以下、本発明の実施例について、図面を参照して詳述する。
(実施例1)
図5(A)は、本発明による光機能素子の一実施例の構成の概念を示す平面図、(B)はそのA−A位置で矢印方向に見た断面図である。本実施例は、フォトニック結晶からなる第1の構造体としてフォトニック結晶スラブ11を用意し、円柱22の周期構造を形成する。円柱22は、具体的には空孔とした。第2の構造体として誘電体からなる平板12をフォトニック結晶スラブ11の上面に近接して設け、フォトニック結晶スラブ11と平板12との距離を変化させることによって、伝搬する光の強度と位相を変化させる構成である。光は、図に示すように、図の左方から入射し、右方から出射するものとする。
この例では、フォトニック結晶スラブ11の媒質はSiとし、その屈折率は3.5、厚さ175nm、格子間隔350nm、空孔22の半径105nmの空孔三角格子からなるものとした。スラブ11の周辺は空気から構成される。光入射の方向は、三角格子のΓ―M方向であり、波長は1.55μmである。また、平板12は、屈折率3.5のSiとし、その厚さは175nmとした。
図6は図5に示す構成で、フォトニック結晶スラブ11の上面と平板12との距離を変化させ、フォトニック結晶スラブ11を伝搬する光の透過率と位相変化をシミュレーションによって求めた結果を示す図である。図6の横軸は、フォトニック結晶スラブ11の上面と平板12との距離dで、左軸は、規格化された透過率、右軸は位相変化を示す。図から分かるように、光透過率は、距離dが小さくなるにつれてd=250nm付近から減少する。その後、d=80nm付近で最小値を取り、その後は一転して光透過率は増加する。平板とフォトニック結晶スラブが密着したd=0nmでは、光透過率は、ほとんどd>250nmでの光透過率、すなわち平板が無い状態の光透過率に戻ってしまうことが分かる。この現象は平板とフォトニックス結晶スラブとの距離dを変えたとき、実用に供しうる透過率の変化が得られる波長域で生ずる。
このことは、新たに発見された点であり、かつ非常に重要な意味を持っている。すなわち、平板を単にフォトニック結晶スラブに密着させるだけでは、光透過率の変化を引き起こさせることは出来ない。図6の結果が得られた構成では、少なくともd=50nm以上平板とフォトニック結晶スラブを離しておかないと、効率的な光透過率の変調は制御できないことを示している。このように、平板12とフォトニック結晶スラブ11とを密着させず、ある距離離しておくことが本質である。勿論、ここに示したd=50nmの値は、平板やフォトニック結晶スラブの構造、材質に依存する量である。
一方、出射光の位相は、距離dが50から80nmの範囲で大きく変化し、この前後で位相がπ変化することが分かる。このように、距離dを少しだけ変化させることによって、光透過率および位相の両者を大幅に変化させることが可能である。
図7は、上述の大きな変化の起因を明らかにするため、フォトニック結晶スラブ11を伝搬する光の透過率をシミュレーションによって求めた図である。図7中の実線は平板12が無い場合、図7中の波線は平板12を、距離d=0.1aだけ離して設置した場合の結果である(aは格子定数)。このフォトニック結晶スラブ11は、三角空孔格子からなり、空孔の半径r=0.3a、スラブ厚さt=0.5a、スラブ屈折率は3.5、平板12の屈折率は3.5、厚さは0.5a、長さは6aとなっている。図7から、フォトニック結晶スラブ11を伝搬する光が平板12の存在によって大きく影響を受け、その特性が大きく変わっていることが分かる。とくに特徴的な点は、平板の存在によって、規格化周波数0.22から0.32付近に存在するバンドギャップ内に、透過ピークが現れることである。このように、平板12の存在によって、バンドギャップ内に新しい準位ができることが分かる。これは、フォトニック結晶のバンド構造が変わったことに対応する。このように、フォトニック結晶のバンド構造が変化することによって、フォトニック結晶を伝搬する光の伝搬の様子が大幅に変わることが重要であることが示された。
図8は、図5に対応する構造を基礎として、作製した光機能素子の構造を示す斜視図である。フォトニック結晶スラブ11は、媒質は屈折率3.5のSi、空孔22を格子間隔350nm、空孔半径105nm、厚さ175nmとする空孔三角格子からなる。スラブ11の周辺は、空気から構成される。フォトニック結晶スラブ11は基板71の上に形成されるが、基板71との間に適当な空隙を形成するとともに、電気的に絶縁するために、SiO2層72を介して形成される。また、光ファイバ(図示しない)からの入射光をフォトニック結晶スラブ11に、効率良く導入し、フォトニック結晶スラブ11からの出射光を効率良く光ファイバ(図示しない)へ導くため、フォトニック結晶スラブ11の両側にリッジ型の導波路75を設けている。このリッジ型の導波路75は、厚みはフォトニック結晶スラブ層11と同じで、幅は3μmとした。
平板12の厚さは175nmとし屈折率3.5のSiとしている。また、平板12の両端部はSiO2層74を介してフォトニック結晶スラブ11の上面に対向するように配置される。これは、フォトニック結晶スラブ11と平板12とを電気的に絶縁するとともに、定常状態でフォトニック結晶スラブ11と平板12との距離を予定値に保つためである。この例では、これを0.5μmとした。また、平板12の両端部に近い部分には切り欠き12aおよび12bを設ける。これは平板12がフォトニック結晶スラブ11の上面と平行を保ちながら変形し安くするためである。ここで注意すべきは、平板12は、フォトニック結晶スラブ11の上面の上では、下面に空間的にSiO2層が無く、ある範囲で自由に下方に動くことができ、フォトニック結晶スラブ11と平板12の距離を変えることができることである。
フォトニック結晶スラブ11および平板12は導電性をもたせるためにリン(P)をドープされてn型とされている。また、それぞれ電極77、電極76を形成され、且つ、電極からリード線79,78が引き出されている。
フォトニック結晶スラブ11に、三角格子のΓ―M方向から波長が1.55μmの光を入射させる。このとき、フォトニック結晶スラブ11および平板12ともに電圧が印加されていないと、両者の距離は0.5μmのままであるから、図6を参照して分かるように、規格化透過率はほぼ1.0である。一方、リード線79,78を介してフォトニック結晶スラブ11および平板12に電圧を印加すると両者の間に発生する静電気間の引力により、平板12はフォトニック結晶スラブ11の上面に引き付けられる。いま、リード線78,79から10Vの電圧を引加した場合、印加しなかった場合に比べて、素子の入射側および出射側に接続した光ファイバ間の光透過率は9dB減少した。この結果は、電圧を引加することによって、フォトニック結晶スラブと平板間の距離が減少し、シミュレーションで予測されたように、光透過特性が減少したことに対応する。
本発明による光機能素子は、上述したように、光パルスの強度を変化する機能を有する光強度変調器であるのみならず、光位相変調器としての機能も有する。リード線78,79から15Vの電圧を引加した場合、印加しなかった場合に比べて、素子の出射端での光の位相がほぼπだけ変化した。このとき、電圧印加の前後での光透過率の変化は20%程度と少なく、位相のみを変化させることができる。これは、シミュレーションの結果である図6から、定性的に説明できる。すなわち、電圧印加前は、フォトニック結晶スラブ11と平板12との距離dが大きく、光透過率がほぼ100%で位相がほぼ0であるが、dを小さくしていき80nmを過ぎてさらに0に近くなると、光透過率はほぼ100%に戻るのに対し、位相はほぼπだけ変化したままである。すなわち、本発明による素子は、低損失で超小型の位相変調器として機能する。
図9(A)−(F)は、図8に示す光機能素子の構造を実現するプロセスの一例の主要部を示す断面図(一部平面図を含む)である。これらの断面図は図8のB−B位置で矢印方向に見た断面である。
まず、図9(A)に示すように、基板71を形成するためのSi基板71の上にSiO2膜72を形成し、その上に、フォトニック結晶スラブ11を形成するためのSi層11を有するSOI(Silicon on Insulator)を用意する。SiO2膜72の厚さは、0.5μm、Si層11の厚さは、175nmである。Si層11にはPをドープする。
次に、図9(B1)に示すように、電子ビーム露光法と気相エッチング法により、空孔22を格子間隔350nm、空孔半径105nmで空孔三角格子をSi層11に形成し、フォトニック結晶スラブ11を作製する。図9(B2)に、この平面図を示す。
その後、図9(C)に示すように、バイアススパッタ法により、フォトニック結晶スラブ11を埋め込む形でSiO2膜74を形成する。このときSiO2膜74はフォトニック結晶スラブ11の上面から、0.5μmの厚さとなるようにした。
この工程の後、図9(D)に示すように、スパッタ法によりSiO2膜74の上に平板12を形成するためのSi層12を厚さ175nmで形成する。Si層12にはPをドープする。
次いで、図9(E1)に示すように、電子ビーム露光法と気相エッチング法により、平板12および切り欠き12a、12bを形成する。図9(E2)に、この平面図を示す。
その後、図9(F)に示すように、弗酸系エッチング液により、SiO2膜74とSiO2膜72を取り除き、図8に示す構造を形成する。このとき、フォトニック結晶スラブ11を支えることになるリッジ型の導波路75部分のSiO2膜72およびフォトニック結晶スラブ11の光路と平行する側面部および平板12を支えることになる平板12の端部の支持用のSiO2膜74は、SiO2層を残す様にエッチング時間を調節する。実際的には、導波路75部分および平板12の端部の領域は、フォトニック結晶スラブ11の光が伝搬する領域に比べて圧倒的に大きいので、エッチング時間の調整は容易である。なお、平板12の端部の支持用のSiO2膜74は、断面位置では除去されているので、断面を示すハッチングは付されていない。最後に、Si層11、12へ電極を形成し、リード線79,78を取り付ける。
なお、図6の特性から分かるように、フォトニック結晶スラブ11と平板12との間隔は、吸引状態では、極めて小さいので、図9(F)に示す過程で図8に示す構造を形成した後、フォトニック結晶スラブ11上にSiO2の微細粒子(粒径が80nm程度)を散布してスペーサとするのが良い。
(実施例2)
実施例1では、図9に示したプロセスで光機能素子を作製したが、ここでは別の作製方法を例示する。図10は、第1の構造体であるフォトニック結晶スラブの材料としてGaAsを用い、第2の構造体である平板としてSiを用いた場合の作製プロセスを示す図である。
まず、図10(A)に示すように、GaAs基板91上に、AlAs層92と最終的にフォトニック結晶スラブとなるGaAs層93をエピタキシャル成長する。AlAs層92の厚さは、0.5μm、GaAs層93の厚さは、175nmである。GaAs層93にはSiをドープする。
次に、図10(B)に示すように、電子ビーム露光法と気相エッチング法により、格子間隔350nm、空孔半径105nmの空孔22の三角格子をGaAs層93に形成し、フォトニック結晶スラブ11を作製する。
その後、図10(C)に示すように、AlAsのみを選択的にエッチングするエッチング液を用いて、フォトニック結晶スラブ11とGaAs基板91との間のAlAs層92を除去する。この場合も、実施例1と同様、導波路75部分およびフォトニック結晶スラブ11の支持部となるAlAs層92の端部の領域は、フォトニック結晶スラブ11の光が伝搬する領域に比べて圧倒的に大きいので、エッチング時間の調整で容易に残すことができる。
一方、図10(D)に示すように、第2の構造体である平板12を形成するためのSi基板95の表面にSiO2層96を形成する。Si基板95にはPをドープする。SiO2層96の厚さは、0.5μmとした。
次に、図10(E)に示すように、通常の光露光法と弗酸系エッチングにより、平板12をフォトニック結晶スラブ11上に支えるSiO2層96を成形する。
その後、図10(F1)に示すように、バックエッチング法により、Si基板95の背面99を削り、Si層98を厚さ175nmの厚さで残す。このSi層98は、図8に示す平板12に対応する。ここで、Si基板95の両側面は残し、張り合わせ操作のための保持部として使用する。そのため、この過程の後、Si層98の両側に、切り欠き12a、12bと同様に切り欠き98a、98bを作成する。勿論、Si層98には、図8に示す切り欠き12aおよび12bをも作成する。図10(F2)に、下面から見た図を示す。
その後、図10(G)に示すように、図10(C)に示す第1の構造体であるフォトニック結晶スラブ11の上に、図10(F1)に示す第2の構造体である平板98を上下逆にして、張り合わせる。最後に、電極等を形成し、図8に示す素子構造を作製した。
実施例2によれば、GaAs基板91上にフォトニック結晶スラブ11を作製する過程と、平板12に対応するSi層98の作成過程とを分離することができるので、両者の張り合わせの位置合わせが必要ではあるが、それぞれを高精度に作成することができる。また、個々の材料、構造の自由度が高くなる。
なお、張り合わせ操作のための保持部として使用するSi基板95の両側面を切り欠き12aおよび12bと平行になる面に作成するものとすれば、実施例2のSi層98には、切り欠き98a、98bを作成することは必要なくなる。
(実施例3)
実施例2では、第1の構造体であるフォトニック結晶スラブ11の材料としてGaAsを用い、第2の構造体である平板12としてSiを用いた場合を例示した。そして、フォトニック結晶スラブ11の部分と平板12の部分とを別に形成して貼り付ける構成とした。ここでは、図11に示すように、フォトニック結晶スラブ11を形成するためのGaAs基板91自体を第2の構造体として用いる場合を示す。したがって、この例では、フォトニック結晶スラブ11が基板91に対して移動するものとなる。
まず、図11(A)に示すように、GaAs基板91上に、絶縁層となるAlAs層92と最終的にフォトニック結晶スラブとなるGaAs層93をエピタキシャル成長する。AlAs層92の厚さは、0.5μm、GaAs層93の厚さは、175nmである。GaAs基板91およびGaAs層93にはSiをドープする。
次に、図11(B)に示すように、電子ビーム露光法と気相エッチング法により、格子間隔350nm、空孔半径105nmの空孔22の三角格子をGaAs層93に形成し、フォトニック結晶スラブ11を作製する。
その後、図10(C)に示すように、AlAsのみを選択的にエッチングするエッチング液を用いて、フォトニック結晶スラブ11とGaAs基板91との間のAlAs層92を除去する。この場合も、実施例1と同様、導波路75部分およびフォトニック結晶スラブ11の支持部となるAlAs層92の端部の領域は、フォトニック結晶スラブ11の光が伝搬する領域に比べて圧倒的に大きいので、エッチング時間の調整で容易に残すことができる。
このような構成で、基板91とフォトニック結晶スラブ11のそれぞれに電極を設けて、電圧を印加すると、今度はフォトニック結晶スラブ11自体が撓み、基板91との距離を変化させることができた。この結果、フォトニック結晶スラブ11を伝搬する光の強度の変化が観測され、基板を第2の構造体とする場合でも、第1の構造体と第2の構造体との相対的な位置を変化させ、第1の構造体の特性を変化させることが可能であることが示された。なお、この場合、リッジ型の導波路75部分は変形しないから、図示しないファイバーからの光の導入には支障が無い。
(実施例4)
実施例4は、実施例2と同様の張り合わせ法による素子構造の作製であるが、別の形で実現する例を示す。実施例2と同様に、第1の構造体であるフォトニック結晶スラブの材料としてGaAsを用い、第2の構造体である平板としてSiを用いた場合の作製プロセスを示す。
まず、図12(A)に示すように、GaAs基板91上に、AlAs層92と最終的にフォトニック結晶スラブとなるGaAs層93をエピタキシャル成長させる。AlAs層92の厚さは0.5μm、GaAs層93の厚さは175nmである。GaAs層93にはSiをドープする。
その後、図12(B)に示すように、第2の構造体となる平板12を支持するためのSiO2層96を、エピタキシャル成長させたGaAs層93の上に気相化学成長法により形成する。
さらに、図12(C)に示すように、光露光法と気相エッチング法により、フォトニック結晶スラブ11を形成する領域を所定の厚さまでエッチングする。このとき、平板12をフォトニック結晶スラブ11上に支えるSiO2層96もパターン化して同時に形成する。平板12の支持のために残された部分は、平板12の両側端部に対応する位置にあるため、この図では、断面を示すハッチングは付されていない。
次に、図12(D1)に示すように、電子ビーム露光法と気相エッチング法により、GaAs層93のフォトニック結晶スラブ11を形成する領域に、格子間隔350nm、空孔半径105nmの空孔三角格子を形成し、フォトニック結晶スラブ11を作製する。図12(D2)に平面図を示す。なお、平面図では平板12の支持のために残されたGaAs層93はSiO2層96の下になっていて図面には現れない。
その後、図12(E)に示すように、AlAs層92のみを選択的にエッチングするエッチング液を用いて、フォトニック結晶スラブ11の下面を空気層にする。このとき、フォトニック結晶スラブ11の支持部となる領域を残すのは前記の実施例1、2と同様である。
一方、図12(F)に示すように、第2の構造体である平板12の形成のために、Si基板95を用意する。このSi基板95にはPをドープする。
その後、図12(G)に示すように、バックエッチング法により、Si基板95の背面99を削り、Si層98を厚さ175nmの厚さで残す。この過程の後、切り欠き98aおよび98bを作成する。このSi層98は、図8に示す平板12に対応する。ここでも、図による説明を省略するが、Si層98には、切り欠き12aおよび12bを作成する。なお、張り合わせ操作のための保持部として使用するSi基板95の両側面を切り欠き12aおよび12bと平行になる面に作成するものとすれば、実施例4のSi層98も、切り欠き98a、98bを作成することは必要なくなる。
その後、図12(H)に示すように、図12(E)に示す第1の構造体であるフォトニック結晶スラブ11の上に、図12(G)に示す第2の構造体である平板98を上下逆にして、両者を張り合わせる。最後に、電極等を形成し、図8に示す素子構造を作製した。
実施例4によれば、GaAs基板91上にフォトニック結晶スラブ11を作製する過程と、平板12に対応するSi層98の作成過程とを分離することができるので、両者の張り合わせの位置合わせが必要ではあるが、それぞれを高精度に作成することができる。また、個々の材料、構造の自由度が高くなる。
(実施例5)
実施例5は、実施例4と同様の張り合わせ法による素子構造の作製であるが、第2の構造体である平板12を別の形で実現する例を示す。図12(A)−図12(E)により、GaAs基板91上にフォトニック結晶スラブ11と平板12を保持する部分を作製する過程までは、実施例4と同様である。
まず、図13(A)に示すように、Si基板95の上にSiO2膜92とSi層97を有するSOI基板を用意する。SiO2膜92の厚さは0.5μm、Si層97の厚さは175nmである。Si層97はPをドープする。
次に、図13(B)に示すように、実施例4の切り欠き98aおよび98bに対応する切り欠き97aおよび97bをSi層97に電子ビーム露光法と気相エッチング法により形成する。このSi層97は、図8に示す平板12に対応する。ここでも、図による説明を省略するが、Si層97には、この過程の後、切り欠き12aおよび12bを作成する。
次に、図13(C1)に示すように、弗酸系エッチング液でSiO2層92を両端の支持部を除いてエッチングする。図13(C2)に側面図を示す。残されたSiO2層92は、断面図の位置では存在しないが、側面図では、両端に表示されている。
その後、図13(D)に示すように、バックエッチング法により、Si基板95の背面99を削り、Si層98を適当な厚さで残す。なお、張り合わせ操作のための保持部として使用するSi基板95の両側面を切り欠き12aおよび12bと平行になる面に作成するものとすれば、実施例5のSi層97も、切り欠き98a、98bを作成することは必要なくなる。
その後、図13(E)に示すように、実施例4の図12(E)に示すように別途作製されたフォトニック結晶スラブ11を有する部分と接合する。
実施例5は、実施例4と比較すると、工程は増えるが、平板12に対応するSi層97をSOI基板を基礎に形成するので、その厚さを精密に管理することができる。また、個々の材料、構造の自由度が高くなる。
なお、実施例5では、平板となる板部98と、保持部となるSi基板95との間に電圧を印加して、フォトニック結晶スラブ11と板部98との距離を変化させるものとしても良い
(実施例6)
実施例6は、実施例4と同様の張り合わせ法による素子構造の作製であるが、第2の構造体である平板12を実施例5とは別の形で実現する例を示す。図12(A)−図12(E)により、GaAs基板91上にフォトニック結晶スラブ11と平板12を保持する部分を作製する過程までは、実施例4と同様である。
まず、図14(A)に示すように、Si基板95の上にSiO2膜92を形成する。SiO2膜92の厚さは0.5μmである。
次に、図14(B1)に示すように、平板12の中央の可動部に対応する部分に対応する部分が残るように、SiO2膜92をパターニングする。図14(B2)に平面図を示す。すなわち、平板12のパターンに対応する破線の内、薄いドットを付した部分のみのSiO2膜92を残す。
次に、図14(C)に示すように、SiO2膜92の上からSi層97をスパッタ法で、Si基板95の露出している面を含めて、Si層97が平坦になるように形成する。この結果形成されるSi層97の厚さはSiO2膜92の上で175nmである。Si層97にはPをドープする。
次に、実施例4の切り欠き98aおよび98bに対応する切り欠き97aおよび97bをSi層97に電子ビーム露光法と気相エッチング法により形成する。このSi層97は、図8に示す平板12に対応する。ここでも、図による説明を省略するが、Si層97には、この過程の後、切り欠き12aおよび12bを作成する。
次に、図14(D)に示すように、弗酸系エッチング液でSiO2層92をエッチングして除去する。また、バックエッチング法により、Si基板95の背面99を削り、Si層98を適当な厚さで残す。なお、張り合わせ操作のための保持部として使用するSi基板95の両側面を切り欠き12aおよび12bと平行になる面に作成するものとすれば、実施例6のSi層97も、切り欠き98a、98bを作成することは必要なくなる。
その後、図14(E)に示すように、実施例4の図12(E)に示すように別途作製されたフォトニック結晶スラブ11を有する部分と接合する。
図14(D)と図13(D)を対比して分かるように、実施例6は、実施例5に対して、平板12の可動部に対応する位置にのみSiO2層92を残すから、他の部分は、全てSi層97となる点においてのみ異なる。
実施例6も、実施例5と同様、実施例4と比較すると、工程は増えるが、平板12に対応するSi層97を別に形成するので、その厚さを精密に管理することができる。また、個々の材料、構造の自由度が高くなる。
(実施例7)
実施例1では、フォトニック結晶からなる第1の構造体と第1の構造体に近接した第2の構造体がそれぞれ一つずつの場合であったが、両者の構造体が複数の場合でも有効な光機能素子としての特性が得られる。図15は、実施例7の一例を示す斜視図である。
図15では、図8に示す構造を基礎とし、フォトニック結晶スラブ11の上に第2の構造体としての誘電体からなる平板121、122を2個、カスケードに形成した場合である。図15には図8に対応する要素の内主要なものに同じ参照番号を付すとともに、同じ機能のもので2つあるものに対しては、下付の1,2を付して区別した。図15に示す光機能素子の各要素のデータは、図8で説明したそれらと同じで良い。
実施例7では、第1の平板121によって光透過率を減少させることができるが、第2の平板122によってさらに光強度が大幅に減少させられることが明らかになった。両方を透過した光の減衰率は20dBと大きな値であり、複数の第2の構造体の存在によって大幅に特性が向上している。このように、複数の構造体を用いることは、単一の第2の構造体の形状や大きさに制限が加わる場合とくに有効である。また、構造体を複数にすることは、フォトニック結晶からなる第1の構造体に様々な制限がある場合にも有効であることは勿論である。また、第1の構造体の形状や大きさの制限ばかりでなく、異なった機能を引き出す場合、とくに異なる波長の光を独立にオンオフする場合、複数の構造体の存在は有効である。
(実施例8)
本発明による光機能素子は、第1の構造体が、1次元フォトニック結晶、フォトニック結晶スラブを含む2次元フォトニック結晶および3次元フォトニック結晶のいずれの場合であっても実現できる。第1の構造体が2次元フォトニック結晶であるフォトニック結晶スラブの場合について、実施例1から実施例7に記述した。図16は第1の構造体が1次元フォトニック結晶の場合の実施例を示す斜視図である。
図16で、161はSiO2基板であり、162の領域は、Si層とSiO2層をSiO2基板161上に交互に10層を積層した1次元フォトニック結晶である。Si層の厚さを0.2a、SiO2層の厚さを0.8aとした。aは、格子定数である。また、最上層はSi層とした。1次元フォトニック結晶層の最上面には、第2の構造体が配置されるが、この構造は、図8で説明したものと同等の構造であり、同じ参照符号を付した。平板12はSiからなり厚さをaとした。また、1次元フォトニック結晶層の最上面のSi層および平板12はPをドープされる。1次元フォトニック結晶層の最上面のSi層および平板12は電圧印加前の1次元フォトニック結晶162と平板12との距離は、aとした。
光は図の矢印の方向に入射し、出射する。波長1.55μmの光を入射したところ、aが0.54μmの時、透過率50%が得られた。次に、10Vの電圧を印加して、1次元フォトニック結晶162と平板12との距離を80nmに制御したところ、透過率が2.5%に大きく減少した。このように、電圧の印加によって、光強度のオンオフができる光変調器が得られた。
(実施例9)
図17は3次元フォトニック結晶で本発明を実現した場合の実施例の概念を示す斜視図である。図17は、図8に示された素子で、フォトニック結晶スラブ11を3次元角材積層型フォトニック結晶171で置き換えたものである。図では平板12の部分と3次元角材積層型フォトニック結晶171との関係が具体的に開示されていないが、図8と同様、フォトニック結晶スラブ11の構造部分を3次元角材積層型フォトニック結晶171で置換して、その周辺部に平板12を配置することで良い。
3次元角材積層型フォトニック結晶171は、それを構成する微細角材を1本抜いて、その抜いた部分を光が伝搬するようにしている。また、微細角材を抜いた層の上には1層の角材層のみを形成して、3次元角材積層型フォトニック結晶171の上部にエバネッセント波が存在するようにした。3次元角材積層型フォトニック結晶の周期は0.7μm、角材の幅と厚みは0.2μmとし、角材はSiで作製した。この場合も、SiにはPをドープして素子への電圧印加により、光透過率の制御ができるようにした。素子への電圧印加により変調が見られ、光変調器として機能していることが示された。
(実施例10)
本発明による光機能素子は、フォトニック結晶中に欠陥を持たせることによって種々の特徴を持つものが実現できる。実施例10は、図8に示す構造を基礎として、欠陥として線欠陥181を含む2次元フォトニック結晶スラブ11とした例である。
図18は線欠陥181を含む2次元フォトニック結晶スラブ11の平面図を示す図である。2次元フォトニック結晶スラブ11の媒質はSiであり、空孔22の一列を取り除いて線欠陥181としている。平板12は、丁度、線欠陥181の上に来るように作製したが、図では、平板12の表示は省略した。光は左の矢印の方向から入射し、右の矢印の方向へ出射する。
図18に示す2次元フォトニック結晶スラブ11の構造による光機能素子の特性を測定した。その結果、10Vの電圧を引加した場合、印加しなかった場合に比べて、素子の入射側および出射側に接続した光ファイバ間の光透過率は12dB減少した。この結果は、電圧を引加して、フォトニック結晶スラブ11と平板12間の距離を80nmまで減少させることによって、光透過特性が減少したことに対応する。
図19は、図18と線欠陥が異なる場合の2次元フォトニック結晶スラブ11の平面図を示す。この例では、上述の線欠陥181の一部に点欠陥182が形成されている場合のフォトニック結晶スラブを示したものである。
図19に示す2次元フォトニック結晶スラブ11の構造による光機能素子の特性を測定した。その結果、8Vの電圧を引加した場合、印加しなかった場合に比べて、素子の入射側および出射側に接続した光ファイバ間の光透過率は12dB減少した。この結果は、線欠陥の場合と同じように、電圧を引加して、フォトニック結晶スラブ11と平板12間の距離を80nmまで減少させることによって、光透過特性が減少したことに対応する。
以上示したように、線欠陥、点欠陥等の欠陥を含むフォトニック結晶の場合も、フォトニック結晶からなる第1の構造体と第1の構造体に近接した第2の構造体の位置を所定の値まで近づけることによって、第1の構造体の特性を変化させることができる。
(実施例11)
本発明による光機能素子は、上述の実施例では、第2の構造体をPをドープしたSiあるいはSiをドープしたGaAsの例で説明したが、これらは、導電性を持たせた他の半導体、例えば、Ge,InP,GaN等の半導体の場合も上述した実施例と同様な特性が得られる。半導体に代えて、SiO2ガラス、LiNbO3等の誘電体であっても良い。さらには、金属、磁性体あるいは半導体、誘電体も含めたそれらの複合体であっても良い。
上述の実施例では、しかしながら、第2の構造体の変位の制御を第1の構造体との間の電位によって行うものとしたので、通電ができない誘電体の場合には工夫が必要である。例えば、第2の構造体である誘電体からなる平板を、通電可能な半導体平板の下に貼り付けることによって、位置の制御をすることが可能である。すなわち、半導体平板と第1の構造体であるフォトニック結晶との静電気力によって両者の位置の変化を引き起こし、それに伴って半導体平板に貼り付けてある誘電体平板の位置も変化させることができる。
さらに、第2の構造体として金属を用いた場合についてみると、光の吸収量が他の半導体や誘電体と比べて非常に大きい。このため、光強度変調器として用いた場合、消光比が大きく取れる。検討の結果、図8に示した素子構造で、平板12としてAlを用いた場合、10Vの電圧引加に対して、印加しなかった場合に比べて、素子の入射側および出射側に接続した光ファイバ間の光透過率は18dBと非常に大きな減少を示した。
以上示した材料は、適用できる材料の一部を示したもので、他の誘電体、半導体、金属材料でも勿論適用可能であることは言うまでもない。
(実施例12)
実施例12に示す光機能素子は、第2の構造体がフォトニック結晶からなることを特徴とする。
図20は、実施例12の光機能素子の構成を示す斜視図である。この実施例12では、図8に示す光機能素子と基本的に同じ構造とし、第2の構造物である平板12がフォトニック結晶スラブから構成されている点において異なる。この場合、平板12のフォトニック結晶スラブは、第1の構造体であるフォトニック結晶スラブ11と同じ厚さ、同じ格子定数、同じ空孔半径とした。
実施例12の光機能素子の特性は以下の通りであった。リード線78,79から5Vの電圧を引加した場合、印加しなかった場合に比べて、素子の入射側および出射側に接続した光ファイバ間の光透過率は10dB減少した。この結果は、電圧を引加することによって、フォトニック結晶スラブと平板間の距離が減少し、光透過特性が減少したことに対応する。また、この結果は、実施例1に示した結果より低電圧で動作しており、第2の構造体である平板がフォトニック結晶スラブになったことによって、第1の構造体と第2の構造体の距離が比較的大きくても、両者の相互作用が保たれることを意味する。すなわち、実施例12の方が実施例1の構造より低い電圧で制御ができることになる。
(実施例13)
実施例13に示す光機能素子は、第1及び第2の構造体の相対的な位置の変化を櫛歯電極を利用したマイクロアクチュエーターを用いて行うことを特徴とする。
図21(A1)は、実施例13の光機能素子によりマッハ・ツエンダー型光変調器を構成した例を示す平面図である。基板71の右側部分上面にはフォトニック結晶スラブ11が構成され、左側部分上面には櫛歯電極を利用したマイクロアクチュエーター220が形成されている。図21(A2)は参考のために、この側面図を示す。
フォトニック結晶スラブ11はSiで形成され、格子間隔350nm、空孔半径105nmの空孔22の空孔正方格子からなり、厚さは175nmである。この空孔正方格子に、図に示すように、マッハ・ツエンダー型の線欠陥導波路を形成する。光は、矢印に示すように入出射する。このマッハ・ツエンダー型導波路の2本の線欠陥導波路の内、片方の導波路の上に、第2の構造体である平板12が存在したりしなかったりするように制御される。図21(A1)は導波路の上に平板12が存在しない場合であり、図21(B)は平板12が存在する場合である。平板12は、Siから形成され、厚さ175nmである。平板12とフォトニック結晶スラブ11との間隔は、150nmとした。
平板12の移動を制御する櫛歯電極を利用したマイクロアクチュエーター220は特許文献3に開示された静電アクチュエーターを利用した。枠部221に支持された固定電極223が形成され、同じく枠部221を固定部分とする板バネ225および227が形成される。板バネ225および227の可動部には可動軸229が結合される。可動軸229の先端の自由端が平板12とされる。可動軸229には、また、可動電極224が結合される。固定電極223および可動電極224に設けられた相互に入り組んだ櫛歯電極間に作用する駆動力は、それぞれ、板バネ225および227をたわませるので、可動軸229の先端の平板12は図の右方向に移動される。この結果図21(B)に示すように、導波路の上に平板12が存在することになる。
このとき、固定電極223および可動電極224間の電圧を制御して、図21(A1)および図21(B)のように、マッハ・ツエンダー型導波路の2本の線欠陥導波路の両方に平板12がかかっていない場合と、一方の導波路の真上に存在するときの光出力は、異なるものとなった。すなわち、図21(A1)に示すように、平板12を導波路の上部から完全にずらした場合の光出力に比べて、図21(B)のように一方の導波路の真上に平板12が存在するときの光出力は10dB小さくなっている。これは、平板の存在によって、導波路の一方を伝搬する光の位相が、πだけ変化していることを示す。このように、第2の構造体である平板12を上下方向に移動するだけでなく、横方向に移動することによって、光機能素子の出力特性を変化させることが可能である。
実施例13の櫛歯電極を利用したマイクロアクチュエーター220は特許文献3に開示されているように、これ自体を独立のものとして作成できるので、その厚さに対応して基板71の左側部分を掘り下げる等により、平板12とフォトニック結晶スラブ11との間隔は、容易に管理できる。
(実施例14)
上述した実施例13では、マイクロアクチュエーター220の可動軸229の先端に平板12を設け、これを横方向に移動させる場合を示した。実施例14では、櫛歯自体を平板12の働きをするものとした光機能素子の例を示す。図22(A)は無制御状態の実施例14の光機能素子の斜視図であり、図22(B)はアクチュエーターの櫛歯に電圧を印加して制御した状態の斜視図である。なお、図22(B)では、フォトニック結晶スラブ11の空孔正方格子を分かりやすく表示するためにアクチュエーターの枠部を省略して表示した。
図22(A)において、71は基板であり、この上面にフォトニック結晶スラブ11が構成される。22は空孔である。ここでは、図8で説明したSiO2層72等は表示を省略した。第1の構造体であるフォトニック結晶スラブ11は、Siで形成され、格子間隔350nm、空孔半径105nmの空孔正方格子からなり、厚さは175nmである。この空孔正方格子は、図22(B)に示すように、直線上の結合欠陥導波路を形成してあるが、図22(A)ではアクチュエーターの枠部のために見えなくなっている。欠陥は、空孔22の無い状態に対応し、空孔3個につき欠陥1個の割合で結合欠陥導波路を形成した。光は、矢印のように入出射する。
基板71の上面にはアクチュエーターが構成される。231はアクチュエーターの枠部であり、固定電極235の支持部233が左側に設けられている。枠部231の反対部には可動電極239間の支持部237が設けられている。支持部237は、基板71からは離れており、ばね片としての237aおよび237bにより枠部231に結合されている。固定電極235および可動電極239は相互に入り組んだ櫛歯とされている。櫛歯電極部分がちょうど導波路の欠陥部分の真上に来るように設置する。両櫛歯電極はリンをドープしたSiで作製し、厚さは175nmとした。両者の間に電圧を印加すると可動電極239が図22(B)に示すように、上側に移動し、フォトニック結晶スラブ11との距離が大きくなった。すなわち、可動電極239を平板12に対応するものとした。ここで、固定電極235および可動電極239は、特許文献3に説明されているように、枠部231によって短絡されないように工夫するのは当然である。その結果、伝搬する光の群速度の波長依存性が変化し、群速度分散が10ps/nm/mm程度変化した。このように、実施例14の機能素子は、群速度分散量が可変な分散補償素子としての機能がある。
櫛歯の上下方向の移動を利用した分散補償素子は分散量を可変にすることが可能であり、素子に入射した光パルスの時間幅を短くすること、すなわちパルス圧縮の機能も存在する。また、長距離光ファイバを伝搬してパルスが拡がってしまった光パルス信号を、本機能素子によって、元のパルス幅に修復する機能も存在する。
(実施例15)
平板12をマイクロアクチュエーターによってフォトニック結晶スラブ11の上下に移動させる他の例を図23に示す。
図23は実施例15の構成を断面図の形で示す図である。基板71の上面にSiO2層72を介してフォトニック結晶スラブ11を形成する。一方、基板71の上面にマイクロアクチュエーター220の保持手段となる板241を設ける。マイクロアクチュエーター220の可動軸229がフォトニック結晶スラブ11の上面に対して垂直に移動するように、マイクロアクチュエーター220を板241により保持し、可動軸229の先端部に平板12を設ける。
実施例14で説明したように、この櫛歯電極を利用したマイクロアクチュエーター220は特許文献3に開示されているように、これ自体を独立のものとして作成できるので、基板71の上面に設けた板241に容易に取り付けることができる。そのため、平板12とフォトニック結晶スラブ11との間隔の管理も容易にできる。
(実施例16)
次に、マイクロアクチュエーターの他の一例として、スクラッチアクチュエーターを用いた場合を例示する。図24は実施例16の構成を示す斜視図である。実施例16で採用したスクラッチアクチュエーターは非特許文献1の論文"Scratch Drive Actuator with Mechanical Links for Self-Assembly of Three-Dimensional MEMS"に紹介されているように、導電性の基板上に導電性のポリシリコンからなる可動板を絶縁して設置する。また、可動板の一端には基板と係合する爪を持たせる。そして、基板と可動板との間に正負に変化する矩形波の電圧を加えることによって、可動板が一定方向に移動するものである。電圧を停止すると、可動板に作用しているバネの復元力により移動したのと反対方向に引き戻されるものである。
図24を参照して、基板71の右側上面にフォトニック結晶スラブ11を形成する。フォトニック結晶スラブ11は、Siで形成され、格子間隔350nm、空孔半径105nmの空孔22からなる空孔正方格子からなり、厚さは175nmである。ここでも、実施例13と同様にマッハ・ツエンダー型導波路の2本の線欠陥導波路を持つものとしている。図に矢印で示すように光が入出射する。一方、基板71の左側上面には平板12を導波路の上への移動を制御するスクラッチアクチュエーター250を配置する。平板12は、幅5μm、厚さ1μmとし、平板12とフォトニック結晶スラブ11との間隔は300nmとした。スクラッチアクチュエーター250は上述したように、導電性の基板251および導電性の可動板253が備えられる。導電性の基板251の上面には絶縁層が形成されているが図示は省略した。また、可動板253の一端には爪255が形成されている。爪255の自由端側に、平板12が連結されている。先に述べたように、導電性の基板251と導電性の可動板253との間に正負に変化する矩形波の電圧を加えると、可動板253は図の右側に移動する。電圧印加を止めると、図示しないが、可動板253に作用しているばね力により図の左側に初期の位置まで引き戻される。
可動板253の初期の位置で、平板12がマッハ・ツエンダー型導波路の2本の導波路の内、片方の導波路に近接した位置にあるようにした。導電性の基板251と導電性の可動板253との間に正負に変化する矩形波の電圧を短時間加えると、平板12が片方の導波路を完全に覆う位置に移動する。電圧を切ると、今度は、可動板253がスプリングの力によって、初期位置に戻るから、平板12も片方の導波路に近接した位置に戻る。
このような矩形波の電圧印加によって、平板12をマッハ・ツエンダー型導波路の1本の導波路の上に移動させあるいは導波路に近接した位置にあるように制御することにより、出射光の出力を11dB変化させることが出来た。これは、実施例16に示した光機能素子が、光変調器としての機能を持つことを示すものである。
(実施例17)
本発明による光機能素子は、波長多重された光信号から特定の波長の光信号のみを選択して空間的に分離する波長分離器、あるいは特定の波長の光信号を波長多重された光信号に加える波長合波器の機能を持つものとすることができる。
図25は、波長分離器を構成する、PをドープしたSiからなるフォトニック結晶スラブ11の実施例を上面から見た図である。図は簡略化してフォトニック結晶スラブ11のみを示したが、全体構成は、図8に示す光機能素子の構造と同等であり、空孔22の大きさと格子定数は同じである。実施例17のフォトニック結晶スラブ11は空孔22が正方格子を構成するフォトニック結晶である。
このフォトニック結晶スラブ11には、線欠陥からなる導波路261がある。この導波路261には、矢印263から波長多重された光パルス信号が入射し、矢印264へ出射する。この波長多重化された光パルスは、光通信ネットワークを形成する光ファイバ(図示しない)から導入され、このフォトニック結晶スラブを通過した後、再び光ファイバへ導かれる。フォトニック結晶スラブ11には、もう一つ線欠陥からなる導波路262が存在し、これには矢印265から光が入射可能で、矢印266から光が出射可能である。ここで、破線12で示すのは、平板12が近接して配置される位置である。この位置では、導波路262が導波路261に空孔22の1層分離れただけの近い位置を通るようになされている。
矢印263から波長1.5,1.6および1.7μmの10Gb/sの光パルスを入射したところ、フォトニック結晶スラブ11と平板12との間に電圧を印加しないときは、全ての波長の光パルスが矢印264から出射した。次に、フォトニック結晶スラブ11と平板12との間に電圧9Vを印加して、フォトニック結晶スラブ11と平板12間を接近させたところ、波長1.5μmの光パルスのみが矢印264から出射した。これは、二つの線欠陥導波路261、262が両者の接近した領域で方向性結合器として働き、平板12の存在によってその結合長が変化したことに起因する。
このように、実施例17は、フォトニック結晶スラブ11の線欠陥導波路261、262を図25に示すように平板12の領域で近接した構造として、平板12をフォトニック結晶スラブ11に近接させたり、離したりすることにより、波長多重された光パルスから特定の波長の光パルスのみを選択して空間的に分離し、あるいは単に通過させる超小型の波長分離器として働くことを示している。
実施例17の構造は、波長合波器としても機能する。このことを図25を参照して説明する。この場合には、矢印263から入射し、矢印264に出射する光信号パルス列に矢印265から入射した異なる波長のパルス列を加える場合について説明する。実際に、矢印263から波長1.5,1.6および1.7μmの10Gb/sの光パルスを入射したところ、フォトニック結晶スラブ11と平板12との間に電圧を印加しないときは全ての波長の光パルスが矢印264から出射した。次に、フォトニック結晶スラブ11と平板12との間に電圧12Vを印加して、フォトニック結晶スラブ11に平板12を近接させてところ、矢印265から入射した波長1.4μmの光パルスが矢印264から出射される光に加わった。すなわち、矢印264からは元の波長1.5,1.6および1.7μmの10Gb/sの光パルスに加えて、波長1.4μmの光パルスが出射した。このように、実施例17は、図25に示された構造からなる素子が、特定の波長の光信号パルスを波長多重された光信号パルスに加える超小型の波長合波器としても働くことを示している。これは、入射光の波長フォトニック結晶スラブ11と平板12との近接の程度により制御可能である。
(実施例18)
図26は波長分離器に関する他の実施例を示したものである。全体構成は、図25に示す波長分離器と同等であり、フォトニック結晶スラブ11は空孔22が正方格子を構成するフォトニック結晶である。
図25と図26とを対比して分かるように、実施例18でも、フォトニック結晶スラブ11には、線欠陥からなる2つの導波路261、262がある。導波路261には、矢印263から波長多重された光パルス信号が入射し、矢印264へ出射する。導波路262には、矢印265から波長多重された光パルス信号が入射し、矢印266へ出射する。この波長多重化された光パルスは、光通信ネットワークを形成する光ファイバ(図示しない)から導入され、このフォトニック結晶スラブを通過した後、再び光ファイバへ導かれる。フォトニック結晶スラブ11には、2つの線欠陥からなる導波路に挟まれた破線12で示す位置に点欠陥による光共振器271が存在する。ここで、破線12で示すのは、平板12が近接して配置される位置である。
矢印263から波長1.5,1.6および1.7μmの10Gb/sの光パルスを入射したところ、フォトニック結晶スラブ11と平板12との間に電圧を印加しないときは、波長1.6μmの光パルスのみが矢印266へ出射され、他の波長1.5および1.7μmの光パルスは矢印264から出射した。これは、点欠陥光共振器271の共振波長が丁度1.5μmとなっているためである。次に、フォトニック結晶スラブ11と平板12との間に電圧9Vを印加して、フォトニック結晶スラブ11と平板12間を接近させたところ、今度は波長1.6μmの光信号のみが矢印266から出射し、それ以外の波長の光信号は矢印264から出射した。これは、平板12の存在によって点欠陥光共振器271の共振波長がシフトしたことに起因する。
このように、実施例18は、フォトニック結晶スラブ11の線欠陥導波路261、262を図26に示すように平板12の領域で点欠陥光共振器271を持つ構造として、平板12をフォトニック結晶スラブ11に近接させたり、離したりすることにより、波長多重された光パルスから特定の波長の光パルスのみを選択して空間的に分離させる超小型の波長分離器として働くことを示している。
実施例17の構造が、波長合波器としても機能するのと同様に、実施例18の構造でも、同様に、フォトニック結晶スラブ11と平板12との間に電圧を印加したり、電圧印加無とするなど、フォトニック結晶スラブ11と平板12間の距離を制御することにより、波長合波器としても機能するものとなる。
(実施例19)
本発明による光機能素子は、光信号伝送路を空間的、時間的あるいは波長的に切り替えるスイッチングの機能を有する光スイッチとして機能するものとすることができる。図27は光スイッチの実施例の形態としたときのフォトニック結晶スラブ11と平板12との関係の一例を示す斜視図である。図27に示すフォトニック結晶スラブ11の諸元は図8に示されたものとほぼ同一であるが、実施例19では正方格子とされている。また、フォトニック結晶スラブ11では、入射光を導入する欠陥導波路281が形成され、直角に曲がって形成されている2つの欠陥導波路282および283と結合された結合欠陥導波路とされている。欠陥導波路282の部分には、その上面に平板12が配置される。
フォトニック結晶スラブ11と平板12との間に電圧が印加されていない状態では、この平板12はフォトニック結晶スラブ11から遠ざかっている。このとき、欠陥導波路281に導入された入射光は、2つの欠陥導波路282および283のそれぞれの出口から出射光1、出射光2としてほぼ同等の強度で出射する。一方、電圧が印加された状態では、平板12がフォトニック結晶スラブ11に接近するので、欠陥導波路282から出射する出射光1の光出力は、10%以下に減少し、それに伴って欠陥導波路283から出射する出射光2の光出力は増加した。
これは、平板12がフォトニック結晶スラブ11に接近することによって、結合した欠陥導波路282の光結合が弱くなり、その結果、欠陥導波路282側からの出射光1の光出力が減少したと考えられる。この減少は、光結合が弱くなった部分で反射が起きるためであり、このため欠陥導波路283側の出力が増加する。このように、実施例19の光機能素子は、欠陥導波路を伝搬する光パルスを空間的にスイッチすることができる。さらに、欠陥導波路283の上面にも平板12を配置して、欠陥導波路283からの出射光2の光出力を減少させて、欠陥導波路282側からの出射光1の光出力を増大させることもできる。すなわち2つの欠陥導波路のどちらか一方にスイッチすることが可能である。なお、実施例19では、空間的なスイッチの場合を述べたが、同様な機構によって、時間的、波長的に光パルスをスイッチすることができる。
(実施例20)
本発明による光機能素子は、光を発する発光体あるいはレーザとして機能するものとすることができる。図28は、レーザとして機能する光機能素子のフォトニック結晶スラブ11と平板12との原理的な構成を示す斜視図である。フォトニック結晶スラブ11は、中心層にそれぞれ10nmのInP/InGaAsPからなる量子井戸層が10層からなる活性層291を有し、上面にP−InP層292および下面にN−InP層293を有する構造とした。この量子井戸からの発光の中心波長は、1.55μmである。また、フォトニック結晶は、屈折率3.5とし、格子間隔500nm、空孔半径150nm、厚さ250nmの空孔22による空孔三角格子である。スラブの周辺は、空気から構成される。また、平板12は、屈折率1.5とし、大きさが2×1.85μm、厚さ250nmである。第1の構造体であるフォトニック結晶スラブ11は点欠陥を含み、その点欠陥の上面に第2の構造体である平板12を設置する。この断面構造は、図5で説明したのと同様であるので、図示は省略した。
このフォトニック結晶スラブ11に外部から波長1.1μmの光を照射したところ、フォトニック結晶スラブ11からの発光が観測された。実施例20は平板12の存在によって点欠陥の共振波長を制御し、例えば波長可変光源を実現する。このとき、点欠陥は必ずしも一つである必要はなく、複数でも勿論良い。
図29は、その特性をシミュレーションで詳しく計算した結果を光強度と波長との関係で示した図である。図に示したように、実施例20により得られるレーザは、第1共鳴と第2共鳴に対応する鋭いピークが存在する。とくに注目する点は、フォトニック結晶スラブ11と平板12の距離dを25,75,225nmと変化させると、そのピーク位置が大きく変化することである。
図30はフォトニック結晶スラブ11と平板12の距離dによるピーク位置の変化の様子を示す図である。図で横軸は距離d、縦軸は共鳴波長である。図から、距離dを2から300nmまで変えることにより、第1共鳴および第2共鳴のいずれでも、波長15nm程度と非常に大きな共鳴波長のチューニングができることが分かる。
図29および図30に示した結果は、平板12の厚さが250nmの場合であったが、平板の厚さを375nmと増やしても、共鳴波長の距離d依存性に差は見られず、大きな効果が同様に得られた。また、図29および図30に示した結果は、平板の大きさが2×1.85μmの場合であったが、平板の大きさを5×1.85μmと大きくしても、図29および図30に示した結果と同様、フォトニック結晶スラブ11と平板12の距離dを変化させることによって、共鳴波長を大きく変化させることができた。さらに、図29および図30に示した結果は、平板12の屈折率が1.5の場合であったが、平板の屈折率が3.5の場合でも、図29および図30に示した結果と同様、フォトニック結晶スラブ11と平板12の距離dを変化させることによって、共鳴波長を大きく変化させることができた。このように、共鳴波長の制御は、第2の構造体である平板12の大きさ、厚さおよび屈折率によらず、いずれの場合も有効に行えることが分かる。
さらに、この素子のフォトニック結晶スラブ11と平板12間に電圧を印加していくと、発光波長が、1.54μmから1.55μmへ連続的に増加した。これは、電圧印加によって、フォトニック結晶スラブ11と平板12との距離が減少し、それによって欠陥の共鳴波長が増加したことによる。このように、第1の構造体であるフォトニック結晶スラブ11が点欠陥を含み、その上部に第2の構造体である平板12を設置することにより、波長可変の発光素子ができることが示された。
ここでは、発光素子として、光ポンプによる発光素子の実施例を示したが、勿論、この構成は電流注入型発光素子の場合にも有効である。また、ここでは一般的に発光素子について記述したが、コヒーレントな光が得られるレーザ素子の場合も本構成は十分有効である。
以上示した実施例20では、第2の構造体である平板12の大きさが、フォトニック結晶スラブ11の点欠陥を含む単位格子よりも大きい場合であった。平板12の大きさが点欠陥を含む単位格子の大きさと同程度のときは、距離dを変化させても共振波長の変化は起きず、距離dを減少させるにつれて、むしろ共振の線幅が増大する結果が得られた。図31は平板12の大きさが点欠陥を含む単位格子の大きさと同程度の場合の発光素子の特性を示す図である。縦軸は規格化光強度を、横軸は波長(μm)を示す。
図31の結果を得た構造は、フォトニック結晶スラブ11の格子間隔440nm、空孔半径150nm,厚さ220nmの空孔三角格子である。また、平板12は、屈折率が3.5、大きさが880nm×880nm、厚さが220nmである。このように、平板12の大きさがフォトニック結晶スラブ11の格子間隔の2倍程度と、丁度格子欠陥の部分の上のみに平板12が覆っている場合、図31に示されるように、距離dの変化によって、欠陥による共振器のQ値を制御できることに対応する。まず、平板とフォトニック結晶スラブとの距離dを200nm以上と十分大きく取ったとき、この量子井戸に電流を注入することによって、点欠陥の部分でレーザ発振が起こり、コヒーレントな光が得られた。次に、平板をフォトニック結晶に近づけ、距離dを100nmにしたとき、このレーザ発振は止まった。これは、距離dを小さくすることによって、Q値が減少し、レーザ発振が出来なくなったためである。このように、平板とフォトニック結晶スラブとの距離を変えることによって、レーザ発振のオン・オフができることが示された。また、これを使ったフォトニック結晶からなる結合欠陥導波路の伝搬速度の制御等、欠陥による共振器のQ値を利用した素子が作製できる。
フォトニック結晶を利用したレーザは特許文献4にも紹介されているが、本発明のように、平板12の制御によって発光素子の特性を制御する例は開示されていない。
(実施例21)
上述したように、本発明は、フォトニック結晶からなる第1の構造体と第1の構造体に近接した第2の構造体を有し、両者の相対的な位置を変化することによって、種々の興味ある特性を実現できるが、以下、光通信システムあるいは光応用システムの中での具体的な応用形態を説明する。
図32は本発明の光機能素子とその機能を制御する機構を同時に備える形で光通信システムに導入された光モジュールを説明する図である。図32に示すモジュールは、図8に示した素子331と、その光軸上で素子331の両側に配置されたファイバ332とレンズ333からなる。さらに、素子331のフォトニック結晶スラブ11と平板12(図示しない)間へ電圧を印加する装置334からなる。本例では、モジュール通過後の光信号を受信した受信装置(図示しない)から制御信号が送られて、素子331へ電圧を印加する装置334から素子へ電圧が印加され、光信号のオン・オフを行う。
図33は本発明の光機能素子を、送信器、中継器、受信器のいずれかもしくは複数箇所に使用した光伝送システムを説明する図である。実施例1に例示した光機能素子を用いた40Gbps/チャンネルの波長分割多重光伝送システムである。このシステムは送信装置341、伝送ファイバ路342、受信装置343から構成される。送信装置341は各波長(チャンネル)ごとの電気―光変換器344、波長多重器345、光送信増幅器346から構成されるが、これらは通例のものをもってして十分である。使用波長は1.55μmを中心とした帯域とする。伝送ファイバ路には分散シフトファイバ342を用い、伝送距離は80kmである。受信装置343は光受信増幅器347、波長分離器348、分散補償器349、光―電気変換器340から構成される。多重されて伝送された光パルスを波長分離装置348で各波長に分割し、分散補償器349で各々のチャンネルで最適な分散補償を行う。
この構成で、波長多重器345は、実施例17または実施例18に記載の波長合波器を多段に用いたもので構成される。また、波長分離器348も、実施例17または実施例18に記載の波長分離器を多段に用いたもので構成される。その結果、波長多重器345や波長分離器348が超小型に構成でき、システムをコンパクトに構成できるという大きな特徴がある。
図34は本発明の光機能素子を使用して光記録装置およびシステムを構成した例を説明する図である。
実施例20に記載の電流注入型で作製した波長可変半導体レーザ351を用いた光ビット書き込みおよび読み出し装置およびシステムを例示したものである。図で、レーザ351からの光はレンズ352を介して、光ビットを記録する回転円盤353上に集光される。円盤は駆動モータ354で回転する。この円盤には、ホールバーニング効果を有する材料が塗布されており、波長を変えることによって、波長多重書き込みが可能である。ホールバーニング効果を有する材料とは、波長の異なる光信号を同一場所に記録出来る材料である。すなわち、例えば波長λ1とλ2の光ビームをホールバーニング効果を有する材料からなる膜の同一場所に照射した場合、その場所での膜の波長λ1とλ2の光透過率が変化する。このため、同一場所で、波長を変えることによって、それぞれの波長に対応する光記録が可能となり、波長多重書き込みができるようになる。
このような装置構成で、制御系355からの信号コントロールにより、波長多重書き込みと読み出しを効率よくかつコンパクトに出来るシステムを構築した。これは、半導体レーザ351がフォトニック結晶から出来ているため、装置の超小型化が出来たためである。
11:フォトニック結晶スラブ、12:平板、12a,12b:切り欠き、13:駆動装置、14:操作ロッド、22:空孔、41:ライトライン、42:分散曲線、71:基板、72,74:SiO2層、75:リッジ型の導波路、76,77:電極77、78,79:リード線、91:GaAs基板、92:AlAs層、93:GaAs層、95:Si基板、96:SiO2層、99:Si基板95の背面、97,98:Si層、98a,98b:切り欠き、161:SiO2基板、162:Si層とSiO2層を積層した1次元フォトニック結晶、171:3次元角材積層型フォトニック結晶、181,182:フォトニック結晶中の線欠陥、220:櫛歯電極を利用したマイクロアクチュエーター、221:枠部、223:固定電極、224:可動電極、225,227:板バネ、229:可動軸、237a,237b:ばね片、241:板、250:スクラッチアクチュエーター、251:導電性の基板、253:導電性の可動板253、255:爪、261,262:導波路、263,265:入射光、264,266:出射光、271:光共振器、281,282,283:欠陥導波路、291:活性層291、292:P−InP層、293:N−InP層、331:素子、332:ファイバ、333:レンズ、334:電圧を印加する装置、340:光―電気変換器、341:送信装置、342:伝送ファイバ路、343:受信装置343、344:電気―光変換器、345:波長多重器、346:光送信増幅器346、347:光受信増幅器、348:波長分離器、349:分散補償器、349、351:波長可変半導体レーザ、352:レンズ、353:回転円盤、354:駆動モータ。