JP2006064249A - 保存庫 - Google Patents

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Abstract

【課題】 変質あるいは損傷した薬品やワクチン、血液、あるいは臓器等が用いられることによる重大な事故の発生を未然に防ぐことができる保存庫を提供すること。
【解決手段】 断熱容器2内が設定温度範囲外になったことを、スピーカ30から出力される警告音によって通知することにより、前記断熱容器2内で薬品やワクチン、血液、あるいは臓器等が適正に保存できる状態にあるか否かを知ることができるので、変質あるいは損傷した血液や臓器、ワクチン等が用いられることによる重大な事故の発生を未然に防ぐことができる。また、前記断熱容器2内の冷却に前記スターリング冷凍機3を用いているため、前記断熱容器2内を極めて低い温度に冷却できるので、薬品やワクチン、血液、あるいは臓器等の医学的、科学的に用いられる被収容物の保存に用いることができる。
【選択図】 図3

Description

本発明は、薬品やワクチン、血液、あるいは臓器等を保存するために使用することが可能な保存庫に関する。
従来、この種の保存庫としては、例えば、断熱性を有する容器に、この容器内を冷却または加熱するためのサーモモジュールおよび容器内の温度を検知するための温度センサを設けると共に、この温度センサが検知した温度によって前記サーモモジュールを制御する制御回路を設けた電子式温冷蔵庫が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、容器内を冷却して用いる保存庫としては、スターリング冷凍機を用いた保存庫が知られている(例えば、特許文献2参照)。そして、これら電子式温冷蔵庫等の保存庫は、主として食品や飲料の冷蔵または温蔵といった用途に用いられるものであるが、その他の物品、例えば薬品やワクチン、血液、あるいは臓器等のように医学的、科学的な用途を有する物の保存や運搬等にも用いられることが想定されている。
特開平10−148453号公報 特開2003−214750号公報
しかしながら、上述したサーモモジュールを備えた電子式温冷蔵庫や、携帯型の冷蔵庫で用いることが可能な小型のコンプレッサーを備えた冷蔵庫では、これらサーモモジュールや小型のコンプレッサーによって、血液や臓器、ワクチン等が保存可能な極めて低い温度にまで前記容器内の温度を確実に下げることができないため、前述したような、薬品やワクチン、血液、あるいは臓器等の医学的、科学的な用途を有する物の保存や運搬等に用いると、容器内に収容された血液等が温度変化により変質等してしまう虞があった。
また、スターリング冷凍機を備えた保存庫では、容器内を極めて低い温度にまで確実に下げることができるものの、何らかの原因により前記容器内の温度が薬品やワクチン、血液、あるいは臓器等の保存に適した温度範囲から外れてしまう虞もあり、この場合、保存庫内に収容しているにも拘わらず血液等が変質等してしまうことになる。そして、特に薬品やワクチン、血液、あるいは臓器等については、変質等していることに気付かずに医学的、科学的な用途に用いてしまうと、重大事故につながってしまうという問題があった。
本発明は、以上の問題点を解決し、変質あるいは損傷した被収容物が用いられることによる重大な事故の発生を未然に防ぐことができる保存庫を提供しようとするものである。
本発明の請求項1記載の保存庫は、断熱容器と、この断熱容器と一体的に設けられて該断熱容器の内部を冷却するスターリング冷凍機と、前記断熱容器と一体的に設けられて該断熱容器の内部の温度を検知する温度検知手段とを有する保存庫において、前記断熱容器と一体的に設けられ、前記温度検知手段によって検知された温度が所定の範囲から外れた際に作動する温度報知手段とを備えたものである。
また、本発明の請求項2記載の保存庫は、前記温度報知手段が音発生手段より成るものである。
また、本発明の請求項3記載の保存庫は、前記温度報知手段が発光手段より成るものである。
また、本発明の請求項4記載の保存庫は、断熱容器と、この断熱容器と一体的に設けられて該断熱容器の内部を冷却するスターリング冷凍機と、前記断熱容器と一体的に設けられて該断熱容器の内部の温度を検知する温度検知手段とを有する保存庫において、前記断熱容器と一体的に設けられて前記温度検知手段によって検知した温度を時系列的に記録する温度記録手段と、前記保存庫への非給電時であっても前記温度記録手段を作動させる非給電時作動制御手段とを備えたものである。
また、本発明の請求項5記載の保存庫は、断熱容器と、この断熱容器と一体的に設けられ、該断熱容器の内部を冷却するスターリング冷凍機と、前記断熱容器と一体的に設けられ、該断熱容器の内部の温度を検知する温度検知手段とを有する保存庫において、前記断熱容器と一体的に設けられたヒータと、前記温度検知手段に基づいて前記スターリング冷凍機及び前記ヒータを作動させる制御手段とを備えたものである。
本発明の請求項1記載の保存庫は、以上のように構成することにより、前記温度検知手段によって検知された前記断熱容器内の温度が所定の温度範囲から外れた際に前記温度報知手段が作動することで、前記断熱容器内で被収容物が適正な温度範囲で保存されているか否かを知らせることができるので、変質あるいは損傷した被収容物が用いられることによる重大な事故の発生を未然に防ぐことができる。また、前記断熱容器内の冷却にスターリング冷凍機を用いているため、前記断熱容器内を極めて低い温度に冷却できるので、薬品やワクチン、血液、あるいは臓器等の医学的、科学的に用いられる被収容物の保存に用いることができる。
また、本発明の請求項2記載の保存庫は、以上のように構成することにより、前記温度検知手段によって検知された前記断熱容器内の温度が所定の温度範囲から外れた際に前記音発生手段が警告音を発するので、この音によって、前記断熱容器内で被収容物が適正な温度範囲で保存されているか否かを、使用者が前記保存庫を見ていなくても、使用者に対し聴覚を介して直感的に知らせることができる。
また、本発明の請求項3記載の保存庫は、以上のように構成することにより、前記温度検知手段によって検知された前記断熱容器内の温度が所定の温度範囲から外れた際に前記発光手段が光を発するので、この光によって、前記断熱容器内で被収容物が適正な温度範囲で保存されているか否かを使用者に対し視覚を介して直感的に知らせることができる。
また、本発明の請求項4記載の保存庫は、以上のように構成することにより、前記温度記録手段によって前記断熱容器内の時系列的な温度変化を記録でき、かくして前記断熱容器内で被収容物が適正に保存できる状態にあったか否かを知ることができるので、変質あるいは損傷した被収容物が用いられることによる重大な事故の発生を未然に防ぐことができる。また、停電が発生したり、移動時等に前記保存庫を積み替えるために一旦外部電源から切り離す等、前記保存庫への給電が停止しても、前記非給電時作動制御手段によって前記温度記録手段を作動させ続けることで、前記断熱容器内の時系列的な温度変化を記録し続けることができるので、前記断熱容器内で被収容物が常に適正な温度範囲で保存されているか否かを知ることができるので、変質あるいは損傷した被収容物が用いられることによる重大な事故の発生をより確実に防ぐことができる。さらに、前記断熱容器内の冷却にスターリング冷凍機を用いているため、前記断熱容器内を極めて低い温度に冷却できるので、薬品やワクチン、血液、あるいは臓器等の医学的、科学的に用いられる被収容物の保存に用いることができる。
さらに、本発明の請求項5記載の保存庫は、以上のように構成することにより、前記ヒータによって前記断熱容器内を温めることができるので、前記断熱容器内が過冷却となることを未然に防止でき、かくして過冷却されると変質等してしまう被収容物であっても適正に保存できるので、変質あるいは損傷した被収容物が用いられることによる重大な事故の発生を未然に防ぐことができる。また、前記断熱容器内の冷却にスターリング冷凍機を用いているため、前記断熱容器内を極めて低い温度に冷却できるので、薬品やワクチン、血液、あるいは臓器等の医学的、科学的に用いられる被収容物の保存に用いることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1乃至図3において、1は保存庫としての携帯型の医療用保存庫1を示し、この医療用保存庫1の箱体は、大別すると、低温で保存する必要のある薬品やワクチン、血液、臓器、あるいは検体等の医学的、科学的に用いられる被収容物を収容するための断熱容器2と、主要機器となるスターリング冷凍機3等を内蔵し、前記断熱容器2と一体的に成型された機器収納部4とで構成されている。
そして、前記断熱容器2には開閉式の蓋5が設けられている。また、この蓋5と前記断熱容器2の本体6との間には、気密を保持するためのパッキン8と、前記扉5の開閉を規制するための施錠機構10とが設けられている。この施錠機構10は、前記扉5に回動部11を介して回動自在に設けられた施錠片12と、前記断熱容器2に設けられ、取付孔13が穿設された突片14と、錠前15とで構成されており、前記施錠片12が回動され、前記断熱容器2から外方に突出した突片14が、当該施錠片12の係合穴16に挿通された後、この外方に突出した突片14が回動されて係止され得る。そして、この突片14の取付穴13には、前記錠前15の脚部17が挿通され、前記錠前15が施錠され得るような構成を有する。かくして前記扉5は、前記錠前15を介して施錠片12が突片14にロックされることにより、開状態となるのを規制し得、当該錠前15に合った鍵(図示せず)によってのみ当該錠前15を解錠し得るようになされている。
また、図2に示すように、前記断熱容器2の本体6の内側には、熱伝導性の良好な金属からなる内容器2Aが設けられており、この内容器2Aと前記本体6の外殻6Aとの間に断熱部材20が配されている。ここで、前記断熱部材20としては、ウレタンフォームや発泡ポリスチレン等が一般的であり、これらを前記内容器2Aの外周に貼り付けたり、前記内容器2Aと外殻6Aとの間に充填したりすることで、前記断熱容器2の本体6が構成される。また、前記蓋5の内部にも、同様に断熱部材21が配されている。なお、前記断熱部材20,21は、断熱仕様によっては、前記ウレタンフォームや発泡ポリスチレンに代えて真空断熱部材を用いる場合もある。因みに、前記機器収容部4は、本来的には断熱構造を必要としないものであるが、本医療用保存庫1の主要機器である前記スターリング冷凍機3が収容されるため、このスターリング冷凍機3において低温となる先端部及びこの先端部に伝熱的に取り付けられた低温側熱交換器3Aの周囲が断熱部材22により囲まれることで、必要な断熱が図られている。
また、図3に示すように、前記機器収納部4内には、前記医療用保存庫1の各種機能を統括的に制御する制御手段としての制御回路25に対して、前記スターリング冷凍機3と、前記機器収容部4に一体的に設けられた温度検知手段としての温度センサ26と、液晶ディスプレイ27と、温度設定スイッチ28と、温度記録手段29と、温度報知手段としてのスピーカ30と、バンドヒータ31と、前記医療用保存庫1が図示しない外部電源(例えば、AC100V電源や自動車用DC12V電源等)から切り離された電源非給電時に、前記制御回路25、前記温度センサ26及び前記温度記録手段29の動力源となるキャパシタ32とが電気的に接続されており、前記温度センサ26及び温度設定スイッチ28からの入力信号に基づいて前記制御回路25が各種機能を実現するようになされている。なお、前記制御回路25及びキャパシタ32によって、前記医療用保存庫1の電源非給電時に前記温度センサ26及び前記温度記録手段29を作動させるための非給電時作動制御手段が構成されている。
ここで、前記温度センサ26は、図2に示したように、この温度センサ26に接続されるリード線34が十分長く選定されていることにより、前記内容器2A内の任意の位置に前記温度センサ26を設置することができ、かくして前記断熱容器2の内容器2A内部の温度分布によらず、前記断熱容器2の内容器2A内における任意の位置の温度を正確に検知することができる。これにより、前記温度センサ26は、前記被収容物に近接した位置に配置させることにより、前記被収容物あるいはその周囲など所望する位置の温度を正確に測定することができる。
なお、前記温度センサ26は1個ではなく、複数個を設置することもできる。このように、複数個の前記温度センサ26を設置した場合には、比較的大きな前記断熱容器2であっても、この断熱容器2の内容器2A内における各部の温度分布を正確に把握することができるので、被収容物あるいはその周囲の温度をより正確に測定することができる。また、前記断熱容器2の内容器2A内に複数の被収容物が収容されていたとしても、これらの被収容物に対して個別に被収容物自身あるいはその周囲温度を正確に測定、記録することができる。なお、前記温度センサ26には、用途や必要とされる仕様に応じて、熱電対やサーミスタ等、各種の素子を用いることができる。因みに、一般的に、熱電対は検出精度や信頼性に優れ、サーミスタは経済性に優れる。したがって、用途や仕様に応じて各種の温度センサ26を使い分けるのが望ましい。
そして、前記液晶ディスプレイ27は、このような温度センサ26により検出した前記断熱容器2内における温度等の各種情報を前記温度設定スイッチ28の操作に応じて表示する。
前記温度設定スイッチ28は、前記断熱容器2内の設定温度範囲などの各種条件を設定するものであり、例えばメインブレン構造のスイッチやプッシュボタンスイッチを用いることができる。そして、この温度設定スイッチ28は、操作性を考慮して、前記機器収容部4の上面に近い側面に傾斜面を設けて、その傾斜面に取り付けられている(図1)。
また、前記温度記録手段29は、前記機器収容部4に一体的に設けられており、前記医療用保存庫1への外部電源からの電力の供給/非供給に拘わらず、前記温度センサ26によって検出した温度を記録するようになされている。なお、前記温度記録手段29としては、各種の記録装置を用いることができる。例えば、前記温度記録手段29として、不揮発性メモリあるいはこれを用いたICメモリーカード等の記憶媒体を用いることができる。これらの記憶媒体を用いる場合、前記温度記録手段29には各種記憶媒体への書き込み装置が含まれる。因みに、この温度記録手段29は、コネクタ35(USBやIEEE1394等)を介して外部に設けられた図示しないコンピュータと接続し得るようになされている。また、前記温度記録手段29は、図4に示すように、前記医療用保存庫1の機器収容部4に対して着脱自在に設けられており、必要に応じて前記医療用保存庫1から容易に着脱することができる。なお、前記温度記録手段29は、前記医療用保存庫1に図示しない外部電源から電力が供給されている時には、この外部電源及び前記制御回路25によって作動及び制御されると共に、前記医療用保存庫1の電源非給電時には、前記非給電時作動制御手段としての前記制御回路25及びキャパシタ32によって作動及び制御される。
また、前記スピーカ30は、前記医療用保存庫1に外部電源から電源が供給されている時に作動し、前記温度センサ26によって検出された温度が予め設定された設定温度範囲外になったときに作動し、警告音を出力し得るようになされている。
そして、前記バンドヒータ31は、図5に示すように、前記内容器2Aの外周に亘って一体的に設けられており、前記内容器2A内をほぼ均等に温めるようになされている。なお、本実施の形態の場合、バンドヒータ31を用いることにより前記内容器2Aとの接触面積を比較的大きくできることから、前記内容器2Aを効率良く温めることができる。
次に、本発明に係る前記医療用保存庫1の主要機器である前記スターリング冷凍機3について、簡単に説明する。このスターリング冷凍機3におけるガスサイクルに関わる部分を模式的に説明すると、図6に示すような構造となり、これは、スターリングサイクルを利用したユニークな冷凍機である。スターリングサイクル自体は、熱力学等でよく知られているように、二つの等温変化と二つの等体積変化とからなる可逆サイクルである。そして、このスターリングサイクルを利用して冷凍機を構成する場合、図6に示すように、先端が閉じられたケーシング41の円筒部41Aの内側にディスプレイサー(フリーピストン)42が設けられており、このディスプレイサー42が前記円筒部41Aの軸方向に設けられたシリンダ43に沿って自由に移動できるようになっている。また、前記円筒部41Aとシリンダ43との間には、再生器44が設けられている。そして、前記円筒部41Aの先端部45近傍の内側で且つ前記シリンダ43の外周に吸熱部46が設けられると共に、前記円筒部41Aの基部47近傍の内側で且つ前記シリンダ43の外周に排熱部48が設けられている。これら吸熱部46及び排熱部48は、熱伝導牲に優れた金属、例えば銅、銅合金、アルミニウム又はアルミニウム合金でフィン状に製作されている。さらに、前記円筒部41Aの基部47及び前記ケーシング41の胴部41Bの内側に設けられたシリンダ49に、前配ディスプレイサー42と対向するように、駆動ピストン50が設けられている。この駆動ピストン50は、リニアモータ等の駆動装置(図示せず)によって、前記ディスプレイサー42に対向して、前記シリンダ49内を往復駆動されるようになっている。なお、前記シリンダ43とシリンダ49は一体に形成されており、これらのシリンダ43,49間に、複数の通孔51が形成されている。そして、ケーシング41で囲まれた密閉空間には、作動ガスとしてヘリウム等の気体が充填されている。
従って、前記駆動ピストン50を前記ディスプレイサー42の方向に移動させると、前記ディスプレイサー42と駆動ピストン50間の圧縮室C内の作動ガスは圧縮されて前記通孔51から矢印Zのように前記排熱部48、再生器44、吸熱部46を通り、前記円筒部41Aの先端部45側の膨張室E内に至ると共に、前記ディスプレイサー42を押し下げる。一方、前記駆動ピストン50を前記ディスプレイサー42と反対の方向に移動させると、前記圧縮室C内が負圧となることで、前記膨張室E内の作動ガスは、矢印Zとは逆に、前記吸熱部46、再生器44、排熱部48を通って前記通孔51から前記圧縮室C内復帰し、これにより、前記ディスプレイサー42が押し上げられる。このような行程中において、前述の二つの等温変化と二つの等体積変化とからなる可逆サイクルが行われて、前記円筒部41Aの先端部45の内部に取り付けられた吸熱部46、ひいては前記円筒部41Aの先端部45の外部に伝熱的に取り付けられた低温側熱交換器3Aは低温となり、一方、前記円筒部41Aの基部47、ひいては前記円筒部41Aの基部47に伝熱的に取り付けられた高温側熱交換器3Bは高温となる。このようなスターリング冷凍機3を医療用保存庫1に使用する場合には、前記低温側熱交換器3Aを、直接あるいは間接的に、前記断熱容器2の内容器2Aに対して熱的に接触させる一方、前記高温側熱交換器3Bの熱を前記医療用保存庫1外に排出できるようにする。これにより、前記スターリング冷凍機3の先端部45は低温となり、この先端部45の冷熱が、サーモサイフォン等の前記低温側熱交換器3Aにより、断熱容器2の内容器2Aへと運ばれ、この内容器2A内の被収容物を冷やす。
一方、前記スターリング冷凍機3の円筒部41Aの基部47に取り付けられた高温側熱交換器3Bは、前記スターリング冷凍機3の作動によって高温となる。そして、前記高温側熱交換器3Bの熱は、冷却ファン52によって前記機器収容部4内に導入された気流へ排出された後、この気流が前記冷却ファン52から前記機器収容部4外へ強制的に排気される。なお、前記スターリング冷凍機3の円筒部41Aの先端部45及びこの先端部45に伝熱的に取り付けられた低温側熱交換器3Aの外周は、前記高温側熱交換器3Bからの熱移動を阻止するために、前記断熱部材22によって覆われている。
次に、本発明の作用について説明する。前記医療用保存庫1は、図示しない外部電源に接続することにより電源が投入されて前記制御回路25、温度センサ26、液晶ディスプレイ27、温度記録手段29及びキャパシタ32に給電され、始動/停止スイッチ28Aを操作することで、前記温度センサ26から送出される前記断熱容器2内の温度信号に基づいて、前記制御回路25によって前記スターリング冷凍機3又はバンドヒータ31が駆動制御される。そして、前記温度設定スイッチ28を操作することによって、前記医療用保存庫1は、前記断熱容器2内の設定温度範囲等が設定される。また、前記スピーカ30は、前記医療用保存庫1を図示しない外部電源に接続した際に、前記温度記録手段29に記憶されている前記断熱容器2内の温度データが前記制御回路25に記憶されている設定温度範囲から外れていた場合に警告音を発する。一方、前記スピーカ30は、前記医療用保存庫1を図示しない外部電源に接続した際に、前記温度記録手段29に記憶されている前記断熱容器2内の温度データが前記制御回路25に記憶されている設定温度範囲内であったり、前記制御回路25に設定温度範囲が記憶されていなかったりした場合、警告音を発しない。さらに、前記キャパシタ32は、前記医療用保存庫1を図示しない外部電源に接続することで充電される。
前記制御回路25は、前記温度センサ26から送出される温度信号に基づいて、前記断熱容器2内の温度が設定された上限温度よりも高いと判断したとき、前記スターリング冷凍機3へ電力を供給し、駆動電圧、駆動電流あるいは駆動電力を制御することで、前記スターリング冷凍機3を精度良く駆動制御し、前記断熱容器2内を冷却する。そして、前記スターリング冷凍機3は、従来用いられていたペルチェ効果を用いたサーモモジュールや小型のコンプレッサーでは実現が困難な低温まで容易に冷却することができるので、前記温度設定スイッチ28によって設定された設定温度が極めて低温であったとしても、高い冷凍能力を発揮させることで設定温度まで容易に冷却することができる。これに対して、前記制御回路25は、前記温度センサ26から送出される温度信号に基づいて、前記断熱容器2内の温度が設定された下限温度よりも低いと判断したとき、前記バンドヒータ31へ電力を供給し、駆動電圧、駆動電流あるいは駆動電力を制御することで、前記バンドヒータ31を駆動制御し、前記断熱容器2内を温め、前記断熱容器2内の温度を適正な低温状態である設定温度範囲内に維持させ得る。このようにして、前記制御回路25は、前記温度センサ26から受け取った温度信号に基づいて、前記スターリング冷凍機3又はバンドヒータ31を制御することにより、前記スターリング冷凍機3又はバンドヒータ31を作動させ、前記断熱容器2の内部を冷却又は加温することにより、前記断熱容器2内を適正な低温状態に調節するようになされている。
因みに、この実施の形態の場合、前記設定温度範囲とは、薬品やワクチン、血液、臓器、あるいは検体等の医学的、科学的に用いられる被収容物を適正に保存可能な極めて低い低温度領域であり、被収容物の種類によって異なっている。そして、この設定温度範囲は、前記温度設定スイッチ28を操作することにより変更でき、かくして前記断熱容器2内に保存される被収容物に応じて設定できるようになされている。なお、前記温度設定スイッチ28で設定された設定温度範囲は、前記制御回路25に送られて、この制御回路25の一部を構成するマイクロコンピュータのメモリ等(図示せず)に記憶される。そして、前記制御回路25には、前記医療用保存庫1への電源非供給時であっても、前記非給電時作動制御手段を構成する前記キャパシタ32によって電力が供給されているので、一旦設定された設定温度範囲は、前記キャパシタ32の容量に依存するが、前記医療用保存庫1が前記外部電源から遮断されても数時間は失われることがなく、外部電源に再接続すれば、そのまま従来の設定状態で運転を継続することができる。
その後、前記制御回路25は、前記温度センサ26から受け取った温度信号に基づいて、設定温度範囲内にあった前記断熱容器2内の温度が何らかの原因によって設定温度範囲から外れたと判断すると、前記スピーカ30から警告音を出力させ、この警告音によって前記断熱容器2内の温度が設定温度範囲外になったことを外部に通知する。
ところで、前記制御回路25は、前記医療用保存庫1の運転時に前記始動/停止スイッチ28Aを操作することにより、前記スターリング冷凍機3及び前記バンドヒータ31への給電を停止する。そして、前記医療用保存庫1を外部電源から切り離すと、この外部電源に代えて前記キャパシタ32から前記制御回路25に給電されると共に、この制御回路25から前記温度センサ26に給電することにより、前記制御回路25は前記温度センサ26を作動させ続け、これにより前記温度センサ26によって前記断熱容器2内の温度を検出し続ける。そして、前記制御回路25は、前記キャパシタ32からの給電に基づいて、前記温度センサ26から受け取った温度信号を前記温度記録部29へ送出する。これにより、前記温度記録部29は、前記温度センサ26から送出された温度信号を時系列的な温度履歴として、電子的な記憶媒体に対して時系列的に記録する。このようにして、前記温度記録部29は、前記医療用保存庫1が外部電源から切り離された時点から再び外部電源に接続されるまでの間、前記キャパシタ32からの給電に基づいて、前記温度センサ26によって検出した前記断熱容器2内の温度を、時系列的な温度履歴として記録し続ける。なお、前記温度センサ26による温度信号の前記記録媒体への記録間隔は、設定により任意の時間間隔を選択できるようにされている。
その後、前記医療用保存庫1が外部電源に再接続されると、前記制御回路25によって、例えば前記液晶ディスプレイ27に、電力非供給時の間に記録された時系列的な温度変化を順次表示する。これにより、前記医療用保存庫1の電力非供給時の温度変化を使用者に対して容易に確認させることができる。なお、前記液晶ディスプレイ27には、電力非供給時の温度変化の表示に代えて、前記温度設定スイッチ28の操作により、外部電力から遮断された時点の温度や所望時期の温度のみを表示するようにしても良く、この場合、前記医療用保存庫1が外部電源に再接続された時に、外部電力から遮断された時点や所望時期の温度だけを、使用者に対して容易に確認させることができる。
因みに、前記医療用保存庫1では、前記温度センサ26を被収容物の近傍に設置することができるので、前記断熱容器2内の温度にムラがあったとしても、被収容物の温度をほぼ正確に計測することができる。更に、前記温度センサ26を複数設けることで、前記断熱容器2内の温度にムラがあったとしても、各被収容物の温度を個別にほぼ正確に計測することができる。また、この医療用保存庫1には、前記扉5に前記施錠機構10が設けられていることにより、不用意な前記扉5の開放を確実に防止でき、前記ワクチン等の貴重な被収容物の紛失、さらには不用意な前記扉5の開閉による前記断熱容器2内の急激な温度変化を確実に防止できる。
以上のように、本実施形態によれば、前記医療用保存庫1の断熱容器2に薬品やワクチン、血液、臓器、あるいは検体等の医学的、科学的に用いられる被収容物を収容して運搬する場合、前記機器収容部4に一体的に設けられた前記スターリング冷凍機3を作動させることで、前記断熱容器2内を適正な設定温度範囲内に冷却し、その後、何らかの原因で前記断熱容器2内の温度が設定温度範囲外になった場合、前記スピーカ30から警告音を鳴らすことにより、前記断熱容器2内が前記被収容物を適正に保存できる低温状態にないことを知らせる。
これにより、使用者は、前記スピーカ30からの警告音に基づいて、前記被収容物が損傷したり変質したりしている可能性を検討することができ、この結果、前記被収容物が損傷したり変質したりしている可能性が高いと判断された場合、この被収容物の使用を中止することで、変質あるいは損傷した被収容物が用いられることによる重大な事故の発生を未然に防止できる。また、前記断熱容器2内の冷却に前記スターリング冷凍機3を用いているため、前記断熱容器2内を比較的少ない消費電力で極めて低い温度に冷却できるので、薬品やワクチン、血液、あるいは臓器等の医学的、科学的に用いられる被収容物の保存に用いることができる。
また、本実施形態によれば、前記スピーカ30から警告音を鳴らすことにより、使用者が前記医療用保存庫1を見続けていなくても、前記断熱容器2内が被収容物を適正に保存できる温度範囲にないことを使用者に対し聴覚を介して直感的に知らせることができる。
また、本実施形態によれば、前記医療用保存庫1の電源非給電時においても、前記キャパシタ32からの給電により前記温度検知センサ26によって前記断熱容器2内の温度を検知し、この温度変化を前記温度記録部29によって記録する。
これにより、使用者は、停電が発生したり、移動時等に前記医療用保存庫1を積み替えるために一旦外部電源から切り離したりする等による前記医療用保存庫1の電源非給電時に、前記断熱容器内の温度が設定温度範囲から外れたか否かを、この記録に基づいて判断でき、薬品やワクチン、血液、あるいは臓器等の被収容物が損傷したり変質したりしている可能性を検討することができる。その結果、前記被収容物が損傷したり変質したりしている可能性が高いと判断された場合には、この被収容物の使用を中止することで、変質あるいは損傷した被収容物が用いられることによる重大な事故の発生を未然に防ぐことができる。
また、本実施形態によれば、前記スターリング冷凍機3に加えて、前記バンドヒータ31を設けていることにより、例えば外気温度が極めて低く、前記断熱容器2内の温度が予め設定された所定の下限温度よりも低くなった場合には、前記スターリング冷凍機3に代えて前記バンドヒータ31を作動させ、前記断熱容器2内を温めることができる。
これにより、前記断熱容器2内が過冷却となることを未然に防止できるので、過冷却されると変質等してしまう薬品やワクチン、血液、あるいは臓器等の被収容物であっても適正に保存でき、かくして変質あるいは損傷した被収容物が用いられることによる重大な事故の発生を未然に防ぐことができる。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載した事項の範囲内で種々の変形実施をすることができる。例えば、上述した実施の形態においては、前記断熱容器2内における任意の位置に配置可能な温度センサ26を設けるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、図2との対応部分に同一符号を付して示す図7のように、前記断熱容器2を構成する内容器2Aの外側に、前記内容器2A内の空気と連通するように前記温度センサ60を設けるようにしても良い。
また、上述した実施の形態においては、前記スピーカ30から警告音を出力することにより、聴覚を介して前記断熱容器2内の温度が設定温度範囲外になったことを知らせるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、前記スピーカ30から音声メッセージを出力させることで聴覚を介して前記断熱容器2内の温度が設定温度範囲外になったことを知らせるようにしたり、あるいは前記スピーカ30に代え又は前記スピーカ30と共に、発光手段として別途設けた図示しない通知LED(Light Emitting Diode)又は前記液晶ディスプレイ27のバックライトを点灯させたりしても良い。これにより、前記断熱容器2内の温度に基づき前記発光手段としての通知LEDや前記液晶ディスプレイ27のバックライトが光を発するので、この光によって、前記断熱容器2内が被収容物を適正に保存できる温度範囲にあるか否かを使用者に対し視覚を介して直感的に知らせることができる。また、前記液晶ディスプレイ27に、前記断熱容器2内の温度が設定温度範囲から外れた旨のコメント文を表示させることにより、視覚を介して前記断熱容器2内の温度が設定温度範囲外になったことを通知するようにしても良い。
また、上述した実施の形態においては、非給電時作動制御手段として、非給電時の電力を供給する要素としてキャパシタ32を用いたが、このキャパシタ32に代えて二次電池等を用いても良い。そして、この場合、供給可能な電力が大きくできるので、温度記録手段29も、不揮発性メモリあるいはこれを用いたICメモリーカードばかりでなく、記録紙に一定時間間隔で前記断熱容器2内の温度をプロットする打点式のアナログ形式の記録計や、記録紙に一定時間間隔で前記断熱容器2内の温度を数値で印刷するディジタル式のプリンタ、あるいは光ディスクや磁気ディスク、光磁気ディスク等の記憶媒体に記録する手段を用いることもできる。
また、上述した実施の形態においては、ヒータとして、前記バンドヒータ31を用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、コードヒータやシリコンテープヒータ、スペースヒータなど、この他種々のヒータを用いるようにしても良い。
さらに、上述した実施の形態においては、保存庫として、薬品やワクチン、血液、あるいは臓器等の医学的、科学的に用いられる被収容物を保存するための携帯型の医療用保存庫1を適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、低い温度で厳密に保管する必要があるような飲食物を保存するための携帯型の飲食物用保存庫等この他種々の被収容物を保存する保存庫を適用するようにしても良い。
本発明に係る医療用保存庫の外観を示す斜視図である。 本発明に係る医療用保存庫の縦断面構成を示す断面図である。 本発明に係る医療用保存庫の構成を示すブロック図である。 本発明に係る医療用保存庫の記録手段を取り外した状態を示す斜視図である。 内容器にバンドヒータを設けた様子を示す斜視図である。 本発明に係る医療用保存庫で用いられるスターリング冷凍機の原理を示す模式図である。 他の実施の形態による温度センサの配置の様子を示す断面図である。
符号の説明
1 医療用保存庫(保存庫)
2 断熱容器
3 スターリング冷凍機
25 制御回路(制御手段、非給電時作動制御手段)
26 温度センサ(温度検知手段)
27 液晶ディスプレイ(温度報知手段、発光手段)
28 温度設定スイッチ
29 温度記録手段
30 スピーカ(温度報知手段、音発生手段)
31 バンドヒータ(ヒータ)
32 キャパシタ(非給電時作動制御手段)

Claims (5)

  1. 断熱容器と、この断熱容器と一体的に設けられて該断熱容器の内部を冷却するスターリング冷凍機と、前記断熱容器と一体的に設けられて該断熱容器の内部の温度を検知する温度検知手段とを有する保存庫において、前記断熱容器と一体的に設けられ、前記温度検知手段によって検知された温度が所定の範囲から外れた際に作動する温度報知手段とを備えたことを特徴とする保存庫。
  2. 前記温度報知手段が音発生手段より成ることを特徴とする請求項1記載の保存庫。
  3. 前記温度報知手段が発光手段より成ることを特徴とする請求項1記載の保存庫。
  4. 断熱容器と、この断熱容器と一体的に設けられて該断熱容器の内部を冷却するスターリング冷凍機と、前記断熱容器と一体的に設けられて該断熱容器の内部の温度を検知する温度検知手段とを有する保存庫において、前記断熱容器と一体的に設けられて前記温度検知手段によって検知した温度を時系列的に記録する温度記録手段と、前記保存庫への非給電時であっても前記温度記録手段を作動させる非給電時作動制御手段とを備えたことを特徴とする保存庫。
  5. 断熱容器と、この断熱容器と一体的に設けられ、該断熱容器の内部を冷却するスターリング冷凍機と、前記断熱容器と一体的に設けられ、該断熱容器の内部の温度を検知する温度検知手段とを有する保存庫において、前記断熱容器と一体的に設けられたヒータと、前記温度検知手段に基づいて前記スターリング冷凍機及び前記ヒータを作動させる制御手段とを備えたことを特徴とする保存庫。

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