JP4297209B2 - Kiaa0172遺伝子の疾病治療及び診断並びに創薬への利用 - Google Patents

Kiaa0172遺伝子の疾病治療及び診断並びに創薬への利用 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、癌細胞増殖抑制機能を有するKIAA0172遺伝子の疾病治療及び診断並びに創薬への利用を提供する。
【0002】
【従来の技術】
KIAA0172遺伝子のcDNAはcDNAクローニングによりクローン化され、そのほぼ全長のcDNA塩基配列について報告されている(Nagase et al., DNA Res. 3 (1), 17-24 (1996))分子量約140kDaのタンパク質をコードしている遺伝子である。KIAA0172遺伝子は、染色体9p24にマップされるBACクローンRPCI-11-130C19上に位置づけられる。また該cDNA塩基配列は、GenBankに登録番号D79994(登録名:Human mRNA for KIAA0172 gene, partial cds)としてcDNA配列の一部が報告されている。しかし、KIAA0172遺伝子の機能については、不明であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、KIAA0172遺伝子の疾病治療及び診断並びに創薬への利用を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、KIAA0172遺伝子の構造解析を行い、該遺伝子が染色体9p24にマップされるBACクローンRPCI-11-130C19上に位置づけられる遺伝子であり、該クローン上のヌクレオチド番号85563から120956に存在することを見出した。また、該BACクローンとNagaseらの報告(Nagase et al., DNA Res. 3, 17-24, 1996)との比較、及びキャップ部位の決定(実施例1の項参照)から、10エキソンよりなる遺伝子構造を有していることを見出した。さらに、これまで機能が不明であったKIAA0172遺伝子の機能解析を行った結果、同遺伝子が癌細胞に対する増殖抑制機能及び形質転換機能を有していること、さらに、腎癌患者において高頻度で同遺伝子の発現が抑えられていることを見出し、同遺伝子が細胞増殖における調整機能を有しており、それが失われると癌としての性質の一部が現れることを明らかにした。
【0005】
すなわち、まずLOH(Loss of heterozygosity、ヘテロ接合性の消失)解析により、KIAA0172遺伝子を含むゲノム領域のLOHが高頻度であることを見出した。またRT-PCR解析により正常組織及び腎癌組織におけるKIAA0172遺伝子発現を解析したところ、腎癌組織においてKIAA0172遺伝子の転写が有意に減少していることを見出した。さらに、エキソン1から10までについて別々に塩基配列を決定し、GenBankに登録してあるKIAA0172遺伝子塩基配列(登録番号D79994)と比較し、腎癌組織より得られたKIAA0172遺伝子塩基配列にアミノ酸配列の変化を伴う変異が存在することを見出した。この変化は遺伝子の自然突然変異の頻度と比較しても有意に高く、腎癌の形成と関連が高いと考えられた。また、一般的な遺伝子の発現抑制の機構として既に公知であるメチル化の有無及びその場所を検討した結果、腎癌患者の癌組織はもとより正常組織においてもアレル(染色体)特異的にメチル化が起こっており、さらにそのメチル化が遺伝子発現抑制の原因であることを実験的に示した。したがって、この結果により、KIAA0172遺伝子に起こるメチル化がリスクファクターであることが明らかになった。また、アレル特異的な遺伝子発現を評価(診断)するために一塩基多型情報を利用することが可能であることも示した。
【0006】
さらに、KIAA0172遺伝子塩基配列を公知の塩基配列との相同性検索を行ったところ、DAPKタンパク質のアンキリン(ankyrin)配列との間に相同性のある部分が認められ、Two-Hybrid法によりこのアンキリンと相同の部位が他の遺伝子産物との相互作用を行っている部分であることを見出した。
一方で、KIAA0172遺伝子産物である蛋白質に特異的なポリクローナル抗体を用いた免疫染色、免疫沈降、ウエスターン解析などにより、細胞質局在性、蛋白質の存在及び分子量などその蛋白質の性質の一部を決定した。
【0007】
従って、本発明者らは同遺伝子を利用することにより、腎癌の診断(リスクファクターの評価及び癌の進行度)が可能になり、さらに癌増殖抑制機能を利用した遺伝子治療が可能になると考え、KIAA0172遺伝子を利用して癌を治療しまたは診断する本発明を完成させるに至った。また、同遺伝子は、多くの組織において発現が確認されていることから、それらの組織細胞においても細胞増殖機能を有すると考えられ、腎臓以外の組織細胞においても癌の治療及び診断に利用可能であることを明らかにした。
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1) KIAA0172遺伝子若しくはその一部配列またはそれらの変異体によってコードされるポリペプチドを有効成分とする癌治療薬、
(2) KIAA0172遺伝子配列若しくはその一部またはそれらの変異体を含むオリゴヌクレオチドを有効成分とする癌治療薬、
(3) KIAA0172遺伝子によってコードされるポリペプチドを認識する抗体を含む癌検出薬、
(4) KIAA0172遺伝子配列若しくはその一部またはそれらの変異体を含むオリゴヌクレオチドを含む癌検出薬、
【0009】
(5) (1)または(2)の治療薬及び医薬上許容される担体を含む癌治療用組成物、
(6) (3)または(4)の検出薬及び医薬上許容される担体を含む癌検出用組成物、
(7) KIAA0172遺伝子若しくはその一部配列またはそれらの変異体を含む癌の治療のためのベクター、
(8) KIAA0172遺伝子若しくはその一部配列またはそれらの変異体を含む癌の検出のためのベクター、
(9) KIAA0172蛋白質を認識する抗体を用いて癌を検出する方法、
(10) KIAA0172遺伝子によってコードされるポリペプチドを認識する抗体を試料と接触させる工程を含む(9)の癌を検出する方法、
(11) 組織切片を用いる免疫染色法である、(9)の癌を検出する方法、
(12) KIAA0172遺伝子配列を含むオリゴヌクレオチドを試料と接触させる工程を含む癌検出法、
【0010】
(13) 下記(a)〜(h)の変異の少なくとも一つの変異を有するKIAA0172遺伝子またはその断片、
(a) 52番目のコドンのCACからCAGへの変異
(b) 168番目のコドンのGCGからGTGへの変異
(c) 268番目と269番目のコドンの間に6塩基GCTGTAの挿入
(d) 269番目のコドンのGTAからGGAへの変異
(e) 274番目のコドンのGAGからCAGへの変異
(f) 306番目のコドンのTCCからGCCへの変異
(g) 506番目のコドンのGCAからGTAへの変異
(h) 509番目のコドンのCGTからCATへの変異
(14) (13)に記載のKIAA0172遺伝子を含む癌検出薬、
(15) (13)に記載のKIAA0172遺伝子配列若しくはその一部を含むオリゴヌクレオチドを試料と接触させる工程を含む癌検出法、
(16) (13)に記載のKIAA0172遺伝子配列若しくはその一部を含むオリゴヌクレオチドを試料と接触させる工程を含む癌罹患のリスクを評価する検出法、
【0011】
(17) KIAA0172遺伝子上の下記(i)〜(r)の一塩基多型部位の少なくとも一つを含む遺伝子断片、
(i) コドン番号273の3番目の塩基のT/G多型部位
(j) コドン番号299の3番目の塩基のG/C多型部位
(k) コドン番号372の1番目の塩基のC/T多型部位
(l) コドン番号380の3番目の塩基のT/G多型部位
(m) コドン番号497の3番目の塩基のT/G多型部位
(n) コドン番号453の3番目の塩基のC/T多型部位
(o) コドン番号478の3番目の塩基のC/T多型部位
(p) コドン番号507の3番目の塩基のG/T多型部位
(q) コドン番号1003の3番目の塩基のC/T多型部位
(r) コドン番号1120の3番目の塩基のG/C多型部位
【0012】
(18) KIAA0172遺伝子上の下記(i)〜(r)の一塩基多型部位の塩基を決定し、癌罹患のリスクを評価する方法、
(i) コドン番号273の3番目の塩基のT/G多型部位
(j) コドン番号299の3番目の塩基のG/C多型部位
(k) コドン番号372の1番目の塩基のC/T多型部位
(l) コドン番号380の3番目の塩基のT/G多型部位
(m) コドン番号497の3番目の塩基のT/G多型部位
(n) コドン番号453の3番目の塩基のC/T多型部位
(o) コドン番号478の3番目の塩基のC/T多型部位
(p) コドン番号507の3番目の塩基のG/T多型部位
(q) コドン番号1003の3番目の塩基のC/T多型部位
(r) コドン番号1120の3番目の塩基のG/C多型部位
【0013】
(19) KIAA0172遺伝子を含むゲノム領域のヘテロ接合性の消失(LOH)の解析により、癌罹患のリスクを評価する方法、
(20) 染色体9p24部位のマイクロサテライトマーカーであるD9S1779およびD9S1858の一方または両方におけるヘテロ接合性の消失を決定することを含む(19)の癌罹患のリスクを評価する方法、
(21) KIAA0172遺伝子のメチル化を解析することを含む癌罹患のリスクを評価する方法、
(22) KIAA0172遺伝子に存在する1つ以上のCpG配列のメチル化パターンを決定することを含む、(21)の癌罹患のリスクを評価する方法、および
(23) CpG配列がKIAA0172遺伝子の第1エキソンに存在するCpGアイランド中のCpG配列である、(22)記載の癌罹患のリスクを評価する方法。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
【発明の実施の形態】
cDNAライブラリーの作製、遺伝子のクローニング及びスクリーニング、塩基配列の決定等の技術はJ. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis (1989): Molecular Cloning, a laboratory manual, second edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press及び Ed Harlow and David Lanc (1988): Antibodies, a laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press等の当業者に良く知られた文献に記載された方法に従って行えばよい。
【0015】
本発明の遺伝子は、mRNAを抽出し、cDNAを合成して単離することができる。mRNAの供給源としてはヒト未分化ミエロイド細胞株KG-1等のヒト細胞を用いることができる。mRNAの調製は、グアニジンチオシアネート/塩化セシウム法などにより全RNAを抽出した後、オリゴdT−セルロースやポリU−セファロース等を用いたアフィニティーカラム法により、あるいはバッチ法によりポリ(A)+RNA(mRNA)を得ることにより行える。このようにして得られたmRNAを鋳型として、オリゴdTプライマー及び逆転写酵素を用いて一本鎖cDNAを合成した後、該一本鎖cDNAから二本鎖cDNAを合成する。
【0016】
合成した二本鎖cDNAを適当なベクターに組み込んで、該ベクターを用いて大腸菌等を形質転換してcDNAライブラリーを作製して本発明の遺伝子の一部を取得することができる。選択方法として、本遺伝子の既知一部配列(WI-12779としてESTが報告されている)に基づいて合成したプローブを用いてのプラークハイブリダイゼーション法、コロニーハイブリダイゼーション法やイムノスクリーニング法等の方法を用いることができる。得られたcDNA断片はPCR法で増幅し、マキサム・ギルバート法(Maxam, A. M. and Gilbert, W., Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 74, 560, 1977)又はジデオキシ法(Messing, J. et al., Nucl. Acids Res., 9, 309, 1981)等により塩基配列を決定することができる。尚、KIAA0172遺伝子のほぼ全長のcDNA塩基配列が報告されており(Nagase et al., DNA Res. 3, 17-24, 1996、登録番号D79994、登録名Human mRNA for KIAA0172 gene, partial cds.でGenBankに登録されている)この配列情報を利用することもできる。
【0017】
KIAA0172遺伝子は、10エキソンよりなるが、エキソンの解析はエキソントラッピング法によっても、またKIAA0172遺伝子についての公知の部分遺伝子情報を基にしても行うことができる。
全長cDNAの情報を得るための5'末端情報は、プライマー伸長反応を行うことにより取得することができる。
本願明細書の開示および上述のKIAA0172遺伝子についての公知の遺伝子情報に基づけば、KIAA0172遺伝子の全長配列を得ることができる。
【0018】
本願発明で利用するKIAA0172遺伝子はその全長配列であってもよいし、一部配列であってもよい。イントロンを含む全長DNA配列も、エキソン部分のみを含むDNA配列も本願発明に利用するKIAA0172遺伝子に含まれる。一部配列の例としては、本遺伝子の機能部位と考えられるアンキリン(ankyrin)配列を含む配列が挙げられる。また、KIAA0172遺伝子の全長配列またはその一部配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる変異体DNAも本発明の遺伝子に含まれる。ストリンジェントな条件とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。例えば、相同性が高いDNA同士、すなわち60%以上、好ましくは80%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それにより相同性が低い核酸同士がハイブリダイズしない条件が挙げられる。より具体的には、ナトリウム濃度が150〜900mM、好ましくは600〜900mMであり、温度が60〜68℃、好ましくは65℃での条件をいう。
【0019】
遺伝子に変異を導入するには、Kunkel法、Gapped duplex法等の公知の手法又はこれに準ずる方法を採用することができる。例えば部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット(例えばMutant-K (TAKARA社製)やMutant-G (TAKARA社製))などを用いて、あるいは、TAKARA社のLA PCR in vitro Mutagenesis シリーズキットを用いて変異導入が行われる。
【0020】
一旦遺伝子の塩基配列が確定されると、その後は化学合成によって、又はクローニングされたcDNAを鋳型としたPCRによって、あるいは該塩基配列を有するDNA断片をプローブとしてハイブリダイズさせることによって、本発明の遺伝子を得ることができる。
【0021】
得られたKIAA0172遺伝子を入手可能な適当な発現ベクターに組み込んで、さらに適当な宿主細胞に形質転換し、適当な培地中で培養、発現させ、目的蛋白質を回収、精製することができる。この際のベクターとして、プラスミド、ファージ、ウイルス等の宿主細胞において複製可能である限りいかなるベクターも用いることができる。例えば、pBR322、pBR325、pUC118、pUC119、pKC30、pCFM536等の大腸菌プラスミド、pUB110等の枯草菌プラスミド、pG-1、YEp13、YCp50等の酵母プラスミド、λgt110、λZAPII等のファージのDNA等が挙げられ、哺乳類細胞用のベクターとしては、バキュロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス等のウイルスDNA、SV40とその誘導体等が挙げられる。ベクターは、複製開始点、選択マーカー、プロモーターを含み、必要に応じてエンハンサー、転写終結配列(ターミネーター)、リボソーム結合部位、ポリアデニル化シグナル等を含んでいてもよい。
【0022】
宿主細胞としては、大腸菌、ストレプトミセス、枯草菌等の細菌細胞、アスペルギルス属菌株等の真菌細胞、パン酵母、メタノール資化性酵母等の酵母細胞、ドロソフィラS2、スポドプテラSf9等の昆虫細胞、CHO、COS、BHK、3T3、C127等の哺乳類細胞等が挙げられる。
形質転換は、塩化カルシウム、リン酸カルシウム、DEAE-デキストラン介在トランスフェクション、エレクトロポーレーション等の公知の方法で行うことができる。
【0023】
得られたリコンビナント蛋白質は、各種の分離精製方法により、分離・精製することができる。例えば、硫酸アンモニウム沈殿、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を単独でまたは適宜組合せて用いることができる。
【0024】
配列番号1にKIAA0172遺伝子のコードするタンパク質のアミノ酸配列を例示するが、このアミノ酸配列を含むタンパク質がKIAA0172遺伝子のコードするタンパク質の有する活性と同等の機能を有する限り、当該アミノ酸配列において複数個、好ましくは数個のアミノ酸に欠失、置換、付加等の変異が生じてもよい。配列番号1で表されるアミノ酸配列の1〜10個、好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1個若しくは2個のアミノ酸が欠失してもよく、配列番号1で表されるアミノ酸配列の1〜10個、好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1個若しくは2個のアミノ酸が他のアミノ酸に置換してもよい。また、配列番号1で表されるアミノ酸配列に1〜10個、好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1個若しくは2個のアミノ酸が付加していてもよい。ここで、KIAA0172遺伝子のコードするタンパク質の有する機能とは、癌細胞に見られる無制御な増殖を抑制する機能をいい、例えば、HEK293細胞等の株化腎癌細胞にKIAA0172遺伝子を導入して、細胞の時間あたりの分裂頻度の減少及び/あるいは細胞の接着面積の増加等の細胞の形態変化を観察することにより該機能を有しているかどうかがわかる。
【0025】
従って、配列番号1で表されるアミノ酸配列を含むタンパク質または配列番号1で表されるアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつKIAA0172遺伝子のコードするタンパク質の有する機能を有するタンパク質をコードする遺伝子も本発明に利用することができる。
【0026】
また、癌組織部において塩基配列に変異が認められるKIAA0172遺伝子配列を含むDNA及び該塩基配列が変化した遺伝子によりコードされるアミノ酸配列が変化したポリペプチドも本発明に利用することができる。癌組織において変異した塩基として、図6に示すように、52番目のコドンがCACからCAGに変わりアミノ酸がHisからGlnに変わったもの、168番目のコドンがGCGからGTGに変わりアミノ酸がAlaからValに変わったもの、268番目と269番目のコドンの間にAla-Valが挿入されたもの、269番目のコドンがGTAからGGAに変わりアミノ酸がValからGlyに変わったもの、274番目のコドンがGAGからCAGに変わりアミノ酸がGluからGlnに変わったもの、306番目のコドンがTCCからGCCに変わりアミノ酸がSerからAlaに変わったもの、506番目のコドンがGCAからGTAに変わりアミノ酸がAlaからVlaに変わったもの、509番目のコドンがCGTからCATに変わりアミノ酸がArgからHisに変わったものが挙げられる。
【0027】
KIAA0172遺伝子のこれらの変異を検出することにより癌に罹患している可能性または癌への罹患へのリスクを評価することができる。さらに、KIAA0172遺伝子上の以下に示すアミノ酸の変異を伴わない一塩基多型(SNPs)を検出することによっても癌に罹患している可能性または癌への罹患へのリスクを評価することができる。
【0028】
KIAA0172遺伝子上の一塩基多型は以下のとおりである。ここで、T/G多型部位とは、野生型の塩基がTであり、変異型の塩基がGであることを示す。
(i) コドン番号273の3番目の塩基のT/G多型部位
(j) コドン番号299の3番目の塩基のG/C多型部位
(k) コドン番号372の1番目の塩基のC/T多型部位
(l) コドン番号380の3番目の塩基のT/G多型部位
(m) コドン番号497の3番目の塩基のT/G多型部位
(n) コドン番号453の3番目の塩基のC/T多型部位
(o) コドン番号478の3番目の塩基のC/T多型部位
(p) コドン番号507の3番目の塩基のG/T多型部位
(q) コドン番号1003の3番目の塩基のC/T多型部位
(r) コドン番号1120の3番目の塩基のG/C多型部位
これらの一塩基多型部位の1つ以上、好ましくは2つ以上さらに好ましくは全ての塩基が変異型である場合に、癌罹患のリスクが高いと判断できる。
【0029】
なお、図6および図7に示されるように、頻度の大きさを考慮すると、274番目のコドンがGAGからCAGに変わりアミノ酸がGluからGlnに変わった変異、306番目のコドンがTCCからGCCに変わりアミノ酸がSerからAlaに変わった変異及び509番目のコドンがCGTからCATに変わりアミノ酸がArgからHisに変わった変異、ならびにコドン番号299の3番目の塩基のG/C多型、コドン番号453の3番目の塩基のC/T多型及びコドン番号478の3番目の塩基のC/T多型が癌と関連しており、これらの変異および/または一塩基多型の検出が癌の診断またた癌罹患のリスクの評価に有用である。
【0030】
変異および一塩基多型は本発明の遺伝子もしくはその断片またはそれらに相補的なDNAを用いてPCR法、サザンハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法、定量的PCR法、in situ ハイブリダイゼーション法、FISH(Fluorescence In Situ Hybridization)、PCR-RFLP法、PCR-SSCP法等により、検出することができる。これらの変異または一塩基多型を検出すれば、該DNAの変異の存在を直接的に検出することができる。また、変異または一塩基多型を有さないことを検出してもよい。
【0031】
例えば、まず変異または一塩基多型を有するKIAA0172遺伝子の変異塩基または一塩基多型部分を含むヌクレオチド配列に相補的なプローブ、野生型遺伝子の該変異塩基部分に対応する部分を含むヌクレオチド配列に相補的なプローブを調製する。用いるプローブの長さに制限はなく、後述の核酸増幅法で増幅しようとする核酸断片の全長でもよいが、通常は15bp〜100bpが好ましく、さらに15bp〜50bpが好ましく、特に18bp〜30bpが好ましい。プローブは、放射性同位元素、蛍光物質、酵素等で標識したものを用いることができる。次いで、検体試料中の変異塩基部分を含む遺伝子断片を核酸増幅法により増幅し、この増幅断片とプローブを反応させる。検体試料中のDNAが野生型、変異型若しくは一塩基多型に対応したいずれのプローブとハイブリダイズするか調べることにより、KIAA0172遺伝子が変異を有するか、または一塩基多型を有するかを決定することができる。
【0032】
プローブを用いて変異または一塩基多型を検出するときのハイブリダイゼーション条件は、適宜設定すればよい。ハイブリダイゼーション時の温度、塩濃度を調節することにより1塩基のミスマッチのみを検出し得るハイブリダイゼーション条件を選択することが可能である。用いるプローブDNAの長さにも依存するが、例えば具体的には、ナトリウム濃度が150〜900mM、好ましくは600〜900mMであり、温度が60〜68℃、好ましくは65℃での条件で行い得る。
【0033】
また、KIAA0172遺伝子の断片またはそれに相補的なDNAをプライマーとして用いることもできる。核酸増幅の際に用いるプライマーとしては、KIAA0172遺伝子の変異部位または一塩基多型部位を挟み増幅しようとする領域の端部と相補的な配列を用いることができる。増幅する領域の塩基長に制限はないが、数十から数百塩基とすることができる。増幅領域にKIAA0172遺伝子の変異部または一塩基多型部を一つだけ含むように増幅塩基長を設定してもよいし、二つ以上の変異部または一塩基多型部を含むように設定してもよい。また、プライマーを変異部位を含む領域に設定することも可能である。プライマーの長さに制限はないが、好ましくは15bp〜50bp、さらに好ましくは20bp〜30bpである。
【0034】
さらに、KIAA0172遺伝子若しくはその断片またはそれらに相補的なDNAを用いて、癌へのの罹患のリスクを決定するためのDNAチップを作製することもできる。DNAチップに結合させる断片としては、上記変異部または一塩基多型部を含む断片が挙げられる。
【0035】
さらに、本発明ではKIAA0172遺伝子配列を含むDNAだけではなく、該遺伝子配列をコードするRNAも含まれ、これらDNAまたはRNAの修飾体も含まれる。ここで修飾体とはKIAA0172遺伝子の機能を妨げない程度に塩基配列中の任意の塩基が修飾されたもの等を含む。
【0036】
KIAA0172遺伝子のコードするタンパク質(ポリペプチド、本明細書においてタンパク質とポリペプチドは区別されない)に対する抗体は、通常の方法で動物をKIAA0172遺伝子発現産物で免疫することにより得られる。抗体はポリクローナル抗体もモノクローナル抗体も含む。
【0037】
本発明のKIAA0172遺伝子配列を含むDNA若しくはRNAヌクレオチドを、遺伝子治療の技術を用いて腎癌その他の組織の癌の治療に利用することができる。例えば、生体の癌細胞でKIAA0172遺伝子のコードするタンパク質を発現させ、癌細胞の増殖を抑制することができる。この際、KIAA0172遺伝子配列を含むDNA等をアデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター等の遺伝子治療に用い得るベクターに導入して投与することもできるし、またDNA等を注射等により直接導入することも、遺伝子銃法で導入することもできる。投与は、経口的にも注射によってもよく、体内にDNAを導入できるならばいかなる投与法も利用することができる。さらに、KIAA0172遺伝子又はKIAA0172遺伝子を含むベクターを直接体内に投与してもよいし(in vivo方式)、一旦癌細胞を取り出してKIAA0172遺伝子を組み込んだ後に体内に戻してもよい(ex vivo方式)。
【0038】
KIAA0172遺伝子のアンチセンスDNA、アンチセンスRNAも癌治療に利用し得る。例えば、KIAA0172遺伝子の癌組織で認められる変異体(図6)に対するアンチセンスDNAまたはアンチセンスRNAの利用が挙げられる。
KIAA0172遺伝子のコードするタンパク質またはその一部を癌患者に投与して、癌細胞の増殖を抑えることにより癌を治療することもできる。
【0039】
KIAA0172遺伝子配列を含むDNA若しくはRNAまたはKIAA0172遺伝子のコードするタンパク質を含む治療用製剤は、医薬上許容できる担体を含んでいてもよい。担体としては、懸濁剤及びシロップ剤のような経口液体調製物は、水、シュクロース、ソルビトール、フラクトース等の糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ごま油、オリーブ油、大豆油等の油類、p-ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤等を使用できる。粉剤、丸剤、カプセル剤及び錠剤は、ラクトース、グルコース、シュクロース、マンニトール等の賦形剤、デンプン、アルギン酸ソーダ等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン等の結合剤、脂肪酸エステル等の表面活性剤、グリセリン等の可塑剤等を用いることができる。また、注射剤の溶液は、蒸留水、塩溶液、グルコース溶液等からなる担体を用いて調製することができる。この際、定法に従い適当な溶解補助剤および懸濁剤を用いて、溶液、懸濁液または分散剤として調製できる。
【0040】
さらに、KIAA0172遺伝子配列を含むDNA、RNAヌクレオチドを利用したノーザンハイブリダイゼーション法、PCR法、定量的PCR法、RT-PCR法、in situ ハイブリダイゼーション法等により、KIAA0172遺伝子の各組織における存在、発現、変異を定性的にまたは定量的に検出することにより癌を検出することができる。この場合、KIAA0172遺伝子配列の一部をPCRのプライマーとして用いることもできるし、検出用プローブとして用いることもできる。これらの遺伝子配列はニックトランスレーション等により適宜標識して用いる。例えば、RT-PCR法によりKIAA0172遺伝子の発現を調べ、癌の検出または癌の進行度を検出することができ、KIAA0172遺伝子DNAの存在をPCRや定量的PCRにより調べることができる。また、KIAA0172遺伝子配列の一部または総てを含むDNAまたはRNAプローブを用いたin situ ハイブリダイゼーション法により組織切片、細胞、染色体等を用いてKIAA0172遺伝子配列を含むDNAまたはRNAを検出し、癌を検出することができる。
この際、癌組織で認められる変異したKIAA0172遺伝子(図6)配列を含むDNA、RNAまたはその一部を用いて、該変異遺伝子の存在を調べることにより癌疾患を直接検出することができる。さらに、KIAA072遺伝子の転写・発現量をRT-PCRにより調べることによっても癌を検出することが可能である。この場合、KIAA0172遺伝子の転写・発現が少ないか、ない場合に癌の可能性が高いと判断される。
【0041】
KIAA0172遺伝子のコードするポリペプチドを認識する抗体を癌の検出に利用することもできる。例えば、KIAA0172遺伝子のコードするタンパク質を認識する抗体を用いてKIAA0172遺伝子の発現産物をEIA、RIA等のイムノアッセイ技術により測定し癌を検出することができる。また、組織の組織切片を作成し、抗体を用いて免疫染色を行ってもよい。免疫染色は公知の方法で行うことができる。この場合、KIAA0172遺伝子のコードするタンパク質が検出されない場合に癌の可能性があると判断される。
この際、該変異遺伝子によりコードされるアミノ酸配列が変化したタンパク質を認識するが、アミノ酸配列の変化していないタンパク質を認識しない抗体を用いて変異遺伝子の産生するタンパク質を測定して癌の検出を行うこともできる。
【0042】
これらの検出はKIAA0172遺伝子のコードするタンパク質、KIAA0172遺伝子を含むDNA等を癌か否かを診断しようとする対象から採取した体液、組織片、細胞、染色体等の試料と接触することにより行うことができる。また、対象中にこれらのDNA、タンパク質等を投与して検出することも可能である。
KIAA0172遺伝子配列を含むヌクレオチド、KIAA0172遺伝子によりコードされるタンパク質に対する抗体等を含むキットを作製することもできる。この際、定量標準物質をキット内に含むことが望ましい。
【0043】
さらに、KIAA0172遺伝子を含むゲノム領域のヘテロ接合性の消失(LOH)を解析することにより、癌に罹患するリスクを評価することができる。KIAA0172遺伝子は、染色体9p24上のマイクロサテライトマーカーD9S1779およびD9S1858の近傍に存在しており、これら2つのマイクロサテライトマーカーを用いてLOHを特定すればよい。LOHが特定された場合に癌罹患のリスクが高いと評価することができる。
【0044】
LOHの特定は、例えばジーンスキャン解析、サザンブロット法を用いたRFLP法や,PCR-RFLP法、PCR法を用いた一本鎖DNA高次構造多型解析法〔PCR−SSCP(single-stranded conformation polymorphism)〕 法等により行うことができる(バイオマニュアルシリーズ1,遺伝子工学の基礎技術,山本 雅編,羊土社(1993)等)。
【0045】
例えば、SSCP法によりLOHの解析を行う場合、解析する遺伝子多型部位を含む近傍の遺伝子を、PCR法を用いて増幅し、得られたPCR産物を、1本鎖に変性後、非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行う。その結果、配列の違いを1本鎖DNAにおける高次構造の差異による移動度の変化として解析することができる。このような解析の結果、遺伝子検体由来細胞及び/又は正常細胞に由来するDNAのピークやバンドが、両方のアレル由来の数を示す場合には、その個体は、その遺伝子多型において「ヘテロ接合性」であるが、遺伝子検体のDNA由来のピークやバンドが、2つのアレル由来のシグナル強度のバランスが崩れた場合、ヘテロ接合性の消失とみなし、LOHと判定する。
【0046】
KIAA0172遺伝子の不活化はメチル化によるので、KIAA0172遺伝子のメチル化パターンを解析することによっても、癌に罹患するリスクを評価することができる。メチル化分析はKIAA0172遺伝子のどの領域を対象にしてもよいが、例えばエキソン1に存在するCpGアイランドを対象に行えばよい。メチル化の程度が大きい場合、癌に罹患するリスクが大きいと評価できる。メチル化の分析は、メチル化特異的PCRを用いるとよい。メチル化特異的PCRの手法については、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1996, 93:p.9821-9826, Herman, J.G. et al.に記載されている。この際用いるプライマーの長さは、最低20塩基以上であるとよく、gまたはcをあわせて12塩基程度含むとよく、プライマー長は50塩基以下であれば、一般に言われているPCRのプライマー長である20〜25塩基よりも長くても良い。
【0047】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲がこれらの実施例により限定されるものではない。
〔実施例1〕 KIAA0172遺伝子の構造解析
(1)KIAA0172遺伝子のゲノム構造
同遺伝子は、染色体9p24にマップされるBACクローンRPCI-11-130C19上に位置づけられる遺伝子であり、同クローン上のヌクレオチド番号85563から120956に存在する。ESTはWI-12779として報告されているが、ほぼ全長のcDNA塩基配列は下記の論文に報告されている。
【0048】
Nagase, T., Seki, N., Ishikawa, K., Tanaka, A. and Nomura, N. "Prediction of the coding sequences of unidentified human genes. V. The coding sequences of 40 new genes (KIAA0161-KIAA0200) deduced by analysis of cDNA clones from human cell line KG-1." DNA Res. 3 (1), 17-24 (1996)
また、GenBankには、登録番号D79994(登録名:Human mRNA for KIAA0172 gene, partial cds)としてcDNA配列の一部が報告されている。上記BACクローンと同論文との比較及び実施例(2)の結果により、10エキソンより成る遺伝子構造を有していることが、本発明者らの解析の結果判明した(図1)。図はKIAA0172遺伝子のヒトゲノム上での構造を示す。BAC(Bacterial Artificial Chromosome)RPCI-11-130C19上のヌクレオチド85563から120956までに10個のエキソンを有する。マイクロサテライトマーカーD9S1858とEST(Expressed Sequence Tag)WI-12779の位置も示した。
【0049】
(2)KIAA0172遺伝子の構造
上記論文及びGenBankデータベースではcDNAの全長が決定されていないため、遺伝子産物の蛋白質の完全なアミノ酸配列は確定していない。我々は遺伝子の5'末端であるキャップ部位を確定し、遺伝子構造を決定するためにプライマー伸長反応を行った。プライマー伸長反応は、データベースのKIAA0172 cDNA塩基配列の87番塩基対以降のアンチセンス鎖の配列CAGATGTGGTCCTGGGTTCT(配列番号36)をプライマーとして用いた。T4ポリヌクレオチドキナーゼにより32Pでラベルしたプライマーを10μgのヒト腎臓由来RNAと80%ホルムアミドを含む40 mM PIPESバッファー30μl中で45℃で12時間アニールさせた。反応産物は精製後、20μlの0.5 mM dNTPsを含む逆転写反応液中で100単位の M-MuLV逆転写酵素(New England Biolabs社)を用いて37℃で2時間反応させた。反応産物は、6%ポリアクリルアミド7 M尿素ゲルを用いて分離し、解析した。図2はKIAA0172遺伝子の遺伝子構造を示す。同遺伝子の部分cDNA構造は既に報告されていたが、未報告であったキャップ部位を決定することにより完全なcDNA構造(及び完全な遺伝子産物のアミノ酸配列)を決定した(図2A)。プライマー伸長反応を利用して図に示したプライマー部位から伸長反応を行いゲル上でのバンドの位置からキャップ部位を同定し(図2B)、さらにその塩基配列を決定した(図2C)。図2B中、Kの矢印部分がプライマー伸長反応産物を示し、Mはサイズマーカーを示す。その結果、図2Dに示す塩基配列から遺伝子構造が始まることが明らかになった。この結果、遺伝子構造が決定された。
【0050】
BACクローンRPCI-11-130C19上のヌクレオチド番号85563が、キャップ部位として同定された。これがKIAA0172遺伝子(mRNA)の構造として+1とし、そのヌクレオチド番号を以下に用いている。ヌクレオチド番号+439が開始コドン(メチオニン)であり、機能部位と考えられるアンキリン相同部位は+3447から+4017、停止コドンは+4114、ポリ(A)シグナルは、+4962に位置している。全長は、4984塩基であった(図2)。また、エキソン構造(BACクローンRPCI-11-130C19上のヌクレオチド番号及びそれぞれのエキソンの長さ)ならびにキャップ部位の位置、開始コドン位置、ポリ(A)シグナル位置およびポリ(A)付加位置(いずれもBACクローンRPCI-11-130C19上のヌクレオチド番号)は、次のようになっている(図1)。
エキソン1:85563-88317 (2755塩基対)
エキソン2:104904-105101 (198塩基対)
エキソン3:106011-106119 (109塩基対)
エキソン4:107231-107470 (240塩基対)
エキソン5:109601-109688 (88塩基対)
エキソン6:113138-113357 (220塩基対)
エキソン7:115645-115787 (143塩基対)
エキソン8:117058-117258 (201塩基対)
エキソン9:119344-119442 (99塩基対)
エキソン10:120026-120956 (931塩基対)
合計 4984塩基対
キャップ部位の位置:85563(エキソン1の開始位置と同じ)
開始コドン位置:86094
ポリ(A)シグナル位置:120936
ポリ(A)付加位置:120956(エキソン10の終了位置と同じ)
【0051】
図3はKIAA0172遺伝子の産物である蛋白質の構造を示す。1194アミノ酸残基からなり、特徴としては、ankyrin相同性部位を1006アミノ酸残基から1162アミノ酸残基の間に有している。このような特徴を抗体産生などに利用することが可能である。
【0052】
〔実施例2〕KIAA0172遺伝子の機能解析
(1)腎癌の形成に対する関連性(その1)
LOH(Loss of Heterozygosity)解析を行った。腎癌患者より得た正常DNAと癌組織由来のDNAの間でLOHを示す部位を、マイクロサテライトマーカー(図4に示した)を用いて検索した。マ イクロサテライトマーカー情報は、データベース HYPERLINK "http://gdbwww.gdb.org" http://gdbwww.gdb.orgより得た。
【0053】
ゲノムDNAは、凍結組織をProteinase Kで消化した後フェノール/クロロホルムにより抽出した。用いた腎癌組織は、顆粒タイプあるいはクリアーセルタイプであった。全てのマイクロサテライトマーカーはスタンフォード大学ヒトゲノムセンターデータベースに記述されたものを用いた。センス鎖もしくはアンチセンス鎖のどちらかのプライマーを6-FAM phosphoamiditeで標識し、PCRに使用した。PCRは全量15μl中に50 ngの鋳型DNAを使用し、GeneAmp PCR system 9700 (Perkin-Elmer Applied Biosystems社) により行った。反応は94℃で30秒、55℃で30秒、72℃で1分間を25サイクル行った。蛍光標識されたPCR産物は電気泳動後、GeneScan 3.1ソフトウエアを用いて解析を行った。正常組織由来DNAと腫瘍由来DNAのシグナル強度を比較し、強度の減少が33%以上であればLOHと判定した。患者R6のLOH解析には、普通の組織由来と腫瘍組織由来の初代培養細胞から抽出されたゲノムDNAを用いた。
【0054】
腎癌患者より得た49検体の癌組織由来のDNAとそれぞれに対応する正常腎臓組織由来DNAとをABI社のGeneScan法を用いて比較することによりLOHを検定したところ、当該遺伝子近傍(約200キロ塩基対以内)に存在する2種のマイクロサテライトマ ーカーD9S1779及びD9S1858の部位においてそれぞれ6例、4例の検体(総計では49検体中9例)において有意にLOHを示した。さらに、同マイクロサテライトマーカーの内、片方のみLOHを示す検体が2例見られ、LOHを示した検体全部を比較したときに見られた最小共通欠失領域は、上記の2種のマイクロサテライト間165 kbの領域であった。
【0055】
上記の結果は、当該遺伝子領域の変異率が、少なくとも約18%であることを示しており、変異率としては有意に高い。また、共通欠失領域が当該遺伝子近傍に存在するという事実は、当該遺伝子の腎癌形成に対する関連性を示すものである。図4に KIAA0172遺伝子の腎癌形成に対する関連性についての腎癌LOH解析結果を示した。図4は、KIAA0172遺伝子が存在している遺伝子座の腎癌形成に対する関連性を示す。腎癌患者に由来するゲノムDNAを利用し、図に示したマイクロサテライトを用いたLOH(Loss of Heterozygosity)解析(ジーンスキャン解析)により腎癌に関連している部位を黒の円で示し、腎癌に関連していない部位を白の円で示した。情報が得られない部位は横線で示した。この解析の結果、9p24部位の0.2 Mb(メガ塩基対)領域が腎癌との関連性を示し、この部位に同遺伝子が存在していることから同遺伝子の関連性が示唆された。また、本方法による9p24部位の欠失の検査が可能であることも示している。
【0056】
(2)腎癌の形成に対する関連性(その2)
RT-PCR法による腎癌患者における遺伝子発現状態を調べた。腎癌患者8検体より得た、正常組織及び腎癌組織由来のcDNA(mRNAから逆転写反応により合成したDNA)を用いて正常組織と腎癌組織の間での遺伝子発現状態を比較した。具体的には、LOH解析によって得られた候補領域に存在し、さらに腎臓で発現が見られるWI-19184、WI-12779、及びWI-17492の3種のESTを用いてRT-PCRを行った。逆転写反応は200単位のM-MuLV reverse transcriptase (New England Biolabs社)の存在下で1μg total RNAと5 pmol oligo(dT)を37℃で1時間反応させることにより行った。反応後、反応液は94℃、3分間熱処理を行う事により、酵素を失活させた。2.5 pmol量の各遺伝子特異的プライマーを用いて、PCR反応液(全量15μl)にそれぞれ逆転写反応液を1μl加え反応を行った。用いたプライマー配列は以下の通りである。EST用として、WI-17492についてはフォワードプライマーTCAGTCAAGGTCACAGTCATATTAA(配列番号37)とリバースプライマー TTGTGCTGTCTGTCAGCATATG(配列番号38)を用いた。WI-12779については、フォワードプライマー AAGTAAATGTGACAGGTAAAAAGG(配列番号39)とリバースプライマー CTTGACACAGTATTTTCAGCTTTTG(配列番号40)を用いた。WI-19184については、フォワードプライマーGAATTCCTTCCTCCCCTGTC(配列番号41)とリバースプライマーAAACCAGGCACAATCAAACC(配列番号42)を用いた。また、KIAA0172用として、5'-領域については、フォワードプライマーGTGGAGACCAGGACAAGGAACAGAAAGAC(配列番号43)とリバースプライマー TCCAGAGGGGGAGGTGGCTTT(配列番号44)を用い、3'-領域のプライマーセットとしては、WI-12779と同じものを使用した。PCR条件は94℃で30秒、60℃で30秒、72℃で30秒を30サイクル行った。正常組織と腎癌組織の間での遺伝子発現量の補正はG3PDH遺伝子の発現を同様にRT-PCRを用いて調べた。それぞれのESTのPCRプライマー配列は、HUGOデータベース HYPERLINK "http://gdbwww.gdb.org" http://gdbwww.gdb.orgより得た。
【0057】
図5は、KIAA0172遺伝子の腎癌形成に対する関連性に関して、RT-PCRによる腎癌患者における遺伝子発現状態を示す。図は、腎癌患者の正常組織細胞と癌組織細胞から得られたmRNAを用いて3種の候補EST(図に示した)についてRT-PCRを行って癌組織細胞での遺伝子転写量を正常組織細胞と比べた結果である。同実験の結果、3つのESTの内WI-12779に関して約63%の患者について遺伝子発現の減少を認めた。したがって、同ESTが腎癌との関連性を有意に示した。
【0058】
ヒトゲノム上で当該遺伝子の極く近傍に存在する2つの遺伝子(あるいはEST)WI-19184及びWI-17492を用いて同上の方法により転写量を測定したところ、いずれも有意な減少は見られなかった。同ESTはKIAA0172遺伝子の一部であることからKIAA0172遺伝子の腎癌との関連性が強く示された。
【0059】
(3)腎癌の形成に対する関連性(その3)
塩基配列決定法による遺伝子変異解析を行った。アミノ酸配列をコードしているエキソン(EXON)1から10までをそれぞれ別に塩基配列を決定した。また、エキソン1は2662 bpと長いため、5つ(a、b、c、d及びe)に分けて塩基配列決定を行った。PCRは、25 ngのDNAと5 pmolのプライマーを用いて94℃30秒間、60℃30秒間、72℃1分間を1サイクルとして、35サイクル行って増幅した。増幅後のDNAは、ABI社Prism 310 Genetic Analyzerを用いて塩基配列決定を行った。得られた塩基配列は、GenBankデータベースに登録してある当該遺伝子塩基配列(登録番号D79994)と比較して変異部位を特定した(図6)。
【0060】
それぞれのプライマー配列は、次の通りである。
EXON 1
E1af: TAC TTT GTG GAG ACC CCC TA(配列番号2)
E1ar: GCT TGT GGT GCC CAT GCC TCC(配列番号3)
E1ar2: CAC TGG GGT GGA GAT CCC TG(配列番号4)
E1bf: ATT ATG GTA GCT ATG CCC CA(配列番号5)
E1bf2: TGC AGC ACA TCC GCG AGC AGA T(配列番号6)
E1cf: TCC GGC AAC TTA CAG CAG(配列番号7)
E1cf2: CAG CTG TGA GGC CTC CTC AG(配列番号8)
E1br: GCC TCT GTG GTA CAC GAC GAT G(配列番号9)
E1df: AGG CAT CTC CTG CCA GCC TGA AT(配列番号10)
E1cr2: TCC ACA GAC CTC CCA GCA CAT C(配列番号11)
E1cr: TCT GTG TTG CTG CCT GTT TCG CAG ACG CT(配列番号12)
E1dr2: AGA CAA GTG TTG GTG CAG GAC TC(配列番号13)
E1ef: GGA CAG TAG CTG TAG GA(配列番号14)
E1dr: CAG CTG AT GGC CTG TCA AAC CC(配列番号15)
E1er2: GGG TTC CTC AGC TCT TCA GTG C(配列番号16)
E1er: TCC TCA TTC CCA GGT CCT CAG G(配列番号17)
EXON 2
CAG TCC TAG CAT CAC ACA CTC TG(配列番号18)
TCC TGC CAA TGA CTG TGA(配列番号19)
EXON 3
GGG TGT GAG TTT TCA TTT TTA TTG CC(配列番号20)
ACT GAC AGC ATT AGC CTC TAG AAC(配列番号21)
EXON 4
TGA GCA CAC CTT GCA TCT CCT GA(配列番号22)
CAT TAA ATG TGG GAG GGG CAA(配列番号23)
EXON 5
TCT TCT TGT GAC CAA TCG TAA CTT(配列番号24)
TAC ACA CTG GGG ATG GTG TTT GC(配列番号25)
EXON 6
AAT AGA AGA ACT AAC GAC CAC TTG G(配列番号26)
TTA GAG AAG AGA GGG TGG AAG GG(配列番号27)
EXON 7
AGA AGG GGC TGC TTC CTA AGA GA(配列番号28)
GGG TGC ATT CCT GAG CAC AGG A(配列番号29)
EXON 8
CAG TAC GTA CTT CTG AAG TCC TTG(配列番号30)
TCC CAG AGC TCC CGT CCA GAG(配列番号31)
EXON 9
GAG AAA CCC AAC ATG GCT TGT TCT(配列番号32)
GGG GTC CAC CAG TCT GGT GGA(配列番号33)
EXON 10
TGA GGT CAC TTA TTA ACC CCC AGT(配列番号34)
GTA TCT GTC ACC CCA ACA GGA AC(配列番号35)
当該遺伝子の変異を患者の腎癌組織より得たゲノムDNAを用いて塩基配列決定法により検索したところ、75検体のうち19検体(25.3%)においてアミノ酸配列の変化を伴う変異が存在していた(図6、7)。
【0061】
図6は、KIAA0172遺伝子の腎癌形成に対する関連性に関して、塩基配列決定法による遺伝子変異解析の結果を示す。図6は、75人の腎癌患者組織由来のDNAを用いて、KIAA0172遺伝子領域の塩基配列を決定し、同遺伝子領域に見られた変異をまとめたものである。遺伝子産物のアミノ酸配列(コドン番号)と既に報告されているアミノ酸(GenBank登録番号D79994の配列)とを比較し、アミノ酸変化とそれを認めた患者の番号及びその変化の頻度を示した。
【0062】
図7は、KIAA0172遺伝子の腎癌形成に対する関連性に関して遺伝子上の一塩基多型(SNPs)を示す。図7は、近年その利用が益々重要になってきている遺伝子多型を調べた結果をまとめたものである。多型は、アミノ酸配列を変えない遺伝子上の変異であり、図には、それを認めたコドン番号、アミノ酸配列、GenBank登録塩基配列及び患者に見られた一塩基多型の塩基配列及びその患者の番号とその多型の出現頻度を示した。
【0063】
図8は、KIAA0172遺伝子の腎癌形成に対する関連性についての塩基配列決定法による遺伝子変異解析(LOH、変異、SNPの関係)の結果を示す。図8は、前図(図4、6、7)をまとめたものである。この結果、LOH、変異、SNPの関係は特に認められないことがわかった。したがって、KIAA0172遺伝子の遺伝子発現の低下は、遺伝子変異が原因ではないことが判明した。また、本結果により、同遺伝子のLOH情報、変異情報、SNP情報を基礎とした機能解析が可能である。
【0064】
遺伝子の変異の確率は、通常1/100万程度であり、それに比較して有意に高い変異率を示している。したがって、上記の変異が腎癌の形成とは無関係に生じたものとは考えられない。また、アミノ酸置換も、アラニンからバリン、バリンからグリシンなど性質がほとんど変わらない置換から、セリンからアラニン、グルタミン酸からグルタミン、アルギニンからヒスチジンへと性質が大きく変わるものも含まれており、機能変化の可能性が高い。また、2アミノ酸残基の挿入の例も存在した。したがって、腎癌の形成に対する関連性は高いと考えられる。
【0065】
〔実施例3〕 KIAA0172遺伝子の機能解析
(1)細胞培養法、cDNA実験及び抗体の作製
腎細胞癌(RCC)培養細胞はAmerican Type Culture Collectionより入手した。VMRC-RCW細胞はMEM培地で、HEK293細胞はDMEM培地、(両培地共に10%子ウシ胎児血清を含む)で5%CO2存在下で37℃で培養した。初代細胞培養は、ヒトRCC組織と正常腎臓組織を外科標本から採取後、断片化した後、行った(Aoyagi, T. et al., Int. J. Urol. 3, 392-396 (1996))。これらの細胞は10%子ウシ胎児血清を含むDMEM中で培養した。正常腎細胞は腎細管細胞の特徴を保持していた。ESTsをスクリーニングするため、同じ患者由来の正常腎組織由来cDNAと腫瘍由来のcDNAのペアはクローンテック社より購入した。KIAA0172遺伝子産物蛋白質に対するウサギ抗体を作製するために、同蛋白質の406〜580アミノ酸残基に相当するcDNAをPCR増幅し、pGEXベクター(ファルマシア社)中のグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)遺伝子下流にフレームを合わせてクローニングし、融合蛋白質を作成した。そして、大腸菌細胞へ上記クローンを導入した後、IPTGにより誘導し、得られた蛋白質をグルタチオンセファロース(ファルマシア社)により精製した。この精製蛋白質はウサギを免疫感作するのに用いた。免疫血清はセファロースにGST融合蛋白質抗原を結合させたカラムを用いることによってアフィニティー精製を行った。
【0066】
(2) 免疫染色法による細胞内局在決定
KIAA0172cDNAはpcDNA3.1(+) (インビトロゲン社)にクローニングした。得られたクローンを、カバーガラス上で培養したHEK293細胞にLipofectamine 2000 (インビトロゲン社)を用いてトランスフェクションした。翌日、細胞を冷メタノール(-20℃)で固定した。これをリン酸緩衝液で洗浄した後、KIAA0172遺伝子産物蛋白質に対する抗体と共に室温で1時間培養した。FITC標識したウサギIgGを用いることにより蛍光顕微鏡(LSM-410, カールツァイス社)下で当該蛋白質を検出した。
【0067】
図9は、KIAA0172遺伝子の機能に関して、細胞内局在の様子を示す。図9は、KIAA0172遺伝子をGFP(Green Fluorescent Protein)遺伝子との融合遺伝子を作り、それぞれCos7細胞あるいはHEK293細胞内で発現させ、GFPの示す蛍光を検出したものである(対照としてGFPのみを発現した例も示した)。本実験の結果、同遺伝子産物である蛋白質は細胞質に存在することが明らかになった。
【0068】
図11は、KIAA0172遺伝子の機能に関して抗KIAA0172蛋白質抗体を用いた正常組織と癌組織の免疫染色の結果を示す。図11は、腎癌とその周辺の正常腎組織の組織切片を作成し、抗KIAA0172蛋白質抗体(1次抗体)を用いて免疫染色を行った結果である。HE染色結果からそれぞれの組織を確認し、ローダミンラベルした2次抗体を用いて蛍光検出した。結果として、正常組織での蛋白質が検出されたが、癌組織では検出されなかった。したがって、同抗体を用いることにより、癌組織の生理所見及びそれに基づく診断が可能である。
【0069】
(3) イムノブロッティングと免疫沈降
細胞抽出液は次のように調製した。細胞をリン酸緩衝液で3回洗浄し、バッファー(50 mM Tris-HCl, pH 7.5, 140 mM NaCl, 10% glycerol, 1 % Nonidet P-40, 100 mM NaF, 200 mM NaVO5, 1 mM PMSF, 10 μg/ml の leupeptin, aprotinin及びchymotrypsin)中、氷上で15分間静置することにより溶解させた。細胞溶解液は4℃で15分間遠心分離を行った後、免疫沈降反応に用いた。細胞溶解液と免疫沈降物はSDS-ポリアクリルアミド電気泳動により分離した後、ニトロセルロースメンブレンに転写した。このメンブレンは5%スキムミルクによりブロッキングを行い、KIAA0172遺伝子産物蛋白質に対する抗体を結合させた。KIAA0172遺伝子産物蛋白質を検出するためにAlkaline phosphatase-conjugated rabbit IgG (Promega社) と BCIP/NBT (GibcoBRL社)を使用した。
【0070】
図10は、KIAA0172遺伝子の機能に関して、細胞内局在と蛋白質の存在との関係を示す。図10は、KIAA0172遺伝子産物に対する特異的ポリクローナル抗体(抗KIAA0172蛋白質抗体)を用いた免疫染色実験の結果(図10A)とウエスターン解析の結果を示した(図10B)。免疫染色実験は、同遺伝子を発現しているVMRC-RCW細胞を用いて同遺伝子産物である蛋白質を抗体を用いて検出したものである。対照実験として、同抗体に対する抗原を用いた吸収実験(シグナルが検出されない)及び同遺伝子の発現の無いHEK293細胞内で発現プラスミド(pCMV-KIAA)を導入して同遺伝子を強制発現させた場合を示した。いずれにしても、細胞質に局在する結果を得た。一方、ウエスターン解析では、VMRC-RCW細胞抽出液において抗KIAA0172蛋白質抗体を用いて同遺伝子産物を検出し(IgGは対照実験でバンドを示さない)、また、発現プラスミド(pCMV-KIAA)を導入したHEK293細胞から得た抽出液でも同様のバンドを検出した。図10A中左の図はVMRC-RCW細胞の染色結果を、中央の図は抗原を加えた場合のVMRC-RCW細胞の染色結果を、右の図はKIAA0172遺伝子を強制発現させたHEK293細胞の染色結果を示す。図10B中、レーン番号1は、IgGを用いた免疫沈降の結果を、レーン番号2はKIAA0172抗体を用いた免疫沈降の結果を示す。また、番号3はVMRC-RCW細胞由来抽出物を用いたウエスターン解析結果を、番号4は、KIAA0172遺伝子を強制発現させたHEK293細胞を用いたウエスターン解析の結果を、番号5は元の細胞を用いたウエスターン解析の結果を示す。したがって、免疫染色法並びにウエスターン解析により細胞内での同遺伝子産物である蛋白質を同定することができた。
【0071】
(4) 遺伝子多型解析
患者R6正常腎組織由来の初代培養細胞(R6N)からのゲノムDNA(50μg)はプライマーCf(GCAGCTGTGAGGCCTCCTCAG)(配列番号45)とCr(TCCACAGACCTCCCAGCACATC)(配列番号46)を用いて増幅した。PCR条件は94℃で30秒、60℃で30秒、72℃で45秒を30サイクル行った。cDNAはR6Nの初代培養細胞から調製した。PCR増幅条件は上記と同じ条件で行った。PCR産物はQiagen社スピンカラムで精製後、Perkin Elmer Applied Biosystems社製キットとCfとCrプライマーにより両方向からシーケンスを行った。得られたシーケンスを確認するため、PCR産物はpGEM-T vector (Promega社)にクローニングした。得られたクローンをランダムに選択し同じプライマーでシーケンスを行い、確認を行った。
【0072】
図12は、KIAA0172遺伝子の機能に関してアレル特異的な遺伝子発現を示す。図12は、KIAA0172遺伝子の示すアレル特異的な遺伝子発現を示すデータである。ジーンスキャン解析では、マーカーD9S1779を用いたマイクロサテライト解析を行い、同マーカー部位が癌細胞において欠失していることを示した(図12A;ジーンスキャン解析による癌組織DNAにおけるアレル喪失結果)。さらに、RT-PCR法によりそれぞれ正常(R6N)及び癌(R6T)組織由来のcDNAを解析し、G6PDHは両者ともにほぼ同量発現しているにも係わらず、同遺伝子については正常組織でしか発現が認められなかった結果を示す(図12B;RT-PCR法による癌組織における遺伝子発現喪失結果)。さらに、その発現している遺伝子は、正常組織の2つのアレルの内、片方(多型部位がG配列のもの)だけであることをゲノムの多型(G配列とC配列の両方が存在している)と正常組織由来のcDNAを比較することにより明らかにした(図12C;一塩基多型を用いたアレル特異的発現結果)。このようなアレル特異性を示す癌抑制機能を有する遺伝子は他に例がないことから、同情報を利用した診断などへの利用が考えられる。
【0073】
(5) メチル化部位の解析
KIAA0172遺伝子のエキソン1領域のメチル化度はSodium bisulphite法(Clark, S.J., Nucleic Acids Res. 22, 2990-2997 (1994))により決定した。具体的には、まずゲノムDNA(125 ng)をサケ精子DNA 2μgと混合し0.3M NaOH中、37℃で20分間変性させた。シトシン残基は5 M sodium bisulphite (Sigma社)と5 mMハイドロキノン (Sigma社)中、55℃で5時間培養することにより硫化させた。DNAサンプルはQiagen社カラムで脱塩化し0.3M NaOH中で脱硫化したのち、エタノール沈殿を行った。処理したDNA(30 ng)はPCRにより増幅した。PCR条件は94℃で30秒、42℃で90秒、72℃で1分間を30サイクルで行った。全量50μlの反応液中に250μMdNTPとTaq DNAポリメラーゼ及び914FプライマーAAGAAGAGA AAAGGTAGTTGG(配列番号47)と1413RプライマーCTATTAAAACTCAATTTCTTT(配列番号48)を混合して使用した。PCR産物は914Fプライマーと1294RプライマーCCTAAAACCTCTATAATACACAAC(配列番号49)を用いて94℃で30秒、52℃で1分、72℃で1分を25サイクルの条件でセミ-ネスティッドPCRを行った。PCR産物はQIA-quick PCR purification kit (Qiagen社)により精製した。精製産物は直接pGEM-T vector (Promega社)にクローニングした。クローンをランダムに選択し、ABI 310 sequencerによりシーケンス解析しメチル化部位を確認した。
【0074】
図13は、KIAA0172遺伝子の機能に関して、正常と癌組織及び株化癌細胞のメチル化パターンを示す。図13は、KIAA0172遺伝子の第1エキソンに存在するCpG Islandとその中の6箇所のCpG配列についてメチル化のパターンをsodium bisulfite法を用いて調べた結果である。患者由来(番号で示す)の正常(N)と癌(T)組織DNAを10組と株化細胞2種類について、それぞれのCpG配列についてメチル化されている場合(黒塗りのボックス)とされていない場合(白抜きのボックス)を示した。図から明らかなように、癌組織では、それぞれのアレルの少なくとも1ヶ所はメチル化されているが、正常組織では、10例中9例について約半数が全くメチル化されていないアレルを有することがわかった(64Nの1例のみは例外)。したがって、本遺伝子は腎癌の正常組織においても既にメチル化を示しており、正常な状態ですでにリスクの高い状態であることを診断することができると考えられる。また、株化細胞HEK293及びG-402細胞に関しても既に全てのアレルがメチル化されていることが判明した。この結果とアレル特異性の結果を合わせて考えると、同遺伝子を利用することにより、リスク因子の検査などに利用することが可能であると考えら得る。
【0075】
図14は、KIAA0172遺伝子の機能に関して、5-アザ-2'デオキシシチジン処理による遺伝子発現の活性化を示す。図14は、KIAA0172遺伝子の発現が認められない株化細胞2種に対して5-アザ-2'デオキシシチジン処理を行うことにより発現が見られた。株化細胞HEK293及びG-402細胞においては同遺伝子は発現していないことから、5-アザ-2'デオキシシチジン処理により脱メチル化が起こり、再発現したと考えられる。したがって、同遺伝子の不活性化のメカニズムはメチル化によるものと判明した。
【0076】
〔実施例4〕 KIAA0172遺伝子の機能解析
(1)腎癌由来の癌細胞株に対する増殖抑制能(その1:HEK293細胞)
増殖抑制実験を以下の方法により行った。当該遺伝子の塩基配列340から4658までをInvitrogenのpcDNA3.1 ベクター(pCMV-vec)に導入し、発現用のプラスミド(pCMV-KIAA)を作成した。本ベクターは、CMVプロモーターを持ち、その下流に挿入された遺伝子の発現を強制的に行う。また、ネオマイシン耐性遺伝子を含んでいるため、抗生物質ネオマイシンによる選択が可能である。挿入した当該遺伝子領域は、翻訳開始メチオニンから翻訳終了のコドンを含み、当該遺伝子産物タンパク質全長が発現される。
【0077】
6 cmシャーレに5.1×105個のHEK293細胞をまき、トランスフェクション実験を行った。KIAA0172発現ベクター(5μg)はLipofectamine 2000を用いてHEK293細胞へトランスフェクションさせた。コントロールとして空ベクター(pcDNA3.1(+))をトランスフェクションさせた。トランスフェクション後、細胞は5×103細胞になるまで培養した。2週間 Geneticin (500 μg/ml)で処理した後、コロニーの形成を確認した。得られたコロニーを固定し、ギムザ液で染色したのち、細胞数を計測した。安定HEK293細胞株は、Geneticinによる選択の後コロニーを単離した。これらの細胞がKIAA0172遺伝子を発現していることは、RT-PCRにより確認した。
【0078】
まず、HEK293細胞では、当該遺伝子を発現していないことをRT-PCRにより確認した。次に、当該遺伝子を発現ベクターに結合して、株化腎癌細胞であるHEK293細胞に導入し、同細胞の中において当該遺伝子を発現させたところ、同細胞の増殖抑制が見られた。すなわち、対象として発現ベクター(pCMV-vec)のみを導入した細胞の増殖に比べ、当該遺伝子を発現するプラスミド(pCMV-KIAA)を用いたときは24%のコロニー形成率を示した(図15;HEK293細胞を用いたコロニー形成能)。図15は、KIAA0172遺伝子の発現がHEK293細胞では認められないことをRT-PCRで示し(図15A;HEK293細胞中での発現)、その細胞に発現プラスミド(pCMV-KIAA)を導入して同遺伝子を強制発現させた場合と対照として空ベクターのみを導入した場合とを比較し、KIAA0172遺伝子を導入した場合にコロニー数が減少することから、同遺伝子の発現により細胞増殖が抑制されたことを示している(図15B;HEK293細胞に導入したときの細胞増殖抑制能)。
【0079】
上記の現象を説明するためには、当該遺伝子(プロモーター領域及びその他の転写調節領域も含む)に変異が起こり、発現が抑制された結果、癌化が誘導されたと考える必要が有り、したがって、当該遺伝子が腎癌の形成に係っていることを示す有力な証拠である。
【0080】
(2)腎癌由来の癌細胞株に対する増殖抑制能(その2:G-402細胞)
増殖抑制実験を上記方法により行った。
【0081】
まず、G-402細胞では、当該遺伝子を発現していないことをRT-PCRにより確認した。次に、当該遺伝子を発現ベクターに結合して、株化腎癌細胞であるG-402細胞に導入し、同細胞の中において当該遺伝子を発現させたところ、同細胞の増殖抑制が見られた。すなわち、対象として発現ベクター(pCMV-vec)のみを導入した細胞の増殖に比べ、当該遺伝子を発現するプラスミド(pCMV-KIAA)を用いたときは30%のコロニー形成率を示した(図16)。図16は、KIAA0172遺伝子の発現がG-402細胞では認められないことをRT-PCRで示し(図16A)、その細胞に発現プラスミド(pCMV-KIAA)を導入して同遺伝子を強制発現させた場合と対照として空ベクターのみを導入した場合とを比較し、KIAA0172遺伝子を導入した場合にコロニー数が減少することから、同遺伝子の発現により細胞増殖が抑制されたことを示している(図16B;G-402細胞に導入したときの細胞増殖抑制能)。
【0082】
上記の現象を説明するためには、当該遺伝子(プロモーター領域及びその他の転写調節領域も含む)に変異が起こり、発現が抑制された結果、癌化が誘導されたと考える必要が有り、したがって、当該遺伝子が腎癌の形成に係っていることを示す有力な証拠である。
【0083】
〔実施例5〕 KIAA0172遺伝子の機能解析
腎癌由来の癌細胞株に対する形質転換能(細胞形態解析)
増殖抑制実験を上記方法により行った。得られた細胞を光学顕微鏡を用いて観察した。
当該遺伝子を発現ベクターに結合して、株化腎癌細胞であるHEK293細胞に導入し、同細胞の中において当該遺伝子を発現させたところ、同細胞の形態変化が見られた。すなわち、対象として発現ベクターのみを導入した細胞の形態に比べ、当該遺伝子を導入し強制発現を行った細胞においては、細胞の接着面積が増加し、細胞間の接着度が増加した(図17)。図17中右がKIAA0172遺伝子を導入した細胞である。図17は、HEK293細胞にKIAA0172遺伝子発現プラスミド(pCMV-KIAA)を導入して同遺伝子を強制発現させた場合と対照として空ベクターのみを導入した場合とを比較し、KIAA0172遺伝子を導入した場合に細胞の形態が変化することを示している。図はそれぞれ拡大倍率などを変えた結果を示した。
【0084】
上記の現象は、当該遺伝の機能として、遺伝子の増殖を適正に制御し、癌細胞に見られる無制御な増殖を抑制する機能を有し、その増殖抑制の結果、細胞の形態が変化したと考えられる。細胞増殖制御のメカニズムは、増殖因子への相互作用の可能性が考えられるが、当該遺伝子産物に対する抗体を用いた免疫染色実験により、細胞骨格への直接の影響の可能性も考えられる。
【0085】
〔実施例6〕 KIAA遺伝子の機能解析
(1)機能領域解析(その1)
塩基配列による相同性検索は以下の方法により行った。米国ジョージタウン大学から公開されている遺伝子ファミリー検索システムGeneFINDを利用して、当該遺伝子のアミノ酸配列(合計1194残基)を用いて相同性を示すアミノ酸配列を検索した。用いた、ソフトウエアは、Wuら(Bioinfomatics誌14巻223-224ページに掲載)のものを使用した。その結果、高度の相同性を示すタンパク質としてヒトのDAPK遺伝子産物と157アミノ酸残基(当該遺伝子産物アミノ酸残基1006から1162までとDAPKタンパク質アミノ酸残基481から630まで)において34.177%の相同性を示した。同領域は、アンキリン(ankyrin)反復構造を含んでいた(図3)。
【0086】
遺伝子相同性検索の結果、当該遺伝子産物は多くの真核生物遺伝子産物に見られる機能部位アンキリン反復構造に対して有意な相同性が判明した。アンキリン反復構造は多くの遺伝子に見られるが、当該遺伝子産物の持つアンキリン相同部位は特にヒトのDAPK遺伝子産物に対して高い相同性を示した。
上記の相同性は、アミノ酸配列上で約34%であり、有意な相同性と考えられる。
【0087】
(2)機能領域解析(その2)
変異体(部分欠失)解析による検定を以下の方法により行った。CLONTECH社のMATCHMAKER GAL4 Two-Hybrid System 3(Two-Hybrid法のキット)を用いて、機能が想定される部位に対する結合タンパク質(あるいはその一部)を含む遺伝子をクローン化した。アンキリン相同部位を含む当該遺伝子の一部(アミノ酸残基995から1194まで)を酵母AH109株の遺伝子発現ベクターpGBKT7のGAL4遺伝子由来のDNA結合部位に導入し融合タンパク質を酵母内で合成させた。この酵母に、腎臓のcDNAライブラリーのcDNAとGAL4のAD部位(アミノ酸残基768から881まで)の両方を含むプラスミド(ベイト)を導入して遺伝子発現をさせた。ベイトの中に当該遺伝子のアンキリン相同部位と相互作用を行う遺伝子産物が含まれる場合は、AD部位がGAL4遺伝子発現を誘導するために発色する。本方法により、ベイトのなかに含まれるアンキリン相同部位と相互作用を行う遺伝子(あるいはその一部)由来のcDNAをクローンとして得ることができる。
【0088】
当該遺伝子のアンキリン相同部位のみを有する変異体を用いて、Two-Hybrid法により相互作用を示す遺伝子の検索を行ったところ、複数(少なくとも10種類)の遺伝子由来cDNAがクローンとして得られた。したがって、同アンキリン相同部位が他の遺伝子産物(タンパク質)との相互作用を行っている部位であることが明らかになった。
同方法は、タンパク質間の相互作用を検定する有力な手法の一つであり、したがって、得られた情報は、信頼性が高いと考えられる。
【0089】
〔実施例7〕 マウスを用いた細胞増殖実験
安定にKIAA0172遺伝子を発現するHEK293細胞株の細胞を集め、リン酸緩衝液に懸濁した。その後、300μl中に5×104細胞になるように調製した懸濁液を3〜4週令のオスのBALB/cヌードマウス脇腹に1または2箇所接種した。接種された腫瘍細胞の成長は10日ごとに2回の割合で腫瘍容量を測定することにより評価した。全ての動物実験は研究所内のガイドラインに沿って行われた。
【0090】
図18は、KIAA0172遺伝子の細胞増殖抑制能に関して、ヌードマウスを用いた細胞増殖抑制実験の結果を示す。図18は、HEK293細胞にKIAA0172遺伝子発現プラスミド(pCMV-KIAA)を導入して同遺伝子を強制発現させた細胞と対照として空ベクターのみを導入した細胞をそれぞれヌードマウスの腹腔に導入し、それぞれの細胞の増殖を観察した結果を示す。結果として、対照の空ベクターを用いた場合は、細胞増殖が押さえられずに癌を形成するのに対し、KIAA0172遺伝子を発現した場合は、細胞増殖が抑制されていることがマウスを使った実験でも明らかになった。これらの一連の細胞増殖抑制実験により、同遺伝子の癌に対する増殖抑制効果が明らかであり、診断のみならず治療への利用が考えられる。
【0091】
【発明の効果】
本発明の治療薬により癌の治療が可能になり、また本発明の検出薬により癌を検出することが可能になる。
【0092】
【配列表】
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【0093】
【配列表フリーテキスト】
配列番号2〜49:合成DNA
【図面の簡単な説明】
【図1】 KIAA0172遺伝子のゲノム構造を表す図である。
【図2】 KIAA0172遺伝子の構造を表す図である。
【図3】 KIAA0172遺伝子の構造(アミノ酸配列)を示す図である。
【図4】腎癌LOH解析結果を示す図である。
【図5】 RT-PCRによる腎癌患者における遺伝子発現状態を示す図である。
【図6】腎癌における遺伝子変異を示す図である。
【図7】 KIAA0172遺伝子上の一塩基多型(SNPs)を示す図である。
【図8】 LOH、塩基配列の変異およびSNPの関係を示す図である。
【図9】 KIAA0172遺伝子の細胞内局在を示す図である。
【図10】 KIAA0172遺伝子の細胞内局在と蛋白質の存在の関連を示す図である。
【図11】抗KIAA0172蛋白質抗体を用いた正常組織と癌組織の免疫染色結果を示す図である。
【図12】アレル特異的なKIAA0172遺伝子の発現を示す図である。
【図13】正常と癌組織及び株化癌細胞のKIAA0172遺伝子のメチル化パターンを示す図である。
【図14】 5-アザ-2'デオキシシチジン処理によるKIAA0172遺伝子の発現の活性化を示す図である。
【図15】 HEK293細胞を用いたコロニー形成実験による、KIAA0172遺伝子の増殖抑制能を示す図である。
【図16】 G-402細胞を用いたコロニー形成実験による、KIAA0172遺伝子の増殖抑制能を示す図である。
【図17】腎癌由来癌細胞株HEK293細胞に対する形質転換能を示す図である。
【図18】ヌードマウスを用いた細胞増殖抑制実験による、KIAA0172遺伝子の増殖抑制能を示す図である。

Claims (21)

  1. KIAA0172遺伝子がコードする配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたは配列番号1に記載のアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加したアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、癌細胞増殖抑制活性を有するポリペプチドを有効成分とする癌治療薬。
  2. 配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードするKIAA0172 DNAを有効成分とする癌治療薬。
  3. KIAA0172遺伝子がコードする配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドを認識する抗体を含む癌検出薬。
  4. 配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードするKIAA0172 DNAを含む癌検出薬。
  5. 請求項1または2に記載の治療薬及び医薬上許容される担体を含む癌治療用組成物。
  6. 請求項3または4に記載の検出薬及び医薬上許容される担体を含む癌検出用組成物。
  7. 配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードするKIAA0172 DNAを含むベクターを有効成分とする癌治療薬。
  8. 配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードするKIAA0172 DNAを含むベクターを含む癌検出薬。
  9. KIAA0172遺伝子がコードする配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドを認識する抗体を生体から採取した試料と接触させる工程を含む癌を検出する方法。
  10. 組織切片を用いる免疫染色法である、請求項9記載の癌を検出する方法。
  11. 配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードするKIAA0172 DNAを生体から採取した試料と接触させる工程を含む癌検出法。
  12. 配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードするKIAA0172 DNAの下記(i)〜(r)の一塩基多型部位の塩基を検出することによりアレル特異的発現を検出する方法。
    (i) コドン番号273の3番目の塩基のT/G多型部位
    (j) コドン番号299の3番目の塩基のG/C多型部位
    (k) コドン番号372の1番目の塩基のC/T多型部位
    (l) コドン番号380の3番目の塩基のT/G多型部位
    (m) コドン番号497の3番目の塩基のT/G多型部位
    (n) コドン番号453の3番目の塩基のC/T多型部位
    (o) コドン番号478の3番目の塩基のC/T多型部位
    (p) コドン番号507の3番目の塩基のG/T多型部位
    (q) コドン番号1003の3番目の塩基のC/T多型部位
    (r) コドン番号1120の3番目の塩基のG/C多型部位
  13. 配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードするKIAA0172 DNAの下記(i)〜(r)の一塩基多型部位の塩基を検出し、検査しようとする対象から採取した試料におけるアレル特異的発現を検出する、癌罹患のリスクを評価するための検査方法。
    (i) コドン番号273の3番目の塩基のT/G多型部位
    (j) コドン番号299の3番目の塩基のG/C多型部位
    (k) コドン番号372の1番目の塩基のC/T多型部位
    (l) コドン番号380の3番目の塩基のT/G多型部位
    (m) コドン番号497の3番目の塩基のT/G多型部位
    (n) コドン番号453の3番目の塩基のC/T多型部位
    (o) コドン番号478の3番目の塩基のC/T多型部位
    (p) コドン番号507の3番目の塩基のG/T多型部位
    (q) コドン番号1003の3番目の塩基のC/T多型部位
    (r) コドン番号1120の3番目の塩基のG/C多型部位
  14. 検査しようとする対象から採取した試料を用いて、配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードするKIAA0172 DNAを含むゲノム領域のヘテロ接合性の消失(LOH)を特定する、癌罹患のリスクを評価するための検査方法。
  15. 染色体9p24部位のマイクロサテライトマーカーであるD9S1779およびD9S1858の一方または両方におけるヘテロ接合性の消失を決定することを含む請求項14に記載の癌罹患のリスクを評価するための検査方法。
  16. 検査しようとする対象から採取した試料を用いて、配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードするKIAA0172 DNAのメチル化を解析することを含む癌罹患のリスクを評価するための検査方法。
  17. 検査しようとする対象から採取した試料を用いて、配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードするKIAA0172 DNAに存在する1つ以上のCpG配列のメチル化パターンを決定することを含む、請求項16記載の癌罹患のリスクを評価するための検査方法。
  18. CpG配列が配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードするKIAA0172 DNAの第1エキソンに存在するCpGアイランド中のCpG配列である、請求項17記載の癌罹患のリスクを評価するための検査方法。
  19. 配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードするKIAA0172 DNAに存在する1つ以上のCpG配列のメチル化パターンを決定することを含む、請求項18記載の癌罹患のリスクを評価するための検査方法。
  20. CpG配列が配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードするKIAA0172 DNAの第1エキソンに存在するCpGアイランド中のCpG配列である、請求項19記載の癌罹患のリスクを評価するための検査方法。
  21. 生体から採取した試料を用いて、配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードするKIAA0172 DNAの転写または発現量を測定することを含む、癌の検出法。
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