JP2006027993A - 水熱固化体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】調湿機能を維持しつつ、揮発性有害物質の除去機能を向上させた水熱固化体を提供する。
【解決手段】この水熱固化体10は、水熱固化用調合物を乾式プレス成形後、水熱処理することにより少なくともケイ酸カルシウム水和物を生じて固化した水熱固化体である。水熱処理による結晶間には、空隙を有して活性炭2及び揮発性有害物質を分解可能な触媒3が分散されている。
【選択図】図1
【解決手段】この水熱固化体10は、水熱固化用調合物を乾式プレス成形後、水熱処理することにより少なくともケイ酸カルシウム水和物を生じて固化した水熱固化体である。水熱処理による結晶間には、空隙を有して活性炭2及び揮発性有害物質を分解可能な触媒3が分散されている。
【選択図】図1
Description
本発明は水熱固化体及びその製造方法に関する。
従来、例えば特許文献1、2に従来の水熱固化体が開示されている。これらの水熱固化体は、水熱固化用調合物を乾式プレス成形後、水熱処理することにより少なくともケイ酸カルシウム水和物を生じて固化したものである。この水熱固化体は、少なくともCaO分、SiO2分及び水を含む水熱固化用調合物を用意し、この水熱固化用調合物を乾式プレス成形法により成形して成形体とした後、成形体を水熱処理することによって製造される。
これらの水熱固化体は、数〜数十nmサイズの多くの細孔を有することにより、調湿効果を発揮するとともに、一部の揮発性有機化合物(VOC)(例えば、ホルムアルデヒド(HCHO)等)、排気ガス、タバコやペット等の悪臭物質等、人体にとって有害な揮発性有害物質を吸着し、シックハウス症候群の防止、悪臭防止等を実現できることが知られている。
しかし、上記従来の水熱固化体は、揮発性有害物質を吸着することで周囲から除去しているに過ぎず、その吸着量には限界がある。このため、この水熱固化体における揮発性有害物質の除去機能の向上が望まれている。
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、調湿機能を維持しつつ、揮発性有害物質の除去機能を向上させた水熱固化体を提供することを解決すべき課題としている。
本発明の水熱固化体は、水熱固化用調合物を乾式プレス成形後、水熱処理することにより少なくともケイ酸カルシウム水和物を生じて固化した水熱固化体において、該水熱処理による結晶間には空隙を有して揮発性有害物質を分解可能な触媒が分散されていることを特徴とする。
また、本発明の水熱固化体の製造方法は、少なくともCaO分、SiO2分及び水を含む水熱固化用調合物を用意する調合工程と、該水熱固化用調合物を乾式プレス成形法により成形して成形体とする成形工程と、該成形体を水熱処理して少なくともケイ酸カルシウム水和物を生じて固化した水熱固化体を得る水熱工程とを有する水熱固化体の製造方法において、
前記水熱固化用調合物には、揮発性有害物質を分解可能な触媒が含有されていることを特徴とする。
前記水熱固化用調合物には、揮発性有害物質を分解可能な触媒が含有されていることを特徴とする。
本発明の水熱固化体は、母材の多くの細孔によって、調湿効果を発揮するとともに、人体にとって有害な揮発性有害物質を吸着する。そして、この水熱固化体は、母材が吸着した揮発性有害物質を触媒によって人体に無害な物質に分解する。この際、触媒は、水熱処理による結晶間に空隙を有して分散されており、水熱固化体自体の細孔をなんら塞ぐものではない。このため、水熱固化体の母材は揮発性有害物質を吸着する機能をいかんなく発揮することができる。また、触媒もそうして母材が吸着した揮発性有害物質を分解する機能をいかんなく発揮することができる。
したがって、本発明の水熱固化体は、調湿機能を維持しつつ、揮発性有害物質の除去機能を向上させることができる。
なお、特開2003−26463号公報には、消石灰(Ca(OH)2)を触媒として分散させた内装材が開示されている。しかしながら、この内装材は、消石灰を含むスラリーを湿式成形しているため、母材自体の細孔を塞いでしまいやすく、揮発性有害物質に対する吸着性能及び分解性能を十分に期待できない。特に、この内装材では、触媒としての消石灰がケイ酸カルシウム水和物に変化することが考えられ、消石灰による揮発性有害物質の分解性能に疑問がある。これに対し、本発明の水熱固化体は、水熱固化用調合物を乾式プレス成形後、水熱処理したものであるため、母材の細孔を維持しており、調湿機能を有するとともに、高い吸着性能及び分解性能を発揮するのである。このため、本発明の水熱固化体は、この内装材と技術分野が異なり、作用効果も異なる。
また、特開2003−70887号公報には、触媒を有する消臭材が開示されている。この消臭材では、触媒として、酸化亜鉛、鉄フタロシアニン等を用いている。しかしながら、この消臭材は、備長炭、ゼオライト及び触媒をポリビニールアルコールである結合材によって固化しているだけであり、水熱固化用調合物を乾式プレス成形後に水熱処理したものではない。このため、この消臭材も、やはり備長炭やゼオライトの細孔を塞いでしまいやすく、揮発性有害物質に対する吸着性能及び分解性能を十分に期待できない。このため、本発明の水熱固化体は、この消臭材とも技術分野が異なり、作用効果も異なる。
さらに、特開2000−210374号公報には、酸化チタン(TiO2)等を光触媒として含む除去材が開示されている。しかしながら、この除去材は、基材に光触媒を接着したものに過ぎず、やはり水熱固化用調合物を乾式プレス成形後に水熱処理したものではない。このため、この除去材は、基材自体が細孔を有するものではなく、揮発性有害物質に対する吸着性能を全く期待できない。このため、本発明の水熱固化体は、この除去材とも技術分野が異なり、作用効果も異なる。
調合工程では、少なくともCaO分、SiO2分及び水を含む水熱固化用調合物を用意する。水熱固化用調合物は、少なくともCaO分、SiO2分及び水を含む。CaO分としては、消石灰(Ca(OH)2)、炭酸カルシウム(CaCO3)等を採用することができる。SiO2分としては、珪砂、ガラス粉、石英粉、シリカフューム、廃鋳物砂、建設汚泥、下水汚泥焼却灰、スラグ、陶磁器くず、籾殻灰、珪藻土、ホワイトカーボン、コンクリート屑、シラス、白土等を採用することができる。CaO分及びSiO2分として、セメント、セメントスラッジ等を採用することもできる。
水熱固化用調合物は、CaO分及びSiO2分以外にAl2O3分、P2O5分等を含むことができる。Al2O3分としては、長石、カオリナイト、雲母、緑泥石、キラ、陶磁器屑、石炭灰、下水汚泥焼却灰、アルミサッシ工場等で発生する水酸化アルミニウムスラッジ、赤泥、スラグ、釉汚泥、メタカオリン、アロフェン、ゼオライト等を採用することができる。P2O5分としては、下水汚泥焼却灰等を採用することができる。
水は外割で30質量%以下で含むことができる。水は外割で10質量%以下であることがより好ましい。含水率が低い程、成形が困難になるが、細孔が多くなるからである。
本発明では、水熱固化用調合物に揮発性有害物質を分解可能な触媒が含有されている。触媒としては、金、白金、ロジウム等の貴金属のほか、貴金属以外の遷移金属(Fe、Mn、Cu、Co等)や酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)等の光触媒等を採用することができる。
揮発性有害物質は、揮発性有機化合物、悪臭物質等、人体にとって有害な物質である。
揮発性有機化合物としては、ホルムアルデヒド、トリメチルアミン((CH3)3N)、メチルメルカプタン(CH3SH)、アセトアルデヒド(CH3CHO)、フタル酸ジオクチル(C6H4(COOC8H17)2)、リン酸トリクレシル((CH3C6H4)3PO4)、トルエン(C6H5CH3)、キシレン(C6H4(CH3)2)、エチルベンゼン(C2H5C6H5)、スチレン(C6H5CH=CH2)等を挙げることができる。
悪臭物質としては、アンモニア(NH3)、硫化水素(H2S)、トリメチルアミン、メチルメルカプタン、アセトアルデヒド、トルエン、キシレン、スチレン等を挙げることができる。この悪臭物質は、揮発性有機化合物の一部を含むものである。
成形工程では、水熱固化用調合物を乾式プレス成形法により成形して成形体とする。
水熱工程では、成形体を水熱処理して少なくともケイ酸カルシウム水和物を生じて固化した水熱固化体を得る。水熱固化体はケイ酸カルシウム水和物以外、アパタイト属、ゼオライト系鉱物等を生じ得る。処理温度は120°C〜200°Cであり得る。
発明者らの知見によれば、ホルムアルデヒド、アンモニア、トリメチルアミン、アセトアルデヒド、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレシル等は極性物質であるのに対し、トルエン、硫化水素、キシレン、エチルベンゼン、スチレン等は無極性物質である。発明者らの試験によれば、上記従来の水熱固化体は、極性物質に対しては十分な吸着性能を発揮できていたものの、無極性物質に対してはさらなる吸着性能の向上が求められる。
このため、本発明の水熱固化体は、水熱処理による結晶間には空隙を有して無極性物質吸着粒子が分散されていることが望ましい。この場合、無極性物質吸着粒子が無極性物質を吸着する。無極性物質吸着材としては、活性炭、ゼオライト等を採用することができる。
発明者らの試験結果によれば、本発明の水熱固化体は、無極性物質吸着粒子として活性炭を採用した場合、その活性炭を除いた母材における数〜数十nmサイズの細孔と、活性炭自体の0.5nm程度にピークをもつサイズの細孔とを多く有している。本発明の水熱固化体は、母材の細孔により、極性物質及び無極性物質に対する高い吸着性能を発揮できるのである。そして、この水熱固化体は、母材が吸着した無極性物質も触媒によって人体に無害な物質に分解するのである。これにより、水熱固化体は、調湿機能を維持しつつ、極性、無極性に関係なく、揮発性有害物質に対して十分に吸着性能を発揮できる。
無極性物質吸着粒子としては、活性炭粒子を採用することが好ましい。活性炭粒子は吸着材として広く普及しており、入手が容易であるとともに、安価だからである。
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、以下の水熱固化体10を以下の各工程により製造した。
(調合工程)
粘土(N−90)及び消石灰(宇部マテリアルズ(株)製(超特号))を質量比80:20で混合してベース粉末とする。また、ベース粉末に無極性物質吸着粒子としての活性炭2((株)キャタラー製:ヤシ殻破砕炭GA−A)の粉末を外割で1質量%混合するとともに、触媒3としてのCu−Mn系活性炭(日本エンバイロケミカルズ製:触媒型活性炭 GSIX)を外割で1質量%混合し、混合粉末を得る。混合粉末にさらに外割で10質量%の水を加え、水熱固化用調合物とする。
粘土(N−90)及び消石灰(宇部マテリアルズ(株)製(超特号))を質量比80:20で混合してベース粉末とする。また、ベース粉末に無極性物質吸着粒子としての活性炭2((株)キャタラー製:ヤシ殻破砕炭GA−A)の粉末を外割で1質量%混合するとともに、触媒3としてのCu−Mn系活性炭(日本エンバイロケミカルズ製:触媒型活性炭 GSIX)を外割で1質量%混合し、混合粉末を得る。混合粉末にさらに外割で10質量%の水を加え、水熱固化用調合物とする。
(成形工程)
水熱固化用調合物を30MPaで一軸方向に加圧する。こうして、乾式プレス成形法により、外形寸法が約40×15×10(mm)の成形体を得る。
水熱固化用調合物を30MPaで一軸方向に加圧する。こうして、乾式プレス成形法により、外形寸法が約40×15×10(mm)の成形体を得る。
(水熱工程)
そして、成形体をオートクレーブ(中央理科機(株)製:内容積2L、水熱処理液0.3L)を用いて180°Cで2時間水熱処理する。こうして、実施例の水熱固化体10を得る。
そして、成形体をオートクレーブ(中央理科機(株)製:内容積2L、水熱処理液0.3L)を用いて180°Cで2時間水熱処理する。こうして、実施例の水熱固化体10を得る。
こうして得られた水熱固化体10は、母材1の多くの細孔によって、調湿効果を発揮するとともに、人体にとって有害な揮発性有害物質を吸着する。特に、この水熱固化体10は、活性炭2が水熱処理による結晶間に空隙を有して分散されているため、活性炭2が無極性物質も吸着する。そして、この水熱固化体10は、母材1が吸着した揮発性有害物質を触媒3によって人体に無害な物質に分解する。この際、触媒3は、水熱処理による結晶間に空隙を有して分散されており、母材1の細孔をなんら塞ぐものではない。このため、水熱固化体10は揮発性有害物質を吸着する機能をいかんなく発揮することができる。また、触媒3もそうして吸着した揮発性有害物質を分解する機能をいかんなく発揮することができる。
したがって、実施例の水熱固化体10は、調湿機能を維持しつつ、揮発性有害物質の除去機能を向上させることができる。
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
本発明の水熱固化体は、内装タイル、床材、天井材等の室内用建材に利用可能である。
10…水熱固化体
2…活性炭(無極性物質吸着粒子)
3…触媒
2…活性炭(無極性物質吸着粒子)
3…触媒
Claims (5)
- 水熱固化用調合物を乾式プレス成形後、水熱処理することにより少なくともケイ酸カルシウム水和物を生じて固化した水熱固化体において、該水熱処理による結晶間には空隙を有して揮発性有害物質を分解可能な触媒が分散されていることを特徴とする水熱固化体。
- 前記水熱処理による結晶間には、空隙を有して無極性物質吸着粒子が分散されていることを特徴とする請求項1記載の水熱固化体。
- 前記無極性物質吸着粒子自体の細孔を維持していることを特徴とする請求項2記載の水熱固化体。
- 前記無極性物質吸着粒子は活性炭粒子であることを特徴とする請求項2又は3記載の水熱固化体。
- 少なくともCaO分、SiO2分及び水を含む水熱固化用調合物を用意する調合工程と、該水熱固化用調合物を乾式プレス成形法により成形して成形体とする成形工程と、該成形体を水熱処理して少なくともケイ酸カルシウム水和物を生じて固化した水熱固化体を得る水熱工程とを有する水熱固化体の製造方法において、
前記水熱固化用調合物には、揮発性有害物質を分解可能な触媒が含有されていることを特徴とする水熱固化体の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004213521A JP2006027993A (ja) | 2004-07-21 | 2004-07-21 | 水熱固化体及びその製造方法 |
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Publications (1)
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ID=35894782
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JP2004213521A Pending JP2006027993A (ja) | 2004-07-21 | 2004-07-21 | 水熱固化体及びその製造方法 |
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JP (1) | JP2006027993A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009120469A (ja) * | 2007-10-22 | 2009-06-04 | Hitoshi Murakami | ペーパースラッジ灰及び石炭灰中のメタカオリン有効利用方法及び製造装置 |
CN106810294A (zh) * | 2017-03-17 | 2017-06-09 | 山东卓联环保科技有限公司 | 一种利用固废制备环保建筑板材的系统和方法 |
-
2004
- 2004-07-21 JP JP2004213521A patent/JP2006027993A/ja active Pending
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