JP2006001285A - 繊維強化複合材料 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 繊維強化複合材料であって、下記(a)〜(d)を満足する、金属塩水溶液を溶剤とするポリケトン溶液から得られたポリケトン繊維が使用されていることを特徴とする繊維強化複合材料。
(a)95重量%以上が一酸化炭素とエチレンとの完全交互共重合体からなるポリケトンから構成されていること、(b)単糸繊度が1〜4dであること、(c)ポリケトン繊維中のパラジウム、ニッケル及びコバルトからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素の含有量が合計で10ppm以下であること、(d)100Hzの動的粘弾性測定において、180℃の貯蔵粘弾性が80g/d以上であること。
【選択図】 なし
Description
ポリケトンを湿式紡糸する場合、用いる溶媒としてはヘキサフルオロイソプロパノールや、m−クレゾール、レゾルシン/水といったフェノール系溶剤、レゾルシン/カーボネートといった有機溶剤が知られている。しかしながら、これらの溶剤は、工業的規模で実施するにはいずれも大きな問題があった。
また、m−クレゾールは、脂肪族ポリケトンの溶剤となり得るが、溶解力が乏しくヘキサフルオロイソプロパノールとの共用が必須となること、また毒性が高く、かつフェノール臭が強いので紡糸設備を完全密閉型にする必要がある。更にこれらの溶剤を用いて得られた繊維の力学物性が低く、またこれらの溶剤を用いた溶液からの脱溶媒速度が余りにも低いために、紡糸速度を高くすると繊維化が困難となる場合もあった。
メタノールを凝固浴に使用せざるを得ず、紡糸設備や溶媒回収設備がやはり高価で煩雑な設備を使用しなくてはならなかった。
すなわち、本発明は、一酸化炭素とオレフィンの共重合体であるポリケトンの溶液において、該共重合体の90重量%以上が一酸化炭素ユニットとオレフィンユニットであり、溶剤が亜鉛塩、カルシウム塩、チオシアン酸塩、及び鉄塩からなる群から選ばれた少なくとも1種の水溶液である上記ポリケトンの溶液及びそれを用いたポリケトン繊維の製造方法並びにポリケトン繊維に関する。
がオレフィン由来のアルキレン基と交互に配列されているポリマーである。このポリマー中には部分的にカルボニル基同士、アルキレン基同士が繋がっていてもよいが、95重量%以上が一酸化炭素とオレフィンの完全交互共重合体、すなわち、アルキレン基の次にはカルボニル基が結合し、カルボニル基の次にはアルキレン基が結合する共重合体からなるポリケトンであることが耐熱性、耐光性を向上させる観点から好ましい。もちろん、ポリマー中の一酸化炭素とオレフィンが完全交互共重合した部分の含有率は高ければ高いほどよく、好ましくは97重量%以上であり、最も好ましくは100重量%である。
本発明に用いるポリケトンの製造方法については、公知の方法をそのまま、あるいは修正して用いることができる。例えば、一酸化炭素とエチレンやプロピレン等のオレフィンとを、パラジウム、ニッケル、コバルト等の第VIII族遷移金属化合物、構造式(2)で示されるリン系二座配位子及び、pKaが4以下の酸のアニオンからなる触媒の存在下で重合させて、本発明に用いるポリケトンを合成することができる。
構造式(2) R1R2P−R−PR3R4
(ここで、R1、R2、R3及びR4は異種又は同種の炭素数1〜30の有機基であり、Rは炭素数2〜5の有機基である。)
また、構造式(2)のリン系二座配位子については、R1、R2、R3及びR4が未置換のフェニル基、あるいは、R1、R2、R3及びR4の少なくとも1つが、フェニル基に結合しているリン元素に対してオルトの位置にある1つ以上のアルコキシ基を含むフェニル基であることが好ましい。また、2つのリン原子を結ぶRは、トリメチレン基であることが好ましい。pKaが4以下の酸としては、トリフルオロ酢酸、ジフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、p−トルエンスルホン酸等が挙げられる。
重合は、メタノール、エタノールのような低級アルコール中に、パラジウム、ニッケル、コバルト等の第VIII族遷移金属化合物、構造式(2)で示されるリン系二座配位子、及びpKaが4以下の酸のアニオンからなる触媒を添加し、この溶液に一酸化炭素とオレフィンを導入させて行う。一酸化炭素とオレフィンのモル比は、5:1〜1:2が好ましい。触媒に用いる第VIII族遷移化合物は、重合に用いるオレフィン1モル当たり、10-8〜0.1モル量相当の金属元素量にすることが触媒活性の観点から好ましい。とり
わけ、得られるポリケトン中にパラジウム、ニッケル及びコバルトが総量としてポリケトン中に100ppm以下でしか含有されないように、仕込みの第VIII族遷移金属化合物の量を設定することが本発明の目的を達成するためには好ましい。
得られたポリケトン含有組成物は、濾過した後、触媒、キノン等を洗い流すために洗浄を行った後、乾燥し単離する。
また、ポリケトンの製造は、上記で示した触媒を、ポリマー、無機粉体等に担持させ、いわゆる気相重合で行ってもよく、この方法はポリケトンに触媒が残りにくいのでむしろ好ましい方法である。
り、鉄塩としては、臭化鉄、ヨウ化鉄、塩化鉄等がある。これらの塩のうち、ポリケトンの溶解性、溶媒のコスト、水溶液の安定性の点で塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、臭化カルシウムがさらに好ましく、特に好ましくは塩化亜鉛である。
溶液に用いる水については、工業的に用いることが可能なものであれば特に制限はなく、飲料水、河川水、イオン交換処理水等、任意のものが使用できる。更に、ポリケトンを溶解する能力を阻害しない範囲で、通常は水の50重量%以内で、メタノール、エタノール、エチレングリコール、アセトン、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の有機溶剤を含有してもよい。
塩の濃度(重量%)=(塩の重量/溶剤の重量)×100
ここで、ハロゲン化亜鉛以外であって50℃の水に1重量%以上溶解する少なくとも1種の金属塩とは、ハロゲン化亜鉛以外であって50℃の水に1重量%以上溶解する金属塩であれば特に制限はなく、典型金属元素又は遷移金属元素の、ハロゲン化塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩等の無機塩、酢酸塩、ギ酸塩、スルホン酸塩等の有機金属塩のいずれでもよいが、ハロゲン化亜鉛と陰イオン元素を共通にすると回収しやすいという利点を有するので、ハロゲン化亜鉛以外のハロゲン化金属塩が好ましい。また、金属の種類としては、得られるポリマー溶液の溶液粘度低下の程度が大きいという観点から、ハロゲン化アルカリ金属とハロゲン化アルカリ土類金属が好ましい。
、紡糸の安定性、得られる繊維の着色の少なさ、回収のしやすさ、金属塩の安定性、コストの観点から特に塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化バリウムが好ましく、特に塩化ナトリウム、塩化カルシウムが好ましい。また、少なくとも1種の金属塩と定義しているように、複数の種類の金属塩を組み合わせて使用してもよい。
ポリマー濃度(重量%)=
(ポリマーの重量/(ポリマーの重量+溶剤の重量))×100
こうして得られたポリケトンの溶液は、ごみ、ゲル化物、少量の未溶解ポリマー、触媒残さ等を除去するために、必要に応じてフィルターを通し均質な溶液となる。
本発明のポリケトン溶液は湿式紡糸を行うことで、強度、弾性率に優れた繊維となる。すなわち、本発明のポリケトン溶液を紡口口金から押し出し、続いて得られた繊維状物から塩の一部又は全部を除去した後、0〜300℃の範囲で該繊維状物を延伸して高性能の繊維を製造することができる。
ポリケトンに対して溶解性の低い溶剤に押し出す方法が好ましい。このような溶解性の低い溶剤としては、本発明に用いた溶剤より濃度の低い金属塩溶液が好ましく、特に水、酸性水溶液、アルカリ水溶液等を用いることが好ましい。該繊維状物を凝固溶剤に通す場合は、一定速度で引っ張りながら通すことが好ましい。この時の速度としては、特に制限はないが、通常0.001〜3000m/minである。
本発明のポリケトン溶液は、ごみ、ゲル化物、少量の未溶解ポリマー、触媒残さ等を除去するために、必要に応じてフィルターを通した後、紡口口金から押し出し、凝固浴に通してポリケトンを繊維状物とする。凝固浴は、ポリケトン溶液から金属塩の一部又は全部を除去し、凝固浴に満たされた溶剤にポリケトンが溶解しない状態に変えて繊維形状を保持させる役割を持つ。凝固浴に用いる溶剤としては、50重量%以上が水で構成された溶剤が、脱塩速度が速いという点で好ましい。例えば、ハロゲン化亜鉛と該ハロゲン化亜鉛以外であって50℃の水に1重量%以上溶解する少なくとも1種の金属塩を含む水溶液を溶剤に用いた場合、凝固浴に用いる溶剤は、水、ハロゲン化亜鉛及び/又は該ハロゲン化亜鉛以外であって50℃の水に1重量%以上溶解する少なくとも1種の金属塩を50重量%未満含む水溶液である。
これらの金属元素の量が100ppmを超えると、ポリケトンをハロゲン化亜鉛を含む水溶液に溶解させた場合、ポリケトンが熱架橋し溶液粘度が著しく増大して紡糸ができなくなったり、紡糸ができたとしても徐々に溶液粘度が高くなるので得られた繊維の特性が紡糸時間と共に変化してしまう場合がある。また、得られたポリケトン繊維は、加熱されると強度、伸度、弾性率、分子量の低下、着色といった問題が起こりやすくなる。このような問題を起こさないためには、これらの金属元素の量をできるだけ減らすことが好ましく、具体的には50ppm以下が好ましく、より好ましくは20ppm以下、更に好ましくは10ppm以下である。
また、本発明のポリケトン繊維の繊度は特に制限はないが、通常単糸繊度は0.01〜10d、総繊度は5〜5000dである。また、長繊維、短繊維、モノフィラメント、マルチフィラメントのいずれでもよい。
実施例の説明中に用いられる各測定値の測定方法は、次の通りである。
(1)極限粘度
極限粘度[η]は、次の定義式に基づいて求めた。
高周波プラズマ発光分光分析により、公知の方法を用いて測定した。
(3)繊維の強力、強度、伸度、弾性率
繊維の強伸度は、JIS−L−1013に準じて測定した。
(4)180℃の貯蔵弾性率
繊維30mmの両端をたるみがないように結んだものを試料とし、動的粘弾性測定装置(RheoVibronDDV−01FP:ORIENTEC(株)社製)を用いて、以下の条件で測定した。周波数:110Hz、温度:20→260℃、昇温速度:5℃/分、測定インターバル:1回/℃、振幅:16μm、単一波形、プリロード加重:0.1g/d
下記の構造式で示される、極限粘度0.5のプロピレンを6モル%共重合したエチレン/プロピレン/一酸化炭素からなるオレフィンと一酸化炭素の交互ターポリマーを60℃で撹拌しながら、70重量%の塩化亜鉛水溶液に加えた。ポリマーは極めて容易に溶解し、溶解時間30分以内でポリマー濃度10重量%のドープを得た。得られた溶液はわずかに黄色を示した。得られたドープを直ちに大量の水に落とし、フィブリル状のポリマーを回収した。回収したポリマーを徹底的に水で洗い、塩化亜鉛を完全に除去し、乾燥した。回収されたポリマーの色の変化はなく、ポリマーの赤外吸収スペクトル、NMRスペクトルを測定したところ、原料のポリマーに対し変化はなかった。このことは原料ポリマーが塩化亜鉛水溶液に分解することなく、完全溶解することを示すものである。
実施例1と同じポリマーを用いて、これを70℃で撹拌しながら、75重量%の塩化亜鉛水溶液に加えた。ポリマーは極めて容易に溶解し、溶解時間30分以内でポリマー濃度20重量%のドープを得た。得られたドープはわずかに黄色を示した。得られた溶液を直ちに大量の水に落とし、フィブリル状のポリマーを回収した。回収したポリマーを徹底的に水で洗い、塩化亜鉛を完全に除去し、乾燥した。回収されたポリマーの色の変化はなく、ポリマーの赤外吸収スペクトル、NMRスペクトルを測定したところ、原料のポリマーに対し変化はなかった。このことは原料ポリマーが塩化亜鉛水溶液に分解することなく、完全溶解することを示すものである。
極限粘度2.0のエチレン/一酸化炭素の交互コポリマー(ECO)を70℃で撹拌し
ながら、75%の塩化亜鉛水溶液に加えた。ポリマーは極めて容易に溶解し、溶解時間30分以内でポリマー濃度15重量%のドープを得た。得られた溶液はわずかに黄色を示した。得られた溶液を直ちに大量の水に落とし、フィブリル状のポリマーを回収した。回収したポリマーを徹底的に水で洗い、塩化亜鉛を完全に除去し、乾燥した。回収されたポリマーの色の変化はなく、ポリマーの赤外吸収スペクトル、NMRスペクトルを測定したところ、原料のポリマーに対し変化はなかった。このことは原料ポリマーが塩化亜鉛水溶液に分解することなく、完全溶解することを示すものである。
[実施例4]
実施例3で得た溶液を20μmのフィルターを通過させた後、紡口経0.5mmのプランジャー型押出機を通して、順に30%の塩化亜鉛水溶液、水の浴に5m/minの速度で通し、得られた未延伸糸を250℃のオーブン中で7倍の延伸倍率で延伸した。
得られた繊維は強度6g/d、伸度20%であった。
極限粘度が0.4で、オレフィン中に含まれるプロピレン量が10モル%となるように共重合したエチレン/プロピレン/一酸化炭素の交互ターポリマーを用い、表1に示す溶剤組成、ポリマー濃度、温度条件で撹拌しながら溶解し、溶解時間30分以内でそれぞれの組成のポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液を直ちに大量の水に落とし、フィブリル状のポリマーを回収した。回収したポリマーを徹底的に水で洗い、乾燥した。回収されたポリマーの色の変化はなく、ポリマーの赤外吸収スペクトル、NMRスペクトルを測定したところ、原料のポリマーに対し変化はなかった。また、極限粘度も表1に示すように、ほとんど変化がなかった。このことは原料ポリマーが分解することなく、実施例5〜10の水溶液は、ポリケトンの溶剤になり得ることを示すものである。
極限粘度4.0のエチレン/一酸化炭素の交互コポリマー(ECO)を90℃で撹拌しながら、75重量%の臭化カルシウム水溶液に加えた。ポリマーは極めて容易に溶解し、
溶解時間30分以内でポリマー濃度10重量%のポリマー溶液を得た。得られた溶液を直ちに大量の水に落とし、フィブリル状のポリマーを回収した。回収したポリマーを徹底的に水で洗い、臭化カルシウムを完全に除去し、乾燥した。回収されたポリマーの色の変化はなく、ポリマーの赤外吸収スペクトル、NMRスペクトルを測定したところ、原料のポリマーに対し変化はなかった。また、極限粘度も4.0であり変化がなかった。このことは原料ポリマーが75重量%臭化カルシウム水溶液に分解することなく、完全溶解することを示すものである。
実施例11で得たドープを20μmのフィルターを通過させた後、直径0.1mmの穴が50個ある紡口口金からプランジャー型押出機を用いて、直接10重量%臭化カルシウム水溶液の凝固浴に2m/minの速度で押し出した。次いで水洗浴を通して洗浄し、水を含んだ状態で管上に巻き取った。これを乾燥器に入れて、バッチで乾燥を行い、得られた乾燥糸を240℃のオーブン中で6倍の延伸倍率で延伸した。
得られた繊維は強度6g/d、伸度10%であった。
極限粘度7.0のエチレン/一酸化炭素の交互コポリマーを用い、ポリマー濃度7重量%で80℃を超えないように、表2に示す溶剤組成の塩化亜鉛を主成分とする水溶液に撹拌しながら溶解した。溶解はいずれの場合も30分以内に完了した。その後、得られた溶液の溶液粘度を測定した。塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、塩化バリウムはいずれも50℃で水に1重量%以上溶解するが、これらを含有する水溶液を溶媒とすると(実施例14〜22)、これらを用いない場合(実施例13)と比較して溶液粘度(80℃で測定)が大きく低下していることがわかる。また、実施例14〜22の溶液を室温で放置していても大きく着色は進行しなかったが、実施例13では着色が進行し、数日後には褐色となった。なお、実施例13〜22のポリマー溶液を大量の水に落とし、十分洗浄して金属塩を完全に除去しポリマーを回収した。回収されたポリマーの極限粘度はほぼ7.0であり、また赤外吸収スペクトル、NMRスペクトルを測定したところ、原料のポリマーに対し変化はなかった。このことは実施例13〜22に示した水溶液は、ポリケトンの溶剤になり得ることを示すものである。
実施例13と14のポリケトンの溶液を用い、20個の紡口径0.16mmの孔から吐出線速6.2m/minで押し出し、エアギャップ長20mmを通過させ、そのまま水の凝固浴を通し、更に2%の硫酸洗浄浴を通した後、更に水洗し巻き取った。巻き取った繊維はいずれの場合もポリマー量の約400倍水を含んでいた。この凝固糸の力学物性を測定したところ、実施例13の場合は強力21g、伸度35%で、実施例14の場合は強力52g、伸度115%であった。このように、塩化亜鉛のみを含む水溶液を用いた場合、凝固糸のタフネスが低いので、紡糸の途中で糸切れが生じた。これに対し、実施例14のポリマー溶液を用いた場合には、糸切れもなく安定な紡糸が達成された。また、実施例14のポリマー溶液から得た凝固糸を100℃で乾燥後、215℃で10倍延伸したところ、強度10g/d、伸度4%、弾性率300g/dの高強度、高弾性率繊維が得られた。また、得られた繊維は若干黄色味を示す程度であった。ちなみに、実施例13のポリケトンの溶液から得られた繊維はかなり黄色かった。
20リットルのオートクレーブにメタノール1リットルを加え、更に酢酸パラジウム0.141ミリモル、ビス(2−メトキシフェニル)のホスフィノプロパン0.0821ミリモル、トリフルオロ酢酸1.333ミリモルを予めメタノール10ミリリットル中で撹拌し調製した触媒液を加えた。その後、一酸化炭素とエチレンを1:1モル含む混合ガスを充填し、5MPaの圧力を維持するように連続的に、この混合ガスを追加しながら、80℃で3.5時間反応を行った。
反応後、圧力を解放し、得られた白色ポリマーを繰り返しメタノールで洗浄後、単離した。収量は、73gであった。得られたポリケトンは、核磁気共鳴スペクトル、赤外吸収スペクトル等の分析によりECOであった。また、その極限粘度は5.5、Pd含有量は、41ppmであった。
参考例1で得た3種のポリケトンを塩化亜鉛/塩化ナトリウム/水(重量比65/15/20)にポリマー濃度6重量%になるように溶解した。得られたポリマー溶液を80℃で保持し、30時間、溶液粘度の上昇を測定した。Pd含量が5ppm、41ppmのECOを用いたポリマー溶液の粘度上昇は、30時間経過後もほとんど認められなかった。しかしながら、Pd残量が105ppmのECOは、20時間保持後で約40%、30時間後には、約100%溶液粘度が上昇した。
参考例1で作成した、極限粘度5.6、Pd含有量41ppmのECOを塩化亜鉛/塩化ナトリウム/水(重量比65/10/25)にポリマー濃度が12重量%になるように溶解し、80℃で紡口径0.16mm×20ホールから吐出し、10mmのエアギャップを通して、10℃の水を満たした1.2mの凝固浴を通し、次に2%の硫酸水溶液を含む2mの洗浄浴を通し、水を連続的に吹きかけるネルソンロールを通してから、定長で240℃の乾燥ラインを通した後、ホットプレートを2つのフィードロールの間に備えた延伸機を用いて、表3に記載した総延伸倍率になるように240℃で第一段延伸、更に260℃で第二段延伸を行った後、巻き取った。紡糸を20時間連続して行っても、特に紡糸性
、延伸性について変化はなく、良好であった。
得られたポリケトン繊維は、表3に示すように優れた力学物性を示した。
また、180℃の貯蔵弾性率は実施例24で96g/d、実施例25で150g/dであった。
参考例1で作成した、極限粘度5.6、Pd含有量105ppmのECOを用いて、実施例24で示した紡糸実験を行った。紡糸を開始後、5時間程度は安定に紡糸を行うことができたが、その後糸切れが増大した。おそらく、部分的に熱架橋物が蓄積し、ポリマー溶液の円滑な吐出を妨げたものと思われる。また、熱架橋物が延伸を妨げているためか、総延伸倍率を実施例24及び25と同様の倍率にまで高めることはできなかった。また、強度が実施例24に比べて低い割には、伸度も低い値を示した。また、180℃での貯蔵弾性率は46g/dであった。
参考例1で作成した、極限粘度5.7、Pd含有量5ppmのECOを用いて、実施例24で示した紡糸実験を行った。延伸性は良く、得られた繊維の物性は良好であった。
[実施例27]
2%の硫酸水溶液の代わりに、70℃の温水を通して、実施例24で示したポリマーを用い、実施例24で示した紡糸実験を行った。実施例24や25と比較して繊維に含まれる亜鉛量は増大したが、ほぼ同様の延伸性を示した。
洗浄浴に用いる液体を2%の硫酸水溶液の代わりに、15℃の冷水を用い、実施例24で示したポリマーを用い、実施例24で示した紡糸実験を行った。得られた繊維から亜鉛を十分に除去することができず、そのために延伸性が阻害されたため、総延伸倍率を5倍以上にしようとすると、糸切れが発生した。延伸できる限界で巻き取った繊維物性を表3に示すが、延伸倍率が低いために、強度、弾性率が低い繊維であった。また、180℃での貯蔵弾性率は75g/dであった。
凝固浴に用いる液体を10℃の水の代わりに、塩化亜鉛を32.5重量%、塩化ナトリウム5重量%を含む、10℃の水溶液を用い、凝固浴の長さを4mにして、実施例24で得たポリマーを用い、実施例24で示した紡糸方法を行った。得られた繊維物性は表3に示す。実施例24と同様に、強度、弾性率に優れた繊維を安定して得ることができた。
また、紡糸を5時間連続して行った後、凝固浴は、塩化亜鉛35重量%、塩化ナトリウム6重量%を含む水溶液であった。この凝固浴を120℃で加熱し、水を留去して煮詰め、濃度を合わせるために塩化亜鉛を加えて、塩化亜鉛/塩化ナトリウム/水(重量比65/15/20)の水溶液を得た。この水溶液に再度実施例24に用いたポリマーを溶解させ、実施例24や25の紡糸実験を繰り返したが、ほぼ同じ紡糸性、延伸性であり、得られた繊維物性も変化はなかった。このことは、本発明に用いる溶剤は、回収性に優れることを示すものである。
実施例26と同様の方法で得た1500d/750fの繊維を下撚、上撚共に、390T/mで合撚し、生コードを得た。これに20%の樹脂量のRFLを付着させ、樹脂付着率が5重量%になるように130℃、225℃の乾燥機を通した。こうして得たタイヤコードを用いて、ラジアルタイヤを作成した。
こうして得たラジアルタイヤをアスファルト面に1tの乗用車が200km/hrで走行する場合と同じ接圧をかけながら、35℃のアスファルト面に接触させて200km/
hrの走行する場合と同じ回転をさせ、そのまま96時間の回転試験を行った。
96時間後、タイヤからタイヤコードを取り出し、強度保持率を測定した。実施例26のポリケトン繊維を用いた場合は、RFL処理後のタイヤコードと比較して強度低下は殆ど起こっていなかった。比較として、同様の実験を比較例1のポリケトン繊維を用いて同様実験を行ったが、実験後のタイヤコードの強度は約6%低下していた。
実施例26と同様の方法で得た1500d/750fの繊維を50mmの短繊維に切断した。この短繊維を2重量部、パルプ3重量部、ポルトランセメント57重量部、シリカ38重量部を混合した後、湿式抄造しオートクレーブ中120℃で成型してスレート板を作成した。こうして得られたスレート板は強度に優れ、断面を観察したところポリケトン繊維は均一に分散していた。スレート板から取り出したポリケトン繊維の溶液粘度を測定したところ、粘度の低下はみられなかった。しかしながら、比較として、同様の実験を比較例1のポリケトン繊維を用いて同様実験を行ったが、実験後のポリケトン繊維の粘度は約12%低下していた。オートクレーブ成型の段階で、粘度低下が起こったものと思われる。
実施例24のポリケトン繊維を下撚、上撚共に、390T/mで合撚し、生コードを得た。これにエポキシ樹脂を付着させ、樹脂付着率が5重量%になるように230℃の乾燥機を通した。こうして得た処理コードを定法に従って、上帆布、クロロプレンゴムからなる圧縮ゴム層及び下帆布の構成からなる長さ1016mmのB型コグ付きVベルトを作成した。このVベルトを2つのプーリー間に通し、2000rpmで24時間回転させた。実験後、ポリケトン繊維をVベルトから取り出し強度を測定したところ、エポキシ処理後の強度に対して殆ど強度低下は起こっていなかった。比較として、同様の実験を比較例1のポリケトン繊維を用いて同様実験を行ったが、実験後のポリケトン繊維の強度は約15%低下していた。
ビス(シクロオクタジエン)ニッケル(0)を0.33ミリモル、2−メルカプト安息香酸を0.33ミリモル、トルエンを2モル、オートクレーブに加え、一酸化炭素とエチレンを1:1モル含む混合ガスを充填し、5MPaで80℃、15時間重合を行った。得られたポリケトンは徹底的にアセトンで洗浄し、極限粘度4.2、ニッケル含有量12ppm、パラジウム、コバルトは実質含まないエチレン/一酸化炭素の交互コポリマー(E
CO)を得た。
このポリケトンに実施例24と同様に湿式紡糸を施した。得られた繊維は、ニッケルを10ppm、亜鉛を300ppm含み、強度10.2g/d、伸度4%を示した。
酢酸パラジウムの代わりに、酢酸コバルトを用いて参考例1、実施例24を繰り返した。得られたポリケトンは、極限粘度3.0、コバルト含有量41ppm、パラジウム、ニッケルは実質含まないエチレン/一酸化炭素の交互コポリマー(ECO)を得た。このポリケトンに実施例24と同様に湿式紡糸を施した。得られた繊維は、コバルトを57ppm、亜鉛を512ppm含み、強度7.2g/d、伸度4%を示した。
極限粘度6.0のエチレン/一酸化炭素の交互コポリマー(ECO)を100℃で撹拌しながら、25%の塩化亜鉛と40%の塩化カルシウムを含む水溶液に加えた。ポリマーは極めて容易に溶解し、ポリマー濃度3重量%の溶液を得た。得られた溶液は透明であった。得られた溶液を直ちに大量の水に落とし、フィブリル状のポリマーを回収した。回収したポリマーを徹底的に水で洗い、塩化亜鉛及び塩化カルシウムを完全に除去し、乾燥した。回収されたポリマーの色の変化はなく、ポリマーの赤外吸収スペクトル、NMRスペクトルを測定したところ、原料のポリマーに対し変化はなかった。このことは原料ポリマーが上記水溶液に分解することなく、完全溶解することを示すものである。
Claims (4)
- 繊維強化複合材料であって、下記(a)〜(d)を満足する、金属塩水溶液を溶剤とするポリケトン溶液から得られた繊維が使用されていることを特徴とする繊維強化複合材料。
(a)95重量%以上が一酸化炭素とエチレンの完全交互共重合体からなるポリケトンから構成されていること (b)単糸繊度が1〜4dであること
(c)ポリケトン繊維中のパラジウム、ニッケル及びコバルトからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素の含有量が合計で10ppm以下であること
(d)100Hzの動的粘弾性測定において、180℃の貯蔵粘弾性が80g/d以上であること - 繊維強化複合材料が、ポリケトン繊維を撚数100〜1000T/mで撚糸して得られたタイヤコードを含むタイヤであることを特徴とする請求項1記載の繊維強化複合材料。
- タイヤコードが、フェノール/ホルマリンラテックス樹脂の付着量が繊維重量に対して2〜7重量%になるようにフェノール/ホルマリンラテックス処理されていることを特徴とする請求項2記載の繊維強化複合材料。
- 繊維強化複合材料が、ポリケトン繊維を撚数100〜1000T/mで撚糸して得られたコードを含むベルトであることを特徴とする請求項1記載の繊維強化複合材料。
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