JP2006022939A - 自動変速機搭載車両 - Google Patents

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Abstract

【課題】自動変速機搭載車両において、トルクコンバータにおける損失を抑えて燃費を向上させる。
【解決手段】 トルクコンバータ22の運転状態を監視し、トルクコンバータ22の損失が大きい場合には、トルクコンバータ22における損失を低減する所定の運転操作(アクセル戻し操作、ロックアップクラッチ21の締結操作等)を行うよう運転者に指示が出される、あるいはトルクコンバータ22における損失を低減する所定の車両制御(エンジン出力減少、変速制御、ロックアップクラッチ21の締結)が自動的に行われるので、トルクコンバータ22における損失を抑え、燃費を向上させることができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、自動変速機を備えた車両に関し、特に、そのような車両における経済運転を支援する技術に関する。
トルクコンバータを有する自動変速機を備えた車両においては、トルクコンバータにおいて滑りが生じ、エンジンの出力の一部がトルクコンバータ内で熱となって消費されるため、一般に、マニュアル変速機を備えた車両に比べて燃費が悪くなる。特に、アクセルペダルを踏み込みすぎて過剰な駆動力を発生させているときは、トルクコンバータにおける滑り、損失が大きくなり、燃費はさらに悪化する。
このような問題を解決するために、トルクコンバータにロックアップクラッチを備えたものがある。ロックアップクラッチを締結すれば、トルクコンバータの入力側と出力側が直結されてトルクコンバータにおける滑りがなくなるので、ロックアップ状態では自動変速機搭載車両であってもマニュアル変速機搭載車両と同等の燃費を実現することが可能である。
しかしながら、従来、ロックアップクラッチは、車速がある程度上昇し、トルクコンバータの入力回転速度と出力回転速度が略等しくなったところで締結されるものであり、締結されるまでの非ロックアップ状態では依然としてトルクコンバータに滑りがあるため、燃費の向上に関してはなお改良の余地があった。
また、非ロックアップ状態におけるトルクコンバータの滑り状態は運転状態によってまちまちであり、滑り状態によってトルクコンバータの効率は大きく変化する。したがって、同じ非ロックアップ状態で走行するにしても、トルクコンバータをより効率のよい状態で走行するようにすれば、さらなる燃費の向上が期待できる。
本発明は、かかる技術的課題を鑑みてなされたもので、自動変速機搭載車両において、トルクコンバータにおける損失を抑えて燃費を向上させることである。
車両の運転状態に基づき、トルクコンバータにおける損失に応じて変化するパラメータ(トルクコンバータの速度比、トルク比、伝達効率、車両の過剰駆動力、過剰駆動力率等)を演算し、演算されたパラメータに基づきトルクコンバータにおける損失を判定し、この判定結果に応じて、トルクコンバータにおける損失を低減する所定の運転操作(アクセル戻し操作、ロックアップスイッチの操作等)を運転者に指示する、あるいは前記トルクコンバータにおける損失を低減する所定の車両制御(エンジン出力減少、変速制御、ロックアップクラッチの締結)を行うようにする。
トルクコンバータの運転状態を監視し、トルクコンバータの損失が大きい場合には、トルクコンバータにおける損失を低減する所定の運転操作(アクセル戻し操作、ロックアップスイッチの操作等)を行うよう指示が出されて運転者が所定の運転操作を行う、あるいはトルクコンバータにおける損失を低減する所定の車両制御(エンジン出力減少、変速制御、ロックアップクラッチの締結)が自動的に行われるので、トルクコンバータにおける損失を抑え、燃費を向上させることができる。
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明に係る自動変速機搭載車両の概略構成図であり、図2はその変速機部分を拡大したものである。
エンジン1は噴射パルス幅を変更することで燃料噴射量を調節することができるコモンレール式のディーゼルエンジンであり、エンジン1の出力は、自動変速機2、プロペラシャフト3、終減速装置4、ドライブシャフト5を介して、駆動輪6に伝達される。自動変速機2は、ロックアップクラッチ21と、トルクコンバータ22と、遊星歯車機構、ブレーキ、クラッチ、油圧回路などからなる変速機構23とで構成される。24は変速制御用のアクチュエータである。なお、エンジン1はガソリンエンジンに代表される火花点火エンジンでもよい。
エンジン1のクランクシャフト10の後端は、自動変速機2のエンジン側に配置されたドライブプレート25に結合される。ドライブプレート25はトルクコンバータ22のポンプインペラ26に結合されおり、クランクシャフト10、ドライブプレート25、ポンプインペラ26は、一体となって同じ回転速度で回転する。ドライブプレート25の外周にはリングギヤ30が設けられており、リングギヤ30には図示しないスタータモータのピニオンギヤが噛み合っている。
トルクコンバータ22は、ポンプインペラ26と、ポンプインペラ26と対向配置されるタービンランナ27と、両者の間に配置されるステータ28とで構成される。エンジンによってポンプインペラ26が回転され、ポンプインペラ26から外側に向けてトルコンオイルが押し出されると、これを受けてタービンランナ27が回転する。このとき、ポンプインペラ26の回転速度に比べてタービンランナ27の回転速度が低いと、タービンランナ27から流出するオイルに回転を助長する力が残っているため、ステータ28で流れの向きを変えて再びポンプインペラ26に戻り、トルコンオイルに回転方向の力を付勢してトルクの増大を図るようになっている。
タービンランナ27の回転速度がポンプインペラ26の回転速度に近づいてくると、ステータ28の羽の背面にトルコンオイルが当たるようになるので、ワンウェイクラッチ29が外れてステータ28が空転しはじめる(クラッチポイント)。この状態及びそれ以降では、もはやトルクの増大作用はなく、ポンプインペラ26とタービンランナ27で構成される流体継手として機能する。
図3はトルクコンバータ22の特性図であり、トルクコンバータ22のトルク比t(=出力トルクTout/入力トルクTin)と伝達効率ηは、トルクコンバータ22の速度比e(=出力回転速度Nout/入力回転速度Nout)によって変化する。伝達効率ηは、Tout・NoutをTin・Ninで割った値であり、Tout=t・Tin、Nout=e・Ninであるので、伝達効率ηは速度比eとトルク比tの積に等しくなる(η=e・t)。
トルク比tは速度比eがゼロとなるストール状態で最大となり、速度比eがゼロから大きくなるにつれてトルク比tは減少し1に近づく。トルク比tが1以上となる速度比eの範囲をコンバータレンジという。そして、速度比eが約0.8になると、ステータ28が空転するクラッチポイントとなってトルク増大作用はなくなり、以後、トルク比tは略1を維持する。このトルク比が略1を維持する速度比eの範囲をカップリングレンジという。これに対し、伝達効率ηは速度比eが減少するにつれ増大し、クラッチポイントの手前に落ち込みがあるものの、その後は速度比が1に近づくにつれて伝達効率ηも1に近づく。
図2に戻り、さらに説明を続けると、ロックアップクラッチ21は、ロックアップ作動バルブ31を開いてロックアップピストン32のエンジン側油圧をドレーンし、クラッチフェーシング33をドライブプレート25に対して押し付けることで締結される。ロックアップクラッチ21を締結すると、ドライブプレート25とトルクコンバータ22の出力軸34が直結状態となる。
エンジン1、自動変速機2の制御用に設けられているコントローラ40は、1または2以上のマイクロプロセッサ、メモリ、入出力インターフェース等で構成され、コントローラ40には、駆動輪6の回転速度Ndを検出する駆動輪速センサ41、アクセルペダル42の操作量を検出するアクセル操作量センサ43、ロックアップクラッチ21を作動させるためのロックアップスイッチ44、エンジン1の回転速度を検出するエンジン回転速度センサ45、自車位置における登坂角度を検出する傾斜センサ46からの各種信号が入力される。
コントローラ40は、入力された信号に基づき、燃料噴射弁49から噴射される燃料の噴射量、噴射時期、自動変速機2の変速段を制御するほか、エンジン1が燃費の良い運転領域で運転するように、また、後述するように、トルクコンバータ22における損失が抑えられるように、エンジン1の運転点、トルクコンバータ22の運転状態を監視し、運転者に対して適切な運転操作を指示する、あるいは、エンジン1の出力制御、自動変速機2の変速制御、ロックアップクラッチ21の締結等、所定の車両制御を実行する。具体的には、エンジン1の運転点が、全性能マップ上の燃費率が最小となる領域に近づくように、また、トルクコンバータ22の滑りを抑えてその損失が小さくなるように、これらの運転操作指示あるいは車両制御を行う。
運転者に対して適切な運転操作を指示するにあたっては、コントローラ40は、車載ユニット50を介して、車内の見やすい位置に取り付けられた表示部51に適切な運転操作を促すメッセージを表示する。メッセージを表示することに代えて、あるいは、メッセージを表示することに加えて、音声、警告音、ランプにて適切な運転操作を促すようにしてもよい。
コントローラ40が行う制御内容をフローチャートを参照しながら詳しく説明する。
図4は、エンジン1の高効率で運転させるための制御であり、コントローラ40において所定時間ごと、例えば10msecごとに繰り返し実行される。
これによると、まず、ステップS1で車両にかかる走行抵抗Rを演算する。走行抵抗Rは、次式に従い、転がり抵抗Rr、空気抵抗Rl、登坂抵抗Rs、加速抵抗Raの和として演算することができる。
R=Rr+Rl+Rs+Ra
Rr=M・g・μr
Rl=1/2・ρ・Cd・A・v
Rs=M・g・sinθ
Ra=(M+Mr)・α
μrは転がり抵抗係数、ρは空気の密度[kg/m]、Cdは空気抵抗係数、Aは車両の前面投影面積[m]、θは登坂角度[°]、Mは車両の質量[kg]、Mrは車両の回転部分の車両相当質量[kg]、αは車両の加速度[m/sec]である。v[m/sec]は車速である。車速vは、駆動輪速センサ41で検出される駆動輪速Ndから求めることができる。加速度αは微小時間における車速vの変化量から求めることができる。加速度αは、車両に加速度センサを設けて直接検出するようにしてもよい。
なお、貨物車のように積載状態によって、空気抵抗係数Cd、前面投影面積Aとの積Cd・A、車両質量Mが変化するときは、これらの値を演算によって求めるようにする。具体的には、まず、水平路を一定車速v1、v2で走行中の駆動力F1、F2を次式
F=Te・t・it・if・ηt/Rd
により求める。tはトルクコンバータ22のトルク比、itは変速機構23の変速比、ifは終減速装置4の終減速比、ηtは変速機構23の伝達効率、Rdは駆動輪6の半径である。エンジントルクTeは、例えば、図5に示すエンジン回転速度と燃料噴射パルス幅に対するエンジントルクの関係を示したマップを予め用意してコントローラ40のメモリに記憶しておき、これを参照することによって求めることができる。
駆動力F1、F2を求めたら、次に、水平路を一定車速で走行しているときは登坂抵抗Rs、加速抵抗Raが共にゼロになり、走行抵抗が転がり抵抗Rrと空気抵抗Rlの和になり、さらに、これが車両の駆動力に等しくなることに着目し、次のような連立方程式を立てる。
F1=M・g・μr+1/2・ρ・Cd・A・v1
F2=M・g・μr+1/2・ρ・Cd・A・v2
この連立方程式を解けば、空気抵抗係数Cdと前面投影面積Aの積Cd・A及び車両の質量Mを求めることができ、これらの値を用いることで積載状態を考慮した走行抵抗の演算が可能となる。
次に、ステップS2では、ステップS1で求めた走行抵抗R、車速v、トルクコンバータ22の伝達効率η、変速機構23の伝達効率ηtを用いて、エンジン1の出力Leを次式により求める。
Le=(R×v)/(η・ηt)
ステップS3では、エンジン回転速度NeとステップS2で求めたエンジン出力Leに基づき、エンジン1の運転点が図6に示すエンジン1の全性能マップのどこに位置するのかを検索する。全性能マップは、エンジン回転速度とエンジントルクに対する燃費率(燃料消費率、BSFC)とエンジン出力の関係を規定したものである。
ステップS4では、ステップS3で検索したエンジン1の運転点と、全性能マップ上に設定された最小燃費率領域との位置を比較し、比較結果に基づき、エンジン1の運転点が最小燃費率領域に近づくように、所定の運転操作を行うよう車載ユニット50、表示部51を介して運転者に指示を出す。最小燃費率領域は、燃費率が所定の低燃費率以下となる領域である。例えば、エンジン1の運転点がX1にあるときは、アクセルペダルを戻してエンジントルクTe、エンジン回転速度Neを下げた方が運転点がX2となって最小燃費率領域に近づき、燃費が向上することから、運転者にアクセルペダルを戻すように指示を出す。
自動変速機2がマニュアルモード付の自動変速機で運転者がシフト操作を行うことにより燃費の向上が期待できる場合は、運転者にシフト操作を指示するようにしても良い。例えば、エンジンの運転点がY1にあるときは、運転者がシフトアップ操作を行うことによりエンジンの運転点がY2となって最小燃費領域に近づき、燃費を向上させることができる。
なお、ここではエンジン1の運転点が最小燃費率領域に近づく運転操作を行うように運転者に指示を出し、運転者自ら車両の運転状態を変更するようにしているが、運転者の意思に関係なく、運転点を最小燃費率領域に近づける車両制御を自動的に行うようにしてもよい。例えば、エンジン1の運転点がX1にあるときは燃料噴射弁49から燃料噴射量を自動的に減少させ、運転点がY1にあるときは自動変速機2の変速段を自動的に1段シフトアップさせる。
また、エンジン1が、図7に示すように、吸気通路11に吸入空気量を調節するスロットルバルブ60を有するガソリンエンジンやガスエンジンである場合は、エンジン1の出力を調整するには、スロットルバルブの開度を調整し、吸入空気量を調整すればよい。
次に、図8を参照しながらトルクコンバータ22における損失を低減するための制御について説明する。このフローも、図4に示したフローと同じく、コントローラ40において所定時間ごと、例えば10msecごとに繰り返し実行される。
これによると、まず、ステップS11で、トルクコンバータ22のトルク比eを、駆動輪速Nd、エンジン回転速度Neに基づき次式により演算する。itは変速機構23の変速比、ifは終減速装置4の終減速比である。
e=Nd・it・if/Ne
速度比eはトルクコンバータ22の出力軸34の回転速度Noutを直接センサにより検出し、これとエンジン回転速度Neの比をとることで求めるようにしてもよい。
ステップS12では、トルクコンバータ22の速度比eを下限速度比ethと比較する。下限速度比ethはクラッチポイントとなる速度比(=約0.8)よりも小さな値、例えば、0.7に設定される。速度比eが下限速度比ethよりも小さければトルクコンバータ22における損失が大きいと判断してステップS13に進み、そうでない場合は処理を終了する。
なお、下限速度比ethは、調節用ボリュームを設ける等して、運転者が自由に設定できるようにしてもよい。また、ここでは、速度比eが下限速度比ethよりも小さければただちにステップS14に進んでいるが、下限速度比ethよりも小さい状態が所定時間(例えば、5秒間)継続したときにステップS13に進むようにしてもよい。
ステップS13では、傾斜センサ46で検出される登坂角度θに基づき、車両が登坂路を走行しているか判断する。登坂路を走行中は速度比eを下げてトルク比tを上昇させ、駆動力を増大させる必要があり、トルクコンバータ22の速度比を1に近づけるための指示を出すことが適切でないからである。したがって、登坂路を走行していない場合にステップS14に進み、登坂路を走行していればそのまま処理を終了する。
ステップS14では、ロックアップクラッチ21を締結した場合にエンジン回転速度Neが所定の低回転速度Neth(例えば、1200rpm、あるいは最高回転速度の1/5)を超えるかどうか判断する。これは、ロックアップクラッチ21を締結することによりエンジン回転速度Neが所定の低回転速度Nethよりも低くなるにもかかわらず、運転者が後のステップS15で出される指示に従いロックアップクラッチ21を締結すると、エンジン1の回転が下がりすぎて回転が不安定になり、運転性を低下させるからである。また、そのようなエンジン1が低速で回転しているときにアクセルペダル42を戻すとやはりエンジン1の回転が不安定になって運転性を低下させるからである。判断の結果、ロックアップクラッチ21を締結してもエンジン回転速度Neが所定の低回転速度Nethを超えるようであればステップS15に進み、そうでない場合はそのまま処理を終了する。
ステップS15では、アクセルペダル42を戻すように、あるいは、ロックアップスイッチ44を作動させるように車載ユニット50、表示部51を介して運転者に指示を出す。これは、トルクコンバータ22の速度比eが下限速度比ethよりも小さいときは、トルクコンバータ22における損失が大きく、燃費を向上させるためには、アクセルペダル42を戻して速度比eを1に近づける、あるいは、ロックアップクラッチ21を締結して速度比eを強制的に1にすることで、トルクコンバータ22における損失する必要があるからである。
運転者が指示に従い、アクセルペダル42を戻す、あるいは、ロックアップスイッチ44を作動させてロックアップクラッチ21を締結すれば、トルクコンバータ22における損失が抑えられ、車両の燃費を向上させることができる。ロックアップクラッチ21を締結した場合は、速度比eが1に達していないためクラッチ締結にショックが生じるが、運転者が自らの意思でロックアップクラッチ21を締結しているので、運転者に違和感を与えることはない。また、ロックアップクラッチ21を締結することにより駆動力が低下するが、アクセル操作により直ちに補うことができるので、運転性に影響を及ぼすものではない。
運転者がロックアップスイッチ44を操作してロックアップクラッチ21を締結した場合は、変速のタイミングで一時的に解除するものの、変速後もエンジン回転速度が所定の低回転速度Neth(例えば、1200rpm、あるいは最高回転速度の1/5)よりも低くならない限り、ロックアップ状態を維持し、トルクコンバータ22における損失を抑える。なお、このロックアップ状態は、運転者がアクセルペダル42を離したとき、あるいは、アクセルペダル42を踏み込んでキックダウンを行うときや車両が登坂路に入ったとき等、大きなトルクが要求される状態となったときに解除される。
図9は、本発明に係る自動変速機搭載車両が静止状態から加速したときの駆動力F、速度比e、エンジン回転速度Neが変化する様子を示したものである。駆動力Fを実線で示し、エンジン回転速度Neを一点鎖線で示す。図中丸数字は自動変速機2の変速段を示している。
図8に示した制御により、速度比eが下限速度比eよりも小さい状態では、アクセルペダルを踏み込みすぎていると判断されて、運転者に対してアクセルペダル42を戻すか、ロックアップクラッチ44を作動させてロックアップクラッチ21を締結するように指示が出される。
この図は指示に従い運転者がロックアップクラッチ21を締結した場合であり、従来ロックアップが行われていたポイントJより手前のポイントLにおいてロックアップクラッチ21が締結されている。ロックアップクラッチ21を締結することにより車両の運転点はポイントLからポイントMに変化し、速度比eは1までステップ的に増大する。このとき、駆動力Fが減少してショックが生じるが、運転者が意図的にロックアップクラッチ21を締結しているので運転者に違和感を与えることはなく、また、駆動力の減少はアクセルペダルを踏み込むことで補うことが可能であるので運転性に影響を及ぼすものではない。
締結後も、図中矢印Pで示すシフトアップのタイミングで一時的に解除されることを除いてロックアップクラッチ21は締結状態を維持し、速度比eは1に保たれる。この結果、トルクコンバータ22における損失を低減し、燃費を向上させることができる。
なお、図8に示すフローでは、トルクコンバータ22の速度比eに基づきアクセル戻し操作、ロックアップクラッチ21の締結の必要性を判断しているが、速度比eとトルク比tの間、また、速度比eと伝達効率ηとの間には一対一の対応関係があるので、速度比eに代えてトルク比tあるいは伝達効率ηに基づきこれらの必要性を判断するようにしてもよい。クラッチポイントにおいて伝達効率ηが若干落ち込むことから速度比eと伝達効率ηは厳密には一対一で対応しないが、判断しきい値をクラッチポイントにおける効率よりも低い値に設定すれば、判断においてこのことが特に問題になることはない。
またあるいは、加速抵抗を除く走行抵抗を車両の駆動力から減じた値を過剰駆動力(必要以上に発生させている駆動力)と定義すれば、速度比eが小さいときに過剰駆動力が大きくなり、速度比eが1に近づくにつれ過剰駆動力が小さくなって、この過剰駆動力も速度比eと略一対一の関係をとることから、速度比eに代えて過剰駆動力を用いるようにしても構わない。例えば、駆動力に占める過剰駆動力の割合(過剰駆動力率)が40%を超えたときに、アクセル戻し操作、ロックアップクラッチ21の締結の必要性を判断するようにする。
続いて本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、トルクコンバータ22における損失を低減するための制御のみが第1の実施形態と異なる。
図10はコントローラ40において、図8に示したフローに代えて実行されるものであり、同じく、コントローラ40において所定時間ごと、例えば10msecごとに繰り返し実行される。
図8に示したフローと同じ処理については同じ参照符号を付して説明を省略し(ステップS11〜S14)、異なる点についてのみ説明すると、この実施形態では、トルクコンバータ22の速度比eが下限速度比ethよりも小さく、登坂路を走行しておらず、かつ、ロックアップした場合のエンジン回転速度が所定の低回転速度Nethよりも低くならないと判断された場合に、ステップS15’に進んでロックアップクラッチ21を自動的に締結する
ロックアップ後は、変速のタイミングで一時的にロックアップを解除するものの、変速後もエンジン回転速度が所定の低回転速度Neth(例えば、1200rpm、あるいは最高回転速度の1/5)以下にならない限り、ロックアップ状態を維持し、トルクコンバータ22における損失を抑える。ロックアップ状態は、運転者がアクセルペダル42を離したとき、あるいは、キックダウン時、登坂路等、大きなトルクが要求されるときに解除される。
ステップS15’では、ロックアップクラッチ21を自動的に締結しているが、ロックアップクラッチ21を締結することに代えて、噴射パルス幅を短くして燃料噴射弁49から噴射される燃料量を減少させる、あるいは、自動変速機2の変速段を1段シフトアップさせるようにしてもよい。このように、エンジン1の出力制御、自動変速機2の変速制御を行うことによっても、速度比eを1に近づけることが可能であり、トルクコンバータ22における損失を抑えて燃費を向上させることができる。
また、ロックアップクラッチ21を運転者の意図とは関係なく締結すると締結時のショックにより運転者に違和感を与える可能性があることから、ロックアップクラッチ21を締結する前に、車載ユニット50、表示部51を通じて運転者にロックアップクラッチ21を締結する旨を伝えるようにしてもよい。このようにすれば、運転者はロックアップクラッチ21が締結されることを事前に知ることができ、締結によりショックが生じても違和感を覚えることはない。
本発明は、トルクコンバータを有する自動変速機を備えた車両に広く適用することができ、トルクコンバータの損失を抑えて、燃費を向上させるのに有用である。また、運転者に対して燃費を向上させるための運転操作を認識させることができるので、運転者の運転技術の向上にも役立てることができる。
本発明に係る自動変速機搭載車両の概略構成図である。 自動変速機搭載車両の変速機部分の拡大図である。 トルクコンバータの特性図である。 コントローラの制御内容を説明するためのフローチャートである。 エンジントルクマップである。 エンジンの全性能マップである。 スロットルバルブを有するエンジンの例である。 コントローラの制御内容を説明するためのフローチャートである。 本発明の作用効果を説明するための図である。 コントローラの制御内容の別の例を説明するためのフローチャートである(第2の実施形態)。
符号の説明
1 エンジン
2 自動変速機
6 駆動輪
21 ロックアップクラッチ
22 トルクコンバータ
23 変速機構
40 コントローラ
41 駆動輪速センサ
42 アクセルペダル
43 アクセル操作量センサ
44 ロックアップスイッチ
45 エンジン回転速度センサ
46 傾斜センサ
49 燃料噴射弁
50 車載ユニット
51 表示部
60 スロットルバルブ

Claims (14)

  1. エンジンと、トルクコンバータを有する自動変速機と、前記自動変速機を介して前記エンジンの出力が伝達される駆動輪と、を備えた自動変速機搭載車両において、
    前記車両の運転状態に基づき、前記トルクコンバータにおける損失に応じて変化するパラメータを演算するパラメータ演算手段と、
    前記パラメータ演算手段により演算されたパラメータに基づき前記トルクコンバータにおける損失を判定する損失判定手段と、
    前記損失判定手段の判定結果に応じて、前記トルクコンバータにおける損失を低減する所定の運転操作を運転者に指示する、あるいは前記トルクコンバータにおける損失を低減する所定の車両制御を行う損失低減手段と、
    を備えたことを特徴とする自動変速機搭載車両。
  2. 前記パラメータ演算手段は、前記パラメータとして前記トルクコンバータの速度比を演算することを特徴とする請求項1に記載の自動変速機搭載車両。
  3. 前記損失判定手段は、前記トルクコンバータの速度比が所定の下限速度比よりも小さいか判断し、
    前記トルクコンバータの速度比が前記所定の下限速度比よりも小さいと判断されたとき、前記損失低減手段は、運転者に対してアクセルペダルを戻すよう指示を出す、
    ことを特徴とする請求項2に記載の自動変速機搭載車両。
  4. 前記トルクコンバータは、運転者がロックアップスイッチを操作することによって締結、解放可能なロックアップクラッチを有しており、
    前記損失判定手段は、前記トルクコンバータの速度比が所定の下限速度比よりも小さいか判断し、
    前記トルクコンバータの速度比が前記所定の下限速度比よりも小さいと判断されたとき、前記損失低減手段は、運転者に対して前記ロックアップスイッチを操作して前記ロックアップクラッチを締結するように指示を出す、
    ことを特徴とする請求項2に記載の自動変速機搭載車両。
  5. 前記損失低減手段は、運転者が前記ロックアップスイッチを操作することによって前記ロックアップクラッチを締結した後、前記エンジンの回転速度が所定の低回転速度よりも低くなるときは前記ロックアップクラッチを解放すること特徴とする請求項4に記載の自動変速機搭載車両。
  6. 前記損失低減手段は、運転者が前記ロックアップスイッチを操作することによって前記ロックアップクラッチを締結した後、アクセルペダルが離されたときは前記ロックアップクラッチを解放することを特徴とする請求項4または5のいずれかひとつに記載の自動変速機搭載車両。
  7. 前記損失低減手段は、登坂路走行中は前記指示を出さないことを特徴とする請求項3または4に記載の自動変速機搭載車両。
  8. 前記損失判定手段は、前記トルクコンバータの速度比が所定の下限速度比よりも小さいか判断し、
    前記トルクコンバータの速度比が前記所定の下限速度比よりも小さいと判断されたとき、前記損失低減手段は、前記エンジンの出力を減少させることを特徴とする請求項2に記載の自動変速機搭載車両。
  9. 登坂路走行中は前記エンジンの出力の減少を行わないことを特徴とする請求項8に記載の自動変速機搭載車両。
  10. 前記トルクコンバータはロックアップクラッチを有しており、
    前記損失判定手段は、前記トルクコンバータの速度比が所定の下限速度比よりも小さいか判断し、
    前記トルクコンバータの速度比が前記所定の下限速度比よりも小さいと判断されたとき、前記損失低減手段は、前記ロックアップクラッチを締結することを特徴とする請求項2に記載の自動変速機搭載車両。
  11. 前記損失低減手段は、登坂路走行中は前記ロックアップクラッチの締結を行わないことを特徴とする請求項10に記載の自動変速機搭載車両。
  12. 前記損失低減手段は、前記ロックアップクラッチを締結した後、前記エンジンの回転速度が所定の低回転速度よりも低くなるときは前記ロックアップクラッチを解放すること特徴とする請求項10または11に記載の自動変速機搭載車両。
  13. 前記損失低減手段は、前記ロックアップクラッチを締結した後、アクセルペダルが離されたときは前記ロックアップクラッチを解放することを特徴とする請求項10から12のいずれかひとつに記載の自動変速機搭載車両。
  14. 車両にかかる走行抵抗と車速の積を前記トルクコンバータの効率で除して前記エンジンの出力を演算し、前記エンジンの出力と前記エンジンの回転速度とによって決まる前記エンジンの運転点が、燃費率が所定値以下となる最小燃費率領域に近づくように、運転者に対して所定の運転操作を指示する、あるいは、所定の車両制御を行うことを特徴とする請求項1から13のいずれか一つに記載の自動変速機搭載車両。
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