JP2005522445A - 注意欠陥過活動性障害(ad/hd)の処置方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、効果的な量の抗AD/HD化合物またはそれの薬学的に受容可能な塩の投与を含む、動物の被験体における注意欠陥過活動性障害(AD/HD)および関連するチック障害の処置方法を提供する。本発明において有用な抗AD/HD化合物は、抗AD/HD特性および抗チック特性によって特徴づけられ、少なくとも2つの異なる薬理学的活性を示す。特に、AD/HDおよびチックと精神障害の合併障害を処置するためのミルナシプランの使用が開示されている。
Description
(発明の分野)
本発明は、注意欠陥過活動性障害(AD/HD)の処置方法に関する。特に、チック障害を合併しているAD/HD患者が、抗AD/HD特性および抗チック特性の双方を示す化合物で処置される。本発明で使用される化合物は、同じ分子においてこれら2つの特性を示し、少なくとも2つの異なる薬理学的活性によって特徴づけられる。
本発明は、注意欠陥過活動性障害(AD/HD)の処置方法に関する。特に、チック障害を合併しているAD/HD患者が、抗AD/HD特性および抗チック特性の双方を示す化合物で処置される。本発明で使用される化合物は、同じ分子においてこれら2つの特性を示し、少なくとも2つの異なる薬理学的活性によって特徴づけられる。
(発明の背景)
注意欠陥過活動性障害(AD/HD)は、子供においてもっともよく現れる精神障害であり、学齢期の子供における有病率は、約3〜7%と見積もられる。該障害は少女よりも少年によく現れ、しばしば時の経過と共に改善する。しかし、相当数の大人も同様に罹患する。
注意欠陥過活動性障害(AD/HD)は、子供においてもっともよく現れる精神障害であり、学齢期の子供における有病率は、約3〜7%と見積もられる。該障害は少女よりも少年によく現れ、しばしば時の経過と共に改善する。しかし、相当数の大人も同様に罹患する。
AD/HDは、特に、注意、持続性、およびコントロールに関わる中脳辺縁系および皮質領域におけるドーパミン伝達の欠陥によって引き起こされると広く考えられている。神経画像処理の研究においても、皮質または辺縁系領域における構造上および機能上の変化がAD/HDの病態生理の一因となっていることが示されている。
それ故に、AD/HD処置の戦略は、主として、脳内のドーパミン量を増加させることに関する。最も広く使用される薬物には、メチルフェニデート(リタリン、コンセルタ(Concerta))、デキストロアンフェタミンならびにアンフェタミン塩(デキセドリン、アデラル(Adderall)、アテンドエイド(Attendaid))、およびペモリン(サイラート(Cylert))が含まれる。これらの薬物はすべて、ドーパミントランスポーターをブロックすること、および/またはシナプス前末端からドーパミンを放出することによる、シナプス内のドーパミンの増加によって作用する。
2つ目の処置戦略は、ノルアドレナリン作動性システムに作用する薬物を利用する。このような2つの薬物、すなわちクロニジン(カタプレス)およびグアンファシン(テネックス(Tenex))は、α2アドレナリン作用性レセプターのアゴニストであり、該レセプターは、ノルエピネフリン(NE)の認知効果に関わると考えられる。
ドーパミンとNE媒介性の神経伝達との両方を増加させると考えられているビュープロピオン、ならびにセロトニンおよびノルエピネフリンの再取り込みをブロックするベンラファキシン(イフェクソール(Effexor))など他の薬剤も使用されてきた(Adlerら,1995,Psychopharmacol Bull.,31:785−8およびOleveraら,1996,J Child Adolesc psychopharmacol,6:241−50)。
全ての患者において、ドーパミン刺激薬物によって生み出される注意に対するポジティブな効果は観察されるわけではない。加えて、これら薬物は、幾人かの患者において深刻な副作用を生み出す。例えば、これら薬物は、不眠および食欲減退を引き起こし得るので、摂食障害の病歴を有する患者には使用してはならない。また、これらの薬物を服用した患者は、一日の終わりに、血中濃度が下がったときに禁断症状またはリバウンド反応を経験し得る。さらに、これらの薬物は乱用され得るので、不正薬物の使用歴がある患者には代表的に使用されない。
ドーパミン刺激薬物の使用は、チック障害を付随するAD/HD患者、またはチック障害が発達する危険のある患者において非常に論議の的である。これらの薬物によって引き起こされるドーパミンの増加は、注意および多活動の症状において効能を生み出す。しかし、増加されたドーパミンはまた、チックの病態生理の一因になることが知られている。従って、増加されたドーパミンは、既存のチック障害を悪化させ得るか、または以前にはいかなるチック障害の症状も示していなかった患者においてチックの発症を引き起こし得る。
ノルアドレナリン作動性系に作用する薬物が、ドーパミン刺激薬物に比較してより良い副作用特徴を有し、チック障害に対して有効であっても、このクラスの薬物は、AD/HD患者の注意および/または多活動の症状を改善させるのに、特に有効ではない。
現在のAD/HD処置における別の欠点は、精神障害の処置には特に有効ではないことである。しばしば、AD/HD患者は精神障害との合併症と診断される。これらの患者において、現在の治療法には、合併精神障害を処置するために抗うつ剤がしばしば補足される。患者の処置レジメンに別の治療剤を追加することは、副作用が進展する危険性を増大させ、患者の服薬遵守を減少させる。
先にあげた理由により、AD/HD患者、そして特に、関連する精神障害およびチック障害に苦しむ患者を処置するための、より効果的な薬剤が求められている。理想的な薬剤は、潜在的な障害を処置し、そして/または、AD/HDならびに合併する精神障害およびチック障害に関連する症状を緩和し、経口的に投与されても非経口的に投与されても満足に作用し、副作用が最小であるか、またはまったくない。
(発明の要旨)
一つの局面において、本発明は、ヒトを含む動物の被験体における、注意欠陥過活動性障害(AD/HD)および必要に応じて、AD/HDに関連するチック障害の処置方法を提供する。該方法は、一般的に、AD/HDおよび合併するチック障害に苦しむ動物の被験体に対し、効果的な量の抗AD/HD化合物またはそれの薬学的に受容可能な塩を投与することを含む。本発明において有用な抗AD/HD化合物は、抗AD/HD特性および抗チック特性によって特徴づけられ、少なくとも2つの異なる薬理学的活性を示す。
一つの局面において、本発明は、ヒトを含む動物の被験体における、注意欠陥過活動性障害(AD/HD)および必要に応じて、AD/HDに関連するチック障害の処置方法を提供する。該方法は、一般的に、AD/HDおよび合併するチック障害に苦しむ動物の被験体に対し、効果的な量の抗AD/HD化合物またはそれの薬学的に受容可能な塩を投与することを含む。本発明において有用な抗AD/HD化合物は、抗AD/HD特性および抗チック特性によって特徴づけられ、少なくとも2つの異なる薬理学的活性を示す。
本発明はまた、注意欠陥過活動性障害(AD/HD)および必要に応じてAD/HDと関連するチック障害を処置する方法を提供し、これは、AD/HDおよび必要に応じて合併するチック障害に苦しむ動物の被験体に対し、効果的な量の抗AD/HD(≠DA、NE)化合物またはそれの薬学的に受容可能な塩を投与することを含む。本発明において有用な抗AD/HD(≠DA、NE)化合物は、抗AD/HD特性および抗チック特性、少なくとも2つの異なる薬理学的活性、同じ分子内におけるドーパミンおよびノルエピネフリン双方の刺激活性の不足、によって特徴づけられる。
本発明における別の局面は、注意欠陥過活動性障害(AD/HD)および必要に応じてAD/HDと関連するチック障害を処置する方法を提供し、これは、AD/HDおよび必要に応じて合併するチック障害に苦しむ動物の被験体に対し、効果的な量のミルナシプランまたはそれの薬学的に受容可能な塩を投与することを含む。
さらに別の局面において、本発明は、1つ以上の上記方法に従った該化合物の使用方法を教示する指示書と共にパッケージされた、本発明において有用な化合物を含むキットを提供する。該キットは、単位投薬形態でパッケージされた化合物を含んでよい。1つの実施形態において、ミルナシプランまたはそれの薬学的に受容可能な塩がキット内に含まれる。
(好ましい実施形態の詳細な説明)
略語
AD/HD 注意欠陥過活動性障害
AMPA α−アミノ−3−ヒドロキシ−5−メチルイソオキサゾール−4−プロピオン酸
GABA γ−アミノ酪酸
5−HT セロトニン
NE ノルエピネフリン
NMDA N−メチル D−アスパラギン酸
SNRI デュアルセロトニンノルエピネフリン再取り込み阻害剤
「安定した化合物」および「安定した構造」は、反応混合物から有用な程度の純度への分離、および有効な治療剤への処方を生き残るのに十分に頑丈な化合物を示すことを意味する。安定した化合物のみが、本発明によって予期される。
略語
AD/HD 注意欠陥過活動性障害
AMPA α−アミノ−3−ヒドロキシ−5−メチルイソオキサゾール−4−プロピオン酸
GABA γ−アミノ酪酸
5−HT セロトニン
NE ノルエピネフリン
NMDA N−メチル D−アスパラギン酸
SNRI デュアルセロトニンノルエピネフリン再取り込み阻害剤
「安定した化合物」および「安定した構造」は、反応混合物から有用な程度の純度への分離、および有効な治療剤への処方を生き残るのに十分に頑丈な化合物を示すことを意味する。安定した化合物のみが、本発明によって予期される。
「置換された」とは、「置換された」を使用する表現で示された原子上の1つ以上の水素が、示された原子の通常の原子価を超えない場合に、および、置換の結果安定した化合物になる場合に、示された基からの選択により置換されることを示すことが意図される。好適な示された基には、例えば、アルキル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環、シクロアルキル、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、カルボキシ、カルボキシアルキル、ケト、チオキソ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、およびシアノが含まれる。置換基がケト(すなわち=O)またはチオキソ(すなわち=S)の基である場合は、原子上の2つの水素が置換される。
「治療上効果的な量」とは、例えば認知機能障害を処置または予防するため、あるいは宿主における認知機能障害の症状を処置するために、本発明において有用な化合物の量、または、特許請求された化合物の組み合わせの量を含むことを示す。該化合物の組み合わせは、好ましくは相乗的な組み合わせである。相乗効果は、例えばChouおよびTalalay,Adv.Enzyme Regul.22:27−55(1984)によって記載されているように、組み合わせて投与された場合の化合物の効果(この場合、認知機能障害の処置または予防)が、単一の薬剤として独立して投与された場合の化合物の相加効果よりも大きい場合に生じる。一般的に、相乗効果は、化合物の最適未満の濃度において最も明白に示される。相乗効果は、独立した成分と比較して、より低い細胞傷害性、増加した活性、または組み合わせによる他の何らかの有益な効果の点からみることができる。
用語「アルキル」は、モノラジカルの分枝したかまたは分岐していない、飽和の炭化水素鎖をいい、好ましくは1〜40個の炭素原子、より好ましくは1〜10個の炭素原子、さらに好ましくは1〜6個の炭素原子を有する。この用語は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、n−ヘキシル、n−デシル、テトラデシルなどの基によって例示される。
アルキルは、1つ以上のアルコキシ、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環、シクロアルキル、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、カルボキシ、カルボキシアルキル、ケト、チオキソ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、およびシアノで必要に応じて置換され得る。
用語「アルキレン」は、ジラジカルの、分枝したか、または枝分かれしていない、飽和した炭化水素鎖をいい、好ましくは1〜40の炭素原子、より好ましくは1〜10の炭素原子、さらに好ましくは1〜6の炭素原子を有する。この用語は、メチレン、エチレン、n−プロピレン、イソプロピレン、n−ブチレン、イソブチレン、第2ブチレン、n−ヘキシレン、n−デシレン、テトラデシレンなどの基によって例示される。
アルキレンは、1つ以上のアルコキシ、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環、シクロアルキル、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、カルボキシ、カルボキシアルキル、ケト、チオキソ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、およびシアノで必要に応じて置換され得る。
用語「アルコキシ」は、アルキル−O−の基をいい、ここでアルキルは、本明細書中で定義される。好ましいアルコキシ基は、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、第3ブトキシ、第2ブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキソキシ、1,2−ジメチルブトキシなどを含む。
アルコキシは、1つ以上のアルキル、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環、シクロアルキル、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、カルボキシ、カルボキシアルキル、ケト、チオキソ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、およびシアノで必要に応じて置換され得る。
用語「アリール」は、単一環(例えばフェニルなど)または複数の縮合(condensed)(縮合(fused))環を有する、6〜20の炭素原子の不飽和の芳香族炭素環式基をいい、その中で、少なくとも1つの環が芳香族である(例えばナフチル、ジヒドロフェナントレニル、フルオレニル、またはアントリル)。好ましいアリールは、フェニル、ナフチルなどを含む。
アリールは、1つ以上のアルキル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、ヘテロアリール、複素環、シクロアルキル、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、カルボキシ、カルボキシアルキル、ケト、チオキソ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、およびシアノで必要に応じて置換され得る。
用語「シクロアルキル」は、単一の環式環または複数の縮合環を有する、3〜20の炭素原子の環式アルキル基をいう。このようなシクロアルキル基は、例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチルなどの単環構造、または、アダマンタニルなどの多環構造を含む。
シクロアルキルは、1つ以上のアルキル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、カルボキシ、カルボキシアルキル、ケト、チオキソ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、およびシアノで必要に応じて置換され得る。
用語「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードをいう。同様に、用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素をいう。
「ハロアルキル」は、本明細書に定義されるような1〜4のハロ基によって置換される、本明細書に定義されるとおりのアルキルをいい、このハロ基は、同じであっても異なってもよい。代表的なハロアルキル基は、例として、トリフルオロメチル、3−フルオロドデシル、12,12,12−トリフルオロドデシル、2−ブロモオクチル、3−ブロモ−6−クロロヘプチルなどを含む。
用語「ヘテロアリール」は、1つ、2つ、または3つの芳香環を含み、1つの芳香環において、少なくとも1つの窒素、酸素、またはイオウ原子を含む、単環式、二環式、または三環式の環系として本明細書に定義され、これは、非置換であり得るか、または、例えば、ハロ、アルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、ハロアルキル、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、およびアルキルスルホニルなどの、1つ以上、特に1〜3つの置換基で、置換され得る。ヘテロアリール基の例は、2H−ピロリル、3H−インドリル、4H−キノリジニル、4nH−カルバゾリル、アクリジニル、ベンゾ[b]チエニル、ベンゾチアゾリル、β−カルボニリル、カルバゾリル、クロメニル、シンナオリニル(cinnaolinyl)、ジベンゾ[b,d]フラニル、フラザニル、フリル、イミダゾリル、イミジゾリル、インダゾリル、インドリシニル(indolisinyl)、インドリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ナフチリジニル、ナフト[2,3−b]、オキサゾリル、ペリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナルザジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピリミジニル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、およびキサンテニルを含むが、これに限定されない。1つの実施形態において、用語「ヘテロアリール」は、炭素ならびに過酸化物でない酸素、イオウ、およびN(Z)の群から独立して選択される1,2,3、または4つのヘテロ原子を含む5または6つの環原子を含む単環式の芳香族環を示し、その中において、Zは存在しないか、またはH、O、アルキル、フェニル、またはベンジルである。別の実施形態において、ヘテロアリールは、そこから誘導された約8〜10つの環原子の、オルト縮合した二環式の複素環であり、特に、ベンゾ誘導体、またはプロピレンもしくはテトラメチレンジラジカルをヘテロアリールに縮合させることによって誘導したものを示す。
ヘテロアリールは、1つ以上のアルキル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アリール、複素環、シクロアルキル、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、カルボキシ、カルボキシアルキル、ケト、チオキソ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、およびシアノで必要に応じて置換され得る。
用語「複素環」は、酸素、窒素、およびイオウの群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含み、アルキルまたはC(=O)ORbと必要に応じて置換される、飽和した、または部分的に不飽和の環系をいい、その中において、Rbは水素またはアルキルである。代表的に、複素環は、酸素、窒素およびイオウの群から選択される1つ以上のヘテロ原子を含む単環式、二環式、または三環式の基である。複素環の基はまた、該環に結合するオキソ基(=O)を含んでいてよい。複素環の基の限定されない例としては、1,3−ジヒドロベンゾフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、1,4−ジチアン、2H−ピラン、2−ピラゾリン、4H−ピラン、クロマニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、インドリニル、イソクロマニル、イソインドリニル、モルホリン、ピペラジニル、ピペリジン、ピペリジル、ピラゾリジン、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピロリジン、ピロリン、キヌクリジン、およびチオモルホリンが含まれる。
複素環は、1つ以上のアルキル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、カルボキシ、カルボキシアルキル、ケト、チオキソ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、およびシアノで必要に応じて置換され得る。
窒素複素環および窒素ヘテロアリールの例には、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチルピリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、イソチアゾール、フェナジン、イソオキサゾール、フェノキサジン、フェノチアジン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドリン、モルホリノ、ピペリジニル、テトラヒドロフラニルなど、およびN−アルコキシ−窒素を含有する複素環が含まれるが、これらに限定されない。
別のクラスの複素環は、「クラウン化合物」として公知であり、これは、1つ以上の式[−(CH2−)aA−]の反復単位を有する特別クラスの複素環式化合物を示し、その中で、aは2以上であり、各独立した出現におけるAは、O、N、S、またはPであり得る。クラウン化合物の例には、例としてのみ、[−(CH2)3−NH−]3、[−((CH2)2−O)4−((CH2)2−NH)2]などが含まれる。代表的に、このようなクラウン化合物は、4〜10のヘテロ原子および8〜40の炭素原子を有し得る。
「アルカノイル」という用語は、C(=O)Rをいい、その中でRは先に定義したようなアルキル基である。
「アルコキシカルボニル」という用語は、C(=O)ORをいい、その中でRは先に定義したようなアルキル基である。
「アミノ」という用語は、−NH2をいい、「アルキルアミノ」という用語は、−NR2をいい、その中で、少なくとも1つのRはアルキルであり、2つめのRはアルキルまたは水素である。「アシルアミノ」という用語は、RC(=O)Nをいい、その中で、Rはアルキルまたはアリールである。
「ニトロ」という用語は−NO2をいう;「トリフルオロメチル」という用語は−CF3をいう;「トリフルオロメトキシ」という用語は−OCF3をいう;「シアノ」という用語は−CNをいう;および「ヒドロキシ」という用語は−OHに言及する。
1つ以上の置換基を含む上記の基のいずれに関しても、このような基は、立体的に非実際的な、および/または合成的に実現不可能な置換も置換パターンも含まない、ということは当然理解されている。加えて、本発明の化合物は、これらの化合物の置換から生じるすべての立体化学的な異性体を含む。
「プロドラッグ」は、プロドラッグが哺乳動物の被験体に投与される場合に、インビボで、本発明の活動性の親ドラッグまたは他の化学式もしくは化合物を解放する、共有結合された物質すべてを含むことが意図される。本発明の化合物のプロドラッグは、例えばミルナシプランは、インビボでの慣用的な操作によって、修飾が親化合物に切断される方法によって、該化合物内に存在する官能基を修飾することによって調製される。プロドラッグは本発明の化合物を含むが、その中で、ヒドロキシ基またはアミノ基は、プロドラッグが哺乳動物の被験体に投与される場合に、切断されてそれぞれ遊離ヒドロキシルまたは遊離アミノを形成する任意の基に結合される。プロドラッグの例は、本発明の化合物におけるアルコールおよびアミン官能基のアセテート、ホルメート、およびベンゾアートの誘導体などを含むが、それらに限定されない。
「代謝産物」は、本発明の活性親薬物または他の化学式または化合物が哺乳動物の被験体に投与された場合に、生きた細胞が、そのような本発明の活性親薬物または他の化学式または化合物とインビボで相互作用する生化学過程から生じる物質をいう。代謝産物は、任意の代謝経路からの生成物または中間体を含む。
「代謝経路」は、1つの化合物をべつの化合物に転換させ、細胞機能のための中間体およびエネルギーを提供する、酵素に仲介された一連の反応をいう。代謝経路は、直鎖状または環状であり得る。特定の代謝経路は、グルクロン酸抱合を含む。
用語「デュアルセロトニンノルエピネフリン再取り込み阻害剤化合物」またはSNRIは、セロトニンおよびノルエピネフリン双方の再取り込みを選択的に阻害する、よく認識されているクラスの抗うつ化合物をいう。一般的なSNRI化合物は、ベンラファキシン(venlafaxine)、デュロキセチン(duloxetine)、およびミルナシプランを含むが、これらに限定されない。
用語「NE≧5−HT SNRI」および「NE>5−HT SNRI」は、本明細書で後により詳細に記載されるように、本発明の方法およびキットに有用な、SNRI化合物のうちの特定のサブクラスをいう。
前述のとおり、本発明の方法およびキットに有用なNE≧5−HT SNRI化合物としては、セロトニン再取り込みよりもより程度が高くノルエピネフリン再取り込みを阻害する化合物、およびこれら2つのモノアミンの再取り込みを同程度に阻害する化合物が挙げられる。本発明の1つの実施形態において、NE≧5−HT SNRI化合物は、ノルエピネフリン再取り込みとセロトニン再取り込みとの阻害割合(“NE:5−HT”)が、約1〜100:1の範囲である。特定の実施形態において、該化合物はNE>5−HT SNRI化合物である、すなわち、セロトニン再取り込みよりも高い程度でノルエピネフリン再取り込みを阻害する化合物である。このようなNE>5−HT SNRI化合物は一般的に、約1.1〜100:1の範囲でNE:5−HTを有する。すなわち、このようなNE>5−HT SNRI化合物は、ノルエピネフリン再取り込み阻害において、セロトニン再取り込みよりも、少なくとも約1.1〜約100倍効果的である。NE:5−HT割合を約2:1〜約10:1の範囲で有するNE>5−HT SNRI化合物は、特に有効であり得る。
特定のSNRIのNE:5−HTを決定するための、多様な技術が当技術分野において公知である。1つの実施形態において、該割合は、NEおよび5−HT再取り込み阻害のためのIC50データから計算可能である。例えば、ミルナシプランについては、ノルエピネフリン再取り込みのIC50は100nMであるが、一方、セロトニン再取り込み阻害のIC50は200nMであると報告されてきた。Moretら,1985,Neuropharmacology 24(12):1211−1219;Palmierら,1989,Eur J Clin Pharmacol 37:235−238参照。従って、このデータに基づくミルナシプランのNE:5−HT再取り込み阻害割合は2:1である。もちろん、ノルエピネフリンおよびセロトニンの両方で同じIC値が比較されるかぎり、他のIC25、IC75などのIC値も使用可能である。所望の阻害程度を得るために必要な濃度(すなわちIC値)は、インビボでもインビトロでも、公知の技術を使用して計算し得る。Sanchezら,1999,Cellular and Molecular Neurobiology 19(4):467−489;Turcotte ら,2001,Neuropsychopharmacology 24(5):5111−521;Moretら,1985,Neuropharmacology 24(12):1211−1219;Moret ら,1997,J.Neurochem.69(2):815−822;Belら,1999,Neuropsychopharmacology 21(6):745−754;およびPalmierら,1989,Eur J Clin Pharmacol 37:235−238参照。
特定のSNRIのNE:5−HTはまた、ノルエピネフリンおよびセロトニンのトランスポーターの平衡解離定数(KD)を使用しても計算し得る。これはTatsumiら,1997,European Journal of Pharmacology 340:249−258に記載されている。例えば、ノルエピネフリントランスポーターについて2nMのKD、セロトニントランスポーターについて8nMのKDを有するNE>5−HT SNRI化合物は、NE:5−HTが4:1である。
特定のSNRI化合物のNE:5−HTを決定するさらに別の手段は、 該SNRIの、ノルエピネフリンおよびセロトニントランスポーターに対する親和性(Ki)を測定することを含む。これはOwensら,1997,JPET 283:1305−1322に記載されている。例えば、ノルエピネフリントランスポーターについて1nMのKi、およびセロトニントランスポーターについて20nMのKiを有するNE>5−HT SNRI化合物は、NE:5−HTが20:1である。
本発明の実施に使用可能なNE≧5−HT SNRI化合物の特定の例は、ミルナシプランである。本発明の実施に使用可能なさらなるNE≧5−HT SNRI化合物の例として、ノルエピネフリン再取り込みを、セロトニン再取り込みと同程度か、より高い程度で阻害する、以下の引例において開示される任意のアミノシクロプロパン誘導体が含まれるが、これはあくまで例であって限定ではない(すなわち、NE:5−HTの割合が1:1である):WO95/22521;米国特許番号5,621,142;Shutoら,1995,J.Med.Chem.38:2964−2968;Shutoら,1996,J.Med.Chem.39:4844−4852;Shutoら,1998,J.Med.Chem.41:3507−3514;Shutoら,2001,Jpn.J.Pharmacol.85:207−213;Noguchiら,1999,Synapse 31:87−96;および米国特許番号4,478,836。これら引例はすべて、その全体が参考として本明細書中に援用される。
本発明の特定の実施形態において、NE>5−HT化合物はミルナシプランである。ミルナシプランの化学構造、cis−(±)−2−(アミノメチル)−N,N−ジエチル−1−フェニル−シクロプロパンカルボシキサミド、は以下の通りである。
当業者は、ミルナシプランなどのNE≧5−HT SNRI化合物は、互変異性、配座異性、幾何異性、および/または光学異性の現象を示す可能性があることを認識する。本発明は、本明細書に記載された1つ以上の有用性を有するNE≧5−HT SNRI化合物のいかなる互変異性、配座異性、光学異性、および/または幾何異性の形態をも、これらの多様な異なる形態の混合物と同様に、包含することが理解されるべきである。例えば、上記の構造式から明らかなように、ミルナシプランは光学的に活性である。文献には、ミルナシプランの右旋性エナンチオマーが、ノルエピネフリンおよびセロトニン再取り込みの阻害において、ラセミ混合物よりも約2倍活性であること、左旋性(levrogyral)エナンチオマーは、効果がずっと低いことが報告されてきた。(例えば、SpencerおよびWilde,1998,前出;Viazzoら,1996,Tetrahedron Lett.37(26): 4519−4522;Deprezら,1998,Eur.J.Drug Metab.Pharmacokinet.23(2):166−171参照)。従って、ミルナシプランは、鏡像異性的に純粋な形態で(例えば純粋な右旋性鏡像異性体)、または、ラセミ混合物などの右旋性鏡像異性体と左旋性(levrogyral)鏡像異性体との混合物として投与され得る。他に特に注記がなければ、本明細書中で使用される場合の用語「ミルナシプラン」は、ミルナシプランの鏡像異性的に純粋な形態と、ミルナシプランの鏡像異性体の混合物と、の両方をいう。ミルナシプランおよび他のNE≧5−HT SNRI化合物の右旋性鏡像異性体および左旋性(levrogyral)鏡像異性体を分離および単離する方法は周知である(例えば、Grardら,2000,Electrophoresis 2000 21:3028−3034参照)。
また、多くの場合において、NE≧5−HT SNRI化合物は、活性NE≧5−HT SNRI化合物を生産するために代謝し得ることが理解される。活性代謝産物の使用もまた、本発明の範囲内である。
ミルナシプランおよびその誘導体は、NMDAレセプターにおいて拮抗性の特性を有することが報告されてきた。Shutoら,1995,J.Med.Chem.38:2964−2968;Shutoら,1996,J.Med.Chem.39:4844−4852;Shutoら,1998,J.Med.Chem.41:3507−3514;およびShutoら,2001,Jpn.J Pharmacol.85:207−213参照。結果として、本発明の特に有用な1つの実施形態には、やはりNMDA拮抗性の特性を有するNE v 5−HT SNRI化合物が含まれる。NMDAレセプター拮抗性の特性を有するNE≧5−HT SNRI化合物は、約1nM〜100nMのIC50値を有し得る。例えば、ミルナシプランは約6.3nMのIC50値を有すると報告されてきた。ミルナシプランおよびその誘導体のNMDAレセプター拮抗性の特性は、Shuto ら,1995,J.Med.Chem.,38:2964−2968;Shutoら,1996,J.Med.Chem.39:4844−4852;Shutoら,1998,J.Med.Chem.41:3507−3514;およびShutoら,2001、Jpn.J Pharmacol.85:207−213に記載されている。拮抗および拮抗への親和性を決定する方法は、Shutoら,1995,J.Med.Chem.38:2964−2968;Shutoら,1996,J.Med.Chem.39:4844−4852;Shutoら,1998,J.Med.Chem.41:3507−3514;Noguchiら,1999,Synapse 31:87−96;およびShutoら,2001,Jpn.J.Pharmacol.85:207−213に開示されている。アミノシクロプロパンの誘導体は、WO95/22521;米国特許番号5,621,142;Shutoら,1995,J.Med.Chem.38:2964−2968;Shutoら,1996,J.Med.Chem.39:4844−4852;Shutoら,1998,J.Med.Chem.41:3507−3514;Noguchiら,1999,Synapse 31:87−96;およびShutoら,2001,Jpn.J.Pharmacol.85:207−213に開示されているが、該アミノシクロプロパンの誘導体は、5−HT再取り込みと同等にまたはより多くNE再取り込みを阻害し、NMDA拮抗性の特性を有し、本発明の実施に使用可能である。これらの引例は、その全体が参考として本明細書中に援用される。
非常に驚くべきことに、本発明者らは、SNRI化合物のNE≧5−HT SNRIサブクラスが、単独で(または、さらに詳細を後で述べるが、神経伝達物質前駆体ではない他の化合物との組み合わせで)投与された場合に、AD、HD、チック、またはそれらの組み合わせの処置において効果的であることを発見していた。従って、本発明の1つの実施形態において、NE≧5−HT SNRI化合物は単独で投与されるか、または、フェニルアラニン、チロシン、および/またはトリプトファンなどの神経伝達物質前駆体以外の化合物と組み合わせて投与される。
例えばミルナシプランなどの、NE≧5−HT SNRI化合物は、他の活性化合物と共に付属的に投与し得る。付属的な投与とは、複数の化合物を、同じ投薬形態で同時に投与すること、異なる投薬形態で同時に投与すること、および複数の化合物を別個に投与すること、を意味する。
NE≧5−HT SNRI化合物は、治療上の利点を得るために治療的に投与すること、または、予防上の利点を得るために予防的に投与することが可能である。治療上の利点とは、治療されるべき根本的な障害の根絶または回復、例えば、根本的な障害の根絶または回復、および/または、患者が、まだ根本的な疾患に苦しんでいるかどうかにかかわらず、気分や状態の改善を報告するような、根本的な障害と関連する1つ以上の生理学上の症状の根絶または回復、を意味する。
治療的な投与のためには、NE≧5−HT SNRI化合物は、代表的に、既に診断されて特定の適応症徴候が処置されている患者に投与される。
予防的な投与のためには、NE≧5−HT SNRI化合物は、AD、HD、チック、またはそれらの組み合わせの診断がまだなされていないとしても、AD、HD、チック、またはそれらの組み合わせが進展する危険性のある患者、あるいは、AD、HD、チック、またはそれらの組み合わせの1つ以上の生理学上の症状を報告する患者に投与されてよい。あるいは、特に、症状が周期的に現れる場合に、根本的な障害の生理学上の症状の発症を避けるために、予防上の投与が適用されてよい。この後者の実施形態において、治療は、根本的な適応症の代わりに、関連する生理学上の症状に関して予防的である。例えば、NE≧5−HT SNRI化合物は、AD、HD、チック、またはそれらの組み合わせと関連した睡眠障害を避けるために、就寝前に予防的に投与可能である。
(AD/HD、チック障害、および精神障害)
本発明は、AD/HDに苦しむ動物の被験体、特にヒトを処置するための方法およびキットを提供する。DSM−IV−TRTMは、AD/HDを、進展の比較できるレベルの個人において代表的に観察されるよりも、より頻繁にみられ、より深刻である、注意散漫、および/または多動−衝動性の永続的なパターン、と定義する。AD/HD患者において、少なくとも2つの周囲環境において、例えば家で、および、学校または仕事場で、該症状からのいくつかの機能障害が観察される。AD/HDの診断基準の1つは、以下の注意散漫の症状のうち6つ以上が6ヶ月間存在し、発展のレベルにおいて不適応および不整合であることである:(i)学業、仕事、または他の活動において、細かいことをよく観察できず、または不注意なミスをする;(ii)仕事または遊びの活動において、注意を持続するのが困難である;(iii)直接話しかけられても聞こえているようではない;(iv)指示に最後まで従わず、学業、雑用、または職場での職務を終えることができない;(v)仕事および活動を系統立てるのが困難である;(vi)精神的努力を継続させる必要のある仕事に従事することを避ける、嫌う、または気が乗らない;(vii)仕事または活動に必要な物を失くす;(viii)無関係な刺激に簡単に気を取られる;および(ix)日常の活動において忘れやすい。別の診断基準は、多動−衝動性の以下の症状が6ヶ月間続き、発展のレベルにおいて不適応および不整合であるかどうかの評価である;(i)手足をそわそわ動かし、または椅子に落ち着いて座れない;(ii)教室または座り続けることが求められる他の状況において、席を離れる;(iii)不適切な状況において、過度に走り回ったりよじ登ったりする;(iv)静かに遊んだり余暇活動に従事したりすることが困難である;(v)しばしば、「絶えず動いている」、または、あたかも「モーターに推進される」ように行動する;(vi)過度に話す;(vii)質問が終わる前に答えを口走る;(viii)順番を待つのが困難である;および(ix)他人に割り込むまたは邪魔をする。AD/HDには3つのサブタイプがある:AD/HD、複合タイプ;AD/HD、主に注意散漫なタイプ;およびAD/HD、主に多動−衝動的なタイプ。AD/HD、複合タイプの診断は、注意散漫および多動−衝動性の両方において6つ以上の症状が少なくとも6ヶ月持続した場合に使用される。AD/HD、主に注意散漫なタイプの診断は、注意散漫における6つ以上の症状で(しかし多動−衝動性の症状は6つより少ない)、少なくとも6ヶ月持続したものからなる。AD/HD、主に多活動−衝動的なタイプの診断は、多動−衝動性において6つ以上の症状(しかし注意散漫の症状は6つより少ない)が、少なくとも6ヶ月持続した場合に使用される。本発明の方法およびキットは、AD/HDの3つのサブタイプ全ての処置に有用である。
本発明は、AD/HDに苦しむ動物の被験体、特にヒトを処置するための方法およびキットを提供する。DSM−IV−TRTMは、AD/HDを、進展の比較できるレベルの個人において代表的に観察されるよりも、より頻繁にみられ、より深刻である、注意散漫、および/または多動−衝動性の永続的なパターン、と定義する。AD/HD患者において、少なくとも2つの周囲環境において、例えば家で、および、学校または仕事場で、該症状からのいくつかの機能障害が観察される。AD/HDの診断基準の1つは、以下の注意散漫の症状のうち6つ以上が6ヶ月間存在し、発展のレベルにおいて不適応および不整合であることである:(i)学業、仕事、または他の活動において、細かいことをよく観察できず、または不注意なミスをする;(ii)仕事または遊びの活動において、注意を持続するのが困難である;(iii)直接話しかけられても聞こえているようではない;(iv)指示に最後まで従わず、学業、雑用、または職場での職務を終えることができない;(v)仕事および活動を系統立てるのが困難である;(vi)精神的努力を継続させる必要のある仕事に従事することを避ける、嫌う、または気が乗らない;(vii)仕事または活動に必要な物を失くす;(viii)無関係な刺激に簡単に気を取られる;および(ix)日常の活動において忘れやすい。別の診断基準は、多動−衝動性の以下の症状が6ヶ月間続き、発展のレベルにおいて不適応および不整合であるかどうかの評価である;(i)手足をそわそわ動かし、または椅子に落ち着いて座れない;(ii)教室または座り続けることが求められる他の状況において、席を離れる;(iii)不適切な状況において、過度に走り回ったりよじ登ったりする;(iv)静かに遊んだり余暇活動に従事したりすることが困難である;(v)しばしば、「絶えず動いている」、または、あたかも「モーターに推進される」ように行動する;(vi)過度に話す;(vii)質問が終わる前に答えを口走る;(viii)順番を待つのが困難である;および(ix)他人に割り込むまたは邪魔をする。AD/HDには3つのサブタイプがある:AD/HD、複合タイプ;AD/HD、主に注意散漫なタイプ;およびAD/HD、主に多動−衝動的なタイプ。AD/HD、複合タイプの診断は、注意散漫および多動−衝動性の両方において6つ以上の症状が少なくとも6ヶ月持続した場合に使用される。AD/HD、主に注意散漫なタイプの診断は、注意散漫における6つ以上の症状で(しかし多動−衝動性の症状は6つより少ない)、少なくとも6ヶ月持続したものからなる。AD/HD、主に多活動−衝動的なタイプの診断は、多動−衝動性において6つ以上の症状(しかし注意散漫の症状は6つより少ない)が、少なくとも6ヶ月持続した場合に使用される。本発明の方法およびキットは、AD/HDの3つのサブタイプ全ての処置に有用である。
特に、本発明の化合物は、合併するチック障害に苦しむAD/HD患者の小集団の処置において有用である。トゥーレット症候群を含む合併するチック障害は、AD/HD患者の小集団において診断される。チックとは、突然の、急速な、反復的な、リズム性のない、型にはまった、モーター動作(motor movement)または発声である。モーターおよび音声のチックは、単純(2、3の筋肉または単純な音だけに関わる)であっても、複合的(統合された発作または単語または文章において編成された(recruited)筋肉の複数のグループに関わる)であってもよい。AD/HD患者は、合併するトゥーレット症候群、慢性モーターチック障害、慢性音声チック障害、または一過性チック障害と共に診断され得る。トゥーレット症候群は、疾病中に、複数のモーターチックと、1つ以上の音声チックとの両方が存在するが、必ずしも同時にではないという状況によって特徴づけられる。慢性モーターチック障害または慢性音声チック障害は、疾病中に、1つまたは複数のモーターチック、または音声チックが、両方ではなく存在することによって特徴づけられる。トゥーレット症候群、慢性モーターチック障害、および慢性音声チック障害においては、ほとんど毎日、または、1年を越える期間を通じて断続的に、1日に何度もチックが起こり(通常は発作)、この期間内は、チックにならない期間が、連続して3ヶ月を超えない。一過性チック障害においては、少なくとも4週間、しかし連続して12ヶ月を超えない期間、ほとんど毎日、1つまたは複数のモーターチック、および/または音声チックが、1日に何度も起こる。
AD/HD患者の中には、AD/HDと共に付随するチック障害と診断される者もいる。一方で、AD/HD患者によっては、チック障害は、AD/HDの処置に使用される中枢神経興奮薬の直接的な生理学上の因果関係である。この因果関係を持ちうる中枢神経興奮薬としては、メチルフェニデート、ペモリン、およびデキストロアンフェタミンが挙げられる。中枢神経興奮薬は、AD/HD患者においてチック障害を引き起こしうるか、または既存の付随するチック障害を悪化させ得る。本明細書において使用される場合、用語「合併するチック障害」は、AD/HD患者において診断される付随するチック障害と、現在のAD/HD治療によって誘発されるAD/HD患者におけるチック障害との両方を意味する。本発明の1つの実施形態において、本発明に有用な化合物は、AD/HDと、付随するチック障害と、の両方と診断された患者に投与される。別の実施形態においては、該化合物は、現在のAD/HD治療によってチック障害が進行した、AD/HDと診断された患者に投与される。本発明の方法における重要な利点は、合併するチック障害を治療する能力のみならず、チック障害を悪化させることも、誘発することもなしに、AD/HDを処置することである。
さらに、本発明の化合物は、合併するチック障害と、精神障害と、の両方に苦しむAD/HD患者の小集団の処置において有用である。AD/HDに関連する精神障害は、反抗性障害(oppositional−defiant disorder)、行動障害、抑うつ性障害、不安障害、強迫神経症、および学習障害を含む。反抗性障害は、権威者に対する反抗的な、挑戦的な、服従しない、敵意のある態度の反復的パターンが、少なくとも6ヶ月継続する状態である。これらの態度は、匹敵する年齢および進展レベルの個人において代表的に観察されるよりも頻繁に発生し、社会的、学術的、または職業的機能における重大な機能障害につながる。行動障害は、他人の基本的な権利、またはその年齢にふさわしい主な社会的な規範または規則を侵害する態度が、反復的で持続するパターンである。抑うつ性障害は、躁、混合、または軽躁の発症の病歴がない、主な鬱の発症によって特徴づけられる。不安障害は、過度の心配、すなわち、実生活の不安に関する過度の心配によって特徴づけられる。強迫神経症の特徴には、時間を要し、または著しい心痛や重大な機能障害を引き起こすほど深刻な、反復性の強迫観念または強迫行為が含まれる。強迫観念は、侵害的で不適切に経験され、著しい不安または心痛を引き起こす、持続する考え、思想、衝動、またはイメージである。強迫行為は、その目的が不安や心痛を防ぐまたは減らすためであり、楽しみや満足を与えるためではない、反復的な態度または精神的な活動である。学習障害は、個々に施行される、読解、数学、または文章表現に関する標準検査における個人の成績が、年齢、学校教育、および知能程度から予想されるよりも、実質的に低い場合に診断される。学習における問題は、読解、数学、または文章作成のスキルを要する学業的業績や日常の生活における活動を、著しく妨げる。前述の1つ以上の精神障害が、AD/HD患者に合併される可能性がある。これらの精神障害を診断する方法はたくさんある。これらの方法には、多様な精神上および行動上の評価が含まれる。これらの方法は、科学文献、例えば精神障害における診断および統計上のマニュアル、第4版などによく記載されている。
当該技術は、AD/HDおよび合併するチックおよび/または精神障害を診断するための多様な方法を提供する。上述のものは、これらの障害を診断するためのいくつかの手段である。上述の診断基準は、精神障害における診断および統計上のマニュアル、第4版から得られた。上述の診断基準に加え、他の科学文献に記載された異なる診断基準も使用可能であることは、当業者にとって明らかである。
(薬理学的活性)
本発明に有用な化合物は、抗AD/HD、抗チック、および抗精神医学上の特性を示し得る。これらの化合物は、2つまたはそれ以上の薬理学的活性によってこれらの特性を示す。
本発明に有用な化合物は、抗AD/HD、抗チック、および抗精神医学上の特性を示し得る。これらの化合物は、2つまたはそれ以上の薬理学的活性によってこれらの特性を示す。
何か特別な動作理論(theory of operation)によって縛られることを意図するわけではないが、抗AD/HD特性に関連する薬理学的活性は、中枢神経系におけるドーパミン刺激活性および増加させたノルエピネフリン活性を含むと考えられている。抗チック特性に関連する薬理学的活性のいくつかには、ドーパミンレセプター拮抗活性、中枢神経系におけるGABA活性の増加、グルタミン作用性活性の減少、またはα2アゴニスト活性が含まれる。中枢神経系におけるセロトニン活性の増加は、本発明の化合物の抗精神医学上の特性に関連する薬理学的活性の1つであると考えられる。
ドーパミン刺激活性は、ドーパミン再取り込みが阻害されるようにドーパミントランスポーター(DAT)をブロックすること、または、シナプス前末端からのドーパミンの放出を引き起こすことを含むが、それらに限定されない。DATをブロックする、またはドーパミンの放出を増加する化合物の能力は、当技術分野において公知のいくつかの技術を使用して決定できる。例えば、Gainetdinovら,1999,Science,283:397−401は、線条体におけるが細胞外ドーパミン濃度が マイクロダイアリシスを使用して測定可能である技術について記載している。DATをブロックする、またはドーパミンの放出を増加する化合物の能力を決定するためには、ドーパミンの細胞外濃度を、該化合物の投与前にも投与後にも測定可能である。試験されている該化合物の投与後における、統計学的に有意なドーパミンレベルの増加は、該化合物がドーパミンの再取り込みを阻害する、または、ドーパミンの放出を増加させることを示す。DATをブロックする能力はまた、ドーパミントランスポーターにおける阻害濃度(IC)値、例えばIC50などによっても数値化可能である。IC値を決定するためのいくつかの技術が、当技術分野において記載されている。例えば、Rothmanら,2000,Synapse,35:222−227を参照されたい。本発明に有用な化合物は、0.1nM〜600μMの範囲のIC50値を有することができる。特に、該化合物は、0.1nM〜100μMのIC50値を有する。
中枢神経系におけるノルエピネフリン刺激活性は、ノルエピネフリン再取り込みの阻害、またはα2アゴニスト活性のいずれかに関連しうるが、それらに限定されない。ノルエピネフリン再取り込みの阻害は、ノルエピネフリントランスポーター(NET)のブロッキングを経由し得る。特定の化合物によるNETのブロッキングは、NETでトランスフェクトされる細胞株を使用して観察可能である。例えば、Galliら,1995,The Journal of Experimental Biology,198:2197−2212参照。1つの実施形態において、特定の化合物によるノルエピネフリン再取り込みの阻害を決定するために、NETにおけるK1値が使用される。本発明に有用な化合物は、1.5nmol/l〜10μmol/lの範囲のK1値を有することができる。100nmol/l〜700nmol/lの範囲のK1値を有する化合物が特に有用である。
用語「α2アゴニスト活性」は、α2レセプターへの結合による、該α2レセプターの一部または全部の活性化に言及する。この活性は、α2レセプターへのノルエピネフリンの結合と関連する、いかなる生物反応の一部または全部の活性化をも含むことができる。「α2レセプター」は、ノルエピネフリン、エピネフリン、およびそれらのアナログを特異的に結合する細胞外レセプターのファミリーに言及する。Docherty,1998,European Journal of Pharmacology,361:1−15参照。該用語はまた、α2レセプターのアイソフォーム、組み換えα2レセプター、および変異したα2レセプターに言及する。化合物のα2アゴニスト活性を決定するためのいくつかの技術が、当技術分野において公知である。特定の化合物のα2アゴニスト特性は、EC50(最大効果の50%を引き起こす濃度)値を決定することによって確認可能であるが、これはJanssonら,1999,European Journal of Pharmacology,374:137−146に記載されている。適切な化合物は、1nM〜5000nMの範囲のEC50値を有してよい。この際、EC50値はJansson ら,1999に記載された技術を使用して決定される。特に、5nM〜3500nMの範囲のEC50値を有する化合物が有用である。この際、EC50値はJanssonら,1999に記載された技術を使用して決定される。本発明においては、α2レセプターにおいて全部または一部のアゴニスト活性を有する化合物が有用である。
用語「ドーパミン拮抗活性」は、ドーパミンレセプターに対するドーパミンなどのような、ドーパミンレセプターアゴニストの一部または全部の阻害(拮抗)に言及する。この用語はまた、アゴニストへのドーパミンレセプターの結合に関連する、いかなる生物応答の一部または全部の阻害にも言及する。「ドーパミンレセプター」は、ドーパミン、およびそれらのアナログを特異的に結合する細胞外レセプターのファミリーに言及する(Valloneら,2000,Neuroscience and Biobehavioral Reviews,24:125−132)。ドーパミンレセプターはまた、高濃度でノルエピネフリンおよびエピネフリンを結合できる。例えば、Newman−Tancrediら,1997,European Journal of Pharmacology,319:379−383参照。該用語はまた、ドーパミンレセプターのアイソフォーム、組み換えドーパミンレセプター、および変異したドーパミンレセプターに言及する。特定の化合物のドーパミン拮抗活性を決定するいくつかの技術が、当技術分野において公知である。例えば、Ficiら,1997,Life Sciences,60:1597−1603、およびLauら,1997,Gen.Pharmac.,29:729−736参照。0.1nM〜100μM、特に、0.2nM〜10μMの範囲のIC50値を有する化合物が有用である。
中枢神経系におけるGABA活性の増加を得るための1つの方法は、GABAアゴニストの使用を介する。用語「GABAアゴニスト」は、GABAレセプターへの結合によってGABAレセプターの一部または全部を活性化する任意の組成物または化合物に言及する。該用語はまた、GABAレセプターへのGABAの結合に関連する生物応答の一部または全部を活性化する、任意の組成物または化合物に言及する。「GABAレセプター」は、GABA、およびそれらのアナログを特異的に結合する細胞外レセプターのファミリーに言及する。Chebibら,1999,Clinial and Experimantal Pharmacology and Physiology,26:937−940参照。該用語はまた、GABAレセプターのアイソフォーム、組み換えGABAレセプター、および変異したGABAレセプターに言及する。化合物のGABAアゴニスト活性を決定するいくつかの技術が、当技術分野において公知である。例えば、Hill−Venningら,1996,Neuropharmacology,35:1209−1222参照。1つの実施形態において、特定の化合物のGABAアゴニスト活性を決定するためには、Hill−Venningら,1996に記載のとおり、GABAの存在下で、GABAレセプターにおけるEC50値が計算可能である。適切な化合物は、50nM〜100μMの範囲のEC50値を有するが、これらの値は、Hill−Venningら,1996に記載の方法によって決定される。本発明では、GABAレセプターにおいて全部または一部のアゴニスト活性を有する化合物が有用である。
グルタミン作用性活性の減少は、NMDAレセプターアンタゴニストまたはAMPA/カイニン酸アンタゴニストの使用によって得られる。「N−メチル D−アスパラギン酸(NMDA)レセプターアンタゴニスト」は、NMDAレセプターに対するグルタミン酸またはNMDAなどの、NMDAレセプターアゴニストの結合の一部または全部を阻害する(アンタゴナイズする)任意の組成物または化合物に言及する。「NMDAレセプターアンタゴニスト」はまた、アゴニストへのNMDAレセプターの結合に関連する任意の生物反応を阻害する任意の組成物または化合物に言及する。「NMDAレセプター」は、グルタミン酸、NMDA、およびそれらのアナログを特異的に結合する細胞外レセプターのファミリーに言及する。Cull−Candyら,2001,Current Opinions in Neurobiology,11:327−335、およびNankaiら,1996、Neurochem Int,29:529−542参照。該用語はまた、NMDAレセプターのアイソフォーム、組み換えNMDAレセプター、および変異したNMDAレセプターに言及する。NMDAレセプターにおけるアンタゴニスト特性を決定するいくつかの技術が、当技術分野において公知である。例えば、Shutoら,1995,J.Med.Chem.,38:2964−2968;Shutoら,1996,J.Med.Chem.,39:4844−4852;Shutoら,1998,J.Med.Chem.,41:3507−3514;およびShutoら,2001,Jpn.J.Pharmacol.,85:207−213参照。化合物のNMDAアンタゴニスト特性を数量化するために、IC値(例えばIC25、IC50、IC75など)またはK1値が使用可能である。NMDAレセプターにおけるIC50値が約1nM〜100μMである化合物が有用である。本発明の1つの局面において、採用される化合物は、NMDAレセプターに対して可逆性、低親和性(K1>0.7マイクロモル濃度)の結合を示すことが好ましい。
「AMPA/カイニン酸レセプターアンタゴニスト」は、グルタミン酸、AMPA、またはカイニン酸などのAMPA/カイニン酸レセプターアゴニストの、AMPA/カイニン酸レセプターへの結合を一部または全部阻害する(アンタゴナイズする)任意の組成物または化合物に言及する。「AMPA/カイニン酸レセプターアンタゴニスト」はまた、AMPA/カイニン酸レセプターのアゴニストへの結合に関連する任意の生物応答を阻害する任意の組成物または化合物に言及する。「AMPA/カイニン酸レセプター」は、グルタミン酸、AMPA、カイニン酸、およびそれらのアナログを特異的に結合する細胞外レセプターのファミリーに言及する。Franciosi,2001,CMLS,Cell.Mol.Life Sci.,58:921−930参照。該用語はまた、AMPA/カイニン酸レセプターのアイソフォーム、組み換えAMPA/カイニン酸レセプター、および変異したAMPA/カイニン酸レセプターに言及する。AMPA/カイニン酸レセプターにおけるアンタゴニスト特性を決定するいくつかの技術が、当技術分野において公知である。例えば、Bleakmanら,1996,Neuropharmacology,35:1689−1702参照。化合物のAMPA/カイニン酸アンタゴニスト特性を数量化するために、IC値(例えばIC25、IC50、IC75など)またはK1値を使用し得る。本発明では、AMPA/カイニン酸レセプターにおけるIC50値が約0.1nM〜500nMである化合物が有用である。
増加したセロトニン活性を得るための1つの方法は、セロトニン再取り込みの阻害によるものである。セロトニン再取り込みを阻害する化合物の能力は、当技術分野において公知の技術を使用して測定され得る。例えば、Sanchezら,1999,Cellular and Molecular Neurobiology 19(4):467−489;Turcotteら,2001,Neuropsychopharmacology,24(5):511−521;Moretら,1985,Neuropharmacology 24(12):1211−1219;Moretら,1997,J.Neurochem.,69(2):815−822;Belら,1999,Neuropsychopharmacology,21(6):745−754;およびPalmierら,1989,Eur J Clin Pharmacol,37:235−238参照。本発明の1つの局面において、セロトニン再取り込みを阻害する化合物の能力を数量化するために、IC値が使用される。本発明では、IC50値が0.1nM〜500nMの範囲である化合物が特に有用である。
抗AD/HD、抗チック、および抗精神医学上の特性は、特定の薬理学的活性に関連するとして本明細書に記載されている。これらの特性が、本出願に記載されていない他の薬理学的活性に関連しうる、ということは、当業者には明白である。
本発明の化合物は、複数の神経伝達物質に作用することによってAD/HD、チック障害、および精神障害を処置する。本発明の利点の1つは、1つの化合物において複数の薬理学的活性が存在することである。従って、1つの薬剤を、AD/HDと、合併する障害との両方を処置するために投与し得る。以前は、例えば、合併するチック障害および精神障害に苦しむAD/HD患者に対し、AD/HD処置のためにはドーパミン刺激薬物、チックにはノルエピネフリン刺激薬物、精神障害には抗うつ剤が投与されてきた。毎日3つの異なる薬物を患者が自分で服用しなければならなかったことから、患者の薬剤服用遵守度は、しばしば低かった。また、患者には、3つの薬物それぞれによって引き起こされる副作用が発生する危険があった。本発明において、これらの問題は、複数の薬理学的活性を有する1つの化合物を投与することによって回避される。この場合投与されるべき薬剤が減り、AD/HD患者に投与される薬剤の数が減るに従って処置の副作用プロフィールが改善することから、患者の薬剤服用遵守は改善する。
(AD/HD、チック障害、および精神障害の処置)
本発明において、合併するチック障害に苦しむAD/HD患者の小集団を処置するために、治療上有効な量の抗AD/HD化合物が使用される。本明細書に使用される場合、用語「抗AD/HD化合物」は、抗AD/HD特性および抗チック特性を有する化合物のクラスに言及する。この化合物のクラスは、少なくとも2つの異なる薬理学的活性によって、これら2つの特性を示す。従って、本発明の抗AD/HD化合物は、抗AD/HD特性と抗チック特性との両方を示すが、1つの薬理学的活性、すなわち、α2アゴニスト活性のみによってこれらの効果を生み出すクロニジンなどの化合物を含まない。
本発明において、合併するチック障害に苦しむAD/HD患者の小集団を処置するために、治療上有効な量の抗AD/HD化合物が使用される。本明細書に使用される場合、用語「抗AD/HD化合物」は、抗AD/HD特性および抗チック特性を有する化合物のクラスに言及する。この化合物のクラスは、少なくとも2つの異なる薬理学的活性によって、これら2つの特性を示す。従って、本発明の抗AD/HD化合物は、抗AD/HD特性と抗チック特性との両方を示すが、1つの薬理学的活性、すなわち、α2アゴニスト活性のみによってこれらの効果を生み出すクロニジンなどの化合物を含まない。
本発明の1つの実施形態において、本発明の実施に使用される化合物は、同じ化合物内においてドーパミンとノルエピネフイン双方の刺激活性を示すことのない、抗AD/HD化合物のサブクラスである。すなわち、このサブクラスにおける特定の化合物がドーパミン活性の増加を示す場合、該化合物はノルエピネフリン活性の増加を示さず、逆の場合も同様である。このサブクラスの化合物は、本明細書において「抗AD/HD(≠DA,NE)化合物」と称される。このサブクラスの化合物は、AD/HD患者、および合併するチック障害に苦しむAD/HD患者の小集団を処置するために使用される。抗AD/HD(≠DA,NE)サブクラスに分類される化合物の例には、以下が含まれる:(1)ドーパミンおよびGABA刺激活性を有する化合物;(2)ドーパミン刺激活性およびグルタミン作用性阻害活性を有する化合物;(3)ドーパミンおよびGABA刺激活性と、グルタミン作用性阻害活性とを有する化合物;(4)ノルエピネフリンおよびGABA刺激活性を有する化合物;(5)ノルエピネフリン刺激活性およびグルタミン作用性阻害活性を有する化合物;(6)ノルエピネフリンおよびGABA刺激活性と、グルタミン作用性阻害活性とを有する化合物;および(7)ノルエピネフリン刺激活性およびドーパミン阻害活性を有する化合物。抗AD/HD(≠DA,NE)化合物は、本明細書に挙げられていない追加的な薬理学的活性を示しうる。抗AD/HD(≠DA,NE)サブクラスに分類される化合物の具体例は、ミルナシプランおよびそのアナログである。
本明細書で使用される用語「抗AD/HD特性」は、AD/HDに対する治療上および/または予防上の活性を意味する。治療上の活性とは、処置される根本的な疾患の根絶または回復、例えば、根本的なAD/HDの根絶または回復、および/または、患者がまだ根本的な疾患に苦しんでいるかどうかにかかわらず、患者の状態において改善が観察されるような、根本的な疾患に関連する1つ以上の症状の根絶または回復、を意味する。例えば、AD/HDに苦しむ患者に対する抗AD/HD特性を有する化合物の投与は、根本的なAD/HD適応症が根絶または回復されるときだけなく、根本的なAD/HD疾患がまだ優勢であったとしても、不適切な注意散漫および/または多活動−衝動性の軽減を患者が示すときにも、治療上の利点を与える。予防上の活性とは、AD/HDが進展する危険性のある患者において、疾患の進展を遅らせたりなくしたりすることを意味する。AD/HDの症状はもう示さないが、AD/HDの再発を防ぐために本発明の化合物が投与される患者において、予防上の利点が観察され得る。
本明細書において、用語「抗チック特性」は、AD/HD患者のチック障害に対する治療上および/または予防上の活性を含むために使用される。治療上の活性とは、処置される根本的な疾患の根絶または回復、例えば、根本的なチック障害の根絶または回復、および/または、患者がまだ根本的なチック障害に苦しんでいるかどうかにかかわらず、患者の状態において改善が観察されるような、根本的なチック障害に関連する1つ以上の症状の根絶または回復、を意味する。予防上の活性とは、チック障害が進展する危険性のある患者において、障害の進展、または障害のそれほどひどくはない形態の進展を遅らせることを意味する。
本発明における、チック障害に対する予防上の活性は、特に、メチルフェニデート、ペモリン、およびデキストロアンフェタミンなどのドーパミン刺激剤を使用して、AD/HD患者において得られる。AD/HD患者のサブクラスにおいては、ドーパミン刺激剤の使用は、チック障害の進展、または既存のチック障害の悪化という結果になる。ドーパミン刺激剤は、中枢神経系におけるドーパミン活性を増加させることによってAD/HDを処置する。しかし、ドーパミン活性の増加は、チック障害の要因の1つとして知られている。従って、AD/HD患者に対するドーパミン刺激剤の投与は、時折、チック障害の進展、または既存のチック障害の悪化を引き起こす。本発明の1つの実施形態において、AD/HD患者の処置に使用される化合物は、ドーパミン活性を刺激することに加えて、グルタミン作用性活性を減少させる。何か特別な動作理論によって縛られることを意図するわけではないが、これらの化合物がドーパミン活性を刺激するとしても、グルタミン作用性活性の減少が、チックに対して阻害効果を有すると考えられている。本発明の別の実施形態においては、本発明において有用な化合物は、ドーパミン作用性活性に加え、GABA活性またはノルアドレナリン作用性活性のいずれかを有し得る。何か特別な動作理論によって縛られることを意図するわけではないが、GABA活性およびノルアドレナリン作用性活性の両方が、チック障害に対して有益な効果を有すると考えられている。従って、本発明の化合物は、AD/HDおよびチック症状の両方に対する治療上および/または予防上の効果を有し得る。
チック障害の病態生理における増加されたドーパミン伝達の役割のため、特に有用なサブクラスの化合物は、ドーパミン活性を増加させないが、ノルアドレナリン作用性活性を増加させる化合物である。ノルアドレナリン作用性活性の増加は、チック障害を引き起こすこと、または悪化させることに関連しないので、このサブクラスの化合物は、合併するチック障害を有するAD/HD患者、および、合併するチック障害が進展する危険を有するAD/HD患者を処置するのに特に有用である。ノルアドレナリン作用性活性に加え、このサブクラスの化合物は、以下の活性のうち少なくとも1つを有する:増加されたGABA活性、減少したグルタミン作用性活性、増加されたセロトニン活性、または減少したドーパミン活性。何か特別な動作理論によって縛られることを意図するわけではないが、ノルアドレナリン作用性活性は、AD/HDおよび/またはチック症状に対して、治療上および/または予防上の利点を与える;GABA活性の増加、および、グルタミン作用性活性またはドーパミン活性の減少は、チック症状に対して有益な効果を与える;および、セロトニン活性の増加は精神障害の処置に対して有益である、と考えられている。全体としては、ドーパミン活性を増加させないことにより、このサブクラスの化合物は、チック障害の進展を引き起こさず、または、既存のチック障害を悪化させることなしに、AD/HDおよび関連する疾患を処置するのに有用であると考えられている。
本発明の1つの実施形態において、本発明で使用される抗AD/HD化合物および抗AD/HD(≠DA,NE)化合物は、追加的な特性、すなわち抗精神医学上の特性によってさらに特徴づけられる。このサブクラスの化合物は、AD/HD患者、特に、合併する精神障害に苦しむAD/HD患者の処置に使用され得る。また、このサブクラスの化合物は、合併するチック障害および精神障害に苦しむAD/HD患者の処置にも使用され得る。
本明細書において、用語「抗精神医学上の特性」は、AD/HD患者における精神障害に対する治療上および/または予防上の活性を含むために使用される。治療上の活性とは、処置される根本的な疾患の根絶または回復、例えば、根本的な精神障害の根絶または回復、および/または、患者がまだ根本的な疾患に苦しんでいるかどうかにかかわらず、患者の状態において改善が観察されるような、根本的な疾患に関連する1つ以上の症状の根絶または回復、を意味する。予防上の活性とは、精神障害が進展する危険性のある患者において、障害の進展を遅らせたりなくしたりすることを意味する。例えば、本発明の化合物は、AD/HDと診断された患者において、精神障害の診断がまだなされていなくとも、予防的に使用され得る。これらの患者においては、与えられる予防上の活性とは、精神障害の進展、または精神障害のそれほどひどくない形態の進展を遅らせることである。
(ADD、ADHD、精神障害、およびチック障害を処置するための、SNRI−NMDA化合物の使用)
本発明を実施するのに有用な化合物の1つのサブクラスは、NMDAアンタゴニズム特性を有するセロトニンノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)化合物である。このサブクラスにおける化合物は、本明細書において、「SNRI−NMDA化合物」と称される。本発明において使用されるSNRI−NMDA化合物では、ノルエピネフリンの再取り込みとセロトニンの再取り込みとで同等の阻害を示し得るか、またはノルエピネフリンの再取り込みの阻害がセロトニンの再取り込みよりも少ないか、またはノルエピネフリンの再取り込みの阻害がセロトニンの再取り込みよりも多い。SNRI−NMDA化合物は、AD/HD患者、合併するチック障害に苦しむAD/HD患者の小集団、および合併するチック障害と精神障害に苦しむAD/HD患者の小集団の処置に使用し得る。
本発明を実施するのに有用な化合物の1つのサブクラスは、NMDAアンタゴニズム特性を有するセロトニンノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)化合物である。このサブクラスにおける化合物は、本明細書において、「SNRI−NMDA化合物」と称される。本発明において使用されるSNRI−NMDA化合物では、ノルエピネフリンの再取り込みとセロトニンの再取り込みとで同等の阻害を示し得るか、またはノルエピネフリンの再取り込みの阻害がセロトニンの再取り込みよりも少ないか、またはノルエピネフリンの再取り込みの阻害がセロトニンの再取り込みよりも多い。SNRI−NMDA化合物は、AD/HD患者、合併するチック障害に苦しむAD/HD患者の小集団、および合併するチック障害と精神障害に苦しむAD/HD患者の小集団の処置に使用し得る。
本発明において特に有用なのは、セロトニンの再取り込みよりもノルエピネフリンの再取り込みを多く阻害するSNRI−NMDA化合物、およびNMDAレセプターアンタゴニストである。これらの化合物は、本明細書において「NSRI−NMDA化合物」と称される。本発明において有用なNSRI−NMDA化合物の特定の例は、ミルナシプランである。
NSRI−NMDA化合物は代表的に、約1.1〜100:1の範囲のNE:5−HTを有する。本明細書における用語「NE:5−HT」は、ノルエピネフリンの再取り込み対セロトニンの再取り込みの阻害割合をいう。NSRI−NMDA化合物は、ノルエピネフリンの再取り込みの阻害において、少なくとも約1.1倍から約100倍までの範囲で、セロトニンの再取り込みの阻害よりも効果的である。NE:5−HTの割合が、約2:1〜約10:1の範囲であるNSRI−NMDA化合物が、特に効果的であり得る。
特定の化合物におけるNE:5−HTを決定するための多様な技術が、当技術分野において公知である。1つの実施形態において、この割合は、NEおよび5−HT再取り込み阻害のためのIC50データから計算され得る。例えば、ミルナシプランについては、ノルエピネフリン再取り込みのIC50は100nMである一方、IC50セロトニン再取り込み阻害は200nMであることが報告されている。Moretら,1985,Neuropharmacology 24(12):1211−1219;Palmierら,1989,Eur J Clin Pharmacol 37:235−238参照。従って、このデータに基づくミルナシプランについてのNE:5−HT再取り込み阻害割合は、2:1である。もちろん、ノルエピネフリンおよびセロトニンの両方で同じIC値が比較されるかぎり、IC25、IC75など他のIC値も使用し得る。所望の阻害程度を得るために必要な濃度(すなわちIC値)は、インビボでもインビトロでも、公知の技術を使用して計算可能である。Sanchezら,1999,CellularおよびMolecular Neurobiology 19(4):467−489;Turcotteら,2001,Neuropsychopharmacology 24(5):511−521;Moretら,1985,Neuropharmacology 24(12):1211−1219;Moretら,1997,J Neurochem.69(2):815−822;Belら,1999,Neuropsychopharmacology 21(6):745−754;およびPalmierら,1989,Eur J Clin Pharma
本発明に適切なSNRI−NMDA化合物は、NMDAレセプターにおけるIC50値が約1nM〜100μMであり得る。例えば、ミルナシプランは、約6.3μMのIC50値を有すると報告されている。ミルナシプランおよびその誘導体のNMDAレセプターアンタゴニスト特性は、Shutoら,1995,J Med.Chem.,38:2964−2968;Shutoら,1996,J Med Chem.39:4844−4852;Shutoら,1998,J Med.Chem.41:3507−3514;およびShutoら,2001,Jpn.J Pharmacol.85:207−213に記載されている。アンタゴニズムおよびアンタゴニズムの親和性の決定方法は、Shutoら,1995,J Med.Chem.38:2964−2968;Shutoら,1996,J Med.Chem.39:4844−4852;Shutoら,1998,J Med.Chem.41:3507−3514;Noguchiら,1999,Synapse 31:87−96;およびShutoら,2001,Jpn.J Pharmacol.85:207−213に開示されている。
本発明に適切なSNRI−NMDA化合物は、NMDAレセプターにおけるIC50値が約1nM〜100μMであり得る。例えば、ミルナシプランは、約6.3μMのIC50値を有すると報告されている。ミルナシプランおよびその誘導体のNMDAレセプターアンタゴニスト特性は、Shutoら,1995,J Med.Chem.,38:2964−2968;Shutoら,1996,J Med Chem.39:4844−4852;Shutoら,1998,J Med.Chem.41:3507−3514;およびShutoら,2001,Jpn.J Pharmacol.85:207−213に記載されている。アンタゴニズムおよびアンタゴニズムの親和性の決定方法は、Shutoら,1995,J Med.Chem.38:2964−2968;Shutoら,1996,J Med.Chem.39:4844−4852;Shutoら,1998,J Med.Chem.41:3507−3514;Noguchiら,1999,Synapse 31:87−96;およびShutoら,2001,Jpn.J Pharmacol.85:207−213に開示されている。
ミルナシプランの誘導体は、WO95/22521;米国特許番号5,621,142;米国特許番号4,478,836;Shutoら,1995,J Med.Chem.38:2964−2968;Shutoら,1996,Med.Chem.39:4844−4852;Shutoら,1998,J Med.Chem.41:3507−3514;Noguchiら,1999,Synapse 31:87−96;およびShutoら,2001,Jpn.J Pharmacol.85:207−213に開示されているが、それらはNEおよび5−HT両方の再取り込みを阻害し、NMDAアンタゴニスト特性を有しており、本発明を実施するのに使用し得る。これらの引例は、その全体が参考として本明細書中に援用される。
ミルナシプランの化学構造、シス−(±)−2−(アミノメチル)−N,N−ジエチル−1−フェニル−シクロプロパンカルボキサミド(yclopropanecarboxaminde)は、以下の通りである:
当業者は、ミルナシプランなどのSNRI−NMDA化合物は、互変異性、配座異性、幾何異性、および/または光学異性の現象を示し得ることを認識する。本発明は、本明細書に記載された1つ以上の有用性を有するSNRI−NMDA化合物のいかなる互変異性、配座異性、光学異性、および/または幾何異性の形態をも、これらの多様な異なる形態の混合物と同様に、包含することが理解されるべきである。例えば、上記の構造式から明らかなように、ミルナシプランは光学的に活性である。文献には、ミルナシプランの右旋性エナンチオマーが、ノルエピネフリンおよびセロトニン再取り込みの阻害において、ラセミ混合物よりも約2倍活性であること、左旋性エナンチオマーは、効果がずっと低いことが報告されてきた。(例えば、SpencerおよびWilde,1998,前出;Viazzoら,1996,Tetrahedron Lett.37(26): 4519−4522;Deprezら,1998,Eur.J.Drug Metab.Pharmacokinet.23(2):166−171参照)。従って、ミルナシプランは、鏡像異性的に純粋な形態で(例えば純粋な右旋性鏡像異性体)、または、ラセミ酸混合物などの右旋性鏡像異性体と左旋性鏡像異性体の混合物として投与され得る。他に特に注記がなければ、本明細書に使用される用語「ミルナシプラン」は、ミルナシプランの鏡像異性的に純粋な形態と、ミルナシプランの光学異性体の混合物と、の両方をいう。ミルナシプランおよび他のSNRI−NMDA化合物の右旋性鏡像異性体および左旋性鏡像異性体を分離および単離する方法は周知である(例えば、Grandら,2000,Electrophoresis 2000 21:3028−3034参照)。
また、多くの場合において、SNRI−NMDA化合物は、活性SNRI−NMDA化合物を生産するために代謝し得ることが理解される。活性代謝産物の使用もまた、本発明の範囲内である。
本発明者らは、SNRI−NMDA化合物、特にNSRI−NMDA化合物が、AD/HDに関連する症状、ならびに合併する精神障害およびチック障害の処置に有効であることを発見していた。何か特別な動作理論によって縛られることを意図するわけではないが、SNRI−NMDA化合物は、AD/HD患者において注意および/または衝動性−多活動の改善をおこすノルエピネフリンの再取り込みを阻害すると考えられている。これらの化合物は、ノルエピネフリンへの効果と、ドーパミンへの効果の欠如とが原因で、チック障害を悪化させないと考えられている。また、これらの化合物のチックをブロックする能力は、NMDAレセプターにおけるアンタゴニスト効果を経由すると考えられている。加えて、セロトニンの再取り込みの阻害が、合併する精神障害に対して有益な効果を生み出すと考えられている。全体的に、ノルエピネフリンおよびセロトニンの再取り込みの阻害、ならびにNMDAレセプターにおけるアンタゴニスト活性により、SNRI−NMDA化合物は、AD/HD患者における注意および衝動性−多活動の改善、精神障害の処置、およびチック障害のブロックに有用である。
(AD/HD、精神障害、およびチック障害を処置するための、3重の再取り込み阻害剤の使用)
本発明に有用な別のサブクラスの抗AD/HD化合物は、セロトニンおよびノルエピネフリンの再取り込みの阻害に加え、ドーパミンの再取り込みを阻害するSNRI化合物である。このサブクラスの化合物は、本明細書において、3重の再取り込み阻害剤と称される。該3重の再取り込み阻害剤は、合併するチック障害にも苦しむAD/HD患者の小集団の処置に有効である。加えて、このサブクラスの化合物は、合併するチック障害および精神障害に苦しむAD/HD患者の小集団の処置に使用され得る。本発明に有用なこのサブクラスに属する化合物としては、ジデスメチルシブトラミン、シブトラミン、NS−2359、NS−2389、BTS−74398、およびBSF−74681が挙げられる。
本発明に有用な別のサブクラスの抗AD/HD化合物は、セロトニンおよびノルエピネフリンの再取り込みの阻害に加え、ドーパミンの再取り込みを阻害するSNRI化合物である。このサブクラスの化合物は、本明細書において、3重の再取り込み阻害剤と称される。該3重の再取り込み阻害剤は、合併するチック障害にも苦しむAD/HD患者の小集団の処置に有効である。加えて、このサブクラスの化合物は、合併するチック障害および精神障害に苦しむAD/HD患者の小集団の処置に使用され得る。本発明に有用なこのサブクラスに属する化合物としては、ジデスメチルシブトラミン、シブトラミン、NS−2359、NS−2389、BTS−74398、およびBSF−74681が挙げられる。
本発明に特に有用な3重の再取り込み阻害剤は、約1.1〜100:1の範囲の、ノルエピネフリン再取り込み対ドーパミン再取り込みの阻害割合(「NE:DA」)を有し得る。すなわち、これらの化合物は、ドーパミンの再取り込みよりも、ノルエピネフリンの再取り込みをより多く阻害する。
3重の再取り込み阻害剤は、現在利用可能なAD/HDのためのドーパミン刺激薬物治療よりも優れた利点をいくつか有する。このサブクラスの化合物は、AD/HDの症状に対するポジティブな効果を生み出し得るドーパミン活性を増加させた。しかし、前述のとおり、増加したドーパミン活性は、チック障害の病態生理の一因となり得る。このドーパミン刺激薬物の欠点は本発明において回避される。なぜならば、適切な3重の再取り込み阻害剤が、ドーパミンよりもノルエピネフリンの再取り込みを多く阻害するからである。ノルエピネフリン活性は、チック障害に対して阻害効果を有すると考えられている。加えて、ノルエピネフリン活性は、AD/HDの症状に対する有益な効果を生み出し得る。
前述のとおり、本発明に適切な3重の再取り込み阻害剤は、チック症状を引き起こすまたは悪化させる能力の欠如によって特徴づけられる。これらの化合物のチック障害に対する効果は、チックの動物モデルにおいて評価され得る。チック障害のいくつかの動物モデルが、当技術分野において周知である。チック障害の動物の一例が、McGrathら,2000,Brain Research,877:23−30である。本発明の1つの実施形態において、本発明に適切な3重の再取り込み阻害剤は、McGrathら,2000に記載された動物モデルにおけるチック様の症状の統計学的に有意な増加を引き起こさない。
(補助的な投与)
例えばミルナシプランなどの本発明の化合物は、代表的なかつ異型の抗精神病薬、ドーパミン消耗剤(depleter)、GABAアゴニスト、およびヒスタミン−3 アンタゴニストなどの他の活性化合物と共に、補助的に投与され得る。本発明の化合物と共に補助的に投与され得る化合物の特定の例には、フルフェナジン、ピモジド、ハロペリドール、リスペリドン、ジプラシドン(ziprasidone)、チオチキセン、トリフルオペラジン、モリンドン、テトラベナジン、トピラマート、クロナゼパム、およびパーセプティン(PerceptinTM)が含まれるが、それらに限定されない。補助的な投与とは、同じ投薬形態での化合物の同時投与と、別個の投薬形態での同時投与と、化合物の別々の投与とを意味する。例えば、ミルナシプランは、フルフェナジンと共に同時に投与され得るが、その場合において、ミルナシプランとフルフェナジンの両方が、同じ錠剤に一緒に処方される。あるいは、ミルナシプランはフルフェナジンと共に同時に投与され得るが、その場合において、ミルナシプランとフルフェナジンの両方が、2つの別個の錠剤内に存在する。さらに別の代替では、ミルナシプランを最初に投与して、後からフルフェナジンを投与し得る。逆もまた可能である。
例えばミルナシプランなどの本発明の化合物は、代表的なかつ異型の抗精神病薬、ドーパミン消耗剤(depleter)、GABAアゴニスト、およびヒスタミン−3 アンタゴニストなどの他の活性化合物と共に、補助的に投与され得る。本発明の化合物と共に補助的に投与され得る化合物の特定の例には、フルフェナジン、ピモジド、ハロペリドール、リスペリドン、ジプラシドン(ziprasidone)、チオチキセン、トリフルオペラジン、モリンドン、テトラベナジン、トピラマート、クロナゼパム、およびパーセプティン(PerceptinTM)が含まれるが、それらに限定されない。補助的な投与とは、同じ投薬形態での化合物の同時投与と、別個の投薬形態での同時投与と、化合物の別々の投与とを意味する。例えば、ミルナシプランは、フルフェナジンと共に同時に投与され得るが、その場合において、ミルナシプランとフルフェナジンの両方が、同じ錠剤に一緒に処方される。あるいは、ミルナシプランはフルフェナジンと共に同時に投与され得るが、その場合において、ミルナシプランとフルフェナジンの両方が、2つの別個の錠剤内に存在する。さらに別の代替では、ミルナシプランを最初に投与して、後からフルフェナジンを投与し得る。逆もまた可能である。
(処方および投与の経路)
本発明において有用な化合物、または薬学的に受容可能なそれらの塩は、多種多様な投与の経路または形態を使用して、患者に送達され得る。適切な投与の経路は、吸入、経皮的、経口的、直腸の、粘膜経由の、腸管の、および非経口(筋肉、皮下、ならびに静脈注射を含む)の投与を含むが、これらに限定されない。
本発明において有用な化合物、または薬学的に受容可能なそれらの塩は、多種多様な投与の経路または形態を使用して、患者に送達され得る。適切な投与の経路は、吸入、経皮的、経口的、直腸の、粘膜経由の、腸管の、および非経口(筋肉、皮下、ならびに静脈注射を含む)の投与を含むが、これらに限定されない。
用語「薬学的に受容可能な塩」とは、本発明において使用される化合物の生物学的有効性および特性を保持し、生物学的に、またはその他の点で望ましくない、ということのない塩を意味する。このような塩には、塩化水素酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、酢酸、フマル酸、コハク酸、乳酸、マンデル酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、またはマレイン酸などの、無機酸または有機酸との塩が含まれる。加えて、化合物がカルボキシ基を含有する場合、無機塩基または有機塩基との薬学的に受容可能な塩に変換され得る。適切な塩基の例には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、およびトリエタノールアミンが挙げられる。
該化合物、または薬学的に受容可能なそれらの塩は、独立して、および/または他の治療薬剤と組み合わせてカクテルにして投与され得る。もちろん、本発明の化合物と共に投与され得る治療薬剤の選択は、部分的に、処置される状態に依存する。
本発明の活性化合物(または薬学的に受容可能なそれらの塩)は、それ自体で、または、薬学的組成物の形態で投与され得る。その中で、該活性化合物は、1つ以上の薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤、または希釈剤との混ぜ物(admixture)または混合物(mixture)の中にある。本発明に従って使用される薬学的組成物は、活性化合物を、薬学的に使用し得る調製物にする処理を促進する、賦形剤および助剤を含む、1つまたはそれ以上の生理的に受容可能なキャリアを使用して、従来の方法で処方され得る。適切な処方は、選択された投与の経路に依存する。
注射用には、該活性化合物は、水溶液、好ましくはハンクス液、リンガー溶液、または生理食塩水緩衝液などの、生理的に適合性を有する緩衝液に処方し得る。経粘膜投与用には、浸透させる障壁に適した浸透剤が処方に使用される。このような浸透剤は、当技術分野において一般的に公知である。
経口投与用には、化合物は、当技術分野において周知の、薬学的に受容可能なキャリアと、活性化合物を組み合わせることにより、容易に処方され得る。このようなキャリアは、処置される患者が経口取り込みできるように、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁物などの形態で、本発明の化合物を処方することを可能にする。経口用に使用される薬学的調製物は、固体の賦形剤として得られうるが、必要に応じて、結果として得られる混合物をすりつぶし、もし所望であれば、適切な助剤を加えた後で、顆粒の混合物を加工し、錠剤または糖衣錠のコアを得る。適切な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む糖などの充填剤;例えばトウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロースの調製物、である。所望であれば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、または、アルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの、崩壊剤を添加し得る。
糖衣錠のコアは、適切なコーティングと共に提供され得る。この目的のために、濃縮された糖液が使用され得るが、これは必要に応じて、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー液、および適切な有機溶媒または溶媒の混合物を含有し得る。識別のため、または、活性化合物の用量の異なる組み合わせを特徴づけるために、錠剤または糖衣錠のコーティングに、染料または顔料を添加し得る。
経口投与用に、化合物は、徐放性調製物として処方され得る。徐放性調製物を処方するための多数の技術が、以下の引例に記載されている:米国特許第4,891,223号、第6,004,582号、第5,397,574号、第5,419,917号、第5,458,005号、第5,458,887号、第5,458,888号、第5,472,708号、第6,106,862号、第6,103,263号、第6,099,862号、第6,099,859号、第6,096,340号、第6,077,541号、第5,916,595号、第5,837,379号、第5,834,023号、第5,885,616号、第5,456,921号、第5,603,956号、第5,512,297号、第5,399,362号、第5,399,359号、第5,399,358号、第5,725,883号、第5,773,025号、第6,110,498号、第5,952,004号、第5,912,013号、第5,897,876号、第5,824,638号、第5,464,633号、第5,422,123号、および第4,839,177号;ならびにWO98/47491。具体的には、ミルナシプランの徐放性調製物がWO98/08495に記載されている。これらの引例は、その全体が参考として本明細書中に援用される。
経口的に使用され得る薬学的調製物は、ゼラチンでできたすべりばめのカプセル、ならびにゼラチンでできた密封された軟カプセル、および、グリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤を含む。すべりばめのカプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、ならびに必要に応じて安定剤と共に、混ぜ物の中に活性材料を含有し得る。軟カプセル剤において、活性化合物は、脂肪油、流動パラフィン、または液体のポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解または懸濁され得る。さらに、安定剤も添加し得る。経口投与のためのすべての処方物は、このような投与に適切な用量であるべきである。
口腔内(buccal)投与用には、組成物は、従来の方法で処方された錠剤またはトローチ剤の形態を採り得る。
吸入による投与用には、活性化合物は、適切な噴霧剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の適切なガスを使用して、加圧型のパックまたは噴霧器からのエアゾールスプレーによる供給の形態で従来どおりに送達され得る。加圧型エアゾールの場合、投薬単位は、測定された量を送達するためのバルブを提供することによって決定され得る。インヘイラーまたは吸入器で使用される、例えばゼラチンなどのカプセルおよびカートリッジは、化合物およびラクトースまたはデンプンなどの適切な粉末基剤の粉末ミックスを含有して処方され得る。
例えばボーラス注射、または連続注入などの注射による非経口投与用にも、化合物を処方し得る。注射用の処方物は、例えばアンプル容器に入れて、単位投薬形態で、または防腐剤を加えて多用量の形態で、提供され得る。組成物は、油性または水性のビヒクル中で、懸濁液、溶液、または乳濁液のような形態をとり得、そして懸濁剤、安定剤、および/または分散剤などの処方薬剤(formulatory agent)を含有し得る。
非経口投与用の薬学的処方物は、水溶性の形態における活性化合物の水溶液を含む。加えて、活性化合物の懸濁液は、適切な油性の注射懸濁液として調製され得る。適切な親油性の溶媒またはビヒクルには、ゴマ油などの脂肪油、または、オレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、あるいはリポソームが含まれる。水性の注射懸濁液は、懸濁液の粘度を増加させる物質、例えばカルボキシルメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどを含有し得る。該懸濁液は、必要に応じて適切な安定剤、または、高濃縮の溶液の調製を可能にするために化合物の溶解度を増加させる薬剤をも含有し得る。
あるいは、活性化合物は、使用前に、適切なビヒクル、例えば無菌で発熱物質がない水と共に構成するために、粉末の形態であり得る。
また、該化合物は、坐剤または保持浣腸剤など直腸用の組成物に処方され得る。例えば、カカオバターまたは他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含有する。
前述の処方に加え、該化合物は、デポ剤の調製としても処方し得る。このように長く作用する処方は、移植または経皮的な送達(例えば皮下または筋肉内)、筋肉内注射または経皮パッチによって投与され得る。従って、例えば、該化合物は、適切な高分子材料または疎水性の材料(例えば受容可能な油の状態の乳濁液として)、またはイオン交換樹脂と共に、または、やや溶けにくい誘導体、例えばやや溶けにくい塩として処方され得る。
薬学的組成物はまた、適切な固相またはゲル相キャリアまたは賦形剤を含有し得る。このようなキャリアまたは賦形剤の例は、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、多様な糖、デンプン、セルロースの誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコールなどのポリマーを含むが、これらに限定されない。
(効果的な用量)
本発明における使用に適切な薬学的組成物は、治療上または予防上効果的な量、すなわち、前述のとおり、治療上または予防上の利点を得るのに効果的な量において活性成分が含有される組成物を含む。もちろん、特定の適用において効果的な実際の量は、特に、処置される状態および投与の経路に依存する。効果的な量の決定は、特に本明細書の開示に照らせば、当業者の能力の範囲内の事項である。
本発明における使用に適切な薬学的組成物は、治療上または予防上効果的な量、すなわち、前述のとおり、治療上または予防上の利点を得るのに効果的な量において活性成分が含有される組成物を含む。もちろん、特定の適用において効果的な実際の量は、特に、処置される状態および投与の経路に依存する。効果的な量の決定は、特に本明細書の開示に照らせば、当業者の能力の範囲内の事項である。
ヒトへの使用において治療上効果的な量は、動物モデルから決定され得る。例えば、ヒトについての用量は、動物において効果的であることが見出されている循環濃度を得るために処方され得る。この目的に適切な動物モデルの例は、Russellら,2000,Behavioral Brain Research,117:69−74;Russell,2001,Metab.Brain Dis.,16:143−149;Sagvoldenら,1992,Behav.Neural Biol.,58:103−112;およびMcGrathら,2000,Brain Research,877:23−30に記載されている。
ヒトへの使用において効果的な量のSNRI−NMDA化合物および3重の再取り込み阻害剤はまた、SNRI−NMDA化合物および3重の再取り込み阻害剤が他の疾患の処置に使用された場合のヒトのデータから決定され得る。投与される量は、他の疾患を処置するために投与される量と同じであり得る。または、他の疾患を処置するために投与される量よりも少ない量であり得る。例えば、うつ病を処置するために、50mg〜400mg/日のミルナシプランが投与される。従って、本発明を実施するために、50mg〜400mg/日、またはそれより少ない用量が投与され得る。
本発明の化合物を経口投与するために患者に与える用量の代表的な範囲は、約1μg〜1gm/日である。例えば、AD/HDおよび関連する精神障害および/または関連するチック障害をミルナシプランで処置するためには、代表的な用量の範囲は、約25mg〜400mg/日、より代表的には約100mg〜250mg/日である。用量は、1日1回、または1日に数回あるいは多数の回数で投与され得る。本発明の方法を実施するために投与される化合物の量は、もちろん、処置される被験者、苦痛の重症度、投与方法、および処方する医師の判断に依存する。本発明を実施するために使用される用量は、深刻な副作用を生み出すことなしに、所望の治療上または予防上の効果を生み出し得る。
本発明の特定の実施形態には、以下が含まれる:
[1]本発明の1つの実施形態は、動物の被験体における注意欠陥過活動性障害(AD/HD)および/またはそれに関連するチック障害を処置する方法を含む。該方法は、効果的な量の抗AD/HD化合物または薬学的に受容可能なそれらの塩の、AD/HDおよび合併するチック障害に苦しむ動物の被験体に対する投与を含む。
[1]本発明の1つの実施形態は、動物の被験体における注意欠陥過活動性障害(AD/HD)および/またはそれに関連するチック障害を処置する方法を含む。該方法は、効果的な量の抗AD/HD化合物または薬学的に受容可能なそれらの塩の、AD/HDおよび合併するチック障害に苦しむ動物の被験体に対する投与を含む。
[2]本発明の別の実施形態は、実施形態[1]に従った方法を与えるが、その中において、該化合物は、抗精神医学上の特性によってさらに特徴づけられる。
[3]本発明の別の実施形態は、実施形態[1]に従った方法を与えるが、その中において、該化合物の薬理学的活性は、ドーパミン刺激、α2アゴニスト活性、ノルエピネフリン再取り込みの阻害、ドーパミンアンタゴニスト活性、中枢神経系におけるGABA活性の増加、グルタミン作用性活性の減少、およびセロトニン活性の増加よりなる群から選択される。
[4]本発明の別の実施形態は、実施形態[1]に従った方法を与えるが、その中において、AD/HDが処置される。
[5]本発明の別の実施形態は、実施形態[1]に従った方法を与えるが、その中において、AD/HDに関連するチック障害が処置される。
[6]本発明の別の実施形態は、実施形態[1]に従った方法を与えるが、その中において、化合物は、フルフェナジン、ピモジド、ハロペリドール、リスペリドン、ジプラシドン、ジプラシドンチオチキセン、トリフルオペラジン、モリンドン、テトラベナジン、トピラマート、クロナゼパム、またはパーセプティン(PerceptinTM)と共に付属的に投与される。
[7]本発明の別の実施形態は、実施形態[1]に従った方法を与えるが、その中において、動物の被験体はヒトである。
[8]本発明の別の実施形態は、動物の被験体において、AD/HD、それに関連するチック障害、またはそれらの組み合わせを処置する方法を与える。該方法は、AD/HDに苦しむ動物の被験体に対して、効果的な量の抗AD/HD(≠DA、NE)化合物または薬学的に受容可能なそれらの塩を投与することを含む。
[9]本発明の別の実施形態は、実施形態[8]に従った方法を与えるが、その中において、該化合物は、抗精神医学上の特性によってさらに特徴づけられる。
[10]本発明の別の実施形態は、実施形態[8]に従った方法を与えるが、その中において、該化合物の薬理学的活性は、ドーパミン刺激、α2アゴニスト活性、ノルエピネフリン再取り込みの阻害、ドーパミンアンタゴニスト活性、中枢神経系におけるGABA活性の増加、グルタミン作用性活性の減少、およびセロトニン活性の増加よりなる群から選択される。
[11]本発明の別の実施形態は、実施形態[8]に従った方法を与えるが、その中において、AD/HDが処置される。
[12]本発明の別の実施形態は、実施形態[8]に従った方法を与えるが、その中において、AD/HDに関連するチック障害が処置される。
[13]本発明の別の実施形態は、実施形態[8]に従った方法を与えるが、その中において、化合物は、フルフェナジン、ピモジド、ハロペリドール、リスペリドン、ジプラシドン、ジプラシドンチオチキセン、トリフルオペラジン、モリンドン、テトラベナジン、トピラマート、クロナゼパム、またはパーセプティン(PerceptinTM)と共に付属的に投与される。
[14]本発明の別の実施形態は、実施形態[8]に従った方法を与えるが、その中において、動物の被験体はヒトである。
[15]本発明の別の実施形態は、動物の被験体において、AD/HD、それに関連するチック障害、またはそれらの組み合わせを処置する方法を与える。該方法は、AD/HDおよび合併するチック障害に苦しむ動物の被験体に対して、効果的な量の抗AD/HD(≠DA、NE)化合物または薬学的に受容可能なそれらの塩を投与することを含む。
[16]本発明の別の実施形態は、実施形態[15]に従った方法を与えるが、その中において、該化合物は、抗精神医学上の特性によってさらに特徴づけられる。
[17]本発明の別の実施形態は、実施形態[15]に従った方法を与えるが、その中において、該化合物の薬理学的活性は、ドーパミン刺激、α2アゴニスト活性、ノルエピネフリン再取り込みの阻害、ドーパミンアンタゴニスト活性、中枢神経系におけるGABA活性の増加、グルタミン作用性活性の減少、およびセロトニン活性の増加よりなる群から選択される。
[18]本発明の別の実施形態は、実施形態[15]に従った方法を与えるが、その中において、AD/HDが処置される。
[19]本発明の別の実施形態は、実施形態[15]に従った方法を与えるが、その中において、AD/HDに関連するチック障害が処置される。
[20]本発明の別の実施形態は、実施形態[15]に従った方法を与えるが、その中において、化合物は、フルフェナジン、ピモジド、ハロペリドール、リスペリドン、ジプラシドン、ジプラシドンチオチキセン、トリフルオペラジン、モリンドン、テトラベナジン、トピラマート、クロナゼパム、またはパーセプティン(PerceptinTM)と共に付属的に投与される。
[21]本発明の別の実施形態は、実施形態[15]に従った方法を与えるが、その中において、動物の被験体はヒトである。
[22]本発明の別の実施形態は、動物の被験体において、AD/HD、それに関連するチック障害、またはそれらの組み合わせを処置する方法を与える。該方法は、AD/HDに苦しむ動物の被験体に対して、効果的な量のミルナシプラン、または薬学的に受容可能なその塩を投与することを含む。
[23]本発明の別の実施形態は、動物の被験体において、AD/HD、それに関連するチック障害、またはそれらの組み合わせを処置する方法を与える。該方法は、AD/HDおよび合併するチック障害に苦しむ動物の被験体に対して、効果的な量のミルナシプラン、または薬学的に受容可能なその塩を投与することを含む。
[24]本発明の別の実施形態は、実施形態[22]または[23]に従った方法を与えるが、その中において、ミルナシプランは、徐放性投薬形態として処方される。
[25]本発明の別の実施形態は、抗AD/HD化合物または薬学的に受容可能なそれらの塩、および、実施形態[1]に従った使用方法を教示する指示書を含むキットを与える。
[26]本発明の別の実施形態は、実施形態[25]のキットを与えるが、その中において、該化合物またはそれらの塩は、単位投薬形態(unit dosage form)にパッケージされる。
[27]本発明の別の実施形態は、実施形態[25]のキットを与えるが、その中において、該化合物はミルナシプランである。
[28]本発明の別の実施形態は、抗AD/HD(≠DA、NE)化合物または薬学的に受容可能なそれらの塩、および、実施形態[8]または[15]のいずれかに従った使用方法を教示する指示書を含むキットを与える。
[29]本発明の別の実施形態は、実施形態[28]のキットを与えるが、その中において、該化合物またはそれらの塩は、ユニット30にパッケージされる。
[30]本発明の別の実施形態は、実施形態[28]のキットを与えるが、その中において、該化合物はミルナシプランである。
本発明における追加的な特定の実施形態は、以下を含む:
[31]本発明の1つの実施形態は、哺乳動物において、注意欠陥過活動性障害(AD/HD)、注意欠陥過活動性障害(AD/HD)に関連するチック障害、またはそれらの組み合わせを処置する方法を与える。該方法は、効果的な量の、N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)レセプターアンタゴニストである化合物を哺乳動物に対して投与することを含むが、その中において、該化合物はまた、選択的なノルエピネフリン(NE)−セロトニン(5−HT)再取り込み阻害剤(NSRI)、選択的なノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NERI)、またはそれらの組み合わせでもある。
[31]本発明の1つの実施形態は、哺乳動物において、注意欠陥過活動性障害(AD/HD)、注意欠陥過活動性障害(AD/HD)に関連するチック障害、またはそれらの組み合わせを処置する方法を与える。該方法は、効果的な量の、N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)レセプターアンタゴニストである化合物を哺乳動物に対して投与することを含むが、その中において、該化合物はまた、選択的なノルエピネフリン(NE)−セロトニン(5−HT)再取り込み阻害剤(NSRI)、選択的なノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NERI)、またはそれらの組み合わせでもある。
[32]本発明の別の実施形態は、実施形態[31]の方法を与えるが、その中において、N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)レセプターアンタゴニストは、50マイクロモル濃度(μM)またはそれ未満のNMDAレセプターとの解離定数を有する。
[33]本発明の別の実施形態は、実施形態[31]の方法を与えるが、その中において、N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)レセプターアンタゴニストは、20マイクロモル濃度(μM)またはそれ未満のNMDAレセプターとの解離定数を有する。
[34]本発明の別の実施形態は、実施形態[31]〜[33]のうちいずれかの方法を与えるが、その中において、N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)レセプターアンタゴニストは、非競合的なNMDAレセプターアンタゴニスト、競合的なNMDAレセプターアンタゴニスト、グリシン部位アンタゴニスト、グルタミン酸部位アンタゴニスト、NR1サブユニットアンタゴニスト、NR2サブユニットのアンタゴニスト(例えば,NR2A−、NR2B、NR2C、またはNR2−Dアンタゴニスト)、またはNR3サブユニットアンタゴニストである。特定のサブユニットのアンタゴニストが、選択的または非選択的であり得る。
[35]本発明の別の実施形態は、実施形態[31]〜[33]のうちいずれかの方法を与えるが、その中において、NMDAレセプターアンタゴニストは、PCP部位NMDAレセプターアンタゴニストである。
[36]本発明の別の実施形態は、実施形態[31]〜[34]のうちいずれかの方法を与えるが、その中において、選択的なノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NERI)は、大脳皮質からシナプトソームへのノルアドレナリンの再取り込みを阻害するための、1マイクロモル濃度(μM)またはそれ未満のIC50を有する。
[37]本発明の別の実施形態は、実施形態[31]〜[35]のうちいずれかの方法を与えるが、その中において、選択的なノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NERI)は、大脳皮質からシナプトソームへのノルアドレナリンの再取り込みを阻害するための、100ナノモル濃度(nM)またはそれ未満のIC50を有する。
[38]本発明の別の実施形態は、実施形態[31]〜[37]のうちいずれかの方法を与えるが、その中において、選択的なNSRIのNE:5−HT再取り込み阻害割合は、少なくとも約1である。
[39]本発明の別の実施形態は、実施形態[31]〜[37]のうちいずれかの方法を与えるが、その中において、選択的なNSRIのNE:5−HT再取り込み阻害割合は、約20以下である。
[40]本発明の別の実施形態は、実施形態[31]〜[37]のうちいずれかの方法を与えるが、その中において、選択的なNSRIのNE:5−HT再取り込み阻害割合は、約1:1〜約20:1である。
[41]本発明の別の実施形態は、実施形態[31]〜[37]のうちいずれかの方法を与えるが、その中において、選択的なNSRIのNE:5−HT再取り込み阻害割合は、約1:1〜約5:1である。
[42]本発明の別の実施形態は、実施形態[31]〜[37]のうちいずれかの方法を与えるが、その中において、選択的なNSRIのNE:5−HT再取り込み阻害割合は、約1:1〜約3:1である。
[43]本発明の別の実施形態は、実施形態[31]〜[42]のうちいずれかの方法を与えるが、その中において、選択的なノルエピネフリン(NE)−セロトニン(5−HT)再取り込み阻害剤(NSRI)は、アドレナリン作用性部位およびコリン作用性部位各々におけるkiが約500ナノモル(nM)超であるように、限定されたシナプス後レセプター効果を有する。
[44]本発明の別の実施形態は、実施形態[31]〜[43]のうちいずれかの方法を与えるが、その中において、該化合物は、式(I)の化合物:
Rは独立して、水素、ハロ、アルキル、置換されたアルキル、アルコキシ、置換されたアルコキシ、ヒドロキシ、ニトロ、アミノ、または置換されたアミノである;
nは1または2である;
R1およびR2は各々が独立して、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリール、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、アルカリール、置換されたアルカリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環、または置換された複素環である;あるいは、
R1およびR2は、隣接する窒素原子と共に、複素環、置換された複素環、ヘテロアリール、または置換されたヘテロアリールを形成し得る;
R3およびR4は各々が独立して、水素、アルキル、または置換されたアルキルである;あるいは、
R3およびR4は、隣接する窒素原子と共に、複素環、置換された複素環、ヘテロアリール、または置換されたヘテロアリールを形成し得る。
[45]本発明の別の実施形態は、実施形態[31]〜[43]のうちいずれかの方法を与えるが、その中において、該化合物は、化学式(Ia)の化合物:
Rは独立して、水素、ハロ、アルキル、置換されたアルキル、アルコキシ、置換されたアルコキシ、ヒドロキシ、ニトロ、アミノ、または置換されたアミノである;
nは1または2である;
R1およびR2は各々が独立して、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリール、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、アルカリール、置換されたアルカリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環、または置換された複素環である;あるいは、
R1およびR2は、隣接する窒素原子と共に、複素環、置換された複素環、ヘテロアリール、または置換されたヘテロアリールを形成し得る;
R3およびR4は各々が独立して、水素、アルキル、または置換されたアルキルである;あるいは、
R3およびR4は、隣接する窒素原子と共に、複素環、置換された複素環、ヘテロアリール、または置換されたヘテロアリールを形成し得る。
[46]本発明の別の実施形態は、実施形態[45]の方法を与えるが、その中において、Rは水素である。
[47]本発明の別の実施形態は、実施形態[45]の方法を与えるが、その中において、nは1である。
[48]本発明の別の実施形態は、実施形態[45]の方法を与えるが、その中において、R1はアルキルである。
[49]本発明の別の実施形態は、実施形態[45]の方法を与えるが、その中において、R1はエチルである。
[50]本発明の別の実施形態は、実施形態[45]の方法を与えるが、その中において、R2はアルキルである。
[51]本発明の別の実施形態は、実施形態[45]の方法を与えるが、その中において、R2はエチルである。
[52]本発明の別の実施形態は、実施形態[45]の方法を与えるが、その中において、R3は水素である。
[53]本発明の別の実施形態は、実施形態[45]の方法を与えるが、その中において、R4は水素である。
[54]本発明の別の実施形態は、実施形態[45]の方法を与えるが、その中において、該化合物は、下記化学式の化合物(ミルナシプラン):
[55]本発明の別の実施形態は、実施形態[54]の方法を与えるが、その中において記載されている化学式の化合物(ミルナシプラン)の投与量は、約400mg/日以下である。
[56]本発明の別の実施形態は、実施形態[54]の方法を与えるが、その中において記載されている化学式の化合物(ミルナシプラン)の投与量は、約25mg/日〜約250mg/日である。
[57]本発明の別の実施形態は、実施形態[54]の方法を与えるが、その中において記載されている化学式の化合物(ミルナシプラン)は、1日当たり1回またはそれ以上(例えば1回、2回、3回、4回、または5回)投与される。
[58]本発明の別の実施形態は、実施形態[31]〜[57]のうちいずれかの方法を与えるが、その中において、N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)レセプターアンタゴニストは、CGP 37−849でも、MK−801でも、AP7でもない;これは、Behav.Neural.Biol.60 p 224−(1993)およびExp.Brain Research 75 p 449−(1989)に開示されているとおりである。
(実施例1 AD/HDの動物モデルにおけるミルナシプランの効力の評価)
この研究においては、自然発生高血圧ラット(SHR)が、AD/HDの動物モデルとして使用される。SHRの動物モデルは、Russellら,2000,Behavioral Brain Research,117:69−74;Russell,2001,Metab.Brain Dis.,16:143−149;およびSagvoldenら,1992,Behav.Neural Biol.,58:103−112に記載されている。該研究は、ラットの2つの群からなる:すなわち正常な群およびSHRの群である。各群は、さらに2つの下位群に分類される:すなわちプラセボの群およびミルナシプランの群である。ミルナシプランの下位群は、さらに4つの下位群に分類され、各下位群には、5mg/kg、10mg/kg、25mg/kg、または50mg/kgのミルナシプランが投与される。ミルナシプランは、21日間にわたってラットに投与される。
この研究においては、自然発生高血圧ラット(SHR)が、AD/HDの動物モデルとして使用される。SHRの動物モデルは、Russellら,2000,Behavioral Brain Research,117:69−74;Russell,2001,Metab.Brain Dis.,16:143−149;およびSagvoldenら,1992,Behav.Neural Biol.,58:103−112に記載されている。該研究は、ラットの2つの群からなる:すなわち正常な群およびSHRの群である。各群は、さらに2つの下位群に分類される:すなわちプラセボの群およびミルナシプランの群である。ミルナシプランの下位群は、さらに4つの下位群に分類され、各下位群には、5mg/kg、10mg/kg、25mg/kg、または50mg/kgのミルナシプランが投与される。ミルナシプランは、21日間にわたってラットに投与される。
ラットは正常なものおよびSHR群に由来し、Charrierら,1996,Pharmacology and Biochemistry and Behavior,54:149−157に記載されているように、遅延された満足反応パラダイム(delayed gratification response paradigm)で訓練される。このパラダイムにおいて、ラットは、30秒後に与えられる5つのフードペレットと、5秒後に与えられる1つのフードペレットと、の間で選択することを学習する。正常なラットは、30秒後に与えられる5つのフードペレットをより高頻度で選択することを学習する。正常なラットと比較すると、SHR群のラットは、30秒後に与えられる5つのフードペレットをより高頻度で選択することを学習するのに、有意に長い時間を要する。
ミルナシプラン投与後には、SHR群のラットが30秒後に与えられる5つのフードペレットをより高頻度で選択するのに要する時間が減少し、正常なラットが要する時間に近づく。
(実施例2 チック障害の動物モデルにおけるミルナシプランの効力の評価)
チック障害に対するミルナシプランの効果を研究するために、McGrathら,2000,Brain Research,877:23−30に記載されたラットが使用される。ラットは2つの群に分類される:すなわちプラセボの群およびミルナシプランの群である。ミルナシプランの群は、さらに4つの下位群に分類され、各下位群には、5mg/kg、10mg/kg、25mg/kg、または50mg/kgのミルナシプランが投与される。ミルナシプランは、21日間にわたってラットに投与される。
チック障害に対するミルナシプランの効果を研究するために、McGrathら,2000,Brain Research,877:23−30に記載されたラットが使用される。ラットは2つの群に分類される:すなわちプラセボの群およびミルナシプランの群である。ミルナシプランの群は、さらに4つの下位群に分類され、各下位群には、5mg/kg、10mg/kg、25mg/kg、または50mg/kgのミルナシプランが投与される。ミルナシプランは、21日間にわたってラットに投与される。
異常行動、具体的にはチック様の行動を、ミルナシプラン投与の前後において数量化する。ミルナシプランの投与は、よじ登る/飛び跳ねる、かじる、および他のチック様の行動などの異常行動を減少させる。
(実施例3 AD/HDおよび合併するチック障害の患者におけるミルナシプランの効力の評価)
この研究は、ランダム化された、二重盲式の、類似の群のプラセボ対照試験である。スクリーニングの手順が踏まれ、14日間のウォッシュアウト期間が過ぎた後、被験者は、8週間にわたってミルナシプランまたはプラセボのいずれかを受け取るように、ランダムに割り当てられた。
この研究は、ランダム化された、二重盲式の、類似の群のプラセボ対照試験である。スクリーニングの手順が踏まれ、14日間のウォッシュアウト期間が過ぎた後、被験者は、8週間にわたってミルナシプランまたはプラセボのいずれかを受け取るように、ランダムに割り当てられた。
研究にエントリーする前に、各患者は、精神分析医および/または心理学者による詳細な臨床評価を受ける。AD/HDおよび合併するチック障害の診断は、この問診に基づいてなされる。
エントリー基準には、7〜15歳の年齢、AD/HDのDSM−IV診断(どのタイプでもよい)、DSM−IVチック障害(どのタイプでもよい)、および、教師または親によって評価された10項目のConners多活動指標(Goyetteら,1978,J.Abnorm.Child Psychol.,6:221−236)における年齢および性別による標準偏差ユニットのスコアが1.5以上であること、が含まれる。
除外基準には、大うつ病の徴候、全般的な不安障害、分離不安障害、または精神病の症状が含まれる。中程度またはそれよりも深刻なチック症状(Yale Global Tic Severity Scale [Leckmanら,1989,J Am Acad Child Adolesc Psychiatry,28:566−573]の総チックスコアが>22である)、または、顕著な強迫症の症状(Children’s Yale Brown Obsessive Compulsive Scale [Scahillら,1997,J Am Acad Child Adolesc Psychiatry,36:844−852]の総スコアが>15である)を有する子供も除外される。
研究にエントリーする前に、患者は、現在の投薬が徐々に減らされる。研究への参加者は、ランダムに2つの群に分けられる−すなわち、ミルナシプランの群と、プラセボコントロール群とである。各群は5人の患者よりなる。ミルナシプラン群の患者は、8週間にわたり、1.5〜2mg/kg/日のミルナシプランを投与される。プラセボ群の患者は、8週間にわたってプラセボを投与される。
患者の経過は、2週間ごとに、患者の試験群がわからない臨床医との来診において追跡される。結果の測定を追跡するために、AD/HD評定尺度、Clinical Global Impression全体的改善スコア、およびYale Global Tic Severity Scaleが使用される。
ADHD評定尺度(DuPaulら,1998,Psychol Assess,9:436−444)は、DSM−IVに由来する注意散漫および多活動/衝動の症状の18項目の尺度である。各症状には、子供の教師によって0〜3のスコアが与えられた(0=まったくない(またはめったにない)、1=ときどきある、2=しばしばある、および3=頻繁にある)。評定尺度は3つのスコアを与える:注意散漫のスコアおよび多活動/衝動のスコア(各スコアの範囲=0〜27)、ならびに総スコア(範囲=0〜54)。
この研究において、被験体の試験群がわからない臨床医は、親および子供への終点の問診の後で、および、可能であれば、子供の最終研究来診の前の週に教師と電話会話をして、AD/HD症状における全体的な改善を評定するために、Clinical Global Impression全体的改善スコアを使用する。Clinical Global Impression全体的改善スコアは、現在の症状の重症度を、ベースラインの重症度と比較する(Guy W(編):ECDEU Assessment Manual for Psychopharmacol−ogy: Publication ADM 76−338.Washington,DC,米国健康・教育・福祉省,1976,218−222頁;Connersら,1985,Psychopharmacol Bull;21:809−843)。スコア1は非常に改善したに対応し、スコア2はとても改善したに対応し、スコア3は最小の変化を示し、そしてスコア4は変化がなかったことを示す。スコア5、6、または7は悪化を示す(それぞれ、悪化が最小であった、とても悪化した、または非常に悪化した)。とても改善した、または非常に改善したに該当するスコアは、学校と家の両方におけるAD/HD症状の意味のある改善を反映し、ポジティブな反応とみなされる。
Yale Global Tic Severity Scaleは、現在のチックの重症度を測定するために設計された、準構造化された臨床的面接法である(Leckmanら,1989,J Am Acad Child Adolesc Psychiatry,28:566−573)。評定尺度は3つの要約スコアを与える:モーターの総スコア(範囲=0〜25)、音の総スコア(範囲=0〜25)、およびチックの総スコア(モーターおよび音のスコアの合計)。
処置の8週間後、ミルナシプラン群の患者は、AD/HD Rating Scale、Clinical Global Improvement Scale、およびYale Global Tic Severity Scaleにおいて改善を示した。
本明細書中に記載または援用されたそれぞれの特許出願、特許、刊行物、およびその他の公表された文献は、各々独立の特許出願、特許、刊行物、およびその他の公表された文献が、具体的かつ個別に参考として援用されることを示されるのと同じ程度に、その全体が本明細書中で参考として援用される。
本発明は、その特定の実施形態に言及して記載されてきたが、当業者は、本発明の真の精神および範囲から逸脱せずに、多様な変更がなされ得ること、および均等物に置き換え得ることを理解するはずである。加えて、特定の状況、物質、組成物、プロセス、プロセス工程を本発明の目的、精神および範囲に適合させるために、多くの改変がなされ得る。このような全ての改変は、本明細書に添付の特許請求の範囲内であることが意図される。
Claims (28)
- N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)レセプターアンタゴニストである化合物の使用であって、該化合物が、選択的なノルエピネフリン(NE)−セロトニン(5−HT)再取り込み阻害剤(NSRI)、選択的なノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NERI)、またはそれらの組み合わせでもあり、哺乳動物において、注意欠陥過活動性障害(AD/HD)、注意欠陥過活動性障害(AD/HD)に関連するチック障害、またはそれらの組み合わせを処置するための、該化合物の使用。
- 前記N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)レセプターアンタゴニストが、50マイクロモル濃度(μM)またはそれ未満のNMDAレセプターとの解離定数を有する、請求項1に記載の化合物の使用。
- 前記N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)レセプターアンタゴニストが、20マイクロモル濃度(μM)またはそれ未満のNMDAレセプターとの解離定数を有する、請求項1に記載の化合物の使用。
- 前記N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)レセプターアンタゴニストが、非競合的なNMDAレセプターアンタゴニスト、競合的なNMDAレセプターアンタゴニスト、グリシン部位アンタゴニスト、グルタミン酸部位アンタゴニスト、NR1サブユニットアンタゴニスト、NR2サブユニットのアンタゴニスト、またはNR3サブユニットアンタゴニストである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物の使用。
- 前記NMDAレセプターアンタゴニストがPCP部位NMDAレセプターアンタゴニストである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物の使用。
- 前記選択的なノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NERI)が、大脳皮質からシナプトソームへのノルアドレナリンの再取り込みを阻害するための、1マイクロモル濃度(μM)またはそれ未満のIC50を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物の使用。
- 前記選択的なノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NERI)が、大脳皮質からシナプトソームへのノルアドレナリンの再取り込みを阻害するための、100ナノモル濃度(nM)またはそれ未満のIC50を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物の使用。
- 前記選択的なNSRIのNE:5−HT再取り込み阻害割合が少なくとも約1である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物の使用。
- 前記選択的なNSRIのNE:5−HT再取り込み阻害割合が約20以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物の使用。
- 前記選択的なNSRIのNE:5−HT再取り込み阻害割合が約1:1〜約20:1である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物の使用。
- 前記選択的なNSRIのNE:5−HT再取り込み阻害割合が約1:1〜約5:1である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物の使用。
- 前記選択的なNSRIのNE:5−HT再取り込み阻害割合が約1:1〜約3:1である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物の使用。
- 前記選択的なノルエピネフリン(NE)−セロトニン(5−HT)再取り込み阻害剤(NSRI)が、アドレナリン作用性部位およびコリン作用性部位各々におけるkiが約500ナノモル濃度(nM)より大きいように、限定されたシナプス後レセプター効果を有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物の使用。
- 前記化合物が化学式(I)の化合物:
Rは独立して、水素、ハロ、アルキル、置換されたアルキル、アルコキシ、置換されたアルコキシ、ヒドロキシ、ニトロ、アミノ、または置換されたアミノであり;
nは1または2であり;
R1およびR2は各々が独立して、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリール、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、アルカリール、置換されたアルカリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環、または置換された複素環であるか;あるいは、
R1およびR2は、隣接する窒素原子と共に、複素環、置換された複素環、ヘテロアリール、または置換されたヘテロアリールを形成し得;
R3およびR4は各々が独立して、水素、アルキル、または置換されたアルキルであるか;あるいは、
R3およびR4は、隣接する窒素原子と共に、複素環、置換された複素環、ヘテロアリール、または置換されたヘテロアリールを形成し得る、請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物の使用。 - 前記化合物が化学式(Ia)の化合物:
Rは独立して、水素、ハロ、アルキル、置換されたアルキル、アルコキシ、置換されたアルコキシ、ヒドロキシ、ニトロ、アミノ、または置換されたアミノであり;
nは1または2であり;
R1およびR2は各々が独立して、水素、アルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリール、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、アルカリール、置換されたアルカリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環、または置換された複素環であるか;あるいは、
R1およびR2は、隣接する窒素原子と共に、複素環、置換された複素環、ヘテロアリール、または置換されたヘテロアリールを形成し得;
R3およびR4は各々が独立して、水素、アルキル、または置換されたアルキルであるか;あるいは、
R3およびR4は、隣接する窒素原子と共に、複素環、置換された複素環、ヘテロアリール、または置換されたヘテロアリールを形成し得る、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物の使用。 - Rが水素である、請求項15に記載の化合物の使用。
- nが1である、請求項15に記載の化合物の使用。
- R1がアルキルである、請求項15に記載の化合物の使用。
- R1がエチルである、請求項15に記載の化合物の使用。
- R2がアルキルである、請求項15に記載の化合物の使用。
- R2がエチルである、請求項15に記載の化合物の使用。
- R3が水素である、請求項15に記載の化合物の使用。
- R4が水素である、請求項15に記載の化合物の使用。
- 前記記載されている化学式の化合物(ミルナシプラン)の投与量が約400mg/日以下である、請求項24に記載の化合物の使用。
- 前記記載されている化学式の化合物(ミルナシプラン)の投与量が約25mg/日〜約250mg/日である、請求項24に記載の化合物の使用。
- 前記記載されている化学式の化合物(ミルナシプラン)が、1日当たり1回以上投与される、請求項24に記載の化合物の使用。
- 前記N−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)レセプターアンタゴニストが、CGP 37−849でも、MK−801でも、AP7でもない、請求項1〜27のいずれか1項に記載の化合物の使用。
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