JP2005533144A - キナクリドン顔料を製造するための酸化法 - Google Patents

キナクリドン顔料を製造するための酸化法 Download PDF

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Abstract

本発明は、キナクリドンを調製するための、キナクリドン顔料に対応する6,13−ジヒドロキナクリドン塩を、触媒としての2,7−アントラキノンジスルホン酸の存在下で、酸化剤としての過酸化水素によって酸化させることによる方法に関する。本発明の方法は、経済的で環境にやさしく、高性能キナクリドン顔料を高い収率で製造する。

Description

本発明は、キナクリドン顔料を製造するための、対応する6,13−ジヒドロキナクリドンを、特定の触媒の存在下で、酸化剤として過酸化水素を使用して酸化させることによる方法に関する。
キナクリドン顔料は、その魅力的な赤及びマゼンタ色ならびに抜群の堅ろう性に関して知られている。当該技術では、対応する置換された6,13−ジヒドロキナクリドンを酸化させることによってキナクリドン顔料を製造することが周知である。
たとえば、多数の刊行物が、塩基及び少量の水を含有するアルコール性媒体中、芳香族ニトロ化合物を酸化剤として使用する、6,13−ジヒドロキナクリドンの対応するキナクリドンへの酸化を開示している。しかし、このような方法は、還元された芳香族副生成物が生成するために多量の有機廃棄物を産出する欠点を抱えている。
また、6,13−ジヒドロキナクリドンを、溶媒系及び/又は塩基性水溶液系中、酸素含有ガスによって酸化させる方法により、6,13−ジヒドロキナクリドンを対応するキナクリドンに酸化させることが公知である。このような方法は、空気が酸素含有ガスとして簡便に使用されるため、しばしば「空気酸化」と呼ばれる。空気酸化法は、多量のガスを不均質反応混合物に導入しなければならず、それによって気泡が発生するという欠点を抱えている。さらには、反応が完了した時点を判断することが困難である。
さらには、酸化剤として空気を利用して、極性溶媒、たとえばジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した6,13−ジヒドロキナクリドンを酸化させることが公知である。このような方法は、優れたキナクリドン顔料を高い収率で生成する利点を有する。しかし、酸化反応中にかなりの量の有機廃棄物、たとえばジメチルスルホンを副生成物として産出し、それが高価な溶媒再生系を要求するという欠点を抱えている。
GB−887,373は、アルカリ性溶液中の6,13−ジヒドロキナクリドンの酸化によるキナクリドンの製造方法であって、酸化剤としてアントラキノンスルホン酸を使用して酸化を実施する方法を開示している。特にアントラキノン−2,7−ジスルホン酸を酸化剤として特許請求しているが、6,13−ジヒドロキナクリドンに基づく多量のアントラキノン酸化剤が必要であるため、この方法は環境にやさしくない。さらには、存在する多量のアントラキノン化合物のせいで、このような最終生成物であるキナクリドンは、アントラキノン誘導体の残渣を含有し、それが移動するか、キナクリドンの色相を変化させることもある。
US−5,840,901は、非置換又は置換ジヒドロキナクリドンの塩が、塩基性液相中のスラリーとしてのキノン触媒の存在下で、高温で、酸化剤として過酸化水素を使用して容易に酸化されるということを開示している。このような方法は、出発原料を実質的に含まないキナクリドン生成物を高収率で得る利点を提供する。加えて、キナクリドン生成物の結晶変態が反応条件によって制御される。
酸化剤としての過酸化水素の使用は、それが経済的であり、周囲圧で高い酸化効率を有するという点でさらに有利である。これは、入手しやすく、たとえば有機ニトロ化合物酸化剤を用いる場合に当てはまるような、還元された有機副生成物を生成するということはない。さらには、キノン、たとえばアントラキノンスルホン酸は、触媒量でしか使用されない。
したがって、本発明は、選択された触媒化合物を使用して、経済的で環境にやさしい経路によって高性能キナクリドン顔料を高収率で製造するための改善された酸化法を記載する。
本発明は、式:
Figure 2005533144
(式中、X及びYは、互いに独立して、H、F、Cl、C1〜C3アルキル及びC1〜C3アルコキシからなる群より選択される)
のキナクリドンを、式:
Figure 2005533144
の対応する6,13−ジヒドロキナクリドンの塩の酸化によって製造する方法であって、対応する6,13−ジヒドロキナクリドン塩を、選択された触媒の存在下で、過酸化水素によって酸化させることを含む方法に関する。
一般に、式(II)の6,13−ジヒドロキナクリドンの塩は、一及び/又は二アルカリ金属塩もしくはそれらの混合物である。二アルカリ金属塩が好ましい。もっとも好ましいものは、二ナトリウム塩及び/又は二カリウム塩である。
6,13−ジヒドロキナクリドン塩は、たとえば、6,13−ジヒドロキナクリドンを、塩基性媒体、たとえば水とアルコールとの塩基性混合物中、30℃を超える温度、好ましくは40〜60℃、もっとも好ましくは50℃〜還流温度で、5分〜2.5時間、好ましくは20分〜1.5時間、撹拌することによって製造される。
一般に、酸化は、6,13−ジヒドロキナクリドン、触媒、塩基及び適切な液相から本質的になるスラリーを過酸化水素水溶液と合わせることによって得られる反応媒体中で実施される。
一般に、適切な液相は、酸化反応を促進するが、過酸化水素酸化剤と有意な程度には反応しない液状媒体である。
一般に、液相は、6,13−ジヒドロキナクリドン100重量部あたり、水20〜750重量部、好ましくは40〜600重量部及びアルコール50〜750重量部、好ましくは100〜600重量部を含有する、低級アルコールと水との混合物であり、部は重量部である。
低級アルコールは、たとえば、C1〜C6アルコール、たとえばメタノール、エタノール、エチレングリコール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、2−ブタノール又はtert−ブタノール、好都合にはC1〜C3アルカノール、好ましくはメタノールである。反応媒体は、好ましくは、他の有機溶媒を実質的に含まない。しかし、有機溶媒は、6,13−ジヒドロキナクリドン塩生成又は酸化反応を損なわない限り、反応媒体中で寛容される。
6,13−ジヒドロキナクリドンの塩を形成することができる塩基が反応媒体中で有用である。塩基は、好ましくはアルカリ金属水酸化物であり、もっとも好ましくは水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである。場合によっては、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとの混合物を使用することが有利である。
6,13−ジヒドロキナクリドンに対する塩基のモル比は、通常、6,13−ジヒドロキナクリドン1モルあたり塩基1〜7モルである。好ましくは、反応媒体は、6,13−ジヒドロキナクリドン1モルあたり塩基2.2〜5モルを含有する。
6,13−ジヒドロキナクリドン塩の生成は、6,13−ジヒドロキナクリドン塩の結晶の形成により、光学顕微鏡下で観察可能である。反応条件、塩基の種類及び/又は6,13−ジヒドロキナクリドン上の置換基に依存して、塩は一般に、針状物、柱状物、立方体又は小板の形態になる。
潜在的な副反応を避け、より制御可能な方法を得るため、酸化反応は、好ましくは、不活性気流、たとえば窒素気流の下で実施される。
最適化された方法では、酸化は、過酸化水素酸化剤の水溶液を、水性アルコールと塩基との塩基性混合物中の6,13−ジヒドロキナクリドンのスラリーと、5分〜6時間、好ましくは30分〜4時間かけて合わせ、続いて酸化を完了させ、顔料の再結晶化を促進するための期間、反応媒体を撹拌しながら高温(たとえば30℃〜約120℃、所望により加圧下)に維持することによって実施される。好ましくは、反応媒体を、過酸化水素の添加後、5分〜5時間、好ましくは5〜30分間、50℃を超える温度、好ましくは還流温度に維持する。その後、ろ過によって顔料を単離し、熱水又はアルコール、次いで熱水で洗浄し、乾燥させる。塩基及びアルコールは、ろ液から容易に再生することができる。
過酸化水素水溶液は、一般に、過酸化水素を1〜50重量%、好ましくは5〜30重量%、もっとも好ましくは10〜25重量%含有する。
過酸化水素による6,13−ジヒドロキナクリドン塩の対応するキナクリドンへの酸化は、反応混合物の変色によって視覚的にたどれる。
一般に、わずかに過剰の過酸化水素が使用される。6,13−ジヒドロキナクリドンに対する過酸化水素のモル比は、6,13−ジヒドロキナクリドン1モルあたり過酸化水素たとえば1.1〜5モル、好ましくは1.2〜3.5モルである。
酸化工程中の酸化促進量の触媒の存在は、より高いキナクリドン収率につながる。さらには、上記の酸化条件下の触媒の存在は、キナクリドンキノンを実質的に含まない、たとえばキナクリドンキノンを2.5重量%未満しか含有しないキナクリドン生成物を生じさせる。しかし、少量のキナクリドンキノンは、その存在が最終的なキナクリドン顔料の彩度を大きく落とさない限り、生成物中で容認される。
キノン触媒、たとえばアントラキノンスルホン酸誘導体は、本発明の反応条件下、6,13−ジヒドロキナクリドンの酸化を触媒する。驚くことに、酸化剤として過酸化水素を使用する好ましい反応媒体で使用される場合、このようなアントラキノンスルホン酸触媒の効力が非常に可変性になるということがわかった。さらには、このようなアントラキノンスルホン酸誘導体は、その化学構造に依存して、得られるキナクリドン顔料の望ましくない色相変化を招くであろう他の可溶性又は不溶性の有色反応生成物に転換するかもしれない。
本出願人らは、2,7−アントラキノンジスルホン酸及びその一又は二ナトリウム又はカリウム塩が特に有益な触媒であることを見いだした。したがって、本触媒は、式:
Figure 2005533144
(式中、各Zは、互いに独立して、H、Na又はKである)
の触媒である。
他の利用可能なアントラキノンジスルホン酸、たとえば2,6−、1,5−又は1,8−アントラキノンジスルホン酸に比べて、2,7−アントラキノンジスルホン酸は、本発明の酸化反応を驚くほど効率の高い方法で触媒する。さらには、2,7−アントラキノンジスルホン酸触媒及びその化学的に改質された酸化反応生成物の残渣は、キナクリドンのろ過及び洗浄工程ではるかに容易に除去される。したがって、2,7−アントラキノンジスルホン酸を触媒として使用することにより、得られるキナクリドン顔料は、高い純度及び高い彩度を示す。
2,7−アントラキノンジスルホン酸触媒は、反応媒体中、酸化反応を触媒するのに有効な量、たとえば6,13−ジヒドロキナクリドンの重量の0.005〜0.1倍、もっとも好ましくは6,13−ジヒドロキナクリドンの重量の0.01〜0.05倍の量で存在する。
本発明を特定の理論に限定するものではないが、2,7−アントラキノンジスルホン酸触媒は、6,13−ジヒドロキナクリドンを酸化させるように作用し、それ自体が、対応するロイコ化合物に還元され、その後過酸化水素によって再生されると考えられている。
6,13−ジヒドロキナクリドンの種類、酸化条件、触媒使用量ならびに特に塩基の種類及びその濃度に依存して、2,7−アントラキノンジスルホン酸を触媒として使用することによって最終顔料で検出される触媒残渣の量は、一般には1000ppm未満、普通は100ppm未満、それどころかHPLC分析法による測定では検出不可能な量である。
2,7−アントラキノンジスルホン酸は、工業用品質のものであることができる。したがって、他の化合物又は不純物、たとえば他のアントラキノン誘導体を、そのような副生成生物が酸化反応及び高純度かつ高彩度のキナクリドン顔料の生成に有意に影響しない限り、含有していてもよい。
液相の組成、再結晶化時間及び温度に依存して、透明で小さめの粒度又は不透明で大きめの粒度のキナクリドン顔料が生成される。より低い温度及びより短い時間は透明な生成物に有利であり、より高い温度及びより長い時間はより不透明な生成物に有利である。
一般に、反応混合物は、約50℃〜媒体の還流温度で、約5分〜約5時間、好ましくは5〜30分間撹拌して、酸化反応を完了させ、顔料の再結晶化を促進する。
さらには、6,13−ジヒドロキナクリドン塩の生成の前又は後で粒子成長抑制剤又は特定の結晶相配向剤を添加して、酸化キナクリドン顔料の粒度及び結晶相を制御することが有利である。解凝集剤又はレオロジー改善剤としても知られる粒子成長抑制剤は、周知である。適切な粒子成長抑制剤及び相配向剤は、たとえば、フタルイミドメチルキナクリドン、イミダゾリルメチルキナクリドン、ピラゾリルメチルキナクリドン、キナクリドンスルホン酸及びその塩、たとえばアルミニウム塩又は1,4−ジケト−3,6−ジフェニルピロロ[3,4−c]ピロールスルホン酸及びその塩ならびにそれぞれ引用例として本明細書に取り込むUS−6,225,472及びUS−6,264,733に記載されているジヒドロキナクリドン及びキナクリドン誘導体を含む。
最適な効果を達成するためには、粒子成長抑制剤は、酸化の前に、好ましくは6,13−ジヒドロキナクリドン塩の生成の前又は後で、6,13−ジヒドロキナクリドンに基づいて0.05〜8重量%、好ましくは0.1〜5重量%の量で加える。
本発明の方法は、キナクリドン、2,9−ジクロロキナクリドン、2,9−ジフルオロキナクリドン、4,11−ジクロロキナクリドン、4,11−ジフルオロキナクリドン、2,9−ジメチルキナクリドン及び2,9−ジメトキシキナクリドンの製造に特に有用である。
さらには、この方法はまた、1種以上のキナクリドン成分を含有する固溶体の製造にも適している。したがって、本発明の態様は、式(II)の6,13−ジヒドロキナクリドン2種以上を含有する混合物を本発明の方法によって同時酸化させてキナクリドン固溶体生成物を得る方法に関する。
本発明の方法は、キナクリドン/2,9−ジクロロキナクリドン、キナクリドン/4,11−ジクロロキナクリドン、キナクリドン/2,9−ジメチルキナクリドン、キナクリドン/2,9−ジメトキシキナクリドン、2,9−ジクロロキナクリドン/2,9−ジメチルキナクリドン、2,9−ジクロロキナクリドン/2,9−ジメトキシキナクリドン又は2,9−ジメチルキナクリドン/2,9−ジメトキシキナクリドン固溶体顔料の製造のために特に実施可能である。
好都合にも6,13−ジヒドロキナクリドン塩生成反応と酸化反応とは同じ容器の中で順次に実施されるため、実質的に取り扱い損失は起こらない。したがって、本発明の方法は、キナクリドン生成物を高い収率で提供する。
さらには、本発明の方法は、選択的に6,13−ジヒドロキナクリドンを対応するキナクリドンへと容易に酸化させる。最終生成物は通常、未反応の6,13−ジヒドロキナクリドンを2.5%未満、過度に酸化したキナクリドンキノンを2.0%未満しか含有しない。通常、ジヒドロキナクリドンの少なくとも96%、通常は97.5%以上が対応するキナクリドンに転換される。
酸化は不均質反応媒体中で実施されるが、本発明の方法は、狭い粒度分布のキナクリドン顔料を提供する。したがって、高い純度及び望ましい狭い粒度分布のために、得られるキナクリドン顔料は、抜群の顔料特性、たとえば高い彩度を明らかに示す。
本発明の方法は、非置換又は置換キナクリドンの特定の結晶変態、たとえば非置換キナクリドンのα形、β形又はγ形、2,9−ジメチルキナクリドンのβ形ならびに2,9−ジクロロキナクリドンのα形及び/又はγ形の製造に特に適している。
使用される反応条件、たとえば塩基の種類及び濃度、液相の組成ならびに酸化工程中に存在することがある粒子成長抑制剤の種類及び濃度に依存して、キナクリドン生成物の種々の結晶形が生成される。さらには、キナクリドン生成物の結晶変態は、所望の結晶変態を有するキナクリドン顔料の種晶を約1〜10%添加することによって制御される。種晶は、好ましくは酸化の前に、もっとも好ましくは塩形成の前に添加する。
最終使用に依存して、テキスチャー改善剤及び/又はレオロジー改善剤を、たとえば顔料の単離の前に、好ましくは水性プレスケークへの配合によって添加することが有利であることがある。適切なテキスチャー改善剤は、特に、炭素原子12個超の脂肪酸、たとえばステアリン酸もしくはベヘン酸又はそれらのアミドもしくは金属塩、好ましくはカルシウムもしくはマグネシウム塩及び可塑剤、ロウ、樹脂酸、たとえばアビエチン酸もしくはその金属塩、コロホニウム、アルキルフェノール又は脂肪族アルコール、たとえばステアリルアルコールもしくはビシナルジオール、たとえばドデカンジオール−1,2ならびに変性コロホニウム/マレイン酸樹脂もしくはフマル酸/コロホニウム樹脂又はポリマー分散剤である。テキスチャー改善剤は、最終生成物に基づいて好ましくは0.1〜30重量%、もっとも好ましくは2〜15重量%の量で加える。
適切なレオロジー改善剤は、たとえば、最終生成物に基づいて好ましくは2〜10重量%、もっとも好ましくは3〜8重量%の量で加えられる上述の解凝集剤である。
本発明のキナクリドン及びキナクリドン固溶体顔料は、無機又は有機基材の着色料として適している。これらは、キャスト品又は成形品へと加工することができる、又はインク及び塗料、たとえば溶液型塗料もしくは水性塗料、たとえば自動車用塗料に使用される高分子量材料を着色するのに非常に適している。
適切な高分子量有機材料は、単独で又は混合物として、熱可塑性材料、熱硬化性プラスチック又はエラストマー、たとえばセルロースエーテル、セルロースエステル、たとえばエチルセルロース;直鎖状又は架橋ポリウレタン;直鎖状、架橋又は不飽和ポリエステル;ポリカーボネート;ポリオレフィン、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン又はポリ−4−メチルペント−1−エン;ポリスチレン;ポリスルホン;ポリアミド;ポリシクロアミド;ポリイミド;ポリエーテル;ポリエーテルケトン、たとえばポリフェニレンオキシド;及びポリ−p−キシレン;ポリハロゲン化ビニル、たとえばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン又はポリテトラフルオロエチレン;アクリル酸ポリマー、たとえばポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル又はポリアクリロニトリル;ゴム;シリコーンポリマー;フェノール/ホルムアルデヒド樹脂;メラミン/ホルムアルデヒド樹脂;尿素/ホルムアルデヒド樹脂;エポキシ樹脂;スチレンブタジエンゴム;アクリロニトリルブタジエンゴム又はクロロプレンゴムを含む。
一般に、顔料は、着色される高分子量有機材料の重量に基づいてたとえば0.01〜30重量%、好ましくは0.1〜10重量%の有効着色量で使用される。したがって、本発明はまた、プラスチック材料と、本発明の方法にしたがって製造された顔料又は顔料固溶体の有効着色量とを含む着色されたプラスチック組成物及び着色されたプラスチック組成物を製造する方法に関する。
本発明の顔料は易分散性であり、有機マトリックスに容易に配合されて、高い彩度ならびに優れた耐光及び耐候堅ろう性を有する均質な着色を提供することができる。
高分子量有機材料は、本発明の顔料を用いて、ロールミル又は混合もしくは粉砕装置をはじめとする高剪断技術を使用して、望むならばマスタバッチの形態で、顔料を基材に混入することによって着色される。そして、着色された材料を、公知の方法、たとえば圧延、プレス加工、押出し、はけ塗り、キャスト又は射出成形によって所望の最終形態にする。
以下の例が本発明の実施態様をさらに記載する。これらの例では、断りない限り、部はすべて重量部である。X線回折図は、RIGAKU GEIGERFLEX回折計タイプD/Maxll v BXで計測した。
例1
温度計、撹拌機及び凝縮器を備えた1リットル容のフラスコに、2,9−ジクロロ−6,13−ジヒドロキナクリドン45g、メタノール280ml及び45%水酸化カリウム水溶液136.8gを注入した。この混合物を、窒素の低速流の下に、還流温度で1時間撹拌して、2,9−ジクロロ−6,13−ジヒドロキナクリドン二カリウム塩を生成した。ナトリウム2,7−アントラキノン−ジスルホネート1.4gを加えた。次いで、16.9%過酸化水素水溶液67.6gを、窒素の低速流の下に、還流状態を維持しながら毎分0.3mlの速度で添加した。得られた青みを帯びた赤色の懸濁液を冷水100mlで希釈し、5分間撹拌して、ろ過した。プレスケークをメタノールで洗浄し、続いて熱水で洗浄したのち、乾燥させると、マゼンタ色の顔料が得られた。
この生成物は、分光測光法による測定で97.4%の2,9−ジクロロキナクリドン純度を示し、2,9−ジクロロ−6,13−ジヒドロキナクリドンは1.7%しか残っていなかった。HPLC分析は、2,9−ジクロロキナクリドン顔料に100ppm未満の触媒残渣を示した。
2,9−ジクロロキナクリドン顔料は、以下のX線回折図によって特徴づけられる、主にγ結晶形のX線回折図を示した。
Figure 2005533144
例2〜5
ナトリウム2,7−アントラキノン−ジスルホネートの代りに他のアントラキノンスルホン酸誘導体を触媒として使用した以外は、上記手順を繰り返した。以下の表は、触媒の種類、その供給元を示し、例1〜5で得られる単離された2,9−ジクロロキナクリドンの純度を比較したものである。
Figure 2005533144
例1の2,7−アントラキノンジスルホン酸二ナトリウム塩(2,7−AQDS)は、少量の2,9−ジクロロ−6,13−ジヒドロキナクリドン(Cl2DQA)及び2,9−ジクロロキナクリドンキノン(Cl2QAQ)とともに2,9−ジクロロキナクリドン(Cl2QA)の高い収率を示し、HPLC計測によると、単離・乾燥させた最終生成物に触媒残渣(触媒及び触媒反応生成物)はごくわずかしか検出されなかった。
例2の公知の触媒アントラキノン−2−スルホン酸ナトリウム塩(2−AQS)もまた、2,9−ジクロロキナクリドンを高収率で生成したが、不都合なことに、単離された2,9−ジクロロキナクリドン最終生成物は、酸化反応中に生成された不溶性の黄色のアントラキノン化合物、主に2−メトキシアントラキノンを痕跡量で含有していた。
予想外にも、スルホン酸を2,6−、1,8−又は1,5−位置に有する、それぞれ二ナトリウム塩である残りのアントラキノンジスルホン酸(例3〜5)は、はるかに低い2,9−ジクロロキナクリドン収率を示し、このような反応条件下では触媒効果が低かった。
例6
温度計、撹拌機及び凝縮器を備えた1リットル容のフラスコに、6,13−ジヒドロキナクリドン50g、メタノール250ml、水36ml、結晶相配向剤かつ粒度縮小剤としてのフタルイミドメチルキナクリドン0.6g及び50%水酸化ナトリウム水溶液75gを注入した。この混合物を、窒素の低速流の下に、還流温度で1時間撹拌して、対応する6,13−ジヒドロキナクリドン二ナトリウム塩を生成した。2,7−アントラキノンジスルホン酸1.2gを添加し、得られた混合物を還流状態で10分間さらに撹拌した。その後、17%過酸化水素水溶液91.4gを、窒素の低速流の下に、還流温度を維持しながら毎分0.3mlの速度で添加した。得られた鮮やかな赤色の懸濁液を冷水100mlで希釈し、5分間撹拌したのち、50〜60℃でろ過した。プレスケークを熱水で洗浄したのち乾燥させると、HPLCによって分析した場合に触媒残渣100ppm未満を示す、高彩度な赤色のγ−キナクリドン顔料が得られた。
例7
ポリ塩化ビニル63.0g、エポキシ化大豆油3.0g、バリウム/カドミウム熱安定化剤2.0g、フタル酸ジオクチル32.0g及び例6にしたがって調製したγキナクリドン1.0gを、ガラスビーカー中、撹拌棒を使用して混合した。この混合物を、実験室用2本ロール式圧延機で、160℃の温度、25rpmのローラ速度及び1:1.2の摩擦で8分間転動させ、一定に折り、取り出し、送ることにより、厚さ約0.4mmの軟質PVCシートに成形した。得られた軟質PVCシートは、魅力的な赤の色合いに着色され、熱、光及び移染に対する優れた堅ろう性を有するものであった。
例8
例1にしたがって調製したマゼンタ2,9−ジクロロキナクリドン顔料5.0g、ヒンダードアミン光安定化剤2.5g、ベンゾトリアゾールUV吸収剤1.0g、ヒンダードフェノール酸化防止剤1.0g及びホスファイトプロセス安定化剤1.0gを、高密度ポリエチレン1000gとともに溶融後30秒間175〜200rpmの速度で混合した。溶融し、着色された樹脂を、暖かく展性であるうちに裁断したのち、造粒機に通した。得られた顆粒を、射出成形機で、5分のドエル時間及び30秒のサイクル時間で、260℃の温度で成形した。鮮やかなマゼンタ色を示し、優れた光安定性を有する均質に着色されたチップが得られた。
例9
2,9−ジクロロキナクリドンの代りに例6にしたがって得られた赤色キナクリドン顔料を使用した以外は例8の手順を繰り返して、優れた光安定性を有する鮮やかな赤に着色されたチップを得た。
例10
例1にしたがって調製した2,9−ジクロロキナクリドン顔料6.0g、ヒンダードアミン光安定化剤9.0g、ベンゾトリアゾールUV吸収剤3.0g及びヒンダードフェノール酸化防止剤3.0gをABS樹脂1200gとともに溶融後30秒間175〜200rpmの速度で混合した。溶融し、着色された樹脂を、暖かく展性であるうちに裁断したのち、造粒機に通した。得られた顆粒を、射出成形機で、7分のドエル時間及び42秒のサイクル時間で、232℃(華氏450度)及び288℃(華氏550度)の温度で成形した。各温度工程それぞれで同様なマゼンタの色合いを示す均質に着色されたチップが得られた。
例11(自動車用塗料の調製)
ミルベース配合物
1パイント容のジャーにアクリル樹脂66g、AB分散剤14.5g及び溶媒(American ChemicalのSOLVESSO(登録商標)100)58.1gを注入した。例6にしたがって得られたキナクリドン顔料26.4g及び直径4mmの鋼ダイアゴナルロッド980gを添加した。この混合物を、ジャーの中、ローラミル上で64時間かけて磨砕した。このミルベースは顔料16.0%を含有し、顔料/バインダの比が0.5であり、全不揮発性成分含有率が48.0%であった。
上色
上記ミルベース47.3g、メラミン樹脂触媒、非水分散樹脂及びUV吸収剤を含有する透明なソリッド着色剤溶液36.4g、ならびにポリエステルウレタン樹脂を含有するバランスの透明なソリッド着色剤溶液16.3gを混合し、キシレン76部、ブタノール21部及びメタノール3部を含有する溶媒混合物で、#2Fisher Cupによって計測して20〜22秒の吹付け粘度まで希釈した。
赤色の樹脂/顔料分散系を下塗りとして1.5分間隔で2回、パネルに吹き付けた。2分後、透明塗料樹脂を1.5分間隔で2回、下塗りに吹き付けた。そして、吹付け塗装されたパネルをフラッシュキャビネット中、空気で10分間フラッシュしたのち、オーブン中、129℃(華氏265度)で30分間「焼付け」すると、優れた耐候性を有する高彩度の赤く着色されたパネルが得られた。
例12
ポリプロピレン顆粒(Chemie LinzのDAPLEN PT-55(登録商標))1000g及び例1で得られた2,9−ジクロロキナクリドン顔料10gを混合ドラムの中で徹底的に混合した。このようにして得られた顆粒を260〜285℃で溶融紡糸して、優れた耐光堅ろう性及び紡織繊維性を有するマゼンタ色のフィラメントにした。
上記の実施態様に加えて、これらの実施態様の多様な変形を本発明にしたがって構成することができる。

Claims (16)

  1. 式:
    Figure 2005533144

    のキナクリドンを製造する方法であって、式:
    Figure 2005533144

    の6,13−ジヒドロキナクリドンの塩を、式:
    Figure 2005533144

    (式中、X及びYは、互いに独立して、H、F、Cl、C1〜C3アルキル及びC1〜C3アルコキシからなる群より選択され、各Zは、互いに独立して、H、Na又はKである)
    の触媒の存在下で、過酸化水素によって酸化させることを含む方法。
  2. 6,13−ジヒドロキナクリドン塩が、アルカリ金属塩、好ましくは一もしくは二ナトリウム塩又は一もしくは二カリウム塩又はそれらの混合物、もっとも好ましくは二ナトリウム塩又は二カリウム塩である、請求項1記載の方法。
  3. 6,13−ジヒドロキナクリドン塩、触媒、塩基及び液相から本質的になるスラリーを、過酸化水素水溶液と合わせることによって酸化工程を実施する、請求項1記載の方法。
  4. 液相が、6,13−ジヒドロキナクリドン100重量部あたり、水20〜750重量部及び低級アルコール50〜750重量部、好ましくは水40〜600重量部及び低級アルコール100〜600重量部から本質的になる、請求項3記載の方法。
  5. アルコールがC1〜C3アルコール、好ましくはメタノールである、請求項4記載の方法。
  6. 塩基が、6,13−ジヒドロキナクリドン1モルあたり、1〜7モル、好ましくは2.2〜5モルの量で存在するアルカリ金属水酸化物である、請求項3記載の方法。
  7. アルカリ金属水酸化物が、水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウム又はそれらの混合物である、請求項6記載の方法。
  8. 2,7−アントラキノンジスルホン酸触媒が、アルカリ金属塩、好ましくは一もしくは二ナトリウム塩又は一もしくは二カリウム塩又はそれらの混合物である、請求項1記載の方法。
  9. 触媒が、6,13−ジヒドロキナクリドンの重量の0.005〜0.1倍の量で存在する、請求項1〜8のいずれか記載の方法。
  10. 過酸化水素の1〜50重量%水溶液、好ましくは過酸化水素の5〜30重量%水溶液を使用する、請求項1〜9のいずれか記載の方法。
  11. 6,13−ジヒドロキナクリドン1モルあたり、過酸化水素1.1〜5モルを使用する、請求項1〜10のいずれか記載の方法。
  12. 過酸化水素水溶液を、5分〜6時間かけて30℃以上の温度でスラリーに添加し、続いて反応媒体を撹拌しながら30℃以上、好ましくは50℃〜還流温度で、5分〜5時間、好ましくは5〜30分間維持して、酸化を完了させ、顔料の再結晶化を促進する、請求項3記載の方法。
  13. 酸化工程を、6,13−ジヒドロキナクリドンに基づいて0.05〜8重量%の粒子成長抑制剤、好ましくはフタルイミドメチル−、イミダゾリルメチル−及びピラゾリルメチル−キナクリドン、フタルイミドメチル−及びo−ベンゾスルフイミドメチル−6,13−ジヒドロキナクリドンならびにキナクリドンモノスルホン酸及び1,4−ジケト−3,6−ジアリールピロロ[3,4−c]ピロールスルホン酸ならびにそれらの塩からなる群より選択される粒子成長抑制剤の存在下で実施する、請求項1〜12のいずれか記載の方法。
  14. キナクリドン顔料が、キナクリドン、2,9−ジクロロキナクリドン、2,9−ジフルオロキナクリドン、4,11−ジクロロキナクリドン、4,11−ジフルオロキナクリドン、2,9−ジメチルキナクリドン、2,9−ジメトキシキナクリドン、又はキナクリドン/2,9−ジクロロキナクリドン、キナクリドン/4,11−ジクロロキナクリドン、キナクリドン/2,9−ジメチルキナクリドン、キナクリドン/2,9−ジメトキシキナクリドン、2,9−ジクロロキナクリドン/2,9−ジメチルキナクリドン、2,9−ジクロロキナクリドン/2,9−ジメトキシキナクリドン及び2,9−ジメチルキナクリドン/2,9−ジメトキシキナクリドン固溶体からなる群より選択されることが好ましいキナクリドン顔料固溶体である、請求項1〜13のいずれか記載の方法。
  15. キナクリドン顔料が、非置換キナクリドンのα形、β形又はγ形(特にγ−I、γ−II又はγ−III)である、請求項14記載の方法。
  16. ジヒドロキナクリドンの少なくとも96%が対応するキナクリドンに転換される、請求項1〜15のいずれか記載の方法。
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