JP2006054643A - アンテナ及びそれを備えた無線機器 - Google Patents

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Abstract

【課題】 比較的簡易な構造で、小型化かつ広帯域化された指向性可変型のアンテナ及びそれを備えた無線機器を提供する。
【解決手段】 同軸線路4に接続され同軸線路4から給電されるアンテナ20であって、同軸線路4に形成される電界分布を可変させる可変手段5、7、10を備える。そして、可変手段5、7、10によって同軸線路4に形成される電界分布を可変させて、アンテナ指向性を変化させる。
【選択図】 図2

Description

この発明は、情報端末、移動通信端末等の無線機器とそこに設置される指向性可変型のアンテナとに関するものである。
近年の無線通信技術の飛躍的な発展にともない、これらの技術を利用した種々の無線機器が広く普及し始めている。このような無線通信技術では、無線通信路の伝送容量拡大に大きな期待がかけられている。特に、最近は時間や空間、偏波、符号といった多次元にわたる信号の多重化によって、伝送容量の拡大を図る研究が活発におこなわれている。
空間による多重化は、複数の無指向性アンテナとその信号をベクトル合成する回路からなるアダプティブアレイアンテナで実現されると考えられているが、アダプティブアレイアンテナは各アンテナの大きさや間隔が大きくなっていた。そのために、その利用対象が制限されていた。特に、情報端末や移動通信端末では使用されるアンテナの大きさができるだけ小さいことが要望されているために、アダプティブアレイアンテナの使用はそれらの要望を満足しないものとなっていた。
一方、従来から、アンテナ指向性を可変できる指向性可変アンテナが知られている。
特許文献1等には、放射素子の周囲を反射素子が機械的に周回することでアンテナ指向性を変化させる指向性可変アンテナが開示されている。
特許文献2等には、電気的にアンテナ指向性を切り替える指向性可変アンテナが開示されている。詳しくは、円形の接地導体上に、中央駆動素子と、それを放射状に取り囲むパラスティック素子と、が配置されている。パラスティック素子の下部にはインピーダンス負荷が設けてあって、このインピーダンスの切替えによりアンテナ指向性を切替える。
特許文献3等には、円形の接地導体上に給電アンテナ素子とそれを放射状に取り囲む無給電可変リアクタンス素子とが配置された指向性可変アンテナが開示されている。
特開平6−350334号公報 特開平10−154911号公報 特開2001−24431号公報
上述したアンテナ指向性を可変できる従来のアンテナは、アダプティブアレイアンテナよりも小型で、空間による多重化を実現することができるものの、情報端末や移動通信端末のアンテナとしては小型化が不充分であった。特に、無指向性アンテナに比べると、従来の指向性可変アンテナは小型化が充分ではなかった。
特許文献1等の指向性可変アンテナは、放射素子の周囲を機械的に周回する反射素子を設けるためにアンテナの大きさが大きくなっていた。
特許文献2等の指向性可変アンテナは、中央駆動素子とパラスティック素子との間隔をλ/4程度とる必要があって、アンテナ全体の大きさは2λ以上になっていた(λは使用波長である。)。
特許文献3等の指向性可変アンテナは、給電アンテナ素子と無給電可変リアクタンス素子との間隔をλ/4程度とる必要があって、アンテナ全体の大きさはλ程度になっていた。
このように、従来の指向性可変アンテナは、無指向性アンテナに比べてその大きさが大きくなってしまうためにその用途が制限されていた。また、使用波長の周波数が数GHz以下と低い場合には、波長の長さが10cm以上となって、アンテナのわずかな寸法の増大が無線機器の利便性を著しく妨げることになっていた。したがって、従来の指向性可変アンテナを情報端末や移動通信端末のアンテナとして利用することは難しかった。
さらに、従来の電気的にアンテナ指向性を可変する指向性可変アンテナは、指向性切替用の制御電極に高周波が漏れてくるのを抑止するために、制御電極にバイアス回路を設けていた。しかし、広い周波数範囲で動作可能なバイアス回路は回路が複雑となってしまうために、アンテナ広帯域化の妨げとなっていた。
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、比較的簡易な構造で、小型化かつ広帯域化されたアンテナ及びそれを備えた無線機器を提供することにある。
本願発明者は、上記課題を解決するために研究を重ねた結果、次の事項を知るに至った。
従来の指向性可変アンテナ(例えば、放射器の周辺に無給電素子を配して放射器と無給電素子との電磁的な相互結合を利用してアンテナの指向性を制御するものである。)は、アンテナの等価的な合成開口が大きくなるので、利得が高くなりアンテナ指向性を制御することができる。しかし、動作原理上、アンテナの大きさを無指向性アンテナと同じ大きさまで小さくすることは難しい。
これに対して、無指向性アンテナにおける給電電界分布を所望の方向に片寄らせることができれば、アンテナの等価的な合成開口を大きくすることなく、アンテナ指向性を変化させることができる。通常、無指向性アンテナの給電には同軸線路を用いるが、その同軸線路に形成される電界分布(給電電界分布)は同軸線路内で均一となっている。同軸線路の電界分布を何らかの方法により変化させても、その後同軸線路を伝播する間に電界分布はすぐに均一となってしまう。しかし、無指向性アンテナの給電部(放射素子との接続部である。)の直前で同軸線路の電界分布を変化させてやれば、電界分布が均一になる前にアンテナから電波を放射することができる。このようにして、無指向性アンテナの給電電界分布を片寄らせて、アンテナ指向性を変化させることができる。
この発明は以上述べた事項に基づくものであり、すなわち、この発明の請求項1記載の発明にかかるアンテナは、同軸線路に接続され当該同軸線路から給電されるアンテナであって、前記同軸線路に形成される電界分布を可変させる可変手段を備え、前記可変手段によって前記電界分布を可変させてアンテナ指向性を変化させるものである。
また、請求項2記載の発明にかかるアンテナは、上記請求項1に記載の発明において、前記同軸線路に接続される放射素子を備え、前記可変手段は、前記放射素子と前記同軸線路との接続部又はその近傍に設けられたものである。
また、請求項3記載の発明にかかるアンテナは、上記請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記可変手段は、アンテナ指向性を切り替える光伝導スイッチを備えたものである。
また、請求項4記載の発明にかかるアンテナは、上記請求項3に記載の発明において、前記光伝導スイッチは、面発光型半導体レーザを励起用光源としたものである。
また、請求項5記載の発明にかかるアンテナは、上記請求項1〜請求項4のいずれかに記載の発明において、前記同軸線路は、信号線と接地導体とを備え、前記可変手段を、前記信号線と前記接地導体との間の一部を短絡する短絡手段としたものである。
また、請求項6記載の発明にかかるアンテナは、上記請求項5に記載の発明において、前記短絡手段を複数備えたものである。
また、請求項7記載の発明にかかるアンテナは、上記請求項1〜請求項6のいずれかに記載の発明において、前記同軸線路は、信号線と接地導体とを備え、前記可変手段を、前記信号線と前記接地導体との間に設けた導体板の一部を当該接地導体と短絡する短絡手段としたものである。
また、請求項8記載の発明にかかるアンテナは、上記請求項7に記載の発明において、前記導体板と前記短絡手段とをそれぞれ複数備えたものである。
また、請求項9記載の発明にかかるアンテナは、上記請求項8に記載の発明において、前記複数の導体板は、異なる動作周波数に応じて長さがそれぞれ異なるように形成されたものである。
また、請求項10記載の発明にかかるアンテナは、上記請求項7〜請求項9のいずれかに記載の発明において、前記導体板と前記接地導体との短絡経路中に可変リアクタンス素子を設け、前記可変リアクタンス素子のリアクタンス値を可変させてアンテナ指向性を変化させるものである。
また、請求項11記載の発明にかかるアンテナは、上記請求項1〜請求項10のいずれかに記載の発明において、前記同軸線路に接続される放射素子に交わる方向に地板を備え、前記可変手段は、前記地板上に配設された誘電体フィルムに形成された回路を備えたものである。
また、請求項12記載の発明にかかるアンテナは、上記請求項1〜請求項11のいずれかに記載の発明において、無指向性アンテナに前記可変手段を設置して構成したものである。
また、請求項13記載の発明にかかるアンテナは、上記請求項12に記載の発明において、前記無指向性アンテナを、進行波型アンテナとしたものである。
また、請求項14記載の発明にかかるアンテナは、上記請求項13に記載の発明において、前記進行波型アンテナを、ディスコーンアンテナとしたものである。
また、この発明の請求項15記載の発明にかかる無線機器は、請求項1〜請求項14のいずれかに記載のアンテナを備えたものである。
本発明は、同軸線路に形成される電界分布を可変させてアンテナ指向性を変化させているので、比較的簡易な構造で小型化かつ広帯域化されたアンテナ及びそれを備えた無線機器を提供することができる。
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
実施の形態1.
図1〜図4にて、この発明の実施の形態1について詳細に説明する。
図1は、実施の形態1のアンテナ20を示す斜視図である。図2は、図1のアンテナ20におけるXZ平面の断面図である。
図1及び図2に示すように、本実施の形態1のアンテナ20は、主として、放射素子1(放射器)と地板2とで構成されている。地板2上には、光伝導スイッチ5と短絡線10とバイアス線7とが形成された誘電体フィルム6が貼着されている。アンテナ20は、信号線4a及び接地導体4bを有する同軸線路4(同軸ケーブル)に接続されていて、同軸線路4から給電される。
本実施の形態1のアンテナ20は、棒状の放射素子1と、それに直交する方向(XY平面である。)に配設された地板2と、からなる無指向性アンテナとしてのモノポールアンテナに対して、同軸線路4に形成される電界分布を可変させる可変手段としての誘電体フィルム6を設けることで指向性アンテナとしたものである。
具体的には、可変手段としての誘電体フィルム6は、同軸線路4とモノポールアンテナ(又は放射素子1)との接続部に設けられていて、その表面にはXY平面内の4方向にそれぞれ光伝導スイッチ5及び短絡線10及びバイアス線7が形成されている。短絡手段としての短絡線10は、一端が信号線4a(又は放射素子1)に接続されていて、他端が光伝導スイッチ5を介してバイアス線7に接続されている。バイアス線7は、外部に開放されていて、アンテナ20外部の電気回路に接続可能に構成されている。このような構成によって、地板2面内の4方向に電気的に短絡をオン・オフすることができる。
光伝導スイッチ5は、面発光型半導体レーザを励起用光源としたスイッチであって、アンテナ外部からバイアス線7を介して短絡のオン・オフを制御できる。
詳しくは、4方向のすべての光伝導スイッチ5をオフした場合には、同軸線路4の電界分布に乱れが生じることがなく、アンテナ20の放射パターンは無指向性のままとなる。これに対して、光伝導スイッチ5を1つだけオンした場合には、同軸線路4内の電界分布に乱れが生じて、アンテナ20の放射パターンは指向性をもつようになる。また、オンする光伝導スイッチ5の位置を切り替えることによって、アンテナ指向性を所望の方向に切り替えることができる。
ここで、図3を参照して、光伝導スイッチ5は、微小な間隙57を介して対向する2つの高周波電極55、56が形成された半導体54と、制御電極52を有する面発光型半導体レーザ51と、導波路53と、から構成されている。2つの高周波電極55、56は、それぞれ、信号線4aと接地導体4bとに接続される。また、面発光型半導体レーザ51の制御電極52は、誘電体フィルム6上のバイアス線7に接続される。
そして、面発光型半導体レーザ51の制御電極52に電圧を印加することにより、導波路53中を矢印方向に高エネルギーの光が伝送されて、その光が半導体54の基板上に照射される。これにより、基板上に自由電子(キャリア)が生成されて、生成された自由電子によって2つの高周波電極55、56の間が短絡されてスイッチがオンされる。ここで、導波路53は誘電体で形成されているため、半導体54上の高周波電極55、56と面発光型半導体レーザ51の制御電極52とは電気的に完全に分離されていることになる。したがって、制御電極52側に高周波が漏れてくることがない。
さらに、詳しく説明する。
同軸線路4の電界分布変化の有無を切替えるためには何らかのスイッチが必要となる。スイッチとして通常の電気的スイッチを使用する場合、このスイッチを制御するための制御電極に高周波が漏れてこないようにバイアス回路が必要となる。これに対して、スイッチとして光伝導スイッチを使用する場合には、スイッチ動作部54とスイッチ制御部(光源)51とを電気的に分離することが可能となる。
このように、本実施の形態1では、指向性・無指向性を切り替えるスイッチとして光伝導スイッチ5を用いているために、バイアス回路を設けることなく、広帯域にわたって制御電極53に高周波が漏れる不具合を抑止することができる。すなわち、アンテナ20の広帯域化が容易になる。
図4は、本実施の形態1のアンテナ20におけるアンテナ指向性の変化を示すグラフである。
図4において、横軸はアンテナ20の放射素子1を中心にしたXY平面内の角度(単位は°である。)を示し、縦軸はゲイン(地板2から仰角45°におけるアンテナ利得であり、単位はdBmである。)を示す。なお、角度0°の位置は、オン・オフする光伝導スイッチ5の位置である。
また、図4において、実線S1は光伝導スイッチ5をオンした場合の利得を示し、破線S2は光伝導スイッチ5をオフした場合の利得を示す。
同図から、すべての光伝導スイッチ5をオフ状態にした場合には、どの角度においても利得が一定となり無指向性となる。これに対して、1つの光伝導スイッチ5をオン状態にした場合には、指向性が変化してオンした光伝導スイッチ5の反対側の放射強度が強くなる。このように、本実施の形態1の構成によれば、無指向性アンテナ(モノポールアンテナ)と同等の大きさで、指向性の切り替えを容易におこなうことができる。
また、本実施の形態1では、光伝導スイッチ5の励起用光源として用いられる面発光型半導体レーザ51は、小型で低消費電力である。具体的に、面発光型半導体レーザ51は大きさが1mm以下であって消費電力が1mA以下である。これによって、広帯域動作が可能で、消費電力が低く、小型の指向性可変アンテナ20となる。
また、本実施の形態1では、同軸線路4の信号線4aと接地導体4bとの間の一部を、光伝導スイッチ5を利用して短絡している。これにより、同軸線路4に形成される電界分布を変化させることができる。この場合、同軸線路4の信号線4aと接地導体4bとの間の面積に対して、短絡する部分の面積を充分に小さくすることが必要である。この短絡する部分の面積が同軸線路4の信号線4aと接地導体4bとの間の面積に対して充分に小さくない場合には、ここでの反射が大きくなってアンテナ自体の放射効率が低下してしまう。したがって、反射が大きくならないように短絡する部分の面積を小さくすることで、短絡時に同軸線路4の電界分布を効率よく変化させることができる。この場合、短絡手段10は光伝導スイッチ5により制御できるので、短絡個所を高速に切替えて指向性を変化させたり、短絡部分をすべて開放したりすれば、無指向性に戻すこともできる。
また、同軸線路4の電界分布を変化させるための回路は、アンテナ20と同軸線路4の接続部又はその近傍に設ける必要がある。しかし、同軸線路4はその直径が数mmと小さいために、必要な回路を同軸線路4に詰め込むことは実装上難しい。また、同軸線路4やアンテナといった3次元構造体に、電界分布を変化させるための回路を直接加工することは難しい。本実施の形態1では、微細加工に適した半導体プロセスを用いて誘電体フィルム6上に微細な回路を形成して地板2上に貼着している。したがって、複雑な加工法を用いることなく、同軸線路4の電界分布を可変する可変手段を比較的簡易に形成することができる。
また、本実施の形態1におけるアンテナ指向性の制御方法は、同軸線路4の電界分布変調を利用している。そのため、周波数による制限が少ない。言い換えれば、広帯域の無指向性アンテナに上述の可変手段を設置することで、広帯域な指向性可変アンテナとすることができる。したがって、ベースとなる無指向性アンテナとしては、広帯域性の高い進行波型アンテナを用いることが好ましい。
なお、図示は省略するが、アンテナ20は、情報端末、移動通信端末等の無線機器に設置される。これにより、無線機器の送受信をおこなうためのアンテナ20が、広帯域化されアンテナ指向性が可変されるとともに、無指向性アンテナと同程度に小型化されることになる。すなわち、無線機器が小型化されるとともに、電波の送受信性能が向上する。したがって、本実施の形態1のアンテナ20は、特に携帯用の小型情報端末に対して有用なものとなる。
以上説明したように、本実施の形態1では、同軸線路4に形成される電界分布を可変させてアンテナ指向性を変化させているので、比較的簡易な構造で小型化かつ広帯域化されたアンテナ及びそれを備えた無線機器を提供することができる。
実施の形態2.
図5及び図6にて、この発明の実施の形態2について詳細に説明する。
図5は、実施の形態2のアンテナ20を示す斜視図である。図6は、図5のアンテナ20におけるXZ平面の断面図である。本実施の形態2のアンテナ20は、短絡手段として信号線4aと接地導体4bとの間に設けた導体板14を用いている点が、短絡手段として短絡線10を用いている前記実施の形態1のものとは相違する。
図5及び図6に示すように、本実施の形態2のアンテナ20は、主として、放射素子1(放射器)と地板2とで構成されている。地板2上には、光伝導スイッチ5と導体板14(浮遊金属片)とバイアス線7とが形成された誘電体フィルム6が貼着されている。アンテナ20は、信号線4a及び接地導体4bを有する同軸線路4に接続されていて、同軸線路4から給電される。
本実施の形態2のアンテナ20は、前記実施の形態1と同様に、放射素子1と地板2とからなる無指向性アンテナとしてのモノポールアンテナに対して、同軸線路4に形成される電界分布を可変させる可変手段としての誘電体フィルム6を設けることで指向性可変アンテナとしたものである。
具体的には、可変手段としての誘電体フィルム6は、同軸線路4とモノポールアンテナ(又は放射素子1)との接続部に設けられていて、その表面にはXY平面内の4方向にそれぞれ光伝導スイッチ5及び導体板14及びバイアス線7が形成されている。導体板14は、一端が接地導体4b内に向けて折り込められていて、他端が光伝導スイッチ5を介してバイアス線7に接続されている。バイアス線7は、アンテナ20外部の電気回路に接続可能に構成されている。このような構成によって、地板2面内の4方向に電気的に短絡をオン・オフすることができる。
光伝導スイッチ5は、前記実施の形態1のものと同様に、面発光型半導体レーザを励起用光源としたスイッチであって、アンテナ外部からバイアス線7を介して短絡のオン・オフを制御する。
詳しくは、4方向のすべての光伝導スイッチ5をオフした場合には、同軸線路4の電界分布に乱れが生じることがなく、アンテナ20の放射パターンは無指向性のままとなる。これに対して、光伝導スイッチ5を1つだけオンした場合には、同軸線路4内の電界分布に乱れが生じて、アンテナ20の放射パターンは指向性をもつようになる。また、オンする光伝導スイッチ5の位置を切り替えることによって、アンテナ指向性を所望の方向に切り替えることができる。
本実施の形態2のように、同軸線路4の信号線4aと接地導体4bとの間に導体板14を設けても、それだけでは同軸線路4の電界分布が乱されることはない。導体板14の一部(好ましくは、同軸線路4の信号が伝播する方向の先端部である。)を、光伝導スイッチ5を用いて接地導体4bと短絡することにより、同軸線路4の電界分布を電気的に変化させることができる。この場合、導体板14と接地導体4bとの短絡は光伝導スイッチ5により制御できるので、短絡個所を高速に切替えて指向性を変化させたり、短絡部分をすべて開放したりすれば、無指向性に戻すこともできる。
このように、本実施の形態2では、無指向性アンテナを指向性可変アンテナとして機能させるために、同軸線路4の電界分布を可変させる可変手段として信号線4aと接地導体4bとの間に設けた導体板14の一部を接地導体4bと短絡する構成としている。これにより、無指向性アンテナと同じ大きさで、高速に指向性を切替えることができる指向性可変アンテナ20となる。
以上説明したように、本実施の形態2でも、前記実施の形態1と同様に、同軸線路4に形成される電界分布を可変させてアンテナ指向性を変化させているので、比較的簡易な構造で小型化かつ広帯域化されたアンテナ及びそれを備えた無線機器を提供することができる。
実施の形態3.
図7及び図8にて、この発明の実施の形態3について詳細に説明する。
図7は、実施の形態3のアンテナ20を示す斜視図である。図8は、図7のアンテナ20におけるXZ平面の断面図である。本実施の形態3のアンテナ20は、ディスコーン型のアンテナ形状になっている点と、長さの異なる導体板14A、14Bが用いられている点とが、前記実施の形態2のものとは相違する。
図7及び図8に示すように、本実施の形態3のアンテナ20は、主として、円錐状の放射素子1(上部電極)と、地板2と、で構成されている。地板2上には、光伝導スイッチ5A、5Bと導体板14A、14Bとバイアス線7A、7Bとが形成された誘電体フィルム6が貼着されている。アンテナ20は、信号線4a及び接地導体4bを有する同軸線路4に接続されていて、同軸線路4から給電される。
本実施の形態3のアンテナ20は、放射素子1と地板2とからなる無指向性アンテナとしてのディスコーンアンテナに対して、同軸線路4の電界分布を可変させる誘電体フィルム6を設けることで指向性可変アンテナとしたものである。
具体的には、誘電体フィルム6は、同軸線路4とディスコーンアンテナ(又は放射素子1)との接続部に設けられている。誘電体フィルム6の表面には、XY平面内の4方向にそれぞれ、一対の光伝導スイッチ5A、5B、一対の導体板14A、14B、一対のバイアス線7A、7Bが形成されている。一対の導体板14A、14Bは、それぞれ、一端が接地導体4b内に向けて折り込められていて、他端が光伝導スイッチ5A、5Bを介してバイアス線7A、7Bに接続されている。バイアス線7A、7Bは、アンテナ20外部の電気回路に接続可能に構成されている。
ここで、図8を参照して、一対の導体板14A、14Bのうち、第1導体板14Aの長さは8mmであって、第2導体板14Bの長さは1.2mmとなっている。これらの導体板の長さは2つの動作周波数に対応するために設定されたものである。具体的に、第1導体板14Aの長さは25GHzの周波数で電界分布を変化させるように設定され、第2導体板14Bの長さは19GHzの周波数で電界分布を変化させるように設定されている。
このような構成によって、地板2面内の4方向に電気的に短絡をオン・オフすることができる。光伝導スイッチ5は、前記各実施の形態のものと同様に、面発光型半導体レーザを励起用光源としたスイッチであって、アンテナ外部からそれぞれのバイアス線7A、7Bを介して短絡のオン・オフを制御する。
詳しくは、4方向のすべての光伝導スイッチ5A、5Bをオフした場合には、同軸線路4の電界分布に乱れが生じることがなく、アンテナ20の放射パターンは無指向性のままとなる。
これに対して、一対の光伝導スイッチ5A、5Bのうち一方の光伝導スイッチ5Aをオンした場合には、25GHzの信号において同軸線路4内の電界分布に乱れが生じて、25GHzの放射パターンが指向性をもつようになる。また、他方の光伝導スイッチ5Bをオンした場合には、19GHzの信号において同軸線路4内の電界分布に乱れが生じて、19GHzの放射パターンが指向性をもつようになる。また、オンする光伝導スイッチ5の位置を切り替えることによって、アンテナ指向性を所望の方向に切り替えることができたり、各周波数を独立して制御することができたりする。
このように、本実施の形態3のアンテナ20は、無指向性アンテナと同等の大きさであって、複数の周波数において独立して指向性の切り替えをおこなうことができる指向性可変アンテナとなる。
さらに、詳しく説明する。
同軸線路4の信号線4aと接地導体4bとの間に設けた導体板14の一部を接地導体4bと短絡させる方法では、導体板14の長さに依存した特定の周波数でのみ同軸線路4の電界分布を変化させることができる。したがって、異なる長さの導体板14A、14Bを用いることで、それぞれ異なる動作周波数をもつことになる。そして、異なる長さをもつ導体板14A、14Bを独立して制御することで、導体板14A、14Bの長さに応じた周波数での指向性を独立して制御することができる。
また、本実施の形態3では、ベースとなる無指向性アンテナとして、ディスコーンアンテナを用いている。ディスコーンアンテナは、広帯域な進行波型アンテナであって、構造が簡易であるために、加工コストを低く抑えることができる。
以上説明したように、本実施の形態3でも、前記各実施の形態と同様に、同軸線路4に形成される電界分布を可変させてアンテナ指向性を変化させているので、比較的簡易な構造で小型化かつ広帯域化されたアンテナ及びそれを備えた無線機器を提供することができる。
実施の形態4.
図9及び図10にて、この発明の実施の形態4について詳細に説明する。
図9は、実施の形態4のアンテナ20を示す斜視図である。図10は、図9のアンテナ20におけるXZ平面の断面図である。本実施の形態4のアンテナ20は、主として、可変リアクタンス素子15が設置されている点が、前記実施の形態3のものとは相違する。
図9及び図10に示すように、本実施の形態4のアンテナ20は、主として、円錐状の放射素子1(上部電極)と、地板2と、で構成されている。地板2上には、光伝導スイッチ5と可変リアクタンス素子15と導体板14とバイアス線7C、7Dとが形成された誘電体フィルム6が貼着されている。アンテナ20は、信号線4a及び接地導体4bを有する同軸線路4に接続されていて、同軸線路4から給電される。
本実施の形態4のアンテナ20は、放射素子1と地板2とからなる無指向性アンテナとしてのディスコーンアンテナに対して、同軸線路4の電界分布を可変させる誘電体フィルム6を設けることで指向性可変アンテナとしたものである。
具体的には、誘電体フィルム6は、同軸線路4とディスコーンアンテナ(又は放射素子1)との接続部に設けられている。誘電体フィルム6の表面には、XY平面内の4方向にそれぞれ、光伝導スイッチ5、可変リアクタンス素子15、導体板14、一対のバイアス線(スイッチ用バイアス線7Cと可変容量用バイアス線7Dとである。)が形成されている。導体板14は、一端が接地導体4b内に向けて折り込められていて、他端が光伝導スイッチ5及び可変リアクタンス素子15を介して2つのバイアス線7C、7Dにそれぞれ接続されている。2つのバイアス線7C、7Dは、アンテナ20外部の電気回路に接続可能に構成されている。可変リアクタンス素子15は、可変容量用バイアス線7Dを通じてその容量を可変することができる。
このような構成によって、地板2面内の4方向に電気的に短絡をオン・オフすることができる。光伝導スイッチ5は、前記各実施の形態のものと同様に、面発光型半導体レーザを励起用光源としたスイッチであって、アンテナ外部からスイッチ用バイアス線7C介して短絡のオン・オフを制御する。
詳しくは、4方向のすべての光伝導スイッチ5をオフした場合には、同軸線路4の電界分布に乱れが生じることがなく、アンテナ20の放射パターンは無指向性のままとなる。
これに対して、1つの光伝導スイッチ5をオンした場合には、同軸線路4内の電界分布に乱れが生じて、放射パターンが指向性をもつようになる。このとき、外部から可変容量用バイアス線7Dを介して可変リアクタンス素子15の容量を変化させることで動作周波数帯を任意に制御することができる。
このように、本実施の形態4のアンテナ20は、無指向性アンテナと同等の大きさであって、任意の周波数にて独立して指向性の切り替えをおこなうことができる指向性可変アンテナとなる。
さらに、詳しく説明する。
同軸線路4のアンテナ接続部であって信号線4aと接地導体4bとの間に導体板14を設けて、導体板14を接地導体4bと短絡させることで、同軸線路4の電界分布を変化させることができる。この電界分布の変化は、導体板14の長さに応じた共振現象に関係するため、特定の周波数でのみ生じることになる。本実施の形態4では、導体板14に可変リアクタンス素子15を接続しているので、導体板14の見かけの電気長を変えることができる。すなわち、特定の周波数帯域で見れば、電気的に同軸線路4の電界分布を変化させたりさせなかったりすることができる。こうして、任意の周波数において独立して指向性の切り替えが可能な指向性可変アンテナとなる。
以上説明したように、本実施の形態4でも、前記各実施の形態と同様に、同軸線路4に形成される電界分布を可変させてアンテナ指向性を変化させているので、比較的簡易な構造で小型化かつ広帯域化されたアンテナ及びそれを備えた無線機器を提供することができる。
なお、本発明が上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、上記各実施の形態の中で示唆した以外にも、上記各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、上記構成部材の数、位置、形状等は上記各実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
この発明の実施の形態1におけるアンテナを示す斜視図である。 図1のアンテナを示す断面図である。 アンテナに設置される光伝導スイッチを示す概略構成図である。 アンテナ指向性を示すグラフである。 この発明の実施の形態2におけるアンテナを示す斜視図である。 図5のアンテナを示す断面図である。 この発明の実施の形態3におけるアンテナを示す斜視図である。 図7のアンテナを示す断面図である。 この発明の実施の形態4におけるアンテナを示す斜視図である。 図9のアンテナを示す断面図である。
符号の説明
1 放射素子、 2 地板、
4 同軸線路、 4a 信号線、 4b 接地導体、
5、5A、5B 光伝導スイッチ、
6 誘電体フィルム、
7 バイアス線、 7A 第1バイアス線、 7B 第2バイアス線、
7C スイッチ用バイアス線、 7D 可変容量用バイアス線、
10 短絡線(短絡手段)、
14 導体板、 14A 第1導体板、 14B 第2導体板、
15 可変リアクタンス素子、 20 アンテナ。

Claims (15)

  1. 同軸線路に接続され当該同軸線路から給電されるアンテナであって、
    前記同軸線路に形成される電界分布を可変させる可変手段を備え、
    前記可変手段によって前記電界分布を可変させてアンテナ指向性を変化させることを特徴とするアンテナ。
  2. 前記同軸線路に接続される放射素子を備え、
    前記可変手段は、前記放射素子と前記同軸線路との接続部又はその近傍に設けられたことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ。
  3. 前記可変手段は、アンテナ指向性を切り替える光伝導スイッチを備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアンテナ。
  4. 前記光伝導スイッチは、面発光型半導体レーザを励起用光源としたことを特徴とする請求項3に記載のアンテナ。
  5. 前記同軸線路は、信号線と接地導体とを備え、
    前記可変手段は、前記信号線と前記接地導体との間の一部を短絡する短絡手段であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のアンテナ。
  6. 前記短絡手段を複数備えたことを特徴とする請求項5に記載のアンテナ。
  7. 前記同軸線路は、信号線と接地導体とを備え、
    前記可変手段は、前記信号線と前記接地導体との間に設けた導体板の一部を当該接地導体と短絡する短絡手段であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載のアンテナ。
  8. 前記導体板と前記短絡手段とをそれぞれ複数備えたことを特徴とする請求項7に記載のアンテナ。
  9. 前記複数の導体板は、異なる動作周波数に応じて長さがそれぞれ異なるように形成されたことを特徴とする請求項8に記載のアンテナ。
  10. 前記導体板と前記接地導体との短絡経路中に可変リアクタンス素子を設け、
    前記可変リアクタンス素子のリアクタンス値を可変させてアンテナ指向性を変化させることを特徴とする請求項7〜請求項9のいずれかに記載のアンテナ。
  11. 前記同軸線路に接続される放射素子に交わる方向に地板を備え、
    前記可変手段は、前記地板上に配設された誘電体フィルムに形成された回路を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれかに記載のアンテナ。
  12. 無指向性アンテナに前記可変手段を設置して構成したことを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれかに記載のアンテナ。
  13. 前記無指向性アンテナは、進行波型アンテナであることを特徴とする請求項12に記載のアンテナ。
  14. 前記進行波型アンテナは、ディスコーンアンテナであることを特徴とする請求項13に記載のアンテナ。
  15. 請求項1〜請求項14のいずれかに記載のアンテナを備えたことを特徴とする無線機器。
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