JP2006049174A - 電子装置の製造方法及びこれに用いるインク組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】 有機ELパネルや有機薄膜トランジスタなどの電子装置における各種薄膜の形成にインクジェット法を用いた製造方法とこれに好適な組成のインクを提供する。
【解決手段】 水を主溶剤とするインクに二級または三級アルコールを添加したインク組成物を用いて有機ELパネルのホール注入層等の画素部形成有機層、あるいは有機薄膜トランジスタの活性層等の電子装置を製造する。二級または三級アルコールとしては、イソプロピルアルコール、t‐ブチルアルコール、3−メチル−1−ブチン−3−オール等が使用される。このアルコールの添加量は、インクに対して17.5wt%から40wt%の範囲とする。
【選択図】 なし
【解決手段】 水を主溶剤とするインクに二級または三級アルコールを添加したインク組成物を用いて有機ELパネルのホール注入層等の画素部形成有機層、あるいは有機薄膜トランジスタの活性層等の電子装置を製造する。二級または三級アルコールとしては、イソプロピルアルコール、t‐ブチルアルコール、3−メチル−1−ブチン−3−オール等が使用される。このアルコールの添加量は、インクに対して17.5wt%から40wt%の範囲とする。
【選択図】 なし
Description
本発明は、電子装置の活性領域の形成とその材料に係り、例えば有機ELパネルの発光層や有機薄膜トランジスタ等の半導体の電極あるいは半導体層をインクジェット法で塗布する方法とこの塗布に好適なインク組成物に関する。
大型パネルディスプレイ(以下、パネルディスプレイを単にパネルとも称する)への適用が期待される高分子系エレクトロルミネッセンスパネル(有機EL表示装置、以下単に有機ELパネル、あるいはOLEDとも称する)、あるいは薄膜トランジスタ等の半導体素子を含む各種の電子装置の構成層の製作にインクジェット法(IJ法)の応用が考えられている。インクジェット法は、微小領域に均一な薄膜を形成するために適した塗布方法である。例えばフルカラーの有機ELパネルでは、一般に、R,G,B3色の各副画素(サブピクセル)で一つのカラー画素(ピクセル)を構成する。
現在、フルカラーの有機ELパネルには、R,G,B3色の副画素を構成する各低分子発光材料を真空マスク蒸着法で副画素装置ごとに塗り分ける、所謂低分子系有機EL方式が有望とされている。この方式では、(1)マスク蒸着の位置精度が低く、大形ディスプレイに適用可能な有機ELパネルの製作が難しい、(2)発光材料をはじめとする発光層形成用材料の利用効率が低い、(3)生産性が低い、等が課題として挙げられている。
これに対して、RGB3色の各高分子発光材料をインクジェット法等の印刷法で塗分ける高分子有機ELパネルは、RGB3色発光層形成の位置精度、材料利用効率、生産性等が高いことから、大形パネルヘの適用が期待されている。高分子有機ELパネルは上記のような利点を有しているが、膜厚均一性の高い発光層、特にホール注入層を形成することが難しい。
有機ELパネルの画素部は、一方の電極(第1の電極、ここでは陽極)の上に、有機層からなるホール注入層を含む発光層や電子注入層を積層し、最上層に他方の電極(第2の電極、ここでは陰極)を成膜して構成される。そして、この有機層(特に、その膜厚の均一性の要求からホール注入層)の形成にインクジェット法を用いるのが好適である。
高分子系有機ELパネルの画素部を構成するホール注入層は、水を主溶剤とする水系インクをインクジェット装置のノズルから画素部に吐出し、これを乾燥することにより薄膜状に形成される。このようなインクジェット装置を用いた薄膜の形成においては、水系インクがノズルの吐出端で詰まり易いことから、有機ELパネルの表示領域全面にわたって均一な、あるいは欠損なくホール注入層をもつが装置部を形成することは難しい。また、水系インクを用いた場合、ノズルから吐出されたインク液滴が画素部の電極(ここでは、陽極であるITO)の上に均一に濡れ広がらない。
図13は、インクジェット装置のノズルにインク詰まりが生じる過程を説明する模式図であり、図13(a)はノズルの正面図、図13(b)は図13(a)のA―A線に沿った断面図、図13(c)はノズルにインクが詰まった状態を示す図13(b)と同様の断面図である。インクジェット装置のノズル部は複数のノズルNZLを同一面上に配列してなり、ノズルNZLの背面に設けた圧電板に電圧を印加することで、ノズルNZLの先端からインク滴を吐出する。このとき、インク滴の一部はノズルNZLの先端から離脱せずに配列面上に残留することがある。図13(a)には、4個のノズルを連絡するようにインクが残留した状態を示す。この時点では、インクは未だ液体状であり、図面には液体状であることを符号INK(L)で示す。液体状のインクINK(L)は時間と共に、その含有する溶剤が蒸散し、図13(c)に示したように固体化してノズルNZLを詰まらせる。これが、均一な膜厚の形成を阻害する原因となる。
特許文献1には、ホール注入層の形成材料にPEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)とPSS(ポリスチレンスルホン酸を含むコロイド水溶液)に、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールを添加して、表面張力と粘度を制御できるとの記載がある。また、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールは揮発性が高く、添加量が多いとノズル詰まりが発生するため、低級アルコールの添加量は20wt%以下であることが望ましいとしている。
特開2000−323276号公報
社団法人応用物理学会発行「応用物理」第70巻第12号1452−1455頁
有機層、例えばホール注入層を高い膜厚均一性で形成できない原因は、水を主溶剤とするポリスチレンスルホン酸(PSS)とポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)のコロイド溶液や、ポリスチレンスルホン酸とポリアニリンのコロイド溶液を用いてホール注入層形成を形成していることにある。これらコロイド水溶液のインクは、このままでは表面張力が72mN/mと大きいためにインクジェット装置のノズルから吐出され難い。また、吐出されたとしてもインク液滴が画素部を構成する電極(1TO)上に濡れ広がり難い。そのため、特許文献1に記載のように、低沸点のアルコールや高沸点のグリコールエーテル系酢酸を添加し、表面張力を低減する方式が提案されている。
特許文献1では、アルコールは、有機ELパネルの画素部にホール注入層を形成するインクの表面張力と粘度を制御する目的で添加されており、アルコールの添加量とノズル詰まりとの関係については十分な考慮がなされていない。そのため、ノズル詰まりの抑制には高沸点の1,3‐イミダゾリジノンの添加が必要である。しかし、1,3‐イミダゾリジノンはホール注入層を構成するバインダのポリマや導電性高分子との親和性が低いため、形成されるホール注入層の膜厚均一性は十分でなかった。また、有機ELパネルの画素部を構成する他の有機層、画素を駆動する薄膜トランジスタ、あるいは他の同様の電子装置の活性領域等の薄膜に有機材料を用いた場合の当該活性領域等を構成する薄膜を均一な膜厚で形成することも十分でなかった。
本発明の目的は、有機ELパネルや有機薄膜トランジスタなどの電子装置における各種薄膜の形成にインクジェット法を用いた製造方法とこれに好適な組成のインクを提供することにある。
本願の発明者等は、水系インクのノズル詰まりを制御し、且つ吐出されたインク液滴を、例えば有機ELパネルの画素部を構成する電極(ITOなど)の上などに濡れ広げるために、インクの揮発性の抑制と表面張力の低減とを両立できる添加剤の検討を行った。その結果、添加剤として水と混和する二級または三級アルコールが有効であることを見出した。このようなアルコールとしては、イソプロピルアルコール、t‐ブチルアルコール、3−メチル−1−ブチン−3−オール等を挙げることができる。前記の特許文献1にも開示されているように、この種のインクにアルコールを添加することは従来から知られており、その添加濃度は20wt%以下でないとノズル詰まりが発生するとされていた。
しかし、本願の発明者等は、アルコールの構造ならびにその添加量を詳細に検討した結果、水系インク中の水含有量に対して、二級または三級アルコールを20wt%以上添加した場合に、画素部の電極上にインク液滴を塗れ広げることができ、しかも長時間インクを吐出してもノズル詰まりは発生しないことを見出した。
本発明は、上記の知見に基づいて、水を主溶剤とするインクに二級または三級アルコールを添加したインク組成物を用いて有機ELパネルのホール注入層等の画素部を形成する有機層(発光機能に係る活性層)、あるいは有機薄膜トランジスタのチャネル層(又はチャネル領域、以降活性層と記す)等の電子装置を製造する。二級または三級アルコールとしては、イソプロピルアルコール、t‐ブチルアルコール、3−メチル−1−ブチン−3−オール等が使用される。このアルコールの添加量は、インクに対して17.5wt%から40wt%の範囲とする。
本発明により、インクジェット装置のノズル詰まりを抑制することができ、各種電子装置の活性層を均一な膜厚で形成にでき、特に、本発明の組成を有するインクを有機ELパネルの画素部を構成するホール注入層の形成に適用することによって、高分子有機ELパネルの表示領域全面の発光の均一性、並びに素子寿命を大幅に改善できる。また、本発明を有機薄膜トランジスタのソース電極、ドレイン電極の形成に適用することで、良好な動作特性を有する有機薄膜トランジスタを得ることができる。さらに、本発明は、他の同様な有機薄膜の成膜を要する種々の電子装置にも適用できることは言うまでもない。
なお、本発明は、上記製造方法に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の技術思想を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
以下、本発明の実施の形態について、実施例の図面を参照して詳細に説明する。
先ず、実施例の説明に入る前に、本発明によって、PSSとPEDOTを含むコロイド水溶液の揮発性を抑制できることを図1乃至図5を用いて詳細に説明する。ここでは、図1乃至図5は、マイクロシリンジを用いてPSSとPEDOTを含む各種のコロイド水溶液の液滴をテフロンシート上に静置して、静置後の液滴の重量変化を示した図であり、横軸に時間(s)を、縦軸に規格化重量を取って示す。
図1は、ホール注入層形成用インクの主溶剤である水、三級ブチルアルコール(三級ブタノール)、キシレン,ならびに発光層インク溶剤として適用可能な安息香酸ブチルの揮発特性を示す図である。図2は、水、三級ブチルアルコール、25%三級ブチルアルコールを含む水溶液の揮発特性を示す図である。図1より、安息香酸ブチルは静置後の重量変化は極めて小さく、揮発性が低いことを示している。一方、発光層インク溶剤として用いるとノズルを詰まらせるキシレンの揮発性は大きいことが分かる。水の揮発性はキシレンのものとほぼ同等であり、ホール注入層形成に水を主溶剤とするインクを用いるとノズル詰まりが発生することが予想され、実際発明者らはノズル詰まり確認している。 また、低級アルコールの一つである三級ブチルアルコールは水よりもかなり速く揮発することが分かる。
このことから判断すると、特許文献1にも記載されているように、PSSとPEDOTを含むコロイド水溶液に三級ブチルアルコールを添加すると、水よりも揮発性の大きいインクとなってしまうことが推測される。しかし、本願の発明者等は、三級ブチルアルコールの添加量と揮発性との関係を検討した結果、図2に一例として示した25%三級ブチルアルコールを含む水溶液の場合、安息香酸ブチルと同様にほとんど揮発しないことを見出した。
図3、図4、図5は、初期液滴の重量を変えた(0.25mg,0.75mg,15mg)時の三級ブチルアルコール濃度と揮発性との関係を評価した結果を示す図である。図3、図4、図5より、三級ブチルアルコール濃度が17.5wt%から40wt%の範囲で水の揮発性が抑制されていることが分かる。
また、本願の発明者等は、液滴の初期重量によって、揮発性を抑制できる三級ブチルァルコールの最適濃度が変化することも見出した。このことは、ノズルの種類によってノズル表面に形成される液滴のサイズが変化しても三級ブチルアルコール濃度を制御することによって、ノズル表面に形成される液滴からの水の揮発性を抑制できることを示している。
また、本願の発明者らは、イソプロピルアルコール、3―メチル―1―ブチン―3−オールを用いた場合にも三級ブチルアルコールと同様に水の揮発性を抑制できることを確認した。さらに、17.5wt%から40wt%の範囲で二級または三級アルコールを、PSSとPEDOTを含むコロイド水溶液に添加したインクを用いて、インクジェット法でホール注入層を形成したところ、ノズル詰まりが発生せず、しかも膜厚均一性の高いホール注入層を形成できることを確認した。
真空蒸着法による有機ELパネルの作製では、生産性が低い、材料の利用効率が低い、といった問題があり、生産コストが極めて高い。本発明によって、大形ディスプレイパネルヘの適用が期待されている高分子有機ELパネルの製作が可能となることから、有機EL生産の大幅な低コス下化を実現できると同時に、有機ELパネルの発光均一性、大幅な長寿命化を達成できる。
なお、本発明は、大形ディスプレイに適用可能な有機ELパネルの生産に最も効果的に活かすことができるが、本発明のインク組成物を適用して形成されるホール注入層が高い電気導電性を有していることから、本発明は例えば非特許文献1に記載のような、インクジェットによる有機薄膜トランジスタのソース電極、ドレイン電極(ドレイン線)、ゲート電極(ゲート線)の形成にも採用することができる。
水系ホール注入層形成用材料(PEDOTとポリスチレンスルホン酸を含む水溶液)に三級ブチルアノレコールを20wt%添加したインクを、インクジェット装置を用いて光沢紙上に吐出した。光沢紙上に形成されたドット状薄膜を顕微鏡で観察してノズル詰まりを評価した結果、インクを60分間連続吐出してもノズルの詰まりは全く発生しないことが分かった。
上記と同じ組成のインクをインクジェット法により撥液性を有する高分子(ポリイミド)隔壁層を形成した公称2.1インチサイズの薄膜トランジスタ(TFT)付基板(陽極はITO)上に吐出して、画素部ITO上にホール注入層を選択的に形成した。
しかし、インク詰まりによるホール注入層の欠陥は全く認められなかった。ホール注入層を形成した基板を200℃で10分間、加熱処理して溶剤を揮発させた轍した。ホール注入層の膜厚分布を測定したところ、平坦性の高い薄膜が形成されていることが分かった(図3)。同基板の緑発光層を形成すべき画素部にポリフルオレン系高分子緑発光材をジクロロベンゼンに0.5wt%溶解したインクをインクジェット装置のノズルから吐出して緑色発光層を形成した。同様にして、青色、赤色発光層をインクジェット法で形成した後、120℃で10分間加熱処理してインク溶剤を揮発させた。
発光層を形成した薄膜トランジスタ付基板上に、グローブボックス中に設置した蒸着装置を用いて,バッファ層BFとして膜厚10nmのCa層を、陰極CDとして膜厚80nmのA1層を積層した。さらに、グローブボックス中で乾燥剤入り封止缶により発光部を封止して、有機ELパネル素子を作製した。作製した有機ELパネルに電圧を印加したところ、発光欠陥の無い良好なカラー画像表示特性を有していることが分かった。
実施例1において、三級ブチルアルコールの代わりにメチルアルコールを添加したインクをホール注入層形成に用いたこと以外は実施例1と同様にしてインクを吐出した。フラッシュランプ照明下でインク吐出状態をカメラ観察したところ、吐出開始後数分でノズルが詰まることが分かつた。メタノールの代わりにエタノール、n一プロピルアルコールを添加したインクを用いた場合も同様に、吐出開始後数分でズルが詰まることが分かった。
図6は、実施例1で製造した有機ELパネルの1画素付近の構造例を説明する断面図である。図6において、薄膜トランジスタ(TFT)付基板TRSは、ガラス基板SUB1の内面に下地層として窒化シリコン膜SINと酸化シリコン膜SIOを有する。この下地層上にポリシリコン半導体層PSI、ゲート電極GT、ゲート絶縁膜GI、ソース電極SD1、ドレイン電極SD2からなる薄膜トランジスタが形成されている。ITOで形成された陽極ADがパッシベーション膜PASの上層に成膜されており、スルーホールを通してソース電極SD1に接続している。
ITOで形成された陽極ADの上には、前記した組成のインクをインクジェット装置のノズルで塗布したホール注入層HTLが形成されている。ホール注入層HTLの上には特定色の発光層LMがインクジェット装置を用いて塗布されている。発光層LMの上にCa層を蒸着して陰極バッファ層BFとし、さらにその上にアルミニウム膜を蒸着して陰極CDとした。なお、ホール注入層HTL、発光層LMの材料に応じて、ホール注入層HTLと発光層LMとの間にはホール輸送層を、発光層LMと陰極CDとの間には電子輸送層と電子注入層とをこの順に挿入してもよい。
上記の構造とした薄膜トランジスタ(TFT)付基板TRSは、封止板SUB2で密封して封止される。図6の例では、薄膜トランジスタ(TFT)付基板TRSの陰極CDと封止板SUB2の間にエポキシ樹脂などの充填材を配置している。しかし、基板TRSと封止板SUB2の間を乾燥空間としてもよい。乾燥空間の維持には両基板の適当な位置に乾燥剤を配置するのが望ましい。
図7は、本発明を適用した有機ELパネルの回路構成例を示す図である。図7に示したように、表示領域DIPには、複数のデータ線線DL(DL(m+1), 線DL(m), 線DL(m−1)・・・)と複数のゲート線GL(GL(n+1), GL(n), GL(n−1)・・・)がマトリクス状に配線されている。各データ線DLとゲート線GLで囲まれた画素PXには、スイッチング素子(コントロール・トランジスタ)である薄膜トランジスタSW1、電流供給トランジスタ(ドライブ・トランジスタ)である薄膜トランジスタSW2、データ保持用のコンデンサC、および有機EL素子OLEが配置される。
薄膜トランジスタ素子SW1の制御電極(ゲート)はゲート線GLに、チャネルの一端(ドレイン)はデータ線DLに接続されている。薄膜トランジスタSW2のゲートは薄膜トランジスタSW1のチャネルの他端(ソース)に接続されており、この接続点にはコンデンサCの一方の電極(+極)が接続されている。薄膜トランジスタSW2のチャネルの一端(ドレイン)は電流供給線PLに、その他端(ソース)は有機EL素子OLEの陽極に接続されている。データ線DLはデータ駆動回路DDRで駆動され、走査線(ゲート線)GLは走査駆動回路DDGで駆動される。また、電流供給線PLは共通電位供給バスラインPLAを通して電流供給回路PWに接続される。
図7において、1つの画素PXが走査線GLで選択されて、その薄膜トランジスタSW1がターン・オンすると、データ線DLから供給される画像データがコンデンサCに蓄積される。その後、薄膜トランジスタSW1がターン・オフした時点で薄膜トランジスタSW2がターン・オンし、電流供給線PLから有機EL素子OLEに、ほぼ1フレーム期間に亘って電流が流れる。有機EL素子OLEに流れる電流は薄膜トランジスタSW2により調整され、また、薄膜トランジスタSW2のゲートには、コンデンサCに蓄積されている電荷に応じた電圧が印加される。これを各が装置について制御することにより、複数の画素の発光が制御され、表示領域DIPに二次元の画像が再現される。
図8は、本発明を適用した有機薄膜トランジスタの断面構造例を示す図である。なお、この有機半導体の構造は、非特許文献1に記載の構造に準拠した。ここでは、基板SUBのとしてガラス基板を用い、セパレータPSBにはアクリル樹脂を用いた。この有機薄膜トランジスタは、ガラス基板SUB上にアクリル系ポジ型レジスト(JSR社製)を塗布し、ソース電極SD1とドレイン電極SD2とを分離するセパレータPSBのパターンをアクリル樹脂層のフォトリソグラフィ法で形成した。
次いで、加熱処理によりアクリル樹脂層を溶剤不溶性とした後、CF4フッ素プラズマ処理により分離層を撥液化した。PEDOT/PSSを含む水分散液に25wt%t‐ブタノールを添加して作製したインクをインクジェット装置のノズルから上記アクリル樹脂のパターンの間に吐出し、加熱乾燥することでPEDOT/PSSからなるソース電極SD1とドレイン電極SD2を形成した。
次に、フルオレン系ポリマ(分子量30万)を含むキシレン溶液をソース電極とドレイン電極を形成したガラス基板SUB上にスピン塗布し、窒素雰囲気中において200℃で加熱処理して半導体層を形成した。この半導体層上に、ポリビニルフェノール(分子量20000)を含むイソプロパノール溶液をスピン塗布して絶縁層GIを形成した。符号CHはチャネル領域を示す。絶縁層GIをCF4プラズマ処理によって撥液化し、セパレータPSBであるアクリル樹脂パターン直上の絶縁層にKrFエキシマレーザを照射し、ゲート電極を形成する領域の撥液性を消失させた。次に、PEDOT/PSSを含む水分散液に25wt%t-ブタノールを添加して作製したインクをインクジェット法でゲート電極を形成する領域に吐出し、加熱乾燥することによりゲート電極を形成した。その後に形成する保護膜等は図示を省略した。こうして作製した有機薄膜トランジスタの特性を評価したところ、良好な特性を示した。
上記実施例では、パターン化を要する点で共通な薄膜トランジスタの導電層であるソース電極、ドレイン電極、ゲート電極の形成をインクジェット法で行い、半導体層、絶縁層の形成をスピンコートで行った。このとき、アクリル樹脂のパターンであるセパレータPSBをガイドにしたソース電極及びドレイン電極の形成、絶縁層上面の撥インク性を抑えた部分をガイドにしたゲート電極の形成を行う際に前記した本発明の組成としたインクを用いた。
図9は、図8で説明した有機薄膜トランジスタを構成する導電層を本発明のインクを用いたインクジェット法で形成する様子を説明する模式図である。図9において、ガラス基板SUBのセパレータPSBを配置した電極形成部分に沿ってインクジェット装置のノズルから本発明による組成とした電極材料のインクを吐出する。図9(a)では、吐出されたインクの液滴とガラス基板SUB上に滴下されて、未だ液状であるインクをINK(L)で示した。ノズルを矢印S方向に走査しながらインクを吐出する。吐出されたインクINK(L)はガラス基板SUB上でセパレータPSBで不要な広がりが抑制され、液滴同士が結合しあってノズルの走査方向に連続して塗布される。その後、加熱乾燥することで固化し、図9(b)に示したように帯状の電極(ソース電極SD1、ドレイン電極SD2、あるいはゲート電極GT)となる。なお、固化したインクをINK(D)で示した。
図10は、図8で説明した有機薄膜トランジスタの電極材料となる高分子材料の一例を説明する分子構造図である。この種の電極材料は、前記したPEDOTとPSSである。図10(a)にPEDOTを、図10(b)にPSSを示した。
図11は、図8で説明した有機薄膜トランジスタの半導体層PSIとなる高分子材料の一例を説明する分子構造図である。半導体層PSIの材料は、前記したように、フルオレン−ビチオフェンであり、図11に示したような構造を有する。
図12は、図8で説明した有機薄膜トランジスタの絶縁材料GIとなる高分子材料の一例を説明する分子構造図である。この絶縁材料GIは所謂ゲート絶縁層であり、ポリビニルフェノールである。その構造は図11に示したとおりである。
SUB1・・・ガラス基板、SIN・・・窒化シリコン膜、SIO・・・酸化シリコン膜、PSI・・・導体層、GT・・・ゲート電極、GI・・・ゲート絶縁膜、SD1・・・ソース電極、SD2・・・ドレイン電極、AD・・・陽極、PAS・・・パッシベーション膜、SD1・・・ソース電極、HTL・・・ホール注入層、LML・・・発光層、BF・・・陰極バッファ層、CD・・・陰極、TRS・・・薄膜トランジスタ(TFT)付基板、SUB2・・・封止板。
Claims (10)
- 複数の活性層の積層又は並設、あるいはそれらの積層と並設とで所定の機能構造を実現する電子装置の製造方法であって、
前記複数の活性層の少なくとも一層を、当該活性層となる材料に二級または三級アルコールを添加した水性インクのインクジェット法による塗布で形成することを特徴とする電子装置の製造方法。 - 前記二級または三級アルコールが、イソプロピルアルコール、t‐ブチルアルコール、3−メチル−1−ブチン−3−オールであることを特徴とする請求項1に記載の電子装置の製造方法。
- 前記二級または三級アルコールの添加量が、当該インクに対して17.5wt%から40wt%の範囲であることを特徴とする請求項2に記載の電子装置の製造方法。
- 前記電子装置は、絶縁性基板上に多数の有機EL素子を配列してなる有機ELパネルであり、
前記絶縁性基板上に、画素毎に第1の電極を形成する第1電極形成工程と、
前記第1の電極の上に、発光に寄与する有機材料からなる複数の画素部形成層を形成する有機材料形成工程と、
前記画素部形成層を覆って第2の電極を形成する第2電極形成工程とを含み、
前記画素部形成層の少なくとも1層の形成に、二級または三級アルコールを添加した水性インクのインクジェット法による塗布で形成することを特徴とする電子装置の製造方法。 - 前記二級または三級アルコールが、イソプロピルアルコール、t‐ブチルアルコール、3−メチル−1−ブチン−3−オールであることを特徴とする請求項4に記載の電子装置の製造方法。
- 前記二級または三級アルコールの添加量が、当該インクに対して17.5wt%から40wt%の範囲であることを特徴とする請求項5に記載の電子装置の製造方法。
- 前記画素部形成層の少なくとも1層がホール注入層であることを特徴とする請求項5に記載の電子装置の製造方法。
- 前記電子装置は、絶縁性基板上にソース電極とドレイン電極、半導体層、ゲート電極を有する有機薄膜トランジスタであり、
前記ソース電極とドレイン電極、およびゲート電極の少なくとも何れかの電極を、当該電極となる材料に二級または三級アルコールを添加した水性インクのインクジェット法による塗布で形成することを特徴とする電子装置の製造方法。 - 前記二級または三級アルコールが、イソプロピルアルコール、t‐ブチルアルコール、3−メチル−1−ブチン−3−オールであることを特徴とする請求項8に記載の電子装置の製造方法。
- 前記二級または三級アルコールの添加量が、当該インクに対して17.5wt%から40wt%の範囲であることを特徴とする請求項9に記載の電子装置の製造方法。
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2004
- 2004-08-06 JP JP2004230447A patent/JP2006049174A/ja not_active Withdrawn
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