JP2006052411A - ポリアミド系樹脂組成物およびその成形品 - Google Patents

ポリアミド系樹脂組成物およびその成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】射出成形などによって成形を行う際に良流動性を有するポリアミド系樹脂組成物、およびこれらから得た成形品を供する。
【解決手段】
少なくとも次の構成要素[A]および[B]からなる樹脂組成物であり、該樹脂組成物合計100重量部に対して、構成要素[A]を0.5から40重量部配合してなるポリアミド系樹脂組成物。
[A]フェノールもしくはフェノールの置換基誘導体(前駆体a)と、二重結合を2個有する脂肪族炭化水素(前駆体b)の縮合により得られるオリゴマー
[B]ポリアミド樹脂
【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性樹脂材料に関する。さらに詳しくは、射出成形などによって成形を行う際に良流動性を有する樹脂組成物、射出成形用ペレット、およびこれらから得た成形品に関する。
熱可塑性樹脂に対して添加剤を使用して改質を行うことは公知である。
添加剤として芳香族変性テルペン樹脂を用いることについては、特許文献1や特許文献2に記載されている。これらは、単体では接着性や塗装性の悪いポリフェニレンエーテルやポリオレフィン系の樹脂に対して、これらの点の改質を行うことを目的としたものである。ポリアミド系樹脂の場合、該樹脂がもともと高い接着性や塗装性を有するので、このような改質をあまり必要としない。ただし、高分子量のポリアミド樹脂や、弾性率を上げたり、難燃性を付与するために大量のフィラーや難燃剤を混合したものを使用する場合には、成形時の流動性が不足することがしばしば起こる。しかし、ポリアミド樹脂の本来の特性を大きく損なうことなく成形時の流動性を改善する添加剤として芳香族変性テルペン樹脂に類する構造のものが用いられたことはこれまでなかった。
特開平2−199164号公報 特開平7−11066号公報
本発明は、低分子量(低粘度)熱可塑性重合体の流動の容易さ(生産性の高さ)と、高分子量熱可塑性樹脂をマトリックスとした場合の力学的特性の高さを合わせ持ち、例えば射出成形などによる成形をおこなった際に、良流動性を有する樹脂組成物、およびこれらの成形材料や樹脂組成物より得た成形品を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明のポリアミド系樹脂組成物は次の構成からなる。
すなわち、少なくとも次の構成要素[A]および[B]からなる樹脂組成物であり、該樹脂組成物合計100重量部に対して、構成要素[A]を0.5から40重量部配合してなるポリアミド系樹脂組成物である。
[A]フェノールもしくはフェノールの置換基誘導体(前駆体a)と、二重結合を2個有する脂肪族炭化水素(前駆体b)の縮合により得られるオリゴマー
[B]ポリアミド樹脂
また、本発明の成形品は、前記ポリアミド系樹脂組成物を成形してなる成形品である。
また、本発明の射出成形用ペレットは、前記ポリアミド系樹脂組成物からなる射出成形用ペレットである。
また、本発明の成形品の他の態様は前記射出成形用ペレットを射出成形してなる成形品である。
本発明によるポリアミド系樹脂組成物は優れた流動性を有する。また、これらから品質の優れた成形品を提供できる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明のポリアミド系樹脂組成物は、少なくとも次の2つの構成要素からなる。構成要素[A]は、フェノールもしくは、フェノールの置換基誘導体(前駆体a)と、二重結合を2個有する脂肪族炭化水素(前駆体b)の縮合により得られるオリゴマーであり、構成要素[B]はポリアミド樹脂である。この樹脂組成物に強化繊維が加えられていてもよい。
フェノールの置換基誘導体(前駆体a)と、二重結合を2個有する脂肪族炭化水素(前駆体b)の縮合反応は、強酸もしくは、ルイス酸の存在下に行うことができる。また、構成要素[A]は、前駆体aと、系内で前駆体bを生成する化合物を同様の条件で反応させて得ることもできる。
この前駆体aとしてのフェノールの置換基誘導体は、フェノールのベンゼン核上に、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基より選ばれる置換基を1〜3個有するものが好ましく用いられる。その具体例としては、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、ノニルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、クロロクレゾール、ヒドロキノン、レゾルシノール、オルシノールなどを挙げることができる。
特に好ましい前駆体aとしては、フェノールおよびクレゾールが挙げられる。
前駆体aは複数種用いてもよい。
前駆体bは、二重結合を2個有する脂肪族炭化水素であり、環状構造を有してもよい。
環状構造をもたない前駆体bの例としては、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、ヘキサジエンなどを挙げることができる。環状構造を有する前駆体bの例としては、単環性の化合物として、シクロヘキサジエン、ビニルシクロヘキセン、シクロヘプタジエン、シクロオクタジエン、C1016の分子式で表される単環式モノテルペン(ジペンテン、リモネン、テルピノレン、テルピネン、フェランドレン)など、二環性の化合物として、2,5−ノルボルナジエン、テトラヒドロインデン、C1524の分子式で表される二環式セスキテルペン(カジネン、セリネン、カリオフィレンなど)など、三環性の化合物としてジシクロペンタジエンなどを挙げることができる。
また、系内で前駆体bを生成する化合物としては、異性化によりジペンテンを生成する、ピネンおよびカンフェンを例として挙げることができる。
前駆体bとしては、炭素数6〜15のものが好ましく、また環状構造を有するものが好ましい。環状構造を持つことにより、分子の運動が適度に拘束されて比較的剛直なものとなる。このような構造を持つ構成要素[A]が構成要素[B]中に分散した成形品を得た際に、成形品の弾性率を大きく低下させたりすることがない。特に好ましい前駆体bとしては、C1016の分子式で表される単環式モノテルペン、およびジシクロペンタジエンが挙げられる。例として単環式モノテルペンとフェノールの付加物の一般的な分子構造を式〔I〕に示す。
Figure 2006052411
前駆体b、および系内で前駆体bを生成する化合物は複数種を用いてもよい。
本発明のポリアミド系樹脂組成物の構成要素[A]として特に優れたものとして、前駆体aを2分子に対して、前駆体bを1分子付加したもの(以下、「2:1の付加物」と表す。)が、構成要素[A]中の40重量%以上であるものである。これは極性の高いフェノールもしくはフェノールの置換基誘導体が2に対して、極性の低い脂肪族炭化水素を1という比率で付加されているため、全体として極性が比較的高く、アミド基などを持つ極性の高いポリアミドとの親和性に優れる。この2:1の付加物は構成要素[A]中の40重量%以上含まれていて主成分であればよく、例えば他に1:1の付加物や2:2の付加物、あるいは他の不純物が混合されていてもよい。このような構成要素[A]の主成分の例として、単環式モノテルペンであるジペンテンと、フェノールの付加物の分子構造を式〔II〕に示す。
Figure 2006052411
この構成要素[A]は、比較的低分子量であり、非常に低粘度であるため、構成要素[B]に添加されることにより、混合された樹脂組成物には高い流動性が付与される。特に樹脂中に強化繊維などのフィラーや難燃剤等が添加してあり、樹脂流動性が非常に悪い場合には、構成要素[A]を加えることにより熱溶融時の流動性を改善することができ、成形性が向上する。一般的には低分子量物を樹脂に添加すると、樹脂の力学的特性などが添加前に比較して大幅に低下する場合があるが、本発明の樹脂組成物は、この特性低下が非常に小さい。
本発明の樹脂組成物合計100重量部に対して、構成要素[A]は0.5〜40重量部の範囲で配合する。0.5重量部より少ないと流動性改善効果が小さく、40重量部を越えると樹脂組成物の力学的特性が大幅に低下してしまう。より望ましい配合量は、5〜15重量部の範囲である。
構成要素[A]の重量平均分子量は、熱をかけた際に容易に揮発するなどして成形品にボイドなどの欠点を生じる原因となったり、また樹脂組成物の物性を低下させるのを防ぐ観点から、200以上が好ましい。一方、分子量が大きくなると結果として溶融粘度が高くなるので、樹脂組成物の流動性改善効果を効果的に得るために分子量は1000以下が好ましい。ここに記す重量平均分子量の測定には、ゲル浸透クロマトグラフ法(GPC)を用い、検出器としてレーザーを用いた低角度光散乱光度計(LALLS)を使用する。
構成要素[B]のポリアミド樹脂としては、アミド基の繰り返しによって主鎖を構成するポリマーであれば特に限定されない。ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン610、ナイロン612やダイマー酸ベースのポリアミドのような脂肪族ポリアミド、あるいはナイロン6Tのような芳香族ポリアミド等も用いることができる。これらの混合物や、ナイロン6とナイロン66の共重合体のように、複数の種類のポリアミドを共重合したものであってもよい。またアミド基の関与する付加反応や縮合反応、メチレン基へのグラフト反応などにより、ポリアミドに別の種類の分子をつなげたようなものでよい。ポリアミドの中では、ナイロン6、またはナイロン66、またはナイロン6とナイロン66の共重合体が、力学的特性に優れるために特に適している。
前述の樹脂組成物100重量部に対して、強化繊維を5〜200重量部配合してもよい。構成要素[A]が含有されてなることにより、強化繊維が含まれていても樹脂組成物の流動性は比較的良好である。強化繊維の配合量が5重量部より小さいと、繊維補強効果が小さく、200重量部を越えると構成要素[A]を配合している場合であっても流動性が悪く、成形性に乏しい。より望ましい強化繊維の配合量は10〜70重量部の範囲である。
強化繊維の種類は、特に限定されない。炭素繊維、ガラス繊維、ポリアラミド繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、ボロン繊維等の高強度、高弾性率繊維等が使用できる。2種以上を混合してもよい。この中では、炭素繊維が力学的特性の向上効果に優れているため好ましい。
より好ましくは、前述したのと同様に、X線光電子分光法により測定される繊維表面の酸素(O)と炭素(C)の原子数の比である表面官能基量(O/C)が、0.05〜0.4の範囲にある炭素繊維が好ましい。
本発明の樹脂組成物には難燃剤、耐候性改良剤、その他酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、相溶化剤、導電性フィラー等を添加しておくことができる。
また本発明の樹脂組成物は、前述した配合比率であれば、その混合の程度は特に限定されないが、混練されていてそれぞれの構成要素がほぼ均一に分散しているものであることが好ましい。
以上説明したポリアミド系樹脂組成物は、通常の成形法により最終的な形状の製品に加工できる。成形方法としてはプレス成形、トランスファー成形、射出成形や、これらの組合せ等が挙げられる。成形品としては、シリンダーヘッドカバー、ベアリングリテーナ、インテークマニホールド、ペダル等の自動車部品、モンキー、レンチ等の工具類、歯車などの小物が挙げられる。また、本発明のポリアミド系樹脂組成物は、流動性に優れるため成形品の厚みが0.5〜2mmといった薄肉の成形品を比較的容易に得ることができる。このような薄肉成形が要求されるものとしては、例えばパーソナルコンピューター、携帯電話に使用されるような筐体や、パーソナルコンピューターの内部でキーボードを支持する部材であるキーボード支持体に代表されるような電気・電子機器用部材が挙げられる。このような電気・電子機器用部材では、強化繊維に導電性を有する炭素繊維を使用した場合に、電磁波シールド性が付与されるためにより望ましい。
また、上記したポリアミド系樹脂組成物は射出成形用ペレットとして用いることができる。とりわけ、連続した強化繊維束を含む上記樹脂組成物の場合、射出成形においてはペレットを可塑化する際、温度、圧力、混練が加えられるから、後述するように本発明によればその際に構成要素[A]が強化繊維束の分散・含浸助剤として大きな効果を発揮する。この場合、通常のインラインスクリュー型射出成形機を用いることができ、またたとえ圧縮比の低いような形状のスクリューを用いたり、材料可塑化の際の背圧を低く設定するなどして、スクリューによる混練効果が弱い場合であっても強化繊維がマトリックス樹脂中に良分散し、繊維への樹脂の含浸が良好な成形品を得ることができる。
強化繊維がマトリックス樹脂中に良分散し、繊維への樹脂の含浸が良好な成形品を得ることができる別の成形材料の例としては、少なくとも次の3つの構成要素からなるものが挙げられる。構成要素[C]は、連続した強化繊維束であり、複合材料の強化材として成形品に高い力学的特性を付与するものである。構成要素[E]は比較的高粘度の、例えば靭性などの物性が高いマトリックス樹脂である。構成要素[E]は、成形後構成要素[C]に含浸し、強化材と接着、これを強固に保持する役割をもつ。構成要素[D]は、比較的低粘度の熱可塑性重合体であり、構成要素[C]と共に複合体を形成するとともに、成形時にはマトリックス樹脂(構成要素[E])が強化繊維束(構成要素[C])に含浸することを助け、また強化繊維がマトリックス中に分散することを助ける、いわゆる含浸助剤・分散助剤としての役割を持つものである。
構成要素[C]と構成要素[D]は、この2者で複合体を形成する。この複合体の形態は図1に示すようなものであり、連続繊維束である構成要素[C]の各単繊維間に構成要素[D]が満たされている。すなわち、構成要素[D]の海に、構成要素[C]が島のように分散している状態である。具体的には構成要素[D]を熱溶融させて、構成要素[C]に含浸することによって複合体を形成する。
図2〜7は前記成形材料の断面の形状の例を模式的に表したものである。
成形材料の断面の形状は、構成要素[C]と構成要素[D]からなる複合体に、構成要素[E]が接するように配置されていれば図に示されたものに限定されないが、好ましくは図2〜5に示されるように、複合体に対して、構成要素[E]が周囲を被覆するように配置されているか、図6、7に示されるように、複合体と構成要素[E]が層状に配置されている構成が望ましい。図4に示されるような複数の複合体を構成要素[E]が被覆するように配置する場合、複合体の数は2〜6程度が望ましい。
複合体と、構成要素[E]の境界は接着されていることが望ましい。境界付近で部分的に構成要素[E]が該複合体の一部に入り込み、構成要素[E]と相溶しているような状態、あるいは構成要素[C]に含浸しているような状態になっていてもよい。
成形材料の長手方向は、ほぼ同一の断面形状を保ち連続であればよい。成形方法によってはこのような連続の成形材料をある長さにカットしてもよい。
前記成形材料は、例えば射出成形やプレス成形などの手法により構成要素[C]、[D]および[E]を混合して最終的な成形品を作製できる。成形材料の取扱性の点から、それぞれの構成要素は成形が行われるまでは分離せず、前述したような形状を保っていることが重要である。構成要素[D]は低分子量であることから常温においては通常比較的脆く破砕しやすい固体であったり、液体であることが多い。このため、高分子量の構成要素[E]を、複合体を保護するように配置し、成形までの材料の運搬、取り扱い時のショック、擦過などにより、構成要素[D]が破砕されて飛散したりしないようにすることが望ましい。
そのため、図2〜5に例示されるように構成要素[C]と構成要素[D]からなる複合体に対して、構成要素[E]が該複合体の周囲を被覆するように配置されていたり、図6〜7に例示されるように複合体と、構成要素[E]が層状に配置されていることが好ましい。このような配置であれば、高分子量の構成要素[E]が破砕しやすい構成要素[D]を包んでいたり、擦過しやすい面に配置されたりしているため、成形材料として形状が保持されやすい。
次に前記成形材料の各構成要素についてさらに詳しく説明する。
構成要素[D]は、重量平均分子量が200〜50,000であってかつ構成要素[E]よりも溶融粘度が低い熱可塑性重合体である。またこれは構成要素[C]に含浸して複合体を形成する。構成要素[D]は、高粘度の熱可塑性樹脂であるマトリックスを繊維束に含浸する際に、含浸や、マトリックス中への繊維の分散を助ける、含浸助剤・分散助剤としての働きを示すものである。あらかじめ強化繊維束(構成要素[C])が低粘度物である構成要素[D]によって含浸されていることにより、例えば射出成形やプレス成形などの最終形状への成形工程において、成形材料に温度、圧力、混練が加えられた際に、マトリックスとなる構成要素[E]が繊維束(構成要素[C])に含浸することを助け、マトリックス中での強化繊維の分散性を向上させる。
これは、次のようなメカニズムによる。強化繊維束を構成する単繊維の直径は、炭素繊維の場合7〜10μmと非常に細く、ガラス繊維でも20μm以下である。これは言い換えると繊維束が見かけから予想するよりずっと大きな表面積を持っていることを示している。繊維束へある粘度をもった溶融物を含浸するということは、単繊維の間のわずかな隙間に溶融物を押し込み、単繊維間に存在する空気を系外に追い出しつつ、広い繊維の表面積をすべてを濡らすということであり、その困難さ(含浸に要する時間)は単純には溶融物の粘度に比例すると考えられる。本発明においては、最終的に含浸させようとする物質(構成要素[E])よりも溶融粘度の小さい物質(構成要素[E])で繊維束が予め濡らされ、単繊維間の隙間が埋められている状態、すなわち含浸されているため、最終的に含浸させようとする溶融物(構成要素[E])がある程度高粘度であっても含浸ははるかに容易となる。これは、予め繊維に含浸されている物質と、これから含浸させようとする物質を、置換あるいは混合するだけで含浸が達成され、空気を系外に追い出す仕事もなくなるためである。構成要素[D]の、強化繊維束(構成要素[C])やマトリックスとなる熱可塑性樹脂(構成要素[E])に対する化学的親和性を考慮することにより、効果はさらに優れたものとなる。特に構成要素[D]に界面活性剤的な役割を付与した場合には、成形時に成形材料が可塑化された際に、強化繊維を成形品中に均一に良分散させる効果が強くあらわれる。
なお、構成要素[D]は一般的に強化繊維の表面処理に用いられるカップリング剤、サイジング剤とは異なる概念に属するものである。すなわち、カップリング剤、サイジング剤の処理量は繊維に対して通常0.05〜10重量%程度と少なく、繊維のごく表面部分に塗布することを意図したものであるから、繊維束をあらかじめ含浸しておくといったものではない。構成要素[C]にはあらかじめ公知の表面処理、カップリング剤やサイジング剤の付与を行うことができ、それらは従来通りの効果を発揮する。ただし、繊維束には構成要素[D]である熱可塑性重合体を含浸させるため、サイジング剤などを使用する場合の処理量は必要最低限で十分である。
成形材料を製造するにあたって、構成要素[D]をあらかじめ構成要素[C]に含浸させる。構成要素[D]は熱溶融させて連続した繊維束(構成要素[C])に容易に含浸させることが可能であり、繊維束を連続的に含浸するプロセスにおいて、例えば速度10m/分以上といった高速走行を実現可能であり、生産性に優れる。また含浸プロセスについても、繊維を大幅に開繊したり、バーなどにこすりつけて繊維が損傷を受けるほどしごいたり、熱可塑性重合体に高圧を付与したりするなどの操作をおこなうような複雑な装置を使用する必要がない。また、熱可塑性重合体を溶媒で希釈して低粘度化して含浸してから溶媒を除去したり、エマルジョン、ディスパーション化して含浸後に媒体を除去するような複雑で生産性の悪い手法をとる必要もない。含浸装置の最適化により、熱可塑性重合体(構成要素[D])を溶融含浸する工程において、繊維束走行速度を数十m/分にすることも十分に可能であり、成形材料の生産において、樹脂含浸性がその生産性の律速となることがなくなるという大きな利点がある。
構成要素[D]の重量平均分子量が200より小さくなると、熱を付与した際に容易に揮発するなどして、成形品にボイドなどの欠点を生じる原因となったり、また成形後のマトリックス樹脂の物性を大幅に低下させてしまう。逆に分子量が50,000より大きくなると、結果として溶融粘度が高くなり、繊維束への含浸が困難となることから成形材料の生産性を低下させてしまうことになる。より望ましい構成要素[D]の分子量の範囲は200〜14,000であり、さらに望ましい範囲は200〜1,000である。ここに記す重量平均分子量の測定には、ゲル浸透クロマトグラフ法(GPC)を用い、検出器としてレーザーを用いた低角度光散乱光度計(LALLS)を使用する。また、溶融粘度の関係は、成形する際の温度において構成要素[D]の溶融粘度が構成要素[E]の溶融粘度より小さければよい。
構成要素[D]の溶融粘度は100ポイズ以下であることが望ましい。より望ましくは20ポイズ以下である。100ポイズより溶融粘度が高いと構成要素[C]への含浸が困難となって成形材料の生産性が低下する。また、構成要素[E]の溶融粘度は500ポイズ以上であることが望ましい。ここに記す溶融粘度は、測定する物質のビカット軟化温度+30℃、あるいは融点+30℃における温度での粘度である。物質が結晶性であって明確な融点を持つ場合には融点+30℃の条件を採用し、それ以外は軟化温度+30℃の条件を用いる。粘度は、キャピラリーレオメーターを用いてJIS K7199試験法により測定する。測定におけるせん断速度は10−1とする。なお、ビカット軟化温度は、JIS K7206試験法にしたがって測定し、融点はDSCにより測定する。
構成要素[D]は成形後の製品においてはマトリックスである構成要素[E]中に混合、拡散することになる。すなわち、構成要素[D]と構成要素[E]がより混合されやすい組合せであれば、構成要素[D]の含浸・分散助剤として働きが優れていることになる。より具体的には構成要素[D]と構成要素[E]が化学的親和性を持っており、望ましくは相溶するものであれば効果が大きい。また、非相溶となる組合せであっても適度な化学的親和性、反応性を有するもの同士であれば、構成要素[D]が構成要素[E]中にミクロ分散するなどして、実質上は十分な含浸・分散助剤としての効果を発揮する。構成要素[D]と構成要素[E]が化学的な親和性をもち、相溶しやすい傾向を持つかどうかは溶解度パラメーターを用いてある程度判断できる。溶解度パラメーターについての詳しい説明は秋山三郎、井上隆、西敏夫共著「ポリマーブレンド」(シーエムシー)に記述されている。ポリマーの溶解度パラメーターの決定法は幾種類か知られるが、比較においては同一の決定法を用いればよい。具体的には算出の容易なHoyの方法を用いることが望ましい(前掲書参照)。2つの液体の溶解度パラメーターの値が近いほど相溶しやすい組合せと言える。かかる観点から、構成要素[D]の溶解度パラメーターをδ1、構成要素[E]の溶解度パラメータをδ2としたときに、溶解度パラメーター値の差の絶対値|δ1−δ2|が3.5より小さいことが好ましい。
低粘度である構成要素[D]と構成要素[E]の混合においては、構成要素[D]に含浸・分散助剤として適したものが選択されていない場合、特に耐衝撃性が大幅に低下することがある。かかる観点から成形材料中の構成要素[D]の含有率が10重量%である際に、該成形材料を成形して得た成形品のアイゾット衝撃値が、該成形材料の構成要素から構成要素[D]を除いてなる成形品のアイゾット衝撃値に対して60%以上であることが好ましい。より好ましくは75%以上である。アイゾット衝撃値はJIS K7110試験法により測定する。
構成要素[D]には、得ようとする成形品の要求特性に応じて、難燃剤、耐候性改良剤、その他酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、相溶化剤、導電性フィラー等を添加しておくことができる。
構成要素[C]は構成要素[D]によって完全に含浸されていることが望ましい。理論的に言えば、繊維(構成要素[C])が六角形状に配列していて最密充填状態にあり、その繊維の隙間に構成要素[D]が含浸した状態が、最も構成要素[D]が少ない状態となり、繊維が真円断面で同一直径であると仮定すると、構成要素[C]の体積含有率は90.7%(π/(2×31/2))となる。実際にこのような体積含有率をボイドなしで達成することは技術的に困難である。ただし、ボイドが一定量存在する場合や、あるいは計算上未含浸部が生じるような高い体積含量率であっても、含浸・繊維分散促進の効果はある。これを考慮すると、成形された複合材料の力学特性の低下を防ぐため、複合体における構成要素[C]の体積含有率は40%以上が好ましい。また、体積含有率が95%を越えると、単繊維間の隙間を構成要素[D]で充填できない部分が増加し、結果として含浸促進効果が急激に低下してしまうことから、構成要素[C]の体積含有率は95%以下が好ましい。より好ましい体積含有率は80〜95%の範囲である。
前述したように、構成要素[C]は構成要素[D]によって完全に含浸されていることが望ましいが、現実的にそれは困難であり、構成要素[C]と構成要素[D]からなる複合体にはある程度のボイドが存在する。特に構成要素[C]の含有率が大きい場合にはボイドが多くなるが、ある程度のボイドが存在する場合でも含浸・繊維分散促進の効果は示される。ただしボイド率が40%を越えると顕著に含浸・繊維分散促進の効果が小さくなるので、ボイド率は0〜40%の範囲が好ましい。より望ましいボイド率の範囲は20%以下である。ボイド率は、複合体の部分をASTM D2734試験法により測定する。
次に構成要素[D]として適した物質の化学的な組成について説明する。
構成要素[C]である強化繊維の表面は、マトリックス樹脂との接着性などの考慮して通常表面処理がなされており、また、通常極性の高いカップリング剤、サイジング剤が塗布されている。このためこの繊維表面との親和性を考慮し、構成要素[D]の熱可塑性重合体は極性基を有することが望ましい。極性基としては、例としてアミノ基、水酸基、カルボキシル基等が挙げられ、繊維表面の官能基などとの親和性を考慮して選択すればよい。構成要素[E]であるマトリックス樹脂の極性が、例えばポリオレフィンなどのように低い場合には、構成要素[D]は、極性基とともに、極性の低い脂肪族炭化水素の部分もあわせて有していることが望ましい。構成要素[D]は繊維/マトリックス界相にあらかじめ配置されているため、このような極性の高い部分と低い部分をあわせ持つものは、界面活性剤的な働きも有し、特に成形時の繊維の分散性の向上に寄与する。
前述したように、構成要素[D]と構成要素[E]の相溶性は重要なファクターとなる。構成要素[D]と構成要素[E]の親和性を考慮して、構成要素[D]中の極性の高い分子と低い分子の構成比を適切に設定することにより、構成要素[C]である繊維の表面と、構成要素[E]のマトリックスの両方に親和性の高い、構成要素[D]を得ることができる。
特に構成要素[D]として優れているものとしては、フェノールもしくはフェノールの置換基誘導体(前駆体a)と、二重結合を2個有する脂肪族炭化水素(前駆体b)の縮合により得られるオリゴマーが挙げられる。縮合反応は、強酸もしくは、ルイス酸の存在下に行うことができる。また、構成要素[D]は、前駆体aと、系内で前駆体bを生成する化合物を同様の条件で反応させて得ることもできる。
この前駆体aとしてのフェノールの置換基誘導体は、フェノールのベンゼン核上に、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基より選ばれる置換基を1〜3個有するものが好ましく用いられる。その具体例としては、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、ノニルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、クロロクレゾール、ヒドロキノン、レゾルシノール、オルシノールなどを挙げることができる。
特に好ましい前駆体aとしては、フェノールおよびクレゾールが挙げられる。
前駆体aは複数種用いてもよい。
前駆体bは、二重結合を2個有する脂肪族炭化水素であり、環状構造を有してもよい。
環状構造をもたない前駆体bの例としては、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、ヘキサジエンなどを挙げることができる。環状構造を有する前駆体bの例としては、単環性の化合物として、シクロヘキサジエン、ビニルシクロヘキセン、シクロヘプタジエン、シクロオクタジエン、C1016の分子式で表される単環式モノテルペン(ジペンテン、リモネン、テルピノレン、テルピネン、フェランドレン)など、二環性の化合物として、2,5−ノルボルナジエン、テトラヒドロインデン、C1524の分子式で表される二環式セスキテルペン(カジネン、セリネン、カリオフィレンなど)など、三環性の化合物としてジシクロペンタジエンなどを挙げることができる。
また、系内で前駆体bを生成する化合物としては、異性化によりジペンテンを生成する、ピネンおよびカンフェンを例として挙げることができる。
前駆体bとしては、炭素数6〜15のものが好ましく、また環状構造を有するものが好ましい。環状構造を持つことにより、分子の運動が適度に拘束されて比較的剛直なものとなる。このような構造を持つ構成要素[D]が構成要素[E]中に分散した成形品を得た際に、成形品の弾性率を大きく低下させたりすることがない。特に好ましい前駆体bとしては、C1016の分子式で表される単環式モノテルペン、およびジシクロペンタジエンが挙げられる。例として単環式モノテルペンとフェノールの付加物の一般的な分子構造を式〔I〕に示す。
Figure 2006052411
前駆体b、および系内で前駆体bを生成する化合物は複数種を用いてもよい。
前記成形材料の構成要素[D]として特に優れたものとして、前駆体aを2分子に対して、前駆体bを1分子付加したもの(以下、「2:1の付加物」と表す。)が、構成要素[D]中の40重量%以上であるものである。これは極性の高いフェノールもしくはフェノールの置換基誘導体が2に対して、極性の低い脂肪族炭化水素を1という比率で付加されているため、全体として極性が比較的高く、アミド基などを持つ極性の高いポリアミドとの親和性に優れる。この2:1の付加物は構成要素[D]中の40重量%以上含まれていて主成分であればよく、例えば他に1:1の付加物や2:2の付加物、あるいは他の不純物が混合されていてもよい。このような構成要素[D]の主成分の例として、単環式モノテルペンであるジペンテンと、フェノールの付加物の分子構造を式〔II〕に示す。
Figure 2006052411
このような構成要素[D]の重量平均分子量は、熱をかけた際に容易に揮発するなどして成形品にボイドなどの欠点を生じる原因となったり、また樹脂組成物の物性を低下させるのを防ぐ観点から、200以上が好ましい。一方、分子量が大きくなると結果として溶融粘度が高くなるので、樹脂組成物の流動性改善効果を効果的に得るためには分子量は1000以下が好ましい。ここに記す重量平均分子量の測定には、ゲル浸透クロマトグラフ法(GPC)を用い、検出器としてレーザーを用いた低角度光散乱光度計(LALLS)を使用する。
構成要素[C]として用いる強化繊維束は、特に限定されない。炭素繊維、ガラス繊維、ポリアラミド繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、ボロン繊維等の高強度、高弾性率繊維等が使用できる。2種以上を混合してもよい。この中では、炭素繊維が力学的特性の向上効果に優れているため好ましい。
より好ましくは、X線光電子分光法により測定される繊維表面の酸素(O)と炭素(C)の原子数の比である表面官能基量(O/C)が、0.05〜0.4の範囲にある連続した炭素繊維が適している。O/Cが0.05より小さいことは、炭素繊維表面にマトリックス樹脂との接着に寄与するような官能基が非常に少ないことを意味している。炭素繊維とマトリックス樹脂の接着性が劣ると、成形品に高い力学的特性が期待できない。逆にO/Cが0.4より大きいと、炭素繊維表面の酸化処理等が必要以上に行われており、炭素の結晶構造が破壊されて繊維表面に脆弱層が形成されていることを意味している。この場合もO/Cが低すぎる場合同様、繊維表層付近で破壊が生じやすいため、成形品に高い力学的特性が期待できない。また、O/Cを上記の範囲内とすることにより、繊維/マトリックス界面の接着性のみならず、構成要素[D]を含浸させる際の親和性、繊維の成形時の分散性などにも好ましい効果をもたらす。
表面官能基量(O/C)は、X線光電子分光法により、次のような手順によって求められる。まず、溶媒でサイジング剤などを除去した炭素繊維(束)をカットして銅製の試料支持台上に拡げて並べた後、光電子脱出角度を90゜とし、X線源としてMgKα1、2を用い、試料チャンバー中を1×10−8Torrに保つ。測定時の帯電に伴うピークの補正としてC1Sの主ピークの運動エネルギー値(K.E.)を969eVに合わせる。C1Sピーク面積は、K.E.として958〜972eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。O1Sピーク面積は、K.E.として714〜726eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。ここで表面官能基量(O/C)とは、上記O1Sピーク面積とC1Sピーク面積の比から、装置固有の感度補正値を用いて原子数比として算出する。
次に、構成要素[E]として用いる熱可塑性樹脂は重量平均分子量が10,000以上のものである。重量平均分子量が10,000未満では最終的に得られる複合材料成形品の力学特性が低くなる。構成要素[E]は重量平均分子量が10,000以上であれば特に限定されない。構成要素[E]として、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66等)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリカーボネート、ポリアミドイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリスチレン、ABS、液晶ポリエステルや、アクリロニトリルとスチレンの共重合体等を用いることができる。これらの混合物でもよい。また、ナイロン6とナイロン66との共重合ナイロンのように共重合したものであってもよい。さらに得たい成形品の要求特性に応じて、構成要素[E]には難燃剤、耐候性改良剤、その他酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、相溶化剤、導電性フィラー等を添加しておくことができる。
前記成形材料の構成要素[E]として特に適したものとしては、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリカーボネートが挙げられる。これらのなかでもナイロン6、ナイロン66、またはナイロン6とナイロン66との共重合体は、前述のフェノールもしくはフェノールの置換基誘導体と、2重結合を2個有する脂肪族炭化水素の縮合によって得られるオリゴマー(構成要素[D])との親和性に優れ、これらが混合されても力学特性などが低下しにくいという点で優れている。
前記成形材料は、好ましくは1〜50mmの範囲の長さに切断して用いる。不連続とすることにより、成形材料の流動性が生じ、また成形時の賦形性が大幅に増す。切断長が短いほど、賦形性、流動性などの成形性が増すが、切断長が1mm未満になると結果として強化繊維長が短くなり繊維補強効果が急激に低下してしまう。切断長が50mm超になると補強効果は増すが成形性が大幅に低下する。より望ましい切断長の範囲は3〜12mmである。
また、前記成形材料は、連続、長尺のままでも成形法によっては使用可能である。例えば、熱可塑性ヤーンプリプレグとして、加熱しながらマンドレルに巻き付け、ロール状成形物を得たりすることができる。また前記成形材料を複数本一方向に引き揃えて加熱・融着させることにより一方向熱可塑性プリプレグを作製することも可能である。このようなプリプレグは高い強度、弾性率が要求されるような分野において適用が可能である。
前記成形材料の製造方法として、構成要素[C]に、粘度が100ポイズ以下になるように加熱溶融された構成要素[D]を含浸させることによって複合体を形成し、次いで溶融した粘度500ポイズ以上の構成要素[E]を該複合体に接するように配置した後、全体を常温まで冷却する方法を挙げることができる。より具体的には連続繊維束(構成要素[C])の単位長さあたりに所定量の加熱溶融させた構成要素[D]を付着させる工程(以下、助剤付与工程という。)、繊維束に付与した構成要素[D]を粘度が100ポイズ以下になるよう調製して繊維束の内部にまで含浸させて複合体を形成させる工程(以下、助剤含浸工程という。)、および連続した複合体に接するように粘度500ポイズ以上の加熱溶融された構成要素[E]を配置する工程(以下、マトリックス配置工程という。)の3つの工程をもつ製造方法を例として挙げることができる。これら3つの工程は連続的におこなわれることが望ましいが、不連続的、すなわち助剤含浸工程の後に一度複合体をボビンなどに巻き取った後、オフラインでマトリックス配置工程に通すといった製造方法をとることもできる。また助剤付与工程と助剤含浸工程が一つの装置で同時に実現できるようなものであればなお望ましい。
助剤付与工程は、繊維束に油剤、サイジング剤、マトリックス樹脂を付与するような公知の製造方法を用いることができるが、より具体的な例として、加熱した回転するロールの表面に、溶融した構成要素[D]の一定厚みの被膜を形成し(コーティング)、このロール表面に繊維束(構成要素[C])を接触させながら走らせることで、繊維束の単位長さあたりに所定量の構成要素[D]を付着させる方法を挙げることができる。ロール表面への構成要素[D]のコーティングに関しては、リバースロール、正回転ロール、キスロール、スプレイ、カーテン、押出などの公知のコーティング装置の概念を応用することで実現できる。ロール上へのコーティング装置に関しては、原崎勇次著「コーティング装置と操作技術入門」(総合技術センター)等の著作に詳しく記述されている。
助剤含浸工程では、構成要素[D]が溶融する温度において、構成要素[D]の付着した構成要素[C]に対して、バーでしごく、拡幅・集束を繰り返す、圧力や振動を加えるなどの操作で構成要素[D]を構成要素[C]である繊維束内部まで含浸するようにする。より具体的な例として、加熱された複数のロールやバーの表面に繊維束を接触するように通して拡幅などを行う方法を挙げることができる。この際、温度を調整することによって溶融した構成要素[D]の粘度が100ポイズ以下になるようにしないと、高速で繊維束に構成要素[D]を含浸する操作は実現できない。
マトリックス配置工程では、溶融した粘度が500ポイズ以上の構成要素[E]を複合体に接するように配置する。より具体的には、押出機と電線被覆法用のコーティングダイを用いて、連続的に複合体の周囲に構成要素[E]を被覆するように配置していく方法や、ロール等で扁平化した複合体の片面あるいは両面から、押出機とTダイを用いて溶融したフィルム状の構成要素[E]を配置し、ロールなどで一体化させる方法を挙げることができる。
製造された成形材料は、ペレタイザーやストランドカッターなどの装置で一定長に切断して用いることもある。この切断工程がマトリックス配置工程の後ろに連続的に設置されていてもよい。成形材料が扁平であったりシート状である場合には、スリットして細長くしてから切断しても良い。スリットと切断を同時におこなうシートペレタイザのようなものを使用してもよい。
また、前述の熱可塑性ヤーンプリプレグを製造する場合は、マトリックス配置工程に次いで、配置されたマトリックス樹脂(構成要素[E])を溶融させ、加熱ロールプレスなどの手段を使って構成要素[D]と混合させながら連続的に構成要素[C]に含浸させるとともに、断面を扁平化していくなどの手段をとることができる。
実施例1
130℃加熱されたロール上に、テルペンフェノール重合体(単環式モノテルペンとフェノールの付加物、ヤスハラケミカル(株)製YP90L、重量平均分子量460)を加熱溶融した液体の被膜を形成させた。ロール上に一定した厚みの被膜を形成するためキスコーターを用いた。このロール上を連続した炭素繊維束(東レ(株)製“トレカ”T700SC、炭素繊維本数12,000本、単繊維繊度0.6デニール)を接触させながら通過させて、炭素繊維束の単位長さあたりに一定量のテルペンフェノール重合体を付着させた。
重合体を付着させた炭素繊維を、180℃に加熱された、ベアリングで自由に回転する、一直線上に配置された10本の直径50mmのロールの上下を、交互に通過させた。この操作により、重合体を繊維束の内部まで含浸させ、炭素繊維とテルペンフェノール重合体よりなる連続した複合体を形成した。この段階で、複合体全体に対する重合体の量は15重量%であった。130℃におけるYP90Lの、せん断速度10−1における溶融粘度は、キャピラリーレオメータによる測定で約10ポイズであった。
この連続した複合体を、直径40mmの単軸押出機の先端に設置された電線被覆法用のコーティングダイ中に通し、押出機からダイ中に240℃で溶融させたナイロン6樹脂(東レ(株)製“アミラン”CM1017、重量平均分子量18,600)を吐出させて、複合体の周囲を被覆するようにナイロン6樹脂を連続的に配置した。240℃におけるナイロン6の、せん断速度10−1における溶融粘度は、キャピラリーレオメータによる測定で約2000ポイズであった。
この複合体をナイロン6で被覆した成形材料を常温近くまで冷却後、ストランドカッターにより長さ7mm長にカットし、射出成形用のペレットとした。ここまでの成形材料製造は連続した工程によりなされ、炭素繊維束の引き取り速度は30m/分であった。
このペレットを用いて、型締め力100tの射出成形機により、外形が150mm×150mm、厚み1mmの平板状成形品を得た。この成形の際、シリンダ温度はノズル近くで250℃に設定し、金型温度は70℃とした。成形品の表面は平滑で、成形品中の繊維の分散性に問題はなく、成形品の断面を顕微鏡観察したがボイドは確認されなかった。
この成形品の組成比は、炭素繊維:テルペンフェノール重合体:ナイロン6樹脂=35:6:59であった。
なお、この成形品のアイゾット衝撃値(ノッチ有)は21kg・cm/cmであった。
比較例1
実施例1で用いたのと同様の連続した炭素繊維束を、直径40mmの単軸押出機の先端に設置された電線被覆法用のコーティングダイ中に通し、押出機からダイ中に240℃で溶融させたナイロン6樹脂(東レ(株)製“アミラン”CM1017)を吐出させて、複合体の周囲を被覆するようにナイロン6樹脂を連続的に配置した。
この炭素繊維束をナイロン6で被覆した成形材料を常温近くまで冷却後、ストランドカッターにより長さ7mm長にカットし、射出成形用のペレットとした。
炭素繊維束の引き取り速度は30m/分であった。
このペレットを用いて、型締め力100tの射出成形機により、外形が150mm×150mm、厚み1mmの平板状成形品を得た。成形条件を実施例1と同一としたところ材料の流動性が不足して、成形品は金型のゲートから距離のある部分で一部ショートショットとなった。また成形品の表面には、未開繊・未含浸の繊維束が露出しており、その部分はみみず腫れ状態となっていた。成形品の断面を顕微鏡観察したところ、未開繊・未含浸の繊維束とボイドが観察された。
この成形品の組成比は、炭素繊維:ナイロン6樹脂=35:65であった。
なお、この成形品のアイゾット衝撃値(ノッチ有)は25kg・cm/cmであった。
強化繊維がマトリックス樹脂中に良分散し、繊維への樹脂の含浸が良好な成形品を得ることができる別の成形材料における複合体の形態の一例の断面を示す説明図である。 強化繊維がマトリックス樹脂中に良分散し、繊維への樹脂の含浸が良好な成形品を得ることができる別の成形材料の形態の一例の断面を示す説明図である。 強化繊維がマトリックス樹脂中に良分散し、繊維への樹脂の含浸が良好な成形品を得ることができる別の成形材料の形態の他の一例の断面を示す説明図である。 強化繊維がマトリックス樹脂中に良分散し、繊維への樹脂の含浸が良好な成形品を得ることができる別の成形材料の形態の他の一例の断面を示す説明図である。 強化繊維がマトリックス樹脂中に良分散し、繊維への樹脂の含浸が良好な成形品を得ることができる別の成形材料の形態の他の一例の断面を示す説明図である。 強化繊維がマトリックス樹脂中に良分散し、繊維への樹脂の含浸が良好な成形品を得ることができる別の成形材料の形態の他の一例の断面を示す説明図である。 強化繊維がマトリックス樹脂中に良分散し、繊維への樹脂の含浸が良好な成形品を得ることができる別の成形材料の形態の他の一例の断面を示す説明図である。
符号の説明
1:構成要素[C]の単繊維
2:構成要素[D]
3:構成要素[C]と構成要素[D]からなる複合体
4:構成要素[E]

Claims (13)

  1. 少なくとも次の構成要素[A]および[B]からなる樹脂組成物であり、該樹脂組成物合計100重量部に対して、構成要素[A]を0.5から40重量部配合してなるポリアミド系樹脂組成物。
    [A]フェノールもしくはフェノールの置換基誘導体(前駆体a)と、二重結合を2個有する脂肪族炭化水素(前駆体b)の縮合により得られるオリゴマー
    [B]ポリアミド樹脂
  2. 前駆体bが、炭素数6〜15の、二重結合を2個有する脂肪族炭化水素であることを特徴とする請求項1に記載のポリアミド系樹脂組成物。
  3. 前駆体bが、環状構造を有することを特徴とする請求項2に記載のポリアミド系樹脂組成物。
  4. 前駆体bが、ジシクロペンタジエンまたはC1016の分子式で表される単環式モノテルペンであることを特徴とする請求項3に記載のポリアミド系樹脂組成物。
  5. 前駆体aを2分子に対して、前駆体bを1分子付加したものが、構成要素[A]中の40重量%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミド系樹脂組成物。
  6. 構成要素[A]の重量平均分子量が200〜1000の範囲にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリアミド系樹脂組成物。
  7. 構成要素[B]がナイロン6、またはナイロン66、またはナイロン6とナイロン66の共重合体であることを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載のポリアミド系樹脂組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載のポリアミド系樹脂組成物100重量部に対して、強化繊維を5から200重量部配合してなることを特徴とする繊維強化ポリアミド系樹脂組成物。
  9. 強化繊維が炭素繊維であることを特徴とする請求項8に記載の繊維強化ポリアミド系樹脂組成物。
  10. 強化繊維が、X線光電子分光法により測定される繊維表面の酸素濃度O/Cが0.05〜0.4の範囲にある炭素繊維であることを特徴とする請求項9に記載の繊維強化ポリアミド系樹脂組成物。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載のポリアミド系樹脂組成物を成形してなる成形品。
  12. 請求項1〜10のいずれかに記載のポリアミド系樹脂組成物からなる射出成形用ペレット。
  13. 請求項12に記載の射出成形用ペレットを射出成形してなる成形品。
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