JP2005515784A - Podに関連した細胞活性を調節するためのアデノウイルスベクター - Google Patents
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Abstract
本発明は、宿主細胞中のPOD核構造に依存する1種類以上の細胞活性をアデノウイルス由来の分子の作用によって調節する方法であって、アデノウイルス由来の分子がPOD核構造の細胞機能と相互作用しうることを特徴とする方法に関する。第一の態様では、本発明は、宿主細胞に上記アデノウイルス分子を導入することによって1種類以上のPOD依存性の細胞活性を減少させるかまたは阻害することを目的とした、方法、複製欠損アデノウイルスベクター、および組成物を提供する。本発明はまた、このような複製欠損アデノウイルスベクターまたは分子を用いて抗ウイルスアポトーシス細胞活性を減少させるかまたは阻害すること、並びに複製欠損アデノウイルスベクターによって誘導された毒性を減少させまたは上記複製欠損アデノウイルスベクターによって行われるトランスジーン発現を高めることにも関する。第二の態様では、本発明は、非機能性であるかまたは欠失している天然のpIXまたはE4orf3遺伝子を有する複製コンピテントアデノウイルスベクター、並びにこのような複製コンピテントアデノウイルスベクターを含んでなるウイルス粒子、宿主細胞および組成物、およびこのような複製コンピテントアデノウイルスベクターを用いる治療方法を提供する。本発明はまた、このような複製コンピテントアデノウイルスベクターを用いて宿主細胞でのアポトーシスを高める方法にも関する。
Description
発明の分野
本発明は、宿主細胞中のPOD核構造に依存する1種類以上の細胞活性をアデノウイルス由来の分子の作用によって調節する方法であって、アデノウイルス由来の分子がPOD核構造の細胞機能と相互作用することができることを特徴とする方法に関する。第一の態様では、本発明は、宿主細胞にアデノウイルス分子を導入することによって1種類以上のPOD依存性の細胞活性を減少させるかまたは阻害することを目的とした、方法、複製欠損アデノウイルスベクター、および組成物を提供する。本発明はまた、このような複製欠損アデノウイルスベクターまたは分子を用いて抗ウイルス活性または細胞アポトーシス活性を減少させるかまたは阻害すること、並びに複製欠損アデノウイルスベクターによって誘導された毒性を減少させるかまたは複製欠損アデノウイルスベクターによって行われるトランスジーン発現を高めることにも関する。第二の態様では、本発明は、非機能性であるかまたは欠失している天然のpIXまたはE4orf3遺伝子を有する複製コンピテントアデノウイルスベクター、並びにこのような複製コンピテントアデノウイルスベクターを含んでなるウイルス粒子、宿主細胞および組成物、およびこのような複製コンピテントアデノウイルスベクターを用いる治療方法を提供する。本発明はまた、このような複製コンピテントアデノウイルスベクターを用いて宿主細胞でのアポトーシスを高める方法にも関する。本発明は、遺伝子療法においてアデノウイルス遺伝子療法ベクターの治療効果を高めるのに特に有用である。
本発明は、宿主細胞中のPOD核構造に依存する1種類以上の細胞活性をアデノウイルス由来の分子の作用によって調節する方法であって、アデノウイルス由来の分子がPOD核構造の細胞機能と相互作用することができることを特徴とする方法に関する。第一の態様では、本発明は、宿主細胞にアデノウイルス分子を導入することによって1種類以上のPOD依存性の細胞活性を減少させるかまたは阻害することを目的とした、方法、複製欠損アデノウイルスベクター、および組成物を提供する。本発明はまた、このような複製欠損アデノウイルスベクターまたは分子を用いて抗ウイルス活性または細胞アポトーシス活性を減少させるかまたは阻害すること、並びに複製欠損アデノウイルスベクターによって誘導された毒性を減少させるかまたは複製欠損アデノウイルスベクターによって行われるトランスジーン発現を高めることにも関する。第二の態様では、本発明は、非機能性であるかまたは欠失している天然のpIXまたはE4orf3遺伝子を有する複製コンピテントアデノウイルスベクター、並びにこのような複製コンピテントアデノウイルスベクターを含んでなるウイルス粒子、宿主細胞および組成物、およびこのような複製コンピテントアデノウイルスベクターを用いる治療方法を提供する。本発明はまた、このような複製コンピテントアデノウイルスベクターを用いて宿主細胞でのアポトーシスを高める方法にも関する。本発明は、遺伝子療法においてアデノウイルス遺伝子療法ベクターの治療効果を高めるのに特に有用である。
背景技術
遺伝子療法は、細胞または生体への遺伝子材料の導入と定義することができる。遺伝子療法によるヒト疾患の治療の可能性は、過去数年で理論的考察段階から臨床応用の段階へと変化してきた。ヒトに応用されたプロトコールは、1990年9月にアメリカ合衆国でアデニンデアミナーゼ(ADA)欠損の患者について開始された。この最初の有望な実験に続いて多くの新たな応用が行われてきており、遺伝子療法に基づく有望な臨床試験が現在進行中である(例えば、http://cnetdb.nci.nih.gov/trialsrch.shtmlまたはhttp://www.wiley.co.uk/genetherapy/clinical/に記載の臨床試験を参照されたい)。現在のプロトコールの大半は、治療を行う細胞に治療遺伝子を運ぶベクターを用いている。
遺伝子療法は、細胞または生体への遺伝子材料の導入と定義することができる。遺伝子療法によるヒト疾患の治療の可能性は、過去数年で理論的考察段階から臨床応用の段階へと変化してきた。ヒトに応用されたプロトコールは、1990年9月にアメリカ合衆国でアデニンデアミナーゼ(ADA)欠損の患者について開始された。この最初の有望な実験に続いて多くの新たな応用が行われてきており、遺伝子療法に基づく有望な臨床試験が現在進行中である(例えば、http://cnetdb.nci.nih.gov/trialsrch.shtmlまたはhttp://www.wiley.co.uk/genetherapy/clinical/に記載の臨床試験を参照されたい)。現在のプロトコールの大半は、治療を行う細胞に治療遺伝子を運ぶベクターを用いている。
2種類の主要な遺伝子送達ベクターとして、ウイルスベクターおよび非ウイルスベクターがある。ウイルスベクターは天然に存在するウイルスに由来し、野生型ウイルスが細胞膜を通過し、リソソーム分解を免れ、そのゲノムを核に送達するために発現した様々な極めて精巧な機構を用いている。多くの様々なウイルスがベクターとして適合しているが、最も進歩したものはレトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス(AAV)である(Robbins et al., Trends Biotechnol. 16 (1998), 35-40; Miller, Human Gene Therapy 8 (1997), 803-815; Montain et al., Tibtech 18 (2000), 119-128)。ポックスウイルス(特に、ワクシニアウイルス)および単純ヘルペスウイルス(HSV)を主体とするウイルスベクターの開発にも、かなりの努力が払われ始めている。非ウイルス的方法としては、裸のDNA(すなわち、プラスミドDNA; Wolff et al., Science 247 (1990), 1465-1468)、カチオン性脂質と複合体形成したDNA(総説については、例えば、Rolland, Critical reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 15 (1998), 143-198を参照されたい)、およびカチオン性ポリマーと縮合したDNAを含んでなる粒子(Wagner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87 (1990), 3410-3414、およびGottschalk et al., Gene Ther. 3 (1996), 448-457)が挙げられる。開発の現段階では、ウイルスベクターは一般に最も効率的なトランスフェクションを行うが、それらの主要な欠点としてはそれらのクローニング能が限定されており、それらが免疫および炎症反応を誘発しやすく、それらの製造が困難なことが挙げられる。非ウイルスベクターでは、トランスフェクションは余り効率的ではないが、インサートの大きさには制限がなく、免疫原性は余り大きくなく、製造が容易である。
アデノウイルスは、多くの動物種で検出されており、非組込み的であり、病原性が低い。アデノウイルスは、様々な種類の細胞、分裂期並びに静止期の細胞に感染することができる。アデノウイルスは、気道上皮に自然親和性を有する。更に、アデノウイルスは、生の腸ワクチンとして長年用いられており、安全性の面でも優れている。最後に、アデノウイルスは、多量に増殖させ且つ精製することが容易である。これらの特徴により、アデノウイルスは治療およびワクチン目的の遺伝子療法ベクターとして用いるのに特に適している。
総てのアデノウイルスは、形態学的および構造的に類似している。これらのウイルスは、外部キャプシドと内部コアからなる、直径が60〜90nmの非エンベロープ型のない正二十面体である。キャプシドは、幾何学的に配置された252個のキャプソメアから構成されており、240個のヘキソンと、ファイバーが突出している12個のペントンベースを形成する。
それらのゲノムは、ウイルスサイクルを完結するのに必要な約30個を上回る遺伝子を有する約36kb(通常は100マップ単位(mu)に分割される)の線状の二本鎖DNA分子からなる。生産的なアデノウイルス感染の際には、3種類のウイルスウイルス遺伝子を下記の順序、すなわち初期(E)、中間および後期(L)の順序で一時的に発現させる。初期遺伝子は、アデノウイルスゲノムに散在する4つの領域に分割される(E1〜E4)。E1、E2およびE4領域はウイルス複製にとって本質的であり、一方E3領域はこれに関しては無くともよい。E1領域(E1AおよびE1B)は、ウイルスゲノムの転写の制御に関与するタンパク質をコードする。E2領域遺伝子(E2AおよびE2B)の発現により、ウイルス複製に必要なポリペプチドが合成される(Pettersson and Roberts著, 「癌細胞(第4巻)、DNA腫瘍ウイルス(Cancer Cells (Vol. 4), DNA Tumor Viruses)」(1986); Botchan and Glodzicker, Sharp監修, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y., 37-47)。E3領域によってコードされたタンパク質は、細胞傷害性T細胞および腫瘍壊死因子による細胞溶解を防止する(Wold and Gooding, Virology 184 (1991), 1-8)。E4領域によってコードされたE4タンパク質は、DNA複製、後期遺伝子発現およびスプライシング、および宿主細胞シャットオフに関与する(Halbert et al., J. Virol. 56 (1985), 250-257)。後期遺伝子(L1−L5)は初期転写単位と少なくとも部分的に重複し、その大部分はウイルスキャプシドを構成する構造タンパク質をコードする。後期遺伝子の産物は、主要後期プロモータープロモーター(MLP)によって行われた20kbの一次転写体のプロセシングの後に発現される。更に、アデノウイルスゲノムは、両端にDNA複製に本質的なシス作用領域であり、DNA複製の起点およびパッケージング配列を有するそれぞれ5’および3’ITR(逆方向末端反復配列)を有する。
アデノウイルス中間体Ad2またはAd5遺伝子IXの産物は、140個のアミノ酸残基のポリペプチド(pIX)であって、その発現がウイルス複製に依存しているものをコードする。更に、pIXは多機能特性を有する。pIXは、ヘキソン間の凝集を最適にすることによって安定性に寄与するウイルスキャプシドの構造成分であることが以前から知られていた(Furcinitti et al., EMBO J. 8 (1989), 3563-3570)。更に、これは、完全長のアデノウイルスゲノムのパッケージングに本質的なものである(Ghosh-Choudhury et al., EMBO J. 6 (1987), 1733)。pIXが幾つかのウイルスおよび細胞TATA含有プロモーターの転写アクチベーターであることも最近になって明らかにされた(Lutz et al., J. Virol. 71 (1997), 5102-5109)。最後に、感染細胞でpIXが産生されることによって、電子伝達に対する相対密度により透明不定形封入体(c.a.封入体)と呼ばれている特異的核構造が形成され(Rosa-Calatrava et al., J. Virol. 75 (2001), 7131-7141)、その機能は核の超微細構造のウイルスによって誘導される再編成に寄与している。
突然変異分析により、pIXタンパク質の機能的ドメインを正確に設定することができている。タンパク質の高度に保存されたN末端はキャプシドの構造特性に本質的であり、一方C末端ロイシンリピート(推定コイルドコイルドメイン)はトランス活性化機能に重要である。ロイシンリピートが完全であることは、pIX自身またはそのコイルドコイルドメインを介する特異的核成分とのマルチマー化によると思われるca封入体の形成および核保持に本質的であると思われる(Rosa-Calatrava et al., J. Virol. 75 (2001), 7131-7141)。
遺伝子療法プロトコールに現在用いられているアデノウイルスベクターは、E1領域を欠いている複製欠損ウイルスであり、環境および宿主生物でのそれらの伝播が回避される。更に、アデノウイルスベクターのほとんどはE3も欠失しており、そのクローニング能を増加させるようになっている。これらのベクターを用いる遺伝子導入の可能性は、イン・ビボでの様々な組織について明らかにされてきた(例えば、Yei et al., Hum. Gene Ther. 5 (1994), 731-744 ; Dai et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92 (1995), 1401-1405; Howell et al., Hum. Gene Ther. 9 (1998), 629-634; Nielsen et al , Hum. Gene Ther. 9 (1998), 681-694;米国特許第6,099,831号明細書;米国特許第6,013,638号明細書を参照されたい)。しかしながら、それらの使用は、多くの動物モデルにおける急性炎症および毒性(Yang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91 (1994), 4407-4411; Zsengeller et al., Hum. Gene Ther. 6 (1995), 457-467)、並びにウイルスベクターおよび遺伝子産物に対する宿主免疫反応(Yang et al., J. Virol. 69 (1995), 2004-2015)と関連しており、感染細胞の除去および一過性のみの遺伝子発現を生じる。
ほとんどのウイルスベクターに基づく遺伝子導入法の成功は、特に慢性および遺伝性疾患の治療を考慮したベクター依存性の毒性並びに効率的トランスジーン発現の非存在によって変化する。毒性の減少は、炎症反応の刺激に関与していると仮定されているウイルス抗原の残りの合成を完全に止める目的でウイルス遺伝子機能を欠失することによって試みられてきた(例えば、欧州特許第974 668号明細書、米国特許第5,670,488号明細書を参照されたい)。イン・ビボでのE1およびE4を欠失したアデノウイルスベクターを評価することによって、肝毒性および炎症は減少したが(Christ et al., Human Gene Ther. 11 (2000), 415-427)、トランスジーン残存率に関して矛盾する結果が得られた(Dedieu et al., J. Virol. 71 (1997), 4626-4637; Kaplan et al., Hum. Gene Ther. 8 (1997), 45-56; Armentano et al., J. Virol. 71 (1997), 2408-2416)。
POD(腫瘍形成ドメイン(PML Oncogenic Domains))またはND10またはPML核ドメインと呼ばれる特異的核構造は、核マトリックスと関連していることが分かった(総説については、例えば、Doucas and Evans, Biochem. Biophys. Acta 1288 (1996), M25-9; Hodges et al., Am. J. Hum. Genet. 63 (1998), 297-304を参照されたい)。それらの大きさおよび数は、細胞サイクルの種類および段階によって変化する。POD構造に関連した幾つかのタンパク質が同定されており、POD構造の形成体を構成するPML(前骨髄性白血病タンパク質)、SP100(スペックルド100kDa)、SUMO、並びに複製、転写、染色体モデリングまたはアポトーシスに関与する様々な細胞因子が挙げられる(Negorev and Maul, Oncogene 20 (2001), 7234-7242を参照されたい)。これらの観察に基づいて、PODの核構造は、細胞増殖(Everett et al., J. Cell. Sci. 112 (1999), 4581-4588)、分化(Wang et al., Science 279 (1998), 1547-1551)、およびアポトーシス(Quignon et al., Nat. Genet. 20 (1998), 259-265)などの様々な細胞過程の制御に関与していると考えられる。それらは、細胞の抗ウイルス過程にも関与していることが示されている(Chelbi-Alix et al., Leukemia 9 (1995), 2027-2033; Chelbi-Alix et al., J. Virol. 72 (1996), 1043-1051)。これに関して、幾つかの研究では、ウイルスゲノムのPODに対するターゲッティングおよびウイルス調節タンパク質によるPML含有核構造の崩壊が報告されている(例えば、Everett, Oncogene 20 (2001), 7266-7273を参照されたい)。一つの仮定は、数個のPODタンパク質成分が細胞インターフェロン経路と機能的に連結しているので、PODがウイルス遺伝子発現について抑制的な細胞コンパートメントを表していることである。これに基づいて、PODの崩壊は細胞の抗ウイルス反応を免れるためのウイルス依存性機構であってもよく、従ってウイルス遺伝子を効率的に発現させるための多くのウイルスの複製サイクルにおける必要な初期事象であると考えられてきた。
アデノウイルスに関しては、Ad2またはAd5ウイルス産物であるE4orf3が、感染の初期中にPOD由来のPMLタンパク質のウイルス「ファイバー様」構造への再分配を誘発し(Carvalho et al., J. Cell Biol. 131 (1995), 45-56; Doucas et al., Genes Dev. 10 (1996), 196-207)、これによりPOD崩壊を誘導することが示されている。しかしながら、これまでは、アデノウイルス分子とPOD核構造との相互作用が、毒性が少なく且つトランスジーン発現に関して一層効率的なアデノウイルスベクターを開発するための出発点となり得ることが従来技術で考えられることが見出されていなかった。
特に毒性、トランスジーン発現および抗原効果の流動性に関する遺伝子療法でのアデノウイルスベクターの使用に関連した上記の一般的な困難を考慮すれば、遺伝子療法ベクターの治療効果を向上させることが本発明の基礎となっている問題である。
この問題は、特許請求の範囲に記載の態様を準備することによって解決される。
従って、本発明は、宿主細胞中のPOD核構造に依存する1種類以上の細胞活性をアデノウイルス由来の分子の作用によって調節する方法であって、アデノウイルス由来の分子がPOD核構造の細胞機能と相互作用しうることを特徴とする方法に関する。好ましくは、アデノウイルス由来の分子の作用は、前記分子をPOD核構造と接触させることによって行われ、ここで、前記分子はPOD核構造と相互作用することができる。
本発明は、アデノウイルスタンパク質pIXが感染の後期中にPMLタンパク質をc.a.封入体に再配分することによりこのタンパク質の機能を中和することによって、PODのアデノウイルス依存性変化において貢献すると思われることが示された実験に基づいている。これは、感染経過中にPODの永続的崩壊の効果を有し、最適のウイルス増殖に寄与する可能性がある。免疫金標識(Immunogold labeling)およびイン・シテューハイブリダイゼーション実験は、電子および光学顕微鏡法により特異的細胞またはウイルス成分を局在化させるための感染細胞の免疫蛍光染色と組み合わせて行った。これらの結果は、ウイルス機能(ウイルスDNA複製、遺伝子発現、スプライシングまたはキャプシド組立)のいずれもpIX含有c.a.封入体には見られなかったことを明確に示している。しかしながら、POD関連タンパク質であるPMLおよびSP100は、感染の後期にはこれらのc.a.封入体中に検出された。これらのデータは、pIXが初期ウイルスE4orf3タンパク質によって誘導されるPMLタンパク質の初期の核非局在化を維持する。従って、pIXは、アデノウイルス感染中の永続的不安定化に寄与する。タンパク質pIXは非ウイルス系ではPODを崩壊させることはできないが、PODの領域上または中に蓄積し、それらをc.a.封入体に隔離する。
本発明は、POD構造の完全性、従ってPOD構造に依存する細胞活性は、アデノウイルスポリペプチドpIXおよびE4orf3のようなPOD構造の1個以上の成分と相互作用することができる(複数の)アデノウイルスポリペプチドの作用によって調節することができる。
一方、PODの完全性を変化させるアデノウイルスポリペプチドの発現により、抗ウイルス反応および細胞アポトーシスのようなPOD依存性の細胞活性が損なわれると仮定される。遺伝子療法ベクターに関して、本発明は通常の複製欠損アデノウイルスに関連した細胞毒性を減少させ、治療した宿主細胞における治療ベクターおよびトランスジーン発現の保持を増加させることが期待される。この点において、本発明は、特に、慢性疾患および臓器変性のような、1個以上の異常なPOD依存性の細胞活性が存在し且つ正常化する必要がある疾患の治療または予防において使用するための、上記POD核構造に依存する1個以上の細胞活性を減少させるかまたは阻害する方法およびベクターを提供する。
他方では、細胞アポトーシスは、PODの完全性を変化させるアデノウイルスポリペプチドの発現を抑制することによって増加させることができると見なされている。この点において、本発明は、アポトーシスが不十分である癌や過剰増殖性疾患のような疾患の治療に用いるための方法およびベクターを提供する。
本明細書で用いられる「調節」という用語は、POD依存性細胞活性の増加または減少を表す。アデノウイルス分子が宿主細胞に提供されるときには減少が期待され、一方、アデノウイルス分子の機能が宿主細胞で完全に破壊されるときには増加が期待される。
本明細書で用いられる「POD核構造に依存する(複数の)細胞活性」という用語は、宿主細胞、特にウイルスに感染した宿主細胞中のPOD核構造によって発揮されるかまたはこれに関連した少なくとも1個の活性を表す。このような細胞活性は、直接的に(例えば、Negorev and Maul, Oncogene 20 (2001), 7234-7242に記載されているような1個以上のPOD関連タンパク質の作用によって)、または間接的に(1個以上の細胞またはウイルス分子の作用によって)発揮させることができる。このような細胞活性としては、転写の調節、クロマチン構造の再建、細胞成長の調節、分化、抗ウイルス反応、およびアポトーシスが挙げられるが、これらに限定されない。細胞の抗ウイルス反応および/またはアポトーシスの調節が好ましい。
「接触」という用語は、アデノウイルス由来の分子を細胞活性/複数の活性を調節しようとする宿主細胞のPOD核構造と接触させるのに適当な当業者に知られている任意の方法を表す。この「接触」とは、例えば、PODを含む細胞または(例えば、ウイルス感染時に)上記のアデノウイルス由来の分子を含むPOD構造を形成しやすい細胞の接触を表すことができる。これは、培養細胞、固定細胞などの使用を包含することができる。好ましくは、「接触」という用語は、アデノウイルス由来の分子を下記に一層詳細に説明するように宿主細胞に導入する態様を包含する。
更に、「相互作用」(interacting)という用語は、該構造および/またはPOD核構造の1個以上の機能に対する効果として定義される。PODの機能および構造の評価方法は、例えば、米国特許第6,319,663号明細書に開示されている。例えば、電子顕微鏡法を用いて、PODの形態を(例えば、POD崩壊を決定する目的で)視覚的に評価することができる。あるいは、PMLのようなPOD局在化タンパク質を直接評価して、その合成がアップまたはダウンレギュレーションを受けるかどうかを決定することができる。検出方法としては、イン・シテューハイブリダイゼーション、免疫沈澱または免疫蛍光分析法におけるようなPOD局在化タンパク質特異抗体の使用、または適当なプローブを用いて選択されたPOD局在化タンパク質をコードするmRNAのレベルを決定することが挙げられる。POD機能は、POD関連の細胞活性の測定によって、例えば、核受容体依存性転写または感染細胞でのウイルス複製の測定によって評価することができる。
本明細書で用いられる「分子」という用語は、ポリペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸配列のいずれをも表す。本発明において、「核酸配列」および「ポリヌクレオチド」という用語は互換的に用いられ、任意の長さのヌクレオチドまたはその類似体のポリマー形状を定義する。「ポリヌクレオチド」という用語は、任意の可能な核酸、特にDNAであって、一本鎖または二本鎖、線状または環状、天然または合成であることができるものを包含する。ポリヌクレオチドは、修飾したヌクレオチド、例えば、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体を含んでなることがある(修飾の例としては、米国特許第5,525,711号明細書、米国特許第4,711,955号明細書または欧州特許第302 175号明細書を参照されたい)。このようなポリヌクレオチドは、存在する核酸供給源から得ることができるが(例えば、ゲノムDNA、cDNA)、合成であることもできる(例えば、オリゴヌクレオチド合成によって生成)。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオシド要素によって中断されることがある。ポリヌクレオチドは、重合の後に更に修飾することもできる。
「ポリペプチド」という用語は、任意の長さのアミノ酸またはその類似体のポリマー形状として理解すべきである。これは、大きさに関わらずポリヌクレオチドの任意の翻訳生成物であることができ、ペプチドが挙げられるが、更に典型的にはタンパク質が挙げられる。これは、好ましくは、アデノウイルスゲノムによってコードされるアデノウイルスポリペプチドである。本発明に関して、アデノウイルスゲノムは、任意のアデノウイルスから誘導することができる。「アデノウイルス」とは、Adenoviridae科、望ましくはMastadenovirus(例えば、哺乳類アデノウイルス)またはAviadenovirus(例えば、トリアデノウイルス)属の任意のウイルスである。アデノウイルスは、任意の血清型のものであることができる。アデノウイルスの供給源として用いることができるアデノウイルスストックは、現在アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC, Rockville, Md.)から入手することができるアデノウイルス血清型1〜47から、または任意の他の供給源から入手することができる任意の他の血清型のアデノウイルスから増幅することができる。例えば、アデノウイルスは、サブグループA(例えば、血清型12、18、および31)、サブグループB(例えば、血清型3、7、11、14、16、21、34、および35)、サブグループC(例えば、血清型1、2、5、および6)、サブグループD(例えば、血清型8、9、10、13、15、17、19、20、22〜30、32、33、36〜39、および42〜47)、サブグループE(血清型4)、サブグループF(血清型40および41)、または任意の他のアデノウイルス血清型のものであることができる。しかしながら、好ましくは、アデノウイルスは血清型2、5または9である。
本発明に関して用いられるアデノウイルス分子は、単独であっても組み合わせていてもよく、直接にまたは他の細胞またはウイルス分子によって、上記のようにPOD核構造の細胞機能と相互作用することができる。本発明に関して、「細胞機能」という用語は、任意の細胞過程の調節、特に転写の調節、細胞成長制御、分化の制御、抗ウイルス反応、アポトーシスクロマチン構造の再建の制御などを表す。
最も好ましくは、アデノウイルス分子は、イニシエーターコドンから終結コドンまでの元の完全長のアデノウイルスポリペプチドであるか、またはこれをコードする。しかしながら、1個以上のPOD機能の調節特性が保存される場合には、突然変異体を用いることもできる。「突然変異体」という用語は、元の分子の本質的特性を保持している元のアデノウイルス分子とは異なる分子を表す。一般的には、突然変異体は、元の配列の任意の位置のアデノウイルスポリペプチドコード配列の1個以上のヌクレオチドまたはヌクレオチドの断片の欠失、付加、および/または置換によって得ることができる。このような修飾は、標準的組換え手法(すなわち、位置指定突然変異誘発、酵素制限切断および移管、PCR技術など)によって得ることができる。有利には、本発明に関して、突然変異体コード配列は元の配列と高度の相同性を共有しており、特に少なくとも70%同一性、より好ましくは少なくとも80%、および更により好ましくは少なくとも90%の同一性を共有する。絶対的同一性が特に好ましい。元のアデノウイルス配列と少なくとも70%の同一性を有する突然変異体とは、突然変異体配列が元の配列のそれぞれ100ヌクレオチド当たり30までの相違点を含み、これはサイレントであることができるか、またはコードされたアミノ酸残基を修飾することもできることを意味している。実際問題としては、突然変異体と元の配列の間の同一性度は、既知のコンピュータープログラムを用いて常法により決定することができる。包括的配列調節とも呼ばれる突然変異体と元の配列との間の最良の全般的組合せは、Brutlag et al.のアルゴリズムに基づくFASTDBコンピュータ・プログラムを用いて決定することができる(Comp. App. Biosci. 6 (1990), 237-245)。
突然変異体の機能性は、以下に記載するように、イン・ビトロ(適当な培養細胞でのPOD関連の(複数の)機能、例えば、IFNg依存性抗ウイルス反応、アポトーシス状態、PODの形態の観察によって)、またはイン・ビボ(動物モデルで、肝毒性、組換えウイルスによって発現されるトランスジーンの持続性のようなウイルス感染に対する細胞反応を評価することによって)で、突然変異体によって示される調節特性を元のアデノウイルスポリペプチドによって示される調節特性と比較することによって当業者が容易に決定することができる。POD機能および形態を分析するためのイン・ビトロでの実験条件は、本明細書の例で提供される。しかしながら、当業者に周知の他の方法を、本発明に関して用いることもできる。
第一の態様によれば、本発明は、宿主細胞にアデノウイルス由来の分子を少なくとも1つ導入することを含んでなる、宿主細胞中のPOD核構造に依存する1種類以上の細胞活性を調節する方法であって、ここでアデノウイルス由来の分子がPOD核構造に依存する1種類以上の細胞活性を減少させるかまたは阻害することを特徴とする、方法を提供する。
本明細書で用いられる「宿主細胞」という用語は、単一存在物を表すか、または細胞の一層大きな集合の一部であることができる。このような細胞の一層大きな集合は、例えば、細胞培養物(混合または純粋)、組織(例えば、上皮または他の組織)、臓器(例えば、心臓、肺、肝臓、膀胱、筋肉、または別の臓器)、器官系(例えば、循環系、呼吸器系、消化器系、泌尿器系、神経系、外皮系、または別の器官系)、または生体(例えば、哺乳類、特にヒトなど)を含んでなることができる。適当な宿主細胞としては、造血細胞(全能、幹細胞、白血球、リンパ球、単球、マクロファージ、APC、樹状細胞など)、肺細胞、気管細胞、肝細胞、上皮細胞、内皮細胞、繊維芽細胞または筋細胞(筋原細胞、筋管、筋原繊維、および衛星細胞のような心、平滑筋、および骨格筋)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、細胞は、心臓、血管、肺、肝臓、および筋細胞からなる群から選択される。更に、具体的態様によれば、真核宿主細胞を更にカプセル化することができる。細胞カプセル化技術は、以前に報告されている(Tresco et al., ASAIO J. 38 (1992), 17-23; Aebischer et al., Human Gene Ther. 7 (1996), 851-860)。「宿主細胞」という用語は、293、PERC−6または293 E4 orf6/7細胞のようなアデノウイルスベクターまたはAAV産生の補足性細胞系(complementing cell lines)も包含する。このような補足性細胞系(complementing cell lines)へPOD調節アデノウイルス分子を導入することにより、PODに依存する細胞の抗ウイルスまたはアポトーシス活性を減少させることによってアデノウイルスまたはAAVベクター産生の改良が期待される。
本明細書で用いられる「導入」という用語は、分子をポリペプチドまたは核酸の形態で細胞に導入するための当業者に知られている任意の方法を表し、形質導入、トランスフェクション、微量注入、電気穿孔、宿主細胞のウイルス感染、エンドサイトーシス、トランスポーター(例えば、Adペントンベース、HIV TATタンパク質など)の使用、核局在化シグナル(NLS)との融合、および受容体依存性形質導入が挙げられるが、これらに限定されない。
第一の態様では、宿主細胞をウイルスに感染させ、アデノウイルス分子は、POD核構造に依存する抗ウイルス細胞活性を減少させまたは阻害する。「ウイルス」という用語は、野生型ウイルス並びに任意の種類の遺伝子工学処理を行ったウイルスを包含する。更に、ウイルス感染は、日和見感染または故意に誘発した感染(例えば、アデノウイルスまたはAAVベクターのような遺伝子療法ベクターによる感染)から生じることができる。好ましくは、宿主細胞感染ウイルスは複製欠損アデノウイルスベクターである。本明細書で用いられる「アデノウイルスベクター」という用語は、ベクターDNA(ゲノム)並びにウイルス粒子(ウイルス、ビリオン)を包含する。
複製欠損アデノウイルスベクターは当該技術分野で知られており、ウイルス複製に本質的なアデノウイルスゲノムの1個以上の領域(例えば、E1、E2またはE4、またはそれらの組合せ)が欠損しており、従って(例えば、補足性細胞またはヘルパーウイルスによって提供される)トランス補足性(trans-complementation)の非存在下では増殖することができないものと定義することができる。複製欠損表現型は、ウイルスゲノムに修飾を導入してウイルス複製に本質的な1個以上の機能を排除することによって得られる。このような(複数の)修飾としては、(複数の)コード配列および/または(複数の)制御配列における1個以上のヌクレオチドの欠失、挿入および/または突然変異が挙げられる。欠失が、本発明に関して好ましい。これに関して、複製欠損ベクターは、好ましくは、少なくとも機能的アデノウイルスE1領域を欠いているか、またはE1を欠失したアデノウイルスベクターである。このようなE1を欠失したアデノウイルスベクターとしては、米国特許第6,063,622号明細書、米国特許第6,093,567号明細書、WO 94/28152号明細書、WO 98/55639号明細書、および欧州特許第974 668号明細書に記載されているものが挙げられ、これらの公表文献の総ての開示内容は、その開示の一部として本明細書に引用されている。好ましいE1欠失は、(受入番号M 73260でGeneBankにおよびChroboczek et al., Virol. 186 (1992), 280-285に開示されている)ヒトアデノウイルス5型の配列を参照することによってヌクレオチド(nt)459〜3328または459〜3510をほぼカバーする。
更に、ベクターのアデノウイルス主鎖は、(複数の)追加的ウイルス領域で修飾を含んでなることがある。これに関して、アデノウイルスベクターは、E2領域(E2AまたはE2B領域中、またはE2AおよびE2Bの両領域中)を欠損していることもある。E2修飾の一例は、DBP(DNA結合タンパク質)コード遺伝子の熱感受性突然変異によって示される(Ensinger et al., J. Virol. 10 (1972), 328-339)。アデノウイルスベクターは、E4領域の総てまたは一部を欠失することもできる(例えば、欧州特許第974 668号明細書、およびWO 00/12741号明細書を参照されたい)。本質的でないE3領域での追加の欠失によりクローニング能を増加することができるが、ポリペプチド (例えば、gp19k)をコードするE3配列の総てまたは一部を保持し、宿主免疫反応(Gooding et al., Critical Review of Immunology 10 (1990), 53-71)または炎症反応(欧州特許第00 440 267.3号明細書)を免れさせるのが有利であることがある。シス作用配列を除き初期(E1、E2、E3およびE4)および後期遺伝子(L1、L2、L3、L4およびL5)を包含する総ての機能遺伝子を欠いている最小(無気力)アデノウイルスベクターを用いることも考えられる(例えば、Kovesdi et al., Current Opinion in Biotechnology 8 (1997), 583-589; Yeh and Perricaudet, FASEB 11 (1997), 615-623;WO 94/12649号明細書;WO 94/28152号明細書を参照されたい)。複製欠損アデノウイルスベクターは、必要な最小配列を考慮すれば、当業者が容易に遺伝子工学処理を行うことができ、これらの典型的態様に限定されない。これに関して、宿主細胞を、E1、E1およびE2、E1およびE3、E1およびE4、E1およびE2およびE3、E1およびE2およびE4、E1およびE3およびE4、または、E1およびE2およびE3およびE4を欠いているアデノウイルスベクターに感染させることができる。
好ましい態様では、宿主細胞を、E1およびE4機能、および場合によってはE3機能を欠損している複製欠損アデノウイルスベクターに感染させる。一例としては、好ましいE4欠失は、(受入番号M 73260でGeneBankにおよびChroboczek et al., Virol. 186 (1992), 280-285に開示されている)ヒトアデノウイルス5型の配列を参照することによって、32994位〜34998位のヌクレオチドをほぼ包含し、好ましいE3欠失は、28592位〜30748位のヌクレオチドをほぼ包含する。
本発明の方法の一態様では、複製欠損アデノウイルスベクターはトランスジーンをさらに含んでなる。
「トランスジーン」という用語は、任意の起源であることができ且つゲノムDNA、cDNA、またはゲノムRNA、mRNA、アンチセンスRNA、リボソームRNA、リボザイム、またはトランスファーRNAのようなRNAをコードする任意のDNAから単離することができる。トランスジーンも、オリゴヌクレオチド(すなわち、例えば、100bp未満の短いサイズの核酸)であることができる。トランスジーンをゲノムDNAから遺伝子工学処理を行って、1個以上のイントロン配列(すなわち、ミニ遺伝子)の総てまたは一部を除去することができる。
好ましい態様では、本発明で用いられるトランスジーンが治療目的の遺伝子産物をコードする。「治療目的の遺伝子産物」とは、患者、特に疾患または疾病症状にかかっているかまたはこのような疾患または症状から保護する必要がある患者、に適切に投与したときに治療または保護活性を有するものである。このような治療または保護活性は、前記疾患または前記症状の経過についての有益な効果に対して相関させることができる。治療を行う疾患または症状によって治療目的の適切な遺伝子産物をコードするトランスジーンを選択することは、当業者の能力範囲内にある。一般的には、以前に得られた結果に基づいて選択することができるので、過度の実験を行うことなく、すなわち、本明細書に記載の発明の実施を除き、このような治療特性を得ることを合理的に期待することができる。
本発明に関して、トランスジーンは、これを導入する宿主細胞に対して相同性または非相同性であることができる。これは、ポリペプチドをコードするのが有利である。トランスジーンに関して、「ポリペプチド」という用語は、大きさに関わりなくポリヌクレオチドの翻訳産物として理解されるべきであり、7個程度の残基(ペプチド)を有するポリペプチドが挙げられるが、更に典型的にはタンパク質が挙げられる。更に、これは、任意の起源(原核生物、下等または高等真核生物、植物、ウイルスなど)のものでよい。それは、元のポリペプチド、変異体、相対物をどこにも持たないキメラポリペプチド、またはそれらの断片でよい。有利には、本発明で用いられるトランスジーンは、動物またはヒト生体で1個以上の欠陥または欠損細胞タンパク質を補償することができる少なくとも1種類のポリペプチドをコードする。適当なポリペプチドは免疫付与性であることもでき、抗原として作用して体液性または細胞応答、または両方を誘発することができる。
本発明の方法で用いられる好ましいトランスジーンとしては、下記をコードするものが挙げられるが、これらに限定されない:
p21、p16、網膜芽細胞腫(Rb)遺伝子の発現産物、キナーゼインヒビター(好ましくは、サイクリン依存型)、GAX、GAS−1、GAS−3、GAS−6、Gadd45、およびサイクリンA、BおよびDのような細胞サイクルに関与するポリペプチド;
サイトカイン(インターロイキン、特にIL−2、IL−6、IL−8、IL−12、GM−CSF、G−CSF、M−CSFのようなコロニー刺激因子)、IFNα、IFNβ、またはIFNγ;
癌遺伝子発現産物を阻害する抗体またはポリペプチド(例えば、ras。mapキナーゼ、チロシンキナーゼ受容体、増殖因子)、Fasリガンド、宿主免疫系を活性化するポリペプチド(MUC−1、パピローマウイルスの初期または後期抗原など)などの細胞増殖を減少させまたは阻害することができるポリペプチド;
細菌、寄生生物またはウイルス感染、またはその展開を阻害することができるポリペプチドであって、例えば、抗原決定基、競争によってウイルスの元のタンパク質の作用を阻害するトランスドミナント変異体(transdominant variants)(欧州特許第614980号明細書、WO 95/16780号明細書)、HIV受容体CD4の細胞外ドメイン(Traunecker et al., Nature 331 (1988), 84-86)、イムノアドヘシン(immunoadhesin)(Capon et al., Nature 337 (1989), 525-531; Byrn et al., Nature 344 (1990), 667-670)、および抗体(Buchacher et al., Vaccines 92 (1992), 191-195);
B7.1、B7.2、ICAMなどの免疫刺激ポリペプチド;
ウレアーゼ、レニン、トロンビン、メタロプロテイナーゼ、酸化窒素シンターゼ(eNOSおよびiNOS)、SOD、カタラーゼ、ヘムオキシゲナーゼ、リポタンパク質リパーゼファミリーのような酵素;
酸素ラジカルスカベンジャー;
アンチトロンビンIII、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビターPAI−1、メタロプロテイナーゼ1−4の組織インヒビターのような酵素インヒビター;
グルコセレブロシダーゼ(Gaucher病;米国特許第5,879,680号明細書、および米国特許第5,236,838号明細書)、α−ガラクトシダーゼ(Fabry病;米国特許第5,401,650号明細書)、酸性α−グルコシダーゼ(Pompe病;WO00/12740号明細書)、α−n−アセチルガラクトサミニダーゼ(Schindler病;米国特許第5,382,524号明細書)、酸性スフィンゴミエリナーゼ(Niemann-Pick病;米国特許第5,686,240号明細書)、およびα−イズロニダーゼ(WO 93/10244号明細書)のようなリソソーム貯蔵酵素;
遺伝病の治療に用いることができるタンパク質、例えば、CFTR(嚢胞性繊維症の治療用)、ジストロフィンまたはミニジストロフィン(筋ジストロフィーの治療用)、α−アンチトリプシン(気腫の治療用)、インスリン(糖尿病に関連)、および血友病因子(血友病および血液疾患の治療用)、例えば、VIIa因子(米国特許第4,784,950号明細書)、VIII因子(米国特許第4,965,199号明細書)またはその誘導体(米国特許第4,868,112号明細書、Bドメインを欠失)、およびIX因子(米国特許第4,994,371号明細書);
アンギオスタチン、エンドスタチン、血小板因子4のような血管新生阻害剤;
DNA結合ドメイン、リガンド結合ドメイン、および転写を活性化または阻害するドメイン(例えば、エストロゲン、ステロイドおよびプロゲステロン受容体由来の融合産物)のような転写因子;
マーカー(β−ガラクトシダーゼ、CAT、ルシフェラーゼ、GFPなど);および
臨床症状の治療または予防に有用であると当該技術分野で認められている任意のポリペプチド
p21、p16、網膜芽細胞腫(Rb)遺伝子の発現産物、キナーゼインヒビター(好ましくは、サイクリン依存型)、GAX、GAS−1、GAS−3、GAS−6、Gadd45、およびサイクリンA、BおよびDのような細胞サイクルに関与するポリペプチド;
サイトカイン(インターロイキン、特にIL−2、IL−6、IL−8、IL−12、GM−CSF、G−CSF、M−CSFのようなコロニー刺激因子)、IFNα、IFNβ、またはIFNγ;
癌遺伝子発現産物を阻害する抗体またはポリペプチド(例えば、ras。mapキナーゼ、チロシンキナーゼ受容体、増殖因子)、Fasリガンド、宿主免疫系を活性化するポリペプチド(MUC−1、パピローマウイルスの初期または後期抗原など)などの細胞増殖を減少させまたは阻害することができるポリペプチド;
細菌、寄生生物またはウイルス感染、またはその展開を阻害することができるポリペプチドであって、例えば、抗原決定基、競争によってウイルスの元のタンパク質の作用を阻害するトランスドミナント変異体(transdominant variants)(欧州特許第614980号明細書、WO 95/16780号明細書)、HIV受容体CD4の細胞外ドメイン(Traunecker et al., Nature 331 (1988), 84-86)、イムノアドヘシン(immunoadhesin)(Capon et al., Nature 337 (1989), 525-531; Byrn et al., Nature 344 (1990), 667-670)、および抗体(Buchacher et al., Vaccines 92 (1992), 191-195);
B7.1、B7.2、ICAMなどの免疫刺激ポリペプチド;
ウレアーゼ、レニン、トロンビン、メタロプロテイナーゼ、酸化窒素シンターゼ(eNOSおよびiNOS)、SOD、カタラーゼ、ヘムオキシゲナーゼ、リポタンパク質リパーゼファミリーのような酵素;
酸素ラジカルスカベンジャー;
アンチトロンビンIII、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビターPAI−1、メタロプロテイナーゼ1−4の組織インヒビターのような酵素インヒビター;
グルコセレブロシダーゼ(Gaucher病;米国特許第5,879,680号明細書、および米国特許第5,236,838号明細書)、α−ガラクトシダーゼ(Fabry病;米国特許第5,401,650号明細書)、酸性α−グルコシダーゼ(Pompe病;WO00/12740号明細書)、α−n−アセチルガラクトサミニダーゼ(Schindler病;米国特許第5,382,524号明細書)、酸性スフィンゴミエリナーゼ(Niemann-Pick病;米国特許第5,686,240号明細書)、およびα−イズロニダーゼ(WO 93/10244号明細書)のようなリソソーム貯蔵酵素;
遺伝病の治療に用いることができるタンパク質、例えば、CFTR(嚢胞性繊維症の治療用)、ジストロフィンまたはミニジストロフィン(筋ジストロフィーの治療用)、α−アンチトリプシン(気腫の治療用)、インスリン(糖尿病に関連)、および血友病因子(血友病および血液疾患の治療用)、例えば、VIIa因子(米国特許第4,784,950号明細書)、VIII因子(米国特許第4,965,199号明細書)またはその誘導体(米国特許第4,868,112号明細書、Bドメインを欠失)、およびIX因子(米国特許第4,994,371号明細書);
アンギオスタチン、エンドスタチン、血小板因子4のような血管新生阻害剤;
DNA結合ドメイン、リガンド結合ドメイン、および転写を活性化または阻害するドメイン(例えば、エストロゲン、ステロイドおよびプロゲステロン受容体由来の融合産物)のような転写因子;
マーカー(β−ガラクトシダーゼ、CAT、ルシフェラーゼ、GFPなど);および
臨床症状の治療または予防に有用であると当該技術分野で認められている任意のポリペプチド
上記のように、トランスジーンとしては、アンチセンス配列をコードする遺伝子、リボザイム、またはRNA干渉を発揮することができるRNA分子(RNAi)であって、これらの分子のそれぞれが特異的な細胞RNA、好ましくは、癌遺伝子および原癌遺伝子(c−myc、c−fos、c−jun、c−myb、c−ras、KcおよびJE)のような選択された積極的に作用する増殖調節遺伝子のそれに結合して不活性化することができるものも挙げられる。
トランスジーンが元の配列に関して1個以上のヌクレオチドの付加、欠失、および/または修飾を含むことができることは、本発明の範囲内である。
一つの態様では、トランスジーンを調節要素に操作可能にリンクさせ、宿主細胞でそれを発現できるようにする。このような調節要素としては、プロモーター、および必要に応じては任意のウイルス、細菌または真核生物遺伝子(更にはトランスジーンが生じる細胞遺伝子)から得ることができ且つ構成的または調節可能であることがあるエンハンサーが挙げられる。必要に応じて、これを修飾してその転写活性を向上させ、負の配列を欠失し、その調節を変更し、適当な制限部位などを導入することができる。構成的プロモーターの例としては、レトロウイルスであるRous肉腫ウイルス(RSV)プロモーター(場合によってはRSVエンハンサーを有する)、サイトメガロウイルス(CMVプロモーター)(Boshart et al., Cell 41 (1985), 521-530)、SV40プロモーター、ジヒドロホレートレダクターゼプロモーター、β−アクチンプロモーター、ホスホグリセロキナーゼ(PGKプロモーター; Hitzeman et al., Science 219 (1983), 620-625; Adra et al., Gene 60 (1987), 65-74)、特に、マウスまたはヒト由来のものが挙げられるが、これらに限定されない。誘導プロモーターは、外来的に供給された化合物によって制御され、亜鉛誘導性メタロチオネイン(MT)プロモーター(McIvor et al., Mol. Cell Biol. 7 (1987), 838-848)、デキサメタゾン(Dex)誘導性マウス乳腺癌ウイルス(MMTV)プロモーター、T7ポリメラーゼプロモーター系(WO 98/10088号明細書)、エクジソン昆虫プロモーター(No et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93 (1996), 3346-3351)、テトラサイクリン抑制性プロモーター(Gossen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89 (1992), 5547-5551)、テトラサイクリン誘導性プロモーター(Kim et al., J. Virol. 69 (1995), 2565-2573)、RU486誘導性プロモーター(Wang et al., Nat. Biotech. 15 (1997), 239-243およびWang et al., Gene Ther. 4 (1997), 432-441)、およびラパマイシン誘導性プロモーター(Magari et al., J. Clin. Invest. 100 (1997), 2865-2872)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明に関して用いられるプロモーターは、組織特異的であって、治療効果が望まれる組織でトランスジーンを発現させることもできる。組織特異的プロモーターとしては、SM22(WO 98/15575号明細書;WO 97/35974号明細書)、デスミン(Desmin)(WO 96/26284号明細書)、α−1−アンチトリプシン(Ciliberto et al., Cell 41 (1985), 531-540)、CFTR、界面活性剤、免疫グロブリン遺伝子、および SRα由来のプロモーターが挙げられる。あるいは、乳癌および前立腺癌で過剰発現したMUC−1遺伝子(Chen et al., J. Clin. Invest. 96 (1995), 2775-2782)、結腸癌で過剰発現したCEA(癌胎児性抗原)コード遺伝子(Schrewe et al., Mol. Cell. Biol. 10 (1990), 2738-2748)、乳癌および膵臓癌で過剰発現したERB−2コード遺伝子(Harris et al., Gene Therapy 1 (1994), 170-175)、および肝臓癌で過剰発現したα−フェトプロテインコード遺伝子(Kanai et al., Cancer Res. 57 (1997), 461-465)のプロモーターのような腫瘍細胞で過剰発現した遺伝子から単離した増殖細胞で活性化することができるプロモーターを用いることができる。
当業者であれば、本発明は、宿主細胞または生体への(複数の)トランスジーンの転写および翻訳を適切に開始、調節および/または終結する目的で追加の制御配列を用いることができることを理解されるであろう。このような制御配列としては、非コードエキソン、イントロン、ターゲッティング配列、輸送配列、分泌シグナル配列、核局在化シグナル配列、IRES、ポリA転写終結配列、トリパータイト(tripartite)リーダー配列、複製または組込みに関与する配列が挙げられるが、これらに限定されない。上記制御配列は文献に報告されており、当業者が容易に得ることができる。
アデノウイルスベクターは、1個以上のトランスジーンを含んでなることがある。これに関して、様々なトランスジーンを、同一(ポリシストロン性)またはベクター内の様々な部位に同一または反対方向で挿入することができる別々の調節要素によって制御することができる。
本発明の方法の一態様では、アデノウイルス由来の分子は、POD核構造によって1種類以上の細胞活性を減少させまたは阻害することができるポリペプチドである。本発明のもう一つの好ましい態様では、アデノウイルス由来の分子は、POD核構造によって1種類以上の細胞活性を減少させまたは阻害することができるポリペプチドをコードする核酸配列である。
好ましい態様では、POD核構造によって1種類以上の細胞活性を減少させまたは阻害するアデノウイルス由来のポリペプチドは、個別にまたは組み合わせて用いられるpIXおよびE4orf3からなる群から選択される。従って、POD核構造によって1種類以上の細胞活性を減少させまたは阻害する目的で、宿主細胞でpIXまたはE4orf3のいずれか、またはpIXとE4orf3を両方とも提供しまたは発現させることが考えられる。更に具体的には、上記アデノウイルス由来のポリペプチドは、アデノウイルス血清型2または5から得または誘導することができる。以下に記載する実験観察に基づいて、pIXはPODの隔離によって特にPOD依存性機能を干渉することができ、一方E4orf3は特にPOD核構造の解体を介して作用することができる。その結果、宿主細胞の一方または両方のアデノウイルスポリペプチドの発現は、宿主細胞におけるPOD依存性機能を阻害しまたは減少させることができる。両方のアデノウイルス配列は、上記で引用したようなアデノウイルスゲノム(および好ましくは、Ad2またはAd5)から標準的分子生物学を応用することによってクローニングすることができる。これらのアデノウイルス遺伝子は異なるアデノウイルス株間で変化することがあるが、それらは異なる供給源(例えば、GeneBank)から入手可能なヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列に基づいて、または相当する十分に特性決定されたAd5配列(受入番号M 73260でGeneBankにおよびChroboczek et al., Virol. 186 (1992), 280-285に開示されている)との相同性によって同定することができる。一例として、pIX遺伝子をアデノウイルスゲノムの左手に配置し(Ad5のヌクレオチド3609−4031の間)、E4orf3コード遺伝子をアデノウイルスゲノムの右手に配置する(Ad2のヌクレオチド34706(ATGコドン)〜34358(STOPコドン)の間)に配置する。
上記のように、(複数の)アデノウイルスポリペプチドの突然変異体を用いて、POD核構造によって1種類以上の細胞活性を減少させまたは阻害することができる。アミノ酸残基に関しては、突然変異体ポリペプチドは、好ましくは保存的アミノ酸置換を含んでなり、すなわち、所定のアミノ酸を同様な大きさ、電荷密度、疎水性/親水性、および/または配置の別のアミノ酸によって置換する(例えば、Pheの代わりにVal)。好ましくは、本発明で用いられる突然変異体は、相当する元のアデノウイルスポリペプチドとほぼ同程度またはこれより大きな程度までPOD調節特性を示す。上記のように、POD核構造を封鎖するpIXの能力は、pIXのC末端部分に配置されたそのコイルドコイルロイシンリッチドメインによって影響を受ける。従って、POD調節機能を保存しているタンパク質のN末端または中央部分に修飾を含むpIX突然変異体を用いることが考えられる。しかしながら、pIXが組換えアデノウイルスベクターに感染することによって発現するときには、野生型pIXタンパク質をコードする核酸配列を用いてpIXのキャプシドおよびPOD調節機能を保存するのが好ましい。
更に適当には、E1欠失の3’ボーダーにおける複製欠損アデノウイルスベクターに存在する元のpIX配列は保持され(それらは、宿主細胞において複製の非存在下では機能性でない元のpIXプロモーターによって制御される)、複製欠損アデノウイルスベクターは宿主細胞で発現することができる異種プロモーターの制御下に置かれた追加のpIXコード配列を含んでなる。
好ましい態様では、POD調節特性を有するアデノウイルス由来のポリペプチドをコードする核酸配列は、宿主細胞で発現することができる適当な転写および翻訳調節要素の制御下に置かれる。このために、核酸配列は、異種(元のものでない)プロモーターの制御下に置くことができる。このような異種プロモーターは、トランスジーン発現を制御する調節要素に関して上記で定義したような構成、誘導、腫瘍特異的および組織特異的プロモーターからなる群から選択することができる。好ましくは、アデノウイルスポリペプチドの発現を制御するプロモーターはCMVプロモーターである。更に、調節要素は、1個以上のエンハンサー、エキソン/イントロン配列、核局在化シグナル配列、ポリA転写終結配列のような追加要素を更に含んでなることがある。上記要素は文献に報告されており、当業者であれば容易に得ることができる。
第一の代替態様としては、POD調節アデノウイルス由来のポリペプチドをコードする核酸配列は、上記で定義した複製欠損アデノウイルスベクターによって運ばれる。上記のように、本発明の方法は、好ましくは、E1およびE4領域の両方、および必要に応じてE3領域を欠失した組換えアデノウイルスベクターを用いる。アデノウイルス由来のポリペプチドをコードする核酸配列を複製欠損アデノウイルスベクターの任意の位置に挿入することができるが、これは有利には欠失したE4またはE3領域の代わりに挿入され、トランスジーンは欠失したE1領域の代わりに挿入される。好ましくは、アデノウイルス由来のポリペプチドおよびトランスジーンは、独立した転写および翻訳調節要素によって制御される。アデノウイルス由来のポリペプチドをコードする核酸配列とトランスジーンは、互いにアンチセンス配向で転写するのが好ましい。上記のように、複製欠損アデノウイルスベクターは、複製が存在しないために発現しない元の位置(E1領域の下流)における(pIXプロモーターを備えた)元のpIX配列を保持するが、異種プロモーターの制御下にあり且つ本来の位置とは異なる位置において(例えば、欠失したE4またはE3領域の代わりに)アデノウイルスベクター中に配置されたpIXをコードする核酸配列をさらに含んでなることができる。
第二の代替態様によれば、アデノウイルス由来のポリペプチドをコードする核酸配列は、前記複製欠損アデノウイルスベクターとは異なるベクターによって運ばれる。本発明に関して、ベクターはプラスミドまたはウイルスベクターであることができる。「プラスミド」という用語は、所定の細胞で自律複製が可能な染色体外環状DNAを表す。適当なプラスミドの範囲は、非常に大きい。好ましくは、プラスミドは、細菌で増幅の目的でおよび真核生物ターゲット細胞で発現の目的でデザインされる。このようなプラスミドとしては、pBR322(Gibco BRL)、pUC(Gibco BRL)、pBluescript(Stratagene)、pREP4、pCEP4(Invitrogene)、pCI(Promega)、およびpPoly(Lathe et al., Gene 57 (1987), 193-201)から誘導されるものが挙げられるが、これらに限定されない。これは、標準的分子生物学の手法(Sambrook et al.,「実験室便覧(Laboratory Manual)」, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY (2001))によって遺伝子工学処理を行うこともできる。これは、トランスフェクションした細胞を選択しまたは同定するための選択遺伝子(例えば、細胞栄養要求性の補足性により、または抗生物質耐性により)、安定化要素(例えば、cer配列; Summers and Sherrat, Cell 36 (1984), 1097-1103)、または組込み要素(例えば、LTRウイルス配列およびトランスポゾン)を含んでなることもできる。ウイルスベクターは、任意のウイルス、特に、ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、フォーミーウイルス、レンチウイルス、セムリキ森林(Semliki forest)ウイルス、AAV(アデノ随伴ウイルス)、ポックスウイルス、アデノウイルス、およびレトロウイルスから誘導することができる。このようなウイルスベクターは、当該技術分野で周知である。「誘導される」とは、ウイルスゲノムのコードまたは非コード部分に1または数個のヌクレオチドの(複数の)欠失、(複数の)付加、および/または(複数の)置換などの1個以上の修飾を導入することによって元のウイルスゲノムから出発して遺伝子工学処理を行ったことを意味する。
更に、本発明の方法で用いられるPOD調節アデノウイルスポリペプチドをコードする核酸配列を含むベクターは、宿主細胞で発現することができる適当な転写および/または翻訳調節要素に操作可能にリンクしたトランスジーンを含んでなることもできる。トランスジーンおよび調節要素の正常に関しては、以前に既に記載されているのと同じことが適用される。
2ベクター態様(第二の代替態様)に関しては、本発明の方法は、宿主細胞に(i)前記複製欠損アデノウイルスベクターと、(ii)前記アデノウイルス由来のポリペプチドをコードする上記核酸配列を含んでなるベクターとを同時にまたは連続的に導入することを含んでなる。「連続的に」とは、少なくとも複製欠損アデノウイルスベクターおよびアデノウイルス由来のポリペプチドをコードするベクターを宿主細胞または生体に順次に導入することを意味する。2個のベクターを連続的に投与するときには、好ましくは、アデノウイルス由来のポリペプチドをコードするベクターを、複製欠損アデノウイルスベクターの後に投与する。アデノウイルス由来のポリペプチドをコードするベクターのような第二のベクターの連続投与は、即時にまたは遅延させることができ、同じ投与経路または異なる投与経路によって行うことができる。第二のベクターの連続投与を遅延させるときには、遅延はおよそ数分、数時間、数日、数週間、数ヶ月、またはそれ以上とすることができる。
本発明の方法に関しては、POD調節アデノウイルスポリペプチドをコードするベクターは、ベクター送達効率または安定性を向上させることができる様々な化合物と複合体形成することができる。このような化合物としては、脂質、ポリマー、ペプチド、縮合剤(スペルミン、スペルミジン、ヒストン、ペプチド)、およびそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。これらの化合物は、当業者が入手することができる科学文献に広範に記載されている。
これに関して、好ましい脂質は、核酸(例えば、本発明のベクター)に高親和性を有し且つ細胞膜と相互作用するカチオン性脂質である(Felgner et al., Nature 337 (1989), 387-388)。その結果、それらは核酸と複合体形成することにより、細胞に入り込むことができるコンパクトな粒子を生成することができる。本発明で用いることができるカチオン性脂質またはカチオン性脂質の混合物としては、Lipofectin(商品名)、DOTMA: N−[1−(2,3−ジオレイルオキシル)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウム(Felgner, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84 (1987), 7413-7417)、DOGS: ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン、またはTransfectam(商品名)(Behr, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86 (1989), 6982-6986)、DMRIE: 1,2−ジミリスチルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシエチルアンモニウム、およびDORIE: 1,2−ジオレイルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシエチルアンモニウム(Felgner, Methods 5 (1993), 67-75)、DC−CHOL: 3−[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル]コレステロール(Gao, BBRC 179 (1991), 280-285)、DOTAP(McLachlan, Gene Therapy 2 (1995), 674-622)、Lipofectamine(商品名)、スペルミン−およびスペルミジン−コレステロール、Lipofectace(商品名)(総説については、例えば、Legendre, Medecine/Science 12 (1996), 1334-1341、またはGao, Gene Therapy 2 (1995), 710-722を参照されたい)、および特許出願WO 98/34910号明細書、WO 98/14439号明細書、WO 97/19675号明細書、WO 97/37966号明細書に開示されているカチオン性脂質、およびそれらの異性体が挙げられる。しかしながら、このリストは総てを網羅しているものではなく、当該技術分野で周知の他のカ
チオン性脂質も本発明に関して同様に用いることができる。
チオン性脂質も本発明に関して同様に用いることができる。
本発明で用いることができるカチオン性ポリマーまたはカチオン性ポリマーの混合物としては、キトサン(WO98/17693号明細書)、ポリ(アミノ酸)、例えば、ポリリシン(米国特許第5,595,897号明細書または仏国特許第2 719 316号明細書);ポリ第四級化合物;プロタミン;ポリイミン;ポリエチレンイミンまたはポリプロピレンイミン(WO 96/02655号明細書);ポリビニルアミン;DEAEと誘導体形成したポリカチオン性ポリマー、例えば、DEAEデキストラン(Lopata et al., Nucleic Acid Res. 12 (1984), 5707-5717);ポリビニルピリジン;ポリメタクリレート;ポリアクリレート;ポリオキセタン;ポリチオジエチルアミノメチルエチレン(P(TDAE));ポリヒスチジン;ポリオルニチン;ポリ−p−アミノスチレン;ポリオキセタン;コ−ポリメタクリレート(例えば、HPMA;N−(2−ヒドロキシプロピル)−メタクリルアミドのコポリマー);US−A−3,910,862号明細書に開示されている化合物、DEAEとメタクリレート、デキストラン、アクリルアミド、ポリイミン、アルブミン、オンジメチルアミノメチルメタクリレート、およびポリビニルピロリドン−メチルアクリルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロリドとのポリビニルピロリド錯体;ポリアミドアミン(Haensler and Szoka, Bioconjugate Chem. 4, (1993), 372-379);テロマー化合物(欧州特許出願第98 401 471.2号明細書);樹状ポリマー(WO 95/24221号明細書)が挙げられる。しかしながら、このリストは総てを網羅しているものではなく、当該技術分野で周知の他のカチオン性脂質も本発明による組成物で同様に用いることができる。
コリピドを、場合によっては包含させて、細胞へのベクターの入り込みを容易にすることができる。このようなコリピドは、中性または双性イオン性脂質であることができる。典型的な例としては、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルコリン、ホスホコリン、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、スフィンゴミエリン、セラミドまたはセレブロシド、およびそれらの誘導体のいずれかが挙げられる。
本発明はまた、特定のターゲット細胞を優先的にターゲッティングするために修飾した複製欠損アデノウイルスベクターまたは粒子の使用をも包含する。(上記ベクターがポリマーおよび脂質と複合体形成したベクターのようなウイルスおよび非ウイルス由来のいずれであることもできる)本発明のターゲッティングしたベクター/粒子の特徴は、細胞および表面が暴露した成分を認識して結合することができるターゲッティング残基がその表面に存在することである。このようなターゲッティング残基としては、化学的接合体、脂質、糖脂質、ホルモン、糖質、ポリマー(例えば、PEG、ポリリシン、PEIなど)、ペプチド、ポリペプチド(例えば、WO 94/40958号明細書に記載のJTS1)、オリゴヌクレオチド、ビタミン、抗原、レクチン、抗体、およびそれらの断片が挙げられるが、これらに限定されない。それらは、好ましくは、細胞特異的マーカー、組織特異的マーカー、細胞受容体、ウイルス抗原、抗原性エピトープ、または腫瘍関連マーカーを認識して結合することができる。アデノウイルスの感染の特異性は、許容細胞の表面に存在する細胞受容体への付着によって決定される。これに関して、アデノウイルスキャプシドの表面に存在するファイバーおよびペントンは、細胞付着において決定的な役割を果たしている(Defer et al., J. Virol. 64 (1990), 3661-3673)。従って、アデノウイルスの細胞ターゲッティングは、ファイバーおよび/またはペントンをコードするウイルス遺伝子の遺伝子修飾によって行い、特有の細胞表面ポリペプチドと特異的相互作用を行うことができる修飾したファイバーおよび/またはペントンを生成することができる。このような修飾の例は、文献に記載されている(例えば、Wickam et al., J. Virol. 71 (1997), 8221-8229; Arnberg et al., Virol. 227 (1997), 239-244; Michael et al., Gene Therapy 2 (1995), 660-668; WO 94/10323号明細書)。実例としては、アデノウイルスファイバーをコードする配列中にEGFをコードする配列を挿入することにより、EGF受容体発現細胞をターゲッティングすることができる。細胞特異的ターゲッティングの他の方法は、複製欠損アデノウイルスベクターの表面におけるターゲッティング残基の化学的接合を伴う。
本発明の方法のもう一つの態様は、アデノウイルス由来の分子は、宿主細胞でのアポトーシスを減少させまたは阻害する。このような減少または阻害は、本発明で用いた分子の非存在またはその発現の非存在と比較して、本発明で用いた分子の存在下での宿主細胞、組織または生体のアポトーシス状態を比較することによって評価することができる。その結果、前記分子を含んでなる宿主細胞、組織または生体は、ほとんどアポトーシス(細胞死)を起こさないか、または前記分子を含まないもしくは発現しない宿主細胞、組織または生体より一層速やかにまたは一層効率的に回復している。このような細胞アポトーシスの減少は、Tryptanブルー、DAPI、TUNEL、共焦点顕微鏡法(co-focal microscopy)、FACS、および超微細構造分析などのアポトーシス検出および細胞サイクル特性決定の定量的および定性的方法によって決定することができる。例えば、アポトーシスの減少は、アポトーシスの過程で産生する1または数個のマーカーの濃度の減少に相関させることができる(アポトーシス関連マーカーの減少は少なくとも2〜10分の1)。アポトーシスによって誘発される形態学的変化としては、クロマチンの凝縮の減少、DNA分裂、核骨格タンパク質の分解、アポトーシス体の形成、および/または核断片化が挙げられる。
本発明の方法のもう一つの態様では、アデノウイルス由来の分子は、宿主細胞の遺伝子療法ベクター(例えば、前記複製欠損アデノウイルスベクター)によって誘導された毒性を減少させるかまたは阻害し、および/または宿主細胞でのトランスジーン発現の持続性を増加させる。実例として、毒性の減少を、例えば、(特に注入部位に近接した細胞形態の観察によって評価することができる)宿主生物での炎症状態の減少、および/または発現する組織での細胞浸透の減少(特に、CD4+およびCD8+細胞、すなわち、免疫組織学による)、および/または壊死または組織変性の減少、および/または複製欠損アデノウイルスベクター(例えば、TNF(腫瘍壊死因子)α、IFN(インターフェロン)γ、IL(インターロイキン)−6およびIL−12)の投与後のサイトカイン産生の減少、および/または肝毒性の減少(トランスアミナーゼの減少)、および/または毒性反応を模倣する動物の生存率の向上(少なくとも3日間を上回る少なくとも2倍の生存率の増加は、毒性状態の改良と解釈することができた)に相関させることができる。トランスジーン発現は、遺伝子産物のレベルを経時的にイン・ビトロ(例えば、培養細胞中)またはイン・ビボ(例えば、動物モデル中)で、フローサイトフルオリメトリー、ELISA、免疫蛍光、ウェスタンブロット法、生物活性測定などのような標準的方法によって評価することによって決定することができる。アデノウイルス分子を含まないまたは発現しないコントロールと比較した遺伝子発現の向上は、遺伝子産物の量に関してまたは発現の持続性(長期間にわたる安定性)に関して見ることができる。
本発明はまた、E1およびE4領域、および場合によってはE3領域を欠失した組換えアデノウイルスベクターであって、少なくとも(i)トランスジーンと、(ii)機能性アデノウイルスpIXタンパク質をコードする核酸配列とを含んでなり、ここで機能性アデノウイルスpIXタンパク質をコードする核酸配列が異種プロモーターの制御下にあって且つ元来の位置とは異なる位置のアデノウイルスベクター中に配置されるものも提供する。
「アデノウイルスベクター」という用語は、本発明の方法に関連して上記に記載されている。「組換え」とは、望ましくは、例えば予防的または治療的に、細胞、または宿主細胞が一部である組織または生体にとって有益であるトランスジーンの発現が存在することを表す。本明細書で用いられる「機能的」という用語は、pIXタンパク質が(宿主細胞で)ウイルス複製の非存在下でその機能(例えば、1種類以上のPOD依存性細胞活性の修飾)を発揮することができることを意味する。好ましくは、アデノウイルスpIXタンパク質をコードする核酸配列は、欠失したE4領域の代わりに、または組換えアデノウイルスベクターの欠失したE3領域の代わりに配置される。これに関して、本発明の組換えアデノウイルスベクターは、E1欠失の3’ボーダーに存在するpIXプロモーターを有するもののウイルス複製の非存在下では宿主細胞で機能的ではない、元のpIX配列を保持することができるが、更に異種プロモーター(非pIX遺伝子プロモーター)の制御下でpIXタンパク質をコードする核酸配列を含み、宿主細胞で機能的pIX遺伝子産物を発現させる。上記のように、核酸配列は野生型または突然変異体pIX遺伝子産物をコードすることができ、野生型pIXについての方が特に優性である。有利には、本発明の組換えアデノウイルスベクターは、異種プロモーターによって制御されるアデノウイルスE4orf3タンパク質をコードするが他のE4遺伝子を欠いている核酸配列を含んでなることもできる。このE4orf3コード遺伝子はアデノウイルスゲノムの任意の位置(例えば、pIX遺伝子と共に発現カセットとして欠失したE4またはE3領域)に挿入することができ、異種プロモーターの制御下にあるpIXと同一または別の転写および翻訳調節要素によって制御することができる。ポリシストン性発現カセットの使用がpIXおよびE4orf3配列の両方の発現を目的とすると考えられるときには、第二のシストンの翻訳をIRESによって再開することができる。2種類の発現カセットを使用しようとするときには、それらをセンス(同一転写方向)またはアンチセンス(反対転写方向)配向に配置することができる。
pIX、またはpIXおよびE4orf3の両方の発現の制御に適する異種プロモーターの範囲は極めて広範であり、当業者の到達範囲内にある。プロモーターは、好ましくは、構成、誘導、腫瘍特異的および組織特異的プロモーターからなる群から選択される。このようなプロモーターは、本発明の方法に関して上記されている。
上記のように、「アデノウイルスベクター」という用語は、このようなベクターを含んでなるウイルス粒子も包含する。ウイルス粒子は、本発明のアデノウイルスベクターが欠損している(少なくともE1機能)ウイルス遺伝子をトランスに供給する補足性細胞系またはヘルパーウイルスを用いて当該技術分野における任意の常法(例えば、Graham and Prevect,「分子生物学の方法、第7巻、遺伝子導入および発現プロトコール(Methods in Molecular Biology, Vol. 7, Gene Transfer and Expression Protocols)」(1991);Murray, The Human Press Inc, Clinton, NJ、またはWO 96/17070号明細書に記載)によって調製して、増殖することができる。組換えアデノウイルスベクターがE4orf3発現核酸配列を含んでなるときには、E4orf3の発現は米国特許第5,670,488号明細書に記載されているようにDNA複製および後期タンパク質合成に必要なE4機能を提供するのに十分であるようにすることができるので、E4のトランス補足性は必要に応じて提供される。細胞系293(Graham et al., J. Gen. Virol. 36 (1977), 59-72)およびPERC6(Fallaux et al., Human Gene Therapy 9 (1998), 1909-1917)は、E1機能の補足に一般的に用いられている。他の細胞系が、二重欠損ベクターを補足するために遺伝子工学処理を施されてきた(Yeh et al., J. Virol. 70 (1996), 559-565; Krougliak and Graham, Human Gene Ther. 6 (1995), 1575-1586; Wang et al., Gene Ther. 2 (1995), 775-783; Lusky et al., J. Virol. 72 (1998), 2022-2033; 欧州特許第919627号明細書、およびWO 97/04119号明細書)。アデノウイルス粒子は培養上清から回収することができるが、リーシスの後に細胞からも回収することができ、必要に応じて標準的手法によって更に精製することができる(例えば、WO 96/27677号明細書、WO 98/00524号明細書、WO 98/26048号明細書、およびWO 00/50573号明細書に記載のクロマトグラフィー、超遠心)。更に、本発明の組換えアデノウイルスベクターは、上記のように特定の宿主細胞にターゲッティングすることができる。
本発明はまた、本発明の方法で用いる本発明の組換えアデノウイルスベクターまたはアデノウイルス由来の分子、および薬学上許容可能なビヒクルを含んでなる組成物も提供する。本発明による組成物は、前進、局所および局在化投与(例えば、局所、エアゾール、点滴、経口投与)など様々な様式の投与のため、常法で製造することができる。全身投与には、例えば、皮下、皮内、筋肉内、静脈内、腹腔内、鞘内、心臓内(例えば、経心臓内(transendocardial)および心臓周囲)、腫瘍内、膣内、肺内、鼻内、気管内、脈管内、動脈内、冠状動脈内または脳室内注射のような注射が好ましい。筋肉内または静脈内注射が、好ましい投与様式である。投与は、単回用量で、または所定時間間隔を置いた後1または数回反復する用量で行うことができる。適当な投与経路および投薬は、様々なパラメーター、例えば、治療を行う症状または疾患、疾患が進行している段階、予防または治療の必要性、および導入を行う治療用トランスジーンによって変えることができる。例えば、組成物は、104−1014iu(感染単位)、有利には105−1013iu、好ましくは106−1012iuの用量の形態で処方することができる。力価は、常法によって決定することができる。本発明の組成物は、様々な形状、例えば固形物(例えば、粉末、凍結乾燥形態)、または液体(例えば、水性)の形態で提供することができる。
更に、本発明の組成物は、前記組換えアデノウイルスベクターまたは前記分子をヒトまたは動物体に送達するための薬学上許容可能なキャリヤーを含んでなることもできる。キャリヤーは、好ましくは、用いた投薬量および濃度でヒトまたは動物の生体に毒性のない薬学上適当な注射可能なキャリヤーまたは希釈剤である(例えば、「レミントンの薬科学、第16版(Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th Ed.)」, Mack Publishing Co (1980)を参照されたい)。これは、好ましくは、等張性、低張性または弱高張性であり、スクロース溶液によって提供されるような比較的低イオン強度を有する。更に、これは、任意の関連溶媒、滅菌した発熱性物質不含水、分散媒、コーティング、および相当物、または希釈剤(例えば、トリス−HCl、アセテート、ホスフェート)、乳化剤、可溶化剤、またはアジュバントを含んでなる水性または部分水性液体キャリヤーを含むことができる。薬学製剤のpHは、ヒトまたは動物で用いるのに相応しくするために適当に調整し、緩衝する。注射用組成物のキャリヤーまたは希釈剤の典型例としては、水、好ましくは生理学的pHで緩衝されている等張食塩溶液(例えば、ポリペプチドまたはタンパク質、例えばヒト血清アルブミンを含むまたは含まないリン酸緩衝食塩水、トリス緩衝食塩水、マンニトール、デキストロース、グリセロール)が挙げられる。このような希釈剤の実例としては、スクロース含有緩衝液(例えば、1M サッカロース、150mM NaCl、1mM MgCl2、54mg/l Tween 80、10mMトリス,pH8.5)、およびマンニトール含有緩衝液(例えば、10mg/mlマンニトール、1mg/ml HSA、20mMトリス,pH7.2および150mM NaCl)が挙げられる。
更に、本発明による組成物は、脂質(例えば、WO 98/44143号明細書; Felgner et al., Proc. West. Pharmacol. Soc. 32 (1987), 115-121; Hodgson and Solaiman, Nature Biotechnology 14 (1996), 339-342; Remy et al., Bioconjugate Chemistry 5 (1994), 647-654に記載のカチオン性脂質、リポソーム、脂質)、ヌクレアーゼ阻害剤、ヒドロゲル、ヒアルロニダーゼ(WO 98/53853号明細書)、コラゲナーゼ、ポリマー、キレート化剤(欧州特許第890362号明細書)のような1種類以上の安定化物質を含み、動物/ヒト体内での分解を防止し、および/または宿主細胞への送達を改良することができる。このような物質は、単独でまたは組み合わせて用いることができる(例えば、カチオン性および中性脂質)。これは、動脈内経路による送達を促進するポリリシンおよびラクトースのゲル複合体(Midoux et al., Nucleic Acid Res. 21 (1993), 871-878)、またはポロキサマー407(Pastore, Circulation 90 (1994), I-517)のような特殊な用途の遺伝子導入を促進することができる物質を含んでなることもできる。アデノウイルスタンパク質は、エンドソームを不安定化し、DNAの細胞への摂取を増加させることができることも示されている。脂質と複合体形成したプラスミドベクターを含む溶液へのアデノウイルスの混合またはタンパク質架橋剤を用いてアデノウイルスに共有結合したポリリシンへのDNAの結合により、ベクターの摂取および発現を実質的に改良することができる(Curiel et al., Am. J. Respir. Cell. Mol. Biol. 6 (1992), 247-252)。
本発明の組成物は、特に慢性疾患、症状または疾病、特に遺伝病(例えば、筋疾患、血友病、嚢胞性線維症、糖尿病関連疾患、Fabry病、Gaucher病、リソソーム貯蔵疾患、貧血)、慢性ウイルス感染症(例えば、B型およびC型肝炎、AIDS)、血管および/または心循環器系の関連疾患(例えば、虚血性疾患、アテローム性動脈硬化症、高血圧、アテローム発生、慢性関節リウマチのような結合組織疾患、目の血管形成疾患、例えば黄斑変性、角膜移植拒絶反応、血管新生緑内障、心筋梗塞、脳血管疾患)、肝臓関連疾患(例えば、肝不全、肝硬変、アルコール肝疾患、化学療法によって誘発される毒性)、免疫疾患(例えば、慢性炎症、自己免疫、および移植拒絶反応)、神経変性疾患(例えば、パーキンソン病、硬化症)の予防または治療を目的とする。
本発明はまた、POD核構造に依存する1種類以上の細胞活性の減少または阻害を提供するための、本発明の組換えアデノウイルスベクターまたは本発明の方法で用いるアデノウイルス由来の分子の使用を提供する。一態様では、このような使用は、ウイルスに感染したときの宿主細胞のPOD核構造に依存する抗ウイルス細胞活性の減少または阻害を表す(例えば、遺伝子療法ベクター、および特に複製欠損アデノウイルスベクター)。もう一つの態様では、前記使用は、特に、上記宿主細胞がウイルスに感染しているときの上記宿主細胞におけるアポトーシスの減少または阻害を表す(例えば、遺伝子療法ベクター、例えば、複製欠損アデノウイルスベクター)。これに関して、上記ウイルスおよび上記分子は、本発明の方法に関して記載した通りに調製される。好ましい態様では、本発明の使用は、宿主細胞での複製欠損アデノウイルスベクターによって誘発される毒性の減少または阻害、および/または宿主細胞でのトランスジーン発現の持続性の増加を表す。通常の遺伝子療法ベクターの投与は、治療生物での急性炎症、毒性および/または細胞死(アポトーシス)と関連していることがあり、これにより感染細胞を除去し且つトランスジーン発現を急速に損失することがある。本発明の方法で用いるアデノウイルスベクターまたは分子は、このようなアポトーシス状態および/または毒性から少なくとも部分的に保護することにより、長期間にわたりトランスジーン発現を行うことができる。
本発明はまた、好ましくはヒトまたは動物体への、遺伝子導入を目的とする医薬品を製造するための、本発明による組換えアデノウイルスベクター、または本発明による方法に関して記載した分子の使用も提供する。本発明の範囲内では、「遺伝子導入」とは、トランスジーンを細胞に導入する方法と理解すべきである。従って、これは、潜在的に抗原性のエピトープを細胞に導入して、細胞性または体液性、または両方であることができる免疫反応を誘導することを含んでなることができる免疫療法も包含する。
このために、組換えアデノウイルスベクターまたはアデノウイルス由来の分子を、治療を行う病状に適応した特異的送達手段によってヒトまたは動物体へイン・ビボで送達することができる。例えば、組換えアデノウイルスベクターをコーティングしたバルーンカテーテルもしくはステント、または、POD調節アデノウイルスペプチドをコードするベクターもしくは複製欠損アデノウイルスベクターを用いて、(Riessen et al., Hum Gene Ther. 4 (1993), 749-758; Feldman and Steg, Medecine/Science 12 (1996), 47-55に記載されている通りに)心循環器系に効率的に到達することができる。これらの治療薬を、直接投与、例えば静脈内、接近可能な腫瘍に、エアゾール化などによって肺に送達することもできる。あるいは、エクス・ビボで遺伝子工学処理を行った真核生物宿主を用いて、本発明の組換えアデノウイルスベクター、または複製欠損アデノウイルスベクター、または本発明の方法で用いるPOD調節アデノウイルスポリペプチドをコードするベクターを含むようにすることができる。このような要素を真核生物細胞に導入する方法は当業者に周知であり、微量のDNAの細胞核への微量注入(Capechi et al., Cell 22 (1980), 479-488)、CaPO4によるトランスフェクション(Chen and Okayama, Mol. Cell Biol. 7 (1987), 2745-2752)、電気穿孔(Chu et al., Nucleic Acid Res. 15 (1987), 1311-1326)、リポフェクション/リポソーム融合(Felgner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84 (1987), 7413-7417)、および粒子衝撃(Yang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87 (1990), 9568-9572)が挙げられる。遺伝子工学処理を行った細胞の移植も、本発明に関して行うことができる(Lynch et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89 (1992), 1138-1142)。
本発明はまた、ヒトまたは動物体の治療方法であって、前記生物に、治療上有効量の本発明の組換えアデノウイルスベクター、または本発明による方法に関連して記載した分子を投与することを含んでなる方法にも関する。
「治療上有効量」とは、治療を行うことが望まれる疾患または症状に通常伴う1以上の徴候を緩和するのに十分な用量である。予防的使用に関するときには、この用語は、疾患または症状の発症を防止しまたは遅延させるのに十分な用量を意味する。
本発明の方法は、前記の疾患または症状に関して予防目的でおよび治療用途で用いることができる。本発明の方法は、通常の遺伝子療法ベクターの投与の後のアポトーシスおよび/または毒性反応を防止しまたは減少させるのに特に有用である。本発明の方法は、様々な方法のいずれかによって、例えばイン・ビボでの直接投与によりまたはエクス・ビボでの方法によって行うことができることを理解すべきである。
本発明の第二の態様では、本発明は、複製コンピテントアデノウイルスベクターであって、元のアデノウイルスpIXおよび/またはE4orf3遺伝子が非機能性であるかまたは欠失しているものも提供する。好ましい態様では、元のアデノウイルスpIXおよびE4orf3遺伝子は、非機能性であるかまたは欠失している。このアデノウイルスベクターは、癌治療での使用を優先的に意味する。
従来技術による複製コンピテントアデノウイルスベクターは、抗ウイルス宿主反応および/またはアポトーシスなどのPOD核構造に依存する(複数の)細胞活性を減少させまたは阻害することができる機能性pIX遺伝子および/または機能性E4orf3を保持しており、従って、複製コンピテントアデノウイルスベクターがこれらの構造を破壊する能力を減少させることに注目すべきである。これに基づいて、本発明は、pIXまたはE4orf3のいずれか、またはpIXとE4orf3デノウイルス遺伝子の両方を欠失しまたは突然変異させ、細胞破壊を増加させるためのそれぞれのPOD関連機能を排除することを提案する。好ましくは、元のアデノウイルスpIXおよび/またはE4orf3遺伝子を、例えば、STOPコドンをそれぞれのコード配列に導入することによって、突然変異させてその(それらの)発現を防止する。しかし、これらのポリペプチドのPOD調節機能のみを破壊する1以上の突然変異を導入することも考えられる。例えば、pIXに関しては、適当なpIX突然変異体は、POD調節機能を欠いているが、ウイルスキャプシドへの組込みを妨げないものである。このようなpIX突然変異体をpIXタンパク質のC末端部分、特にロイシンリッチコイルドコイル(coiled-coil)ドメインで突然変異させる。これに関して、ロイシンリピートを、1以上の位置での無極性残基の正確な整列を妨害することによって、または疎水性結合を妨害することによって崩壊させることができる。適当なpIX突然変異体としては、Rosa-Calatrava et al. (J. Virol. 71 (2001), 7131-7141)に記載されているものが挙げられ、これは114位のロイシン残基のプロリンによる置換(L114P)、または117位のバリン残基のアスパラギン酸による置換(V117D)、または114位のロイシン残基のプロリン置換および117位のバリン残基のアスパラギン酸による置換(L−V)を含む。
本発明で用いられる「複製コンピテント」という用語は、任意のトランス−補足性の非存在下で宿主細胞で複製することができるアデノウイルスベクターを表す。本発明に関連して、この用語は、癌または過剰増殖性宿主細胞で一層良好にまたは選択的に複製するように遺伝子工学処理を行っている複製選択的または条件付き複製性のアデノウイルスベクターも包含する。このような複製コンピテントアデノウイルスベクターの例は当該技術分野で周知であり、当業者であれば容易に入手できる(例えば、Hernandez-Alcoceba et al., Human Gene Ther. 11 (2000), 2009-2024; Nemunaitis et al., Gene Ther. 8 (2001), 746-759; Alemany et al., Nature Biotechnology 18 (2000), 723-727を参照されたい)。以前と同様に、「アデノウイルスベクター」という用語は、ベクターDNA、並びに通常の技術によってそれから生成したウイルス粒子を包含する。更に、これは、細胞特異的マーカー、組織特異的マーカー、細胞受容体、ウイルス抗原、抗原性エピトープ、または腫瘍関連マーカーを認識して結合することができるターゲッティング残基を表面に有する「ターゲッティングした」アデノウイルスベクターも包含する。これに関して、アデノウイルスの細胞ターゲッティングは、ウイルスの表面に存在するアデノウイルスポリペプチドをコードする遺伝子修飾によって(例えば、ファイバーおよび/またはペントン)、または上記のような化学的カップリングによって行うことができる。
本発明による複製コンピテントアデノウイルスベクターは、野生型アデノウイルスゲノムであることができ、または例えば、条件付き複製性のアデノウイルスベクターを生成するために、ウイルスゲノムに修飾を導入することによってそれから誘導することができる。このような(複数の)修飾としては、コード配列および/または調節配列における1種類以上のヌクレオチドの欠失、挿入、および/または突然変異が挙げられる。好ましい修飾は、腫瘍または癌細胞に特異的に存在する細胞活性に依存する上記複製コンピテントアデノウイルスベクターを付与するものである。これに関して、p53またはRb結合を介して細胞サイクルの活性化に関与している遺伝子のような腫瘍細胞で非必須になる(複数の)ウイルス遺伝子は、完全にまたは部分的に欠失または突然変異することができる。例えば、このような条件付き複製性のアデノウイルスベクターを、55kDaタンパク質をコードするアデノウイルスE1B遺伝子の完全な欠失によって、またはE1B領域の完全な欠失によって遺伝子工学処理を行い、p53結合を排除することができる。もう一つのとしては、E1A領域の完全な欠失により、固有のまたはIL−6により誘導されるE1A様活性に依存するアデノウイルスベクターが作製される。第二の方法では、ウイルス遺伝子の転写を制御する元のウイルスプロモーターを、腫瘍特異的プロモーターに代えることができる。例えば、E1Aおよび/またはE1B遺伝子の調節を、PSA、カリクレイン、プロバシン、またはAFPプロモーターのような腫瘍特異的プロモーターの制御下に置くことができる。
本発明に関して、複製コンピテントアデノウイルスベクターは、Adenoviridae科の任意のウイルス、望ましくはMastadenovirus属(例えば、哺乳類アデノウイルス)またはAviadenovirus属(例えば、トリアデノウイルス)から誘導することができる。アデノウイルスは、任意の血清型であることができる。アデノウイルスの供給源として用いることができるアデノウイルスストックを、現在アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC, Rockville, Md.)からまたは任意の他の供給源から入手可能なアデノウイルスの任意の他の血清型から入手することができるアデノウイルス血清型1〜47から増幅することができる。例えば、アデノウイルスは、サブグループA(例えば、血清型12、18、および31)、サブグループB(例えば、血清型3、7、11、14、16、21、34、および35)、サブグループC(例えば、血清型1、2、5、および6)、サブグループD(例えば、血清型8、9、10、13、15、17、19、20、22−30、32、33、36〜39、および42〜47)、サブグループE(血清型4)、サブグループF(血清型40および41)、または任意の他のアデノウイルス血清型であることができる。しかしながら、好ましくは、アデノウイルスは、血清型2、5または9である。
有利には、本発明の複製コンピテントアデノウイルスベクターは、転写および/または翻訳調節要素の制御下に置き宿主細胞で発現させるトランスジーンをさらに含んでなる。上記のように、「トランスジーン」という用語は、任意の起源のものであり且つゲノムDNA、cDNA、またはゲノムRNA、mRNA、アンチセンスRNA、リボソームRNA、リボザイムまたはトランスファーRNAのようなRNAをコードする任意のDNAから単離することができる核酸を表す。トランスジーンは、オリゴヌクレオチド(すなわち、大きさが100bp未満の小さな核酸)であることもできる。これは、ゲノムDNAから遺伝子工学処理を行って1個以上のイントロン配列(すなわち、ミニ遺伝子)の総てまたは一部を除去することができる。好ましい態様では、本発明のこの態様で用いるトランスジーンは、患者、特に癌または過剰増殖性疾患の患者に投与するときに治療または防御活性を有する遺伝子産物をコードする。このような治療または防御活性は、上記疾患または上記症状の徴候の経過に対する有益な効果と相関させることができる。トランスジーンは、これを導入する宿主細胞と同種または異種であることができる。適当な抗腫瘍性遺伝子産物をコードするトランスジーンを選択することは、当業者の到達範囲内にある。一般的には、当業者は、すなわち特許請求を行う発明の実施を除いて、過度の実験を行うことなく、このような治療特性を得ることを合理的に期待することができるように、予め得た結果に基づいて選択することができる。有利には、トランスジーンは、任意の起源(原核生物、下等または高等真核生物、植物、ウイルスなど)からのポリペプチド(大きさに関わらずポリヌクレオチドの任意の翻訳生成物)をコードする。これは、元のポリペプチド、変異体、天然に相対物を持たないキメラポリペプチド、またはそれらの断片であってもよい。有利には、本発明で用いるトランスジーンは、身体からの有害細胞を制限しまたは除去するため毒性効果を介して作用する少なくとも1種類のポリペプチドをコードする。
好ましいトランスジーンとしては、自殺遺伝子、毒素、免疫毒素(Kurachi et al., Biochemistry 24 (1985), 5494-5499)、溶解性ポリペプチド、細胞傷害性ポリペプチド、アポトーシスインデューサー(例えば、p53、Bas、Bcl2、BclX、Bad、およびそれらの拮抗物質)および血管新生ポリペプチド(例えば、血管内非増殖因子VEGFのファミリーの一員、すなわち、ヘパリン結合VEGF GeneBank受入番号M32977)をコードする遺伝子、形質転換増殖因子(TGF、特に、TGFαおよびβ)、上皮増殖因子(EGF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF、特に、FGFαおよびβ)、腫瘍壊死因子(TNF、特に、TNFαおよびβ)、CCN(CTGF、Cyr61、Nov、Elm−1、Cop−1およびWisp−3)、散乱因子/肝細胞増殖因子(SH/HGF)、アンギオゲニン、アンギオポエチン(特に、1および2)、アンギオテンシン−2、プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)およびウロキナーゼ(uPA)が挙げられるが、これらに限定されない。
好ましい態様では、トランスジーンは自殺遺伝子である。本発明に関して、「自殺遺伝子」という用語は、任意の遺伝子であって、その産物が不活性物質(プロドラッグ)を細胞傷害性物質に転換することによって細胞死を生じることができる遺伝子を包含する。HSV−1のチミジンキナーゼ(TK)をコードする遺伝子は、自殺遺伝子ファミリーのプロトタイプを構成する(Caruso et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90 (1993), 7024-7028; Culver et al., Science 256 (1992), 1550-1552)。TKは、アシクロビル(acyclovir)またはガンシクロビル(ganciclovir)のようなヌクレオシド類似体(プロドラッグ)の、新たに形成されるDNA鎖に組込んで細胞分裂を阻害する毒性ヌクレオシドへの形質転換を触媒する。多数の自殺遺伝子/プロドラッグ配合物が、現在入手可能である。本発明に関して、特に興味深いものは、ラットシトクロムp450およびシクロホスホファミド(Wei et al., Human Gene Ther. 5 (1994), 969-978)、Escherichia coli (E. coli)プリンヌクレオシドホスホリラーゼおよび6−メチルプリンデオキシリボヌクレオシド(Sorscher et al., Gene Therapy 1 (1994), 223-238)、E. coliグアニンホスホリボシルトランスフェラーゼおよび6−チオキサンチン(Mzoz et al., Human Gene Ther. 4 (1993), 589-595)である。しかしながら、更に好ましい態様では、本発明の複製コンピテントアデノウイルスベクターは、シトシンデアミナーゼ(CDアーゼ)またはウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ(UPRTアーゼ)活性またはCDアーゼおよびUPRTアーゼ活性を両方とも有するポリペプチドをコードする自殺遺伝子を含んでなり、これはプロドラッグ5−フルオロシトシン(5−FC)と共に用いることができる。例えば、CDアーゼおよびUPRTアーゼ活性を有するポリペプチドをコードする自殺遺伝子の組合せの使用も、本発明に関して考えることができる。
CDアーゼおよびUPRTアーゼ活性は原核生物および下等真核生物で明らかにされているが、哺乳類には存在しない。CDアーゼは、通常は外来シトシンを加水分解脱アミノ化によってウラシルに変換するピリミジン代謝経路に関与しており、一方UPRTアーゼはウラシルをUMPに変換する。しかしながら、CDアーゼはシトシンの類似体5−FCも脱アミノ化し、これによって5−フルオロウラシル(5−FU)を形成し、これはUPRTアーゼ活性によって5−フルオロ−UMP(5−FUMP)に転換されると細胞毒性が高い。
適当なCDアーゼコード遺伝子としては、Saccharomyces cerevisiae FCY1遺伝子(Erbs et al., Curr. Genet. 31 (1997), 1-6; WO 93/01281)、およびE. coli codA遺伝子(欧州特許第402 108号明細書)が挙げられるが、これらに限定されない。適当なUPRTアーゼコード遺伝子としては、E. coli (upp遺伝子; Anderson et al., Eur. J. Biochem. 204 (1992), 51-56)、Lactococcus lactis (Martinussen and Hammer, J. Bacteriol. 176 (1994), 6457-6463)、Mycobacterium bovis (Kim et al., Biochem. Mol. Biol. Int 41 (1997), 1117-1124)、Bacillus subtilis (Martinussen et al., J. Bacteriol. 177 (1995), 271-274)、およびSaccharomyces cerevisiae (FUR−1遺伝子; Kern et al., Gene 88 (1990), 149-157)由来のものが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、CDアーゼコード遺伝子はFCY1遺伝子から誘導され、UPRTアーゼコード遺伝子FUR−1遺伝子から誘導される。
本発明は、遺伝子産物の細胞傷害活性が保存されるという条件で1または数個のヌクレオチドを付加、欠失、および/または置換によって修飾した突然変異体自殺遺伝子の使用も包含する。ある程度の数のCDアーゼおよびUPRTアーゼ突然変異体は、文献に報告されている。好ましくは、本発明で用いる自殺遺伝子は、CDアーゼおよびUPRTアーゼ活性を有する融合ポリペプチドをコードする(WO 96/16183号明細書)。特に好ましい態様では、融合ポリペプチドは、最初の35個の残基が欠失したFUR−1遺伝子によってコードされるUPRTアーゼの突然変異体を含んでなる(WO 99/54481号明細書に開示のFCU−1)。
複製コンピテントアデノウイルスベクターは1個以上のトランスジーンを含んでなることができる。これに関して、自殺遺伝子産物をコードする遺伝子とサイトカイン(例えば、IL−2、IL−8、IFNg、GM−CSF)または免疫刺激ポリペプチド(例えば、B7.1、B7.2、ICAMなど)との配合物が、本発明に関して有利であることがある。異なるトランスジーンを同一(ポリシストン性)または異なる調節要素であって、ベクター内の様々な部位に同一方向または反対方向で挿入することができるものによって制御することができる。
好ましくは、宿主細胞でトランスジーンの発現を制御する調節要素は、腫瘍特異的プロモーターを含んでなる。このようなプロモーターは、当該技術分野で知られている。代表的な例は、本発明の方法に関連して上記に記載されている。
本発明はまた、下記(i)〜(iv)を含んでなるウイルス粒子の製造方法も提供する:
(i) 本発明の複製コンピテントアデノウイルスベクターを許容細胞に導入して、トランスフェクションした許容細胞を得、
(ii) トランスフェクションした許容細胞を適当な時間適当な条件下で培養して、ウイルス粒子を産生させ、
(iii) ウイルス粒子を細胞培養物から回収し、
(iv) 必要に応じて、回収したウイルス粒子を精製する。
(i) 本発明の複製コンピテントアデノウイルスベクターを許容細胞に導入して、トランスフェクションした許容細胞を得、
(ii) トランスフェクションした許容細胞を適当な時間適当な条件下で培養して、ウイルス粒子を産生させ、
(iii) ウイルス粒子を細胞培養物から回収し、
(iv) 必要に応じて、回収したウイルス粒子を精製する。
好ましくは、許容細胞は哺乳類細胞であり、更に好ましくはヒト細胞である。アデノウイルス粒子は培養上清から回収することができるが、リーシス後の細胞から回収することもでき、必要に応じて標準的手法(例えば、WO 96/27677号明細書、WO 98/00524号明細書、WO 98/26048号明細書、およびWO00/50573号明細書に記載のクロマトグラフィー、超遠心)によって更に精製することができる。更に、本発明の複製コンピテントアデノウイルスベクターは、本発明の方法に関連して上記した特定の宿主細胞にターゲッティングすることができる。
本発明はまた、本発明の複製コンピテントアデノウイルスベクターを含んでなるウイルス粒子も提供する。このようなウイルス粒子は、上記段落で開示した方法を用いて調製することができる。
本発明は、複製コンピテントアデノウイルスベクターを含んでなるまたは本発明のウイルス粒子に感染した宿主細胞も提供する。本発明で用いる「宿主細胞」という用語は、単一実在物を表すか、または一層大きな細胞の集合体の一部であることができる。このような一層大きな細胞の集合体は、例えば、本発明の方法に関連して上記した細胞培養物(混合または純粋)、組織、臓器、臓器系、または生体(例えば、哺乳類など)を含んでなることができる。好ましくは、これに関する宿主細胞は、癌性、腫瘍性または過剰増殖性であるか、または癌、腫瘍または過剰増殖物を発生しやすい。本発明は、天然でヒト生体に属するおよび身体から単離されない宿主細胞には関係しないことが重要である。
本発明は、複製コンピテントアデノウイルスベクター、ウイルス粒子または本発明の宿主細胞を含んでなる組成物も提供する。本発明による組成物は、全身、局所および局在化投与(例えば、局所、エアゾール、点滴、経口投与)など様々な投与様式について通常の方法で製造することができる。全身投与には、例えば、皮下、皮内、筋肉内、静脈内、腹腔内、鞘内、心臓内(例えば、経心臓内(transendocardial)および心臓周囲)、腫瘍内、膣内、肺内、鼻内、気管内、脈管内、動脈内、冠状動脈内または脳室内注射のような注射が好ましい。筋肉内、腫瘍内および静脈内注射が、好ましい投与様式である。投与は、単回用量で、または所定時間間隔を置いた後1または数回反復する用量で行うことができる。適当な投与経路および投薬は、様々なパラメーター、例えば、治療を行う症状または疾患、疾患が進行している段階、予防または治療の必要性、および導入を行う治療用トランスジーンによって変えることができる。例えば、組成物は、104〜1014iu(感染単位)、有利には105〜1013iu、好ましくは106〜1012iuの用量の形態で処方することができる。力価は、常法によって決定することができる。本発明の組成物は、様々な形状、例えば固形物(例えば、粉末、凍結乾燥形態)、または液体(例えば、水性)の形態で提供することができる。
更に、本発明の組成物は、上記複製コンピテントアデノウイルスベクターをヒトまたは動物体に送達するための薬学上許容可能なキャリヤーをさらに含んでなることもできる。キャリヤーは、好ましくは、用いた投薬量および濃度でヒトまたは動物の生体に毒性のない薬学上適当な注射可能なキャリヤーまたは希釈剤である(例えば、「レミントンの薬科学、第16版(Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th Ed.)」, Mack Publishing Co (1980)を参照されたい)。これは、好ましくは、等張性、低張性または弱高張性であり、スクロース溶液によって提供されるような比較的低イオン強度を有する。更に、これは、任意の関連溶媒、滅菌した発熱性物質不含水、分散媒、コーティング、および相当物、または希釈剤(例えば、トリス−HCl、アセテート、ホスフェート)、乳化剤、可溶化剤、またはアジュバントを含んでなる水性または部分水性液体キャリヤーを含むことができる。薬学製剤のpHは、ヒトまたは動物で用いるのに相応しくするために適当に調整し、緩衝する。注射用組成物のキャリヤーまたは希釈剤の典型例としては、水、好ましくは生理学的pHで緩衝されている等張食塩溶液(例えば、ポリペプチドまたはタンパク質、例えばヒト血清アルブミンを含むまたは含まないリン酸緩衝食塩水、トリス緩衝食塩水、マンニトール、デキストロース、グリセロール)が挙げられる。このような希釈剤の実例としては、スクロース含有緩衝液(例えば、1M サッカロース、150mM NaCl、1mM MgCl2、54mg/l Tween 80、10mMトリス,pH8.5)、およびマンニトール含有緩衝液(例えば、10mg/mlマンニトール、1mg/ml HSA、20mMトリス,pH7.2および150mM NaCl)が挙げられる。
更に、本発明による組成物は、脂質(例えば、WO 98/44143号明細書; Felgner et al., Proc. West. Pharmacol. Soc. 32 (1987), 115-121; Hodgson and Solaiman, Nature Biotechnology 14 (1996), 339-342; Remy et al., Bioconjugate Chemistry 5 (1994), 647-654に記載のカチオン性脂質、リポソーム、脂質)、ヌクレアーゼ阻害剤、ヒドロゲル、ヒアルロニダーゼ(WO 98/53853号明細書)、コラゲナーゼ、ポリマー、キレート化剤(欧州特許第890362号明細書)のような1種類以上の安定化物質を含み、動物/ヒト体内での分解を防止し、および/または宿主細胞への送達を改良することができる。このような物質は、単独でまたは組み合わせて用いることができる(例えば、カチオン性および中性脂質)。これは、動脈内経路による送達を促進するポリリシンおよびラクトースのゲル複合体(Midoux et al., Nucleic Acid Res. 21 (1993), 871-878)、またはポロキサマー407(Pastore, Circulation 90 (1994), I-517)のような特殊な用途の遺伝子導入を促進することができる物質を含んでなることもできる。
本発明の組成物は、特に癌の予防または治療を目的としている。「癌」という用語は、拡散性または局在化腫瘍、転移、癌性ポリープ、および前新生物病巣(例えば、形成異常)などの任意の癌性症状、並びに望ましくない細胞増殖から生じる疾病を包含する。特に、「癌」という用語は、胸部、子宮頸(特に、パピローマウイルスによって誘発されるもの)、前立腺、肺、膀胱、肝臓、結腸直腸、膵臓、胃、食道、喉頭、中枢神経系、血液(リンパ腫、白血病など)の癌、および黒色腫、および肥満細胞腫を表す。
本発明はまた、癌または過剰増殖性細胞疾患に罹っている患者の治療方法であって、患者に、治療上有効量の本発明の複製コンピテントアデノウイルスベクター、ウイルス粒子、または宿主細胞を投与することを含んでなる方法も提供する。「治療上有効量」とは、通常は治療が所望な疾患または症状に関連した1以上の徴候を緩和するのに十分な用量である。予防的使用に関するときには、この用語は、疾患または症状の発症を妨げまたは遅延させるのに十分な用量を意味する。
本発明の治療法を、上記の疾患または症状に関して予防目的でおよび治療用途で用いることができる。本発明の方法は、本明細書に記載の方法を用いて、腫瘍の発症を防止しまたは任意の種類の存在する腫瘍を後退させるのに特に有用である。本発明の方法は、様々な方法のいずれによって行うこともできることを理解すべきである。有利には、本発明の複製コンピテントアデノウイルスベクターまたは組成物を、任意の通常の生理学的に許容可能な投与経路によって、例えば静脈内注射によって、接近可能な腫瘍に、エアゾールまたは点滴により肺に、適当なカテーテルを用いて血管系などに、イン・ビボで直接投与することができる。患者から細胞(骨髄細胞、末梢血リンパ球、筋原細胞など)を取り出し、細胞に本発明の複製コンピテントアデノウイルスベクターを当該技術分野の手法に準じて導入し、ベクター担持細胞を患者に再投与することからなるエクス・ビボ法を採用することもできる。
好ましい態様によれば、本発明の方法が自殺遺伝子を発現する複製コンピテントアデノウイルスベクターを用いるときには、発現した自殺遺伝子産物に特異的なプロドラッグの薬学上許容可能な量を更に投与するのが有利であることがある。2つの投与を、同時にまたは連続的に行うことができるが、好ましくは、本発明のアデノウイルス粒子の後にプロドラッグを投与する。例えば、50〜500mg/kg/日のプロドラッグの用量を用いることができるが、200mg/kg/日の用量が好ましい。プロドラッグは、標準的実施に準じて投与される。経口投与が好ましい。プロドラッグの単回用量、または宿主生物または宿主細胞内で産生される有毒物質を代謝することができる十分な長時間をおいて反復する用量を投与することができる。上記のように、プロドラッグガンシクロビルまたはアシクロビルは、TK HSV−1遺伝子産物と組み合わせて用いることができ、5−FCは、FCY1、FUR1および/またはFCU1遺伝子によってコードされるUPRTアーゼおよび/またはCDアーゼ活性を発現する複製コンピテントアデノウイルスベクターの使用と組み合わせて用いることができる。
疾患または症状の予防または治療は、本発明の方法を単独で、または所望ならば、他の現在利用可能な方法(例えば、放射線、化学療法、手術または免疫抑制治療)と組み合わせて用いて行うことができる。
本発明はまた、癌または過剰増殖性細胞疾患を遺伝子療法によって治療するための医薬を製造するための、本発明の複製コンピテントアデノウイルスベクター、ウイルス粒子、または宿主細胞の使用を提供する。本発明の範囲内では、「遺伝子療法」とは、治療遺伝子を細胞に導入する方法と理解すべきである。従って、これは、好ましくは、潜在的に抗原性のエピトープを細胞に導入して、細胞性または体液性、または両方であることができる免疫反応を誘導することに関する免疫療法も包含する。
本発明はまた、宿主細胞のアポトーシス状態を高める方法であって、宿主細胞に、少なくとも本発明の複製コンピテントアデノウイルスベクター、ウイルス粒子、または宿主細胞を導入することを含んでなる方法も提供する。好ましい態様では、この方法はイン・ビトロで行われる。アポトーシスの増加は、機能的pIXおよび/またはE4orf3遺伝子を保持する通常の複製コンピテントアデノウイルスベクターと比較して本発明の複製コンピテントアデノウイルスベクターの存在下で宿主細胞、組織または生体のアポトーシス状態を比較することによって評価することができる。その結果、本発明の複製コンピテントアデノウイルスベクターを含む宿主細胞、組織または生体は、一層アポトーシス(細胞死)が起こりやすく、通常の複製コンピテントアデノウイルスベクターを含む宿主細胞、組織または生体と比較して余り速やかにまたは余り効率的には回収されない。このようなアポトーシスの改良は、例えば、細胞死、FACS分析によるアポトーシスの経過で産生される1または数個のマーカーの濃度(アポトーシス関連マーカーの少なくとも2−10倍の増加)および/または形態学的分析(例えば、核周縁部におけるクロマチンの凝縮の増加、DNA分裂、核骨格タンパク質の分解、アポトーシス体の形成、および/または核断片化)を評価することによって決定することができる。
本発明はまた、宿主細胞でのアポトーシス(すなわち、アポトーシス状態)を増加させるための医薬を製造するための、本発明の複製コンピテントアデノウイルスベクター、ウイルス粒子、または宿主細胞の使用も提供する。
本発明を例示的に記載してきたが、用いてきた用語は制限よりはむしろ記載の単語の本質を示そうとするものであることを理解すべきである。本発明の多くの修飾および変更が、上記教示を考慮すれば可能であることは明らかである。従って、特許請求の範囲内で、本発明を、本明細書に具体的に記載しているものとは異なる方法で実施することができることを理解すべきである。
上記で引用された特許、公報、およびデータベースの開示内容の総ては、それぞれの個々の特許、公報または記載事項の内容が具体的かつ個々にその開示の一部として本明細書に引用されているのと同程度に、全体としてその開示の一部として本明細書に引用されている。
下記の例は、本発明を説明するためのものである。
下記の構築は、Sambrook et al.著の「分子クローニング、実験室便覧(Molecular Cloning, A Laboratory Manual)」(Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor NY (2001))に詳細に説明されている遺伝子工学および分子クローニングの標準的手法に従って行う。細菌プラスミドを用いるクローニング段階はEscherichia coli (E. coli) 5KまたはBJ株で行い、M13をベースとするベクターを用いるクローニング段階はE. coli NM522で行う。PCR増幅は、「PCR−プロトコール-方法および応用の指針(PCR-Protocols - A guide to methods and applications)」(Innis, Gelfand, Sninsky and White監修, Academic Press Inc (1990))に記載の標準的手続きに従って行う。これ以後に記載の構築で用いるアデノウイルス断片は、Chroboczek et al. (Virology 186 (1992), 280-285)またはGeneBankデータバンクに参照番号M73260で開示されたAd5ゲノムにおけるそれらの位置に準じて示される。総てのウイルスゲノムは、導入プラスミドとChartier et al. (J. Virol. 70 (1996), 4805-4810)に記載のウイルス主鎖を含むPacIで線形化したプラスミドとの間でEscherichia coliでの相同組換えによって感染性プラスミドとして構築した。細胞は、標準的手続きまたは製造業者の推奨に従って培養する。
材料および方法
細胞およびウイルス
単層ヒト肺癌A549細胞(Smith, American Review of Respiratory Disease 115 (1977), 285-293; ATCC CCL-185)、293細胞(Graham et al., J. Gen. Virol. 36 (1977), 59-72; ATCC CRL-1573)および293−E4ORF6/7細胞(Lusky et al., J. Virol. 72 (1998), 2022-2032)を、10%ウシ胎仔血清(FCS)を補足したDulbecco培地で増殖させた。細胞を、80%コンフルエンシーで、2%血清中20PFU/細胞の感染多重度(MOI)で様々なアデノウイルス(野生型(wt)Ad5、pIX V117Dで突然変異したAd5、またはAdベクター)に感染させた。A549細胞を、上記のようにリン酸カルシウム共沈によってトランスフェクションした(Chen, Mol. Cell Biol. 7 (1987), 2745-2752)。
細胞およびウイルス
単層ヒト肺癌A549細胞(Smith, American Review of Respiratory Disease 115 (1977), 285-293; ATCC CCL-185)、293細胞(Graham et al., J. Gen. Virol. 36 (1977), 59-72; ATCC CRL-1573)および293−E4ORF6/7細胞(Lusky et al., J. Virol. 72 (1998), 2022-2032)を、10%ウシ胎仔血清(FCS)を補足したDulbecco培地で増殖させた。細胞を、80%コンフルエンシーで、2%血清中20PFU/細胞の感染多重度(MOI)で様々なアデノウイルス(野生型(wt)Ad5、pIX V117Dで突然変異したAd5、またはAdベクター)に感染させた。A549細胞を、上記のようにリン酸カルシウム共沈によってトランスフェクションした(Chen, Mol. Cell Biol. 7 (1987), 2745-2752)。
Adベクター:
Ad(CMVIX)を図1に示す。これは、E1、E3およびE4を欠失したAdTG9546ベクターから得られ(Lusky et al., J. Virol. 72 (1998), 2022-2032; E1欠失 nt 459-nt 3327、E3欠失 nt 28249-nt 30758、およびE4欠失 nt 32994-nt 34998)、E4欠失領域の代わりにヒトCMV(hCMV)プロモーターの転写制御下にあるAd5pIXコード配列(nt 3609-4031)、キメライントロン(免疫グロブリン遺伝子受容体スプライス部位に融合したヒトβグロブリンドナースプライス部位を含んでなるPromega製のpCIベクターで見られる)、およびウサギβ−グロブリン遺伝子由来のポリアデニル化シグナル(GeneBankデータバンクで参照番号K03256で開示されている配列のnt 1542-2064)を含む。Ad5pIXコード配列を、5’および3’末端にそれぞれSalIおよびEcoRV部位を含むオリゴヌクレオチドを用いるPCRによって増幅し、発現カセットのポリリンカーへの指定クローニングを行った(5’オリゴヌクレオチド: 5'-GAATTCGTCGACCCATGAGCACCAACTCG-3'(配列番号:1)および3’−オリゴヌクレオチド: 5'-GAATTCGATATCTTAAACCGCATTGGGAGGGGAGG-3'(配列番号:2))。シークエンシングの後、増幅生成物を導入プラスミドにサブクローニングした。Ad5pIX発現カセットに、E4領域での相同組換えに必要なアデノウイルス配列をフランキングさせた。
Ad(CMVIX)を図1に示す。これは、E1、E3およびE4を欠失したAdTG9546ベクターから得られ(Lusky et al., J. Virol. 72 (1998), 2022-2032; E1欠失 nt 459-nt 3327、E3欠失 nt 28249-nt 30758、およびE4欠失 nt 32994-nt 34998)、E4欠失領域の代わりにヒトCMV(hCMV)プロモーターの転写制御下にあるAd5pIXコード配列(nt 3609-4031)、キメライントロン(免疫グロブリン遺伝子受容体スプライス部位に融合したヒトβグロブリンドナースプライス部位を含んでなるPromega製のpCIベクターで見られる)、およびウサギβ−グロブリン遺伝子由来のポリアデニル化シグナル(GeneBankデータバンクで参照番号K03256で開示されている配列のnt 1542-2064)を含む。Ad5pIXコード配列を、5’および3’末端にそれぞれSalIおよびEcoRV部位を含むオリゴヌクレオチドを用いるPCRによって増幅し、発現カセットのポリリンカーへの指定クローニングを行った(5’オリゴヌクレオチド: 5'-GAATTCGTCGACCCATGAGCACCAACTCG-3'(配列番号:1)および3’−オリゴヌクレオチド: 5'-GAATTCGATATCTTAAACCGCATTGGGAGGGGAGG-3'(配列番号:2))。シークエンシングの後、増幅生成物を導入プラスミドにサブクローニングした。Ad5pIX発現カセットに、E4領域での相同組換えに必要なアデノウイルス配列をフランキングさせた。
Ad(CMVIXV117D)は、これがCMVプロモーターの制御下で野生型pIXの代わりにpIXで突然変異したV117Dを発現すること以外は、Ad(CMVIX)と同じである。V117Dは、117位のバリン残基(V)がアスパラギン酸(D)によって置換されているpIX突然変異体であり(「QuickChange位置指定突然変異誘発」システム; Stratagene)、wtpIXのC末端コイルドコイルドメインを崩壊する(Rosa-Calatrava et al., J. Virol. 75 (2001), 7131-7141)。
Ad(CMVIXV117D)およびAd(CMVIX)を、293−E4ORF6/7細胞上で増殖させた。ウイルス増殖、精製、およびDNA結合タンパク質(DBP)の間接免疫蛍光による感染性単位(IU/ml)の滴定は、Lusky et al.に記載の通りであった(J. Virol. 72 (1998), 2022-2032)。
組換え真核生物発現ベクター
pIXコード配列を、以前に記載されているように、短い欠失(del13-15、del22-23、del26-28、del63-70)または点突然変異(Q106K、E113K、L114P、V117DおよびL−V)を導入することによって突然変異した(Rosa-Calatrava et al., J. Virol. 75 (2001), 7131-7141)。例えば、様々な突然変異したpIX配列を、3種類の発現ベクターであるpXJ41プラスミド(Rosa-Calatrava et al., J. Virol. 75 (2001), 7131-7141)、pMプラスミドおよびVP16プラスミド(CLONTECH, Palo Alto, CA)に導入して、それぞれGAL4 DNA結合ドメインおよびVP16トランス活性化ドメインを有するN末端領域における融合タンパク質として発現させた。
pIXコード配列を、以前に記載されているように、短い欠失(del13-15、del22-23、del26-28、del63-70)または点突然変異(Q106K、E113K、L114P、V117DおよびL−V)を導入することによって突然変異した(Rosa-Calatrava et al., J. Virol. 75 (2001), 7131-7141)。例えば、様々な突然変異したpIX配列を、3種類の発現ベクターであるpXJ41プラスミド(Rosa-Calatrava et al., J. Virol. 75 (2001), 7131-7141)、pMプラスミドおよびVP16プラスミド(CLONTECH, Palo Alto, CA)に導入して、それぞれGAL4 DNA結合ドメインおよびVP16トランス活性化ドメインを有するN末端領域における融合タンパク質として発現させた。
野生型の69kDaアイソフォームPML(PML3B, 受入番号M80185)およびRINGフィンガー(Q59C60-E59L60)またはコイルドコイルドメイン(P1:del216-333)の相当する突然変異体を発現するプラスミドpSG5は、以前に報告した通りであった(De The et al., Cell 66 (1991), 675 - 684)。wtまたは突然変異した69kDaアイソフォームPMLタンパク質をコードする配列も、インフレームでpMおよびpVP16プラスミドに導入し、それぞれGAL4 DNA結合ドメインおよびVP16トランス活性化ドメインと融合して発現した(Sternsdorf et al., J. Cell Biol. 139 (1997), 1621-1634)。
G4−TK−CATレポーター(Webster et al., Cell 52 (1988), 169-178)は、HSV−1チミジンキナーゼ(TK)プロモーター(−105/+51)によって運ばれるCAT遺伝子を含み、TKプロモーターに対して5’を挿入したGAL4結合部位を有する。TATAボックス(TATTAAG)を、「Quick Change位置指定突然変異誘発」システム(Stratagene)を用いてTGTAボックスに突然変異した。総ての構築物は、DNAシークエンシングによって立証した。
抗体
ウサギポリクローナルアンチpIXおよびアンチAd5ペントンベース抗体は、以前に報告した(Rosa-Calatrava et al., J. Virol. 75 (2001), 7131-7141)。ニワトリアンチPML、ウサギアンチPML(De The et al., Cell 66 (1991), 675-684)、アンチSP100(De The et al., Cell 66 (1991), 675 - 684)、およびアンチヘキソン(Valbiotech, Paris)抗体は、以前に報告した(Puvion-Dutilleul et al., Experimental Cell Research 218 (1995), 9-16、およびPuvion-Dutilleul et al., Biology of the Cell 91 (1999), 617-628)。モノクローナルアンチファイバー(Legrand et al., J. Virol. 73 (1999), 907-919)は、以前に報告した。モノクローナルアンチPML(PMG3)およびアンチSUMO(アンチ−GMP1)抗体は、それぞれStratageneおよびZymedから購入した。
ウサギポリクローナルアンチpIXおよびアンチAd5ペントンベース抗体は、以前に報告した(Rosa-Calatrava et al., J. Virol. 75 (2001), 7131-7141)。ニワトリアンチPML、ウサギアンチPML(De The et al., Cell 66 (1991), 675-684)、アンチSP100(De The et al., Cell 66 (1991), 675 - 684)、およびアンチヘキソン(Valbiotech, Paris)抗体は、以前に報告した(Puvion-Dutilleul et al., Experimental Cell Research 218 (1995), 9-16、およびPuvion-Dutilleul et al., Biology of the Cell 91 (1999), 617-628)。モノクローナルアンチファイバー(Legrand et al., J. Virol. 73 (1999), 907-919)は、以前に報告した。モノクローナルアンチPML(PMG3)およびアンチSUMO(アンチ−GMP1)抗体は、それぞれStratageneおよびZymedから購入した。
電子顕微鏡検査
固定および埋設
A549細胞の単層に、Ad5 wtまたは突然変異したAdIX/V117D(上記参照)を感染させた。ウイルス吸着の30分後、細胞をPBSで濯ぎ、新鮮な培地を加え、インキュベーションを感染後(pi)18または28時間延長した後、固定した。
固定および埋設
A549細胞の単層に、Ad5 wtまたは突然変異したAdIX/V117D(上記参照)を感染させた。ウイルス吸着の30分後、細胞をPBSで濯ぎ、新鮮な培地を加え、インキュベーションを感染後(pi)18または28時間延長した後、固定した。
通常の研究のため、細胞を0.1M PBS中1.6%グルタルアルデヒド(Taab Lab. Equip. Ltd, Reading, UK)で4℃で1時間固定した。固定段階中に、細胞をプラスチック台からこすり落とし、遠心分離した。生成するペレットを上記緩衝液で濯ぎ、増加濃度のエタノール中で脱水し、Eponに埋設した。超薄切片をFormvar−炭素コート金グリッド(200メッシュ)上に集め、酢酸ウラニルおよびクエン酸鉛で染色した後、Philips400透過型電子顕微鏡で80kVで13,000倍の倍率で観察した。
固形物の免疫金検出のため、細胞培養物をグルタルアルデヒドの代わりに4%ホルムアルデヒド(Merck, Darmstadt, Germany)で固定し、それぞれエタノールおよびEponの代わりにメタノールで脱水し、Lowicryl K4M (Polysciences Europe Gmbh, Eppelheim, Germany)に埋設した。Lowicryl埋設試料の重合は、長波長UV光線(Philips TL 6W蛍光管)下−30℃で5日間行った後、室温にて1日行った。超薄切片をFormvar−炭素コート金グリッド(200メッシュ)上に集め、免疫細胞学の目的で加工した後、酢酸ウラニル染色を行った。
免疫細胞学
Lowicryl切片を有するグリッドをAurion BSA-C (Biovalley, Franceから購入)(0.01%、PBS中)の液滴上に2分間浮遊させ、バックグラウンドを防止した後、下記のようにPBSで希釈した一次抗体の5μl液滴上で30分間インキュベーションした: ウサギアンチpIX(1/50)、アンチファイバー(1/50)またはアンチペントンベース(1/50)抗体、30分間;ウサギアンチPML(ZINA)(1/10)またはアンチSP100(1/20)抗体、1時間;ヤギアンチヘキソン(1/200)抗体、30分間。PBS液滴上で洗浄した後、グリッドをPBSで1/25に希釈した二次抗体5μl液滴上で30分間インキュベーションした:ヤギアンチウサギIgGおよび/またはIgMまたはヤギアンチマウスIgG(British Biocell International LTD, Cardiff, UK)またはサルアンチヤギIgG(Valbiotech, Paris, France)、金粒子に接合、直径10nm。PBS液滴上を速やかに通過した後、グリッドを蒸留水の水流で洗浄し、風乾し、最後に常法で酢酸ウラニルで染色した後、観察した。コントロールについては、ウイルスタンパク質に対して生じた一次抗体は(非感染細胞由来の)細胞材料と反応せず、且つ二次抗体はウイルス材料に非特異的に結合しないことが立証された。
Lowicryl切片を有するグリッドをAurion BSA-C (Biovalley, Franceから購入)(0.01%、PBS中)の液滴上に2分間浮遊させ、バックグラウンドを防止した後、下記のようにPBSで希釈した一次抗体の5μl液滴上で30分間インキュベーションした: ウサギアンチpIX(1/50)、アンチファイバー(1/50)またはアンチペントンベース(1/50)抗体、30分間;ウサギアンチPML(ZINA)(1/10)またはアンチSP100(1/20)抗体、1時間;ヤギアンチヘキソン(1/200)抗体、30分間。PBS液滴上で洗浄した後、グリッドをPBSで1/25に希釈した二次抗体5μl液滴上で30分間インキュベーションした:ヤギアンチウサギIgGおよび/またはIgMまたはヤギアンチマウスIgG(British Biocell International LTD, Cardiff, UK)またはサルアンチヤギIgG(Valbiotech, Paris, France)、金粒子に接合、直径10nm。PBS液滴上を速やかに通過した後、グリッドを蒸留水の水流で洗浄し、風乾し、最後に常法で酢酸ウラニルで染色した後、観察した。コントロールについては、ウイルスタンパク質に対して生じた一次抗体は(非感染細胞由来の)細胞材料と反応せず、且つ二次抗体はウイルス材料に非特異的に結合しないことが立証された。
イン・シテューハイブリダイゼーション
ウイルスRNAを局在化するため、イン・シテューハイブリダイゼーションを、市販のビオチニル化ゲノムプローブ(Enzo Biochemicals Inc., New York, USA)を用いて、以前に報告した通りにLowicryl切片上で行った(Puvion-Dutilleul, et al., Biology of the Cell 91 (1999), 617-628)。簡単に説明すれば、切片をDNアーゼI(1mg/ml,1時間,Worthington Biochemical Corp. Freehold, USA)で消化した後、ハイブリダイゼーション段階を行い、ウイルス性の一本鎖DNAを除去した。タンパク質によって隠されている切片のウイルスRNAを試験的に暴露するため、幾つかの切片をプロテアーゼ溶液の存在下にてインキュベーションした後、DNアーゼ消化を行った。ハイブリダイゼーションは、多湿のチャンバーで37℃で90分間行った。次に、ハイブリッドを、直径が10nmの金粒子に接合したアンチビオチン抗体を用いて検出した(British Biocell International, Cardiff, UK)。最後に、グリッドを酢酸ウラニルで染色した。
ウイルスRNAを局在化するため、イン・シテューハイブリダイゼーションを、市販のビオチニル化ゲノムプローブ(Enzo Biochemicals Inc., New York, USA)を用いて、以前に報告した通りにLowicryl切片上で行った(Puvion-Dutilleul, et al., Biology of the Cell 91 (1999), 617-628)。簡単に説明すれば、切片をDNアーゼI(1mg/ml,1時間,Worthington Biochemical Corp. Freehold, USA)で消化した後、ハイブリダイゼーション段階を行い、ウイルス性の一本鎖DNAを除去した。タンパク質によって隠されている切片のウイルスRNAを試験的に暴露するため、幾つかの切片をプロテアーゼ溶液の存在下にてインキュベーションした後、DNアーゼ消化を行った。ハイブリダイゼーションは、多湿のチャンバーで37℃で90分間行った。次に、ハイブリッドを、直径が10nmの金粒子に接合したアンチビオチン抗体を用いて検出した(British Biocell International, Cardiff, UK)。最後に、グリッドを酢酸ウラニルで染色した。
免疫蛍光
免疫蛍光染色実験は、以前に報告した通りに行った(Rosa-Calatrava et al., J. Virol. 75 (2001), 7131-7141)。
免疫蛍光染色実験は、以前に報告した通りに行った(Rosa-Calatrava et al., J. Virol. 75 (2001), 7131-7141)。
一次抗体を、0.1% Triton X−100を含むPBSで希釈した。アンチpIXウサギポリクローナル抗体を、以前に報告した通りに用いた(Rosa-Calatrava et al., J. Virol. 75 (2001), 7131-7141)。ウサギポリクローナルアンチSP100、ニワトリアンチPML、モノクローナルマウスアンチPML(PMG3)およびアンチSUMO(アンチ−GMP1)を、0.1% Triton X−100を含むPBSでそれぞれ1/5000、1/250、1/100、および1/100に希釈した。1時間インキュベーションした後、カバーグラスをPBS−0.1% Triton X−100で数回洗浄した後、ヤギCy3またはCy5接合アンチマウスIgGおよび/またはロバCy3またはFITC標識アンチウサギIgGおよび/またはロバCy3アンチニワトリ(Sigma)と共に供給業者が推奨する濃度でインキュベーションした。
次に、核をHoechst 33258で対向染色した。染色の後、カバーグラスを載せ、細胞を共焦点レーザー走査顕微鏡(Leica)で分析した。画像向上ソフトウェアを用いてシグナル強度を釣り合わせ、8倍走査を用いてシグナルをノイズから分離した。
例1: Ad5感染細胞でのpIXによって誘導されるc.a.封入体の分布および進化
他のウイルスタンパク質とは独立して、pIXは透明な非晶質(c.a.)封入体と呼ばれる特徴的な核構造の形成を誘導することが、以前に示された(Rosa-Calatrava et al., J. Virol. 75 (2001), 7131-7141)。(i) pIXの核内分布を一層正確に検討し、(ii) 感染の全般的関連における関連封入体の推定機能を強調し且つ宿主の核超微細構造のAdによって誘発される変化を特性決定するため、Ad5に感染したA549細胞を、アンチpIXポリクローナル抗体を用いる免疫−電子顕微鏡法(免疫−EM)および免疫蛍光(IF)によって分析した。核形態の変化は、Ad感染後の3つの主要段階:ウイルスDNA複製と同時の初期段階、約18時間piに起こる中期段階、および約24−28時間piの後期段階に起こる。
他のウイルスタンパク質とは独立して、pIXは透明な非晶質(c.a.)封入体と呼ばれる特徴的な核構造の形成を誘導することが、以前に示された(Rosa-Calatrava et al., J. Virol. 75 (2001), 7131-7141)。(i) pIXの核内分布を一層正確に検討し、(ii) 感染の全般的関連における関連封入体の推定機能を強調し且つ宿主の核超微細構造のAdによって誘発される変化を特性決定するため、Ad5に感染したA549細胞を、アンチpIXポリクローナル抗体を用いる免疫−電子顕微鏡法(免疫−EM)および免疫蛍光(IF)によって分析した。核形態の変化は、Ad感染後の3つの主要段階:ウイルスDNA複製と同時の初期段階、約18時間piに起こる中期段階、および約24−28時間piの後期段階に起こる。
初期の感染細胞の細胞質(45分pi)および核(4時間piまで)には、少量のpIXが検出され、感染ウイルスのキャプシドから放出されたポリペプチドに相当する。この初期期間の後、12〜14時間piまで有意なpIX標識は観察することができず、ウイルスDNA複製の開始に相当し、この段階でのpIX転写が低レベルであることと一致した。
感染の中間期には、アンチpIX染色による原繊維−顆粒ネットワークの若干の標識が最初に観察され、ウイルス遺伝子トランス活性化に関与しているpIX分子に相当するものと思われる(約16時間pi)。このような局在化は、感染の全後期中に持続し続けている。いったん新たに合成されると、pIXは次第に宿主核に蓄積し、不規則な形状のパッチとして目に見えるようになり、全般的原繊維−顆粒ネットワーク内に急送された(一面に広がった)特異的構造(c.a.封入体)を形成する(Rosa-Calatrava et al., J. Virol. 75 (2001), 7131-7141も参照されたい)。それらは、EM分析で唯一の形態を有することによって容易に同定することができ、直径が1μm以下であり、電子透過に対する見かけの密度が弱い幾らか丸みを帯びた均質な封入体と思われる。c.a.封入体の他に、Ad感染は、pIX染色に対してネガティブであり、機能も知られていない他の種類の構造: (i) 中間体遺伝子Iva2の産物であるpIVa2に対する抗体で強力に標識される非晶質の電子不透過性封入体(o.i.)(Lutz and Kedinger, J. Virol. 70 (1996), 1396-1405)、非ポリアデニル化ウイルスRNAを含むコンパクトなリング(Puvion-Dutilleul et al., J. of Cell Science 107 (1994), 1457-1468)、および複製フォーカス(Puvion-Dutilleul and Puvion, Biology of the Cell 71 (1991), 135-147)を誘発する。pIXを含むc.a.封入体のそれぞれは、アンチpIX抗体で集中的且つ均質に標識されるが、他のウイルスによって誘導されるまたは宿主細胞構造の総ては、知られているように、キャプシドタンパク質およびビリオンの結晶を除き、pIX染色に対してネガティブである。
pIXを含むc.a.封入体は正味の動的展開を示し、感染の後期中に大きさが連続的に増加する。不活性なウイルスゲノムの蓄積およびウイルス粒子の結晶配列(Puvion-Dutilleul and Pichard, Biol. Cell 76 (1992), 139-150、およびPuvion-Dutilleul et al., Journal of Structural Biology 108 (1992), 209-220)は、中心の原繊維−顆粒ウイルス領域からのそれらの排除、および核の核周縁半透明部分へのそれらの再分布を誘発する。免疫−EM観察と良好な一致において、IF−染色実験は、感染が後期へ進むに従って、pIX分布の「マイクロ斑紋」パターンから「マクロ斑紋」局面への展開を示す。感染の後期(28時間pi以後)には、c.a.封入体が合体し、透明な蓄積構造を形成すると思われる。時には、これらの封入体の2または3個が、核周縁部の半透明部分に自動並列して観察されることがある(下記参照)。36時間piでは、拡散性細胞質pIX染色に重なった多数のc.a.封入体が細胞質に観察される。
EMおよびIF免疫染色は、pIXのV117D変異体を発現するpIX−V117DAd5に感染した細胞を用いても行った。突然変異したpIXは未だビリオンに組込まれているが、観察結果は、細胞質、核原繊維−顆粒ネットワークおよび核周縁半透明部分にはc.a.封入体および続いて生じるpIX V117Dの拡散局在化が存在しないことを示している。これは、pIXのコイルドコイルドメインの完全性が、恐らくは自己マルチマー化によって介在されるc.a.封入体の形成に必要であることを支持している。
例2: pIXによって誘導されるc.a.封入体は、転写、スプライシングまたはウイルスキャプシド化活性を示さない
上記実験は、(i) pIX自己集合の積極的過程によるc.a.封入体形成、(ii) それらの特異的核保持、(iii) それらの決定された一時的外観および動態、(iv) 感染の後期におけるそれらの大きさおよび数の重要性を支持している。これに基づけば、ウイルス機能がc.a.封入体にもリンクしているかどうかを明らかにすることが重要であった。
上記実験は、(i) pIX自己集合の積極的過程によるc.a.封入体形成、(ii) それらの特異的核保持、(iii) それらの決定された一時的外観および動態、(iv) 感染の後期におけるそれらの大きさおよび数の重要性を支持している。これに基づけば、ウイルス機能がc.a.封入体にもリンクしているかどうかを明らかにすることが重要であった。
以前の研究により、pIXが転写アクチベーターであり(Lutz et al., J. Virol. 71 (1997), 5102-5109)、恐らくはそのコイルドコイルドメインを介して転写細胞機構の成分と相互作用し(Rosa-Calatrava, J. Virol. 75 (2001), 7131-7141)、Ad遺伝子発現のプログラムに寄与していると思われることが明らかになった。pIXタンパク質のコイルドコイルドメインは、c.a.封入体の形成に中心的役割も果たしている。上記のように、(i) c.a.封入体では、ウイルスRNAはイン・シテューハイブリダイゼーション実験によっては検出されず、一方、予想されるように、ウイルス転写で活性である原繊維−顆粒ネットワーク、並びにインタークロマチン顆粒のクラスターと細胞質は標識され、(ii) トランス活性化機能またはc.a.封入体を形成する能力のみを保持するpIX突然変異体が単離され、(iii) 感染の後期中に、c.a.封入体は転写活性を有する顆粒−原繊維ネットワークから次第に排除され、核周縁、電子−半透明部分、細胞質へと追いやられた。更に、RNAポリメラーゼIIもc.a.封入体では検出されなかったが、これは原繊維−顆粒ネットワークおよびインタークロマチン顆粒のクラスターに関連して見出された(データは示さず)。
合計では、これらの観察は、pIX転写活性とc.a.封入体とのリンクを除外している。これに基づいて、pIXの転写およびc.a.封入体特性の一時的解離が、Ad感染中に期待される。
感染後期には、ウイルスRNAプロセシングが、2種類の細胞構造の消失、コイルドボディー、(Rebelo et al., Molecular Biology of the Cell 7 (1996), 1137-1151)、およびインタークロマチン顆粒関連ゾーン(Besse et al., Gene Expression 5 (1995), 79-92)を形態学的に生じる過程である宿主細胞スプライシング機構を独占する。スプライシング事象は、ウイルスによって誘発される原繊維−顆粒ネットワークおよびインタークロマチン顆粒のクラスターと関連したままである(Puvion-Dutilleul et al., Journal of Cell Science 107 (1994), 1457-1468)。pIXによって誘発されるc.a.封入体内のスプライシング関連事象を探して、スプライソソーム成分の細胞分布を再検討した: U1およびU2 snRNA、SnRNP、ウイルス転写体(上記の通り)、またはポリ(A)+RNA: それらは、総て後期感染核のインタークロマチン顆粒のクラスターに配置されていたが、それらはc.a.封入体中には全く見られなかった。pIX特異的標識をインタークロマチン顆粒に見出すことができなかったという事実と共に、これらの結果は、pIXとc.a.封入体は感染後の転写後過程に関与していないことを明らかに示している。
pIXはAdキャプシド中での相互作用を安定化する構造タンパク質であるので(Colby and Shenk, J. Virol. 39 (1981), 977-980; Furcinitti et al., EMBO J. 8 (1989), 3563-3570; Ghosh-Choudhury et al., EMBO J. 6 (1987), 1733-1739)、主要なキャプシドタンパク質がc.a.封入体中で同時局在化されているかどうかも検討した。免疫染色は、c.a.封入体がアンチヘキソン抗体で弱く標識され、相当する抗体による標識が存在しないことによって明らかなように、ペントンベースとファイバータンパク質を全く欠いていることを示している。対照的に且つ予想されるように、強力な標識が、ウイルスおよびタンパク質結晶についてはアンチヘキソン、アンチペントンベースおよびアンチファイバー抗体で生じた。c.a.封入体におけるウイルスDNA(イン・シテューハイブリダイゼーションによって測定)およびビリオンの非存在と一致して、これらの結果は、pIXによって誘発されるc.a.封入体がビリオンキャプシド化の過程に関与していないことを明らかに示している。
従って、pIXによって誘発されるc.a.封入体は、DNA転写、RNAスプライシングおよびビリオン組立によって表される本質的ウイルス過程には全く無関係であると思われる。これらの結果と一致して、これらの活性を支持しているウイルス構造は、Ad5 IX/V117Dによる感染に関連して修飾または変更を全く受けないと思われる。c.a.封入体は、ウイルス感染から生じる宿主細胞代謝の変更に関与することがあると推定することができる。
例3: 宿主細胞PMLおよびSP100タンパク質は感染後期中にc.a.封入体内で検出される
免疫金アンチpIXによって染色したモノクローナルまたはポリクローナルを用いる免疫−EMは、c.a.封入体が、PMLおよびSP100タンパク質を、その形成の正に初期段階(16−17時間pi)からそれらが感染後期(28または36時間pi)に最終的に大きな核周縁封入体を構成するまで明らかに含んでいることを示している。興味深いことには、c.a.封入体は感染中には常にアンチPMLおよびアンチSP100抗体で強力且つ均質に染色されるが、免疫−EMは、総ての他の後期核ウイルスコンパートメントはごく僅かだけ標識されるかまたは標識されない(例えば、原繊維−顆粒およびクロマチン間顆粒ゾーン)を示した。これらのデータは、PMLおよびSP100細胞タンパク質とpIXによって誘発されるc.a.封入体との特異的会合を支持している。
免疫金アンチpIXによって染色したモノクローナルまたはポリクローナルを用いる免疫−EMは、c.a.封入体が、PMLおよびSP100タンパク質を、その形成の正に初期段階(16−17時間pi)からそれらが感染後期(28または36時間pi)に最終的に大きな核周縁封入体を構成するまで明らかに含んでいることを示している。興味深いことには、c.a.封入体は感染中には常にアンチPMLおよびアンチSP100抗体で強力且つ均質に染色されるが、免疫−EMは、総ての他の後期核ウイルスコンパートメントはごく僅かだけ標識されるかまたは標識されない(例えば、原繊維−顆粒およびクロマチン間顆粒ゾーン)を示した。これらのデータは、PMLおよびSP100細胞タンパク質とpIXによって誘発されるc.a.封入体との特異的会合を支持している。
c.a.封入体におけるPML核ドメイン(PML癌遺伝子ドメイン,PODとも呼ばれる)のこれら2つの構成的成分の存在は、単なる偶然ということはできない。従って、次に、pIXが、アデノウイルス感染によって促進されるこれらの宿主核ドメインの変化の過程に直接関連しているかどうかを検討した。
例4: Ad感染は、pIXによって誘発されるc.a.封入体内の内因性PMLタンパク質の後期制限を誘発する
アデノウイルス(Ad)感染の初期に、PODは、ウイルスの「繊維状トラック」 構造の網にPMLタンパク質を再分布するAdE4orf3遺伝子産物によって崩壊されることが以前に示された(Carvalho et al., J. Cell Biol. 131 (1995), 45-56; Doucas et al., Genes Dev. 10 (1996), 196-207; Puvion-Dutilleul et al., Exp. Cell Res. 218 (1995), 9-16)。しかしながら、感染後期のPML局在化の運命は、検討されていない。このために、Ad5 wt感染細胞のIF染色を感染後(pi)の様々な時点に行って、感染経過中のPML核分布の全動態を可視化した。
アデノウイルス(Ad)感染の初期に、PODは、ウイルスの「繊維状トラック」 構造の網にPMLタンパク質を再分布するAdE4orf3遺伝子産物によって崩壊されることが以前に示された(Carvalho et al., J. Cell Biol. 131 (1995), 45-56; Doucas et al., Genes Dev. 10 (1996), 196-207; Puvion-Dutilleul et al., Exp. Cell Res. 218 (1995), 9-16)。しかしながら、感染後期のPML局在化の運命は、検討されていない。このために、Ad5 wt感染細胞のIF染色を感染後(pi)の様々な時点に行って、感染経過中のPML核分布の全動態を可視化した。
宿主核で形成されるpIXによって誘発されたc.a.封入体は、ほとんどが(E4orf3によって誘発される)PMLを含む繊維状トラックと同時局在化されると思われ、またはそれらの直ぐとなりに見出された。pIXは感染細胞に蓄積し、c.a.封入体の大きさは増すが、PMLを含む繊維状トラックは次第に消滅して、最後にはアデノウイルス感染の後期段階には検出されなくなる。
PML免疫反応性の漸進的喪失がc.a.封入体のタンパク質の分解によってまたは核再分布によって引き起こされるかどうかを試験するため、感染細胞の抽出物におけるPMLタンパク質の存在をウェスタンブロット法で分析した。このために、IFNgで24時間前処理(して、Stadler et al., Leukemia 9 (1995), 2027-2033によって報告されている方法で、PMLの内因性発現を増加させた)後、A549細胞にwt Ad5を比較的高MOI(50pfu)で数回72時間piまで感染させた。
非感染細胞では、IFNg処理により、様々な修飾形態および高分子量アイソフォームのPMLであって、分子量が80−130kDaであるものの合成が誘導される。wt Ad5に感染した細胞は、72時間piにも非感染細胞と同じPMLタンパク質のパターンを見かけ上は示すが、全PMLシグナルの減少並びにpIXおよび細胞アクチンの減少が60時間piに観察され、この減少はアデノウイルス感染の後期段階における細胞リーシスによる細胞材料の喪失と相関している。これらの結果は、PMLタンパク質はアデノウイルス感染中には分解せず、且つPODのアデノウイルスによって誘発される崩壊はそれらのオーガナイザータンパク質であるPMLの分解と関連していないことを示している。これらの結果は、48時間piであってもc.a.封入体内のPMLシグナルの持続的検出を示している上記EM観察によって確認される。IFおよびEM実験によって得られる逆説的結果は、PMLタンパク質は、核スライスの表面に露出していなければ、封入体内部の抗体に接近することができない(従って、IF−免疫染色によって検出されない)という事実によって説明することができると思われる。この仮定により、PMLタンパク質をpIXによって誘発されるc.a.封入体に局限することができ、またpIXによって突然変異したAd5(Ad IXV117D)に感染した細胞のIFおよびEM分析によって支持される。Ad5ベクターのこの突然変異体はc.a.封入体の形成の誘導を欠いており、c.a.封入体とE4 orf3によって誘発される繊維状トラックとの同時局在化を示さない。
これらの結果は、pIX蓄積と同時に、PMLがその本来のE4orf3によって誘発される位置からはずれ、c.a.封入体内部に封鎖されることを支持している。興味深いことには、もう一つのPOD関連タンパク質であるSp100も、免疫EMによって明らかにされているように、PMLと同様な時間経過でc.a.封入体に補充される。これらの観察は、pIXによって誘発されるc.a.封入体中にPODが存在することは、感染サイクル中にPOD関連細胞機能を妨げるようにデザインされた特異的アデノウイルス法を反映している可能性があることを強く示唆している。
例5: 組換えpIXタンパク質は特異的に内因性POD上でc.a.封入体の形成をそれらを崩壊させることなく誘導する
上記の仮説を確認するため、固有のpIX特性を細胞性PMLタンパク質および関連PODの完全性に関して検討した。このために、組換えwt pIXタンパク質を、非ウイルス的にすなわち、プラスミドベクター由来のトランスフェクションした細胞で過剰発現した。免疫蛍光染色は、pIXが蓄積し、内因性PML核ドメイン上(すなわち、上または近接または領域)でc.a.封入体の形成を完全に覆い尽くすまで誘発する。SP100−およびSUMO−1タンパク質のようなPMLおよび他のPOD構成的成分とc.a.封入体との持続的な「ドット様」同時局在化は、POD成分が核再分布を受け難いことを示している。更に、トランスフェクションから48時間後にPOD成分が安定的に検出されることは、POD成分がc.a.封入体で分解されないことを示唆している。
上記の仮説を確認するため、固有のpIX特性を細胞性PMLタンパク質および関連PODの完全性に関して検討した。このために、組換えwt pIXタンパク質を、非ウイルス的にすなわち、プラスミドベクター由来のトランスフェクションした細胞で過剰発現した。免疫蛍光染色は、pIXが蓄積し、内因性PML核ドメイン上(すなわち、上または近接または領域)でc.a.封入体の形成を完全に覆い尽くすまで誘発する。SP100−およびSUMO−1タンパク質のようなPMLおよび他のPOD構成的成分とc.a.封入体との持続的な「ドット様」同時局在化は、POD成分が核再分布を受け難いことを示している。更に、トランスフェクションから48時間後にPOD成分が安定的に検出されることは、POD成分がc.a.封入体で分解されないことを示唆している。
pIX突然変異体(Rosa-Calatrava et al., J. Virol. 75 (2001), 7131-7141)を、POD核構造を覆い尽くすc.a.封入体の形成を誘導する能力について評価した。A549細胞を、それぞれ一連のpIX突然変異体コードプラスミドの一つによってトランスフェクションし、生成する細胞をポリクローナルアンチpIXおよびモノクローナルアンチPML抗体を用いる免疫蛍光染色によって試験した。POD上での蓄積は、コイルドコイルドメインで変更されているpIX突然変異体(これらの突然変異は、上記のようにc.a.封入体の形成も破壊し拡散性細胞質および核質分布を生じる)を産生する細胞では検出することができなかった。同様に、コイルドコイルドメインの真の電荷の変更により、POD上またはの範囲におけるpIX蓄積が完全にまたは部分的に終結する。著しく対照的に、タンパク質のN末端または中心ドメインに影響する突然変異は、この過程を変化させない。これらの結果は、pIXのコイルドコイルドメインは、pIXとPODとの同時局在化およびそれらのpIXへの埋設に本質的であることを明らかに示している。
これらの観察は、pIXは単独では内因性PML核ドメインを破壊することができないが、それらと一緒に特異的に蓄積することを示している。更に、c.a.封入体と宿主核マトリックスとの会合に関する上記データと良好な相関があり、核におけるc.a.封入体の形成とPOD上のまたはに近接したそれらの特異的蓄積とは強力にリンクしていることを示唆しており、これらは核マトリックスにリンクしたものであり、いずれの過程もpIXのコイルドコイルドメインの完全性によって変化する。
例6: PMLおよびpIXタンパク質はコイルドコイルドメインを介して相互作用する
PMLタンパク質は、周縁部に同心多層網を構成することによるPODの構造的オーガナイザーである。これに関して且つ上記結果と一致して、PMLはc.a.封入体を形成させるpIXタンパク質の好ましいターゲットであることができ、両タンパク質間の推定親和性を示唆していた。この仮定を明らかにするため、pIXタンパク質に関する組換えPMLの分布を一過的に同時トランスフェクションした細胞を用いて検討した。免疫染色は、PMLが、pIXによって誘発されるc.a.封入体と部分的に同時局在化しまたは並置されている拡大PODに相当する大きなドットの核パターンを形成することを示している。EMは、相当する構造が共通のドメインを共有していることを示している。これに関して、pIXはPODおよびc.a.封入体と同様に、PMLの同心多層網中に検出される。対照的に、タンパク質のホモオリゴマー化を終結させ且つ変異体の拡散した核パターンを誘発することが以前に示されたPMLの予想的コイルドコイルドメインの欠失は、pIXによって誘発される封入体との同時局在化を終結させる。一方、成熟PODの形成を妨げるが、PMLの集合体をかなり誘発することが以前に示されているRINGフィンガーおよびBボックスなどのPMLタンパク質の亜鉛結合ドメインにおける点突然変異(De Th, Cell 66 (1991), 675-684; Borden et al., EMBO J. 14 (1995), 1532-1541; Borden et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA 93 (1996), 1601-1606)は、pIXによって誘発されるc.a.封入体との同時局在化を変化させない。同様な結果が、異なるアイソフォームにおいて推定的コイル−コイルドドメインが直立して固定されている場合には、これらのPMLアイソフォームで得られた。
PMLタンパク質は、周縁部に同心多層網を構成することによるPODの構造的オーガナイザーである。これに関して且つ上記結果と一致して、PMLはc.a.封入体を形成させるpIXタンパク質の好ましいターゲットであることができ、両タンパク質間の推定親和性を示唆していた。この仮定を明らかにするため、pIXタンパク質に関する組換えPMLの分布を一過的に同時トランスフェクションした細胞を用いて検討した。免疫染色は、PMLが、pIXによって誘発されるc.a.封入体と部分的に同時局在化しまたは並置されている拡大PODに相当する大きなドットの核パターンを形成することを示している。EMは、相当する構造が共通のドメインを共有していることを示している。これに関して、pIXはPODおよびc.a.封入体と同様に、PMLの同心多層網中に検出される。対照的に、タンパク質のホモオリゴマー化を終結させ且つ変異体の拡散した核パターンを誘発することが以前に示されたPMLの予想的コイルドコイルドメインの欠失は、pIXによって誘発される封入体との同時局在化を終結させる。一方、成熟PODの形成を妨げるが、PMLの集合体をかなり誘発することが以前に示されているRINGフィンガーおよびBボックスなどのPMLタンパク質の亜鉛結合ドメインにおける点突然変異(De Th, Cell 66 (1991), 675-684; Borden et al., EMBO J. 14 (1995), 1532-1541; Borden et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA 93 (1996), 1601-1606)は、pIXによって誘発されるc.a.封入体との同時局在化を変化させない。同様な結果が、異なるアイソフォームにおいて推定的コイル−コイルドドメインが直立して固定されている場合には、これらのPMLアイソフォームで得られた。
これらの結果は、pIXとPMLとの間に特異的親和性があり、それらのそれぞれのコイルドコイルドメインの完全性に依存していると思われることを明らかに示している。両ドメインは疎水性残基がリッチであり、タンパク質間でのヘテロマー的相互作用を行わせることが知られていることに留意すべきである。
pIXが直接PMLタンパク質と相互作用するかどうかを決定するために、二ハイブリッド分析システムをヒトA549細胞において行った。このために、細胞を、それぞれGal4DNA結合ドメインおよびVP16トランス活性化ドメインと融合したpIXおよびPMLをコードするプラスミドと同時トランスフェクションした。Gal4またはVP16ドメインの融合はpIXのN末端を用いて行い、pIXのC末端コイルドコイルドメインは自由に接近可能にした。
次に、この細胞を、突然変異したG4−TK−CATレポータープラスミドであって、HSV−1チミジンキナーゼ(TK)プロモーターによって動かされるCAT遺伝子を含み且つTKプロモーターの5’に挿入した単一のGAL4結合部位を有するものでトランスフェクションした(Webster et al., Cell 52 (1988), 169-178)。TKプロモーターのTATAボックス(TATTAAG)をTGTAボックス(TGTAAAG)に突然変異して、pIXのTATA特異的トランス活性化活性を防止した(Lutz et al., J. Virol. 71 (1997), 5102-5109に記載)。免疫ブロット分析法を選択したクローンで行い、等レベルのpIXおよびPML融合タンパク質が同時に産生することを確かめた。CAT活性を測定して、pIX融合タンパク質がPML融合タンパク質と相互作用する能力を評価した。ネガティブコントロールとは対照的に、VP16−PML融合と組み合わせたwt pIXとのGal4 DNA結合ドメインの融合を同時発現する細胞について有意なシグナルが検出される。Gal4DNA結合ドメインをpIX突然変異体であってコイルドコイルドメインが突然変異しているもの(例えば、V117DおよびE113L)と組み合わせる融合タンパク質の発現は、V16−PML融合と同時発現したときには、有意なCAT活性を生じない。一方、GAL4融合タンパク質をN末端ドメインが突然変異しているpIX突然変異体(例えば、del22−23)で発現させると、V16−PML融合と同時発現したときには、GAL4−wtpIX融合と同じCAT活性を生じる。
同様に、Gal4−wtpIX融合タンパク質と、VP16トランス活性化ドメインをコイルドコイルドメインが欠失しているPML突然変異体と結合する融合タンパク質との同時発現では、ポジティブコントロールと比較して、有意なCAT活性を生じない。
これらの結果は、PMLとpIXがヘテロマー的相互作用を行うことができ、これはそれぞれの推定的疎水性コイルドコイルドメインを介して起こると思われることを強力に支持している。興味深いことには、PMLと同様に、感染の後期にはSP100タンパク質はpIXによって誘発されるc.a.封入体に再分布されるが(上記参照)、SP100とpIXタンパク質の相互作用は、上記の二ハイブリッド分析システムを用いて検出することはできなかった。
例7: pIXによって誘発されたc.a.封入体に局限されているときには、細胞のヒ素処理によりPODを破壊することができない
数時間のヒ素処理により、マトリックスに結合したPODの核質画分のターゲッティングが誘導されるが、長時間の露出により分解し、次いでこれらの核ドメインが消失する(Zhu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94 (1997), 3978-3983)。pIXによって誘発されるc.a.封入体へPODを局限することの効果を評価するため、A549細胞をwt pIXまたはpIX突然変異体をコードするプラスミドでトランスフェクションし、同時にヒ素で処理した。これらの細胞をポリクローナルアンチpIXおよびモノクローナルアンチPML抗体を用いる免疫蛍光染色分析法によって分析した。結果は、pIXがPODとの同時局在化においてc.a.封入体の形成を誘発するときには、非トランスフェクション細胞をヒ素に暴露したときに観察された効果とは対照的に、ヒ素処理によってそれらを完全な消失を誘発することはできないことを示している。PMLの観察されたドット様パターンは残っているPODに相当し、同様な観察はSP100−またはSUMO−1特異的染色でも見られる。N末端またはその中央領域で変化しているpIX突然変異体をヒ素で処理した細胞で発現させるときには、ヒ素への暴露に対するPODの同様な防御が観察される。対照的に、コイルドコイルドメインで突然変異したpIX突然変異体は核c.a.封入体の形成を終結するが、PODのヒ素によって誘発される消失は防止しない。
数時間のヒ素処理により、マトリックスに結合したPODの核質画分のターゲッティングが誘導されるが、長時間の露出により分解し、次いでこれらの核ドメインが消失する(Zhu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94 (1997), 3978-3983)。pIXによって誘発されるc.a.封入体へPODを局限することの効果を評価するため、A549細胞をwt pIXまたはpIX突然変異体をコードするプラスミドでトランスフェクションし、同時にヒ素で処理した。これらの細胞をポリクローナルアンチpIXおよびモノクローナルアンチPML抗体を用いる免疫蛍光染色分析法によって分析した。結果は、pIXがPODとの同時局在化においてc.a.封入体の形成を誘発するときには、非トランスフェクション細胞をヒ素に暴露したときに観察された効果とは対照的に、ヒ素処理によってそれらを完全な消失を誘発することはできないことを示している。PMLの観察されたドット様パターンは残っているPODに相当し、同様な観察はSP100−またはSUMO−1特異的染色でも見られる。N末端またはその中央領域で変化しているpIX突然変異体をヒ素で処理した細胞で発現させるときには、ヒ素への暴露に対するPODの同様な防御が観察される。対照的に、コイルドコイルドメインで突然変異したpIX突然変異体は核c.a.封入体の形成を終結するが、PODのヒ素によって誘発される消失は防止しない。
これらの結果は、非ウイルス的にはpIXによって誘発されるc.a.封入体の宿主PODを局限する固有の特性を示している。このような活性は、pIXとPMLの間のヘテロマー的相互作用によって行うことができると思われる。本発明に関しては、wtpIXは主としてPMLを含む繊維状トラック上またはに近接して蓄積し且つPMLタンパク質をc.a.封入体に蓄積して隔離するので、c.a.封入体の同様な機能、すなわち、PODのc.a.封入体への局限は、既に記載されているように、Ad感染中に起こることもあることが仮定されている。
PML核ドメインを恒久的に変更することが、感染サイクルにおけるアデノウイルスの一つの方法である。この方法は、HSVまたはCMVのような他のDNAウイルスによって採用されているものとは異なっていると思われる。PMLタンパク質を初期に分解する代わりに、アデノウイルスは、初期E4orf3 産物によって開始されたPMLの一次脱局在化を誘導した後に、PMLタンパク質のc.a.封入体内への推定的局限を介して、感染の後期中のpIXによって支持される更なるリレーおよび隔離を誘発すると思われる。
例8: wt pIXの過剰発現はインターフェロンによって誘発されるアポトーシスを妨げる
A549細胞を、IFNgに36時間暴露する24時間前またはこれと同時に、Ad(CMVIX)またはネガティブコントロールに感染させた。ネガティブコントロールは、空のE1、E3およびE4欠失アデノウイルスベクター、および宿主POD上またはに近接してc.a.封入体を形成することができないpIX突然変異体(pIXV117D)を発現するAd(CMVIXV117D)である。アポトーシス性細胞死(クロマチンの凝縮、DNAの開裂、核骨格タンパク質の分解、アポトーシス体の形成、および核断片化, Kerr et al., Br. J. Cancer 26 (1972), 239-257に記載)を、それぞれの場合にEpon切片で評価した。
A549細胞を、IFNgに36時間暴露する24時間前またはこれと同時に、Ad(CMVIX)またはネガティブコントロールに感染させた。ネガティブコントロールは、空のE1、E3およびE4欠失アデノウイルスベクター、および宿主POD上またはに近接してc.a.封入体を形成することができないpIX突然変異体(pIXV117D)を発現するAd(CMVIXV117D)である。アポトーシス性細胞死(クロマチンの凝縮、DNAの開裂、核骨格タンパク質の分解、アポトーシス体の形成、および核断片化, Kerr et al., Br. J. Cancer 26 (1972), 239-257に記載)を、それぞれの場合にEpon切片で評価した。
図2に示されるように、非感染細胞(図2A)は分断した核を示し、凝縮したクロマチンが顕著である。2つの核ローブは、核質の幅の狭いストランドで相互連結されている。図2Bは、wt Ad5pIXタンパク質を発現するAd(CMVIX)に感染したA549細胞を表す。楕円形の核が、主として薄い核周縁層に限定された凝縮したクロマチンと共に観察されたが、微細なクロマチンが核質を満たしている。大きな核小体(nu)3個の通常成分:原繊維中心、周囲の稠密な原繊維成分および顆粒成分は、容易に識別可能である。矢印は、pIXによって誘発される透明な非晶質封入体を指している。図2Cは、pIX突然変異体 V117Dを発現するAd(CMVIXV117D)に感染したA549細胞を示す。核は著しいローブ状であり、この断面では、分断されている外観が示されている。凝縮したクロマチンは、主としてローブ中に分布している。核小体(nu)はコンパクトである。
結論として、IFNg処理の後に、未感染細胞、およびE1、E3およびE4欠失アデノウイルスベクターまたはpIX−V117D突然変異体を発現するベクターに感染した細胞は、分断した核を示し、切片の面によっては、個々のローブまたは核質の幅の狭いストランドによって相互に連結されたローブの外観をとっていた。凝縮クロマチンは、ローブ中に広く分布していた。これらの細胞は、明らかにアポトーシスの形態学的特徴を有している。
これとは対照的に、Ad5 wtpIXを発現するAd(CMVIX)に感染した細胞は、楕円状の核を示し、凝縮したクロマチンは核ボーダーの薄い層に限定されていた。核小体は大きく、未処理細胞培養物で観察されたものと同様であった。実際に、それらの3個のコンパートメント(原繊維中心、周囲の稠密な原繊維成分、および顆粒成分)は、はっきりと目に見えた。これらの細胞は、切断表面において、核質に配置された1または数個のpIXによって誘発される透明な非晶質封入体の存在も示した。wt Ad5pIXを過剰発現する細胞は、いずれもアポトーシスの特徴を示さない。分断された核および豊富な凝縮したクロマチンが存在しないことは、恐らく宿主細胞におけるAd5pIXの合成の結果であると思われる。
Claims (41)
- アデノウイルス由来の分子をPOD核構造と接触させることを含んでなる、宿主細胞中のPOD核構造に依存する1種類以上の細胞活性を調節する方法であって、
アデノウイルス由来の分子がPOD核構造と相互作用しうることを特徴とする、方法。 - 宿主細胞にアデノウイルス由来の少なくとも1分子を導入することを含んでなり、ここでアデノウイルス由来の分子がPOD核構造に依存する1種類以上の細胞活性を減少させるかまたは阻害する、請求項1に記載の方法。
- 宿主細胞がウイルスに感染しており、かつ、アデノウイルス分子がPOD核構造に依存する抗ウイルス細胞活性を減少させるかまたは阻害する、請求項2に記載の方法。
- ウイルスが複製欠損アデノウイルスベクター(Ad)である、請求項3に記載の方法。
- 複製欠損アデノウイルスベクターが、E1およびE4機能、および必要に応じてE3機能を欠いている、請求項4または5に記載の方法。
- 複製欠損アデノウイルスベクターが、トランスジーンをさらに含んでなる、請求項4または5に記載の方法。
- アデノウイルス由来の分子が、POD核構造に依存する1種類以上の細胞活性を減少させるかまたは阻害することができるポリペプチドである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
- アデノウイルス由来の分子が、POD核構造に依存する1種類以上の細胞活性を減少させるかまたは阻害することができるポリペプチドをコードする核酸配列である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
- アデノウイルス由来のポリペプチドが、pIXおよびE4orf3からなる群から個々にまたは組み合わせて選択される、請求項7または8に記載の方法。
- アデノウイルス由来のポリペプチドをコードする核酸配列が、複製欠損アデノウイルスベクターによって運ばれる、請求項8または9に記載の方法。
- アデノウイルス由来のポリペプチドをコードする核酸配列を、欠失したE4領域の代わりに複製欠損Adに挿入し、かつ、トランスジーンを、欠失したE1領域の代わりに挿入する、請求項10に記載の方法。
- アデノウイルス由来のポリペプチドをコードする核酸配列およびトランスジーンを、互いにアンチセンス配向で転写する、請求項11に記載の方法。
- アデノウイルス由来のポリペプチドをコードする核酸配列が、複製欠損アデノウイルスベクターとは異なるベクターによって運ばれる、請求項8または9に記載の方法。
- 前記ベクターがトランスジーンをさらに含んでなる、請求項13に記載の方法。
- (i)複製欠損アデノウイルスベクターと、(ii)アデノウイルス由来のポリペプチドをコードする上記核酸配列を含んでなるベクターとを、宿主細胞に同時にまたは連続して導入することを含んでなる、請求項13または14に記載の方法。
- アデノウイルス由来のポリペプチドをコードする核酸配列が、構成、誘導、腫瘍特異的、および組織特異的プロモーターからなる群から選択される異種プロモーターの制御下におかれている、請求項8〜15のいずれか一項に記載の方法。
- アデノウイルス由来の分子が、宿主細胞のアポトーシスを減少させるかまたは阻害する、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
- アデノウイルス由来の分子が、宿主細胞の複製欠損アデノウイルスベクターによって誘導される毒性を減少させるかまたは阻害し、および/または、宿主細胞のトランスジーン発現の持続性を高める、請求項4〜17のいずれか一項に記載の方法。
- E1およびE4機能、および必要に応じてE3機能を欠いている、組換えアデノウイルスベクターであって、
少なくとも(i)トランスジーンと、(ii)機能性アデノウイルスpIXタンパク質をコードする核酸配列とを含んでなり、ここで、機能性アデノウイルスpIXタンパク質をコードする核酸配列が、異種プロモーターの制御下にあって且つ上記アデノウイルスベクターにおける本来の位置とは異なる位置にある、組換えアデノウイルスベクター。 - アデノウイルスpIXタンパク質をコードする核酸配列が、欠失したE4領域の代わりに配置されている、請求項19に記載の組換えアデノウイルスベクター。
- アデノウイルスベクターが、異種プロモーターの制御下におかれているアデノウイルスE4orf3タンパク質をコードする核酸配列をさらに含んでなる、請求項19または20に記載の組換えアデノウイルスベクター。
- 異種プロモーターが、構成、誘導、腫瘍特異的および組織特異的プロモーターからなる群から選択される、請求項19または21に記載の組換えアデノウイルスベクター。
- 請求項19〜22のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスベクターまたは請求項1〜18のいずれか一項に記載のアデノウイルス由来の分子と、必要に応じて薬学上許容可能なキャリヤーとを含んでなる、組成物。
- POD核構造に依存する1種類以上の細胞活性を減少させるかまたは阻害するための、請求項19〜22のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスベクターまたは請求項1〜18のいずれか一項に記載のアデノウイルス由来の分子の使用。
- 細胞活性が、宿主細胞がウイルスに感染している場合のPOD核構造に依存する抗ウイルス細胞活性である、請求項24に記載の使用。
- 細胞活性が、宿主細胞のアポトーシス、特に宿主細胞がウイルスに感染している場合の宿主細胞のアポトーシスである、請求項24に記載の使用。
- 細胞活性が、宿主細胞の複製欠損アデノウイルスベクターによって誘導される毒性、および/または、宿主細胞のトランスジーン発現の持続性の増加である、請求項24に記載の使用。
- 元のアデノウイルスpIXおよび/またはE4orf3遺伝子が、非機能性であるかまたは欠失していることを特徴とする、複製コンピテントアデノウイルスベクター。
- 天然のアデノウイルスpIXおよびE4orf3遺伝子のいずれもが、非機能性であるかまたは欠失している、請求項28に記載の複製コンピテントアデノウイルスベクター。
- トランスジーンをさらに含んでなる、請求項28または29に記載の複製コンピテントアデノウイルスベクター。
- トランスジーンが自殺遺伝子である、請求項30に記載の複製コンピテントアデノウイルスベクター。
- 自殺遺伝子が、シトシンデアミナーゼ(CDアーゼ)および/またはウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ(UPRTアーゼ)活性を有するポリペプチドをコードする、請求項31に記載の複製コンピテントアデノウイルスベクター。
- 自殺遺伝子がUPRTアーゼおよびCDアーゼ活性を両方とも有する融合ポリペプチドをコードする、請求項32に記載の複製コンピテントアデノウイルスベクター。
- 上記トランスジーンが腫瘍特異的プロモーターの制御下におかれている、請求項30〜33のいずれか一項に記載の複製コンピテントアデノウイルスベクター。
- 請求項28〜34のいずれか一項に記載の複製コンピテントアデノウイルスベクターを含んでなる、ウイルス粒子。
- 請求項28〜34のいずれか一項に記載の複製コンピテントアデノウイルスベクターを含んでなるかまたは請求項35に記載のウイルス粒子に感染した、宿主細胞。
- 請求項28〜34のいずれか一項に記載の複製コンピテントアデノウイルスベクター、請求項35に記載のウイルス粒子、または請求項36に記載の宿主細胞を含んでなる、組成物。
- 癌または過剰増殖性細胞疾患に罹っている患者の治療方法であって、患者に、治療上有効量の請求項28〜34のいずれか一項に記載の複製コンピテントアデノウイルスベクター、請求項35に記載のウイルス粒子または請求項36に記載の宿主細胞を投与することを含んでなる、方法。
- 遺伝子療法による癌または過剰増殖性細胞疾患の治療または予防用の医薬を製造するための、請求項28〜34のいずれか一項に記載の複製コンピテントアデノウイルスベクター、請求項35に記載のウイルス粒子、または請求項36に記載の宿主細胞の使用。
- 宿主細胞のアポトーシス状態を高める方法であって、宿主細胞に、少なくとも請求項28〜34のいずれか一項に記載の複製コンピテントアデノウイルスベクター、または請求項35に記載のウイルス粒子を導入することを含んでなる、方法。
- 宿主細胞のアポトーシス状態を高める医薬を製造するための、請求項28〜34のいずれか一項に記載の複製コンピテントアデノウイルスベクター、請求項35に記載のウイルス粒子または請求項36に記載の宿主細胞の使用。
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