JP2005503790A - 輸送体及びイオンチャネル - Google Patents

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Abstract

本発明の種々の実施例はヒト輸送体およびイオンチャネル(TRICH)、並びにTRICHを同定し、コードするポリヌクレオチドを提供する。本発明の実施例はまた、発現ベクター、宿主細胞、抗体、アゴニストおよびアンタゴニストをも提供する。他の実施例はTRICHの異常発現に関連する疾患を診断、治療または予防する方法を提供する。

Description

【技術分野】
【0001】
本発明は新規な核酸、これらの核酸によってコードされる輸送体およびイオンチャネルに関する。またこれらの核酸およびタンパク質の、輸送障害、神経疾患、筋疾患、免疫疾患および細胞増殖異常の診断、治療および予防における利用に関する。本発明はまた、外因性化合物の核酸、輸送体およびイオンチャネルの発現に対する作用のアセスメントに関する。
【背景技術】
【0002】
真核細胞は、殆どの極性分子にとって高度に非浸透性であるような疎水性脂質二重層膜に囲まれ、この膜によって機能的に異なるオルガネラに細区画される。細胞及びオルガネラは、必須栄養素及び、K+、NH4 +、Pi、SO4 2-を含む金属イオン、糖、ビタミン及び種々の代謝廃棄物を移出入するための輸送タンパク質を必要とする。輸送タンパク質は、抗生物質抵抗性、毒素分泌、イオンバランス、シナプス神経伝達、腎機能、腸管吸収、腫瘍成長及びその他の多様な細胞機能においても役割を果たす(Griffith, J.及びC. Sansom (1998) The Transporter Facts Book. Academic Press, San Diego CA, 3-29)。輸送は、受動的な濃度依存メカニズムによって起こるか、或いはATP加水分解またはイオン勾配などのエネルギー源に関連し得る。輸送で機能するタンパク質には、キャリアータンパク質及びチャネルタンパク質がある。キャリアータンパク質は、特定の溶質に結合して、あるコンフォメーションの変化を起こし、その変化によって結合した溶質が膜を通過できるようにする。チャネルタンパク質は、特定の溶質が電気化学的溶質勾配に従って膜を通過して拡散することができるような疎水性ポアを形成する。
【0003】
膜の一方の側から他方の側へ単一溶質を輸送するキャリアタンパク質をユニポーターと呼ぶ。対照的に、共役輸送体は、1つの溶質の移動を第2溶質の移動に連結させ、その移動は同時または順次に起こるかのいずれかであり、移動の方向は同一方向(シンポート)または逆方向(アンチポート)のいずれかである。例えば、腸管及び腎臓の上皮は、原形質膜内外のナトリウム勾配によって駆動される種々のシンポーター系を含む。ナトリウムは、電気化学勾配に従って細胞内に移動し、その移動と共に溶質を細胞内に運ぶ。溶質を取り込むための駆動力を供給するナトリウム勾配は、遍在性のNa+/K+ ATP分解酵素系によって維持される。ナトリウム共役輸送体には、哺乳動物グルコース輸送体(SGLT1)、ヨウ化物輸送体(NIS)及びマルチビタミン輸送体(SMVT)がある。3つの輸送体はすべて、12個の推定上の膜貫通セグメント、細胞外グリコシル化部位、並びに細胞質内側にあるN末端及びC末端を有する。NISは、放射性ヨウ素甲状腺イメージング技術及び甲状腺への放射性同位元素の特異的ターゲッティングの分子的基礎であるため、種々の甲状腺病理の評価、診断及び治療において重大な役割を果たす(Levy, O. 他(1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:5568-5573)。SMVTは、腸管粘膜、腎臓及び胎盤において発現され、ビオチンやパントテン酸などの水溶性ビタミンの輸送に関与していると考えられる(Prasad, P. D. 他 (1998) J. Biol. Chem. 273:7501-7506)。
【0004】
MFS(major facilitator superfamily)は、輸送体の最大ファミリーの1つであり、ユニポーター−シンポーター−アンチポーターファミリーとも呼ばれる。MFS輸送体は、イオン勾配に応じて小溶質を輸送する、単一ポリペプチドキャリアである。MFSのメンバーは、すべてのクラスの生物に見られ、糖、オリゴ糖、リン酸、硝酸、ヌクレオシド、モノカルボン酸及び薬剤のための輸送体を含む。真核生物に見られるMFS輸送体はすべて12個の膜貫通セグメントを含む構成となっている(Pao, S. S. 他 (1998) Microbiol. Molec. Biol. Rev. 62:1-34)。MFS輸送体の最大のファミリーは糖輸送体ファミリーであり、ヒトに見られるような、グルコース及びその他の六炭糖の輸送に必要な7つのグルコース輸送体(GLUT1〜GLUT7)を含む。これらのグルコース輸送タンパク質は、独自の組織分布及び生理学的機能を有する。GLUT1は、基底板でのグルコース要求を有する多くの細胞型に提供して、上皮及び内皮の障壁組織を通ってグルコースを輸送し、GLUT2はグルコースの取り込みまたは肝臓からの流出を促進し、GLUT3はニューロンへのグルコースの供給を調整し、GLUT4はインシュリンによって調整されるグルコース分解に関与し、GLUT5は骨格筋へのフルクトースの取り込みを調節する。グルコース輸送体の欠陥は、最近同定された神経症候群であって、グリコーゲン貯蔵病、ファンコーニ−ビッケル症候群、及び非インスリン依存糖尿病のみならず、乳幼児けいれん及び発達遅滞の原因となるような神経症候群に関与している(Mueckler, M. (1994) Eur. J. Biochem. 219:713-725、Longo, N. および L. J. Elsas (1998) Adv. Pediatr. 45:293-313)。
【0005】
モノカルボン酸アニオン輸送体は、L-乳酸、ピルビン酸及びケトン体アセテート、アセトアセテート及びβヒドロキシ酪酸を含む広範な基質特異性を有するプロトン共役シンポーターである。これまでに少なくとも7つのアイソフォームが同定されている。アイソフォームは、TM6とTM7との間に大きな細胞内ループを有する12個の膜貫通(TM)らせん状ドメインを有し、解糖中に乳酸と共に化学量論的に生成されるプロトンを除去することにより、細胞内pHを維持する際に重要な役割を果たすと推定されている。最も良く特徴付けられたH+ モノカルボン酸輸送体は、L-乳酸と広範囲の他の脂肪族モノカルボン酸を輸送する赤血球膜の輸送体である。その他の細胞は、異なる基質及び抑制因子選択性を有するH+共役モノカルボン酸輸送体を含む。特に心筋及び腫瘍細胞は、或る基質に対するKm値(D-乳酸よりL-乳酸を選択する立体化学的選択性を含む)及び抑制因子に対する感受性が異なる輸送体を有する。腸管及び腎臓上皮の管腔表面にNa+ モノカルボン酸共輸送体があり、それによってこれらの組織における乳酸、ピルビン酸及びケトン体の取り込みが可能になる。更に、腎臓、腸及び肝臓を含む器官に、有機カチオン及び有機アニオンのための特異的且つ選択的な輸送体がある。有機アニオン輸送体は、電子求引性側鎖を有する疎水性、荷電分子に選択的である。アンモニウム輸送体などの有機カチオン輸送体は、種々の薬剤及び内因性代謝産物の分泌を媒介し、細胞内pHの維持に寄与する(Poole, R. C. 及び A. P. Halestrap (1993) Am. J. Physiol. 264 : C761-C782、Price, N. T. 他 (1998) Biochem. J. 329 : 321-328、Martinelle, K. 及び I. Haggstrom (1993) J. Biotechnol. 30 : 339-350)。
【0006】
ATP結合カセット(ABC)輸送体は、イオン、糖、アミノ酸、ペプチド、リン脂質のような小分子からリポペプチド、大タンパク質、及び複合体疎水性薬剤までに及ぶ基質を輸送するような、膜タンパク質のスーパーファミリーのメンバーである。ABC輸送体は、4つのモジュール即ち2つのヌクレオチド結合ドメイン(NBD)及び2つの膜貫通ドメイン(MSD)を含む。NBDは、ATPを加水分解して輸送に必要なエネルギーを供給し、各MSDは、推定上の6つの膜貫通セグメントを含む。これら4つのモジュールは、単一の遺伝子または別々の遺伝子によりコードし得る。 単一の遺伝子によりコードし得るのは、嚢胞性繊維症膜貫通伝導調節因子(CFTR)に対する場合などである。別々の遺伝子にコードされる場合には、各遺伝子産物には1つのNBD及び1つのMSDが含まれる。これらの「半分子」は、小胞体での主要組織適合複合体(MHC)ペプチド輸送系であるTap1及びTap2などのホモ及びヘテロ二量体を形成する。幾つかの遺伝病は、ABC輸送体の欠陥に起因する。疾患及びそれに対応するタンパク質の例としては、嚢胞性繊維症(CFTR、イオンチャネル)、副腎白質ジストロフィー(副腎白質ジストロフィータンパク質、ALDP)、ツェルヴェーガー症候群(ペルオキシソームの膜タンパク質-70、PMP70)及び高インシュリン性低血糖症(スルホニル尿素受容体、SUR)がある。別のABC輸送体である多剤耐性(MDR)タンパク質がヒトの癌細胞において過剰発現すると、化学療法に用いられる種々の細胞毒性薬剤に対して細胞が耐性を有する(Taglicht, D. および S. Michaelis (1998) Meth. Enzymol. 292 : 130-162)。
【0007】
鉄、亜鉛、銅、コバルト、マンガン、モリブデン、セレン、ニッケル、クロムなどの多数の金属イオンは、多数の酵素に対する補助因子として重要である。例えば銅は、スーパーオキシドジスムターゼ、フェロキシダーゼ(セルロプラスミン)およびリジルオキシダーゼ等の酸化還元酵素の補因子として作用することによって、ヘモグロビン合成、結合組織の代謝および骨の発達に関与している。銅およびその他の金属イオンは食餌で摂取する必要があり、胃腸管の輸送体によって吸収される。血漿タンパク質は、金属イオンを肝臓及びその他の標的器官へ輸送し、ここで特異輸送体が必要に応じてイオンを細胞及び細胞のオルガネラに移動させる。金属イオンでの代謝の不均衡は、多数の疾患状態に関連付けされている(Danks, D. M. (1986) J. Med. Genet. 23 : 99-106)。
【0008】
原形質膜を通過する脂肪酸の輸送は、高容量で低親和性プロセスである拡散により起こる。しかしながら、通常の生理学的条件下では、脂肪酸輸送の内の有意の割合が高親和性、低容量のタンパク質媒介輸送プロセスによって起こっているように見える。脂肪酸輸送タンパク質(FATP)は、4つの膜貫通セグメントを有する膜内在性タンパク質であり、筋肉、心臓及び脂肪などの、高レベルの原形質膜脂肪酸流入を示す組織において発現される。FATPの発現は、脂肪変換中に3T3-L1細胞において上方制御され、COS7線維芽細胞における発現は、長鎖脂肪酸の取り込みを増加させる(Hui, T. Y. 他(1998) J. Biol. Chem. 273:27420-27429)。
【0009】
リポカリンスーパーファミリは、小さな疎水性分子に結合して輸送する細胞外リガンド結合タンパク質として機能する40以上のタンパク質群であり、系統的に保存されている。このファミリのメンバーはレチノイド、臭気物質、発色団、フェロモン、アレルゲンおよびステロールのキャリアーとして機能し、また栄養輸送、細胞成長調節、免疫応答、およびプロスタグランジン合成を含むさまざまなプロセスにおいて機能する。これらのタンパク質のあるサブセットは、多機能で、生合成酵素または特異的酵素インヒビターとしての役割を果たしている可能性がある(Tanaka, T. 他 (1997) J. Biol. Chem. 272:15789-15795; および van't Hof, W. 他(1997) J. Biol. Chem. 272:1837-1841)。
【0010】
リポカリンのファミリのメンバーは、異常に低い全体的な配列保存レベルを示す。ペアワイズの配列同一性はしばしば20%以下に落ちる。ファミリメンバー間の配列類似性は、ジスルフィド結合を形成する保存されたシステイン、および標的細胞認識部位として機能する並列クラスターを形成する3つのモチーフに限定されている。リポカリン類は1枚の8本鎖逆平行βシートを共有する。このシートはそれ自体が折れ曲がることにより、連続的に水素結合したβバレルを形成する。このバレルが形成するポケットは、内部リガンド結合部位として機能する。7つのループ(L1〜L7)は短いβヘアピン群を形成するが、ループL1のみは大きなオメガループであって蓋を形成し、この内部リガンド結合部位を部分的に閉鎖する(Flower (1996) Biochem. J. 318:1-14)。
【0011】
リポカリンは重要な輸送分子である。各リポカリンは、特定のリガンドと会合して、そのリガンドを生物体の中の適切な標的部位に送達する。最もよく研究されたリポカリンの一つであるレチノール結合タンパク質(RBP)は、肝臓内の貯蔵場所からレチノールを標的組織に輸送する。アポリポプロテインD(アポD)は高密度リポプロテイン(HDL)と低密度リポプロテイン(LDL)のコンポーネントであり、全身のコレステロールの標的を特定した収集と送達の役割を果たす。リポカリンは細胞の調節過程にも関与する。アポDは巨視的(グロス)嚢胞性疾患液タンパク質(GCDFP)24と同じもので、乳房の嚢胞液内に高レベルで発現するプロゲステロン/プレグネノロン結合タンパク質である。数種のヒト乳癌細胞株におけるアポDの分泌は、細胞増殖の低減および、細胞の、より分化した表現型への進行を伴う。同様に、アポDと他のリポカリンであるα1-酸糖タンパク質 (AGP)は神経細胞再生に関与している。AGPは、また、抗炎症活性および免疫抑制活性にも関与する。AGPは、ポジティブな急性期タンパク質(APP)の1種であり、AGPの循環レベルの増加は、ストレスおよび炎症の刺激に応答して起こる。AGPは炎症部位に蓄積し、血小板と好中球の活性化を阻害し、食細胞活動を阻害する。AGPの免疫調節特性はグリコシル化に起因している。AGPは40%が糖質であるため、異常に酸性で可溶性である。AGPのグリコシル化パターンは急性期反応中に変化し、脱グリコシル化されたAGPは免疫抑制活性を持っていない(Flower (1994) FEBS Lett. 354:7-11; Flower (1996) 前出)。
【0012】
リポカリンスーパーファミリにはまた、いくつかの動物アレルゲンが含まれる。例えばマウス主要尿タンパク質(mMUP)、ラットα-2-ミクログロブリン (rA2U) 、ウシβ-ラクトグロブリン (βlg) 、ゴキブリのアレルゲン (Bla g4) 、ウシふけ(dander)アレルゲン (Bos d2) 、および、主要なウマのアレルゲンであるEquus caballus アレルゲン 1 (Equ c1)を含むEqu c1は、慢性的にウマのアレルゲンに曝される患者の抗ウマIgE抗体反応の原因の約80%を占める強力なアレルゲンである。リポカリンはIgE反応を誘発する能力を持った共通の構造を持っているように見える(Gregoire, C. 他,(1996) J. Biol. Chem. 271:32951-32959)。
【0013】
リポカリン類は、診断マーカーおよび予後マーカーとして、多様な病態において用いられる。AGPの血漿レベルの測定は、妊娠時や、以下の状況での診断と予後診断とにおいてなされる。すなわち例えば癌化学療法、腎臓機能障害、心筋梗塞、関節炎、および多発性硬化症などを含む状況である。RBPは、腎臓の尿細管再吸収のマーカーとして臨床的に用いられる。またアポDは粗大嚢胞性乳房疾患(gross cystic breast disease)のマーカーである(前出のFlower (1996))。さらに、リポカリン動物アレルゲンの使用は、ウマ(前出のGregoire)、ブタ、ゴキブリ、マウスおよびラットへのアレルギー反応の診断に役立つ可能性がある。
【0014】
ミトコンドリアキャリアタンパク質は、サイトゾル及びミトコンドリア基質の間でイオン及び荷電代謝産物を輸送する膜貫通タンパク質である。例として、ADPキャリアタンパク質、ATPキャリアタンパク質、2-オキソグルタル酸/リンゴ酸キャリア、リン酸キャリアタンパク質、ピルビン酸キャリア、ジカルボン酸キャリア(リンゴ酸、コハク酸、フマル酸及びリン酸を輸送する)、トリカルボン酸キャリア(クエン酸及びリンゴ酸を輸送する)、及びグレーブス病キャリアタンパク質(甲状腺機能亢進症の原因となる自己免疫異常である活性グレーブス病を患った患者のIgGにより認識されたタンパク質)がある。このファミリーのタンパク質は、約100アミノ酸ドメインの3つのタンデムリピートからなり、各タンデムリピートは2つの膜貫通領域を有する(Stryer, L. (1995) Biochemistrv, W. H. Freeman and Company, New York NY, 551ページ、PROSITE PDOC00189 Mitochondrial energy transfer proteins signature、Online Mendelian Inheritance in Man (OMIM) *275000 Graves Disease)。
【0015】
このクラスの輸送体には、またミトコンドリア脱共役タンパク質も含まれる。この脱共役タンパク質はミトコンドリア内膜でプロトンリークを起こさせ、酸化的リン酸化をATP合成から脱共役させる。結果として、熱の形態でのエネルギー散逸が起こる。ミトコンドリア脱共役タンパク質は、温度調節及び代謝率のモジュレーターとして意味づけられ、肥満症などの代謝病に対する薬剤の潜在的標的として提案されてきた(Ricquier, D. 他 (1999) J. Int. Med. 245:637-642)。
【0016】
イオンチャネル
細胞の電位は、原形質膜を通過するイオンの動きを制御することにより起こり、かつ維持される。イオンが動くためには、膜内にイオン選択性ポアを形成するようなイオンチャネルを必要とする。イオンチャネルには2つの基本型があり、それはイオン輸送体とゲート型イオンチャネルである。イオン輸送体は、ATP加水分解から得られるエネルギーを利用して、イオンの濃度勾配に逆らってイオンを能動的に輸送する。ゲート型イオンチャネルは、制限された条件下でイオンの電気化学勾配に従ってイオンの受動的流動を起こさせる。これらのタイプのイオンチャネルは共に、1)神経細胞の軸索に沿った電気インパルス伝導、2)濃度勾配に逆らった細胞内への分子の輸送、3)筋収縮の開始、及び4)内分泌細胞の分泌に用いられるような電気化学勾配を、発生させ、維持し、利用する。
【0017】
イオン輸送体
イオン輸送体は、細胞の静止電位を発生させ及び維持する。ATP加水分解に由来するエネルギーを利用して、イオン輸送体は、イオンの濃度勾配に逆らってイオンを輸送する。これらの膜貫通ATPアーゼは、3つのファミリーに区分される。リン酸化(P)クラスイオン輸送体には、Na+/K+ATPアーゼ、Ca2+ATPアーゼ及びH+ATPアーゼがあり、リン酸化イベントによって活性化される。Pクラスイオン輸送体は、Na+及びCa2+のサイトゾル内濃度が低く、K+のサイトゾル内濃度が高くなるように静止電位での分布を維持するのに関与している。液胞(V)クラスのイオン輸送体には、リソソーム及びゴルジなどの細胞内オルガネラ上のH+ポンプがある。オルガネラの内腔内では低いpHが、その機能に必要であり、Vクラスイオン輸送体は、その低pHを発生させるのに関与している。共役因子(F)クラスは、ミトコンドリアのH+ポンプから構成される。Fクラスイオン輸送体は、プロトン勾配を利用してADP及び無機リン酸(Pi)からATPを生成する。
【0018】
P-ATP分解酵素は、イオン結合で役割を果たし得るような、10個の膜貫通ドメイン及び幾つかの大きな細胞質内領域を有する100kD サブユニットの六量体である(Scarborough, G. A. (1999) Curr. Opin. Cell Biol. 11:517-522)。V-ATPアーゼは、2つの機能的ドメインから構成される。V1ドメインは、ATPアーゼに関与する周辺複合体であり、V0ドメインは、プロトンの膜通過移動に関与する、膜内在性の複合体である。F-ATPアーゼは、構造的及び進化的にV-ATPアーゼに関連する。F-ATPアーゼのF0ドメインは、12個のコピーのcサブユニットを含んでおり、各サブユニットは高度に疎水性のタンパク質で、2つの膜貫通ドメインから成り、プロトン輸送に不可欠なTM2に1つの埋没されたカルボキシル基を含む。V-ATPアーゼのV0ドメインは、TM4またはTM3に4つまたは5つの膜貫通ドメイン及び必須カルボキシル基を有する3つの型の相同cサブユニットを含む。複合体の両型は、活性のpH依存性の制御に関与している可能性のある単一サブユニットも含む(Forgac, M. (1999) J. Biol. Chem. 274:12951-12954)。
【0019】
細胞の静止電位は、キャリアタンパク質及びゲート型イオンチャネルに関連する多くのプロセスに利用される。キャリアタンパク質は、静止電位を利用して分子を細胞内外に輸送する。多くの細胞へのアミノ酸及びグルコースの輸送は、ナトリウムイオン共輸送(シンポート)にカップルされ、Na+の電気化学勾配に従った動きが他の分子を濃度勾配に逆らって輸送させる。同様にして、心筋は、細胞からのCa2+の移動を細胞内へのNa+の輸送にカップルさせる(アンチポート)。
【0020】
イオンチャネル
イオンチャネルは、ポアの開閉を調節することによってイオンの流れを制御する。種々のゲーティング機構によってイオン流速を制御する能力は、ニューロン及び内分泌シグナル伝達、筋収縮、受精並びに、イオン及びpHバランスの調整などの多様なシグナル伝達及び恒常性機能をイオンチャネルに媒介させ得る。イオンチャネルは、開口機能の制御方法に応じて区分される。機械依存性チャネルは、機械的応力に応じてポアを開け、電位依存性チャネル(例えばNa+、K+、Ca2+ 及びCl- チャネル)は膜電位に応じてポアを開け、リガンド依存性チャネル(例えばアセチルコリン依存性、セロトニン依存性、及びグルタミン依存性カチオンチャネル、並びにGABA依存性及びグリシン依存性クロライドチャネル)は、特定のイオン、ヌクレオチドまたは神経伝達物質の存在下でポアを開ける。特定のイオンチャネルの開口特性(即ち開閉に対するその閾値及び持続時間)は、補助チャネルタンパク質及び/またはリン酸化などの翻訳後修飾と関連して時折調節される。
【0021】
機械依存性または機械刺激イオンチャネルは、触覚、聴覚及び平衡感覚のトランスデューサとして作用し、細胞容積調整、平滑筋収縮及び心リズム生成においても重要な役割を果たす。機械受容不活性化チャネル(SIC)は、最近ラットの腎臓からクローニングされた。SICチャネルは、細胞膜への圧力またはストレスによって活性化され、Ca2+及びNa+を共に伝導するようなあるグループのチャネルに属している(Suzuki, M. 他(1999) J. Biol. Chem. 274:6330-6335)。
【0022】
電位依存性カチオンチャネルのポア形成サブユニットは、イオンチャネルタンパク質のスーパーファミリーを形成する。チャネルタンパク質の特徴的なドメインには、6つの膜貫通ドメイン(S1〜S6)、S5とS6との間に配置されたポア形成領域(P)及び、細胞内にあるアミノ末端及びカルボキシ末端がある。Na+ 及びCa2+ サブファミリーでは、このドメインは4回繰り返され、Kチャネルサブファミリーでは、各チャネルは、同一または非類似のいずれかであるサブユニットの四量体から形成される。P領域は、チャネルに対するイオン選択性を特定する情報を含む。K+チャネルの場合、GYGトリペプチドがこの選択性に関与する(Ishii, T. M. 他 (1997) (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:11651-11656)。
【0023】
電位依存性Na+ 及びK+ チャネルは、神経及び筋肉細胞などの電気的興奮性細胞の機能に必要である。活動電位は、神経伝達物質放出及び筋収縮の原因となるものであるが、Na+及びK+ イオンへの膜の浸透性における大きな一過的変化から生じる。閾値レベルを超えた膜の脱分極によって、電位依存性Na+ チャネルが開く。ナトリウムイオンは、細胞内に流れ、更に膜を脱分極してより多く電位依存性Na+チャネルを開き、このようにして脱分極が細胞に沿って伝わっていく。脱分極はまた、電位依存性カリウムチャネルを開く。結果として、カリウムイオンは外向きに流れ、それによって膜の再分極が生じる。電位依存性チャネルは、第4膜貫通セグメント(S4)において荷電した残基を利用して電圧変化を検出する。開状態は、約1ミリ秒しか持続せず、その約1ミリ秒後に、チャンネルは膜電位と無関係に開き得ない不活性化状態に自発的に変換する。不活性化は、ポアを閉じるプラグとして作用するようなチャネルのN末端によって媒介される。不活性化状態から閉状態へ遷移するには、静止電位に戻すことが必要である。
【0024】
電位依存性Na+ チャネルは、260 kDaのポアを形成するαサブユニットから構成されるヘテロ三量体の複合体である。このαサブユニットは2つの更に小さな補助サブユニットであるβ1及びβ2と会合している。β2サブユニットは、細胞外Igドメインを含む膜内在性糖タンパク質であり、そのα及びβ1サブユニットとの会合は、チャネルの機能的発現の増加、そのゲーティング特性の変化、及び膜表面面積の増加による全細胞キャパシタンスの増加と相関する(Isom, L. L. 他 (1995) Cell 83: 433-442)。
【0025】
非電位依存性Na+ チャネルには、アミロライド感受性Na+ チャネル/degenerin(NaC/DEG)ファミリーのメンバーが含まれる。このファミリーのチャネルサブユニットは、アミノ末端及びカルボキシル末端が細胞内にあり、長い細胞外ループに隣接する2つの膜貫通ドメインを含むと考えられる。NaC/DEGファミリーには、気道、遠位結腸、腎臓の皮質集合管及び外分泌有導管腺(exocrine duct glands)を含む上皮におけるNa+ 再吸収に関与する上皮性Na+ チャネル(EnaC)がある。EnaCにおける突然変異は、1型偽性低アルドステロン症及びリドル症候群(偽性高アルドステロン症)を引き起こす。NaC/DEGファミリーには、最近特徴付けられたH+ 依存性カチオンチャネルまたは酸感受性イオンチャネル(ASIC)もある。ASICサブユニットは、脳で発現し、ヘテロ多量体のNa+ 透過性チャネルを形成する。これらのチャネルは、活性化のために酸性pH変動を必要とする。ASICサブユニットは、元々は線虫から単離された機械刺激依存性チャネルのファミリーであるdegenerinとの相同性を示す。degenerinでの突然変異は、神経変性を引き起こす。組織アシドーシスが痛みを発生させるものであるので、ASICサブユニットは、神経機能または痛みの知覚においても役割を有し得る(Waldmann, R.およびM. Lazdunski (1998) Curr. Opin. Neurobiol. 8 : 418-424、Eglen, R. M. 他 (1999) Trends Pharmacol. Sci. 20:337-342)。
【0026】
K+ チャネルはすべての細胞種に存在し、電圧、ATP濃度、またはCa2+ 及びcAMPなどのセカンドメッセンジャーによって制御され得る。非興奮性組織では、K+ チャネルが、タンパク質合成、内分泌性分泌の制御、及び、膜内外の浸透平衡の維持に関与している。ニューロン及びその他の興奮性細胞では、活動電位の調整及び膜の再分極に加えて、K+ チャネルが静止膜電位の設定に関与する。サイトゾルは、非拡散性アニオンを含み、この負の電荷総ての平衡を保持するために、細胞にはNa+、K+ 及びCl- の再分布を提供するNa+/K+ ポンプ及びイオンチャネルが含まれる。ポンプは、能動的にNa+ を細胞外へ輸送し、K+ を細胞内に輸送され、そのNa+:K+ の割合は3:2である。原形質膜のイオンチャネルは、K+ 及びCl- が受動的な拡散により流出入することを許容する。サイトゾル内の電荷が高度に負であるので、Cl- は細胞外に流出する。K+ の流れは、K+ を細胞内に引き込む起電力及びK+ を細胞外に押し出すK+濃度勾配によって均衡が保たれる。従って、静止膜電位は、主としてK+ の流れによって調整される(Salkoff, L. および T. Jegla (1995) Neuron 15:489-492)。
【0027】
Shaker様スーパーファミリーのカリウムチャネルサブユニットはすべて6つの膜貫通ドメイン/1つのポアドメイン構造の特徴を有する。4つのサブユニットは、ホモ四量体またはヘテロ四量体として結合し、機能的Kチャネルを形成する。これらのポア形成サブユニットは、チャネル不活性化動態を変容させるような種々の細胞質βサブユニットとも会合している。Shaker様チャネルファミリーには、QT延長症(1種の心律動異常症候群/不整脈)に関連するようなヒトether-a-go-go関連遺伝子(HERG)などの遅延整流型(delayed rectifier type)チャネルや、電位依存性K+チャネルがある(Curran, M. E. (1998) Curr. Opin. Biotechnol. 9:565-572、Kaczarowski, G. J. および M. L. Garcia (1999) Curr. Opin. Chem. Biol. 3:448-458)。
【0028】
K+ チャネルの第2のスーパーファミリーは、内向き整流型チャネル(Kir)で構成される。Kirチャネルは、優先的にK+ の流れを内向きに導く特性を有する。これらのタンパク質は、1つのカリウム選択性ポアドメイン及び2つの膜貫通ドメインから構成され、これらは電位依存性K+チャネルの第5及び第6膜貫通ドメインに対応する。Kirサブユニット群は、四量体としても会合している。Kirファミリーには、腎尿細管疾患のバーター症候群の原因となる突然変異であるROMK1がある。Kirチャネルは、心臓ペースメーカー活動の調整、発作及びてんかん、並びにインシュリン調整にも関与している(Doupnik, C. A. 他 (1995) Curr. Opin. Neurobiol. 5:268-277; Curran、前出)。
【0029】
最近認識されたTWIK K+ チャネルファミリーには、哺乳類のTWIK-1、TREK-1及びTASKタンパク質がある。このファミリーのメンバーは、4つの膜貫通ドメイン及び2つのPドメインを含む全体構造を有する。これらのタンパク質は、おそらく多くの細胞種における静止電位の制御に関与している(Duprat, F. 他 (1997) EMBO J 16:5464-5471)。
【0030】
電位依存性Ca2+ チャネルは、電気生理学的特性及び薬理学的特性に基づき、幾つかのサブタイプに区分分けされてきた。L型Ca2+ チャネルは、心筋及び骨格筋に主に発現し、興奮収縮連関において不可欠な役割を果たす。T型チャネルは、心臓ペースメーカー活動に重要であり、N型及びP/Q型チャネルは、中枢神経系及び抹消神経系における神経伝達物質放出の制御に関与している。L型及びN型電位依存性Ca2+ チャネルは精製されており、両チャネルは機能が非常に異なるが、類似のサブユニット組成を有する。両チャネルは、3つのサブユニットを含む。 αサブユニットは膜の細孔および電位センサーを形成し、他方、αδサブユニットとβサブユニットは電位依存、ゲート開閉特質およびチャネルの電流振幅を変調する。 4番目のサブユニットのγは骨格筋において同定されている(Walker, D. 他(1998) J. Biol. Chem. 273:2361-2367; McCleskey, E.W. (1994) Curr. Opin. Neurobiol. 4:304-312)。
【0031】
生化学的特性が研究されてきた高電位活性化Ca 2+ チャネルには、約190〜250 kDaのポア形成アルファ1サブユニットの複合体、アルファ2およびデルタサブユニットの膜貫通複合体、細胞内ベータサブユニット、および場合によっては膜貫通ガンマサブユニットを含む。さまざまなα1サブユニット、α2δ複合体、βサブユニットおよびγサブユニットが知られている。α1サブユニットのCav1ファミリはLタイプCa 2+ 電流を流し、それによって筋肉の収縮、内分泌および遺伝子の転写が始まる。LタイプCa 2+ 電流の調節は主にセカンドメッセンジャー活性化タンパク質リン酸化経路によって行われる。α1サブユニットのCav2ファミリはNタイプ、P/QタイプおよびRタイプのCa 2+ 電流を流し、それによって急速なシナプス伝達が始まる。調節は主にGタンパク質およびSNAREタンパク質との直接の相互作用によって、そして補助的にタンパク質リン酸化によって行われる。α1サブユニットのCav3ファミリはTタイプのCa 2+ 電流を流すが、この活性化と不活性化は他のCa 2+ 電流タイプと比べてより速く起こり、またより負の膜電位で起こる。これら3つのファミリのCa 2+ チャネルの異なる構造と調節パターンにより、膜電位の変化に応答してさまざまなCa 2+ 流入経路が提供され、またセカンドメッセンジャー経路および相互作用するタンパク質によってCa 2+ の流入を調節するさまざまな可能性が提供される(Catterall, W.A. (2000) Annu. Rev. Cell Dev. Biol. 16:521-555)。
【0032】
電位依存性Ca 2+チャネルのα2サブユニットは1つ以上のCache ドメインを含んでいる可能性がある。細胞外Cacheドメインは、細胞内触媒ドメイン(ヒスチジンキナーゼ、PP2Cホスファターゼ、GGDEF(推定ジグアニレートシクラーゼ)、HD-GYP(推定ホスホジエステラーゼ)、またはアデニリルシクラーゼドメイン等)あるいは非触媒ドメイン(メチル受容DNA結合ウィング付きヘリックス・ターン・ヘリックス、GAF、PASまたはHAMP(istidine キナーゼ、デニリルシクラーゼ、エチル結合タンパク質、およびホスファターゼに見られるドメイン)等)に融合している可能性がある。小さな分子はCacheドメインを通じて結合し、このシグナルが細胞内ドメインに依存して多様な出力に変換される(Anantharaman, V. および Aravind, L.(2000) Trends Biochem. Sci. 25:535-537)。
【0033】
カルシウムイオンチャネルの過渡的な受容体ファミリ(Trp:transient receptor family)は容量性カルシウム流入(CCE)を媒介すると考えられている。CCEは、イノシトール三リン酸(IP3)や多くのホルモンや成長因子に応答する他の物質の作用によって消耗されるCa2+貯蔵を再供給するためのCa2+の細胞内への流入である。TrpとTrp様はまず、ショウジョバエ(Drosophila)からクローンされており、S3領域からS6領域まで電圧依存性Ca2+チャネルに類似性を有する。これはTrpおよび/または関連タンパク質が哺乳動物CCEチャネルを形成することを示唆する(Zhu, X. 他 (1996) Cell 85:661-671; Boulay, G. 他(1997) J. Biol. Chem. 272:29672-29680)。メラスタチン(melastatin)はマウスおよびヒトのどちらにも単離される遺伝子であり、黒色腫細胞でのメラスタチン発現は、生体内における黒色腫の侵襲性と逆相関している。このヒトcDNA転写物は、Trpファミリのメンバーに相同体を有する1533基のアミノ酸をもつタンパク質に相当する。メラスタチンmRNA発現状態と腫瘍の厚さを組み合わせて利用すると、転移性疾患の発症に対するリスクの低いグループと高いグループに患者のグループ分けを決定できる可能性が提示されている(Duncan, L.M. 他(2001) J. Clin. Oncol. 19:568-576)。
【0034】
クロライドチャネルは、内分泌性分泌及びサイトゾルオルガネラのpH 調整に必要である。分泌性上皮細胞では、Cl- はNa+/K+/Cl- 共輸送体によって側底膜を通過して細胞に入り、電気化学的平衡濃度以上で細胞内に蓄積する。ホルモンの刺激に応じて、頂側膜表面からのCl- を分泌することにより、Na+ 及び水が分泌性ルーメンに流入する。嚢胞性線維症膜通過伝導制御因子(CFTR)は、ヒトによく見られる致命的な遺伝病である嚢胞性繊維症のための遺伝子によってコードされるクロライドチャネルである。CFTRはABC輸送体ファミリーのメンバーであり、6つの膜貫通ドメインを各々有するような2つのドメインとその後に続くヌクレオチド結合部位から構成される。CFTR機能の損失は、経上皮水分泌を減少させ、結果的に、呼吸樹、膵管及び腸を被膜する粘液の層は、脱水されて、取り除くのが困難になる。結果的にこれらの部位が閉塞することにより、膵不全、「胎便性イレウス」及び悲惨な「慢性閉塞性肺疾患」を生じさせる(Al-Awqati, Q. 他 (1992) J. Exp. Biol. 172:245-266)。
【0035】
電位依存性クロライドチャネル(CLC)は、CBSドメインとして知られる2つの小球形ドメインの他に10〜12個の膜貫通ドメインによって特徴付けられる。CLCサブユニットは、おそらくホモ四量体として機能する。CLCタンパク質は、細胞容積、膜電位安定化、シグナル伝達及び経上皮輸送の調整に関与している。骨格筋で主に発現されるようなCLC-1の突然変異は、常染色体劣性全身性ミオトニー及び常染色体優性先天性ミオトニーの原因であり、腎臓チャネルCLC-5における突然変異は、腎臓結石を引き起こす(Jentsch, T. J. (1996) Curr. Opin. Neurobiol. 6 : 303-310)。
【0036】
リガンド依存性チャネルがポアを開くのは、細胞外または細胞内のメディエータがチャネルに結合する時である。神経伝達物質依存性チャネルは、神経伝達物質が細胞外ドメインに結合すると開くチャネルである。これらのチャネルは、神経または筋肉細胞のシナプス後膜に存在する。神経伝達物質依存性チャネルには、2つの型がある。ナトリウムチャネルは、アセチルコリン、グルタミン酸及びセロトニンなどの興奮性神経伝達物質に応じて開く。こうして開くことによって、Na+ の流入を引き起こし、電位依存性チャネルを活性化して活動電位を開始する最初の局在脱分極を提供する。クロライドチャネルは、γアミノ酪酸(GABA)及びグリシンなどの抑制神経伝達物質に応じて開き、膜の過分極及びそれに続く活動電位の発生を引き起こす。神経伝達物質依存性イオンチャネルは、4つの膜貫通ドメインを有し、おそらく五量体として機能する(前出のJentsch)。第2膜貫通ドメインのアミノ酸は、チャネル浸透及び選択性の決定において重要であるように見える(Sather, W. A. 他 (1994) Curr. Opin. Neurobiol. 4:313-323)。
【0037】
リガンド依存性チャネルは、細胞内のセカンドメッセンジャーによって制御され得る。例えば、カルシウム活性化K+チャネルは、内部カルシウムイオンによってゲーティングされる。神経細胞では、脱分極中のカルシウムの流入によってK+ チャネルが開き、活動電位の大きさが調節される(前出のIshii 他)。大コンダクタンス(BK)チャネルは、脳から精製され、そのサブユニット組成が決定された。BKチャネルのαサブユニットは、電位依存性K+ チャネルとは対照的に6つではなく、7つの膜貫通ドメインを有する。付加的な膜貫通ドメインは、サブユニットN末端に位置する。サブユニットのC末端領域(「カルシウムボウル(calcium bowl)」領域)の28個のアミノ酸ストレッチは、負に荷電した残基を多数含み、カルシウム結合に関与する領域であると考えられる。βサブユニットは、グリコシル化された細胞外ループによって結合された2つの膜貫通ドメインを含み、細胞質内にN末端及びC末端を有する(前出のKaczorowski、Vergara, C. 他 (1998) Curr. Opin. Neurobiol. 8:321-329)。
【0038】
サイクリックヌクレオチド依存性(CNG)チャネルは、サイトゾルのサイクリックヌクレオチドによってゲーティングされる。最も良い例は、嗅覚に関与するcAMP依存性Na+ チャネルと、視覚に関与するcGMP依存性カチオンチャネルである。両システムは、Gタンパク質共役受容体のリガンド媒介活性化に関与し、Gタンパク質共役受容体は次に細胞内でのサイクリックヌクレオチドのレベルを変化させる。CNGチャネルはまた、Ca2+がニューロンに入る主要経路を示し、ニューロンの発達及び可塑性において役割を果たす。CNGチャネルは、少なくとも2つのタイプのサブユニット(機能的ホモマーチャネルを形成し得るαサブユニットとチャネル特性を調節するβサブユニット)を含む四量体である。すべてのCNGサブユニットは、電位依存性K+ チャネルに類似して、6つの膜貫通ドメインと第5及び第6膜貫通ドメインの間にポア形成領域を有する。大きなC末端ドメインにはサイクリックヌクレオチド結合ドメインが含まれ、N末端ドメインはチャネルサブタイプ間に変異をもたらす(Zufall, F. 他 (1997) Curr. Opin. Neurobiol. 4:404-412)。
【0039】
他のタイプのイオンチャネルタンパク質の活性はまた、種々の細胞内シグナル伝達タンパク質によっても調節され得る。多くのチャネルは、1個以上のプロテインキナーゼによるリン酸化部位を有する。そのようなプロテインキナーゼには、プロテインキナーゼA、プロテインキナーゼC、チロシンキナーゼ及びカゼインキナーゼIIがあり、これらはすべて細胞のイオンチャネル活性を調節する。Kirチャネルは、ヘテロ三量体のGタンパク質のGβγサブユニットの結合により活性化される(Reimann, F. および F. M. Ashcroft (1999) Curr. Opin. Cell. Biol. 11 : 503-508)。別のタンパク質は、細胞膜の特定部位へのイオンチャネルの局在化に関与している。このようなタンパク質にはPDZドメインタンパク質があり、これはニューロンのシナプスでイオンチャネルのクラスター形成を調整するMAGUK(膜関連グアニル酸キナーゼ)として知られている(Craven, S. E. および D. S. Bredt (1998) Cell 93:495-498)。
【0040】
疾患との相関関係
多くのヒトの疾患及び障害の原因は、膜を通過する分子輸送における欠陥に帰しし得る。膜結合輸送体及びイオンチャネルの輸送における欠陥は、嚢胞性繊維症、グルコース−ガラクトース吸収不良症候群、高コレステロール血症、フォンギールケ病及び或る種の真性糖尿病など幾つかの疾患に関連している。膜を通過して小分子を輸送できないことに起因する単一の遺伝子欠陥疾患には、例えばシスチン尿症、イミノグリシン尿症、Hartup病及びファンコーニ病がある(van't Hoff, W. G. (1996) Exp. Nephrol. 4 : 253-262、Talente, G. M. 他 (1994) Ann. Intern. Med. 120:218-226; および Chillon, M. 他(1994) Ann. Intern. Med. 120 : 218-226、Chillon, M. 他 (1995) New Engl. J. Med. 332:1475-1480)。
【0041】
イオンチャネル遺伝子における突然変異に起因するヒト疾患には、骨格筋、心筋及び中枢神経系の疾患がある。ナトリウムチャネル及びクロライドチャネルのポア形成サブユニットにおける突然変異は、ミオトニーを引き起こす。ミオトニーは、随意収縮後の弛緩が遅れる筋肉障害である。ナトリウムチャネルミオトニーは、チャネル遮断薬で治療されてきた。筋肉のナトリウム及びカルシウムチャネルにおける突然変異は、数種の周期性麻痺を引き起こし、筋形質カルシウム放出チャネル、T管カルシウムチャネル及び筋肉ナトリウムチャネルにおける突然変異は、悪性高熱症を引き起こす。QT延長症候群及び特発性心室細動などの心不整脈疾患は、カリウム及びナトリウムチャネルにおける突然変異に起因する(Cooper, E. C. および L. Y. Jan (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:4759-4766)。既知のヒト特発性てんかん遺伝子は、4つがすべてイオンチャネルタンパク質をコードする(Berkovic, S. F. および I. E. Scheffer (1999) Curr. Opin. Neurology 12:177182)。その他の神経疾患、例えば運動失調、片麻痺性片頭痛及び遺伝性難聴などもまた、イオンチャネル遺伝子における突然変異に起因し得る(Jen, J. (1999) Curr. Opin. Neurobiol. 9:274-280、前出のCooper)。
【0042】
イオンチャネルは、多くの薬物治療法に対する標的となっている。神経伝達物質依存性チャネルは、不眠症、不安、抑うつ症及び精神分裂病(統合失調症)の治療において標的とされて来た。電位依存性チャネルは、不整脈、虚血性発作、頭部外傷及び神経変性疾患の治療法において標的にされてきた(Taylor, C. P. および L. S. Narasimhan (1997) Adv. Pharmacol. 39:47-98)。種々のクラスのイオンチャネルは、痛みの知覚においても重要な役割を果たすので、新たな鎮痛薬の標的となり得る。このようなイオンチャネルにはバニロイド(vanilloid)依存性イオンチャネルがあり、これは侵害熱によってのみならずバニロイドであるカプサイシンによっても活性化される。電位依存性Na+ チャネルを遮断するリドカインやメキシレチンなどの局部麻酔薬は、神経障害性の痛みの治療において有用である(前出のEglen)。
【0043】
免疫調節のための標的として、最近では免疫系におけるイオンチャネルが示唆されている。T細胞活性化は、カルシウムシグナル伝達に依存し、多様なT細胞特異的イオンチャネルは、このシグナル伝達過程に影響することが特徴付けられている。チャネル遮断薬は、リンホカインの分泌、細胞増殖、及び標的細胞の死滅を阻害することができる。T細胞カリウムチャネルKv1.3のペプチドアンタゴニストは、ブタにおける遅延型過敏症及び異質遺伝子型反応を抑制し、安全で効果的な免疫抑制薬としてのチャネル遮断薬の使用のアイデアを実証している(Calahan, M. D.及びK. G. Chandy (1997) Curr. Opin. Biotechnol. 8 : 749-756)。
【0044】
発現プロファイル作成
マイクロアレイは、生体分析で用いられる分析ツ−ルである。マイクロアレイは複数の分子をを有し、それらは或る固体支持体の表面で空間的に分布し、その表面と安定して結合している。ポリペプチド、ポリヌクレオチド、そして/あるいは抗体のマイクロアレイが開発されており、その種々の用途には遺伝子シークエンシング、遺伝子発現のモニタリング、遺伝子マッピング、細菌同定、薬剤発見、コンビナトリアルケミストリがある。
特にマイクロアレイの使用として見出された1つの分野は、遺伝子発現分析である。 アレイ技術は、単一の多型遺伝子の発現や、多数の関連遺伝子または無関係の遺伝子の発現プロファイルを探求する、簡単な方法を提供し得る。単一遺伝子の発現を試験するときは、アレイを用いて、或る特定遺伝子又はその変異体の発現を検出する。発現プロファイルを試験するときは、アレイは次のような遺伝子を同定するプラットフォームを提供する。即ちどの遺伝子が組織特異的か、毒性アッセイにおいてテストされる物質に影響されるか、シグナル伝達カスケードの一部であるか、ハウスキーピング機能を実行するか、又は、特定の遺伝的素因や、条件、疾患、又は障害に、特異的に関連する遺伝子であるかの同定である。
【0045】
遺伝子発現プロファイル作成の応用の可能性は癌、例えば、乳癌、肺癌、前立腺癌、卵巣癌、および骨癌などの診断、予後および治療、並びに、血管性炎症、免疫応答、肝臓毒性および神経疾患の治療の改善に関連する。
【0046】
乳癌
180,000例を超える乳癌の新規症例が毎年診断されており、乳癌による死亡率は45〜54歳の女性の全死亡の10%に近い(Gish, K. (1999) AWIS Magazine 28:7-10)。ただし、限局性乳癌の早期診断に基づく生存率は極めて高い(97%)。これに対して、病期が進行し腫瘍が乳房外に進展した場合は22%である。現在の臨床乳癌検診の手法は感度と特異性とを欠いており、乳癌の包括的な遺伝子発現プロファイルを開発する努力がなされている。このプロファイルを従来のスクリーニング法とともに用いれば、乳癌の診断と予後診断とを向上し得る(Perou, C.M. 他(2000) Nature 406:747-752)。
【0047】
2種の遺伝子、BRCA1とBRCA2との突然変異が女性乳癌の大きな素因となることが知られており、この変異は親から子へ受け渡されるようである(前出Gish)。しかし、このタイプの遺伝性乳癌はわずかに乳癌の約5%〜9%であり、大多数の乳癌の原因は非遺伝性突然変異であり、乳腺上皮細胞での変異である。
【0048】
上皮成長因子(EGF)とその受容体であるEGFRとの発現と、ヒト乳癌との関係は、特に良く研究されている(Khazaie, K. 他(1993) Cancer and Metastasis Rev. 12:255-274とその中の参照文献に、この分野が概説されている)。EGFRの過剰発現、特にエストロゲン受容体の下方制御と結びついた発現は、乳癌患者の不良な予後のマーカーである。また、乳腺腫瘍転移におけるEGFR発現は、しばしば原発腫瘍に比して上昇するので、EGFRが腫瘍の進行と転移とに関わることを示唆している。これを支持する証拠が蓄積されている。それはEGFが、転移の潜在能に関する細胞機能に対する効果を持つという証拠である。この機能とは例えば、細胞運動性、走化性、分泌、および分化である。erbB受容体ファミリー(EGFRはその1つである)の他のメンバーの発現の変化も、乳癌に関わるとされている。erbB受容体(例えばHER-2/neu、HER-3、HER-4)およびそれらリガンドの乳癌における豊富さは乳癌の発生機序におけるそれらの機能的重要性を示しており、したがって乳癌治療の標的を提供しうる(Bacus, SS他(1994) Am. J. Clin. Pathol. 102:S13-S24)。別の既知の乳癌マーカーとしては、或るヒトの分泌型frizzledタンパク質のmRNA(乳腺腫瘍で下方制御される)、マトリクスG1aタンパク質(ヒト乳癌細胞で過剰発現)、Drg1すなわちRTP(この遺伝子の発現は結腸腫瘍、乳腺腫瘍、前立腺腫瘍で低下)、maspin(この腫瘍抑制遺伝子は浸潤性乳癌で下方制御)、およびCaN19(S100蛋白ファミリーのメンバーであり、本ファミリーは全て、乳癌細胞では正常乳腺上皮細胞に関連して下方制御)を含む(Zhou, Z. 他(1998) Int. J. Cancer 78:95-99; Chen, L. 他(1990) Oncogene 5:1391-1395; Ulrix, W. et al (1999) FEBS Lett 455:23-26; Sager, R. 他(1996) Curr. Top. Microbiol. Immunol. 213:51-64;およびLee, S. W. 他(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:2504-2508)。
【0049】
種々の病期のヒト乳癌の乳腺上皮細胞に由来する細胞株は、悪性転換と腫瘍進行とのプロセスを研究するのに有用なモデルを提供する。その理由は、これらの細胞株が、その親腫瘍の多くの特性を、長い培養期間にわたり保持することが示されているからである(Wistuba, I.I. 他(1998) Clin.Cancer Res.4:2931-2938)。こうしたモデルが特に有用なのは、ヒト乳腺上皮細胞の表現型と分子との特徴を、悪性転換の種々の病期で比較する場合である。
【0050】
肺癌
肺癌は米国における癌死亡の主要原因であり、毎年10万人以上の男性および5万人以上の女性がこの影響を受けている。肺癌と診断された患者の殆ど90%が喫煙者である。タバコの煙には暴露された気管支上皮において発癌物質代謝酵素および共有結合性DNA付加体形成を誘発する有害物質がたくさん含まれている。肺癌と診断された患者のほとんど80%においてすでに転移が生じている。大部分の肺癌は胸膜、脳、骨、心膜、および肝臓に移転する。手術、放射線療法、あるいは化学療法を行うかの決定は、腫瘍組織学、成長因子またはホルモン応答および阻害剤または薬物への感受性に基づいてなされる。現在の治療では大部分の患者が診断の一年以内に死亡する。肺癌の早期診断、および同定、病期および治療に対する系統的アプローチは患者への結果をポジティブなものにし得る。
【0051】
肺癌は、過形成から侵襲性癌への一連の形態学的に固有の段階を通して進行する。悪性の肺癌は四つの組織病理学的なクラスからなる2つのグループに分かれる。非小細胞肺癌(Non Small Cell Lung Carcinoma :NSCLC) 群は扁平上皮細胞癌、腺癌および大細胞癌を含み、すべての肺癌症例の約70%を占める。腺癌は通常、末梢気道に生じ、ムチン分泌腺を形成する。扁平上皮細胞癌は一般に、近位気道に発症する。扁平上皮細胞癌の組織形成は慢性炎症と、気管支上皮の損傷に関連し、扁平上皮化生につながる。肺小細胞癌(Small Cell Lung Carcinoma :SCLC) 群は肺癌症例の約20%を占める。SCLCは一般的に近位の気道に発症し、副腎皮質刺激ホルモンおよび抗利尿ホルモンの不適切な産生などの多くの腫瘍随伴症候群を示す。
【0052】
肺癌細胞は多くの遺伝的病変を蓄積し、その多くは、細胞学的に明らかな染色体異常を伴う。肺癌に随伴する染色体欠失の頻度が高いことはこの疾患の病因において複数の癌抑制遺伝子座の関与を示し得る。3番染色体の短腕の欠失は症例の90%以上に見られ、肺癌につながる最も早期の遺伝子病変の一つを示す。染色体の9pおよび17pの短腕における欠失もまた一般的である。
その他のしばしば見られる遺伝的病変にはテロメラーゼの過剰発現、Kras やcmycなどの発癌遺伝子の活性化、またRB、 p53 および CDKN2のような癌抑制遺伝子の不活性化がある。
【0053】
肺癌において差次的に制御される遺伝子が種々の方法によって同定されている。
【0054】
mRNAディファレンシャルディスプレイ技術を用いて、Manda 他 (1999; Genomics 51:5-14) は正常気管支上皮細胞に比べて肺癌細胞系で差次的に発現される5つの遺伝子を同定した。既知の遺伝子の内で、肺界面活性物質のアポプロテインAおよびアルファ2マクログロブリンは下方制御され、他方、nm23H1は上方制御される。Petersen 他(2000; Int J. Cancer, 86:512-517) はサプレッションサブトラクティブハイブリダイゼーション(suppression subtractive hybridization)を用いて、肺腫瘍由来細胞系に差次的に発現された552のクローンを同定した。その中の205は既知の遺伝子を示した。既知の遺伝子の間で、トロンボスポンジン1、フィブロネクチン、細胞間接着分子1およびサイトケラチン6と18は肺癌において差次的に発現されることが以前に観察されていた。Wang 他(2000; Oncogene 19:1519-1528) はマイクロアレイ解析とサブトラクティブハイブリダイゼーションを併用して正常肺上皮と比べて扁平細胞癌に差次的に過剰発現された17の遺伝子を同定した。彼らが同定した既知の遺伝子の中には、ケラチンアイソフォーム6、KOC、SPRC、IGFb2, コネキシン 26、 plakofillin 1 およびサイトケラチン 13があった。
【0055】
前立腺癌
前立腺癌は50歳以上の男性に多い悪性疾患であり、罹患率は年齢と共に増える。米国では毎年、約13万2千の新規診断前立腺癌症例があり、3万3千人が前立腺癌で死亡する。
【0056】
前立腺に癌細胞が生じると、テストステロンの刺激で、より速く成長する。したがって精巣を除去すれば、癌の急速な成長と転移との双方を、間接的に低減できる。95パーセント以上の前立腺癌は、起源が前立腺腺房の腺癌である。残る5%の分類は扁平上皮細胞癌と移行上皮細胞癌とがあり、どちらも前立腺管または前立腺の他の部位に生じる。
【0057】
ほとんどの腫瘍と同様、前立腺癌は多段階の進行を通して発達して、最終的に侵略的な腫瘍の表現型をもたらす。腫瘍進行の初めの段階には、正常な内腔および/または基底上皮細胞の過剰増殖が関係する。アンドロゲン応答性細胞は過形成し、初期段階の腫瘍に発展する。初期段階の腫瘍はしばしばアンドロゲンに対して感受性がありアンドロゲン除去療法に反応するが、アンドロゲン非依存性細胞の集団が過形成集団から発展する。これらの細胞は、浸襲性となり、また骨、脳、または肺に転移する可能性がある前立腺腫瘍のより進んだ形態を表す。多様な遺伝子が、腫瘍進行中に差次的に発現され得る。例えば、異型接合性の喪失(LOH)は前立腺癌の第8p染色体において頻繁に観察される。蛍光原位置ハイブリダイゼーション(FISH)によって、29(69%)の腫瘍で第8p染色体上の少なくとも1つの遺伝子座の欠損があり、限局性前立腺癌に比べて進行性前立腺癌において8p21.2p21.1 上の欠損の頻度が有意に高いことが明らかにされた。これは8p22p21.3 上の欠失は腫瘍分化において重要な役割を果たしており、他方、 8p21.2p21.1上の 欠失は前立腺癌の進行に関与することを意味する (Oba, K. 他 (2001) Cancer Genet. Cytogenet. 124: 2026)。
【0058】
前立腺の一次診断マーカーは前立腺特異抗原(PSA)である。PSAは組織特異的セリンプロテアーゼであり、ほぼ限定的に前立腺上皮細胞が産生する。PSA量は前立腺上皮細胞の数量と相関するので、PSAレベルは異常な前立腺成長の優れた指標である。前立腺癌男性のPSAレベルは早期に線形的に上昇した後、指数関数的に上昇し、診断がつく。しかしPSAレベルはまた炎症やアンドロゲンその他の成長因子などの因子にも影響されるので、一部の科学者は依然、PSAレベルの変化は個々の前立腺癌症例の検出に有用でないとする。
【0059】
現在の癌研究領域は前立腺癌の更なる有望なマーカーと潜在的治療標的を提供する。数種の成長因子は、腫瘍の発生、成長、進行において重要な役割を果たすことがわかっている。成長因子である上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)および腫瘍成長因子α(TGFα)は前立腺上皮細胞の正常な成長においても、また過剰増殖においても、重要であり、特に腫瘍発生および腫瘍進行の早期において重要であり、また、これら細胞のシグナル経路に様々に影響する(Lin J 他(1999) Cancer Res.59:2891-2897; Putz T 他(1999) Cancer Res.59:227-233)。 TGFβファミリーの成長因子は一般にヒト癌で発現レベルが上昇し、高レベルの発現は多くの場合、進行した病期の悪性腫瘍と患者の不良な生存度とに相関する(Gold LI (1999) Crit Rev Oncog 10:303-360)。最後に、ヒト細胞株にはアンドロゲン依存期の前立腺癌を示す株(LNCap)とアンドロゲン非依存性でホルモン不応期の前立腺癌株(PC3とDU-145)があり、前立腺癌進行に伴う遺伝子発現パターンや、これら発現した遺伝子への細胞治療(cell treatments)の効果の研究に有用との実証がある(Chung TD (1999) Prostate 15:199-207)。
【0060】
卵巣癌
卵巣癌は婦人科の癌による死亡の主な原因となっている。卵巣癌の主なものは上皮細胞から由来しており、上皮卵巣癌の患者の70%は疾患の後期段階にある。その結果、この疾患の長期生存率は極めて低い。卵巣癌の早期マーカを同定できれば、生存率を大きく増加できるであろう。卵巣癌発症に関与する遺伝的変異にはP53の突然変異およびミクロサテライトの不安定性が含まれる。正常卵巣は卵巣腫瘍と較べると遺伝子発現パターンが変動しがちである。
【0061】
骨癌
骨肉腫は子供で最も一般的な悪性骨腫瘍である。患者の約80%は非転移性である。最初の生検による診断の後に、3〜4回のネオアジュバント化学療法を行ってから、最終的な手術を行い、その後、術後化学療法がなされる。現在利用できる治療法で、非転移性疾患患者の30〜40%は療法後再発する。現在のところ、再発の危険が高い患者を予測するために最初の診断時に利用できる予後因子はない。非転移性骨肉腫患者の予後を予測する唯一の有意義な予後因子は、最終的手術の時に切除された原発腫瘍の組織病理的応答である。原発腫瘍の壊死の度合いはネオアジュバント化学療法に対する腫瘍応答の反映である。高度な壊死(良好または好ましい応答)では再発性の危険が低く、良好な予後を伴う。低度の壊死(不良または好ましくない応答)のある患者は原発腫瘍の完全な切除後でさえも、再発の危険が極めて高く、予後は不良となる。不運な事に、原発腫瘍のネオアジュバント化学療法に対する耐性を生じる術後の化学療法を修正しても不良な予後は変えることができない。したがって、再発の異なる危険性を有する骨肉腫のサブタイプを見分けて、予後を改善するために、より適切な化学療法を最初に用いることができるように、診断時に用いられる予後因子を同定する必要が緊急にある。
【0062】
炎症および免疫応答
アテローム動脈硬化は主要な動脈血管壁内の慢性局所的炎症応答を特徴とする病理学的状態である。疾患が進行すると、アテローム動脈硬化性病変の不安定なプラークを形成する。この病変部は時折、破裂し、血管腔の破局的な血栓性閉塞を誘発するアテローム動脈硬化症および関連する冠動脈疾患や脳卒中は、先進工業国における死亡の最も一般的な原因となっている。特定の主な危険因子は同定されているが、この複雑な疾患の原因を解明し、可能性のある治療標的のすべてを同定する完全な分子的性質決定は、まだ達成されていない。アテローム動脈硬化症の分子的性質決定には、病変の成長、安定化、溶解、破壊および閉塞性血管血栓の誘発に寄与する遺伝子を同定することが必要である。
【0063】
血管壁は2つの組織層によって構成されている。すなわち、血管の腔表面を構成する内皮細胞(EC)層と、その下にある血管平滑筋細胞(VSMC)層からなる。相互および周囲組織との動的な相互作用によって、血管内皮組織および血管平滑筋組織は血管の緊張を保持し、血管壁の選択透過性を制御し、血管の再構築および血管新生を誘導し、また炎症および免疫応答を調節する。
【0064】
炎症応答は多くのサイトカイン、ケモカイン、成長因子、およびその他のシグナル伝達分子(活性化された内皮細胞、血管平滑筋細胞および白血球によって発現される)によって媒介される複合血管反応である。炎症は外傷や感染時に生体を保護するが、またアテローム動脈硬化のような病理的状態の原因ともなる。血管内皮の活性化は、広範な生理的過程また病態過程、例えば血管緊張調節、凝血および血栓症、アテローム硬化症、炎症、並びにいくつかの感染症における中心的な現象である。
【0065】
炎症誘発性サイトカイン、インターロイキン(IL)−1および腫瘍壊死因子(TNF)は、少数の活性化マクロファージまたは、その他の細胞によって分泌され、主に、内皮細胞や血管平滑筋細胞における遺伝子発現パターンを変化させる能力によって血管変化のカスケードを開始しさせることができる。これらの血管の変化には、微小血管系の血管拡張および透過性増加、浮腫、および白血球の血管外遊走および血管壁を越えた遊出が含まれる。最終的に、白血球、特に好中球や単球/マクロファージが血管外腔で蓄積され、そこで、これらが食作用や酸化的死滅(プロテアーゼや活性酸素種のような毒性因子の放出を伴う課程)によって有害物質を除去する。
【0066】
IL-1およびTNFは、内皮細胞や血管平滑筋細胞表面の受容体によるシグナル伝達によって、遺伝子発現における炎症誘発性、血栓性および抗アポトーシス性変化を誘導する。これらの受容体はNFκBや、 AP-1、IRF-1および NF-Gmaなどの転写因子を活性化し、遺伝子発現の変化を生じる。IL-1 と TNFによって 内皮細胞で差次的に調節されることが知られている遺伝子には、E セレクチン、VCAM-1、 ICAM-1、 PAF、IκBα、IAP1、MCP1、 eotaxin、 ENA-78、G-CSF、 A20、ICEおよび補体C3 成分である。例えば、炎症の主な現象である、血管内皮を横切っての血中白血球の接着および遊出は、活性化された内皮上でのEセレクチン、Pセレクチン、ICAM1およびVCAM1 の発現増加によって媒介される。
【0067】
数人の研究者が種々の炎症性疾患、あるいはモデル系に随伴する血管細胞遺伝子発現における変化を調べた。組換えTNF-α または活性化ヒト初代単球から調整された培養液(conditioned medium)によって活性化されたヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC) を調べることによってHorrevoets 他(1999; Blood 93:3418-3431)は106の差次的に調節された遺伝子を同定した。類似のアプローチで、deVries 他(2000; JBC 275:23939-23947) は酸化型LDL粒子で刺激された培養マクロファージから調整された培養液によって活性化された、臍帯動脈由来の平滑筋細胞において40の差次的に調節された遺伝子を同定した。どちらの研究においても、同定された遺伝子の多くは、炎症に関与することがすでにわかっていた。炎症患部組織、培養マクロファージ、軟骨細胞株、初代軟骨細胞および滑膜細胞からの発現プロフィールを比較して、Heller 他(1997; Proc Natl Acad Sci USA 94:2150-2155) はTNF、IL1、 IL6、IL8 GCSF、 RANTESおよび VCAMなどの炎症応答に関与する候補遺伝子を同定した。この候補遺伝子の組から、メタロプロテイナーゼ1の組織インヒビター、フェリチン軽鎖およびマンガンスーパオキシドジスムターゼは、炎症性腸疾患(IBD)に較べて関節リューマチ(RA)において差次的に発現されることが発見された。さらに、IL-3、ケモカインGroαおよびメタロプロテイナーゼ基質メタロエラスターゼは関節リューマチにも炎症性腸疾患にも発現された。つい最近、Haley 他(2000; Circulation 102:2185-2189) は、好酸球走化性因子であるエオタキシン(eotaxin)が20倍増加することをTNF-α処理した培養大動脈平滑筋細胞の分析において見つけた。アテローム硬化病変でのエオタキシンとその受容体CCR3の過剰発現はノーザン分析によって確認された。
【0068】
ヒト冠状動脈内皮細胞(HCAEC)はヒト冠状動脈の内皮から由来する初代細胞である。HCAEC はヒト血管生物学における内皮の役割りを、in vitro で調べるための実験モデルとして使われている。ヒト臍動脈内皮細胞(HUAEC)はヒト臍動脈の内皮から由来する初代細胞である。ヒト子宮筋層微小血管内皮細胞(UtMVEC)は子宮筋層微小血管系から由来する初代細胞である。ヒト腸骨動脈内皮細胞(HIAEC)は腸骨動脈の内皮から由来する初代細胞である。ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)はヒト臍静脈の内皮から由来する初代細胞株である。ECV304は、 ヒト内皮細胞株である。
【0069】
神経疾患
ヒト脳における領域ー特異的遺伝子発現の特徴づけによって種々の神経疾患に関する分子神経生物学の背景がわかる。例えば、アルツハイマー病(AD)は記憶および、より高度な認識機能の低下を特徴とする、ヒト新皮質の進行性神経破壊プロセスである。進行性かつ、不可逆性脳疾患であるアルツハイマー病(AD)は三つの主な病原性エピソードを特徴としており、これらは(a)βアミロイド前駆体タンパク質(βAPP)の異常な処理および沈着による神経毒βアミロイド(ベータA)ペプチドおよび老人斑を形成するベータAの凝集不溶性ポリマーの形成、(b)銀染色性(agyrophilic)な神経原線維変化(NFT)の広範囲な沈着を生じる神経細胞内神経炎性タウ病理(tau pathology)の確立、および(c)脳特異的炎症応答の開始と拡散である。これらの三つの分散しているかに見えるアルツハイマー病の発生機序の特質は、炎症誘発性ミクログリア、反応性星状細胞、およびそれらに関連するサイトカインやケモカインが微小管結合タンパク質タウの生物学、ベータAの種分化(speciation)および凝集と関連していると言う事実によってつながっている。早期開始の家族性アルツハイマー病と関連すると考えられている、プレセニリン遺伝子PS1 およびPS2でのミスセンスな突然変異は異常なベータAPPプロセッシングを生じ、結果としてベータA42および関連する神経毒性ペプチドの過剰産生を伴う。ベータA42のような特定のベータA断片はさらに、炎症誘発性機序を増強し得る。誘発性酸化還元酵素のシクロオキシゲナーゼ-2およびサイトゾルのホスホリパーゼA2(cPLA2)は、脳虚血や外傷、癲癇およびアルツハイマー病において強く活性化されるが、これは脳損傷に対する応答としての炎症誘発性遺伝子経路の誘導を示している。アルミニウムや亜鉛(両方とも、アルツハイマー病発生機序に関係していると考えられている)のような神経毒性金属、および脳cPLA2活性の主な代謝産物であるアラキドン酸は、各々過剰リン酸化tauを重合してNFT様束を形成する。研究によって、関節炎を含む非中枢神経系の痛みに非ステロイド系抗炎症剤で以前に治療された70才以上の患者は、アルツハイマー病に罹る危険性が少ないことがわかった。(神経炎症応答のアルツハイマー病におけるPS1、PS2 とベータAPP 遺伝子発現のtauとベータA沈着および誘発、制御並びに拡散の機序の間の相互関係の概説についてはLukiw, W.J, and Bazan, N.G. (2000) Neurochem. Res. 2000 25:11731184を参照)。
【0070】
腫瘍壊死因子α(TNF-α ) は多面的サイトカインであり、複数のシグナル伝達経路の活性化を介して炎症応答の媒介における中心的役割りを果たす。TNF-αは活性化リンパ球、マクロファージおよびその他の白血球によって産生され、内皮細胞を活性化する。タイプIIインターフェロンまたは免疫インターフェロンとしても知られているインターフェロンガンマ(IFNγ)は、Tリンパ球とナチュラルキラー細胞によって主に産生されるサイトカインである。成熟型IFNγ は非共有結合的に結合したホモ二量体として存在する。IFNγ は抗ウイルス性、抗増殖性、免疫調節性および炎症誘発性活性を示し、宿主防衛機構において重要である。IFN-γ はサイトカインの産生を誘発し、クラスIとIIMHC抗原、Fc受容体および白血球接着分子の発現を上方制御し、マクロファージエフェクタ-機能を調節し、イソタイプの切り替えに影響し、B細胞による免疫グロブリンの分泌を増強し、TH1細胞の拡大(expansion)を高め、またTH1細胞の分化に必要であり得る。IFNγ は高親和性結合部位を示す特定の細胞表面受容体に結合することによってその生物学的活性を発揮する。IFNγ 受容体は、成熟型赤血球を除くほとんどすべての細胞タイプ上に存在する。その受容体に結合すると、IFNγ はJAK-1 キナーゼと JAK-2 キナーゼの活性化を誘発し、その結果、STAT1のリン酸化を生じる。IFNγ およびTNF-α は共に、炎症誘発性サイトカインと見なされている。二つのサイトカインのシグナル伝達間にクロストークが存在し得る。例えば、2つの異なったサイトカインによって開始されたシグナル伝達カスケードはNfkBの活性化を生じる。
【0071】
肝臓毒性
ヒトC3A肝臓細胞株は、成長での、強力な接触阻害に関して選択されたHepG2/C3(肝臓腫瘍を患う15歳の男子から単離した肝臓癌細胞株)のクローン誘導体である。クローン集団の使用は、細胞の再現性を強化する。C3A細胞は、培養中の初代ヒト肝細胞の多くの特徴を有する。i)インシュリン受容体とインシュリン様成長因子II受容体の発現、ii)αフェトプロテインと比較した血清アルブミンの高率分泌、iii)アンモニアの尿素とグルタミンへの転換、iv)芳香アミノ酸代謝、v)グルコースの無いまたインシュリンの無い培地での増殖、である。C3A細胞株は、成熟したヒト肝臓のin vitroモデルとして今や十分に確立されている(Mickelson 他 (1995) Hepatology 22:866-875; Nagendra 他 (1997) Am. J. Physiol. 272:G408-G416)。
【0072】
遺伝子発現プロファイル作成の使用の可能性は、可能性のある治療化合物に対する毒性反応および治療薬剤の代謝反応の毒性の測定に関連している。例えば、ステロイドで治療する疾患と、ステロイド治療に対する代謝反応によって生じる疾患には、腺腫症、胆汁鬱滞、肝硬変、血管腫、ヘーノホ(ヘノッホ)‐シェーンライン紫斑病、肝炎、肝細胞癌、転移性癌、特発性血小板減少性紫斑病、ポルフィリン症、サルコイドーシス、ウィルソン病が含まれる。可能性のある治療化合物に対する毒性反応、および治療薬に対する代謝反応の毒性の測定が望ましい。
【0073】
ステロイドは、コレステロール、胆汁酸、ビタミンD、ホルモン等の脂質可溶性分子の1クラスであり、シクロペンタヒドロフェナントレン(cyclopentanoperhydrophenanthrene)に基づく共通な4リング構造を共有し、広範囲な機能を実施する。副腎皮質、卵巣、精巣によって生成されるステロイドホルモンには、グルココルチコイド、電解質コルチコイド、アンドロゲン、エストロゲンが含まれる。 ステロイドホルモンは、避妊法、また怪我や関節炎、喘息、自己免疫障害等の疾患での抗炎症治療において広範囲に利用されている。天然のプロゲスチンであるプロゲステロンは、無月経、異常子宮出血の治療に、または避妊薬として主に使用される。 6α-メチル-17-ヒドロキシプロゲステロンとしても知られるメドロキシプロゲステロン(MAH)は、プロゲステロンよりも約15倍も大きな薬理学的作用を有する合成プロゲスチンである。MAHは腎臓癌と子宮内膜癌、無月経、異常子宮出血および、ホルモン失調と関連する子宮内膜症の治療のために使用される。外因性のプロゲスチンの主要な避妊効果には、LHのmidcycle surge(月経中期サージ)の抑制が関係する。しかし、正確な作用機序は不明である。細胞レベルでプロゲスチンは自由に拡散して標的細胞に入っていき、プロゲステロン受容体に結合する。標的細胞には、女性生殖管、乳腺、視床下部、下垂体がある。いったん受容体に結合すると、プロゲスチンは視床下部からのゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH) の放出頻度を遅くし、排卵前LHサージを鈍くする。それにより卵胞成熟と排卵を防ぐ。興味深いことに、呼吸中枢へのMAH刺激作用は、睡眠時無呼吸、慢性閉塞性肺疾患、または高炭酸血症による血液酸素化の低下を治療するために臨床的に用いられている。ベクロメタゾンは、ステロイド性喘息の治療、アレルギー性または非アレルギー性(血管運動)鼻炎に伴う症状の軽減、外科的切除後の再発鼻ポリープの予防に使われる合成グルココルチコイドである。鼻腔内ベクロメタゾンの抗炎症作用および血管収縮作用は、ヒドロコルチゾンによるものより5,000倍強力である。ブデソニドは、アレルギー性鼻炎または喘息に付随する症状を制御するために使用されるコルチコステロイドである。デキサメタゾンは、抗炎症組成物または免疫抑制組成物において使用される合成グルココルチコイドである。プレドニゾンは肝臓で代謝されて、活性型であるプレドニゾロン(抗炎症特性を有するグルココルチコイド)になる。ベタメタゾンは抗炎症作用と免疫抑制作用を有する合成グルココルチコイドであり、乾癬と、水虫や白癬等の真菌感染症を治療するために使用される。ステロイド化合物に暴露されるか、または治療された被験者の組織に発現されたレベルと配列の両方を、健常者の未治療の組織で発現されたレベルと配列と比較すると、ステロイドに対する組織の応答を測定することができる。ブデソニド(Bude) は、アレルギー性鼻炎または喘息に付随する症状を制御するために使用されるコルチコステロイドである。ブデソニドは、全身作用は弱いが強い局所抗炎症作用を有する。プレドニゾンはコルチコステロイドであり、肝臓で代謝されて活性型であるプレドニゾロンになる。プレドニゾンはグルココルチコイドとしてヒドロコルチゾンの約4倍、強力である。プレドニゾンの作用持続時間はヒドロコルチゾンとデキサメサゾンの中間にある。プレドニゾンは同種移植拒絶反応、喘息、全身性エリトマトーデスおよびその他の炎症状態のような状態において使われる。
【0074】
グルココルチコイドは天然ホルモンであり、薬理量で投与すると、炎症および免疫応答を防止または抑制する。分子レベルでは、非結合グルココルチコイドは容易に細胞膜を越え、特異的細胞質レセプターに高親和性の結合をする。結合後、転写に影響し、最終的に、タンパク合成に影響する。この結果には、炎症部位の白血球浸潤阻害、炎症応答メディエータ機能妨害、および液性免疫応答抑制を含みうる。コルチコステロイドの抗炎症作用は、リポコルチンと総称されるホスホリパーゼA2抑制タンパク質に関係すると考えられる。逆にリポコルチンは、前駆体分子アラキドン酸の放出を阻害することによりプロスタグランジン、ロイコトリエン等の炎症の強力な媒介物の生合成を制御する。
【0075】
輸送、神経疾患、筋疾患、免疫疾患および細胞増殖異常の診断、予防および治療のための核酸およびタンパク質を含む新規の組成物のための技術上の必要性がある。
【発明の開示】
【発明の効果】
【0076】
本発明の種々の実施態様は、総称して「TRICH」、個別にはそれぞれ「TRICH-1」、「TRICH-2」、「TRICH-3」、「TRICH-4」、「TRICH-5」、「TRICH-6」、「TRICH-7」、「TRICH-8」、「TRICH-9」、「TRICH-10」、「TRICH-11」、「TRICH-12」、「TRICH-13」、「TRICH-14」、「TRICH-15」、「TRICH-16」、「TRICH-17」、「TRICH-18」、「TRICH-19」、「TRICH-20」、「TRICH-21」、「TRICH-22」、「TRICH-23」、「TRICH-24」、「TRICH-25」、および「TRICH-26」と呼ぶ、輸送体およびイオンチャネルである、精製ポリペプチドを提供し、また、これらのタンパク質とそれらのコードするポリヌクレオチドとを用いた疾患と病状との検出、診断、および治療の方法を提供する。実施例はまた、効力、用量、毒性および薬理の決定などの薬物開発過程に利用するために、精製された輸送体類およびイオンチャネル類および/またはそれらのコードするポリヌクレオチドを利用する方法をも提供する。関連する実施例によって、疾患および病状の病原性を調べるために精製された輸送体類およびイオンチャネル類および/またはそれらのコードするポリヌクレオチドを利用する方法を提供する。
【0077】
或る実施様態は、(a)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(b)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択されたアミノ酸配列と90%以上同一であるあるいは少なくとも約90%同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、(c)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片と、(d)SEQ ID NO:1-26とからなる群から選択されたアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片とで構成される群から選択された単離したポリペプチドを提供する。別の実施様態は、SEQ ID NO:1-26のアミノ酸配列を含む単離したポリペプチドを提供する。
【0078】
また別の実施態様は(a)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択した或るアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を持つ或る天然アミノ酸配列を有するポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリペプチドの生物学的活性断片、または(d)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択した或るアミノ酸配列を持つポリヌクレオチドの免疫原性断片、からなる群から選択した或るポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチドを提供する。一実施態様では、該ポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:1-26からなる群から選択した或るポリペプチドをコードする。別の実施態様では、ポリヌクレオチドはSEQ ID NO:27-52からなる群から選択される。
【0079】
更に別の実施様態は、(a)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるあるいは少なくとも約90%同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、または(d)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片、からなる群から選択されたポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと機能的に連結したプロモーター配列を含む組換えポリヌクレオチドを提供する。別の実施態様では、本発明は組換えポリヌクレオチドを用いて形質転換した細胞を提供する。しかし別の実施様態は、組換えポリヌクレオチドを含む遺伝形質転換生物体を提供する。
【0080】
別の実施様態は、(a)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるあるいは少なくとも約90%同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、または(d)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片、からなる群から選択したポリペプチドを製造する方法を提供する。製造方法は、(a)組換えポリヌクレオチドを用いて形質転換した細胞をポリペプチドの発現に適した条件下で培養する過程と、(b)そのように発現したポリペプチドを受容する過程とを有し、組換えポリヌクレオチドはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に結合したプロモーター配列を有する。
【0081】
更に別の実施様態は、(a)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるあるいは少なくとも約90%同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、または(d)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片、から構成される群から選択されたポリペプチドに特異結合するような単離された抗体を提供する。
【0082】
また更に別の実施態様は、(a)SEQ ID NO:27-52からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチド、(b)SEQ ID NO:27-52からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列との少なくとも90%の同一性を有する或る天然ポリヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチド、(c)(a)に相補的なポリヌクレオチド、(d)(b)に相補的なポリヌクレオチド、および(e)(a)〜(d)のRNA等価物、からなる群から選択した、単離されたポリヌクレオチドを提供する。別の実施様態では、ポリヌクレオチドは少なくとも20、30、40、60、80、あるいは100の連続したヌクレオチドを含むことができる。
【0083】
また別の実施様態は、サンプル中の標的ポリヌクレオチドを検出する方法を提供する。ここで標的ポリヌクレオチドは、(a)SEQ ID NO:27-52からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(b)SEQ ID NO:27-52からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%同一であるあるいは少なくとも約90%同一である天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(c)(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(d)(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、および(e)(a)〜(d)のRNA等価物、からなる群から選択される。検出方法は、(a)サンプル中の上記標的ポリヌクレオチドに相補的な或る配列からなる少なくとも20の連続したヌクレオチド群からなる或るプローブを用いて該サンプルをハイブリダイズする過程と、(b)該ハイブリダイゼーション複合体の有無を検出する過程を含む。該プローブと該標的ポリヌクレオチドあるいはその断片との間でハイブリダイゼーション複合体が形成されるような条件下で、プローブは、該標的ポリヌクレオチドに対し特異的にハイブリダイズする。関連する或る実施様態では、方法にはハイブリダイゼーション複合体の量を検出することが含まれ得る。別の実施様態では、プローブは少なくとも約20、30、40、60、80、あるいは100の連続したヌクレオチドを含むことができる。
【0084】
更にまた別の実施様態は、サンプル中の標的ポリヌクレオチドを検出する方法を提供する。ここで標的ポリヌクレオチドは、(a)SEQ ID NO:27-52からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(b)SEQ ID NO:27-52からなる群から選択したポリヌクレオチド配列と少なくとも90%同一であるあるいは少なくとも約90%同一である天然のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(c)(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(d)(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、および(e)(a)〜(d)のRNA等価物、からなる群から選択される。検出方法は、(a)ポリメラーゼ連鎖反応増幅を用いて標的ポリヌクレオチドまたはその断片を増幅する過程と、(b)増幅した標的ポリヌクレオチドまたはその断片の存在・不存在を検出する過程を含む。関連する或る実施様態では、検出方法には増幅した標的ポリヌクレオチドまたはその断片の量を検出することが含まれ得る。
【0085】
別の実施様態は、有効量のポリペプチドと薬剤として許容できる賦形剤とを含む成分を提供する。有効量のポリペプチドは、(a)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるあるいは少なくとも約90%同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、または(d)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片、からなる群れから選択される。一実施様態では、組成物はSEQ ID NO:1-26からなる群から選択されたアミノ酸配列を含み得る。他の実施態様は、機能的TRICHの発現の低下または異常発現に関連する疾患や症状の治療方法を提供し、そのような治療の必要な患者にこの組成物を投与することを含む。
【0086】
また別の実施様態は、(a)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるあるいは少なくとも約90%同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、または(d)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片、、からなる群から選択したポリペプチドのアゴニストとしての有効性を確認するために、或る化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)該ポリペプチドを含むサンプルを或る化合物に曝す過程と、(b)サンプル中のアゴニスト活性を検出する過程からなる。別の実施様態は、この方法で同定したアゴニスト化合物と許容される医薬用賦形剤を含む、或る組成物を提供する。さらにもう1つの実施態様は、機能的TRICHの発現の低下に関連した疾患やその症状の治療方法を提供し、そのような治療を必要とする患者にこの組成物を投与することが含まれる。
【0087】
さらにまた別の実施様態は、(a)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるあるいは少なくとも約90%同一である天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、または(d)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片、からなる群から選択したポリペプチドのアンタゴニストとしての有効性を確認するために、或る化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)該ポリペプチドを含むサンプルを或る化合物に曝す過程と、(b)サンプル中のアンタゴニスト活性を検出する過程からなる。別の実施様態は、この方法で同定したアンタゴニスト化合物と許容される医薬用賦形剤を含む、或る組成物を提供する。さらに他の実施例は、機能的TRICHの過剰発現に関連した疾患や病状の治療方法を提供し、また、そのような治療を必要とする患者にこの組成物を投与することが含まれる。
【0088】
もう1つの実施例は、(a)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性あるいは少なくとも約90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(c)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、または(d)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片を含む群から選択されたポリペプチドに特異結合する化合物をスクリーニングする方法を提供する。スクリーニング方法は、(a)ポリペプチドを適切な条件下で少なくとも1つの試験化合物と混合させる過程と、(b)試験化合物とのポリペプチドの結合を検出し、それによってポリペプチドに特異結合する化合物を同定する過程とを含む。
【0089】
さらにもう1つの実施例は、(a)SEQ ID NO:1-26を有する群から選択したアミノ酸配列、(b)SEQ ID NO:1-26を有する群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性あるいは少なくとも約90%の同一性を有する天然のアミノ酸配列、(c)SEQ ID NO:1-26を有する群から選択したアミノ酸配列の生物学的活性断片、または(d)SEQ ID NO:1-26を有する群から選択したアミノ酸配列の免疫原性断片を含むポリペプチドの活性を調節する化合物をスクリーニングする方法を提供する。 スクリーニング方法は、(a)ポリペプチドの活性が許容された条件下で、ポリペプチドを少なくとも1つの試験化合物と混合させる過程と、(b)ポリペプチドの活性を試験化合物の存在下で算定する過程と、(c)試験化合物の存在下でのポリペプチドの活性を試験化合物の不存在下でのポリペプチドの活性と比較する過程とを含み、試験化合物の存在下でのポリペプチドの活性の変化は、ポリペプチドの活性を調節する化合物であることを意味する。
【0090】
更に別の実施様態は、SEQ ID NO:27-52からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列を含む標的ポリヌクレオチドの発現を改変する効果につき、或る化合物をスクリーニングする一方法を提供する。この方法は、(a)この標的ポリヌクレオチドを含むサンプルを或る化合物に曝露する過程と、(b)この標的ポリヌクレオチドの発現の改変を検出する過程と、(c)可変量のこの化合物の存在下でのこの標的ポリヌクレオチドの発現と、この化合物の不在下での発現とを比較する過程とからなる。
【0091】
別の実施様態は、試験化合物の毒性の算定方法を提供する。この方法には、以下の過程がある。(a)核酸を有する生体サンプルを試験化合物で処理する過程、(b)処理済み生体サンプルの核酸をハイブリダイズする過程。この過程には、次のようなプローブを用いる。(i)SEQ ID NO:20-52からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(ii)SEQ ID NO:27-52からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列との少なくとも90%の同一であるあるいは少なくとも約90%同一である天然ポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(iii)(i)に相補的な配列を有するポリヌクレオチド、(iv)(ii)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(v)(i)〜(iv)のRNA等価物、からなる群から選択した或るポリヌクレオチドの少なくとも27の連続したヌクレオチド群からなるプローブである。ハイブリダイゼーションは、上記プローブと生体サンプル中の標的ポリヌクレオチドとの間に特異的ハイブリダイゼーション複合体が形成されるような条件下で生じる。上記標的ポリヌクレオチドは、(i)SEQ ID NO:27-52からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチド、(ii)SEQ ID NO:27-52からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列との少なくとも90%または少なくとも約90%の同一性を有する天然ポリヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチド、(iii)(i)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(iv)(ii)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、(v)(i)〜(iv)のRNA等価物、からなる群から選択する。あるいは標的ポリヌクレオチドは、上記(i)〜(v)からなる群から選択したポリヌクレオチド配列の断片を持つ場合がある。毒性の算定方法には更に、以下の過程がある。(c)ハイブリダイゼーション複合体の量を定量する過程と、(d)処理済み生体サンプル中のハイブリダイゼーション複合体の量を、非処理の生体サンプル中のハイブリダイゼーション複合体の量と比較する過程である。処理済み生体サンプル中のハイブリダイゼーション複合体の量の差異が、試験化合物の毒性を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0092】
(本発明の記載について)
タンパク質、核酸および方法について説明するが、その前に、説明した特定の装置、機器、材料および方法に本発明の実施様態が限定されるものではなく、変更され得ることを理解されたい。また、ここで使用する専門用語は特定の実施様態を説明する目的で用いたものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものではないことも併せて理解されたい。
【0093】
補足請求および明細書中で用いている単数形の「或る」および「その(この)」の表記は、文脈から明らかにそうでないとされる場合を除いて複数のものを指す場合もあることに注意されたい。したがって、例えば「或る宿主細胞」と記されている場合にはそのような宿主細胞が複数あることもあり、「或る抗体」と記されている場合には1個以上の抗体、および、当業者に公知の抗体の等価物などについても言及している。
【0094】
本明細書中で用いる全ての技術用語および科学用語は、特に定義されている場合を除き、当業者に一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書で説明するものと類似あるいは同等の任意の装置、材料および方法を用いて本発明の実施または試験を行うことができるが、ここでは好適な装置、材料、方法について説明する。本発明で言及する全ての刊行物は、刊行物中で報告されていて且つ本発明の実施様態に関係して用い得る、細胞株、プロトコル、試薬およびベクターについて説明および開示する目的で引用しているものである。本明細書のいかなる開示内容も、本発明が先行技術の効力によってこのような開示に対して先行する権利を与えられていないことを認めるものではない。
【0095】
(定義)
用語「TRICH」は、天然、合成、半合成或いは組換え体などからの、全ての種(特にウシ、ヒツジ、ブタ、ネズミ、ウマ及びヒトを含む哺乳動物)から得られる実質的に精製されたTRICHのアミノ酸配列を指す。
【0096】
用語「アゴニスト」は、TRICHの生物学的活性を強めたり、模倣する分子を指す。このアゴニストは、TRICHに直接相互作用するか、或いはTRICHが関与する生物学的経路の成分と作用して、TRICHの活性を調節するタンパク質、核酸、糖質、小分子、任意の他の化合物や組成物を含み得る。
【0097】
用語「対立遺伝子変異体/変異配列」は、TRICHをコードする遺伝子の別の形を指す。対立遺伝子変異体は、核酸配列における少なくとも1つの突然変異から作製し得る。また、変容したmRNAまたはポリペプチドを作製し得る。その構造または機能は、変容することもしないこともある。或る遺伝子は、その天然型の対立遺伝子変異体を全く持たない場合もあり、1個以上持つこともある。対立遺伝子変異体を生じさせる通常の突然変異性変化は一般に、ヌクレオチドの自然な欠失、付加または置換に帰するものである。これら各変化は、単独或いは他の変化と共に、所定の配列内で1回若しくは数回生じ得る。
【0098】
TRICHをコードする「変容した/改変された」核酸配列は、様々なヌクレオチドの欠失、挿入、或いは置換を有し、その結果、TRICHと同じポリペプチド或いはTRICHの機能特性の少なくとも1つを備えるポリペプチドを指す。この定義には、TRICHをコードするポリヌクレオチドの或る特定オリゴヌクレオチドプローブを用いて容易に検出可能な或いは検出困難な多型性、およびTRICHをコードするポリヌクレオチドにとり正常な染色体の遺伝子座ではない位置での、対立形質変異配列群への不適当或いは予期しないハイブリダイゼーションが含まれる。コードされるタンパク質も「変容する/改変される」ことがあり、サイレント変化を生じ機能的に等価なTRICHとなる、アミノ酸残基の欠失、挿入、或いは置換を含み得る。意図的なアミノ酸置換は、生物学的或いは免疫学的にTRICH の活性が保持される範囲で、残基の、極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、及び/または両親媒性、についての1つ以上の類似性に基づいて成され得る。例えば、負に帯電したアミノ酸にはアスパラギン酸およびグルタミン酸があり、正に帯電したアミノ酸にはリジンおよびアルギニンがある。親水性値が近似した非荷電極性側鎖を持つアミノ酸としては、アスパラギンとグルタミン、およびセリンとトレオニンを含みうる。親水性値が近似した非荷電側鎖を持つアミノ酸としては、ロイシンとイソロイシンとバリン、グリシンとアラニン、およびフェニルアラニンとチロシンを含みうる。
【0099】
用語「アミノ酸」および「アミノ酸配列」は、オリゴペプチド、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質配列、あるいはそれらのいずれかの断片を指し、天然分子または合成分子を指し得る。ここで「アミノ酸配列」は天然のタンパク質分子のアミノ酸配列を指すものであり、「アミノ酸配列」及び類似の語は、アミノ酸配列を、列挙したタンパク質分子に関連する完全な本来のアミノ酸配列に限定しようとするものではない。
【0100】
「増幅」は、或る核酸配列の付加的複製物を作製する行為に関する。増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)技術または当分野でよく知られている他の核酸増幅技術を用いて実行される。
【0101】
用語「アンタゴニスト」は、TRICHの生物学的活性を阻害或いは減弱する分子である。アンタゴニストとしては、抗体などのタンパク質、anticalin、核酸、糖質、小分子またはその他の任意の化合物や組成物を挙げることができるが、これらはTRICH と直接相互作用することによって、或いはTRICH が関与する生物学的経路の構成エレメントに作用することによって、TRICHの活性を調節する。
【0102】
「抗体」の語は、抗原決定基と結合することができる、無傷の免疫グロブリン分子やその断片、例えばFab,、F(ab')2 及びFv断片を指す。TRICHポリペプチドと結合する抗体は、免疫抗原として、無傷のポリペプチド、または関心のある小ペプチドを含む断片を用いて作製可能である。動物(マウス、ラット、ウサギ等)を免疫化するために用いるポリペプチドまたはオリゴペプチドは、RNAの翻訳、または化学合成によって得られるポリペプチドまたはオリゴペプチドに由来し得るもので、所望によりキャリアタンパク質に抱合することも可能である。通常用いられるキャリアであってペプチドと化学結合するものは、ウシ血清アルブミン、サイログロブリン及びスカシガイのヘモシアニン(KLH)等がある。結合その結合ペプチドは、動物を免疫化するために用いる。
【0103】
「抗原決定基」の語は、特定の抗体と接触する、分子の領域(即ちエピトープ)を指す。タンパク質またはタンパク質断片を用いて宿主動物を免疫化する場合、タンパク質の多数の領域が、抗原決定基(タンパク質の特定の領域または3次元構造)に特異結合する抗体の産生を誘発し得る。抗原決定基は、抗体への結合において無損傷抗原(即ち免疫応答を誘発するために用いられる免疫原)と競合し得る。
【0104】
用語「アプタマー」は、特定の分子標的に結合する核酸またはオリゴヌクレオチドを指す。アプタマーはin vitroでの進化プロセスに由来する(例えば、SELEX(Systematic Evolution of Ligands by EXponential Enrichmentの略、試験管内選択法)、米国特許第5,270,163号に記述)。これは、大規模な組合せライブラリ群から標的特異的アプタマー配列を選択するプロセスである。アプタマーの構成は二本鎖または一本鎖であり、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、ヌクレオチド誘導体または他のヌクレオチド様分子を含み得る。アプタマーのヌクレオチド構成要素は修飾された糖基(例えば、リボヌクレオチドの2'-OH 基が2'-F または 2'-NH2で置換されている)を有することが可能で、これらの糖基は、例えば、ヌクレアーゼに対する耐性あるいは血中でのより長い寿命など、望む性質を改善しうる。循環系からアプタマーが除去される速度を遅くするために、アプタマーを高分子量キャリアー等の分子に抱合させることができる。アプタマーは、たとえば架橋剤の光活性化によって各々のリガンドと特異的に架橋させることができる(Brody, E.N. および L. Gold (2000) J. Biotechnol. 74:5-13)。
【0105】
「intramer」の用語はin vivoで発現されるアプタマーを意味する例えば、ワクシニアウイルスに基づく或るRNA発現系を用いて、白血球の細胞質内で特定のRNAアプタマー類が高レベルに発現されている(Blind, M.他(1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:3606-3610)。
【0106】
「スピーゲルマー(spiegelmer)」の語はL-DNA、L-RNAその他の左旋性ヌクレオチド誘導体またはヌクレオチド様分子を含むアプタマーを指す。左旋性ヌクレオチドを含むアプタマーは、右旋性のヌクレオチドを含む基質に通常作用する天然の酵素による分解に耐性がある。
【0107】
用語「アンチセンス」は、或る特定の核酸配列を有するポリヌクレオチドの「センス」(コーディング)鎖との塩基対を形成し得る任意の組成物を指す。アンチセンス組成物としては、DNAや、RNAや、ペプチド核酸(PNA)や、修飾されたバックボーン連結たとえばホスホロチオ酸、メチルホスホン酸またはベンジルホスホン酸などを有するオリゴヌクレオチドや、修飾された糖基たとえば2'-メトキシエチル糖または2'-メトキシエトキシ糖などを有するオリゴヌクレオチドや、あるいは修飾された塩基たとえば5-メチルシトシン、2-デオキシウラシルまたは7-デアザ-2'-デオキシグアノシンなどを有するオリゴヌクレオチドがあり得る。アンチセンス分子は、化学合成または転写など、任意の方法で製造することができる。相補的アンチセンス分子は、細胞に導入されると、細胞が産生した天然核酸配列との塩基対を形成し、二重鎖を形成して転写または翻訳を妨害する。「負」または「マイナス」という表現は、ある参考DNA分子のアンチセンス鎖を意味し、「正」または「プラス」という表現は、ある参考DNA分子のセンス鎖を意味しうる。
【0108】
「生物学的に活性」の語は、天然分子の構造的機能、調節機能または生化学的機能を有するタンパク質を指す。同様に、用語「免疫学的に活性」または「免疫原性」は、天然或いは組換え体のTRICH、合成のTRICHまたはそれらの任意のオリゴペプチドが、適当な動物或いは細胞の特定の免疫応答を誘発して特定の抗体と結合する能力を指す。
【0109】
「相補(的)」または「相補性」の語は、塩基対形成によってアニーリングする2つの一本鎖核酸の間の関係を指す。例えば、配列「5'A-G-T3'」は、相補配列「3'T-C-A5'」と対を形成する。
【0110】
「〜のポリヌクレオチドを含む(持つ)組成物」または「〜のポリペプチドを含む(持つ)組成物」は、所定のポリヌクレオチド配列若しくはポリペプチドを持つ、任意の組成物を指す。この組成物には、乾燥製剤または水溶液が含まれ得る。 Compositions comprising polynucleotides encoding TRICH or fragments of TRICH may be employed as hybridization probes.これらプローブは、凍結乾燥形態で貯蔵でき、また、糖質などの安定化剤と結合させ得る。ハイブリダイゼーションにおいては、塩(例えばNaCl)、界面活性剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム;SDS)及びその他の構成要素(例えばデンハート液、粉乳、サケの精子のDNA等)を含む水溶液中にプローブを分散させることができる。
【0111】
「コンセンサス配列」は、不要な塩基を分離するためにDNA配列の解析を繰り返し行い、XL-PCRキット(Applied Biosystems,Foster City CA)を用いて5'及び/または3'の方向に伸長され、再度シークエンシングされた核酸配列、またはGELVIEW 断片アセンブリシステム(GCG, Madison, WI)か、あるいはPhrap (University of Washington, Seattle WA)等の断片アセンブリ用のコンピュータプログラムを用いて1つ或いはそれ以上の重複するcDNAやEST、またはゲノムDNA断片からアセンブリされた核酸配列を指す。伸長及びアセンブリの両方を行ってコンセンサス配列を作製する配列もある。
【0112】
「保存的なアミノ酸置換」は、置換がなされた時に元のタンパク質の特性を殆ど損なわないと予測されるような置換、即ちタンパク質の構造と特に機能が保存され、そのような置換による大きな変化がない置換を指す。下表は、タンパク質中で元のアミノ酸と置換可能で、保存アミノ酸置換と認められるアミノ酸を示している。
Figure 2005503790
【0113】
保存アミノ酸置換では通常、(a)置換領域におけるポリペプチドのバックボーン構造、例えばβシートやα螺旋構造、(b)置換部位における分子の電荷または疎水性、及び/または(c)側鎖の大部分を保持する。
【0114】
「欠失」は、結果的に1個若しくは数個のアミノ酸残基またはヌクレオチドが失われてなくなるようなアミノ酸またはヌクレオチド配列における変化を指す。
【0115】
「誘導体」の語は、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの化学修飾を指す。例えば、アルキル基、アシル基、ヒドロキシル基またはアミノ基による水素の置換は、ポリヌクレオチドの化学修飾に含まれ得る。ポリヌクレオチド誘導体は、天然分子の生物学的または免疫学的機能を少なくとも1つは保持しているポリペプチドをコードする。ポリペプチド誘導体は、グリコシル化、ポリエチレングリコール化(pegylation)、或いは任意の同様なプロセスであって誘導起源のポリペプチドの、少なくとも1つの生物学的若しくは免疫学的機能を保持するプロセスによって修飾されたポリペプチドである。
【0116】
「検出可能な標識」は、測定可能なシグナルを生成することができ、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに共有結合または非共有結合するようなレポーター分子または酵素を指す。
【0117】
「差次的発現」は少なくとも2つの異なったサンプルを比較することによって決められる、増加(上方調節)、あるいは減少(下方調節)、または遺伝子発現またはタンパク発現の欠損を指す。このような比較は例えば、処理済サンプルと不処理サンプル、または病態サンプルと健常サンプルとの間で行われ得る。
【0118】
「エキソンシャフリング」は、異なるコード領域(エキソン)の組換えを意味する。1つのエキソンはコードされるタンパク質の1つの構造的または機能的ドメインを代表し得るため、安定したサブストラクチャー群の新たな組み合わせによって、新しいタンパク質がアセンブリされることが可能であり、新しいタンパク質機能の進化を促進できる。
【0119】
「断片」は、TRICH の又はTRICH をコードする或るポリヌクレオチドの固有の部分であって、その親配列(parent sequence)と配列は同一でありうるが親配列より長さが短いものを指す。或る断片は、定義された配列の全長から1ヌクレオチド/アミノ酸残基を差し引いた長さよりも短い長さを有し得る。例えば或る断片は、約5〜約1000の連続したヌクレオチドまたはアミノ酸残基を有し得る。プローブ、プライマー、抗原、治療用分子として、或いはその他の目的のために用いられる断片は、少なくとも5、10、15、16、20、25、30、40、50、60、75、100、150、250若しくは500の連続したヌクレオチド或いはアミノ酸残基長さであり得る。断片は、或る分子の特定領域から優先的に選択し得る。例えば、或るポリペプチド断片は、定義された或る配列内に見られるような或るポリペプチドの最初の250または500アミノ酸(または最初の25%または50%)から選択した、或る長さの連続したアミノ酸を持ち得る。これらの長さは明らかに例として挙げているものであり、本発明の実施態様では、配列表、表および図面を含む本明細書が支持する任意の長さであり得る。
【0120】
SEQ ID NO:27-52の断片は、例えば、この断片を得たゲノム内の他の配列とは異なる、SEQ ID NO:27-52を特異的に同定する固有のポリヌクレオチド配列の領域を持ちうる。SEQ ID NO:27-52のある断片は、本発明の例えば、ハイブリダイゼーションや増幅技術の1つ以上の実施様態、またはSEQ ID NO:27-52を関連ポリヌクレオチドから区別する類似の方法に有用である。SEQ ID NO:27-52の断片の正確な長さ及び断片に対応するSEQ ID NO:27-52の領域は、断片に対する意図した目的に基づき当業者が慣例的に決定することが可能である。
【0121】
SEQ ID NO:1-26の断片はSEQ ID NO:27-52の断片によってコードされている。SEQ ID NO::1-26の断片はSEQ ID NO:1-26を特異的に同定する固有のアミノ酸配列の領域を含む。例えば、SEQ ID NO:1-26の断片は、SEQ ID NO:1-26を特異認識する抗体を産出するための免疫原性ペプチドとして有用である。SEQ ID NO:1-26の断片および断片に対応するSEQ ID NO:1-26の領域の正確な長さは、断片に対する意図した目的に基づき、本明細書に記載されている、あるいは当分野で知られている1つ以上の分析方法を用いて当業者が慣例的に決定することが可能である。
【0122】
「完全長」ポリヌクレオチドとは、少なくとも1つの翻訳開始コドン(例えばメチオニン)と、それに続く1オープンリーディングフレームおよび翻訳終止コドンを有する配列である。或る「完全長」ポリヌクレオチド配列は、或る「完全長」ポリペプチド配列をコードする。
【0123】
「相同性」の語は、2つ以上のポリヌクレオチド配列または2つ以上のポリペプチド配列の配列類似性、互換性、または配列同一性を意味する。
【0124】
ポリヌクレオチド配列に適用される「一致率」または「〜%同一」の語は、標準化されたアルゴリズムを用いてアラインメントされた少なくとも2つ以上のポリヌクレオチド配列間で一致する残基の割合を意味する。標準化アルゴリズムは、2配列間のアラインメントを最適化するため、標準化された再現性のある方法で比較対象の2配列内にギャップ群を挿入し得るので、2つの配列をより有意に比較できる。
【0125】
ポリヌクレオチド配列間の一致率は、当分野で知られているあるいは本明細書に記載されている1つ以上のコンピュータアルゴリズムまたはプログラムを用いて決定し得る。例えば、一致率は、MEGALIGN version 3.12e配列アラインメントプログラムに組込まれているようなCLUSTAL Vアルゴリズムのデフォルトのパラメータを用いて決定できる。このプログラムは、LASERGENE ソフトウェアパッケージ(一組の分子生物学的分析プログラム)(DNASTAR, Madison WI)の一部である。CLUSTAL Vは、Higgins, D.G.およびP.M. Sharp (1989; CABIOS 5:151-153)、並びにHiggins, D.G. 他(1992; CABIOS 8:189-191)に記載がある。ポリヌクレオチド配列を2つ1組でアラインメントする際のデフォルトパラメータは、Ktuple=2、gap penalty=5、window=4、「diagonals saved」=4と設定する。デフォルトとして「重みづけされた」残基の重みづけ表を選択する。CLUSTAL Vは、アラインメントされたポリヌクレオチド配列対間の「percent similarity(類似率)」として一致率を報告する。
【0126】
あるいは、米国国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)が、一般的に用いられ、且つ、無料で利用可能な用い得る配列比較アルゴリズム一式を提供している(Altschul, S.F. 他(1990)J. Mol. Biol. 215:403-410)。BLASTアルゴリズムは、幾つかの情報源から入手可能であり、メリーランド州ベセスダにあるNCBIおよびインターネット(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)からも入手可能である。BLASTソフトウェア一式には様々な配列分析プログラムが含まれており、既知のポリヌクレオチド配列を種々のデータベースから得た別のポリヌクレオチド配列とアラインメントする「blastn」もその1つである。その他にも、2つのヌクレオチド配列をペアワイズで直接比較するために用いる「BLAST 2 Sequences」と称されるツールも利用可能である。「BLAST 2 Sequences」は、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gorf/bl2.htmlにアクセスして、対話形式で利用ができる。「BLAST 2 Sequences」ツールは、blastn 及び blastp(以下に記載)の両方に用いることができる。BLASTプログラムは、一般的には、ギャップ及び他のパラメータをデフォルト設定に設定して用いる。例えば、2つのヌクレオチド配列を比較するには、デフォルトパラメータに設定した「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.12(2000年4月21日)を用いてblastnを実行し得る。デフォルトパラメータの設定例を以下に示す。
【0127】
Matrix: BLOSUM62
Reward for match: 1
Penalty for mismatch: -2
Open Gap: 5 and Extension Gap: 2 penalties
Gap x drop-off: 50
Expect: 10
Word Size: 11
Filter: on
【0128】
一致率は、ある定義された配列の全長(例えば特定のSEQ IDナンバーで定義された配列)について測定し得る。或いは、より短い長さ、例えば、定義された、より大きな配列から得られた断片(例えば少なくとも20、30、40、50、70、100または200の連続したヌクレオチドの断片)の長さについて一致率を測定してもよい。ここに挙げた長さは単なる例示的なものに過ぎず、表、図および配列リストを含めた本明細書に記載された配列が支持する任意の断片長を用いて、一致率を測定し得る或る長さを説明し得ることを理解されたい。
【0129】
高度の同一性を示さない核酸配列が、それにもかかわらず遺伝子コードの縮重が原因で、類似のアミノ酸配列をコードする場合がある。この縮重を利用して核酸配列内で変化を生じさせて、全ての核酸配列が実質上同一のタンパク質をコードするような多数の核酸配列を生成し得ることを理解されたい。
【0130】
ポリペプチド配列に用いられる用語「一致率」または「一致性%」とは、標準化されたアルゴリズムを用いてアラインメントされる2つ以上のポリペプチド配列間の一致する残基の百分率のことである。ポリペプチド配列アラインメントの方法は公知である。保存的アミノ酸置換を考慮するアラインメント方法もある。既に詳述したこのような保存的置換は通常、置換部位の電荷および疎水性を保存するので、ポリペプチドの構造を(したがって機能も)保存する。
【0131】
ポリペプチド配列間の一致率は、MEGALIGN version 3.12e配列アラインメントプログラムに組込まれているようなCLUSTAL Vアルゴリズムのデフォルトのパラメータを用いて決定できる(既に説明したのでそれを参照されたい)。CLUSTAL Vを用いて、ポリペプチド配列をペアワイズアラインメントする際のデフォルトパラメータは、Ktuple=1、gap penalty=3、window=5、「diagonals saved」=5と設定される。PAM250マトリクスが、デフォルトの残基重み付け表として選択される。ポリヌクレオチドのアラインメントと同様に、アラインメントされたポリペプチド配列の対の一致率は、CLUSTAL Vによって「percent similarity(類似性パーセント)」として報告される。
【0132】
或いは、NCBI BLASTソフトウェア一式を用いてもよい。例えば、2つのポリペプチド配列をペアワイズで比較する場合、「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.12(2000年4月21日)のblastpをデフォルトパラメータに設定して用い得る。デフォルトパラメータの設定例を以下に示す。
【0133】
Matrix: BLOSUM62
Open Gap: 11 and Extension Gap: 1 penalties
Gap x drop-off: 50
Expect: 10
Word Size: 3
Filter: on
【0134】
一致率は、ある定義されたポリペプチド配列の全長(例えば特定のSEQ IDナンバーで定義された配列)について測定し得る。或いは、より短い長さ、例えば、定義された、より大きなポリペプチド配列から得られた断片(例えば少なくとも15、20、30、40、50、70、または150の連続した残基の断片)の長さについて一致率を測定してもよい。ここに挙げた長さは単なる例示的なものに過ぎず、表、図および配列リストを含めた本明細書に記載された配列が支持する任意の断片長を用いて、一致率を測定し得る或る長さを説明し得ることを理解されたい。
【0135】
「ヒト人工染色体(HAC)」は、約6kb(キロベース)〜10MbのサイズのDNA配列を含み得る、染色体の複製、分離及び維持に必要な全ての要素を含む直鎖状の微小染色体である。
【0136】
用語「ヒト化抗体」は、もとの結合能力を保持しつつよりヒトの抗体に似せるために、非抗原結合領域のアミノ酸配列が変えられた抗体分子を指す。
【0137】
「ハイブリダイゼーション」とは、所定のハイブリダイゼーション条件下で、ある一本鎖ポリヌクレオチドがある相補的な一本鎖と塩基対を形成するアニーリングのプロセスである。特異的ハイブリダイゼーションは、2つの核酸配列が高い相補性を共有することの指標である。特異的ハイブリダイゼーション複合体は許容されるアニーリング条件下で形成され、1回以上の「洗浄」ステップ後もハイブリダイズされたままである。洗浄ステップは、ハイブリダイゼーションプロセスのストリンジェンシーを決定する際に特に重要であり、よりストリンジェントな条件では、非特異結合(すなわち完全には一致しない核酸鎖対間の結合)が減少する。核酸配列のアニーリングに対する許容条件は、当業者が慣例的に決定できる。許容条件は、どのハイブリダイゼーション実験でも一定でありうるが、洗浄条件は所望のストリンジェンシーを得るように、従ってハイブリダイゼーション特異性も得るように実験によって変更することができる。アニーリングが許容される条件は、例えば、温度が68℃で、約6×SSC、約1%(w/v)のSDS、並びに約100μg/mlのせん断して変性したサケ精子DNAが含まれる。
【0138】
一般に、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは或る程度、洗浄ステップを実行する温度を基準にして表すことができる。このような洗浄温度は通常、所定のイオン強度及びpHにおける特定の配列の融点(Tm)より約5〜20℃低くなるように選択する。このTmは、所定のイオン強度及びpHの下で、完全に一致するプローブに標的配列の50%がハイブリダイズする温度である。Tmを計算する式および核酸のハイブリダイゼーション条件はよく知られており、Sambrook, J. 他(1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, 1-3巻, Cold Spring Harbor Press, Plainview NYに記載されており、特に2巻の9章を参照されたい。
【0139】
本発明の、ポリヌクレオチドとポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションに対する高ストリンジェンシー条件には、約0.2×SSC及び約1%のSDS存在下で68℃において1時間の洗浄条件が含まれる。別法では、約65℃、60℃、55℃、42℃の温度で行う。SSC濃度は、約0.1%のSDS存在下で、約0.1〜2×SSCの範囲で変化し得る。通常は、遮断剤を用いて非特異ハイブリダイゼーションを阻止する。このようなブロッキング剤には、例えば、約100〜200μg/mlの、せん断した変性サケ精子DNAがある。特定条件下で、例えばRNAとDNAのハイブリダイゼーションでは、有機溶剤、例えば約35〜50%v/vの濃度のホルムアミドを用いることもできる。洗浄条件の有用なバリエーションは、当業者には自明であろう。ハイブリダイゼーションは、特に高ストリンジェント条件下では、ヌクレオチド間の進化的な類似性を示唆し得る。進化的類似性は、ヌクレオチド群、およびヌクレオチドがコードするポリペプチド群について、或る同様の役割を強く示唆する。
【0140】
用語「ハイブリダイゼーション複合体」は、相補的な塩基間の水素結合の形成によって形成された、2つの核酸配列の複合体を指す。ハイブリダイゼーション複合体は、溶解状態で形成し得る(C0tまたはR0t解析など)。あるいは、一方の核酸が溶解状態で存在し、もう一方の核酸が固体支持体(例えば紙、膜、フィルタ、チップ、ピンまたはガラススライド、あるいは他の適切な基板であって細胞若しくはその核酸が固定される基板)に固定されているような2つの核酸間に形成され得る。
【0141】
用語「挿入」或いは「付加」は、1個以上のアミノ酸残基或いはヌクレオチドがそれぞれ追加されるアミノ酸配列或いはポリヌクレオチド配列の変化を指す。
【0142】
「免疫応答」は、炎症、外傷、免疫異常症、伝染性疾患または遺伝性疾患に関連する症状を指し得る。これらの症状は、細胞及び全身の防御系に作用し得る種々の因子、例えばサイトカイン、ケモカイン、その他のシグナル伝達分子の発現によって特徴づけることができる。
【0143】
用語「免疫原性断片」は、例えば哺乳動物などの生きている動物に導入すると、免疫反応を引き起こすTRICHのポリペプチド断片またはオリゴペプチド断片を指す。「免疫抗原性断片」の語には、本明細書中で開示したような或いは当分野で既知であるような任意の抗体産出方法において有用なTRICHの任意のポリペプチドまたはオリゴペプチド断片も含まれる。
【0144】
用語「マイクロアレイ」は、基板上の複数のポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体またはその他の化合物の構成を指す。
【0145】
用語「エレメント」または「アレイエレメント」は、マイクロアレイ上に固有の指定された位置を有する、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体またはその他の化合物を指す。
【0146】
用語「モジュレート」または「活性の調節」は、TRICHの活性の変化を指す。例えば、モジュレートによって、TRICHのタンパク質活性の増減、或いは結合特性またはその他の生物学的特性、機能的特性或いは免疫学的特性の変化が起こる。
【0147】
「核酸」および「核酸配列」の語は、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはこれらの断片を指す。「核酸」および「核酸配列」の語はまた、ゲノム起源または合成起源のDNAまたはRNAであって一本鎖または二本鎖であるかあるいはセンス鎖またはアンチセンス鎖を表し得るようなDNAまたはRNAや、ペプチド核酸(PNA)や、任意のDNA様またはRNA様物質を指すこともある。
【0148】
「機能的に連結した」は、第1の核酸配列と第2の核酸配列が機能的な関係にある状態を指す。例えば、或るプロモーターが或るコード配列の転写または発現に影響を及ぼす場合には、そのプロモーターはそのコード配列に機能的に連結している。機能的に連結したDNA配列群は非常に近接するか連続的に隣接することがあり、また、2つのタンパク質コード領域を結合するために必要な場合は同一リーディングフレーム内にあり得る。
【0149】
「ペプチド核酸(PNA)」は、末端がリジンで終わるアミノ酸残基のペプチドのバックボーンに結合した、少なくとも約5ヌクレオチドの長さのオリゴヌクレオチドを含む、アンチセンス分子または抗遺伝子剤を指す。末端のリジンは、この組成に溶解性を与える。PNAは、相補的一本鎖DNAまたはRNAに優先的に結合して転写の伸長を停止するものであり、ポリエチレングリコール化して細胞におけるPNAの寿命を延長し得る。
【0150】
TRICHの「翻訳後修飾」には、脂質化、グリコシル化、リン酸化、アセチル化、ラセミ化、蛋白分解性切断及び当分野で既知の、その他の修飾が含まれ得る。 これらのプロセスは、合成或いは生化学的に生じ得る。生化学的修飾は、TRICHの酵素環境に依存し、細胞の種類によって異なることとなる。
【0151】
「プローブ」とは、同一核酸、対立遺伝子核酸、または関連核酸の検出に用いる、TRICHやそれらの相補配列、またはそれらの断片をコードする核酸を指す。プローブは、単離されたオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドであって、検出可能な標識またはレポーター分子に接着した配列である。典型的な標識には、放射性アイソトープ、リガンド、化学発光試薬および酵素がある。「プライマー」は、短い核酸、通常はDNAオリゴヌクレオチドであり、相補的塩基対を形成することで標的ポリヌクレオチドにアニーリングされ得る。プライマーは次に、DNAポリメラーゼ酵素によって標的DNA鎖に沿って伸長し得る。プライマー対は、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による、核酸の増幅(および同定)に用い得る。
【0152】
本発明に用いるようなプローブ及びプライマーは通常、既知の配列の、少なくとも15の連続したヌクレオチドを含んでいる。特異性を高めるため、長めのプローブおよびプライマー、例えば開示した核酸配列の少なくとも20、25、30、40、50、60、70、80、90、100または少なくとも150の連続したヌクレオチドからなるようなプローブおよびプライマーも用い得る。これよりもかなり長いプローブおよびプライマーもある。表、図面および配列リストを含む本明細書が支持する、任意の長さのヌクレオチドを用い得るものと理解されたい。
【0153】
プローブおよびプライマーの調製および使用方法については、Sambrook, J. 他(1989; Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, 1-3巻, Cold Spring Harbor Press, Plainview NY)、Ausubel, F.M. 他(1999) Short Protocols in Molecular Biology, 第4版, John Wiley & Sons, New York NY),およびInnis, M.他(1990; PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications, Academic Press, San Diego CA)などの参照文献に記載がある。PCRプライマー対は、その目的のためのコンピュータプログラム、例えばPrimer(Version 0.5, 1991, Whitehead Institute for Biomedical Research, Cambridge MA)を用いるなどして既知の配列から得ることができる。
【0154】
プライマーとして用いるオリゴヌクレオチドの選択は、そのような目的のために本技術分野でよく知られているソフトウェアを用いて行う。例えばOLIGO 4.06ソフトウェアは、各100ヌクレオチドまでのPCRプライマー対の選択に有用であり、オリゴヌクレオチドおよび、最大5,000までの大きめのポリヌクレオチドであって32キロベースまでのインプットポリヌクレオチド配列から得た配列を分析するのにも有用である。類似のプライマー選択プログラムには、拡張能力のための追加機能が組込まれている。例えば、PrimOUプライマー選択プログラム(テキサス州ダラスにあるテキサス大学南西部医療センターのゲノムセンターから一般向けに入手可能)は、メガベース配列から特定のプライマーを選択することが可能であり、したがってゲノム全体の範囲でプライマーを設計するのに有用である。Primer3プライマー選択プログラム(Whitehead Institute/MIT Center for Genome Research(マサチューセッツ州ケンブリッジ)より入手可能)によって、ユーザーは、プライマー結合部位として避けたい配列を指定できる「非プライミングライブラリ(mispriming library)」を入力できる。Primer3は特に、マイクロアレイのためのオリゴヌクレオチドの選択に有用である(後二者のプライマー選択プログラムのソースコードは、それぞれの情報源から得てユーザー固有のニーズを満たすように修正し得る)。PrimerGenプログラム(英国ケンブリッジ市の英国ヒトゲノムマッピングプロジェクト-リソースセンターから一般向けに入手可能)は、多数の配列アラインメントに基づいてプライマーを設計し、それによって、アラインメントされた核酸配列の最大保存領域または最小保存領域のいずれかとハイブリダイズするようなプライマーの選択を可能にする。従って、このプログラムは、固有であって保存されたオリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドの断片の同定に有用である。上記選択方法のいずれかによって同定したオリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチド断片は、ハイブリダイゼーション技術において、例えばPCRまたはシークエンシングプライマーとして、マイクロアレイエレメントとして、あるいは核酸のサンプルにおいて完全または部分的相補的ポリヌクレオチドを同定する特異プローブとして有用である。オリゴヌクレオチドの選択方法は、上記の方法に限定されるものではない。
【0155】
本明細書における「組換え核酸」は天然の配列ではなく、2つ以上の配列の離れたセグメントを人工的に組み合わせた核酸である。この人為的組合せはしばしば化学合成によって達成するが、より一般的には核酸の単離セグメントの人為的操作によって、例えばSambrookの文献(前出)に記載されているような遺伝子工学的手法によって達成する。組換え核酸の語は、単に核酸の一部が付加、置換または欠失により改変された核酸も含む。しばしば組換え核酸には、プロモーター配列に機能的に連結した核酸配列が含まれる。このような組換え核酸は、例えばある細胞を形質転換するために使用されるベクターの一部と成し得る。
【0156】
あるいはこのような組換え核酸は、ウイルスベクターの一部と成すことができ、ベクターは例えばワクシニアウイルスに基づくものであり得る。そのようなベクターは哺乳類に接種され、その組換え核酸が発現されて、その哺乳類内で防御免疫応答を誘導するように使用することができる。
【0157】
「調節因子」は、通常は遺伝子の非翻訳領域に由来する核酸配列であり、エンハンサー、プロモーター、イントロン及び5'及び3'の非翻訳領域(UTR)を含む。調節エレメントは、転写、翻訳またはRNA安定性を制御する宿主タンパク質またはウイルスタンパク質と相互作用する。
【0158】
「レポーター分子」は、核酸、アミノ酸または抗体の標識に用いられる化学的または生化学的な部分である。レポーター分子には、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、発色剤、基質、補助因子、阻害因子、磁気粒子およびその他の当分野で既知の成分がある。
【0159】
DNA分子に対する「RNA等価物」は、基準となるDNA分子と同じ直鎖の核酸配列から構成されるが、全ての窒素性塩基のチミンがウラシルで置換され、糖鎖のバックボーンがデオキシリボースではなくリボースからなる。
【0160】
用語「サンプル」は、その最も広い意味で用いられている。TRICH、TRICHをコードする核酸、またはその断片を含むと推定されるサンプルは、体液と、細胞や細胞から単離された染色体や細胞内小器官(オルガネラ)または膜からの抽出物と、細胞と、溶液中に存在するまたは基板に固定されたゲノムDNA、RNA、cDNAと、組織と、組織プリント等を含み得る。
【0161】
用語「特異的結合」及び「特異的に結合する」は、タンパク質若しくはペプチドと、アゴニスト、抗体、アンタゴニスト、小分子、若しくは任意の天然若しくは合成の結合組成物との間の相互作用を指す。この相互作用は、タンパク質の特定の構造(例えば抗原決定基即ちエピトープ)であって結合分子が認識するものが存在するか否かに依存している。例えば、抗体がエピトープ「A」に対して特異的である場合、遊離した標識A及びその抗体を含む反応において、エピトープA(つまり遊離した、標識されていないA)を含むポリペプチドの存在が、抗体に結合する標識されたAの量を低減させる。
【0162】
用語「実質的に精製された」は、自然の環境から取り除かれてから、単離或いは分離された核酸配列或いはアミノ酸配列であって、自然に結合している組成物が少なくとも約60%除去されたものであり、好ましくは約75%以上の除去、最も好ましくは約90%以上除去されたものを指す。
【0163】
「置換」とは、一つ以上のアミノ酸またはヌクレオチドをそれぞれ別のアミノ酸またはヌクレオチドに置き換えることである。
【0164】
用語「基板」は、任意の好適な固体或いは半固体の支持物を指し、膜及びフィルター、チップ、スライド、ウエハ、ファイバー、磁気または非磁気ビーズ、ゲル、チューブ、プレート、ポリマー、微小粒子、毛細管が含まれる。基板は、ウェル、溝、ピン、チャネル、孔など、様々な表面形態を有することができ、基板表面にはポリヌクレオチドやポリペプチドが結合する。
【0165】
「転写イメージ(transcript image)」または「発現プロファイル(プロフィール)」は、所定条件下での所定時間における特定の細胞の種類または組織による集合的遺伝子発現のパターンを指す。
【0166】
「形質転換(transformation)」とは、外来DNAが受容細胞に導入されるプロセスのことである。形質転換は、本技術分野で知られている種々の方法に従って自然条件または人工条件下で生じ得るものであり、外来性の核酸配列を原核宿主細胞または真核宿主細胞に挿入する、任意の既知の方法を基にし得る。形質転換の方法は、形質転換する宿主細胞の種類によって選択する。限定するものではないが形質転換方法には、バクテリオファージあるいはウイルス感染、電気穿孔法(エレクトロポレーション)、熱ショック、リポフェクションおよび微粒子銃を用いる方法がある。「形質転換された細胞」には、導入されたDNAが自律的に複製するプラスミドとして或いは宿主染色体の一部として複製可能である安定的に形質転換された細胞が含まれる。さらに、限られた時間に一過的に導入DNA若しくは導入RNAを発現する細胞も含まれる。
【0167】
ここで用いる「遺伝形質転換生物体(transgenic organism)」とは任意の生物体であり、限定するものではないが動植物を含み、生物体の1個以上の細胞が、ヒトの関与によって、例えば本技術分野でよく知られているトランスジェニック(transgenic)技術によって導入された異種核酸を有する。核酸の細胞への導入は、直接または間接的に、細胞の前駆物質に導入することによって、計画的な遺伝子操作によって、例えば微量注射法によって或いは組換えウイルスでの感染によって行う。別の実施態様で核酸の導入は、組換えウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクターを感染させて成し得る (Lois, C. 他(2002) Science 295:868-872)。遺伝子操作の語は、古典的な交雑育種あるいはin vitro受精を指すものではなく、組換えDNA分子の導入を指す。本発明に基づいて予期される遺伝形質転換生物体には、バクテリア、シアノバクテリア、真菌および動植物がある。本発明の単離されたDNAは、本技術分野で知られている方法、例えば感染、形質移入、形質転換またはトランス接合によって宿主に導入することができる。本発明のDNAをこのような生物体に移入する技術はよく知られており、前出のSambrook 他(1989)などの参考文献に記載されている。
【0168】
特定の核酸配列の「変異体」は、核酸配列1本全部の長さに対して特定の核酸配列と少なくとも40%の相同性を有する核酸配列であると定義する。 その際、デフォルトパラメータに設定した「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.9(1999年5月7日)を用いてblastnを実行する。このような核酸対は、所定の長さに対して、例えば少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の相同性を示し得る。或る変異体は、例えば「対立遺伝子」変異体(前述)、「スプライス」変異体、「種」変異体または「多型性」変異体として記載し得る。スプライス変異体は参照分子とかなりの相同性を有し得るが、mRNAプロセッシング中のエキソンの選択的スプライシングによって通常、より多くまたはより少数のヌクレオチドを有することになる。対応するポリペプチドは、追加機能ドメイン群を有するか、あるいは参照分子には存在するドメイン群が欠落していることがある。種変異体は、種によって異なるポリヌクレオチドである。結果的に生じるポリペプチドは通常、相互にかなりのアミノ酸相同性を有する。多型性変異体は、所与の種の個体間で特定の遺伝子のポリヌクレオチド配列が異なる。多型変異配列はまた、ポリヌクレオチド配列の1つのヌクレオチドが異なる「1塩基多型性」(SNP)も含み得る。SNPの存在は、例えば特定の集団、病状または病状性向を示し得る。
【0169】
特定のポリペプチド配列の「変異体」は、ポリペプチド配列の1本の長さ全体で特定のポリペプチド配列に対して少なくとも40%の相同性を有するポリペプチド配列として定義される。定義づけには、デフォルトパラメータに設定した「BLAST 2 Sequences」ツールVersion 2.0.9(1999年5月7日)を用いてblastpを実行する。このようなポリペプチド対は、そのポリペプチドの一方の所定の長さに対して、例えば少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を示し得る。
【0170】
(発明)
本発明の種々の実施例は、新規のヒト輸送体及びイオンチャネル(TRICH)及びTRICHをコードするポリヌクレオチドを含み、これらの組成物を利用した輸送障害、神経疾患、筋疾患、免疫疾患および細胞増殖異常の診断、治療、及び予防に関する。
【0171】
表1は、本発明の完全長ポリヌクレオチドおよびポリペプチド実施様態の命名の概略である。各ポリヌクレオチドおよびその対応するポリペプチドは、1つのIncyteプロジェクト識別番号(IncyteプロジェクトID)に相関する。各ポリペプチド配列は、ポリペプチド配列識別番号(ポリペプチドSEQ ID NO:)とIncyteポリペプチド配列番号(IncyteポリペプチドID)によって表示した。各ポリヌクレオチド配列は、ポリヌクレオチド配列識別番号(ポリヌクレオチドSEQ ID NO:)とIncyteポリヌクレオチドコンセンサス配列番号(IncyteポリヌクレオチドID)によって表示した。列6は本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチド配列に相当する物理的な完全長クローンのIncyte ID 番号を示す。完全長のクローンは列3に示すポリペプチド配列に少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチドをコードする。
【0172】
表2は、GenBankタンパク質(genpept)データベースとPROTEOMEデータベースとに対するBLAST分析で同定した、本発明のポリペプチド群に相同な配列群を示す。列1および列2はそれぞれ、本発明の各ポリペプチドに対するポリペプチド配列識別番号(ポリペプチド SEQ ID NO:)と、それに対応するIncyteポリペプチド配列番号(IncyteポリペプチドID)を示す。列3は、GenBankの最も近い相同体のGenBank識別番号(Genbank ID NO :)と最も近いPROTEOMEデータベース相同体のPROTEOMEデータベース識別番号(PROTEOME ID NO:)を示す。列4は、各ポリペプチドとその相同体1つ以上との間の一致に関する確率スコアを示す。列5は、GenBankとPROTEOMEデータベースの相同体の注釈を示し、更に該当箇所には関連する引用文献も示す。これらを引用することを以って本明細書の一部とする。
【0173】
表3は、本発明のポリペプチドの多様な構造的特徴を示す。列1および列2はそれぞれ、本発明の各ポリペプチドに対するポリペプチド配列識別番号(SEQ ID NO:)と、それに対応するIncyteポリペプチド配列番号(IncyteポリペプチドID)を示す。列3は、各ポリペプチドのアミノ酸残基数を示す。列4および列5はそれぞれ、GCG配列分析ソフトウェアパッケージのMOTIFSプログラム(Genetics Computer Group, Madison WI)によって決定された、リン酸化およびグリコシル化の可能性のある部位を示す。列6は、シグネチャ配列、ドメイン、およびモチーフを含むアミノ酸残基を示す。列7は、タンパク質の構造/機能の分析のための分析方法を示し、該当箇所には更に、分析方法に利用した検索可能なデータベースを示す。
【0174】
表2及び3は共に、本発明の各々のポリペプチドの特性を要約しており、それら特性が請求の範囲に記載されたポリペプチドが輸送体及びイオンチャネルであることを確立している。例えば、SEQ ID NO:1はヒトCTL1タンパク質 (GenBank ID g6996442) とS11残基からK626残基まで49%同一であることがBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって示された(表2参照)。BLAST確率スコアは9e-168であり、これは観測されたポリペプチド配列アラインメントが偶然に得られる確率を示している。SEQ ID NO:1 はまた、8個の膜貫通ヘリックス領域を含んでいることが膜貫通ヘリックスの予測用隠れマルコフモデルを用いて決定された。(表3参照)。また他の例として、SEQ ID NO:3はヒトSLC11A3 鉄輸送体 (GenBank ID g8895485) とE10残基からV115残基まで57%の同一性を有することがBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって示された(表2参照)。BLAST確率スコアは4.7e-25であり、これは観測されたポリペプチド配列アラインメントが偶然に得られる確率を示している。別の例として、SEQ ID NO:6は残基M1から残基S944までラットのカリウムチャネル(GenBank ID g2745729) と88%の同一性を有することがBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって決定された(表2参照)。BLAST確率スコアは0.0であるが、これは観測されたポリペプチド配列が偶然に得られる確率を示す。SEQ ID NO:6はまた、1つのPACモチーフ、1つのPASドメイン、1つのサイクリックヌクレオチド結合ドメインおよび1つのイオン輸送タンパク質ドメインを有するが、これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された(表3参照)。BLAST_PRODOM およびBLAST_PRODOM解析からのデータは、SEQ ID NO:6がカリウムチャネルであることを示す、更に確証的な証拠を提供する。別の例で、SEQ ID NO:10 は、ヒトEag関連遺伝子メンバー 2 (GenBank ID g11878259) とM1残基からI418残基まで99%、S420残基からS680残基まで95%、P665残基からH894残基まで94%同一であることがBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)で確認された(表2参照)。BLAST確率スコアは0.0であるが、これは観測されたポリペプチド配列が偶然に得られる確率を示す。SEQ ID NO:10 は原形質膜に局在し、輸送体とチャネル活性を有し、また電位依存性カリウムチャネルであることがPROTEOME データベースを使ったBLAST解析によって確認された。SEQ ID NO:10はまた、1つのPACドメイン、1つのサイクリックヌクレオチド結合ドメインおよび1つのイオン輸送ドメインを有するが、これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された(表3参照)。SEQ ID NO:10 は5つの膜貫通領域を含むことがTMHMMR解析によって確認された。PRODOMおよびDOMOデータベースのBLAST解析からのデータは、SEQ ID NO:10がカリウムチャネルであることの確証的な証拠をさらに提供する。別の例として、SEQ ID NO:11はA94残基からS785残基までラットのカリウムチャネル (GenBank ID g2745729) と86%の同一性を有することがBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって確認された(表2参照)。BLAST確率スコアは0.0であるが、これは観測されたポリペプチド配列が偶然に得られる確率を示す。PROTEOME データベースを用いたBLAST解析によって決定されたように、SEQ ID NO:11 は原形質膜に局在し、緩徐活性化遅延整流性カリウムチャネルであり、椎骨神経前駆体細胞(prevertebral neurons)の分化を促進させ得るラットether-a-go-go 関連2(PROTEOME ID 331276|Rn.10875)に相同性である。SEQ ID NO:11 はまた、神経系で特異的にカリウム輸送作用がある内向き整流型カリウムチャネルであるラットetheragogo関連遺伝子3(PROTEOME ID 331274|Rn.10874)に相同性である。SEQ ID NO:11はまた、1つのサイクリックヌクレオチド結合ドメインおよび1つのイオン輸送タンパク質ドメインを有するが、これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された(表3参照)。更なるBLAST解析からのデータは、SEQ ID NO:11がカリウムチャネルであることを示す更に確証的な証拠を提供する。別の例において、SEQ ID NO:14はQ13残基からS1049残基まで分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe )の膜ATP分解酵素(GenBank ID g3451312) に38%の同一性を有するが、これはBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって同定される(表2参照)。BLAST確率スコアは1.5e-189であり、これは観測されたポリペプチド配列アラインメントが偶然に得られる確率を示している。SEQ ID NO:14 は膜に局在しており、ATP分解酵素サブファミリのPタイプ、Ca2+タイプのメンバーであることがPROTEOMEデータベースを用いたBLAST解析によって確認された。SEQ ID NO:14はまた、1つのE1-E2ATP分解酵素ドメインを有するが、 これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された(表3参照)。BLIMPS、MOTIFS、及びPROFILESCAN解析からのデータは、SEQ ID NO:14 が膜ATP分解酵素であると言う、さらに確証的な証拠を提供する。別の例において、SEQ ID NO:19 はヒトナトリウム依存性高親和性ジカルボン酸輸送体(GenBank ID g8132324) と残基M1からL602まで98%の同一性を有することがBasic Local Alignment Search Tool (BLAST)によって決定された(表2参照)。BLAST確率スコアは0.0であるが、これは観測されたポリペプチド配列が偶然に得られる確率を示す。SEQ ID NO:19 はまた、輸送体遺伝子機能を有するタンパク質に相同性であり、ナトリウム依存性ジカルボン酸輸送体であることがPROTEOMEデータベースを用いたBLAST解析によって決定された。SEQ ID NO:19はまた、1つのナトリウム依存性ジカルボン酸輸送体ドメインを有するが、 これは、隠れマルコフモデル(HMM)を基にした保存されたタンパク質ファミリードメインのPFAMデータベースにおいて、統計的に有意な一致を検索して決定された(表3参照)。BLIMPSおよびBLAST解析からのデータは、SEQ ID NO:19がナトリウム依存性ジカルボン酸輸送体であることを示す更なる確証を提供する。SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:4-5、SEQ ID NO:7-9、SEQ ID NO:12-13、SEQ ID NO:15-18、およびSEQ ID NO:20-26は、同様に分析し、注釈を付けた。SEQ ID NO:1-26の解析用のアルゴリズム及びパラメータを表7に記載した。
【0175】
表4に示すように、完全長ポリヌクレオチドの具体例は、cDNA配列またはゲノムDNA由来のコード(エキソン)配列を用いて、あるいはこれら2種類の配列を任意に組み合わせてアセンブリした。列1は本発明の各ポリヌクレオチドに対するポリヌクレオチド配列識別番号(ポリヌクレオチドSEQ ID NO)および対応するIncyteポリヌクレオチドコンセンサス配列番号(Incyte ID)、および塩基対の各ポリヌクレオチド配列の長さを示している。列2は、完全長ポリヌクレオチド実施態様のアセンブリに用いたcDNA配列および/またはゲノム配列の開始ヌクレオチド(5')位置および終了ヌクレオチド(3')位置、また、例えばSEQ ID NO:8-14を同定するため、或いはSEQ ID NO:8-14と、関連するポリヌクレオチド群とを区別するためのハイブリダイゼーション技術または増幅技術に有用なポリヌクレオチドの断片の開始ヌクレオチド(5')位置および終了ヌクレオチド(3')位置を示す。
【0176】
表4の列2で記述されたポリヌクレオチド断片は、具体的にはたとえば組織特異的なcDNAライブラリまたはプールされたcDNAライブラリに由来するIncyte cDNAを指す場合がある。或いは列2に記載したポリヌクレオチド断片は、完全長ポリヌクレオチドのアセンブリに寄与したGenBank cDNAまたはESTを指す場合もある。さらに、列2のポリヌクレオチド断片は、ENSEMBL(The Sanger Centre、英国ケンブリッジ)データベースから由来した配列(即ち「ENST」命名を含む配列)を同定し得る。或いは、列2で記述されたポリヌクレオチド断片は、NCBI RefSeq Nucleotide Sequence Records データベースから由来する場合もあり(即ち「NM」または「NT」の命名を含む配列)、またNCBI RefSeq Protein Sequence Recordsから由来する場合もある(即ち「NP」の命名を含む配列)。または列2のポリヌクレオチド断片は、「エキソンスティッチング(exon-stitching)」アルゴリズムにより結び合わせたcDNA及びGenscan予想エキソンの両方のアセンブリ体を意味する場合がある。例えば、FL_XXXXXX_N1_N2_YYYYY_N3_N4 と同定されるポリヌクレオチドは、アルゴリズムが適用される配列のクラスターの識別番号がXXXXXXであり、アルゴリズムにより生成される予測の番号がYYYYY であり、(もし存在すれば)N1,2,3..が解析中に手動で編集された可能性のある特定のエキソンであるような「縫合された(stitched)」配列である(実施例5参照)。または、列2のポリヌクレオチド断片は「エキソンストレッチング(exon-stretching)」アルゴリズムにより結び合わせたエキソンのアセンブリ体を指す場合もある。例えば、FLXXXXXX_gAAAAA_gBBBBB_1_Nとして同定されるポリヌクレオチド配列は、「ストレッチされた」配列である。XXXXXXはIncyteプロジェクト識別番号、gAAAAAは「エキソンストレッチング」アルゴリズムを適用したヒトゲノム配列のGenBank識別番号、gBBBBBは一番近いGenBankタンパク質相同体のGenBank識別番号またはNCBI RefSeq 識別番号であり、Nは特定のエキソンを指す(実施例5を参照)。あるRefSeq配列が「エキソンストレッチング」アルゴリズムのためのタンパク質相同体として使用された場合では、RefSeq識別子(「NM」、「NP」、または「NT」によって表される)が、GenBank識別子(即ち、gBBBBB)の代わりに使用される場合もある。
【0177】
あるいは、接頭コードは手作業で編集されたか、ゲノムDNA配列から予測されたか、または配列解析方法の組み合わせから由来している構成配列を同定する。次の表は構成配列の接頭コードと、接頭コードに対応する同じ配列の分析方法の例を列記する(実施例4と5を参照)。
Figure 2005503790
【0178】
場合によっては、最終コンセンサスポリヌクレオチド配列を確認するために、表4に示すような配列の適用範囲と重複するIncyte cDNA適用範囲が得られたが、該当するIncyte cDNA識別番号は示さなかった。
【0179】
表5は、Incyte cDNA配列を用いてアセンブリされた完全長ポリヌクレオチドのための代表的なcDNAライブラリを示している。代表的なcDNAライブラリとはIncyte cDNAライブラリであり、これは、最も頻繁にはIncyte cDNA配列群によって代表されるが、これら配列は、上記のポリヌクレオチドをアセンブリおよび確認するために用いられた。cDNAライブラリを作製するために用いた組織およびベクターを表5に示し、表6で説明している。
【0180】
表8は、本発明のポリヌクレオチド配列に見られる一塩基多型((SNP) を、種々のヒト集団での対立遺伝子(アレル)頻度と共に示す。列1および列2はそれぞれ、本発明の各ポリヌクレオチドのポリヌクレオチド配列識別番号(SEQ ID NO :)およびそれに対応するIncyteプロジェクト識別番号(PID)を示す。列3はSNPが検出されたESTのIncyte識別番号(EST ID)を示し、列4はSNPの識別番号(SNP ID)を示す。列5はSNPが存在するEST配列内の位置(EST SNP)を示し、列6は完全長ポリヌクレオチド配列内のSNPの位置(CB1 SNP)を示す。列7はEST配列内に存在する対立遺伝子を示す。列8および列9はSNP部位に存在する2つの対立遺伝子を示す。列10はESTに存在する対立遺伝子に基づいてSNP部位に含まれるコドンによってコードされるアミノ酸を示す。列11〜14は四つの異なったヒト母集団における対立遺伝子1の発生頻度を示す。n/d(検出されない)の項目は母集団における対立遺伝子1の発生頻度が低すぎて検出されなかったことを示し、また、n/a(利用不可)はその母集団において対立遺伝子の発生頻度が決定されなかったことを示す。
【0181】
本発明はまた、TRICHの変異体も含む。好適なTRICH変異体は、TRICHの機能的或いは構造的特徴の少なくともどちらか一方を有し、かつ該TRICHアミノ酸配列に対して少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、或いは少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性、更には少なくとも約95%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0182】
種々の実施態様もまた、TRICHをコードするポリヌクレオチドをも含む。特定の実施例において、本発明は、TRICHをコードするSEQ ID NO:27-52からなる一群から選択された配列を含むポリヌクレオチド配列を提供する。SEQ NO ID:27-52のポリヌクレオチド配列は、配列表に示すように等価RNA配列を有しているが、窒素塩基チミンの出現はウラシルに置換され、糖のバックボーンはデオキシリボースではなくリボースから構成されている。
【0183】
本発明はまた、TRICHをコードするポリヌクレオチドの変異体を含む。詳細には、このような変異体ポリヌクレオチド配列は、TRICHをコードするポリヌクレオチド配列との、少なくとも約70%のポリヌクレオチド配列同一性、あるいは少なくとも約85%のポリヌクレオチド配列同一性、更には少なくとも約95%ものポリヌクレオチド配列同一性を持つこととなる。本発明の或る実施態様では、SEQ ID NO:27-52からなる群から選択されたアミノ酸配列と少なくとも約70%、或いは少なくとも約85%、または少なくとも約95%ものポリヌクレオチド配列同一性を有するようなSEQ ID NO:27-52からなる群から選択された配列を有するポリヌクレオチド配列の変異配列を含む。上記の任意のポリヌクレオチドの変異体は、TRICHの機能的若しくは構造的特徴を少なくとも1つ有するアミノ酸配列をコードし得る。
【0184】
更に別の例では、本発明の或るポリヌクレオチド変異体はTRICHをコードするポリヌクレオチドのスプライス変異配列である。或るスプライス変異体はTRICHをコードするポリヌクレオチドとの顕著な配列同一性を持つ部分複数を有し得るが、mRNAプロセッシング中のエキソン群の選択的スプライシングによって生ずる、配列の数ブロックの付加または欠失により、通常、より多数またはより少数のポリヌクレオチドを有することになる。或るスプライス変異体には、約70%未満、または約60%未満、あるいは約50%未満のポリヌクレオチド配列同一性が、TRICHをコードするポリヌクレオチドとの間で全長に渡って見られるが、このスプライス変異体の幾つかの部分は、TRICHをコードするポリヌクレオチドの各部との、少なくとも約70%、あるいは少なくとも約85%、または少なくとも約95%、なおまたは100%の、ポリヌクレオチド配列同一性を有することとなる。例えば、配列SEQ ID NO:34を含むポリヌクレオチドと配列SEQ ID NO:43を含むポリヌクレオチドは互いのスプライス変異体であり、配列SEQ ID NO:46を含むポリヌクレオチドと、配列SEQ ID NO:52を含むポリヌクレオチドは互いのスプライス変異体であり、配 列SEQ ID NO:39を含むポリヌクレオチドと、配列SEQ ID NO:50を含むポリヌクレオチドは互いのスプライス変異体であり、配列SEQ ID NO:32を含むポリヌクレオチド、配列SEQ ID NO:36を含むポリヌクレオチド、および配列SEQ ID NO:37を含むポリヌクレオチドは互いにスプライス変異体である。上記のスプライス変異体は何れも、TRICHの機能的或いは構造的特徴の少なくとも1つを有する或るポリペプチドをコードし得る。
【0185】
遺伝暗号の縮重により、TRICHをコードする種々のポリヌクレオチド配列が作り出される可能性があり、中には、いかなる既知の自然発生する遺伝子のポリヌクレオチド配列とも最小の類似性しか有しないものも含まれることを、当業者は理解するであろう。したがって本発明には、可能コドン選択に基づく組合せの選択によって産出し得るあらゆる可能なポリヌクレオチド配列のバリエーションを網羅し得る。これらの組み合わせは、天然TRICHのポリヌクレオチド配列に適用される標準的なトリプレット遺伝暗号を基に作られる。また、こうした全ての変異が明確に開示されていると考慮されたい。
【0186】
TRICH とその変異体とをコードするポリヌクレオチドは一般に、好適に選択されたストリンジェンシー条件下で天然TRICH のポリヌクレオチドとハイブリダイズ可能であるが、非天然コドン群を含めるなどの実質的に異なるコドン使用を有するTRICH 或いはその誘導体をコードするポリヌクレオチドを作成することは、有益であり得る。宿主が特定コドンを利用する頻度に基づいて、特定の真核宿主または原核宿主に発生するペプチドの発現率を高めるようにコドンを選択し得る。コードされるアミノ酸配列を改変せずに、TRICH及びその誘導体をコードするヌクレオチド配列を実質的に改変する別の理由には、天然の配列から作られる転写物より例えば長い半減期など好ましい特性を備えるRNA転写物を作ることもある。
【0187】
本発明はまた、TRICH 及びその誘導体をコードするポリヌクレオチドまたはそれらの断片を完全に合成化学によって作り出す過程も含む。作製後にこの合成ポリヌクレオチドを、当分野で公知の試薬を用いて、多くの入手可能な発現ベクター及び細胞系の何れの中にも挿入可能である。更に、合成化学を用いて、TRICH またはその任意の断片をコードするポリヌクレオチドの中に突然変異を導入することも可能である。
【0188】
本発明の実施態様には、種々のストリンジェンシー条件下で、請求項に記載のポリヌクレオチド、特に、SEQ ID NO:27-52に示す配列を持つポリヌクレオチド、及びそれらの断片群にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド群が含まれる(Wahl, G.MおよびS.L. Berger (1987) Methods Enzymol.152:399-407、Kimmel, A.R.(1987)Methods Enzymol.152:507-511)。 アニーリングおよび洗浄条件を含むハイブリダイゼーションの条件は、「定義」に記載した。
【0189】
DNAシークエンシングの方法は当分野では公知であり、本発明のいずれの実施例もDNAシークエンシング方法を用いて実施可能である。DNAシークエンシング方法には酵素を用い得る。例えばDNAポリメラーゼ1のクレノウ断片、SEQUENASE(US Biochemical, Cleveland OH)、Taqポリメラーゼ(Applied Biosystems)、熱安定性T7ポリメラーゼ(Amersham Biosciences, Piscataway NJ)を用い得る。あるいは、例えばELONGASE増幅システム(Invitrogen, Carlsbad CA)において見られるように、ポリメラーゼと校正エキソヌクレアーゼとを併用し得る。好適には、MICROLAB2200液体転移システム(Hamilton, Reno, NV)、PTC200サーマルサイクラー(MJ Research, Watertown MA)およびABI CATALYST 800サーマルサイクラー(Applied Biosystems)などの装置を用いて配列の準備を自動化する。次に、ABI 373 或いは 377 DNAシークエンシングシステム(Applied Biosystems)、MEGABACE 1000 DNAシークエンシングシステム(Amersham Biosciences)または当分野で周知の他の方法を用いてシークエンシングを行う。結果として得られた配列を当分野でよく知られている種々のアルゴリズムを用いて分析する(Ausubel 他、前出、第7章; Meyers, R.A. (1995) Molecular Biology and Biotechnology, Wiley VCH, New York NY、856-853ページ)。
【0190】
当分野で周知の、PCR法をベースにした種々の方法と、部分的ヌクレオチド配列とを利用して、TRICH をコードする核酸を伸長し、プロモーターや調節エレメントなど、上流にある配列を検出し得る。例えば、使用し得る方法の1つである制限部位PCR法は、ユニバーサルプライマー及びネステッドプライマーを用いてクローニングベクター内のゲノムDNAから未知の配列を増幅する方法である(Sarkar, G. (1993) PCR Methods Applic 2:318-322)。別の方法にインバースPCR法があり、これは広範な方向に伸長させたプライマーを用いて環状化した鋳型から未知の配列を増幅する方法である。鋳型は、或る既知のゲノム遺伝子座およびその周辺の配列群からなる制限酵素断片群から得る(Triglia, T. 他(1988) Nucleic Acids Res.16:8186)。 第3の方法としてキャプチャPCR法があり、これはヒト及び酵母菌人工染色体DNAの既知の配列に隣接するDNA断片をPCR増幅する方法に関与している(Lagerstrom, M.他(1991) PCR Methods Applic.1:111119)。 この方法では、PCRを行う前に複数の制限酵素の消化及びライゲーション反応を用いて未知の配列領域内に組換え二本鎖配列を挿入することが可能である。未知の配列群を検索するために用い得る他の複数の方法も当分野で既知である(Parker, J.D 他(1991) Nucleic Acids Res.19:30553060)。 更に、PCR、ネステッドプライマー及びPromoterFinderライブラリ(Clontech, Palo Alto CA)を用いてゲノムDNAをウォーキングすることができる。この手順は、ライブラリ類をスクリーニングする必要がなく、イントロン/エキソン接合部の発見に有用である。全てのPCRベースの方法に対して、市販されているソフトウェア、例えばOLIGO 4.06プライマー分析ソフトウェア(National Biosciences, Plymouth MN)或いは別の好適なプログラムを用いて、長さが約22〜30ヌクレオチド、GC含有率が約50%以上、温度約68℃〜72℃で鋳型に対してアニーリングするようにプライマーを設計し得る。
【0191】
完全長cDNA群をスクリーニングする際は、より大きなcDNA群を含むようにサイズ選択されたライブラリ群を用いるのが好ましい。更に、ランダムプライマーのライブラリは、遺伝子群の5'領域を有する配列をしばしば含んでおり、オリゴd(T)ライブラリが完全長cDNAを作製できない状況に対して好適である。ゲノムライブラリ群は、5'非転写調節領域への、配列の伸長に有用であろう。
【0192】
市販のキャピラリー電気泳動システムを用いて、シークエンシングまたはPCR産物のサイズを分析し、またはそのヌクレオチド配列を確認することができる。具体的には、キャピラリーシークエンシングは、電気泳動による分離のための流動性ポリマーと、4つの異なるヌクレオチドに特異的であるような、レーザで刺激される蛍光色素と、発光された波長の検出に利用するCCDカメラとを有し得る。出力/光の強度は、適切なソフトウェア(Applied Biosystems社のGENOTYPER、SEQUENCE NAVIGATOR等)を用いて電気信号に変換し得る。サンプルのロードからコンピュータ分析及び電子データ表示までの全プロセスがコンピュータ制御可能である。キャピラリー電気泳動法は、特定のサンプルに少量しか存在しないようなDNA小断片のシークエンシングに特に適している。
【0193】
本発明の別の実施態様では、TRICHをコードするポリヌクレオチドまたはその断片を、TRICH、その断片または機能的等価物を適切な宿主細胞内に発現させる組換えDNA分子にクローニングし得る。遺伝暗号に固有の縮重により、実質的に同じ或いは機能的に等価のポリヌクレオチドをコードする別のポリヌクレオチドが作られ、これらの配列をTRICHの発現に利用可能である。
【0194】
様々の目的で、TRICHをコードする配列群を改変するために、当分野で一般に既知の複数の方法を用いて、本発明のポリヌクレオチド群を組換えることができる。この組換えの多様な目的には、遺伝子産物のクローン化、あるいはプロセッシングおよび/または発現のモディフィケーションが含まれるが、これらに限定されるものではない。遺伝子断片及び合成オリゴヌクレオチドのランダムなフラグメンテーション及びPCR再アセンブリによるDNAシャッフリングを用い、ヌクレオチド配列を組み換えることが可能である。例えば、オリゴヌクレオチドを介した部位特異的変異誘導を利用して、新規な制限部位の作製、グリコシル化パターンの変更、コドン優先の変更、スプライス変異体の生成等を起こす突然変異を導入し得る。
【0195】
本発明のヌクレオチドは、MOLECULARBREEDING(Maxygen Inc., Santa Clara CA, 米国特許第5,837,458号、Chang, C.-C.他 (1999) Nat. Biotechnol. 17:793-797; Christians, F.C. 他(1999) Nat. Biotechnol. 17:259-264; Crameri, A. 他(1996) Nat. Biotechnol. 14:315-319)などのDNAシャフリング技術の対象となり得るもので、生物学的または酵素的な活性、或いは他の分子や化合物と結合する能力などのTRICHの生物学的特性を変更或いは改良することができる。DNAシャッフリングは、遺伝子断片のPCRを介する組換えを用いて遺伝子変異体のライブラリを作製するプロセスである。ライブラリはその後、所望の特性を持つ遺伝子変異体群を同定する、選択またはスクリーニングの手順を経る。続いて、これら好適な変異体をプールし、更に反復してDNAシャッフリングおよび選択/スクリーニングを行い得る。従って、「人工的な」育種及び急速な分子の進化によって遺伝的多様性が生み出される。例えば、ランダムポイント突然変異を持つ単一の遺伝子の断片を組換えて、スクリーニングし、その後所望の特性が最適化されるまでシャッフリングし得る。或いは、所与の遺伝子を同種または異種のいずれかから得た同一遺伝子ファミリーの相同遺伝子と組み換え、それによって天然に存在する複数の遺伝子の遺伝多様性を、管理され制御可能な方法で、最大化させることができる。
【0196】
別の実施態様では、TRICH をコードするポリヌクレオチドは、当分野で周知の化学的方法を一つ以上用いて、全体或いは一部を合成可能である(Caruthers. M.H.他(1980) Nucleic Acids Symp. Ser. 7:215-223; Horn, T.他(1980) Nucleic Acids Symp. Ser. 7:225-232)。あるいは、TRICH 自体またはその断片を当分野で既知の化学的方法を用いて合成し得る。例えば、種々の液相または固相技術を用いてペプチド合成を行うことができる(Creighton, T. (1984) Proteins, Structures and Molecular Properties, WH Freeman, New York NY55-60ページ; Roberge, J.Y.他(1995) Science 269:202-204)。自動合成はABI 431Aペプチドシンセサイザ(Applied Biosystems)を用いて達成し得る。更にTRICHのアミノ酸配列または任意のその一部を用い、直接合成の際の改変により、及び/または化学的方法を用いた他のタンパク質からの配列または任意のその一部との組み合わせにより、天然ポリペプチドの配列を有するポリペプチドまたは変異体ポリペプチドを作製することが可能である。
【0197】
ペプチドは、分離用高速液体クロマトグラフィーを用いて実質上精製可能である(Chiez, R.M.及び F.Z. Regnier (1990) Methods Enzymol. 182:392-421)。合成ペプチドの組成は、アミノ酸分析またはシークエンシングによって確認することができる(前出のCreighton, 28-53ページ)。
【0198】
生物学的に活性なTRICHを発現させるために、TRICHをコードするポリヌクレオチドまたはその誘導体を好適な発現ベクターに挿入する。 この発現ベクターは、好適な宿主に挿入されたコード配列の転写及び翻訳の調節に必要なエレメントを含む。必要なエレメントとしては、ベクター内およびTRICHをコードするポリヌクレオチドにおける調節配列(例えばエンハンサー、構成型および発現誘導型のプロモーター、5'および3'の非翻訳領域など)が含まれる。必要なエレメント群は、強度および特異性が様々である。また、特定の開始シグナルを用いることによって、TRICHをコードするポリヌクレオチドのより効果的な翻訳を達成することが可能である。開始シグナルの例には、ATG開始コドンと、コザック配列など近傍の配列とが含まれる。TRICH をコードするポリヌクレオチド配列、およびその開始コドンや、上流の調節配列が好適な発現ベクターに挿入された場合は、更なる転写制御シグナルや翻訳制御シグナルは必要ないこともある。しかしながら、コード配列あるいはその断片のみが挿入された場合は、インフレームATG開始コドンなど外来性の翻訳制御シグナルが発現ベクターに含まれるようにすべきである。外来性の翻訳エレメント及び開始コドンは、様々な天然物及び合成物を起源とし得る。用いられる特定の宿主細胞系に好適なエンハンサーを含めることで発現の効率を高めることが可能である(Scharf, D.他(1994) Results Probl.Cell Differ. 20:125162)。
【0199】
当業者に周知の方法を用いて、TRICH をコードするポリヌクレオチドと、好適な転写および翻訳制御エレメントとを持つ発現ベクターを作製することが可能である。これらの方法としては、in vitro組換えDNA技術、合成技術、およびin vivo遺伝子組換え技術がある(Sambrook, J.他(1989) Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Plainview NY, 4, 8, および 16-17章; Ausubel他、前出、1, 3および15章)。
【0200】
種々の発現ベクター/宿主系を利用して、TRICHをコードするポリヌクレオチドの保持および発現が可能である。限定するものではないがこのような発現ベクター/宿主系には、組換えバクテリオファージ、プラスミドまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換させた細菌や、酵母菌発現ベクターで形質転換させた酵母菌などの微生物や、ウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系や、ウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルス:CaMVまたはタバコモザイクウイルス:TMV)または細菌発現ベクター(例えばTiまたはpBR322プラスミド)で形質転換させた植物細胞系、動物細胞系等がある(Sambrook、前出、 Ausubel 他、前出、Van Heeke, G. および S.M. Schuster (1989) J. Biol. Chem. 264:55035509; Engelhard, E.K. 他(1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3224-3227、Sandig, V.他(1996) Hum.Gene Ther.7:1937-1945、Takamatsu, N. (1987) EMBO J. 6:307-311;『マグローヒル科学技術年鑑』(The McGraw Hill Yearbook of Science and Technology) (1992) McGraw Hill, New York NY, 191-196ページ、Logan, J.およびT. Shenk (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3655-3659、Harrington, J.J. 他(1997) Nat. Genet. 15:157-355)。レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルスまたはワクシニアウイルス由来の発現ベクター、または種々の細菌性プラスミド由来の発現ベクターを用いて、ポリヌクレオチドを標的器官、組織または細胞集団へ送達することができる(Di Nicola, M.他(1998) Cancer Gen. Ther. 5:350-356; Yu, M.他(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6340-6344; Buller, R.M.他(1985) Nature 317:813-815; McGregor, D.P.他(1994) Mol. Immunol. 31:219-226; Verma, I.M.およびN. Somia (1997) Nature 389:239-242)。本発明は使用する宿主細胞によって限定されない。
【0201】
細菌系では、多数のクローニングベクター及び発現ベクターを、TRICHをコードするポリヌクレオチド群の使用目的に応じて選択できる。例えば、TRICH をコードするポリヌクレオチドの日常的なクローニング、サブクローニングおよび増殖は、PBLUESCRIPT(Stratagene, La Jolla CA)またはPSPORT1プラスミド(Invitrogen)などの多機能の大腸菌ベクターを用いて達成することができる。TRICH をコードするポリヌクレオチドをこのベクターのマルチクローニング部位にライゲーションするとlacZ遺伝子が破壊され、組換え分子を持つ形質転換された細菌の同定のための比色スクリーニング法が可能となる。更にこれらのベクターは、クローニングされた配列におけるin vitro転写、ジデオキシのシークエンシング、ヘルパーファージによる一本鎖のレスキュー、入れ子状態の欠失の生成にも有用であろう(Van Heeke, G. および S.M. Schuster (1989) J. Biol. Chem. 264:5503-5509 )。例えば、抗体の産生のためなどに多量のTRICHが必要な場合は、TRICHの高レベル発現を誘導するベクターが使用できる。例えば、強力な誘導SP6バクテリオファージプロモーターまたは誘導T7バクテリオファージプロモーターを含むベクターが使用できる。
【0202】
TRICHの産生に酵母発現系の使用が可能である。α因子、アルコールオキシダーゼ、PGHプロモーター等の構成型或いは誘導型のプロモーターを含む多数のベクターが、出芽酵母菌(Saccharomyces cerevisiae) またはピキア酵母(Pichia pastoris)に使用可能である。更に、このようなベクターは、発現したタンパク質の、分泌か細胞内での保持かのどちらかを指示するものであり、安定した増殖のために宿主ゲノムの中に外来ポリヌクレオチド配列群を組み込むことを可能にする(Ausubel 他、前出; Bitter, G.A. 他、(1987) Methods Enzymol.153:516-544; Scorer, C.A.他(1994) Bio/Technology 12:181-184)。
【0203】
植物系もTRICHの発現に使用可能である。TRICH をコードするポリヌクレオチドの転写は、ウイルスプロモーター、例えば単独で用いられるか、あるいはTMV由来のオメガリーダー配列と組み合わせて用いられるようなCaMV由来の35Sおよび19Sプロモーターによって促進し得る(Takamatsu, N.(1987)EMBO J 6:307-311)。あるいは、RUBISCO の小サブユニットなどの植物プロモーター、または熱ショックプロモーターを用い得る(Coruzzi, G. 他(1984) EMBO J. 3:1671-1680; Broglie, R.他(1984) Science 224:838-843; および Winter, J.他(1991) Results Probl.Cell Differ. 17:85105)。 これらの構成物は、直接DNA形質転換または病原体を媒介とする形質移入によって、植物細胞内に導入可能である(『マグローヒル科学技術年鑑』(The McGraw Hill Yearbook of Science and Technology) (1992) McGraw Hill New York NY, 191-196ページ)。
【0204】
哺乳類細胞においては、多数のウイルスベースの発現系を利用し得る。アデノウイルスが発現ベクターとして用いられる場合、後期プロモーターと3連リーダー配列とからなるアデノウイルス転写/翻訳複合体に、TRICH をコードするポリヌクレオチド群をライゲーションし得る。ウイルスのゲノムの非必須のE1またはE3領域への挿入により、宿主細胞にTRICH を発現する感染ウイルスを得ることが可能である(Logan, J.及びShenk, T.(1984)Proc. Natl. Acad. Sci. 81:3655-3659)。更に、ラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサー等の転写エンハンサーを用いて、哺乳動物宿主細胞における発現を増大させ得る。SV40またはEBVをベースにしたベクターを用いてタンパク質を高レベルで発現させることもできる。
【0205】
また、ヒト人工染色体(HAC)類を用いて、或るプラスミドに含まれ得る断片やプラスミドから発現し得る断片より大きなDNAの断片群を送達し得る。治療のために約6kb〜10MbのHACsが作製され、従来の送達方法(リポソーム、ポリカチオンアミノポリマー、またはベシクル)で送達されている(Harrington, J.J.他(1997) Nat. Genet. 15:157-355)。
【0206】
哺乳動物系での組換えタンパク質の長期にわたる産生のためには、株化細胞におけるTRICHの安定した発現が望ましい。例えば、TRICH をコードするポリヌクレオチドを細胞株に形質転換するために、発現ベクター類と、同じベクター上の或いは別のベクター上の選択可能マーカー遺伝子とを用い得る。用いる発現ベクターは、ウイルス起源の複製要素、および/または内因性の発現要素を持ち得る。ベクターの導入後、選択培地に移す前に強化培地で約1〜2日間、細胞を増殖させ得る。選択可能マーカーの目的は選択剤への抵抗性を与えることであり、選択可能マーカーの存在により、導入した配列をうまく発現するような細胞の成長および回収が可能となる。安定的に形質転換された細胞の耐性クローンは、その細胞型に適した組織培養技術を用いて増殖できる。
【0207】
任意の数の選択系を用いて、形質転換細胞株を回収できる。限定するものではないがこのような選択系には、tk細胞のために用いられる単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ遺伝子と、apr細胞のために用いられる単純ヘルペスウイルスのアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子がある(Wigler, M. 他(1977) Cell 11:223-232; Lowy, I. 他(1980) Cell 22:817-823)。また、選択の基礎として代謝拮抗物質、抗生物質あるいは除草剤への耐性を用いることができる。例えばdhfrはメトトレキセートに対する耐性を与え、neoはアミノグリコシドであるネオマイシンおよびG-418に対する耐性を与え、alsはクロルスルフロンに対する耐性を、patはホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼに対する耐性を各々与える(Wigler, M. 他(1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:35673570、Colbere-Garapin, F.他(1981) J. Mol. Biol. 150:1-14)。この他の選択可能な遺伝子、例えば、代謝のための細胞の必要条件を変えるtrpB及びhisDは、文献に記載されている(Hartman, S.C.及び R.C. Mulligan (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:8047-8051)。可視マーカー、例えばアントシアニン、緑色蛍光タンパク質(GFP;Clontech)、βグルクロニダーゼ及びその基質βグルクロニド、またはルシフェラーゼ及びその基質ルシフェリン等を用いてもよい。これらのマーカーを用いて、形質転換体を同定するだけでなく、特定のベクター系に起因する一過性或いは安定したタンパク質発現を定量することも可能である(Rhodes, C.A. (1995) Methods Mol. Biol. 55:121-131)。
【0208】
マーカー遺伝子発現の有無によって目的の遺伝子の存在が示唆されても、その遺伝子の存在および発現の確認が必要な場合もある。例えば、TRICH をコードする配列が或るマーカー遺伝子配列の中に挿入された場合、TRICH をコードするポリヌクレオチド群を有する形質転換された細胞群は、マーカー遺伝子機能の欠落により同定できる。または、1つのプロモーターの制御下で、マーカー遺伝子を、TRICHをコードする配列とタンデムに配置することも可能である。誘導または選択に応答したマーカー遺伝子の発現は通常、タンデム遺伝子の発現も示す。
【0209】
一般に、TRICH をコードするポリヌクレオチドを含み且つTRICH を発現する宿主細胞は、当業者によく知られている種々の方法を用いて同定することが可能である。限定するものではないが当業者によく知られている方法には、DNA-DNAハイブリダイゼーション或いはDNA-RNAハイブリダイゼーション、PCR法、核酸或いはタンパク質の検出、定量、或いはその両方を行うための膜系、溶液ベース或いはチップベースの技術を含むタンパク質の生物学的検定法または免疫学的検定法がある。
【0210】
特異的なポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のどちらかを用いるTRICHの発現の検出及び計測のための免疫学的な方法は、当分野で既知である。 このような技法には、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、蛍光標示式細胞分取(FACS)などがある。TRICH上の2つの非干渉エピトープに反応するモノクローナル抗体を用いた、2部位のモノクローナルベースイムノアッセイ(two-site, monoclonal-based immunoassay)が好ましいが、競合結合アッセイを用いることもできる。これらのアッセイおよび他のアッセイは、当分野で周知である(Hampton, R.他(1990) Serological Methods, a Laboratory Manual, APS Press, St. Paul MN, Sect.IV、Coligan, J.E.他(1997) Current Protocols in Immunology, Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience, New York NY; Pound, J.D. (1998) Immunochemical Protocols, Humana Press, Totowa NJ)。
【0211】
多岐にわたる標識方法及び抱合方法が、当業者に知られており、様々な核酸アッセイおよびアミノ酸アッセイにこれらの方法を用い得る。TRICHをコードするポリヌクレオチドに関連する配列を検出するための、標識されたハイブリダイゼーションプローブ或いはPCRプローブを生成する方法には、オリゴ標識化、ニックトランスレーション、エンドラベリング(末端標識化)、または標識されたヌクレオチドを用いるPCR増幅が含まれる。或いはTRICHをコードするポリヌクレオチド、またはその任意の断片を、mRNAプローブを生成するためのベクターにクローニングしうる。このようなベクターは、当分野において知られており、市販もされており、T7、T3またはSP6などの好適なRNAポリメラーゼおよび標識されたヌクレオチドを加えて、in vitroでRNAプローブの合成に用いることができる。これらの方法は、例えばAmersham Biosciences、Promega(Madison WI)、U.S. Biochemicalなどの種々の市販キットを用いて実行できる。検出を容易にするために用い得る好適なレポーター分子あるいは標識には、基質、補助因子、インヒビター、磁気粒子のほか、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、発色剤などがある。
【0212】
TRICH をコードするポリヌクレオチド群で形質転換された宿主細胞は、細胞培地でのこのタンパク質の発現および回収に好適な条件下で培養される。形質転換細胞から製造されたタンパク質が分泌されるか細胞内に留まるかは、使用される配列、ベクター、あるいはその両者に依存する。TRICHをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、原核細胞膜及び真核細胞膜を透過するTRICH分泌を指示するシグナル配列を含むように設計できることは、当業者には理解されよう。
【0213】
更に、宿主細胞株の選択は、挿入したポリヌクレオチドの発現をモジュレートする能力、または発現したタンパク質を所望の形に処理する能力によって行い得る。限定するものではないがこのようなポリペプチドの修飾には、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化およびアシル化がある。タンパク質の「プレプロ」または「プロ」形を切断する翻訳後のプロセシングを利用して、タンパク質の標的への誘導、折りたたみ及び/または活性を特定することが可能である。翻訳後の活性のための、特定の細胞装置および特徴的な機序を持つ、種々の宿主細胞(例えばCHO、HeLa、MDCK、HEK293、WI38など)は、American Type Culture Collection(ATCC, Manassas, VA)から入手可能であり、外来タンパク質の正しい修飾およびプロセシングを確実にするように選択し得る。
【0214】
本発明の別の実施態様では、TRICH をコードする、天然ポリヌクレオチド、修飾ポリヌクレオチド、または組換えポリヌクレオチドを或る異種配列に結合させることにより、上記した任意の宿主系内で、融合タンパク質の翻訳を生じ得る。例えば、市販の抗体によって認識できる異種部分を含むキメラTRICHタンパク質が、TRICH活性のインヒビターに対するペプチドライブラリのスクリーニングを促進し得る。また、異種タンパク質部分および異種ペプチド部分も、市販されている親和性マトリックスを用いて融合タンパク質の精製を促進し得る。限定されるものではないがこのような部分には、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、チオレドキシン(Trx)、カルモジュリン結合ペプチド(CBP)、6-His、FLAG、c-myc、赤血球凝集素(HA)がある。GSTは固定化グルタチオン上で、MBPはマルトース上で、Trxはフェニルアルシンオキシド上で、CBPはカルモジュリン上で、そして6-Hisは金属キレート樹脂上で、同族の融合タンパク質の精製を可能にする。FLAG、c-mycおよび赤血球凝集素(HA)は、これらのエピトープ標識を特異的に認識する市販のモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を用いた、融合タンパク質の免疫親和性精製を可能にする。また、TRICHをコードする配列と異種タンパク質配列との間にタンパク質分解切断部位を融合タンパク質が含むように遺伝子操作すると、TRICHが精製の後に異種部分から切断され得る。融合タンパク質の発現および精製方法は、前出のAusubel他(前出、10および16章)に記載がある。市販されている種々のキットを用いて融合タンパク質の発現および精製を促進することもできる。
【0215】
別の実施態様では、TNTウサギ網状赤血球可溶化液またはコムギ胚芽抽出系(Promega)を用いてin vitroで、放射標識TRICH を合成しうる。これらの系は、T7、T3またはSP6プロモーターと機能的に連結したタンパク質コード配列の転写及び翻訳をカップルさせる。翻訳は、例えば35Sメチオニンのような放射能標識したアミノ酸前駆体の存在下で起こる。
【0216】
TRICHまたはその断片、あるいはTRICHの変異体を用いて、TRICHに特異結合する化合物をスクリーニングすることができる。1つ以上の試験化合物を用いて、TRICHへの特異的な結合をスクリーニングすることが可能である。種々の実施例において、TRICHに対する特異結合について、1、 2、 3、 4、 5、 10、 20、 50、 100 または 200 の試験化合物をスクリーンすることができる。試験化合物の例として、抗体、アンティカリン(anticalins)、オリゴヌクレオチド、タンパク質(例えばリガンドや受容体)、または小分子が挙げられる。
【0217】
関連する実施例において、TRICH 、TRICH の変異体、あるいはTRICH および/または1つ以上のTRICH 変異体とのある組み合わせへの試験化合物(抗体等)の結合/をスクリーニングするために、TRICH 変異体を用いることができる。或る実施態様で或るTRICH 変異体を用いて、TRICH 変異体に結合するがSEQ ID NO:1-26の正確な配列を持つTRICH には結合しない化合物をスクリーニングできる。こうしたスクリーニングの実施に用いるTRICH 変異体は、約50%〜約99%の範囲でTRICH への配列同一性を持つ場合があり、種々の実施態様は60%、70%、75%、80%、85%、90%および95%の配列同一性を持ち得る。
【0218】
或る実施態様でTRICHへの特異結合スクリーニングで同定された化合物は、TRICHの天然リガンドに密接に関連する場合があり、例えばリガンドやその断片であり、または天然基質や、構造的または機能的な擬態物質(mimetic)、あるいは自然結合パートナーである (Coligan, J.E. 他(1991) Current Protocols in Immunology 1(2):5章)。 In another embodiment, the compound thus identified can be a natural ligand of a receptor TRICH (Howard, A.D. et al.(2001) Trends Pharmacol. Sci.22:132 -140; Wise, A. 他(2002) Drug Discovery Today 7:235-246)。
【0219】
別の実施態様で該化合物は、TRICH への特異結合に対するスクリーニングにおいて同定された化合物は、TRICH が結合する天然受容体に、或いは少なくとも該受容体の或る断片、または例えばリガンド結合部位や結合ポケットの全体または一部を含む該受容体の或る断片に密接に関連し得る。例えば該化合物は、シグナルを伝播可能なTRICH 受容体の場合や、シグナルを伝播できないTRICH おとり受容体の場合がある(Ashkenazi, A.およびV.M. Divit (1999) Curr. Opin. Cell Biol.11:255-260、Mantovani, A. 他(2001) Trends Immunol. 22:328-336)。該化合物は既知の技術を用いて合理的に設計できる。こうした技術の例としては、化合物エタネルセプト(etanercept)(ENBREL、Amgen Inc., Thousand Oaks CA)作製に用いた技術を含む。エタネルセプトは、ヒトリウマチ様関節炎の治療に有効である。エタネルセプトは遺伝子操作されたp75腫瘍壊死因子(TNF)受容体ダイマーであり、ヒトIgG1 のFc部分に連結されている(Taylor, P.C. 他(2001) Curr. Opin. Immunol. 13:611-616)。
【0220】
一実施様態においては、類似または異なる特異性を有する2つ以上の抗体のTRICH、TRICHの断片、またはTRICHの変異体への特異的結合についてスクリーニングし得る。こうしてスクリーニングした抗体の結合特異性を選択し、TRICHの特定の断片または変異体を同定できる。1つの実施態様で、TRICHの特定の断片または変異体を優先的に同定できる結合特異性を持つ抗体を選択できる。他の実施態様においては、TRICH産生の増加、減少あるいはその他の異常産生を伴う特定疾患または状態を優先的に診断できるように抗体の結合特異性を選ぶことができる。
【0221】
1つの実施態様で、anticalinを、TRICHまたはその断片あるいはその変異体への特異結合につきスクリーニングできる。anticalinはリポカリン足場に基づいて作成されたリガンド結合タンパク質である(Weiss, G.A. 及び H.B. Lowman (2000) Chem. Biol. 7:R177-R184、Skerra, A. (2001) J. Biotechnol. 74:257-275)。リポカリンのタンパク質構造には、8つの逆平行ベータストランドを持つβバレルが含まれ得り、それらのストランドはバレルの開放末端に4つのループを支持する。これらのループはリポカリンの天然リガンド結合部位を形成し、この部位はin vitro でアミノ酸置換によって再度人工操作して、新規な結合特異性を与えることができる。このアミノ酸置換は当分野で既知の方法または本明細書に記載の方法を用いて行うことができる。また、保存的置換(例えば、結合特異性を変えないような置換)、あるいは、結合特異性を少し、中等度、または大きく変えるような置換を行うこともできる。
【0222】
或る実施例では、TRICHに特異的に結合する、刺激する、または阻害する化合物のためのスクリーニングには、分泌タンパク質として、または細胞膜上にTRICHを発現する好適な細胞群の作製が含まれる。好適な細胞には、哺乳動物、酵母、ショウジョウバエ、または大腸菌からの細胞が含まれる。TRICHを発現する細胞またはTRICHを含有する細胞膜分画を試験化合物と接触させて、TRICHまたは化合物の何れかの結合、刺激または活性の阻害を分析する。
【0223】
あるアッセイは、単に試験化合物をポリペプチドに実験的に結合させ、結合を、蛍光色素、放射性同位体、酵素抱合体またはその他の検出可能な標識により検出することができる。例えば、このアッセイは、少なくとも1つの試験化合物を、溶液中の或いは固体支持物に固定されたTRICHと混合するステップと、TRICHとこの化合物との結合を検出するステップを含み得る。別法では、標識された競合物の存在下での試験化合物の結合の検出および測定を行うことができる。更にこのアッセイは、無細胞再構成標本、化学ライブラリ、または、天然産物の混合物を用いて実施でき、試験化合物(群)は、溶液中で遊離させるか固体支持体に固定する。
【0224】
アッセイを用いて、或る化合物が、その天然リガンドに結合する能力、および/または、その天然リガンドの、その天然受容体への結合を阻害する能力を評価しうる。こうしたアッセイの例としては、米国特許第5,914,236号および第6,372,724号に記載されたような放射ラベルアッセイを含む。関連した実施態様では、1つ以上のアミノ酸置換が或るポリペプチド化合物(受容体など)に導入され、その天然リガンドに結合する能力を向上または改変しうる(Matthews, D.J. および J.A. Wells. (1994) Chem. Biol. 1:25-30)。もう一つの関連する実施様態においては、ポリペプチド化合物(たとえばリガンド)に1つ以上のアミノ酸置換を行うことにより、天然受容体への結合能力を改善または改変することができる(Cunningham, B.C.およびJ.A. Wells (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:3407-3411; Lowman, H.B. 他 (1991) J. Biol. Chem. 266:10982-10988)
【0225】
TRICHまたはその断片、あるいはTRICHの変異体を用いて、TRICHの活性を変調する化合物のスクリーニングすることができる。このような化合物としては、アゴニスト、アンタゴニスト、部分的アゴニストまたは逆アゴニストなどが含まれ得る。一実施例では、TRICHの活性が許容される条件下でアッセイを実施し、そのアッセイでは少なくとも1つの試験化合物をTRICHと混合し、試験化合物の存在下でのTRICHの活性を試験化合物不在下でのTRICHの活性と比較する。試験化合物の存在下でのTRICHの活性の変化は、TRICHの活性を調節する化合物の存在を示唆する。別法では、試験化合物をTRICHの活性に適した条件下でTRICHを含むin vitroすなわち無細胞系と混合してアッセイを実施する。これらアッセイの何れかにおいて、TRICHの活性を調節する試験化合物は間接的に結合する場合があり、その際は試験化合物と直接接触する必要がない。少なくとも1つ、または複数の試験化合物をスクリーニングすることができる。
【0226】
別の実施例では、胚性幹細胞(ES細胞)における相同組換えを用いて動物モデル系内で、TRICHまたはその哺乳動物相同体をコードするポリヌクレオチドを「ノックアウト」する。このような技術は当技術分野において周知であり、ヒト疾患動物モデルの作製に有用である(米国特許第5,175,383号及び第5,767,337号等を参照)。例えば129/SvJ細胞系などのマウスES細胞は初期のマウス胚に由来し、培地で増殖させることができる。このES細胞は、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neo: Capecchi, M.R.(1989)Science 244:1288-1292)などのマーカー遺伝子で破壊した、目的の遺伝子を持つベクターで形質転換される。このベクターは、相同組換えにより、宿主ゲノムの対応する領域に組込まれる。或いは、Cre-loxP系を用いて相同組換えを行い、組織特異的または発生段階特異的に目的遺伝子をノックアウトする(Marth, J.D. (1996) Clin. Invest. 97:1999-2002、Wagner, K.U.他(1997) Nucleic Acids Res.25:4323-4330)。 形質転換したES細胞を同定し、例えばC57BL/6マウス株などから採取したマウス細胞胚盤胞に微量注入する。これらの胚盤胞を偽妊娠メスに外科的に導入し、得られるキメラ子孫の遺伝形質を特定し、これらを交配させてヘテロ接合性系またはホモ接合性系を作製する。このようにして作製した遺伝子組換え動物は、潜在的な治療薬や毒性薬物で検査されうる。
【0227】
TRICHをコードするポリヌクレオチドをin vitroでヒト胚盤胞由来のES細胞において操作することが可能である。ヒトES細胞は、内胚葉、中胚葉および外胚葉の細胞タイプを含む、少なくとも8つの別々の細胞系統に分化する可能性を有する。これらの細胞系統は、例えば神経細胞、造血系統および心筋細胞に分化する(Thomson, J.A.他(1998) Science 282:1145-1147)。
【0228】
TRICHをコードするポリヌクレオチドを用いて、ヒト疾患をモデルとした「ノックイン」ヒト化動物(ブタ)または遺伝子組換え動物(マウスまたはラット)を作製することが可能である。ノックイン技術を用いて、TRICHをコードするポリヌクレオチドの或る領域を動物ES細胞に注入し、注入した配列を動物細胞ゲノムに組み込ませる。形質転換細胞を胞胚に注入し、胞胚を上記のように移植する。遺伝子組換え子孫または近交系について試験し、潜在的医薬品を用いて処理し、ヒトの疾患の治療に関する情報を得る。別法では、例えばTRICHを乳汁内に分泌するなどTRICHを過剰に発現する哺乳動物近交系は、便利なタンパク質源となり得る(Janne, J. 他 (1998) (1998) Biotechnol. Annu. Rev. 4:55-74)。
【0229】
(治療)
TRICHのある領域と輸送体及びイオンチャネルのある領域との間に、例えば配列及びモチーフの内容における化学的及び構造的類似性が存在する。TRICHの発現は健常心臓組織、肝腫瘍組織および罹患脳梁組織と密接に関連している。さらに、TRICHを発現する組織の例としては表6に示されており、また実施例11にも示されている。従って、TRICHは、輸送障害、神経の疾患、筋疾患、及び免疫疾患や細胞異常増殖においてある役割を果たすと考えられる。TRICHの発現若しくは活性の増大に関連する疾患の治療においては、TRICHの発現または活性を低下させることが望ましい。また、TRICHの発現または活性の低下に関連する疾患の治療においては、TRICHの発現または活性を増大させることが望ましい。
【0230】
従って、一実施例において、TRICHの発現または活性の低下に関連した疾患の治療または予防のために、患者にTRICHまたはその断片や誘導体を投与することが可能である。限定するものではないが、このような疾患のうち、輸送障害には運動不能症、筋萎縮性側索硬化症、毛細血管拡張性運動失調、嚢胞性線維症、ベッカー筋ジストロフィー、顔面麻痺、シャルコー‐マリー‐ツース病、糖尿病、尿崩症、糖尿病性ニューロパシー、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、高カリウム血性周期性四肢麻痺、正常カリウム血性周期性四肢麻痺、パーキンソン病、悪性高熱(高体温)、多剤耐性、重症筋無力症、筋緊張性異栄養症(筋強直性ジストロフィー)、緊張病、遅発性ジスキネジー、ジストニー、末梢神経障害、脳腫瘍、前立腺癌と、狭心症、徐脈性不整脈、頻拍(頻脈)性不整脈、高血圧症、QT延長症候群、心筋炎、心筋症、ネマリンミオパシー、中心核ミオパシー、脂質ミオパシー、ミトコンドリアミオパシー、甲状腺中毒性ミオパシー、エタノールミオパシー、皮膚筋炎、封入体筋炎、感染性節炎、及び多発性筋炎などの輸送に関連した心臓病と、アルツハイマー病、健忘症、双極性障害、痴呆、うつ病、てんかん、トゥーレット病、妄想性(パラノイド)精神病、及び分裂病(統合失調症)などの輸送に関連した神経疾患と、神経線維腫症、帯状疱疹(ヘルペス)後神経痛、三叉神経ニューロパシー、サルコイドーシス、鎌状赤血球性貧血、ウィルソン病、白内障、不妊症、肺動脈狭窄症、常染色体性感音性難聴、高/低血糖症、グレーブス病、甲状腺腫、クッシング病、アジソン病(慢性原発性副腎機能不全)、グルコース‐ガラクトース吸収不全(不良)症候群、グリコーゲン貯蔵病、高コレステロール血症、副腎白質ジストロフィー、ツェルヴェーガー症候群、メンケス病、後角症候群、フォンギールケ症候群、偽性低アルドステロン症(タイプ1)、リドル症候群、シスチン尿症、イミノグリシン尿症、Hartup病、ファンコーニ病およびBartter症候群が含まれ、神経疾患の中には、癲癇、虚血性脳血管障害、脳卒中、大脳新生物、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン病、痴呆、パーキンソン病及びその他の錐体外路障害、筋萎縮性側索硬化及びその他の運動ニューロン障害、進行性神経性筋萎縮症、色素性網膜炎(網膜色素変性症)、遺伝性運動失調、多発性硬化症及び他の脱髄疾患、細菌性及びウイルス性髄膜炎、脳膿瘍、硬膜下膿瘍、硬膜外膿瘍、化膿性頭蓋内血栓性静脈炎、脊髄炎及び神経根炎、ウイルス性中枢神経系疾患と、クールー及びクロイツフェルト‐ヤコブ病、Gerstmann-Straussler-Scheinker症候群を含むプリオン病(prion disease)と、致死性家族性不眠症、神経系性栄養病及び代謝病、神経線維腫症、結節硬化症、小脳網膜血管芽腫症(cerebelloretinal hemangioblastomatosis)、脳三叉神経血管腫症候群、ダウン症を含む中枢神経系性精神遅滞及び他の発生障害、脳性麻痺、神経骨格異常症、自律神経系障害、脳神経疾患、脊髄病、筋ジストロフィー及び他の神経筋障害、末梢神経疾患、皮膚筋炎及び多発性筋炎と、遺伝性、代謝性、内分泌性、及び中毒性ミオパシーと、重症筋無力症、周期性四肢麻痺と、気分性及び不安性精神障害、及び分裂病(統合失調症)性精神障害と、季節性感情障害(SAD)、静座不能、健忘症、緊張病、糖尿病性ニューロパシー、片麻痺性片頭痛、遅発性ジスキネジー、ジストニー、パラノイド精神病、帯状疱疹後神経痛、トゥーレット病、進行性核上麻痺、大脳皮質基底核変性症、及び家族性前頭側頭型痴呆が含まれ、筋疾患の中には、心筋症、心筋炎、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型(良性仮性肥大性)筋ジストロフィー、筋緊張性ジストロフィー、セントラルコア病、ネマリンミオパシー、中心核ミオパシー、脂質ミオパシー、ミトコンドリアミオパチー、感染性筋炎、多発性筋炎、皮膚筋炎、封入体筋炎、甲状腺中毒性ミオパシー、エタノールミオパシー(ethanol myopathy)、狭心症、アナフィラキシーショック、不整脈、喘息、心血管ショック、クッシング病、高血圧症、低血糖症、心筋梗塞、片頭痛、クロム親和細胞腫、脳症、てんかん、カーンズ‐セイヤ症候群、乳酸アシドーシス、ミオクローヌス疾患、眼筋麻痺、酸性マルターゼ欠損症(AMD、ポンペ病としても知られる)、全身性筋緊張症(generalized myotonia)および先天性筋緊張症を含む筋障害が含まれ、免疫疾患の中には、後天性免疫不全症候群(AIDS)及びアジソン病、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー、強直性脊椎炎、アミロイド症、貧血、喘息、アテローム性動脈硬化症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性多腺性内分泌カンジダ症外胚葉ジストロフィー(APECED)、気管支炎、胆嚢炎、接触皮膚炎、クローン病、アトピー性皮膚炎、皮膚筋炎、糖尿病、肺気腫、リンパ球傷害因子性偶発性リンパ球減少症、胎児赤芽球症(新生児溶血性疾患)、結節性紅斑、萎縮性胃炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、痛風、グレーブス病、橋本甲状腺炎、過好酸球増加症、過敏性腸症候群、多発性硬化症、重症筋無力症、心筋または心膜炎症、骨関節炎、骨粗しょう症、膵炎、多発性筋炎、乾癬、ライター症候群、リウマチ様関節炎、強皮症、シェ−グレン症候群、全身性アナフィラキシー、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症(硬化症)、血小板減少性紫斑病、潰瘍性大腸炎、ぶどう膜炎、ウェルナー症候群、癌合併症、血液透析、体外循環、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、寄生虫感染症、原虫感染症、蠕虫感染症、外傷が、細胞異常増殖には日光性角化症及びアテローム性動脈硬化、滑液包炎、硬変、肝炎、混合性結合組織病(MCTD)、骨髄線維症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、真性多血症、乾癬、原発性血小板血症、並びに腺癌及び白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫、及び奇形癌など癌、具体的には、副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、頚部、胆嚢、神経節、消化管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、子宮の癌が含まれる。
【0231】
別の実施例では、限定するものではないが上に列記した疾患を含むTRICHの発現または活性の低下に関連した疾患の治療または予防のために、TRICHまたはその断片や誘導体を発現し得るベクターを被験者に投与することも可能である。
【0232】
更に別の実施例では、限定するものではないが上に列記した疾患を含むTRICHの発現または活性の低下に関連した疾患の治療または予防のために、実質的に精製されたTRICHを含む組成物を好適な医薬用担体と共に被験者に投与することも可能である。
【0233】
更に別の実施例では、限定するものではないが上に列記した疾患を含むTRICHの発現または活性の低下に関連した疾患の治療または予防のために、TRICHの活性を調節するアゴニストを被験者に投与することも可能である。
【0234】
更なる実施例では、TRICHの発現または活性の増大に関連した疾患の治療または予防のために、被験者にTRICHのアンタゴニストを投与することが可能である。限定するものではないが、このような疾患の例には、上記した輸送障害、神経疾患、筋疾患、免疫疾患および細胞増殖異常が含まれる。一実施態様では、TRICHと特異的に結合する抗体が直接アンタゴニストとして、或いはTRICHを発現する細胞または組織に薬剤を運ぶターゲッティング或いは送達機構として間接的に用いられ得る。
【0235】
別の実施例では、限定するものではないが上に列記した疾患を含むTRICHの発現または活性の増大に関連した疾患の治療または予防のために、TRICHをコードするポリヌクレオチドの相補配列を発現するベクターを被験者に投与することも可能である。
【0236】
他の実施態様において、タンパク質、アゴニスト、アンタゴニスト、抗体、相補的配列、またはベクタは他の適切な治療剤と併用して投与し得る。併用療法で用いる好適な治療薬は、当業者が従来の医薬原理に従って選択し得る。治療薬と組合せることにより、上記した種々の疾患の治療または予防に相乗効果をもたらし得る。この方法により、少量の各薬物で医薬効果をあげることが可能となり、それによって副作用の可能性を低減し得る。
【0237】
TRICHのアンタゴニストは、当分野で一般的な方法を用いて製造することが可能である。 詳しくは、精製されたTRICHを用いて抗体を作ったり、治療薬のライブラリをスクリーニングしてTRICHと特異的に結合するものの同定が可能である。TRICHの抗体も、当分野で公知の方法を用いて製造することが可能である。 このような抗体には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、Fabフラグメント、及びFab発現ライブラリによって作られたフラグメントが含まれる。 但し、これらに限定されるものではない。中和抗体(すなわち二量体の形成を阻害する抗体)は通常、治療用に好適である。一本鎖抗体(例えばラクダまたはラマ由来)は強力な酵素阻害剤である可能性があり、ペプチド擬態物質の設計において利点を持つようであり、免疫吸着剤とバイオセンサーとの開発においても利点を持つようである(Muyldermans, S. (2001) J. Biotechnol. 74:277-302)。
【0238】
抗体の産生のためには、ヤギ、ウサギ、ラット、マウス、ラクダ、ヒトコブラクダ、ラマ、ヒト及びその他のものを含む種々の宿主が、TRICH または任意の断片、または免疫原性の特性を備えるそのオリゴペプチドの注入によって免疫化され得る。宿主の種に応じて、種々のアジュバントを用いて免疫応答を高めることもできる。限定するものではないがこのようなアジュバントには、フロイントアジュバントと、水酸化アルミニウムなどのミネラルゲルアジュバントと、リゾレシチン、プルロニックポリオル、ポリアニオン、ペプチド、油性乳剤、スカシガイのヘモシアニン(KLH)、ジニトロフェノールなどの界面活性剤とがある。ヒトに用いられるアジュバントの中では、BCG(カルメット‐ゲラン杆菌)およびコリネバクテリウム‐パルバム(Corynebacterium parvum)が特に好ましい。
【0239】
TRICHに対する抗体を誘発するために用いられるオリゴペプチド、ペプチド、または断片は、少なくとも約5個のアミノ酸からなるものが好ましく、一般的には約10個以上のアミノ酸からなるものとなる。これらのオリゴペプチド、ペプチドまたは断片はまた、天然のタンパク質のアミノ酸配列の一部と同一であることが望ましい。TRICHアミノ酸の短いストレッチは、KLHなどの別のタンパク質の配列と融合し、このキメラ分子に対する抗体が産生され得る。
【0240】
TRICHに対するモノクローナル抗体は、培地内の連続した細胞株によって、抗体分子を産生する任意の技術を用いて作製することが可能である。限定するものではないがこのような技術には、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、およびEBV-ハイブリドーマ技術がある(Kohler, G. 他(1975) Nature 256:495-497; Kozbor, D.他(1985) J. Immunol. Methods 81:31-42; Cote, R.J.他 (1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:2026-2030; Cole, S.P.他(1984) Mol.Cell Biol. 62:109-120)。
【0241】
更に、「キメラ抗体」作製のために開発された技術、例えば、ヒト抗体遺伝子にマウス抗体遺伝子をスプライシングするなどの技術が、好適な抗原特異性および生物学的活性を有する分子を得るために用いられる(Morrison, S.L. 他(1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855、Neuberger, M.S. 他(1984) Nature 312:604-608; Takeda, S.他(1985) Nature 314:452-454)。別法では、当分野で周知の方法を用いて、一本鎖抗体の産生のための記載された技術を適用して、TRICH特異性一本鎖抗体を生成する。関連特異性を有するがイディオタイプ組成が異なるような抗体を、ランダムな組合せの免疫グロブリンライブラリからチェーンシャッフリングによって産生することもできる(Burton D.R. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:10134-10137)。
【0242】
抗体の産生は、リンパ球集団におけるin vivo産生の誘導によって、或いは文献に開示されているように非常に特異的な結合試薬の免疫グロブリンのライブラリまたはパネルのスクリーニングによっても行い得る(Orlandi, R. 他(1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:3833-3837、Winter, G.他(1991) Nature 349:293-299)。
【0243】
TRICHに対する特異的な結合部位を含む抗体も得ることができる。例えば、限定するものではないが、このような断片には、抗体分子のペプシン消化によって作製されるF(ab')2 断片と、F(ab')2 断片のジスルフィド架橋を還元することによって作製されるFab断片とがある。あるいは、Fab発現ライブラリを作製することによって、所望の特異性を持つモノクローナルFab断片を迅速且つ容易に同定することが可能となる (Huse, W.D. 他(1989) Science 246:1275-1281)。
【0244】
種々の免疫学的検定(イムノアッセイ)を用いてスクリーニングすることにより、所望の特異性を有する抗体を同定し得る。確立された特異性を有するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体の何れかを用いる競合結合アッセイ、または免疫放射線アッセイのための数々のプロトコルが、当分野では周知である。通常このようなイムノアッセイには、TRICHとその特異抗体との間の複合体形成の計測が含まれる。二つの非干渉性TRICHエピトープに対して反応性を持つモノクローナル抗体を用いる、2部位モノクローナルベースのイムノアッセイが一般に利用されるが、競合的結合アッセイも利用することができる(Pound、前出)。
【0245】
ラジオイムノアッセイ技術と共にScatchard分析などの様々な方法を用いて、TRICHに対する抗体の親和性を評価しうる。親和性を結合定数Kaで表すが、このKaは、平衡状態の下でTRICH抗体複合体のモル濃度を遊離抗体と遊離抗原のモル濃度で除して得られる値である。ポリクローナル抗体類は多様なTRICHエピトープに対して親和性が不均一であり、或るポリクローナル抗体製剤に関して判定したKaは、TRICHに対する抗体の平均親和性または結合活性を表す。モノクローナル抗体は或る特定のTRICHエピトープに単一特異的であり、或るモノクローナル抗体製剤について判定したKaは、親和性の真の測定値を表す。Ka値が109〜1012liter/molの高親和性抗体医薬は、TRICH抗体複合体が激しい操作に耐えなければならないイムノアッセイに用いるのが好ましい。Ka値が10〜10liter/molの低親和性抗体製剤は、TRICHが抗体から最終的に活性化状態で解離する必要がある免疫精製(immunopurification)及び類似の処理に用いるのが好ましい。 (Catty, D. (1988) Antibodies, Volume I: A Practical Approach. IRL Press, Washington, DC; Liddell, J. E. および Cryer, A. (1991) A Practical Guide to Monoclonal Antibodies, John Wiley & Sons, New York NY)。
【0246】
ポリクローナル抗体製剤の抗体価および結合活性を更に評価して、後に使う或る適用例に対するこのような試薬の品質および適性を決定することができる。例えば、少なくとも1〜2mg/mlの特異的な抗体、好ましくは5〜10mg/mlの特異的な抗体を含むポリクローナル抗体製剤は一般に、TRICH抗体複合体を沈殿させなければならない処理に用いられる。抗体の特異性、抗体価、結合活性、様々な適用例における抗体の品質や使用に対する指針については、一般に入手可能である(Catty、前出、Coligan 他、前出)。
【0247】
本発明の別の実施態様では、TRICHをコードするポリヌクレオチド、またはその任意の断片や相補配列を、治療目的で使用できる。ある実施態様では、TRICHをコードする遺伝子のコーディング領域や調節領域に相補的な配列やアンチセンス分子(DNA、RNA、PNA、または修飾したオリゴヌクレオチド)を設計して遺伝子発現を変更することができる。このような技術は当分野では周知であり、センスまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドまたは大きな断片が、TRICH をコードする配列の制御領域、またはコード領域に沿ったさまざまな位置から設計可能である(Agrawal, S., 編集 (1996) Antisense Therapeutics, Humana Press Inc., Totawa NJ 等を参照)。
【0248】
治療に用いる場合、アンチセンス配列を適切な標的細胞に導入するのに好適な、任意の遺伝子送達系を用いることができる。アンチセンス配列は、転写時に標的タンパク質をコードする細胞配列の少なくとも一部に相補的な配列を作製する発現プラスミドの形で、細胞内に送達し得る(Slater, J.E.他 (1998) J. Allergy Clin. Immunol. 102:469-475; Scanlon, K.J. et al.(1995) 9:1288-1296).アンチセンス配列はまた、例えばレトロウイルスやアデノ関連ウイルスベクター等のウイルスベクターを用いて細胞内に導入することもできる(Miller, A.D. (1990) Blood 76:271、前出のAusubel、Uckert, W. 及び W. Walther (1994) Pharmacol. Ther. 63:323-347)。その他の遺伝子送達機構には、リポソーム系、人工的なウイルスエンベロープおよび当分野で公知のその他のシステムが含まれる(Rossi, J.J. (1995) Br. Med. Bull. 51:217-225; Boado, R.J.他(1998) J. Pharm. Sci. 87(11):1308-1315、Morris, M.C.他(1997) Nucleic Acids Res. 25:2730-2736)。
【0249】
本発明の別の実施例では、TRICHをコードするポリヌクレオチドを、体細胞若しくは生殖細胞の遺伝子治療に用いることが可能である。遺伝子治療により、(i)遺伝子欠損症を治療し(例えばX染色体連鎖遺伝(Cavazzana-Calvo, M.他(2000) Science 288:669-672)により特徴付けられる重症複合型免疫不全(SCID)-X1病の場合)、先天性アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症に関連する重症複合型免疫不全症候群(Blaese, R.M. 他(1995) Science 270:475-480; Bordignon, C.他(1995) Science 270:470-475)、嚢胞性繊維症(Zabner, J.他(1993) Cell 75:207-216; Crystal, R.G.他(1995) Hum.Gene Therapy 6:643-666; Crystal, R.G.他(1995) Hum.Gene Therapy 6:667-703)、サラセミア(thalassamia)、家族性高コレステロール血症や、第8因子若しくは第9因子欠損に起因する血友病(Crystal, R.G. (1995) Science 270:404-410、Verma, I.M. および N. Somia (1997) Nature 389:239-242)、(ii)条件的致死性遺伝子産物を発現させ(例えば制御不能な細胞増殖に起因する癌の場合)、(iii)細胞内の寄生生物、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)(Baltimore, D. (1988) Nature 335:395-396、Poeschla, E.他(1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 93:11395-11399)などヒトレトロウイルス、B型若しくはC型肝炎ウイルス(HBV、HCV)、Candida albicansおよびParacoccidioides brasiliensis等の寄生真菌、並びに熱帯熱マラリア原虫およびクルーズトリパノソーマ等の寄生原虫に対する防御機能を有するタンパク質を発現できる。TRICHの発現若しくは調節に必要な遺伝子の欠損が疾患を引き起こす場合、導入した細胞の好適な集団からTRICHを発現させて、遺伝子欠損によって起こる症状の発現を緩和することが可能である。
【0250】
本発明の更なる実施例では、TRICHの欠損による疾患や異常症は、TRICHをコードする哺乳動物発現ベクターを作製して、これらのベクターを機械的手段によってTRICH欠損細胞に導入することによって治療する。in vivoあるいはex vitroの細胞に用いる機械的導入技術には、(i)個々の細胞内への直接的なDNA微量注射法、(ii)遺伝子銃、(iii)リポソームを介した形質移入、(iv)受容体を介した遺伝子導入、および(v)DNAトランスポゾンの使用がある(Morgan, R.A. および W.F. Anderson(1993)Annu. Rev. Biochem. 62:191-217、Ivics, Z.(1997)Cell 91:501-510; Boulay, J-L. およびH. Recipon(1998)Curr. Opin. Biotechnol. 9:445-450)。
【0251】
限定するものではないがTRICHの発現に影響を及ぼし得る発現ベクターには、PCDNA 3.1、EPITAG、PRCCMV2、PREP、PVAX、PCR2-TOPOTAベクター(Invitrogen, Carlsbad CA)、PCMV-SCRIPT、PCMV-TAG、PEGSH/PERV(Stratagene, La Jolla CA)及びPTET-OFF、PTET-ON、PTRE2、PTRE2-LUC、PTK-HYG(Clontech, Palo Alto CA)がある。TRICHを発現させるために、(i)恒常的に活性なプロモーター(例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、SV40ウイルス、チミジンキナーゼ(TK)、若しくはβ−アクチン遺伝子等)、(ii)誘導性プロモーター(例えば、市販されているT-REXプラスミド(Invitrogen)に含まれている、テトラサイクリン調節性プロモーター(Gossen, M及びH. Bujard (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89:5547-5551、Gossen, M. 他 (1995) Science 268:1766-1769、Rossi, F.M.V.及びH.M. Blau (1998) Curr. Opin. Biotechnol. 9:451-456))、エクジソン誘導性プロモーター(市販されているプラスミドPVGRXR及びPINDに含まれている:Invitrogen)、FK506/ラパマイシン誘導性プロモーター、またはRU486/ミフェプリストーン誘導性プロモーター(Rossi, F.M.V.及びH.M. Blau, 前出)、または(iii)正常な個体に由来するTRICHをコードする内因性遺伝子の天然のプロモーター若しくは組織特異的プロモーターを用いることが可能である。
【0252】
市販のリポソーム形質転換キット(例えばInvitrogen社のPERFECT LIPID TRANSFECTION KIT)を用いれば、当業者は経験にそれほど頼らないでもポリヌクレオチドを培養中の標的細胞に導入することが可能になる。別法では、リン酸カルシウム法(Graham. F.L. および A.J. Eb(1973)Virology 52:456-467)若しくは電気穿孔法(Neumann, E. 他(1982) EMBO J. 1:841-845)。初代培養細胞にDNAを導入するためには、標準化された哺乳類の形質移入プロトコルの修正が必要である。
【0253】
本発明の別の実施例では、TRICHの発現に関連する遺伝子欠損によって起こる疾患や異常症を、(i)レトロウイルス末端反復配列(LTR)プロモーター若しくは独立したプロモーターのコントロール下でTRICHをコードするポリヌクレオチドと、(ii)好適なRNAパッケージングシグナルと、(iii)追加のレトロウイルス・シス作用性RNA配列及び効率的なベクターの増殖に必要なコーディング配列を伴うRev応答性エレメント(RRE)とからなるレトロウイルスベクターを作製して治療することができる。レトロウイルスベクター(例えばPFBおよびPFBNEO)はStratagene社から市販されており、刊行データ(Riviere, I. 他(1995)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:6733-6737)に基づく。上記データを引用することを以て本明細書の一部とする。このベクターは、好適なベクター産生細胞株(VPCL)において増殖される。VPCLは、各標的細胞上の受容体への親和性を持つエンベロープ遺伝子を、またはVSVgなど汎親和性エンベロープタンパク質を発現する(Armentano, D. 他(1987) J. Virol. 61:1647-1650; Bender, M.A.他 (1987) J. Virol. 61:1639-1646; Adam, M.A. および A.D. Miller (1988) J. Virol. 62:3802-3806; Dull, T.他 (1998) J. Virol. 72:8463-8471; Zufferey, R.他 (1998) J. Virol. 72:9873-9880)。Riggに付与された米国特許第5,910,434号(「Method for obtaining retrovirus packaging cell lines producing high transducing efficiency retroviral supernatant」)において、レトロウイルスパッケージング細胞株を得るための方法が開示されており、引用することをもって本明細書の一部とする。レトロウイルスベクター類の繁殖や、細胞集団(例えばCD4+T細胞群)の形質導入、および形質導入した細胞群の患者への戻しは、遺伝子治療分野では当業者に周知の手法であり、多数の文献に記載がある(Ranga, U.他(1997) J. Virol. 71:7020-7029; Bauer, G.他 (1997) Blood 89:2259-2267; Bonyhadi, M.L. (1997) J. Virol. 71:4707-4716; Ranga, U.他 (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:1201-1206; Su, L. (1997) Blood 89:2283-2290)。
【0254】
或る実施態様では、アデノウイルス系遺伝子治療の送達系を用いて、TRICH の発現に関連する1或いは複数の遺伝子異常を有する細胞にTRICH をコードするポリヌクレオチドを送達する。アデノウイルス系ベクター類の作製およびパッケージングについては、当業者に周知である。複製欠損型アデノウイルスベクター類は、種々の免疫調節タンパク質をコードする遺伝子群を、無損傷の膵島内に導入する目的で多様に利用し得ることが証明された(Csete, M.E. 他 (1995) Transplantation 27:263-268)。使用できる可能性のあるアデノウイルスベクターは、Armentanoに付与された米国特許第5,707,618号(「Adenovirus vectors for gene therapy」)に記載されており、引用することをもって本明細書の一部とする。アデノウイルスベクター類については、Antinozzi, P.A. 他(1999; Annu. Rev. Nutr. 19:511-544) 並びに、Verma, I.M. および N. Somia (1997; Nature 18:389:239-242)。
【0255】
別の実施態様では、ヘルペス系遺伝子治療の送達系を用いて、TRICH の発現に関連する1つ以上の遺伝子異常を有する標的細胞に、TRICH をコードするポリヌクレオチドを送達する。単純疱疹ウイルス(HSV)系のベクターは、HSVが向性を持つ中枢神経細胞にTRICHを導入する際に特に有用たりうる。ヘルペス系ベクター類の作製およびパッケージングは、当業者に公知である。或る複製適格性単純ヘルペスウイルス(HSV)1型系のベクターが、或るレポーター遺伝子の、霊長類の眼への送達に用いられている(Liu, X. 他(1999) Exp.Eye Res.169:385395)。 HSV-1ウイルスベクターの作製についても、DeLucaに付与された米国特許第5,804,413号(「Herpes simplex virus strains for gene transfer」)に開示されており、該特許の引用をもって本明細書の一部とする。米国特許第5,804,413号には、ヒト遺伝子治療を含む目的のために好適なプロモーターの制御下において細胞に導入される少なくとも1つの外在性遺伝子を有するゲノムを含む組換えHSV d92の使用についての記載がある。上記特許はまた、ICP4、ICP27及びICP22を欠失した組換えHSV系統の作製及び使用について開示している。HSVベクター類については、Goins, W.F. 他(1999; J. Virol. 73:519532)、Xu, H. 他(1994; Dev. Biol. 163:152161)。クローン化ヘルペスウイルス配列の操作、巨大ヘルペスウイルスのゲノムの異なったセグメント群を含む多数のプラスミドを形質移入した後の組換えウイルスの産生、ヘルペスウイルスの成長及び増殖、並びにヘルペスウイルスの細胞への感染は、当業者に公知の技術である。
【0256】
別の実施態様では、αウイルス(正の一本鎖RNAウイルス)ベクターを用いてTRICH をコードするポリヌクレオチドを標的細胞に送達する。プロトタイプのαウイルスであるセムリキ森林熱ウイルス(Semliki Forest Virus, SFV)の生物学的研究が広範に行われており、遺伝子導入ベクターはSFVゲノムに基づいている(Garoff, H. 及び K.-J. Li (1998) Cun. Opin. Biotech. 9:464-469)。αウイルスRNAの複製中に、通常はウイルスのカプシドタンパク質をコードするサブゲノムRNAが作り出される。このサブゲノムRNAは、完全長のゲノムRNAより高いレベルに複製されるため、酵素活性(例えばプロテアーゼ及びポリメラーゼ)を有するウイルスタンパク質に比べてカプシドタンパク質が過剰産生される。同様に、TRICHをコードする配列をαウイルスゲノムのカプシドをコードする領域に導入することによって、ベクター導入細胞において多数のTRICHをコードするRNAが産生され、高いレベルでTRICHが合成される。通常、αウイルスの感染は、数日以内の細胞溶解を伴う。一方、シンドビスウイルス(SIN)の或る変異体を有するハムスター正常腎臓細胞(BHK-21)群が持続的な感染を確立する能力は、αウイルス類の溶解複製を、遺伝子治療に応用し得るように好適に改変可能であることを示唆する(Dryga, S.A.他(1997) Virology 228:74-83)。αウイルスの宿主域は広いので、様々なタイプの細胞にTRICHを導入できることとなる。或る集団における或るサブセットの細胞群の特異的形質導入は、形質導入前に細胞の選別を必要とし得る。αウイルスの感染性cDNAクローンの処置方法、αウイルスのcDNAおよびRNAの形質移入方法およびαウイルスの感染方法は、当業者に公知である。
【0257】
転写開始部位(transcription initiation site)由来のオリゴヌクレオチドを用いて遺伝子発現を阻害することも可能である。この位置は、例えばスタート部位(start site)から数えて約−10と約+10の間である。同様に、三重らせん塩基対の形成方法を用いて阻害が可能となる。三重らせん塩基対形成は、ポリメラーゼ、転写因子または調節分子と結合できるように十分に開こうとする、二重らせんの能力を阻害するため有用である。三重らせんDNAを用いる最近の治療の進歩については文献に記載がある(Gee, J.E.他(1994) in Huber, B.E.およびB.I. Carr, Molecular and Immunologic Approaches, Futura Publishing, Mt. Kisco NY, 163-177ページを参照)。相補配列またはアンチセンス分子もまた、転写物がリボソームに結合するのを阻止することによってmRNAの翻訳を阻止するように設計することができる。
【0258】
リボザイムは酵素的RNA分子であり、RNAの特異的切断を触媒するためにリボザイムを用いることもできる。リボザイム作用のメカニズムは、相補的標的RNAへのリボザイム分子の配列特異的ハイブリダイゼーションとその後に起こる内ヌクレオチド鎖切断に関与している。例えば、人為操作されたハンマーヘッド型リボザイム分子は、TRICHをコードするRNA分子のヌクレオチド鎖切断を、特異的且つ効果的に触媒する可能性がある。
【0259】
任意のRNA標的内の特異的リボザイム切断部位は、GUA、GUU、GUC配列を含めたリボザイム切断部位に対して標的分子をスキャンすることによって先ず同定される。一度同定されると、切断部位を持つ標的遺伝子の領域に対応する15〜20リボヌクレオチドの短いRNA配列が、そのオリゴヌクレオチドを機能不全にするような2次構造の特徴をもっていないかを評価することが可能になる。候補標的の適合性の評価も、リボヌクレアーゼ保護アッセイを用いて相補的オリゴヌクレオチド群とのハイブリダイゼーションへのアクセス可能性をテストすることによって行い得る。
【0260】
相補リボ核酸分子及びリボザイムは、核酸分子の合成のために当分野で既知の任意の方法を用いて作製し得る。作製方法には、固相ホスホラミダイト化学合成など、オリゴヌクレオチドを化学的に合成する方法がある。或いは、TRICHをコードするDNA分子のin vitroおよびin vivo転写によってRNA分子を作成し得る。このようなDNA配列は、T7やSP6などの好適なRNAポリメラーゼプロモーターを用いて多様なベクター内に取り込むことが可能である。或いは、相補的RNAを構成的或いは誘導的に合成するようなこれらcDNA産物を、細胞株、細胞または組織内に導入することができる。
【0261】
細胞内の安定性を高め、半減期を長くするために、RNA分子を修飾し得る。限定するものではないが可能な修飾としては、分子の5'末端、3'末端、あるいはその両方において隣接配列群を追加することや、分子の主鎖内においてホスホジエステラーゼ結合ではなくホスホロチオエートまたは2' O-メチルを使用することが含まれる。この概念は、本来はPNA群の産出におけるものであるが、これら全ての分子に拡大することができる。そのためには、内因性エンドヌクレアーゼによって容易には認識されない、アデニン、シチジン、グアニン、チミン、およびウリジンにアセチル−、メチル−、チオ−および同様の修飾をしたものや、非従来型塩基、例えばイノシン、クエオシン(queosine)、ワイブトシン(wybutosine)を加える。
【0262】
本発明の更なる実施例は、TRICHをコードするポリヌクレオチドの発現の改変に有効な化合物をスクリーニングする方法を含む。限定するものではないが特異ポリヌクレオチドの発現の改変に効果的な化合物には、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、三重らせん形成オリゴヌクレオチド、転写因子その他のポリペプチド転写制御因子、及び特異ポリヌクレオチド配列と相互作用し得る非高分子化学的実体がある。有効な化合物は、ポリヌクレオチド発現のインヒビターまたはエンハンサーのいずれかとして作用することによりポリヌクレオチド発現を改変し得る。従って、TRICHの発現または活性の増加に関連する疾患の治療においては、TRICHをコードするポリヌクレオチドの発現を特異的に阻害する化合物が治療上有用であり、TRICHの発現または活性の低下に関連する疾患の治療においては、TRICHをコードするポリヌクレオチドの発現を特異的に促進する化合物が治療上有用であり得る。
【0263】
特異ポリヌクレオチドの発現改変における有効性に対して、少なくとも1個から複数個の試験化合物をスクリーニングし得る。試験化合物は、当分野で通常知られている任意の方法により得られる。このような方法には、ポリヌクレオチドの発現を変異させる場合と、既存の、市販のまたは私的な、天然または非天然の化合物ライブラリから選択する場合と、標的ポリヌクレオチドの化学的及び/または構造的特性に基づく化合物を合理的にデザインする場合と、組合せ的にまたは無作為に生成した化合物のライブラリから選択する場合に有効であることが知られているような化合物の化学修飾がある。TRICHをコードするポリヌクレオチドを含むサンプルは、このようにして得られた試験化合物の少なくとも1つに曝露する。サンプルは例えば、無傷細胞、透過化処理した細胞、あるいはin vitro 無細胞系すなわち再構成生化学系があり得る。TRICHをコードするポリヌクレオチドの発現における変容は、当分野で周知の任意の方法でアッセイする。通常、TRICHをコードするポリヌクレオチドの配列に相補的なヌクレオチド配列を有するプローブを用いたハイブリダイゼーションにより、特定のヌクレオチドの発現を検出する。ハイブリダイゼーション量を定量し、それによって1つ以上の試験化合物に曝露される及び曝露されないポリヌクレオチドの発現の比較に対する基礎を形成し得る。試験化合物に曝露されるポリヌクレオチドの発現における変化の検出は、ポリヌクレオチドの発現を改変する際に試験化合物が有効であることを示している。或る特定ポリヌクレオチドの改変発現に有効な化合物のためのスクリーニングを実行でき、例えば分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)遺伝子発現系(Atkins, D. 他(1999) 米国特許第5,932,435号、Arndt, G.M. 他(2000) Nucleic Acids Res.28:E15)またはHeLa細胞等のヒト細胞株(Clarke, M.L. 他(2000) Biochem. Biophys. Res. Commun. 268:8-13)。本発明の或る特定の実施態様は、或る特定ポリヌクレオチド配列に対するアンチセンス活性について、オリゴヌクレオチド(デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、ペプチド核酸、修飾したオリゴヌクレオチド)の組合せライブラリをスクリーニングする過程に関する(Bruice, T.W. 他(1997) 米国特許第5,686,242号、Bruice, T.W.他(2000) 米国特許第6,022,691号)。
【0264】
ベクターを細胞または組織に導入する多数の方法が利用可能であり、in vivo、in vitro及びex vivoの使用に対して同程度に適している。ex vivo治療の場合、ベクターを、患者から採取した幹細胞内に導入し、クローニング増殖して同患者に自家移植で戻すことができる。トランスフェクションによる、またはリボソーム注入やポリカチオンアミノポリマーによる送達は、当分野で周知の方法を用いて実行することができる(Goldman, C.K.他(1997) Nat. Biotechnol. 15:462-466)。
【0265】
上記の治療方法はいずれも、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ウサギ、サルなどの哺乳類を含めて治療が必要な全ての被験体に適用できる。
【0266】
本発明の或る更なる実施態様は、薬物として許容できる或る賦形剤と共に製剤される或る活性成分を一般に有する、或る組成物の投与に関する。賦形剤には例えば、糖、でんぷん、セルロース、ゴムおよびタンパク質がある。様々な剤型が広く知られており、詳細はRemington's Pharmaceutical Sciences(Maack Publishing, Easton PA)の最新版に記載されている。このような組成物は、TRICH、TRICHの抗体、擬態物質、アゴニスト、アンタゴニスト、またはTRICHのインヒビターなどからなる。
【0267】
本発明に用いられる組成物は、任意の数の経路によって投与することができ、限定するものではないが経路には、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、クモ膜下腔内、心室内、肺、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所、舌下または直腸がある。
【0268】
肺から投与する組成物は、液状または乾燥粉末状で調製し得る。このような組成物は通常、患者が吸入する直前にエアロゾル化する。小分子(例えば伝統的な低分子量有機薬)の場合には、速効製剤のエアロゾル送達は当分野で公知である。高分子(例えばより大きなペプチドおよびタンパク質)の場合には、当該分野において肺の肺胞領域を介しての肺送達が最近向上したことにより、インスリンなどの薬物を実質的に血液循環へ輸送することを可能にした(Patton, J.S. 他, 米国特許第5,997,848号などを参照)。肺送達は、針注射なしに投与する点で優れており、有毒な可能性のある浸透エンハンサーの必要性をなくす。
【0269】
本発明での使用に適した組成物には、所定の目的を達成するために必要なだけの量の活性成分を含有する組成物が含まれる。有効投与量の決定は、当業者の能力の範囲内で行う。
【0270】
TRICHまたはその断片を含む高分子を直接細胞内に送達するべく、特殊な種々の形状の組成物が調製されうる。例えば、細胞不透過性高分子を含むリポソーム製剤は、その高分子の細胞融合と細胞内送達とを促進し得る。別法では、TRICHまたはその断片をHIV Tat-1タンパク質から得た短い陽イオンN末端部に結合することもできる。このようにして生成された融合タンパク質類は、或るマウスモデル系の、脳を含む全ての組織の細胞群に形質導入することがわかっている(Schwarze, S.R. 他(1999) Science 285:1569-1572)。
【0271】
任意の化合物に対して、細胞培養アッセイ、例えば新生物性細胞の細胞培養アッセイにおいて、或いは、動物モデル、例えばマウス、ウサギ、イヌまたはブタ等において、先ず治療有効投与量を推定することができる。動物モデルはまた、好適な濃度範囲および投与経路を決定するためにも用い得る。このような情報を用いて、次にヒトに対する有益な投与量および投与経路を決定することができる。
【0272】
治療有効投与量とは、症状や容態を回復させる、たとえばTRICHまたはその断片、TRICHの抗体、TRICHのアゴニストまたはアンタゴニスト、インヒビターなどの活性成分の量を指す。治療有効性及び毒性は、細胞培養または動物実験における標準的な薬剤手法によって、例えばED50(集団の50%の治療有効量)またはLD50(集団の50%の致死量)を測定するなどして決定することができる。毒性効果の治療効果に対する投与量の比が治療指数であり、LD50/ED50比として表すことができる。高い治療指数を示すような組成物が望ましい。細胞培養アッセイと動物実験とから得られたデータは、ヒトに用いる投与量の範囲の策定に用いられる。このような組成物に含まれる投与量は、毒性を殆どあるいは全く持たず、ED50を含むような血中濃度の範囲にあることが好ましい。投与量は、用いられる投与形態、患者の感受性および投与の経路によってこの範囲内で変わる。
【0273】
正確な投与量は、治療が必要な被験者に関する要素を考慮して、現場の医者が決定することになる。充分なレベルの活性成分を与え、あるいは所望の効果を維持すべく、用法および用量を調整する。被験者に関する要素としては、疾患の重症度、患者の全身の健康状態、患者の年齢、体重及び性別(ジェンダー)、投与の時間及び頻度、併用薬、反応感受性及び治療に対する応答等を考慮しうる。作用期間が長い組成物は、特定の製剤の半減期及びクリアランス率によって3〜4日毎に1度、1週間に1度、或いは2週間に1度の間隔で投与し得る。
【0274】
通常の投与量は、投与の経路にもよるが約0.1〜100.000μgであり、合計で約1gまでとする。特定の投与量および送達方法に関するガイダンスは文献に記載されており、現場の医者は通常それを利用することができる。当業者は、ヌクレオチドの処方では、タンパク質またはそれらのインヒビター類とは異なる処方を利用することになる。同様に、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの送達は、特定の細胞、症状、部位などに特異的なものとなる。
【0275】
(診断)
別の実施例では、TRICHに特異的に結合する抗体が、TRICHの発現によって特徴付けられる疾患の診断、またはTRICHやTRICHのアゴニストまたはアンタゴニスト、インヒビターで治療を受けている患者をモニターするためのアッセイに用いられる。診断目的に有用な抗体は、上記の治療の箇所で記載した方法と同じ方法で作成される。TRICHの診断アッセイには、抗体及び標識を用いてヒトの体液或いは細胞や組織の抽出物からTRICHを検出する方法が含まれる。この抗体は修飾されたものも、されていないものも可能であり、レポーター分子との共有結合または非共有結合で標識化できる。レポーター分子としては広くさまざまな種類が本分野で知られており、また使用可能であるが、そのうちのいくつかは上記で説明されている。
【0276】
TRICHを測定するためのELISA,RIA,及びFACSを含む種々のプロトコルは、当分野では周知であり、変容した或いは異常なレベルのTRICHの発現を診断するための基盤を提供する。正常或いは標準的なTRICHの発現の値は、複合体の形成に適した条件の下、正常な哺乳動物、例えばヒトなどの被験者から採取した体液または細胞抽出物とTRICHに対する抗体とを混合させることによって確定する。標準複合体形成量は、種々の方法、例えば測光法で定量できる。被験体、対照、および、生検組織からの罹患サンプルでの、TRICHの発現の量が基準値と比較される。標準値と被験体との偏差が、疾患を診断するパラメータを確定する。
【0277】
本発明の別の実施態様では、TRICH をコードするポリヌクレオチドを、診断目的で用い得る。用いることができるポリヌクレオチドには、オリゴヌクレオチド配列、相補的RNA及びDNA分子、そしてPNAが含まれる。このポリヌクレオチドを用いて、TRICHの発現が疾患と相関し得る生検組織における遺伝子の発現を検出し定量する。この診断アッセイを用いて、TRICHの存在の有無、更に過剰な発現を調べ、治療中のTRICH値の調節を監視する。
【0278】
一態様では、TRICHまたは近縁の分子をコードする、ゲノム配列などポリヌクレオチドを検出可能なPCRプローブ類とのハイブリダイゼーションを、TRICHをコードする核酸配列の同定に用いうる。例プローブが高度に特異的な領域(例えば5'調節領域)から作られている、或いはやや特異性の低い領域(例えば保存されたモチーフ)から作られているかにかかわらず、そのプローブの特異性と、ハイブリダイゼーション或いは増幅のストリンジェントによって、そのプローブがTRICHをコードする自然界の配列のみを同定するかどうか、或いは対立遺伝子や関連配列コードする自然界の配列のみを同定するかどうかが決まるであろう。
【0279】
プローブはまた、関連する配列の検出に利用されうる。また、TRICHをコードする任意の配列と少なくとも50%の配列同一性を有し得る。本発明のハイブリダイゼーションプローブには、DNAあるいはRNAが可能であり、SEQ ID NO:27-52の配列、或いはTRICH遺伝子のプロモーター、エンハンサー、イントロンを含むゲノム配列に由来し得る。
【0280】
TRICH をコードするポリヌクレオチドに特異的なハイブリダイゼーションプローブの作製方法としては、TRICH またはTRICH 誘導体をコードするポリヌクレオチド配列を、mRNAプローブ作製用ベクターにクローニングする方法を含む。mRNAプローブ作製のためのベクターは、当業者に知られており、市販されており、好適なRNAポリメラーゼ及び好適な標識されたヌクレオチドを加えることによって、in vitroでRNAプローブを合成するために用いられ得る。ハイブリダイゼーションプローブは、種々のレポーター集団によって標識され得る。レポーター集団の例としては、32Pまたは35S等の放射性核種、或いはアビジン/ビオチン結合系を介してプローブに結合されたアルカリホスファターゼ等の酵素標識などが挙げられる。
【0281】
TRICH をコードするポリヌクレオチド配列を、TRICH の発現に関係する疾患の診断に用い得る。限定するものではないが、このような疾患のうち、輸送障害には運動不能症、筋萎縮性側索硬化症、毛細血管拡張性運動失調、嚢胞性線維症、ベッカー筋ジストロフィー、顔面麻痺、シャルコー‐マリー‐ツース病、糖尿病、尿崩症、糖尿病性ニューロパシー、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、高カリウム血性周期性四肢麻痺、正常カリウム血性周期性四肢麻痺、パーキンソン病、悪性高熱(高体温)、多剤耐性、重症筋無力症、筋緊張性異栄養症(筋強直性ジストロフィー)、緊張病、遅発性ジスキネジー、ジストニー、末梢神経障害、脳腫瘍、前立腺癌と、狭心症、徐脈性不整脈、頻拍(頻脈)性不整脈、高血圧症、QT延長症候群、心筋炎、心筋症、ネマリンミオパシー、中心核ミオパシー、脂質ミオパシー、ミトコンドリアミオパシー、甲状腺中毒性ミオパシー、エタノールミオパシー、皮膚筋炎、封入体筋炎、感染性節炎、及び多発性筋炎などの輸送に関連した心臓病と、アルツハイマー病、健忘症、双極性障害、痴呆、うつ病、てんかん、トゥーレット病、妄想性(パラノイド)精神病、及び分裂病(統合失調症)などの輸送に関連した神経疾患と、神経線維腫症、帯状疱疹(ヘルペス)後神経痛、三叉神経ニューロパシー、サルコイドーシス、鎌状赤血球性貧血、ウィルソン病、白内障、不妊症、肺動脈狭窄症、常染色体性感音性難聴、高/低血糖症、グレーブス病、甲状腺腫、クッシング病、アジソン病(慢性原発性副腎機能不全)、グルコース‐ガラクトース吸収不全(不良)症候群、グリコーゲン貯蔵病、高コレステロール血症、副腎白質ジストロフィー、ツェルヴェーガー症候群、メンケス病、後角症候群、フォンギールケ症候群、偽性低アルドステロン症(タイプ1)、リドル症候群、シスチン尿症、イミノグリシン尿症、Hartup病、ファンコーニ病およびBartter症候群が含まれ、神経疾患の中には、癲癇、虚血性脳血管障害、脳卒中、大脳新生物、アルツハイマー病、ピック病、ハンチントン病、痴呆、パーキンソン病及びその他の錐体外路障害、筋萎縮性側索硬化及びその他の運動ニューロン障害、進行性神経性筋萎縮症、色素性網膜炎(網膜色素変性症)、遺伝性運動失調、多発性硬化症及び他の脱髄疾患、細菌性及びウイルス性髄膜炎、脳膿瘍、硬膜下膿瘍、硬膜外膿瘍、化膿性頭蓋内血栓性静脈炎、脊髄炎及び神経根炎、ウイルス性中枢神経系疾患と、クールー及びクロイツフェルト‐ヤコブ病、Gerstmann-Straussler-Scheinker症候群を含むプリオン病(prion disease)と、致死性家族性不眠症、神経系性栄養病及び代謝病、神経線維腫症、結節硬化症、小脳網膜血管芽腫症(cerebelloretinal hemangioblastomatosis)、脳三叉神経血管腫症候群、ダウン症を含む中枢神経系性精神遅滞及び他の発生障害、脳性麻痺、神経骨格異常症、自律神経系障害、脳神経疾患、脊髄病、筋ジストロフィー及び他の神経筋障害、末梢神経疾患、皮膚筋炎及び多発性筋炎と、遺伝性、代謝性、内分泌性、及び中毒性ミオパシーと、重症筋無力症、周期性四肢麻痺と、気分性及び不安性精神障害、及び分裂病(統合失調症)性精神障害と、季節性感情障害(SAD)、静座不能、健忘症、緊張病、糖尿病性ニューロパシー、片麻痺性片頭痛、遅発性ジスキネジー、ジストニー、パラノイド精神病、帯状疱疹後神経痛、トゥーレット病、進行性核上麻痺、大脳皮質基底核変性症、及び家族性前頭側頭型痴呆が含まれ、筋疾患の中には、心筋症、心筋炎、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型(良性仮性肥大性)筋ジストロフィー、筋緊張性ジストロフィー、セントラルコア病、ネマリンミオパシー、中心核ミオパシー、脂質ミオパシー、ミトコンドリアミオパチー、感染性筋炎、多発性筋炎、皮膚筋炎、封入体筋炎、甲状腺中毒性ミオパシー、エタノールミオパシー(ethanol myopathy)、狭心症、アナフィラキシーショック、不整脈、喘息、心血管ショック、クッシング病、高血圧症、低血糖症、心筋梗塞、片頭痛、クロム親和細胞腫、脳症、てんかん、カーンズ‐セイヤ症候群、乳酸アシドーシス、ミオクローヌス疾患、眼筋麻痺、酸性マルターゼ欠損症(AMD、ポンペ病としても知られる)、全身性筋緊張症(generalized myotonia)および先天性筋緊張症を含む筋障害が含まれ、免疫疾患の中には、後天性免疫不全症候群(AIDS)及びアジソン病、成人呼吸窮迫症候群、アレルギー、強直性脊椎炎、アミロイド症、貧血、喘息、アテローム性動脈硬化症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性多腺性内分泌カンジダ症外胚葉ジストロフィー(APECED)、気管支炎、胆嚢炎、接触皮膚炎、クローン病、アトピー性皮膚炎、皮膚筋炎、糖尿病、肺気腫、リンパ球傷害因子性偶発性リンパ球減少症、胎児赤芽球症(新生児溶血性疾患)、結節性紅斑、萎縮性胃炎、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、痛風、グレーブス病、橋本甲状腺炎、過好酸球増加症、過敏性腸症候群、多発性硬化症、重症筋無力症、心筋または心膜炎症、骨関節炎、骨粗しょう症、膵炎、多発性筋炎、乾癬、ライター症候群、リウマチ様関節炎、強皮症、シェ−グレン症候群、全身性アナフィラキシー、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症(硬化症)、血小板減少性紫斑病、潰瘍性大腸炎、ぶどう膜炎、ウェルナー症候群、癌合併症、血液透析、体外循環、ウイルス感染症、細菌感染症、真菌感染症、寄生虫感染症、原虫感染症、蠕虫感染症、外傷が、細胞異常増殖には日光性角化症及びアテローム性動脈硬化、滑液包炎、硬変、肝炎、混合性結合組織病(MCTD)、骨髄線維症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、真性多血症、乾癬、原発性血小板血症、並びに腺癌及び白血病、リンパ腫、黒色腫、骨髄腫、肉腫、及び奇形癌など癌、具体的には、副腎、膀胱、骨、骨髄、脳、乳房、頚部、胆嚢、神経節、消化管、心臓、腎臓、肝臓、肺、筋肉、卵巣、膵臓、副甲状腺、陰茎、前立腺、唾液腺、皮膚、脾臓、精巣、胸腺、甲状腺、子宮の癌が含まれる。TRICH をコードするポリヌクレオチド配列は、変容したTRICH 発現を検出するために患者から採取した体液或いは組織を利用する、サザーン法やノーザン法、ドットブロット法、或いはその他の膜系の技術や、PCR法や、ディップスティック(dipstick)、ピン(pin)、およびマルチフォーマットのELISA式アッセイ、及びマイクロアレイに使用することが可能である。このような定性方法または定量方法は、当分野で公知である。
【0282】
或る特定の態様では、TRICH をコードするヌクレオチド群を、関連する障害、特に上記した障害を検出するアッセイ類に用い得る。TRICH をコードする配列に相補的なポリヌクレオチドは、標準的な方法で標識化され、ハイブリダイゼーション複合体の形成に好適な条件の下、患者から採取した体液或いは組織のサンプルに加えることができる。好適なインキュベーション期間が経過したらサンプルを洗浄し、シグナルを定量して標準値と比較する。患者サンプル中のシグナルの量が、対照サンプルと較べて著しく変化している場合は、該サンプル内の、TRICH をコードするポリヌクレオチドのレベル変化の存在が、関連する疾患の存在を示す。このようなアッセイは、動物実験、臨床試験における特定の治療効果を評価するため、あるいは個々の患者の治療をモニターするために用いることもできる。
【0283】
TRICHの発現に関連する疾患の診断の基礎を提供するために、発現の正常すなわち標準的なプロファイルが確立される。これは、ハイブリダイゼーション或いは増幅に好適な条件下で、動物或いはヒトの何れかの正常な被験者から抽出された体液或いは細胞と、TRICHをコードする配列或いはその断片とを混合させることにより達成され得る。実質的に精製されたポリヌクレオチドを既知量で用いて行った実験から得た値を正常な被験者から得た値と比較することにより、標準ハイブリダイゼーションを定量することができる。このようにして得た標準値は、疾患の徴候を示す患者から得たサンプルから得た値と比較することができる。標準値からの偏差を用いて疾患の存在を確定する。
【0284】
疾患の存在が確定されて治療プロトコルが開始されると、患者の発現レベルが正常な被検者に観察されるレベルに近づき始めたかどうかを測定するため、ハイブリダイゼーションアッセイを定期的に繰り返し得る。連続アッセイから得られた結果を用いて、数日から数ヶ月の期間にわたる治療の効果を示し得る。
【0285】
癌に関しては、個体からの生体組織における異常な量の転写物(過少発現または過剰発現)の存在は、疾患の発生素質を示したり、実際に臨床的症状が現れる前に疾患を検出する方法を提供し得る。この種のより明確な診断により、医療の専門家が予防方法または積極的な治療法を早くから利用し、それによって癌の発生または更なる進行を防止することが可能となる。
【0286】
TRICHをコードする配列から設計されたオリゴヌクレオチドのさらなる診断への利用には、PCRの利用が含まれ得る。これらのオリゴマーは、化学的に合成するか、酵素により生産するか、あるいはin vitroで産出し得る。オリゴマーは、好ましくはTRICHをコードするポリヌクレオチドの断片、或いはTRICHをコードするポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチドの断片を含み、最適化した条件下で、特定の遺伝子や条件を識別するために利用される。また、オリゴマーは、やや緩いストリンジェンシー条件下で、近縁のDNA或いはRNA配列の検出、定量、或いはその両方のため用いることが可能である。
【0287】
或る特定の態様で、TRICH をコードするポリヌクレオチド群由来のオリゴヌクレオチドプライマー類を用いて一塩基多型(SNP)を検出し得る。SNPは、多くの場合にヒトの先天性または後天性遺伝病の原因となるような置換、挿入及び欠失である。限定するものではないがSNPの検出方法には、SSCP(single-stranded conformation polymorphism)及び蛍光SSCP(fSSCP)がある。SSCPでは、TRICH をコードするポリヌクレオチド群に由来のオリゴヌクレオチドプライマー類とポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)を用いDNAを増幅する。このDNAは例えば、病変組織または正常組織、生検サンプル、体液などに由来し得る。DNA内のSNPによって、一本鎖形状のPCR生成物の2次及び3次構造に差異が生じる。この差異は非変性ゲル中でのゲル電気泳動法を用いて検出可能である。fSCCPでは、オリゴヌクレオチドプライマーを蛍光性に標識する。それによってDNAシークエンシング機などの高処理機器でアンプリマー(amplimer)の検出が可能になる。更に、インシリコSNP(in silico SNP, isSNP)と呼ばれる配列データベース分析法は、一般的なコンセンサス配列へアセンブリされるような個々のオーバーラップするDNA断片の配列を比較することにより、多型性を同定し得る。これらのコンピュータベースの方法は、DNAの実験室での調製に、また統計モデル及びDNA配列クロマトグラムの自動分析を用いたシークエンシングのエラーに起因する配列の変異をフィルタリングして除去する。別の態様では、例えば高処理MASSARRAYシステム(Sequenom, Inc., San Diego CA)を用いた質量分析によりSNPを検出し、特徴付ける。
【0288】
SNPを利用して、ヒト疾患の遺伝的基礎を研究しうる。例えば、少なくとも16の一般的SNPが非インスリン依存型真性糖尿病と関連がある。SNPはまた、嚢胞性線維症、鎌状赤血球貧血、慢性肉芽腫性疾病等の単一遺伝子病の転帰の違いを研究するために有用である。例えば、マンノース結合レクチンでの変異体(MBL2)は、嚢胞性線維症の肺での有害な転帰と相関することがわかっている。SNPはまた、生命を脅かす毒性等の薬剤への患者の反応に影響する遺伝変異体の同定という薬理ゲノミックスにおいても有用性がある。例えば、N-アセチルトランスフェラーゼにおける変異は抗結核剤、イソニアジドに応答した末梢神経障害の発生率が高くなるが、ALOX5 遺伝子のコアプロモータの変異は5-リポキシゲナーゼ経路を標的とする抗喘息薬での治療に対する臨床的反応を減少する。異なった集団でのSNPの分布についての分析は遺伝的浮動、突然変異、組み換えおよび選択の研究に有用であると共に、集団の起源と移動の調査にも有用である (Taylor, J.G. 他(2001) Trends Mol. Med. 7:507-512、Kwok, P.-Y.およびZ. Gu (1999) Mol. Med. Today 5:538-543、Nowotny, P. 他(2001) Curr. Opin. Neurobiol. 11:637-641)。
【0289】
TRICH の発現を定量するために用い得る別の方法の例としては、ヌクレオチド群の放射標識またはビオチン標識、対照核酸の共増幅(coamplification)、および、標準曲線から得た結果の補間もある(Melby, P.C. 他(1993) J. Immunol. Methods 159:235-244、Duplaa, C.他(1993) Anal. Biochem. 212:229-236)。目的のオリゴマーが種々の希釈液中に存在し、分光光度法または比色反応によって定量が迅速になるような高処理フォーマットのアッセイを行うことによって、複数のサンプルの定量速度を加速することができる。
【0290】
更に別の実施様態では、本明細書に記載した任意のポリヌクレオチドに由来するオリゴヌクレオチドまたはより長い断片を、或るマイクロアレイにおけるエレメント群として用いることができる。大多数の遺伝子の相対発現レベルを同時にモニターする転写イメージング技術にマイクロアレイを用いることが可能である。これについては、以下に記載する。マイクロアレイはまた、遺伝変異体、突然変異および多型性の同定に用いることができる。この情報を用いることで、遺伝子機能を決定し、疾患の遺伝的根拠を理解し、疾患を診断し、遺伝子発現の機能としての疾病の進行/後退をモニターし、疾病治療における薬物の活性を開発およびモニターすることができる。特に、患者にとって最もふさわしく、有効な治療法を選択するために、この情報を用いて患者の薬理ゲノムプロフィールを開発することができる。例えば、患者の薬理ゲノムプロファイルに基づき、患者に対して高度に効果的で副作用の最も少ない治療薬を選択することができる。
【0291】
別の実施例では、TRICH、TRICHの断片、TRICHに特異的な抗体をマイクロアレイ上のエレメントとして用いることができる。マイクロアレイを用いて、上記のようなタンパク質−タンパク質相互作用、薬物−標的相互作用および遺伝子発現プロファイルをモニターまたは測定することが可能である。
【0292】
或る実施態様は、或る組織または細胞タイプの転写イメージを作製する、本発明のポリヌクレオチドの使用に関連する。転写イメージは、特定の組織または細胞タイプによる遺伝子発現の包括的パターンを表す。包括的遺伝子発現パターンは、所与の条件下で所与の時間に発現した遺伝子の数および相対存在量を定量することにより分析し得る(Seilhamer 他の米国特許第5,840,484号 「Comparative Gene Transcript Analysis」は特に引用することを以って本明細書の一部となす)。従って、特定の組織または細胞タイプの転写物または逆転写物全体に本発明のポリヌクレオチドまたはその相補体をハイブリダイズすることにより、転写イメージを生成し得る。或る実施例では、本発明のポリヌクレオチドまたはその相補体がマイクロアレイ上のエレメントのサブセットを複数含むような高処理フォーマットでハイブリダイゼーションを発生させる。結果として得られる転写イメージは、遺伝子活性のプロファイルを提供し得る。
【0293】
転写イメージは、組織、細胞株、生検またはその生体サンプルから単離した転写物を用いて作製し得る。転写イメージはしたがって、組織または生検サンプルの場合にはin vivo、細胞株の場合にはin vitroでの遺伝子発現を反映する。
【0294】
本発明のポリヌクレオチドの発現のプロフィールを作製する転写イメージはまた、工業的または天然の環境化合物の毒性試験のみならず、in vitroモデル系及び薬剤の前臨床評価と併せて使用し得る。全ての化合物は、作用および毒性のメカニズムを標示し、しばしば分子フィンガープリントまたは毒性シグネチャ(toxicant signatures)と称される、特徴的な遺伝子発現パターンを惹起する(Nuwaysir, E.F. 他(1999) Mol. Carcinog. 24:153-159; Steiner, S.およびN.L. Anderson (2000) Toxicol. Lett. 112-113:467-471)。試験化合物が、既知の毒性を有する化合物のシグネチャと同様のシグネチャを有する場合には、毒性特性を共有している可能性がある。フィンガープリントまたはシグネチャは、多数の遺伝子および遺伝子ファミリからの発現情報を含んでいる場合に、最も有用且つ正確である。理想的には、ゲノム全域にわたる発現の測定が、最高品質のシグネチャを提供する。たとえ、発現が任意の試験された化合物によって変容しない遺伝子があったとしても、それらの発現レベルを残りの発現データをノーマライズするために使用できるため、それらの遺伝子は重要である。ノーマライズ手順は、種々の化合物で処理した後の発現データの比較に有用である。毒性シグネチャの要素への遺伝子機能を割り当てることは毒性機構の解明に役立つが、毒性の予測につながるシグネチャの統計的な一致には遺伝子機能の知識は必要ではない(例えば2000年2月29日に米国国立環境健康科学研究所(National Institute of Environmental Health Sciences)より2000年2月29日に発行されたPress Release 00-02を参照されたい。これについてはhttp://www.niehs.nih.gov/oc/news/toxchip.htmで入手可能である)。したがって、毒性シグネチャを用いる中毒学的スクリーニングの際に、全ての発現した遺伝子配列を含めることは、重要且つ望ましい。
【0295】
或る実施例では、核酸を有する生体サンプルを試験化合物で処理することにより、この試験化合物の毒性を算定する。処理した生物学的サンプル中で発現した核酸は、本発明のポリヌクレオチドに特異的な1つ以上のプローブでハイブリダイズし、それによって本発明のポリヌクレオチドに対応する転写物レベルを定量し得る。処理した生体サンプル中の転写レベルを、未処理生体サンプル中のレベルと比較する。両サンプルの転写物レベルの差は、処理されたサンプル中で試験化合物が引き起こす毒性反応を示す。
【0296】
別の実施態様は、本明細書に開示するポリペプチド配列群を用いて或る組織または細胞タイプのプロテオームを分析することに関する。プロテオームの語は、特定の組織または細胞タイプでのタンパク質発現の包括的パターンを指す。プロテオームの各タンパク質成分は、個々に更なる分析にかけることができる。プロテオーム発現パターンすなわちプロファイルは、所与の条件下で所与の時間に発現したタンパク質の数および相対存在量を定量することにより分析し得る。したがって、或る細胞のプロテオームのプロファイルは、特定の組織または細胞タイプのポリペプチドを分離および分析することにより作成し得る。或る実施例では、1次元等電点電気泳動によりサンプルからタンパク質を分離し、2次元ドデシル硫酸ナトリウムスラブゲル電気泳動により分子量に応じて分離するような2次元ゲル電気泳動により、分離が達成される(前出のSteiner および Anderson)。タンパク質は、通常はクーマシーブルー、あるいは銀染色液または蛍光染色液などの物質を用いてゲルを染色することにより、分散した、独自の位置にある点としてゲル中で可視化される。各タンパク質スポットの光学密度は、通常、サンプル中のタンパク質レベルに比例する。異なるサンプル、例えば試験化合物または治療薬で処理または未処理のいずれかの生体サンプルからの、同等に位置したタンパク質スポットの光学密度を比較し、処理に関連するタンパク質スポット密度の変化を同定する。スポット内のタンパク質は、例えば化学的または酵素的切断とそれに続く質量分析を用いる標準的な方法を用いて部分的にシークエンシングする。或るスポット内のタンパク質の同一性は、その部分配列を、好適には少なくとも5個の連続するアミノ酸残基を、目的のポリペプチド配列と比較することにより決定し得る。場合によっては、決定的なタンパク質同定のための更なる配列データが得られる。
【0297】
プロテオームのプロファイルは、TRICHに特異的な抗体を用いてTRICH発現レベルを定量することによっても作成可能である。或る実施態様では、マイクロアレイ上のエレメントとしてこれら抗体を用い、マイクロアレイをサンプルに曝して各アレイエレメントへのタンパク質結合レベルを検出することにより、タンパク質発現レベルを定量する(Lueking, A. 他(1999) Anal. Biochem. 270:103-111、Mendoze, L.G.他(1999) Biotechniques 27:778-788)。検出は当分野で既知の様々な方法で行うことができ、例えば、チオール反応性またはアミノ反応性蛍光化合物とサンプル中のタンパク質を反応させ、各アレイエレメントにおける蛍光結合の量を検出し得る。
【0298】
プロテオームレベルでの毒性シグネチャも中毒学的スクリーニングに有用であり、転写レベルでの毒性シグネチャと並行に分析するべきである。いくつかの組織のいくつかのタンパク質については、転写物の存在量とタンパク質の存在量との相関が乏しいので(Anderson, N.L. および J. Seilhamer(1997)Electrophoresis 18:533-537)、転写イメージにはそれ程影響しないがプロテオームのプロファイルを改変するような化合物の分析において、プロテオーム毒性シグネチャは有用たり得る。更に、体液中の転写物の分析はmRNAの急速な分解のために困難なので、プロテオームのプロファイル作成はこのような場合により信頼でき、情報価値があり得る。
【0299】
別の実施様態では、タンパク質を含有する生体サンプルを試験化合物で処理することにより試験化合物の毒性を算定する。処理された生体サンプル中で発現したタンパク質は、各タンパク質の量を定量し得るように分離する。各タンパク質の量を、未処理生物学的サンプル中の対応するタンパク質の量と比較する。両サンプルのタンパク質量の差は、処理サンプル中の試験化合物に対する毒性反応を示す。個々のタンパク質は、個々のタンパク質のアミノ酸残基をシークエンシングし、これら部分配列を本発明のポリペプチドと比較することにより同定する。
【0300】
別の実施様態では、タンパク質を含有する生体サンプルを試験化合物で処理することにより試験化合物の毒性を算定する。生体サンプルから得たタンパク質は、本発明のポリペプチドに特異的な抗体を用いてインキュベートする。抗体により認識されたタンパク質の量を定量する。処理された生物学的サンプル中のタンパク質の量を、未処理生物学的サンプル中のタンパク質の量と比較する。両サンプルのタンパク質量の差は、処理サンプル中の試験化合物に対する毒性反応を示す。
【0301】
マイクロアレイは、本技術分野で既知の方法で調製し、使用し、分析する(例えばBrennan, T.M. 他(1995)米国特許第5,474,796号、Schena, M. 他(1996)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:10614-10619、Baldeschweiler 他(1995)PCT出願第WO95/251116号、Shalon, D.他(1995)PCT出願第WO95/35505号、Heller, R.A. 他(1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:2150-2155、Heller, M.J. 他.(1997) 米国特許第5,605,662号)。様々なタイプのマイクロアレイが公知であり、詳細については、Schena, M 編集 (1999、DNA Microarrays:A Practical Approach, Oxford University Press, London)に記載されている。
【0302】
本発明の別の実施例ではまた、TRICHをコードする核酸配列を用いて、天然のゲノム配列をマッピングするのに有用なハイブリダイゼーションプローブを作製することが可能である。コード配列または非コード配列のいずれかを用いることができ、或る例では、コード配列より非コード配列の方が好ましい。例えば、多重遺伝子族のメンバー内でのコード配列の保存により、染色体マッピング中に望ましくないクロスハイブリダイゼーションが生じる可能性がある。核酸配列は、特定の染色体、染色体の特定領域または人工形成の染色体、例えば、ヒト人工染色体(HAC)、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、細菌P1産物、或いは単一染色体cDNAライブラリに対してマッピングされる(Harrington, J.J.他 (1997) Nat. Genet. 15:345-355; Price, C.M. (1993) Blood Rev. 7:127134; Trask, B.J. (1991) Trends Genet.7:149154).一度マッピングすると、核酸配列を用いて、例えば病状の遺伝と特定の染色体領域やまたは制限酵素断片長多型(RFLP)の遺伝とが相関するような遺伝子連鎖地図を作成可能である(Lander, E.S. 及び D. Botstein (1986) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:7353-7357)。
【0303】
蛍光原位置ハイブリッド形成法(FISH)は、他の物理的および遺伝的地図データと相関し得る(Heinz-Ulrich他 (1995) in Meyers, supra, pp.965-968).遺伝地図データの例は、種々の科学雑誌あるいはOnline Mendelian Inheritance in Man(OMIM)のウェブサイトに見ることができる。物理的な染色体地図上の、TRICHをコードする遺伝子の位置と、特定の疾患または特定の疾患に対する素因との間の相関性が、このような疾患と関連するDNA領域の決定に役立つため、更なるポジショナルクローニングが行われうる。
【0304】
確定した染色体マーカーを用いた連鎖分析等の物理的マッピング技術及び染色体標本原位置ハイブリッド形成法を用いて、遺伝地図を拡張することができる。例えばマウスなど別の哺乳類の染色体上に遺伝子を配置することにより、正確な染色体上の遺伝子座が未知でも、関連するマーカー類をしばしば明らかにし得る。この情報は、ポジショナルクローニング、またはその他の遺伝子発見技術を用いて疾患遺伝子を探す研究者にとって価値がある。疾患または症候群に関与する遺伝子が、血管拡張性失調症の11q22-23領域等、特定の遺伝子領域への遺伝的結合によって大まかに位置決めがなされると、該領域にマップされる任意の配列は、更なる調査のための関連遺伝子あるいは調節遺伝子を提示している可能性がある(Gatti, R.A.他(1988) Nature 336:577-580)。転座、反転などに起因する、健常者、保有者、罹病者の三者間における染色体位置の相違を検出する場合にも、本発明のヌクレオチド配列を用い得る。
【0305】
本発明の別の実施例では、TRICH、その触媒作用断片或いは免疫原断片またはそのオリゴペプチドを、種々の任意の薬剤スクリーニング技術における化合物のライブラリのスクリーニングに用いることができる。薬剤スクリーニングに用いる断片は、溶液中に遊離しているか、固体支持物に固定されるか、細胞表面上に保持されるか、細胞内に位置しうる。TRICHと検査する薬剤との結合による複合体の形成を測定してもよい。
【0306】
別の薬物スクリーニング方法は、目的のタンパク質に対して好適な結合親和性を有する化合物を高い処理能力でスクリーニングするために用いられる(Geysen他(1984)PCT出願WO84/03564)。この方法においては、多数の様々な低分子の試験用化合物を固体基板上で合成する。試験用化合物は、TRICH、或いはその断片と反応させてから洗浄される。次ぎに、結合したTRICHが、当分野で周知の方法で検出される。 精製されたTRICHはまた、前記した薬剤をスクリーニングする技術に用いられるプレート上に直接被覆することもできる。別法では、非中和抗体を用いてペプチドを捕捉し、ペプチドを固体支持物に固定することもできる。
【0307】
別の実施例では、TRICHと特異結合可能な中和抗体が、TRICHとの結合を試験化合物と競合する、競合的薬剤スクリーニングアッセイを用いることができる。このようにして、TRICHと1つ以上の抗原決定因子を共有するどのペプチドの存在をも、抗体を使って検出できる。
【0308】
別の実施例では、TRICHをコードするヌクレオチド配列を、将来に開発される分子生物学技術であり、現在知られているヌクレオチド配列の特性(限定はされないが、トリプレット遺伝コード、特異的な塩基対相互作用等を含む)に依存する新技術に用い得る。
【0309】
更に詳細説明をしなくとも、当業者であれば以上の説明を以って本発明を最大限に利用できるであろう。したがって、これ以下に記載する実施例は単なる例示目的にすぎず、いかようにも本発明を限定するものではない。
【0310】
更に詳細説明をしなくとも、当業者であれば以上の説明を以って本発明を最大限に利用できるであろう。従って、これ以下に記載する実施例は単なる例示目的にすぎず、いかようにも本発明を限定するものではない。
【0311】
本明細書において開示した全ての特許、特許出願及び刊行物、特に米国特許第60/313,242号、第60/324,782号、第60/328,184号、第 60/345,937号、第 60/335,698号、 第 60/332,804号、第 60/333,922号、第60/388,180号、第60/375,637号、および 第 60/377,444号 は、言及することをもって本明細書の一部となす。
【実施例】
【0312】
cDNA ライブラリの作製
Incyte cDNA群の由来は、LIFESEQ GOLDデータベース (Incyte Genomics, Palo Alto CA)に記載されたcDNAライブラリ群である。幾つかの組織はホモジナイズしてグアニジニウムイソチオシアネート溶液に溶解し、他の組織はホモジナイズしてフェノールにまたは変性剤群の好適な混合液に溶解した。混合液の1例であるTRIZOL(Invitrogen)は、フェノールとグアニジンイソチオシアネートとの単相溶液である。結果として得た溶解物は、塩化セシウムのクッション液の上に重層して遠心分離するか、クロロフォルムで抽出した。イソプロパノールか、酢酸ナトリウムとエタノールか、いずれか一方、或いは別の方法を用いて、溶解物からRNAを沈殿させた。
【0313】
RNAの純度を高めるため、RNAのフェノールによる抽出及び沈殿を必要な回数繰り返した。場合によっては、DNA分解酵素でRNAを処理した。殆どのライブラリでは、オリゴd(T)連結常磁性粒子(Promega)、OLIGOTEXラテックス粒子(QIAGEN, Chatsworth CA)またはOLIGOTEX mRNA精製キット(QIAGEN)を用いて、ポリ(A)+RNAを単離した。別法では、別のRNA単離キット、例えばPOLY(A)PURE mRNA精製キット(Ambion, Austin TX)を用いて、組織溶解物からRNAを直接単離した。
【0314】
場合によってはStratagene社へのRNA提供を行い、対応するcDNAライブラリをStratagene社が作製することもあった。そうでない場合は、UNIZAPベクターシステム(Stratagene)またはSUPERSCRIPTプラスミドシステム(Invitrogen)を用いて本技術分野で公知の推奨される方法または類似の方法でcDNAを合成し、cDNAライブラリを作製した(前出のAusubel、他、5章)。逆転写は、オリゴd(T)またはランダムプライマーを用いて開始した。合成オリゴヌクレオチドアダプターを二本鎖cDNAに連結反応させ、好適な制限酵素または酵素群でcDNAを消化した。殆どのライブラリに対しcDNAのサイズ選択(300〜1000bp)は、SEPHACRYL S1000、SEPHAROSE CL2BまたはSEPHAROSE CL4Bカラムクロマトグラフィ(Amersham Biosciences)、あるいは分取用アガロースゲル電気泳動法を用いて行った。cDNAは好適なプラスミドのポリリンカーの、適合する制限酵素部位にライゲーションされた。好適なプラスミドは、例えばPBLUESCRIPTプラスミド(Stratagene)、PSPORT1プラスミド(Invitrogen)PCDNA2.1プラスミド(Invitrogen, Carlsbad CA)、PBK-CMVプラスミド(Stratagene)、PCR2−TOPOTAプラスミド(Invitrogen)、PCMV-ICISプラスミド(Stratagene)、pIGEN(Incyte Genomics, Palo Alto CA)、pRARE (Incyte Genomics)、またはplNCY(Incyte Genomics)、またはこれらの誘導体である。組換えプラスミドは、Stratagene社のXL1-Blue、XL1-BIueMRFまたはSOLR、あるいはInvitrogen社のDH5α、DH10BまたはElectroMAX DH10Bなど適格な大腸菌細胞に形質転換した。
【0315】
2 cDNA クローンの単離
UNIZAPベクターシステム(Stratagene)を用いたin vivo切除によって、或いは細胞溶解によって、実施例1のようにして得たプラスミドを宿主細胞から回収した。プラスミドを精製する方法は、MagicまたはWIZARD Minipreps DNA精製システム(Promega)、AGTC Miniprep精製キット(Edge Biosystems, Gaithersburg MD)、QIAGEN社のQIAWELL 8 Plasmid、QIAWELL 8 Plus PlasmidおよびQIAWELL 8 Ultra Plasmid 精製システム、R.E.A.L. Prep 96プラスミド精製キットの中から少なくとも1つを用いた。プラスミドは、沈殿させた後、0.1mlの蒸留水に再懸濁して、凍結乾燥して或いは凍結乾燥せずに4℃で保管した。
【0316】
別法では、高処理フォーマットにおいて直接結合PCR法を用いて宿主細胞溶解物からプラスミドDNAを増幅した(Rao, V.B. (1994) Anal. Biochem. 216:1-14)。宿主細胞の溶解および熱サイクリング過程は、単一反応混合液中で行った。サンプルを処理し、それを384穴プレート内で保管し、増幅したプラスミドDNAの濃度をPICOGREEN色素(Molecular Probes, Eugene OR)及びFLUOROSKAN2蛍光スキャナ(Labsystems Oy, Helsinki, Finland)を用いて蛍光分析的に定量した。
【0317】
3 シークエンシング及び分析
実施例2に記載したようにプラスミドから回収したIncyte cDNAを、以下に示すようにシークエンシングした。cDNAのシークエンス反応は、標準的方法あるいは高処理装置、例えばABI CATALYST 800 サーマルサイクラー(Applied Biosystems)またはPTC-200 サーマルサイクラー(MJ Research)を、HYDRAマイクロディスペンサー(Robbins Scientific)またはMICROLAB 2200(Hamilton)液体転移システムと併用して処理した。cDNAのシークエンス反応は、Amersham Biosciences社が提供する試薬、またはABIシークエンシングキット、例えばABI PRISM BIGDYE Terminator cycle sequencing ready reaction kit(Applied Biosystems)の試薬を用いて準備した。cDNAのシークエンス反応の電気泳動的分離及び標識したポリヌクレオチドの検出には、MEGABACE 1000 DNAシークエンシングシステム(Applied Biosystems)か、標準ABIプロトコル及び塩基呼び出し(base calling)ソフトウェアを用いるABI PRISM 373または377シークエンシングシステム(Applied Biosystems)か、或いはその他の本技術分野で既知の配列解析システムを用いた。cDNA配列内のリーディングフレームは、標準的方法(前出のAusubel, 7章)を用いて決定した。cDNA配列の幾つかを選択して、実施例8に記載した方法で配列を伸長させた。
【0318】
IncyteのcDNA配列に由来するポリヌクレオチド配列は、ベクター、リンカー及びポリ(A)配列を除去し、あいまいな塩基をマスクすることによって有効性を確認した。その際、BLAST、動的プログラミング及び隣接ジヌクレオチド頻度分析に基づくアルゴリズム及びプログラムを用いた。次に、Incyte cDNA配列またはそれらの翻訳の問い合わせを、以下のデータベース群に対して行った。すなわち、選抜した公共のデータベース群(例えばGenBankの霊長類、げっ歯類、哺乳類、脊椎動物、真核生物のデータベースと、BLOCKS、PRINTS、DOMO、PRODOM)と、ヒト、ラット、マウス、線虫(Caenorhabditis elegans)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)およびCandida albicansからの配列群を持つPROTEOMEデータベース群(Incyte Genomics, Palo Alto CA)、および、隠れマルコフモデル(HMM)ベースのタンパク質ファミリーデータベース群、例えばPFAM、INCY、およびTIGRFAM (Haft, D.H. 他 (2001) Nucleic Acids Res. 29:41- 43)、並びにHMMベースのタンパク質ドメインデータベースたとえばSMART(Schultz. J. 他 (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:5857-5864; Letunic, I. 他 (2002) Nucleic Acids Res.<0)30:242-244)。(HMMは、遺伝子ファミリーのコンセンサス1次構造を分析する確率的アプローチである。Eddy, S.R. (1996) Cuff. Opin. Struct. Biol. 6:361-365等を参照)。問合せは、BLAST、FASTA、BLIMPS、およびHMMERに基づくプログラムを用いて行った。Incyte cDNA配列は、完全長のポリヌクレオチド配列を産出するようにアセンブリした。あるいは、GenBank cDNA群、GenBank EST群、スティッチされた配列群、ストレッチされた配列群、またはGenscan予測コード配列群(実施例4および5を参照)を用い、Incyte cDNAのアセンブリ体群を完全長まで伸長させた。PhredとPhrapとConsedとに基づくプログラムを用いてアセンブリし、GenMarkとBLASTとFASTAとに基づくプログラムを用いて、cDNAのアセンブリ体を、オープンリーディングフレームについてスクリーニングした。完全長ポリヌクレオチド配列を翻訳し、対応する完全長ポリペプチド配列を得た。あるいは、或るポリペプチドは、完全長翻訳ポリペプチドの任意のメチオニン残基で開始し得る。完全長ポリペプチド配列群の続いての分析としての問い合わせを、GenBankタンパク質データベース群(genpept)、SwissProt、PROTEOMEデータベース群、BLOCKS、PRINTS、DOMO、PRODOMおよびProsite等のデータベースや、PFAM、INCY、およびTIGRFAM等の隠れマルコフモデル(HMM)ベースのタンパク質ファミリーデータベース群、並びにSMART等のHMMベースのタンパク質ドメインデータベース群に対し行った。完全長ポリヌクレオチド配列はまた、MACDNASIS PROソフトウェア(MiraiBio, Alameda CA)および LASERGENEソフトウェア(DNASTAR)を用いて分析する。ポリヌクレオチド及びポリペプチド配列アラインメントは、アラインメントした配列間の一致率も計算するMEGALIGNマルチシークエンスアラインメントプログラム(DNASTAR)に組み込まれているようなCLUSTALアルゴリズムによって指定されるデフォルトパラメータを用いて作製する。
【0319】
Incyte cDNA及び完全長配列の分析及びアセンブリに利用したツール、プログラム及びアルゴリズムの概略と、適用可能な説明、参照文献、閾値パラメータを表7に示す。用いたツール、プログラム及びアルゴリズムを表7の列1に、それらの簡単な説明を列2に示す。列3は好適な参照文献であり、全ての文献は全体を引用を以って本明細書の一部となす。適用可能な場合には、列4は2つの配列が一致する強さを評価するために用いたスコア、確率値その他のパラメータを示す(スコアが高いほど、または確率値が低いほど、2配列間の相同性が高くなる)。
【0320】
完全長ポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列のアセンブリ及び分析に用いる上記のプログラムは、SEQ ID NO:27-52のポリヌクレオチド配列断片の同定にも利用できる。 ハイブリダイゼーション及び増幅技術に有用である約20〜約4000ヌクレオチドの断片を表4の列2に示した。
【0321】
4 ゲノム DNA からのコード配列の同定及び編集
推定上の輸送体及びイオンチャネルは、公共のゲノム配列データベース(例えば、gbpriやgbhtg)においてGenscan遺伝子同定プログラムを実行して初めに同定された。Genscanは、様々な生物からのゲノムDNA配列を分析する汎用遺伝子同定プログラムである(Burge, C. 及び S. Karlin (1997) J. Mol. Biol. 268:78-94、Burge, C. 及び S. Karlin (1998) Curr. Opin. Struct. Biol. 8:346-354)。プログラムは予測エキソンを連結し、メチオニンから停止コドンに及ぶアセンブリされたcDNA配列を形成する。Genscanの出力は、ポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列のFASTAデータベースである。Genscanが一度に分析する配列の最大範囲は、30kbに設定した。これらのGenscan予測cDNA配列の内、どの配列が輸送体及びイオンチャネルをコードするかを決定するために、コードされたポリペプチドをPFAMモデルにおいて輸送体及びイオンチャネルについて問合せて分析した。潜在的な輸送体及びイオンチャネルもまた、輸送体及びイオンチャネルとして注釈を付けたIncyte cDNA配列に対する相同性を基に同定した。こうして選択されたGenscan予測配列は、次にBLAST分析により公共データベースgenpept及びgbpriと比較した。必要であれば、genpeptからのトップBLASTヒットと比較することによりGenscan予測配列を編集し、余分なまたは省略されたエキソンなど、Genscanが予測した配列におけるエラーを補正した。BLAST分析はまた、Genscan予測配列の、いかなるIncyte cDNAまたは公共cDNAカバレッジ(coverage)の発見にも用いられ、したがって転写の証拠を提供した。Incyte cDNAカバレッジが利用できた場合には、この情報を用いてGenscan予測配列を補正または確認した。完全長ポリヌクレオチド配列は、実施例3に記載したアセンブリプロセスを用いて、Incyte cDNA配列および/または公共cDNA配列でGenscan予測コード配列をアセンブリして得た。或いは、完全長ポリヌクレオチド配列は、編集した、または非編集のGenscan予測コード配列に完全に由来する。
【0322】
5 DNA 配列データを使ったゲノム配列データのアセンブリ
スティッチ配列(Stitched Sequence)
部分cDNA配列は、実施例4に記載のGenscan遺伝子同定プログラムにより予測されたエキソンを用いて伸長させた。実施例3に記載されたようにアセンブリされた部分cDNAは、ゲノムDNAにマッピングし、関連するcDNA及び1つ以上のゲノム配列から予測されたGenscanエキソンを含むクラスタに分解した。cDNA及びゲノム情報を統合するべくグラフ理論及び動的プログラミングに基づくアルゴリズムを用いて各クラスタを分析し、引き続いて確認、編集または伸長して完全長配列を産出するような潜在的スプライス変異体を生成した。区間の全長が、2つ以上の配列に在るような配列区間群をクラスター内で同定し、そのように同定された区間群は、推移性により、等しいと考えた。例えば、1つのcDNAと2つのゲノム配列上に或る区間が存在する場合、この3つの区間は全て等しいと考えられた。このプロセスは、無関係であるが連続したゲノム配列をcDNA配列により結び合わせて架橋し得る。このようにして同定された区間を、親配列(parent sequence)に沿って現われる順にステッチアルゴリズムで縫い合わせ、可能な最も長い配列および変異配列を作製する。1種類の親配列に沿って発生した区間間の連鎖(cDNA−cDNAまたはゲノム配列−ゲノム配列)は、親の種類を変える連鎖(cDNA−ゲノム配列)に優先した。結果として得たスティッチ配列群を翻訳し、BLAST分析で公共データベースgenpeptおよびgbpriと比較した。Genscanが予測した不正確なエキソン群は、genpeptからのトップBLASTヒットとの比較により補正した。必要な場合には、追加cDNA配列を用いるかゲノムDNAの検査により配列を更に伸長させた。
【0323】
ストレッチ配列(Stretched Sequence)
部分DNA配列は、BLAST分析に基づくアルゴリズムにより完全長まで伸長された。先ず、BLASTプログラムを用いて、GenBankの霊長類、げっ歯類、哺乳動物、脊椎動物及び真核生物のデータベースなどの公共データベースに対し、実施例3に記載したようにアセンブリされた部分cDNAを問い合わせた。次に、最も近いGenBankタンパク質相同体を、BLAST分析により、Incyte cDNA配列または実施例4に記載のGenScanエキソン予測配列のいずれかと比較した。結果として得られる高スコアリングセグメント対(HSP)を用いてキメラタンパク質を産出し、翻訳した配列をGenBankタンパク質相同体上にマッピングした。元のGenBankタンパク質相同体に対し、キメラタンパク質内では挿入または欠失が起こり得る。GenBankタンパク質相同体、キメラタンパク質またはその両方をプローブとして用い、公共のヒトゲノムデータベースから相同ゲノム配列を検索した。このようにして、部分的なDNA配列を、相同ゲノム配列の付加によりストレッチすなわち伸長した。結果として得られるストレッチ配列を検査し、完全遺伝子を含んでいるか否かを判定した。
【0324】
TRICH をコードするポリヌクレオチドの染色体マッピング
SEQ ID NO:27-52をアセンブリするために用いた配列を、BLAST及びSmith-Watermanアルゴリズムを用いて、Incyte LIFESEQデータベース及び公共のドメインデータベースの配列と比較した。SEQ ID NO:27-52 と一致するこれらのデータベースの配列を、Phrapなどのアセンブリアルゴリズム(表7)を使用して、連続及びオーバーラップした配列のクラスターにアセンブリした。スタンフォード・ヒトゲノムセンター(SHGC)、ホワイトヘッド・ゲノム研究所(WIGR)、Genethonなどの公的な情報源から入手可能な放射線ハイブリッドおよび遺伝地図データを用いて、いずれかのクラスター化された配列が既にマッピングされているかを判定した。マッピングされた配列が或るクラスターに含まれている場合、そのクラスターの全配列が、個々の配列番号と共に、地図上の位置に割り当てられた。
【0325】
地図上の位置は、ヒト染色体の範囲または区間として表される。センチモルガン単位での或る区間の地図上の位置は、染色体の短腕(p-arm)の末端に対して測定する(センチモルガン(cM)は、染色体マーカー間の組換え頻度に基づく計測単位である。平均して、1cMは、ヒト中のDNAの1メガベース(Mb)にほぼ等しい。 もっとも、この値は、組換えのホットスポット及びコールドスポットによって広範囲に変化する)。cM距離は、各クラスタ内に配列が含まれる放射線ハイブリッドマーカー類に対して境界を提供するGenethonによってマッピングされた遺伝マーカー群に基づく。NCBI「GeneMap'99」(http://www.ncbi.nlm.nih.gpv/ genemap/)などの一般個人が入手可能なヒト遺伝子マップおよびその他の情報源を用いて、既に同定されている疾患遺伝子群が、上記した区間内若しくは近傍に位置するかを決定できる。
【0326】
7 ポリヌクレオチド発現の分析
ノーザン分析は、遺伝子の転写物の存在を検出するために用いられる実験用技術であり、特定の細胞種或いは組織からのRNAが結合されている膜への標識されたヌクレオチド配列のハイブリダイゼーションを伴う(Sambrook 他,前出, 7章; Ausubel 他、前出, 4章)。
【0327】
BLASTを適用する類似のコンピュータ技術を用いて、GenBankやLIFESEQ (Incyte Genomics)等のデータベースにおいて同一または関連分子を検索した。ノーザン分析は、多数の膜系ハイブリダイゼーションよりも非常に速い。更に、任意の特定の一致を厳密なあるいは相同的なものとして分類するか否かを決定するため、コンピュータ検索の感度を修正することができる。検索の基準は積スコアであり、次式で定義される。
【0328】
【数1】
Figure 2005503790
【0329】
積スコアは、2つの配列間の類似度と、配列が一致する長さとの両方を考慮している。積スコアは、0〜100のノーマライズされた値であり、次のようにして求める。BLASTスコアにヌクレオチドの配列一致率を乗じ、その積を2つの配列の短い方の長さの5倍で除する。BLASTスコアを計算するには、或る高スコアリングセグメント対(HSP)内の一致する各塩基に+5のスコアを割り当て、各不一致塩基に−4を割り当てる。2つの配列は、2以上のHSPを共有し得る(ギャップにより隔離される)。2以上のHSPがある場合には、最高BLASTスコアのセグメント対を用いて積スコアを計算する。積スコアは、断片的オーバーラップとBLASTアラインメントの質とのバランスを表す。例えば積スコア100は、比較した2つの配列の短い方の長さ全体にわたって100%一致する場合のみ得られる。積スコア70は、一端が100%一致し、70%オーバーラップしているか、他端が88%一致し、100%オーバーラップしているかのいずれかの場合に得られる。積スコア50は、一端が100%一致し、50%オーバーラップしているか、79%一致し、100%オーバーラップしているかのいずれかの場合に得られる。
【0330】
或いは、TRICH をコードするポリヌクレオチドは、由来する組織源に対して分析する。例えば幾つかの完全長配列は、少なくとも一部は、オーバーラップするIncyte cDNA配列群を用いてアセンブリされる(実施例3を参照)。各cDNA配列は、ヒト組織から作製されたcDNAライブラリに由来する。各ヒト組織は、以下の臓器/組織カテゴリーの1つに分類される。すなわち心血管系、結合組織、消化器系、胎芽構造、内分泌系、外分泌腺、女性生殖器、男性生殖器、生殖細胞、血液および免疫系、肝、筋骨格系、神経系、膵臓、呼吸器系、感覚器、皮膚、顎口腔系、非分類性/混合性または尿路である。各カテゴリーのライブラリ数を数えて、全カテゴリーの総ライブラリ数で除する。同様に、各ヒト組織は、以下の疾患/条件カテゴリー即ち癌、細胞株、発達、炎症、神経性、外傷、心血管、プール、その他の1つに分類される。各カテゴリーのライブラリ数を数えて、全カテゴリーの総ライブラリ数で除する。得られるパーセンテージは、TRICHをコードするcDNAの組織特異的発現および疾患特異的発現を反映する。 cDNA配列およびcDNAライブラリ/組織の情報は、LIFESEQ GOLD データベース(Incyte Genomics, Palo Alto CA)から得ることができる。
【0331】
TRICH をコードするポリヌクレオチドの伸長
完全長のポリヌクレオチドもまた、完全長分子の適切な断片から設計したオリゴヌクレオチドプライマーを用いて該断片を伸長させて生成した。或るプライマーは既知の断片の5'伸長を開始するべく合成し、別のプライマーは既知の断片の3'伸長を開始するべく合成した。開始プライマーは、長さが約22〜30ヌクレオチド、GC含有率が約50%以上となり、約68〜72℃の温度で標的配列にアニーリングするように、OLIGO 4.06ソフトウェア(National Biosciences)或いは別の適切なプログラムを用いて設計した。 ヘアピン構造及びプライマー−プライマー二量体を生ずるようなヌクレオチドの伸長は全て回避した。
【0332】
選択したヒトcDNAライブラリ群を用い、配列を伸長した。2段階以上の伸長が必要または望ましい場合には、付加的プライマーあるいはプライマーのネステッドセットを設計した。
【0333】
高忠実度の増幅が、当業者によく知られている方法を利用したPCR法によって得られた。PCRは、PTC-200 サーマルサイクラー(MJ Research, Inc.)を用いて96ウェルプレート内で行った。反応混合液は、鋳型DNA及び200nmolの各プライマーを有する。また、Mg +と(NH4)2SO4と2−メルカプトエタノールを含む反応バッファー、Taq DNAポリメラーゼ(Amersham Biosciences)、ELONGASE酵素(Invitrogen)、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)を含む。プライマーの組、PCI AとPCI Bに対して以下のパラメータで増幅を行った。ステップ1: 94℃, 3分、 ステップ 2: 94℃, 15 秒、ステップ 3: 60℃, 1 分、ステップ 4: 68℃, 2 分、 ステップ 5: ステップ2、3および 4を20回反復する。 ステップ6: 68℃、 5 分、ステップ7: 4℃で保存する。別法では、プライマーの組、T7とSK+に対して以下のパラメータで増幅を行った。ステップ1: 94℃, 3分、 ステップ 2: 94℃, 15 秒、ステップ 3: 57℃, 1 分、ステップ 4: 68℃, 2 分、 ステップ 5: ステップ2、3および 4を20回反復する。 ステップ6: 68℃、 5 分、ステップ7: 4℃で保存する。
【0334】
各ウェルのDNA濃度は、1×TE及び0.5μlの希釈していないPCR産物に溶解した100μlのPICOGREEN定量試薬(0.25(v/v) PICOGREEN; Molecular Probes, Eugene OR)を不透明な蛍光光度計プレート(Corning Costar, Acton MA)の各ウェルに分配してDNAが試薬と結合できるようにして測定した。サンプルの蛍光を計測してDNAの濃度を定量すべく、プレートをFluoroskan II(Labsystems Oy, Helsinki, Finland)でスキャンした。 反応混合物のアリコット5〜10μlを1%アガロースゲル上で電気泳動法によって解析し、どの反応が配列の伸長に成功したかを判定した。
【0335】
伸長したヌクレオチドは、脱塩および濃縮して384穴プレートに移し、CviJIコレラウイルスエンドヌクレアーゼ(Molecular Biology Research, Madison WI)を用いて消化し、音波処理またはせん断し、pUC 18ベクター(Amersham Biosciences)への再連結を行った。ショットガン・シークエンシングのために、消化したヌクレオチドを低濃度(0.6〜0.8%)のアガロースゲル上で分離し、断片を切除し、寒天をAgar ACE(Promega)で消化した。伸長したクローンをT4リガーゼ(New England Biolabs, Beverly MA)を用いてpUC 18ベクター(Amersham Biosciences)に再連結し、Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)で処理して制限部位のオーバーハング部分を満たし、大腸菌細胞に形質移入した。形質移入した細胞を選択して抗生物質を含む培地に移し、それぞれのコロニーを切りとってLB/2Xカルベニシリン培養液の384ウェルプレートに37℃で一晩培養した。
【0336】
細胞を溶解して、Taq DNAポリメラーゼ(Amersham Biosciences)及びPfu DNAポリメラーゼ(Stratagene)を用いて以下の手順でDNAをPCR増幅した。ステップ1: 94℃, 3分、 ステップ 2: 94℃、 15 秒、ステップ 3: 60℃、 1 分、ステップ 4: 72℃、 2 分、 ステップ 5: ステップ2、3および 4を29回反復する。 ステップ6: 72℃、5 分、ステップ7: 4℃で保存する。上記のようにPICOGREEN試薬(Molecular Probes)でDNAを定量した。DNAの回収率が低いサンプルは、上記と同一の条件を用いて再増幅した。サンプルは20%ジメチルスルホキシド(1:2, v/v)で希釈し、DYENAMIC エネルギートランスファー シークエンシングプライマー、及びDYENAMIC DIRECT kit(Amersham Biosciences)またはABI PRISM BIGDYE ターミネーターサイクル シークエンシング反応キット(Terminator cycle sequencing ready reaction kit)(Applied Biosystems)を用いてシークエンシングした。
【0337】
同様に、上記手順を用いて完全長ポリヌクレオチドを検証した。あるいは、完全長ポリヌクレオチドを用い、上記手順で、そのような伸長のために設計したオリゴヌクレオチド類と、或る適切なゲノムライブラリとを用いて5'調節配列を得た。
【0338】
TRICH をコードするポリヌクレオチドの一塩基多型の同定
一塩基多型性(SNP)として知られる一般的なDNA配列変異体は、LIFESEQデータベース(Incyte Genomics)を用いてSEQ ID NO:27-52において同定された。実施例3に記述されているように、同じ遺伝子からの配列を共にクラスターにしてアセンブリし、これによって遺伝子内のすべての配列変異体の同定ができた。一連のフィルタからなるアルゴリズムを使って、SNPを他の配列変異体から区別した。前段フィルターは、最小限Phredクオリティスコア15を要求することにより大多数のベースコールのエラーを除去し、また、配列アライメントエラーや、ベクター配列、キメラおよびスプライス変異体の不適当なトリミングにより生じるエラーを取り除いた。染色体の高度解析の自動化手順により、推定SNPの近傍におけるオリジナルのクロマトグラムファイルが解析された。クローンエラーフィルタは統計的に生み出されたアルゴリズムを用いて、逆転写酵素、ポリメラーゼ、または体細胞突然変異によって引き起こされるエラーのような、実験処理時に導入されるエラーを識別した。クラスターエラーフィルターは、統計的に生み出されたアルゴリズムを用いて、近縁の相同体または偽遺伝子のクラスター化に起因するエラー、または非ヒト配列によるコンタミネーションにより生じたエラーを同定した。最後のフィルター群によって、免疫グロブリンまたはT細胞受容体に存在する重複(duplicates)とSNPが除去された。
【0339】
異なる4つのヒト集団のSNP部位における対立遺伝子頻度を分析するために、高処理MASSARRAYシステム(Sequenom, Inc.)を用いる質量分析によって、更なる特徴付けのためにいくつかのSNPが選択された。白人母集団は、ユタ州の83人、フランス人4人、ベネズエラ3人およびアーミッシュ派2人を含む92人(男性46人、女性46人)で構成された。アフリカ人母集団はすべてアフリカ系アメリカ人である194人( 男性97人、 女性97人)からなる。ヒスパニック母集団はすべてメキシコ系ヒスパニックの324人( 男性162人、 女性162人)からなる。アジア人母集団は126人(男性64人、女性62人)からなり、親の内訳は中国人43%、日本人31%、コリアン13%、ベトナム人5%およびその他のアジア人8%と報告されている。対立形質の発生頻度は最初に白人母集団において分析し、いくつかの例において、この母集団で対立形質分散を示さなかったSNPは他の三つの母集団においてさらに検査しなかった。
【0340】
10 個々のハイブリダイゼーションプローブの標識化及び使用
SEQ ID NO:27-52から導き出されたハイブリダイゼーションプローブを用いて、cDNA、mRNA、またはゲノムDNAをスクリーニングする。約20塩基対からなるオリゴヌクレオチドの標識について特に記載するが、より大きなヌクレオチド断片に対しても本質的に同一の手順が用いられる。オリゴヌクレオチドは、OLIGO 4.06ソフトウェア(National Biosciences)等の最新ソフトウェアを用いて設計し、各オリゴマー50pmolと、[γ-32P]アデノシン3リン酸 (Amersham Biosciences)250μCiと、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(DuPont NEN, Boston MA)を混合することにより標識する。標識したオリゴヌクレオチドは、SEPHADEX G-25超細繊分子サイズ排除デキストラン ビーズカラム(Amersham Biosciences)を用いて実質的に精製する。Ase I、Bgl II、Eco RI、Pst I、Xba1またはPvu II(DuPont NEN)のいずれか1つのエンドヌクレアーゼで消化されたヒトゲノムDNAの典型的な膜ベースのハイブリダイゼーション解析において、毎分107カウントの標識されたプローブを含むアリコットを用いる。
【0341】
各消化物から得たDNAは、0.7%アガロースゲル上で分画してナイロン膜(Nytran Plus, Schleicher & Schuell, Durham NH)に移す。ハイブリダイゼーションは、40℃で16時間行う。 非特異的シグナルを除去するため、例えば0.1×クエン酸ナトリウム食塩水及び0.5%ドデシル硫酸ナトリウムに一致する条件下で、ブロットを室温で順次洗浄する。オートラジオグラフィーまたはそれに代わるイメージング手段を用いてハイブリダイゼーションパターンを視覚化し、比較する。
【0342】
11 マイクロアレイ
マイクロアレイの表面上でアレイエレメントの結合または合成は、フォトリソグラフィ、ピエゾ式印刷(インクジェット印刷、前出のBaldeschweiler他等を参照)、機械的マイクロスポッティング技術及びこれらから派生したものを用いて達成することが可能である。上記各技術において基板は、均一且つ無孔の固体とするべきである(Schena ,M., ed. (1999) DNA Microarrays:A Practical Approach, Oxford University Press, Londoに記載されている)。推奨する基板には、シリコン、シリカ、スライドガラス、ガラスチップおよびシリコンウェハがある。あるいは、ドットブロット法またはスロットブロット法に類似した手順を利用し、熱的、紫外線的、化学的または機械的結合手順を用いて基板の表面にエレメントを配置および結合させてもよい。通常のアレイは、利用可能な、当業者に公知の方法と機械とを用いて作製でき、任意の適正数のエレメントを有し得る(Schena, M. 他(1995) Science 270:467-470; Shalon, D.他(1996) Genome Res.6:639-645; Marshall, A. および J. Hodgson (1998) Nat. Biotechnol. 16:27-31を参照)。
【0343】
完全長cDNA、発現配列タグ(EST)、またはその断片またはオリゴマーが、マイクロアレイのエレメントと成り得る。ハイブリダイゼーションに好適な断片またはオリゴマーを、LASERGENEソフトウェア(DNASTAR)など本技術分野で公知のソフトウェアを用いて選択することが可能である。アレイエレメント群を、生体サンプル中のポリヌクレオチド群とハイブリダイズする。生体サンプル中のポリヌクレオチドは、検出を容易にするために蛍光標識などの分子タグに抱合させる。ハイブリダイゼーション後、生体サンプルからのハイブリダイズされていないヌクレオチドを除去し、蛍光スキャナを用いて各アレイエレメントでのハイブリダイゼーションを検出する。あるいは、レーザー脱離および質量スペクトロメトリを用いてもハイブリダイゼーションを検出し得る。マイクロアレイ上の或るエレメントにハイブリダイズする各ポリヌクレオチドの、相補性の度合と相対存在度とを算定し得る。一実施態様におけるマイクロアレイの調製および使用について、以下に詳述する。
【0344】
組織または細胞サンプルの調製
全RNAを組織サンプルから単離するためグアニジニウムチオシアネート法を用い、ポリ(A)+RNA精製にオリゴ(dT)セルロース法を用いる。各ポリ(A)+RNAサンプルを、MMLV逆転写酵素、0.05pg/μlのオリゴ(dT)プライマー(21mer)、1×第一鎖合成バッファー、0.03unit/μlのRNアーゼ阻害因子、500μMのdATP、500μMのdGTP、500μMのdTTP、40μMのdCTP、40μMのdCTP-Cy3(BDS)またはdCTP-Cy5(Amersham Biosciences)を用いて逆転写する。逆転写反応は、GEMBRIGHTキット(Incyte Genomics)を用いて200 ng ポリ(A)+RNA含有の25体積ml内で行う。特異的対照ポリ(A)+RNAは、非コード酵母ゲノムDNAからin vitro転写により合成する。37℃で2時間インキュベートした後、各反応サンプル(1つはCy3、もう1つはCy5標識)は、2.5mlの0.5M水酸化ナトリウムで処理し、85℃で20分間インキュベートし、反応を停止させてRNAを分解させる。サンプルを精製するため、2つの連続するCHROMA SPIN 30ゲル濾過スピンカラム(Clontech, Palo Alto, CA)を用いる。混合後、2つの反応サンプルをエタノール沈殿させるため、1mlのグリコーゲン(1mg/ml)、60mlの酢酸ナトリウム、および300mlの100%エタノールを用いる。サンプルは次に、SpeedVAC(Savant Instruments Inc., Holbrook NY)を用いて乾燥して仕上げ、14μl 5×SSC/0.2% SDS中で再懸濁する。
【0345】
マイクロアレイの調製
本発明の配列を用いて、アレイエレメントを作製する。各アレイエレメントは、クローン化cDNAインサートを持つベクター含有細菌細胞から増幅する。PCR増幅は、cDNAインサートに隣接するベクター配列に相補的なプライマーを用いる。30サイクルのPCRで1〜2ngの初期量から5μgより大きい最終量までアレイエレメントを増幅する。増幅したアレイエレメントは、SEPHACRYL-400(Amersham Biosciences)を用いて精製する。
【0346】
精製したアレイエレメントは、ポリマーコートされたスライドグラス上に固定する。顕微鏡スライドグラス(Corning)は、0.1%のSDSおよびアセトン中で超音波洗浄し、処理の間および処理後に充分に蒸留水で洗浄する。スライドグラスは、4%フッ化水素酸(VWR Scientific Products Corporation(VWR), West Chester PA)中でエッチングし、充分に蒸留水中で洗浄し、95%エタノール中で0.05%アミノプロピルシラン(Sigma)を用いてコーティングする。コーティングしたスライドは、110℃のオーブンで硬化させる。
【0347】
米国特許第5,807,522号に記載されている方法を用いて、コーティングしたガラス基板にアレイエレメントを付加する。 この特許に引用することを以って本明細書の一部とする。平均濃度100ng/μlのアレイエレメントDNA1μlを、高速ロボット装置(robotic apparatus)により、開放型キャピラリープリンティングエレメント(open capillary printing element)に充填する。装置はここで、スライド毎に約5nlのアレイエレメントサンプルを置く。
【0348】
マイクロアレイには、STRATALINKER UV架橋剤(Stratagene)を用いてUV架橋する。マイクロアレイは、室温において0.2%SDSで1度洗浄し、蒸留水で3度洗浄する。リン酸緩衝生理食塩水 (PBS)(Tropix, Inc., Bedford MA)中の0.2%カゼイン中において60℃で30分間マイクロアレイをインキュベートした後、前に行ったように0.2%SDS及び蒸留水で洗浄することにより、非特異結合部位をブロックする。
【0349】
ハイブリダイゼーション
ハイブリダイゼーション反応液は、5×SSC、0.2%SDSハイブリダイゼーション緩衝液にCy3及びCy5標識したcDNA合成産物を各0.2μg含む9μlのサンプル混合体を含めたものである。サンプル混合体は、65℃まで5分間加熱し、マイクロアレイ表面上で等分して1.8cm2 のカバーガラスで覆う。アレイは、顕微鏡スライドより僅かに大きい空洞を有する防水チェンバーに移す。チェンバーのコーナーに140μlの5×SSCを加えることにより、チェンバー内部を湿度100%に保持する。アレイを含むチェンバーは、60℃で約6.5時間インキュベートする。アレイは、第1洗浄緩衝液中(1×SSC、0.1%SDS)において45℃で10分間洗浄し、第2洗浄緩衝液中(0.1×SSC)において各々45℃で10分間、3度洗浄して乾燥させる。
【0350】
検出
レポーター標識したハイブリダイゼーション複合体を検出するには、Cy3の励起のために488nm、Cy5の励起のために632nmでスペクトル線を発生し得るInnova70混合ガス10Wレーザー(Coherent, Inc., Santa Clara CA)を備えた顕微鏡を用いる。励起レーザー光の焦点をアレイ上に置くため、20×顕微鏡対物レンズ(Nikon, Inc., Melville NY)を用いる。アレイを含むスライドを、顕微鏡の、コンピュータ制御のX-Yステージに置き、対物レンズを通してラスタースキャンする。本実施例で用いる1.8cm×1.8cmのアレイは、解像度20μmでスキャンする。
【0351】
2回の異なるスキャンで、混合ガスマルチラインレーザは2つのフルオロフォアを連続的に励起する。発光された光は、波長に基づき分離され、2つのフルオロフォアに対応する2つの光電子増倍管検出器(PMT R1477, Hamamatsu Photonics Systems, Bridgewater NJ)に送られる。好適なフィルタ群をアレイと光電子増倍管との間に設置して、シグナルをフィルタする。用いるフルオロフォアの最大発光の波長は、Cy3では565nm、Cy5では650nmである。装置は両方の蛍光色素からのスペクトルを同時に記録し得るが、レーザ源において好適なフィルターを用いて、蛍光色素1つにつき1度スキャンし、各アレイを通常2度スキャンする。
【0352】
スキャンの感度は通常、既知濃度のサンプル混合体に添加されるcDNA対照種により生成されるシグナル強度を用いて較正する。アレイ上の特定の位置には相補的DNA配列が含まれ、その位置におけるシグナルの強度を、ハイブリダイズする種の重量比1:100,000に相関させる。 異なる源泉(例えば試験される細胞及び対照細胞など)からの2つのサンプルを、各々異なる蛍光色素で標識し、他と異なって発現した遺伝子を同定するために単一のアレイにハイブリダイズする場合には、その較正を、較正するcDNAのサンプルを2つの蛍光色素で標識し、ハイブリダイゼーション混合体に各々等量を加えることによって行う。
【0353】
光電子増倍管の出力は、IBMコンパチブルPCコンピュータにインストールされた12ビットRTI-835Hアナログ−ディジタル(A/D)変換ボード(Analog Devices, Inc., Norwood MA)を用いてディジタル化される。ディジタル化したデータは、青色(低シグナル)から赤色(高シグナル)までの擬似カラースケールへのリニア20色変換を用いて、シグナル強度がマッピングされたイメージとして表示される。データは、定量的にも分析される。2つの異なるフルオロフォアを同時に励起および測定する場合には、各フルオロフォアの発光スペクトルを用いて、データは先ずフルオロフォア間の光学的クロストーク(発光スペクトルの重なりに起因する)を補正される。
【0354】
グリッドが蛍光シグナルイメージ上に重ねられ、それによって各スポットからのシグナルはグリッドの各エレメントに集められる。各エレメント内の蛍光シグナルは統合され、シグナルの平均強度に応じた数値が得られる。シグナル分析に用いるソフトウェアは、GEMTOOLS遺伝子発現分析プログラム(Incyte Genomics)である。発現が少なくとも2倍変化したアレイエレメント、SB比が少なくとも2.5であるもの、およびエレメントスポットサイズが少なくとも40%であるものは差次的に発現していると同定された。
【0355】
発現
別の例でSEQ ID NO:30は差次的発現を骨肉腫組織と正常な骨細胞とで示し、これはマイクロアレイ分析で判定した。健常ヒト骨芽細胞からのメッセンジャーRNAを生検標本、骨肉腫組織、初代培養または、転移した組織からのmRNAと比較した。
初期実験における参照基準として、健常な骨芽細胞初代培養を選んだ。基本的な一組の実験では同じ患者の生検標本からのmRNAと最終的外科的標本からのmRNAの比較として定義される。この基本となる組の拡大研究には、同じ患者の最終的外科的標本(筋肉組織、または軟骨組織)の初代細胞培養からのmRNAが含まれる。個々の人における変動性を明らかにするために、異なった被験者からの生検標本、最終的外科的標本または肺転移組織をも含められた。SEQ ID NO:30 の発現は、健常者の骨細胞に較べて骨肉腫組織では少なくとも2倍増加した。したがって、様々な実施様態でSEQ ID NO:30は下記の1つ以上の目的で使用することができる。すなわち、i)骨癌の治療のモニタリング、ii)骨癌の診断アッセイ、そしてiii)骨癌の治療法そして/あるいは他の治療法の開発である。
【0356】
別の例でSEQ ID NO:33は肺扁平上皮癌と正常な肺組織とで差次的発現を示し、これはマイクロアレイ分析で判定した。対応する組織の実験において、SEQ ID NO:33 の発現は、同じドナーの肉眼的で見て関与しない健常肺組織に比べると腫瘍性肺組織では少なくとも2分の1まで減少した。したがって、様々な実施様態でSEQ ID NO:33は下記の1つ以上の目的で使用することができる。すなわち、i)肺癌の治療のモニタリング、ii)肺癌の診断アッセイ、そしてiii)肺癌の治療法そして/あるいは他の治療法の開発である。
【0357】
SEQ ID NO:33 はまた、健常卵巣組織と卵巣腺癌組織では差次的発現を示すことがマイクロアレイ解析によって確認された。SEQ ID NO:33の発現は、卵巣腺癌において、同じドナーの肉眼的に無併発の健常肺組織と比べて少なくとも2分の1に減少した。したがって、様々な実施様態でSEQ ID NO:33は下記の1つ以上の目的で使用することができる。すなわち、i)卵巣癌の治療のモニタリング、ii)卵巣癌の診断アッセイ、そしてiii)卵巣癌の治療法そして/あるいは他の治療法の開発である。
【0358】
SEQ ID NO:33 と SEQ ID NO:40 は免疫応答および炎症応答と関連して差次的発現を示すことがマイクロアレイ解析によって確認された。SEQ ID NO:33 の発現は、未処理のヒト臍静脈細胞に較べてPMA で処理されたヒト臍静脈細胞において少なくとも2倍増加した。ヒト臍静脈細胞はヒト臍静脈の内皮から由来しており、in vitroでヒト内皮細胞の機能的生物学を調べるための実験モデルとして使われている。PMAはプロテインキナーゼC依存性経路の広範囲な活性化因子であり、イオノマイシンはカルシウムの細胞内流入を可能にするカルシウムイオンイオノフォアであり、したがって、細胞質ゾル内カルシウム濃度を増加する。SEQ ID NO:40 の発現は、未処理の血管内皮組織と較べると、TNFα とIL-1β で処理された血管内皮組織では少なくとも2.5倍増加した。 同じドナーから得たヒト冠動脈内皮細胞とヒト冠動脈平滑筋細胞(BioWhittaker, Inc., San Diego CA) を組織培養フラスコ中にて内皮増殖培養液(Endothelium Growth Medium )、または平滑筋増殖培養液(Smooth Muscle Growth Medium)でそれぞれ培養した(BioWhittaker)。85%コンフルエンスでの培養は、組換えヒト TNFα および IL-1β (R&D Systems, Minneapolis MN) 、各々10ng/mlにて、37℃で24時間で処理するか、または未処理のままにした。したがって、様々な実施様態でSEQ ID NO:33とSEQ ID NO:40は下記の1つ以上の目的で使用することができる。すなわち、i)免疫/炎症応答の治療のモニタリング、ii)免疫/炎症応答の診断アッセイ、そしてiii)免疫/炎症応答の治療法そして/あるいは他の治療法の開発である。
【0359】
別の実施例において、SEQ ID NO:38 は、初代乳腺上皮細胞と乳癌細胞株では差次的な発現を示すことがマイクロアレイ分析によって確認された。乳癌細胞株にはMCF7(69才女性の胸水由来乳腺癌細胞株)、T-47D(54才女性の乳房の浸潤性管癌患者の胸水由来乳癌細胞株)、Sk-BR-3(43才女性の悪性胸水から単離された乳腺癌細胞株、MDA-mb-231(51才女性の転移性乳癌患者の胸水由来の転移性乳房腫瘍細胞株およびMDA-mb-435S(転移性、乳房腺管癌を持つ31才女性の胸水から単離された細胞株から誘導した紡錘の形態を有する株)が含まれる。初代乳房上皮細胞系のHMECは健常乳房組織(Clonetics San Diego, CA)から得た。
【0360】
全ての培養細胞は供給業者の推奨事項に従ってケミカリーディファインド培養液で繁殖させ、70〜80%コンフルエントまで成長させてからRNA単離を行った。このマイクロアレイ実験で、5つのすべての乳癌細胞株(MCF7、 T-47D、Sk-BR-3、 MDA-mb-231および MDA-mb-435S) において、SEQ ID NO:38 の発現は、初代乳腺上皮細胞での発現の少なくとも2分の1に減少していることを示した。したがって、様々な実施様態でSEQ ID NO:38は下記の1つ以上の目的で使用することができる。すなわち、i)乳癌治療のモニタリング、ii)乳癌の診断アッセイ、そしてiii)乳癌の治療法そして/あるいは他の治療法の開発である。
【0361】
SEQ ID NO:38 はまた、特定の前立腺癌細胞株では健常前立腺上皮細胞に対して差次的発現を示すことがマイクロアレイ解析によって確認された。それらの前立腺癌細胞株にはCA-HPV-10、 DU 145、 LNCaP、 PC-3および MDAPCa2bがある。CA-HPV-7 は前立腺癌の63才男性の細胞に由来しており、HPV18 DNA.での形質移入によって形質転換された。DU 145 は広汎性転移性前立腺癌の69才男性の脳の転移部位から単離された。DU 145 はホルモンへの感受性は検出されず、半流動性培地でコロニーを形成し、酸性ホスファターゼに僅かに陽性であり、細胞は前立腺特異抗原(PSA)に陰性である。LNCaPは、転移前立腺癌の50才男性のリンパ節生検から単離された前立腺癌細胞株である。LNCaPはPSAを発現し、前立腺酸性ホスファターゼを産生し、アンドロゲン受容体を発現する。前立腺腺癌細胞株であるPC-3は、62才男性(グレード4の前立腺腺癌)の骨の転移部位から単離された。MDAPCa2b は63才男性の骨の転移部位から単離された前立腺腺癌細胞株である。MDAPCa2b細胞株はPSAとアンドロゲン受容体を発現し、アンドロゲンに感受性である。正常上皮細胞株であるPrECは初代前立腺上皮細胞株であり、或る正常ドナーから単離された。5つの前立腺癌細胞株の中、3つ (DU 145、 LNCaP、PC-3) において、SEQ ID NO:38 の発現は健常前立腺上皮細胞の細胞に較べて少なくとも2分の1に減少した。したがって、様々な実施様態でSEQ ID NO:38は下記の1つ以上の目的で使用することができる。すなわち、i)前立腺癌の治療のモニタリング、ii)前立腺癌の診断アッセイ、そしてiii)前立腺癌の治療法そして/あるいは他の治療法の開発である。
【0362】
例えばSEQ ID NO:38およびSEQ ID NO:43 はマイクロアレイ分析による判定で、毒性研究において差次的発現を示した。SEQ ID NO:43 の発現は1〜100 μM ベクロメタゾンで処理したC3A肝芽腫細胞では、未処理のC3A肝芽腫細胞に較べて少なくとも2倍増加した。ヒトC3A細胞株は、成長での、強力な接触阻害に関して選択されたHepG2/C3(肝臓腫瘍を患う15歳の男子から単離した肝臓癌細胞株)のクローン誘導体である。クローン集団の使用は、細胞の再現性を強化する。C3A細胞は、培養で初代ヒト肝細胞の多くの特徴を有する。つまり、i)インシュリン受容体とインシュリン様成長因子II受容体の発現、ii)αフェトプロテインと比較した血清アルブミンの高率分泌、iii)アンモニアの尿素とグルタミンへの転換、iv)芳香アミノ酸代謝、v)グルコースとインシュリンの無い培地での増殖、である。C3A細胞株は、成熟したヒト肝臓のin vitroモデルとして今や十分に確立されている(Mickelson 他(1995) Hepatology 22:866-875; Nagendra 他 (1997) Am J Physiol 272:G408-G416)。 C3A 細胞は1〜100 μM ベクロメタゾンで1時間、3時間、6時間処理し、未処理の細胞と較べた。さらに、SEQ ID NO:34 の発現は、プロゲステロン、ベクロメタゾン、メドロキシプロゲステロン、ブデソニド、プレドニゾン、デキサメタゾン、またはベタメタゾンで1時間、3時間または6時間処理した早期コンフルエントのC3A細胞では、未処理のC3A細胞に較べて少なくとも2倍増加した。さらに、SEQ ID NO:38 の発現は、プロゲステロン、ベクロメタゾン、メドロキシプロゲステロン、ブデソニド、プレドニゾン、デキサメタゾン、またはベタメタゾンで1時間、3時間または6時間処理した早期コンフルエントのC3A細胞では、未処理のC3A細胞に較べて少なくとも2分の1に減少した。肝臓代謝に対するステロイドの効果は薬物動態の理解において重要である。したがって、様々な実施様態でSEQ ID NO:34、SEQ ID NO:38およびSEQ ID NO:43 は下記の1つ以上の目的で使用することができる。Iすなわち、i)肝臓毒性、疾患および障害の治療のモニタリング、ii)肝臓毒性、疾患および障害の診断アッセイおよびiii)肝臓毒性、疾患および障害の治療法および/またはその他の治療法の開発、である。
【0363】
さらに、他の実施例において、SEQ ID NO:48 はヒト脳組織のある特定領域では、プールされた脳組織コントロールに較べて差次的に発現した。ヒト脳における領域特異的遺伝子発現の特徴を明らかにすることによって分子神経生物学研究一般の状況と背景がわかる。この知識によって脳構造と機能の遺伝子的基礎に関する洞察が得られうる。SEQ ID NO:48 の発現は、健常ヒト扁桃、嗅内皮質、脳組織では、コントロールとして用いた健常なヒトのプールされた脳組織に較べて、少なくとも2分の1に減少した。マイクロアッセイ技術を用いると、SEQ ID NO:48 が有意な差次的発現パターンを示し、また、さらに、神経疾患の診断マーカーまたは治療薬としての利用性が確立されることが、これらの実験によって示された。したがって、様々な実施様態でSEQ ID NO:48は下記の1つ以上の目的で使用することができる。すなわち、i)神経疾患の治療のモニタリング、ii)神経疾患の診断アッセイ、そしてiii)神経疾患の治療法そして/あるいは他の治療法の開発である。
【0364】
12 相補的ポリヌクレオチド TRICHをコードする配列或いはその任意の一部に対して相補的な配列は、天然のTRICHの発現を検出、低減または阻害するために用いられる。約15〜30塩基対を含むオリゴヌクレオチドの使用について記すが、これより小さなあるいは大きな配列の断片の場合でも、本質的に同じ手順を用いる。Oligo4.06ソフトウェア(National Biosciences)及びTRICHのコーディング配列を用いて、適切なオリゴヌクレオチドを設計する。転写を阻害するためには、最も独特な5'配列から相補的オリゴヌクレオチドを設計し、これを用いて、プロモーターがコーディング配列に結合するのを防止する。翻訳を阻害するためには、相補的なオリゴヌクレオチドを設計して、リボソームがTRICHをコードする転写物に結合するのを阻害する。
【0365】
13 TRICH の発現
TRICHの発現及び精製は、細菌若しくはウイルスを基にした発現系を用いて行うことができる。細菌でTRICHを発現させるためには、抗生物質耐性遺伝子と、cDNA転写レベルを高める誘導性のプロモーターとを含む好適なベクターにcDNAをサブクローニングする。このようなプロモーターとしては、lacオペレーター調節エレメントと併用するT5またはT7バクテリオファージプロモーター、およびtrp-lac(tac)ハイブリッドプロモーターが含まれるが、これらに限定するものではない。組換えベクターを、BL21(DE3)などの好適な細菌宿主に形質転換する。抗生物質耐性細菌は、イソプロピルβ−Dチオガラクトピラノシド(IPTG)で誘発されるとTRICHを発現する。真核細胞でのTRICHの発現は、昆虫細胞株または哺乳動物細胞株に一般にバキュロウイルスとして知られるAutographica californica核多角体病ウイルス(AcMNPV)の組換え型を感染させて行う。バキュロウイルスの非必須ポリヘドリン遺伝子を、相同組換え、或いはトランスファープラスミドの媒介を伴う細菌の媒介による遺伝子転移のどちらかによって、TRICHをコードするcDNAと置換する。ウイルスの感染力は維持され、強力なポリヘドリンプロモーターによって高レベルのcDNA転写が行われる。組換えバキュロウイルスは、多くの場合はSpodoptera frugiperda(Sf9)昆虫細胞への感染に用いられるが、ヒト肝細胞の感染にも用いられることもある。後者の感染の場合は、バキュロウイルスへの更なる遺伝的修飾が必要になる(Engelhard, E.K 他、(1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3224-3227、Sandig, V.他(1996) Hum.Gene Ther. 7:1937-1945)。
【0366】
殆どの発現系では、TRICHが、例えばグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)と、またはFLAGや6-Hisなどのペプチドエピトープ標識と合成された融合タンパク質となるため、未精製の細胞溶解物からの組換え融合タンパク質の親和性ベースの精製を素早く1回で行うことができる。GSTは日本住血吸虫からの26kDaの酵素であり、タンパク質の活性および抗原性を維持した状態で、固定化したグルタチオン上での融合タンパク質の精製を可能とする(Amersham Biosciences)。精製の後、GST部分を特定の操作部位でTRICHからタンパク分解的に切断できる。FLAGは8アミノ酸のペプチドであり、市販されているモノクローナルおよびポリクローナル抗FLAG抗体(Eastman Kodak)を用いた免疫親和性精製を可能にする。6ヒスチジン残基が連続して伸長した6-Hisは、金属キレート樹脂上での精製を可能にする(QIAGEN)。タンパク質の発現および精製の方法は、Ausubel他(前出、10および16章)に記載がある。これらの方法で得た精製TRICH を直接用いて以下の実施例17、18、19、および20の適用可能なアッセイを行うことができる。
【0367】
14 機能的アッセイ
TRICHの機能は、哺乳動物細胞培養系において生理学的に高められたレベルでの、TRICHをコードする配列の発現によって評価する。cDNAを、cDNAを高いレベルで発現する強いプロモーターを含む哺乳動物発現ベクターにサブクローニングする。選択されるベクターとしては、PCMV SPORT(Invitrogen, Carlsbad CA)およびPCR 3.1プラスミド(Invitrogen,)があり、どちらもサイトメガロウイルスプロモーターを持つ。リポソーム製剤あるいは電気穿孔法を用いて、5〜10μgの組換えベクターをヒト細胞株、例えば内皮由来または造血由来の細胞株に、一過的に形質移入する。更に、標識タンパク質をコードする配列を含む1〜2μgのプラスミドを同時に形質移入する。標識タンパク質の発現により、形質移入細胞と非形質移入細胞を区別する手段が与えられる。また、標識タンパク質の発現によって、cDNAの組換えベクターからの発現を正確に予想できる。標識タンパク質は、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP;Clontech)、CD64またはCD64-GFP融合タンパク質から選択できる。自動化された、レーザ光学に基づく技術であるフローサイトメトリー(FCM)を用いて、GFPまたはCD64-GFPを発現する形質移入された細胞を同定し、その細胞のアポトーシス状態や他の細胞特性を評価する。FCMは、細胞死に先行するか或いは同時に発生する現象を診断する蛍光分子の取込を検出して計量する。このような現象として挙げられるのは、ヨウ化プロピジウムによるDNA染色によって計測される核DNA含量の変化、前方散乱光と90°側方散乱光によって計測される細胞サイズと粒度の変化、ブロモデオキシウリジンの取込量の低下によって計測されるDNA合成の下方調節、特異抗体との反応性によって計測される細胞表面及び細胞内におけるタンパク質の発現の変容、及びフルオレセイン抱合したアネキシンVタンパク質の細胞表面への結合によって計測される原形質膜組成の変容とがある。フローサイトメトリー法については、Ormerod, M.G. (1994; Flow Cytometry, Oxford, New York NY)に記述がある。
【0368】
遺伝子発現に与えるTRICHの影響は、TRICHをコードする配列とCD64またはCD64-GFPのどちらかが形質移入された高度に精製された細胞集団を用いて評価することができる。CD64またはCD64-GFPは、形質移入された細胞表面で発現し、ヒト免疫グロブリンG(IgG)の保存された複数の領域に結合する。形質移入された細胞と形質移入されていない細胞とは、ヒトIgGかCD64に対する抗体のどちらかで被覆された磁気ビーズを用いて分離することができる(DYNAL. Lake Success. NY)。 mRNAは、当分野で周知の方法で細胞から精製することができる。 TRICH及び目的の他の遺伝子をコードするmRNAの発現は、ノーザン分析やマイクロアレイ技術で分析することができる。
【0369】
15 TRICH に特異的な抗体の作製
ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE;例えば、Harrington, M.G. (1990) Methods Enzymol. 182:488-495を参照)または他の精製技術で実質的に精製されたTRICHを用いて、標準的なプロトコルで動物(例えば、ウサギ、マウス等)を免疫化して抗体を作り出す。182:488-495を参照)または他の精製技術で行い、これを用いて標準的なプロトコルで動物(例えばウサギ、マウスなど)を免疫化して抗体を作り出す。
【0370】
或いは、レーザGENEソフトウェア(DNASTAR)を用いてTRICH アミノ酸配列を解析し、免疫原性の高い領域を決定する。そして対応するオリゴペプチドを合成し、このオリゴペプチドを用いて当業者によく知られている方法で抗体を生成する。例えばC末端付近或いは隣接する親水性領域等の、適切なエピトープの選択については、当分野で公知である(前出のAusubel 他、11章)。
【0371】
通常は、長さ約15残基のオリゴペプチドを、FMOC 化学法を用いるABI 431A ペプチドシンセサイザ(Applied Biosystems)を用いて合成し、N-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)を用いた反応によってKLH(Sigma-Aldrich, St. Louis MO)に結合させて、免疫原性を高める(前出のAusubel 他)。完全フロイントアジュバントにおいて、オリゴペプチド-KLH複合体を用いてウサギを免疫化する。得られた抗血清の抗ペプチド活性及び抗TRICH活性を検査するには、ペプチドまたはTRICHを基板に結合し、1%BSAを用いてブロッキング処理し、ウサギ抗血清と反応させて洗浄し、さらに放射性ヨウ素標識されたヤギ抗ウサギIgGと反応させる。
【0372】
16 特異的抗体を用いる天然 TRICH の精製
天然TRICH或いは組換えTRICHは、TRICHに特異的な抗体を用いたイムノアフィニティークロマトグラフィによって実質的に精製される。イムノアフィニティーカラムは、CNBr-活性化SEPHAROSE(Amersham Biosciences)のような活性化クロマトグラフィー用レジンと抗TRICH抗体とを共有結合させることにより形成する。結合後に、製造者の使用説明書に従ってこのレジンをブロックし、洗浄する。
【0373】
TRICHを含む培養液をイムノアフィニティーカラムに通し、TRICHを優先的に吸着できる条件で(例えば、界面活性剤の存在下において高イオン強度のバッファーで)そのカラムを洗浄する。そのカラムを、抗体とTRICHとの結合を切るような条件で(例えば、pH2〜3のバッファー、或いは高濃度の尿素またはチオシアン酸イオンのようなカオトロープで)溶出させ、TRICHを回収する。
【0374】
17 TRICH と相互作用する分子の同定
TRICHまたは生物学的に活性なその断片を、125I ボルトンハンター試薬で標識する(Bolton A.E.及びW.M. Hunter (1973) Biochem. J. 133:529)。マルチウェルプレートのウェルに予め配列しておいた候補の分子を、標識したTRICHと共にインキュベートし、洗浄して、標識されたTRICH複合体を有する全てのウェルをアッセイする。様々なTRICH濃度で得られたデータを用いて、候補分子と結合したTRICHの数量及び親和性、会合についての値を計算する。
【0375】
別法では、TRICH と相互作用する分子を、Fields, S.およびO. Song(1989, Nature 340:245-246)に記載の酵母2−ハイブリッドシステム(yeast two-hybrid system)や、MATCHMAKERシステム(Clontech)などの2−ハイブリッドシステムに基づいた市販のキットを用いて分析する。
【0376】
TRICHはまた、ハイスループット型の酵母2ハイブリッドシステムを使用するPATHCALLINGプロセス(CuraGen Corp., New Haven CT)に用いて、遺伝子の2大ライブラリによってコードされるタンパク質間の全ての相互作用を判定できる(Nandabalan, K. 他 (2000) U.S. Patent No. 6,057,101)。(2000) 米国特許第6,057,101号)。
【0377】
18 TRICH と相互作用する分子の同定
TRICHと相互作用する分子には、輸送体基質、アゴニスト若しくはアンタゴニスト、Gβγタンパク質(Reimann既出)のような調節性タンパク質、又はMAGUKs(Craven既出)の様なTRICHの局在化若しくはクラスター形成に関与するタンパク質が含まれる。TRICHまたは生物学的に活性であるTRICH断片を、125Iボルトンハンター試薬で標識する(例えば Bolton A.E.及びW.M. Hunter (1973) Biochem. J. 133:529-539を参照)。マルチウェルプレートのウェルに予め配列しておいた候補の分子を、標識したTRICHと共にインキュベートし、洗浄して、標識されたTRICH複合体を有する全てのウェルをアッセイする。様々なTRICH濃度で得られたデータを用いて、候補分子と結合したTRICHの数量及び親和性、会合についての値を計算する。
【0378】
別法では、TRICHと相互作用するタンパク質が、Fields, S.及びO. Song(1989, Nature 340:245-246)に記載の酵母2−ハイブリッドシステム(yeast 2-hybrid system)で単離される。TRICHもしくはその断片はGal4若しくはlexAのDNA結合ドメインを有する融合タンパク質として発現し、また潜在的な相互作用タンパク質は、活性化ドメインを有する融合タンパク質として発現する。TRICH融合タンパク質とTRICH相互作用タンパク質(活性化ドメインを有する融合タンパク質)間の相互作用は、レポーター遺伝子の発現によって観察されるトランス活性化機能を元に戻す。酵母2−ハイブリッドシステムは商業的に利用可能であり、イオンチャネルタンパク質を有する酵母2−ハイブリッドシステムの使用方法は、 Niethammer, M. およびM. Sheng(1998, Meth. Enzymol. 293:104-122)に記載されている。
【0379】
TRICHはまた、ハイスループット型の酵母2ハイブリッドシステムを使用するPATHCALLINGプロセス(CuraGen Corp., New Haven CT)に用いて、遺伝子の2大ライブラリによってコードされるタンパク質間の全ての相互作用を判定できる(Nandabalan, K. 他 (2000) U.S. Patent No. 6,057,101)。(2000) 米国特許第6,057,101号)。
【0380】
潜在的なTRICHアゴニスト若しくはアンタゴニストは、実施例18に記載のアッセイを用いてTRICHイオンチャネル活性の活性化若しくは阻害について試験されうる。
【0381】
19 TRICH 活性の実証
TRICHのイオンチャネル活性は、イオンコンダクタンスの電気生理学的アッセイを用いて実証される。TRICHは、TRICHをコードする真核生物発現ベクターで、COS7、HeLa、若しくはCHOのようなほ乳類株化細胞を形質転換することによって発現され得る。真核生物発現ベクターは市販されており、それらを細胞内に導入する技術は当業者には周知である。 β−ガラクトシダーゼのような多数の標識遺伝子いずれか一つを発現させる第二のプラスミドが細胞へと同時形質転換され、外来DNAを取り込み発現させるそれら細胞の迅速な同定を可能とする。細胞は、形質転換の後、株化細胞がTRICH及びβ−ガラクトシダーゼを発現し蓄積するのに適した条件下で、48〜72時間に渡ってインキュベートされる。
【0382】
β−ガラクトシダーゼを発現させる形質転換細胞は、好適な比色用基質が本技術分野で公知の条件下で培地へ添加されると、青く染色される。染色された細胞は、本技術分野で既知の電気生理学技術を用いて膜電気伝導度の違いを試験される。形質転換されていない細胞、及び/又はベクター配列だけ、若しくはβ−ガラクトシダーゼ配列だけのいずれかで形質転換された細胞は、対照として用いられ、並行に試験される。TRICHを発現する細胞は、対照細胞よりも高いアニオンコンダクタンス、若しくはカチオンコンダクタンスを有することとなる。TRICHの伝導度への寄与は、TRICHに特異的な抗体を用いて細胞をインキュベーションすることによって確認できる。抗体は、TRICHの細胞外側面に結合し、それによってイオンチャネル内の孔とそれに伴うコンダクタンスをブロッキングする。
【0383】
別法では、TRICHのイオンチャネル活性は、二電極電位クランプ技術(Ishi 他 前出、Jegla, T.及びL. Salkoff (1997) J. Neurosci. 17 : 32-44)を用いて、TRICH含有アフリカツメガエル卵母細胞膜を通る電流として測定される。TRICHは、pBFのような適切なアフリカツメガエル卵母細胞発現ベクターへとサブクローニングされ、また0.5〜5ngのmRNAが成熟段階4の卵母細胞へ注入される。注入された卵母細胞は摂氏18度で1−5日間インキュベートされる。インサイド‐アウトマクロパッチが切り取られて、116mMのK-グルコン酸、4mMのKC1、および10 mMのHepes (pH 7.2)を含む細胞内溶液へと移される。細胞内溶液には、cAMP、cGMP、またはCa+2 (CaCl2の形態)のような様々な濃度のTRICH媒介物質が適切に補充される。電極の抵抗は2〜5MΩにセットされ、電極は媒介物質のない細胞内溶液で満たされる。実験は、室温で0mVの保持電位から実行される。-100mVから100mVまでの電圧ランプ(voltage ramps) (2.5 秒)が、サンプリング周波数500Hzで得られる。測定される電流はアッセイに於けるTRICHの活性に比例する。
【0384】
TRICHの変換活性は、アフリカツメガエル卵母細胞への標識された基質の取り込みによって検査される。ステージ5及び6における卵母細胞を、TRICH mRNA (卵母細胞あたり10 ng)で注入し、OR2培地(82.5mMのNaCl、2.5mMのKC1、1mMのCaCl2、1mMのMgCl2、1mM Na2HPO4、5mMのHepes、3.8mMのNaOH、50μg/ml ゲンタマイシン、pH7.8)内で18℃で3日間インキュベートし、TRICHを発現させる。卵母細胞は、次に標準取り込み培地(100mMのNaCl、2mMのKC1、1mMのCaCl2、1mMのMgCl2、10mMのHepes/Tris、pH7.5)へと移される。様々な基質(例えばアミノ酸、糖、薬剤、イオン、及び神経伝達物質)の取り込みは、標識された基質(例えば3Hで放射標識されていたり、ローダミンで蛍光標識されている)を添加することで開始される。30分間のインキュベートの後、取り込みは、卵母細胞を3回、Na+のない培養液で洗浄することで終了し、取り込まれた標識を測定して、対照と比較する。TRICH活性は、内部移行された標識基質のレベルに比例する。
【0385】
TRICHに関連するATPase活性は、放射性ラベルされたATP-[γ-32P]の加水分解、クロマトグラフィー法による加水分解生成物の分離、及び、シンチレーションカウンターを用いる回収した32Pの定量化によって測定できる。反応混合物は、ATP-[γ-32P]と、好適な時間をかけて摂氏37度でインキュベートされた好適なバッファ中の様々な量のTRICHとを有する。反応は、トリクロロ酢酸での沈殿によって終了し、次に塩基で中和され、反応混合物のアリコットは、反応産物を分離するべく、膜若しくはろ紙ベースのクロマトグラフィーにかけられる。遊離された32Pの量は、シンチレーション計数器でカウントされる。このアッセイでは、回収した放射活性の量がTRICHのATP分解酵素活性に比例する。
【0386】
TRICHのlipocalin活性はリガンド蛍光エンハンスメント分光蛍光分析によって測定される(Lin 他 (1997) Molecular Vision 3:17)。リガンドの例としては、レチノール (Sigma, St. Louis MO) および 16-アントリルオキシ パルミチン酸(anthryloxy-palmitic acid)(16-AP) (Molecular Probes Inc., Eugene OR)を含む。リガンドは100%エタノールに溶解され、濃度は既知の吸光係数(レチノール: 46,000 A/M/cm @ 325 nm; 16-AP: 8,200 A/M/cm @ 361 nm)を使って推測される。10 mM Tris (pH 7.5)、2 mM EDTAおよび500 mM NaCl 溶液中に溶かした1μM TRICH の700μl アリコットを光路長1 cm の石英キュベットに入れ、1μl アリコットのリガンド溶液を加える。蛍光の測定は、それぞれの添加の100秒後に、読みが安定するまで行う。リガンド濃度の単位変化あたりの蛍光の変化がTRICHの活性に比例する。
【0387】
20 TRICH アゴニスト及びアンタゴニストの同定
TRICHは、CHO(チャイニーズハムスターの卵巣)またはHEK (ヒト胎児腎臓) 293のような真核細胞株内で発現する。形質転換細胞のイオンチャネル活性は、候補アゴニスト又は候補アンタゴニストの存在若しくは不在条件下で測定される。イオンチャネル活性は本技術分野で公知のパッチクランプ法を用いて、または実施例18に記載のように検定される。別法では、イオンチャネル活性が、細胞膜を通るイオンの流れを測定する蛍光技術を用い検定される(Velicelebi, G.他 (1999) Meth. Enzymol. 294:20-47、West, M. R.及びC. R. Molloy (1996) Anal. Biochem. 241:51-58)。 (1999) Meth. Enzymol. 294:20-47; West, M.R. and C.R. Molloy (1996) Anal. Biochem. 241:51-58).これらアッセイは、マイクロプレートを用いる高処理のスクリーニングに適合されうる。内部イオン濃度の変化は、Ca2+ 指示薬Fluo-4 AM、SBFI及びナトリウムグリーンのようなナトリウム感受性色素、またはCl指示薬MQAE (すべてMolecular Probes社より入手可能) のような蛍光色素を用い、FLIPR蛍光定量プレートリーディングシステム(Molecular Device社)と併せて測定される。アッセイのさらに一般的な別法では、原形質膜を通るイオンの流れによって生じる膜電位の変化は、DiBAC4(Molecular Probes)のようなoxonyl色素を用いて測定される。DiBAC4は、細胞膜電位に従って細胞外溶液と細胞部位との間で平衡となる。色素の蛍光強度は、疎水性の細胞内部位に結合すると20倍に大きくなり、細胞内へのDiBAC4の流入が検出可能となる(Gonzalez, J. E.及び P. A. Negulescu (1998) Curr. Opin. Biotechnol. 9:624-631)。候補アゴニスト若しくはアンタゴニストは、既知のイオンチャネルアゴニスト若しくはアンタゴニスト、ペプチドライブラリ、若しくは組み合わせの化学ライブラリより選択されてもよい。
【0388】
当業者には、本発明の要旨および精神から逸脱しない範囲での、本発明の記載した組成物、方法およびシステムの種々の修正および変更の手段は自明であろう。本発明が新規であり、有用なタンパク質およびそのコードするポリヌクレオチドを提供することは高く評価されるであろう。また、これらは薬物発見および疾患および症状の検出、診断および治療にこれらの組成物を使用する方法に用いられ得る。本発明について説明するにあたり幾つかの実施例に関連して説明を行ったが、本発明の請求の範囲が、そのような特定の実施例に不当に制限されるべきではないことを理解されたい。また、本発明をこのような実施態様の説明によって、開示した形態だけに網羅されるか、あるいは、制限されるものと見なされるべきでもない。さらに、一実施態様の要素は他の実施態様の一つ以上の要素と容易に組み合わされ得る。このような組合わせによって本発明の範囲内で多数の実施態様が形成され得る。本発明の範囲は下記の請求項およびそれに相当するものによって定義することを意図するものである。
【0389】
(表の簡単な説明)
表1は、本発明の完全長ポリヌクレオチドおよびポリペプチド実施様態の命名の概略である。
【0390】
表2は、本発明のポリペプチド実施例のGenBank識別番号と、最も近いGenBank相同体の注釈(annotation)と、PROTEOMEデータベース識別番号と、PROTEOMEデータベース相同体群の注釈とを示す。各ポリペプチドとそのGenBank相同体が一致する確率スコアも併せて示す。
【0391】
表3は、予測されるモチーフ及びドメインを含む本発明のポリペプチド実施様態の構造的特徴を、ポリペプチドの分析に用いるための方法、アルゴリズム及び検索可能なデータベースと共に示す。
【0392】
表4は、ポリヌクレオチド実施様態をアセンブリするために用いたcDNAやゲノムDNA断片を、ポリヌクレオチドの選択した断片と共に示す。
【0393】
表5は、ポリヌクレオチド実施様態の代表的なcDNAライブラリを示す。
【0394】
表6は、表5に示したcDNAライブラリの作製に用いた組織及びベクターを説明する付表である。
【0395】
表7は、ポリヌクレオチドとポリペプチドの分析に用いたツール、プログラム、アルゴリズムを、適用可能な説明、引用文献及び閾値パラメータと共に示す。
【0396】
表8は、本発明のポリヌクレオチド配列に見られる一塩基多型を、種々のヒト集団での対立遺伝子(アレル)頻度と共に示す。
【0397】
【表1−1】
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【0398】
【表1−2】
Figure 2005503790
【0399】
【表2−1】
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【0400】
【表2−2】
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【0401】
【表2−3】
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【0402】
【表2−4】
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【0403】
【表2−5】
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【0404】
【表2−6】
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【0405】
【表2−7】
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【0406】
【表2−8】
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【0407】
【表2−9】
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【0408】
【表2−10】
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【0409】
【表2−11】
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【0410】
【表2−12】
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【0411】
【表2−13】
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【0412】
【表2−14】
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【0413】
【表3−1】
Figure 2005503790
【0414】
【表3−2】
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【0415】
【表3−3】
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【0416】
【表3−4】
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【0417】
【表3−5】
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【0418】
【表3−6】
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【0419】
【表3−7】
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【0420】
【表3−8】
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【0421】
【表3−9】
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【0422】
【表3−10】
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【0423】
【表3−11】
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【0424】
【表3−12】
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【0425】
【表3−13】
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【0426】
【表3−14】
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【0427】
【表3−15】
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【0428】
【表3−16】
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【0429】
【表3−17】
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【0430】
【表3−18】
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【0431】
【表3−19】
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【0432】
【表3−20】
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【0433】
【表3−21】
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【0434】
【表3−22】
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【0435】
【表3−23】
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【0436】
【表4−1】
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【0437】
【表4−2】
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【0438】
【表4−3】
Figure 2005503790
【0439】
【表4−4】
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【0440】
【表4−5】
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【0441】
【表4−6】
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【0442】
【表4−7】
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【0443】
【表4−8】
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【0444】
【表4−9】
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【0445】
【表4−10】
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【0446】
【表4−11】
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【0447】
【表4−12】
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【0448】
【表4−13】
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【0449】
【表4−14】
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【0450】
【表5】
Figure 2005503790
【0451】
【表6−1】
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【0452】
【表6−2】
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【0453】
【表6−3】
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【0454】
【表6−4】
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【0455】
【表6−5】
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【0456】
【表7−1】
Figure 2005503790
【0457】
【表7−2】
Figure 2005503790
【0458】
【表8】
Figure 2005503790

Claims (107)

  1. 以下の(a)乃至(g)からなる群から選択した単離されたポリペプチド。
    (a)SEQ ID NO:1-26(配列番号1乃至26)からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチド
    (b)SEQ ID NO:1-8、11、14-18、20、 22-23および 25-26,からなる群から選択したアミノ酸配列と少なくとも90%が同一であるような天然のアミノ酸配列を含むポリペプチド。
    (c)SEQ ID NO:9、およびSEQ ID NO:21からなる群から選択した或るアミノ酸配列に対して少なくとも93%が同一であるような天然アミノ酸配列を含むポリペプチド
    (d)SEQ ID NO:24のアミノ酸配列と少なくとも96%が同一であるような天然のアミノ酸配列を有するポリペプチド
    (e)SEQ ID NO:19のアミノ酸配列に対して少なくとも99%が同一であるような天然アミノ酸配列を含むポリペプチド
    (f)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的活性断片、および
    (g)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドの免疫原性断片。
  2. SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離されたポリペプチド。
  3. 請求項1に記載のポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
  4. 請求項2に記載のポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
  5. SEQ ID NO:27-52からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含む、請求項4に記載の単離されたポリヌクレオチド。
  6. 請求項3に記載のポリヌクレオチドに機能的に連結したプロモーター配列を含む組換えポリヌクレオチド。
  7. 請求項6に記載の組換えポリヌクレオチドを用いて形質転換した細胞。
  8. 請求項6に記載の組換えポリヌクレオチドを含む遺伝形質転換体。
  9. 請求項1のポリペプチドを生産する方法であって、
    (a)前記ポリペプチドの発現に好適な条件下で、請求項1のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに機能的に連結したプロモーター配列を含む組換えポリヌクレオチドで形質転換される細胞を培養する過程と、
    (b)そのように発現した前記ポリペプチドを回収する過程とからなる方法。
  10. 前記ポリペプチドが、SEQ ID NO:1-26からなる群から選択した或るアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
  11. 請求項1に記載のポリペプチドと特異的に結合する単離された抗体。
  12. 以下の(a)乃至(i)からなる群から選択した単離されたポリヌクレオチド。
    (a)SEQ ID NO:27-52からなる群から選択したポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド
    (b)SEQ ID NO:27-44、 SEQ ID NO:46-47、 SEQ ID NO:49およびSEQ ID NO:51-52,からなる群から選択した或るポリヌクレオチド配列に対して少なくとも90%が同一であるような天然ポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド
    (c)SEQ ID NO:48のポリヌクレオチド配列に対して少なくとも92%が同一であるような天然ポリヌクレオチド配列を持つポリヌクレオチド
    (d)SEQ ID NO:45のポリヌクレオチド配列に対して少なくとも99%が同一であるような天然ポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド
    (e)SEQ ID NO:50のポリヌクレオチド配列に対して少なくとも90%が同一であるような天然ポリヌクレオチド配列を実質的に有するポリヌクレオチド
    (f)(a)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド
    (g)(b)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド
    (h)(c)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド
    (i)(d)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド
    (j)(e)のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチド、および
    (k)(a)〜(j)のRNA等価物
  13. 請求項12に記載のポリヌクレオチドの少なくとも60の連続したヌクレオチドを含む単離されたポリヌクレオチド。
  14. 請求項12に記載のポリヌクレオチドの配列を有する標的ポリヌクレオチドをサンプル中から検出する方法であって、
    (a)前記サンプル中の前記標的ポリヌクレオチドに相補的な配列を持つ少なくとも20の連続したヌクレオチドを持つプローブを用いて前記サンプルをハイブリダイズする過程と、
    (b)前記ハイブリダイゼーション複合体の有無を検出し、該複合体が存在する場合にはオプションでその量を検出する過程とを含む方法。
  15. 前記プローブが少なくとも60の連続したヌクレオチドを含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
  16. 請求項12に記載のポリヌクレオチドの配列を有する標的ポリヌクレオチドをサンプル中から検出する方法であって、
    (a)ポリメラーゼ連鎖反応増幅を用いて前記標的ポリヌクレオチドまたはその断片を増幅する過程と、
    (b)前記の増幅した標的ポリヌクレオチドまたはその断片の有無を検出し、該標的ポリヌクレオチドまたはその断片が存在する場合にはオプションでその量を検出する過程を含むことを特徴とする方法。
  17. 請求項1に記載のポリペプチドと、薬剤として許容できる賦形剤とを含む組成物。
  18. 前記ポリペプチドが、SEQ ID NO:1-26からなる群から選択されたアミノ酸配列を持つことを特徴とする、請求項17の組成物。
  19. 機能的なTRICHの発現の低下に関連する疾患や病態の治療方法であって、そのような治療が必要な患者に請求項17に記載の組成物を投与することを含むことを特徴とする治療方法。
  20. 請求項1のポリペプチドのアゴニストとしての有効性を確認するために化合物をスクリーニングする方法であって、
    (a)請求項1のポリペプチドを含むサンプルを化合物に曝すステップと、
    (b)前記サンプルにおいてアゴニスト活性を検出する過程を含むことを特徴とする方法。
  21. 請求項20に記載の方法によって同定したアゴニスト化合物と、薬剤として許容できる賦形剤とを含むことを特徴とする組成物。
  22. 機能的なTRICHの発現の低下に関連する疾患や病態の治療方法であって、そのような治療が必要な患者に請求項21に記載の組成物を投与することを含むことを特徴とする治療方法。
  23. 請求項1に記載のポリペプチドのアンタゴニストとして有効性を確認するために化合物をスクリーニングする方法であって、
    (a)請求項1のポリペプチドを含むサンプルを化合物に曝すステップと、
    (b)前記サンプルにおいてアンタゴニスト活性を検出する過程とを含むことを特徴とする方法。
  24. 請求項23に記載の方法によって同定したアンタゴニスト化合物と、薬剤として許容できる賦形剤とを含む組成物。
  25. 機能的TRICHの過剰発現に関連する疾患や病態の治療方法であって、そのような治療が必要な患者に請求項24の組成物を投与することを含むことを特徴とする治療方法。
  26. 請求項1のポリペプチドに特異結合する化合物をスクリーニングする方法であって、
    (a)請求項1のポリペプチドを適切な条件下で少なくとも1つの試験化合物と混合する過程と、
    (b)請求項1のポリペプチドの試験化合物との結合を検出し、それによって請求項1のポリペプチドに特異結合する化合物を同定する過程を含む方法。
  27. 請求項1に記載のポリペプチドの活性を調節する化合物をスクリーニングする方法であって、
    (a)請求項1のポリペプチドの活性が許容される条件下で、請求項1のポリペプチドを少なくとも1つの試験化合物と混合する過程と、
    (b)請求項1に記載のポリペプチドの活性を試験化合物の存在下で算定する過程と、
    (c)試験化合物の存在下での請求項1に記載のポリペプチドの活性を、試験化合物の不存在下での請求項1に記載のポリペプチドの活性と比較する過程を含み、試験化合物の存在下での請求項1に記載のポリペプチドの活性の変化が、請求項1に記載のポリペプチドの活性を調節する化合物を標示することを特徴とする方法。
  28. 請求項5の配列を持つ標的ポリヌクレオチドの発現を改変するのに効果的な化合物をスクリーニングする方法であって、
    (a)前記標的ポリヌクレオチドの発現に好適な条件下で、該標的ポリヌクレオチドを含むサンプルを化合物に曝露する過程と、
    (b)前記標的ポリヌクレオチドの発現改変を検出する過程と、
    (c)可変量の前記化合物の存在下と前記化合物の不存在下で、前記標的ポリヌクレオチドの発現を比較する過程とを含むことを特徴とする方法。
  29. 試験化合物の毒性を算定する方法であって、
    (a)核酸を含む生物学的サンプルを前記試験化合物で処理する過程と、
    (b)処理した前記生物学的サンプルの核酸と、請求項12のポリヌクレオチドの少なくとも20の連続するヌクレオチドを持つプローブをハイブリダイズさせる過程であって、このハイブリダイゼーションゼーションが、前記プローブと前記生物学的サンプル中の標的ポリヌクレオチドとの間で特異的なハイブリダイゼーション複合体が形成される条件下で行われ、前記標的ポリヌクレオチドが、請求項12のポリヌクレオチドまたはその断片のポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドである、前記過程と、
    (c)ハイブリダイゼーション複合体の収量を定量する過程と、
    (d)前記処理された生物学的サンプル中のハイブリタイゼーション複合体の量を、処理されていない生物学的サンプル中のハイブリタイゼーション複合体の量と比較する過程とを含み、前記処理された生物学的サンプル中のハイブリタイゼーション複合体の量の差が、前記試験化合物の毒性を標示するような方法。
  30. 生物学的サンプル中のTRICHの発現に関連する症状または疾患に対する診断試験法であって、
    (a)前記生物学的サンプルと請求項11の抗体との混合を、前記抗体が前記ポリペプチドに結合し、抗体とポリペプチドとの複合体を形成するのに適した条件下で行う過程と、
    (b)前記複合体を検出する過程とを含み、前記複合体の存在が、前記生物学的サンプル中の前記ポリペプチドの存在と相関することを特徴とする方法。
  31. 請求項11に記載の抗体であって、
    (a)キメラ抗体
    (b)単鎖抗体
    (c)Fab断片
    (d)F(ab')2 断片
    (e)ヒト化抗体のいずれかである抗体。
  32. 請求項11に記載の抗体と、許容できる賦形剤とを含む組成物。
  33. 被検者のTRICHの発現に関連する病状又は疾患の診断方法であって、請求項32に記載の化合物の有効量を前記被検者に投与する過程を含むことを特徴とする方法。
  34. 前記抗体が標識されることを特徴とする請求項32に記載の組成物。
  35. 被検者のTRICHの発現に関連する病状又は疾患の診断方法であって、請求項34に記載の化合物の有効量を前記被検者に投与する過程を含むことを特徴とする方法。
  36. 請求項11に記載の抗体の特異性を有するポリクローナル抗体を調製する方法であって、
    (a)抗体反応を誘発する条件下で、SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列またはその免疫原性断片を含むポリペプチドを用いて動物を免疫化する過程と、
    (b)前記動物から抗体を単離する過程と、
    (c)前記単離された抗体を前記ポリペプチドでスクリーニングし、それによって、SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異結合するポリクローナル抗体を同定する過程とを含むような方法。
  37. 請求項36の方法で産生したポリクローナル抗体。
  38. 請求項37のポリクローナル抗体と好適なキャリアとを有する組成物。
  39. 請求項11に記載の抗体の特異性を有するモノクローナル抗体を作製する方法であって、
    (a)抗体反応を誘発する条件下で、SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列またはその免疫原性断片を含むポリペプチドを用いて動物を免疫化する過程と、
    (b)前記動物から抗体産出細胞を単離する過程と、
    (c)前記抗体産出細胞と不死化した細胞とを融合して、モノクローナル抗体を産出するハイブリドーマ細胞を形成する過程と、
    (d)前記ハイブリドーマ細胞を培養する過程と、
    (e)SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異結合するようなモノクローナル抗体を前記培養物から単離する過程とを含むことを特徴とする方法。
  40. 請求項39に記載の方法で産出したモノクローナル抗体。
  41. 請求項40に記載のモノクローナル抗体と適切なキャリアとを含む組成物。
  42. Fab発現ライブラリをスクリーニングすることにより産出されることを特徴とする請求項11に記載の抗体。
  43. 組換え免疫グロブリンライブラリのスクリーニングにより前記抗体を産出することを特徴とする請求項11に記載の抗体。
  44. SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドをサンプル中に検出する方法であって、
    (a)請求項11に記載の抗体と前記ポリペプチドとの特異結合を許容する条件下で、前記抗体と1サンプルとをインキュベートする過程と、
    (b)特異結合を検出する過程とを含み、該特異結合が、SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドがサンプル中に存在することを標示することを特徴とする方法。
  45. SEQ ID NO:1-26 からなる群から選択したアミノ酸配列を有するポリペプチドを精製する方法であって、
    (a)請求項11に記載の抗体と前記ポリペプチドとの特異結合を許容する条件下で、前記抗体と1サンプルとをインキュベートする過程と、
    (b)前記サンプルから前記抗体を分離し、SEQ ID NO:1-26からなる群から選択したアミノ酸配列を含む精製ポリペプチドを得る過程とを含むことを特徴とする方法。
  46. マイクロアレイの少なくとも1つのエレメントが請求項13に記載のポリヌクレオチドであることを特徴とするマイクロアレイ。
  47. ポリヌクレオチドを含むサンプルの発現プロファイルを作製する方法であって、
    (a)サンプル中のポリヌクレオチドを標識化する過程
    (b)ハイブリダイゼーション複合体が形成されるのに適した条件下で請求項46のマイクロアレイのエレメントとサンプル中の標識化ポリヌクレオチドとを接触させる過程と、
    (c)サンプル中のポリヌクレオチドの発現を定量する過程を含む方法
  48. 或る固体基板上の固有の物理的位置に付着された種々のヌクレオチド分子を有するアレイであって、少なくとも1つの前記ヌクレオチド分子が、或る標的ポリヌクレオチドの少なくとも30の連続したヌクレオチド群と特異的にハイブリダイズ可能な最初のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列を有し、前記の標的ポリヌクレオチドが請求項12に記載のポリヌクレオチドであることを特徴とするアレイ。
  49. 請求項48に記載のアレイで、前記の最初のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの配列が前記の標的ポリヌクレオチドの少なくとも30の連続したヌクレオチドに完全に相補的であることを特徴とするアレイ。
  50. 請求項48に記載のアレイで、前記の最初のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの配列が前記の標的ポリヌクレオチドの少なくとも60の連続したヌクレオチドに完全に相補的であることを特徴とするアレイ。
  51. 請求項48に記載のアレイで、前記のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの最初の配列が前記の標的ポリヌクレオチドに完全に相補的であることを特徴とするアレイ。
  52. 請求項48に記載のアレイで、マイクロアレイであることを特徴とするアレイ。
  53. 請求項48に記載のアレイで、前記のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの最初の配列を有する或るヌクレオチド分子にハイブリダイズした前記の標的ポリヌクレオチドを更に有することを特徴とするアレイ。
  54. 請求項48に記載のアレイで、或るリンカーが前記のヌクレオチド分子の少なくとも1つと前記の固体基板とを連結していることを特徴とするアレイ。
  55. 請求項48に記載のアレイで、該基板上の固有の物理的位置の各々が複数のヌクレオチド分子を含み、任意の単一の固有の物理的位置でのその複数のヌクレオチド分子は同一の配列を有し、該基板上の固有の物理的位置の各々は、該基板上の別の固有の物理的位置でのヌクレオチド分子群の配列とは異なる或る配列を有するヌクレオチド分子群を含むことを特徴とするアレイ。
  56. SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  57. SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  58. SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  59. SEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  60. SEQ ID NO:5のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  61. SEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  62. SEQ ID NO:7のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  63. SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  64. SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  65. SEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  66. SEQ ID NO:11のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  67. SEQ ID NO:12のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  68. SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  69. SEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  70. SEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  71. SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  72. SEQ ID NO:17のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  73. SEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  74. SEQ ID NO:19のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  75. SEQ ID NO:20のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  76. SEQ ID NO:21のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  77. SEQ ID NO:22のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  78. SEQ ID NO:23のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  79. SEQ ID NO:24のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  80. SEQ ID NO:25のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  81. SEQ ID NO:26のアミノ酸配列を含む請求項1に記載のポリペプチド。
  82. SEQ ID NO:27のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  83. SEQ ID NO:28のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  84. SEQ ID NO:29のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  85. SEQ ID NO:30のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  86. SEQ ID NO:31のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  87. SEQ ID NO:32のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  88. SEQ ID NO:33のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  89. SEQ ID NO:34のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  90. SEQ ID NO:35のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  91. SEQ ID NO:36のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  92. SEQ ID NO:37のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  93. SEQ ID NO:38のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  94. SEQ ID NO:39のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  95. SEQ ID NO:40のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  96. SEQ ID NO:41のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  97. SEQ ID NO:42のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  98. SEQ ID NO:43のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  99. SEQ ID NO:44のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  100. SEQ ID NO:45のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  101. SEQ ID NO:46のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  102. SEQ ID NO:47のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  103. SEQ ID NO:48のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  104. SEQ ID NO:49のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  105. SEQ ID NO:50のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  106. SEQ ID NO:51のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
  107. SEQ ID NO:52のポリヌクレオチド配列を含む請求項12に記載のポリヌクレオチド。
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