JP2005515992A - 眼病治療のための多環式フェノール化合物の使用方法 - Google Patents

眼病治療のための多環式フェノール化合物の使用方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、被検体における眼の疾病、疾患、又は障害の予防或いは治療のための保護化合物の使用方法に関するものである。当該方法は、予め決定した多環式フェノール化合物を被検体に投与する工程を含む。当該多環式フェノール化合物は、少なくとも1の末端フェノール基、及び少なくとも1のその他の環状基を有する化合物から選択される。

Description

ミトコンドリアは、細胞のエネルギーの90%以上を生み出す細胞成分であるが、同時に、細胞にとって有害なフリーラジカルの90%以上を生じさせる。通常のミトコンドリア機能の緩やかな障害でさえ、細胞にエネルギー的及び酸化的ストレスを与え、それが抑制されない場合には細胞死の前兆となる。実際、ミトコンドリア機能の急な損失は、壊死性細胞死をもたらすのに対し、ミトコンドリア機能の緩やかな損失は、アポトーシス(すなわち、“細胞の自殺”)により細胞死を開始させる。これは、目における多くの細胞を含む全ての好気性細胞に当てはまる。例えば、水晶体における透明度の減少は、水晶体タンパク質のラジカル媒介架橋と関連するものであり、緑内障における網膜神経節細胞のアポトーシス死は、ミトコンドリアの障害(failure)によって誘発される。
原発開放隅角緑内障(POAG)は、米国における失明の主な原因であり、その患者数は人工の高齢化に伴い増加すると予想される。典型的には、当該疾病は、適切な薬剤を用いて、及び時には線維柱帯切開術(trabeculotomy)などの外科技術を用いて、当該疾病の主な危険因子である眼内圧力上昇(IOP)を減少させることによって治療される。ベータブロッカー、アルファ−2作動薬、プロスタノイド、及び炭酸脱水酵素阻害剤を含む現在の治療薬は、例えば、房水の生成を抑えることによってIOPを減少させるものである。眼内圧を低下させることにより、更なる圧力誘発機構又は虚血性障害が抑制され、間接的にではあるが視神経が保護される。しかしながら、多くの患者は、当該眼内圧の正常化にもかかわらず、なおも進行性の神経障害によって緑内障性視力喪失を示す。
IOP上昇に起因する視力喪失は、視神経の損傷に伴う、網膜神経節細胞(RGC)の死及び神経線維層の損失によって生じる。当該細胞死は、虚血、或いは、圧力又は障害に誘発された軸索原形質逆輸送の減少により引き起こされる栄養の減少(すなわち、栄養因子の減少)によって促進される。現在の通説では、障害の第一要因(例えば、IOP上昇)が除去された場合であっても、網膜の及び視神経細胞の損傷の進行が起こると考えられている(Schwartzら、1996年)。当該証拠は、RGCの緑内障性損傷が、壊死性及びアポトーシス性の工程のいずれにも起因することを示唆するものである(Nickells、1999年;Tattonら、2001年;Hartwick、2001年;Weinreb及びLevin、2002年)。現在では、緑内障は、神経変性疾病、特に視神経症として特徴付けられており、網膜神経節細胞及びその軸索の変性によって視神経円板に特徴的な穴(excavation)が生じる(Weinreb及びLevin、2002年)。緑内障におけるRGCの死及びその他の眼球組織における細胞保護のために用いることができる神経防護的(neuroprotective)治療法は、現在のところ存在しない(Schwartzら、1996年;Nickells、1999年;Weinreb及びLevin、1999年;Levin、2001年)。従って、男女の両方に対して長期的に用いることができる、安全で効果的な神経防護的治療に対する需要が存在する。
目などにおけるその他の細胞型の場合と同様に、RGCの死は、種々の有害なストレス因子(stressor)によって生じる。それらには、神経向性サポートの減少(Yuan及びNeufeld、2000年;Schmeerら、2002年)、一酸化窒素シンターゼの過剰発現(Neufeld、1999年)、グルタミン酸等の興奮性ジカルボン酸アミノ酸の過剰暴露(Hartwick、2001年;Hareら、2001年)、或いは、静水圧の増加又は軸索原形質逆輸送の減少などのその他の障害(Dreyer、1998年;Brooksら、1999年;Vorwerkら、2000年)が含まれる。初期の障害にかかわらず、RGCの死を引き起こす細胞機構及びミトコンドリア機構には、フリーラジカル生成の増大、及び、イオンとエネルギーにおけるホメオスタシスの損失が含まれる。この病因論は、アルツハイマー病やパーキンソン病等の慢性的神経変性疾病において生じることが知られている神経細胞の死と部分的に類似するものであり、さらに、虚血性脳卒中において生じる興奮毒性(excitotoxicity)及びアポトーシス性細胞死に部分的に類似するものである(Dykens、1997年;Manfredi及びBeal、2000年;Hartwick、2001年;Tattonら、2001年において総説されている)。
興奮毒性は、興奮性神経伝達物質(例えば、グルタミン酸及びキノリン酸等)によるジカルボン酸レセプター(例えば、NMDAレセプター、及び、その他の電位依存性及び代謝型レセプター)の過剰刺激(overexcitation)に起因する。結果として得られる細胞質内Ca2+の急速な増加は、ミトコンドリアを不安定化し、フリーラジカル生成を促進するだけでなく、細胞エネルギー状態を損なわせる。これらはいずれも、壊死又はアポトーシスにより細胞を死滅させる。従って、ミトコンドリアは、緑内障におけるRGCの死に関係する種々の有害な環境下(酸化的障害、エネルギー機能障害、浸透圧障害、及びその他の細胞傷害工程)における神経細胞生存性の重要なモジュレーターである(Hartwick、2001年;Shoriら、2001年)。従って、ミトコンドリアは、潜在的な治療行為における臨界点を提供する。すなわち、エネルギー的及び酸化的な病状がRGCの保全性(integrity)を損なう範囲内において、ミトコンドリアに対する治療行為が有益である。Tattonは、ミトコンドリア膜の保全性を部分的に維持するデプレニル及びその代謝物であるデスメチルデプレニル(DES)が、緑内障の治療において有用であると提案している(Tatton、1999年;Tattonら、2001年;米国特許第6,455,590号、第5,981,598号、及び5,783,606号)。
組織への血液供給が著しく減少した場合、網膜又は視神経における虚血症又は低酸素症が生じる。虚血症は、不十分な酸素の血管輸送に起因するミトコンドリア機能の低下だけでなく、種々の生物学的事象を含む複雑な病理学的症状である。近年、虚血症に関する神経細胞及び網膜の損傷に、興奮性アミノ酸が関与していることが判明した(例えば、Choi、「Exicitatory cell death」、Journal of Neurobiology、23巻、1261−1276頁(1992年)参照)。さらに、興奮毒性条件に暴露されたミトコンドリアによるフリーラジカルの生産が、直接的に証明された(J.A.Dykens、「Isolated cerebellar and cerebral mitochondria produce free radicals when exposed to elevated Ca2+ and Na:Implications for Neurodegeneration」、J.Neurochemistry、63巻、584−591頁(1994年))。ミトコンドリア機能を混乱させる化合物(例えば、エタンブトール)は、興奮毒性経路により、網膜神経節細胞に有毒であることが明らかとなっている(Hengら、Invest. Ophthalmol. Vis. Sci.、40巻、190−6頁(1999年))。
糖尿病性網膜症は、視力喪失、さらには失明をもたらす眼病である。グルタミン酸の興奮毒性が、そのような失明に関与していることが報告されている(例えば、Ambatiら、「Elevated GABA,Glutamate,and VEGF in the Viterous of Humans with Proliferative Diabetic Retinopathy」、Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.、38巻、S771頁(1997年)を参照)。当該文献は、高濃度のグルタミン酸が、網膜神経節細胞に対して潜在的に有毒であることを示唆している。
近年、自然発生ホルモンである17β−エストラジオールが、酸化的リン酸化反応の脱共役剤である3−ニトロプロピオン酸の存在下においてミトコンドリア機能を保護することが明らかとなった(Wangら、J.Neurochem.、77巻、804−811頁(2001年))。この機構は、種々の毒性(例えば、成長因子欠損、グルタミン酸毒性、及び酸化ストレス)に対して広く説明されてきたエストラゲンの神経防護作用の重要な構成要素となり得る。同様に、齧歯類において、17β−エストラジオールが、脳虚血症(Simpkinsら、J.Neurosurg、87巻、724−730頁(1997年);Yangら、Stroke、31巻、70−75頁(2000年))及び網膜虚血症(Nonakaら、Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.、41巻、2689−2696頁(2000年))の導入後における神経細胞の欠損を軽減することが明らかとなっている。これらの虚血症は、いずれも、脳卒中の半影部(penumbra)におけるアポトーシスをもたらすグルタミン酸興奮毒性及びミトコンドリア機能障害を伴い得る。
また、17β―エストラジオールは、生体内において網膜虚血症に対する神経保護剤として機能することが明らかとなっている(Nonakaら、2000年)。本研究では、視神経の結紮(ligation)により網膜虚血症をラットへ誘導し、発作の前に17β―エストラジオールを投与した。再灌流の数日後、エストラジオールで処理した動物において、網膜神経節層における細胞密度が著しく高くなった。これらの実験は、エストラジオールによる原理を証明するものであるが、当該化合物は、副次的ホルモン活性のため、理想的な治療薬候補ではない。
いくつかの証拠により、エストロゲンの神経防護効果には、古典的なエストロゲン−レセプター(ER)依存性遺伝子転写を要しないことが示唆される。17α―エストラジオール(Greenら、J.Neurosci.、17巻、511−515頁(1997年);Greenら、J.Steroid Biochem.Mol.Biol.、63巻、229−235頁(1997年))及びエント−エストラジオール(Greenら、Endocrinology、142巻、400−406頁(2001年))等の、いわゆる“非ホルモン性エストロゲン”は、ERに結合せず、エストロゲン応答性組織を刺激しないにもかかわらず、非常に有効な神経防護剤である。さらに、多くの研究が、エストロゲンに媒介された神経細胞の保護を立証しているにもかかわらず、HT−22細胞にも、SK−N−SH細胞においても、機能性ERは未だ発見されていない。Behlら、Mol.Pharmacology、51巻、535−541頁(1997年);Zhangら、Brain Res.、784巻、321−324頁(1998年);Greenら、Neuroscience、84巻、7−10頁(1998年)を参照されたい。同様に、ER拮抗剤の存在下において、17α−E2−媒介保護が生じ得る。これらの研究は、神経防護におけるERの役割を排除することなく、エストロゲンの神経防護効果における古典的なER活性以外の細胞機構に関するものである。構造−活性の研究は、神経防護における最少限の要求がフェノールA環の存在であることを明らかにしており、また、新規な多環式フェノール化合物(PPC)の開発に導くものである。
正確な機構は解明されていないが、種々の形態のエストロゲンがヒトにおけるIOPを低下させ得ることは明らかである。例えば、正常な女性をメストラノールで連続的に経口治療することにより、IOPが徐々に減少する(Treisterら、1970年)。原発開放隅角緑内障の患者に対して、ノルエチノドレルと共にメストラノールを経口投与することにより、IOPが減少する(Meyerら、1966年)。最近の研究では、更年期障害がIOPの著しい増加に関係していることが判明し(Qurshi、1996年)、これは、更年期前のホルモンが、小柱網のホメオスタシスの調節に関与していることを示唆するものである。また、更年期後の緑内障患者では、ホルモン補充がIOPを低下させることが明らかとなっている。
上述のように、IOPの正常化は、緑内障の疾病の開始又は進行に対する保護として十分なものではない。IOP低下薬で治療されている多くの患者は、自分が緑内障による失明から保護されてものと誤解している。最善の治療方は、細胞や組織を損傷の影響から保護しながら、危険因子を最小化又は軽減することである。残念ながら、IOPを低下させるための現在の治療は、緑内障の危険因子を低下させつつも、小柱網細胞のアポトーシスを誘発し得るものである。
網膜の疾病である、黄斑変性症及び緑内障に対しする治療には、坑酸化剤とNMDA拮抗活性を有する化合物(米国特許第6,200,990号)、ポリアミン拮抗薬(米国特許第5,604,244号)、カルパイン阻害剤(米国特許第6,303,579号)、エストロゲン代謝物(米国特許第5,521,168号)、及びカルベジロール(米国特許第6,291,506号)が含まれる。
本発明は、非ホルモン性多環式フェノール化合物(“PPC”)が、細胞ストレス条件下(例えば、過剰のカルシウム負荷)の網膜組織におけるミトコンドリアを安定化するという知見によるものである。当該PPCが細胞保護性であることは公知であるが、ミトコンドリアにおける機能の点で、これらの化合物はより優れた保護剤であり、好ましくないミトコンドリアの毒素が存在する眼病における眼組織の保護のような特定の治療法を示すものである。
本願では、病理学的に関連するストレス因子に暴露した原発RGC及び形質転換RGCのミトコンドリア機能及び生存性における、PPCの効果を評価した。
理想的には、PPCは、古典的なエストロゲンレセプターのいずれとも反応せず、それゆえ、男女の長期治療における重要な検討事項であるホルモン作用を有しない。本発明についての研究は、非ホルモン性PPCが、カルシウム負荷の病理関連条件下の網膜神経節細胞におけるミトコンドリア機能を安定化できることを示すものである。
本発明における1の典型的な実施態様では、被検体における眼の疾病、疾患、又は障害の予防或いは治療のための保護化合物の使用方法が提供される。
本発明の別の実施態様は、被検体における眼の疾病、疾患、又は障害の予防或いは治療のための保護化合物の使用方法であって、当該保護化合物が細胞死を防ぐ、当該方法を提供するものである。
本発明の別の典型的な実施態様は、被検体における眼の疾病、疾患、又は障害の予防或いは治療のための保護化合物の使用方法であって、細胞死がアポトーシスによって生じる、当該方法を提供するものである。
本発明の更なる典型的な実施態様は、網膜神経節細胞の損傷の危険性がある被検体における網膜神経節細胞の保護のための保護化合物の使用方法を提供するものである。
本発明の更なる典型的な実施態様は、網膜神経節細胞におけるミトコンドリア機能を不安定化する可能性がある治療を行う際に、被検体に保護化合物を投与することを記載するものである。
本発明の更なる典型的な実施態様は、被検体における眼の疾病、疾患、又は障害を予防或いは治療する方法であって、ミトコンドリアの生存性又は活性を安定化又は向上させる化合物を選択する工程、及び、当該化合物を被検体に投与する工程を含む、当該方法を開示するものである。
本発明の別の典型的な実施態様は、保護化合物を被検体に投与することによって、当該被検体における眼の疾病、疾患、又は障害を予防或いは治療する方法であって、ここで、当該保護化合物は、細胞死から直接的に保護する工程に加えて、眼内圧を正常化する工程を含む複合機構(dual mechanism)によって作用する、当該方法を記載するものである。
本発明の更なる典型的な実施態様では、眼の疾病、疾患、又は障害の徴候を未だ示していないが危険な状態にある患者に対して、保護化合物を予防的に投与し、それにより、当該疾病を予防し又はその発現を遅延させることを含む方法が記載される。
本発明の更なる側面では、保護化合物が被検体に投与され、ここで、当該被検体は、ミトコンドリアを混乱させることが知られている薬剤、及び/又は視神経症を生じさせることが知られている薬剤の1以上で更に治療される。
本発明の更なる典型的な実施態様は、被検体における眼の疾病、疾患、又は障害を予防或いは治療するための薬剤組成物であって、適切な剤形(formulation)において有効量の保護剤を含む、当該組成物を提供するものである。
本発明の典型的な実施態様を以下に説明するが、図面を参照することにより更に理解することができるであろう。
定義
本明細書及び特許請求の範囲において、以下の用語は、特に文脈で要求される場合以外は、以下に提示する意味を有する。
“眼の疾病、疾患、又は障害”という語には、糖尿病性網膜症、緑内障、黄斑変性、網膜色素変性、網膜裂傷あるいは裂孔、網膜剥離、網膜虚血、外傷性の急性網膜症、炎症性変性、術後合併症、光線力学療法(PDT)を含むレーザー治療による損傷、無影灯に誘発される医原性網膜症、薬剤誘発性網膜症、常染色体優性視神経萎縮、毒性/栄養性弱視;レーバー遺伝性視神経症(LHOP)、眼性症状或いは合併症を伴うその他のミトコンドリア病、血管形成;異型RP;バルデー−ビードル症候群;ベスト病;青錐体単色症;白内障;中心性輪紋状脈絡膜ジストロフィ;先天性脈絡膜欠如;錐体変性;杆体変性;錐体−杆体変性;杆体−錐体変性;先天性定常的夜盲症;サイトメガロウィルス性網膜炎;糖尿病性黄斑浮腫;優性ドルーゼ;巨細胞性動脈炎(GCA);Goldmann−Favre病;甲状腺眼症;脳回転状網膜脈絡膜萎縮;ヒドロキシクロロキン;虹彩炎;若年性網膜分離症;Kearns−Sayre症候群;Lawrence−Moon Bardet−Biedl症候群;レーバー先天性黒内障;ループス性綿花様白斑;乾性黄斑変性;湿性黄斑変性;黄斑ドルーゼ;黄斑ジストロフィ;Malattia Leventinese;眼ヒストプラスマ症;小口病;酸化損傷;増殖性硝子体網膜症;レフサム病;白点状網膜炎;未熟児網膜症;杆体1色型色覚;RP及びアッシャー症候群;強膜炎;セクタRP;シェーグレン−ラルソン症候群;Sorsby眼底ジストロフィ;スタルガルド病、及びその他の網膜疾患が含まれる。
多環式フェノール化合物(“PPC”)は、少なくとも1の末端フェノール環、及び少なくとも1の末端炭素環状基、及びそれらの塩、異性体、光学異性体、プロドラッグ、及び前駆体を有する化合物である。一般に、所望の活性を有するPPCは、2、3、4、及び5の環構造を有するが、200ダルトン未満、好ましくは1500ダルトン未満、より好ましくは1000ダルトン未満の分子量を有する。本発明の典型的な実施態様において有用であると考えられるPPCの例は、PCT公報WO02/36605、WO00/63228、及び以下で引用するいくつかの米国特許に開示されている。
“保護化合物”という語には、少なくとも第2の環を有する構造において末端フェノール基を有する多環式フェノール化合物が含まれる。そのような化合物の例は、米国特許第5,554,601号、第5,859,001号、第5,972,923号、及び第6,197,833B1号に記載されており、これらは全て引用により本明細書中に取り込まれる。一般に、保護化合物は、(常にではないが)1000ダルトン未満の分子量を有する。一般に、保護化合物の有効量によって、500nM以下の組織中又は血中濃度となる。上記引用特許には、非エストロゲン化合物と共にエストロゲンに基づく化合物の例が開示されているが、当該化合物の保護作用は、古典的なERα−及びER−βエストロゲンレセプターとの結合能とは無関係であることが観測されている。エストロゲンに基づく化合物に関して、エストロゲンのホルモン的性質は、ほとんどの場合不必要であり、さらには望ましくない場合もあるので、実際には、非ホルモン性エストロゲンアナログを用いるのが好ましい。ホルモン性エストロゲン、例えば、17β−エストラジオール及びそのホルモン性アナログを、本発明のの典型的な実施態様において用いることができる。しかしながら、それらは、好ましくは、それらの網膜保護性質が高く、(a)ホルモン効果の実体のないほど十分に少ない量で用いることができる、(b)女性患者に対してそもそも投与されている、又は(c)投与の方法(例えば、点眼)等によって、ホルモン効果が別の方法で軽減される、のいずれかの環境においてのみ用いられる。
“非ホルモン性”エストロゲンは、古典的なERα−及びER−βエストロゲンレセプターとの結合能にかかわらず、通常はホルモン性エストロゲンに付随するレセプター媒介ホルモン効果を発現させないエストロゲンアナログを意味する。
本発明は、非ホルモン性多環式フェノール化合物(“PPC”)が、細胞ストレス条件下(例えば、過剰のカルシウム負荷)の網膜組織におけるミトコンドリアを安定化するという知見によるものである。当該PPCが細胞保護性であることは公知であるが、ミトコンドリアにおける機能の点で、これらの化合物はその保護能力において非常に優れており、及び、好ましくないミトコンドリアの毒素が存在する眼病における眼組織の保護のような特定の治療法を示すものである。PPCにはエストロゲンと類似のホルモン的性質を有する化合物が含まれ得るが、理想的には、多くのPPC及び多くのエストロゲンアナログは、古典的なエストロゲンレセプターのいずれとも反応せず、それゆえ、男女の長期治療における重要な検討事項であるホルモン作用を有しない。本発明についての研究は、非ホルモン性PPCが、カルシウム負荷の病理関連条件下の網膜神経節細胞におけるミトコンドリア機能を安定化できることを示すものである。
本発明の典型的な実施態様は、末端フェノール環及び少なくとも第2の炭素環を有する保護化合物の使用が含まれる。
これら所要の構造に加えて、当該化合物は、末端環のフェノール構造が維持される限りにおいて、フェノール環における任意の利用可能な部位又はその他の場所に接続した複数のR基を有することができる。当該R基は、無機又は有機の原子又は分子から選択することができる。いくつかの異なるタイプのR基の非限定的な例には、ハロゲン基、アミド基、硫酸基、硝酸基、フルオロ基、クロロ基、又はブロモ基から任意に選択される任意の無機R基が含まれる。さらに、ナトリウム、カリウム、及び/又はアンモニウム塩から選択されるR基をアルファ位又はベータ位に連結して、前記構造における任意の利用可能な炭素上の水素原子を置換することができる。R基は、有機分子であることができ、或いは、有機分子とイオンの混合物を含むことができる。有機R基には、線状又は分枝の配列で6の炭素までを含むアルカン、アルケン、又はアルキンが含まれ得る。例えば、付加的なR置換基には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、ジメチル、イソブチル、イソペンチル、tert−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、メチルペンチル、ネオペンチル、イソヘキシル、ヘキセニル、ヘキサジエン、1,3−ヘキサジエン−5−イン、ビニル、アリル、イソプロペニル、エチニル、エチリジン、ビニリジン、イソプロピリデン、メチレン、硫酸、メルカプト、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、メチルスルフィニル、メチルスルホニル、チオヘキサニル、チオベニル、チオペノル、チオシアナート、スルホエチルアミド、チオニトロシル、チオホスホリル、p−トルエンスルホン酸、アミノ、イミノ、シアノ、カルバモイル、アセトアミド、ヒドロキシアミノ、ニトロソ、ニトロ、シアナート、セレシアナート、アルコシン(arccosine)、ピリジニウム、ヒドラジド、セミカルバゾン、カルボキシメチルアミド、オキシム、ヒドラゾン、サルファートリメチルアンモニウム、セミカルバゾン,o−カルボキシメチルオキシム、ヘミ酢酸アルデヒド、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、 ブチルエーテル、ベンジルエーテル、メチルカーボネート、カルボキシレート、酢酸、クロロ酢酸、酢酸トリメチル、シクロペンチルプロピオン酸、プロピオン酸、プロピオン酸フェニル、カルボン酸メチルエーテル、ギ酸、安息香酸、酪酸、カプリル酸、桂皮酸、デシレート(decylate)、ヘプチレート(heptylate)、エナント酸、グルコシドウロン酸、コハク酸、ヘミコハク酸、パルミチン酸、ノナン酸、ステアリン酸、トシル酸、吉草酸、バルプロ酸、デカン酸、ヘキサヒドロ安息香酸、乳酸、ミリスチン酸、フタル酸、ヒドロキシル、エチレンケタール、ジエチレンケタール、ギ酸、クロロギ酸、ホルミル、ジクロロ酢酸、ケト酸、ジフルオロ酢酸、エトキシカルボニル、トリクロロギ酸、ヒドロキシメチレン、エポキシ、ペルオキシ、ジメチルケタール、アセトニド、シクロヘキシル、ベンジル、フェニル、ジフェニル、ベンジリデン、及びシクロプロピル基が含まれる。R基は、任意の構成環に接続されて、ピリジン、ピリアジン、ピリミジン、又はv−トリアジンを形成することができる。更なるR置換基には、以下に述べる任意の6員環又は5員環が含まれ得る。
また、保護化合物は、フェノールA環に加えて複素環式炭素環を有するものから選択することができる。ここで、当該複素環式炭素環は、上述の任意の置換基を有する芳香族又は非芳香族フェノール環であることができ、さらに、例えば、以下の構造の1以上から選択することもできる。フェナントレン、ナフタレン、ナフトール、ジフェニル、ベンゼン、シクロヘキサン、1,2−ピラン、1,4−ピラン、1,2−ピロン、1,4−ピロン、1,2−ジオキシン、1,3−ジオキシン(ジヒドロ型)、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジン、s−トリアジン、as−トリアジン、v−トリアジン、1,2,4−オキサジン、1,3,2−オキサジン、1,3,6−オキサジン(ペントキサゾール)、1,2,6−オキサジン、1,4−オキサジン、o−イソキサジン、p−イソキサジン、1,2,5−オキサチアジン、1,2,6−オキサチアジン、1,4,2−オキサジアジン、1,3,5,2−オキサジアジン、モルホリン(テトラヒドロ−p−イソキサジン)である。上述の任意の6員環は、当該化合物の末端基となる。さらに、上記炭素環構造は、直接又は連結基を介して、任意の更なる複素環芳香族または非芳香族炭素環に連結させることができる。それらには、フラン;チオフェン(チオフラン);ピロール(アゾール);イソピロール(イソアゾール);3−イソピロール(イソアゾール):ピラゾール(1,2−ジアゾール);2−イソイミダゾール(1,3−イソジアゾール);1,2,3−トリアゾール);1,2,4−トリアゾーリ;1,2−ジオチオール;1,2,3−オキサチオール、イソキサゾール(フロ(a)モノゾール);オキサゾール(フロ(b)モナゾール);チアゾール;イソチアゾール;1,2,3−オキサジアゾール;1,2,4−オキサジアゾール、1,2,5−オキサジアゾール、1,3,5−オキサジアゾール、1,2,3,4−オキサトリアゾール、1,2,3,5−オキサトリアゾール;1,2,3−ジオキサゾール;1,2,4−ジオキサゾール;1,3,2−ジオキサゾール;1,3,4−ジオキサゾール;1,2,5−オキサチアゾール;1,3−オキサチオール、シクロペンタンが含まれる。これらの化合物は、任意の利用可能な部位において炭素環が置換されている上記の群から選択される会合(associated)R基を有することができる。
保護化合物の典型例には、ジクロペンタノフェナントレン環化合物を形成し得る任意の化合物(上記の化合物も含む)が含まれ得る。例えば、それらは、1,3,5(10),6,8−エストラペンタエン、1,3,5(10),6,8,11−エストラペンタエン、1,3,5(10),6,8,15−エストラペンタエン、1,3,5(10),6−エストラテトラエン、1,3,5(10),7−エストラテトラエン、1,3,5(10)8−エストラテトラエン、1,3,5(10)16−エストラテトラエン、1,3,5(10)15−エストラテトラエン、1,3,5(10)−エストラトリエン、1,3,5(10)15−エストラトリエンよりなる群から選択することができる。
保護化合物の更なる典型例には、ラロキシフェン、タモキシフェン、アンドロゲン化合物、及びそれらの塩から選択される前駆体又は誘導体を含む任意の化合物が含まれる。ここで、無傷の(intact)フェノール環は、末端フェノール環の炭素1、2、3、及び4に存在するヒドロキシル基と共に存在する。
本発明において有用な保護化合物の更なる典型例には、代謝されることによって神経防護作用を有する活性多環式フェノール化合物が得られるようなプロドラッグの形態の任意の化合物、及び、その塩、異性体、光学異性体、及び薬剤が含まれる。
本明細書及び特許請求の範囲において、“エストロゲン化合物”という語は、米国特許第5,554,601号(引用により本明細書中に取り込まれる)の記載に従って、N.H.Wilton、“Steroids”、11版、Steroids Inc.(引用により本明細書中に取り込まれる)に記載の任意の構造物として定義される。当該定義に含まれるその他のエストロゲン化合物は、エストロゲン誘導体、エストロゲン代謝物、エストロゲン前駆体、及び、細胞関連エストロゲンレセプターと結合し得るその他の分子、さらには、結合により固有のエストロゲン効果を特異的に誘引するその他の分子である。当該定義に含まれる下位カテゴリーは、上述の引用文献に記載されている非ステロイド性エストロゲン、非ホルモン性エストロゲン、ホルモン性エストロゲンである。上述したように、非ホルモン性エストロゲンは、古典的なE−α及び/又は古典的なE−βエストロゲンレセプターのホルモン活性化を要せずに、保護効果を発揮するエストロゲン類を意味する。単独で又はその他の薬剤と組合されることにより有用性を示すエストロゲン構造物の例が、米国特許第5,554,601号の図9に記載されている(これは、引用により本明細書中に取り込まれる)。
緑内障の危険因子を低下させつつIOPを低下させるための現状の治療は、小柱網細胞のアポトーシスをも誘発する場合がある。従って、本発明の典型的な実施態様における神経防護薬の用途には、危険を減少させるだけでなく、標的細胞を損傷から保護し得ることが求められる。
従って、保護化合物は、眼の疾病、眼の疾患、又は眼の障害の予防或いは治療において用いることができる。
当該保護化合物は、その作用機構(mode of action)によって選択される。例えば、(a)網膜神経節細胞及び眼におけるその他の組織を細胞死から保護することにより機能する保護化合物が選択される(ここで、当該細胞死のメカニズムには、アポトーシスプロセス又はミトコンドリア機能障害が含まれ得る);(b)保護化合物は、ミトコンドリアの活性及び生存性(これらが欠乏すると、代謝系能動輸送機構による細胞ATPレベルが枯渇し、アポトーシスによる細胞死が起こる)を効果的に向上させる能力に照らして選択される;(c)保護化合物は、細胞死から直接的に保護すると共に眼内圧を正常化する複合機構を効果的に生じさせ、それにより、眼病の発症及び進行に対する最適な保護を提供する能力に照らして選択される。
当該保護化合物は、症状により特定される、又は遺伝子診断により変性眼病の素因が判明することにより特定される危険な状態の患者に対して、予防的に又は治療として用いることができる。眼病の例には、レーバー遺伝性視神経症が含まれる。変性の症状が発現する前の症状(例えば、眼内圧の上昇)を保護化合物で治療することにより、変性疾患を未然に防ぐことができ、かつ当該症状を軽減することができる。
本発明の実施態様では、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症に感染し、又はそれに対する坑レトロウィルス療法を必要としている患者が特性され、当該患者が変性眼病(例えば、レーバー遺伝性視神経症)に対する感受性の検査を受けた場合、その後、陽性の患者を予防的又は治療的に保護化合物によって治療することができる。
さらに、ミトコンドリアを混乱させることが知られている薬剤、及び/又は視神経症を生じさせることが知られている薬剤の1以上を摂取している被検体を、保護化合物によって治療することもできる。
保護化合物は、単独で、又は、(他の活性薬剤の有無にかかわらず)当該技術分野において公知の坑緑内障薬を含む2以上の保護化合物の組合せとして投与することができる。当該坑緑内障薬は、例えば、プロスタグランジン又はプロスタノイド、炭酸脱水酵素阻害剤、ベータ−アドレナリン作用薬及び拮抗薬、アルファ−アドレナリン作用薬、N−アセチルシステイン、グルタチオン、又はその他の坑緑内障薬である(ただし、これらに限定されない)。また、保護化合物には、上記保護化合物の光学異性体、ジアステレオマー、又はラセミ混合物、さらに、当該化合物の薬学的に許容可能な塩が含まれる。保護化合物は、経口投与、静脈注射、皮下注射、筋肉注射、眼球内注射、経皮投与、口腔投与、経鼻投与、大脳内投与、腔内投与、局所投与(例えば、点眼)、又は、現在市販されているものを含む種々の新規なドラッグデリバリーシステム、又は上記化合物に適切な任意のその他の手段を用いて、任意の適切な剤形で送達することができる。当該化合物が局所的に投与されるべき場合には、局所点眼薬(topical ophthalmic composition)が用いられる。局所点眼薬の調製は、当該技術分野において周知である。一般に、本発明において有用な局所点眼薬は、溶液、懸濁液、ゲルの形態であり、又はデバイス(例えば、コラーゲンシールド、その他の生体侵食性(bioerodible)又は非侵食性のデバイス)の一部として製剤される。種々の賦形剤が、本発明の局所点眼用の溶液、懸濁液、又はゲル中に含まれ得る。例えば、緩衝液(例えば、ホウ酸塩、炭酸塩、リン酸塩)、張性剤(tonicity agent)(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、多価アルコール)、防腐剤(例えば、ポリクオタニウム、ポリビグアニド、BAS)、キレート剤(例えば、EDTA)、粘度増強剤(例えば、ポリエトキシル化グリコール)、及び可溶化剤(例えば、ポリエトキシル化ヒマシ油(polyoxl−35 ヒマシ油)、ポリソルベート20、40、及び80、Pluronic.RTM.F−68、F−84、及びP−103、又はシクロデキストリン)を、局所点眼薬に含むことができる。種々のゲルを本発明の局所点眼薬において用いることができ、それらには、カルボマー、ポリビニルアルコール−ホウ酸錯体、又は、キサンタンガム、ジェランガム、グアーガムが含まれる(ただし、これらに限定されない)。
局所点眼用の生物侵食性及び非侵食性デバイス(例えば、結膜移植)(A.L.Weiner、「Polymeric Drug Delivery Systems For the Eye,in Polymeric Site−specific Pharmacotherapy」、A.J.Domb編、John Wiley&Sons、316−327頁、1994年)を、保護化合物の局所投与のために用いることができる。局所投与は、本明細書に記載の保護化合物の輸送を促進し、眼の長期治療を可能とするために適切である。
保護化合物は、固体又は半固体の骨格上で輸送することができる。ここで、輸送は、まぶた、結膜、強膜、網膜、視神経鞘、眼内、及び眼窩内よりなる群から選択される領域に支持体を置くことによって達成される。また、保護化合物を、コンタクトレンズを介して、眼の損傷組織へゆっくり時間をかけて輸送することができる。この投薬手法は、一般に、まずコンタクトレンズを保護化合物に浸漬し、その後、通常の方法で当該コンタクトレンズを眼に装着することによって行われる。
或いは、保護化合物は、眼における1以上の部位へ移植するために生体外に維持した培養組織又は培養細胞と共に用いることができる。この場合、保護化合物は、当該組織の生存性を向上させ、移植の成功確率を高める。これに関する保護化合物の使用は、任意の使用可能な培養手法又は移植手法によって遂行することができる。
保護化合物を眼内、脳内、又は髄腔内の外科的手順(例えば、球後又は眼周囲注射、眼内灌流又は注射、又は髄腔内又は脳内注射又は灌流)において投与する場合には、媒体として洗浄液(irrigating solution)を用いるのが最も好ましい。一般に、最も基本的な洗浄液は、無菌生理食塩水又はリン酸緩衝生理食塩水を含む。しかしながら、より高度な洗浄液が好ましい。本明細書において、“生理学的にバランスのとれた洗浄液”という語は、浸襲的又は浸襲的な非医療措置において組織の物理的構造及び機能を維持するのに適した溶液を意味する。このような溶液は、典型的には、電解質(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、及び/又は塩化物イオン)、エネルギー源(例えば、デキストロース)、及び、溶液のpHを生理的水準及びその付近に維持するための重炭酸緩衝液を含有する。このようなタイプの種々の溶液が公知である(例えば、乳酸リンゲル液、BSS、RTM、BSSプラスRTM、無菌洗浄液、及び無菌眼内用洗浄液)。球後又は眼周囲注射は、当該技術分野において公知の有用な技術であり、多くの文献に記載されている(例えば、「Ophthalmic Surgery;Principles of Practice」、G.L.Spaeth編、W.B.Sanders Co.、フィラデルフィア、ペンシルベニア州、米国、85−87頁、1990年)。
当該技術分野において周知の技術を用いて、全身投与のための保護化合物の薬剤組成物を製剤することができる。一般に、経口用組成物は、錠剤、ハード又はソフトゼラチンカプセル、懸濁液、顆粒、粉末、又はその他の典型的な組成物の形態であり、そのような組成物中に通常用いられる賦形剤を含む。当該経口用組成物の調製方法は、当該技術分野において周知である。非経口投与用の組成物は、一般に、注射可能な溶液又は懸濁液の形態である。当該非経口用組成物の調製方法は、当該技術分野において周知である。
実施例1は、黄斑変性のインビトロモデルについての結果を示すものである。実施例2は、ニューロンではない小柱細胞についての結果を示すものである。小柱網は、通常の眼内圧を維持するために重要な房水のホメオスタシスの制御に関与するものである。異常なほど高いIOPは、緑内障における深刻な危険因子である。実施例3は、網膜神経節の変性に起因する種々の眼病のモデルとなる、網膜神経細胞変性モデルのインビボにおける結果を示すものである。実施例1−5において、多環式フェノール化合物は高い保護作用を示したが、これは、治療における有用性を実証するものである。
本明細書において引用した全ての文献は、引用により援用される。
1.PAM及びPACAの投与における、インビトロにおいて酸素過剰条件にした網膜色素上皮細胞の生存性
ここで用いた化合物、[2S−(2a,4aα,10αβ)]−1,2,3,4,4a,9,10,10a−オクタヒドロ−7−ヒドロキシ−2−メチル−2−フェナントレンメタノール(下記A)、及び[2S−(2a,4aα,10αβ)]−1,2,3,4,4a,9,10,10a−オクタヒドロ−7−ヒドロキシ−2−メチル−2−フェナントレンカルボキサルデヒド(下記B)は、米国特許第4,874,891号に記載の手順に従って合成した。
Figure 2005515992
ヒト網膜色素上皮細胞(RPE340細胞)を増殖させ、Hondaら、Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.、42巻、2139−44頁(2001年)に従って酸素過剰状態にした。実験の期間中、当該細胞を40%O又は20%O(対照)の条件にした。これらの条件は、アポトーシスによる細胞死を誘引することが知られている。
無水エタノール中に上記化合物A及びBを1mg/mlで溶解した後、最終濃度2nMとなるよう培養液で希釈した。処理ウェルにおけるエタノールの影響を抑制するため、培養液のすべてのバッチに、適切な濃度の無水エタノールを補充した。化合物A、化合物B、及び化合物を添加していないもののいずれについても、酸素過剰条件下で5日間、細胞を培養した。細胞の生存性及び成長に与える影響をトリパンブルー排除法によりモニターした。その結果、化合物A及び化合物Bは、当該モデルにおいて当該細胞を細胞死から保護することが分かった。
2.多環式フェノール化合物の投与における、インビトロにおいてグルタミン酸毒性で処理した原発小柱網細胞の生存性
ここで用いた化合物、2−(1−アダマンチル)−3−ヒドロキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−オン(下記C)、及び2−(1−tertブチル)−3−ヒドロキシエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−オン(下記D)は、文献に記載の手順に従って合成した。
Figure 2005515992
ここで用いた小柱網細胞は、Agarwalら、Exp.Eye.Res.、68巻、583−90頁(1999年)、及びHoggら、Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.、41巻、1091−8頁(2000年)の記載の手順に従って正常なドナーから得た新鮮な外植片(explant)から増殖させた。100uMの過酸化水素に24時間暴露させ、細胞を中毒症状にした(これにより、通常は、少なくとも50%の細胞が死滅する)。種々の細胞バッチをを用いる場合、50%の細胞死を得るために必要な過酸化水素濃度は、しばしば実験的に決定する必要がある。小柱細胞(trabecular cell)の生存性は、市販されているライブデッド(live−dead)染色を用いて評価した。また、DNA断片化又はアネキシン結合のための株等のその他の株も適している。
無水エタノール中に上記化合物C及びDを1mg/mlで溶解した後、最終濃度2nMとなるよう培養液で希釈した。処理ウェルにおけるエタノールの影響を抑制するため、培養液のすべてのバッチに、適切な濃度の無水エタノールを補充した。化合物A、化合物B、及び化合物を添加していないもののいずれについても、中毒条件下で24時間、培養小柱細胞を培養した。小柱細胞の生存性は、市販されているライブデッド染色を用いて評価した。化合物C及び化合物Dは、いずれも、当該条件下における生存性を著しく向上させた。
3.17β−エストラジオール及びエント−17β−エストラジオールの眼内投与における、成人ラットにおける軸索切断された網膜神経節細胞の生存性
ここで用いた化合物は、17β−エストラジオール(E)及びエント−17β−エストラジオール(F)である。17β−エストラジオールは、Steraloids,Inc.(ニューポート、ロードアイランド州)から購入したものであり、エント−17β−エストラジオール(Chemistry Abstracts登録番号、3736−22−9)は、WO01/10430 A2(これは引用により本明細書中に取り込まれる)に記載の手順に従って合成した。
Figure 2005515992
当該薬剤をゴマ油中に100ug/mlで溶解させた。当該実験に用いた成人のメスのラットを、まず卵巣切除した。その後、ラットに対して視神経の眼窩内離断を行った。当該工程により、大部分の網膜神経節細胞に進行性変性がもたらされる。細胞は、数日間生存した後、突然死滅し、1週間後には50%のみしか生存しておらず、2週間後には10%しか生存していない。軸索切断は、プログラム細胞死に特有の古典的な細胞化学的変性を引き起こすアポトーシス工程によって網膜神経節細胞の死滅もたらすことが周知である。
視神経を処理した後の2日間乃至8日間、100ug/mlの油中の化合物を1日2回の皮化注射により、送達される最終濃度が100ug/となるように、ラットに投与した。用いられる保護化合物が水溶性の剤形である場合、それらは、一度の硝子体内注射によって送達することもできる。上述した種々のその他の剤形により、保護化合物を投与することができる。
更に4日後、網膜神経節細胞を、神経株(nerve stump)にカルボシアニン色素である4Di−10ASpを用いた逆染色(retrograde staining)によりラベル化した。3日後、ラットを犠牲にし、網膜全体に生存している網膜細胞を計測した。17β−エストラジオール及びエント−17β−エストラジオールで処理したラットは、いずれも、比較例に対して3倍以上の生存網膜神経節細胞を有していた。
ラットの処理手順及び分析技術についての詳細は、Mansour−Robaeyら、PNAS、91巻、1632−6頁(1994年);Berkelaarら、Neurosci、14巻、4368−74頁(1994年);Peinado−Ramonら、Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.、37巻、489−500頁(1996年);Meyら、Brain Res.、602巻、304−17頁(1993年)に記載されている。
4.PPCによる、SHSY−5Y神経芽細胞腫細胞及び形質転換RGCにおけるCa 2+ 誘発ΔΨ 降下の軽減
本発明の典型的実施態様をの実施において有用な保護化合物は、種々の多環式フェノール化合物(PPC)から得ることができる。これまでの研究では、自然発生17β−エストラジオール、その非ホルモン性異性体、17α−エストラジ−ル、及びその他の非ホルモン性合成アナログ(例えば、17β−E2の完全な光学異性体(ent17β−E2))が、ラットの海馬HT−22細胞系及びその他のインビトロモデルにおけるグルタミン酸中毒の対して、優れた神経防護作用を示すことが判明している(Greenら、1997年、2001年;Simpkinsら、1997年;Garcia−Seguraら、2001年)。これらの化合物は、また、前治療又は治療後における動物の脳梗塞における梗塞容積(infarct volume)を著しく減少させる(Simpkinsら、1997年;Yangら、2000年)。
驚くべきことに、これらの化合物の細胞保護効果が、ホルモン活性とは完全に独立していることを見出した。すなわち、非ホルモン性エストロゲンアナログの多くが、親17β−エストラジオール、又はその100倍ホルモン性が低い異性体である17α−エストラジオールのいずれよりも優れた細胞保護剤である。レセプター結合−置換分析によると、当該アナログは、古典的なエストロゲンレセプターであるERα及びERβのいずれとも相互作用しない。これは、男女の長期的緑内障治療における重要な検討事項であるホルモン活性及びそれに関連する健康上の危険が存在しないことを示唆するものである。
これらの化合物の神経防護活性は、A位置におけるフェノール環の存在に依存し、ヒドロキシル基が酢酸に代わると当該活性が失われる(Greenら、1997年;Behlら、1997年)。構造−活性及び機械的データによると、当該PPCは、細胞膜(ミトコンドリア膜を含む)にインターカレートし、膜の完全性を損なわせる脂質過酸化連鎖反応を遮断するが示唆されている(Dickoら、1999年;Laingら、2001年;Wangら、2001年)。ミトコンドリア機能、及び、ミトコンドリアの崩壊に起因する壊死又はアポトーシスは、内部ミトコンドリア膜の完全性に大きく依存するので、膜活性PPCは、ミトコンドリアの保全性を選択的に促進する(Wangら、2001年)。注目すべきは、生体内における神経防護効果に要求される当該化合物濃度は、生体外の坑酸化効果において要求される濃度よりも低い。このことは、単純な質量作用的坑酸化作用ではなく、触媒機構的作用であることを示唆するものである。例えば、細胞培養モデルにおける17β−エストラジオール及び17α−エストラジオールによる実質的な細胞保護作用は、通常、0.2nM程度の投与量で達成され、これは、古典的なラジカル掃去作用に要求される濃度よりも遥かに低いものである。機能の触媒モデルよると、培養液におけるグルタチオンの存在は、神経防護にためのPPCにおけるEC50を約400倍低下させるが、これは、グルタチオンを含むリサイクル機構を示唆するものである(Greenら、1997年)。
作用の直接的ミトコンドリア機構によると、17β−エストラジオールは、培地において及び生体内において神経細胞を死滅させる酸化的リン酸化の阻害剤である3−ニトロプロピオン酸の存在下において、ミトコンドリア機能を保護することが明らかとなっている(Wangら、2001年)。
本発明の典型的実施態様で示唆される結果から、PPCのライブラリーは、男女の長期治療における重要な検討事項である潜在的なホルモン活性を除去しつつ、(特に、系統的製剤によって)神経防護作用を維持するために最適化された化合物群を構成する。
17β−エストラジオール及び17α−エストラジオールのミトコンドリア活性
特定の理論に拘束されることは望まないが、当該データは、PPCは、ミトコンドリア機能を保護することによって(少なくとも部分的には、過剰のCa2+負荷における膜構造を安定化することによって)、潜在的な神経防護効果を発揮していることを示唆していると考えられる。図1に示すように、17β−エストラジオール及び17α−エストラジオールは、いずれも、神経芽細胞腫細胞におけるΔΨの降下を誘発させるのに必要なCa2+の量を大幅に増大させている。これは、図1と関連するEC50のデータに反映するものである。当該実験は、所定のCa2+負荷において、当該化合物で処理した細胞におけるミトコンドリアの大部分がΔΨを保持し、それにより、細胞エネルギー及び酸化的ホメオスタシスが維持され、壊死又はアポトーシスが阻害されることを示唆するものである。
5.17β−エストラジオール、17α−エストラジオール、及びPPCによる、SHSY−5Y神経芽細胞腫細胞及び形質転換RGCにおけるCa 2+ 誘発ΔΨ 降下の軽減
特定の理論に拘束されることは望まないが、当該データは、PPCは、ミトコンドリア機能を保護することによって(少なくとも部分的には、過剰のCa2+負荷における膜構造を安定化することによって)、潜在的な神経防護効果を発揮していることを示唆していると考えられる。
SHSY−5Y細胞におけるミトコンドリアの影響
図1に示すように、17β−エストラジオール及び17α−エストラジオールは、いずれも、SHSY−5Y神経芽細胞腫細胞におけるΔΨの降下を誘発させるのに必要なCa2+の量を大幅に増大させている。これは、対照例と比較して、投与量応答曲線が右にシフトしていることを反映するものである。当該実験は、所定のCa2+負荷において、当該化合物で処理した細胞におけるミトコンドリアの大部分がΔΨを保持し、それにより、細胞エネルギー及び酸化的ホメオスタシスが維持され、壊死又はアポトーシスが阻害されることを示唆するものである。
図1を参照すると、ミトコンドリアは、ΔΨの不可逆的損失の前に最大値まで外因性Ca2+を迅速に吸収する。0乃至50uMの範囲の濃度のCa2+に暴露した後、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)分析法(Dykens及びStout、2001年)を用いて、ΔΨをモニターした0.5uMの17β−エストラジオール及び17α−エストラジオールで2.5時間細胞を培養し、その後、ジギトニン(最終濃度0.008%)に5分間浸漬させた細胞へ直接Ca2+を添加して、Ca2+供給を行った。曲線の下方領域として算出した応答を、S字回帰分析を用いてCa2+濃度の対数に対してプロットした。17α−エストラジオール(18.68+0.3SE、N=4)及び17β−エストラジオール(19.44+0.5SE、N=4)におけるEC50値は、いずれも、対照例(11.83+0.2SE、N=4)よりも大幅に増大した(P<0.01、共分散分析)。ここで、相関係数r2は、それぞれ、0.97、0.94、及び0.99である。
形質転換網膜神経節細胞におけるミトコンドリアの影響
形質転換網膜神経節細胞(RGC−5細胞)は、複製能力のないΨ2 E1Aウイルスを有する生後1日のラットからのSprague−Dawleyラット網膜細胞を形質転換することにより取得した。これは、本来は、緑内障のRGCアポトーシスにおける基本メカニズムを解明するために開発されたものである(Krishnomoorthyら、2001年)。当該細胞は、オリジナルの網膜神経節細胞と同様、特異的細胞マーカーThy−1を発現する。Thy−1発現の確認は、RT−PCR、免疫細胞化学的分析、及び免疫ブロット分析により行った。また、当該細胞は、種々のニューロトロフィン及びそれらのレセプターを発現し、これは、生存培地における栄養因子の存在に依存することが分かった。グルタミン酸による中毒応答は、約50uMのEC50を有していた。重要なことは、形質転換RGC細胞が、栄養枯渇(serum deprivation)においてTUNEL−陽性アポトーシス−媒介細胞死を受けることである。これは、ミトコンドリア機能障害及び/又は損傷誘引される古典的なアポトーシス経路の存在を示唆するものである。
ミトコンドリアを特定する2つの色素の蛍光エネルギー転移(FRET)に基づくミトコンドリアのΔΨ分析を用いて本発明の化合物のミトコンドリア応答を、無傷RGC−5細胞において評価した。当該FRET分析は、原形質膜電位の交絡変数、及び単一電位差色素に特有の低い蛍光効率を解決する(Dykens及びStout、2001年)。形質転換網膜神経節細胞(RGC−5)は、当該実験の前に、60K細胞/ウェルの濃度で24時間塗布した(plated)。当該細胞を、0.08%のジギトニンに浸漬した。細胞は、Ca2+添加の前に、17β−エストラジオール、17α−エストラジオール、及び非ホルモン性PPCである化合物H(実施例6参照)に5分間暴露した。
図2に示すように、RGCがCa2+ストレスに曝されると、Ca2+濃度の増大に伴ってミトコンドリア膜電位が減少する(これは、浸透性の変化を意味する)。しかしながら、緩衝液で処理した対照例と比較すると、17β−エストラジオール、17α−エストラジオール、又は非ホルモン性PPC(化合物H)の存在下では、ミトコンドリア減少の程度が軽減されている(これは、当該3つの群における低い曲線に見ることができる)。最も高いCa2+濃度において、ミトコンドリアの損傷の程度は、17b−E2、17a−E2、及び化合物Hにより著しく減少している(分散分析でP<0.05)。
当該FRETΔΨ分析における励起色素は、ノニルアクリジンオレンジ(NAO)である。NAOは、ミトコンドリアの内膜にほぼ排他的(>99%)に存在する脂質であるカルジオリピンに対して極めて選択的な系である。それによる内膜の染色は、ΔΨとは無関係である。第2の色素は、テトラメチルローダミン(TMR)であり、これは、ΔΨ及び濃度のネルンスト関数に従ってミトコンドリアマトリクスに取り込まれる電位差色素(potentiometric dye)である。カルジオリピンを染色するNAOの特異性と、両方の色素の近接性における絶対的必要条件によって、当該FRET分析は、原形質膜電位の妨害を受けずにΔΨを得ることができる。
ΔΨによるTMRの吸収及び残留により、所定の色素濃度において、TMRによるNAOの失活の程度は、ΔΨの大きさに反映する。脱共役剤、Ca2+負荷の増大、又は呼吸器の脱共役のよるΔΨの損失は、ミトコンドリアからのTMRの流出をもたらす。それに対応する近接性の損失は、NAOの失活を停止させ、それにより、ΔΨの損失は、NAOの蛍光の増大として検出される。
6.非ホルモン性多環式フェノール化合物の潜在的保護効果
多くの非ホルモン性PPCは、神経防護剤として、17β−エストラジオールよりも効果的である。例えば、本研究では、マウスののHT−22海馬細胞を、10%のウシ胎仔血清を補充したDMEM中で培養した。細胞を塗布し、その後、グルタミン酸塩(10mM)及び10nM乃至10μMの種々の投与量における1の試験化合物で同時に処理した。当該試験化合物は、例えば、以下の化合物H(これは、図2における化合物4565であり、PCT公報WO02/36605及びWO00/63228に開示されている多数の保護PPCの1つである)、又は陽性対照の17β−エストラジオール(E)である。16時間後、カルセインAMの蛍光(励起/発光、485/530nm)を用いて、Bio−Texマイクロプレート蛍光読取機において、細胞の生存性を評価した。代表的実験において算出したEC50の値は、化合物Hで0.37μM、17β−エストラジオールで2.20μMであった。
Figure 2005515992
本発明の典型的な実施例をここに述べてきたが、当該技術分野における当業者であれば、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、当該実施態様における種々の変更及び改変が可能であることを理解すべきである。
図1は、17α−及び17β−エストラジオールが、Ca2+に誘発された降下(collapse)に対して、SHSY−5Y神経芽細胞腫細胞におけるミトコンドリア膜電位(ΔΨ)を安定化することを示すものである。 図2は、PPCが、神経芽細胞腫及び網膜神経節細胞におけるCa2+に誘発されたΔΨの降下を軽減することを示すものである。

Claims (19)

  1. 生理学的ストレス因子によってもたらされる眼組織細胞における細胞死の頻度を減少させる方法であって、少なくとも1の多環式フェノール化合物を前記眼組織細胞に提供する工程を含み、当該少なくとも1の多環式フェノール化合物が、少なくとも1の末端フェノール基及び少なくとも1のその他の環状基を有する、当該方法。
  2. 前記ストレス因子が壊死及び/又はアポトーシスを含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記眼組織細胞が網膜神経節細胞を含む、請求項1に記載の方法。
  4. 前記保護化合物の投与によって、ミトコンドリアの構造及び機能が安定化されると共に、眼内圧が正常化される、請求項1に記載の方法。
  5. 前記保護化合物を、眼の疾病、疾患、又は障害の徴候を未だ示していないが危険な状態にある被検体へ予防的に投与して、当該疾病を予防し又はその発現を遅延させる、請求項1に記載の方法。
  6. 前記保護化合物が、ミトコンドリアを混乱させ及び/又は視神経症を生じさせることが知られている1以上の他の薬剤と共に被検体へ投与される、請求項1に記載の方法。
  7. 前記眼組織細胞が網膜神経節細胞である、請求項1に記載の方法。
  8. 前記細胞死がジカルボン酸レセプターの過剰刺激によってもたらされる、請求項1に記載の方法。
  9. 前記1のその他の環状基が、末端にあり、かつ、置換又は未置換の芳香族又は非芳香族フェノール化合物、フェナントレン、ナフタレン、ナフトール、ジフェニル、ベンゼン、シクロヘキサン、1,2−ピラン、1,4−ピラン、1,2−ピロン、1,4−ピロン、1,2−ジオキシン、1,3−ジオキシン(ジヒドロ型)、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジン、s−トリアジン、as−トリアジン、v−トリアジン、1,2,4−オキサジン、1,3,2−オキサジン、1,3,6−オキサジン(ペントキサゾール)、1,2,6−オキサジン、1,4−オキサジン、o−イソキサジン、p−イソキサジン、1,2,5−オキサチアジン、1,2,6−オキサチアジン、1,4,2−オキサジアジン、1,3,5,2−オキサジアジン、モルホリン(テトラヒドロ−p−イソキサジン)よりなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  10. 被検体における眼の疾病、疾患、又は障害を予防或いは治療するための薬剤組成物であって、薬学的に許容可能な剤形において有効量の多環式フェノール化合物を含む、当該薬剤組成物。
  11. 興奮性神経伝達物質又は生体異物ジカルボン酸アナログへの暴露によって生じる眼組織細胞の死を減少させるために有効な、請求項10に記載の薬剤組成物。
  12. グルタミン酸、キノリン酸、カイナイト、及びイボテン酸のうちの1つへの暴露によって生じる眼組織細胞の死を減少させるために有効な、請求項10に記載の薬剤組成物。
  13. 神経向性サポートの減少によって生じる眼組織細胞の死を減少させるために有効な、請求項10に記載の薬剤組成物。
  14. 一酸化窒素シンターゼの過剰発現によって生じる眼組織細胞の死を減少させるために有効な、請求項10に記載の薬剤組成物。
  15. 静水圧の増加によって生じる網膜神経節細胞の死を減少させるために有効な、請求項10に記載の薬剤組成物。
  16. 軸索原形質逆輸送の減少によって生じる網膜神経節細胞の死を減少させるために有効な、請求項10に記載の薬剤組成物。
  17. フリーラジカルへの暴露によって生じる網膜神経節細胞の死を減少させるために有効な、請求項10に記載の薬剤組成物。
  18. 急速なカルシウムイオン負荷によって生じる網膜神経節細胞の死を減少させるために有効な、請求項10に記載の薬剤組成物。
  19. 前記組成物が薬学的に許容可能な賦形剤を含む、請求項10に記載の薬剤組成物。
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