[関連出願との相互参照]
適用なし
[連邦補助研究または開発に関する表明]
適用なし
[発明の背景]
従来から知られているように、変調器−復調器(モデム)は、送信信号を変調し、また受信信号を復調する電子装置である。このモデムは、一般的にはデジタル装置とアナログ通信システムとの間のインターフェースを与え、かくして2つの端末または局間においてデジタル情報のアナログ伝送を可能とする。このような伝送は、一般に帯域(バンド)制限された電話回線、携帯通信リンク、衛星リンク、およびケーブルTVのような伝送リンクを通して行われる。即ち、情報は、最大ビットエラーレートを有する周波数の所定範囲においてのみ、伝送リンクを通して伝送される。
これもまた知られているように、送信局と受信局との間の無線伝送を提供するためにモデムが使用される。このような無線通信は、線形変調技術QAM、QPSK、Pi/4DPSK、GMSKの1つを使用するVHF、IS−54(携帯)、IS−95(携帯)、SPADE(衛星)、GSM(携帯)、HDTV、SAT−TV等の種々の応用に使用できる。無線通信応用によって、それぞれの帯域幅は容認可能なビットエラーレート内に制限されている。
ほとんどのモデムはガウス雑音を補償することが可能であるが、インパルス雑音をよく管理することができない。ほとんどのモデムはまた、全てのケースで振幅歪みが容認できないので、より高電力の増幅手段を必要とする。放送環境では、インパルス雑音に対して、FM伝送が優れた対処を与えるものと理解されている。FM伝送方式ではまた、送信信号は、ほぼ100%の効率で増幅される。これは、信号の部分を搬送する情報が、信号のゼロクロス点によって識別されるためである。かくして、振幅歪みは無視される。
これらの装置の利点にもかかわらず、モデム内に使用される非線形周波数変調は、独立した数例が存在するに過ぎない。300bpsのデータレートを与える周波数シフトキーイングは、本質的に2種類の、それぞれ独立したデータビットを表すための周波数を使用する。モデムにおける次の主要な開発は、2相変調から開始して、4相、8相へと進展した位相変調の使用である。振幅および位相変調の組み合わせが後に開発され、直交振幅変調またはQAMとも呼ばれる。
続く開発は、ガウス最小シフトキーイングまたはGMSKである。一見すると、そのような符号化は、4相変調に似ているが、振幅変調を回避するために、ガウスフィルタと呼ばれる特別なローパスフィルタが、位相変調器に入力するデータに適用される。ガウスフィルタは積分器に似ているとみなされるので、そのような変調方式が周波数変調を生じさせるとする論議もなされる。これは、GMSKがFM弁別器を使用して復調できるからである。依然として、GMSKは、データの線形関数を同相および直交キャリアに適用して、線形変調を生成する。にもかかわらず、真のFMは、フィルタ処理された信号の三角関数を同相および直交キャリアへ応用することと数学的に等価である。FMは非線形変調であるが、それは、データ伝送には不十分と考えられている。何故ならば、送信周波数スペクトルが、AMモデムでのように、ベースバンドスペクトルの単純な変換とはならないからである。モデム用のFMについて考えられる別の問題は、真の信号だけを、そのモデムの電圧制御型発振器に受け入れる点である。即ち、FM用の等価な同相および直交キャリア法では、QAMモデムの二重同相および直交キャリアのダブルサイドバンドスペクトルと比べた場合に冗長であり、それ故非効率的であるとみなされるシングルキャリアのダブルサイドバンドスペクトルで生じた同じデータを、双方の経路が送信する。また、シングルサイドバンド(SSB)伝送は、モデムにとって望ましくないものと考えられていた。これは、AM−SSB信号をキャリア基準なしに効率的に変調する単純な手法がないためである。データ転送と全く関係ないアナログ技術としてのFMは、FSKに関する点を除けば、忘れ去られていた。
一般的なモデムでは、二値データは、通常ベースバンドの高次余弦フィルタを通過させられる。このフィルタは、ベースバンド信号の帯域幅を制限する。このため、そのベースバンド信号にキャリアを乗じた時に、通過帯域信号帯域幅の制御は、記号間干渉なしになされる。一般的なモデムの出力は、離散的な位相を有した信号を含んでいる。このため、そこに含まれるデータは、各ビットの位相を認識することによって識別される。例えば、信号が+90°の位相シフトを有するときはいつでも、それは0と解釈される。また、位相シフトが−90°のときは、それは1を表す。かくして、キャリアを使用する一般的なモデムでは、キャリア信号の位相および/または振幅は、現在送信されている記号によって決定される。このキャリアは、各記号の期間の殆どについて位相及び振幅の選択された値だけを仮定する。また、選択された位相−振幅対の全ての図形的プロットは、モデムの星座点と呼ばれる。一般的なモデムは、送信される記号の可能な各値について明瞭に区別できる点が星座中に存在することを必要とする。さらには、これらの点が誤割当てされた場合には、記号間干渉に起因して、またはリンク状の雑音に起因して、受信器でビットエラーが起こる。
多くの応用では、モデムの計算上の必要条件が、そのシステムの動作にとって不利益な遅延を招来する。例えば、デジタル音声伝送およびマルチアクセスネットワークは、モデムでの遅延に敏感である。さらに、モデムがデータを送受信する帯域幅の単位毎のレートは、モデム帯域幅効率と呼ばれる。デジタル情報理論の規律では、この効率は、送信信号が最大エントロピーまたはランダム性を有するときに、最大化されるものと知られている。最大エントロピー伝送は、帯域制限されたガウス雑音であって、他の特性の中で、ガウス雑音は、星座中のように、明瞭に異なる位相−振幅対には存在しない。かくして、内部処理時間を最小化し、またビットエラーレートを犠牲にすることなく帯域幅効率を最大化する通過帯域キャリアを有したモデムを提供することが望ましい。
シーケンシャルなシリーズの記号を伝送リンクを通して通信する方法は、その記号をマルチレートで多位相フィルタ処理する工程と、フィルタ処理された出力を使用してキャリアを変調する工程と、変調されたキャリアを伝送リンクを通して送信する工程と、変調された信号を受信する工程と、送信器の多位相フィルタの逆関数を受信信号に適用する工程と、逆関数フィルタの出力に対してしきい値処理および再組立て処理を施して送信記号を回復する工程とを備える。
データは、無線伝送リンクを通して、第1のモデムから第2のモデムへ伝送される。この場合、入力データから入力データフレームを形成し、その入力フレームに回転行列を乗じ、回転行列の出力を周波数変調して送信し、送信されたデータを受信して周波数復調し、復調されたデータに第2の回転行列を乗じ、逆回転されたデータを再組立して元のデータを回復する。
伝送リンクを通して記号伝送するモデムは、送信部と、受信部とを有する。送信部は、入力をパラレルデータチャネルに分割するための分割要素と、チャネル分割されたデータをパラレル信号チャネルに多位相変換するためのベースバンド送信回転部と、パラレル信号チャネルをシーケンシャルなシリアルサンプルに変換する再配置部と、変調された信号を与えるためのキャリア変調器と、変調された信号を送信するための送信器とを備える。受信部は、送信されて来た変調された信号を受信するための受信器と、受信した信号をパラレル信号チャネルに復調する復調器と、受信し復調された信号をパラレルデータチャネルに多位相変換するための受信回転部と、パラレルデータチャネルをシリアルデータ信号に組み入れるための組込要素とを備える。
これらの方法の多位相フィルタ処理およびこのモデムは、送信記号のFM変調を可能とする。これは、元の記号の真の成分だけが生成されているからである。FMは、入力信号を周波数変調したか位相変調して達成されたにかかわらず、非ガウス雑音に対して強化された免疫を与え、非コヒーレントなIFを使用し、かくしてキャリア回復を必要とせず、A/D変換器がない分だけ従来のモデムよりも安価であり、FMキャプチャー効果によって低い共干渉を与え、しかも交換可能な演算子を使用することによって、アナログ信号との互換性がある。B級やC級のように電力効率的ではあるが潜在的に線形でない増幅器が使用可能である。これは、ゼロクロス点がデータ内容を決定することに使用でき、キャリア回復が必要とされないためである。QAMのような変調方式を使用するモデムは、そのように非線形増幅を使用できない。更に、ここに開示される方法およびモデムを使用する衛星モデムは、TWTバックオフ電力を節約し、かくしてよりエネルギ効率的である。これは、パーソナルコンピュータがビットエラーレートを犠牲にすることなく、より高いデータレートを達成する一方で、相互変調が問題とはならないからである。
多位相フィルタ処理は、第1の実施形態では、ウエーブレット型フィルタ(例えば、直交ミラーフィルタ)対によって実施される。分割要素は、線形位相FIRベクターフィルタ処理の前に、複数のパラレルデータチャネル中のシリアルデータを分割する。この場合、フィルタ係数は、正方行列である。これにより、入力データは、パラレル信号チャネルに変換される。この変換は、入力データベクターの畳み込み回転による。出力信号の各座標は、その隣と僅かに重なる周波数サブバンドに制限される。第1の実施形態の回転に先行して、送信部のプリエンファシスは、情報の殆どを低いベースバンド周波数域に配置する。これは、FM弁別器の、周波数の2乗に比例した雑音確率密度関数に起因する。受信器のデエンファシスは、総合利得等式への追加を生じる。この等式は、一実施形態では、FM送信器の利得による貢献度と、デエンファシス利得と、雑音低減利得とを含む。各サブバンド内の分割されたデータビットを表すパルス振幅レベルは、全サブバンド内の全レベルが整数値に対応している限り、整数のビットに対応することを必ずしも必要としない。
受信器部分は、元のデータを回復する逆変換を行うための逆回転フィルタを提供する。一実施形態では、逆変換は、変調変換と交換可能である。別の実施形態では、受信器の逆回転フィルタの係数は、伝送路歪みを補償する等化用に適応的に選択される。これは、アナライザーが部分レートのFIRフィルタであるからである。かくして、近完全再構築フィルタが使用される。しきい値演算子は、最近接の整数座標値を最有望記号とする。
別の実施形態では、交換可能な回転フィルタおよび逆回転フィルタは、ベクターの幾何学的回転を記述する基本行列から求められる。それらの関数は、データ座標系内の入力データベクターを、信号座標系内の信号ベクターに変換するためのものである。この結果、信号ベクターのシーケンシャルに直列化された座標が、帯域制限されたアナログ信号のデジタルサンプルを形成する。行列に取り組む更に他の方法は、離散的ウエーブレット変換による数学的変換である。
送信器部分と受信器部分のそれぞれにおいて、理想的な回転演算子は、計算的に効率のよいマルチレートのウエーブレット型フィルタバンクである。FM送信器の変調器への導入に先行した、ベースバンド信号の対数増幅は、受信器の変調利得を改善する。さらには、送信器に先行する対数増幅と受信器に後続する逆増幅との副産物として、送信チャネルに導入された雑音は減衰される。
リンク内の分散的な障害は、サブバンド間に相対的な位相シフトを生成する。この場合、ウエーブレットの「直交性」は失われ、回復された記号に自己干渉としてクロスタームが現れる。
[発明の簡単な要約]
ここで開示される発明では、特別な微分位相シフト用のクロスタームを近づけるために、固定されたタップ重みフィルタが受信器で使用される。このフィルタの出力は、測定された微分位相シフトの既知の関数F(p)によって重み付けされ、さらに重み付けされたフィルタ出力は、回復された信号から減算されて、自己干渉を除去する。好ましい設計では、フィルタの固定された係数は、微分位相シフトの1つの値における内積から計算される。位相が測定できない場合には、適応コンバイナーが使用される。
この発明の前述した特徴は、この発明自体と同様に、以下の図面の詳細な記述から一層完全に理解される。
[発明の詳細な説明]
図1を参照すると、信号分解−再合成システム10は、1つの入力ポート14aおよび一対の出力ポート16a,16bを有するアナライザー12を備える。出力ポート16a,16bのそれぞれは、シンセサイザー20の対応する一対の入力ポート18a,18bに結合されている。
アナライザーの入力ポート14aに与えられたアナログ入力信号Xは、一対の信号W’およびV’へと分解され、それぞれは出力ポート16a,16bの対応するポートに与えられる。同様に、シンセサイザーの入力ポート18a,18bに与えられた一対の入力信号W’,V’は、シンセサイザーの出力ポート20aで出力信号Yに再構築される。アナライザー12とシンセサイザー20によってなされる分解および再構築過程は、信号V’およびW’と同様に、以下で更に説明される。ここでは、入力信号Xが信号V’およびW’へ分解される、と言うに留めておくが、信号V’およびW’は入力信号Xを確実に再構築するように後で組み合わされる。
ここで留意されるべき点は、ビルディングブロックであるサブアナライザーやサブシンセサイザーはデジタル的に動作するが、説明を明瞭にするために、システム内でアナログ信号とデジタル信号を相互に変換するに必要な信号調整回路は省略されている。そのような信号調整回路は図4に関連して以下で説明される。しかしながら、簡単に言えば、そして図4に関連して以下で説明されるように、システムビルディングブロック例えばサブアナライザーやサブシンセサイザーへの入力信号がアナログ信号に対応しているときに、その信号は、先ずナイキストフィルタ処理を与えるように選択されたフィルタ特性を有するフィルタを通して供給されるべきである。適切にフィルタ処理された信号は、次にアナログ/デジタル変換器(ADC)によってサンプリングされる。同様に、システムビルディングブロックからの信号がアナログ信号となる場合、その信号は、デジタル/アナログ変換器(DAC)に供給され、そしてナイキストフィルタ処理を与えるように同様に選択されたフィルタ特性を有する第2のフィルタへ供給される。
サブシンセサイザー20とサブアナライザー12は、互いに相手の逆関数動作を行う。即ち、サブアナライザーからの信号W’およびV’が入力信号としてサブシンセサイザーの入力ポート18a,18bに加えられる場合、所定の遅延時間を除けば、出力信号Yは入力サンプルXのシーケンスと等しくなる。好ましい実施形態では、この遅延時間は1サンプル時間に対応する。
同様に、信号V’,W’をシンセサイザーのそれぞれの入力ポート18a,18bに加え、そして結果として生じた出力信号Yをアナライザー入力ポート14aに加えると、アナライザーのそれぞれの出力ポート16a,16bには、元の信号W’およびV’がえられる。
上述したように、アナライザー12とシンセサイザー20は、信号分解および再構築機能を提供する。以下で説明されるように、サブアナライザーとサブシンセサイザーは、ビルディングブロックとして使用でき、またより複雑な回路を提供するために結合させることができる。これらの回路は、それ自体が結合されて種々の信号送受信システムを与えるためのものである。さらに、アナライザー12とシンセサイザー20は、以下で説明される他のシステムビルディングブロックと同様に、ハードウエア、ソフトウエアまたはハードウエアとソフトウエアの組み合わせによって、効率的に実施できる。
ここで説明されるアナライザーとシンセサイザーは、順序付けられた数列に従って動作する。この数列は、限定されるものではないが、アナログ/デジタル変換器(ADC)からのサンプルである。例えば、サンプルは、X(0),X(1),X(2),X(3)のように表現される。この場合,X(0)は最新のサンプルである。二値数X(0)〜X(3)のそれぞれは、所定の値の範囲内で特別な値を有する。例えば8ビットADCは、−128から+127までの10進数値の範囲を与える。
サンプルX(0)〜X(3)のシーケンスは、4次元空間におけるベクター[X]の座標と考えられる。同じ4次元空間においてXの座標系から他の座標系へ線形変換することができる。かくして、ベクターXは、「回転」行列CによってベクターYに変換される。行列表記法では、これは次のように表現される。
新座標系の互いに直交した軸を使用すると、ベクターYは、新変換軸上へのXの投影に対応した成分を有する。そのような投影は、ベクターのドット積(内積)を形成することによって与えられる。
例えば4次元の場合、1組のウォルシュ符号Code1〜Code4は、次のように与えられる。
このウォルシュ符号Code1〜Code4は、この時間順序空間の4次元の直交座標軸を表している。符号Code1〜4は、4の平方根に対応する長さを有し(即ち、Code1とそれ自身のドット積は4に等しい)、かくして単位ベクターではない。
回転行列Cは、次のように表される。
即ち、回転行列Cの行C1〜C4は、ウォルシュ符号ベクターの成分に対応する。この場合、回転行列CとベクターXの行列乗算は、ベクターC1〜C4の特別な1つとベクターXとのドット積と等価になる。行ベクターXの成分は、次のように表される。
新状態ベクターは、次のように表される。
ここで、*は、[X]とウォルシュ符号ベクター[C1]〜[C4]とのドット積演算を示す記号である。新状態ベクター[Y]は、[X]によって定義される元の状態を完全に記述し、4サンプルX(0)〜X(3)の各群毎に計算される。
線形回転演算は、確実に反転可能であって、次の関係にある。
ここで、[C^]は、[C]の逆関数である。行列C^は、以下の関係式から求められる。
ここで、Lは、行列C^の行または列ベクターの次元に対応する。
2次元の場合には、ウォルシュベクターは、C1=[+1,+1]およびC2=[+1,−1]として表される。かくして、アナライザーは、上記の2次元ベクターを使用して、2つの出力を有するように定義される。
ウォルシュベクターは、どの次元でも、2次元ベクターC1,C2によって生成される。即ち、1組のウォルシュ符号を2次元ジェネレータ行列に置換すると、2倍の次元を有した新たなウォルシュ符号が与えられる。この手順を使用すると、アナライザーを与えるために必要なN次元変換が得られる。かくして、ウォルシュベクターがそれらの2次元ウォルシュジェネレータから構築された手法故に、より高次元のアナライザーおよびシンセサイザーは、2次元の場合から構築できる。
この行列変換法によって、モデムまたは信号暗号化装置を提供するための行列等式が生成される。必要な計算中の基本的演算は、ターム(項)の加算と減算である。
ここで留意されるべき点は、N次元を有する行列による行列方法を使用して与えられるカスケードアナライザーやシンセサイザーの場合、最低周波数チャネルは、行列ベクターC1によって演算され、それに後続する各チャネルiは、対応する行列ベクターCiによって演算され、最後に最高周波数チャネルは、行列ベクターCNによって演算される。かくして、4次元行列の場合、最低周波数チャネルは、行列ベクターC1によって演算され、そして最高周波数チャネルは、行列ベクターC4によって演算される。この行列方法によって与えられるツリーアナライザーやシンセサイザーの場合は、図1Cおよび1Dを参照して以下で説明される。
もう1つの好ましい方法では、サブアナライザー出力信号V’およびW’を記述する等式(Equation)は、次のように与えられる。
ここで、V’はサンプリングされた入力信号Xのスケーリングまたはフィルタリング関数に対応する。W’はサンプリングされた入力信号Xの残差または導関数に対応する。X(n)は最新入力サンプルに対応する。X(n−1)およびX(n−2)は2つの先行入力サンプルに対応する。SHIFTは2の正の累乗(例えば32や64等)に等しい変数の組に対応する。またBNは0とSHIFTとの間の値を有する正の整数に対応し、好ましくは比較的小さな値である。
以下で更に詳細に説明されるように、等式Equation1および2によって定義されるスケーリング関数V’と残差W’は、入力信号Xの交互入力サンプルで評価される。この場合、残差W’の値は、「中央」のサンプルX(n−1)と、このX(n−1)に最近接の、ここではX(n)とX(n−2)として表された2つのサンプルを結ぶ線の中間点との間の差の2倍に対応する。等式Equation1および2が交互入力サンプルで評価されるとき、奇数(または偶数)だけの「中央点」が選択されて計算される。かくして、サブアナライザーの出力レートは、入力信号Xの入力レートの1/2に対応する。
残差W’はまた、中央点を中心とした減速度としても解釈できる。かくして、上記等式Equation1および2において、残差W’を加速度として定義し、且つ−W’でW’を置換することが可能である。これにより、残差W’に対する代替の本質的に等価な表現が得られる。
より近い隣接点を使用し、中央点について評価された関数の高次または1次の導関数として残差W’を定義する他の実施もまた使用できる。
上述した残差W’(n)の解釈は、残差W’(n)が、交互サンプル回りの傾斜変化にだけ応答することを示している。かくして、本発明における残差W’の1つの特性は、中央点を中心とした傾斜が一定であるときに、残差W’がゼロ値を有するように与えられるということである。
通常定義されている残差W(n)は、本発明で定義されている有効残差W’(n)と、次のような関係にある。
本発明の残差W’(n)に対する定義の結果として、(通常の解法で定義された残差W(n)ではなく、)残差W’(n)の線形または非線形量子化に基づく信号圧縮は、圧縮方式に対して改良された性能を生じる。これは、以下に示すような残差W(N)の通常の定義に基づいている。
サブシンセサイザーの演算は、下記の等式Equation3および4によって記述される。
ここで、SHIFTは2の累乗に対応し、また
である。Y’(−)は、予め計算され記憶された(即ち、再帰的な)Y’(n)の値に対応する。
変数SHIFTを上記のように定義し、また2の累乗による乗算および除算が2値コンピュータ上では右または左シフトと等価であるという事実の利点をとることによって、これらの等式の実用上の実施は、比較的少なく単純なハードウエアによってなされ、それ故好ましいものである。
かくして本発明の解法では、残差W’は、特別な特徴を与えるように定義されており、またシーケンスV’は、そのシーケンスの余りを与えるように定義される。
図1Aを参照すると、いわゆる「カスケードアナライザー」24は、複数の、ここではN台のサブアナライザーを備える。このカスケードアナライザー24は、信号V1’を第1のサブアナライザー24aの出力ポートから第2のサブアナライザー24bの入力ポートへ与え、信号V2’を第2のサブアナライザーの出力ポートから第3のサブアナライザー(図示せず)の入力ポートへ与え、以下同様にすることによって、与えられる。この過程は、サブアナライザー24Nが所定のサンプルレートを有した信号VN’を与えるまで続く。
例えば、通信システムでは、上述したように、複数の、例えばN台のサブアナライザーを結合することが望ましい。この場合、通信リンクの下側周波数カットオフの2倍以下であるサンプルレートを信号VN’が選択的に有するように、Nは選択される。各サブアナライザーはその入力へのサンプルレートを半分にするので、カスケードアナライザーの種々の出力信号W1’,W2’・・・WN’は、異なるレートで与えられる。
図1Bを参照すると、いわゆる「カスケードシンセサイザー」26は、図1に関連して説明されたタイプの複数のサブシンセサイザー26a〜26Nによって与えられる。このカスケードシンセサイザーは、カスケードアナライザーの逆関数演算を与えるように動作する。
図1Cを参照すると、いわゆる「ツリーアナライザー」28は、複数の、それぞれが図1に関連して説明されたタイプのサブアナライザー29a〜29gを適切に結合するによって与えられる。かくして、スケール関数V’(N)から発するカスケードに加えて、1以上の残りのシーケンスW’(N)から発する残りのカスケードを有することも可能である。即ち、残りのシーケンスW’(N)は、それら自身を多分解能解析用の入力と考えることができる。従って、その場合には、等しいサンプルレートを有するスケーリング関数V’と残りのシーケンスW’を与えることが可能である。ここで、そのサンプルレートは、元のサンプルレートの1/8に対応する。
ツリーアナライザー28は、残りのシーケンス出力W’のそれぞれを、そのようなシーケンスの全てが1つのレートに落とされるまで、解析することによって与えられる。このレートは、通常はアナライザーが協同する伝送リンクの下側カットオフ周波数のナイキストレート以下である。3レベルのアナライザーツリー28は、ここでは、アナログ入力信号Xのサンプルレートrの1/8で、その出力29a〜29hの全てを有するように与えられる。各出力サンプルは、入力サンプルよりも多いサンプル当たりのビットを有することができるが、それらの出力サンプルによって表わされる数は、通常は大きさが小さく、量子化器(図示せず)によって簡単に再量子化される。
図1Dを参照すると、いわゆる「ツリーシンセサイザー」30は、複数の、それぞれが図1に関連して説明されたタイプのサブシンセサイザー31a〜31gによって与えられる。このツリーシンセサイザー30は、ツリーアナライザー28(図1C)の逆関数演算を与えるように動作する。
ここで留意されるべき点は、図2〜8に関連して以下で説明される応用のそれぞれにおいて、図2〜8を通して使用されるタームアナライザーは、サブアナライザー、カスケードアナライザーまたはツリーアナライザー要素等を示すことに使用されるということである。図2〜8で参照されるタームシンセサイザーは、サブシンセサイザー、カスケードシンセサイザーまたはツリーシンセサイザー要素を示すことに使用される。これらのそれぞれは、図1〜1Dに関連して説明されたものである。アナライザー及びシンセサイザー要素のそれぞれは、行列変換技術によって与えられる。この代わりに、アナライザー及びシンセサイザー要素のそれぞれは、上記等式Equation1および2の形態をとる3点等式によって与えられる。さらには、アナライザー及びシンセサイザー要素のそれぞれは、以下の形態の等式によって与えられる。
アナライザー及びシンセサイザーがツリー型のアナライザー及びシンセサイザーとして与えられる場合、i=1,3,5・・・であれば、行列ベクターCiは、ツリーアナライザーまたはシンセサイザーの底部のチャネルで動作する。一方、i=2,4,6・・・であれば、行列ベクターCiは、ツリーアナライザーまたはシンセサイザーの上半分のチャネルで動作する。かくして、チャネル29a〜29hを有するアナライザー28がベクターC1〜C8を有する8次元行列によって与えられる場合、チャネル29h〜29eは、行列ベクターC1,C3,C5およびC7によって演算され、またチャネル29d〜29aは、行列ベクターC2,C4,C6およびC8によって演算される。
図2を参照すると、信号暗号化装置32は、そこへ結合された、例えば、乱数発生器である信号暗号化回路34を有したアナライザー33を備える。このアナライザー33は、複数の、ここでは5台のサブアナライザーを図示のように結合することによって与えられる。サブアナライザーのそれぞれは、図1に関連して上述したサブアナライザーと同様の型であり、かくして同様の手法で動作する。複数のアナライザー出力ポート33a〜33fのそれぞれは、シンセサイザー36の同様の複数の入力ポート36a〜36fの対応するものに結合される。同様に、シンセサイザー36は、複数の、ここでは5台のサブシンセサイザーを図示のように結合することによって与えられる。サブアナライザーのそれぞれは、図1に関連して上述したサブアナライザーと同様の型であり、かくして同様の手法で動作する。
ここで留意されるべき点は、ここでは5台のサブアナライザー及びサブシンセサイザーが図示のように接続されているが、当業者には認められるように、如何なる数のサブアナライザーおよびサブシンセサイザーでも使用できるということである。ここでまた留意されるべき点は、上述したように、カスケード型のサブアナライザー及びサブシンセサイザーがここでは図示されているが、ツリー型のサブアナライザー及びサブシンセサイザーもまた使用できるということである。従って、1つの入力信号Xは、任意の数Nの信号に分解される。一般に、そして図1に関連して上述したように、アナライザー、従ってその数の結合されたサブアナライザーによって行われる分解手順は、N番目の信号VNのナイキスト周波数が入力信号Xの既知の下側カットオフ周波数以下になったときに終わることが好ましい。
信号暗号化回路32の一般的な動作概観では、例えば音声信号である入力信号Xは、アナライザーの入力ポート33a’に供給され、アナライザー33によって図1に関連して説明された手法で分解される。ここでは、入力信号Xは、図示のように、信号V1,V2,V3,V4,V5およびW1,W2,W3,W4,W5に分解される。暗号化するために、デジタル乱数発生器である乱数発生器34は、残差W1’〜W5’の信号経路のそれぞれに暗号化信号を供給する。残差W1’〜W5’のそれぞれの値は、このようにして、信号E1〜E5に対応するように修正される。
ここに示されるように、残差W1’〜W5’を暗号化するための1つの方法は、残差W1’〜W5’の符合と論理値に対応した値を有する論理的変数との間の排他的論理和(XOR)演算を与えるものである(図示のように)。この代わりに、もう1つの暗号化方法は、複数の個別秘密2値ビットストリームを、残差W’の1つまたは全てに加算することによって与えられる。一般には残差信号W’は、比較的低い電力レベルを有するように与えられる。従って、上述した暗号化技術のいずれかまたは双方によって、残差信号W1’〜W5’は、単なる雑音(即ち、雑音に「埋まった」)信号として現れる。当業者には周知の他の暗号化方法もまた使用できる。例えば、チャネルの順列や、記号の置換である。ここで留意されるべき点は、その代わりに、信号V1’〜V5’ のそれぞれが暗号化されるか、信号WK’およびVK’の組み合わせが暗号化されてもよいということである。
ここで留意されるべき点は、信号暗号化装置32が、暗号化の分野では一般的なデジタル暗号フィードバックを含むように修正できるということである。本発明においてデジタル暗号フィードバックを与えるためには、アナライザーからの5つのXOR出力のそれぞれは、暗号化用のデータ暗号化標準(DES)の手法で、5つの独立した秘密乱数発生器(図示せず)の入力にフィードバックされるべきである。
ここでまた留意されるべき点は、当業者には周知であるデジタル乱数を与える手段、例えば限定されるものではないが、DESを、暗号フィードバック付きまたは無しで使用できるということである。さらに、残差W’の値を修正するために、乱数を求めて使用する他の方法、例えば限定されるものではないが、XOR関数を使用しない付加的雑音技術等もまた使用できる。
暗号化された信号E1〜E5は、次にアナライザーの出力ポート33a〜33fの対応するものに結合され、それからシンセサイザーの入力ポート36a〜36eに供給され、また未修正信号V5は、入力ポート36fに供給される。シンセサイザー36は、等式Equation3および4を使用して、そこへ供給された信号E1〜E5を再構築し、これにより再構築出力信号Yを与える。この信号Yは、例えば通信チャネル(図示せず)を通して送信される。
受信器(図示せず)は、送信されてきた信号を受信し、さらにその信号を解析して、信号V5およびE1〜E5を回復する。この受信器は次に、信号E1〜E5を解読して信号W1〜W5を回復し、さらに再合成して元の信号Xを得る。
シンセサイザー36は、信号E1〜E5を再構築するが、この場合シンセサイザーの出力ポートに与えられる再構築された結果の信号X’がナイキスト帯域幅を超えて占有することがないようにすべきである。かくして、最高周波数暗号化ステージのサンプリング周波数を、送信チャネルの上側カットオフ周波数の2倍に対応させることは可能である。
シンセサイザーの出力ポートに与えられる再構築された暗号化信号X’は勿論、導入された付加的雑音に起因して、異なる(雑音的な)電力スペクトルと、異なる平均総電力とを有する。入力信号電力は、総チャネル電力を制限するために減少させられる。総チャネル電力を制限する手段は、暗号解読器とADCを同期させることに使用されるパイロットトーンの振幅を使用することによって、電力ファクターを受信器へ送信する手段を含む。これらのパイロットトーンは、例えば位相同期ループによってADCのクロックを求めることに使用されるもので、明示狭帯域トーンとして与えられる。あるいは、これらのパイロットトーンは、残差W’に付加されて、この残差の真の値を隠すための秘密符号化シーケンスとして与えられる。受信器は、時間同期を確立するために、適切な残差と相互に関係する。この方法によって同期を獲得するに必要とされる好適な相関関係を有する特定の符号化されたシーケンス(例えば、GOLD符号やJPLレンジ符号)は、スペクトラム拡散通信方式の分野で知られている。
さらには、暗号化装置は、受信器からの信号を、元の入力信号とほぼ同程度に確実に回復させる。但し、チャネルからの雑音と、送信器および受信器の末端部内におけるADC変換器の不正確な時間同期に起因した雑音的な変動は、存在する。
信号暗号化装置は、線路等化用の手段(図示せず)も備える。そのような手段は、モデム設計の分野の当業者には周知である。周波数(傾斜)および位相シフトを伴う線路損失の変化は、適応フィルタ処理によって補償される。しばしば、フィルタパラメータを設定するための既知のエネルギの先駆バーストと、受信信号の一定の質に基づいて等化器の係数を周期的に修正するための手段とを有する。
ここで留意されるべき点は、信号暗号化装置32で入力信号Xの値がゼロに設定される場合、信号暗号化装置の出力信号X’は、暗号化乱数発生器によって発生されたランダムノイズに対応するということである。かくして、この場合には、信号暗号化装置32は、広帯域の乱数発生器として作用する。このように、信号暗号化装置は、線路等化過程で使用される線路上の信号を与えるための発生器として使用される。
さらには、アナライザーは、各チャネルのチャネル応答を測定することに使用される。かくして、シンセサイザーが各チャンネルにテスト信号を与える場合、アナライザーは、各チャネルのチャネル応答を測定して、各チャンネルの損失を決定する。このようにして、アナライザーとシンセサイザーは、線路等化法を与えるために使用される。
図4に関連して以下で説明されるように、この概念は更に、送信端ではシンセサイザーだけを、また受信端ではアナライザーだけを使用することに洗練される。
ツリーでの遅延(Delay)は、以下の式に対応する。
ここで、Lはツリー内のレベルの数である。かくして、5レベルのツリーのツリー過程は、31サンプルだけの比較的短い遅延を導入する。同様に、カスケードシステムについては、各信号経路内の遅延は、Lがカスケードの特別な経路のステージの数に対応する場合の上記等式によって与えられるものと信じられている。人間の聴力は、殆どの伝送媒体に見られる混成結合器からのエコーに感受性があるので、この短い遅延は、望ましい特徴である。
図3を参照すると、高信頼性信号を送受信するための送受信システム40は、送信部40aと、受信部40bとを備える。送信部40aは、信号調整回路41を有する。この回路は、好ましくはそこへ供給されるアナログ信号に対してナイキストフィルタ処理をするように好ましく選択されたフィルタ特性を有する入力フィルタ42を含んでいる。このフィルタ42は、アナログ信号をアナログ/デジタル変換器(ADC)43に結合する。この変換器は、受信したアナログ信号を、このアナログ信号を表すデジタル信号に変換する。
ADC43の入力ポートに供給されたアナログ信号は、増幅器または他の前処理回路(図示せず)を通してADC43に供給される。好ましくは、低雑音増幅器や緩衝増幅器のような信号前処理回路は、比較的広帯域の増幅器であって、さらにはその増幅器の帯域にわたって比較的低レベルの位相分散を有するものとして特徴付けられる。即ち、この増幅器は、増幅出力信号に位相シフトを与える。この位相シフトは、少なくとも送信信号の帯域にわたって、そこからの増幅出力信号と実質的に等しい。さらに、ADC43のサンプリングレートは、ナイキストサンプリング周波数の2倍より大きい(即ち、入力スペクトラムにおける最高周波数成分信号の周波数の2倍より大きい)ことが望ましい。
ADC43は、所定のサンプリングレートに従ってフィルタ42から与えられる信号を変換して、デジタルワードのストリームを与える。ADC43の出力で、そのようなデジタルワードのストリームは、信号暗号化回路44に供給される。
信号暗号化回路44は、そこへ供給された信号を適切に分解して複数の信号にするアナライザー46と、分解された信号を暗号化する暗号化回路48と、そこへ供給された信号を組み合わせて再構築された暗号化信号にするシンセサイザー50とを備える。信号暗号化回路44は、図2に関連して上述され信号暗号化回路32と同じタイプであって、同様の手法で動作する。
信号暗号化回路44は、秘密数を残差W’に加算することによって、信号を暗号化する。この場合、秘密数の値は、送信側と受信側だけに知られている。そのような追加は、典型的にはモジュロ2でなされる。即ち、ビット毎の排他的論理和(XOR)関数を残差信号に与えることによって、である。そのような追加はまた、単純にモジュロをデータの実際のデータサイズに加えることによっても達成される。
暗号化装置48は、そのようにすることが要求される時間の数に基づいて異なる秘密数を与えるタイプか、出力がその入力だけに依存するタイプの秘密数発生器として提供される。後者のタイプは、しばしば自己同期的である。前者のタイプは、受信器が何らかの理由で送信器とのビットまたはワード同期を失なった場合に、符号化装置と解読装置との間の同期を失うことがある。
暗号化装置48は、複数のチャネル間の順列演算を提供する。その代わりに、暗号化装置48は、置換演算を提供する。あるいはその代わりに、暗号化装置48は、図2に関連して説明された論理または演算を提供する。
信号暗号化回路44は、再構築された暗号化信号を、出力信号調整回路51の入力ポートに供給する。この回路は、デジタル/アナログ変換器(DAC)52を有する。この変換器は、対数ADCとして与えられるもので、例えばそこへ供給される暗号化されたビットストリームを、この暗号化されたビットストリームを表すアナログ信号に変換する。次に、このアナログ信号は、上述したように適切に選択されたフィルタ特性を有する出力フィルタ54に供給される。このフィルタ54は、そこへ供給された信号を、例えば電話回線として与えられる送信チャネル56の第1の端部へ結合する。この送信チャネル56の第2の端部は、送受信システム40の受信部40bへ結合される。
一般的な概観では、受信部40bは、そこへ供給された高信頼性信号を受信し、そしてその信号を解読して、明瞭なテキスト信号を出力ポートに与える。送受信システム40の受信部40bは、暗号化された信号を、入力信号調整回路57を通して、適切に選択されたフィルタ特性を有する入力フィルタ58の入力ポートで受信する。入力フィルタ58は、この信号をADC60へ結合する。このADC60は、アナログ信号を変換し、上述したと同様の手法で、デジタルワードのストリームを与える。フィルタ58は、ADC60のサンプリング周波数の1/2に対応するローパスフィルタ周波数カットオフ特性を有するように与えられる。ADC60は、デジタルワードのストリームを解読回路61に供給する。この解読回路61は、そこへ供給された信号を複数の信号に分解するアナライザー62と、解読装置回路64とを有する。
システムの送信部40aの符号化回路48が秘密数を使用して信号を暗号化した場合には、解読装置回路64は、その秘密数を減算して、元のデータを回復する。
解読装置64とシンセサイザー66の組み合わせは、送信器における暗号化装置48とアナライザー46の組み合わせの逆関数演算を行い、そして解読され、適切に再合成された信号を、デジタル/アナログ変換器(DAC)68へ供給する。このDAC68は、そこへ供給されたビットストリームに対応したアナログ信号を与え、そしてそのアナログ信号を、上述したように適切に選択されたフィルタ特性を有する受信器出力フィルタに供給する。
アナライザーとシンセサイザーがカスケード型またはツリー型として与えられた場合は、上述したように、レベルの数は、典型的には、入力信号帯域幅の下限によって決定される。かくして、殆どの応用に対する実際の必要条件は、ハイパスまたはバンドパスフィルタ特性を有したプリフィルタ(図示せず)を、信号調整回路41の前段に配設することである。
どの場合にも、そのようなフィルタが与えられるか、与えられないかにかかわらず、送信側および受信側のシステムは、通信リンク56の帯域幅を超えた帯域幅を有した信号を回復しない。通信リンク56が電磁気的または音波的なエネルギによって与えられる応用では、そのリンクの帯域幅は一般的に、例えば単一のテレビ(TV)チャネルのような実用上の限界を有する。
図4を参照すると、信号暗号化システム72は、入力ポートでアナログ信号を受信し、そのアナログ信号をフィルタ処理し、さらにフィルタ74とADC76を通して、図4に関連して上述されたと同じ手法で、第1のビットストリームに変換する。このビットストリームは、ADC76から信号暗号化装置78に供給される。信号暗号化装置78は、これらの信号を、分離された信号チャネル上で直接受信する。乱数発生器80が信号暗号化装置78に結合され、ランダムなビットストリームを信号暗号化装置78に供給する。このランダムなビットストリームは、第1のビットストリームを修正して、暗号化された信号を与える。信号暗号化装置78は、これらの信号を組み合わせ、その出力ポートに再構築された暗号化信号を与える。
暗号化された信号は、次に信号暗号化装置78からDAC82の入力ポートに供給される。このDAC82は、暗号化されたビットストリームをアナログ信号に変換する。このアナログ信号は、適切にフィルタ処理された信号を与えるフィルタ84を通して、信号組み合わせ回路86の入力ポートに結合される。
タイミング回路87は、タイミング信号を与えるためのタイミング信号発生器88を有する。このタイミング回路87は、受信器92に対して、アナログかデジタルのタイミング信号を与える。このため、ここではオプションのADC90が、タイミング信号発生器88と加算回路86との間に結合されている。DAC90がタイミング回路90に含まれている場合は、タイミング信号は、オプションの信号経路91’を通してDAC8dのデジタル入力ポートへ供給される。ADC90が省略される場合は、タイミング信号は、図示のように信号経路91を通して加算回路86へ供給される。
ここで留意されるべきであり、しかも当業者が認識することになる点は、上記の等式に従って動作するアナライザーおよびシンセサイザーを使用したアナログ通信リンクの受信端における情報の回復に内在するものは、システムの送信部と受信部がサンプリングの確実な時間で一致するように、システムの送信部のADCとシステムの受信部のDACを同期させる必要性である、ということである。同期における大きな不正確さは、受信器から訳の判らない言葉を生じさせる。タイミング同期の小さな統計的なジッターは、リンク上の雑音と同様の影響を与える。
タイミングおよび同期方式は、当業者には知られている。例えば1つの方法では、送信部のサンプリングレートにロックされた(即ち、由来する)発振器は、リンクを通して送信される。受信された発振器信号は、受信器のサンプリング用クロック信号を(例えば、位相同期ループ技術によって)得ることに使用される。高信頼性の送受信システム40(図3)で述べられたように、タイミング情報は、暗号化装置と解読装置にそれぞれ適用される。
カスケード型またはツリー型のアナライザーおよびシンセサイザーを使用するシステム(図1A〜1D)では、2種類のタイミング信号が必要とされる。これは、システムの送信部における固有の遅延が、同期されるべき信号ビットだけでなく、「ワード」を有効に定義するからである。そのようなワード同期は、第2の送信側発振器を設けることによって達成される。この第2の発振器は、第1の発振器にロックされる(その代わりに、第1の発振器が第2の発振器にロックされ、かくしてワード同期だけを必要とする)。また、第2の発振器は、カスケード中のレベルの数と、与えられるシステム(即ち信号暗号化装置、信号圧縮器またはモデム)のタイプとに依存したレートで動作する。このような発振器信号は、システム情報と同じ帯域幅を占有することがある。これは、その発振器信号が、既知の周波数および一定振幅の信号を除去するための既知の技術によって減算されるからである。実際には、これら2種類の発振器は、特別な周波数と特別な振幅を有する信号を与えることが好ましい。実際には、これら2種類の発振器は、リンクの帯域限界を超えない必要条件を維持しながら、システム情報の周波数帯域幅の最も上側および下側の帯域エッジを規定する周波数に対応した周波数を有する信号にロックされることが好ましい。
添付されているシステム情報信号から干渉信号(即ち、受信した発振器信号)を除去する1つの方法は、結果として得られる差が、既知の(受信された)発振器に対する狭帯域の相関をもはや含まなくなるまで、既知の(受信された)周波数の量を減算するフィードバックループを形成することである。位相同期ループの動作は、入力信号に局部発振器(これは、受信されたタイミング信号にロックされる)を乗じ、その結果をローパスフィルタで積分することである。
システムの送信部と受信部との間のタイミング同期のもう1つの方法は、図7に関連して以下で説明される。
図5を参照すると、アナログ媒体を通してデジタルデータを伝送するためのシステム94は、変調器−復調器(モデム)95を含む。ここでは、モデム95の変調器部分だけが図示されている。モデム95は、デジタルデータを、データ伝送用に適切に選択された所定の長さを有するフレームまたはバイトに形成するためのデータアセンブリユニット96を有する。このデータアセンブリユニットは、データをシンセサイザー98の入力ポートに供給する。このシンセサイザー98は、図1に関連して上述されたサブシンセサイザー20の技術に従って、データをビットストリームに形成する。即ち、ここでは、送信されるデジタルデータがシンセサイザーの残差入力W1’〜WN’に適用される。このデータは、暗号化シーケンスを与える乱数発生器(図示せず)によって暗号化される。この暗号化シーケンスは、秘密シーケンスであることもあれば、無いこともある。
シンセサイザー98は、ビットストリームを、DAC100の入力ポートに供給する。このDAC100は、非線形応答特性を有するように設けられ、そこへ供給されたビットストリームに対応するアナログ信号を発生する。ナイキストのサンプリング定理の手順に従うと、送信側からのデジタル化されたサンプルは、DAC100によって、供給されたデジタル信号を表すアナログ信号に変換されるべきである。このアナログ信号は次に、ローパスフィルタ特性を有したフィルタ102で、エイリアス除去用にフィルタ処理される。このフィルタ102は、好ましくは比較的急なフィルタースカートと、サンプリングレート周波数の1/2に対応するカットオフ周波数とを有したものである。フィルタ処理された信号は、加算回路104の第1の入力ポートに結合される。タイミング回路106は、タイミング信号を加算回路の第2の入力ポートに供給する。この加算回路は、そこへ供給された2つのアナログ信号を重ね合わせる。この代わりに、タイミング信号を、シンセサイザー98の入力ポートを通して送信することもできる。
重ね合わされたアナログ信号は、アナログ伝送リンク107(例えば、電話回線)を通して受信器108へ送信される。ここでは、タイミング信号を使用して受信器用のタイミングデータを与え、これによりアナログ信号からビットストリームを回復できるようにする。本発明によって構築されたモデムは、伝送リンク用に、そのリンクの信号対雑音比とシャノンの法則に基づいて、理論的に可能な最高データレートまたはその付近で動作するものと信じられている。
受信器108では、受信器のサンプリングレート周波数の1/2以上の周波数帯のほぼ全ての雑音が、ローパスフィルタ特性および受信器のサンプリングレート周波数の1/2以上のカットオフ周波数を有するフィルタによってフィルタ処理されるべきである。伝送リンク107が、400Hz〜3200Hzの周波数を有する信号を伝送するものとして与えられる場合、入力信号は、典型的に約6400bpsのサンプリングレートでサンプリングされる。
典型的に約3200Hzの周波数を有する信号トーンは、タイミング回路によって与えられ、そして送信信号に加えられ、更に受信器のADCクロックを同期させる1つの手段としての受信器で位相同期される。このトーンは、既知の振幅および周波数を有するように与えられるので、受信器でフィルタ除去されるのではなく、減算される。かくして、データ損失は起こらない。
同様に、典型的に約400Hzの周波数を有する信号トーンは、入力を備えるワードを全てのカスケードレベルに公式化するためのワード同期を与えることに使用される。400Hz以下の周波数帯の信号は、半−全二重モデムにおける線路のターンアラウンド用に信号伝送するために、また逆チャネルデータおよびネットワーク情報を送信するために使用できる。カスケードレベル毎のビットは、送信されるデータの単位当たりの最大電力およびシャノン限界に達するまで増加される。
さらには、N符号中のM(N中のM冗長ビット)のような誤り訂正符号と、スクランブル信号とは、モデムの分野の当業者には知られているように、入力データワードに適用される。
図6を参照すると、コード化モデム110は、直接シーケンス符号化方式を使用する。この場合、各データワードは、一連の符号ビット中の全てのビットを変調し、1より多い信号は、リンクを同時に共用する。共用される信号S2は、例えば、音声信号、テレビ(TV)信号、またはファクシミリ(FAX)信号として与えられる。この代わりに、共用される信号S2は、直交符号シーケンスで動作する同じタイプの追加されたモデムから与えられる。
コード化モデム110は、符号化動作を与えるためのコーダ112を有する。符号化された信号は、シンセサイザー114に供給される。このシンセサイザー114は、雑音的な周波数スペクトラムを有した比較的広帯域の信号を、加算回路116の入力ポートに与える。共用信号は、この加算回路の第2の入力ポートに供給される。この加算回路は、そこへ供給された信号を伝送線路117の第1の端部に結合する。
変調器部分では、信号タップ118が、伝送線路117を通して送信されてきた信号の一部をオプションの信号処理器124に供給する。この信号処理器124は、処理された信号を受信器125に供給する。
コーダ112の符号は、良好な自己および相互相関特性を有するように選択される。かくして、モデムが、共用信号に対して低電力で動作する時でさえも、モデムのデータは回復される。
共用デバイス、例えばTV受信器として与えられる受信器125に対して、モデム信号は小さな背景ランダム雑音として現れる。しかしながら、共用信号が、符号シーケンスCを含んだ信号処理器124を通して、TV受信器125に結合される場合、TV受信器124におけるモデム「干渉」の殆どまたはほぼ全ては、相関のある雑音を相殺するための既知の記述によって除去される。
モデム110は、符号化動作Cを与えるためのコーダ112と、相関動作C^を与えるためのデコーダ122とを有する。相関動作では、受信されたシーケンスと記憶されている符号Cとの積をデジタル的に積分することによって、データが回復される。リンクを共有する信号は、典型的にはゼロ付近に統合する傾向にある。これは共有された伝送が選択された符号Cと相関がないからである。共有信号に対するオプションの干渉相殺動作は、信号処理器124によって行われる。
システム110の送信部と受信部との間でタイミング同期をとる方法が、以下で説明されるが、この方法を説明する前に留意されるべき点は、この方法はコード化モデムの文脈内では明瞭に説明できるものの、この方法がまた、僅かな変更で他のシステム、例えば図2〜4に関連して上述された信号暗号化システムや、図9に関連して以下で説明される信号圧縮システムにも適用できるということである。
信号Wk’の少なくとも1つは、既知の相関特性を有するシーケンスにされる。カスケードシンセサイザーでは、「ワード」同期が必要とされるので、選択された信号Wk’は、最低のバンド内サンプルレートを有する信号に対応することが好ましい。しかしながら、直接シーケンスコード化モデムでは、全てのWk’がそのように符号化されるという点に留意されるべきである。
好適な符号シーケンスには、JPL、GOLD符号およびウォルシュ符号のように多くの例がある。説明のために、そして制限するためにではなく、ウォルシュ符号(ハダマードコードとしても知られる)が説明される。ウォルシュ符号の核は、次のように与えられる。
高次の符号は、レベルを核に代入することによって、以下に示されるようになる。
これは、以下のようにコンパクトに表現される。
多くの他の符号(例えば、GOLD符号)は、「良好な」相関特性を有するものとして知られている。相関とは、2つの値を持つ二値の場合(+1,−1)、乗算と積分は、シーケンスのベクタードット積まで減少することを意味する。2つの同じ符号のドット積は、所定の出力(即ち、(Code1)DOT(Code1)=4)を与える。しかしながら、2つの異なる符号のドット積は、ゼロ出力(即ち、(code1)DOT(code2,3,4)=0)を与える。同様に、この関係はまた、他の3つの符号のそれぞれに付いても真である。かくして、これらは直交符号である。
大きな自己相関と小さな相互相関を有する非直交符号もまた好適である。そして、そのような符号のいくつかは、スライディング相関器での迅速な同期獲得にとって特に良好であると知られている。スライディング相関器の一例は、code3によって作られる。ワード同期が未知の場合(この論議では、ビット同期は既知であると仮定する)、4つの可能性の1つが受信側の相関器で起こる。それらは、以下の通りである。
+1+1−1−1 受信器のワードクロックの仮定されたタイミング
+1−1−1+1 受信されたパターンの可能性1
−1−1+1+1 可能性2
−1+1+1−1 可能性3
+1+1−1−1 可能性4
相関、即ち受信器の符号と4通りの可能なパターンのそれぞれとのドット積は、相関器が4通りの可能性に対するドット積0,−4,0,+4をそれぞれ計算するものであることを示している。しかしながら、正しいワード同期(即ち、可能性4)だけが、大きな正の(即ち、+4)の相関を有する。受信器の仮定されたクロックを、到来する信号に対してビット単位でスライドさせながら、相関をとることによって、受信器はワード同期を見出すことができる。それ故に、「スライディング相関」の名が生れる。ここでまた留意されるべき点は、ワード同期もビット同期も共に正しいときに、最大相関が起こるということである。
前述した同期方法を達成するために、送信側のカスケード中における最低周波数ステージの残差W’は、code3がその値を定義するように(あるいは、少なくとも残差W’の符合がcode3に後続するように)構成される。先の論議は、受信器の同期が、多くの手法のいくつかで、達成されることを説明している。あるシステム応用、例えば暗号化では、受信器からのタイミングは、他のビルディングブロック、例えば解読装置をも駆動することができる。全二重動作では、受信器のクロックはまた、システムに唯一のマスタークロックが存在するように、その端部からの送信にも使用できる。
モデム110でビット同期もワード同期も成立しているものと仮定すると、到来するデータビットは、+1または−1のいずれか対応するものとして表現される。そのデータビットが、符号の1つ、例えばcode2に掛けられる場合、その結果生じる4ビットのシーケンスは、code2か、各ビットの符合を反転したcode2のいずれかとなる。そのシーケンスが、カスケードまたはツリーシンセサイザーのW’入力の1つに、ビットのシーケンスとして適用される場合、受信器のアナライザーは、そのW’を回復し、code2と相関をとることになる。これは、受信器の出力を+1か−1と決定することになる大きな正の数か大きな負の数を得るためである。ここでは、説明を簡単にするために、単一ビットを使用した例が説明されている。実際のシステムでは勿論、そのような動作は典型的には、複数のビットを有するデジタルワードについて行われる。
符号化されたデータビットをカスケードシンセサイザーのW’入力に適用すると、そのカスケード中の各ステージが異なるサンプリングレートで動作するので、幾分複雑になる。そのような動作は、ツリーシンセサイザーではもっと簡単に達成できる。これは、入力データがワードに組み立てられ、そしてシンセサイザーの最低ステージの周波数で一度に適用されるためである。ツリーシンセサイザーにとって、送信器の電力もまた、リンクの帯域幅全体に均等に分布される。これは、好ましい効率的なケースである。送信器のエネルギをリンクの帯域幅全体に拡散することは、リンクの最大限での動作を達成するための処方である。
図6で説明されたタイプのいくつかのコード化モデムは、総リンク電力が拘束されながら、同じリンク上で同時に動作できる。各モデムは、異なる直交符号を使用すべきである。例えば、code3のモデムがcode2のモデムと干渉しないようにする。ここで留意されるべき点は、上述した4ビットのウォルシュ符号を使用するリンクを共有するモデムの数は、4よりも大きいということである。これは、あるグループのモデムが厳密に同時には動作しない場合には、各モデムが、その独立した残差入力のそれぞれに、異なる独特な符号の組み合わせを有するためである。ここでまた留意されるべき点は、これらの複数のモデムは、直交符号化された異なるデータビットを単に与えられているということである。
2線式全二重モデムは、1組のほぼ直交した符号を使用することによって与えられる。ウォルシュ符号は、上記のcode1〜code4として識別され、それらのビット位置の補数は、4ビットの16通りの可能な組み合わせの1/2だけである。以下に示すように、残りの組み合わせもまた、もう1組の相互に直交するベクターの組を形成する。これらのベクターは、以下でc5〜c8と番号付けされている。この4つのベクターからなる第2の組は、第1の組とは直交していない。それは、「ほぼ直交している」と記述することができる。何故ならば、第1の組set1のメンバーと第2の組set2のメンバーとのドット積は、常にベクターの長さの半分だからである。また、勿論、同じ組の1つのメンバーともう1つのメンバーとのドット積は、常に0だからである。但し、それ自身との積は、常にその長さに等しい。
マスターグループは直交し、スレーブグループもまた直交しているが、クロスグループ相関は、デュアル(二重)については−2、その他のクロスタームについては+2である。伝送リンクの一端は、マスターの符号の組を使用して信号を送信し、また伝送リンクの第2の端部は、スレーブの符号の組を使用して信号を送信する。ここで留意されるべき点は、シンセサイザー114とアナライザー120を与える行列変換法を使用することによって、同じ利益が実現されるということである。
かくして、全二重動作を与えるために、リンク各端のモデムは、set1またはset2をマスターおよびスレーブとして使用するように割り当てることができる。マスターがcode1および2だけを使用し、スレーブがcode3および4だけを使用する場合、全てのエコー信号は、直交性によって総合的に相殺されるが、2組の符号に基づいた上述した配置を使用することによって、各モデムに対するデータは、可能なレートの半分になる。
さらには、図6に関連して説明されたタイプのコード化モデムは、リンク上の他の信号と共存する。これは、相関器が信号をさほどあるいは全く与えないからである。符号シーケンスを長くすると、データ処理能力は低下するが、この効果を改善できる。ウォルシュ符号以外の或る符号は、この特性をマルチアクセス応用により良く活かすことが可能である。
図7に示されるモデム126は、直接シーケンス符号分割多重方式を使用して、シンセサイザーカスケードのサブステージを励起することが可能である。上述したように、そのような手順は、スライディング相関に基づくクロック回復を可能にする。それはまた、(直接シーケンス拡散スペクトラム方式で行われるように)相関技術を使用して、符号シーケンスに掛けられるデータが受信器端で回復されることを可能にする。
そのようなコード化モデムの1つの応用は、相関受信器の処理利得を利用して、大きな「妨害」信号に埋もれたモデムからの低電力信号を回復することである。妨害信号の実際の例には、音声(この場合、データは音声に隠れた「雑音」として送信される)と、テレビ(この場合、高品位デジタル情報は、互換性を保つために、標準ビデオと同じチャネルで送信される)と、符号分割多重と、2線式全二重FDXとが含まれる。開示された技術は、これらの方法に対する改良である。これは、モデムが、これまでよりも効率的に帯域幅を利用するからである。
さらには、ここでは変調器(シンセサイザー)および復調器(アナライザー)であるとして説明されているモデムは、ベースバンドの(またはADCの制限を除いて、ベースバンドより高い)RFまたは音波送信器変調器および受信器の形態をとることもある。そのような受信器は、デジタル高品位TV(HDTV)を受信する応用を有する。
図6に関連して先に説明され、且つ図7に関連して以下で説明されるタイプのコード化モデムは、ウォルシュ符号を使用して、W’およびV’入力に適用されるデータを予備符号化する。シンセサイザーは、それ自身がウォルシュ符号を使用するので、回転行列によって実施される場合には、これら2種類の符号化方式は独立している、と指摘されるべきである。例えば、データ入力の符号長は、シンセサイザー出力の数と同じである必要はない。出力の数は、シンセサイザーの回転演算子の長さに等しい。かくして、行列方法をコード化モデムに適用することによって、このコード化モデムは、本質において、2回コード化モデムになる。
図7を参照すると、コード化ツリーモデム126は、複数のコーダ回路128a〜128hを備えている。これらコーダ回路は、図1に関連して説明された原理に従って動作するツリー型シンセサイザー130の複数の入力ポート130a〜130hの対応するものに結合されている。このシンセサイザーの出力ポートは、リンク132を通して、図1に関連して説明された原理に従って動作するツリー型アナライザー134の入力ポートに結合されている。複数のデコーダ回路136a〜136hは、アナライザーの出力ポート134a〜134hに結合されて、そこへ供給される符号化された信号を復号する。
原理的に、コード化ツリーモデム126は次のように動作する。即ち、コーダ回路は、符号化動作を行って、データワードに直交符号Cを掛ける。デコーダは、ここではC^で示される相関動作を行う。ここで留意されるべき点は、線路130h上の最終V’入力シーケンスは、それがリンク312の通過帯域周波数の下側周波数限界に対応した周波数よりも低いと仮定される場合には、ゼロに設定されるということである。
図8を参照すると、圧縮された信号を送受信するためのシステム138は、送信部138aを備える。この送信部は、入力信号調整回路139を有する。この調整回路は、ここでは、入力フィルタ140と、ADC142とを含む。フィルタ140とADC142は、上述した技術に従って動作するように選択される。これは、デジタルワードの適切なストリームを、アナライザー144の第1の入力ポートに与えるためである。量子化器146がアナライザー144とシンセサイザー148との間に結合されている。動作時に、信号圧縮器の量子化器146は、残差W’(N)を、記述するに少ないビットで済む新たな数にマッピングする。これが圧縮動作である。
出力信号調整回路149は、シンセサイザー148の出力ポートに結合されたDAC150を有する。このDAC150は、デジタルワードのストリームを受信して、そこへ供給されたビットストリームを表すアナログ出力信号を与える。適切に選択されたフィルタ特性を有するフィルタ152は、DAC150からのアナログ信号を伝送線路154の第1の端部に結合する。
この伝送線路154の第2の端部は、システム138の受信部138bに結合されている。受信部bは、入力信号調整回路156を有する。この調整回路は、そこへ供給されたアナログ信号を適切にフィルタ処理して変換し、適切なストリームのデジタルワードをアナライザー158の第1の入力ポートに与える。逆量子化器160(即ち、再量子化器)がアナライザー158とシンセサイザー162との間に結合されている。
動作時に、再量子化器160は、元のビット定義へと再マッピングする。圧縮動作は、勿論、信号の情報内容を低下させるので、失われた情報は回復されない。しかしながら、多くの応用では、失われた情報は冗長である。あるいは、量子化器によって捨てられた情報に含まれていた詳細のレベルは、人間の観察者が感じることのないものである。かくして、信号劣化は、さほどあるいは全く検出されない。
出力信号調整回路163は、再構築されたデジタルストリームのワードをシンセサイザー162から受信し、そこへ供給されたビットストリームを表すアナログ出力信号の適切にフィルタ処理されたものを、システム138の受信部138bの出力ポートに与える。
会話圧縮過程では、帯域幅は、残差W’用のビットの数を制限することによって、一般に減縮される。
しかしながら、帯域幅を大きく減縮させる変形例は、先ず最低周波数帯に対応するカスケードチャネル上の信号V5をゼロに置き換えて、信号W5’だけを送信することによって達成される。次に、700Hz〜1400Hzの周波数域帯の1つの周波数帯に対応するカスケードチャネルに関連した信号W3’が消去されるか、粗く量子化される。更には、ホフマン符号化法またはコードブックベクター量子化法がW2’に使用される。
サンプルレートを調整することによって、700Hz〜1400Hzの周波数帯が分離される。人間の特に英語の音声は、この帯域にフォーマットを含まないので、700Hz〜1400Hzの周波数帯に対応したカスケードチャネルは、(残差W3’をゼロに設定することによって、)理解容易性に損失を与えることなく、消去される。同様に、下表に示すように、W1’およびW5’もゼロに設定される。
かくして、この例では、W1’〜W5’およびV5は、上表に示されたレートでサンプリングされる。また、例えば残差W2’およびW4’に対応した信号だけを送信することが可能になる。これらは、700および2800ボーのサンプルレートを有したもので、おそらくホフマン符号化後は各残差W2’,W4’について2ビット以下となる。更なる減少もまた可能である。これは、W2’をもう1つのサンプリングされた信号として単純に考え、かくして帯域幅を更に減少させるために、マルチ分解能解析によって再分割することができるからである。
例として、700サンプル/秒について1.5ビットが使用され、また残差W2’がそれぞれ1.5ビットで1400サンプル/秒、700サンプル/秒、350サンプル/秒、175サンプル/秒、および65サンプル/秒に分解される場合、ビット/秒(bps)の合計数は、5085bpsに対応する。これに、フレーム同期用のオーバーヘッドビットが加えられる。この方法は、音声圧縮の分野の当業者には知られているように、線形予測符号化10(LPC10)や動的励起LPCおよびその改良のような方法に比べて、計算量がかなり少ない。
ここには示されていないが、受信器は、V0に適用される受信信号並びにV0’から取り出される明瞭な出力と同じ形態を有するように与えられる。
上記の観点から、当業者はここで、上述したシステムの組み合わせが、例えば、アナログリンク上で使用される暗号化されたデータの圧縮システムを形成するように作られていることを認識する。このことは、送信されるデジタルデータの量がリンクのシャノン法則限界を超える高品位TV信号の送受信のような応用に特に有用である。かくして、そのような応用では、サンプルレートがリンクのナイキストサンプリング定理限界に一致するまで、アルゴリズム手段によって、データは先ず圧縮され、次いでそのデータは、例えば図5〜7に関連して上述されたモデムシステムの1つに与えられる。
図9を参照すると、デジタル圧縮回路166は、アナライザー168を有し、これは量子化器170に結合される。デジタル信号は、アナライザー入力に供給される。アナライザー168は、その信号を分解し、量子化器170は、図8に関連して説明された圧縮動作を行う。量子化器170は次に、圧縮されたデジタル信号をデジタルリンク172の第1の端部に供給する。デジタルリンク172の第2の端部は、再量子化器174の入力ポートに結合されている。再量子化器174は、そこへ供給された信号を受信し、逆量子化過程を行い、再量子化された信号をシンセサイザー176へ供給する。デジタル方式では、W信号と乱数RNとの間の論理演算、例えば排他的論理和演算を行うだけでよい。
図10を参照すると、電話モデム178は、400Hz〜3200Hzの周波数帯域で動作可能なシンセサイザー180を備える。このシンセサイザー180は、典型的には約6400サンプル/秒のサンプリングレートを有するDAC182に信号を供給する。このDACは、そこに供給されたビットストリームをアナログ信号に変換する。このアナログ信号は、アナログ伝送リンク184を通して、これもまた約6400サンプル/秒のサンプリングレートを有するADC186へ供給される。ADC186は、そこに供給されたアナログ信号をデジタルビットのストリームに変換する。このデジタルビットのストリームは、アナライザー188に供給される。
シンセサイザー180は、図1に関連して上述された行列変換法に従って与えられる。しかしながら、ここで留意されるべき点は、シンセサイザー180は、図1に関連して上述された等式Equation3および4に従う3レベルのツリーシンセサイザーとしても与えられるということである。
行列法では、シンセサイザー180は、そこへ供給されたデータフレームについて、回転行列で演算する。ここでは、8次元の回転行列がデータフレームに適用される。同様に、アナライザー188は、シンセサイザー180によって使用された行列の逆行列に対応した8次元の行列を適用することによって、逆回転演算を行う。
上述したように、DAC182およびADC186の基本サンプリングレートは、6400サンプル/秒である。デジタル入力および出力は、1/8のフレームレートまたは800フレーム/秒で動作する。各フレームは、例えば各5ビット(またはそれより大きい)の7ワードに分割された35ビットからなり、そしてチャネル180a〜180hに適用される。処理能力は、28,000bps(35ビット×800フレーム/秒)である。使用可能なレートは、リンク184上のS/N比と、順方向誤り訂正(FEC)とによって決定される。かくして、モデム178は、28kbps以下のデータ転送速度(レート)で動作する。
さらに、モデム178はFECを使用する。また、一般的な実践のように、300Hz〜400Hzの周波数帯が、周波数シフトキーイング(FSK)診断信号方式に使用される。
チャネル180hは、400hz以下の信号方式に対応し、この例のデータ用には使用できない。しかしながら、一定振幅および交番符合を有する信号がチャネル180hに印加される場合、400hzのトーンは、同期を助けるために、受信器(図示せず)によって、線路信号からフィルタで取り出される。加えて、既知の予め選択された振幅は、チャネル188hからデータとして回復され、そして利得校正信号として受信器で使用され、さらにはFECブロック符号化方式用のブロック境界を規定することに使用されることがある。
正確なタイミング同期と利得校正は、モデム178の動作にとって重要である。図6及び7に関連して上述したように、コード化モデムは、送信信号中に現れるトーン無しで、同期情報を得ることができる。かくして、コード化モデムを暗号化することによる秘密通信は、同時に存在する非秘密通信と同じ狭帯域幅内を、低レベルの外観上非相関的な雑音として送信される。
チャネル180a〜180gのデータは、モデムでは一般的な実践であるように、スクランブルされる。この結果、出力は、普通の偶発的な35個の0または1の入力ストリングを送信するときに、より雑音的になる。スクランブルしないと、0のストリングは、変調されてはいるが強い相関を持つ、DC成分のない出力を生成する。
アナライザー188によって受信されたデータは、実際のデータの倍数である。その倍率は、回転行列の次元に対応し、この回転行列の次元は、シンセサイザー180内のチャネルの数に対応する。受信器は、受信したチャネル出力を最も近い倍数に量子化、即ち丸め処理し、さらにその倍数による除算を行って、リンク184上の雑音の影響を低減すべきである。
キャリア信号が存在しないベースバンド変調技術を使用するモデムは、行列回転法を使用することによって、または上記の図1〜1Dに関連して与えられた等式によって、与えられる。これらの手法の何れかにおいて、モデムは、2以上のサンプルのグループを復調および処理して、データを回復しなければならない。従来のベースバンドシステムでは、データを回復するために、単一のサンプルが処理される。
かくして、ベースバンドシステムでは、上述した行列法に従って動作するモデムは、サンプルのグループを変調および復調する。例えば、行列ベクター長さが8である場合、復調器によって8つのサンプルが1つの独立したグループとして一緒に処理される。即ち、復調器は、サンプルのグループに対し、変調器で使用された逆行列を乗じる。ここで留意されるべき点は、サンプルのグループ化は、変調の一部であって、例えば誤り訂正用のブロックデータ符号化法とは明瞭に区別され、そして両技術は、単一のモデムで同時に使用できる、ということである。
要するに、ベースバンドモデム技術は、反転可能なマッピングを使用する。これまでの開示、並びに発行された親特許であるUS特許第5,367,516号によれば、変調および復調マッピングは、フィルタバンク型のシンセサイザーおよびアナライザー、または回転および逆回転行列、またはベースバンドの数学的変換およびその逆変換として特徴付けられる。これらの特徴は、明瞭に異なるか、いくつかの例では、同じ動作を異なる技術で記述する。3つの特徴の術語と統一は、本願出願に関連して引用された刊行物に見られる。例えば、図1のアナライザーとシンセサイザーは、バイディアナサン(Vaidyanathan)とフォン(Hoang) によって記述されている2チャネル直交ミラーフィルタ(QMF)対である。行列は、ビタリ(Viterli)とガル(Gall)の交換可能な多位相フィルタ行列、またはバイディアナサンと彼の学生の同様なものである。逆多位相行列は、図1のQMF、並びに多くのサブバンクを有したフィルタバンク、例えば図1Cおよび1Dの構造と機能的に等価なフィルタバンクを記述している。最後に、2チャネルQMFに基づいた図1Aの構造は、リウル(Rioul)とビターリ(Vitterli)によって記述されているように、離散的ウエーブレット変換(DWT)と数学的に等価である。スケール関数と残差関数は、ウエーブレット変換を記述することに使用されるターム(項)である。
モデム用の反転可能なマッピングは、幾何学的な回転と同様である。この場合、そのマッピングは、フィルタに起因する純粋な遅延を有していることも、有していないこともある。サンプルX(0)〜X(3)のシーケンスは、4次元空間におけるベクターXの座標と考えられる。線形変換は、同じ4次元空間内において、Xの座標系から他の1つの座標系になされる。かくして、ベクターXは、「回転」行列によって、またはフィルタバンクによって、あるいはDWTのような数学的変換によって、ベクターYに変換される。
ベクターXの成分は、送信器のD/A変換器への連続したサンプルのフレームと等しくされる。Yの成分は、送信帯域幅内のサブバンドに対応したフィルタバンクへの入力に割り当てられる。先の開示および発行された親特許である米国特許第5,367,516号に基づいたモデムでは、XおよびYは、同じベクターの2つの異なる座標表現である。モデムの変調器は、線形「回転」演算子[M]として、また復調器は、演算子[D]として考えることができる。送信器では、X=[M]Yとなる。ベクターYは、モデムが正しくデータを運んだ場合には、受信データ[D]X=Yとなるように、送信される。これは、必要条件[D][M]=z[I]と一致する条件である。ここで、[I]は識別行列であり、またzは、システムを通しての純粋な周波数非依存性遅延があれば、それを表す。受信器に付加的な雑音があれば、線形復調演算子は、全てのモデムで共通であるように、その雑音タームを非線形しきい値演算によって除去しなければならない。
線形および非線形双方の演算子を含む一般的な常識では、全てのモデムは、データを正しく回復するために、[D][M]=z[I]であることを必要とする。しかしながら、前述のベースバンドモデムでは、また発行された親特許である米国特許第5,367,516号では、結果的に幾何学的回転類比が生じる。これは、線形演算子が交換可能なためである。即ち、[D][M]=[M][D]であるか、少なくともそれらはチャネルの有用な帯域幅全体にわたって、ほとんど交換可能である。2次元の幾何学的回転は交換可能であり、また如何なる次元の回転でも、反転された一連の逆回転と交換可能な一連の2次元回転を作ることによって、交換可能にすることができる。これは、引用文献の多次元(マルチバンド)QMFバンクに対するバイディアナサン等の設計手順の本質である。
上述したように、また発行された親特許である米国特許第5,367,516号で述べているように、サンプリングされたアナログ信号は、ベクターAとしてフレーム化でき、また帯域幅拡張もデジタル圧縮もなしに、デジタル的に暗号化できる。これは、送信側の暗号化装置がX=[M][e][D]Aを送信し、また受信側の解読装置がA=[M][d][D]Xを計算できるからである。この場合、デジタル暗号化[e]と解読[d]は、[d][e]=[I]を満足し、また[M]と[D]は交換可能であると仮定する。
パスバンドモデムは、1以上のキャリアを、データを表す1以上の分離されたベースバンドモデム波形で変調する。キャリアの変調と後続する復調は、現代のモデムの一般的な線形動作である。かくして、あるキャリア周波数において、モデムは、正弦および余弦キャリアを加算する。この場合、各キャリアは、ベースバンドデータ変調器やフィルタによって、線形振幅変調されている。結果として得られた信号は、直交振幅変調(QAM)モデムでのように、位相および/または振幅双方の変化を有する。前述した開示のベースバンド変調は、パスバンド用の線形モデムを形成することに、この同じ手法で適用できる。
データモデムおよびアナログ信号暗号化装置にとって、パスバンドへの非線形変調もまた可能である。非線形モデムは、非常に非効率的な周波数シフトキーイング(FSK)モデム以外にはめったに使用されていない。しかしながら、ここで説明されている方法を使用した非線形モデムは、例えば無線通信用の関心ある領域で動作したときに、QAMのような他の線形変調よりも帯域幅効率がよい。この場合、比較のために、非線形設計にも線形設計にも順方向誤り訂正(FEC)がないことを仮定している。例示的な非線形FMモデムがここでは説明される。
FMのDSB信号は、直交キャリア法によって生成可能である。この方法では、正弦および余弦キャリアが、ベースバンドモデム信号の積分の正弦および余弦によって、それぞれ振幅変調される。かくして、余弦関数の振幅は、余弦キャリア等を変調する。この場合、FM信号は、実際の非線形変調であって、線形パスバンド変調とは明瞭に区別される。これは、ベースバンド積分器を含むことも、含まないこともある。FMと非線形位相変調(PM)は、電圧制御発振器(VCO)によって、また他の技術によって、生成することができる。上述したように、また発行された親特許である米国特許第5,367,516号で説明されたように、データと、変調された信号は、同じベクターを表す異なる座標であり得る。この観点は、フィルタバンクやウエーブレットによる回転を使用した非線形モデムの設計に対して洞察と特異な技術を与える。
図11において、本発明に係るFMモデム200は、ブロック図の形態で示されている。このモデムは、送信部202と、受信部204とを備える。送信部202への入力データは先ず、分割要素206によってデータベクター表現に分割される。分割された信号全般に対して、非線形プリエンファシス増幅207によって等価な平均電力を与えた後に、データベクターは、前述したように送信部演算子208によって回転させられて、信号ベクターになる。非線形圧縮209によって変調利得を改善した後に(以下で説明される)、信号ベクターは、ブロック210で示されるようにFM変調され、そして送信器インターフェース212によって、出力信号として送信器(図示せず)に与えられる。
典型的に、1つのモデム200の送信部202からの出力信号は、同じモデム200の受信部204によって受信されることはない。しかしながら、出力信号がそこを通して送信され、また入力信号がそこから受信されるところの、伝送経路が、送信信号を記憶するためのメモリデバイスを含むことは可能である。そのような場合、同じモデムが送信および受信の両機能を遂行することは可能である。
例えば、本発明の変形実施形態では、メモリデバイスは、磁気ディスクか不揮発性固体メモリデバイスであって、アナログ形態で記憶される変調されたデジタル情報は、後に同じモデムによって検索、復調される。このメモリデバイスは、例外的に長いリンク遅延を有したモデム伝送リンクとして振る舞う。この結果、メモリへの、またはメモリからのビットエラーレート計算値および最大システム転送速度は、如何なるモデムシステムに対しても決定できる。特に、データの回復に対する最大エラー無しビットレートは、シャノンの法則によって与えられる。ここでは、信号対雑音比は、デバイスの物理的特性や、電子装置の雑音指数に依存する。
モデム200の受信部204側では、FM受信器(図示せず)からの入力信号は、受信器インターフェース214において受信され、そしてFM復調器216に送られる。復調された信号は、非線形逆圧縮減衰217の後に、受信回転演算子218によって逆回転させられる。相補的デエンファシス増幅219の後に、その結果は、理想的には元の入力データと同じである出力データへとアセンブル220される。逆圧縮減衰217は、変形実施形態では、さらに等化器を備える。
上述し、また発行された親特許である米国特許第5,367,516号で論議された畳み込み回転を使用するモデムは、潜在的な帯域幅効率という点で最適である。この技術を使用する暗号化は、信号暗号化装置が、如何なる帯域制限された信号でもデジタルドメインに変換し、それをデジタル的に暗号化し、さらにその信号を、アナログ帯域幅を変化させることなく、アナログドメインに変換し戻すことができる、という点で最適である。これは、デジタル音声圧縮アルゴリズムに依存して、帯域幅拡張なしに暗号化を達成する現在のデジタル音声暗号化装置とは対照的である。これら最適な特性の双方は、上述し、また発行された親特許である米国特許第5,367,516号に開示されたモデムに使用された反転可能ベースバンド変換の結果である。この反転可能ベースバンド変換の好ましい1つの実施形態は、ウエーブレットフィルタとしても知られる直交ミラーフィルタ(QMF)バンクである。これは、フィルタの通過帯域の全てにわたって無損失の信号再構築を可能にする。バンドエッジにおけるストップバンドへの遷移領域は、フィルタ遅延が増加するにつれて消滅するように設計できるので、変調器は、数学的限界においてエントロピー損失を無くすためのシャノンの基準を満足する。
第1の実施形態の回転演算子は、マルチレートのウエーブレット型フィルターバンクである。そのようなフィルタは、サブバンド符号化方式と同様な手法で設計されている。各アナライザー入力は、M個の重複するサブバンドの1つに対応する。信号スペクトラムのバンド外領域に対応するポートは、データ用には使用されていないが、それらは別の実施形態において、スペクトラム制約を乱すことなしに、ベースバンド同期ビットを搬送することに使用される。サブバンドの数と関係なく、多位相回転行列は、帯域全体にわたって確実に交換可能である。独立して選択されたフィルタ長によって決定されるように、非常に小さなエントロピー損失が、(バンド間ではなく)バンドエッジにある。
M個のサンプルに対応する時間フレームについて、入力二値情報は、情報ベクターの整数座標に分割される。復調演算子の出力は、非線形座標を有したベクターとしてみられる。「しきい値処理」は、受信したベクター座標を整数へ丸め処理することによって雑音を除去する非線形演算である。
データを符号化して、均等に離された符合付きの奇数値にすることは、データを送信するときの通常のモデム実践である。例えば、2ビットは、4つのレベル−3,−1,+1,+3の1つとして符号化される。この場合、しきい値処理は、最近接の奇数値に丸め処理する。モデムはまた、如何なる帯域制限されたアナログ信号を送信することにも使用できる。このアナログ信号は、例えば、限定されるものではないが、上述し、また発行された親特許である米国特許第5,367,516号に開示されたデジタル暗号化のデジタル処理工程を含むサブレートのフィルタ処理によってデジタル的に処理されている。モデムがこの手法で使用されるときは、モデム変調器の入力サンプルは、ゼロを含んだ偶数値および奇数値を跨ぐ符合付き整数と考えることができる。受信器のしきい値処理は、これらの値を丸め処理する。表記法と一致させるために、整数は変調器への入力であると仮定され、変調器は整数をD/A変換器に送り、受信器はA/Dから整数を受ける。復調器は、整数を出力する。この整数は、回転行列の正規化定数で除した後の商を整数または奇整数に適切に丸め処理することによってしきい値処理されたものである。上述し、また発行された親特許である米国特許第5,367,516号に記載されているように、この回転利得は、回転演算子(フィルタバンクの多位相行列)から計算される。
同期情報を含んだ送信データは、M次元ベクターによって表される。一実施形態では、データ表現において搬送ベクターに秘密ベクターをモジュロ加算すると、高信頼性のデジタル的に暗号化されたアナログ信号がD/Aから得られる。解読は、秘密ベクターをモジュロ減算して、搬送ベクターを回復する。
入力情報ビットは、ベクターのデータ表現座標に割り当てられ、そして各座標に独特な疑似ランダムシーケンスをチップレートで乗算される。このチップレートの結果は、モデムのバンド内データポートに入力され、そこで回転の次元数に等しい要因によってアップ・サンプリングを受ける。モデム変換は、アップ・サンプル・フィルタ処理された各サブシーケンスを、送信器のスペクトラムの重複したサブバンドへ直交加算する結果を生じさせる。この代わりに、単一拡散関数が情報に適用される。この情報は、所望の変調効率に従って分割されて、ベクターの成分となる。このベクターは、ウエーブレットフィルタバンクによって変換される。
協同する受信器は、信号ベクターを逆回転してデータ空間座標に戻すことによって、サブバンドへの入力をフィルタ処理する。しかしながら、拡散関数の効果は、しきい値処理に先行して、除去されなければならない。これは、拡散信号が1より小さな信号対雑音比を有しているからである。「逆拡散」は、既知の拡散関数と、しきい値処理されていないデータ表現座標とを相関させることによって、達成される。送信器のデータ表現におけるベクターは、反転可能な秘密変換によって、バンド内信号空間のどこへでも再指向される(即ち、秘密ベクターのモジュロ加算によってデジタル的に暗号化される)ので、真に高信頼性の拡散スペクトラムがなされる。受信器は、逆拡散に先行して、しきい値処理されていないデータ表現を解読しなければならない。受信器は、逆回転、解読、逆拡散およびしきい値処理を、この順序で行う。幾何学的には、暗号化されたベクターは、常にN次元信号空間の半径である半径R内にある。モジュロRベクター減算は、暗号化された搬送ベクターに加算された大きな非整数雑音ベクターを保存して、それが後に相関(逆拡散)され、しきい値処理されるようにする。
かくして、繰り返すが、N次元空間は、D/A変換器へのN個のサンプルによって定義される。データ座標系は、データ表現のN座標中のサブセットnがバンド内の情報点の全てを定義するように、選択される。n座標のそれぞれにとって、Bビットのデータは、2B通りの整数レベルの1つとして、座標当たり(即ち、サブバンド当たり)2*Bビット/Hzの効率で送信される。サブバンドは、パスバンド内では完全に重複し、また典型的には−70dbのストップバンドを外部に有するので、総合帯域幅効率は、フィルタ遷移領域がデータ用に使用される総帯域幅と比較して無視できる場合には、名目的に2*Bビット/Hzである。残るN−n個のデータ座標は、データ用には使用されないが、モデムを同期させるためには使用できる。
従って、整数座標を有するデータベクターは、第1の交換可能な演算によって信号座標に回転させられる。幾何学的な観点からは、この演算は、データベクターのマッピング(または回転)用多位相行列を、信号ベクター表現に適用することである。別な方法では、マッピングは、有限インパルス応答(FIR)フィルタバンクや無限インパルス応答(IIP)シンセサイザーを使用することによって、実施される。その代わりに、マッピングは、いくつかの場合には、シンセサイザーによって行われるフィルタ処理と数学的に等価であると示されるウエーブレット変換であり得る。送信器における第1の交換可能な演算は、受信器における第2の交換可能な演算によって返礼される。これらの演算子は、一緒になって識別行列を生じさせ、入力データの完全な回復を可能にする。完全再構築(PR)QMFバンクの実際のFIR格子フィルタの実施は、識別行列にスカラー利得と純粋遅延とを乗じたものである。マトリクスが典型的には正規化されていない整数フォーマットであるので、利得要因が生じ、また純粋で周波数に依存しない遅延要因は、FIRフィルタを通しての遅延を表す。近完全再構築(NPR)フィルタバンクもまた、QMF設計の分野の当業者に知られている。FIR格子QMFは、幾何学的回転の交換可能な特性を使用することによって、設計される。FIR横断フィルタ形態は、格子形態から求められるが、そのようにする場合、PR特性が漏洩され、またフィルタバンクはNPRを与える。しかしながら、計算器援用設計技術を使用することによって、NPRフィルタは通常最適化されて、ストップバンド減衰に対して、例えば反復設計を開始することに使用されるPR格子フィルタよりも良好な総合特性を有したNPRフィルタとなる。従って、上述した開示および親特許である米国特許第5,367,516号のベースバンドモデムの変調器および復調器を構築することに使用されるマッピングは、可能な遅延および利得によって、それが完全または近完全再構築であるという面で、交換可能である。
図1のような2次元QMFは、多位相行列により、文献に記載されている。例えば、ハイパスフィルタおよびローパスフィルタがFIRである場合、各フィルタ転送関数は、Z変換変数の偶数および奇数の累乗に要因化される。それ故、H(z)がハイパスフィルタを記述し、またL(z)がローパスフィルタを記述する場合、QMFアナライザーのフィルタは、次のように要因化される。
これは、次のような行列形態に書くことができる。
QMFにおけるサンプルレート変化は、右側の遅延列行列と結合して、アナライザー用のシリアル/パラレル変換になる。また、その要素が列ベクターとして示されている右側の2×2行列は、多位相回転行列である。このサンプルレート変化はまた、z2の累乗をzの累乗に変換するが、列ベクター中のzの累乗の係数だけが計算値に関連しているので、z変数はしばしば省略される。同様の定義がQMFシンセサイザーにも使用される。2バンドシンセサイザーへの入力におけるアップ・サンプリングは、奇数の係数だけが奇数の出力サンプルに貢献することを意味する。かくして、フィルタ処理は、1/2の長さのフィルタを使用して、1/2のレートで進行する。これは、多位相表記法が記述していることである。2より多いサブバンドを有したフィルタ用の多位相行列は、親特許である米国特許第5,367,516号に関連した引用文献に同様な手法で定義されている。
多位相行列は、FIR横断フィルタに対応した形態にさらに要因化される。このフィルタは、スカラーではなくベクターに作用する。即ち、スカラー要素を有する正方行列CJはそれぞれ累乗をzのj乗に乗算する。かくして、変調演算子[M]は、以下のように記述される。
この形態では、モデムはデータビットをフレーム化し、それらをベクターの座標に変換する。このベクターは、ベクターフィルタに入力されて、回転を行う。それ以前のL−1個のデータベクターが横断フィルタの遅延線に格納されている。ベクターフィルタは、行列Cjを使用して、現在およびL−1個の以前のデータベクターを新しいベクターにマッピングし、それからベクター加算によって、結果のベースバンドモデム出力ベクターを見つける。受信器は、[D]に対応したベクターフィルタを使用して、逆回転によりデータを回復する。 一実施形態では、モデム回転を実施するために、ハードウエアASICが、係数のROMバンクを有した単一の時分割9タップ型フィルタと、シフトレジスターのバンクとを使用する。
このベクターフィルタ配置は勿論、回転の他の形態と数学的に等価である。しかしながら、横断形態は、上述した論議および親特許である米国特許第5,367,516号に記載されたモデムが、既知のモデム分野の横断等化器に適用されるものと同じ方法を使用して、伝送リンクの歪みに対して等化され得ることを示唆している。等化器フィルタと復調フィルタ[D]は、有意に1つの同じものであり得る。
従って、本発明の異なる実施形態は、逆回転行列とも呼ばれる受信器多位相行列の適応調整を使用する。周波数依存歪みのいくつかの形態が伝送経路に導入されていると判断される場合、本FMモデムの、あるいは上述したり、親特許である米国特許第5,367,516号に見出される方法を使用した如何なるモデムの、受信器部分内の多位相フィルタは、そのような歪みを補償するように調整されうる。このことを述べるもう1つの方法は、逆回転行列中の逆回転係数のいくつかが、伝送経路中の周波数依存歪みを補償するように調整されるということである。この調整は、計算された誤り関数を最小化する。このことは、フィルタバンクの設計においてNPRを最適化する設計手順と同様である。しかしながら、モデムでは、NPR解は、情報を正確に再構築していない。これは、モデム伝送リンクの振幅歪みおよび遅延歪みのためである。FIR実施における受信器多位相フィルタバンクは、各サブバンド用FIRフィルタと等価である。ここで、フィルタ出力は、データを回復するために、デシメートされて、しきい値処理される。これは、モデム等化の分野の当業者には既知であるが、断片的に離された等化器と同じ形態である。それ故、モデムの分野の方法、例えば、限定されるものではないが、等化器の係数を誤り関数に比例して適応的に調整するための最小2乗平均(LMS)アルゴリズムが、復調器の多位相行列係数に適用されうる。これは、独立した等化器フィルタを用いずにリンク歪みを訂正する適応逆回転を、受信器に与えるためである。かくして、断片的にサンプリングされたFIRフィルタが提供される。受信器の多位相フィルタの調整は、通信の開始時になされ、そしてある設定で残される。あるいは、一例として、復調器からの整数または奇数のしきい値に関する雑音のRMS拡散をモニタすることによって動的に調整される。
送信器と受信器との間の伝送リンクの付加雑音は、雑音ベクターを送信信号に付加する。この結果、受信器でなされる逆回転は、非整数座標を有する回復されたデータベクターを生じる。本発明の第1の単純化された実施形態では、しきい値演算子は、最近接の整数座標値を最有望記号として採用する。より複雑な受信器の実施形態では、しきい値処理は、ビタビアルゴリズムによって実行される。これは、回転が、M−nの余剰自由度を有する畳み込みだからである。このことは、パリティビットを使用しない「自由」誤り訂正を可能にする。
上記の開示および親特許である米国特許第5,367,516号によるモデムの各送信フレームでは、各D/Aサンプルは、変調器へのスケール入力および全ての他の残差入力に依存する。D/AおよびA/Dによるアナログへの、およびアナログからの変換で生じるエイリアシングを回避するために、好ましいモデムの設計では、データを送信することに最高周波数のサブバンドは使用されない。変換器への/からのサンプルの数は、サブバンドの総数Mに等しいので、送信信号には冗長性がある。他のサブバンドは、出力スペクトラムを仕上げるために、例えばDCを送信することを回避するために、オプションで省略されることがある。これにより、冗長性は、n/Mサンプルに更に増加される。固定振幅の符合を交互に変更する技術によって、例えば最高周波数のサブバンドに送信される同期信号は、情報を搬送しないので、冗長性を増加させない。受信器が、現在のフレームに先行して、ビット誤り無く、一連のフレームをしきい値処理した場合、その受信器は、現在のフレームの復調を助けるために、それらの結果を使用する。例えば、しきい値処理していない復調器出力は、2つの許容される奇数しきい値の間にある。どのソフト判定値が最も有望であるかを決定するために、受信器は、2つの可能な現フレームのソフト判定と共に、先行データフレームを使用して、変調された信号を受信器で発生し、実際の受信信号と相関をとることができる。それから、受信器は、どの整数レベルが現フレームについて最も有望に送信されたかに関し、より良好な相関に基づいて最終判定を行う。ビタビアルゴリズムによる動的プログラム法を通して実施されるこの手順は、上記の開示および親特許である米国特許第5,367,516号の変調器の畳み込み出力に固有な冗長性故に可能である。これは、モデムの分野でトレリス(Trellis)符号化変調(TCM)として知られているソフト順方向誤り訂正(FEC)法とは実質的に異なる。
TCMでは、一般に実践されているように、1以上の好適に計算されたパリティビットを送信前のデータに添付することによって、冗長性が与えられる。トレリス符号化法による符号化利得は、余剰パリティの送信に起因するビット毎のエネルギ損失を埋め合わせなければならない。さらには、TCMモデムは、最適化できない。これは、シャノン容量がパリティビットを送信するために犠牲にされるからである。このことは、この発明によるTCMの使用を排除するものではない。モデムの分野で知られている順方向誤り訂正の他の方法、例えば多次元符号化法もまた、座標回転によって生成される固有の多次元信号に適用可能である。かくして、通常はデータベクター用に奇数座標だけを使用する回転に基づいたデータモデムは、その代わりに、連続するベクターの座標を、偶数および奇数の大きな組から、ビットエラーの確率を減少させる手法で選択できる。
上記モデムと暗号化装置の双方の定義に暗示されているものは、データが回転してNバンドのアナログ信号になるという仮定である。D/AのNサンプルは、精密な時間フレーム内にある。厳密な同時必要条件を帯域幅に置くことは、既知の変換技術によって注意してなされなければならない。これは、正弦および余弦ベースの変換が、それら波形の無限の大きさによって、複雑にされるからである。時間が確実に制約されるときは、周波数成分は無限に延びる。この逆もまた真である。
ウエーブレット理論は、時間的に無限の大きさを有しない「マザーウエーブレット」に基づいて、変換を与える。フーリエ解析と同様に、多くの基底関数が一緒に合計されて、任意の信号を表す。マザーウエーブレットは、時間的に延長されシフトされて、1組の残差基底関数と、関連した1組のスケーリング基底関数とを形成する。かくして、プロトタイプの正弦波がフーリエ変換を生成するように、単一のマザーウエーブレットは、1つの変換を生成する。無数の「マザー」ウエーブレットがあり、それぞれが異なる変換を生成する。ウエーブレット変換は、全く実際のことである(仮想成分やキャリアは存在しない)。このことは、変調および等化の複雑さを半減する。実成分だけが関与するので、仮想成分を考慮する必要なしに、入力データストリームを周波数変調することが可能である。
本開示による例示的なFMモデムは、FM変調器へのベースバンド入力として、8次元多位相フィルタを使用する。下記の表に示されているように、バンド毎のビットの非線形分布が使用される。
かくして、現在示されている実施形態では、入力記号毎に合計で13ビットある。1つの設計目標は、各バンドがほぼ同じ電力を有することである(ここで、RMS平均=9db)。以下の等式によると、受信器から到来する雑音が、サブバンド周波数の2乗に依存しているように見える。電力スペクトル密度PSDは、カウチ(Couch)の「デジタルおよびアナログ通信システム」4版、マクミラン、等式7−125によって与えられる。
ここで、Kは、FM検出器の利得であり、Aは、キャリア振幅であり、N0は、ダブルサイドの雑音電力スペクトル密度である。
この周波数対雑音関係によると、サブバンドがDCから遠ざかるにつれて、より少ないビットが各サブバンド内で伝送される。これは、雑音が周波数の2乗で増加するからである。それ故、最低周波数で多数のビットを送信することが可能になる。これは、受信器内の弁別器から到来する雑音が高いサブバンドでよりも有意に少ないからである。上記の例では、サブバンド0は4ビットを有するのに対し、サブバンド6は1ビットを有する。また、各バンド内のレベルの数は、FM弁別器の放物雑音密度関数PSDに適合するように選択される。
本発明の第1の実施形態では、減少する平均電力レベルと増加するサブバンド周波数とを有したサブバンドをFM変調器に与えることが可能である。例えば、最高サブバンドは、少ないビットしか搬送できないが、全てのサブバンドはビット毎に同じレベルのスペーシングを使用する。本発明の第2の実施形態では、サブバンド内の各ビットまたは複数のビットを表すレベルは、離されているか、プリエンファシス処理されている。これは、全てのサブバンドにわたって等価な平均電力を与えるためである。換言すれば、+/−1,3,5,7,9,11,13,15の電圧レベルは、サブバンド0で使用される。これは、このサブバンドに割り当てられた4ビットによって搬送されるデータを表すためである。+/−9の電圧レベルは、サブバンド6に割り当てられた単一ビットの状態0または1を表すことに使用される。これら2つのサブバンドに対する平均電力は、かくしてほぼ同じになる。レベルを高い周波数のサブバンドに離して配置するこの技術は、プリエンファシス技術と呼ばれる。この手法でそのデータ座標表現中にプリエンファシス処理された信号は、多位相座標回転フィルタによって、その信号座標表現に変換される。このサンプリングされたアナログ信号は、アナログFM送信器への入力として使用できる。受信器は、これらのレベルを検出して、それらをビットへ戻すように変換する。かくして、明示的なプリエンファシスフィルタやデエンファシスフィルタは必要とされない。
上記の例では、各サブバンドに対するレベルは、整数として与えられている(即ち、+/−1,3,5・・・)。換言すれば、各サブバンドは、2Bレベルを有する。本応用の異なる実施形態では、与えられたサブバンド内のレベルの数は、2の累乗ではないが、合計Kビットがpサブバンドで伝送される場合、pサブバンド内のレベルの総数は2Kとなる。二値マッピングアルゴリズムが使用されて、2〜nレベルのどれが表されているかを決定する。サブバンド毎のビットと記号毎のビットの総数を調整することによって、キャリア対雑音比に対する帯域幅の最適化が可能となる。計算機援用設計イテレーションは、これらの最適化値を提供する。
高い周波数のサブバンドのプリエンファシスを補償するために、受信器で受信された高い周波数の信号を「デエンファシス処理」することが必要である。高い周波数のサブバンドで多くのデータは送信されないが、そのデータは高いレベルで搬送される。これは、送信器から、サブバンド全体に均一な電力を与えるためである。高い周波数のサブバンドを減衰させると、デエンファシス利得Gdを生じさせる。このデエンファシスは、M次元に対して下式で近似される総合利得を生じさせる。
ここで、GSは、注意深く設計されたモデムの利得であるか、各サブバンドで2Bレベルに制限されたレベルを有する設計において各サブバンドに対して僅かに変化する。明らかに、多数のサブバンドMは、利得を増加させる。さらなる利得の改良は、順方向誤り訂正によって、また伸張処理または制御されたベクターのフィルタ処理を使用してピーク対平均電力比PARを減少させることによって、可能である。後者の技術によって、出力ピーク電圧は、送信器で予め計算され、そして有用な情報を搬送しない余剰ビットは、データと共に送信される。これらの余剰ビットは、ベースバンド変調器からのピーク対平均電力比(PAR)を減少させる手法で選択される。
H(i)をサブバンドiにおけるプリエンファシス増幅とすると、サブバンドi=0〜M−1について、次のようになる。
ここで、GS用の上記式中の分母は、弁別器からの雑音のPSDのサブバンドiからサブバンドi+1までの積分に比例している。サブバンドi=0は、kビットのデータを搬送し、プリエンファシスを搬送しない。よって、H(0)=1である。サブバンド1は、H(1)=2でk−1ビットを搬送する。以下、同様である。M=8に対する典型的な割り当ては、各サブバンドにおいてほぼ等しい電力を生じさせる。
記号毎に合計B=26ビットである。種々のビットレベルの割り当ては、サブバンド毎のビットの上記の例に示されている。
総合利得Gは、上記のように与えられたデエンファシス利得Gdと、FM指数に起因して以下のように与えられるFM送信器利得Gm(変調器利得としても知られる)と、雑音低減利得Grとから求められる。総合利得Gは、次のように与えられる。
ここで、G’は、上記のように与えられたデエンファシス利得式からの最小デエンファシス利得Gdに等しい。模範的な変調利得要因Gmは、次のように与えられる。
ここで、PARは、周波数変調器へのピーク対RMS電圧比であり、またmは変調指数である。
FM指数は、ピークキャリア周波数偏位とベースバンド信号のピーク周波数との比である。先の式に示されているように、ピーク対平均比(PAR)が増加すると、FM利得、即ち変調利得は減少する。この問題に取り組むために、本発明の別の実施形態は、FM送信器への挿入に先行したベースバンド信号の非線形増幅と、受信器での相補的な逆増幅とを使用する。これは、集合的に伸張と呼ばれる。好ましい実施形態では、対数Mu法関数が、テーブルルックアップによって送信器の増幅をデジタル的に行う。Mu法は、信号座標表現に適用される。大きなキャリア対雑音比(CNR)にとって好ましい実施形態では、データビットはフレーム化され、データ座標で表現され、その後プリエンファシス処理され、回転され、ルックアップによってMu法増幅され、さらにサンプリングされたシーケンスとしてFM変調器に適用される。前述したように、一実施形態では、逆圧縮減衰は、等化器を含む。
小さなCNRにとって好ましいもう1つの実施形態では、データはフレーム化され、データ座標で表現され、その後信号座標に回転され、デジタル的にMu法増幅され、データ座標に逆回転され、プリエンファシス処理され、信号座標に回転され、FM変調器に適用される。この後者の構成は、弁別器直後のデエンファシスを可能にするものであって、FMしきい値付近で動作するとき、あるいは大振幅非ガウス干渉の存在下で動作するときに好ましい。送信器の非線形増幅にとって好ましいMu法関数は、次のように表される。
ここで、入力Viは、最大電圧値Vcを有し、また出力Voは、最大値Vpを有する。Muの値は、1より大きいか等しい。典型的には255である。FM偏位は、Vcが回転フィルタ計算の精度を反映してはいるが、Vpによって決定される。
対数増幅の第2の利点は、受信器で必要な対数逆増幅(即ち、逆圧縮)の結果であり、これは減衰に等しい。入力信号は、伝送リンクの何れかの端部において対数的に増幅され、それから逆増幅される。しかしながら、雑音がこの伝送リンクに導入されている。それ故、この雑音が逆対数的に減衰されて、上記の受信器利得等式に示すように、雑音低減利得Grを生じる。
モデムのビットエラーレートは、ビット当たりのエネルギに依存する。換言すれば、このエネルギは、各データ表現レベルを分離する。このレートはまた、雑音エネルギ密度にも依存する。FMモデムの信号対雑音比は、次の通りである。
かくして、線形モデムとは異なり、効率は連続してC/Nに対する設計値に依存する。線形モデムの効率は、例えば4−PSKから8−PSKへ向かう変調レベルを加えるときに、段階的に変化する。与えられた設計について、C/Nの増加は、ビットエラーレート(BER)を線形および非線形双方のモデムについて改良する。しかしながら、FMモデムのC/Nの小さな増加は、その代わりに、帯域幅効率を増加することに、または同じ効率で帯域幅を減少することに使用できる。即ち、増加したC/Nは、FM変調指数を減少することに使用できる。FM変調指数は、カーソン(Carson)の規則によって帯域幅を低下させる。この規則は、FMまたは非線形PMの帯域幅Wを、以下のように特定する。
ここで、wはベースバンド帯域幅である。かくして、非線形モデムシステムは、設計C/N値に対するC/Nの過剰分を使用することによって、一定のBERおよび効率を維持しながら、隣接チャネル干渉(ACI)を低減できる。あるいは、モデムは、同じBERおよびACIで効率を増加させることができる。
モデムの信号対雑音比は、以下のように、Eb/N0にモデムの帯域幅効率(ビット/秒/Hzで与えられる)を乗じたものとなる。
ここで、Eb/N0は、ビット当たりのエネルギ対雑音エネルギ密度を反映する。
FM伝送技術の前述したデータ伝送への応用は、振幅歪みがFMにとって無関係であるという事実から利益を生ずる。これは、例えば受信器がゼロクロス点を追跡することによって、周波数から情報が検索されるためである。図12では、FMダブルサイドバンドによるデータの伝送が、フロー図の形態で描かれている。ステップ230では、伝送すべきデータが、前述したように、多位相フィルタ処理される。また前述したように、FIRフィルタ処理は、それ以前の与えられた数の多位相フィルタ処理の加算を含んでいる。この点については、図14に関連して説明される。
一般に認識されていることではあるが、周波数変調は、1)キャリアの周波数を直接調整することによって、または2)送信すべき情報の積分である信号でキャリアの位相を調整することによって、達成される。周波数変調を達成することに位相調整を使用することは、本発明の一実施形態では好ましいことである。これは、位相変調を完全なデジタル的手法で可能とするチップが利用可能となり、かくして入力信号の再生可能性を最大化するためである。位相調整FMは、FMダブルサイドバンドについては図12に、またFMシングルサイドバンドについては図13に示されている。
図12では、多位相フィルタ処理された入力が、ステップ232で積分される。ステップ236では、正弦キャリア信号をデジタル的にシミュレートすることにルックアップテーブルが使用される。このキャリア信号は、それから多位相フィルタ積分の結果を使用して位相変調される(ステップ238)。この信号のゼロクロス点は、符号化された情報を含んでいるので、ゼロクロス点をカウントすることによって(デジタル的に−ステップ240)、所望の情報がRFスイッチング増幅器に与えられる(ステップ242および244)。本発明の第1の実施形態では、スイッチング増幅器は、C級増幅器である。第2の実施形態では、パスバンドでFMを生じるさせるためにVCOが使用される。第3の実施形態では、同相および直交技術を使用してFMが生じる。
FMダブルサイドバンドは、従来技術のモデムに対して有意な利点を与える。それは、振幅変調された信号に関連した雑音に対する免疫を与える。非線形増幅に起因した歪みは回避される。使用されるRF増幅器は、精密(および高価)である必要はない。これは、振幅変調が精密に再生される必要がないからである。それはまた、ある程度の回路の単純さを与える。これは、キャリアの回復が受信器では必要とされないからである。
しかしながら、FMダブルサイドバンドは、FMシングルサイドバンドと比較して半分の帯域幅効率を与える。それ故、本発明のもう1つの実施形態は、FMシングルサイドバンドを使用する。図13のフロー図は、本発明用のFMシングルサイドバンドを示している。ステップ250では、入力データは、例えば前述したようにFIRフィルタやウエーブレット変換を使用して、多位相フィルタ処理されている。このステップは、以下で説明される図14で更に展開される。多位相フィルタ出力は、それから積分され、この結果が記憶される(ステップ252)。
ヒルバート変換は、入力信号を処理して、入力を90度効果的に位相シフトする(ステップ254)。ヒルバートフィルタ処理の出力は、同様に積分される(ステップ256)。ヒルバートフィルタ積分は、それから指数関数的なルックアップテーブルに入力される(ステップ258)。
正弦キャリア信号は、ステップ260でルックアップテーブルを使用してデジタル的にシミュレートされる。このキャリアは、それから積分された多位相フィルタ出力を使用して位相変調される(ステップ262)。
FMダブルサイドバンドのシナリオによって、位相変調キャリアのゼロクロス点が計算され(ステップ264)、そしてゼロクロス点に対応したデジタルパルス列が生成される(ステップ266)。最後に、シングルサイドバンドの場合には、入力電流が指数関数的ルックアップテーブルからの出力に比例するスイッチング増幅器は、デジタルゼロクロスパルス列を増幅する(ステップ268)。
FMダブルまたはシングルサイドバンドの何れかの場合、送信手順の第1のステップ、即ち入力データの多位相フィルタ処理は、次のように達成される。図14を参照すると、入力データは先ず、Bビットを有するブロックに分割され、ここでBビットは更に、ベクターのM座標に分離される(ステップ270)。図示のフロー図では、B=13およびB=8であるが、これらの変数に対する他の値も使用可能である。デエンファシス利得要因は、(M3/(M−1))によって変化するので、Mの増加はキャリア対雑音比の減少を可能にする。最適な数は経験的に決定され、そしてサブバンド全体のプリエンファシスの決定に必ず影響を与える。これは、デエンファシス利得要因に関連して先に論議した通りである。
今回のベクターと以前のL個のベクターを保持するために、ステップ272でスタックが使用される。図示のように、第1の実施形態は、L=9個のベクターを使用する。これらL個のベクターは、M×M次元のスカラー行列を乗じられて、初期の多位相フィルタ処理を実現する(ステップ274)。図示のように、このスカラー行列は8×8である。続いて、ステップ276では、各イテレーションについて異なる8×8行列を使用して、スタックに格納されている以前の(L−1)個のベクターに対し行列乗算を行し、その結果が蓄積されて出力される(ステップ278)。ステップ280に記載されているように、図14に示されたそれまでのステップはそれから、Rビット/秒を伝送するために、記号レート(R/B)で繰り返される。
前記説明の全てにおいて、この多位相技術により入力データをFM変調するための代替手順も実行可能である点が理解される。しかしながら、説明された手順は、デジタルであるデータ操作の割合を最大化する。
図15を参照すると、FM送信データを受信するための手順が示されている。ステップ284では、受信信号は、低雑音増幅され、そしてイメージフィルタを通過させられている。これは、受信信号と局部発振器を混合することによって導入されたイメージを消去するためである。次に、ステップ286では、フィルタ処理された受信信号が、中間周波数にダウンコンバートされ、そしてバンド内フィルタ処理される。IFのゼロクロス点は、ステップ288でカウントされる。FM変調を使用して、キャリア信号を回復したり、キャリアの位相を決定する必要はない。
ステップ290のDCフィルタ処理は、本発明の応用に有用であって、実質的なドップラーシフトを受ける。ドップラーシフトが既知の軌道パラメータに追従する低地球軌道衛星で使用されるモデムに対して、そのようなDCまたは低周波歪みを消去するために、1つの例ではフィルタ処理が使用される。そのような低周波歪みに対応するもう1つの方法は、最低周波数のサブバンドの使用を回避することである。同じステップのデシメーションフィルタ処理は、ゼロクロス点のカウントを円滑化する。後者は、十分な信号分解能に対して高いレートにあることが必要であるが、それは不要な雑音を招来する。ステップ292では、多位相フィルタ処理は、伝送手順の第1ステップで使用された交換可能な演算子の応用を含む。
しきい値処理は、受信レベル間を弁別することに使用される。伝送信号は、複数の容易に区別可能なレベルの1つで送信される。しかしながら、伝送リンクに導入された雑音は、受信信号を、予測されるレベルの中間の点へシフトする。従ってステップ294では、デシメートされた受信信号を複数の信号レベルの1つに割り当てることが必要である。
FMデータ伝送を使用したキャリア回復は必要とされないが、ベースバンド同期は、ビット同期回復のいくつかの形態を必要とする(ステップ294)。先に述べたように、そのような同期情報は、データ伝送に使用されていないサブバンドで伝送可能である。ドップラーシフトが問題であると予測される場合は、例えば低地球軌道衛星通信では、最低周波数サブバンドは、データ用には使用されず、同期伝送用に利用可能となる。
同様に、最高周波数サブバンドは、典型的には使用できない。等価A/DおよびD/A変換動作でエイリアシングを回避するに全く十分なフィルタは存在しない。最高から2番目のサブバンドと最高サブバンドとの間の3db点で既知のビットパターンを伝送することによって、同期情報は、送信信号の帯域幅内になるが、使用可能なデータ帯域幅ではない。そのような同期情報は、DC信号を同期ビットレートでサンプリングすることによって、挿入され得る。ハイパスおよびローパスのフィルタ処理は、そのサンプルレートで正弦波出力を生じさせる。各方形波は、それぞれのサブバンドの高または低端部にある。かくして、この同期信号は、パイロットトーンと類似して、データ信号の全てに直交している。
ステップ292の演算子の応用に含まれた特定のステップが、図16に示されている。具体的には、サンプリングされた入力は、伝送手順で使用されたものと同じ数Mの次元を有するベクターに分割される(ステップ300)。図示の例では、M=8である。この結果は、L個のベクターのスタック上に押し込まれる(ステップ302)。この例では、L=9を使用している。このスタック上の最初のベクターは、ステップ304で、伝送シーケンスで使用されたと同じ8×8スカラー行列と乗算される。これは、スタック上でL−1個の以前のベクターに対して繰り返され、その結果が蓄積される(ステップ306)。この蓄積された結果は、結果ベクター合計の座標を与える(ステップ308)。これは、ステップ294のしきい値処理および回復の後に、元の送信データを生じる。図16のステップは、Rビット/秒を受信するために、記号レートR/Bで繰り返される(ステップ310)。
前述したステップは、これが、全ての実践的目的に対して、全デジタル式FMモデムであることを示している。非デジタル部分は、ステップ244および268で使用される受動タンク回路と、ステップ284および286の受信器フロントエンドと、指数関数的ルックアップテーブルを使用してC級スイッチング増幅器に入力する電流を変調するに必要なD/A変換器だけである。送信器のRF電力増幅器は、実際にデジタルスイッチである。フィルタもまた、全ての乗算が二値シフトおよび加算となるように、実施できる。かくして、ASICのコストおよび電力消失を低減することができる。
これまでの説明と等式は、アナログ変換器でのエイリアシングを防止することに、Mサブバンドの1つだけが使用されないものと概ね仮定している。代替実施形態では、1より多いサブバンドを未使用にすることから、速度の利点が生じる。
これまでに認識されたように、この技術および一般的な構造は、異なる実施形態において、AM変調を使用した多位相フィルタ処理されたデータの伝送に適用できる。受信回転行列の適応回転は、上述したように、LMSアルゴリズムを使用するAM変調モデムに適用できる。LMS法にとって、ベクターフィルタタップ行列の列は、誤りに比例したベクターに、そのタップ用にフィルタ遅延線に格納されている入力ベクターを掛けたものを減算することによって、繰り返し訂正される。誤りは、モデム受信器の非量子化出力と量子化出力との差(即ち、誤りマージン)であるか、非量子化出力と既知のトレーニングデータシーケンスとの差のいずれかである。これらの一般的な技術は、モデム等化器に使用されているものと同様である。例外は、それらが独立した等化器なしに回転行列に適用される点である。
ここで開示されているモデムの一実施形態に関して上述したように、入力データのパラレルストリームは、データリンクを通して伝送する前に、マルチレートフィルタバンクを使用して回転されたベクターである。理想的な条件下では、データリンクは何も歪みを導入せず、またフィルタのインパルス応答は一致したウエーブレットであり、さらに受信器のフィルタバンクは、ベクター空間で逆回転として振る舞う。理想的には、受信器フィルタバンクの各バンドの記号レートでのサンプリングは、入射信号の自己相関を効果的に計算する。ウエーブレット変換を達成することによって元のデータを完全に回復するためには、全ての他のバンドと同様に、同じバンド内の過去および将来の記号からフィルタ内に格納された全ての早期および後期の重複したウエーブレットに対する受信信号の相互相関がゼロであるか、少なくと無視できる「自己相関」を起こさなければならない。換言すれば、クロスタームが直交していなければならない。それでも、データリンク歪みは直交性を乱し、また自己相関を起こす。
送信器は、周波数基準「パイロット」トーンを、例えばデータ搬送に使用されていないサブバンドで、受信器に送信する。受信器では、位相同期ループ(PLL)が使用できる。これは、PLLバンド内に小さな残差位相誤差だけが存在するように、受信信号の位相および周波数を受信器の相関器に同期させるためである。D/AおよびA/D変換器用のアナログ変換フィルタをそれぞれ送信器および受信器に含んだリンクは、バンド毎に位相が変化(即ち、分散)する線形応答を有しない。
このようなフォセットに対応するために、ウエーブレットの組に対する相互相関がフィルタ処理過程によって計算される。一実施形態における送信器および受信器のマルチレートフィルタバンクは、上述したように、ウエーブレット関数W(I,J)であるフィルタ係数を有する。フィルタ内にMサブバンドがある場合、Iは1〜Mの範囲にあり、またJは送信器おける現在の記号の時間であり、jはその記号が受信器に到達したときの時間である。デジタル処理にとって、時間はサンプルの中で測定されるので、IおよびJは整数であり、iは受信器で処理される特別なサブバンドである。
モデムは、Mサンプルのそれぞれについて時間Tだけ離れた記号を送信する。この結果、記号は、・・・J−3T,J−2T,J−T,J,J+T,J+2T・・・で送信される。Jで送信された記号は、時刻jに受信器へ到達する。かくして、特異な記号は、受信器での処理用にj+nTに到達する。ウエーブレットは、制限された期間を有し、N記号だけを跨ぐ。この結果、「n添字」は、−(N−1)と+(N−1)との間の小さな範囲に限定される。これは、時刻jで受信記号と時間的に重なる全てのウエーブレットをカバーするためである。
サブバンドは、どのサブバンドiでも隣のサブバンドだけと重複するように、良く周波数が定義されている。かくして、バンドi+mだけを考慮すれば足りる。ここで、mは例えば−2,−1,0,+1,+2の範囲にあり、それぞれの側で最も近い2つの隣接するサブバンドを超えて周波数が重複する部分はない。即ち、m>2の大きさに対して、このフィルタはそのストップバンド内にある。勿論、i+mは常に1〜Mの範囲にあり、Mはフィルタ内のサブバンドの合計数である。
送信器は、データ記号D(I,J)中のビットを符号化し、各バンドに対して振幅重み付けされたウエーブレットを送信する。記号は、以下のように送信される。
全ての活性なサブバンドに対するこれらタームの合計は、時刻jに受信器に到達する。ここで、j=(J+リンク内の遅延)である。mを除く全サブバンドを考えることは、バンドiを受信するについて有意ではない。
かくして、合計が全ての許容されるmおよびnについてとられるときに、時間が重複し、かつ周波数が重複した一連のウエーブレットがある。
受信器は、そのタイミングと、必要であれば、受信器フィルタのウエーブレットの位相を調整する。この結果、受信器フィルタは、各記号期間T毎のW(i,j)との内積を評価して、以下を得る。
表記法<,>は内積を表す。定数C00はウエーブレットの自己相関、即ちそれ自身との内積を表す。この結果、データ記号は、C00で割ることによって見出される。かくして、以下のようになる。
ここで、D(i,j)は、時間遅延した送信記号D(I,J)である。複数のウエーブレット関数は、確実に、あるいはほとんど、直交している。それ故、受信器では、クロスターム内積は、設計によって、全てゼロであるか、C00と比較して非常に小さい。受信器は、しきい値検出により正規化された回復された記号(Normalized Recovered Symbol)から精密に記号を回復する。
全ての関連したウエーブレット相関または内積は、バンドiについて、次のように書くことができる。
添字は、正及び負の整数を範囲として、先に定義したように、隣接するバンド及び隣接する記号時間を表現する。
しかしながら、リンク内の分散性障害は、サブバンド間に相対的な位相シフトを作り出す。その場合、ウエーブレットの「直交性」は失われ、回復された記号には自己相関としてクロスタームが現れる。
ここに開示されている発明では、固定されたタップ重みフィルタが使用されて、クロスタームを特別な差分(微分)位相シフトに近似する。フィルタ出力はそれから測定された差分位相シフトの既知の関数F(p)によって重み付けされ、そして重み付けされたフィルタ出力は、回復された信号から減算されて、自己干渉を除去する。好ましい設計では、フィルタの固定された係数は、差分位相シフトの1つの値における内積から計算される。位相が測定できない場合には、適応コンバイナーが使用できる。
好ましい実施形態では、特別な差分位相シフトは90度であり、また既知の重み付け関数は、sin(p)である。ここで、pは、測定された差分位相角である。
バンドi+mの位相が角度Pmである場合、隣のバンドは、差分位相p=P0−Pmを有する。差分位相シフトpに対する内積は、先ず以下のように計算される。
バンドiの自己干渉は、いくつかの成分を有する。例えば、バンドi内で回復された信号は、フィルタSに入力される。iの左側のバンド、即ちバンドi−1から回復された信号は、隣のバンドフィルタALへ挿入され、またi+1から回復された信号は、バンドiの右側の右フィルタARへ挿入される。重み関数F(p)は、X係数のp依存性から決定される。自己干渉は、遅延された回復信号Rと組み合わせることによって、以下のように除去される。
自己干渉項(ターム)をウエーブレットの内積から計算する原理は、位相シフト障害から、時間シフト障害をも含むように、延長させることができる。この場合、時間シフトtは、以下のように計算される。
タイミングオフセットに起因する自己干渉は、フィルタ処理された複数の信号を位相に対するものと同じ手法で組み合わせることによって除去されるが、フィルタタップ重みは、Y値から選択される。
スライディング相関は、1つのサブバンドについて送信器と受信器との間のタイミングオフセットを除去できるとしても、グループ遅延変化(即ち、分散)に起因して他のバンドにもオフセットがある。
前述したものは、ウエーブレット関数の相互相関に基づいてウエーブレットモデムに対する位相および時間等化を与える方法を記述している。前述したように、位相または時間シフトが簡単に測定できない例では、適応コンバイナーが使用できる。さらに、1つのmバンドモデムは、相関器基準位相に対してm位相シフトだけを有しているので、mバンドの全ては、それらmパラメータだけで回復される。m角度が測定できる場合、コンバイナーは適応性である必要はない。それでも、広いサブバンド内の歪みまたは周波数オフセットは、相互相関の計算を複雑化し、この場合は、全てのタップを適応性にすることが必要とされる。
内積クロスタームの他の応用では、他のウエーブレットとは時間的にも周波数的にも重複していない隔離されたウエーブレットW(i,j)は、受信器からuサンプルで時間的なオフセットに到達する。受信器は、隔離された記号を、真の記号の前後の記号時間における小さな早期および後期「衛星」応答と同様に、計算する。
受信器は、正しい時間を見つけるために開示されたように、スライディング相関を行うことができる。しかしながら、隔離された信号の広い相関ピークの、小さな時間誤差に対する精度uは、u=0である設定の確実な決定を許容しない。しかしながら、相関が、例えばピークの真の到達の1記号時間前および1記号時間後になされる場合、さらに2つの内積が存在する。
ウエーブレットが対称または非対称である場合、それはモデムの線形位相応答には望ましいが、タイミングが正しいときに、内積のウエーブレットの位相が一致すれば、早期(Early)および後期(Late)の信号の振幅が等しくなる。即ち、u=0のときに、受信器のフィルタからの衛星応答は、同期したときに同じ大きさを持つ。さらには、隔離(Isolated)された信号に対する早期および後期の信号の大きさは、スライディング相関がu=0に近く、しかも偽ピークには近くないことを確実にするためのしきい値として使用できる。
受信器のウエーブレットに対する受信信号の位相が不明な場合、受信器はまたウエーブレットw(i,j)から相互相関Early’およびLate’を計算する。ここで、w(i,j)はW(i,j)を90度位相シフトしたものである。この場合、エネルギ、具体的にはエネルギの2乗 (energy squared)は、次のようになる。
EarlyおよびLateエネルギまたはエネルギの2乗は、u=0のときに、即ち、送信器と受信器が時間同期しているときに、等しい。このため、到来する隔離されたウエーブレットは、受信器のウエーブレットと整列する。それから、送信された記号は、受信器のフィルタによって検出できる。さらには、隔離された信号と早期信号または隔離された信号と後期信号についてのエネルギの2乗の比は、相互相関から計算可能であり、またその比は、真の同期をサーチすることを助けることができる。
発明の好ましい実施形態が説明されてきたが、当業者には明らかになるように、この概念を組み入れた他の実施形態も使用できる。それ故、これらの実施形態は、開示された実施形態に限定されるべきものではなく、むしろ添付された請求の範囲の精神及び範囲によってのみ制限されるべきものであると感じられる。