JP2009531334A - 抗糖尿病性白内障化合物及びそれらの用途 - Google Patents

抗糖尿病性白内障化合物及びそれらの用途 Download PDF

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Abstract

本発明は、式(I)の抗グリケーション剤:
Figure 2009531334

式中、
Xは、NR7を表し、ここでR7は、水素原子或いは線状、分岐状若しくは環状のC1-10脂肪酸又はC6-10芳香族酸に由来するアシル基を表す、
R1は、水素原子、NH2、又はC6-10芳香族基で置換されていてもよい線状、分岐状若しくは環状のC1-10アルキルを表す、
R2は、水素原子、線状、分岐状若しくは環状のC1-10アルキル、又はCOOH基を表す、
R’2は、水素原子又は線状、分岐状若しくは環状のC1-10アルキル基を表す、
R3は、水素原子、=O、OR8、SR8、又はNR8R9を表し、ここでR8及びR9は、水素原子、線状、分岐状若しくは環状のC1-10アルキル、或いは線状、分岐状若しくは環状のC1-10脂肪酸又はC6-10芳香族酸に由来するアシル基を表す、但し、R8及びR9は、両方ともがアシル基ということはない、
R4及びR5は、各々独立にOH、NH2、又はSHを表す、
R6は、水素原子、F、Cl、Br、I、OR10又はSR10を表し、ここでR10は、水素或いは線状、分岐状若しくは環状のC1-10脂肪酸又はC6-10芳香族酸に由来するアシル基を表し、R6は、一つより多く存在していてもよく、互いに同じでも異なっていてもよい;これらの化合物の、生理学的に許容される塩、プロドラッグ、生理学的に機能性の誘導体又は混合物、例えば、(S)-イソプロテレノール及びそのプロドラッグである二ピバル酸(S)-イソプロテレノール塩酸塩などの糖尿病性白内障の発症に対する用途に関する。(S)-イソプロテレノールは、16.8±0.8μMの生体外IC50値を有する強力な抗グリケーション剤である。二ピバル酸(S)-イソプロテレノール塩酸塩を、0.1%の濃度で点眼薬の形態で調製し、糖尿病のラットに一日二度、三週間まで投与した。このプロドラッグの治療を施した糖尿病でないラットにおいても施さない糖尿病でないラットにおいても、白内障は観察されなかった。このプロドラッグの治療を施さない糖尿病のラット(グループIII)では、88%の目が、8.6±1.5週間で白内障になった。このプロドラッグの治療を施した糖尿病のラットでは、53%の目だけが、8.6±1.2週間で白内障を発症し、残りの26%の目が、発症を17.1±3.1週間にのばした。さらに、21%の目には、30週間であっても、白内障は観察されなかった。

Description

この出願は、2001年10月15日に出願された米国特許出願第60/328,808号からの優先権を主張する2002年10月15日に出願された米国特許出願第10/492,553号の一部継続出願であり、それら両出願の全体が参照することにより本願に組み込まれている。
本発明は、糖尿病性白内障の発症を防止し、遅らせるための(S)-イソプロテレノール、特に二ピバル酸(S)-イソプロテレノール[(S)-isoproterenol dipivalate]等の抗糖尿病化合物の用途に関するものである。より具体的には、本発明は、(S)-イソプロテレノール等のよく効く抗グリケーション剤(anti-glycation agents)を水晶体に送るためのプロドラッグ形態の製剤(prodrug form)の用途、及びアドレナリン作用性(adrenergically active)の(R)-イソプロテレノールは、副作用を引き起こすことがあるので、光学的に純粋な(S)-イソ型の用途に関するものである。
世界中で10億を超える成人が体重過多であり、そのうちの少なくとも3億が肥満である。肥満及び体重過多は、2型糖尿病、心臓血管疾患、高血圧、脳卒中及びある種の癌を含む慢性病の大きな危険性をもたらす。肥満は、世界中で、特に発展途上国において、憂慮すべき率で増加している。肥満と関連する糖尿病も、増加しており、いくつかの臓器において、網膜症、腎障害、神経障害、高血圧、及び末梢虚血の形態の多くの血管合併症を引き起こす。糖尿病は、また、白内障、緑内障、関節症、歯周病、及び皮膚の弾力性低下などの非血管性合併症も引き起こす。
白内障は、目の水晶体の混濁化によって生じるものであり、世界中で主な失明の原因である。実際、白内障は、すべての失明の約42%の原因になっている。糖尿病は、白内障発生の主な危険因子であるが、白内障発生の確率は、健康で糖尿病でない人々においてさえ、加齢とともに大幅に高くなる。65〜75歳の間の人々の約50%、及び75歳を超える人々の約70%は、白内障である。しかしながら、現証拠(present evidence)は、白内障は、糖尿病の人々においては、10年早く発達した状態に到達することを示している。
糖尿病性白内障の発生は、複数の機構と関連している。それらのうちの三つは、白内障の発生に関与することが証明されており、そのため、薬剤開発のターゲットとして認定されている(Stitt、2001年)。それらは、グリケーション(糖化)、酸化的ストレス及びポリオールの経路である。
グリケーションは、還元糖と、タンパク質、脂質及び核酸のアミノ基との間の非酵素的自然化学反応である。糖尿病性白内障においては、グルコースが、還元糖の主な供給源であり、一連のメイラード反応を通じて、シッフ塩基、アマドリ生成物及び安定なグリケーション最終産物(AGEs)を生成する。Nε-カルボキシメチルリシン(CML)、クロスリン(crossline)、ペントシジン、ピラリン(pyralline)、フロイル-フラニルイミダゾール(Furoyl-furanyl imidazole)、1-アルキル-2-ホルミル-3,4-グリコシル-ピロール、アルグピリミジン、グリオキサールリシン二量体(GOLD)、デオキシグルコソン-リシン二量体(DOLD)、及びメチルグリオキサールリシン二量体(MOLD)を含む、幾つかのグリケーション最終産物(AGEs)が、確認されている。グリケーションは、高反応性α-ジカルボニル種も生じさせ、酸化的ストレスを誘発し、高血糖症関連疾患を引き起こす(Stitt、2001年)。高血糖症は、細胞内酸化的ストレスを生じさせる。その結果、量の増加した活性酸素種は、DNA酸化、タンパク質酸化及び脂質過酸化を通じて細胞内標的にダメージを与えるシグナル伝達媒介物質(signaling mediators)である。酸化的ストレスは、また、グリケーションを加速させる。したがって、グリケーションと酸化的ストレスとは、何らかの形で、相互リンクしている。他の主な機構が、ポリオール経路(polyol pathway)を通じての体液異常流出(flux)の増加と関連しており、ポリオール経路においては、アルドース還元酵素が、ソルビトールの蓄積における律速酵素である(Dagher他、2004年)。
これらの経路を塞ぐのに潜在的に有効な幾つかの抗白内障薬剤が開発され、動物、疫学及び臨床の研究において調査されている(Kyselova他、2004年)。それらは、何らかの形で、互いに関連しているが、抗酸化剤、抗グリケーション剤、及びアルドース還元酵素阻害剤に分類することができる(Kyselova他、2004年)。ポリオール経路を塞ぐため、アルドース還元酵素阻害剤が、開発されてきた。フラボノイド、ベンゾピラン、スピロヒダントイン(spirohydantoins)、アルカロイド、非ステロイド抗炎症剤、及びキノンは、構造的には異なるが、アルドース還元酵素を阻害する。ソルビニル、スタチル(statil)、トルレスタット、アルレスタチン、エパルレスタット、及びALO1576は、臨床的に研究されている阻害剤のうちの幾つかである。しかしながら、それらのうちの何れも臨床的に有効であることが証明されておらず、しかも、それらのうちのいくつかは有害な副作用がある。抗酸化剤は、酸化的ストレスを減少させる。実際、水晶体は、グルタチオン、ビタミンC、ビタミンE、カロテノイド、スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼ、及びセレン依存GSHペルオキシダーゼなどの内在性抗酸化物質を有している。アルドース還元酵素阻害剤のうちのあるものが、抗酸化物質でもあることは注目すべきことである。いくつかの抗酸化物質が、研究されており、例えば、α-リポ酸は、効力のある抗酸化物質であり、グルコース取込を増やすことによってグルコース濃度を低下させ、白内障の発生を減少させる(Packer他、2001年)。抗白内障薬剤の第三のグループは、抗グリケーション剤である。我々は、約1,300の薬品又は薬品候補の抗グリケーション活性を検査した。最も大々的に研究された抗グリケーション剤は、アミノグアニジンであり、動物実験において入り交じった結果を示した。ピリドキサール-アミノグアニジンは、抗グリケーション剤であるとともに抗酸化剤でもあり、ラットモデルにおいて有効な糖尿病性白内障の防止を示した。L-カルノシン(プロドラッグ:N-アセチル-L-カルノシン)が、グリケーションによるエステラーゼの不活性化を防ぎ、そのため、AGE形成の病理学的帰結を改善させ(Yan & Harding、2005年)、白内障患者の視力を改善させることも報告されている。これらの研究にもかかわらず、白内障を防止又は治療する決定的な薬品は、米国食品薬品局(FDA)によって認可されていない。
我々は、カテコール、ドーパミン及びエピネフリンの有効な抗グリケーション活性について先に報告をした(Yeboah他、2002年)。(R,S)-エピネフリンのプロドラッグであるジピベフリンが、緑内障を治療するための市販の点眼薬であるように、エピネフリンの薬品リポジショニングは、目への局所的使用に利点がある。そのため、我々は、エピネフリンを基にして、白内障などの糖尿病に関連する目の合併症を予防/治療するための点眼薬を開発した。
最も重要な化合物のうちの一つが、プロドラッグの形式の(S)-イソプロテレノールであり、(S)-イソプロテレノールは、ヒトに安全な薬剤と考えられている。d-重酒石酸(S)-イソプロテレノール((S)-isoproterenol d-bitartrate)点眼薬を、10%という非常に高い濃度でヒトの目に投与したが、短時間で軽度の結膜の充血と刺激を起こしただけであった。20%塩酸(S)-イソプロテレノール((S)-isoproterenol HCL)の局所投与が、顕著な結膜の充血と軽度の縮瞳(瞳孔の収縮の医学用語)を生じさせ、それらは数時間持続した(Kass他、1976年)。
しかしながら、これらの濃度は、本発明において好適に使用されているプロドラッグの0.1%よりもずっと高く、また、これらの副作用がヒト及び動物において見られるであろう。また、(S)-イソプロテレノールの大量の静脈内投与は、血圧及び脈拍数に対し、わずかで一時的な影響しかないように思われた(Kass他、1976年)。(R,S)-イソプロテレノールのジピバロイルプロドラッグは、このプロドラッグの静脈注射が、犬において、このプロドラッグの作用を(R,S)-イソプロテレノールの作用と区別する独特の心臓血管効果を何ら生じさせなかったので、このプロドラッグが(R,S)-イソプロテレノールへと活性化されるまで、心臓血管に不活性であると思われる(Wang他、1977年)。
本発明は、糖尿病性白内障の発症を予防し及び/又は遅らせる方法を提供するものである。この方法は、斯かる治療が必要な患者の目に使用することを含んでいる。
本発明は、抗グリケーション剤としてのエピネフリンの新規な用途を開発するための医薬品リポジショニング戦略を利用するものである。本発明は、糖尿病に関連する合併症、より具体的には、糖尿病性白内障の便利で局所的な目の治療のための点眼薬製剤を提供するものである。局所治療は、投与量を減少させ、全身治療と比較して、生じうる副作用を最小限にするものである。
本発明の別の実施の形態では、エピネフリンのアドレナリン的に不活性な(adrenergically inactive)(S)-異性体(d-異性体)が用いられ、アドレナリンのアドレナリン的に活性な(adrenergically active)(R)-異性体(l-異性体)は、それらが眼圧を低下させることがあり、動脈血圧の上昇、頻脈、局所刺激、及び散瞳を引き起こすことがあるため、除外される(Rowland及びPotter、1981年)。
本発明のさらに別の実施の形態では、薬剤の効能を高めるため、(S)-エピネフリンをプロドラッグの剤型に製剤する。プロドラッグの製剤は、有効に親油性の角膜細胞膜に浸透するよう親油性を高めるように立案されている。
本発明のさらに別の実施の形態では、プロドラッグは、このドラッグを水晶体に届けるため、角膜、房水及び/又は水晶体において(単数又は複数の)酵素によって適当な速度で加水分解されるようになっている。
本発明のさらに別の実施の形態では、プロドラッグは、治療有効濃度のドラッグが水晶体に侵入するようになっている。
本発明のさらに別の実施の形態では、点眼薬は、頻繁で不便な点眼治療を回避するため、数時間の持続期間を有するようになっている。
インビトロでの50%抑制濃度(IC50)は、50μM未満であることが好ましく、特に40μM未満であることが好ましく、30μM未満であることがさらに好ましい。
本発明は、糖尿病性白内障の発症を予防し/遅らせるのに治療効果のある用量を提供するものである。(S)-イソプロテレノール、プロドラッグ又は塩などの本発明の化合物の濃度は、0.01〜10%w/vが好ましく、0.01〜5%w/vが特に好ましく、0.01〜1%w/vが更に好ましく、約0.1%w/vがとりわけ好ましい。それらの化合物、プロドラッグ又は塩は、単位用量の形態でよく、例えば、5〜200μL、より好ましくは10〜100μL、特に好ましくは30〜50μLの単位用量でよい。50μLが、点眼薬一滴の容積であるとすれば、200μL及び100μLは、一回の点眼に目薬4滴及び2滴に相当する。市販の点眼薬製品には、一回の点眼に点眼薬2〜3滴の使用を薦めているものがある。プロドラッグが想定するのは、プロドラッグ製剤において報告されている他の基、例えば、ジアセチル基、ジプロピオニル基、ジブチリル基、ジシクロプロパノイル基、ジバベゾイル基、ジ(4-メチルベンゾイル)基などを使用することはできるが、ジピバロイル基である(Javinena and Jarvinenb、1996年)。通常考えられる塩は、重酒石酸塩(酒石酸水素塩)、酢酸塩又は炭酸塩などの他の生理学的に許容される塩を使用することはできるが、塩酸塩である。ラットに関して動物実験が実施されてきたが、(S)-イソプロテレノール、プロドラッグ又は塩などの本発明の化合物のこの有用性は、ヒトを含む他の動物にも当てはまると推定するのはもっともなことである。光学異性体の純度に関し、長期間の使用における(R)-イソ型の起こりうるアドレナリン性の副作用を減少させるためには、光学異性体の純度は、少なくとも97又は98%w/w光学純度であることが好ましい。
本発明の原理の理解を促進させる目的で、本明細書において例示する実施の形態を参照し、これらの実施の形態を説明するために、特殊な用語を使用する。しかしながら、それにより、発明の範囲を限定する意図ではないことが理解されよう。説明をする方法、システム又は装置におけるいかなる変更及びさらなる改修も、本明細書において説明されるような本発明の原理のいかなる別の応用も、本発明と関連する技術分野における当業者には普通に思い浮かぶであろうものと考えられる。
本発明は、本質的に既存の薬剤の抗グリケーション剤としての新しい用途の発見である薬品リポジショニング戦略を利用するものである。この戦略を用いて発見された薬剤のいくつかが、イェボア他(Yeboah et al.)によって列挙された(2002年)。図7は、50%抑制濃度(IC50)の値が47μg/mL未満であった他の薬剤を示している。図6は、抗グリケーション活性が既に知られているいくつかの薬剤又は薬剤候補を例示している。
抗グリケーション活性を示した薬剤の中で、本発明は、最も効力のある抗グリケーション(S)-イソプロテレノール、及びその類似体(analogs)のうちの一つを用いるものであり、最も効力のある抗グリケーション(S)-イソプロテレノールの50%抑制濃度(IC50)の値は16.8±0.8μMであった。(S)-イソプロテレノールのカテコール部分は、それらの構造-活性相関研究に基づけば、抗グリケーション活性に必須のものである。
本発明は、(S)-イソプロテレノール(d-イソプロテレノールとしても知られている)の、目の合併症である糖尿病性白内障の発症の防止/遅延に関する新規な用途を提供するものである。(S)-イソプロテレノールは、16.8±0.8μMのインビトロ50%抑制濃度(IC50)の値を有する強力な抗グリケーション剤なので、(S)-イソプロテレノールは、水晶体における増加したグリケーションの影響を緩和し、したがって、糖尿病性白内障の症状を緩和することがあるように思われる。
本発明は、アドレナリン的に活性な(R)-イソプロテレノール(また、l-イソプロテレノールとも称する)が副作用として眼圧を下げる(Kass 他、1976年)ので、(R)-イソプロテレノールの使用を排除している。アルドリッチ(Aldrich)(カナダ、オンタリオ州、オークビル)から購入した重酒石酸(S)-イソプロテレノールは、2.0±0.3%の(R)-イソプロテレノール不純物を含んでいた(実験の項を参照)。
本発明は、二ピバル酸(S)-イソプロテレノールをプロドラッグとして用い、このプロドラッグは、角膜を通しての目への吸収及び浸透を高め、促進する。ジピバロイル基は、また、保存の間、酸化等の化学反応から3,4-ジヒドロキシル基を保護する。
本発明の抗グリケーション化合物のなかで、糖尿病性白内障の予防/遅延のために特に関心のあるものが、式(I)の化合物の式(II)のプロドラッグであり、これらのプロドラッグは、二ピバル酸(S)-イソプロテレノールの類似体と考えることができる。(S)-イソプロテレノールは、交感神経様作用薬、気管支拡張剤、及び抗アレルギー薬などとして、イソプロテレノールのラセミ混合物の形で臨床的に用いられる。しかしながら、有効成分は(R)-イソプロテレノールであり、(S)-イソプロテレノールの治療活性は、我々の先の報告書(Yeboah他、2002年)における抗グリケーション活性を例外として、報告されていない。
二ピバル酸(S)-イソプロテレノールプロドラッグの細胞毒性を、二つの細胞株(cell lines)を用いて調べた。一方は、高濃度の上記プロドラッグ(2.4mM)が、点眼薬として施されるヒトの角膜上皮細胞である。もう一方は、上記プロドラッグの高い親油性が、このプロドラッグが血液脳関門及び血液網膜関門を通過できるようにさせることがあるので、上記プロドラッグのいくらかが神経細胞に到達するかも知れないという問題のある神経細胞のモデル細胞であるPC12細胞である。PC12細胞は、最長2時間までの短時間の培養において、最多500μMまでのプロドラッグに対して耐性があった(図5)。より長い最長24時間までの培養も、最小培地(minimum media)を用いて実施され、同じ500μMの耐性であった(データは示さず)。ヒトの角膜上皮細胞は、上記プロドラッグに対して、予想よりもはるかに耐性があり、顕微鏡の観察で、最多25μMのプロドラッグまで、細胞毒性は目に見えては認められなかった。
ラットに糖尿病を誘発させるのに、ストレプトゾトシンを用いた。糖尿病でないラットと糖尿病のラットに関して、27週間の期間にわたり、週1度血糖値を観察した。糖尿病でない動物(塗りつぶした菱形)の、対照であるグループI(ビヒクルを投与)及びグループII(プロドラッグを投与)は、それぞれ、5.1±0.4及び5.1±0.4mMの安定した血糖値を有していた。血糖値の上昇は、グループIII(ビヒクルを投与)及びグループIV(プロドラッグを投与)の糖尿病のラットについて、糖尿病誘発の最初の2週間の間、観察された。その後、血糖値は、それぞれ28±4及び27±5mMで安定した。約5mMの血糖値が正常であると考えられるので、グループI及びグループIIのラットは、糖尿病でない。血糖値が15mMを越えると、ラットは糖尿病であると考えられる。したがって、グループIII及びグループIVの全てのラットは、糖尿病である。グループIとグループIIとの間及びグループIIIとグループIVとの間の血糖値の一貫性は、(S)-イソプロテレノールが、血糖値及び糖尿病に影響しないことを示している。
(S)-イソプロテレノールの体重の減/増に対する他の副作用を観察した。実験の間の体重の増加は、グループI(ビヒクルを投与)とグループII(プロドラッグを服用)との間では、ほとんど同じであり、糖尿病でないラットの体重の減/増には、(S)-イソプロテレノールは影響しないことを示唆した(図2)。糖尿病のラットでは体重増が、糖尿病でないラットの体重増と比較して随分少ない(Chen 他、2004年)。しかしながら、グループIII(ビヒクルを投与)の体重増は、グループIV(プロドラッグを投与)の体重増とほとんど同じであり、糖尿病のラットの体重の増/減には、(S)-イソプロテレノールは影響しないことを示した(図2)。
ストレプトゾトシンを注射された糖尿病のラットにおける白内障の発症と進行を、白内障の重度を4つのレベル、即ち、健康な目がレベル0、淡いピンクがかった色合いが認められる場合又は白内障の最も初期の段階が目に見えて認められる場合がレベル1、白い膜が明らかに認められる場合がレベル2、膜が目全体を覆っているが、瞳孔はまだ見ることができる場合がレベル3、白い膜が形成されたことにより瞳孔が認められない場合がレベル4、でスコアをつけることにより観察した。図3は、糖尿病のラットにおける白内障の進行を目視で識別することを可能にするものである。30週間までの実験の間、糖尿病でないラットは、レベル1でさえも糖尿病にはならなかった。したがって、本発明において、白内障は齢(age)によっては誘発されなかった。
(S)-イソプロテレノールは、白内障の発病を遅らせた。平均して、ビヒクルを投与した糖尿病のラットは、10.2±5.1週間後に白内障を発症したのに対し、二ピバル酸(S)-イソプロテレノールを投与した糖尿病のラットは、15.0±8.3週間後に白内障を発症した。したがって、(S)-イソプロテレノールは、糖尿病のラットにおいて、白内障の発現を約5週間(言い換えれば1.5倍)遅らせる。しかしながら、全ての目が、同時に白内障を発病するわけではなく、それらの分布は、(S)-イソプロテレノールの、より劇的な効果を示している(図4)。ビヒクルを投与した糖尿病の対照ラットでは、88%の目が、8.6±1.5週間で白内障を発病し、残りの三つの目が、それぞれ、14、22及び30超(>30)週間で白内障を発症した。これに反して、プロドラッグを投与した糖尿病のラットでは、53、26、21%の目が、それぞれ、8.6±1.2、17.1±3.1、(一つの目が、23超週間であったのを除き)30超週間で白内障を発症した。言い換えれば、(S)-イソプロテレノールが、四分の一の目に関して白内障の発病を8.6週間から17.1週間(2倍)へと遅らせ、さらに、21%の目が、(一つの目が23超週間であったのを除き)30週間より長く白内障にはならなかった。30週間よりも長い遅れは、ラットにおける白内障の主な原因の一つであるポリオール経路が、抗グリケーション剤によっては阻害されないので、予想外であった。約10年間の白内障発現における遅れは、目を見えなくする白内障の罹患率を約45%減少させると推定されるので、我々の発明は、重大な社会的影響があり、医療基金の主な出費である必要な白内障手術の数を減少させるであろう。
白内障の進行を、白内障の各レベルにとどまる時間によって観察した。表2は、ビヒクルを投与した糖尿病のラット(13匹、n=13)は、白内障発病後、レベル1、2及び3において、それぞれ、1.18±0.736、2.5±1.5及び4.1±2.4週間とどまった後、最も重篤なレベル4に入ったことを示している。プロドラッグを投与した糖尿病のラット(17匹、n=17)は、白内障発病後、レベル1、2及び3において、それぞれ、1.24±0.82、1.88±1.09及び5.4±1.9週間とどまった後、最も重篤なレベル4に入った。(S)-イソプロテレノールを投与した糖尿病のラットと投与しなかった糖尿病のラットとの間のレベル1、2及び3にとどまった時間の差は、実験誤差の範囲内である。ポリオール経路は、ラットの白内障では重要な役割を果たし、ラットの白内障の進行は、ポリオール経路があまり重要な役割を果たさないマウス及びヒトの目における白内障の緩やかな進行と比較して特徴的に早い(Hedge他、2003年)。したがって、(S)-イソプロテレノールは、ポリオール由来の早い白内障の進行には影響しないが、(S)-イソプロテレノールは、人間におけるグリケーション及び/又は酸化的ストレスに由来する白内障の緩やかな進行を遅らせるかも知れないと思われる。
アドレナリン投与が、白内障発症の増加と関連づけられてきた(Kyselova他、2004年)。したがって、同族化合物の(S)-イソプロテレノールが白内障の発症を遅らせたことは予想外である。一方、(S)-イソプロテレノールは、最も有効な抗グリケーション剤の一つであり(Yeboah他、2002年)、白内障発症のグリケーション経路(glycation pathway)を遮断する又は遅らせることができよう。しかしながら、(S)-イソプロテレノールが、ミトコンドリア損傷、カルパイン活性化、細胞骨格スペクトリン/フォドリンタンパク質分解、及び繊維細胞グロブリゼーション(fiber cell globulization)などの白内障発症の他の潜在的なメカニズムに何らかの影響を有するかどうかは、分かっていない(Hedge他、2003年)。さらに、(S)-イソプロテレノールの抗白内障活性は、直接又は間接的に白内障の発病を遅らせることができ、ヒトやマウスなどにおいて、ポリオール経路が白内障の進行を支配しない場合に、白内障の進行に対する(S)-イソプロテレノールの影響に関しては、何も分かっていない。(S)-イソプロテレノールに仲介された白内障の発病と進行の抑制の詳細なメカニズムは、進展中の研究の対象である。
本発明による抗グリケーション化合物は、共通のコア化学構造を共有しているということで一族の化合物を意味する。本発明の化合物は、抗グリケーション剤として分類することができる。イソプロテレノールの芳香族ジヒドロキシル基の低いpKa(= 8.72 ± 0.05)が、1-デオキシグルコース、3-デオキシグルコソン、2-グルコソン、グルコソン、メチルグリオキサール、及びグリオキサールなどの反応性中間体の□-ジカルボニル基の一つと反応することがある芳香族OHの一つを容易にイオン化する。他の芳香族OHが、その後、イオン化され残りのカルボニルと反応し、六員環を形成する。R1が水素の場合には、脱水が生じることがあり、その後、加水分解が生じて遊離カルボキシル基及び芳香族OHを生成する。(S)-イソプロテレノールは、アマドリ生成物とも反応することがあり、転位(rearrangement)及び加水分解を通じてリジン(Lys)残基を放出する。同様の反応が、カルボニル基を含む他のグリケーション中間体と生じることがある。
グリケーションは、酸化過程を含み、酸化的ストレスと密接に関連している。実際、抗酸化活性を有するいくつかの抗炎症薬品が、抗グリケーション活性を示した。本発明の化合物は、抗酸化活性を通じてグリケーションを抑制することもあるので、(S)-イソプロテレノール及びそのプロドラッグである二ピバル酸(S)-イソプロテレノールの抗酸化活性を、細胞レベルでのH2O2による酸化ストレスに対して、測定した。H2O2による酸化的ストレスは、生体外及び生体内でのアポトーシスを誘発し、N-アセチル-システインなどの有効な抗酸化剤が、酸化的ストレスを減少させ、細胞をアポトーシスから保護する。(S)-イソプロテレノール及び二ピバル酸(S)-イソプロテレノールの抗酸化活性を、その50%抑制濃度値(IC50値)(16.8±0.8μM)を包含する10〜100μMの濃度範囲で測定した。H2O2を用いた培養は、H2O2処理をしない対照と比較して80%を越えるPC12細胞を死滅させた。(S)-イソプロテレノール及びそのプロドラッグは、どちらも、何ら保護効果を示さず、(S)-イソプロテレノールの抗グリケーション活性が、抗酸化活性に起因するものでないことを実証した。
式(I)の化合物:
(式(I))
Figure 2009531334
好ましくは、式(Ia)の化合物:
(式(Ia))
Figure 2009531334
式中、
Xは、NR7を表し、ここでR7は、水素原子或いは線状、分岐状若しくは環状の脂肪酸(好ましくはC1-10脂肪酸)又は芳香族酸(好ましくはC6-10芳香族酸)に由来するアシル基を表す、
R1は、水素原子、NH2、又は芳香族基(好ましくはC6-10芳香族基)で置換されていてもよい線状、分岐状若しくは環状のC1-10アルキルを表す、
R2は、水素原子、線状、分岐状若しくは環状のC1-10アルキル、又はCOOH基を表す、
R’2は、水素原子又は線状、分岐状若しくは環状のC1-10アルキル基を表す、
R3は、水素原子、=O、OR8、SR8、又はNR8R9を表し、ここでR8及びR9は、水素原子、線状、分岐状若しくは環状のC1-10アルキル、或いは線状、分岐状若しくは環状の脂肪酸(好ましくはC1-10脂肪酸)又は芳香族酸(好ましくはC6-10芳香族基)に由来するアシル基を表す、但し、R8及びR9は、両方ともがアシル基ということはない(R3自体が、アドレナリン的活性などの生物学的活性を不活性化しない場合には、式(I)に示すキラリティーのうちの一つだけを用いる)、
R4及びR5は、OH、NH2、又はSHを表す、
R6は、水素原子、ハロゲン原子(F、Cl、Br又はI)、OR10又はSR10を表し、ここでR10は、水素原子或いは線状、分岐状若しくは環状の脂肪酸(好ましくはC1-10脂肪酸)又は芳香族酸(好ましくはC6-10芳香族酸)に由来するアシル基を表す。1以上の同じ又は異なるR6が、芳香族環を置換していてもよい。
式(II)のプロドラッグ:
(式(II))
Figure 2009531334
好ましくは、式(IIa)の化合物:
(式(IIa))
Figure 2009531334
式中、
Xは、NR7を表し、ここでR7は、水素原子或いは線状、分岐状若しくは環状の脂肪酸(好ましくはC1-10脂肪酸)又は芳香族酸(好ましくはC6-10芳香族酸)に由来するアシル基を表す、
R1は、水素原子、NH2、又は芳香族基(好ましくはC6-10芳香族基)で置換されていてもよい線状、分岐状若しくは環状のC1-10アルキルを表す、
R2は、水素原子、線状、分岐状若しくは環状のC1-10アルキル、又はCOOH基を表す、
R’2は、水素原子又は線状、分岐状若しくは環状のC1-10アルキル基を表す、
R3は、水素原子、=O、OR8、SR8、又はNR8R9を表し、ここでR8及びR9は、水素原子、線状、分岐状若しくは環状のC1-10アルキル、或いは線状、分岐状若しくは環状の脂肪酸(好ましくはC1-10脂肪酸)又は芳香族酸(好ましくはC6-10芳香族酸)に由来するアシル基を表す、但し、R8及びR9は、両方ともがアシル基ということはない、
R4及びR5は、-O-、-NH-、又は-S-を表す、
R6は、水素原子、ハロゲン原子(F、Cl、Br又はI)、OR10又はSR10を表し、ここでR10は、水素原子或いは線状、分岐状若しくは環状の脂肪酸(好ましくはC1-10の脂肪酸)又は芳香族酸(好ましくはC6-10芳香族酸)に由来するアシル基を表し、1以上の同じ又は異なるR6が、芳香族環を置換していてもよい、
Y1及びY2は、R4及びR5の保護基であり、式III、式IV、又は式Vを表し、ここで、R11及びR12は、水素原子、又は芳香族基(好ましくは一以上のC6-10芳香族基)で置換されていてもよい線状、分岐状若しくは環状のC1-10アルキル基を表す。
(式III)
Figure 2009531334
(式IV)
Figure 2009531334
(式V)
Figure 2009531334
一つの好ましい実施の形態において、本発明は、糖尿病性白内障及び関連する疾病を予防するためのイソプロテレノールの(S)-イソ型及びその類似体の新規な用途を提供する。これらの化合物は、この用途にとって重要ないくつかの基準を満たす。先ず初めに、イソプロテレノールの(S)-イソ型及びその類似体の抗グリケーション活性が高い。表2は、それぞれ、(R)-ノルエピネフリンのIC50値(IC50 = 39.6±3.4 μM)及び(R)-イソプロテレノールのIC50値(IC50 = 18.1±1.1 μM) とほぼ同等の(S)-ノルエピネフリンのIC50値(IC50 = 40.3±4.7 μM)及び(S)-イソプロテレノールのIC50値(IC50 = 16.8±0.8 μM)を示している。
Figure 2009531334
これに基づいて、(S)-エピネフリン及びその類似体のIC50値が、この範囲にとどまると予想することは妥当である。第二に、(R)-イソ型のアドレナリン的活性は、眼圧の低下をもたらすが、(S)-イソ型に関しては、微々たるものである。エピネフリンの(S)-イソ型及びその類似体のアドレナリン的活性は、相当する(R)-イソ型のアドレナリン的活性よりも、少なくとも二桁低い(Patil他、1974年)。特に、塩酸(S)-イソプロテレノールの最多20%までの局所投与は、ヒトの目において眼圧を低下させる兆候を何ら示さなかった(Kass他、1976年)。
イソプロテレノールの(S)-イソ型及びその類似体は、目への投与に関して安全であることが知られている。緑内障の治療のための種々の市販の製剤が、二ピバル酸(R,S)-エピネフリン(ジピベフリン)を含んでおり、二ピバル酸(R,S)-エピネフリンは、点眼後に(R,S)-エピネフリンに加水分解されるプロドラッグである。遊離したエピネフリンは、等量のエピネフリンの(S)-イソ型及び(R)-イソ型を含んでおり、それらのうちのアドレナリン的に活性な(R)-イソ型のみが、緑内障の治療と関連している。(S)-イソ型は、この用途には不活性であるが、その存在は、安全であることが証明されている。本発明の一つの好ましい実施の形態による製剤は、イソプロテレノールの(S)-イソ型及びその類似体のみを含むので、それらも、目への適用には安全である。
イソプロテレノールは、適当な頻度の投与、例えば、一日に二度の投与をおこなうのに十分長い持続期間を有することが知られている。例えば、ボノミ(Bonomi、1964年)は、2.47%の(R,S)-イソプロテレノールを正常なヒトの目に滴下し、眼圧が20%低下して少なくとも12時間持続することを観察した。
(S)-イソプロテレノールは、ひとたび血液循環系に入ると、代謝されて3-メチル-(S)-イソプロテレノールになり、その血漿中半減期は、3.0〜4.1分の範囲であり(Conway他、1968年)、(S)-イソプロテレノールのあらゆる全身性の副作用が生じる可能性を最小限にしている。
本発明による用途に関し、式(I)の化合物、特に(S)-イソプロテレノール及びその類似体は、それらの生理学的に許容される塩、生理学的に機能性の誘導体、又は式(II)のプロドラッグの形態で用いることができる。式(I)の化合物の好ましいプロドラッグ又は生理学的に機能性の誘導体は、線状、分岐状若しくは環状の脂肪酸又は芳香族酸に由来する少なくとも一つのアシル基を含むものであり、アシル基は、式中のX、R3、R4、R5、又はR6のうちの少なくとも一つをアシル化する。ピバロイル(トリメチルアセチル)アシル基が、特に好ましい。
本発明に係る目の治療用の組成物は、1以上の式(I)及び式(II)の化合物、それらの生理学的に許容される塩又は生理学的に機能性の誘導体を含んでいてもよい。これらの組成物は、溶液、懸濁液又は乳濁液などの、局所的な目への投薬(topical ophthalmic delivery)に適したいかなる投与形態に製剤されていてもよい。これらの中で、水性の点眼薬(眼科溶液)が好ましい。必要な場合又は適当である場合には、有効成分以外に、それらの組成物は、抗菌性保存剤、薬剤及びプロドラッグの滞留を向上させるための増粘剤、緩衝剤、浸透圧調整剤、界面活性剤及び抗酸化剤などの通常の眼科用添加剤及び賦形剤をさらに含有していてもよい。
製剤された溶液は、点眼薬として用いることもでき、又は、長い持続時間を有する薬剤又はプロドラッグの有効濃度を低下させうる他の方法、例えば、ソフトコンタクトレンズにしみ込ませる方法などによって施薬することもできる(Bietti他、1976年)。
実験の材料及び方法
化学薬品:重酒石酸(S)-イソプロテレノール、D-マンニトール、塩化ベンザルコニウム、塩化ピバロイル(塩化トリメチルアセチル)、及び硫酸二ナトリウムを、アルドリッチ(Aldrich、カナダ、オンタリオ州、オークビル)から購入した。クロロブタノール、アミノカプロン酸、過塩素酸ナトリウム、塩化ヘキサデシルピリジニウム、[Glu1]-フィブリノペプチドB、及びポビドン(K30)を、シグマ(Sigma、カナダ、オンタリオ州、オークビル)から入手した。アセトン、塩化メチレン、氷酢酸、炭酸二ナトリウム、塩化ナトリウム及び水酸化ナトリウムは、EMDサイエンス(EMD Science、米国、ニュージャージー州、ギブスタウン)からのものである。エデト酸二ナトリウム、トリフルオロ酢酸(TFA)及び、水は、ジェイ・ティー・べーカー(J. T. Baker、米国、ニュージャージー州、フィリップスバーグ)から購入した。1.0モルの塩酸(HCl)を、ヴィー・ダブリュ・アール(VWR、カナダ、ケベック州、モントリオール)から入手した。質量分析用の水を、アナケミア(Anachemia、カナダ、ケベック州、ラシーヌ)から購入した。蟻酸を、リーデル・ド・ヘーン(Riedel de Haen、カナダ、オンタリオ州、オークビル)から購入した。アセトニトリルは、フィッシャー・サイエンティフィック(Fisher Scientific、カナダ、オンタリオ州、ネピアン)からのものである。全ての化学薬品は、それ以上精製せずに用いた。
酢酸ヘキサデシルピリジニウムを、塩化ヘキサデシルピリジニウムから調製した。塩化ヘキサデシルピリジニウムを、メタノールに溶解させ、酢酸及び酢酸ナトリウムを加えた。溶剤を蒸発させた後、残留物を塩化メチレンに溶解させた。酢酸ヘキサデシルピリジニウムが塩化メチレンに可溶であるのに対し、塩化ナトリウムは、析出し、濾過によって取り除かれた。溶剤を蒸発させ、硝酸銀溶液を生成物に添加した時に、析出物が生成されなかったので塩化物イオンが存在しないことが確認された。
二ピバル酸(S)-イソプロテレノール塩酸塩[(S)-isoproterenol dipivalate hydrochloride]の純度を、ウォーターズ(Waters)の分析高速液体クロマトグラフィー(HPCL)システム(600-MSコントローラ、600Eポンプ、717自動サンプラ、996フォトダイオードアレイ検出器)によって、検査した。重酒石酸(S)-イソプロテレノール及び二ピバル酸(S)-イソプロテレノール塩酸塩の光学純度を、他のウォーターズの高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システム(600コントローラ、600Eポンプ、717自動サンプラ、d2996フォトダイオードアレイ検出器)を用いて、検査した。高速置換クロマトグラフィー(HPDC)も、後者のシステムを用いて実施した。NMRスペクトルを、ブルカー・アバンス(Bruker Avance)の500メガヘルツNMRによって測定した。高解像度質量スペクトル(high-resolution mass spectra)を、ナノロックスプレー(NanoLockspray)(対照化合物としての[Glu1]-フィブリノペプチドB)を用いて、マイクロマス・ウォーターズ(Micromass Waters)のQ-Tof Ultima(商標)GLOVAL質量分析計(カナダ、オンタリオ州、ミシサーガ)によって測定した。
糖尿病性白内障に対する(S)-イソプロテレノールの効果を調査するため、ラットモデルを用いた。この調査においては、ストレプトゾトシンを注射して、膵臓のβ細胞を破壊することによって糖尿病を誘発させた。このモデルは、糖尿病に関連する病理学的現象及びそれらの可能な治療を研究するのに広く用いられている(Dagher他、2004年;Ben-nun他、2004年;Chung他、2005年)。ラットモデルは、対照の糖尿病ラットの大半において8〜9週間と早く初期白内障が観察されたように、糖尿病性白内障が早く発現するという利点を有している。二ヶ月齢の雄のSDラット(Sprague-Dawley rats)を、カナダのチャールズ・リバー(Charles River)から購入した。それらのラットは、バイオテクノロジー・リサーチ・インスティテュート(Biotechnology Research Institure:BRI)の動物施設に収容された。収容及び全ての実験操作は、カナディアン・カウンシル・オブ・アニマル・ケア(Canadian Council of Animal Care)のガイドラインのもとで機能するBRIアニマル・ケア・コミッティー(BRI Animal Care Committee)によって承認された。
二ピバル酸(S)-イソプロテレノール塩酸塩を、重酒石酸(S)-イソプロテレノールから合成した。塩化ピバロイル(塩化トリメチルアセチル)(4.1 mmol、500 ml)を、重酒石酸(S)-イソプロテレノール(1.0 mmol、361.3 mg)が50%1M水酸化ナトリウムの水/アセトン(5.5 ml、5.5 ml)に溶解した溶液に添加した。この混合物を、室温で1時間放置して反応させた。この溶液を、1.0規定の塩酸を用いてpH3〜5まで酸性化させた。n-ヘキサン[フィッシャー(Fisher)、カナダ、オンタリオ州、ネピアン]で洗浄した後、溶液をCH2Cl2で抽出した。有機層を10%炭酸ナトリウム(Na2CO3)水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下に濃縮した。残留物を、高速置換クロマトグラフィー(カラム;Shiseido Capcell PAK C18 AQ 5μm、250x4.6mm、4.0 mg/mLの酢酸ヘキサデシルピリジニウム及び0.1%酢酸水溶液、流量;1.0 mL/分)によって精製した。生成物を、4.0 mg/mlの酢酸ヘキサデシルピリジニウム及び0.1%酢酸水溶液、によって溶離した。0.1規定の塩酸を用いた塩交換(salt exchange)及び親油性化をした後、二ピバル酸(S)-イソプロテレノール塩酸塩が、32±4%の収率及び以下に述べる不純物の定量(quantitation)に基づき97.2±0.7%の純度で、得られた。
1H NMR (500 MHz, CD3OD)δ7.33 (dd, 1H, J=7.2, 1.9 Hz, Bz-6), 7.24 (d, 1H, J=1.9 Hz, Bz-2), 7.15 (d, 1H, J=7.2 Hz, Bz-5), 4.96 (dd, 1H, J=9.9, 3.1 Hz, CHOH-CH2-NH2), 3.40 (m, 1H, i-Pr(CH)), 3.18 (dd, 1H, J=12.3, 3.1 Hz, CHOH-CH 2 -NH2), 3.07 (dd, 1H, J=12.62, 9.9 Hz, CHOH-CH 2 -NH2), 1.32 (d, 6H, J=7.0 Hz, i-Pr(CH3)), 1.30 (s, 9H, t-Bu), 1.29 (s, 9H, t-Bu).
二ピバル酸(S)-イソプロテレノールの高解像度エレクトロスプレーイオン化質量分析(high resolution electrospray ionization mass spectroscopy)、[MH]+ 計算(calc.)= 380.2473及び[MH]+ 観察(obs.) = 380.2426.
二ピバル酸(S)-イソプロテレノールの細胞毒性を、PC12細胞を用いて測定した。PC12細胞(ATCC-CRL-1721)を、完全培地(10%の加熱培養した(heat-incuvated)ウマの血清(Gibco)、5%の子ウシの血清(Hyclone)、及び1Xペニシリン/ストレプトマイシン溶液(Multicell)を補給したRPMI 1640培地)で育成し、5%のCO2を含む加湿した雰囲気中で37℃に維持した。PC12細胞を、ラットの尾のコラーゲンで被覆した96ウェルプレートに、2x104細胞/ウェルの密度で接種し、1日培養した。実験の日に、100μM〜10mMの範囲の二ピバル酸(S)-イソプロテレノールの希釈物を、完全培地において、調製した。培地を吸引し、異なる培養時間(5分〜2時間)に関し、細胞に治療を施した(各培養時間に関して、三つの別のサンプルを治療、即ち、各培養時間に関しての治療を三回行った)。培養時間の終わりに、培地を吸引し、100μLのMTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウム;完全培地中0.2mg/ml)の溶液を、細胞に加えた。37℃で2時間培養した後、MTTを除去し、着色したホルマザンを、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させた(37℃で1/2時間)。減少(reduction)を、青色の不溶なホルマザン生成物の比色検出(595nm)によって、測定した。この検定は、細胞中に存在する機能性ミトコンドリア(functioning mitochondria)の数の推定値をもたらす。即ち、ホルマザン生成物の量が、培養物中の代謝的に活性な細胞の数と正比例する。各ウェルにおけるPC12細胞の生存度(viability)は、対照細胞のパーセンテージとして示した。
二ピバル酸(S)-イソプロテレノールの細胞毒性を、ヒトの角膜上皮細胞(HCEC細胞、Cascade Biologics)を用いて、測定した。HCEC細胞を、ヒト角膜成長サプリメント(HCGS; Cascade Biologics)を補給したエピライフ(EpiLife)培地で育成させた。細胞を、5%のCO2を含む加湿した雰囲気中で37℃に維持し、培地を一日おきに交換した。HCEC細胞を、96ウェルプレートに、約103細胞/ウェルの密度で接種し、一日培養した。実験の日に、250μM〜25mMの範囲の二ピバル酸(S)-イソプロテレノールの希釈物を、エピライフ(EpiLife)培地において、調製した。培地を吸引し、異なる培養時間(5分〜2時間及び24時間)に関し、細胞に治療を施した(各培養時間に関して、三つの別のサンプルを治療、即ち、各培養時間に関しての治療を三回行った) 。培養時間の終わりに、細胞の生残を顕微鏡で目視検査した。
約1300の薬品又は薬品候補の抗グリケーション活性を審査するため、メイラード蛍光ベースアッセイを用いた。実験条件の詳細は、Yeboah他によって記載されている(2002年)。簡単に言えば、このアッセイは、D-リボース(50mM)及びアッセイ化合物(0.47、4.7及び47 μg/mL)を用いたウシ血清アルブミン(BSA)(0.075mM)の培養を含むものである。溶液を、37℃で5日間培養した。ポジティブコントロール、即ち、メイラード蛍光発生を100%阻止(370nm励起波長及び440nm発光波長)は、BSAのみを含む溶液からなっていた。ネガティブコントロール、即ち、メイラード蛍光発生を阻止せず、はBSAとD-リボースを含む溶液からなっていた。強い蛍光を有する又はメイラード蛍光の蛍光消光を示すアッセイ化合物は、このアッセイから除外した。
WatersのSymmetryShield(商標)カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(50x4.6mm;3.5μm;水-アセトニトリル線状勾配(7分間で0-80%);流量、2.0mL/分)によって、二つの不純物が二ピバル酸(S)-イソプロテレノール塩酸塩に検出された。水とアセトニトリルの何れもが、0.1%のトリフルオロ酢酸(TFA)を含んでいた。それらの不純物は、それらの高解像度質量分析(high resolution MS)、即ち、[MH]+ 観察(obs.) = 296.1861であるのに対し、[MH]+ 計算(calc.) = 296.1862、に基づいて一ピバル酸(S)-イソプロテレノール塩酸塩であると同定された。それらは、264nmにおけるそれらの吸収に基づいて0.35±0.19%及び0.48±0.22%と定量された。これら二つの一ピバル酸塩不純物は、ゆっくりと相互変換され別々には分析することができなかった(Wall他、1992年)。
重酒石酸(S)-イソプロテレノール及び二ピバル酸(S)-イソプロテレノール塩酸塩の光学異性体は、ShiseidoのキラルCD-Phカラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(250x4.6 mm;5μm;0.5M過塩素酸ナトリウム/水及びアセトニトリルの定組成60:40;流量1.0 mL/分)によって分離された。溶出プロファイルを、重酒石酸イソプロテレノールに関しては223nmにおける吸収、二ピバル酸イソプロテレノール塩酸塩に関しては264nmにおける吸収によって、観察した。光学不純物(optical impurities)を、曲線当てはめソフトウェア(curve fitting software)TABLECurve2D (Systat)を用いることにより、重酒石酸イソプロテレノールに関しては223nmにおける吸光度、二ピバル酸イソプロテレノール塩酸塩に関しては264nmにおける吸光度により、定量した。重酒石酸(R)-イソプロテレノール及び二ピバル酸(R)-イソプロテレノール塩酸塩である不純物は、それぞれ、2.0±0.3%及び3.3±0.2%と推定された。したがって、合成及び精製の間に誘発されたラセミ化は、生じたとしても、最小限であった。
アドレナリンの他の利点は、製剤である。即ち、市販の点眼薬ジピベフリンは、(R,S)-エピネフリンのプロドラッグである。ジピベフリンは、エピネフリンよりも親油性であるが、それでも水溶性であり、点眼薬溶液において安定であり、角膜を通過する時に、エピネフリンを放出し、保護基の切断型であるピバル酸は、多量の経口投与においてさえも安全の大きなゆとりを有する。ジピベフリンは、エピネフリンよりも17倍も眼内吸収が良く、用量及び起こりうる副作用を減少させることができる(Mandell & Stentz、1978年)。同様の製剤のプロドラッグが、上首尾にイソプロテレノールに応用された(Hussain & Truelove、1975年)。そのようなわけで、ラットモデルを用いて、製剤された二ピバル酸(S)-イソプロテレノール塩酸塩の白内障に対する効果を調べた。
点眼薬の有効成分は、0.10%(w/v)の二ピバル酸(S)-イソプロテレノール塩酸塩であり、非活性成分は、1.84%(w/v)のD-マンニトール、0.005%(w/v)のエデト酸二ナトリウム、0.10%(w/v)のクロロブタノール、0.16%(w/v)の□-アミノカプロン酸、0.5%(w/v)の塩化ナトリウム、0.003%(w/v)の塩化ベンザルコニウム、及び0.20%(w/v)のポビドンである。点眼薬のpHを、1規定の塩酸で5.5に調整した。対照の点眼薬は、同じ非活性成分を有しているが、有効成分がない。点眼薬は、毎月新たに作り、4℃で保存した。4℃で1ヶ月間保存した後、有効成分及び非活性成分の劣化は、それらの高速液体クロマトグラフィー(HPLC)プロファイルに基づいて、検出されなかった。点眼薬一滴の大きさは、50μLであった。
体重約200g〜250gの雄のSDラット(Sprague-Dawley rats)に、β細胞毒(beta-cell toxin)であるストレプトゾトシン(STZ)(Sigma、米国、ミズーリ州、セントルイス)を、pH4.5のクエン酸塩緩衝液において60mg/kg(体重)の用量で、一回腹腔内注射をすることにより糖尿病を誘発させた。糖尿病でない対照ラットは、クエン酸塩緩衝液のみを投与された。
糖尿病の誘発の一週間後、尾静脈から採取した血液における血糖値を、血糖監視システム(Ascensia ELITE Blood Glucose Meter、Bayer Inc、カナダ、オンタリオ州、トロント)を用いて測定した。血糖測定器の検出限界が、33mMであったので、それより上の全ての値は、最大値である35mMを割り当てた。15mMよりも高い血糖値を有する動物のみ、研究に残した。そこで、動物を4つのグループ:グループI(20匹、n=20):ビヒクルを投与された糖尿病でないラット、グループII(20匹、n=20):二ピバル酸(S)-イソプロテレノールを含む点眼薬を投与された糖尿病でないラット、グループIII(20匹、n=20):ビヒクルを投与された糖尿病のラット、グループIV(20匹、n=20):二ピバル酸(S)-イソプロテレノールを含む点眼薬を投与された糖尿病のラット、のうちの一つに割り当てた。
点眼薬又はビヒクルを、一日に二度、一週間に七日、二つの治療の間に7時間の最短間隔をもうけて、いろいろなグループのラットの角膜に投与した。体重増加を促進し、高血糖を抑えるため、2 IUウルトラレンテインスリン(Humulin、Eli Lily、カナダ、オンタリオ州、トロント)を、一週間に三回皮下注射した。動物の体重は、毎週観察した。
白内障の進行を、一週間に二度、目視検査により監視した。白内障の重度を評価するため、採点システムを考案した。健康な目には、0のスコア(正常なレベル)を与えた。淡いピンクがかった色合いが認められた場合には(レベル1)、白内障の発達は、目視で認められるその最も初期の段階であり、この段階には、1のスコアを与えた。白い膜がはっきりと認められた場合には(レベル2)、2のスコアが割り当てられた。膜が目の全体を覆っているが、瞳孔はまだ見える場合には(レベル3)、3のスコアが割り当てられ、最後に、白い膜が形成されたことにより瞳孔が認められない場合には(レベル4)、白内障は、最も重篤であると考えられた(4のスコア)。
Figure 2009531334
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血糖値:この図は、実験の期間を通じての平均血糖値を示している。血糖値は、ビヒクル(A)又はプロドラッグ(B)を投与された正常なラット(塗りつぶした菱形)及び糖尿病のラット(塗りつぶした正方形)に関して、尾静脈穿刺により血糖計を用いて週毎に測定した。 体重:この図は、実験の期間を通じての平均体重を示している。ビヒクル(A)又はプロドラッグ(B)を投与された正常なラット(塗りつぶした菱形)及び糖尿病のラット(塗りつぶした正方形)を、週毎に体重測定した。 白内障の進行:この図は、白内障の重度を分類するのに用いられた4つの段階の典型である白内障を患う目の写真を示している。レベル0は、正常な目である。淡いピンクの色合いがレベル1の特徴である。はっきりと認められる白い膜が、レベル2と定義される。目の中のはっきりとした白い膜であるが、まだ瞳孔を見ることができる膜が、レベル3と定義される。白内障の最も重度の形態が(レベル4)、全表面を濃密な白い膜で覆い、瞳を見つけるのを妨げる。 糖尿病ラットの目における白内障の発症に対する(S)-イソプロテレノールの効果:糖尿病ラットの目を、プロドラッグ(34匹、n=34)(塗りつぶした丸)又はビヒクル(26匹、n=26)(塗りつぶした三角形)で、一日二回、30週間まで、局所的に治療した。非白内障水晶体(レベル0)のパーセンテージを、30週間の期間にわたってプロットした。 PC-12細胞における二ピバル酸(S)-イソプロテレノールの細胞毒性:細胞を5分〜24時間培養した後、細胞の生き残りの量を計るためのMTTアッセイを行った。 抗グリケーション活性が知られている薬剤又は薬剤候補 図7、我々のスクリーニング検定において発見されるまで、抗グリケーション活性が報告されていなかった薬剤又は薬剤候補

Claims (55)

  1. 糖尿病性白内障の発症を予防する又は遅らせるための、式(I)の化合物
    式(I)
    Figure 2009531334
    式中、
    Xは、NR7を表し、ここでR7は、水素原子或いは線状、分岐状若しくは環状のC1-10脂肪酸又はC6-10芳香族酸に由来するアシル基を表す、
    R1は、水素原子、NH2、又はC6-10芳香族基で置換されていてもよい線状、分岐状若しくは環状のC1-10アルキルを表す、
    R2は、水素原子、線状、分岐状若しくは環状のC1-10アルキル、又はCOOH基を表す、
    R’2は、水素原子又は線状、分岐状若しくは環状のC1-10アルキル基を表す、
    R3は、水素原子、=O、OR8、SR8、又はNR8R9を表し、ここでR8及びR9は、水素原子、線状、分岐状若しくは環状のC1-10アルキル、或いは線状、分岐状若しくは環状のC1-10脂肪酸又はC6-10芳香族酸に由来するアシル基を表す、但し、R8及びR9は、両方ともがアシル基ということはない、
    R4及びR5は、各々独立にOH、NH2、又はSHを表す、
    R6は、水素原子、F、Cl、Br、I、OR10又はSR10を表し、ここでR10は、水素或いは線状、分岐状若しくは環状のC1-10脂肪酸又はC6-10芳香族酸に由来するアシル基を表し、R6は、一つより多く存在していてもよく、互いに同じでも異なっていてもよい;これらの化合物の、生理学的に許容される塩、プロドラッグ、生理学的に機能性の誘導体又は混合物の用途。
  2. Xが、NHである請求項1に記載の用途。
  3. R1が、-CH(CH3)2である請求項2に記載の用途。
  4. R2が、Hである請求項3に記載の用途。
  5. R’2が、Hである請求項4に記載の用途。
  6. R3が、OHである請求項5に記載の用途。
  7. 化合物が、S-立体配置を有し、この化合物におけるR-異性体の混入が、R-異性体の望ましくないアドレナリン作用及び他の副作用を減少させるのに十分な3重量%未満である請求項6に記載の用途。
  8. R6が、Hであり、R4及びR5が、どちらもOHである請求項7に記載の用途。
  9. 化合物が、α-(1-メチル-3-フェニル-プロピルアミノ)-3,4-ジヒドロキシアセトフェノン、3,4-ジヒドロキシ-1-[α-(1-メチル-3-フェニル-プロピルアミノ)-β-ヒドロキシエチル]ベンゼン、3,4-ジヒドロキシ-1-[(α-イソプロピルアミノ-β-メトキシ)エチル]ベンゼン、3,4-ジヒドロキシ-1-[(α-メチルアミノ-β-メトキシ)エチル]ベンゼン、イソエタリン、(S)-イソプロテレノール、(S)-カルビドパ又はコルバドリンである請求項1に記載の用途。
  10. 化合物が、プロドラッグ又は生理学的に機能性の誘導体である請求項1に記載の用途。
  11. プロドラッグが、線状、分岐状若しくは環状のC1-10脂肪酸又はC6-10の芳香族酸に由来の少なくとも一つのアシル基を有している請求項10に記載の用途。
  12. アシル基が、X、R3、R4、R5又はR6の少なくとも一つをアシル化する請求項11に記載の用途。
  13. アシル基が、ピバロイルである請求項12に記載の用途。
  14. XがNH、R1がイソプロピル、R3がヒドロキシ、R2、R’2及びR6が水素、R4及びR5がピバロイル化されたヒドロキシ基であり、化合物がS-立体配置を有している請求項13の用途。
  15. 糖尿病性白内障の発症を予防する又は遅らせるための、式(II)のプロドラッグ:

    (式(II))
    Figure 2009531334

    式中、
    Xは、NR7を表し、ここでR7は、水素原子或いは線状、分岐状若しくは環状のC1-10脂肪酸又はC6-10芳香族酸に由来するアシル基を表す、
    R1は、水素原子、NH2、又はC6-10芳香族基で置換されていてもよい線状、分岐状若しくは環状のC1-10アルキルを表す、
    R2は、水素原子、線状、分岐状若しくは環状のC1-10アルキル、又はCOOH基を表す、
    R’2は、水素原子又は線状、分岐状若しくは環状のC1-10アルキル基を表す、
    R3は、水素原子、=O、OR8、SR8、又はNR8R9を表し、ここでR8及びR9は、水素原子、線状、分岐状若しくは環状のC1-10アルキル、或いは線状、分岐状若しくは環状のC1-10脂肪酸又はC6-10芳香族酸に由来するアシル基を表す、但し、R8及びR9は、両方ともがアシル基ということはない、
    R4及びR5は、各々独立に-O-、-NH-、又は-S-を表す、
    R6は、水素原子、F、Cl、Br、I、OR10又はSR10を表し、ここでR10は、水素原子或いは線状、分岐状若しくは環状のC1-10脂肪酸又はC6-10芳香族酸に由来するアシル基を表し、R6は、一つより多く存在していてもよく、互いに同じでも異なっていてもよい、
    Y1及びY2は、それぞれ、R5及びR4の保護基であり、式III、式IV、又は式Vを表し、ここで、R11及びR12は、水素原子、又は一以上のC6-10芳香族基で置換されていてもよい線状、分岐状若しくは環状のC1-10アルキル基を表す;これらの生理学的に許容される塩、生理学的に機能性の誘導体又は混合物の用途。
    (式III)
    Figure 2009531334
    (式IV)
    Figure 2009531334
    (式V)
    Figure 2009531334
  16. 薬剤が、目の病変の発症を予防する又は遅らせるためのものである請求項15に記載の用途。
  17. Xが、NHである請求項16に記載の用途。
  18. R1が、-CH(CH3)2である請求項17に記載の用途。
  19. R2が、Hである請求項18に記載の用途。
  20. R’2が、Hである請求項19に記載の用途。
  21. R3が、OHである請求項20に記載の用途。
  22. 化合物が、S-立体配置を有し、この化合物におけるR-異性体の混入が、R-異性体の望ましくないアドレナリン作用及び他の副作用を減少させるのに十分な3重量%未満である請求項21に記載の用途。
  23. R6が、Hであり、R4及びR5が、どちらも-O-である請求項22に記載の用途。
  24. Y1及びY2が、両方ともピバロイルである請求項23に記載の用途。
  25. 化合物が、α-(1-メチル-3-フェニル-プロピルアミノ)-3,4-ジヒドロキシアセトフェノン、3,4-ジヒドロキシ-1-[α-(1-メチル-3-フェニル-プロピルアミノ)-β-ヒドロキシエチル]ベンゼン、3,4-ジヒドロキシ-1-[(α-イソプロピルアミノ-β-メトキシ)エチル]ベンゼン、3,4-ジヒドロキシ-1-[(α-メチルアミノ-β-メトキシ)エチル]ベンゼン、イソエタリン、(S)-イソプロテレノール、(S)-カルビドパ又はコルバドリンである請求項16に記載の用途。
  26. 化合物が、式(II)のプロドラッグ又は生理学的に機能性の誘導体である請求項15に記載の用途。
  27. プロドラッグが、線状若しくは分岐状のC1-10脂肪酸又はC6-10の芳香族酸に由来の少なくとも一つのアシル基を有している請求項26に記載の用途。
  28. アシル基が、X、R3、R4、R5又はR6の少なくとも一つをアシル化する請求項27に記載の用途。
  29. アシル基が、ピバロイルである請求項28に記載の用途。
  30. XがNH、R1がイソプロピル、R3がヒドロキシ、R2、R’2及びR6が水素、R4及びR5がヒドロキシ基、Y1及びY2がピバロイル基であり、化合物がS-立体配置を有している請求項29の用途。
  31. 薬剤が、局所的な目への投与に適した形態である請求項15に記載の用途。
  32. 薬剤が、点眼薬の形態である請求項31に記載の用途。
  33. 糖尿病性白内障の発症を予防する又は遅らせるための、局所用眼科組成物であって、薬学的に許容可能な希釈剤又はキャリヤーと、
    一以上の、式(II)の化合物:
    (式(II))
    Figure 2009531334

    式中、
    Xは、NR7を表し、ここでR7は、水素原子或いは線状、分岐状若しくは環状のC1-10脂肪酸又はC6-10芳香族酸に由来するアシル基を表す、
    R1は、水素原子、NH2、又はC6-10芳香族基で置換されていてもよい線状、分岐状若しくは環状のC1-10アルキルを表す、
    R2は、水素原子、線状、分岐状若しくは環状のC1-10アルキル、又はCOOH基を表す、
    R’2は、水素原子又は線状、分岐状若しくは環状のC1-10アルキル基を表す、
    R3は、水素原子、=O、OR8、SR8、又はNR8R9を表し、ここでR8及びR9は、水素原子、線状、分岐状若しくは環状のC1-10アルキル、或いは線状、分岐状若しくは環状のC1-10脂肪酸又はC6-10芳香族酸に由来するアシル基を表す、但し、R8及びR9は、両方ともがアシル基ということはない、
    R4及びR5は、各々独立に-O-、-NH-、又は-S-を表す、
    R6は、水素原子、F、Cl、Br、I、OR10又はSR10を表し、ここでR10は、水素原子或いは線状、分岐状若しくは環状のC1-10脂肪酸又はC6-10芳香族酸に由来するアシル基を表し、R6は、一つより多く存在していてもよく、互いに同じでも異なっていてもよい、
    Y1及びY2は、それぞれ、R5及びR4の保護基であり、式III、式IV、又は式Vを表し、ここで、R11及びR12は、水素原子、又は一以上のC6-10芳香族基で置換されていてもよい線状、分岐状若しくは環状のC1-10アルキル基を表す;これらの化合物の、生理学的に許容される塩、生理学的に機能性の誘導体又は混合物とを、含む組成物。
    (式III)
    Figure 2009531334
    (式IV)
    Figure 2009531334
    (式V)
    Figure 2009531334
  34. Xが、NHである請求項33に記載の組成物。
  35. R1が、-CH(CH3)2である請求項34に記載の組成物。
  36. R2が、Hである請求項35に記載の組成物。
  37. R’2が、Hである請求項36に記載の組成物。
  38. R3が、OHである請求項37に記載の組成物。
  39. 化合物が、S-立体配置を有し、この化合物におけるR-異性体の混入が、R-異性体の望ましくないアドレナリン作用及び他の副作用を減少させるのに十分な3重量%未満である請求項38に記載の組成物。
  40. R6が、Hであり、R4及びR5が、どちらも-O-である請求項39に記載の組成物。
  41. Y1及びY2が、両方ともピバロイルである請求項40に記載の組成物。
  42. 化合物が、α-(1-メチル-3-フェニル-プロピルアミノ)-3,4-ジヒドロキシアセトフェノン、3,4-ジヒドロキシ-1-[α-(1-メチル-3-フェニル-プロピルアミノ)-β-ヒドロキシエチル]ベンゼン、3,4-ジヒドロキシ-1-[(α-イソプロピルアミノ-β-メトキシ)エチル]ベンゼン、3,4-ジヒドロキシ-1-[(α-メチルアミノ-β-メトキシ)エチル]ベンゼン、イソエタリン、(S)-イソプロテレノール、(S)-カルビドパ又はコルバドリンである請求項33に記載の組成物。
  43. 化合物が、プロドラッグ又は生理学的に機能性の誘導体である請求項33に記載の組成物。
  44. プロドラッグが、線状、分岐状若しくは環状のC1-10脂肪酸又はC6-10の芳香族酸に由来の少なくとも一つのアシル基を有している請求項43に記載の組成物。
  45. アシル基が、X、R3、R4、R5又はR6の少なくとも一つをアシル化する請求項44に記載の組成物。
  46. アシル基が、ピバロイルである請求項45に記載の組成物。
  47. XがNH、R1がイソプロピル、R3がヒドロキシ、R2、R’2及びR6が水素、R4及びR5がヒドロキシ基、Y1及びY2がピバロイル基であり、化合物がS-立体配置を有している請求項46の組成物。
  48. 異性的に97〜98重量%純粋な、二ピバル酸(S)-イソプロテレノール。
  49. 患者の白内障の治療に用いるための薬剤の調製における、薬学的に有効量の(S)-イソプロテレノール、そのプロドラッグ又は塩の用途。
  50. 患者の白内障の治療に用いるための、薬学的に有効量の(S)-イソプロテレノール、そのプロドラッグ又は塩の用途。
  51. 患者の白内障の治療に用いるための、薬学的に有効量の請求項1〜14の何れか一つにおいて定義される式(I)の化合物、そのプロドラッグ又は塩を、取扱説明書とともに含むコマーシャル・パッケージ。
  52. 患者の白内障の治療方法であって、薬学的に有効量の請求項1〜14の何れか一つにおいて定義される式(I)の化合物、そのプロドラッグ又は塩の溶液を、前記患者の目に施薬することを含む方法。
  53. 前記プロドラッグが、二ピバル酸(S)-イソプロテレノール、そのプロドラッグ又は塩である請求項52に記載の方法。
  54. 前記(S)-イソプロテレノール、そのプロドラッグ又は塩が、前記溶液の0.01%〜10%w/vを構成する請求項53に記載の方法。
  55. 前記(S)-イソプロテレノール、そのプロドラッグ又は塩が、単位用量の形態であり、前記用量が、5〜200μLである請求項52に記載の方法。
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