JP2005507232A - 予め選抜されたイムノタイプおよび/またはジェノタイプを有するホモ接合性幹細胞群の製造方法、該細胞由来の移植に適切な細胞、並びにこれらを用いた材料および方法 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
本出願は、2001年1月2日に出願された、米国仮出願第60/258,881号の利益を主張する。
【0002】
I.発明の分野
本発明は、ドナーのホモ接合性の減数分裂I後の二倍体生殖細胞からイムノタイプおよび/またはジェノタイプで予め選抜された相同な一連のホモ接合性幹(HS)細胞の製造方法に関する。本発明はさらに、診断、治療的および美容的移植、細胞置換および/または遺伝子治療、並びに種々の遺伝性疾患、神経変性疾患、外傷性損傷、および癌の治療のためのこのような組織適合性HS細胞の使用方法に関する。
【0003】
本発明はさらに、診断的、治療的および美容的移植(損傷および火傷の修復のための皮膚移植、損傷四肢の再構築における使用のための骨、軟骨および腱の置換、並びに耳、鼻、唇、および頭皮の修復を含むがこれに限定されない)、細胞置換および/または遺伝子治療、並びに、神経変性疾患、外傷性損傷、および癌を含むがこれに限定されない、種々の遺伝的疾患の治療を含むがこれに限定されない、予防的および治療的介入のための、非疾患性ジェノタイプで予め選抜された組織適合性HS細胞の使用方法に関する。
【0004】
さらに、本発明は、前駆細胞、および他の分化細胞、細胞塊または組織タイプを作製するために、ジェノタイプ(genotyped)および/またはHLA−タイプ(HLA−typed)(「イムノタイプ(immunotyped)」)されたHS細胞を分化させる方法に関する。
【0005】
最後に、本発明は、診断、治療および/または移植のための細胞の、不断の、信頼できる、包括的な供給のための、各HS細胞系が独自のHLAハプロイトプについてホモ接合性であり、このようなハプロタイプのHLA成分を有するいずれの個体とも組織適合性である、複数のドナーからのHS細胞系の、分類された移植組織(transplant)の寄託を提供する方法に関する。
【0006】
さらに、本出願に記載されている方法は、いずれもここに参照により組み込まれる、2000年11月30日に出願された米国仮出願第60/253,943号の利益を主張して、2001年11月30日に出願された、「単離されたホモ接合性幹細胞、それ由来の分化細胞、およびこれらの作製および使用方法」という表題の米国特許出願第09/997,240号に開示されている材料および方法と組み合わせると有用である。
【背景技術】
【0007】
II.発明の背景
一の個体から他の個体への組織移植は、拒絶の危険がある。危険の程度は、ドナー(donor)およびレシピエント(recipient)の細胞の表面上に発現している特定の遺伝子産物、抗原間の不一致の程度に比例する。移植の成功を保証するため、ドナー組織は、レシピエント組織と免疫組織学的に適合性(immunohistologically compatible)でなければならない、すなわち、ドナーおよびレシピエント組織は適合(matched)していなければならない。適合は、ドナー組織が「自己」抗原を発現している場合に達成される。次いでレシピエントからのT細胞はドナー組織を「自己」であると認識し、それに対する免疫応答を形成しないだろう。
【0008】
研究されている全ての哺乳動物種において、最も強い移植抗原をコードする単一の遺伝子座が存在する。これは、主要組織適合複合体(MHC)として知られている。ヒト白血球抗原(HLA)は、ヒトのMHCに対応するものの遺伝的な呼称である。HLAは、免疫応答を高度に特異的な方法で制限し、それによって調節している。HLAによりコードされる分子は、外来微生物抗原に結合し、個体自身のT細胞に対して提示する。実際、外来抗原は、個体自身のHLA分子の面で提示されると、個体のT細胞によってのみ認識されうる。これによって、HLA分子は、T細胞受容体、外来微生物抗原、および自己HLA分子からなる三分子複合体に関与する。
【0009】
移植においては、非自己HLA抗原を発現しているドナー組織は、細胞障害性T細胞により確実に殺傷される。組織移植片は、自己HLA分子とたった一アミノ酸異なるHLA分子に基づいて拒絶されうる。このような拒絶の主な理由は、非自己HLA分子が、自己HLA分子によって認識されない多くのペプチドを認識してこれと複合体を形成するということであると考えられている。T細胞はこれらの非自己HLA−ペプチド複合体に非寛容であり、非自己HLA分子の示差的特徴(distinctive feature)に対して結合しうる。
【0010】
したがって、ドナーおよびレシピエントの組織をHLAで適合させると、レシピエントにおける細胞障害性T細胞応答の機会が減少し、これによって移植組織の生存の機会が増大する。しかしながら、移植のためには適合そのものにより問題が生じる。第一に、HLA分子には二つのクラス、クラスIおよびIIがある。第二に、各HLAクラスには種々の遺伝子があり、これらの遺伝子は各々多くのアレル(allele)を有している(すなわち、HLAは多型である)。HLAは個体に対し多様な免疫応答の可能性を提供する一方で、HLAによりドナー−レシピエント適合の達成が困難となるため、ある個体から他の個体への移植は困難な課題となっている。
【0011】
ヒトにおいては、クラスI HLA分子には3つの遺伝子、HLA−A、HLA−B、およびHLA−Cwがあり、クラスII HLA分子には3つの遺伝子、HLA−DR、−DP、および−DQがある。さらに、HLA遺伝子は多型である。22の異なるHLA−Aアレル、42の異なる−Bアレル、9の異なる−Cwアレル、および18の異なる−DRアレルがある。適合の複雑性に加え、個体はA、B、Cw、およびDRアレルを各々2つ有しており、A、B、Cw、およびDRの1セット(ハプロタイプ)が各親から遺伝され、したがって、個体はA、B、Cw、およびDRハプロタイプについてホモ接合性またはヘテロ接合性でありうる。
【0012】
現在、HLA−A、−B、−Cw、および−DRの適合した非親類ドナー組織を用いた移植により、組織タイピングの供給源に対して莫大な需要が生じている。これは主として、HLA遺伝子の多型的特性、並びに、拒絶および急性の移植片対レシピエント病を最小化するために適合には高度の厳密性が要求されることによる。平均すると、HLA多型のために、HLA−A、−B、−Cw、および−DRの適合したドナー−レシピエントを発見する機会は、一般的な個体群における患者の組織タイプの頻度により1000分の1から数百万分の1の範囲であろう。Hansen, J.A., Anasetti, C., Peterdorf, E., Clift, R.A. and Martin, P.J., ”Marrow tranplants from unrelated donors,” Transplant Proc., 1994 Jun; 26:1719−1712 (Review)もまた参照のこと。
【発明の開示】
【0013】
本発明は、同一のHLAハプロタイプを2セット有する細胞または組織の確かな供給源を提供し、これによりドナーおよびレシピエントの間で組織学的に適合する可能性を有意に増大させ、したがって本発明は、診断、移植および/または治療に用いられうる。HS細胞はホモ接合性で、ただ1つのHLAハプロタイプを発現している。これにより、ドナーのHS細胞は、ヘテロ接合性幹細胞でのように2つではなく、レシピエントと適合しうるただ1つのHLAハプロタイプを有している。一般に集団の個体の有する少なくとも1つのハプロタイプと免疫組織学的に適合するHS細胞群の寄託またはバンクを提供するためには、複数の民族性の任意のドナーからHS細胞が採取されうる。前記寄託は、一般的な集団のほとんどに使えるように(すなわち、移植に適当な免疫組織適合性の細胞を提供するために)、各々が異なるHLAハプロタイプを有する、約200の異なるHS細胞系のみを含有することを必要とする。
【0014】
さらに、ヒトにおける遺伝子治療により倫理上の問題が提起される。体細胞のみを用いる遺伝的処置と生殖細胞を用いうる処置とは区別されている。体細胞(somatic)処置は患者のみに影響を及ぼすため、一般に許容されるが、一方で生殖細胞処置は患者の子孫に影響を及ぼすため禁じられている。さらに、トランスジェニック動物における研究により、胚の遺伝的処置によってのみ遺伝子欠損が効果的に修正されうることが示された。しかしながら、実施上の理由、例えばレトロウイルスベクターの細胞DNAへの組み込みにより生じる挿入突然変異のレベルが許容できないほど高くなりうることから、この手法はヒトにおける遺伝子治療に実用可能ではない。
【0015】
本発明はまた、遺伝子置換療法における有意な進歩を約束する。現在、遺伝子治療には多くの障害がある。ある疾患が遺伝的介入に適切かどうか、その疾患の遺伝子は同定されクローン化されているか、遺伝子を細胞に導入する効率的な方法があるか、またはその遺伝子が、罹患した組織以外の組織において有効に発現しうるか、のような問題により、遺伝子治療の実用性は強く妨げられている。
【0016】
このように、本技術分野においては、遺伝子治療を含む、移植および/または治療に用いられうる、組織適合性細胞または組織の確かな供給源が明らかに必要とされている。例えば、遺伝的疾患を患った患者と組織適合性であるHS細胞は、移植のための特定の細胞タイプへ分化する前に遺伝的に処置されうる。
【0017】
III.発明の要約
本発明は、単離されたホモ接合性幹(HS)細胞、およびこれらの細胞がイムノタイプおよびジェノタイプで選抜されうるという発見に関し、したがって診断、移植および/または治療に有用である。
【0018】
本発明はまた、血清学的または分子的手法によりHLA−A、−B、−Cw、および−DRに分類されたHS細胞系の寄託またはバンクを提供して、組織タイピングの供給源に対する需要を減少させうる。さらに、本発明は、イムノタイプのみではなくジェノタイプで選択された細胞をも提供する。よって、本発明は、例えば細胞移植による遺伝的障害を治療する方法を提供し、この際、非疾患性ジェノタイプで予め選抜されたHS細胞が罹患領域に対して移植されうる。こうして、実際の遺伝的介入を伴わずに遺伝子治療を効果的に提供すること。
【0019】
さらに、ここに開示された本発明は、HLAタイプされたHS細胞、並びにこれ由来の前駆細胞および分化細胞の製造方法を提供する。よって本発明は、2001年11月30日に出願された、「単離されたホモ接合性幹細胞、それ由来の分化細胞、およびこれらの作製および使用方法」という表題の米国特許出願第09/997,240号、および、多分化能ホモ接合性幹(HS)細胞、これを作製するための方法および材料、並びにHS細胞を前駆細胞または他の所望の分化細胞へ分化させる方法、インビボまたはインビトロにおける細胞または組織群を提供する、米国仮出願第60/253,943号の教示と組み合わせると有用である。
【0020】
HS細胞は、生きている動物中へ移植されると、ステムプラズム(stemplasm)からの未受精の減数分裂I後の二倍体生殖細胞を活性化させることにより製造される。本発明のさらなる目的は、前記ステムプラズム内での種々の成長段階からHS細胞を単離することにある。本発明の他の目的は、該ステムプラズムから単離される該細胞を選抜する方法を提供することにある。
【0021】
本発明のHS細胞は多分化能性であり、未受精で生存可能な胚へ発生する能力のない細胞塊から単離されるため倫理的な問題を生じない。さらに、ヘテロ接合性ES細胞系が組織または細胞移植療法に用いられ、あるいはバンクおよび/または寄託において管理されると、免疫組織適合性の適合は達成が困難である。これは、アドバンストセルテクノロジーおよび他の組織により開発されたものを含むES細胞系が、受精胚、または成人分化細胞を用いた核移植技術由来のものであり、ゲノムがヘテロ接合性であることによる(例えば、WO01/84920A1、WO01/79445A2およびWO01/29206A1)。本発明の多分化能幹細胞は、減数分裂I後の生殖細胞、もしくはステムプラズム由来であり、ゲノムがホモ接合性であり(最小限のヘテロ接合性または一様にヘテロ接合性)、またはMHCホモ接合性で選択される(2つの二倍体生殖細胞の融合および核移植の場合のように)ため、このような細胞は、現在使用可能な、ES細胞系を用いた、移植、細胞置換、および遺伝子治療技術、あるいは、ES細胞系バンクおよび/または寄託の管理により直面している免疫組織適合性の問題を克服するために用いられうる。
【0022】
配偶子形成の間、ヘテロ接合性生殖細胞、すなわち父方のおよび母方の双方の染色体を有する生殖細胞、は減数分裂を起こす。最初の減数分裂(減数分裂I)において、相同染色体が分離し、乗換えの現象のためにもたらされたいくらかのヘテロ接合性を伴って父方のまたは母方のいずれかの染色体を含有する、2つのホモ接合性の娘細胞を形成する。さらに、卵形成の間、1つの娘細胞の突出(extrusion)(第一極体)が観察される。他の娘細胞は、分裂中期IIにおいて停止する。このような分裂中期IIの二倍体卵母細胞は、最小のヘテロ接合性を有するホモ接合性幹細胞を得るために用いられうる。
【0023】
適切な活性化により、分裂中期IIの卵母細胞は、1つの類染色質の突出(例えば、第二極体)により減数分裂を完成させるために進行でき、一倍体細胞をもたらしうる。このように減数分裂を完成させた一倍体卵母細胞は、細胞質分裂せずに自己複製し、二倍体および均一にホモ接合性となる。したがって、このように減数分裂を完成させた一倍体卵母細胞はまた、本発明のホモ接合性幹細胞をヘテロ接合性を伴わずに作製するために用いられうる。Kaufman M.H., Robertson E.J., Handyside A.H., Evans M.J., ”Establishment of pluripotential cell lines from haploid mouse embryos,” J. Embryol. Exp. Morphol., 73:249−61 (1983)もまた参照のこと。細胞分裂IまたはII後の生殖細胞由来のステムプラズム由来の幹細胞もまた、上記のホモ接合性を有している。MHCについてホモ接合性のものが細胞ベースの治療適用において選抜され使用されうるにもかかわらず、ある個体からの2つの二倍体生殖細胞の融合または核移植(nuclear transfer)由来の幹細胞はより程度の大きいヘテロ接合性を有しうる。
【0024】
最小のヘテロ接合性および均一のホモ接合性を有する双方のHS細胞は、ホモ接合性幹細胞は2組の同一の主要組織適合複合体(MHC)ハプロタイプを含有しうるという点で、ヘテロ接合性ES細胞を用いた幹細胞(受精胚、核移植、治療的クローン胚、および成人幹細胞を用いて得られたもののような)よりも優れている。したがって、ドナーと移植治療を必要としている個体との間の免疫組織適合性の適合は、HS細胞を用いるとより達成が容易となる。1つのMHCハプロタイプについてホモ接合性のこのような幹細胞は、同一のハプロタイプを有するレシピエントだけでなく、その両親のハプロタイプのいずれかにおいて同じMHC成分を有するレシピエントにも許容される。
【0025】
ヒトMHCの遺伝子座(loci)は、第6番染色体上の4Mb内にあり、MHCアレルは、通常ひとまとまりで遺伝する。MHCアレルの組み合わせのいくつかは、個体群中で非常に高頻度に共有されており、例えば15の最も一般的なHLA−A、−B、−Cw、−DRハプロタイプは21.3%の白人アメリカ人に共有され、ハプロタイプ頻度の同様な所見は他の民族的背景においても見られる。さらに、1つの人種群における共通のHLAハプロタイプは、他の群によっても有意に共有されている。例えば、白人アメリカ人における184の共通のハプロタイプのうちの156のハプロタイプは、アフリカ系アメリカ人、アジア系アメリカ人、ラテン系アメリカ人、またはネイティブアメリカンにより少なくとも1つは共有されている。他の人種群の共通のハプロタイプ数、および対応する共有ハプロタイプ数は:アフリカ系アメリカ人(198/63);アジア系アメリカ人(210/100);ラテン系アメリカ人(194/147);およびネイティブアメリカン(194/173)である。Mori, M., et al., ”HLA gene and haplotype frequencies in the North American population: the National Marrow Donor Program Donor Registry,” Transplantation, 64(7):1017−27 (1997)。このような連鎖(linkage)の不均衡を支持するこのような証拠を考慮すると、未受精の減数分裂I後の二倍体生殖細胞(gamete)由来のHS細胞を用いることで、幹細胞バンクまたは組織もしくは細胞移植のための寄託において維持される必要のある免疫学的に異なる細胞系の数を減少させうる。
【0026】
よって、潜在的に、異なるハプロタイプについてホモ接合性である数百の幹細胞系で、個体群の大多数を適合させるには充分だろう。この数は、胚性幹細胞、成人幹細胞、または治療的クローン幹細胞由来の幹細胞系のためのバンクまたは寄託を維持するために必要とされるハプロタイプの数に対してものすごく少ない。例えば、200のハプロタイプ毎に20,000を超えるヘテロ接合性の可能性がある(図1)。
【0027】
本発明は、以前に、米国特許出願第09/997,240号、および米国仮出願第60/253,943号に記載された発明と組み合わせて用いられると、遺伝的疾患、神経変性疾患、内分泌関連の障害および癌、外傷性損傷、美容的および治療的移植、並びに遺伝子治療および細胞置換療法のような種々の疾患の診断および治療、を含むがこれに限定されない、のために有用である。
【0028】
本発明は、イムノタイプおよび/またはジェノタイプで選抜されたホモ接合性幹細胞群の製造方法を提供する。HS細胞は、本技術分野で周知の血清学的および/または分子的技術を用いてHLA−A、−B、−Cw、および−DRでイムノタイプされる。HS細胞はさらに、本技術分野で周知の分子的技術を用いてジェノタイプで選抜される。次いでこのようなHS細胞は、ここに参照により組み込まれる、米国特許出願第07/997,240号、および米国仮出願第60/253,943号に開示されている方法を用いて、前駆細胞、および/または他の分化細胞、細胞または組織タイプの群を得るために用いられうる。加えて、本発明は、治療的もしくは美容的移植、並びに/または遺伝的および神経変性疾患、外傷性損傷および癌の治療のための、予めHLAタイプされたHS由来の分化細胞および/または組織を使用する方法を提供する。
【0029】
本発明の目的は、(a)標的イムノタイプを決定するために、所望のレシピエントのイムノタイプ、すなわちホモ接合性またはヘテロ接合性HLAハプロタイプを分析すること、(b)特定のHLAハプロタイプについてホモ接合性の内部細胞塊(ICM)を各々が含有する複数の胚盤胞様塊を生じさせるために、有糸分裂が活性化されたホモ接合性の減数分裂1後の二倍体生殖細胞試料を製造すること、(c)標的HLAハプロタイプを有するものを選抜するために、前記各ICMのイムノタイプを分析すること、および(d)標的HLAハプロタイプについてホモ接合性の永久HS細胞系を作製するために、選抜されたICMから単離されたHS細胞を培養すること、による、所望のレシピエントへの移植に適切である標的イムノタイプを有する、有糸分裂が活性化されたホモ接合性の減数分裂I後の二倍体生殖細胞からの、ホモ接合性幹細胞群の製造方法を提供することにある。本発明のさらなる目的は、所望のレシピエント、または所望のレシピエントと共通の少なくとも1つのHLAハプロタイプを有する、所望のレシピエントの近親の親類もしくは所望のレシピエントと非親類の人由来のHS細胞を提供することにある。標的HLAハプロタイプを有するHS細胞を分析および採取するため、並びに所望のレシピエントおよびドナーのイムノタイプを分析するためには、周知の技術が用いられる。
【0030】
ここに参照により組み込まれる、米国特許出願第09/997,240号、および米国仮出願第60/253,943号に詳細に記載されているように、HS細胞は:(a)2つの卵母細胞または2つの精細胞を融合させること;(b)卵形成の間の第二極体の突出を防止すること;(c)適切な条件下で第二極体の突出および同時のゲノム自己複製を許容すること;または、(d)2つの一倍体の卵核または精核を除核卵母細胞に導入すること、ここで方法(a)および(d)は、ジェノタイピング(genotyping)によるホモ接合性幹細胞の選抜のための追加を必要とする、によって製造される胚盤胞様塊由来である。
【0031】
本発明の他の目的は、ここに参照により組み込まれる、米国特許出願第09/997,240号、および米国仮出願第60/253,943号に詳細に記載されている工程により作製されるステムプラズムからの、レシピエント組織適合性ホモ接合性幹細胞群の単離方法を提供することにある。このようなレシピエント組織適合性のHS細胞群は、(a)標的のイムノタイプおよびジェノタイプを決定するために、所望のレシピエントのイムノタイプおよびジェノタイプを分析すること;(b)特定のアレルについてホモ接合性である内部細胞塊(ICM)を各々が含有する複数の胚盤胞様塊を発生させるために、ドナーのホモ接合性の減数分裂I後の二倍体生殖細胞の有糸分裂を活性化すること;(c)細胞系を作製するために、選抜されたICMからHS細胞を単離し、該HS細胞を培養すること;(d)前記各HS細胞系のジェノタイプを分析し、標的のジェノタイプについてホモ接合性であるものを選抜すること、によって製造されるだろう。該HS細胞は、移植後に作製されたステムプラズムから組織学的手法によって同定され、適切なHLAハプロタイプおよびジェノタイプで分析されうる。
【0032】
本発明の他の目的は、(a)標的のイムノタイプおよびジェノタイプを決定するために、所望のレシピエントのジェノタイプおよびHLA−ハプロタイプを分析すること;(b)特定のアレル、および特定のHLAハプロタイプについてホモ接合性の内部細胞塊(ICM)を各々が含有する複数の胚盤胞様塊を発生させるために、ドナーのホモ接合性の減数分裂I後の二倍体生殖細胞の有糸分裂を活性化すること;(c)細胞系を作製するために、前記ICMからHS細胞を単離し、該HS細胞を培養すること;および(d)前記各HS細胞系のHLAハプロタイプおよびジェノタイプを分析し、標的のHLAハプロタイプおよびジェノタイプを有するものを選抜すること、による、所望のレシピエントへの移植に適切な標的ジェノタイプ、すなわち標的遺伝子の非疾患性アレルを有する有糸分裂が活性化されたホモ接合性の減数分裂I後の二倍体生殖細胞からの、レシピエント組織適合性のホモ接合性幹細胞群の製造方法を提供することにある。
【0033】
本発明のさらなる目的は、1つの機能性アレル(functional allele)を有する所望のレシピエント、または所望のレシピエントと共通の少なくとも1つのHLAハプロタイプ、および少なくとも1つの標的遺伝子の非疾患性アレルを有する所望のレシピエントの近親の親類もしくは所望のレシピエントと親類でない人由来のHS細胞を提供することにある。標的HLAハプロタイプおよび標的ジェノタイプを有するHS細胞を分析および採取するため、並びに所望のレシピエントおよびドナーのイムノタイプおよびジェノタイプを分析するためには、周知の技術が用いられる。
【0034】
本発明の他の目的は、所望の細胞、細胞群、または組織タイプへ到達するために、インビボまたはインビトロの要素を用いた適切な条件下で、単離され、イムノタイプされ、および/またはジェノタイプされたHS細胞の分化を方向づけることを含む、所望の細胞、細胞群、または組織タイプの作製方法を提供することにある。組織の例としては、上皮組織、結合組織、筋組織または神経組織が例示されるがこれに限定されない。
【0035】
例としての上皮細胞のタイプは、角化上皮細胞;湿潤重層障壁上皮(wet−stratified barrier epithelia);内層上皮細胞(lining epithelial cells);外分泌分泌上皮細胞;内分泌分泌上皮細胞;消化管、外分泌腺、および尿生殖路のもののような吸収上皮細胞;並びに収縮性上皮細胞を含むがこれに限定されない。例としての結合組織細胞のタイプは、細胞外マトリックス分泌細胞;代謝および貯蔵のために分化した細胞;並びに血液および免疫系の循環細胞を含むがこれに限定されない。例としての筋細胞のタイプは、推進機能を有する収縮細胞および線毛細胞を含むがこれに限定されない。例としての神経または感覚細胞のタイプは、感覚変換器(sensory transducer);自律性ニューロン;感覚器官および末梢ニューロンの支持細胞;並びに中枢神経系のニューロンおよびグリア細胞を含むがこれに限定されない。例としての生殖細胞(reproductive cells)のタイプは、生殖細胞(germ cells)および栄養細胞(nurse cells)を含むがこれに限定されない。
【0036】
本発明の他の目的は、診断移植および/または治療のための免疫組織適合性細胞の、信頼できる、不断の、包括的な供給のために、それぞれの個体群が少なくとも1つのHLAハプロタイプについてホモ接合性である、複数のドナー由来の予めHLAタイプされたHS細胞群を含有する、分類された移植の寄託またはバンクを提供することにある。
【0037】
本発明の他の目的は、個体と免疫組織学的に適合性の、単離されたHS細胞から、適切な置換細胞、細胞群、組織または器官を、インサイチュ(in situ)またはインビトロにおいて生成させることによる、個体における損傷または疾患状態の治療方法を提供することにある。損傷および疾患状態の例としては、外傷性損傷(例えば、外傷後の修復および再構成、四肢置換、脊髄損傷、火傷など)および先天性異常;細胞、組織、および器官の病的および悪性状態(例えば、癌);並びに、筋(例えば、嚢胞性線維症、筋ジストロフィー、心臓病の状態)、神経(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、および多発性硬化症)、上皮(例えば、失明およびミオパチー、粥状動脈硬化症および他の狭窄血管状態、クローン病のような酵素不全、並びに糖尿病のようなホルモン不全)、および結合組織(例えば、免疫状態および貧血)の細胞および組織の変性および先天性疾患、を含むがこれに限定されない。HS由来の細胞および組織は、好ましくは被験者自身の供与材料を用いて、必要とする患者に対して移植(grafted)または移植(transplanted)されうる。
【0038】
これらのおよびさらなる本発明の目的は、以下の詳細な説明、実施例、および請求の範囲により完全に記載されており、ただし本発明の範囲を何ら制限するものではない。
【0039】
IV.図面の簡単な説明
図1:非HS細胞バンク対HS細胞バンクについて、必要とされる細胞量の差異を示したグラフ。
【0040】
図2:減数分裂I後の卵母細胞からのHS細胞の誘導を示した概要図。
【0041】
図3:精子形成および卵形成の概要図
図4A:HLA遺伝子座の血清学的特異性を示す表
図4B:公式に承認されたHLA−DRおよびHLA−DQの特異性
図5:HLAクラスIIアレルのジェノタイピングのための例としての制限エンドヌクレアーゼの一覧表
図6:HLAクラスIIタイピングのための例としてのSSOプローブの一覧表
図7:マイクロサテライトタイピングおよび配列決定のために用いられるプライマーの例としての配列の一覧表
図8:12のマイクロサテライトの相対的な位置を示している、HLAクラスI、II、およびIIIの地図
図9A:C57/DBA2マウス
図9B:過剰排卵(superovulated)卵母細胞由来の胚盤胞様塊
図9C:代表的なコロニーI
図9D:代表的なコロニーII
図9E:ジェノタイピング実験の結果
図9F:イムノタイピング実験の結果
図10A:マウスHS細胞由来のフィーダー層(feeder layer)上で増殖した、単離された内部細胞塊の写真。
【0042】
図10B:ヒトのホモ接合性の減数分裂I後の二倍体卵母細胞由来の桑実胚様塊の発生を示す写真。
【0043】
図10C:ヒトのホモ接合性の減数分裂I後の二倍体卵母細胞由来の早期の胚盤胞様塊の写真。
【0044】
図10D:内部細胞塊を露出している、ヒトのホモ接合性の減数分裂I後の二倍体卵母細胞由来の胚盤胞様塊の写真。
【0045】
図11:HLAクラスIIアレルの増幅のためのPCRプライマーの例としての一覧表。
【0046】
V.本発明の詳細な説明および好ましい実施態様
ここに引用される全ての参考文献は、ここに全体として参照により組み込まれる。ここで本発明が、このような先行発明による開示よりも先になされてはいないという承認としては、何ら解釈されるものではない。この記載を通して、示された好ましい実施態様および実施例は、本発明についての制限としてではなく、むしろ見本として考えられるべきである。
【0047】
A.定義
本発明の文脈において、HS細胞系とは、未受精のホモ接合性の減数分裂I後の二倍体生殖細胞の有糸分裂の活性化、または2つの一倍体生殖細胞の融合もしくは核移植の結果得られる胚盤胞様塊由来の幹細胞、自然発生した奇形組織由来の幹細胞、並びに、ここに参照により組み込まれる、米国特許出願第09/997,240号、および米国仮出願第60/253,943号に記載されているようなステムプラズム由来の幹細胞を意味する。HS細胞系から単離されたHS細胞は多分化能性であり、適切な条件下で分化させて、多能性前駆細胞、体細胞前駆体、および他のタイプの分化細胞を製造しうる。
【0048】
「分化」とは、細胞が成熟して通常の機能細胞になる際に経る、高度に制御された過程である。分化した細胞は、特有の特徴を有し、特異的な機能を発揮し、分裂しにくい。逆に、未分化細胞は、複数の非特異的な活性および機能とともに非特異的な外観を有している、急速に分裂している未成熟な、胚細胞または原始細胞である。
【0049】
ここで用いられているように、「幹細胞」の語は、活発に分裂およびサイクルし、適切な刺激により、成熟し、分化した機能細胞の系統を生じる、相対的に未分化の細胞を意味する。幹細胞を定義づける特性は:(a)それ自身は最終分化していない;(b)動物の寿命の間は制限なしに分裂しうる;および(c)分裂すると、各娘は、幹細胞のままでいるか、または不可逆的な最終分化へと続く過程に進むかの選択をする、を含む。初めはその可能性(すなわち、種々のタイプの分化細胞を生じうる)において無制限である幹細胞は、「多分化能性(pluripotent)」と呼ばれる。現時点での多分化能性細胞の源は、胚性(ES)幹細胞、胚性癌腫(EC)細胞、体細胞クローニングから生じた細胞、奇形腫および奇形癌を含む。
【0050】
3つの胚葉、すなわち、内胚葉、中胚葉および外胚葉のうちの1つからそれぞれが細胞を生産しうる前駆細胞系は、本出願において「多能(multi−potent)」と称される。各前駆細胞系は最終分化しておらず、動物の寿命の間は分裂しつづけることができるが、ただ一つのタイプの胚葉からの異なる組織または細胞へコミットされる(committed)と考えられる。したがって、特定の前駆細胞系は、骨、軟骨、平滑筋、横紋筋および造血細胞(中胚葉);肝、原始腸管、気道上皮(内胚葉);または、ニューロン、グリア細胞、毛嚢および歯蕾(外胚葉)へ分化しうる。したがって、「前駆細胞(progenitor cells)」の語は,「多能幹細胞(multi−potent stem cells)」または「前駆細胞(precursor cells)」と同義に用いられうる。このような前駆細胞系は、インビボ(ここで「インビボ」の語は、HS細胞を易感染状態の(immunocompromised)動物に封入し、そのような封入された細胞からステムプラズムを生じさせることにより誘導された分化を含む)またはインビトロにおけるHS細胞の有向分化(directed differentiation)により作製され、培養により永久細胞系として維持されうる。
【0051】
「奇形腫」とは、多くのタイプの分化組織を含有している細胞の秩序の乱れた(disorganized)塊であり、該組織は、骨、筋、軟骨、神経、歯蕾、腺上皮等のような3つの全ての胚葉由来であり、該奇形腫は、断続的に分裂してこれらの分化組織の多くを生じる未分化幹細胞と混合している。
【0052】
「奇形癌」とは、奇形腫に従属的である。奇形腫はたいてい良性であるが;悪性化すると奇形癌が進行し、レシピエントに対して致命的となりうる。他の腫瘍と比較して、奇形腫は独特な組織学的特徴を示す。奇形腫は、表皮、中枢神経系組織、または成熟軟骨のような組織を含む、種々の分化組織からなる。奇形腫はまた、非特異的な組織タイプ、例えば、リンパ組織または線維性基質(fibrous stroma)を含有する。
【0053】
「ステムプラズム」とは、HS細胞のレシピエントへの移植により発生する塊を説明するために用いられる新規に得られた語である。奇形腫とは異なり、3つの全ての胚葉(embryonic germ layers)からの細胞をやはり含有してはいるが、ステムプラズムは制御された増殖を示す。それゆえにステムプラズムは、本発明のHS細胞のインビボでの分化の手段として用いられうる。
【0054】
「ホモ接合性幹細胞」とは、未受精の減数分裂I後の二倍体生殖細胞から生じる未分化幹細胞である。好ましくは、ホモ接合性幹細胞は、卵形成の間の第二極体の突出を防止すること(もしくは「活性化」)、または適切な条件下で第二極体の突出および同時の一倍体卵母細胞のゲノム自己複製を許容すること、により形成される。ホモ接合性幹(HS)細胞は、(a)2つの卵母細胞または2つの精細胞を融合させること;(b)卵形成の間の第二極体の突出を防止すること;(c)適切な条件下で第二極体の突出および同時のゲノム自己複製を許容すること;または、(d)2つの一倍体の卵核または精核を除核卵母細胞に導入すること、により得られる、未受精生殖細胞の「有糸分裂の活性化」により発生する胚盤胞様塊の、内部細胞塊から生じた、単離された細胞である。
【0055】
哺乳動物の発生においては、卵割により、そうでなければ「内部細胞塊」として知られている、片側にある細胞の塊により代表されることが適切な胚とともに、薄膜の中空球、「胚盤胞」が生成する。胚盤胞は移植の前に形成され、「胞胚(blastula)」と同義である。薄膜中空球の壁は「栄養胞」と称され、哺乳動物の胚盤胞の周囲を形成する上皮の外胚葉であり、胚を子宮の壁に付着させる。栄養胞は絨毛膜の外層を形成し、母体の組織とともに胎盤を形成するだろう。
【0056】
本発明の文脈において、「胚盤胞様塊」は、有糸分裂が活性化された未受精の減数分裂I後の生殖細胞の生成物であるという点で、「胚盤胞」(本技術分野において用いられているような)とは異なる。
【0057】
ここで用いられているように、「有糸分裂が活性化され」とは、通常の有糸細胞分裂を行いうる能力を得ることを意味する。有糸分裂の活性化とは、減数分裂IIが(1)再開し、一倍体生殖細胞が細胞質分裂なしにゲノムを自己複製した後に有糸分裂を行う、または(2)再開するが、一倍体生殖細胞はカリキネシス(karykinesis)および細胞質分裂できずに、次いで有糸分裂を行う、のいずれかであるような生殖細胞の活性化をいう。
【0058】
「ホモ接合性の減数分裂I後の二倍体生殖細胞」の語は、ここで用いられているように、細胞が父方のまたは母方の相同染色体をそれぞれ2コピー含有する配偶子形成の段階である生殖細胞を意味する。そして一倍体生殖細胞とは、減数分裂を達成し、染色体をただ1コピーのみ有している生殖細胞を意味する。
【0059】
「アレル」は、遺伝子座の代わりの形式(alternative forms)である。各遺伝子座につき単一のアレルが、各親から別個に遺伝される。本発明の文脈においては、同一のアレルを2コピー含有する場合、細胞は「ホモ接合性」として分類される。逆に、「ヘテロ接合性」細胞は同一の遺伝子座の異なる2つのアレルを含有する。
【0060】
本発明の文脈において、個体の「イムノタイプ」とは、細胞の表面上に配置され、組織適合抗原として知られているタンパク質の独特の配列により特徴づけられる。ヒトにおいて、これらの組織適合抗原は、体中の細胞の表面上に見られる遺伝的に受け継がれるタンパク質の複合体ファミリーである、ヒト白血球抗原またはHLAと称される。
【0061】
細胞のイムノタイプの原始的な決定要因は、外来の生物体に応答するための身体の免疫系の活性化に重要な役割を果たしているタンパク質からなる、白血球および血小板上の遺伝的な指紋である、HLAプロファイルである。HLAにより、移植の処置における所望のレシピエントと可能性のあるドナーとの間の適合が決定される。HLA抗原に対する反応は、組織移植片の拒絶の原始的な原因である。HLA因子は母および父から遺伝される(各1つ)ため、同一のHLAタイプを有する最大の機会は兄弟間である(例えば、4分の1)。レシピエント本来の細胞のものと同一のイムノタイプまたはHLAプロファイルを有する外来細胞は、レシピエントにより「自己」であるとして許容され、レシピエントの免疫系ににより拒絶されないだろう。
【0062】
HLA抗原は、通常そのままの単位で遺伝される、単一の染色体上の、複数の、密接に連鎖した遺伝子の産物である。この組織適合性複合体、すなわちHLA領域は、補体および免疫応答に重要な遺伝子もまた含有している。
【0063】
HLA遺伝子複合体は、HLA−A、−B、−Cw、および−DRとして知られている少なくとも4つの遺伝子座を含有している。HLA抗原には2つのクラスがある。クラスIはHLA−A、B、および−Cwからなる。22の異なるHLA−A抗原、42の異なる−B抗原、9の異なる−Cw抗原、および18の異なる−DR抗原がある。HLA−A、−B、および−C抗原はほとんど全てのヒト細胞上に発現している。個体のクラスI HLAプロファイルは、腎、骨髄等の移植や、血小板もしくは白血球の注射において、または家系の研究のために、可能性のあるドナーおよびレシピエントのような個体間の適合性または遺伝的関係の程度を決定するために用いられうる。クラスI抗原は、血清学的手法により同定されうる。例えば、個体のクラスI HLAプロファイルは、特定のA−、B−、またはC−遺伝子座抗原に対する周知の特異性を有する一組の抗血清とともに、試料リンパ球をインキュベートすることにより決定されうる。陽性の細胞/血清相互作用により、細胞のHLA抗原が特徴づけられる。
【0064】
クラスIIはHLA−DRおよび−DQからなる。18の異なるDR抗原がある。これらの抗原は通常、Bリンパ球、単球、マクロファージ、樹状細胞および内皮細胞上に発現しており、ただし該抗原は免疫刺激により他の細胞上に誘導される。クラスII抗原(例えば、DRβ1、DRβ3、DRβ4、DRβ5、およびDQβ1遺伝子)は、患者DNAの血清学的および/または分子的分析により検出されうる。中程度の感度のタイピングのみが必要とされる場合には、遺伝子の全ての領域について配列特異的オリゴヌクレオチドプローブ(SSOP)を利用してもよい。高感度(アレルレベル)が必要とされる場合には、SSOP試験およびDNA配列決定の組み合わせが用いられうる。高感度試験は通常、非常に高度の適合が不可欠である骨髄レシピエントおよびその見込みのあるドナーについてのみ行われる。
【0065】
レシピエント細胞に発現しているHLAタンパク質を1以上発現している細胞は、レシピエントの免疫系により「自己」であると認識され、これに対し他のHLAタンパク質を発現している細胞は、「外来」または「非自己」であると認識される。レシピエントの免疫系は「外来」または「非自己」タンパク質に対する応答を促進し、外来組織を殺傷する。外来組織が移植器官である場合には、この応答は拒絶と呼ばれる。
【0066】
本発明において、ドナー細胞が拒絶されずにレシピエントに対して安定して移植されうる場合には、ドナー細胞は所望のレシピエントに対する「移植に適切である」と特徴づけられる。移植に適切であるためには、ドナー細胞は所望のレシピエントと「組織適合性」で、すなわちHLAが「適合して」いなければならない。HLAが実質的に適合している場合には、免疫系はほとんど応答しそうにない。ヒトはHLAタンパク質を第6番染色体上で両親から受け継ぐ。個体は2つの染色体6sを得る(通常、母から1つおよび父から1つ)ことから、該個体のHLAタンパク質の半分は両親のいずれかと適合するだろう。適合するHLAタンパク質がより多くなれば、移植された器官はレシピエントによってより拒絶されにくくなるだろう。
【0067】
個体はA、B、Cw、およびDRアレルを各2つ有しており、ここでA、B、Cw、およびDRの1セット(「ハプロタイプ」)は各親から遺伝される。さらに、個体はA、B、Cw、およびDRハプロタイプについてホモ接合性またはヘテロ接合性でありうる。本発明において、ドナー細胞がレシピエントに対して外来であるHLA産物を発現していない場合には、ドナー細胞は所望のレシピエントに対してHLAが「適合している」または「組織適合性である」とみなされる。例えば、HLA−A1、−Cw7、−B8またはHLA−A29、−Cw7、−B8のようなハプロタイプについてホモ接合性であるドナー細胞は、HLA−A1、−Cw7、−B8、およびHLA−A29、−Cw8、−B65ハプロタイプの双方を有するヘテロ接合性HLAプロファイルを有するレシピエントと適合するだろう。
【0068】
ここで用いられているように、「ジェノタイプ」の語は、生物体または生物体群の遺伝的な構成をいう。本発明において、「標的」ジェノタイプは、通常のまたは野生型のタイプの配列、すなわち、遺伝子配列が特定の病的状態と関連していない配列だろう。そのような病的状態は、しばしば「遺伝的障害(genetic disorders)」と称され、単一のまたは複数の変異遺伝子の発現と関連していることを意味する。遺伝的障害はしばしば、特定の遺伝子変異から生じる。本発明において、病状と関連した遺伝子変異は遺伝され(例えば、遺伝性の遺伝的障害)、または誘導され(例えば、発癌性物質に対する曝露)うる。
【0069】
遺伝性の遺伝的障害の例は、アルツハイマー病、糖尿病、グレーブス病、血友病、ハンチントン病、筋ジストロフィー、パーキンソン病、鎌状赤血球性貧血、および種々の代謝性障害(すなわち、フェニルケトン尿症(PKU)および重症複合免疫不全症(SCID)のような酵素欠損)を含むがこれに限定されない。誘導性の遺伝的障害の例は、癌および多発性硬化症を含むがこれに限定されない。
【0070】
遺伝的障害およびそれに関連するヒト遺伝子の一覧は、Online Mendelian inheritance in Man(Online Mendelian Inheritance in Man, OMIM (TM). McKusick−Nathans Institute for Genetic Medicine, Johns Hopkins University (Baltimore, MD) and National Center for Biotechnology Information, National Library of Medicine (Bethesda, MD), 2000. World Wide Web t1RL: http://www.ncbi.nlm.nih. gov/omim/)を通じて入手できる。OMIMは、米国立生物工学情報センター(NCBI)により管理されている、遺伝的な疾患、障害、および特性並びにそれらの異なる発現の、巨大な探索可能なデータベースである。OMIMはワールドワイドウェブ(world wide web)上で入手できる。
【0071】
B.本発明のホモ接合性幹細胞の作製
米国特許出願第09/997,240号に詳細に記載されているように、HS細胞は、未受精の減数分裂I後の二倍体生殖細胞の有糸分裂の活性化により発生する胚盤胞様塊から単離される。図2は、未受精の減数分裂I後の二倍体生殖細胞からHS細胞を発生させる好ましい方法を示すフローチャートを提供する。
【0072】
生殖細胞は発生し、有糸分裂の活性化により本発明のHS細胞が得られる胚盤胞様塊を生産する、未受精の減数分裂I後の二倍体生殖細胞となる。本発明のHS細胞、および/または分化細胞は、治療を必要とする罹患した個体への内移植(implantation)または移植(transplantation)を含むがこれに限定されない、疾患の診断および/または治療において有用性が見出される。
【0073】
ホモ接合性の減数分裂I後の二倍体生殖細胞は、同一の個体から、または免疫適合性のドナーから得られるが、特定の状況においては自己ドナー(self−donor)が好ましい。しかしながら、治療のために選択された罹患個体が遺伝性疾患(すなわち、変異または不適切な発現のいずれかによる重要な遺伝子の欠損により特徴づけられる疾患)を患っている場合には、非自己ドナーが好ましく用いられうる。替わりに、選抜方法の当業者が、欠損した遺伝子を発現しうる、所望のジェノタイプを示す自己生殖細胞(例えば、欠損または変異した遺伝子を持たない細胞)を選抜してもよい。このような選抜技術はまた、組織移植のために免疫不適合なジェノタイプまたは発現型を回避するためにも用いられうる。
【0074】
HLAハプロタイプおよび標的遺伝子についてホモ接合性のHS細胞は:(a)2つの卵母細胞または2つの精細胞を融合させること;(b)卵形成の間の第二極体の突出を防止すること;(c)適切な条件下で第二極体の突出および同時のゲノム自己複製を許容すること;または、(d)2つの一倍体の卵核または精核を除核卵母細胞に導入すること、から得られおよび選抜されうる。図3は、雄性および雌性での有糸分裂および減数分裂の段階における差異を示す、精子形成および卵形成の概要的な表現を提供する。
【0075】
本発明において有用な卵母細胞は、本技術分野において周知の、または発見されるべき任意の方法を用いることにより得られうる。ヒト卵母細胞は一般的に、ドナー個体の卵胞から回収され、包囲または付着している細胞から単離される。収率を最大化するためには、ドナー個体において過剰排卵が誘導される。過剰排卵は、単独でまたはクエン酸クロミフェンと組み合わせて投与される、適切な性腺刺激ホルモンまたは性腺刺激ホルモン誘導体の投与により誘導されうる(ここに参照により込みこまれる、Barriere et al., Rev. Prat., 40(29) :2689−93 (1990))。マウスにおいては、例としての方法は、卵胞刺激ホルモン(FSH)を模造した妊馬血清(PMS)、および黄体化ホルモン(LH)を模造したヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)の投与を含む。Hogan et al., Manipulating the mouse embryo: A Laboratory Manual, 2nd ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1994)を参照のこと。過剰排卵の効率的な誘導は、雌性の年齢および重量、性腺刺激ホルモンの量、投与時間、および用いられた家系を含むがこれに限定されないいくつかの変数に依存している。
【0076】
排卵の過剰誘導および卵母細胞の回収は、本技術分野において周知である。例としての詳細なマウスのプロトコールについては、全内容がここに参照により組み込まれる、Hogan et al., supra, pp. 130−132を参照のこと。例えば、Hoganは、過剰排卵を誘導するための、いずれも凍結乾燥粉末から再懸濁された、滅菌0.9%NaCl中のPMSおよびhCGの腹腔内投与を記載している。PMSおよびhCGのいずれも、内因性LHの放出前に投与されるべきである。Hoganプロトコールは、マウスからの卵母細胞の回収について記載されているが、過度の実験を伴わずに機械的にヒトに適用されうる。
【0077】
ポリエチレングリコールもまた、排卵された卵母細胞の融合を誘導することが示されている(例えば、ここに参照により組み込まれる、Sekirina, G.G., Ontogenez. 16(6):583−8 (1985), および Gulyas, B.J., Dev. Biol. 101(1):246−50 (1984)を参照)。替わりに、Nogues et al., Zygote, 2(1):15−28 (1994)(ここに参照により組み込まれる)には、胚発生の第一段階を経ることができる「接合体」または「卵母細胞融合産物(OFP)」の生産へと続く、不活性化センダイウイルスによる卵母細胞融合の誘導が記載されている。卵母細胞の融合技術の概観のためには、ここに参照により組み込まれる、Gulyas, B.J., Dev. Biol., 4:57−80 (1986)を参照のこと。
【0078】
替わりに、卵母細胞からの第二極体の突出を防止することでHS細胞が生じる。マウス卵母細胞の活性化のための詳細なプロトコールは、Hogan et al. supra, pp. 148−150に記載されており、ここで、回収された、卵丘細胞の付着した卵は、ダルベッコPBS中の7%エタノール溶液中で5分間保持され、培地で洗浄され、および37℃で5時間インキュベートされる。続いて卵丘細胞は、ヒアルロニダーゼを用いた処置により除去される。本質的には、第一減数分裂および第一極体の分離に続き、卵母細胞は分裂中期IIにおいて停止し、精子により刺激された場合に第二減数分裂を経ることができるのみである。インビトロでは、減数分裂IIを継続させるために、卵母細胞をCa++イオノフォア(A23187)またはエタノールのような薬剤に対して曝露することで、精子からの刺激が模造されうる。第二極体の突出前には、6−ジメチルアミノプリン(6−DMAP)、またはサイトカラシンDを含むがこれに限定されない薬剤により核分裂(染色体の分離)および細胞質分裂(細胞の分裂)が阻害され、このような二倍体卵母細胞の活性化およびそれに続く胚盤胞様塊の形成が起こりうる。図2は活性化の産物を示す。
【0079】
他の実施態様においては、卵母細胞を、単独またはプロマイシンが続くCa++イオノフォア(A23187)に曝露させることで、第二極体の突出の許容が達成されうる。一倍体卵母細胞はさらに、分裂を伴わずにゲノム自己複製を経ることができ、その結果の二倍体卵母細胞は適切な条件下でインキュベートされると胚盤胞様塊を形成し、HS細胞を得るために用いられうる。Taylor, A.S., et al., Hum. Reprod., 9(12):2389−97 (1994); および Kaufinan, M.H. et al., J. Embryol. Exp. Morphol., 73:249−61 (1983)を参照のこと。
【0080】
本発明において有用な精細胞は、本技術分野において周知のまたは発見されるべき任意の適切な方法、特にインビトロ受精の分野において慣習的な方法を用いることにより得られうる。雄性において使用するためのHS細胞を作製するためには、精細胞(減数分裂IIが完了した)が回収され、次いで融合が誘導される。精細胞融合は、充分に確立された標準技術を用いることにより達成されうる。例えば、ここに参照により組み込まれる、Asakura S. et al., Exp. Cell. Res., 181(2):566− 73 (1989)には、一対の精細胞の融合および単一の尖体(シナクロソーム(synacrosome))の最終的な形成を誘導するための低張性培地の使用が教示されている。替わりに、本技術分野において周知の方法を用いることにより、第二精母細胞(減数分裂Iが完了した)が活性化されうる。
【0081】
ホモ接合性の減数分裂I後の二倍体生殖細胞は、慣習的な技術、特にインビトロ受精の技術分野において一般的に用いられている技術を用いて、ドナーから回収されうる。例えば、ヒト卵胞から卵母細胞を吸引する技術が記載されている、Jones et al., Fertil. Steril., 37(1):26−29 (1982);精巣上体および精巣から精子を採取する技術が記載されている、Lisek et al., Tech. Urol., 3(2):81−85 (1997);1のドナーの核物質を他のドナーの除核卵母細胞へ移植する技術が記載されている、Stice et al., Mol. Reprod. Dev., 38(1):61−8 (1994), および Takeuchi et al., Hum. Reprod., 14(5):1312−7 (1999)を参照のこと。ここでこれらの参考文献の全内容は、ここに参照により組み込まれる。
【0082】
最後に、上記のように、単離されたHS細胞は、2つの二倍体生殖細胞核を除核卵母細胞へ移植することにより作製されうる。特に、精子または一倍体の卵の2つの核は、除核卵母細胞へ移植され、卵母細胞の細胞質中にドナーである雄性または雌性の核遺伝情報を有する未受精の二倍体卵母細胞が作製されうる。ドナーの核材料は、本技術分野において慣習的な標準技術を用いることにより、回収および/または単離されうる。同様に、移植段階は、インビトロ受精の技術分野において慣習的な技術を用いることにより行われうる(ここに参照により組み込まれる、米国特許第5,945,577号、WO98/07841を参照し、Wobus et al., Cells Tissues Organs, 166: 1−5 (2000)と併せて、上記したStice and Takeuchiもまた参照のこと。
【0083】
ウイルスベクター導入、細菌ベクター導入、および合成ベクター導入(例えば、プラスミド、リポソームおよびコロイド複合体を媒介として)を含むがこれに限定されないポリヌクレオチドトランスフェクション技術により、HS細胞へ遺伝的な修飾がもたらされうる。
【0084】
受精胚盤胞の内部細胞塊からES細胞を単離する方法は、本技術分野において周知である。このような方法は、胚盤胞様塊の内部細胞塊からのHS細胞の単離にも適用されうる。例えば、内容がここに参照により組み込まれる、Gardner et al.,, Curr. Op. Obst. Gyn., 11:307−311 (1999)、米国特許第5,843,780号(Thomson et al.)および米国特許第5,905,042号(Stice et al.)を参照のこと。
【0085】
HS細胞は、任意の動物ドナー材料から作製され、任意の動物系において用いられうる。ヒトおよび非ヒトHS細胞の双方が本発明により考えられている。適切な獣医学上の適用は、哺乳動物、魚類、爬虫類、鳥類、および両生類からのHS細胞の作製およびこれらにおける使用を含む。
【0086】
C.イムノタイプの選抜のための方法
上記のような方法により作製され、回収されたホモ接合性の減数分裂I後の二倍体生殖細胞は、HS細胞並びに、最終的にはHS由来の前駆細胞、および他の分化細胞を得るために用いられる。本発明はさらに、例えば、治療を必要とする罹患患者への内移植(implantation)または移植(transplantation)により、疾患の治療において用いられうるような、イムノタイプおよび標的遺伝子のジェノタイプでHS細胞を選抜する方法を含む。
【0087】
ホモ接合性の減数分裂I後の二倍体生殖細胞は、まず罹患した個体から得られてもよく、この場合にはイムノタイプを適合させる必要はない。しかしながら、このような生殖細胞がレシピエントの親類である、または親類でないドナーから得られた場合には、イムノタイプで選抜する必要がある。さらに、本発明の目的は、予め免疫組織学的に分類された幹細胞のためのバンクを作製することにある。特定の状況においては、自己ドナーが好ましい。しかしながら、罹患した個体が遺伝性疾患(すなわち、変異または不適切な発現のいずれかによる重要な遺伝子の欠損により特徴づけられる疾患)を患っている場合には、非自己ドナーを用いることが好ましい。替わりに、本発明の他の目的は、選抜方法の分野における当業者が、所望のジェノタイプを示す自己生殖細胞(例えば、欠損または変異した遺伝子を持たない細胞)、欠損した遺伝子を発現しうる細胞を選抜しうるということである。このような選抜技術はまた、組織移植のために免疫不適合なジェノタイプまたは発現型を回避するためにも用いられうる。
【0088】
本発明により考えられているような、移植に適切なホモ接合性の細胞群の製造方法は、レシピエントのイムノタイプを分析し(「組織タイピング」)、次いで免疫適合性の幹細胞群を選抜することを必要とする。組織タイピングのためには現在、2つの技術、血清学的(リンパ球傷害性試験)、および分子的(DNAに基づく)技術が用いられている。これらはさらに、幹細胞群を選抜するために用いられ、以下に記載される。
【0089】
1.血清学的技術
本発明において、レシピエントの血清学的タイピングのためには、完全なクラスIおよびクラスII組織タイプについては、レシピエントからの約20mLの抗凝固血液の試料が2つ必要とされる。クラスIタイピングについては、血液の試料の1つをクエン酸ナトリウムで処理し、次いで、血小板は偽陰性反応の原因となることから血小板を除去するために、脱フィブリン化(defibrinated)する。次いで該試料は、リンパ球から赤血球および顆粒球を分離するために、密度勾配培地上に積層されて遠心分離される。赤血球および顆粒球の沈殿、並びにリンパ球のバンドは、他のチューブへ除去されて洗浄される。リンパ球は次いでカウントされ、リンパ球傷害性試験のために、mLあたり150万〜200万細胞のような標準化された細胞数に調節される。カウントされた細胞およびタイピング血清は、リンパ球の表面上の特異的な細胞膜標的抗原にHLA抗血清が結合できるように、試験プレートのウェル中でインキュベートされる。クラスIアレルの血清学的特異性については、図4Aを参照のこと。次いで細胞を溶解させるために、ウサギ血清、または補体が添加される。リンパ球の細胞膜上に抗体−抗原複合体が形成され、次いで補体が活性化されて細胞溶解が誘導されたときにのみ、細胞は溶解するだろう。溶解した細胞は、死滅した細胞中への染色液の侵入−陽性反応、により検出される。溶解がなければ、細胞は染色されずに陰性反応を示す。
【0090】
クラスIIタイピングについては、第二の血液の試料がEDTAで処理される。該試料は次いで、免疫磁性ビーズ(immunomagnetic beads)(モノクローナル抗体で被覆された超常磁性(superparamagnetic)単分散ポリマー粒子)とともにインキュベートされ、磁場中に配置される。クラスII抗原がB細胞上に発現すると、免疫磁性ビーズは、B細胞への特異性を有するモノクローナル抗体により被覆される。該B細胞およびビーズは、標準技術を用いて磁場により捕捉され、洗浄され、カウントされる。次いで60μLのような標準的な体積が、上記のようなリンパ球傷害性試験のために用いられる。クラスIIアレルの血清学的特性については、図4Bを参照のこと。リンパ球傷害性試験はさらに、Hut et al, Handbook of HLA Typing Techniques, p. 194 (1993)により記載されている。
【0091】
リンパ球傷害性試験はさらに、幹細胞を分類するために用いられうる。免疫学的に充分に特性の決定された抗血清群が、親類または非親類のドナーからの幹細胞の試料に添加され、インキュベートされる。次いで、補体の源であるウサギの血清が混合液中に添加され、抗血清が幹細胞表面上のHLA抗原に結合すると活性化される。活性化により、補体は細胞を溶解させ、細胞は標準染色液を吸収して検出されるようになる。
【0092】
発生のこの早い段階においては、HS細胞が適切なHLA分子を有していなかったかどうかは明確ではないため、分子的試験(下記のセクション2を参照)もまた用いられるべきである。
【0093】
代わりの態様においては、リンパ球混合培養試験(MLC)もまた、レシピエントおよび幹細胞のクラスII分子のために用いられうる。この試験は、Bach et al. (1964), Lymphocyte Interaction: A Potential Histocompatibility Test In Vitro, Science 143:813−814に記載されているように、見込みのあるドナーの細胞上に存在する同種抗原に対する、見込みのあるレシピエントのT細胞の応答を測定しており、ここに参照により組み込まれる。
【0094】
2.分子的技術
これらの技術には、レシピエントの血液試料、または幹細胞からのゲノムDNAが必要とされる。ゲノムDNAは初めに、当業者に周知のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いることにより増幅される。PCR増幅された血液DNAは、次いで2つの技術、制限酵素(制限断片長多型分析)を用いた消化、または複数の配列特異的オリゴヌクレオチドプローブ(SSOP)を用いたハイブリダイゼーション、を用いて分類されうる。RFLP分析は、放射性ラベル化を必要としないため、信頼できるより簡便な方法として好ましい。該方法はいくつかのアレルの特異的部位を認識する酵素を用いており、それゆえに、該酵素が増幅されたDNAを消化するかどうかを単に調べることにより、特定のHLA−ハプロタイプが検出されうる。図5は、クラスIIタイピングに用いられうる制限エンドヌクレアーゼを列挙している。詳細な方法論は、Hui et al, Handbook, at 9から得られうる。
【0095】
SSOP分析においては、増幅されたDNAがナイロン膜上に固定され、次いで、特定のHLAアレルに対する選択された放射性オリゴヌクレオチドプローブとハイブリダイズすることが必要とされる。図6は、クラスIIタイピングに用いられうるSSOPの一覧表を示す。この技術の修飾である、配列特異的プライマータイピング(SSP)もまた、用いられうる。ここで、該タイピングシステムの特異性は、PCR反応の一部である。特定のHLAアレルを増幅するためにはオリゴヌクレオチドプライマーが用いられ、したがって、完全に適合するプライマーがPCR反応においてより効率よく用いられ、次いでアガロースゲル電気泳動および透視法(transillumination)を用いることにより検出されうる。
【0096】
PCRフィンガープリント法によるクラスIIマッチング、Hui et al, Handbook, at 99、HLAの多型性マイクロサテライト遺伝子座のPCRによる特徴づけ、Martin et al., Immunogenetics 47:131−138, (1998)のような他のPCR法もまた、本発明により考えられている。
【0097】
HLAの多型性マイクロサテライト座の特徴づけは、レシピエントおよびドナーのHLAハプロタイプを予測するのに好ましい技術であり、ドナーおよびレシピエントが親類である場合に特に有用である。Martin et al., supraにより記載されているように、多数のマイクロサテライト反復がヒトゲノム中に散在しているのが見られる。これらのマイクロサテライトは高度に多型性であり、メンデル型で遺伝され、こうして遺伝マーカーとしての利用性が付与される。HLA内のまたは近傍の12のマイクロサテライトは、Martin et alにより分類され配列決定された。マイクロサテライトの配列決定に用いられるPCRプライマーについては図7を参照のこと。さらに、アレルは大きさに従って示された。これらのマイクロサテライトおよび特定のHLAアレルの間の連鎖の不均衡は、これらのマイクロサテライトがHLAタイピングを予測でき、マーカーとして用いられうるということを示唆している。図8は、HLA−I、IIおよびIII領域および12のマイクロサテライトの相対的な位置の地図を示す。
【0098】
D.ジェノタイプの選抜のための方法
特定の例においては、標的のジェノタイプの存在で選抜することが必要である。上記のように、本発明における「標的」ジェノタイプは、非変異または「通常」型、すなわち、病状に関連していない遺伝子配列であるジェノタイプだろう。よって、生殖細胞ドナーが遺伝的に関連した疾患または障害に罹患しているまたはキャリアーである例では、各ドナーのホモ接合性の減数分裂I後の二倍体生殖細胞を生じる各HS細胞系のジェノタイプを分析し、所望の標的ジェノタイプを有する群のみを選抜することが必要である。変異ジェノタイプを有する群は、さらなる発生から除去されるべきである。各ドナー生殖細胞は、特定のハプロタイプについて二倍体およびホモ接合性であることを思い出すこと。よって、それから生じる(すなわち、減数分裂I後の二倍体生殖細胞系およびステムプラズム系の有糸分裂の活性化)各細胞群は、双方ではなく、一または他方のハプロタイプを均質に有している。
【0099】
細胞群の遺伝的構成または「ジェノタイプ」を分析するためには多数の技術がある。ほとんどは、そこからcDNAが得られる遺伝的材料(例えば、ゲノムDNAまたはmRNA)の試料の、代表的な細胞からの抽出で始まる。試料は通常、PCRのような技術を用いて増幅され、部分的なまたは完全なゲノム「ライブラリー」を得るためにクローン化される。該ライブラリーは次いで、通常または変異配列の存在によりスクリーニングされうる(screened)。前記のように、通常配列を含有する群がさらなる発生のために選抜され;変異配列(すなわち、病状と関連している)を含有する群は除去されるだろう。遺伝子変異は、ゲルを用いる配列決定、ゲルを用いない配列決定、および遺伝マーカーを含むがこれに限定されない技術を利用した多くの方法により検出されうる。得られた配列は、変異または標的(すなわち、通常)配列の存在で自動的に走査され(scanned)うる。
【0100】
1.ゲルを用いる配列決定
最も一般的な核酸配列決定法は、一般的には特異的な開裂により切断されまたはDNAポリメラーゼにより合成されたゲノムDNAまたはcDNAから、ポリアクリルアミドゲルのようなゲルを用いた、DNA断片の分離を用いる。ゲルを用いる配列決定技術の例は、マクサム−ギルバート(Maxam−Gilbert)配列決定(化学分解法とも称される)およびサンガー(Sanger)配列決定(鎖終結法またはジデオキシ法とも称される)を含むがこれに限定されない。
【0101】
マクサム−ギルバート配列決定(ここに参照により組み込まれる、Maxam et. al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74:560−564, 1977)は、DNAを特異的な塩基で開裂させ、異なる長さの断片を生じさせるための化学物質を用いる。多重配列決定として知られているマクサム−ギルバート法の改良により、研究者が単一のDNA配列決定ゲル上で約40クローンを分析することが可能である。
【0102】
サンガー配列決定は(ここに参照により組み込まれる、Sanger et. al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74 5463− 5467, 1977)、4つの異なる反応で種々の長さのDNA鎖を合成するために酵素的方法を用いること、4つの塩基のうちの1つにより占有された位置でDNA複製を停止させること、および、次いで、得られた断片の長さを決定することを含む。
【0103】
マクサム−ギルバートおよびサンガーは、ネスト(nested)DNA断片が作製される方法において第一に相違する。双方の方法が機能するのは、ゲル電気泳動によればDNA分子がとても高感度に分離され;1ヌクレオチドのみにより大きさが異なる断片さえも分離されうるためである。これらの配列決定法におけるほとんど全ての段階は、現在では自動化されている。特定の周知の疾患遺伝子は、断片分離速度を増加させるための高電圧キャピラリーおよび極薄(ultrathin)電気泳動のような技術を用い、安定なアイソトープラベルを検出するための共鳴イオン分光法を利用することにより配列決定されうる。
【0104】
2.ゲルを用いない配列決定
ゲルを用いない配列決定技術もまた用いられ、これは効率を数オーダーの規模で増大させることを目的としている。これらの技術は、(a)フローサイトメトリーにおける、個々がラベル化された塩基の強化された蛍光検出;(b)走査型トンネル顕微鏡または原子間力顕微鏡の利用によるDNA鎖上の塩基配列の直接解読;(c)DNA配列の、強化された質量分析、および(d)短パネル(short panel)の周知の配列のヌクレオチドに対するハイブリダイゼーションによる配列決定を含むがこれに限定されない。
【0105】
ハイブリダイゼーションによる配列決定(Sequencing by hybridization (SBH))は、1以上のDNA試料の短時間での効率的な同定および配列決定に適用されうる。この手法は、DNA診断学、法医学、および遺伝子マッピングにおいて、多くの適用を有している。この手法はまた、遺伝的疾患および他の特性の原因である変異を同定するため、生物多様性を評価するため、および他の多くのタイプのDNA配列に基づくデータを作成するためにも用いられうる。
【0106】
ハイブリダイゼーションによる配列決定(SBH)のためにはいくつかのアプローチがある。SBHフォーマット1においては、DNA試料を整列させ、ラベル化プローブを該試料とハイブリダイズさせる。試料DNAと同一のセットを有するレプリカ膜が、いくつかのプローブの平行スコアリング(parallel scoring)のために用いられ、および/またはプローブは多重使用される。DNA試料をナイロン膜上に整列させハイブリダイズさせる技術はよく発展している。各アレイ(array)は多くの回数再使用されてもよい。フォーマット1は、多数の試料の一括処理に特に効率的である。
【0107】
SBHフォーマット2においては、プローブを整列させ、ラベル化DNA試料断片を、整列したプローブにハイブリダイズさせる。この場合において、1の断片の完全な配列は、整列したプローブとの同時のハイブリダイゼーション反応により決定されうる。他のDNA断片の配列決定には、同じオリゴヌクレオチドアレイが再使用されうる。フォーマット2の変形においては、DNAアンカー(anchors)を整列させ、標的DNAの末端に存在するオリゴ配列を決定するためにライゲーション(ligation)が用いられる。
【0108】
フォーマット3においては、2セットのプローブが用いられる。1セットはアレイの形で用いられ、もう1つの、ラベル化セットは複数ウェルプレート中に貯蔵される。この場合において、標的DNAはラベル化される必要はない。標的DNAおよび1つのラベル化プローブが、整列されたプローブのセットに添加される。1つの結合したプローブおよび1つのラベル化プローブの双方が、標的DNA上で隣接してハイブリダイズした場合には、それらは共有結合により連結され、算出されるべき長さの2倍の配列を生成する。この過程によれば、より小さい断片でのDNAサブクローニングを伴わずに、長いDNA断片、例えば完全な細菌ゲノム、の配列決定が可能である。
【0109】
SBHについてのさらなる詳細については、ここに参照により組み込まれる、米国特許第5,503,980号、第5,683,881号、および第6,025,136号を参照のこと。その内容が全てここに参照により組み込まれる、Bainst, W., et al., J. Theoret. Biol., 135: 303−307 1988; Matthews, J.A., et al., Anal. Biochem., 169, 1− 25, 1988; Syvanen, A.C., Medical Biology, 64, 313−324 1986; and Lehrach, H., et al., Genome Analysis, 1, 39−71, 1990もまた参照のこと。
【0110】
3.遺伝マーカー
特定の遺伝子配列の存在に相関する短い配列である遺伝マーカーが、変異または通常遺伝子の存在を検出するために用いられうる。本発明において有用な遺伝マーカーの例は、物理地図作成のための標準マーカーである短い配列である、配列タグ部位(STSs)、、および発現遺伝子を同定するための独特なマーカーである、発現配列タグ(ESTs)を含むがこれに限定されない。これらのマーカーにより、たいていのヒト遺伝子を迅速に同定する手段が提供される。ESTアプローチの他の適用は、染色体に沿った遺伝子の位置を決定することおよびゲノム配列中のコード領域を同定することを含む。
【0111】
遺伝マーカーは、それらが高度に遺伝性で、複対立(multi−allelic)で、および多数である場合に、最大の利用性を有する。たいていの遺伝マーカーは、それらのアレルが、1の世代から次の世代へ高度に保存されるDNAのヌクレオチド配列によって決定され、それらのアレルの検出は自然環境により影響を受けないため、高度に遺伝性である。進化の過程において、マーカーの遺伝子座を規定する稀な、遺伝的に安定な変異がDNA配列中に生じ、他に存在するアレルとともに、数世代にわたり散在したため、マーカーは複数のアレルを有している。まれに起こる安定な変異に結びついたDNAの高度に保存された特性により、遺伝マーカーは異なるジェノタイプを予測もでき、識別もできる。
【0112】
DNAフィンガープリント法は、例えば、単離されたDNAの試料におけるマーカーDNAの存在を比較することにより、種々の源から単離されたDNAにおける配列の差異を評価する方法を示すために用いられる広義の語である。一般的に、DNAフィンガープリント法は、異なる種の生物体からのDNAまたは同種の異なる個体からのDNAを分析および比較するために用いられる。フィンガープリント法により検出されるDNA配列の差異は、DNA多型と称される。ある生物体のDNAにおけるDNA多型の存在は、このような生物体の遺伝的起源が、そのDNAが多型を有しない生物体の遺伝的起源とは異なるということを示すのに役立つ。このような多型は、例えば、ゲノムにおける挿入、欠失、および/または変異の発生により生じうる。
【0113】
制限断片長多型(RFLP)(Bostein et al., Am. J. Hum. Genet. 32:314−331, 1980);一本鎖DNA高次構造多型(SSCP)(Fischer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:1579−1583,1983; Orita et al., Genomics 5:874−8791989);増幅断片長多型(AFLP)(Vos et al., Nucleic Acids Res. 23:4407−4414, 1995);マイクロサテライトまたは単一配列反復(SSR)(Weber, J. L. et al., Am. J. Hum. Genet. 44:388−3961989);高速増幅多型DNA(RAPD)(Williams et al., Nucleic Acids Res. 18:6531−6535 1990);配列タグ部位(STS)(Olson et al., Science 245:1434−1435, 1989);遺伝ビット分析(GBA)(Nikiforov et al., Nucleic Acids Res. 22:4167−4175, 1994);アレル特異的ポリメラーゼ連鎖反応(ASPCR)(Gibbs et al., Nucleic Acids Res. 17:2437−2448, 1989;, Newton et al., Nucleic Acids Res. 17:2503−2516, 1989);ニックトランスレーションPCR(例えば、TaqMan.TM.)(Lee et al., Nucleic Acids Res. 21:3761−3766, 1993);およびアレル特異的ハイブリダイゼーション(ASH)(Wallace et al., Nucleic Acids Res. 6:3543−3557, 1979); Sheldon et al., Clin. Chem. 39(4):718−719 1993)を含む多くの遺伝マーカー技術がフィンガープリント法に適合する。上記の各文献は、ここに参照により組み込まれる。
【0114】
RAPDおよびAFLP分析のためのキットは、例えば、Perkin Elmer Applied Biosystems(Foster City, Calif.)から商業的に入手できる。例えば、制限断片長多型(RFLP)技術は、DNAの制限酵素消化、それに続くゲル電気泳動による消化されたDNAのサイズ分離、およびサイズ分離されたDNAの特異的ポリヌクレオチド断片とのハイブリダイゼーションを用いる。ポリヌクレオチドプローブが結合する制限断片の大きさにおける差異は、DNA試料における配列の差異、すなわちDNA多型を反映する。ここに参照により組み込まれる、Tanksley, Biotechnology 7:257−264 (1988)を参照のこと。
【0115】
PCRを用いるフィンガープリント法によれば、一般的にはゲル電気泳動により、分離されうる特定のサイズの、複製可能な多数のDNA断片が生じる。これらの断片は可視化され、増幅されたDNAの「フィンガープリント」を生成する。サイズ分離された断片の可視化は、例えば蛍光色素を用いた直接的な可視化、ポリヌクレオチドプローブを用いたハイブリダイゼーション、またはPCR中の増幅産物のラベル化(放射性または蛍光的)のいずれかにより行われ、ゲル中でのラベル化産物の検出が続く。これらのフィンガープリントは、多様な用途:親子分析;特定の性質の連鎖分析;ある種における個体間の遺伝的関係の程度の分析;および種間の系統発生的関係の分析、を有する。これは、農業において、特定のジェノタイプに特異的な遺伝的特性のマーカー補助選択(例えば、穀物または動物において)、量的形質遺伝子座(QTLs)の同定およびマッピング等のためのかなりの商業的な用途を有する。
【0116】
遺伝マーカー、および配列決定を用いない遺伝子の検出のための技術についてのさらなる詳細については、全てここに参照により組み込まれる、米国特許第6,141,657号、第5,683,880号、および第6,100,030号を参照のこと。
【0117】
E.HS細胞の方向づけられた分化(directed differentiation)のための方法
HS細胞は、皮膚、頭髪、神経組織、膵臓島細胞、骨、骨髄、下垂体、肝、膀胱、および、完全にここに参照により組み込まれる、米国特許出願第09/997,240号および米国仮出願第60/253,943号に記載されているようなヒトを含む動物において診断上のまたは治療上の利用性を有する他の組織、を含むがこれに限定されない、3つの全ての胚葉(内胚葉、中胚葉、および外胚葉)を起源とする種々のタイプの組織へ分化するように誘導されうる。
【0118】
分化技術の分野における当業者、特にES細胞および胚性癌腫(奇形癌)細胞の分化に長けた者は、過度の実験なしに、多分化能性HS細胞が所望のタイプ/の組織へ分化するように誘導しうる。
【0119】
本発明の単離された多分化能性HS細胞は、研究、診断の目的での、または個体への内移植のための分化組織のインビトロ培養を含む種々の治療的用途のために、選抜された組織へ分化しうる。好ましくは、HS細胞は、HS形成のためにドナー材料を提供した個体において治療的に用いられるだろう。雌性においては、これは減数分裂I後の二倍体卵母細胞の活性化によって、または2つの一倍体卵母細胞の融合によって達成され;雄性においては、これは二次精母細胞の活性化もしくは精細胞の融合によって、または除核卵母細胞への精核の移植によって達成されうる。
【0120】
ES細胞の単離および培養のために用いられるよく知られた方法は、HS細胞を用いる使用に適合しうる。例としての方法は、Hogan et al., supra, pp. 254−262, 265−272により提供される。例えば、Hogan et al.は、最適な培地は、グルコースおよびピルビン酸ナトリウムを含有し、さらにグルタミン(2mM)、非必須アミノ酸(0.1mM)、メルカプトエタノール(0.1mM)またはモノチオグリセロール(0.15mM)、ゲンタマイシン(50μg/mL)、15%血清(例えば、胎児ウシ血清)、および白血病阻害因子(LIF)が添加された、ダルベッコ修飾イーグル培地(Dulbecco’s modified Eagle’s medium)のような7.2−7.4pHに緩衝化された重炭酸イオン培地であると記載している。Ca++/Mg++非含有リン酸緩衝化生理食塩水中のトリプシンおよびEDTAの混合物が、細胞を組織培養ディッシュ(dishes)から分離させ、お互いに分離させるために用いられうる。幹細胞は、増殖を高め、幹細胞の未分化状態を維持するための因子を提供するために、好ましくは、LIFの添加された培地中で、フィーダー細胞層上で培養される。線維芽細胞、特にマウス胚線維芽細胞(MEF)およびSTOマウス線維芽細胞が、好ましいフィーダー細胞である。フィーダー細胞は、マイトマイシンC、またはガンマ線を用いた処置により有糸分裂が不活性化されるべきである。フィーダー細胞には別のタイプが用いられてもよく、フィーダーのない系が用いられてもよい。生育可能な幹細胞培養の調製および維持における各段階のための詳細なプロトコールは、Hogan et al., supraにより提供される。
【0121】
同様に、ES細胞の単一コロニーを単離し、それをDNAの単離およびスクリーニング(screening)ができるような充分な数に増殖させるための方法は、HS細胞に適用されうる。例えば、Hogan et al., supra, at pp. 279−281には:自動ピペッター(pipettor)を用いた、培養ディッシュの単一ウェルへのトリプシン処理されたコロニーの抽出および転移、並びに、配管およびマウスピース(mouthpiece)に連結された滅菌の、ガラスパスツールピペットを用いた、トリプシン/EDTAのマイクロドロップ(microdrop)へのトリプシン処理されていないコロニーの抽出および転移、を含む幹細胞単離技術が記載されている。好ましいクローンは、迅速な技術およびPCRを用いて同定され評価されうる。
【0122】
染色体異常の蓄積の危険性を最小化するため、貯蔵のバイアルは凍結し、可能な限り速やかに貯蔵すべきである。培養の適切な凍結および貯蔵の方法は、ES細胞についてはよく知られており、HS細胞に対して適用されうる。例えば、細胞培養からの試料の凍結、トリプシン処理、ペレット化および再懸濁についての詳細なプロトコールが記載されている、Hogan, et al., supra, pp.283を参照のこと。多分化能性細胞の分化のための方法は、以下で論ずる。これらの方法は、本発明のHS細胞を含む多分化能性細胞を分化させるための方法の、網羅的でなく例示的な列挙として予定されている。本発明は、ここに詳述されず、または未だ発見されていない技術を含む、本技術分野において周知の分化方法を用いて行われうる。
【0123】
例えば、Hole(ここに参照により組み込まれる、Cells Tissues Organs 165:181−189, 1999)は、HS細胞を分化させるために適用されうる、インビトロでの胚性幹細胞からの造血細胞の分化を方向づける方法を記載している。さらに、ここに参照により組み込まれる、Doetschman et al., Embryol. Exp. Morphol. 87:27−45, 1985は、懸濁培養中で増殖したES細胞からの白血病阻害因子(LIF)の回収により、赤血球およびマクロファージからなる血島を含有する嚢胞性胚様体が形成されるということを示唆している。幹細胞からの、好中球、マスト細胞、マクロファージおよび赤血球系細胞を含む他の造血細胞の作製もまた記載されている(例えば、ここでそれぞれ全内容がここに参照により組み込まれる、Wiles and Keller, Devel. 111:259−267,1991; Keller et al, Mol. Cell. Biol. 13:473−486, 1993a;およびLieschke and Dunn, Exp. Hematol. 23:328−334, 1995を参照のこと)。これらの方法は、過度の実験なしに、本発明のHS細胞を用いた使用のために適用されうる。
【0124】
ここに参照により組み込まれる、Cho et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:9797−9802, 1999により記載されている、ES細胞を成熟したIg分泌Bリンパ球へ効率よく分化させる技術もまた、本発明のHS細胞を用いた使用のために適用されうる。同様に、ここに参照により組み込まれる、Dani, Cells Tissues Organs 165: 173−180, 1999には、ES細胞を脂肪細胞へ分化させる方法が記載されている。例えば、分化の初期段階に胚様体をレチノイン酸(RA)で短時間処理すると、脂肪生成へとつながるようである。
【0125】
種々のニューロン細胞およびニューロンへの幹細胞の分化を引き起こす技術は、ここに参照により組み込まれる、Okabe et al., Mech. Dev. 59: 89−102, 1996により記載されている。同様に、損傷脊髄の治療における特定の用途を有する、幹細胞由来の希突起膠神経細胞(oligodendrocyte)およびニューロンが、ここに参照により組み込まれる、McDonald et al., Nature Medicine 5:1410−1412, 1999により記載されている。これらの技術は、過度の実験なしに、本発明のHS細胞を用いた使用のために適用されうる。
【0126】
特定の細胞系譜を得るための、OP9のような補助細胞系の使用もまた考えられる。例えば、赤血球系、骨髄系およびリンパ球系の系譜に関連する、Nakano el al., Science 265: 1098−1101, 1994(ここに参照により組み込まれる)およびNakayama el al., Blood 91:2283−2295, 1998(ここに参照により組み込まれる)を参照のこと。
【0127】
上皮細胞と同様に、濾胞細胞への本発明のHS細胞の分化を引き起こす技術もまた考えられる。例えば、Taylor et al., Cell 102: 451−361, 2000(ここに参照により組み込まれる)を参照のこと。特定の制御遺伝子の発現もまた、分化を方向づけるために用いられうる。例えば、造血系遺伝子に関連する、Hole et al., Blood 90:1266−1276 1996a, および Battieres Clin. Hematol. 3:467−483, 1997(ここに参照により組み込まれる)を参照のこと。同様に、PPAR(PPARδおよびPPARγ)並びにC/EBPδ(C/EBPβ、C/EBPδおよびC/EBPα)を含むがこれに限定されない、脂質代謝に関与する核制御因子もまた、前脂肪細胞の脂肪細胞への最終分化を誘導しうる。このような因子は、本発明の分化方法において有用性があるだろう。
【0128】
必要とされる機能によって、分化に特異的な遺伝子の発現を検出することにより、組織特異的抗原を検出することにより、細胞または組織の形態を検査することにより、イオンチャネル機能のような機能的発現を検出することにより;またはHS細胞の分化を検出するのに適切な任意の手段により、分化が評価されうる。
【0129】
胎生期癌(EC)細胞の、種々の胚性または胚体外細胞タイプへの分化を誘導する方法は、HS細胞の分化を誘導するために用いられうる(Andrews, APMIS 106:158−168 1998)。HS細胞は、所望の細胞タイプまたは組織への細胞のコミットメント(commitment)および分化を誘導するための周知の種々の因子に対する曝露により、インビトロにおける方向づけられた分化を経ることができる。インビトロにおける分化の機構の多くは、分化の開始を促進するための周知の増殖因子の除去を伴う。これらの因子が培地から除去されると、フィーダー細胞なしで懸濁液中で増殖している幹細胞は、胚様体として知られ、その中に3つの全ての胚葉の子孫が見出されうるクラスターを形成する。さらなる増殖因子および化学物質を含む培地を追加することにより、胚様体中での特定の細胞系の存在が促進されうる。得られた細胞群においては、その後、含まれる所望の細胞タイプの群が増加し、次いで選択的に単離されうるだろう。多分化能性幹細胞および、医療におけるそれらの使用の議論については、Edwards et al., Modern Trend., 74(1) : 1−7, 2000(ここに参照により組み込まれる)を参照のこと。
【0130】
このような分化制御因子を説明する例としては、サイトカイン、ホルモン、および、LIF、GM−CSF、SCF、IL−3、甲状腺ホルモン(T3)、幹細胞因子(SCF)、線維芽細胞増殖因子(FGF−2)、血小板由来増殖因子(PDGF)、毛様体神経栄養因子(ciliary neurotrophic factor)のような細胞制御因子を含むがこれに限定されない。GM−CSF、SCF、およびIL−3のような刺激性サイトカインが分化を促進させることが示されている(Keil F. et al., Ann. Hematol. 79(5):243−8, 2000(ここに参照により組み込まれる))一方で、LIFのような抑制性因子がマウス胚性幹(ES)細胞を未分化の多分化能性状態に維持することが示されている(Zandstra PW, et al., Blood 96(4): 1215−22, 2000(ここに参照により組み込まれる))。ニワトリ破骨細胞の推定される前駆体からの分化をSCFが刺激することが示されている(ここに参照により組み込まれる、van’s Hof RJ, et al., FASEB J. 1997 Mar;l l (4):287−93, 1997)一方で、固定されたGHFT細胞における、乳腺刺激ホルモン産生細胞の分化の開始およびプロラクチン発現の双方においてFGF−2が重要な役割を果たしていることが示されており、それによって、異なる下垂体前葉細胞への幹細胞の分化を制御する機構を示唆している(ここに参照により組み込まれる、Lopez−Fernandez J. et al., J. Biol. Chem. 275(28):21653−60, 2000)。血小板由来増殖因子(PDGF−AA、−AB、および−BB)がニューロンの分化を支援するのに対し、毛様体神経栄養因子および甲状腺ホルモンT3は星状細胞および希突起膠神経細胞のクローンを生じさせる(ここに参照により組み込まれる、Johe KK, et al., Genes Dev. 10(24):3129−40, 1996)。
【0131】
HS細胞は、インビボにおける、好ましくはインサイチュにおける移植により分化が誘導され、ここで、細胞は組織的および機能的な分化を経て、レシピエント細胞との間に適切な結合を形成する。移植部位において存在する内因性制御因子は、特定のタイプの分化細胞または組織への幹細胞の分化を方向づけうる。替わりに、皮下、腹膜、および腎被膜に移植された幹細胞から、異なる分化細胞群および/または組織群が得られる。腎被膜移植法の詳細な説明については、Hogan, supra, pp. 183 to 184を参照のこと。
【0132】
種々の内胚葉細胞タイプへの多分化能性HS細胞の分化は、移植を目的とした、またはHS細胞が栄養素を吸収しプロセシングできるのを促進するのに、または高投与量のRAによる処置によって若しくは骨の形態形成タンパク質(BMP)−2(P era and Herzfeld,Reprod.Pert.Dev.80:551−555 1998)などのトランスフォーミング成長因子β超科のものによって内胚葉前駆細胞に分化するように誘導されるパターン形成を指示するのに使用されるなど、優れた治療上の含意(implication)を有している。HS細胞系にはまた、別の培養系において誘導されるものもある。例えば、非神経性の分化は、ヘキサメチレンビスアセトアミド(HMBA)により誘導されうる(Andrews, APMIS 106: 158−168 1998)。BMP−2は、体壁性(parietal)または内臓性(visceral)の内胚葉への分化を特異的に誘導するために用いられうる(Rogers et at., Mol. Bio. Cell. 3:189−196 1992)。BMPはインビボにおける軟骨および骨の増殖を誘導する分子であるが、BMPの伝達暗号(messages)は、発達中の心臓、毛嚢および中枢神経系を含む多くの非骨性の組織においてもまた発現しており、細胞のコミットメントおよび分化における重要な役割を示している。
【0133】
F.予防上および治療上の利用性
本発明の一実施態様は、遺伝病または遺伝的疾患、神経学上のまたは神経変性の疾患、外傷性損傷および癌、を含むがこれに限定されない疾患の治療のために、罹患者に対して移植されうる細胞および組織を増殖させる方法である。本発明の美容上の他の適用は、頭髪置換のための皮膚移植および/または他のそのような適用である。
【0134】
HS細胞は、皮膚、頭髪、神経組織、膵臓島細胞、骨、骨髄、下垂体、肝、膀胱、および、米国特許出願第09/997,240号および米国仮出願第60/253,943号に記載されているようなヒトを含む動物において診断上のまたは治療上の利用性を有する他の組織、を含むがこれに限定されない、3つの全ての胚葉(内胚葉、中胚葉、および外胚葉)を起源とする種々のタイプの組織へ分化するように誘導されうる。
【0135】
本発明は、イムノタイプおよび/またはジェノタイプで予め選抜された単離されたHS細胞からの適切な置換細胞、細胞、組織または器官群をインサイチュまたはインビトロにおいて生じさせることにより、障害または疾患状態を治療する方法を提供する。インサイチュまたはインビトロにおいて細胞の分化を方向づける方法は、上記のセクション、並びに米国特許出願第09/997,240号および米国仮出願第60/253,943号に記載されている。
【0136】
障害および疾患状態の例としては、外傷性損傷(例えば、外傷後の修復および再構成、四肢置換のため、脊髄損傷、火傷など)および先天性異常;細胞、組織および器官の病的および悪性状態(例えば、癌);並びに、筋(嚢胞性線維症、筋ジストロフィー、心臓病の状態)、神経(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、および多発性硬化症)、上皮(例えば、失明およびミオパチー、粥状動脈硬化症および他の狭窄血管状態、クローン病のような酵素不全、並びに糖尿病のようなホルモン不全)、および結合組織(例えば、免疫状態および貧血)の細胞および組織の変性および先天性疾患を含むがこれに限定されない。HS由来の細胞および組織は、必要とする被験者に、好ましくは該被験者自身のドナー材料を用いて、移植(grafted)または移植(transplanted)されうる。
【0137】
現在、遺伝性の疾患の治療のための遺伝子療法は、それほど成功してはいない。これには多くの理由があり、最も重要なのは、正常なDNAを、安定に組み込まれて発現するように患者の細胞中に配置するのは不可能であるということである。さらに、例えば、ADA欠損型を含む、重症複合免疫不全症(SCID)を治療するために、正常なDNAを有するT細胞を患者に移植するという遺伝子修正T細胞療法のような、遺伝子置換療法も同様に標的とされている。ここで直面する問題は、修正されたT細胞はたった1つのタイプの抗原に対するものであり、それらから広範な免疫応答は得られないということである。現在の遺伝子療法の適用が直面しているさらに他の問題は、変異遺伝子の産物もしくは正確な機能が知られていないかもしれず、または遺伝的疾患が、遺伝子置換により治療されえない因子の全体的なカスケードに関与しているかもしれないということである。
【0138】
本発明は、これらの懸念を回避するための手段を提供する。例えばSCIDにおいては、局所的な内因性因子が広範なT細胞およびB細胞を誘導できるように、HS細胞が患者の骨髄に移植されうる。HLA適合性、または移植片対レシピエント病の問題は、該細胞が免疫学的に適合性であるため、ここでは問題ではない。同様に、欠失遺伝子産物(missing gene product)または酵素の欠損の原因となる変異により生じた遺伝的疾患の治療のために、HS細胞は有用でありうる。例えば現在、フェニルケトン尿症の治療法は患者の食事からフェニルアラニンを除くことであり、これは、該患者はそれをチロシンへ変換するのに必要な酵素を産生しないためである。分化したHS細胞は、必要とされる酵素を産生するためにこれらの患者に対して移植されうる。同様に、HS細胞は、分化したHS細胞が欠失遺伝子産物、すなわち凝固因子VIIIを産生しうる、血友病Aのような疾患における移植の適用を見出しうる。
【0139】
本発明の他の実施態様は、インビボにおける、好ましくはインサイチュにおける移植によりHS細胞の分化を誘導し、それによって、細胞が組織的および機能的な分化を経て、レシピエント細胞との適切な結合を形成するステムプラズムを生じさせる方法である。移植部位に存在する内因性の制御因子は、特定のタイプの分化した細胞または組織への幹細胞の分化を方向づけしうる。替わりに、分化した異なる細胞および/または組織群は、皮下、腹膜、および腎被膜に移植された幹細胞から生じる。これらのおよび他の方法は、米国特許出願第09/997,240号および米国仮出願第60/253,943号に記載されている。
【0140】
本発明の単離された多分化能性のHS細胞はまた、易感染状態の動物におけるインビボでの分化により選択された組織へと分化し、それに続けて種々の治療上の用途のために該組織を単離しうる。そしてHS細胞はまた、研究または診断の目的で、インビトロにおいて培養され、分化しうる。
【0141】
G.HLAタイプされたHS細胞の寄託
HS細胞はホモ接合性であり、ただ1つのHLAハプロタイプを有する。よって、ドナーのHS細胞は、ヘテロ接合性幹細胞のように2つではなくレシピエントと適合すべきただ1つのHLAハプロタイプを有する。上記で論じたように、22の異なるHLA A抗原、42の異なるB抗原、9の異なるCw抗原および18のDR抗原がある。このような多数の多型性HLAハプロタイプにより、レシピエントとドナーとの間の2つのハプロタイプが完全に適合することは極めて困難である。連鎖の不均衡があり、特定の民族的なHLAハプロタイプが存在する場合のような最善の場合のシナリオにおいても、2つのハプロタイプが適合するのを見る機会は1,000分の1から数百万分の1にわたる。しかしながら、同様のシナリオにおいても、共通のハプロタイプについては200人中1人未満で1つのハプロタイプの適合が達成されうる(アメリカ合衆国における白人集団についての約172の共通のハプロタイプの全体的な不均衡を示している、Martin et al., supra.を参照のこと)。よって、HS細胞は、集団全体における個体が有する少なくとも1つのハプロタイプと免疫組織学的に適合するHS細胞群の寄託またはバンクを提供するために、複数の民族性の任意のドナーから得られる。一般的な集団のほとんどに提供する(すなわち、移植に適切な免疫組織適合性細胞を提供する)ため、寄託は、各々が異なるHLAハプロタイプを有する、約200の異なるHS細胞系のみを含有することを要する。
【0142】
好ましい実施態様においては、世界中の開業医による遠隔の、迅速なスクリーニングを容易にするため、寄託の内容は、例えば検索可能なコンピュータデータベースとして分類される。本発明は、複数のドナーからの、ジェノタイプ(genotyped)されたホモ接合性幹(HS)細胞群を作製する方法を提供する。理想的には、広く分散したHLAハプロタイプを高い確率で有するようにドナーが選択されるだろう。ドナーは次いで、HLAハプロタイプおよびジェノタイプを分析されるだろう。次いで、特定のアレルについてホモ接合性の内部細胞塊(ICM)を各々が含有する複数の胚盤胞様塊を発生させるために、ドナーのホモ接合性の減数分裂I後の二倍体生殖細胞の有糸分裂を活性化し、選抜されたICMからHS細胞を単離し、および各HS細胞系を作製するために該HS細胞を培養し、各HS細胞系のジェノタイプを分析し、生じた各HS細胞系に関連した各HLAハプロタイプおよびジェノタイプを分類することにより、HSが該ドナーから得られる。
【0143】
以下の実施例は、さらに、本発明の選択された好ましい実施態様の実施および利用性の整理を行った実験を例示しており、ただし、それらは上記の本発明の教示または開示を限定するものでは全くない。
【実施例】
【0144】
H.実施例
実施例1.ホモ接合性幹細胞の形成、並びにそれらの、前駆細胞および、ステムプラズム内の3つの胚葉の種々の組織への分化
実施例1(a):活性化とそれに続く第二極体の突出の防止とによる、マウスの減数分裂I後の卵母細胞からのHS細胞の誘導
3匹の、8週齢の雌性C57/BDA2F1マウス(Charles River Laboratories,Wilmington,MA)を、注射の間を48時間空けて5IU/100uLの妊馬血清ゴナドトロピン(PMS;PCCA,Houston,TX(29−1000−lBX))、および5IU/100μLのヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG;Sigma,St.Louis,MO,(C8554))を腹膜下注射することにより過剰排卵させた。HCG投与の約17時間後に73個の卵母細胞を回収し、0.3mg/mLの最終濃度にM2培地(M7167,Sigma)で希釈されたヒアルロニダーゼ(Sigma,H4272)の液滴(〜300μL)中で、新たに得られた卵母細胞をインキュベートすることにより卵丘を除去し、さらなる取扱い前にHEPES緩衝化M2培地で3回洗浄した。次いで、5μMカルシウムイオノフォア(Sigma,C7522)溶液を用いて室温で5分間処理することにより卵母細胞を活性化し、HEPES緩衝化M2培地を用いて2回洗浄した。卵母細胞は、M16重炭酸塩緩衝化培養培地(Sigma,M7292)中の5mM 6−ジメチルアミノプリン(6−DMAP)(Sigma,D2629)中、5%CO2および37℃で3時間さらにインキュベートした。インキュベーション後、M16培地を用いて卵母細胞を3回洗浄し、鉱油下、M16培地の液滴中で、胚盤胞様塊が発生するまで(4から5日)インキュベートした。次いで、胚盤胞様塊は周囲の領域の外殻から自然に孵化し、その後、マイトマイシンC処理されたマウス胚性フィーダー細胞層に該胚盤胞様塊を移し、幹細胞系形成のためにES培地(20%胎児ウシ血清(Gibco,16141−079)および1,400U/mLのLIF(Chemicon,ESG1106)を含むDMEM(Gibco,Life Technologies,Rockville,MD,11995−065)中で少なくとも15日間培養した。
【0145】
替わりに、以下の方法によりフィーダー上で培養する前に、胚盤胞様塊から栄養胞細胞を除去するために免疫的手術(immunosurgery)を行った。
【0146】
孵化した胚盤胞様塊をまず、抗マウスThy−1ウサギ血清(幹細胞培地、Accurate Chemical,Westbury,NY,ACL2001、中での1:10希釈)および抗ヒトリンパ球ウサギ血清(幹細胞培地、Accurate Chemical,CL8010、中での1:10希釈)とともに37℃で1時間インキュベートした。M2培地で3回洗浄後、胚盤胞様塊を、モルモット補体(幹細胞培地、Accurate Chemical,ACL4051、中での1:10希釈)とともに37℃で30分間インキュベートした。次いで、補体処理された細胞塊をM2培地で3回洗浄し、20%胎児ウシ血清(Gibco−BRL)、1mMグルタミン、0.1mMメルカプトエタノール(Sigma)、1%非必須アミノ酸ストック(Gibco−BRL)および1,400U/mL LIF(Chemicon,ESG1106)が添加された80%ダルベッコ修飾イーグル培地(ピルビン酸非含有、高グルコース製剤;Gibco−BRL)からなる幹細胞培地中でのさらなる培養のため、マイトマイシンC処理されたマウス胚性フィーダー細胞層に該胚盤胞様塊を移した。
【0147】
15日後、内部細胞塊由来の副生成物が生成し、これをマイクロピペットを用いた機械的分離により塊として分離し、新たな幹細胞培地中のマウス線維芽細胞フィーダー上で再播種した。均一の未分化の形態を有する単一コロニーを、マイクロピペットにより各々選抜し、機械的に塊として分離し、再播種した。培養が確立され増殖したら、トリプシン/EDTA溶液(0.05%/0.5%、Gibco−BRL)に5分間曝露させ、続けてさらにフィーダー細胞および新たな幹細胞培地上で培養することにより、培養を継代した。
【0148】
マウス胚性線維芽細胞フィーダー細胞はStemcell, Inc.(00308)から購入し、使用前に2−3回継代した。フィーダー細胞の有糸分裂を阻害するため、集密的(confluent)に増殖したフィーダー細胞の60mmディッシュの1枚を、DMEM/10%FBS培地中の10μg/mLマイトマイシンC(Sigma,M4287)を5mL用いて、37℃で3時間処理した。次いで、処理されたフィーダー細胞をDMEM/10%FBS5mLで3回洗浄し、37℃で5分間のトリプシン処理により回収し、続けてDMEM/10%FBS培地5mLで中和し、1000rpmで5分間遠心分離した。次いで、得られたマイトマイシン処理された細胞ペレットを、DMEM/10%FBS培地15mLに再懸濁し、3枚の60mmディッシュ上で培養し(5mL細胞懸濁液/ディッシュ)、使用前に37℃で一晩インキュベートした。
【0149】
実施例1(b) 雌性C57/DBA2ハイブリッドマウスからの、特定のジェノタイプおよびイムノタイプについてホモ接合性のHS細胞の誘導
ほとんどの遺伝子座およびH−2(マウスMHC)についてヘテロ接合性の5匹の雌性C57DBA2ハイブリッドマウスを、HS細胞群のために、実施例1(a)に記載されたように過剰排卵させた。11の細胞系を得て、培養により増殖させ、次いで凍結保存させた。約5回継代させた各系からの細胞を、H−2遺伝子座におけるI−E−ベータでイムノタイプし(PCRプライマーの配列は:Ebl:CAG AAC CTG AGT CCT GGG CG;Eb2: AGC AGA CCA GGA GGT TGT GGである)、マイクロサテライトマーカー(Research Genetics)を用いてD2mit42でジェノタイプした。
【0150】
マウスHS細胞のゲノムDNA抽出、PCR増幅、および遺伝分析(D2mit42マイクロサテライトマーカーを用いる)のための方法は、実施例1(f)に記載している通りであった。H−2(I−E−ベータ)のイムノタイピング(Immunotyping)は、MDEゲル(FMC Bioproducts)上での一本鎖DNA高次構造多型(SSCP)分析を用いて、H−2アレルのPCR産物を分離することにより行った。C57/DBA2ハイブリッドマウスから得られた2つの代表的なHS細胞系のジェノタイピングおよびイムノタイピングの結果は、図9A−Fに示されており、ここで、C57/DBA2マウス(図9A)、並びにその過剰排卵された卵母細胞由来の胚盤胞様塊(図9B)および2つの異なるHS細胞系からの2つの代表的なコロニー(図9Cおよび9D)が示されている。ドナーマウス(レーン1)、HS細胞系−1(レーン2)、およびHS細胞系−2(レーン3)のジェノタイプ(図9E)およびイムノタイプ(図9F)もまた示されている。
【0151】
実施例1(c):活性化とそれに続く第二極体の突出の防止とによるヒト二倍体卵母細胞からの胚盤胞様塊の発生
雌性の卵ドナーは酢酸リュールポライド(leurpolide acetate)(Lupron:TAP Pharmaceuticals,Deerfield,IL)でダウンレギュレートを受け、次いで、適切な多卵胞(multifollicular)応答を誘導するための卵胞刺激ホルモン(FSH)(Serono,Gona−F)処理を、300IU/日の量で受けることにより、COH(制御された卵胞の過剰刺激)を開始した。超音波検査の卵胞成熟の基準に達したら、10,000IU量のヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)(Serono,Profasi)を単回で投与し、hCG投与の約36時間後に経膣卵胞吸引を行った。次いで、80IU/mLのヒアルロニダーゼに約30秒間と、それに続けて10%ヒト血清アルブミンが添加されたHEPES緩衝化ヒト卵管液(tubal fluid)(HEPES−HTF−HSA)(InVitroCare,Inc.,San Diego,CA,2002および2101)に暴露することにより、回収された卵母細胞からの卵丘を除去した。
【0152】
有糸分裂の活性化を達成するため、無卵丘の成熟したM−II卵母細胞をHEPES−HTF−HSA中の5μMカルシウムイオノフォア(A23187,Sigma)を用いて33℃で5分間処理し、次いでHEPES−HTF−HSAで3回洗浄後、IVC−TWO(InVitroCare,2008)中の1〜5mMの6−ジメチルアミノプリン(6−DMAP,Sigma)中、37℃で3〜5時間インキュベートした。活性化された卵母細胞をIVC−ONE培地(InVitroCare,2006)中で3日間インキュベートし、細胞分裂および胚盤胞様塊形成のために、IVC−THREE(InVitroCare)中でさらに2日間インキュベートした。
【0153】
替わりに、卵母細胞をSTOマウスフィーダー細胞と共培養した(co−cultured)。6日目に、マイクロマニピュレータ下で補助孵化を行い、その下で保持ピペット(holding pipette)(シリンジ吸引システム)を用いて胚盤胞様塊を固定して、3時の位置の、酸性化タイロード溶液(Medi−Cult,1060−0002)で満たされた微細針を中空の囲卵腔にさらして、微小の(30ミクロン)領域に対し、ニードルチップを該領域の極めて近傍に保持することにより、酸性化タイロード溶液を放出させた。該領域の内部が貫通し(pierced)または軟化する(softened)と、酸性化タイロード溶液の放出を速やかに中止させた。胚盤胞様塊は次いで、弱った領域から放出した。胚盤胞様塊が領域から分離した後に、該塊を抗ヒトThy−1(IVC−THREE,Accurate Chemical,Westbury,NY,CBL415−CD90、中での1:10希釈)および抗ヒトリンパ球(IVC−THREE,Accurate Chemical,CL8010、中での1:10希釈)とともに37℃で1時間インキュベートすることにより、栄養胞細胞を除去するための免疫的手術を行った。IVC−THREE培地で3回洗浄後、次いで胚盤胞様塊をLOW−TOXモルモット補体(IVC−THREE,Cedarlane,CL4051、中での1:10希釈)とともに37℃で30分間インキュベートした。次いで、補体処理された細胞塊をIVC−THREE培地中で3回洗浄し、マイトマイシンC処理されたSTO(ATCC)フィーダー細胞層へ移し、20%胎児ウシ血清(Gibco−BRL)、1mMグルタミン、0.1mMメルカプトエタノール(Sigma)、1%非必須アミノ酸ストック(Gibco−BRL)および1,400U/mL LIF(Chemicon,ESG1106)が添加された80%ダルベッコ修飾イーグル培地(ピルビン酸非含有、高グルコース製剤;Gibco−BRL)からなる幹細胞培地中で培養した。図10Aを参照のこと。
【0154】
実施例1(d):活性化とそれに続く第二極体の突出およびゲノム自己複製の許容とによるヒトの減数分裂I後の二倍体卵母細胞からの胚盤胞様細胞塊の発生
過剰排卵、卵母細胞の回収、およびそれに続く卵丘の除去の方法は、実施例1(b)に記載されている通りであった。有糸分裂の活性化を達成するため、無卵丘の成熟したM−II卵母細胞に、精子によりもたらされる活性化を擬制するためのにせの細胞質内精子注射(ICSI)を行い、続けて25μMカルシウムイオノフォア(A23187,Sigma)とともに33℃で5分間インキュベートした。この方法により活性化された卵母細胞は、第二極体を突出し、一倍体となった。このような一倍体卵母細胞をIVC−ONE培地(InVitroCare,Inc.)中で3日間インキュベートし、細胞分裂および胚盤胞様細胞塊形成のために、IVC−THREE(InVitroCare)中でさらに2日間インキュベートした。その後の胚盤胞様塊の処置は、実施例1(b)に記載されている通りであった。活性化により得られる一倍体卵母細胞は、細胞質分裂を伴わずに自己のゲノムを自己複製し、二倍体細胞を生じることができる(Taylor,A.S.,et al.,Hum.Reprod.9(12):2389−97(1994);Kaufman,M.H.et al.,J.Embryol.Exp.Morphol.73:249−61(1983)。図10B−Dを参照のこと。
【0155】
実施例1(e):マウスHS細胞の増殖、このようなHS細胞のマウス腎被膜下での分化、およびこのような細胞の胚様体の形成
実施例1(a)に記載されているように胚盤胞様塊から得られたHS細胞を、コロニー形成のため、実施例1(a)に記載されているように、幹細胞培地を含む0.1%ゼラチンコートディッシュ(10cm)中のマウスフィーダー細胞上に播種した。
【0156】
ステムプラズム形成を誘導するため、HS細胞のコロニーの1つをいくつかの小片に切断し、26匹のハイブリッドマウスの2つの腎被膜のうちの1つに内移植した。次いで、内移植から1,3,6,9.5,10.5,11,12、および14週後にマウスを犠牲にすることにより、ステムプラズムを回収した。形態研究のために各ステムプラズムの半分をホルマリン中に固定し、他の半分は分子的な特徴づけのために−80℃で凍結させた。ステムプラズムは、約3週で目に見える大きさになり始めた。ステムプラズムの回収をずらすことによって、ステムプラズム内で発生した多様な組織タイプを研究した。ここで同定された組織タイプは、全て該ステムプラズム内で産生された。ステムプラズムのジェノタイプは、section C.2., supraに記載されているPCRベースアレル分析により確認した。
【0157】
胚様体(EB)を作製するため、60mmディッシュ上のHS細胞をまずPBSで2回洗浄した。次いでトリプシン/EDTA溶液を1mL添加し、細胞を37℃に5分間保持した。次いでES培地を5mL添加し、細胞スクレーパー(scraper)により細胞を持ち上げ、1000rpmで5分間遠心分離した。次いで、こうして得られた細胞ペレットをLIFを含まない幹細胞培地5mL中に再懸濁し、細胞数をカウントした。次いで、ふた(lid)および出口(vent)を有する懸濁ディッシュ(Nalge Nunc International,171099,35x10mm)上に細胞を2x106/10cmディッシュで播種した。細胞を幹細胞培地中で4日間育て、この際、細胞を15mLチューブ中に移し、細胞がチューブの底へ沈むまで約5分間待ち、次いで培地を置換することにより培地を2日おきに交換した。次いで細胞をもとのディッシュに戻し、さらなる分化のための胚様体へ凝集させた。
【0158】
実施例1(f):奇形腫内でのヒトHS細胞の分化、およびこのような分化組織の遺伝的ホモ接合性
米軍病理学研究所(Armed Forces Institute of Pathology,Washington,DC)、およびニューヨーク大学病理学科(Department of Pathology,New York University.New York,NY(Dr.J.Liu))のファイルから31の奇形腫を回収した。女性患者からの20の卵巣腫瘍においては、種々の異なる種類の専門分化した組織がみられた。分化した組織は、本技術分野において周知の方法並びに染色体3および8に対するアルファサテライトプローブを用いる代表的な場合で行われるFISH分析により確認され、二倍体であることが判明した。女性患者からの7つの卵巣腫瘍および男性患者からの4つの精巣腫瘍においてみられた未分化または分化組織の3から12の間の組織領域が同定され、遺伝分析のために各場合について選択的に顕微解剖された。各場合において、分化組織は遺伝的にホモ接合性であることが判明し、未分化組織は遺伝的にヘテロ接合性であることが判明した。
【0159】
顕微解剖。ガラススライド上の未染色の6ミクロン断片をキシレンを用いて脱パラフィン化し、100%から80%のエタノール中で洗浄し、ヘマトキシリンおよびエオジンを用いて一時的に染色し、TE緩衝液中の10%グリセロール中で洗浄した。組織の顕微解剖は、直接光顕微可視化(direct light microscopic visualization)により行った。各場合から、遺伝分析のために、6から12の間の異なる組織分化が個別に顕微解剖された。さらに、正常の、非腫瘍性の組織のいくつかの領域を得た。
【0160】
DNA抽出。得られた細胞を、トリス−HCI、pH8.0;1.0mMエチレンジアミン四酢酸、pH8.0;1%Tween20;および0.5mg/mLプロテイナーゼKを含有する緩衝液25μL中に速やかに再懸濁させ、37℃で一晩インキュベートした。プロテイナーゼKを不活性化するために混合液を5分間煮沸し、この溶液の1.5μLをDNAのPCR増幅のために用いた。
【0161】
遺伝分析。顕微解剖後に用いることができる限られた量のDNAにおけるホモ接合性を高い信頼性で同定するため、複数の異なる顕微解剖組織試料を、DIS1646およびD1S243(lp)、D3S2452(3p)、D5S346(5q)、D7S1822(7q)、Ank−1(8p)、D9S171(9p)、D9S303(9q)、Int−2およびPYGM(1lq)、IFNA(9p)、D17S250(17q)、CYP2D(22q)、並びにAR(Xq)を含む、14の異なる高度に多型性のマイクロサテライトマーカーを用いて分析した。各PCR試料は、上記のようなテンプレートDNAを1.5μL、各プライマーを10pmol、dATP、dCTP、DGTP、およびDTTPをそれぞれ20nmol、MgCl2を15mM、Taq DNAポリメラーゼを0.1U、[32P]dCTP(6000Ci/mmol)を0.05mL、および10X緩衝液を1μL、全容積10μLで含有していた。PCRは、35サイクル:95℃で1分間の変性、1分間のアニーリング(マーカーにより、55℃から60℃の間のアニーリング温度)および72℃で60秒間の伸長、で行った。最後の伸長は10分間継続させた。ラベル化増幅DNAを等容積のホルムアミドローディングダイ(loading dye)(95%ホルムアミド、20mM EDTA、0.05%ブロモフェノールブルー、および0.05%キシレンシアノール)と混合させた。
【0162】
試料は95%で5分間変性され、6%アクリルアミド(アクリルアミド:ビスアクリルアミド 49:1)を含有するゲル上にロード(loaded)され、1800Vで90分間電気泳動されうる。電気泳動後、ゲルを3mmワットマン(Whatman)紙に移し、乾燥させてもよい。Kodak X−OMATフィルム(Eastman Kodak,Rochester,NY)を用いて、オートラジオグラフィーが行われうる。
【0163】
結果。同一のアレルの一貫したホモ接合性を示す分化した奇形腫組織は、扁平上皮、グリア、および軟骨の顕微解剖試料(マーカーAnkl(トップ)およびD1S1646(ボトム)を用いて分析された)を含んでいた。コントロールとしては正常な卵巣組織を用いた。
【0164】
奇形腫のサブセット(subset)において、一致しない(discordant)ヘテロ接合性のアレルを有していることが判明した分化した奇形腫組織(マーカーInt−2、D9S303、D1S1646、D3S2452、およびAnklを用いて分析された)は、表皮、皮脂腺、気道上皮、およびグリアの試料を含んでいた。コントロールとしては正常な卵巣組織を用いた。このような腫瘍においては、アレルのヘテロ接合性は、生殖細胞における減数分裂Iの前に腫瘍形成が開始することにより生じると考えられている。奇形腫瘍細胞の開始後、次いで、無作為の、独立した事象により、減数分裂後のジェノタイプを有する前駆細胞が生じる。
【0165】
分化および未分化の双方の組織を含有する一連の卵巣奇形腫および精巣生殖細胞腫瘍もまた分析した。各腫瘍において、未分化および分化組織成分の双方を得た。ホモ接合性およびヘテロ接合性成分は、マーカーD3S2452、D3S303、CYP2D、およびD17S250を用いることにより検出した。コントロールとしては正常な卵巣および精巣組織を用いた。未熟扁平上皮、神経組織(時に同一腫瘍内の神経組織の分離した領域からの)、軟骨、腺状構造、および間葉組織を含む未分化の組織成分において、ヘテロ接合性アレルが検出された。顕微解剖により同一の腫瘍から単離された分化した組織成分は、同一のマーカーについてはホモ接合性であることが判明した。検査された成熟成分は:皮脂腺組織、毛嚢、および成熟扁平上皮(時に同一腫瘍内の扁平上皮の分離した領域からの)を含んでいた。いくつかの腫瘍においては、分化した成分が逆のホモ接合性アレルを示したが、これは、組換えを示し、または減数分裂後の異なる細胞から別々に種々の成分が生じたことを示唆している。
【0166】
実施例1(g):ヒトHS細胞からの前駆細胞の誘導
初期の分化
初期胚性線維芽細胞層を有する60mmディッシュ(Falcon,#353802)および/または0.1%ゼラチンコートディッシュ上で増殖したHS細胞を、1.5mLのトリプシン/EDTA(Invitrogen,#25300−050)でトリプシン処理し、15mLコニカルチューブ内の1.5mLのES−LIF培地内へ移す。次いで細胞を1200rpmで遠心分離し、上清を除去する。細胞ペレットを2mLのES−LIF培地中に再懸濁させて単個細胞浮遊液(single cell suspension)とし、懸濁培養−35*10mmディッシュ(NalgeNunc,#171099)中の懸濁細胞として1−3X106細胞の密度で培養して、4−6日間で胚様体(EBs)として知られる丸い球状塊を、幹細胞から形成させる。EBを15mLのコニカルチューブに移し、次いで底へ沈ませることにより、形成中のEBを2日おきに洗浄する。上清を除去し、新たなES−LIFを添加する。EBを次いで懸濁培養ディッシュへ戻す。胚様体として増殖したHS細胞は、全ての胚葉である、外胚葉、内胚葉、および中胚葉を含む。
【0167】
外胚葉前駆体。4−6日後、1mLのトリプシン/EDTA中でEBをトリプシン処理し、4mLのES−LIF培地中で洗浄し、10%血清交換(Replacement)(Invitrogen,#10828)、およびG5(Invitrogen,#17503)、N2(Invitrogen,#17502−048)またはベータNGF(100ng/mL)(R&D Systems,#256−GF)が添加されたDMEM/ノックアウト培地(Invitrogen,#10829−018)中に再懸濁させて単個細胞浮遊液とする。これらの細胞を、フィブロネクチンコート35mmディッシュ(50ug/ml)(Sigma,#F−0895)中、3−5X105/3mLで10日間培養し、2−3日おきに培地交換する。
【0168】
替わりに、0.1%ゼラチンコートディッシュでES−LIF培地中、1−2日間EBを培養し、次いで培地を6日間、インスリン(5ug/mL)、塩化セレニウム(.015nM)、トランスフェリン(50ug/mL)、およびフィブロネクチン(5ug/mL)(Sigma)が添加された無血清培地に変更する。該細胞をトリプシン処理し、単個細胞浮遊液をN2培地(N2(Invitrogen,#17502−048)、B27(Invitrogen,#17504−44)、およびbFGF(10ng/mL)(Invitrogen,#13256−029)が添加された、無血清DMEM/F12)中で培養する。次いで細胞をカウントし、ポリ−L−オルニチン(15ug/mL)(Sigma,#P36550)でプレコートされた24ウェルプレート中に、2−5X104細胞/ウェル/400uL N2培地の密度で播種し、6日間増殖させる。
【0169】
これらの前駆体は、G5、RA、FGF、NGF、GNDF、またはBNDFを添加することによりさらに分化し、異なるニューロン性細胞タイプとなる。これらはまた、細胞増殖のために、これらが存在する状態の培地中で維持される。
【0170】
中胚葉前駆体。中胚葉前駆体を得るには、上記のような10%血清交換およびベータNGFが添加されたDMEM/ノックアウト培地中の単個細胞浮遊液を、2/3日おきに培地交換しながら10日間培養する。この期間後、心臓前駆細胞を得るには、細胞をアクチビンA添加(20ng/mL)(Sigma,#A4941)調整培地中でさらに10日間培養する。替わりに、腎およびミュラー管前駆細胞を得るには、細胞をアクチビンA添加(20ng/mL)(Sigma,#A4941)調整培地中でさらに4−6日間培養後、2ng/mLのTGF−ベータ(R&D Systems,#)を培地に添加し、細胞をさらに4−6日間培養する。
【0171】
内胚葉前駆体。内胚葉前駆体を得るには、単個細胞浮遊液を、10%血清交換が添加されたDMEM/ノックアウト培地中で、ラミニンコート(10ug/mL)(Sigma,#L2020)またはコラーゲンIコート(10ug/mL)(Sigma,#C−7661)上のG5またはベータNGFとともに10日間培養する。G5またはベータNGFの替わりにHGF(20ng/mL)および/またはTGFアルファ(2ng/mL)を培地に添加し、細胞をさらに6−8日間培養する。
【0172】
替わりに、コラーゲンIコートディッシュ上でEBを播種し、ES−LIF培地中で4日間培養する。FGF(20ng/mL)を添加し、細胞をさらに3日間培養する。この期間後、HGF(20ng/mL)および/またはTGFアルファ(2ng/mL)を添加し、さらに6日間培養する。
【0173】
EBはまた、ラミニンコート接着性ディッシュ(10mg/mL)(Sigma,#L2020)または0.1%ゼラチンコート35*10mm接着性ディッシュへ移され、ES−LIF培地中で1−2日間培養される。培地を除去し、インスリン(5ug/mL)(Invitrogen,#11882)、塩化セレニウム(0.015nM)(Sigma,#S5261)、トランスフェリン(50ug/mL)(Sigma,#T−2036)、およびフィブロネクチン(5ug/mL)(Sigma)が添加された無血清DMEM/F12培地(Invitrogen,#11330−0321)。この培地をITSFn培地と称する。ITSFn培地中で細胞を6日間育て、この際2日おきに培地を交換する。
【0174】
実施例1(h):移植されたHS細胞からのホモ接合性前駆細胞の発生および単離
ホモ接合性前駆細胞を得るため、前述の記載および実施例において開示された方法により得られた多分化能性HS細胞を、易感染状態のマウスに対して腎被膜下へ移植し、インビボで4から6週間生育させた。次いで、得られた細胞塊を単細胞に細分し、細胞系へのさらなる増殖および発生のためにフィーダー細胞上で培養した。
【0175】
系のコミットメント(前駆細胞のタイプ)を評価するため、周知の系統特異的マーカー、例えば、外胚葉系に対するNF−H、ケラチン、D−ベータ−H、中胚葉系に対するエノラーゼ、CMP、レニン、カリケレイン(kallikerein)、WT1、デルタ−グロビン、ベータ−グロビン、および内胚葉系に対するアルブミン、アルファ−1−AT、アミラーゼ、PDX−1、インスリン、アルファ−FP、について、RT−PCR、ノーザンブロット、免疫組織学等のような遺伝子発現解析を行う。
【0176】
実施例2:親類(例えば、所望のレシピエントの親)により供与された材料より得られたHS細胞群からの標的イムノタイプを有するHS細胞の選抜
前述の実施例に記載された方法を用いた過剰排卵により、レシピエントの母親から卵母細胞を得る。前述の実施例に記載された方法に従ってHS細胞群が得られたら、HLA分子の最適な発現のために各HS群の試料をインビトロで分化させてもよく(例えば、造血系)、次いで、顕微リンパ球毒性試験(microlymphotoxicity assay)を用い、HLA−A、−B、および−Cについて、各群からのHS由来試料細胞を調べる。該試験は、60−または72ウェル顕微リンパ球毒性プレート上で行われる。商業的な源から得られた抗血清の群を選択し、プレート上に予め注ぎ、−40または−70℃フリーザー中で冷却する。プレートの各ウェル中に、0.5−1μLのHS細胞懸濁液(標準技術を用いて、ミリリットルあたり1.5x106HS由来試料細胞で、RPMIまたはタイピングのための希釈液中にHS細胞を懸濁することにより調製される)を分取し、20−22℃で30分間インキュベートする。次いで、プレートの各ウェルに2−5μLの補体を添加し、20−22℃で60分間インキュベートする。補体は、凍結乾燥型のウサギプール血清として商業的に入手できる。次いで、1μLの5%エオジン溶液と、それに続けて1μLのホルムアルデヒドを各ウェルに添加する。適当な顕微鏡を用い、細胞中に固定された染料の量により判断される、各ウェルにおける細胞死を確認する。0から8の、標準的なスコア付けシステムを用い、ここで8は80−100%の強陽性を示し、2は20−40%の偽陽性を示す。
【0177】
次いで、PCR−RFLP分析を用い、HLA−DR、−DQおよび−DBについて試料細胞を調べる。本技術分野において周知の標準技術を用いて、HS細胞からDNAを抽出する。次いで、200−300ngの抽出されたDNAを、2.5UのTaqポリメラーゼを用いたPCRにより増幅する。HLAクラスIIの増幅に用いられたPCRプライマーは図11に列挙されている。増幅後、図5の一覧表から選択された制限酵素、および適切な制限緩衝液(restriction buffer)を含有する溶液に反応混合液の4−7μLを添加し、3時間インキュベートする。完全なクラスIIタイピングのために、29の異なる酵素を用いる。次いで、制限酵素により切断された増幅DNAの試料を、12%ポリアクリルアミド平板ゲルを用い、小型装置(例えば、E−Y laboratories Inc.,San Mateo,CAから得られるMupid−2)中で電気泳動する。臭化エチジウムを用いた染色により、RFLP断片を検出する。
【0178】
上記のような血清学的および分子的手法を用い、レシピエントのイムノタイプを決定する。20mLの静脈血を、レシピエント(標的)からクエン酸ナトリウム抗凝血剤(血液10mLあたり3.3%クエン酸ナトリウムを1mL)中へ得る。次いで、クエン酸塩加血を、等容積のヘパリン化HBSS(HBSS100mLに対し、1000U/mLのヘパリン1mL)で希釈する。10mL容積の希釈血を、ピペットを用いて、17−120mmねじぶた遠心チューブ中の4mLのフィコール−イソパーク(Ficoll−isopaque)上に積層する。次いで、該チューブを700xgで15から20分間遠心分離する。赤血球および多核白血球はチューブの末端にペレットを形成し、リンパ球はフィコール−イソパークの界面に分離した層を形成する。リンパ球層を別のチューブに吸引し、HBSSで満たし、250xgで5分間再度遠心分離する。次いで、リンパ球ペレットを再懸濁させ、HBSSで洗浄し、120xgで5分間再度遠心分離する。この段階により、リンパ球はチューブの底に沈殿するのに対し、血小板のほとんどが上清中に懸濁して分離する。HBSSを除去し、リンパ球ペレットをHBSS中に再懸濁させ、250xgで5分間、最後の遠心分離をする。次いで、HBSSを除去し、リンパ球ペレットをRPMIまたはタイピングのための所望の希釈液中に再懸濁させる。標的のHLAハプロタイプを決定するためには、試料幹細胞を用いて上記のHLA−A、BおよびCタイピング方法を繰り返す。
【0179】
HLAクラスIIの分子的タイピングのために、さらに20mL未満の静脈血をレシピエントから得る。本技術分野において周知の技術を用いてレシピエントの血球から抽出されたゲノムDNAを、PCRを用いて増幅する。次いで、上記のようなRFLP分析を行う。
【0180】
レシピエントのHLAハプロタイプは、ホモ接合性またはヘテロ接合性であり、いずれの場合においても、1つのHLAハプロタイプ(例えば、母系のII)は該母体の卵母細胞から得られたHS細胞群の1つと適合するだろう。あるHS群が標的イムノタイプを有していると決定されたら、次いで、完全にここに参照により組み込まれる、米国特許出願第09/997,240号、および米国仮出願第60/253,943号に記載されている技術を用いて、インビボで、またはインビトロで、該細胞群を分化させ、レシピエントに対して移植しうる。
【0181】
実施例3:所望のレシピエント(自己ドナー)から抽出された材料より得られたHS細胞群からの、標的ジェノタイプを有するHS細胞の選抜
所望の移植のレシピエントが変異遺伝子配列の発現に関連する遺伝的障害を患っている場合には、非変異ハプロタイプ(例えば、「標的」ジェノタイプ)についてホモ接合性であるHS細胞群を選抜することが必要になる。ジェノタイプについての選抜のためのプロトコールの例は以下の通りである:
この例において、所望のレシピエントは鎌状赤血球性貧血を患っている女性である。ヒトの疾患状態の多くは、ヘモグロビンポリペプチド鎖をコードする1以上の遺伝子に影響する遺伝子変異が原因であり、鎌状赤血球性貧血も含まれ、これはヘモグロビンβ鎖における点突然変異が原因である。鎌状赤血球性貧血に関連する変異遺伝子の遺伝子配列は、開示されて広く研究されている。例えば、ここに参照により組み込まれる、Saiki et al.,1985,Science,230,1350−1354を参照のこと。
【0182】
一連のHS細胞群は、上記の実施例1に記載されている方法に従って所望のレシピエントから回収された卵母細胞から作製される。次いで、該群をジェノタイプについて分析する。標的ジェノタイプ(例えば、変異遺伝子よりも正常または野生型の遺伝子)を均質に有する群のみを、さらなる発生のために選抜する。
【0183】
この例では、鎌状赤血球性貧血に関連する変異遺伝子を、アレル特異的ハイブリダイゼーション、すなわち「ASH」、により検出する。この技術は、短い一本鎖のオリゴヌクレオチドプローブが、一本鎖の標的核酸に対して、塩基対合が完全に相補的である場合にのみ安定してアニーリングすることに基づく。次いで、プローブ上の放射性または非放射性ラベルによりハイブリダイゼーションを検出しうる(プローブおよび他の核酸をラベル化する方法を以下に詳細に示す)。主要なマーカーとしてASHマーカーを用い、この際、ただ1つのプローブによるハイブリダイゼーションの有無によってただ1つのアレル(またはハプロタイプ)の存在の有無を決定する。ハイブリダイゼーションしなければ代わりのアレルが推測されうる。
【0184】
ASHマーカーは、DNA配列における点突然変異の結果生じるヒト疾患に対する感受性を診断するために開発されてきた。鎌状赤血球性貧血に関連するβs−グロビンアレルの検出に有用なASHマーカーは、Conner et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:278−282,1983に記載されており、ここに参照により組み込まれる。
【0185】
各HS群から細胞試料を得、慣用法を用いてDNAを抽出する。Conner et al.,supraに概説されている方法に従って、ゲノムDNAを制限エンドヌクレアーゼで消化する。得られた核酸断片をPCRを用いて増幅し(ここに参照により組み込まれる、Mullis,K.B.et al.,Methods Enzymol.155:335−350(1987)を参照のこと)、アンプリコン(amplicons)を作製する。次いで、ドットブロットフォーマットで結合した鎌状赤血球性貧血に特異的な放射ラベル化オリゴヌクレオチドプローブを有する膜へ、該アンプリコンを移す。ハイブリダイゼーションドットをオートラジオグラフィーにより検出する。替わりに、アンプリコンをラベル化し、プローブを膜に結合させてもよい。
【0186】
ある試料が標的のイムノタイプおよびジェノタイプを有していると決定されたら、次いで、ここに参照により組み込まれる、米国特許出願第09/997,240号、および米国仮出願第60/253,943号に記載されている技術を用いて、インビボで、またはインビトロで、該試料を分化させ、所望のレシピエントに対して移植しうる。
【0187】
医学的状態のために自己ドナーに適切ではない男性レシピエントまたは女性レシピエントについては、家族の一員である女性のドナーから、標的のイムノタイプおよびジェノタイプの双方を有するHS細胞を得ることができる。ある試料群が標的のイムノタイプおよびジェノタイプを有していると決定されたら、次いで、ここに参照により組み込まれる、米国特許出願第09/997,240号、および米国仮出願第60/253,943号に記載されている技術を用いて、インビボで、またはインビトロで、該試料を分化させ、所望のレシピエントに対して移植しうる。
【0188】
実施例4:非親類の個体(非自己、非親類ドナー)により供与された材料より得られたHS細胞群からの、標的イムノタイプおよび標的ジェノタイプを有するHS細胞の選抜
ある特定の例においては、所望のレシピエントまたは近親の親類からドナー材料を得ることができない。このような場合には、標的イムノタイプおよび標的ジェノタイプの双方でHS群を探索することが必要である。標的イムノタイプおよび標的ジェノタイプでの選抜のためのプロトコールの例は以下の通りである。
【0189】
HS細胞群は、上記の実施例1において引用されているプロトコールを用いてドナー個体より抽出された卵母細胞から得られる。HS細胞群が発生したら、上記の実施例2に記載されている顕微リンパ球毒性試験を用い、HLA−A、−B、および−C特異性で試料細胞を分類する。
【0190】
HS細胞はさらに、PCR−SSOP法を用いてHLAクラスII抗原で分類する。本技術分野において周知の標準的な方法を用い、細胞からDNAを抽出する。次いで、200−300ngの抽出されたDNAを、2.5UのTaqポリメラーゼを用いてPCRにより増幅する。HLA−DRB/DQB/DPBの増幅のために用いられるPCRプライマー、およびオリゴタイピング(oligotyping)のためのプライマーの全ての組み合わせについてのサイクル条件は、図14に列挙されている。次いで、反応混合液の2.5μLの分取をNH4−酢酸1Mの50μLと混合し、ミニフォールドIIストットブロッター(Minifold II stot blotter)(Schleicher&Schuell)を用いてフィルター(Nytran,Schleicher&Schuell)上に手動でアプライする。膜を0.4N NaOH中に10分間配置することにより該膜を変性させ、次いで1M NH4−酢酸中で10分間中和し、次いで室温で乾燥させる。各膜上に、ハイブリダイゼーションについての陽性および陰性のコントロールを用いる。
【0191】
次いで、ハイブリダイゼーションのためのオリゴヌクレオチドを[32P]γ−ATPおよびポリヌクレオチドキナーゼを用いて10μLの反応液中でラベル化する。該反応液は、6pmolオリゴ、25μCi ATP、1μLキナーゼ緩衝液(0.5Mトリス−HCL、pH7.6、0.1M MgCl2、50mMジチオスレイトール(DTT)、1mMスペルミジン、1mM EDTA)、および5UT4ポリヌクレオチドキナーゼ(Pharmacia)を含有する。該反応液を37℃で30分間インキュベートし、ラベル化オリゴをDE52カラム(Whatman,Cat.No.4057−050)で精製する。カラムにロード後、10mLの洗浄緩衝液(150mM NaCl、20mMトリス−HCl、pH7.8、10mM EDTA)を用いてオリゴを洗浄し、次いで0.2mLの量の溶出緩衝液(1M NaCl、20mMトリス−HCl、pH7.8、1mM EDTA)で溶出する。
【0192】
次いで、各膜を放射性オリゴでハイブリダイズする。まず、塩化テトラメチルアンモニウムハイブリダイゼーション(TMAC)緩衝液(50mMトリス−HCl、pH8.0、3M TMAC(Fluka)、2mM EDTA、pH8.0、5xデンハート溶液(Denhardt’s)、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、100μg/mL変性サケ精子DNA、Whatman 3MM紙で濾過したもの)を用い、54℃で30分間、プレハイブリダイゼーション段階を行う。次いで、0.5x106cpm/mLのラベル化オリゴを含有するTMACハイブリダイゼーション緩衝液中で、54℃で1から3時間、該膜をハイブリダイズさせる。TMAC洗浄緩衝液中、室温で10分間、該ブロットを2回洗浄し、次いで同様に、59℃(19−マー)で15分間、再度2回洗浄する。この方法は、ここに参照により組み込まれる、Hui et al.,Handbook,at119−123に完全に記載されている。
【0193】
上記実施例2において記載されている血清学的および分子的方法により、標的イムノタイプを決定する。標的ハプロタイプはホモ接合性またはヘテロ接合性である。いずれの場合においても、レシピエントの少なくとも1つのHLAハプロタイプが、レシピエントと同じ民族性の非親類の卵母細胞ドナーからの細胞群から得られた試料HS群のHLAと適合する確率は高い(上記を参照のこと)。
【0194】
本発明においては、疾患性ジェノタイプを有しないHS細胞が得られるため、遺伝的疾患を患っている非親類の女性が排除される必要はない。例えば、外来ドナー(例えば、非親類個体)はベータ−サラセミアを患っている女性である。ベータ−サラセミアは、ヘモグロビン合成における、遺伝的に決定される異常である。充分な量のグロビン鎖を産生することができない。アルファ−およびベータ−サラセミアの容態は、グロビン鎖の1つのタイプの不充分な合成と、それによるグロビン鎖の他のタイプの過剰な合成により表現型として表れる遺伝子変異の結果生じる、血液関連障害である。Weatherall et al.,The Thalassaemia Syndromes,3rd ea.,Oxford,Blackwell Scientific,1981および米国特許第5,750,345号を広く参照のこと。β−サラセミアに関連するβ0−サラセミアアレルは、ここに参照により組み込まれる、Pirastu et al.,New England J.Med.309:284−287,1983により記載されている。よって、本実施例において、「標的」ジェノタイプは、病状に関連する変異ハプロタイプである、β−サラセミアアレルがないことだろう。
【0195】
ジェノタイプについての分析においては、さらなる発生のために、標的ジェノタイプ(例えば、変異遺伝子よりも正常または野生型の遺伝子)を均質に有する群のみが選抜される。標的ジェノタイプ、例えばベータ−サラセミアに対応する遺伝子を有しない、が鎌状赤血球性貧血についての上記実施例3に記載されている方法に類似の方法により、ベータ−サラセミアに特異的なASHプローブを用いて検出および選抜される(Weatherall et al.およびPiratsu et al.,supra.を参照のこと)。
【0196】
ある試料群が標的のイムノタイプおよびジェノタイプを有していると決定されたら、次いで、ここに参照により組み込まれる、米国特許出願第09/997,240号、および米国仮出願第60/253,943号に記載されている技術を用いて、インビボで、またはインビトロで、該試料群を分化させ、所望のレシピエントに対して移植しうる。
【図面の簡単な説明】
【0197】
【図1】非HS細胞バンク対HS細胞バンクについて、必要とされる細胞量の差異を示したグラフ。
【図2】減数分裂I後の卵母細胞からのHS細胞の誘導を示した概要図。
【図3】精子形成および卵形成の概要図。
【図4A】HLA遺伝子座の血清学的特異性を示す表。
【図4B】公式に承認されたHLA−DRおよびHLA−DQの特異性。
【図5】HLAクラスIIアレルのジェノタイピングのための例としての制限エンドヌクレアーゼの一覧表。
【図6A】HLA−DR遺伝子タイピングのためのSSOプローブの一覧表。
【図6B】DRB1、DRB3、DRB5サブタイプの分析のためのSSOプローブの一覧表。
【図7】マイクロサテライトタイピングおよび配列決定のために用いられるプライマーの例としての配列の一覧表。
【図8】12のマイクロサテライトの相対的な位置を示している、HLAクラスI、II、およびIIIの地図。
【図9A】C57/DBA2マウス。
【図9B】過剰排卵(superovulated)卵母細胞由来の胚盤胞様塊。
【図9C】代表的なコロニーI。
【図9D】代表的なコロニーII。
【図9E】ジェノタイピング実験の結果。
【図9F】イムノタイピング実験の結果。
【図10A】マウスHS細胞由来のフィーダー層(feeder layer)上で増殖した、単離された内部細胞塊の写真。
【図10B】ヒトのホモ接合性の減数分裂I後の二倍体卵母細胞由来の桑実胚様塊の発生を示す写真。
【図10C】ヒトのホモ接合性の減数分裂I後の二倍体卵母細胞由来の早期の胚盤胞様塊の写真。
【図10D】内部細胞塊を露出している、ヒトのホモ接合性の減数分裂I後の二倍体卵母細胞由来の胚盤胞様塊の写真。
【図11】HLAクラスIIアレルの増幅のためのPCRプライマーの例としての一覧表。
Claims (33)
- (a)標的ジェノタイプを決定すること;
(b)標的ジェノタイプについてホモ接合性である内部細胞塊(ICM)を各々が含有する複数の胚盤胞様塊を発生させるために、未受精の減数分裂I後の二倍体生殖細胞の有糸分裂を活性化すること;
(c)ICMからHS細胞を単離すること;
(d)HS細胞系を得るために、単離されたHS細胞を培養すること;
(e)各HS細胞系のジェノタイプを決定すること;および
(f)標的ジェノタイプについてホモ接合性である細胞を選択すること:
を含む、未受精の減数分裂I後の二倍体生殖細胞からの、標的ジェノタイプを有するホモ接合性幹(HS)細胞の製造方法。 - 前記標的ジェノタイプは、特定の疾患または障害に関連した遺伝子変異を含有しない、請求項1に記載の方法。
- 前記標的ジェノタイプは、特定の疾患または障害に関連した遺伝子変異を含有する、請求項1に記載の方法。
- 前記未受精の減数分裂I後の二倍体生殖細胞は、特定の疾患または障害に関連した変異アレルおよび対応する野生型アレルを有するヘテロ接合性ドナーから得られる、請求項2または3に記載の方法。
- 前記未受精の減数分裂I後の二倍体生殖細胞はドナーにより供与され、得られるHS細胞はそれを必要とするレシピエント向けである、請求項1に記載の方法。
- 前記ドナーおよびレシピエントは同一個体であり、前記ドナーおよび前記レシピエントは親類であり、または前記ドナーおよびレシピエントは非親類である、請求項5に記載の方法。
- (a)標的イムノタイプを決定すること;
(b)標的イムノタイプについてホモ接合性である内部細胞塊(ICM)を各々が含有する胚盤胞様塊を発生させるために、未受精の減数分裂I後の二倍体生殖細胞の有糸分裂を活性化すること;
(c)ICMからHS細胞を単離すること;
(d)HS細胞系を得るために、単離されたHS細胞を培養すること;
(e)各HS細胞系のイムノタイプを決定すること;および
(f)標的イムノタイプについてホモ接合性である細胞を選択すること:
を含む、未受精の減数分裂I後の二倍体生殖細胞からの、標的イムノタイプを有するホモ接合性幹(HS)細胞の製造方法。 - 前記標的イムノタイプは、特定の疾患または障害に関連した遺伝子変異を含有しない、請求項7に記載の方法。
- 前記標的イムノタイプは、特定の疾患または障害に関連した遺伝子変異を含有する、請求項7に記載の方法。
- 前記未受精の減数分裂I後の二倍体生殖細胞は、特定の疾患または障害に関連した変異アレルおよび対応する野生型アレルを有するヘテロ接合性ドナーから得られる、請求項8または9に記載の方法。
- 前記未受精の減数分裂I後の二倍体生殖細胞はドナーにより供与され、得られるHS細胞はそれを必要とするレシピエント向けである、請求項7に記載の方法。
- 前記ドナーおよびレシピエントは同一個体であり、前記ドナーおよび前記レシピエントは親類であり、または前記ドナーおよびレシピエントは非親類である、請求項11に記載の方法。
- (a)標的のイムノタイプおよびジェノタイプを決定すること;
(b)標的のイムノタイプおよびジェノタイプについてホモ接合性である内部細胞塊(ICM)を各々が含有する胚盤胞様塊を発生させるために、未受精の減数分裂I後の二倍体生殖細胞の有糸分裂を活性化すること;
(c)ICMからHS細胞を単離すること;
(d)HS細胞系を得るために、単離されたHS細胞を培養すること;
(e)各HS細胞系のジェノタイプを決定すること;および
(f)標的のイムノタイプおよびジェノタイプについてホモ接合性である細胞を選択すること:
を含む、未受精の減数分裂I後の二倍体生殖細胞からの、標的のイムノタイプおよびジェノタイプを有するホモ接合性幹(HS)細胞の製造方法。 - 前記標的ジェノタイプは、特定の疾患または障害に関連した遺伝子変異を含有しない、請求項13に記載の方法。
- 前記標的ジェノタイプは、特定の疾患または障害に関連した遺伝子変異を含有する、請求項13に記載の方法。
- 前記未受精の減数分裂I後の二倍体生殖細胞は、特定の疾患または障害に関連した変異アレルおよび対応する野生型アレルを有するヘテロ接合性ドナーから得られる、請求項14または15に記載の方法。
- 前記未受精の減数分裂I後の二倍体生殖細胞はドナーにより供与され、得られるHS細胞はそれを必要とするレシピエント向けである、請求項13に記載の方法。
- 前記ドナーおよびレシピエントは同一個体であり、前記ドナーおよび前記レシピエントは親類であり、または前記ドナーおよびレシピエントは非親類である、請求項17に記載の方法。
- 各HS細胞系の前記ジェノタイプは、ゲルを用いる(gel−based)の検出法を用いて、ゲルを用いない検出法を用いて、または遺伝マーカーを用いて決定される、請求項1または13に記載の方法。
- 前記標的イムノタイプは、血清学的または分子的方法を用いて決定される、請求項7または13に記載の方法。
- 前記標的イムノタイプは、HLA組織タイピングにより決定される、請求項20に記載の方法。
- 前駆細胞並びに/または他の分化した細胞および組織タイプを生じさせるため、(d)はさらに、単離されたHS細胞を分化させることを含む、請求項1、7または13のいずれか1項に記載の方法。
- 分化は、インビトロで因子により方向づけられる、請求項22に記載の方法。
- 分化は、インビボで因子により方向づけられる、請求項22に記載の方法。
- 各HS細胞系は異なるドナーから得られ、独自のHLAハプロタイプについてホモ接合性である、複数群のHLAタイプされたHS細胞系を含む細胞の寄託。
- 前記HS細胞系は異なる民族性のドナーから得られる、請求項25に記載の細胞の寄託。
- 前記寄託の内容は分類されている、請求項25または26に記載の細胞の寄託。
- (a)ドナーを選択すること;
(b)各ドナーのジェノタイプを決定すること;
(c)特定のジェノタイプについてホモ接合性である内部細胞塊(ICM)を各々が含有する複数の胚盤胞様塊を発生させるために、各ドナーから得られた未受精の減数分裂I後の二倍体生殖細胞の有糸分裂を活性化すること;
(d)各ドナーから得られたICMからHS細胞を単離すること;
(e)HS細胞系を得るために、単離されたHS細胞を培養すること;
(f)各HS細胞系のジェノタイプを決定すること;および
(g)(e)において得られた各HS細胞系のジェノタイプを分類すること:
を含む、複数のドナーからの、ジェノタイプされたホモ接合性幹(HS)細胞のHS細胞寄託の製造方法。 - (a)ドナーを選択すること;
(b)各ドナーのイムノタイプを決定すること;
(c)特定のイムノタイプについてホモ接合性である内部細胞塊(ICM)を各々が含有する複数の胚盤胞様塊を発生させるために、各ドナーから得られた未受精の減数分裂I後の二倍体生殖細胞の有糸分裂を活性化すること;
(d)各ドナーから得られたICMからHS細胞を単離すること;
(e)HS細胞系を得るために、単離されたHS細胞を培養すること;
(f)各HS細胞系のイムノタイプを決定すること;および
(g)(e)において得られた各HS細胞系のイムノタイプを分類すること:
を含む、複数のドナーからの、イムノタイプされたホモ接合性幹(HS)細胞のHS細胞寄託の製造方法。 - (a)ドナーを選択すること;
(b)各ドナーのジェノタイプおよびイムノタイプを決定すること;
(c)特定のジェノタイプおよびイムノタイプについてホモ接合性である内部細胞塊(ICM)を各々が含有する複数の胚盤胞様塊を発生させるために、各ドナーから得られた未受精の減数分裂I後の二倍体生殖細胞の有糸分裂を活性化すること;
(d)各ドナーから得られたICMからHS細胞を単離すること;
(e)HS細胞系を得るために、該HS細胞を培養すること;
(f)各HS細胞系のジェノタイプおよびイムノタイプを決定すること;並びに
(g)(e)において得られた各HS細胞系のジェノタイプおよびイムノタイプを分類すること:
を含む、複数のドナーからの、ジェノタイプおよびイムノタイプされたホモ接合性幹(HS)細胞のHS細胞寄託の製造方法。 - ドナーは哺乳動物である、請求項28、29または30のいずれか1項に記載の方法。
- ドナーはヒトである、請求項31に記載の方法。
- ドナーは非ヒトである、請求項31に記載の方法。
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