JP2006064018A - 自動変速機の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 自動変速機の変速制御中にイナーシャ相を精度良く判定することができ、イナーシャ相に応じた適正なタイミングで変速制御を進行できるようにする。
【解決手段】 変速制御中に、解放状態に切り換えるブレーキB1の回転速度差に基づいてイナーシャ相の開始時期を判定し、係合状態に切り換えるクラッチC0の回転速度差に基づいてイナーシャ相の終了時期を判定する。そして、イナーシャ相に応じたタイミングで係合側油圧のフィードバック制御を実行する。また、イナーシャ相の開始前に目標変速段が更新された場合には、その時点で、新たな目標変速段に切り換える多重変速制御を開始する。一方、イナーシャ相の期間中に目標変速段が更新された場合には、その時点で、多重変速制御を開始するが、まず、係合側油圧制御だけを開始し、その後、イナーシャ相の終了時期と判定された時点で、解放側油圧制御を実行する。
【選択図】 図4
【解決手段】 変速制御中に、解放状態に切り換えるブレーキB1の回転速度差に基づいてイナーシャ相の開始時期を判定し、係合状態に切り換えるクラッチC0の回転速度差に基づいてイナーシャ相の終了時期を判定する。そして、イナーシャ相に応じたタイミングで係合側油圧のフィードバック制御を実行する。また、イナーシャ相の開始前に目標変速段が更新された場合には、その時点で、新たな目標変速段に切り換える多重変速制御を開始する。一方、イナーシャ相の期間中に目標変速段が更新された場合には、その時点で、多重変速制御を開始するが、まず、係合側油圧制御だけを開始し、その後、イナーシャ相の終了時期と判定された時点で、解放側油圧制御を実行する。
【選択図】 図4
Description
本発明は、変速機構の変速段を切り換える変速制御を改善した自動変速機の制御装置に関するものである。
自動車用の自動変速機は、エンジンの動力をトルクコンバータを介して変速機構の入力軸に伝達し、この変速機構で変速して出力軸に伝達し、駆動輪を回転駆動するようにしている。最も一般的な変速機構は、入力軸と出力軸との間に複数の歯車を配列して、入力軸と出力軸との間に変速比の異なる複数の動力伝達経路を構成し、各動力伝達経路中にクラッチやブレーキ等の摩擦係合要素を設けて、変速段切り換え要求に応じて各摩擦係合要素に作用させる油圧を個別に制御することで、各摩擦係合要素の係合と解放を選択的に切り換えて、入出力軸間の動力伝達経路を切り換えて変速比を切り換えるようにしている。
このような自動変速機の変速制御では、所定の摩擦係合要素に対して油圧制御を開始した後、各摩擦係合要素のトルク分担が変化する段階であるトルク相を経て、入出力軸間の回転速度の比(つまり変速比)が変化する段階であるイナーシャ相に移行する。このイナーシャ相では変速機構内の回転系の慣性力の変化によるトルク(イナーシャトルク)が発生し、このイナーシャトルクによる出力軸トルク変化によって変速ショックが発生することがある。イナーシャ相で発生する変速ショックは入力軸回転速度の変化率に依存することが分かっているため、イナーシャ相で入力軸回転速度の変化率が目標値に一致するように制御油圧をフィードバック制御することで、イナーシャ相における変速ショックを低減するようにしたものがある。
また、運転者による手動変速操作やアクセルペダルの急操作によるスロットル開度の急変化等によって、変速機構の変速段を第1の目標変速段に切り換える変速制御中に目標変速段が第2の目標変速段に切り換えられる場合がある。このような場合、第1の目標変速段に切り換える変速制御中のイナーシャ相で、第2の目標変速段へ切り換える多重変速制御を実行しようとすると、油圧制御が非常に困難になり、大きな変速ショックが発生する可能性がある。その対策として、イナーシャ相での多重変速制御を禁止してイナーシャ相の終了後に多重変速制御を実行するようにしたものがある。
上述したように、イナーシャ相でフィードバック制御を実行したり、或は、イナーシャ相で多重変速制御を禁止したりするには、イナーシャ相の開始時期や終了時期を精度良く判定する必要がある。
そこで、特許文献1(特開2001−304397号公報)に記載されているように、変速制御中に変速機構の入力軸回転速度Nt と出力軸回転速度No を検出し、[出力軸回転速度No ×変速前ギヤ比gr1 ]と入力軸回転速度Nt との差が閾値ΔN1 以上となったときにイナーシャ相の開始と判定し、入力軸回転速度Nt と[出力軸回転速度No ×変速後ギヤ比gr2 ]との差が閾値ΔN2 よりも小さくなったときにイナーシャ相の終了と判定するようにしたものがある。
特開2001−304397号公報(第5頁等)
しかし、上記特許文献1の技術では、変速機構の入力軸回転速度Nt と出力軸回転速度No の両方を用いてイナーシャ相の開始時期や終了時期を判定するため、常に入力軸回転速度の検出誤差と出力軸回転速度の検出誤差の両方の影響がイナーシャ相の判定に含まれてしまい、イナーシャ相の判定精度が低下するという欠点がある。このため、イナーシャ相に対してフィードバック制御や多重変速制御等を適正なタイミングで実行できなくなり、変速ショックが発生する可能性がある。
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、従って本発明の目的は、自動変速機の変速制御中にイナーシャ相を精度良く判定することができ、イナーシャ相に応じた適正なタイミングで変速制御を進行することができる自動変速機の制御装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の自動変速機の制御装置は、摩擦係合要素の係合側と被係合側の回転速度差(以下単に「摩擦係合要素の回転速度差」という)を検出する回転速度差検出手段を設け、イナーシャ相状態判定手段によって、変速機構の変速段を目標変速段に切り換える変速制御中に、該変速制御に関係する摩擦係合要素の回転速度差に基づいて、変速機構の変速比が変化する段階であるイナーシャ相の進行状態を判定し、変速制御中にイナーシャ相状態判定手段の判定結果に基づいて当該変速制御の進行を制御するようにしたものである。
変速制御中は、その変速制御に関係する摩擦係合要素の作動状態に応じてイナーシャ相の進行状態が変化し、摩擦係合要素の作動状態は、摩擦係合要素の回転速度差によって判定することができる。従って、変速制御に関係する摩擦係合要素の回転速度差を監視すれば、イナーシャ相の進行状態を判定することができる。この場合、イナーシャ相の判定には、判定に用いる摩擦係合要素の回転速度差の検出誤差の影響が含まれるだけなので、常に入力軸回転速度の検出誤差と出力軸回転速度の検出誤差の両方の影響がイナーシャ相の判定に含まれる従来技術に比べて、イナーシャ相の判定精度を向上させることができる。従って、請求項1に係る発明によれば、イナーシャ相を精度良く判定することができ、その判定結果に基づいて変速制御の進行を制御することができるため、イナーシャ相に応じた適正なタイミングで変速に関する制御(例えば、制御油圧のフィードバック制御)を実行することができ、変速ショックを低減することができる。
また、請求項2のように、変速制御中に目標変速段が新たな目標変速段に切り換えられた場合に、イナーシャ相状態判定手段の判定結果に基づいて変速機構の変速段を新たな目標変速段へ切り換える多重変速制御を実行するようにしても良い。このようにすれば、イナーシャ相に応じた適正なタイミングで多重変速制御を実行することができ、変速ショックを低減することができる。
この場合、請求項3のように、変速制御中にイナーシャ相の開始時期と判定される前に目標変速段が新たな目標変速段に切り換えられた場合には、その時点で多重変速制御を実行するようにすると良い。このようにすれば、イナーシャ相の開始前に多重変速制御を実行することができ、イナーシャ相で多重変速制御が実行されることを確実に回避することができる。
また、請求項4のように、変速制御中にイナーシャ相の期間中と判定されているときに目標変速段が新たな目標変速段に切り換えられた場合には、イナーシャ相の終了時期と判定された後に多重変速制御を実行するようにすると良い。このようにすれば、イナーシャ相の終了後に多重変速制御を実行することができ、イナーシャ相で多重変速制御が実行されることを確実に回避することができる。
或は、請求項5のように、変速制御中にイナーシャ相の期間中と判定されているときに目標変速段が新たな目標変速段に切り換えられた場合には、その時点で多重変速制御の一部の制御を開始し、イナーシャ相の終了時期と判定された後に多重変速制御の残りの制御を開始するようにしても良い。このようにすれば、多重変速制御のうちイナーシャ相で実行しても変速ショックがほとんど発生しない制御(例えば、摩擦係合要素を係合状態に切り換えるための係合側油圧制御の前半部)だけをイナーシャ相で実行し、残りの制御をイナーシャ相の終了後に実行することができる。これにより、変速ショックの発生を防止しながら、多重変速制御をイナーシャ相の途中から開始することができて、多重変速制御を早期に終了させることができる。
また、イナーシャ相の判定は、請求項6のように、変速制御中に係合状態から解放状態に切り換えられる摩擦係合要素(以下「解放側の摩擦係合要素」という)の回転速度差に基づいてイナーシャ相の開始時期を判定するようにすると良い。解放側の摩擦係合要素に回転速度差が生じた時点が、解放側の摩擦係合要素が滑り始めて変速比が変化し始める時期、すなわち、イナーシャ相の開始時期となるため、解放側の摩擦係合要素の回転速度差を監視すれば、イナーシャ相の開始時期を精度良く判定することができる。
更に、請求項7のように、変速制御中に解放状態から係合状態に切り換えられる摩擦係合要素(以下「係合側の摩擦係合要素」という)の回転速度差に基づいてイナーシャ相の終了時期を判定するようにすると良い。係合側の摩擦係合要素に回転速度差が無くなった時点が、係合側の摩擦係合要素が完全に係合状態となって変速比の変化が止まる時期、すなわち、イナーシャ相の終了時期となるため、係合側の摩擦係合要素の回転速度差を監視すれば、イナーシャ相の終了時期を精度良く判定することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を、次の2つの実施例1,2を用いて説明する。
本発明の実施例1を図1乃至図11に基づいて説明する。
まず、図1に基づいて自動変速機11の概略構成を説明する。エンジン12(駆動源)の出力軸13には、トルクコンバータ14の入力軸15が連結され、このトルクコンバータ14の出力軸16に、油圧駆動式の変速歯車機構17(変速機構)が連結されている。トルクコンバータ14の内部には、流体継手を構成するポンプインペラ18とタービンランナ19が対向して設けられ、ポンプインペラ18とタービンランナ19との間には、オイルの流れを整流するステータ20が設けられている。ポンプインペラ18は、トルクコンバータ14の入力軸15に連結され、タービンランナ19は、トルクコンバータ14の出力軸16に連結されている。
まず、図1に基づいて自動変速機11の概略構成を説明する。エンジン12(駆動源)の出力軸13には、トルクコンバータ14の入力軸15が連結され、このトルクコンバータ14の出力軸16に、油圧駆動式の変速歯車機構17(変速機構)が連結されている。トルクコンバータ14の内部には、流体継手を構成するポンプインペラ18とタービンランナ19が対向して設けられ、ポンプインペラ18とタービンランナ19との間には、オイルの流れを整流するステータ20が設けられている。ポンプインペラ18は、トルクコンバータ14の入力軸15に連結され、タービンランナ19は、トルクコンバータ14の出力軸16に連結されている。
また、トルクコンバータ14には、入力軸15側と出力軸16側との間を係合又は切り離しするためのロックアップクラッチ21が設けられている。エンジン12の出力トルクは、トルクコンバータ14を介して変速歯車機構17に伝達され、変速歯車機構17の第1〜第3の遊星歯車機構22〜24で変速されて、車両の駆動輪(前輪又は後輪)に伝達されるようになっている。
変速歯車機構17には、複数の変速段を切り換えるための摩擦係合要素である複数のクラッチC0,C1,C2とブレーキB0,B1,B2,B3が設けられていると共に、複数のワンウェイクラッチF0,F1,F2が設けられている。図2に示すように、これら各クラッチC0,C1,C2と各ブレーキB0,B1,B2,B3の係合/解放を油圧で切り換えて、動力を伝達する各遊星歯車機構22〜24のギヤの組み合わせを切り換えることによって変速比を切り換えるようになっている。尚、図2は5速自動変速機のクラッチC0,C1,C2とブレーキB0,B1,B2,B3の係合の組合せを示すもので、○印はその変速段で係合状態(トルク伝達状態)に保持されるクラッチとブレーキを示し、無印は解放状態を示している。例えば、3速から2速にダウンシフトする場合は、3速で係合状態に保持されていたクラッチC1,C2とブレーキB1,B3のうちの1つのクラッチC1を解放し、その代わりに、ブレーキB2を係合することで、2速にダウンシフトする。また、3速から4速にアップシフトする場合は、3速で係合状態に保持されていたクラッチC1,C2とブレーキB1,B3のうちの1つのブレーキB1を解放し、その代わりに、クラッチC0を係合することで、4速にアップシフトする。
図1に示すように、変速歯車機構17には、エンジン動力で駆動される油圧ポンプ(図示せず)が設けられ、作動油(オイル)を貯溜するオイルパン(図示せず)内には、油圧制御回路25が設けられている。この油圧制御回路25は、ライン圧制御回路26、自動変速制御回路27、ロックアップ制御回路28、手動切換弁29等から構成され、オイルパンから油圧ポンプで汲み上げられた作動油がライン圧制御回路26を介して自動変速制御回路27とロックアップ制御回路28に供給される。ライン圧制御回路26には、油圧ポンプからの油圧を所定のライン圧に制御するライン圧制御用の油圧制御弁(図示せず)が設けられ、自動変速制御回路27には、変速歯車機構17の各クラッチC0,C1,C2と各ブレーキB0,B1,B2,B3に供給する油圧を制御する複数の変速用の油圧制御弁(図示せず)が設けられている。また、ロックアップ制御回路28には、ロックアップクラッチ21に供給する油圧を制御するロックアップ制御用の油圧制御弁(図示せず)が設けられている。
また、ライン圧制御回路26と自動変速制御回路27との間には、シフトレバー30の操作に連動して切り換えられる手動切換弁29が設けられている。シフトレバー30がニュートラルレンジ(Nレンジ)又はパーキングレンジ(Pレンジ)に操作されているときには、自動変速制御回路27の油圧制御弁への通電が停止(OFF)された状態になっていても、手動切換弁29によって変速歯車機構17に供給する油圧が変速歯車機構17をニュートラル状態とするように切り換えられる。
一方、エンジン12には、スロットル開度を検出するスロットル開度センサ31が設けられている。また、変速歯車機構17には、第1の遊星歯車機構22のサンギヤ22aの回転速度を検出する回転速度センサ32と、遊星歯車機構22のキャリヤ22bの回転速度を検出する回転速度センサ33と、変速歯車機構17の出力軸34の回転速度を検出する出力軸回転速度センサ35が設けられている。
これら各種センサの出力信号は、自動変速機電子制御回路(以下「AT−ECU」と表記する)36に入力される。このAT−ECU36は、マイクロコンピュータを主体として構成され、内蔵されたROM(記憶媒体)に記憶された変速制御用の各プログラムを実行することで、予め設定した図3の変速パターンに従って変速歯車機構17の変速が行われるように、シフトレバー30の操作位置や運転条件(スロットル開度、車速等)に応じて発生する変速段切り換え要求(目標変速段の切り換え要求)に応じて自動変速制御回路27の各油圧制御弁への通電を制御して、変速歯車機構17の各クラッチC0,C1,C2と各ブレーキB0,B1,B2,B3に作用させる油圧を制御することによって、図2に示すように、各クラッチC0,C1,C2と各ブレーキB0,B1,B2,B3の係合/解放を切り換えて、動力を伝達する各遊星歯車機構22〜24のギヤの組み合わせを切り換えることで、変速歯車機構17の変速比を切り換える。また、変速歯車機構17の変速段の切り換え中に新たな変速段切り換え要求が発生して目標変速段が新たな目標変速段に切り換えられた場合には、変速歯車機構17の変速段を新たな目標変速段に切り換える多重変速制御を行う。
以下、図4及び図5を用いて変速歯車機構17の変速段を切り換える際の変速制御を、変速段を3速から4速に切り換える場合を例に挙げて説明する。
変速歯車機構17の変速段を3速から4速に切り換える場合には、第1の遊星歯車機構22のサンギヤ22aと変速歯車機構17本体側との間に設けられたブレーキB1(図1参照)から作動油を排出して、ブレーキB1を係合状態から解放状態に切り換えると共に、第1の遊星歯車機構22のリングギヤ22cと第2の遊星歯車機構23のリングギヤ23cとの間に設けられたクラッチC0(図1参照)に作動油を充填して、クラッチC0を解放状態から係合状態に切り換える。
変速歯車機構17の変速段を3速から4速に切り換える場合には、第1の遊星歯車機構22のサンギヤ22aと変速歯車機構17本体側との間に設けられたブレーキB1(図1参照)から作動油を排出して、ブレーキB1を係合状態から解放状態に切り換えると共に、第1の遊星歯車機構22のリングギヤ22cと第2の遊星歯車機構23のリングギヤ23cとの間に設けられたクラッチC0(図1参照)に作動油を充填して、クラッチC0を解放状態から係合状態に切り換える。
通常は、図4及び図5に実線で示すように、変速段切り換え要求に応じて目標変速段が3速から4速に更新された時点t0 で、変速歯車機構17の変速段を3速から4速に切り換える3→4変速油圧制御を開始して、ブレーキB1の解放側油圧制御とクラッチC0の係合側油圧制御を実行する。
ブレーキB1の解放側油圧制御では、目標変速段が3速から4速に更新された時点t0 で、ブレーキB1の油圧指令値を0に設定してブレーキB1から作動油を排出する。これにより、ブレーキB1の係合力が低下してブレーキB1のトルク伝達容量が低下する。
一方、クラッチC0の係合側油圧制御では、目標変速段が3速から4速に更新された時点t0 で、まず、急速充填制御(Phase1)を実行する。この急速充填制御では、クラッチC0の油圧指令値を所定の充填油圧に設定することで、クラッチC0に作動油を充填する。
この急速充填制御を所定時間だけ実行した時点t1 で、定圧制御(Phase2)を実行する。この定圧制御では、クラッチC0の油圧指令値を所定の待機油圧まで低下させて一定時間保持することで、クラッチC0に作用する油圧をトルク相開始時期付近で安定的に収束させる。
この定圧制御を所定時間だけ実行した時点t2 で、スイープ制御(Phase3)を実行する。このスイープ制御では、クラッチC0の油圧指令値を徐々に増加させることで、クラッチC0のトルク容量が変速に必要なトルク容量となるまでクラッチC0に作用する油圧を徐々に増加させる。
この後、変速歯車機構17の入力軸回転速度が減少して入出力軸間の回転速度の比(つまり変速比)が変化する段階であるイナーシャ相に移行する。その際、後述するタイミングでフィードバック制御(Phase4)を実行して、入力軸回転速度の変化率が目標値に一致するようにクラッチC0に作用する油圧をフィードバック制御し、変速終期には終了制御(Phase5)を実行して、クラッチC0の油圧指令値を最高油圧に向けて上昇させて、変速段の切り換えを終了する。
本実施例1では、変速歯車機構17の変速段を3速から4速に切り換える変速制御中に、回転速度センサ32の出力に基づいてブレーキB1の回転速度差を検出し、回転速度センサ32,33と出力軸回転速度センサ35の出力とに基づいてクラッチC0の回転速度差を検出する。これらの回転速度センサ32,33と出力軸回転速度センサ35が特許請求の範囲でいう回転速度差検出手段としての役割を果たす。
ここで、ブレーキB1の回転速度差は、ブレーキB1の係合側と被係合側(つまり、第1の遊星歯車機構22のサンギヤ22a側と変速歯車機構17本体側)の回転速度差である。この場合、ブレーキB1の変速歯車機構17本体側の回転速度は「0」であるため、回転速度センサ32で第1の遊星歯車機構22のサンギヤ22aの回転速度を検出することで、ブレーキB1の回転速度差を検出することができる。
また、クラッチC0の回転速度差は、クラッチC0の係合側と被係合側(つまり、第1の遊星歯車機構22のリングギヤ22c側と第2の遊星歯車機構23のリングギヤ23c側)の回転速度差である。この場合、回転速度センサ32で検出した第1の遊星歯車機構22のサンギヤ22aの回転速度と、回転速度センサ33で検出した第1の遊星歯車機構22のキャリヤ22bの回転速度と、第1の遊星歯車機構22のギヤ比とに基づいて第1の遊星歯車機構22のリングギヤ22cの回転速度を算出することができる。更に、出力軸回転速度センサ35で検出した変速歯車機構17の出力軸34の回転速度と、第2の遊星歯車機構23のギヤ比とに基づいて第2の遊星歯車機構23のリングギヤ23cの回転速度を算出することができる。これらの第1の遊星歯車機構22のリングギヤ22cの回転速度と第2の遊星歯車機構23のリングギヤ23cの回転速度との差を求めることで、クラッチC0の回転速度差を検出することができる。
そして、図4及び図5に実線で示すように、変速制御中に、ブレーキB1の回転速度差が0よりも大きくなった時点t3 で、ブレーキB1が滑り始めて変速歯車機構17の変速比が変化し始める時期、つまり、イナーシャ相の開始時期であると判定して、クラッチC0のフィードバック制御(Phase4)を開始する。その後、クラッチC0の回転速度差が0になった時点t4 で、クラッチC0が完全に係合状態となって変速歯車機構17の変速比の変化が止まる時期、つまり、イナーシャ相の終了時期であると判定して、クラッチC0のフィードバック制御(Phase4)を終了する。
次に、図4及び図5に点線で示すように、変速歯車機構17の変速段を3速から4速に切り換える変速制御中に、新たな変速段切り換え要求が発生して目標変速段が新たな目標変速段(例えば3速)に切り換えられた場合について説明する。
図4に点線で示すように、変速歯車機構17の変速段を3速から4速に切り換える変速制御中でイナーシャ相の開始時期と判定される前に目標変速段が4速から3速に切り換えられた場合には、その時点tcで、変速歯車機構17の変速段を新たな目標変速段である3速に切り換えるイナーシャ相前4→3変速油圧制御(多重変速制御)を開始する。
このイナーシャ相前4→3変速油圧制御では、ブレーキB1のイナーシャ相前係合側油圧制御とクラッチC0のイナーシャ相前解放側油圧制御を実行する。ブレーキB1のイナーシャ相前係合側油圧制御では、目標変速段が4速から3速に更新された時点tcで、ブレーキB1の油圧指令値を所定値に設定してブレーキB1に作動油を充填する。一方、クラッチC0のイナーシャ相前解放側油圧制御では、目標変速段が4速から3速に更新された時点tcで、クラッチC0の油圧指令値を0に設定してクラッチC0から作動油を排出する。
また、図5に点線で示すように、変速歯車機構17の変速段を3速から4速に切り換える変速制御中でイナーシャ相の期間中と判定されているときに目標変速段が4速から3速に切り換えられた場合には、その時点tcで、変速歯車機構17の変速段を新たな目標変速段である3速に切り換える4→3変速油圧制御(多重変速制御)を開始するが、まず、目標変速段が4速から3速に更新された時点tcでは、ブレーキB1のイナーシャ相中係合側油圧制御だけを開始し、その後、イナーシャ相の終了時期と判定された時点t4 で、クラッチC0のイナーシャ相後解放側油圧制御を実行する。
ブレーキB1のイナーシャ相中係合側油圧制御では、目標変速段が4速から3速に更新された時点tcで、通常時の係合側油圧制御と同じように、急速充填制御、定圧制御、スイープ制御、フィードバック制御、終了制御を順に実行する。その際、イナーシャ相で実行しても変速ショックがほとんど発生しない制御(例えば急速充填制御と定圧制御)だけをイナーシャ相で実行し、残りの制御(例えばスイープ制御とフィードバック制御と終了制御)はイナーシャ相の終了後に実行する。一方、クラッチC0のイナーシャ相後解放側油圧制御では、イナーシャ相の終了時期と判定された時点t4 で、クラッチC0の油圧指令値を低下させてクラッチC0から作動油を排出する。
以上説明した本実施例1の変速制御は、AT−ECU36によって図6乃至図11の各プログラムに従って実行される。以下、これらの各プログラムの処理内容を、変速段を3速から4速に切り換える場合を例に挙げて説明する。
[変速制御]
図6に示す変速制御プログラムは、AT−ECU36の電源オン中に所定周期で実行され、特許請求の範囲でいう変速制御手段としての役割を果たす。本プログラムが起動されると、まず、ステップ101で、変速段切り換え要求に応じて目標変速段が切り換えられて変速指令が出力された否かを判定する。変速指令が出力されていなければ、そのまま本プログラムを終了する。
図6に示す変速制御プログラムは、AT−ECU36の電源オン中に所定周期で実行され、特許請求の範囲でいう変速制御手段としての役割を果たす。本プログラムが起動されると、まず、ステップ101で、変速段切り換え要求に応じて目標変速段が切り換えられて変速指令が出力された否かを判定する。変速指令が出力されていなければ、そのまま本プログラムを終了する。
一方、変速指令が出力されていれば、ステップ102に進み、後述する図7の変速油圧制御プログラムを実行して、変速歯車機構17の変速段を目標変速段に切り換えるための油圧制御を行う。
この後、ステップ103に進み、変速終了フラグがオンされているか否かを判定し、変速終了フラグがオンされていなければ、そのまま本プログラムを終了する。その後、変速終了フラグがオンされたと判定された時点で、ステップ104に進み、後述する係合側油圧制御の段階を判定するための制御段階フラグFlag1を初期値「0」にリセットして、本プログラムを終了する。
[変速油圧制御]
図7に示す変速油圧制御プログラムは、図6のステップ102で実行されるサブルーチンである。本プログラムが起動されると、まず、ステップ201で、後述する図8のイナーシャ相判定プログラムを実行して、イナーシャ相の開始時期と判定されたときにイナーシャ相開始フラグをオンし、イナーシャ相の終了時期と判定されたときにイナーシャ相終了フラグをオンする。
図7に示す変速油圧制御プログラムは、図6のステップ102で実行されるサブルーチンである。本プログラムが起動されると、まず、ステップ201で、後述する図8のイナーシャ相判定プログラムを実行して、イナーシャ相の開始時期と判定されたときにイナーシャ相開始フラグをオンし、イナーシャ相の終了時期と判定されたときにイナーシャ相終了フラグをオンする。
この後、ステップ202に進み、4→3変速要求フラグがオンされているか否か、つまり、変速歯車機構17の変速段を3速から4速に切り換える変速制御中に、新たな変速段切り換え要求が発生して目標変速段が新たな目標変速段である3速に切り換えられたか否かを判定する。
4→3変速要求フラグがオンされていなければ、ステップ205に進み、後述する図9の3→4変速油圧制御プログラムを実行して、変速歯車機構17の変速段を3速から4速に切り換えるための3→4変速油圧制御を継続する。
その後、上記ステップ202で、4→3変速要求フラグがオンされた、つまり、目標変速段が新たな目標変速段である3速に切り換えられたと判定された時点で、ステップ203に進み、イナーシャ相開始フラグがオンされているか否かを判定する。
その結果、まだ、イナーシャ相開始フラグがオンされていないと判定された場合には、イナーシャ相の開始前であると判断して、ステップ206に進み、後述する図11のイナーシャ相前4→3変速油圧制御プログラムを実行して、イナーシャ相の開始前に変速歯車機構17の変速段を4速から3速に切り換えるためのイナーシャ相前4→3変速油圧制御を行う。
一方、上記ステップ203で、イナーシャ相開始フラグがオンされていると判定された場合には、ステップ204に進み、イナーシャ相終了フラグがオンされているか否かを判定する。
その結果、まだ、イナーシャ相終了フラグがオンされていないと判定された場合には、イナーシャ相の期間中であると判断して、ステップ207に進み、変速歯車機構17の変速段を新たな目標変速段である3速に切り換えるための4→3変速油圧制御を開始するが、イナーシャ相の期間中は、まず、4→3変速油圧制御のうちブレーキB1のイナーシャ相中係合側油圧制御だけを開始する。このブレーキB1のイナーシャ相中係合側油圧制御では、目標変速段が4速から3速に更新された時点tcで、通常時の係合側油圧制御と同じように、急速充填制御、定圧制御、スイープ制御、フィードバック制御、終了制御を順に実行する。その際、イナーシャ相で実行しても変速ショックがほとんど発生しない制御(例えば急速充填制御と定圧制御)だけをイナーシャ相で実行し、残りの制御(例えばスイープ制御とフィードバック制御と終了制御)はイナーシャ相の終了後に実行する。
その後、上記ステップ204で、イナーシャ相終了フラグがオンされていると判定された時点で、イナーシャ相の終了後であると判断して、ステップ208に進み、4→3変速油圧制御のうちクラッチC0のイナーシャ相後解放側油圧制御を開始する。このクラッチC0のイナーシャ相後解放側油圧制御では、イナーシャ相の終了時期と判定された時点t4 で、クラッチC0の油圧指令値を低下させてクラッチC0から作動油を排出する。
[イナーシャ相判定]
図8に示すイナーシャ相判定プログラムは、図7のステップ201で実行されるサブルーチンであり、特許請求の範囲でいうイナーシャ相状態判定手段としての役割を果たす。本プログラムが起動されると、まず、ステップ301で、回転速度センサ32の出力に基づいてブレーキB1の回転速度差を検出する。
図8に示すイナーシャ相判定プログラムは、図7のステップ201で実行されるサブルーチンであり、特許請求の範囲でいうイナーシャ相状態判定手段としての役割を果たす。本プログラムが起動されると、まず、ステップ301で、回転速度センサ32の出力に基づいてブレーキB1の回転速度差を検出する。
この後、ステップ302に進み、ブレーキB1の回転速度差が0であるか否かを判定し、ブレーキB1の回転速度差が0であると判定された場合には、そのまま本プログラムを終了する。
その後、上記ステップ302で、ブレーキB1の回転速度差が0ではないと判定された時点で、ブレーキB1が滑り始めて変速歯車機構17の変速比が変化し始める時期、つまり、イナーシャ相の開始時期であると判定して、ステップ303に進み、イナーシャ相開始フラグをオンする。
この後、ステップ304に進み、回転速度センサ32,33と出力軸回転速度センサ35の出力とに基づいてクラッチC0の回転速度差を検出する。
この後、ステップ305に進み、クラッチC0の回転速度差が0であるか否かを判定し、クラッチC0の回転速度差が0ではないと判定された場合には、そのまま本プログラムを終了する。
この後、ステップ305に進み、クラッチC0の回転速度差が0であるか否かを判定し、クラッチC0の回転速度差が0ではないと判定された場合には、そのまま本プログラムを終了する。
その後、上記ステップ305で、クラッチC0の回転速度差が0であると判定された時点で、クラッチC0が完全に係合状態となって変速歯車機構17の変速比の変化が止まる時期、つまり、イナーシャ相の終了時期であると判定して、ステップ306に進み、イナーシャ相終了フラグをオンする。
[3→4変速油圧制御]
図9に示す3→4変速油圧制御プログラムは、図7のステップ205で実行されるサブルーチンである。本プログラムが起動されると、まず、401で、後述する図10の係合側油圧制御プログラムを実行して、クラッチC0の係合側油圧制御を行う。このクラッチC0の係合側油圧制御では、急速充填制御、定圧制御、スイープ制御、フィードバック制御、終了制御を順に実行する。
図9に示す3→4変速油圧制御プログラムは、図7のステップ205で実行されるサブルーチンである。本プログラムが起動されると、まず、401で、後述する図10の係合側油圧制御プログラムを実行して、クラッチC0の係合側油圧制御を行う。このクラッチC0の係合側油圧制御では、急速充填制御、定圧制御、スイープ制御、フィードバック制御、終了制御を順に実行する。
この後、ステップ402に進み、図示しない解放側油圧制御プログラムを実行して、ブレーキB1の解放側油圧制御を行う。このブレーキB1の解放側油圧制御では、ブレーキB1の油圧指令値を0に設定してブレーキB1から作動油を排出する。
[係合側油圧制御]
図10に示す係合側油圧制御プログラムは、図9のステップ401で実行されるサブルーチンである。本プログラムが起動されると、まず、501で、制御段階フラグFlag1の値が0〜4のいずれであるか否かで、現在の係合側油圧制御の段階を判定する。この制御段階フラグFlag1は、係合側油圧制御の各段階に進む毎に1ずつ増加するフラグであり、初期値は0で最大値は4である。
図10に示す係合側油圧制御プログラムは、図9のステップ401で実行されるサブルーチンである。本プログラムが起動されると、まず、501で、制御段階フラグFlag1の値が0〜4のいずれであるか否かで、現在の係合側油圧制御の段階を判定する。この制御段階フラグFlag1は、係合側油圧制御の各段階に進む毎に1ずつ増加するフラグであり、初期値は0で最大値は4である。
係合側油圧制御を開始する時点t0 では、制御段階フラグFlag1は初期値(0)に設定されているため、ステップ502に進み、急速充填制御(Phase1)を実行する。この急速充填制御では、クラッチC0の油圧指令値を所定の充填油圧に設定することで、クラッチC0に作動油を充填する。そして、次のステップ503で、制御段階フラグFlag1を「1」にセットした後、ステップ504に進み、係合油圧制御開始からの経過時間をカウントするタイマTを0にリセットして、本プログラムを終了する。
急速充填制御中は、制御段階フラグFlag1が「1」にセットされているため、次回の本プログラムの起動時には、ステップ501からステップ505に進み、タイマTをカウントアップした後、ステップ506に進み、係合油圧制御開始からの経過時間(タイマTのカウント値)が所定時間TQ以上になったか否かを判定する。そして、係合油圧制御開始からの経過時間が所定時間TQに達するまでは、急速充填制御を継続する(ステップ507)。
その後、係合油圧制御開始からの経過時間が所定時間TQに達した時点t1 で、ステップ506からステップ508に進み、定圧制御(Phase2)を実行する。この定圧制御では、クラッチC0の油圧指令値を所定の待機油圧まで低下させて保持することで、クラッチC0に作用する油圧をトルク相開始時期付近で安定的に収束させる。そして、次のステップ509で、制御段階フラグFlag1を「2」にセットして、本プログラムを終了する。
定圧制御中は、制御段階フラグFlag1が「2」にセットされているため、次回の本プログラムの起動時には、ステップ501からステップ510に進み、タイマTをカウントアップした後、ステップ511に進み、係合油圧制御開始からの経過時間(タイマTのカウント値)が所定時間TC以上になったか否かを判定する。そして、係合油圧制御開始からの経過時間が所定時間TCに達するまでは、定圧制御を継続する(ステップ512)。
その後、係合油圧制御開始からの経過時間が所定時間TCに達した時点t2 で、ステップ511からステップ513に進み、スイープ制御(Phase3)を実行する。このスイープ制御では、クラッチC0の油圧指令値を徐々に増加させることで、クラッチC0のトルク容量が変速に必要なトルク容量となるまでクラッチC0に作用する油圧を徐々に増加させる。そして、次のステップ514で、制御段階フラグFlag1を「3」にセットして、本プログラムを終了する。
スイープ制御中は、制御段階フラグFlag1が「3」にセットされているため、次回の本プログラムの起動時には、ステップ501からステップ515に進み、タイマTをカウントアップした後、ステップ516で、係合油圧制御開始からの経過時間(タイマTのカウント値)が所定時間TS以上になったか否かを判定し、ステップ517で、イナーシャ相開始フラグがオンされているか否かを判定する。
そして、上記ステップ516とステップ517のいずれか一方で「Yes」と判定されるまで、つまり、係合油圧制御開始からの経過時間が所定時間TSに達するか又はイナーシャ相開始フラグがオンされるまでは、スイープ制御を継続する(ステップ518)。
その後、係合油圧制御開始からの経過時間が所定時間TCに達した時点、又は、イナーシャ相開始フラグがオンされた時点t3 で、ステップ519に進み、フィードバック制御(Phase4)を実行して、入力軸回転速度の変化率が目標値に一致するようにクラッチC0に作用する油圧をフィードバック制御する。そして、次のステップ520で、制御段階フラグFlag1を「4」にセットして、本プログラムを終了する。
フィードバック制御中は、制御段階フラグFlag1が「4」にセットされているため、次回の本プログラムの起動時には、ステップ501からステップ521に進み、イナーシャ相終了フラグがオンされているか否かを判定する。そして、イナーシャ相終了フラグがオンされるまでは、フィードバック制御を継続する(ステップ522)。
その後、イナーシャ相終了フラグがオンされた時点t4 で、ステップ521からステップ523に進み、終了制御(Phase5)を実行して、クラッチC0の油圧指令値を最高油圧に向けて上昇させて、変速段の切り換えを終了する。そして、次のステップ524で、係合側油圧制御終了フラグをオンして、本プログラムを終了する。
[イナーシャ相前4→3変速油圧制御]
図11に示すイナーシャ相前4→3変速油圧制御プログラムは、図7のステップ206で実行されるサブルーチンである。本プログラムが起動されると、まず、601で、図示しないイナーシャ相前係合側油圧制御プログラムを実行して、ブレーキB1のイナーシャ相前係合側油圧制御を行う。このブレーキB1のイナーシャ相前係合側油圧制御では、目標変速段が4速から3速に更新された時点tcで、ブレーキB1の油圧指令値を所定値に設定してブレーキB1に作動油を充填する。
図11に示すイナーシャ相前4→3変速油圧制御プログラムは、図7のステップ206で実行されるサブルーチンである。本プログラムが起動されると、まず、601で、図示しないイナーシャ相前係合側油圧制御プログラムを実行して、ブレーキB1のイナーシャ相前係合側油圧制御を行う。このブレーキB1のイナーシャ相前係合側油圧制御では、目標変速段が4速から3速に更新された時点tcで、ブレーキB1の油圧指令値を所定値に設定してブレーキB1に作動油を充填する。
この後、ステップ602に進み、図示しないイナーシャ相前解放側油圧制御プログラムを実行して、クラッチC0のイナーシャ相前解放側油圧制御を行う。このクラッチC0のイナーシャ相前解放側油圧制御では、目標変速段が4速から3速に更新された時点tcで、クラッチC0の油圧指令値を0に設定してクラッチC0から作動油を排出する。
以上説明した本実施例1では、変速歯車機構17の変速段を3速から4速に切り換える変速制御中に、その変速制御に関係するブレーキB1の回転速度差とクラッチC0の回転速度差を検出し、ブレーキB1の回転速度差が0よりも大きくなった時点t3 で、イナーシャ相の開始時期であると判定して、クラッチC0のフィードバック制御を開始する。その後、クラッチC0の回転速度差が0になった時点t4 で、イナーシャ相の終了時期であると判定して、クラッチC0のフィードバック制御を終了する。
この場合、イナーシャ相の開始時期の判定には、ブレーキB1の回転速度差の検出誤差の影響が含まれるだけであり、イナーシャ相の終了時期の判定には、クラッチC0の回転速度差の検出誤差の影響が含まれるだけなので、常に入力軸回転速度の検出誤差と出力軸回転速度の検出誤差の両方の影響がイナーシャ相の判定に含まれる従来技術に比べて、イナーシャ相の判定精度を向上させることができる。従って、本実施例1によれば、イナーシャ相の開始時期と終了時期を精度良く判定することができ、その判定結果に基づいてクラッチC0のフィードバック制御を実行するため、イナーシャ相に応じた適正なタイミングでクラッチC0のフィードバック制御を実行することができ、変速ショックを低減することができる。
また、本実施例1では、変速歯車機構17の変速段を3速から4速に切り換える変速制御中でイナーシャ相の開始時期と判定される前に目標変速段が4速から3速に切り換えられた場合には、その時点tcで、変速歯車機構17の変速段を新たな目標変速段である3速に切り換えるイナーシャ相前4→3変速油圧制御(多重変速制御)を開始するようにしたので、イナーシャ相の開始前に多重変速制御を実行することができて、イナーシャ相で多重変速制御が実行されることを確実に回避することができ、変速ショックを低減することができる。
更に、本実施例1では、変速歯車機構17の変速段を3速から4速に切り換える変速制御中でイナーシャ相の期間中と判定されているときに目標変速段が4速から3速に切り換えられた場合には、その時点tcで、変速歯車機構17の変速段を新たな目標変速段である3速に切り換える4→3変速油圧制御(多重変速制御)を開始するが、まず、目標変速段が4速から3速に更新された時点tcでは、ブレーキB1のイナーシャ相中係合側油圧制御だけを開始し、その後、イナーシャ相の終了時期と判定された時点t4 で、クラッチC0のイナーシャ相後解放側油圧制御を実行する。このようにすれば、多重変速制御のうちイナーシャ相で実行しても変速ショックがほとんど発生しない制御(例えば係合側油圧制御における急速充填制御と定圧制御)だけをイナーシャ相で実行し、残りの制御をイナーシャ相の終了後に実行することができる。これにより、変速ショックの発生を防止しながら、多重変速制御をイナーシャ相の途中から開始することができて、多重変速制御を早期に終了させることができる。
次に、図12乃至図14を用いて本発明の実施例2を説明する。
本実施例2では、図12に点線で示すように、変速歯車機構17の変速段を3速から4速に切り換える変速制御中でイナーシャ相の期間中と判定されているときに目標変速段が4速から3速に切り換えられた場合に、その後、イナーシャ相の終了時期と判定された時点t4 で、変速歯車機構17の変速段を新たな目標変速段である3速に切り換えるイナーシャ相後4→3変速油圧制御(多重変速制御)を開始するようにしている。
本実施例2では、図12に点線で示すように、変速歯車機構17の変速段を3速から4速に切り換える変速制御中でイナーシャ相の期間中と判定されているときに目標変速段が4速から3速に切り換えられた場合に、その後、イナーシャ相の終了時期と判定された時点t4 で、変速歯車機構17の変速段を新たな目標変速段である3速に切り換えるイナーシャ相後4→3変速油圧制御(多重変速制御)を開始するようにしている。
以下、本実施例2でAT−ECU36が実行する図13の変速油圧制御プログラム及び図14のイナーシャ相後4→3変速油圧制御プログラムの処理内容を説明する。
図13に示す変速油圧制御プログラムでは、まず、ステップ701で、前述した図8のイナーシャ相判定プログラムを実行して、イナーシャ相の開始時期と判定されたときにイナーシャ相開始フラグをオンし、イナーシャ相の終了時期と判定されたときにイナーシャ相終了フラグをオンする。
図13に示す変速油圧制御プログラムでは、まず、ステップ701で、前述した図8のイナーシャ相判定プログラムを実行して、イナーシャ相の開始時期と判定されたときにイナーシャ相開始フラグをオンし、イナーシャ相の終了時期と判定されたときにイナーシャ相終了フラグをオンする。
この後、ステップ702に進み、4→3変速要求フラグがオンされているか否かを判定し、4→3変速要求フラグがオンされていなければ、前述した図9の3→4変速油圧制御プログラムを実行して、変速歯車機構17の変速段を3速から4速に切り換えるための3→4変速油圧制御を継続する(ステップ705)。
その後、4→3変速要求フラグがオンされたと判定された時点で、ステップ703に進み、イナーシャ相開始フラグがオンされているか否かを判定し、まだ、イナーシャ相開始フラグがオンされていないと判定された場合には、イナーシャ相の開始前であると判断して、前述した図11のイナーシャ相前4→3変速油圧制御プログラムを実行して、イナーシャ相の開始前に変速歯車機構17の変速段を4速から3速に切り換えるためのイナーシャ相前4→3変速油圧制御を行う(ステップ706)。
一方、イナーシャ相開始フラグがオンされていると判定された場合には、ステップ704に進み、イナーシャ相終了フラグがオンされているか否かを判定し、まだ、イナーシャ相終了フラグがオンされていないと判定された場合には、イナーシャ相の期間中であると判断して、ステップ705に進み、前述した図9の3→4変速油圧制御プログラムを実行して、変速歯車機構17の変速段を3速から4速に切り換えるための3→4変速油圧制御を継続する。
その後、イナーシャ相終了フラグがオンされていると判定された時点で、イナーシャ相の終了後であると判断して、ステップ207に進み、後述する図14のイナーシャ相後4→3変速油圧制御プログラムを実行して、イナーシャ相の終了後に変速歯車機構17の変速段を4速から3速に切り換えるためのイナーシャ相後4→3変速油圧制御を行う。
図14に示すイナーシャ相後4→3変速油圧制御プログラムは、図13のステップ707で実行されるサブルーチンである。本プログラムが起動されると、まず、ステップ801で、図示しないイナーシャ相後係合側油圧制御プログラムを実行して、ブレーキB1のイナーシャ相後係合側油圧制御を行う。このブレーキB1のイナーシャ相後係合側油圧制御では、イナーシャ相の終了時期と判定された時点t4 で、通常時の係合側油圧制御と同じように、急速充填制御、定圧制御、スイープ制御、フィードバック制御、終了制御を順に実行する。
この後、ステップ802に進み、図示しないイナーシャ相後解放側油圧制御プログラムを実行して、クラッチC0のイナーシャ相後解放側油圧制御を行う。このクラッチC0のイナーシャ相後解放側油圧制御では、イナーシャ相の終了時期と判定された時点t4 で、クラッチC0の油圧指令値を低下させてクラッチC0から作動油を排出する。
以上説明した本実施例2では、変速歯車機構17の変速段を3速から4速に切り換える変速制御中でイナーシャ相の期間中と判定されているときに目標変速段が4速から3速に切り換えられた場合には、その後、イナーシャ相の終了時期と判定された時点t4 で、変速歯車機構17の変速段を新たな目標変速段である3速に切り換えるイナーシャ相後4→3変速油圧制御(多重変速制御)を開始するようにしたので、イナーシャ相の終了後に多重変速制御を実行することができて、イナーシャ相で多重変速制御が実行されることを確実に回避することができ、変速ショックを低減することができる。
尚、上記各実施例1,2では、変速歯車機構17の変速段を3速から4速に切り換える場合を例に挙げて説明したが、本発明の適用範囲は、変速段を3速から4速に切り換える変速制御に限定されず、他の変速制御に本発明を適用して実施しても良い。
また、本発明は、5速自動変速機に限定されず、4速以下又は6速以上の自動変速機にも適用できることは言うまでもない。
11…自動変速機、12…エンジン(駆動源)、14…トルクコンバータ、17…変速歯車機構(変速機構)、22〜24…遊星歯車機構、25…油圧制御回路、26…ライン圧制御回路、27…自動変速制御回路、28…ロックアップ制御回路、32,33…回転速度センサ(回転速度差検出手段)、35…出力軸回転速度センサ(回転速度差検出手段)、36…AT−ECU(変速制御手段,イナーシャ相状態判定手段)、C0〜C2…クラッチ(摩擦係合要素)、B0〜B3…ブレーキ(摩擦係合要素)
Claims (7)
- 駆動源から回転力が伝達される入力軸の回転を変速して出力軸に伝達する変速機構と、この変速機構の複数の変速段に設けられた複数の摩擦係合要素と、変速段切り換え要求に応じて目標変速段を設定して前記複数の摩擦係合要素に作用させる油圧を個別に制御することで各摩擦係合要素の係合と解放を選択的に切り換えて前記変速機構の変速段を切り換える変速制御手段とを備えた自動変速機の制御装置において、
前記摩擦係合要素の係合側と被係合側の回転速度差(以下単に「摩擦係合要素の回転速度差」という)を検出する回転速度差検出手段と、
前記変速機構の変速段を前記目標変速段に切り換える変速制御中に、該変速制御に関係する摩擦係合要素の回転速度差に基づいて、前記変速機構の変速比が変化する段階であるイナーシャ相の進行状態を判定するイナーシャ相状態判定手段とを備え、
前記変速制御手段は、前記変速制御中に前記イナーシャ相状態判定手段の判定結果に基づいて当該変速制御の進行を制御することを特徴とする自動変速機の制御装置。 - 駆動源から回転力が伝達される入力軸の回転を変速して出力軸に伝達する変速機構と、この変速機構の複数の変速段に設けられた複数の摩擦係合要素と、変速段切り換え要求に応じて目標変速段を設定して前記複数の摩擦係合要素に作用させる油圧を個別に制御することで各摩擦係合要素の係合と解放を選択的に切り換えて前記変速機構の変速段を切り換える変速制御手段とを備えた自動変速機の制御装置において、
前記摩擦係合要素の係合側と被係合側の回転速度差(以下単に「摩擦係合要素の回転速度差」という)を検出する回転速度差検出手段と、
前記変速機構の変速段を前記目標変速段に切り換える変速制御中に、該変速制御に関係する摩擦係合要素の回転速度差に基づいて、前記変速機構の変速比が変化する段階であるイナーシャ相の進行状態を判定するイナーシャ相状態判定手段とを備え、
前記変速制御手段は、前記変速制御中に前記目標変速段が新たな目標変速段に切り換えられた場合に、前記イナーシャ相状態判定手段の判定結果に基づいて前記変速機構の変速段を前記新たな目標変速段へ切り換える多重変速制御を実行することを特徴とする自動変速機の制御装置。 - 前記変速制御手段は、前記変速制御中に前記イナーシャ相状態判定手段により前記イナーシャ相の開始時期と判定される前に前記目標変速段が新たな目標変速段に切り換えられた場合には、その時点で前記多重変速制御を実行することを特徴とする請求項2に記載の自動変速機の制御装置。
- 前記変速制御手段は、前記変速制御中に前記イナーシャ相状態判定手段により前記イナーシャ相の期間中と判定されているときに前記目標変速段が新たな目標変速段に切り換えられた場合には、前記イナーシャ相状態判定手段により前記イナーシャ相の終了時期と判定された後に前記多重変速制御を実行することを特徴とする請求項2又は3に記載の自動変速機の制御装置。
- 前記変速制御手段は、前記変速制御中に前記イナーシャ相状態判定手段により前記イナーシャ相の期間中と判定されているときに前記目標変速段が新たな目標変速段に切り換えられた場合には、その時点で前記多重変速制御の一部の制御を開始し、前記イナーシャ相状態判定手段により前記イナーシャ相の終了時期と判定された後に前記多重変速制御の残りの制御を開始することを特徴とする請求項2又は3に記載の自動変速機の制御装置。
- 前記イナーシャ相状態判定手段は、前記変速制御中に係合状態から解放状態に切り換えられる摩擦係合要素の回転速度差に基づいて前記イナーシャ相の開始時期を判定することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の自動変速機の制御装置。
- 前記イナーシャ相状態判定手段は、前記変速制御中に解放状態から係合状態に切り換えられる摩擦係合要素の回転速度差に基づいて前記イナーシャ相の終了時期を判定することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の自動変速機の制御装置。
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JP2008111491A (ja) * | 2006-10-31 | 2008-05-15 | Denso Corp | 自動変速機の制御装置 |
JP2008208960A (ja) * | 2007-02-28 | 2008-09-11 | Denso Corp | 自動変速機の制御装置 |
US7824291B2 (en) | 2006-09-15 | 2010-11-02 | Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha | Shift control apparatus and method for automatic transmission |
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2004
- 2004-08-25 JP JP2004244688A patent/JP2006064018A/ja active Pending
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