JP2006040472A - 磁気記録媒体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 長期保存性及び電磁変換特性に優れた磁気記録媒体を提供すること。
【解決手段】 非磁性支持体上に、放射線硬化性化合物含有層を放射線照射により硬化させた放射線硬化層及び強磁性微粉末を結合剤中に分散した磁性層を、この順に有する磁気記録媒体であって、前記放射線硬化性化合物は分子内に脂環式骨格を有し、2〜3個の放射線硬化官能基をもつポリエステル(メタ)アクリレート化合物を含むことを特徴とする磁気記録媒体。放射線硬化層と磁性層との間に、非磁性粉末を結合剤中に分散した非磁性層を有していてもよい。

Description

本発明は、磁気テープや磁気ディスク等の磁気記録媒体に関する。
オーディオ用、ビデオ用、コンピュータ用などのテープ状磁気記録媒体及びフレキシブルディスクなどのディスク状磁気記録媒体として、γ−酸化鉄、Co含有酸化鉄、酸化クロム、強磁性金属粉末などの強磁性粉末を結合剤中に分散させた磁性層を支持体上に設けた磁気記録媒体が用いられている。磁気記録媒体に用いられている支持体としては、一般にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどが用いられている。これらの支持体は延伸され高度に結晶化されているため機械的強度が強く耐溶剤性に優れている。
強磁性粉末を結合剤中に分散させた塗布液を支持体に塗布して得られる磁性層は、強磁性粉末の充填度が高く破断伸びが小さく脆いため、機械的な力を加えることにより簡単に破壊され、支持体から剥離することがある。そこで、支持体上に下塗り層を設けて、磁性層を支持体上に強く接着させることが行われている。
例えば、支持体上に、電子線などの放射線により硬化する官能基をもつ化合物、即ち放射線硬化性化合物を用いて放射線硬化層を形成した磁気記録媒体が知られている(特許文献1〜2参照)。しかし、これらの磁気記録媒体は、下塗り層の塗膜強度が不十分であり、塗布工程でパスロールに貼りつく等のハンドリング故障を起こしやすいという問題点があった。また、保存中に下塗り層が吸湿膨張しやすく、磁気テープの幅が変化し、電磁変換特性が低下しやすいという問題点もあった。特に、微粒子を用いた高い電磁変換特性を要求される磁気記録媒体においてはテープの幅変化による電磁変換特性への影響が顕著であった。
特開昭60−133530号公報 特開昭57−040747号公報
本発明が解決しようとする課題は、長期保存性及び電磁変換特性に優れた磁気記録媒体を提供することである。
本発明が解決しようとする上記課題は、下記(1)又は(2)によって解決された。
(1)非磁性支持体上に、放射線硬化性化合物含有層を放射線照射により硬化させた放射線硬化層及び強磁性微粉末を結合剤中に分散した磁性層を、この順に有する磁気記録媒体であって、前記放射線硬化性化合物は分子内に脂環式骨格を有し、2〜3個の放射線硬化官能基をもつポリエステル(メタ)アクリレート化合物を含むことを特徴とする磁気記録媒体、
(2)非磁性支持体上に、放射線硬化性化合物含有層を放射線照射により硬化させた放射線硬化層、非磁性粉末を結合剤中に分散した非磁性層及び強磁性微粉末を結合剤中に分散した磁性層を、この順に有する磁気記録媒体であって、前記放射線硬化性化合物は分子内に脂環式骨格を有し、2〜3個の放射線硬化官能基をもつポリエステル(メタ)アクリレート化合物を含むことを特徴とする磁気記録媒体。
シクロヘキサン環等の脂環式骨格は比較的疎水性であり、この脂環式骨格を有することでポリエステル(メタ)アクリレートの親水性を抑制できるので、保存による放射線硬化層の吸湿膨張を抑制できる。その結果、磁気記録媒体全体の膨張も抑制できる。特にコンピューター用バックアップテープ等のデジタル記録において長期保存でのトラックずれ等のエラー発生を減少させることができる。
さらに脂環式骨格が環状構造なので高い力学強度の放射線硬化層が得ることができ、塗布工程でのパスロールへの粘着による貼りつき故障も起きにくくすることもできる。
また本発明に使用する放射線硬化性化合物はエステル結合を有しているのでPET、PEN、ポリアミド支持体との密着性に優れ、塗膜の脱落がしにくいために繰り返し走行での故障もしにくくなる作用もある。
本発明に使用するポリエステル(メタ)アクリレート硬化層を支持体上に設けることで支持体の突起を埋めることもでき、平滑性に優れた磁気記録媒体が得られ高い電磁変換特性も得ることができる。
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
I.放射線硬化層
本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体上に、放射線硬化性化合物含有層を放射線照射により硬化させた放射線硬化層を有する。
本発明に使用するポリエステル(メタ)アクリレートは分子内に脂環式骨格を有し、2〜3個の放射線硬化官能基を有するものである。脂環式骨格とは、単環又は多環の炭化水素構造を意味し、シクロ骨格、ビシクロ骨格、トリシクロ骨格、水添ナフタレン骨格、ノルボルナン骨格等が含まれる。炭化水素環状構造は、不飽和結合を含んでも良いが、不飽和結合を含まない飽和結合のみが好ましい。
脂環式骨格を有するポリエステル(メタ)アクリレートは以下の方法で得たものを使用することができる。ここで、(ジ)カルボン酸成分、又はモノ(ジ)オールの少なくとも一方の原料に脂環式骨格が含まれてい化合物を使用してエステル化するものである。
(1)ジカルボン酸化合物1モルに対して分子内に1個の放射線硬化性官能基と1個のOH基をもつ化合物を2モルを脱水縮合反応させたもの。
(2)両末端カルボン酸のポリエステル化.合物に放射線硬化性官能基とOH基をもつ化合物を脱水縮合反応させたもの。
(3)末端OH基をもつポリエステルポリオールに放射線硬化官能基とカルボン酸をもつ化合物を反応させたもの。
(1)のジカルボン酸化合物として、トリシクロデカンジカルボン酸、水添ナフタレンジカルボン酸、水添ダイマー酸等の脂環式骨格をもつジカルボン酸を使用することができる。中でも水添ダイマー酸を用いることが好ましい。
水添ダイマー酸の構造を以下に示す。
Figure 2006040472
水添ダイマー酸
(1)の分子内に1個の放射線硬化性官能基と1個のOH基をもつ化合物としては、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートを用いることができる。これらの中でも、ヒドロシキエチルアクリレートを用いることが好ましい。
(2)の末端カルボン酸のポリエステル化合物とは、グリコール成分に対して過剰のジカルボン酸を脱水縮合でエステル交換反応させて得られる、分子の両末端にカルボン酸を有するポリエステル化合物である。脂環式骨格を有するジカルボン酸、グリコールを用いることで脂環式骨格を導入できる。
ジカルボン酸成分としては、トリシクロデカンジカルボン酸、水添ナフタレンジカルボン酸、水添ダイマー酸等の脂環式骨格をもつジカルボン酸を使用できる。中でも好ましいものは水添ダイマー酸である。
グリコール成分としてはシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、トリシクロデカンジメタノール、水添ダイマージオール等を使用できる。中でも好ましいものは水素化ビスフェノールA及び水添ダイマージオールである。
水添ダイマージオールの構造を以下に示す。
Figure 2006040472
水添ダイマージオール
放射線硬化性官能基とOH基とをもつ化合物は(1)と同様のものを用いることができる。
上記以外の末端カルボン酸化合物としてはロジン酸を用いることもできる。この場合はロジン酸1モルに対して分子内に1個のOH基及び2個ないし3個の放射線硬化性官能基をもつ化合物1モルを反応させてポリエステル(メタ)アクリレートを得ることができる。分子内に1個のOH基及び2個ないし3個の放射線硬化性官能基をもつ化合物としてはペンタエリスリトールのトリアクリレートがある。
(3)の末端OH基をもつポリエステルポリオールはジカルボン酸に対して過剰のグリコールを脱水縮合でエステル交換反応させて得られる、分子両末端にOH基をもつポリエステルジオールであり、(2)と同様の脂環式骨格を有するジカルボン酸、グリコールを用いることで脂環式骨格を導入できる。
(3)に用いることのできる放射線硬化官能基とカルボン酸をもつ化合物としてはアクリル酸、メタクリル酸、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸が挙げられる。これらの中でもアクリル酸が好ましい。
(2)及び(3)のグリコール成分として脂環式骨格を持たない公知の化合物を必要により用いてもよい。脂環式骨格を持たないグリコール成分としてはポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール等が好ましい。
本発明に使用するポリエステル(メタ)アクリレートの分子量は、200〜3,000が好ましく、300〜1,500がより好ましい。分子量が上記範囲であると、粘度が適度となり磁気記録媒体の平滑性が良好となる。
ポリエステル(メタ)アクリレート中の脂環式骨格部分の含有量は5〜50重量%であることが好ましい。含有量が上記範囲であると硬化性が良好となり、十分な塗膜強度を得ることができる。
ポリエステル(メタ)アクリレートの粘度は10〜4,000cpsであることが好ましい。粘度が上記範囲であると平滑性が良好となる。
ポリエステル(メタ)アクリレートの放射線硬化性官能基はアクリロイル基であることが好ましい。アクリロイル基は1分子中に2〜3個であることが好ましい。この範囲であると、硬化収縮が起きにくく、平滑性が良好となる。
本発明に使用する放射線硬化型化合物であるポリエステル(メタ)アクリレートは、分子中にエーテル結合を有しないことが好ましい。ここで、「エーテル結合」とは、鎖状のエーテル結合の他に環状のエーテル結合をも含む意味である。エーテル結合は親水的な性質を有するので、疎水的な脂環式骨格の部分構造が発揮する特性を打ち消す方向に作用するからである。
また、本発明に使用する放射線硬化型化合物は分子内に脂環式骨格を有するが、脂環式骨格に含まれる炭素数が多いほど疎水的になるので好ましい。「脂環式骨格に含まれる炭素数」とは、脂環式骨格構造及びこれに直接結合する炭化水素部分に含まれる炭素数をいう。脂環式骨格に含まれる炭素数に、これに無置換アルキル基が結合する場合はそのアルキル基に含まれる全炭素数を加え、又、置換アルキレン基が結合する場合には脂環式骨格に結合する炭素から酸素原子、窒素原子、カルボニル基などが結合する炭素原子までの部分を構成する炭化水素残基に含まれる炭素原子の数を加えた総数をいう。2つの脂環式骨格を結合するアルキレン基がある場合にはそのアルキレン基に含まれる炭素数を含めた合計炭素数を言う。脂環式骨格を有するポリエステル(メタ)アクリレートは、脂環式骨格に含まれる炭素数が13以上であることが好ましく、15〜36であることがより好ましい。例えば、水添ビスフェノールAとアジピン酸との2/1モル反応物に含まれる脂環式骨格に含まれる炭素数は15であり、水添ダイマー酸/ヒドロキシエチルアクリレート1/2モル反応物、又は、水添ダイマージオール/アクリル酸1/2モル反応物における、脂環式骨格に含まれる炭素数は、それぞれ34又は36である。
本発明においては、放射線硬化性化合物として、上記のポリエステル(メタ)アクリレートに加えて公知の放射線硬化性化合物を併用することもできる。併用する放射線硬化性化合物としては、アクリロイル基を2官能以上有するものが好ましい。
併用する好ましい化合物としては、5−エチル−2−(2−ヒドロキシ−1,1’−ジメチルエチル)−5−(ヒドロキシメチル)−1,3−ジオキサンジアクリレート、テトラヒドロフランジメタノールジアクリレート、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンジアクリレート等の環状構造を有するものや、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等の4官能以上のアクリロイル基を有するものが挙げられる。
放射線硬化層の厚みは0.1から1.0μmが好ましく、0.3〜0.7μmがより好ましい。上記範囲であると、十分な平滑性が得られると共に、支持体との密着性が良好であるため好ましい。
放射線硬化層の硬化後のガラス転移温度(Tg)は80〜150℃であることが好ましく、80〜130℃であることがより好ましい。ガラス転移温度が上記範囲であると塗布工程で粘着故障を生じることがなく、また、好適な塗膜強度が得られるので好ましい。
放射線硬化層の弾性率は1.5〜4GPaであることが好ましい。上記範囲内であると、塗膜が粘着故障を起こすことがなく、また、良好な塗膜強度が得られるため好ましい。
放射線硬化層の表面粗さ(Ra)は、カットオフ値0.25nmにおいて、1〜3nmであることが好ましい。上記範囲内にあると、塗布工程でのパスロールへの貼りつき故障を起こすことがなく、また、十分な磁性層の平滑性が得られるので好ましい。
本発明において硬化反応に使用される放射線は電子線や紫外線を用いることができる。紫外線を使用する場合には前記の化合物に光重合開始剤を添加することが必要となる。電子線硬化の場合は重合開始剤が不要であり、透過深さも深いので好ましい。
電子線加速器としてはスキャニング方式、ダブルスキャニング方式あるいはカーテンビーム方式が採用できるが、好ましいのは比較的安価で大出力が得られるカーテンビーム方式である。電子線特性としては、好ましくは加速電圧が30〜1,000kV、より好ましくは50〜300kVであり、好ましくは吸収線量が0.5〜20Mrad、より好ましくは2〜10Mradである。加速電圧が上記範囲内であると、十分なエネルギー透過量と、良好なエネルギー効率が得られるので好ましい。電子線を照射する雰囲気は窒素パージにより酸素濃度を200ppm以下にすることが好ましい。酸素濃度が低いと、表面近傍の架橋、硬化反応が阻害されないので好ましい。
紫外線光源としては、水銀灯が用いられる。水銀灯は20〜240W/cmのランプを用い、速度0.3〜20m/分で使用される。基体と水銀灯との距離は一般に1〜30cmであることが好ましい。
紫外線硬化に用いる光重合開始剤として光ラジカル重合開始剤が用いられる。詳細は例えば「新高分子実験学第2巻 第6章 光・放射線重合」(共立出版1995発行、高分子学会編)記載されているものを使用できる。具体例としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルメチルケタール、ベンジルエチルケタール、ベンゾインイソブチルケトン、ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−2ジエトキシアセトフェノン、などがある。芳香族ケトンなどの光重合開始剤の混合比率は、放射線硬化性化合物100重量部に対し好ましくは0.5〜20重量部、より好ましくは2〜15重量部、さらに好ましくは3〜10重量部である。
放射線硬化装置、条件などについては「UV・EB硬化技術」((株)総合技術センター発行)や「低エネルギー電子線照射の応用技術」(2000、(株)シーエムシー発行)などに記載されている公知のものを用いることができる。
II.磁性層
本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体上に強磁性微粉末を結合在中に分散した磁性層を有する。
<強磁性粉末>
本発明における磁性層に含まれる強磁性粉末は、針状及び平板状の強磁性粉末のいずれも用いることができる。針状強磁性粉末として、強磁性金属粉末を用いることが好ましく、平板状強磁性金属粉末として強磁性六方晶フェライト粉末を用いることが好ましい。
(強磁性金属粉末)
本発明の磁気記録媒体に使用される強磁性金属粉末は、針状でありコバルト含有強磁性酸化鉄又は強磁性合金粉末が好ましい。SBET(BET法による比表面積)は好ましくは40〜80m2/gであり、より好ましくは50〜70m2/gである。結晶子サイズは好ましくは12〜25nmであり、より好ましくは13〜22nmであり、特に好ましくは14〜20nmである。長軸長は好ましくは20〜70nmであり、より好ましくは30〜50nmである。
強磁性金属粉末としては、イットリウムを含むFe、Fe−Co、Fe−Ni、Co−Ni−Feが挙げられ、強磁性金属粉末中のイットリウム含有量は、鉄原子に対してイットリウム原子の比、Y/Feが0.5〜20原子%であることが好ましく、更に好ましくは、5〜10原子%である。上記範囲内にあると、強磁性金属粉末が高σS化され、良好な磁気特性と電磁変換特性が得られるので好ましい。また、鉄の含有量が適当であるので良好な磁気特性及び、電磁変換特性が得られるので好ましい。
さらに、鉄100原子%に対して20原子%以下の範囲内で、アルミニウム、ケイ素、硫黄、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、銅、亜鉛、モリブデン、ロジウム、パラジウム、錫、アンチモン、ホウ素、バリウム、タンタル、タングステン、レニウム、金、鉛、リン、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、テルル、ビスマス等を含むことができる。また、強磁性金属粉末が少量の水、水酸化物または酸化物を含むものなどであってもよい。
本発明の、コバルト、イットリウムを導入した強磁性金属粉末の製造方法の一例を示す。
第一鉄塩とアルカリを混合した水性懸濁液に、酸化性気体を吹き込むことによって得られるオキシ水酸化鉄を出発原料とする例を挙げることができる。
このオキシ水酸化鉄の種類としては、α−FeOOHが好ましく、その製法としては、第一鉄塩を水酸化アルカリで中和してFe(OH)2の水性懸濁液とし、この懸濁液に酸化性ガスを吹き込んで針状のα−FeOOHとする第一の製法がある。一方、第一鉄塩を炭酸アルカリで中和してFeCO3の水性懸濁液とし、この懸濁液に酸化性気体を吹き込んで紡錘状のα−FeOOHとする第二の製法がある。このようなオキシ水酸化鉄は第一鉄塩水溶液とアルカリ水溶液とを反応させて水酸化第一鉄を含有する水溶液を得て、これを空気酸化等により酸化して得られたものであることが好ましい。この際、第一鉄塩水溶液にNi塩や、Ca塩、Ba塩、Sr塩等のアルカリ土類元素の塩、Cr塩、Zn塩などを共存させても良く、このような塩を適宜選択して用いることによって粒子形状(軸比)などを調製することができる。
第一鉄塩としては、塩化第一鉄、硫酸第一鉄等が好ましい。またアルカリとしては水酸化ナトリウム、アンモニア水、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム等が好ましい。また、共存させることができる塩としては、塩化ニッケル、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化ストロンチウム、塩化クロム、塩化亜鉛等の塩化物が好ましい。
次いで、鉄にコバルトを導入する場合は、イットリウムを導入する前に、硫酸コバルト、塩化コバルト等のコバルト化合物の水溶液を前記のオキシ水酸化鉄のスラリーに撹拌混合する。コバルトを含有するオキシ水酸化鉄のスラリーを調製した後、このスラリーにイットリウムの化合物を含有する水溶液を添加し、撹拌混合することによって導入することができる。
本発明の強磁性金属粉末には、イットリウム以外にもネオジム、サマリウム、プラセオジウム、ランタン等を導入することができる。これらは、塩化イットリウム、塩化ネオジム、塩化サマリウム、塩化プラセオジウム、塩化ランタン等の塩化物、硝酸ネオジム、硝酸ガドリニウム等の硝酸塩などを用いて導入することができ、これらは、二種以上を併用しても良い。
(強磁性六方晶フェライト粉末)
本発明において、平板状強磁性粉末として、強磁性六方晶フェライト粉末を用いることが好ましい。
強磁性六方晶フェライト粉末としてバリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、鉛フェライト、カルシウムフェライトの各置換体、Co置換体等がある。具体的にはマグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト、スピネルで粒子表面を被覆したマグネトプランバイト型フェライト、更に一部スピネル相を含有したマグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト等が挙げられ、その他所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、B、Ge、Nb、Zrなどの原子を含んでもかまわない。一般にはCo−Ti、Co−Ti−Zr、Co−Ti−Zn、Ni−Ti−Zn、Nb−Zn−Co、Sb−Zn−Co、Nb−Zn等の元素を添加した物を使用することができる。原料・製法によっては特有の不純物を含有するものもある。
平板状強磁性粉末の板径は10〜50nmであることが好ましい。粒子サイズは六角板径で10〜50nmであることが好ましい。
磁気抵抗ヘッドで再生する場合は、低ノイズにする必要があり、板径は10〜40nmが好ましい。上記範囲内にあると、熱揺らぎの影響を受けず安定な磁化が望めるとともに、ノイズが低いため、高密度磁気記録に好適であり、好ましい。
板状比(板径/板厚)は1〜15が望ましい。さらに好ましくは2〜7である。板状比が上記範囲内にあると、磁性層中の充填性が高く、また十分な配向性が得られるので好ましい。さらに、粒子間のスタッキングによるノイズが小さくなるので好ましい。
この粒子サイズ範囲のSBET(BET法による比表面積)は10〜200m2/gを示す。比表面積は概ね粒子板径と板厚からの算術計算値と符号する。結晶子サイズは好ましくは50〜450Å、より好ましくは100〜350Åである。
粒子板径・板厚の分布は通常狭いほど好ましい。数値化は困難であるが粒子TEM写真より500粒子を無作為に測定する事で比較できる。分布は正規分布ではない場合が多いが、計算して平均サイズに対する標準偏差で表すとσ/平均サイズ=0.1〜2.0であることが好ましい。粒子サイズ分布をシャープにするには粒子生成反応系をできるだけ均一にすると共に、生成した粒子に分布改良処理を施すことも行われている。たとえば酸溶液中で超微細粒子を選別的に溶解する方法等も知られている。
強磁性六方晶フェライト粉末で測定される抗磁力Hcは39.8〜398kA/m(500〜5,000Oe)程度まで作成できる。Hcは高い方が高密度記録に有利であるが、記録ヘッドの能力で制限される。通常63.7〜318kA/m(800〜4,000Oe)程度であるが、好ましくは119〜279kA/m(1,500〜3500Oe)である。ヘッドの飽和磁化が1.4テスラーを越える場合は、159kA/m(2,000Oe)以上にすることが好ましい。Hcは粒子サイズ(板径・板厚)、含有元素の種類と量、元素の置換サイト、粒子生成反応条件等により制御できる。
飽和磁化σsは40〜80A・m2/kg(emu/g)であることが好ましい。σsは高い方が好ましいが微粒子になるほど小さくなる傾向がある。σs改良のためマグネトプランバイトフェライトにスピネルフェライトを複合すること、含有元素の種類と添加量の選択等が良く知られている。またW型六方晶フェライトを用いることも可能である。
強磁性六方晶フェライト粉末を分散する際に強磁性六方晶フェライト粉末表面を分散媒、ポリマーに合った物質で処理することも行われている。表面処理材は無機化合物、有機化合物が使用される。主な化合物としてはSi、Al、P、等の酸化物または水酸化物、各種シランカップリング剤、各種チタンカップリング剤が代表例である。量は強磁性六方晶フェライト粉末に対して0.1〜10%である。強磁性六方晶フェライト粉末のpHも分散に重要である。通常4〜12程度で分散媒、ポリマーにより最適値があるが、媒体の化学的安定性、保存性から6〜10程度が好ましい。強磁性六方晶フェライト粉末に含まれる水分も分散に影響する。分散媒、ポリマーにより最適値があるが通常0.01〜2.0%が好ましい。
強磁性六方晶フェライト粉末の製法としては、(1)酸化バリウム・酸化鉄・鉄を置換する金属酸化物とガラス形成物質として酸化ホウ素等を所望のフェライト組成になるように混合した後溶融し、急冷して非晶質体とし、次いで再加熱処理した後、洗浄・粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得るガラス結晶化法、(2)バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後100℃以上で液相加熱した後洗浄・乾燥・粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る水熱反応法、(3)バリウムフェライト組成金属塩溶液をアルカリで中和し、副生成物を除去した後乾燥し1,100℃以下で処理し、粉砕してバリウムフェライト結晶粉体を得る共沈法、等があるが、本発明は製法を選ばない。
<結合剤>
磁性層に用いる結合剤としてはポリウレタン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレートなどを共重合したアクリル系樹脂、ニトロセルロースなどのセルロース系樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアルキラール樹脂などから単独あるいは複数の樹脂を混合して用いることができる。これらの中で好ましいのはポリウレタン樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル系樹脂である。
結合剤には強磁性粉末、非磁性粉体の分散性を向上させるためこれらの粉体表面に吸着する官能基(極性基)を持つことが好ましい。好ましい官能基としては−SO3M、−SO4M、−PO(OM)2、−OPO(OM)2、−COOM、>NSO3M、>NRSO3M、−NR12、−N+123-などがある。ここでMは水素又はNa、K等のアルカリ金属を表し、Rはアルキレン基を表し、R1、R2およびR3は独立にアルキル基又はヒドロキシアルキル基又は水素、X-はCl-、Br-等のハロゲン化物イオンを表す。結合剤中の官能基の量は10〜200μeq/gが好ましく、30〜120μeq/gが更に好ましい。この範囲内にあると、良好な分散性が得られるので好ましい。
結合剤には吸着官能基のほかにイソシアネート硬化剤と反応して架橋構造を形成し塗膜強度を向上させるために−OH基などの活性水素を持つ官能基を付与することが好ましい。好ましい量は0.1〜2meq/gである。
結合剤の分子量は重量平均分子量で10,000〜200,000が好ましく、20,000〜100,000が更に好ましい。この範囲内にあると、塗膜強度が十分であり、耐久性が良好であり、また分散性が向上するので好ましい。
好ましい結合剤であるポリウレタン樹脂は例えば「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(岩田敬治 編、1986年 日刊工業新聞社)に詳しく記載されているが、通常、長鎖ジオール、短鎖ジオール(鎖延長剤と呼ばれることもある)とジイソシアネート化合物の付加重合によって得られる。長鎖ジオールは分子量500〜5,000のポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリエーテルエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリオレフィンジオールなどが用いられる。この長鎖ポリオールの種類によりポリエステルウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリエーテルエステルウレタン、ポリカーボネートウレタンなどと呼ばれる。
ポリエステルジオールとしてはアジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、などの脂肪族二塩基酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族二塩基酸とグリコールとの縮重合によって得られる。グリコール成分としてはエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールAなどがある。また、ポリエステルジオールにはこのほかに、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトンを開環重合したポリカプロラクトンジオール、ポリバレロラクトンジオールなども用いることができる。
ポリエステルジオールは耐加水分解性の観点で分岐側鎖をもつもの、芳香族、脂環族の原料から得られるものが好ましい。
ポリエーテルジオールとしてはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、やビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールP、水素化ビスフェノールAなどの芳香族グリコールや脂環族ジオールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加重合したものなどがある。
これらの長鎖ジオールは複数の種類のものを併用、混合して用いることもできる。
短鎖ジオールとしては上記ポリエステルジオールのグリコール成分に例示したものと同じ化合物群の中から選ぶことができる。また3官能以上の多価アルコール例えばトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどを少量併用すると分岐構造のポリウレタン樹脂が得られ溶液粘度を低下させたり、ポリウレタンの末端のOH基を増やすことでイソシアネート系硬化剤との硬化性を高めることができる。
ジイソシアネート化合物としてはMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)、2,4−TDI(トリレンジイソシアネート)、2,6−TDI、1,5−NDI(ナフタレンジイソシアネート)、TODI(トリジンジイソシアネート)、p−フェニレンジイソシアネート、XDI(キシリレンジイソシアネート)などの芳香族ジイソシアネート、トランスシクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、IPDI(イソホロンジイソシアネート)、H6XDI(水素添加キシリレンジイソシアネート)、H12MDI(水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート)などの脂肪族、脂環族ジイソシアネートなどが用いられる。
ポリウレタン樹脂中の長鎖ジオール/短鎖ジオール/ジイソシアネートの好ましい組成は(80〜15重量%)/(5〜40重量%)/(15〜50重量%)である。
ポリウレタン樹脂のウレタン基濃度は1〜5meq/gが好ましく、1.5〜4.5が更に好ましい。この範囲より少ないと力学強度が小さく、多すぎると溶液粘度が高く分散性が低下する。
ポリウレタン樹脂のガラス転移温度は0〜200℃が好ましく、更には40〜160℃である。この範囲より低いと耐久性が低下し、高すぎるとカレンダー成形性が低下し電磁変換特性が低下する。
ポリウレタン樹脂に前述した吸着官能基(極性基)を導入する方法としては官能基を長鎖ジオールのモノマーの一部に用いる方法、短鎖ジオールの一部に用いる方法やポリウレタンを重合した後、高分子反応で極性基を導入する方法などがある。
塩化ビニル系樹脂としては塩化ビニルモノマーに種々のモノマーと共重合したものが用いられる。
共重合モノマーとしては酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの脂肪酸ビニルエステル類、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどのアクリレート、メタクリレート類、アリルメチルエーテル、アリルエチルエーテル、アリルプロピルエーテル、アリルブチルエーテルなどのアルキルアリルエーテル類、その他スチレン、α−メチルスチレン、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、エチレン、ブタジエン、アクリルアミド、更に官能基をもつ共重合モノマーとしてビニルアルコール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、2−ヒドロキシプロピルアリルエーテル、3−ヒドロキシプロピルアリルエーテル、p−ビニルフェノール、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、ホスホエチル(メタ)アクリレート、スルホエチル(メタ)アクリレート、p−スチレンスルホン酸、及びこれらのNa塩、K塩などが用いられる。
塩化ビニル系樹脂中の塩化ビニルモノマーの組成は60〜95重量%が好ましい。上記範囲内にあると、良好な力学強度が得られると共に、溶剤溶解性が良好で、好適な溶液粘度のために良好な分散性が得られるので好ましい。
吸着官能基(極性基)、ポリイソシアネート系硬化剤との硬化性を高めるための官能基の好ましい量は前述したとおりである。これらの官能基の導入方法は上記の官能基含有モノマーを共重合しても良いし、塩ビ系樹脂を共重合した後、高分子反応で官能基を導入しても良い。
好ましい重合度は200〜600、更に好ましくは240〜450である。この範囲内にあると、良好な力学強度が得られると共に、好適な溶液粘度のために良好な分散性が得られるので好ましい。
本発明に使用する結合剤を架橋、硬化させ塗膜の力学強度や耐熱性高めるために硬化剤を用いることができる。好ましい硬化剤としてポリイソシアネート化合物がある。ポリイソシアネート化合物は3官能以上のポリイソシアネートが好ましい。
具体的にはトリメチロールプロパン(TMP)にTDI(トリレンジイソシアネート)を3モル付加した化合物、TMPにHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)を3モル付加した化合物、TMPにIPDI(イソホロンジイソシアネート)を3モル付加した化合物、TMPにXDI(キシリレンジイソシアネート)を3モル付加した化合物、などアダクト型ポリイソシアネート化合物。TDIの縮合イソシアヌレート型3量体、TDIの縮合イソシアヌレート5量体、TDIの縮合イソシアヌレート7量体、及びこれらの混合物。HDIのイソシアヌレート型縮合物、IPDIのイソシアヌレート型縮合物。さらにクルードMDIなどがある。
これらの中で好ましいのはTMPにTDIを3モル付加した化合物、TDIのイソシアヌレート型3量体などである。
イソシアネート系硬化剤以外に電子線あるいは紫外線などの放射線硬化性の硬化剤を用いても良い。この場合放射線硬化性官能基としてアクリロイル基またはメタクリロイル基を分子内に2個以上、好ましくは3個以上有する硬化剤を用いることができる。例えばTMP(トリメチロールプロパン)のトリアクリレート、ペンタエリスリトールのテトラアクリレート、ウレタンアクリレートオリゴマーなどがある。この場合、硬化剤のほかに結合剤にも(メタ)アクリロイル基を導入するのが好ましい。紫外線硬化の場合はこのほかに光増感剤が併用される。
硬化剤は結合剤100重量部に対して0〜80重量部添加するのが好ましい。上記範囲内にあると分散性が良好であるので好ましい。
結合剤の添加量は磁性層の場合は強磁性粉末100重量部に対して、5〜30重量部が好ましく、10〜20重量部が更に好ましい。
本発明における磁性層には、必要に応じて添加剤を加えることができる。添加剤としては、研磨剤、潤滑剤、分散剤・分散助剤、防黴剤、帯電防止剤、酸化防止剤、溶剤、カーボンブラックなどを挙げることができる。
これら添加剤としては、例えば、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、グラファイト、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、シリコーンオイル、極性基を持つシリコーン、脂肪酸変性シリコーン、フッ素含有シリコーン、フッ素含有アルコール、フッ素含有エステル、ポリオレフィン、ポリグリコール、ポリフェニルエーテル、フェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸基、フェネチルホスホン酸、α−メチルベンジルホスホン酸、1−メチル−1−フェネチルホスホン酸、ジフェニルメチルホスホン酸、ビフェニルホスホン酸、ベンジルフェニルホスホン酸、α−クミルホスホン酸、トルイルホスホン酸、キシリルホスホン酸、エチルフェニルホスホン酸、クメニルホスホン酸、プロピルフェニルホスホン酸、ブチルフェニルホスホン酸、ヘプチルフェニルホスホン酸、オクチルフェニルホスホン酸、ノニルフェニルホスホン酸等の芳香族環含有有機ホスホン酸およびそのアルカリ金属塩、オクチルホスホン酸、2−エチルヘキシルホスホン酸、イソオクチルホスホン酸、イソノニルホスホン酸、イソデシルホスホン酸、イソウンデシルホスホン酸、イソドデシルホスホン酸、イソヘキサデシルホスホン酸、イソオクタデシルホスホン酸、イソエイコシルホスホン酸等のアルキルホスホン酸およびそのアルカリ金属塩、リン酸フェニル、リン酸ベンジル、リン酸フェネチル、リン酸α−メチルベンジル、リン酸1−メチル−1−フェネチル、リン酸ジフェニルメチル、リン酸ビフェニル、リン酸ベンジルフェニル、リン酸α−クミル、リン酸トルイル、リン酸キシリル、リン酸エチルフェニル、リン酸クメニル、リン酸プロピルフェニル、リン酸ブチルフェニル、リン酸ヘプチルフェニル、リン酸オクチルフェニル、リン酸ノニルフェニル等の芳香族リン酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、リン酸オクチル、リン酸2−エチルヘキシル、リン酸イソオクチル、リン酸イソノニル、リン酸イソデシル、リン酸イソウンデシル、リン酸イソドデシル、リン酸イソヘキサデシル、リン酸イソオクタデシル、リン酸イソエイコシル等のリン酸アルキルエステルおよびそのアルカリ金属塩、アルキルスルホン酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、フッ素含有アルキル硫酸エステルおよびそのアルカリ金属塩、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ステアリン酸ブチル、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、エルカ酸等の炭素数10〜24の不飽和結合を含んでも分岐していてもよい一塩基性脂肪酸およびこれらの金属塩、またはステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸アミル、ステアリン酸イソオクチル、ミリスチン酸オクチル、ラウリル酸ブチル、ステアリン酸ブトキシエチル、アンヒドロソルビタンモノステアレート、アンヒドロソルビタンジステアレート、アンヒドロソルビタントリステアレート等の炭素数10〜24の不飽和結合を含んでも分岐していてもよい一塩基性脂肪酸と炭素数2〜22の不飽和結合を含んでも分岐していてもよい1〜6価アルコール、炭素数12〜22の不飽和結合を含んでも分岐していてもよいアルコキシアルコールまたはアルキレンオキサイド重合物のモノアルキルエーテルのいずれか一つとからなるモノ脂肪酸エステル、ジ脂肪酸エステルまたは多価脂肪酸エステル、炭素数2〜22の脂肪酸アミド、炭素数8〜22の脂肪族アミンなどが使用できる。また、上記炭化水素基以外にもニトロ基およびF、Cl、Br、CF3、CCl3、CBr3等の含ハロゲン炭化水素等炭化水素基以外の基が置換したアルキル基、アリール基、アラルキル基を持つものでもよい。
また、アルキレンオキサイド系、グリセリン系、グリシドール系、アルキルフエノールエチレンオキサイド付加体等のノニオン界面活性剤、環状アミン、エステルアミド、第四級アンモニウム塩類、ヒダントイン誘導体、複素環類、ホスホニウムまたはスルホニウム類等のカチオン系界面活性剤、カルボン酸、スルホン酸、硫酸エステル基等の酸性基を含むアニオン界面活性剤、アミノ酸類、アミノスルホン酸類、アミノアルコールの硫酸またはリン酸エステル類、アルキルベタイン型等の両性界面活性剤等も使用できる。これらの界面活性剤については、「界面活性剤便覧」(産業図書株式会社発行)に詳細に記載されている。
上記分散剤、潤滑剤等は必ずしも純粋ではなく主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物等の不純分が含まれても構わない。これらの不純分は30重量%以下が好ましく、さらに好ましくは10重量%以下である。
これらの添加物の具体例としては、例えば、日本油脂社製:NAA−102、ヒマシ油硬化脂肪酸、NAA−42、カチオンSA、ナイミーンL−201、ノニオンE−208、アノンBF、アノンLG、竹本油脂社製:FAL−205、FAL−123、新日本理化社製:エヌジエルブOL、信越化学社製:TA−3、ライオンアーマー社製:アーマイドP、ライオン社製:デュオミンTDO、日清製油社製:BA−41G、三洋化成社製:プロフアン2012E、ニューポールPE61、イオネットMS−400等が挙げられる。
本発明の磁性層で用いられる有機溶剤は、公知のものが使用できる。有機溶剤は、任意の比率でアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、テトラヒドロフラン、等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルシクロヘキサノールなどのアルコール類、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、酢酸グリコール等のエステル類、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサンなどのグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、ジクロルベンゼン等の塩素化炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサン等を使用することができる。
これら有機溶媒は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物、水分等の不純分が含まれてもかまわない。これらの不純分は30%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下である。本発明で用いる有機溶媒は磁性層と非磁性層でその種類は同じであることが好ましい。その添加量は変えてもかまわない。非磁性層に表面張力の高い溶媒(シクロヘキサノン、ジオキサンなど)を用い塗布の安定性を上げる、具体的には上層溶剤組成の算術平均値が非磁性層溶剤組成の算術平均値を下回らないことが肝要である。分散性を向上させるためにはある程度極性が強い方が好ましく、溶剤組成の内、誘電率が15以上の溶剤が50%以上含まれることが好ましい。また、溶解パラメータは8〜11であることが好ましい。
本発明の磁性層で用いられるこれらの分散剤、潤滑剤、界面活性剤は磁性層および後述する非磁性層でその種類、量を必要に応じ使い分けることができる。例えば、無論ここに示した例のみに限られるものではないが、分散剤は極性基で吸着もしくは結合する性質を有しており、磁性層においては主に強磁性粉末の表面に、また後述する非磁性層においては主に非磁性粉末の表面に前記の極性基で吸着もしくは結合し、一度吸着した有機リン化合物は金属あるいは金属化合物等の表面から脱着しがたいと推察される。したがって、本発明の強磁性粉末表面あるいは後述する非磁性粉末表面は、アルキル基、芳香族基等で被覆されたような状態になるので、強磁性粉末あるいは非磁性粉末の結合剤樹脂成分に対する親和性が向上し、さらに強磁性粉末あるいは非磁性粉末の分散安定性も改善される。また、潤滑剤としては遊離の状態で存在するため非磁性層、磁性層で融点の異なる脂肪酸を用い表面へのにじみ出しを制御する、沸点や極性の異なるエステル類を用い表面へのにじみ出しを制御する、界面活性剤量を調節することで塗布の安定性を向上させる、潤滑剤の添加量を非磁性層で多くして潤滑効果を向上させるなどが考えられる。また本発明で用いられる添加剤のすべてまたはその一部は、磁性層あるいは非磁性層用塗布液の製造時のいずれの工程で添加してもよい。例えば、混練工程前に強磁性粉末と混合する場合、強磁性粉末と結合剤と溶剤による混練工程で添加する場合、分散工程で添加する場合、分散後に添加する場合、塗布直前に添加する場合などがある。
また、本発明における磁性層には、必要に応じてカーボンブラックを添加することができる。
カーボンブラックの種類はゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。放射線硬化層のカーボンブラックは所望する効果によって、以下のような特性を最適化すべきであり、併用することでより効果が得られることがある。
カーボンブラックの比表面積は好ましくは100〜500m2/g、さらに好ましくは150〜400m2/g、好ましくはDBP吸油量は20〜400ml/100g、さらに好ましくは30〜200ml/100gである。カーボンブラックの粒子径は好ましくは5〜80nm、より好ましく10〜50nm、さらに好ましくは10〜40nmである。カーボンブラックのpHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/mlが好ましい。
本発明に用いられるカーボンブラックの具体的な例としてはキャボット社製 BLACKPEARLS 2000,1300,1000,900,800,880,700、VULCAN XC−72、三菱化成工業社製 #3050B,#3150B,#3250B,#3750B,#3950B,#950,#650B,#970B,#850B,MA−600,MA−230,#4000,#4010、コロンビアカーボン社製 CONDUCTEX SC、RAVEN 8800,8000,7000,5750,5250,3500,2100,2000,1800,1500,1255,1250、アクゾー社製ケッチェンブラックECなどがあげられる。
カーボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用してもかまわない。また、カーボンブラックを塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。本発明で使用できるカーボンブラックは例えば「カーボンブラック便覧」(カーボンブラック協会編)を参考にすることができる。
これらのカーボンブラックは単独または組み合せで使用することができる。カーボンブラックを使用する場合、強磁性粉末の重量に対して0.1〜30重量%で用いることが好ましい。カーボンブラックは磁性層の帯電防止、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向上などの働きがあり、これらは用いるカーボンブラックにより異なる。したがって本発明で使用されるこれらのカーボンブラックは、磁性層でその種類、量、組み合せを変え、粒子サイズ、吸油量、電導度、pHなどの先に示した諸特性を基に目的に応じて使い分けることはもちろん可能であり、むしろ各層で最適化すべきものである。
III.非磁性層
本発明の磁気記録媒体は、放射線硬化層と磁性層との間に結合剤および非磁性粉末を含む非磁性層を有していてもよい。非磁性層に使用できる非磁性粉末は、無機物質でも有機物質でもよい。また、非磁性層には非磁性粉末と共に、必要に応じてカーボンブラックを混合してもよい。
(非磁性粉末)
次に非磁性層に関する詳細な内容について説明する。
本発明の磁気記録媒体は、平滑化層を設けた非磁性支持体上に結合剤及び非磁性粉末を含む非磁性層(下層)を有していてもよい。
非磁性層には、下層が実質的に非磁性である範囲で磁性粉末を使用してもよいが、非磁性粉末を用いることが好ましい。
非磁性層に使用できる非磁性粉末は、無機物質でも有機物質でもよい。また、カーボンブラック等も使用できる。無機物質としては、例えば金属、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物などが挙げられる。
具体的には二酸化チタン等のチタン酸化物、酸化セリウム、酸化スズ、酸化タングステン、ZnO、ZrO2、SiO2、Cr23、α化率90〜100%のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、α−酸化鉄、ゲータイト、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイト、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、2硫化モリブデン、酸化銅、MgCO3、CaCO3、BaCO3、SrCO3、BaSO4、炭化珪素、炭化チタンなどが単独又は2種類以上を組み合わせて使用される。好ましいのは、α−酸化鉄、酸化チタンである。
非磁性粉末の形状は、針状、球状、多面体状、板状のいずれでもあってもよい。
非磁性粉末の結晶子サイズは、4nm〜1μmが好ましく、40〜100nmがさらに好ましい。結晶子サイズが4nm〜1μmの範囲であれば、分散が困難になることもなく、また好適な表面粗さを有するため好ましい。
これら非磁性粉末の平均粒径は、5nm〜2μmが好ましいが、必要に応じて平均粒径の異なる非磁性粉末を組み合わせたり、単独の非磁性粉末でも粒径分布を広くしたりして同様の効果をもたせることもできる。とりわけ好ましい非磁性粉末の平均粒径は、10〜200nmである。5nm〜2μmの範囲であれば、分散も良好で、かつ好適な表面粗さを有するため好ましい。
非磁性粉末の比表面積は、好ましくは1〜100m2/gであり、より好ましくは5〜70m2/gであり、さらに好ましくは10〜65m2/gである。比表面積が1〜100m2/gの範囲内にあれば、好適な表面粗さを有し、かつ、所望の結合剤量で分散できるため好ましい。
ジブチルフタレート(DBP)を用いた吸油量は、好ましくは5〜100ml/100g、より好ましくは10〜80ml/100g、さらに好ましくは20〜60ml/100gである。
比重は好ましくは1〜12、より好ましくは3〜6である。タップ密度は好ましくは0.05〜2g/ml、より好ましくは0.2〜1.5g/mlである。タップ密度が0.05〜2g/mlの範囲であれば、飛散する粒子が少なく操作が容易であり、また装置にも固着しにくくなる傾向がある。
非磁性粉末のpHは2〜11であることが好ましいが、pHは6〜9の間が特に好ましい。pHが2〜11の範囲にあれば、高温、高湿下又は脂肪酸の遊離により摩擦係数が大きくなることはない。
非磁性粉末の含水率は、好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは0.2〜3重量%、さらに好ましくは0.3〜1.5重量%である。含水量が0.1〜5重量%の範囲であれば、分散も良好で、分散後の塗料粘度も安定するため好ましい。
強熱減量は、20重量%以下であることが好ましく、強熱減量が小さいものが好ましい。
また、非磁性粉末が無機粉末である場合には、モース硬度は4〜10のものが好ましい。モース硬度が4〜10の範囲であれば耐久性を確保することができる。非磁性粉末のステアリン酸吸着量は、1〜20μmol/m2であり、さらに好ましくは2〜15μmol/m2である。
非磁性粉末の25℃での水への湿潤熱は、20〜60μJ/cm2(200〜600erg/cm2)の範囲にあることが好ましい。また、この湿潤熱の範囲にある溶媒を使用することができる。
100〜400℃での表面の水分子の量は1〜10個/100Åが適当である。水中での等電点のpHは、3〜9の間にあることが好ましい。
これらの非磁性粉末の表面にはAl23、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Sb23、ZnOで表面処理することが好ましい。特に分散性に好ましいのはAl23、SiO2、TiO2、ZrO2であるが、さらに好ましいのはAl23、SiO2、ZrO2である。これらは組み合わせて使用してもよいし、単独で用いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面処理層を用いてもよいし、先ずアルミナで処理した後にその表層をシリカで処理する方法、またはその逆の方法を採ることもできる。また、表面処理層は目的に応じて多孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般には好ましい。
本発明の非磁性層に用いられる非磁性粉末の具体的な例としては、例えば、昭和電工製ナノタイト、住友化学製HIT−100、ZA−G1、戸田工業社製DPN−250、DPN−250BX、DPN−245、DPN−270BX、DPB−550BX、DPN−550RX 石原産業製酸化チタンTTO−51B、TTO−55A、TTO−55B、TTO−55C、TTO−55S、TTO−55D、SN−100、MJ−7、α−酸化鉄E270、E271、E300、チタン工業製STT−4D、STT−30D、STT−30、STT−65C、テイカ製MT−100S、MT−100T、MT−150W、MT−500B、T−600B、T−100F、T−500HDなどが挙げられる。堺化学製FINEX−25、BF−1、BF−10、BF−20、ST−M、同和鉱業製DEFIC−Y、DEFIC−R、日本アエロジル製AS2BM、TiO2P25、宇部興産製100A、500A、チタン工業製Y−LOP及びそれを焼成したものが挙げられる。特に好ましい非磁性粉末は二酸化チタンとα−酸化鉄である。
非磁性層には非磁性粉末と共に、カーボンブラックを混合し表面電気抵抗を下げ、光透過率を小さくすると共に、所望のμビッカース硬度を得ることができる。非磁性層のμビッカース硬度は、好ましくは25〜60kg/mm2、より好ましくはヘッド当りを調整するために、30〜50kg/mm2であり、薄膜硬度計(日本電気製 HMA−400)を用いて、稜角80度、先端半径0.1μmのダイヤモンド製三角錐針を圧子先端に用いて測定することができる。光透過率は一般に波長900nm程度の赤外線の吸収が3%以下、たとえばVHS用磁気テープでは0.8%以下であることが規格化されている。このためにはゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。
本発明の非磁性層に用いられるカーボンブラックの比表面積は好ましくは100〜500m2/g、より好ましくは150〜400m2/g、DBP吸油量は好ましくは20〜400ml/100g、より好ましくは30〜200ml/100gである。カーボンブラックの粒子径は好ましくは5〜80nm、より好ましく10〜50nm、さらに好ましくは10〜40nmである。カーボンブラックのpHは2〜10、含水率は0.1〜10%、タップ密度は0.1〜1g/mlが好ましい。
本発明の非磁性層に用いることができるカーボンブラックの具体的な例としては、キャボット社製BLACKPEARLS 2000、1300、1000、900、800、880、700、VULCAN XC−72、三菱化成工業社製#3050B、#3150B、#3250B、#3750B、#3950B、#950、#650B、#970B、#850B、MA−600、コロンビアカーボン社製CONDUCTEX SC、RAVEN8800、8000、7000、5750、5250、3500、2100、2000、1800、1500、1255、1250、アクゾー社製ケッチェンブラックECなどが挙げられる。
また、カーボンブラックを分散剤などで表面処理したり、樹脂でグラフト化して使用しても、表面の一部をグラファイト化したものを使用してもかまわない。また、カーボンブラックを塗料に添加する前にあらかじめ結合剤で分散してもかまわない。これらのカーボンブラックは上記無機質粉末に対して50重量%を越えない範囲、非磁性層総重量の40%を越えない範囲で使用することが好ましい。これらのカーボンブラックは単独、または組み合せで使用することができる。本発明の非磁性層で使用できるカーボンブラックは例えば「カーボンブラック便覧」カーボンブラック協会編、を参考にすることができる。
また非磁性層には目的に応じて有機質粉末を添加することもできる。このような有機質粉末としては、例えば、アクリルスチレン系樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、フタロシアニン系顔料が挙げられるが、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂も使用することができる。その製法は、特開昭62−18564号公報、特開昭60−255827号公報に記されているようなものが使用できる。
IV.非磁性支持体
本発明に用いることのできる非磁性支持体としては、二軸延伸を行ったポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリアミド等の公知のものが挙げられる。これらの中でもポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミドが好ましい。
これらの支持体はあらかじめコロナ放電、プラズマ処理、易接着処理、熱処理などを行ってもよい。また、本発明に用いることのできる非磁性支持体の表面粗さはカットオフ値0.25mmにおいて中心平均粗さRa3〜10nmが好ましい。
V.バックコート層
一般に、コンピュータデータ記録用の磁気テープは、ビデオテープ、オーディオテープに比較して繰り返し走行性が強く要求される。このような高い保存安定性を維持させるために、非磁性支持体の非磁性層および磁性層が設けられた面とは反対の面にバックコート層を設けることもできる。バックコート層用塗料は、研磨剤、帯電防止剤などの粒子成分と結合剤とを有機溶媒に分散させる。粒状成分として各種の無機顔料やカーボンブラックを使用することができる。また、結合剤としては、例えば、ニトロセルロース、フェノキシ樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン等の樹脂を単独またはこれらを混合して使用することができる。
VI.層構成
本発明で用いられる磁気記録媒体の構成において、放射線硬化層の厚さは、上述のとおり0.1〜1.0μmの範囲が好ましく、0.3〜0.7μmが更に好ましい。
非磁性支持体の好ましい厚さは、3〜80μmである。
非磁性支持体の非磁性層および磁性層が設けられた面とは反対側の面に設けられたバックコート層の厚さは、好ましくは0.1〜1.0μm、より好ましくは0.2〜0.8μmである。
磁性層の厚さは、用いる磁気ヘッドの飽和磁化量やヘッドギャップ長、記録信号の帯域により最適化されるものであるが、好ましくは0.01〜0.12μmであり、更に好ましくは0.02〜0.10μmである。また、磁性層の厚さ変動率は±50%以内が好ましく、さらに好ましくは±40%以内である。磁性層は少なくとも一層あればよく、磁性層を異なる磁気特性を有する2層以上に分離してもかまわず、公知の重層磁性層に関する構成が適用できる。
本発明の非磁性層の厚さは、好ましくは0.2〜3.0μmであり、0.3〜2.5μmであることがより好ましく、0.4〜2.0μmであることがさらに好ましい。なお、本発明の磁気記録媒体の非磁性層は、実質的に非磁性であればその効果を発揮するものであり、例えば不純物として、あるいは意図的に少量の磁性体を含んでいても、本発明の効果を示すものであり、本発明の磁気記録媒体と実質的に同一の構成とみなすことができる。なお、実質的に同一とは、非磁性層の残留磁束密度が10T・m(100G)以下または抗磁力が7.96kA/m(100 Oe)以下であることを示し、好ましくは残留磁束密度と抗磁力を持たないことを意味する。
VII.製造方法
本発明で用いられる磁気記録媒体の磁性層塗布液を製造する工程は、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段階以上に分かれていてもかまわない。本発明で用いられる強磁性六方晶フェライト粉末または強磁性金属粉末、非磁性粉末、結合剤、カーボンブラック、研磨材、帯電防止剤、潤滑剤、溶剤などすべての原料はどの工程の最初または途中で添加してもかまわない。また、個々の原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。例えば、ポリウレタンを混練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程で分割して投入してもよい。本発明の目的を達成するためには、従来の公知の製造技術を一部の工程として用いることができる。混練工程ではオープンニーダ、連続ニーダ、加圧ニーダ、エクストルーダなど強い混練力をもつものを使用することが好ましい。ニーダを用いる場合は磁性粉末または非磁性粉末と結合剤のすべてまたはその一部(但し、全結合剤の30%以上が好ましい)および強磁性粉末100重量部に対し15〜500重量部の範囲で混練処理される。これらの混練処理の詳細については特開平1−106338号公報、特開平1−79274号公報に記載されている。また、磁性層用液および非磁性層用液を分散させるには、ガラスビーズを用いることができる。このようなガラスビーズは、高比重の分散メディアであるジルコニアビーズ、チタニアビーズ、スチールビーズが好適である。これら分散メディアの粒径と充填率は最適化して用いられる。分散機は公知のものを使用することができる。
本発明の磁気記録媒体の製造方法は、例えば、走行下にある非磁性支持体の表面に磁性層用塗布液を所定の膜厚となるように塗布する。ここで複数の磁性層用塗布液を逐次あるいは同時に重層塗布してもよく、下層の磁性層用塗布液と上層の磁性層用塗布液とを逐次あるいは同時に重層塗布してもよい。上記磁性層用塗布液もしくは下層の磁性層用塗布液を塗布する塗布機としては、エアードクターコート、ブレードコート、ロッドコート、押出しコート、エアナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビヤコート、キスコート、キャストコート、スプレイコート、スピンコート等が利用できる。これらについては例えば(株)総合技術センター発行の「最新コーティング技術」(昭和58年5月31日)を参考にできる。
磁性層塗布液の塗布層は、磁気テープの場合、磁性層塗布液の塗布層中に含まれる強磁性粉末にコバルト磁石やソレノイドを用いて長手方向に磁場配向処理を施す。ディスクの場合、配向装置を用いず無配向でも十分に等方的な配向性が得られることもあるが、コバルト磁石を斜めに交互に配置すること、ソレノイドで交流磁場を印加するなど公知のランダム配向装置を用いることが好ましい。等方的な配向とは強磁性金属微粉末の場合、一般的には面内2次元ランダムが好ましいが、垂直成分をもたせて3次元ランダムとすることもできる。六方晶フェライトの場合は一般的に面内および垂直方向の3次元ランダムになりやすいが、面内2次元ランダムとすることも可能である。また異極対向磁石など公知の方法を用い、垂直配向とすることで円周方向に等方的な磁気特性を付与することもできる。特に高密度記録を行う場合は垂直配向が好ましい。また、スピンコートを用いて円周配向としてもよい。
乾燥風の温度、風量、塗布速度を制御することで塗膜の乾燥位置を制御できるようにすることが好ましく、塗布速度は20〜1,000m/分、乾燥風の温度は60℃以上が好ましい。また磁石ゾーンに入る前に適度の予備乾燥を行うこともできる。
乾燥された後、塗布層に表面平滑化処理を施す。表面平滑化処理には、例えばスーパーカレンダーロールなどが利用される。表面平滑化処理を行うことにより、乾燥時の溶剤の除去によって生じた空孔が消滅し磁性層中の強磁性粉末の充填率が向上するので、電磁変換特性の高い磁気記録媒体を得ることができる。
カレンダ処理ロールとしてはエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の耐熱性プラスチックロールを使用する。また金属ロールで処理することもできる。本発明の磁気記録媒体は、表面の中心面平均粗さが、カットオフ値0.25mmにおいて好ましくは0.1〜4.0nm、より好ましくは0.5〜3.0nmの範囲という極めて優れた平滑性を有する表面であることが好ましい。その方法として、例えば上述したように特定の強磁性粉末と結合剤を選んで形成した磁性層を上記カレンダ処理を施すことにより行われる。カレンダ処理条件としては、カレンダーロールの温度は好ましくは60〜100℃の範囲、より好ましくは70〜100℃の範囲、特に好ましくは80〜100℃の範囲であり、圧力は好ましくは100〜500kg/cmの範囲、好ましくは200〜450kg/cmの範囲であり、特に好ましくは300〜400kg/cmの範囲の条件で作動させることによって行われることが好ましい。
熱収縮率低減手段として、低テンションでハンドリングしながらウエッブ状で熱処理する方法と、バルクまたはカセットに組み込んだ状態などテープが積層した形態で熱処理する方法(サーモ処理)があり、両者が利用できる。前者は、バックコート層表面の突起写りの影響が少ないが、熱収縮率を大きく下げることができない。一方、後者のサーモ処理は、熱収縮率を大幅に改善できるが、バックコート層表面の突起写りの影響を強く受けると、磁性層が面荒れし、出力低下およびノイズ増加を引き起こす。特に、サーモ処理を伴う磁気記録媒体で、高出力、低ノイズの磁気記録媒体を供給することができる。得られた磁気記録媒体は、裁断機、打抜機などを使用して所望の大きさに裁断して使用することができる。
VIII.物理特性
本発明の磁気記録媒体は、全ての面内方向で湿度膨張係数が−15ppm〜15ppm/%RHであることが好ましく、0〜15ppm/%RHであることがより好ましく、0〜10ppm/%RHであることがさらに好ましい。
上記湿度膨張係数は、次式を用いることにより求めることができる。
Figure 2006040472
式中、T3は測定前の湿度%RHを、T4は測定後の湿度%RHを表す。
湿度膨張係数の湿度は、各測定条件に応じて自由に決定することができる。例えば湿度30%RHから80%RHまでの間における磁気記録媒体の寸法変化及び湿度変化を測定することにより湿度膨張係数を決定することができる。
本発明に用いられる磁気記録媒体の磁性層の飽和磁束密度は、100〜300T・m(1,000〜3,000G)であることが好ましい。また磁性層の抗磁力(Hr)は、143.3〜318.4kA/m(1,800〜4,000Oe)であることが好ましいが、より好ましくは159.2〜278.6kA/m(2,000〜3,500Oe)である。抗磁力の分布は狭い方が好ましく、SFDおよびSFDrは好ましくは0.6以下、さらに好ましくは0.2以下である。
本発明で用いられる磁気記録媒体のヘッドに対する摩擦係数は、温度−10〜40℃、湿度0〜95%の範囲において好ましくは0.5以下であり、より好ましくは0.3以下である。また、帯電位は−500〜+500V以内が好ましい。磁性層の0.5%伸びでの弾性率は、面内各方向で好ましくは0.98〜19.6GPa(100〜2,000kg/mm2)、破断強度は、好ましくは98〜686MPa(10〜70kg/mm2)、磁気記録媒体の弾性率は、面内各方向で好ましくは0.98〜14.7GPa(100〜1,500kg/mm2)、残留のびは、好ましくは0.5%以下、100℃以下のあらゆる温度での熱収縮率は、好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下、最も好ましくは0.1%以下である。
磁性層のガラス転移温度(110Hzで測定した動的粘弾性測定の損失弾性率の極大点)は50〜180℃が好ましく、非磁性層のそれは0〜180℃が好ましい。損失弾性率は1×107〜8×108Pa(1×108〜8×109dyne/cm2)の範囲にあることが好ましく、損失正接は0.2以下であることが好ましい。損失正接が0.2以下であると粘着故障が発生し難いので好ましい。これらの熱特性や機械特性は媒体の面内各方向において10%以内でほぼ等しいことが好ましい。
磁性層中に含まれる残留溶媒は好ましくは100mg/m2以下、さらに好ましくは10mg/m2以下である。塗布層が有する空隙率は非磁性層、磁性層とも好ましくは30容量%以下、さらに好ましくは20容量%以下である。空隙率は高出力を果たすためには小さい方が好ましいが、目的によってはある値を確保した方が良い場合がある。例えば、繰り返し用途が重視されるディスク媒体では空隙率が大きい方が保存安定性は好ましいことが多い。
磁性層のTOPO−3Dのmirau法で測定した中心面表面粗さRaは、好ましくは4.0nm以下であり、より好ましくは3.0nm以下であり、さらに好ましくは2.0nm以下である。磁性層の最大高さSRmaxは、0.5μm以下、十点平均粗さSRzは0.3μm以下、中心面山高さSRpは0.3μm以下、中心面谷深さSRvは0.3μm以下、中心面面積率SSrは20〜80%、平均波長Sλaは5〜300μmが好ましい。磁性層の表面突起は0.01〜1μmの大きさのものを100μm当たり0〜2,000個の範囲で任意に設定することが可能であり、これにより電磁変換特性、摩擦係数を最適化することが好ましい。これらは支持体のフィラーによる表面性のコントロールや磁性層に添加する粉末の粒径と量、カレンダ処理のロール表面形状などで容易にコントロールすることができる。カールは±3mm以内とすることが好ましい。
本発明の磁気記録媒体における非磁性層と磁性層と間では、目的に応じ非磁性層と磁性層でこれらの物理特性を変えることができるのは容易に推定されることである。例えば、磁性層の弾性率を高くし保存安定性を向上させると同時に非磁性層の弾性率を磁性層より低くして磁気記録媒体のヘッドへの当りをよくするなどである。
本発明の磁気記録媒体は、磁気記録媒体に磁気記録された信号を再生するヘッドについては特に制限はないが、MRヘッドのために用いることが好ましい。本発明の磁気記録媒体の再生にMRヘッドを用いる場合、MRヘッドには特に制限はなく、例えばGMRヘッドやTMRヘッドを用いることもできる。また、磁気記録に用いるヘッドは特に制限されないが、飽和磁化量が好ましくは1.0T以上であり、1.5T以上であることがより好ましい。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、実施例中の「部」は、断らない限り「重量部」の意味である。
(実施例1)
[ポリエステルアクリレートの合成]
表1に示した原料及び酢酸亜鉛0.001モル、メトキシハイドロキノン0.002モルを還流式冷却器、撹拌機を具備した容器にトルエン50重量%溶液で110℃で5時間加熱し、脱水縮合反応を行った。得られた反応物は酸価及びH−NMRで解析し、未反応カルボン酸が3モル%以下であることを確認した。
得られたポリエステルアクリレートA〜Mの組成及び放射線硬化官能基数を表1に示す。
Figure 2006040472
ポリエステルアクリレートの合成に使用した水添ダイマー酸及び水添ダイマージオールの化学構造は、前記の通りである。
ポリエステルGの合成に使用したポリカプロラクトンジオールの化学構造を以下に示す。
Figure 2006040472
[磁性層塗布液の調製]
針状強磁性合金粉末(Fe89atm%、Co5atm%、Y6atm%、Hc;175kA/m(2,200Oe)、BET比表面積;70m2/g、長軸長;20nm、針状比;3、σs;125A・m2/kg(emu/g))100部をオープンニーダーで10分間粉砕し、次いでSO3Na含有ポリウレタン溶液(固形分30%、SO3Na含量70μeq/g、重量平均分子量8万)を10部(固形分)加え、更にシクロヘキサノン30部を加えで60分間混練した。
次いで、
研磨剤(Al23 粒子サイズ0.15μm) 2部
カーボンブラック (粒子サイズ 20nm) 2部
メチルエチルケトン/トルエン=1/1 200部
を加えてサンドミルで120分間分散した。これに
ブチルステアレート 2部
ステアリン酸 1部
メチルエチルケトン 50部
を加え、さらに20分間撹拌混合したあと、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、磁性塗料を調製した。
放射線硬化層用放射線硬化化合物として、表1に示したポリエステルアクリレートAを15重量%溶液(MEK希釈溶液)に調整した。このポリエステルアクリレートA溶液を乾燥後の厚さが0.5μmになるようにコイルバーを用いて厚さ7μm、中心平均表面粗さRa6.2nmのポリエチレンテレフタレート支持体の表面に塗布した。乾燥後、塗膜表面に加速電圧125KVの電子線を吸収線量が3Mradになるように照射し硬化させた。
その後、放射線硬化層の上に磁性塗料を乾燥後の厚みがそれぞれ0.5μmになるように、リバースロールを用いて塗布した。磁性塗料が未乾燥の状態で5,000ガウスのCo磁石と4,000ガウスのソレノイド磁石で磁場配向を行ない、溶剤を乾燥したものを金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロールの組み合せによるカレンダー処理を(速度100m/min、線圧300kg/cm、温度90℃)で行なった後1/2インチ幅にスリットして磁気テープを得た。
(実施例2)
磁性体として針状強磁性合金粉末の代わりに下記の強磁性板状六方晶フェライト粉末を用いた以外は実施例1と同様に磁気テープを作成した。
強磁性板状六方晶フェライト粉末((Ba/Fe/Co/Zn=1/9.1/0.2/0.8 モル比)、Hc;195kA/m(2450Oe)、板径;10nm、BET比表面積;58m2/g、σs;50A・m2/kg(emu/g)
(実施例3〜8)
ポリエステルアクリレートとして、ポリエステルアクリレートAの代わりにを表2に示したものを用いた以外は実施例1と同様にして磁気テープを作成した。
(実施例9、11)
磁性体として表2に記載した長軸長の針状強磁性合金粉末を用いた以外は実施例1と同様の方法で磁気テープを作成した。
(実施例10、12)
磁性体として表2に記載した板径の強磁性板状六方晶フェライト粉末を用いた以外は実施例2と同様の方法で磁気テープを作成した。
(比較例1〜11)
磁性体及びポリエステルアクリレートを表2に記載したものを用いた以外は実施例1と同様の方法で磁気テープを作成した。
実施例1〜12、比較例1〜11で使用したポリエステルアクリレート及び磁性体並びに作製した磁気テープの評価結果を表2に示す。
Figure 2006040472
(実施例13)
[磁性層塗布液の調製]
実施例1と同様の方法で作成した。
[非磁性塗布液の調製]
α−Fe23(平均粒径0.15μm、SBET52m2/g、表面処理Al23、SiO2、pH6.5〜8.0)100部をオープンニーダーで10分間粉砕し、次いでSO3Na含有ポリウレタン溶液(固形分30%、SO3Na含量70μeq/g、重量平均分子量8万)15部(固形分)を加え、更にシクロヘキサノンを30部を加えて60分間混練した。
次いで
メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=6/4 200部
を加えてサンドミルで120分間分散した。これに
ブチルステアレート 2部
ステアリン酸 1部
メチルエチルケトン 50部
を加え、さらに20分間撹拌混合したあと、1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、下層用塗料を調製した。
放射線硬化層用放射線硬化化合物として表−1に示したポリエステルアクリレートAを15重量%溶液(MEK希釈溶液)に調整した。このポリエステルアクリレートA溶液を乾燥後の厚さが0.5μmになるようにコイルバーを用いて厚さ7μm、中心平均表面粗さRa6.2nmのポリエチレンテレフタレート支持体の表面に塗布した。乾燥後、塗膜表面に加速電圧125KVの電子線を吸収線量が3Mradになるように照射し硬化させた。
その後、放射線硬化層の上に非磁性塗料を、さらにその上に磁性塗料を乾燥後の厚みがそれぞれ1.0μm、0.1μmになるように、リバースロールを用いて同時重層塗布した。磁性塗料が未乾燥の状態で5,000ガウスのCo磁石と4,000ガウスのソレノイド磁石で磁場配向を行ない、溶剤を乾燥したものを金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロール−金属ロールの組み合せによるカレンダー処理を(速度100m/min、線圧300kg/cm、温度90℃)で行なった後1/2インチ幅にスリットして磁気テープを作成した。
(実施例14)
磁性塗料を実施例2と同様のものを用いた以外は実施例13と同様の方法で磁気テープを作成した。
(比較例12)
ポリエステルアクリレートAをポリエステルアクリレートHとした以外は実施例13と同様の方法で磁気テープを作成した。
(比較例13)
ポリエステルアクリレートAをポリエステルアクリレートHとした以外は実施例14と同様の方法で作成した。
実施例13〜14、比較例12〜13で使用したポリエステルアクリレート及び磁性体並びに作製した磁気テープの評価結果を表3に示す。
Figure 2006040472
なお、測定方法は以下のとおりである。
(1)保存後耐久性
テープをリールに巻きつけた状態で60℃90%RH環境に30日間保存し、磁性層表面を以下の条件で摺動させ、摺動後の磁性層表面ダメージを観察し、以下のランクで評価した。
[摺動条件]
40℃80%RH環境にて磁性層面をSUS420部材に接触させて荷重50gをかけ、14mm/secで繰り返し100パス摺動させた。
[摺動後の磁性層表面ダメージ]
摺動後の磁性層表面を微分干渉顕微鏡(倍率50)で目視観察した。
[評価ランク]
優秀:摺動後の磁性層表面にダメージがなく摺動前と同等
良好:摺動後の磁性層表面に削れが見られるが100パス摺動できたもの
不良:100パス未満でSUS部材にはりつき停止したもの
(2)湿度膨張係数
テープをその幅方向に30mm、長手方向に5mm切り出したサンプルをTMA装置にセットして30℃30%RHで24時間エージングした。エージング後湿度30%〜80%RHにおける寸法変化をMD方向とTD方向で測定し湿度膨張係数を以下の式により求めた。
Figure 2006040472
式中、T3は測定前の湿度%RHを、T4は測定後の湿度%RHを表す。
湿度膨張係数の単位はppm/%RHで示した。
ここで、MD方向とは磁気記録媒体の長手方向であり、TDとは磁気記録媒体の幅方向である。
(3)平滑性
デジタルオプチカルプロフィメーター(WYKO製HD2000)を用いてカットオフ0.25mmの条件で中心線粗さRaを調べた。

Claims (4)

  1. 非磁性支持体上に、放射線硬化性化合物含有層を放射線照射により硬化させた放射線硬化層及び強磁性微粉末を結合剤中に分散した磁性層を、この順に有する磁気記録媒体であって、
    前記放射線硬化性化合物は分子内に脂環式骨格を有し、2〜3個の放射線硬化官能基をもつポリエステル(メタ)アクリレート化合物を含むことを特徴とする
    磁気記録媒体。
  2. 非磁性支持体上に、放射線硬化性化合物含有層を放射線照射により硬化させた放射線硬化層、非磁性粉末を結合剤中に分散した非磁性層及び強磁性微粉末を結合剤中に分散した磁性層を、この順に有する磁気記録媒体であって、
    前記放射線硬化性化合物は分子内に脂環式骨格を有し、2〜3個の放射線硬化官能基をもつポリエステル(メタ)アクリレート化合物を含むことを特徴とする
    磁気記録媒体。
  3. 磁気記録媒体の全ての面内方向で湿度膨張係数が−15ppm〜15ppm/%RHである請求項1又は2記載の磁気記録媒体。
  4. 強磁性微粉末が長軸長20〜70nmの針状強磁性体又は板径10〜50nmの平板状磁性体である請求項1〜3いずれか1つに記載の磁気記録媒体。
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