JP2006040491A - 情報記録媒体用塗布液、情報記録媒体の製造方法および情報記録媒体 - Google Patents

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Abstract

【課題】回収し易い情報記録媒体用塗布液を提供することを主目的とする。
【解決手段】色素を、その色素に対する20℃での飽和溶解度が0.7重量%以上2.5重量%以下の範囲内の溶媒に溶解して情報記録媒体用塗布液を構成する。また、光記録媒体10を製造するときには、上記の色素を上記の溶媒に溶解してこの情報記録媒体用塗布液を作製し、この情報記録媒体用塗布液を基材21上に塗布して記録層22を形成する。これにより、色素の回収作業に要する時間を大幅に短縮することができると共に色素の回収量を増加させることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、記録層に色素を用いた情報記録媒体用塗布液、情報記録媒体の製造方法および情報記録媒体に関する。
近年、追記型の情報記録媒体(具体的にはDVD−R)の需要拡大に伴い、情報記録媒体の市場価格が大きく低下しており、いかにして製造コストを低減するかが重要な課題になっている。この製造コストの低減に際しては、情報記録媒体の製品コストに占める色素(記録層を形成する色素)のコストの割合が高いため、色素を無駄なく使用することが重要である。このため、スピンコート法によって記録層を形成する場合、容器等によって閉塞された空間内で基材を回転させることによって基材の表面から振り切られた塗布液(色素と溶媒)を容器等の内壁に付着させ、付着した塗布液を所定の条件下(例えば、90℃で24時間放置)で乾燥させた後、容器等の内壁から剥離して回収して再利用している。
また、DVD−Rの記録層を形成する色素としては、アゾ系色素と共にシアニン系色素が使用されるが、このシアニン系色素を使用するときには、特開平11−39708号公報に記載されているように、記録層の特性やスピンコートによる塗布性能(塗布のし易さ)などを考慮して、2.0重量%付近の濃度の塗布液が一般的に用いられている。また、塗布液については、情報記録媒体を製造する際の塗布工程および乾燥工程において、色素が結晶化して析出しないように、作業性の観点から、塗布液の色素濃度に対して十分に大きな飽和溶解度を有する溶媒を使用するようにしている。例えば、上記公報では、シアニン系色素に対する飽和溶解度が8重量%以上の溶媒を使用することが記載されている。
特開平11−39708号公報(第3頁)
ところが、上記公報に開示された塗布液には、以下の解決すべき課題がある。すなわち、上記公報に開示されているシアニン系色素は、溶媒に対する親和性が高いという性質を有している。このため、塗布液から溶媒が揮発しにくくなる結果、回収した塗布液を上記の条件下で乾燥させたとしても、溶媒が揮発しにくく、溶媒とシアニン系色素との混合体が粘性を有した状態になる。このため、この混合体を容器から掻き取りにくくなる結果、上記公報に開示された塗布液には、剥離作業に長時間を要して情報記録媒体の製造コストが上昇するという課題が存在する。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、回収し易い情報記録媒体用塗布液、製造コストを低減し得る情報記録媒体の製造方法、および製造コストの安価な情報記録媒体を提供することを主目的とする。
上記目的を達成すべく本発明に係る情報記録媒体用塗布液は、色素を、当該色素に対する20℃での飽和溶解度が0.7重量%以上2.5重量%以下の範囲内の溶媒に溶解して構成されている。
また、本発明に係る情報記録媒体の製造方法は、色素を、当該色素に対する20℃での飽和溶解度が0.7重量%以上2.5重量%以下の範囲内の溶媒に溶解して塗布液を作製し、当該塗布液を基材上にスピンコートして記録層を形成する。
また、本発明に係る情報記録媒体は、色素と、当該色素に対する20℃での飽和溶解度が0.7重量%以上2.5重量%以下の範囲内の溶媒とを含む記録層を有している。
本発明に係る情報記録媒体用塗布液によれば、色素に対する20℃での飽和溶解度が0.7重量%以上2.5重量%以下の範囲内の溶媒にその色素を溶解して構成したことにより、例えば、光記録媒体の製造において塗布液を基材上にスピンコートして記録層を形成する際には、塗布液中の色素の濃度を記録層の形成に通常必要となる0.7重量%〜1.5重量%程度に維持しつつ、溶媒の色素に対する親和性を十分に低下させることができる。したがって、回収した塗布液中に含まれている溶媒を揮発させ易くすることができるため、乾燥後における溶媒に対する色素の比率を高めて、色素と溶媒との混合体を粘性を有しない固体状態にすることができる。これにより、例えば、スピンコータから取り外した回収部の内壁面に付着した色素と溶媒との混合体を容易に掻き取って回収することができるため、色素の回収作業に要する時間を大幅に短縮することができる。また、このように色素と溶媒との混合体の回収性を向上させることができる結果、色素の回収量を増加させることもできる。また、混合体に含まれている溶媒の比率を無視できるレベルにまで低減することができる。したがって、色素を再利用する際に、回収した混合体(塗布液)に含まれている溶剤の量についての確認作業を省くことができるため、回収作業に要する時間をさらに短縮することができる結果、情報記録媒体の製造コストを大幅に低減することができる。
また、本発明に係る情報記録媒体の製造方法によれば、色素に対する20℃での飽和溶解度が0.7重量%以上2.5重量%以下の範囲内の溶媒にその色素を溶解して塗布液を作製し、その塗布液を基材上にスピンコートして記録層を形成することにより、上記したように、溶媒の色素に対する親和性を十分に低下させることができるため、色素の回収作業に要する時間を大幅に短縮することができる結果、情報記録媒体の製造コストを大幅に低減することができる。
また、本発明に係る情報記録媒体によれば、色素と、その色素に対する20℃での飽和溶解度が0.7重量%以上2.5重量%以下の範囲内の溶媒(つまり残留溶媒)とを含む記録層を有したことにより、色素を無駄なく使用して低コストで製造できるため、情報記録媒体の製品価格を安価に設定することができる。
以下、添付図面を参照して、本発明に係る情報記録媒体用塗布液、情報記録媒体の製造方法および情報記録媒体の最良の形態について説明する。
光記録媒体10は、本発明に係る情報記録媒体の一例としてのDVD−R規格に対応した光記録媒体であって、図1に示すように、記録可能に構成されたディスク20とディスク30(ダミー基板)とを接着剤40で貼り合わすことによって構成されている。この場合、ディスク20は、グルーブ50が形成された基材(通常、ポリカーボネート樹脂を用いて0.6mm程度の厚みに形成されている)21上に、記録層22、反射層23および保護層24が順次積層されて構成されている。ディスク30は、例えば基材21と同様の材料を用いて構成されている。接着剤40は、紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂などの任意の材料を選択することができ、この接着剤40による接着層は10μm〜200μm程度の厚みに形成されている。
基材21は、ディスク状に形成されて、裏面側(同図中の下面側)からの記録および再生を可能とするために、記録用および再生用レーザー光(波長630nm〜680nm程度)に対して、実質的に透明(好ましくは透過率88%以上)な樹脂あるいはガラスを材料として形成されている。この場合、樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、アモルファスポリオレフィン、TPX、ポリスチレン系樹脂等の各種熱可塑性樹脂を採用することができる。
記録層22は、シアニン系色素等の色素を主成分として30nm〜300nmの厚みに形成されている。反射層23は、Au、Cu、Al、Ag、AgCu等の高反射率金属または合金を材料として、その厚みが50nm以上になるように形成されている。保護層24は、例えば紫外線硬化樹脂等の各種樹脂材料を用いて、0.5μm〜100μm程度の厚さに形成されている。
次に、光記録媒体10の製造方法について説明する。
まず、光記録媒体10の製造に先立ち、記録層22を形成するための塗布液を作製する。具体的には、色素を所定の濃度(記録層22の形成に必要な濃度)で溶媒に溶解して塗布液を作製する。溶媒としては、基材21を侵さず、かつ色素を所定の濃度で溶解し得る最低限の飽和溶解度を有すると共に飽和溶解度が0.7重量%以上2.5重量%以下の範囲内にあるものを使用する。DVD−R規格に対応した光記録媒体では、塗布液中の色素の濃度は、上記の所定の濃度として、通常、0.7重量%以上1.5重量%以下程度の範囲内の値(以下、単に「所定の濃度」ともいう)に設定される。一例として色素を1.0重量%の濃度で含有する塗布液を作製するときには、この色素に対する20℃での飽和溶解度が1.0重量%以上2.5重量%以下、例えば1.5重量%の溶媒を選択して塗布液を作製する。また、このような飽和溶解度の単一溶媒が存在しないときには、飽和溶解度が高い溶媒(単一溶媒)に、この溶媒よりも飽和溶解度の低い溶媒を混合して所望の飽和溶解度の溶媒を作製する。また、特定の溶媒に対して所望の飽和溶解度になるように、色素側を分子設計する方法を採用することもできる。
次いで、射出成形によって基材21を作製する。続いて、基材21(具体的には、基材21におけるグルーブ50の形成面)上に塗布液を塗布して記録層22を形成する。一例として、基材21をスピンコータ(塗布装置)内に配設し、基材21を回転させた状態で塗布液を基材21の表面の中央部近傍に滴下し、その後回転数を上昇させて塗布液を表面全体に展延させると共に余剰の塗布液を振り切ることにより、記録層22を基材21の表面に均一な厚みで形成する。この場合、基材21上から振り切られた塗布液は、基材21を取り囲むようにしてスピンコータに設置された容器状の回収部の内壁面に付着する。次いで、記録層22上に反射層23をスパッタ法で形成する。最後に、スピンコート法を用いて反射層23上に保護層を24を形成する。これにより、図1に示される光記録媒体10が完成する。
また、上記した光記録媒体10の製造方法を繰り返し実施して光記録媒体10を製造しつつ、スピンコータの回収部に付着している塗布液の量を定期的にチェックする。このチェックを行った際に、付着している塗布液の量が多くなっているときには、スピンコータの回収部を交換すると共に、スピンコータから取り外した回収部を乾燥機に搬入して、所定の条件下(例えば、90℃の雰囲気中で24時間放置)で塗布液を乾燥させる。これにより、塗布液中の溶媒が徐々に揮発するため、当初の液体状態から飴状を経て、粘性を有しない固体状態に移行する。次いで、乾燥機から回収部を取り出すと共に、回収部の内壁面に付着した色素と溶媒との混合体を掻き取って回収して、新たな塗布液を作製する際に再利用する。
この光記録媒体10の製造に使用される光記録媒体用塗布液は、色素を、この色素に対する20℃での飽和溶解度が0.7重量%以上2.5重量%以下の範囲内の溶媒に溶解して作製されている。このため、この光記録媒体用塗布液および光記録媒体の製造方法によれば、塗布液中の色素の濃度を記録層22の形成に通常必要な0.7重量%〜1.5重量%程度に維持しつつ、溶媒の色素に対する親和性を十分に低下させることができる。したがって、回収した塗布液中に含まれている溶媒を揮発させ易くすることができるため、乾燥後における溶媒に対する色素の比率を高めて、色素と溶媒との混合体を粘性を有しない固体状態にすることができる。これにより、例えばスピンコータから取り外した回収部の内壁面に付着した色素と溶媒との混合体を容易に掻き取って回収することができるため、色素の回収作業に要する時間を大幅に短縮することができる。また、このように色素と溶媒との混合体の回収性を向上させることができる結果、色素の回収量を増加させることもできる。また、混合体に含まれている溶媒の比率を無視できるレベルにまで低減することができる。したがって、色素を再利用する際に、回収した混合体(塗布液)に含まれている溶剤の量についての確認作業を省くことができるため、回収作業に要する時間をさらに短縮することができる結果、光記録媒体10の製造コストを大幅に低減することができる。また、この光記録媒体用塗布液を使用して製造された光記録媒体によれば、色素を無駄なく使用して低コストで製造できるため、製品価格を安価に設定することができる。
次に、実施例を挙げて本発明に係る光記録媒体用塗布液について詳細に説明する。
まず、本実施例で採用した試験方法および評価方法を説明する。試験方法では、溶媒の選定や調整、または色素の分子設計などを行うことにより、組み合わされる色素に対する飽和溶解度がそれぞれ異なる6種類の溶媒を作製する。次いで、色素(具体的には、シアニン系色素)を溶解させることにより、塗布液についてのサンプルを6種類作製する。続いて、作製した各サンプルを試験基板上にそれぞれ塗布した後に、内壁に塗布液が付着した回収部(回収用容器)を同一の条件下(95℃の雰囲気中で50時間放置)で乾燥させる。次いで、乾燥後の各サンプル(溶媒とシアニン系色素の混合体)に含まれている残留溶媒の量を測定する。一方、評価方法では、測定した残留溶媒の量が重量比で10%以下となるサンプルについては、乾燥後の混合体が殆ど粘性を有していないために、回収し易いと判別し、測定した残留溶媒の量が重量比で10%を超えるサンプルについては、乾燥後の混合体が粘性を有している場合が殆どのため、回収し難いと判別する。
(実施例1)
下記一般式(I)で示されるシアニン系色素を、このシアニン系色素に対する20℃での飽和溶解度が1.5重量%の溶媒(テトラフルオロプロパノール)に、濃度1.0質量%となるように溶解して塗布液のサンプルを作製した。
Figure 2006040491
(実施例2)
下記一般式(II)で示されるシアニン系色素を、このシアニン系色素に対する20℃での飽和溶解度が2.5重量%の溶媒(テトラフルオロプロパノールとエタノールとを80:20の比率で混合したもの)に、濃度1.0質量%となるように溶解して塗布液のサンプルを作製した。
Figure 2006040491
(実施例3)
下記一般式(III)で示されるシアニン系色素を、このシアニン系色素に対する20℃での飽和溶解度が0.7重量%の溶媒(ダイアセトンアルコール)に、濃度0.7質量%となるように溶解して塗布液のサンプルを作製した。
Figure 2006040491
(比較例1)
下記一般式(IV)で示されるシアニン系色素を、このシアニン系色素に対する20℃での飽和溶解度が2.7重量%の溶媒(テトラフルオロプロパノール)に、濃度1.0質量%となるように溶解して塗布液のサンプルを作製した。
Figure 2006040491
(比較例2)
下記一般式(V)で示されるシアニン系色素を、このシアニン系色素に対する20℃での飽和溶解度が4.5重量%の溶媒(テトラフルオロプロパノール)に、濃度1.0質量%となるように溶解して塗布液のサンプルを作製した。
Figure 2006040491
(比較例3)
下記一般式(VI)で示されるシアニン系色素(ホルマザン(F−type))を、このシアニン系色素に対する20℃での飽和溶解度が5.5重量%の溶媒(テトラフルオロプロパノール)に、濃度1.0質量%となるように溶解して塗布液のサンプルを作製した。
Figure 2006040491
上記実施例1〜3で作製した各サンプル、および比較例1〜3で作製した各サンプルについての残留溶媒の量を、上記の試験方法に従って測定し、測定した各サンプルの残留溶媒の量に基づいて、各サンプルについての「回収のし易さ」を評価した。この評価結果を図2に示す。
図2によれば、飽和溶解度が2.5重量%以下の溶媒を使用して作製した各サンプルは、乾燥後の残留溶媒の量がすべて15%以下となって、回収のし易さが良好であることを確認できた(同図中に○印を付する)。これに対して、飽和溶解度が2.5重量%を超える溶媒を使用して作製した各サンプルは、乾燥後の残留溶媒の量がすべて20%以上となって、回収し難いことを確認できた(同図中に×印を付する)。
なお、本発明に係る情報記録媒体用塗布液は、記録層および反射層を各々形成して貼り合わせたいわゆる両面の光記録媒体にも適用できるのは勿論である。上記の例では、塗膜(記録層)を形成するのに必要な塗布量に比べて基材21上から振り切られる量(つまり、使用されない量)が多いために、色素を回収する必要性の高いスピンコート法について説明したが、スプレーコート法、ディップコート法、およびダイノズルを用いたエクストルージョン法などにおいても、本発明に係る情報記録媒体用塗布液を用いることにより、使用した色素の回収性を高めることができる。また、本発明における色素としてシアニン色素を使用する場合には、シアニン色素の中でも結晶性の低い色素(低結晶性色素)であるインドレニン系シアニン色素が好適である。
DVD−Rの構成を示す部分断面図である。 実施例1〜3として作製したサンプル、および比較例1〜3として作製したサンプルの評価結果を示す評価結果図である。
符号の説明
10 光記録媒体(DVD−R)
20 ディスク
21 基材
22 記録層
23 反射層
24 保護層
30 ダミー基板
40 接着剤

Claims (3)

  1. 色素を、当該色素に対する20℃での飽和溶解度が0.7重量%以上2.5重量%以下の範囲内の溶媒に溶解して構成されている情報記録媒体用塗布液。
  2. 色素を、当該色素に対する20℃での飽和溶解度が0.7重量%以上2.5重量%以下の範囲内の溶媒に溶解して塗布液を作製し、当該塗布液を基材上に塗布して記録層を形成する情報記録媒体の製造方法。
  3. 色素と、当該色素に対する20℃での飽和溶解度が0.7重量%以上2.5重量%以下の範囲内の溶媒とを含む記録層を有している情報記録媒体。
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