JP2006070847A - 内燃機関 - Google Patents

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Abstract

【課題】直噴噴射弁先端部の過熱を抑制し、かつ過冷却を抑制すること。
【解決手段】この内燃機関はいわゆる直噴の内燃機関である。直噴噴射弁20は、内燃機関の燃焼室1b内へ燃料を噴射する燃料噴射孔26を備える。また、燃料噴射孔26が設けられている直噴噴射弁20の先端部20tは、カバー部材30で覆われている。また、カバー部材30は、燃料噴射孔26から噴射される燃料噴霧Fmが通過する燃料通過孔31を有する。そして、内燃機関の運転条件に応じて直噴噴射弁20に供給する燃料の燃圧を変化させることによって、燃料噴射孔26から噴射される燃料噴霧Fmの噴射角度を変化させる。これによって、燃料噴霧Fmが燃料通過孔31を通過する際に、燃料噴霧Fmの一部をカバー部材30と干渉させる。
【選択図】 図2−1

Description

本発明は、内燃機関に関し、さらに詳しくは、燃焼室内へ直接燃料を噴射するいわゆる直噴の内燃機関に関するものである。
燃焼室内に直接燃料を噴射して点火する、いわゆる直噴の内燃機関は、圧縮行程中に直接燃料を噴射して、点火プラグ付近に燃料噴霧を留めて着火しやすい混合気を形成し、その周りの空気層と分離、すなわち成層化する。この状態で点火プラグ付近の混合気に点火して燃焼させる、いわゆる成層燃焼運転をすることで、超希薄燃焼運転を実現できる。これにより、内燃機関の燃費を向上させるとともに、COの排出量を低減させることができる。
また、直噴の内燃機関は、吸入行程中に燃焼室内へ直接燃料を噴射して気筒内へ燃料を拡散させ、均質の混合気を形成して燃焼させる、いわゆる均質燃焼運転することもできる。均質燃焼運転では、吸入行程中に燃焼室内へ直接噴射した燃料の気化熱によって吸入空気を冷却できるので、充填効率を高めることができる。これにより、直噴の内燃機関の均質燃焼領域における運転では高出力を得ることもできる。このような利点から、近年、直噴の火花点火式内燃機関が注目されており、実用化されている。
直噴の内燃機関は、燃焼室内へ燃料を噴射する燃料噴射弁を備えており、この燃料噴射弁の燃料噴射孔は燃焼室内へ開口している。内燃機関の運転中においては、燃料噴射弁の燃料噴射孔付近が高温の燃焼ガスにさらされるので、燃料噴射孔の近傍にはカーボンが堆積する。その結果、燃料噴射弁から噴射される燃料の流量低下、燃料噴霧形状の悪化という問題が発生することがある。この問題を解決するため、例えば、特許文献1には、インジェクタの先端部に当接する冷却部材を設け、噴射した燃料をこの冷却部材に当てて、気化潛熱によりインジェクタ先端部の冷却を促進する技術が開示されている。
特開平8−246981号公報
しかし、特許文献1に開示された技術は、常に燃料が冷却部材に当たるため、冷却を回避したい運転条件の場合であっても冷却が促進される結果、インジェクタ先端部が過冷却されて燃料の霧化が悪化する。その結果、燃料消費の増加やエミッションの悪化を引き起こすおそれがあった。そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、直噴噴射弁先端部の過熱を抑制し、かつ過冷却を抑制できる内燃機関を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る内燃機関は、燃焼室内へ直接燃料が噴射される内燃機関であって、前記燃焼室内へ燃料を噴射する燃料噴射孔が、前記燃焼室側に位置する端部に設けられる直噴噴射弁と、前記燃料噴射孔が設けられている前記直噴噴射弁の端部を覆うとともに、前記燃料噴射孔から噴射される燃料噴霧が通過する燃料通過孔を有するカバー部材と、前記内燃機関の運転条件に応じて、前記燃料噴射孔から噴射される燃料噴霧が前記燃料通過孔を通過する際に、前記燃料噴霧の一部を前記カバー部材と干渉させることのできる燃料干渉手段と、を備えることを特徴とする。
次の本発明に係る内燃機関は、前記内燃機関において、前記燃料干渉手段は、前記燃料噴射孔が開口している前記直噴噴射弁の端部の温度を表すパラメータに基づいて、前記燃料噴霧の一部を前記カバー部材と干渉させるか否かを決定することを特徴とする。
次の本発明に係る内燃機関は、前記内燃機関において、前記燃料干渉手段は、前記カバー部材が有する燃料通過孔と、前記直噴噴射弁が有する前記燃料噴射孔との相対的な位置を変更するものであることを特徴とする。
次の本発明に係る内燃機関は、前記内燃機関において、前記燃料干渉手段は、前記直噴噴射弁へ供給する燃料の圧力を変更するものであることを特徴とする。
次の本発明に係る内燃機関は、前記内燃機関において、前記カバー部材はコップ形状の胴部を有し、かつコップの底に相当する部分に前記燃料通過孔が形成され、さらに前記燃料噴射孔が開口している前記直噴噴射弁の端部は、前記胴部内に格納されることを特徴とする。
次の本発明に係る内燃機関は、前記内燃機関において、前記直噴噴射弁と前記カバー部材との間には、前記直噴噴射弁の中心軸に対して直交する方向に押圧力を受ける密封部材が介在することを特徴とする。
以上説明したように、この発明に係る内燃機関では、直噴噴射弁先端部の過熱を抑制し、かつ過冷却を抑制できる。
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための最良の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。本発明は、乗用車やバス、あるいはトラック等の車両に搭載される内燃機関に対して好ましく適用できる。また、本発明は、燃焼室内へ直接燃料を噴射する直噴噴射弁を備える内燃機関であれば、その形式を問わず適用できる。また、次の説明では、レシプロ式内燃機関の1気筒を取り出して説明するが、本発明は気筒数を問わず適用できる。
この実施例に係る内燃機関は、いわゆる直噴の内燃機関である。そして、直噴噴射弁の燃料噴射孔から噴射される燃料噴霧の通過孔が開口するカバー部材と、前記燃料噴霧が前記燃料通過孔を通過する際に、前記燃料噴霧の一部を前記カバー部材と干渉させ、燃料噴霧の気化潜熱により直噴噴射弁の先端部を冷却することのできる燃料干渉手段とを備える点に特徴がある。まず、この実施例に係る内燃機関の全体構成について簡単に説明する。図1は、この実施例に係る内燃機関の全体構成を示す概略図である。
この内燃機関1は、火花点火式のレシプロ式内燃機関であり、気筒1sの燃焼室1b内へ直接燃料Fを噴射する直噴噴射弁20を備える。直噴噴射弁20は、燃料カバー部材30を介してシリンダヘッド1hへ取り付けられる。内燃機関1の気筒1s内にはピストン5が配置されており、燃焼室1b内へ形成された混合気の燃焼により往復運動する。直噴噴射弁20には、燃料分配手段であるデリバリパイプ2から燃料が供給されて、燃焼室1b内へ直接燃料Fを噴射する。
直噴噴射弁20によって燃焼室1b内へ直接噴射された燃料Fは、吸気通路である吸気ポート4iを通って燃焼室1b内へ導入される空気Aと混合気を形成する。ここで、内燃機関1の燃焼室1bへ導入される空気Aの流量は、吸気通路に設けられるスロットル弁3vの開度を調整することで制御される。スロットル弁3vの開度はアクセル3pと連動しており、運転者の意思がスロットル弁3vの開度に反映される。
燃焼室1b内には、内燃機関1の負荷KLや機関回転数NEに応じた噴射量及びタイミングで、直噴噴射弁20から燃料Fが噴射される。燃料Fは、直噴噴射弁20から燃焼室1b内へ噴射されて燃料噴霧Fmとなり、吸気ポート4iから吸気弁8iを通って燃焼室1b内に導入される空気Aと混合気を形成する。この混合気は点火プラグ7で着火されて燃焼し、混合気の燃焼圧力はピストン5に伝えられ、ピストン5を往復運動させる。
ピストン5の往復運動はコネクティングロッド6cを介してクランク軸6に伝えられ、ここで回転運動に変換されて、内燃機関1の出力として取り出される。燃焼後の混合気は排ガスExとなり、排気弁8eを通って排気通路である排気ポート4eへ排出される。排ガスExは、排気通路に設けられる触媒9により浄化されて、大気中へ放出される。
次に、この実施例に係る内燃機関1の燃料供給系について説明する。内燃機関1へ供給される燃料Fは、燃料タンク10に貯留されている。燃料Fは、まずフィードポンプ11により所定の圧力Pで、低圧燃料供給通路12を通して高圧ポンプ13へ送られる。高圧ポンプ13へ送られた燃料Fは、ここでPに昇圧され、高圧燃料供給通路14を通ってデリバリパイプ2へ送られる。デリバリパイプ2へ送られた燃料Fは、直噴噴射弁20へ送られて、所定のタイミングで燃焼室1b内へ噴射される。なお、P>Pである。
デリバリパイプ2内の余剰の燃料Fは、燃料リターン通路15を通って燃料タンク10内へ戻る。デリバリパイプ2の出口以降には、調圧弁16が設けられており、デリバリパイプ2内の圧力が規定値Pを超えないようにする。この実施例において、調圧弁16は、燃料リターン通路15に設けられている。この実施例の燃料供給系に備えられる高圧ポンプ13は、燃料Fの吐出デューティを変化させることができる。これにより、規定値Pまでの範囲で、直噴噴射弁20へ供給する燃料の圧力(以下燃圧)を調整することができる。燃圧はデリバリパイプ2に取り付けられる燃圧センサ45により測定されて、高圧ポンプ13は、燃料Fの吐出デューティが制御される。
内燃機関1の運転を制御するエンジンECU(Electronic Control Unit)50は、内燃機関1に取り付けられるクランク角センサ41、アクセル開度センサ42、エアフローセンサ43、冷却水温センサ44、燃圧センサ45その他の各種センサ類からの出力を取得して、内燃機関1の運転を制御する。エンジンECU50は、制御部51、記憶部52、入力ポート53、出力ポート54を含んで構成される。
制御部51は、内燃機関1の運転の制御を司る機能を持ち、入力ポート53に接続された前記各種センサ類から取得する情報に基づいて、内燃機関1の運転を制御する。記憶部52には、内燃機関1の運転制御に用いるデータマップや制御プログラムが格納されており、制御部51は適宜これらを呼び出して内燃機関1の運転を制御する。入力ポート53には、前記センサ類が接続され、出力ポート54には、制御対象である直噴噴射弁20や高圧ポンプ13等が接続される。
次に、この実施例に係る内燃機関1が備える直噴噴射弁20及びカバー部材30について説明する。図2−1は、この実施例に係る内燃機関が備える直噴噴射弁及びカバー部材の取り付け構造を示す説明図である。図2−2は、図2−1のX−X矢視図である。図3−1、図3−2は、この実施例に係る内燃機関1が備えるカバー部材の斜視図である。図4−1、図4−2は、この実施例に係る内燃機関1が備える直噴噴射弁を示す説明図である。次の説明では、適宜図1を参照されたい。
図2−1に示すように、直噴噴射弁20及びカバー部材30は、内燃機関1のシリンダヘッド1hに設けられた噴射弁等取付孔60に挿入される。噴射弁等取付孔60は、燃焼室1b側の内径よりも、直噴噴射弁20及びカバー部材30を挿入する挿入側の内径の方が大きくなっている。これにより、噴射弁等取付孔60には段部61が形成される。
ここで、この実施例に係るカバー部材30及び直噴噴射弁20について説明する。図3−1、図3−2に示すように、カバー部材30は、端面30tpに燃料通過孔31が形成された底付筒状、すなわちコップ形状の胴部30sと、燃料通過孔31と反対側の端部に設けられた鍔部30uとで構成される。このように、カバー部材30の胴部30sをコップ状の形状とすることによって、シリンダヘッド1hに形成された既存の噴射弁等取付孔60を利用してカバー部材30を固定できる。これによって、全体の構成を簡略化できる。
鍔部30uには開口部30Hが設けられており、図2−1に示すように、直噴噴射弁20の先端部20tが、この開口部30Hからカバー部材30の胴部30s内へ格納される。ここで、直噴噴射弁20の先端部20tは、燃料噴射孔26が開口している直噴噴射弁20の端部である。なお、図2−1に示すように、この実施例において燃料通過孔31は燃焼室1bに向かって断面積が大きくなるようにしてあるが、断面積は一定でもよい。
次に、この実施例に係る直噴噴射弁20について説明する。図4−1に示すように、直噴噴射弁20は、弁体21に穿設した弁孔23の弁孔入口23iから弁針25を挿入し、弁針25が弁体21の中心軸Z方向に往復できるように構成してある。なお、弁体21の中心軸Z方向は、直噴噴射弁20の中心軸方向である。弁針25の外径dは、弁孔23の内径dよりも小さくなっており、これによって弁針25と弁孔内壁23wiとの間には燃料Fが流れる環状の燃料通路22が形成される。弁孔23の先端部23t(弁孔入口23iの反対側)には、弁針25の先端部25tが当接する円錐状の弁座部27とサック部29とが形成してある。また、弁孔23の先端部23tには、前記サック部29から弁体21の先端部21tの先端面21tpに開口するスリット状の燃料噴射孔26が形成されている。
直噴噴射弁20に供給された燃料Fは、燃料通路22に満たされる。燃料Fを噴射しない場合には、弁針25の先端部25tと弁座部27とが当接して、サック部29に対する燃料Fの供給を停止する。燃料Fを噴射する場合には、エンジンECU50からの指令を受けて、弁針25が弁孔入口23i方向に移動する。これにより、弁針25の先端部25tと弁座部27との当接が解除される。すると、燃料通路22に満たされた燃料Fがサック部29に流れ込み、燃料噴射孔26から燃料Fが噴射され、燃料噴霧Fmを形成する。燃料噴霧Fmは、図4−1に示すように、カバー部材30の端面30tpに設けられた燃料通過孔31を通過する。
次に、この実施例に係る直噴噴射弁20及びカバー部材30の取り付け構造について説明する。図2−1に示すように、カバー部材30が噴射弁等取付孔60へ挿入されると、噴射弁等取付孔60の段部61とカバー部材の鍔部30uとが係合して、カバー部材30が噴射弁等取付孔60に取り付けられる。このとき、前記鍔部30うと段部61との間には、燃焼室1bの密封を保持するため、環状の密封部材71が設けられる。
直噴噴射弁20は、すでに噴射弁等取付孔60に取り付けられているカバー部材30内へ、燃料噴射孔26が燃焼室1bへ向くように挿入される。このとき、直噴噴射弁20の第1鍔部20uは、噴射弁等取付孔60の挿入側開口部から張り出して、シリンダヘッド1hと係合する。また、直噴噴射弁20の第2鍔部20uは、カバー部材の鍔部30uと係合する。直噴噴射弁20の第1鍔部20uとシリンダヘッド1hとの間、及び直噴噴射弁20の第2鍔部20uとカバー部材の鍔部30uとの間には、それぞれ環状の密封部材72、73が設けられる。これにより、燃焼室1bの密封が保持される。
直噴噴射弁20の弁体21と、カバー部材30との間には、環状の密封部材70が介在する。環状の密封部材70は、直噴噴射弁20の中心軸Zに対して直交する方向に押圧力を受けて、燃焼室1bの密封を保持する。また、直噴噴射弁20の弁体21と、カバー部材30とは、この密封部材70を介して接触するので、燃焼室1b内の高温の燃焼ガスにさらされるカバー部材30から直噴噴射弁20へ伝わる熱を効果的に抑制できる。さらに、環状の密封部材70を設ければ、この部分よりも燃焼室1bの反対側へ向かう燃焼ガスを封止することができるので、直噴噴射弁20全体の昇温を抑制できる。これらの効果をより発揮させるため、密封部材70には、できるだけ熱伝導率の低い材料を使用することが好ましい。例えば、樹脂材料やセラミックス材料、あるいは、これらの多孔質材料が好ましい。
また、弁体21と、カバー部材30との間の密封部材70は使用せず、燃焼室1bの密封は、直噴噴射弁20の第2鍔部20uとカバー部材の鍔部30uとの間に介在する密封部材72で確保するようにしてもよい。これにより、弁体21と、カバー部材30との間に存在する空気層により、カバー部材30から直噴噴射弁20へ伝わる熱をより効果的に抑制できる。
この実施例において、直噴噴射弁20の燃料噴射孔26から噴射された燃料F、すなわち燃料噴霧Fmは、図2−1に示すように、カバー部材30の燃料通過孔31を通って燃焼室1b内へ導入される。ここで、燃料噴霧Fmとは、直噴噴射弁20の燃料噴射孔26から噴射された燃料Fを意味する。この実施例においては、直噴噴射弁20への燃圧を調整することによって、燃料噴射孔26から噴射される燃料噴霧Fmの広がり角度を変化させることができる。すなわち、燃圧調整手段が、燃料干渉手段となる。これによって、燃料噴射孔26から噴射される燃料噴霧Fmを、カバー部材30に対して選択的に干渉させることができる。すなわち、燃料噴射孔26から噴射される燃料噴霧Fmを、カバー部材30に干渉させたり、干渉させないで燃料通過孔31を通過させたりすることができる。
かかる構成において、燃料噴霧Fmをカバー部材30に干渉させると、燃料噴霧Fmの一部が、燃料噴射孔26が開口している直噴噴射弁20の端部、すなわち直噴噴射弁20の先端部20tとカバー部材30との間の空間Aに滞留する。そして、前記空間に滞留した燃料噴霧Fmが気化するときの気化潜熱により、直噴噴射弁20の先端部20tが冷却される。これによって、燃料噴射孔26の外部、内部及びサック部29等の過熱を効果的に抑制して、これらの箇所に堆積するデポジットを低減できる。同時に、直噴噴射弁20の耐久性低下も抑制できる。
また、この実施例では、カバー部材30によって直噴噴射弁20の先端部20tがカバー部材30で覆われて、先端部20tとカバー部材30との間の空間Aには空気層が形成される。これにより、直噴噴射弁20の先端部20tは、高温の燃焼ガスに直接さらされることはないので、それだけ直噴噴射弁20の先端部20tの温度上昇を抑制し、デポジットの堆積をさらに効果的に抑制できる。また、上述したように、この実施例では、弁体21と、カバー部材30とは、密封部材70を介して接触するので、高温の燃焼ガスにさらされるカバー部材30から直噴噴射弁20へ伝わる熱を効果的に抑制できる。その結果、デポジットの堆積をさらに効果的に抑制できる。
次に、燃料干渉手段の他の例について説明する。次の燃料干渉手段は、カバー部材の燃料通過孔と、直噴噴射弁の燃料噴射孔との相対的な位置を変化させる機構である。図5−1〜図5−4は、燃料干渉手段の他の例を示す説明図である。図5−2は、図5−1を、図面左側から見た状態を示している。この例では、カバー部材30を直噴噴射弁20の中心軸Zの周りに回転させ、カバー部材30の端面30tpに形成される燃料通過孔31と、直噴噴射弁20の燃料噴射孔26との相対的な位置を変化させる。これによって、内燃機関1の運転条件に応じて燃料噴霧Fmの一部をカバー部材30に対して干渉させて、燃料通過孔31を通過させることができる。
図5−1に示すように、カバー部材30の鍔部30uは、ベアリング80を介して、噴射弁等取付孔60の段部61と直噴噴射弁20の第2鍔部20uとに狭まれ、保持される。これにより、カバー部材30は、直噴噴射弁20の中心軸Zの周りに回転できるように構成される。また、カバー部材30の鍔部30uは、コントロールロッド81を介して、モータやソレノイド等のアクチュエータ85が連結されている。そして、エンジンECU50からの指令によりアクチュエータ85が動作すると、カバー部材30が直噴噴射弁20の中心軸Zの周りに回転する。
図5−3に示すように、直噴噴射弁20の中心軸Zを支点とした場合、コントロールロッド81の作用点の反対側におけるカバー部材30の鍔部30uには、ばねに代表される弾性部材82が取り付けられている。この弾性部材82は、鍔部30uとシリンダヘッド1hとの間に配置されて、鍔部30uに対して押圧力を与える。これにより、アクチュエータ85が作動しない場合、図5−3に示すように、燃料噴霧Fmはカバー部材30に干渉しないで燃料通過孔31を通過するように維持される。
図5−4に示すように、燃料噴霧Fmとカバー部材30とを干渉させる場合、エンジンECU50からの指令によりアクチュエータ85を作動させる。すると、コントロールロッド81は鍔部30uを押し、弾性部材82は縮む。これにより、燃料噴霧Fmと交差する方向に燃料通過孔31が動くことにより、燃料通過孔31と、燃料噴射孔26との相対的な位置が変化して、燃料噴霧Fmとカバー部材30とが干渉する。なお、アクチュエータ85には、モータやソレノイドの他、油圧を利用した油圧シリンダ等を用いてもよい(以下同様)。
図6−1、図6−2は、燃料干渉手段の他の例を示す説明図である。図6−1に示すように、上記弾性部材82の代わりに2本のコントロールロッド81a、81b、及び2個のアクチュエータ85a、85bを用いて、カバー部材30を直噴噴射弁20の中心軸Zの周りに回転させて、燃料干渉手段を構成してもよい。また、図6−2に示すように、カバー部材30aの端面30tpと直噴噴射弁20の先端部20tとの距離を変化させて、燃料干渉手段を構成してもよい。この構成について説明する。
図6−2に示すように、カバー部材30aは、第1胴部30sと第2胴部30sとの2分割で構成される。第2胴部30sは、開口側の端部が、第1胴部30sの周方向に向かって形成されている空間33内に挿入されており、直噴噴射弁20の中心軸Z方向に対して往復運動可能に構成される。また、第2胴部30sは、前記空間33内に配置される弾性部材87によって、直噴噴射弁20の先端部20t側へ引き付ける力が与えられている。さらに、カバー部材30aの外側には電磁コイル86が設けられており、この電磁コイル86に通電することによって、第2胴部30sは、直噴噴射弁20の先端部20tから距離Hだけ離れるように動作する。
電磁コイル86に通電しない場合、第2胴部30sは図6−2の実線の位置になる。この場合、燃料噴射孔26から噴射される燃料噴霧Fmは、カバー部材30aの一部である第2胴部30sと干渉しないで通過する。電磁コイル86に通電すると、第2胴部30sは直噴噴射弁20の先端部20tから距離Hだけ離れるように動作し、図6−2の破線の位置まで移動する。これによって、燃料通過孔31は燃料噴霧Fmの広がった位置に移動するので、燃料噴霧Fmがカバー部材30aの一部である第2胴部30sと干渉する。このように、燃料通過孔31を、直噴噴射弁20の中心軸Zと平行な方向に移動させることにより燃料通過孔31と燃料噴射孔26との相対的な位置を変化させ、燃料噴霧Fmとカバー部材30aとを干渉させてもよい。
図7−1、図7−2は、燃料干渉手段の他の例を示す説明図である。この例に係る燃料干渉手段では、大きさの異なる燃料通過孔を切り替えることにより、燃料噴霧をカバー部材に干渉させる。このカバー部材30bは、端面30tpに燃料通過孔31が形成された胴部30sと、複数の燃料通過孔が形成された干渉板83とを含んで構成される。干渉板83には、第1燃料通過孔83hと、第2燃料通過孔83hとが形成されている。また、干渉板83に取り付けられる軸83sが、胴部30sの外部に取り出されている。
干渉板83は、胴部30s内に設けられる弾性部材84により、弾性部材84の取り付け側とは反対側に押し付けられる。これにより、干渉板83の軸83sを自由にした状態では、干渉板83の第1燃料通過孔83hとカバー部材30bの燃料通過孔31とが重なる。ここで、及び燃料通過孔31、第1燃料通過孔83h、及び第2燃料通過孔83hは矩形の孔であり、それぞれの長辺と短辺とを(a、b)、(a、b)、(a、b)とすると、a>a>a、b>b>bとなる。
カバー部材30bに形成される燃料通過孔31及び干渉板83に形成される第1燃料通過孔83hは、燃料噴射孔26から噴射される燃料噴霧Fmがカバー部材30bと干渉しないで通過できる。一方、干渉板83に形成される第2燃料通過孔83hは、燃料噴射孔26から噴射される燃料噴霧Fmが、カバー部材30bと干渉する。このような構成で、前記燃料噴霧Fmを燃料通過孔31と干渉させたいときには、干渉板83をカバー部材30b内へ押し込み、第2燃料通過孔83hと、カバー部材30bに形成される燃料通過孔31とが重なるようにする。このようにすれば、カバー部材30bを構成する干渉板83に燃料噴霧Fmが干渉する。なお、燃料噴霧Fmをカバー部材30bに干渉させるためには、カバー部材30bに形成される燃料通過孔31の面積を干渉板83によって小さくしてもよい。
このように、カバー部材の燃料通過孔と、直噴噴射弁の燃料噴射孔との相対的な位置を変化させる機構を燃料干渉手段とすれば、燃圧調整手段を燃料干渉手段とする場合と比較して、燃料噴霧Fmの干渉量を大きく変化させることができる。
次に、カバー部材に燃料噴霧Fmを干渉させるか否かの制御を説明する。この実施例では、内燃機関1の運転条件に応じて、カバー部材に燃料噴霧Fmを干渉させる量を制御する。この実施例では、カバー部材に燃料噴霧Fmを干渉させるか干渉させないかの2段階であるが、運転条件に応じて燃料噴霧Fmの干渉量を段階的に、あるいは無段階に変化させてもよい。また、この実施例では、燃料噴射孔が開口している直噴噴射弁の端部、すなわち直噴噴射弁先端部の温度を表すパラメータ(以下先端部温度パラメータという)に基づいて、燃料噴霧Fmを干渉させるか否かを制御する。
ここで、燃料噴霧Fmの干渉量は、空燃比A/Fに与える影響が許容できる程度とする。また、空燃比センサからのフィードバック信号によって、燃料噴霧Fmの干渉量を制御してもよい。直噴噴射弁20へ供給する燃圧を制御する燃料干渉手段の場合、空燃比センサからのフィードバック信号に基づいて高圧ポンプ13を制御することによって、燃料噴霧Fmの干渉量を調整できる。また、カバー部材30に形成される燃料通過孔31と、直噴噴射弁20の燃料噴射孔26との相対的な位置を変化させる燃料干渉手段の場合、両者の相対的な位置関係を変化させることで、燃料噴霧Fmの干渉量を調整できる。
冷間時や低回転低負荷時等のように、直噴噴射弁20の先端部20tの温度が許容温度よりも低い場合、燃料噴霧を干渉させると燃料の霧化が悪化して燃焼が悪化する結果、燃料消費が増加したりエミッションが悪化したりする。このため、直噴噴射弁20の先端部20tの温度が許容温度よりも低いには、燃料噴霧Fmをカバー部材30等に干渉させないか、あるいは干渉量を低減する。これにより、燃料の霧化の悪化を抑制して燃焼悪化を抑えることができる。その結果、燃料消費の増加及びエミッションの悪化を抑制できる。次に、具体的な制御について説明する。
図8は、この実施例に係る燃料噴射制御の手順を説明するフローチャートである。図9は、この実施例に係る燃料噴射制御に用いる判定マップの一例を示す説明図である。まず、エンジンECU50の制御部51が、内燃機関1に取り付けられている各種センサ類からの信号から、負荷KL、機関回転数NE及び水温Twを取得する(ステップS101)。これらが、この実施例における先端部温度パラメータとなる。そして、制御部51は、取得した負荷KL、機関回転数NE及び水温Twを、記憶部52に格納されている判定マップ90へ与え、燃料噴霧の干渉が必要か否かを判定する(ステップS102)。判定マップ90は、予め適合試験やシミュレーションにより求めておく。
なお、この実施例では、負荷KL、機関回転数NE及び水温Twを先端部温度パラメータとして、燃料噴霧の干渉が必要か否かを判定しているが、判定に用いる先端部温度パラメータはこれらに限定されるものではない。例えば、負荷KLと機関回転数NEとを先端部温度パラメータとしてもよい。さらに、判定マップ90を用いず、直噴噴射弁20の先端部20tの先端部温度実測値や、直噴噴射弁20の取付部近傍の温度から先端部20t推定した先端部温度推定値を前記先端部温度パラメータとしてもよい。
前記判定の結果、制御部51が、燃料噴霧の干渉が必要であると判定した場合には(ステップS102;Yes)、上述した燃料干渉手段を動作させることによって、燃料噴霧Fmをカバー部材30等と干渉させて、燃料通過孔31を通過させる(ステップS103)。制御部51が、燃料噴霧の干渉が必要でないと判定した場合には(ステップS102;No)、エンジンECU50は再び内燃機関1の運転状態を監視する。
以上、この実施例では、直噴噴射弁の先端部を覆うカバー部材に燃料通過孔を形成するとともに、前記燃料通過孔を通る燃料噴霧の一部を前記カバー部材に干渉させることのできる燃料干渉手段を備えるようにした。これにより、カバー部材に干渉した燃料噴霧が直噴噴射弁の先端部近傍に滞留するので、この滞留した燃料噴霧の気化潜熱を利用して直噴噴射弁の先端部を効果的に冷却できる。その結果、内燃機関の負荷が大きい場合のように直噴噴射弁の先端部の温度が上昇しやすい運転条件であっても、直噴噴射弁の先端部の過熱を抑制して、デポジットの堆積及び直噴噴射弁と耐久性低下を抑制できる。
そして、この実施例では、内燃機関の運転条件に基づき、冷間時や低回転低負荷時のように、直噴噴射弁の先端部を冷却する必要がない場合には、燃料噴霧をカバー材に干渉させない。これにより、直噴噴射弁の先端部の過冷却を抑制して、燃料の霧化悪化を抑制できる。その結果、燃焼悪化を抑えて、燃料消費の増加及びエミッションの悪化を抑制できる。
以上のように、本発明に係る内燃機関は、いわゆる直噴の内燃機関に有用であり、特に、直噴噴射弁先端部の過熱を抑制し、かつ過冷却を抑制することに適している。
この実施例に係る内燃機関の全体構成を示す概略図である。 この実施例に係る内燃機関が備える直噴噴射弁及びカバー部材の取り付け構造を示す説明図である。 図2−1のX−X矢視図である。 この実施例に係る内燃機関1が備えるカバー部材の斜視図である。 この実施例に係る内燃機関1が備えるカバー部材の斜視図である。 この実施例に係る内燃機関1が備える直噴噴射弁を示す説明図である。 この実施例に係る内燃機関1が備える直噴噴射弁を示す説明図である。 燃料干渉手段の他の例を示す説明図である。 燃料干渉手段の他の例を示す説明図である。 燃料干渉手段の他の例を示す説明図である。 燃料干渉手段の他の例を示す説明図である。 燃料干渉手段の他の例を示す説明図である。 燃料干渉手段の他の例を示す説明図である。 燃料干渉手段の他の例を示す説明図である。 燃料干渉手段の他の例を示す説明図である。 この実施例に係る燃料噴射制御の手順を説明するフローチャートである。 この実施例に係る燃料噴射制御に用いる判定マップの一例を示す説明図である。
符号の説明
1 内燃機関
1b 燃焼室
1h シリンダヘッド
1s 気筒
20 直噴噴射弁
20t 先端部
26 燃料噴射孔
30、30a、30b カバー部材
31 燃料通過孔
50 エンジンECU
51 制御部
52 記憶部
60 噴射弁等取付孔
70、71、72、73 密封部材

Claims (6)

  1. 燃焼室内へ直接燃料が噴射される内燃機関であって、
    前記燃焼室内へ燃料を噴射する燃料噴射孔が、前記燃焼室側に位置する端部に設けられる直噴噴射弁と、
    前記燃料噴射孔が設けられている前記直噴噴射弁の端部を覆うとともに、前記燃料噴射孔から噴射される燃料噴霧が通過する燃料通過孔を有するカバー部材と、
    前記内燃機関の運転条件に応じて、前記燃料噴射孔から噴射される燃料噴霧が前記燃料通過孔を通過する際に、前記燃料噴霧の一部を前記カバー部材と干渉させることのできる燃料干渉手段と、
    を備えることを特徴とする内燃機関。
  2. 前記燃料干渉手段は、前記燃料噴射孔が開口している前記直噴噴射弁の端部の温度を表すパラメータに基づいて、前記燃料噴霧の一部を前記カバー部材と干渉させるか否かを決定することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
  3. 前記燃料干渉手段は、前記カバー部材が有する燃料通過孔と、前記直噴噴射弁が有する前記燃料噴射孔との相対的な位置を変更するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関。
  4. 前記燃料干渉手段は、前記直噴噴射弁へ供給する燃料の圧力を変更するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関。
  5. 前記カバー部材はコップ形状の胴部を有し、かつコップの底に相当する部分に前記燃料通過孔が形成され、さらに前記燃料噴射孔が開口している前記直噴噴射弁の端部は、前記胴部内に格納されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関。
  6. 前記直噴噴射弁と前記カバー部材との間には、前記直噴噴射弁の中心軸に対して直交する方向に押圧力を受ける密封部材が介在することを特徴とする請求項5に記載の内燃機関。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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FR2981401A1 (fr) * 2011-10-14 2013-04-19 Toyota Motor Co Ltd Structure de joint d'etancheite de soupape d'injection et systeme de post-traitement d'echappement
JP2019157647A (ja) * 2018-03-07 2019-09-19 トヨタ自動車株式会社 内燃機関

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