JP2006037162A - 熱延鋼板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C<0.0030%、Si≦0.1%、Mn≦1.0%、P≦0.02%、S≦0.015、Ti:0.015〜0.10%、Al≦0.10%、N≦0.005%及びB:0.0010〜0.0050%を含み、残部はFeと不純物からなる化学組成で、組織が各々平均結晶粒径5〜30μmのベイニティックフェライト及びポリゴナルフェライトからなり、ベイニティックフェライトの面積割合が1〜80%で、ポリゴナルフェライトの硬さがビッカース硬さで120以下である熱延鋼板。下記(1)から(3)群の少なくとも1群から選んだ1種以上の元素を含有してもよい。(1)Nb:0.002〜0.04%、(2)Ni:0.005〜1.0%及びCr:0.005〜1.0%、(3)Ca:0.0005〜0.050%及びREM:0.0005〜0.050%。
【選択図】なし
Description
鋼板から直径が200mmの円板を各3枚採取し、それぞれの円板について、絞り比を2.0として直径が100mmの円筒に深絞り成形した際に割れが発生しないこと。
脆化温度が−40℃以下であること。ここで、上記「脆化温度」とは、鋼板から深絞り比2.0の深絞り成形して得た直径が100mmの円筒を種々の温度に冷却した後、円筒の口縁部に円錐台形状のポンチを載せ、そのポンチに対して、質量20kgの錘を5mの高さから落下させて前記円筒の口縁部に衝撃的な伸びフランジ加工に相当する応力を加えた場合に、口縁部に脆性的縦割れが発生しない下限の冷却温度をいう。
鋼板の平面曲げ疲労試験における耐久比が0.52以上であること。ここで、上記の「耐久比」とは、鋼板から採取したJIS Z 2275(1978)に記載の1号試験片(記号1−20)を用いて、応力比を−1として両振り平面曲げ疲労試験した際の破断時の繰り返し数と応力振幅値の関係を調査し、得られた疲労曲線から106回の繰り返しサイクルにて破断した応力振幅値を求め、前記の応力振幅値を引張強さ(TS)で除した値をいう。
C:0.0030%未満
熱延鋼板の組織をベイニティックフェライトとポリゴナルフェライトとの2相組織とするためには、Cの含有量を0.0030%未満にする必要がある。Cの含有量が0.0030%未満の場合には、伸び特性が向上して深絞り成形性が高まり、深絞り成形加工が一層容易になるという効果も得られる。なお、Cの含有量が0.0030%以上になると、所望のベイニティックフェライトとポリゴナルフェライトとの2相組織が得られないばかりか、粗大なTiC、NbC及び(Ti、Nb)Cが析出して、耐2次加工脆性及び耐疲労特性が著しく低下する場合がある。したがって、Cの含有量を0.0030%未満とした。C含有量の下限は特に限定するものではないが、精錬コストの観点からは、0.0005%とすることが好ましい。
Siは、鋼を脆化させ、加工性及び耐2次加工脆性の低下を招く。特に、その含有量が0.1%を超えると、加工性及び耐2次加工脆性の低下が著しくなる。したがって、Siの含有量を0.1%以下とした。なお、Siの含有量はできるだけ低減することが望ましいが、Si含有量低減のためのコストと材質の改善度合いとの兼ね合いという点からは、その下限を0.005%とすることが好ましい。
Mnは、鋼の強度を増加させるものの延性を低下させ、特に、Mnの含有量が1.0%を超えると、延性が低下して伸び特性の顕著な劣化を招く。したがって、伸び特性を向上させる必要がある本発明においては、Mnの含有量を1.0%以下とした。極めて良好な加工性が要求される場合には、Mn含有量の上限を0.5%とすることが望ましい。なお、Mn含有量の下限は特に限定するものではないが、Mnは変態点を低下させる作用を有するためフェライト組織の微細化に有効であり、また、Mnには赤熱脆性を抑制する作用もある。このため、上記の作用を確保するという観点からは、Mnは0.03%以上含有させることが好ましい。
Pは、鋼を脆化させる元素であり、耐2次加工脆化の改善のためできるだけ低減するのが望ましいが、その含有量が0.02%以下であれば、前述した(ロ)の耐2次加工脆性、すなわち、−40℃以下の脆化温度が確保できる。したがって、Pの含有量を0.02%以下とした。なお、Pの含有量はできるだけ低減することが望ましいが、P含有量低減のためのコストと材質の改善度合いとの兼ね合いという点からは、その下限を0.002%とすることが好ましい。
Sは、硫化物を生成して伸び特性を低下させるので低減する必要があり、特に、Sの含有量が0.015%を超えると伸び特性の劣化が顕著になる。したがって、Sの含有量を0.015%以下とした。なお、Sの含有量は0.010%以下とすることが好ましい。S含有量の下限は特に限定するものではないが、S含有量低減のための精錬コストの観点からは、0.0005%とすることが好ましい。
Tiは、ベイニティックフェライト及びポリゴナルフェライトの微細化にとって極めて重要な元素である。更に、Tiにはポリゴナルフェライトの生成を遅らせてベイニティックフェライトの生成を助長する作用があり、極低C系の鋼の組織中にベイニティックフェライトを生じさせるのに有効である。これらの効果は、Tiの含有量が0.015%で得られる。一方、0.10%を超えて含有させても前記の効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、Tiの含有量を0.015 〜0.10%とした。なお、Tiの含有量は0.02〜0.07%とすることが好ましい。
Alは、脱酸剤として作用するが、多量に含有すると、アルミナ等に起因する表面欠陥が発生し、しかも含有量に見合う材質改善の効果が期待できない。特に、その含有量が0.10%を超えると、表面欠陥の発生が顕著になる。したがって、Alの含有量を0.10%以下とした。なお、Alの含有量は0.08%以下とすることが好ましい。Al含有量の下限は特に規定するものではないが、製鋼工程の安定性という観点からは、0.001%とすることが好ましく、0.005%とすることがより好ましい。
Nは、鋼塊の段階でTiと結合して粗大なTiNを形成し、鋼の耐2次加工脆性及び耐疲労特性を著しく劣化させるため、その含有量はできるだけ低減することが望ましいが、0.005%以下であれば、鋼塊の鋳造条件を適正化することにより無害化できる。したがって、Nの含有量を0.005%以下とした。なお、Nの含有量はできるだけ低減することが望ましいが、N含有量低減のためのコストと材質の改善度合いとの兼ね合いという点からは、その下限を0.0010%とすることが好ましい。
Bは、耐2次加工脆性を向上させる本発明において極めて重要な元素である。極低炭素鋼の場合、フェライト粒界の結合強度が低下するため、粒界破壊のモードで2次加工脆化が生じやすいが、Bは粒界に偏析し、上記フェライト粒界の結合強度の低下を抑制して耐2次加工脆性を高める作用を有する。この効果はBの含有量が0.0010%以上で得られる。しかしながら、0.0050%を超えてBを含有させると、熱間加工性が劣化するし、含有量に見合う耐2次加工脆性の改善効果も得られない。したがって、Bの含有量を0.0010 〜0.0050%とした。なお、Bの含有量は0.0015〜0.0045%とすることが好ましい。
Nbは、結晶粒を微細化する作用を有する。この効果を確実に得るには、Nbは0.002%以上の含有量とすることが好ましい。しかしながら、Nbを0.04%を超えて含有させても前記の効果は飽和して含有量に見合う効果が得られず、コストが嵩むばかりである。したがって、Nbを添加する場合の含有量は、0.002〜0.04%とするのがよい。なお、Nbのより好ましい含有量は0.01〜0.03%である。
Ni及びCrは、いずれも組織を微細化して耐2次加工脆性及び耐疲労特性を高める作用を有する。この効果を確実に得るには、少なくとも一方を0.005%以上の含有量とすることが好ましい。しかしながら、Ni又はCrを1.0%を超えて含有させても前記の効果は飽和して含有量に見合う効果が得られず、コストが嵩むばかりである。したがって、Ni及びCrを添加する場合のそれぞれの含有量は、Niは0.005〜1.0%及びCrは 0.005〜1.0%とするのがよい。Niのより好ましい含有量は0.1〜0.5%であり、また、Crのより好ましい含有量は0.1〜0.5%である。なお、Ni及びCrはいずれか1種のみ、又は2種の複合で添加することができる。
Ca及びREMは、いずれも耐2次加工脆性を高める作用を有する。この効果を確実に得るには、少なくとも一方を0.0005%以上の含有量とすることが好ましい。しかしながら、Ca又はREMを0.050%を超えて含有させると、清浄度の低下が著しくなる。したがって、Ca及びREMを添加する場合のそれぞれの含有量は、Caは0.0005%〜0.050%及びREMは0.0005%〜0.050%とするのがよい。Caのより好ましい含有量は0.0010〜0.010%であり、また、REMのより好ましい含有量は0.0010〜0.010%である。上記のCa及びREMはいずれか1種のみ、又は2種の複合で添加することができる。なお、REMは、Sc、Y及びランタノイドの合計17元素を指し、本発明でいうREMの含有量が上記元素の合計含有量を指すことは既に述べたとおりである。
(B−1)相の規定
鋼板の組織は本発明の重要な要素であり、前記(1)の発明〜(4)の発明に係る熱延鋼板は、その組織が、平均結晶粒径5〜30μmのベイニティックフェライト及び平均結晶粒径5〜30μmのポリゴナルフェライトからなり、かつ、前記ベイニティックフェライトの面積割合が1〜80%でなければならない。
前記(A)項に記載の化学組成を有する熱延鋼板の組織が前記(B−1)項に記載した相からなる場合であっても、ポリゴナルフェライトの硬さがビッカース硬さ(以下、ビッカース硬さを「HV硬さ」という。)で120を超えると、加工性が低下して所望のプレス成形性が得られない。
前記(A)項に記載の化学組成と(B)項に記載の組織とを有する(1)の発明〜(4)の発明に係る熱延鋼板は、例えば、前記(A)項に記載の化学組成を有する溶鋼を鋳造して鋼塊とする「鋳造工程が、溶鋼の液相線温度から固相線温度までの温度範囲における鋼塊の鋳込み方向に垂直な断面の平均冷却速度を0.3〜1.0℃/秒とするものであり、かつ、鋼塊を熱間圧延して巻き取るまでの工程が、1100℃以上の温度を有する鋼塊を熱間圧延して950〜880℃の温度で圧延を完了し、圧延完了の0.5〜2秒後に1次冷却を開始して40〜200℃/秒の平均冷却速度で770℃〜630℃まで冷却し、次いで、1〜15秒中間空冷した後、平均冷却速度5℃/秒以上で620〜400℃まで2次冷却してその温度で巻き取る」前記(5)の発明によって比較的容易に製造することができる。
各鋼板の圧延方向に平行な断面について、光学顕微鏡又は電子顕微鏡を用いて、相の判定をするとともに、「切片法」で求めた平均切片長さを1.13倍してベイニティックフェライト及びポリゴナルフェライトの平均結晶粒径を求め、更に、面積割合も求めた。なお、相の判定と面積割合は板厚方向の全域について実施し、平均結晶粒径は板厚をtとして、いわゆる「t/4」位置と「3t/4」位置について実施した。
各鋼板から圧延方向に平行にJIS Z 2201(1998)に記載の5号引張試験を採取し、クロスヘッド速度を10mm/分として引張試験を行い、降伏点(YP)、引張強さ(TS)及び伸び(El)を測定した。
各鋼板から直径が200mmの円板を3枚ずつ採取し、それぞれの円板を深絞り比を2.0として直径が100mmの円筒に深絞り成形した後、割れの有無を調査して深絞り性(プレス成形性)を評価した。割れが発生しなかったものを深絞り性が良好とし、一方、割れが発生したものは深絞り性が劣るとした。
各鋼板から深絞り比2.0で深絞り成形して得た上記の直径が100mmの円筒を、種々の温度に冷却した後、円筒の口縁部に円錐台形状のポンチを載せ、そのポンチに対して、質量20kgの錘を5mの高さから落下させて前記円筒の口縁部に衝撃的な伸びフランジ加工に相当する応力を加えた場合に、口縁部に脆性的縦割れが発生しない下限の冷却温度を脆化温度として、耐2次加工脆性を評価した。この脆化温度が低い鋼板ほど耐2次加工脆性は良好である。
各鋼板からJIS Z 2275(1978)に記載の1号試験片(記号1−20)を採取し、応力比を−1として両振り平面曲げ疲労試験を行って破断時の繰り返し数と応力振幅値の関係を調査し、得られた疲労曲線から106回の繰り返しサイクルで破断した応力振幅値を求め、前記の応力振幅値を引張強さ(TS)で除した「耐久比」で耐疲労特性を評価した。
(6)製品疵発生率の調査:
各鋼板表面におけるスケール疵及び平坦悪化による製品疵を目視で調査し、総質量に対する製品不良部、つまり、スケール疵が入っている鋼板の幅と長さの全領域で、切り捨てた部分の合計質量を求めて、製品疵発生率(%)とした。
表4及び表5に、前記の各調査結果をまとめて示す。なお、表4及び表5における深絞り性の欄の「○」及び「×」はそれぞれ、前記した条件で直径が100mmの円筒に深絞り成形した際、「割れが発生しなかったこと」及び「割れが発生したこと」を示す。なお、いずれの試験番号の熱延鋼板の場合も、その組織はベイニティックフェライトとポリゴナルフェライトの2相組織であった。したがって、「ベイニティックフェライトの面積割合」を100から引いた値は「ポリゴナルフェライトの面積割合」を示すものである。
試験番号15、19及び20の熱延鋼板は、ポリゴナルフェライト及びベイニティクフェライトの平均結晶粒径がいずれも30μmを超えるため、耐2次加工脆性及び耐疲労特性に劣っていた。なお、上記のうちで試験番号15の熱延鋼板には、粗大なTiNが多く存在していた。このため、その伸びは39%と低いものであった。
Claims (6)
- 質量%で、C:0.0030%未満、Si:0.1%以下、Mn:1.0%以下、P:0.02%以下、S:0.015%以下、Ti:0.015〜0.10%、Al:0.10%以下、N:0.005%以下及びB:0.0010〜0.0050%を含有し、残部はFe及び不純物からなる化学組成を有し、組織が平均結晶粒径5〜30μmのベイニティックフェライト及び平均結晶粒径5〜30μmのポリゴナルフェライトからなり、かつ、前記ベイニティックフェライトの面積割合が1〜80%で、更に、前記ポリゴナルフェライトの硬さがビッカース硬さで120以下であることを特徴とする熱延鋼板。
- Feの一部に代えて、質量%で、Nb:0.002〜0.04%を含有する請求項1に記載の熱延鋼板。
- Feの一部に代えて、質量%で、Ni:0.005〜1.0%及びCr:0.005〜1.0%のうちの1種又は2種を含有する請求項1又は2に記載の熱延鋼板。
- Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.0005〜0.050%及びREM(希土類元素):0.0005〜0.050%のうちの1種又は2種を含有する請求項1から3までのいずれかに記載の熱延鋼板。
- 請求項1から4までのいずれかに記載の化学組成を有する溶鋼を鋳造後圧延する熱延鋼板の製造方法であって、鋳造工程が、溶鋼の液相線温度から固相線温度までの温度範囲における鋼塊の鋳込み方向に垂直な断面の平均冷却速度を0.3〜1.0℃/秒とするものであり、かつ、鋼塊を熱間圧延して巻き取るまでの工程が、1100℃以上の温度を有する鋼塊を熱間圧延して950〜880℃の温度で圧延を完了し、圧延完了の0.5〜2秒後に1次冷却を開始して40〜200℃/秒の平均冷却速度で770℃〜630℃まで冷却し、次いで、1〜15秒中間空冷した後、平均冷却速度5℃/秒以上で620〜400℃まで2次冷却してその温度で巻き取るものであることを特徴とする熱延鋼板の製造方法。
- 熱間圧延が、鋼塊を粗圧延してシートバーとした後、そのシートバーを加熱してシートバーの長手方向の平均温度を950℃以上及び長手方向の最大温度と最小温度との差を150℃以下とし、次いで、仕上げ圧延するものであることを特徴とする請求項5に記載の熱延鋼板の製造方法。
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