以下、本発明を詳細に説明する。
シート状の絶縁体の平面方向および厚み方向にわたった導電部を形成する場合を例に挙げて、本発明の複合部材の製造方法を図1を用いて説明する。
図1に本発明の複合部材の製造方法を示す断面概略図を示す。
本発明においては、少なくとも工程(1)〜工程(3)、さらに必要により下記の(4)、(5)を行なうことによって、微細なパターンを有する導電部を絶縁体に形成する。ここでは、光照射によりイオン交換性基を生成する化合物を含む感光性組成物を用いた場合を示す。以下に各工程について述べる。
工程(1):まず、図1(a)に示すように、光照射によりイオン交換性基を生成する化合物を含有する感光性組成物層2を絶縁体1に形成する。絶縁体1の平面方向および厚み方向に導電部のパターンを形成する場合には、絶縁体1を多孔質体とすることにより容易に精度良く形成できる。
工程(2):次に、図1(b)に示すように絶縁体1に形成された前記感光組成物層2に対してマスク3を介してパターン露光し、感光性組成物層2の露光部4にイオン交換性基を生成させる。絶縁体1が多孔質体である場合には、絶縁体1の内部も露光される。
工程(3):その後、工程(2)におけるパターン露光により露光部4に生成したイオン交換性基に、図1(c)に示すように金属イオンまたは金属を結合させる。
工程(4):必要に応じて、図1(d)に示すように露光部4のイオン交換性基に結合した金属イオンを還元処理して金属イオンを金属化することにより、導電性を向上させる。
工程(5):さらに必要に応じて、図1(e)に示すように露光部4に形成された導電部に対し、導電性を向上させるために無電解めっき5を施す。
なお、露光によりイオン交換性基を消失する化合物を含む感光性組成物を用いた場合には、第2工程において露光部のイオン交換性基が消失して未露光部にイオン交換性基が残留し、ネガ型のパターンが形成される。
このような本発明の複合部材の製造方法に係る工程(1)乃至(3)(必要に応じて(4)、(5))においては、レジストの塗布、エッチングおよびレジストの剥離などの煩雑な工程が必要ない。したがって、フォトリソグラフィーや機械的手法を用いて貫通孔を形成する従来の配線基板の製造方法に比べて、工程が簡略化される。また、絶縁体として多孔質体を用いれば、選択的にめっきや導電ペーストを充填して導電部を形成する工程がなく、作業が容易になる。
しかも、導電部のパターン形状の精度も向上させることができ、数十μm以下に制御した微細なパターンを容易に形成することが可能となる。そのため、絶縁体に形成する導電部の設計の自由度も向上する。
なお、特開平11−24977号公報に記載された配線基板の製造方法では、絶縁体全体に金属塩を含む感光性組成物を予め形成する必要がある。これに対して、本発明では、そうした工程は必要ないため、望まない部分に金属核が析出するという現象が生じない。その結果、所望の部分にのみ精度良く微細なパターン形状を有する導電部を形成することができる。
本発明の第1および第2の態様においては、光照射によりイオン交換性基を生成あるいは消失する化合物として、280nm以上の波長の光照射によりイオン交換性基を生成する化合物を用い、露光光として280nm以上の波長の光を用いる。それにより、露光によって絶縁体に生じる損傷が低減し、絶縁体の劣化が少なくなる。また、絶縁体における露光光の吸収が少なくなる。このため、特に多孔質体からなる絶縁体を用いて、膜厚方向に貫通した導電部を形成する際に有利となる。特に配線基板に用いるには、絶縁体がポリマーの場合、耐熱性ポリマーを用いる必要がある。耐熱性ポリマーの多くは、主鎖あるいは側鎖中にベンゼン環などの芳香族・複素環系の構造を有することが多く、こうした芳香族・複素環系の構造は紫外領域の光を吸収する。例えばベンゼン環は、254nm付近に吸収ピークを有する。そのため280nm以下の短波長の光はほとんど吸収されてしまい、膜厚方向に貫通して露光することが難しい。芳香族・複素環系の構造の吸収が少ない長波長の光を露光光とすることによって、より精度高く微細なパターンを有する導電部を形成することができる。
また、本発明の第3の態様においては、光照射によりイオン交換性基を生成する化合物として、オニウム塩誘導体、スルフォニウムエステル誘導体、カルボン酸誘導体およびナフトキノンジアジド誘導体から選択される少なくとも1種の誘導体を含有する感光性化合物を使用する。ここで列挙した化合物群は、汎用性に富み、光照射により容易にイオン交換性基を生成する。このため、精度良く微細なパターンを有する導電部を形成することができる。さらに、これらはセラミックや有機絶縁材料等のいかなる絶縁体にも塗布することができる。したがって、低コストな成形加工性に富む絶縁体の使用を可能にする。
特開平7−207450号公報に記載されたPTFEを用いた方法では、親水性基を有する化合物として通常、水やアルコールなどの液体を用い、これらの液体が多孔質フィルムに湿潤した状態で露光を行なう必要がある。このため、プロセスや露光装置が煩雑になるなどの問題点があった。しかしながら、本発明によれば、このような問題点は生じず、容易に導電部が形成できる。
本発明の製造方法には、ナフトキノンジアジド誘導体およびカルボジイミド誘導体を少なくとも含有する感光性組成物が好ましく使用される。
ナフトキノンジアジド誘導体は感光性成分として作用し、こうした誘導体としては、製膜性を考慮して例えばフェノール樹脂付加型のような高分子量を有する化合物に付加した誘導体を用いることが好ましい。この時、ナフトキノンジアジド誘導体は、i線の波長(365nm)以上の波長の光を照射することにより、容易にイオン交換性のカルボキシル基を解像度良く生成する。その反応中に副生される生成物は窒素のみであり、これは気体として容易に系外に排出される。したがって、その後の金属イオン置換反応や、必要に応じて行なわれる無電解めっき過程に影響を及ぼさない。
また、ポリカルボジイミド誘導体は、アルコール、チオール、アミン等に含まれる活性水素化合物と高い反応性を示すカルボジイミド構造を有している。こうしたポリカルボジイミド誘導体を配合することで、ナフトキノンジアジド誘導体と容易に反応させることができる。このように、両誘導体を反応させることによって、感光性組成物層が三次元的にゲル化した構造となる。このため、水系および有機溶剤系いずれの溶剤にも不溶になり、かつ耐熱性も高めることができる。その結果、導電部と絶縁体との接着強度が向上するうえ、複合部材全体の耐薬品性、耐熱性を向上させることができる。
本発明においては、絶縁体として多孔質体を用いることが好ましい。特に、この多孔質体の内部空孔表面にナフトキノンジアジド誘導体を含む感光性組成物が被覆されている場合には、上述したような工程(2)を行なうことによって、パターン形状の精度の高い導電部を形成することができる。
シート状の絶縁体を用いて、平面方向および厚み方向にわたって本発明の方法により導電部を形成する場合、得られる複合部材は、次のような構成とすることが好ましい。図2を参照して、これについて説明する。
図2には、本発明の方法により製造される複合部材の一例の概略図を示す。図2に示すように、多孔質の絶縁体21表面には、露光によりイオン交換性基を生成する化合物を含有する感光性組成物層22が存在する。露光を施すことによって、露光部にはイオン交換性基を含有する有機化合物24が形成される。有機化合物24のイオン交換性基は、イオン交換反応や吸着反応によって金属イオンや金属微粒子を担持する。引き続き無電解めっきを施すことで、厚みをもった導電部23が形成される。こうして本発明の方法により複合部材が作製される。ここで有機化合物24は、絶縁体21および導電部23の両方に強固に接着して、両者の密着性を向上させている。このように絶縁体21および導電部23との間に有機化合物24が存在する複合部材においては、絶縁体21表面における有機化合物24の量は、以下の条件を満たすことが好ましい。すなわち、導電部23に接触せずに存在する有機化合物24の量は、絶縁体21と導電部23との界面に存在する有機化合物24の量よりも少ないことが望ましい。親水性のイオン交換性基は、導電部23と絶縁体21との密着性の向上に寄与する。しかしながら、導電部23が形成された部位以外に有機化合物の親水性基が存在する場合には、隣接した導電部23間での金属のマイグレーションが起こりやすい。また吸湿性が高まり、絶縁性が低下してしまう。
本発明の方法により製造された複合部材を用いて、多層配線基板を作製することができる。まず、シート状の絶縁体の平面方向および厚み方向にわたって、本発明の方法により導電部を形成して、複合部材を製造する。こうして得られた複合部材を複数積層して作製された多層配線基板について、図3を参照して説明する。
図3には、本発明の方法により製造された複合部材を用いた多層配線基板の一例を表わす概略図を示す。図3に示すように、多層配線基板31は、ビア32や配線33などの導電部を備えた絶縁体34からなる多孔質フィルムを、複数積層することによって構成される。ビア32および配線33は、多孔質フィルムの微細孔の表面あるいは内部に金属を充填することによって形成されている。こうした導電部の端面には、金属などの導電性物質のみで形成された導電部35が形成されている。
すなわち、図3に示す多層配線基板31においては、個々の多孔質フィルムにおける導電部32,33の最表面には絶縁体成分を含まない導電体からなる層35が存在する。このため、導電部を低抵抗化することができる。特に周波数の高い領域では、これら構造の表皮効果によりインピーダンス特性を向上することが可能となる。
本発明の方法により製造される複合部材は、積層せずに単層で配線基板として用いることができる。このような配線基板、または上述したような多層配線基板上に電子部品を電気的に接続して、電子パッケージを得ることができる。
こうして構成された電子パッケージにおける配線基板には、微細パターンを有する導電部が精度高く形成されているため、高密度実装が可能となる。以上述べた配線基板あるいは多層配線基板の具体例としては、携帯機器やマイクロマシンなどの高密度実装や、フリップチップ、球状半導体の実装などに欠かせない多層配線基板やインターポーザー、立体配線等に好適に用いられ得る多層配線や三次元配線などが挙げられる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明において、配線やビアなどの導電部が形成される絶縁体としては、いかなる絶縁体材料からなるものであっても良いが、具体的には樹脂やセラミックスなどが挙げられる。
樹脂としては、例えばガラスエポキシ樹脂や、ビスマレイミド−トリアジン樹脂およびPPE樹脂等、プリント配線基板の絶縁体として従来からよく用いられる樹脂や、その他ポリオレフィン、アクリル系ポリマー、ポリアリルエーテル系などのポリエーテル、ポリアリレート系などのポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルスルホン等の一般にエンジニアリングプラスチックと呼ばれている樹脂が挙げられる。
また、セラミックスとしては、ガラス、アルミナ、および窒化アルミ等が挙げられる。
特に本発明において3次元的に導電部を形成する場合、すなわち例えばシート状の絶縁体に平面方向のみならず厚み方向にも導電部を形成する場合には、絶縁体材料からなる多孔質体を用いることによって、精度のよい導電部を容易に形成できる。
樹脂からなる多孔質体は、湿式法または乾式法などの手法によって容易に作製できる。
例えば、湿式法により多孔質樹脂シートを作製する場合には、まず、孔形成剤である無機微粉末および有機溶剤を樹脂に添加し、練り合わせて混合物を調製する。次いで、これを成膜した後、溶剤で無機微粉末および有機溶剤を抽出する。その後、必要に応じて延伸する。
また、例えば乾式法により多孔質樹脂シートを作製する際には、湿式法の場合と同様に調製した混合物を、シート状に押出し成形する。次いで、必要に応じて熱処理後、これを一軸もしくは二軸延伸する。
これら湿式法および乾式法のいずれの手法により多孔質樹脂シートを作製する場合も、必要であれば寸法安定性のために、延伸後の樹脂シートに対して熱処理を行なってもよい。また、前述の添加物等を加えずに、樹脂シート成形後、この樹脂シートを延伸多孔質化することによっても、所望の多孔質樹脂シートを容易に作製できる。
また、セラミックスからなる多孔質体としては、例えばアルミナなどは電解液中でアルミニウムを陽極酸化するなどして作製することができる。
本発明に係る複合部材の製造方法において、3次元的に導電部を形成する場合、すなわち例えばシート状の絶縁体に平面方向のみならず厚み方向にも導電部を形成する場合には、多孔質体の内部も露光する。この際、露光光の散乱を防ぐため、多孔質体の空孔径は露光波長に対して十分に小さいことが好ましい。しかしながら、空孔径が余り小さすぎると、感光性組成物が含浸しにくくなったり、露光光が透過しにくくなったりするおそれがある。特に配線を形成する場合には、充填された金属は空孔内で良好に連続している必要があるが、空孔径が小さすぎると、金属が空孔内で互いに分離した微粒子状態になるおそれがある。こうした不都合を避けるため、多孔質体の空孔径は30〜2000nmであることが好ましく、50〜1000nmであることがより好ましく、100〜500nmの範囲に設定されることが最も好ましい。
空孔径が上述した範囲を逸脱し、露光波長よりもかなり大きな場合でも、多孔質体と近いか同じ屈折率を有する液体、あるいは低沸点のアモルファス固体などを散乱防止用として空孔内に充填すれば、露光時の散乱などを防止することは可能である。しかしながら、空孔径が余り大きくなると、やはりめっきなどによって空孔内に十分に金属を充填することが難しくなるうえ、導電部の幅を数十μm以下と十分に小さくすることが困難になる。また、多層配線基板を作製する際には、層間でのショートなどが起こりやすくなる。これらを考慮に入れると、露光時に散乱防止用の液体などを用いる場合にも、多孔質体の空孔径は5μm以下に設定されるのが望まれる。
また多孔質体は、膜厚方向にパターン状、特に二次元方向に連続して導通したライン形の部位を形成した複合部材を作製するために、三次元的に連続した空孔を有する多孔質体であることが望ましい。
さらに多孔質体に存在する連続した空孔は、露光光の散乱を防ぐために、規則的に均質に形成されていることが好ましい。これは、前記導電ラインの微細化のためにも有効である。
また多孔質体における連続した空孔は、多孔質体外部に開放されていることが必要であり、外部に開放端のない独立気泡はできるだけ少ないことが望まれる。また、配線の導電率などを向上させるために、空孔率は多孔質体の機械的強度が保たれる範囲において高い方が望まれる。具体的には、空孔率は40%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。
上述したような三次元的に連続した空孔を有する多孔質体は、種々の方法によって作製することができる。例えば、ビーズを積層したものや、グリーンシート、ビーズの積層構造を鋳型として作製した多孔質体、気泡や液泡の積層体を鋳型として形成した多孔質体、シリカゾルを超臨界乾燥して得られるシリカエアロゲル、ポリマーのミクロ相分離構造から形成した多孔質体、ポリマーやシリカなどの混合物のスピノーダル分解によって生じた共連続構造などの相分離構造から適切な相を除去することによって作製した多孔質体、エマルジョンテンプレーティング法などによって作製した多孔質体、B.H.Cumpstonら(Nature,vol.398,51,1999)やM.Campbellら(Nature,vol.404,53,2000)が報告しているような三次元光造形法を用いて作製した多孔質体などを用いることができる。
ビーズの積層構造の空隙に樹脂や金属酸化物ゲルなどを充填して硬化させた後に、ビーズを除去して作製される多孔質体としては例えばY.A.Vlasovら(Adv.Mater.11, No.2,165,1999)やS.A.Johnsonら(Science Vol.283,963,1999)が報告している。
また、規則的で空孔率の高い多孔質体を低コストで作製することが可能なことから、気泡や液泡の積層体を鋳型として形成されたポリマーなどの多孔質体が好ましい。この多孔質体については例えばS.H.Parkら(Adv.Mater.10,No.13,1045,1998)やS.A.Jenekheら(Science Vol.283,372,1999)が報告している。
また、シリカゾルを超臨界乾燥して得られる空孔率90%以上、空孔径100nm以下程度の連続した空孔を有するシリカエアロゲルは、空孔率が高く、かつ透明性に優れており好ましい。
なお、空孔径の制御が容易で低コストで製造が可能な点から、ポリマーなどが示す相分離構造から形成された多孔質体が最も好ましい。
ミクロ相分離構造から作製した多孔質体は、空孔の内表面の状態を制御することが容易である。すなわち、ミクロ相分離構造の1相を除去する際に、完全に除去せずに空孔内表面に一部残留させる。これによって、空孔の内表面の表面状態を変化させることができる。例えば、A−B−C型のトリブロックコポリマーにおいてAおよびCの分子量がBと比較して充分に大きいものを用いて、C相を除去してA相からなる多孔質体を形成する場合には、B相が空孔内表面に配置される。そのため、多孔質体の全体としての性質は大きく変化させることなく、空孔内表面の性状を変化させることができる。したがって、含浸樹脂と多孔質体との接着性を向上させることができる。この場合、B相はA相と化学結合によって完全に結合しているため、通常の表面吸着型の表面処理剤よりも優れている。
ポリマーが示す相分離構造としては特に限定されず、例えばポリマーブレンドが示すスピノーダル分解によって形成された相分離構造、ブロックコポリマーやグラフトコポリマーが示すミクロ相分離構造などが挙げられる。空孔径の制御が容易で規則的な多孔質構造を形成可能な点からブロックコポリマーやグラフトコポリマーが示すミクロ相分離構造がもっともよい。
ミクロ相分離構造の中でも特に共連続構造は、三次元的に連続な2つの相からなる相分離構造であり、1相を選択的に除去することによって三次元的に連続な空孔を有する多孔質体を形成することができるため好ましい。こうした共連続構造のなかでも、OBDD構造やGyroid構造などが好ましい。また、多孔質体を構成するポリマー鎖のコポリマー中における重量分率が30〜70%の範囲に設定されることがよい。
得られる多孔質体の空孔径は、相分離構造から除去する相を構成しているポリマー鎖の分子量によって制御することが可能である。また、こうしたポリマー鎖と相溶性のよいホモポリマーなどを混合することによって、多孔質体の空孔径を制御することもできる。ホモポリマーを混合する手法を用いることによって、コポリマーのみでは形成しにくい100nm以上の空孔径を有する多孔質体を、比較的容易に作製することができる。ただしホモポリマーの混合量を多くしすぎると相分離構造の規則性が低下する。そのためホモポリマーの混合量はコポリマーに対して重量比で10%以下にすることが好ましい。
共連続構造から作製される三次元多孔質体は、三次元多孔質構造を構成するミクロドメインの断面の回転半径の2√3倍と4倍のいずれにも相関距離をもつ連続空孔を有する。これは、小角X線散乱法や光散乱法によって確認することができる。なお、相関距離をもつとは、所定のドメインの中心からの距離rに対して、周囲のドメインの存在確率(距離rの地点において、その地点が空孔ではなくドメインを形成しているところの充填領域である確率)を測定した際に、存在確率が極大を示す距離が存在することを意味する。
ミクロ相分離構造から選択的に1相を除去する方法は特に限定されず、種々の方法を採用することができる。例えば、テレケリックポリマーを用いて二つの結合部位を化学的に切断してから、一方のポリマー鎖をエッチングする方法が挙げられる。また、一方の相を選択的にオゾン酸化して分解除去する方法、酸素プラズマや光分解により除去する方法を用いてもよい。さらに、β線などのエネルギー線を照射して一方の相を選択的に分解除去することもできる。
相分離構造から多孔質体を作製するためのポリマー材料は特に限定されず、任意のものを用いることができる。例えば、ポリオレフィン、アクリル系ポリマー、ポリアリルエーテル系などのポリエーテル、ポリアリレート系などのポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリエーテルスルホンなどが挙げられる。
配線形成用の基板として多孔質体を用いる場合には、特にポリイミド、ポリアミド、ポリアリルエーテル、ポリアリレート、およびポリエーテルスルホンなどの耐熱性ポリマーであることが好ましい。また、1,2−結合型あるいは1,4−結合型のポリブタジエンなどの共役ジエンモノマーを重合した側鎖中あるいは主鎖中に二重結合を有するポリマーを架橋したものでもよい。
ポリイミドからなる多孔質体は、例えば次のような手法で作製することができる。まず、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸とポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリメチルメタクリレートなどの熱分解性ポリマーとを混合する。この際、ブロックコポリマーやグラフトコポリマーなどとして、相分離させてもよい。次いで、加熱処理を施してポリアミド酸をポリイミドに変換すると同時に、熱分解性ポリマーを揮発除去する。
構造の規則性の観点からは、ブロックコポリマーやグラフトコポリマーを用いることが好ましい。ただし、100nm以上の空孔を形成する場合には、熱分解性ポリマー鎖の分子量は10万程度以上となるため、ブロックコポリマーを合成するのが比較的困難になる。そこで、例えば熱分解性ポリマー鎖の末端に結合基を導入し、その後グラフトコポリマーを合成することが好ましい。ブロックコポリマーやグラフトコポリマーにホモポリマーを添加して、多孔質体の空孔径を調節してもよい。ただしホモポリマーの混合量を多くしすぎると相分離構造の規則性が低下する。そのためホモポリマーの混合量はコポリマーに対して重量比で10%以下にすることが好ましい。またこの際、ビスマレイミド類などの架橋性の可塑剤を添加するとミクロ相分離構造の形成が促進されるとともに、多孔質体の耐熱性や機械的強度などが向上する。
また1,2−結合型ポリブタジエン、すなわちポリ(ビニルエチレン)はラジカル発生剤や架橋剤の添加によって三次元架橋して、耐熱性、電気特性、耐湿性、機械的特性にすぐれた硬化ポリマーとなる。しかもポリ(ビニルエチレン)はリビング重合が可能であるので、高分子量でしかも分子量分布の揃ったブロックコポリマーを作製することが可能である。そのためポリ(ビニルエチレン)と、β線で分解除去可能なポリメタクリル酸エステルなどとのブロックコポリマーを用いると、ポリ(ビニルエチレン)架橋体からなる所望の空孔径の規則的な多孔質体を形成することができる。この場合もホモポリマーを添加して、多孔質体の空孔径を制御することができる。
ラジカル発生剤としては、一般的なジクミルパーオキサイドの様な有機過酸化物類やアゾビスイソブチロニトリルのようなアゾニトリル類などを用いることができる。なかでも2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、および3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどの多官能ラジカル発生剤は、架橋剤としても作用するため好ましい。
ラジカル発生剤の添加量は、架橋させるポリマー鎖に対して0.1〜20重量%、さらに1〜5重量%であることがよい。ラジカル発生剤が少なすぎると架橋密度が小さく、多すぎると架橋体が多孔質になったりミクロ相分離構造が乱れるおそれがある。
架橋剤としては、例えばビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(4−マレイミドフェニル)エーテル、2,2’−ビス[4−(パラアミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−(パラアミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンなどのビスマレイミド類が好ましい。添加量は、架橋させるポリマー鎖に対して0.1〜20重量%であることが好ましく、1〜5重量%であることがより好ましい。少なすぎると架橋密度が小さく、多すぎるとミクロ相分離構造が乱れるおそれがある。
ミクロ相分離構造が形成される前に架橋反応が進行してしまうと、ミクロ相分離構造の形成が阻害される。そのため、ミクロ相分離構造が十分に形成されてから架橋反応が開始されることが好ましい。ミクロ相分離構造の形成は、コポリマーを形成する各ポリマー鎖のガラス転移点温度以上で進行する。したがって、ポリマー鎖のガラス転移点温度が、ラジカル発生剤のラジカル発生温度よりも充分低いことが好ましい。
最も好ましい組成の例としては、ポリ(ビニルエチレン)鎖と、ポリ(メチルメタクリレート)鎖や、ポリα−メチルスチレン鎖とのジブロックコポリマーあるいはトリブロックコポリマーに、ラジカル発生剤としての2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパンあるいは3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンを、ポリ(ビニルエチレン)鎖に対して重量%で1〜5%添加したものが挙げられる。特に、ラジカル発生剤として3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンを用いるのが最も良い。
まず、各ポリマー鎖のガラス転移点温度以上の温度で加熱してミクロ相分離構造を形成した後、徐々に昇温してラジカル発生剤の熱分解温度以上で加熱して架橋硬化すればよい。ただしこの際、あまり温度を高くすると十分な架橋が行なわれる前に秩序−無秩序転移温度を通り越してしまい、溶融して均一になってしまうおそれがある。その点、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンにおいては、熱分解によらずとも紫外線照射によってラジカルを発生するので好都合である。
ポリ(ビニルエチレン)鎖とポリメチルメタクリレート鎖とのジブロックコポリマーあるいはトリブロックコポリマーは、ポリメチルメタクリレートのガラス転移点温度が105℃付近と比較的高いために、充分にミクロ相分離構造が形成される前に架橋反応が起こりやすい。しかしながら、ポリメチルメタクリレートはβ線照射すると、熱分解によって揮発しやすくなるため、溶媒洗浄や比較的低温の加熱処理で多孔質化することができる。ポリメチルメタクリレートのガラス転移点温度と架橋開始温度が接近しているために、溶液からゆっくり溶媒を蒸発させてキャスト膜を成膜することによって、ミクロ相分離構造を形成するのもよい。この場合、ラジカル発生剤の熱分解温度よりも十分に低い温度で溶媒を蒸発させれば、ミクロ相分子構造の形成が架橋によって阻害されるおそれもない。しかしながら、このようなキャスト膜の作製は比較的時間がかかり生産性が高くない。ポリメチルメタクリレートの代わりにポリα−メチルスチレンを用いた場合も同様のことがいえる。
ポリメチルメタクリレートやポリα−メチルスチレンの代わりに、炭素数3〜6のアルキル基で置換されたポリメタクリル酸エステル類や、同様のアルキル基でフェニル基が置換された置換ポリα−メチルスチレン類などは、ガラス転移点温度が低下するために、上述したような問題を回避することができる。すなわち、コポリマーの膜(あるいは成形体)を、ガラス転移点温度以上の温度で加熱処理することによって、ミクロ相分離構造を迅速に形成することができる。例えばポリn−プロピルメタクリレート、ポリn−ブチルメタクリレートなどは、ガラス転移点温度がそれぞれ35℃、25℃と低い。4位をブチル化したポリα−メチルスチレンも同様に、低いガラス転移点温度を示す。アルキル基の単素数が6個より多くなると、さらに低いガラス転移点温度を示すものの、同時にβ線照射によって架橋反応を起こしやすくなってしまう。低いガラス転移点温度とβ線照射による分解促進効果を両立するものとして、ポリn−プロピルメタクリレート、ポリn−ブチルメタクリレート、およびポリs−ブチルメタクリレートが挙げられ、特にポリn−ブチルメタクリエート、ポリs−ブチルメタクリレートがもっとも好ましい。
2−エチルヘキシル基のようにアルキル基が分岐している場合には、炭素数が増大してもβ線照射による分解促進効果が抑制されにくい点では優れている。しかしながら、モノマーの入手のし易さの点から、実用性の点で上記のポリn−ブチルメタクリレート、ポリs−ブチルメタクリレートに劣る。
低いガラス転移点温度とβ線照射による分解促進効果とを両立するポリマー鎖として、さらに、ポリイソブチレンやポリプロピレンなどを用いることができる。
β線の照射量としては特に制限はないが、100Gy〜10MGyの範囲に設定されることがよく、さらには1KGy〜1MGy、さらに望ましくは10KGy〜200KGyに設定されることが好ましい。あまり照射量が少ないと分解性ポリマー鎖の分解が十分でなく、反対に照射量が多すぎると分解性ポリマー鎖の分解物が三次元架橋などして硬化してしまったり、難分解性のポリマー鎖まで分解してしまう恐れがあるからである。加速電圧はコポリマーの成形体の厚さ、つまりβ線の成形体内への侵入長によって異なり、例えば、数十μm以下程度の薄膜であれば、20kV〜2MV程度が好ましい。また、100μm以上のフィルムやバルクの成形体などでは500kV〜10MV程度が好ましい。成形体中に金属成形体などが含まれている場合は、さらい加速電圧を高くすることもできる。
β線照射を行なうと1,2−結合型ポリブタジエン鎖は架橋するため、ラジカル発生剤の量を減少してもよく、全く添加しないことも可能である。この場合には、ガラス転移点温度を必ずしも低減する必要はない。ポリ(ビニルエチレン)の架橋体は、その優れた特性から配線基板に用いることが試みられているが、配線の銅との接着性が良くないという問題があった。
しかしながら、本発明の複合部材においては、銅などの配線やビアは多孔質体と一体化されているためにこうした問題は回避される。
次に、本発明に係る複合部材の製造方法を、各工程毎に図1を参照して説明する。
<工程1>
工程(1):まず、露光によりイオン交換性基を生成するかあるいは消失する化合物を含有する感光性組成物層2を、図1(a)に示すように絶縁体1に形成する。なお、図1においては、露光によりイオン交換性基を生成する化合物を含有する感光性組成物を使用した例を示している。
絶縁体1の平面方向及び厚み方向に導電部を形成する場合には、絶縁体1を多孔質体とすることによって、容易に精度良く導電部を形成できる。
本発明に係る複合部材の製造方法において用いられる感光性組成物は、光照射によりイオン交換性基を生成する化合物、または光照射によりイオン交換性基を消失する化合物を含有する。但し、露光によりイオン交換性基を生成する化合物は、露光による化学反応をきっかけにする多段階反応によりイオン交換性基を生じるものであってもよい。こうした化合物は、まず、露光により化学反応を生じて何らかのイオン交換性基の前駆体を生じ、この前駆体がさらに化学反応を生じることによりイオン交換性基を生成する。
露光によりイオン交換性基を生成する化合物としては、(i)露光によりイオン交換能を有する官能基を発生する化合物が挙げられる。
また、露光によりイオン交換性基を消失する化合物としては、(ii)露光前には、イオン交換能を有する官能基を有し、露光後に水に溶解あるいは膨潤しにくい疎水的な性質を有する官能基を発生する化合物が挙げられる。
前述の(i)、(ii)においてイオン交換性を有する官能基としては、親水性の官能基が挙げられ、−COOX基、−SO3X基、−PO3X2基(Xは水素原子、アルカリ金属やアルカリ土類金属および周期律表1、2族に属する典型金属、およびアンモニウム基から選択される)および−NH2OH等が挙げられる。
特に(i)、(ii)において、イオン交換能を有する官能基としては、陽イオン交換性基であるものが、金属イオンとイオン交換を行ないやすいため望ましい。こうした陽イオン交換性基としては、−COOX基、−SO3X基あるいは−PO3X2基等の酸性基(但し、Xは水素原子、アルカリ金属やアルカリ土類金属及び周期律表I、II族に属する典型金属、アンモニウム基)が特に好ましい。これらが含まれていると、後工程である金属イオン交換後、還元生成した金属あるいは金属微粒子との安定した吸着が得られる。
また、前述の陽イオン交換性基のうちでも、水中でのイオン解離特性から求めたpKa値が7.2以下を呈するものがより好ましい。pKa値が7.2を越えたものであると、引き続いて行なわれる金属イオンまたは金属を結合させる工程(工程(3))において、単位面積当たりの結合が少ない。したがって、その後に形成させる導電部に、望まれる十分な導電性が得られないおそれがある。
本発明の第1および第2の態様においては、光照射によりイオン交換性基を生成あるいは消失する化合物として、280nm以上の波長の光照射によりイオン交換性基を生成あるいは消失する化合物を使用する。
280nm以上の波長の光照射によりイオン交換性基を生成する化合物の具体例としては、ナフトキノンジアジド誘導体およびo−ニトロベンジルエステル誘導体、p−ニトロベンジルエステルスルフォネート誘導体およびナフチルもしくはフタルイミドトリフルオロスルフォネート誘導体等が挙げられる。
特にナフトキノンジアジド誘導体を用いた場合、エネルギーの低い280nm以上の波長の光で、しかも短時間に十分に微細なパターニングが可能である。また、ナフトキノンジアジド誘導体は露光時に光ブリーチングを起こし、およそ300nm以上の波長域で透明化する。そのため、膜厚方向に深くまで露光することが可能であり、多孔質シートの膜厚方向に貫通して露光する際などに非常に適している。
例えばイオン交換性基を生成する化合物としてナフトキノンジアジドを用いた場合の露光反応を下記化学式(1)に示す。
上記化学式(1)に示すように、絶縁体に形成されたナフトキノンジアジドは露光および次の工程において水を存在せしめることにより、−COOH基を発生する。
なお、感光性組成物層は、後工程において金属イオン含有水溶液やアルカリまたは酸性水溶液中に曝される。イオン交換反応によりイオン化した感光性組成物は水溶液に溶解しやすいため、基材としての絶縁体より剥離しやすくなる。そこで、基材からの剥離を防ぐためにイオン交換性基を生じる基がポリマーなどの高分子化合物等に担持、あるいは結合されているものが好ましく、イオン交換性基を生じる基が高分子化合物に共有結合によって化学的に結合しているのが最も好ましい。
この場合、ポリマーや高分子化合物の分子量は、1000以上であることが好ましく、2000以上であることがより好ましい。分子量が1000以下のポリマーでは、基材である絶縁体に対する塗布性が悪化して、均一な塗布が困難となるおそれがある。また、めっき工程などにおけるアルカリまたは酸性水溶液中への曝露により劣化を生じやすくなる。
単に基材からの剥離を防止するだけなら、基材と化学結合可能な基およびイオン交換性基を併せ持つ低分子の単分子膜を基材表面に形成すればよい。例えば、特開平6−202343号には、感光してイオン交換性基となるナフトキノンジアジド基を有するシランカップリング剤の単分子膜を、ガラス基板表面に形成する方法が開示されている。
しかしながら、単分子層の場合にはめっき核の吸着量が少なく、充分なめっきができないことが、本発明者らの研究により判明した。上述したようなポリマー状の感光性組成物を用いることによって、ある程度の厚みを持って基材表面を被覆することができる。したがって、充分な量のめっき核が吸着するため、良好なめっきを行なうことが可能となる。
そのような観点から、本発明において280nm以上の波長の光照射によりイオン交換性基を生成する化合物としては、1,2−ナフトキノンジアジドスルホニル置換フェノール樹脂誘導体、1,2−ナフトキノンジアジドスルホニル置換ポリスチレン誘導体等が好適である。
また、280nm以上の波長の光照射によりイオン交換性基を生成する化合物の他の例としては、ポリマーの構造中に含有されるカルボキシル基などのイオン交換性基に保護基を導入した化合物が挙げられる。この化合物を用いる場合には、280nm以上の波長の光を照射することによって酸を発生する光酸発生剤を感光性組成物に添加する。後工程の露光によって光酸発生剤から酸が発生し、その発生した酸で保護基が分解することによりイオン交換性基が生成する。なお、前述のポリマーとしては、フェノールノボラック樹脂、キシレノールノボラック樹脂、ビニルフェノール樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のフェノール系樹脂やポリアミド酸やポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等のカルボキシル基含有ポリマー等が挙げられる。
フェノール系樹脂の保護基としては、tert−ブトキシカルボニルメチル基やtert−ブトキシカルボニルエチル基などのtert−ブチルエステル誘導体置換基が挙げられる。
一方、ポリアミド酸やポリアクリル酸等においては、構造中のカルボキシル基の保護基としてメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ベンジルアルコキシ基、2−アセトキシエチル基、2−メトキシエチル基、メトキシメチル基、2−エトキシエチル基、3−メトキシ−1−プロピル基等のアルコキシ基やトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基等のアルキルシリル基が挙げられる。
また、光酸発生剤を用いずとも光照射だけでカルボン酸などのイオン交換性基を生成する保護基としては、o−ニトロベンジルエステル基が挙げられる。
こうした保護基の脱保護のために好適な光酸発生剤としては、CF3SO3 -、p−CH3PhSO3 -、p−NO2PhSO3 -等を対アニオンとするオニウム塩、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩等の塩、有機ハロゲン化合物、およびオルトキノン−ジアジドスルホン酸エステルなどを用いることができる。
このような化学増幅によってイオン交換性基を生成する組成物を用いることで、光に対する高感度化が可能である。これらの組成物の使用は、特に、多孔質基材への三次元パターン形成のような膜厚方向への光透過性がより要求される場合において、パターンの微細化が進むにつれて有効となってくる。
一方、280nm以上の波長の光照射によりイオン交換性基を消失する、すなわち露光前にはイオン交換能を有し、露光後に水に溶解あるいは膨潤しにくい疎水的な性質を有する官能基を発生する化合物としては、次のような化合物を用いることができる。すなわち、イオン交換性基である−COOX基、−SO3X基あるいは−PO3X2基等の酸性基(但し、Xは水素原子、アルカリ金属やアルカリ土類金属及び周期律表I、II族の属する典型金属、アンモニウム基)を、その組成物骨格中に有し、光照射によりイオン交換能が消失する化合物である。
露光前にはイオン交換能を有し、露光後に水に溶解あるいは膨潤しにくい疎水的な性質を有する官能基を発生する化合物としては、塩基性物質の存在下での光照射により脱炭酸反応を起こして分解することのできるカルボキシル基含有化合物が挙げられる。この場合には、前述のカルボキシル基含有化合物に加えて、光酸発生剤と塩基性化合物とを感光性組成物中に添加する。こうした組成物においては、露光により発生した酸が、脱炭酸反応に関わる塩基性化合物を中和してしまう。このため、露光部ではカルボキシル基がそのまま残り、未露光部では脱炭酸反応が進行するというメカニズムによって、露光部のイオン交換能が消滅する。
脱炭酸反応を起こして分解することのできるカルボキシル基含有化合物としては、任意の化合物を選択できるが、塩基性化合物により脱炭酸反応が進行しやすい化合物が好ましい。そのような化合物としては、カルボキシル基のα位またはβ位に電子吸引性基または不飽和結合を有するものが挙げられる。ここで、電子吸引性基は、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、カルボニル基、またはハロゲンであることが好ましい。
このようなカルボキシル基含有化合物の具体例としては、α−シアノカルボン酸誘導体、α−ニトロカルボン酸誘導体、α−フェニルカルボン酸誘導体、β,γ−オレフィンカルボン酸などが挙げられる。
添加する光酸発生剤としては、上述したような光酸発生剤が挙げられ、280nm以上の波長で酸を発生するものが特に好ましい。
添加する塩基性化合物としては、光酸発生剤から放出される酸によって中和され、カルボキシル基含有化合物の脱炭酸反応の触媒として作用するものであれば任意のものを用いることができる。この塩基性化合物は有機化合物、無機化合物いずれでも構わないが、好ましいのは含窒素化合物である。具体的には、アンモニア、1級アミン類、2級アミン類、および3級アミン類等が挙げられる。これら塩基性化合物の含有量は、感光性組成物中0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜15重量%である。0.1重量%未満の場合には、脱炭酸反応が充分に進まなくなり、30重量%を越えると、未露光部に残存するカルボキシル基含有化合物の劣化を促すおそれがある。
なお、後工程で感光性組成物層は金属イオン含有水溶液やアルカリまたは酸性水溶液中に曝されるため、それらに溶解することがないようイオン交換性基消失反応を生じる基がポリマーや高分子化合物等に担持、あるいは結合されているものが好ましい。すでに説明したように、イオン交換性基消失反応を生じる基は、分子量1000以上のポリマーや高分子化合物に化学的に結合していることが最も好ましい。
本発明の第3の態様においては、露光によりイオン交換性基を生成する化合物として、オニウム塩誘導体、スルフォニウムエステル誘導体、カルボン酸誘導体およびナフトキノンジアジド誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の誘導体を使用する。
オニウム塩誘導体としては、CF3SO3 -、p−CH3PhSO3 -、p−NO2PhSO3 -等を対アニオンとするジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩等が挙げられる。より具体的には、ジフェニルヨードニウム、4,4’−ジブチルフェニルヨードニウム、トリフェニルスルホニウム、ナフチルスルホニウム等のトリフルオロ酢酸塩系誘導体、トリフルオロメタンスルホン酸塩誘導体、およびトルエンスルホン酸誘導体が挙げられる。
スルフォニウムエステル誘導体としては、ベンゾイントシレート系誘導体、o−ニトロベンジルトシレート系誘導体、アリールスルホン酸のp−ニトロベンジルエステル系誘導体、p−ニトロベンジル−9,10−ジエトキシアントラセン−2−スルホネート系誘導体等が挙げられる。
また、カルボン酸誘導体としては、上述したフェノール樹脂やポリアミド酸やポリアクリル酸の水酸基、あるいはカルボキシル基が保護されたポリマー等であり、前記ポリマーとしては、フェノールノボラック樹脂誘導体、キシレノールノボラック樹脂誘導体、ビニルフェノール樹脂誘導体、クレゾールノボラック樹脂誘導体等のフェノール系樹脂誘導体やポリアミド酸誘導体やポリアクリル酸誘導体、ポリメタクリル酸誘導体等のカルボキシル基含有ポリマー誘導体等が挙げられる。
フェノール系樹脂誘導体の保護基としては、tert−ブトキシカルボニルメチル基やtert−ブトキシカルボニルエチル基などのtert−ブチルエステル誘導体置換基が挙げられる。
一方、ポリアミド酸やポリアクリル酸等においては構造中のカルボキシル基の保護基としてメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ベンジルアルコキシ基、2−アセトキシエチル基、2−メトキシエチル基、メトキシメチル基、2−エトキシエチル基、3−メトキシ−1−プロピル基等のアルコキシ基やトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基等のアルキルシリル基が挙げられる。これらは、適当な光酸発生剤と作用することによって、カルボキシル基を生成する。
ナフトキノンジアジド誘導体としては、ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸系誘導体、ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸系誘導体、ナフトキノンジアジドスルホニルハライド系誘導体、およびこれらのエステル化物等が挙げられる。
なお、上述したような化合物を含む感光性組成物層は、後工程で金属イオン含有水溶液やアルカリまたは酸性水溶液中に曝されるため、それらに溶解することがないようイオン交換性基生成反応を生じる基がポリマーや高分子化合物等に担持、あるいは結合されているものが好ましい。すでに説明したように、イオン交換性基消失反応を生じる基は、分子量1000以上のポリマーや高分子化合物に化学的に結合していることが最も好ましい。
そのような観点から、1,2−ナフトキノンジアジドスルホニル置換フェノール樹脂誘導体、1,2−ナフトキノンジアジドスルホニル置換ポリスチレン誘導体等、または、ポリマー官能基保護基の光酸発生剤を用いた脱保護によるイオン交換性基生成が好適である。
本発明の第4の態様においては、露光によりイオン交換性基を消失する、すなわち露光前にはイオン交換能を有するが、露光後に水に溶解または膨潤しにくい疎水的な性質を有する官能基を発生する化合物を含有する感光性組成物が用いられる。こうした化合物は、イオン交換性基をその骨格に有し、光照射によりイオン交換能を消滅する化合物である。イオン交換性基としては、−COOX基、−SO3X基あるいは−PO3X2基等の酸性基(但し、Xは水素原子、アルカリ金属やアルカリ土類金属及び周期律表I、II族の属する典型金属、アンモニウム基)が挙げられる。
露光前にはイオン交換能を有し、露光後に水に溶解あるいは膨潤しにくい疎水的な性質を有する官能基を発生する化合物としては、脱炭酸反応を起こして分解することのできるカルボキシル基含有化合物が挙げられる。この場合には、前述のカルボキシル基含有化合物に加えて、光酸発生剤と塩基性化合物と感光性組成物中に添加する。こうした組成物においては、露光により発生した酸が、脱炭酸反応に関わる塩基性化合物を中和してしまう。このため、露光部ではカルボキシル基がそのまま残り、未露光部では脱炭酸反応が進行するというメカニズムによって、露光部のイオン交換能が消滅する。
脱炭酸反応を起こして分解することのできるカルボキシル基含有化合物としては、任意の化合物を選択できるが、塩基性化合物により脱炭酸反応が進行しやすい化合物が好ましい。そのような化合物としては、カルボキシル基のα位またはβ位に電子吸引性基または不飽和結合を有するものが挙げられる。ここで、電子吸引性基が、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、カルボニル基、またはハロゲンであることが好ましい。
このようなカルボキシル基含有化合物の具体例としては、α−シアノカルボン酸誘導体、α−ニトロカルボン酸誘導体、α−フェニルカルボン酸誘導体、β,γ−オレフィンカルボン酸、その他が挙げられる。
添加する光酸発生剤としては、上述した光酸発生剤が挙げられ、280nm以上の波長で酸を発生するものが特に好ましい。
添加する塩基性化合物としては、光酸発生剤から放出される酸によって中和され、カルボキシル基含有化合物の脱炭酸反応の触媒として作用するものであれば任意のものを用いることができる。この塩基性化合物は有機化合物、無機化合物いずれでも構わないが、好ましいのは含窒素化合物である。具体的には、アンモニア、1級アミン類、2級アミン類、および3級アミン類等が挙げられる。これら塩基性化合物の含有量は、感光性組成物中0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜15重量%である。0.1重量%未満の場合には、脱炭酸反応が充分に進まなくなり、30重量%を越えると、未露光部に残存するカルボキシル基含有化合物の劣化を促すおそれがある。
なお、感光性組成物層は、後工程で金属イオン含有水溶液やアルカリまたは酸性水溶液中に曝されるため、それらに溶解することがないようイオン交換性基消失反応を生じる基が、ポリマーや高分子化合物等に担持、あるいは結合されているものが好ましい。すでに説明したように、イオン交換性基消失反応を生じる基は、分子量1000以上のポリマーや高分子化合物に化学的に結合していることが最も好ましい。
以上説明したように、本発明の方法によれば、まず、パターン露光を施すことによって、感光性組成物層の露光部または未露光部に、イオン交換性基が選択的に配置される。こうしたイオン交換性基のある領域は親水性であるが、イオン交換性基を含まない領域は、多くの場合、疎水性となりやすい。しかしながら、本発明においては、感光性組成物層のイオン交換性基の存在しない領域も、親水性であって水に対する濡れ性を有していることが好ましい。イオン交換性基の存在しない領域の疎水性が強すぎる場合には、後述する<工程(5)>のメッキ工程において、メッキ液と基板との接触が不十分となって、基板に気泡が付きやすくなる。気泡が付着するとその部分がめっきされずに残ってしまうため、良好な金属パターンが形成できない。また特に基材として多孔質体を用いた場合には、多孔質体内部へめっき液が浸透性し難くなる。このため、イオン交換性基の存在しない領域の疎水性が強すぎる場合には、多孔質体の内部にめっきをすることが難しくなる。
なお、特開平6−202343号には、親水性領域と疎水性領域とからなるパターンを形成して、親水性領域に選択的にめっきを施すことにより金属パターンを形成する方法が開示されている。この際、めっきの選択性を向上させるために、疎水性領域を選択的にフッ素化して、その領域の疎水性を高めている。フッ素化することによって、親水性領域と疎水性領域の水に対する濡れ性の差が増大する。これにより、親水性領域に選択的にめっき液を接触させて、めっきの選択性を高めている。
しかしながら、上述したような理由から、こうした方法では疎水性領域に気泡が付着しやすくなるので、良好なめっきを行なうことができない。さらに、多孔質体内部へめっき液が浸透し難くなるので、多孔質体内部にめっきすることも極めて困難である。
これに対して、本発明の方法においては、親水性領域と疎水性領域とを形成する必要はない。むしろ、基材としての絶縁体の表面をすべて親水性とすることによって、基材とめっき液を充分に接触させることができ、良好なめっきを行なうことができる。
水に対する濡れ性は、平坦な表面上に水滴を滴下した際の接触角で容易に測定できる。本発明においては、イオン交換性基の存在しない領域でも、接触角が60°以下、さらには40°以下であることが好ましい。
本発明の製造方法に用いられる感光性組成物には、露光によりイオン交換性基を生成する化合物以外にも、目的に応じた添加剤を含有することができる。
例えば、解像度や膜厚透過性などを向上させるための光増感剤を配合してもよい。光増感剤は、露光によりイオン交換性基を生成する化合物の光増感が可能なものであれば特に限定されず、使用される化合物の種類や光源などに応じて適宜選択される。
光増感剤の具体例としては、芳香族炭化水素およびその誘導体、ベンゾフェノンおよびその誘導体、o−ベンゾイル安息香酸エステルおよびその誘導体、アセトフェノンおよびその誘導体、ベンゾインならびにベンゾインエーテルおよびその誘導体、キサントンおよびその誘導体、チオキサントンおよびその誘導体、ジスルフィド化合物、キノン系化合物、ハロゲン化炭化水素含有化合物ならびにアミン類、エオシンB(C.I.No.45400)、エオシンJ(C.I.No.45380)、シアノシン(C.I.No.45410)、ベンガルローズ、エリスロシン(C.I.No.45430)、2,3,7−トリヒドロキシ−9−フェニルキサンテン−6−オン、ローダミン6Gなどのキサンテン色素、チオニン(C.I.No.52000)、アズレA(C.I.No.52005)、アズレC(C.I.No.52002)などのチアジン色素、ピロニンB(C.I.No.45005)、ピロニンGY(C.I.No.45005)などのピロニン色素、3−アセチルクマリン、3−アセチル−7−ジエチルアミノクマリンなどのクマリン色素などが挙げられる。
このような光増感剤の配合割合は、露光によりイオン交換性基を生成あるいは消失する化合物に対して、通常0.001〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%である。
また、露光によりイオン交換性基を生成する化合物として上述のナフトキノンジアジド誘導体を用いた場合には、カルボジイミド誘導体あるいはアミン誘導体等を架橋剤として添加することが好ましい。導電部を形成後に加熱処理を行なうことにより感光性組成物を硬化させて、得られる絶縁体に耐熱性を付与することができる。
このような架橋剤の配合割合は、反応する相互の官能基等量から適宜決定される。
本発明の複合部材の製造方法において用いる感光性組成物としては、ナフトキノンジアジド誘導体およびポリカルボジイミド誘導体を含有する感光性組成物が特に好ましい。こうした感光性組成物を用いた場合には、導電部形成後、加熱処理を行なうことによって、ナフトキノンジアジド誘導体から生じたイオン交換性基などとポリカルボジイミド誘導体が相互に架橋する。これにより、導電部と絶縁体との接触性を向上させる。こうして耐熱性が高いと同時に、微細なパターンを有する導電部を備えた複合部材を得ることができる。
また、上述したような感光性組成物は、露光部に選択的に親水性のイオン交換性基が生じるため、感光性組成物層の露光部と未露光部とで溶解度の差異が生じる。この溶解度の差異を利用して、感光性組成物のパターンを容易に形成することもできる。
なお、こうした感光性組成物は、ビルドアップ基板用の層間絶縁膜やカラー液晶表示装置、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、カラー蛍光表示装置、プラズマディスプレイパネル、OAセンサー、固体撮像素子等に使用される光学的カラーフィルターの製造に適した遮光性感光性樹脂組成物等の用途に用いることができる。この感光性組成物は、耐薬品性、耐水性、耐熱性、基板に対する高密着性などの特性を有するため、有用な感光性組成物である。
上述した感光性組成物に含有されるナフトキノンジアジド誘導体としては、1,2−ナフトキノンジアジドスルホニル置換フェノール樹脂、1,2−ナフトキノンジアジドスルホニル置換ポリスチレン樹脂などが特に好ましい。これらが含有されていると、成膜性がよく、かつ薄膜を形成することができる。特に、1,2−ナフトキノンジアジドスルホニル置換フェノール樹脂は、フェノール樹脂のフェノール性水酸基がポリカルボジイミド誘導体と相互に架橋硬化するため、耐熱性に優れる、もっとも優れている。
また、上述した感光性組成物に含有されるポリカルボジイミド誘導体としては、下記一般式(1)で表わされる化合物が好ましい。
(式中、R1は、メチレン基、エチレン基、プロピル基、イソプレン基、ブタジエン基等に代表される炭素数1〜20の有機基を示す。)
このように、ポリカルボジイミド誘導体が脂肪族系の骨格で構成されていると、組成物を低粘度に設定できる。そこで、スピンコート法やディップコート法等による溶剤での塗布の場合において、有機感光性組成物の薄膜化のためには、特に望ましく用いられる。
また、上述したような感光性組成物においては、ナフトキノンジアジド誘導体とポリカルボジイミド誘導体はそれぞれ、反応する相互の官能基当量を考慮にいれ、カルボジイミド基1モルに対し、反応性基の割合が0.01モル〜1モル含有されることが望ましい。反応性基の割合が0.01モル未満であると、反応性に乏しく、望みの耐熱性を得ることが困難になる。また、反応性基の割合が1モルを越えると、室温での保存安定性が低下し、さらに本発明の工程を阻害するおそれがある。上記範囲に調整することで、反応温度を100℃前後とすることができ、本工程終了後に反応を進めることが望ましい。
本発明の複合部材の製造方法において用いられる感光性組成物は、構成成分の混合物を成形してシート状としてもよいし、構成成分の混合物を適切な溶媒に溶解して溶液状としてもよい。
感光性組成物層を絶縁体に形成するには、シート状を呈した感光性組成物を、絶縁体に添着することにより絶縁体の表面に感光性組成物層を形成することができる。あるいは、溶液状とした感光性組成物を絶縁体にコーティングして絶縁体の表面に感光性組成物層を形成してもよい。導電部を形成後の複合部材の耐久性を考えると、絶縁体に溶液状の感光性組成物をコーティングして、感光性組成物層を形成するのが好適である。
また、多孔質体の絶縁体を用いて3次元にわたって導電部を形成する場合には、溶液状の感光性組成物を多孔質体の絶縁体にその内表面まで含浸あるいはコーティングし、表面から内部にわたって感光性組成物層の形成を行なう。
コーティング方法としては、ディッピング法、スピンコート法、スプレー法、真空蒸着法、およびラミネート法等のいずれの方法を用いても構わない。
本発明の複合部材の製造方法においては、感光性組成物層が予め形成された絶縁体を用いることが、生産性の向上のために好ましい。
感光性組成物層が予め形成された絶縁体としては、内部空孔表面がナフトキノンジアジド誘導体を含有する感光性組成物で被覆されている多孔質絶縁体が挙げられる。このようにナフトキノンジアジド誘導体で内部空孔表面が被覆された多孔質絶縁体を用いることによって、パターン形状の精度の高い導電部を三次元的な形状に形成することができる。
<工程(2)>
次に、工程(1)によって絶縁体1に形成された感光性組成物層2に対して、図1(b)に示すように所望の導電性パターンにパターン露光して、感光性組成物層2の露光部4にイオン交換性基を生成あるいは消失させる。
図1(b)においては、導電パターンが形成されたマスク3を介してパターン露光しているが、これに限定されるものではない。の導電パターンのネガ像を形成したマスクを用いて、導電パターン部以外の部分のイオン交換性基を生成あるいは消失させてもよい。
露光に際しては、必ずしもマスクを用いる必要はない。例えば、レーザービームなどを用いて導電パターンどおりに描画して露光してもよい。また、光の干渉によって生じる干渉縞などの周期的な光強度パターンを用いて周期的なパターンを露光してもよい。
さらには、露光パターンは二次元的なもののみならず、三次元的なパターンを露光してもよい。三次元的なパターンを露光するには、露光光をレンズで集光して、集光された光のスポットを三次元的に走査してパターンを描画するなど、高知の種々の三次元露光方法を用いることができる。
本発明の第1および第2の態様においては、280nm以上の波長の露光光を照射する。露光による絶縁体の劣化を低く抑えるためには、露光光の波長は、300nm以上であることが好ましく、350nm以上であることがより好ましい。
特に多孔質体の内部の厚み方向に露光する場合など、多孔質体が芳香族化合物構造を有する場合には、長波長の露光光を用いることが肝要である。多孔質体が芳香族ポリイミドなどで構成される場合には、ポリイミドの吸収の吸収端が450nm以上になるものも少なくない。こうした場合には、さらに長波長の500nm以上の波長でパターン露光を行なうことが好ましい。
本発明の第3および第4の態様においては、露光光の波長は特に問わない。
工程(2)で用いる露光光源としては、紫外光源、可視光源のほか、β線(電子線)、X線など光源のなかから所定の波長の露光光を生じるものを選択して使用することができる。紫外光源、あるいは可視光源は、具体的には水素放電管、希ガス放電管、タングステンランプ、ハロゲンランプのような連続スペクトル光源、各種レーザー、水銀灯のような不連続スペクトル光源などのなかから選択して用いる。
工程(2)においては、感光性組成物層のイオン交換性基に対して、後工程の工程(3)で金属イオンの結合量を増量するために、イオン交換性基の中和、あるいはそのイオン交換性基を形成した部分の膨潤を行なってもよい。そのためには、絶縁体を酸またはアルカリ溶液に吹き付けや浸漬などの手法によって接触させる。特に、アルカリ溶液として水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の水酸化物、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属塩、ナトリウムメトキサイドやカリウムエトキサイド等の金属アルコキサイドや水素化ホウ素ナトリウム等の水溶液の少なくとも1種を用い、これらの溶液に浸漬するのがよい。こうした水溶液は、単独でも混合して用いてもよい。
<工程(3)>
次に、形成されたイオン交換性基に、選択的に金属イオンまたは金属微粒子を結合させて、図1(c)に示すように導電部を形成する。図1(c)においては、露光部4が導電部となる。
露光部に生じたイオン交換性基は、金属イオンとの交換反応を行なう。イオン交換性基と金属イオンとの交換反応の例を下記化学式(2)に示す。
イオン交換性基と金属イオンとの交換反応を生じさせるには、例えば金属塩を含有する水溶液などに、パターン露光後の絶縁体を浸漬させるだけで容易に行なうことができる。
金属イオンとして用いられる金属元素としては、銅、銀、パラジウム、ニッケル、コバルト、錫、チタン、鉛、白金、金、クロミウム、モリブデン、鉄、イリジウム、タングステン、およびロジウム等が挙げられる。
これらの金属元素は、硫酸塩、酢酸塩、硝酸塩、塩化物、および炭酸塩等のような金属塩として溶液中に含有させる。特に、硫酸銅が好ましい。こうした金属塩は、溶液における金属イオンの濃度が0.001〜10M、好ましくは0.01〜1Mとなるよう配合するのが適切である。なお、金属塩を溶解させる溶媒は、水あるいは有機溶媒系、例えばメタノールやイソプロパノール等であってもよい。
ここで用いられる金属塩含有液のpHは、7以下であることが好ましく、6.5以下であることがより好ましい。本発明において用いられるイオン交換性基としては、水中でのイオン解離定数から求めたpKa値が7.2以下であるものが好適に用いられる。この場合、金属塩を含有した水溶液のpHが7付近になるにしたがって、イオン交換量はほとんど変化しなくなる。
また、金属塩含有溶液のpHが7を超えると、目的のイオン交換性基以外の極性基、例えばフェノール性水酸基、シラノール基などに対しても金属イオンが吸着してしまう。その結果、良好なパターンを得られなくなる。例えば、ガラス基板にスピンコート等により感光剤を塗布した場合では、感光剤の塗布されていない裏面には水酸基が露出している。pH7を超える金属塩含有の水溶液にこのような基板を浸漬した場合には、その水酸基に金属イオンが吸着する。このため、その後の工程において金属化が生じ、感光剤の塗布されていない裏面がめっきされてしまう。
それゆえ、本発明において用いられる金属塩含有溶液は、濃度、pHともに上述した範囲内であることが望まれる。
本発明においては、金属微粒子が分散した溶液を用いることもできる。イオン交換性基とコロイド状態の金属微粒子とは、静電的な相互作用などによって選択的に結合を生じる。したがって、イオン交換性基と金属微粒子との結合は、金属微粒子が分散した溶液に絶縁体を浸漬させるだけで容易に生じさせることができる。
例えば、塩酸酸性水溶液中に塩化パラジウムと塩化スズを混合して作製する無電解メッキの触媒として使用されるパラジウム−スズコロイド、またパラジウムのハロゲン化物、酸化物、アセチル化錯体の分散溶液中に絶縁体を浸漬させる。それにより、イオン交換性基上に位置選択的に金属微粒子が容易に結合を生じる。
以上のようにして、本発明の方法により絶縁体に導電部を形成して、複合部材を得ることができる。複合部材の導電部の導電性をさらに向上させるためには、以下の工程(4)、工程(5)のいずれか、あるいはその両方を行なうことが望ましい。
<工程(4)>
イオン交換により形成された導電部4の導電性を向上させるために、図1(d)に示すように、イオン交換性基に結合した金属イオンを還元剤と接触させて金属化させる。
イオン交換性基と金属イオンの金属化反応の例を下記化学式(3)に示す。
用いられる還元剤は特に限定されないが、ジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、ヒドラジン、ホルマリン、水素化ホウ素ナトリウムや、次亜リン酸ナトリウム等の次亜リン酸塩等が挙げられる。こうした還元剤を含有する溶液に絶縁体を浸漬することによって、導電部4を金属化させることができる。
<工程(5)>
導電部4に対し導電性を向上させるために、図1(e)に示すように無電解めっき5を施す。これにより、導電部4の空孔内を金属である程度充填することができる。
金属としては、電気抵抗が少なく、比較的腐食しにくい銅が最も好ましい。具体的には、前工程で得られた導電部を触媒核として、無電解メッキ液と接触させる。
無電解メッキ液としては、例えば、銅、銀、パラジウム、ニッケル、コバルト、白金、金、ロジウム等の金属イオンを含有するものが挙げられる。
この無電解メッキ液には、前述の金属塩水溶液の他にホルムアルデヒド、ヒドラジン、次亜リン酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、アスコルビン酸、グリオキシル酸等の還元剤、酢酸ナトリウム、EDTA、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グリシン等の錯化剤や析出制御剤等が含まれており、これらの多くは市販されており簡単に入手することができる。そこで、前記部材をこれらの無電解メッキ液の所望される導電膜厚、若しくは多孔質内部への充填が完了するまで浸漬しておけばよい。
なお、絶縁体として多孔質体を用いた場合には、複合体の電気絶縁性や機械的強度を向上させるために、下記の工程(6)をさらに行なうことが望ましい。
<工程(6)>
多孔質体の空孔を、含浸樹脂または無機物質で充填する。含浸樹脂としては、エポキシ樹脂やポリイミド、BT樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、架橋ポリブタジエン樹脂などの硬化性樹脂からなるものが挙げられ、無機物質としては、シリカゾル、シルセスキオキサンやポリシラザンなどから生成されるシリカなどを用いることができる。
絶縁体に空孔が存在していると、空孔内表面などが吸湿するなどして電気的絶縁性が損なわれるおそれがある。ただし、空孔が導電部の寸法、すなわちビアならビア径、配線なら配線幅および配線ピッチよりも十分に小さな独立気泡の場合は、絶縁性をある程度保つことが可能である。
充填する材料は、上述したような含浸樹脂や前記無機物質などが挙げられ、特に限定されない。しかしながら、充填性、接着性等を考慮すると含浸樹脂が最も好ましい。
含浸樹脂には、場合によってナノメートルオーダーの無機フィラーなどを混ぜるとよい。
無機フィラーとしては、シリカ、アルミナなどの金属酸化物や、窒化ケイ素や窒化アルミニウムなどの金属窒化物、白金やパラジウムなどの金属超微粒子などが用いられる。無機フィラーは、予め含浸樹脂に混合して、その混合物を含浸させることができる。あるいは、無機フィラー前駆体と含浸樹脂との混合物を含浸した後、無機フィラーを空孔内で生成させてもよい。こうした無機フィラー前駆体としては、シルセスキオキサンやポリシラザンなどが良好に用いられる。
なお、本発明の製造方法において、導電部を形成する目的の部位以外の感光性組成物層内にイオン交換性基含有の有機化合物が生成することは、極力避けなければならない。このため、めっきまでの操作は、短波長の光を遮断したイエロールーム内で行なうことが好ましい。
また、本発明に係る複合部材の製造方法においては、熱分解性などの容易に除去可能な絶縁体を用いることもできる。この場合は、まず絶縁体の所定の領域に導電部を形成する。次いで、上述したような手法により含浸樹脂を含浸させて硬化する前に、多孔質体を加熱などの手段によって除去する。これによって、含浸樹脂の硬化物中にビアや配線が形成された配線基板を形成してもよい。この場合には、導電部の形成に用いた絶縁体とは異なる材料中に、導電部が最終的に形成されることになる。
なお、含浸樹脂の硬化の際に絶縁体を加圧して圧縮すると、導電部の多孔質体が除去されて形成された空隙がつぶれて、導電性物質同士が密着する。その結果、導電性カラムの導電率を向上させることができるため好ましい。
本発明の方法により製造される複合部材においては、感光性組成物に由来する有機化合物層が、絶縁体と導電部との界面に残留する。この場合、図2を参照して説明したように、絶縁体表面における単位表面積当りの有機化合物の含有量を調整することが好ましい。これによって、導電部と絶縁体との密着性を向上させ、かつ導電部の電気特性も向上させることができる。
すなわち、図2に示すように多孔質の絶縁体21の表面または内部に部分的に導電部23が有機化合物24を介して形成されてなる複合部材であって、絶縁体21の表面における単位表面積当りの有機化合物24の含有量が、次の関係を満たすことが好ましい。すなわち、絶縁体21と導電部23との間に存在する有機化合物24の量は、絶縁体21と導電部23との間以外に存在する有機化合物24の含有量よりも多い。
複合部材の耐湿性向上、マイグレーション防止などのためには、絶縁体21と導電部23との間における有機化合物24の含有量が、絶縁体21と導電部23との間以外に存在する有機化合物の含有量の5倍以上であることが好ましく、10倍以上であることがより好ましい。
この場合、有機化合物24は、本発明にかかる複合部材の製造方法にて用いられる感光性組成物に由来するものであってもよいし、それ以外のものであってもよい。特に、絶縁体21と感光性組成物が異なる構造をしたものであると、絶縁体が光照射による劣化を受けず、絶縁体の材料選択が制限を受けない点で望ましい。
例えば、本発明を多層配線基板に用いる場合には、絶縁部に従来から使用されているエポキシ樹脂やフェノール樹脂、ビスマレイミド−トリアジン(BT)樹脂などの汎用性樹脂、ポリイミド、ポリアミド、ポリアリルエーテル、ポリアリレート、およびポリエーテルスルホンなどの耐熱性ポリマーを用いることができる。また、低誘電率化を望むのであれば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)系ポリマーやベンゾシクロブテン(BCB)樹脂等、用途に応じた材料選択が可能である。さらに、上述のように露光の際に絶縁体が光劣化などのダメージを受けにくいために、厚み等も自由に設定できる。
本発明の方法により製造される複合部材を用いて、多層配線基板を作製することができる。図4を参照して、これについて説明する。
図4には、多層配線基板の製造に用いられる複合部材の斜視図および断面図を示す。まず、本発明の方法にしたがって複合部材を製造する。図4に示されるように、シート状の複合部材a,b,cにおいては、多孔質の絶縁体41の表面、または内部あるいはその両方に配線パターンとなる導電部42が形成されている。また、シート状の複合部材dには、多孔質の絶縁体41の表面、または内部あるいはその両方にビアパターンとなる導電部42が形成されている。複合部材bのように、ビアパターンと配線パターンとが同一のシートに形成されていてもよい。
ビアパターンを形成した複合部材dに示されるように、ビアである導電部42の端面は、シート表面から突出した剣山状などの鋭角の構造とすることが望ましい。それにより、ビアと配線との接続を良好にすることが可能となる。
ビアの端面をはんだでコートすることも同様によいが、この場合も鋭角構造とするのがより好ましい。ただし、はんだはフラックスなどが蒸発して積層時にボイドなどの原因となりやすいので、ニッケル合金系などの比較的硬い金属により、ビアの端面に鋭角構造を形成するのが好ましい。ビア端面が偏平である場合には、含浸樹脂によって端面が被覆されて電気的接続が阻害されやすい。剣山状の構造は、例えばCu/Ni共晶系の針状めっきを施すことによって形成することができる。
こうして形成された配線パターンが形成された複合部材a、b、cと、ビアパターンが形成された複合部材dとを、交互に複数積層することによって、三次元配線が形成された多層配線基板が得られる。
多層配線基板は、あらかじめ配線パターンやビアパターンを形成した複数の複合部材を作製し、それを一括して積層することによって製造することができる。あるいは、配線パターンやビアパターンを形成した複合部材の上に、まだ配線パターンやビアパターンを形成していない多孔質体を重ねて、露光、めっきを施して配線パターンを形成し、これを順次繰り返すことにより多層配線基板を得ることもできる。
多層配線基板における各複合部材の間は、圧着して積層することが望ましく、圧着する際には、隣接するシート間に接着層を挿入してもよい。
さらに圧着後、エポキシ樹脂やポリイミド、BT樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂などの含浸樹脂を多孔質体に充填して硬化すれば、より強固な多層配線基板を形成することができる。含浸樹脂の他にシリカゾル、シルセスキオキサン、ポリシラザンなどから生成されるシリカなどの無機物質を充填してももちろんよい。圧着前に含浸樹脂を含浸しておき、圧着しながら含浸樹脂を硬化させてもよいが、ビア端面が含浸樹脂で被覆されてしまうおそれがある。
配線パターンを多孔質フィルム状の絶縁体と複合化した形で形成することによって、配線部と非配線部との段差を非常に小さくすることができる。場合によっては、そうした段差をなくすことができるため、複数の複合部材を容易に積層することができる。さらに、複合部材の膜厚を薄くしたり、多層配線基板における積層数を多くすることも可能となる。特に、多孔質フィルム状の絶縁体の厚さが数μm程度と薄い場合には、こうした効果が顕著に現れる。
以上、配線パターンが形成された複合部材と、ビアが形成された複合部材とを積層することにより多層配線基板を製造する方法を説明したが、これに限定されるものではない。配線パターンとビアとが形成された複合部材を用いて、多層配線基板を製造することもできる。
こうした複合部材の断面図を、図5に示す。図5に示す複合部材においては、シート状の多孔質の絶縁体51中に深さの異なる導電部52を形成することによって、配線パターンとビアとが1つの部材中に作り込まれている。こうした複合部材を用いて多層配線基板を製造することにより、積層数を低減して工程を簡略化することができる。
このとき、シート状の多孔質の絶縁体中に深さの異なる導電部を作り込むには、シート状の多孔質の絶縁体(以下多孔質絶縁体シート)の露光波長に対する吸光度の調節などによって、露光光の多孔質絶縁体シート内への侵入長を、そのシート厚の内部にとどめるよう制御する。こうした露光光を用いて、一方の面から配線パターンを露光し、他方の面からビアのパターンを露光する。その後、無電解めっき等を施すことによって、配線パターンとビアとを有する複合部材を得ることができる。あるいは、多孔質の絶縁体にあまり吸収されない波長の露光光を用いて、ビアパターンを露光してもよい。これらの手法を用いることによって、インナービアを非常に簡便に作製することが可能となる。すなわち、基本的に配線パターンとビアとを同じ工程で作製することが可能となるため、製造工程が簡略化される。配線パターンを絶縁体の両面に露光すれば、両面配線基板を作製することもできる。
以上説明したように、本発明の方法によれば、微細なビアや配線が自由にかつ精度よく形成された複合部材を製造することができる。得られる複合部材は、機械的特性や電気絶縁性といった特性も優れている。
なお、複合部材が積層された多層配線基板においては、図3に示したように、各複合部材の導電部32,33の最表面には、絶縁体成分を含まない導電体からなる層35が形成されていることが好ましい。このように、基板の導電部32,33の最表面には絶縁体成分を含まない導電体からなる層35が存在することによって、導電部間の接触が良好となる。したがって、導電部の低抵抗化に有効である。
導電部の最表面に形成される絶縁体成分を含まない導電体からなる層35としては、具体的には、低抵抗な銅などの金属からなる層が好ましい。絶縁体成分を含まないとは、導電体中の前記絶縁体成分の含有率が体積分率で5%以下であることをさす。層の厚さとしては、各層の平坦性を考慮し、20μm以下、特に10μm以下が望ましい。また、絶縁体成分を含む多孔質体中に形成された導電体からなる層の厚さの1〜50%、さらには5〜20%に設定されることが望まれる。厚さが厚すぎると導電部の段差が大きくなり、積層が困難となる。一方、薄すぎる場合には、導電部の低抵抗化の効果が十分でない。
導電体からなる層35は、前記工程(1)にあたる無電解めっきを長時間行なうことによって形成することができる。あるいは、絶縁体内部にパターン状導電部を形成した後、再度めっき浴に浸漬して、導電体層35を形成してもよい。導電部最表面の形状に自由度を持たせるためには、金属箔を導電部端面に貼り合わせるのが望ましい。
このような構成の多層配線基板を得るためには、まず、多孔質体シートに露光、めっきして配線部、ビア部からなる導電部を形成する。その後、導電部以外の多孔質シート表面にエポキシ樹脂やポリイミド(ポリアミド酸)などの接着剤を塗布し、金属箔の接着と導電部と金属箔の接続を行なう。
接着剤の塗布は、シルクスクリーン法などで行なってもよいが、インクジェット法などで塗布してもよい。この際、導電部端面をはんだめっきしておくことが好ましい。
接着後、両面の金属箔をサブストラクト的手法のような常法により加工して、回路パターンを形成する。各々の複合部材に対して適当な含浸樹脂を注入した後、ホットプレスで積層することによって、多層配線基板を製造することができる。
あるいは、多孔質体フィルムの片面に金属箔を接着し、露光、めっきによって望みのパターンで多孔質フィルム内に導電部を形成する。しかる後に、上面に金属箔を接着して導電部と金属箔の接続を行ない、上下の銅箔をパターニングして回路パターンを形成して、複合部材を得る。これを、前述と同様の手法により多層化することによって、多層配線基板を製造することもできる。
さらにまた、金属箔の代わりに予めパターン状に形成した金属配線パターンを転写させることにより多孔質フィルムと接着する手法を用いるなど、種々の方法を採用して、導電体からなる層を形成することができる。
もちろん、こうした導電体からなる層は段差の原因となり、積層する際に問題となる。しかしながら、多孔質体内部に形成された導電部と共同で導電の役を担うため、その膜厚を薄くすることが可能となる。特に、高周波用途の配線においては、表皮効果によって配線表面の導電率が配線全体の導電特性を左右する。そのため、膜厚が薄くとも十分な効果が期待できる。図3に示されるような構造の多層配線基板は、こうした用途に最適である。
本発明に係る複合部材の製造方法は、多層配線基板や3次元配線基板の形成以外にも、半導体装置の多層チップの層間の配線の形成に適用することも可能である。具体的には、上下にパッドが存在する半導体チップを積層する際の層間配線の形成である。例えば、半導体チップのパッドの配置に合わせた、あるいは特に合わせずに柱状配線などをシート状の絶縁体の多孔質体の膜厚方向に形成する。こうして柱状配線が形成されたシートを、2枚の半導体チップの間に挿入して積層することによって、隣接する2つの半導体チップ間の配線を形成することができる。またこの後、シートを酸素アッシングや熱分解などの手法により除去してもよい。さらに多孔質体シートを除去した後、電解めっき、無電解めっき等によって多孔質化している配線を緻密化することもできる。
さらには、本発明の方法により製造された複合部材を、ガラスエポキシ基板などの配線基板と複合化することもできる。用いられる配線基板は、例えば、公知の製法によって作製されたガラスクロスやアラミド繊維の不織布などの強化繊維に、含浸樹脂を含浸した樹脂シートから作製されたものなどが挙げられる。このように複合化することによって、曲げ強度を簡単に確保することが可能となる。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)絶縁体表面への配線パターンの形成
絶縁体として、ビスマレイミド−トリアジン樹脂シートを用意した。一方、ナフトキノンジアジド含有フェノール樹脂(ナフトキノンジアジド含有率;33当量mol%)をアセトンに溶解して、1wt%の濃度の感光性組成物溶液を調製した。ここで用いたフェノール樹脂の分子量は、2500である。得られた溶液を、前述の樹脂シート上に厚み0.1μmとなるようスピンコートして塗膜を得た。さらに、室温で30min乾燥させて、感光性組成物層を形成した。
このシートに対して、CANON PLA501を用いて、ライン幅10μm、スペース30μmのマスクを介して光量500mJ/cm2(波長436nm)の条件で露光し、インデンカルボン酸からなる潜像を形成させた。
パターン潜像が形成されたシートを、0.5Mに調整した硫酸銅水溶液に5min浸漬後、蒸留水による洗浄を3回繰り返した。用いた硫酸銅水溶液のpHは4.1であった。洗浄後のシートを、水素化ホウ素ナトリウム0.01M水溶液に30min浸漬後、蒸留水で洗浄して、複合部材を製造した。得られた複合部材には、ライン幅10μm、スペース30μmのマスクどおりのCuからなる導電部が形成されていた。
図6に、本実施例で得られた複合部材における導電部の表面から観察した光学顕微鏡写真を示す。この写真は、倍率180倍にて撮影した反射型光学顕微鏡写真である。
なお、本実施例で得られた複合部材の断面に関して、テトラブロモフェノールブルーを用いた酸染色試験を行なったところ、導電部と絶縁体との界面にはインデンカルボン酸に由来するカルボン酸が存在していることが確認された。
この複合部材において、絶縁体と導電部の界面以外の部位では、前述のインデンカルボン酸は観察されなかった。
このようにして得た複合部材(導電パターン形成シート)を、さらに無電解めっき液PS−503に30min浸漬して、導電部に銅めっきを施すことにより配線パターンを形成した。
導電部と絶縁体との密着性の評価は、次のとおりである。従来品では、めっき金属の室温でのピール強度として1.0kN/m前後の多層配線板が数多く市販されている。上述と同様の条件で得られたBT樹脂シート−Cu層からなる複合部材において、BT樹脂シートを固定し、Cu部について90°方向、50nm/minの条件下でのピール強度を測定した。その結果、1.9kN/mとなり、従来品と比較して、導電部と絶縁体との密着性は良好であることが確認された。本発明の方法により製造された複合部材においては、有機感光性化合物が接着層として十分機能していることがわかる。
(実施例2)多孔質体の絶縁体への配線パターンの形成
絶縁体として、PTFE多孔質フィルム(空孔径500nm、膜厚20μm)を用い、実施例1で用いた感光性組成物溶液を、ディップ法にてフィルム全表面にコーティングした。この操作により、多孔質フィルムの内部空孔表面がナフトキノンジアジド含有フェノール樹脂で被覆された。その後、ドット径50μm、スペース50μmのマスクを用いて、実施例1と同様の操作を行なって複合部材(導電パターン形成シート)を製造した。得られた複合部材においては、ドット径50μm、スペース50μmの導電部が、絶縁体の内部にわたって形成されていた。
(実施例3)無電解めっき処理
実施例2で得られた導電パターン形成シートを、無電解銅めっき液PS−503に30min浸漬し、導電部に銅めっきを施して配線パターンを形成した。フィルム裏面についても同様のパターン形状が形成されていた。
図7に、本実施例で得られた複合部材における配線パターンの表面から観察した光学顕微鏡写真を示す。この写真は、倍率180倍にて撮影した反射型光学顕微鏡写真である。
本実施例で得られた複合部材において、導電部と絶縁体との界面、および前記絶縁体と導電部の界面以外に存在するインデンカルボン酸由来のカルボン酸を実施例1と同様の手法を用いて観察した。その結果、インデンカルボン酸由来のカルボン酸は、絶縁体と導電部の界面のみに観察された。また、導電部と絶縁体との密着性は良好であった。
(実施例4)両面プリント配線基板
下記式で表わされるポリアミド酸とポリエチレンオキシドとのグラフトコポリマー、およびビス(4−マレイミドフェニルメタン)の混合物を含有するNMP溶液を調製した。ただし、ポリエチレン鎖の分子量は約2万、ポリアミド酸成分とポリエチレンオキシド成分との重量比は2:5とし、グラフトコポリマーとビス(4−マレイミドフェニルメタン)との混合比は重量比で7:1とした。
この溶液から、キャスト法によりシートを作製した。得られたシートを窒素気流下、室温から30分かけて150℃に昇温し、この温度で1時間加熱した。次に、30分かけて250℃に昇温して、この温度で1時間加熱した。さらに、30分かけて350℃に昇温し、この温度で1時間加熱処理して、厚さ10μmのポリイミド多孔質体シートが得られた。
加熱後のフィルムを透過型電子顕微鏡で観察したところ、孔径約0.2μmの三次元的に連続な空孔が形成されていた。
一方、感光性組成物溶液として、ナフトキノンジアジド含有フェノール樹脂(ナフトキノンジアジド含有率:33当量mol%)をアセトンに溶解して、1wt%の溶液を調製した。ここで用いたフェノール樹脂の分子量は、2500であった。この溶液を、前述のポリイミド多孔質体シートの全表面に、ディップ法にてコーティングした。この操作により、多孔質体シートの内部空孔表面がナフトキノンジアジド含有フェノール樹脂で被覆された。
このポリイミド多孔質シートに対して、CANON PLA501で、ドット径50μm、スペース50μmのマスクを介して光量 3J/cm2(波長436nm)の条件で露光して、インデンカルボン酸からなる潜像を形成させた。
パターン潜像が形成されたシートを、0.5Mに調製した硫酸銅水溶液に5min浸漬後、蒸留水による洗浄を3回繰り返した。用いた硫酸銅水溶液のpHは4.1である。洗浄後のシートを、水素化ホウ素ナトリウム0.01M水溶液に30min浸漬後、蒸留水で洗浄した。洗浄後、無電解銅めっき液PS−503に30min浸漬し、導電部に銅めっきを施して、複合部材を製造した。得られた複合部材には、ドット径50μm、スペース50μmのマスクどおりのCuからなる導電部が形成されていた。
(実施例5)両面プリント配線基板
前述の実施例4と同様の手法により、厚さ10μmのポリイミド多孔質体シートを作製した。このポリイミド多孔質体シートには、孔径約0.2μmの連続な空孔が三次元的に形成されていた。
得られた多孔質体シートに対して、ビア径として50μmのパターンのマスクでビアシートを実施例4と同様の方法で形成した。その後、ビア端面にははんだめっきを施して、ビアシートを得た。また、同様の多孔質体シートを用いて、上述と同様の手法により、ライン幅30μmの配線シートを作製した。
そして、ビアと配線とが導通する位置でビアシート/配線シート/ビアシートの配列で位置合わせをして、熱プレス機により加熱、加圧して積層し多層配線基板を得た。
(実施例6)
前述の実施例4と同様の手法により、厚さ40μmのポリイミド多孔質体シートを作製した。このポリイミド多孔質体シートには、孔径約0.2μmの連続な空孔が三次元的に形成されていた。
得られた多孔質体シートに対して、ビア径として50μmのパターンのマスクでビアシートを実施例4と同様の方法で形成した。その後、ビア端面にははんだめっきを施して、ビアシートを得た。また、同様の多孔質体シートを用いて、上述と同様の手法により、ライン幅30μmの配線シートを得た。この配線シートに対しても、ビアシートの場合と同様の方法で導電部を形成した後、はんだめっきを施した。
ビアシートおよび配線シートにおける導電部以外の表面部分には、ポリイミドワニスをシルクスクリーン法により塗布した。
また一方で、0.3mm厚のステンレス板上に市販のポジ型フォトレジストをスピンコート法により膜厚2μmに塗布してフォトレジスト膜を形成した。得られたフォトレジスト膜に対して、露光、現像を行ない、ビア転写用の基板および配線パターン転写用の基板を作製した。なお、ビア転写用の基板の作製に当たっては、ビア径55μmのマスクを用いて露光を行ない、配線パターン転写用基板の作製に当たっては、ライン幅33μmのマスクを用いて露光を行なった。いずれのマスクも、前述の多孔質シートに形成されたビアおよび配線パターンと同じピッチである。
こうして得られた転写用基板と銅電極とを対向し、硫酸銅めっき浴に浸漬することにより電解めっきを施した(電流密度2A/dm2、15min)。用いた硫酸銅のpHは4.1である。各転写用基板におけるフォトレジスト除去部位には、膜厚約5μmの銅が析出して金属パターンが形成され、これを金属転写原板とした。
多孔質体シートに形成された導電部が金属転写原板の金属パターンに対向するよう、パターン形状の対応したビアシートと金属転写原板とを150℃で圧着して、転写原板の金属部を多孔質体シートへ転写した。配線シートについても、同様にして転写原板の金属部を転写した。
その後、実施例5と同様の手法により、ビアと配線とが導通する位置でビアシート/配線シート/ビアシートの配列で位置合わせをして、熱プレス機で加熱、加圧して積層した。その結果、図3に示すような多層配線基板が得られた。
積層シートの上端と下端の抵抗を測定したところ、1mΩであった。
(実施例7)異方性導電シート
実施例2および3で作製された導電パターン形成PTFE多孔質シートに対し、銅カラムの端面にCu/Ni系共晶めっきをして高さ2〜3μmの剣山状の構造を形成した。この銅カラムが形成されたPTFE多孔質体シートに含浸する樹脂組成物を、以下のように調製した。
当量の3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と2,2’−ビス[4−(p−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンとを、ジメチルアセトアミド中で反応させて、ポリアミド酸ワニスを調製した。このポリアミド酸ワニスに、30重量%の2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニルを加えて、含浸溶液とした。
得られた含浸溶液を、銅カラムが形成されたPTFE多孔質体シートに含浸した後、熱風乾燥して溶媒を除去した。次いで、200℃で30分間加熱して、接着性の異方性導電フィルムを作製した。
(実施例8)多孔質の絶縁体への配線
パターンの形成式(II)で表わされる化合物(分子量10,000)5gと、酸発生剤としてN−ヒドロキシナフチルイミドトリフルオロメタンスルホネート0.1gおよびシクロヘキシルアミン0.04gとを、メトキシメチルプロピオネート100gに溶解して、有機感光性組成物溶液を調製した。
絶縁体としては、PTFE多孔質フィルム(空孔径500nm、膜厚20μm)を用意した。前述の有機感光性組成物溶液をディップ法にてフィルム全面にコーティングした後、100℃、90秒間のベーキングを施した。さらに、ライン幅=50μm、スペース幅=100μmのマスクを用いて、実施例1と同様の条件にて露光した。次いで、140℃で15分PEBを施した後、実施例1と同様の導電パターン形成プロセスを行なって、複合部材を製造した。得られた複合部材には、Lライン幅=100μm、スペース幅=50μmの導電部が内部にわたって形成されていた。
(実施例9)
有機感光性組成物溶液として、ナフトキノンジアジド含有フェノール樹脂(ナフトキノンジアジド含有率;33当量mol%)0.9gとポリ(エチレン−カルボジイミド)樹脂0.5gとをアセトン100mlに溶解して溶液を調製した。ここで用いたフェノール樹脂の分子量は2500である。この溶液を用いて、実施例1と同様の手法により複合部材を製造した。得られた複合部材には、実施例1と同様に良好なパターンが形成されていた。
この複合部材に対し、80℃で1時間加熱処理を加えた後、ピール強度評価を行なったところ、2.6kN/mであった。
(実施例10)
有機感光性組成物溶液として、ポリ(p−ニトロベンジル−p−ビニルベンゼンカルボネート−co−スチレン)をトルエンに溶解して、1重量%の濃度の溶液を調製した。用いた樹脂の分子量は、15,000である。この溶液を用いた以外は実施例2と同様の手法により、PTFE多孔質フィルムに配線パターンを形成した。その結果、マスクどおりに良好な導電パターンが得られた。
(実施例11)
まず、ポリ(ビニルスチレン)とポリメチルメタクリレートとのジブロックコポリマーを、リビングアニオン重合法により合成した。重量平均分子量Mw=287000(ポリ(ビニルエチレン)分子量=91000、ポリメチルメタクリレート分子量=196000)、Mw/Mn=1.10であった。このジブロックコポリマーに、ラジカル発生剤としての3,3’,4,4’−テトラ−(t−ブチルぺルオキシカルボニル)ベンゾフェノンを1.7重量%添加して混合物を得、この混合物をシクロヘキサノンに溶解して、10重量%の濃度の溶液を調製した。
得られたシクロヘキサノン溶液を、アプリケータを用いてPTFE板上に塗布し、乾燥して厚さ15μmのフィルムを作製した。このフィルムを窒素気流下、135℃で24時間加熱処理した。加熱処理後、加速電圧2MVのβ線を160KGy照射した。照射後、乳酸エチルで洗浄して、架橋ポリ(ビニルエチレン)の多孔質フィルムを作製した。
得られたフィルムを透過型電子顕微鏡で観察したところ、孔径約50nmの三次元的に連続な空孔が形成されていた。
一方、ナフトキノンジアジド含有フェノール樹脂(ナフトキノンジアジド含有率;33当量mol%)をアセトンに溶解して0.5wt%濃度の溶液を調製し、感光性組成物溶液とした。このアセトン溶液を、前述の多孔質フィルムに含浸した後、室温で乾燥した。このシートに対し、CANON PLA501を用いて、マスクを介して配線パターンおよびビアパターンをそれぞれ露光して、インデンカルボン酸からなる潜像を形成した。配線パターンは、ライン幅20μm、スペース30μmであり、ビア径は10μmである。露光は、光量500mJ/cm2(波長436nm)の条件で行なった。
パターン潜像が形成されたシートを、0.5Mに調整した硫酸銅水溶液に5min浸漬後、蒸留水による洗浄を3回繰り返した。用いた硫酸銅水溶液のpHは4.1であった。洗浄後のシートを、水素化ホウ素ナトリウム0.01M水溶液に30min浸漬後、蒸留水で洗浄した。さらに、無電解銅めっき液PS−503に30min浸漬して、導電部に銅めっきを施した。これにより、Cuからなる配線パターンおよびビアパターンがそれぞれ形成された多孔質シートが得られた。
配線パターンが形成された多孔質シート(配線シート)には、さらに無電解めっきを施すことにより、配線パターンの端面にCuのみからなる厚さ2μmの層を形成した。また、ビアパターンが形成された多孔質シート(ビアシート)には、端面にCu/Ni系共晶めっきをして高さ2〜3ミクロンの剣山状の突起構造を形成した。
こうして得られた配線シート2枚の間に、ビアシート1枚を挟んで積層した後、樹脂溶液を含浸した。用いた含浸樹脂溶液は、ベンゾシクロブテン樹脂溶液(ダウケミカル社製、商品名:XU13005)100重量部に、50重量部のメチルイソブチルケトンを加えて調製した。シートの積層体は、圧着してから溶媒を除去した。さらに、窒素気流下、240℃で1時間加熱硬化させることにより、両面配線基板を作製した。
同様の手法により、配線シート4枚とビアシート3枚とを交互に積層して4層の多層配線基板を作製した。また、4層のFR−4ガラスエポキシ基板(配線幅75μm)の両面に、それぞれビアシートおよび配線シート1枚ずつを積層して、6層の多層配線基板を作製した。さらに、ビアシートおよび配線シートを2枚ずつ用いて8層の多層配線基板も作製できた。
以上のように作製した多層配線基板は、配線シートの導電部の端面にCuのみからなる層が形成されているため、端面にCuのみからなる層を形成しないものに比べて低抵抗であった。また、ガラスエポキシ基板をコア層に有する多層配線基板は、曲げ強度に優れていた。
(実施例12)
前述の実施例4と同様の手法により、厚さ20μmのポリイミド多孔質体シートを作製した。このポリイミド多孔質体シートには、孔径約0.2μmの連続な空孔が三次元的に形成されていた。
一方、OH基をtert−ブトキシカルボニルメチル基でキャップしたフェノールノボラック樹脂誘導体10gと、酸発生剤として、DTBPI−TF(ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート)0.5gおよびアクリジンオレンジ(C.I.46005)0.08gとをメチルセロソルブ200gに溶解して、有機感光性組成物溶液を調製した。
前述のようにして得られたポリイミド多孔質体シートを、この有機感光性組成物溶液に含浸した後、80℃、10min乾燥させて、有機感光性組成物被覆ポリイミド多孔質体シートを作製した。
このシートに対して、低圧水銀ランプで、ライン幅50μm、スペース50μmの配線パターンのマスクを介して光量10mJ/cm2(波長254nm)の条件で露光し、その後、100℃で5分間の条件で加熱処理を施すことにより、カルボキシル基含有フェノールノボラック樹脂からなる潜像を形成させた。この条件におけるパターンのシートに対する侵入深さは、約5μmであった。
引き続いて、このシートの裏面にビアパターンマスクを配置して、露光を施した。用いたビアパターンマスクには、50μmφのビア部が100μmピッチに並んでいる。このビア部を、前述のシート下部に描いたライン露光部に貫通するよう配置した。これらに対し、CANON PLA501で、光量500mJ/cm2(波長546nm)の条件で長波長露光して、前述と同様にカルボキシル基含有フェノールノボラック樹脂からなる潜像を形成させた。
露光後のシートにおいては、ビア露光部がライン露光部まで到達した潜像を形成していた。
パターン潜像が形成されたシートを蒸留水により洗浄し、0.5Mに調整した硫酸銅水溶液に5min浸漬後、蒸留水による洗浄を3回繰り返した。用いた硫酸銅水溶液のpHは4.1である。洗浄後のシートを、水素化ホウ素ナトリウム0.01M水溶液に30min浸漬後、蒸留水で洗浄した。さらに、無電解銅めっき液PS−503に30min浸漬して、導電部に銅めっきを施した。その結果、図5に示されるようなCuからなる配線パターンが形成された複合部材が得られた。
本発明は、各種光機能性装置や多層配線基板等、多くの用途に好適に用いることができ、その工業的価値は絶大である。