JP2006056002A - 機能素子およびその製造方法、流体吐出装置、並びに印刷装置 - Google Patents

機能素子およびその製造方法、流体吐出装置、並びに印刷装置 Download PDF

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Abstract

【課題】高密度配置に容易に対応し得るとともに、高密度配置した場合であっても効率のよい流体吐出特性を得られるようにする。
【解決手段】複数の振動板11と、その各振動板11を変形可能に支持する各支持部17aと、前記各振動板11を静電力により変形させて流体に圧力変化を与える、または流体の圧力変化により前記振動板11を変形させて静電容量を検出する電極対とを有する機能素子において、前記各支持部11を環状となるように配する。
【選択図】図7

Description

本発明は、振動アクチュエータとしての機能を備えた機能素子およびその製造方法、並びに、その機能素子を用いて構成された流体吐出装置および印刷装置に関する。
近年、薄膜形成技術により形成される、振動アクチュエータとしての機能を備えた機能素子が利用されつつある。「薄膜形成技術」とは、例えば半導体製造プロセスにてシリコン半導体基板に微細加工を施す際に用いられるもののように、蒸着、スパッタ、エッチング等を行って薄膜を形成するための技術をいう。また、「振動アクチュエータとしての機能を備えた機能素子」とは、入力信号に対して何らかの応答を示す振動子を備えて構成された素子のことをいう。このような機能素子の一例としては、いわゆるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)が知られている。
ここで、振動アクチュエータとしての機能を備えた機能素子が用いられる一具体例として、プリンタやファクシミリ等の印刷装置を構成するインクジェットヘッド(流体吐出装置)を例に挙げ、その構成について簡単に説明する。インクジェットヘッドは、インク液を吐出するノズルと、このノズルに連通するインク液の流路(圧力室)と、この流路内のインク液を加圧する振動アクチュエータとを備え、振動アクチュエータを駆動することでインク液に対する加圧を行ってノズルからインクを吐出させるようにしたものである。従来、このインクジェットヘッドを構成する振動アクチュエータとして、静電力(クーロン力)を利用して振動子(振動板)を振動させる機能素子を用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。詳しくは、インク液の流路の一部を変形可能に支持された振動板によって形成するとともに、この振動板に付随して設けられた電極対に電界を印加することで、その電極対の間に静電力を発生させて振動板を変形させ、これにより液室内の圧力や体積を変化させることによってノズルからインク液を吐出させるのである。
このようなインクジェットヘッドに用いられる機能素子は、振動板を薄く形成する必要がある。厚い振動板では、その厚みがばらつき易く、結果として印刷の品位や信頼性の低下を招き得るからである。ところが、振動板が薄い場合には、剛性が不足して十分な反発力を確保できずに、インク液の吐出に足る十分な吐出力が得られないおそれがある。このことから、振動アクチュエータとして機能する機能素子については、薄い振動板に十分な剛性を付与すべく、その振動板を複数の支柱で支持することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特許第2854876号公報 特開平7−246706号公報
ところで、インクジェットヘッドに対しては、更なる印刷画像の高画質化や印刷出力の高速化等といった要求に応えるため、消費電力を増加させず、しかもインク液の吐出性能を落とすことなく、ノズルを高密度に配置することが求められている。
ただし、上述した機能素子を用いて構成されたインクジェットヘッド、すなわち静電方式を利用したインクジェットヘッドでは、例えば抵抗加熱方式のような他方式のものに比べると、消費電力が少なく駆動周波数が高いという特長が得られるが、800npi(nozzle per inch)程度のノズル密度に到達する抵抗加熱方式に対し、180npi程度のノズル密度のものが一般的である。このノズル密度については、静電方式のものであっても、ノズルを一列に挟ピッチで配置することにより、300npi程度までは実現可能である。ところが、静電方式を利用したインクジェットヘッドでは、ノズルを挟ピッチで配置すると、これに伴ってインク液の流路(圧力室)も狭くなるため流路抵抗が高くなり、その結果インク液の吐出効率が悪化してしまう可能性がある。
このことから、静電方式を利用したインクジェットヘッドにおいては、ノズルおよび振動アクチュエータの配置構造を見直し、ノズルを一列に配置する場合のように振動板が短冊状の振動アクチュエータを並べてノズルの挟ピッチ化を実現するのではなく、振動板が円形状や方形状等に形成された振動アクチュエータを規則的に並べることで、列上での密度ではなく印刷画像上での面内密度を高くし、これによりノズル配置の高密度化という要求に応えることが考えられる。
しかしながら、必要な吐出量と吐出速度を得るためにはそれに応じた変位体積を確保しなければならないため、振動アクチュエータにおける振動板を円形状や方形状等にすると、その振動板の変位体積と反発力が問題となる。振動板の反発力を主に規定するのはその短辺長であるが、振動板を円形状や方形状等とした場合には、その径(短辺長)は当然大きくなることから、十分な反発力を確保できずに、インク液の吐出に足る十分な吐出力が得られないおそれがある。この点については、上述の特許文献2で開示されているように振動板を複数の支柱で支持して十分な反発力を確保することも考えられるが、単に支柱を配置しただけでは、振動板の剛性は確保できても、その振動板を効率よく振動させ得るとは限らない。つまり、必ずしも振動アクチュエータを効率よく動作させ得るとは限らない。したがって、例えば消費電力や吐出力等の点で、所望の特性が得られなくなるおそれも生じる。
そこで、本発明は、高密度配置に容易に対応し得るとともに、高密度配置した場合であっても効率のよい流体吐出特性を得ることのできる機能素子およびその製造方法、流体吐出装置、並びに印刷装置を提供することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成するための案出された機能素子である。すなわち、圧力室内の流体に対して圧力変化を与えるための振動板と、当該振動板を変形可能に支持する複数の支柱と、当該支柱によって形成される空間を挟んで対向する電極対とを備え、前記電極対の間に発生する静電力により前記振動板を変形させて前記流体に圧力変化を与えるように構成された機能素子において、前記複数の支柱が、当該支柱のうちの最近傍同士のものを結んで描かれる支柱列が環状となるように配されていることを特徴とするものである。
また、本発明は、上記目的を達成するための案出された機能素子の製造方法である。すなわち、圧力室内の流体に対して圧力変化を与えるための振動板と、当該振動板を変形可能に支持する複数の支柱と、当該支柱によって形成される空間を挟んで対向する電極対とを備え、前記電極対の間に発生する静電力により前記振動板を変形させて前記流体に圧力変化を与えるように構成された機能素子の製造方法において、前記複数の支柱を形成するのにあたり、当該支柱のうちの最近傍同士のものを結んで描かれる支柱列が環状となるように、前記複数の支柱を配設することを特徴とする。
また、本発明は、上記目的を達成するための案出された流体吐出装置である。すなわち、圧力室内の流体に対して圧力変化を与えるための振動板と、当該振動板を変形可能に支持する複数の支柱と、当該支柱によって形成される空間を挟んで対向する電極対とを備えた機能素子を用い、前記電極対の間に発生する静電力により前記振動板を変形させて前記流体に圧力変化を与えることで、前記圧力室内からの前記流体の吐出を行うように構成された流体吐出装置において、前記複数の支柱が、当該支柱のうちの最近傍同士のものを結んで描かれる支柱列が環状となるように配されていることを特徴とするものである。
また、本発明は、上記目的を達成するための案出された印刷装置である。すなわち、圧力室内の流体に対して圧力変化を与えるための振動板と、当該振動板を変形可能に支持する複数の支柱と、当該支柱によって形成される空間を挟んで対向する電極対とを備えた機能素子を流体吐出装置として用い、前記電極対の間に発生する静電力により前記振動板を変形させて前記流体に圧力変化を与えることで、前記圧力室内から前記流体を吐出した媒体上への印刷を行うように構成された印刷装置において、前記複数の支柱が、当該支柱のうちの最近傍同士のものを結んで描かれる支柱列が環状となるように配されていることを特徴とするものである。
上記構成の機能素子、上記手順の機能素子の製造方法、上記構成の流体吐出装置、および上記構成の印刷装置によれば、振動板を支持する複数の支柱が、その複数の支柱のうちの最近傍同士のものを結んで描かれる支柱列が環状となるように配されている。ここで、「環状」とは、環を描く形状のことをいうが、その環が円形状の場合の他に、楕円形状、方形状、多角形状の場合をも含み、またその環が多重の場合の他に一重の場合をも含むものとする。さらには、その環が閉じている場合の他に、一部が開いている場合をも含む。一部が開いている場合としては、例えば環が螺旋(うずまき)状である場合や、環の一部に途切れている箇所がある場合等が挙げられる。
このような環状に支柱列が配されていれば、例えば振動板を円形状または方形状等に形成した場合であっても、その振動板の形状に対応して複数の支柱が配列されることになる。すなわち、複数の支柱が振動板を支持することになるので、その振動板の反発力を十分に確保し得るようになる。しかも、支柱列の描く環が振動板の形状に対応するため、例えば振動板が円形状であれば多重円形状に各支柱を配したり、あるいは螺旋状に各支柱を配するといったことが可能となり、支柱の存在によって振動板の撓みが部分毎に分割される場合であっても、その分割の単位が多重円形状あるいは螺旋状等といった振動板の形状に則したものとなる。つまり、振動板の形状に則した分割単位毎にその振動板を撓ませ得るようになるので、その振動板を効率よく振動させ得るようになる。
本発明によれば、複数の支柱の存在によって振動板の剛性を確保し十分な反発力が得られるようになるので、振動板の短辺長が大きくても、その振動板を変形させて流体に圧力変化を与える際に十分な圧力変化を与え得るようになる。しかも、複数の支柱が環状に配されているため、その振動板を効率よく振動させ得るようになる。
これらのことから、本発明を用いれば、例えばインク液の液滴を吐出して画像を印刷する場合において、振動板の短辺長を大きくして印刷画像上での面内密度を高くすることで、インク液吐出の高密度化に容易に対応することができる。さらには、流体であるインク液に圧力変化を与えるための振動板を効率よく振動させ得るので、消費電力を増加させず、しかもインク液の吐出性能を落とすことなく、そのインク液の吐出を行うことが可能となる。したがって、印刷画像の高画質化や印刷出力の高速化等といった要求に十分に対応することが可能となる。
つまり、本発明を用いれば、高密度配置に容易に対応し得るとともに、高密度配置した場合であっても効率のよい流体吐出特性を得ることができるようになる。
以下、図面に基づき本発明に係る機能素子およびその製造方法、流体吐出装置、並びに印刷装置について説明する。
〔流体吐出装置および印刷装置の説明〕
はじめに、機能素子の説明に先立ち、その機能素子を用いて構成された流体吐出装置および印刷装置について説明する。
先ず、印刷装置について説明する。印刷装置としては、その一例として、インクジェットプリンタ装置が知られている。図1は、インクジェットプリンタ装置の概要を示す説明図である。インクジェットプリンタ装置は、インク液を細かい粒状にして用紙に吐出することで、写真画質の印刷物を高速で印刷出力するものである。このようなインクジェットプリンタ装置には、大別すると、シリアルヘッド方式のものと、ラインヘッド方式のものとがある。
シリアルヘッド方式のものでは、図1(a)に示すように、印刷対象物である用紙1をその主走査方向に送るローラ2と、その用紙1の副走査方向に移動可能なキャリッジ3に搭載されたインクジェットヘッド4とを備えている。そして、用紙1およびキャリッジ3を移動させつつ、インクジェットヘッド4が用紙1にインク液を吐出することで、印刷出力を行うようになっている。
一方、ラインヘッド方式のものでは、図1(b)に示すように、用紙1をその主走査方向に送るローラ2と、その用紙1の副走査方向に沿ってインク液の吐出口がライン状に配されたインクジェットヘッド5とを備えている。そして、用紙1を移動させつつ、インクジェットヘッド5の各吐出口から用紙1にインク液を吐出することで、印刷出力を行うようになっている。
なお、上述したインクジェットプリンタ装置の構成は、印刷装置の一例であり、液滴を吐出させるヘッド部と印刷対象物の相対位置を変化させることで印刷を行うことができれば、この構成にはこだわらない。
ところで、インクジェットプリンタ装置に対しては、シリアルヘッドまたはラインヘッドのいずれの方式であっても、さらに高い画質を高速に印刷するというニーズに対応するため、消費電力を増加させず、吐出性能を落とさずに、さらに画素数の高密度化を実現することが求められている。このような要求に応えるべく、インクジェットプリンタ装置の中には、静電MEMS方式によるインクジェットヘッド4,5を用いて構成されたものがある。静電MEMS方式によるものでは、インクジェットヘッド4,5が、振動アクチュエータとしての機能を備えた機能素子を用いて構成されており、その機能による振動を圧力印加手段として利用することで、用紙1へのインク液の吐出を行うようになっている。なお、インクジェットプリンタ装置におけるインクジェットヘッド4,5以外の構成要素については、公知技術により実現すればよいため、ここではその説明を省略する。
続いて、インクジェットプリンタ装置に用いられるインクジェットヘッド、すなわち機能素子を用いて構成される流体吐出装置の一具体例について説明する。ただし、ここでは、シリアルヘッド方式とラインヘッド方式との別に関係なく、機能素子を用いて構成された流体吐出装置としてのインクジェットヘッドの要部についてのみ説明する。図2〜4は本発明が適用されたインクジェットヘッドの要部構成例を示す模式図であり、図2はその斜視図、図3はその平面図、図4はその側断面図である。
図2に示すように、ここで説明するインクジェットヘッドは、大別すると、微小流体駆動部10と、流体供給部20とを備えている。このうち、微小流体駆動部10は、静電気力により駆動(振動)される複数の振動板11を高密度に配置してなるもので、その振動板11が駆動されることで振動アクチュエータとして機能するものである。一方、流体供給部20は、その微小流体駆動部10上に配され、流体であるインク液21が溜められる圧力室(いわゆるキャビティ)22と、その圧力室22を形成するための外壁となる流路壁23およびノズル板24と、圧力室22内のインク液21を外部に吐出するための吐出部(いわゆるノズル)25と、を備えてなるものである。
また、微小流体駆動部10は、図3〜4に示すように、基板12上に、導電性物質薄膜からなる基板側電極13が形成され、その基板側電極13の表面に絶縁膜14が形成され、この基板側電極13に対向するように中空構造の空間(以下「中空構造部分」という)15を挟んで振動板側電極16および振動板11が一体に配置され、さらに各振動板11を両持ち梁で支持するように複数の支柱17aが基板12上に形成されて、構成されたものである。
なお、これらの図では基板側が共通電極、振動板側が各々独立に駆動される複数の個別電極を記載しているが、基板側と振動板側の電極構成が逆であっても構わない。
このうち、基板12は、例えばシリコン基板12a上にシリコン酸化膜等による絶縁膜12bを形成したものを用いることが考えられるが、その他にも、ガリウム砒素(GaAs)等の半導体基板上に絶縁膜を形成したものや、石英基板を含むガラス基板のように絶縁性を有したものを用いるようにしてもよい。
基板側電極13は、例えば不純物をドーピングした多結晶シリコン膜で形成することが考えられるが、金属膜(例えばPt、Ti、Al、Au、Cr、Ni、Cu等の蒸着膜)やITO(Indium Tin Oxide)膜等で形成されたものであってもよい。また、振動板側電極16についても同様に、不純物ドープの多結晶シリコン膜、金属膜、ITO膜等で形成すればよい。
振動板11は、絶縁膜で形成されたものであるが、特に高い反発力が得られるシリコン窒化膜(SiN膜)で形成するのが好ましい。ただし、振動板11は、SiN膜の上面および下面にシリコン酸化膜が形成されて、実質的にこれらの各膜の積層によって構成される。なお、振動板11は、詳細を後述するように、その平面形状が円形状、方形状または多角形状に形成された複数のものが、同心上に配されてなるものとする。図4では、振動板11が二重に同心円配置されている場合を例に挙げている。
また、振動板11は、夫々所定間隔(支柱間ピッチ)を置いて形成された複数の支柱17aによって支持されている。ただし、支柱間ピッチには、狭ピッチと広ピッチとがある。狭ピッチは、2μm以上、10μm以下が好ましく、5μm程度が最適である。一方、広ピッチは、15μm以上、35μm以下が好ましく、25μm程度が最適である。このように、狭ピッチおよび広ピッチからなる支柱間ピッチで支柱17aを配設すれば、一律な均等ピッチの場合のように振動板11の反りの影響が支柱17aの全周に及ぶことがなく、そのピッチの広狭によって隣の振動板11の反りや動作の影響が軽微となる。なお、これら複数の支柱17aは、詳細を後述するように、狭ピッチで隣り合う同士のものを結んで描かれる支柱列が、環状その平面形状が円形状、方形状または多角形状に形成された複数のものが、環状となるように配されているものとする。
そして、複数配置された振動板11のうちの隣り合うもの同士は、支柱17aを介して連続して形成され、かつ、支柱17aも振動板11と同じ材料で一体に形成されている。したがって、振動板11と基板側電極13間の空間を構成する中空構造部分15は、並列する複数の振動板11の間で連通していることになり、また密閉空間になるように形成されたものとなる。
また、各振動板11の支柱17aの近傍、例えば一つの振動板11の同心円方向に沿う各支柱17aの間には、中空構造部分15を形成するための犠牲層エッチングを行う際に利用する開口18が形成される。開口18の大きさは、小さいほど閉塞し易いことから、□2μm以下とすることが考えられるが、犠牲層エッチングがドライエッチングの場合であれば、□0.5μmでも十分である。
この開口18は、犠牲層エッチングの後には、封止膜19によって閉塞される。封止膜19による開口18の封止は、蒸着、スパッタまたはPECVD(plasma-enhanced chemical vapor deposition)のいずれかによって行うことが考えられる。また、封止膜19の形成材料としては、成形加工の容易さから、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、銅(Cu)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、コバルト(Co)、タンタル(Ta)、白金(Pt)、金(Au)、タングステン(W)、ケイ素(Si)等の金属類やその合金類、SiO2等の酸化膜、または窒化膜等が挙げられるが、予め成形したセラミックや樹脂等を接合して用いることもできる。
なお、振動板11には、絶縁膜を介して振動板側電極16が接合されており、しかもその振動板11の折曲された下面凹部内に挿入されるように振動板側電極16が配設されているものとする。また、振動板11の下方には、当該振動板11が薄く形成された場合の反発力を高めるべく、支柱(いわゆるアンカー)17aと合わせて、その中央部直下近傍に補助支柱(いわゆるポスト)17bを形成してもよい。
このような微小流体駆動部10および流体供給部20によって、インクジェットヘッドが構成されているのである。
ここで、以上のような構成のインクジェットヘッドにおける処理動作を説明する。インクジェットヘッドでは、微小流体駆動部10における基板側電極13と振動板側電極16との間に所要の電圧を印加すると、図5(a)に示すように、各電極間に静電引力が発生して、振動板側電極16と一体な振動板11が基板側電極13の側に撓む。逆に、基板側電極13と振動板側電極16との間への電圧印加を開放すると、図5(b)に示すように、振動板11が静電引力から開放され、自身の復元力により減衰振動する。この振動板11の上下振動に伴う流体供給部20における圧力室22の容積変動で、インクジェットヘッドでは、圧力室22内のインク液21がノズル25から外部に吐出され、また圧力室22内へ貫通孔を介してインク液21が供給されるのである。
このとき、振動板11が基板側電極13の側に撓むと、中空構造部分15が閉空間であるため、その中空構造部分15内の空気は圧縮されて、振動板11の撓みを阻害しようとする。ところが、振動板11が支柱17a、補助支柱17a等による支持構造であれば、隣接する振動板11の下の中空構造部分15内に圧縮された空気を逃がすことができ、結果として十分に振動板11を撓ませることが可能となる。
〔機能素子の説明〕
次に、以上のような構成のインクジェットヘッドにおいて用いられる機能素子、すなわち本発明に係る機能素子について、さらに詳しく説明する。機能素子は、既に説明したように、振動アクチュエータとしての機能を備えた素子の全てを含むが、その一例としてインクジェットヘッドにおいて用いられるもの、すなわち図6〜8に示すようなものがある。図6は本発明に係る機能素子の概略構成の一例を示す説明図であり、図7はその要部構成の一例を示す説明図であり、図8はその配置例を示す説明図である。
図6に示すように、ここで説明する機能素子は、基板12上に基板側電極13が形成され、その基板側電極13の表面に絶縁膜14が形成され、この基板側電極13に対向するように中空構造部分15を挟んで振動板側電極16および振動板11が一体に配置され、さらに各振動板11を両持ち梁で支持するように支柱17aが基板12上に形成されて、微小流体駆動部10が構成されたものである。そして、基板側電極13と振動板側電極16との間に所要の電圧を印加して、各電極間に静電引力が発生させることで、振動板側電極16と一体な振動板11を振動させ得るようになっている。つまり、これらの構成のよって、微小流体駆動部10は、振動アクチュエータとしての機能を果たすようになっている。
また、微小流体駆動部10の上方には、流路壁23およびノズル板24によって圧力室22が形成されており、振動板11の振動によってその圧力室22に圧力変化が与えられるようになっている。つまり、この振動板11の上下振動に伴う圧力室22内の圧力変化で、その圧力室22内のインク液21がノズル25から外部に吐出され、また圧力室22内へのインク液21の供給が行われるのである。
ところで、ここで説明する機能素子では、その特徴的な構成として、振動板11および支柱17aが以下に述べるように構成されている。
すなわち、振動板11は、その全体の平面形状が、図7(a)〜(c)に示すような円形状、図7(d)に示すような方形状、または図7(e)〜(f)に示すような多角形状のいずれかに形成されている。
また、振動板11を支持する支柱17aは、既に説明したように狭ピッチおよび広ピッチからなる支柱間ピッチで配設されるが、その狭ピッチで隣り合う同士のものを結んで描かれる支柱列、すなわち最近傍同士のものを結んで描かれる支柱列が、環状となるように配されている。ここで、「環状」とは、環を描く形状のことをいうが、その環が円形状の場合の他に、楕円形状、方形状、多角形状の場合をも含み、またその環が多重の場合の他に一重の場合をも含むものとする。さらには、その環が閉じている場合の他に、一部が開いている場合をも含む。一部が開いている場合としては、例えば環が螺旋(うずまき)状である場合や、環の一部に途切れている箇所がある場合等が挙げられる。具体的には、図7(a)に示すように支柱17aの列が多重円形状(図例は四重円形状)の場合、図7(b)に示すように支柱17aの列がクロソイド曲線のようで横の列との距離が一定の曲線を描くような螺旋状である場合、図7(c)に示すように支柱17aの列が略多重円形状(図例は四重円形状)であるがその一部に途切れている箇所がある場合、図7(d)に示すように支柱17aの列が多重方形状(図例は四重方形状)の場合、図7(e)に示すように支柱17aの列が多重六角形状(図例は四重六角形状)の場合、図7(f)に示すように支柱17aの列が多重八角形状(図例は四重八角形状)の場合等が考えられる。
このような支柱17aの配置の場合には、その支柱17aによって形成される中空構造部分15を挟んで対向する基板側電極13と振動板側電極16についても、その支柱17aの配置に対応して配置されていることが望ましい。すなわち、基板側電極13と振動板側電極16との少なくとも一方は、支柱17aの列が描く環に対応して複数設けられており、それぞれが独立して駆動可能であることが望ましい。
具体的には、図7(a)に示すように支柱17aの列が多重円形状の場合であれば、基板側電極13と振動板側電極16との少なくとも一方については、その支柱17aの列に沿って多重環を描くように配置して、その支柱17aの列によって分割される各振動板11を、例えば内周側と外周側とで個別に駆動可能にする、といったことが考えられる。また、図7(b)に示すように支柱17aの列が螺旋状の場合であれば、基板側電極13と振動板側電極16との少なくとも一方については、支柱17aの広ピッチに対応した幅で所定長さの矩形状のものを、その支柱17aの列に沿って並べるように配置して、各矩形状の大きさに対応したそれぞれの振動板11を、例えば螺旋の中央近傍を外周近傍とで個別に駆動可能にする、といったことが考えられる。
このような基板側電極13と振動板側電極16とからなる電極対を、それぞれ独立して駆動を可能にするためには、それぞれに個別に電圧を印加するためのスイッチング回路等を利用すればよい。また、その電極対は、基板側電極13と振動板側電極16との少なくとも一方が複数設けられていればよい。したがって、例えば図6(a)に示すように、基板側電極13を共通電極とし、振動板側電極16を個別電極として複数設け、これらによって電極対を構成してもよく、あるいは例えば図6(b)に示すように、基板側電極13を個別電極として複数設け、振動板側電極16を共通電極とし、これらによって電極対を構成してもよい。
以上のように構成された機能素子では、振動板11を静電気力により撓ませ、その復元力を駆動力とすることにより、圧力室22内の流体であるインク液21を精度良く制御してノズル25から外部に吐出することが可能になる。さらには、振動板11の平面形状が円形状、方形状または多角形状に形成されているため、圧力室22もこれに対応した形状で形成されることになり、例えば振動板が短冊状の振動アクチュエータを並べてノズルを一列に配置する場合に比べて流路抵抗が1/10以下となり、一つの振動アクチュエータあたりの占有面積を低減することが可能である。したがって、例えば図8に示すように、インク液21の供給経路30を挟んで、複数の圧力室22を規則的に並べて配置することが可能となるので、振動アクチュエータ面積が低減できた分だけ同一面内に配置できるアクチュエータ数は増加し、インクジェットヘッドに適用した場合に印刷画像上での面内密度を高くしてノズル配置の高密度化を実現することが容易となる。その上、振動板11の平面形状が円形状、方形状または多角形状に形成されていても、その振動板11は複数の支柱17aによって支持されるため、その振動板11の反発力を十分に確保し得るようになる。
しかも、振動板11を支持する複数の支柱17aは、これらの描く支柱列が環状となるように配されている。つまり、例えば振動板11が円形状であれば多重円形状に各支柱17aを配したり、あるいは螺旋状に各支柱17aを配するといった具合に、振動板11の平面形状が円形状、方形状または多角形状に形成されていても、その形状に対応して複数の支柱17aが配列されることになる。このことは、支柱17aの存在によって振動板11の撓みが部分毎に分割される場合であっても、その分割の単位が例えば多重円形状、螺旋状、多重方形状あるいは多重多角形といった振動板11の形状に則したものとなることを意味する。したがって、振動板11の形状に則した分割単位毎にその振動板11を撓ませ得るようになるので、その振動板11を効率よく振動させ得るようになるのである。
特に、基板側電極13と振動板側電極16とからなる電極対の少なくとも一方について、支柱17aの列が描く環に対応して複数設け、それぞれを独立して駆動可能とした場合には、以下に述べるような駆動制御を行うことが可能となり、振動板11をより一層効率よく振動させ得るようになる。
例えば、複数設けられた電極対のそれぞれを独立して駆動する場合には、その駆動を行う電極対の数を切り換えることで、振動板11が圧力室22内の流体であるインク液21に与える仕事量を調節することが可能となる。具体的には、ノズル25から大量のインク液21を吐出する場合であれば、駆動を行う電極対の数を増加させ、振動板11における多く分割単位を撓ませる一方、ノズル25から少量のインク液21を吐出する場合であれば、駆動を行う電極対の数を減少させ、振動板11における分割単位の一部のみを撓ませる、といった駆動制御を行い得るようになる。つまり、必要な吐出量に合わせて振動板11が撓む面積を可変し得るので、効率的なインク液21の吐出が可能となり、しかも消費電力の低減も実現可能となる。
また、例えば、複数設けられた電極対のそれぞれを独立して駆動する場合には、その駆動のタイミングを各電極対で相違させることで、振動板11が圧力室22内の流体であるインク液21に与える仕事の特定位置での位相を一致させることも可能となる。図7からも明らかなように、支柱17aの列を環状とし、これによって分割される各振動板11をその分割単位毎に個別に駆動可能とした場合には、ノズル25から各分割単位までの距離が異なり、外周に行くほど距離が遠くなる。そのため、ノズル25からインク液21を吐出する場合には、各分割単位が同時に駆動すると、ノズル25までの距離差による位相差が生じるため、インク液21の吐出効率が落ちる。このことから、ノズル25を特定位置として定め、その特定位置で位相が一致するように、予め数十ナノ秒(nsec)レベルでそれぞれの分割単位の駆動に位相差を与え、特定位置より遠い分割単位の撓みを先に復元させるようにすることで、効率的なインク液21の吐出が可能となり、しかも消費電力の低減も実現可能となる。
これらのことからも、振動板11を支持する複数の支柱17aを環状に配列すれば、その振動板11を効率よく振動させ得るので、消費電力を増加させず、しかもインク液21の吐出性能を落とすことなく、そのインク液21の吐出を行うことが可能となるといえる。したがって、以上のように構成された機能素子を用いれば、高密度配置に容易に対応し得るとともに、高密度配置した場合であっても効率のよいインク液21の吐出特性を得ることができるのである。
また、例えば図7(c)に示すように、支柱17aの列が描く環の一部に途切れているとともに、その途切れている箇所を供給経路30との連通口に合致させれば、インク液21の吐出特性のみならず、圧力室22内へのインク液21の供給についても、電極対の駆動制御、すなわち振動板11の駆動によって連通口近傍の断面積を変化させることが可能となり、非常に良好に行い得るようになる。
〔機能素子の製造方法の説明〕
次に、以上のように構成された機能素子の製造方法について説明する。ただし、ここでは、機能素子の製造手順の概要についてのみ説明し、その製造の過程で用いる薄膜形成技術の詳細については、従来と略同様であり、公知技術を利用することができるため、その説明を省略する。
機能素子の製造にあたっては、先ず、基板12上に基板側電極13を形成し、その基板側電極13の表面に絶縁膜14を形成し、さらにこの基板側電極13上に絶縁膜を介して犠牲層を形成する。犠牲層は、例えば多結晶シリコン膜をCVD法により堆積することが考えられる。
そして、後に形成する振動板11を支える支柱17aを形成すべき部分、および補助支柱17bに対応する部分の犠牲層を選択的にエッチング除去し、開口部を形成する。このときのエッチングはドライエッチングが好ましい。また、支柱17aを形成すべき部分に対するエッチングは、上述した環状に対応したエッチングパターンで行う。
その後は、犠牲層上に絶縁膜を介して振動板側電極16を形成し、さらに犠牲層上および開口部内の全面にわたって振動板11と、これに連続した支柱17aおよび補助支柱17bを同一の絶縁膜により形成する。これら振動板11、支柱17a、補助支柱17bは、例えば減圧CVD法によるシリコン窒化膜(SiN膜)で形成することが考えられる。SiN膜は引っ張りの応力が発生するので、振動板11の反発力が高まり好都合だからである。そして、これら振動板11、支柱17a、補助支柱17bの表面に、インク液21との親水性を有する絶縁膜を形成する。これにより、振動板11は、絶縁膜に挟まれる構成となるが、これは引張り応力を有するSiN膜と圧縮応力を有する絶縁膜(例えばシリコン酸化膜)との積層構造を形成することになるので、その振動板11の反りを防ぐ上で有効である。
このようにして振動板11を形成した後は、続いて、振動板11と絶縁膜との積層構造を貫通して犠牲層が露出するように開口18を形成する。そして、その開口18を通じて犠牲層エッチングにより犠牲層を除去し、さらにその開口18を封止膜19によって閉塞する。これにより、中空構造部分15が形成され、その中空構造部分15内に支柱17aが環状に配されることになる。ただし、中空構造部分15は、犠牲層エッチングではなく、他の公知の形成方法を用いても構わない。また、振動板11の膜厚は、犠牲層をエッチングしたことによって生じる撓みや応力、封止膜19を形成することで生じる撓みや応力等を考慮して決定しているものとする。
また、中空構造部分15の形成に利用した開口18については、これを封止膜19によって閉塞することになるが、その封止膜19の上には、外気や流体等の侵入を防止するためのカバー層を成膜してもよい。カバー層で封止膜19を覆えば、その封止膜19による開口18の封止が、より一層確実なものとなるからである。このようなカバー層としては、耐湿性等に優れており、流体等の侵入を防止する上で有効となるプラズマシリコン窒化(PE−SiN)膜が考えられる。ただし、カバー層は、必ずしも必須ではなく、成膜しなくてもよい。また、成膜する場合であっても、カバー層は、必ずしもPE−SiN膜のような単層のものである必要はなく、複層のものであっても構わない。
その後は、例えば光硬化性樹脂材料層、例えば感光性を有するエポキシ樹脂材料層を形成し、リソグラフィ技術を用いてパターニングして、圧力室22の流路壁23およびこの圧力室22に連通する流体の供給流路(図示せず)を形成する。すなわち、振動板11上に圧力室22を形成し、振動板11の両側部に対応する上に流路壁23を形成する。そして、圧力室22の上部を閉塞するように、ニッケル、ステンレス等の金属、またはSiウエハ、ガラス、樹脂といった所要の材料で形成されたノズル板24を接合する。このとき、圧力室22は、例えば図9(a)〜(c)に示すようなノズル25を含む断面形状をガラスや樹脂で予め形成しておき、これを微小流体駆動部10の上面へハンダ付け、陽極接合、拡散接合、接着等によって取り付けることで形成してもよい。図例の断面形状においては、(c)に示したものよりも(a)に示したもののほうがノズル25に向けて徐々に狭くなっているため、流路抵抗が少なく、ノズル面の撓みも少なく、良好な吐出効率が得られる。
以上のような手順を経て、機能素子が構成されることになる。
なお、上述した一連の実施の形態では、振動板11が複数の支柱17aによって支持され、その支柱17aの列が環状となるように配されている場合を例に挙げて説明したが、これら複数の支柱17aに代わって一つの支柱壁を設けることも考えられる。すなわち、上述した支柱列に沿って連続する壁体を設けて支柱壁とし、その支柱壁が振動板11を変形可能に支持するように構成することも考えられる。このような支柱壁を設けた場合であっても、その支柱壁が環状となるように配されていれば、その振動板11を効率よく振動させ得るので、高密度配置に容易に対応し得るとともに、高密度配置した場合であってもインク液21の吐出性能を落とすことなく、しかも消費電力を増加させずに、そのインク液21の吐出を行うことが可能となる。
〔機能素子の他の例についての説明〕
上述した実施の形態の説明では、機能素子をインクジェットヘッドに用いた場合、すなわち流体吐出装置がインクジェットヘッドであり、印刷装置がインクジェットプリンタ装置である場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、本発明に係る機能素子は、インクジェットヘッドを始めとする流体吐出装置だけでなく、マイクロポンプ、μTAS(Micro Total Analysis Systems)、DNAチップ、熱拡散装置、スピーカ素子、ダイアフラム型センサ(例えば、マイク、圧力センサ)等にも適用可能である。また、本発明に係る流体吐出装置は、インクジェットヘッドの他にも、有機電界発光素子等の高分子または低分子有機材料の塗布装置、プリント基板配線用の印刷装置、ハンダバンプ印刷装置、三次元モデリング装置、DNAチップ、μTASとして薬液その他の液体をpl(ピコリットル)以下の微小単位にて精度良くコントロールして供給する供給ヘッド、さらには気体を微小量精度良くコントロールして供給する供給ヘッド等に適用することができる。
ここで、本発明に係る他の実施の形態として、本発明を微小流体駆動部と整流弁とを組み合わせてなる、いわゆるマイクロポンプに適用した場合を例に挙げる。図10は、本発明が適用されたマイクロポンプの要部構成の一例を示す模式図である。
図例のように、ここで説明するマイクロポンプは、静電MEMS方式またはピエゾ方式の振動板41を有する振動アクチュエータ42上に、流路43に連通する圧力室44を配置し、その圧力室44の流体供給口および流体排出口に夫々上述の流路抵抗が異方性を有する整流弁45a,45bを配置して構成されている。そして、振動アクチュエータ42における振動板41は、環状に配された複数の支柱(または支柱壁)46によって支持されている。なお、流体は、インクジェットヘッドにおけるインク液のような液体だけではなく、環境空気または所定ガスといった気体の場合もある。
このような構成のマイクロポンプでは、以下に述べるような処理動作を行う。図10(a)に示すように、マイクロポンプは、デフォルト状態では、整流弁45a,45bがいずれも応力差のため反っており、その先端が圧力室44の天井に接している。そして、図10(b)に示すように、振動板41が下方に変位して、圧力室44の体積増加でその圧力室44内の圧力が低下すると、整流弁45aがその両面に生じる圧力差により撓み、整流弁45aの側から圧力室44内に流体が流れ込む。その後、図10(c)に示すように、振動板41が上方に変位して、圧力室44の体積減少でその圧力室44内の圧力が増加すると、整流弁45aはその先端が圧力室44の天井に接し、圧力室44内の流体の逆流を防ぐ一方、整流弁45bが撓んで圧力室44内の流体が排出される。
なお、整流弁は流路抵抗に異方性を有するものであればこの方式に限定されるものではない。
このような処理動作を行うマイクロポンプは、例えばLSI(Large Scale Integration)の冷却用のポンプとして用いることが考えられる。すなわち、LSI冷却用のポンプとして用いれば、冷媒として機能する流体をLSIからの発熱量に応じて循環させることが可能となる。このとき、上述したマイクロポンプの構成では、インクジェットヘッドの場合と同様に構成されたノズルまたはこれに準ずる弁を介して吸気または排気を行うことになるが、吸気の際にはあらゆる方向から気体を吸い込むのに対し、排気(吐出)の際にはノズル板等の面に対して垂直な方向にしか速度ベクトルを生じないため、ノズル等の近傍に冷却対象物を配置すると、その冷却対象物に対して高速の気体を吹き付けることが可能となる。また、この冷却方式であれば整流弁は不要であり、圧力室への流体の出入り口も1つでも構わない。
以上のようなマイクロポンプにおいても、振動板41を支持する支柱(または支柱壁)46を環状に配することで、その振動板41を効率よく振動させ得るので、高密度配置に容易に対応し得るとともに、高密度配置した場合であっても気体の吐出性能を落とすことなく、しかも消費電力を増加させずに、その気体の吐出を行うことが可能となる。
このように、振動板が圧力変化を与える流体は、上述したインクジェットヘッドの場合のようなインク液(液体)に限定されることはなく、ここで説明するマイクロポンプの場合のよう気体であっても構わない。
〔機能素子のさらに他の例についての説明〕
次いで、本発明に係る他の実施の形態として、本発明をスピーカーに適用した場合を例に挙げる。図11は、本発明が適用されたスピーカーの要部構成の一例を示す模式図である。
図例のように、ここで説明するスピーカーは、基板51上に基板側電極52が形成され、その基板側電極52に対向するように中空構造部分53を挟んで振動板側電極54および振動板55が一体に配置され、さらに振動板55を支持するように支柱56が基板51上に形成されて、その支柱56の描く支柱列が環状となるように配されて構成されたものである。そして、基板側電極52と振動板側電極54との間に所要の電圧を印加して、各電極間に静電引力が発生させることで、振動板側電極54と一体な振動板55を振動させ得るようになっている。つまり、これらの構成のよって、振動板55を振動させて音を出力するスピーカーとして機能するのである。なお、このようなスピーカーの場合は、上述したインクジェットヘッドの場合に比べて、振動板55を薄くして、共振周波数を100kHz程度にするのが望ましい。
以上のようなスピーカーにおいても、振動板55を支持する支柱56の列を環状に配することで、その振動板55を効率よく振動させ得るので、高密度配置に容易に対応し得るとともに、高密度配置した場合であっても音の出力特性(振動性能)を落とすことなく、しかも消費電力を増加させずに、その音の出力を行うことが可能となる。
また、上述したスピーカーとほぼ同じ構造にて駆動と検出を切り換えることで、コンデンサマイクとしての実用が可能となる。つまり、本発明に係る機能素子は、流体の圧力変化により振動板を変形させて、その変形による静電容量の変化を電極対によって検出するものであってもよい。
以上に説明したように、本発明については、様々なものに適用することが考えられる。すなわち、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
インクジェットプリンタ装置の概要を示す説明図である。 本発明に係る流体吐出装置の一具体例で、本発明が適用されたインクジェットヘッドの要部構成例を模式的に示す斜視図である。 本発明が適用されたインクジェットヘッドの要部構成例を模式的に示す平面図である。 本発明が適用されたインクジェットヘッドの要部構成例を模式的に示す側断面図(その1)であり、図3におけるA−A断面を示す図である。 本発明が適用されたインクジェットヘッドにおける処理動作の概要を模式的に示す説明図である。 本発明に係る機能素子の概略構成の一例を示す説明図である。 本発明に係る機能素子の要部構成の一例を示す説明図である。 本発明に係る機能素子の配置例を示す説明図である。 本発明に係る機能素子における圧力室形状の具体例を示す説明図である。 本発明に係る流体吐出装置の他の具体例で、本発明が適用されたマイクロポンプの要部構成の一例を示す模式図である。 本発明に係る流体吐出装置の他の具体例で、本発明が適用されたスピーカーの要部構成の一例を示す模式図である。
符号の説明
1…用紙、2…ローラ、3…キャリッジ、4,5…インクジェットヘッド、10…微小流体駆動部、11…振動板、12…基板、13…基板側電極、14…絶縁膜、15…中空構造部分、16…振動板側電極、17a…支柱(アンカー)、17b…補助支柱(ポスト)、18…開口、19…封止膜、20…流体供給部、21…インク液、22…圧力室(キャビティ)、23…流路壁(壁体)、30…供給経路、41…振動板、42…振動アクチュエータ、43…流路、44…圧力室、45a,45b…整流弁、46…支柱、51…基板、52…基板側電極、53…中空構造部分、54…振動板側電極、55…振動板、56…支柱

Claims (26)

  1. 複数の振動板と、
    当該各振動板を変形可能に支持する各支持部と、
    前記各振動板を静電力により変形させて流体に圧力変化を与える、または流体の圧力変化により前記振動板を変形させて静電容量を検出する電極対とを有する機能素子において、
    前記各支持部が環状となるように配されている
    ことを特徴とする機能素子。
  2. 前記各支持部が複数の支柱からなり、当該支柱のうちの最近傍同士のものを結んで描かれる支柱列が環状となるように配されている
    ことを特徴とする請求項1記載の機能素子。
  3. 前記各支持部が連続する壁体からなり、当該壁体が環状となるように配されている
    ことを特徴とする請求項1記載の機能素子。
  4. 前記電極対が複数設けられているとともに、各電極対が独立して駆動または検出可能である
    ことを特徴とする請求項1記載の機能素子。
  5. 複数設けられた前記電極対は、環状の前記支柱列に沿って多重環を描くように配置されている
    ことを特徴とする請求項4記載の機能素子。
  6. 複数設けられた前記電極対のそれぞれを独立して駆動するとともに、当該駆動を行う前記電極対の数を切り換えることで、前記振動板が前記流体に与える仕事量を調節する駆動手段
    を備えることを特徴とする請求項4記載の機能素子。
  7. 複数設けられた前記電極対のそれぞれを独立して駆動するとともに、当該駆動のタイミングを各電極対で相違させることで、前記振動板が前記流体に与える仕事の特定位置での位相を一致させる駆動手段
    を備えることを特徴とする請求項4記載の機能素子。
  8. 複数の振動板と、
    当該各振動板を変形可能に支持する各支持部と、
    前記各振動板を静電力により変形させて流体に圧力変化を与える、または流体の圧力変化により前記振動板を変形させて静電容量を検出する電極対とを有する機能素子の製造方法において、
    前記各支持部を形成するのにあたり、当該各支持部が環状となるように配する
    ことを特徴とする機能素子の製造方法。
  9. 前記各支持部を複数の支柱によって構成し、当該支柱のうちの最近傍同士のものを結んで描かれる支柱列が環状となるように前記複数の支柱を配する
    ことを特徴とする請求項8記載の機能素子の製造方法。
  10. 前記各支持部を連続する壁体によって構成し、当該壁体が環状となるように配する
    ことを特徴とする請求項8記載の機能素子の製造方法。
  11. 複数の前記電極対をそれぞれが独立して駆動または検出可能となるように配設する
    ことを特徴とする請求項8記載の機能素子の製造方法。
  12. 複数の前記電極対を、環状の前記支柱列に沿って多重環を描くように配置する
    ことを特徴とする請求項11記載の機能素子の製造方法。
  13. 複数の振動板と、当該各振動板を変形可能に支持する各支持部と、前記各振動板を静電力により変形させて流体に圧力変化を与える電極対とを有する機能素子を用いて構成された流体吐出装置において、
    前記各支持部が環状となるように配されている
    ことを特徴とする流体吐出装置。
  14. 前記各支持部が複数の支柱からなり、当該支柱のうちの最近傍同士のものを結んで描かれる支柱列が環状となるように配されている
    ことを特徴とする請求項13記載の流体吐出装置。
  15. 前記各支持部が連続する壁体からなり、当該壁体が環状となるように配されている
    ことを特徴とする請求項13記載の流体吐出装置。
  16. 前記電極対が複数設けられているとともに、各電極対が独立して駆動可能である
    ことを特徴とする請求項13記載の流体吐出装置。
  17. 複数設けられた前記電極対は、環状の前記支柱列に沿って多重環を描くように配置されている
    ことを特徴とする請求項16記載の流体吐出装置。
  18. 複数設けられた前記電極対のそれぞれを独立して駆動するとともに、当該駆動を行う前記電極対の数を切り換えることで、前記振動板が前記流体に与える仕事量を調節する駆動手段
    を備えることを特徴とする請求項16記載の流体吐出装置。
  19. 複数設けられた前記電極対のそれぞれを独立して駆動するとともに、当該駆動のタイミングを各電極対で相違させることで、前記振動板が前記流体に与える仕事の特定位置での位相を一致させる駆動手段
    を備えることを特徴とする請求項16記載の流体吐出装置。
  20. 複数の振動板と、当該各振動板を変形可能に支持する各支持部と、前記各振動板を静電力により変形させて流体に圧力変化を与える電極対とを有する機能素子を、流体吐出装置として用いて媒体上への印刷を行うように構成された印刷装置において、
    前記各支持部が環状となるように配されている
    ことを特徴とする印刷装置。
  21. 前記各支持部が複数の支柱からなり、当該支柱のうちの最近傍同士のものを結んで描かれる支柱列が環状となるように配されている
    ことを特徴とする請求項20記載の印刷装置。
  22. 前記各支持部が連続する壁体からなり、当該壁体が環状となるように配されている
    ことを特徴とする請求項20記載の印刷装置。
  23. 前記電極対が複数設けられているとともに、各電極対が独立して駆動可能である
    ことを特徴とする請求項20記載の印刷装置。
  24. 複数設けられた前記電極対は、環状の前記支柱列に沿って多重環を描くように配置されている
    ことを特徴とする請求項23記載の印刷装置。
  25. 複数設けられた前記電極対のそれぞれを独立して駆動するとともに、当該駆動を行う前記電極対の数を切り換えることで、前記振動板が前記流体に与える仕事量を調節する駆動手段
    を備えることを特徴とする請求項23記載の印刷装置。
  26. 複数設けられた前記電極対のそれぞれを独立して駆動するとともに、当該駆動のタイミングを各電極対で相違させることで、前記振動板が前記流体に与える仕事の特定位置での位相を一致させる駆動手段
    を備えることを特徴とする請求項23記載の印刷装置。
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