以下、図を参照して、この発明の実施の形態につき説明する。なお、各図は、この発明に係る一構成例を図示するものであり、この発明が理解できる程度に各構成要素の配置関係等を概略的に示しているに過ぎず、この発明を図示例に限定するものではない。また、以下の説明において、特定の機器及び条件等を用いることがあるが、これら材料及び条件は好適例の一つに過ぎず、したがって、何らこれらに限定されない。また、各図において同様の構成要素については、その重複する説明を省略することもある。
<第1の実施の形態>
図1を参照して第1の実施の形態の光スイッチの構造と動作について説明する。
(構造)
この光スイッチは、光分波合成器10と、第1光ファイバ16と、第2光ファイバ18と、光非線形制御部20とを具えている。
既に説明したとおり、この発明の光スイッチにおける上述の第1光ファイバ16や第2光ファイバ18等は、制御光及び被制御光である信号光の偏光面がこれらの光ファイバを伝播中に不規則に変動することがないように、偏波面保存光ファイバを利用するのが望ましい。偏波面保存光ファイバとしては、図2に示すパンダ(PANDA:Polarization-maintaining AND Absorption-reducing)型光ファイバが代表的である。この光ファイバは、コアの近傍に応力付与部を形成し,コアに強い応力を加えることにより偏波保持性を得ている。
図2は、偏波面保存光ファイバである、PANDA型光ファイバの光の伝播方向に対して垂直に切断した断面の概略的構造を示す図である。光が導波されるコア42を取り囲むクラッド40に、コア42を挟む形で応力付与部44が形成されている。例えば、クラッド40はSiO2、コア42はGeO2がドープされたSiO2で形成され、応力付与部はB2O3がドープされたSiO2から形成される。
このように形成することによって、図2中で、PANDA型光ファイバの光の伝播方向に対して垂直な面内に設定されたスロー(slow)軸との方向と、slow軸と直交するファスト(fast)軸の方向では、コア42を導波される光に対する等価屈折率が異なる。すなわち、コア42の近くにクラッド40の屈折率より高い屈折率を有する応力付与部がおかれているために、光の電場ベクトルの振動方向がslow軸の方向に平行な光に対する等価屈折率が、光の電場ベクトルの振動方向がfast軸の方向に平行な光に対する等価屈折率よりも高くなる。このような等価屈折率の非対称性があるために、PANDA型光ファイバに入力される光の偏光面は保存されて伝播されるようになる。
すなわち、PANDA型光ファイバでは、直線偏波の光の偏波面を、図2に示すslow軸(もしくはfast軸)に合わせて入力すると、偏波状態が保たれたままPANDA型光ファイバ中を伝搬し、出射端においても、偏波面が、slow軸(もしくはfast軸)に一致した直線偏波の光のみを得ることが可能である。
光分波合成器10は、方向性光結合器等を利用することができる。特にこの発明の光スイッチを構成するには、光の偏波面が一定の方向に確定されたまま光経路を切り替えることができる方向性光結合器を利用するのが望ましい。このような偏波面が保存される方向性光結合器として、図3に示す偏波面保存光カプラが開発されている。図3は、代表的な偏波面保存光カプラの概略的構成図である。この偏波面保存光カプラは、2本のPANDA型光ファイバのslow軸(もしくはfast軸)同士を精密にあわせて平行に整列させた上で、融着延伸して作製される。所望の方向性光結合器としての特性(光強度の分岐比が1対1となる等)が得られることが確認できた時点で、延伸を終了して補強のための基板に固定されて完成される。
図3において、融着延伸部58は、2本のPANDA型光ファイバのslow軸(もしくはfast軸)同士を精密にあわせて融着延伸して作製された部分である。図3に示す偏波面保存光カプラは、この発明の光スイッチの光分波合成器10として利用することが可能である。すなわち、波長λsの信号光を入力する第1ポート10-1として入出力端面50を利用できるように光ファイバと偏波面保存光カプラとを結合する機構を構成すればよい。第2ポート、第3ポート及び第4ポートとして同様に入出力端面52、54及び56を利用できるように光ファイバと偏波面保存光カプラとを結合する機構を構成すればよい。
また、偏波面保存光カプラとして、光強度の分岐比が1対1となるように設計された製品を利用すれば、光分波合成器10に求められる光強度の分岐比が1対1であるという条件を満足させることができる。
以下の説明では、便宜のために、図1に示す光スイッチの概略的構成図において、光ファイバ等の光伝送路や光分波合成器等の光素子を伝播する光の偏光方向を次のように規定しておく。光の電場ベクトルの振動方向が紙面に対して垂直な偏光をTE (Transverse-Electric Modes)偏波と呼び、紙面に垂直な方向をTE方向という。また、光の電場ベクトルの振動方向が紙面に対して平行な偏光をTM (Transverse-Magnetic Modes)偏波と呼び、紙面に平行な方向をTM方向という。もちろん、この発明の光スイッチの利用の可能性は上記の場合に限定されるものではない。
第1光ファイバ16は、光分波合成器10の第2ポート10-2に一端が接続され、波長λpの制御光を入力する光カプラ12を具えている。第2光ファイバ18は、光分波合成器10の第3ポート10-3に一端が接続されている。光カプラ12は、偏波面が保存されるタイプの光カプラを利用するのが望ましい。例えば、図3を参照して後述する偏波面保存光カプラの入出力端のうちの3箇所の入出力端を利用する形で設定すればよい。
光非線形制御部20は、偏波分離合成モジュール14と、第3光ファイバ22と、第4光ファイバ24と、偏波面回転部26とを具えている。偏波分離合成モジュール14は、第1入出力端14−1、第2入出力端14−2、第3入出力端14−3及び第4入出力端14−4を具えている。第3光ファイバ22は、偏波分離合成モジュール14の第1光ファイバ16の他端が結合されている第1入出力端14-1と対向する側の第3入出力端14-3に一端が結合されている。第4光ファイバ24は、偏波分離合成モジュール14の第2光ファイバ18の他端が結合されている第4入出力端14-4と対向する側の第2入出力端14-2に一端が結合されている。偏波面回転部26は、第3光ファイバ22の他端と第4光ファイバ24の他端とを接続している。
偏波分離合成モジュール14には、例えば市販されている偏光ビームスプリッタの中から好適なものを選んで利用することができる。第3光ファイバ22及び第4光ファイバ24は、偏光面保存光ファイバを用いるのが望ましいが、偏光面保存という性質のほかに、非線形光学効果が大きいことも望ましい。非線形光学効果を大きくするため、光ファイバのコア(図2に示すコア42に相当)にGeO2を高濃度ドープして光カー効果に基づく非線形光学定数γ(W-1km-1)を増大させたり、あるいは、光ファイバの導波モード断面積であるモードフィールド径(MFD:Mode Field Diameter)を小さくして、光ファイバ内での光エネルギー密度を高くする工夫がなされている。例えば、MFDが8μmの通常の光ファイバはγ=2 km-1W-1程度であるのに対して、MFDを3.6μmとしてγ=20 km-1W-1と一桁大きくした光ファイバも市販されている。また、ホーリーファイバ(Holey fiber)と呼ばれるクラッドに空洞を形成したファイバや、フォトニックバンドギャップファイバといった、光非線形性の高い光ファイバも開発されている。将来、偏波面保存光ファイバにも上述の工夫が取り入れられ、偏波面保存という性質を備えつつ高い光非線形性を有する光ファイバが開発されることが当然に予想される。
偏波分離合成モジュール14においては、第1入出力端14−1から入力されたTM偏波成分は、第3入出力端14−3に出力され、第1入出力端14−1から入力されたTE偏波成分は、第4入出力端14−4に出力される。同様に第3入出力端14−3、第2入出力端14−2、第4入出力端14−4、から入力されたTM偏波成分は、それぞれ第1入出力端14−1、第4入出力端14−4、第2入出力端14−2に出力され、TE偏波成分は、それぞれ第2入出力端14−2、第3入出力端14−3、第1入出力端14−1に出力される。
光分波合成器10の第2ポート10−2から偏波分離合成モジュール14の第1入出力端14−1に至る経路の長さ、すなわち第1光ファイバ16の長さをl1(経路L1ということもある。)、光分波合成器10の第3ポート10−3から偏波分離合成モジュール14の第4入出力端14−4に至る経路の長さ、すなわち第2光ファイバ18の長さをl2(経路L2ということもある。)、偏波分離合成モジュール14の第3入出力端14−3から偏波面回転部26に至る経路、すなわち第3光ファイバ22の長さをl3(経路L3ということもある。)、偏波分離合成モジュール14の第2入出力端14−2から偏波面回転部26に至る経路、すなわち第4光ファイバ24の長さをl4(経路L4ということもある。)とする。
偏波面回転部26は、いわゆる1/2波長板を用いて構成することもできるし、また、図4を参照して説明する構造でも実現できる。図4は、偏波面回転部の構造の説明に供する図であり、光ファイバ70及び光ファイバ72はPANDA型光ファイバである。図4において、断面74及び76は光の伝播方向に対して垂直に切断したPANDA型光ファイバ70及び72の断面の概略的構造を示している。この断面構造は、先に図2を参照して説明したPANDA型光ファイバと同一である。
PANDA型光ファイバ70及び72のそれぞれの切断面は、図4の上部に示すように、それらのslow軸が直交する関係に配置されている。偏波面回転部26はPANDA型光ファイバを一端、光の伝播方向に対して垂直に切断した後、それぞれのslow軸(fast軸)が直交するように対向させコアが合致するように密着させて融着することで形成されている。
(動作)
図1を参照して、第1の実施の形態の光スイッチの動作原理を説明する。以下の説明において、信号光はTM偏波であるものとして説明する。もちろん信号光をTE偏波として光スイッチを構成することも可能であるが、この場合も偏波分離合成モジュール14において、第1乃至4入出力端からの入力に対する出力光の得られる入出力端の関係をTM偏波の場合とTE偏波の場合とを逆にするだけで、同様の説明となるので、その説明を省略する。
第1の実施の形態の光スイッチによれば、信号光が光分波合成器10の第1ポート10−1から入力されて第1信号光と第2信号光とに分岐される。第1信号光は光分波合成器10の第2ポート10−2からから出力されて第1光ファイバ16に入力され、第2信号光は光分波合成器10の第3ポート10−3からから出力されて第2光ファイバ18に入力される。すなわち、第1信号光は第1光ファイバ16を時計回り(CW方向ということもある。)に伝播し、第2信号光は第2光ファイバ18を反時計回り(CCW方向ということもある。)を伝播する。
第1信号光は、第1光ファイバ16を伝播した後、光非線形制御部20に入力される。すなわち、偏波分離合成モジュール14の第1入出力端14-1から入力されて第1入出力端14-1と対向する側の第3入出力端14-3から出力され、第3光ファイバ22に入力されて第3光ファイバ22を伝播し、偏波面回転部26で偏波面が90°回転されて、第4光ファイバ24を伝播して偏波分離合成モジュール14の第2入出力端14-2に入力される。そして、偏波分離合成モジュール14の第3入出力端14-3から出力されて再び第3光ファイバ22を伝播し、偏波面回転部26で再び偏波面が90°回転されて、第4光ファイバ24を伝播して偏波分離合成モジュール14の第2入出力端14-2に入力される。そして、第2入出力端14-2に対向する側の第4入出力端14-4から出力されて、第2光ファイバを18伝播して、光分波合成器10の第3ポート10-3に戻る。
一方、第2信号光は、第2光ファイバ18を伝播した後、光非線形制御部20に入力される。すなわち、偏波分離合成モジュール14の第4入出力端14-4に入力されて第4入出力端14-4に対向する側の第2入出力端14-2から出力され、第4光ファイバ24に入力されて第4光ファイバ24を伝播し、偏波面回転部26で偏波面が90°回転されて、第3光ファイバ22を伝播して偏波分離合成モジュール14の第3入出力端14-3に入力される。そして、偏波分離合成モジュールの14第2入出力端14-2から出力されて再び第4光ファイバ24を伝播し、偏波面回転部26で再び偏波面が90°回転されて第3光ファイバ22を伝播して、偏波分離合成モジュール14の第3入出力端14-3から入力されて第3入出力端14-3に対向する側の第1入出力端14-1から出力されて、第1光ファイバ16に入力されて第1光ファイバ16を伝播して光分波合成器10の第2ポート10-2に戻る。
制御光は、第1光ファイバ16の途中に設置された光カプラ12を介して第1光ファイバ16に入力される。また、光分波合成器10の第4ポート10-4から出力光が外部に出力される。第1光ファイバ16に入力される制御光によって、第1光ファイバ16、第2光ファイバ18、第3光ファイバ22及び第4光ファイバ24において光カー効果が発現し、これらの光ファイバを伝播する信号光に対する屈折率が変化する。第3光ファイバ22及び第4光ファイバ24の長さが第1光ファイバ16及び第2光ファイバ18の長さに比べてはるかに長いので、信号光の位相変化への寄与は、主に第3光ファイバ22及び第4光ファイバ24によってもたらされる。すなわち、信号光の位相変化は第3光ファイバ22及び第4光ファイバ24の長さが長いほど、顕著となる。
上述の信号光の位相変化量がπとなるように、制御光の強度に応じて第3光ファイバ22及び第4光ファイバ24の長さを調整すれば、第1の実施の形態の光スイッチに入力された信号光は、制御光が、第1光ファイバ16が具える光カプラ12から入力されたときに限り、光分波合成器10の第1ポート10-1と対になる第4ポート10-4にループ透過光として出力される。一方、制御光が入力されないとき、信号光は、ループ反射光として光分波合成器10の第1ポート10-1に反射される。
上述したように、第1及び第2信号光は、第3光ファイバ22及び第4光ファイバ24をそれぞれ2回伝播することになる。このようなことが実現するのは、偏波面回転部26で偏波面が90°回転されることと、偏波分離合成モジュールの偏波面選択性に起因する。この理由は次のとおりである。
信号光をTM偏波(光の電場ベクトルの振動方向が紙面に対して平行な偏光)として偏波面保存光ファイバに入力させて光分波合成器10の第1ポート10-1に入力させる。光分波合成器10の第1ポート10-1に接続されている第6光ファイバである光ファイバ34をはじめ、光スイッチを構成する光分波合成器10等の構成要素は全て偏波面保存を担保されて動作する素子である。すなわち、第1光ファイバ16等の光ファイバは、全てPANDA型光ファイバを利用し、光分波合成器10は、図3に示す偏波面保存光カプラが用いられる。
CW方向に伝播する第1信号光を考える。第1信号光は、第1光ファイバ16によって構成される経路L1をTM偏波として伝播して偏波分離合成モジュール14の第1入出力端14-1に入力され、第3入出力端14-3から出力される。これは、既に説明したように、TM偏波として偏波分離合成モジュール14の第1入出力端14-1に入力されたので、偏波分離合成モジュール14の内部を直進し第1入出力端14-1と対向する側の第3入出力端14-3に出力されることとなる。
既に説明したように、TM偏波として偏波分離合成モジュール14に入力された場合には、偏波分離合成モジュール14の内部を直進し入力側とは対向する側の入出力端に出力される。一方、TE偏波として偏波分離合成モジュール14に入力された場合には、偏波分離合成モジュール14の内部に存在する偏波面選択性を有する反射面14Rで反射され、反射光の向かう側の側面の入出力端から出力される。偏波面選択性を有する反射面14Rは、偏光ビームスプリッタ等において、誘電体多層膜等によって形成されており、偏波面選択性を持つ反射特性を発現させている。
第1信号光は、偏波分離合成モジュール14の第3入出力端14-3に出力され、第3光ファイバ22によって構成される経路L3をTM偏波で伝播する。その後、偏波面回転部26でTE偏波に変換される。このようなことが起こるのは、既に図4を参照して説明したように偏波面回転部26が、PANDA型光ファイバのslow軸(fast軸)が直交するように対向させコアが合致するように密着させて融着されて形成されていることに起因する。例えば、光の電場ベクトルの振動方向がslow軸に平行になる直線偏波として導波されてきた場合、偏波面回転部26において、slow軸が90°回転された方向に変化するので、光の電場ベクトルの振動方向もこれに追随して90°回転される。すなわち、偏波面回転部26をTM偏波が通過すればTE偏波に変換され、TE偏波が通過すればTM偏波に変換されるように設定することができることを意味している。
偏波面回転部26を通過することでTM偏波からTE偏波に変換された第1信号光は、第4光ファイバで構成される経路L4を伝播して、偏波分離合成モジュール14の第2入出力端14-2にTE偏波として入力されるので、第3入出力端14-3から出力される。その後、経路L3をTE偏波として伝播し偏波面回転部26を通過することでTE偏波からTM偏波に変換されて、経路L4を伝播して偏波分離合成モジュール14の第2入出力端14-2にTM偏波として入力されるので、第4入出力端14-4から出力される。第4入出力端14-4からTM偏波として出力された第1信号光は、第2光ファイバ18で構成される経路L2を伝播して、光分波合成器10の第3ポート10-3に入力されて第2信号光と合波される。
第1乃至第4の光ファイバであるPANDA型光ファイバのslow軸の実効屈折率をns、fast軸の実効屈折率をnfとし、slow軸の方向がTE偏波の偏波面と合致するとしたとき、第1信号光が、光分波合成器10で分波されて光分波合成器10の第2ポート10-2を出て再び光分波合成器10の第3ポート10-3に戻り、光分波合成器10で合波されるまでの光路長は、第1信号光が伝播する経路順に加算して、次式(2)で与えられる。
nfl1+nfl3+nsl4+nsl3+nfl4+nfl2 (2)
ここで、l1、l2、l3、l4はそれぞれ経路L1、L2、L3、L4の長さである。
すなわち、第1光ファイバで形成される経路L1はTM偏波として伝播するので光路長は、nfl1であり、第2光ファイバで形成される経路L2もTM偏波として伝播するので光路長は、nfl2である。また、第1信号光が、偏波分離合成モジュール14の第3入出力端14-3から出力され、経路L3をTM偏波として伝播(光路長=nfl3)し、経路L4をTE偏波として伝播(光路長=nsl4)し、経路L3をTE偏波として伝播(光路長=nsl3)し、経路L4をTM偏波として伝播(光路長=nfl4)する合計の光路長は、nfl3+nsl4+nsl3+nfl4で与えられる。このことから、経路L3(第3光ファイバ)と経路L4(第4光ファイバ)をTM偏波及びTE偏波としてそれぞれ一回ずつ、合計2回伝播していることが分かる。
CCW方向に伝播する第2信号光についても、CW方向に伝播する第1信号光と同様に考えることができ、第2信号光が、光分波合成器10で分波されて光分波合成器10の第3ポート10-3を出て再び光分波合成器10の第2ポート10-2に戻り、光分波合成器10で合波されるまでの光路長も同様に、第2信号光の伝播する経路順に加算して、次式(3)で与えられる。
nfl2+nfl4+nsl3+nsl4+nfl3+nfl1 (3)
なお、制御光は、第1信号光と同一の経路であるCW方向に伝播する経路をたどる。
上式(2)と(3)とを比較すると、式(2)の第1項、2項、3項、4項、5項、6項と式(3)の第6項、5項、4項、3項、2項、1項とは、それぞれ等しいことが分かる。すなわち、第1信号光と第2信号光とは同一の光路長を伝播していることが分かる。
すなわち、制御光が入力されない場合には、第1信号光と第2信号光とは、光分波合成器10において同位相で合波される。その結果、光分波合成器10の第1ポート10-1に入力された信号光は、光分波合成器10の第1ポート10-1にループ反射光として出力される。一方、光カプラ12から制御光が入力されると光ファイバループ内で光カー効果が発現し屈折率が変化する。そのため、第1信号光と第2信号光とは、それぞれが経路L1乃至L4から構成される光ファイバループ内をそれぞれ時計回り及び反時計回りに伝播し、再び光分波合成器10に入力されて両者が結合されたときには両者の位相がずれている。
この位相ずれ量φがπに等しくなるように、制御光の強度を調整するか、あるいは第1乃至第4光ファイバ(特に第3及び第4光ファイバ)の長さを調整すれば、光分波合成器10の第1ポート10-1に入力された信号光は、光分波合成器10の第4ポート10-4にループ透過光として出力される。位相ずれ量φは上述の式(1)で与えられるように、経路L1乃至L4から構成される光ファイバループの合計の長さに比例する。すなわち、この発明の光スイッチは、経路L3(第3光ファイバ)と経路L4(第4光ファイバ)をTM偏波及びTE偏波としてそれぞれ一回ずつ、合計2回伝播する構成とされているので、実質的に経路L3(第3光ファイバ)と経路L4(第4光ファイバ)の長さ分だけ、光カー効果が発現する経路を長く取られていることに等しい。
第3及び第4光ファイバの長さは第1及び第2光ファイバに比べてはるかに長く設定されているので、光カー効果に基づく位相ずれ量φの発現に主に寄与しているのは第3及び第4光ファイバである。式(1)によれば、位相ずれ量φは、光ファイバループを構成している光ファイバの長さと制御光の強度との積に比例するので、この発明の光スイッチによれば、従来の光スイッチに比べて、光カー効果に基づく位相ずれ量φの発現に主に寄与する第3及び第4光ファイバに相当する光ファイバの長さは半分で済むことになる。
すなわち、光スイッチを構成する第3及び第4光ファイバの長さを短くできることは、光スイッチのコンパクト化に有効である。また、第3及び第4光ファイバの長さを短くできることにより、周囲温度等の影響を受けにくくなるため、光スイッチの動作状態の安定化にも有効である。
この発明の第1の実施の形態の光スイッチの動作を、時分割多重光パルス信号をスイッチングする場合を例にとり、図1を参照して具体的に説明する。図1において、光パルス信号である信号光、制御光及び光パルス信号がスイッチングされた結果としての透過光及び反射光の概略的時間波形を、横軸を時間軸として示してある。光パルスの存在及び不存在に対応させて「0」あるいは「1」を対応させる2値デジタル信号を想定する。規則正しく波長λsの光パルスが並ぶ信号光を、[1 1 0 1]を表現する波長λpの光パルス列からなる制御光で制御(スイッチング)する場合を考える。
信号光は光サーキュレータ28を介して第6光ファイバである光ファイバ34を伝播して光分波合成器10の第1ポート10-1に入力される。ここで、光ファイバ32はPANDA型光ファイバ等偏波面保存光ファイバを利用するのが好ましい。なぜならば、信号光をTM偏波として光分波合成器10の第1ポート10-1に入力する必要があるためである。
信号光は上述したように、光分波合成器10で第1信号光及び第2信号光に分波されて、第1信号光は、光分波合成器10の第2ポート10-2から第1光ファイバ16を伝播する。信号光の最初の光パルスである第1光パルス(図1では、時間軸上で最も右に位置する光パルス)が光カプラ12を通過する時に丁度、制御光の最初の光パルスである第1光パルス(図1では、時間軸上で最も右に位置する光パルス)が光カプラ12から入力されたと仮定する。もちろん、制御光もTM偏波として第1光ファイバに入力されるものとする。
第1信号光の光パルス(波長λs)と制御光の光パルス(波長λp)とは、並走しながら、第1乃至第4光ファイバを伝播することになる。そのため、第1信号光の光パルスに対する光ファイバの実効屈折率が制御光の光パルスによって発現する光カー効果により変化する。つまり、第1信号光の光パルスと制御光の光パルスとが並走することによって、制御光の光パルスの存在に起因して、常に実効屈折率が変化している光路を第1信号光の光パルスが伝播することになる。一方第2信号光の光パルス(波長λs)は、制御光の光パルスの影響を受けることなく第1信号光の光パルスとは逆向きに第1乃至第4光ファイバを伝播することになる。
この結果上式(2)に現れる実効屈折率ns及びnfの値は、上式(3)に現れる実効屈折率ns及びnfの値とは異なることになる。すなわち、上式(2)に現れる実効屈折率の値は、ns'及びnf'となる。
そこで、経路L3(第3光ファイバ)及び経路L4(第4光ファイバ)の長さを、
(nf'l1+nf'l3+ns'l4+ns'l3+nf'l4+nf'l2)−(nfl2+nfl4+nsl3+nsl4+nfl3+nfl1)=λs/2
となるように調整すれば、第1信号光の光パルスと第2信号光の光パルスが光分波合成器10において合波されるときの位相差をπとすることができる。ただし、光分波合成器10の第2ポート10-2から光カプラ12までの長さは、第3光ファイバ及び第4光ファイバの長さと比べて十分に短いので、この部分の長さを無視して上述の式は表現してある。
制御光の強度に応じて第3光ファイバ22及び第4光ファイバ24の長さを上述のように調整すれば、第1信号光の光パルスは、制御光の光パルスが、光カプラ12から第1光ファイバ16に入力されたときに限り、光分波合成器10の第4ポート10-4にループ透過光として出力される。
厳密には、制御光と信号光の波長はそれぞれλp及びλsであるので、波長が異なる。そのため、第2光ファイバ22及び第3光ファイバ24で生じる群速度分散による制御光と信号光との間の群遅延時間差が、信号光の光パルスの時間軸上での出現の間隔、すなわち信号光の1ビット(1光パルス)が占める時間間隔よりも短いことが必要である。しかしこの条件は、制御光の波長λpと信号光の波長λsとの差異はほとんどなく、容易に満足させることができる。制御光の波長λpと信号光の波長λsとの差異は、後述するようにスイッチングされた信号光のみを光スイッチから出力させるためには、光スイッチの出力側に設定される光バンドパスフィルタによって、制御光が遮断でき信号光を透過させることができる程度離れていればよい。
次に、第1信号光の第1光パルスの次の第2光パルスが光カプラ12を通過する時にも丁度、制御光の次の光パルスである第2光パルスが存在するが、第1信号光の第2光パルスの次の第3光パルスが光カプラ12を通過する時には、制御光の第2光パルスの次の光パルスである第3光パルスが存在しない。この場合には、第1信号光の第3光パルスは、制御光の光パルスが存在しない状態、つまり、第1信号光の光パルスは、制御光の光パルスと並走することなく、経路L1乃至L4から構成される光路を伝播することとなる。そのため、光分波合成器10において第1信号光の光パルスと第2信号光の光パルスとは同位相で合波される。第1信号光の光パルスは、光分波合成器10の第1ポート10-1にループ反射光として出力され、第6光ファイバである光ファイバ34を伝播して光サーキュレータ28を介して、信号光が伝播してきた伝送路とは異なる伝送路に向けて出力される。
この結果、光分波合成器10の第4ポート10-4から出力される透過光を構成する光パルス列は、図1に示すように、制御光を構成する光パルス列を反映させたものとなる。また、反射光は、制御光の光パルスの存在しない時間帯に、信号光の光パルスが存在する場合に限り、ループ反射光として光サーキュレータ28を介して外部に出力されるので、図1に示すようなパルス列となる。
また、光分波合成器10の第4ポート10-4からは、波長λpの制御光も出力されるので、スイッチングされた波長λsの信号光だけを外部に取り出すには、光分波合成器10の第4ポート10-4に第5光ファイバである光ファイバ32の一端を接続し、光ファイバ32の他端に、透過波長の中心がλsに設定されておりかつ波長λpを遮断できる特性を有する光バンドパスフィルタ30を接続する必要がある。
ループ反射光として光分波合成器10の第1ポート10-1に出力される第1信号光の光パルスは、光サーキュレータ28が配置されていなければ、伝送されてきた伝送路を逆に進み、送信側に返送されることになる。一般に時間多重光通信において、受信側から送信側に向けて、送信信号の一部が逆送されることは、好ましくないので、光サーキュレータ28を利用して、ループ反射光として光分波合成器10の第1ポート10-1に出力される第1信号光の光パルスを、信号光が伝播してきた伝送路とは異なる伝送路に向けて出力させる構成とするのが望ましい。
<第2の実施の形態>
図5を参照して第2の実施の形態の光スイッチの構造と動作について説明する。
(構造)
この発明の第2の実施の形態の光スイッチは、光分波合成器100と、第1光ファイバ116と、第2光ファイバ118と、光非線形制御部120とを具えている。光分波合成器100は、被制御光である信号光を入力する第1ポート100-1、第1光ファイバ116を接続する第2ポート100-2、第2光ファイバ118を接続する第3ポート100-3及びスイッチングされた信号光を出力する第4ポート100-4を具え、光強度の分岐比が1対1に調整されている。第1光ファイバ116は、光分波合成器100の第2ポート100-2にその一端が接続され、制御光を入力する光カプラ112を具えている。第2光ファイバ118は、光分波合成器100の第3ポート100-3にその一端が接続され、偏波面を90°回転させる第1偏波面回転部132を具えている。
光非線形制御部120は、第1光ファイバ116と第2光ファイバ118とが結合されており、第1入出力端122-1、第2入出力端122-2及び第3入出力端122-3を具える第1偏波分離合成モジュール122と、第1入出力端124-1、第2入出力端124-2及び第3入出力端124-3を具える第2偏波分離合成モジュール124と、第3光ファイバ126と、第4光ファイバ128とを具えている。第3光ファイバ126は、第1偏波分離合成モジュール122の第1入出力端122-1に対向する側の第2入出力端122-2にその一端が結合され、第2偏波分離合成モジュール124の第3入出力端124-3に対向する側の第1入出力端124-1にその他端が結合されている。第4光ファイバ128は、偏波面を90°回転させる第2偏波面回転部130を具え、第1偏波分離合成モジュール122の第3入出力端122-3にその一端が結合され、第2偏波分離合成モジュール124の第1入出力端124-1に対向する側の第3入出力端124-3にその一端が結合されている。
そして、第1偏波分離合成モジュール122の第1入出力端122-1には第1光ファイバ116の他端が結合されており、第2偏波分離合成モジュール124の第2入出力端124-2には第2光ファイバ118の他端が結合されている。
第1光ファイバ116、第2光ファイバ118、第3光ファイバ126及び第4光ファイバ128には、第1の実施の形態の光スイッチで利用されたPANDA型光ファイバ等の偏波面保存光ファイバを用いて構成するのが好ましい。また、光分波合成器100も、第1の実施の形態の光スイッチで利用されたものと同一の方向性光結合器等を利用でき、光カプラ112も第1の実施の形態の光スイッチで利用されたものと同一の光カプラを利用できる。また、偏波分離合成モジュール122、124も第1の実施の形態の光スイッチで利用された偏光ビームスプリッタ等を利用できる。
第1偏波分離合成モジュール122及び第2偏波分離合成モジュール124は、第1の実施の形態で利用した偏波分離合成モジュール14とは入出力端が1つ少なく、3つの入出力端を有した構成である。第1偏波分離合成モジュール122及び第2偏波分離合成モジュール124の特性は、構造が同一であるので、第1偏波分離合成モジュール122について説明する。
TM偏波として偏波分離合成モジュール122に入力された場合には、偏波分離合成モジュール122の内部を直進し入力側とは対向する側の入出力端に出力される。一方、TE偏波として偏波分離合成モジュール122に入力された場合には、偏波分離合成モジュール122の内部に存在する偏波面選択性を有する反射面122Rで反射され、反射光の向かう側の側面の入出力端から出力される。
また、光サーキュレータ134及び光バンドパスフィルタ136の役割についても、第1の実施の形態の光スイッチの場合と共通するので、その説明を省略する。
(動作)
図5を参照して、第2の実施の形態の光スイッチの動作原理を説明する。ここでも、信号光はTM偏波であるものとして説明する。第2の実施の形態の光スイッチによれば、信号光が第1ポート100-1から光分波合成器100に入力されて第1信号光と第2信号光とに分岐され、第1信号光は第2ポート100-2から出力されて第1光ファイバ116に入力され、第2信号光は第3ポート100-3から出力されて第2光ファイバに118入力される。
第1信号光は、第1光ファイバ116を伝播した後、光非線形制御部120に入力される。すなわち、第1偏波分離合成モジュール122の第1入出力端122-1から入力されて第2入出力端122-2から出力されて第3光ファイバ126に入力されてその第3光ファイバ126を伝播し、第2偏波分離合成モジュール124の第1入出力端124-1から入力され第3入出力端124-3から出力されて第4光ファイバ128に入力される。
そして、第4光ファイバ128を伝播して第4光ファイバ128の途中位置に設けられている第2偏波面回転部130で偏波面が90°回転されて、第1偏波分離合成モジュール122の第3入出力端122-3に入力される。そして、第1偏波分離合成モジュール122の第2入出力端122-2から出力されて再び第3光ファイバ126を伝播し、第2偏波分離合成モジュール124の第1入出力端124-1に入力されて、第2入出力端124-2から出力されて第2光ファイバ118を伝播して、第2光ファイバ118の途中の位置に設けられている第1偏波面回転部132で偏波面が90°回転され光分波合成器100の第3ポート100-3に戻る。
一方、第2信号光は、第2光ファイバ118を伝播して、第2光ファイバ118の途中の位置に設けられている第1偏波面回転部132で偏波面が90°回転された後、光非線形制御部120に入力される。すなわち、第2偏波分離合成モジュール124の第2入出力端124-2から入力されて第1入出力端124-1から出力され第3光ファイバ126に入力されて第3光ファイバ126を伝播して第1偏波分離合成モジュール122の第2入出力端122-2から入力されて第3入出力端122-3から出力されて第4光ファイバ128に入力される。そして、第4光ファイバ128を伝播して第4光ファイバの途中位置に設けられている第2偏波面回転部130で偏波面が90°回転されて、第2偏波分離合成モジュール124の第3入出力端124-3に入力される。そして、第2偏波分離合成モジュール124の第1入出力端124-1から出力されて再び第3光ファイバ126を伝播し、第1偏波分離合成モジュール122の第2入出力端122-2に入力されて、第1入出力端122-1から出力されて第1光ファイバ116を伝播して光分波合成器100の第2ポート100-2に戻る。
制御光が第1光ファイバ116の途中に設置された光カプラ112を介して第1光ファイバ116に入力されると、光分波合成器100の第4ポート100-4からループ透過光として出力光が外部に出力される点は第1の実施の形態の光スイッチと共通する。そして、第2の実施の形態の光スイッチにおいては、第1及び第2信号光が第3光ファイバをそれぞれ2回伝播する構成となっている。このことによって、第3光ファイバの長さを実質的に2倍にしたのと同等の効果がある。
第2の実施の形態の光スイッチが第1の実施の形態の光スイッチと相違するのは、次の点である。すなわち、偏波分離合成モジュールを、第1偏波分離合成モジュール122及び第2偏波分離合成モジュール124として2箇所に設定する構成であるので、スイッチングされる信号光の偏波面の選択性が2倍高まり、第1の実施の形態の光スイッチに比べ、偏波クロストーク成分の除去がより効果的に行なわれる。また、偏波分離合成モジュールの偏波面選択性が不完全である場合でも、実質的に偏波分離合成モジュールによる偏波面選択性が向上する。
第1及び第2信号光が第3光ファイバをそれぞれ2回伝播する構成となっている。このようなことが実現するのは、第1偏波面回転部132及び第2偏波面回転部130で偏波面が90°回転されることと、第1偏波分離合成モジュール122及び第2偏波分離合成モジュール124の偏波面選択性に起因する。この理由は次のとおりである。
信号光を、TM偏波(光の電場ベクトルの振動方向が紙面に対して平行な偏光)として偏波面保存光ファイバ140に入力させて光分波合成器100の第1ポート100-1に入力させる。ここで、CW方向に伝播する第1信号光を考える。第1信号光は、第1光ファイバ116によって構成される経路L1をTM偏波として伝播して第1偏波分離合成モジュール122の第1入出力端122-1に入力され、第2入出力端122-2から出力される。これは、TM偏波として第1偏波分離合成モジュール122の第1入出力端122-1に入力されたので、第1偏波分離合成モジュール122の内部を直進し第1入出力端122-1と対向する側の第2入出力端122-2に出力されることとなる。
既に説明したように、TM偏波として第1偏波分離合成モジュール122に入力された場合には、第1偏波分離合成モジュール122の内部を直進し入力側とは対向する側の入出力端に出力される。一方、TE偏波として第1偏波分離合成モジュール122に入力された場合には、第1偏波分離合成モジュール122の内部に存在する偏波面選択性を有する反射面122Rで反射され、反射光の向かう側の側面の入出力端から出力される。第2偏波分離合成モジュール124についても同様である。
第1信号光は、第1偏波分離合成モジュール122の第2入出力端122-2に出力され、第3光ファイバ126をTM偏波で伝播する。その後、第2偏波分離合成モジュール124の第1入出力端124-1に入力されて、第3入出力端124-3から出力され第4光ファイバ128をTM偏波で伝播する。第4光ファイバ128の途中に設置されている第2偏波面回転部130を通過することでTM偏波からTE偏波に変換され、第1偏波分離合成モジュール122の第3入出力端122-3に入力され、TE偏波であることから、第2入出力端122-2から出力される。
第2入出力端122-2からTE偏波として出力された第1信号光は、再び第3光ファイバ126を伝播して、第2偏波分離合成モジュール124の第1入出力端124-1に入力され、TE偏波であることから、第2入出力端124-2から出力されて、第2光ファイバ118を伝播する。そして第2光ファイバ118の途中に設置されている第1偏波面回転部132を通過することによって、TE偏波からTM偏波に変換されて、光分波合成器100の第3ポート10-3に入力されて第2信号光と合波される。
第1の実施の形態の光スイッチの場合と同様に、第1乃至第4の光ファイバであるPANDA型光ファイバのslow軸の実効屈折率をns、fast軸の実効屈折率をnfとし、slow軸の方向がTE偏波の偏波面と合致するとしたとき、CW方向に伝播する第1信号光が、光分波合成器100で分波されて光分波合成器100の第2ポート100-2を出て再び光分波合成器100の第3ポート100-3に戻り、光分波合成器100で合波されるまでの光路長は、次のように求められる。
第1光ファイバ116の長さをl1、第3光ファイバ126の長さをl2、第2偏波分離合成モジュール124の第3入出力端124-3から第2偏波面回転部130までの第4光ファイバ128の長さをl3、第2偏波面回転部130から、第1偏波分離合成モジュール122の第3入出力端122-3までの第4光ファイバ128の長さをl4、第2偏波分離合成モジュール124の第2入出力端124-2から第1偏波面回転部132までの第2光ファイバ118の長さをl5、第1偏波面回転部132から光分波合成器100の第3ポート100-3までの長さをl6とすれば、光路長は、第1信号光が伝播する経路順に加算して、次式(4)
nfl1+nfl2+nfl3+nsl4+nsl2+nsl5+nfl6 (4)
で与えられる。
すなわち、第1信号光は、第1光ファイバ116をTM偏波として伝播するので光路長は、nfl1であり、第3光ファイバ126もTM偏波として伝播するので光路長は、nfl2である。また、第1信号光が、第2偏波分離合成モジュール124の第3入出力端124-3から第2偏波面回転部130までの第4光ファイバ128をTM偏波として伝播するので光路長は、nfl3である。次に、第2偏波面回転部130から、第1偏波分離合成モジュール122の第3入出力端122-3までの第4光ファイバ128をTE偏波として伝播するので、光路長は、nsl4である。次に、再び第3光ファイバ126をTE偏波として伝播するので光路長はnsl2である。次に第2偏波分離合成モジュール124の第2入出力端124-2から第1偏波面回転部132までの第2光ファイバ118をTE偏波として伝播するので光路長は、nsl5である。そして、第1偏波面回転部132から光分波合成器100の第3ポート100-3までをTM偏波として伝播するので光路長は、nfl6である。
このことから、第3光ファイバ126をTM偏波及びTE偏波としてそれぞれ一回ずつ、合計2回伝播していることが分かる。
CCW方向に伝播する第2信号光についても、CW方向に伝播する第1信号光と同様に考えることができ、第2信号光が、光分波合成器100で分波されて光分波合成器100の第3ポート100-3を出て再び光分波合成器100の第2ポート10-02ポートに戻り、光分波合成器100で合波されるまでの光路長は、第2信号光が伝播する経路順に加算して、次式(5)
nfl6+nsl5+nsl2+nsl4+nfl3+nfl2+nfl1 (5)
で与えられる。
なお、第2の実施の形態の光スイッチにおいても、制御光は第1信号光と同一の経路であるCW方向に伝播する経路をたどる。
上式(4)と(5)とを比較すると、式(4)の第1項、2項、3項、4項、5項、6項、7項と式(5)の第7項、6項、5項、4項、3項、2項、1項とは、それぞれ等しいことが分かる。すなわち、第1信号光と第2信号光とは同一の光路長を伝播していることが分かる。
第1の実施の形態の光スイッチと同様に、制御光が入力されない場合には、光分波合成器100の第1ポート100-1入力された信号光は、光分波合成器100の第1ポート100-1にループ反射光として出力される。一方、光カプラ112から制御光が入力されると光ファイバループ内で光カー効果が発現し屈折率が変化する。そのため、第1信号光と第2信号光とは、再び光分波合成器100に入力されて両者が結合されたときには両者の位相がずれている。
この位相ずれ量φがπに等しくなるように、制御光の強度を調整するか、あるいは第1乃至第4光ファイバ(特に第3光ファイバ)の長さを調整すれば、光分波合成器100の第1ポート100-1に入力された信号光は、光分波合成器100の第4ポート100-4にループ透過光として出力される。この発明の第2の実施の形態の光スイッチは、第3光ファイバ126をTM偏波及びTE偏波としてそれぞれ一回ずつ、合計2回伝播する構成とされているので、第3光ファイバ126の長さ分だけ、光カー効果が発現する経路を長く取られていることに等しい。