JP2006019208A - 燃料電池システム - Google Patents

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Abstract

【課題】車両が減速する時に発生する回生電力を有効に利用する燃料電池システムを提供する。
【解決手段】発電の際に純水を用いる燃料電池スタック8と、純水が凍結しているか否かを判断する凍結判断部10と、純水を加熱する純水加熱器12と、燃料電池スタック8が発電した電力を蓄える蓄電部7と、燃料電池スタック8が発電した電力又は蓄電部7に蓄えられている電力を用いて車両を加速させると共に、車両が減速する際の運動エネルギを電気エネルギへ変換する車両駆動部30と、車両駆動部30が変換した電気エネルギの供給先を純水加熱器12又は蓄電部7へ切り替える電力分配部5とを有する。
【選択図】図1

Description

本発明は燃料電池システムに関し、特に、燃料電池スタック内の純水を加熱する装置を有する燃料電池システムに関する。
燃料電池システムは、天然ガス等の燃料を改質して得られる水素と空気中の酸素とを電気化学的に反応させて直接発電する発電システムであり、燃料の持つ化学エネルギを有効に利用することが出来、環境にもやさしい特性を有しているため、実用化に向けて技術開発が本格化している。
水素と酸素を用いて発電する際に燃料電池スタック内には純水が存在する。例えば燃料電池スタックを車両に搭載して、外気温度が氷点下の状態にて長時間発電せずに放置した場合、燃料電池スタック内の純水が凍結し、純水を使用しての燃料電池スタック内のイオン交換が不可能になり発電が出来なくなる。つまり、氷点下の環境にさらされ燃料電池スタックが凍りつくと、燃料電池スタックを直ぐに起動することができなくなる。
従来から、燃料電池スタックと車両駆動用の二次電池を搭載した車両において、燃料電池スタックの保温や解氷のために、車両駆動用とは別に専用(解氷専用)の二次電池を使用して、燃料電池スタックの低温起動性を向上させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、解氷専用の二次電池に蓄えられたエネルギによって電熱器を発熱させて、燃料電池スタック内の氷を解氷させている。
特開2000−257441号公報
しかし、特許文献1に開示された燃料電池式電気自動車は、車両駆動用の二次電池と解氷専用の二次電池を搭載するための空間を用意する必要があり、また車両の重量が増加してしまう。車両重量が増加することで、車両の加速性能や運動性能が低下し、燃費性能が低下してしまう。即ち、解氷専用の二次電池は、解氷後は駆動の補助をすることなく単に車両重量を増加させる要因になってしまい、その結果として車両の運動性能の低下や燃費性能の低下を引き起こしてしまう。
本発明の特徴は、発電の際に純水を用いる燃料電池スタックと、純水が凍結しているか否かを判断する凍結判断部と、純水を加熱する純水加熱器と、燃料電池スタックが発電した電力を蓄える蓄電部と、燃料電池スタックが発電した電力又は蓄電部に蓄えられている電力を用いて車両を加速させると共に、車両が減速する際の運動エネルギを電気エネルギ(回生電力)へ変換する車両駆動部と、車両駆動部が変換した回生電力の供給先を純水加熱器又は蓄電部へ切り替える電力分配部とを有する燃料電池システムであることを要旨とする。
本発明によれば、車両が減速する時に発生する回生電力を有効に利用する燃料電池システムを提供することが出来る。
以下図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。図面の記載において同一あるいは類似の部分には同一あるいは類似な符号を付している。
(第1の実施の形態)
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係わる燃料電池システムは、発電の際に純水を用いる燃料電池スタック8と、純水の凍結の有無を判断する凍結判断部としての純水流量計10と、純水を加熱する純水加熱器としての電熱器12と、燃料電池スタック8が発電した電力を蓄える蓄電部としての二次電池7と、車両が減速する際の運動エネルギを電気エネルギ(以後、「回生電力」という)へ変換する車両駆動部30と、回生電力の供給先を電熱器12又は二次電池7へ切り替える電力分配部としての回生電力切替装置5とを有する。また、燃料電池システムは、純水が凍結していると純水流量計10が判断した時、回生電力を電熱器12へ供給するように回生電力切替装置5を制御する制御部としてのシステム制御ユニット1を更に有することが望ましい。
燃料電池スタック8は、燃料ガス中の水素と空気中の酸素とを電気化学的に反応させて直接発電する。水素と酸素の電気化学的反応において水(H2O)が生成される。燃料電池スタック8は、純水を循環させるための純水配管9と、不要な純水を排出するための純水排出経路11とを備える。燃料電池スタック8が発電した電力は、車両駆動部30或いは二次電池7へ供給される。
純水流量計10は、純水配管9内の純水の流量を検出し、流量が無い時、つまり純水が実質的に流れていない時、純水が凍結していると判断する。純水流量計10は、これらの作用により凍結判断部として機能する。
電熱器12は、熱交換器13の内部に配置されている。熱交換器13は、燃料電池スタック8に隣接して配置されている。純水配管9の一部は、熱交換器13の内部に配置されている。電熱器12は、熱交換器13の内部に配置された純水配管9の一部を流れる純水を加熱する。
車両駆動部30は、図1に示す燃料電池システムを搭載した車両の駆動輪に接続された車両駆動用モータ2と、車両駆動用モータ2の動作を制御するインバータ3とを備え、燃料電池スタック8が発電した電力又は二次電池7に蓄えられている電力を用いて車両を加速させる。インバータ3は、車両が減速する際の車両駆動用モータ2の運動エネルギを電気エネルギ(回生電力)へ変換する。回生電力は、二次電池7又は電熱器12へ供給される。或いは、回生電力は、車両駆動用モータ2以外の補機へ供給しても構わない。
具体的には、二次電池7に蓄えられた電力がインバータ3に入力され、インバータ3はシステム制御ユニット1からの回転指令に応じて車両駆動用モータ2の回転磁界を作り出す。この回転磁界に応じて車両駆動用モータ2が回転することで、車両駆動用モータ2に繋がれた車軸や車輪が回転して車両を力行させる。一方、車両のエネルギ回生では、車輪や車軸に繋がれた車両駆動用モータ2が回転することで回転磁界を作り出し、この回転磁界により発生した電力をインバータ3で整流して二次電池7に供給することで充電し、車両のエネルギを回生している。
二次電池7は、充電と放電を繰り返しながら電力を一時的に貯蔵する。二次電池7は、燃料電池スタック8が発電した電力のみならず、車両のエネルギ回生よって車両駆動部30において生成された回生電力をも一時的に蓄えることができる。また、二次電池7は、貯蔵する電力を電熱器12又は車両駆動部30へ供給することもできる。
回生電力切替装置5は、車両駆動部30、二次電池7及び電熱器12の間に高電圧配線4によって接続されている。回生電力切替装置5は、車両駆動部30と二次電池7間の接続、車両駆動部30と電熱器12間の接続を切り替える回生電力切替リレー6を有する。回生電力切替リレー6のオン/オフ操作により、車両駆動部30からの回生電力の供給先が電熱器12又は二次電池7へ切り替えられる。回生電力切替リレー6は、通常、システム制御ユニット1から指示が無い限り、車両駆動部30と二次電池7間を接続している。これを「オフ(OFF)状態」と呼ぶ。オフ状態において、車両駆動部30からの回生電力は二次電池7へ供給されるか、或いは、二次電池7以外の補機へ供給される。これに対して、システム制御ユニット1から指示があった場合、回生電力切替リレー6は、車両駆動部30と電熱器12間を接続する。これを「オン(ON)状態」と呼ぶ。オン状態において、車両駆動部30からの回生電力は電熱器12へ供給される。
システム制御ユニット1は、燃料電池システム全体の制御を行う。即ち、図1に示すように、システム制御ユニット1は、制御用配線14により、インバータ3、回生電力切替リレー6、純水流量計10に接続されている。制御用配線14は、各部品とシステム制御ユニット1間で信号の伝達を行うための配線である。
図1に示した燃料電池システムを搭載する車両は、二次電池7の容量だけで十分に走行することが可能な燃料電池式電気自動車である。
図2に示すように、車両が回生状態となったとき、システム制御ユニット1は、純水の凍結の有無を示す信号(流量データ)を純水流量計10から受信する。具体的には、純水流量計10は純水配管9内の純水の流量を計測し、流量の測定値をシステム制御ユニット1へ送信する。純水の流量が実質的に無い場合、システム制御ユニット1は、純水が凍結していると判断して、通常オフ状態である回生電力切替リレー6に対してオン状態への切り替えを指示する制御信号を送信する。一方、システム制御ユニット1は、車両駆動用モータ2の回転磁界を決定する回転指令の信号をインバータ3へ送信する。回生電力切替装置5は、車両駆動部30において生成された回生電力を優先的に電熱器12へ分配し、電熱器12の発熱により純水配管9内の純水が解氷される。
図3を参照して図1の燃料電池システムの制御の手順を示す。
(イ)先ずS101段階において、純水配管9内の純水流量を純水流量計により検出する。流量が無い場合(S101段階においてYES)、S102段階に進み、純水が停留していると判断する。一方、流量が有る場合(S101段階においてNO)、純水が停留していないと判断して本制御は終了して、通常の制御方法に移行する。純水が凍結していない場合、車両駆動部30で発生する回生電力は、電熱器12以外の二次電池7や補機に分配される。
(ロ)S103段階において、車両が回生状態であるか否かを判断する。車両がエネルギ回生を行っている場合(S103段階においてYES)、S104段階に進み、回生電力切替リレー6をオン状態へ切り替える。一方、車両がエネルギ回生を行っていない場合(S103段階においてNO)、車両駆動部30から回生電力が得られないため、本制御は終了する。
(ハ)S105段階において、オン状態の回生電力切替リレー6を介して電熱器12へ回生電力が供給される。そして、S106段階において、電熱器12の発熱により純水配管9内の純水が解氷される。その後、S101段階に戻り、純水が凍結しており且つ車両がエネルギ回生を行っている間、S101〜S106段階を繰り返し実施する。純水が解氷された時或いは車両が力行を開始した時、本制御は終了し、通常の制御方法に移行する。なお、再度車両が回生状態になった時、或いは純水が凍結した時は同様の制御を行う。
以上説明したように、車両減速時に回生電力が発生している時に純水が凍結している場合に、回生電力切替装置5が回生電力を電熱器12へ優先的に分配する。したがって、回生電力が二次電池7へ充電される時の二次電池7の内部抵抗に起因する電力損失を抑制することができ、燃料電池システム及び燃料電池システムを搭載する燃料電池車両全体のエネルギ効率を向上させることができる。即ち、二次電池7には内部抵抗が存在し、放電する時にも充電する時にも電気エネルギの一部が熱エネルギに変換され、熱エネルギが損失となる。二次電池7への充電を控えることで熱エネルギへの損失を抑制することが出来、車両全体のエネルギ効率を向上させることが可能となる。
また、車両が減速する時に発生する回生電力を有効に使用することで、燃料電池スタックの解氷を効果的に促進することができる。
更に、回生電力を使用して純水の解氷を行うため、燃料電池スタック8の起動を待たずに車両の運転を開始することが可能になる。
更に、純水が凍結していない場合、車両駆動部30で発生する回生電力は、電熱器12以外の二次電池7や補機に分配される。したがって、回生電力を電熱器12へ必要以上に供給せず、無駄な熱の発生を抑えることができ、車両全体のエネルギ効率の向上を図ることができる。
更に、システム制御ユニット1から指示の無い限り、回生電力切替装置5は、回生電力を通常良く使用する二次電池7や各種補機へ分配する。したがって、回生電力切替装置5の運転に必要な電力を抑制することができ、車両全体のエネルギ効率の向上を実現できる。
更に、燃料電池スタック8内の氷を解凍させるにあたり、電熱器12による加熱によって解氷を行うのが一般的であるが、この解氷のために専用の二次電池又はキャパシタを用意することなく、車両が減速する時に発生する回生時のエネルギを燃料電池スタック8内の解氷に使うことで、二次電池7から出し入れする電力量を小さくし、二次電池7の充電効率から発生する電力損失による温度上昇を小さくしながら、効率的に燃料電池スタック8を解氷させることができる。
(第2の実施の形態)
図4に示すように、本発明の第2の実施の形態に係わる燃料電池システムは、図1の燃料電池システムに比して、以下の点において相違する。
即ち、本発明の第2の実施の形態に係わる燃料電池システムは、二次電池7の充電状態(SOC)を検出する二次電池SOC検出器(セル電圧モニタ)15を更に有する。図示は省略するが、システム制御ユニット1は、セル電圧の検出値に基づいて、二次電池7が放電することができる電力量を求める放電可能量演算部を有する。二次電池7のSOCを検出することで車両に残された電力量と燃料電池スタック8を起動させるための電力量を正確に推定することができる。
その他の構成は、図1の燃料電池システムと同じであり、説明を省略する。
図5に示すように、本発明の第2の実施の形態に係わる燃料電池システムの制御は、図2の制御に比して、以下の点において相違する。
セル電圧モニタ15は二次電池7のSOCを検出し、システム制御ユニット1の放電可能量演算部へSOCの検出値を送信する。放電可能量演算部は、二次電池7が放電することができる電力量が燃料電池スタックの純水を解氷して燃料電池スタックを起動するために十分な電力量よりも多いと判断した時、車両の状態が力行か回生または惰性に関わらずに回生電力切替リレー6をオン状態として、二次電池7に蓄えられている電力を電熱器12へ供給する。即ち、車両の運転において単位時間当たりに発生する回生による電気エネルギが小さく、十分に燃料電池スタック8の電熱器12の温度が上昇せずに、燃料電池スタック8内の純水の解氷が進行しない時、二次電池7が供給可能な電力総量が、燃料電池スタック8を解氷させて起動させる時に必要な電力量を下回る前に、燃料電池スタック8を解氷して起動させる。これにより、電力量が足りなくなりしかも発電できなく車両を停止する事態に陥ることなく、確実に車両を連続走行させることが出来る。
その他の処理は、図2の制御と同じであり、説明を省略する。
図6を参照して図4の燃料電池システムの制御の手順を示す。
(イ)先ずS201段階において、純水配管9内の純水流量を純水流量計により検出する。流量が無い場合(S201段階においてYES)、S202段階に進み、純水が停留していると判断する。一方、流量が有る場合(S201段階においてNO)、純水が停留していないと判断して本制御は終了して、通常の制御方法に移行する。
(ロ)S203段階において、二次電池7が放電することができる電力量が燃料電池スタックの純水を解氷して燃料電池スタックを起動するために十分な電力量よりも多いか否かを判断する。S203段階においてYESの場合、S205段階に進み、S203段階においてNOの場合、S204段階に進む。
(ハ)S204段階において、車両が回生状態であるか否かを判断する。車両がエネルギ回生を行っている場合(S204段階においてYES)、S205段階に進み、回生電力切替リレー6をオン状態へ切り替える。一方、車両がエネルギ回生を行っていない場合(S204段階においてNO)、車両駆動部30から回生電力が得られないため、本制御は終了する。
(ニ)S206段階において、オン状態の回生電力切替リレー6を介して電熱器12へ回生電力が供給される。そして、S207段階において、電熱器12の発熱により純水配管9内の純水が解氷される。その後、S201段階に戻り、S201〜S207段階を繰り返し実施する。純水が解氷された時、本制御は終了し、通常の制御方法に移行する。なお、純水が凍結した時は同様の制御を行う。
図7のグラフにおいて、二次電池7のSOCと車両の走行可能距離の関係は車両が走行することで左下に移行する。「燃料電池スタック8を解氷するために必要なエネルギ下限」以下になる前に燃料電池スタック8を解氷し起動させることで、電力量が足りなくなりしかも発電できなく車両を停止する事態に陥ることなく、確実に車両を連続走行させることが出来る。
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係わる燃料電池システムは、図4に示した燃料電池システムと同じ構成を有するため、図示及び説明を省略する。
図8に示すように、本発明の第3の実施の形態に係わる燃料電池システムの制御は、図5の制御に比して、以下の点において相違する。
インバータ3は、車両速度情報(例えば、モータ回転数)をシステム制御ユニット1へ送信する。システム制御ユニット1は車両の走行速度及び重量から車両の運動エネルギを求める運動エネルギ演算部を更に有し、運動エネルギ演算部は、車両の運動エネルギから車両を減速した時に回生で発生する電気エネルギ(回生電力)を推定し、車両が減速する際に車両駆動部30が変換する回生電力に基づいて、二次電池7が放電することができる電力量(SOC)を補正する。即ち、運動エネルギ演算部は、システム制御ユニット1の放電可能量演算部が受信する二次電池7のSOCに対して、回生電力に基づく補正を行う。
その他の処理は、図5の制御と同じであり、説明を省略する。
図9を参照して第3の実施の形態に係わる燃料電池システムの制御の手順を示す。
(イ)先ずS301段階において、純水配管9内の純水流量を純水流量計により検出する。流量が無い場合(S301段階においてYES)、S302段階に進み、純水が停留していると判断する。一方、流量が有る場合(S301段階においてNO)、純水が停留していないと判断して本制御は終了して、通常の制御方法に移行する。
(ロ)S303段階において、運動エネルギ演算部は車両の走行速度及び重量から車両の運動エネルギを求める。S304段階において、運動エネルギ演算部は、車両が減速する際に車両駆動部30が変換する回生電力に基づいて、二次電池7が放電することができる電力量を補正する。
(ハ)S305段階において、二次電池7が放電することができる電力量であって補正後のものが燃料電池スタックの純水を解氷して燃料電池スタックを起動するために十分な電力量よりも多いか否かを判断する。S305段階においてYESの場合、S307段階に進み、S305段階においてNOの場合、S306段階に進む。
(ニ)S306段階において、車両が回生状態であるか否かを判断する。車両がエネルギ回生を行っている場合(S306段階においてYES)、S307段階に進み、回生電力切替リレー6をオン状態へ切り替える。一方、車両がエネルギ回生を行っていない場合(S306段階においてNO)、車両駆動部30から回生電力が得られないため、本制御は終了する。
(ホ)S308段階において、オン状態の回生電力切替リレー6を介して電熱器12へ回生電力が供給される。そして、S309段階において、電熱器12の発熱により純水配管9内の純水が解氷される。その後、S301段階に戻り、S301〜S309段階を繰り返し実施する。純水が解氷された時、本制御は終了し、通常の制御方法に移行する。なお、純水が凍結した時は同様の制御を行なう。
図10のグラフにおいて、補正前の二次電池7のSOCと車両の走行可能距離の関係を実線で示し、補正後の二次電池7のSOCと車両の走行可能距離の関係を点線で示す。車両の速度が大きく運動エネルギが多い状態においては点線のようなシフト補正を行う。二次電池7のSOCと車両の走行可能距離の関係を、車両の運動エネルギを変換した回生電力に基づいてシフトし補正することで、より高精度に車両で正味必要となる燃料電池スタック8を解氷するためのエネルギの算出が可能になる。
(第4の実施の形態)
図11に示すように、本発明の第4の実施の形態に係わる燃料電池システムは、図4の燃料電池システムに比して、以下の点において相違する。
即ち、本発明の第4の実施の形態に係わる燃料電池システムは、車両の現在位置及び運行情報を取得する車両位置部16(GPS)を更に有する。図示は省略するが、システム制御ユニット1は、車両の現在位置、運行情報及び重量から車両の位置エネルギを求める位置エネルギ演算部を更に有する。
その他の構成は、図4の燃料電池システムと同じであり、説明を省略する。
図12に示すように、本発明の第4の実施の形態に係わる燃料電池システムの制御は、図5の制御に比して、以下の点において相違する。
車両位置部16は車両の現在位置及び運行情報を取得し、システム制御ユニット1の位置エネルギ演算部へ送信する。システム制御ユニット1の位置エネルギ演算部は、車両の現在位置、運行情報及び重量から車両の位置エネルギを求める。
位置エネルギ演算部は、車両の位置エネルギに基づいて、二次電池7が放電することができる電力量(SOC)を補正する。即ち、位置エネルギ演算部は、システム制御ユニット1の放電可能量演算部が受信する二次電池7のSOCに対して、車両の位置エネルギに基づく補正を行う。
その他の処理は、図5の制御と同じであり、説明を省略する。
図13を参照して第4の実施の形態に係わる燃料電池システムの制御の手順を示す。
(イ)先ずS401段階において、純水配管9内の純水流量を純水流量計により検出する。流量が無い場合(S401段階においてYES)、S402段階に進み、純水が停留していると判断する。一方、流量が有る場合(S401段階においてNO)、純水が停留していないと判断して本制御は終了して、通常の制御方法に移行する。
(ロ)S403段階において、車両位置部16は車両の現在位置及び運行情報を取得し、位置エネルギ演算部は、車両の現在位置、運行情報及び重量から車両の位置エネルギを求める。S404段階において、位置エネルギ演算部は、車両の位置エネルギに基づいて、二次電池7が放電することができる電力量を補正する。
(ハ)S405〜409段階において、図9のS304〜409段階と同じ処理を実施する。
図14のグラフにおいて、補正前の二次電池7のSOCと車両の走行可能距離の関係を実線で示し、下り坂での位置エネルギに基づいた補正後の二次電池7のSOCと車両の走行可能距離の関係を第1の点線31で示す。下り坂では、第1の点線31のように正の側へ位置エネルギに基づくシフト補正を行う。
図15のグラフにおいて、上り坂での位置エネルギに基づいた補正後の二次電池7のSOCと車両の走行可能距離の関係を第2の点線32で示す。上り坂では、第2の点線32のように負の側へ位置エネルギに基づくシフト補正を行う。
このように、二次電池7のSOCと車両の走行可能距離の関係を、車両の位置エネルギに基づいてシフトし補正することで、より高精度に車両で正味必要となる燃料電池スタック8を解氷するためのエネルギの算出が可能になる。
(第5の実施の形態)
図16に示すように、本発明の第5の実施の形態に係わる燃料電池システムは、図1の燃料電池システムに比して、以下の点において相違する。
即ち、本発明の第5の実施の形態に係わる燃料電池システムは、回生電力の供給先を電熱器12又は二次電池7へ切り替える電力分配部として、図1の回生電力切替装置5の代わりにDC/DCコンバータ17を有する。システム制御ユニット1は、純水が凍結していると純水流量計10が判断した時、回生電力を電熱器12へ供給するようにDC/DCコンバータ17を制御する。電熱器12はインバータ3と異なる電源電圧で作動し、DC/DCコンバータ17は電熱器12の電源電圧とインバータ3の電源電圧とを繋いでいる。
DC/DCコンバータ17は、インバータ3、二次電池7及び電熱器12の間に高電圧配線4によって接続されている。DC/DCコンバータ17は、インバータ3と二次電池7間の接続、インバータ3と電熱器12間の接続を切り替える。DC/DCコンバータ17は、通常、システム制御ユニット1から指示が無い限り、インバータ3と二次電池7間を接続している。これを「オフ(OFF)状態」と呼ぶ。オフ状態において、インバータ3からの回生電力は二次電池7へ供給されるか、或いは、二次電池7以外の補機へ供給される。これに対して、システム制御ユニット1から指示があった場合、DC/DCコンバータ17の変電能力を上げて、インバータ3と電熱器12間を優先的に接続する。これを「オン(ON)状態」と呼ぶ。オン状態において、インバータ3からの回生電力は電熱器12へ供給される。
その他の構成は、図1の燃料電池システムと同じであり、説明を省略する。
図17に示すように、車両が回生状態となったとき、システム制御ユニット1は、純水の凍結の有無を示す信号(流量データ)を純水流量計10から受信する。純水の流量が実質的に無い場合、システム制御ユニット1は、純水が凍結していると判断して、通常オフ状態であるDC/DCコンバータ17に対してオン状態への切り替えを指示する制御信号を送信する。一方、システム制御ユニット1は、車両駆動用モータ2の回転磁界を決定する回転指令の信号をインバータ3へ送信する。DC/DCコンバータ17は、車両駆動部30において生成された回生電力を優先的に電熱器12へ分配し、電熱器12の発熱により純水配管9内の純水が解氷される。
図18を参照して図16の燃料電池システムの制御の手順を示す。
(イ)先ず501段階において、純水配管9内の純水流量を純水流量計により検出する。流量が無い場合(S501段階においてYES)、S502段階に進み、純水が停留していると判断する。一方、流量が有る場合(S501段階においてNO)、純水が停留していないと判断して本制御は終了して、通常の制御方法に移行する。純水が凍結していない場合、車両駆動部30で発生する回生電力は、電熱器12以外の二次電池7や補機に分配される。
(ロ)S503段階において、車両が回生状態であるか否かを判断する。車両がエネルギ回生を行っている場合(S503段階においてYES)、S504段階に進み、DC/DCコンバータ17をオン状態へ切り替える。一方、車両がエネルギ回生を行っていない場合(S503段階においてNO)、車両駆動部30から回生電力が得られないため、本制御は終了する。
(ハ)S505段階において、オン状態のDC/DCコンバータ17を介して電熱器12へ回生電力が供給される。そして、S506段階において、電熱器12の発熱により純水配管9内の純水が解氷される。その後、S501段階に戻り、純水が凍結しており且つ車両がエネルギ回生を行っている間、S501〜S506段階を繰り返し実施する。純水が解氷された時或いは車両が力行を開始した時、本制御は終了し、通常の制御方法に移行する。なお、再度車両が回生状態になった時、或いは純水が凍結した時は同様の制御を行う。
(第6の実施の形態)
図19に示すように、本発明の第6の実施の形態に係わる燃料電池システムは、図16の燃料電池システムに比して、以下の点において相違する。
即ち、本発明の第6の実施の形態に係わる燃料電池システムは、純水配管9内の純水を加熱する純水加熱器として、図1の電熱器12の代わりに、純水配管9内の純水を加熱するフリクションプレート20と、フリクションプレート20を発熱させるフリクションプレートモータ18と、フリクションプレートモータ18とフリクションプレート20とを繋ぐフリクションプレートシャフト19とを有する。フリクションプレートシャフト19及びフリクションプレート20は熱交換器13内に配置され、フリクションプレートモータ18は、高電圧配線4によりDC/DCコンバータ17に接続されている。フリクションプレート20は、熱交換器13の内部に配置された純水配管9の一部を流れる純水を加熱する。
その他の構成は、図1の燃料電池システムと同じであり、説明を省略する。
図20に示すように、車両が回生状態となったとき、システム制御ユニット1は、純水の凍結の有無を示す信号(流量データ)を純水流量計10から受信する。純水の流量が実質的に無い場合、システム制御ユニット1は、純水が凍結していると判断して、通常オフ状態であるDC/DCコンバータ17に対してオン状態への切り替えを指示する制御信号を送信する。一方、システム制御ユニット1は、車両駆動用モータ2の回転磁界を決定する回転指令の信号をインバータ3へ送信する。DC/DCコンバータ17は、車両駆動部30において生成された回生電力を優先的にフリクションプレートモータ18へ分配し、フリクションプレートモータ18は、フリクションプレートシャフト19を介してフリクションプレート20を駆動して発熱させる。フリクションプレート20の発熱により純水配管9内の純水が解氷される。
図21を参照して図19の燃料電池システムの制御の手順を示す。
(イ)先ず601段階において、純水配管9内の純水流量を純水流量計により検出する。流量が無い場合(S601段階においてYES)、S602段階に進み、純水が停留していると判断する。一方、流量が有る場合(S601段階においてNO)、純水が停留していないと判断して本制御は終了して、通常の制御方法に移行する。
(ロ)S603段階において、車両が回生状態であるか否かを判断する。車両がエネルギ回生を行っている場合(S603段階においてYES)、S604段階に進み、DC/DCコンバータ17をオン状態へ切り替える。一方、車両がエネルギ回生を行っていない場合(S603段階においてNO)、車両駆動部30から回生電力が得られないため、本制御は終了する。
(ハ)S605段階において、オン状態のDC/DCコンバータ17を介してフリクションプレートモータ18へ回生電力が供給され、フリクションプレートモータ18が回転する。そして、S606段階において、フリクションプレートモータ18に繋がれたフリクションプレート20が発熱し、S607段階において、フリクションプレート20の発熱により純水配管9内の純水が解氷される。その後、S601段階に戻り、純水が凍結しており且つ車両がエネルギ回生を行っている間、S601〜S606段階を繰り返し実施する。純水が解氷された時或いは車両が力行を開始した時、本制御は終了し、通常の制御方法に移行する。なお、再度車両が回生状態になった時、或いは純水が凍結した時は同様の制御を行う。
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は、第1乃至第6の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
例えば、第1乃至第6の実施の形態では、蓄電部として二次電池7を例に取り説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。蓄電部として二次電池7の代わりにキャパシタを用いても構わない。
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ限定されるものである。
本発明の第1の実施の形態に係わる燃料電池システムを示すブロック図である。 図1のシステム制御ユニットによる燃料電池システムの制御の流れを示すブロック図である。 図1の燃料電池システムの制御の手順を示すフローチャートである。 本発明の第2の実施の形態に係わる燃料電池システムを示すブロック図である。 図4のシステム制御ユニットによる燃料電池システムの制御の流れを示すブロック図である。 図4の燃料電池システムの制御の手順を示すフローチャートである。 二次電池のSOCと走行可能距離の関係を示すグラフである。 第3の実施の形態に係わる燃料電池システムの制御の流れを示すブロック図である。 第3の実施の形態に係わる燃料電池システムの制御の手順を示すフローチャートである。 補正前及び補正後の二次電池のSOCと走行可能距離の関係を示すグラフである。 本発明の第4の実施の形態に係わる燃料電池システムを示すブロック図である。 図11のシステム制御ユニットによる燃料電池システムの制御の流れを示すブロック図である。 図11の燃料電池システムの制御の手順を示すフローチャートである。 補正前及び補正後の二次電池のSOCと走行可能距離の関係を示すグラフである(その1)。 補正前及び補正後の二次電池のSOCと走行可能距離の関係を示すグラフである(その2)。 本発明の第5の実施の形態に係わる燃料電池システムを示すブロック図である。 図16のシステム制御ユニットによる燃料電池システムの制御の流れを示すブロック図である。 図16の燃料電池システムの制御の手順を示すフローチャートである。 本発明の第6の実施の形態に係わる燃料電池システムを示すブロック図である。 図19のシステム制御ユニットによる燃料電池システムの制御の流れを示すブロック図である。 図19の燃料電池システムの制御の手順を示すフローチャートである。
符号の説明
1…システム制御ユニット
2…車両駆動用モータ
3…インバータ
4…高電圧配線
5…回生電力切替装置(電力分配部)
6…回生電力切替リレー
7…二次電池
7…蓄電部
8…燃料電池スタック
9…純水配管
10…純水流量計(凍結判断部)
11…純水排出経路
12…電熱器(純水加熱器)
13…熱交換器
14…制御用配線
15…セル電圧モニタ
16…車両位置部
17…DC/DCコンバータ(電力分配部)
18…フリクションプレートモータ(純水加熱器)
19…フリクションプレートシャフト(純水加熱器)
20…フリクションプレート(純水加熱器)
30…車両駆動部
31…第1の点線
32…第2の点線

Claims (9)

  1. 発電の際に純水を用いる燃料電池スタックと、
    前記純水の凍結の有無を判断する凍結判断部と、
    前記純水を加熱する純水加熱器と、
    前記燃料電池スタックが発電した電力を蓄える蓄電部と、
    前記燃料電池スタックが発電した電力又は前記蓄電部に蓄えられている電力を用いて車両を加速させると共に、前記車両が減速する際の運動エネルギを電気エネルギへ変換する車両駆動部と、
    前記電気エネルギの供給先を前記純水加熱器又は前記蓄電部へ切り替える電力分配部
    とを有することを特徴とする燃料電池システム。
  2. 前記純水が凍結していると前記凍結判断部が判断した時、前記電気エネルギを前記純水加熱器へ供給するように前記電力分配部を制御する制御部を更に有することを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
  3. 前記制御部は、前記純水が凍結していないと前記凍結判断部が判断した時、前記電気エネルギを前記蓄電部へ供給するように前記電力分配部を制御することを特徴とする請求項2記載の燃料電池システム。
  4. 前記電力分配部は、前記制御部から指示があった場合に限り前記電気エネルギを前記純水加熱器へ供給することを特徴とする請求項2又は3記載の燃料電池システム。
  5. 前記制御部は前記蓄電部が放電することができる電力量を求める放電可能量演算部を有し、
    前記蓄電部が放電することができる電力量が前記燃料電池スタックの純水を解氷して前記燃料電池スタックを起動するために十分な電力量よりも多い時、前記蓄電部に蓄えられている電力を前記純水加熱器へ供給することを特徴とする請求項1乃至4何れか1項記載の燃料電池システム。
  6. 前記制御部は前記車両の走行速度及び重量から前記車両の運動エネルギを求める運動エネルギ演算部を更に有し、前記運動エネルギ演算部は、前記車両が減速する際に前記車両駆動部が変換する前記電気エネルギに基づいて、前記蓄電部が放電することができる電力量を補正することを特徴とする請求項5記載の燃料電池システム。
  7. 前記車両の現在位置及び運行情報を取得する車両位置部を更に有し、
    前記制御部は前記車両の現在位置、運行情報及び重量から前記車両の位置エネルギを求める位置エネルギ演算部を更に有し、
    前記位置エネルギ演算部は、前記車両の位置エネルギに基づいて、前記蓄電部が放電することができる電力量を補正することを特徴とする請求項5記載の燃料電池システム。
  8. 電力分配部は、DC/DCコンバータであることを特徴とする請求項1乃至7何れか1項記載の燃料電池システム。
  9. 前記純水加熱器は、モータ駆動によるフリクションプレートであり、前記電力分配部は、前記電気エネルギをフリクションプレート駆動用モータへ供給することを特徴とする請求項1乃至8何れか1項記載の燃料電池システム。
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