以下、本発明の光記録再生装置の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる光記録再生装置の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施の形態にかかる光記録再生装置は、光ディスク7(記録媒体)に対してレーザ光を照射することにより、情報の記録または再生を行うものであって、光ヘッド20、フィルタ駆動部30(透過量可変部)、レーザパワー制御部31(光出力制御部)、出力パワー検出部32(特性検出部)、フォーカス制御部33、トラッキング制御部34、再生信号処理部35、記録層判別部36、および制御部37(判定部、透過量制御部)を備えている。
まず、光ヘッド20について説明する。光ヘッド20は、半導体レーザ1(レーザ光源)、コリメータレンズ2、強度フィルタ3(透過量可変部)、ビームスプリッタ4(分光部)、1/4波長板5、対物レンズ6(光学レンズ)、検出レンズ8、10、受光素子9(受光検出部)、11、および遮光フィルタ12(遮光部)を備えている。
半導体レーザ1は、GaN系等の青紫色レーザ等のレーザ光を出射する半導体素子である。コリメータレンズ2は、入射光を平行光に変換する。強度フィルタ3は、入射光の強度を減衰させる光学フィルタである。ビームスプリッタ4は、入射光を反射および透過することによって分光する。すなわち、ビームスプリッタ4は、半導体レーザ1からのレーザ光を、受光素子9へ照射する第一のレーザ光と光ディスク7へ照射する第二のレーザ光とに分光する。1/4波長板5は、入射光の偏光を円偏光へ変換する。対物レンズ6は、円偏光の入射光を屈折させて、集光する。検出レンズ8、10は、入射光を屈折させて集光する。受光素子9、11は、半導体レーザ1からのレーザ光を受光可能に構成されるとともに、受光したレーザ光に応じた電気信号を出力する。遮光フィルタ12は、光ディスク7に照射されるレーザ光を遮断する。
半導体レーザ1、コリメータレンズ2、ビームスプリッタ4、検出レンズ8、および受光素子9は、半導体レーザ1から出射されるレーザ光の光軸に沿って、直線状に配置される。また、対物レンズ6、1/4波長板5、ビームスプリッタ4、検出レンズ10、および受光素子11は、光ディスク7から反射される反射光の光軸に沿って、直線状に配置される。
強度フィルタ3は、光吸収膜を含んだ光学フィルタにより構成されており、フィルタ駆動部30とともに、半導体レーザ1からビームスプリッタ4に入射されるレーザ光の透過量を調整する透過量可変部を構成している。すなわち、強度フィルタ3は、コリメータレンズ2とビームスプリッタ4との間の光路において、フィルタ駆動部30によって当該光路に対し垂直に挿入または排出される。なお、強度フィルタ3の配置は光路中のコリメータレンズ2とビームスプリッタ4との間に限定されず、光路に対して機械的に挿入または排出されることにより、レーザ光の光量を調整させることができれば、光路中のどこに配置してもよい。
また、遮光フィルタ12は、対物レンズ6と光ディスク7との間において、制御部37からの制御信号に従って、光ディスク7へ照射されるレーザ光の光軸に対して挿入または排出される。なお、遮光フィルタ12の配置は当該光軸中の対物レンズ6と光ディスク7との間に限定されず、レーザ光が光ディスク7へ集光されなければよい。具体的には、ビームスプリッタ4と1/4波長板5との間に、遮光フィルタ12を配置してもよい。
次に、半導体レーザ1から出射されるレーザ光について説明する。
半導体レーザ1から出射されたレーザ光は、コリメータレンズ2に入射する。その後、コリメータレンズ2から出射された出射光は、ビームスプリッタ4へ入射する。前述のとおり、強度フィルタ3は光路に対して、挿入または排出することができるため、挿入された場合のみレーザ光は強度フィルタ3を介して、ビームスプリッタ4へ入射することとなる。
ビームスプリッタ4は前述のとおり、入射光を反射および透過する。これにより、反射されたレーザ光は、1/4波長板5へ入射する。1/4波長板5から出射された出射光は、対物レンズ6へ入射する。対物レンズ6から出射されたレーザ光は、光ディスク7の表面に焦点を結ぶ。その後、光ディスク7によって、反射された反射光は、再び対物レンズ6へ入射する。対物レンズ6に入射した反射光は、1/4波長板5を介して、ビームスプリッタ4へ再び入射する。ビームスプリッタ4へ入射した反射光は、透過され検出レンズ10へ入射する。検出レンズ10から出射された反射光は、受光素子11へ集光する。
一方、ビームスプリッタ4によって透過されたレーザ光は、検出レンズ8へ入射する。検出レンズ8から出射されたレーザ光は、受光素子9へ集光する。
次に、本実施の形態にかかる光記録再生装置において、光ヘッド20以外の構成、つまり光ヘッド20を制御する制御系について説明する。
出力パワー検出部32は、受光素子9によって変換された電気信号を入力する。当該電気信号は、半導体レーザ1の出力パワーおよび強度フィルタ3によって変更されたレーザ光の透過量等を検出するための信号である。出力パワー検出部32は、入力した電気信号から、受光素子9によって受光されたレーザ光(第一のレーザ光)の光出力(出力パワー)を取得する。さらに、出力パワー検出部32は、レーザパワー制御部31からの出力信号を入力して、この出力信号を基に半導体レーザ1へ供給された電流を取得する。そして、出力パワー検出部32は、後述する演算により、レーザ光の微分量子効率値を求める。ここで求めた微分量子効率値は、制御部37へ出力される。
レーザパワー制御部31は、出力パワー検出部32から当該出力パワー検出部32で検出された上記出力パワーを入力する。そして、レーザパワー制御部31は、レーザ光が所望の出力パワーで半導体レーザ1から出力されるように、フィードバック制御を実行することにより、半導体レーザ1への電流供給の調節が行われる。また、レーザパワー制御部31は、半導体レーザ1から出射されたレーザ光の出力に応じた上記出力信号を出力パワー検出部32及び制御部37に出力する。
フォーカス制御部33は、受光素子11によって変換された電気信号を入力する。フォーカス制御部33は、入力した電気信号からフォーカス誤差情報を取得して、このフォーカス誤差情報に基づいて、レーザ光が光ディスク7上に焦点を結ぶように、光ヘッド20を制御する。
トラッキング制御部34は、受光素子11によって変換された電気信号を入力する。トラッキング制御部34は、入力した電気信号からトラッキング誤差情報を取得して、このトラッキング誤差情報に基づいて、レーザ光が光ディスク7上のトラック上の所定位置にレーザ光が集光するように、光ヘッド20を制御する。
再生信号処理部35は、受光素子11によって変換された電気信号を入力する。再生信号制御部35は、入力した電気信号から光ディスク7に記録された記録情報を再生するための再生信号を取得する。そして、再生信号処理部35は、取得した再生信号に対して波形等化等の処理を行い、再生データを出力する。
記録層判別部36は、受光素子11によって変換された電気信号を入力する。記録層判別部36は、入力した電気信号から光ディスク7からの反射光量等の、光ディスク7に関する情報を取得する。そして、記録層判別部36は、取得した情報に基づいて、光ディスク7が有する記録層の数を判別する。ここで判別された光ディスク7の記録層の数は、制御部37へ出力される。
制御部37は、記録層判別部36から取得した光ディスク7の記録層の数に適合する強度フィルタ3の状態を、光路に対する挿入および排出のいずれか一方から判断する。そして、制御部37は、判断した強度フィルタ3の動作状態に対応した制御信号をフィルタ駆動部30へ送信する。また、制御部37は、出力パワー検出部32によって求められた微分量子効率値を用いて、強度フィルタ3の動作状態およびこれを駆動するフィルタ駆動部30の動作状態を判定することもできる。
フィルタ駆動部30は、制御部37からの制御信号を受け、強度フィルタ3を光路に対して挿入または排出するよう制御する。
次に、本実施の形態にかかる光記録再生装置の動作について、図面を用いて説明する。図2は図1に示した光記録再生装置の起動手順の一例を示すフローチャートである。ここでは、光ディスク7を光記録再生装置に挿入し、当該光ディスク7への記録または再生を行うまでの記録再生前処理について説明する。
まず、光ディスク7が挿入される(ステップS101)。そして、記録層判別部36が光ディスク7の記録層の数を判別する(ステップS102)。光ディスク7が有する記録層の数が単層である場合、ステップS103へ進む。その後、制御部37が、遮光フィルタ12をレーザ光の光軸に対して挿入する(ステップS103)。一方、上記ステップS102において、光ディスク7が有する記録層の数が2層である場合、ステップS104へ進む。その後、制御部37が、遮光フィルタ12をレーザ光の光軸に対して挿入する(ステップS104)。光ディスク7が有する記録層の数の判別には、例えば、以下の方法を用いる。
すなわち、制御部37が、半導体レーザ1を所定の出力パワーで発光させるよう、レーザパワー制御部31へ指示すると、所定の出力パワーで出射されたレーザ光が、コリメータレンズ2、ビームスプリッタ4、1/4波長板5、および対物レンズ6を介して、光ディスク7へ照射される。そして、光ディスク7によって反射された反射光は、対物レンズ6、1/4波長板5、ビームスプリッタ4、および検出レンズ10を介して、受光素子11へ入射する。記録層判別部36は、受光素子11が受光した反射光の光量と、所定のレベル光量と比較することにより、光ディスク7が有する記録層の数を判別することができる。例えば、所定のレベル光量が1.0であり、受光素子11が受光した反射光の光量が0.5である場合には、光ディスク7が有する記録層の数は2層であると判断できる。
また、ここでは、1つのレベル光量を基準として単層ディスクおよび2層ディスクを判別する例を用いたが、この一例に限定されない。例えば、3層ディスクの場合には0.33、4層ディスクの場合には0.25等の所定のレベル光量を設定しておくことにより、記録層判別部36は、光ディスク7が有する記録層の数が3層以上の場合でも、記録層の数を判別することができる。なお、光ディスク7が有する記録層の数を判別する際には、強度フィルタ3は光路に対して、挿入されていてもよいし、排出されていてもよい。
ステップS105では、制御部37が、フィルタ駆動部30に、強度フィルタ3を光路から排出するよう、制御信号を送信して指示する。光ディスク7に対し記録再生する際、単層ディスクの場合であれば、光路へ強度フィルタ3が挿入されている必要があるが、本実施の形態では、記録層判別部36の判別結果とは逆に、強度フィルタ3を光路から排出する。従って、受光素子9は強度フィルタ3を介さないレーザ光を受光し、当該レーザ光を電気信号に変換する。
次に、出力パワー検出部32は、受光素子9によって変換された電気信号を取得し、強度フィルタ3を排出させた状態での微分量子効率値Eoutを求める(ステップS107)。
ここで、微分量子効率値とは、半導体レーザ1へ供給される電流と受光素子9によって受光される光出力との関係(以下、I−L特性と称す。)により表されるレーザ光の効率を示す。図3は、半導体レーザの電流−光出力特性(I−L特性)の一例を示すグラフである。図3において、X軸が半導体レーザ1へ供給される電流の推移を示し、Y軸がレーザ光の光出力の推移を示している。微分量子効率値Eは、電流−光出力特性の傾きにより表されることから、例えば、以下の式(1)によって求めることができる。
E=(Pb−Pa)/(Ib−Ia) 式(1)
一方、出力パワー検出部32は、受光素子9によって変換される電気信号から、出力パワー検出レベルを取得するとともに、レーザパワー制御部31からの出力信号を基に半導体レーザ1へ供給された電流を取得することができる。当該出力パワー検出レベルと半導体レーザ1に供給された電流との関係が電流−出力パワー検出レベル特性(以下、I−V特性と称す。)である。図4は、図1に示した光記録再生装置の半導体レーザの電流−光出力特性(I−V特性)の一例を示すグラフである。図4において、X軸が半導体レーザ1へ供給される電流の推移を示し、Y軸が出力パワー検出部32によって検出されるレーザ光の出力パワー検出レベルの推移を示している。
そして、出力パワー検出部32は、上記出力パワー検出レベルと、半導体レーザ1に供給された電流とを用いて、微分量子効率値を求めることができる。ここでのI−V特性は、光路から強度フィルタ3が排出されているため、図4の(a)の特性である。まず、出力パワー検出部32は、所定の電流(Ia)における出力パワー検出レベル(Vaout)を求める。次に、レーザパワー制御部31が、半導体レーザ1へ供給する電流を徐々に増大させ、出力パワー検出部32が増大後の電流(Ib)における出力パワー検出レベル(Vbout)を求める。それぞれの値を用いて、例えば、以下の式(2)より、出力パワー検出部32は微分量子効率値Eoutを求めることができる。
Eout=(Vbout−Vaout)/(Ib−Ia) 式(2)
式(2)によって求められた微分量子効率値Eoutは、制御部37へ出力される。なお、本実施の形態にかかる微分量子効率値の演算式はこの一例に限定されない。
次に、ステップS109では、制御部37が、フィルタ駆動部30に、強度フィルタ3を光路へ挿入するよう、制御信号を送信して指示する。ここでの光路に対する強度フィルタ3の状態は、記録層判別部36の判別結果から得られる光路に対する強度フィルタ3の状態と一致する。従って、受光素子9は、強度フィルタ3を介したレーザ光を受光し、当該レーザ光を電気信号に変換する。
その後、出力パワー検出部32は、受光素子9によって変換された電気信号を取得し、強度フィルタ3を挿入させた状態での微分量子効率値Einを求める(ステップS111)。ここでのI−V特性は、光路へ強度フィルタ3が挿入されているため、図4の(b)の特性となる。まず、出力パワー検出部32は、ステップS107と同量の電流(Ia)における出力パワー検出レベル(Vain)を求める。次に、レーザパワー制御部31が、半導体レーザ1へ供給する電流がステップS107と同量になるまで徐々に増大させ、出力パワー検出部32が増大後の電流(Ib)における出力パワー検出レベル(Vbin)を求める。それぞれの値を用いて、例えば、以下の式(3)より、出力パワー検出部32は微分量子効率値Einを求めることができる。
Ein=(Vbin−Vain)/(Ib−Ia) 式(3)
式(3)によって求められた微分量子効率値Einは、制御部37へ出力される。なお、本実施の形態にかかる微分量子効率値の演算式はこの一例に限定されない。
次に、制御部37は、光路に対し強度フィルタ3が排出されているときの微分量子効率値Eoutと、光路に対し強度フィルタ3が挿入されているときの微分量子効率値Einとを取得する。出力パワー検出部32によって、検出される出力パワー検出レベルVain、Vaout、Vbin、Vboutは、強度フィルタ3が制御部37の指示どおりに光路に対して挿入および排出されていれば、強度フィルタ3のレーザ光透過率をmとした場合、Vbin=Vbout×m、およびVain=Vaout×mの関係をそれぞれ満たす。これは、出力パワー検出部32で検出されるレーザ光は、半導体レーザ1の微分量子効率、強度フィルタ3を含めた半導体レーザ1から受光素子9までの間の光学透過率、および受光素子9の光電変換効率の影響を受ける。しかしながら、ステップS105からステップS111までの処理は、極めて短時間(例えば、数秒〜数十秒程度)で行われるため、半導体レーザ1の微分量子効率、強度フィルタ3を除いた半導体レーザ1から受光素子9までの間の光学透過率、および受光素子9の光学変換効率は、ほぼ一定である。すなわち、強度フィルタ3による透過量変化以外のレーザ光に対する影響を無視することができるため、出力パワー検出部32における微分量子効率値は、強度フィルタ3が光路に対して挿入または排出させることのみを考慮し算出されるためである。従って、ステップS113では、制御部37が、微分量子効率値Eout、Einと強度フィルタ3のレーザ光透過率mとの関係が以下の式(4)の関係を満たすか否かを判断する。
Ein=Eout×m 式(4)
一例として、光路に対して挿入または排出される強度フィルタ3の光透過率が50%(0.5)である場合について説明する。光透過率が50%(0.5)の場合、出力パワー検出部32によって検出される出力パワー検出レベルの関係は、Vbin=Vbout/2、Vain=Vaout/2となるため、制御部37は、微分量子効率値Eout、Einが以下の式(5)の関係を満たすか否か判断する。
Ein=Eout×0.5 式(5)
また、ステップS113において判断に用いる式は、ステップS107およびステップS111にて求められる微分量子効率値Eout、Einの検出誤差を考慮し、式(4)の代わりに以下の式(6)を用いることができる。
K1×m×Eout<Ein<K2×m×Eout 式(6)
(但し、K1およびK2は係数)
ここで、微分量子効率値Einの範囲を決定する係数K1およびK2は、ステップS107およびステップS111における微分量子効率値の演算結果のばらつき度合いを考慮して、任意に設定することができる。一例として、係数K1を、「0.8」、係数K2を「1.2」とし、強度フィルタ3の光透過率を50%(0.5)とした場合、式(6)は以下の式(7)へ変更することができる。
0.4×Eout<Ein<0.6×Eout 式(7)
なお、ここで使用した係数K1およびK2は、この一例に限定されず、微分量子効率値Eout、Einのばらつきを吸収できればよい。また、制御部37は、ステップS113において、微分量子効率値Eout、Einの関係が、式(4)および式(6)のうち、いずれか一方を満たすことによって判断してもよい。
ステップS113での判断の結果、微分量子効率値Eout、Einが式(4)の関係を満たす場合(Yes)、遮光フィルタ12が光路から排出され(ステップS114)、制御部37はディスク種類に応じた各種調整を行い、光ディスク7の記録再生を開始する(ステップS115)。
なお、微分量子効率値Eout、Einが式(4)の関係を満たさない場合(No)、制御部37は上位装置へエラーを通知する等のエラー処理を行う(ステップS116)。ここでの上位装置とは、本実施の形態にかかる光記録再生装置に対し、記録または再生を指示する装置であり、光記録再生装置内にあってもよいし、例えば、パーソナルコンピュータ等のCPUのように、光記録再生装置外にあってもよい。また、エラー処理としては、制御部37が、レーザパワー制御部31に、半導体レーザ1への電流の供給を停止するよう指示してもよいし、再生信号処理部35が、受光素子11から取得した再生信号の処理を止めることにより、光ディスク7の再生を停止してもよい。さらに、制御部37は、光ディスク7への記録を停止してもよい。また、ステップS102から再実行する等のエラー処理を行ってもよい。
一方、ステップS106では、制御部37が、フィルタ駆動部30に、強度フィルタ3を光路へ挿入するよう、制御信号を送信して指示する。光ディスク7を記録再生する際、2層ディスクの場合であれば、光路から強度フィルタ3が排出されている必要があるが、本実施の形態では、記録層判別部36の判別結果とは逆に、強度フィルタ3を光路へ挿入する。
次に、出力パワー検出部32は、受光素子9によって変換された電気信号を取得し、強度フィルタ3を挿入させた状態での微分量子効率値Einを求める(ステップS108)。ここでのI−V特性は、光路へ強度フィルタ3が挿入されているため、図4の(b)の特性となる。出力パワー検出部32は、所定の電流(Ia)における出力パワー検出レベル(Vain)を求め、レーザパワー制御部31の制御による電流増大後の電流(Ib)における出力パワー検出レベル(Vbin)を求める。それぞれの値を用いて、例えば、式(3)より、微分量子効率値Einを求めることができる。その後、微分量子効率値Einは、制御部37へ出力される。
ステップS110では、制御部37が、フィルタ駆動部30に、強度フィルタ3を光路から排出するよう、制御信号を送信して指示する。ここでの光路に対する強度フィルタ3の状態は、記録層判別部36の判別結果から得られる光路に対する強度フィルタ3の状態と一致する。
次に、出力パワー検出部32は、受光素子9によって変換された電気信号を取得し、強度フィルタ3を排出させた状態での微分量子効率値Eoutを求める(ステップS112)。ここでのI−V特性は、光路から強度フィルタ3が排出されているため、図4の(a)の特性となる。出力パワー検出部32は、ステップS108と同量の電流(Ia)における出力パワー検出レベル(Vaout)と、ステップS108と同量になるまで増大させた電流(Ib)における出力パワー検出レベル(Vbout)を求める。それぞれの値を用いて、例えば、式(2)より、微分量子効率値Eoutを求めることができる。その後、微分量子効率値Eoutは、制御部37へ出力され、ステップS113へ進む。
以上のように、本実施の形態によれば、出力パワー検出部32(特性検出部)が、光路に対して強度フィルタ3(透過量可変部)が挿入または排出された状態でのレーザ光(第一のレーザ光)の出力パワー検出レベル(光出力)と、半導体レーザ1(レーザ光源)に供給された電流とを取得して、それぞれの状態での微分量子効率値(特性値)を求めている。また、制御部37(判定部)は、出力パワー検出部32からの微分量子効率値を用いて、フィルタ駆動部30(透過量可変部)およびこれに駆動される強度フィルタ3が当該制御部37(透過量制御部)から出力された制御信号に従って動作しているか否かを判定している。これにより、制御部37は、フィルタ駆動部30および強度フィルタ3の動作状態を把握して、当該フィルタ駆動部30および強度フィルタ3が誤動作しているか否かを判断することができる。従って、光ディスク7が単層ディスクの場合、光路から強度フィルタ3が誤って排出された状態で、再生動作が行われるのを防ぐことができるため、信号品質が劣化した状態での再生動作を防ぐことができる。また、光ディスク7が2層ディスクの場合、光路へ強度フィルタ3が誤って挿入された状態で、記録動作が行われるのを防ぐことができるため、半導体レーザ1の劣化や破壊を防ぐことができる。さらに、本実施の形態にかかる光記録再生装置によれば、これまでの光記録再生装置に構成を追加することなく、上記の効果を得ることができる。
また、本実施の形態では、強度フィルタ3が光路に対して挿入または排出された2態様の状態に変化されているので、半導体レーザ1の経時変化の影響を受けることなく、制御部37はフィルタ駆動部30および強度フィルタ3の動作状態を判定することができる。
なお、本実施の形態にかかる光ディスク7が単層または2層の記録層を有する場合について説明したが、この一例に限定されない。光ディスク7は、3層以上の記録層を有していてもよい。一例として、光ディスク7の有する記録層の数が3層である場合、制御部37は、フィルタ駆動部30に対して3態様の制御信号を送信する。フィルタ駆動部30は、受信した制御信号に応じて強度フィルタ3を3態様に制御する。しかし、制御部37は、強度フィルタ3が制御信号に応じて動作するか否かについて、強度フィルタ3の状態を少なくとも2態様に異ならせて判定することができる。例えば、光ディスク7がn層(nは整数)の記録層を有している場合、制御部37は、式(4)および式(6)の代わりに、以下の式(8)および式(9)を用いて、判断することができる。
Ei=強度フィルタ3を単層ディスクに応じた状態とした場合の微分量子効率値
Ej=強度フィルタ3をn層ディスクに応じた状態とした場合の微分量子効率値
Ei=Ej×(1/n) 式(8)
(K1/n)×Ej<Ei<(K2/n)×Ej 式(9)
(但し、K1およびK2は係数)
ここで、微分量子効率値Eiの範囲を決定する係数K1およびK2は、微分量子効率値Ei、Ejの演算結果のばらつき度合いを考慮して、任意に設定することができる。
なお、本実施の形態にかかる光記録再生装置の動作順序は、図2を用いて説明した順序に限定されない。光ディスク7への記録および再生に先立ち、光路に対して強度フィルム3の挿入および排出を行い、それぞれの状態における微分量子効率値Eout、Einの関係が、式(4)または式(6)を満たすことを、制御部37が判断できればよい。一例として、光ディスク7が有する記録層の数が単層であろうと2層であろうと、光路に対する強度フィルタ3の挿入および排出の順序が同一であってもよい。すなわち、2層ディスクでも、光路から強度フィルタ3を排出して微分量子効率値Eoutを求めた後、光路に対し強度フィルタ3を挿入して微分量子効率値Einを求めてもよい。但し、光ディスク7が単層の記録層を有する場合には、上記のように、強度フィルタ3を先に光路から排出した後に光路に挿入する場合の方が、制御部37は単層の記録層に適合した強度フィルタ3の配置状態で、その判定動作を終了することができ、光ディスク7に対する記録動作または再生動作を直ちに行える点で好ましい。同様に、光ディスク7が2層の記録層を有する場合には、上記のように、強度フィルタ3を先に光路に挿入した後に光路から排出する場合の方が、制御部37は2層の記録層に適合した強度フィルタ3の配置状態で、その判定動作を終了することができ、光ディスク7に対する記録動作または再生動作を直ちに行える点で好ましい。
なお、強度フィルタ3の代わりに液晶素子や回折格子等を用いてもよい。液晶素子は、電気(電圧信号)が与えられることにより、レーザ光の透過量を調整することができるため、光路に対して液晶素子を挿入または排出するための機構(フィルタ駆動部30に相当)が不要である。また、階調制御が可能な液晶素子を用いれば、透過量の調整を多段階にすることができる。
また、本実施の形態にかかる光記録再生装置では、強度フィルタ3およびフィルタ駆動部30の正常動作を判断するまでの間、光ディスク7へのレーザ光(第二のレーザ光)を遮るように遮光フィルタ12を挿入する動作について説明した。しかし、この一例に限定されず、例えば、遮光フィルタ12の代わりに、フォーカス制御部33が、対物レンズ6を光ディスク7に対して垂直に移動することによって、レーザ光が光ディスク7へ集光されないようにしてもよい。これにより、半導体レーザ1から出射されたレーザ光が、光ディスク7に記録された記録信号(記録情報)を消去することを確実に防ぐことができる。
なお、本実施の形態において、記録層判別部36は、光ディスク7の記録層の数を、ディスク保護用カートリッジ(図示せず)の形状、所定位置における開口穴の有無等によって判別してもよい。
さらに、記録層判別部36は、フォーカス誤差信号のS字カーブの数によって、光ディスク7が有する記録層の数を判別してもよい。一例として、制御部37が、半導体レーザ1を所定の出力パワーで発光させるよう、レーザパワー制御部31へ指示し、対物レンズ6を光ディスク7から垂直方向に移動させる。その時に得られる光ディスク7からの反射光を、受光素子11が受光し、電気信号に変換する。当該電気信号を取得することにより、記録層判別部36は、フォーカスずれ量に対するフォーカス誤差信号におけるS字カーブの数が1つの場合は単層ディスクと判別し、2つの場合は2層ディスクと判別することができる。
また、記録層判別部36は、例えば、光ディスク7のリードイン等の所定領域に記録層の数に関する情報があらかじめ記録されている場合には、当該情報を読み取ることにより、記録層の数を判別してもよい。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2にかかる光記録再生装置について説明する。
図5は、本発明の実施の形態2にかかる光記録再生装置の構成を示すブロック図である。なお、本実施の形態にかかる光記録再生装置について、実施の形態1において図1を用いながら説明した光記録再生装置と同様の機能を実現する構成については、図5において同様の番号を付番し、説明を省略する。
図5に示すように、本実施の形態にかかる光記録再生装置は、光ヘッド20、フィルタ駆動部30(透過量可変部)、レーザパワー制御部31(光出力制御部)、出力パワー検出部32(特性検出部)、フォーカス制御部33、トラッキング制御部34、再生信号処理部35、記録感度判別部38、および制御部37を備えている。すなわち、本実施の形態にかかる光記録再生装置は、記録層判別部の代わりに記録感度判別部38を有している点において、実施の形態1にかかる光記録再生装置と異なる。また、光ヘッド20は、半導体レーザ1(レーザ光源)、コリメータレンズ2、強度フィルタ3(透過量可変部)、ビームスプリッタ4(分光部)、1/4波長板5、対物レンズ6(光学レンズ)、検出レンズ8、10、および受光素子9(受光検出部)、11を備えており、実施の形態1の光ヘッド20とは、遮光フィルタ12を備えていない点で異なる。
記録感度判別部38は、受光素子11によって変換された電気信号を入力する。記録感度判別部38は、入力した電気信号から光ディスク7からの反射光量等の、光ディスク7に関する情報を取得する。そして、記録感度判別部38は、取得した情報に基づいて、光ディスク7の記録感度を判別する。ここで判別された光ディスク7の記録感度は、制御部37へ出力される。また、光ディスク7の記録感度には、記録層の数および当該光ディスク7に指定されている記録(パワー)感度が含まれている。
次に、本実施の形態にかかる光記録再生装置の動作について、図面を用いてその動作について説明する。図6は図5に示した光記録再生装置の起動手順の一例を示すフローチャートである。ここでは、光ディスク7を光記録再生装置に挿入し、当該光ディスク7への記録または再生を行うまでの記録再生前処理について説明する。
まず、光ディスク7が挿入されたことを検知する(ステップS201)。そして、光ディスク7が挿入されたことを検知した後、記録感度判別部38が光ディスク7の記録感度を判別する(ステップS202)。光ディスク7の記録感度が高い場合、ステップS203へ進む。光ディスク7の記録感度が低い場合、ステップS204へ進む。また、ステップS202の判別動作を終了すると、フォーカス制御部33が対物レンズ6を光ディスク7に対して垂直に移動することにより、半導体レーザ1からのレーザ光が光ディスク7へ集光されない状態とされる。また、光ディスク7の記録感度の判別には、例えば、以下の方法を用いる。
すなわち、光ディスク7のリードイン等の所定領域に記録感度に関する情報があらかじめ記録されている場合には、当該情報を読み取ることにより、記録感度を判別することができる。また、記録感度が低いとは、再生(または記録)するために、より強い再生パワー(または記録パワー)が必要であることを指している。なお、光ディスク7の記録感度を判別する際には、強度フィルタ3は光路に対し、挿入してもいてもよく、排出してもいてもよい。
ステップS203では、制御部37が、フィルタ駆動部30に、強度フィルタ3を光路から排出するよう、制御信号を送信して指示する。光ディスク7に対し記録再生する際、記録感度が高い場合であれば、光路へ強度フィルタ3が挿入されている必要があるが、本実施の形態では、記録感度判別部38の判別結果とは逆に、強度フィルタ3を光路から排出する。従って、半導体レーザ1から出射されたレーザ光は、強度フィルタ3を介さずに、受光素子9へ入射し、電気信号に変換される。
次に、出力パワー検出部32は、受光素子9によって変換された電気信号を取得する。そして、出力パワー検出部32は、取得した電気信号から、所定の電流(Ia)における出力パワー検出レベル(Vaout)を求める。次に、レーザパワー制御部31が、半導体レーザ1へ供給する電流を徐々に増大させ、出力パワー検出部32が増大後の電流(Ib)における出力パワー検出レベル(Vbout)を求める。その後、出力パワー検出部32は、例えば式(2)より、微分量子効率値Eoutを求める(ステップS205)。ステップS205で、求められた微分量子効率値Eoutは、制御部37へ出力される。
そして、ステップS207では、制御部37が、フィルタ駆動部30に、強度フィルタ3を光路へ挿入するよう、制御信号を送信して指示する。ここでの光路に対する強度フィルタ3の状態は、記録感度判別部38の判別結果から得られる光路に対する強度フィルタ3の状態と一致する。従って、半導体レーザ1から出射されたレーザ光は、強度フィルタ3を介して、受光素子9へ入射し、電気信号に変換される。
その後、出力パワー検出部32は、受光素子9によって変換された電気信号を取得する。そして、出力パワー検出部32は、取得した電気信号から、所定の電流(Ia)における出力パワー検出レベル(Vain)を求める。次に、レーザパワー制御部31が、半導体レーザ1へ供給する電流を徐々に増大させ、出力パワー検出部32が増大後の電流(Ib)における出力パワー検出レベル(Vbin)を求める。その後、出力パワー検出部32は、例えば、式(3)により、微分量子効率値Einを求める(ステップS209)。微分量子効率値Einは、制御部37へ出力される。
次に、制御部37は、光路に対し強度フィルタ3が排出されているときの微分量子効率値Eoutと、光路に対し強度フィルタ3が挿入されているときの微分量子効率値Einとを取得する。制御部37は、微分量子効率値Eout、Einと強度フィルタ3のレーザ光透過率mとの関係が式(4)の関係を満たすか否かを判断する(ステップS211)。また、判断に用いる式としては、ステップS205およびステップS209にて求められる微分量子効率値Eout、Einの検出ばらつきを考慮し、式(6)を用いてもよい。また、制御部37は、ステップS211において、微分量子効率値Eout、Einの関係が、式(4)および式(6)のうち、いずれか一方を満たすことによって判断してもよい。
ステップS211での判断の結果、微分量子効率値Eout、Einが式(4)の関係を満たす場合(Yes)、半導体レーザ1からのレーザ光が光ディスク7へ集光するようにフォーカス制御部33によって対物レンズ6が移動された後、制御部37はディスク種類に応じた各種調整を行い、光ディスク7の記録再生を開始する(ステップS212)。微分量子効率値Eout、Einが式(4)の関係を満たさない場合(No)、制御部37は上位装置へエラー通知を行う等のエラー処理を行い、光ディスク7の記録再生を行わない(ステップS213)。
一方、ステップS204では、制御部37が、フィルタ駆動部30に、強度フィルタ3を光路へ挿入するよう、制御信号を送信して指示する。光ディスク7を記録再生する際、記録感度が低い場合であれば、光路から強度フィルタ3が排出されている必要があるが、本実施の形態では、記録密度判別部38の判別結果とは逆に、強度フィルタ3を光路へ挿入する。
次に、出力パワー検出部32は、受光素子9によって変換された電気信号を取得する。そして、出力パワー検出部32は、取得した電気信号から、所定の電流(Ia)における出力パワー検出レベル(Vain)を求める。次に、レーザパワー制御部31が、半導体レーザ1へ供給する電流を徐々に増大させ、出力パワー検出部32が増大後の電流(Ib)における出力パワー検出レベル(Vbin)を求める。その後、出力パワー検出部32は、例えば、式(3)により、微分量子効率値Einを求める(ステップS206)。微分量子効率値Einは、制御部37へ出力される。
ステップS208では、制御部37が、フィルタ駆動部30に、強度フィルタ3を光路から排出するよう、制御信号を送信して指示する。ここでの光路に対する強度フィルタ3の状態は、記録感度判別部38の判別結果から得られる光路に対する強度フィルタ3の状態と一致する。
次に、出力パワー検出部32は、受光素子9によって変換された電気信号を取得する。そして、出力パワー検出部32は、取得した電気信号から、所定の電流(Ia)における出力パワー検出レベル(Vaout)を求める。次に、レーザパワー制御部31が、半導体レーザ1へ供給する電流を徐々に増大させ、出力パワー検出部32が増大後の電流(Ib)における出力パワー検出レベル(Vbout)を求める。その後、出力パワー検出部32は、例えば式(2)により、微分量子効率値Eoutを求める(ステップS210)。その後、微分量子効率値Eoutは、制御部37へ出力され、ステップS211へ進む。
以上のように、本実施の形態によれば、記録感度の異なる光ディスク7に対して、記録再生する場合であっても、制御部37は、出力パワー検出部32からの微分量子効率値を用いて、フィルタ駆動部30および強度フィルタ3が当該制御部37から出力された制御信号に従って動作しているか否かを判定している。これにより、制御部37は、フィルタ駆動部30および強度フィルタ3の動作状態を把握して、当該フィルタ駆動部30および強度フィルタ3が誤動作しているか否かを判断することができる。従って、例えば記録感度が低い場合に光路から強度フィルタ3が誤挿入された状態で、記録動作または再生動作が行われるのを防ぐことができる。
なお、本実施の形態にかかる光記録再生装置の動作順序は、この図6を用いて説明した順序に限定されない。光ディスク7への記録および再生に先立ち、強度フィルム3を光路に対して挿入および排出し、それぞれの状態における微分量子効率値Eout、Einnの関係が、式(4)または式(6)を満たすことを、制御部37が判断できればよい。一例として、光ディスク7の記録感度の高低に関係なく、光路に対する強度フィルタ3の挿入および排出の順序が同一であってもよい。すなわち、光ディスクの記録感度が低い場合でも、光路に対し強度フィルタ3を排出して微分量子効率値Eoutを求めた後、光路に対し強度フィルタ3を挿入して微分量子効率値Einを求めてもよい。但し、光ディスク7の記録感度が高い場合には、上記のように、強度フィルタ3を先に光路から排出した後に光路に挿入する場合の方が、制御部37は高い記録感度に適合した強度フィルタ3の配置状態で、その判定動作を終了することができ、光ディスク7に対する記録動作または再生動作を直ちに行える点で好ましい。同様に、光ディスク7の記録感度が低い場合には、上記のように、強度フィルタ3を先に光路に挿入した後に光路から排出する場合の方が、制御部37は低い記録感度に適合した強度フィルタ3の配置状態で、その判定動作を終了することができ、光ディスク7に対する記録動作または再生動作を直ちに行える点で好ましい。
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3にかかる光記録再生装置について説明する。
図7は、本発明の実施の形態3にかかる光記録再生装置の構成を示すブロック図である。本実施の形態にかかる光記録再生装置において、図1を用いて説明した実施の形態1の光記録再生装置と同じ機能を実現する構成については、図7において同じ番号を付番し、説明を省略する。
本実施の形態にかかる光記録再生装置は、光ヘッド20、フィルタ駆動部30(透過量可変部)、レーザパワー制御部31(光出力制御部)、出力パワー検出部32(特性検出部)、フォーカス制御部33、トラッキング制御部34、再生信号処理部39、記録層判別部36、制御部40、および記憶部41を備えている。また、光ヘッド20は、半導体レーザ1(レーザ光源)、コリメータレンズ2、強度フィルタ3(透過量可変部)、ビームスプリッタ4(分光部)、1/4波長板5、対物レンズ6(光学レンズ)、検出レンズ8、10、および受光素子9(受光検出部)、11を備えており、実施の形態1の光ヘッド20とは、遮光フィルタ12を備えていない点で異なる。
再生信号処理部39は、光ヘッド20の受光素子11によって変換された電気信号を入力する。再生信号制御部39は、入力した電気信号から光ディスク7に記録された記録情報を再生するための再生信号を取得する。そして、再生信号処理部39は、取得した再生信号に対して波形等化等の処理を行い、再生データを出力する。さらに、再生信号処理部39は、取得した再生信号から、例えば変調度、ジッタ値、またはエラーレート等の当該再生信号の品質に関する情報を抽出して制御部40へ出力する。
記憶部41は、フラッシュEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等を用いることができる。記憶部41には、強度フィルタ3が光路に対して挿入および排出された際における微分量子効率値(特性設定値)Ein0、Eout0が、工場出荷時等にあらかじめ記憶されている。
制御部40は、記録層判別部36から取得した光ディスク7の記録層の数に適合する強度フィルタ3の状態を、光路に対する挿入および排出のいずれか一方から判断する。そして、制御部40は、判断した強度フィルタ3の動作状態に対応した制御信号をフィルタ駆動部30へ送信する。さらに、制御部40は、再生信号処理部39から、再生信号の品質に関する情報を取得し、信号品質の判断を行うことができる。また、制御部40は、記憶部41にあらかじめ記憶された微分量子効率値を取得することができ、出力パワー検出部32によって求められた微分量子効率値と比較することにより、強度フィルタ3の動作状態およびフィルタ駆動部30の動作状態を判定することができる。
次に、本実施の形態にかかる光記録再生装置の動作について説明する。図8は、図7に示した光記録再生装置の起動手順の一例を示すフローチャートである。ここでは、光ディスク7を光記録再生装置に挿入し、当該光ディスク7への記録または再生を行うまでの記録再生前処理について説明する。
まず、光ディスク7が挿入されたことを検知する(ステップS301)。そして、光ディスク7が挿入されたことを検知した後、記録層判別部36が光ディスク7の記録層の数を判別する(ステップS302)。光ディスク7が単層ディスクである場合、ステップS303へ進む。光ディスク7が2層ディスクである場合、ステップS304へ進む。また、ステップS302の判別動作を終了すると、フォーカス制御部33が対物レンズ6を光ディスク7に対して垂直に移動することにより、半導体レーザ1からのレーザ光が光ディスク7へ集光されない状態とされる。
ステップS303では、制御部40が、フィルタ駆動部30に、強度フィルタ3を光路へ挿入するよう、制御信号を送信して指示する。従って、半導体レーザ1から出射されたレーザ光は、強度フィルタ3を介し、受光素子9へ入射し、電気信号に変換される。
次に、出力パワー検出部32は、受光素子9によって変換された電気信号を取得する。そして、出力パワー検出部32は、取得した電気信号から、所定の電流(Ia)における出力パワー検出レベル(Vain)を求める。次に、レーザパワー制御部31が、半導体レーザ1へ供給する電流を徐々に増大させ、出力パワー検出部32が増大後の電流(Ib)における出力パワー検出レベル(Vbin)を求める。出力パワー検出部32は、例えば、式(3)により、微分量子効率値Einを求める(ステップS305)。ステップS305で、求めた微分量子効率値Einは、制御部40へ出力される。
ここで、レーザ光の微分量子効率値の経時的な変化について説明する。図9は、図7に示した光記録再生装置の半導体レーザの電流−光出力特性(I−V特性)の一例を示すグラフである。図9においては、X軸が半導体レーザ1へ供給される電流の推移を示し、Y軸が出力パワー検出部32によって検出されるレーザ光の出力パワー検出レベルの推移を示している。
レーザ光の微分量子効率値は、半導体レーザ1の内部における活性層の劣化等により、時間の経過と共に低下する(例えば、「わかる半導体レーザの基礎と応用−レーザ・ダイオードの発光原理および諸特性とその展望 基礎解説シリーズ」、平田照二著、2001年11月発行、CQ出版社、第105頁)。一方、レーザ光の微分量子効率値が向上する要因は少ない。従って、一定期間経過後における微分量子効率値は、例えば、−40%〜+10%の範囲内であると予測することができる。図9の(a0)、(b0)は、工場出荷当時におけるレーザ光の微分量子効率値の特性を示している。図9の(a1)、(b1)は、レーザ光の微分量子効率値が向上すると予測した場合の特性を示している。また、図9の(a2)、(b2)は、レーザ光の微分量子効率値が低下すると予測した場合の特性を示している。
制御部40は、強度フィルタ3が光路に挿入された際における微分量子効率値Ein0を記憶部41から取得する。そして、制御部40は、ステップS305において求められた微分量子効率値Einと記憶部41の微分量子効率値Ein0との関係が、以下の式(10)を満たすか否か判断する(ステップS307)。
0.6×Ein0<Ein<1.1×Ein0 式(10)
ステップS307での判断の結果、微分量子効率値Ein0、Einが式(10)の関係を満たす場合(Yes)、半導体レーザ1からのレーザ光が光ディスク7へ集光するようにフォーカス制御部33によって対物レンズ6が移動された後、制御部40はディスク種類に応じた各種調整を行い、光ディスク7の記録再生を開始する(ステップS309)。
微分量子効率値Ein0、Einが式(10)の関係を満たさない場合(No)、制御部40は上位装置へエラー通知を行う等のエラー処理を行い、光ディスク7の記録再生を行わない(ステップS311)。制御部40は、レーザパワー制御部31に対し、半導体レーザ1への電流の供給を停止するよう指示を出す。なお、微分量子効率値Ein0、Einの関係が、Ein<0.6×Ein0を満たす場合には、半導体レーザ1が、工場出荷当時に対して大幅に劣化していると判断できる。
一方、ステップS304では、制御部40が、フィルタ駆動部30に、強度フィルタ3を光路から排出するよう、制御信号を送信して指示する。従って、半導体レーザ1から出射されたレーザ光は、強度フィルタ3を介さず、受光素子9へ入射し、電気信号に変換される。
次に、出力パワー検出部32は、受光素子9によって変換された電気信号を取得する。そして、出力パワー検出部32は、取得した電気信号から、所定の電流(Ia)における出力パワー検出レベル(Vaout)を求める。次に、レーザパワー制御部31が、半導体レーザ1へ供給する電流を徐々に増大させ、出力パワー検出部32が増大後の電流(Ib)における出力パワー検出レベル(Vbout)を求める。その後、出力パワー検出部32は、例えば、式(2)により、微分量子効率値Eoutを求める(ステップS306)。ステップS306で、求めた微分量子効率値Eoutは、制御部40へ出力される。
制御部40は、強度フィルタ3が光路から排出された際における微分量子効率値Eout0を記憶部41から取得する。そして、制御部40は、ステップS306において求められた微分量子効率値Eoutと記憶部41の微分量子効率値Eout0との関係が、以下の式(11)を満たすか否か判断する(ステップS308)。
0.6×Eout0<Eout<1.1×Eout0 式(11)
ステップS308での判断の結果、微分量子効率値Eout0、Eoutが式(11)の関係を満たす場合(Yes)、半導体レーザ1からのレーザ光が光ディスク7へ集光するようにフォーカス制御部33によって対物レンズ6が移動された後、制御部40はディスク種類に応じた各種調整を行い、光ディスク7の記録再生を開始する(ステップS310)。
微分量子効率値Eout0、Eoutが式(11)の関係を満たさない場合(No)、制御部40は上位装置へエラー通知を行う等のエラー処理を行い、光ディスク7の記録再生を行わない(ステップS311)。
以上のように、本実施の形態にかかる光記録再生装置は、制御部40が、出力パワー検出部32が検出した微分量子効率値(特性値)と、記憶部41に、例えば工場出荷時にあらかじめ記憶された微分量子効率値(特性設定値)とを比較することにより、強度フィルタ3およびフィルタ駆動部30が正常に動作しているか否かを判定できる。この結果、上記実施の形態と異なり、強度フィルタ3を配置状態を挿入または排出の2態様に変化させて、微分量子効率値の変化を検出する必要がないため、短時間での判定が可能である。また、I−V特性が温度や経時劣化などにより変化することを考慮して、(式10)および(式11)中の係数を決めているため、ステップS307およびステップS308における判定を正確に行うことが可能である。
なお、上記の説明以外に、ステップS307またはステップS308における判断の結果、式(10)または式(11)の関係を満たさないとき、光ディスク7が単層ディスクであれば、試し再生を行うことができる。この場合、ステップS312で、光ディスク7が単層ディスクであるか否かを判断し、単層ディスクであれば、ステップS313へ進む。2層ディスクであれば、ステップS315へ進む。
ステップS313では、制御部40がレーザパワー駆動部31へ、半導体レーザ1への電流供給を行うように指示する。従って、半導体レーザ1から出射されたレーザ光は、強度フィルタ3を介さずに、光ディスク7上に焦点を結び、光ディスク7によって反射された反射光は受光素子11へ入射する。受光素子11に受光された反射光は、電気信号に変換される。再生信号処理部39は、受光素子11から電気信号を取得し、制御部40へ出力する。制御部40は、当該電気信号に含まれる再生信号の品質に関する情報を参照し、再生信号の品質が良好であるか否かを判断する(ステップS314)。再生信号の品質が良好であれば(Yes)、制御部40は光ディスク7の記録情報を再生する(ステップS309)。再生信号の品質が良好でなければ(No)、制御部40は、光ディスク7の記録情報を再生しない(ステップS315)。
これにより、制御部40によって、強度フィルタ3が誤って排出されたと判断された場合であっても、光ディスク7が単層ディスクであれば、レーザ光の出力パワーは半導体レーザ1を劣化させるほどの出力パワーではないため、強度フィルタ3またはフィルタ駆動部30の動作異常に関係なく、再生を行うことができる。
また、式(10)および式(11)中の係数(「0.6」「1.1」)は、半導体レーザ1の一定期間経過後における微分量子効率値を、一例として、−40%〜+10%の範囲内であると予測した場合における係数である。式(10)および式(11)中の係数は、I−V特性の変化を、温度または経時劣化等を考慮して決定すればよく、この一例に限定されるものではない。
なお、記憶部41に記憶する微分量子効率値Ein0、Eout0を工場出荷時の値として説明したが、本実施の形態にかかる光記録再生装置における記憶部41にあらかじめ設定する時期は、これに限るものではない。経時劣化等の劣化要因が発生する以前に記憶部41に設定されていればよく、例えば、初めて光記録再生装置を使用した際に、自動的に記憶部41に設定されるものでもよい。また、本実施の形態の記憶部41を上記実施の形態1、2の光記録再生装置に設け、光路に対する強度フィルタ3の配置状態を2態様に変化させ、かつ、当該記憶部41内に保持されている特性設定値(Ein0、Eout0)を用いて、制御部37が上記透過量可変部での誤動作の有無を判断する構成でもよい。
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4にかかる光記録再生装置について説明する。
図10は、本発明の実施の形態4にかかる光記録再生装置の構成を示すブロック図である。本実施の形態にかかる光記録再生装置において、図1を用いて説明した実施の形態1の光記録再生装置と同じ機能を実現する構成については、図10において同じ番号を付番し、説明を省略する。
本実施の形態にかかる光記録再生装置は、光ヘッド20、フィルタ駆動部30(透過量可変部)、レーザパワー制御部31(光出力制御部)、出力パワー検出部32(特性検出部)、フォーカス制御部33、トラッキング制御部34、再生信号処理部35、記録層判別部36、および制御部37を備えている。また、光ヘッド20は、半導体レーザ1(レーザ光源)、コリメータレンズ2、第一の強度フィルタ3a(第一の透過量可変部)、第二の強度フィルタ3b(第二の透過量可変部)、ビームスプリッタ4(分光部)、1/4波長板5、対物レンズ6(光学レンズ)、検出レンズ8、10、および受光素子9(受光検出部)、11を備えており、実施の形態1の光ヘッド20とは、遮光フィルタ12を備えていない点で異なる。
第一の強度フィルタ3aは、フィルタ駆動部30とともに、第一の透過量可変部を構成するものであり、上記実施の形態の強度フィルタ3と同様に、光ディスク7の記録層の数または記録感度に応じて、半導体レーザ1からビームスプリッタ4に入射されるレーザ光の透過量を調整する。
第二の強度フィルタ3bは、フィルタ駆動部30とともに、光ディスク7に対する再生動作または記録動作に応じて、半導体レーザ1からビームスプリッタ4に入射されるレーザ光の透過量を調整する第二の透過量可変部を構成している。
また、第一および第二の各強度フィルタ3a、3bでは、制御部37からの制御信号に従ったフィルタ駆動部30の動作により、例えば表1に示すように、光ディスク7の記録層の数および当該光ディスク7に対する記録再生動作に応じて、上記光路に対して適宜挿入または排出されるようになっている。
表1に例示されるように、第一の強度フィルタ3aは、実施の形態1の強度フィルタ3と同様に、記録層判別部36によって判別された光ディスク7の記録層の数に従って、挿入または排出されるようになっている。また、この第一の強度フィルタ3aの動作状態の判定処理は、第二の強度フィルタ3bが光路から排出された状態で、強度フィルタ3と同様に、行われる。すなわち、図2のステップS105〜S116に示したように、出力パワー検出部32が第一の強度フィルタ3aを挿入および排出させた状態での微分量子効率値Ein、Eoutを検出し、制御部37が式(4)または式(6)に代入することで第一の強度フィルタ3aおよびフィルタ駆動部30の誤動作の有無が判断される。尚、この説明以外に、第二の強度フィルタ3bを光路に挿入した状態でも、上記ステップS105〜S116の手順に従って、第一の強度フィルタ3aの動作状態の判定処理を実施することができる。
一方、第二の強度フィルタ3bは、表1に示したように、再生動作に挿入され、記録動作に排出されるようになっており、記録動作が行われる前に、制御部37は第二の強度フィルタ3bに対する誤動作の有無を必ず判定するようになっている(詳細は後述)。
ここで、第一および第二の強度フィルタ3a、3bによって調整される半導体レーザ1の出力パワーについて具体的に説明する。なお、以下の説明では、第一および第二の強度フィルタ3a、3bでのレーザ光の各透過率が、50%である場合について説明する。また、光ヘッド20の光学透過率(第一および第二の強度フィルタ3a、3bを除く、光ヘッドの光学系全体の透過率)が、25%である場合について説明する。また、単層ディスクに情報を記録するために必要な盤面(記録層)上の記録パワーが5mWであり、単層ディスクから情報を再生するために必要な記録層上の再生パワーが0.4mWである場合について説明する。
まず、記録動作時では、単層ディスクの光ディスク7に対して、5mWの記録パワーを得るためには、半導体レーザ1の出力パワーを、40mW(5mW/25%/50%)とする必要がある。また、2層ディスクの光ディスク7に対する記録動作時では、単層ディスクの約2倍の記録パワーを得る必要があることから、40mW(5mW×2/25%)に半導体レーザ1の出力パワーを調整する必要がある。
一方、再生動作時では、単層ディスクの光ディスク7に対して、0.4mWの再生パワーを得るためには、半導体レーザ1の出力パワーを、6.4mW(0.4mW/25%/50%/50%)とする必要がある。また、2層ディスクの光ディスク7に対する再生動作時では、単層ディスクの約2倍の再生パワーを得る必要があることから、6.4mW(0.4mW×2/25%/50%)に半導体レーザ1の出力パワーを調整する必要がある。このように、再生動作時では、光ディスク7の記録層の数に関わらず、第二の強度フィルタ3bが上記光路に挿入されるので、上記各実施の形態のものに比べて、半導体レーザ1の再生パワーを高くすることができる。この結果、本実施の形態では、再生動作時での半導体レーザ1の量子雑音の低減効果をより向上させて、優れた品質の再生信号を得ることができる。
次に、本実施の形態にかかる光記録再生装置の動作について、図面を用いて説明する。なお、以下の説明では、第二の強度フィルタ3bの挿入または排出する動作について主に説明する。また、2層ディスクの光ディスク7に対して、再生動作および記録動作が連続的に行われる場合を例示して説明する。
図11は、図10に示した光記録再生装置での動作例を示すタイミングチャートである。図12は図10に示した光記録再生装置での再生動作から記録動作への切換時の動作例を示すフローチャートであり、図13は図10に示した光記録再生装置での記録動作から再生動作への切換時の動作例を示すフローチャートである。
図11に示すように、再生動作が行われているときには、第二の強度フィルタ3bは上記光路に挿入されており、記録動作の開始前の時点t1において、第二の強度フィルタ3bは排出される。このとき、フィルタ駆動部30が正常に動作して、第二の強度フィルタ3bが適切に排出されていれば、レーザパワー制御部31では、出力パワー検出部32からの検出信号(再生パワー)を目標値に用いたフィードバック制御も正常に行われる。すなわち、第二の強度フィルタ3bの排出動作に伴って、半導体レーザ1への供給電流値が減少されることで半導体レーザ1の出力パワーは第二の強度フィルタ3bの透過率に応じて低下するが、光ディスク7上の再生パワーは目標値に合致するように制御される。それ故、第二の強度フィルタ3bの排出動作の判定処理は、当該第二のフィルタ3bの排出前後の電流変化量ΔIeを用いて行うことができる。
つまり、再生パワーおよび第二の強度フィルタ3bの透過率をそれぞれPrおよびT2とし、第二の強度フィルタ3bの排出前の微分量子効率値をEaとすると、第二の強度フィルタ3bの排出前後での電流変化量ΔIeの期待値ΔIxeは、以下の式(12)で表現される。
ΔIxe=Pr/(Ea/T2)−Pr/Ea 式(12)
ここで、第二の強度フィルタ3bの透過率T2が50%である場合には、上記式(12)は次の式(13)に変形される。
ΔIxe=−0.5×(Pr/Ea) 式(13)
したがって、制御部37は、検出誤差などを考慮した次の式(14)により、第二の強度フィルタ3bの排出動作を判定することが可能となる。
ΔIe<0.8×ΔIxe 式(14)
詳細には、図12のステップS401に示すように、上記時点t1の前に出力パワー検出部32が受光素子9からの電気信号およびレーザパワー制御部31からの出力信号を基に再生パワーPrおよび微分量子効率値Eaを求めて、制御部37に出力する。続いて、制御部37は、入力した再生パワーPrおよび微分量子効率値Eaを式(13)に代入することにより、上記期待値ΔIxeを算出する。また、制御部37では、レーザパワー制御部31からの出力信号に基づいて、第二の強度フィルタ3bの排出前後での電流変化量ΔIeを検出する(ステップS402)。
続いて、制御部37は、算出した期待値ΔIxeと検出した電流変化量ΔIeとが上記式(14)を満足するか否かについて判別する(ステップS403)。そして、式(14)を満足している場合には、制御部37は、第二の強度フィルタ3bが光路から排出されていると判断し、図11に時点t2にて示すように、再生動作から記録動作に切り換えて記録動作を開始する(ステップS404)。
一方、上記ステップS403において、式(14)が満足されていないことを判別すると、制御部37は、第二の強度フィルタ3bが光路から排出されていないと判断して、エラー処理を行う(ステップS405)。
また、再生動作が記録動作に連続的に行われる場合では、図11に示すように、記録動作から再生動作に切り換えた時点t3から所定時間が経過した時点t4で第二の強度フィルタ3bは光路に挿入される。このとき、フィルタ駆動部30が正常に動作して、第二の強度フィルタ3bが適切に挿入されていれば、レーザパワー制御部31では、出力パワー検出部32からの検出信号(再生パワー)を目標値に用いたフィードバック制御も正常に行われる。すなわち、第二の強度フィルタ3bの挿入動作に伴って、半導体レーザ1への供給電流値が増加されることで半導体レーザ1の出力パワーは第二の強度フィルタ3bの透過率に応じて上昇するが、光ディスク7上の再生パワーは目標値に合致するように制御される。それ故、第二の強度フィルタ3bの挿入動作の判定処理は、当該第二のフィルタ3bの挿入前後の電流変化量ΔIiを用いて行うことができる。
つまり、再生パワーおよび第二の強度フィルタ3bの透過率をそれぞれPrおよびT2とし、第二の強度フィルタ3bの挿入前の微分量子効率値をEbとすると、第二の強度フィルタ3bの挿入前後での電流変化量ΔIiの期待値ΔIxiは、以下の式(15)で表現される。
ΔIxi=Pr/(Eb×T2)−Pr/Eb 式(15)
ここで、第二の強度フィルタ3bの透過率T2が50%である場合には、上記式(15)は次の式(16)に変形される。
ΔIxi=(Pr/Eb) 式(16)
したがって、制御部37は、検出誤差などを考慮した次の式(17)により、第二の強度フィルタ3bの挿入動作を判定することが可能となる。
ΔIi>0.8×ΔIxi 式(17)
詳細には、図13のステップS406に示すように、上記時点t4の前に出力パワー検出部32が受光素子9からの電気信号およびレーザパワー制御部31からの出力信号を基に再生パワーPrおよび微分量子効率値Ebを求めて、制御部37に出力する。続いて、制御部37は、入力した再生パワーPrおよび微分量子効率値Ebを式(16)に代入することにより、上記期待値ΔIxiを算出する。また、制御部37では、レーザパワー制御部31からの出力信号に基づいて、第二の強度フィルタ3bの挿入前後での電流変化量ΔIiを検出する(ステップS407)。
続いて、制御部37は、算出した期待値ΔIxiと検出した電流変化量ΔIiとが上記式(17)を満足するか否かについて判別する(ステップS408)。そして、式(17)を満足している場合には、制御部37は、第二の強度フィルタ3bが光路に挿入されていると判断し、上記時点t4から再生動作を実質的に開始する(ステップS409)。
一方、上記ステップS408において、式(17)が満足されていないことを判別すると、制御部37は、第二の強度フィルタ3bが光路に挿入されていないと判断して、エラー処理を行う(ステップS410)。
以上のように構成された本実施の形態では、光路に対して各々挿入または排出される第一および第二の強度フィルタ3a、3bが設けられているので、光ディスク7の記録層の数または記録感度および当該光ディスク7に対する再生動作または記録動作に応じて、ビームスプリッタ4を介して光ディスク7に照射されるレーザ光(第二のレーザ光)を制御することができる。この結果、本実施の形態では、記録層の数または記録感度および再生動作または記録動作に最適なレーザ光によって光ディスク7に対する情報の記録動作または再生動作を実行することができる。また、記録動作が行われる前に、第二の強度フィルタ3bの誤挿入の判定処理が実施されているので、当該第二の強度フィルタ3bの誤挿入に起因して半導体レーザ1の出力パワーが不適切に増加されるのを防ぐことができ、半導体レーザ1の劣化や破壊が生じるのを確実に回避することができる。また、再生動作が行われる前に、第二の強度フィルタ3bの誤排出の判定処理が実施されているので、当該第二の強度フィルタ3bの誤排出に起因して再生信号が劣化するのを防止することができる。
また、上記の説明以外に、光ヘッド20を制御する上記制御系に自動パワー制御(Automatic Power Control:以下、APCと称す。)が設定されている場合では、レーザパワー制御部31での上記再生パワーを1/2程度に下げた後、第二の強度フィルタ3bの排出動作を行う構成でもよい。これにより、再生動作に引き続いて記録動作を行う際に、第二の強度フィルタ3bの排出動作に伴って、上記APCでの帯域制限に起因して、半導体レーザ1の出力パワーが急激に増加するのを防ぐことができる。
具体的にいえば、図14に示すように、第二の強度フィルタ3bが光路に挿入されている状態において、レーザパワー制御部31では、同図14の時点t5で、設定された再生APCでの目標値P0から目標値P0/2に切り換えられる。その後、レーザパワー制御部31では、上記時点t5から所定時間経過後の時点t6で再生APCがホールドされる。すなわち、レーザパワー制御部31では、フィードバック制御での目標値がP0/2に固定された後、第二の強度フィルタ3bは記録動作の開始前の時点t7で光路から排出される。このとき、時点t5から時点t6までの間に再生APCでの目標値が1/2程度に低減されていないと、第二の強度フィルタ3bの排出動作の動作速度が上記帯域制限(例えば、1kHz)に比べて非常に速いため、半導体レーザ1への供給電流値が上記時点t7経過後急峻に立ち上がって半導体レーザ1の出力パワーが急激に増加するのを回避できない。尚、再生APCでの目標値の低減率は、第二の強度フィルタ3bの透過率を基に適宜変更することが好ましい。つまり、第二の強度フィルタ3bの透過率が例えば25%である場合には、当該強度フィルタ3bの排出動作前に再生APCでの目標値を1/4程度に低減することが好ましい。
また、レーザパワー制御部31が上記再生APCを行っている場合では、第二の強度フィルタ3bの排出動作の判定処理は、当該第二のフィルタ3bの排出前後の再生パワーの変化(増加)量ΔPreを用いて行うことができる。
つまり、第二の強度フィルタ3bの透過率をT2とすると、第二の強度フィルタ3bの排出前後での再生パワーの増加量ΔPreの期待値ΔPxeは、以下の式(18)で表現される。
ΔPxe=Pr−T2×Pr 式(18)
したがって、制御部37は、検出誤差などを考慮した次の式(19)により、第二の強度フィルタ3bの排出動作を判定することが可能となる。
ΔPre<0.8×ΔPxe 式(19)
詳細には、図15のステップS411に示すように、上記時点t5において、レーザパワー制御部31での再生APCの再生パワー目標値が低減された後、出力パワー検出部32が受光素子9からの電気信号を基に再生パワーPrを求めて、制御部37に出力する(ステップS412)。続いて、制御部37は、入力した再生パワーPrを式(18)に代入することにより、上記期待値ΔPxeを算出する。また、制御部37では、出力パワー検出部32からの出力信号に基づいて、第二の強度フィルタ3bの排出前後での再生パワーの増加量ΔPreを検出する(ステップS413)。
続いて、制御部37は、算出した期待値ΔPxeと検出した増加量ΔPreとが上記式(19)を満足するか否かについて判別する(ステップS414)。そして、式(19)を満足している場合には、制御部37は、第二の強度フィルタ3bが光路から排出されていると判断し、図14に時点t8にて示すように、再生動作から記録動作に切り換えて記録動作を開始する(ステップS415)。
一方、上記ステップS414において、式(19)が満足されていないことを判別すると、制御部37は、第二の強度フィルタ3bが光路から排出されていないと判断して、エラー処理を行う(ステップS416)。
また、再生動作が記録動作に連続的に行われる場合では、図14に示すように、記録動作から再生動作に切り換えた時点t9から所定時間が経過した時点t10で再生APCがホールドされた後、第二の強度フィルタ3bは時点t11で光路に挿入される。
また、第二の強度フィルタ3bの挿入動作の判定処理は、排出動作の場合と同様に、当該第二のフィルタ3bの挿入前後の再生パワーの変化(減少)量ΔPriを用いて行うことができる。
つまり、第二の強度フィルタ3bの透過率をT2とすると、第二の強度フィルタ3bの挿入前後での再生パワーの減少量ΔPriの期待値ΔPxiは、以下の式(20)で表現される。
ΔPxi=T2×Pr−Pr 式(20)
したがって、制御部37は、検出誤差などを考慮した次の式(21)により、第二の強度フィルタ3bの挿入動作を判定することが可能となる。
ΔPri>0.8×ΔPxi 式(21)
詳細には、図16のステップS417に示すように、出力パワー検出部32が受光素子9からの電気信号を基に再生パワーPrを求めて、制御部37に出力する(ステップS417)。続いて、制御部37は、入力した再生パワーPrを式(20)に代入することにより、上記期待値ΔPxiを算出する。また、制御部37では、出力パワー検出部32からの出力信号に基づいて、第二の強度フィルタ3bの挿入前後での再生パワーの減少量ΔPriを検出する(ステップS418)。
続いて、制御部37は、算出した期待値ΔPxiと検出した減少量ΔPriとが上記式(21)を満足するか否かについて判別する(ステップS419)。そして、式(21)を満足している場合には、制御部37は、第二の強度フィルタ3bが光路に挿入されていると判断し、図14の時点t12から再生動作を実質的に開始する(ステップS420)。
一方、上記ステップS419において、式(21)が満足されていないことを判別すると、制御部37は、第二の強度フィルタ3bが光路に挿入されていないと判断して、エラー処理を行う(ステップS421)。
なお、上記の説明では、一つのフィルタ駆動部が第一および第二の各強度フィルタの駆動(挿入または排出)する構成について説明したが、強度フィルタ毎にフィルタ駆動部を設ける構成でもよい。また、例えば第二の強度フィルタの代わりに、光学フィルタとは異なる、回折格子や液晶素子などを用いることもできる。
また、本実施の形態の第二の透過量可変部を上記実施の形態1〜3の各光記録再生装置に組み込んだ構成でもよい。
なお、上述の各実施の形態において、強度フィルタおよびフィルタ駆動部の正常動作を判断する際、I−V特性に基づく微分量子効率値を用いた場合について説明したが、この一例に限定されるものではなく、特性検出部が受光検出部によって受光された第一のレーザ光に関する特性値を検出し、判定部が特性検出部からの特性値を用いて、透過量可変部が透過量制御部から出力された制御信号に従って動作しているか否かを判定するものであれば何等限定されない。例えば特性検出部が、受光検出部から出力された電気信号から求められる第一のレーザ光の光出力と、光出力制御部から出力された出力信号から求められるレーザ光源に供給された電流との少なくとも一方を特性値として検出してもよい。このように構成した場合には、判定部は第一のレーザ光の光出力とレーザ光源に供給された電流との少なくとも一方に基づいて、透過量可変部の動作状態を容易に判定することができる。但し、上記のように、判定部が第一のレーザ光の微分量子効率値を基に透過量可変部の動作状態を判定する場合の方が、上記光出力および電流の各々に含まれる、レーザ光源の経時変化を相殺することができ、判定部が透過量可変部の動作状態を高精度に判定することができる点で好ましい。
また、上記の説明以外に、例えば半導体レーザから出射されるレーザ光の記録パワーを特性値に用いてもよい。
この場合、レーザ光は光ディスク上の所定の試し書き領域に対して出射され、当該試し書き領域における、いわゆる試し書きによるパワー学習を行う。そのため、半導体レーザから出射されたレーザ光が、光ディスクに記録された記録信号を消去することなく、強度フィルタおよびフィルタ駆動部の正常動作を判定することができる。
ここで、I−V特性に基づく微分量子効率値の代わりに、レーザ光の記録パワーを用いる場合の光記録再生装置の動作について説明する。この動作は、例えば、光ディスクが光記録再生装置に挿入された直後、あるいは一定時間ごと等のタイミングで行われる。
まず、半導体レーザから光ディスク上の試し書き領域に向けて、レーザ光が出射される。次に、レーザパワー制御部は、光ディスク上の試し書き領域に出射されるレーザ光の記録パワーを様々に変えることにより、出力パワー検出部は所定の変調度を得ることができる記録パワーの検出を行う。制御部は、強度フィルタが光路へ挿入されているときの所定の変調度における記録パワーと、強度フィルタが光路から排出されているときの所定の変調度における記録パワーとを比較することによって、強度フィルタおよびフィルタ駆動部の正常動作を判断する。
図17は、本発明にかかる光記録再生装置の半導体レーザの記録パワー−変調度特性の一例を示すグラフである。図17においては、X軸が光ディスクへ照射される記録パワーの推移を示し、Y軸が変調度の推移を示している。ここでは、制御部は、強度フィルタが光路へ挿入されているときに変調度Mxを得ることができる記録パワーPinと、強度フィルタが光路から排出されているときに変調度Mxを得ることができる記録パワーPoutとの関係が、例えば以下の式(22)を満たす場合に、強度フィルタおよびフィルタ駆動部の正常動作を判断することができる。
0.4×Pin<Pout<0.6×Pin 式(22)
以上のように、出力パワー検出部(特性検出部)が受光素子(受光検出部)を介して検出した記録パワーを特性値に用いて、透過量可変部(強度フィルタおよびフィルタ駆動部)の動作状態を判定することができる。また、このように記録パワーを特性値に用いた場合では、記録媒体に情報を記録しているときでも、判定部は、透過量可変部が透過量制御部からの制御信号に従って動作しているか否かを判定することができる。なお、式(22)に用いた係数(「0.4」「0.6」)は、記録パワーPout、Pinの検出ばらつきを吸収することができればよく、この一例に限定されない。
同様にして、出力パワー検出部(特性検出部)が受光素子(受光検出部)を介して検出することができる再生パワーにおいても、同様の式を用いることで、透過量可変部(強度フィルタおよびフィルタ駆動部)の動作状態を判定して、その正常動作を判断することができる。このように、特性値に再生パワーを用いた場合では、記録媒体から情報を再生しているときでも、判定部は、透過量可変部が透過量制御部からの制御信号に従って動作しているか否かを判定することができる。
さらに、上述の各実施の形態において、起動処理時に行なわれる場合について説明したが、これに限定されない。例えば、記録中に強度フィルタおよびフィルタ駆動部の動作異常を検出するのでもよい。これにより、記録中に誤って強度フィルタおよびフィルタ駆動部の動作異常が発生したときにも、半導体レーザが劣化したり、破壊されたりするのを防ぐことができる。