JP2006046854A - 機能性装置及びこれを利用した冷凍、冷蔵又は空調装置 - Google Patents

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真一郎 小林
Teruo Kido
照雄 木戸
Haruo Nakada
春男 中田
Toshimitsu Kamata
俊光 鎌田
Takashi Yoshioka
俊 吉岡
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Abstract

【課題】 滑機能性装置の表面に平滑型滑水性被膜をコーティングして被膜を形成する場合に表面粗度と滑落角との関係を明確にすることにより滑水性に優れた機能性装置を提供すること。
【解決手段】 結露及び/又は着霜する可能性のある表面を持つ機能性装置において、前記表面には平滑型滑水性被膜が形成され、更に、この平滑型滑水性被膜の表面粗度がJIS B0601に規定された中心線平均粗さRa=0.1μm以下であることを特徴とする。平滑型滑水性被膜としては、例えば、オルガノポリシロキサンと反応性官能基を含有するポリアルキル水素シロキサンとからなる被膜形成組成物をコーティングして形成したものを挙げることができる。また、機能性装置としては、一定間隔で多数平行に並べられた板状フィン11にほぼ直角に熱交換チューブ12を挿通し、熱交換用空気を送風装置により送風する対空気用熱交換器としたものを挙げることができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、結露及び/又は着霜する可能性のある表面に平滑型滑水性被膜が形成された熱交換器、冷凍・冷蔵装置の製氷皿、冷蔵庫内壁等の機能性装置及びこれを利用した冷凍、冷蔵又は空調装置に関するものである。
従来から、熱交換器、例えば空気調和機等の蒸発器においては、アルミニウム等の金属性フィンの表面が熱交換対象の空気の露点温度以下になるため、金属性フィンの表面に凝縮によって生じた水滴が付着する。また、空気調和機がヒートポンプ式空気調和機である場合には、暖房運転時の室外側熱交換器において、熱交換対象となる外気温度が低くなり、フィン表面の温度が零度以下となり、水滴が霜となって氷結することがある。このため、空気調和機等の蒸発器、例えば、ヒートポンプ式空気調和機における室外側熱交換器では、結露により通風抵抗が増加したり、着霜により通風抵抗が増加して熱交換効率が著しく低下したりするといった問題があった。
このための解決策として、親水性塗膜を施して、板状フィンの表面に凝縮して付着した水滴を速やかに流下させるようにしている。また、除霜運転時の融解水を速やかに流下させるようにして、除霜運転終了時の水滴の残留を最少にするようにしているが、暖房運転開始後の着霜に至るまでの運転時間(フロスト時間)を長くするには至っていない。また、板状フィン表面に形成される親水性の塗膜が経時的に劣化し、その劣化と共に水滴の除去性能も低下するため、耐久性においても問題があった。
一方、このような問題を解決する被膜形成組成物として、特許文献1及び2に記載されているような撥水性粒子と樹脂バインダーとを含有する被膜形成組成物が提案されている。この被膜形成組成物をコーティングして形成した撥水性被膜は、撥水性微粉末の存在により被膜の表面を凹凸とし、この凹凸部に多量の空気層を保持している。また、この撥水性被膜は、表面張力が小さい。この撥水性被膜は、このような特徴を有することにより、水滴を凹凸表面で転がり落とすように流下させるものである。ところが、空気調和機の熱交換器、冷凍・冷蔵装置の製氷皿、冷蔵庫内壁等の機能性装置のように、熱交換する空気中の水分が結露して表面に水滴が発生するものでは、凹凸部に水滴が保持されることにより、空気層を形成する表面の凹凸が消失して、滑水性能が劣化するという問題があった。また、空気調和機の熱交換器のように、微少間隔で板状フィンが形成されている機能性装置においては、板状フィン表面上にこのような撥水性被膜を形成した場合に、凹凸空間に水滴が保持され、更に、この水滴が微少空間を形成する板状フィン間に挟まれて落下が妨げられるため、滑水性能が更に大幅に低下するという問題があった。
また、このような問題点を解決するものとして、特許文献1、2のように表面に凹凸を形成せずに、平滑とし、表面に付着した水滴を、表面に接したまま滑り落し、その落ちる過程において当該被膜上にある他の水滴を巻き込みながら落下させることにより、撥水性能及び撥水性の耐久性を向上させた被膜(以下平滑型滑水性被膜という)が開発されている。この種の平滑型滑水性被膜用の被膜形成組成物として特許文献3に記載されたものがある。この特許文献3に記載の被膜形成組成物は、微粒子よりなる充填材を含まずに、R SiO3/2 単位とからなるシリコーンレジンとポリアルキルシロキサンとから構成された撥水性の被膜形成組成物である。この特許文献3記載の被膜形成組成物から形成された被膜によれば。良好な撥水性能を得ることができる。しかしながら、この特許文献3に記載の被膜形成組成物は、被膜形成組成物中に含有されるポリアルキルシロキサンが反応性官能基を有していないため、撥水性能の耐久性に乏しいという問題があった。
また、特許文献3における撥水性能の耐久性の問題を解決した実用可能な平滑型滑水性被膜用の被膜形成組成物としては、特許文献4を挙げることができる。特許文献4には、特定のオルガノポリシロキサンと、反応性官能基を含有する特定構造を有するポリアルキル水素シロキサンとを特定の成分割合にした被膜形成組成物が提案されている。その詳細は特許文献4によるものとするが、この被膜形成組成物からなる被膜は、極めて優れた撥水性(滑水性)を発揮するとともに、撥水性能の耐久性に優れた性質を示すと報告されている。
更に、撥水性に優れ、かつ、撥水性の耐久性に優れた他の実用可能な平滑型滑水性被膜用の被膜形成組成物及びこの被膜形成組成物を用いた機能性装置が特許文献5に記載されている。この特許文献5に記載されている被膜形成組成物は、シリコーン樹脂である特定のオルガノポリシロキサンと、シリコンオイルであるシラノール基を有する特定のオルガノポリシロキサンとが特定の割合において配合されることによって得られたものである。その詳細は特許文献5によるものとする。また、この被膜形成組成物からなる被膜は、被膜の表面に付着した水滴が転がり落ちるのではなく、滑り落ちるように除去されるといった、極めて優れた撥水性(滑水性)が実現されること、並びに、延伸性に優れていることから低温雰囲気下において被膜に亀裂が生じたり、黴が発生したり、被膜が剥離したりするといった問題の発生がなく優れた耐久性も実現できることが報告されている。
特開平4−45181号公報 特開平7−118577号公報 特開平9−166798号公報 特開2000−119642号公報 特開2002−323298号公報
ところで、本発明者は、このような被膜形成組成物を用いた機能性装置の研究を進めていくうちに、結露及び/又は着霜する可能性のある表面を持つ機能性装置においては、特許文献4及び特許文献5の被膜形成組成物をただ単に用いただけでは期待する滑水性能を得ることができないことを発見した。すなわち、結露及び/又は着霜する可能性のある表面を持つ機能性装置において、この表面に特許文献4及び特許文献5のような平滑型撥水製被膜を施して、この表面の滑水性能及び滑水性能の耐久性を向上させるには、被膜の表面粗度を特定範囲にすることが必要であること、同様に、機能性装置が低温雰囲気下に使用される蒸発器である場合において、着霜に至るまでの時間(フロスト時間)を長くするには、被膜の表面粗度を特定範囲にすることが必要であることを見出した。
本発明は、このような知見に基づきなされたものであって、機能性装置の表面に平滑型滑水性被膜をコーティングして被膜を形成する場合に表面粗度と滑落角との関係を明確にすることにより滑水性に優れた機能性装置を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、第1の発明に係る機能性装置は、結露及び/又は着霜する可能性のある表面を持つ機能性装置において、前記表面には平滑型滑水性被膜が形成され、更に、この平滑型滑水性被膜の表面粗度がJIS B0601に規定された中心線平均粗さRa=0.1μm以下であることを特徴とする。
また、第2の発明は、第1の発明において、前記平滑型滑水性被膜は、オルガノポリシロキサンと反応性官能基を含有するポリアルキル水素シロキサンとからなる被膜形成組成物をコーティングして形成したものである。
また、第3の発明は、第1又は第2の発明において、機能性装置は、一定間隔で多数平行に並べられた板状フィンと、この板状フィンにほぼ直角に挿通された熱交換チューブと、熱交換用空気を送風する送風装置とからなる対空気用熱交換器としたものである。
また、第4の発明は、第3の発明において、前記被膜は、0.5〜10μmの厚さに形成したものである。
また、第5の発明は、第4の発明において、機能性装置は、冷凍・冷蔵装置用の製氷皿又は内壁としたものである。
また、第6の発明に係る冷凍、冷蔵又は空調装置は、第1〜第4の何れかに記載の機能性装置を熱交換器に利用したものである。
第1の発明に係る機能性装置によれば、結露及び/又は着霜する可能性のある表面を持つ機能性装置において、前記表面に平滑型滑水性被膜を形成するとともに平滑型滑水性被膜の表面粗度をJIS B0601に規定された中心線平均粗さRa=0.1μm以下としているので、撥水性を向上させるとともに撥水性の耐久性を向上させることができ、着霜に至るまでの運転時間(フロスト時間)を長期化することができる。
また、第2の発明によれば、第1の発明において、平滑型滑水性被膜を、オルガノポリシロキサンと反応性官能基を含有するポリアルキル水素シロキサンとからなる被膜形成組成物をコーティングして形成しているので、優れた撥水性を実現することができる。また、このような被膜形成組成物から形成された被膜では、機能性装置の表面に付着した水滴が転がり落ちるのではなく、滑り落ちるように除去されるため、極めて優れた撥水性及び滑水性が実現される。また、この被膜は、延伸性に優れていることから低温雰囲気下において被膜に亀裂が生じたり、黴が発生したり、被膜が剥離したりするといった問題の発生がなく、優れた耐久性も実現できる。したがって、この発明によれば、優れた滑水性及び滑水性の耐久性を実現することができ、着霜に至るまでの運転時間(フロスト時間)を長期化することができる。
また、第3の発明によれば、第1又は第2の発明において、機能性装置を、一定間隔で多数平行に並べられた板状フィンと、この板状フィンにほぼ直角に挿通された熱交換チューブと、熱交換用空気を送風する送風装置とからなる対空気用熱交換器としているので、この対空気用熱交換器を蒸発器として使用した場合に、板状フィンに付着している水滴が少なくなり、通風抵抗が減少する。また、この熱交換器をヒートポンプ式空気調和機の室外側熱交換器に用いた場合には、暖房運転中、室外側熱交換器に付着する水滴が減少することと、デフロスト運転後の板状フィンに付着している水滴量が少なくなることにより、フロスト時間を長くすることができる。
また、第4の発明によれば、第3の発明において、前記被膜の厚さを0.5〜10μmに形成したので、機能性装置における前記表面を形成する素材の表面粗度の影響を受けることなく、被膜の表面粗度を所定の粗度として滑水性を向上させることができる。また、対空気用熱交換器の通風抵抗の増大を招くことなく対空気用熱交換器の滑水性を向上させることができる。
また、第5の発明によれば、第4の発明において、機能性装置は、冷凍・冷蔵装置用の製氷皿又は内壁であるので、製氷皿又は内壁から水滴が落下し易い。このため、例え製氷皿又は内壁に霜が付着して氷結しても、短時間の加熱で容易に除霜することができる。
また、第6の発明に係る冷凍、冷蔵又は空調装置よれば、熱交換器に保持される水滴を減少させることにより、熱交換器の通風抵抗を減少させることができる。また、この熱交換器が外気を熱源とする蒸発器として用いられる場合には、着霜に至るまでの運転時間(フロスト時間)を長くすることができる。
以下に、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る機能性装置の一例としての熱交換器の斜視図である。図2は同熱交換器を用いたヒートポンプ式空気調和機の代表的な冷媒回路図である。図2に示すように、本実施の形態に係るヒートポンプ式空気調和機は、圧縮機1の吐出口に対し四路切換弁2の吐出側ポートが接続され、圧縮機1の吸入口に対し四路切換弁2の吸入側ポートが接続されている。そして、四路切換弁2の切換ポート間に室外側熱交換器3、膨張弁4、室内側熱交換器5が順次接続されている。これら機器の内、室外側熱交換器3は、図2に示すように、板状フィン11を一定間隔で平行に並べ、この板状フィン11に熱交換チューブ12を直角に挿通した、外気と熱交換するクロスフィン型の対空気用熱交換器であり、外気を送風するための送風装置3aを備えている。また、室内側熱交換器5は、上記室外側熱交換器3と同様のものであり、板状フィンを一定間隔で平行に並べ、この板状フィンに熱交換チューブを直角に挿通した、室内空気と熱交換するクロスフィン型の対空気用熱交換器であり、室内空気を送風するための送風装置5aを備えている。
このように構成された空気調和機は次のように運転される。冷房運転時は、四路切換弁2を実線の冷房運転状態に切り換えて、圧縮機1を運転する。圧縮機1から吐出された吐出ガスは、室外側熱交換器3に流れ、外気と熱交換して冷却され、凝縮液化して膨張弁4に流れる。膨張弁4で減圧された冷媒は、室内側熱交換器5に送られ、室内空気と熱交換して蒸発気化し、四路切換弁2を介して圧縮機1に戻る。この冷房運転時においては、送風装置5aにより室内空気が室内側熱交換器5により冷却されながら循環することにより冷房される。
次に暖房運転時は、四路切換弁2を破線の暖房運転状態に切り換えて、圧縮機1を運転する。圧縮機1から吐出された吐出ガスは、室内側熱交換器5に流れ、室内空気と熱交換して冷却され、凝縮液化して膨張弁4に流れる。膨張弁4で減圧された冷媒は、室外側熱交換器3に送られ、外気と熱交換して蒸発気化し、四路切換弁2を介して圧縮機1に戻る。この暖房運転時においては、送風装置5aにより室内空気が室内側熱交換器5により加熱されながら循環することにより暖房される。
また、上記暖房運転時において、外気が低温のときは、室外側熱交換器3が蒸発器として作用するが、このときの蒸発温度が0度以下となり、室外側熱交換器3の板状フィン11の表面に結露して付着した水滴が氷結し、霜となって板状フィン11の表面に付着する。運転時間の経過につれ室外側熱交換器3の板状フィン11の表面に付着する霜の量が多くなると(フロストすると)、室外側熱交換器3の熱交換率が低下し暖房運転が正常に行われなくなる。そこで着霜量が所定量になると、これを検出してデフロスト運転が行われる。
デフロスト運転は、例えば、四路切換弁2を冷房運転状態に切り換えて冷媒回路を冷房運転時の状態にする、所謂逆サイクル運転方式のデフロストが行われる。つまり、デフロスト運転時、室外側熱交換器3は凝縮器として作用することにより、室外側熱交換器3の板状フィン11の表面に氷結した霜を融解して流れ落とすように形成されている。
上記の構成において、室外側熱交換器3には、板厚約0.1mmのアルミニウム製の板状フィン11が用いられている。そして、板状フィン11の表面には前述のオルガノポリシロキサンと反応性官能基を含有するポリアルキル水素シロキサンとからなる被膜形成組成物がコーティングされて、平滑型滑水性被膜が形成されている。この被膜形成組成物としては、具体的にはダウコーニング アジア 株式会社製の型番Q2−2132が用いられている。また、この平滑型滑水性被膜の表面粗度は、板状フィン11に良好な滑水性を持たせるためにJIS B0601に規定された中心線平均粗さRa=0.1μm以下に形成されている。
これは、平滑型滑水性被膜の表面粗度をRa=0.1μm以上にすると、被膜表面における凹凸により水滴が表面に保持され、なめらかに滑り落ちなくなるためである。この点についての実験結果を示したのが図3及び図4である。
図3は、室外側熱交換器3に用いられるアルミニウムと同様の板厚0.1mmのアルミニウム製基板の表面に、平滑型滑水性被膜を形成した試料板を用いて行った実験結果を示したものであって、平滑型滑水性被膜の表面粗度と、被膜の表面に水滴が付着する場合の対水接触角との関係を示したものである。ここで、表面粗度はJIS B0601に規定された中心線平均粗さRaをいうものとする。
試料板の表面への被膜の形成は、まず、被膜形成組成物としてのダウコーニング アジア 株式会社製の型番Q2−2132の原液をメーカ指定の希釈溶剤により希釈して液状の被膜形成組成物を作製する。次に、この液状の被膜形成組成物中に板厚約0.1mmのアルミニウム製基板(JIS−A1050P)により形成されている基板を浸漬して引き上げる。そして、過剰に付着した液状の被膜形成組成物が基板上に得られた薄膜から全て落下するまで基板を立てて放置し、その後に、200℃のオ−ブンで加熱を行うことにより硬化被膜を形成する。なお、被膜の表面粗度及び被膜の厚さは、この液状の被膜形成組成物の濃度を変化させることにより変化させることができる。このようにして得られた種々の表面粗度の試料板を使用して、図3の実験結果が得られている。
図3では、試料板上に水滴を4μl滴下した場合、10μl滴下した場合、20μl滴下した場合についてそれぞれ示している。対水接触角は、JIS R3257に準じ、協和界面科学株式会社製の接触角計(商品名CAーVP)により、温度15〜20℃、相対湿度50〜70%で測定したものである。この実験結果によれば、対水接触角は、平滑型滑水性被膜表面の中心線平均粗さRaが0.15μm以下で良好になることが理解できる。
次に、図4は、前記と同様に作製した試料板を用いて実験した結果を示したものであって、平滑型滑水性被膜の表面粗度、すなわち、JIS B0601に規定された中心線平均粗さRaと滑落角との関係を示した実験結果である。この実験においても、水滴を4μl滴下した場合、10μl滴下した場合、20μl滴下した場合についてそれぞれ示している。滑落角の測定は、試料板を協和界面科学株式会社製の接触角計(商品名CAーVP)に水平に固定し、温度15〜20℃で、相対湿度50〜70%の環境下に載置された試料板上に上述の量の蒸留水を滴下し、次いで試料板を角度0.1度ずつ傾斜させていき、水滴が流れ始めるときの試料板の角度を測定したものである。この実験データによれば、前述の接触角では平滑型滑水性被膜表面の中心線平均粗さRaが0.15μm以下で良好になっていたが、滑落角については、平滑型滑水性被膜表面の中心線平均粗さRaが0.1μm以下にしないと良好な結果が得られないことが分かる。前述の対水接触角は、機能性装置における平滑型滑水性被膜を施した、結露及び/又は着霜する可能性のある表面の滑水性評価の一つのデータではあるが、直接的なデータではない。この点、滑落角は、同表面の滑水性を直接的に影響するデータである。したがって、滑落角は、結露及び/又は着霜する可能性のある表面の滑水性評価において耐水接触角のデータに優先するデータである。
一方、平滑型滑水性被膜の厚さは、熱交換性能の点からいえば、被膜は熱伝導における熱抵抗となるので、薄いほど良いといえる。しかし、薄くし過ぎると、平滑型滑水性被膜の機能を発揮することができなくなる。また、あまり薄いと板状フィン11の素材の表面粗度が被膜表面の粗度に大きく影響することになり、小さな表面粗度を得ることが難しくなる。このような観点から平滑型滑水性被膜の厚さは、0.5〜10μmが好ましい。
以上のように本実施の形態における空気調和機は、室外側熱交換器3の板状フィン11の表面に平滑型滑水性被膜用の被膜形成組成物がコーティングされて平滑型滑水性被膜が形成されているので、暖房運転時において、室外側熱交換器3の外気中の水分が結露して板状フィン11の表面に水滴が付着するが、この水滴は速やかに流れ落ちる。このため、暖房運転中における室外側熱交換器3の板状フィン11に付着している水滴が少なくなり、通風抵抗が減少する。また、デフロスト運転時においては、室外側熱交換器3の板状フィン11に氷結していた霜が融解すると、この融解水が速やかに板状フィン11の平滑型滑水性被膜上を流れ落ちる。このため、デフロスト運転を終了して暖房運転に移行するときに、室外側熱交換器3の板状フィン11の表面に付着している水滴が少なくなる。したがって、暖房運転中に発生して板状フィン11に付着している水滴の量が減少することと、デフロスト運転から暖房運転に移行するときの室外側熱交換器3における水滴量が少なくなることとが相俟って、本実施例における空気調和機では着霜に至る時間(フロスト時間)が長くなる。
図5は、上記のヒートポンプ式空気調和機における室外側熱交換器3の板状フィン11の表面に、ダウコーニング アジア 株式会社製の型番Q2−2132を用いて平滑型滑水性被膜を形成したものについて、平滑型滑水性被膜の表面粗度、すなわち、JIS B0601に規定された中心線平均粗さRaと着霜に至るまでの運転時間(フロスト時間)との関係を示したものである。この図に示すように、室外側熱交換器3の板状フィン11の表面に平滑型滑水性被膜を形成した空気調和機では、平滑型滑水性被膜の表面の中心線平均粗さRaを0.1μm以下とすることにより、室外側熱交換器3のフロスト時間を顕著に長くできることを示している。例えば、平滑型滑水性被膜の中心線平均粗さRaを0.09μmとした点Aのフロスト時間は、アルミフィン表面の中心線平均粗さRaと同一の0.16とした点Bのフロスト時間の約2倍になる。
以上の実施の形態の説明においては、空気調和機の室外側熱交換器3に平滑型滑水性被膜を形成し、その表面粗度を0.1μm以下とすることにより、室外側熱交換器3に付着する水滴が速やかに落下し、通風抵抗が小さくなり、着霜までの時間が長くなることを、その根拠となる基礎的な実験結果と共に示したが、この空気調和機における室外側熱交換器3は機能性装置の一例であって、本発明は、このような例に限定されるものではない。機能性装置の他の例としては、業務用冷蔵庫における蒸発器であってもよく、また、冷凍・冷蔵装置用の製氷皿や内壁であってもよい。この場合、例え製氷皿又は内壁に霜が付着して氷結しても、短時間の加熱で容易に除霜することができる。
また、平滑型滑水性被膜用の被膜形成組成物は、上記の実施の形態においては、ダウコーニング アジア 株式会社製の型番Q2−2132に基づいて説明したが、前述の特許文献4や、特許文献5に記載の他の被膜形成組成物でも同様の傾向が得られるものであり、これら被膜形成組成物に限定されるものではない。
本発明の実施の形態に係る機能性装置の一例としての対空気用熱交換器の斜視図である。 同熱交換器を用いたヒートポンプ式空気調和機の代表的な冷媒回路図である。 平滑型滑水性被膜の表面粗度と被膜の表面に水滴が付着する場合の対水接触角との関係を示した実験結果図である。 平滑型滑水性被膜の表面粗度と滑落角との関係を示した実験結果図である。 平滑型滑水性被膜の表面粗度と着霜に至るまでの運転時間(フロスト時間)との関係を示した実験結果図である。
符号の説明
3 室外側熱交換器
3a 送風装置
11 板状フィン
12 熱交換チューブ

Claims (6)

  1. 結露及び/又は着霜する可能性のある表面を持つ機能性装置において、前記表面には平滑型滑水性被膜が形成され、更に、この平滑型滑水性被膜の表面粗度がJIS B0601に規定された中心線平均粗さRa=0.1μm以下であることを特徴とする機能性装置。
  2. 前記平滑型滑水性被膜は、オルガノポリシロキサンと反応性官能基を含有するポリアルキル水素シロキサンとからなる被膜形成組成物をコーティングして形成されていることを特徴とする請求項1記載の機能性装置。
  3. 機能性装置は、一定間隔で多数平行に並べられた板状フィンと、この板状フィンにほぼ直角に挿通された熱交換チューブと、熱交換用空気を送風する送風装置とからなる対空気用熱交換器であることを特徴とする請求項1又は2記載の機能性装置。
  4. 前記被膜は、0.5〜10μmの厚さに形成されていることを特徴とする請求項3記載の機能性装置。
  5. 機能性装置は、冷凍・冷蔵装置用の製氷皿又は内壁であることを特徴とする請求項1又は2記載の機能性装置。
  6. 請求項1〜4の何れか1項記載の機能性装置を熱交換器に利用したことを特徴とする冷凍、冷蔵又は空調装置。
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