しかしながら、上記のような従来の技術では、ヒンジドアであるサブサイドドアは、スライドドアの動作に常に連動する構成であり、独立して開口部の一部を開閉して乗員の乗降を可能とすることができない。すなわち、前席の乗員が乗降する際においても、この乗員は、スライドドアを操作して、開口部におけるスライドドアが開放する部分を通ることになる。
本発明は、上記事実を考慮して、ヒンジドアを操作することで車体の開口部を乗降可能に開放することができ、かつ乗降性が良好となる車両乗降用開口部の開閉装置を得ることが目的である。
上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係る車両乗降用開口部の開閉装置は、車体側方に開口し車室に対し乗降するための開口部を開閉する車両乗降用開口部の開閉装置であって、前端側に設けられた支軸廻りに車体に対し回動することで、前記開口部の前部を閉塞する閉塞位置と、車体外側に位置して前記開口部の前部を乗員の乗降可能に開放する開放位置とを取り得るヒンジドアと、前記開口部の開放面に沿って前後方向に移動することで、前記閉塞位置に位置する前記ヒンジドアの後端に前端を突き当てて前記開口部の後部を閉塞する閉塞位置と、該閉塞位置よりも車体に対し後側に位置して前記開口部の後部を開放する開放位置とを取り得るスライドドアと、前記ヒンジドアを前記閉塞位置から前記開放位置側に回動する際に、該ヒンジドアの前記閉塞位置に対する前記開放位置側への回動量又は回動可能量が所定値以下である場合には、前記スライドドアを後側に移動する乗降補助装置と、備える。
請求項1記載の車両乗降用開口部の開閉装置では、乗員乗降用の開口部は、その前部がヒンジドアによって開閉され、その後部がスライドドアによって開閉される。開口部の閉塞状態では、スライドドアの前端がヒンジドアの後端に突き当てられている。すなわち、開口部の前部と後部とは仕切られることなく連通している。開放位置に位置するヒンジドアは、スライドドアが閉塞位置に位置する状態でも、開口部の前部を経由した乗員の乗降を可能とする。
乗員が乗降する際に、ヒンジドアが支軸廻りの開放位置側に回動した現実の回動量が所定値以下であるか、又はヒンジドアを他と干渉することなく開放位置側に回動することができる回動可能量が所定値以下である場合には、乗降補助装置がスライドドアを後側に移動する。上記の通り開口部の前後部は互いに連通しているので、スライドドアが後方へ移動することで、ヒンジドアを大きく回動することができない場合であっても、開口部が大きく開放されて乗降性が確保される。
このように、請求項1記載の車両乗降用開口部の開閉装置では、ヒンジドアを操作することで車体の開口部を乗降可能に開放することができ、かつ乗降性が良好である。
上記目的を達成するために請求項2記載の発明に係る車両乗降用開口部の開閉装置は、前席に対する乗降用の前側開口部を前ヒンジの外開き式ヒンジドアが開閉し、後席に対する乗降用の後側開口部を車体前後方向に沿ってスライドするスライドドアが開閉する車両乗降用開口部の開閉装置であって、前記前側開口部と後側開口部とは、全開口高さに亘り連通して1つの開口部を成しており、前記ヒンジドアが前側開口部を閉塞する閉塞位置から該開口部を開放する開放位置側に回動する際に、前記ヒンジドアの閉塞位置に対する開放位置側への回動量又は回動可能量が所定値以下である場合には、前記スライドドアを後側に移動する乗降補助装置を備えている。
請求項2記載の車両乗降用開口部の開閉装置では、ヒンジドアにて開閉される前席用の前側開口部と、スライドドアにて開閉される後席用の後側開口部とが全高に亘り連通して、車両前後方向に間口の広い開口部が構成されている。ヒンジドアが前側開口部を開放する開放位置に至ると、前席に対する乗員の乗降が可能である。
乗員が乗降する際に、外開き式ヒンジドアが前ヒンジ廻りの開放位置側(車体外側)に回動した現実の回動量が所定値以下であるか、又はヒンジドアを他と干渉することなく開放位置側に回動することができる回動可能量が所定値以下である場合には、乗降補助装置がスライドドアを後側に移動する。上記の通り前後の開口部は互いに連通しているので、スライドドアが後方へ移動することで、ヒンジドアを大きく回動することができない場合であっても、開口部が大きく開放されて乗降性が確保される。すなわち、前席乗員は、後席乗降用の後側開口部の少なくとも一部を利用して、車両に対し乗降することができる。
このように、請求項2記載の車両乗降用開口部の開閉装置では、ヒンジドアを操作することで車体の開口部を乗降可能に開放することができ、かつ乗降性が良好である。
請求項3記載の発明に係る車両乗降用開口部の開閉装置は、請求項1又は請求項2記載の車両乗降用開口部の開閉装置において、前記乗降補助装置は、前記スライドドアを前記閉塞位置と開放位置との間で駆動するスライドドア駆動装置と、前記ヒンジドアに設けられ、該ヒンジドアが前記閉塞位置から開口位置側に所定量だけ回動する回動軌跡に干渉する障害物が存在するか否かに応じた信号を出力する障害物検出器と、前記ヒンジドアを前記閉塞位置から開放位置側へ回動する際に開信号を出力するヒンジドア開検出器と、前記ヒンジドア開検出器から前記開信号が入力され、かつ前記障害物検出器から入力される信号に基づいて障害物を検知した場合に、前記スライドドア駆動装置を作動して前記スライドドアを後側に移動させる制御装置と、を含んで構成されている。
請求項3記載の車両乗降用開口部の開閉装置では、制御装置は、障害物検出器からの入力信号に基づいて、ヒンジドアが開放位置側に所定量だけ回動する回動軌跡に干渉してしまう範囲に障害物が存在しないと判断すると、ヒンジドア開検出器から開信号が入力されてもスライドドア駆動装置を作動しない。この場合、乗員は、ヒンジドアを開放位置まで開放してゆとりを持って乗降することができる。すなわち、上記所定量は、開放位置までの回動量と一致するとは限らず、ヒンジドアが十分に開口部を開放することができる回動量に基づき設定される。
一方、制御装置は、障害物検出器からの入力信号に基づいて、ヒンジドアを所定量だけ回動すると干渉する範囲に障害物が存在すると判断すると、ヒンジドア開検出器から開信号が入力されることを条件にスライドドア駆動装置を作動し、スライドドアを後側に移動させる。このように、本構成では、ヒンジドアの回動可能量が所定値以下であるか否かを、障害物検出器が出力する所定の範囲内に障害物が存在するか否か(障害物になり得る物との距離が閾値以上であるか否か)に応じた信号によって、該回動可能量を算出等することなく判断している。なお、障害物検出器は、例えば、所定距離以内の障害物の有無に応じて2値信号を切り替えるものであっても良く、アナログ信号を出力するものであっても良い。
請求項4記載の発明に係る車両乗降用開口部の開閉装置は、請求項1又は請求項2記載の車両乗降用開口部の開閉装置において、前記乗降補助装置は、前記スライドドアを前記閉塞位置と開放位置との間で駆動するスライドドア駆動装置と、前記ヒンジドアの前記閉塞位置から開放位置側への回動可能量に応じた信号を出力する回動量検出器と、前記ヒンジドアを前記閉塞位置から開放位置へ回動する際に開信号を出力するヒンジドア開検出器と、前記回動量検出器から入力される信号に基づいて前記回動可能量が設定した閾値未満であると判断した場合には、前記ヒンジドア開検出器から前記開信号が入力されることを条件に前記スライドドア駆動装置を作動して前記スライドドアを後側に移動させる制御装置と、を含んで構成されている
請求項4記載の車両乗降用開口部の開閉装置では、制御装置は、回動量検出器から入力されるヒンジドアの開放位置側への回動可能量に対応する信号(この信号を処理した信号を含む)が閾値以上である場合には、換言すれば、ヒンジドアの開放位置側への回動可能量すなわち開口部の開口幅が十分に確保されている場合には、ヒンジドア開検出器から開信号が入力されてもスライドドア駆動装置を作動しない。この場合、乗員は、ヒンジドアを開放位置まで開放してゆとりを持って乗降することができる。
一方、制御装置は、回動量検出器から入力される上記信号が閾値未満である場合には、ヒンジドア開検出器から開信号が入力されることを条件にスライドドア駆動装置を作動し、スライドドアを後側に移動させる。このように、本構成では、ヒンジドアの回動可能量が所定値以下であるか否かを、回動量検出器から入力される信号と設定された閾値との比較によって判断している。
請求項5記載の発明に係る車両乗降用開口部の開閉装置は、請求項4記載の記載の車両乗降用開口部の開閉装置において、前記制御装置は、前記ヒンジドアの後端から前記スライドドア前端までの距離が設定値以上になるように、前記スライドドア駆動装置を作動して前記スライドドアの後側に移動させる。
請求項5記載の車両乗降用開口部の開閉装置では、例えば、回動量検出器から入力されるヒンジドアの開放位置側への回動可能量に対応する信号に基づいて、ヒンジドアを回動可能量だけ回動した場合の開口部の開口幅を算出し、この算出した開口幅と設定距離との差分をとり、この差分により得た距離以上の距離だけスライドドアを後側に移動する。これにより、ヒンジドアの回動可能量の大小に拘わらず、常に設定距離以上の開口幅を確保することができる。なお、前記ヒンジドアの後端から前記スライドドア前端までの距離が設定値以上する制御装置の動作は、上記例示には限られず、例えばヒンジドアの回動可能量から直接的にスライドドアのスライド量を得るように構成されていても良い。また、ヒンジドア後端からスライドドア前端までの距離は、これらを直線的に結んだ距離であっても良く、開口部開放面に投影した前後方向に沿う距離であっても良い。
請求項6記載の発明に係る車両乗降用開口部の開閉装置は、請求項4又は請求項5記載の車両乗降用開口部の開閉装置において、前記回動量検出器は、前記ヒンジドアの後端に設けられ、該ヒンジドアが前記閉塞位置に位置する状態で、前記開放位置側に位置する物までの距離に応じた信号を出力する距離センサである。
請求項6記載の車両乗降用開口部の開閉装置では、ヒンジドアの後端に設けた距離センサが、ヒンジドアの開放位置側に位置する物までの距離に応じた信号を制御装置に出力する。ヒンジドア(距離センサ)は、距離センサからの距離が検出された物と当接するまでの(又は、干渉させない)範囲で開放位置側に回動可能であるから、距離センサの出力信号はヒンジドアの回動可能量に応じた信号である。
請求項7記載の発明に係る車両乗降用開口部の開閉装置は、請求項1乃至請求項6の何れか1項記載の車両乗降用開口部の開閉装置において、前記乗降補助装置が前記スライドドアを後方に移動するのに伴って、前記ヒンジドアの内側に位置し車両乗員が着座するためのシートを後方に移動するシート駆動装置をさらに備えた。
請求項7記載の車両乗降用開口部の開閉装置では、乗降補助装置(制御装置の制御によってスライドドア駆動装置)がスライドドアを後側に移動すると、ヒンジドアの内側に位置しているシート(請求項2に従属する構成では前席)がシート駆動手段によって後方に移動する。これにより、乗員は、シートに着座したまま自動的に後方に移動し、スライドドアの後側への移動によってヒンジドアにて開閉される部分(前側開口部)よりも後側で開口幅が確保されている部分から、容易に乗降することができる。
請求項8記載の発明に係る車両乗降用開口部の開閉装置は、請求項1乃至請求項6の何れか1項記載の車両乗降用開口部の開閉装置において、前記ヒンジドアを前記閉塞位置から前記開放位置側に回動する際であって、かつ前記ヒンジドアの内側に位置し車両乗員が着座するためのシートが車体に対し所定の乗降位置に移動した場合に、前記乗降補助装置が前記スライドドアを後方に移動する。
請求項8記載の車両乗降用開口部の開閉装置では、ヒンジドアの回動量または回動可能量が所定値以下であり、ヒンジドアを開操作し、かつヒンジドアの内側に位置しているシート(請求項2に従属する構成では前席)が乗降位置に移動すると、乗降補助装置がスライドドアを後方に移動する。すなわち、本構成では、スライドドアの後側への移動によって、ヒンジドアが開放位置に位置する場合と比較して降車スペースが後側に確保されることから、シートの乗降位置への移動を乗員の降車意思信号として、乗降補助装置の制御パラメータ又はトリガに加えている。これにより、乗員に降車意志がなく単にヒンジドアを開放した場合等には、乗降補助装置を作動しないようにすることができる。
以上説明したように本発明に係る車両乗降用開口部の開閉装置では、ヒンジドアを操作することで車体の開口部を乗降可能に開放することができ、かつ乗降性が良好であるという優れた効果を有する。
本発明の第1の実施形態に係る車両乗降用開口部の開閉装置としての乗降口開閉装置10を自動車Sに適用した例を、図1乃至図5に基づいて説明する。なお、図中矢印FRは車体の前方向を、矢印OUTは車幅方向外側をそれぞれ示す。また、左右の方向を用いて説明するときは、矢印FR方向を向いて見た場合の左右各方向を表すものとする。
図1には自動車Sの概略構成が模式的な平面図にて示されており、図3には自動車Sが斜視図にて示されている。これらの図に示される如く、自動車Sは、車体12を備えており、車体12内には人(以下、乗車前又は乗車後であっても乗員という)が乗車するための車室14が設けられている。また、車体12には、乗員が車室14に対し乗降するための乗降用開口部16が設けられている。
乗降用開口部16は、この第1の実施形態では、前輪18と後輪20との間に配置されている。そして、図3に示される如く、乗降用開口部16は、車室14内における主に前席シート(運転席及び助手席)22にアクセスするための前側開口部16Aと、車室14内における主に後席シート24にアクセスするための後側開口部16Bとが車体上下方向に沿う全高に亘り互いに連通して構成されている。すなわち、自動車Sは、前側開口部16Aと後側開口部16Bとを区画するセンタピラーを備えない形式の車体構造を備えており、前側開口部16Aと後側開口部16Bとの間には機能上の明確な境界は存在しない。
図1に示される如く、乗降用開口部16は、自動車Sの左右両側にそれぞれ設けられており、それぞれ乗降口開閉装置10によって手動又は電動で開閉されるようになっている。この実施形態では左右の乗降用開口部16、乗降口開閉装置10は基本的に対称に構成されるので、以下、左右の乗降用開口部16、乗降口開閉装置10について特に区別することなく説明することとする。
乗降口開閉装置10は、乗降用開口部16の前側開口部16Aを開閉するヒンジドア26と、乗降用開口部16の後側開口部16Bを開閉するスライドドア28とを備えている。換言すれば、乗降用開口部16におけるヒンジドア26が開閉する部分が前側開口部16Aであり、スライドドア28が開閉する部分が後側開口部16Bである。図1に示される如く、ヒンジドア26は、車体12における乗降用開口部16の前縁部に設けられた支軸としてのヒンジ軸30によって車体12に対するに回動可能に軸支されている。
これにより、ヒンジドア26は、図1の右座席側(紙面上側)に示すように前側開口部16Aを閉塞する閉塞位置と、図1の左側座席(紙面下側)に示すように、閉塞位置からヒンジ軸30廻りに矢印A方向に略90°回動して前側開口部16Aを通じた乗降(前席シート22へのアクセス)を可能とする開放位置とを取り得る構成とされている。また、ヒンジドア26は、矢印Aとは反対向きの矢印B方向にヒンジ軸30廻りに回動することで、開放位置から閉塞位置に戻るようになっている。このヒンジドア26は、第1の実施形態では、乗員が手動で開閉操作することで閉塞位置と開放位置との間で回動する構成とされている。
スライドドア28は、例えば自動車Sの車体12に前後方向に沿って設けられたガイドレールにガイドされるローラをブラケット(何れも図示省略)を介して支持して構成されており、ローラがガイドレールにガイドされつつ前後方向にスライドするようになっている。ガイドレールの前端は車幅方向内向きに傾斜乃至湾曲している。
これにより、スライドドア28は、図1の右座席側(紙面上側)に示すように後側開口部16Bを閉塞する閉塞位置と、図1の左側座席(紙面下側)に示すように、閉塞位置から後側にスライドして後側開口部16Bを通じた乗降(後席シート24へのアクセス)を可能とする開放位置とを取り得る構成とされている。スライドドア28は、閉塞位置から開放位置へ移動する動作の初期には上記の如く前端が傾斜乃至湾曲したガイドレールによって若干車幅方向外側に移動しつつ後方にスライドする構成とされている。また、スライドドア28は、閉塞位置から開放位置へ移動する動作とは反対の動作によって、開放位置から閉塞位置に戻るようになっている。スライドドア28のスライド機構としては、例えばスライドドア28側にガイドレールを設ける等、他の機構を採用しても良い。
このスライドドア28は、乗員の手動操作による後側開口部16Bの開閉動作の他、電動式開閉装置32(図1参照)による後側開口部16Bの開閉動作が可能な構成とされている。電動式開閉装置32は、乗員の手元スイッチの操作によって、スライドドア28を閉塞位置と開放位置との間で移動させ、また中間位置での停止・保持を可能とするように構成されている。電動式開閉装置32は、例えば、モータにより駆動されるローラをスライドドア28の内面に押し付けて該スライドドア28に動力伝達する構成、一端をスライドドア28に取り付けた開放用及び閉塞用の各ケーブルをそれぞれモータにより駆動されるドラムにて巻き取ることでスライドドア28を駆動する構成等、各種構成を採用することができる。
そして、図1に示される如く、乗降口開閉装置10は、所定の場合に電動式開閉装置32を自動的に作動させる制御装置としてのドアECU34を備えている。ドアECU34は、電動式開閉装置32に電気的に接続されている。また、ドアECU34は、ヒンジドア26の開閉操作を検知するヒンジドア開検出器としてのカーテシスイッチ36、ヒンジドア26に設けられた障害物検出器としての障害物センサ38に電気的に接続されている。なお、後述する前席シート駆動装置40も含め、ドアECU34に電気的に接続される各機器類については、右側座席用のものについて図1に図示することとする。
カーテシスイッチ36は、ヒンジドア26の操作時に車内灯等を点灯するために、ヒンジドア26の開操作(ドアレバー操作)の有無、すなわち前側開口部16Aを開放する乗員意思の有無に応じた信号(ON/OFF信号でも良い)を出力するスイッチである。ヒンジドア26の開操作の際にカーテシスイッチ36が出力する信号を開信号ということとする。
図3にも示される如く、障害物センサ38は、ヒンジドア26の外面における後端に取り付けられている。この障害物センサ38は、ヒンジドア26が閉塞位置に位置しているときに、ヒンジドア26の車幅方向外側における所定の範囲内に、障害物が存在するか否か(開放位置側に存在する物体が障害物であるか否か)に応じて信号を出力する(信号の出力タイミングを変化させる)ようになっている。この実施の形態では、障害物センサ38は超音波センサとされており、ヒンジドア26の開放位置側に向けて超音波を発信し、この超音波の反射波の検出有無に応じた信号をドアECU34に出力するようになっている。
ドアECU34は、障害物センサ38が超音波を発信してから反射波を検出するまでの時間Tが予め設定した閾値T0以上である場合にはヒンジドア26の開放位置側に障害物が存在しないと判断し、時間Tが閾値T0未満である場合にはヒンジドア26の開放位置側に障害物が存在すると判断する構成とされている。この閾値は、ヒンジドア26が前側開口部16Aから乗員がスムースに乗降できる程度に開放位置側に回動しようとすると干渉してしまう範囲に、障害物が存在するか否かを検知するべく設定されている。換言すれば、ドアECU34は、障害物センサ38の出力に基づいて、ヒンジドア26の開放位置側への回動可能量が、前側開口部16Aからの乗員のスムースな乗降を許容する所定角以上であるか否かを判断する構成とされている。より具体的には、この実施形態では、ヒンジドア26が開放位置(矢印A方向の回動限)まで回動する回動軌跡に干渉する障害物が存在するか否かを検知するようになっている。
そして、ドアECU34は、時間Tが閾値T0未満である場合には、電動式開閉装置32を作動し、図2に示される如くスライドドア28を所定量M1だけ(例えば200mm程度)後側に移動させるようになっている。これにより、障害物Hの存在によって前側開口部16Aが十分に開放されない場合に、この前側開口部16Aの後側に連通する後側開口部16Bが所定量だけ開放され、乗降用開口部16の全体としての開口幅が確保される構成である。なお、障害物センサ38は、時間Tの閾値T0に対する大小に応じた信号を出力するものであっても良く、所定の検知範囲(例えば、センサから照射した所定強度の音波や光が反射されてセンサに戻る限界距離)内に障害物が存在するか否か(反射波の有無)に応じてON/OFF信号を出力するスイッチであっても良い。
ドアECU34は、自動車Sに設けた各種センサや他のECU等から各種車両情報が入力されるようになっており、これらの情報に基づいて自動車Sが停止しているか否かを判断するようになっている。具体的には、例えば自動車Sがオートマチックトランスミッションを備える構成である場合には、シフトレバーがパーキングレンジに位置することに対応する信号が入力されたとき、又はシフトレバーがニュートラルレンジに位置することに対応する信号及びパーキングブレーキがロックされていることに対応する信号の両者が入力されたときに、自動車Sが停止していると判断するようになっている。また例えば、自動車Sがマニュアルトランスミッションを備える構成である場合には、パーキングブレーキがロックされていることに対応する信号が入力されたとき、又はエンジン停止に対応する信号が入力されたときに、自動車Sが停止していると判断するようになっている。
そして、ドアECU34は、自動車Sが停止していない場合には、障害物センサ38を作動させず、又は障害物センサ38からの入力信号に拘わらず電動式開閉装置を作動させない構成とされている。すなわち、ドアECU34は、自動車Sが走行中である判断した場合には、スライドドア28を自動的に開放位置側に移動することがない。
さらに、乗降口開閉装置10は、シート駆動装置としての前席シート駆動装置40を備えている。前席シート駆動装置40は、例えば、モータと、モータの回転力を前席シート22の前後方向に沿う移動力に変換する運動変換機構とを含んで構成されている。そして、この前席シート駆動装置40は、ドアECU34に電気的に接続され、該ドアECU34によって制御されるようになっている。具体的には、ドアECU34は、電動式開閉装置32を駆動してスライドドア28を後方にスライドさせるのと同時に、若しくは若干の時間差をもって、図2に示される如く前席シート駆動装置40を作動して前席シート22を所定量M2だけ後方に移動させるようにようになっている。したがって、この実施の形態では、前席シート18が本発明におけるシートに相当する。
なお、以上説明した乗降口開閉装置10では、ドアECU34は、左右のヒンジドア26にそれぞれ対応するカーテシスイッチ36、障害物センサ38の出力に基づいて、左右のスライドドア28(電動式開閉装置32)、左右の前席シート22(前席シート駆動装置40)を、それぞれ独立して制御するようになっている。
次に、第1の実施形態の作用について、図5に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
上記構成の乗降口開閉装置10が適用された自動車Sでは、ドアECU34は、ステップS10において、各種車両情報に基づいて自動車Sが確実に停止したか否かを判断する。自動車Sが停止していないと判断したときは、ステップS10に戻り、自動車Sが停止するまでこれを繰り返す。
ステップS10で自動車が確実に停止したと判断されると、ステップS12へ進む。ステップS12では、障害物センサ38の出力に基づいて、ヒンジドア26の車幅方向外側における開放位置側に障害物が存在するか否かを判断する。障害物が存在しないと判断された場合には、ステップS10に戻る。このステップS10、S12を繰り返す期間中にヒンジドア26が開操作された場合は、障害物が存在しないため、乗員はヒンジドア26を開放位置まで矢印A方向に回動することができる。ヒンジドア26を開放位置まで回動すると、乗降用開口部16の前側開口部16Aは広く開放され、前席乗員はスムースに乗降することができる。
一方、ステップS12で障害物が存在していると判断されると、ステップS14へ進む。ステップS14では、カーテシスイッチ36からの入力信号に基づいてヒンジドア26が開操作されるか否かが判断される。カーテシスイッチ36から開信号が入力されない場合は、ヒンジドア26が開操作されていないと判断され、ステップS10に戻る。カーテシスイッチ36から開信号が入力されると、すなわちヒンジドア26が開操作されたと判断されると、ステップS16へ進む。ステップS16では、電動式開閉装置32を作動することで、スライドドア28を後側に所定量M1だけ移動する。次いでステップS18へ進み、ステップS18では、前席シート駆動装置40を作動することで、前席シート22を所定量M2だけ後方へ移動する。ステップS16、S18は順序が逆でも良く、同時に実行されても良い。
すなわち、ステップS14でヒンジドア26が開操作された図4に示す状態から、ステップS16、S18が実行されることで、図3に示されるスライドドア28及び前席シート22が自動的に後方に移動した状態になる。これにより、自動車Sの側方に駐車された他の自動車や自動車Sの側方に位置する壁などが障害物Hとして存在する場合に、ヒンジドア26の矢印A側への回動によって前側開口部16Aを広く開放することはできないものの、前側開口部16Aに連通する後側開口部16Bの一部(全部でも良い)を利用して乗員乗降用の開口幅を確保することができる。
したがって、前席シート22に着座していた乗員は、広く開口した乗降用開口部16を経由して降車することができ、乗車して前席シート22へ着座しようとする乗員は、広く開口した乗降用開口部16を経由して乗車することができる。しかも、前席シート22が後側開口部16B側に移動してきているため、図2に示される如く、乗降時における路面上の足元スペースの幅Waが、乗降口開閉装置10を備えない構成の足元スペースの幅Wbと比較して著しく拡大される。このため、乗員は腰をひねることなく楽な姿勢で車室14内の前席側に乗降することができる。
このように、第1の実施形態に係る乗降口開閉装置10では、ヒンジドア26を操作することで、車体12の乗降用開口部16を前席乗員の乗降可能に開放することができ、かつ前席乗員の乗降性が良好である。
次に、本発明の第2の実施形態に係る乗降口開閉装置50について、図6乃至図8に基づいて説明する。なお、上記第1の実施形態と基本的に同一の部品・部分を有する場合には、第1の実施形態又と同一の符号を付して図示及び説明を省略することがある。
図6には、乗降口開閉装置50が適用された自動車Sが図1に対応する模式的な平面図にて示されている。この図に示される如く、乗降口開閉装置50は、ドアECU34に代えてドアECU52を備え、障害物センサ38に代えて回動量検出器としての障害物センサ54を備える点で、上記第1の実施形態に係る乗降口開閉装置10とは異なる。
障害物センサ54は、障害物との距離に応じたアナログ信号を出力する(距離検出を目的とする)点で、基本的に障害物の有無を検出する障害物センサ38とは異なる。この実施の形態で障害物センサ54は、例えば超音波式又は光学式の距離センサとされており、その検知範囲内に発信した超音波又は光を反射する物体が存在する場合に、この反射波を受けるまでの時間すなわち上記物体との距離に応じた信号を出力するようになっている。また、反射波を受けない場合には0信号を出力するようになっている。障害物センサ54が0信号を出力する状態は、ヒンジドア26を閉塞位置から開放位置まで回動する範囲内に障害物が存在しない状態に対応している。換言すれば、障害物センサ54が物体との距離に応じた信号を出力している場合には、ヒンジドア26を閉塞位置から開放位置まで回動する範囲内に障害物が存在しており、この信号がヒンジドア26の後端(障害物センサ54)と障害物との距離に対応している。この信号を距離信号ということとする。
なお、障害物センサ54として、障害物センサ38と同様に反射波を検出したことに対応する信号を出力するセンサを用い、ドアECU52側で超音波発信から反射波受信までの時間に基づいて障害物の有無、障害物までの距離を検知、算出するようにしても良い。逆に、上記障害物センサ54の如く、距離に応じた信号出力するセンサを障害物センサ38として用いることも可能である。
ドアECU52は、障害物センサ54から入力される距離信号に基づいて、障害物が存在する場合におけるスライドドア28の後側への必要移動量Lを算出するようになっている。具体的には、図7に示される如く、ドアECU52は、乗員がスムースに乗降するために十分な前後方向に沿う開口幅L0を、設定値として記憶している。また、ドアECU52は、ヒンジドア26を障害物に干渉しない範囲で矢印A方向に回動した場合の前側開口部16Aの開口幅L1を算出するようになっている。これにより、障害物が存在する場合におけるスライドドア28の後側への必要移動量Lは、L=L0−L1として算出することができる。なお、この実施の形態では、開口幅L0は、ヒンジドア26が開放位置に位置するときの開口幅L1に略一致する設定さとされている。
また、前側開口部16Aの開口幅L1は、障害物センサ54から入力される距離信号から得られるヒンジドア26後端と障害物Hとの車幅方向に沿う距離Lhと、予め記憶しているヒンジドア26の長さ(回動半径)Ldとから、L1=Ld−(Ld2−Lh2)1/2として算出することができる。なお、スライドドア28の後側への必要移動量Lを、L=L0−Ld+(Ld2−Lh2)1/2として、直接的に算出しても良いことは言うまでもない。この第2の実施形態では、ドアECU52は、スライドドア28を必要移動量L以上後側に移動する構成とされている。さらに、ドアECU52は、前席シート22の後方への移動量を必要移動量Lに応じて変化させるようになっている。この第2の実施形態では、スライドドア28の実際の移動量Ls(≧L)だけ前席シート22を後方に移動するようになっている。
乗降口開閉装置50の他の構成は、乗降口開閉装置10と同様である。
次に、第2の実施形態の作用について、図8に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
上記構成の乗降口開閉装置50が適用された自動車Sでは、ドアECU52は、ステップS20において、各種車両情報に基づいて自動車Sが確実に停止したか否かを判断する。自動車Sが停止していないと判断したときは、ステップS20に戻り、自動車Sが停止するまでこれを繰り返す。
ステップS20で自動車が確実に停止したと判断されると、ステップS22へ進む。ステップS22では、障害物センサ54から0信号が入力されているか否か、すなわちヒンジドア26の車幅方向外側における開放位置側に障害物が存在するか否かを判断する。障害物が存在しないと判断された場合には、ステップS20に戻る。このステップS20、S22を繰り返す期間中にヒンジドア26が開操作された場合は、障害物が存在しないため、乗員はヒンジドア26を開放位置まで矢印A方向に回動することができる。ヒンジドア26を開放位置まで回動すると、乗降用開口部16の前側開口部16Aは広く開放され、前席乗員はスムースに乗降することができる。
一方、ステップS22で障害物が存在していると判断されると、ステップS24へ進む。ステップS24では、障害物センサ54からから入力されている距離信号に基づいて、ヒンジドア26後端と障害物Hとの車幅方向に沿う距離Lhを得る。そして、ステップS26へ進み、ステップS26では、距離Lhを用いて、スライドドア28の必要移動量L(=L0−L1=L0−Ld+(Ld2−Lh2)1/2)を算出する。必要移動量Lを算出すると、ステップS28へ進む。
ステップS28では、カーテシスイッチ36からの入力信号に基づいてヒンジドア26が開操作されるか否かが判断される。カーテシスイッチから開信号が入力されない場合は、ヒンジドア26が開操作されていないと判断され、ステップS20に戻る。カーテシスイッチから開信号が入力されると、すなわちヒンジドア26が開操作されたと判断されると、ステップS30へ進む。ステップS30では、電動式開閉装置32を作動することで、スライドドア28を後側に必要移動量L以上の距離Lsだけ移動する。次いでステップS32へ進み、ステップS32では、前席シート駆動装置40を作動することで、前席シート22を距離Lsだけ後方へ移動する。ステップS30、S32は順序が逆でも良く、同時に実行されても良い。
すなわち、ステップS28でヒンジドア26が開操作された状態(図4に相当する状態)から、ステップS30、S32が実行されることで、スライドドア28及び前席シート22が自動的に後方に移動した状態(図3に相当する状態)になる。これにより、自動車Sの側方に駐車された他の自動車や自動車Sの側方に位置する壁などが障害物Hとして存在する場合に、ヒンジドア26の矢印A側への回動によって前側開口部16Aを広く開放することはできないものの、前側開口部16Aに連通する後側開口部16Bの一部(全部でも良い)を利用して乗員乗降用の開口幅を確保することができる。
したがって、前席シート22に着座していた乗員は、広く開口した乗降用開口部16を経由して降車することができ、乗車して前席シート22の着座しようとする乗員は、広く開口した乗降用開口部16を経由して乗車することができる。そして、ドアECU52がヒンジドア26と障害物Hとの距離Lhに応じてスライドドア28の必要移動量Lを算出し、この結果に基づきスライドドア28の実際の移動量LsをLs≧Lとするため、ヒンジドア26の閉塞位置から開放位置までの回動軌跡上に障害物Hが存在する場合でも、乗降用開口部16には、常に乗員がスムースに乗降するために十分な開口幅L0以上の開口幅が確保される。すなわち、障害物Hの有無やヒンジドア26との距離に拘わらず、前席乗員がスムースに乗降することが可能となった。
しかも、前席シート22が後側開口部16B側に移動してきているため、図7では図示を省略するが、図2に示されるのと同様に、乗降時における路面上の足元スペースの幅Waが、乗降口開閉装置10を備えない構成の足元スペースの幅Wbと比較して著しく拡大される。このため、乗員は腰をひねることなく楽な姿勢で車室14内の前席側に乗降することができる。
このように、第2の実施形態に係る乗降口開閉装置50では、ヒンジドア26を操作することで、車体12の乗降用開口部16を前席乗員の乗降可能に開放することができ、かつ前席乗員の乗降性が良好である。
次に、本発明の第3の実施形態に係る乗降口開閉装置60について、図9及び図10に基づいて説明する。なお、上記第1又は第2の実施形態と基本的に同一の部品・部分を有する場合には、第1又は第2の実施形態と同一の符号を付して図示及び説明を省略することがある。
図9には、乗降口開閉装置60が適用された自動車Sが図6に対応する模式的な平面図にて示されている。この図に示される如く、乗降口開閉装置60は、ドアECU52に代えてドアECU62を備え、前席シート駆動装置40に代えて前席シート検出センサ64を備える点で、上記第2の実施形態に係る乗降口開閉装置50とは異なる。
前席シート検出センサ64は、車室の底を構成するフロア等に固定され、前席シート22が所定範囲内である乗降位置に存在する場合にON信号を出力する構成とされている。この乗降位置は、第3の実施形態では、前席シート22の通常の使用位置(運転位置等)よりも十分に(例えば200mm程度)後側に離間した位置とされている。
ドアECU62は、障害物センサ54の出力に基づいて障害物の有無、ヒンジドア26後端と障害物との距離Lhを得、スライドドア28の必要移動量Lを算出する点ではドアECU52と共通する。このドアECU62は、前席シート検出センサ64に電気的に接続されており、カーテシスイッチ36から開信号が入力されることに加え、前席シート検出センサ64からON信号が入力されることを条件に電動式開閉装置32を作動してスライドドア28を後側に移動するようになっている。すなわち、第1及び第2の実施形態に係る乗降口開閉装置10、50では、前席シート22の位置を自動的に移動すべき制御対象としていたが、第3の実施形態に係る乗降口開閉装置60では、前席シート22の位置をスライドドア28を移動する際のトリガ情報として扱うようになっている。
乗降口開閉装置60の他の構成は、乗降口開閉装置10と同様である。
次に、第3の実施形態の作用について、図10に示すフローチャートを参照しつつ説明する。なお、図10に示すフローチャートのステップS20からステップS26までの動作は、図8に同じ符号で示されるステップS20からステップS26までの動作と全く同じなので、説明を省略する。
ドアECU62は、ステップS26で必要移動量Lを算出すると、ステップS40へ進む。ステップS40では、カーテシスイッチ36からの入力信号に基づいてヒンジドア26が開操作されるか否かが判断される。カーテシスイッチ36から開信号が入力されない場合は、ヒンジドア26が開操作されていないと判断され、ステップS20に戻る。カーテシスイッチ36から開信号が入力されると、すなわちヒンジドア26が開操作されたと判断されると、ステップS42へ進む。
ステップS42では、前席シート検出センサ64からの入力信号に基づいて前席シート22が通常位置から乗降位置までスライドされてきているか否か、すなわち前席シート22の乗員に降車する意思があるか否かが判断される。前席シート検出センサ64からON信号が入力されない場合は、前席シート22の乗員に降車する意思がないと判断され、ステップS20に戻る。前席シート検出センサ64からON信号が入力されると、すなわち前席シート22の乗員に降車の意志があると判断されると、ステップS44に進む。ステップS44では、電動式開閉装置32を作動することで、スライドドア28を後側に必要移動量L以上の距離Lsだけ移動する。
これにより、自動車Sは、乗員によって前席シート22が所定位置まで後退すると共に、スライドドア28が自動的に距離Lsだけ後側に移動することで、乗降用開口部16における広く開口した部分に臨んで前席シートが位置する状態(図3に相当する状態)になる。これにより、前席シート22を乗員の意思で後方に移動する第3の実施形態では、前席シート22を自動的に後側に移動第2の実施形態とは動作が異なるものの、最終的な乗降に際しては同じ状態となる。したがって、第3の実施形態に係る乗降口開閉装置60は、基本的に第2の実施形態に係る乗降口開閉装置50と同じ効果を得ることができる。
また、乗降口開閉装置60では、前席シート22の乗員が降車する意思なくヒンジドア26を開操作した場合には、スライドドア28が不用意に後方に移動することが防止される。そして、乗員が前席シート22を降車に適した乗降位置に移動することを検出して降車意志を判断するため、前席シート22を自動的に降車に適した位置に移動するための前席シート駆動装置40を設けないシンプルな構成にすることができる。
このように、第3の実施形態に係る乗降口開閉装置60では、ヒンジドア26を操作することで、車体12のこのように乗降用開口部16を前席乗員の乗降可能に開放することができ、かつ前席乗員の乗降性が良好である。
なお、上記各実施の形態では、障害物がある場合には前席シートを後方に移動する例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、前席シート22を着座している乗員が外側を向く方向に回転する構成としても良い。また、後席シート24との関係で、前席シート22の移動を禁止したり、移動量を制限したしても良い。
また、上記第2及び第3の実施形態では、自動車Sの前後方向に沿う開口幅L0、L1をスライドドア28の必要移動量Lの算出に用いたが、本発明はこれに限定されず、例えば、ヒンジドア26、スライドドア28の厚みや形状、車体12における乗降用開口部16の開方面形状等に応じて、自動車Sの前後方向に対し交差する方向の寸法を用いて必要移動量Lを算出(乗降性を評価)しても良い。
さらに、上記各実施形態では、障害物センサ38、54の出力に基づいてヒンジドア26の回動可能量が閾値以上であるか否かを判断し、又は回動可能量自体を得る構成としたが、本発明はこれに限定されず、例えば、ヒンジ軸30廻りにヒンジドア26の回動量を直接検出する回転角センサを設け、現実のヒンジドア26の回転角(前側開口部16Aの開口幅)が所定値以下であると判断した場合に、電動式開閉装置32を作動するようにしても良い。
さらにまた、上記各実施形態では、ヒンジドア26が開放位置(矢印A側の回動限)まで回動することができない場合にスライドドア28を自動的に後側に移動する(開口幅L0をヒンジドア26が開放位置に位置するときの開口幅L1に一致させた)構成としたが、本発明はこれに限定されず、開放位置まで至らないが乗降に十分な開口幅が得られる範囲にヒンジドア26が位置する場合には、スライドドア28を後方に移動しない設定としても良い。換言すれば、ヒンジドア26の機械的な回動限である開放位置と、スライドドア28の作動要否を決めるための閾値である開放位置とは一致する必要がない。