JP2006016619A - エポキシ樹脂組成物、プリプレグ、樹脂付き金属箔、接着シート及び積層板 - Google Patents

エポキシ樹脂組成物、プリプレグ、樹脂付き金属箔、接着シート及び積層板 Download PDF

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Abstract

【課題】
ハロゲンを含有せずに優れた難燃性を示す硬化物が得られ、半硬化したものの保存安定性を向上させたエポキシ樹脂組成物、このエポキシ樹脂組成物を用いたプリプレグ、樹脂付き金属箔及び接着シート、積層板を提供する。
【解決手段】
特定の有機リン化合物の少なくとも一方とエポキシ樹脂とを反応させて得られるリン含有エポキシ樹脂と、硬化剤と、無機粉末充填材とを含有してなるエポキシ樹脂組成物であって、リン含有エポキシ樹脂中のリン含有比率が0.5〜4.0重量%であり、エポキシ樹脂組成物の全固形分中の無機粉末充填材の含有比率が20〜60重量%であるエポキシ樹脂組成物。このエポキシ樹脂組成物を用いたプリプレグ、樹脂付き金属箔及び接着シート。このプリプレグ、樹脂付き金属箔又は接着シートを用いた積層板。

Description

本発明は、電子部品等の製造に使用される成形材、封止材、注型材、接着剤、塗料等に用いられるエポキシ樹脂組成物、このエポキシ樹脂組成物を用いたプリプレグ、樹脂付き金属箔及び接着シート並びに前記プリプレグ、樹脂付き金属箔及び接着シートのうち少なくとも一種のものが積層成形されてなる積層板に関するものである。
エポキシ樹脂組成物は、接着性、電気絶縁性、耐薬品性等に優れていることから、プリント配線板用の材料や、半導体封止材等の電子部品用途で広範囲に使用されている。このような用途にエポキシ樹脂組成物を使用する場合には、火災に対する安全性確保のため、難燃性を備えることが要求される。そこで、従来は、臭素化エポキシ樹脂等のハロゲン化物をエポキシ樹脂組成物中に含有させることが行われている。
しかしながら、このようなエポキシ樹脂組成物の硬化物は、燃焼時において、人体や自然環境に対し悪影響を及ぼすハロゲン含有成分を生成することが問題視されるようになり、ハロゲンを含有せずに優れた難燃性を示すエポキシ樹脂組成物の開発が広くおこなわれている。ハロゲンを含有することなく、優れた難燃性を付与することができるものとして、リン含有エポキシ樹脂が注目を集めている。例えば、リン含有エポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物が、特開平11−279258号公報等に記載されている。
特開平11−279258号公報
しかしながら、このようなリン含有エポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物を半硬化(Bステージ化)して作製したプリプレグ、樹脂付き金属箔、接着シート等は、保存安定性に問題があり、その改善が求められている。プリプレグ、樹脂付き金属箔、接着シート等の保存安定性が悪いと、積層板とするための積層成形の際の成形性が悪くなり、得られる積層板にボイド等が発生し歩留まりが悪くなるという問題が生じる。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、有害物質生成の原因となるハロゲンを含有せずに優れた難燃性を示す硬化物が得られると共に、半硬化(Bステージ化)したものの保存安定性を向上させたエポキシ樹脂組成物、このエポキシ樹脂組成物を用いたプリプレグ、樹脂付き金属箔及び接着シート並びに前記プリプレグ、樹脂付き金属箔及び接着シートのうち少なくとも一種のものが積層成形されてなる積層板を提供することを目的とするものである。
発明者等は、エポキシ樹脂組成物を半硬化(Bステージ化)したものの保存安定性を改良する手段について、各種の検討を行ったところ、無機粉末充填材を特定の割合で含有させることが有効であることを見出し、本発明に至ったものである。
請求項1に係る発明のエポキシ樹脂組成物は、下記式(1)又は式(2)で表される有機リン化合物の少なくとも一方とエポキシ樹脂とを反応させて得られるリン含有エポキシ樹脂と、硬化剤と、無機粉末充填材とを含有してなるエポキシ樹脂組成物であって、前記リン含有エポキシ樹脂中のリン含有比率が0.5〜4.0重量%であり、エポキシ樹脂組成物の全固形分中の無機粉末充填材の含有比率が20〜60重量%であるエポキシ樹脂組成物である。
Figure 2006016619
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請求項2に係る発明のエポキシ樹脂組成物は、下記式(5)で表される有機リン化合物とエポキシ樹脂とを反応させて得られるリン含有エポキシ樹脂と、硬化剤と、無機粉末充填材とを含有してなるエポキシ樹脂組成物であって、前記リン含有エポキシ樹脂中のリン含有比率が0.5〜4.0重量%であり、エポキシ樹脂組成物の全固形分中の無機粉末充填材の含有比率が20〜60重量%であるエポキシ樹脂組成物である。
Figure 2006016619
請求項3に係る発明のエポキシ樹脂組成物は、式(1)、式(2)又は式(5)で表される有機リン化合物と反応させるエポキシ樹脂が、ノボラック型エポキシ樹脂を20重量%以上含有していることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のエポキシ樹脂組成物である。
請求項4に係る発明のエポキシ樹脂組成物は、無機粉末充填材が、炭酸カルシウム、シリカ、カオリン、焼成カオリン、クレー、焼成クレー、タルク、焼成タルク、ハイドロタルサイト、ワラストナイト、金属水酸化物、金属酸化物、ガラス粉末、シリカバルーン又はシラスバルーンの少なくとも何れかである請求項1から請求項3までの何れかに記載のエポキシ樹脂組成物である。
請求項5に係る発明のエポキシ樹脂組成物は、無機粉末充填材が、カオリン、焼成カオリン、タルク、焼成タルク又は水酸化アルミの少なくとも何れかである請求項1から請求項3までの何れかに記載のエポキシ樹脂組成物である。
請求項6に係る発明のエポキシ樹脂組成物は、前記ノボラック型エポキシ樹脂が、フェノールノボラック型エポキシ樹脂又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂である請求項1から請求項5までの何れかに記載のエポキシ樹脂組成物である。
請求項7に係る発明のプリプレグは、請求項1〜請求項6の何れかに記載のエポキシ樹脂組成物をシート状基材に含浸・乾燥してなるプリプレグである。
請求項8に係る発明のエポキシ樹脂組成物は、請求項1〜請求項6の何れかに記載のエポキシ樹脂組成物を金属箔に塗布・乾燥してなる樹脂付き金属箔である。
請求項9に係る発明の接着シートは、請求項1〜請求項6の何れかに記載のエポキシ樹脂組成物をシート状に形成してなる接着シートである。
請求項10に係る発明の積層板は、請求項7に記載のプリプレグ、請求項8に記載の樹脂付き金属箔又は請求項9に記載の接着シートのうち少なくとも一種のものが積層成形されてなる積層板である。
請求項1から請求項6に係る発明のエポキシ樹脂組成物は、式(1)又は式(2)で表される有機リン化合物の少なくとも一方と、エポキシ樹脂とを反応させて得られるリン含有エポキシ樹脂と、硬化剤と、無機粉末充填材とを含有してなるエポキシ樹脂組成物であって、リン含有エポキシ樹脂中のリン含有比率が0.5〜4.0重量%であり、エポキシ樹脂組成物の全固形分中の無機粉末充填材の含有比率が20〜60重量%であるエポキシ樹脂組成物であるので、請求項1から請求項6に係る発明のエポキシ樹脂組成物を用いると、有害物質生成の原因となるハロゲンを含有せずに優れた難燃性を示す積層板であって、ピール強度や耐熱性が優れている積層板を得ることができ、且つ保存安定性が良好なプリプレグ、樹脂付き銅箔及び接着シートを製造することが可能となる。なお、プリプレグ、樹脂付き銅箔や接着シートの保存安定性が良好であると、それらを保存したことによるボイド等の成形不良が防止され、歩留まりが悪くなるという問題が防止される。
請求項5に係る発明のエポキシ樹脂組成物では、無機粉末充填材として、カオリン、焼成カオリン、タルク、焼成タルク又は水酸化アルミの少なくとも何れかの無機粉末充填材を使用しているので、上記の請求項1から請求項6に係る発明のエポキシ樹脂組成物の効果に加えて、吸湿耐熱性がより優れている積層板を得ることができるという効果も奏する。
請求項7に係る発明のプリプレグは、請求項1〜請求項6の何れかに記載のエポキシ樹脂組成物をシート状基材に含浸・乾燥してなるプリプレグであるので、保存安定性が良好なプリプレグであって、有害物質生成の原因となるハロゲンを含有せずに優れた難燃性を示し、且つピール強度や耐熱性が優れている積層板を得ることが可能なプリプレグとなる。
請求項8に係る発明の樹脂付き金属箔は、請求項1〜請求項6の何れかに記載のエポキシ樹脂組成物を金属箔に塗布・乾燥してなる樹脂付き金属箔であるので、保存安定性が良好な樹脂付き金属箔であって、有害物質生成の原因となるハロゲンを含有せずに優れた難燃性を示し、且つピール強度や耐熱性が優れている積層板を得ることが可能な樹脂付き金属箔となる。
請求項9に係る発明の接着シートは、請求項1〜請求項6の何れかに記載のエポキシ樹脂組成物をシート状に形成してなる接着シートであるので、保存安定性が良好な接着シートであって、有害物質生成の原因となるハロゲンを含有せずに優れた難燃性を示し、且つピール強度や耐熱性が優れている積層板を得ることが可能な接着シートとなる。
請求項10に係る発明の積層板は、請求項7に記載のプリプレグ、請求項8に記載の樹脂付き金属箔又は請求項9に記載の接着シートのうち少なくとも一種のものが積層成形されてなる積層板であるので、原材料として使用するプリプレグ、樹脂付き銅箔又は接着シートを長時間保存した後でも、ボイド等の成形不良が発生しにくい積層板であって、有害物質生成の原因となるハロゲンを含有せずに優れた難燃性を示し、且つ接着性や耐熱性が優れている積層板となる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明におけるリン含有エポキシ樹脂は、式(1)、式(2)又は式(5)で表される有機リン化合物とエポキシ樹脂とから合成されるものである。このエポキシ樹脂としては、分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物であればよいが、エポキシ樹脂全量中にノボラック型エポキシ樹脂を20重量%以上含有すると得られる硬化物の耐熱性、特にガラス転移温度が優れたものとなるので好ましい。また、ノボラック型エポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂であることが、得られる硬化物の耐熱性が優れたものとなり、且つ、入手安定性に優れるので好ましい。
式(1)、式(2)で表される有機リン化合物は、式(1)や式(2)中の置換基X、X’の部分が水素原子である化合物を出発物質として、このものとキノン類とをそれぞれ反応させることによって合成することができる。例えば、式(1)中のR1〜R8及び置換基Xが全て水素原子である化合物(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド:以下では化合物Aと表す。)と、1,4−ナフトキノンとを反応させると、式(5)で表される有機リン化合物を合成することができる。従って、式(5)は、式(1)で表される有機リン化合物の具体例である。
また他の具体例としては、式(2)中のR’1〜R’10及び置換基X’が全て水素原子である化合物は、ジフェニルホスフィンオキシド(以下ではDPPOと表す。)であり、このものとキノン類とを反応させたものが挙げられる。
式(1)、式(2)で表される有機リン化合物の合成に用いられるキノン類としては、上述した1,4−ナフトキノンの他に、1,4−ベンゾキノン、1,2−ベンゾキノン、トルキノン等も用いることができる。
そして、上述した式(1)、式(2)、式(5)で表される有機リン化合物とエポキシ樹脂とからリン含有エポキシ樹脂を合成することは、特開平11−279258号公報に示されるような方法で行うことができる。なお、反応温度は100〜200℃、好ましくは120〜180℃であって、上記の混合物を反応容器中で攪拌し反応させるものである。なお、この反応の速度が遅い場合、必要に応じて触媒を添加することができる。具体的には、ベンジルジメチルアミン等の第三級アミン類、テトラメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩類、トリフェニルホスフィン、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン等のホスフィン類、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド等のホスホニウム塩類、2−メチルイミダゾール、2−エチル4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類等が使用可能である。
本発明では、リン含有エポキシ樹脂中のリン含有比率を0.5〜4.0重量%の範囲内に特定している。リン含有比率が0.5重量%未満では、十分な難燃性を確保することが困難であり、4.0重量%を越えると、得られる硬化物の耐熱性が悪化するという問題が生じるからである。
本発明では、エポキシ樹脂組成物中に必須成分として、上記のリン含有エポキシ樹脂以外に、硬化剤と、無機粉末充填材とを含有する。この硬化剤としては、各種フェノール樹脂類、酸無水物類、アミン類、ヒドラジド類、ジシアンジアミド等、エポキシ樹脂の硬化剤として使用されるものであれば特に限定されるものではないが、エポキシ樹脂組成物を半硬化(Bステージ化)したものの保存安定性を良好なものとするには、ジシアンジアミドを使用することが好ましい。これらの硬化剤は1種を単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもいずれでもよい。また、本発明では、硬化促進剤を用いることができ、例えば、ベンジルジメチルアミン等の第三級アミン類、テトラメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩類、トリフェニルホスフィン、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン等のホスフィン類、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド等のホスホニウム塩類、2−メチルイミダゾール、2−エチル4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類等が使用可能である。
また、本発明では、エポキシ樹脂組成物中に必須成分として、無機粉末充填材を含有する。そして、エポキシ樹脂組成物の全固形分中の無機粉末充填材の含有比率が20〜60重量%であることが、本発明では重要である。無機粉末充填材の含有比率が20重量%未満では、エポキシ樹脂組成物を半硬化(Bステージ化)したものの保存安定性の改良が不充分となり、また、60重量%を越えると、複合材を形成するためのエポキシ樹脂組成物にとって重要な特性である接着性が悪化するという問題が生じるからである。
本発明で使用する無機粉末充填材としては、炭酸カルシウム、シリカ、カオリン、焼成カオリン、クレー、焼成クレー、タルク、焼成タルク、ハイドロタルサイト、ワラストナイト、金属水酸化物、金属酸化物、ガラス粉末、シリカバルーン、シラスバルーン等を例示できる。これらの無機粉末充填材は1種を単独で使用しても、2種以上を混合して使用しても何れでも良い。これらの無機粉末充填材の中で、特にカオリン、焼成カオリン、タルク、焼成タルク又は水酸化アルミを用いると、得られる積層板の吸湿耐熱性が優れたものとなるので、より好ましい。
本発明では、エポキシ樹脂組成物中に有機溶剤を配合・混合することにより、樹脂ワニスとすることができる。有機溶剤としては特に限定されるものではないが、例えば、ジメチルホルムアミド等のアミド類、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類等を挙げることができる。このようにして得られた樹脂ワニスは、以下に述べるプリプレグ、樹脂付き金属箔及び接着シート等の製造に用いることができる。
まず、プリプレグについて説明する。本発明のプリプレグは、上述した樹脂ワニスをシート状基材に含浸させた後、例えば100〜200℃で1〜40分間加熱乾燥し、樹脂成分を半硬化(Bステージ化)させて製造することができる。この場合のシート状基材としては、特に限定されるものではないが、例えば、ガラス等の無機質繊維の織布又は不織布、ポリエステル、ポリアミド等の有機質繊維の織布又は不織布等を用いることができる。
次に、樹脂付き金属箔について説明する。本発明の樹脂付き金属箔の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、上述した樹脂ワニスを金属箔の片面にロールコータ等を用いて塗布した後、100〜200℃で1〜40分間加熱乾燥し、樹脂成分を半硬化(Bステージ化)させて製造することができる。この場合の金属箔としては、特に限定されるものではないが、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル等の金属箔や、これらの金属と他の金属との合金からなる金属箔を用いることができる。ここで、樹脂付き金属箔の樹脂部分の厚みは、特に限定するものではないが、5〜80μmとすることが好ましい。
次に、接着シートについて説明する。本発明の接着シートの製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、一般にキャスティング法と呼ばれる方法に基づいて行われるものである。すなわち、上述した樹脂ワニスをキャリアフィルム上に例えば5〜100μm程度の厚みとなるように塗布した後、100〜200℃で1〜40分間加熱乾燥し、樹脂成分を半硬化(Bステージ化)させてシート状に形成して製造することができる。この場合のキャリアフィルムとしては、樹脂ワニスに溶解しないものであれば特に限定はなく、例えば、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等を用いることができる。ここで、接着シートの厚みは、特に限定するものではないが、5〜80μmとすることが好ましい。
次に、積層板について説明する。上記のようにして得られたプリプレグ、樹脂付き金属箔又は接着シートのうちの少なくとも1種のものを1枚又は2枚以上重ねて積層物を形成する。次いで、この積層物の片面又は両面に金属箔を配置させる。なお、樹脂付き金属箔で積層物を形成する場合には、この樹脂付き金属箔の金属箔が積層物の片面又は両面を形成するように配置する。その後、この積層物を金属箔と共に加熱・加圧して積層一体化させることによって積層板を得ることができる。なお、加熱・加圧の条件は、エポキシ樹脂組成物が硬化する条件であれば特に限定はなく、例えば、温度を160〜220℃、圧力を0.5〜5.0MPa、加熱・加圧時間を40〜240分間に設定することができる。
さらに、以上説明したプリプレグ、樹脂付き金属箔、接着シート、積層板を原材料として用いて多層板(内層回路入り積層板)を製造することができる。
以下、本発明を実施例及び比較例によって具体的に説明する。
まず、合成例1〜9の9種のリン含有エポキシ樹脂を、表1に示す原料の配合量で合成した。また、同表には合成して得られたリン含有エポキシ樹脂のエポキシ当量とリン含有量(重量%)も示している。そして、合成例1〜9について、その操作手順を以下に示す。
(合成例1)
攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた四つ口のガラスセパラブルフラスコに化合物A(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド)を41.9重量部、トルエンを400重量部仕込み、化合物Aを加熱して溶解させた。その後、反応熱に注意して1,4−ナフトキノン(以下1,4−NQと表す。)28.5重量部を少しずつ投入した。反応終了後、フェノールノボラックエポキシ樹脂として、東都化成社製「YDPN−638」を930.0重量部仕込み、窒素ガスを導入しながら攪拌し、120℃まで加熱して溶解させた。さらにトリフェニルホスフィンを0.25重量部添加して、150℃で4時間反応させた。反応終了後、トルエンを減圧除去してリン含有エポキシ樹脂を得た。得られたリン含有エポキシ樹脂のエポキシ当量は210、リン含有量は0.6重量%であった。
(合成例2)
攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた四つ口のガラスセパラブルフラスコに化合物Aを160.5重量部、トルエンを400重量部仕込み、化合物Aを加熱して溶解させた。その後、反応熱に注意して1,4−NQ109.0重量部を少しずつ投入した。反応終了後、フェノールノボラックエポキシ樹脂として、東都化成社製「YDPN−638」を730.0重量部仕込み、窒素ガスを導入しながら攪拌し、120℃まで加熱して溶解させた。さらにトリフェニルホスフィンを0.25重量部添加して、150℃で4時間反応させた。反応終了後、トルエンを減圧除去してリン含有エポキシ樹脂を得た。得られたリン含有エポキシ樹脂のエポキシ当量は385、リン含有量は2.2重量%であった。
(合成例3)
攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた四つ口のガラスセパラブルフラスコに化合物Aを209.4重量部、トルエンを400重量部仕込み、化合物Aを加熱して溶解させた。その後、反応熱に注意して1,4−NQ142.5重量部を少しずつ投入した。反応終了後、フェノールノボラックエポキシ樹脂として、東都化成社製「YDPN−638」を650.0重量部仕込み、窒素ガスを導入しながら攪拌し、120℃まで加熱して溶解させた。さらにトリフェニルホスフィンを0.25重量部添加して、150℃で4時間反応させた。反応終了後、トルエンを減圧除去してリン含有エポキシ樹脂を得た。得られたリン含有エポキシ樹脂のエポキシ当量は580、リン含有量は3.0重量%であった。
(合成例4)
攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた四つ口のガラスセパラブルフラスコに化合物Aを125.5重量部、トルエンを400重量部仕込み、化合物Aを加熱して溶解させた。その後、反応熱に注意して1,4−NQ85.5重量部を少しずつ投入した。反応終了後、ビスフェノールA型エポキシ樹脂として、東都化成社製「YD−128」を790.0重量部仕込み、窒素ガスを導入しながら攪拌し、120℃まで加熱して溶解させた。さらにトリフェニルホスフィンを0.25重量部添加して、150℃で4時間反応させた。反応終了後、トルエンを減圧除去してリン含有エポキシ樹脂を得た。得られたリン含有エポキシ樹脂のエポキシ当量は330、リン含有量は1.7重量%であった。
(合成例5)
攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた四つ口のガラスセパラブルフラスコに化合物Aを153.5重量部、トルエンを400重量部仕込み、化合物Aを加熱して溶解させた。その後、反応熱に注意して1,4−NQ104.5重量部を少しずつ投入した。反応終了後、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂として、東都化成社製「YDCN−701」を750.0重量部仕込み、窒素ガスを導入しながら攪拌し、120℃まで加熱して溶解させた。さらにトリフェニルホスフィンを0.25重量部添加して、150℃で4時間反応させた。反応終了後、トルエンを減圧除去してリン含有エポキシ樹脂を得た。得られたリン含有エポキシ樹脂のエポキシ当量は455、リン含有量は2.2重量%であった。
(合成例6)
攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた四つ口のガラスセパラブルフラスコに化合物Aを140.0重量部、トルエンを400重量部仕込み、化合物Aを加熱して溶解させた。その後、反応熱に注意して1,4−NQ95.0重量部を少しずつ投入した。反応終了後、フェノールノボラックエポキシ樹脂[東都化成社製「YDPN−638」]を390.0重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂[東都化成社製「YD−128」]を370.0重量部仕込み、窒素ガスを導入しながら攪拌し、120℃まで加熱して溶解させた。さらにトリフェニルホスフィンを0.25重量部添加して、150℃で4時間反応させた。反応終了後、トルエンを減圧除去してリン含有エポキシ樹脂を得た。得られたリン含有エポキシ樹脂のエポキシ当量は340、リン含有量は1.9重量%であった。
(合成例7)
攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた四つ口のガラスセパラブルフラスコにDPPO(ジフェニルホスフィンオキシド)を124.0重量部、トルエンを400重量部仕込み、DPPOを加熱して溶解させた。その後、反応熱に注意して1,4−NQ90.0重量部を少しずつ投入した。反応終了後、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂として、東都化成社製「YDCN−701」を790.0重量部仕込み、窒素ガスを導入しながら攪拌し、120℃まで加熱して溶解させた。さらにトリフェニルホスフィンを0.25重量部添加して、150℃で4時間反応させた。反応終了後、トルエンを減圧除去してリン含有エポキシ樹脂を得た。得られたリン含有エポキシ樹脂のエポキシ当量は390、リン含有量は1.8重量%であった。
(合成例8)
攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた四つ口のガラスセパラブルフラスコに化合物Aを160.5重量部、トルエンを400重量部仕込み、化合物Aを加熱して溶解させた。その後、反応熱に注意して1,4−ベンゾキノン(以下1,4−BQと表す。)75.0重量部を少しずつ投入した。反応終了後、フェノールノボラックエポキシ樹脂として、東都化成社製「YDPN−638」を770.0重量部仕込み、窒素ガスを導入しながら攪拌し、120℃まで加熱して溶解させた。さらにトリフェニルホスフィンを0.25重量部添加して、150℃で4時間反応させた。反応終了後、トルエンを減圧除去してリン含有エポキシ樹脂を得た。得られたリン含有エポキシ樹脂のエポキシ当量は360、リン含有量は2.2重量%であった。
(合成例9)
攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入装置を備えた四つ口のガラスセパラブルフラスコに化合物Aを21.0重量部、トルエンを400重量部仕込み、化合物Aを加熱して溶解させた。その後、反応熱に注意して1,4−NQ14.0重量部を少しずつ投入した。反応終了後、フェノールノボラックエポキシ樹脂として、東都化成社製「YDPN−638」を970.0重量部仕込み、窒素ガスを導入しながら攪拌し、120℃まで加熱して溶解させた。さらにトリフェニルホスフィンを0.25重量部添加して、150℃で4時間反応させた。反応終了後、トルエンを減圧除去してリン含有エポキシ樹脂を得た。得られたリン含有エポキシ樹脂のエポキシ当量は195、リン含有量は0.3重量%であった。
Figure 2006016619
次に、上記のようにして得たリン含有エポキシ樹脂を用いて、表2〜表6に示す組成を有する樹脂ワニス(エポキシ樹脂組成物)を調製した。なお、表2〜表6に示す硬化剤Dicyはジシアンジアミドを表し、硬化剤PSM4357は群栄化学社製のフェノールノボラック樹脂を表している。タルクは富士タルク工業社製の品番PKP−53を使用し、焼成タルクは富士タルク工業社製の品番LMS−100を800℃で焼成したものを使用し、水酸化アルミは住友化学工業社製の品番CL−310を使用し、カオリンは富士タルク工業社製の品番ASP−07を使用し、焼成カオリンは富士タルク工業社製の商品名「SATINTONE No5」を使用し、アルミナは住友化学工業社製の品番AL−41を使用し、ガラス粉末は日本フリット社製の品番GF−2−10を使用し、ハイドロタルサイトは協和化学工業社製の品番DHT−4Aを使用し、ワラストナイトはキンセイマテック社製の品番FPW800を使用した。
そして、この樹脂ワニスをガラスクロス(日東紡績社製、7628タイプ)に含浸させた後、155℃で5分間加熱して乾燥し、プリプレグを得た。得られたプリプレグを5枚積層し、その両側に厚み18μmの銅箔を配置して積層物とした。次いで、この積層物を170℃、3.9MPaの条件で120分間、加熱・加圧成形することにより、両面銅張の積層板を作製した。以上のようにして得られたプリプレグ及び両面銅張の積層板について、特性を下記の方法で評価し、その結果を表2〜表6に示した。
(プリプレグの3日後溶融粘度変化度)
各実施例及び各比較例の半硬化物をフローテスターを用い130℃における最低溶融粘度を、以下でいう溶融粘度として測定した。初期のプリプレグの溶融粘度と40℃±3℃の恒温槽に3日間保管後のプリプレグの溶融粘度を測定し、各測定結果について下記式で計算した。
溶融粘度の変化度(倍)=3日保管後の溶融粘度/初期の溶融粘度
(吸湿耐熱性)
各実施例及び各比較例の積層板を5cm角に切断し、121℃−2気圧の飽和水蒸気圧下で2時間吸湿を行い、次いで260℃±5℃の半田槽に吸湿処理を行った積層板を30秒間投入しフクレの発生について確認した。得られた結果を下記の表現で表2〜表6に示した。
レベル1:フクレの発生がなく、且つガラスクロス面のミーズリングが認められない状態(合格のレベル)。
レベル2:ガラスクロス面へのミーズリングが認められるが、フクレの発生はない状態(合格レベル)。
レベル3:フクレが発生している状態(不合格レベル)。
(難燃性評価)
各実施例及各比較例の積層板に対し全面エッチングを行って銅箔を除去したものを試験片とし、UL94−1993 20mm垂直試験方法記載の方法に従い難燃性評価をおこなった。合格した難燃性レベルを表2〜表6に示した。
(銅箔ピール強度)
JIS−6481 No5.7に準拠して測定し、結果を表2〜表6に示した。
(ガラス転移温度)
各実施例及各比較例の積層板に対し全面エッチングを行って銅箔を除去したものを試験片とし、DSCによりJIS‐7121-1987に準拠し測定した。
Figure 2006016619
Figure 2006016619
Figure 2006016619
Figure 2006016619
Figure 2006016619
表2〜表6で明らかなように、各実施例のものは、リン含有エポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物を半硬化(Bステージ化)して作製したプリプレグの保存安定性が優れていて、積層板としての、吸湿耐熱性、難燃性、ピール強度も確保されていることが、確認された。そして、各実施例では、有害物質生成の原因となるハロゲンを含有することなしに、優れた難燃性を示す積層板が得られている。また、実施例2〜実施例6の結果で明らかなように、無機粉末充填材の中で、特にカオリン、焼成カオリン、タルク、焼成タルク、水酸化アルミを用いて得られた積層板の吸湿耐熱性はレベル1という優れたレベルのものとなっていることが確認された。
これに対し、比較例では次のような問題点がある。比較例1は、難燃性が不十分であり、比較例2、3、5、6、7、8、9、10、11、12、13はプリプレグの保存安定性が悪く、比較例4では銅箔のピール強度が低いという問題があることが、確認された。比較例6では、硬化促進剤であるイミダゾール量を低減して保存安定性が向上できないかを検討したが、得られた結果はプリプレグの3日後溶融粘度変化度が大きいという結果であった。

Claims (10)

  1. 下記式(1)又は式(2)で表される有機リン化合物の少なくとも一方とエポキシ樹脂とを反応させて得られるリン含有エポキシ樹脂と、硬化剤と、無機粉末充填材とを含有してなるエポキシ樹脂組成物であって、前記リン含有エポキシ樹脂中のリン含有比率が0.5〜4.0重量%であり、エポキシ樹脂組成物の全固形分中の無機粉末充填材の含有比率が20〜60重量%であるエポキシ樹脂組成物。
    Figure 2006016619
    Figure 2006016619
    Figure 2006016619
    Figure 2006016619
  2. 下記式(5)で表される有機リン化合物とエポキシ樹脂とを反応させて得られるリン含有エポキシ樹脂と、硬化剤と、無機粉末充填材とを含有してなるエポキシ樹脂組成物であって、前記リン含有エポキシ樹脂中のリン含有比率が0.5〜4.0重量%であり、エポキシ樹脂組成物の全固形分中の無機粉末充填材の含有比率が20〜60重量%であるエポキシ樹脂組成物。
    Figure 2006016619
  3. 式(1)、式(2)又は式(5)で表される有機リン化合物と反応させるエポキシ樹脂が、ノボラック型エポキシ樹脂を20重量%以上含有していることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のエポキシ樹脂組成物。
  4. 無機粉末充填材が、炭酸カルシウム、シリカ、カオリン、焼成カオリン、クレー、焼成クレー、タルク、焼成タルク、ハイドロタルサイト、ワラストナイト、金属水酸化物、金属酸化物、ガラス粉末、シリカバルーン又はシラスバルーンの少なくとも何れかである請求項1から請求項3までの何れかに記載のエポキシ樹脂組成物。
  5. 無機粉末充填材が、カオリン、焼成カオリン、クレー、焼成クレー、タルク、焼成タルク又は水酸化アルミの少なくとも何れかである請求項1から請求項3までの何れかに記載のエポキシ樹脂組成物。
  6. 前記ノボラック型エポキシ樹脂が、フェノールノボラック型エポキシ樹脂又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂である請求項1から請求項5までの何れかに記載のエポキシ樹脂組成物。
  7. 請求項1〜請求項6の何れかに記載のエポキシ樹脂組成物をシート状基材に含浸・乾燥してなるプリプレグ。
  8. 請求項1〜請求項6の何れかに記載のエポキシ樹脂組成物を金属箔に塗布・乾燥してなる樹脂付き金属箔。
  9. 請求項1〜請求項6の何れかに記載のエポキシ樹脂組成物をシート状に形成してなる接着シート。
  10. 請求項7に記載のプリプレグ、請求項8に記載の樹脂付き金属箔又は請求項9に記載の接着シートのうち少なくとも一種のものが積層成形されてなる積層板。
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