JP2006009171A - 極短繊維製造用の凍結繊維束の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 1.0 mm以下(特に、0.1 mm以下)の繊維長を有する極短繊維を、ミスカットすることなく、歩留まり良く大量に製造することができる極短繊維製造用の凍結繊維束の製造方法を提供する。
【解決手段】 冷却によって固化し加熱によって気化又は液化するの氷柱(1),(2)を固化状態で互いに接合可能な状態に一対として形成すると共に、更に、多数の単繊維群を互いに繊維長手方向に並行となるように引き揃えて束ねた繊維束(3)を形成し、前記繊維束(3)に液体状態にした水を含ませ、前記一対の氷柱(1),(2)を間に挟んで前記繊維束を一方向に引き揃えられた状態で設置し、前記一対の氷柱(1),(2)によって前記繊維束(3)を加圧して内部に含まれる水の一部を押し出し、加圧状態の前記繊維束(3)を冷却して前記繊維束(3)を埋包処理することを特徴とする極短繊維製造用の凍結繊維束の製造方法である。
【選択図】 図1
【解決手段】 冷却によって固化し加熱によって気化又は液化するの氷柱(1),(2)を固化状態で互いに接合可能な状態に一対として形成すると共に、更に、多数の単繊維群を互いに繊維長手方向に並行となるように引き揃えて束ねた繊維束(3)を形成し、前記繊維束(3)に液体状態にした水を含ませ、前記一対の氷柱(1),(2)を間に挟んで前記繊維束を一方向に引き揃えられた状態で設置し、前記一対の氷柱(1),(2)によって前記繊維束(3)を加圧して内部に含まれる水の一部を押し出し、加圧状態の前記繊維束(3)を冷却して前記繊維束(3)を埋包処理することを特徴とする極短繊維製造用の凍結繊維束の製造方法である。
【選択図】 図1
Description
本発明は、繊維長が1.0 mm以下の極短繊維を製造するための原料となる、多数の長単繊維群を束ねて凍結した繊維束を製造するための方法に関する。
従来、ポリエステル、ポリアミドなどの熱可塑性合成ポリマーからなる長単繊維群を束ねて繊維束とし、この繊維束を切断して数mmから数十mmの長さの短繊維を得るために、各種の繊維束切断装置が慣用されている。例えば、このような切断装置として、切断刃が放射状に多数設けられたカッターローラに繊維束を巻付け、切断刃上に巻き付けられて巻き太った繊維を切断刃に押圧しながら連続的に所定の長さに切断するローラカッター式繊維束切断装置が使用されている。また、固定刃と移動刃とを剪断刃として設け、これら剪断刃の間に所定の切断長づつ繊維束を押し出して切断するいわゆるギロチンカッター式繊維束切断装置も古くから知られている。
しかしながら、このような従来タイプの繊維束切断装置を用いて単繊維繊度の小さな繊維を切断しようとすると、繊維自体が有する弾性のために繊維が湾曲したり、座屈したりして固定刃に直角に当接しなくなったり、あるいは、固定刃と移動刃とのクリアランスの調整が極めて困難となったりして、斜め切りや切断長さの不揃いなどのミスカットが多量に発生する。このような場合においても、繊維の切断長が一定に揃えられた短繊維を得ようとすると、ミスカットされた多量の切断繊維の中から正常に切断されたもののみを選別して取り出すことが要求される。しかしながら、その作業は極めて繁雑であるばかりか、許容切断長に収まらないミスカットされた繊維が多くなると、正常に切断された繊維の収率そのものも悪くなる。
以上に述べたような従来技術では、切断後の繊維長が1.0 mm以下(特に、0.1 mm以下)になるように切断することはきわめて難しく、工業的な規模でこのような短い繊維長を有する極短繊維を製造することは、これまで試みられてこなかった。わずかに、特開2003−119662号公報において、連続的に供給される繊維束の切断部より前方にこの繊維束をシート状物によって包む役割を果たさせるためのガイドを取り付け、連続シート状物を繊維束に併走させてガイドローラを介してシート状物を繊維束を包むように重ねて繊維束と一緒に切断する技術が提案されている。
ところが、このようなシート状物を使用するとなると、切断後に切断された繊維とシート状物とを分離することが要求されるが、これらを完全に分離することが困難であって、わずかであっても切断した繊維に混入する可能性がある。その上、切断繊維長が0.1 mmに近づくにしたがって、使用できるシート状物は、より剛直なものが必要とされ、更に切断可能な繊維束の束径も生産性を上げることができるまでの径にまで大きくすることができず、どうしても小さくする必要が生じる。何故ならば、一旦多数の単繊維群を束ねて太い繊維束を形成させてしまうと、繊維束の周りをフィルム状シートで包み込んだとしても、繊維束を構成する単繊維群に強い拘束力を作用させることが容易ではなくなからである。そうすると、どうしても自由に動ける状態にある単繊維群が部分的に発生してしまって、ミスカットなく切断することは容易ではない。このため、生産効率が大幅に低下し、生産効率の面からも好ましくなく、しかも、このような従来技術を好適に使用したとしても、なお実質的に0.1 mm以下の切断繊維長を有する極短繊維を歩留まり良く製造するのは困難である。
特開2003−119662号公報
本発明の目的は、以上に述べた従来技術が有する諸問題を解決することにあり、1.0 mm以下(特に、0.1 mm以下)の繊維長を有する極短繊維を、ミスカットすることなく、歩留まり良く大量に製造することができる極短繊維製造用の凍結繊維束の製造方法を提供することにある。
しかしながら、繊維束から短繊維を切り出すには、繊維束を構成する単繊維群の一本の単繊維を取り出すと、この単繊維は極めて細く、しかも、弾性に富むために、切断時に切断刃から受ける力によって容易に変形して切断刃から逃げてしまうという根本的な問題を解決することが必要である。そして、これを具現化するための手段として、氷(あるいは、ドライアイス)を媒介として繊維束を氷凍結し、特に、0.1 mm以下というような極めて短い長さに切断した。
ところが、例えば水で繊維束を凍結すると、脱気処理した水を凍結水として使用したとしても、凍結した繊維束の内部やその周辺に気泡が一緒に凍結されるような事態が生じることが分かった。そうすると、気泡部周辺の繊維は凍結氷にて拘束されなくなるために、繊維自体が有する弾性のために繊維が湾曲したり、挫屈したりして切断刃に直角に当接しなくなり、斜め切りや切断長さの不揃いなどのミスカットが多量に発生する等の様々な弊害が生じることが分かった。
そこで、少なくとも繊維束が存在する領域においては、無気泡で透明な氷によって繊維束を凍結処理することがきわめて重要であることを知見した。なお、このような無気泡で透明な氷の作成方法について従来技術を探索したところ、蒸留水を凍結容器に注入した後、該容器の上方と下方間で一定の温度勾配を持たせた状態で該容器中の蒸留水を攪拌しながら、冷却媒体の入った容器中に該凍結容器を浸漬して、凍結過程における氷の異方的成長を抑制することによって、白濁の無い透明な氷を得るという技術が、例えば特開平6−42848号公報に提案されているように周知であることが分かった。
しかしながら、前記の従来技術を使用して繊維束を無気泡で透明な氷中に凍結しようとしても、繊維束を構成する単繊維群間に存在する空気や単繊維群に付着した空気を凍結時に追い出す必要がある。しかしながら、このような気泡を凍結前あるいは凍結中に氷中から追い出すことがきわめて困難であることを知見した。そこで、本発明者は、この問題を解決するために鋭意検討した結果、繊維束を水に浸漬した状態で繊維束を凍結するのでは氷で凍結した繊維束から気泡を取り除くのはきわめて難しいことがわかった。
以上に述べたような背景から、本発明者は、互いに接合可能な一対の氷を予め製作し、接合する氷の表面を溶解状態にした後に、予め十分に水を含ませるか、あるいは脱気した水中に浸漬した繊維束を前記一対の氷の間に設置して一対の氷を高圧で加圧しながら水を凍結する方法を想到するに至った。そして、この着想を実験したところ、白濁の無い透明な氷により凍結された繊維束を得ることが可能で有ることを見出し、本発明を完成したものである。
ここに、前記課題を達成することができる本発明として、請求項1に記載の「冷却によって固化し加熱によって気化又は液化するの埋包材を固化状態で互いに接合可能な状態に一対として形成すると共に、更に、多数の単繊維群を互いに繊維長手方向に並行となるように引き揃えて束ねた繊維束を形成し、前記繊維束に液体状態にした前記埋包材を含ませ、前記一対の埋包材の間に挟んで前記繊維束を一方向に引き揃えられた状態で設置し、前記一対の埋包材によって前記繊維束を加圧して内部に含まれる液体状の埋包材の一部を押し出し、加圧状態の前記繊維束を冷却して前記繊維束を埋包処理することを特徴とする極短繊維製造用の凍結繊維束の製造方法」が提供される。
また、請求項2に記載の発明として、「前記埋包材が、ドライアイス、氷、パラフィン、及び熱可塑性樹脂からなる材料群中から選ばれる少なくとも一つの材である、請求項1に記載の極短繊維製造用の凍結繊維束の製造方法」が提供される。
また、請求項3に記載の発明として、「固化状態にある前記埋包材が氷である、請求項2に記載の極短繊維製造用の凍結繊維束の製造方法」が提供される。
また、請求項4に記載の発明として、「脱気した水を液化状態の埋包材として使用し、前記繊維束に前記水を含浸させて前記の加圧処理を行う、請求項3に記載の極短繊維製造用の凍結繊維束の製造方法」が提供される。
また、請求項5に記載の発明として、「請求項4に記載の加圧処理を前記繊維束の前記水への浸漬状態下で行うことを特徴とする極短繊維製造用の凍結繊維束の製造方法」が提供される。
また、請求項6に記載の発明として、「請求項5に記載の水を加圧することを特徴とする極短繊維製造用の凍結繊維束の製造方法」が提供される。
また、請求項7に記載の発明として、「前記繊維束がポリエステル又はポリアミドなどからなる熱可塑性合成繊維からなる、請求項1〜6の何れかに記載の極短繊維製造用の凍結繊維束の製造方法」が提供される。
そして、請求項8に記載の発明として、「一本の前記繊維束の総繊度が1万〜1000万dtexである、請求項1〜7の何れかに記載の極短繊維製造用の凍結繊維束の製造方法」が提供される。
前記請求項1に記載の発明によれば、固体状態にある互いに接合可能な一対の埋包材の間に、一方向に引き揃えられた単繊維群からなる繊維束を挟んでサンドイッチ状態で加圧することができる。このときサンドイッチ状態で一対の埋包材の間に挟まれる繊維束に対して、液体状態にした埋包材を予め含浸させておくと、一対の埋包材の接合面に付着する空気や、繊維束に付着したり、単繊維群間に含まれたりする空気が、流出する液体状の埋包材と共に外部へ流れ出す。これとともに、液体状の埋包材が繊維束の内部にも十分に進入することができる。
しかも、固体状態の埋包材の接合面に付着していた空気も接合可能な一対の埋包材を圧接する際に、外部に流れ出す液体状の埋包材と共に外部に押し出されて流出することとなる。したがって、埋包した繊維束の内部や外周に気泡が残留することを抑制することができる。
そうすると、無気泡状態で繊維束を埋包処理することができ、繊維束を構成する単繊維の一本々々を固化した埋包材で拘束することができる。すなわち、気泡の存在によって拘束されない単繊維の出現の可能性を低減することができる。このため、このようにして埋包処理した繊維束の端面を薄片状に切削すれば、切削刃による切削力を単繊維に確実に伝達することができる。したがって、1.0 mm以下(特に、0.1 mm以下)の繊維長を有する極短繊維を、ミスカットすることなく、工業的な規模で歩留まり良く大量に製造することができる。
なお、請求項2に記載のように前記埋包材として、ドライアイス、氷、パラフィン、及び熱可塑性樹脂からなる材料群中から選ばれる少なくとも一つの材を使用するようにすれば、これらの材は加熱によって、容易に液化あるいは気化することができるために、容易に繊維束に含浸させることができる。しかも、これを冷却すれば固化して、単繊維群を完全に拘束することができるために、前述の切断長を有する極短繊維を製造するための埋包材として好適に使用することができる。
その際、請求項3に記載のように、接合可能な一対の埋包材として特に氷を使用すれば、繊維束を囲繞する一定の厚さを有する氷によって切削時に繊維束を強固に保持できるため、切削力を繊維束に十分に伝達することができる。また、当然のことながら、前述のように、水は乾燥によって水蒸気化するために容易に製造した極短繊維と分離でき、しかも、安価、大量かつ容易に入手可能であり、更に、安全性や環境面においても優れた性質を有するため特に好ましい。
このとき、請求項4に記載のように、更に、脱気した水(特に、蒸留水が好ましい)を液化状態の埋包材として使用すると、前記の接合可能な一対の埋包材と同一の材料であるために、凍結時に接合面を同一材料である水で濡らしながら極めて良好に接合することができる。このため、接合界面に気泡が残留することも極力解消でき、繊維束の外周を強固に拘束することができる。しかも、凍結処理(埋包処理)に関しては、接合可能な一対の氷については、既に凍結されているため凍結処理を行う必要が無く、実質的に繊維束に含まれる水とこの繊維束の外周を取り囲む水とに対してだけ実施するだけでよい。このため、極めて短時間で繊維束の凍結処理(埋包処理)を実施することができる。
更に、請求項5に記載のように、接合可能な一対の氷(埋包材)によって繊維束を挟んでサンドイッチ状態で加圧処理を行うに際して、前記水中に繊維束を浸漬した状態下で加圧処理を行うことにすると、水中に浸漬した繊維束を一旦外部に取り出す必要がない。このために、繊維束の外周部などに空気が再付着するのを防止することができ、埋包処理した繊維束の内部や外周部に気泡が残留することが無くなる。
また、請求項6に記載のように、繊維束を水に浸漬したままで前記の一対の氷(埋包材)によって繊維束を挟んで加圧処理を行うようにするとともに、繊維束を浸漬する水を加圧すると、水は加圧によって固化する温度(大気圧下では0℃である)が低下する過冷却状態になる。このために、0℃以下に過冷却された水中では気体の溶解度が更に低下し、凍結前に溶解していた気体を更に気泡化させて除去することができる。その上、例え気泡が生じても、加圧されているために、気泡のサイズは極めて微小であり、そのサイズが大きくなることは無い。このため、水を凍結した時に得られる氷は、ほとんど気泡がなく無色透明となる。
本発明は、以上に述べた優れた作用効果を奏するため、埋包処理の対象となる一本の前記繊維束の総繊度が1万〜1000万dtexであっても、内部に含まれる気泡が少ない埋包処理を施すことができる。
本発明が製造しようとする凍結繊維束は、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンなどのポリマーからなる合成繊維、あるいは2種以上のポリマーを組み合わせた複合合成繊維からも得ることができるが、特にこれらに限定されるわけではない。つまり、絹糸、綿糸、麻糸などの天然繊維、あるいはセルロース繊維、アセテート繊維などのような半合成繊維からも得ることができる。
一般に、繊維長が1.0 mmから数十mmにカットされた短繊維は、その単繊維(“フィラメント”ともいう)の繊度が0.001〜10 dtexと非常に小さな単繊維群を束ねた繊維束を短く切断して製造される。しかしながら、このような単繊維は、一本々々は非常に細くて柔軟であって、切断力が作用する方向に容易に変形して逃げてしまうために、特に、0.1 mm以下の繊維長を有する極短繊維を製造するのは容易ではない。そこで、本発明においては、繊維束を互いに接合可能な一対の埋包材間で挟んだ後、挟み込んだ繊維束を前記一対の埋包材によって十分に加圧して繊維束を埋包材中に埋め込んだ状態で一体化する。そして、繊維束を一対の前記埋包材によって固定し繊維束の運動の自由度を拘束し、繊維束を構成する単繊維群かが容易に動くことができない状態を現出させ、この状態で切削刃によって薄片状に削り取る。そうすると、繊維束を構成する単繊維群に切削力が作用した際に、暖簾に腕押しといった風に単繊維が容易に切削刃から逃げてしまうことも無く、大きな切削力を作用させることができる。
ただし、本発明においては、互いに接合可能な固体状態にある一対の埋包材の間に繊維束を挟み込んで加圧するに当たって、繊維束の内部に溶融状態にある液化した埋包材を十分に含浸させておくことが好ましい。何故ならば、先ず繊維束に液化した埋包材を含浸させる工程において、不十分ではあるが、この含浸工程において、繊維束に付着したり、単繊維群間に存在したりする空気を液化した埋包材で置き換えることができるからである。
このようにして、繊維束に付着したり、単繊維群間に存在したりする空気を液化した埋包材で置き換える処理を行った後、互いに接合可能な固体状態にある一対の埋包材の間に挟み込み、繊維束を加圧する。そうすると、繊維束に含浸された液状の埋包材が加圧によって、一対の埋包材を互いに接合させる接合面の間隙から流れ出す。このとき、液状の埋包材を繊維束に含浸させても繊維束の内部に未だ残存していた気泡も同時に外部に流れ出す。そして、このような一対の埋包材によって加圧した状態で繊維束を冷却すると、液化状態にある埋包材も固化する。したがって、無気泡に近い状態で繊維束を埋包処理することができる。
なお、本発明で使用する前記埋包材としては、ドライアイスや氷を好適に使用することができ、その他にパラフィンを好適に使用することもできる。更には、埋包処理する繊維よりも大幅に低い分子量を有する熱可塑性樹脂を使用することができる。なお、このような低分子量の熱可塑性樹脂としては、その溶融温度と溶融粘度とが低く、製造する極短繊維と容易に分離できるものであれば特に限定されるものではないが、例えば低重合ポリエステル、低重合ポリスチレン、低重合ポリエチレンなど、周知の低分子量の熱可塑性樹脂を適宜使用条件に合わせて使用することができる。
しかしながら、本発明においては、埋包材として氷を用いることが特に好ましい。何故ならば、氷は融けると水となるため、乾燥することで製造した極短繊維と容易に分離できるためである。また、冷却して凍結させると硬度が大きくなり、このため、切削刃による被切削性においても優れる。さらに、水になるとその粘度が他の材料に比較してもきわめて低いため、繊維束の内部に容易に進入することができ、このようにして進入した水を凍結固化させれば、一本の総繊度が1万〜1000万dtexである繊維束であっても、この繊維束を構成する単繊維の一本々々を確実に拘束することができるという大きな特徴も有しているからである。
以下、本発明の係る実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の極短繊維製造用の凍結繊維束の製造方法を模式的に例示した説明図であって、1及び2は繊維束を凍結処理するための固体状態にある一対の埋包材であって、このような埋包材として、氷を好ましく使用することができる。また、3は繊維束であって、この繊維束3は液化状態の埋包材を含浸した状態で直線状に一方向へ引き揃えられている。なお、4は加圧手段(図の例では、錘)である。なお、図2は、氷柱1と2の間に繊維束3が挟まれたサンドイッチ状態で加圧処理を受けている様子を模式的に説明するための説明図(正断面図)である。
図1は、本発明の極短繊維製造用の凍結繊維束の製造方法を模式的に例示した説明図であって、1及び2は繊維束を凍結処理するための固体状態にある一対の埋包材であって、このような埋包材として、氷を好ましく使用することができる。また、3は繊維束であって、この繊維束3は液化状態の埋包材を含浸した状態で直線状に一方向へ引き揃えられている。なお、4は加圧手段(図の例では、錘)である。なお、図2は、氷柱1と2の間に繊維束3が挟まれたサンドイッチ状態で加圧処理を受けている様子を模式的に説明するための説明図(正断面図)である。
このとき、繊維束3を埋包処理するための氷1と2は、直線状に一方向へ引き揃えられた状態の繊維束3をそのままの形で接合するように予め成形されたものである。例えば、この埋包材に氷を使用する際には、互いに接合可能なような形を有する容器内で製氷された一対の氷柱を使用する。このとき、一対の氷柱には、図示したように、例えば“水”のような液体状の埋包材を含浸した繊維束3を置くことができる凹部が設けられており、この部分に繊維束3を挟んだ状態で一対の氷柱を接合する。この一対の氷柱の接合に際しては、図示したように、水を含浸した繊維束3を置く部分では繊維束3を良好に加圧できるような形状としておくことが好ましい。このため、一方の氷柱1には凹状の窪み形状が付けられ、他方の氷柱2には凸状の突起形状が形成され、これらが互いに勘合でき、これによって互いに接合できるようになっている。
本発明においては、繊維束3に液状の埋包材(以下、“水”で代表させて説明する)を含浸させて、繊維束3を形成する単繊維群に付着した空気やその間に存在する空気を水で置き換える。したがって、このような操作を行うに当たっては、煮沸処理などによって脱気した蒸留水を充填した容器中に繊維束3を浸漬して、更に、繊維束3に微振動を加えたり、超音波を照射するなどして繊維束3から空気を十分に追い出すことが好ましい。
そして、このような状態の繊維束3を前記一対の氷柱1と2の間に挟んで、加圧手段4によって適当な力を付与して繊維束3を加圧する。そうすると、この加圧によって、繊維束3に含浸されていた水の一部が接合面の間隙から押し出され、互いに接合する氷柱1と2の間の界面に付着する空気も同時に押し出される。そして、このような状態において、繊維束3に含浸された水を加圧したままで冷却して凍結固化する。そうすると、気泡が含まれない無透明な氷によって埋包処理された繊維束3を製造することができる。そして、このようにして埋包処理された繊維束3を切削に供することによって、ミスカットのない繊維長が0.1 mm未満の極短繊維を工業的に歩留まり良く大量に製造できることになる。
以上に述べた本発明の方法においては、脱気処理した蒸留水を充填した容器中に繊維束3を浸漬し、繊維束3から空気を抜く処理を行っている。しかしながら、この操作において、水を含浸させた繊維束3を容器から取り出すと、この取り出し操作の過程で繊維束3に空気が再付着する。そこで、水中から繊維束3を取り出さずに、繊維束3が水中にある状態で、一対の氷柱1と2の間に繊維束3を挟んで加圧するようにすることが好ましい。そして、このようにして繊維束3をサンドイッチにして加圧した状態の氷柱1と2を水中から取り出して冷却し、繊維束3の内部に含まれる水を凍結して、繊維束3を氷の中に埋包する。
なお、前述の操作では、水中において一対の氷柱1と2とで加圧された状態の繊維束3を水中から取り出すようにしたが、水中から取り出さずにそのままの状態で冷却し、容器内の水と共に冷却するようにしてもよい。なお、このような場合には、容器内の水も加圧して、過冷却された水の氷点が0 ℃以下に下がるような状態で凍結を実施するようにしてもよい。そうすると、過冷却によって、過冷却前に溶解していた気体が気泡化し、前述のような微振動の付与や超音波の照射などより脱気した水を提供することができる。また、水中に微小な気泡が残っていても、加圧によってその体積が減少し、気泡サイズがより微細化される。そうすると、繊維束3の内部とその外周部に存在する氷をより透明で無気泡な状態で凍結処理することができる。なお、このとき使用する水としては蒸留水が好ましい。
また、本発明においては、繊維束3を水中に浸漬して脱気する工程において使用する蒸留水は、氷点に近い温度にまで冷却しておくことが好ましい。何故ならば、含水状態の繊維束3から加圧によって水の一部を追い出した後、直ちに凍結処理を行って短時間で水を凍結するためには、水温をできるだけ氷点に近い温度にまで冷却しておくことが好ましいからである。なお、このような好ましい水温としては、加圧されて過冷却した水を使用して、0℃以下にすることも好ましい実施態様であるが、通常の大気圧下で使用する場合には、0.5〜5 ℃程度に冷却しておくことも好ましい実施態様である。
このとき、本発明で使用する一対の氷柱1と2は、繊維束3の周りを取り囲んで切削時に繊維束3に作用する力を完全に受け止めることができればよく、このためにはできるだけ硬度が大きなもの使用することが好ましいが、とくにその性状を限定する理由はない。しかし、脱泡処理のため繊維束3を水中に浸漬する操作を行う場合には、これらの氷柱1と2の温度は低温にしておくことが好ましい。そこで、例えば、氷柱1と2の温度を−1〜−100℃にすることが好ましい。
また、本発明においては、一対の氷柱1と2の間に繊維束3を挟んで接合する際に、繊維束3の一方向への引揃えが十分に行われていれば特に限定されることは無い。しかしながら、一対の氷柱1と2の接合時に、繊維束3の両端を固定具で把持し、所定の張力で繊維束3を引っ張って、緊張状態にして接合を行うことが好ましい。何故ならば、繊維束3が弛んでいると、繊維束3を校正する単繊維が斜めになった状態で凍結処理(埋包処理)されてしまい、斜め切りなどのミスカットが生じるために、切断長のばらつきが発生するからである。
更に、本発明においては、前述のように一対の氷柱1と2の間に挟んだ繊維束3を加圧することが肝要であって、これを具現化するために加圧手段4を備えている。この加圧手段4としては、図に示したように、応力集中が特定部分に生じないように広い接触面積を有する錘を好適に使用することができる。しかしながら、本発明の加圧手段4は、このような錘に限定されること無く、例えば、空気圧や水圧などで作動する流体圧シリンダーなども好適に使用することができる。また、万力のようなクランプ力を付与する周知の器具を使用することもできる。要するに、氷柱1又は2の特別な箇所に応力集中が発生して、氷柱1又は2を破損したりすることがないような器具又は方法で所定の圧力を氷柱1と2を介して繊維束3を加圧できれば良い。
以下、実施例により本発明の凍結繊維束の作成方法を説明する。
まず、ポリエステルからなる4dtexの単繊維群を均一に束ねて繊維長1.1 m、総繊度200万dtexの繊維束を作成した。そして、得られた繊維束の両端を固定具で固定、100 kgの張力を図1の矢印方向へ与えて緊張状態にした。次いで、予め煮沸処理された後に2℃に冷却された蒸留水を充填した容器中に緊張状態を保ったままの繊維束を浸漬して水を含浸させると共に、繊維束を浸漬した容器に対してバイブレータによって微振動を加えて容器内の水に微振動を与えた。
まず、ポリエステルからなる4dtexの単繊維群を均一に束ねて繊維長1.1 m、総繊度200万dtexの繊維束を作成した。そして、得られた繊維束の両端を固定具で固定、100 kgの張力を図1の矢印方向へ与えて緊張状態にした。次いで、予め煮沸処理された後に2℃に冷却された蒸留水を充填した容器中に緊張状態を保ったままの繊維束を浸漬して水を含浸させると共に、繊維束を浸漬した容器に対してバイブレータによって微振動を加えて容器内の水に微振動を与えた。
次に、水を含浸させた繊維束を容器から取り出し、直ちに、70mm幅×1000 mm長さ×20 mmの接合面が平滑に仕上げられ、かつ、図1に示したような形状を有する一対の氷柱によってサンドイッチし、重さ2 kgの錘を一方の氷柱の上に載せた状態で冷蔵庫中に入れて、8時間冷凍した。この時、繊維束と接合する氷柱の温度を−10℃にし、接合の直前において接合面を水で濡らした。このようにして、氷中に埋包処理(凍結処理)した繊維束をカッターによって切断し、その切断面を観察したところ、繊維束の内部と外周部とは無気泡で透明な氷によって良好な状態で埋包されていた。
以上に述本発明の方法を用いて極短繊維製造用の凍結繊維束を製作することによって、繊維束の内部とその外周部とに気泡が実質的に存在しない埋包材によって埋包処理することができる。このため、本方式で得られた凍結繊維束を用いれば、繊維束は埋包材によって強固に固定されているので、切断時に発生する繊維束の逃げが発生せず1mm以下、特に0.1 mm以下の切断繊維長を有する極短繊維をほとんどミスカットすることなく工業的な規模で安定、安価かつ容易に製造することができる。
1:氷柱
2:氷柱
3:繊維束
4:錘(加圧手段)
2:氷柱
3:繊維束
4:錘(加圧手段)
Claims (8)
- 冷却によって固化し加熱によって気化又は液化する埋包材を固化状態で互いに接合可能な状態に一対として形成すると共に、更に、多数の単繊維群を互いに繊維長手方向に並行となるように引き揃えて束ねた繊維束を形成し、前記繊維束に液体状態にした前記埋包材を含ませ、前記一対の埋包材の間に挟んで前記繊維束を一方向に引き揃えられた状態で設置し、前記一対の埋包材によって前記繊維束を加圧して内部に含まれる液体状の埋包材の一部を押し出し、加圧状態の前記繊維束を冷却して前記繊維束を埋包処理することを特徴とする極短繊維製造用の凍結繊維束の製造方法。
- 前記埋包材が、ドライアイス、氷、パラフィン、及び熱可塑性樹脂からなる材料群中から選ばれる少なくとも一つの材である、請求項1に記載の極短繊維製造用の凍結繊維束の製造方法。
- 固化状態にある前記埋包材が氷である、請求項2に記載の極短繊維製造用の凍結繊維束の製造方法。
- 脱気した水を液化状態の埋包材として使用し、前記繊維束に前記水を含浸させて前記の加圧処理を行う、請求項3に記載の極短繊維製造用の凍結繊維束の製造方法。
- 請求項4に記載の加圧処理を前記繊維束の前記水への浸漬状態下で行うことを特徴とする極短繊維製造用の凍結繊維束の製造方法。
- 請求項5に記載の水を加圧することを特徴とする極短繊維製造用の凍結繊維束の製造方法。
- 前記繊維束がポリエステル又はポリアミドなどからなる熱可塑性合成繊維からなる、請求項1〜5の何れかに記載の極短繊維製造用の凍結繊維束の製造方法。
- 一本の前記繊維束の総繊度が1万〜1000万dtexである、請求項1〜6の何れかに記載の極短繊維製造用の凍結繊維束の製造方法。
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JP2004184798A JP2006009171A (ja) | 2004-06-23 | 2004-06-23 | 極短繊維製造用の凍結繊維束の製造方法 |
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Cited By (2)
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---|---|---|---|---|
JP2008089441A (ja) * | 2006-10-03 | 2008-04-17 | Natl Inst Of Radiological Sciences | 分析標準およびその作製方法 |
CN111139556A (zh) * | 2020-02-26 | 2020-05-12 | 江苏奥神新材料股份有限公司 | 一种用于聚酰亚胺纤维切断的设备及切断方法 |
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2004
- 2004-06-23 JP JP2004184798A patent/JP2006009171A/ja active Pending
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