JP2006012591A - 固定陽極x線管装置 - Google Patents

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誠 大塚
Koji Akita
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Abstract

【課題】
固定陽極X線管装置への大負荷入力時にX線管の陽極のターゲット部に発生する熱応力を低減する。
【解決手段】
X線管の陽極32の陽極母材62に埋め込まれたターゲット60の裏面にモリブデンと銅から成る銅合金の板状体80を配設する。銅合金の熱膨張率はターゲット60のタングステンの熱膨張率と陽極母材62の銅の熱膨張率との中間にあるため、ターゲット60と銅合金板80と陽極母材60のそれぞれの境界面における熱膨張率の差の値は従来のターゲット60と陽極母材60との境界面における値の略半分に低下する。これにより、大負荷時にターゲット60の裏面に発生する熱応力が従来の約半分に低減される。
【選択図】 図3

Description

本発明は陽極に連続して3kW以上の負荷を印加し大線量のX線を照射できる固定陽極X線管装置に係り、特に大負荷を入力するのに好適なX線管の陽極構造の改良技術に関する。
固定陽極X線管装置は、通常固定陽極X線管が回転陽極X線管と比べて小型で低コストであるという利点を活かして、可搬型の小型X線装置や歯科用の小容量のX線装置、あるいは工業用等の許容負荷の小さいX線装置などに用いられている。また、長時間連続的に大きな負荷が印加される工業用のX線装置や照射用のX線装置などには、大負荷を入力できる大容量の固定陽極X線管装置が用いられている。(例えば、特許文献1、特許文献2)
特開平9‐306399号公報 特開2003‐36806号公報
図5に、従来の大容量の固定陽極X線管装置の一例の全体構成図を示す。図5において、固定陽極X線管装置(以下、X線管装置と略称する)100は、X線管装置本体102と冷却装置20とから構成される。X線管装置本体102では防X線・防電撃処理を施したX線管容器14内に大容量の固定陽極X線管(以下、X線管と略称する)104が絶縁油18に浸漬されて内挿されている。冷却装置20はX線管104を冷却するための絶縁油19を貯えておく絶縁油タンク22と、絶縁油19を送油する絶縁油ポンプ24と、絶縁油19の温度を低下させるための放熱器26と、放熱器26を冷却するためのファン28と、冷却装置20とX線管装置本体102との間および冷却装置20の構成要素間を接続して絶縁油19を循環させる配管30などから構成される。
X線管104は陽極106と陰極34と両者を内包する外囲器36とから構成される。X線管104は全体として大略円柱状をしているため、これを内包するX線管容器14も大略円筒状をしている。X線管容器14内で、X線管104は陽極側では陽極支持体38により、陰極側では陰極支持体40により、X線管容器14の内面にそれぞれ絶縁支持されている。X線管容器14は、円筒部14aと、その一端に設けられた陽極側端面14bと、その中央部に設けられた放射窓部14cと、陽極側および陰極側ケーブルレセプタクル取付部14d、14eなどから成る。陽極側端面14bには絶縁油出入口42、43が設けられており、放射窓部14cにはX線放射窓46が取り付けられ、陰極側端部は開口には絶縁油18の膨張、収縮を緩衝するためのベローズ48が取り付けられている。また、ケーブルレセプタクル取付部14d、14eは円筒部14aの陽極側および陰極側の側面から大略円筒状に張り出した部分であり、陽極側および陰極側ケーブルレセプタクルが取り付けられる。
X線管104の陽極106には、これを絶縁油19で冷却するための冷却用穴50が設けられている。また、X線管104の陽極側を支持する陽極支持体38の中心軸部にも絶縁油19を流すための送油口52が設けられている。X線管容器14の陽極側端面14bと陽極支持体40とX線管104の陽極106は、絶縁油出入口42、43と陽極支持体40の送油口52と陽極106の冷却用穴50が同軸に配列されるように結合されている。また、送油口52内には絶縁配管54が、冷却用穴50内には冷却ノズル56が配列され、両者は絶縁油入口43と同軸に結合されている。
図6に、図5のX線管装置に内挿されるX線管104の構造図を示す。図6において、X線管104は電子線57を発生する陰極34と、陰極34からの電子線57が衝突してX線58を発生する陽極106と、陰極34と陽極106とを対向させて絶縁支持し、両者を真空気密に内包する外囲器36とから成る。陰極34は、加熱されて熱電子を発生するフィラメント34aと、熱電子を集束してX線源(焦点)を形成するための電子線57とする集束電極などから成る。陽極106は、陰極34からの電子線57が衝突してX線58を発生するターゲット60と、ターゲット60を支持し、そこで発生した熱を熱伝導によって放散させる陽極母材62と、ターゲット60で発生する2次電子の散乱を防止するフード64と、陽極106と外囲器36とを接続するための支持材66と、陽極106全体を支持するための管球支持材68などから成る。ターゲット60はタングステンなどの高融点で、高原子番号の金属材料から成り、大略円柱状の陽極母材62の傾斜した端面の中に埋め込まれている。陽極母材62のターゲット60と反対側に冷却用穴50が穿けられており、その底面(冷却面)70が主として絶縁油19で冷却されている。陽極母材62には熱伝導率の高い無酸素銅が用いられ、ターゲット60で発生した熱は冷却用穴50に向けて良好に伝達される。フード64は陰極34と対向する部分に電子線57が入射する電子線入射口64aを有し、側面にX線58を外部に放出するためのX線放射口64bを有する。フード64と陽極母材62とは、傾斜したフード接合面72にてろう付けなどにより接合されている。陽極10の冷却用穴50内には、その中心軸に沿って絶縁配管54と冷却ノズル56が配列され、冷却ノズル56の先端は冷却面70に近接して配置されている。
外囲器36は、大略円筒状をしており、その部分が耐熱性ガラスなどの絶縁物から成る。外囲器36の陽極側は陽極106の支持材66と結合されている。外囲器36と陽極106との結合部には、外囲器36の絶縁材と熱的になじみのよい金属材料の薄板から成る外囲器接続材74が挿入されている。外囲器36の陰極側は、陰極34のステム(大部分がガラスなどの絶縁物から成る)と直接結合されている。外囲器36の陰極側には、陰極34に高電圧を給電するためのリード線が接続されるが、この部分の電界を緩和するためおよびリード線の接続を容易にするための部品である口金76が取り付けられている。また、外囲器36の中央部側面の陽極106のフード64のX線放射口64bに近接した部分に、X線透過性の良い材料から成るX線窓78が取り付けられ、このX線窓78からX線58が外部に取り出される。
このX線管装置100の使用時には、装置の外部から陽極側および陰極側ケーブルレセプタクルを経由してX線管104の陽極106および陰極34に正、負の電位の高電圧(50〜150kV)とフィラメント加熱電圧が印加される。陰極34のフィラメント34aがフィラメント加熱電圧によって加熱されることによって放出された熱電子は集束電極によって集束されて電子線57となる。この電子線57は陰極34と陽極106間に印加された高電圧(100〜300kV)によって加速され、陽極106のフード64の電子線入射口64aを通って、陽極母材62に埋め込まれたターゲット60に衝突する。このターゲット60への電子線57の衝突により、ターゲット60からX線58が発生し、フード64のX線放射口64b、外囲器36のX線窓78およびX線管装置本体102のX線放射窓46を通して外部に放射され、X線照射対象などに照射される。
このとき、電子線57に与えられたエネルギーのうちX線に変換されるエネルギーは1%以下であり、残りの約99%のエネルギーは熱に変換されるため、ターゲット60の電子線57が衝突したX線源(焦点)またはその近傍で大量の熱が発生する。陽極106が真空中に置かれているため、ターゲット60の熱の放散手段としては熱輻射によって直接外部に放散するか、熱伝導によって陽極106の支持部を通して放散することになるが、陽極表面の温度が低いことから主として後者の熱伝導によって熱放散する。しかし、電子線57の量、すなわちX線管電流が増加すると、熱が陽極106のターゲット60の近傍に蓄積し、ターゲット60の温度が上昇して、陽極106の劣化が進むおそれがある。
そこで、大容量のX線管104では、図5、図6に示す如く、陽極106のターゲット60の裏面側に冷却用穴50を設け、その冷却用穴50に冷却ノズル56を挿入し、この冷却ノズル56から冷却装置20で冷却した絶縁油19を冷却面70に噴射して、陽極106を冷却している。この絶縁油19は、冷却装置20の絶縁油タンク22から絶縁油ポンプ24にて放熱器26に送油され、ファン28を用いて冷却された後、配管30を通りX線管容器14の陽極側端面14bの絶縁油入口43から絶縁配管54を経由して冷却ノズル56に導かれたものである。陽極106の冷却面70およびその周辺を冷却して温度上昇した絶縁油18は支持材66と冷却ノズル56との隙間、管給支持材68と絶縁配管54との隙間および陽極支持体38の送油口52を経由して、X線管容器14の陽極側端面14bの絶縁油出口42から配管30を通して冷却装置20の絶縁油タンク22に戻される。陽極106の冷却に絶縁油19を用いるのは、陽極106に50〜150kVの正の高電圧が印加されるために電気的に外部と絶縁するためである。同様の理由で、陽極支持体38や絶縁配管54にも絶縁物が用いられている。
上記従来技術では、X線管104の陽極106のターゲット60を陽極母材62に埋め込むにあたり、真空鋳造法を採用し、陽極母材62の材料として無酸素銅を使用しているが、ターゲット60と陽極母材62との間のなじみが悪く、鋳造の際に陽極母材62の中に気泡やヒケによる空洞ができやすく、その空洞がターゲット60の裏面に発生する場合がある。その結果、空洞発生部では、ターゲット60と陽極母材62との間の熱伝達は悪化することになり、X線管104の大負荷使用時に、ターゲット60の焦点面で発生した大量の熱の放散が十分行われないため、ターゲット60の焦点面の温度が大幅に上昇することになり、ターゲット60の焦点面が荒れたり、溶けたりして、X線管104の短寿命の原因となる。
また、陽極106のターゲット60の材料のタングステンと陽極母材62の材料の銅の熱膨張率は、後者が前者の約4倍で、その差が非常に大きいため、X線管104に大きな負荷が印加され、ターゲット60の温度上昇が大きくなると、ターゲット60と陽極母材62の境界面に大きな熱応力が発生する。X線管104の大負荷での使用を繰り返すことにより、上記熱応力が上記境界面に繰り返し印加されることにより、上記境界面に剥離が生じ、ターゲット60自体およびその焦点面の冷却が悪化し、ターゲット60の温度が上昇することになる。その結果、ターゲット60の焦点面の劣化が急速に進行し、X線管104の寿命が短くなるという問題があった。
上記に鑑み、本発明は従来の固定陽極X線管装置における大負荷入力に対する問題点を解決するためになされたものであり、3kW以上の大負荷による熱サイクルに耐え、長期にわたり安定した動作が可能な固定陽極X線管装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の固定陽極X線管装置(以下、X線管装置と略称する)は、電子線を発生する陰極と、陰極からの電子線が衝突してX線を放出するターゲットを有する陽極と、陽極と陰極とを対向して配置して真空気密に内包して絶縁支持する外囲器とから構成される固定陽極X線管(以下、X線管と略称する)と、該X線管をX線管容器内に絶縁油に浸漬して内包するX線管装置本体と、前記X線管の陽極に設けた冷却用穴に配設した冷却ノズルにて冷却用絶縁油を噴出することによって前記陽極を冷却する冷却装置とから成る固定陽極X線管装置において、前記X線管の陽極のターゲットの裏面にターゲットの素材またはこの素材に近似の熱膨張率を有する高融点金属と銅との合金(以下、銅合金という)から成る構造体を面接触するように配置したものである(請求項1)。
また、本発明のX線管装置では、前記銅合金はタングステンまたはモリブデンと銅との合金である。
また、本発明のX線管装置では、前記銅合金はモリブデンと銅との合金である。
また、本発明のX線管装置では、前記銅合金におけるモリブデンと銅の組成比率は8対4から6対4の範囲にある。
また、本発明のX線管装置では、前記銅合金から成る構造体は板状体である(請求項2)。
また、本発明のX線管装置では、前記銅合金から成る構造体は1層の板状体である。
また、本発明のX線管装置では、前記銅合金から成る構造体は多層の板状体から構成され、各層の板状体の銅合金内の銅の組成比率はターゲットに近い側にある層のもの程小さくなっている。
また、本発明のX線管装置では、前記銅合金から成る構造体は2層の板状体から構成される。
また、本発明のX線管装置では、前記銅合金から成る構造体は全体として塊状体であり、ターゲットと接触する面は平面に加工されている。
本発明のX線管装置は、内挿するX線管の陽極のターゲットの裏面にターゲットの素材またはこの素材に近似の熱膨張率を有する高融点金属と銅との合金である銅合金から成る構造体を面接触するように配置しているので、ターゲットの近傍を熱膨張率の見地から見た場合、低い熱膨張率のターゲットと高い熱膨張率の陽極母材との間に、中間の熱膨張率の銅合金の構造体が挿入されているので、それぞれの境界面における熱膨張率の差が従来のターゲットと陽極母材との境界面における値よりも大幅に低下するため、それぞれの境界面に働く熱応力が大幅に低減される。その結果、ターゲットと陽極母材との間で境界面の剥離などの問題がなくなり、熱伝達が改善されるため、X線管の陽極に従来品よりも大きな負荷、例えば3kW以上の負荷を与えることが可能となった(請求項1)。
また、本発明のX線管装置では、銅合金がタングステンまたはモリブデンと銅との合金であり、その成分であるタングステンまたはモリブデンはターゲットと同じか近似の熱膨張率を有する高融点金属であるため、銅合金の熱膨張率はターゲットの熱膨張率と陽極母材の熱膨張率との中間の値となる。従って、この銅合金の構造体のターゲット裏面への挿入により、ターゲットと銅合金との間、および銅合金と陽極母材との間における熱膨張率の差が従来品のターゲットと陽極母材との境界面における値よりも大幅に低下するため、それぞれの境界面に発生する熱応力も従来品より低減される。
また、本発明のX線管装置では、銅合金がモリブデンと銅との合金であるので、素材のモリブデンの粉末の入手や銅との合金の製造が他の高融点金属の場合と比べて容易であるため、銅合金が比較的安価で入手できる。
また、本発明のX線管装置では、銅合金におけるモリブデンと銅の組成比率を8対2から6対4の範囲としているので、銅合金の熱膨張率は8×10-6/Kから12×10-6/Kの範囲の値となっている。従って、この銅合金の熱膨張率はターゲットのタングステンの熱膨張率4.5×10-6/Kと陽極母材の銅の熱膨張率17×10-6/Kとの中間にある。このことは、銅合金が、ターゲットと陽極母材との間に挿入して両者との境界面における熱膨張率の差を低下させるのに、好適な材料であることを示している。
また、本発明のX線管装置では、銅合金から成る構造体が板状体であるので、構造体自体の加工が容易であり、また、ターゲットが通常板状体であることから、ターゲットの裏面への挿入時にターゲットとの密着度が良くなり、ターゲットを陽極母材に真空鋳造する際に、この部分に空洞やヒケなどの欠陥が生ずることがない(請求項2)。
また、本発明のX線管装置では、銅合金から成る構造体は1層の板状体であるので、構造体の加工およびターゲットの鋳造作業は容易である。また、銅合金の組成比率は熱膨張率の値がタングステンの熱膨張率と銅の熱膨張率のほぼ中間の値となるように選定することにより、ターゲット裏面近傍の熱応力を従来比の約1/2に緩和することができる。
また、本発明のX線管装置では、銅合金から成る構造体は多層の板状体から構成され、各層の板状体の銅合金の銅の組成比率がターゲットに近い側にある層のもの程小さくなっているので、ターゲットの裏面には2層以上の熱膨張率の異なる板状体がターゲット側から陽極母材側に向けて順に熱膨張率が大きくなるように配列されている。この結果、ターゲットと銅合金の板状体と陽極母材との境界面における熱膨張率の差を1層の板状体を挿入したときよりも小さくすることができるので、X線管の使用時に前記境界面に発生する熱応力を1層の板状体を挿入したときよりも更に低減することができる。
また、本発明のX線管装置では、銅合金から成る構造体は2層の板状体から構成されているので、上記の多層の板状体を挿入した場合の良好な熱応力低減効果が得られ、板状体が2層であるので、素材の入手、真空鋳造作業も比較的容易であり、製造コストの上昇も低く押さえることができる。
また、本発明のX線管装置では、銅合金から成る構造体は全体として塊状体であり、ターゲットと接触する面は平面に加工されているので、ターゲットの裏面に塊状体の平面部を接触させて、真空鋳造にて陽極母材に埋め込むことにより、上記の板状体の場合と同様にターゲットの裏面における熱応力が低減される。
以下、本発明の実施例を添付図面を参照しながら説明する。図中の符号については、従来例と同一機能のものについて同じ符号で表記することにした。
図1は本発明に係る固定陽極X線管装置の第1の実施例の全体構成図、図2は図1の実施例に内挿される固定陽極X線管の構造を示す断面図、図3は図2の要部である陽極部の拡大断面図である。
本実施例においては、固定陽極X線管装置(以下、X線管装置と略称する)に挿入される固定陽極X線管(以下、X線管と略称する)の構造、特にその陽極の構造に特徴がある。このため、先ず、図2と図3を用いて、X線管の構造について説明する。図2において、X線管16は、陽極32と陰極34と外囲器36などから構成される。陽極32と陰極34は外囲器36内に対向して、ほぼ同軸に配置され、両電極とも端部を外囲器36によって支持されている。外囲器36の内部は真空に保持されている。
陰極34は、熱電子を放出するフィラメント34aと、熱電子を細いビーム状の電子線57に集束する集束電極(図示せず)と、集束電極を支持し、複数本のリード線を封入したステム(図示せず)などから構成される。フィラメント34aはタングステンなどの高融点金属から成る細い線をコイル状に巻いたもので、両端は集束電極に支持される。フィラメント34aにはステムのリード線を介して、外部からフィラメント加熱電圧が供給される。集束電極はフィラメント34aから放出された熱電子を陽極32に向かう電子線57に集束するための集束溝を有し、この集束溝内にフィラメントを支持する。集束電極は鉄やステンレス鋼などから成る。また、集束電極にはステムのリード線を介して、外部から負の高電圧(陰極電位)が供給される。ステムは大部分が耐熱性ガラスやセラミックなどの絶縁物から成り、その絶縁物に、複数本のリード線が真空気密に封入されている。陰極34と外囲器36との結合はステムの部分で行われている。
次に、陽極32は、陰極からの電子線57が衝突してX線58を放射するターゲット60と、ターゲット60が埋め込まれている陽極母材62と、陽極母材62と結合され、ターゲット60を覆うように配設されたフード64と、陽極母材62の端部に結合された支持材66と、支持材66と結合された管球支持材68と、陽極32を冷却するための部材としての冷却ノズル56と絶縁配管54などから構成される。
次に、図3を用いて、本実施例の要部となる陽極32のターゲット60の周辺の構造について詳しく説明する。図3において、ターゲット60は従来品と同様に長方形または円形の板状体で、タングステンなどの高融点で、高原子番号の金属材料またはそれらの合金から成り、ここではタングステンが用いられている。このターゲット60は、電子線57に対し少し傾けて配置され、無酸素銅から成る陽極母材62に埋め込まれている。ターゲット60の裏側にはタングステンまたはモリブデンと銅の合金(以下、銅合金と略称する)から成る板状体(以下、銅合金板という)80が配設されている。この銅合金は、タングステンまたはモリブデンの微粒粉末と銅の微粒粉末を混合して、それぞれの微粒子が均一に分散するように作られている。この銅合金の熱膨張率はタングステンまたはモリブデンの熱膨張率と銅の熱膨張率のほぼ中間の値になっている。本実施例では、入手の容易さおよび価格の安さを考慮して、モリブデンと銅から成る合金を使用している。以下の説明は、タングステンや他の熱膨張率がタングステンに近似の高融点金属と銅との合金の場合にも、同様に適用される。ここでは、モリブデンと銅の組成比率が6対4から8対2の範囲の銅合金が使用されている。モリブデンと銅を組成比率6:4〜8:2で混合した銅合金の場合、その熱膨張率は8〜12×10-6/Kで、ターゲット60のタングステンの熱膨張率4.5×10-6/Kと陽極母材62の銅の熱膨張率17×10-6/Kのほぼ中間の値となっている。
ターゲット60と銅合金板80との陽極母材62への埋め込みは、ターゲット60の裏面に銅合金板80を重ねた状態で真空中で鋳造法により行われ、陽極母材62の材料である無酸素銅で鋳込まれ、接合されている。この場合、陽極母材62と銅合金板80との接合面では、銅合金板80が銅を含むために、無酸素銅の濡れ性が良く、真空鋳造時に、空洞やヒケ等の欠点が生じなくなる。
ターゲット60の鋳造後、陽極母材62は傾斜するフード接合面72およびターゲット60の裏面側の冷却用穴50などについて切削加工され、更にターゲット60の表面が研磨加工される。フード64は通常陽極母材62と同じ無酸素銅などから成り、電子線57の入射する電子線入射口64aと、X線58を外部に放射するX線放射口64bと、陽極母材62と接合するため傾斜面64cなどが加工される。陽極母材62とフード64とは、フード接合面72において、溶融温度の比較的高い銅合金ろう材、例えば金銅ろう(融点約990°C)を用いてろう付けにより接合される。ろう付け品については、外周部やフード64の電子線入射口64a、X線放射口64bなどが仕上げ加工され、所定の寸法に仕上げられる。
陽極加工以後の工程については図2により説明する。陽極母材62と支持材66とは、陽極母材62とフード64とのろう付け時に、同じろう材を用いて一緒にろう付けされる。この支持材66は筒状体で、鉄鋼材やステンレス鋼材などの高強度の金属材料から成る。次に、管球支持材68と外囲器接続材74が陽極母材62に結合された支持材66にろう付けによって同時に結合される。この時のろう材としては、溶融温度の比較的低い銅合金ろう材、例えば銀ろう(融点780°C)が用いられる。管球支持材68は大略筒状をしており、鉄鋼材やステンレス鋼材などの高強度の金属材料から成る。外囲器接続材74は断面がU字形のリング状体で、外囲器36を構成するガラスなどの絶縁物と熱的になじみのよい金属材料から成る。外囲器接続材74は内周側で支持材66と結合され、外周側で外囲器36と結合される。上記のろう付け後に、陽極32全体としての二次仕上げ加工が行われ、陽極32が完成する。
外囲器36は、大略円筒形状をしており、耐熱性ガラスなどの絶縁物から成る。外囲器36の中央部は直径が大きく、端部では直径が小さくなっている。外囲器36の陽極側端部では、陽極32の外囲器接続材74に結合され、陰極側端部では陰極34のステムに結合されている。これらの結合によって、陽極32と陰極34は外囲器36内に対向して絶縁支持される。外囲器36の中央部側面の陽極32のフード64のX線放射口64bに対向する位置にX線窓78が取り付けられている。このX線窓78は、X線を透過しやすい金属、例えばベリリウムの板状体から成り、間に外囲器本体の絶縁物と熱的になじみのよい金属材料を介して、外囲器36の絶縁物に結合されている。
外囲器36は、封止工程において、絶縁物から成る外囲器本体とX線窓78を結合した後に、その両端部において陽極32および陰極34と真空気密に結合される。この状態で、X線管16としての外形が形成される。このX線管16はその後排気工程にて、電極の脱ガスなどを行って、X線管16内の真空排気が行われ、封止切りすることによりX線管16として完成する。次の仕上げ工程では、外囲器36の陰極側端部において、陰極34のステムのリード線の配線仕上げやリード線の周辺の電界を緩和するため部品である口金76の取付け、陽極32の冷却用穴50の清浄化およびメッキ、冷却ノズル56の冷却用穴50への取付けなどの作業が行われる。次のエージング工程では、X線管16を慣らし運転するために、X線管16の陽極32と陰極34との間に高電圧が印加され、大負荷も付与される。このエージング工程は絶縁油18の中で行われることになるが、X線管16単体で行う場合と、X線管16をX線管容器に挿入して行う場合と、条件を変えて両方を行う場合がある。
次に、図1を用いて、本実施例のX線管装置の構造について説明する。図1において、本実施例のX線管装置10は、図2に示したX線管16を内挿するX線管装置本体12と冷却装置20とから構成される。X線管装置本体12はX線管16を除いて図5の従来例とほぼ同じ構造であり、また冷却装置20も従来例とほぼ同じ構造である。
先ず、X線管装置本体12は図2に示したX線管16と、これを収納するX線管容器14と、X線管16を絶縁支持する陽極支持体38ならびに陰極支持体40と、X線管容器14内に充填されてX線管16の外囲器36表面を絶縁する絶縁油18と、絶縁油18の膨張、収縮を緩衝するベローズ48と、X線58の取出し口となるX線放射窓46と、X線管16の陽極32、陰極34に高電圧を供給するための陽極側ケーブルレセプタクル82並びに陰極側ケーブルレセプタクル83などから構成されている。
X線管容器14は、大略円筒形をしていて、通常アルミニウム合金などの軽量金属合金の鋳造品である。X線管容器14の円筒部14aの陽極側端部には底(陽極側端面)14bがあり、陰極側端部は開口となっている。円筒部14aの中央部側面にはX線放射窓46を取り付けるための開口44を有する放射窓部14cが設けられており、また陽極側および陰極側側面には陽極側および陰極側ケーブルレセプタクル82、83を取り付けるための陽極側および陰極側ケーブルレセプタクル取付部14d、14eが設けられている。放射窓部14cは四角形または円形の突出部であり、ケーブルレセプタクル取付部14d、14eは筒状の突出部である。陽極側端面14aはX線管16の陽極32を支持する部分であり、そのほぼ中心部にX線管16の陽極32を冷却するための絶縁油19を送油する絶縁油出口42と絶縁油入口43が設けられている。また、X線管容器14の内面の必要な部分には防X線のために鉛板の貼り付けが行われている。
X線管16の陽極側のX線管容器14への固定は、その陽極32と陽極支持体38とを結合した後、X線管容器14の陽極側端面14aに陽極支持体38をねじなどで固定することにより行われる。陽極支持体38はエポキシ樹脂などの高強度の絶縁物から成り、その中央部には送油口52が設けられている。陽極支持体38の陽極側端面14bへの取り付けでは、絶縁油19の流路としての見地から、送油口52の位置がX線管16の陽極32の冷却用穴50および陽極側端面14bの絶縁油出入口42、43の位置と一致するように行われる。送油口52の中には絶縁物から成る絶縁配管54が配設され、その一端にはX線管16の冷却用穴50内の冷却ノズル56に接続され、その他端は陽極側端面14bの絶縁油入口43に接続される。同時に、送油口52と陽極側端面14bの絶縁油出口42との接続も行われる。これらの接続により、陽極側端面14bの絶縁油入口43と、絶縁配管54と、冷却ノズル56と、陽極32の冷却面70と、冷却用穴50(冷却ノズル56の外側)と、送油口52(絶縁配管54の外側)と、絶縁油出口42を通る絶縁油19の陽極冷却路が形成される。
X線管16の陽極32のX線管容器14への固定時には、X線管16の陰極側において陰極支持体40によるX線管容器14の円筒部14aの内壁への支持も行われる。陰極支持体40はエポキシ樹脂などの絶縁物から成り、その内周はX線管16の口金76の周りに、その外周はX線管容器14の円筒部14aの内壁に、それぞれ接着剤などで固定される。このとき、X線管16のX線源の位置が、放射窓部14eから見て所定位置に来るように、位置の調整が行われる。陽極側ケーブルレセプタクル82と陰極側ケーブルレセプタクル83がX線管容器14の陽極側ケーブルレセプタクル取付部14dと陰極側ケーブルレセプタクル取付部14eに取り付けられ、陽極側ケーブルレセプタクル82の端子とX線管16の陽極32との間、および陰極側ケーブルレセプタクル83の端子とX線管16の陰極34との間でリード線の配線接続が行われる。リード線は通常陽極側では高電圧供給用の1本であるが、陰極側では高電圧供給用とフィラメント加熱電圧供給用とで2本以上となる。陽極側ケーブルレセプタクル82と陰極側ケーブルレセプタクル83は外部から高電圧を供給するための高電圧ケーブルヘッドを受容するソケットであり、大略円筒形状で、一端には底が付いていて、他端にはフランジが付いており、エポキシ樹脂などの絶縁物から成る。リード線接続の端子はケーブルレセプタクル82、83の底の部分に取り付けられており、ケーブルレセプタクル取付部14d、14eへの取り付けはフランジの部分で行われている。また、X線管容器14の放射窓部14cにはX線放射窓46が取り付けられ、陰極側端部の開口にはベローズ48が取り付けられる。X線放射窓46はコーン状をしており、X線透過性のよいプラスチックから成る。通常透明な材質のものが用いられる。ベローズ48は全体としては椀状をしており、耐油性ゴムなどから成る。外周にはOリング形状の部分があり、そのOリング形状部をX線管容器14の開口に固定することにより、油密を保持している。X線管装置本体12が上記の如く組み立てられた後に、X線管容器14に設けた注油口(図示せず)から絶縁油18を注入する。この絶縁油18の注入は通常真空雰囲気内で、X線放射窓46を取り付けない状態で行い、絶縁油18の注入後、ベローズ48の部分で油量の調整を行った後、X線放射窓46を取り付けている。その後で、X線管容器14の陰極側端部にベローズ48を保護するためのカバー84を取り付ける。
次に、冷却装置20は、X線管16の陽極32を冷却するための絶縁油19を蓄積しておく絶縁油タンク22と、絶縁油19を送油する絶縁油ポンプ24と、陽極32を冷却して温度上昇した絶縁油19の熱を放熱させる放熱器26と、放熱器26に送風して冷却するファン28と、X線管装置本体12と冷却装置20間、および冷却装置20の部品相互間を接続し絶縁油19の循環路を形成する配管30などから構成される。放熱器26はファン28の送風によって放熱する空冷式のもので、3kW以上の放熱能力を持ったものが使用されている。配管30としては通常耐油性、耐圧力性のゴム管などが使用され、X線管装置本体12の絶縁油出口42と絶縁油タンク22との間、絶縁油タンク22と絶縁油ポンプ24との間、絶縁油ポンプ24と放熱器26との間、放熱器26とX線管装置本体12の絶縁油入口43との間に配設されている。この中で、絶縁油ポンプ24と放熱器26は直結される場合もある。冷却装置20は上記の如く構成されているので、放熱器26で冷却された絶縁油19が、配管30、絶縁油入口42、絶縁配管54、冷却ノズル56を通って、直ちに陽極32の冷却用穴50の冷却面70に噴射されるので、冷却面70の冷却は効率的に行われている。
X線管装置10の実動作時には、X線装置よりX線管装置本体12にX線管電圧、フィラメント加熱電圧などが高電圧ケーブルを介して供給され、X線管装置本体12の陽極側および陰極側ケーブルレセプタクル82、83を経由して、X線管16の陽極32と陰極34に100kV以上の高電圧(X線管電圧)と10V前後のフィラメント加熱電圧が印加される。これらの電圧の印加により、X線管16の陰極34のフィラメント34aは数Aのフィラメント電流によって加熱され赤熱し、熱電子を放出する。放出された熱電子は、X線管電圧によって集束電極の近傍に形成される集束電界によって電子線57として集束され、この電子線57はX線管電圧によって陽極32に向かって加速される。この加速された電子線57は陽極32のフード64の電子線入射口64から入って陽極母材62に埋め込まれたターゲット60に衝突する。この衝突の際に電子の制動輻射作用によりX線58が発生する。電子線57の衝突により、ターゲット60の表面(X線源の近傍)は急激に温度上昇する。ターゲット60の表面で発生した熱は、ターゲット60全体を温度上昇させて熱膨張させるとともに、大部分が熱伝導によりターゲット60の裏面から銅合金板80に伝達される。
ターゲット60から銅合金板80に伝達された熱は、銅合金板80を温度上昇させるとともに、それを取り囲む陽極母材62に熱伝導にて伝達される。陽極母材62では、冷却用穴50の冷却面70が絶縁油19によって冷却されているので、この冷却面70において、陽極母材62から絶縁油19への熱伝達が行われる。この熱伝達によって、ターゲット60で発生した熱の大部分が、絶縁油19とともに冷却装置20へ移動し、放熱器26で放散される。このときの熱によって、陽極32のターゲット60と銅合金板80と陽極母材62は温度上昇し、熱膨張するため、その結果として、それぞれの境界面では熱応力が発生することになる。それぞれの境界面で発生する熱応力は境界を接する金属材料の熱膨張率の差に比例することになるので、この熱膨張率の差が小さい程境界面での熱応力は小さくなる。
本実施例では、ターゲット60の裏面に銅合金板80を重ねて陽極母材62に埋め込んでおり、この銅合金板80の熱膨張率は8〜12×10-6/Kであり、ターゲット60の材料のタングステンの熱膨張率4.5×10-6/Kと陽極母材62の材料の無酸素銅の熱膨張率17×10-6/Kの中間の値となっている。このため、ターゲット60と銅合金板80との境界面および銅合金板80と陽極母材62との境界面における熱膨張率の差は、銅合金板80の熱膨張率として上記の中心値10×10-6/Kを採用した場合、それぞれ5.5×10-6/K、7×10-6/Kとなる。従来例の場合、ターゲットを陽極母材に直接埋め込んでいるので、境界面における熱膨張率の差は12.5×10-6/Kである。両者を比較すると、本実施例のターゲット60と銅合金板80との境界面での熱膨張率の差は従来例の約44%であり、銅合金板80と陽極母材62との境界面での熱膨張率の差は従来例の約56%であり、約1/2に低下している。このことから、本実施例の両境界面における熱応力は、X線管16の陽極32への負荷が従来例と同じ場合には、従来例の約1/2に低減される。
上記の陽極構造を有するX線管16を内挿するX線管装置10では、陽極32のターゲット60と陽極母材62との境界領域における熱応力を低減することができるので、従来この熱応力によって発生するターゲットの変形や劣化を考慮して制限されていたX線管の負荷容量(X線管電圧×X線管電流)の限度値を大きくすることが可能となった。すなわち、従来品よりも高電圧を印加したり、大きなX線管電流を流したりして、大負荷を印加することが可能となり、従来品よりも強い強度のX線を連続して発生することが可能となる。また、X線管16の陽極32に与える負荷量が従来品と同等である場合には、ターゲットの変形や劣化が防止され、X線管の長寿命化が図られる。
次に、図4を用いて、本発明に係る固定陽極X線管装置の第2の実施例について説明する。図4は、本実施例のX線管装置に内挿されるX線管の陽極部の拡大断面図である。本実施例は、ターゲットの裏面に埋め込む銅合金材の構造に特徴があり、第1の実施例では銅合金材が一層であったのに対し、本実施例で銅合金材を2層としたものである。図4において、X線管の陽極90は、ターゲット60と陽極母材62とフード64と第1の銅合金板86と第2の銅合金板87などから構成される。陽極母材62の冷却用穴50の構造や、フード64の構造や、陽極母材62とフード64の結合構造などは第1の実施例と同じである。
陽極母材62に埋め込まれたターゲット60の裏面には2層の銅合金板、すなわち第1の銅合金板86と第2の銅合金板87が配設されている。第1の銅合金板86と第2の銅合金板87は、第1の実施例の銅合金板80と同様に、銅とタングステンまたはモリブデンの合金から成る板状体である。ここでも、銅合金として、銅とモリブデンの合金が用いられている。2層の銅合金板86、87は銅とモリブデンの組成比率が異なる。ターゲット60に接する第1の銅合金板86はモリブデンの組成比率が大きく(逆に銅の組成比率は小さく)、例えば、モリブデンと銅の組成比率が8:2で、その熱的性質、特に熱膨張率がターゲット60のタングステンにより近いものとなっている。陽極母材62に接する第2の銅合金板87はモリブデンの組成比率が少し小さくなり(逆に銅の組成比率は少し大きくなり)、例えばモリブデンと銅の組成比が6:4で、その熱的性質、特に熱膨張率が陽極母材62の銅により近いものとなっている。それぞれの熱膨張率は、ターゲット60、第1の銅合金板86、第2の銅合金板87、陽極母材62の順に、4.5×10-6/K、8×10-6/K、12×10-6/K、17×10-6/Kとなっている。ターゲット60と銅合金板86、87と陽極母材62との境界面に働く熱応力は境界面で接合する二つの材料の熱膨張率の差にほぼ比例するので、各境界面における熱膨張率の差を求めてみると、ターゲット60と第1の銅合金板86との境界面で3.5×10-6/K、第1の銅合金板86と第2の銅合金板87との境界面で4×10-6/K、第2の銅合金板87と陽極母材62との境界面で5×10-6/Kとなっている。これらの値は、第1の実施例の場合のターゲット60と銅合金板80と陽極母材62の境界面における値よりも小さくなっているので、各境界面における熱応力は第1の実施例の場合より小さくなっている。
本実施例では、ターゲット60の裏面に配設する銅合金板を2層とし、2層における銅とモリブデンの組成比率を熱応力的見地から有利になるように変化させたが、これは銅合金板を3層以上にした場合にも熱応力を低減する効果が得られる。この場合も、ターゲット60に近い銅合金板についてはモリブデン(またはタングステン)の組成比率を大きくし、陽極母材62に近い銅合金板については銅の組成比率を大きくすればよい。
ターゲットと銅合金板の形状については、長方形でも円形でも、またはその他の形状のものでもよい。また、ターゲットと銅合金板とは同じ形状でも異なる形状でもよい。ターゲットが長方形の場合には銅合金板も同じ形状をしていた方が鋳造作業などは有利である。X線照射用などに用いられる大きな焦点を有するX線管では、ターゲットは円形がよいが、銅合金板は円形でも長方形でも、または他の形状でもよい。
また、第1および第2の実施例では、X線管の陽極のターゲットの裏側に銅合金板を配設したが、この銅合金の構造体については板状体に限定されず、他の形状の構造体でも熱応力の低減効果が得られる。他の形状の銅合金の構造体としては、半球状や不定形の塊状などの塊状体である。銅合金から成る塊状体を陽極のターゲットの裏面に配設する場合、ターゲットとの接合面は平面状に平滑に加工し、陽極母材に接する表面については、殆んど加工は不要であり、凹凸面や粗面であってもよい。このような塊状体を用いて陽極の真空鋳造を行った場合でも、空洞やヒケ等の欠陥は発生せず、また陽極母材との密着度もよいので、板状体の場合と同様、ターゲット裏面に発生する熱応力を低減する効果が得られる。
本発明によるX線管装置では、X線管に大きい負荷を連続して与えることができるので、従来のX線管装置と比較して、より多くのX線を連続して発生することができる。このため、本X線管装置は大線量を必要とするX線照射装置などに組み込み、輸血用血液保存袋の照射(特開平10−123299号公報参照)などに使用することが可能である。その場合、X線量の増加に伴い輸血用血液保存袋のX線照射処理時間が短縮され、スループットが向上される。
本発明に係る固定陽極X線管装置の第1の実施例の全体構成図。 図1の実施例に内挿される固定陽極X線管の構造を示す断面図。 図2の要部である陽極部の拡大断面図。 本発明に係る固定陽極X線管装置の第2の実施例に内挿されるX線管の陽極部の拡大断面図。 従来の大容量の固定陽極X線管装置の一例の全体構成図。 図5のX線管装置に内挿される固定陽極X線管の構造を示す断面図。
符号の説明
10、100・・・固定陽極X線管装置(X線管装置)
12、102・・・X線管装置本体
14・・・X線管容器
16、104・・・固定陽極X線管(X線管)
18、19・・・絶縁油
20・・・冷却装置
24・・・絶縁油ポンプ
26・・・放熱器
32、90、106・・・陽極
34・・・陰極
36・・・外囲器
42・・・絶縁油出口
43・・・絶縁油入口
44・・・開口
46・・・X線放射窓
50・・・冷却用穴
52・・・送油口
54・・・絶縁配管
56・・・冷却ノズル
57・・・電子線
58・・・X線
60・・・ターゲット
62・・・陽極母材
64・・・フード
66・・・支持材
68・・・管球支持材
70・・・底面(冷却面)
72・・・フード接合面
80・・・銅合金板
86・・・第1の銅合金板
87・・・第2の銅合金板

Claims (2)

  1. 電子線を発生する陰極と、陰極からの電子線が衝突してX線を放出するターゲットを有する陽極と、陽極と陰極とを対向して配置して真空気密に内包して絶縁支持する外囲器とから構成される固定陽極X線管(以下、X線管と略称する)と、該X線管をX線管容器内に絶縁油に浸漬して内包するX線管装置本体と、前記X線管の陽極に設けた冷却用穴に配設した冷却ノズルにて冷却用絶縁油を噴出することによって前記陽極を冷却する冷却装置とから成る固定陽極X線管装置において、前記X線管の陽極のターゲットの裏面にターゲットの素材またはこの素材に近似の熱膨張率を有する高融点金属と銅との合金(以下、銅合金という)から成る構造体を面接触するように配置したことを特徴とする固定陽極X線管装置。
  2. 請求項1記載の固定陽極X線管装置において、前記銅合金はタングステンまたはモリブデンと銅との合金であり、前記構造体は板状体であることを特徴とする固定陽極X線管装置。
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