JP2006001695A - 耐炎化糸パッケージおよびその製造方法 - Google Patents

耐炎化糸パッケージおよびその製造方法 Download PDF

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孝光 廣瀬
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Abstract

【課題】高次加工を行う際に耐炎化糸の品位を維持し、ハンドリング性に優れた巻き量の大きい、いわゆる巻厚みの大きいアクリル系耐炎化糸パッケージとその製造方法を提供する。
【解決手段】アクリル系耐炎化糸が、ボビンに巻断面積A(cm2 )/繊度D(dtex)×1000の比率である巻厚さHが1.00cm2 /1000dtex)以上に巻き取られていることを特徴とする耐炎化糸パッケージであり、また、アクリル系耐炎化糸をコアボビン上に巻断面積A(cm2 )/繊度D(dtex)×1000の比率である巻厚さHが1(cm2 /1000dtex)以上になるように巻き取ることを特徴とする耐炎化糸パッケージの製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、品位が良好でハンドリング性および高次加工性に優れた巻き量の大きい、いわゆる巻厚さの大きいアクリル系耐炎化糸のパッケージおよびその製造方法に関するものである。
アクリル系耐炎化糸はアクリル系炭素繊維を製造するときの前駆体となりうるが、一方、耐炎化糸そのものが融解せず、耐熱性、難燃性に優れるため、消防服、溶接火花防護シートなどの耐熱材料、難燃材料として広く使用されている。さらには、耐炎化糸のフェノール樹脂コンポジットを不活性雰囲気中で高温処理(炭素化処理)して炭素繊維補強炭素材料(C/Cコンポジット)を製造する用途などにも使用されている。これらの耐炎化糸の用途において、耐炎化糸は、織物形態、不織布形態、紡績糸形態、紡績糸の織物形態などの種種の形態に高次加工されて使用されるのが一般的である。
したがって、高次加工時に品位低下が少なく、かつ取り扱いやすい耐炎化糸の供給方法が強く求められている。同時に、耐炎化糸パッケージの糸長さが長いほど、すなわち巻厚みが大きいほどボビンの切り替え回数が少なくなり、高次加工時の切り替えによるロスが減少するとともに、作業効率もアップできるため、巻き量の大きいパッケージが求められている。
かかるアクリル系耐炎化糸の供給方法として、水分率を平衡水分率の1.2〜1.8倍に高くした耐炎化糸をカートンケースに無張力状態で積み重ねた状態のものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この供給方法では複数本の耐炎化糸をひき揃えて高次加工工程に供給する場合、固定ガイドなどにある程度擦過させ、張力を掛ける必要がある。
耐炎化糸は、裁けやすくまた摩擦係数が極めて小さいことから、擦過時に毛羽が発生するため、耐炎化糸織物などの高次加工品を生産する時に糸切れやローラへの糸巻き付きなどによるトラブルの原因となる。
さらには、流動層で耐炎化したアクリル系耐炎化糸をパッケージとして巻き取ること技術が提案されているが(例えば、特許文献2参照)、パッケージの形状、巻き量、巻き取り条件などについては何ら提案されてはいない。
特開2003-182764号公報 特開平1−104835号公報
本発明の目的は、上記従来技術では達成しえなかった高次加工を行う際に耐炎化糸の品位を劣化させない、ハンドリング性に優れた巻き量の大きい、いわゆる巻厚みの大きいアクリル系耐炎化糸パッケージとその製造方法を提供することにある。
上記の目的を達成するため、本発明は、以下の構成を採用する。すなわち、
(1)アクリル系耐炎化糸が、ボビンに巻断面積A(cm2 )/繊度D(dtex)×1000の比率である巻厚さHが1(cm2 /1000dtex)以上に巻き取られていることを特徴とする耐炎化糸パッケージ。
(2)前記耐炎化糸の繊度が1000dtex以上であることを特徴とする前記(1)に記載の耐炎化糸パッケージ。
(3)ボビンへの巻綾角度θが5°〜40°の範囲であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の耐炎化糸パッケージ。
(4)糸裁け幅S(mm)/糸−糸摩擦係数F(−)の比率である形態保持係数Kが200(mm)未満であり、かつボビンへの巻綾角度θが5°〜40°の範囲であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の耐炎化糸パッケージ。
(5)糸裁け幅S(mm)/糸−糸摩擦係数F(−)の比率である形態保持係数Kが200(mm)以上であり、かつボビンへの巻綾角度θが15°〜40°の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐炎化糸パッケージ。
(6)耐炎化糸の炎収縮率が1〜30%の範囲、かつ密度が1.3〜1.5g/cm3 の範囲であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の耐炎化糸パッケージ。
(7)耐炎化糸の引張破断伸度が5〜30%の範囲にあることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載の耐炎化糸パッケージ。
(8)パッケージ上の耐炎化繊維糸の糸幅が0.1〜1.2mm/1000dtexであることを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれかに記載の耐炎化糸パッケージ。
(9)パッケージの耐炎化糸の巻密度が0.5〜1.1g/cm3 の範囲にあることを特徴とする前記(1)(8)のいずれかに記載の耐炎化糸パッケージ
(10)アクリル系耐炎化糸をコアボビン上に巻断面積A(cm2 )/繊度D(dtex)/巻き取り幅W(cm))の比率である巻厚さHが0.05(cm /1000dtex)以上になるように巻き取ることを特徴とする耐炎化糸パッケージの製造方法。
(11)ワインド比における端数wを0.1〜0.9の範囲、巻綾角度θを5〜40°の範囲に制御するとともに、巻始めから巻終わりまでの糸の張力を10〜200g/1000dtexの範囲に制御してコアボビンに巻取ることを特徴とする請求項10に記載の耐炎化糸パッケージの製造方法。
(12)糸裁け幅S(mm)/糸−糸摩擦係数F(−)の比率である形態保持係数Kが200(mm)未満の耐炎化糸の巻始めおよび巻終わりの巻綾角度θを5〜40°の範囲に制御することを特徴とする前記(10)または(11)に記載の耐炎化糸パッケージの製造方法。
(13)糸裁け幅S(mm)/糸−糸摩擦係数F(−)の比率である形態保持係数Kが200(mm)以上の耐炎化糸の巻始めおよび巻終わりの巻綾角度θを15〜40°の範囲に制御することを特徴とする前記(10)または(11)に記載の耐炎化糸パッケージの製造方法。
本発明によれば、以下に説明するとおり、アクリル系耐炎化糸の取り扱い性に優れ、かつ、巻き量の大きなパッケージを得ることができるため、高次加工時に耐炎化糸の品位劣化による工程トラブルが少なく、かつ長時間パッケージの切り替えをせず効率的に加工することができ、しかも品位の良い高次加工品を製造することができる。
本発明において、アクリル系耐炎化糸は、従来のアクリル系繊維において耐炎化糸といわれているものが適用でき、一般的には、例えば、アクリル系繊維を空気雰囲気中で200〜400℃の範囲の温度で加熱、酸化することによって製造されるものである。アクリル系繊維としては、好ましくは、アクリル系炭素繊維の製造用のアクリル系繊維が使用される。
本発明の耐炎化パッケージは、ボビン上に耐炎化糸が巻断面積A(cm2 )/繊度D(dtex)×1000の比率である巻厚さHが1(cm2 /1000dtex)以上に巻き取られた耐炎化糸パッケージである。
コアボビンの形態としては、安価で製造しやすい一般的な円筒型が好ましい。
また、コアボビンの材質については特に限定はされないが、安価である紙や比較的安価で再利用が可能なベークライトなどのプラスチックスが好ましい。
パッケージの形態としては、スクエアエンド型やテーパーエンド型などとすることができるが、巻取られた耐炎化繊維束が滑りにくくパッケージ形態保持性が優れているという点でスクエアエンド型がより好ましい。
本発明において、コアボビン上に巻かれた耐炎化糸の巻き厚さHは1cm2 /1000dtex以上あるが、好ましくは2cm2 /1000dtex以上、より好ましくは5cm2 /1000dtex以上である。
耐炎化糸の巻き厚さHが1cm2 /1000dtexより小さいと、耐炎化糸を織物や紡績糸などに高次加工する際に、パッケージの切り替え頻度が増大して、耐炎化糸の切り替えロスの増大や切り替え作業の増加などによりコストの増大をまねく。巻き厚さの上限に関しては、特に制限はないが、巻き取り技術の限界やパッケージの取り扱い性などから決まるが、500cm2 /1000dtex程度が好ましい。
本発明において、耐炎化糸の繊度は1000dtex以上であることが好ましいが、12,000dtex以上がより好ましく、24,000以上がさらに好ましい。1000dtex未満では糸が細すぎるため、巻取り時の張力制御が難しく、毛羽や糸切れを発生し易くなる。
本発明において、耐炎化糸のパッケージ巻取りの巻綾角度θは、5〜40°であることが好ましく、15〜35°の範囲が好ましく、さらに好ましい範囲は20〜30°である。パッケージの巻き取りの巻綾角度が5°よりも小さくなると端面部分からの綾落ちによる巻き崩れが発生しやすくなる。また、40°を超えると巻き取り角度がきつくなることにより、糸と糸との摩擦、あるいは糸と案内ガイドとの摩擦が大きくなり、耐炎化糸の品位が悪化する。また、形態保持性Kが200mm未満、すなわち形態保持性が比較的高い耐炎化糸の巻綾角度θは5°〜40°と低い巻綾角度範囲から巻きとることが可能である。また、形態保持性Kが200mm以上の比較的低い耐炎化糸の巻綾角度θは15°〜40°と高い巻綾角度範囲で巻き取ることが重要である。
本発明における耐炎化糸の酸化の程度は、炎収縮率、および密度で規定され、炎収縮率が1〜30%の範囲、かつ密度が1.3〜1.5g/cm3 の範囲であることが好ましい。炎収縮率が30%より大きいか、あるいは密度が1.3g/cm3 より小さいと、耐炎化糸の耐熱性や難燃性が不十分な場合がある。また、炎収縮率が1%より小さいと、あるいは密度が1.5g/cm3 より大きいと、耐炎化度が進みすぎていることにより、高次加工性時に毛羽発生しやすい傾向にある。
ここでいう炎収縮率とは、以下の方法で測定する。すなわち、
20cmの長さにカットした耐炎化糸に10g/3000dtexの比率で重りを吊し、800℃の炎で収縮がなくなるまで燃焼させ、その処理前後の長さの比率によって求められ、算出式は、
炎収縮率(%)={(燃焼前の長さ−燃焼後の長さ)÷燃焼前の長さ}×100%
である。
本発明において、耐炎化糸は引張破断伸度が5〜30%の範囲であることが好ましい。引張破断伸度が5%より小さいと、高次加工時に耐炎化糸の糸切れが発生し、また、得られた高次加工品の品質が低下する傾向にある。引張破断伸度が30%より大きくするためには、酸化の程度を浅くする必要があるため、耐炎化糸の耐熱性や難燃性が低下する傾向にある。
ここでいう引張破断伸度は、引張試験機を用いて、試験長200mm、引張速度は100mm/分として測定することができ、引張回数10点の平均値を引張破断伸度とする。
引張試験機としては、例えば、TOYO BALDWIN社製テンシロン機器(UTM−4−200)を用いる。
本発明において、パッケージ上の耐炎化糸の糸幅が0.1〜1.2mm/1000dtexであることが好ましい。糸幅が0.1mm/1000dtexより小さいと、糸の拡がり性が低いため、織物などに加工した際に目隙きの大きくなるなど高次加工品の品位を高めるのが難しい場合がある。他方、糸幅が1.2mm/1000dtexより大きいと、糸の収束性が低下し、高次加工時に毛羽がローラに糸が取られやすくなるため、高速加工や複雑な加工には向かない場合がある。
ここでいうパッケージ上の耐炎化糸の糸幅とは、コアボビンにある程度巻かれたパッケージ状態から耐炎化繊維糸条を引き出しながら、その糸条がパッケージから離れる直前、すなわちパッケージ上の表面の糸条の幅を静止状態で測定した値のことであり、1トラバース分の糸条を引き出し規則的に測定した10点の平均値を用いる。
本発明において、パッケージの耐炎化糸の巻き密度が0.5〜1.1g/cm3 の範囲であることが好ましい。巻き密度が0.5g/cm3 より小さいと、パッケージから糸を引き出す際やパッケージを運搬する際などに、パッケージの型くずれ発生しやすい。他方、巻き密度が1.1g/cm3 より大きいと、糸を引き出す際に、下の糸と密着しているために引き剥がすことになり糸傷みの原因となりやすい。
本発明の耐炎化糸のパッケージは、アクリル系繊維を空気雰囲気中で200〜400℃の範囲の温度で酸化させた耐炎化糸をコアボビン上に巻断面積A(cm2 )/繊度D(dtex)×1000の比率である巻厚さHが1(cm2 /1000dtex)以上になるように巻き取ることにより製造される。
アクリル系繊維の酸化は、空気雰囲気中で好ましくは200〜400℃の範囲の温度で加熱により行われるが、好ましくは、200〜350℃の範囲の温度で加熱される。加熱温度が200℃より低いと酸化に非常に長時間を要するため現実的でない。加熱温度を高くするほど処理時間を短くできるが、400℃より高いと、アクリル系繊維の酸化に伴う発熱量の制御が困難となり繊維が燃えてしまう場合がある。加熱温度を高くし過ぎると、燃えないまでも、得られた耐炎化糸の引張破断伸度が低下するため、アクリル系繊維の特性を配慮の上、耐炎化糸の目標とする物性に適した温度条件を選択することが好ましい。加熱温度を階段状に上昇させて酸化することにより、酸化に要する時間も比較的短く、かつ、物性も高い耐炎化糸を得ることができる。
本発明において、耐炎化糸を巻き取る際に、巻綾角度θを5〜40°の範囲に制御するとともに、巻始めから巻終わりまでの糸張力を10〜200g/1000dtexの範囲に制御して巻き取ることが好ましい。
綾角度θが40°を超えると、巻取り時に案内ガイドと糸との摩擦が大きくなり、品位が悪化する傾向にある。また、5°を下回ると綾落ちなどの問題が発生し易くなる。
また、巻き取り時の張力が200g/1000dtexを超えると、巻き取り案内ガイドとの摩擦が高くなり、毛羽立ちなどの品位が悪化したり、張力が高すぎることにより巻きが潰れて綾落ちや、巻崩れが発生し易い傾向にある。また、10g/1000dtex未満では、パッケージとしての形態保持性が低下し、移動時などの振動で巻き崩れが発生し易い傾向にある。
本発明において、耐炎化糸を巻き取る際に、ワインド比における端数w を0.1〜0.9の範囲に制御することが好ましい。
ここでいうワインド比とは、糸条をワインダーでコアボビンに巻き取る時の1トラバース当たりの回転数を示す。また、端数wとは、ワインド比の数値の正数分を除いた数値である。例えば、ある糸条を1トラバースする間に4.5回転とすれば、このワインド比は4.5であり、wは0.5となる。
巻き取り時のワインド比における端数w が、0.1より小さくても、0.9より大きくても、すなわち整数値に近ければ近いほど、巻き取り時の耐炎化糸の巻き取り位置が常に同じということになり、綾落ちが生じたり、表面形態が荒くなる傾向にある。
本発明において、アクリル繊維糸条をコアボビン上に厚く巻くためには糸の糸−糸摩擦係数F(−)と集束性のバランスが重要であり、一般的に糸裁け巾が大きいほど、または糸−糸間の摩擦係数F(−)が小さいほど巻取りが困難となる。すなわち、耐炎化糸の糸裁け幅S(mm)/糸−糸摩擦係数F(−)の比率である形態保持係数Kの範囲が大きければ大きいほど巻き取り難く、小さければ小さいほど巻き取りし易いということになる。
したがって、Kの値が200(mm)未満の耐炎化糸条においては、耐炎化繊維をコアボビン上に巻き取る際の巻き始めから巻き終わり間、すなわち巻き取り中は巻き綾角度θを5°〜40°とすることが好ましく、15°〜35°がより好ましく、20°〜35°がさらに好ましい条件である。
また、形態保持係数Kの値が200(mm)以上の耐炎化糸条においては、耐炎化繊維をコアボビン上に巻き取る際の、巻き始めから巻終わり間、すなわち巻き取り中は巻き綾角度θを15°〜40°とすることが好ましく、20°〜35°がより好ましい条件である。
アクリル系耐炎化糸には、大きく分けて2種類の耐炎化糸があり、一つは湿式紡糸法で作製したアクリル繊維を前駆体として用いた耐炎化糸で、単繊維の表面が粗で糸−糸摩擦係数F(−)が大きいことが特徴であり、この場合は糸裁け幅Sが大きいことが、耐炎化糸を厚く巻き取るために重要である。
もう一つは乾湿式紡糸法で作製したアクリル系繊維を前駆体として用いた耐炎化糸で、単繊維の表面が平滑で糸−糸摩擦係数F(−)が小さいことが特徴であり、この場合は糸裁け幅Sが狭いことが、耐炎化糸を厚く巻くために重要である。
すなわち、形態保持係数Kの値が200(mm)以上では、巻き取りにくい裁けやすく、または、滑りやすい耐炎化糸ということである。また、形態保持係数Kの値が200(mm)未満では、裁けにくく、滑りにくい耐炎化糸であり、容易に巻き取ることが可能である。
ここでいう、糸裁け巾Sとは、次の方法で測定される。長さ40cmにカットした耐炎化糸を無緊張状態にして吊し、その中央部である20cmの地点から横平行に35cm離れた位置から、エアーを吹き付けた後の耐炎化繊維の拡がり巾を測定する。ここで吹き付けるエアー条件は、ノズル形状φ6mmから圧力19.6MPa(2kgf/mm2)で1秒間の噴射とし、測定回数20回の平均値とし、金尺(ものさし)で容易に測定することができる。
また、糸−糸摩擦係数F(−)については、次の方法で測定される。
測定しようとする耐炎化繊維糸条をコアボビンにある程度巻き取り、パッケージ状にして固定し、同耐炎化繊維をある程度の長さにカットしたものを、そのパッケージの繊維方向と同じ方向に180°(π)接触させ、一方に重りG、一方にバネ計りを引っかけた状態で引っ張り、動作中のバネ計りの数値Vと重りGから下記計算式、
F=LN(V/G)/π
により、F−F摩擦係数Fが求められる。なお、測定回数5点の平均値を用いる。
以下、本発明を実施例により、さらに、具体的に説明する。
[実施例1]
48,000dtexのアクリロニトリル系繊維糸条を、230℃の酸化性雰囲気中にて300分間加熱し、連続した耐炎化繊維糸条を得、引き続きラウリルアルコール(EO)付加物を主成分とした界面活性剤を1.0重量%になるように付与して、炎収縮率2%、密度1.40g/cm3 、引張破断伸度25%、糸裁け幅Sが132mm、糸−糸摩擦係数F(−)が0.23、形態保持係数Kが574mmの耐炎化糸を得た。そのまま、ワインダー条件のワインド比における端数wを0.4、巻き上げ初期の巻綾角度θを23°、巻き上げ初期の張力を25g/1000dtex、パッケージ上の糸幅が0.31mm/1000dtexに調整して巻き上げ、巻密度0.75g/cm3 、巻断面積268cm2 、巻厚さHが5.58cm2 /1000dtexのスクエアエンド型のパッケージを得た。このスクエアエンド型パッケージを用いて高次加工を実施したところ、切り替え頻度などのロス時間減少、引き出し時の解除不良や巻崩れなどの取り扱い性または品質・品位においても問題なく良好な結果であった。
[比較例1]
実施例1と同一の耐炎化繊維糸条を得た後、そのまま、ワインダー条件のワインド比における端数wを0.4、巻き上げ初期の巻綾角度θ23°、巻き上げ初期の張力を25g/1000dtex、パッケージ上の糸幅が0.31mm/1000dtexに調整して巻き上げ、巻密度0.75g/cm3 、巻断面積46cm2 、巻厚さH0.95cm2 /1000dtexのスクエア型のパッケージを得た。このスクエアエンド型のパッケージを用いて高次加工を実施したところ、引き出し時の解除不良や巻崩れなどの取り扱い性または品質・品位においては問題なかったものの、巻厚さが小さいために切り替え頻度が多く作業量が増大し、長期の使用は困難であった。
[実施例2]
実施例1と同一の耐炎化繊維糸条を得た後、そのまま、ワインダー条件のワインド比における端数wを0.8、巻き上げ初期の巻綾角度θ42°、巻き上げ初期の張力を25g/1000dtex、パッケージ上の糸幅が0.31mm/1000dtexに調整して巻き上げ、巻密度0.75g/cm3 、巻断面積268cm2 、巻厚さH5.58cm2 /1000dtexのスクエアエンド型のパッケージを得た。このスクエアエンド型パッケージを用いて高次加工を実施したところ、切り替え頻度などのロス時間減少、引き出し時の解除不良や巻崩れなどの取り扱い性は問題なかった。ただし、巻綾角度増大により、毛羽品位が実施例1に比べ若干悪くなった。
[比較例2]
実施例1と同一の耐炎化繊維糸条を得た後、そのまま、ワインダー条件のワインド比における端数wを0.2、巻き上げ初期の巻綾角度θ12°、巻き上げ初期の張力を25g/1000dtex、パッケージ上の糸幅が0.31mm/1000dtexに調整して巻き上げ、巻密度0.75g/cm3 、巻断面積46cm2 、巻厚さH0.95cm2 /1000dtexのスクエアエンド型のパッケージを用いて高次加工を実施したところ、引き出し時に若干の巻崩れが発生し、取り扱い性が困難であった。また、巻厚さが小さいために切り替え頻度が多く作業量が増大し、長期の使用は不可能であった。
[実施例3]
48,000dtexのアクリロニトリル系繊維糸条を、235℃の酸化性雰囲気中にて300分間加熱し、連続した耐炎化繊維糸条を得、引き続きラウリルアルコール(EO)付加物を主成分とした界面活性剤を1.0重量%になるように付与して、炎収縮率0.9%、密度1.45g/cm3 、引張破断伸度25%、糸裁け幅Sが132mm、糸−糸摩擦係数F(−)が0.23、形態保持係数Kが574mmの耐炎化糸を得た。そのまま、ワインダー条件のワインド比におけるwを0.4、巻き上げ初期の巻綾角度θ23°、巻き上げ初期の張力を25g/1000dtex、パッケージ上の糸幅が0.31mm/1000dtexに調整して巻き上げ、巻密度0.75g/cm3 、巻厚さH5.58cm2 /1000dtexのスクエアエンド型のパッケージを得た。このスクエアエンド型パッケージを用いて高次加工を実施したところ、切り替え頻度などのロス時間減少、引き出し時の解除不良や巻崩れなどの取り扱い性は問題なく良好な結果であった。ただし、炎収縮率が低目であるため、高次加工性時での品質・品位は実施例1より低下した。
[実施例4]
48,000dtexのアクリロニトリル系繊維糸条を、240℃の酸化性雰囲気中にて300分間加熱し、連続した耐炎化繊維糸条を得、引き続きラウリルアルコール(EO)付加物を主成分とした界面活性剤を1.0重量%になるように付与して、炎収縮率0.2%、密度1.55g/cm3 、引張破断伸度4%、糸裁けSが150mm、糸−糸摩擦係数F0.35、形態保持係数Kが429mmの耐炎化糸を得た。そのまま、ワインダー条件のワインド比における端数wを0.4、巻き上げ初期の巻綾角度θ23°、巻き上げ初期の張力を25g/1000dtex、パッケージ上の糸幅が0.31mm/1000dtexに調整して巻き上げ、巻密度0.75g/cm3 、巻断面積268cm2 、巻厚さH5.58cm2 /1000dtexのスクエアエンド型のパッケージを得た。このスクエアエンド型パッケージを用いて高次加工を実施したところ、切り替え頻度などのロス時間減少、引き出し時の解除不良や巻崩れなどの取り扱い性は問題なく良好な結果であった。ただし、炎収縮率、引っ張り破断伸度が低目であること、および密度が高目であることにより、高次加工時での品質・品位が実施例1に比べ劣る結果であった。
[比較例3]
実施例4と同一の耐炎化繊維糸状を得た後、そのまま、ワインダー条件のワインド比における端数wを0.4、巻き上げ初期の巻綾角度θ23°、巻き上げ初期の張力を25g/1000dtex、パッケージ上の糸幅が0.31mm/1000dtexに調整して巻き上げ、巻密度0.75g/cm3 、巻断面積46cm2 、巻厚さH0.95cm2 /1000dtexのスクエアエンド型のパッケージを得た。このスクエアエンド型パッケージを用いて高次加工を実施したところ、巻厚さが小さいことによる切り替え頻度の増加、炎収縮率、引っ張り破断伸度が低すぎること、および密度が高すぎることにより、高次加工性時での品質・品位が劣ることにより、使用不可能であった。
[実施例5]
実施例1と同一の耐炎化繊維糸条を得た後、そのまま、ワインダー条件のワインド比における端数wを0.8、巻き上げ初期の巻綾角度θ23°、巻き上げ初期の張力を25g/1000dtex、パッケージ上の糸幅が1.25mm/1000dtexに調整して巻き上げ、巻密度0.75g/cm3 、巻断面積268cm2 、巻厚さH5.58cm2 /1000dtexのスクエアエンド型のパッケージを得た。このスクエアエンド型パッケージを用いて高次加工を実施したところ、切り替え頻度などのロス時間は減少したものの、耐炎化繊維糸状の集束性が低めであったため、引き出し時に品位が若干悪化した。
[比較例4]
実施例1と同一の耐炎化繊維糸条を得た後、そのまま、ワインダー条件のワインド比における端数wを0.0、巻き上げ初期の巻綾角度θ23°、巻き上げ初期の張力を25g/1000dtex、パッケージ上の糸幅が0.31mm/1000dtexに調整して巻き上げ、巻密度0.75g/cm3 、巻断面積46cm2 、巻厚さH0.95cm2 /1000dtexのスクエア型のパッケージを用いて高次加工を実施したところ、巻形状が悪く引き出し時に解除不良や巻崩れなどの取り扱い性が悪化した。また、巻厚さが小さいために切り替え頻度が多く作業量が増大し、長期の使用は不可能であった。
[実施例6]
実施例1と同一の耐炎化繊維糸条を得た後、そのまま、ワインダー条件のワインド比における端数wを0.4、巻き上げ初期の巻綾角度θ23°、巻き上げ初期の張力を4g/1000dtex、パッケージ上の糸幅が0.31mm/1000dtexに調整して巻き上げ、巻密度0.40g/cm3 、巻断面積A106cm2 巻厚さH2.20cm2 /1000dtexのスクエアエンド型のパッケージを得た。このスクエアエンド型パッケージを用いて高次加工を実施したところ、実施例1に比べると巻形状が劣り、引き出し時に若干の解除不良や巻崩れが発生するなど、作業性が低下した。
[比較例5]
実施例1と同一の耐炎化繊維糸条を得た後、そのまま、ワインダー条件のワインド比における端数wを0.4、巻き上げ初期の巻綾角度θ23°、巻き上げ初期の張力を4g/1000dtex、パッケージ上の糸幅が0.31mm/1000dtexに調整して巻き上げ、巻密度0.40g/cm3 、巻断面積A46cm2 、巻厚さH0.95cm2 /1000dtexのスクエアエンド型のパッケージを得た。このスクエアエンド型パッケージを用いて高次加工性を実施したところ、切り替え頻度などのロス時間の増大や、巻き上げ張力、巻密度が低いことにより、引き出し時に若干の解除不良や巻崩れが発生し、全般的に使用不可であった。
本発明に係る耐炎化繊維糸条パッケージの一例を示す説明図であり、(A)は正面図、(B)は(A)のB−B’断面図であって、(B)の斜線部が巻断面積を示す。 糸裁け評価を示す概略図であり、(C)はエアー処理前の耐炎化繊維糸条の状態であり、(D)は(C)のエア処理した後の状態を示す。
符号の説明
1:コアボビン
2:耐炎化繊維糸条
3:エアーノズル
θ:巻綾角度
S:糸裁け幅
A:巻断面積

Claims (13)

  1. アクリル系耐炎化糸が、ボビンに巻断面積A(cm2 )/繊度D(dtex)×1000の比率である巻厚さHが1(cm2/1000dtex)以上に巻き取られていることを特徴とする耐炎化糸パッケージ。
  2. 前記耐炎化糸の繊度が1000dtex以上であることを特徴とする請求項1に記載の耐炎化糸パッケージ。
  3. ボビンへの巻綾角度θが5°〜40°の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の耐炎化糸パッケージ。
  4. 糸裁け幅S(mm)/糸−糸摩擦係数F(−)の比率である形態保持係数Kが200(mm)未満であり、かつボビンへの巻綾角度θが5°〜40°の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐炎化糸パッケージ。
  5. 糸裁け幅S(mm)/糸−糸摩擦係数F(−)の比率である形態保持係数Kが200(mm)以上であり、かつボビンへの巻綾角度θが15°〜40°の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐炎化糸パッケージ。
  6. 耐炎化糸の炎収縮率が1〜30%の範囲、かつ密度が1.3〜1.5g/cm3 の範囲であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の耐炎化糸パッケージ。
  7. 耐炎化糸の引張破断伸度が5〜30%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の耐炎化糸パッケージ。
  8. パッケージ上の耐炎化繊維糸の糸幅が0.1〜1.2mm/1000dtexであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の耐炎化糸パッケージ。
  9. パッケージの耐炎化糸の巻密度が0.5〜1.1g/cm3 の範囲にあることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の耐炎化糸パッケージ
  10. アクリル系耐炎化糸をコアボビン上に巻断面積A(cm2 )/繊度D(dtex)×1000の比率である巻厚さHが1(cm2 /1000dtex)以上になるように巻き取ることを特徴とする耐炎化糸パッケージの製造方法。
  11. ワインド比における端数wを0.1〜0.9の範囲、巻綾角度θを5〜40°の範囲に制御するとともに、巻始めから巻終わりまでの糸の張力を10〜200g/1000dtexの範囲に制御してコアボビンに巻取ることを特徴とする請求項10に記載の耐炎化糸パッケージの製造方法。
  12. 糸裁け幅S(mm)/糸−糸摩擦係数F(−)の比率である形態保持係数Kが200(mm)未満の耐炎化糸の巻始めおよび巻終わりの巻綾角度θを5〜40°の範囲に制御することを特徴とする請求項10または11に記載の耐炎化糸パッケージの製造方法。
  13. 糸裁け幅S(mm)/糸−糸摩擦係数F(−)の比率である形態保持係数Kが200(mm)以上の耐炎化糸の巻始めおよび巻終わりの巻綾角度θを15〜40°の範囲に制御することを特徴とする請求項10または11に記載の耐炎化糸パッケージの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4856651B2 (ja) * 2006-09-06 2012-01-18 三菱レイヨン株式会社 炭素繊維パッケージ及びその製造方法

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