JP2006019385A - 磁場中成形方法、ラジアル異方性リング磁石の製造方法、磁場中成形装置及びラジアル異方性リング磁石 - Google Patents

磁場中成形方法、ラジアル異方性リング磁石の製造方法、磁場中成形装置及びラジアル異方性リング磁石 Download PDF

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Abstract

【課題】 接合部が発生せず、かつ配向の乱れを生ずることなく長尺のラジアル異方性リング磁石を製造する方法を提供する。
【解決手段】 リング状のキャビティ3に磁石粉Pを充填する充填工程と、互いに反発する磁場をキャビティ3の所定の領域ごとに印加することにより磁石粉Pをラジアル方向に配向しかつ、配向された磁石粉Pを加圧成形して成形体を得る磁場中成形工程とを備える磁場中成形方法により得られた成形体を焼結する。上記の磁場中成形は磁石粉Pを途中で追加する必要がなく、また、互いに反発する磁場を用いているため、磁石粉Pの配向方向は、キャビティ3の内周側から外周側に向けて、又はその逆に一定とすることができるので、配向を乱すこともない。
【選択図】図1

Description

本発明は、ラジアル異方性リング磁石に関し、特に長尺のラジアル異方性リング磁石及びその製造方法に関する。
ラジアル異方性リング磁石は、単体磁石であるため、モータのロータに装着する場合に、複数個のセグメント磁石を用いる場合に比べて部品点数が減少し、また組み付けが容易であるという利点がある。
ラジアル異方性リング磁石の成形方法を図15を参照しつつ説明する。
図15は、ラジアル異方性リング磁石を得る過程の磁場中成形の一例を示す断面図である。磁場中成形を行う成形機40は、配向磁場を発生する上コイル41、下コイル42を備えている。上コイル41、下コイル42から反発方向に発生される磁場(反発磁場)は、磁性体で構成されるコア43及び磁性体で構成されるダイ44を磁気回路として、コア43、ダイ44及び非磁性体で構成された上パンチ45、下パンチ46とで形成されるキャビティ47にラジアル方向の配向磁場を付与する。キャビティ47内に充填された磁石粉Pは配向された状態で、上パンチ45、下パンチ46を用いて加圧成形する。
ラジアル異方性リング磁石の磁気特性を向上させるためには、高い配向磁場を発生させる必要がある。ここで、コア43の断面積をSi、飽和磁化をJs、ダイ44の内径面の面積をSoとすると、ラジアル配向磁場は(Si・Js)/Soに比例する。Si、Soは各々以下に示す通りであるから、配向磁場はJs・(d/D)・d・/4/Lに比例する。この式は、コア43の飽和磁化が高いほど、成形体の内径/外径(d/D)が大きいほど、成形体の内径(d)が大きいほど、ダイ44の長さLが短いほど、配向磁場が大きくなり、ラジアル異方性リング磁石の磁気特性(特に残留磁束密度(Br))を向上することができることを示している。
Si=π・d2/4(d:成形体の内径=コア43の外径)、So=D・π・L(D:成形体の外径=ダイ44の内径、L:ダイ44の長さ)
上記式より、配向磁場はダイ44の長さLに反比例することがわかる。したがって、得られる成形体、ひいてはラジアル異方性リング磁石の長さはその外径によって制限されることになる。ダイ44の長さLを長くしたとしても、コア43を通過する磁束には限りがあるため、成形体全体として配向磁場が弱いために配向度の低いラジアル異方性リング磁石しか得ることができない。そのために、外径が20〜40mm程度のサイズの磁石で十分な配向度を得るためには、成形体の長さを15mm程度に制限する必要があった。
しかし、一方で長さの長い長尺のラジアル異方性リング磁石の要望は高く、特に低コスト化が要求される今日では長尺であってかつ磁気特性の高いラジアル異方性リング磁石の登場が希求されている。
長尺のラジアル異方性リング磁石を得るために種々の提案がなされている。その1つとして多段成形と呼ばれる成形方法がある(特許文献1(特開平2−281721号公報))。多段成形とは、キャビティに充填された所定量の磁石粉を配向磁場中で加圧成形して成形体を得た後に、この成形体上にさらに所定量の磁石粉を充填した後に配向磁場中で加圧成形するという処理を任意回数繰り返す方法である。しかし、多段成形は、1つのラジアル異方性リング磁石を製造するのに複数回の磁場中成形を行うために生産性が劣り、製品コストを上昇させる要因となる。また、複数回の成形を行うことにより接合部が発生するが、この接合部は機械的な強度劣化、磁気特性劣化を招来する原因となる。
長尺のラジアル異方性リング磁石を得る他の方法として、特許文献2(特開平7−161512号公報)には、ラジアル異方性を有する円弧状成形体を作製し、次いでこれら円弧状成形体を円弧状に組み合わせ、焼結する方法が開示されている。この方法も、組み合わせのための工程が必要であるとともに、接合部が発生するために、多段成形と同様の問題がある。
以上のような接合部発生の問題を有しない長尺ラジアル異方性リング磁石の製造方法が特許文献3(特開2004−111944号公報)に提案されている。特許文献3は、反発磁場を用いるのではなく、水平磁場垂直成形法によるラジアル配向を提案している。特許文献3によれば、先行して配向した方向と90度だけ配向軸を回転させて後続の磁場配向を行う。この後続の磁場配向における磁場強度は先行する磁場配向よりも弱くする。しかし、先行する磁場配向による配向部分と後続の磁場配向による配向部分の境界部分では、一旦配向された磁石粉が反転するために、配向の乱れが生じて、均一な磁気特性を得ることが難しい。
特開平2−281721号公報 特開平7−161512号公報 特開2004−111944号公報
本発明は、以上のような技術的課題に基づいてなされたもので、接合部が発生せず、かつ配向の乱れを生ずることなく長尺のラジアル異方性リング磁石を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明は、リング状のキャビティに磁石粉を充填する充填工程と、互いに反発する磁場をキャビティの所定の領域ごとに印加することにより磁石粉をラジアル方向に配向しかつ、配向された磁石粉を加圧成形する磁場中成形工程と、を備えることを特徴とする磁場中成形方法により前記課題を解決する。
本発明において、磁場をキャビティの所定の領域ごとに印加する形態として、キャビティの周方向に分割された所定の領域に順次磁場を印加する形態と、キャビティの軸方向に分割された所定の領域に順次磁場を印加する形態を包含する。
キャビティの周方向に分割された所定の領域に順次磁場を印加する場合、キャビティの中心を基準として略対称の位置に存在する複数の所定の領域に磁場を同時に印加し、次いで略対称の位置に存在する他の複数の所定の領域に磁場を同時に印加する処理を所定回数繰り返すことにより、キャビティの周方向全域に亘って磁石粉を配向することができる。磁場が直接印加された領域に隣接する領域も磁場の影響を微小ではあるが受ける。磁場を対称位置に印加することで、この微小な影響の度合いも周方向に均等になる。したがって、以上のように略対称の位置に存在する複数の所定の領域に磁場を同時に印加するという処理を繰り返すことによって、周方向の配向バラツキを低減でき、その結果、磁石としての表面磁束バラツキを低減することができる。
本発明において、同一の所定の領域に磁場を印加する回数は1回であってもよいし、複数回であってもよい。加圧前に、複数回磁場を印加することで1回の印加では配向仕切れなかった磁石粉も配向することができるようになる。したがって、複数回磁場を印加することによって、配向度を向上させることができる。また、加圧することで配向は乱れる。そこで加圧中に複数回磁場を印加することで、その乱れた配向を回復させることが可能となる。
また、所定の領域ごとに印加される磁場強度は各々同等とすることにより、均一な配向状態の成形体を得ることが可能となる。
さらに本発明は、成形体を構成するに足りる量の磁石粉を磁場の印加前にキャビティに一度で充填することができるため、磁石粉の供給を複数回行う必要がない。さらに、従来の多段成形法で生じていた接合部を生成することがない。
上述した磁場中成形方法は、ラジアル異方性リング磁石を製造する際に有益な方法である。したがって本発明は、互いに反発する磁場の印加領域を周方向又は軸方向に移動することによりラジアル方向に磁石粉が配向されたリング状の成形体を作製する工程と、成形体を焼結する工程とを備えることを特徴とするラジアル異方性リング磁石の製造方法をも提供する。
この製造方法において、磁場の印加が、複数の第1領域に対して同時に磁場を印加する第1印加工程と、複数の第1領域と異なるか又は一部が重複する複数の第2領域に対して同時に磁場を印加する第2印加工程を少なくとも備えることにより、長尺かつ高磁気特性のラジアル異方性リング磁石を簡易に製造することができる。
また本発明のラジアル異方性リング磁石の製造方法において、磁場の印加領域が移動する過程において、磁石粉の配向方向を一定とすることができる。したがって、特許文献3で生じていた配向の乱れを生じることがない。
本発明はまた、上述した磁場中成形方法を実施する以下の磁場中成形装置を提供する。この磁場中成形装置は、リング状のキャビティに充填された磁石粉を加圧する加圧成形部と、キャビティに対してその内周側から外周側に向けた磁場又はその外周側から内周側に向けた磁場のいずれかを印加し、かつキャビティの周方向又はキャビティの軸方向に沿って磁場の印加領域が変更可能な磁場印加部とを備えることを特徴とする。
この磁場印加部は、キャビティの周方向又は軸方向に沿って配置され、かつ各々独立して磁場を印加する複数の磁場発生コイルと、複数の磁場発生コイルによる磁場発生タイミングを制御する磁場発生制御手段と、を備えることが望ましい。この場合、複数の磁場発生コイルが複数のグループに区分され、磁場発生制御手段は、グループ単位で磁場発生コイルの磁場発生タイミングを制御することができる。本発明はこのような構成を採用することにより、複数の磁場発生コイルを、キャビティに対してその位置を固定することができる。
以上の本発明によれば、外径:a[mm]、内径:b[mm]、長さ:t[mm]とした場合に、t≧0.85×b×(b/a)のサイズを有し、その外周の周方向における表面磁束のばらつきが5%以下、その外周の軸方向における表面磁束のばらつきが10%以下であるラジアル異方性リング磁石を製造することができる。
以上説明したように、本発明によれば、接合部が発生せず、かつ配向の乱れを生ずることなく長尺のラジアル異方性リング磁石を製造する方法を提供することができる。
以下、本発明を実施の形態に基づいて詳細に説明する。
始めに本発明の原理について図1及び図2を参照しつつ説明する。なお、図1は本発明に基づく磁場中成形方法を説明するための図、図2は従来の磁場中成形方法を説明するための図である。
図2において、コア1とダイ2との間にキャビティ3が形成され、このキャビティ3には磁石粉Pが充填されている。コア1及びダイ2は軟磁性体から構成されており、ダイ2の長さをLとする。図示しないコイルから発生した磁束はダイ2、キャビティ3を通過した後に、コア1に進入する。ダイ2はその全体が軟磁性体から構成されているため、磁束はダイ2の全周にわたって均等に進入する。したがって、キャビティ3の周方向の全ての領域に磁場が印加される。なお、ここでは印加される磁場強度を12本の磁束で表すものとする。
以上に対して、例えば図1に示すように、ダイ2を40°に9分割し、そのうち3つ、つまり120°に対応する所定領域だけに同時に磁束を進入させたとする。コア1の飽和磁化が図2と同等であれば、ダイ2の長さを3Lにしても、図2の場合と同等の磁場強度を得ることができる。図1では120°に対応する所定領域に磁場を印加している状態を示しているが、磁場を印加する領域を周方向に移動することにより、キャビティ3の全周(360°)に亘って磁場を印加することができる。
以上のように、磁場を印加すべき領域に対して一度に磁場を印加するのではなく、キャビティ3の所定領域、例えば周方向が分割された所定領域ごとに磁場を印加することにより、ダイ2の長さ、換言すると成形体の長さを長くしても所定の磁場強度を得ることができるため、長尺でかつ磁気特性の高いラジアル異方性リング磁石を製造することができる。
次に、本発明による磁場中成形の具体的な形態について説明する。
<第1形態>
図3及び図4に基づいて本発明による磁場中成形方法(第1形態)について説明する。なお、図3は磁場中成形機10の構成を示す縦断面図、図4は第1形態を実施する磁場中成形機10の構成を示す横断面図であり、図3は図4のA−A矢視断面、図4は図3のB−B矢視断面図である。
磁場中成形機10は、軟磁性体で構成される円柱状のコア11と、コア11と所定の間隔を隔てて配設されるダイ12とを備えている。ダイ12は、磁性体部12aと非磁性体部12bとから構成される。コア11及びダイ12との間にキャビティ15が形成され、このキャビティ15には、所定量の磁石粉Pが充填される。磁場中成形機10は、磁石粉Pを加圧する上パンチ13及び下パンチ14を備えている。
ダイ12の周囲には、電磁コイルC11、C12、C13、C21、C22、C23、C31、C32、C33(以下、C11等と総称することがある)が均等間隔に配設されている。電磁コイルC11等には、各々ヨーク16が付設されている。各ヨーク16は、ダイ12の磁性体部12aに対応して配置されており、したがって電磁コイルC11等から発生する磁束は、ヨーク16、ダイ12の磁性体部12a、コア11からなる磁気回路を通過する。
電磁コイルC11等は、第1グループ、第2グループ及び第3グループの3つに区分される。第1グループには電磁コイルC11、C12及びC13が属し、第2グループには電磁コイルC21、C22及びC23が属し、第3グループには電磁コイルC31、C32及びC33が属している。第1グループに属する3つの電磁コイルC11、C12及びC13は、コア11の軸を中心として点対称の位置に配置されている。したがって、第1グループに属する3つの電磁コイルC11、C12及びC13から、各々反発する磁場を発生させることができる。この関係は、第2グループに属する3つの電磁コイルC21、C22及びC23、第3グループに属する電磁コイルC31、C32及びC33にも該当する。
第1グループ、第2グループ及び第3グループは、各々独立して磁場を発生することができる。つまり、第1グループに属する電磁コイルC11、C12及びC13から磁場を発生しているときに、第2グループに属する電磁コイルC21、C22及びC23及び第3グループに属する電磁コイルC31、C32及びC33からは磁場を発生させないようにすることができる。図3及び図4は、第1グループに属する電磁コイルC11、C12及びC13から磁場が発生している状態を示している。磁場中成形機10は、第1グループ、第2グループ及び第3グループからの磁場発生の有無を制御するためのコントローラ19を備えている。コントローラ19は、第1グループ、第2グループ及び第3グループを順次励磁するように図示しない電源から供給される電流を制御する。
さて、キャビティ15に磁石粉Pが充填されている図3及び図4の状態において、上パンチ13及び下パンチ14を作動させて磁石粉Pを加圧する。このとき、図5に示すように、コントローラ19によって、第1タイミングには第1グループに属する電磁コイルC11、C12及びC13から各々反発する磁場を発生させ、次の第2タイミングには第2グループに属する電磁コイルC21、C22及びC23から各々反発する磁場を発生させ、さらに次の第3タイミングには第3グループに属する電磁コイルC31、C32及びC33から各々反発する磁場を発生させる。そうすると、第1タイミングには、磁石粉Pは第1グループに属する電磁コイルC11、C12及びC13から発生した磁場により配向される。配向される磁石粉Pは電磁コイルC11、C12及びC13に対応する領域である。磁場中成形機10は、9つの電磁コイルC11等を備えており、1つの電磁コイルC11等は、各々キャビティ15の周方向の40°に該当する領域を配向する。したがって、第1タイミングでは、キャビティ15の周方向の120°の領域を配向することになる。以下、第2タイミングには第2グループに属する電磁コイルC21、C22及びC23が担当する120°の領域を、次いで第3タイミングには第3グループに属する電磁コイルC31、C32及びC33が担当する120°の領域を配向する。かくして、第1〜第3タイミングを経ることにより、キャビティ15に充填されている磁石粉Pの周方向の全域を配向することができる。
上述した図5の例は加圧期間中に第1〜第3グループによる磁場配向を各々1回だけ行った例であるが、加圧期間中に第1〜第3グループによる磁場配向を複数回行うこともできることは言うまでもない。また、上述した例は、第1〜第3タイミングともに、キャビティ15に対してその内周側から外周側に向けた磁場又はその外周側から内周側に向けた磁場のいずれかを印加する、つまりキャビティ15を基準として同一方向に磁石粉Pを配向するので、配向に乱れが生ずることがない。
磁場中成形機10において、磁場配向に関与している磁性体部12aから、磁場配向に関与していない隣接する磁性体部12aに対する磁束のショートパスが懸念される。ショートパスはキャビティ15内の配向磁場に乱れを生じさせるおそれがある。そこで、磁場中成形機10は、上部補助コイル17、下部補助コイル18を設けている。電磁コイルC11等を励磁している間、上部補助コイル17、下部補助コイル18を継続して励磁することにより、当該磁性体部12aから漏洩する磁束は、隣接する磁性体部12aよりもコア11へ優先的に進入させることができる。なお、コントローラ19が上部補助コイル17及び下部補助コイル18の励磁を制御することができる。
この他、上記ショートパスを解消させる方法として、配向のために磁場を印加するグループに隣接するグループの領域にも、配向磁場と同極の弱い磁場を印加することが考えられる。例えば、第1グループによって磁場配向を行っているときに、前記配向磁場の1/5程度以下の同極の磁場を第2グループ、第3グループから印加する。そうすると、第2グループ、第3グループからの磁場の影響で第1グループからの配向磁場によるショートパスを防止することができる。
<第2形態>
上述した第1形態は、ダイ12の周囲に電磁コイルC11等を配設した例を示したが、本発明はダイの内部に電磁コイルC11等を組み込むことができる。その例(第2形態)を図6及び図7に基づいて説明する。なお、図6は第2形態を実施する磁場中成形機20の構成を示す横断面図、図7は磁場中成形機20の電磁コイルC11等への電流の供給タイミングを示す図である。
図6に示すように、磁場中成形機20は、軟磁性体で構成される円柱状のコア21と、コア21と所定の間隔を隔てて配設されるダイ22とを備えている。ダイ22は、複数の磁性体部22aと複数の非磁性体部22bとを備えている。また、ダイ22は、複数の電磁コイルC11、C12、C13、C21、C22、C23、C31、C32、C33、C41、C42、C43(以下、C11等と総称することがある)から構成される。コア21及びダイ22との間にキャビティ25が形成され、このキャビティ25には、所定量の磁石粉Pが充填される。磁場中成形機20は、磁石粉Pを加圧する図示しない上パンチ及び下パンチを備えている。
ダイ22の周囲に均等間隔に配設されている電磁コイルC11等には、各々磁性体部22aが付設されている。1つの電磁コイルC11等と1つの磁性体部22aが磁気回路の一単位を構成し、この磁気回路間に非磁性体部22bが介在してダイ22を構成している。
電磁コイルC11等は、第1グループ、第2グループ、第3グループ及び第4グループの4つに区分される。第1グループには電磁コイルC11、C12及びC13が属し、第2グループには電磁コイルC21、C22及びC23が属し、第3グループには電磁コイルC31、C32及びC33が属し、第4グループには電磁コイルC41、C42及びC43が属している。第1グループに属する3つの電磁コイルC11、C12及びC13は、コア21の軸を中心として点対称の位置に配置されている。したがって、第1グループに属する3つの電磁コイルC11、C12及びC13から、各々反発する磁場を発生させることができる。この関係は、第2グループに属する3つの電磁コイルC21、C22及びC23、第3グループに属する電磁コイルC31、C32及びC33、第4グループに属する電磁コイルC41、C42及びC43にも該当する。
第1形態と同様に、第1グループ、第2グループ、第3グループ及び第4グループは、各々独立して磁場を発生することができる。また、磁場中成形機20は、図示しないコントローラによって、第1グループ、第2グループ、第3グループ及び第4グループからの磁場発生を制御することができる。
キャビティ25に磁石粉Pが充填されている図6の状態において、図示しない上パンチ及び下パンチを作動させて磁石粉Pを加圧する。このとき、図7に示すように、第1グループCn1(n=1,2,3、以下同じ)に属する電磁コイルC11、C12及びC13、第2グループCn2に属する電磁コイルC21、C22及びC23、第3グループCn3に属する電磁コイルC31、C32及びC33、第4グループCn4に属する電磁コイルC41、C42及びC43に順次電流を供給する。第1グループCn1(n=1,2,3、以下同じ)に属する電磁コイルC11、C12及びC13に電流を供給しているときには、電磁コイルC11、C12及びC13から各々反発する磁場が発生し、磁石粉Pが配向される。配向される磁石粉Pが電磁コイルC11、C12及びC13に対応する領域のものであることは、第1形態と同様である。磁場中成形機20は、12個の電磁コイルC11等を備えており、1つの電磁コイルC11等は、各々キャビティ25の周方向の30°に該当する領域を配向する。したがって、第1グループに属する電磁コイルC11、C12及びC13に電流を供給しているときには、キャビティ25の周方向の90°の領域を配向することになる。以下、第2グループに属する電磁コイルC21、C22及びC23が担当する90°の領域、次いで第3グループに属する電磁コイルC31、C32及びC33が担当する90°の領域、さらに第4グループに属する電磁コイルC41、C42及びC43が担当する90°の領域を順次配向し、キャビティ25に充填されている磁石粉Pの周方向の全域を配向することができる。なお、図7に示すように、第1〜第4グループに電流を供給する回数は任意である。また、供給する電流の形態は、パルス磁場、静磁場等いずれであってもかまわない。
<第3形態>
上述した第1形態及び第2形態は、円筒状キャビティをその周方向に分割して順次配向する方法に関するものであるが、本発明は周方向のみならず、円筒状キャビティをその軸方向に分割して順次配向することもできる。図8に基づいてこの形態(第3形態)について説明する。なお、図8は第3形態にかかる磁場中成形機30の構成を示す縦断面図であり、図8(a)は磁場配向前半の状態を、又図8(b)は磁場配向後半の状態を示している。
磁場中成形機30は、軟磁性体で構成される円柱状のコア31と、コア31と所定の間隔を隔てて配設されるダイ32とを備えている。ダイ32の周囲には、ダイヨーク38が配置されている。このダイヨーク38は、上コイル36及び下コイル37とともに昇降可能である。コア31及びダイ32との間にキャビティ35が形成され、このキャビティ35には、所定量の磁石粉Pが充填される。磁場中成形機30は、磁石粉Pを加圧する上パンチ33及び下パンチ34を備えている。磁場中成形機30はまた、配向磁場を発生する上コイル36及び下コイル37を備えている。上コイル36及び下コイル37から反発方向に発生される磁場(反発磁場)は、いずれも磁性体で構成されるコア31、ダイ32及びダイヨーク38を磁気回路として、コア31、ダイ32及び非磁性体で構成された上パンチ33、下パンチ34とで形成されるキャビティ35にラジアル方向の配向磁場を形成する。
磁場中成形機30は、以下の特徴を有している。すなわち、磁場中成形機30は、キャビティ35と上コイル36及び下コイル37のコア31における軸方向の相対的位置が変動する。具体的には、上コイル36、下コイル37及びダイヨーク38がキャビティ35に対して昇降可能に配設されている。もちろん、キャビティ35、換言すればダイ32が上コイル36、下コイル37及びダイヨーク38に対して昇降可能に配設されていてもよい。昇降のための機構は、従来公知の手段を用いることができるので、ここでの説明は省略する。
さて、キャビティ35に所定量の磁石粉Pが充填され、かつ上コイル36及び下コイル37が図8(a)の位置に存在するときに上コイル36及び下コイル37を励磁する。そうすると、キャビティ35の上部にある磁石粉Pが配向される。上コイル36及び下コイル37への電流供給を一旦停止した後に上コイル36及び下コイル37を降下させる。降下したときの上コイル36及び下コイル37の位置を図8(b)に示す。上コイル36及び下コイル37を降下した後に再度上コイル36及び下コイル37を励磁する。そうすると、キャビティ35の下部にある磁石粉Pが配向される。
以上のようにキャビティ35上部の配向、下部の配向が終了した後に、上パンチ33及び下パンチ34により磁石粉Pを加圧成形する。ただし、加圧成形は配向終了後に限るものではなく、配向中に加圧成形することもできる。
また、以上の例では、キャビティ35上部の配向から下部の配向に移行する際に上コイル36及び下コイル37への電流供給を一旦停止しているが、電流供給を停止することなく上コイル36及び下コイル37を降下させている最中に磁場配向を行ってもよい。
さらに、以上の例ではキャビティ35上部、下部と2つの領域に区分して磁場配向を行ったが、上部、中間部及び下部というように3つの領域にあるいはそれ以上に区分して磁場配向することもできる。
さらにまた、以上の例では一対の上コイル36及び下コイル37をキャビティ35に対して相対的に移動させることにより、所定の領域ごとに磁石粉Pを配向しているが、二対以上の電磁コイルをコア31の軸方向に配設し、励磁する電磁コイル対を順次変えることによって、電磁コイルの位置の移動を伴うことなく、キャビティ35の軸方向の全領域を配向することもできる。
<磁石の製造工程説明>
以上、本発明の特徴部分である磁場中成形について説明したが、以下では磁場中成形を含めたラジアル異方性リング磁石の製造方法について言及する。なお、以下では永久磁石としてR−T−B系焼結磁石を例にして説明するが、本発明はこれ以外の希土類焼結磁石、フェライト磁石に適用できることは言うまでもない。
<原料合金>
原料合金は、真空又は不活性ガス、望ましくはAr雰囲気中でストリップキャスト法、その他公知の溶解法により作製することができる。ストリップキャスト法は、原料金属をArガス雰囲気などの非酸化雰囲気中で溶解して得た溶湯を回転するロールの表面に噴出させる。ロールで急冷された溶湯は、薄板または薄片(鱗片)状に急冷凝固される。この急冷凝固された合金は、結晶粒径が1〜50μmの均質な組織を有している。原料合金は、ストリップキャスト法に限らず、高周波誘導溶解等の溶解法によって得ることができる。なお、溶解後の偏析を防止するため、例えば水冷銅板に傾注して凝固させることができる。また、還元拡散法によって得られた合金を原料合金として用いることもできる。
<粉砕工程>
原料合金は粉砕工程に供される。混合法による場合には、低R合金及び高R合金は別々に又は一緒に粉砕される。粉砕工程には、粗粉砕工程と微粉砕工程とがある。まず、原料合金を、粒径数百μm程度になるまで粗粉砕する。粗粉砕は、スタンプミル、ジョークラッシャー、ブラウンミル等を用い、不活性ガス雰囲気中にて行なうことが望ましい。粗粉砕に先立って、原料合金に水素を吸蔵させた後に放出させることにより粉砕を行なうことが効果的である。水素放出処理は、希土類焼結磁石として不純物となる水素を減少させることを目的として行われる。水素放出のための加熱保持の温度は、200℃以上、望ましくは350℃以上とする。保持時間は、保持温度との関係、原料合金の厚さ等によって変わるが、少なくとも30分以上、望ましくは1時間以上とする。水素放出処理は、真空中又はArガスフローにて行う。なお、水素吸蔵処理、水素放出処理は必須の処理ではない。この水素粉砕を粗粉砕と位置付けて、機械的な粗粉砕を省略することもできる。
粗粉砕工程後、微粉砕工程に移る。微粉砕には主にジェットミルが用いられ、粒径数百μm程度の粗粉砕粉末を、平均粒径2.5〜6μm、望ましくは3〜5μmとする。ジェットミルは、高圧の不活性ガスを狭いノズルより開放して高速のガス流を発生させ、この高速のガス流により粗粉砕粉末を加速し、粗粉砕粉末同士の衝突やターゲットあるいは容器壁との衝突を発生させて粉砕する方法である。微粉砕前の粗紛末に潤滑剤を添加混合しても良く、微粉砕後あるいはその両方で潤滑剤を添加混合しても良い。
以上のようにして得られた微粉砕粉は前述した第1〜第3形態、あるいは本発明に包含される方法によって磁場中成形される。
磁場中成形における成形圧力は0.3〜3ton/cm2(30〜300MPa)の範囲とすればよい。成形圧力が低いほど配向性は良好となるが、成形圧力が低すぎると成形体の強度が不足してハンドリングに問題が生じるので、この点を考慮して上記範囲から成形圧力を選択する。磁場中成形で得られる成形体の最終的な相対密度は、通常、50〜60%である。
本ラジアル成形にて印加する磁場は、2〜15kOe(160〜1200kA/m)程度とすればよい。印加する磁場は静磁場に限定されず、パルス状の磁場とすることもできる。また、静磁場とパルス状磁場を併用することもできる。
次いで、成形体を真空又は不活性ガス雰囲気中で焼結する。焼結温度は、組成、粉砕方法、平均粒径と粒度分布の違い等、諸条件により調整する必要があるが、1000〜1200℃で1〜10時間程度焼結すればよい。
焼結後、得られた焼結体に時効処理を施すことができる。この工程は、保磁力を制御する重要な工程である。時効処理を2段に分けて行なう場合には、800℃近傍、600℃近傍での所定時間の保持が有効である。800℃近傍での熱処理を焼結後に行なうと、保磁力が増大するため、混合法においては特に有効である。また、600℃近傍の熱処理で保磁力が大きく増加するため、時効処理を1段で行なう場合には、600℃近傍の時効処理を施すとよい。
次に本発明はR−T−B(Rは希土類元素の1種又は2種以上、TはFe又はFe及びCo)系焼結磁石について適用することが望ましい。その理由は以下の通りである。
ラジアル異方性リング磁石は、異方性フェライト磁石が一般的になった1970年初頭に、径方向と周方向の熱収縮率の異方性により生じるひずみによる応力と、磁石を構成する材料強度の関係より、焼結クラックを招く異方性化度が計算によって求められた。その結果、フェライト磁石では、異方性化度を成形時の配向磁場強度によって調整する手法が採用された。しかし、焼結クラックの発生が通常の配向の磁石に比べて多いという問題を有していた。また、希土類磁石の中でSmCo系磁石は材質が脆いため、焼結クラックを生じさせないためには異方性化度をかなり低くしなければならず、その高い材料特性を有効に発揮しにくいこと、さらに異方性化度を調整しても、製造時のばらつきにより焼結クラックが発生しやすいという問題を有していた。
以上に対してR−T−B系焼結磁石は、ラジアル異方性リング磁石にしても焼結クラックが発生しにくい。その理由は、焼結後の冷却時に径方向と周方向の収縮率の違いが発生するキュリー点が、R−T−B系焼結磁石では320℃前後と低く、室温でのひずみによる応力が低いこと、及び機械的強度がフェライト磁石、SmCo系磁石に比べて相当程度高いことにある。したがって、本発明はR−T−B系焼結磁石に適用することが望ましい。
R−T−B系焼結磁石は、希土類元素(R)を25〜37wt%含有する。ここで、RはYを含む概念を有しており、したがってY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuの1種又は2種以上から選択される。Rの量が25wt%未満であると、R−T−B系焼結磁石の主相となるR214B相の生成が十分ではなく軟磁性を持つα−Feなどが析出し、保磁力が著しく低下する。一方、Rが37wt%を超えると主相であるR214B相の体積比率が低下し、残留磁束密度が低下する。またRが酸素と反応し、含有する酸素量が増え、これに伴い保磁力発生に有効なRリッチ相が減少し、保磁力の低下を招く。したがって、Rの量は25〜37wt%とする。望ましいRの量は28〜35wt%である。
また、本発明が適用されるR−T−B系焼結磁石は、ホウ素(B)を0.5〜4.5wt%含有する。Bが0.5wt%未満の場合には高い保磁力を得ることができない。一方で、Bが4.5wt%を超えると残留磁束密度が低下する傾向がある。したがって、Bの上限を4.5wt%とする。望ましいBの量は0.5〜1.5wt%、さらに望ましいBの量は0.8〜1.2wt%である。
本発明が適用されるR−T−B系焼結磁石は、Coを5.0wt%以下(0を含まず)、望ましくは0.1〜3.0wt%含有することができる。CoはFeと同様の相を形成するが、キュリー温度の向上、粒界相の耐食性向上に効果がある。
本発明が適用されるR−T−B系焼結磁石は、他の元素の含有を許容する。例えば、Al、Cu、Zr、Ti、Bi、Sn、Ga、Nb、Ta、Si、V、Ag、Ge等の元素を適宜含有させることができる。一方で、酸素、窒素、炭素等の不純物元素を極力低減することが望ましい。特に磁気特性を害する酸素は、その量を8000ppm以下、さらには5000ppm以下とすることが望ましい。酸素量が多いと非磁性成分である希土類酸化物相が増大して、磁気特性を低下させるからである。
<ラジアル異方性リング磁石>
本発明はラジアル異方性リング磁石に広く適用することができるが、特に長尺のラジアル異方性リング磁石に適用することが望ましい。従来の多段成形法により得られた長尺のラジアル異方性リング磁石は、接続部が不可避的に存在し、磁気特性さらには耐食性の低下を招いていた。これに対して本発明によるラジアル異方性リング磁石は、上述した説明から明らかなように、磁石粉Pを追加して供給することがないために、接合部が発生することがない。このことを具体例に基づいて説明する。
従来の多段成形法により得られたラジアル異方性リング磁石、本発明によるラジアル異方性リング磁石の表面磁束分布を測定した。ラジアル異方性リング磁石は、φ22m(外径)×φ18mm(内径)×30mm(長さ)の寸法を有するNd−Fe−B系磁石である。表面磁束分布は、図9(多段成形法)及び図11(本発明)に示すように、ラジアル異方性リング磁石Rのスラスト方向に測定プローブを移動させて測定した。なお、図9における点線は、磁場中成形時に磁石粉Pを継ぎ足した位置を示している。これに対して、本発明によるラジアル異方性リング磁石Rは、図11に示すように、成形体を得るために必要な磁石粉Pの全てを当初よりキャビティに挿入するため、接合部は発生しない。
表面磁束分布の測定結果を図10(従来)及び図12(本発明)に示す。図10に示すように、多段成形法により得られたラジアル異方性リング磁石Rは、磁石粉Pを継ぎ足した位置の表面磁束が局部的に低下していることがわかる。これに対して本発明によるラジアル異方性リング磁石Rは、局部的な表面磁束の低下は見られない。そのため、本発明によるラジアル異方性リング磁石Rは、両端部から5mmの範囲を除いた範囲において、表面磁束のばらつきは7%程度と、多段成形の場合の22%に比べて均一な表面磁束分布を示すことがわかる。
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。
<第1実施例>
29wt%Nd−3.5wt%Dy−1.0wt%B−0.5wt%Co−Feの組成を有する原料薄帯状合金を、ストリップキャスト法で作製した。この薄帯状の合金に室温にて水素を吸蔵させた後、Ar雰囲気中で脱水素を行なうことにより粗粉末を得た。
ジェットミルを用いてこの粗粉末を微粉砕した。微粉砕は、ジェットミル内をN2ガスで置換した後に高圧N2ガス気流を用いて行った。得られた微粉末の平均粒径は4.0μmであった。
以上の微粉末を、図3、図4に示す磁場中成形機(本発明)又は図15に示す磁場中成形機(従来法)を用いて表1に示す成形で磁場中成形した後、以下に示す条件で焼結、時効処理を行うことにより、表1に示すサイズのラジアル異方性リング磁石を作製した。得られたラジアル異方性リング磁石の磁気特性を測定した。測定は、ラジアル異方性リング磁石から測定用試料(3mm×2mm×1mm)を切り出し、振動式試料磁束計を用いた。磁気量から残留磁束密度(Br)への換算は、試料の重量と密度を測定した値を用いた。その結果を表1にあわせて示す。なお、表1の試料No.1及び2は従来法によるラジアル異方性リング磁石、No.3が本発明によるラジアル異方性リング磁石である。
焼成:真空中において、1080℃で4時間焼結した
時効処理:850℃×1時間と540℃×1時間(ともにAr雰囲気中)の2段時効処理
Figure 2006019385
表1に示すように、図15に示す従来の磁場中成形機を用いて得られたラジアル異方性リング磁石(試料No.1、2)を比較すると、ラジアル異方性リング磁石の長さを長く(およそ3倍)にすることにより、残留磁束密度(Br)が0.1T低下したことがわかる。これに対して、本発明により得られたラジアル異方性リング磁石(試料No.3)は、試料No.2と同等のサイズを有しているにもかかわらず、磁気特性は長さの短い試料No.1と同等の値を得ることができる。
試料No.3について、12極着磁を行い、ラジアル異方性リング磁石の外周面についてスラスト方向(軸方向)の表面磁束分布を測定したところ、図12に示したと同様に、多段成形を行ったときのような局部的な磁束の落ち込みのない、平坦な分布を示すことを確認した。また、外周面側がN極、内周面側がS極となるように着磁を行い、ラジアル異方性リング磁石の軸方向中央部における周方向の表面磁束分布を測定した。その結果、表面磁束のばらつきが5%以内のほぼ均一な分布を示すことを確認した。
以上のように、本発明によると、高磁気特性でかつ特性の均一性が高い長尺なラジアル異方性リング磁石を製造することができる。
<第2実施例>
29.5wt%Nd−3.0wt%Dy−1.0wt%B−0.5wt%Co−Feの組成を有する原料薄帯状合金を、ストリップキャスト法で作製した。この薄帯状の合金に室温にて水素を吸蔵させた後、Ar雰囲気中で脱水素を行なうことにより粗粉末を得た。
ジェットミルを用いてこの粗粉末を微粉砕した。微粉砕は、ジェットミル内をN2ガスで置換した後に高圧N2ガス気流を用いて行った。得られた微粉末の平均粒径は4.0μmであった。
以上の微粉末を、図3、図4に示す磁場中成形機(本発明)又は図15に示す磁場中成形機(従来法)にて成形した後、第1実施例と同様の条件で焼結、時効処理を施して表2に示すサイズのラジアル異方性リング磁石を作製した。
ラジアル異方性リング磁石から測定用試料を切り出し、第1実施例と同様に磁気特性を測定した。測定結果を表2に示すとともに、図13にサイズごとのラジアル異方性リング磁石の長さtと残留磁束密度(Br)の関係を示す。また、同じ磁石粉を用いて、直交磁場成形法(加圧方向と配向方向が直交する)にて、1.5Tの配向磁場を用いて直方体形状(3mm×2mm×1mm)の磁石を作製し、同様に磁気特性を測定したところ、残留磁束密度(Br)は1310mTであった。
磁石外径:φa[mm]、磁石内径:φb[mm]、磁石長さ:t[mm]とした場合、tが0.85×b×(b/a)(以下、臨界長さということがある)を超えると、従来法により作製したラジアル異方性リング磁石の残留磁束密度(Br)は1150mT未満となる。これに対して本発明によるラジアル異方性リング磁石は、1150mT以上の残留磁束密度(Br)を得ることができる。
ここで、直交磁場成形法により得られた磁石の残留磁束密度(Br)に対する、各ラジアル異方性リング磁石の残留磁束密度(Br)の比率(%、以下「配向値」ということがある)を求めた。その結果を表2に示す。ちなみに、上記の1150mTという残留磁束密度(Br)は、直交磁場成形法にて作製した直方体形状の磁石の88%となる。この値を下回ると、配向磁場に対する残留磁束密度(Br)の値が急激に減少し、図14に示すように、その傾きが急峻になるため、製造される磁石の残留磁束密度(Br)のばらつきが大きくなって、実用的でない。なお、組成を変更して直交磁場成形法により得られる残留磁束密度(Br)が変われば、それに応じてラジアル異方性リング磁石の残留磁束密度(Br)も変化する。
表2に示すように、0.85×b×(b/a)で示される臨界長さ未満の長さtのラジアル異方性リング磁石では、従来法によっても88%以上の配向値を得ることができるが(例えば、試料No.1、4、7等)、長さtが臨界長さ以上になると配向値は88%未満となってしまう(例えば、試料No.2、5、8等)。これに対し本発明により作製されたラジアル異方性リング磁石は、長さtが臨界長さ以上であっても88%以上の配向値を得ることができる。
Figure 2006019385
本発明による磁場中成形方法の原理を説明するための図である。 従来の磁場中成形方法を説明するための図である。 本発明の第1形態を実施する磁場中成形機の構成を示す縦断面図である。 本発明の第1形態を実施する磁場中成形機の構成を示す横断面図である。 本発明の第1形態における電磁コイルの励磁タイミングを示す図である。 本発明の第2形態を実施する磁場中成形機の構成を示す横断面図である。 本発明の第2形態における電磁コイルへの電流供給タイミングを示す図である。 本発明の第3形態にかかる磁場中成形機の構成を示す縦断面図であり、図8(a)は磁場配向前半の状態を、図8(b)は磁場配向後半の状態を示している。 表面磁束分布の測定方法を示す図である(多段成形法)。 多段成形法によるラジアル異方性リング磁石の表面磁束分布の測定結果を示すグラフである。 表面磁束分布の測定方法を示す図である(本発明)。 本発明によるラジアル異方性リング磁石の表面磁束分布の測定結果を示すグラフである。 ラジアル異方性リング磁石の長さと残留磁束密度(Br)との関係を示すグラフである。 配向磁場強度と直交磁場成形法により得られた磁石の残留磁束密度(Br)に対する、各ラジアル異方性リング磁石の残留磁束密度(Br)の比率の関係を示すグラフである。 従来の磁場中成形を示す図である。
符号の説明
10,20,30…磁場中成形機、11,21,31…コア、12,22,32…ダイ、12a,22a…磁性体部、12b,22b…非磁性体部、13,33…上パンチ、14,34…下パンチ、15,25,35…キャビティ、16…ヨーク、17…上部補助コイル、18…下部補助コイル、C11,C12,C13,C21,C22,C23,C31,C32,C33,C41,C42,C43…電磁コイル、36…上コイル、37…下コイル、P…磁石粉

Claims (15)

  1. リング状のキャビティに磁石粉を充填する充填工程と、
    互いに反発する磁場を前記キャビティの所定の領域ごとに印加することにより前記磁石粉をラジアル方向に配向しかつ、配向された前記磁石粉を加圧成形して成形体を得る磁場中成形工程と、
    を備えることを特徴とする磁場中成形方法。
  2. 前記キャビティの周方向に分割された前記所定の領域に順次磁場を印加することを特徴とする請求項1に記載の磁場中成形方法。
  3. 前記キャビティの中心を基準として略対称の位置に存在する複数の前記所定の領域に磁場を同時に印加し、
    次いで、前記キャビティの中心を基準として略対称の位置に存在する他の複数の前記所定の領域に磁場を同時に印加する処理を所定回数繰り返すことを特徴とする請求項1又は2に記載の磁場中成形方法。
  4. 前記キャビティの軸方向に分割された前記所定の領域に順次磁場を印加することを特徴とする請求項1に記載の磁場中成形方法。
  5. 同一の前記所定の領域に複数回磁場を印加することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の磁場中成形方法。
  6. 前記所定の領域ごとに印加される磁場の強度が同等であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の磁場中成形方法。
  7. 前記成形体を構成するに足りる量の前記磁石粉を磁場の印加前に前記キャビティに充填することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の磁場中成形方法。
  8. 互いに反発する磁場の印加領域を周方向又は軸方向に移動することによりラジアル方向に磁石粉が配向されたリング状の成形体を作製する工程と、
    前記成形体を焼結する工程と、
    を備えることを特徴とするラジアル異方性リング磁石の製造方法。
  9. 前記磁場の印加が、複数の第1領域に対して同時に磁場を印加する第1印加工程と、前記複数の第1領域と異なるか又は一部が重複する複数の第2領域に対して同時に磁場を印加する第2印加工程を少なくとも備えることを特徴とする請求項8に記載のラジアル異方性リング磁石の製造方法。
  10. 前記磁場の印加領域が移動する過程において、前記磁石粉の配向方向が一定であることを特徴とする請求項8又は9に記載のラジアル異方性リング磁石の製造方法。
  11. リング状のキャビティに充填された磁石粉を加圧する加圧成形部と、
    前記キャビティに対してその内周側から外周側に向けた磁場又はその外周側から内周側に向けた磁場のいずれかを印加し、かつ前記キャビティの周方向又は前記キャビティの軸方向に沿って磁場の印加領域が変更可能な磁場印加部と、
    を備えることを特徴とする磁場中成形装置。
  12. 前記磁場印加部は、
    前記キャビティの周方向又は軸方向に沿って配置され、かつ各々独立して磁場を印加する複数の磁場発生コイルと、
    前記複数の磁場発生コイルによる磁場発生タイミングを制御する磁場発生制御手段と、
    を備えることを特徴とする請求項11に記載の磁場中成形装置。
  13. 前記複数の磁場発生コイルが複数のグループに区分され、
    前記磁場発生制御手段は、グループ単位で前記磁場発生コイルの磁場発生タイミングを制御することを特徴する請求項12に記載の磁場中成形装置。
  14. 前記複数の磁場発生コイルは、前記キャビティに対してその位置が固定されていることを特徴する請求項11〜13のいずれかに記載の磁場中成形装置。
  15. 外径:a[mm]、内径:b[mm]、長さ:t[mm]とした場合に、t≧0.85×b×(b/a)のサイズを有し、
    その外周の周方向における表面磁束のばらつきが5%以下、
    その外周の軸方向における表面磁束のばらつきが10%以下であることを特徴とするラジアル異方性リング磁石。
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