JP2006026664A - 離型剤塗布装置および離型剤塗布方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 簡単な設備改造で生産性と品質を満足する離型剤塗布装置および離型剤塗布方法を提供する。
【解決手段】 離型剤の性質を変化させる添加剤を添加することが必要な金型位置では離型剤をノズル43に供給する管路14に添加剤を供給し、離型剤のまま塗布する金型位置では管路14に添加剤を供給せずに、離型剤をノズル43から噴霧して金型2、4に塗布する。
【選択図】 図1
【解決手段】 離型剤の性質を変化させる添加剤を添加することが必要な金型位置では離型剤をノズル43に供給する管路14に添加剤を供給し、離型剤のまま塗布する金型位置では管路14に添加剤を供給せずに、離型剤をノズル43から噴霧して金型2、4に塗布する。
【選択図】 図1
Description
本発明は金型へ離型剤を噴霧する離型剤塗布装置および離型剤塗布方法に関する。
通常ダイカスト工法においては、製品取り出し後の金型表面に対して金型の冷却および次ショットの離型性確保の目的で離型剤を塗布している。一般的にダイカスト工法ではダイカストマシンの高速噴射特性を生かし、薄肉で複雑な形状の製品を鋳造する。製品形状に合わせて用いられるダイカスト金型も複雑な形状をしている。このため金型の温度分布が不均一になり、製品品質に問題が生ずる。
金型の温度分布を均一にするため、通常使用の離型剤とは別に冷却性を向上させた離型剤を用意し、金型温度の低い部分には通常使用の離型剤、高い部分には冷却性を向上させた離型剤を噴霧するというように使い分けることが考えられる。しかし離型剤は離型剤メーカーにより離型剤成分が安定化するように乳化されて納入されており、ユーザー側で離型剤の冷却性向上を行うことにより乳化が困難になる場合もあり、ユーザーが自由に調整することはできない。また離型剤を2種類用意することは管理が複雑になるとともに、2種類の離型剤の供給には圧送経路が2ライン必要となり設備が複雑になる問題がある。
1種類の離型剤を使用して金型の温度分布を均一にする方法として、特許文献1に記載されているように、従来、金型の温度分布によって塗布量を調整している。金型温度が高い部分には離型剤塗布量を多くし、金型温度が低い部分には離型剤塗布量を少なくする。具体的には、塗布量の調整はスプレーノズルの移動速度を調整する方法が記載されている。しかし、この方法では金型温度の高い部分で離型剤噴霧時間を長くとらなければならないため、生産性を阻害する一要因となっていた。また別の塗布量調整方法として、離型剤の噴霧量を調製する方法が記載されている。しかし、この方法では金型温度の高い部分に離型剤を多量に噴霧することにより余剰の離型剤が金型内に残り鋳巣不良など品質に悪影響をあたえやすいという問題がある。
特開2001−162212号公報(段落番号[0002])
本発明は上記課題を解決したもので、簡単な設備改造で生産性と品質を満足する離型剤塗布装置および離型剤塗布方法を提供する。
上記技術的課題を解決するために、請求項1の発明では、離型剤をノズルから噴霧して金型に塗布する離型剤塗布装置において、離型剤の性質を変化させる添加剤をバルブを介して、前記離型剤を前記ノズルに供給する管路に供給することを特徴とする離型剤塗布装置としている。
請求項2の発明では、前記添加剤が界面活性剤であることを特徴とする請求項1記載の離型剤塗布装置としている。
請求項3の発明では、離型剤をノズルから噴霧して金型に塗布する離型剤塗布方法において、前記ノズルの前記金型に対面する位置を移動させながら、前記離型剤の性質を変化させる添加剤を添加する必要な位置では前記離型剤を前記ノズルに供給する管路に前記添加剤を供給し、前記離型剤のまま塗布する位置では前記離型剤を前記管路に前記添加剤を供給せずに前記離型剤を前記ノズルから噴霧して前記金型に塗布する離型剤塗布方法としている。
請求項4の発明では、前記添加剤が界面活性剤であり、前記金型の相対的に温度が高い高温部では前記添加剤を前記管路に供給し、前記金型の相対的に温度が低い低温部では前記添加剤を供給しないことを特徴とする請求項3記載の離型剤塗布方法としている。
請求項1の発明によれば、添加剤は離型剤をノズルに供給する既設の管路に供給されるため大幅な設備変更を必要としない。また離型剤を多量に噴霧せずに金型部位によって適した離型剤を塗布できるので、製品品質を満足できる。さらに噴霧時に添加剤を添加することによりこれまで困難であった離型剤の安定化の問題を解決する効果がある。
請求項2の発明によれば、添加剤を界面活性剤とすることで離型剤の冷却性を向上でき、これを使用して金型温度を均一化できるので、製品品質を満足できる。また添加剤を界面活性剤とすることで水溶性離型剤に容易に溶け込ませられるという効果がある。
請求項3の発明によれば、金型の任意の部位にて添加剤の添加、未添加を制御できるので、離型剤を多量に噴霧せずに金型部位によって適した離型剤を塗布でき、鋳造品質の安定化がはかれるという効果がある。
請求項4の発明によれば、冷却性を向上させる界面活性剤の使用により、形状が複雑で温度差の激しい金型においても生産性を阻害せずに金型温度を均一化させる効果がある。
本発明者は、金型の高温部で離型剤の噴霧時間を長くしたり噴霧量を多くすることなく金型温度を低温部より冷却できること、離型剤の品質に悪影響を与えないことを課題として研究してきた。その結果、本発明者は離型剤噴霧工程において、ユーザー側の目的に合わせて任意の金型位置で離型剤の性質を変えることができれば、噴霧時間や噴霧量を変えることなく、かつ離型剤の品質に悪影響を与えずに金型の温度を均一化できるという技術的思想に到達し、鋭意研究した結果、本発明の至った。
本発明は、金型に塗布する離型剤の管路上で、離型剤の性質を変化させる添加剤を離型剤中に混入させてノズルより噴霧するものである。すなわち離型剤タンクからノズルに離型剤を送る管路の途中に添加剤を供給するために添加剤管路を連結する。添加剤管路にバルブを設け、添加剤を混合した離型剤を噴霧する必要がある金型の部分ではバルブを開け、離型剤だけを噴霧すればよい金型の部分ではバルブを閉めれば、ユーザー側の目的に合わせて任意の金型位置で離型剤の性質を変えることができる。
金型温度を均一にすることが目的である場合、離型剤の冷却性を向上させる添加剤を使用する。このような添加剤として界面活性剤が使用できる。図2は界面活性剤添加の効果を説明する説明図である。図2はノズルから噴霧された離型剤の液滴が金型に塗布される様子を表している。図2の左側は離型剤のみ(界面活性剤が添加されていない)の場合、右側は界面活性剤が添加されている場合を示している。離型剤50がノズルより噴霧され金型80に達すると、金型が高温であるため金型面上で液滴51のように中に浮いた状態となったり液滴52のようにはじかれ、金型80にほとんど接触できない状態となる。この現象をライデンフロスト現象という。この現象のために金型を冷却する効率が低下する。一方、界面活性剤が添加された離型剤60は金型80に達すると、界面活性剤により表面張力が下がっているためライデンフロスト現象が起こらず、61のように金型面上に広がって十分に接触した状態となる。このため界面活性剤は離型剤の冷却性を向上する添加剤として作用する。
金型の低温部で離型剤のみを噴霧し、金型の高温部では離型剤に界面活性剤を添加して噴霧すれば、低温部より高温部の方が冷却され、その結果、金型の表面温度(キャビティ面温度)を均一化できる。そして、金型の高温部で噴霧時間を長くしたり、噴霧量を多くする必要がないので、離型剤残りによる鋳巣の発生が抑制でき、かつ生産性に優れた離型剤塗布が実現できる。ここで、離型剤として予め界面活性剤が含まれるものを使用することもできる。金型の高温部では離型剤に界面活性剤をさらに添加して供給すれば、金型の高温部の方が低温部より冷却され、その結果、金型の表面温度を均一化できるのは、界面活性剤が含まれていない離型剤を使用した場合と同様である。
以上の説明では、具体的には界面活性剤で離型剤の冷却性を向上させ、金型の表面温度を均一化する離型剤塗布について説明したが、金型の部位によって離型剤の性質を変える必要がある場合にはすべて適用できる。添加剤としては、変える必要がある性質を有するものであればよい。例えば、潤滑性、保温性、離型剤の付着性を変えることが考えられる。潤滑性を変化させる場合には硫化モリブデンなどを含む添加剤を使用し、保温性を変化させる場合にはタルクや珪藻土などを含む添加剤を使用し、離型剤の付着性を変化させる場合には油分やワックス分などを含む添加剤を使用すればよい。
離型剤の性質を変える程度は添加剤を混入させる割合を変化させて行う。添加剤を添加する割合は離型剤と添加剤を供給する流量や圧力によって制御する。上記の説明では、添加剤を離型剤に添加する場合と添加しない場合で説明したが、必要に応じて添加剤の添加量を噴霧する場所によって制御してもよい。
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態の離型剤塗布装置を説明する説明図である。この実施形態ではアルミダイカスト鋳造装置100の離型剤塗布装置である。アルミダイカスト鋳造装置100の金型は可動型2と固定型4から構成されている。可動型2は可動プラテン1に取り付けられ可動プラテン1とともに可動される。固定型4は固定プラテン3に取り付けられている。固定プラテン3側にはアルミ溶湯を可動型2と固定型4で形成されるキャビティに供給するための湯道8が取り付けられ、湯道8にはアルミ溶湯を注入する溶湯口7が設けられている。また湯道8の溶湯をキャビティに供給するためにプランジャ5が湯道8内を摺動するように設けられている。
アルミダイカスト鋳造装置100には離型剤塗布装置の離型剤噴霧ロボット40が付属している。離型剤噴霧ロボット40の固定部45は固定プラテン3上に取り付けられている。固定部45から金型側にアーム41が延びている。アーム41の先端にはマニホールド42が取り付けられている。マニホールド42は離型剤噴霧ロボット40の制御部44に記憶されている動作プログラムによりアーム41を動かして上下、左右(図1の紙面垂直方向)に動かすようになっている。マニホールド42には複数個のノズル43が設けられている。
マニホールド42にはエア源20より吐出調整弁21、エアバルブ22を介し、エア供給管24を通ってエアが供給される。またマニホールド42には離型剤タンク10より圧送ポンプ13、吐出調整弁11、離型剤バルブ12を介し、離型剤供給管14を通って離型剤が供給される。
離型剤塗布装置には界面活性剤タンク30が設けられ、この界面活性剤タンク30より圧送ポンプ33、吐出調整弁31、界面活性剤バルブ32を介し、界面活性剤供給管34を通って界面活性剤が離型剤供給管14に供給される。エアバルブ22、離型剤バルブ12、界面活性剤バルブ32は、いずれも開閉バルブである。
前のダイカスト鋳造が終了すると可動型2が可動され、図1に示すように金型が開いた状態となる。この状態で鋳造品が取り出される。その後、離型剤噴霧ロボット40のアーム41を動かして、マニホールド42を可動型2と固定型4の間に挿入し、マニホールド42を上下、左右に動かしながら離型剤をノズル43から可動型2と固定型4のキャビティ面に噴霧する。
離型剤の噴霧動作について説明する。離型剤タンク10中の離型剤は、圧送ポンプ13により加圧され、吐出調整弁11により吐出圧が調整されている。エア源20より供給されるエアは吐出調整弁21により吐出圧が調整されている。界面活性剤タンク30中の界面活性剤は圧送ポンプ33により加圧され、吐出調整弁31により吐出圧が調整されている。
可動型2、固定型4のキャビティ面で相対的に高温となる部分(高温部)、その他の部分(低温部)はあらじめわかっており、制御部44のメモリに記憶されている。ノズル43が低温部に対面する位置にあるときには離型剤バルブ12とエアバルブ22が開状態となっており、離型剤は離型剤供給管14を通ってマニホールド42に供給され、エアはエア供給管24を通ってマニホールド42に供給される。マニホールド42内で離型剤とエアが混合されノズル43よりキャビティ面に向かって噴霧される。ノズル43が高温部に対面する位置にあるときには離型剤バルブ12とエアバルブ22とともに界面活性剤バルブ32も開状態となり、界面活性剤は界面活性剤供給管34を通って離型剤供給管14に供給される。離型剤供給管14に供給された界面活性剤は離型剤とともに離型剤供給管14を通ってマニホールド42に供給される。マニホールド42内で離型剤と界面活性剤はエアと混合されノズル43よりキャビティ面に向かって噴霧される。離型剤バルブ12、エアバルブ22は離型剤の噴霧が始まったら噴霧終了まで開状態である。界面活性剤バルブ32は制御部44に記憶されているプログラムにしたがって、ノズル43が高温部に対面したときだけ開状態とされる。
金型の高温部では界面活性剤が添加された離型剤が噴霧され塗布されるので、上記したように、離型剤のみが噴霧され塗布された低温部より効率的に冷却される。これにより金型のキャビティ面の温度を均一化でき製品品質を向上できる。また、低温部では界面活性剤を添加されていない離型剤を噴霧しているので、金型が冷えすぎを抑えることができ製品品質を向上できる。
金型への離型剤塗布が完了したら、エアブローにて余剰の離型剤を乾燥させた後、マニホールド42を可動型2と固定型4の間の空間から待避させ、可動型2を可動させて固定型4に当接させる。溶湯口7から湯道8に注入されたアルミ溶湯をプランジャ5を前進させて、可動型2と固定型4で形成されたキャビティに注入する。
以下、界面活性剤による冷却効果の試験例を示す。試験は実際の金型において型開き後の高温金型部にスポット的に各試験材料を噴霧し、噴霧後の表面温度を測定することで比較した。噴霧条件はすべて同じとした。噴霧する前の金型表面温度は400℃である。試験に使用した離型剤はシリコーン系の水溶性エマルジョン離型剤を30倍に水希釈したものを用いた。試験に使用した界面活性剤は廃水処理性を考慮にいれ非イオン系界面活性剤を用いた。以下、試験に使用した界面活性剤を示す。ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル(以下、BEOと称する。)、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(以下、DSPと称する。)、ポリオキシエチレングリセロールエーテル(以下、GLと称する。)、ポリオキシエチレンビスフェノールFエーテル(以下、BFEと称する。)、ジプロピレングリコール(以下、DPGと称する。)以上5種類の界面活性剤を任意に水にて希釈して噴霧を行った。また、離型剤および水を噴霧した際の冷却効果も比較として行った。表1には各試験材料の希釈倍率と試験結果を示した。
試験例7の離型剤を噴霧した場合に比べて界面活性剤を噴霧した場合はいずれも表面温度が低くなっており冷却効果があることが分かる。また水を噴霧した試験例8に比べても表面温度が低くなっている。特に界面活性剤としてBEO、DSP、GLを噴霧した試験例1〜4では冷却効果が大きく特に試験例1、2の冷却効果が著しい。
さらに、離型剤に界面活性剤を添加した場合の冷却効果をみるために試験装置を作製して試験した。図3は界面活性剤添加による冷却効果を試験した方法を説明する説明図である。ヒータ91を内蔵する鉄板90の表面に離型剤をノズル43によって噴霧する。ノズル43は、その噴霧方向が鉄板90の表面に直交するように配置されている。
離型剤が塗布される鉄板90の表面には表面温度を検出する温度センサ92が設けられている。鉄板90の表面とノズル43との距離は一定とした。離型剤を噴霧する前の鉄板90の表面温度は300℃に制御されている。この状態で、上記の試験例7の試験材料(離型剤:重量比30倍希釈液)に界面活性剤BEOを試験例7の試験材料を100重量部として0.1重量部添加したものと、試験例7の試験材料を同じ条件で2秒間噴霧し、温度センサ92で表面温度の変化を測定した。図4は温度変化の一例を示したグラフ図である。100は界面活性剤を添加した試験材料の場合の温度変化、200は試験例7の試験材料の場合の温度変化を示している。いずれも離型剤を噴霧中は表面温度が低下し、噴霧終了後には表面温度が上昇している。界面活性剤を添加した試験材料の場合の方が、より表面温度が低くなっている。
以上の試験でわかるように離型剤に界面活性剤を添加することにより金型を冷却する効果が大きくなる。どの界面活性剤を使用するかは、対象となる金型温度、鋳造条件などにより選択される。
なお、上記の説明ではダイカスト工法による金属鋳造で説明したが、これに限定されず金型を用いて金属を鋳造する場合にすべて適用できる。
2…可動型(金型)
4…固定型(金型)
14…離型剤供給管(管路)
10…離型剤タンク
30…界面活性剤タンク
31…吐出調整弁
32…界面活性剤バルブ(バルブ)
33…圧送ポンプ
34…界面活性剤供給管
40…離型剤噴霧ロボット
43…ノズル
44…制御部
4…固定型(金型)
14…離型剤供給管(管路)
10…離型剤タンク
30…界面活性剤タンク
31…吐出調整弁
32…界面活性剤バルブ(バルブ)
33…圧送ポンプ
34…界面活性剤供給管
40…離型剤噴霧ロボット
43…ノズル
44…制御部
Claims (4)
- 離型剤をノズルから噴霧して金型に塗布する離型剤塗布装置において、
離型剤の性質を変化させる添加剤をバルブを介して、前記離型剤を前記ノズルに供給する管路に供給することを特徴とする離型剤塗布装置。 - 前記添加剤が界面活性剤であることを特徴とする請求項1記載の離型剤塗布装置。
- 離型剤をノズルから噴霧して金型に塗布する離型剤塗布方法において、
前記ノズルの前記金型に対する位置を移動させながら、前記離型剤の性質を変化させる添加剤を添加する必要な位置では前記離型剤を前記ノズルに供給する管路に前記添加剤を供給し、前記離型剤のまま塗布する位置では前記管路に前記添加剤を供給せずに、前記離型剤を前記ノズルから噴霧して前記金型に塗布する離型剤塗布方法。 - 前記添加剤が界面活性剤であり、前記金型の相対的に温度が高い高温部では前記添加剤を前記管路に供給し、前記金型の相対的に温度が低い低温部では前記添加剤を前記管路に供給しないことを特徴とする請求項3記載の離型剤塗布方法。
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