JP2006038878A - 気体流量計 - Google Patents

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隆史 松村
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昌大 松本
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Abstract

【課題】気体流量計の電子回路の高集積化、出力特性調整の高精度化に好適な手段を提供する。
【解決手段】電源に印加される過電圧、サージ、高周波ノイズを低減するノイズ低減回路、気体流量検出回路とデジタル調整回路により気体流量計を構成するようにした。また、調整演算において、入力値により、予め用意した予め用意した1次式による調整演算式を選択することにより、非線形な調整もできるようにした。また、集積回路内でセンサ出力経路とデータ入出力経路を兼用し、スイッチで切り替える手段を持たせることにより端子数を減らした。
【選択図】図1

Description

本発明は、自動車制御用の気体流量計に係わり、特に電子回路の高集積化をはかる際に好適な、ノイズ低減回路、調整方式、調整用端子や出力端子の削減、出力回路に係わる。
内燃機関の空気流量を検出する気体流量計がある。気体流量計の例としては、非特許文献1に記載の定温度制御熱線式気体流量計がある。図25にこの構成を応用した気体の流量検出回路DECT1の概略構成図を示す。この気体の流量検出回路は、主に、演算増幅器OP1、パワートランジスタTr1、発熱抵抗体(ホットワイヤ、或いは熱線などとも呼ばれる)Rh、気体温度測定抵抗体(コールドワイヤ、或いは冷線などとも呼ばれる)Rc、抵抗R1、R2から構成され、発熱抵抗体Rhの温度を常に一定にする、つまり、演算増幅器OP1でブリッジバランスを保って、抵抗値を一定にする。気体流量が多いほど、発熱抵抗体Rhからの放熱が増えるので、加熱電流が増える。この加熱電流は、抵抗R1の両端の電圧に比例するので、この電圧を測定すれば気体流量を検出できる。電流検出抵抗R1で変換された電圧出力は、要求される気体流量計の出力信号特性となるように、所定の入出力特性をもつ調整回路で処理される。
また、図26に示すように、上記の定温度型制御熱線式気体流量計の発熱抵抗体の上流、下流それぞれに、発熱抵抗体Rhからの熱影響を受けるように気体流温度を測定する感温抵抗体Ru、Rdを配置し、これらを直列に接続した構成の流量検出回路DECT2もある。気体流量に応じて上流側の抵抗体Ruは冷やされて抵抗値が下がり、下流側の抵抗体Rdは発熱抵抗体Rhによって暖められた気体流を受けて温度が上がり、抵抗値は上昇する。従って、感温抵抗体RuとRdの接続点の電位が変化するので、この電圧を測定することにより気体流量を検出できる。
また、図27に示すように、上記の定温度型制御熱線式気体流量計の発熱抵抗体Rhの上流、下流それぞれに、発熱抵抗体Rhからの熱影響を受けるように気体流温度を測定する感温抵抗体を2本ずつ配置し、これらを上流、下流の順で1対の抵抗体Ru1、Rd1を、下流、上流の順で1対の抵抗体Rd2、Ru2を直列に接続し、ブリッジ構成として、接続点の電位差を測定する構成の流量検出回路DECT3もある。気体流量に応じて上流側の抵抗体Ru1、Ru2は冷やされて抵抗値が下がり、下流側の抵抗体Rd1、Rd2は発熱抵抗体Rhによって暖められた気体流を受けて温度が上がり、抵抗値は上昇する。従って、ブリッジの電位差が変化するので、この電圧差を測定することにより気体流量を検出できる。
ところで、自動車に搭載される気体流量計の出力特性を調整する電子回路には、非特許文献2や3の規格に規定されているように様々なサージ、過電圧が印加される。これらの規格は、エンジンの点火等で発生するサージ電圧や寒冷時のエンジンスタートの際におけるバッテリの2段重ねによる過電圧、各種の電子機器から発生する高周波ノイズに対し電子回路が誤動作、故障しないようにする目的で制定されている。一方で、製造コストの低減のために、電子回路は集積化され、更には、最近では、排ガス規制に対応するためにエンジン制御の高機能化に対応した気体流量計の高精度化が必要となってきている。更に、使用温度範囲が−40℃から130℃と広いが、温度変化に対する出力の変化が起きないようにする必要がある。
サージや過電圧に対しては、従来から種々の過電圧保護回路が使用されているが、その例として、図28に示すツェナーダイオードZDと電流制限抵抗Rを用いた回路がある。
この図28の回路は、一般的な定電圧回路の一種で、バッテリへの接続端子VBBに印加された電圧により、電流制限抵抗Rを介してツェナーダイオードZDに電流が流れるようにしておき、過電圧が印加されたときも、ツェナーダイオードZDのツェナー電圧により回路各部への電源供給端子Vccの電圧がクランプされ、これにより過電圧保護が得られるようにしたものである。
また、例えば特許文献1によれば、抵抗とツェナーダイオードで構成した過電圧検出回路と、バイポーラトランジスタで構成されたスイッチング回路を用いた過電圧保護回路が従来技術として提案されている。これに記載の過電圧保護回路は、マイクロ波用FET(電界効果トランジスタ)の保護用で、ツェナーダイオードのツェナー電圧とスイッチング用トランジスタのベースエミッタ間電圧を加算した電圧以上の過電圧が電源受給端子に印加されたときスイッチング回路を動作させ、負荷を電源ラインから切離し、過電圧が負荷にかからないように保護されるようになっている。
次に、図25〜27の流量検出回路DECT1〜3の電圧出力は、要求されるセンサ出力特性となるように、ゼロ点、スパン(出力範囲)の調整を行なう必要がある。この調整回路は、現在、アナログ回路が主流であるが、デジタル化することにより高精度な調整ができると考えられる。
表1に、アナログ回路とデジタル回路の比較を示す(非特許文献4参照)。
Figure 2006038878
アナログ回路は、デジタル回路と比較して、回路が小型であり、低消費電力であるが、抵抗などの素子を用いているため、製造ばらつきが生じ、また、経年変化による変化が生じるため、デジタル回路に比べ精度、安定性の点で劣る。一方、デジタル回路は、アナログ回路と比較して、精度、安定性に優れるが、回路が大きく、消費電力も大きくなる。しかし、近年の集積回路製造技術の急速な進歩により、微細加工が可能となったため、回路が小型化され、消費電力も小さくなり、様々な産業分野に応用されている。気体流量計にデジタル調整回路を適用した例としては、特許文献2、特許文献3、特許文献4などがあげられる。
表2に気体流量計の調整回路として、アナログ調整とデジタル調整の比較を示す。
Figure 2006038878
アナログ調整の概略回路構成は、演算増幅器OP2、トリミング抵抗Rs1、Rz1、抵抗Rs2、Rz2からなり、流量検出回路DECTからの電圧出力を、トリミング抵抗Rz1、Rs1をトリミングすることによりゼロ点、スパンを調整し、所望の気体流量に対する出力を得る回路である。トリミング抵抗Rs、Rzとして、ハイブリッドIC上に印刷された厚膜抵抗やIC上の薄膜抵抗がある。抵抗のトリミングには、レーザトリマ装置などが用いられるが、高精度にトリミングしようとすると作業に時間がかかり、また、再トリミングができないなどの問題がある。また、2点のみの調整となるため、出力特性の非線形調整のような複雑な調整を行なうことが難しい。更に、アナログ回路では、気体流量に対する出力仕様が変わると、抵抗値の再設計が必要であり、場合によっては、ハイブリットIC基板のパターンを再設計する必要が生じるため、設計工数が増える。
一方、デジタル調整回路の場合は、回路パターンはそのままで調整係数を変えることにより、出力仕様の変更ができるため、設計工数の低減が可能である。このデジタル調整回路としては、例えば上記特許文献2に記載された方法が提案されている。デジタル調整の概略構成は、流量検出回路DECTからの電圧出力をアナログ・デジタル変換器ADにてデジタル値に変換後、デジタル演算器CALCによりゼロ点、スパン調整を計算にて行ない、デジタル・アナログ変換器DAにてアナログ信号に変換して、所望の気体流量に対するアナログ出力を得る回路である。この演算における調整係数は、PROMなどの記憶装置MEMに保存されている。また、デジタル演算器CALCは、非線形な演算が容易であるため、出力の調整において、ゼロ点、スパン調整のみならず、非線形調整を容易に行なうことが可能である。この非線形調整により、調整精度は±2%以下となる。
また、デジタル調整について、他の一例として、上記特許文献4に示された構成がある。この構成は、表2に示したデジタル調整回路と同じであるが、アナログ・デジタル変換器ADとして、デルタ・シグマ変調器を含むオーバーサンプリング型アナログ・デジタル変換器を用いることにより、回路規模を小さくしている。
更に、デジタル調整について、他の一例として、特許文献5に示された構成がある。演算器で調整演算を実行するための調整係数はセンサ外部との通信を行なうデジタル入出力回路の端子を介して、PROMなどの記憶素子に書き込まれる。また、同公報では調整演算として3次の多項式を用いることが記載されている。
更に、デジタル調整について、他の一例として、特許文献6に示された構成がある。この構成は、気体流量検出回路からの流量信号を矩形波信号に変換し、更に、この矩形波が“1”の期間のみ、カウンタがあるレートでカウントアップされる。このカウント値に調整係数を加算して出力する。
また、発熱抵抗体Rhを流れる加熱電流は、供給電源(例えば、バッテリ)の電圧変動に左右されないため、気体の流量検出回路DECT1の電圧出力は非レシオメトリック特性であるが、気体流量計の出力仕様として、非レシオメトリックのアナログ出力のほかに、レシオメトリックのアナログ出力、及び、デジタル出力の仕様がある。レシオメトリックのアナログ出力回路を実現する回路構成として、特許文献7に記載された方法がある。この回路は外部からのレシオメトリック出力用基準電圧が2個の抵抗により分圧され、分圧された電圧を演算増幅器に入力し、レシオメトリック出力を実現している。2個の抵抗の和を10kオーム程度とすることにより、基準電圧から供給すべき電流は0.5mA程度と比較的小さい。デジタル出力回路については、特許文献8に記載された構成がある。この回路構成は、少なくとも、定温度制御回路、ゼロ点/スパン調整回路、電圧制御発振器を1チップ化した集積回路となっている。
更に、アナログ出力とデジタル出力を1つの回路基板で対応させる構成として、特許文献9に記載された方法がある。これは、1つの回路基板上にアナログ出力端子とデジタル出力端子の両方を設けてあり、出力コネクタにアナログ、デジタルの両方の出力を出力させ、片方の出力信号のみを選択して利用する、或いは、出力コネクタに選択的に、片方のみをワイヤで接続する構成となっている。
特開平9−307361号公報 特許第3073089号公報 特開平8−62010号公報 特開平11−118552号公報 特開2000−338193号公報 特開平11−94620号公報 特開平2−85724号公報 特開平8−247815号公報 特開平5−203475号公報 ジャーナル オブ フリッド メカニクス、47(1971年)第577頁から第599頁(J. Fuuid Mech., vol47(1971), PP577−599) インターナショナル・スタンダード・オーガニゼーション(ISO)7637規格 自動車規格(JASO)D001−94規格 岩田 穆監修、CMOSアナログ回路設計技術、トリケップス(1998)
上記の従来技術は、気体流量計の低コスト化、小型化、高精度調整化を進めるために回路を集積化、デジタル化をする場合において、最適化されておらず、従来技術では解決できないいくつかの問題点がある。
特に、回路の高集積化、デジタル化のためにC−MOSが用いられるが、これはアナログ回路で用いられるバイポーラトランジスタに比べサージ、過電圧に弱く、十分に対策する必要がある。
まず、過電圧保護回路において、図28の回路では、接続される回路の電流が大きい場合、電流制限用の抵抗による電圧降下を防ぐため、抵抗値を小さくする必要があるが、この場合、ツェナーダイオードZDの電気的耐量を大きくして、過電流にも充分に耐えるようにするため、部品のサイズアップとコストアップを誘引し、好ましくない。
次に、特許文献5では、3次式により非線形調整を行なっているが、非線形調整が4次式以上必要な場合は、計算時間の増大を招き、また、個々の出力特性が理想特性に対し急峻な特性変化を持っている場合に、このような多項式では調整しきれない場合が存在するため、好ましくない。
次に、気体流量計における電子回路のデジタル回路による集積化では、調整時、調整係数を書き込み可能な記憶装置に書き込む作業が必要であるため、端子の追加が必要である。また、センサの出力として、レシオメトリックのアナログ出力、非レシオメトリックのアナログ出力、及び、デジタル出力の仕様があり、回路を集積化する場合、製造コストの低減のため、これらすべての仕様に対応できるようにする必要がある。しかし、これらの対応のために、特許文献6に示された方法のように、単に端子を追加すると、チップ面積の増加を招き、好ましくない。
次に、調整演算をデジタル化した場合、出力段にはデジタル・アナログ変換器が必要となる場合がある。このデジタル・アナログ変換器は外部への出力のための増幅回路を含むため、消費電流が数mA程度となる。レシオメトリック出力のための外部の基準電圧を用いてデジタル・アナログ変換器を駆動しようとすると、この電源から供給される最大電流が小さい場合、デジタル・アナログ変換器を駆動できないため、基準電圧を直接デジタル・アナログ変換器の電源端子に接続できない問題が生じる。
そこで、本発明の目的は、上記の気体流量計における低コスト化、電子回路の高集積化、高精度調整化、デジタル回路化、小型化における問題を解決できる手段を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するために、次のように構成される。
(1)気体通路中を流れる気体流量を電圧信号として出力する気体の流量検出回路からの前記電圧出力を調整する調整回路を有する気体流量計において、前記調整回路に入力される電圧信号の入力範囲を2分割以上に分割して、各分割範囲で予め異なる調整演算式を定めておき、前記調整回路に入力される電圧信号の入力値によって前記調整演算式を選択して調整演算を行ない、出力値を得る手段を有する。このような構成により、気体流量計の調整時に高精度な調整が可能となる。
(2)好ましくは、(1)において、前記調整回路は、検出した気体流量に基づいた信号をデジタル調整して出力するデジタル調整回路である。このような構成により、前記(1)のような調整が実現できる。
(3)好ましくは、(1)又は(2)において、前記調整回路の各調整演算式は、前記気体の流量検出回路の出力値(すなわち、調整演算の入力値)をx、調整演算の結果をy、調整係数をa、bとしてy=a・x+bの1次式で表現される調整回路を有する。このような構成により、計算時間を短くすることができる。
(4)好ましくは、(1)から(3)のいずれかにおいて、更に温度センサ、前記温度センサの出力をデジタル値に変換するデジタル変換回路を追加し、前記温度センサの出力も用いて調整演算を行なう調整回路を有する。このような構成により、温度調整を行なうことが可能となる。
(5)好ましくは、(4)において、前記気体の流量検出回路の出力値をx、前記温度センサの出力値をt、調整係数をa1、a2、b1、b2として、
y=(a1・t+a2)・x+(b1・t+b2)で表現される調整回路を有する。このような構成により、デジタル調整回路において適切な調整を行なうことが可能となる。
(6)好ましくは、(3)又は(5)において、前記各調整係数a、a1、a2、b、b1、b2は書き込み可能な記憶装置に書きこむ調整回路を有する。このような構成により、デジタル調整回路において、適切な回路構成となる。
(7)好ましくは、(3)又は(5)において、前記各調整係数a、a1、a2、b、b1、b2は書き込み後消去可能で、再書き込みできる記憶装置に書きこむ調整回路を有する。このような構成により、デジタル調整回路において、適切な回路構成となる。
(8)また、好ましくは、気体通路中を流れる気体流量を電圧信号として出力する気体の流量検出回路からの前記電圧出力を調整する調整回路と調整のためのデータを記憶する記憶装置を有する気体流量計において、前記記憶装置に外部から調整データを書きこんだり、外部へデータを読み出したりするための外部データ通信経路が2端子であるデータ入出力回路を含む。このような構成により、気体流量計を小型化することが可能となる。
(9)好ましくは、(8)において、前記データ入出力回路の前記外部データ通信端子のいずれかに、2パルス以上の定められたパルス数が入力されてから、前記調整回路が記憶装置と外部とでデータを読み書きするデータ通信モードに移行する手段をもつ。このような構成により、通常使用中にパルスノイズが印加されても誤って通信モードに移行することを防ぐことができる。
(10)更に、好ましくは、気体通路中を流れる気体流量を電圧信号として出力する気体流量検出回路からの前記電圧出力を調整する調整回路と調整のためのデータを記憶する記憶装置を有する気体流量計において、前記検出気体流量の出力信号として、レシオメトリックアナログ出力、ノンレシオメトリックアナログ出力、及びデジタル出力を取り出せ、かつ前記調整回路に設けた出力選択手段で出力信号を切り替える前記調整回路を有する。このような構成により、ひとつの気体流量計で様々な出力仕様に対応できて標準化が可能となり、製造コストの低減をすることができる。
(11)好ましくは(10)において、気体流量計が、前記レシオメトリックアナログ出力、前記ノンレシオメトリックアナログ出力、及び前記デジタル出力をする回路が同一集積回路上に形成されていることを特徴とする。このような構成により、回路を小型化することが可能となる。
(12)好ましくは(8)又は(10)において、気体流量計が前記外部データ通信端子と検出端子の出力経路を兼用することを特徴とする。このような構成により、気体流量計を小型化することが可能となる。
(13)また更に、好ましくは、気体通路中に配置される抵抗体に流れる電流や発生電圧を検出することにより、前記気体通路中を流れる気体流量を電圧信号として出力する気体の流量検出回路と、検出した気体流量をデジタル信号に変換するデジタル変換回路と、前記デジタル信号をデジタル調整して出力するデジタル調整回路と、前記デジタル調整回路で調整した信号に基づいた電圧信号を出力する気体流量計において、前記デジタル変換回路は単相入力と差動入力のいずれかを選択できる手段を有する。このような構成により、調整回路が、単相出力、差動出力の気体流量検出回路に対応することが可能となる。
(14)好ましくは、気体通路中に配置される抵抗体に流れる電流や発生電圧を検出することにより、前記気体通路中を流れる気体流量を電圧信号として出力する気体の流量検出回路と、検出した気体流量をデジタル信号に変換するデジタル変換回路と、前記デジタル信号をデジタル調整して出力するデジタル調整回路と前記デジタル調整出力を受けて、アナログ信号に変換するアナログ変換回路からなるデジタル調整回路を有する気体流量計において、前記アナログ変換回路は外部からの基準電圧を基準として駆動され、かつ、前記基準電圧端子と前記アナログ変換回路を駆動する電源端子との間に、電圧ホロア回路を配置したことを特徴とする。このような構成により、外部からの基準電圧からの供給電流が小さくても、デジタル・アナログ変換器を駆動できる。
本発明によれば、デジタル調整の気体流量計において、高集積化、デジタル化のためにサージ、過電圧に弱いC−MOSを用いても、故障、誤動作が起きない効果が得られる。
また、気体流量計における電子回路のノイズ低減回路に含まれる過電圧保護回路において、過電圧保護回路に必要な電流制限抵抗による電圧降下による電圧供給端子からの供給電圧の低下を抑制する効果、ならびに、電圧リミッタ回路を小型化できる効果を得られる。
また、気体流量計の出力の特性調整演算において、入力値により、予め用意した1次式による調整演算式を選択し計算を行なうため、計算時間が短く、かつ、非線形な調整もできる効果が生まれる。更に、基板温度調整も同時に行なうことができる。
また、流量信号出力兼データ入出力の経路を兼ねることにより、端子数の増加を招くことなく、少数の経路で気体流量計の調整、ならびに、流量信号出力として、レシオメトリックのアナログ出力、非レシオメトリックのアナログ出力、及び、デジタル出力のすべての仕様に対応できる効果が得られる。また、出力段のデジタル・アナログ変換器に対し、外部からの基準電圧から供給される最大電流が小さくても、デジタル・アナログ変換器を駆動できる効果が得られる。
以上より、気体流量計の低コスト化、高精度出力化を進めるために回路を集積化、デジタル化をする場合において、最適化された集積回路、構成を提供できる。
以下、本発明による気体流量計、集積回路、及び調整回路の構成について、図示の実施の形態により詳細に説明する。
図1は本発明の第一の実施形態による気体流量計の構成を示したものである。
この構成は、気体の流量検出回路、デジタル調整回路、レギュレータ及びノイズ低減回路からなる。気体の流量検出回路は、気体通路中を流れる気体流量を電圧信号として出力する。気体の流量検出回路は、例えば、気体通路中に配置される抵抗体に流れる電流や現れる電圧を検出することにより、前記気体通路中を流れる気体流量を電圧信号として出力する図21に示した気体の流量検出回路DECT1を用いることができる。
前記電圧出力はデジタル調整回路に入力される。デジタル調整回路の構成のひとつとして、表2(b)に示したように、流量検出回路からの電圧出力をアナログ・デジタル変換器AD1にてデジタル値に変換後、デジタル演算器CALCによりゼロ点、スパンなどの調整を計算にて行ない、デジタル・アナログ変換器DAにてアナログ信号に変換し、所望の気体流量に対するアナログ出力を得る回路構成である。更に、これらのアナログ・デジタル変換器AD、デジタル演算器CALC、デジタル・アナログ変換器DAを駆動し、また、アナログ・デジタル変換器AD、デジタル・アナログ変換器DAの基準電圧となるレギュレータからなる。
ノイズ低減回路は、サージ、過電圧、高周波ノイズを低減し、安定した電源電圧を供給する回路である。デジタル調整回路の一部にはサージ、過電圧で故障する恐れのあるC−MOSが用いられており、また、各種の電子機器から発生する高周波電磁波ノイズで誤動作する恐れがあるので、デジタル調整回路の電源端子はレギュレータを介してこのノイズ低減回路を接続する。なお、デジタル調整回路の一部、若しくは全部をバイポーラトランジスタを使用してもよく、また、このノイズ低減回路は、空気流量計に含まれる様々な回路の電源部に接続してもよい。
図2に示すように、ノイズ低減回路100は、電源端子VBBに印加されるサージ、過電圧から気体流量検出回路及び調整回路を保護する過電圧保護回路101、及び高周波ノイズを低減する高周波ノイズ低減回路102からなる。ノイズ低減回路100は気体の流量検出回路、及び調整回路などの回路Ld1、Ld2に、過電圧、サージ、高周波ノイズが低減された供給電圧を2端子以上から供給する。各回路Ld1、Ld2で必要な最低電圧が異なる場合、この電圧供給端子から供給される電圧を異なるようにすればよい。
次に、ノイズ低減回路の一部である過電圧保護回路について、図3を用いて説明する。
この過電圧保護回路103は、電圧リミッタ回路110、2個の電流制限用の抵抗Ra、Rb、ダイオードD2、D3で構成され、電源端子VBBと接地端子GNDを介して、図示しない自動車のバッテリ(蓄電池)などから直流電力の供給を受け、2個の電圧供給端子Vcc1、Vcc2に接続された回路Ld1、Ld2に過電圧保護された直流電力を供給するようになっている。
電圧リミッタ回路110は、ある電圧以上となるとオンとなって電流が流れる回路で、電流制限抵抗を直列に接続することにより、電源端子VBBと接地端子GNDの間に印加されたサージ電圧などの過電圧をクリッピングして、過電圧エネルギーを吸収する働きをする。
電圧リミッタ回路110は、例えば図4にあるように、いくつかのツェナーダイオードZD1〜nを直列に接続し、Nch D−MOS Mを加えた回路を用いる。これは、ツェナーダイオード群ZD1〜ZDnにある以上の電圧が印加されるとONとなり、Nch D−MOS MがONとなって、サージ電流が流れる構成である。これにより、殆ど電流が流れないツェナーダイオードを小さくすることができ、小型化が可能となる。なお、この電圧リミッタ回路のNch D−MOSの代わりにバイポーラトランジスタを用いたり、ツェナーダイオードのみで電圧リミッタ回路を形成してもよい。
図3に戻って、ダイオードD3は回路Ld1に抵抗Rbからの電流が、或いは回路Ld2に抵抗Raからの電流が流れ込まないようにし、また、各電圧供給端子Vcc1、Vcc2から異なる供給電圧を供給させる働きを持つ。
このダイオードD3は、例えば、図5に示すように、バイポーラトランジスタを用いて、ベースとエミッタを接続する構成とする。これにより、バイポーラトランジスタを作る工程でダイオードを作ることができるので、製造工程を低減することができる。
ここで、抵抗Raの大きさは抵抗Rbよりも大きいと仮定する。回路Ld1、Ld2を保護するべきプラスのサージ電圧が電源端子VBBと接地端子GNDとの間に印加されたとすると、サージ電流は主に電流制限抵抗Rb、電圧リミッタ回路110を介して流れることにより、回路Ld2はサージから保護される。また、ダイオードD3により、電圧供給端子Vcc1の電圧はほぼ、電圧供給端子Vcc2の電圧と同じとなり、回路Ld1もサージから保護される。一方、マイナスのサージ電圧がかかった場合は、サージ電流はダイオードD2、電流制限抵抗Rbを流れ、回路Ld1、Ld2はサージから保護される。
また、別の過電圧保護回路の構成として、図6の構成104がある。これは図3に対してダイオードD2をダイオードD1の位置に接続し直した構成である。
回路Ld1、Ld2を保護するべきプラスのサージ電圧が、電源端子VBBと接地端子GNDとの間に印加されたとすると、サージ電流は主に電流制限抵抗Rb、電圧リミッタ回路110を介して流れることにより、回路Ld2はサージから保護される。また、ダイオードD3により、電圧供給端子Vcc1の電圧はほぼ、電圧供給端子Vcc2の電圧と同じとなり、回路Ld1もサージから保護される。
また、マイナスのサージに対しては、サージ電流はダイオードD1、D3、電流制限抵抗Rbを流れ、回路Ld1、Ld2はサージから保護される。
また、別の過電圧保護回路の構成として、図7の構成105がある。これは図3に対して電圧リミット回路111、ダイオードD1を電流制限抵抗Raに直列に接続し、電圧供給端子Vcc1とVcc2の間にツェナーダイオードZDを接続した構成である。
回路Ld1、Ld2を保護するべきプラスのサージ電圧が電源端子VBBと接地端子GNDとの間に印加されたとすると、サージ電流は主に電流制限抵抗Rb、ツェナーダイオードZD、電圧リミッタ回路111を介して流れることにより、回路Ld1、Ld2はサージから保護される。また、マイナスのサージに対しては、サージ電流はダイオードD1、ツェナーダイオードZD、電流制限抵抗Rbを流れ、回路Ld1、Ld2はサージから保護される。
更に、別の過電圧保護回路の構成として図8の構成106がある。この過電圧保護回路106は、電圧リミッタ回路110、111、2個の電流制限用の抵抗Ra、Rb、ダイオードD1、D2で構成され、電源端子VBBと接地端子GNDを介して、図示しない自動車のバッテリ(蓄電池)などから直流電力の供給を受け、電圧供給端子Vcc1、Vcc2に接続された回路Ld1、回路Ld2に過電圧保護された直流電力を供給するようになっている。
ここで、回路Ld1、Ld2に必要な最低電圧、最低電流が異なると仮定する。電流制限抵抗Ra、Rbは通常時においては、回路Ld1、Ld2を流れる電流により電圧降下を起こすが、回路1及び回路2に最低必要な供給電圧の範囲内で電流制限抵抗Ra、Rbの抵抗値を大きくすれば、電圧リミッタ回路を小さくでき、回路の小型化を図ることができる。
ところで、本発明は特にデジタル調整回路を持つ気体流量計の回路に適用する場合において好適であり、図9に具体例を示す。ここで、過電圧保護回路は図3の構成103とした場合で説明する。図3における回路Ld1として、図25に示した流量検出回路DECT1の一部である演算増幅器OP1を接続する。また、回路Ld2として、気体流量計の回路の各部に必要な基準電圧を供給するレギュレータREGを接続する。
演算増幅器OP1はパワートランジスタTr1を制御するので、演算増幅器OP1に必要な供給電流は少なくて良いが(1.5mA程度と仮定)、パワートランジスタTr1を駆動するために比較的高い供給電圧が必要である。例えば、自動車のエンジンの始動時などバッテリ電圧が下がって、電源端子VBBの電圧が6Vとなっても、5.5V程度の出力を出せるようにする必要がある。一方、レギュレータREGは、表2(b)のデジタル調整回路のアナログ・デジタル変換器AD1、デジタル演算器CALC、デジタル・アナログ変換器DAなどに電圧を供給するもので、レギュレータREGに必要な供給電流は比較的大きいが(15mA程度と仮定)、電源供給端子VBBの電圧が仮に6Vに下がっても、常に5Vの出力を出せるようにすれば良い。
仮に、過電圧保護回路を図28に示した構成とし、1つの電圧供給端子から演算増幅器OP1、レギュレータREGの両方に過電圧保護された電圧を供給しようとすると、電源端子VBBの電圧が6Vのときに、供給電圧は5.5V、供給電流は16.5mA必要という条件から、電流制限抵抗Rの抵抗値は例えば30オームとする必要がある。
一方、図9の過電圧保護回路103では、図28の一般的な過電圧保護回路に比べ、抵抗値を大きくすることが可能である。すなわち、電流制限抵抗Raは電流が1.5mA流れたときに電圧降下が0.5V以下、電流制限抵抗Rbは電流が15mA流れたときに電圧降下が1V以下という条件から、例えば、抵抗Raを250オーム、抵抗Rbを50オームとすれば良い。したがって、電圧リミッタ回路110を流れる電流、すなわちエネルギーが小さくなるので、必要となる電気的耐量が小さくなり、電圧リミッタ回路110を小さくすることも可能となる。
また、これらの過電圧保護回路、流量検出回路DECT、デジタル調整回路に含まれる素子の一部、若しくは全部をBCD(バイポーラ、C−MOS、D−MOS)プロセスなどを利用して、同一集積回路上に集積化することにより、小型化や製造コストの低減を図ることが可能である。なお、本発明による過電圧保護回路の構成は、電圧供給端子Vccが3端子以上に増えても同様な考え方で応用できる。
次に、センサ出力特性の調整の高精度化について、図10〜13を用いて、(1)本発明における調整演算の例を、(2)ゼロ点、スパンのみの調整した従来例と比較して、説明する。
図10は流量検出回路DECTにおける流量に対する出力電圧特性であり、この出力電圧を、所望の流量に対する出力特性である図12の細線で示した(A)理想出力となるように調整回路で調整する。
まず、(2)ゼロ点、スパンのみを調整した従来例の場合、図11の調整回路における調整演算式は、入力される電圧値によらず、1次式の関係となる。この調整回路での入出力特性で図10の流量検出回路における流量に対する出力電圧特性を調整すると図12の(2)の図のようになる。(A)理想出力との誤差を図13の(2)に示す。一方、(2)本発明による調整演算の例では、図11に示すように、調整回路の入出力特性は、入力される電圧信号の入力範囲を2分割して、各分割範囲A、Bで異なる調整演算式(本例では、最も簡単な1次式とした)を定めている。この調整回路での入出力特性で図10の流量検出回路における流量に対する出力電圧特性を調整すると図12の(1)の図のようになる。(A)理想出力との誤差を図13に(2)の従来例と重ねて示すと、(1)のようになり、調整誤差が小さくなることが分かる。
なお、本例では、入力される電圧信号の入力範囲の分割を、最も簡単な2分割としているが、調整誤差を更に小さくするためには分割数を増やし、それぞれに調整演算式を与えれば良い。例えば、4分割とすると図13の(3)に示したようになる。また、調整演算式も2次以上の関係式を用いて、調整誤差を小さくしても良い。ただし、この場合には回路規模が増大したり、デジタル演算では計算時間が長くなるといった問題がある。
また、本例では、誤差が2次関数的な特性として検討しているが、誤差が3次(以上)関数的な特性であったり、急峻な特性であっても、分割数を増やすことにより調整誤差を小さくできる。
このような調整回路は調整回路をデジタル化すると容易に実現できる。このデジタル調整回路の例は表2(b)のデジタル調整に示した。
このデジタル調整回路は、図25、図26に示した流量検出回路DECT1、DECT2の電圧出力をアナログ・デジタル変換器AD1にてデジタル値に変換後、デジタル演算器CALCにより出力特性を調整演算し、デジタル・アナログ変換器DAにてアナログ出力を得る構成である。デジタル演算器CALCを制御し、また、調整演算のためのプログラム、調整演算式に必要な調整係数、演算上、一時的に保存するデータは、ROMなどの読み出し専用のメモリ、PROMなどの書き込み可能なメモリやEEPROMなどの書き換え可能なメモリ、RAMなどの読み書き可能なメモリなどの記憶装置MEMに記憶される。
ところで、微分可能な任意の関数y=f(x)に対して、aを定数として、|x−a|が極めて小さいとき、平均値の定理からf(x)=f(a)+f'(a)(x−a)で表される、つまり、xの微少変化範囲では任意関数は1次式で置き換えることが可能である。
そこで、DinとDoutについても、
Dout=f(Din) (式1)
と置くと、各Dinの微少変化範囲においてA,Bを係数として、1次式
Dout=A・Din+B (式2)
で置き換えることができる。ただし、すべてのDinに対し、1次式を与えるのは現実的でないことや、あるDinの範囲内ではほぼ同じ1次の調整演算式を用いることができることから、Dinの軸を分割点Din(1),Din(2),...,Din(n)でn分割して、各分割区間に対し1次の調整演算式
Figure 2006038878
を与えることにした。
これに基づいた計算のフローチャートを図14に示す。まず、デジタル演算器CALCに入力されたDinから、Din(k)≦Din<Din(k+1)となるkを検索する。次に、係数A(k)、B(k)を記憶装置MEMより呼び出して、デジタル演算器CALCで調整演算式(式3)に則り計算を行なうことにより、出力が調整される。
ここで、分割点の数nを2のi乗とする。デジタル値Dinを2進数であらわし、m(=n+1以上)ビットで表現されるとする。分割点については、上位iビットは任意値であり、残りの下位m−iビットはすべて0であるとする。つまり、Din(k)は
iビット m-i ビット
Din(1)= 0 0 0 0 0 .... 0 0
Din(2)= 0 0 1 0 0 .... 0 0


Din(n)= 1 1 1 0 0 .... 0 0 (式4)
とする。つまり、分割の区間は均等となる。センサ出力を調整するには、Dinの上位iビットがk(2進数表現)であれば、Dinは必ず
Din(k)≦Din<Din(k+1)
となる。従って、調整演算式の係数はA(k)、B(k)となる。つまり、Dinの上位iビットをラベルに持つA(k)、B(k)を記憶装置から読み出し、デジタル演算器CALCにて調整演算を行なえば良い。
このような検索方法は、分割数が大きくなっても、検索にかかる時間は変わらないので、特に分割数が大きくなる場合において有効な方法である。
なお、調整値の書き込む前の気体流量計の調整時の測定ポイントはn個を均等に測定する必要はなく、任意ポイントで測定し、n個の調整係数A(k)、B(k)は補間により求め、書き込めばよい。
また、この均等分割での直線近似の直線は図15に示すグラフの関係がある。すなわち、Dinのある区間の検索に用いた上位iビットの残り下位m−iビットを用いて、
Dout=A・(Dinの下位m-iビット)+B (式5)
の調整演算式を用いれば、計算においてオーバーフローを起こす可能性が小さくなる。
ところで、気体流量検出回路DECTの電流検出抵抗Rhで変換された電圧出力Vと流量Qの間は、図10に示したような4次式で表現されるような関係をもっている。ここで、仮にQに対し、V∝Qのようなリニアな出力特性を出す必要が生じた場合、分割数を増やして、直線近似で4次式を表現する方法を用いることができる。この気体流量計の場合、4次式と直線近似による誤差は、16分割では約3%、32分割では約0.8%、64分割では約0.2%、128分割では約0.05%となる。分割数を増やせば、4次式を直線近似したことによる誤差が当然小さくなり、流量Qに対しリニアな出力特性に近づくが、気体流量計の出力特性に許容される誤差を考えると、32分割以上にすると良い。
次に、温度特性の調整について説明する。
気体流量計の温度特性、すなわち、温度による出力特性の変化は、大きく分けて、回路基板温度が一定で、気体温度が変化した場合の吸気温度特性、及び、気体温度が一定で回路基板温度が変化した場合の基板温度特性(モジュール温度特性ともよぶ)の2つであるが、ここでは、基板温度特性の調整について説明する。なお、吸気温度特性については、流量検出回路DECT1の発熱抵抗体Rh、気体温度測定抵抗体Rcの抵抗値、抵抗温度係数(TCR)、抵抗R1、R2の抵抗値を適切に設定することにより、小さくすることができる。なお、吸気温度特性は流量依存性があり、完全にゼロとすることが難しいので、基板温度特性に、故意に吸気温度特性に対して逆特性を持たせることにより、気体流量計全体の温度特性をゼロとすることもできる。
一方、基板温度特性は、主に、アナログ・デジタル変換器ADやデジタル・アナログ変換器DAに基準電圧を供給するレギュレータの出力電圧の温度特性に起因する。この温度特性の調整をする回路の概略構成を図16に示す。表2(b)のデジタル調整回路に対し、温度特性の調整を行なうため、温度センサTSとその出力をデジタル値に変換するアナログ・デジタル変換器AD2を追加し、デジタル演算器CALCに入力している。
まず、温度特性の調整に必要な温度センサTSは、温度特性を持つレギュレータの近傍に配置される。この温度センサの構成として、例えば、図17にあるように、定電流源ISと1〜数個のダイオードDを用いた構成がある。例えばダイオードを3個直列に接続した構成とすると、温度変化に対する出力がおよそ−6〜−5mV/℃の割合で変化し、直線性も良い。
更に、レギュレータの供給電圧は、温度に対しリニアに変化するようにすれば、温度調整は1次式で良いことになる。
このようなレギュレータはバンドギャップ基準電源回路(バンドギャップ電圧源回路)を用いることにより、実現される。この回路の概略構成を図18に示す。2個のダイオード接続されたトランジスタQ1、Q2、演算増幅器OP3、抵抗R7、R8、R9により構成される。トランジスタQ1、Q2に流れる電流は、演算増幅器OP3を用いることにより、抵抗R8、R9の抵抗値により定められる一定比率となる。このとき、トランジスタQ2のベース・エミッタ間電圧と抵抗R7の電圧降下の和と、トランジスタQ1のベース・エミッタ間電が等しくなるように演算増幅器OP3の出力電圧が安定する。抵抗R7の電圧降下は、トランジスタQ2とQ1のベース・エミッタ間電圧の差に等しく、これはサーマルボルテージVT=kT/qに比例した値となるので、抵抗R8、R9とトランジスタQ2、Q1に流れる電流は1次の正の温度特性を有する。
一般に、ベース・エミッタ間電圧は負の温度特性を有することから、トランジスタQ2、Q1のベース・エミッタ間電圧と、サーマルボルテージVTに比例する抵抗R7の電圧降下との和であるバンドギャップ基準電源回路の出力である基準電圧は、抵抗R7、R8、R9の抵抗値を変えることにより、1次の温度係数を設定できる。実際には、バンドギャップ基準電源回路に含まれる各要素がわずかに非線形な温度係数を持つので、この基準電源回路の出力電圧は、温度変化に対して高温側でわずかに非線形な特性となる。
温度センサTSの出力、基準電圧を供給するレギュレータの供給電圧が温度変化に対して1次の温度特性をもつので、温度特性の調整は、Dinに対する調整演算式(式2)でA、Bの調整項に温度に対する1次の調整項をくわえればよいことになる、すなわち、a、b、c、dを係数として、
Dout=(a・Dtemp+b)・Din+(c・Dtemp+d) (式6)
の式で与える。
従って、調整演算式は(式3)、(式4)をまとめて、a(k)、b(k)、c(k)、d(k)を係数として、
Figure 2006038878
で与えられる。
センサの出力を調整するには、図14のフローチャートと同様に、Din(k)≦Din<Din(k+1)となるkを検索し、調整演算式の係数a(k)、b(k)、c(k)、d(k)を記憶装置より呼び出して、デジタル演算器CALCで調整演算式(式7)に則り計算を行なうことにより、出力が調整される。
なお、温度に対する調整を更に簡略化するには、演算調整式(式6)の代わりに、C、Dを係数として
Dout=(C・Dtemp+D)・(A・Din+B) (式8)
としても良い。この式は、まず、流量に関する調整演算を行なってから、温度に関する調整演算を行なう演算式となる。
更に、レギュレータがわずかに非線形の温度特性を持っていることから、温度特性に対する調整精度の向上のために、流量調整と同様に温度センサの出力値によって演算式を変えて調整しても良い。この例を図19に、(a)温度センサの出力値によって演算式を変えて調整する例(ここでは、2分割とした)を、(b)一律調整の例と比較して示す。なお、ここでは、調整回路への入力値が一定、つまり、吸気温度特性がゼロで、流量が一定である仮定する。図18に示したレギュレータの温度特性に対する調整演算式の例を図19(1)とすると、温度特性に対する調整後の出力特性は図19(2)のようになり、誤差が小さくなることがわかる。
また、温度特性調整の演算式は2次式以上であってもよい。更に、吸気温度特性の調整のために、気体温度センサとアナログ・デジタル変換器を追加し、上記と同様な調整演算を行なうことも可能である。
ところで、調整係数の記憶装置として、再書き込み可能なEEPROMなどの記憶装置を用いれば、不要になった自動車から、まだ使用可能な気体流量計を取り出し、出力の仕様を変えることで、他の自動車に使用することが可能となる。
また、製造工程においては、現状では、調整において、まず、調整前に気体を流し出力特性の調整量を決定して調整を行ない、その上で、更に特性を確認試験する工程を取っているが、EEPROMを用いた場合、予め調整係数を書き込んでおき、特性確認試験でNGとなった気体流量計を再調整すれば良い。つまり、EEPROMを用いることにより、リサイクル性が高まり、製造コストを引き下げるメリットが生まれる。
また、デジタル調整回路として、図20のような構成もある。これは、図16とほぼ同構成であるが、図27に示した差動出力型の流量検出回路DECT3をアナログ・デジタル変換器AD1に接続した構成である。更に、図25、図26に示した流量検出回路DECT1、DECT2も接続できるように、スイッチ群SWSを追加し、単相入力、差動入力を切り替えられるようにした。更に、出力回路として周波数出力回路FCを追加した。なお、調整演算は同じように行なうことができる。
次に図21は、気体流量計の流量信号出力端子と調整データが書きこまれる記憶装置とのデータ通信に必要な通信用の入出力端子の削減、ならびに、気体流量計の流量信号出力として、レシオメトリックのアナログ出力、非レシオメトリックのアナログ出力、及び、デジタル出力のいずれかを出力可能とし、更に、データ通信用入出力経路と流量信号出力経路を兼ねることにより、端子を削減することが可能となる、本発明の実施例を説明する図の一例である。
出力回路部201は、主にデジタル・アナログ変換器DA、周波数出力回路FC、スイッチSW1、SW2から構成される。
デジタル演算器CALCにより調整演算して得られるデジタル値は、デジタル・アナログ変換器DA、周波数出力回路FCに入力される。デジタル・アナログ変換器DAは入力されたデジタル値をアナログ電圧出力に変換する。このアナログ電圧出力の基準はデジタル・アナログ変換器DAに供給される電圧であるが、この電圧を気体流量計の内部の電子回路で生成された電圧とレシオメトリック基準電圧端子232に外部から供給される電圧(例えば、自動車用エンジンコントロールユニットのアナログ・デジタル変換器の基準電圧)とをスイッチSW2で切り替えることにより、ノンレシオメトリック電圧出力とレシオメトリック出力を切り替えることが可能である。また、周波数出力回路FCは入力されたデジタル値を所望のデジタル出力として出力する。アナログ電圧出力とデジタル出力はスイッチSW2により、切り替える。
これらスイッチSW1、SW2の切り替えは、センサ調整時に書き込み可能な記憶装置MEMのデータで行なう。
また、センサ調整時に調整係数、スイッチ切り替え設定を書き込む記憶装置MEMと気体流量計外部とのデータを転送するデータ入出力回路部202は、主に、集積回路内部のデータのビット数(8ビットや16ビット)と外部とのデータ転送時の1ビットデータを変換するデータ変換回路I/O、及び、データ変換回路I/Oがデータの入力するか、出力するかを示すDIRECTION信号を出力する方向信号出力回路DIR、CLOCK端子に入力されたクロック信号を検出するクロック検出回路CDECT、方向信号出力回路DIRからの信号によりデータ変換回路I/Oにデータ信号を入力するか、出力するかを切り替えるスイッチSW4から構成される。
クロック検出回路CDECTからの検出信号はデータ変換回路I/Oに入力され、データ変換回路が動作する。また、スイッチSW3を追加し、この検出信号によりスイッチSW3が切り替わるようにすれば、集積回路内で流量信号出力経路とデータ入出力経路を1つの経路にまとめることが可能となる。また、CLOCK端子にパルスノイズが入って、誤ってスイッチSW3を切り替えることがないように、クロック検出回路CDECTに予め定められたパルス数が入力されてから、検出信号を出力するようにした。
図22にデータ入出力時のデータのタイミングチャートの一例を示す。CLOCK端子にCLOCK信号251が入ると、クロック検出回路CDECTが動作しSTART信号252を生成する。スイッチSW3はこのSTART信号252で切り替える。また、DIRECTION信号253は、予め定められたクロックパルスの数で信号が切り替わる。DEIRECTION信号253により、スイッチSW4を切り替え、データの流れる方向、つまり、DATA IN信号254とDATA OUT信号255を切り替える。
図23は、気体流量計の流量信号出力端子と調整情報を書き込む記憶素子との通信に必要な通信用の入出力端子の削減、ならびに、センサの出力として、レシオメトリックのアナログ出力、非レシオメトリックのアナログ出力、及び、パルス出力のいずれかを出力可能とし、更に、通信用入出力端子とセンサ出力端子を兼ねて、端子を削減することが可能となる、本発明の他の実施例を説明する図である。
図21と異なる点はデジタル・アナログ変換器DAの後段にアナログ電圧をデジタル出力に変換するVF変換回路VFを入れ、スイッチSW1により、アナログ電圧出力かデジタル出力かを切り替える構成とした。この構成の動作は図21と同じとなるので、説明は省略する。
従って、本構成により、気体流量計の外部との接続端子は電源端子、接地端子、流量信号出力兼データ入出力端子、データ入出力端子の最低4端子で実現できる。
ところで、エンジンコントロールユニットからの外部基準電圧から供給される最大電流が小さくて、この外部基準電圧をデジタル・アナログ変換器DAに直接接続した場合、出力段の増幅回路を含むために消費電流が大きいデジタル・アナログ変換器DAを駆動できない可能性がある。そこで、図24のように演算増幅器OP4の供給電源を図示しないバッテリ電圧に接続したバッファ回路を挿入し、バッファ回路の入力を抵抗として、出力をデジタル・アナログ変換器DAの電源端子に接続すれば、演算増幅器OP4より電流が供給されるため、デジタル・アナログ変換器DAを駆動することが可能となる。なお、バッファ回路の負荷抵抗Riは10kオーム程度とする。
本発明における気体流量計の概略回路構成図。 本発明における気体流量計に適用されるノイズ低減回路の概略回路構成図。 本発明における気体流量計に用いられる過電圧保護回路の概略回路構成図。 本発明における過電圧保護回路に用いられる電圧リミット回路の一例を示す図。 本発明における気体流量計に用いられる過電圧保護回路の概略回路構成図。 本発明における気体流量計に用いられる過電圧保護回路の概略回路構成図。 本発明における過電圧保護回路に用いられるダイオードの一例を示す図。 本発明における気体流量計に用いられる過電圧保護回路の概略回路構成図。 本発明における気体流量計に用いられる過電圧保護回路の概略回路構成図。 気体流量計の流量検出回路の出力特性の一例を示した図。 本発明における気体流量計の調整回路における入出力特性の一例を示した図。 本発明における気体流量計の調整後の出力特性の一例を示した図。 本発明における気体流量計の調整後の出力特性の誤差を示した図。 本発明における気体流量計に用いられる調整演算のフローチャートを示した図。 本発明における気体流量計に用いられる調整演算の原理を示した図。 本発明における気体流量計に用いられる調整回路の概略回路構成図。 温度センサ回路の一例を示した図。 レギュレータ回路の一例を示した図。 本発明における気体流量計の温度特性調整後の出力特性の一例を示した図。 本発明における気体流量計に用いられる調整回路の概略回路構成図。 本発明による気体流量計に用いられるデータ通信用入出力回路とセンサ出力回路の概略回路構成図。 図17におけるデータ通信用入出力回路の各端子のタイミングチャートの概略を示した図。 本発明による気体流量計に用いられるデータ通信用入出力回路とセンサ出力回路の概略回路構成図。 本発明における気体流量計に用いられるデジタル・アナログ変換器回路の電源回路部の概略回路構成図。 流量検出回路の一例を示した概略図。 流量検出回路の一例を示した概略図。 流量検出回路の一例を示した概略図。 従来から用いられている過電圧保護回路の概略回路構成の一例を示した図。
符号の説明
DECT…流量検出回路、OP…演算増幅器、Tr…パワートランジスタ、Rh…ホットワイヤ(熱線)、Rc…コールドワイヤ(冷線)、R…抵抗、Ru…上流側感温抵抗体、Rd…下流側感温抵抗体、100…ノイズ低減回路、101…過電圧保護回路、102…高周波ノイズ低減回路、110、111…電圧リミッタ回路、ZD…ツェナーダイオード、D…ダイオード、VBB…電源供給端子、GND…接地端子、REG…レギュレータ、201…センサ出力回路部、202…データ通信回路部、SW…スイッチ、AD…アナログ・デジタル変換器、CALC…デジタル演算器、DA…デジタル・アナログ変換器、FC…周波数出力回路、VF…VF変換回路、TS…温度センサ、MEM…記憶装置、I/O…データ変換回路。

Claims (14)

  1. 気体通路中を流れる気体流量を電圧信号として出力する気体の流量検出回路からの前記電圧出力を調整する調整回路を有する気体流量計において、
    前記調整回路に入力される電圧信号の入力範囲を2分割以上に分割して、各分割範囲で予め異なる調整演算式を定めておき、前記調整回路に入力される電圧信号の入力値によって前記調整演算式を選択して、調整演算を行ない、出力値を得る手段を有することを特徴とする気体流量計。
  2. 請求項1において、
    前記調整回路は、検出した気体流量に基づいた信号をデジタル調整して出力するデジタル調整回路であることを特徴とする気体流量計。
  3. 請求項1又は請求項2において、
    前記調整回路の各調整演算式は、前記気体の流量検出回路の出力値(すなわち、調整演算の入力値)をx、調整演算の結果をy、調整係数をa、bとしてy=a・x+bの1次式で表現される調整回路を有することを特徴とする気体流量計。
  4. 請求項1から請求項3のいずれかにおいて、
    更に温度センサ、前記温度センサの出力をデジタル値に変換するデジタル変換回路を追加し、前記温度センサの出力も用いて調整演算を行なう調整回路を有することを特徴とする気体流量計。
  5. 請求項4において、
    前記気体の流量検出回路の出力値をx、前記温度センサの出力値をt、調整係数をa1、a2、b1、b2として、y=(a1・t+a2)・x+(b1・t+b2)で表現される調整回路を有することを特徴とする気体流量計。
  6. 請求項3又は請求項5において、
    前記各調整係数a、a1、a2、b、b1、b2は書き込み可能な記憶装置に書きこむ調整回路を有することを特徴とする気体流量計。
  7. 請求項3又は請求項5において、
    前記各調整係数a、a1、a2、b、b1、b2は書き込み後消去可能であり、再書き込みできる記憶装置に書きこむ調整回路を有することを特徴とする気体流量計。
  8. 気体通路中を流れる気体流量を電圧信号として出力する気体流の量検出回路からの前記電圧出力を調整する調整回路と調整のためのデータを記憶する記憶装置を有する気体流量計において、
    前記記憶装置に外部から調整データを書きこんだり、外部へデータを読み出したりするための外部データ通信端子が2端子であるデータ入出力回路を含むことを特徴とする気体流量計。
  9. 請求項8において、
    前記データ入出力回路の前記外部データ通信端子のいずれかに、2パルス以上の定められたパルス数が入力されてから、前記調整回路が前記記憶装置と外部とでデータを読み書きするデータ通信モードに移行する手段をもつことを特徴とする気体流量計。
  10. 気体通路中を流れる気体流量を電圧信号として出力する気体の流量検出回路からの前記電圧出力を調整する調整回路と調整のためのデータを記憶する記憶装置を有する気体流量計において、
    前記検出気体流量の出力信号として、レシオメトリックアナログ出力、ノンレシオメトリックアナログ出力、及びデジタル出力を取り出せ、かつ前記調整回路に設けた出力選択手段で出力信号を切り替える前記調整回路を有することを特徴とする気体流量計。
  11. 請求項10において、
    前記レシオメトリックアナログ出力、前記ノンレシオメトリックアナログ出力、及び前記デジタル出力をする回路が同一集積回路上に形成されていることを特徴とする気体流量計。
  12. 請求項8又は請求項10において、
    前記外部データ通信端子と検出流量の出力端子を兼用することを特徴とする気体流量計。
  13. 気体通路中に配置される抵抗体に流れる電流や発生電圧を検出することにより、前記気体通路中を流れる気体流量を電圧信号として出力する気体の流量検出回路と、検出した気体流量をデジタル信号に変換するデジタル変換回路と、前記デジタル信号をデジタル調整して出力するデジタル調整回路とを備え、前記デジタル調整回路で調整した信号に基づいた電圧信号を出力する気体流量計において、
    前記デジタル変換回路は単相入力と差動入力のいずれかを選択できる手段を有することを特徴とする気体流量計。
  14. 気体通路中に配置される抵抗体に流れる電流や発生電圧を検出することにより、前記気体通路中を流れる気体流量を電圧信号として出力する気体の流量検出回路と、検出した気体流量をデジタル信号に変換するデジタル変換回路と、前記デジタル信号をデジタル調整して出力するデジタル調整回路と、前記デジタル調整出力を受けて、アナログ信号に変換するアナログ変換回路からなるデジタル調整回路を有する気体流量計において、
    前記アナログ変換回路は外部からの基準電圧を基準として駆動され、かつ、前記基準電圧端子と前記アナログ変換回路を駆動する電源端子との間に、電圧ホロア回路を配置したことを特徴とする発熱抵抗体式の気体流量計。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2015025799A (ja) * 2013-05-07 2015-02-05 パナソニックIpマネジメント株式会社 流量計測装置および流量計測装置に利用される無線装置

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