JP2005514903A - 受容体と膜結合タンパク質 - Google Patents

受容体と膜結合タンパク質 Download PDF

Info

Publication number
JP2005514903A
JP2005514903A JP2002592453A JP2002592453A JP2005514903A JP 2005514903 A JP2005514903 A JP 2005514903A JP 2002592453 A JP2002592453 A JP 2002592453A JP 2002592453 A JP2002592453 A JP 2002592453A JP 2005514903 A JP2005514903 A JP 2005514903A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
polynucleotide
seq
polypeptide
amino acid
sequence
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2002592453A
Other languages
English (en)
Inventor
ラル、プリーティ・ジー
ワレン、ブリジット・エイ
スー、ユーミング
ダガン、ブレンダン・エム
ホンシェル、シンシア・ディー
カリック、デボラー・エイ
ボーグン、マライア・アール
タング、ワイ・トム
ユエ、ヘンリー
バンドマン、オルガ
ジョーンズ、カレン・アン
ベチャ、シャニア・ディー
トラン、ユエン・ケイ
オウ−ヤング、ジャニス・ケイ
グリフィン、ジェニファー・エイ
ゼバージャディアン、イェガネー
リー、アーンスティーン・エイ
エリオット、ビッキー・エス
サンガベル、カビサ
ランクマール、ジャヤラクシミ
リュ、ヤン
ハファリア、エープリル・ジェイ・エイ
チョーラ、ナリンダー・ケイ
アイソン、クレイグ・エイチ
ソーントン、マイケル
スウォーナカール、アニータ
ヤング、ジュンミング
リチャードソン、トマス・ダブリュ
エマーリング、ブルック・エム
ヤオ、モニーク・ジー
コックス、ベンジャミン・ジー
サンジャンワラ、バラティ
メイソン、パトリシア・エム
ガンディー、アミーナ・アール
リー、ジョアナ・エックス
フォーサイス、イアン・ジェイ
ガルラジャン、ラジャゴパル
ギエツェン、キンバリー・ジェイ
Original Assignee
インサイト・ゲノミックス・インコーポレイテッド
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by インサイト・ゲノミックス・インコーポレイテッド filed Critical インサイト・ゲノミックス・インコーポレイテッド
Publication of JP2005514903A publication Critical patent/JP2005514903A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K14/00Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • C07K14/435Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
    • C07K14/705Receptors; Cell surface antigens; Cell surface determinants
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P1/00Drugs for disorders of the alimentary tract or the digestive system
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P25/00Drugs for disorders of the nervous system
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P29/00Non-central analgesic, antipyretic or antiinflammatory agents, e.g. antirheumatic agents; Non-steroidal antiinflammatory drugs [NSAID]
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P3/00Drugs for disorders of the metabolism
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P31/00Antiinfectives, i.e. antibiotics, antiseptics, chemotherapeutics
    • A61P31/12Antivirals
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P35/00Antineoplastic agents
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P37/00Drugs for immunological or allergic disorders
    • A61P37/02Immunomodulators
    • A61P37/06Immunosuppressants, e.g. drugs for graft rejection
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K14/00Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • C07K14/435Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
    • C07K14/46Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans from vertebrates
    • C07K14/47Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans from vertebrates from mammals

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Gastroenterology & Hepatology (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Toxicology (AREA)
  • Cell Biology (AREA)
  • Communicable Diseases (AREA)
  • Neurology (AREA)
  • Virology (AREA)
  • Pain & Pain Management (AREA)
  • Obesity (AREA)
  • Hematology (AREA)
  • Diabetes (AREA)
  • Transplantation (AREA)
  • Neurosurgery (AREA)
  • Rheumatology (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Oncology (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)

Abstract

本発明はヒト受容体および膜結合タンパク質(REMAP)、およびREMAPを同定し、コードするポリヌクレオチドを提供する。本発明はまた、発現ベクター、宿主細胞、抗体、アゴニストおよびアンタゴニストをも提供する。本発明はまた、REMAPの異常発現に関連する疾患を診断、治療または予防する方法をも提供する。

Description

本発明は、受容体および膜結合タンパク質の核酸配列とアミノ酸配列に関する。本発明はまた、これらの配列を利用した細胞増殖異常、自己免疫/炎症性の疾患、神経疾患、代謝異常、発生または発達障害、内分泌疾患、生殖系疾患、胃腸疾患、代謝異常、遺伝疾患、脂質代謝異常、癌、およびウィルス感染の診断・治療・予防に関する。本発明は、さらに受容体および膜結合タンパク質の核酸配列とアミノ酸配列の発現における外来性化合物の効果についての評価に関する。
真核生物が原核生物と異なる点は、細胞内の、膜に囲まれる多くの区画、例えばオルガネラや小胞を持つことである。真核生物の生化学を原核生物の生化学から区別する代謝反応の多くは、これらの区画内で起こる。詳細には、多くの細胞機能は非常にストリンジェントな反応条件を必要とし、オルガネラや小胞が各反応の区画化と隔離とを可能にしなければ、細胞質の各代謝プロセスが混乱し得る。これらのオルガネラの例に、ミトコンドリア、滑面小胞体、粗面小胞体、筋小胞体、およびゴルジ体がある。小胞の例には、食胞、リソソーム、エンドソーム、ペルオキシソーム、および分泌小胞がある。オルガネラと小胞とは、1層または2層の膜で囲まれる。
シグナル伝達は、細胞が細胞外シグナルに応答する一般的プロセスである。形質膜を越えてのシグナル伝達は、ホルモン、神経伝達物質または成長因子など、シグナル分子が、細胞膜受容体に結合することから開始する。そのようにして活性化された受容体は細胞内の生化学的カスケードを誘発し、このカスケードは、転写因子など細胞内標的分子の活性化で終了する。シグナル伝達のこのプロセスは、細胞増殖、分化及び遺伝子転写を含む、全てのタイプの細胞機能を制御する。
生体膜はオルガネラと、小胞および細胞自体とを囲む。生体膜は、脂質の2重層シートから成る高度に選択的な透過性障壁であって、2重層シートの構成素材は、ホスホグリセリド、脂肪酸、コレステロール、リン脂質、糖脂質、プロテオグリカン、およびタンパク質である。膜にはイオンポンプや、イオンチャネル、および特異的受容体類があり、受容体は外部刺激を受け、生化学的シグナルを膜の内側に伝達する。これらの膜にはまた、セカンドメッセンジャータンパク質類があって、これらのポンプやチャネルや受容体と相互作用し、これらのシグナルの伝達を増幅し調節する。
原形質膜タンパク質
原形質膜タンパク質(MP)は2群に分けられ、その分類基準は膜からのタンパク質の抽出方法である。膜の外にあるタンパク質すなわち膜表在性タンパク質の放出させるには、極端なイオン強度またはpHを用いるか、尿素などの、タンパク質相互作用の撹乱物質を用いる。膜の内側にあるタンパク質すなわち膜内在性タンパク質を放出させる唯一の方法は、膜の脂質2重層を界面活性剤で溶解することである。
既知の膜内在性タンパク質の大部分は膜貫通タンパク質(TM)であり、細胞外、膜貫通および細胞内ドメインを特徴とする。TMドメイン群は通常、15〜25の疎水性アミノ酸からなり、これらのアミノ酸は1つのα螺旋構造をとると予測される。TMタンパク質はバイトピック(bitopic)(タイプIおよびタイプII)と、ポリトピック(polytopic)(タイプIIIおよびタイプIV) (Singer, S.J. (1990) Annu. Rev. Cell Biol. 6:247-96) に分類され、バイトピックタンパク質は膜を1回貫通するが、ポリトピックタンパク質には、複数の膜貫通セグメントがある。TM タンパク質は種々の重要な細胞機能を果たしており、これには、シグナル伝達に関与する細胞表面受容体タンパク質としての作用が含まれる。これらの機能は、成長因子受容体および分化因子受容体、またショウジョウバエのpecanexやfrizzledタンパク質のような受容体相互作用タンパク質、LIV-1 タンパク質、NF2 タンパク質、およびGNS1/SUR4真核生物膜内在性タンパク質によって代表される。TMタンパク質はまた、イオンまたは代謝産物のトランスポータ(例えばギャップ結合チャネル(コネキシン類)とイオンチャネル類)として作用し、また、細胞接着タンパク質(例えばレクチン類とインテグリン類とフィブロネクチン類)として作用する。TMタンパク質は、小胞オルガネラを形成する分子(例えばカベオリン(caveolin)類)、または、細胞認識分子(例えば分化クラスター(CD)抗原、糖タンパク質、およびムチン類)に存在する。
多くの膜タンパク質(MP)には、タンパク質を特定の亜細胞内部位に局在させるよう働く、アミノ酸配列モチーフがある。これらのモチーフの例に、PDZドメイン群や、KDEL、RGD、NGR、およびGSL配列モチーフ群や、フォンウィルブランド因子A(vWFA)ドメイン群や、EGF様ドメイン群がある。RGD、NGR、およびGSLモチーフ含有ペプチド類は、腫瘍血管系の標的癌を治療するための薬物送達剤として用いられている (Arap, W. 他 (1998) Science, 279:377-380)。さらに、膜タンパク質にはまた、糖質認識ドメイン群(CRD)のような細胞外分子や細胞内分子と相互作用するように働くアミノ酸配列モチーフ群がある。
アミノ酸残基側鎖の化学修飾により、MP類が他の分子(例えば膜リン脂質)と相互作用する方法が変わる。このような化学修飾の例に、グリコサミノグリカン類や、少糖類、リン脂質類、アセチル部分およびパルミトイル部分、ADPリボース、リン酸、および硫酸基との、共有結合の形成がある。
膜タンパク質をコードするRNAは選択的スプライス部位を持つことがあり、これらの部位により、同一遺伝子がコードするタンパク質群が、異なるメッセンジャーRNAとアミノ酸配列とを持ち得る。スプライス変異膜タンパク質は、他のリガンドやタンパク質のアイソフォームと相互作用し得る。
受容体
受容体の用語は他の分子を特異的に認識するタンパク質を意味する。そのカテゴリーは広く、様々の機能を持つタンパク質が含まれる。大部分の受容体は、細胞外リガンドと結合して、成長、分化、飲食細胞運動および免疫応答の領域において細胞内応答を生じる細胞表面タンパク質である。他の受容体は、小胞からのタンパク質の選択的な輸送を促進し、細胞内の特定の部位に酵素を局在化させる。この用語はまた、既知の、あるいは未知の化学的組成物をもつリガンドの受容体として作用するタンパク質や、他の細胞構成成分と相互作用するタンパク質にも適用され得る。例えば、ステロイドホルモン受容体はDNAの転写物に結合し、調節する。
細胞表面受容体は一般に原形質膜内在性タンパク質である。これらの受容体はホルモン類(カテコールアミン、ペプチドホルモン、成長因子、分化因子、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、ガラニン、ソマトスタチン、およびタキキニン等)、および循環系で運ばれるシグナル伝達分子を認識する。 免疫系細胞上の細胞表面受容体は、抗原、抗体、および主要組織適合性複合体(MHC)結合ペプチドを認識する。他の細胞表面受容体はリガンド類に結合し、それらのリガンドはその細胞によって取り込まれる。この受容体介在性エンドサイトーシスは、低密度リポタンパク質(LDL)、トランスフェリン、グルコース末端糖タンパク質、マンノース末端糖タンパク質、ガラクトース末端糖タンパク質、免疫グロブリン、ホスホビテロゲニン(phosphovitellogenin)類、フィブリン、プロテイナーゼ-阻害剤複合体、プラスミノーゲン活性化因子、およびトロンボスポンジンの取り込み時に機能する(Lodish, H. 他 (1995) Molecular Cell Biology, Scientific American Books, New York NY, 723ページ; Mikhailenko, I. 他(1997) J. Biol. Chem. 272:6784-6791)。
受容体プロテインキナーゼ
多くの成長因子受容体(例えば、上皮性成長因子、血小板由来成長因子、線維芽細胞成長因子、および成長調節因子αトロンビン等)には固有のプロテインキナーゼ活性がある。成長因子が受容体に結合すると、受容体のセリン、トレオニン、またはチロシン残基の自己リン酸化が誘発される。これらのリン酸化部位は他の細胞質シグナル伝達タンパク質結合の認識部位となる。これらのタンパク質は、細胞表面での最初の受容体の活性化を最終的に特異的細胞内標的分子の活性化に結びつけるシグナル伝達経路に関与する。チロシン残基自己リン酸化の場合、これらのシグナル伝達タンパク質にはSrc 相同性(SH)ドメインと呼ばれる共通ドメインが含まれている。SH2ドメインおよびSH3ドメインはホスホリパーゼCγ、PI-3-K p85 調節サブユニット、Ras-GTPアーゼ活性化タンパク質およびpp60csrc に存在する(Lowenstein, E.J. 他 (1992) Cell 70:431442)。サイトカインファミリの受容体は異なった共通結合ドメインを共有しており、成長ホルモン(GH)、インターロイキン、エリスロポエチンおよびプロラクチンが含まれる。
他の受容体およびセカンドメッセンジャー結合タンパク質は内在性セリン/トレオニンプロテインキナーゼ活性を有する。これらにはアクチビン/TGF-β/BMP-スーパファミリ受容体、カルシウムおよびジアシルグリセロール活性化/リン脂質依存性プロテインキナーゼ(PK-C)およびRNA依存性プロテインキナーゼ(PK-P)が含まれる。さらに、線虫Twitchinを含む他のセリン/トレオニンプロテインキナーゼはフィブロネクチン様、免疫グロブリンC2様ドメインを有する。
Gタンパク質共役受容体
今までに同定されている遺伝子の最も大きいファミリーの1つによってコードされるGタンパク質共役受容体(GPCR)は、原形質膜での細胞外シグナルの伝達において中心的役割を果たす。GPCRは、治療標的としての成功の、実証された歴史を持つ。
GPCRは、7つの疎水性膜貫通ドメインを有することを特徴とする膜内在性タンパク質であり、それらのドメインがまとまって逆平行アルファ(α)螺旋の束を形成するようになる。GPCRのサイズは、400以下から1000以上のアミノ酸に及ぶ(Strosberg, A.D. (1991) Eur. J. Biochem. 196:1-10、Coughlin, S.R. (1994) Curr. Opin. Cell Biol. 6:191-197)。GPCRのアミノ末端は、細胞外にあり、長さが可変で、多くの場合グリコシル化されている。カルボキシ末端は細胞質内にあり、通常はリン酸化されている。細胞外ループ群が、細胞内ループ群と交互に現れ、膜貫通ドメイン群を連結している。第2及び第3細胞外ループを結びつけるシステインジスルフィド架橋は、アゴニスト及びアンタゴニストと相互作用し得る。GPCRの最も保存されたドメインは、膜貫通ドメイン群及び、最初の2つの細胞質ループである。膜貫通ドメインは、受容体の構造及び機能をある程度特徴付けている。大抵の場合、αへリックスの束がリガンド結合ポケットを形成する。細胞外N末端セグメント、または3つの細胞外ループの内の1つ以上のループも、リガンド結合に関与し得る。リガンド結合によって、受容体の細胞内部分に構造的変化が誘発されて受容体が活性化される。次に、この活性化された受容体の大きな第3の細胞内ループが、ヘテロ三量体であるグアニンヌクレオチド結合(G)タンパク質複合体と相互作用し、この複合体は、サイクリックAMP(cAMP)やホスホリパーゼCやイノシトール三リン酸など、セカンドメッセンジャーの活性化を含む細胞内シグナル伝達作用と、活性化されたGPCRとイオンチャネルタンパク質類との相互作用とを更に仲介する(Watson, S.およびS. Arkinstall (1994) The G-protein Linked Receptor Facts Book, Academic Press, San Diego CA, 2-6ページ、Bolander, F.F. (1994) Molecular Endocrinology, Academic Press, San Diego CA,162-176ページ、Baldwin, J.M. (1994) Curr. Opin. Cell Biol. 6:180190等参照)。
GPCRには、以下に対する受容体類がある(感覚性シグナルメディエータ(例えば光及び嗅覚刺激性分子)、アデノシン、γアミノ酪酸(GABA)、肝細胞成長因子、メラノコルチン、ニューロペプチドY、オピオイドペプチド、オプシン、ソマトスタチン、タキキニン、血管作用性腸管ポリペプチドファミリー及びバソプレシン、生体アミン(例えばドーパミン、エピネフリン及びノルエピネフリン、ヒスタミン、グルタミン酸(代謝調節作用)、アセチルコリン(ムスカリン様作用)及びセロトニン)、ケモカイン、炎症の脂質メディエータ(例えばプロスタグランジン及びプロスタノイド、血小板活性化因子及びロイコトリエン)及びペプチドホルモン(例えばボンベシン、ブラジキニン、カルシトニン、C5aアナフィラトキシン、エンドセリン、卵胞刺激ホルモン(FSH)、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、ニューロキニン及び甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)及びオキシトシン))。まだ同定されていない刺激の受容体として作用するGPCRは、オーファン受容体として知られている。
GPCRファミリーの多様性は、選択的スプライシングによって更に増加する。多くのGPCR遺伝子はイントロンを持ち、スプライス変異体が同定されている受容体は現在30を超えている。変異の数が最も多いのは、このタンパク質のC末端においてである。N末端及び細胞質内ループの変異体もまた高頻度であるのに対して、細胞外ループまたは膜貫通ドメインでの変異体は頻度が低い。変異が発生し得るような部位を2ヶ所以上有する、幾つかの受容体もある。スプライシング変異体は、分布、シグナル伝達、共役、制御及びリガンド結合の特徴に観察される差異に基づき、機能的に異なるようである(Kilpatrick, G.J. 他 (1999) Trends Pharmacol. Sd. 20:294-301)。
GPCRは、3つの主要なサブファミリーに分類できる。即ちロドプシン様、セクレチン様、及び代謝調節型グルタミン酸受容体サブファミリーである。GPCRサブファミリー群のメンバーは、同様の機能と、特徴的な膜7回貫通構造とを共有するが、アミノ酸配列は互いに異なる。最大のファミリーを構成するロドプシン様GPCRは、ホルモン、神経伝達物質、及び光など、多様な細胞外シグナルを伝送する。ロドプシンは、動物の網膜内に見られる感光性GPCRである。脊椎動物では、ロドプシン分子は、光受容体(杆体)細胞に見られる膜の積層(membranous stacks)に包埋されている。各ロドプシン分子は、cGMPレベルの低下を誘発し、これにより原形質膜ナトリウムチャネルが閉鎖することにより1光子の光に反応する。この方法で、視覚シグナルが神経インパルスへ変換される。別のロドプシン様GPCRは、神経伝達物質への反応に直接関与する。このようなGPCRには、アドレナリンに対する受容体(アドレナリン受容体)、アセチルコリンに対する受容体(ムスカリン様受容体)、アデノシンに対する受容体、ガラニンに対する受容体及びグルタミン酸に対する受容体(N-メチル-D-アスパラギン酸/NMDA受容体)がある(Watson, S.およびS. Arkinstall (1994) The G-Protein Linked Receptor Facts Book, Academic Press, San Diego CA, .7-9, 19-22, 32-35, 130-131, 214-216, 221-222ページ、Habert-Ortoli, E. 他 (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:9780-9783に概説されている)。
ガラニン受容体は、神経内分泌ペプチドガラニンの活性を仲介する。ガラニンはインスリン、アセチルコリン、セロトニン及びノルアドレナリンの分泌を阻害し、プロラクチン及び成長ホルモンの放出を刺激する。ガラニン受容体は、摂食疾患、痛み、うつ病及びアルツハイマー病に関与している(Kask, K. 他 (1997) Life Sd. 60:1523-1533)。その他の神経系ロドプシン様GPCRは、発達及び神経病理学において役割を有するようにみえるリゾホスファチジン酸その他のリゾホスファチドに対する受容体など、増大する数のファミリーを含む(Chun, J.他 (1999) Cell Biochem. Biophys. 30:213-242)。
GPCRの最大のサブファミリーである嗅覚受容体もまた、ロドプシン様GPCRファミリーのメンバーである。これらの受容体群は、臭覚シグナルの伝達により機能する。異なる臭気を区別するためには、多くの異なる嗅覚受容体が必要である。各嗅覚ニューロンは1種類の嗅覚受容体しか発現せず、別々の受容体を発現するニューロン群が、鼻の経路中の異なる位置を占める。例えば、ラット脳ライブラリから単離したRA1c受容体は、脳の非常に特有の領域及び嗅覚上皮の或る特定の区域のみに発現が限定されていることを示した(Raining, K. 他 (1998) Receptors Channels 6:141-151)。しかしながら、嗅覚様受容体の発現は嗅覚組織に限定されない。例えば、典型的なGPCR特性を有する嗅覚様受容体をコードする3つのラット遺伝子は、味覚及び嗅覚組織のみならず雄の生殖組織においても発現パターンを示す(Thomas, M.B. 他 (1996) Gene 178:1-5)。
GPCR突然変異は、機能または構造的活性化の減少を招き得るものであり、多数のヒト疾患に関係してきた(前出のCoughlin)。例えば網膜色素変性症(色素性網膜炎)は、ロドプシン遺伝子の突然変異から発生し得る。更に、甲状腺刺激ホルモン受容体の体細胞活性化突然変異は、機能亢進甲状腺アデノーマの原因となることが報告されており、恒常的活性化に感受性が高い或るGPCRが癌原遺伝子のように振舞い得ることを示唆している(Parma, J. 他 (1993) Nature 365:649-651)。以下のリガンドに対するGPCR受容体には、ヒトの疾患に関連する突然変異も含まれる(黄体形成ホルモン(思春期早発症)、バソプレシンV2(X連鎖の腎原発性糖尿病)、グルカゴン(糖尿病及び高血圧)、カルシウム(副甲状腺機能亢進症、低カルシウム尿症(hypocalcuria)、高カルシウム血症)、副甲状腺ホルモン(短肢小人症)、β3-アドレナリン受容体(肥満症、非インスリン依存型糖尿病)、成長ホルモン放出ホルモン(小人症)及び副腎皮質刺激ホルモン(糖質コルチコイド欠乏症))(Wilson, S. 他 (1998) Br. J. Pharmocol. 125:1387-.1392、Stadel, J.M. 他 (1997) Trends Pharmacol. Sci. 18:430-437)。GPCRは、抑うつ症、分裂病、不眠症、高血圧、不安、ストレス、腎不全その他幾つかの心血管障害にも関与している(Horn, F. および G. Vriend (1998) J. Mol. Med. 76:464-468)。GPCRをコードする遺伝子群の突然変異と転写活性の変化とに伴う神経障害に、統合失調症(精神分裂病)、パーキンソン病、アルツハイマー病、薬物依存、および摂食障害がある。若年発達および繁殖能2(jdf-2)遺伝子座、別名runty-jerky-sterile (rjs) は、HERC2における欠失と点突然変異とに関連し、HERC2は、或るグアニンヌクレオチド交換因子タンパク質をコードする遺伝子であって小胞輸送に関わる(Walkowicz, M. 他 (1999) Mamm. Genome 10:870-878)。
更に、GPCRの活性化及び阻害に直接作用する数百の新薬が過去20年のうちに認知されてきた。これらの薬の治療標的は、癌、骨粗鬆症、子宮内膜症のみならず、心血管障害、胃腸障害、中枢神経系疾患を含めた、幅広い疾病および障害に及ぶ(前出のWilson、同Stadel)。例えばドーパミンアゴニストのLドーパはパーキンソン病の治療に用いられ、或るドーパミンアンタゴニストは精神分裂病及び初期段階のハンチントン病の治療に用いられる。アドレナリン受容体のアゴニスト及びアンタゴニストは、喘息、高血圧その他の心血管障害、及び不安の治療に用いられてきた。ムスカリン性アゴニストは緑内障及び頻脈の治療に用いられ、セロトニン5HT1Dアンタゴニストは片頭痛に対して用いられ、ヒスタミンH1アンタゴニストはアレルギー性及びアナフィラキシー性反応、枯草熱、痒み、及び動揺病に対して用いられる(前出のHorn)。
セクレチン様GPCRサブファミリーのメンバーは、セクレチン、カルシトニン、グルカゴン、成長ホルモン放出ホルモン、副甲状腺ホルモン、及び血管作用性小腸ペプチドなどのペプチドホルモンをリガンドとして有する。例えば、セクレチン受容体は、膵臓及び小腸で酵素とイオンとの分泌を刺激するペプチドホルモンである、セクレチンに応答する(前出のWatson, 278-283ページ)。セクレチン受容体は、長さが約450アミノ酸であり、胃腸細胞の原形質膜に見られる。セクレチンがその受容体に結合することにより、cAMPの産出が刺激される。
炎症及び免疫応答に結びつけられるセクレチン様GPCRの例には、EGFのモジュールを含んだムチン様ホルモン受容体(Emrl)及びCD97受容体タンパク質がある。CD97は、主に白血球で発現し、活性化されたB及びT細胞上で顕著に上方制御される(McKnight, A.J.及びS. Gordon (1998) J. Leukoc. Biol. 63:271-280)。これらのGPCRは、最近特徴付けられたEGF-TM7受容体サブファミリーのメンバーである。これら膜7回貫通ホルモン受容体は、in vivoでヘテロ二量体として存在し、3から7の潜在的カルシウム結合EGF様モチーフ群を持つ。このEGF モチーフは長さが約40アミノ酸残基で、6つの保存されたシステイン残基を持ち、シグネチャ配列のN末端の近くにはカルシウム結合部位がある。アスパラギン酸またはアスパラギン残基の翻訳後のヒドロキシル化はいくつかのタンパク質のEGF様ドメインと関連している (Prosite PDOC00010 Aspartic acid and asparagine hydroxylation site)。EGF-TM7ファミリは最近単離されたEGF-TM7ラトロフィリン(latrophilin)関連タンパク質(ETL)も含んでいる。このタンパク質は心臓の筋細胞および平滑筋で発現されていて、心臓において発生的に調節されている。ETLは心筋の最終分化をもたらすうえで役割を持っている可能性がある。ETLは冠状動脈血管形成にも関与している可能性がある(Nechiporuk, T. 他 (2001) J. Biol. Chem. 276:4150-4157)。
もう1つのGPCRサブファミリーは、代謝調節型グルタミン酸受容体ファミリーである。グルタミン酸は、中枢神経系の主要な興奮性神経伝達物質である。代謝調節型グルタミン酸受容体は、細胞内エフェクターの活性を調節し、長期の増強作用に関与する(前出のWatson, .130ページ)。Ca2+感知受容体は、カルシウムイオンの細胞外濃度の変化を感知するものであり、カルシウム結合に関与し得る酸性アミノ酸のクラスター群を含む大きな細胞外ドメインを有する。代謝調節型グルタミン酸受容体ファミリーには、フェロモン受容体、GABAB受容体及び味覚受容体もある。
その他のGPCRのサブファミリーには、線虫(Caenorhabditis elegans及びCaenorhabditis briggsae)に見られる化学受容体遺伝子の2つの群があり、これらは哺乳動物の嗅覚受容体遺伝子に遠く関係している。細胞膜上の接合因子への反応に関与している酵母フェロモン受容体STE2及びSTE3は、細胞性粘菌(Dictyostelium discoideum)で個々の細胞の集合を調整し、多くの発達的制御遺伝子の発現を制御すると考えられているcAMP受容体と同様に、膜7回貫通シグネチャを有する。
最近の研究では、糖尿病、肥満症及び骨粗鬆症を含む代謝障害の治療においてGPCRを将来的に使用できる可能性を示唆している。例えば、腎原発性糖尿病の原因となる突然変異体V2バソプレシン受容体は、突然変異を含む領域に及ぶC末端V2受容体ペプチドの同時発現によりin vitroで機能的にレスキューされ得る。これは疾病治療の新規なストラテジーを示唆する(Schoneberg, T. 他 (1996) EMBO 1. 15:1283-1291)。メラノコルチン4受容体(MC4R)における突然変異は、ヒトの体重調節及び肥満症に関与している。バソプレシンV2受容体の突然変異体により、これらMC4Rの突然変異体は原形質膜への輸送に欠陥があるので(Ho, G及び R.G. MacKenzie (1999) J. Biol. Chem. 274:35816-35822)、従って同様のストラテジーで治療し得る。副甲状腺ホルモン(PTH)のための1型受容体は、血流中のカルシウムホメオスタシスのPTH依存型制御を仲介するGPCRである。PTH/受容体の相互作用の研究は、骨粗鬆症の治療のための新規なPTH受容体リガンドの開発を可能にし得る(Mannstadt, M. 他 (1999) Am. J. Physiol. 277:F665-F675)。
GPCRのケモカイン受容体グループは、炎症及び感染症の治療に役立つ可能性を持つ(概説は、Locati, M.およびP.M. Murphy (1999) Annu. Rev. Med. 50:425-440を参照)。ケモカインは、白血球輸送、造血、及び血管形成の制御において、細胞内シグナルとして作用する小ポリペプチドである。マウスにおける種々のケモカイン受容体の標的化された破壊は、これらの受容体が、病理的炎症において、及び多発性硬化症などの自己免疫異常において、役割を果たしていることを示す。ヘルペスウイルス及びヒト免疫不全症ウイルス(HIV-1)などの感染体も、感染を促進するために、ケモカイン受容体を利用する。ケモカイン受容体CCR5の短縮変種(トランケート型)は、HIV-1によるT細胞の感染に対する補助受容体として作用するものであり、AIDSに対する抵抗力を生じさせ、CCR5のアンタゴニストがAIDSの発達予防に有用たり得ることを示唆する。
インターロイキン(IL)は免疫細胞と炎症細胞の間の相互作用を仲介する。いくつかのインターロイキンが記述されていて、その各々が独自の生物学的活性および他のものと重複する生物学的活性を持っている。マクロファージはIL-1とIL-6を産生し、T細胞はIL-2、IL-3、IL-4、IL-5およびIL-6を産生し、骨髄間質細胞はIL-7を産生する。IL 1とIL 6は免疫細胞の機能において重要な役割を果たすだけでなく、さまざまな炎症細胞タイプを刺激する。好酸球の成長と分化はIL 5によって顕著に推進される。IL 2はT細胞、ナチュラルキラー細胞およびリンフォカイン活性化キラー細胞の強力な増殖シグナルである。IL 1, IL 3, IL 4および IL 7はさまざまな造血前駆体の発達を推進する。IL 4〜IL 6はまた、B細胞の増殖と抗体の産生の推進に役割を果たす(Mizel, S.B. (1989) FASEB J. 3:23792388)。
メラトニンはヒドロキシルラジカル(.OH)、ペルオキシ亜硝酸アニオン(ONOO)および次亜塩素酸(HOCl)を含むフリーラジカルを除去し、核因子κB(NFkappa B) が核に転位してDNAに結合するのを防ぎ、それによりインターロイキンおよび腫瘍神経症因子αなどの炎症性サイトカインの上方調節を低減する。メラトニンは組織の損傷を招く経内皮移動および浮腫を弱める(Reiter, R.J. 他 (2000) Ann. N.Y. Acad. Sci. 917:376386)。メラトニン受容体が活性化されると、γインターフェロンおよびインターロイキン2(IL-2)などのTヘルパー細胞サイトカインの放出、およびインターロイキン4とダイノルフィンBとに免疫学的に交差反応するオピオイドサイトカインの活性化が促進される。造血は、メラトニンに誘発されたオピオイドが骨髄マクロファージのκ1オピオイド受容体に作用することによる影響を受ける(Maestroni, G.J. (1999) Adv. Exp. Med. Biol. 467:217226)。
リガンド依存性受容体イオンチャネル
リガンド依存性受容体イオンチャネルは2つのカテゴリーに分かれる。第1のカテゴリーである細胞外リガンド依存性受容体イオンチャネル(ELG)は、神経伝達物質結合を迅速なシナプス神経伝達のような電気シグナルに急速に変換する。ELG機能は翻訳後修飾によって調節される。第二のカテゴリーである細胞内リガンド依存性受容体イオンチャネル(ILG)は多くの細胞内セカンドメッセンジャーによって活性化され、チャネル開放応答に作用する際、翻訳後修飾を必要としない。
ELGは、活動電位の発生の閾値にまで興奮性細胞を脱分極する。非興奮性細胞においては、ELGはアゴニストの存在時に限られたカルシウムイオン流入を可能にする。ELGにはアセチルコリン、L-グルタミン酸、グリシン、ATP、セロトニン、GABAおよびヒスタミンのような神経伝達物質によって直接制御されるチャネルが含まれる。ELG遺伝子は構造的かつ機能的に強い類似性を有するタンパク質をコードする。ILGは異なった、関連しない遺伝子ファミリによってコードされ、また、cAMP、 cGMP、カルシウムイオン、 ATPおよびアラキドン酸の代謝産物に対する受容体群を含む。
マクロファージスカベンジャー受容体
マクロファージスカベンジャー受容体類は広いリガンド特異性を持っており、低密度リポタンパク質(LDL)や外来抗原との結合に関与し得る。スカベンジャー受容体タイプIおよびIIは三量体膜タンパク質であり、各サブユニットには小さいN末端細胞内ドメインと、1つの膜貫通ドメインと、1つの大きな細胞外ドメインと、C末端システインリッチドメインとがある。細胞外ドメインには1つの短いスペーサードメインと、1つのα螺旋コイルドコイルドメインと、1つの3重螺旋コラーゲン性ドメインとがある。これらの受容体は或る範囲のリガンド群と結合することが示され、リガンドの例には、化学修飾されたリポタンパク質およびアルブミンと、ポリリボヌクレオチドと、ポリサッカライドと、リン脂質と、アスベストとがある(Matsumoto, A. 他 (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. 87:9133-9137; および Elomaa, O. 他 (1995) Cell 80:603-609)。スカベンジャー受容体が主要な役割を果たすと思われるのはアテローム発生においてであり、これは、動脈壁内の、修飾されたLDLの取り込みを媒介して働き、また宿主防御においては、細菌性エンドトキシンと、細菌と、原虫とに結合して働く。
T細胞受容体
T細胞は免疫系において作動体および調節因子としての二つの役割を果たしており、感染細胞で細胞死を誘発し、他の免疫細胞の増殖を刺激するシグナルの伝達と抗原認識を連関する。T細胞の集団は広範囲の異なった抗原を認識できるが、個々のT細胞は一つの抗原のみを、抗原提示細胞表面上の主要組織適合分子(MHC)との複合型ペプチドとしてT細胞受容体(TCR)に提示された場合のみに認識できる。大部分のT細胞上のTCRは免疫グロブリン様膜内在性糖タンパク質からなる。この免疫グロブリン様膜内在性糖タンパク質は、似た分子量のαとβの二つのポリペプチドサブユニットを含む。両方のTCRサブユニットは、可変領域と定常領域の両方を有する細胞外ドメイン、膜を1回貫通する膜貫通ドメイン、および短い細胞内ドメインを有する(Saito, H. 他 (1984) Nature 309:757-762)。TCRサブユニットの遺伝子は、異なった遺伝子区分の体細胞性再構成によって作成される。適切なMHC状況における抗原とTCRとの相互作用によって、免疫系の細胞要素の増殖、成熟および機能を誘発するシグナルカスケードが開始される(Weiss, A. (1991) Annu. Rev. Genet. 25: 487-510)。リンパ腫、白血病、自己免疫疾患および免疫不全疾患においてTCR遺伝子の再編成とTCR発現の変化が注目されている(Aisenberg, A.C. 他 (1985) N. Engl. J. Med. 313:529-533; Weiss, 前出)。
ネトリン受容体:
ネトリンは拡散性誘引物質および忌避物質として働いて発達中の神経系内で遊走している細胞や軸索をその標的に誘導する分子のファミリーである。このネトリンの受容体には線虫タンパク質UNC-5および最近脊椎動物中に同定された相同体が含まれる(Leonardo, E.D. 他 (1997) Nature 386:833-838)。これらの受容体は免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであり、またZU5 ドメインと呼ばれる特徴的ドメインも含んでいる。ネトリン受容体ファミリーのマウスメンバーにおける突然変異であるRcm(吻側小脳形成異常)では、明らかに神経細胞異常遊走の結果である小脳および中脳欠損を生じている(Ackerman, S.L.. et al. (1997) Nature 386:838-842)。
VPS10 ドメイン含有受容体
VPS10含有受容体ファミリのメンバーはすべて、酵母の液胞ソーティング・タンパク質10 (VPS10) 受容体に相同性を持つドメインを含んでいる。このファミリーには、マウス胚性および出生後早期の神経系発達時に発現するSorCS、モザイク受容体SorLA、およびニューロテンシン受容体sortilinが含まれる(Hermey, G. 他 (1999) Biochem. Biophys. Res. Commun. 266:347-351; Hermey, G. 他 (2001) Neuroreport 12:29-32).このファミリーの最近同定されたメンバーであるSorCS2は発達中および成熟したマウスの中枢神経系に高度に発現される。その発現の主要部位は底板であり、ドーパミン性脳核および視床背側核を含む脳領域においても一過性に高度に検出される(Rezgaoui, M. (2001) Mech. Dev. 100:335-338)。
膜結合タンパク質
テトラスパンファミリータンパク質
膜4回貫通型スーパーファミリー(TM4SF)、別名テトラスパンファミリーは多重遺伝子族であり、タイプIII膜内在性タンパク質をコードする(Wright, M.D. および Tomlinson, M.G. (1994) Immunol. Today 15:588-594)。このTM4SFは、細胞膜を4回貫通する膜タンパク質からなる。TM4SFのメンバーの例には、血小板および内皮細胞の膜タンパク質と、黒色腫関連抗原、白血球表面糖タンパク質、結腸癌腫抗原、腫瘍関連抗原、および住血吸虫表面タンパク質がある(Jankowski, S.A. (1994) Oncogene 9:1205-1211)。TM4SFの各メンバーは、約25〜30%のアミノ酸配列同一性を互いに共有する。 多数のTM4SFメンバーが関与すると示唆されている作用は、シグナル伝達、細胞接着の制御、細胞の成長と増殖との調節(例えば発生および発癌)、並びに細胞運動性(例えば腫瘍細胞転移)である。TM4SFタンパク質の発現は多様な腫瘍に関連し、発現のレベルは、細胞が成長する際や活性化する際に改変され得る。
腫瘍抗原
腫瘍抗原は表面分子であり、腫瘍細胞では正常細胞と異なる発現をする。腫瘍抗原は、腫瘍細胞を免疫的に正常細胞と区別し、ヒトの癌に関する診断と治療の標的を提供する(Takagi, S. 他 (1995) Int. J. Cancer 61: 706-715; Liu, E. 他 (1992) Oncogene 7: 1027-1032)。
イオンチャネル
イオンチャネルは、事実上、身体のあらゆる細胞の原形質膜内に見られる。例えば、塩素イオンチャネルは多様な細胞機能を媒介し、その機能の例には、膜電位の調節と、上皮膜を通ってのイオンの吸収と分泌とがある。塩素イオンチャネルが、ゴルジ体とエンドサイトーシス小胞の細胞内の膜にある場合、オルガネラのpHをも調節する(例えばGreger, R. (1988) Annu. Rev. Physiol. 50:111-122を参照)。塩素イオンチャネル類の電気生理的および薬理学的特性、例えばイオンコンダクタンス、電流-膜電位関係、およびモジュレーター(修飾因子)類への感受性は、筋肉、神経細胞、線維芽細胞、上皮細胞、および白血球に、別々の塩素イオンチャネルがあることを示唆する。多くのチャネルは、1個若しくは数個のプロテインキナーゼによるリン酸化部位を有する。 プロテインキナーゼには、プロテインキナーゼA、プロテインキナーゼC、チロシンキナーゼ及びカゼインキナーゼIIがあり、これらはすべて細胞のイオンチャネル活性を調節する。細胞内におけるタンパク質の不適切なリン酸化は、細胞周期の進行および細胞分化における変化に関連する。細胞周期における変化は、アポトーシスの誘発や癌の誘発に関連することが示されている。細胞分化における変化は、生殖系、免疫系、および骨格筋の、疾患や障害に関連することが示されている。
小脳顆粒神経細胞は非不活化カリウム電流を持ち、これは神経伝達物質からの受容体刺激による発火頻度を調節し、また、静止膜電位を制御する。非不活化電流を示すカリウムチャネル類の例に、ether a go-go (EAG) チャネルがある。KCR1と名付けられた膜タンパク質は、ラットEAGと特異的にそのC末端領域で結合し、小脳非不活化カリウム電流を調節する。KCR1は、12の膜貫通ドメイン群と、細胞内にアミノ酸末端およびカルボキシル末端を含むと予測される。これらの膜貫通領域の構造的特徴はトランスポータスーパーファミリーの領域に類似しているように見えるが、KCR1と既知のトランスポータとの間に相同性は見られないことから、KCR1は新規クラスのトランスポータに属すことが示唆される。KCR1は、非不活化カリウムチャネルの調節成分と考えられる (Hoshi, N. 他 (1998) J. Biol. Chem. 273:23080-23085)。
プロトンポンプ
プロトンATPアーゼは大きなクラスの膜タンパク質であり、ATP加水分解エネルギーを用いて電気化学的プロトン勾配を膜の内外に発生させる。この発生した勾配は、他のイオン(Na+、K+、または Cl-)の膜を通しての輸送、または、オルガネラpHの維持のために使用し得る。プロトンATPアーゼ類は更に、ミトコンドリアF-ATPアーゼ、原形質膜ATPアーゼ、および液胞ATPアーゼに分類される。液胞ATPアーゼは、エンドサイトーシスとエキソサイトーシスとの各過程に関与する多様な小胞における、酸性pHを確立し維持する(Mellman, I. 他 (1986) Ann. Rev. Biochem. 55:663-700)。
プロトンと共役する、膜12回貫通ドメイントランスポータ、例えばPEPT 1およびPEPT 2はペプチド類の、胃腸での吸収と、腎臓での再吸収とに関与し、これには電気化学的プロトン勾配を駆動力として用いる。別のタイプのペプチドトランスポータであるTAPトランスポータは、TAP 1とTAP 2から成るヘテロ二量体であり、抗原のプロセシングに関わる。ペプチド抗原はTAPによって小胞体の膜を通して輸送され、その結果、ペプチド抗原は、細胞表面においてMHC分子と会合して発現し得る。各TAPタンパク質は複数の疎水性膜貫通セグメントと、1つの高度に保存されたATP結合カセットから構成される(Boll, M. 他 (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. 93:284289)。病原微生物、例えば単純ヘルペスウイルスは、TAPが媒介するペプチド輸送の阻害因子をコードする可能性があり、その目的は、免疫の監視を逃れることである(Marusina, K. および Manaco, J.J. (1996) Curr. Opin. Hematol. 3:19-26)。
ABC輸送体
ATP結合カセット(ABC)輸送体、別名「輸送ATPアーゼ」は膜タンパク質のスーパーファミリーであり、原核生物と真核生物とにおける輸送機能とチャネル機能とを媒介する(Higgins, C.F. (1992) Annu. Rev. Cell Biol. 8:67-113)。ABCタンパク質類は、類似した全体構造と、顕著な配列相同性とを共有する。すべてのABCタンパク質には約200アミノ酸残基の或る保存されたドメインがあり、これには1つ以上のヌクレオチド結合ドメインが含まれている。ABC輸送体遺伝子群における突然変異は、高ビリルビン血症II/Dubin-Johnson症候群、劣性スタルガルト病、X染色体連鎖副腎白質ジストロフィー、多剤耐性、小児脂肪便症、および嚢胞性線維症など、様々な疾患に関与する。
セマホリンとニューロピリン
セマフォリン(semaphorin)類は軸索誘導分子の1大グループで少なくとも30種のメンバーがあり、脊椎動物、無脊椎動物、更には数種のウイルスでも発見されている。すべてのセマフォリンは長さが約500アミノ酸のセマ(sema)ドメインを有する。セマフォリン受容体であるニューロピリン(neuropilin)は、in vitroで神経突起の伸展を促進することが示されている。ニューロピリンの細胞外領域はCUB、ディスコイディン(discoidin)、およびMAMドメインという3つの異なるドメインから成っている。ニューロピリンのCUBモチーフおよびMAMモチーフはタンパク質間相互作用において幾つかの役割を果たすことが示唆されており、更にセマドメインおよびC末端ドメインを介してセマフォリン類の結合に関与していると考えられる(Raper, J.A.(2000)Curr. Opin. Neurobiol. 10:88-94の概説を参照)。
細胞間伝達に関連する膜タンパク質
細胞間伝達は、多細胞生物の発生と生存とに必須である。細胞は、タンパク質シグナル伝達分子の分泌と取り込みとによって互いに通信する。細胞内へのタンパク質の取り込みを達成する手段がエンドサイトーシスであり、ここでは、シグナル伝達分子と原形質膜表面との相互作用が、しばしば特異的受容体への結合を通じて行われる結果、形質膜由来小胞を形成し、これらの小胞が分子を取り囲み、細胞質内に運ぶ。細胞からのタンパク質の分泌を達成する手段がエキソサイトーシスであり、ここでは、細胞内の分子が、トランスゴルジ網に由来する、膜に囲まれた輸送小胞内に詰められる。これらの小胞は原形質膜と融合し、小胞の内容物を周囲の細胞外空間に放出する。エンドサイトーシスとエキソサイトーシスとの結果、原形質膜成分の除去と追加とが起こり、また、これらの成分のリサイクルは、原形質膜と、膜に囲まれた内部区画との双方の、完全性、同一性、および機能性の維持に必須である。
シナプトブレビン(synaptobrevin)類はシナプスの小胞会合膜タンパク質(VAMP)であり、初めはラット脳で発見された。これらのタンパク質は、神経細胞に限定され、一細胞の細胞膜からシナプスを通り他の細胞膜への、小胞の移動において機能すると初めは考えられていた。シナプトブレビン類は、今では、構成的な複数の小胞輸送経路に存在および機能し、多くの非神経細胞タイプの、受容体が媒介するエンドサイトーシスおよびエキソサイトーシス経路に関与することがわかった。この調節される小胞輸送経路は、シナプトブレビン分子を切断するクロストリジウム神経毒素の、高度に特異的な作用によってブロックされ得る。
In vitro での研究が、多様な細胞膜に関して行われ (Galli 他 (1994) J. Cell. Biol. 125:1015-24; Link 他 (1993) J. Biol. Chem. 268:18423-6) 、それらの研究は、VAMPSは広く分布することを示している。これらの重要な膜輸送タンパク質は、発生期の軸索伸展にもエキソサイトーシスを通じて関与し、また、神経伝達物質と調節ペプチドとの放出や、エンドサイトーシスにも関与するようである。エンドサイトーシス性小胞輸送としては、細胞内イベント、例えば核膜、小胞体、ゴルジ体、および多様な封入体(例えばペルオキシソームまたはリソソーム)の、融合および分裂がある。エンドサイトーシスの各プロセスは、真核細胞では、酵母、線虫(Caenorhabditis elegans)、ショウジョウバエ、および哺乳動物に渡り、普遍的なようである。
VAMP-1Bは、細胞内ターゲッティングに関与し、また、VAMP-1Aのアイソフォームである (Isenmann, S. 他 (1998) Mol. Biol. Cell 9:1649-1660)。4種の更なるスプライス変異体(VAMP-1CからFまで)が最近、同定された。各変異体には可変配列群があるが、その位置はきわめて末端のC末端部のみであることから、C末端部が、小胞ターゲッティングに重要であると示唆される (Berglund, L. 他 (1999) Biochem. Biophys. Res. Commun. 264:777-780)。
Nogo は中枢神経系ミエリンの成分として同定され、成熟した脊椎動物における軸索再生を防ぐ。Nogo-66 受容体および軸索表面からのグリコホスファチジルイノシトール結合タンパク質の切断は神経細胞をNogo-66に対して非感受性にして中枢神経系障害からの回復を促進する(Fournier, A.E. 他 (2001) Nature 409:341-346)。
スリットタンパク質は神経系の腹側正中線の細胞によって発現される細胞外基質タンパク質である。スリットタンパク質は反発的ガイダンス受容体のRoundabout (Robo)のためのリガンドであり、したがって、反発的軸索誘導の役割を果たす(Brose, K. 他 (1999) Cell 96:795-806)。
リソソームは、自己貪食時の細胞内物質分解の部位であり、また、エンドサイトーシス後の細胞外分子の分解の場でもある。リソソーム酵素は、トランスゴルジ網から出芽する小胞内に詰められる。これらの小胞はエンドソームと融合して成熟リソソームを形成し、成熟リソソーム内では、エンドサイトーシスによって取り込まれた物質の加水分解性消化が起こる。リソソームは自己貪食小胞と融合し、独特な区画を形成し得る。この区画の中では、オルガネラや他の細胞内成分の分解が起こる。
輸送小胞、例えばエンドソームによるタンパク質選別は、多様な生理的過程にとって重要な結果をもたらす。このような過程の例に、細胞表面成長、異なる細胞内オルガネラ群の生合成、エンドサイトーシス、および、ホルモンと神経伝達物質との制御された分泌がある(Rothman, J.E. および Wieland, F.T. (1996) Science 272:227-234)。特に、神経変性障害その他の神経病理には、エンドソームのタンパク質選別時、または、エンドソーム生合成の際の生化学的欠陥が関連する(Mayer R.J. 他 (1996) Adv. Exp. Med. Biol. 389:261-269)。
ペルオキシソーム類は、分泌経路とは独立したオルガネラである。これらは、細胞内の、過酸化物を生成する多くの酸化反応の場である。ペルオキシソームは、真核細胞のオルガネラの中でもサイズや数が独特であり、また、酵素内容は、生物と細胞タイプと代謝の需要によって異なる(Waterham, H.R. および Cregg, J.M. (1997) BioEssays 19:57-66)。ペルオキシソームタンパク質に遺伝子欠損があるとペルオキシソーム欠損症を生じ、この欠損が関連付けられる多数のヒト病理の例に、ツェルヴェーガー症候群、近位肢型点状軟骨異形成(rhizomelic chondrodysplasia punctata)、X染色体連鎖副腎白質ジストロフィー、アシルCoAオキシダーゼ欠損症、二頭酵素欠損症、古典的Refsum病、DHAPアルキルトランスフェラーゼ欠損症、および無カタラーゼ血症がある(Moser, H.W. および Moser, A.B. (1996) Ann. NY Acad. Sci. 804:427-441)。また、Gartner, J. 他 (1991; Pediatr. Res. 29:141-146) は、ツェルヴェーガー症候群の患者における低密度ペルオキシソーム様細胞内分画に関連する、或る22 kDaの膜内在性タンパク質を発見した。
正常な胚発生と、生殖細胞成熟の制御とを変調する多数の分泌タンパク質は、それぞれの膜結合受容体と相互作用する。胚発生時の細胞運命は、アクチビン(activin)/TGF-βスーパーファミリーのメンバー、カドヘリン、IGF-2、および他のモルフォゲンによって決定される。また、生殖細胞と生殖組織との増殖、成熟、および再分化は、例えばIGF-2、インヒビン、アクチビン、およびフォリスタチン(follistatins)によって調節される(Petraglia, F. (1997) Placenta 18:3-8; Mather, J.P. 他 (1997) Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 215:209-222)。トランスフォーミング成長因子β(TGFベータ) シグナル伝達は、連続して作用する二つの受容体セリン/トレオニンキナーゼ(II型TGFベータ受容体(TbetaRII) とリン酸化I型TGFベータ受容体(TbetaRI))によって媒介される。TbetaRI結合タンパク質1 (TRECAP1)はI型トランスフォーミング成長因子β受容体の静止形態と活性形態を識別し、TGFベータシグナル伝達に関連付けられている(Charng, M.J 他(1998) J. Biol. Chem. 273:93659368)。
レチノイン酸受容体α(RAR α) はレチノイン酸によって誘発される成熟を媒介し、骨髄の発達に関与する。顆粒球分化中にレチノイン酸によって誘発される遺伝子には、造血特異的遺伝子のE3が含まれているが、E3は骨髄造血時の活性RARαの直接の標的となる。
μオピオイド受容体(MOR)は、モルフィン、コデイン、メサドンおよびフェンタニル並びにヘロインなどの鎮痛薬の作用を媒介する。MORはGタンパク質活性化カリウムチャネルに機能的に結合する(Mestek A. 他 (1995) J. Neurosci. 15:2396-2406)。多様なMORサブタイプが存在する。ソマトスタチン2、ドパミンD2、プロスタグランディンEP3、およびセロトニン受容体サブタイプ 5ヒドロキシトリプタミン4 および5ヒドロキシトリプタミン7 を含む多数のGタンパク質共役受容体と同様にMOR-1で選択的スプライシングが見られる(Pan, Y.X. 他 (1999) Mol. Pharm. 56:396403)。
膜表在性タンパク質およびアンカー型膜タンパク質
いくつかの膜タンパク質は膜貫通しておらず、膜アンカーまたは膜内在性タンパク質との相互作用を介して原形質膜に固着している。膜アンカーは、あるタンパク質に翻訳後に共役的に結合し、プレニル基、ミリスチル基およびグリコシルホスファチジルイノシトール基のような部分が含まれる。膜表在性タンパク質およびアンカー型タンパク質の膜局在化は受容体媒介シグナル伝達などのプロセスにおける機能にとって重要である。例えば、Rasのプレニル化は原形質膜への局在化に必要であり、またシグナル伝達における正常作用および発ガン性作用に必要とされる。
小胞体膜タンパク質
正常に機能する真核細胞に必要な条件は、新規に合成された全てのタンパク質が正しく折りたたまれ、修飾され、特定の細胞内部位および細胞外部位に送達されることである。新規合成された膜タンパク質および分泌タンパク質は、細胞の選別・分配網に入る。これは合成時または合成直後に起こり、その後、タンパク質は細胞内外の特定の位置に送られる。この過程の最初の区画である小胞体(ER)においてタンパク質が受ける修飾の例に、グリコシル化、ジスルフィド結合形成、およびオリゴマー形成がある。修飾されたタンパク質は次に、一連の、膜に囲まれた区画を通って輸送される。この区画の例にゴルジ体の多様な層板があり、この区画では更なる糖質修飾が起こる。区画間の輸送を生じる手段は、小胞の出芽と融合とである。一旦、分泌経路に入るとタンパク質は、細胞表面に達するのに膜を横断する必要は無い。
過半数のタンパク質はER内でプロセシングされオルガネラから運び出されるが、幾つかは保持される。ER内に保持されるためのシグナルは、哺乳動物細胞では、テトラペプチド配列であるKDELからなり、その位置は、常在ER膜タンパク質のカルボキシル末端である(Munro, S. (1986) Cell 46:291-300)。KDEL配列を持つタンパク質はERを出るが、すぐに初期ゴルジ層板から回収され、ERに戻る。一方、このシグナルを欠くタンパク質は、分泌経路を進む。
細胞の分泌経路の妨害は、幾つかのヒト疾患に関与することが示唆されている。家族性高コレステロール血症では低密度リポタンパク質受容体がER内に残り、細胞表面に移動しない(Pathak, R.K. (1988) J. Cell Biol. 106:1831-1841)。βアミロイド前駆体タンパク質(βAPP)の輸送とプロセシングとの変異は、推定上の小胞輸送タンパク質であるプレセニリン(presenilin)と関与しており、また、早期発症アルツハイマー病に関与し得る(Levy-Lahad, E. 他 (1995) Science 269:973-977)。ERに由来するカルシウム恒常性の変化に伴う疾患の例に、心筋症、心臓肥大、筋緊張性ジストロフィー、Brody病、Smith-McCort異形成、および糖尿病がある。
ミトコンドリア膜タンパク質
ミトコンドリア電子伝達系(すなわち呼吸鎖)は、一連の3種の酵素複合体であってミトコンドリア膜内にあり、NADHから酸素への電子伝達と、この酸化作用をATPの合成に共役させる過程(酸化的リン酸化)とに関わる。ATPはその後、主要なエネルギー源を提供することにより、細胞の、エネルギーを必要とする多くの反応を駆動する。
ミトコンドリア呼吸鎖の殆どのタンパク質成分は、核がコードする遺伝子の産物であり、これらはミトコンドリア内に移入されるが、他のタンパク質はミトコンドリア遺伝子の産物である。この呼吸鎖における酵素の欠損や改変された発現に関連して多様な病態がヒトにおいて見られ、その例に、神経変性疾患、ミオパシー(筋疾患)、および癌がある。
リンパ球および白血球膜タンパク質
抗原へのB細胞の応答は、正常な免疫系の必須要素である。成熟B細胞は、B細胞受容体(BCR)によってが外来抗原を認識し、これらの受容体は膜結合性の特異的抗体であって、外来抗原と結合する。この抗原/受容体複合体は細胞内に取り込まれ、抗原はタンパク質分解処理を受ける。複雑な抗原に対し有効な応答を発生するには、BCRとBCRに会合するタンパク質とT細胞応答との全てが必要である。抗原のタンパク質分解断片は、B細胞の表面の主要組織適合複合体II(MHC II)分子と複合体を形成する。B細胞の表面でこの複合体をT細胞が認識し得る。一方、マクロファージ他のリンパ様細胞は、MHC I分子に会合する抗原を、T細胞に提示する。T細胞はMHC I-抗原複合体を認識し、それによって活性化されるが、この作用は、T細胞受容体/CD3複合体との相互作用による。後者の複合体はT細胞表面多量体タンパク質で、原形質膜にある。抗原提示によって活性化したT細胞は多様なリンホカインを分泌する。リンホカインはB細胞の成熟とT細胞の増殖とを誘導し、また標的細胞を殺すマクロファージを活性化する。
白血球は炎症応答と免疫応答とにおいて基本的な役割を持ち、白血球の例としては単球/マクロファージ、肥満細胞、多形核白血球、ナチュラルキラー細胞、好中球、好酸球、好塩基球、および骨髄系前駆体がある。白血球膜タンパク質の例に、CD抗原のメンバー、N-CAM、I-CAM、ヒト白血球抗原(HLA)クラスIおよびHLAクラスIIの遺伝子産物、免疫グロブリン、免疫グロブリン受容体、補体、補体受容体、インターフェロン、インターフェロン受容体、インターロイキン受容体、およびケモカイン受容体がある。
異常なリンパ球と白血球との活性に伴う急性障害の例には、AIDS、免疫過敏、白血病、白血球減少症、全身性ループス、肉芽腫症、および好酸球増加症がある。
アポトーシス関連膜タンパク質
多様なリガンド、受容体、酵素、腫瘍抑制因子、ウイルス性遺伝子産物、薬物、および無機イオンは、アポトーシスの細胞破壊の調節と実行において、重要な正または負の役割を持つ。アポトーシス経路の幾つかの特定成分はすでに同定され特徴付けられているが、関与するタンパク質間の多くの相互作用は不明確であり、この経路の主要な諸相は未知のままである。
DNA切断と、Fasが媒介する細胞死とにおけるカルシウムレベルの関与を示す過去の研究は、アポトーシスにおいてカルシウムが必要であることを示唆した(Hewish, D.R. および L.A. Burgoyne (1973) Biochem. Biophys. Res. Comm. 52:504-510; Vignaux, F. 他 (1995) J. Exp. Med. 181:781-786; Oshimi, Y. および S. Miyazaki (1995) J. Immunol. 154:599-609)。別の研究は、細胞内カルシウム濃度の上昇が、胸腺細胞においてT細胞受容体架橋または糖質コルチコイドによってアポトーシスが引き起こされた際に見られ、また、この上昇をブロックすることによって細胞死を防げることを示している(McConkey, D.J. 他 (1989) J. Immunol. 143:1801-1806; McConkey, D.J. 他 (1989) Arch. Biochem. Biophys. 269:365-370)。したがって、膜タンパク質、例えばカルシウムチャネルおよびFas受容体は、アポトーシス応答にとって重要である。
核内ホルモン受容体
核内受容体又は細胞内受容体とも呼ばれる核内ホルモン受容体群は、1つのタンパク質スーパーファミリーを構成する。 このスーパーファミリーのメンバーは、受容体及び転写調節因子の両方である。核内ホルモン受容体は、その受容体機能及び転写調節機能の両方によって、発生、恒常性、細胞増殖、及び細胞分化を含む広範な生体プロセスに影響を与える(Mangelsdorf, D. J.他 (1995) Cell 83 : 835-840 ; Wen, D. X. 及び D. P. McDonnell (1995) Curr. Opin. Biotechnol. 6 : 582-589 ; Perlmann, T. 及び R. M. Evans (1997) Cell 90 : 391-397 ; Tenbaum, S. 及び A. Baniahmad (1997) Int. J. Biochem. Cell Biol. 29 : 1325-1341 ; Moras, D. 及び H. Gronemeyer (1998) Curr. Opin. Cell Biol. 10 : 384-391 ; Willy, P. J. 及び D. J. Mangelsdorf (1998) Hormones and Signaling (編集: B. W. O'Malley) vol. 1, Academic Press, San Diego CA, 307-358ページ ; Weatherman, R. V.他 (1999) Annu. Rev. Biochem. 68 : 559-581.)。
受容体としての核内ホルモン受容体
一般に、受容体とは、他の分子を特異的に認識するタンパク質を指す。核内ホルモン受容体は受容体として、それらの同種リガンドを特異的に認識してそれらに結合する。核内ホルモン受容体は細胞内に局在するが、多くの受容体は、細胞外リガンドと結合する細胞外の細胞表面タンパク質である。このような細胞外受容体は、成長、分化、エンドサイトーシス、及び免疫反応に影響を与える細胞応答を引き起こす。他の受容体は、小胞体からのタンパク質の選択的な輸送を促進し、細胞の特定の領域に酵素を局在化させる。核内ホルモン受容体による転写調節、細胞外受容体による細胞内へのシグナル伝達、及び他の受容体によるタンパク質の輸送及び局在化は全て、受容体と様々な細胞成分との間の特異的な相互作用に依存する。多くの場合、受容体が結合する同種リガンドが同定されていない。このような受容体はオーファン受容体と呼ばれる。リガンドと結合せずに転写調節機能を果たす核内ホルモン受容体もオーファン受容体である。
転写調節因子としての核内ホルモン受容体
多細胞生物は、構造及び機能が著しく異なる多様な細胞型から構成されている。細胞型は遺伝子発現パターンの特徴によって決定され、また、異なった細胞型は発生中に、オーバーラップするが弁別的な一組の遺伝子群を発現する。遺伝子発現の空間的及び時間的な調節は、細胞増殖、細胞分化、アポトーシス、及び生物の発達に必要なその他のプロセスにとって極めて重要である。核内ホルモン受容体は転写調節因子として、これらの基本的な生体プロセスの調節において重要な役割を果たしている。他の転写調節因子は、細胞間伝達の仲介および様々な細胞型の作用の調整を行なう細胞外シグナルに応答して遺伝子発現に影響を与える。
一般に、核内ホルモン受容体等の転写調節因子は、配列特異的な要領でプロモーター、エンハンサー、及び遺伝子の上流の調節領域と結合して、遺伝子転写の開始、活性化、抑制、または停止を行う。しかしながら、或る種の転写調節因子は、遺伝子コード領域内或いはその下流の調節エレメントと結合する。転写調節タンパク質が、単体で或いは他のアクセサリーファクターと複合体を形成してDNAの特定の領域に結合し得る(Lewin, B. (1990) Genes IV, Oxford University Press, New York NY, and Cell Press, Cambridge MA, 554-570ページ)。
核内ホルモン受容体機能のメカニズム
核内ホルモン受容体は、リガンドと結合していない状態では、hsp90等の熱ショックタンパク質及びhsp56等のイムノフィリンを含むシャペロンの多タンパク質複合体と結合して存在する。これらのシャペロンは、遊離リガンドの結合が受け入れられるような不活性な状態にリガンドのない受容体を維持し、リガンドのない受容体が核に転位するのを防止する。同種リガンドによって活性化されると、核内ホルモン受容体はホモ二量体又はヘテロ二量体を形成することができ、そのホモ二量体又はヘテロ二量体は核に転位して、特定のDNA配列に結合し、転写調節機能を発揮する。核内ホルモン受容体の調節の役割を効果的に果たすために、活性化した核内ホルモン受容体はヒストンデアセチラーゼ含有コリプレッサー複合体から解離し、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ含有コアクティベーター複合体と結合する(Xu, L.他 (1999) Curr. Opin. Genet. Dev. 9 : 140- 147)。活性化した受容体がコアクティベータタンパク質と結合してクロマチンがリモデリングされることにより、転写的に開いた活性な状態になり、活性化した核内受容体の転写調節エレメントに到達できるようになる(Lemon, B. D. 及び L. P. Freedman (1999) Curr. Opin. Genet. Dev. 9 : 499-504)。
核内ホルモン受容体の構造
核内ホルモン受容体は、ホルモンシグナルを転写反応に変換してシグナルトランスデューサとして作用する。一般に、核内ホルモン受容体は、可変アミノ末端ドメイン、高度に保存されたDNA結合ドメイン、及び保存されたC末端リガンド結合ドメインからなる。ステロイド結合核内ホルモン受容体では、アミノ末端ドメインがAF-1と呼ばれるトランス活性化エレメントを匿っている。 或る種の核内ホルモン受容体はまた、AF-2と呼ばれるリガンド結合ドメインにトランス活性化エレメントを含む。 核内ホルモン受容体のDNA結合ドメイン及びリガンド結合ドメインは二量体化エレメントを含み得る。 また、DNA結合ドメインは核局在化シグナルを含み得る(Weatherman, R. V.他 (1999) Annu. Rev. Biochem. 68 : 559-581)。
核内ホルモン受容体のDNA結合ドメインは、特定のDNA配列の認識を媒介する2つのZnフィンガーモチーフからなる。Znフィンガーモチーフは、Zn+2を配位結合する周期的に離間したヒスチジン残基及びシステイン残基を含む。 この配列パターンの例には、C2H2型、C4型、及びC3HC4型(「RING」フィンガー)のZnフィンガー、及びPHDドメインが含まれる(Lewin, 前出 ; Aasland, R. 他 (1995) Trends Biochem. Sci. 20 : 56-59)。Znフィンガーモチーフは、構造及び隣接状態が亜鉛イオンによって維持されている1つの逆平行βシート及び1つのαヘリックスを含む。DNAとの接触は、ヘリックスの前のアルギニン残基によって、並びにαヘリックスの第2の残基、第3の残基、及び第6の残基によってなされる。タンパク質の各ZnフィンガーのαヘリックスがDNA二重螺旋の主溝と接触できるように、Znフィンガーモチーフはそのタンパク質内にタンデム型にリピートされ得る。この、タンパク質とDNAとの間の接触の繰り返しによって、強力且つ特異的なDNA−タンパク質相互作用が起こる。この相互作用の強度及び特異性は、タンパク質内のZnフィンガーモチーフの数によって調節され得る。Znフィンガーは、初めはDNAと直接相互作用する領域としてDNA結合タンパク質において見出されたが、その後DNAと結合しないタンパク質からも見出された(例えばLodish, H.他 (1995) Molecular Cell Biology, Scientific American Books, New York NY, 447-451ページ参照)。
核内ホルモン受容体のリガンド結合ドメインは、リガンド、コアクティベータタンパク質、及びコリプレッサータンパク質との結合に関与する。このドメインは三層のαヘリックスからなり、中間の層は多数の疎水性側鎖を含む2つのヘリックスからなる(Moras, D. 及び H. Gronemeyer (1998) Curr. Opin. Cell Biol. 10 : 384-391)。従って、これらの2つの中間層のαヘリックスが、リガンド結合部位である疎水性ポケットを形成している。 この疎水性リガンド結合部位のリガンド結合は、受容体タンパク質の内部に完全に埋もれ、溶液に露出していない。このことから、リガンドの結合にはリガンド結合ドメインにおける大きな構造の変化を伴うことが示唆される。リガンド結合ドメインのαヘリックスの一つは、核内受容体の二量体にサブユニット間の接触の多くを提供する。このαヘリックスはリガンド結合ポケットにおいて結合している時はそのリガンドに接触することから、リガンド結合が受容体の二量体の形成に影響を与え得ることが示唆される(Weatherman, R. V.他 (1999) Annu. Rev. Biochem. 68 : 559-581)。
核内ホルモン受容体のクラスと関連タンパク質
核内ホルモン受容体は、ステロイド受容体、RXR−ヘテロ二量体受容体、及び核内オーファンホルモン受容体の3つのクラスに大きく分類することができる。ステロイド受容体はステロイドホルモンに結合し、このクラスにはアンドロゲン受容体、ミネラルコルチコイド受容体、エストロゲン受容体、糖質コルチコイド受容体、及びプロゲステロン受容体が含まれる。RXR−ヘテロ二量体受容体は非ステロイドリガンドと結合し、このクラスには、甲状腺ホルモン受容体、レチノイン酸受容体、ビタミンD受容体、エクジソン受容体、及びペルオキシソーム増殖因子活性化受容体が含まれる。核内オーファンホルモン受容体には、ステロイド産生因子1、神経成長因子誘導性受容体、及びX染色体連鎖オーファン受容体DAX-1が含まれる。
ステロイドホルモン受容体は、特定のステロイドホルモンと結合すると活性化する。 リガンドの結合によって起こる構造の変化により、熱ショックタンパク質から受容体が解離し、ホルモン応答エレメント(HRE)と呼ばれる特定のパリンドロームDNA配列を認識する受容体ホモ二量体が形成される。ステロイドホルモン受容体ホモ二量体はHREに結合すると標的遺伝子の転写を調節し得る。
例えばプロゲステロン受容体(PR)は、女性の生殖周期を変化させる重要な要素であるコレステロール由来のプロゲステロン即ち4-プレグネン-3,20-ジオンによって活性化されるステロイドホルモン受容体である。これらの変動は、月経及び妊娠を含む解剖学的及び形態学的変化と相関する。プロゲステロンの作用はPRによって仲介される。細胞質では、PRは、幾つかの他のタンパク質及びPRヘテロ複合体として知られる因子と結合している。このヘテロ複合体には、hsp70、hsp90、hsp27、p59 (hsp56)、p48、及びp23等のイムノフィリン及び熱ショックタンパク質が含まれる(Johnson, J. L.他 (1994) Mol. Cell. Biol. 14 : 1956-1963)。プロゲステロンの結合で活性化されたPRが核に転移し、正準DNA転写エレメントに結合して分化及び細胞周期に関係するプロゲステロン調節性遺伝子を調節する(Moutsatsou, P 及び C. E. Sekeris (1997) Ann. N. Y. Acad. Sci. 816 : 99-115)。妊娠を終了させるのに用いられ得るPRアンタゴニストRU486は、ステロイドホルモン受容体を標的とした市販の治療薬の一例である。
RXRヘテロ二量体核内受容体は、そのグループのメンバーがレチノイドX受容体(RXR)とヘテロ二量体を形成するとその標的DNA配列と結合することから、ステロイドホルモン受容体と区別される(Mangelsdorf, D. J. 及び R. M. Evans (1995) Cell 83 : 841-850)。RXRの3種類のアイソフォームが同定された(Minucci, S. 及び K. Ozato (1996) Curr. Opin. Genet. Dev. 6 : 567-574)。レチノイン酸受容体(RAR)はRXRヘテロ二量体核内受容体の例である。レチノイン酸(RA)は、主に魚の肝油、肝臓、卵黄、バター、及びクリームに存在する脂溶性ビタミンであるビタミンA(レチノール)の生物学的に活性な代謝産物である。9-シス-RAはRAR/RXRに結合するが、オール-トランス-RAはRXRのみと結合する。RAR/RXRヘテロ二量体は、レチノイン酸応答エレメント(RARE)として知られる特定のDNA配列と高親和的に結合するため、RA依存性転写の制御因子として作用する。
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)は、脂肪酸及びエイコサノイドによって誘導される治療的に重要なRXR−ヘテロ二量体核内受容体である。それぞれが特定の発現パターンを有するPPARの3種類の既知のイソ型が存在し、これらはグルコース及び脂質の全身の恒常性に関与する遺伝子の調節に関与する(Kliewer, S. A. 及び T. M. Willson (1998) Curr. Opin. Genet. Dev. 8 : 576-581 ; Michalik, L. 及び W. Wahli (1999) Curr. Opin. Biotechnol. 10 : 564-570)。従って、PPARは糖尿病、異脂肪血症、及び肥満症等の疾患の治療標的である(Smith, S. A. (1996) Pharmacol. Rev. Commun. 8 : 57-64 ; Willson, T. M. 及び W. Wahli (1997) Curr. Opin. Chem. Biol. 1 : 235-241 ; Barroso, I.他 (1999) Nature 402 : 880-883)。
核内オーファン受容体は、活性化するリガンドを有していない核内受容体、或いはリガンド結合してもその影響がなく転写調節活性を発揮し得る核内受容体である。例えば、線虫において、X染色体によってコードされる核内受容体相同体SEX-1は、性決定遺伝子xol-1の転写を調節する(Carmi, I.他 (1998) Nature 396 : 168-173)。SEX-1はリガンド結合に依存するのではなく、X染色体カウント機構による性分化調節において、用量応答的に転写調節因子として影響を与える。
レチノイド関連オーファン受容体α(RORα)は核内受容体スーパーファミリのもう一つのメンバーである。RORα遺伝子に欠失のあるマウスは免疫系の異常を示す。RORα1の発現はNF-κBシグナル伝達経路に悪影響を与えるが、これはNF-κBシグナル伝達経路の主要な阻害タンパク質であるIκBαの誘発を通じて起こるようである。こららの観察は、RORα1がアテローム硬化型冠動脈疾患およびリューマチ性関節炎などの慢性炎症性疾患の治療の標的であることを示唆している(Delerive, P. (2001) EMBO 2:4248)。
NSD1はいくつかの核内受容体のリガンド結合ドメイン(LBD)と相互作用するマウスの核タンパク質である。NSD1は、ショウジョウバエの遺伝子Ash1および出芽酵母(S. cerevisiae)の遺伝子YJQ8によってコードされるタンパク質に代表されるサブタイプのSETドメインを含む。SETドメインは染色体の構成と機能に関与し、数多くの真核生物タンパク質に見られる。NSA1はまた、PHDフィンガーまたはC4HC3モチーフとして知られる複数のZnフィンガー様モチーフを含んでいる。NSD1はNIDL および NID+Lと名づけられた2つの明確な核内受容体相互作用ドメインを含んでいる。NIDL はレチノイン酸受容体(RAR)と甲状腺ホルモン受容体(TR)のリガンドに結合していないLBDと相互作用する。NID+L はRAR、TR、レチノイドX受容体(RXR)およびエストロゲン受容体(ER)のリガンドの結合したLBDと相互作用する。このことから、標的核内受容体のLBDにリガンドが結合しているかどうかによって、NSA1は転写調節に関して異なる役割を演じている可能性が高い(Ningwu Huangl, N. 他 (1998) EMBO 17:33983412 およびこの論文中の参照文献)。
或る種の核内ホルモン受容体は、通常は核内ホルモン受容体ファミリーと結合する通常のDNA結合ドメインを含まない。DAX-1は、通常のDNA結合ドメインを含まない核内ホルモン受容体の一つであって、DAX-1における突然変異は先天性X染色体連鎖副腎形成不全を引き起こすことが分かっている(Zanaria, E. F.他 (1994) Nature 372 : 635-641)。DAX-1は核内オーファン受容体であって、ステロイド産生因子1(SF-1)と直接相互作用する(Ito, M.他 (1997) Mol. Cell. Biol. 17 : 1476-1483)。 DAX-1はまた、性特異的遺伝子発現におけるSF-1の作用を調節する能力がある(Nachtigal, M. W.他 (1998) Cell 445-454)。SF-1は、副腎及び生殖腺の幾つかのステロイド産生酵素遺伝子の転写調節因子として作用する核内オルファン受容体であり、(Lala, D. S.他 (1992) Mol. Endocrinol. 6 : 1249-1258 ; Lynch, J. P. 他 (1993) Mol. Endocrinol. 7 : 776-786 ; Clemens, J. W. 他 (1994) Endocrinology 134 : 1499-1508)、下垂体性腺刺激細胞で発現される幾つかの遺伝子も調節し得る(Barnhart, K. M. 及び P. L. Mellon (1994) Mol. Endocrinol. 8 : 878-885 ; Ingraham, H. A. 他 (1994) Genes Dev. 8 : 2302-2312 ; Halvorson, L. M. 他 (1996) J. Biol. Chem. 271 : 6645-6650 ; Keri, R. A. 及び J. H. Nilson (1996) J. Biol. Chem. 271 : 10782-10785)。
SF-1はまた小ヘテロ二量体パートナー(SHP ; short heterodimer partner)の強力なトランス活性化因子として作用する(Lee, Y. K. 他 (1999) J. Biol. Chem. 274 : 20869-20873)。SHPもまた、通常のDNA結合ドメインを含まない核内ホルモン受容体である(Seol, W. 他 (1996) Science 272 : 1336-1339 ; Lee, H.-K. 他 (1998) J. Biol. Chem. 273 : 14398-14402)。SHPは核内ホルモン受容体ファミリーの多くのメンバーと相互作用する。 その中には、レチノイド受容体、エストロゲン受容体、甲状腺ホルモン受容体、及びオーファン受容体CARが含まれる。SHPは、エストロゲン受容体への結合においてコアクティベーターと競合することで、エストロゲン受容体仲介性転写活性化のインヒビターとして作用する(Johansson, L. 他 (1999) J. Biol. Chem. 274 : 345-353)。SHPはまた、オーファン受容体肝細胞核因子4及びレチノイドX受容体によってトランス活性化を阻害する(Lee, Y. K. 他 (2000) Mol. Cell. Biol. 20 : 187-195)。
ヒトの甲状腺ホルモン受容体関連タンパク質(TRAP)複合体は核内受容体のコアクティベータである。TRAPは、TATA結合(TBP)関連因子(TAF)が不在のときにin vitroで活性化転写を仲介する能力を持つ酵母のSRBおよびMED含有補助因子複合体(SRB/MED, SMCC) の等価物であるらしい。TAFはTBPとは異なるTFIIDのサブユニットを含む。SRB/MEDは、TAFが不在のときに活性化転写を仲介(MED)するRNAポリメラーゼII(SRP)の最大サブユニットのカルボキシル末端リピートドメインの切断のサプレッサであると遺伝的に同定されるポリペプチドを含んでいる。
不完全な転写調節による結果
ヒトにおける腫瘍疾患の多くは、不適切な遺伝子発現によって起こり得る。悪性の細胞成長は、腫瘍促進遺伝子の過剰な発現又は、腫瘍抑制遺伝子の不十分な発現によって起こり得る(Cleary, M. L. (1992) Cancer Surv. 15:89-104)。染色体転座によっても、或る遺伝子のコード配列を別の無関係遺伝子の調節領域と融合させる、キメラ座(chimeric loci)が生成され得る。このような配列は、おそらく不適切な遺伝子転写を引き起こす。また、悪性腫瘍を引き起こす可能性もある。
更に、免疫系は、細胞防御機構の漸進的な選択、増幅、及び動員を調整するイベントのカスケードを活性化することにより、感染や外傷に応答する。遺伝子の活性化及び抑制の複雑かつバランスの取れたプログラムが、このプロセスに関与している。しかしながら、遺伝子発現の不適切或いは不十分な調節によって起こる免疫系の活動過多は、組織や器官に相当な損傷を与え得る。この損傷は、関節炎、アレルゲン、心臓発症、発作、及び感染に関連する免疫応答についての文献に詳しく記載されている(例えばIsselbacher 他 (1996) Harrison's Principles of Internal Medicine, 13/e, McGraw Hill, Inc. and Teton Data Systems Software参照)。
更に、多細胞生物の成長は発生の適切な段階における細胞分化の誘導及び調整に基づいている。このプロセスの中心は、体中の細胞及び組織に固有性を与える差次的な遺伝子発現である。発生中に遺伝子発現の調節に失敗すると、発生/発達障害が起こり得る。
T細胞の活性化
ヒトのT細胞はブドウ球菌の外毒素によって特異的に活性化することができ、この結果サイトカインの産生と細胞増殖が起こり、敗血ショックに至ることがある(Muraille, E. 他 (1999) Int. Immunol. 11:1403-1410)。ブドウ球菌の外毒素によってT細胞を活性化するには、外毒素分子をT細胞に提示して最適なT細胞活性化に必要な共刺激シグナルを伝える、抗体提示細胞(APC)の存在を要する。ブドウ球菌の外毒素はAPCによってT細胞に提示される必要があるが、これらの分子はAPCによるプロセシングを必要としない。その代わりに、ブドウ球菌の外毒素はヒトの主要組織適合性複合体(MHC)クラスII分子の非多型性部分に直接結合し、これによりMHCクラスII分子の多型性抗原溝へのペプチドの結合および切断、捕捉の必要性を回避する。
発現プロファイリング
アレイ技術は、単一の多型遺伝子の発現や、多数の関連遺伝子または無関係の遺伝子の発現プロファイルを探求する簡単な方法を提供し得る。単一遺伝子の発現を試験するときは、アレイを用いて或る特定遺伝子又はその変異体の発現を検出する。発現プロファイルを調べると、組織特異的であり、毒性試験でテストする物質によって影響され、シグナル伝達カスケードの一部であり、細胞の生存に基本的に必要な機能を実行する、または特定の遺伝的素因、状態、疾患または障害に特に関連する遺伝子を同定するためのプラットホームをアレイは提供する。
新規の受容体および膜結合タンパク質、またそれらをコードするポリヌクレオチドの発見により、新規の組成物を提供することで当分野の要望に応えることができる。 この新規の組成物は、細胞増殖異常、自己免疫/炎症性の疾患、神経疾患、代謝異常、発生または発達障害、内分泌疾患、心血管障害、生殖系疾患、胃腸障害、代謝異常、遺伝疾患、脂質代謝異常、癌およびウィルス感染の診断・治療・予防において有用であり、また、受容体および膜結合タンパク質の核酸配列及びアミノ酸配列の発現における外来性化合物の影響についての評価にも有用である。
本発明は、総称して「NAAP」、個別には各々「REMAP-1」、「REMAP-2」、「REMAP-3」、「REMAP-4」、「REMAP-5」、「REMAP-6」、「REMAP-7」、「REMAP-8」、「REMAP-9」、「REMAP-10」、「REMAP-11」、「REMAP-12」、「REMAP-13」、「REMAP-14」、「REMAP-15」、「REMAP-16」、「REMAP-17」、「REMAP-18」、「REMAP-19」、「REMAP-20」、「REMAP-21」、「REMAP-22」、「REMAP-23」、「REMAP-24」、「REMAP-25」、および「REMAP-26」と呼ぶ、受容体および膜結合タンパク質である、精製されたポリペプチドを提供する。或る態様において本発明は、(a)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列からなるポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列からなるポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片からなる群から選択した単離されたポリペプチドを提供する。一態様では、SEQ ID NO:1-26のアミノ酸配列からなる単離されたポリペプチドを提供する。
また、本発明は(a)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択した或るアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を持つ或る天然アミノ酸配列を有するポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチドの生物学的活性断片、または(d)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリヌクレオチドの免疫原性断片、からなる群から選択した或るポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチドを提供する。一実施態様では、該ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:1-26からなる群から選択した或るポリペプチドをコードする。別の実施態様では、ポリヌクレオチドはSEQ ID NO:27-52からなる群から選択される。
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、または(d)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片から構成される群から選択されたポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと機能的に連結したプロモーター配列を含む組換えポリヌクレオチドを提供する。一実施態様では、本発明は組換えポリヌクレオチドを用いて形質転換した細胞を提供する。別の実施態様では、本発明は組換えポリヌクレオチドを含む遺伝形質転換生物体を提供する。
また、本発明は、(a)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片から構成される群から選択したポリペプチドを製造する方法を提供する。 製造方法は、(a)組換えポリヌクレオチドを用いて形質転換した細胞をポリペプチドの発現に適した条件下で培養する過程と、(b)そのように発現したポリペプチドを回収する過程とを有し、組換えポリヌクレオチドはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結したプロモーター配列を有する。
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片から構成される群から選択されたポリペプチドに特異結合するような単離された抗体を提供する。
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:27-52からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、(b)SEQ ID NO:27-52からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(c)(a)に相補的なポリヌクレオチド配列、(d)(b)に相補的なポリヌクレオチド配列、および(e)(a)〜(d)のRNA等価物からなる群から選択された単離されたポリヌクレオチドを提供する。一実施態様では、ポリヌクレオチドは少なくとも60の連続したヌクレオチドを有する。
本発明は更に、サンプル中の標的ポリヌクレオチドを検出する方法を提供する。ここで、標的ポリヌクレオチドは(a)SEQ ID NO:27-52からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、(b)SEQ ID NO:27-52からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(c)(a)に相補的なポリヌクレオチド、(d)(b)に相補的なポリヌクレオチド、および(e)(a)〜(d)のRNA等価物からなる群から選択されたポリヌクレオチドの配列を有する。検出方法は、(a)サンプル中の前記の標的ポリヌクレオチドに相補的な配列を含む、少なくとも20の連続したヌクレオチドを含むプローブを用いて該サンプルをハイブリダイズする過程と、(b)ハイブリダイゼーション複合体の存在・不存在を検出し、複合体が存在する場合にはオプションでその量を検出する過程からなり、プローブと標的ポリヌクレオチドあるいはその断片の間でハイブリダイゼーション複合体が形成されるような条件下で、プローブは標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズする。一実施態様では、プローブは少なくとも60の連続したヌクレオチドを含む。
本発明はまた、サンプル中の標的ポリヌクレオチドを検出する方法を提供する。ここで、標的ポリヌクレオチドは、(a)SEQ ID NO:27-52からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(b)SEQ ID NO:27-52からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(c)(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(d)(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、および(e)(a)〜(d)のRNA等価物からなる群から選択された配列のポリヌクレオチドを有する。検出方法は、(a)ポリメラーゼ連鎖反応増幅を用いて標的ポリヌクレオチドまたはその断片を増幅する過程と、(b)前記の増幅した標的ポリヌクレオチドまたはその断片の存在・不存在を検出し、該標的ポリヌクレオチドまたはその断片が存在する場合にはオプションでその量を検出する過程を含む。
本発明は更に、或る有効量のポリペプチドと薬物として許容し得る或る賦形剤とからなる、或る組成物を提供する。有効量のポリペプチドは、(a)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択した或るアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択した或るアミノ酸配列を含むポリペプチドの生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチドの免疫原性断片、からなる群から選択される。一実施例では、SEQ ID NO:1-26からなる一群から選択されたアミノ酸配列を含む組成物を提供する。 更に、本発明は、患者にこの組成物を投与することを含む、機能的REMAPの発現の低下に関連した疾患やその症状の治療方法を提供する。
本発明はまた、(a)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択した或るアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を有する天然アミノ酸配列を持つポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を持つポリペプチドの生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチドの免疫原性断片、からなる群から選択したポリペプチドのアゴニストとしての有効性を確認するために、或る化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)該ポリペプチドを有するサンプルを或る化合物に曝す過程と、(b)サンプル中のアゴニスト活性を検出する過程からなる。別法では、本発明は、この方法によって同定されたアゴニスト化合物と好適な医薬用賦形剤とを含む組成物を提供する。更なる別法では、本発明は、この組成物の患者への投与を含む、機能的REMAPの発現の低下に関連した疾患やその症状の治療方法を提供する。
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択した或るアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を有する天然アミノ酸配列を持つポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を持つポリペプチドの生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を持つポリペプチドの免疫原性断片、からなる群から選択したポリペプチドのアンタゴニストとしての有効性につき、或る化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)該ポリペプチドを含むサンプルを或る化合物に曝す過程と、(b)サンプル中のアンタゴニスト活性を検出する過程からなる。或いは本発明は、この方法で同定したアンタゴニスト化合物と薬物として許容し得る賦形剤とを有する組成物を提供する。更なる別法で本発明は、機能的REMAPの過剰発現を伴う疾患や症状の治療を要する患者への、この組成物の投与方法を提供する。
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、または(d)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片を含む群から選択されたポリペプチドに特異結合する化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)ポリペプチドを適切な条件下で少なくとも1つの試験化合物と混合させる過程と、(b)試験化合物とのポリペプチドの結合を検出し、それによってポリペプチドに特異結合する化合物を同定する過程とを含む。
本発明は更に、(a)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を有する或る天然アミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチドの生物学的活性断片、および(d)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチドの免疫原性断片、からなる群から選択した或るポリペプチドの活性を調節する或る化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)該ポリペプチドの活性にとり許容し得る条件下で、該ポリペプチドを少なくとも1つの試験化合物と混合する過程と、(b)該ポリペプチドの活性をこの試験化合物の存在下で算定する過程と、(c)この試験化合物の存在下での該ポリペプチドの活性をこの試験化合物の不存在下での該ポリペプチドの活性と比較する過程からなり、この試験化合物の存在下での該ポリペプチドの活性の変化は、該ポリペプチドの活性を調節する化合物を標示する。
更に本発明は、SEQ ID NO:27-52からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列を持つ標的ポリヌクレオチドの発現を改変する効果につき、或る化合物をスクリーニングする一方法を提供する。この方法は、(a)この標的ポリヌクレオチドを有するサンプルを或る化合物に曝露する過程と、(b)この標的ポリヌクレオチドの発現の改変を検出する過程と、(c)可変量のこの化合物の存在下でのこの標的ポリヌクレオチドの発現と、この化合物の不在下での発現とを比較する過程とからなる。
本発明は更に、試験化合物の毒性の算定方法を提供する。この方法には、以下の過程がある。(a)核酸群を有する生体サンプルを試験化合物で処理する過程。(b)処理済み生体サンプルの核酸群をハイブリダイズする過程。この過程には、次のようなプローブを用いる。(i)SEQ ID NO:27-52からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(ii)SEQ ID NO:27-52からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列との少なくとも90%の同一性を有する天然ポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(iii)(i)に相補的な配列を持つポリヌクレオチド、(iv)(ii)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(v)(i)〜(iv)のRNA等価物、からなる群から選択した或るポリヌクレオチドの少なくとも20の連続したヌクレオチドからなるプローブである。ハイブリダイゼーションは、前記プローブと生物学的サンプル中の標的ポリヌクレオチドの間に特定のハイブリダイゼーション複合体が形成されるような条件下で発生し、前記標的ポリヌクレオチドは、(i)SEQ ID NO:27-52からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(ii)SEQ ID NO:27-52からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%が同一である天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(iii)(i)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(iv)(ii)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、および(v)(I)〜(iv)のRNA等価物からなる群から選択する。或いは、標的ポリヌクレオチドは、上記(i)〜(v)からなる群から選択したポリヌクレオチド配列の断片と、(c)ハイブリダイゼーション複合体の量を定量する過程と、(d)処理した生物学的サンプルのハイブリダイゼーション複合体の量を、非処理の生物学的サンプルのハイブリダイゼーション複合体の量と比較する過程を含み、処理した生物学的サンプルのハイブリダイゼーション複合体の量との差は、試験化合物の毒性を意味する。
(本発明の記載について)
本発明のタンパク質、ヌクレオチド配列及び方法について説明する前に、説明した特定の装置、材料及び方法に本発明が限定されるものではなく、改変し得ることを理解されたい。また、ここで使用する専門用語は特定の実施例を説明する目的で用いたものに過ぎず、特許請求の範囲にのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図したものではないことも併せて理解されたい。
請求の範囲及び明細書中で用いている単数形の「或る」及び「その(この)」の表記は、文脈から明らかにそうでないとされる場合を除いて複数のものを指す場合もあることに注意しなければならない。従って、例えば「或る宿主細胞」と記されている場合にはそのような宿主細胞が複数あることもあり、「或る抗体」と記されている場合には単数または複数の抗体、及び、当業者に公知の抗体の等価物等についても言及しているのである。
本明細書中で用いる全ての技術用語および科学用語は、特に定義されている場合を除き、当業者に一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書で説明するものと類似あるいは同等の任意の装置、材料及び方法を用いて本発明の実施または試験を行うことができるが、ここでは好適な装置、材料、方法について説明する。本発明で言及する全ての刊行物は、刊行物中で報告されていて且つ本発明に関係して用い得る、細胞株、プロトコル、試薬およびベクターについて説明および開示する目的で引用しているものである。本明細書のいかなる開示内容も、本発明が先行技術の効力によってこのような開示に対して先行する権利を与えられていないことを認めるものではない。
(定義)
用語「REMAP」は、天然、合成、半合成或いは組換え体など全ての種(特にウシ、ヒツジ、ブタ、マウス、ウマ及びヒトを含む哺乳動物)から得られる実質的に精製されたREMAPのアミノ酸配列を指す。
用語「アゴニスト」は、REMAPの生物学的活性を強めたり、模倣する分子を指す。このアゴニストは、REMAP に直接相互作用するか、或いはREMAP が関与する生物学的経路の成分と作用して、REMAP の活性を調節するタンパク質、核酸、糖質、小分子、任意の他の化合物や組成物を含み得る。
用語「対立遺伝子変異配列」は、REMAPをコードする遺伝子の別の形を指す。対立遺伝子変異体は、核酸配列における少なくとも1つの突然変異から作製し得る。また、変異RNAまたはポリペプチドからも作製し得る。ポリペプチドの構造または機能は、変異することもしないこともある。或る遺伝子は、その天然型の対立遺伝子変異配列を全く持たない場合もあり、1個以上持つこともある。対立遺伝子変異体を生じさせる通常の突然変異性変化は一般に、ヌクレオチドの自然な欠失、付加または置換による。これら各種の変化は、単独であるいは他の変化と共に、或る配列内で1回以上、生じ得る。
REMAP をコードする「変異(altered)」核酸配列は、種々のヌクレオチドを欠失、挿入または置換する核酸配列を有し、REMAP と同一またはREMAP の機能的特徴を少なくとも1つ有するポリペプチドを産出する。この定義には、REMAPをコードするポリヌクレオチド配列の正常な染色体の遺伝子座ではない位置での対立遺伝子変異配列との不適当あるいは予期しないハイブリダイゼーション、並びにREMAPをコードするポリヌクレオチドの特定のオリゴヌクレオチドプローブを用いて容易に検出可能なあるいは検出困難な多型性を含む。コードされたタンパク質も「変異」し得るものであり、サイレント変化を生ぜしめて結果的に機能的に等価なREMAPとなるようなアミノ酸残基の欠失、挿入または置換を含み得る。生物学的或いは免疫学的にREMAPの活性が保持される範囲で、残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性、及び/または両親媒性についての類似性に基づいて意図的なアミノ酸置換が成され得る。例えば、負に帯電したアミノ酸にはアスパラギン酸及びグルタミン酸があり、正に帯電したアミノ酸にはリジン及びアルギニンがある。親水性値が近似している非荷電極性側鎖を有するアミノ酸には、アスパラギンとグルタミン、セリンとトレオニンがある。親水性値が近似している非荷電側鎖を有するアミノ酸には、ロイシンとイソロイシンとバリン、グリシンとアラニン、フェニルアラニンとチロシンが含まれうる。
用語「アミノ酸」及び「アミノ酸配列」は、オリゴペプチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質配列、或いはそれらの任意の断片を指し、天然の分子及び合成分子を含む。「アミノ酸配列」が天然のタンパク質分子の配列を指す場合、「アミノ酸配列」及び類似の用語は、アミノ酸配列を記載したタンパク質分子に関連する完全で元のままのアミノ酸配列に限定するものではない。
用語「増幅」は、核酸配列の複製物を作製することに関連する。増幅は通常、当業者によく知られたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を用いて行う。
用語「アンタゴニスト」は、REMAPの生物学的活性を阻害或いは減弱する分子である。アンタゴニストは、REMAP に直接相互作用するか、或いはREMAP が関与する生物学的経路の成分と作用してREMAP の活性を調節する抗体、核酸、糖質、小分子、任意の他の化合物や組成物などのタンパク質を含み得る。
「抗体」の語は、抗原決定基と結合することができる、そのままの免疫グロブリン分子やその断片、例えばFab,、F(ab')2 及びFv断片を指す。REMAP ポリペプチドと結合する抗体は、抗体を免疫する小ペプチドを含む無傷の分子またはその断片を用いて作製可能である。動物(マウス、ラット、ウサギ等)を免疫化するために用いるポリペプチドまたはオリゴペプチドは、RNAの翻訳、または化学合成によって得られるポリペプチドまたはオリゴペプチドに由来し得るもので、好みに応じてキャリアータンパク質に抱合することも可能である。通常用いられるキャリアーであってペプチドと化学結合するものは、ウシ血清アルブミン、サイログロブリン及びスカシガイのヘモシアニン(KLH)等がある。その結合ペプチドは、動物を免疫化するために用いる。
用語「抗原決定基」は、特定の抗体と接触する分子の領域(即ちエピトープ)を指す。タンパク質またはタンパク質断片を用いて宿主動物を免疫化する場合、タンパク質の多数の領域が、抗原決定基(タンパク質の特定の領域または3次元構造)に特異結合する抗体の産生を誘導し得る。抗原決定基は、抗体に結合するための無損傷抗原(即ち免疫応答を誘導するために用いられる免疫原)と競合し得る。
用語「アプタマー(aptamer)」は、核酸またはオリゴヌクレオチド分子であって、特定の分子ターゲットに結合する分子を指す。アプタマーはin vitroでの進化プロセスに由来する(例えば、SELEX(Systematic Evolution of Ligands by EXponential Enrichmentの略、試験管内選択法)、米国特許第5,270,163号に記述)。これは、大規模な組み合わせライブラリ群から標的特異的アプタマー配列を選択するプロセスである。アプタマー組成は、2本鎖または1本鎖であってもよく、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、ヌクレオチド誘導体、または他のヌクレオチド様分子を含み得る。アプタマーの各ヌクレオチド成分は修飾された糖基を持つことがあり(例えば、リボヌクレオチドの2'-OH基は2'-Fまたは2'-NH2によって置換され得る)、これは、ヌクレアーゼへの抵抗性または血中でのより長い寿命など、所望の特性を向上し得る。循環系からアプタマーが除去される速度を遅くするために、アプタマーを高分子量キャリアー等の分子に抱合させることができる。アプタマーは、たとえば光活性化または架橋剤によって各々のリガンドと特異的に架橋させることができる。(Brody, E.N. および L. Gold (2000) J. Biotechnol. 74:5-13等を参照)。
「intramer」の用語はin vivoで発現されるアプタマーを意味するたとえば、ワクシニアウイルスに基づく或るRNA発現系は、白血球の細胞質内で特定のRNAアプタマーが高レベルで発現するために使用されている(Blind, M. 他 (1999) Proc. Natl Acad. Sci. USA 96:3606-3610)。
「spiegelmer」の語はL-DNA、L-RNAその他の左旋性ヌクレオチド誘導体またはヌクレオチド様分子を含むアプタマーを指す。左旋性ヌクレオチドを含むアプタマーは、右旋性のヌクレオチドを含む基質に通常作用する天然の酵素による分解に耐性がある。
本明細書において「アンチセンス」は、特定の核酸配列のセンス(コーディング)鎖と塩基対を形成し得る任意の組成物を指す。アンチセンス成分には、DNAや、RNAや、ペプチド核酸(PNA)や、ホスホロチオ酸、メチルホスホン酸またはベンジルホスホン酸等の修飾されたバックボーン結合を有するオリゴヌクレオチドや、2'-メトキシエチル糖または2'-メトキシエトキシ糖等の修飾された糖類を有するオリゴヌクレオチドや、或いは5-メチルシトシン、2-デオキシウラシルまたは7-デアザ-2'-デオキシグアノシン等の修飾された塩基を有するオリゴヌクレオチドがある。アンチセンス分子は、化学合成または転写を含む任意の方法で製造することができる。相補的アンチセンス分子は、ひとたび細胞に導入されたら、細胞が産生した天然核酸配列との塩基対を形成し、転写または翻訳を阻止する二重鎖を形成する。「負」または「マイナス」という表現は、ある参考DNA分子のアンチセンス鎖を意味し、「正」または「プラス」という表現はある参考DNA分子のセンス鎖を意味する。
用語「生物学的に活性」は、天然分子の構造的、調節的、或いは生化学的な機能を有するタンパク質を指す。同様に、用語「免疫学的に活性」または「免疫原性」は、天然或いは組換え体のREMAP、合成のREMAPまたはそれらの任意のオリゴペプチドが、適当な動物或いは細胞の特定の免疫応答を誘発して特定の抗体と結合する能力を指す。
「相補(的)」または「相補性」の語は、塩基対形成によってアニーリングする2つの一本鎖核酸の間の関係を指す。例えば、「5'-AGT-3'」は、その相補配列「3'-TCA-5'」との対を形成する。
「所定のポリヌクレオチド配列を含む組成物」または「所定のアミノ酸配列を含む組成物」は広い意味で、所定のポリヌクレオチド配列若しくはアミノ酸配列を含む任意の組成物を指す。この組成物には、乾燥製剤または水溶液が含まれ得る。REMAP 若しくはREMAP の断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物は、ハイブリダイゼーションプローブとして使用され得る。このプローブは、凍結乾燥状態で保存可能であり、糖質などの安定化剤と結合させることが可能である。ハイブリダイゼーションにおいては、塩(例えばNaCl)、界面活性剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム;SDS)及びその他の構成成分(例えばデンハート液、脱脂粉乳、サケの精子のDNA等)を含む水溶液中にプローブを分散させることができる。
「コンセンサス配列」は、不要な塩基を分離するためにDNA配列の解析を繰り返し行い、XL-PCRキット(PE Biosystems,Foster City CA)を用いて5'及び/または3'の方向に伸長され、再度シークエンシングされた核酸配列、またはGELVIEW 断片アセンブリシステム(GCG, Madison, WI)またはPhrap (University of Washington, Seattle WA)等の断片アセンブリ用のコンピュータプログラムを用いて1つ或いはそれ以上のオーバーラップするcDNAやEST、またはゲノムDNA断片からアセンブリされた核酸配列を指す。伸長及びアセンブリの両方を行ってコンセンサス配列を作製する配列もある。
用語「保存的なアミノ酸置換」は、元のタンパク質の特性を殆ど変えない置換を指す。即ち、置換によってそのタンパク質の構造や機能が大きくは変わらず、そのタンパク質の構造、特にその機能が保存される。下表は、タンパク質中で元のアミノ酸と置換できて、保存アミノ酸置換と認められるアミノ酸を示している。
Figure 2005514903
保存アミノ酸置換では通常、(a)置換領域におけるポリペプチドのバックボーン構造、例えばβシートやα螺旋構造、(b)置換部位における分子の電荷または疎水性、及び/または(c)側鎖の大部分を保持する。
用語「欠失」は、1個以上のアミノ酸残基が欠如するアミノ酸配列の変化、或いは1個以上のヌクレオチドが欠如する核酸配列の変化を指す。
用語「誘導体」は、化学修飾されたポリヌクレオチドまたはポリペプチドを指す。例えば、アルキル基、アシル基、ヒドロキシル基またはアミノ基による水素の置換は、ポリヌクレオチド配列の化学修飾に含まれ得る。ポリヌクレオチド誘導体は、天然分子の生物学的または免疫学的機能を少なくとも1つは保持しているポリペプチドをコードする。ポリペプチド誘導体は、グリコシル化、ポリエチレングリコール化(pegylation)、或いは任意の同様なプロセスであって、誘導起源のポリペプチドの少なくとも1つの生物学的若しくは免疫学的機能を保持するプロセスによって、修飾されたポリペプチドである。
「検出可能な標識」は、測定可能な信号を発生し得る、ポリヌクレオチドやポリペプチドに共有結合或いは非共有結合するレポーター分子や酵素を指す。
「差次的発現」は少なくとも2つの異なったサンプルを比較することによって決められる、増加(上方調節)、あるいは減少(下方調節)、または欠損遺伝子またはタンパク発現の欠損を指す。このような比較は例えば、処理済サンプルと不処理サンプル、または病態のサンプルと正常サンプルの間で行われ得る。
「エキソンシャフリング」は、異なるコード領域(エキソン)の組換えを意味する。1つのエキソンがコードされたタンパク質の1つの構造的または機能的ドメインを代表し得るため、安定したサブストラクチャーを再分類することによって、新しいタンパク質をアセンブリすることが可能であり、新しいタンパク質機能の進化を促進できる。
用語「断片」は、REMAP またはREMAP をコードするポリヌクレオチドの固有の部分であって、その親配列(parent sequence)と同一であるがその配列より長さが短いものを指す。断片は、定義された配列の全長から1ヌクレオチド/アミノ酸残基を差し引いた長さよりも短い長さを有し得る。例えば或る断片は、5〜1000の連続したヌクレオチドまたはアミノ酸残基を有し得る。プローブ、プライマー、抗原、治療用分子として、或いはその他の目的のために用いられる断片は、少なくとも5、10、15、20、25、30、40、50、60、75、100、150、250若しくは500の連続したヌクレオチド或いはアミノ酸残基長さであり得る。断片は、分子の特定領域から選択的に選択し得る。例えば、ポリペプチド断片は、所定の配列に示すような最初の250または500アミノ酸(またはポリペプチドの最初の25%または50%)から選択された或る長さの連続したアミノ酸を有し得る。これらの長さは明らかに例として挙げているものであり、本発明の実施例では、配列表、表及び図面を含む明細書に裏付けされた任意の長さであってよい。
SEQ ID NO:27-52 の断片は、例えば、この断片を得たゲノム内の他の配列とは異なる、SEQ ID NO:27-52 を明確に同定する固有のポリヌクレオチド配列の領域を含む。SEQ ID NO:27-52のある断片は、例えば、ハイブリダイゼーションや増幅技術、またはSEQ ID NO:27-52を関連ポリヌクレオチド配列から区別する類似の方法に有用である。SEQ ID NO:27-52の断片の正確な長さ及び断片に対応するSEQ ID NO:27-52の領域は、断片に対する意図した目的に基づき当業者が慣例的に決定することが可能である。
SEQ ID NO:1-26 のある断片は、SEQ ID NO:27-52のある断片によってコードされる。 SEQ ID NO:1-26 のある断片には、SEQ ID NO:1-26を特異的に同定する固有のアミノ酸配列領域が含まれている。 例えば、SEQ ID NO:1-26 のある断片は、SEQ ID NO:1-26を特異認識する抗体を産出するための免疫原性ペプチドとして有用である。 SEQ ID NO:1-26 のある断片の正確な長さ、及びその断片に対応するSEQ ID NO:1-26 の領域は、断片に対する意図した目的に基づき当業者が慣例的に決定することが可能である。
「完全長」ポリヌクレオチド配列とは、少なくとも1つの翻訳開始コドン(例えばメチオニン)、オープンリーディングフレーム及び翻訳終止コドンを有する配列である。「完全長」ポリヌクレオチド配列は、「完全長」ポリペプチド配列をコードする。
「相同性」の語は、2つ以上のポリヌクレオチド配列または2つ以上のポリペプチド配列の配列類似性、または配列同一性を意味する。
ポリヌクレオチド配列についての用語「一致率」または「一致性%」とは、標準化されたアルゴリズムを用いてアラインメントされる、2つ以上のポリヌクレオチド配列間の一致する残基の百分率のことである。このようなアルゴリズムは、2配列間のアラインメントを最適化するために、比較する配列において、標準化された再現性のある方法でギャップを挿入しうるので、2つの配列をより有意に比較できる。
ポリヌクレオチド配列間の一致率は、MEGALIGN version 3.12e配列アラインメントプログラムに組込まれているようなCLUSTAL Vアルゴリズムのデフォルトのパラメータを用いて決定できる。このプログラムは、LASERGENE ソフトウェアパッケージ(一組の分子生物学的分析プログラム) (DNASTAR, Madison WI)の一部である。このCLUSTAL Vは、Higgins, D.G.およびP.M. Sharp(1989)CABIOS 5:151-153、Higgins, D.G. 他(1992)CABIOS 8:189-191に記載されている。ポリヌクレオチド配列をペアワイズアラインメントする際のデフォルトパラメータは、Ktuple=2、gap penalty=5、window=4、「diagonals saved」=4と設定される。「weighted」残基重み付け表がデフォルトで選択される。一致率は、アラインメントされたポリヌクレオチド配列間の「percent similarity(類似性パーセント)」としてCLUSTAL Vによって報告される。
あるいは、米国国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)が一般的に用いられ、且つ、無料で入手可能な配列比較アルゴリズム一式を提供している(Altschul, S.F. 他(1990)J. Mol. Biol. 215:403-410)。BLASTアルゴリズムは、幾つかの情報源から入手可能であり、メリーランド州ベセスダにあるNCBIおよびインターネット(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)からも入手可能である。このBLASTソフトウェア一式には、既知のポリヌクレオチド配列と様々なデータベースの別のポリヌクレオチド配列とのアラインメントに用いられる「blastn」を含む、様々な配列分析プログラムが含まれる。「BLAST 2 Sequences」と呼ばれるツールが入手可能であり、2つのヌクレオチド配列の直接のペアワイズで比較するために用いられる。「BLAST 2 Sequences」は、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gorf/bl2.htmlにアクセスして、対話形式で利用ができる。「BLAST 2 Sequences」ツールは、blastn および blastp(以下に記載)の両方に用い得る。BLASTプログラムは、一般的には、ギャップ(gap)などのパラメータをデフォルト設定にセットして用いる。例えば、2つのヌクレオチド配列を比較するために、デフォルトパラメータとして設定された「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.12(2000年4月21日)を用いてblastnを実行してもよい。デフォルトパラメータの設定例を以下に示す。
Matrix:BLOSUM62
Reward for match: 1
Penalty for mismatch: -2
Open Gap:5 及びExtension Gap:2 penalties
Gap x drop-off: 50
Expect: 10
Word Size: 11
Filter:on
一致率は、ある定義された配列の全長(例えば特定のSEQ IDナンバーで定義された配列)で測定し得る。或いは、より短い長さ、例えば、定義された、より大きな配列から得られた断片(例えば少なくとも20、30、40、50、70、100または200の連続したヌクレオチドの断片)の長さと比較して一致率を測定してもよい。ここに挙げた長さは単なる例示的なものに過ぎず、表、図及び配列リストを含めた本明細書に記載された配列に裏付けられた任意の配列長さの断片を用いて、一致率を測定し得る長さを説明し得ることを理解されたい。
高度の相同性を示さない核酸配列が、それにもかかわらず遺伝子コードの縮重が原因で類似のアミノ酸配列をコードする場合がある。この縮重を利用して核酸配列内で変化を生じさせて、全ての核酸配列が実質上同一のタンパク質をコードするような多数の核酸配列を生成し得ることを理解されたい。
ポリペプチド配列に用いられる用語「一致率」または「一致性%」とは、標準化されたアルゴリズムを用いてアラインメントされる2つ以上のポリペプチド配列間の一致する残基の百分率のことである。ポリペプチド配列アラインメントの方法は公知である。保存的アミノ酸置換を考慮するアラインメント方法もある。既に詳述したこのような保存的置換は通常、置換部位の電荷および疎水性を保存するので、ポリペプチドの構造を(したがって機能も)保存する。
ポリペプチド配列間の一致率は、MEGALIGN version 3.12e配列アラインメントプログラムに組込まれているようなCLUSTAL Vアルゴリズムのデフォルトのパラメータを用いて決定できる(既に説明したのでそれを参照されたい)。CLUSTAL Vを用いて、ポリペプチド配列をペアワイズアラインメントする際のデフォルトパラメータは、Ktuple=1、gap penalty=3、window=5、「diagonals saved」=5と設定される。PAM250マトリクスが、デフォルトの残基重み付け表として選択される。ポリヌクレオチドアラインメントと同様に、CLUSTAL Vは、アラインメントされたポリペプチド配列対間の「類似率」として一致率を報告する。
或いは、NCBI BLASTソフトウェア一式を用いてもよい。例えば、2つのポリペプチド配列をペアワイズで比較する場合、「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.12(2000年4月21日)のblastpをデフォルトパラメータに設定して用い得る。デフォルトパラメータの設定例を以下に示す。
Matrix:BLOSUM62
Open Gap:11 及びExtension Gap:1 penalties
Gap x drop-off: 50
Expect: 10
Word Size: 3
Filter:on
一致率は、定義された(例えば特定の配列番号で定義された)ポリペプチド配列全体の長さと比較して測定し得る。或いは、より短い長さ、例えばより大きな定義されたポリペプチド配列から得られた断片(例えば少なくとも15、20、30、40、50、70または150の連続した残基の断片)の長さと比較して一致率を測定してもよい。ここに挙げた長さは単なる例示的なものに過ぎず、表、図及び配列リストを含めた本明細書に記載された配列に裏付けられた任意の配列長さの断片を用いて、或る長さであってその長さに対して一致率を測定し得る長さを説明し得ることを理解されたい。
「ヒト人工染色体(HAC)」は、約6kb 〜10MbのサイズのDNA配列を含み得る、安定した染色体複製の分離及び維持に必要な全てのエレメントを含む直鎖状の小染色体である。
用語「ヒト化抗体」は、もとの結合能力を保持しつつよりヒトの抗体に似せるために、非抗原結合領域のアミノ酸配列が変えられた抗体分子を指す。
「ハイブリダイゼーション」とは、所定のハイブリダイゼーション条件下で、ある一本鎖ポリヌクレオチドがある相補的な一本鎖と塩基対を形成するアニーリングのプロセスである。特異的ハイブリダイゼーションは、2つの核酸配列が高い相補性を共有することを示すものである。特異的ハイブリダイゼーション複合体は許容されるアニーリング条件下で形成され、「洗浄」ステップ後もハイブリダイズされたままである。洗浄ステップは、ハイブリダイゼーションプロセスのストリンジェンシーを決定する際に特に重要であり、更にストリンジェントな条件では、非特異結合(即ち完全には一致しない核酸鎖間の対の結合)が減少する。核酸配列のアニーリングに対する許容条件は、本技術分野における当業者が慣例的に決定する。 許容条件はハイブリダイゼーション実験の間は一定でよいが、洗浄条件は所望のストリンジェンシーを得るように、従ってハイブリダイゼーション特異性も得るように実験中に変更することができる。アニーリングが許容される条件は、例えば、温度が68℃で、約6×SSC、約1%(w/v)のSDS、並びに約100μg/mlのせん断して変性したサケ精子DNAが含まれる。
一般に、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは或る程度、洗浄ステップを実行する温度を基準にして表すことができる。このような洗浄温度は通常、所定のイオン強度及びpHにおける特定の配列の融点(Tm)より約5〜20℃低くなるように選択する。このTmは、所定のイオン強度及びpHの条件下で、完全に一致するプローブに標的配列の50%がハイブリダイズする温度である。Tmを計算する式及び核酸のハイブリダイゼーション条件はよく知られており、Sambrook 他 (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, 1-3巻, Cold Spring Harbor Press, Plainview NYに記載されており、特に2巻の9章を参照されたい。
本発明のポリヌクレオチド間の高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーションでは、約0.2x SSC及び約0.1%のSDSの存在の下、約68℃で1時間の洗浄過程を含む。別法では、約65℃、60℃、55℃、または42℃の温度で行う。SSC濃度は、約0.1%のSDS存在下で、約0.1〜2×SSCの範囲で変化し得る。通常は、ブロッキング剤を用いて非特異ハイブリダイゼーションを阻止する。このようなブロッキング剤には、例えば、約100〜200μg/mlのせん断した変性サケ精子DNAがある。特定条件下で、例えばRNAとDNAのハイブリダイゼーションに有機溶剤、例えば約35〜50%v/vの濃度のホルムアミドを用いることもできる。洗浄条件の有用なバリエーションは、当業者には自明であろう。ハイブリダイゼーションは、特に高ストリンジェント条件下では、ヌクレオチド間の進化的な類似性を示唆し得る。このような類似性は、ヌクレオチド群及びヌクレオチドにコードされるポリペプチド群について、類似の役割を強く示唆している。
用語「ハイブリダイゼーション複合体」は、相補的な塩基間の水素結合によって、形成された2つの核酸配列の複合体を指す。ハイブリダイゼーション複合体は、溶解状態で形成し得る(C0tまたはR0t解析等)。或いは、一方の核酸配列が溶解状態で存在し、もう一方の核酸配列が固体支持体(例えば紙、膜、フィルタ、チップ、ピンまたはガラススライド、或いは他の適切な基板であって細胞若しくはその核酸が固定される基板)に固定されているような2つの核酸配列間に形成され得る。
用語「挿入」或いは「付加」は、1個以上のアミノ酸残基或いはヌクレオチドがそれぞれ追加されるアミノ酸配列或いは核酸配列の変化を指す。
「免疫応答」は、炎症、外傷、免疫異常症、伝染性疾患または遺伝性疾患に関連する症状を指し得る。これらの症状は、細胞及び全身の防御系に作用し得る種々の因子、例えばサイトカイン、ケモカイン、その他のシグナル伝達分子の発現によって特徴づけることができる。
「免疫抗原性断片」とは、哺乳動物等の生命体に導入されると免疫応答を誘発し得るようなREMAPのポリペプチドまたはオリゴペプチド断片である。用語「免疫原性断片」にはまた、本明細書で開示するまたは当分野で既知のあらゆる抗体生産方法に有用な、REMAPのあらゆるポリペプチド断片またはオリゴペプチド断片をも含む。
用語「マイクロアレイ」は、基板上の複数のポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはその他の化合物の構成を指す。
用語「エレメント」または「アレイエレメント」は、マイクロアレイ上に固有の指定された位置を有する、ポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはその他の化合物を指す。
用語「調節」は、REMAPの活性の変化を指す。調節することによって例えば、REMAPのタンパク質活性、結合特性その他の生物学的、機能的または免疫学的特性が増大または低下し得る。
「核酸」及び「核酸配列」の語は、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはこれらの断片を指す。「核酸」及び「核酸配列」の語は、ゲノム起源または合成起源のDNAまたはRNAであって一本鎖または二本鎖であるか或いはセンス鎖またはアンチセンス鎖を表し得るようなDNAまたはRNAや、ペプチド核酸(PNA)や、任意のDNA様またはRNA様物質を指すこともある。
「機能的に連結した」は、第1の核酸配列と第2の核酸配列が機能的な関係にある状態を指す。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼす場合には、そのプロモーターはそのコード配列に機能的に連結している。同一のリーディングフレーム内で2つのタンパク質コード領域を接続する必要がある場合、一般に、機能的に連結したDNA配列は非常に近接するか、或いは連続的に隣接し得る。
「ペプチド核酸(PNA)」は、末端がリシンで終わるアミノ酸残基のペプチドのバックボーンに結合した、少なくとも約5ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドを含む、アンチセンス分子または抗遺伝子剤を指す。末端のリジンは、この組成に溶解性を与える。PNAは、相補的一本鎖DNAまたはRNAに優先的に結合して転写の伸長を停止するものであり、ポリエチレングリコール化して細胞におけるPNAの寿命を延長し得る。
REMAP の「翻訳後修飾」には、脂質化、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ラセミ化、蛋白分解性切断及びその他の当分野で既知の修飾が含まれ得る。 これらのプロセスは、合成或いは生化学的に生じ得る。生化学的修飾は、REMAPの酵素環境に依存し、細胞の種類によって異なり得る。
「プローブ」とは、同一配列或いは対立遺伝子核酸配列、関連する核酸配列の検出に用いる、REMAPやそれらの相補配列、またはそれらの断片をコードする核酸配列のことである。プローブは、単離されたオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドであって、検出可能な標識またはレポーター分子に結合したものである。典型的な標識には、放射性アイソトープ、リガンド、化学発光試薬及び酵素がある。「プライマー」とは、相補的な塩基対を形成して標的のポリヌクレオチドにアニーリング可能な、通常はDNAオリゴヌクレオチドである短い核酸である。プライマーは次に、DNAポリメラーゼ酵素によって標的DNA鎖に沿って延長し得る。プライマー対は、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による核酸配列の増幅(及び同定)に用い得る。
本発明に用いるようなプローブ及びプライマーは通常、既知の配列の、少なくとも15の連続したヌクレオチドを含んでいる。特異性を高めるために長めのプローブ及びプライマー、例えば開示した核酸配列の少なくとも20、25、30、40、50、60、70、80、90、100または150の連続したヌクレオチドからなるようなプローブ及びプライマーを用いてもよい。これよりもかなり長いプローブ及びプライマーもある。表、図面及び配列リストを含む本明細書に裏付けされた任意の長さのヌクレオチドを用いることができるものと理解されたい。
プローブ及びプライマーの調製及び使用方法については、Sambrook, J.他 (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, 1-3巻、Cold Spring Harbor Press, Plainview NY、Ausubel, F.M.他, (1987) Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pubi. Assoc. & Wiley-Intersciences, New York NY、Innis他 (1990) PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications Academic Press, San Diego CA等を参照されたい。PCRプライマー対は、その目的のためのコンピュータプログラム、例えばPrimer(Version 0.5, 1991, Whitehead Institute for Biomedical Research, Cambridge MA)を用いるなどして既知の配列から得ることができる。
プライマーとして用いるオリゴヌクレオチドの選択は、そのような目的のために本技術分野で既知のソフトウェアを用いて行う。例えばOLIGO 4.06ソフトウェアは、各100ヌクレオチドまでのPCRプライマー対の選択に有用であり、オリゴヌクレオチド及び最大5,000までの大きめのポリヌクレオチドであって32キロベースまでのインプットポリヌクレオチド配列から得たものを分析するのにも有用である。類似のプライマー選択プログラムには、拡張能力のための追加機能が組込まれている。例えば、PrimOUプライマー選択プログラム(テキサス州ダラスにあるテキサス大学南西部医療センターのゲノムセンターから一般向けに入手可能)は、メガベース配列から特定のプライマーを選択することが可能であり、従ってゲノム全体の範囲でプライマーを設計するのに有用である。Primer3プライマー選択プログラム(Whitehead Institute/MIT Center for Genome Research(マサチューセッツ州ケンブリッジ)より入手可能)を用いれば、プライマー結合部位として避けたい配列を指定できる「非プライミングライブラリ(mispriming library)」を入力できる。Primer3は特に、マイクロアレイのためのオリゴヌクレオチドの選択に有用である。(後二者のプライマー選択プログラムのソースコードは、それぞれの情報源から得てユーザー固有のニーズを満たすように変更してもよい。)PrimerGenプログラム(英国ケンブリッジ市の英国ヒトゲノムマッピングプロジェクト-リソースセンターから一般向けに入手可能)は、多数の配列アラインメントに基づいてプライマーを設計し、それによって、アラインメントされた核酸配列の最大保存領域または最小保存領域の何れかとハイブリダイズするようなプライマーの選択を可能にする。従って、このプログラムは、固有であって保存されたオリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドの断片の同定に有用である。上記選択方法のいずれかによって同定したオリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドの断片は、ハイブリダイゼーション技術において、例えばPCRまたはシークエンシングプライマーとして、マイクロアレイエレメントとして、或いは核酸のサンプルにおいて完全または部分的相補的ポリヌクレオチドを同定する特異プローブとして有用である。オリゴヌクレオチドの選択方法は、上記の方法に限定されるものではない。
本明細書における「組換え核酸」は天然の配列ではなく、2つ以上の配列の離れたセグメントを人工的に組み合わせた配列である。この人為的組合せはしばしば化学合成によって達成するが、より一般的には核酸の単離セグメントの人為的操作によって、例えばのSambrookらの文献(前出)に記載されているような遺伝子工学的手法によって達成する。組換え核酸の語は、単に核酸の一部が付加、置換または欠失により改変された核酸も含む。しばしば組換え核酸には、プロモーター配列に機能的に連結した核酸配列が含まれる。このような組換え核酸は、例えばある細胞を形質転換するために使用されるベクターの一部とすることが可能である。
或いはこのような組換え核酸は、ウイルスベクターの一部であって、例えばワクシニアウイルスに基づくものであり得る。そのようなワクシニアウイルスは哺乳動物に接種され、その組換え核酸が発現されて、その哺乳動物ないで防御免疫応答を誘導するように使用することができる。
「調節因子」は、通常は遺伝子の非翻訳領域に由来する核酸配列であり、エンハンサー、プロモーター、イントロン及び5'及び3'の非翻訳領域(UTR)を含む。調節エレメントは、転写、翻訳またはRNA安定性を調節する宿主タンパク質またはウイルスタンパク質と相互作用する。
「レポーター分子」は、核酸、アミノ酸または抗体の標識に用いられる化学的または生化学的な部分である。レポーター分子には、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、発色剤、基質、補助因子、阻害因子、磁気粒子及びその他の当分野で既知の成分がある。
DNA配列に対する「RNA等価物」とは、基準となるDNA配列と同じ直鎖の核酸配列から構成されるが、窒素性塩基のチミンがウラシルで置換され、糖鎖のバックボーンがデオキシリボースではなくリボースからなる。
用語「サンプル」は、その最も広い意味で用いられている。REMAP、REMAPをコードする核酸、またはその断片を含むと推定されるサンプルは、体液と、細胞からの抽出物や細胞から単離された染色体や細胞内小器官、膜と、細胞と、溶液中に存在するまたは基板に固定されたゲノムDNA、RNA、cDNAと、組織と、組織プリント等を含み得る。
用語「特異的結合」及び「特異的に結合する」は、タンパク質若しくはペプチドと、アゴニスト、抗体、アンタゴニスト、小分子、若しくは任意の天然若しくは合成の結合組成物との間の相互作用を指す。この相互作用は、タンパク質の特定の構造(例えば抗原決定基即ちエピトープ)であって結合分子が認識するものが存在するか否かに依存していることを意味している。例えば、抗体がエピトープ「A」に対して特異的である場合、結合していない標識した「A」及び抗体を含む反応液に、エピトープAを含むポリペプチド或いは結合していない無標識の「A」が存在すると、抗体と結合する標識Aの量が減少する。
用語「実質的に精製された」は、自然の環境から取り除かれてから、単離あるいは分離された核酸配列あるいはアミノ酸配列であって、自然に結合している組成物が少なくとも60%除去されたものであり、好ましくは75%以上除去、最も好ましくは90%以上除去されたものを指す。
「置換」とは、一つ以上のアミノ酸またはヌクレオチドをそれぞれ別のアミノ酸またはヌクレオチドに置き換えることである。
用語「基板」は、任意の好適な固体或いは半固体の支持物を指し、膜及びフィルター、チップ、スライド、ウエハ、ファイバー、磁気または非磁気ビード、ゲル、チューブ、プレート、ポリマー、微小粒子、毛細管が含まれる。基板は、壁、溝、ピン、チャネル、孔等、様々な表面形態を有することができ、基板表面にはポリヌクレオチドやポリペプチドが結合する。
「転写イメージ」または「発現プロファイル」は、所定条件下での所定時間における特定の細胞の種類または組織による集合的遺伝子発現のパターンを指す。
「形質転換(transformation)」とは、外来DNAが受容細胞に導入されるプロセスのことである。形質転換は、本技術分野で知られている種々の方法に従って自然条件または人工条件下で生じ得るものであり、外来性の核酸配列を原核宿主細胞または真核宿主細胞に挿入する任意の既知の方法を基にし得る。形質転換の方法は、形質転換する宿主細胞の種類によって選択する。限定するものではないが形質転換方法には、ウイルス感染、電気穿孔法(エレクトロポレーション)、熱ショック、リポフェクション及び微粒子銃を用いる方法がある。「形質転換された細胞」には、導入されたDNAが自律的に複製するプラスミドとして或いは宿主染色体の一部として複製可能である安定的に形質転換された細胞が含まれる。さらに、限られた時間に一過的に導入DNA若しくは導入RNAを発現する細胞も含まれる。
ここで用いる「遺伝形質転換体」とは任意の生物体であり、限定するものではないが動植物を含み、生物体の1若しくは数個の細胞が、ヒトの関与によって、例えば本技術分野でよく知られている形質転換技術によって導入された異種核酸を有する。 核酸の細胞への導入は、直接または間接的に、細胞の前駆物質に導入することによって、計画的な遺伝子操作によって、例えば微量注射法によって或いは組換えウイルスの導入によって行う。或る実施例において、核酸はレンチウイルスベクターのような組換えウイルスベクターを用いた感染によって導入することができる(Lois, C. 他(2002) Science 295:868-872)。遺伝子操作の語は、古典的な交雑育種或いは試験管内受精を指すものではなく、組換えDNA分子の導入を指すものである。本発明に基づいて予期される遺伝形質転換体には、バクテリア、シアノバクテリア、真菌及び動植物がある。本発明の単離されたDNAは、本技術分野で知られている方法、例えば感染、形質移入、形質転換またはトランス接合(transconjugation)によって宿主に導入することができる。本発明のDNAをこのような生物体に移入する技術はよく知られており、前出のSambrook ら (1989) 等の参考文献に与えられている。
特定の核酸配列の「変異体」は、核酸配列1本全部の長さに対して特定の核酸配列と少なくとも40%の相同性を有する核酸配列であると定義する。 その際、デフォルトパラメータに設定した「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.9(1999年5月7日)を用いてblastnを実行する。このような核酸対は、所定の長さに対して、例えば少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の相同性を示し得る。或る変異体は、例えば「対立遺伝子」変異体(前述)、「スプライス」変異体、「種」変異体または「多型性」変異体として説明し得る。スプライス変異体は参照分子とかなりの相同性を有し得るが、mRNAプロセッシング中のエキソンの選択的スプライシングによって通常、より多くまたはより少数のヌクレオチドを有することになる。対応するポリペプチドは、追加機能ドメインを有するか或いは参照分子に存在するドメインが欠落していることがある。種変異体は、種によって異なるポリヌクレオチド配列である。結果的に生じるポリペプチドは通常、相互にかなりのアミノ酸相同性を有する。多型性変異体は、与えられた種の個体間で特定の遺伝子のポリヌクレオチド配列中での変異である。多型変異配列はまた、ポリヌクレオチド配列の1つのヌクレオチドが異なる「1塩基多型性」(SNP)も含み得る。SNPの存在は、例えば特定の個体群、病状または病状性向を示し得る。
特定のポリペプチド配列の「変異体」は、ポリペプチド配列の1本の長さ全体で特定のポリペプチド配列に対して少なくとも40%の相同性を有するポリペプチド配列として定義される。定義づけには、デフォルトパラメータに設定した「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.9(1999年5月7日)を用いてblastpを実行する。このようなポリペプチド対は、一方のポリペプチドの或る所定の長さに対して、例えば少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を示し得る。
(発明)
本発明は新規のヒトの受容体および膜結合タンパク質(REMAP)の発見、REMAPをコードするポリヌクレオチド、および細胞増殖異常、自己免疫/炎症性の疾患、神経疾患、代謝異常、発生または発達障害、内分泌疾患、心血管障害、生殖系疾患、胃腸障害、代謝異常、遺伝疾患、脂質代謝異常、癌およびウィルス感染の診断、治療、ならびに予防に対するこれらの組成の使用に基づいている。
表1は、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列及びポリペプチド配列の命名の概略である。各ポリヌクレオチド及びその対応するポリペプチドは、1つのIncyteプロジェクト識別番号(IncyteプロジェクトID)と相関する。各ポリペプチド配列は、ポリペプチド配列識別番号(ポリペプチドSEQ ID NO)とIncyteポリペプチド配列番号(IncyteポリペプチドID)によって表示した。各ポリヌクレオチド配列は、ポリヌクレオチド配列識別番号(ポリヌクレオチドSEQ ID NO)とIncyteポリヌクレオチドコンセンサス配列番号(IncyteポリヌクレオチドID)によって表示した。列6は本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチド配列に相当する物理的な完全長クローンのIncyte ID 番号を示す。完全長のクローンは列3に示すポリペプチド配列に少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチドをコードする。
表2は、GenBankタンパク質(genpept)データベースとPROTEOMEデータベースとに対するBLAST分析で同定した、本発明のポリペプチド群に相同な配列群を示す。列1および列2はそれぞれ、本発明の各ポリペプチドに対するポリペプチド配列識別番号(ポリペプチド SEQ ID NO:)とそれに対応するIncyte ポリペプチド配列番号(Incyte ポリペプチド ID)を示す。列3は、GenBankの最も近い相同体のGenBank識別番号(Genbank ID NO :)と最も近いPROTEOME データベース相同体のPROTEOME データベース識別番号 (PROTEOME ID NO:) を示す。列4は、各ポリペプチドとその相同体との間の一致について確率スコアを示す。列5は、GenBankとPROTEOME データベースの相同体の注釈を示し、更に該当箇所には関連する引用文献も示す。これら全ては引用することを以って本明細書の一部とする。
表3は、本発明のポリペプチドの様々な構造的特徴を示す。列1および列2はそれぞれ、本発明の各ポリペプチドのポリペプチド配列識別番号(SEQ ID NO :)およびそれに対応するIncyte ポリペプチド配列番号(Incyte ポリペプチド ID)を示す。列3は、各ポリペプチドのアミノ酸残基数を示す。列4および列5はそれぞれ、GCG配列分析ソフトウェアパッケージのMOTIFSプログラム(Genetics Computer Group, Madison WI)によって決定された、リン酸化およびグリコシル化の可能性のある部位を示す。列6は、シグネチャ配列、ドメイン、およびモチーフを含むアミノ酸残基を示す。列7は、タンパク質の構造/機能の分析のための分析方法を示し、該当箇所にはさらに分析方法に利用した検索可能なデータベースを示す。
表2及び表3は共に、本発明の各々のポリペプチドの特性を要約しており、それらの特性が請求の範囲に記載されたポリペプチドが受容体および膜結合タンパク質であることを確立している。また他の例として、SEQ ID NO:1はマウスのVPS10ドメイン受容体タンパク質SorCS2(GenBank ID g12007720) とM1残基からV1158残基にかけて86%同一であることがBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって示された(表2参照)。BLAST確率スコアは0.0であり、これは観測されたポリペプチド配列アラインメントが偶然に得られる確率を示している。SEQ ID NO:1はまた、BNR リピートを有するが、 これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された (表3参照)。MOTIFからのデータおよびPRODOMとDOMOデータベースに対するさらなるBLAST解析により、SEQ ID NO:1がVPS10ドメイン受容体タンパク質ファミリのメンバーであるという実証的な証拠がさらに提供された。さらに、TMAP解析により、SEQ ID NO:1が2つの膜貫通ドメインを含むことが明らかにされた。別の例では、SEQ ID NO:6がN124残基からV673残基にかけてヒトのメラトニン関連受容体(GenBank ID g1326155)と99%同一であることがBLASTによって示された(表2参照)。BLAST確率スコアは0.0である。SEQ ID NO:6はまた、膜7回貫通受容体ドメイン(ロドプシンファミリ)を含むが、これはHMMに基づくPFAMデータベースによって決定された (表3参照)。BLIMPS、MOTIFS、およびPROFILESCAN解析から得られたデータによって、SEQ ID NO:6がロドプシンファミリ受容体であることが裏付けられた。別の例では、SEQ ID NO:17がL2残基からP346残基にかけてヒトのNogo受容体(GenBank ID g12407653)と49%同一であることがBLASTによって示された(表2参照)。BLAST確率スコアは1.2e-81である。SEQ ID NO:17はまた、ロイシンリッチリピートドメインを含むことがHMMに基づいたPFAMデータベースによって示された(表3参照)。BLIMPS分析から得たデータは、SEQ ID NO:17がNogo受容体であることを裏づける証拠を更に提供する。さらに別の例においては、SEQ ID NO:19がM103残基からG409残基にかけてヒトの妊娠誘発性成長インヒビター(GenBank ID g6274473) と100%同一であることがBLASTによって示された(表2参照)。BLAST確率スコアは1.6e-166である。TMAPよりのデータは、SEQ ID NO:19 が膜貫通タンパク質である、さらに実証的な証拠を提供する。さらに別の例においては、SEQ ID NO:23はマウスのSETドメインおよび複数のPHDフィンガードメインを含む核受容体タンパク質NSD1(GenBank ID g3329465) とV413残基からK2696にかけて82%、M1残基からG324残基にかけて87%同一であることがBLASTによって示された(表2参照)。BLAST確率スコアは0.0である。SEQ ID NO:23はまた、上記で同定されたNSD1の保存されたドメインを含むが、これはHMMに基づくPFAMデータベースによって決定された(表3参照)。BLIMPS、MOTIFS分析から得たデータは、SEQ ID NO:23がSETドメイン含有受容体であることを裏づける証拠を更に提供する。別の例において、SEQ ID NO:24はヒトの甲状腺ホルモン受容体関連タンパク質複合体成分TRAP240(GenBank ID g4530437) とD740残基からL2210残基にかけて58%、K466残基からN1311残基にかけて45%同一であることがBLASTによって示された(表2参照)。BLAST確率スコアは0.0である。MOTIFS解析よりのデータは、「Pループ」ATP/GTP結合部位が存在するという証拠を提供する。さらに別の例において、SEQ ID NO:25は、マウスの核内オーファン受容体/転写因子(GenBank ID g1869971) とV81残基からG336残基にかけて98%、M2残基からQ110残基にかけて80%同一であることがBLASTによって示された(表2参照)。BLAST確率スコアは3.4e-180である。また、SEQ ID NO:25 は核内ホルモン受容体ドメインを持っているが、これはHMMベースのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された(表3参照)。BLIMPS、MOTIFS、及びPROFILESCAN解析よりのデータは、SEQ ID NO:25 が核内ホルモン受容体である、さらに実証的な証拠を提供する。 SEQ ID NO:2-5、SEQ ID NO:7-16、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:20-22およびSEQ ID NO:26については、同様の方法で分析し、注釈を付けた。SEQ ID NO:1-26の解析のためのアルゴリズム及びパラメータが表7で記述されている。
表4に示すように、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列は、cDNA配列またはゲノムDNA由来のコード(エキソン)配列を用いて、或いはこれら2種類の配列を任意に組み合わせてアセンブリした。列1は本発明の各ポリヌクレオチドに対するポリヌクレオチド配列識別番号(ポリヌクレオチドSEQ ID NO)および対応するIncyteポリヌクレオチドコンセンサス配列番号(Incyte ID)、および塩基対の各ポリヌクレオチド配列の長さを示している。列2は、本発明の全長ポリヌクレオチド配列をアセンブリするために使われたcDNA配列および/またはゲノム配列のヌクレオチド開始位置(5')と終了位置(3')を示し、またSEQ ID NO:27-52を同定するための、またはSEQ ID NO:27-52と関連するポリヌクレオチド配列とを区別するための技術(例えば、ハイブリダイゼーション技術または増幅技術)で有用なポリヌクレオチド配列の断片のヌクレオチド開始位置(5')と終了位置(3')を示す。
表4の列2で記述されたポリヌクレオチド断片は、具体的にはたとえば組織特異的なcDNAライブラリまたはプールされたcDNAライブラリに由来するIncyte cDNAを指す場合がある。或いは列2の識別番号は、完全長ポリヌクレオチド配列のアセンブリに寄与するGenBank cDNAまたはESTを指す場合もある。さらに、列2のポリヌクレオチド断片は、ENSEMBL(The Sanger Centre、英国ケンブリッジ)データベースから由来した配列(即ち「ENST」命名を含む配列)を同定し得る。或いは、列2で記述されたポリヌクレオチド断片は、NCBI RefSeq Nucleotide Sequence Records データベースから由来する場合もあり(即ち「NM」または「NT」の命名を含む配列)、またNCBI RefSeq Protein Sequence Recordsから由来する場合もある(即ち「NP」の命名を含む配列)。または列で記述されたポリヌクレオチド断片は、「エキソンスティッチング(exon-stitching)」アルゴリズムにより結び合わせたcDNA及びGenscan予想エキソンの両方からなるアセンブリ体を意味する場合がある。例えば、FL_XXXXXX_N1_N2_YYYYY_N3_N4 として同定されるポリヌクレオチド配列はアルゴリズムが適用される配列のクラスターの識別番号がXXXXXXであり、アルゴリズムにより生成される予測の番号がYYYYY であり、(もし存在すれば)N1,2,3..が解析中に手動で編集された可能性のある特定のエキソンであるような「縫合された」配列である( 実施例5参照 )。または、列2のポリヌクレオチド断片は「エキソンストレッチング(exon-stretching)」アルゴリズムにより結び合わせたエキソンのアセンブリ体を指す場合もある。例えば、FLXXXXXX_gAAAAA_gBBBBB_1_N として同定されるポリヌクレオチド配列は「ストレッチ」配列である。ここでXXXXXXはIncyteプロジェクト識別番号、gAAAAAは「エキソンストレッチング」アルゴリズムを適用したヒトゲノム配列のGenBank識別番号、gBBBBBは一番近いGenBankタンパク質相同体のGenBank識別番号またはNCBI RefSeq 識別番号である。(実施例5を参照。)あるRefSeq配列が「エキソンストレッチング」アルゴリズムのためのタンパク質相同体として使用された場合では、RefSeq識別番号(「NM」、「NP」、または「NT」によって表される)が、GenBank識別(即ち、gBBBBB)の代わりに使用される場合もある。
或いは、接頭コードは、手動で編集された構成配列、ゲノムDNA配列から予測された構成配列、または組み合わされた配列解析方法から由来する構成配列を同定する。次の表は、構成配列の接頭コードと、接頭コードに対応する配列分析方法の例を列記する(実施例4と5を参照)。
Figure 2005514903
場合によっては、最終コンセンサスポリヌクレオチド配列を確認するために表4に示すような配列の適用範囲と重複するIncyte cDNAの適用範囲が得られたが、それに関連するIncyte cDNA識別番号は示さなかった。
表5は、Incyte cDNA配列を用いてアセンブリされた完全長ポリヌクレオチド配列のための代表的なcDNAライブラリを示している。代表的なcDNAライブラリは、上記のポリヌクレオチド配列をアセンブリ及び確認するために用いられるIncyte cDNA配列によって最も頻繁に代表されるIncyte cDNAライブラリである。cDNAライブラリを作製するために用いた組織およびベクターを表5に示し、表6で説明している。
本発明はまた、REMAP の変異体も含む。好適なREMAP 変異体は、REMAP の機能的或いは構造的特徴の少なくとも1つを有し、かつ、REMAP アミノ酸配列に対して少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、或いは少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性、更には少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する変異体である。
本発明はまた、REMAPをコードするポリヌクレオチド群をも含む。特定の実施例において、本発明は、REMAPをコードするSEQ ID NO:27-52からなる群から選択した配列を含むポリヌクレオチド配列を含む。SEQ ID NO:27-52のポリヌクレオチド配列には、配列表に示したように等価RNA配列をも含むが、そこでは窒素塩基チミンの出現はウラシルに置換され、糖のバックボーンはデオキシリボースではなくリボースで構成される。
本発明はまた、REMAPをコードするポリヌクレオチド配列の変異配列を含む。詳細には、このようなポリヌクレオチド配列の変異配列は、REMAPをコードするポリヌクレオチド配列に対して少なくとも約70%のポリヌクレオチド配列同一性、或いは少なくとも約85%のポリヌクレオチド配列同一性、更には少なくとも約95%ものポリヌクレオチド配列同一性を有する。本発明の特定の実施形態は、SEQ ID NO:27-52からなる群から選択された核酸配列と少なくとも約70%のポリヌクレオチド配列同一性、或いは少なくとも約85%のポリヌクレオチド配列同一性、更には少なくとも約95%ものポリヌクレオチド配列同一性を有するSEQ ID NO:27-52からなる群から選択された配列を含むポリヌクレオチド配列の変異配列を提供する。 上記のポリヌクレオチド変異配列は何れも、REMAPの機能的或いは構造的特徴の少なくとも1つを有するアミノ酸配列をコードし得る。
更に別の例では、本発明の或るポリヌクレオチド変異配列は、REMAPをコードするポリヌクレオチド配列のスプライス変異配列である。スプライス変異体はREMAPをコードするポリヌクレオチド配列と有意な相同性を有し得るが、mRNAプロセッシング中のエキソンの選択的スプライシングによる配列ブロックの追加または削除により、通常、ポリヌクレオチドがより多くまたはより少数の塩基を有することになる。或るスプライス変異配列には、約70%未満、または約60%未満、あるいは約50%未満のポリヌクレオチド配列同一性が、REMAPをコードするポリヌクレオチド配列との間で全長に渡って見られるが、このスプライス変異配列の部分は、REMAPをコードするポリヌクレオチド配列の部分と、少なくとも約70%、あるいは少なくとも約85%、または少なくとも約95%、なおまたは100%の、ポリヌクレオチド配列同一性を有することとなる。例えば、SEQ ID:39の配列を含むポリヌクレオチドはSEQ ID:52の配列を含むポリヌクレオチドのスプライス変異体である。前記のスプライス変異体のいずれもが、REMAPの少なくとも一つの機能的特徴か、または構造的特徴を含むアミノ酸配列をコードできる。
遺伝暗号の縮重により作り出され得るREMAPをコードする種々のポリヌクレオチド配列には、自然発生する任意の既知の遺伝子のポリヌクレオチド配列と最小の類似性しか有しないものも含まれることを、当業者は理解するであろう。したがって本発明には、可能コドン選択に基づく組合せの選択によって産出し得るあらゆる可能なポリヌクレオチド配列のバリエーションを網羅し得る。これらの組み合わせは、天然のREMAPのポリヌクレオチド配列に適用される標準的なトリプレット遺伝暗号を基に作られ、全ての変異が明確に開示されていると考慮する。
REMAP をコードするヌクレオチド配列及びその変異配列は一般に、適切に選択されたストリンジェントな条件下で、天然のREMAP のヌクレオチド配列とハイブリダイズ可能であるが、例えば、非天然のコドンを含めるなどの実質的に異なった使い方のコドンを有するREMAP 或いはその誘導体をコードするヌクレオチド配列を作ることは有利となり得る。宿主が特定のコドンを利用する頻度に基づいて、特定の真核宿主又は原核宿主に発生するペプチドの発現率を高めるようにコドンを選択することが可能である。コードされたアミノ酸配列を変えないで、REMAP 及びその誘導体をコードするヌクレオチド配列を実質的に変更する別の理由は、天然の配列から作られる転写物より例えば長い半減期など好ましい特性を備えるRNA転写物を作ることにある。
本発明はまた、REMAP 及びその誘導体をコードするDNA配列またはそれらの断片を完全に合成化学によって作り出すことも含む。作製後、当分野で周知の試薬を用いて、この合成配列を任意の様々な入手可能な発現ベクター及び細胞系中に挿入し得る。更に、合成化学を用いてREMAP またはその任意の断片をコードする或る配列に突然変異を誘導し得る。
更に本発明には、種々のストリンジェントな条件下で、請求項に記載されたポリヌクレオチド配列、特に、SEQ ID NO:27-52 及びそれらの断片とハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド配列が含まれる(例えば、Wahl, G.M.及びS.L. Berger (1987) Methods Enzymol.152:399-407、Kimmel, A.R. (1987) Methods Enzymol. 152:507-511等を参照)。アニーリング及び洗浄条件を含むハイブリダイゼーションの条件は、「定義」に記載されている。
DNAシークエンシングの方法は当分野では公知であり、本発明のいずれの実施例もDNAシークエンシング方法を用いて実施可能である。DNAシークエンシング方法には酵素を用いることができ、例えばDNAポリメラーゼIのクレノウ断片、SEQUENASE(US Biochemical, Cleveland OH)、Taqポリメラーゼ(Applied Biosystems)、熱安定性T7ポリメラーゼ(Amersham, Biosciences, Piscataway NJ)を用いることができる。或いは、例えばELONGASE増幅システム(Invitrogen, Carlsbad CA)において見られるように、ポリメラーゼと校正エキソヌクレアーゼを併用することができる。好適には、MICROLAB2200液体転移システム(Hamilton, Reno, NV)、PTC200サーマルサイクラー(MJ Research, Watertown MA)及びABI CATALYST 800サーマルサイクラー(Applied Biosystems)等の装置を用いて配列の準備を自動化する。次に、ABI 373 或いは 377 DNAシークエンシングシステム(Applied Biosystems)、MEGABACE 1000 DNAシークエンシングシステム(Amersham Biosciences)または当分野でよく知られている他の方法を用いてシークエンシングを行う。結果として得られた配列を当分野でよく知られている種々のアルゴリズムを用いて分析する(例えば、Ausubel, F.M. (1997) Short Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York NY, 7.7ユニット、Meyers, R.A. (1995) Molecular Biology and Biotechnology, Wiley VCH, New York NY, 856-853ページを参照)。
当分野で周知のPCR法をベースにした種々の方法を用いて部分的なヌクレオチド配列を利用して、REMAP をコードする核酸配列を伸長し、プロモーターや調節エレメントなどの上流にある配列を検出する。例えば、使用し得る方法の1つである制限部位PCR法は、ユニバーサルプライマーおよびネステッドプライマーを用いてクローニングベクター内のゲノムDNAからの未知の配列を増幅する方法である(例えば、Sarkar, G. (1993) PCR Methods Applic. 2:318-322を参照)。別の方法にインバースPCR法があり、これは広範な方向に伸長させたプライマーを用いて環状化した鋳型から未知の配列を増幅する方法である。鋳型は、或る既知のゲノム遺伝子座およびその周辺の配列群からなる制限酵素断片群から得る(例えば、Triglia, T. 他 (1988) Nucleic Acids Res. 16:8186を参照)。第3の方法としてキャプチャPCR法があり、これはヒト及び酵母菌人工染色体DNAの既知の配列に隣接するDNA断片をPCR増幅する方法に関与している。(Lagerstrom, M.他(1991) PCR Methods Applic 1:111-119等を参照)。この方法では、PCRを行う前に複数の制限酵素の消化及びライゲーション反応を用いて未知の配列領域内に組換え二本鎖配列を挿入することが可能である。また、未知の配列を検索するために用い得る別の方法については当分野で知られている(Parker, J.D.他 (1991) Nucleic Acids Res. 19:3055-3060等を参照)。更に、PCR、ネステッドプライマー及びPromoterFinder(商標)ライブラリ(Clontech, Palo Alto CA)を用いてゲノムDNAをウォーキングすることができる。この手順は、ライブラリ類をスクリーニングする必要がなく、イントロン/エキソン接合部の発見に有用である。全てのPCRベースの方法に対して、市販されているソフトウェア、例えばOLIGO 4.06プライマー分析ソフトウェア(National Biosciences, Plymouth MN)或いは別の好適なプログラムを用いて、長さが約22〜30ヌクレオチド、GC含有率が約50%以上、温度約68℃〜72℃で鋳型に対してアニーリングするようにプライマーを設計し得る。
完全長cDNAをスクリーニングする際は、より大きなcDNAを含むようにサイズ選択されたライブラリを用いるのが好ましい。更に、ランダムプライマーのライブラリは、しばしば遺伝子の5'領域を有する配列を含み、オリゴd(T)ライブラリが完全長cDNAを作製できない状況に対して好適である。ゲノムライブラリ群は、5'非転写調節領域への、配列の伸長に有用であろう。
市販のキャピラリー電気泳動システムを用いて、シークエンシングまたはPCR産物のサイズを分析し、またはそのヌクレオチド配列を確認することができる。具体的には、キャピラリーシークエンシングは、電気泳動による分離のための流動性ポリマーと、4つの異なるヌクレオチドに特異的であるような、レーザで活性化されるフルオロフォアと、発光された波長の検出に利用するCCDカメラとを有し得る。出力/光の強度は、適切なソフトウェア(Applied Biosystems社のGENOTYPER、SEQUENCE NAVIGATOR等)を用いて電気信号に変換し得る。サンプルのロードからコンピュータ分析及び電子データ表示までの全プロセスがコンピュータ制御可能である。キャピラリー電気泳動法は、特定のサンプルに少量しか存在しないようなDNA小断片のシークエンシングに特に適している。
本発明の別の実施態様では、REMAP をコードするポリヌクレオチド配列またはその断片を、REMAP 、その断片または機能的等価物を適切な宿主細胞内に発現させる組換えDNA分子にクローニングし得る。遺伝暗号固有の縮重により、実質的に同じ或いは機能的に等価のアミノ酸配列をコードする別のDNA配列が作られ得り、これらの配列をREMAPの発現に利用可能である。
種々の目的でREMAPをコードする配列を変えるために、当分野で一般的に知られている方法を用いて、本発明のヌクレオチド配列を組換えることができる。この目的には、遺伝子産物のクローン化、プロセッシング及び/または発現の調節が含まれるが、これらに限定されるものではない。遺伝子断片及び合成オリゴヌクレオチドのランダムなフラグメンテーション及びPCR再アセンブリによるDNAシャッフリングを用い、ヌクレオチド配列を組み換えることが可能である。例えば、オリゴヌクレオチドを介した部位特異的変異誘導を利用して、新規な制限部位の作製、グリコシル化パターンの変更、コドン優先の変更、スプライス変異体の生成等を起こす突然変異を導入し得る。
本発明のヌクレオチドは、MOLECULARBREEDING(Maxygen Inc., Santa Clara CA。 米国特許第5,837,458号、Chang, C.-C.他 (1999) Nat. Biotechnol. 17:793-797、Christians, F.C.他 (1999) Nat. Biotechnol. 17:259-264、Crameri, A. 他 (1996) Nat. Biotechnol. 14:315-319に記載)等のDNAシャッフリング技術の対象となり、REMAPの生物学的特性、例えば生物活性、酵素力、或いは他の分子や化合物との結合力等を変更または向上させ得る。DNAシャッフリングは、遺伝子断片のPCRを介する組換えを用いて遺伝子変異体のライブラリを作製するプロセスである。ライブラリはその後、所望の特性を持つ遺伝子変異体群を同定する、選択またはスクリーニングの手順を経る。続いて、これら好適な変異体をプールし、更に反復してDNAシャッフリングおよび選択/スクリーニングを行い得る。従って、人工的な育種及び急速な分子の進化によって多様な遺伝子が作られる。例えば、ランダムポイント突然変異を持つ単一の遺伝子の断片を組み換えて、スクリーニングし、その後所望の特性が最適化されるまでシャッフリングし得る。或いは、所定の遺伝子を同種または異種のいずれかから得た同一遺伝子ファミリーの相同遺伝子と組み換え、それによって天然に存在する複数の遺伝子の遺伝多様性を、指図された制御可能な方法で最大化させることができる。
別の実施例によれば、REMAPをコードする配列は、当分野で周知の化学的方法を用いて、全体或いは一部が合成可能である(例えば、Caruthers. M.H.ら(1980)Nucl. Acids Res. Symp. Ser 7:215-223; 及びHorn, T.他(1980)Nucl. Acids Res. Symp. Ser.225-232を参照)。別法として、化学的方法を用いて、REMAP 自体またはその断片を合成し得る。例えば、種々の液相または固相技術を用いてペプチド合成を行い得る(たとえば、 Creighton, T. (1984) Proteins, Structures and Molecular Properties, WH Freeman, New York NY, 55-60ページ; Roberge, J.Y. 他 (1995) Science 269:202204を参照)。自動合成はABI 431Aペプチドシンセサイザ(Applied Biosystems)を用いて達成し得る。更にREMAPのアミノ酸配列または任意のその一部は、直接的な合成の際の改変により、および/または他のタンパク質群または任意のその一部からの配列群との組み合わせにより、変異配列ポリペプチドを作製、または、天然ポリペプチドの配列を有するポリペプチドを作製することが可能である。
このペプチドは、分離用高速液体クロマトグラフィーを用いて実質的に精製し得る(Chiez, R.M.およびF.Z. Regnier (1990) Methods Enzymol. 182:392-421などを参照)。合成ペプチドの組成は、アミノ酸分析またはシークエンシングによって確認することができる(前出のCreighton, 28-53ページ等を参照)。
生物学的に活性なREMAPを発現させるために、REMAPをコードするヌクレオチド配列またはその誘導体を好適な発現ベクターに挿入し得る。好適な発現ベクターとは、好適な宿主に挿入されたコーディング配列の転写および翻訳の制御に必要なエレメント群を持つベクターである。これらのエレメントの例には、エンハンサー、構成型及び発現誘導型のプロモーター、5'及び3'の非翻訳領域など、ベクター及びREMAPをコードするポリヌクレオチド配列群における調節配列が含まれる。必要なエレメント群は、強度および特異性が様々である。特定の開始シグナルによって、REMAPをコードする配列のより効果的な翻訳を達成することが可能である。開始シグナルの例には、ATG開始コドンと、コザック配列など近傍の配列とが含まれる。REMAP をコードする配列、およびその開始コドンや、上流の調節配列が好適な発現ベクターに挿入された場合は、更なる転写制御シグナルや翻訳制御シグナルは必要ないこともある。しかしながら、コード配列あるいはその断片のみが挿入された場合は、インフレームATG開始コドンなど外因性の翻訳制御シグナルが発現ベクターに含まれるようにすべきである。外因性の翻訳エレメント群および開始コドン群は、様々な天然物および合成物を起源とし得る。用いられる特定の宿主細胞系に好適なエンハンサーを含めることで発現の効率を高めることが可能である。(Scharf, D. 他 (1994) Results Probl. Cell Differ. 20:125-162.等を参照)。
当業者に周知の方法を用いて、REMAP をコードする配列、好適な転写及び翻訳調節エレメントを含む発現ベクターを作製することが可能である。これらの方法には、in vitro組換えDNA技術、合成技術、及びin vivo遺伝子組換え技術が含まれる(例えば、 Sambrook, J. 他. (1989) Molecular Cloning. A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Plainview NY, 4章及び8章, および16-17章; およびAusubel, F.M. 他. (1995) Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York NY, ch. 9章、13章および16章を参照)。
種々の発現ベクター/宿主系を利用して、REMAPをコードする配列の保持及び発現が可能である。限定するものではないがこのような発現ベクター/宿主系には、組換えバクテリオファージ、プラスミドまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換させた細菌や、酵母菌発現ベクターで形質転換させた酵母菌などの微生物や、ウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系や、ウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルス:CaMVまたはタバコモザイクウイルス:TMV)または細菌発現ベクター(例えばTiまたはpBR322プラスミド)で形質転換させた植物細胞系、動物細胞系等がある。(前出のSambrook、前出のAusubel、Van Heeke, G. and S.M. Schuster (1989) J. Biol. Chem. 264:5503-5509、; Engelhard、E.K. ら (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3224-3227、Sandig, V. ら (1996) Hum. Gene Ther. 7:1937-1945、Takamatsu, N. (1987) EMBOJ. 6:307-311、;『マグローヒル科学技術年鑑』(The McGraw Hill Yearbook of Science and Technology) (1992) McGraw Hill New York NY, 191-196ページ、Logan, J. and T. Shenk (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3655-3659、Harrington, J.J. ら (1997) Nat. Genet. 15:345-355等を参照)。レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルスまたはワクシニアウイルス由来の発現ベクター、または種々の細菌性プラスミド由来の発現ベクターを用いて、ヌクレオチド配列を標的器官、組織または細胞集団へ輸送することができる(Di Nicola, M. 他 (1998) Cancer Gen. Ther. 5(6):350-356、Yu, M. 他(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90(13):6340-6344、Buller, R.M. 他(1985) Nature 317(6040):813-815; McGregor, D.P. 他(1994) Mol. Immunol. 31(3):219-226、Verma, I.M.およびN. Somia (1997) Nature 389:239-242等を参照)。本発明は使用される宿主細胞によって限定されるものではない。
細菌系では、多数のクローニングベクター及び発現ベクターが、REMAPをコードするポリヌクレオチド配列の使用目的に応じて選択可能である。例えば、REMAPをコードするポリヌクレオチド配列の日常的なクローニング、サブクローニング、増殖には、PBLUESCRIPT(Stratagene, La Jolla CA)またはpSPORT1プラスミド(Invitrogen)などの多機能の大腸菌ベクターを用いることができる。ベクターのマルチクローニング部位にREMAP をコードする配列をライゲーションするとlacZ遺伝子が破壊され、組換え分子を含む形質転換された細菌の同定のための比色スクリーニング法が可能となる。更にこれらのベクターは、クローニングされた配列におけるin vitro転写、ジデオキシのシークエンシング、ヘルパーファージによる一本鎖のレスキュー、入れ子状態の欠失の生成にも有用であろう。(例えば、Van Heeke, G. および S.M. Schuster (1989) J. Biol. Chem. 264:5503-5509を参照)。例えば抗体類の産生などに多量のREMAP が必要な場合は、高度レベルのREMAP の発現を誘導するベクター類が使用できる。例えば、強力な誘導SP6バクテリオファージプロモーターまたは誘導T7バクテリオファージプロモーターを含むベクターが使用できる。
酵母の発現系を使用してREMAPを産出することもできる。α因子、アルコールオキシダーゼ、PGHプロモーター等の構成型或いは誘導型のプロモーターを含む多数のベクターが、出芽酵母菌(Saccharomyces cerevisiae) またはピキア酵母(Pichia pastoris)に使用可能である。更に、このようなベクターは、発現したタンパク質の、分泌か細胞内での保持かのどちらかを指示するものであり、安定した増殖のために宿主ゲノムの中に外来配列群を組み込むことを可能にする(例えば、Ausubel, 1995,前出、Bitter, G.A. 他 (1987) Methods Enzymol.153:516-544、及びScorer. C. A. 他 (1994) Bio/Technology 121:181-184.を参照)。
植物系もREMAPの発現に使用可能である。REMAP をコードする配列の転写は、ウイルスプロモーター、例えば単独であるいはTMV由来のオメガリーダー配列と組み合わせて用いられるようなCaMV由来の35Sおよび19Sプロモーターによって促進し得る(Takamatsu, N.(1987)EMBO J 6:307-311)。あるいは、RuBisCOの小サブユニットなどの植物プロモーター、または熱ショックプロモーターを用い得る。(例えば、Coruzzi, G. 他 (1984) EMBO J. 3 : 1671-1680 ; Broglie, R. 他 (1984) Science 224 : 838-843 ; および Winter, J. 他 (1991) Results Probl. Cell Differ. 17 : 85-105を参照)これらの構成物は、直接DNA形質転換または病原体を媒介とする形質移入によって、植物細胞内に導入可能である。(『マグローヒル科学技術年鑑』(The McGraw Hill Yearbook of Science and Technology) (1992) McGraw Hill New York NY, 191-196ページ等を参照。
哺乳類細胞においては、多数のウイルスベースの発現系を利用し得る。アデノウイルスが発現ベクターとして用いられる場合、後発プロモーター及び3連リーダー配列からなるアデノウイルス転写物/翻訳複合体にREMAP をコードする配列を結合し得る。アデノウイルスゲノムの非必須のE1またはE3領域への挿入を用いれば、宿主細胞内でREMAP を発現する感染ウイルスを得ることができる(例えば、Logan, J. および T. Shenk (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:36553659を参照)。更に、ラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサー等の転写エンハンサーを用いて、哺乳動物宿主細胞における発現を増大させ得る。SV40またはEBVをベースにしたベクターを用いてタンパク質を高レベルで発現させることもできる。
ヒト人工染色体(HAC)を用いて、プラスミドに含まれ得る断片やプラスミドから発現し得る断片より大きなDNAの断片群を送達することもできる。治療のために約6kb〜10MbのHACsを作製し、従来の輸送方法(リポソーム、ポリカチオンアミノポリマー、またはベシクル)で供給する。(例えば、Harrington. J.J. 他 (1997) Nat. Genet.15:345-355.を参照)。
長期にわたり哺乳動物系内で組換えタンパク質を生成するためには、細胞株内のREMAP の安定発現が望ましい。例えば、REMAP をコードする配列を細胞株に形質転換するために、発現ベクター類と、同じ或いは別のベクター上の選択可能マーカー遺伝子とを用い得る。用いる発現ベクターは、複製のウイルス起源、及び/または内在性の発現エレメントを持ち得る。ベクターの導入後、選択培地に移す前に強化培地で約1〜2日間、細胞を増殖させ得る。選択可能マーカーの目的は選択剤への抵抗性を与えることであり、選択可能マーカーの存在により、導入した配列をうまく発現するような細胞の成長および回収が可能となる。安定的に形質転換された細胞の耐性クローンは、その細胞型に適した組織培養技術を用いて増殖可能である。
任意の数の選択系を用いて、形質転換細胞株を回収できる。限定するものではないがこのような選択系には、tk単純細胞のために用いられるヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子と、apr細胞のために用いられるアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子がある(例えば、Wigler, M. 他 (1977) Cell 11:223-232; 及びLowy, I. 他(1980) Cell 22:817-823を参照)。また、選択の基礎として代謝拮抗物質、抗生物質あるいは除草剤への耐性を用いることができる。例えばdhfrはメトトレキセートに対する耐性を与え、neoはアミノグリコシド系ネオマイシンおよびG-418に対する耐性を与え、alsはクロルスルフロンに対する耐性を、patはホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼに対する耐性を各々与える( Wigler, M. 他 (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:35673570; ColbereGarapin, F. 他 (1981) J. Mol. Biol. 150:114 等を参照。)この他の選択可能な遺伝子、例えば、代謝のための細胞の必要条件を変えるtrpB及びhisDは、文献に記載されている(Hartman, S.C. および R.C. Mulligan (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:80478051を参照)。可視マーカー、例えばアントシアニン、緑色蛍光タンパク質(GFP;Clontech)、βグルクロニダーゼ及びその基質βグルクロニド、またはルシフェラーゼ及びその基質ルシフェリン等を用いてもよい。これらのマーカーを用いて、トランスフォーマントを同定するだけでなく、特定のベクター系に起因する一過性あるいは安定したタンパク質発現を定量し得る(Rhodes, C.A. (1995) Methods Mol. Biol. 55:121131等を参照)。
マーカー遺伝子発現の有無によって目的の遺伝子の存在が示唆されても、その遺伝子の存在および発現の確認が必要な場合もある。例えば、REMAP をコードする配列がマーカー遺伝子配列の中に挿入された場合、REMAP をコードする配列を含む形質転換された細胞は、マーカー遺伝子機能の欠落により特定可能である。または単一プロモーター制御下で、REMAP をコードする配列とタンデムにマーカー遺伝子を配置することも可能である。誘導または選択に応答したマーカー遺伝子の発現は通常、タンデム遺伝子の発現も示す。
一般に、REMAP をコードする核酸配列を持ち、REMAP を発現する宿主細胞は、当業者に周知の種々の方法を用いて同定し得る。これらの方法には、DNA−DNAあるいはDNA−RNAハイブリダイゼーションや、PCR法、核酸配列あるいはタンパク質配列の検出および/または数量化のための膜系、溶液ベース、あるいはチップベースの技術を含むタンパク質生物学的試験法または免疫学的アッセイが含まれるが、これらに限定されるものではない。
特異的ポリクローナル抗体または特異的モノクローナル抗体を用いてREMAP の発現の検出及び計測を行うための免疫学的方法は、当分野で公知である。 このような技術の例としては、酵素に結合したイムノソルベントアッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、蛍光活性化細胞選別(FACS)などが挙げられる。REMAP 上の2つの非干渉エピトープに反応するモノクローナル抗体を用いた、2部位のモノクローナルベース イムノアッセイ(two-site, monoclonal-based immunoassay)が好ましいが、競合の結合アッセイも用いることもできる。これらのアッセイ及びこれ以外のアッセイは、当分野で公知である(Hampton. R. 他 (1990) Serological Methods, a Laboratory Manual. APS Press. St Paul. MN, Sect. IV、Coligan, J. E. 他 (1997) Current Protocols in Immunology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience, New York NY、Pound, J.D. (1998) Immunochemical Protocols, Humans Press, Totowa NJ等を参照)。
多岐にわたる標識方法及び抱合方法が、当業者に知られており、様々な核酸アッセイおよびアミノ酸アッセイにこれらの方法を用い得る。REMAP をコードするポリヌクレオチドに関連する配列を検出するための、標識されたハイブリダイゼーションプローブ或いはPCRプローブを生成する方法には、オリゴ標識化、ニックトランスレーション、末端標識化、または標識されたヌクレオチドを用いるPCR増幅が含まれる。別法として、REMAPをコードする配列、またはその任意の断片をmRNAプローブを生成するためのベクターにクローニングすることも可能である。このようなベクターは、当分野において知られており、市販もされており、T7、T3またはSP6などの好適なRNAポリメラーゼおよび標識されたヌクレオチドを加えて、in vitroでRNAプローブの合成に用いることができる。このような方法は、例えばAmersham Biosciences、Promega(Madison WI)、U.S. Biochemicalなどから市販されている種々のキットを用いて実行することができる。検出を容易にするために用い得る好適なレポーター分子あるいは標識には、基質、補助因子、インヒビター、磁気粒子のほか、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、発色剤などがある。
REMAP をコードするヌクレオチド配列で形質転換された宿主細胞は、細胞培地でのこのタンパク質の発現及び回収に好適な条件下で培養される。形質転換細胞から製造されたタンパク質が分泌されるか細胞内に留まるかは、使用される配列、ベクター、あるいはその両者に依存する。REMAP をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、原核細胞膜及び真核細胞膜を透過するPPの分泌を誘導するシグナル配列を含むように設計できることは、当業者には理解されよう。
更に、宿主細胞株の選択は、挿入した配列の発現をモジュレートする能力、または発現したタンパク質を所望の形に処理する能力によって行い得る。限定するものではないがこのようなポリペプチドの修飾には、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化およびアシル化がある。タンパク質の「プレプロ」または「プロ」形を切断する翻訳後のプロセシングを利用して、タンパク質の標的への誘導、折りたたみ及び/または活性を特定することが可能である。翻訳後の活性のための固有の細胞装置及び特徴のある機構を有する種々の宿主細胞(例えばCHO、HeLa、MDCK、MEK293、WI38等)は、American Type Culture Collection(ATCC, Manassas, VA)から入手可能であり、外来タンパク質の正しい修飾及び処理を確実にするように選択し得る。
本発明の別の実施例では、REMAP をコードする天然の核酸配列、修飾された核酸配列、または組換え核酸配列を上記した任意の宿主系の融合タンパク質の翻訳となる異種配列にライゲーションさせる。例えば、市販の抗体によって認識できる異種部分を含むキメラREMAP タンパク質が、REMAP 活性のインヒビターに対するペプチドライブラリのスクリーニングを容易にする。また、異種タンパク質部分および異種ペプチド部分も、市販されている親和性マトリックスを用いて融合タンパク質の精製を促進し得る。限定されるものではないがこのような部分には、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、チオレドキシン(Trx)、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、6-His、FLAG、c-myc、赤血球凝集素(HA)がある。GSTは固定化グルタチオン上で、MBPはマルトース上で、Trxはフェニルアルシンオキシド上で、CBPはカルモジュリン上で、そして6-Hisは金属キレート樹脂上で、同族の融合タンパク質の精製を可能にする。FLAG、c-mycおよび赤血球凝集素(HA)は、これらのエピトープ標識を特異的に認識する市販のモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を用いた、融合タンパク質の免疫親和性精製を可能にする。また、融合タンパク質が、REMAP をコードする配列と異種タンパク質配列との間にタンパク質分解切断部位を持つように遺伝子操作すると、精製後にREMAP が異種部分から切断され得る。融合タンパク質の発現および精製方法は、前出のAusubel(1995)10章に記載されている。市販されている種々のキットを用いて融合タンパク質の発現および精製を促進することもできる。
本発明の別の実施例では、TNTウサギ網状赤血球可溶化液またはコムギ胚芽抽出系(Promega)を用いてin vitroで放射能標識したREMAP の合成が可能である。これらの系は、T7、T3またはSP6プロモーターと機能的に連結したタンパク質コード配列の転写及び翻訳をカップルさせる。翻訳は、例えば35Sメチオニンのような放射能標識したアミノ酸前駆体の存在下で起こる。
本発明のREMAPまたはその断片を用いて、REMAPに特異結合する化合物をスクリーニングすることができる。少なくとも1つまたは複数の試験化合物を用いて、REMAPへの特異的結合をスクリーニングすることが可能である。試験化合物としては、抗体、オリゴヌクレオチド、タンパク質(例えばリガンドまたは受容体)または小分子が挙げられる。一実施例では、このように同定された化合物は、例えばリガンドやその断片などのREMAPの天然のリガンド、または天然の基質、構造的または機能的な擬態性または自然結合パートナーに密接に関連している(Coligan, J.E. 他 (1991) Current Protocols in Immunology 1(2)の5章等を参照)。別の実施例においては、こうして同定された化合物は受容体REMAPの天然のリガンドである(たとえば、Howard, A.D. 他 (2001) Trends Pharmacol. Sci.22:132-140; Wise, A. 他 (2002) Drug Discovery Today 7:235-246を参照)。
別の実施例においては、その化合物は、REMAP が結合する天然受容体、或いは少なくとも受容体のある断片、リガンド結合部位または結合ポケットの全体または一部を含む受容体のある断片に密接に関連し得る。たとえば、この化合物はシグナルを伝播する能力を持つREMAPの受容体であるかもしれないし、あるいはシグナルを伝播する能力のないREMAPのおとり受容体であるかもしれない(Ashkenazi, A. および V.M. Divit (1999) Curr. Opin. Cell Biol. 11:255-260; Mantovani, A. 他 (2001) Trends Immunol. 22:328-336)。この化合物は既知の技法を用いて合理的に設計することができる。こうした技法の例としては、化合物エタネルセプト(etanercept)(ENBREL; Immunex Corp., Seattle WA)の作製に用いられた技法がある。この化合物はヒトのリューマチ性関節炎の治療に効果的である。エタネルセプトは遺伝子操作されたp75腫瘍壊死因子(TNF)受容体二量体であり、ヒトのIgG1のFc部分に連結されている(Taylor, P.C. 他 (2001) Curr. Opin. Immunol. 13:611-616)。
一実施例では、REMAPへの特異的な結合、刺激または阻害を行う化合物に対するスクリーニングには、分泌タンパク質或いは細胞膜上のタンパク質の何れか一方としてREMAPを発現する好適な細胞の作製が含まれる。好適な細胞には、哺乳動物、酵母、ショウジョウバエ、または大腸菌からの細胞が含まれる。PKINを発現する細胞またはREMAP を含有する細胞膜断片を試験化合物と接触させて、REMAP または化合物の何れかの結合、刺激または阻害を分析する。
或るアッセイは、単に試験化合物をポリペプチドに実験的に結合させ、フルオロフォア(蛍光標識試薬)、放射性同位体、酵素抱合体、または他の検出可能な標識により、その結合を検出できる。例えば、このアッセイは、少なくとも1つの試験化合物を、溶液中の或いは固体支持物に固定されたREMAP と結合させるステップと、REMAP とこの化合物との結合を検出するステップを含み得る。別法では、標識された競合物の存在下での試験化合物の結合の検出及び測定を行うことができる。更にこのアッセイでは、無細胞再構成標本、化学ライブラリまたは天然の生成混合物を用いて実施することができ、試験化合物は、溶液中で遊離させるか固体支持体に固定させる。
ある化合物が天然のリガンドに結合したり天然のリガンドがその天然の受容体に結合するのを阻害する能力を検定するためのアッセイを使うことができる。そのようなアッセイの例としては、米国特許第5,914,236 号および米国特許第6,372,724号に記載されているような放射線標識アッセイが挙げられる。関連する実施例において、ポリペプチド化合物(たとえば受容体)に1つ以上のアミノ酸置換を導入して天然のリガンドへの結合能力を改善または変更することができる(たとえば、 Matthews, D.J. および J.A. Wells. (1994) Chem. Biol. 1:25-30を参照。)別の関連する実施例において、ポリペプチド化合物(たとえばリガンド)に1つ以上のアミノ酸置換を導入して天然の受容体への結合能力を改善または変更することができる(たとえば、 Cunningham, B.C. および J.A. Wells (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:3407-3411; Lowman, H.B. 他 (1991) J. Biol. Chem. 266:10982-10988を参照)。
本発明のREMAP またはその断片を用いて、REMAP の活性を調整する化合物をスクリーニングすることが可能である。このような化合物には、アゴニスト、アンタゴニスト、部分的アゴニスト、または逆アゴニスト等が含まれる。一実施例では、REMAP の活性が許容される条件下でアッセイを実施し、そのアッセイでは少なくとも1つの試験化合物とREMAPを混合し、試験化合物の存在下でのREMAP の活性が試験化合物不在下でのREMAP の活性と比較する。試験化合物の存在下でのREMAP の活性の変化は、REMAP の活性を調整する化合物の存在を示唆する。別の実施態様において、試験化合物をREMAP の活性に適した条件下でREMAP を含むin vitroまたは無細胞再構成系と混合させてアッセイを実施する。これらアッセイの何れかにおいて、REMAP の活性を調整する試験化合物は間接的に結合することが可能であり、試験化合物と直接接触する必要はない。少なくとも1つから複数の試験化合物をスクリーニングすることができる。
別の実施態様では、胚性幹細胞(ES細胞)における相同組み換えを用いて動物モデル系内で、REMAP またはその哺乳動物相同体をコードするポリヌクレオチドを「ノックアウト」する。このような技術は当技術分野において周知であり、ヒト疾患動物モデルの作製に有用である(米国特許第5,175,383号及び第5,767,337号等を参照)。例えば129/SvJ細胞株等のマウスES細胞は初期のマウス胚に由来し、培地で増殖させることができる。このES細胞は、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neo: Capecchi, M.R.(1989)Science 244:1288-1292)などのマーカー遺伝子で破壊した、目的の遺伝子を持つベクターで形質転換する。このベクターは、相同組換えにより宿主ゲノムの対応する領域に組み込まれる。別法では、Cre-loxP系を用いて相同組換えを行い、組織特異的または発生段階特異的に目的遺伝子をノックアウトする(Marth, J.D. (1996) Clin. Invest. 97:1999-2002; Wagner, K.U. 他 (1997) Nucleic Acids Res. 25:4323-43 30)。形質転換したES細胞を同定し、例えばC57BL/6マウス系等から採取したマウス細胞胚盤胞に微量注入する。胚盤胞を偽妊娠メスに外科的に導入し、得られるキメラ子孫の遺伝形質を決め、これを交配させてヘテロ接合性系またはホモ接合性系を作製する。このようにして作製した遺伝子組換え動物は、潜在的な治療薬や毒性薬物で検査されうる。
REMAP をコードするポリヌクレオチドをin vitroでヒト胚盤胞由来のES細胞において操作することが可能である。ヒトES細胞は、内胚葉、中胚葉及び外胚葉の細胞の種類を含む少なくとも8つの別々の細胞系統に分化する可能性を有する。これらの細胞系統は、例えば神経細胞、造血系統及び心筋細胞に分化する(Thomson, J.A. 他 (1998) Science 282:1145-1 147)。
REMAP をコードするポリヌクレオチドを用いて、ヒト疾患をモデルとした「ノックイン」ヒト化動物(ブタ)または遺伝子組み換え動物(マウスまたはラット)を作製することが可能である。ノックイン技術を用いて、REMAP をコードするポリヌクレオチドのある領域を動物ES細胞に注入し、注入した配列を動物細胞ゲノムに組み込ませる。形質転換細胞を胞胚に注入し、胞胚を上記のように移植する。遺伝子組換え子孫または近交系について研究し、可能性のある医薬品を用いて処理し、ヒトの疾患の治療に関する情報を得る。別法では、例えばREMAP を乳汁内に分泌するなどREMAP を過剰に発現する哺乳動物近交系は、便利なタンパク質源となり得る(Janne, J. 他 (1998) Biotechnol. Annu. Rev. 4:55-74)。
(治療)
REMAP 領域と受容体および膜結合タンパク質領域との間に、例えば配列及びモチーフの内容における化学的及び構造的類似性が存在する。さらに、REMAPを発現する組織の例が、表6および実施例11に見つけられる。従ってREMAPは、細胞増殖異常、自己免疫/炎症性の疾患、神経疾患、代謝異常、発生または発達障害、内分泌疾患、心血管障害、生殖系疾患、胃腸障害、代謝異常、遺伝疾患、脂質代謝異常、癌およびウィルス感染において或る役割を果たすものと考えられる。REMAP の発現若しくは活性の増大に関連する疾患の治療においては、REMAP の発現または活性を低下させることが望ましい。REMAP の発現または活性の低下に関連する疾患の治療においては、REMAP の発現または活性を増大させることが望ましい。
従って、或る実施例において、REMAP の発現または活性の低下に関連した疾患の治療または予防のために、患者にREMAP またはその断片や誘導体を投与することが可能である。限定されるものではないが、そのような疾患として、細胞増殖異常には日光性角化症、動脈硬化、アテローム性動脈硬化、滑液包炎、硬変、肝炎、混合型結合組織病(MCTD)、骨髄線維症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、真性多血症、乾癬、原発性血小板血症、並びに腺癌及び白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫、及び奇形癌、具体的には、副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、頚部、胆嚢、神経節、消化管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、子宮の癌が含まれ; 自己免疫/炎症疾患には、後天性免疫不全症候群(AIDS)、アジソン病(慢性原発性副腎機能不全)、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー、強直性脊椎炎、アミロイド症、貧血、喘息、アテローム性動脈硬化、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性多腺性内分泌カンジダ症外胚葉ジストロフィー(APECED)、気管支炎、胆嚢炎、接触皮膚炎、クローン病、アトピー性皮膚炎、皮膚筋炎、糖尿病、肺気腫、リンパ球傷害因子性偶発性リンパ球減少症、新生児溶血性疾患(胎児赤芽球症)、結節性紅斑、萎縮性胃炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、痛風、グレーブス病、橋本甲状腺炎、過好酸球増加症、過敏性腸症候群、多発性硬化症、重症筋無力症、心筋または心膜炎症、骨関節炎、骨粗しょう症、膵炎、多発性筋炎、乾癬、ライター症候群、リウマチ様関節炎、強皮症、シェーグレン症候群、全身性アナフィラキシー、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、血小板減少性紫斑病、潰瘍性大腸炎、ぶどう膜炎、ウェルナー症候群、癌合併症、血液透析、体外循環、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、寄生虫感染症、原虫感染症、蠕虫感染症、外傷が含まれ; 神経障害には、癲癇、虚血性脳血管障害、脳卒中、脳腫瘍、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン病、痴呆、パーキンソン病およびその他の錐体外路障害、筋萎縮性側索硬化およびその他の運動ニューロン障害、進行性神経性筋萎縮症、網膜色素変性症(色素性網膜炎)、遺伝性運動失調、多発性硬化症および他の脱髄疾患、細菌性およびウイルス性髄膜炎、脳膿瘍、硬膜下膿瘍、硬膜外膿瘍、化膿性頭蓋内血栓性静脈炎、脊髄炎および神経根炎、ウイルス性中枢神経系疾患と、プリオン病(クールー、クロイツフェルト‐ヤコブ病、およびGerstmann-Straussler-Scheinker症候群を含む)、致死性家族性不眠症、神経系性栄養病および代謝病、神経線維腫症、結節硬化症、小脳網膜血管腫症(cerebelloretinal hemangioblastomatosis)、脳3叉神経血管症候群、ダウン症を含む中枢神経系性精神遅滞および他の発達障害、脳性麻痺、神経骨格異常症、自律神経系障害、脳神経障害、脊髄疾患、筋ジストロフィー他の神経筋障害、末梢神経疾患、皮膚筋炎および多発性筋炎と、遺伝性、代謝性、内分泌性、および中毒性ミオパシーと、重症筋無力症、周期性四肢麻痺、精神障害(気分性、不安性の障害、統合失調症/分裂病)、季節性感情障害(SAD)、静座不能、健忘症、緊張病、糖尿病性ニューロパシー、遅発性ジスキネジア、ジストニー、パラノイド精神病、帯状疱疹後神経痛、トゥーレット病、進行性核上麻痺、大脳皮質基底核変性(corticobasal degeneration)、および家族性前頭側頭型痴呆とが含まれ; 代謝系の疾患としては、アジソン病、脳腱黄色腫症、先天性副腎過形成、クマリン耐性(coumarin resistance)、嚢胞性繊維症、糖尿病、脂肪性肝硬変、フルクトース-1、6−ジホスファターゼ欠乏症、ガラクトース血症、甲状腺腫、グルカゴノーマ、糖原病、遺伝性果糖不耐症、副腎皮質機能亢進症(Hyperadrenalism)、副甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能低下症、高コレステロール血症、甲状腺機能亢進症、低血糖症、甲状腺機能低下症、脂肪過剰血症、脂質ミオパシー、脂肪ジストロフィー症、リソソーム蓄積症、マノシドーシス、ノイラミニナーゼ欠損症、肥満、骨粗しょう症、フェニルケトン尿症、プソイドビタミンD欠損くる病、炭水化物代謝障害(例えば、先天性II型異常赤血球産生症性貧血、糖尿病、インスリン依存型真性糖尿病、非インスリン依存型真性糖尿病、ガラクトースエピメラーゼ欠乏症、糖原病、リソソーム蓄積症、果糖尿、五炭糖尿症)、およびピルビン酸代謝の先天性異常、脂肪肝のような脂質代謝異常、胆汁うっ滞、原発性胆汁性肝硬変、カルニチン欠乏症、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ欠乏症、ミオアデニレートデミナーゼ欠乏症、高トリグリセリド血症、ファブリー病などの脂質貯蔵病、ゴーシェ病、ニーマン‐ピック病、変染色性白質ジストロフィー、副腎性白質ジストロフィー、GM2にガングリオシドーシス、セロイドリポフスチン症、無β‐リポ蛋白血症、タンジアー病、リポ蛋白過剰血症、脂肪異栄養症、脂肪腫症、急性皮下脂肪組織炎、播種性脂肪組織壊死症、有痛脂肪症、リポイド副腎過形成、最小変化症、脂肪腫、アテローム性動脈硬化症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症を伴った高コレステロール血症、原発性低αリポ蛋白血症、甲状腺症機能低下症、腎臟病、肝疾患、レシチン-コレステロールアシルトランスフェラーゼ欠乏症、脳腱黄色腫症、シトステロール血症、低コレステロール血症、テイ‐サックス病、サンドホフ病、高脂血症、脂肪過剰血症、脂質筋障害、およびMenke病のような銅代謝疾患、ウイルソン病、およびエーレルス‐ダンロー症候群IX型糖尿病が含まれ; 発生または発達障害には尿細管性アシドーシス、貧血、クッシング症候群、軟骨形成不全性小人症、デュシェンヌ/ベッカー型筋ジストロフィー、癲癇、性腺形成異常、WAGR症候群(ウィルムス腫瘍、無虹彩症、尿生殖器異常、精神遅滞)、スミス‐マジェニス症候群(Smith- Magenis syndrome)、骨髄異形成症候群、遺伝性粘膜上皮異形成、遺伝性角皮症や、シャルコーマリーツース病および神経線維腫症などの遺伝性神経病、甲状腺機能低下症、水頭症や、Syndenham舞踏病(Syndenham's chorea)および脳性小児麻痺などの発作障害、二分脊椎、無脳症、頭蓋脊椎披裂、先天性緑内障、白内障、感音難聴が含まれ; 内分泌障害の中には原発脳腫瘍及び腺腫、妊娠性梗塞、下垂体切除、動脈瘤、血管奇形、血栓症、感染症、免疫異常、頭部外傷による合併症などの病変から起こる視床下部及び下垂体の障害と、性機能低下及びシーハン症候群、尿崩症、カルマン病、ハンド‐シュラークリスチャン病、レトラ‐シヴェ病、サルコイドーシス、エンプティセラ症候群、小人症を含む下垂体低下に関連した障害と、良性線種によって発生しやすい不適当抗利尿ホルモン(ADH)分泌症候群(SIADH)及び先端巨大症、巨人症を含む下垂体亢進に関連した障害と、甲状腺腫及び粘液水腫、細菌感染性急性甲状腺炎、ウイルス感染性亜急性甲状腺炎、自己免疫性甲状腺炎(橋本病)、クレチン病を含む甲状腺機能低下症に関連した障害と、甲状腺中毒症及びその様々な型、グレーブス病、前脛骨粘液水腫、中毒性多結節性甲状腺腫、甲状腺癌、プランマー病を含む甲状腺機能亢進症と、Conn病(chronic hypercalemia)を含む副甲状腺機能亢進症と、I型及びII型糖尿病及び合併症などの膵臓疾患と、過形成及び副腎皮質の癌腫や腺腫、アルカローシスに関連した高血圧、アミロイド症、低カリウム血、クッシング病、リドル症候群、Arnold-Healy-Gordon症候群、褐色細胞腫瘍、、アジソン病、副腎機能不全などの副腎に関連した障害と、女性の異常プロラクチン産生及び不妊症、子宮内膜症、月経周期の摂動、多嚢胞性卵巣疾患、高プロラクチン血症、選択的性腺刺激ホルモン不全(isolated gonadotropin deficiency)、無月経、乳汁漏出症、半陰陽、多毛症及び男性化、乳癌、閉経期後の骨粗鬆症、男性のライジッヒ細胞過形成、男性更年期、生殖細胞無形成症、ライジッヒ細胞腫瘍に関連した性機能亢進、アンドロゲン受容体の欠如に関連したアンドロゲン耐性、5α−還元酵素症候群、21‐ヒドロキシラーゼ症候群、女性乳房症などの生殖腺ステロイドホルモンに関連した疾患とが含まれ; 心血管疾患の中には、動静脈瘻、アテローム硬化、高血圧、脈管炎、レイノー病、静脈奇形、動脈解離、静脈瘤、血栓静脈炎及び静脈血栓、血管の腫瘍、血栓崩壊の合併症、バルーン血管形成術、血管置換術、バイパス手術、うっ血性心不全、虚血性心疾患、狭心症、心筋梗塞、高血圧性心疾患、変性弁膜性心疾患、石灰化大動脈弁狭窄症、先天性2尖大動脈弁、僧帽弁輪石灰化、僧帽弁脱出、リウマチ熱、リウマチ性心疾患、感染性心内膜炎、非細菌性血栓性心内膜炎、全身性エリテマトーデスの心内膜炎、カルチノイド心疾患、心筋症、心筋炎、心膜炎、腫瘍性心疾患、先天性心臓疾患、及び心臓移植の合併症と、先天性肺異常、肺拡張不全、肺うっ血及び肺水腫、肺動脈塞栓症、肺出血、肺梗塞、肺高血圧症、血管硬化症、閉塞性肺疾患、拘束型肺疾患、慢性閉塞性肺疾患、肺気腫、慢性気管支炎、気管支喘息、細気管支拡張症、細菌性肺炎、ウイルス性肺炎及びマイコプラズマ肺炎、肺膿瘍、肺結核、びまん性間質性疾患、塵肺症、サルコイド症、特発性肺線維症、剥離性間質性肺炎、過敏症肺炎、肺好酸球増加閉塞性細気管支炎―器質性肺炎(pulmonary eosinophilia bronchiolitis obliterans-organizing pneumonia)、びまん性肺出血症候群、グッドパスチャー症候群、特発性肺血鉄症、肺併発膠原血管病併発性肺疾患、肺胞たんぱく症、肺腫瘍、炎症性及び非炎症性胸水、気胸症、胸膜腫瘍、薬物性肺疾患、放射線による肺疾患、及び肺移植の合併症などが含まれ; 生殖系疾患として、プロラクチン産生の障害、不妊(例えば卵管疾患、排卵不良、子宮内膜症、性周期の途絶、月経周期の途絶、多嚢胞性卵巣症候群、卵巣過剰刺激症候群、子宮内膜腫瘍や卵巣腫瘍、子宮筋腫、自己免疫障害、異所性妊娠、奇形発生、乳癌、乳房線維嚢胞病、乳漏症、精子形成の途絶、異常精子生理、精巣癌、前立腺癌、良性前立腺肥大、前立腺炎、ペーロニー病、インポテンス、男性乳癌、女性化乳房、高ゴナドトロピン性腺機能低下症、低ゴナドトロピン性腺機能低下症、仮性半陰陽、無精子症、早発卵巣不全、アクロシン欠損症、晩発思春期、逆行性射精、無射精、血管芽腫、嚢胞・クロム親和細胞腫(cystsphaeochromocytomas)、傍神経節腫、精巣上体の嚢胞腺腫、および内リンパ嚢腫瘍)が含まれ; 胃腸障害の内には、腸疾患、消化性食道炎、食道攣縮、食道狭窄、食道癌、消化不良、消化不良、胃炎、胃癌、摂食障害、吐き気、嘔吐、胃不全麻痺、胞状浮腫および幽門浮腫、腹部アンギナ、胸焼け、胃腸炎、腸閉塞、腸管感染、消化性潰瘍、胆石症、胆嚢炎、胆汁鬱滞、膵臓炎、膵臓癌、胆道疾患、肝炎、高ビリルビン血症、肝硬変、肝臓の受動的鬱血、肝臓癌、伝染性大腸炎、潰瘍大腸炎、潰瘍性直腸炎、クローン病、ホイップル病、マロリーワイス症候群、結腸癌、結腸閉塞、過敏性大腸症候群、短腸症候群、下痢、便秘、胃腸出血、後天性免疫不全症候群(AIDS)、腸疾患、黄疸、肝性脳症、肝腎症候群、肝臓脂肪症、血色素症、ウィルソン病、α1アンチトリプシン欠乏症、ライ症候群、原発性硬化性胆管炎、肝臓梗塞、門脈閉塞および血栓症、小葉中心性壊死、肝紫斑症、肝静脈血栓症、肝中心静脈閉塞症、子癇前症、子癇、急性妊娠脂肪肝、妊娠肝内胆汁鬱滞、肝腫瘍(結節過形成、腺腫、および癌)が含まれ; 遺伝疾患としてたとえば副腎脳白質ジストロフィー、Alport症候群、コロイデレミア、デュシェンヌおよびベッカー型筋ジストロフィー、ダウン症候群、嚢胞性線維症、慢性肉芽腫症、ゴーシェ病、ハンチントン病、Marfan症候群、筋ジストロフィー、筋強直性ジストロフィー、ピクノディスオストーシス、Refsum症候群、網膜芽細胞種、鎌形赤血球貧血症、サラセミア、ウェルナー症候群、von Willebrand症候群、ウィルムス腫瘍、ゼルウィガー症候群、ペルオキシソームアシルCoAオキシダーゼ欠乏症、ペルオキシソームチオラーゼ欠乏症、ペルオキシソーム二価性タンパク質欠乏症、ミトコンドリアカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼおよびカルニチン欠乏症、ミトコンドリア長鎖アシル
CoAデヒドロゲナーゼ欠乏症、ミトコンドリア中鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ欠乏症、ミトコンドリア短鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ欠乏症、ミトコンドリア電子伝達フラビンタンパク質および電子伝達フラビンタンパク質:ユービキノンオキシドレダクターゼ欠乏症、ミトコンドリア三価性タンパク質欠乏症およびミトコンドリア短鎖3ヒドロキシアシルCoAデヒドロゲナーゼ欠乏症が含まれ; 脂質代謝障害として、脂肪肝、胆汁うっ滞、原発性胆汁性肝硬変、カルニチン欠乏症、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ欠乏症、ミオアデニル酸デアミナーゼ欠損症、高トリグリセリド血症と、ファブリー病などの脂質貯蔵病、ゴーシェ病、ニーマン‐ピック病、異染性白質ジストロフィー、副腎白質ジストロフィー、GMガングリオシド蓄積症、セロイドリポフスチン症、無β‐リポ蛋白血症、タンジアー病、高リポ蛋白血症、糖尿病、脂肪異栄養症、脂肪腫症、急性皮下脂肪組織炎、播種性脂肪壊死、有痛脂肪症、リポイド副腎過形成、微小変化型ネフローゼ、脂肪腫、アテローム性動脈硬化症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症を伴った高コレステロール血症、原発性低αリポ蛋白血症、甲状腺機能低下症、腎疾患、肝疾患、レシチン:コレステロールアシルトランスフェラーゼ欠損症、脳腱黄色腫症、シトステロール血症、低コレステロール血症、テイ‐サックス病、サンドホフ病、高脂血症、高脂質血症、脂質筋障害が含まれ; 癌としては、腺癌、白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫、奇形癌を含む癌、具体的には副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、頚部、胆嚢、神経節、消化管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、子宮の癌等が含まれ; ウイルス病原体による感染の中には、アデノウイルス及びアレナウイルス、ブンヤウイルス、カリチウイルス、コロナウイルス、フィロウイルス、ヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、フラビウイルス、オルソミクソウイルス、パルボウイルス、パポーバウイルス、パラミキソウイルス、ピコルナウイルス、ポックスウイルス、レオウイルス、レトロウイルス、ラブドウイルス、トンガウイルスに分類されるウィルスによるものが含まれる。
別の実施例では、REMAP またはその断片や誘導体を発現し得るベクターを患者に投与して、限定するものではないが上記した疾患を含むREMAP の発現または活性の低下に関連した疾患を治療または予防することも可能である。
更に別の実施態様では、限定するものではないが上記した疾患を含む、REMAP の発現または活性の低下に関連した疾患の治療または予防のために、実質的に精製されたREMAP を含む組成物を好適な医薬用キャリアと共に患者に投与することも可能である。
更に別の実施例では、REMAP の活性を調節するアゴニストを患者に投与して、限定するものではないが上記した疾患を含むREMAP の発現または活性の低下に関連した疾患を治療または予防することも可能である。
更なる実施例では、REMAP の発現または活性の増大に関連した疾患の治療または予防のために、患者にREMAP のアンタゴニストを投与することが可能である。限定するものではないがこのような疾患の例には、上記した細胞増殖異常、自己免疫/炎症性の疾患、神経疾患、代謝異常、発生または発達障害、内分泌疾患、心血管障害、生殖系疾患、胃腸障害、代謝異常、遺伝疾患、脂質代謝異常、癌およびウィルス感染がある。一実施態様では、REMAP と特異的に結合する抗体が直接アンタゴニストとして、或いはREMAP を発現する細胞または組織に薬剤を運ぶターゲッティング或いは送達機構として間接的に用いられ得る。
別の実施例では、REMAP をコードするポリヌクレオチドの相補体を発現するベクターを患者に投与して、限定するものではないが上記した疾患を含むREMAP の発現または活性の増大に関連した疾患を治療または予防することも可能である。
別の実施態様では、本発明の任意のタンパク質、アンタゴニスト、抗体、アゴニスト、相補配列、またはベクターを、別の好適な治療薬と組み合わせて投与することもできる。併用療法で用いる好適な治療薬は、当業者が従来の医薬原理に従って選択し得る。治療薬と組合せることにより、上記した種々の疾患の治療または予防に相乗効果をもたらし得る。この方法を用いることにより少量の各薬剤で医薬効果をあげることが可能となり、それによって副作用の可能性を低減し得る。
REMAP のアンタゴニストは、本技術分野で一般的に知られている方法を用いて製造し得る。具体的には、精製されたREMAP を用いて抗体を作るか、治療薬のライブラリをスクリーニングして、TMPと特異結合するものを同定することが可能である。REMAP の抗体も、当分野で一般的な方法を用いて製造することが可能である。このような抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖、Fab断片、及びFab発現ライブラリによって作られた断片が含まれる。但し、これらに限定されるものではない。中和抗体(即ち二量体の形成を阻害する抗体)は通常、治療用に好適である。(例えば、ラクダまたはラマからの一本鎖抗体)一本鎖抗体は強力な酵素阻害剤である可能性があり、ペプチド擬態の設計および免疫吸着剤およびバイオセンサの開発に有用である可能性がある(Muyldermans, S. (2001) J. Biotechnol. 74:277-302)。
抗体の産生のためには、ヤギ、ウサギ、ラット、マウス、ラクダ、ヒトコブラクダ、ラマ、ヒト及びその他のものを含む種々の宿主が、REMAP または任意の断片、または免疫原性の特性を備えるそのオリゴペプチドの注入によって免疫化され得る。宿主の種に応じて、種々のアジュバントを用いて免疫応答を高めることもできる。限定するものではないがこのようなアジュバントには、フロイントアジュバントと、水酸化アルミニウム等のミネラルゲルアジュバントと、リゾレシチン、プルロニックポリオル、ポリアニオン、ペプチド、油性乳剤、スカシガイのヘモシニアン、ジニトロフェノール等の界面活性剤とがある。ヒトに用いられるアジュバントの中では、BCG(カルメット‐ゲラン杆菌)及びコリネバクテリウム‐パルバム(Corynebacterium parvum)が特に好ましい。
REMAP に対する抗体類を誘導するために用いられるオリゴペプチド、ペプチド、または断片は、少なくとも約5個のアミノ酸からなるアミノ酸配列を持つものが好ましく、一般的には約10個以上のアミノ酸からなる。これらのオリゴペプチド、ペプチドまたは断片は、天然のタンパク質のアミノ酸配列の一部と同一であることが望ましい。REMAP アミノ酸の短いストレッチは、KLHなど別のタンパク質の配列と融合されることができ、このキメラ分子に対する抗体群が産生され得る。
REMAP に対するモノクローナル抗体は、抗体分子を産生する任意の技術を用いて、培地内の連続した細胞株によって作製し得る。限定するものではないがこのような技術には、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、およびEBV-ハイブリドーマ技術がある(Kohler, G. 他 (1975) Nature 256:495-497、Kozbor, D. 他 (1985) .J. Immunol. Methods 81:31-42、Cote, R.J. 他 (1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:2026-2030、Cole, S.P. 他 (1984) Mol. Cell Biol. 62:109-120等を参照)。
更に、「キメラ抗体」作製のために発達したヒト抗体遺伝子にマウス抗体遺伝子をスプライシングするなどの技術が、好適な抗原特異性及び生物学的活性を備える分子を得るために用いられる(例えば、Morrison, S.L.他. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. 81:6851-6855; Neuberger, M.S.他. (1984) Nature 312:604-608; Takeda, S.他 (1985) Nature 314:452,454を参照。)別法では、当分野で周知の方法を用いて、一本鎖抗体の産生のための記載された技術を適用して、REMAP特異的一本鎖抗体を生成する。関連特異性を有するがイディオタイプ組成が異なるような抗体を、ランダムな組合せの免疫グロブリンライブラリからチェーンシャッフリングによって産生することもできる(Burton D.R. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:10134-10137等を参照)。
抗体の産生は、リンパ球集団におけるin vivo産生の誘導によって、或いは文献に開示されているように非常に特異的な結合試薬の免疫グロブリンのライブラリまたはパネルのスクリーニングによっても行い得る(Orlandi, R. 他 (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 3833-3837、Winter, G. 他 (1991) Nature 349:293-299等を参照)。
REMAP のための特異結合部位を有する抗体断片を産生することもできる。例えば、限定するものではないが、このような断片には、抗体分子のペプシン消化によって作製されるF(ab')2 断片と、F(ab')2 断片のジスルフィド架橋を還元することによって作製されるFab断片とがある。或いは、Fab発現ライブラリを作製することによって、モノクローナルFab断片を所望の特異性と迅速且つ容易に同定することが可能となる(Huse, W.D. 他 (1989) Science 246:1275-1281等を参照)。
種々の免疫学的検定(イムノアッセイ)を用いてスクリーニングすることにより、所望の特異性を有する抗体を同定し得る。隔離された特異性を有するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体の何れかを用いる競合的な結合、または免疫放射線活性のための数々のプロトコルが、当分野では周知である。 通常このようなイムノアッセイには、REMAP とその特異性抗体との間の複合体形成の計測が含まれる。二つの非干渉性REMAP エピトープに対して反応性のモノクローナル抗体を用いる、2部位モノクローナルベースのイムノアッセイが一般に利用されるが、競合的結合アッセイも利用することができる(Pound、前出)。
ラジオイムノアッセイ技術と共にScatchard分析などの様々な方法を用いて、REMAPに対する抗体の親和性を評価する。親和性を結合定数Kaで表すが、このKaは、平衡状態の下でREMAP抗体複合体のモル濃度を遊離抗体と遊離抗原のモル濃度で除して得られる値である。ポリクローナル抗体類は多数のREMAP エピトープに対して親和性が不均一であり、或るポリクローナル抗体試薬に関して判定したKaは、REMAP に対する抗体群の平均の親和性または結合活性を表す。特定のREMAP エピトープに単一特異的なモノクローナル抗体試薬のKaは、親和性の真の測定値を表す。Ka値が10〜1012liter/molの高親和性抗体試薬は、REMAP抗体複合体が過酷な処理に耐えなければならないイムノアッセイに用いるのが好ましい。Ka値が10〜10liter/molの低親和性抗体試薬は、REMAPが抗体から最終的に活性化状態で解離する必要がある免疫精製及び類似の処理に用いるのが好ましい(Catty, D. (1988) Antibodies, Volume I: A Practical Approach. IRL Press, Washington, DC; Liddell, J. E. 及び Cryer, A. (1991) A Practical Guide to Monoclonal Antibodies, John Wiley & Sons, New York NY)。
ポリクローナル抗体製剤の抗体価および結合活性を更に評価して、後に使う或る適用例に対するこのような試薬の品質および適性を決定することができる。例えば、少なくとも1〜2mg/mlの特異的な抗体、好ましくは5〜10mg/mlの特異的な抗体を含むポリクローナル抗体医薬は一般に、REMAP抗体複合体を沈殿させなければならない処理に用いられる。抗体の特異性、抗体価、結合活性、様々な適用例における抗体の品質や使用に対する指針については、一般に入手可能である。(前出のCattyの文献、同Coligan 他の文献等を参照)。
本発明の別の実施例では、REMAPをコードするポリヌクレオチド、またはその任意の断片や相補配列を、治療目的で使用できる。ある実施態様では、REMAPをコードする遺伝子のコーディング領域や調節領域に相補的な配列やアンチセンス分子(DNA及びRNA、修飾ヌクレオチド)を設計して遺伝子発現を変更することができる。このような技術は当分野では周知であり、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたは大きな断片を、REMAPをコードする配列の制御領域、またはコード領域に沿ったさまざまな位置から設計可能である(Agrawal, S., ed. (1996) Antisense Therapeutics, Humana Press Inc., Totawa NJを参照)。
治療に用いる場合、アンチセンス配列を適切な標的細胞に導入するのに好適な、任意の遺伝子送達系を用いることができる。アンチセンス配列は、転写時に標的タンパク質をコードする細胞配列の少なくとも一部に相補的な配列を作製する発現プラスミドの形で細胞内に輸送することが可能である(Slater, J.E. 他 (1998) J. Allergy Clin. Immunol. 102(3):469-475; およびScanlon, K.J. 他 (1995) 9(13):1288-1296を参照)。アンチセンス配列はまた、例えばレトロウイルスやアデノ随伴ウイルスベクターなどのウイルスベクターを用いて細胞内に導入することもできる(Miller, A.D. (1990) Blood 76:271、前出のAusubel、Uckert, W. および W. Walther (1994) Pharmacol. Ther. 63(3):323-347等を参照)。その他の遺伝子送達機構には、リポソーム系、人工的なウイルスエンベロープ及び当分野で公知のその他のシステムが含まれる(Rossi, J.J. (1995) Br. Med. Bull. 51(1):217-225; Boado、R.J.他 (1998) J. Pharm. Sci. 87(11):1308-1315、Morris, M.C. 他 (1997) Nucleic Acids Res. 25(14):2730-2736. 等を参照)。
本発明の別の実施例では、REMAP をコードするポリヌクレオチドを、体細胞若しくは生殖細胞遺伝子治療に用いることが可能である。遺伝子治療を行うことにより、(i)遺伝子欠損症(例えばX染色体鎖遺伝(Cavazzana-Calvo, M. 他 (2000) Science 288:669-672)により特徴付けられる重度の複合型免疫欠損(SCID)-X1の場合)、先天性アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症に関連する重度の複合型免疫欠損(Blaese, R.M. 他 (1995) Science 270:475-480、Bordignon, C. 他 (1995) Science 270:470-475)、嚢胞性繊維症(Zabner, J. 他 (1993) Cell 75:207-216: Crystal、R.G. 他 (1995) Hum. Gene Therapy 6:643-666、Crystal, R.G. 他 (1995) Hum. Gene Therapy 6:667-703)、サラセミア(thalassamia)、家族性高コレステロール血症、第VIII因子若しくは第IX因子欠損に起因する血友病(Crystal, 35 R.G. (1995) Science 270:404-410、Verma, I.M. および N. Somia (1997) Nature 389:239-242)を治療し、(ii)条件的致死性遺伝子産物を発現させ(例えば制御不能な細胞増殖に起因する癌の場合)、(iii)細胞内の寄生虫(例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)(Baltimore, D. (1988) Nature 335:395-396、Poescbla, E. 他 (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 93:11395-11399)、B型若しくはC型肝炎ウイルス(HBV、HCV)、Candida albicans及びParacoccidioides brasiliensis等の真菌寄生虫、並びにPlasmodium falciparum及びTrypanosoma cruzi等の原虫寄生体に対する防御機能を有するタンパク質を発現させることができる。REMAP の発現若しくは調節に必要な遺伝子の欠損が疾患を引き起こす場合、導入した細胞の好適な集団からREMAP を発現させて、遺伝子欠損によって起こる症状の発現を緩和することが可能である。
本発明の更なる実施例では、REMAPの欠損による疾患や障害は、REMAPをコードする哺乳動物発現ベクターを作製して、これらのベクターを機械的手段によってREMAP欠損細胞に導入することによって治療される。in vivoあるいはex vitroの細胞に用いる機械的導入技術には、(i)個々の細胞内への直接的なDNA微量注射法、(ii)遺伝子銃、(iii)リポソームを介した形質移入、(iv)受容体を介した遺伝子導入、および(v)DNAトランスポゾンの使用がある(Morgan, R.A. および W.F. Anderson(1993)Annu. Rev. Biochem. 62:191-217、Ivics, Z.(1997)Cell 91:501-510; Boulay, J-L. およびH. Recipon(1998)Curr. Opin. Biotechnol. 9:445-450)。
REMAP の発現に有効であり得る発現ベクターの例として、限定するものではないがpcDNA 3.1、EpiTag、pRcCMV2、pREP、pVAX、pCRII-TOPOTAベクター(Invitrogen, Carlsbad CA)、pCMV-Script、pCMV-Tag、PEGSH/PERV(Stratagene, La Jolla CA)およびPTET-OFF、PTET-ON、PTRE2、PTRE2-LUC、PTK-HYG(Clontech, Palo Alto CA)が挙げられる。REMAP を発現させるために、(i)恒常的に活性なプロモーター(例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、SV40ウイルス、チミジンキナーゼ(TK)、若しくはβ−アクチン遺伝子等)、(ii)誘導性プロモーター(例えば、市販のT-REXプラスミド(Invitrogen)に含まれている、テトラサイクリン調節性プロモーター(Gossen, M. and H. Bujard (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89:5547-5551; Gossen, M. 他 (1995) Science 268:1766-1769; Rossi, F.M.V. 及び H.M. Blau (1998) Curr. Opin. Biotechnol. 9:451-456))、エクジソン誘導性プロモーター(市販のプラスミドPVGRXR及びPINDに含まれている:Invitrogen)、FK506/ラパマイシン誘導性プロモーター、またはRU486/ミフェプリストーン誘導性プロモーター(Rossi, F.M.V. and H.M. Blau, 前出)、または(iii)正常な個体に由来するREMAP をコードする内在性遺伝子の天然のプロモーター若しくは組織特異的プロモーターを用いることが可能である。
市販のリポソーム形質転換キット(例えばInvitrogen社のPERFECT LIPID TRANSFECTION KIT)を用いれば、当業者は経験にそれほど頼らないでもポリヌクレオチドを培養中の標的細胞に導入することが可能になる。別法では、リン酸カルシウム法(Graham. F.L. 及び A.J. Eb (1973) Virology 52:456-467)若しくは電気穿孔法(Neumann, B. 他 (1982) EMBO J. 1:841-845)を用いて形質転換を行う。初代培養細胞にDNAを導入するためには、標準化された哺乳動物の形質移入プロトコルの修飾が必要である。
本発明の別の実施態様では、REMAP の発現に関連する種々の遺伝子欠損によって起こる疾患や障害を、(i)レトロウイルス長末端反復配列(LTR)プロモーター若しくは或る独立プロモーターのコントロール下でREMAP をコードするポリヌクレオチドと、(ii)好適なRNAパッケージングシグナル群と、(iii)効率的なベクター増殖に必要なコーディング配列群と追加のレトロウイルス・シス作用性RNA配列群とを伴うRev応答性エレメント(RRE)と、からなるレトロウイルスベクターを作製して治療し得る。レトロウイルスベクター(例えばPFB及びPFBNEO)はStratagene社から市販されており、刊行データ(Riviere, I. 他 (1995) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92:6733-6737)に基づいている。上記データを引用することをもって本明細書の一部とする。ベクターは、好適なベクター産生細胞株(VPCL)において増殖され、VPCLは、標的細胞上の受容体に対する親和性を有するエンベロープ遺伝子またはVSVg等の汎親和性エンベロープタンパク質を発現する(Armentano, D. 他 (1987) J. Virol. 61:1647-1650、Bender, M.A. 他 (1987) J. Virol. 61:1639-1646、Adam, M.A. および A.D. Miller (1988) J. Virol. 62:3802-3806、Dull, T. 他 (1998) J. Virol. 72:8463-8471、Zufferey, R. 他 (1998) J. Virol. 72:9873-9880)。 U.S. Riggに付与された米国特許第5,910,434号(「Method for obtaining retrovirus packaging cell lines producing high transducing efficiency retroviral supernatant」)において、レトロウイルスパッケージング細胞株を得るための方法が開示されており、引用することをもって本明細書の一部とする。レトロウイルスベクターの増殖、細胞集団(例えばCD4+ T細胞)の形質導入、及び形質導入した細胞の患者への戻しは、遺伝子治療の分野では当業者に公知の方法であり、多数の文献に記載されている(Ranga, U. 他 (1997) J. Virol. 71:7020-7029、Bauer, G. 他 (1997) Blood 89:2259-2267、Bonyhadi, M.L. (1997) J. Virol. 71:4707-4716、Ranga, U. 他 (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95:1201-1206、Su, L. (1997) Blood 89:2283-2290)。
別法では、アデノウイルス系遺伝子治療の送達系を用いて、REMAP の発現に関連する1つ以上の遺伝子異常を有する細胞にREMAP をコードするポリヌクレオチドを送達する。アデノウイルス系ベクターの作製及びパッケージングについては、当業者に公知である。複製欠損型アデノウイルスベクターは、免疫調節タンパク質をコードする遺伝子を膵臓の無損傷の膵島内に導入するために融通のきくことが証明された(Csete, M.E. 他 (1995) Transplantation 27:263-268)。使用できる可能性のあるアデノウイルスベクターは、Armentanoに付与された米国特許第5,707,618号(「Adenovirus vectors for gene therapy」)に記載されており、引用することをもって本明細書の一部とする。アデノウイルスベクターについては、Antinozzi, P.A. 他 (1999) Annu. Rev. Nutr. 19:511-544 及び Verma, I.M. 及び N. Somia (1997) Nature 18:389:239-242も参照されたい。両文献は、引用することをもって本明細書の一部とする。
別法では、ヘルペス系遺伝子治療の或る送達系を用いて、REMAP の発現に関連する1つ以上の遺伝子異常を持つ標的細胞群に、REMAP をコードするポリヌクレオチド群を送達する。単純ヘルペスウイルス(HSV)系ベクター類は、HSVが親和性を持つ中枢神経系の細胞にREMAP を導入する際に、特に有用であろう。ヘルペス系ベクターの作製及びパッケージングは、当業者に公知である。複製適格性単純ヘルペスウイルス(HSV)I型系のベクターは、レポーター遺伝子を霊長類の眼に送達するために用いられてきた(Liu, X. 他 (1999) Exp. Eye Res.169:385-395)。HSV-1ウイルスベクターの作製についても、DeLucaに付与された米国特許第5,804,413号(「Herpes simplex virus swains for gene transfer」)に開示されており、該特許の引用をもって本明細書の一部とする。 米国特許第5,804,413号には、ヒト遺伝子治療を含む目的のために好適なプロモーターの制御下において細胞に導入される少なくとも1つの外在性遺伝子を有するゲノムを含む組換えHSV d92についての記載がある。上記特許はまた、ICP4、ICP27及びICP22のために除去される組換えHSV系統の作製及び使用について開示している。HSVベクターについては、Goins, W.F. 他 (1999) J. Virol. 73:519-532 及び Xu, H. ら (1994) Dev. Biol. 163:152-161も参照されたい。両文献は、引用をもって本明細書の一部とする。クローン化ヘルペスウイルス配列の操作、巨大ヘルペスウイルスのゲノムの異なった部分を含む多数のプラスミドを形質移入した後の組換えウイルスの産生、ヘルペスウイルスの成長及び増殖、並びにヘルペスウイルスの細胞への感染は、当業者に公知の技術である。
別法では、αウイルス(正の一本鎖RNAウイルス)ベクターを用いてREMAP をコードするポリヌクレオチドを標的細胞に送達する。プロトタイプのαウイルスであるセムリキ森林熱ウイルス(Semliki Forest Virus, SFV)の生物学的研究が広範に行われており、遺伝子導入ベクターがSFVゲノムに基づいていることが分かった(Garoff, H. 及び K.-J. Li (1998) Cun. Opin. Biotech. 9:464-469)。αウイルスRNAの複製中に、通常はウイルスのキャプシッドタンパク質をコードするサブゲノムRNAが作り出される。このサブゲノムRNAは、完全長のゲノムRNAより高いレベルに複製されるため、酵素活性(例えばプロテアーゼ及びポリメラーゼ)を有するウイルスタンパク質に比べてキャプシッドタンパク質が過剰産生される。同様に、REMAP をコードする配列をキャプシッドをコードする領域の代わりにαウイルスゲノムに導入することによって、ベクター導入細胞において多数のREMAP をコードするRNAが産生され、高いレベルでREMAP が合成される。通常はαウイルスの感染が数日以内での細胞溶解に関係する一方で、シンドビスウイルス(SIN)の変異体を有するハムスター正常腎臓細胞(BHK-21)の持続的な感染を確立する能力は、αウイルスの溶解複製を遺伝子治療に適用できるように好適に変更可能であることを示唆している(Dryga, S.A. 他 (1997) Virology 228 :74-83)。様々な宿主にαウイルスを導入できることから、様々なタイプの細胞にREMAP を導入することができる。或る集団におけるサブセットの細胞の特定形質導入は、形質導入前に細胞の選別を必要とし得る。αウイルスの感染性cDNAクローンの処置方法、αウイルスのcDNA及びRNAの形質移入方法及びαウイルスの感染方法は、当業者に公知である。
転写開始部位由来のオリゴヌクレオチドを用いて遺伝子発現を阻害することも可能である。転写開始部位(transcription initiation site)とは例えばスタート部位(start site)から数えて約−10と約+10の間である。同様に、三重らせん塩基対の形成方法を用いて阻害が可能となる。三重らせん塩基対形成は、ポリメラーゼ、転写因子または調節分子の結合のために充分に開く、二重らせんの能力を阻害するので有用である。三重らせんDNAを用いる最近の治療の進歩については文献に記載がある(Gee, J.E. 他 (1994) in: Huber, B.E.and B.I. Carr, Molecular and Immunologic Approaches, Futura Publishing Co., Mt. Kisco, NY, 163-177ページ等を参照。)相補配列またはアンチセンス分子もまた、転写物がリボソームに結合するのを阻止することによってmRNAの翻訳を阻止するべく設計することができる。
リボザイムは酵素的RNA分子であり、RNAの特異的切断を触媒するためにリボザイムを用いることもできる。リボザイム作用のメカニズムは、相補的標的RNAへのリボザイム分子の配列特異性ハイブリダイゼーションとその後に起こる内ヌクレオチド鎖切断に関与している。例えば、遺伝子操作で作られたハンマーヘッド型リボザイム分子は、REMAPをコードする配列の内ヌクレオチド鎖分解性の切断を特異的且つ効果的に触媒する可能性がある。
任意のRNA標的内の特異的リボザイム切断部位は、GUA、GUU、GUC配列を含めたリボザイム切断部位に対して標的分子をスキャンすることによって先ず同定される。一度同定されると、切断部位を含む標的遺伝子の領域に対応する15〜20リボヌクレオチドの短いRNA配列が、そのオリゴヌクレオチドを機能不全にするような2次構造の特徴をもっていないかを評価することが可能になる。候補標的の適合性の評価も、リボヌクレアーゼ保護アッセイを用いて相補的オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションのアクセス可能性をテストすることによって行うことができる。
本発明の相補リボ核酸分子およびリボザイムは、核酸分子合成のために当分野でよく知られている任意の方法を用いて作製し得る。任意の方法には、固相フォスフォアミダイト化学合成等のオリゴヌクレオチドを化学的に合成する方法がある。或いは、REMAPをコードするDNA配列のin vitro及びin vivo転写によってRNA分子を産出し得る。このようなDNA配列は、T7やSP6等の好適なRNAポリメラーゼプロモーターを用いて多様なベクター内に取り込むことが可能である。或いは、相補的RNAを構成的或いは誘導的に合成するようなこれらcDNA産物を、細胞系、細胞または組織内に導入することができる。
細胞内の安定性を高め、半減期を長くするためにRNA分子を修飾することができる。限定するものではないが可能な修飾としては、分子の5'末端、3'末端、あるいはその両方において隣接配列群を追加することや、分子の主鎖内においてホスホジエステラーゼ結合ではなくホスホロチオエートまたは2'O-メチルを使用することが含まれる。この概念は、PNAの産出に固有のものであり、これら全ての分子に拡大することができる。それには、内因性エンドヌクレアーゼによって容易には認識されないアデニン、シチジン、グアニン、チミン、及びウリジンにアセチル−、メチル−、チオ−及び同様の修飾をしたものの他、非従来型塩基、例えばイノシン、クエオシン(queosine)、ワイブトシン(wybutosine)等を加えることでできる。
本発明の更なる実施例は、REMAPをコードするポリヌクレオチドの発現の変化に有効な化合物をスクリーニングする方法を含む。限定するものではないが特異ポリヌクレオチドの発現変化を起こすのに有効な化合物には、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、三重らせん形成オリゴヌクレオチド、転写因子その他のポリペプチド転写制御因子、及び特異ポリヌクレオチド配列と相互作用し得る非高分子化学的実体がある。有効な化合物は、ポリヌクレオチド発現のインヒビターまたはエンハンサーのいずれかとして作用することによりポリヌクレオチド発現を変異し得る。従って、REMAP の発現または活性の増加に関連する疾患の治療においては、REMAP をコードするポリヌクレオチドの発現を特異的に阻害する化合物が治療上有用であり、REMAP の発現または活性の低下に関連する疾患の治療においては、REMAP をコードするポリヌクレオチドの発現を特異的に促進する化合物が治療上有用であり得る。
或る特定ポリヌクレオチドの発現を改変する際の有効性について、少なくとも1個、または複数個の試験化合物をスクリーニングし得る。試験化合物は、当分野で通常知られている任意の方法により得られる。このような方法には、ポリヌクレオチドの発現を変異させる場合と、既に、市販のまたは私的な、天然または非天然の化合物ライブラリから選択する場合と、標的ポリヌクレオチドの化学的及び/または構造的特性に基づく化合物を合理的にデザインする場合と、組合せ的にまたは無作為に生成した化合物のライブラリから選択する場合に有効であることが知られているような化合物の化学修飾がある。REMAP をコードするポリヌクレオチドを含むサンプルは、少なくとも1つの試験化合物に曝露して得る。サンプルには例えば、無傷細胞、透過化処理した細胞、無細胞再構成系または再構成生化学系があり得る。REMAP をコードするポリヌクレオチドの発現における変化は、当分野で通常知られている任意の方法でアッセイする。通常、REMAP をコードするポリヌクレオチドの配列に相補的なヌクレオチド配列を有するプローブを用いたハイブリダイゼーションにより、特異ヌクレオチドの発現を検出する。ハイブリダイゼーション量を定量し、それによって1つ以上の試験化合物に曝露される及び曝露されないポリヌクレオチドの発現の比較に対する基礎を形成し得る。試験化合物に曝露されるポリヌクレオチドの発現における変化の検出は、ポリヌクレオチドの発現を変異する際に試験化合物が有効であることを示している。特異ポリヌクレオチドの発現改変に有効な化合物に対して、例えば分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)遺伝子発現系(Atkins, D. 他 (1999) 米国特許第5,932,435号、Arndt, G.M. 他 (2000) Nucleic Acids Res. 28:E15)またはHeLa細胞等のヒト細胞株(Clarke, M.L. 他 (2000) Biochem. Biophys. Res. Commun. 268:8-13)を用いてスクリーニングを実行する。本発明の或る特定の実施態様は、或る特定ポリヌクレオチド配列に対するアンチセンス活性について、オリゴヌクレオチド(デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、ペプチド核酸、修飾したオリゴヌクレオチド)の組み合わせライブラリをスクリーニングする過程に関する(Bruice, T.W. 他 (1997) U.S. Patent No. 5,686,242、Bruice, T.W. 他. (2000) U.S. Patent No. 6,022,691)。
ベクターを細胞または組織に導入する多数の方法が利用可能であり、in vivoin vitro及びex vivoの使用に対して同程度に適している。ex vivo治療の場合、ベクターを患者から採取した幹細胞内に導入し、クローニング増殖して同一患者に自家移植で戻すことができる。トランスフェクション、リボソーム注入またはポリカチオンアミノポリマーによる送達は、当分野でよく知られている方法を用いて実行することができる(Goldman, C.K. 他 (1997) Nat. Biotechnol. 15:462-466.等を参照)。
上記の治療方法はいずれも、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ウサギ、サルなどの哺乳類を含めて治療が必要な全ての被験体に適用できる。
本発明の追加実施例は、通常薬剤として許容できる賦形剤で処方される活性成分を有する組成物の投与に関連する。賦形剤には例えば、糖、でんぷん、セルロース、ゴム及びタンパク質がある。様々な処方が通常知られており、詳細はRemington's Pharmaceutical Sciences(Maack Publishing, Easton PA)の最新版に記載されている。このような組成物は、REMAP、REMAPの抗体、擬態、アゴニスト、アンタゴニスト、またはREMAPのインヒビターなどからなる。
本発明に用いられる組成物は、任意の数の経路によって投与することができ、限定するものではないが経路には、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、クモ膜下腔内、心室内、肺、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所、舌下または直腸がある。
肺から投与する組成物は、液状または乾燥粉末状で調製し得る。このような組成物は通常、患者が吸入する直前にエアロゾル化する。小分子(例えば従来の低分子量有機薬)の場合には、速効製剤のエアロゾル送達は当分野で公知である。高分子(例えばより大きなペプチド及びタンパク質)の場合には、当該分野において肺の肺胞領域を介しての肺送達が最近向上したことにより、インスリン等の薬剤を実質的に血液循環へ輸送することを可能にした(Patton, J.S. 他, 米国特許第5,997,848号等を参照)。肺送達は、針注射なしに投与する点で優れており、有毒な可能性のある浸透エンハンサーの必要性をなくす。
本発明での使用に適した組成物には、所定の目的を達成するために必要なだけの量の活性成分を含有する成分が含まれる。有効投与量の決定は、当業者の能力の範囲内で行う。
特殊形状の成分は、REMAP またはその断片を含む高分子を直接細胞内輸送するために調製される。例えば、細胞不透過性高分子を含むリポソーム製剤は、細胞融合及び高分子の細胞内送達を促進し得る。別法では、REMAP またはその断片をHIV Tat-1タンパク質の陽イオンN末端部に結合することもできる。このようにして生成された融合タンパク質は、マウスモデル系の脳を含む全ての組織の細胞に形質導入することがわかっている(Schwarze, S.R. 他 (1999) Science 285:1569-1572)。
任意の化合物に対して、先ず細胞培養アッセイ、例えば新生物性細胞の細胞培養アッセイにおいて、あるいは、動物モデル、例えばマウス、ラット、ウサギ、イヌ、サルまたはブタなどにおいて、治療有効量を推定することができる。動物モデルはまた、好適な濃度範囲及び投与経路を決定するためにも用い得る。このような情報を用いて、次にヒトに対する有益な投与量及び投与経路を決定することができる。
医学的に効果的な薬用量は、症状や容態を回復させる、たとえばREMAPまたはその断片、REMAPの抗体、REMAPのアゴニストまたはアンタゴニスト、インヒビターなどの活性処方成分の量に関連する。治療有効性および毒性は、細胞培養または動物実験における標準的な薬学手法によって、例えばED50(集団の50%の治療有効量)またはLD50(集団の50%の致死量)統計を計算するなどして判定できる。毒性効果の治療効果に対する投与量の比は、治療指数であり、LD50/ED50比として表すことができる。高い治療指数を示すような組成物が望ましい。細胞培養アッセイと動物実験とから得られたデータは、ヒトに用いる投与量の範囲の策定に用いられる。このような組成物が含まれる投与量は、毒性を殆ど或いは全く含まず、ED50を含むような血中濃度の範囲にあることが好ましい。用いられる投与形態、患者の感受性及び投与の経路によって、投与量はこの範囲内で様々に変わる。
正確な投与量は、治療が必要な被験者に関する要素を考慮して、現場の医者が決定することになる。効果的なレベルの活性成分を与え、或いは所望の効果を維持するべく、投与量及び投与を調節する。被験者に関する要素としては、疾患の重症度、患者の通常の健康状態、患者の年齢、体重及び性別、投与の時間及び頻度、薬剤の配合、反応感受性及び治療に対する応答等を考慮する。作用期間が長い組成物は、特定の製剤の半減期及びクリアランス率によって3〜4日毎に1度、1週間に1度、或いは2週間に1度の間隔で投与し得る。
通常の投与量は、投与の経路にもよるが約0.1〜100,000μgであり、合計で約1gまでとする。特定の投与量及び送達方法に関するガイダンスは文献に記載されており、現場の医者は通常それを利用することができる。当業者は、タンパク質またはインヒビターに対する処方とは異なる、ヌクレオチドに対する処方を利用することになる。同様に、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの送達は、特定の細胞、状態、位置等に特異的なものとなる。
(診断)
別の実施例では、REMAP の発現によって特徴付けられる疾患の診断のために、或いはREMAP やREMAP のアゴニスト、アンタゴニストまたは阻害剤で治療を受けている患者をモニターするためのアッセイにおいて、REMAP を特異的に結合する抗体が用いられることがある。診断目的に有用な抗体は、上記の治療の箇所で記載した方法と同じ方法で調合される。REMAP の診断アッセイには、ヒトの体液から、あるいは細胞や組織の抽出物から、抗体および標識を用いてREMAP を検出する方法が含まれる。この抗体は修飾されたものもされていないものも可能であり、レポーター分子との共有結合または非共有結合で標識化できる。レポーター分子としては広くさまざまな種類が本分野で知られており、また使用可能であるが、そのうちのいくつかは上記で説明されている。
REMAPを測定するための、ELISA,RIA,及びFACSなど種々のプロトコルは、当分野では既知であり、変容した或いは異常なレベルのREMAP発現を診断するための基盤を提供する。正常或いは標準的なREMAP の発現の値は、複合体の形成に適した条件下で、正常な哺乳動物、例えばヒトなどの被験者から採取した体液または細胞とREMAP に対する抗体とを結合させることによって決定する。標準複合体形成量は、種々の方法、例えば測光法で定量できる。被験者、対照、及び疾患生検組織からの各サンプルのREMAP の発現の量が基準値と比較される。標準値と被験者との偏差が疾患を診断するパラメータとなる。
本発明の別の実施例によれば、REMAP をコードするポリヌクレオチドを診断のために用いることもできる。用いられることができるポリヌクレオチドには、オリゴヌクレオチド配列、相補的RNA及びDNA分子、そしてPNAが含まれる。このポリヌクレオチドを用いて、疾患と相関し得るREMAP を発現する生検組織における遺伝子の発現を検出し定量する。この診断アッセイを用いて、REMAP の存在の有無、更に過剰な発現を調べ、治療中のREMAP 値の調節を監視する。
一実施形態では、REMAP または近縁の分子をコードする遺伝子配列を含むポリヌクレオチド配列を検出可能なPCRプローブを用いたハイブリダイゼーションによって、REMAP をコードする核酸配列を同定することが可能である。プローブが高度に特異的な領域(例えば5'調節領域)から作成されていようと、あるいは、やや特異性の低い領域(例えば保存されたモチーフ)から作成されていようと、プローブの特異性と、ハイブリダイゼーション或いは増幅のストリンジェントは、プローブがREMAPをコードする天然の配列のみを同定するか、或いは対立形質変異体や関連配列コードする自然界の配列のみを同定するかどうかによって決まるであろう。
プローブはまた、関連する配列の検出に利用され、REMAP をコードする任意の配列と少なくとも50%の配列同一性を有し得る。目的の本発明のハイブリダイゼーションプローブには、DNAあるいはRNAが可能であり、SEQ ID NO:27-52 の配列、或いはREMAP 遺伝子のプロモーター、エンハンサー、イントロンを含むゲノム配列に由来し得る。
REMAP をコードするDNAに対して特異的なハイブリダイゼーションプローブの作製方法には、REMAP およびREMAP 誘導体をコードするポリヌクレオチド配列をmRNAプローブの作製のためのベクターにクローニングする方法がある。mRNAプローブ作製のためのベクターは、当業者に知られており、市販されており、好適なRNAポリメラーゼ及び好適な標識されたヌクレオチドを加えることによって、in vitroでRNAプローブを合成するために用いられ得る。ハイブリダイゼーションプローブは、種々のレポーターの集団によって標識され得る。レポーター集団の例としては、32Pまたは35S等の放射性核種、或いはアビジン/ビオチン結合系を介してプローブに結合されたアルカリホスファターゼ等の酵素標識などが挙げられる。
REMAP をコードするポリヌクレオチド配列を用いて、REMAP の発現に関連する疾患を診断することが可能である。限定されるものではないが、そのような疾患として、細胞増殖異常には日光性角化症、動脈硬化、アテローム性動脈硬化、滑液包炎、硬変、肝炎、混合型結合組織病(MCTD)、骨髄線維症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、真性多血症、乾癬、原発性血小板血症、並びに腺癌及び白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫、及び奇形癌、具体的には、副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、頚部、胆嚢、神経節、消化管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、子宮の癌が含まれ; 自己免疫/炎症疾患には、後天性免疫不全症候群(AIDS)、アジソン病(慢性原発性副腎機能不全)、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー、強直性脊椎炎、アミロイド症、貧血、喘息、アテローム性動脈硬化、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性多腺性内分泌カンジダ症外胚葉ジストロフィー(APECED)、気管支炎、胆嚢炎、接触皮膚炎、クローン病、アトピー性皮膚炎、皮膚筋炎、糖尿病、肺気腫、リンパ球傷害因子性偶発性リンパ球減少症、新生児溶血性疾患(胎児赤芽球症)、結節性紅斑、萎縮性胃炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、痛風、グレーブス病、橋本甲状腺炎、過好酸球増加症、過敏性腸症候群、多発性硬化症、重症筋無力症、心筋または心膜炎症、骨関節炎、骨粗しょう症、膵炎、多発性筋炎、乾癬、ライター症候群、リウマチ様関節炎、強皮症、シェーグレン症候群、全身性アナフィラキシー、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、血小板減少性紫斑病、潰瘍性大腸炎、ぶどう膜炎、ウェルナー症候群、癌合併症、血液透析、体外循環、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、寄生虫感染症、原虫感染症、蠕虫感染症、外傷が含まれ; 神経障害には、癲癇、虚血性脳血管障害、脳卒中、脳腫瘍、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン病、痴呆、パーキンソン病およびその他の錐体外路障害、筋萎縮性側索硬化およびその他の運動ニューロン障害、進行性神経性筋萎縮症、網膜色素変性症(色素性網膜炎)、遺伝性運動失調、多発性硬化症および他の脱髄疾患、細菌性およびウイルス性髄膜炎、脳膿瘍、硬膜下膿瘍、硬膜外膿瘍、化膿性頭蓋内血栓性静脈炎、脊髄炎および神経根炎、ウイルス性中枢神経系疾患と、プリオン病(クールー、クロイツフェルト‐ヤコブ病、およびGerstmann-Straussler-Scheinker症候群を含む)、致死性家族性不眠症、神経系性栄養病および代謝病、神経線維腫症、結節硬化症、小脳網膜血管腫症(cerebelloretinal hemangioblastomatosis)、脳3叉神経血管症候群、ダウン症を含む中枢神経系性精神遅滞および他の発達障害、脳性麻痺、神経骨格異常症、自律神経系障害、脳神経障害、脊髄疾患、筋ジストロフィー他の神経筋障害、末梢神経疾患、皮膚筋炎および多発性筋炎と、遺伝性、代謝性、内分泌性、および中毒性ミオパシーと、重症筋無力症、周期性四肢麻痺、精神障害(気分性、不安性の障害、統合失調症/分裂病)、季節性感情障害(SAD)、静座不能、健忘症、緊張病、糖尿病性ニューロパシー、遅発性ジスキネジア、ジストニー、パラノイド精神病、帯状疱疹後神経痛、トゥーレット病、進行性核上麻痺、大脳皮質基底核変性(corticobasal degeneration)、および家族性前頭側頭型痴呆とが含まれ; 代謝系の疾患としては、アジソン病、脳腱黄色腫症、先天性副腎過形成、クマリン耐性(coumarin resistance)、嚢胞性繊維症、糖尿病、脂肪性肝硬変、フルクトース-1、6−ジホスファターゼ欠乏症、ガラクトース血症、甲状腺腫、グルカゴノーマ、糖原病、遺伝性果糖不耐症、副腎皮質機能亢進症(Hyperadrenalism)、副甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能低下症、高コレステロール血症、甲状腺機能亢進症、低血糖症、甲状腺機能低下症、脂肪過剰血症、脂質ミオパシー、脂肪ジストロフィー症、リソソーム蓄積症、マノシドーシス、ノイラミニナーゼ欠損症、肥満、骨粗しょう症、フェニルケトン尿症、プソイドビタミンD欠損くる病、炭水化物代謝障害(例えば、先天性II型異常赤血球産生症性貧血、糖尿病、インスリン依存型真性糖尿病、非インスリン依存型真性糖尿病、ガラクトースエピメラーゼ欠乏症、糖原病、リソソーム蓄積症、果糖尿、五炭糖尿症)、およびピルビン酸代謝の先天性異常、脂肪肝のような脂質代謝異常、胆汁うっ滞、原発性胆汁性肝硬変、カルニチン欠乏症、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ欠乏症、ミオアデニレートデミナーゼ欠乏症、高トリグリセリド血症、ファブリー病などの脂質貯蔵病、ゴーシェ病、ニーマン‐ピック病、変染色性白質ジストロフィー、副腎性白質ジストロフィー、GM2にガングリオシドーシス、セロイドリポフスチン症、無β‐リポ蛋白血症、タンジアー病、リポ蛋白過剰血症、脂肪異栄養症、脂肪腫症、急性皮下脂肪組織炎、播種性脂肪組織壊死症、有痛脂肪症、リポイド副腎過形成、最小変化症、脂肪腫、アテローム性動脈硬化症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症を伴った高コレステロール血症、原発性低αリポ蛋白血症、甲状腺症機能低下症、腎臟病、肝疾患、レシチン-コレステロールアシルトランスフェラーゼ欠乏症、脳腱黄色腫症、シトステロール血症、低コレステロール血症、テイ‐サックス病、サンドホフ病、高脂血症、脂肪過剰血症、脂質筋障害、およびMenke病のような銅代謝疾患、ウイルソン病、およびエーレルス‐ダンロー症候群IX型糖尿病が含まれ; 発生または発達障害には尿細管性アシドーシス、貧血、クッシング症候群、軟骨形成不全性小人症、デュシェンヌ/ベッカー型筋ジストロフィー、癲癇、性腺形成異常、WAGR症候群(ウィルムス腫瘍、無虹彩症、尿生殖器異常、精神遅滞)、スミス‐マジェニス症候群(Smith- Magenis syndrome)、骨髄異形成症候群、遺伝性粘膜上皮異形成、遺伝性角皮症や、シャルコーマリーツース病および神経線維腫症などの遺伝性神経病、甲状腺機能低下症、水頭症や、Syndenham舞踏病(Syndenham's chorea)および脳性小児麻痺などの発作障害、二分脊椎、無脳症、頭蓋脊椎披裂、先天性緑内障、白内障、感音難聴が含まれ; 内分泌障害の中には原発脳腫瘍及び腺腫、妊娠性梗塞、下垂体切除、動脈瘤、血管奇形、血栓症、感染症、免疫異常、頭部外傷による合併症などの病変から起こる視床下部及び下垂体の障害と、性機能低下及びシーハン症候群、尿崩症、カルマン病、ハンド‐シュラークリスチャン病、レトラ‐シヴェ病、サルコイドーシス、エンプティセラ症候群、小人症を含む下垂体低下に関連した障害と、良性線種によって発生しやすい不適当抗利尿ホルモン(ADH)分泌症候群(SIADH)及び先端巨大症、巨人症を含む下垂体亢進に関連した障害と、甲状腺腫及び粘液水腫、細菌感染性急性甲状腺炎、ウイルス感染性亜急性甲状腺炎、自己免疫性甲状腺炎(橋本病)、クレチン病を含む甲状腺機能低下症に関連した障害と、甲状腺中毒症及びその様々な型、グレーブス病、前脛骨粘液水腫、中毒性多結節性甲状腺腫、甲状腺癌、プランマー病を含む甲状腺機能亢進症と、Conn病(chronic hypercalemia)を含む副甲状腺機能亢進症と、I型及びII型糖尿病及び合併症などの膵臓疾患と、過形成及び副腎皮質の癌腫や腺腫、アルカローシスに関連した高血圧、アミロイド症、低カリウム血、クッシング病、リドル症候群、Arnold-Healy-Gordon症候群、褐色細胞腫瘍、、アジソン病、副腎機能不全などの副腎に関連した障害と、女性の異常プロラクチン産生及び不妊症、子宮内膜症、月経周期の摂動、多嚢胞性卵巣疾患、高プロラクチン血症、選択的性腺刺激ホルモン不全(isolated gonadotropin deficiency)、無月経、乳汁漏出症、半陰陽、多毛症及び男性化、乳癌、閉経期後の骨粗鬆症、男性のライジッヒ細胞過形成、男性更年期、生殖細胞無形成症、ライジッヒ細胞腫瘍に関連した性機能亢進、アンドロゲン受容体の欠如に関連したアンドロゲン耐性、5α−還元酵素症候群、21‐ヒドロキシラーゼ症候群、女性乳房症などの生殖腺ステロイドホルモンに関連した疾患とが含まれ; 心血管疾患の中には、動静脈瘻、アテローム硬化、高血圧、脈管炎、レイノー病、静脈奇形、動脈解離、静脈瘤、血栓静脈炎及び静脈血栓、血管の腫瘍、血栓崩壊の合併症、バルーン血管形成術、血管置換術、バイパス手術、うっ血性心不全、虚血性心疾患、狭心症、心筋梗塞、高血圧性心疾患、変性弁膜性心疾患、石灰化大動脈弁狭窄症、先天性2尖大動脈弁、僧帽弁輪石灰化、僧帽弁脱出、リウマチ熱、リウマチ性心疾患、感染性心内膜炎、非細菌性血栓性心内膜炎、全身性エリテマトーデスの心内膜炎、カルチノイド心疾患、心筋症、心筋炎、心膜炎、腫瘍性心疾患、先天性心臓疾患、及び心臓移植の合併症と、先天性肺異常、肺拡張不全、肺うっ血及び肺水腫、肺動脈塞栓症、肺出血、肺梗塞、肺高血圧症、血管硬化症、閉塞性肺疾患、拘束型肺疾患、慢性閉塞性肺疾患、肺気腫、慢性気管支炎、気管支喘息、細気管支拡張症、細菌性肺炎、ウイルス性肺炎及びマイコプラズマ肺炎、肺膿瘍、肺結核、びまん性間質性疾患、塵肺症、サルコイド症、特発性肺線維症、剥離性間質性肺炎、過敏症肺炎、肺好酸球増加閉塞性細気管支炎―器質性肺炎(pulmonary eosinophilia bronchiolitis obliterans-organizing pneumonia)、びまん性肺出血症候群、グッドパスチャー症候群、特発性肺血鉄症、肺併発膠原血管病併発性肺疾患、肺胞たんぱく症、肺腫瘍、炎症性及び非炎症性胸水、気胸症、胸膜腫瘍、薬物性肺疾患、放射線による肺疾患、及び肺移植の合併症などが含まれ; 生殖系疾患として、プロラクチン産生の障害、不妊(例えば卵管疾患、排卵不良、子宮内膜症、性周期の途絶、月経周期の途絶、多嚢胞性卵巣症候群、卵巣過剰刺激症候群、子宮内膜腫瘍や卵巣腫瘍、子宮筋腫、自己免疫障害、異所性妊娠、奇形発生、乳癌、乳房線維嚢胞病、乳漏症、精子形成の途絶、異常精子生理、精巣癌、前立腺癌、良性前立腺肥大、前立腺炎、ペーロニー病、インポテンス、男性乳癌、女性化乳房、高ゴナドトロピン性腺機能低下症、低ゴナドトロピン性腺機能低下症、仮性半陰陽、無精子症、早発卵巣不全、アクロシン欠損症、晩発思春期、逆行性射精、無射精、血管芽腫、嚢胞・クロム親和細胞腫(cystsphaeochromocytomas)、傍神経節腫、精巣上体の嚢胞腺腫、および内リンパ嚢腫瘍)が含まれ; 胃腸障害の内には、腸疾患、消化性食道炎、食道攣縮、食道狭窄、食道癌、消化不良、消化不良、胃炎、胃癌、摂食障害、吐き気、嘔吐、胃不全麻痺、胞状浮腫および幽門浮腫、腹部アンギナ、胸焼け、胃腸炎、腸閉塞、腸管感染、消化性潰瘍、胆石症、胆嚢炎、胆汁鬱滞、膵臓炎、膵臓癌、胆道疾患、肝炎、高ビリルビン血症、肝硬変、肝臓の受動的鬱血、肝臓癌、伝染性大腸炎、潰瘍大腸炎、潰瘍性直腸炎、クローン病、ホイップル病、マロリーワイス症候群、結腸癌、結腸閉塞、過敏性大腸症候群、短腸症候群、下痢、便秘、胃腸出血、後天性免疫不全症候群(AIDS)、腸疾患、黄疸、肝性脳症、肝腎症候群、肝臓脂肪症、血色素症、ウィルソン病、α1アンチトリプシン欠乏症、ライ症候群、原発性硬化性胆管炎、肝臓梗塞、門脈閉塞および血栓症、小葉中心性壊死、肝紫斑症、肝静脈血栓症、肝中心静脈閉塞症、子癇前症、子癇、急性妊娠脂肪肝、妊娠肝内胆汁鬱滞、肝腫瘍(結節過形成、腺腫、および癌)が含まれ; 遺伝疾患としてたとえば副腎脳白質ジストロフィー、Alport症候群、コロイデレミア、デュシェンヌおよびベッカー型筋ジストロフィー、ダウン症候群、嚢胞性線維症、慢性肉芽腫症、ゴーシェ病、ハンチントン病、Marfan症候群、筋ジストロフィー、筋強直性ジストロフィー、ピクノディスオストーシス、Refsum症候群、網膜芽細胞種、鎌形赤血球貧血症、サラセミア、ウェルナー症候群、von Willebrand症候群、ウィルムス腫瘍、ゼルウィガー症候群、ペルオキシソームアシルCoAオキシダーゼ欠乏症、ペルオキシソームチオラーゼ欠乏症、ペルオキシソーム二価性タンパク質欠乏症、ミトコンドリアカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼおよびカルニチン欠乏症、ミトコンドリア長鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ欠乏症、ミトコンドリア中鎖アシルCoAデ
ヒドロゲナーゼ欠乏症、ミトコンドリア短鎖アシルCoAデヒドロゲナーゼ欠乏症、ミトコンドリア電子伝達フラビンタンパク質および電子伝達フラビンタンパク質:ユービキノンオキシドレダクターゼ欠乏症、ミトコンドリア三価性タンパク質欠乏症およびミトコンドリア短鎖3ヒドロキシアシルCoAデヒドロゲナーゼ欠乏症が含まれ; 脂質代謝障害として、脂肪肝、胆汁うっ滞、原発性胆汁性肝硬変、カルニチン欠乏症、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ欠乏症、ミオアデニル酸デアミナーゼ欠損症、高トリグリセリド血症と、ファブリー病などの脂質貯蔵病、ゴーシェ病、ニーマン‐ピック病、異染性白質ジストロフィー、副腎白質ジストロフィー、GMガングリオシド蓄積症、セロイドリポフスチン症、無β‐リポ蛋白血症、タンジアー病、高リポ蛋白血症、糖尿病、脂肪異栄養症、脂肪腫症、急性皮下脂肪組織炎、播種性脂肪壊死、有痛脂肪症、リポイド副腎過形成、微小変化型ネフローゼ、脂肪腫、アテローム性動脈硬化症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症を伴った高コレステロール血症、原発性低αリポ蛋白血症、甲状腺機能低下症、腎疾患、肝疾患、レシチン:コレステロールアシルトランスフェラーゼ欠損症、脳腱黄色腫症、シトステロール血症、低コレステロール血症、テイ‐サックス病、サンドホフ病、高脂血症、高脂質血症、脂質筋障害が含まれ; 癌としては、腺癌、白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫、奇形癌を含む癌、具体的には副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、頚部、胆嚢、神経節、消化管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、子宮の癌等が含まれ; ウイルス病原体による感染の中には、アデノウイルス及びアレナウイルス、ブンヤウイルス、カリチウイルス、コロナウイルス、フィロウイルス、ヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、フラビウイルス、オルソミクソウイルス、パルボウイルス、パポーバウイルス、パラミキソウイルス、ピコルナウイルス、ポックスウイルス、レオウイルス、レトロウイルス、ラブドウイルス、トンガウイルスに分類されるウィルスによるものが含まれる。REMAP をコードするポリヌクレオチド配列は、変容したREMAP 発現を検出するために患者から採取した体液あるいは組織を利用する、サザーン法やノーザン法、ドットブロット法、あるいはその他の膜系の技術、PCR法、ディップスティック(dipstick)、ピン(pin)、およびマルチフォーマットのELISA式アッセイ、およびマイクロアレイに使用可能である。このような定性方法または定量方法は、当分野で公知である。
ある実施態様では、REMAP をコードするヌクレオチド配列は、関連する疾患、特に上記した疾患を検出するアッセイにおいて有用であろう。REMAP をコードするヌクレオチド配列は、標準的な方法で標識化され、ハイブリダイゼーション複合体の形成に好適な条件下で、患者から採取した体液あるいは組織のサンプルに加えることができるであろう。好適なインキュベーション期間が経過したらサンプルを洗浄し、シグナルを定量して標準値と比較する。患者のサンプルのシグナルの量が対照サンプルに比較して著しく変化している場合は、そのサンプル内のREMAP をコードするヌクレオチド配列群のレベル変化の存在により、関連する疾患の存在が明らかになる。このようなアッセイは、動物実験、臨床試験における特定の治療効果を評価するため、あるいは個々の患者の治療をモニターするために用いることもできる。
REMAPの発現に関連する疾患の診断の基礎を提供するために、発現の正常すなわち標準的なプロフィールが確立される。これは、ハイブリダイゼーション或いは増幅に好適な条件下で、動物或いはヒトの何れかの正常な被験者から抽出された体液或いは細胞と、REMAPをコードする配列或いはその断片とを結合させることにより達成され得る。実質的に精製されたポリヌクレオチドを既知量用いて行った実験から得た値を正常な被験者から得た値と比較することにより、標準ハイブリダイゼーションを定量することができる。このようにして得た標準値は、疾患の徴候を示す患者から得たサンプルから得た値と比較することができる。標準値からの偏差を用いて疾患の存在を確定する。
疾患の存在が確定されて治療プロトコルが開始されると、患者の発現レベルが正常な被検者に観察されるレベルに近づき始めたかどうかを測定するため、ハイブリダイゼーションアッセイを定期的に繰り返し得る。連続アッセイから得られた結果を用いて、数日から数ヶ月の期間にわたる治療の効果を示し得る。
癌に関しては、個体からの生体組織における異常な量の転写物(過少発現または過剰発現)の存在は、疾患の発生素質を示したり、実際に臨床的症状が現れる前に疾患を検出する方法を提供し得る。この種のより明確な診断により、医療の専門家が予防方法または積極的な治療法を早くから利用し、それによって癌の発生または更なる進行を防止することが可能となる。
REMAP をコードする配列群から設計したオリゴヌクレオチド群の更なる診断的利用には、PCRの利用を含み得る。これらのオリゴマーは、化学的に合成するか、酵素により生産するか、或いはin vitroで産出し得る。オリゴマーは、好ましくはREMAPをコードするポリヌクレオチドの断片、あるいはREMAPをコードするポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチドの断片を含み、最適な条件下で、特定の遺伝子や条件を識別するために利用される。また、オリゴマーは、やや緩いストリンジェント条件下で、近縁のDNA或いはRNA配列の検出、定量、或いはその両方のため用いることが可能である。
或る実施態様においては、REMAP をコードするポリヌクレオチド配列群に由来するオリゴヌクレオチドプライマー類を用いて、一塩基多型(SNP)を検出し得る。SNPは、多くの場合にヒトの先天性または後天性遺伝病の原因となるような置換、挿入および欠失である。限定するものではないがSNPの検出方法には、SSCP(single-stranded conformation polymorphism)及び蛍光SSCP(fSSCP)がある。REMAP では、REMAP をコードするポリヌクレオチド配列由来のオリゴヌクレオチドプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)でDNAを増幅する。DNAは例えば、病変組織または正常組織、生検サンプル、体液その他に由来し得る。DNA内のSNPは、一本鎖形状のPCR生成物の2次及び3次構造に差異を生じさせる。差異は非変性ゲル中でのゲル電気泳動法を用いて検出可能である。fSCCPでは、オリゴヌクレオチドプライマーを蛍光性に標識する。それによってDNAシークエンシング機などの高処理機器でアンプリマー(amplimer)の検出が可能になる。更に、インシリコSNP(in silico SNP, isSNP)と呼ばれる配列データベース分析法は、一般的なコンセンサス配列にアセンブリされるような個々のオーバーラップするDNA断片の配列を比較することにより、多型性を同定し得る。これらのコンピュータベースの方法は、DNAの実験室での調整及び統計モデル及びDNA配列クロマトグラムの自動分析を用いたシークエンシングのエラーに起因する配列の変異をフィルタリングして除去する。別の態様では、例えば高処理MASSARRAYシステム(Sequenom, Inc., San Diego CA)を用いた質量分析によりSNPを検出し、特徴付ける。
SNPはヒトの病気の遺伝的基礎を研究するために使える可能性がある。たとえば、少なくとも16個の一般的なSNPがインスリン非依存性の糖尿病と関連付けられている。SNPはまた、嚢胞性線維症、鎌形血球貧血、慢性肉芽腫性疾病等の単一遺伝子病の現れ方の違いを研究するために有用である。たとえば、マンノース結合レクチン(MBL2)の変異体は嚢胞性線維症の肺での有害な現れ方との相関が示されている。SNPはまた、薬理ゲノミックス(命のかかわる毒性など、患者の薬への反応に影響する遺伝的変異体の同定)にも役立つ。たとえば、Nアセチルトランスフェラーゼのある変異体は抗結核薬剤イソニアジドに対する高頻度の末梢神経障害と関連付けられているし、ALOX5のコアプロモーターのある変異体は5リポオキシゲナーゼ経路を標的とする抗喘息薬剤による治療への臨床的反応を弱くする。異なる集団におけるSNPの分布の解析は、遺伝子浮動、突然変異、組換えおよび選択の研究に有用であると共に、集団の起源と移動の調査にも役立つ(Taylor, J.G. 他 (2001) Trends Mol. Med. 7:507-512; Kwok, P.-Y. and Z. Gu (1999) Mol. Med. Today 5:538-543; Nowotny, P. 他 (2001) Curr. Opin. Neurobiol. 11:637-641.)。
REMAP の発現を定量するために用い得る方法には、ヌクレオチドの放射標識またはビオチン標識、調節核酸の相互増幅(coamplification)、及び、標準曲線から得た結果の補間もある(例えば、 Melby, P.C. 他 (1993) J. Immunol. Methods 159:235-244; Duplaa, C. 他 (1993) Anal. Biochem. 212:229-236を参照。)目的のオリゴマーが種々の希釈液中に存在し、分光光度法または比色反応によって定量が迅速になるような高処理フォーマットのアッセイを行うことによって、複数のサンプルの定量速度を加速することができる。
更に別の実施例では、本明細書で記載した任意のポリヌクレオチド配列由来のオリゴヌクレオチドまたはより長い断片を、マイクロアレイにおけるエレメントとして用いることができる。多数の遺伝子の関連発現レベルを同時にモニターする転写イメージング技術にマイクロアレイを用いることが可能である。これについては、以下に記載する。マイクロアレイはまた、遺伝変異体、突然変異及び多型性の同定に用いることができる。この情報を用いることで、遺伝子機能を決定し、疾患の遺伝的根拠を理解し、疾患を診断し、遺伝子発現の機能としての疾病の進行/後退をモニターし、疾病治療における薬剤の活性を開発及びモニターすることができる。特に、患者にとって最もふさわしく、有効的な治療法を選択するために、この情報を用いて患者の薬理ゲノムプロフィールを開発することができる。例えば、患者の薬理ゲノムプロファイルに基づき、患者に対して高度に効果的で副作用を殆ど示さない治療薬を選択することができる。
別の実施例では、REMAP、REMAPの断片、REMAPに特異的な抗体を、マイクロアレイ上のエレメントとして用いることができる。マイクロアレイを用いて、上記のようなタンパク質−タンパク質相互作用、薬剤−標的相互作用及び遺伝子発現プロフィールをモニターまたは測定することが可能である。
或る実施態様は、或る組織または細胞タイプの転写イメージを作製する、本発明のポリヌクレオチドの使用に関連する。転写イメージは、特定の組織または細胞タイプにより遺伝子発現の包括的パターンを表す。包括的遺伝子発現パターンは、所定の条件下で所定の時間に発現した遺伝子の数及び相対存在量を定量することにより分析される(Seilhamer 他、米国特許第5,840,484号の「Comparative Gene Transcript Analysis」を参照。これらを引用することを以って本明細書の一部とする)。従って、特定の組織または細胞タイプの転写または逆転写全体に本発明のポリヌクレオチドまたはその補体をハイブリダイズすることにより、転写イメージを生成し得る。或る実施例では、本発明のポリヌクレオチドまたはその補体がマイクロアレイ上のエレメントのサブセットを複数含むような高処理フォーマットでハイブリダイゼーションを発生させる。結果として得られる転写イメージは、遺伝子活性のプロファイルを提供し得る。
転写イメージは、組織、細胞株、生検またはその生体サンプルから単離した転写物を用いて作製し得る。転写イメージは従って、組織または生検サンプルの場合にはin vivo、または株化細胞の場合にはin vitroでの遺伝子発現を反映する。
本発明のポリヌクレオチドの発現のプロフィールを作製する転写イメージはまた、工業的または天然の環境化合物の毒性試験のみならず、in vitroモデル系及び薬剤の前臨床評価と併せて使用し得る。全ての化合物は、作用及び毒性のメカニズムを暗示する、しばしば分子フィンガープリントまたは毒性シグネチャ(toxicant signatures)と称されるような特徴的な遺伝子発現パターンを惹起する(Nuwaysir, E.F. 他 (1999) Mol. Carcinog. 24:15 3-159、Steiner, S. 及び N.L. Anderson (2000) Toxicol. Lett. 112-113:467-471、該文献は特に引用することを以って本明細書の一部となす)。試験化合物が、既知の毒性を有する化合物のシグネチャと同一のシグネチャを有する場合には、毒性特性を共有している可能性がある。フィンガープリントまたはシグネチャは、多数の遺伝子および遺伝子ファミリからの発現情報を含んでいる場合に、最も有用且つ正確である。理想的には、ゲノム全域にわたる発現の測定が、最高品質のシグネチャを提供する。たとえ、発現が任意の試験された化合物によって変化しない遺伝子があったとしても、それらの発現レベルを残りの発現データを標準化するために使用できるため、それらの遺伝子は重要である。標準化手順は、異なる化合物で処理した後の発現データの比較に有用である。毒性シグネチャの要素に遺伝子機能を割り当てることが毒性メカニズムの解釈に役立つが、毒性の予測につながるシグネチャの統計的に一致させるのに遺伝子機能の知識は必要とされない(例えば2000年2月29日にNational Institute of Environmental Health Sciencesより発行されたPress Release 00-02を参照されたい。これについてはhttp://www.niehs.nih.gov/oc/news/toxchip.htmで入手可能である)。従って、中毒学的スクリーニングの際に毒性シグネチャを用いて、全ての発現した遺伝子配列を含めることは重要且つ望ましいことである。
或る実施例では、核酸を有する生体サンプルを試験化合物で処理することにより、この試験化合物の毒性を算定する。処理した生物学的サンプル中で発現した核酸は、本発明のポリヌクレオチドに特異的な1つ若しくは複数のプローブでハイブリダイズし、それによって本発明のポリヌクレオチドに対応する転写レベルを定量し得る。処理した生物学的サンプル中の転写レベルを、未処理生物学的サンプル中のレベルと比較する。両サンプルの転写レベルの差は、処理されたサンプル中で試験化合物が引き起こす毒性反応を示す。
別の実施態様は、本発明のポリペプチド配列群を用いて或る組織または細胞タイプのプロテオームを分析することに関する。プロテオームの語は、特定の組織または細胞タイプでのタンパク質発現の包括的パターンを指す。プロテオームの各タンパク質成分は、個々に更に分析の対象とすることができる。プロテオーム発現パターン即ちプロフィールは、所与の条件下で所与の時間に発現したタンパク質の数及び相対存在量を定量することにより分析し得る。従って細胞のプロテオームのプロフィールは、特定の組織または細胞タイプのポリペプチドを分離及び分析することにより作成し得る。或る実施例では、1次元等電点電気泳動によりサンプルからタンパク質を分離し、2次元ドデシル硫酸ナトリウムスラブゲル電気泳動により分子量に応じて分離するような2次元ゲル電気泳動により分離が達成される(前出のSteiner および Anderson)。タンパク質は、通常クーマシーブルーまたは銀染色液または蛍光染色液などの物質を用いてゲルで染色することにより、分散した、独自の位置にある点としてゲル中で可視化される。各タンパク質スポットの光学密度は、通常サンプル中のタンパク質レベルに比例する。異なるサンプル、例えば試験化合物または治療薬で処理または未処理のいずれかの生物学的サンプルから得られるタンパク質スポットの光学密度を比較し、処理に関連するタンパク質スポット密度の変化を同定する。スポット内のタンパク質は、例えば化学的または酵素的切断とそれに続く質量分析を用いる標準的な方法を用いて部分的にシークエンシングする。スポット内のタンパク質の同一性は、その部分配列を、好適には少なくとも5個の連続するアミノ酸残基を、本発明のポリペプチド配列と比較することにより決定し得る。場合によっては、決定的なタンパク質同定のための更なる配列が得られる。
プロテオームのプロファイルは、REMAP に特異的な抗体を用いて作成してREMAP 発現レベルを定量する。或る実施例では、マイクロアレイ上でエレメントとして抗体を用い、マイクロアレイをサンプルに曝して各アレイ要素へのタンパク質結合レベルを検出することによりタンパク質発現レベルを定量する(Lueking, A. 他 (1999) Anal. Biochern. 270:103-111、Mendoze, L.G. 他 (1999) Biotechniques 27:778-788)。検出は当分野で既知の様々な方法で行うことができ、例えば、チオール反応性またはアミノ反応性蛍光化合物とサンプル中のタンパク質を反応させ、各アレイエレメントにおける蛍光結合の量を検出し得る。
プロテオームレベルでの毒性シグネチャも中毒学的スクリーニングに有用であり、転写レベルでの毒性シグネチャと並行に分析するべきである。或る組織の或るタンパク質に対しては、転写とタンパク質の存在量の相関が乏しいこともあるので(Anderson, N.L. 及び J. Seilhamer (1997) Electrophoresis 18:533-537)、転写イメージにはそれ程影響しないがプロテオームのプロフィールを変化させるような化合物の分析においてプロテオーム毒性シグネチャは有用たり得る。更に、体液中の転写物の分析はmRNAの急速な分解のために困難なので、プロテオームのプロフィール作成はこのような場合により信頼し得、情報価値があり得る。
別の実施例では、タンパク質を含有する生体サンプルを試験化合物で処理することにより試験化合物の毒性を算定する。処理された生物学的サンプル中で発現したタンパク質は、各タンパク質の量を定量し得るように分離する。各タンパク質の量を、未処理生物学的サンプル中の対応するタンパク質の量と比較する。両サンプルのタンパク質量の差は、処理サンプル中の試験化合物に対する反応を示す。個々のタンパク質は、個々のタンパク質のアミノ酸残基をシークエンシングし、これら部分配列を本発明のポリペプチドと比較することにより同定する。
別の実施例では、タンパク質を含有する生体サンプルを試験化合物で処理することにより試験化合物の毒性を算定する。生物学的サンプルから得たタンパク質は、本発明のポリペプチドに特異的な抗体を用いてインキュベートする。抗体により認識されたタンパク質の量を定量する。処理された生物学的サンプル中のタンパク質の量を、未処理生物学的サンプル中のタンパク質の量と比較する。両サンプルのタンパク質量の差は、処理サンプル中の試験化合物に対する反応を示す。
マイクロアレイは、本技術分野で既知の方法を用いて調製し、使用し、そして分析しうる(Brennan, T.M. 他 (1995) の米国特許第5,474,796号、Schena, M. 他 (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:10614-10619、Baldeschweiler 他の (1995) PCT出願第WO95/251116号、Shalon, D.他の (1995) PCT出願第WO95/35505号、Heller, R.A. 他 (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:2150-2155、Heller, M.J. 他の (1997) 米国特許第5,605,662号等を参照)。様々なタイプのマイクロアレイが公知であり、詳細については、DNA Microarrays: A Practical Approach, M. Schena, 編集. (1999) Oxford University Press, Londonに記載されている。 該文献は、特に引用することを以って本明細書の一部となす。
本発明の別の実施例では、天然のゲノム配列をマッピングする際に有効なハイブリダイゼーションプローブを産出するため、REMAP をコードする核酸配列を用いることが可能である。コード配列または非コード配列のいずれかを用いることができ、或る例では、コード配列より非コード配列の方が好ましい。例えば、多重遺伝子ファミリーのメンバー内でのコード配列の保存により、染色体マッピング中に望ましくないクロスハイブリダイゼーションが生じる可能性がある。核酸配列は、特定の染色体、染色体の特定領域または人工形成の染色体、例えば、ヒト人工染色体(HAC)、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、細菌P1産物、或いは単一染色体cDNAライブラリに対してマッピングされる。(例えばHarrington, J.J. 他(1997)Nat. Genet. 15:345-355; Price, C.M.(1993)Blood Rev. 7:127-134; Trask, B.J.(1991)Trends Genet. 7:149-154を参照)。一度マッピングすると、本発明の核酸配列を用いて例えば病状の遺伝を特定の染色体領域の遺伝または制限酵素断片長多型(RFLP)と相関させるような遺伝子連鎖地図を発生させ得る。(例えば、 Lander, E.S. and D. Botstein (1986) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:7353-7357を参照)。
蛍光in situハイブリッド形成法(FISH)は、他の物理的及び遺伝地図データと相関し得る。(前出のHeinz-Ulrich, ら (1995) in Meyers, 965-968ページ.等を参照)遺伝地図データの例は、種々の科学雑誌あるいはOnline Mendelian Inheritance in Man(OMIM)のウェブサイトに見ることができる。物理的な染色体地図上のREMAP をコードする遺伝子の位置と、特定の疾患との相関性、あるいは特定の疾患に対する素因との相関性は、この疾患と関連するDNAの領域の決定に役立ち得るため、ポジショナルクローニングの作業を促進し得る。
確定した染色体マーカーを用いた連鎖分析等の物理的マッピング技術及び染色体標本原位置ハイブリッド形成法を用いて、遺伝地図を拡張することができる。例えばマウスなど別の哺乳動物の染色体上に遺伝子を配置することにより、正確な染色体上の遺伝子座が未知でも、関連するマーカー類をしばしば明らかにし得る。この情報は、ポジショナルクローニングその他の遺伝子発見技術を用いて遺伝的疾患を探す研究者にとって価値がある。いったん疾患または症候群に関与する遺伝子(群)が、血管拡張性失調症の11q22-23領域など、特定のゲノム領域への遺伝的連鎖によって、大まかに位置決めがなされると、該領域にマップされる任意の配列は、更なる調査のための関連遺伝子あるいは調節遺伝子を提示している可能性がある(Gatti, R.A.他 (1988) Nature 336:577-580等を参照)転座、反転などに起因する、健常者、保有者、罹病者の三者間における染色体位置の相違を検出する場合にも、本発明のヌクレオチド配列を用い得る。
本発明の別の実施例では、REMAP、その触媒作用断片或いは免疫原断片またはそのオリゴペプチドを、種々の任意の薬剤スクリーニング技術における化合物のライブラリのスクリーニングに用いることができる。薬剤スクリーニングに用いる断片は、溶液中に遊離しているか、固体支持物に固定されるか、細胞表面上に保持されるか、細胞内に位置することになろう。REMAP と検査する薬剤との結合による複合体の形成を測定してもよい。
別の薬物スクリーニング方法は、目的のタンパク質に対して好適な結合親和性を有する化合物を高い処理能力でスクリーニングするために用いられる(Geysen, 他 (1984) PCT application WO84/03564等を参照。)この方法においては、多数の異なる小さな試験用化合物を固体基板上で合成する。試験用化合物は、REMAP、或いはその断片と反応してから洗浄される。次ぎに、結合されたREMAP が当分野で周知の方法で検出される。 精製されたREMAP はまた、前記した薬剤をスクリーニングする技術に用いられるプレート上で直接被覆することもできる。別法では、非中和抗体を用いてペプチドを捕捉し、ペプチドを固体支持物に固定することもできる。
別の実施例では、REMAP と特異結合可能な中和抗体がREMAP との結合について試験用化合物競合する、競合的薬剤スクリーニングアッセイを用いることができる。この方法では、抗体が、REMAPと1つ以上の抗原決定因子を共有するどのペプチドの存在も検出する。
別の実施例では、発展途上の分子生物学技術にREMAP をコードするヌクレオチド配列を用いて、限定はされないが、現在知られているトリプレット暗号及び特異的な塩基対相互作用などのヌクレオチド配列の特性に依存する新しい技術を提供することができる。
更に詳細説明をしなくとも、当業者であれば以上の説明を以って本発明を最大限に利用できるであろう。従って、これ以下に記載する実施例は単なる例示目的にすぎず、いかようにも本発明を限定するものではない。
本明細書において開示した全ての特許、特許出願及び刊行物、特に米国特許第60/292,197号、第60/297,012号、第60/300,495号、第60/300,582号、第60/301,992号及び第60/340,542は、言及することをもって本明細書の一部となす。
1 cDNAライブラリの作製
Incyte cDNA群の由来は、LIFESEQ GOLDデータベース (Incyte Genomics, Palo Alto CA)に記載されたcDNAライブラリ群である。幾つかの組織はホモジナイズしてグアニジニウムイソチオシアネート溶液に溶解し、他の組織はホモジナイズしてフェノールにまたは変性剤群の好適な混合液に溶解した。混合液の1例であるTRIZOL(Invitrogen)は、フェノールとグアニジンイソチオシアネートとの単相溶液である。結果として得られた溶解物は、塩化セシウムで遠心分離するかクロロホルムで抽出した。イソプロパノールか、酢酸ナトリウムとエタノールか、いずれか一方、或いは別の方法を用いて、溶解物からRNAを沈殿させた。
RNAの純度を高めるため、RNAのフェノールによる抽出及び沈殿を必要な回数繰り返した。場合によっては、DNA分解酵素でRNAを処理した。殆どのライブラリでは、オリゴd(T)連結常磁性粒子(Promega)、OLIGOTEXラテックス粒子(QIAGEN, Chatsworth CA)またはOLIGOTEX mRNA精製キット(QIAGEN)を用いて、ポリ(A+) RNAを単離した。別法では、別のRNA単離キット、例えばPOLY(A)PURE mRNA精製キット(Ambion, Austin TX)を用いて組織溶解物からRNAを直接単離した。
場合によってはStratagene社へのRNA提供を行い、対応するcDNAライブラリをStratagene社が作製することもあった。そうでない場合は、UNIZAPベクターシステム(Stratagene)またはSUPERSCRIPTプラスミドシステム(Invitrogen)を用いて本技術分野で公知の推奨方法または類似の方法でcDNAを合成し、cDNAライブラリを作製した(前出のAusubel, 1997, 5.1-6.6ユニット等を参照)。逆転写は、オリゴd(T)またはランダムプライマーを用いて開始した。合成オリゴヌクレオチドアダプターを二本鎖cDNAに連結反応させ、好適な制限酵素でcDNAを消化した。殆どのライブラリに対して、cDNAのサイズ(300〜1000bp)選択は、SEPHACRYL S1000、SEPHAROSE CL2BまたはSEPHAROSE CL4Bカラムクロマトグラフィー(Amersham Biosciences)、或いは調製用アガロースゲル電気泳動法を用いて行った。 合成オリゴヌクレオチドアダプターを二本鎖cDNAに連結反応させ、好適な制限酵素または酵素でcDNAを消化した。 好適なプラスミドは、例えばPBLUESCRIPTプラスミド(Stratagene)、PSPORT1 プラスミド(Invitrogen)、PCDNA2.1 プラスミド (Invitrogen, Carlsbad CA)、PBK-CMV プラスミド (Stratagene)、PCR2-TOPOTAプラスミド (Invitrogen)、PCMV-ICISプラスミド (Stratagene)、pIGEN (Incyte Genomics, Palo Alto CA)、pRARE (Incyte Genomics)、plNCY(Incyte Genomics)等およびその誘導体である。組換えプラスミドは、Stratagene社のXL1-Blue、XL1-BIueMRFまたはSOLR、あるいはInvitrogen社のDH5α、DH10BまたはElectroMAX DH10Bなど適格な大腸菌細胞に形質転換した。
2 cDNAクローンの単離
UNIZAPベクターシステム(Stratagene)を用いたin vivo切除によって、或いは細胞溶解によって、実施例1のようにして得たプラスミドを宿主細胞から回収した。プラスミドの精製には、下記の少なくとも1つを用いた。すなわちMagicまたはWIZARD Minipreps DNA精製システム(Promega)、AGTC Miniprep精製キット(Edge Biosystems, Gaithersburg MD)、QIAGEN社のQIAWELL 8 Plasmid、QIAWELL 8 Plus PlasmidおよびQIAWELL 8 Ultra Plasmid精製システム、R.E.A.L. Prep 96プラスミド精製キットのいずれかである。プラスミドは、沈殿させた後、0.1mlの蒸留水に再懸濁して、凍結乾燥して或いは凍結乾燥しないで4℃で保管した。
別法では、高処理フォーマットにおいて直接結合PCR法を用いて宿主細胞溶解物からプラスミドDNAを増幅した(Rao, V.B. (1994) Anal. Biochem. 216:1-14)。宿主細胞の溶解および熱サイクリング過程は、単一反応混合液中で行った。サンプルを処理し、それを384ウェルプレート内で保管し、増幅したプラスミドDNAの濃度をPICOGREEN色素(Molecular Probes, Eugene OR)及びFLUOROSKANII蛍光スキャナ(Labsystems Oy, Helsinki, Finland)を用いて蛍光分析的に定量した。
3 シークエンシング及び分析
実施例2に記載したようにプラスミドから回収したIncyte cDNAを、以下に示すようにシークエンシングした。cDNAのシークエンス反応は、標準的方法或いは高処理装置、例えばABI CATALYST 800 サーマルサイクラー(Applied Biosystems)またはPTC-200 サーマルサイクラー(MJ Research)をHYDRAマイクロディスペンサー(Robbins Scientific)またはMICROLAB 2200(Hamilton)液体転移システムと併用して処理した。cDNAのシークエンス反応は、Amersham Biosciences 社が提供する試薬、またはABIシークエンシングキット、例えばABI PRISM BIGDYE Terminator cycle sequencing ready reaction kit(Applied Biosystems)の試薬を用いて準備した。cDNAのシークエンス反応の電気泳動的分離及び標識したポリヌクレオチドの検出には、MEGABACE 1000 DNAシークエンシングシステム(Applied Biosystems)か、標準ABIプロトコル及び塩基呼び出し(base calling)ソフトウェアを用いるABI PRISM 373または377シークエンシングシステム(Applied Biosystems)か、或いはその他の本技術分野で既知の配列解析システムを用いた。cDNA配列内のリーディングフレームは、標準的方法(前出のAusubel, 1997, 7.7ユニットに概説)を用いて決定した。cDNA配列の幾つかを選択して、実施例8に記載した方法で配列を伸長させた。
Incyte cDNA配列に由来するポリヌクレオチド配列は、ベクター、リンカー及びポリ(A)配列を除去し、あいまいな塩基対をマスクすることによって有効性を確認した。 その際、BLAST、動的プログラミング及び隣接ジヌクレオチド頻度分析に基づくアルゴリズム及びプログラムを用いた。次に、IncyteのcDNA配列、またはその翻訳を公共のデータベース(例えばGenBankの霊長類及びげっ歯類、哺乳動物、脊椎動物、真核生物のデータベースと、BLOCKS、PRINTS、DOMO、PRODOM)と、ヒト、ラット、マウス、線虫、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)、および鵞口瘡カンジダ(Candida albicans )からの配列を含むPROTEOMEデータベース(Incyte Genomics, Palo Alto CA)、及びPFAM等隠れマルコフモデル(HMM)に基づいたタンパク質ファミリーデータベース並びに、SMART(Schultz 他(1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:5857-5864、Letunic, I. 他 (2002) Nucleic Acids Res. 30:242-244)のようなHMMに基づいたタンパク質ドメインデータベースから選択したデータベースに対して問い合わせた。(HMMは、遺伝子ファミリのコンセンサス1次構造を分析する確率的アプローチである。例えばEddy, S.R. (1996) Cuff. Opin. Struct. Biol. 6:361-365等を参照)。問合せは、BLAST、FASTA、BLIMPS及びHMMERに基づくプログラムを用いて行った。Incyte cDNA配列をアセンブリし、完全長のポリヌクレオチド配列を産出した。あるいは、GenBank cDNA群、GenBank EST群、スティッチされた配列群、ストレッチされた配列群、またはGenscan予測コード配列群(実施例4および5を参照)を用い、Incyte cDNAのアセンブリ体を完全長まで伸長させた。PhredとPhrapとConsedとに基づくプログラムを用いてアセンブリし、GenMarkとBLASTとFASTAとに基づくプログラムを用いて、cDNAのアセンブリ体を、オープンリーディングフレームについてスクリーニングした。完全長ポリヌクレオチド配列を翻訳し、対応する完全長ポリペプチド配列を引き出した。あるいは、本発明のポリペプチドは、完全長翻訳ポリペプチドの任意のメチオニン残基で開始し得る。完全長ポリペプチド配列群の続いての分析としての問い合わせを、GenBankタンパク質データベース群(genpept)、SwissProt、PROTEOMEデータベース群、BLOCKS、PRINTS、DOMO、PRODOMおよびProsite等のデータベースや、PFAM、INCY、およびTIGRFAM等の隠れマルコフモデル(HMM)ベースのタンパク質ファミリーデータベース群、並びにSMART等のHMMベースのタンパク質ドメインデータベース群に対し行った。完全長ポリヌクレオチド配列はまた、MACDNASIS PROソフトウェア(日立ソフトウェアエンジニアリング, South San Francisco CA)およびLASERGENEソフトウェア(DNASTAR)を用いて分析する。ポリヌクレオチド及びポリペプチド配列アラインメントは、アラインメントした配列と配列の一致率も計算するMEGALIGNマルチシークエンスアラインメントプログラム(DNASTAR)に組み込まれているようなCLUSTALアルゴリズムによって特定されるデフォルトパラメータを用いて作製する。
Incyte cDNA及び完全長配列の分析及びアセンブリに利用したツール、プログラム及びアルゴリズムの概略と、適用可能な説明、参照文献、閾値パラメータを表7に示す。用いたツール、プログラム及びアルゴリズムを表7の列1に、それらの簡単な説明を列2に示す。列3は好適な引用文献であり、全ての文献はそっくりそのまま引用を以って本明細書の一部となす。適用可能な場合には、列4は2つの配列が一致する強さを評価するために用いたスコア、確率値その他のパラメータを示す(スコアが高いほど、または確率値が低いほど、2配列間の相同性が高くなる)。
完全長ポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列のアセンブリ及び分析に用いる上記のプログラムは、SEQ ID NO:27-52のポリヌクレオチド配列断片の同定にも利用できる。 ハイブリダイゼーション及び増幅技術に有用である約20〜約4000ヌクレオチドの断片を表4の列2に示した。
4 ゲノムDNAからのコード配列の同定及び編集
推定上の受容体および膜結合タンパク質は、公共のゲノム配列データベース(例えば、gbpriやgbhtg)においてGenscan遺伝子同定プログラムを実行して初めに同定された。Genscanは、様々な生物からのゲノムDNA配列を分析する汎用遺伝子同定プログラムである(Burge, C. 及び S. Karlin (1997) J. Mol. Biol. 268:78-94、Burge, C. 及び S. Karlin (1998) Curr. Opin. Struct. Biol. 8:346-354を参照)。プログラムは予測エキソンを連結し、メチオニンから終止コドンに及ぶアセンブリされたcDNA配列を形成する。Genscanの出力は、ポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列のFASTAデータベースである。Genscanが一度に分析する配列の最大範囲は、30kbに設定した。これらのGenscan予測cDNA配列の内、どの配列が受容体および膜結合タンパク質をコードするかを決定するために、コードされたポリペプチドをPFAMモデルにおいて受容体および膜結合タンパク質について問合せて分析した。潜在的な受容体および膜結合タンパク質は、また受容体および膜結合タンパク質として注釈が付けられたIncyte cDNA配列に対する相同性を基に同定した。こうして選択されたGenscan予測配列は、次にBLAST分析により公共データベースgenpept及びgbpriと比較した。必要であれば、genpeptからのトップBLASTヒットと比較することによりGenscan予測配列を編集し、余分なまたは省略されたエキソンなど、Genscanが予測した配列におけるエラーを補正した。BLAST分析はまた、Genscan予測配列の、いかなるIncyte cDNAまたは公共cDNAカバレッジ(coverage)の発見にも用いられ、したがって転写の証拠を提供した。Incyte cDNAカバレッジが利用できた場合には、この情報を用いてGenscan予測配列を補正または確認した。完全長ポリヌクレオチド配列は、実施例3に記載したアセンブリプロセスを用いて、Incyte cDNA配列および/または公共cDNA配列でGenscan予測コード配列をアセンブリして得た。或いは、完全長ポリヌクレオチド配列は編集または未編集のGenscan予測コード配列に完全に由来する。
5 cDNA配列データを使ったゲノム配列データのアセンブリ
ステッチ配列(Stitched Sequence)
部分cDNA配列は、実施例4に記載のGenscan遺伝子同定プログラムにより予測されたエキソンを用いて伸長させた。実施例3に記載されたようにアセンブリされた部分cDNAは、ゲノムDNAにマッピングし、関連するcDNA及び1つ若しくは複数のゲノム配列から予測されたGenscanエキソンを含むクラスタに分解した。cDNA及びゲノム情報を統合するべくグラフ理論及び動的プログラミングに基づくアルゴリズムを用いて各クラスタを分析し、引き続いて確認、編集または伸長して完全長配列を産出するような潜在的スプライシング変異体を生み出した。区間全体の長さがクラスタ中の2以上の配列に存在するような配列を同定し、そのように同定された間隔は推移により等しいと考えられた。例えば、1つのcDNA及び2つのゲノム配列に間隔が存在する場合、3つの間隔は全て等しいと考えられる。このプロセスは、無関係であるが連続したゲノム配列をcDNA配列により結び合わせて架橋し得る。このようにして同定された区間を、親配列(parent sequence)に沿って現われるようにステッチアルゴリズムで縫い合わせ、可能な最も長い配列および変異配列を作製する。1種類の親配列に沿って発生した間隔と間隔との連鎖(cDNA−cDNAまたはゲノム配列−ゲノム配列)は、親の種類を変える連鎖(cDNA−ゲノム配列)に優先した。結果として得たスティッチ配列群を翻訳し、BLAST分析で公共データベースgenpeptおよびgbpriと比較した。Genscanにより予測された不正確なエキソンは、genpeptからのトップのBLASTヒットと比較することにより修正した。必要な場合には、追加cDNA配列を用いるかゲノムDNAの検査により配列を更に伸長させた。
ストレッチ配列(Stretched Sequence)
部分DNA配列は、BLAST分析に基づくアルゴリズムにより完全長まで伸長された。先ず、BLASTプログラムを用いて、GenBankの霊長類、げっ歯類、哺乳動物、脊椎動物及び真核生物のデータベースなどの公共データベースに対し、実施例3に記載されたようにアセンブリされた部分cDNAを問い合わせた。次に、最も近いGenBankタンパク質相同体をBLAST分析によりIncyte cDNA配列または実施例4に記載のGenScanエキソン予測配列のいずれかと比較した。結果として得られる高スコアリングセグメント対(HSP)を用いてキメラタンパク質を産出し、翻訳した配列をGenBankタンパク質相同体上にマッピングした。元のGenBankタンパク質相同体に対し、キメラタンパク質内では挿入または欠失が起こり得る。GenBankタンパク質相同体、キメラタンパク質またはその両方をプローブとして用い、公共のヒトゲノムデータベースから相同ゲノム配列を検索した。このようにして、部分的なDNA配列を相同ゲノム配列の付加によりストレッチすなわち伸長した。結果として得られるストレッチ配列を検査し、完全遺伝子を含んでいるか否かを判定した。
6 REMAP をコードするポリヌクレオチドの染色体マッピング
SEQ ID NO:27-52をアセンブリするために用いた配列を、BLAST及びSmith-Watermanアルゴリズムを用いて、Incyte LIFESEQデータベース及び公共のドメインデータベースの配列と比較した。SEQ ID NO:27-52と一致するこれらのデータベースの配列を、Phrapなどのアセンブリアルゴリズム(表7)を使用して、連続しオーバーラップする配列のクラスター群にアセンブリした。スタンフォード・ヒトゲノムセンター(SHGC)、ホワイトヘッド・ゲノム研究所(WIGR)、Genethon等の公的な情報源から入手可能な放射線ハイブリッド及び遺伝地図データを用いて、クラスタ化された配列が前もってマッピングされたかを決定した。マッピングされた配列がクラスタに含まれている場合は、個々の配列番号を含めてそのクラスタの全配列が地図上の位置に割り当てられた。
地図上の位置は、ヒト染色体の範囲または間隔として表される。センチモルガン間隔の地図上の位置は、染色体の短腕(p-arm)の末端に関連して測定する。(センチモルガン(cM)は、染色体マーカー間の組換え頻度に基づく計測単位である。平均して、1cMは、ヒト中のDNAの1メガベース(Mb)にほぼ等しい。尤も、この値は、組換えのホットスポット及びコールドスポットに起因して広範囲に変化する。)cM距離は、各クラスタ内に配列が含まれる放射線ハイブリッドマーカー類に対して境界を提供するGenethonによってマッピングされた遺伝マーカー群に基づく。NCBI「GeneMap'99」(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/genemap/)などの公的に入手可能なヒト遺伝子マップおよびその他の情報源を用いて、既に同定されている疾患遺伝子群が、上記した区間内若しくは近傍に位置するかを決定できる。
7 ポリヌクレオチド発現の分析
ノーザン分析は、転写された遺伝情報の存在を検出するために用いられる実験技術であり、特定の細胞種または組織からのRNAが結合される膜への標識されたヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションに関与している。(前出のSambrook, 7章、同Ausubel. F.M. 他, 4章及び16章等を参照)。
BLASTを適用した類似のコンピュータ技術を用いて、GenBankやLifeSeq(Incyte Genomics)等のcDNAデータベースにおいて同一または関連分子を検索した。ノーザン分析は、多数の膜系ハイブリダイゼーションよりも非常に速い。更に、特定の同一を厳密な或いは相同的なものとして分類するか否かを決定するため、コンピュータ検索の感度を変更することができる。検索の基準は積スコアであり、次式で定義される。
Figure 2005514903
積スコアは、2つの配列間の類似度と、配列が一致する長さとの両方を考慮している。積スコアは、0〜100の規準化された値であり、次のようにして求める。BLASTスコアにヌクレオチドの配列一致率を乗じ、その積を2つの配列の短い方の長さの5倍で除する。BLASTスコアを計算するには、或る高スコアリングセグメント対(HSP)内の一致する各塩基に+5のスコアを割り当て、各不一致塩基に−4を割り当てる。2つの配列は、2以上のHSPを共有し得る(ギャップにより隔離される)。2以上のHSPがある場合には、最高BLASTスコアの塩基対を用いて積スコアを計算する。積スコアは、断片的オーバーラップとBLASTアラインメントの質とのバランスを表す。例えば積スコア100は、比較した2つの配列の短い方の長さ全体にわたって100%一致する場合のみ得られる。積スコア70は、一端が100%一致し、70%オーバーラップしているか、他端が88%一致し、100%オーバーラップしているかのいずれかの場合に得られる。積スコア50は、一端が100%一致し、50%オーバーラップしているか、79%一致し、100%オーバーラップしているかのいずれかの場合に得られる。
或いは、REMAP をコードするポリヌクレオチド配列を、ポリヌクレオチド配列が派生した組織源に関連して分析した。例えば幾つかの完全長配列は、少なくとも一部は、オーバーラップするIncyte cDNA配列群を用いてアセンブリされる(実施例3を参照)。各cDNA配列は、ヒト組織から作製されたcDNAライブラリに由来する。各cDNA配列は、ヒト組織から作製されたcDNAライブラリに由来する。各ヒト組織は、以下の生物/組織カテゴリー即ち心血管系、結合組織、消化器系、胎芽構造、内分泌系、外分泌腺、女性生殖器、男性生殖器、生殖細胞、血液及び免疫系、肝、筋骨格系、神経系、膵臓、呼吸器系、感覚器、皮膚、顎口腔系、非分類性/混合性または尿路の1つに分類される。各カテゴリーのライブラリ数を数えて、全カテゴリーの総ライブラリ数で除する。同様に、各ヒト組織は、以下の疾患/病状カテゴリー即ち癌、細胞株、発達、炎症、神経性、外傷、心血管、プール、その他の1つに分類される。 各カテゴリーのライブラリ数を数えて、全カテゴリーの総ライブラリ数で除する。得られるパーセンテージは、REMAP をコードするcDNAの疾患特異的な発現を反映する。 cDNA配列およびcDNAライブラリ/組織の情報は、LIFESEQ GOLD データベース(Incyte Genomics, Palo Alto CA)から得ることができる。
8 REMAPをコードするポリヌクレオチドの伸長
完全長のポリヌクレオチド配列はまた、完全長分子の適切な断片から設計したオリゴヌクレオチドプライマー群を用いて該断片を伸長させて産生した。或るプライマーは既知の断片の5'伸長を開始するべく合成し、別のプライマーは既知の断片の3'伸長を開始するべく合成した。開始プライマーは、長さが約22〜30ヌクレオチド、GC含有率が約50%以上となり、約68〜72℃の温度で標的配列にアニーリングするように、OLIGO 4.06ソフトウェア(National Biosciences)或いは別の適切なプログラムを用いて、cDNAから設計した。 ヘアピン構造及びプライマー−プライマー二量体を生ずるようなヌクレオチドの伸長は全て回避した。
配列を伸長するために、選択されたヒトcDNAライブラリを用いた。2段階以上の伸長が必要または望ましい場合には、付加的プライマーあるいはプライマーのネステッドセットを設計した。
高忠実度の増幅が、当業者によく知られている方法を利用したPCR法によって得られた。 PCRは、PTC-200 サーマルサイクラー(MJ Research, Inc.)を用いて96穴プレート内で行った。反応混合液は、鋳型DNA及び200 nmolの各プライマー、Mg2+と(NH4)2SO4とβ−メルカプトエタノールを含むバッファー、Taq DNAポリメラーゼ(Amersham Biosciences)、ELONGASE酵素(Invitrogen)、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)を含む。 プライマーの組、PCI AとPCI Bに対して以下のパラメータで増幅を行った。ステップ1: 94℃, 3分、 ステップ 2: 94℃, 15 秒、ステップ 3: 60℃, 1 分、ステップ 4: 68℃, 2 分、 ステップ 5: ステップ2、3および 4を20回反復する。 ステップ6: 68℃、 5 分、ステップ7: 4℃で保存する。別法では、プライマーの組、T7とSK+に対して以下のパラメータで増幅を行った。ステップ1: 94℃, 3分、 ステップ 2: 94℃, 15 秒、ステップ 3: 57℃, 1 分、ステップ 4: 68℃, 2 分、 ステップ 5: ステップ2、3および 4を20回反復する。 ステップ6: 68℃、 5 分、ステップ7: 4℃で保存する。
各ウェルのDNA濃度は、1X TE及び0.5μlの希釈していないPCR産物に溶解した100μlのPICOGREEN定量試薬(0.25%(v/v) PICOGREEN; Molecular Probes, Eugene OR)を不透明な蛍光光度計プレート(Corning Costar, Acton MA)の各ウェルに分配してDNAが試薬と結合できるようにして測定する。サンプルの蛍光を計測してDNAの濃度を定量すべく、プレートをFluoroskan II(Labsystems Oy, Helsinki, Finland)でスキャンした。反応混合物のアリコット5〜10μlを1%アガロースゲル上で電気泳動法によって解析し、どの反応が配列の伸長に成功したかを判定した。
伸長させたヌクレオチドは、脱塩及び濃縮して384ウェルプレートに移し、CviJIコレラウイルスエンドヌクレアーゼ(Molecular Biology Research, Madison WI)を用いて消化し、pUC 18ベクター(Amersham Biosciences)への再連結反応前に音波処理またはせん断した。ショットガン・シークエンシングのために、消化したヌクレオチドを低濃度(0.6〜0.8%)のアガロースゲル上で分離し、断片を切除し、寒天をAgar ACE(Promega)で消化した。伸長させたクローンをT4リガーゼ(New England Biolabs, Beverly MA)を用いてpUC 18ベクター(Amersham Biosciences)に再連結し、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)で処理して制限部位のオーバーハングを満たし、大腸菌細胞に形質移入した。形質移入した細胞を選択して抗生物質を含む培地に移し、それぞれのコロニーを切りとってLB/2Xカルベニシリン培養液の384ウェルプレートに37℃で一晩培養した。
細胞を溶解して、Taq DNAポリメラーゼ(Amersham Biosciences)及びPfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)を用いて以下の手順でDNAをPCR増幅した。ステップ1: 94℃, 3分、 ステップ 2: 94℃、 15 秒、ステップ 3: 60℃、 1 分、ステップ 4: 72℃、 2 分、 ステップ 5: ステップ2、3および 4を29回反復する。 ステップ6: 72℃、5 分、ステップ7: 4℃で保存する。上記のようにPICOGREEN試薬(Molecular Probes)でDNAを定量した。DNAの回収率が低いサンプルは、上記と同一の条件を用いて再増幅した。サンプルは20%ジメチルスルホキシド(1:2, v/v)で希釈し、DYENAMIC エネルギートランスファー シークエンシングプライマー、及びDYENAMIC DIRECT kit(Amersham Biosciences)またはABI PRISM BIGDYE ターミネーターサイクル シークエンシング反応キット(Terminator cycle sequencing ready reaction kit)(Applied Biosystems)を用いてシークエンシングした。
同様に、上記手順を用いて完全長ポリヌクレオチド配列を検証し、或いはそのような伸長のために設計されたオリゴヌクレオチド及び適切なゲノムライブラリを用いて5'調節配列を得る。
9 REMAP がコードするポリヌクレオチドのSNP(一塩基多型)の同定
一塩基多型(SNP)として知られる一般的なDNA配列変異体がLIFESEQ データベース(Incyte Genomics)を用いてSEQ ID NO:27-52 において同定された。実施例3に記述したように、同じ遺伝子からの配列を一緒にまとめてクラスター化し、アセンブリした。一連のフィルタから成るアルゴリズムが、SNPを他の配列変異体から区別するために用いられた。予備フィルターは最小Phredクオリティスコア15を要求することによって大多数のベースコールエラーを除去し、配列アラインメントエラーとスプライス変異体、キメラおよびベクター配列の不適正なトリミングによるエラーを除去した。高度染色体解析の自動化手順により、オリジナルのクロマトグラムファイルの中の推定上のSNPの近傍を解析した。クローンエラーフィルターは、統計的に生成されたアルゴリズムを使って、実験室の処理中に入ってくる(逆転写酵素、ポリメラーゼまたは体細胞性突然変異などに起因する)エラーを同定した。クラスタリングエラーフィルターは統計的に生成されたアルゴリズムを使って、近い相同体や偽遺伝子のクラスタリングによるエラーおよび非ヒト配列によるコンタミネーションに起因するエラーを同定した。最後のフィルターセットは免疫グロブリンまたはT細胞受容体で見つかる複製とSNPを除去した。
4つの異なるヒトの集団における対立遺伝子頻度を解析するために、ある種のSNPを選択して、高スループットMASSARRAYシステム(Sequenom, Inc.) を使った質量分析で特性を測定した。白人集団は92人(男性46人、女性46人)で、83人がユタ州出身、4人がフランス人、3人がベネズエラ、そして2人がアーミッシュだった。アフリカ人は194人(男性97人、女性97人)からなり、その全てがアフリカ系アメリカ人であった。ラテンアメリカ系集団は324人(男性162人、女性162人)からなり、その全てがメキシコのラテンアメリカ系であった。アジア系集団は126人(男性64人、女性62人)からなり、報告された親の内訳は中国人が43%、日本人が31%、韓国人が13%、ベトナム人が5%、その他のアジア系が8%であった。対立遺伝子頻度は最初に白人集団で解析された。この集団内で対立遺伝子変異を示さなかったSNPはその他3つの集団ではテストしない場合もあった。
10 個々のハイブリダイゼーションプローブの標識化及び使用
SEQ ID NO:27-52から導き出されたハイブリダイゼーションプローブを用いて、cDNA、mRNA、またはゲノムDNAをスクリーニングする。約20塩基対からなるオリゴヌクレオチドの標識について特に記載するが、より大きなヌクレオチド断片に対しても本質的に同一の手順が用いられる。オリゴヌクレオチドは、OLIGO 4.06ソフトウェア(National Biosciences)等の最新ソフトウェアを用いて設計し、各オリゴマー50pmolと、[γ-32P]アデノシン3リン酸 (Amersham Biosciences)250μCiと、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(DuPont NEN, Boston MA)を混合することにより標識する。標識したオリゴヌクレオチドは、SEPHADEX G-25超細繊分子サイズ排除デキストラン ビードカラム(Amersham Biosciences)を用いて実質的に精製する。下記のいずれか1つのエンドヌクレアーゼで消化されたヒトゲノムDNAの、典型的な膜ベースのハイブリダイゼーション解析において、毎分107カウントの標識されたプローブを含むアリコットを用いる。すなわちAse I、Bgl II、Eco RI、Pst I、Xba I、またはPvu II(DuPont NEN)である。
各消化物から得たDNAは、0.7%アガロースゲル上で分画してナイロン膜(Nytran Plus, Schleicher & Schuell, Durham NH)に移す。ハイブリダイゼーションは、40℃で16時間行う。 非特異的シグナルを除去するため、例えば0.1×クエン酸ナトリウム食塩水及び0.5%ドデシル硫酸ナトリウムに一致する条件下で、ブロットを室温で順次洗浄する。オートラジオグラフィーまたはそれに代わるイメージング手段を用いてハイブリダイゼーションパターンを視覚化し、比較する。
11 マイクロアレイ
マイクロアレイの表面上でアレイエレメントの結合または合成は、フォトリソグラフィ、ピエゾ式印刷(インクジェット印刷、前出のBaldeschweiler等を参照)、機械的マイクロスポッティング技術及びこれらから派生したものを用いて達成することが可能である。上記各技術において基板は、均一且つ非多孔性の固体とするべきである(Schena (1999) 前出)。推奨する基板には、シリコン、シリカ、スライドガラス、ガラスチップ及びシリコンウエハがある。或いは、ドットブロット法またはスロットブロット法に類似のアレイを利用して、熱的、紫外線的、化学的または機械的結合手順を用いて基板の表面にエレメントを配置及び結合させてもよい。通常のアレイは、利用可能な、当業者に公知の方法と機械とを用いて作製でき、任意の適正数のエレメントを有し得る(例えばSchena, M. 他. (1995) Science 270:467-470、Shalon, D.他. (1996) Genome Res. 6:639-645、Marshall, A.及びJ. Hodgson (1998) Nat. Biotechnol. 16:27-31等を参照)。
完全長cDNA、発現配列タグ(EST)、またはその断片またはオリゴマーは、マイクロアレイのエレメントと成り得る。ハイブリダイゼーションに好適な断片またはオリゴマーを、レーザGENEソフトウェア(DNASTAR)等の本技術分野で公知のソフトウェアを用いて選択することが可能である。アレイエレメント群を、生体サンプル中のポリヌクレオチド群とハイブリダイズする。生体サンプル中のポリヌクレオチドは、検出を容易にするために蛍光標識などの分子タグに抱合させる。ハイブリダイゼーション後、生体サンプルからのハイブリダイズされていないヌクレオチドを除去し、蛍光スキャナを用いて各アレイエレメントでのハイブリダイゼーションを検出する。あるいは、レーザー脱離および質量スペクトロメトリを用いてもハイブリダイゼーションを検出し得る。マイクロアレイ上の或るエレメントにハイブリダイズする各ポリヌクレオチドの、相補性の度合と相対存在度とを算定し得る。 一実施態様におけるマイクロアレイの調製および使用について、以下に詳述する。
組織または細胞サンプルの準備
グアニジニウムチオシアネート法を用いて組織サンプルから全RNAを単離し、オリゴ(dT)セルロース法を用いてポリ(A)+RNAを精製する。各ポリ(A)+RNAサンプルを、MMLV逆転写酵素、0.05pg/μlのオリゴ(dT)プライマー(21mer)、1×第一鎖合成バッファー、0.03unit/μlのRNアーゼ阻害因子、500μMのdATP、500μMのdGTP、500μMのdTTP、40μMのdCTP、40μMのdCTP-Cy3(BDS)またはdCTP-Cy5(Amersham Biosciences)を用いて逆転写する。逆転写反応は、GEMBRIGHTキット(Incyte)を用いてポリ(A)+RNA含有の25体積ml内で行う。特異的対照ポリ(A)+RNAは、非コード酵母ゲノムDNAからin vitro転写により合成する。各反応サンプル(1つはCy3、もう1つはCy5標識)は、2.5mlの0.5M水酸化ナトリウムで処理し、85℃で20分間インキュベートし、反応を停止させてRNAを分解させる。サンプルは、2つの連続するCHROMA SPIN 30ゲル濾過スピンカラム(CLONTECH Laboratories, Inc. (CLONTECH), Palo Alto CA)を用いて精製する。 混合後、2つの反応サンプルは、1mlのグリコーゲン(1mg/ml)、60mlの酢酸ナトリウム及び300mlの100%エタノールを用いてエタノール沈殿させる。サンプルは次に、SpeedVAC(Savant Instruments Inc., Holbrook NY)を用いて乾燥して仕上げ、14μlの5×SSC/0.2%SDS中で再懸濁する。
マイクロアレイの準備
本発明の配列を用いて、アレイエレメントを作製する。各アレイエレメントは、クローン化cDNAインサートによりベクター含有細菌性細胞から増幅する。PCR増幅は、cDNAインサートに隣接するベクター配列に相補的なプライマーを用いる。30サイクルのPCRによって、1〜2ngの初期量から5μgを超える最終量までアレイエレメントを増幅する。増幅したアレイエレメントは、SEPHACRYL-400(Amersham Biosciences)を用いて精製する。
精製したアレイエレメントは、ポリマーコートされたスライドグラス上に固定する。顕微鏡スライドグラス(Corning)は、処理中及び処理後に0.1%のSDS及びアセトン中で超音波処理をかけ、蒸留水で非常に良く洗浄する。スライドグラスは、4%フッ化水素酸(VWR Scientific Products Corporation (VWR), West Chester PA)中でエッチングし、蒸留水中で非常に良く洗浄し、95%エタノール中で0.05%アミノプロピルシラン(Sigma)を用いてコーティングする。コーティングしたスライドガラスは、110℃のオブンで硬化させる。
米国特許第5,807,522号で説明されている方法を用いて、コーティングしたガラス基板にアレイエレメントを付加する。 該特許は、引用を以って本明細書の一部となす。平均濃度が100ng/μlのアレイエレメントDNA1μlを高速機械装置により開放型キャピラリープリンティングエレメント(open capillary printing element)に充填する。装置はここで、スライド毎に約5nlのアレイエレメントサンプルを加える。
マイクロアレイには、STRATALINKER UV架橋剤(Stratagene)を用いてUV架橋する。マイクロアレイは、室温において0.2%SDSで1度洗浄し、蒸留水で3度洗浄する。リン酸緩衝生理食塩水 (PBS)(Tropix, Inc., Bedford MA)中の0.2%カゼイン中において60℃で30分間マイクロアレイをインキュベートした後、前に行ったように0.2%SDS及び蒸留水で洗浄することにより、非特異結合部位をブロックする。
ハイブリダイゼーション
ハイブリダイゼーション反応液は、5×SSC、0.2%SDSハイブリダイゼーション緩衝液にCy3及びCy5標識したcDNA合成産物を各0.2μg含む9μlのサンプル混合体を含めたものである。サンプル混合体は、65℃まで5分間加熱し、マイクロアレイ表面上に等分して1.8cm2 のカバーガラスで覆う。アレイを、顕微鏡用スライドよりわずかに大きい空洞を有する防水チェンバーに移す。チェンバーのコーナーに140μlの5×SSCを加えることにより、チェンバー内部を湿度100%に保持する。アレイを含むチェンバーは、60℃で約6.5時間インキュベートする。アレイは、第1洗浄緩衝液中(1×SSC,0.1%SDS)において45℃で10分間洗浄し、第2洗浄緩衝液中(0.1×SSC)において45℃で10分間各々3度洗浄して乾燥させる。
検出
レポーター標識ハイブリダイゼーション複合体は、Cy3の励起のためには488nm、Cy5の励起のためには632nmでスペクトル線を発生し得るInnova70混合ガス10Wレーザ(Coherent, Inc., Santa Clara CA)を備えた顕微鏡で検出する。励起レーザ光の焦点をアレイ上に置くため、20×顕微鏡対物レンズ(Nikon, Inc., Melville NY)を用いる。アレイを含むスライドを、顕微鏡の、コンピュータ制御のX-Yステージに置き、対物レンズを通してラスタースキャンする。本実施例で用いる1.8cm×1.8cmのアレイは、解像度20μmでスキャンする。
2つの異なるスキャンで、混合ガスマルチラインレーザは2つの蛍光色素を連続的に励起する。発光された光は、波長に基づき分離され、2つのフルオロフォアに対応する2つの光電子増倍管検出器(PMT R1477, Hamamatsu Photonics Systems, Bridgewater NJ)に送られる。好適なフィルタ群をアレイと光電子増倍管との間に設置して、シグナルをフィルタする。用いるフルオロフォアの最大発光の波長は、Cy3では565nm、Cy5では650nmである。装置は両方の蛍光色素からのスペクトルを同時に記録し得るが、レーザ源において好適なフィルタを用いて、蛍光色素1つにつき1度スキャンし、各アレイを通常2度スキャンする。
スキャンの感度は通常、既知濃度でサンプル混合体に添加されるcDNA対照種により発生されるシグナル強度を用いて較正する。アレイ上の特定の位置には相補的DNA配列が含まれ、その位置におけるシグナルの強度を重量比1:100,000でハイブリダイゼーション種と相関させる。異なる源泉(例えば試験される細胞及び対照細胞など)からの2つのサンプルを、各々異なる蛍光色素で標識し、他と異なって発現した遺伝子を同定するために単一のアレイにハイブリダイズする場合には、2つの蛍光色素で較正するcDNAのサンプルを標識し、ハイブリダイゼーション混合液に各々等量を加えることによって較正を行う。
光電子増倍管の出力は、IBMコンパチブルPCコンピュータにインストールされた12ビットRTI-835Hアナログディジタル(A/D)変換ボード(Analog Devices, Inc., Norwood MA)を用いてディジタル化される。ディジタル化されたデータは、青色(低シグナル)から赤色(高シグナル)までの擬似カラー範囲へのリニア20色変換を用いてシグナル強度がマッピングされたようなイメージとして表示される。データは、定量的にも分析される。2つの異なる蛍光色素を同時に励起および測定する場合には、各蛍光体の発光スペクトルを用いて、データはまず蛍光色素間の光学的クロストーク(発光スペクトルの重なりに起因する)を補正する。
グリッドが蛍光シグナルイメージ上に重ねられ、それによって各スポットからのシグナルはグリッドの各エレメントに集められる。各エレメント内の蛍光シグナルは統合され、シグナルの平均強度に応じた数値が得られる。シグナル分析に用いるソフトウェアは、GEMTOOLS遺伝子発現分析プログラム(Incyte)である。
発現
SEQ ID NO:30およびSEQ ID NO:48-50は差次的発現を示し、これはマイクロアレイ分析で判定した。GEMTOOLSプログラム(Incyte Genomics)を使って、発現が少なくとも2倍変化したアレイエレメント、SB比が少なくとも2.5であるもの、およびエレメントスポットサイズが少なくとも40%であるものは差次的に発現していると同定された。
たとえば、ブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)に対する反応として健常な提供者から得られた末梢血単核球(PBMC)(12% Bリンパ球、40% Tリンパ球、20% NK 細胞、25%単球、3%樹状細胞と前駆細胞を含む様々な細胞)内の遺伝子発現の変異を評価するために、7人の健常なボランティア提供者が in vitro で24時間および72時間SEBによって刺激された。各提供者からのSEB処理されたPBMCが、同じ提供者からの、SEBなしで24時間インキュベートされたPBMCと比較された。SEQ ID NO:30 の発現は、少なくとも2倍増が、SEB処理したPBMCで見られた。したがってSEQ ID NO:30は、炎症応答の診断アッセイに有用である。
別の例においては、マイクロアレイ上の或るエレメントにハイブリダイズする各ポリヌクレオチドの、相補性の度合と相対存在度とを算定し得る。 一実施態様におけるマイクロアレイの調製および使用について、以下に詳述する。たとえば、SEQ ID NO:48は、腺管癌を持つ提供者から採取された乳房腫瘍細胞株において差次的発現を示した。比較の前に、健常なヒトの乳腺上皮細胞(HMEC) と乳房の腺管癌細胞(BT-474 および BT-483)が、成長因子とホルモンを含まない基礎培地で培養された。細胞はTrizolで溶解され、全RNA分画が製造者のプロトコルにしたがって回収された。ポリ(A)mRNAは標準的なオリゴdT選択法を使って精製された。Cy3およびCy5プローブは、Incyte社のマイクロアレイ施設で開発された標準的な作業手順に従って調製された。HMEC細胞の遺伝子発現プロフィールがBT-474 および BT-483のものと比較された。SEQ ID NO:48の発現は、乳腫瘍細胞株(BT-474 および BT-483) において、正常な乳房の上皮細胞(HMEC)と比べて少なくとも2倍に増加していることがマイクロアレイ解析で明らかにされた。したがってSEQ ID NO:48 は、乳癌検知の診断アッセイに有用である。
さらに別の例において、マイクロアレイ解析を用いて、SEQ ID NO:23のポリペプチドをコードするSEQ ID NO:49の発現を、未処理の初代血単球細胞(PBMC)とグルココルチコイド、デキサメタゾン(1 μM)、 リポ多糖(LPS)(1 μg/ml)または両方の化合物で処理したPBMCにおいて比較した。4人の提供者からのリンパ球をプールして、2,4,24または72時間、処理(または模擬処理)した。デキサメタゾン、LPSまたは両方の化合物で処理されたPBMCは、実験の早期の時点(すなわち2および4時間)において2倍以上の下方調節を示し、後の時点にはそれほど顕著でない下方調節を示した。この結果は、SEQ ID NO:49の発現レベルを使ってリンパ球に対して毒性のある化合物(たとえばLPS)またはPBMCの応答に影響して炎症反応を仲介する化合物(たとえばデキサメタゾン)の早期の効果を監視することができることを示している。
関連する実験において、ホジキン病の患者から採取された細胞から得られたB細胞リンパ芽球細胞株(RPMI 6666) を1 μg/ml LPS で0.5、1,2,4または8時間処理したものと未処理のものが比較された。SEQ ID NO:49の発現レベルは実験の全期間を通じて着実に減少し、4および8時間の時点では2倍以上減少していた。同じ実験において、SEQ ID NO:24のポリペプチドをコードするSEQ ID NO:50の発現は、8時間の時点で20倍以上減少したのに対して、それより以前の時点では未処理細胞と差がなかった。これらの結果は、SEQ ID NO:49およびSEQ ID NO:50はB細胞株に対するLPSのような毒性化合物の効果を監視するために役立つことを示唆している。
12 相補的ポリヌクレオチド
REMAPをコードする配列或いはその任意の一部に対して相補的な配列は、天然のREMAPの発現を低下させるため即ち阻害するために用いられる。約15〜30塩基対を含むオリゴヌクレオチドの使用について記すが、これより小さなあるいは大きな配列の断片の場合でも、本質的に同じ手順を用いる。Oligo4.06ソフトウェア(National Biosciences)及びREMAPのコーディング配列を用いて、適切なオリゴヌクレオチドを設計する。転写を阻害するためには、最も独特な5'配列から相補的オリゴヌクレオチドを設計し、これを用いて、プロモーターがコーディング配列に結合するのを防止する。翻訳を阻害するためには、相補的なオリゴヌクレオチドを設計して、リボソームがREMAPをコードする転写物に結合するのを阻害する。
13 REMAPの発現
REMAP の発現及び精製は、細菌若しくはウイルスを基にした発現系を用いて行うことができる。細菌でREMAP が発現するために、抗生物質耐性及びcDNAの転写レベルを高める誘導性のプロモーターを含む好適なベクターにcDNAをサブクローニングする。このようなプロモーターとしては、lacオペレーター調節エレメントと併用するT5またはT7バクテリオファージプロモーター、およびtrp-lac(tac)ハイブリッドプロモーターが含まれるが、これらに限定するものではない。組換えベクターを、BL21(DE3)等の好適な細菌宿主に形質転換する。抗生物質耐性をもつ細菌が、イソプロピルβ−Dチオガラクトピラノシド(IPTG)で誘発されるとREMAP を発現する。真核細胞でのREMAP の発現は、一般にバキュロウイスルスとして知られているAutographica californica核多角体病ウイルス(AcMNPV)を昆虫細胞株または哺乳動物細胞株に感染させて行う。バキュロウイルスの非必須の多角体遺伝子を、相同組換え或いは転移プラスミドの媒介を伴う細菌の媒介による遺伝子転移のどちらかによって、REMAP をコードするcDNAと置換する。ウイルスの感染力は維持され、強力なポリヘドリンプロモーターによって高レベルのcDNA転写が行われる。組換えバキュロウイルスは、多くの場合は夜蛾の1種Spodoptera frugiperda(Sf9)昆虫細胞への感染に用いるが、ヒト肝細胞への感染に用いることもある。後者の感染の場合は、バキュロウイルスの更なる遺伝的変更が必要になる(Engelhard. E. K.他 (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3224-3227、Sandig, V. 他 (1996) Hum. Gene Ther. 7:1937-1945.等を参照)。
殆どの発現系では、REMAP が、例えばグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、またはFLAGや6-Hisなどのペプチドエピトープ標識で合成された融合タンパク質となるため、未精製の細胞溶解物からの組換え融合タンパク質の親和性ベースの精製が素早く1回で行うことができる。GSTは日本住血吸虫からの26kDaの酵素であり、タンパク質の活性および抗原性を維持した状態で、固定化したグルタチオン上での融合タンパク質の精製を可能とする(Amersham Biosciences)。精製の後、GST部分を特定の操作部位でREMAP からタンパク分解的に切断できる。FLAGは8アミノ酸のペプチドであり、市販されているモノクローナル及びポリクローナル抗FLAG抗体(Eastman Kodak)を用いて免疫親和性精製を可能にする。6ヒスチジン残基が連続して伸長した6-Hisは、金属キレート樹脂上での精製を可能にする(QIAGEN)。タンパク質の発現および精製の方法は、前出のAusubel(1995)10章、16章に記載されている。これらの方法で得た精製REMAP を直接用いて以下の実施例17、18、および19の、適用可能なアッセイを行うことができる。
14 機能的アッセイ
REMAP 機能は、哺乳動物細胞培養系において生理学的に高められたレベルでのREMAP をコードする配列の発現によって評価する。 cDNAを、cDNAを高いレベルで発現する強いプロモーターを含む哺乳動物発現ベクターにサブクローニングする。選択されるベクターには、PCMV SPORTプラスミド(Invitrogen, Carlsbad CA)及びPCR 3.1プラスミド(Invitrogen)が含まれ、どちらもサイトメガロウイルスプロモーターを有する。リポソーム製剤あるいは電気穿孔法を用いて、5〜10μgの組換えベクターをヒト細胞株、例えば内皮由来または造血由来の細胞株に、一過的に形質移入する。更に、標識タンパク質をコードする配列を含む1〜2μgのプラスミドを同時に形質移入する。標識タンパク質の発現により、形質移入された細胞と形質移入されていない細胞を区別する手段が与えられる。また、標識タンパク質の発現によって、cDNAの組換えベクターからの発現を正確に予想できる。標識タンパク質は、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP;Clontech)、CD64またはCD64-GFP融合タンパク質から選択できる。自動化された、レーザー光学に基づく技術であるフローサイトメトリー(FCM)を用いて、GFPまたはCD64-GFPを発現する形質移入された細胞を同定し、それらの細胞のアポトーシス状態や他の細胞特性を評価する。FCMは、細胞死に先行するか或いは同時に発生する現象を診断する蛍光分子の取込を検出して計量する。このような現象として挙げられるのは、プロピジウムヨウ化物によるDNA染色によって計測される核DNA内容物の変化、前方散乱光と90°側方散乱光によって計測される細胞サイズと顆粒状性の変化、ブロモデオキシウリジンの取込量の低下によって計測されるDNA合成の下方調節、特異抗体との反応性によって計測される細胞表面及び細胞内におけるタンパンク質の発現の変化、及び蛍光複合アネキシンVタンパク質の細胞表面への結合によって計測される原形質膜組成の変化とがある。フローサイトメトリー法については、Ormerod, M.G.(1994)Flow Cytometry, Oxford, New York NYに記述がある。
遺伝子発現におけるREMAP の影響は、REMAP をコードする配列とCD64またはCD64-GFPのどちらかが形質移入された高度に精製された細胞集団を用いて評価することができる。CD64またはCD64-GFPは、形質移入された細胞表面で発現し、ヒト免疫グロブリンG(IgG)の保存された複数の領域に結合する。形質転換された細胞と形質転換されない細胞とは、ヒトIgGかCD64に対する抗体のどちらかで被覆された磁気ビードを用いて分離することができる(DYNAL. Lake Success. NY)。mRNAは、当分野で周知の方法で細胞から精製することができる。REMAP および目的の他の遺伝子をコードするmRNAの発現は、ノーザン分析やマイクロアレイ技術で分析することができる。
15 REMAPに特異的な抗体の作製
実質的に精製されたREMAPを、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE;例えば、Harrington, M.G.(1990)Methods Enzymol..
或いは、レーザGENEソフトウェア(DNASTAR)を用いてREMAP アミノ酸配列を解析し、免疫原性の高い領域を決定する。 そして対応するオリゴペプチドを合成し、このオリゴペプチドを用いて当業者によく知られている方法で抗体を生成する。 適切なエピトープ、例えばC末端付近或いは隣接する親水性領域にあるエピトープの選択については、当分野で公知である(前出のAusubel, 1995, 11章等を参照)。
通常は、長さ約15残基のオリゴペプチドを、FMOC ケミストリを用いるABI 431A ペプチドシンセサイザ(Applied Biosystems)を用いて合成し、N-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)を用いた反応によってKLH(Sigma-Aldrich, St. Louis MO)に結合させて、免疫原性を高める(前出のAusubel, 1995 等を参照)。完全フロイントアジュバントにおいて、オリゴペプチド-KLH複合体を用いてウサギを免疫化する。例えば、ペプチドまたはREMAP を基板に結合し、1%BSAを用いてブロッキング処理し、ウサギ抗血清と反応させて洗浄し、さらに放射性ヨウ素標識されたヤギ抗ウサギIgGと反応させて、得られた抗血清の抗ペプチド活性及び抗REMAP 活性を検査する。
16 特異的抗体を用いる天然REMAPの精製
天然REMAP 或いは組換えREMAP を、REMAP に特異的な抗体を用いるイムノアフィニティークロマトグラフィにより実質的に精製する。イムノアフィニティーカラムは、CNBr-活性化SEPHAROSE(Amersham Biosciences)のような活性化クロマトグラフィー用レジンと抗REMAP 抗体とを共有結合させることにより形成する。結合後に、製造者の使用説明書に従ってこのレジンをブロックし、洗浄する。
REMAP を含む培養液をイムノアフィニティーカラムに通し、REMAP を優先的に吸着できる条件で(例えば、界面活性剤の存在下において高イオン強度のバッファーで)そのカラムを洗浄する。そのカラムを、抗体とREMAP との結合を切るような条件で(例えば、pH2〜3のバッファー、或いは高濃度の尿素またはチオシアン酸塩イオンのようなカオトロピックイオンで)溶出させ、REMAP を回収する。
17 REMAPと相互作用する分子の同定
REMAPと相互作用する分子としては、Gタンパク質など、シグナル伝達に関与する分子や、アゴニスト及びアンタゴニストを含み得る。REMAPまたはその断片を、125Iボルトンハンター試薬で標識する(例えば Bolton A.E.及びW.M. Hunter (1973) Biochem. J. 133:529-539を参照)。REMAPの断片には、例えば3つの細胞外ループのうち1つ若しくは複数のループ、細胞外N末端領域または第3細胞内ループがある。マルチウェルプレートに予め配列しておいた候補の分子を、標識したREMAP と共にインキュベートし、洗浄して、標識したREMAP 複合体を有する全てのウェルをアッセイする。様々なREMAP 濃度で得られたデータを用いて、候補分子と結合したREMAP の数量及び親和性、会合についての値を計算する。
別法では、REMAP と相互作用する分子を、Fields, S.およびO. Song(1989, Nature 340:245-246)に記載の酵母2−ハイブリッドシステム(yeast two-hybrid system)やMATCHMAKERシステム(Clontech)などの2−ハイブリッドシステムに基づいた市販のキットを用いて分析する。
REMAPはまた、高処理型の酵母2ハイブリッドシステムを使用するPATHCALLINGプロセス(CuraGen Corp., New Haven CT)に用いて、遺伝子の2つの大きなライブラリによってコードされるタンパク質間の全ての相互作用を決定することができる(Nandabalan, K. 他 (2000) 米国特許第6,057,101号)。
潜在的REMAPアゴニストまたはアンタゴニストは、実施例17及び18に記載のアッセイを用いてREMAP受容体活性の活性化または阻害を試験し得る。候補分子は、既知のGPCRアゴニストまたはアンタゴニスト、ペプチドライブラリ、または組み合わせの化学ライブラリから選択し得る。
REMAPとGタンパク質などの細胞内シグナル伝達分子の相互作用を検出する方法は、オーファンGタンパク質共役膜7回貫通受容体から得た内部セグメントまたは細胞質ドメインが、既知のGタンパク質共役膜7回貫通受容体の相似ドメインと交換され、Gタンパク質及びオーファン受容体ドメインに活性化された下流シグナル伝達経路を同定するために用いられるという前提に基づく(Kobilka, B.K. ら (1988) Science 240:1310-1316)。類似の或る方法においては、オーファン受容体のドメイン群を融合タンパク質の一部としてクローニングし、結合アッセイに用いて、特定のGタンパク質との相互作用を実証し得る。研究によれば、Gタンパク質共役膜7回貫通受容体の第3細胞内ループがGタンパク質相互作用及びシグナル伝達に重要であることが示されてきた(Conklin, B.R. 他 (1993) Cell 73:631-641)。例えば、REMAPの第3細胞内ループに対応するDNA断片は、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)により増幅し、pGEX(Pharmacia Biotech)などの融合ベクターにサブクローニングし得る。構成物は適切な細菌性宿主へ形質転換され、誘発され、融合タンパク質はグルタチオン-セファロース4B(Pharmacia Biotech)アフィニティークロマトグラフィで細胞溶解産物から精製される。
in vitro結合アッセイの場合、Gタンパク質を含む細胞抽出物は、50mM Tris、pH7.8、1mM EGTA、5mMのMgCl2、20mMのCHAPS、20%グリセロール、各10μgのアプロチニン及びロイペプチンと、20μlの50mMフッ化フェニルメチルスルフォニルで抽出することにより準備する。溶解産物は絶えず撹拌しながら氷上で45分間インキュベートし、23,000g、4℃で15分間遠心分離して上澄みを集める。750μgの細胞抽出物をグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質ビーズを用いて4℃で2時間インキュベートする。 GSTビーズは、リン酸緩衝食塩水で5回洗浄する。結合Gサブユニットは、百日咳毒素またはコレラ毒素を用いた[32P]ADPリボシル化により検出する。SDSサンプル緩衝液(4.6%(w/v) SDS、10%(vlv) βメルカプトエタノール、20%(w/v) グリセロール、95.2mM Tris-HCl、pH6.8、0.01%(w/v) ブロムフェノールブルー)を添加することにより反応を停止させる。[32P]ADP標識されたタンパク質を、10%SDS-PAGEゲルで分離し、オートラジオグラフを行う。ゲル中で分離したタンパク質はニトロセルロースペーパーに移し、ブロット(blotto)(5%脱脂粉乳、50mMのTris-HCl (pH 8.0)、2mMのCaCl2、80mMのNaCl、0.02%のNaN3 及び0.2%ノニデットP-40)を用いて室温で1時間遮断し、Gαサブタイプ選択的抗体(1:500; Calbiochem-Novabiocliem)で1.5時間インキュベートする。3回洗浄後に、ブロットをホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)抱合したヤギ抗ウサギ免疫グロブリン(1:2000, Cappel, Westchester PA)とインキュベートし、化学ルミネセンスベースのECL法(Amersham Corp.)で可視化する。
18 REMAP活性の実証
REMAP 活性に対する或るアッセイは、細胞表面におけるREMAP の発現を測定する。REMAP をコードするcDNAを、好適な哺乳動物細胞株に形質移入する。細胞表面タンパク質は、記載されているようにビオチンで標識する(de la Fuente, M.A. 他 (1997) Blood 90:2398-2405)。REMAP特異抗体を用いて免疫沈降を実行し、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)及び免疫ブロット技術を用いて免疫沈降サンプルを分析する。標識された免疫沈降と未標識免疫沈降の比は、細胞表面に発現したREMAP の量に比例する。
或いは、REMAP 活性のためのアッセイは、リガンド/受容体が仲介する細胞増殖の調節のための原型アッセイに基づく。このアッセイは、Swissマウス3T3細胞におけるDNA合成速度を測定する。当分野で公知の形質移入方法を用いて、REMAP をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドを静止状態の3T3培養細胞に加える。 一過性に形質移入された細胞は次に、放射性DNA前駆分子である[3H]チミジンの存在下でインキュベートする。次に、培養した細胞に種々の量のREMAP リガンドを加える。[3H]チミジンの、酸沈殿可能DNA内への取り込みを、ラジオアイソトープカウンターを用いて適当な時間間隔で測定する。取り込まれた量は、新規に合成されたDNAの量に正比例する。少なくとも100倍のREMAP リガンド濃度範囲に対する用量反応曲線がリニアであることは、受容体活性を示唆するものである。ミリリットル当りの活性の1単位は、50%の反応レベルを産出するREMAP の密度として定義され、100%であれば[3H]チミジンを酸沈殿可能DNAに最大限取り込むことを表す(McKay, I. and I. Leigh, eds. (1993) Growth Factors: A Practical Approach, Oxford University Press, New York NY, 73ページ)。
或いは、REMAP 活性のためのアッセイは、REMAP ファミリータンパク質がGタンパク質活性化セカンドメッセンジャーシグナル伝達経路を調整する能力に基づく(例えばcAMP; Gauclin, P. 他 (1998) J. Biol. Chem. 273:4990-4996)。当分野で既知の方法を用いて、完全長REMAP をコードするプラスミドを哺乳動物細胞系(例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)またはヒト胎児腎臓(HEK-293)細胞系)に形質移入する。 培地中の12穴トレーで形質移入された細胞を成長させ、培養液を廃棄して、接着した細胞をPBSで軽く洗浄する。次に細胞のインキュベートを、培地内で、リガンドと共に又はリガンド無しで30分間行い、次に培地を除去し、細胞の溶解を、1 Mの過塩素酸で処理して行う。溶解産物中のcAMPレベルは、当分野で既知の方法を用いて放射免疫アッセイにより測定する。 リガンドに曝された細胞から得た溶解産物中のcAMPレベルをリガンドなしのものと比較したときの変化は、形質移入された細胞に存在するREMAP の量に比例する。
イノシトールリン酸レベルの変化を測定するためには、1×105 細胞/穴を含む24穴プレートで細胞を成長させ、イノシトールを含まない培地及び [3H]ミオイノシトールを用いて2μCi/穴で48時間インキュベートする。培地を除去し、細胞の洗浄を10 mMのLiCl含有バッファで行った後、リガンドを加える。反応を、過塩素酸を加えて停止させる。イノシトールリン酸の抽出と分離とをDowex AG1-X8 (Bio-Rad)アニオン交換樹脂上で行い、標識された総イノシトールリン酸のカウントを液体シンチレーションによって行う。リガンドに曝された細胞から得た標識されたイノシトールリン酸のレベルをリガンドなしのものと比較したときの変化は、形質移入された細胞に存在するREMAP の量に比例する。
更なる実施例において、REMAPのイオン伝導性機能は電気生理学的試験を用いて実証される。REMAPは、COS7、 HeLa または CHOのような哺乳類細胞系をREMAPをコードする 真核生物発現ベクターで形質転換することによって発現される。真核生物発現ベクターは市販されており、それらを細胞内に導入する技術は当業者には周知である。β−ガラクトシダーゼのような多数の標識遺伝子のいずれか一つを発現させる第二プラスミドの少量は、細胞へと同時形質転換され、外来DNAを吸収し発現させるそれら細胞の迅速な同定を可能とする。細胞は形質転換の後、株化細胞がREMAP 及び13−ガラクトシダーゼを発現し蓄積するのに適した条件下で、48〜72時間に渡ってインキュベートされる。β−ガラクトシダーゼを発現する形質転換細胞は、本技術分野で既知の条件下で適切な比色基質を培地へ添加すると青く染色される。 染色された細胞は、本技術分野で既知の電気生理学技術を用いて膜電気伝導度の違いを試験する。形質転換されていない細胞、及び/又はベクター配列だけ、若しくはβ−ガラクトシダーゼ配列だけのいずれかで形質転換された細胞は、対照として用いられ、並行して試験する。どちらかのREMAPに特異的な抗体を用いて細胞をインキュベートすることによってREMAP のカチオンまたはアニオン伝導性に寄与することが示される。それぞれの抗体は、REMAPの細胞外側に結合することにより、イオンチャネル内のポアと、それに伴う伝導性とをブロックする。
更なる実施例において、REMAP の輸送活性は、アフリカツメガエル卵母細胞への標識された基質の取り込みを測定することによって検査される。 ステージ5及び6の卵母細胞は、REMAP mRNA (卵母細胞あたり10 ng)で注入され、OR2培地(82,5. 5mMのNaCl、2. 5 mMのKC1、1mMのCaCl2、1mMのMgCl2、1mM Na2HPO4、5 mMのHepes、3. 8 mMのNaOH、 50μg/ml ゲンタマイシン、pH 7. 8) 内で18℃で3日間インキュベートして、REMAP の発現を可能とする。卵母細胞は、次に標準取り込み培地(100mMのNaCl、2 mMのKC1、1mMのCaCl2、1mMのMgCl2、10 mMのHepes/Tris、pH 7. 5)へと移される。種々の基質(例えば、アミノ酸、糖、薬物および神経伝達物質)の取り込みは、卵母細胞にH3 基質を添加することによって開始される。30分間インキュベートした後、卵母細胞を Na+遊離培養液中で卵母細胞を3回洗浄して取り込みは中止され、取り込まれた 3Hを測定し、対照と比較する。REMAP活性は吸収された3H基質の濃度に比例する。
さらなる実施例において、REMAP プロテインキナーゼ(PK)活性は、γ標識の[32P]ATP を用いたタンパク質基質のリン酸化と組み込まれた放射活性を定量する。REMAP はタンパク質基質、32P-ATP、及び適切なキナーゼバッファと共にインキュベートする。生成産物に組み込まれた32Pは、電気泳動法で遊離32P-ATPより分離され、組み込まれた32Pをカウントする。回収した32P の量はアッセイ中のREMAP のPK 活性に比例する。リン酸化した特異的アミノ酸残基の判定を、加水分解したタンパク質のホスホアミノ酸解析で行う。
REMAPの転写調節活性を、そのレポーター遺伝子の転写を刺激する能力によって測定する(Liu, H. Y. 他 (1997) EMBO J. 16 : 5289-5298)。このアッセイは、十分に特徴付けられたレポーター遺伝子作成物であるLexAop-LacZを用いる。このLexAop-LacZは、大腸菌LacZ酵素をコードする配列に融合されたLexA DNA転写調節エレメント(LexAop)からなる。融合遺伝子の作成及び発現、細胞への融合遺伝子の導入、及び、LacZ酵素活性の測定方法は、当業者に周知である。REMAPをコードする配列を、LexA転写因子に由来するDNA結合ドメインとREMAPとからなる融合タンパク質、LexA-REMAPの合成を指示するプラスミドにクローニングする。得られたLexA-REMAP融合タンパク質をコードするプラスミドを、LexAop-LacZレポーター遺伝子を含むプラスミドと共に酵母細胞内に導入する。対照細胞と比較したLexA-REMAP形質移入細胞に関連するLacZ酵素活性の量が、REMAPによって刺激された転写の量に比例する。
19 REMAPリガンドの同定
REMAP は、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)またはHEK(ヒト胎児腎臓)293などの真核細胞株において発現する。 これらの細胞株は、GPCR発現過程が良好であり、発現したREMAP が下流エフェクターに機能的に共役できるような広範囲のGタンパク質を含む。候補リガンドの存在下で発現した受容体の活性化に対し、形質転換した細胞をアッセイする。活性を、cAMPまたはCa2+ など細胞内セカンドメッセンジャーの変化によって測定する。当分野で公知の標準的な方法を用いるか、活性化受容体によるタンパク質キナーゼCの刺激に反応して発光タンパク質(例えばホタルルシフェラーゼまたは緑色蛍光タンパク質)がプロモーターの転写調節下にあるようなレポーター遺伝子アッセイを用いて直接測定する(Milligan, C. 他 (1996) Trends Pharmacol. Sci. 17:235-237)。アッセイ技術は、これら二次メッセンジャー系の両方に利用可能であり、アデニリルシクラーゼ活性化FlashPlate Assay(NEN Life Sciences Products)などのマルチウェルプレートフォーマットでの、またはFluo-4 AM(Molecular Probes)などの蛍光Ca2+ 指示薬にFLIPR蛍光定量的プレート読出しシステム(Molecular Devices)を併用しての高処理読出しを可能にする。生理的関連性のあるセカンドメッセンジャー経路が知られていない場合、REMAP は、ホスホリパーゼC及びCa2+ 可動化に関与する経路を介してREMAP のシグナル伝達を通すために、広範囲のGタンパク質と共役することが実証されているようなGタンパク質Gα15/16と同時発現し得る(Offerrnanns, S. and M.I. Simon (1995) J. Biol. Chem. 270:15175-15180)。或いは、REMAP は内因性GPCRが不足しているような操作された酵母系に発現し、それによってREMAP 活性化スクリーニングに対してバックグラウンドが存在しない利点を提供し得る。これらの酵母系は、ヒトGPCR及びGαタンパク質を内因性酵母フェロモン受容体経路の対応する構成要素の代替とする。シグナルに対する正常な酵母反応を、選択的培地の正の成長またはレポーター遺伝子発現に変換するように、下流シグナル伝達経路も変更される(Broach, J.R. and J. Thorner (1996) Nature 384 (supp.):14-16)。既知のGPCRリガンド及びその他天然の生理活性分子を含む推定上のリガンドに対して受容体をスクリーニングする。組織、生物学的液体及び細胞上澄みからの生物学的抽出物もスクリーニングする。
当業者は、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく本発明の記載した方法及びシステムの種々の改変を行い得る。本発明について説明するにあたり特定の好適実施例に関連して説明を行ったが、本発明の範囲が、そのような特定の実施例に不当に制限されるべきではないことを理解されたい。分子生物学または関連分野の専門家には明らかな、本明細書に記載する本発明の実施方法の様々な修正は、明確に特許請求の範囲内にあるものとする。
(表の簡単な説明)
表1は、本発明の完全長ポリヌクレオチド配列及びポリペプチド配列の命名法の概略を示す。
表2は、本発明のポリペプチド群のGenBank識別番号と、最も近いGenBank相同体の注釈(annotation)と、PROTEOMEデータベース識別番号と、PROTEOMEデータベース相同体群の注釈とを示す。また、各ポリペプチドとその相同体(1つ以上)が一致する確率スコアも併せて示す。
表3は、予測されるモチーフ及びドメインを含む本発明のポリヌクレオチド配列の構造的特徴を、ポリペプチドの分析に用いるための方法、アルゴリズム及び検索可能なデータベースと共に示す。
表4は、本発明のポリヌクレオチド配列をアセンブリするために用いたcDNAやゲノムDNA断片を、ポリヌクレオチド配列の選択した断片と共に示す。
表5は、本発明のポリヌクレオチドの代表的なcDNAライブラリを示す。
表6は、表5に示したcDNAライブラリの作製に用いた組織及びベクターを説明する付表である。
表7は、本発明のポリヌクレオチドとポリペプチドの分析に用いたツール、プログラム、アルゴリズムを、適用可能な説明、参照文献及び閾値パラメータと共に示す。
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903
Figure 2005514903

Claims (107)

  1. 以下の(a)乃至(i)からなる群から選択した単離されたポリペプチド。
    (a) SEQ ID NO:1-26(配列番号1乃至26)からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド
    (b) SEQ ID NO:1-6、 SEQ ID NO:8-12、 SEQ ID NO:15および SEQ ID NO:17-25からなる群から選択した或るアミノ酸配列と少なくとも90%が同一であるような天然アミノ酸配列を含むポリペプチド
    (c) (b)SEQ ID NO:7のアミノ酸配列に対して少なくとも98%が同一であるような天然アミノ酸配列を持つポリペプチド
    (d) (b)SEQ ID NO:13のアミノ酸配列と少なくとも94%が同一であるような天然のアミノ酸配列を有するポリペプチド
    (e) SEQ ID NO:14のアミノ酸配列に対して少なくとも99%が同一であるような天然アミノ酸配列を含むポリペプチド
    (f) SEQ ID NO:16のアミノ酸配列に対して少なくとも95%が同一であるような天然アミノ酸配列を含むポリペプチド
    (g) SEQ ID NO:26のアミノ酸配列と少なくとも90%が同一であるような天然のアミノ酸配列を有するポリペプチド
    (h) SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片
    (i) SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片
  2. SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
  3. 請求項1のポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
  4. 請求項2のポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
  5. SEQ ID NO:27-52からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含む、請求項4に記載の単離されたポリヌクレオチド。
  6. 請求項3に記載のポリヌクレオチドに機能的に連結したプロモーター配列を含む組換えポリヌクレオチド。
  7. 請求項6に記載の組換えポリヌクレオチドを用いて形質転換した細胞。
  8. 請求項6に記載の組換えポリヌクレオチドを含む遺伝形質転換体。
  9. 請求項1のポリペプチドを生産する方法であって、
    (a) 前記ポリペプチドの発現に好適な条件下で、請求項1のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結したプロモーター配列を含む組換えポリヌクレオチドで形質転換される細胞を培養する過程と、
    (b) そのように発現した前記ポリペプチドを回収する過程とからなり、前記組換えポリヌクレオチドが、請求項1に記載の前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結したプロモーター配列を含むことを特徴とする方法。
  10. 前記ポリペプチドが、SEQ ID NO:1-26からなる群から選択した或るアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
  11. 請求項1に記載のポリペプチドと特異結合するような単離された抗体。
  12. 以下の(a)乃至(g)からなる群から選択した単離されたポリヌクレオチド。
    (a) SEQ ID NO:27-52からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド
    (b) SEQ ID NO:27-32およびSEQ ID NO:34-52からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列に対して少なくとも90%が同一であるような天然ポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド
    (c) SEQ ID NO:33のポリヌクレオチド配列に対して少なくとも95%が同一であるような天然ポリヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチド
    (d) (a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド
    (e) (b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド
    (f) (c)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、および
    (g) (a)〜(f)のRNA等価物
  13. 請求項12に記載のポリヌクレオチドの少なくとも60の連続したヌクレオチドを含む単離されたポリヌクレオチド。
  14. 請求項12に記載のポリヌクレオチドの配列を有する標的ポリヌクレオチドをサンプル中から検出する方法であって、
    (a) 前記サンプル中の前記標的ポリヌクレオチドに相補的な配列を持つ少なくとも20の連続したヌクレオチドを持つプローブを用いて前記サンプルをハイブリダイズする過程と、
    (b) 前記ハイブリダイゼーション複合体の存在・不存在を検出し、該複合体が存在する場合にはオプションでその量を検出する過程、とを含み、前記プローブと前記標的ポリヌクレオチドあるいはその断片との間でハイブリダイゼーション複合体が形成される条件下で、プローブが前記標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズすることを特徴とする方法。
  15. 前記プローブが少なくとも60の連続したヌクレオチドを含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
  16. 請求項12に記載のポリヌクレオチドの配列を有する標的ポリヌクレオチドをサンプル中から検出する方法であって、
    (a) ポリメラーゼ連鎖反応増幅を用いて前記標的ポリヌクレオチドまたはその断片を増幅する過程と、
    (b) 前記の増幅した標的ポリヌクレオチドまたはその断片の有無を検出し、該標的ポリヌクレオチドまたはその断片が存在する場合にはオプションでその量を検出する過程を含むことを特徴とする方法。
  17. 請求項1のポリペプチドと、薬剤として許容できる賦形剤とを含むことを特徴とする組成物。
  18. 前記ポリペプチドが、SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を含むことを特徴とする請求項17に記載の組成物。
  19. 機能性REMAPの発現低下に関連する疾患又は病状を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に対して請求項17に記載の組成物を投与する過程を含むことを特徴とする方法。
  20. 請求項1に記載のポリペプチドのアゴニストとして有効性を確認するために化合物をスクリーニングする方法であって、
    (a) 請求項1のポリペプチドを含むサンプルを化合物に曝すステップと、
    (b) 前記サンプルにおいてアゴニスト活性を検出するステップとを含むことを特徴とするスクリーニング方法。
  21. 請求項20に記載の方法によって同定したアゴニスト化合物と、薬剤として許容できる賦形剤とを含むことを特徴とする組成物。
  22. 機能性REMAPの発現低下に関連する疾患又は病状を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に対して請求項21に記載の組成物を投与する過程を含むことを特徴とする方法。
  23. 請求項1に記載のポリペプチドのアンタゴニストとして有効性を確認するために化合物をスクリーニングする方法であって、
    (a) 請求項1のポリペプチドを含むサンプルを化合物に曝すステップと、
    (b) 前記サンプルにおいてアンタゴニスト活性を検出するステップとを含むことを特徴とするスクリーニング方法。
  24. 請求項23に記載の方法によって同定したアンタゴニスト化合物と、薬剤として許容できる賦形剤とを含むことを特徴とする組成物。
  25. 機能性REMAPの過剰発現に関連する疾患又は病状の治療方法であって、そのような治療を必要とする患者に対して請求項24に記載の組成物を投与する過程を含むことを特徴とする方法。
  26. 請求項1に記載のポリペプチドに特異結合する化合物をスクリーニングする方法であって、
    (a) 請求項1のポリペプチドを適切な条件下で少なくとも1つの試験化合物と混合する過程と、
    (b) 請求項1のポリペプチドの試験化合物との結合を検出し、それによって請求項1のポリペプチドに特異結合する化合物を同定する過程を含む方法。
  27. 請求項1に記載のポリペプチドの活性を調節する化合物をスクリーニングする方法であって、
    (a) 請求項1のポリペプチドの活性が許容される条件下で、請求項1のポリペプチドを少なくとも1つの試験化合物と混合する過程と、
    (b) 請求項1に記載のポリペプチドの活性を試験化合物の存在下で算定する過程と、
    (c) 試験化合物の存在下での請求項1のポリペプチドの活性を、試験化合物の不存在下での請求項1のポリペプチドの活性と比較する過程を含み、試験化合物の存在下での請求項1のポリペプチドの活性の変化が、請求項1のポリペプチドの活性を調節する化合物を標示するような方法。
  28. 請求項5の配列を含む標的ポリヌクレオチドの発現を変容させるのに効果的な化合物をスクリーニングする方法であって、
    (a) 前記標的ポリヌクレオチドの発現に好適な条件下で、該標的ポリヌクレオチドを含むサンプルを化合物に曝露する過程と、
    (b) 前記標的ポリヌクレオチドの発現改変を検出する過程と、
    (c) 可変量の前記化合物の存在下と前記化合物の不存在下で、前記標的ポリヌクレオチドの発現を比較する過程とを含むことを特徴とする方法。
  29. 試験化合物の毒性を算定する方法であって、
    (a) 核酸を含む生物学的サンプルを前記試験化合物で処理する過程と、
    (b) 処理した前記生物学的サンプルの核酸と、請求項12のポリヌクレオチドの少なくとも20の連続するヌクレオチドを持つプローブをハイブリダイズさせる過程であって、このハイブリダイゼーションゼーションが、前記プローブと前記生物学的サンプル中の標的ポリヌクレオチドとの間で特異的なハイブリダイゼーション複合体が形成される条件下で行われ、前記標的ポリヌクレオチドが、請求項12のポリヌクレオチドまたはその断片のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドである、前記過程と、
    (c) ハイブリダイゼーション複合体の収量を定量する過程と、
    (d) 前記処理された生物学的サンプル中のハイブリタイゼーション複合体の量を、処理されていない生物学的サンプル中のハイブリタイゼーション複合体の量と比較する過程とを含み、前記処理された生物学的サンプル中のハイブリタイゼーション複合体の量の差が、前記試験化合物の毒性を標示するような方法。
  30. 生物学的サンプル中のREMAP の発現に関連する症状または疾患に対する診断試験法であって、
    (a) 前記生物学的サンプルと請求項11の抗体との混合を、前記抗体が前記ポリペプチドに結合し、抗体とポリペプチドとの複合体を形成するのに適した条件下で行う過程と、
    (b) 前記複合体を検出する過程とを含み、前記複合体の存在が、前記生物学的サンプル中の前記ポリペプチドの存在と相関することを特徴とする方法。
  31. 請求項11の抗体であって、
    (a) キメラ抗体
    (b) 単鎖抗体
    (c) Fab断片
    (d) F(ab')2 断片
    (e) またはヒト化抗体である抗体。
  32. 請求項11に記載の抗体と、許容できる賦形剤とを含む組成物。
  33. 被検者のREMAP の発現に関連する病状又は疾患の診断方法であって、請求項32に記載の組成物の有効量を前記被検者に投与する過程を含むことを特徴とする方法。
  34. 前記抗体が標識されることを特徴とする請求項32に記載の組成物。
  35. 被検者のREMAP の発現に関連する病状又は疾患の診断方法であって、請求項34に記載の組成物の有効量を前記被検者に投与する過程を含むことを特徴とする方法。
  36. 請求項11に記載の抗体の特異性を有するポリクローナル抗体を調製する方法であって、
    (a) 抗体反応を誘発する条件下で、SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列またはその免疫原性断片を含むポリペプチドを用いて動物を免疫化する過程と、
    (b) 前記動物から抗体を単離する過程と、
    (c) 前記単離された抗体を前記ポリペプチドでスクリーニングし、それによって、SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異結合するポリクローナル抗体を同定する過程とを含むような方法。
  37. 請求項36に記載の方法で産出したポリクローナル抗体。
  38. 請求項37に記載のポリクローナル抗体及び適切なキャリアーを含む組成物。
  39. 請求項11に記載の抗体の特異性を有するモノクローナル抗体を作製する方法であって、
    (a) 抗体反応を誘発する条件下で、SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列またはその免疫原性断片を含むポリペプチドを用いて動物を免疫化する過程と、
    (b) 前記動物から抗体産出細胞を単離する過程と、
    (c) 前記抗体産出細胞と不死化した細胞とを融合して、モノクローナル抗体を産出するハイブリドーマ細胞を形成する過程と、
    (d) 前記ハイブリドーマ細胞を培養する過程と、
    (e) SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異結合するようなモノクローナル抗体を前記培養物から単離する過程とを含むことを特徴とする方法。
  40. 請求項39に記載の方法で産出したモノクローナル抗体。
  41. 請求項40に記載のモノクローナル抗体及び適切なキャリアーを含む組成物。
  42. Fab発現ライブラリをスクリーニングすることにより産出されることを特徴とする請求項11に記載の抗体。
  43. 組換え免疫グロブリンライブラリのスクリーニングにより前記抗体を産出することを特徴とする請求項11に記載の抗体。
  44. SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドをサンプル中に検出する方法であって、
    (a) 請求項11に記載の抗体と前記ポリペプチドとの特異結合を許容する条件下で、前記抗体と1サンプルとをインキュベートする過程と、
    (b) 特異結合を検出する過程とを含み、該特異結合が、SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドがサンプル中に存在することを標示することを特徴とする方法。
  45. SEQ ID NO:1-26 からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドを精製する方法であって、
    (a) 請求項11に記載の抗体と前記ポリペプチドとの特異結合を許容する条件下で、前記抗体と1サンプルとをインキュベートする過程と、
    (b) 前記サンプルから前記抗体を分離し、SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を含む精製ポリペプチドを得る過程とを含むことを特徴とする方法。
  46. マイクロアレイの少なくとも1つが請求項13に記載のポリヌクレオチドであることを特徴とするマクロアレイ。
  47. ポリヌクレオチドを含むサンプルの発現プロファイルを作製する方法であって、
    (a) サンプル中のポリヌクレオチドを標識化する過程
    (b) ハイブリダイゼーション複合体が形成されるのに適した条件下で請求項46のマイクロアレイのエレメントとサンプル中の標識化ポリヌクレオチドとを接触させる過程と、
    (c) サンプル中のポリヌクレオチドの発現を定量する過程を含む方法
  48. 或る固体基板上の固有の物理的位置に付着された種々のヌクレオチド分子を有するアレイであって、少なくとも1つの前記ヌクレオチド分子が、或る標的ポリヌクレオチドの少なくとも30の連続したヌクレオチド群と特異的にハイブリダイズ可能な最初のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列を含み、前記の標的ポリヌクレオチドが請求項12に記載のポリヌクレオチドであることを特徴とするアレイ。
  49. 請求項48に記載のアレイで、前記の最初のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの配列が前記の標的ポリヌクレオチドの少なくとも30の連続したヌクレオチドに完全に相補的であることを特徴とするアレイ。
  50. 請求項48に記載のアレイで、前記の最初のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの配列が前記の標的ポリヌクレオチドの少なくとも60の連続したヌクレオチドに完全に相補的であることを特徴とするアレイ。
  51. 請求項48に記載のアレイで、前記の最初のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの配列が前記の標的ポリヌクレオチドに完全に相補的であることを特徴とするアレイ。
  52. 請求項48に記載のアレイで、マイクロアレイであることを特徴とするアレイ。
  53. 請求項48に記載のアレイで、前記のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの最初の配列を含むヌクレオチド分子にハイブリダイズした前記の標的ポリヌクレオチドを有することを特徴とするアレイ。
  54. 請求項48に記載のアレイで、リンカーが少なくとも1つの前記のヌクレオチド分子と前記の固体基板を連結していることを特徴とするアレイ。
  55. 請求項48に記載のアレイで、基板上の固有の物理的位置の各々が複数のヌクレオチド分子を含み、任意の単一の固有の物理的位置でのその複数のヌクレオチド分子は同一の配列を有し、基板上の固有の物理的位置の各々は、基板上の別の固有の物理的位置でのヌクレオチド分子の配列とは異なる配列を有するヌクレオチド分子を含むことを特徴とするアレイ。
  56. SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  57. SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  58. SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  59. SEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  60. SEQ ID NO:5のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  61. SEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  62. SEQ ID NO:7のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  63. SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  64. SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  65. SEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  66. SEQ ID NO:11のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  67. SEQ ID NO:12のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  68. SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  69. SEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  70. SEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  71. SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  72. SEQ ID NO:17のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  73. SEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  74. SEQ ID NO:19のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  75. SEQ ID NO:20のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  76. SEQ ID NO:21のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  77. SEQ ID NO:22のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  78. SEQ ID NO:23のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  79. SEQ ID NO:24のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  80. SEQ ID NO:25のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  81. SEQ ID NO:26のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  82. SEQ ID NO:27のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  83. SEQ ID NO:28のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  84. SEQ ID NO:29のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  85. SEQ ID NO:30のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  86. SEQ ID NO:31のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  87. SEQ ID NO:32のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  88. SEQ ID NO:33のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  89. SEQ ID NO:34のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  90. SEQ ID NO:35のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  91. SEQ ID NO:36のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  92. SEQ ID NO:37のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  93. SEQ ID NO:38のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  94. SEQ ID NO:39のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  95. SEQ ID NO:40のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  96. SEQ ID NO:41のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  97. SEQ ID NO:42のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  98. SEQ ID NO:43のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  99. SEQ ID NO:44のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  100. SEQ ID NO:45のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  101. SEQ ID NO:46のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  102. SEQ ID NO:47のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  103. SEQ ID NO:48のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  104. SEQ ID NO:49のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  105. SEQ ID NO:50のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  106. SEQ ID NO:51のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  107. SEQ ID NO:52のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
JP2002592453A 2001-05-18 2002-05-16 受容体と膜結合タンパク質 Pending JP2005514903A (ja)

Applications Claiming Priority (7)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US29219701P 2001-05-18 2001-05-18
US29701201P 2001-06-08 2001-06-08
US30058201P 2001-06-21 2001-06-21
US30049501P 2001-06-22 2001-06-22
US30199201P 2001-06-28 2001-06-28
US34054201P 2001-12-14 2001-12-14
PCT/US2002/015899 WO2002094990A2 (en) 2001-05-18 2002-05-16 Receptors and membrane-associated proteins

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2005514903A true JP2005514903A (ja) 2005-05-26

Family

ID=27559612

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002592453A Pending JP2005514903A (ja) 2001-05-18 2002-05-16 受容体と膜結合タンパク質

Country Status (6)

Country Link
US (1) US20050033018A1 (ja)
EP (1) EP1572875A2 (ja)
JP (1) JP2005514903A (ja)
AU (1) AU2002309970A1 (ja)
CA (1) CA2447338A1 (ja)
WO (1) WO2002094990A2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2011049207A1 (ja) * 2009-10-23 2011-04-28 国立大学法人京都大学 モヤモヤ病関連遺伝子及びその利用

Families Citing this family (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CA2432715A1 (en) * 2000-12-21 2002-07-04 Mochida Pharmaceutical Co., Ltd. Novel atopic dermatitis-associated gene and proteins
US7504222B2 (en) * 2001-10-31 2009-03-17 Millennium Pharmaceuticals, Inc. Compositions, kits, and methods for identification, assessment, prevention, and therapy of breast cancer
AU2003241037A1 (en) * 2002-06-08 2003-12-22 Astrazeneca Ab Methods for the detection of polymorphisms in human gpr50
JP2004290170A (ja) * 2002-08-02 2004-10-21 Takeda Chem Ind Ltd 疾患関連遺伝子の用途
GB0306185D0 (en) * 2003-03-19 2003-04-23 Astrazeneca Ab Molecules
US20070141581A1 (en) * 2005-12-15 2007-06-21 University Of North Texas Health Science Center At Fort Worth Membrane androgen receptor as a therapeutic target for the prevention/promotion of cell death
US7723300B2 (en) * 2006-04-05 2010-05-25 University Of Connecticut Regulators of the non-genomic action of progesterone and methods of use
US8252532B2 (en) * 2006-04-05 2012-08-28 University Of Connecticut Regulators of the non-genomic action of progesterone and methods of use
CN113584145A (zh) * 2021-06-09 2021-11-02 广东省妇幼保健院 检测pgrmc1含量的试剂在制备诊断和预测多囊卵巢综合征的试剂盒中的应用

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2011049207A1 (ja) * 2009-10-23 2011-04-28 国立大学法人京都大学 モヤモヤ病関連遺伝子及びその利用
JP5854423B2 (ja) * 2009-10-23 2016-02-09 国立大学法人京都大学 モヤモヤ病関連遺伝子及びその利用

Also Published As

Publication number Publication date
CA2447338A1 (en) 2002-11-28
EP1572875A2 (en) 2005-09-14
US20050033018A1 (en) 2005-02-10
AU2002309970A1 (en) 2002-12-03
AU2002309970A8 (en) 2006-11-02
WO2002094990A2 (en) 2002-11-28
WO2002094990A3 (en) 2006-02-02

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2004523203A (ja) Gタンパク質結合受容体
JP2005508631A (ja) 受容体および膜結合タンパク質
JP2003527107A (ja) Gタンパク質結合受容体
JP2004516817A (ja) Gタンパク質共役受容体
JP2004517604A (ja) Gタンパク質結合受容体
JP2004516812A (ja) 受容体
WO2003048305A2 (en) Receptors and membrane-associated proteins
JP2004513614A (ja) Gタンパク質結合受容体
US7378492B2 (en) CD40-related receptor that binds CD40L
JP2005514903A (ja) 受容体と膜結合タンパク質
JP2004530409A (ja) 膜貫通タンパク質
JP2005512512A (ja) 分泌タンパク質
JP2004515215A (ja) Gタンパク質結合受容体
JP2004528007A (ja) Gタンパク質共役受容体
JP2005503111A (ja) Gタンパク質共役受容体
JP2004537283A (ja) 輸送体及びイオンチャネル
JP2005500008A (ja) 受容体および膜結合タンパク質
WO2003025130A2 (en) Receptors and membrane-associated proteins
JP2004523236A (ja) 神経伝達関連タンパク質
JP2005503790A (ja) 輸送体及びイオンチャネル
JP2005504503A (ja) 受容体および膜関連タンパク質
US20040097707A1 (en) Receptors and membrane-associated proteins
JP2004532630A (ja) Gタンパク質共役受容体
JP2005500037A (ja) Gタンパク質共役受容体
JP2005507239A (ja) 分泌タンパク質