JP2006019135A - 透明電極用基板の製造装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 加熱を伴う成膜プロセスにおいて基材に生じる反りを小さく抑えることができ、低抵抗な透明導電膜を基材上に均一に形成することが可能な透明電極用基板の製造装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明に係る透明電極用基板の製造装置1は、基材11の被成膜面上に透明導電膜12を設けてなる透明電極用基板をスプレー熱分解法を用いて形成する装置であって、透明導電膜12の原料溶液をスプレー状に噴射する吐出手段30と、吐出手段30と対向する位置に配され基材11を載置する支持手段20と、支持手段20に内蔵された温度制御手段21と、支持手段20の上に配設され基材11の側面に接して基材11を支持する保持手段60とを備えてなる構成が好適である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、スプレー熱分解(Spray Pyrolysis Deposition;SPD)法により、透明電極用基板を構成する透明導電膜を基板上に形成するために用いられる製造装置に関する。
液晶表示素子や太陽電池等に利用される透明電極用基板としては、ガラス板等からなる透明な基板の表面上に、導電性を備えた透明な薄膜(以下、透明導電膜という)を、例えば50〜2000nm程度の厚さで設けたものが広く使用されている。このような透明導電膜の例としては、酸化インジウムに数%のスズを添加してなる薄膜;インジウム・スズ・オキサイド膜[以下、ITO(Indium-Tin-Oxide)膜という]や、酸化スズに数%のフッ素を添加してなる薄膜;フッ素ドープ酸化スズ膜[以下、FTO(Fluorine-doped-Tin-Oxide)膜という]が挙げられる。
上記ITO膜では、3価のインジウム(In3+)席に置換した4価のスズ(Sn4+)がキャリア電子を発生するため、ITO膜は電気をよく通す性質を備えている。また、ITO膜は、エネルギー・ギャップが紫外域に対応するため可視光をほとんど吸収しないので、太陽光を構成する可視光スペクトルの大部分を透過させる能力も備えている。
従来、このような優れた導電性と透過性とを併せ持つITO膜に代表される透明導電膜は、減圧雰囲気を要する真空成膜法、例えばスパッタ法や蒸着法、CVD法等に代表される方法によって形成されている。
上記方法によれば、透明性に優れ、かつ高い導電性を備えた膜が得られる反面、減圧雰囲気で薄膜形成を行う装置は、導入コストが高く、その後の運転コストも高くなる傾向が強く、さらには広い面積に渡って均一な厚さの膜を形成しにくいという課題があった。
近年、減圧雰囲気が不要で、装置構成が簡易なことから、製造コストを安く抑えることが可能な成膜法として、スプレー熱分解法が注目されている。スプレー熱分解法とは、霧吹きの原理に基づき原料溶液を加熱された基板に向けて噴霧すると、溶媒の蒸発と溶質の変化が生じて薄膜形成が進行する技術である。出発原料には金属無機塩の水またはアルコール溶液、あるいは有機金属化合物や有機酸塩の有機溶剤系溶液が用いられる。基板温度は出発原料、原料溶液によって異なるが、250〜700℃の範囲で設定される(例えば、特許文献1、2を参照)。
図7はスプレー熱分解法を用いた従来の装置例を示す模式的な断面図であり、(a)は装置の全体図を、(b)は領域βの部分拡大図である。
図7(a)に示した装置100は、吐出手段130の吐出口131から基材111に向けて原料溶液141を噴霧することにより、基材111上に透明導電膜112を形成し、透明電極用基板110を作製する。透明導電膜112を形成する際には、基材111は支持手段120に載置され、支持手段120が内蔵する温度制御手段121により基材111の温度は調整される。また、例えばフード150を設けて原料溶液141を噴霧すれば、内部空間140を安定させることができるので好ましい。図7(b)に示すように、基材111の端部111aを構成する側面111bは、特に束縛されることなく自由端とされていた。
しかしながら、このスプレー熱分解法を用いた透明導電膜の作製には、次のような問題があった。
(1)スプレーを用いて原料溶液を、250〜700℃の範囲で加熱した基材に吹き付けるため、この熱の影響を受け基材に反りが発生しやすい。特に、自由端をなす基材の外周部において反り量が大きくなる傾向にある。液晶表示素子や太陽電池等に利用される透明電極用基板は対向して配される電極面と所定の距離を保つ必要があるため、透明電極用基板には平坦性が求められるので、このような規則性の無い反りの発生は芳しくない。
(2)このような規則性の無い反りが発生すると、スプレーで吹き付けて基板上に付着させた膜は、制御できない膜厚分布を持つようになる。例えば、基板中央部において膜が厚くなり、基板周辺部では膜が薄くなる傾向があった。この膜厚ムラは抵抗値のバラツキを生み、ひいてはこの透明電極用基板上に形成される液晶表示素子や太陽電池等のデバイスにおける電気的特性が面内でバラツキをもつ原因となるため改善が求められていた。
例えば、一方の電極として機能する透明導電膜を基板上に設けてなる透明電極用基板を用いて色素増感太陽電池を作製する場合には、例えばこの透明電極用基板を構成する透明導電膜上に、光電変換層として機能する酸化チタンなどの酸化物半導体の微粉末からなるペーストを塗布し、次いで焼成することにより、多孔質の酸化物半導体膜を形成する。次いで、この酸化物半導体膜上に透明導電膜と対向させて、他方の電極として機能する対極を設ける。
しかしながら、透明導電膜を基板上に設けてなる透明電極用基板に反りが存在すると、この反りが有る部分と無い部分において対向する2つの電極間距離にバラツキが生じる。その結果、太陽電池面内において発生する起電力が場所毎に偏りをもつこととなる。これに加えて、透明導電膜の膜厚ムラに起因する抵抗値のバラツキが重なると、前述した起電力が場所毎に偏りは一段と顕在化する傾向にあった。これは、太陽電池等における初期特性の不安定性や長期信頼性の低下に繋がるので、その対応策の開発が期待されていた。
このような透明電極用基板に関する先行技術文献としては、以下に挙げるものが知られている。
特開平10−53418号公報 特開2000−212514号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、加熱を伴う成膜プロセスにおいて基材に生じる反りを小さく抑えることができ、低抵抗な透明導電膜を基材上に均一に形成することが可能な透明電極用基板の製造装置を提供することを目的とする。
本発明に係る透明電極用基板の製造装置は、基材の被成膜面上に透明導電膜を設けてなる透明電極用基板をスプレー熱分解法を用いて形成する装置であって、
前記透明導電膜の原料溶液をスプレー状に噴射する吐出手段と、前記吐出手段と対向する位置に配され前記基材を載置する支持手段と、前記支持手段に内蔵された温度制御手段と、前記支持手段の上に配設され前記基材の側面に接して基材を支持する保持手段とを、具備したことを特徴としている。
かかる構成によると、透明導電膜の原料溶液を基板に向けてスプレー状に噴射する吐出手段は、基材を載置する支持手段と対向する位置に配されている。基材に対して吐出手段を用いて透明導電膜の原料溶液を噴射させ、所定範囲の領域に原料溶液を飛散させることにより、基材に対して均一な膜厚の透明導電膜を形成を可能とする。前記支持手段に内蔵された温度制御手段は、基材に付着した原料溶液を所定の温度に保持することにより所望の導電特性を有する透明導電膜の形成を促す。
その際、前記支持手段の上に配設され前記基材の側面に接して基材を支持する保持手段は、温度制御手段を用いて加熱・保持・冷却を行い基材の温度制御した際に基材の端部をなす側面を抑えつけることにより、基材の位置ズレ量を抑制する。本発明において基材の位置ズレ量とは、支持手段の面内において基材が横移動して初期値からズレが生じた量、及び、支持手段の面から離れるように基材の一部又は全部が縦移動して初期値からズレが生じた量、を含むものとする。すなわち、後者は基材の反りを意味する。
したがって、本発明によれば、温度制御を伴う成膜プロセスにおいて基材に発生する反りの大きさを抑制することにより、膜厚分布の小さな透明導電膜を基材上に安定して形成可能な透明電極用基板の製造装置が得られる。
前記保持手段が前記基材に対して押圧を加える加圧手段を備えている場合は、保持手段はより強い力で基材を押さえ付けるように働くため、熱的影響を受けて基材に生じる反りを抑制する能力がさらに高まる。ゆえに、加圧手段は基材の反り量の低減に寄与する。
前記保持手段を移動させる誘導手段を備えている場合は、誘導手段を用いることにより、誘導手段の延びる方向に沿って、保持手段を確実に基材に接触させ、基材11を所望の方向に安定して押さえ付けることが可能となる。
前記基材として側面の一部または全部が被成膜面の方向に向く傾斜面Aを備えている基材を用いる場合には、前記保持手段は前記傾斜面Aに対して押圧を加える形態を備えることにより、保持手段は基材の側面を支えると共に基材の側面を支持手段に押し付けるように働く。この構成によれば、基材の端部をなす側面が被成膜面側に反る量をより低減できる。
前記基材として側面の一部または全部が被成膜面とは反対の面の方向に向く傾斜面Bを備えている基材を用いる場合には、前記保持手段が前記傾斜面Bに対して押圧を加える形態を備えることにより、保持手段は基材の側面を支えると共に基材の側面を支持手段から押し上げるように働く。この構成によれば、基材の端部をなす側面が被成膜面とは反対の面側に反る量をより低減できる。
前記基材として側面の一部または全部が被成膜面の方向に向く傾斜面Cと側面の一部または全部が被成膜面とは反対の面の方向に向く傾斜面Dとを備えている基材を用いる場合には、前記保持手段は前記傾斜面Cと前記傾斜面Dに対して押圧を加える形態を備えることにより、保持手段は基材の側面を支えると共に基材の側面を支持手段から押し付ける方向と押し上げる方向の両方に働く。この構成によれば、基材の端部をなす側面が被成膜面側に反りが生じる場合に限らず、被成膜面とは反対の面側に反りが生じる場合であっても、発生した反りの方向に依存せず柔軟に反る量を低減できる。
以上説明したように、本発明に係る透明電極用基板の製造装置は、支持手段の上に配設され基材の側面に接して基材を支持する保持手段を備えたことにより、加熱を伴う成膜プロセスにおいて基材の反り量を小さく抑えることができるので、たとえ大きな面積の基材に対しても、基材の中心領域のみならず、基材の周辺領域においても均一な膜厚の透明導電膜を安定して製造できる。
よって、本発明の製造装置は、厚みの均一な透明導電膜を基材上に備えてなる大面積の基材透明電極用基板が求められている、液晶表示素子や太陽電池に代表される光電変換素子などにおいて、各種特性の面内均一化あるいは高品質化をもたらす。
以下、実施の形態に基づいて本発明を詳しく説明する。
図1は、本発明に係る透明電極用基板の製造装置の一例を示す模式的な断面図であり、基板11の被成膜面11a上に透明導電膜12を設けてなる透明電極用基板10をスプレー熱分解法を用いて形成する装置1であり、(a)は装置の全体図を、(b)は領域αの部分拡大図である。
装置1は、基材11を載置する支持手段20と、透明導電膜12の原料溶液をスプレー状に噴射する吐出手段30と、この吐出手段30と対向する位置に配される基材11を載置する支持手段20とを備えており、支持手段20は、基材11の被成膜面11aを所定の温度に保ちながら透明導電膜12を形成するため、基材11の加熱・保持・冷却機能を備えた温度制御手段21を内蔵している。
したがって、基材に対して吐出手段30を用いて透明導電膜12の原料溶液を噴射させ、所定範囲の領域に原料溶液を飛散させることにより、基材11に対して均一な膜厚の透明導電膜12を形成できる。また、支持手段20には温度制御手段21が内蔵されているので、基材11に付着した原料溶液を所定の温度に保持することにより所望の導電特性を有する透明導電膜12の形成が促進される。
また、装置1の支持手段20上には、基材11と共に基材11を支持する保持手段60が載置されている。基材11の端部11aがもつ側面11bと保持手段60の端部60aがもつ側面60bは、支持手段20と略垂直をなしており、互いに接触するように構成されている。この接触部を備えたことにより、例えば基材11に熱処理が加えられた際に、支持手段20上において基材11はその動きが束縛される。ゆえに、基材11はその水平方向はおろか垂直方向にも抑えられることから、熱処理を伴う成膜中の基材11は支持手段20上において所定の位置に固定される。よって、基材11に対する吐出手段30の相対的な位置関係に不具合が生じるという問題、すなわち、吐出手段30の吐出口31から基材11の方向を見て基材11の被成膜面が横ズレを起こすような問題は解消される。また、基材の側面11bは保持手段の側面60bに接しているので、基材の端部11aはその厚さ方向への動くことも束縛されるので、基材の端部11aにおける反りの発生も低減できる。さらに、図1の装置では、吐出手段30と対向する位置に配される基板11との間の空間40を包み込むようにフード50が配置されている。フード50を設置すると、吐出手段30の吐出口31からスプレー状に噴射された透明導電膜の原料溶液は外気の影響を受けることなくなり、吐出口31から基板11に向かう放射状空間41に噴霧された状態を安定に保つことができるので好ましい。
図2は、本発明に係る透明電極用基板の製造装置の他の一例を示す模式的な部分断面図であり、図1に示した透明電極用基板の製造装置において、保持手段60が基材11に対して押圧を加える加圧手段70を備えている場合を示す。
図2には、加圧手段70として例えばバネ状の弾性体を設けた例を示しているが、加圧手段70は保持手段60を基材11の方向に押さえ付けるように働くものであればよく、バネ状の弾性体に限定されるものではない。例えば、加圧手段70として、保持手段60とフード50との間に大きめの伸縮性を有する部材を挿入しても良いし、あるいは熱が加わった際に伸びる部材などを用いても構わない。
このような構成によれば、保持手段60は単に接する場合と比較して、より強い力で基材11を押さえ付けることが可能になるため、熱的影響を受けて基材11に生じる反りを抑制する能力がさらに高まるので、加圧手段70は基材11の反り量の低減をもたらす。
図3は、本発明に係る透明電極用基板の製造装置の他の一例を示す模式的な部分断面図であり、図1に示した透明電極用基板の製造装置において、保持手段60が基材11に対して押圧を加える加圧手段70とともに、保持手段60を移動させる誘導手段80を備えている場合を示す。
誘導手段80としては、例えばレール状の軌道などが挙げられる。図3は、加圧手段70により保持手段60が基材11の方向に押さえ付けら、保持手段60の下部が誘導手段の一部80aに跨った状態にあることを示している。このような構成によれば、誘導手段80の延びる方向に沿って、保持手段60は確実に基材11に接し、基材11を所望の方向に安定して押さえ付けることが可能となる。
また、保持手段60が誘導手段80から外れて浮き上がることの無いように、図示はしないが、例えば誘導手段80の断面構造を上部が下部に比べて大きくなるように工夫しても構わない。換言すると、誘導手段80が保持手段60の中に組み込まれ、基材11に生じる反りの方向とは異なる方向に噛み合わせ部(不図示)を設けることにより、基材11に発生した反りの影響を受けて保持手段60が浮き上がり、保持手段60の機能が損なわれるのを防止できるので好ましい。
図4は、本発明に係る透明電極用基板の製造装置の他の一例を示す模式的な部分断面図であり、図1に示した透明電極用基板の製造装置において、基材として側面の一部または全部が被成膜面の方向に向く傾斜面Aを備えている基材を用いる場合に好適な保持手段61を示している。
図4において、傾斜面Aとは基材の端部11aをなす側面11bである。保持手段61の端部61aをなす側面61bは、傾斜面Aすなわち側面11bに対して、接して押圧を加えることが可能とされている。その際、図4には示さないが、図2と同様に保持手段61を基材に対して押圧を加える加圧手段や、保持手段61を移動させる誘導手段を更に備えてもよい。
図4に示すように、傾斜面Aとすれば垂直面(図1)に比べて、基材11に対する保持手段61の接触面積を増やすことができるので、基材11を支持する安定性が向上する。
また、傾斜面Aは基材11の被成膜面の方向に向いているので、保持手段61から傾斜面Aに加えられた押圧による力は、基材11の被成膜面と平行な方向に作用すると共に、基材11の被成膜面と垂直な方向でかつ基材11を支持手段20に押しつける方向にも働く。特に、後者の方向に働く力は、基材11の端部11aがこれを載置する支持手段20から離れる向きに反りが生じた場合、この反りを緩和させるために機能する。換言すると、基材11がその断面方向から見て下方に凸状をなすように反りが発生する場合は、保持手段61を用いることにより、基材の側面11bを支えると共に、基材の側面11bを支持手段20に押し付けることが可能となる。
よって、この構成によれば、基材11の端部11aをなす側面11bの支持安定性が改善されると共に、基材11の端部11aが被成膜面と同じ側に反る量の更なる低減も図ることができる。
図5は、本発明に係る透明電極用基板の製造装置の他の一例を示す模式的な部分断面図であり、図1に示した透明電極用基板の製造装置において、基材として側面の一部または全部が被成膜面とは反対の面の方向に向く傾斜面Bを備えている基材を用いる場合に好適な保持手段62を示している。
図5において、傾斜面Bとは基材の端部11aをなす側面11cである。保持手段62の端部62aをなす側面62bは、傾斜面Bすなわち側面11cに対して、接して押圧を加えることが可能とされている。その際、図5には示さないが、図2と同様に保持手段62を基材に対して押圧を加える加圧手段や、保持手段62を移動させる誘導手段を更に備えてもよい。
図5に示すように、傾斜面Bとすれば垂直面(図1)に比べて、基材11に対する保持手段62の接触面積を増やすことができるので、基材11を支持する安定性が向上する。
また、傾斜面Bは基材11の被成膜面とは反対の面の方向に向いているので、保持手段62から傾斜面Bに加えられた押圧による力は、基材11の被成膜面と平行な方向に働くと共に、基材11の被成膜面と垂直な方向でかつ基材11を支持手段20から離す方向にも働く。特に、後者の方向に働く力は、基材11の端部11aがこれを載置する支持手段20と接する向きに反りが生じた場合、この反りを緩和させるために機能する。換言すると、基材11がその断面方向から見て上方に凸状をなすように反りが発生する場合は、保持手段62を用いることにより、基材11の側面11cを支えると共に、基材11の側面11cを支持手段20から引き離すことが可能となる。
よって、この構成によれば、基材11の端部11aをなす側面11cの支持安定性が改善されると共に、基材11の端部11aが被成膜面とは反対側に反る量の更なる低減も図ることができる。
図6は、本発明に係る透明電極用基板の製造装置の他の一例を示す模式的な部分断面図であり、図1に示した透明電極用基板の製造装置において、基材として側面の一部または全部が被成膜面の方向に向く傾斜面Cと側面の一部または全部が被成膜面とは反対の面の方向に向く傾斜面Dとを備えている基材を用いる場合に好適な保持手段62を示している。
図6において、傾斜面Cとは基材の端部11aをなす側面11dであり、傾斜面Dとは、基材の端部11aをなす側面11eである。保持手段63の端部63aをなす側面63bは、傾斜面Cすなわち側面11dに対して、また保持手段63の端部63aをなす側面63cは、傾斜面Dすなわち側面11eに対して、それぞれ接して押圧を加えることが可能とされている。その際、図6には示さないが、図2と同様に保持手段63を基材に対して押圧を加える加圧手段や、保持手段63を移動させる誘導手段を更に備えてもよい。
図6に示すように、傾斜面C及び傾斜面Dとすれば垂直面(図1)に比べて、基材11に対する保持手段62の接触面積を増やすことができるので、基材11を支持する安定性が向上する。
また、図6の傾斜面Cは基材11の被成膜面の方向に向いているので、保持手段63から傾斜面Cに加えられた押圧による力は、基材11の被成膜面と平行な方向に作用すると共に、基材11の被成膜面と垂直な方向でかつ基材11を支持手段20に押しつける方向にも働く。特に、後者の方向に働く力は、基材11の端部11aがこれを載置する支持手段20から離れる向きに反りが生じた場合、この反りを緩和させるために機能する。換言すると、基材11がその断面方向から見て下方に凸状をなすように反りが発生する場合は、保持手段63を用いることにより、基材の側面11dを支えると共に、基材の側面11dを支持手段20に押し付けることが可能となる。
さらに、図6の傾斜面Dは基材11の被成膜面とは反対の面の方向に向いているので、保持手段63から傾斜面Dに加えられた押圧による力は、基材11の被成膜面と平行な方向に働くと共に、基材11の被成膜面と垂直な方向でかつ基材11を支持手段20から離す方向にも働く。特に、後者の方向に働く力は、基材11の端部11aがこれを載置する支持手段20と接する向きに反りが生じた場合、この反りを緩和させるために機能する。換言すると、基材11がその断面方向から見て上方に凸状をなすように反りが発生する場合は、保持手段63を用いることにより、基材11の側面11eを支えると共に、基材11の側面11eを支持手段20から引き離すことが可能となる。
よって、この構成によれば、基材の端部をなす側面が被成膜面側に反りが生じる場合には、基材11の端部11aをなす側面11dが、被成膜面とは反対の面側に反りが生じる場合には、基材11の端部11aをなす側面11eが、それぞれ機能する。ゆえに、図6に示す構成は、基材の端部をなす側面が被成膜面側に反りが生じる場合に限らず、被成膜面とは反対の面側に反りが生じる場合であっても、発生した反りの方向に依存せず柔軟に反る量を低減できる。
図6には、側面dと側面eの長さが等しい例を示したが、異なる長さを持つように設計しても良い。また、一つの基材11において端部aを同じ断面形状にする必要も無く、例えば基材11が四角形をなす場合、一辺の端部aでは側面dが側面eより長く、他の一辺では側面dが側面eより短くなるような形態を採っても構わない。
このように側面dと側面eの長さを異ならせた形態を有する基材11は、複数枚の基材11を組み合わせて支持手段20の上に配置するような場合に特に有効となる。基材11ごとに熱の影響を受ける度合いが異なるためである。具体的には、個々の基材11がどの様に他の基材11と端部において接しているのか、若しくは、自由端をなしているかによる。また、接触した基材の端部が支持手段20の中心付近にあるのか周辺付近に位置するのかを考慮する場合にも、側面dと側面eの長さを異ならせた形態が有効となる。
上述した装置を構成する保持手段60〜63としては、加熱や冷却を伴う成膜プロセスにおいて基材11と近い熱履歴を持つことが可能な材料が選定される。
保持手段60〜63は、異なる熱膨張係数をもつガラス、例えば、無アルカリガラス(熱膨張係数32)とソーダライムガラス(熱膨張係数87)からなる2つの基材11の何れのガラスにも対応できるようにするため、保持手段60〜63を構成する材料は、これら2つの基材11がもつ熱膨張係数の中間的な値の熱膨張係数をもつものが好ましく、その一例としてカーボンセラミック板(熱膨張係数57)が挙げられる。
以上説明したように、本発明は、基材の端部をなす側面を支持する保持手段を設けると共に、基材の側面と保持手段の接触部を傾斜させた形態を採用することにより、加熱を伴う成膜プロセスにおいて基材の反りが小さく、膜厚分布の小さな透明導電膜を基材上に安定して形成できる透明電極用基板の製造装置をもたらす。
また、本発明に係る透明電極用基板の製造装置は、支持手段上に保持手段を設けることにより、支持手段上に基材を取り付けるのに要する時間が半減以下となることから、製造ラインの時間的効率の向上にも寄与する。
本例では、本発明に係る透明電極用基板の製造装置を用い、透明導電膜としてITO膜を形成した場合について詳述する。
ITO膜作製用の原料溶液としては、塩化インジウム(III)四水和物(InCl・4HO、Fw:293.24)0.19Mと塩化スズ(II)二水和物(SnCl・2HO 、Fw:225.65)0.01Mとをエタノール90mlに溶解させたものを用いた。
(実施例1)
図1に示す基材11と垂直な側面で接する保持手段60を備えた透明電極用基板の製造装置を用いて、ITO膜を基材上に形成した(以下、試料Aと呼ぶ)。その際、基材としては、TEMPAX社製のガラス基板(型番:#8330、30cm角、板厚1.1mm)を用いた。吐出手段をなすスプレーの噴出口から基板までの距離は60cmとした。表1に他の設定条件も纏めて示す。温度制御手段21を用い、基板の被成膜面の温度は350℃を保持した。保持手段60としては、虹技社製のセラミック部材(カーボンセラミック板、32cm×5cm、板厚1.1mm)を用いた。その際、基材11と保持手段60の接触面は互いに平滑であり隙間なく密接した状態とした。
Figure 2006019135
(実施例2)
図2に示すように、保持手段60に加圧手段70を設けた点の他は実施例1と同様として、ITO膜を基板上に形成した(以下、試料Bと呼ぶ)。ここで、加圧手段70としてはコイルばねを用い、保持手段60の基板と接する側と反対側の両方にそれぞれ設けた。
(実施例3)
図3に示すように、保持手段60に加圧手段70と誘導手段80を設けた点の他は実施例1と同様として、ITO膜を基板上に形成した(以下、試料Cと呼ぶ)。ここで、加圧手段70としてはコイルばねを用い、保持手段60の基板と接する側と反対側の両方にそれぞれ設けた。また誘導手段80としてはカーボンセラミックスからなる部材を用い、保持手段60の側面に配した。
(比較例1)
保持手段60を設けなかった点の他は実施例1と同様として、ITO膜を基板上に形成した(以下、試料Gと呼ぶ)。
表2は、上述した実施例1〜3および比較例1において作製された各試料の評価結果である。ここで、上段に示す抵抗値[Ω/□]とは得られたITO膜のシート抵抗であり、基材の中心部および四隅の端部(角から0.5cm×0.5cmの地点)について測定した結果である。また、下段に示す距離[mm]とは、支持手段20と基材11の裏面との間隙の大きさである。
Figure 2006019135
表2より、以下の点が明らかとなった。
(21)基材11の側面に保持手段を設けず、基材端部が自由端をなしている場合(比較例1)には、基材11上の場所に依存せず、得られたITO膜は15Ω/□を越える高い抵抗値となる。基材11のサイズが30cm角、板厚1.1mm程度の場合、加熱により基材中心が成膜面側に凸状をなすように反りが生じる。その際、基材中心において、支持手段20と基材11の裏面との間隙は板厚の3倍を越えるような大きさになった。
(22)基材11の側面を支える保持手段60を設けた場合(実施例1)には、少なくとも基材11のうち四隅の端部において抵抗値の低いITO膜が得られるが、基材中心では抵抗値はあまり低減しない。加熱により基材中心が成膜面側に凸状をなすように反りが生じる傾向は改善は見られる。しかし、基材中心において、支持手段20と基材11の裏面との間隙はまた板厚の2倍程度ある。
(23)保持手段60に加圧手段70を設けた場合(実施例2)には、保持手段60の側面が基材11の側面を押し付けて支えることが可能となり、基材中心はやや凸状をなすものの、その間隙は0.5mm程度であり大幅に低減する。この反りの低減は、得られたITO膜の抵抗値のバラツキを抑えることに寄与し、基材中心の抵抗値を基材のうち四隅の端部と同程度の抵抗値に低減することが可能となる。
(24)保持手段60に加圧手段70と誘導手段80を設けた場合(実施例3)には、基材11に反りが生じることで、保持手段60が浮く上がるのを誘導手段80が押さえ付けることが可能となる。その結果、基材11の全面に渡って抵抗値の低いITO膜が得られると共に、基材11の反りも0.2mmより小さな範囲に抑制できる。
(実施例4)
図5に示すように、側面の一部または全部が被成膜面とは反対の面の方向に向く傾斜面Bを備えた基材11と、この傾斜面Bに接する側面形状を備えた保持手段62とを用いた点の他は実施例1と同様として、ITO膜を基板上に形成した(以下、試料Dと呼ぶ)。ただし、基材11として実施例1と同じ面積を有するもの(30cm角、板厚1.1mm)を用いた。
(実施例5)
図4に示すように、側面の一部または全部が被成膜面の方向に向く傾斜面Aを備えた基材11と、この傾斜面Aに接する側面形状を備えた保持手段61とを用いた点の他は実施例1と同様として、ITO膜を基板上に形成した(以下、試料Eと呼ぶ)。ただし、基材11として実施例1の4倍角の面積を有するもの(60cm角、板厚1.1mm)を用いた。
(実施例6)
図6に示すように、側面の一部または全部が被成膜面の方向に向く傾斜面Cと側面の一部または全部が被成膜面とは反対の面の方向に向く傾斜面Dとを備えた基材11と、これらの傾斜面Cおよび傾斜面Dに接する側面形状を備えた保持手段63とを用いた点の他は実施例1と同様として、ITO膜を基板上に形成した(以下、試料Fと呼ぶ)。ただし、基材11として実施例1の4倍角の面積を有するもの(60cm角、板厚1.1mm)を用いた。
(比較例2)
保持手段60を設けなかった点の他は実施例1と同様として、ITO膜を基板上に形成した(以下、試料Hと呼ぶ)。ただし、基材11として実施例1の4倍角の面積を有するもの(60cm角、板厚1.1mm)を用いた。
表3は、上述した実施例4〜6および比較例2において作製された各試料の評価結果である。また表3には参考まで、比較例1の結果も掲載した。なお、上段に示す抵抗値[Ω/□]とは得られたITO膜のシート抵抗であり、基材の中心部および四隅の端部(角から0.5cm×0.5cmの地点)について測定した結果である。また、下段に示す距離[mm]とは、支持手段20と基材11の裏面との間隙の大きさである。
Figure 2006019135
表3より、以下の点が明らかとなった。
(31)基材11のサイズによって反りの発生が異なる。小面積(30cm角)の場合には基材の中央部が被成膜面側に凸状をなす(比較例1)のに対して、大面積(60cm角)の場合には中央部が被成膜面に凹状をなす(比較例2)ことが分かった。同じ板厚の基材11でもその面積が大きくなると、基材11を加熱した場合、基材11は自重によりその中央部が支持手段20に接触した状態を保ち、基材11の端部は支持手段20から離れて上方に反る傾向が確認された(比較例2)。これは、基材11の面積が比較的小さな場合(比較例1)とは逆の傾向であった。
(32)基材の中央部が被成膜面側に凸状をなす小面積(30cm角)の場合には、基材の端部を下方から支え、基材を上方へ押し出すように作用する傾斜面Bを備えることにより、基材11の中央部における反りを更に小さくできる。その結果、基材11の全面に渡って抵抗値の低いITO膜が得られると共に、基材11の反りも0.1mmより小さな範囲に抑制できる。
(33)基材の中央部が被成膜面側に凹状をなす大面積(60cm角)の場合には、基材の端部を上方から支えて、基材を下方に押し出すように作用する傾斜面Aを備えることにより、基材11の端部が被成膜面側に反るという現象を抑えることができる。その結果、大面積(60cm角)の基材11においても、その全面に渡って抵抗値の低いITO膜が得られると共に、基材11の反りを比較的小さな範囲(0.3mm以下)に抑制できる。
(34)基材の中央部が被成膜面側に凹状をなす大面積(60cm角)の場合には、基材の端部を上方および下方から支える傾斜面Cと傾斜面Dを備えることにより、基材11の端部で生じる反りを更に抑えることができる。その結果、大面積(60cm角)の基材11においても、その全面に渡って抵抗値の低いITO膜が得られると共に、基材11の反りも0.1mmより小さな範囲に抑制できる。
以上の結果より、(イ)基材の側面と接する保持手段を設けること、(ロ)加圧手段により保持手段を基材の側面に押しつけること、(ハ)誘導手段により保持手段の浮き上がりを抑えること、(ニ)傾斜面Aにより基材の側面を上方からも支持すること、(ホ)傾斜面Bにより基材の側面を下方からも支持すること、(ヘ)傾斜面CとDにより基材の側面を上方および下方の両方から支持することが、ITO膜の低抵抗化や反りの抑制に寄与することが分かった。
本発明によれば、基材の側面形状に応じた保持手段を備えることにより、基材の面積サイズに依存せず、加熱を伴う成膜プロセスにおいて基材に生じる反りを小さく抑えることが可能であると共に、低抵抗な透明導電膜を基材上に均一に形成することも可能な透明電極用基板の製造装置を提供することができる。ゆえに、本発明に係る製造装置は、デバイスの大面積化や製造コストの削減が強く求められている液晶表示素子や太陽電池に代表される光電変換素子などにおいて、透明電極として機能する透明導電膜の作製に貢献するものである。
本発明に係る装置例を示す断面図である。 本発明に係る他の装置例を示す断面図である。 本発明に係る他の装置例を示す断面図である。 本発明に係る他の装置例を示す断面図である。 本発明に係る他の装置例を示す断面図である。 本発明に係る他の装置例を示す断面図である。 従来の装置例を示す断面図である。
符号の説明
1、100 製造装置、10、110 透明電極用基板、11、111 基材、12、112 透明導電膜、20、120 支持手段、21、121 温度制御手段、30、130 吐出手段、40、140 空間、50、150 フード、60〜63 保持手段、70 加圧手段、80 誘導手段。

Claims (6)

  1. 基材の被成膜面上に透明導電膜を設けてなる透明電極用基板をスプレー熱分解法を用いて形成する装置であって、
    前記透明導電膜の原料溶液をスプレー状に噴射する吐出手段と、前記吐出手段と対向する位置に配され前記基材を載置する支持手段と、前記支持手段に内蔵された温度制御手段と、前記支持手段の上に配設され前記基材の側面に接して基材を支持する保持手段とを、具備したことを特徴とする透明電極用基板の製造装置。
  2. 前記保持手段は、前記基材に対して押圧を加える加圧手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の透明電極用基板の製造装置。
  3. 前記保持手段を移動させる誘導手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の透明電極用基板の製造装置。
  4. 前記基材として側面の一部または全部が被成膜面の方向に向く傾斜面Aを備えている基材を用いる場合には、前記保持手段は前記傾斜面Aに対して押圧を加える形態を備えていることを特徴とする請求項1に記載の透明電極用基板の製造装置。
  5. 前記基材として側面の一部または全部が被成膜面とは反対の面の方向に向く傾斜面Bを備えている基材を用いる場合には、前記保持手段は前記傾斜面Bに対して押圧を加える形態を備えていることを特徴とする請求項1に記載の透明電極用基板の製造装置。
  6. 前記基材として側面の一部または全部が被成膜面の方向に向く傾斜面Cと側面の一部または全部が被成膜面とは反対の面の方向に向く傾斜面Dとを備えている基材を用いる場合には、前記保持手段は前記傾斜面Cと前記傾斜面Dに対して押圧を加える形態を備えていることを特徴とする請求項1に記載の透明電極用基板の製造装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2008117605A1 (ja) * 2007-03-23 2008-10-02 Hamamatsu Foundation For Science And Technology Promotion 大面積透明導電膜およびその製造方法

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