JP2006026852A - 磁気インパクト工具 - Google Patents
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Abstract
【課題】 衝撃的な回転に伴う騒音を抑制することができ、かつ反力による作業者に対する負担が少ないインパクト工具を得る。
【解決手段】 制御回路21は、磁気ハンマブロック7と磁気アンビルブロック8とが磁気的に結合された状態を維持しつつモータ2から磁気ハンマブロック7までの可動部分を回転軸周りに揺動させ、出力軸5にステップ的な回転動作を生じさせることにより、出力トルクを周期的に変動させ、反力が一定方向に継続的に作用しないようにする。
【選択図】 図1
【解決手段】 制御回路21は、磁気ハンマブロック7と磁気アンビルブロック8とが磁気的に結合された状態を維持しつつモータ2から磁気ハンマブロック7までの可動部分を回転軸周りに揺動させ、出力軸5にステップ的な回転動作を生じさせることにより、出力トルクを周期的に変動させ、反力が一定方向に継続的に作用しないようにする。
【選択図】 図1
Description
本発明は、磁気を利用して衝撃的なトルクを発生させる磁気インパクト工具に関する。
従来より、機械的に衝撃的なトルクを発生させるインパクト工具が知られている(例えば特許文献1参照)。
図14および図15に示すように、上記特許文献1のインパクト工具100は、モータ101のトルクが減速機構102およびモータ出力軸103を介して伝達されて回転するハンマ104と、軸方向においてハンマ104と噛み合って回転するアンビル105と、軸方向で可動とされた同ハンマ104をアンビル105側に向けて付勢するスプリング106とを備え、前記ハンマ104とアンビル105との噛合部107でこのアンビル105に対しハンマ104の回転する方向に間欠的な打撃を付与して同アンビル105を回動させることにより、このアンビル105の前端に形成された出力軸108に装着されるビットを衝撃的に回転させることができるものである。
そして、前記インパクト工具は、ビットホルダ114にドライバビットのようなビットを装着するインパクトドライバのようなものであって、外殻ケース112のグリップ部112aの下端に電源となる電池パック(図示せず)が装着されており、同グリップ部112aの前面側にはトリガスイッチ113が設けられている。外殻ケース112内にはモータ取付台121を介してモータ101が配設され、モータ101の出力回転軸にはピニオン122が圧入固定されており、このピニオン122にはモータ出力軸103の後端部分のキャリア部123に取り付けられたプラネタリギヤ124が噛み合っている。
前記モータ出力軸103は軸受125によって支持されると共に、軸受126で支持されたアンビル105によって支持されているもので、前記プラネタリギヤ124はモータ取付台121と一体に形成されたインターナルギヤ127にも噛み合っている。そのため、モータ101の出力回転軸が回転されると、ピニオン122、プラネタリギヤ124、インターナルギヤ127、およびキャリア部123で構成される遊星歯車機構(減速機構102)によって減速され、前記モータ出力軸103が回転する。
また、前記モータ出力軸103の外周には環状のハンマ104が軸方向及び回転方向に移動自在に配設されている。このハンマ104はその前面に前記アンビル105の後端部分に形成されたアンビル腕105aと噛み合うハンマ爪104aを備え、その内周に軸方向の直溝128を備えたものであり、モータ出力軸103の外周面に形成されたV字状溝129と同直溝128とに係合する鋼製のボール130の存在故に、同モータ出力軸103に対する軸方向及び回転方向の移動について制限を受けている。
そして、ハンマ104の背面には、スプリング106の一端がスラスト板131及び球132を介して当接される一方、スプリング106の他端はスラスト板133で支持されており、ハンマ104は前方へと付勢されている。アンビル105は軸受126によって回転自在に支持されており、その前端部分にはビットが装着されるビットホルダ114を備え、その後端部分には前記ハンマ爪104aと噛み合うアンビル腕105aが形成されている。したがって、このインパクト工具100において、モータ101のトルクは、ボール130を介してハンマ104に伝えられ、そして、スプリング106による付勢力で同ハンマ104はアンビル105と噛合部107で噛み合った状態にあるため、そのトルクはアンビル105に形成された出力軸108を通じてドライバビットのようなビットに伝達される。
ここで、ドライバビットのようなビットによるビス締め作業等を行っている際に、回転の負荷が大きくなってくると、ハンマ104とアンビル105との噛合部107において、モータ出力軸103に設けられたV字状溝129の存在故に、ハンマ104を後退させる方向の分力が生じ、このハンマ104はモータ出力軸103に対して回転しながら後退する。そして、ハンマ104とアンビル105との噛合部107でハンマ爪104aとアンビル腕105aとの噛み合いが外れ、モータ101からの回転エネルギとスプリング106の復元力とによって、同ハンマ104はアンビル105を打撃し、この打撃による回転方向の衝撃がドライバビットのようなビットに繰り返し加えられることによって、強力なトルクを発生することができる。
特開平11−333742号公報
しかしながら、上記従来のインパクト工具では、打撃により衝撃的かつ強大なトルクを発生させることができるが、ハンマ爪とアンビル腕とが直接衝突するため、大きな騒音(金属音)が発生する。したがって、この騒音を低減することが望まれている。
そこで、インパクト工具を、モータにより回転駆動される駆動軸と、駆動軸と共に回転する磁気ハンマブロックと、磁気ハンマブロックに対向して配置される磁気アンビルブロックと、磁気アンビルブロックと共に回転する出力軸と、を備え、磁気ハンマブロックと磁気アンビルブロックとの対向面の一方に磁極を構成し、他方に磁極または磁性体を構成し、磁気ハンマブロックの回転によって、磁気アンビルブロックに非接触で磁気的に衝撃回転力を発生させるように構成することが考えられる。かかる構成により、ハンマ爪とアンビル腕とを直接衝突させることなく、相互に非接触で回転する磁気ハンマブロックおよび磁気アンビルブロックによって磁力を利用して衝撃的かつ強大なトルクを発生することができるので、騒音を大幅に低減することができる。
ここで、このような磁力を利用したインパクト工具(以下、磁気インパクト工具と記す)では、負荷トルクが小さく、磁気ハンマブロックと磁気アンビルブロックとの間の磁力による吸引トルクを下回る場合には、磁気ハンマブロックと磁気アンビルブロックとの磁気的な結合は解除されない。よって、断続的かつ衝撃的なトルクは生じることなく、出力軸は連続的に一方向に回転し続ける。
このため、作業者の腕には一定方向の反力が継続的に作用することとなって疲れ易くなり、ひいては作業効率が低下する等の問題を生じる場合がある。
そこで、本発明は、衝撃的な回転に伴う騒音を抑制することができ、かつ負荷トルクが小さい状態で作業を行う場合にも反力による影響が少ない磁気インパクト工具を得ることを目的とする。
本発明にかかる磁気インパクト工具にあっては、モータにより回転駆動される駆動軸と、駆動軸と共に回転する主動側ブロックと、主動側ブロックに対向して配置される従動側ブロックと、従動側ブロックと共に回転する出力軸と、を備え、主動側ブロックと従動側ブロックとの対向面の一方に磁極を構成し、他方に磁極または磁性体を構成し、主動側ブロックの回転によって、従動側ブロックに非接触で磁気的に衝撃回転力を発生させる磁気インパクト工具において、主動側ブロックと従動側ブロックとが磁気的に結合された状態を維持しつつモータから主動側ブロックまでの可動部分を回転軸周りに揺動させ、出力軸にステップ的な回転動作を生じさせる揺動制御手段を備えることを最も主要な特徴とする。
このような構成によれば、相互に接触しない主動側ブロックと従動側ブロックとの間に作用する磁力を利用して衝撃的なトルクを発生させるため、機械的な打撃音が発生せず、騒音を低減することができる。また、揺動制御手段により、出力軸にステップ的な回転動作を発生させ、出力トルクが周期的に変動するようにしたので、反力が一定の方向に継続的に作用することがなくなる。
また、上記本発明にかかる磁気インパクト工具では、上記揺動制御手段は、可動部分の揺動の周波数が増大するにつれて出力軸のトルクが増大する範囲で、当該周波数を増大させながら出力軸を回転させるのが好適である。こうすれば、揺動の周波数とともに出力軸の回転数が増大し、当該出力軸の回転数の増大に伴って出力トルクを増大させることができるため、作業時の違和感が少なくなる。
また、上記本発明にかかる磁気インパクト工具では、上記揺動制御手段は、可動部分の揺動の周波数が減少するにつれて出力軸のトルクが増大する範囲で、当該周波数を減少させながら出力軸を回転させるのが好適である。こうすれば、負荷トルクが増大して、出力軸の回転数とともに揺動の周波数が減少すると、出力軸のトルクが増大するという、回転作業を行う工具として極めて好適な特性が得られるため、複雑な制御回路が不要となる。
また、上記本発明にかかる磁気インパクト工具では、上記揺動制御手段は、指示入力手段の操作量に応じて揺動の周波数を変化させるのが好適である。こうすれば、作業者の意志により、出力トルクを自在に調整することができるようになる。
また、上記本発明にかかる磁気インパクト工具では、モータの駆動電圧を検出する電圧検出手段を備え、上記揺動制御手段は、上記電圧検出手段によって検出された駆動電圧の低下に応じて、当該駆動電圧が低いときには揺動制御信号のデューティ比を高くし、駆動電圧が高いときにはデューティ比を低くするのが好適である。こうすれば、駆動電圧が低下した場合にも、モータに印加される電力を確保することができ、より確実に揺動制御を行うことができるようになるとともに、無駄な電力消費を抑制し、電池寿命をより長くすることができる。
本発明によれば、騒音を低減することができるため、作業者やその近隣に対し、騒音による悪影響を及ぼすことがなくなるという効果がある。また、負荷トルクが小さい場合であっても、出力トルクが周期的に変動し、反力が一定の方向に継続的に作用することがなくなるので、当該反力による作業者への負担を軽減することができるという効果がある。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1実施形態)図1〜図11は、本発明の第1実施形態を示しており、図1は、磁気インパクト工具の内部構造を示す側断面図、図2は、磁気インパクト工具に含まれるインパクト回転発生機構の分解斜視図、図3〜図6は、インパクト回転発生機構の断面図(図1のA−A断面図)であって、回転制御の各段階におけるインパクト回転発生機構の磁気ハンマブロックと磁気アンビルブロックとの位置関係を示す図、図7は、磁気インパクト工具の制御回路の概略構成を示すブロック図、図8は、揺動制御された磁気ハンマブロックの磁気アンビルブロックに対する相対的な回転角および出力トルクの経時変化の一例を示す図、図9は、図8の揺動制御の各段階におけるインパクト回転発生機構の断面図、図10は、揺動の周波数に応じた出力トルク特性の一例を示す図、また図11は、揺動制御信号のデューティ比の制御の一例を示す図である。なお、図8では、横軸を時間、左側の縦軸を制御信号(電圧)、右側の縦軸上段を出力トルク、右側の縦軸下段を磁気アンビルブロックに対する磁気ハンマブロックの相対的な回転角としている。また、図10では、横軸を周波数(出力軸の回転数)、縦軸をトルクとしており、揺動制御を行う場合の特性を実線で、負荷トルクが大きく衝撃的なトルクが発生する場合(磁気インパクト状態)の特性を破線で示している。
本実施形態にかかる磁気インパクト工具1は、回転駆動力を発生するモータ2、モータ2による回転を減速する減速機構3、および磁力を利用して衝撃的な回転動作を発生させるインパクト回転発生機構4を備えており、出力軸5のビットホルダ6に装着したビット(図示せず)を衝撃的に回転させるものである。
モータ2は、制御回路21から入力される制御信号によって制御され、モータ出力軸(図示せず)を所定方向に回転させ、あるいは揺動させるものであり、例えば、直流電源(例えば蓄電池26)によって駆動されるDCモータとして構成される。また、減速機構3は、例えば、サンギヤ、プラネタリギヤ、およびリングギヤ(いずれも図示せず)を備える遊星歯車機構として構成され、モータ出力軸の回転を減速してインパクト回転発生機構4に伝達する。
インパクト回転発生機構4は、軸方向後側(モータ2側)の磁気ハンマブロック(主動側ブロック)7と、軸方向前側(出力軸5側)の磁気アンビルブロック(従動側ブロック)8とを含んでいる。本実施形態では、磁気ハンマブロック7に磁石9が設けられる一方、磁気アンビルブロック8は磁性体によって構成され、これらの間で非接触で磁気的吸引力が作用するようにしてある。
磁気ハンマブロック7では、筒状のコア部10の外周に、軸方向視で略十字状に突出する四つの板状の極取付部11が設けられるとともに、各極取付部11の径方向外側(先端側)に、極取付部11と同じ厚みの板状の磁石9が隣接して配置されている。そして、極取付部11および磁石9は、周方向の両側から磁性体からなる磁極板12で挟み込むようにして接着され、こうして90°おきに四つのハンマ部13が形成されている。また、コア部10の筒状部分には、減速機構3の出力軸(図示せず)と連結されて前側に伸びる駆動軸14が圧入されている。
一方、磁気アンビルブロック8は、略十字状に形成される板状の基体部15と、十字の各先端で折れ曲がって軸方向の後側(モータ2側)に伸びるアーム部16と、基体部15の中心部から軸方向の前側に向けて伸びる円柱状の出力軸5とを備える。アーム部16は、磁気ハンマブロック7のハンマ部13の外周に、微小なギャップをあけて90°間隔で四つ配設され、その幅はハンマ部13の幅とほぼ同じになるように形成されており、図3に示すように、各ハンマ部13の径方向外側に各アーム部16が対向配置される位置関係となったときに、磁気ハンマブロック7と磁気アンビルブロック8との間で作用する磁力(吸引力)が最も強くなる。なお、本実施形態では、磁気アンビルブロック8の一部としての出力軸5が、磁気インパクト工具1の本体部の一部としてのケーシング17に設けられた軸受19に回転自在に支持されている。また、磁気ハンマブロック7の駆動軸14の前端部は磁気アンビルブロック8の基体部15の後端面に形成された有底孔15aに取り付けられた軸受20に回動自在に支持される一方、当該駆動軸14の後端部は減速機構3の出力に連結されている。
ここで、図3〜図6を参照して、インパクト回転発生機構4において衝撃的な回転が発生する原理について説明する。
まず、ねじの締め付け工程の初期状態など、負荷トルクが比較的小さい状態では、図3に示すように、磁気ハンマブロック7および磁気アンビルブロック8は、ハンマ部13とアーム部16とが周方向にほとんどずれることなく相互に重なり合った状態で回転する。
そして、ねじの締め付け等が進み、負荷トルクがより大きくなると、図4に示すように、磁気アンビルブロック8は磁気ハンマブロック7に対して周方向に遅れをもって回転するようになる。
さらに負荷トルクが増大し、磁気ハンマブロック7と磁気アンビルブロック8との間の磁力による吸引トルクを越えると、それらの間の磁気的な結合が解除され、図5に示すように、ハンマ部13とアーム部16との同期が外れて周方向に大きくずれ、磁気ハンマブロック7と磁気アンビルブロック8との間に角速度の差が生じる。
しかし、磁気ハンマブロック7の回転がさらに進むと、ハンマ部13(13a)は、図6に示すように、従前に(図3の状態で)重なり合っていたアーム部16(16a)の先方側(回転先側)に隣接するアーム部16(16b)と重なり合う位置に到達する。このとき、磁気アンビルブロック8には、磁気ハンマブロック7から、モータ2の駆動トルクとモータ2から磁気ハンマブロック7までの可動部分の慣性トルクとの和となって吸引トルクを超えるトルクが衝撃的に伝達される。そして、上述した図3〜図6の動作が繰り返され、出力軸5のビットホルダ6に装着したビットを、断続的かつ衝撃的に印加される強大なトルクによって効率よく回転させることができる。
上述したように、負荷トルクが磁気ハンマブロック7と磁気アンビルブロック8との間に作用する吸引トルクより小さいときには、断続的かつ衝撃的なトルクは生じることなく、出力軸は連続的に一方向に回転し続ける。このため、作業者の腕には反力が一定方向に継続的に作用することとなって疲れ易くなり、ひいては作業効率が低下する等の問題を生じる場合がある。そこで、本実施形態では、モータ2から磁気ハンマブロック7までの可動部分(本実施形態では、モータ2のロータ(図示せず)、減速機構3、および磁気ハンマブロック7)を揺動制御することにより、負荷トルクが吸引トルクより低い状態でも、出力トルクを周期的に変動させ、反力が一定方向に継続的に作用するのを抑制する。以下、かかる揺動制御および当該制御による可動部分の動作について説明する。
モータ2の動作を制御する制御回路21は、モータ2に制御信号を入力するモータ制御部22の他、回転状態判定部23および駆動電圧検出部27を備える。
回転状態判定部23は、可動部分の回転状態を判定する。具体的には、モータ2の回転角度を検出するエンコーダ25から出力された角度検出パルスに基づいて、角速度あるいは角加速度を取得し、角速度の変化(角加速度の大きさ)が所定時間継続して所定の閾値と同じかまたは小さい場合には、負荷トルクが吸引トルクより低く、断続的かつ衝撃的な出力トルクが生じていない状態が所定時間継続していると判定して、低負荷状態判定信号を出力する。
モータ制御部22は、回転状態判定部23から低負荷状態判定信号が出力されると、モータ2に対し、可動部分を揺動させるべく、揺動制御信号を入力する。本実施形態では、図8に示すように、揺動制御信号を、周波数が一定で、電圧値:+V0をハイレベル、電圧値:0をローレベルとする矩形波の電圧信号としている。
そして、この揺動制御信号がモータ2に入力されると、図9に示すように、揺動の各段階(a)〜(d)で、磁気アンビルブロック8に対する磁気ハンマブロック7の相対的な揺動角度(図3の正対状態からの角度差β1〜β4)はβ1からβ3まで漸増し(β1<β2<β3=β4)、その後振幅がβ3(=β4)で一定となる。このとき、出力軸5のトルク(出力トルク)も揺動角度に応じた振幅で周期的に変動する。そして、かかるトルクを発生する出力軸5は、周期的に回転速度が増減して揺動しながら回転するステップ的な回転動作を生じることになる。
ここで、この可動部分に関しては、当該可動部分の慣性、磁気ハンマブロック7と磁気アンビルブロック8との間の磁気バネ、およびモータ2内のロータ−磁石間の磁気バネからなるねじれ共振系が構成されており、当該可動部分をねじれ共振周波数(ねじれ共振の固有振動数ω0およびその整数(2以上の整数)分の1の振動数ω0/2,ω0/3,ω0/4,・・・)で揺動させると、ねじれ共振が生じる。すなわち、モータ2に、ねじれ共振周波数またはその近傍の周波数の揺動制御信号を入力すると、可動部分の揺動振幅が徐々に大きくなり、ついには、磁気ハンマブロック7と磁気アンビルブロック8との磁気的結合が解除されることになる。しかし、本実施形態では、磁気ハンマブロック7と磁気アンビルブロック8との磁気的結合を解除しない状態で可動部分を揺動させるべく、揺動制御信号の周波数を、ねじれ共振が生じない、ねじれ共振周波数と次のねじれ共振周波数との間の周波数(例えば図10でトルクが極小となる周波数x)とする。このように、揺動の周波数をねじれ共振が生じない周波数とし、磁気ハンマブロック7と磁気アンビルブロック8との磁気的結合を解除させないことで、磁気バネによるエネルギ蓄積の効果により、可動部分を揺動させるのに要するエネルギ消費を抑制することができる。
一方、回転状態判定部23から低負荷状態判定信号が出力されない場合には、モータ制御部22は、回転制御信号として一定電圧の信号を出力する。この場合には、図3〜図6に示した動作となり、高負荷の場合には衝撃的かつ強大な出力トルクが生じるようになる。
また、本実施形態では、図7に示すように、スライドスイッチや押しボタン等の操作部材を含むモード切替指示部28を設け、かかるモード切替指示部28の操作により、上記揺動制御を行うか、あるいは通常の回転制御を行うかを切り替えるように構成している。こうすることで、作業者の意志によって、上記揺動制御を行うか否かを選択することができる。
さらに、本実施形態にかかる制御回路21は、駆動電圧を検出する駆動電圧検出部27を備え、当該駆動電圧に応じて揺動制御信号の波形を変化させるようにしている。具体的には、駆動電圧検出部27は、電源としての蓄電池26の電圧をモニタしており、揺動制御信号の周期(周波数)は変化させることなく、駆動電圧が低いときには揺動制御信号のデューティ比を高くし、駆動電圧が高いときにはデューティ比を低くするものである。例えば、図11に示すように、通常時の駆動電圧を2[V(ボルト)]とし、それに対応する有効な正電圧印加期間をT(デューティ比50%、すなわち周期は2T)と設定している場合には、駆動電圧がそれより高く例えば2.4[V]であるときには、正電圧印加期間をより短く0.83Tとする一方、駆動電圧がそれより低く例えば1.6[V]であるときには、正電圧印加期間をより長く例えば1.25Tとする。これにより、駆動電圧が低下した場合にも、モータ2に印加される電力(すなわち電圧値と印加期間の積)をほぼ一定とすることができ、より確実にロック状態から抜け出すことができるようになるとともに、無駄な電力消費を抑制し、電池寿命をより長くすることができる。
以上説明した本実施形態にかかる磁気インパクト工具によれば、相互に接触しない磁気ハンマブロック7と磁気アンビルブロック8との間に作用する磁力を利用して衝撃的なトルクを発生させるため、機械的な打撃音が発生せず、騒音を低減することができる。また、負荷トルクが小さい場合に、ステップ的な回転動作を行わせ、出力トルクが周期的に変動するようにしたので、反力が一定の方向に継続的に作用することがなくなり、当該反力による作業者への負担を軽減することができるという効果がある。
また、本実施形態にかかる磁気インパクト工具によれば、駆動電圧検出部27を設け、駆動電圧が低いときには揺動制御信号のデューティ比を高くし、駆動電圧が高いときにはデューティ比を低くするようにしたので、駆動電圧が低下した場合にも、モータ2に印加される電力を確保することができ、より確実に揺動制御を行うことができるようになるとともに、無駄な電力消費を抑制し、電池寿命をより長くすることができる。
(第2実施形態)図12は、本発明の第2実施形態を示しており、揺動制御された磁気ハンマブロックの磁気アンビルブロックに対する相対的な回転角および出力トルクの経時変化の一例を示す図である。なお、図12では、横軸を時間とし、左側の縦軸を制御信号(電圧)、右側の縦軸上段を出力トルク、右側の縦軸下段を磁気アンビルブロックに対する磁気ハンマブロックの相対的な回転角としている。本実施形態では、モータ制御部22によって出力する揺動制御信号が上記第1実施形態と相違しており、それ以外は上記第1実施形態にかかる磁気インパクト工具と全く同様である。
図12に示すように、本実施形態では、モータ制御部22は、揺動制御信号の周波数を漸増させている。具体的には、図12の例では、その周波数を図10の周波数xから周波数yに向けて、3段階で増大している。図10に示すように、出力トルクは、ねじれ共振周波数で極大値となり、相互に隣接するねじれ共振周波数の中間域に極小値が存在する特性を有しており、各ねじれ共振周波数より周波数(回転数)が低いところに、当該周波数が増大するにつれて出力軸のトルクが単調に増大する範囲がある。したがって、本実施形態のように、揺動の周波数をxからねじれ共振周波数(ω0)に近い周波数yまで増大させると、出力トルクはT1まで増大する。なお、周波数yは、磁気ハンマブロック7と磁気アンビルブロック8との磁気的な結合が解除されない周波数に設定してある。
また、このとき、揺動の周波数は、指示入力手段としてのトリガスイッチ18の操作量に応じて増大させるのが好適である。これにより、作業者の意志によって出力トルクを自在に調整することができるようになる。
本実施形態によれば、揺動の周波数の増大とともに出力軸5の回転数が増大し、当該出力軸5の回転数の増大に伴って出力トルクが増大することになるため、作業時の違和感が少なくなるという利点がある。また、本実施形態のように、揺動の周波数によって出力トルクを変化させる場合、モータ制御部22は、モータ2に対し、比較的容易な速度制御を行えばよく、回路構成をより簡素に構成することができるという利点もある。
(第3実施形態)図13は、本発明の第3実施形態を示しており、揺動制御された磁気ハンマブロックの磁気アンビルブロックに対する相対的な回転角および出力トルクの経時変化の一例を示す図である。なお、図13では、横軸を時間とし、左側の縦軸を制御信号(電圧)、右側の縦軸上段を出力トルク、右側の縦軸下段を磁気アンビルブロックに対する磁気ハンマブロックの相対的な回転角としている。本実施形態では、モータ制御部22によって出力する揺動制御信号が上記第1実施形態と相違しており、それ以外は上記第1実施形態にかかる磁気インパクト工具と全く同様である。
図13に示すように、本実施形態では、モータ制御部22は、揺動制御信号の周波数を漸減させている。具体的には、図13の例では、その周波数を図10の周波数xから周波数zに向けて、3段階に増大している。図10に示すように、各ねじれ共振周波数より周波数(回転数)が高いところに、当該周波数が減少するにつれて出力軸のトルクが単調に増大する範囲がある。したがって、本実施形態のように、揺動の周波数をxからねじれ共振周波数(ω0/2)に近い周波数zまで減少させると、出力トルクはT1まで増大する。なお、周波数zは、磁気ハンマブロック7と磁気アンビルブロック8との磁気的な結合が解除されない周波数に設定してある。
ここで、DCモータには、負荷トルクが大きくなるにつれて回転数が低下する特性がある。したがって、本実施形態によれば、負荷トルクが増大すると、出力軸5の回転数とともに揺動の周波数が減少して、出力軸5のトルクが増大するという、この種の工具として極めて好適な特性が得られることになり、揺動制御を行うモータ制御部22としては複雑な回路構成が不要になるという利点がある。また、本実施形態でも、モータ制御部22は、モータ2に対して比較的容易な速度制御を行えば済むため、回路構成をより簡素化することができるという利点がある。
そして、本実施形態でも、揺動の周波数は、指示入力手段としてのトリガスイッチ18の操作量に応じて増大させるのが好適である。これにより、作業者の意志によって出力トルクを自在に調整することができるようになる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に種々の改変を施すことができる。例えば、上記実施形態では、磁石を磁気ハンマブロック(主動側ブロック)に配置した場合を例にあげて説明したが、この磁石を磁気アンビルブロック(従動側ブロック)に設けてもよい。
また、上記実施形態では、回転状態判定部23を、エンコーダ25の出力パルスから取得した可動部分の角速度または角加速度によって回転状態を判定するものとして構成したが、これに替えて、モータ2に入力される制御信号の電流値を検出する電流検出部(図示せず)や、磁気ハンマブロック7の動作を検出するホール素子(図示せず)を設け、それらの検出結果を用いて判定するようにしてもよい。前者の場合には、負荷トルクが大きいほどモータ制御信号の電流値が大きくなることを利用し、当該制御信号の電流値が所定の閾値より低い場合に、負荷トルクが小さい状態と判定することができる一方、後者の場合には、ホール素子によって検出した磁気ハンマブロック7の動作状態(パルス数等)から負荷トルクが小さい状態を判定することができる。
1 磁気インパクト工具
2 モータ
5 出力軸
7 磁気ハンマブロック(主動側ブロック)
8 磁気アンビルブロック(従動側ブロック)
11 磁石(磁極)
14 駆動軸
18 トリガスイッチ(指示入力手段)
22 モータ制御部(揺動制御手段)
27 駆動電圧検出部(電圧検出手段)
2 モータ
5 出力軸
7 磁気ハンマブロック(主動側ブロック)
8 磁気アンビルブロック(従動側ブロック)
11 磁石(磁極)
14 駆動軸
18 トリガスイッチ(指示入力手段)
22 モータ制御部(揺動制御手段)
27 駆動電圧検出部(電圧検出手段)
Claims (5)
- モータにより回転駆動される駆動軸と、駆動軸と共に回転する主動側ブロックと、主動側ブロックに対向して配置される従動側ブロックと、従動側ブロックと共に回転する出力軸と、を備え、主動側ブロックと従動側ブロックとの対向面の一方に磁極を構成し、他方に磁極または磁性体を構成し、主動側ブロックの回転によって、従動側ブロックに非接触で磁気的に衝撃回転力を発生させる磁気インパクト工具において、
主動側ブロックと従動側ブロックとが磁気的に結合された状態を維持しつつモータから主動側ブロックまでの可動部分を回転軸周りに揺動させ、出力軸にステップ的な回転動作を生じさせる揺動制御手段を備えることを特徴とする磁気インパクト工具。 - 前記揺動制御手段は、可動部分の揺動の周波数が増大するにつれて出力軸のトルクが増大する範囲で、当該周波数を増大させながら出力軸を回転させることを特徴とする請求項1に記載の磁気インパクト工具。
- 前記揺動制御手段は、可動部分の揺動の周波数が減少するにつれて出力軸のトルクが増大する範囲で、当該周波数を減少させながら出力軸を回転させることを特徴とする請求項1に記載の磁気インパクト工具。
- 前記揺動制御手段は、指示入力手段の操作量に応じて揺動の周波数を変化させることを特徴とする請求項2または3に記載の磁気インパクト工具。
- モータの駆動電圧を検出する電圧検出手段を備え、
前記揺動制御手段は、前記電圧検出手段によって検出された駆動電圧の低下に応じて、当該駆動電圧が低いときには揺動制御信号のデューティ比を高くし、駆動電圧が高いときにはデューティ比を低くすることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一つに記載の磁気インパクト工具。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004211931A JP2006026852A (ja) | 2004-07-20 | 2004-07-20 | 磁気インパクト工具 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2004211931A JP2006026852A (ja) | 2004-07-20 | 2004-07-20 | 磁気インパクト工具 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2006026852A true JP2006026852A (ja) | 2006-02-02 |
Family
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Family Applications (1)
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JP2004211931A Withdrawn JP2006026852A (ja) | 2004-07-20 | 2004-07-20 | 磁気インパクト工具 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2006026852A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2015133082A1 (ja) * | 2014-03-04 | 2015-09-11 | パナソニックIpマネジメント株式会社 | インパクト回転工具 |
-
2004
- 2004-07-20 JP JP2004211931A patent/JP2006026852A/ja not_active Withdrawn
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