JP2006002406A - 衝撃吸収用堤体および衝撃エネルギーの吸収方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 補強盛土を主体とする衝撃吸収用堤体であって、粒体を拘束可能に位置させた半硬質層20と、前記半硬質層20に隣接して位置させた非硬質層30とより構成し、前記半硬質層20を前記衝撃吸収用堤体10の受撃面11に配置したことを特徴とする、衝撃吸収用堤体10である。
【選択図】図1
Description
<1>堤体のコンクリート擁壁は、現場で型枠工によって構築するため、施工性が悪いだけでなく、コスト高になってしまう。殊に、落石、雪崩、土砂崩落などの発生が予想される現場は、山岳地帯や断崖等である場合が多く、このような現場に建設機械や大量の資材を搬入して工事を行うため、多大の工期や工費の負担も強いられてしまう。
<2>衝撃吸収用堤体に高いエネルギー減衰力を求める場合、従来の重力式堤体では大型に設計するほかなく、その場合コストや設置スペース面での負担が増加する、という問題が生じる。
<3>従来の衝撃吸収用堤体は、受撃面と、その背面に構成する盛土との物性が異なるため、受撃エネルギーの伝搬性能に劣る。このため、コンクリート擁壁が破壊する危険性が高い。
<4>施工上、盛土表面とコンクリート擁壁との間に隙間が発生しやすいため、受撃した際、この空洞が原因となってコンクリート擁壁を破壊する恐れがある。また、コンクリート擁壁の一部または全体が破損したときは、擁壁を除去して再構築する必要があり、補修性の面でも問題がある。
<1>本発明の堤体は、受撃面に粒体を収容して形成する半硬質層を設置しており、この粒体には現場発生土が利用できるので、施工性が良く、また安価に構築することができる。また大量の資材や建設機械を搬入する手間も不要となるため、工期や工費の負担も減少する。
<2>受撃面に設置した半硬質層は、受撃した際に拘束作用が働き、衝撃エネルギーを減衰すると共に、エネルギーを分散して背面の非硬質層に伝播するため、エネルギーの減衰率が高い。その結果、高性能設計にする場合でも、従来の重力式のように大型化する必要がなく、設置面やコスト面で大幅な負担となることはない。
<3>堤体を構成する半硬質層と非硬質層とは、同じ物性で構成でき、また各層の粒体は連続した状態で構築するため、エネルギーの伝播性能に優れる。この結果、各層は同じ挙動を示し、伝播性が連続するので、エネルギーが半硬質層に溜まり、破壊する危険が少ない。
<4>半硬質層の粒体と非硬質層の粒体は連続しているため、層の境界に隙間が生じることはなく、受撃時に破壊する危険性もない。
本発明に係る衝撃吸収用堤体10は、図1に示すように、斜面50からの衝撃物を受け止める受撃面11を有する衝撃吸収用の堤体であって、衝撃作用方向と交差する方向に、半硬質層20、非硬質層30、半硬質層21を順に配置した衝撃吸収用堤体10を例に挙げて、以下各部詳細について説明する。
以下、各部の詳細について説明する。
半硬質層20、21は、粒体を拘束可能に位置させた層で、受撃した衝撃力を分散して非硬質層30へ伝達するとともに、衝撃エネルギーを減衰する作用を有する。
壁面材22には、たとえば図1に示すようにL字型を呈する壁面材22を並設した面が利用できる。
壁面材22は、堤体10の形状を保持すると共に受撃面11(擁壁面)を保持するもので、平板を折曲した断面L字型を呈するもののほか、たとえば矩形、正方形などの平板などが利用できる。この壁面材22には、軽量でかつ土圧に対抗できる強度の素材を使用し、例えばエキスパンドメタルや溶接金網等が採用できる。この壁面材22の表面には、亜鉛鍍金等の鍍金加工やポリエチレンコーティング等のプラスチック塗装等を行って防錆処理を施しておくことが望ましい。
壁面材22は、施工目的に応じて板の種類、大きさなどを選択する。
非硬質層30は、粒体を敷設して形成する層であって、衝撃エネルギーを減衰する作用を有する。
非硬質層30を構成する盛土中には、ジオグリッドやジオテキスタイルなどの盛土補強材31を階層的に埋設する等して、形状の安定を図るものが好ましい。盛土補強材31は、ほぼ水平面に複数枚間隔をあけて配置する。
基礎地盤に複数の壁面材22を構築予定の衝撃吸収用堤体10に沿って並設する。
つぎに、並設した壁面材22の水平部221の端部から、縦棒材23を壁面材22の長手方向へ一定間隔をおいて立ち上げる。縦棒材23は、壁面材22の起立部222と並行に配置する。縦棒材23を立ち上げる水平部221の周囲には、水平部221の破断を防止する補強部材を設けるのが好ましい。
その後、盛土補強材31を敷設しつつ、現地発生土を対峙する壁面材22、22で囲まれる空間に投入してゆき、締め固めを行い、壁面材22の起立部222の高さまで盛土を行う。こうして、第一段目の盛土層を構築する。
盛土層を積み上げる途中で、縦棒材23が盛土内に埋没するようであれば、縦棒材23の先端に図外のカプラなどを取り付けて、その先に新たに棒材を取り付けて延長させれば良い。
こうして、盛土堤体10の谷側と山側には、半硬質層20、21が形成され、その間には非硬質層30が形成される。
次に、堤体10に落石が衝突する例について説明する。
堤体10の受撃面11に落石が衝突すると、半硬質層20には拘束効果が生じる(図2)。受撃面11に「点」で作用した衝撃は、拘束効果によって半硬質層20の面方向に分散され、減衰されてゆく。同時に、半硬質層20に拡がった衝撃エネルギーは、隣接する非硬質層30に伝播される。非硬質層30では土粒間の摩擦抵抗により、減衰作用が生じ、やがてエネルギーは消滅する。
つぎに、堤体10の特性について説明する。
前記したように、半硬質層20は、受撃によって拘束作用を示すもので、粒体を壁面材22と抵抗帯25とで区画構成したものである。壁面材22に対してほぼ垂直方向に荷重が作用すると、はじめて半硬質層20に拘束作用が生じ、衝撃エネルギーは分散される。
半硬質層20の側面に衝撃が作用すると、内部の粒体は側方へ向けて流動し、各粒体間の隙間は狭まるように変位して相互に接触する。各粒体が接触すると、粒体間には摩擦力が生じる。この摩擦力は作用する衝撃エネルギーに比例して大きくなり、各粒体間の結合力は高められる。
この現象が、半硬質層20の内部で生じ、半硬質層20全体を拘束する拘束作用を生ぜしめる(図2)。
しかし、本発明に係る衝撃吸収用堤体10は、受撃した際、受撃面11に配置する半硬質層20が拘束作用を示し、恰も擬似擁壁のように一枚の面版として作用するため、衝撃エネルギーは受撃面11全体に分散され、半硬質層20の面全体から非硬質層30へ衝撃エネルギーが伝播されるような作用を示す。
また半硬質層20から非硬質層30へ伝播されるエネルギーは、半硬質層20の抵抗帯25の間隙を通じ、連続した粒体を介して伝播されるので、同じ挙動を示したまま伝播することができる。
また、衝撃物には落石のほか、雪崩や崩落土砂などの衝撃吸収用堤体10として利用できることは勿論である。
実施の形態1では、衝撃作用方向と交差する方向に、半硬質層20、非硬質層30、半硬質層21を順に配置した三層構造の堤体10について説明したが、さらに半硬質層21の背面に非硬質層31と半硬質層22を配置して、多層構造の堤体10としても良い(図5)。
この場合、衝撃エネルギーは半硬質層を通過するごとに、分散されてゆくため、より効果的に衝撃エネルギーを減衰することができる。特に、落石が衝突するような、大きな衝撃エネルギーが「点」で及ぶ場合には、特に高い減衰効果を示す。
また、実施の形態1で示した盛土堤体10のうち、背面側の半硬質層21を省略することもできる。
11・・・受撃面
20・・・半硬質層
21・・・半硬質層
23・・・縦棒材
24・・・横棒材
25・・・抵抗帯
30・・・非硬質層
Claims (6)
- 補強盛土を主体とする衝撃吸収用堤体であって、
粒体を拘束可能に位置させた半硬質層と、
前記半硬質層に隣接して位置させた非硬質層とより構成し、
前記半硬質層を前記衝撃吸収用堤体の受撃面に配置したことを特徴とする、
衝撃吸収用堤体。
- 請求項1において、
前記衝撃吸収用堤体の背面に、前記半硬質層を配置したことを特徴とする、
衝撃吸収用堤体。
- 請求項1又は請求項2において、
前記半硬質層の間に、前記非硬質層を配置したことを特徴とする、
衝撃吸収用堤体。
- 請求項1乃至請求項3の何れかに記載の衝撃吸収用堤体において、
所定の間隔を隔てて配置した壁面材と抵抗帯の間に、前記粒体を拘束可能に位置させて半硬質層を構成したことを特徴とする、
衝撃吸収用堤体。
- 衝撃吸収用堤体を用いた衝撃エネルギーの吸収方法であって、
請求項1乃至請求項3の何れかに記載した衝撃吸収用堤体を使用し、
前記受撃面の半硬質層で受撃した衝撃力を分散して前記非硬質層へ伝達し、
前記半硬質層による吸収作用と、前記非硬質層による吸収作用とにより、衝撃エネルギーを吸収することを特徴とした、
衝撃エネルギーの吸収方法。
- 衝撃吸収用堤体を用いた衝撃エネルギーの吸収方法であって、
請求項4に記載した衝撃吸収用堤体を使用し、
前記受撃面の半硬質層で受撃した衝撃力を分散して前記非硬質層へ伝達し、
前記半硬質層による吸収作用と、前記非硬質層による吸収作用と、前記半硬質層の抵抗帯による曲げ抵抗とにより、衝撃エネルギーを吸収することを特徴とした、
衝撃エネルギーの吸収方法。
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