JP2005516623A - リパーゼ活性を有するエステラーゼ - Google Patents

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Abstract

本発明は、生体内変化方法における昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体の触媒としての使用に関する。本発明は、加水分解、エステル化、エステル交換、エステル間エステル交換またはアシル化反応を含む任意の方法に用途を有し得る。本発明はまた、光学活性な化合物を生産するために化合物の酵素的分割に用途を有しており、特に、ピレスロイドおよび脂肪酸エステルなどの疎水性部分を有する基質への用途を有する(但し、これに限定されない)。

Description

本発明は、生体内変化方法におけるリパーゼおよびエステラーゼの触媒としての使用に関する。それは、特にそのような方法における、昆虫エステラーゼおよびそれらのリパーゼおよび変異体の使用に関する。本発明は、加水分解、エステル化、エステル交換、エステル間エステル交換(interesterification)またはアシル化反応を含む任意の方法に用途を有し得る。また、本発明は、光学活性な化合物を生産するために化合物の酵素的分割に用途を有しており、特に、ピレスロイドおよび脂肪酸エステルなどの疎水性部分を有する基質への用途を有する(但し、これに限定されない)。
リパーゼおよびエステラーゼの産業上の利用可能性は、加水分解、エステル化、エステル交換およびアシル化活性の範囲を包含する。リパーゼおよびエステラーゼで触媒される工業的反応についての包括的な概観は、Kazlauskas and Bornscheuer (1998), Phythian (1998), Anderson et al.(1998), Jaeger and Reetz (1998), Pandey et al.(1999)およびVilleneuve et al.(2000)に見られる(これらの文献の開示はいずれも参照によってその全体が本願に組み込まれる)。
リパーゼとエステラーゼの加水分解活性が主に関わる用途は、トリグリセリド、脂肪族、脂環式、二環式および芳香族のエステル、さらには有機金属サンドイッチ化合物に基づくエステルなど種々の基質に及ぶ。従来の用途は、家庭用及び産業用の洗剤を含んでいる。他の産業用途としては、革なめし、食品加工(果汁、焼いた食品、野菜の発酵および乳製品の栄養強化を含む)および製紙業で生産されたパルプ中のピッチの除去を含んでいる。また、現在、様々な反肥満処理を含む製薬および栄養補助食品の分野に用途がある。バイオセンサー用途も現われてきており、特に医学の分野並びに食品および飲料産業において、トリアシルグリセロール類の決定のために用いられる。
特に興味深いのは、比較的最近になって利用されるようになった様々な生体内変化におけるリパーゼまたはエステラーゼの加水分解能力の使用であり、これは精密化学、製薬および農薬産業で用いられる新規および/またはキラルな構成単位または生成物を得るものである。これらの産業では生成物についての位置純度およびキラル純度の要求が高まっている。1995年の治療剤の総売上高は1500億米ドルであると見積もられているが、そのうち、600億米ドルがキラル化合物によってもたらされる。10億米ドルを超える売上高を有するキラル薬品としては、アモキシシリン(抗生物質)、カプトプリル(アンギオテンシン転換酵素阻害剤)およびエリスロポエチン(造血成長因子)が挙げられる。多くの場合、所与の医薬や農薬については化合物の鏡像異性体の一方のみが、所望の効果を奏するが、規定当局は新薬として可能性のあるものについては、両方/すべてのキラル型について評価しようとする傾向を強めている。今ではサリドマイドの場合がそうであったと思われるが、時として別の型は現実に望ましくない副作用を有することがある。1990年代には医薬品の鏡像異性体純度は約25%にすぎなかったが、次の数十年間で、新製品の過半数が鏡像異性体として純粋でなければならなくなると産業界では見ている。
これらの酵素の加水分解活性を考慮した使用例は、ピレスロイド殺虫剤を含む農芸化学産業用の対掌性生体内変化であり、これらのカルボキシルエステル殺虫剤のアルコールおよび酸性の構成単位の必要量をラセミ体である出発原料から、鏡像異性体特異的な加水分解により高収率高純度で生産することができる(Hirohara and Nishizawa, 1998; Liese and Filho, 1999)。このような使用の例は、米国特許第5,180,671号、米国特許第4,985,364号および米国特許第6,207,429号に記載されている。精密化学または製薬産業においてエステルのラセミ化合物の速度論的分割のためにエステラーゼまたはリパーゼが使用することができる他の例としては、フェニルグリシジルエステル(心臓脈管薬であるジルチアゼムの前駆物質)、グリシジルブチレートおよびトリネム(Trinem)タイプのβ-ラクタム抗生物質を合成するための(1S-2S)-トランス-2-メトキシシクロヘキサノールが挙げられる。3-フェニルグリシデートの酵素触媒されたアミノアルコールとのエステル交換の酵素的速度論的分割方法が、米国特許第6,187,936号に記載されている(その開示は相互参照によって本願に組み込まれる)。米国特許第5,571,704号(その開示は本願に組み込まれる)は、エステルの鏡像異性体混合物を動物または微生物起源のリパーゼの存在下、酸をエステル化するのとは異なるアルコールの存在下での対掌性酵素的エステル交換に服させることにより、(2R,3S)-3-(4-メトキシフェニル)グリシド酸エステルを調製する方法について記載する。また、米国特許第5,750,382号(その開示は本願に組み込まれる)は、アルコールのラセミ化合物の混合物をアシル供与体の存在下にリパーゼで処理することによる光学活性な2-アルコキシシクロヘキサノール誘導体を生産する方法について記載する。
注目すべきことに、加水分解の対掌性特異性は、例えば、使用する有機溶媒および他の反応条件を変えることにより変えることができる。したがって、特定のリパーゼを対掌性特異性の非常に異なる反応において使用できる(Rubio et al.(1991); Kazlauskas and Bornscheuer, (1998); Villeneuve et al.(2000)、およびBerglund(2001)。
さらに、適当な有機溶媒条件を取ることにより、順方向の加水分解反応を抑え、逆方向エステル化反応が優性になる(Villeneuve et al., 2000; Berglund 2001参照)。酵素および条件によっては、この逆反応は、位置-またはキラル特異的であるかもしれないし、そうではないかもしれないし、選択的エステル化および非選択的エステル化の両者について重要な用途がある。
非位置選択的なエステル化の例として、カンジダアルビカンス(Candida albicans)β-リパーゼ(CALB)は、均質なトリグリセリドの調製には特に効率的なものとなり得る。これは、それがグリセリンの1級水酸基だけでなく、2級水酸基もアシル化することができ、例えば、長鎖オメガ-3型ポリ不飽和脂肪酸トリグリセリドを製造することができるからである。均質な生産物が望ましい可能性のある他の用途としては、様々な短鎖アルコールを様々な脂肪酸でエステル化することによるバイオディーゼル油の生産が挙げられる。例えば、米国特許第5,697,986号および米国特許第5,288,619号参照(それらの開示は相互参照によって本願に組み込まれる)。
しかし、最近、関心の大部分は、化学選択的、位置選択的および立体選択的なエステル化反応へのリパーゼおよびエステラーゼの用途に焦点がある。医薬および栄養補助食品における精密化学および農芸化学産業にとってそのような選択的合成の重要性は、上記のリパーゼおよびエステラーゼ媒介加水分解反応に関する議論に注記されている。それは、それらのエステル化反応にも等しく当てはまる。鏡像異性体選択的なエステル化は、対掌性基質とともに使用すること、およびラセミ化合物の速度論的分割用として興味深い。注目すべきことに、個別の酵素は、一般にエステル化反応と加水分解反応のいずれでも同一のプロキラル基を優先するが、この2つの反応は反対の鏡像異性体を生成するために使用することができる。例えば、リパーゼによっては2-ベンジルグリセリンアセチル化は、たとえいずれの場合もプロ-R位置で反応するとしても、(S)-一酢酸塩を生じるが、同じ酵素による二酢酸塩の加水分解は(R)-一酢酸塩を生じる(Kazlauskas and Bornscheuer (1998)およびその参考文献)。
ラセミ化合物の速度論的分割についての順方向または逆方向の反応における1つの主な使用上での制限は、転換率50%が最高だったという点である。しかし、この方法は効率の改善に利用可能になっている。選択性を改善するための突然変異に基づく改良および有機溶媒中での活性および安定性を増強する新規な固定化技術については後述する。別の改良としては、酵素によって受け入れられない鏡像異性体のラセミ化を引き起こすために、第2の触媒を使用する動的な速度論的分割が挙げられる。場合によっては、遷移金属触媒が使用されるが、それはリパーゼ/エステラーゼと適合性を有するものでなければならない。
エステル交換は、エステルと酸の間(酸分解)、エステルと別のエステルの間(エステル間エステル交換)、エステルとアルコール(アルコール分解)の間でのアシル基の交換方法を指す。例えば、価値のある食品の生産のためにはエステラーゼおよびリパーゼで触媒されたエステル交換に相当な商業的関心がある。1つの場合としては、濃縮ミルクおよびクリームにおける乳製品フレーバーの生産が挙げられる。別のものとしては、植物油を高い産業上高品質のものに改変するためのエステル交換が挙げられる。例えば、リーバ/ユニリーバ(Lever/Unilever)は脂肪とアシルグリセロールのエステル間エステル交換について一連の特許、米国特許第4,275,081号および米国特許第4,863,860号を得ている(それらの開示は参照によって本願に組み込まれる)。この方法は、乳剤ならびにマーガリン、人工クリームおよびアイスクリームなどの他の脂肪に基づく食品で使用するのに適したエステル間エステル交換された脂肪を生成する。
その加水分解、エステル化またはエステル交換能力を利用できるリパーゼ/エステラーゼの興味深い用途の1つの組は、ポリマーの生産に関する。例えば、連続エステル化、2官能性エステルとアルコールとのエステル交換、2官能性モノマーの自己縮合およびラクトンの開環重合によりポリエステルを生産することができる(Chaudhary et al. 1997およびその参考文献)。米国特許5,478,910号(その開示は参照によってその全体が本願に組み入れられる)は、超臨界流体の存在下、固体エステラーゼ(好ましくはリパーゼ)酵素の存在下で、有機ジオールを有機ジエステルまたは有機ジカルボン酸のいずれかと反応させることを含むポリエステルの製造方法について開示する。米国特許第5,962,624号(その開示も参照によって本願に組み入れられる)は、少なくとも2個の1級アルコール基および少なくとも1個の2級アルコールまたはアミノ基を含むポリオールを、有効量のリパーゼの存在下でジカルボン酸またはジカルボン酸エステルと反応させることによる線状ポリエステルの製造方法について開示する。ポリオール部分の2級OHまたはアミノ基は反応しない。
エステラーゼおよびリパーゼのアシル化剤としての可能性は、アシル化された酵素中間体が関わるその2段階反応メカニズムに基づく。順方向(加水分解)反応の場合には、反応は単に水のアシル化である。逆方向(エステル化)反応については、それはアルコールのアシル化である。しかし、これらの酵素の多くは、水以外の求核分子(必ずしも酸素を含まない)をアシル化するか、またはアルコール以外のアシル供与体をエステル化することができる。これまではアシル供与体としてのプロキラルアルコールに注目が集まっていたが、今やジオールおよびα-、β-ヒドロキシ酸その他多数を含む非常に広範囲の化合物に関心が持たれている。
カンジダアルビカンスβ-リパーゼは、別のアシル化に関する潜在的可能性の多くを例示する。したがって、それは水またはアルコールの代わりにアミノ基、ヒドロペルオキシ基およびメルカプト基を求核分子として受け入れ、光学活性アミドの調製または対掌性アミンの分割におよびそれを使用することができる。この酵素を使用する方法は、純粋なβ-アミノ酸およびR-アミンの調製法として記載されている。酵素は、カルボン酸エステル、トリグリセリド、アリールエステル、β-ケトエステル、α,β-不飽和エステルおよびアクリルエステルによるアミノ分解を触媒することになる。N-アシルアミノ酸およびN-アシルアミノ酸アミドは生産されており、カーボネートおよびカーバメートの生産にはさらに大きな可能性がある。後者は特に製薬産業において大きな価値がある。現在、化学合成法は、有毒であることがよく知られている何種類かの試薬の使用を含むが、リパーゼを媒介とする合成法では、例えば、ビニルカーボネートまたはオキシムカーボネートを使用する。
アシル化方法の例は以下のとおりである:固定化リパーゼ、アシル供与体、および乾燥非水酸基有機溶媒の使用により、イムノマイシンの選択的なアシル化について記載する米国特許第5,210,030号;ビニルエステルとポリスチレン樹脂上に固定化したリパーゼを使用するアルコールのアシル化方法について記載する米国特許第5,387,514号;リパーゼの存在下で2官能性のアシル供与体を使用して連続的アシル化(back to back acylation)により、活性化されたアシルエステルまたはカーボネートを形成し、次いで、これを用いてリパーゼの存在下で求核分子をアシル化する、水酸基を有する化合物の誘導方法について記載する米国特許第6,261,813号;ならびにアシル化剤、有機溶媒およびリパーゼの存在下に化合物をアシル化することにより、ビタミンA生産のための前駆物質の製造について記載する米国特許第5,902,738号。
リパーゼの有用な反応の多くは、特に、触媒速度が遅い有機溶媒の使用に依存する。これに対する1つの解決策は、シリカゲルのような無機マトリクス上への固定化を含んでいた。これは吸着や共有結合架橋によって実現できる。固定化に代わる方策としては、架橋酵素結晶、逆ミセル、および脂質または界面活性剤コーティングを施した酵素が挙げられる。様々な代替法は、Kazlauskas and Bornscheuer, 1998; Villeneuve et al. 2000;およびBerglund 2001に総説されている。
反応条件(「溶媒工学」)の操作とは別に、さらに遺伝子工学によって鏡像異性体選択性を変えることができる。異なる2種のアプローチを試験した。すなわち、サイト特異的突然変異誘発法と試験管内進化である。前者は予測された効果を有する変異を形成するために、タンパク質構造および基質相互作用についての予め実験または推理して得た知識に依存する。これはしばしば合理的な設計と呼ばれ、エステラーゼとリパーゼの場合には、1ダースを超える関連するカルボキシル/コリンエステラーゼおよびリパーゼの三次構造についての経験的情報によって支援される。後者は必ずしもそのような事前情報を使用しないが、多数の変異の選択による蓄積を可能にして、標的遺伝子/酵素システムの任意の場所またはその領域において所望の結果を得るべく改善する。現在では、エステラーゼ/リパーゼの鏡像異性体特異性に影響を及ぼすアプローチは両者ともいくつかの例がある(総説としてVilleneuve et al. 2000; Svendsen 2000およびBerglund 2001を参照)。
合理的な設計による変更された鏡像異性体特異性についての最良の証拠としては、sn-1(3)位置選択的なクモノスカビ(Rhizopus oryzae)リパーゼ(ROL)(Scheib et al. 1998)の活性サイト内の基質結合サイトが挙げられる。そのsn2置換基を収容するROLの疎水性パッチにおける残基258は、トリアシルグリセロール(triradylglycerols)のその加水分解の立体特異性にとって重要であり、同じ疎水性パッチ中の残基254に起因する効果はより小さいことが判明した。この場合、変異体の実験的な挙動は、合理的な設計法則からの予測された挙動と細かく一致した。しかし、サイト特異的突然変異誘発法による別の例においては、実験的な挙動は予測と異なっていた。この場合(Hirose et al. 1995)、セパシア菌(Pseudomonas cepacia)から得たリパーゼPSを含むと、1,4-ジヒドロピリジンの加水分解の立体特異性は、3つの突然変異サイト221、266および287において反転したが、個々の変異はいずれも大きな効果を有さなかった。
試験管内進化による変更された鏡像異性体特異性についての別の証拠は、上記リパーゼPSと非常に近縁の緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)リパーゼ(PAL)を含む(Liebeton et al. 2000)。4回の進化の後に、モデル基質である2-メチルデカン酸p-ニトロフェノールエステルの加水分解についての鏡像異性体選択性を実質的に変更した変異体を選択した。変異体酵素は5つの異なる変異を有し、いずれも酵素の基質結合サイトおよび結合基質の立体中心から遠く離れている。その代わりに、それらは、酵素の活性サイトの唇部の「閉」位置から開「蓋」位置への遷移に関わるループ内またはその近くにある。
現在、少数のエステラーゼと若干多いリパーゼが産業上使用されているが、本発明者が知る限り、これらのいずれも昆虫エステラーゼまたはリパーゼの使用を含んでいない。
双翅目のα-カルボキシルエステラーゼクラスタは、ゲノム(Oakeshott et al., 1999)中で一般に物理的にも緊密に結合しているカルボキシル/コリンエステラーゼ多重遺伝子族中の系統発生的に関連する遺伝子のグループである。このクラスタは、双翅目の種の中で高等な種において、ショウジョウバエ属(Drosophila)、キンバエ属(Lucilia)およびハエ属(Musca)から分子的に同定されている。OP殺虫剤耐性を与える変異がこのクラスタに対してマッピングされるため、これは過去十年間の間多くの興味を引きつけてきた(Newcomb et al., 1997; Campbell et al., 1998; Claudianos et al., 1999)。それは、カルボキシル/コリンエステラーゼ多重遺伝子族の系統発生の分析での個別の亜分岐群(sub-clade)を形成する(図1)。現在まで識別されたその分岐群(clade)の他の唯一のメンバーは、やはりOP耐性と関連する他の昆虫のカルボキシルエステラーゼ変異体である(図1)。これらはより下等な双翅目(蚊)、半翅目(アリマキ)および膜翅類(スズメバチ)に由来する遺伝子/酵素を含む。したがって、ショウジョウバエα-エステラーゼクラスタに対して少なくとも約30%の同一性を備えたカルボキシルエステラーゼのこの分岐群が、昆虫綱全体にわたって存在しているようである。
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これらのカルボキシルエステラーゼの天然の(すなわち、非OP殺虫剤)基質に関しては、酪酸メチルおよび酢酸ナフチルなどの単純かつ水溶性の合成エステルをin vitroで加水分解するその能力(これはカルボキシルエステラーゼ活性の診断用として広く採用されている)を別にすればほとんど知られていない。それらのカルボキシルエステラーゼ活性はOP加水分解酵素活性を得た変異体の中では著しく弱められ得る。
本発明者らは、予想外にも、α-カルボキシルエステラーゼ分岐群中におけるような昆虫エステラーゼおよびリパーゼならびにそれらの変異体が、脂肪酸エステル(例えば、4-メチルアンベリフェリルパルミテート)およびピレスロイドなどの非脂肪酸疎水性分子を含む様々な大きな疎水性カルボキシルエステルに対しても活性を有することを見出した。
第1の態様では、本発明は酵素に基づく生体触媒方法(そこで酵素は昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体である)を提供する。
リパーゼは、簡単な酸部分と複雑なアルコール部分を備えた基質に優先的に作用し、一方、エステラーゼは複雑な酸部分と簡単なアルコール部分を備えた基質に優先的に作用すると一般に考えられている(例えば、Phythian, 1998を参照)。α-カルボキシルエステラーゼ分岐群中におけるような昆虫エステラーゼまたはリパーゼおよびそれらの変異体は、簡単または複雑な酸またはアルコール部分の提供において異常である。したがって、上記昆虫エステラーゼおよびそれらの変異体はエステラーゼまたはリパーゼのいずれかと考えることができよう。
さらに、他のいくつかのリパーゼおよびエステラーゼのように、これらの昆虫エステラーゼおよびリパーゼは高度の位置特異性および立体特異性を示す。さらに、それらの位置特異性および立体特異性は、単純なアミノ酸の変更によって定質的に変更することができる。これらの変異は、それらの酸とアルコールの両方のグループにおいて立体特異性を変更することができる。したがって、それらは、リパーゼまたはエステラーゼに基づく生体触媒について現在検討されているその広範囲の用途に役立つ可能性を有している。
第1の態様の好ましい実施形態では、昆虫エステラーゼまたはリパーゼは、酵素のカルボキシル/コリンエステラーゼ多重遺伝子族のメンバーである。より好ましくは、昆虫エステラーゼまたはリパーゼはこの多重遺伝子族内のα-カルボキシルエステラーゼ分岐群に由来する(Oakeshott et al., 1999)。さらにより好ましくは、昆虫エステラーゼまたはリパーゼはこの多重遺伝子族内の亜分岐群を形成するα-カルボキシルエステラーゼクラスタのメンバーである(Oakeshott et al., 1999)(図1)。この亜分岐群を形成するエステラーゼまたはリパーゼは、少なくとも双翅目、半翅目および膜翅類の種から分離できるα-カルボキシルエステラーゼを含む。この亜分岐群中に見出される特定の酵素としては、E3、EST23またはE4エステラーゼまたはリパーゼが挙げられる(但し、これらに限定されない)。もっとも、他の昆虫類からのE3、EST23またはE4のオーソロガスも本発明の方法で使用できる。
好ましくは、α-カルボキシルエステラーゼは双翅目の1種から分離することができる。より好ましくは、高等な双翅目のショウジョウバエ、キンバエおよびハエ(Oakeshott et al., 1999)を含む属からのα-カルボキシルエステラーゼクラスタ。したがって、本発明で使用される好ましいα-カルボキシルエステラーゼの例は、ヒツジキンバエ(lucilia cuprina)に由来するE3エステラーゼ(配列番号1)、またはキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)に由来するEST23エステラーゼ(配列番号2)である。
さらに好ましい実施形態では、変異体昆虫エステラーゼまたはリパーゼは、活性サイトのオキシアニオンホール、アシル結合ポケットまたはアニオン性サイト領域中の変異またはその任意の組合せを有する。
さらに好ましい実施形態では、変異体α-カルボキシルエステラーゼは、E3G137R、E3G137H、E3W251L、E3W251S、E3W251G、E3W251T、E3W251A、E3W251L/F309L、E3W251L/G137D、E3W251L/P250S、E3F309L、E3Y148F、E3E217M、E3F354W、E3F354LおよびEST23W251Lからなる群から選択される。好ましくは変異体α-カルボキシルエステラーゼはE3W251L、E3F309L、E3W251L/F309LまたはEST23W251Lである。
第1の態様の別の好ましい実施形態では、α-カルボキシルエステラーゼ(またはその変異体)は、
i) 配列番号1で示される配列、
ii) 配列番号2で示される配列、
iii) 配列番号3で示される配列、および
iv) i)〜iii)のうちのいずれか1つと少なくとも40%が同一である配列
からなる群から選択され、疎水性エステルの加水分解が可能な配列を有する。より好ましくは、ポリペプチドはi)〜iii)のうちのいずれか1つと、少なくとも50%同一、より好ましくは少なくとも60%同一、より好ましくは少なくとも70%同一、より好ましくは少なくとも80%同一、より好ましくは少なくとも90%同一、より好ましくは少なくとも95%同一、さらにより好ましくは少なくとも97%同一である。
本発明の生体触媒方法は以下のスキームからなるかこれを含み得る:
Figure 2005516623
(式中、R、R2およびR3は同一の部分Zであるか、または
Rが部分Zの立体異性体の混合物であり、R2は部分Zの1つの立体異性体であり、R3は部分Zの別の立体異性体の割合を多くした立体異性体の混合物であり;
R1、R4およびR5は同一の部分Yであるか、または
R1は部分Yの立体異性体の混合物であり、R5は部分の1つの立体異性体であり、R4は部分Yの別の立体異性体の割合を多くした立体異性体の混合物であり;
部分ZおよびYは同一または異なっていてもよく、任意の炭化水素部分であり;
Xは求核性基である)。
ZとYは以下のものからなる群から選ぶことができる:
置換または非置換、飽和または不飽和の直鎖または分岐した非環式または非環式の炭化水素(1または複数のヘテロ原子を途中に含んでもよい);
置換または非置換、飽和または不飽和の縮合多環式炭化水素;
置換または非置換、飽和または不飽和の架橋炭化水素;
置換または非置換、飽和または不飽和のスピロ炭化水素;
置換または非置換、飽和または不飽和の環構成体;
置換または非置換、飽和または不飽和の架橋または非架橋複素環システム;および
置換または非置換、飽和または不飽和のスピロまたは非スピロの架橋または非架橋の縮合複素環システム。
ZとYの例(但し、これらに限定されない)は、α,β-不飽和カルボニル化合物、ケトン、アルデヒド、酸、アリールオキシ、フェノール、シアノ-sエポキシド、α-ヒドロオキシ酸、アミド、ポリオール、およびアミノ酸である。
平衡があるため、順方向反応または逆方向反応のいずれかが優勢である状態を選択することが可能である。
本発明の方法は、順方向反応が優勢である状態の下で行うことができる。
この場合、本発明の方法は、化学選択的、位置選択的または立体選択的な加水分解反応のために使用できる。例えば、この方法は、カルボン酸エステルの立体異性体の混合物からの立体異性体の分割のために使用できる。立体異性体は鏡像異性体でも位置的な立体異性体でもよい。
特に1つの実施形態では、本発明の方法は、(R)-エステル化合物と(S)-エステル化合物の混合物の光学分割方法であって、以下のステップ:
(a)前記混合物に昆虫エステラーゼまたはリパーゼまたはそれらの変異体を接触させ、(R)-エステル化合物と(S)-エステル化合物のうちの一方を立体選択的に加水分解することにより、光学活性な化合物または光学活性なアルコール化合物を得るステップ、および、
(b) 光学活性な酸化合物、光学活性なアルコール化合物、および加水分解されていない光学活性なエステルからなる群から選択される光学活性な化合物を回収するステップ
を含む方法に使用できる。
逆方向反応が優勢であるように方法を行うこともできる。この場合、本発明の方法は化合物R5XH(式中、R5とXは上に定義する通りである)のアシル化のために使用できる。
この場合、本発明の方法は、化学選択的、位置選択的または立体選択的なエステル化反応のために使用できる。例えば、この方法は、出発化合物(つまりエステルとR5XH)の純粋またはラセミ化合物の混合物を使用して、光学活性なエステルを生産することができる。立体異性体は鏡像異性体でも位置的な立体異性体でもよい。
また、本発明の方法は、例えば、一般に以下のように表わされるエステル交換反応でもよい:
Figure 2005516623
Figure 2005516623
本発明の方法は、例えば、一般に以下のように表わされるエステル置換反応(エステル交換)でもよい:
Figure 2005516623
この方法は、親水性および/または疎水性部分を有するエステルである基質に対して行うことができる。エステルは疎水性カルボキシルエステルでもよい。疎水性部分は、エステルの酸および/またはアルコール残基中にあってもよい。疎水性部分は、例えば、C3〜C36またはそれ以上の炭化水素でもよい。疎水性部分は、1または複数の飽和でも不飽和でもよいような炭素環などの疎水性環基を含む部分でもよい。疎水性部分はピレスロイドアルコール残基でもよい。
本発明の方法は光学異性体の混合物から光学活性な酸またはアルコールを生産するために使用してもよい。酸の光学分割の場合には、基質は酸の簡単なエステル、例えば、酸のC1〜C4アルキルエステルでもよい。アルコールの光学分割の場合には、基質はアルコールの簡単なエステル、例えば、アルコールのC1〜C4アルキルエステルでもよい。酸は、置換または非置換のシクロプロパンカルボン酸でもよい。アルコールは置換または非置換のフェノキシベンジルアルコールでもよい。例えば、本発明の方法は、ピレスロイド殺虫剤の合成に用いられるピレスロイド酸またはピレスロイドアルコールの光学異性体の生産のために使用してもよい。ピレスロイドは、天然のピレトリン類(それらは、除虫菊植物(Tanacetum cinerariifolium)の花において生産される)の合成アナログである。それらの構造の修正では、天然製品本来の脊椎動物に対する低毒性を保持しているが、殺虫剤としてより安定でより有力な化合物を生産した。ピレスロイドは、タイプIピレスロイドでもタイプIIピレスロイドでもよい。ピレスロイドタイプIピレスロイド化合物(例えば、ペルメトリン)とタイプIIピレスロイド化合物とは、タイプII化合物がフェノキシベンジル部分のα-炭素原子上にシアノ基を有する点で異なる。
ピレスロイドの例としては、ペルメトリン、シクロプロトリン(cyloprothrin)、フェンバレレート、エスフェンバレレート、フルシトリナート、フルバリネート、フェンプロパトリン、d-フェノトリン(fenothrin)、サイフェノトリン(cyfenothrin)、アレスリン、シペルメトリン、デルタメトリン、トラロメトリン、テトラメトリン、レスメスリンおよびシフルトリンが挙げられる(但し、これらの化合物に限定されない)。
本発明の方法は、上記「背景技術」の見出しの下で上に論じた用途(昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体が触媒として使用される)を含む広い用途を有する。
したがって、本発明の方法は、
家庭用および産業用の洗剤;革なめし;食品加工(果汁、焼いた食品、野菜の発酵および乳製品の栄養強化を含む);
製紙業で生産するパルプ中のピッチの除去;
医薬品/栄養補助食品の分野およびバイオセンサー用途も、特に医学の分野および食品および飲料産業におけるトリアシルグリセロール類の測定のために出現している;
精密化学、製薬および農芸化学産業用の新規および/または対掌性構成単位または製品を得る生体内変化、特に位置および対掌性純度に基づくもの;
ピレスロイド殺虫剤を含む農芸化学産業用の対掌性生体内変化(これらのカルボキシルエステル殺虫剤のアルコールおよび酸構成単位の必要な量);
eg有価食品(濃縮ミルクおよびクリーム中の乳製品フレーバーを含む)の生産のためのエステラーゼおよびリパーゼに触媒されたエステル交換;
植物油を高い産業品質(乳剤、ならびにマーガリン、人工クリームおよびアイスクリームなどの他の脂肪系食品で使用するのに適したエステル間エステル交換された脂肪を含む)に改変するエステル交換;
ポリマーの生産(例えば、2官能性エステルおよびアルコールの連続エステル化およびエステル交換、2官能性モノマーの自己縮合ならびにラクトンの開環重合によってポリエステルを生産することができる);
バイオディーゼルを含む生物燃料の生産;ならびに
アシル化反応
を含むエステラーゼまたはリパーゼの使用を含むこうした用途の中に用途を有する。
好ましくは、この方法は液体を含む環境中で実行する。
昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体は任意の適当な手段によっても提供することができる。これには、昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体をキャリアーまたは賦形剤などとともにまたはこれらを伴わずに直接供給することを含む。昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体は宿主細胞(昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体をコードするポリヌクレオチドを発現する、形質転換された原核生物細胞または真核生物細胞、典型的には、バクテリアまたは真菌類などの微生物)の形で提供してもよい。
また、昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体は、重合体のスポンジまたは発泡体として供給することもできる。発泡体またはスポンジは昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体を、重合体の多孔性支持体上に固定化して含む。
好ましくは、多孔性支持体はポリウレタンを含む。
好ましい実施形態では、スポンジまたは発泡体が、多孔性支持体上または支持体内で埋め込まれたか組み込まれた炭素をさらに含む。
本発明の方法における界面活性剤の使用は、基質となる可能性のあるもの、特に試料中の何らかの、例えば、析出物に由来する疎水性物質を遊離し得ることを想定している。これにより、本発明の方法の効率は増大する。したがって、別の好ましい実施形態では、方法は、界面活性剤の存在を含む。より好ましくは、界面活性剤はバイオサーファクタントである。
別の態様では、本発明は、疎水性エステルを加水分解する酵素を生成および選択する方法であって:
(i)昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたは既に変異した昆虫エステラーゼまたはリパーゼ中に1または複数の変異を導入すること、および
(ii)変異体昆虫エステラーゼまたはリパーゼの疎水性エステルの加水分解能力を決定すること
を含む方法を提供する。
好ましくは、疎水性エステルは脂肪酸エステルである。
好ましくは、1または複数の変異は、エステラーゼもしくはリパーゼの加水分解活性を増強しかつ/または立体特異性を変更する。
好ましくは、昆虫エステラーゼまたはリパーゼはα-カルボキシルエステラーゼである。
好ましくは、α-カルボキシルエステラーゼは、
i) 配列番号1で示される配列、
ii) 配列番号2で示される配列、
iii) 配列番号3で示される配列、および
iv) i)〜iii)のうちのいずれか1つと少なくとも40%が同一である配列
からなる群から選択される配列を有する。より好ましくは、この配列はi)〜iii)のうちのいずれか1つと、少なくとも50%同一、より好ましくは少なくとも60%同一、より好ましくは少なくとも70%同一、より好ましくは少なくとも80%同一、より好ましくは少なくとも90%同一、より好ましくは少なくとも95%同一、さらに好ましくは少なくとも97%同一である。
好ましくは、1または複数の変異は、エステラーゼまたはリパーゼの領域内にあり、オキシアニオンホール、アシル結合ポケットおよびアニオン性サイトからなる群から選択される。
好ましくは、変異は点突然変異である。
好ましくは、既に変異した昆虫エステラーゼまたはリパーゼは、E3G137R、E3G137H、E3W251L、E3W251S、E3W251G、E3W251T、E3W251A、E3W251L/F309L、E3W251L/G137D、E3W251L/P250S、E3F309L、E3Y148F、E3E217M、E3F354W、E3F354LおよびEST23W251Lからなる群から選択される。
別の態様では、本発明は、エステルを加水分解する昆虫α-カルボキシルエステラーゼを生成および選択する方法であって、
(i)昆虫α-カルボキシルエステラーゼまたは既に変異した昆虫α-カルボキシルエステラーゼ中に1または複数の変異を導入すること、および
(ii)変異体α-カルボキシルエステラーゼのエステル加水分解能力を決定すること
を含む方法を提供する。
好ましくは、1または複数の変異は、昆虫α-カルボキシルエステラーゼの加水分解活性を増強しかつ/または立体特異性を変更する。
別の態様では、本発明は、前記2つの態様による方法によって得られた酵素を提供する。
以下、本発明を実施例(但し、本発明はこれに限定されない)および添付図面によって説明する。
配列表の概略
配列番号1:ヒツジキンバエ(Lucilia cuprina)E3α-カルボキシルエステラーゼのアミノ酸配列。
配列番号2:キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)EST23α-カルボキシルエステラーゼのアミノ酸配列。
配列番号3:モモアカアブラムシ(Myzus persicae)E4α-カルボキシルエステラーゼのアミノ酸配列。
配列番号4:カリフォルニアシビレエイ(Torpedo californica)アセチルコリンエステラーゼの部分的なアミノ酸配列。
一般的な技術
特に断らない限り、本発明で利用した組み換えDNA技術は標準的操作であり当業者にはよく知られている。そのような技術は、J. Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning, John Wiley and Sons (1984), J. Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbour Laboratory Press (1989), T. A. Brown (editor), Essential Molecular Biology: A Practical Approach, Volumes 1 and 2, IRL Press (1991), D. M. Glover and B. D. Hames (editors), DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes 1-4, IRL Press (1995 and 1996)およびF. M. Ausubel et al.(Editors), Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience (1988、現在までのすべての改訂を含む)(これらは参照によって本願に組み込まれる)などの文献全体にわたって記載され説明されている。
定義
この明細中で、「置換された」という用語は、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール基、アリールアルキル、ハロ、ハロアルキル、ハロアルキニル、水酸基、アルコキシ基、アルケニルオキシ、ハロアルコキシ、ハロアルケニルオキシ、ニトロ、アミノ、ニトロアルキル、ニトロアルケニル、ニトロアルキニル、ニトロヘテロシクリル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルケニルアミン、アルキニルアミノ、アシル、アルケニル、アルキニルアシル、アシルアミノ、ジアシルアミノ、アシルオキシ、アルキルスルホニルオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、ヘテロシクリルアミノ、ハロヘテロシクリル、アルキルスルフェニル、カルボアルコキシ、アルキルチオ、アシルチオ、ホスホノおよびホスフィニルなどのリン含有基から選択される1または複数の基でさらに置換されまたは置換されない基による置換を含む。
本願で使用する「アルキル」という用語は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチルなどの直鎖アルキル基を意味すると理解される。アルキル基は、場合によって、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ、ハロアルキル、ハロアルキニル、水酸基、アルコキシ、アルケニルオキシ、ハロアルコキシ、ハロアルケニルオキシ、ニトロ、アミノ、ニトロアルキル、ニトロアルケニル、ニトロアルキニル、ニトロヘテロシクリル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルケニルアミン、アルキニルアミノ、アシル、アルケノイル、アルキノイル、アシルアミノ、ジアシルアミノ、アシルオキシ、アルキルスルホニルオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、ヘテロシクリルアミノ、ハロヘテロシクリル、アルキルスルフェニル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルチオ、アシルチオ、ホスホノおよびホスフィニルなどのリン含有基から選択される1または複数の基によって置換されていてもよい。
本願で使用する場合、「アルコキシ」という用語は、直鎖または分岐のアルキルオキシ、好ましくはC1〜10アルコキシ基を表す。例としてはメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシおよび様々なブトキシ異性体が挙げられる。
本願で使用する「アルケニル」という用語は、直鎖または分岐の、単環または多環アルケンおよびポリエンから得られる基を指す。置換基としては、前に定義したモノ-またはポリ-不飽和のアルキルまたはシクロアルキル基、好ましくはC2〜l0 アルケニルが挙げられる。アルケニルの例としては、ビニル、アリル、1-メチルビニル、ブテニル、イソブテニル、3-メチル-2-ブテニル、1-ペンテニル、シクロペンテニル、1-メチル-シクロペンテニル、1-ヘキセニル、3-ヘキセニル、シクロヘキセニル、1-ヘプテニル、3-ヘプテニル、1-オクテニル、シクロオクテニル、1-ノネニル、2-ノネニル、3-ノネニル、1-デセニル、3-デセニル、1,3-ブタジエニル、1,4-ペンタジエニル、1,3-シクロペンタジエニル、1,3-ヘキサジエニル、1,4-ヘキサジエニル、1,3-シクロヘキサジエニル、1,4-シクロヘキサジエニル、1,3-シクロへプタジエニル、1,3,5-シクロへプタトリエニルまたは1,3,5,7-シクロオクタテトラエニルが挙げられる。
本願で使用する「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素、好ましくは臭素またはフッ素を指す。
本願で使用する「ヘテロ原子」という用語は、O、NまたはSを指す。
「アシル」という用語は、単独で使用する場合または「アシルオキシ」、「アシルチオ」、「アシルアミノ」またはジアシルアミノ」のような複合語で使用する場合のいずれでも、脂肪族のアシル基、および複素環を含むアシル基(複素環アシルと呼ぶ)を指し、好ましくはC1〜10アルカノイルである。アシルの例としては、カルバモイル;ホルミル、アセチル、プロパノイル、ブタノイル、2-メチルプロパノイル、ペンタノイル、2,2-ジメチルプロパノイル、ヘキサノイル、へプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイルなどの直鎖または分岐のアルカノイル;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t-ブトキシカルボニル、t-ペンチルオキシカルボニルまたはヘプチルオキシカルボニルなどのアルコキシカルボニル;シクロプロパンカルボニル、シクロブタンカルボニル、シクロペンタンカルボニルまたはシクロヘキサンカルボニルなどのシクロアルカンカルボニル;メタンスルホニルまたはエタンスルホニルなどのアルカンスルホニル;メトキシスルホニルまたはエトキシスルホニルなどのアルコキシスルホニル;ヘテロシクロアルカンカルボニル;ピロリジニルアセチル、ピロリジニルプロパノイル、ピロリジニルブタノイル、ピロリジニルペンタノイル、ピロリジニルヘキサノイルまたはチアゾリジニルアセチルなどのヘテロシクリオアルカノイル;ヘテロシクリルプロペノイル、ヘテロシクリルブテノイル、ヘテロシクリルペンテノイルまたはヘテロシクリルヘキセノイルなどのヘテロシクリルアルケノイル;またはチアゾリジニルグリオキシロイルまたはピロリジニルグリオキシロイルなどのヘテロシクリルグリオキシロイルが挙げられる。
昆虫エステラーゼ、リパーゼおよびそれらの変異体
ポリペプチドの%同一性は、ギャップ生成ペナルティ=5およびギャップ拡張ペナルティ=0.3とし、GAP(Needleman and Wunsch, 1970)分析(GCGプログラム)によって決定する。問い合わせ配列は長さで少なくとも15個のアミノ酸とし、GAP分析は、少なくとも15個のアミノ酸領域上で2つの配列のアラインメントを行う。より好ましくは、問い合わせ配列は長さで少なくとも50個のアミノ酸であり、GAP分析は、少なくとも50個のアミノ酸領域上の2つの配列のアラインメントを行う。より好ましくは、問い合わせ配列は長さで少なくとも100個のアミノ酸であり、GAP分析は、少なくとも100のアミノ酸領域上の2つの配列のアラインメントを行う。より好ましくは、問い合わせ配列は長さで少なくとも250個のアミノ酸であり、GAP分析は、少なくとも250個のアミノ酸領域上の2つの配列のアラインメントを行う。さらにより好ましくは、問い合わせ配列は長さで少なくとも500個のアミノ酸であり、GAP分析は、少なくとも500個のアミノ酸領域上の2つの配列のアラインメントを行う。
本願で使用する「そ(れら)の変異体」という用語は、天然に存在する昆虫エステラーゼまたはリパーゼの変異体であって、それが由来する天然に存在する昆虫エステラーゼまたはリパーゼと比較して、本願に記載するエステル含有化合物に対して少なくともある加水分解活性を維持するものである。好ましくは、変異体は、それらが由来する天然に存在する昆虫エステラーゼまたはリパーゼと比較して、活性が増強されおよび/または立体特異性が変更されたものである。
天然に存在する昆虫エステラーゼまたはリパーゼのアミノ酸配列変異体は、本発明の核酸に適当なヌクレオチド変更を導入することにより、または所望のポリペプチドのin vitro合成によって調製できる。そのような変異体は、例えば、アミノ酸配列内の残基の欠失、挿入または置換を含む。最終タンパク質産物が所望の特性を有する限り、欠失、挿入および置換の組合せを最終コンストラクトに到達するように行うことができる。
アミノ酸配列変異体の設計において、変異サイトの位置および変異の性質は、修正しようとする特有に依存するであろう。特に好ましい実施形態では、天然に存在する昆虫エステラーゼまたはリパーゼは、本願に記載するエステル含有化合物に対してそれらの加水分解能力を増加させるために変異させられる。変異のためのサイトは個々にまたは連続的に、例えば、(1)最初に保存的なアミノ酸選択で置換し、次いで、達成された結果に依存する、より根本的な選択で置換し、(2)標的残基を欠失させ、または(3)位置特定したサイトに隣接して他の残基を挿入することによって修正できる。そのような変異体の例としては、E3G137R、E3G137H、E3W251L、E3W251S、E3W251G、E3W251T、E3W251A、E3W251L/F309L、E3W251L/G137D、E3W251L/P250S、E3F309L、E3Y148F、E3E217M、E3F354W、E3F354LおよびEST23W251Lが挙げられる。
DNAシャフリング法(Patten et al., 1997)を使用しても本発明の方法に役立つ変異体を得ることができる。DNAシャフリングは、関連する遺伝子プールの任意の断片化にプライマーなしのPCRによる断片のリアセンブリを続けて行うことによって実行される再帰的な組換えおよび変異方法である。一般に、DNAシャフリングは、選択されるかスクリーニングすることができるポリヌクレオチド(この場合、本願に記載するようなエステル含有化合物を加水分解できる酵素をコードするポリヌクレオチド)のライブラリーを生成するための手段を提供する。選択された酵素の立体特異性もスクリーニングすることができる。
アミノ酸配列の欠失は、一般に約1〜30残基、より好ましくは約1〜10残基、典型的には約1〜5個の連続する残基にわたって行う。
置換変異体は、ポリペプチド分子中の少なくとも1個のアミノ酸残基を欠失させ、その場所に異なる残基を挿入する。置換突然変異生成のために最も興味深いサイトとしては、活性または結合性サイトであると確認されたサイトが挙げられる。他の興味あるサイトは、様々な株または種から得られた特定の残基が同一であるようなものである。これらの位置は生体活性にとって重要かもしれない。これらのサイト(特に、少なくとも3個の他の同一に保存されたサイトの配列内にあるもの)は比較的保存的な方法で置換することができる。そのような保存的な置換を「典型的な置換」の標題の下の表1に示す。
さらに、所望であれば、昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体中に、置換または追加として非天然のアミノ酸または化学的なアミノ酸アナログを導入することができる。そのようなアミノ酸としては、普通のアミノ酸のD-異性体、2,4-ジアミノ酪酸、α-アミノイソ酪酸、4-アミノ酪酸、2-アミノ酪酸、6-アミノヘキサン酸、2-アミノイソ酪酸、3-アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、ホモシトルリン、システイン酸 、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β-アラニン、フルオロアミノ酸、β-メチルアミノ酸、Cα-メチルアミノ酸、Nα-メチルアミノ酸などのデザイナーアミノ酸、および一般にアミノ酸アナログが挙げられる(但し、これらに限定されない)。
Figure 2005516623
また、昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体(それらは合成中または合成後に、例えば、ビオチン化、ベンジル化、糖鎖形成、アセチル化、リン酸化、知られている保護/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解を生ずる開裂、抗体分子または他の細胞配位子への連結などによって差別的に修正される)は本発明の範囲内で含まれる。これらの修正は、本発明のポリペプチドの安定性および/または対生物作用を増加させるように働き得る。
昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体は、天然のタンパク質の生産および回収、組換えタンパク質の生産および回収ならびにおよびタンパク質の化学合成を含む様々な方法で生産することができる。1つの実施形態では、昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体をコードする分離されたポリペプチドを、ポリペプチドを生産するのに有効な条件の下のポリペプチドを発現し得る細胞を培養し、そのポリペプチドを回収することにより生産できる。培養に好ましい細胞は本発明の組換え細胞である。有効な培養条件としては、タンパク質生産をするのに効果的な培地、バイオリアクター、温度、pHおよび酸素条件が挙げられるが、これらに限定されない。有効な培地は、本発明のポリペプチドを生産するために細胞を培養し得る任意の培地を指す。そのような培地は、典型的には同化可能な炭素、窒素およびリン酸塩源ならびに適当な塩類、ミネラル、金属、およびビタミンなどの他の栄養素を有する水性培地を含む。昆虫エステラーゼもしくはリパーゼを生産する細胞またはそれらの変異体は、慣用の発酵バイオリアクター、振とうフラスコ、試験管、マイクロタイターディッシュおよびペトリプレートにおいて培養できる。培養は、組換え細胞に適当な温度、pHおよび酸素含有量で実行できる。そのような培養条件は、当業者の専門知識内にある。
組換えベクター
組換えベクターは、本発明の方法で使用するために昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体を発現するために使用することができる。さらに、本発明の別の実施形態は、昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体をコードする少なくとも1つの分離されたポリヌクレオチドを含み、宿主細胞にポリヌクレオチド分子を運ぶことができる任意のベクターに挿入された、その組換えベクターを含む。そのようなベクターは、天然状態では昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体をコードするポリヌクレオチドに隣接して見出されず、好ましくは、エステラーゼまたはリパーゼが由来する種以外の種に由来するポリヌクレオチド配列である、異種起源のポリヌクレオチド配列を含む。ベクターは、RNAまたはDNA、原核生物または真核生物のいずれでもよく、典型的にはウイルスまたはプラスミドである。
1つのタイプの組換えベクターは、機能し得るように発現ベクターに連結された、昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体をコードするポリヌクレオチドを含む。機能し得るように連結されたという表現は、宿主細胞の形質転換のために導入された時、分子が発現され得るような方法での発現ベクターへのポリヌクレオチド分子の挿入を指す。本願で使用する場合、発現ベクターは宿主細胞を形質転換することができ、特定のポリヌクレオチド分子の発現を達成することができるDNAまたはRNAのベクターである。好ましくは、発現ベクターは、さらに宿主細胞内で増殖することができる。発現ベクターは原核生物でもよいし真核生物でもよく、典型的にウイルスまたはプラスミドである。本発明の発現ベクターとしては、本発明の組換え細胞における機能(すなわち、直接的遺伝子発現)を含む任意のベクター(バクテリア、菌類、内部寄生虫、節足動物、他の動物および植物細胞を含む)が挙げられる。本発明の好ましい発現ベクターは、バクテリア、酵母、節足動物、哺乳類の細胞、より好ましくは本願に開示する細胞タイプにおいて遺伝子発現を指示することができる。
本発明の発現ベクターは、転写コントロール配列、翻訳コントロール配列、複製起点、および組換え細胞と適合性を有し、本発明のポリヌクレオチド分子の発現をコントロールする他の調節配列などの調節配列を含む。特に、昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、転写コントロール配列を含む。転写コントロール配列は転写の開始、延長および終了をコントロールする配列である。特に重要な転写コントロール配列は、プロモーター、エンハンサー、オペレーターおよびリプレッサー配列などの転写開始をコントロールするものである。適当な転写コントロール配列としては、本発明の組換え細胞の少なくとも1つにおいて機能し得る何らかの転写コントロール配列を含む。様々なそのような転写コントロール配列は当業者に知られている。好ましい転写コントロール配列としては、バクテリア、酵母、節足動物、哺乳類細胞中で機能するものが挙げられ、tac、lac、trp、trc、oxy-pro、omp/lpp、rrnB、バクテリオファージラムダ、バクテリオファージT7、T7lac、バクテリオファージT3、バクテリオファージSP6、バクテリオファージSP01、メタロチオネイン、アルファ接合因子、ピチア(Pichia)アルコール酸化酵素、アルファウイルスサブゲノムプロモーター(シンドビス(Sindbis)ウイルスサブゲノムプロモーターなど)、抗生物質耐性遺伝子、バキュロウイルス、Heliothis zea昆虫ウイルス、牛痘ウイルス、疱疹ウイルス、アライグマポックスウイルス、他のポックスウイルス、アデノウイルス、サイトメガロウイルス(中間初期プロモーターなど)、シミアンウイルス40、レトロウイルス、アクチン、レトロウイルスの長い末端反復、ラウス肉腫ウイルス、熱衝撃、リン酸塩および硝酸塩転写コントロール配列、ならびに原核生物または真核生物細胞内の遺伝子発現をコントロールすることができる他の配列などである(但し、これらに限定されない)。追加的な適当な転写コントロール配列は、組織特異的プロモーターおよびエンハンサーを含む。
また、昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体をコードするポリヌクレオチドは、(a)発現された昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体をそのポリペプチドを生産する細胞から分泌可能にする分泌シグナル(すなわち、シグナルセグメント核酸配列) および/または(b)融合配列を含んでもよい。適当なシグナルセグメントの例としては、昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体の分泌を指図することができる任意のシグナルセグメントが挙げられる。好ましいシグナルセグメントとしては、組織プラスミノゲン活性剤(t-PA)、インターフェロン、インターロイキン、成長ホルモン、組織適合性およびウイルスエンベロープ糖タンパク質シグナルセグメント、ならびに天然のシグナル配列が挙げられる(但し、これらに限定されない)。さらに、昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体をコードするポリヌクレオチドは、コードされたタンパク質をプロテオソームに指し向ける融合セグメント(ユビキチン融合セグメントなど)に結合させることができる。
宿主細胞
本発明の別の実施形態としては、昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体をコードする1または複数のポリヌクレオチドで形質転換された宿主細胞を含む組換え細胞が挙げられる。ポリヌクレオチド分子による細胞の形質転換は、ポリヌクレオチド分子を細胞に挿入できる任意の方法で遂行できる。形質転換技術としては、トランスフェクション、エレクトロポレーション、顕微鏡下注射、リポフェクション(lipofection)、吸着および原形質融合が挙げられる(但し、これらに限定されない)。組換え細胞は単細胞のままでもよいし、または組織、器官もしくは多細胞の有機体まで成長させてもよい。昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体をコードする形質転換されたポリヌクレオチドは、染色体外にとどまってもよいし、または発現されるその能力が保持されるようにして形質転換された(すなわち、組換え)細胞の染色体内の1または複数のサイトに一体化させてもよい。
形質転換するべき適当な宿主細胞としては、昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体をコードするポリヌクレオチドで形質転換することができる任意の細胞が挙げられる。本発明の宿主細胞は、昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体を内生的に(すなわち、自然に)生産し得るものでもよいし、または昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドで形質転換された後にそのようなタンパク質を生産し得るものでもよい。本発明の宿主細胞は少なくとも1つの昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体を生産することができる任意の細胞であり、バクテリア、真菌類(酵母を含む)、寄生動物、節足動物、動物および植物の細胞を含む。好ましい宿主細胞としては、バクテリア、ミコバクテリウム、酵母、節足動物、哺乳類細胞が挙げられる。より好ましい宿主細胞は、サルモネラ菌、大腸菌、桿菌、リステリア菌、サッカロミケス、Spodoptera、ミコバクテリウム、Trichoplusia、BHK(ベビーハムスター腎)細胞、MDCK細胞(イヌ疱疹ウイルス培養用の正常イヌ腎細胞系統)、CRFK細胞(ネコ疱疹ウイルス培養用の正常ネコ腎細胞系統)、CV-1細胞(例えば、アライグマポックスウイルスの培養に使用されるアフリカ猿腎臓細胞系統)、COS(例えば、COS-7) 細胞、およびVero細胞が挙げられる。特に好ましい宿主細胞は大腸菌(E.coli)K-12誘導株を含む大腸菌;チフス菌(Salmonella typhi);減弱化株を含むネズミチフス菌(Salmonella typhimurium);ヨトウガ(Spodoptera frugiperda); イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni);BHK細胞;MDCK細胞;CRFK細胞;CV-1細胞;COS細胞;Vero細胞;および非腫瘍形成マウス筋芽細胞G8細胞(例えば、ATCC CRL 1246)である。追加的な適当な哺乳類細胞宿主としては、他の腎臓細胞系統、他の繊維芽細胞細胞系統(例えば、ヒト、ネズミ科または鶏胎児繊維芽細胞細胞系統)、髄腫細胞系統、チャイニーズハムスター卵巣細胞、マウスNIH/3T3細胞、LMTK細胞および/またはヒーラ細胞が挙げられる。
組み換えDNA法は、例えば、宿主細胞内のポリヌクレオチド分子のコピーの数、それらのポリヌクレオチド分子の転写効率、得られた転写体が翻訳される効率および翻訳後修飾の効率を操作することにより、形質転換されたポリヌクレオチド分子の発現改善のために使用できる。昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体をコードするポリヌクレオチドの発現を増加させるのに有用な組換え技術としては、高コピー数プラスミドにポリヌクレオチド分子を機能可能に連結すること、ポリヌクレオチド分子を1または複数の宿主細胞染色体に組み込むこと、ベクター安定配列のプラスミドへの追加、転写コントロール信号(例えば、プロモーター、オペレーター、エンハンサー)の置換または修正、翻訳コントロール信号(例えば、リボソーム結合サイト、Shine-Dalgarno配列) の置換または修正、宿主細胞のコドン用法に対応させるための本発明のポリヌクレオチド分子の修正、および転写を不安定化する配列の欠失が挙げられる(但し、これらに限定されない)。
組成物
本発明の方法に有用な組成物、または昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体を含む組成物は、賦形剤(本願では「許容されるキャリアー」とも呼ぶ)を含む。賦形剤は本願に記載する方法での使用に適した任意の材料であり得る。そのような賦形剤の例としては、水、食塩水、リンゲル液、ブドウ糖溶液、ハンク溶液および他の水性の生理学的にバランスのとれた塩溶液が挙げられる。不揮発性油、胡麻油、オレイン酸エチルまたはトリグリセリドなどの非水性ビヒクルも使用できる。他の有用な処方は、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどの増粘剤を含む懸濁液を含む。また、賦形剤は、等張性および化学的安定性を増強する物質など少量の添加剤を含むことができる。バッファーの例としてはリン酸塩バッファー、重炭酸ソーダバッファーおよびトリスバッファーが挙げられ、予防薬の例としては、チメロサールまたはo-クレゾール、ホルマリンおよびベンジルアルコールが挙げられる。賦形剤はまた、例えば、組成物の半減期を増加させるために使用することができ、例えば、重合体の徐放性ビヒクル、生物分解性インプラント、リポソーム、バクテリア、ウイルス、他の細胞、油、エステル、およびグリコールなどが挙げられる(但し、これらに限定されない)。
さらに、昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体は、生体触媒の速度および/または程度を増強するか、ポリペプチドの安定性を増加させる組成物中に提供することができる。例えば、昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体をポリウレタンマトリクス上に固定化するか(Gordon et al., 1999)、または適当なリポソーム中にカプセル化することができる(Petrikovics et al.2000a and b)。昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体は、さらに消火(LeJeune et al., 1998)で慣例的に使用されるものなどの発泡体を含む組成物に組み入れることができる。
当業者には理解されるであろうが、昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体は、容易に、WO 00/64539(その内容はその全体が本願に組み入れられる)に開示されるようなスポンジまたは発泡体中に使用することができるであろう。
有効な生体触媒を生産するために必要とされる昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体(または昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体を発現する宿主細胞)の濃度は、実行される必要のある反応の性質、および組成物の処方を含む多くの要因に依存するであろう。当業者によって理解されるように、組成物中での昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体(または昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体を発現する宿主細胞)の有効な濃度は、容易に実験的に決定することができる。
界面活性剤
本発明の方法における界面活性剤の使用は、基質となる可能性のあるもの、特に試料中の何らかの、例えば、析出物に由来する疎水性物質を遊離し得ることを想定している。これにより、本発明の方法の効率は増大する。
界面活性剤は、油/水または空気/水界面の間の界面など、流体相間、極性および水素結合度合いの異なる界面で選択的に分割する親水性部分と疎水性部分(一般に炭化水素)を備えた両親媒性分子である。これらの特性は、界面活性剤を、表面および界面の張力を低減することができ、炭化水素を水中に溶解させることができるところで、または水を炭化水素中に溶解させることができるところで、マイクロエマルジョンを形成し得るものとしている。界面活性剤は、分散特性を含む多くの有用な特性を有する。
バイオサーファクタントは微生物によって合成される構造上様々な表面活性剤分子のグループである。これらの分子は、水溶液および炭化水素混合の両方で表面および界面の張力を低減する。バイオサーファクタントは、低毒性、より高い生物分解性、より良好な環境適合性、より高い発泡性、極端な温度、pHおよび塩分における、高い選択性および特異性、ならびに再生可能な原料から合成され得るなど、化学的界面活性剤に対していくつもの大きな長所を有する。
本発明の生体内変化方法で有用なバイオサーファクタントとしては、ラムノリピッド(例えば緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来)、トレハロリピッド(例えば、Rhodococcus erythropolis由来)、ソホロリピッド(例えば、Torulopsis bombicola由来)およびセロビオリピッド(例えば、Ustilago zeae由来)などの糖脂質;セレウェッチン(serrawettin) (例えば、霊菌(Serratia marcescens)由来)、サーファクチン(例えば、枯草菌(Bacillus subtilis)由来)などのリポペプチドおよびリポタンパク質; 、サブチリシン(例えば、枯草菌(Bacillus subtilis)由来)、グラミシジン(例えばBacillus brevis由来) およびポリミクシン(例えばBacillus polymyxa由来);脂肪酸、中性脂質およびリン脂質;エマルサン(emulsan)(例えばAcinetobacter calcoaceticus由来)、バイオディスペルサン(例えばAcinetobacter calcoaceticus由来)、マンナン脂質タンパク質(例えば、Candida tropicalis由来)、リポサン(liposan)(例えば、Candida lypolytica由来)、タンパク質PA(例えば緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来)などの重合体界面活性剤;ならびに、例えばA.calcoaceticus由来のベシクルおよびフィムブリエなどの微粒子のバイオサーファクタントが挙げられる(但し、これらに限定されない)。
(実施例1)
変異体の構築
E3酵素アミノ酸配列の脊椎動物アセチルコリンエステラーゼ(TcAChE;その3次元構造は知られている; Sussman et al., 1991)のそれとのアラインメントを図2に示す。E3とEST23の変異体は、StratageneのQuickChange(商標)サイト特異的突然変異生成キットを使用して構築し、変更された残基の数およびその変更の性質によって命名される。例えば、変異体E3W251Lは野生型酵素(すなわち、E3WT)中の位置251でのTrp残基が、Leuに変異したE3変異体である。
E3およびEST23酵素は、Newcomb et al.(1997)によって記載されるようなバキュロウイルス発現システムを使用し、但し、増大した発現のためにHyQ SFX昆虫無血清培地(HyClone)を使用して発現された。細胞抽出物は、0.05%トライトンX-100を含む0.1Mリン酸塩バッファーpH 7.0中濃度108細胞ml-1で細胞を溶解することにより調製した。次いで、抽出物を、ジエチルクマリルリン酸塩(dECP)による酵素リン酸化に際してのクマリン(蛍光化合物)の初期放出に基づく蛍光分析を使用して、エステラーゼ分子数を滴定した。
図3は、アシル化反応においてE3(脊椎動物AChEの3次元構造に基づく)の活性サイトの提案された配置を図示するものである。我々は、既知のAChE活性サイトの3つの別個のサブサイトに対応する領域内における7個のE3残基中の変異を調べた。これらはオキシアニオンホール(E3残基137)、アニオン性サイト(E3残基148、217および354)およびアシル結合ポケット(E3残基250、251および309)である。アニオン性サイトおよびアシル結合ポケットは、Jarv(1984)の命名法中のplおよびp2サブサイトに相当する。
オキシアニオンホールの変異
TcAChE中で、オキシアニオンホールは、Gly118、Gly119およびAla201を含み、これらはE3中のGly136、Gly137およびAla219に対応する。いくつかのリパーゼ(Derewenda et al., 1992)中での界面活性化の間、構造が変わるとはいえ、これらの残基は、カルボキシル/コリンエステラーゼ多重遺伝子族(Oakeshott et al., 1999)の全体にわたって高度に保存されており、いくつかのコリンエステラーゼおよびリパーゼに関するX線の結晶学的な研究(Cygler and Schrag, 1997)からは、オキシアニオンホール構造の保存を立証すべき実験的な証拠がある。また、カルボキシルエステル基質のカルボニル化合物酸素によって形成されたオキシアニオンの安定化において、触媒作用中の第1の遷移状態としてのその機能を示す実験的な構造上の証拠もある(Grochulski et al., 1993; Martinez et al., 1994)。この安定化は、ペプチド鎖中の3つの重要な残基のアミド基への水素結合のネットワークによって達成される(Ordentlich et al., 1998)。最近、Koellner et al.(2000)は、AChE オキシアニオンホール中の両方のGly残基は、埋められた「構造的」水分子と水素結合を形成し、これが触媒作用の間中、維持され、活性サイト内の基質と生成物の出入り(traffic)を容易にする潤滑剤の役割をしていることを示した。
耐OP性L.cuprinaで自然に見出されたG137Dに加えてE3中のGly137にさらに3つの変異を形成した。第一に、GluをG137E中で別の酸性アミノ酸に置換した。Hisも中性pH(pKa約6.5。なお、AspとGluは4.4)では非プロトン化しており、そのオキシアニオンホールのいずれかのGlyに置換した時、ヒトブチリルコリンエステラーゼ上に対するOP加水分解性が付与されることが見出されたため、変異体G137Hも構築した(Broomfield et al., 1999)。最後に、可能な最も強い塩基性置換の影響を検討するため、位置137でArg(pKa 約12)を置換した。
アシル結合ポケット中での変異
構造上特徴づけられたコリンエステラーゼのアシル結合ポケットを、主に4つの無極性の残基(さらに、それらのうちの3つは一般に芳香性である)から形成する。これらは一緒になって強疎水性のポケットを形成し、結合基質のアシル部分を収容する。TcAChE中の4つの残基は、Trp233、Phe288、Phe290およびVal400であり、これらはE3中のTrp251、Val307、Phe309およびPhe422に対応する。疎水性残基の同様の配列は、ほとんどのカルボキシル/コリンエステラーゼの対応するサイトで保存されているように思われる(Oakeshott et al., 1993; Robin et al., 1996; Yao et al., 1997; Harel et al., 2000)。特にTrpは、強く残基233/251で保存され、290/309は、いくつかのリパーゼおよび少数のカルボキシルエステラーゼ中でLeuまたはIleであるが、コリンエステラーゼおよびほとんどのカルボキシルエステラーゼ中でPheである。TcAChE Phe288に対応する残基は、典型的にはブチリルコリンなどの長鎖エステルに対する優先性を示すコリンエステラーゼ中の分岐鎖脂肪族のアミノ酸である。これは哺乳類ブチリルコリンエステラーゼおよびいくつかの昆虫アセチルコリンエステラーゼ (それらはブチリルコリンエステラーゼ様の基質特異性を有する)を含む。分岐鎖脂肪族のアミノ酸は、アシル結合ポケット中により大きなスペースを提供するためより大きなアシル基を収容するように思われる。
いくつかのコリンエステラーゼ中の288/307と290/309に関する突然変異の研究から、アシル基同一性と関係する基質特異性の態様の決定におけるそれらの重要な役割が確認されている。ヒトAChEでは、いずれかの位置におけるAlaなどより小さな残基によるPheの置換が、天然のアセチル(チオ)コリン基質より大きなアシル基を備えたプロピルまたはブチル-(チオ)コリン様の基質に対する酵素の動力学を改善する(Ordentlich et al., 1993)。キイロショウジョウバエ(D.melanogaster)およびイエバエ(Musca domestica)由来のAChEにおいて、それらの標的サイトOP耐性に寄与するより嵩高く極性なTyrと等価な290/309の天然の変異は、アセチルコリンおよびOPの両方に対してより低い反応性を有する(Fournier et al., 1992; Walsh et al., 2001)。D.melanogaster AChEについては、より小さなLeuによるこのPhe残基の置換はOP感度を予測通り増加させた。もっとも、予想外にも、Gly、SerまたはValなどの他の小さな残基による置換では増加は起こらなかった(Villatte et al., 2000)。
Trpの233/251は、コリンエステラーゼに関する突然変異の研究では遥かに少ない注目しか集めていないが、E3についての我々の先の研究では、より小さなLeu残基によるその置換は、ここでも、嵩高いアシル部分を有するカルボキシルエステル基質、またはOPに対する反応性を増加させることを示す(Campbell et al., 1998a, b; Devonshire et al., 2002)。Glyへの変異もスズメバチ(Anisopteromalus calandrae)からの同族体で見つかっており、マラチオンカルボキシルエステラーゼ(MCE)動力学の増強を示す(Zhu et al., 1999)一方、マラチオン耐性に関係しているM.domesticaからの同族体ではSerが見つかった(Claudianos et al., 2002)。OP加水分解酵素活性に関して、Devonshire et al.(2002)は、そのような変異の特別の利益は、反応の第2の加水分解段階を進めるために生じる必要があるリン周りの反転をもたらすことであると提案した。特にDevonshire et al.(2002)は、E3W251LのOP加水分解酵素活性に対するkcatが、dMUP(これは、dECP(これはジエチルリン酸基を有する)より小さなジメチルリン酸基を有する)に対するよりも1桁大きいことを見出した。これは、より大きなアシルポケットを備えた変異体においても、反転にはきつい立体的制約が残ることを示唆する。
我々は、W251に直に隣接しているP250とともにE3のW251とF309の残基を両方とも変異させた。以前に特徴づけられた天然のW251L変異に加えて、我々は、W251S、W251G、W251TおよびW251A中の4つの他の小さなアミノ酸による置換を分析した。W251LとP250Sの2重変異体も分析した。M.domesticaでは、高いMCE活性を有するE3のオーソログの天然の形質転換体が、位置250および251にSerとLeuをそれぞれ有するからである。F309置換1個のみの置換F309Lも調べた。F309Lは、AChEの結果によれば、MCE およびOP加水分解活性を増強させるはずである。F309Lは、単独でおよびW251Lによる2重変異体として分析した。
アニオン性サイトの変異
コリンエステラーゼのアニオン性サイトは4級結合サイトと呼ばれ(アセチルコリン中の4級アンモニアに因む)、またはJarv(1984)の本来の命名法ではp1サブサイトと呼ばれることがある。それは、主に、Trp84、Glu 199およびPhe 330を含み、Phe 331およびTyr130(TcAChE命名法)も含まれる。Glu 199を除いて、それはこのように高度に疎水性なサイトである。Glu 199は、触媒作用を有するSer200に直に隣接している。重要な残基は、コリンエステラーゼ全体にわたって高度に保存されており、多くのカルボキシルエステラーゼではその程度はより少ない(Oakeshott et al., 1993; Ordentlich et al., 1995; Robin et al., 1996; Claudianos et al., 2002)。Trp84(図2中の配列アラインメントは、E3がAChE 残基74〜85に対応する失われた残基であることを示す)を除いて、E3は対応する位置(それぞれ217、354および148)でTcAChEに対して同一の残基を有する。興味深いことに、Glu199に相当するのはGlnであり、Phe 330に相当するのは、いくつかのリパーゼおよびある種のカルボキシルエステラーゼ(その基質は小さな離脱基を有することが知られている) 中のLeuである(Thomas et al., 1999; Campbell et al., 2001; Claudianos et al., 2002)。
構造と突然変異についての研究は、コリンエステラーゼ触媒作用におけるアニオン性サイトの役割の詳細な描像をもたらした。重要な残基は、活性サイトの底部における水素結合ネットワークの一部を形成し、Tyr130およびGlu 199がさらに構造的水分子に一緒に接触している(Ordentlich et al., 1995; Koellner et al., 2000)。基質が、活性サイトの狭縊部の唇で周辺の結合サイトと結合する場合、アニオン性サイトがコンホメーション変化を受けて、新たなコンホメーションによって基質の(離脱)コリン基を収容し、そのカルボニル炭素と触媒Ser 200との相互作用が容易になる(Shafferman et al., 1992; Ordentlich et al., 1995; 1996)。結果として、サイトは主として反応の第1段階、すなわち、酵素アシル化において、特に、非共有結合の遷移状態において機能する(Nair et al., 1994)。したがって、重要な残基の変異は、kcatよりは主としてKmに影響する。コリン離脱基との相互作用は、主にTrp84およびPhe 330が関わる無極性のπ-電子相互作用によって主として媒介される(Ordentlich et al., 1995)。
OP阻害剤を用いた研究は、コリンエステラーゼのアニオン性サイトがその離脱基も収容するが、サイトの一部(主としてGlu 199およびTyr130; さらに恐らくSer 226)が、リン酸化された酵素の反応性にも影響している証拠がある、と示唆する(Qian and Kovach, 1993;さらにOrdentlich et al., 1996; Thomas et al., 1999も参照)。
AChEのアニオン性サイトに対応するカルボキシルエステラーゼサイトの突然変異の分析はほとんどないが、その中で1つの面白い例外は、D.melanogasterのEST6 カルボキシルエステラーゼ(これはGlu 199に相当する位置にHisを有する)に関するものである。このHisがGluによって置換されている変異体は、様々なカルボキシルエステル基質に対して活性の低減を示したが、あるアセチルチオコリンの加水分解活性を獲得した(Myers et al., 1993)。アリマキ(Myzus persicae)のE4 カルボキシルエステラーゼはこの位置でMetを有するが、この酵素はOPに異常に反応的である(Devonshire and Moores, 1982)。しかし、MetがOP加水分解酵素活性に寄与するかどうかは知られていない。同様に、Y148F置換は、M. domesticaのOP耐性株(つまり、さらにG137D)中のE3オーソログにおいて記録されているいくつかのもののうちの1つであるが、この変化が直接OP加水分解酵素活性に寄与するかどうかは知られていない(Claudianos et al., 1999)。
今回、E3中のY148、E217およびF354残基を変異させた。上記のM.persicaeおよびM.domestica酵素の中の対応する変異が、それらのOP反応性に直接寄与するかどうかを試験するため、E217MとY148Fの変異を形成した。Y148FもG137D2重変異体中で試験する。これは、耐性M.domesticaで見つかった組合せだからである。F354はより小さなLeu残基、およびより大きなTrp、Leu(リパーゼのこの位置で通常見出される)の両方に変異していた(上記参照)。
(実施例2)
酵素滴定
以下のマイクロプレートカラム1〜4でそれぞれ発現されたエステラーゼのために4つの100μl反応液をセットアップした。
0.025%トライトンX-100、0.1Mリン酸塩バッファーpH 7.0を含むプレートウエルブランク;
0.025%トライトンX-100、0.1Mリン酸塩バッファーpH 7.0中に100μM dECPを含む基質ブランク;
0.1Mリン酸塩バッファーpH 7.0と1:1で混合した50μl細胞抽出物を含む細胞ブランク;
200μM dECPを含む0.1Mリン酸塩バッファーpH 7.0と1:1で混合した50μl細胞抽出物を含む滴定反応。
dECP(バッファー中濃度200μMで新たに調製した)以外の成分をすべてウエルに入れた。いくつかの酵素をプレート中で同時に分析した、反応はカラムを下って2番目と4番目のウエルにdECPを同時に加えることにより開始した。最初の計測までの間隔(典型的には1分後)を後の計算のために記録した。
さらなる計算の前に、プレートウエルブランク(A)についての平均値をすべての計測値から差し引いた。様々な細胞抽出物を用いた予備実験では、それらは460nmで若干の蛍光をもたらすことが示されており、アッセイ産物(7-ヒドロキシクマリン)溶液へのそれらの添加は蛍光を39(±7)%消光した。したがって、滴定反応(D)における蛍光値は、細胞抽出物(C)の本来の蛍光を差し引いた後にこの消光効果に関して修正した。最後に、プレート中でのすべての同時分析から平均として得られた基質ブランク(B)を差し引いてエステラーゼ離脱されたクマリンによって引き起こされた修正された蛍光を得た。これらの修正はエステラーゼの発現が非常に低水準(<1pmol/μl抽出物)である細胞系統にとって最も重要であった。
完全に訂正したデータを進行曲線としてプロットし、平衡勾配として時間0まで外挿して、阻害剤によるその化学量論的相互作用に基づいて、エステラーゼの量を決定した(dECP濃度100μMは、10〜20分後にはこれらの酵素すべてのエステラーゼ触媒サイトの完全な飽和をもたらした)。すべてのプレート中の反応に沿って、7-ヒドロキシクマリンについての校正曲線を作成し、酵素および生成物形成の体積モル濃度を計算するために使用した。
図4は、バキュロウイルス発現エステラーゼを含む細胞抽出物に対して実行した代表的な滴定実験の結果を示す。
(実施例3)
ペルメトリン加水分解アッセイ
発現された酵素は、酸標識化合物についての放射計分配アッセイ(radiometric partition assay)、またはアルコール部分中に標識が付されたものについてのTLCに基づくアッセイを使用してペルメトリン加水分解活性に関して試験した(Devonshire and Moores,1982)。このアッセイの特徴としては、ペルメトリンの濃度を水溶液中でのその文献記載値(0.5μM)未満に保ち、界面活性剤(酵素が発現される昆虫細胞から酵素を抽出するために使用した)の濃度を臨界ミセル濃度(トライトンX100については0.02%)未満に維持し、アッセイを迅速 (つまり10〜30分以内)に実行することで、分析チューブ(粘着性を最小限にするためにガラス管を使用した)の管壁に付着する基質を最小限にした点が挙げられる。これらのペルメトリン濃度では、酵素は基質によって飽和されず、したがって、Km値を決定することはできないこともある。しかし、ペルメトリン活性を有する酵素(これらは低い基質濃度ではそれらの効率の直接比較が可能である)の各々について特異性定数(kcat/Km)を正確に計算することができた。シスとトランスの異性体にペルメトリンを分離することにより分析パワーを増加させた。
(a)ペルメトリンのシスおよびトランス異性体の分離
ペルメトリンの市販製剤は、1Sシス、1Rシス、1Sトランスおよび1Rトランスの4つの立体異性体を含む(図5)。シリカ上での分取薄層クロマトグラフィー(TLC)を使用して2つの鏡像異性体ペア1S/1Rシスおよび1S/1Rトランスに異性体を分離した。鏡像異性体はそれ以上は分離できなかった。次いで、各鏡像異性体ペアの加水分解のために酵素調製物を分析してもよい。
(b)アッセイプロトコル
酸性部分中に放射性標識されたピレスロイド
この分析(Devonshire and Moores, 1982)はペルメトリン異性体のために使用される。これは、発現されたエステラーゼを放射性標識された基質とともにインキュベートし、そして次に、未変化の基質を有機溶媒中に抽出した後、水相中で放射性シクロプロパンカルボキシレートアニオンを測定することによる。事前の経験に基づいて、最良の抽出プロトコルは、2:1(体積比)のメタノールとクロロホルムの混合物を使用する。適当な割合でアッセイインキュベーションのアリコートと混合した時点で、得られるバッファー、メタノールおよびクロロホルムの混合物は単一相であるが、これを、酵素反応を止め、ピレスロイドの完全な可溶化を確実にする目的に用いる。次いでクロロホルムおよびバッファーの過剰量を添加すると、相を一緒にしておくメタノールの能力を超過する。その結果、有機相を除去することができ、水相中の生成物が測定される。プロトコルは詳細には以下のとおりである。
リン酸塩バッファー(0.1M、pH 7.0)を放射性標識されたペルメトリン(50μM、アセトン中)に加え、1μM溶液とし、その同じバッファーで適当に希釈した発現されたエステラーゼを等量添加することによりアッセイを始めた。非常に脂肪親和性が高いピレスロイドがミセル中に分配され酵素が利用できなくなることを避けるため、事前の作業により、インキュベーションの中の界面活性剤(収穫された細胞からエステラーゼを抽出するためにトライトンX-100を使用した)濃度は、そのCMC(0.02%の臨界ミセル濃度)未満でなければならないことを確証した。典型的には、アッセイの最終体積は500〜1000μlであり、基質とアセトンの濃度はそれぞれ0.5μMおよび1%であった。温度30°で30秒から10分までの間隔を置いて、100μlインキュベーションのアリコートを取り出し、2:1メタノール-クロロホルム混合液300μlを含むチューブに添加しボルテックスで混合した。次いで、インキュベーションの終わりまたは拡張サンプリング間隔中にバッチを一緒に処理することができるようになるまで、チューブを室温に保持した。50μlバッファーおよび100μlクロロホルムを加えた後に、混合物をボルテックスで混合し、遠心分離し、下部の有機相を500μlハミルトン注射器で除去し、廃棄した。さらに100μlのクロロホルムを加えた後、抽出を繰り返し、次いで、上部の水相200μlを取り出して(細い先端を備えたピペッターを使用)シンチレーションを計数した。有機相を少しでも取らないようにすることが重要である。水相の最終体積は260μl(若干メタノールを含む)であったので、当初の100μlアリコート中で生じる計数の合計に従って修正した。
アルコール部分の中で放射性標識されたピレスロイド
i) タイプIピレスロイド-ペルメトリンのジブロモアナログ(NRDC157):
これらのエステルの加水分解で形成された3-フェノキシベンジルアルコールは、クロロホルム-メタノール抽出操作では水相に分配されない。したがって、シリカ上のTLC(Devonshire and Mooers, 1982)によって基質からこの生成物を分離する必要があった。プロトコルは詳細には以下のとおりである。
インキュベーションを酸標識した基質に関してセットアップした。インキュベーションから間隔を置いて100μlアリコートを取り、直ちに-79°(固体CO2)で200μlアセトンと混合することにより反応を停止した。次いで、混合物100μlを放射性標識を施していない3-フェノキシベンジルアルコール(アセトン中2%)3μlとともに、LinearQチャネルドシリカF254プレート(Whatman)のローディングゾーン上に移した。トルエン(ギ酸で飽和)のジエチルエーテルとの10:3混合物中で現像した後、基質および生成物を、(紫外光下に曝した冷標準3-フェノキシベンジルアルコールへの生成物の同一の可動性を確認して)6〜7日間ラジオオートグラフィーによって位置特定した。次いで、TLCプレートのこれらのエリアにNeatan(Merck)を含浸させ乾燥し、その後、それをグラス支持体から剥離して、シンチレーションを計数するためのガラス瓶に移した。計数値はシリカ上にスポットする前にアセトンによって、初期の100μlの3倍稀釈に関して修正した。
ii) タイプIIピレスロイド-デルタメトリン異性体:
予備実験(その中で上記TLCによってインキュベーションを分析した)では、主として3-フェノキシ安息香酸が形成することが示された。これは、初期のシアノヒドリン加水分解生成物は非酵素的に酸に急速に変換されるという文献報告と一致していた。TLCアッセイはクロロホルム-メタノール抽出操作より時間が掛かるので、これらの基質から生産された3-フェノキシ安息香酸アニオンを測定するには、後者(酸標識したピレスロイドについて上に記載)を採用した。
すべてのアッセイについては、形成された生成物のモル量は、放射性標識された基質についての既知の特定の活性から計算した。発現したE3WTエステラーゼ上の初期の実験は、加水分解の割合が、アッセイにおいて、0.5μM、すなわち、Michaelis複合体の蓄積がなくなるところまで、1RSシスまたは1RSトランスペルメトリンの濃度に正比例することを示した。0.5μM(これはペルメトリンの水溶性の文献値に近い)より大きな濃度でのアッセイは不安定な結果を与えるため、Kmとkcatの測定から排除した。さらに、ラセミ化合物の基質では、一旦基質のおよそ50%が加水分解されると、加水分解速度が劇的に遅くなるので、2つの鏡像異性体(ラセミ混合物中、等量存在する1Rまたは1S)のうちの一方だけが容易に加水分解されることを示した。これは、アリマキ由来のエステラーゼについて以前に公表されたデータと一致している(Devonshire and Moores, 1982)。そこで、各ペアの中でより容易に加水分解する鏡像異性体の加水分解を測定するようにアッセイ条件を調節した。耐OP性のアリマキ(Myzus pericae)ホモジェネート由来のE3WTおよびE4とのトランスペルメトリンの連続的インキュベーションによって、両方が1Sトランス鏡像異性体に対する優先性を示すことが確認された。いずれの場合も、0.5μM(すなわち、ラセミ化合物の基質中の1つの鏡像異性体について0.25μM)での加水分解速度は、dECPでの滴定によって決定されたモル量のエステラーゼとともに、特異性定数(kcat/Km)を計算するために使用した。これらの動的パラメーターを分離することが不可能なためである。同様の考慮を、その濃度に対する反応の基質可溶性および割合(proportionality)については、すべての酵素および基質に関して仮定した。
(c) 特異性定数の計算
図6は、ペルメトリンのトランスおよびシス異性体をE3W251L酵素によって加水分解したときの実験結果を示す。
ペルメトリン異性体の加水分解速度は、0.5μM(すなわち、Michaelis複合体の有意な形成がなくなるところまで)基質の濃度に正比例したので、Kmとkcatを独立したパラメーターとして測定することは不可能であった。Kmより十分に低い濃度では、ミハエリス-メンテンの式は以下のように単純化される。
Figure 2005516623
したがって、特異性定数(すなわち、kcat/Km)は、初期の加水分解速度(pmol/min、放射性標識された基質の既知の特定の活性から計算された) ならびにアッセイ中の基質および酵素の濃度を使用して上記の方程式から計算することができる。特異性定数に対する拡散律則最大値は108〜109M-1sec-1(Stryer、1981)である。
(実施例4)
E3、EST23およびMyzusE4形質転換体のペルメトリン加水分解活性
表2に、基質としてシス-およびトランス-ペルメトリンを使用し、18種のE3、3種のEST23および5種のMpE4形質転換体について得られた動的データをまとめた。いずれの場合も、データは、各々の1S/1Rシスおよび1S/1Rトランス異性体ペアのうち最も速く加水分解する鏡像異性体の加水分解を表す(上記参照)。
OP感受性のクロバエ、そのEST23 D.melanogaster オーソログおよびMpE4WT酵素で見つかったE3WT酵素は、著しいレベルのペルメトリンの加水分解活性(それはトランス異性体に特異的であった)を示した。E3酵素の活性サイトのアシル結合ポケットまたはアニオン性サイト領域のいずれかにおける変異は、ペルメトリンのトランスおよびシスの両異性体用の活性の著しい増加をもたらした。
a) オキシアニオンホール変異
E3G137D変異はヒツジキンバエにおけるダイアジノン耐性の原因である。この変異体では、酵素の活性サイトのオキシアニオンホール領域中の非常に小さい脂肪族、中性のGly残基が酸性Aspと置き替えられ、結合オキソンOP分子の加水分解を可能にしている。しかし、この変異体(そのD.melanogaster オーソログおよび対応するMpE4G113D変異体も同様)は、野生型の酵素のそれと比較して、特にトランス-ペルメトリンについての活性が低減されている。この活性は、HisまたはGluのいずれかによってGly-137を置換することによって増加しなかった。しかし、Gly-137のArgによる置換はシス-またはトランス-ペルメトリンのいずれについても活性にほとんど影響しなかった。Argが線状であるという性質は、それが容易に折れ曲がり、活性サイトへのペルメトリンの結合を妨害しないことを意味するかもしれない。
b) アシル結合ポケット変異体
E3W251L変異は、活性サイトのアシルポケットにおいて、大きな芳香族Trp残基をより小さな脂肪族のLeuに置き換えるものであり、トランス-ペルメトリン加水分解の7倍の増加および実質的なシス-ペルメトリン加水分解の獲得をもたらした。EST23におけるW251Lの効果は実質的にE3におけるのと同一であった。しかし、MpE4中での対応するW224L変異は、トランス-とシス-ペルメトリン活性の両方について実質的な減少をもたらし、これは恐らくタンパク質骨格の差によるものであろう。E3(サイズの減少順に、Thr、Ser、AlaおよびGly)におけるTrp-251のさらにより小さな残基への置換も、ペルメトリンの加水分解活性の増加をもたらした(もっとも、これらの変異体の活性はそのE3W251Lにおけるそれほどには高くはなかった)。明らかに、立体的要因は変異体の活性におけるただ1つの要素ではない。例えば、ThrとSerは両方とも水酸基を含んでおり親水性である。さらに、Alaは(Leuのように)脂肪族であるとともに疎水性でLeuよりさらに小さいが、それでも、この変異体はペルメトリンに対してはW251L変異体と同じくらい活性であった。W251L変異体(すなわち、E3P250S/W251L)のオキシアニオンホールを開いた場合も、活性は野生型のそれよりはまだ高いものの、シス-およびトランス-ペルメトリン活性の両方についてその活性が減少した。E3中のすべてのW251変異体に対するペルメトリンの特異性定数およびEST23の中のW251Lが野生型のものと比較して増加しているが、その増加がシス異性体に対して一様により明らかであるという点に着目することは興味深い。野生型酵素はトランス:シス比率が少なくとも20:1であるが、この比率はW251変異体では2〜6:1にすぎない。これらの変異体によって提供されるアシルポケット中の余分なスペースは、一見すると、他のより問題のあるシス異性体の加水分解のため最も大きな利益があった。
同じE3分子に対するW251LとG137D変異の両方の組合せは、野生型のレベルを超えるシス-ペルメトリンに対する酵素活性を増加させたが、トランス-ペルメトリンに対する活性を減少させた。しかし、2重変異体の活性は、E3W251L変異のみを含む変異体のそれほど大きくなかった(すなわち、変異は付加的に作用しなかった)。
いくつかのリパーゼは、L.cuprina E3におけるPhe 309に対応する位置にLeu残基を有することが知られている。そこで、E3F309L変異体を、ピレスロイドなどの脂肪親和性の強い基質に対して活性を付与する目的で構築した。表2からわかるように、E3F309L変異体はE3WTよりその両方の異性体について遥かに良好であった。それはE3W251Lよりトランス-ペルメトリンがさらに活性であったが、シス異性体にはそれほど活性でなかった。同じE3分子上のF309LとW251Lの両方の変異の組合せは、シス-ペルメトリンに対する活性を増加させ、トランス-ペルメトリンに対する活性をE3W251Lレベルまで減少させた。言いかえれば、F309L変異は、ペルメトリンに対するW251L変異体の活性にほとんど効果がなかった。
c) アニオン性サイト変異
いくつかのリパーゼは、L.cuprina E3中のPhe 354に対応する位置にLeu残基を有することが知られている。しかし、E3中のLeuに対するPhe 354の置換は、ペルメトリンに対するその活性をあまり増加させなかった。他方、Phe 354のより嵩高い芳香族残基Trpでの置換は、シス-およびトランス-ペルメトリン両方について活性を3〜4倍増加させた。いくつかの天然に存在するリパーゼ中でPheに置換するのがLeuであるとすれば、F354LではなくF354Wが非常に脂肪親和性の強いペルメトリンに対して活性の増加を示すことは恐らく驚くべきである。
Y148F変異は、ペルメトリン動力学に対する大規模な影響を生じ、その影響は遺伝的背景に依存する方向とは反対であった。単一の変異体として、これは野生型と比較してシスおよびトランスペルメトリン両方について5〜6倍の活性の増強を示す。G137D(この単一の変異体は野生型より遙かに低い値を与える)による2重変異体として、それは、トランスペルメトリンに対してはさらに2倍の低減を示し、シスペルメトリンに対する活性がほとんどない。この後者の結果は、明らかにペルメトリン加水分解に関するY148とオキシアニオンホールとの強い相互作用を意味する。
Glu-217(触媒セリンに直に隣接している残基)は、加水分解反応において中間の遷移状態を安定させる上で重要であると思われる。しかし、アリマキM.persicaeのエステラーゼE4で自然に見出されるように、この残基をMet(E3E217M)に変異させることは、ペルメトリン活性にほとんど効果がなかった。しかし、MpE4(すなわち、MpE4M190E)の中の逆の変異は、トランス-およびシス-ペルメトリン両方に対するMpE4酵素の活性を約半分減少させた。オキシアニオンホール変異(MpE4G113D/M190E)とこの変異を組み合わせることにより、ペルメトリンの加水分解活性のさらに実質的な減少がもたらされた(つまり、2つの変異はペルメトリン活性に対するそれらの影響において付加的であった)。
Figure 2005516623
(実施例5)
ブロモ-ペルメトリンアナログの加水分解
表2も、ペルメトリン(NRDC157)の2つのシスジブロモビニルアナログを使用して、E3とEST23変種について得られた動的データをまとめたものである。ペルメトリンのこのジブロモアナログの1Sシス異性体は、E3F309LおよびF309L/W251L以外のすべての酵素によって、1R/1Sシスペルメトリンに対してと同様の効率で加水分解された。これは、より大きな臭素原子がこの基質の触媒中心へのアクセスを実質的に妨害しなかったことを示す。E3WTおよびEST23WT酵素による活性は異性体間の有意な比較には低すぎたが、E3F309LとF309L/W251L以外の他のすべての酵素は1S異性体より10〜100倍速い加水分解を示した。これはM.persicae における1Sトランスペルメトリンに対し以前に見出されたシクロプロパン環のC1におけるこのコンフィグレーションに対するのと同じ優先性である(Devonshire and Moores, 1982)。
F309Lは、NRDC157動力学に対する劇的な影響を示した。単一の変異体は1Sシスに対し野生型との差をほとんど示さなかったが、W251Lによる2重変異体は、この異性体についてのみW251Lより低い活性を示した。しかし、1S/1R優先性は単一の変異体では0.7: 1に対し、2重変異体では0.4: 1に逆転した。結果はすべてのデータセット中の1Rシス活性に対する2つの最も高い値である。2重変異体についての値は、実際、いずれかの変異体用単独よりも約10倍高い。
(実施例6)
発現された酵素によるタイプIIピレスロイドの加水分解
表3は、4種のデルタメトリンシス異性体を使用して、E3とEST23変種のサブセットに対して得られた動力学的データをまとめたものである。E3W251LとE3F309Lを例外として、デルタメトリン(αSまたはαR)の1Rシス異性体は、1Rシス NRDC157(ジブロモビニル置換基を有するがαシアノ基を欠く点においてペルメトリンとデルタメトリンの中間の性質であると考えることができる)に対してと同様の効率で加水分解された。1Rシス異性体に対する活性は、αSコンホメーションよりαRで常により大きかった。E3W251LとE3F309Lは、NRDC157の対応する異性体との場合に比べデルタメトリンの1Rシス異性体との場合に著しく低効率であった。
Figure 2005516623
注目すべきことに、最も高いデルタメトリン活性を有する251変異体はW251Sであり、一方、W251L(他の2種のピレスロイドについては最も高い)およびW251Gは5種の251変異体中で最低のデルタメトリン活性を与えた。これは、離脱基のα-シアノ部分の収容が効率的なデルタメトリン加水分解にとっての主な障害であり、野生型E3による何らかの有意な加水分解を防ぐのに十分であることを示唆する。基質の収容は、特にαR異性体にとっては、アシルポケット中のW251のより小さな残基による置換が、有用な収容を可能にするような他の基質と比較して活性サイト全体のスペースを著しく異なるかたちで利用せざるを得なくなる。しかし、重要なことは、空間の必要条件の詳細、したがってその最も効果のある変異体は、他のピレスロイドについてとは異なるという点である。
α-シアノ基を欠くNRDC157の対応する異性体との場合と比較して、デルタメトリンの1Sシス異性体に対するすべての酵素の活性は劇的に低かった。このαシアノ基の劇的な影響は、シクロプロパン基のC1でのこの1Sコンホメーションとともに発現しているように見える。最も活性でない変異体のうちのいくつかを例外として、1Sシス異性体に対する活性は、ここでもαSコンポメーションよりαRで常により大きかった。
(実施例7)
ピレスロイド実験の一般的な議論
251のシリーズ変異体についてのペルメトリンとNRDC157の結果は、E3/EST23の中でのアシル結合制約に関するいくつかの全く強く単純な推論を生じさせる。全体として、より広いアシルポケットを生成するべき251の置換が、これらの基質の嵩高いアシル基の収容/安定化を促進する。これらの置換は、シクロプロパン環を横切る2つの立体中心によって生じるすべての異性体の加水分解にとって有益である。トランス異性体が野生型酵素によって強く好まれる一方、変異体も少なくともシス異性体混合物の一部によって、比較的よく加水分解される。しかし、シス異性体内において、変異体における改良は、1Sシス異性体に対してより遥かに著しい。1Rシス異性体(それらは野生型酵素にとってはどのコンフィグレーションでも最も問題のものである)は、変異体にとってもやはり最も問題のあるものである。変異体シリーズ内では、改善された動力学は、単に側鎖サイズの縮小によっては説明されない。最も小さなものへの置換が最も高い活性を与える訳ではないからである。実際、最良の動力学は、W251Lで得られるが、Leuは試験したすべての置換の中で最も大きな側鎖サイズがあり、これは、その強い脂肪親和性が重要な役割を果たすことを示唆している。
ペルメトリンおよびNRDC157で見られた比較的単純で一貫したパターンとは対照的に、251シリーズ変異体に関するデルタメトリンの結果は極めて複雑で、解釈が困難である。他の基質についてのその増強された動力学から期待され得るように、それらは4種のシスデルタメトリン異性体に対して野生型より全面的に良好な活性を示す。とはいえ、野生型は、他の基質と比べてみても絶対的な意味で遥かに低い。しかし、1R異性体よりも1Sを優先する性質(それはNRDC157に関しては非常に強い)は、デルタメトリンデータ中では最大でも弱いものである。他方で、αS異性体に比してαRを優先する性質は、すべての変異体にわたって明確な傾向がある。それは一般に約2:1にすぎないが、注目すべきことに、それは野生型EST23によって示される傾向とは反対である。後者は、基質の(アルコール)離脱基中のα-シアノ部分に当てはまるので、推定されるアシル結合ポケット置換がαR/αS 立体優先性に影響することは一見して予期されない。
全体として、F309Lデータは、明白にピレスロイド加水分解の動力学に対するこの残基の大きな影響を示す。1つのレベルでは、W251シリーズ変異体についての結果との平行性がある。すなわち、両方のデータセットはアシル結合ポケット中により大きな空間が提供されることに基づく予想と一致する増強された動力学を示す。しかし、両者には重要な違いもある。すなわち、W251シリーズはペルメトリンのシス対トランス異性体には不釣り合いな活性な有し、F309LはシスNRDC157の1R対1S異性体に不釣り合いな活性を備えている。また、2つのサイトの置換は強い相互作用も示し、それらがアシル結合ポケット中の共有される構造および機能に寄与していることと一致している。例えば、シスペルメトリンに対するW251変異体の不釣り合いな増強、および1RシスNRDC157に対するF309Lの不釣り合いな増強は、両者とも2重変異体中で優性な性質として作用する。251および309の変異体は、デルタメトリン加水分解に関し活性に対しての定量的に同様の増強効果および同じ立体特異性があり、より小さなピレスロイドで見い出される立体特異性の違いは見い出されない。しかし、我々は、その離脱基中のαシアノ部分がもたらす追加的な嵩によって、活性サイト全体にわたる非常に根本的な空間の再配分が必要となるため、より小さなピレスロイドでは明白な立体特異性が無視されると主張する。
(実施例8)
リパーゼ活性の蛍光測定
リパーゼ活性アッセイ
昆虫エステラーゼまたはリパーゼおよびそれらの変異体のリパーゼ活性を測定するために蛍光発生アッセイを用いた。蛍光発生基質は、酵素活性を測定する迅速で再現性のある方法を提供する。4-メチルアンベリフェロン蛍光体の脂肪酸エステル(アシル化)をリパーゼ活性の識別のため基質として使用する。このアッセイは蛍光性4-メチルアンベリフェリルパルミテート(4-MUパルミテート)(下に示す構造)を使用するもので、Devonshire et al.(2002)の蛍光測定エステラーゼ滴定アッセイおよびミコバクテリウムの迅速な同定および識別に使用されたHamid et al.(1994)の方法の修正である。
Figure 2005516623
4-メチルアンベリフェロン(4-MU)パルミテートはリパーゼによって加水分解され、蛍光性4-メチルアンベリフェロン(4-MU)を放出し、それは蛍光測光器によって測定できる。
4-MUに対する検量線を滴定に沿って各プレートに準備する。25μl 10-2M dMUストック(100%エタノール中19.8mg/10ml)を、2.475ml(3×825μl)エタノールで希釈して10-4M溶液を得た。この10-4M溶液を使用して0.1Mリン酸塩バッファーpH 7.0(+細胞抽出物中にある場合は0.05%または0.5%の超高純度のトライトンX-100(TX100))中0〜1.0μMの検量線を作成した。これは、チューブへ25μl、20μl、15μl、10μ1、5μl、0μl(+エタノールを25μlまで)および2.475mlのリン酸塩バッファー(またはもし必要であればTX100を含むリン酸塩バッファー)を分配し、次いで、1つのウエル当たり100μlを加えることにより行われた。これは0.25%TX100の中の0.2、0.4、0.6、0.8および1.0uMを与える。
試料は基本設定を使用して、以下の滴定反応に沿ってFluorostar蛍光測定器(BMG LabTechnologies)で計測した。励起-355nm、放射-460nm、利得0、各サイクル前180秒間10サイクルの振とうをした。
アッセイについては、5×10-4 4-MUパルミテート(100%アセトン中) 20μlを、基質(下記表4に定義するIIおよびIII)を要求するウエルに入れ、風乾した。アッセイすべき各酵素について、4つの反応をセットアップし、最初にバッファー、次いで細胞試料を分配した。細胞抽出物は50μl細胞抽出物または細胞上清+50μlリン酸塩バッファー(0.1M)0.05%TX-100である。アッセイにおける4-MUパルミテートの最終濃度は10-4Mであった。計測を開始する直前に細胞抽出物を加えるべきである。
Figure 2005516623
訂正された蛍光(F訂正)は、以下の式によって計算した:
リン酸塩pH 7.0中
F訂正= [(FII-FI)/0.7]-FIII+2*FIV]
リン酸塩pH 7.0中0.05〜0.5%TX100について
F訂正= [(FII-FI)/0.6]-FIII+2*FIV]
ここで、0.6と0.7は108細胞/mlにおける細胞抽出物についての消光訂正係数である(それぞれ、TX100あり、TX100なし)。
結果
リパーゼ活性アッセイの結果を表5に示す。基質の可溶性についての不確実性のためにこれらのデータからの形式上の運動パラメーターを計算することができないこともある。一般的に言えば、データは、最も容易にはKcatデータと比較可能である。そういうものとしては、得られた値は試験した酵素に対して良好なリパーゼ活性を示した。
4UMP活性において酵素全体にわたって少なくとも2桁の変動がある。しかし、様々な酵素にわたって、4UMP活性とナフチルアセテート、マラチオンまたは任意のピレスロイド加水分解活性の間には自明な相関性はない。したがって、このデータは、基質の様々な範囲について、有用な活性をもたらす上でグループとしての酵素の汎用性をさらに示す。
キンバエ E3およびショウジョウバエEST23の変異体と同様に、2つの野生型酵素、Myzus E4およびショウジョウバエアルファE2が、比較的高い4UMP活性を与える。したがって、4UMPを加水分解する能力は、α-カルボキシルエステラーゼ 分岐群全体にわたって広く分布している。
3つの活性サイト小区域内の各々でE3変異体中には少なくとも1桁の差があり、3つの小区域すべてで、野生型より実質的に良い変異体がある。他の基質に対する場合のように、3つの小区域すべてにおいて変異はリパーゼ活性改善の可能性を示す。
W251L置換は、明らかにMyzus E4およびショウジョウバエEST23中でより高い4UMP活性を与えるが興味深いことにキンバエ E3ではない。しかし、後者のW251T中では、改善が明白にある。F309Lもアシルポケットシリーズ中にあり、これは、Leuがいくつかのリパーゼにおいて等価な位置に見出されるため作られたものであるが、野生型より極めて良好である。
いくつかのリパーゼで見つかり、それが同様により高い4UMP活性を与えるため、F354Lもアニオン性サイト中に作られた。比較ゲノミクスは、増強されたリパーゼ活性を有する酵素設計への有望なアプローチであるように見えるであろう。少数のよく選択された変更の組合せによって、疎水性(または反対に、親水性)基質を加水分解するエステラーゼ/リパーゼ能力に非常に大きな変更を加えることができた。
Figure 2005516623
(実施例9)
昆虫エステラーゼのバクテリアでの発現
E3のバクテリアの発現は、GST融合ベクターpGEX4T-1、hisタグ融合ベクターpET146;およびベクターpTTQl8およびベクターpKK223-3(これは、タグなしタンパク質を生産する)において成功することがわかった。成功した発現は、DH10B、TG1およびBl21(DE3)を含む広範囲の大腸菌株で観察された。これらの発現システムは、すべての昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体(野生型E3および5つの変異体に成功することわかっているE3の変異体を含む)に対して普遍的に有用であろう。
本明細書の全体にわたって、「含む」という単語または「含んでいる」等の変形は、記載した要素、整数またはステップ、1群の要素、整数またはステップを包含するが、他の要素、整数、ステップ、1群の要素、整数またはステップを排除することを意味するものではないことが了解されるだろう。
上に議論した刊行物はすべて、それらの全体が本願に組み入れられる。
文書、行為、材料、装置、物品、または本明細書に含まれているその他同種のものについてのいずれの議論も、もっぱら本発明の背景を説明するためのものである。それは、これらのもののうちのいずれかまたはすべてが先行技術の基礎の一部を形成するか、それが、本願の各請求項の優先日の前に存在したものとして、本発明の関連分野で普通の一般的な知識だったということを認めるものとして受け取ってはならない。
当業者は、広く記載される本発明の技術思想または範囲から外れずに、具体的実施形態の中で示した発明に多数の変形および/または修正がなされ得ることをによって理解するであろう。したがって、本願の実施形態は、すべての点で例として示すものであって限定的ではないと考えるべきである。
カルボキシル/コリンエステラーゼ多重遺伝子族の系統発生樹(Oakeshott et al. 1999)。分析した140のタンパク質のためのほとんどの配列は、Pfam、C.elegans(http://www.sanger.ac.uk/Projects/C_elegans/blast_server.shtml)およびCOGNCBIデータベースに見出すことができる。重要な参照はOakeshott et al.(1999)の中で与えられる。配列は、ジェネティックコンピューターグループ(GCG)のパイルアッププログラムを、デフォルト設定(ギャップ重み3.0およびギャップ長重み0.1)を用いてアラインメントした。多数のパラロガスな配列を含む末端系統を(・)で示す。C.elegansデータベース中の49配列についての系統発生の全表示も、Oakeshott et al.(1999)に与えられている。CE=カルボキシルエステラーゼ。脊椎動物CES1〜CES4群はSatoh and Hosokawa(1998)のものである。 E3(配列番号1)とカリフォルニアシビレエイ(Torpedo californica)アセチルコリンエステラーゼ(配列番号4)酵素のアミノ酸配列アラインメント。活性サイトセリンおよび残基Glyl37、Trp251およびPhe309の周囲の配列を太字および下線で強調した。 アシル化反応でのLcE3 カルボキシルエステラーゼの活性サイトについて提案されている配置。 エステラーゼを発現したバキュロウイルスを含む細胞抽出物に対して行った代表的な滴定実験の結果。 1R/Sシスおよびトランスペルメトリン、1R/SシスおよびトランスNRDC157、およびシスデルタメトリンの4つの立体異性体の分子構造。 E3W251Lによるシスおよびトランスペルメトリン(0.5μM)の加水分解。
[参考文献]
Figure 2005516623
Figure 2005516623
Figure 2005516623
Figure 2005516623
Figure 2005516623

Claims (47)

  1. 昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体である酵素に基づく生体触媒方法。
  2. エステラーゼまたはリパーゼに基づく生体触媒が、以下のスキーム:
    Figure 2005516623
    (式中、R、R2およびR3は同一の部分Zであるか、または
    Rが部分Zの立体異性体の混合物であり、R2は部分Zの1つの立体異性体であり、R3は部分Zの別の立体異性体の割合を多くした立体異性体の混合物であり;
    R1、R4およびR5は同一の部分Yであるか、または
    R1は部分Yの立体異性体の混合物であり、R5は当該部分の1つの立体異性体であり、R4は部分Yの別の立体異性体の割合を多くした鏡像異性体の混合物であり;
    部分ZおよびYは、1または複数のヘテロ原子を途中に含んでもよい、置換または非置換の炭化水素部分から個別に選択され;
    Xは求核性基である)
    を含む請求項1に記載の方法。
  3. 立体異性体が鏡像異性体または位置立体異性体である請求項2に記載の方法。
  4. 順方向反応が優勢である状態の下で実行される請求項2に記載の方法。
  5. 少なくとも1つの酸性のエステルの化学選択的、位置選択的または立体選択的な加水分解のために用いられる請求項1ないし4のいずれか一項に記載の方法。
  6. エステルがエステル基を含む殺虫剤である請求項5に記載の方法。
  7. エステルがピレスロイドである請求項6に記載の方法。
  8. ピレスロイドが以下:
    ペルメトリン、シクロプロトリン、フェンバレレート、エスフェンバレレート、フルシトリナート、フルバリネート、フェンプロパトリン、d-フェノトリン、サイフェノトリン、アレスリン、シペルメトリン、デルタメトリン、トラロメトリン、テトラメトリン、レスメスリンおよびシフルトリンからなる群から選択される請求項7に記載の方法。
  9. エステルが脂肪酸エステルである請求項5に記載の方法。
  10. カルボン酸エステルの立体異性体の混合物からの立体異性体の分割のために使用される請求項5から9のいずれか一項に記載の方法。
  11. (R)-エステル化合物と(S)-エステル化合物の混合物の光学分割方法であって、以下のステップ:
    (a)前記混合物に昆虫エステラーゼまたはリパーゼまたはそれらの変異体を接触させ、(R)-エステル化合物と(S)-エステル化合物のうちの一方を立体選択的に加水分解することにより、光学酸性な化合物または光学活性なアルコール化合物を得るステップ、および、
    (b)光学活性な酸化合物、光学活性なアルコール化合物、および加水分解されていない光学活性なエステルからなる群から選択される光学活性な化合物を回収するステップ
    を含む請求項1ないし10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 光学活性な酸を生産するために使用される請求項1または請求項2に記載の方法。
  13. 光学活性な酸がピレスロイド酸である請求項12に記載の方法。
  14. ピレスロイド酸が以下:
    ペルメトリン、シクロプロトリン、フェンバレレート、エスフェンバレレート、フルシトリナート、フルバリネート、フェンプロパトリン、d-フェノトリン、サイフェノトリン、アレスリン、シペルメトリン、デルタメトリン、トラロメトリン、テトラメトリン、レスメスリンおよびシフルトリンからなる群から選択される請求項13に記載の方法。
  15. 光学活性な酸がシクロプロパンカルボン酸である請求項1または請求項2に記載の方法。
  16. 光学活性なアルコールの生産のために使用される請求項1または請求項2に記載の方法。
  17. 光学活性なアルコールがピレスロイドアルコールである請求項16に記載の方法。
  18. ピレスロイドアルコールが以下:
    ペルメトリン、シクロプロトリン、フェンバレレート、エスフェンバレレート、フルシトリナート、フルバリネート、フェンプロパトリン、d-フェノトリン、サイフェノトリン、アレスリン、シペルメトリン、デルタメトリン、トラロメトリン、テトラメトリン、レスメスリンおよびシフルトリンからなる群から選択されるピレスロイドのアルコールである請求項17に記載の方法。
  19. エステル交換またはエステル置換反応である請求項1または請求項2に記載の方法。
  20. 乳剤および他の脂肪系食品で使用するのに適した植物油脂の変性のために使用される請求項1または請求項2に記載の方法。
  21. 食品がマーガリン、人工クリームおよびアイスクリームからなる群から選択される請求項20に記載の方法。
  22. ポリマーの生産のために使用される請求項1または請求項2に記載の方法。
  23. ポリマーがポリエステルである請求項22に記載の方法。
  24. ポリエステルが、連続エステル化および2官能性エステルとアルコールのエステル交換、2官能性モノマーの自己縮合およびラクトンの開環重合によって生産される請求項23に記載の方法。
  25. 逆方向反応が優勢である状態の下で実行される請求項1または請求項2に記載の方法。
  26. 基質のアシル化のために使用される請求項25に記載の方法。
  27. 昆虫エステラーゼまたはリパーゼがα-カルボキシルエステラーゼである請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
  28. 変異体昆虫エステラーゼまたはリパーゼがα-カルボキシルエステラーゼであり、エステラーゼまたはリパーゼの活性サイトのオキシアニオンホール、アシル結合ポケットもしくはアニオン性サイト領域またはそれらの任意の組合せに変異を有する請求項27に記載の方法。
  29. 変異体昆虫エステラーゼまたはリパーゼが、E3G137R、E3G137H、E3W251L、E3W251S、E3W251G、E3W251T、E3W251A、E3W251L/F309L、E3W251L/G137D、E3W251L/P250S、E3F309L、E3Y148F、E3E217M、E3F354W、E3F354LおよびEST23W251Lからなる群から選ばれる請求項28に記載の方法。
  30. α-カルボキシルエステラーゼまたはその変異体が、
    i) 配列番号1で示される配列、
    ii) 配列番号2で示される配列、
    iii) 配列番号3で示される配列、および
    iii) i)〜iii)のうちのいずれか1つと少なくとも40%が同一であって、疎水性エステルの加水分解が可能な配列
    からなる群から選択される配列を含む請求項27または請求項28に記載の方法。
  31. 配列がi)またはii)と少なくとも80%同一である請求項30に記載の方法。
  32. 配列がi)またはii)と少なくとも90%同一である請求項30に記載の方法。
  33. 昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたはそれらの変異体が組換え宿主細胞から発現される請求項1ないし32のいずれか一項に記載の方法。
  34. 宿主細胞が細菌細胞である請求項33に記載の方法。
  35. 宿主細胞が真菌細胞である請求項33に記載の方法。
  36. 疎水性エステルを加水分解する酵素を生成および選択する方法であって:
    (i)昆虫エステラーゼもしくはリパーゼまたは既に変異した昆虫エステラーゼまたはリパーゼ中に1または複数の変異を導入すること、および
    (ii)変異体昆虫エステラーゼまたはリパーゼの疎水性エステルの加水分解能力を調べること
    を含む方法。
  37. 疎水性エステルが脂肪酸エステルである請求項36に記載の方法。
  38. 1または複数の変異が、加水分解活性を増強しかつ/またはエステラーゼまたはリパーゼの立体特異性を変更する請求項36または請求項37に記載の方法。
  39. 昆虫エステラーゼまたはリパーゼがα-カルボキシルエステラーゼである請求項36から38のいずれか一項に記載の方法。
  40. α-カルボキシルエステラーゼが、
    i) 配列番号1で示される配列、
    ii) 配列番号2で示される配列、
    iii) 配列番号3で示される配列、および
    iv) i)〜iii)のうちのいずれか1つと少なくとも40%が同一である配列
    からなる群から選択される配列を有する請求項39に記載の方法。
  41. 配列がi)〜iii)のうちのいずれか1つと少なくとも80%同一である請求項40に記載の方法。
  42. 配列がi)〜iii)のうちのいずれか1つと少なくとも90%同一である請求項40に記載の方法。
  43. 1つまたは複数の変異が、エステラーゼまたはリパーゼの、オキシアニオンホール、アシル結合ポケットおよびアニオン性サイトからなる群から選択される領域内にある請求項36から42のいずれか一項に記載の方法。
  44. 変異が点突然変異である請求項36から43のいずれか一項に記載の方法。
  45. 既に変異した昆虫エステラーゼまたはリパーゼが、E3G137R、E3G137H、E3W251L、E3W251S、E3W251G、E3W251T、E3W251A、E3W251L/F309L、E3W251L/G137D、E3W251L/P250S、E3F309L、E3Y148F、E3E217M、E3F354W、E3F354LおよびEST23W251Lからなる群から選ばれる請求項44に記載の方法。
  46. エステルを加水分解する昆虫α-カルボキシルエステラーゼを生成および選択する方法であって:
    (i)昆虫α-カルボキシルエステラーゼまたは既に変異した昆虫α-カルボキシルエステラーゼ中に1つまたは複数の変異を導入すること、および
    (ii)変異体昆虫α-カルボキシルエステラーゼのエステルの加水分解能力を調べること
    を含む方法。
  47. 請求項36から46のいずれか一項に記載の方法によって得られる酵素。
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