JP2006009626A - 可変容量圧縮機 - Google Patents
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Abstract
【課題】 カムプレートの傾斜角度の変更を円滑に行うことが可能なヒンジ機構を備えた可変容量圧縮機を提供すること。
【解決手段】 斜板18の傾斜角度の変更を案内するヒンジ機構19は、ラグプレート17に設けられた凸曲面状のラグプレート側ガイド面46aと、斜板18に設けられた凸曲面状の斜板側ガイド面22aとを備えている。ラグプレート側ガイド面46aの中心軸線Q及び斜板側ガイド面22aの中心軸線Pは、駆動軸16の中心軸線Lと斜板18の上死点対応位置TDCとで決定される仮想平面に対して、それぞれ直交する。斜板18の傾斜角度の変更は、斜板側ガイド面22aがラグプレート側ガイド面46aに当接することで、最小傾斜角度から最大傾斜角度まで案内される。
【選択図】 図1
【解決手段】 斜板18の傾斜角度の変更を案内するヒンジ機構19は、ラグプレート17に設けられた凸曲面状のラグプレート側ガイド面46aと、斜板18に設けられた凸曲面状の斜板側ガイド面22aとを備えている。ラグプレート側ガイド面46aの中心軸線Q及び斜板側ガイド面22aの中心軸線Pは、駆動軸16の中心軸線Lと斜板18の上死点対応位置TDCとで決定される仮想平面に対して、それぞれ直交する。斜板18の傾斜角度の変更は、斜板側ガイド面22aがラグプレート側ガイド面46aに当接することで、最小傾斜角度から最大傾斜角度まで案内される。
【選択図】 図1
Description
本発明は、カムプレートの傾斜角度を変更することで吐出容量を可変する、例えば、車両空調装置等の冷媒循環回路を構成する可変容量圧縮機に関する。
この種の可変容量圧縮機として、本願出願人は、例えば特許文献1に記載された従来技術を提案している。図11に、従来の可変容量圧縮機の一例を示す。図11に示すように、駆動軸101にはラグプレート102が一体回転可能に固定されている。駆動軸101には斜板(カムプレート)103が支持されている。斜板103は、駆動軸101に対する傾斜角度を変更可能である。ラグプレート102と斜板103との間にはヒンジ機構104が介在されている。斜板103にはピストン105が係留されている。
駆動軸101は、車両におけるエンジンや電動モータ等の駆動源(図示しない)によって回転駆動される。駆動軸101が回転すると、ラグプレート102が同期回転し、ラグプレート102の回転力は、ヒンジ機構104を介して斜板103に伝達され、斜板103が回転する。斜板103が回転すると、前記したように係留されたピストン105が往復動し、冷媒ガスの圧縮が行われる。
ヒンジ機構104は、斜板103の傾斜角度を変更するための機構であり、この角度を変更することで、ピストン105のストロークが変更され、可変容量圧縮機の吐出容量が変えられる。
ヒンジ機構104は、ラグプレート102に設けられたガイド溝106と、斜板103に設けられたアーム107とを有する。アーム107の先端部はガイド溝106内に挿入されている。ガイド溝106内には、斜板103側に向かう平面状のカム面106aと、駆動軸101の回転方向の前側(紙面手前側)に向かう動力伝達面106bとが備えられている。カム面106aは、駆動軸101の中心軸線Lと斜板103の上死点対応位置TDCとで決定される仮想平面に対して直交し、かつ駆動軸101の中心軸線Lに対して傾斜されている。
アーム107の先端部には、凸曲面からなる柱面107aが設けられている。柱面107aの中心軸線Pは、駆動軸101の中心軸線Lと斜板103の上死点対応位置TDCとで決定される仮想平面に対して直交されている。アーム107の先端部は、駆動軸101の回転方向の後側に向かう側面において、ガイド溝106内の動力伝達面106bに対して当接されている。したがって、ラグプレート102の回転力は、ガイド溝106内の動力伝達面106b及びアーム107の側面を介して斜板103へと伝達される。
アーム107の先端部は、柱面107aにおいてガイド溝106内のカム面106aに対して当接されている。したがって、斜板103は、柱面107aがガイド溝106のカム面106a上を駆動軸101に対して接近又は離間する方向へ摺動することで案内され、中心軸線Lに対する傾斜角度が変更される。
なお、本明細書において、駆動軸(若しくは駆動軸の中心軸線)に対する斜板の傾斜角度とは、当該中心軸線と斜板とがなす角度が直角のときを0度(最小傾斜角度)としている。
特開平9−203377号公報(第4−第5頁、第2図)
本願出願人は、以上のような構成の、柱面107aとカム面106aとの当接位置の集合が略直線となる(線接触する)ことで、両者間の摩擦を小さくし、これによって斜板103の傾斜角度の変更制御(吐出容量制御)を容易にした優れた可変容量圧縮機を提案しているが、本願発明者らは、上記したヒンジ機構をさらに改良した可変容量圧縮機を提供することを課題としている。例えば、以下のような点をよりよくした可変容量圧縮機を提供することを目的としている。
上記した従来技術において、斜板103には、冷媒ガスの圧縮に起因した圧縮荷重がピストン105を介して作用している。この圧縮荷重は、アーム107の柱面107a及びガイド溝106内のカム面106aを介して、ラグプレート102によって受承される。つまり、上記圧縮荷重によって、柱面107aがカム面106aに強く押し付けられている。また、柱面107aとカム面106aとは、理論的には線接触するが、柱面107a及びカム面106aの寸法公差や面粗度等の影響を受けて面接触してしまう可能性もある。
このため、斜板103の傾斜角度が変更される際に、柱面107aとカム面106aとの間に大きな摩擦抵抗が生じてしまう可能性もあった。
一方、近年の環境問題対策の一環として、冷媒に二酸化炭素等を用いることがある。このような可変容量圧縮機では、例えば代替フロンを冷媒として用いた場合と比較して、遙かに高い冷媒圧力を生み出す必要がある。そのため、圧縮荷重がより大きくなってしまう可能性もあった。
一方、近年の環境問題対策の一環として、冷媒に二酸化炭素等を用いることがある。このような可変容量圧縮機では、例えば代替フロンを冷媒として用いた場合と比較して、遙かに高い冷媒圧力を生み出す必要がある。そのため、圧縮荷重がより大きくなってしまう可能性もあった。
以上のように、圧縮荷重が大きくなってしまうと、柱面107aとカム面106aとの摺動性が低下し、斜板103の傾斜角度の変更(吐出容量の変更)が困難になってしまう可能性がある。そこで、本願出願人は、前記した優れた可変容量圧縮機を改良し、容量制御性がさらに高い可変容量圧縮機、すなわち、斜板(カムプレート)の傾斜角度の変更を極めて円滑に行うことが可能なヒンジ機構を備えた可変容量圧縮機を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、本発明に係る可変容量圧縮機は、以下の構成要素を備えている。
・駆動軸。
・駆動軸に連結され、駆動軸と同期回転されるラグプレート。
・駆動軸が貫通されて支持されたカムプレート。
・ラグプレートとカムプレートとの間に設けられ、カムプレートの駆動軸に対する傾斜角度を変更させ、かつ、ラグプレートによる回転力をカムプレートへ伝達するヒンジ機構。
・駆動軸。
・駆動軸に連結され、駆動軸と同期回転されるラグプレート。
・駆動軸が貫通されて支持されたカムプレート。
・ラグプレートとカムプレートとの間に設けられ、カムプレートの駆動軸に対する傾斜角度を変更させ、かつ、ラグプレートによる回転力をカムプレートへ伝達するヒンジ機構。
そして、ヒンジ機構は以下のように構成されている。
・カムプレートにおいてラグプレート側に向かって突設されたアームと、ラグプレートにおいてカムプレート側に向かって突設された支持部とを備えている。
・支持部は、カムプレート側に凸の凸部を備え、凸部のカムプレート側には、略曲面で構成された側面を有する略柱における当該側面の一部又は全部と同一形状のラグプレート側ガイド面が設けられている。この柱は、略円柱とすることが好ましい。
・アームは、カムプレートを基準としてラグプレート側に凸のカムプレート側ガイド面が設けられ、カムプレート側ガイド面は、略曲面で構成されている。例えば球面の一部又は全部と略同一とすることもできる。
・カムプレート側ガイド面がラグプレート側ガイド面を摺動してカムプレートの駆動軸に対する傾斜角度が変更される。
・カムプレートにおいてラグプレート側に向かって突設されたアームと、ラグプレートにおいてカムプレート側に向かって突設された支持部とを備えている。
・支持部は、カムプレート側に凸の凸部を備え、凸部のカムプレート側には、略曲面で構成された側面を有する略柱における当該側面の一部又は全部と同一形状のラグプレート側ガイド面が設けられている。この柱は、略円柱とすることが好ましい。
・アームは、カムプレートを基準としてラグプレート側に凸のカムプレート側ガイド面が設けられ、カムプレート側ガイド面は、略曲面で構成されている。例えば球面の一部又は全部と略同一とすることもできる。
・カムプレート側ガイド面がラグプレート側ガイド面を摺動してカムプレートの駆動軸に対する傾斜角度が変更される。
また、ラグプレート側ガイド面を複数設け、カムプレート側ガイド面を、カムプレートの駆動軸に対する傾斜角度に応じて所定のラグプレート側ガイド面と当接して摺動するようにすることが好ましい。
この場合、ラグプレート側ガイド面は、各面と略同一形状の仮想的な柱における底面の中心を結んだ軸線を中心として、駆動軸と略平行な方向を基準とした場合における、カムプレート側ガイド面との当接位置の角度が、面ごとに一部又は全部が異なるようにするとさらに好ましい。
このような可変容量圧縮機は、凸部を、略円筒の部材を支持部に組み付けられて設けてもよい。
また、カムプレート側ガイド面は、略柱の側面の一部又は全部と同一形状であり、この仮想的な柱における底面の中心同士を結んだ軸線と、ラグプレート側ガイド面と略同一形状の仮想的な柱における底面の中心同士を結んだ軸線とが略平行に配置してもよい。
また、カムプレート側ガイド面は、略柱の側面の一部又は全部と同一形状であり、この仮想的な柱における底面の中心同士を結んだ軸線と、ラグプレート側ガイド面と略同一形状の仮想的な柱における底面の中心同士を結んだ軸線とが略平行に配置してもよい。
さらに、凸部は、ラグプレート側ガイド面と略同一形状の仮想的な柱における底面の中心同士を結んだ軸線を中心として回転可能に構成してもよい。
なお、ラグプレート側ガイド面は、略柱(好ましくは略円柱)の側面の一部又は全部と同一形状にするようにしたり、略錐(好ましくは略円錐)の側面(斜面)の一部又は全部と同一形状にするようにしたりしてもよい。
なお、ラグプレート側ガイド面は、略柱(好ましくは略円柱)の側面の一部又は全部と同一形状にするようにしたり、略錐(好ましくは略円錐)の側面(斜面)の一部又は全部と同一形状にするようにしたりしてもよい。
以上の構成には、以下の構成を有する可変容量圧縮機が当然に含まれている。
・ラグプレートとカムプレートとを連結するヒンジ機構が、ラグプレートに設けられた凸曲面状のラグプレート側ガイド面と、カムプレートに設けられた凸曲面状のカムプレート側ガイド面とを備えている。
・ラグプレート側ガイド面の中心軸線及びカムプレート側ガイド面の中心軸線は、駆動軸の中心軸線とカムプレートの上死点対応位置とで決定される仮想平面に対して、それぞれ直交又は略直交している。
・カムプレートの傾斜角度の変更は、カムプレート側ガイド面がラグプレート側ガイド面に当接することで、最小傾斜角度から最大傾斜角度まで案内される。
・ラグプレートとカムプレートとを連結するヒンジ機構が、ラグプレートに設けられた凸曲面状のラグプレート側ガイド面と、カムプレートに設けられた凸曲面状のカムプレート側ガイド面とを備えている。
・ラグプレート側ガイド面の中心軸線及びカムプレート側ガイド面の中心軸線は、駆動軸の中心軸線とカムプレートの上死点対応位置とで決定される仮想平面に対して、それぞれ直交又は略直交している。
・カムプレートの傾斜角度の変更は、カムプレート側ガイド面がラグプレート側ガイド面に当接することで、最小傾斜角度から最大傾斜角度まで案内される。
ラグプレート側ガイド面とカムプレート側ガイド面との接触は線接触であるが、上記したラグプレート側ガイド面とカムプレート側ガイド面は、これらの接触位置から周方向へ離れるにつれて相手の柱面から積極的に離間しようとする形状である。したがって、ラグプレート側ガイド面とカムプレート側ガイド面との接触は、ラグプレート側ガイド面及びカムプレート側ガイド面の寸法公差や面粗度の影響を受け難く、凸曲面状の柱面と凹曲面状の柱面との接触等と比較して、より線接触に近い状態を得ることができる。よって、カムプレートの傾斜角度の変更を極めて円滑に行うことが可能となる。
カムプレートの傾斜角度の変更を最小傾斜角度から最大傾斜角度まで案内するラグプレート側ガイド面とカムプレート側ガイド面の案内組を、ラグプレート側ガイド面が一つとカムプレート側ガイド面が一つとで構成してもよい。このように構成すれば、例えば、案内組が、ラグプレート側ガイド面及びカムプレート側ガイド面の少なくとも一方を複数備える場合と比較して、ヒンジ機構の構成を簡素化できる。
また、カムプレートの傾斜角度の変更を最小傾斜角度から最大傾斜角度まで案内する、ラグプレート側ガイド面とカムプレート側ガイド面の案内組を、ラグプレート側ガイド面及びカムプレート側ガイド面のうちの一方の柱面が一つと、ラグプレート側ガイド面及びカムプレート側ガイド面のうちの他方の柱面が複数とで構成してもよい。このように構成すれば、カムプレートの傾斜角度の変更に応じて、一方の柱面が当接する他方の柱面を順次変更することができる。
ここで、カムプレート側ガイド面の中心軸線は、カムプレートの傾斜角度の変更に応じて、ラグプレート側ガイド面に沿う形状の移動軌跡をラグプレートに対して描く。カムプレート側ガイド面の中心軸線がラグプレートに対して描く移動軌跡は、その形状や寸法が、ピストンのトップクリアランスの変動特性や、可変容量圧縮機の容量制御性に大きな影響を与える。これら可変容量圧縮機の特性を様々に設定可能とするにおいて、カムプレート側ガイド面の中心軸線の移動軌跡を決定するパラメータは、できるだけ多いほうが設計上都合がよい。
一方、上記構成においては、一方の柱面が当接する他方の柱面が、カムプレートの傾斜角度域毎に異なっている。つまり、例えば案内組が、ラグプレート側ガイド面が一つとカムプレート側ガイド面が一つとからなっている場合と比較して、カムプレート側ガイド面の中心軸線の移動軌跡を決定するためのパラメータが多く存在し、可変容量圧縮機の特性を設定する上での自由度を高くすることができる。
また、ラグプレート及びカムプレートの少なくとも一方に円柱体が取り付けられた構成としてもよい。この場合、円柱体の外周面によって、ラグプレート側ガイド面及び/又はカムプレート側ガイド面が提供される。
ラグプレート側ガイド面をラグプレートに直接形成する場合等には、その形成工程において、大型でかつ複雑な形状のワーク(ラグプレートやカムプレート)を取り扱う必要があるが、上記構成を採用すれば、柱面を形成する対象となるワークが、小型でかつ単純な形状の円柱体であるため、高精度で形成することが容易となる。
なお、この構成において、円柱体を、それが取り付けられたラグプレート及び/又はカムプレートによって、自身の中心軸線を中心として回転できるようにしてもよい。このように構成すれば、カムプレートが傾斜角度を変更する際には、円柱体が回転することとなり、カムプレートの傾斜角度の変更をさらに円滑に行うことが可能となる。
本発明によれば、カムプレートの傾斜角度の変更を円滑に行うことが可能となり、可変容量圧縮機の容量制御性を向上させることができる。
以下、本実施の形態に係る可変容量圧縮機を、車両空調装置の冷媒循環回路に用いられる可変容量型斜板式圧縮機に具体化した第1実施形態及び第2実施形態について説明する。
〈第1実施形態〉
図1は、可変容量型斜板式圧縮機(以下単に圧縮機とする)10の縦断面図を示す。図1において左方を圧縮機10の前方とし、右方を圧縮機10の後方とする。図1に示すように、圧縮機10のハウジングは、シリンダブロック11、フロントハウジング12及びリヤハウジング14を備える。フロントハウジング12は、シリンダブロック11の前端に接合されている。リヤハウジング14は、シリンダブロック11の後端に弁・ポート形成体13を介して固定されている。
〈第1実施形態〉
図1は、可変容量型斜板式圧縮機(以下単に圧縮機とする)10の縦断面図を示す。図1において左方を圧縮機10の前方とし、右方を圧縮機10の後方とする。図1に示すように、圧縮機10のハウジングは、シリンダブロック11、フロントハウジング12及びリヤハウジング14を備える。フロントハウジング12は、シリンダブロック11の前端に接合されている。リヤハウジング14は、シリンダブロック11の後端に弁・ポート形成体13を介して固定されている。
圧縮機10のハウジング内において、シリンダブロック11とフロントハウジング12との間にはクランク室15が区画されている。シリンダブロック11とフロントハウジング12との間には、駆動軸16が回転可能に架設されている。すなわち、駆動軸16は、リヤハウジング14並びにフロントハウジング12に担持され、クランク室15を通るように配置されている。
駆動軸16は、動力伝達機構PTを介して、車両の走行駆動源としてのエンジン(内燃機関)Eやモータ等の駆動装置に作動連結されている。動力伝達機構PTは、外部からの電気制御によって動力の伝達/遮断を選択可能なクラッチ機構(例えば電磁クラッチ)であってもよく、または、そのようなクラッチ機構を持たない常時伝達型のクラッチレス機構(例えばベルト/プーリの組合せ)であってもよい。本実施形態では、クラッチレス機構からなる動力伝達機構PTが採用されている。駆動軸16は、エンジンEの稼働時においては、エンジンEから動力の供給を常時受けて、矢印Rの方向に中心軸線Lを中心として回転する。
駆動軸16には、クランク室15内において、実質的に円盤状をなすラグプレート17が固定されている。したがって、ラグプレート17は、駆動軸16が回転すると、これに同期して回転する。
また、クランク室15内には、カムプレートとしての斜板18が収容され、斜板18の中央部に形成された挿通孔18aに駆動軸16が挿通されている。斜板18の挿通孔18a内において、駆動軸16にはスライダ20が支持されている。スライダ20は、駆動軸16の中心軸線Lに沿う方向へスライド移動が可能である。
スライダ20には軸部20aが設けられている。軸部20aには斜板18が、軸部20aを中心として所定の角度範囲内において回転可能に支持されている。つまり、駆動軸16に対する傾斜角度を変更可能としている。
ラグプレート17と斜板18との間には、ヒンジ機構19が介在されている。斜板18は、ヒンジ機構19を介したラグプレート17との間でのヒンジ連結、及びスライダ20を介した駆動軸16の支持により、ラグプレート17及び駆動軸16と同期回転する。また、駆動軸16の中心軸線Lに沿う方向への移動を伴いながら、駆動軸16に対する傾斜角度が変更可能となっている。
シリンダブロック11において駆動軸16の中心軸線L周りには、複数(図面には一つのみ示す)のシリンダボア27が等角度間隔で前後方向に貫通されている。片頭型のピストン28は、各シリンダボア27内において前後方向へ移動可能に収容されている。シリンダボア27の前後開口は、弁・ポート形成体13の前端面及びピストン28によって閉塞されている。つまり、シリンダボア27内には、ピストン28の前後方向への移動に応じて容積変化する圧縮室29が区画されている。
各ピストン28は、半球状をなす一対のシュー30を介して斜板18の外周部に係留されている。これにより、斜板18の回転運動は、シュー30を介してピストン28の往復運動に変換される。
ハウジング内において、弁・ポート形成体13とリヤハウジング14との間には、吸入室31及び吐出室40がそれぞれ区画されている。弁・ポート形成体13には、圧縮室29と吸入室31との間に位置するように、吸入ポート32及び吸入弁33がそれぞれ形成されている。また、弁・ポート形成体13には、圧縮室29と吐出室40との間に位置するように、吐出ポート34及び吐出弁35がそれぞれ形成されている。
吸入室31内の冷媒(本実施形態では二酸化炭素)ガスは、各ピストン28の上死点位置から下死点位置側への移動により、吸入ポート32及び吸入弁33を介して圧縮室29内へと吸入される。圧縮室29内に吸入された冷媒ガスは、ピストン28の下死点位置から上死点位置側への移動により所定の圧力にまで圧縮された後、吐出ポート34及び吐出弁35を介して吐出室40内へと吐出される。
斜板18の傾斜角度は、斜板18の回転時の遠心力に起因する回転運動のモーメント、ピストン28の往復慣性力によるモーメント、及び、ピストン28の前後に作用するガス圧によるモーメント等の各種モーメントの相互バランスに基づいて決定される。ガス圧によるモーメントとは、圧縮室29の内圧と、ピストン28の背圧にあたるクランク室15の内圧との相互関係に基づいて発生するモーメントであり、クランク室15の内圧に応じて傾斜角度の減少方向にも傾斜角度の増大方向にも作用する。
圧縮機10のハウジング内には、抽気通路36、給気通路37及び制御弁38が設けられている。抽気通路36は、クランク室15と吸入室31とを接続する。給気通路37は、吐出室40とクランク室15とを接続する。給気通路37の途中には、電磁弁を有する周知の制御弁38が配設されている。制御弁38は、その開度を調節することで、給気通路37を介したクランク室15内への高圧な吐出ガスの導入量と、抽気通路36を介したクランク室15内からのガス導出量とを調整する。この制御によって、クランク室15の内圧を決定する。
制御弁38は、クランク室15の内圧を低下することで、斜板18の傾斜角度を大きくする。これにより、ピストン28のストロークが増大するため、圧縮機10の吐出容量が増大する。図1及び図3には、斜板18の傾斜角度が最大となった状態を示している。この状態は、図にも示すように、斜板18の中央部がラグプレート17に当接することで維持される。斜板18の最大傾斜角度は、例えば15°〜25°に設定される。
制御弁38は、クランク室15の内圧を上昇させることで、斜板18の傾斜角度を小さくする。これにより、ピストン28のストロークが減少するため、圧縮機10の吐出容量が減少する。図4には、斜板18の傾斜角度が最小となった状態を示している。この状態は、斜板18の中央部が、駆動軸16に装着されたサークリップ23に当接することで維持される。斜板18の最小傾斜角度は、一般に、ゼロ又はゼロ近傍の極小さい角度(例えば0°〜3°)に設定される。
次に、ヒンジ機構19について説明する。
図1〜図3に示すように、斜板18における上死点対応位置TDC若しくはその近傍に、ラグプレート17側に向かって、アームとしての斜板側アーム21が突設されている。上死点対応位置TDCとは、上死点に位置するピストン28を係留している斜板18におけるシュー30の曲率中心点である。斜板側アーム21のラグプレート17側の先端部22には、カムプレート側ガイド面としての斜板側ガイド面22aが設けられている。
図1〜図3に示すように、斜板18における上死点対応位置TDC若しくはその近傍に、ラグプレート17側に向かって、アームとしての斜板側アーム21が突設されている。上死点対応位置TDCとは、上死点に位置するピストン28を係留している斜板18におけるシュー30の曲率中心点である。斜板側アーム21のラグプレート17側の先端部22には、カムプレート側ガイド面としての斜板側ガイド面22aが設けられている。
斜板側ガイド面22aは、斜板18を基準としてラグプレート17側に凸とされ、好ましくは断面形状が曲線で構成される。本実施形態においては、斜板側ガイド面22aは、仮想的な略円柱の側面の一部と一致する形状とされている。形状を略曲面で構成すると、後述するラグプレート側ガイド面46aを備えたローラ46との間の摩擦を小さくできるからである。
なお、斜板側ガイド面22aの形状を、略柱の側面の一部と一致する形状としてもよく、この場合、各面若しくは一部の面を曲面としたり、面と面との間を面取りしたりすることが好ましい。断面形状が略スプライン曲線等の曲線と一致する柱の側面としてもよい。
また、斜板側ガイド面22aの形状を、略柱の側面の一部と一致する形状以外にすることもでき、例えば、球の表面の一部と一致する形状としたり、一部又は全部に平面を有する形状としたりすることもできる。
さらに、複数の斜板側ガイド面22aを備えることもできる。例えば、斜板側アーム21におけるラグプレート17側(先端部22)に、二以上の凸部を設け、各凸部がそれぞれローラ46と当接するようにしてもよい。この場合、各凸部におけるローラ46と当接する部位がそれぞれ斜板側ガイド面22aということになる。各斜板側ガイド面22aは、前記したようにそれぞれ略曲面で構成されることが望ましいが、それぞれの形状や大きさ等は異なっていても同一であってもよい。
図2に示すように、ラグプレート17における斜板18側には、支持部としての第1ガイドアーム25及び第2ガイドアーム26が斜板18側に向かって突設されている。第1ガイドアーム25は、駆動軸16の中心軸線L周りでの位相が、斜板18の上死点対応位置TDCに対して回転方向Rの前側へ若干ずれた位置に配置されている。第2ガイドアーム26は、駆動軸16の中心軸線L周りでの位相が、斜板18の上死点対応位置TDCに対して回転方向Rの後側へ若干ずれた位置に配置されている。つまり、第1ガイドアーム25と第2ガイドアーム26との間には、隙間が形成されている。
図2及び図3に示すように、第1ガイドアーム25と第2ガイドアーム26との間には、円柱状のピン45が架設されている。ピン45には、回転体としての円筒状のローラ46が回転可能に支持されている。つまり、ローラ46は、自身の中心軸線と略一致するピン45の中心軸線Qを中心として回転可能に支持されている。
ローラ46の内周面とピン45の外周面との間には、軸受47が介在されている。軸受47は、例えばプレーンベアリング(滑り軸受)を採用でき、ピン45に対するローラ46の回転をスムーズにする。なお、軸受47はボールベアリング等、他の機構を採用することができる。
なお、プレーンベアリングは、ボールベアリングと比較して軸受47の小型化に有利である。また、軸受47は削除してもよい。軸受47を削除した場合には、ローラ46の内周面及び該内周面に接触するピン45の外周面のうちの少なくとも一方に、固体潤滑剤(例えばフッ素樹脂)等よりなるコーティングを施したり焼入処理(例えば浸炭焼入処理)を施したりすると、ピン45に対するローラ46の回転がスムーズとなる。
ローラ46の外周面は、ラグプレート側ガイド面46aをなしている。つまり、ラグプレート側ガイド面46aは、斜板18側に凸で、略円柱の側面と同一形状である。
なお、斜板側ガイド面22aを前記したように略柱の側面と同一形状等にした場合には、この仮想的な柱における底面における対応した部分を結んだ直線(例えば中心を結んだ直線P)と、ローラ46の中心軸線Qとが略平行になるように設計するとよい。このように構成すると、斜板側ガイド面22aとラグプレート側ガイド面46aとの接触点の集合を略直線にすることができ、点接触する場合と比べて接触点にかかる力を分散することができ、面接触する場合と比べて接触面積を小さくできるため、両者間の摩擦を小さくすることができる。
なお、斜板側ガイド面22aを前記したように略柱の側面と同一形状等にした場合には、この仮想的な柱における底面における対応した部分を結んだ直線(例えば中心を結んだ直線P)と、ローラ46の中心軸線Qとが略平行になるように設計するとよい。このように構成すると、斜板側ガイド面22aとラグプレート側ガイド面46aとの接触点の集合を略直線にすることができ、点接触する場合と比べて接触点にかかる力を分散することができ、面接触する場合と比べて接触面積を小さくできるため、両者間の摩擦を小さくすることができる。
斜板側アーム21の先端部22(少なくとも斜板側ガイド面22aを含む部分)は、前記したとおり、ラグプレート側ガイド面46aと当接できるように配置される。つまり、両ガイド面が当接する際には、斜板側アーム21の先端部は、第1ガイドアーム25と第2ガイドアーム26との間に位置するようにされている。
斜板18の傾斜角度は、斜板側ガイド面22aがラグプレート側ガイド面46aに当接し、ラグプレート側ガイド面46aが中心軸線Qを略中心として回転することで斜板側ガイド面22aが案内されて変更される。つまり、前記した斜板側ガイド面22aの案内によって、このガイド面22aとラグプレート側ガイド面46aとの接触位置(当接位置)が変わり、斜板側ガイド面22a及び斜板側アーム21と接続した斜板18が最小傾斜角度から最大傾斜角度まで案内される。このように、斜板側アーム21並びに斜板側ガイド面22a、及び第1ガイドアーム25、第2ガイドアーム26、ピン45、ローラ46並びにラグプレート側ガイド面46a等は、斜板18の傾斜角度を最小傾斜角度から最大傾斜角度まで変更するヒンジ機構19として機能する。
第2ガイドアーム26における回転方向Rの前側に設けられた平面状の側面が、駆動軸16からラグプレート17に伝達された回転力を斜板18に伝達するための動力伝達面26aをなしている。斜板側アーム21における回転方向Rの後側の平面状の側面が、ラグプレート17から回転力を受けとるための動力受承面22bをなしている。そして、動力伝達面26aと動力受承面22bとは回転方向Rの前後で対向して配置されている。したがって、駆動軸16からラグプレート17に伝達された回転力は、動力伝達面26aから動力受承面22bへと伝えられ、これにより、動力受承面22bと一体化された斜板側アーム21、ひいては斜板18が駆動軸16を中心として回転する。このように、ヒンジ機構19は、ラグプレート17の回転力を斜板18に伝達する機能も備える。
以下に、斜板18が、駆動軸16に対する傾斜角度を変更される機構について、図3や図4を用いてさらに詳細に説明する。
斜板18には、係留されている複数のピストン28の内で圧縮行程にあるピストン28によって、駆動軸16の中心軸線Lに沿う方向へ圧縮荷重Xがかかっている(作用している)。圧縮荷重Xは、斜板側アーム21の斜板側ガイド面22aを介して、ローラ46のラグプレート側ガイド面46aに受承される。つまり、圧縮荷重Xの作用によって、斜板側アーム21の斜板側ガイド面22aがローラ46のラグプレート側ガイド面46aに対して圧接される。なお、圧縮荷重Xは、圧縮機10の吐出容量が増大すれば大きくなり減少すれば小さくなる。図3、図4において圧縮荷重Xを示す矢印の長さは、その大きさに比例している。
斜板18には、係留されている複数のピストン28の内で圧縮行程にあるピストン28によって、駆動軸16の中心軸線Lに沿う方向へ圧縮荷重Xがかかっている(作用している)。圧縮荷重Xは、斜板側アーム21の斜板側ガイド面22aを介して、ローラ46のラグプレート側ガイド面46aに受承される。つまり、圧縮荷重Xの作用によって、斜板側アーム21の斜板側ガイド面22aがローラ46のラグプレート側ガイド面46aに対して圧接される。なお、圧縮荷重Xは、圧縮機10の吐出容量が増大すれば大きくなり減少すれば小さくなる。図3、図4において圧縮荷重Xを示す矢印の長さは、その大きさに比例している。
圧縮機10の吐出容量が増大する際には、斜板側アーム21がローラ46を押す力が大きくなる。つまり、圧縮機10における圧縮荷重Xは図3に示すような状態となる(図3における圧縮荷重X>図4における圧縮荷重X)。このため、斜板側アーム21は、ラグプレート側ガイド面46aの中心軸線Qを中心としてローラ46を図面における反時計方向に回転させながら、斜板側ガイド面22aの中心軸線Pを中心として図面の時計方向に回転する。これにより、斜板18の傾斜角度が増大する。なお、中心軸線Pとは、該ガイド面の側面と概略同一形状の仮想的な柱における、当該柱の底面における各中心を結んだ仮想的な直線のことである。
圧縮機10が吐出容量を減少する際には、斜板側アーム21がローラ46を押す力が小さくなる。つまり、圧縮機10における圧縮荷重Xは図4に示すような状態となる。このため、斜板側アーム21は、ラグプレート側ガイド面46aの中心軸線Qを中心としてローラ46を図面における時計方向に回転させながら、斜板側ガイド面22aの中心軸線Pを中心として図面の反時計方向に回転する。これにより、斜板18の傾斜角度が減少する。
このように、斜板18は、斜板側ガイド面22aの中心軸線Pとラグプレート側ガイド面46aの中心軸線Qとの間の距離を、常に一定に保った状態で行われる。
上記構成の本実施形態においては次のような効果を奏する。
(1)ラグプレート側ガイド面46aと斜板側ガイド面22aとを線接触させて摺動させることを極めて確実に(高い確率で)行うことができ得る。
上記構成の本実施形態においては次のような効果を奏する。
(1)ラグプレート側ガイド面46aと斜板側ガイド面22aとを線接触させて摺動させることを極めて確実に(高い確率で)行うことができ得る。
ラグプレート側ガイド面46aと斜板側ガイド面22aは、これらの接触位置から周方向へ離れるにつれて相手の柱面から積極的に離間しようとする形状である。したがって、両者を摺動させる際に、ラグプレート側ガイド面46a及び斜板側ガイド面22aの寸法公差や面粗度の影響を受け難い。したがって、凸曲面状の柱面と凹曲面状の柱面との接触等と比較して、より線接触に近い状態を得ることができる。つまり、斜板18の傾斜角度の変更を円滑に行うことが可能となり、圧縮機10の容量制御性を向上させることができる。
また、例えばラグプレート側ガイド面46a及び斜板側ガイド面22aのうちの一方を凹曲面状とした場合と比較して、ラグプレート側ガイド面46a及び斜板側ガイド面22aのうちの他方の曲率半径を比較的自由に設計できる。凸曲面状をなす柱面と凹曲面状をなす柱面との接触では、凹曲面状の柱面に入り込んで、なおかつ該柱面に対して線接触する必要がある凸曲面状の柱面に関して、曲率半径等の寸法の設定に制約が生まれるからである。
(2)斜板側アーム21等を軽量化することや簡素化することが可能となる。
(2)斜板側アーム21等を軽量化することや簡素化することが可能となる。
本実施形態に係る圧縮機10は、ローラ46等、斜板18の傾斜角度を変更するための機構の多くはラグプレート17に設けられている。言い換えれば、ヒンジ機構19を構成する部材の多くがラグプレート17に設けられているため、斜板側アーム21等には、斜板側ガイド面22aが形成されていればよく、他の部材を設ける必要がない。つまり、斜板側アーム21等は、従来のものよりも軽量にすることが可能となる。よって、斜板側アーム21が重くなることに起因した、圧縮機10の容量制御性の悪化や、圧縮機10からの振動や騒音の発生の問題を極めて小さくしたり解消したりすることができる。
換言すれば、斜板側アーム21は、少なくとも斜板側ガイド面22aを備え、当該面を支持し、かつ、当該アームに求められる強度を維持さえできればよい。このように、これらの条件を満たしてさえいればよいため、材料選択の自由度が高く、また、肉抜き等の軽量化手法を施すことも容易となる。したがって、斜板側アーム21が駆動軸16を中心として公転する際に生じる遠心力を小さくでき、特に高速運転時の制御性を高くすることができたり、静粛性等を極めてよいものにできたりできる。
このことは、斜板18の製造容易化や、斜板18の圧縮機10への組み付けの容易化等をも可能にする。
斜板18は、上記した条件を備えた斜板側アーム21を備えていればよいため、斜板18並びに斜板側アーム21の製造が従来品に比べてより容易にすることができる。斜板側アーム21にピン等の部材を設ける必要がないからである。
斜板18は、上記した条件を備えた斜板側アーム21を備えていればよいため、斜板18並びに斜板側アーム21の製造が従来品に比べてより容易にすることができる。斜板側アーム21にピン等の部材を設ける必要がないからである。
また、斜板18並びにラグプレート17は、斜板側ガイド面22aとラグプレート側ガイド面46aとが対向するようにそれぞれを駆動軸16に組み付ければよい。そのため、例えば特許文献1に開示された従来技術のように、斜板側とラグプレート側との部材をかみ合わせる等の作業が必要がない。したがって、従来品に比べて圧縮機10への組み付けを容易にすることが可能となる。
(3)高精度のラグプレート側ガイド面46aを容易に形成可能となる。
(3)高精度のラグプレート側ガイド面46aを容易に形成可能となる。
ラグプレート17にはローラ46が取り付けられ、ローラ46の外周面によって、ラグプレート側ガイド面46aが提供されているからである。このようにラグプレート側ガイド面46aを高精度で形成できれば、斜板18の傾斜角度の変更をさらに円滑に行うことができる。
(4)斜板18の駆動軸16に対する傾斜角度の変更をスムーズに行うことができる。
(4)斜板18の駆動軸16に対する傾斜角度の変更をスムーズに行うことができる。
斜板18は、斜板側アーム21の斜板側ガイド面22aがローラ46のラグプレート側ガイド面46aに当接し、ローラ46が回転しつつ斜板側アーム21が案内されることで、駆動軸16に対する傾斜角度が変更される。したがって、斜板18の傾斜角度を変更する際の抵抗は、斜板側アーム21とローラ46との間に生じる転がり抵抗となる。よって、斜板側アーム21とローラ46との相対移動、つまりは斜板18の傾斜角度の変更を円滑に行うことができる。言い換えれば、クランク室15の圧力を調整した場合における斜板18の傾斜角度(吐出容量)の変更性(応答性)が極めて良好となる。
(5)トップクリアランス特性の調整が容易である。
(5)トップクリアランス特性の調整が容易である。
各ガイド面の形状や大きさ、配置位置等を調整することでトップクリアランスTCを調整することができ得る。
なお、トップクリアランスTCとは、上死点に位置するピストン28において圧縮室29内に面する先端面と、該先端面に対向する弁・ポート形成体13の前端面との間の距離のことである。トップクリアランスTCが小さければ、ピストン28が上死点に位置した際における圧縮室29の容積を小さくすることができ、圧縮室29内において吐出されずに残る冷媒ガス(残留ガス)の量を少なくすることができる。したがって、斜板18の傾斜角度の変更によっても、トップクリアランスTCを小さく維持できれば、圧縮機10の効率を向上させることができる。
なお、トップクリアランスTCとは、上死点に位置するピストン28において圧縮室29内に面する先端面と、該先端面に対向する弁・ポート形成体13の前端面との間の距離のことである。トップクリアランスTCが小さければ、ピストン28が上死点に位置した際における圧縮室29の容積を小さくすることができ、圧縮室29内において吐出されずに残る冷媒ガス(残留ガス)の量を少なくすることができる。したがって、斜板18の傾斜角度の変更によっても、トップクリアランスTCを小さく維持できれば、圧縮機10の効率を向上させることができる。
本実施の形態に係る圧縮機10は、上記したような作用・効果を奏するため、例えば、冷媒循環回路の冷媒として二酸化炭素等が用いられている回路に好適に組み込むことができる。斜板18の傾斜角度の円滑な変更が容易だからである。
次に、第2の実施の形態に係る圧縮機について説明する。
〈第2実施形態〉
図5及び図6(a)〜図6(c)並びに図7には、上記第1実施形態の変更例たる第2実施形態に係る圧縮機10を示す。なお、以下においては第1実施形態との相違点についてのみ説明し、第1実施形態の部材と同一の部材又は同等の部材には同じ番号を付して説明を省略する。
〈第2実施形態〉
図5及び図6(a)〜図6(c)並びに図7には、上記第1実施形態の変更例たる第2実施形態に係る圧縮機10を示す。なお、以下においては第1実施形態との相違点についてのみ説明し、第1実施形態の部材と同一の部材又は同等の部材には同じ番号を付して説明を省略する。
図5及び図6(a)に示すように、駆動軸16と斜板18との間からは、スライダ20が削除されている。その代わりに、斜板18は、駆動軸16によって、中心軸線Lに沿う方向へスライド移動可能とされ、かつ、一定の角度範囲で回転可能(駆動軸16に対する傾斜角度を変更可能)に直接支持されている。
ここで、ピン45は「第1ピン45」と表記する。ローラ46は「第1ローラ46」とする。第1ピン45及び第1ローラ46の中心軸線は「Q1」とする。ラグプレート側ガイド面46aは「第1ラグプレート側ガイド面46a」とする。
以上のように、第1ピン45等を備える点は第1実施形態と同様であるが、第2実施形態では、さらに、第1ガイドアーム25と第2ガイドアーム26との間に、円柱状の第2ピン51が架設され、第2ピン51には、回転体としての円筒状の第2ローラ52が中心軸線Q2を中心として回転可能に支持されている点が第1実施形態とは異なる。
第2ローラ52の内周面と第2ピン51の外周面との間には、第1ローラ46等と同様に軸受53を介在させてもよく、第2ローラ52の内周面及び該内周面に接触する第2ピン51の外周面のうちの少なくとも一方に、固体潤滑剤(例えばフッ素樹脂)よりなるコーティングを施したり焼入処理(例えば浸炭焼入処理)を施したりしてもよい。
第2ローラ52の外周面は、ラグプレート側ガイド面としての第2ラグプレート側ガイド面52aをなしている。したがって、第2ラグプレート側ガイド面52aは、第1ラグプレート側ガイド面46aと同様に、ラグプレート17を基準として斜板18側に凸の、仮想的な円柱の側面と概略同一形状の曲面で構成され、この仮想的な円柱の中心軸線Q2を中心として回転する。
なお、中心軸線Q1とQ2とは、略平行になるようにするとよい。
ここで、中心軸線Q2は、駆動軸16の中心軸線Lからの距離が、中心軸線Q1よりも遠くに設定されている。また、中心軸線Q2は、中心軸線Q1よりもラグプレート17寄り(前寄り)に設定されている。
ここで、中心軸線Q2は、駆動軸16の中心軸線Lからの距離が、中心軸線Q1よりも遠くに設定されている。また、中心軸線Q2は、中心軸線Q1よりもラグプレート17寄り(前寄り)に設定されている。
なお、ラグプレート17に第1ローラ46及び第2ローラ52をそれぞれ回転可能に設ける上で、当然ながら、第1ラグプレート側ガイド面46aの中心軸線Q1と第2ラグプレート側ガイド面52aの中心軸線Q2との間の距離は、第1ラグプレート側ガイド面46aの曲率半径に第2ラグプレート側ガイド面52aの曲率半径を加えた距離以上となっている。第1ラグプレート側ガイド面46aの曲率半径と第2ラグプレート側ガイド面52aの曲率半径は、同じであってもよいし異なっていてもよい。
図6(a)〜図6(c)に示すように、斜板18は、斜板側ガイド面22aが第1ラグプレート側ガイド面46a及び第2ラグプレート側ガイド面52aの少なくとも一方に当接することで、最小傾斜角度から最大傾斜角度まで案内される。つまり、斜板側ガイド面22aは、斜板18の傾斜角度によって、所定のラグプレート側ガイド面46a,52aと当接する。
以下、斜板18の駆動軸16に対する傾斜角度が変更される様子を、図6を参照しながら詳説する。
図6(a)には、斜板18の駆動軸16に対する傾斜角度が大きい場合(大傾斜角度域)におけるヒンジ機構19等の様子を示す。
図6(a)には、斜板18の駆動軸16に対する傾斜角度が大きい場合(大傾斜角度域)におけるヒンジ機構19等の様子を示す。
大傾斜角度域では、斜板側ガイド面22aは、第2ラグプレート側ガイド面52aに当接し、かつ、第1ラグプレート側ガイド面46aから離間している。圧縮機10は、斜板側アーム21が、第2ラグプレート側ガイド面52aを回転させながら、当該面に案内されて斜板18の傾斜角度が変更され、これにより吐出容量を変更(増大若しくは減少)する。
なお、斜板側ガイド面22aの形状が、略円柱の側面の一部若しくは全部と同一形状の場合等、断面形状が略円形状である場合には、斜板側ガイド面22aにおける中心軸線Pと第2ラグプレート側ガイド面52aの中心軸線Q2との距離は略一定に保たれたまま斜板18の駆動軸16に対する傾斜角度が変更される。
図6(c)には、斜板18の駆動軸16に対する傾斜角度が小さい場合(小傾斜角度域)におけるヒンジ機構19等の様子を示す。
小傾斜角度域では、斜板側ガイド面22aは、第1ラグプレート側ガイド面46aに当接し、かつ、第2ラグプレート側ガイド面52aから離間している。圧縮機10は、斜板側アーム21が、第1ラグプレート側ガイド面46aを回転させながら、当該面に案内されて斜板18の傾斜角度が変更され、これにより吐出容量を変更する。
小傾斜角度域では、斜板側ガイド面22aは、第1ラグプレート側ガイド面46aに当接し、かつ、第2ラグプレート側ガイド面52aから離間している。圧縮機10は、斜板側アーム21が、第1ラグプレート側ガイド面46aを回転させながら、当該面に案内されて斜板18の傾斜角度が変更され、これにより吐出容量を変更する。
なお、前記同様、斜板側ガイド面22aの断面形状が略円形状である場合には、斜板側ガイド面22aにおける中心軸線Pと第1ラグプレート側ガイド面46aの中心軸線Q1との距離は略一定に保たれたまま斜板18の駆動軸16に対する傾斜角度が変更される。
図6(b)には、斜板18の駆動軸16に対する傾斜角度が小傾斜角度域と大傾斜角度域との境界のある中間傾斜角度にある場合におけるヒンジ機構19等の様子を示す。中間傾斜角度にある場合とは、斜板側ガイド面22aが、第1ラグプレート側ガイド面46a及び第2ラグプレート側ガイド面52aのうちの一方に当接する状態から他方に当接する状態へと移行する過渡期の状態のことである。
中間傾斜角度にある場合には、斜板側ガイド面22aは、第1ラグプレート側ガイド面46a及び第2ラグプレート側ガイド面52aに当接している。また、第1ラグプレート側ガイド面46aにおける斜板側ガイド面22aとの当接位置と、第2ラグプレート側ガイド面52aにおけるそれとは異なる。なお、当接位置とは、ラグプレート側ガイド面の中心軸線を基準とし、駆動軸16の中心軸線Lと平行な直線における方向において、前記した定義における前側から後側方向を0度とした場合の、当接位置の角度で定義される位置のことである。図6(b)に示す状態では、第1ラグプレート側ガイド面46aにおける斜板側ガイド面22aの当接位置は、中心軸線Q1を通り、中心軸線Lと平行な仮想直線を基準として、中心軸線Lとは反対側にある。第2ラグプレート側ガイド面52aにおける斜板側ガイド面22aの当接位置は、中心軸線Q2を通り、中心軸線Lと平行な仮想直線を基準として、中心軸線L側にある。このように、それぞれのガイド面における当接位置が異なっている。
次に、ヒンジ機構19等にかかる力について説明する。まず、図6に示す矢印の意味について説明する。
図6(c)における「Fa0」は、第1ラグプレート側ガイド面46aと斜板側ガイド面22aとの当接位置における、中心軸線Lと概略平行方向への圧縮荷重(分力)Xに対する第1ラグプレート側ガイド面46aからの垂直抗力(基準抗力)を示す。「Fa1」は、圧縮機10の運転時において、圧縮荷重Xに基づいて斜板側アーム21に生じる、第1ラグプレート側ガイド面46aからの垂直抗力(実抗力)を示す。図6(c)において「θ」は、基準抗力Fa0と実抗力Fa1とがなす角度(抗力角度)である。
図6(c)における「Fa0」は、第1ラグプレート側ガイド面46aと斜板側ガイド面22aとの当接位置における、中心軸線Lと概略平行方向への圧縮荷重(分力)Xに対する第1ラグプレート側ガイド面46aからの垂直抗力(基準抗力)を示す。「Fa1」は、圧縮機10の運転時において、圧縮荷重Xに基づいて斜板側アーム21に生じる、第1ラグプレート側ガイド面46aからの垂直抗力(実抗力)を示す。図6(c)において「θ」は、基準抗力Fa0と実抗力Fa1とがなす角度(抗力角度)である。
図6(a)における「Fb0」及び「Fb1」も、第2ラグプレート側ガイド面52aにおける垂直抗力である点を除けばそれぞれ前記同様の力を示している。図6(a)において「θ」は、基準抗力Fb0と実抗力Fb1とがなす角度(抗力角度)である。
図6(b)において「Fc」は、第1ラグプレート側ガイド面46aからの実抗力Fa1と第2ラグプレート側ガイド面52aからの実抗力Fb1の合力を示す。
実抗力Fa1,Fb1の方向が基準抗力Fa0,Fb0の方向とそれぞれ同じ場合(実抗力Fa1,Fb1の方向が駆動軸16の中心軸線Lと平行な場合)には、抗力角度θはゼロとなる。ここで、中心軸線Q1(若しくはQ2)と直交し、かつ、中心軸線Lを含む仮想平面を設定した場合における、当該仮想平面に対して直交しかつ中心軸線Lを含む仮想平面を基準面とする。抗力角度θは、実抗力Fa1,Fb1が基準面から離れる方向に向かう場合をプラスとし、基準面に近づく方向に向かう場合をマイナスとする。
実抗力Fa1,Fb1の方向が基準抗力Fa0,Fb0の方向とそれぞれ同じ場合(実抗力Fa1,Fb1の方向が駆動軸16の中心軸線Lと平行な場合)には、抗力角度θはゼロとなる。ここで、中心軸線Q1(若しくはQ2)と直交し、かつ、中心軸線Lを含む仮想平面を設定した場合における、当該仮想平面に対して直交しかつ中心軸線Lを含む仮想平面を基準面とする。抗力角度θは、実抗力Fa1,Fb1が基準面から離れる方向に向かう場合をプラスとし、基準面に近づく方向に向かう場合をマイナスとする。
抗力角度θがゼロでなければ、圧縮荷重Xの分力に基づいて、斜板側アーム21にラグプレート側ガイド面46a,52aの周方向に沿った移動力が生じる。つまり、斜板18の傾斜角度を増大又は減少する方向への移動力が生じる。具体的には、抗力角度θがプラスであれば、斜板側アーム21には斜板18の傾斜角度を増大する方向の移動力が生じる。抗力角度θがマイナスであれば、斜板側アーム21には斜板18の傾斜角度を減少する方向の移動力が生じる。
以上の機構による斜板18の傾斜角度が変更される様子を、図7のグラフを用いてさらに詳細に説明する。
図7に示すように、本実施形態に係る圧縮機10は、小傾斜角度域と大傾斜角度域とでは抗力角度θが大きく異なる。このため、当接位置における圧縮荷重Xに対向する力も、小傾斜角度域と大傾斜角度域とでは大きく異なる。したがって、小傾斜角度域における実抗力Fa1の中心軸線Lと平行方向の分力と斜板18の傾斜角度との関数と、大傾斜角度域における実抗力Fb1のそれとは非連続となる。このため、斜板18を所望の傾斜角度にするために必要となるクランク室15の圧力も、小傾斜角度域と大傾斜角度域とでは大きく異なるものとなる。
図7に示すように、本実施形態に係る圧縮機10は、小傾斜角度域と大傾斜角度域とでは抗力角度θが大きく異なる。このため、当接位置における圧縮荷重Xに対向する力も、小傾斜角度域と大傾斜角度域とでは大きく異なる。したがって、小傾斜角度域における実抗力Fa1の中心軸線Lと平行方向の分力と斜板18の傾斜角度との関数と、大傾斜角度域における実抗力Fb1のそれとは非連続となる。このため、斜板18を所望の傾斜角度にするために必要となるクランク室15の圧力も、小傾斜角度域と大傾斜角度域とでは大きく異なるものとなる。
一方、本願発明者らは、吐出容量(若しくはこれと一次関数の関係にある斜板18の傾斜角度)と、吐出容量を調整するために調整されるクランク室15の圧力とは、摩擦等の影響によって、吐出容量が大きい場合と小さい場合における上記圧力には大きな差がでない場合があることを見いだした。この現象は、特に冷媒の流量の小さいときに顕著に表れる。そのため、クランク室15の圧力を調整しても吐出容量(斜板18の傾斜角度)を所望の容量(角度)に調整できない場合があることが分かった。
本願発明者らは、この問題を解決するために、前記したヒンジ機構19の構造がよいことを見いだした。具体的には以下の通りである。
実抗力の中心軸線L方向の分力は、抗力角度θの大きさが小さければ大きくなり、抗力角度θの大きさが大きければ小さくなる。したがって、抗力角度θの大きさが小さい場合には、斜板18を所望の傾斜角度に維持するために必要とされるクランク室15の圧力は小さくてすみ、抗力角度θの大きさが大きい場合には、クランク室15の圧力を大きくする必要がある。
実抗力の中心軸線L方向の分力は、抗力角度θの大きさが小さければ大きくなり、抗力角度θの大きさが大きければ小さくなる。したがって、抗力角度θの大きさが小さい場合には、斜板18を所望の傾斜角度に維持するために必要とされるクランク室15の圧力は小さくてすみ、抗力角度θの大きさが大きい場合には、クランク室15の圧力を大きくする必要がある。
また、前記したように、小傾斜角度域と大傾斜角度域とでは、抗力角度θの大きさが大きく異なる。そのため、図7に示す例では、小傾斜角度域では、抗力角度θの大きさが大きいため、クランク室15の圧力を、摩擦等の影響を考慮しない場合における理想的な状態における圧力よりも高く設定する必要がある。一方、大傾斜角度域では、抗力角度θの大きさが小さいため、クランク室15の圧力を理想的な圧力よりも低く設定する必要がある。
このため、小傾斜角度域と大傾斜角度域とにおける、クランク室15内に求められる圧力の差は大きなものにできる。したがって、クランク室15の圧力を調整することによって吐出容量(斜板18の傾斜角度)を所望の容量(角度)に調整しやすくなる。特に、小傾斜角度域と大傾斜角度域との間で斜板18の傾斜角度を調整する際の制御性や正確性、再現性等が極めて良好となる。
なお、以上の特性をよりよいものとするには、各ラグプレート側ガイド面46a,52aにおける斜板側ガイド面22aとの当接位置を、それぞれ所定の位置とするとよい。つまり、図6に示すような断面図において、中心軸線Q1やQ2を中心として、中心軸線Lと平行な方向を基準(角度ゼロ)とした場合における当接位置の角度が、各ガイド面においてそれぞれ所定の角度をとるように、ガイド面の形状等を設計するとよい。このことは、第1実施形態に係る圧縮機10においても同様である。以上のように設計すれば、クランク室15の圧力と吐出容量(斜板18の傾斜角度)との関係を示した略一次関数における係数(傾き)が、このように設計しない場合と比較して極めて大きくできるからである。つまり、クランク室15の圧力を変更した場合に、当該圧力に対応した吐出容量にする、いわゆる吐出容量のクランク室15の圧力に対する応答性が極めて高くなるからである。以下に詳説する。
ラグプレート側ガイド面における当接位置が、斜板18の傾斜角度によって変わらないということは、抗力角度θも変わらないということである。
ここで、斜板側ガイド面22aの断面形状が略直線であり、斜板18と概略平行な場合とされたヒンジ機構と比較する。このヒンジ機構は、斜板18の傾斜角度が0度のときには実抗力の方向は中心軸線Lと概略平行な方向となる。
ここで、斜板側ガイド面22aの断面形状が略直線であり、斜板18と概略平行な場合とされたヒンジ機構と比較する。このヒンジ機構は、斜板18の傾斜角度が0度のときには実抗力の方向は中心軸線Lと概略平行な方向となる。
したがって、前記した構成を採用する場合に、当接位置の角度が0度でなければ、比較対象のヒンジ機構と比較して、実抗力の中心軸線Lと平行な方向の分力は小さくなる。したがって、分力が小さくなった分、クランク室15の内圧を高くする必要がある。
一方、斜板18の傾斜角度が大きいときには、上記した場合とは逆に、上記比較対象のヒンジ機構と比較して、実抗力の中心軸線Lと平行な方向の分力は大きくなる。したがって、分力が大きくなった分、クランク室15の内圧を低くする必要がある。
本願発明者らは、前記したように、斜板18の傾斜角度とクランク室15の内圧との対応関係を一次関数で表した場合の傾きが小さいことを見いだした。これに対して、前記した構成を採用し、傾斜角度が0度の場合におけるクランク室15の内圧を高くし、傾斜角度が大きい場合におけるクランク室15の内圧を低くなるようにすれば、上記傾きは大きくなる。これにより、クランク室15内の圧力に対する斜板18の傾斜角度の応答性が極めてよくなる。
上記構成の本実施形態においては、第1実施形態と同等の効果を奏し、また、上記したように良好な容量制御性(斜板18の傾斜角度の制御性)が得られる以外にも、次のような効果も奏する。
(6)トップクリアランス特性を調整するパラメータが多い。
(6)トップクリアランス特性を調整するパラメータが多い。
トップクリアランスTCは、斜板18の傾斜角度が変わっても変動しないことが好ましい。
これに対し、本実施形態においては、ラグプレート側ガイド面を二面有するため、大傾斜角度域と小傾斜角度域とにおけるトップクリアランスTCの調整のために各ガイド面の形状や大きさ、配置位置等を設定できる。このように、本実施の形態に係る圧縮機10は、トップクリアランスTCを調整するためのパラメータが多いため、良好なトップクリアランス特性を得ることができ得る。
これに対し、本実施形態においては、ラグプレート側ガイド面を二面有するため、大傾斜角度域と小傾斜角度域とにおけるトップクリアランスTCの調整のために各ガイド面の形状や大きさ、配置位置等を設定できる。このように、本実施の形態に係る圧縮機10は、トップクリアランスTCを調整するためのパラメータが多いため、良好なトップクリアランス特性を得ることができ得る。
なお、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で例えば以下の態様でも実施できる。当然、以下に記載していない態様でも実施でき、例えば、本明細書に記載した各種の変形例を、互いに矛盾しない範囲で適宜組み合わせて採用したり、すでに記載した変形例等を採用したりすることもできる。
これらの変形例を採用すれば、すでに記載した作用・効果や、以下に記載した作用・効果を得ることができ得る。
○図8に示すように、上記第1実施形態を変更し、ラグプレート側ガイド面46aをラグプレート17に直接形成すること。このようにすれば、ピン45及びローラ46を削除することができて、ヒンジ機構19を構成する部品点数を削減することができる。
○上記第1実施形態においてローラ46を削除するとともに、ラグプレート側ガイド面46aをピン45の外周面によって提供すること。そして、回転体としてのピン45を、自身の中心軸線Qを中心として正方向及び逆方向へ回転可能に、第1ガイドアーム25及び第2ガイドアーム26によって支持させること。このようにすれば、ヒンジ機構19を構成する部品点数を削減することができる。
○上記第1実施形態を変更し、ヒンジ機構19が備える、ラグプレート側ガイド面46aと斜板側ガイド面22aの案内組を、二組や三組等の複数組とすること。
○上記第1実施形態を変更し、スライダ20を削除して、斜板18を駆動軸16に直接支持させること。また、第2実施形態において、スライダ20を採用すること。
○図9に示すように、上記第1実施形態において斜板側ガイド面22aを、異なる曲率半径及び異なる中心軸線P1,P2,P3を有する複数の凸曲面状の柱面61〜63が周方向に連続されてなる、複合柱面とすること。そして、斜板18の傾斜角度の変更に応じて、ラグプレート側ガイド面46aに当接する斜板側ガイド面22aの柱面61〜63が順次変更されるようにすること。
○図8に示すように、上記第1実施形態を変更し、ラグプレート側ガイド面46aをラグプレート17に直接形成すること。このようにすれば、ピン45及びローラ46を削除することができて、ヒンジ機構19を構成する部品点数を削減することができる。
○上記第1実施形態においてローラ46を削除するとともに、ラグプレート側ガイド面46aをピン45の外周面によって提供すること。そして、回転体としてのピン45を、自身の中心軸線Qを中心として正方向及び逆方向へ回転可能に、第1ガイドアーム25及び第2ガイドアーム26によって支持させること。このようにすれば、ヒンジ機構19を構成する部品点数を削減することができる。
○上記第1実施形態を変更し、ヒンジ機構19が備える、ラグプレート側ガイド面46aと斜板側ガイド面22aの案内組を、二組や三組等の複数組とすること。
○上記第1実施形態を変更し、スライダ20を削除して、斜板18を駆動軸16に直接支持させること。また、第2実施形態において、スライダ20を採用すること。
○図9に示すように、上記第1実施形態において斜板側ガイド面22aを、異なる曲率半径及び異なる中心軸線P1,P2,P3を有する複数の凸曲面状の柱面61〜63が周方向に連続されてなる、複合柱面とすること。そして、斜板18の傾斜角度の変更に応じて、ラグプレート側ガイド面46aに当接する斜板側ガイド面22aの柱面61〜63が順次変更されるようにすること。
このようにすれば、斜板側ガイド面22aを構成する各柱面61〜63の曲率半径及び中心軸線P1〜P3の位置関係がそれぞれパラメータとなり、圧縮機10の特性を設定する上での自由度が増す。
○第1実施形態又は第2実施形態を変更し、斜板側アーム21にそれとは別体の円柱体を取り付け、円柱体の外周面によって斜板側ガイド面22aを提供すること。このようにすれば、斜板側ガイド面22aを高精度で形成でき、斜板18の傾斜角度の変更をさらに円滑に行うことができる。また、本態様において、斜板側ガイド面22aを備える円柱体を、それが取り付けられた斜板18によって、自身の中心軸線を中心として回転可能に支持すれば、斜板18の傾斜角度の変更を、さらに円滑に行うことが可能となる。
○上記第1実施形態又は第2実施形態を変更し、斜板側ガイド面22aにおいて、例えば斜板18の最小傾斜角度や最大傾斜角度に対応する位置に、保持凹部を設ける。そして、保持凹部にローラ46(第2実施形態の変更例では第1ローラ46及び第2ローラ52のうちの少なくとも一方)の一部を嵌り込ませることで、その状態における斜板18の傾斜角度を確実に維持できるようにすること。
○上記第2実施形態を変更し、第1ラグプレート側ガイド面46a及び第2ラグプレート側ガイド面52aの少なくとも一方を、ラグプレート17に直接形成すること。例えば、図10には、第1ラグプレート側ガイド面46a及び第2ラグプレート側ガイド面52aがラグプレート17に直接形成された例が示されている。このようにすれば、ヒンジ機構19を構成する部品点数を削減することができる。また、第1ラグプレート側ガイド面46aの中心軸線Q1と第2ラグプレート側ガイド面52aの中心軸線Q2との間の距離を、第1ラグプレート側ガイド面46aの曲率半径に第2ラグプレート側ガイド面52aの曲率半径を加えた距離よりも小さくする設定が可能となり、圧縮機10の特性を設定する上での自由度がさらに増す。当然、前記したように極めて良好な容量制御性も得られる。
○上記第2実施形態において第1ローラ46を削除するとともに、第1ラグプレート側ガイド面46aを第1ピン45の外周面によって提供すること。そして、回転体としての第1ピン45を、自身の中心軸線Q1を中心として正方向及び逆方向へ回転可能に、第1ガイドアーム25及び第2ガイドアーム26によって支持させること。このようにすれば、第1ローラ46を削除できて、ヒンジ機構19を構成する部品点数を削減することができる。
○上記第2実施形態において第2ローラ52を削除するとともに、第2ラグプレート側ガイド面52aを第2ピン51の外周面によって提供すること。そして、回転体としての第2ピン51を、自身の中心軸線Q2を中心として正方向及び逆方向へ回転可能に、第1ガイドアーム25及び第2ガイドアーム26によって支持させること。このようにすれば、第2ローラ52を削除できて、ヒンジ機構19を構成する部品点数を削減することができる。
○上記第2実施形態を変更し、ヒンジ機構19が備える、ラグプレート側ガイド面(第1ラグプレート側ガイド面46a及び第2ラグプレート側ガイド面52a)と斜板側ガイド面22aの案内組を、二組や三組等の複数組とすること。
○上記第2実施形態において、第1ローラ46及び第2ローラ52のうちの少なくとも一方を、回転体としての球状体(例えば球体に第1ピン45又は第2ピン51の挿通を許容する透孔が形成されたもの)に変更すること。つまり、第1ラグプレート側ガイド面46a及び第2ラグプレート側ガイド面52aのうちの少なくとも一方を、凸曲面状の球面よりなるものとすること。
○本実施形態に係る圧縮機に公知の変形を加え、ワッブルタイプの可変容量圧縮機に具体化すること。
○本実施形態に係る圧縮機に公知の変形を加え、例えば空気圧縮機等の冷媒圧縮機以外の可変容量圧縮機に具体化すること。
○第1実施形態又は第2実施形態を変更し、斜板側アーム21にそれとは別体の円柱体を取り付け、円柱体の外周面によって斜板側ガイド面22aを提供すること。このようにすれば、斜板側ガイド面22aを高精度で形成でき、斜板18の傾斜角度の変更をさらに円滑に行うことができる。また、本態様において、斜板側ガイド面22aを備える円柱体を、それが取り付けられた斜板18によって、自身の中心軸線を中心として回転可能に支持すれば、斜板18の傾斜角度の変更を、さらに円滑に行うことが可能となる。
○上記第1実施形態又は第2実施形態を変更し、斜板側ガイド面22aにおいて、例えば斜板18の最小傾斜角度や最大傾斜角度に対応する位置に、保持凹部を設ける。そして、保持凹部にローラ46(第2実施形態の変更例では第1ローラ46及び第2ローラ52のうちの少なくとも一方)の一部を嵌り込ませることで、その状態における斜板18の傾斜角度を確実に維持できるようにすること。
○上記第2実施形態を変更し、第1ラグプレート側ガイド面46a及び第2ラグプレート側ガイド面52aの少なくとも一方を、ラグプレート17に直接形成すること。例えば、図10には、第1ラグプレート側ガイド面46a及び第2ラグプレート側ガイド面52aがラグプレート17に直接形成された例が示されている。このようにすれば、ヒンジ機構19を構成する部品点数を削減することができる。また、第1ラグプレート側ガイド面46aの中心軸線Q1と第2ラグプレート側ガイド面52aの中心軸線Q2との間の距離を、第1ラグプレート側ガイド面46aの曲率半径に第2ラグプレート側ガイド面52aの曲率半径を加えた距離よりも小さくする設定が可能となり、圧縮機10の特性を設定する上での自由度がさらに増す。当然、前記したように極めて良好な容量制御性も得られる。
○上記第2実施形態において第1ローラ46を削除するとともに、第1ラグプレート側ガイド面46aを第1ピン45の外周面によって提供すること。そして、回転体としての第1ピン45を、自身の中心軸線Q1を中心として正方向及び逆方向へ回転可能に、第1ガイドアーム25及び第2ガイドアーム26によって支持させること。このようにすれば、第1ローラ46を削除できて、ヒンジ機構19を構成する部品点数を削減することができる。
○上記第2実施形態において第2ローラ52を削除するとともに、第2ラグプレート側ガイド面52aを第2ピン51の外周面によって提供すること。そして、回転体としての第2ピン51を、自身の中心軸線Q2を中心として正方向及び逆方向へ回転可能に、第1ガイドアーム25及び第2ガイドアーム26によって支持させること。このようにすれば、第2ローラ52を削除できて、ヒンジ機構19を構成する部品点数を削減することができる。
○上記第2実施形態を変更し、ヒンジ機構19が備える、ラグプレート側ガイド面(第1ラグプレート側ガイド面46a及び第2ラグプレート側ガイド面52a)と斜板側ガイド面22aの案内組を、二組や三組等の複数組とすること。
○上記第2実施形態において、第1ローラ46及び第2ローラ52のうちの少なくとも一方を、回転体としての球状体(例えば球体に第1ピン45又は第2ピン51の挿通を許容する透孔が形成されたもの)に変更すること。つまり、第1ラグプレート側ガイド面46a及び第2ラグプレート側ガイド面52aのうちの少なくとも一方を、凸曲面状の球面よりなるものとすること。
○本実施形態に係る圧縮機に公知の変形を加え、ワッブルタイプの可変容量圧縮機に具体化すること。
○本実施形態に係る圧縮機に公知の変形を加え、例えば空気圧縮機等の冷媒圧縮機以外の可変容量圧縮機に具体化すること。
10…可変容量圧縮機としての可変容量型斜板式圧縮機、16…駆動軸、17…ラグプレート、18…カムプレートとしての斜板、19…ヒンジ機構、21…アームとしての斜板側アーム、22a…カムプレート側ガイド面としての斜板側ガイド面、25…支持部としての第1ガイドアーム、26…支持部としての第2ガイドアーム、28…ピストン、46…円筒の部材(凸部)としてのローラ(第2実施形態では第1ローラ)、46a…ラグプレート側ガイド面(第2実施形態では第1ラグプレート側ガイド面)、52…円筒の部材(凸部)としての第2ローラ(第2実施形態)、52a…ラグプレート側ガイド面としての第2ラグプレート側ガイド面、P…斜板側ガイド面の中心軸線、Q…ラグプレート側ガイド面の中心軸線(第2実施形態では「Q1」が第1ラグプレート側ガイド面の中心軸線、「Q2」が第2ラグプレート側ガイド面の中心軸線)。
Claims (7)
- 駆動軸と、
前記駆動軸に連結され、当該駆動軸と同期回転されるラグプレートと、
前記駆動軸が貫通されて、当該駆動軸に支持されたカムプレートと、
前記ラグプレートと前記カムプレートとの間に設けられ、前記カムプレートの前記駆動軸に対する傾斜角度を変更させ、かつ、前記ラグプレートによる回転力を前記カムプレートへ伝達するヒンジ機構と、を備え、
前記ヒンジ機構は、前記カムプレートにおいて前記ラグプレート側に向かって突設されたアームと、前記ラグプレートにおいて前記カムプレート側に向かって突設された支持部とを備え、
前記支持部は、前記カムプレート側に凸の凸部を備え、当該凸部の前記カムプレート側には、略曲面で構成された側面を有する略柱における当該側面の一部又は全部と同一形状のラグプレート側ガイド面が設けられ、
前記アームは、前記カムプレートを基準として前記ラグプレート側に凸のカムプレート側ガイド面が設けられ、当該カムプレート側ガイド面は、略曲面で構成され、
前記カムプレート側ガイド面が前記ラグプレート側ガイド面を摺動して前記カムプレートの前記駆動軸に対する傾斜角度が変更される、可変容量圧縮機。 - 前記ラグプレート側ガイド面は複数設けられ、前記カムプレート側ガイド面は、前記カムプレートの前記駆動軸に対する傾斜角度に応じて所定のラグプレート側ガイド面と当接して摺動する、請求項1記載の可変容量圧縮機。
- 前記ラグプレート側ガイド面は、各面と略同一形状の仮想的な柱における底面の中心を結んだ軸線を中心として、前記駆動軸と略平行な方向を基準とした場合における、前記カムプレート側ガイド面との当接位置の角度が、面ごとに一部又は全部が異なるようにされた、請求項2記載の可変容量圧縮機。
- 前記凸部は略円筒の部材が前記支持部に組み付けられて設けられた、請求項1から3のいずれか一項に記載の可変容量圧縮機。
- 前記カムプレート側ガイド面は、略柱の側面の一部又は全部と同一形状であり、この仮想的な柱における底面の中心同士を結んだ軸線と、前記ラグプレート側ガイド面と略同一形状の仮想的な柱における底面の中心同士を結んだ軸線とが略平行に配置された、請求項1から4のいずれか一項に記載の可変容量圧縮機。
- 前記凸部は、前記ラグプレート側ガイド面と略同一形状の仮想的な柱における底面の中心同士を結んだ軸線を中心として回転可能な、請求項1から5のいずれか一項に記載の可変容量圧縮機。
- 前記した仮想的な柱が仮想的な錐台及び錐のいずれかに置換された、請求項1から6のいずれか一項に記載の可変容量圧縮機。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004185523A JP2006009626A (ja) | 2004-06-23 | 2004-06-23 | 可変容量圧縮機 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2004185523A JP2006009626A (ja) | 2004-06-23 | 2004-06-23 | 可変容量圧縮機 |
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Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2006009626A true JP2006009626A (ja) | 2006-01-12 |
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ID=35777150
Family Applications (1)
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JP2004185523A Pending JP2006009626A (ja) | 2004-06-23 | 2004-06-23 | 可変容量圧縮機 |
Country Status (1)
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JP (1) | JP2006009626A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN104948414A (zh) * | 2014-03-25 | 2015-09-30 | 株式会社丰田自动织机 | 可变排量旋转斜板式压缩机 |
-
2004
- 2004-06-23 JP JP2004185523A patent/JP2006009626A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN104948414A (zh) * | 2014-03-25 | 2015-09-30 | 株式会社丰田自动织机 | 可变排量旋转斜板式压缩机 |
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