JP2006040610A - 燃料電池システム - Google Patents

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Abstract

【課題】燃料電池スタックの酸に対する耐腐食性を向上した燃料電池システムを提供する。
【解決手段】電解質膜21を電極22で狭持し、さらに電極22に反応ガスを導入するガス流路23を備えた単位セル20を有する燃料電池スタック2と、燃料電池スタック2内のpH値の状態を推定または検出するpH検知手段と、pH検知手段の出力に応じて、燃料電池スタック2内の水量を制御する制御手段36を備える。pH検知手段により燃料電池スタック2内の酸性度が高いと判断される場合には、燃料電池スタック2内の水量を増大することにより、酸による腐食が生じるのを抑制する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、燃料電池システムに関する。特に、固体高分子型燃料電池を用いたシステムにおけるpH値管理に関する。
従来の固体高分子型燃料電池を用いた燃料電池システムとして、アノードにはアルカリ性、カソードには酸性の化合物を適宜混入した加湿水を導入することによって、両極のpH値を制御し、燃料電池の起電力を向上したものが知られている。セルの起電力は両極のpH値の偏差に応じて変化するため、アノードのpH値がカソードのpH値よりも高くなるように制御することによって、各セルの起電力が向上される。
このとき、カソード側のpH値は、燃料電池システム内で加湿水が通過する部位に酸に対する耐食性に基づいて定まるpH値の下限値に対して同等以上となる範囲に調整される。各電極から排出される排出物のpH値を検出するpH検出手段を設け、検出されたpH値を用いてカソード側のpH値が上記範囲に収まるように制御される(例えば、特許文献1、参照。)。
特開2001−176530号公報
ここで、固体高分子型燃料電池で使用される電解質膜は酸性を示すため、電池を構成する部材にはある一定以上の酸に対する耐腐食性が要求される。そこで、耐酸性に優れ、導電性を有するカーボン系セパレータが使用され、材料の腐食による燃料電池の劣化を抑制している。しかしながら、カーボン系セパレータでは、板厚みを小さくさせるという面で可能限界があるため、車載を考えたコンパクト化には限界があった。一方で、耐酸性をあげるために金属プレートの表面処理や特別な組成の金属を使用する試みが為されているが、コストが上がるという問題を発生している。
これに対して上記従来技術による燃料電池システムでは、pH値を酸による腐食を抑制できる範囲に制御している。しかしながら、このシステムは、燃料電池に供給する加湿水のpH雰囲気を制御するものであり、燃料電池内の酸性度が過剰となった場合に、速やかにこれを解消するのは困難であった。
そこで、本発明は、さらに、燃料電池の酸に対する耐腐食性を向上した燃料電池システムを提供することを目的とする。
本発明は、電解質膜を電極で狭持し、さらに電極に反応ガスを導入するガス流路を備えた単位セルを有する燃料電池と、前記燃料電池内のpH値の状態を推定または検出するpH検知手段と、前記pH検知手段の出力に応じて、前記燃料電池内の水量を制御する制御手段と、を備える。
燃料電池内のpH値の状態を推定または検出し、これに応じてスタック内の水量を制御することで、燃料電池内で酸性度が増大すると推定される場合、または酸性度が増大した場合に、速やかに燃料電池内の液水の酸性を緩和することができる。これにより、燃料電池を構成する部材の酸による腐食を抑制し、燃料電池の耐腐食性を向上することができる。
図1を参照して、本実施形態による燃料電池システム1の構成を説明する。
燃料が有する化学エネルギを直接電気エネルギに変換する燃料電池スタック2を備える。なお、図1は、燃料電池スタック2を便宜的に単位セル20のように示しているが、実際には、電解質膜21とその両面に形成される一対の電極22a、22cと、電極22a、2cに反応ガスを導入するガス流路23a、23cを有する単位セル20を複数積層して燃料電池スタック2を構成する。電解質膜21としては、スルホン酸基を有するフッ素系樹脂から構成されたナフィオン膜(例えばDuPont社製)を用いる。
燃料電池スタック2のアノードガス流路23aに水素を含むアノードガスが、カソードガス流路23cに酸素を含むカソードガスが導入され、アノードガス電極22a、カソードガス電極22cに反応ガスが供給されることにより、以下のような電気化学反応を生じる。
アノード:H2 → 2H+ + 2e-
カソード:1/2O2 + 2H+ +2e- → H2
各単位セル20間には図示しない金属材料により構成したセパレータを設け、単位セル20間の反応ガスの混合を防止するとともに、単位セル20間を電気的に直列に接続する。
また、燃料電池スタック2は、供給されたアノードガスを各単位セル20のアノードガス流路23aに分配するアノード入口マニホールド26と、アノードガス流路23aからアノード排ガスを回収するアノード出口マニホールド24を備える。また、燃料電池スタック2は、供給されたカソードガスを各単位セル20のカソードガス流路23cに分配するカソード入口マニホールド27と、カソードガス流路23cからカソード排ガスを回収するカソード出口マニホールド25を備える。
アノード入口マニホールド26の上流には、アノード供給装置5と、その下流に配置した加湿装置3を備える。アノード供給装置5としては、高圧ガスタンク、液化水素タンク、水素吸蔵合金タンク等のいずれを用いても良い。また、アノードガスとしては、ガソリンやアルコール、天然ガス等の燃料を改質した水素含有ガス、または水素ガス等のいずれを用いてもよい。加湿装置3は、アノード供給装置5から取り出されたアノードガスの加湿を行う装置とする。例えば、加湿装置3として、反応ガス中に霧状の水を噴射することにより加湿を行う装置を用いる。もしくは、カソード出口側から排出される高湿度のガスから凝縮させた液滴を分離して再利用することもできる。
また、カソード入口マニホールド27の上流には、カソード供給装置6と、その下流に配置した加湿装置4と、を備える。カソード供給装置6としては、コンプレッサまたはエアポンプ等のいずれを用いてもよい。カソードガスとしては、ここでは空気を用いる。加湿装置4は、カソード供給装置6から圧送された空気中の湿度を調整可能な装置である。例えば、加湿装置4として、反応ガス中に霧状の水を噴射することにより加湿を行う装置を用いる。
さらに、燃料電池スタック2の停止運転時にアノードガス流路23aに残留する水を空気を用いてパージするために、カソード供給装置6の下流からアノード側の加湿装置3の上流に向かって分岐する分岐路9と、分岐路9を連通/遮断するバルブ8を備える。また、分岐路9を介してアノード側に供給されるパージガスが、アノードガス供給装置5に逆流するのを防ぐために、アノードガス供給装置5と分岐路9との間に逆止弁7を備える。
また、燃料電池スタック2は、アノード出口マニホールド24、カソード出口マニホールド25の下流に、燃料電池スタック2から排出されたアノード排ガス、カソード排ガス中の凝縮水のpH値を検出するpH検出手段31、32を備える。アノード排ガス、カソード排ガス中の凝縮水のpH値から燃料電池スタック2内のpH値を推測する。
なお、pH値の計測は、pH検出手段31、32の配置付近に液滴が存在している状態で行うことが望ましい。ここでは、pH検出手段31、32近傍にトラップを備え、液滴が存在し易いように構成する。ただし、トラップは、液滴が長時間滞留するのを避けることができる範囲に小さいものとして、燃料電池スタック2内の酸性度と計測による結果に時間的なズレが生じるのを抑制する。
また、燃料電池スタック2の温度Tsを検出する温度センサ33と、外気温度Tbを検出する温度センサ35を備える。温度センサ33は、単位セル20内部の反応面の温度を検出するものが好ましい。ただし、計測そのものによる反応に対する影響が出る場合があるため、ここでは、単位セル20の外端部、もしくは、一定内部に配置した部位での温度を測定する。
また、燃料電池スタック2内の相対湿度Rhを計測する湿度センサ34を備える。湿度センサ34は、アノード側、カソード側にそれぞれ設ける。ここでは、単位セル20からの反応ガスの出口部分、または出口マニホールド24、25における相対湿度Rhを検出する。または、湿度センサ34を、入口側と出口側の両方に設け、その平均値を各電極の相対湿度Rhとしてもよい。
さらに、燃料電池スタック2の電池電圧Vを検出する電圧センサ37を備える。ここでは、電圧センサ37を燃料電池スタック2の電圧を検出する手段としたが、この限りではなく、単位セル20の電圧を検出する手段、または複数の単位セル20の電圧を検出する手段としてもよい。
また、燃料電池システム1を制御する手段として、制御装置36を備える。制御装置36は、中央演算ユニット(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、および入出力インターフェース(I/Oインターフェース)を有するマイクロコンピュータで構成される。制御装置36を複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。制御装置36は、pH検出手段31、32、温度センサ33、35、湿度センサ34の出力に基づいて、アノード供給装置5、カソード供給装置6、および、加湿装置3、4を制御する。
次に、発電時および停止時の燃料電池スタック2内の酸性状態を説明する。
固体高分子電解質膜21を用いた単位セル20は、電解質膜21が適度に加湿された状態で発電が行われる。そのため、それぞれの単位セル20内の湿度状態が適切に制御される必要がある。ここでは、各単位セル20に供給されるアノードガス、カソードガスを予め加湿装置3、4で加湿してから燃料電池スタック2に導入することで、電解質膜21を適切な湿度に維持している。
固体高分子型の燃料電池スタック2で使用される電解質膜21は酸性を示すため、燃料電池スタック2を構成する部材にはある一定以上の酸に対する耐腐食性が要求される。腐食問題は、電解質膜21に由来するスルホン酸イオンやフッ素イオンによるものであり、これらが単位セル20内に存在する液滴に溶け込んで酸性を示す。これらのイオン濃度は局所的に差があるため、場所によってはpH値がかなり小さく、酸性度が高くなる場合がある。さらに、供給ガスが低湿度の場合や、停止直後に燃料電池スタック2内で液滴の気化が生じた場合などには、上記イオン濃度が凝縮されるため、酸性度が上昇する可能性がある。燃料電池システム1の停止後には、酸性を示す液滴は酸性度が高い状態で単位セル20内に残存するため、構成部材が長時間に渡って酸性雰囲気に晒されることになり、劣化が促進することになる。
そこで、発電時および停止時の燃料電池スタック2内に存在する水量を調整することにより、燃料電池スタック2内の酸性度の上昇を抑制する。
まず、図2のフローチャートを参照して、燃料電池スタック2の発電運転中におけるpH値の制御ルーチンについて説明する。燃料電池スタック2の発電中に、本ルーチンを所定時間毎に繰り返し実行する。
ステップS1において、燃料電池システム1が所定条件下であるか否かを判断する。所定条件を、燃料電池スタック2内のpH値が過度に小さくなり酸性度が増大していると判断される状態、または増大すると推測される状態とする。
ここでは、所定条件を、燃料電池スタック2に対する負荷が高負荷に移行してからの経過時間が所定時間a以内である状態とする。例えば、単位セル20の平均電圧値が0.2V以下まで落ちる負荷を高負荷範囲とする。ここで、高負荷運転に移行して多くの反応ガスが供給され始めてから、実際に発電反応が増大するまでには時間差がある。この間に、燃料電池スタック2から過度に水が排水されることにより低湿度状態となり、酸性度が増大する可能性がある。そこで、高負荷運転に移行してから低湿度状態が生じる可能性がある所定時間aを予め実験等により求めておき、高負荷運転に移行してから所定時間aの間を所定条件とする。
ここでは、電圧センサ37の出力より、単位セルの平均電圧が0.2Vより小さくなった場合に高負荷状態に移行したと判断する。または、燃料電池システム1を車載している場合には、アクセル開度や車速等より負荷状態を求めても良い。
燃料電池システム1が所定条件下ではない場合には、ステップS6に進み、通常運転時の制御を行う。つまり、負荷に応じて設定した反応ガス流量、加湿量を供給するように、アノード供給装置5、カソード供給装置6、加湿装置3、4を制御する。
一方、燃料電池システム1が所定条件下である場合、つまり、pH値が適切値より小さいと判断・推測される場合には、ステップS2に進み、燃料電池スタック2の電池電圧Vを検出する。次に、ステップS3で電池電圧Vと規定電圧V0を比較する。
ここで、後述するステップS4、S5では、燃料電池スタック2内のpH値を増大するために、加湿量を増大するとともに反応ガス流量を抑制することにより燃料電池スタック2内の水量を増大している。加湿量を増大することによりフラッディングが生じ易くなりガス拡散性が低下する。また、反応ガス量を抑制することにより、反応ガスの利用率が上昇して、反応ガス流路23の下流領域ではガス流量が小さくなる。このため、pH値の悪化を抑制するためのステップS4、S5を行うことで、燃料電池スタック2の電池電圧Vが経過時間に応じて低下してしまう。そこで、電池電圧Vが規定電圧V0より小さい場合には、ステップS6に進み、通常の加湿量、反応ガス流量で運転を行う。
一方、ステップS3で電池電圧Vが規定電圧V0以上の場合には、ステップS4に進み、通常時に比較して加湿量を増大するように、加湿装置3、4を制御する。ここで、加湿の増大量は、もともとの加湿量に応じて加湿ができる範囲以内で大きく設定する。ただし、加湿量増大に伴ってフラッディングが生じ、電池電圧Vの降下があまりに短時間で起ってしまう場合、加湿量を増大することにより酸性度を抑制する効果が抑制されるので、電圧降下までの時間を考慮して設定することが望ましい。
ステップS5で通常時に比較して燃料電池スタック2に供給する反応ガス量を低減する。これにより、燃料電池スタック2から排出される水量を抑制する。反応ガスの低減量は、予め実験等より設定した値とする。
このように、ステップS4、S5およびステップS6で加湿量と反応ガス流量を制御したら、本ルーチンを終了する。
なお、ステップS1において、所定条件を燃料電池スタック2に対する負荷の大きさにより設定したがこの限りではない。例えば、所定条件を、低負荷から高負荷への急激なサイクルの連続回数が所定回数以上となってからある一定時間の間であるか否かとしてもよい。この場合には、所定時間以内の低負荷領域から高負荷領域に変化した回数を、タイマと電圧センサ37を用いてカウントし、これを記憶しておくことで、所定条件下であるか否かを判断することができる。
または、ステップS1において、所定条件を、pH検出手段31、32の出力からpH値が所定値k1より小さい状態としてもよい。ただし、発電中はアノードでプロトンが消費され、カソードでは水が生成されるため、排出物のpH値とアノード、カソード内のpH値とは必ずしも一致しない。そこで、予め実験などで排出物のpH値とアノード、カソードのpH値との対応関係を求め、その結果を記憶し、これを参照して燃料電池スタック2内のpH値を推定する。この場合には、pH検出手段31、32がpH検知手段に相当する。
または、ステップS1において、所定条件を、燃料電池スタック2内の相対湿度が所定値Rh0より小さい状態としてもよい。燃料電池スタック2内の相対湿度が低い場合には、比較的酸性度が増大し易いと判断することができる。このときには、湿度センサ34がpH検知手段に相当する。
つまり、ステップS1の所定条件は、燃料電池スタック2内の酸性度が過剰となると判断できる条件、または過剰になると推測できる条件となる。
このように、運転時には、燃料電池スタック2内の酸性度が上昇する、またはその可能性がある運転条件下では、加湿量を増大し、反応ガスの供給量を低減することで、燃料電池スタック2内の水量を増大して酸性度を抑制する。
次に、停止制御時における燃料電池スタック2内のpH値の制御ルーチンを図3のフローチャートを用いて説明する。燃料電池システム1の停止を指示する信号が出力されたら、本ルーチンを開始する。
ステップS11で、pH検出手段31、32の出力を読み込む。ここでは発電反応が終了しているので、pH検出手段31、32の出力より燃料電池スタック2内のアノード、カソードのpH値を推定する。なお、pH値の検出は、反応ガスの供給停止直後、または、反応ガスの供給を停止する直前とすることが好ましい。
ステップS12で、pHが所定値k2より小さいか否かを判断する。所定値k2をあまり大きく設定しておくと、酸性度を抑制するために液水を生成する制御を停止の度に実施しなくてはならず、電力消費量が増大してしまう。反対に、所定値k2を小さく設定しすぎると酸性度の高い液滴が燃料電池スタック2内に存在する頻度と時間が増大し、燃料電池スタック2の構成部材の劣化が促進してしまう。所定値k2は、電解質膜21の種類や厚さ、サイズにも依存するが、ここではk2<6とする。または、k2の値を、k2<5とし、さらにはk2<4.5とするのが好ましい。
pH値が所定値k2以上の場合には、燃料電池スタック2内の酸性度は適切であると判断して、ステップS18でガスパージによる排水を行う。ここでは、バルブ8を開いて、アノードガス流路23a、カソードガス流路23cに空気を導入することにより反応ガスおよび水分のパージを行う。このとき、燃料電池スタック2には、加湿装置3、4で加湿された空気がパージガスとして供給される。パージガスにより、余分な水を除去しつつ、燃料電池スタック2が冷却されるので、燃料電池システム1の運転が終了して放置されても、燃料電池スタック2内での水の蒸発を抑制することができる。そのため、蒸発によるプロトンイオン濃度の増大により、酸性度が上昇するのを抑制できるので、燃料電池システム1の放置時に、燃料電池スタック2内の酸性度が過大となって構成部材が劣化するのを抑制することができる。
一方、ステップS12で、pH値が所定値k2より小さい場合には、燃料電池スタック2内の酸性度が高いと判断する。ステップS13で燃料電池スタック2内の相対湿度Rh、外気温度Tb、スタック温度Tsを検出する。ステップS14で、pH値に応じて燃料電池スタック2の各電極内の要求水量wを設定する。pH値が小さいほど、要求水量wが大きくなるように設定する。
ステップS15で、相対湿度Rhとスタック温度Tsから、凝縮により要求水量wを得るための要求温度Taを算出する。次に、ステップS16において、要求温度Taが、外気温度Tb以上か否かを判断する。要求温度Taが外気温度Tb以上の場合には、燃料電池スタック2内の温度が、いずれ要求温度Taまで低下して、燃料電池スタック2内の液水量が要求水量wとなると判断する。この場合には、ステップS17で、スタック温度Tsが要求温度Taまで低下したか否かを判断する。スタック温度Tsが要求温度Ta以下となるまでその状態を維持し、要求温度Ta以下となったら、ステップS18でガスパージによる排水を行う。
ステップS18におけるガスパージにより、燃料電池スタック2内の水が排水される。パージ後、燃料電池スタック2内には僅かな水が残存するが、この水のpH値は許容範囲に調整されているので、酸性度の高い液水による燃料電池スタック2の劣化を抑制することができる。
一方、ステップS16で、要求温度Taが外気温度Tbより小さい場合には、燃料電池スタック2の温度が雰囲気温度まで低下された場合にも、燃料電池スタック2内に酸性度の高い液水が存在すると推定される。そこで、ステップS19で、燃料電池スタック2内に水を供給する。ここでは、バルブ8を開き、カソード供給装置6から加湿装置3、4で、できるだけ多くの水を含ませた空気を、アノードガス流路23a、カソードガス流路23cに導入する。このときの空気流量は後述するパージ時に比較して小さく設定する。この加湿ガスの導入により、燃料電池スタック2の各電極に要求水量w以上の液水が生じるように、加湿量および加湿ガス量を設定する。または、要求水量wに応じて予め定められた加湿量および流量の加湿ガスを供給する時間を設定しておき、要求水量wに応じた時間だけ加湿ガスの供給を行う。なお、ステップS19においては、加湿された空気ではなく、直接液水を供給してもよい。
ステップS19において、要求水量w以上の水を燃料電池スタック2の各電極に供給したら、ステップS18において、ガスパージによる排水を行う。この場合に、燃料電池1スタック2内の液水のpH値は許容範囲と成っており、これをパージすることにより、燃料電池スタック2内に残存する液水の酸性度を抑制することができる。
なお、図3に示す停止時におけるpH値の制御ルーチンは、停止指令出力後、一回実行するとしているが、この限りではない。例えば、要求温度Taが外気温度Tbより低い場合には、燃料電池スタック2が外気温度Tbに等しくなった場合に得られる液水量と要求水量wとの差を算出し、この差に応じた回数だけ繰り返しても良い。ただし、この場合には、ステップS19で増大させる加湿量を予め設定された所定値とする。これにより、燃料電池スタック2内に高酸性度の液水を保持する時間を短縮することができる。
このように、停止時に、液水量を増加させてpH値を許容範囲まで上昇させてから水のパージを行うので、残存する液水の酸性度を抑制することができる。
次に、本実施形態の効果について説明する。
電解質膜21を電極22で狭持し、さらに電極22に反応ガスを導入するガス流路23を有する単位セル20を積層することにより構成した燃料電池スタック2と、燃料電池スタック2内のpH値の状態を推定または検出するpH検知手段と、pH検知手段の出力に応じて、燃料電池スタック2内の水量を制御する制御手段36と、を備える。これにより、燃料電池スタック2内で酸性度が増大すると推定される場合、または酸性度が増大した場合に、速やかに燃料電池スタック2内の液水の酸性を緩和することができる。その結果、燃料電池スタック2を構成する部材の酸による腐食を抑制し、燃料電池スタック2の耐腐食性を向上することができる。
ここでは、前記pH検知手段は運転負荷検出手段であり、さらには電圧センサ37である。発電時に、運転負荷が所定負荷以上に移行した際に、燃料電池スタック2内の水量を一時的に増大する。このように、燃料電池スタック2内で酸性度が上昇し易い状態となった時点で燃料電池スタック2内の水を増大することで、酸性度の上昇を抑制することができる。
または、前記pH検知手段は運転負荷をモニタする手段であり、ここでは電圧センサ37である。発電時に、運転負荷が低負荷から高負荷への急激な変化を所定時間に生じた回数が、所定回数を超えたら、燃料電池スタック2内の水量を一時的に増大する。このように、燃料電池スタック2内で酸性度が上昇し易い状態となった時点で燃料電池スタック2内の水を増大することで、酸性度の上昇を抑制することができる。
または、前記pH検知手段は、燃料電池スタック2からの排出物のpH値を検出する手段であり、発電時に、pH値が所定値以下である場合に、燃料電池スタック2内の水量を増大する。これにより、酸性度が過剰となった場合にも、pH値を速やかに適切な範囲に戻すことができる。
ガス流路23に供給される水量を調整する加湿装置3、4を備える。加湿装置3、4により供給する水量を増大することにより、燃料電池スタック2の水量を一時的に増大する。これにより、従来から使用される装置を用いて燃料電池システム1の耐酸性を向上することができる。
燃料電池スタック2に供給する反応ガス流量を調整するアノード供給装置5、カソード供給装置6を備える。通常時に比較して反応ガス流量を抑制することにより、燃料電池スタックからの排出を抑制することができ、水量を増大することができる。
また、前記pH検知手段は、燃料電池スタック2内のpH値を推定または検出する手段であり、ここでは、燃料電池スタック2からの排出物のpH値を検出するpH検出手段31、32である。運転停止時に、pH検出手段31、32の出力が所定値k2より小さい場合には、燃料電池スタック2内の液水の量がpH値に応じた要求水量w以上となるように燃料電池スタック2内の水量を制御する。これにより、燃料電池スタック2停止中に構成部材が酸性雰囲気下で劣化するのを抑制することができる。
また、燃料電池スタック2の温度Tsを検出する温度センサ33と、燃料電池スタック2内部の相対湿度Rhを検出する湿度センサ34と、を備える。燃料電池スタック2内部の相対湿度Rhおよび温度Tsから燃料電池スタック2内の液水の量がpH値に応じた要求水量w以上となる要求温度Taを設定する。さらに、燃料電池スタック2は気相または液相の水を導入する水導入手段と、外気温度Tbを検出する温度センサ35と、を備え、燃料電池スタック2内の液水の量がpH値に応じた要求水量w以上となる温度Taが外気温度Tbより低い場合には、燃料電池スタック2内に水を導入する。これにより、要求水量wが得られる要求温度Taが外気温度Tb以上の場合には、燃料電池スタック2の温度Tsが要求温度Taまで低下した際に要求水量wを得られたと判断することができる。また、要求温度Taが外気温度Tbより小さい場合には、凝縮により要求水量wを得ることはできないので、水を導入することにより燃料電池スタック2内の水量を要求水量wとなるように制御することができる。なお、水導入手段は、カソード供給装置6とバルブ8、分岐路9、加湿装置3、4とから構成する。
ガス流路23にパージガスを導入するパージ手段を備え、燃料電池スタック2内の水量が、pH値に応じた要求水量wに達したら、燃料電池スタック2内の液水をパージする。これにより、燃料電池システム停止時に、酸性雰囲気下で構成部材の劣化が促進されるのを抑制することができる。なお、ここではパージ手段は、カソード供給装置6とバルブ8、分岐路9から構成する。
なお、上記実施の形態においては、複数の単位セル20を積層することにより構成した燃料電池スタック2について説明しているが、一つの単位セル20より構成してもよい。また、アノードガスとカソードガスの両方の加湿を行っているが、どちらか一方としてもよい。
また、ここではパージガスとして空気を用いているが、これに限らない。例えば、窒素タンク等を備える場合には、パージガスとして窒素を用いても良い。
また、加湿装置として、反応ガス中に霧状の水を噴射する装置を用いたがこの限りではない。水透過膜を用いた装置や、水蒸気を供給するものなど、何れのものを用いても良い。
このように、本発明は、上記発明を実施するための最良の形態に限定されるわけではなく、特許請求の範囲に記載の技術思想の範囲内で、様々な変更を為し得ることはいうまでもない。
本発明は、固体高分子型燃料電池を備えた燃料電池システムに適用することができる。特に、システムのコンパクト化が望まれる車両搭載用の燃料電池システムに用いることで、適切な効果を得ることができる。
本実施形態による燃料電池システムの構成図である。 本実施形態による運転時のpH値の制御ルーチンを示すフローチャートである。 本実施形態による停止時のpH値の制御ルーチンを示すフローチャートである。
符号の説明
1 燃料電池システム
2 燃料電池スタック
3、4 加湿装置(加湿手段、水導入手段)
5 アノード供給装置(反応ガス供給手段)
6 カソード供給装置(反応ガス供給手段、パージ手段、水導入手段)
8 バルブ(パージ手段、水導入手段)
9 分岐路(パージ手段、水導入手段)
20 単位セル(燃料電池)
21 電解質膜
22 電極
23 ガス流路
31、32 pH検出手段(pH検知手段)
33 温度センサ(スタック温度検出手段)
34 湿度センサ(湿度検出手段)
35 温度センサ(外気温度検出手段)
36 制御装置
37 電圧センサ(pH検知手段)

Claims (10)

  1. 電解質膜を電極で狭持し、さらに電極に反応ガスを導入するガス流路を備えた単位セルを有する燃料電池と、
    前記燃料電池内のpH値の状態を推定または検出するpH検知手段と、
    前記pH検知手段の出力に応じて、前記燃料電池内の水量を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする燃料電池システム。
  2. 前記pH検知手段は運転負荷検出手段であり、
    発電時に、前記運転負荷が所定負荷以上に移行した際に、前記燃料電池内の水量を一時的に増大する請求項1に記載の燃料電池システム。
  3. 前記pH検知手段は運転負荷をモニタする手段であり、
    発電時に、前記運転負荷が低負荷から高負荷への急激な変化を所定時間に生じた回数が、所定回数を超えたら、前記燃料電池内の水量を一時的に増大する請求項1に記載の燃料電池システム。
  4. 前記pH検知手段は、前記燃料電池からの排出物のpH値を検出する手段であり、
    発電時に、pH値が所定値以下である場合に、前記燃料電池内の水量を増大する請求項1に記載の燃料電池システム。
  5. 前記ガス流路に供給される水量を調整する加湿手段を備え、
    前記加湿手段により供給する水量を増大することにより、前記燃料電池の水量を一時的に増大する請求項2から4のいずれか一つに記載の燃料電池システム。
  6. 前記燃料電池に供給する反応ガス流量を調整する反応ガス供給手段を備え、
    通常時に比較して前記反応ガス流量を抑制することにより、前記燃料電池の水量を一時的に増大する請求項2から4のいずれか一つに記載の燃料電池システム。
  7. 前記pH検知手段は、前記燃料電池内のpH値を推定または検出する手段であり、
    運転停止時に、前記pH検知手段の出力が所定値より小さい場合には、前記燃料電池内の液水の量がpH値に応じた量以上となるように前記燃料電池内の水量を制御する請求項1に記載の燃料電池システム。
  8. 前記燃料電池の温度を検出する電池温度検出手段と、
    前記燃料電池内部の相対湿度を検出する湿度検出手段と、を備え、
    前記燃料電池内部の相対湿度および温度から前記燃料電池内の液水の量がpH値に応じた量以上となる温度を設定する請求項7に記載の燃料電池システム。
  9. 前記燃料電池は気相または液相の水を導入する水導入手段と、
    前記外気温度を検出する外気温度検出手段と、を備え、
    前記燃料電池内の液水の量がpH値に応じた量以上となる温度が外気温度より低い場合には、前記燃料電池内に水を導入する請求項8に記載の燃料電池システム。
  10. 前記ガス流路にパージガスを導入するパージ手段を備え、
    前記燃料電池内の水量が、前記pH値に応じた量に達したら、前記燃料電池内の液水をパージする請求項9に記載の燃料電池システム。
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