JP2006071917A - 光導波路 - Google Patents

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Abstract

【課題】 コア層の断面形状をより真円に近い形状とすることで、コア層内における光の反射伝搬をより均等にして、伝送信号の鈍りを低減することができる光導波路を提供する。
【解決手段】 コア層1と、溝部3を有するクラッド層2とを含み、信号光を入射−伝播−出射する光導波路10である。コア層1の断面形状が略円形である。コア層1の、略円形中心近傍における屈折率が、円周近傍における屈折率よりも高いことが好ましい。また、コア層1が添加剤を含み、かつ、添加剤の濃度が、略円形中心近傍と円周近傍とで異なっていることも好ましい。
【選択図】 図1

Description

本発明は光導波路に関し、詳しくは、簡易な工程により製造可能で、光の伝搬による信号の鈍りを低減することができる光導波路に関する。
近年の光通信技術の発展に伴い、光スイッチや光合分波器などの光通信用部品を構成する基本素子として、高性能の光導波路の開発が望まれている。光導波路は一般に、基板上に、直接または下部クラッド層を介して、コア層および上部クラッド層を順次形成してなる構造を基本構造とする。そのコア層の材料としては、従来より、光伝播損失が小さいなどの利点から、光ファイバと同様に主として石英ガラス等の無機材料が用いられているが、最近では、加工性やコスト性に優れる合成樹脂などの有機材料を用いたポリマー光導波路について、検討が進められてきている。
このような光導波路の製造方法としては、フォトリソグラフィーや反応性イオンエッチング(RIE)等を用いてコア層をパターン形成する方法が一般的である(例えば、特許文献1、2等に記載)。即ち、図4に示すように、まず、(a)基板101上にクラッド層102およびコア層103を順次塗布形成した後、(b)その上にマスク層104を形成し、(c)フォトリソグラフィーにより所望のコア層形状にパターニングする。さらに、(d)このマスク層104を用いてコア層103をRIE等により加工し、最後に(e)マスク層104を除去することで、所望の形状のコア層103を得ることができる。
ところで、上記のような方法により製造される光導波路におけるコア層の断面形状は、製法上必然的に矩形となるが、このような矩形断面のコア層内で光を伝播させた場合、図5(b)に示すように、全反射による光の伝搬が不均等になりやすく、パルスに広がりが生じて、信号の鈍りが大きくなってしまうという問題があった。この問題に対しては、光ファイバの場合と同様に、光が伝搬するコア層の断面形状を円形とすることが有効であると考えられる。
これに対し、例えば、特許文献3には、高分子材料からなるコアとクラッドとを有し、前記コアの断面形状が円形である高分子光導波路が記載されており、この高分子導波路が、コアの断面形状が半円状の第1の高分子光導波路と、コアの断面形状が半円状の第2の高分子光導波路とをそれぞれ形成した後、これらを互いのコアが対向するようにして重ね合わせることにより製造できることも記載されている。また、特許文献4には、下部クラッド層の高分子光導波路形成側面のコア形成部以外に撥水・撥油層を設け、該コア形成部に液状のコア形成剤を塗布し、次いで、該コア形成剤を固化させてコア部を形成した後、コア部周囲に上部クラッド層を形成することにより、コア部断面形状が円形である高分子光導波路を容易に作製することを可能とした高分子光導波路の製造方法が記載されている。
特開平6−347658号公報(段落[0010]〜[0012]等) 特開平8−304650号公報(段落[0009]等) 特開2000−56148号公報(特許請求の範囲等) 特開2003−21740号公報(特許請求の範囲等)
上記のように、断面円形状のコア層を有する光導波路に関しては、種々検討されてきているが、未だ十分なものではなかった。即ち、上記特許文献3、4に記載の技術では、円形に近い断面を有するコア層を形成することは可能であるものの、上述の信号の鈍りの問題を十分に解消できる程度のものではなく、コア層内における光の反射伝搬をより均等にして、信号の鈍りのさらなる低減を図ることのできる光導波路を実現するための技術が求められていた。
そこで本発明の目的は、コア層の断面形状をより真円に近い形状とすることで、コア層内における光の反射伝搬をより均等にして、伝送信号の鈍りを低減することができる光導波路を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討した結果、下記構成とすることにより、上述の問題を解決できることを見出して、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の光導波路は、コア層と、溝部を有するクラッド層とを含み、信号光を入射−伝播−出射する光導波路において、前記コア層の断面形状が略円形であることを特徴とするものである。
本発明においては、前記コア層の、前記略円形中心近傍における屈折率を、円周近傍における屈折率よりも高くすることが好ましく、これは、前記コア層に添加剤を含有させ、かつ、該添加剤の濃度を、前記略円形中心近傍と円周近傍とで異なっているものとすることで実現できる。また、この場合、前記コア層を屈折率の異なる2以上の層からなるものとすることも好適であり、このようなコア層は、多層押し出しにより好適に形成することができる。さらに、前記溝部は、少なくとも一部に略半円形を含む断面形状を有することが好ましく、このような溝部は、射出成形法またはブレード研磨法を用いて形成することができる。
本発明によれば、上記構成としたことにより、コア層内における信号の反射伝搬をより均等にすることができ、これにより信号の鈍りを従来に比しさらに低減した光導波路を得ることが可能となった。また、本発明の光導波路は、フォトリソグラフィを用いた従来方法と比較して簡易な工程で、容易に製造することが可能であるため、生産性にも優れるものである。
以下、本発明の具体的な実施の形態につき詳細に説明する。
図1(a)に、本発明の一好適例の光導波路の拡大断面図を示す。図示するように、本発明の光導波路10は、コア層1とクラッド層2とを含み、コア層1を介して信号光を入射−伝播−出射するものであり、コア層1の断面形状が略円形である点に特徴を有する。コア層の断面形状を略円形としたことで、図5(a)に示すように、コア層内における信号の反射伝搬を均等にすることができ、これにより伝搬に伴う信号の鈍りを低減することが可能となった。
本発明の光導波路においては、信号光が伝搬するコア層の断面形状を略円形とした点のみが重要であり、それ以外の点については特に制限されるものではないが、特には、コア層の、略円形中心近傍における屈折率を、円周近傍における屈折率よりも高くすることが好ましい。中でも、コア層の屈折率を略円形中心近傍から円周近傍に向かい低くなるよう形成した光導波路を、コア層内において屈折率が一様な、いわゆるSI(ステップインデックス)型光導波路に対し、GI(グレーデッドインデックス)型光導波路という。GI型光導波路は、伝播時間が光線の経路によらず一定であることから、広範な波長領域にわたり低損失であり、高速大容量伝送に好適であることが知られている。特には、コア層の屈折率を、略円形中心近傍から円周近傍に向かい連続的に低くなるよう形成することが好ましく、これにより、より伝送損失の低い高性能の光導波路とすることができる。このようなGI型のコア層は、例えば、コア層の材料中に屈折率制御が可能な添加剤を含有させ、レーザやバーナなどによる熱や光を用いて、略円形中心近傍と円周近傍とでその含有濃度を変えることにより、作製することが可能である。
かかる添加剤としては、主たるコア層材料、または、主たるコア層材料を反応等により生成する材料と十分な相溶性を有するとともに、高い屈折率差を生じさせることができるものであれば特に制限されるものではない。主たるコア層材料等と併せ、以下のような組み合わせから適宜選択して用いることができる。なお、屈折率の差は、0.001以上あることが望ましい。
高屈折率を有する添加剤としては、屈折率1.55〜2.00、好ましくは1.60〜1.80であるものが好ましく用いられ、例えば、ハロゲン原子や芳香族環、またはS、N、P原子等の高屈折率成分、エーテル結合等の結合基を含む低分子化合物、オリゴマー、ポリマーなどが好ましい。また、C−H結合を実質的に有しないことが望ましい。具体的な例として、含フッ素ポリエーテルに対する添加剤としてはクロロトリフルオロエチレンオリゴマーが、含フッ素芳香族ポリエステルまたは含フッ素芳香族ポリカーボネートに対しては含フッ素芳香族イミドが用いられる。また、ブタジエン化合物には芳香族環またはハロゲンを有するビニルまたはアクリル系低分子化合物が添加される。さらに、アクリル化合物には、高屈折率モノマーとしてエポキシアクリレート等が添加される。
また、屈折率1.6〜2.7の高屈折率のフィラーを含有させることもできる。この例としては、ZnO(n=1.9)、TiO2(n=2.3〜2.7)、CeO2(n=1.95)、Sb25(n=1.71)、SnO2(n=1.95)、ITO(n=1.95)、Al23(n=1.63)、ZrO2(n=2.05)、Y23(n=1.87)、La23(n=1.95)、HfO2(n=2.0)等が挙げられる。これらは、単独または混合して使用することができる。
一方、低い屈折率を有する添加剤としては、屈折率が1.20〜1.45であるものが好ましい。これらの特徴を有する材料としては、例えば、LiF(n=1.4)、MgF2(n=1.4)、3NaF・AlF3(n=1.4)、AlF3(n=1.4)、Na3AlF6(n=1.33)、SiO2(n=1.45)等の無機フィラーを含有させることができる。
また、フッ素系材料も用いられる。この例としては、フッ化ビニリデン共重合体、フルオロオレフィン/炭化水素共重合体、含フッ素エポキシ樹脂、含フッ素エポキシアクリレート、含フッ素シリコーン、含フッ素アルコキシシランやエポキサイド、エポキシアクリレート等の含フッ素モノマー、オリゴマー、プレポリマー等を挙げることができる。具体的な例としては、ポリメタクリル酸メチルにヘプタフルオロ−n−ブタン酸エチル、メチルパーフルオロオクタオクタノエート、パーフルオロオクタン酸メチル等を添加して用いられる。
上記添加剤を主たるコア層材料中に拡散させる方法としては、主たるコア層材料の溶融液の中心部に添加剤または添加剤を含む主たるコア層材料を注入し、その後成形する方法や、溶融紡糸や延伸などにより得られた主たるコア層材料からなる芯材に添加剤または添加剤を含む主たるコア層材料を繰り返しディップコートする方法等を用いることも可能である。また、主たるコア層材料よりも低屈折率の昇華性または揮発性有機化合物を添加剤として用いる場合には、主たるコア層材料を所望形状に成形した後、その表面にこの有機化合物を浸透・分散させる方法を用いてもよい。さらに、その他、光照射により屈折率が変化するフォトブリーチング材料を用いる方法など、従来公知の手法を適宜用いて上記GI型のコア層を形成することができることは言うまでもない(例えば、特開2001−296438号公報、特開2000−304952号公報、特開平8−337723号公報、特開2003−322742号公報、特開2000−38422号公報等を参照)。
また、GI型のコア層は、屈折率の異なる2以上の層からなるものとすることも好適である。図1(b)に、かかるGI型光導波路の一構成例を示す。図示するGI型の光導波路20は、屈折率の異なる4つの層11a〜11dからなるコア層11とクラッド層2とを有しており、4つの層11a〜11dはそれぞれ、略円形中心近傍の層11aから円周近傍の層11dに向かい、順次屈折率が低くなるよう形成されている。この場合の屈折率の調整は、例えば、上記したように、添加剤の含有濃度を変えることにより行うことができ、また、各層の構成材料を変えることにより行うこともでき、特に制限されるものではない。このようなコア層11は、例えば、多層押出により好適に形成することができる。多層押出を用いた場合、下部クラッド層上に多層押出にて作製されたコア層は、接着剤や熱の付与等により下部クラッド層と接合することができ、その上から上部クラッド層を塗布することにより、より強固に固定することができる。
本発明の光導波路においては、上記SI型またはGI型のいずれの場合であっても、図示するようにクラッド層2が溝部3を有し、この溝部3内にコア層1、11が形成されている。従って本発明においては、図示するように、断面略円形状のコア層に対応して、溝部が、少なくとも一部に略半円形を含む断面形状を有することが好ましい。このような溝部は、図示するような上下クラッド層2a、2bのいずれかに、例えば、射出成形法や、ブレード研磨法を用いて形成することができる。また、いわゆるインプリント法(ホットエンボス法またはナノインプリント法とも称する)を用いても、好適にコア層を形成することが可能である。
図2に、かかるインプリント法を用いた本発明の光導波路10の製造工程の一例を示す。図示する例では、(a)基板5上に下部クラッド層2bを塗工した後、(b)かかる下部クラッド層2bに対し凹凸パターンが形成されたモールド6をプレスして、その凹凸パターンを下部クラッド層2b表面に転写することにより、溝部3を形成している(インプリント工程)。その後、(c)溝部3内にコア層1を塗工して、さらに、(d)上部クラッド層2aを積層することにより、光導波路10を製造することができる。
上記のように、インプリント法を用いて溝部3の形成を行うことにより、従来のリソグラフィー法に必要な現像作業が不要となり、簡易な工程で効率良く製造を行うことが可能となる。また、ビーム系が不要であるため装置コストが抑制でき、化学増幅系などの高価なレジスト材料が不要となる点でもコストの低減に寄与することができる。さらに、インプリント法では、パターンの形状をそのまま転写することができるため、設計通りの3次元形状を容易に得ることができるとともに、従来のリソグラフィー法では対応できなかった曲面などの多様な断面形状にも、光導波路を形成することが可能となるという利点もある。なお、図示する例では、断面略U字形状の凸部を有するモールド(テンプレート)6を用いているが、モールドの凸部は半円形やV字形などであってもよく、特に制限されるものではない。図示するような断面略U字形状の凸部であれば、より容易に略半円形の断面形状を有するコア層の形成が可能であるが、例えば、半円形やV字形などの場合でも、後述する溝部表面の接触角を利用する方法を用いることで、略半円形の断面形状を有するコア層を形成することが可能である。
ここで、上記インプリント工程においては、下部クラッド層2bの材料として、熱可塑性材料または熱硬化性材料を用いる熱インプリント法、または、光硬化材料を用いる光インプリント法のいずれかを、好適に採用することができる。このうち、熱可塑性材料を用いる場合には、そのガラス転移点以上の温度でモールド6のプレスを行った後、モールド6からの離型前に下部クラッド層2bの冷却硬化を行うことにより、形状精度良く溝部3のパターンを形成した下部クラッド層2bを形成することができる。また、熱硬化性材料を用いた場合には、プレス後、モールド6からの離型前に下部クラッド層2bの熱硬化を行い、光硬化材料を用いた場合には、同様にプレス後、モールド6からの離型前に、下部クラッド層2bの光硬化を行えばよい。いずれの場合においても、モールド6からの離型前に下部クラッド層2bを硬化させることができるため、所望の形状の溝部3のパターンを、歪みを生ずることなく形成することができる。
熱インプリント法に用いることのできる下部クラッド層2bの材料としては、透明性に優れた熱可塑性材料および熱硬化性材料であればよく、特に制限されるものではない。例えば、熱可塑性材料としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などが挙げられる。これらの材料は、単独もしくはブレンドして用いてもよく、ブレンドの場合には、ブレンドされる各々の材料の3次元網目構造が相互貫通している構造(IPN(Inter penetrating networks)構造)をとってもよい。上記材料の成分をブロックとして、共重合体としてもよい。また、上記材料に適量の溶剤を添加して、転写性を改良することも可能である。
また、熱硬化性材料としては、シリコン系材料、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアリレート樹脂、フッ素系樹脂、これら樹脂の重水素化物などが挙げられる。これらの材料は、単品もしくはブレンドして用いてもよく、ブレンドの場合には、ブレンドされる各々の材料の3次元網目構造が相互貫通している構造(IPN構造)をとってもよい。上記材料の成分をブロックとして、共重合体としてもよい。
次に、光インプリント法は、一般的に材料の硬化速度が速いので、熱インプリント法と比較して、プロセス時間を短くできる利点がある。かかる光インプリント法に用いることのできる光硬化材料は、(a)重クロム酸塩系感光性樹脂、(b)光分解型感光性樹脂、(c)光二量化型感光性樹脂、(d)光重合型感光性樹脂に分類される。
(a)重クロム酸塩系感光性樹脂としては、ゼラチン、グルー、卵白、アラビアゴム、セラミックなどの天然高分子、あるいは、PVA(ポリビニルアルコール)、ポリアクリルアミドのような合成高分子に、重クロム酸アンモニウムあるいは重クロム酸カリウムを加えたものを挙げることができる。また、(b)光分解型感光性樹脂としては、芳香族ジアゾニウム塩系樹脂、o−キノンジアジド類樹脂、アジド化合物含有樹脂があり、(c)光二量化型感光性樹脂としては、桂皮酸エステル系樹脂が挙げられる。これらはいずれも、光インプリント法における下部クラッド層材料として用いることができる。
さらに、(d)光重合型感光性樹脂としては、不飽和二重結合のラジカル重合反応を利用した光ラジカル重合系組成物、二重結合へのチオール基の付加反応を利用した光付加反応系組成物、および、エポキシ基の開環付加反応(カチオン重合)を利用した光カチオン重合系組成物等が挙げられる。このうち光ラジカル重合系組成物としては、(メタ)アクリロイル基、マレイン酸、フマル酸基を官能基として導入した不飽和ポリエステル、不飽和ポリウレタン、不飽和エポキシ樹脂、オリゴエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、二重結合へのチオール基の付加反応を利用した光付加反応系組成物としては、ポリウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基にアリルアルコールを反応結合させたポリエンにペンタエリスリトールテトラキス(β−メルカプトプロピオネート)のようなチオール基を持つ化合物が挙げられ、光カチオン重合系組成物としては、光の照射により、BF3、SnCl4、PF5などのルイス酸を放出する化合物を光カチオン重合開始剤として用いて、エポキシ基などを光開環重合させるものが挙げられる。上記の光重合型感光性樹脂は、いずれも光インプリント法に使用可能である。
なお、インプリント法では、前述したように熱収縮や光硬化収縮により寸法変化が生ずるため、使用する材料に応じて変化量をあらかじめ予測して、光導波路を設計する必要がある。また、解像度がモールドで定まってしまう点、モールド内に樹脂の残膜が発生する場合がある点にも注意を要する。
インプリント法を用いる場合の、図2(a)、(d)に示す下部クラッド層2bおよび上部クラッド層2aの形成は、使用する材料に応じて慣用の塗工方法により行えばよく、特に制限されるものではない。例えば、スピンコート法、コンマ法、グラビア法等を用いることができる。また、所望に応じ別途作製したフィルム状のクラッド層を積層してもよい。また、図2(c)に示す溝部3内へのコア層1の形成は、特に制限されるものではなく、例えば、スピンコート法、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、インクジェット、ディスペンサー塗布、アプリケーター塗布等の、液状かまたは少なくとも流動性を有する材料を供給することが可能な慣用の方法を用いて行うことができ、特には、インクジェットまたはディスペンサー塗布、中でも、ディスペンサー塗布の手法を用いることが好適である。図2(d)に示す上部クラッド層2aの塗工後には、熱ないし光(紫外線(UV)、電子線(EB)等)を適宜付与して、未硬化の部分を硬化させることにより、光導波路10を得ることができる。なお、図2(c)に示すコア層1の塗工後にも、コア層をある程度硬化させて形状を保持するために、熱ないし光を付与することが好ましい。
ここで、溝部3内において断面形状が略円形であるコア層1を形成するための手法としては、例えば、コア層1形成用材料の溝部3表面に対する接触角を高く、例えば、90〜170°の範囲内程度とする手法が挙げられる。かかる高接触角を有するコア層1形成用材料を溝部3内に塗工すると、図示するように、コア層1形成用材料は、表面張力により断面略円形状に形成されることになる。その状態で硬化を行うことにより、溝部3内において、図示するような断面略円形状のコア層1を形成することができる。
この場合、コア層1およびクラッド層2の各材料の組み合わせを適宜選択することにより上記接触角を調整することも可能であるが、本発明においては、溝部3の表面にフッ素含有化合物を含有させる手法を好適に用いることができる。フッ素含有化合物は、一般に、屈折率が低い上に撥水、撥油性が高いため、溝部3の表面の少なくとも一部、図示する例では、少なくとも溝部3表面のうち半円形の部分にフッ素含有化合物を含有させておくことで、その部分に対するコア層1形成用材料の接触角を高めることができる。得られる接触角は、コア層1形成用材料とフッ素含有化合物との組み合わせにより変わるが、例えば、100〜140°程度である。かかるフッ素含有化合物としては、特に制限されるものではなく、汎用の材料から適宜選択して用いることができるが、例えば、フッ素化エポキシ樹脂、フッ素化アクリル樹脂、フッ素化アクリル酸エステル樹脂、フッ素化ポリイミド樹脂などのフッ素化された樹脂、ゴムや無機フッ素化合物、パーフルオロアルキル基含有アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルの共重合体などのフッ素系界面活性剤などを挙げることができる。
溝部3の表面にフッ素含有化合物を含有させる方法としては、溝部3を設けたクラッド層2を成形した後、その溝部3表面の適宜箇所にフッ素含有化合物をスピンコート法、スプレー法、ディップ法などにより塗布する方法を用いてもよく、また、溝部3を後述するインプリント法により形成する場合には、インプリント法に用いるモールドの、溝部3に対応する適宜部分にフッ素含有化合物を塗布しておき、溝部3の形成と同時に、その表面にフッ素含有化合物を含有させる方法を用いてもよい。また、クラッド層全体をフッ素含有化合物からなるものとしてもよく、さらに、クラッド層の形成後、引き続きクラッド層表面にフッ素含有化合物を塗工して、その後インプリント法による凹凸パターンの転写を行う手法を用いてもよい。
この場合、フッ素含有化合物を含有させてコア層1形成用材料の接触角を高めた溝部3表面と、形成されたコア層1との間には、互いに非接触となって空気の残留する領域が形成される場合がある。空気の屈折率は約1であるため、この空気の存在する領域については、コア層1とクラッド層2との境界面における屈折率差をより大きく取ることができることとなり、伝送損失の低減を図る上で有利となる。コア層1形成用材料の接触角を適切に調整することで、かかる非接触領域、即ち、空気層の介在領域を大きく取って、より高効率化を図ることも可能である。なお、コア層1とクラッド層2との間に空気層を形成するための手法としては、コア層1およびクラッド層2のうちいずれか一方または双方の形成用材料として、熱または光により収縮可能である材料を用いることも有効であり、例えば、3〜13%程度の熱収縮率を有する紫外線(UV)硬化型エポキシ樹脂やUV硬化型アクリル樹脂、UV硬化収縮率35%のポリシラン(熱でも収縮)などを挙げることができる。これにより、硬化後にコア層−クラッド層間に空隙を生じさせて、空気層を形成することが可能となる。具体的には例えば、コア層形成用材料として硬化の際に収縮する材料を用いて、図3(a)に示すように、下部クラッド層22bに形成された底部が断面略半円形状の溝部23内に、コア層21を塗工し、硬化させる。硬化によりコア層21は収縮するので、その後コア層21上に、あらかじめシート状に形成した上部クラッド層22aを積層することで、図2(b)に示すように、最終的に得られる光導波路30において、コア層21−クラッド層22間に空気層24を形成することができる。
コア層1およびクラッド層2の材料としては、特に制限されるものではなく、従来慣用の無機材料や有機材料のうちから適宜選択して用いることができるが、コア層は、上下クラッド層よりも高屈折率にて形成することが必要となるので、互いの層の材料との関連で選択することを要する。クラッド層2の材料としては、インプリント法を用いる場合には前述した材料が好適であり、コア層1の材料としては、例えば、光硬化材料、熱硬化性材料、熱可塑性材料等の各種モノマー(溶液も含む)、オリゴマー(溶液も含む)、ポリマー溶液のうちから、透明性や耐熱性等のコア層としての要求特性等の観点から、適宜選択して用いることができる。なお、前述した多層押出しによりコア層1を形成する場合には、熱可塑性材料を用いることが好適である。
上記のうちモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸およびこれらの低級アルコールエステル、下記一般式(2)、
Figure 2006071917
(式中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2は炭素数8〜20のアルキル基を表す)で表される化合物、ジ(メタ)アクリルエステル、トリ(メタ)アクリルエステル、さらには、スチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン系モノマーなどを挙げることができる。
アクリル酸およびメタクリル酸の低級アルコールエステルの低級アルコールとしては、炭素数1〜5、好ましくは1〜3の1価アルコール、より好ましくはメタノールが挙げられる。
また、前記一般式(1)で表される化合物において、炭素数8〜20の高級アルキル基を示すR2の好ましい炭素数は10〜16、より好ましくは12〜14である。この高級アルキル基R2は、単独アルキル基であっても混合アルキル基であってもよいが、最も好ましくは炭素数12と13との混合アルキル基である。この場合、炭素数12のアルキル基のものと炭素数13のアルキル基のものとの割合、即ち、ドデシル(メタ)アクリレートとトリデシル(メタ)アクリレートとの割合は、重量比として通常20:80〜80:20であり、特に40:60〜60:40であることが好ましい。
ジ(メタ)アクリルエステルとしては、エチレングリコールと(メタ)アクリル酸とのジエステル、ポリエチレングリコールと(メタ)アクリル酸とのジエステル、アルキル鎖の炭素数が3〜6のジオールと(メタ)アクリル酸とのジエステルが挙げられる。また、トリ(メタ)アクリルエステルとしては、アルキル鎖の炭素数が3〜6のトリオールと(メタ)アクリル酸とのトリエステルが挙げられる。なお、ポリエチレングリコールと(メタ)アクリル酸とのジエステルを構成するポリエチレングリコールとしては、下記一般式(3)、
Figure 2006071917
において、nが1〜15、特に1〜10のものが好ましい。
上記モノマーを重合あるいは共重合させて層を形成するための方法としては、熱や光による硬化方法が一般的であるが、特に制限されるものではない。一般的には、熱硬化の場合には、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジーt−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジミリスチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)、クミルパーオキシオクトエートなどの有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリルなどのアゾ化合物等の重合開始剤を添加し、50〜120℃で1〜20時間重合させる方法を採用することができる。また、光硬化の場合の重合開始剤としては、ベンジルメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタールなどのケタール系化合物、α−ヒドロキシケトン、ミヒラーズケトン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのケトン系化合物、ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物、メタロセンなどのメタロセン系化合物、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾイン化合物などが好適に用いられる。
なお、上記モノマーとともに、リン酸エステル、芳香族カルボン酸エステル、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸エステル、グリコール類及びグリコール(メタ)アクリレート類の1種または2種以上をブレンドして用いることが、高温高湿下に長期間放置した場合の白濁を防止する点から好ましい。
また、ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂((メタ)アクリル酸のエステル)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂(結晶、非結晶)、ポリシラン、ポリエーテルスルホン、ポリノルボルネン、エポキシ系樹脂、例えば、ビスフェノールA型、ノボラック型のエポキシ樹脂とポリアミノアミド、変性ポリアミノアミド、変性芳香族ポリアミン、変性脂肪族ポリアミン、変性脂環族ポリアミン,フェノールなどの活性水素を持つ硬化剤との混合硬化物、ポリアリール、ポリイミド(PI)、ポリカルボジイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリアミド(PA)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、メチルメタクリレート−スチレン共重合体(MS、MMA−St)、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)等のスチレン系樹脂(中でも、SBS、ABSは耐衝撃性に優れる利点を備える)、ポリフェニレンエーテル等のポリアリーレンエーテル、ポリアリレート(PAR)、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトンやポリエーテルケトンケトン等のポリエーテルケトン類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロックポリマー(SEBS)、フッ化ビニリデン系樹脂、ヘキサフルオロプロピレン系樹脂、ヘキサフルオロアセトン系樹脂等のフッ素系樹脂などを挙げることができ、中でも、(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。
透明樹脂としては、他に、ポリ塩化ビニル(PVC)、シクロオレフィンポリマー(商品名:アートン(JSR(株))、ゼオネックス(日本ゼオン(株)等)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)、フェノール樹脂、ポリサルフォン(PSF)樹脂等が挙げられる。上記のうち、モノマーあるいは低分子材料から出発できるものとしては、スチレン系樹脂、特にはMS樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂がある。
さらに、アクリル酸、メタクリル酸およびこれらの低級アルコールエステルとスチレン系モノマーとの共重合体の他、前述したモノマー類の一部または全ての水素原子をフッ素原子に置き換えたモノマーを用いた透明樹脂などを用いることもできる。かかるコア層1およびクラッド層2の材料は、単独または2種以上を適宜混合して使用することが可能である。
また、上部クラッド層2aについては、先に挙げた下部クラッド層2bと同様の材料を用いればよく、伝送損失の低減の観点からは、同一の材料を用いて形成することが好ましい。
なお、図2に示す製造工程において使用する基板5としては、従来より知られているものから適宜選択して用いることができ、特に制限されるものではない。例えば、シリコン基板や石英基板、金属箔、ガラス板などの他、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの高分子フィルム等を用いることができる。但し、前述のインプリント工程において光インプリント法を用いる場合には、基板5側から、または、モールド側から光を照射して硬化を行う必要があるため、基板5またはモールドとして透明なものを用いることが必要となる。さらに、上記各層の塗工溶液の調製に用いる溶剤としては、特に制限されるものではなく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル、酢酸セロソルブ、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、ベンゼン、シクロヘキサノン等の慣用の有機溶剤から適宜選択して用いることができる。
以下、本発明を、実施例を用いて具体的に説明する。
実施例
2インチ径のSi基板上に、バーコーターを用いて、アクリル系樹脂(JSR製)を100μm厚さに塗布し、引き続き100℃で3分間加熱して、下部クラッド層(屈折率1.51)を形成した。
次に、凹凸パターンの凸側が断面半円形状(直径50μm)を有する石英製モールドを準備し、熱インプリント法により、180℃のプレス温度にて、表面に4本の平行な溝部を有する下部クラッド層を成形した後、高熱水銀灯(365nm)の光源を用いて、照度20mW/cm2、光量1.0J/cm2にて露光した。それぞれの溝部は底部が半円形であり、幅60μm、高さ60μmの形状を有していた。
次いで、主たるコア層材料としてのアクリル系樹脂中に屈折率制御が可能な添加剤としてのエポキシアクリレートを添加して押出成形することにより、断面形状が直径50μmの略円形であるコア層を形成した。その後、レーザを用いた加熱により、略円形中心近傍と円周近傍とでその含有濃度を変えることにより、中心近傍における屈折率を1.57に、円周近傍における屈折率を1.51に、それぞれ調整した。このコア層を、下部クラッド層の溝部内に、加熱しながら押し込んで固定した。
次に、上部クラッド層として、上記下部クラッド層と同じアクリル系樹脂を離型フィルム上にバーコーター法にて塗布してなる30μmの膜を、上記のコア層および下部クラッド層上に転写、積層して、150℃で60分間加熱を行った。得られた光導波路(導波路長30mm)に波長0.83μmの光を通して、伝送信号の鈍りを確認したところ、鈍りはほとんど見られなかった。即ちこの場合、コア層の断面形状を円形としたことで、図5(a)に示すように、光導波路内に入射した光は、コア層とクラッド層との界面にて全反射を繰り返しながら伝播する際に、より均等に反射することになり、このため光の伝搬もより均等となって、入射光の信号波形が保持され、信号の鈍りが生じなかったものと考えられる。
比較例
凹凸パターンの凸側が断面矩形状(幅50μm、高さ50μm)を有する石英製モールドを用いた以外は実施例と同様にして、表面に4本の平行な溝部を有する下部クラッド層(屈折率1.51)を成形した。その後、高熱水銀灯(365nm)の光源を用いて、照度20mW/cm2、光量1.0J/cm2にて露光を行った。形成された溝部は底部が矩形であり、幅60μm、高さ60μmの形状を有していた。
次いで、主たるコア層材料としてアクリル系樹脂を用いて押出成形することにより、断面形状が50μm×50μmの略矩形であるコア層(屈折率1.57)を形成した。このコア層を、下部クラッド層の溝部内に、加熱しながら押し込んで固定した。
次に、上部クラッド層として、上記下部クラッド層と同じアクリル系樹脂を離型フィルム上にバーコーター法にて塗布してなる30μmの膜を、上記のコア層および下部クラッド層上に転写、積層して、150℃で60分間加熱を行った。得られた光導波路(導波路長30mm)に波長0.83μmの光を通して、伝送信号の鈍りを確認したところ、大幅な鈍りが確認された。即ちこの場合、図5(b)に示すように、入射光が不均等に反射して、不均等に伝搬するため、信号の鈍りが生じたものと考えられる。
(a)、(b)は、本発明の光導波路の一好適例を示す平面図である。 (a)〜(d)は、本発明の光導波路の製造方法の一好適例を示す製造工程図である。 (a)、(b)は、本発明の光導波路の他の好適例に係る説明図である。 (a)〜(e)は、従来の光導波路の製造方法の一例を示す製造工程図である。 (a)、(b)は、光導波路における光の伝搬状態およびその際のパルス分布を表す説明図である。
符号の説明
1、11、21 コア層
2、12、22 クラッド層
2a、12a、22a 上部クラッド層
2b、12b、22b 下部クラッド層
3、23 溝部
4 空気層
5、基板
6 モールド
10、20、30 光導波路

Claims (7)

  1. コア層と、溝部を有するクラッド層とを含み、信号光を入射−伝播−出射する光導波路において、前記コア層の断面形状が略円形であることを特徴とする光導波路。
  2. 前記コア層の、前記略円形中心近傍における屈折率が、円周近傍における屈折率よりも高い請求項1記載の光導波路。
  3. 前記コア層が添加剤を含み、かつ、該添加剤の濃度が、前記略円形中心近傍と円周近傍とで異なっている請求項2記載の光導波路。
  4. 前記コア層が屈折率の異なる2以上の層からなる請求項2または3記載の光導波路。
  5. 前記コア層が、多層押し出しにより形成されている請求項4記載の光導波路。
  6. 前記溝部が、少なくとも一部に略半円形を含む断面形状を有する請求項1〜5のうちいずれか一項記載の光導波路。
  7. 前記溝部が、射出成形法またはブレード研磨法を用いて形成されている請求項1〜6のうちいずれか一項記載の光導波路。
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JP2007316406A (ja) * 2006-05-26 2007-12-06 Toppan Printing Co Ltd 光基板およびその製造方法
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