JP2006061002A - 新規なasc様タンパク質およびそれをコードする新規遺伝子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 ヒトHCC cell lineより新規なASC様タンパク質をコードする遺伝子を単離した。この新規遺伝子は、癌サンプルにおいて異常なメチル化を生じ、この遺伝子がコードするタンパク質は、アポトーシスの活性化を介した細胞増殖抑制機能を有すると考えられる。新規遺伝子および新規タンパク質は、癌の治療法や診断法研究の標的として有用である。
【選択図】 なし
Description
pyrinドメインを有するタンパク質の一つであるASCは、抗癌剤処理によって癌細胞にアポトーシスを誘導したときに、細胞内で凝集塊(speck)を形成するCARDタンパク質として発見された(非特許文献2)。ASCはpyrinドメインに加えて、C末端にCARDドメインを有し、CARD−CARD相互作用によってprocaspaseIを活性化し(非特許文献3)、炎症のシグナル伝達において機能する。
ASCは、target of methylation-induced silencing (TMS1)とも呼ばれるように、DNAのメチル化によりその発現が抑制されることが乳癌で報告されている(非特許文献4)。
一般に、プロモータ領域のCpGアイランドでメチル化が起こると、ヒストンのアセチル化が低下し、転写が抑制される傾向がある。近年、複数種の癌において、がん抑制遺伝子などの遺伝子がメチル化され、これらの遺伝子の機能が抑制されている現象が見出されている。
さらに、ASCは、そのpyrinドメインによってBaxに結合し、これをミトコンドリアにリクルートすることによって、シトクロムcの放出と各種カスパーゼの活性化に寄与している(非特許文献5)。
これらの情報は、ASCが、免疫反応のみならず、癌の発生に深く関わっていることを示唆しており、基礎研究および癌の予防・治療法の研究の分野において注目されている。
Fairbrother WJ, et al. Protein Sci 2001;10:1911-8 Masumoto J, et al. J Biol Chem 1999;274:33835-8 Srinivasula SM, et al. J Biol Chem 2002;277:21119-22 Conway KE, et al. Cancer Res 2000;60:6236-42 Ohtsuka T, et al. Nat Cell Biol 2004;6:121-8
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、新規なASC様タンパク質、その遺伝子、その製造方法、および用途を提供することを目的とする。
そして、ASCL遺伝子は、肝細胞癌(以下、「HCC」という。)のcell lineにおいては高密度かつ高頻度(80%)にメチル化されていること、正常な肝サンプルではこのような顕著なメチル化が生じていないこと、さらに、この異常なメチル化が、RNAの発現抑制に高い関連性を有していることを見出した。ASCLの発現が抑制されている細胞を脱メチル化剤で処理したところ、ASCL発現が再び活性化されたことから、ASCLの発現抑制がDNAのメチル化に関連することが、より明らかとなった。
一方、ASCLのメチル化はその頻度は低いものの、原発性HCCにおいても見られ、原発性HCCサンプルの53%で、ASCLまたはASCのいずれかのメチル化が起こっていることが確認された。
さらに、メチル化による発現抑制が起こった細胞で、発現を再活性化させると、その細胞の増殖が抑制されることを確認し、本発明を完成するに至った。
〔1〕下記(a)〜(d)のいずれかに記載のDNA:(a)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA、(b)配列番号:1に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA、(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を有し、配列番号:2に記載のタンパク質と機能的に同質のタンパク質をコードするDNA、(d)配列番号:1に記載の塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同質のタンパク質をコードするDNA;〔2〕配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質の部分ペプチドをコードするDNA;〔3〕上記〔1〕または〔2〕に記載のDNAによりコードされるタンパク質またはペプチド;〔4〕上記〔1〕または〔2〕に記載のDNAを含有するベクター;〔5〕上記〔4〕に記載のベクターを含む形質転換体;〔6〕上記〔5〕に記載の形質転換体を培養し、発現したタンパク質またはペプチドを回収する工程を含む、上記〔3〕に記載のタンパク質またはペプチドの製造方法;〔7〕上記〔3〕に記載のタンパク質または部分ペプチドに結合する抗体;〔8〕被検者から採取した試料からDNAを抽出する工程と、該DNA上の下記(i)〜(v)のいずれかに記載の領域におけるメチル化の頻度を測定する工程と、を含む癌の診断方法:(i)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNAを含む領域、(ii)配列番号:1に記載の塩基配列を含む領域、(iii)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を有し、配列番号:2に記載のタンパク質と機能的に同質のタンパク質をコードするDNAを含む領域、(iv)配列番号:1に記載の塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同質のタンパク質をコードするDNAを含む領域、(v)配列番号3に記載の塩基配列からなる領域;〔9〕さらに、前記被検者から採取した試料から抽出されたDNA上の、ASCタンパク質のコード領域におけるメチル化の頻度も測定する、上記〔8〕に記載の方法。;〔10〕前記メチル化の頻度を測定する工程が、Methylation Specific PCR法である、上記〔8〕または〔9〕に記載の方法;〔11〕前記メチル化の頻度を測定する工程が、Bisulfite Sequencing法である、上記〔8〕または〔9〕に記載の方法〔12〕被検者から採取した試料中に含まれる請求項1に記載のDNAの発現を検出および/または定量する工程と、
これを健常者における場合と比較して、該DNAの発現が低下している場合に被検者が癌であると判定する工程と、を含む癌の診断方法;〔13〕下記(a)または(b)を含む癌の診断用キット:(a)上記〔3〕に記載のタンパク質またはペプチドに結合する抗体、(b)請求項1または2に記載のDNA若しくはその相補鎖の全部または一部に相補的なポリヌクレオチド;〔14〕上記〔1〕に記載のDNAの発現を亢進または抑制する化合物のスクリーニング方法であって、細胞に被検化合物を添加する工程と、前記被検化合物の添加の前後における、前記細胞内での上記〔1〕に記載のDNAの発現の変化を検出および/または定量する工程と、を含む方法、を提供する。
また、脱メチル化によりASCLの機能を回復させた細胞のコロニーでは、細胞の増殖抑制が観察されたこと、さらに、ASCL遺伝子を含むベクターで形質転換した細胞において、annexin-V結合が陽性になり、カスパーゼ3が活性化されたことから、ASCLタンパク質は細胞のアポトーシスに関与している可能性が高いことも示唆された。
これらの事実から、ASCLタンパク質は、HCCの発生において何らかの重要な役割を果たしていることが推察され、ASCLに関連する研究は、HCCの予防方法や治療方法につながるものとして重要であると言える。
また、ASCLタンパク質やASCL遺伝子のメチル化を検出または定量し、その結果を癌の診断、癌になりやすい傾向、癌の進行度の指標としても用いることができる可能性が高い。
本発明に係る、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同等のタンパク質は、配列番号:2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を有する。このようなタンパク質は、例えば、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNAに変異を導入し、このDNAを含むベクターを用いて宿主を形質転換し、発現したタンパク質を回収することによって得ることができる。また、配列番号:2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質には、細胞内で自然に誘発された変異を有するタンパク質も含まれる。アミノ酸の変異数や変異部位は、タンパク質の機能が保持される限り制限されない。
「変異を導入する方法」としては、部位特異的突然変異誘発法を用いることができ、この方法によれば、まず、変異させたい遺伝子をM13ファージ等のベクターの一部に組み込んで一本鎖環状のファージDNAを得て、これに変異を導入するよう一部の塩基を変更して設計されたオリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせたのち、DNAポリメラーゼとDNAリガーゼで修復して一部ミスマッチの状態になった二本鎖環状DNAとする。これを大腸菌等に感染させて培養すると二本鎖の組換え体M13の複製の際、変異株と非変異株が分離してそれぞれ一本鎖となって個々のファージ粒子に入る。そこで変異が導入された方の鎖のみ選ぶことで、特定の部位に所望の変異を有する配列を得ることができる。この他、適当な制限酵素を用いて付着末端を生じさせ、そのままDNAリガーゼで連結して数塩基の欠失を起こさせる方法や、エラーが起こりやすい条件下でPCRにより増幅することで、一定の領域のランダムな変異を入れる方法、Kunkel法やEckstein法など公知の方法を使用することができる。
ここで、ハイブリダイゼーションは、当業者であれば自体公知の方法(例えば、Current Protocols in Molecular Biology; edit. Ausubel et al. (1987)に記載の方法等)またはそれに準ずる方法に従って、適宜行うことができる。ストリンジェントな条件は、例えば、1×SSC、0.1%SDS、60℃とすることができ、SCCの濃度および温度などで調整することができる。高ストリンジェントな条件を選択すれば、より高い相補性を有するDNAのみがハイブリダイズする。
さらに、宿主内で、本発明に係るタンパク質が効率よく発現されるよう、宿主に適した、プロモータ配列、エンハンサー配列、シャインダルガーノ配列、シグナル配列、ポリAシグナルなどを適宜選択し、ベクターに挿入することができる。
本発明に係るDNAの上記ベクターへの挿入は、例えば、制限酵素を用いてベクターを切断し、リガーゼ反応によって、DNAを該切断部位に連結することにより行うことができる。
ベクターの導入方法としては、宿主が大腸菌である場合には塩化カルシウム法、枯草菌を宿主とする場合にはコンピテントセル法や酢酸リチウム法、枯草菌、放線菌、酵母などにはプロトプラスト法、動植物細胞、酵母、細菌などに広く用いられる方法としてリン酸カルシウム共沈法、エレクトロポレーション法、DEAE−デキストランやポリブレンなどのポリマーと複合体を形成させる方法などから適宜選択することができる。カチオン性脂質のリポソームと複合体を形成させるリポフェクトアミン(Invitrogen社)を用いることもできる。
このようにして得た形質転換体を培養して発現させた本発明に係るタンパク質は、通常のタンパク質の精製方法を用いて精製することができ、使用した発現系により、例えば各種クロマトグラフィー、限外濾過法、塩析、浸透圧ショック法、超音波処理などを組み合わせて精製することができる。クロマトグラフィー法としては、例えば、水溶液中で行うイオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過、疎水クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、有機溶媒を用いる逆相クロマトグラフィーなどが挙げられる。本発明はこれらの精製方法を用いて精製されたタンパク質も含む。
また、発現させたタンパク質は、精製前または精製後に適当なタンパク質修飾酵素を用いて修飾を加えたり部分的にペプチドを除去したりすることもでき、これらの修飾されたタンパク質も本発明に含まれる。タンパク質修飾酵素としては、トリプシン、キモトリプシン、プロテインキナーゼやグルコシダーゼなどが挙げられる。尚、当業者は、発現したタンパク質が遊離した状態であれば塩に、塩として得られた場合に遊離した状態に容易に変えることができる。
まず、ポリクローナル抗体は、ASCLを用いて哺乳動物、好ましくはマウスやラット等のげっ歯目、ウサギ目、サルなどの霊長目の動物を免疫し、血清を得て、この血清をASCLまたは部分ペプチドを固定したアフィニティーカラムに通して精製することにより得ることができる。
またモノクローナル抗体は、まず同様に哺乳動物を免疫し、この動物から得た抗体産生細胞と、増殖力の強いミエローマ細胞とを融合させ、個々の融合細胞を分離し、求める抗体の生産能を検定することによって抗原の一つのエピトープに特異的に反応する抗体分子を1種だけ生産する細胞を選択し、この細胞を培養することによって製造することができる。またモノクローナル抗体は、モノクローナル抗体のアミノ酸配列をコードするDNAをベクターに挿入し、このベクターを宿主に導入して産生させて遺伝子工学的方法で得ることもできる。ヒト抗体遺伝子を導入したトランスジェニック動物を免疫すれば、ヒト抗体を産生することもでき、マウスのモノクローナル抗体の抗原結合部位をコードするcDNAとヒトのIgG遺伝子の定常部をコードする遺伝子を連結してこれをBリンパ球に導入すればキメラ抗体分子を生産させることも可能であり、これらの抗体も本発明に含まれる。本発明の抗体は、本発明に係るタンパク質または部分ペプチドを特異的に認識して結合する限り、フラグメントや修飾された抗体であってもよい。抗体のフラグメントとしては例えば、F(ab)、F(ab')2、Fcフラグメント、またはシングルチェインFvなどが挙げられ、修飾された抗体としては例えばポリエチレングリコールなどの化合物と結合された抗体などが挙げられる。本発明の抗体は、ASCLの精製や検出、定量に用いることができるし、またASCLの生物学的活性を亢進または抑制する作用を有する場合には、アゴニストまたはアンタゴニストとなりうる。
(i)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNAを含む領域。
(ii)配列番号:1に記載の塩基配列を含む領域。
(iii)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を有し、配列番号:2に記載のタンパク質と機能的に同質のタンパク質をコードするDNAを含む領域。
(iv)配列番号:1に記載の塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同質のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む領域。
(v)配列番号:3に記載の塩基配列からなる領域。
ここで、配列番号:3に示す塩基配列からなる領域は、ゲノムDNAを制限酵素NotIで切断した際に得られるNotIサイトであり、ASCLタンパク質のコード領域を完全に含む領域である。従って、被検者から採取したDNAをNotIで処理し、配列番号:3に記載の塩基配列からなる領域におけるメチル化を検出することにより、そのDNAが癌患者に由来するものかどうかを好適に判定することができる。また、メチル化の検出は、領域(i)〜(v)の一部であってもよい。
MSP法では、メチル化された配列に特異的なプライマーを用いてメチル化された領域だけを増幅し、検出する方法である。
一方、Bisulfite Sequencing法は、Bisulfite処理後の塩基配列を解析することによって、メチル化を検出する方法である。配列解析の方法は特に限定されず、マクサム・ギルバート法、ジデオキシ法等公知の方法によることができるが、例えばPyrosequencing法によれば、高精度に定量することができて好適である(Colella S. et al., BioTechniques 35: 146-150(July 2003))。
また本発明に係る診断方法が用いられる癌は、特に限定されず、例えば、脳腫瘍、頭頸部癌、食道癌、胃癌、大腸癌、肝癌、膵癌、肺癌、乳癌、皮膚癌、卵巣癌、前立腺癌、腎癌、膀胱癌、等が挙げられる。なお、本発明者らはHCCセル・ラインを用いてASCLの機能を解明したが、例えば、SOCS−1遺伝子におけるメチル化が、肝癌、リンパ腫、膵癌、胃癌で見られるように、メチル化は各種の癌に共通する現象であることが知られている(例えば、Esteller M, et al., Cancer Research 2001, Apr 15;61(8):3225-9を参照)。
原発性ASC遺伝子におけるメチル化も、上述したASCL遺伝子と同様の方法で検出または定量することができる。
本発明者らは、上述のように、ASCLタンパク質をコードするDNAにおいてメチル化が生じると、ASCLの発現が低下することを見出した。したがって、この発現を検出および/または定量することによって、その被検試料が癌患者由来のものであるかを検知することができる。なお、本明細書において「ASCLタンパク質をコードするDNAの発現」は、転写および翻訳の双方を含み、mRNAの発現を検出・定量してもよいし、ASCLタンパク質の発現を検出・定量しても良い。
被験者から採取する試料、および本診断法方が用いられる癌疾患は、上述したDNAのメチル化の検出・定量工程を含む診断方法と同様であり、ここでは説明を省略する。
標識としては、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質等が挙げられるが、これらに限定されない。
具体的には、ASCLタンパク質またはその部分ペプチドをコードするDNA若しくはその相補鎖の全部または一部に相補的なポリヌクレオチドをプローブとして用いたノーザンハイブリダイゼーションを行ったり、プライマーとしてPCR反応に用い、増幅されたDNAを検出・定量法に供することができる。
本発明者らは、ASCLによる細胞増殖抑制作用にアポトーシスが関与していることを見出した。従って、ASCLの発現を亢進または抑制する作用を有する化合物は、細胞のアポトーシスの制御に用いることのできる可能性があり、ひいては、癌の治療薬や予防薬としての機能を有する可能性もある。被検細胞は、ASCLをコードするDNAを有する細胞であればよく、特に種類は限定されない。また、DNAの発現は、上述した診断方法に用いられる方法と同様の方法を用いることができ、ここでは説明を省略する。
ヒトHCCのcell lineを用いたrestriction landmark genomic scanning (RLGS)解析で27%の異常が確認された(Nagai H, et al. Cancer Res 1994;54:1545-50、Yoshikawa H, et al. Genomics 1996;31:28−35、Yoshikawa H, et al. Gene 1997;197:129-35)NotIによるフラグメントをクローニングした。BLAST検索により、cDNAクローンであるZD54H05(Genebank accession number AF086332)がCpGリッチな領域に存在し、NotI領域を含むことがわかった(図1A)。
ASCLのメチル化をMSP法により検出した。MSP法は、Herman JG, et al. Proc Natl Acad Sci USA 1996;93:9821-6の方法に従ってBisulfite処理を行った後、配列番号:4および5に記載の塩基配列を有するプライマーをメチル化領域特異的プライマーとし、配列番号:6および7に記載の塩基配列を有するプライマーを非メチル化領域特異的プライマーとして、Conway KE, et al. Cancer Res 2000;60:6236-42の方法に従って行った。その結果、10のcell lineのうち、8 cell lineでメチル化が確認された(図1E)が、対照的に、正常肝サンプルでは確認されなかった。すべてのHep3Bを除くすべてのcell lineで、完全なメチル化が生じていた。
ヒト肝臓RNA(BD Biosciences)から完全長ASCLcDNAを単離し、配列番号:13および14に記載のプライマーペアを用いてPCRで増幅し、これをpcDNA3.1/HisCベクター(Invitrogen)に挿入した。ASCcDNAは、配列番号:15および:16に記載のプライマーペアを用いて、RT-PCRにより増幅し、Xpress-tagをHA-tagに置き換えるよう修飾したpcDNA3.1ベクターに挿入した。これらのベクターを用いて細胞を形質転換し、G418で4週間培養した。
ASCLとASCは、そのゲノム上の位置づけと、pyrin domainの相同性から密接に関連するものと考えられる。そこで、HCCにおけるASC遺伝子のメチル化と発現を解析した。10のHCC cell lineのうち、7つ(HuH2、HuH4、HuH7、Li-7、PLC/RPF/5、Kim1およびFLC4)がメチル化を受けていた(図3A)。対照的に、残りの3つのcell lineと正常肝サンプルでは、メチル化は検出されなかった。発現解析では、完全にメチル化されているcell line(HuH2、PLC/PRF/5およびFLC4)では、まったく発現せず(図3B)、これらのcell lineでは、DNAのメチル化に関連してASC遺伝子が不活化されていることが示唆された。部分的にメチル化を受けたcell lineでは、ASC遺伝子の発現が見られ、メチル化を受けていない対立遺伝子が活性を有するものと考えられた。
ASCL遺伝子またはASC遺伝子を含むベクターで形質転換した細胞を3%パラホルムアルデヒドで固定し、0.1%Triton X-100で処理した。マウス抗Xpress (Invitrogen)抗体および、ウサギ抗HA (Santa Cruz Biotechnology, Inc)抗体を使用して、Xpress標識されたASCLおよび、HA標識されたASCを検出した。
Claims (14)
- 下記(a)〜(d)のいずれかに記載のDNA。
(a)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA。
(b)配列番号:1に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA。
(c)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を有し、配列番号:2に記載のタンパク質と機能的に同質のタンパク質をコードするDNA。
(d)配列番号:1に記載の塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同質のタンパク質をコードするDNA。 - 配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質の部分ペプチドをコードするDNA。
- 請求項1または2に記載のDNAによりコードされるタンパク質またはペプチド。
- 請求項1または2に記載のDNAを含有するベクター。
- 請求項4に記載のベクターを含む形質転換体。
- 請求項5に記載の形質転換体を培養し、発現したタンパク質またはペプチドを回収する工程を含む、請求項3に記載のタンパク質またはペプチドの製造方法。
- 請求項3に記載のタンパク質または部分ペプチドに結合する抗体。
- 被検者から採取した試料からDNAを抽出する工程と、
該DNA上の下記(i)〜(v)のいずれかに記載の領域におけるメチル化の頻度を測定する工程と、を含む癌の診断方法。
(i)配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNAを含む領域。
(ii)配列番号:1に記載の塩基配列を含む領域。
(iii)配列番号:2に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を有し、配列番号:2に記載のタンパク質と機能的に同質のタンパク質をコードするDNAを含む領域。
(iv)配列番号:1に記載の塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に同質のタンパク質をコードするDNAを含む領域。
(v)配列番号3に記載の塩基配列からなる領域。 - さらに、前記被検者から採取した試料から抽出されたDNA上の、ASCタンパク質のコード領域におけるメチル化の頻度も測定する、請求項8に記載の方法。
- 前記メチル化の頻度を測定する工程が、Methylation Specific PCR法である、請求項8または9に記載の方法。
- 前記メチル化の頻度を測定する工程が、Bisulfite Sequencing法である、請求項8または9に記載の方法。
- 被検者から採取した試料中における請求項1に記載のDNAの発現を検出および/または定量する工程と、
これを健常者における場合と比較して、該DNAの発現が低下している場合に被検者が癌であると判定する工程と、を含む癌の診断方法。 - 下記(a)または(b)を含む癌の診断用キット。
(a)請求項3に記載のタンパク質またはペプチドに結合する抗体。
(b)請求項1または2に記載のDNA若しくはその相補鎖の全部または一部に相補的なポリヌクレオチド。 - 請求項1に記載のDNAの発現を亢進または抑制する化合物のスクリーニング方法であって、
細胞に被検化合物を添加する工程と、
前記被検化合物の添加の前後における、前記細胞内での請求項1に記載のDNAの発現の変化を検出および/または定量する工程と、を含む方法。
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