JP2002220726A - 炭素繊維前駆体糸条の製造方法 - Google Patents
炭素繊維前駆体糸条の製造方法Info
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Abstract
発生の少ない高品質、高性能な炭素繊維前駆体糸条を、
低コストにて生産性よく、容器に収納する方法を提供す
ることを目的とする。 【解決手段】 フックドロップ法で測定した交絡度5ヶ
/m〜20ヶ/m、水分率5%〜30%に調製した炭素
繊維前駆体繊維束を1本以上引き揃えた総繊度7万デニ
ール以上の炭素繊維前駆体繊維束集合体F2を、ギヤロ
ール1によって集束させた後、容器3に収納することを
特徴とする炭素繊維前駆体糸条の製造方法。
Description
ル以上の炭素繊維前駆体糸条の製造方法に関し、詳しく
は、炭素繊維製造工程において扱いやすい形態で供給で
きる炭素繊維前駆体糸条の製造方法に関する。
ス繊維、アラミド繊維等が使用されている。中でも、炭
素繊維は、比強度、比弾性率、耐熱性、耐薬品性等に優
れ、航空機用途、ゴルフシャフト、釣り竿等のスポーツ
用途、一般産業用途の繊維強化複合材料の強化材として
使用されている。高強度、高弾性率の炭素繊維を得るた
めには、炭素繊維前駆体糸条束として糸切れ、毛羽の発
生が少なく品質に優れたものが必要である。前駆体糸条
束のフィラメント構成として、フィラメント数が300
0本以上から24000本以下が主に用いられていた。
車、エネルギー、コンパウンド等の一般産業用途に使用
されるようになり、その為、高強度・高弾性率でより安
価な生産性に優れたラージトウが強く求められている。
機台あたりの生産性を向上させる技術(特開2000−
144521号公報)やトウ幅制御による多錘化技術
(特願平11−168587号:未公開)等が提案され
ており、これらの技術を実施することで、高品質で安価
なラージトウを提供することが可能となった。しかし、
ラージトウのような太物糸条をボビン等に巻き上げ炭素
繊維製造工程に供給することは非常に困難である。例え
ば、ワインダートラバースガイドでの擦過や損傷、また
ガイドからの単糸の溝飛びによる毛羽、糸切れ等の問題
が生じ、更には炭素繊維製造工程でのトウの厚みムラ、
トウエッジ部での損傷、折れ曲がり等の問題が発生す
る。このような問題を解決するために、例えば特開平1
1−189913号公報では、捲縮を施した炭素繊維前
駆体を箱容器に収納し、耐炎化工程で小トウに分割し焼
成を行う技術が提案されているが、炭素繊維前駆体糸条
に捲縮を施すことで糸条が挫屈、損傷するために、炭素
繊維前駆体糸条として強度発現性の点からあまり好まし
くない。更に、捲縮により得られる糸条は嵩高であるの
で、多数本束ねて箱容器に収納しようとした場合に箱容
器が大きくなり、ハンドリングが困難で収納効率が低下
する。また、糸長を確保することも困難である。
造工程(焼成工程)における糸条束の総繊度、太さ、糸
長を考慮して、炭素繊維製造工程において使いやすい形
態の炭素繊維前駆体糸条を製造する方法を提供すること
を目的とする。
れ、毛羽の発生の少ない高品質、高性能な炭素繊維前駆
体糸条を、低コストにて生産性よく、容器に収納する方
法を提供するものである。
プ法で測定した交絡度5ヶ/m〜20ヶ/m、水分率5
%〜30%に調製した炭素繊維前駆体繊維束を1本以上
引き揃えた総繊度7万デニール以上の炭素繊維前駆体繊
維束集合体を、ギヤロールによって集束させた後、容器
に収納することを特徴とする炭素繊維前駆体糸条の製造
方法に関する。
繊維前駆体繊維束集合体を容器に収納する際、該炭素繊
維前駆体繊維束集合体を少なくとも2ヶ以上に分割し、
各々独立して1つの容器内に収納してもよい。
維束集合体を分割することにより、炭素繊維を製造する
際に最も扱いやすい形態のトウボリュウム(太さ、トー
タル繊度)にすることができる。
繊維前駆体繊維束集合体の嵩密度を0.5以上とするこ
とが好ましく、これにより設備投資が少なくまた省スペ
ースで小糸条束の糸長を長くすることが可能になる。
ロニトリル系重合体を含む紡糸原液を紡糸口金から紡出
して凝固糸とした後、洗浄、延伸、添油、乾燥等の通常
の各工程を経て製造される。アクリロニトリル系重合体
としては、通常の炭素繊維前駆体アクリロニトリル繊維
に用いられるものであれば特に制限はなく、アクリロニ
トリル系重合体としては、アクリロニトリルの単独重合
体もしくは共重合体、またはこれらの重合体の混合重合
体を使用することができる。
れる炭素繊維前駆体繊維束を、以下に説明するようにし
て、容器に収納された炭素繊維前駆体糸条を得るもので
ある。
交絡度が、5ヶ/mから20ヶ/mの範囲、好ましくは
10ヶ/m〜14ヶ/mの範囲になるように集束性を付
与する。ここで、炭素繊維前駆体繊維束の交絡度とは、
繊維束中の1本の単繊維が隣接する他の単繊維と1mの
間に何回交絡しているかを示すパラメータである。交絡
度は、フックドロップ法により測定される。そして交絡
度が小さすぎると、容器に収納する際糸条束がばらけ、
毛羽や糸切れ等の問題が発生し、又、分割して容器内に
収納することが困難となる。糸条束の交絡度が大きすぎ
ると、その後の水分付与が難しくなり、また得られる炭
素繊維束の樹脂含浸性および開繊性が悪くなる。
なく、一般的なラビリンス装置、インターレース装置等
を用いることができる。
〜30%の範囲、好ましくは10%〜20%の範囲にな
るように調整する。ここで、水分率は、ウエット状態に
ある繊維束の重量wと、これを105℃×2時間の熱風
乾燥機で乾燥した後の重量w 0とにより、水分率(重量
%)=(w−w0 )×100/w0によって求めた数値
である。水分率が低すぎると、糸条束の集束性が低下し
容器内に収納する際、糸条束が静電気でばらけやすくな
り収納が困難になり、又、炭素繊維製造工程において糸
条束を解舒する際にばらけて焼成工程通過性が悪くな
る。一方、水分率が高すぎても、糸条束に過剰付着した
水分が悪影響を及ぼし、炭素繊維としての強度発現性に
劣る。
定されないが、ディップ−ニップ槽、噴霧装置、タッチ
ロール等により炭素繊維前駆体繊維に水分付与を行うこ
とができる。
スト化を狙うことから、繊度2万〜10万デニールの多
フィラメントで構成される繊維束を、総繊度7万デニー
ル以上となるように1本以上、必要により複数本の繊維
束を引き揃え、ギヤロールにより集束させる。この時、
総繊度7万デニール以下の場合に適用しても構わない
が、高生産性、低コストの面からあまり好ましくない。
また、本発明の製造方法を適用する必要性は乏しい。
糸繊度は、生産性と得られる炭素繊維物性を考慮して、
1.0dtexから1.65dtexの範囲が好まし
い。
を示す。断面形状が歯車状の凹凸を有するギヤロール1
aと1b(図面では模式的に示した。)を有するギヤロ
ール1に、複数の繊維束を引き揃えた繊維束F2を通過
させると、集束性の向上した繊維束集合体F3が得られ
る。
ステンレス、炭素鋼、アルミ等が用いられるが、通常は
設備費用やトウへ与えるダメージを考慮してステンレス
にハードクロムメッキの表面処理を施したものが好まし
い。このようなギヤロールを用いることで、繊維に挫屈
などの損傷を与えることなく、また巻き付き等のトラブ
ルもなく安定に複数本の繊維束を引き揃えることが可能
となる。
ギヤロールで集束した繊維束集合体(糸条束)を、容器
に収納する直前に、好ましくは少なくとも2本以上に分
割して、1つの容器に収納する。繊維束集合体を分割す
る方法としては、例えばピンガイドや分繊バーを用いて
容易に分割することができる。また、エアーを吹き付け
て分割することも可能である。
しくは角容器のどちらを用いても構わない。容器の材質
については、ダンボール、アルミ容器、ステンレス容
器、プラスチック容器、またはフレキシブルコンテナバ
ック等に収納することを用いることができる。収納する
トウ水分率を維持することを考慮すると、耐水、耐油加
工を施したもの、更には、密閉できる容器が好ましい。
又、ハンドリングや輸送コストの点では、容器は軽い方
が好ましい。
に容器サイズを大きくした場合、ハンドリングの問題や
輸送コスト、更には容器の耐強度の問題があるので、容
器サイズは炭素繊維製造工程に必要な糸長を考慮し、決
定する必要がある。
容器へ収納するときの振り込み方法は、一般的な振り込
み方法を用いて行うことができる。例えば、角容器を用
いる場合には、トウを振り込むトラバースガイドを往復
運動(X−Y振り込み)させることにより収納する方法
や、またトラバースガイドを固定し、角容器を往復運動
させることにより収納する方法が挙げられる。
転運動させることにより収納する方法やトラバースガイ
ドを回転させることにより振り込む方法が挙げられる。
設置場所や設備コスト等を考えると、振り込みトラバー
スガイドを可動させて収納する方法が有利である。
糸条の嵩密度は、0.5以上が好ましい。嵩密度が低す
ぎると、必要以上に容器サイズが大きくなり上記の問題
が生じる。トウ水分率を5%〜30%の範囲内にするこ
とで、嵩密度を容易に0.5以上にすることができる。
また物理的な方法として、タンピング作業を連続または
随時実施することで解決される。
維前駆体繊維束の単繊強度は、好ましくは5.0cN/
dtex以上であり、より好ましくは6.5cN/dt
ex以上であり、さらに好ましくは7.0cN/dte
x以上である。単繊強度が低すぎると、焼成工程での単
糸切れによる毛羽の発生が多くなって焼成工程通過性が
悪くなる。
は、単繊維自動引張強伸度測定機(オリエンテック U
TM II−20)を使用し、台紙に貼られた単繊維をロ
ードセルのチャックに装着し、毎分20.0mmの速度
で引っ張り試験を行い強伸度を測定することによって求
められる。
駆体糸条は、耐炎化処理、炭素化処理等の焼成工程に供
給したときに、ばらけることもなく、単糸切れによる羽
毛発生もなく、工程通過性に優れるため高品位の炭素繊
維に転換することができる。
焼成して得られた炭素繊維のストランド強度は、好まし
くは450Kg/mm2以上であり、より好ましくは4
80Kg/mm2以上であり、さらに好ましくは500
Kg/mm2以上である。ストランド強度が450Kg
/mm2未満では、市場から要求される産業資材用途へ
の適用が難しくなり、本発明を適用する必要性は乏しく
なる。
繊性にも優れる炭素繊維を容易に得ることができる。
説明する。本実施例における各測定は、以下の方法によ
って行った。
機(オリエンテック UTM II−20)を使用し、台
紙に貼られた単繊維をロードセルのチャックに装着し、
毎分20.0mmの速度で引っ張り試験を行い強伸度を
測定した。
の繊維束を用意し、垂下装置の上部に該繊維束を取り付
け、上部つかみ部から下方1mにおもりを取り付けつり
下げた。ここで用いるおもり荷重は、デニール数の1/
5のグラム数とした。該繊維束の上部つかみから1cm
下部の点に該繊維束を2分割するようにフックを挿入
し、2cm/Sの速度でフックを下降させた。フックが
該繊維束の絡みによって停止した点までのフックの下降
距離L(mm)を求め、次式によって交絡度を算出し
た。尚、試験回数はN=50とし、その平均値の小数点
1桁まで求めた。
の針状で、表面が滑らかに仕上げ処理をしたものであ
る。
に記載された試験法に準拠し測定した。
駆体の繊維束の重量wと、これを105℃×2時間の熱
風乾燥機で乾燥した後の重量w0 とにより、水分率(重
量%)=(w−w0)×100/w0によって測定した。
み、その時振り込んだトウのウエット重量をw、体積を
Vとし、w/Vで嵩密度を算出した。
酸メチルおよびメタクリル酸を、過硫酸アンモニウム−
亜硫酸水素アンモニウムおよび硫酸鉄の存在下、水系懸
濁重合により共重合し、アクリロニトリル単位/アクリ
ル酸メチル単位/メタクリル酸単位=95/4/1(重
量比)からなるアクリロニトリル系重合体を得た。この
アクリロニトリル系重合体をジメチルアセトアミドに溶
解し、21重量%の紡糸原液を調製した。
の製造を、図1を参照しながら説明する。
径55μmの紡糸口金を通して、濃度60重量%、温度
25℃のジメチルアセトアミド水溶液からなる凝固浴中
に吐出させて凝固糸にし、第1凝固浴中からこの凝固糸
を、紡糸原液の吐出線速度の0.8倍の引取り速度で引
き取った。ついで、この糸条束に対して水洗と同時に4
倍の延伸を行い、これに1.5重量%に調製したアミノ
シリコン系油剤を添油した。この糸条束を熱ロールを用
いて乾燥、熱セットを施し、スチーム延伸機にて4.0
倍に延伸した。図1に示すように、この段階で、フィラ
メント数30,000、単繊維繊度1.1dtexの糸
条束F1が、数本工程を走行している。
し、この糸条束をエアーによって交絡処理を施し、フッ
クドロップ法による交絡度が15ヶ/mとなるようにし
て、紡糸機最終ロール5に送った。紡糸機最終ロール5
には、タッチロール6が備えてあり、これにて糸条束の
水分率を調整し、この糸条束に繊維当たり25重量%の
水分を含有させた。
なるように、フィラメント数30,000、単繊維繊度
1.1dtexの糸条束を4本引き揃えた糸条束F2
を、ギヤロール1に導糸し集束性が向上した糸状束F3
を得た。その後、分繊バー2によって4つの小糸条束F
4に分割し、それぞれ角形状の小区画に区画された容器
3にそれぞれが独立して収納されるようにx−y振り込
みを行い、炭素繊維前駆体糸条を得た。
であった。またこの炭素繊維前駆体繊維の単繊維繊度は
1.1dtex、単繊維強度は7.2cN/dtexで
あった。
繊維前駆体糸条を、炭素繊維に転換するために、小区画
に区画された容器から小トウを引き出し、空気中230
〜280℃の熱風循環式耐炎化炉に送り、60分間処理
し耐炎化繊維束となし、ついで耐炎繊維束を窒素雰囲気
中下で最高温度780℃にて1.5分間処理し、さらに
同雰囲気下で最高温度が1300℃の高温熱処理炉にて
約1.5分処理した後、重炭酸水素アンモニウム水溶液
中で0.4Amin/mで電解処理を施し、炭素繊維束
を得た。得られた炭素繊維のストランド強度は490k
g/mm2であった。また焼成工程における工程通過性
は良好であった。
収納した後の嵩密度、焼成して得られた炭素繊維のスト
ランド強度、焼成工程における工程通過性の評価の各結
果をまとめて示す(以下の実施例、比較例についても同
じ。)。
ルとなるように糸条束を8本引き揃え、ギヤロールに導
糸した以外は、実施例1と同様にして容器に収納された
炭素繊維前駆体糸条を得た。単繊維繊度は1.1dte
xであった。結果を表1に示す。
55μmの紡糸口金により紡糸し、総繊度42万トータ
ルデニールとなるように糸条束を6本引き揃え、ギヤロ
ールに導糸した以外は、実施例1と同様にして容器に収
納された炭素繊維前駆体糸条を得た。単繊維繊度は1.
1dtexであった。結果を表1に示す。
に交絡処理を変更した以外は、実施例1と同様にして容
器に収納された炭素繊維前駆体糸条を得た。単繊維繊度
は1.1dtexであった。結果を表1に示す。
うに交絡処理を変更した以外は、実施例1と同様にして
容器に収納された炭素繊維前駆体糸条を得た。単繊維繊
度は1.1dtexであった。結果を表1に示す。
糸条束の水分率を3重量%に変更した以外は、実施例1
と同様にして容器に収納された炭素繊維前駆体糸条を得
た。単繊維繊度は1.1dtexであった。結果を表1
に示す。
糸条束の水分率を40重量%に変更した以外は、実施例
1と同様にして容器に収納された炭素繊維前駆体糸条を
得た。単繊維繊度は1.1dtexであった。結果を表
1に示す。
際、ギヤロールの替わりにニップロールを使用した以外
は、実施例1と同様にして容器に収納された炭素繊維前
駆体糸条を得た。単繊維繊度は1.1dtexであっ
た。結果を表1に示す。
成工程)における糸条束の総繊度、太さ、糸長を考慮し
て、炭素繊維製造工程において使いやすい形態の炭素繊
維前駆体糸条を製造する方法を提供することができる。
れ、毛羽の発生の少ない高品質、高性能な炭素繊維前駆
体糸条を、低コストにて生産性よく、容器に収納する方
法を提供することができる。
を説明するための図である。
Claims (5)
- 【請求項1】 フックドロップ法で測定した交絡度5ヶ
/m〜20ヶ/m、水分率5%〜30%に調製した炭素
繊維前駆体繊維束を1本以上引き揃えた総繊度7万デニ
ール以上の炭素繊維前駆体繊維束集合体を、ギヤロール
によって集束させた後、容器に収納することを特徴とす
る炭素繊維前駆体糸条の製造方法。 - 【請求項2】 総繊度7万デニール以上の炭素繊維前駆
体繊維束集合体を容器に収納する際、該炭素繊維前駆体
繊維束集合体を少なくとも2ヶ以上に分割し、各々独立
して1つの容器内に収納することを特徴とする請求項1
記載の炭素繊維前駆体糸条の製造方法。 - 【請求項3】 容器に収納した炭素繊維前駆体繊維束集
合体の嵩密度を0.5以上とすることを特徴とする請求
項1または2記載の炭素繊維前駆体糸条の製造方法。 - 【請求項4】 容器に収納した炭素繊維前駆体繊維束集
合体の単繊維強度が5.0cN/dtex以上であるこ
とを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の炭素
繊維前駆体糸条の製造方法。 - 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項記載の製造
方法で得られた容器に収納した炭素繊維前駆体繊維束集
合体を焼成して得られたストランド強度が450kg/
mm2以上である炭素繊維。
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