JP2005506555A - 3次元表示システム - Google Patents

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Abstract

3次元表示装置及び方法が開示されている。この装置及び方法は、画像の構成要素を、像空間に一連のフレームで提供することにより、3次元画像を形成する。画像の構成要素の提供には、光成形素子の画像を像空間に走査する段階であって、光成形素子の複数領域のそれぞれが、像空間の複数領域のそれぞれに投射される、走査する段階と、走査時における複数フレームそれぞれの期間に、光成形素子領域の複数部分を選択的に照光する段階であって、光成形素子領域のそれぞれが、照光を散乱し、且つ散乱された照光の少なくとも一部が、像空間において3次元画像の構成要素となる、照光する段階とが含まれる。

Description

【0001】
技術分野
本発明は電子表示装置に関し、より詳細には、3次元電子表示装置に関する。
【0002】
発明の背景
画像は、平面モニター上に描画すると、たとえ高画質であっても平面的に見えてしまう。画像を3次元的に表示しようとする多くのアプローチがこれまでに提案されてきた。これらは、体積的アプローチ及び立体的アプローチという2つの主たるカテゴリに分類される。
【0003】
体積表示装置は、光を発する或いは発するように見える点の集まりを体積内に生成することで、3次元像を生成する。これらの点が等方的に光を放射すれば、画像は「ゴースト」を伴うように、或いは「透明」に見える。典型的な体積表示装置は、体積要素が互いを遮断するようには知覚されないので、真の3次元光照射野(原語:light field)を生成することはなく、よって、画像には視点の妨害が現れない。体積表示装置は、ハーシ(原語:Hirsch)(米国特許第2,967,905号)、ケッチペル(原語:Ketchpel)(米国特許第3,140,415号)、及びルイス等(原語:Lewis et al.)(IEEE Trans. Elec. Dev., 18, No. 9, pp. 724−732, 1971)を含む多くの研究者により開示されている。
【0004】
最も一般的な形式の立体表示装置は、シャッター付き又は受動的偏光アイウェアを用いるもので、観察者が、それぞれの目から表示された2つの画像の内の何れかを遮蔽するアイウェアを着用する。この例としては、受動的偏光グラスや高速交代シャッター付きグラス(例えば、リプトン等(原語:Lipton et alの米国特許第4,523,226号を参照)がある。分子模型作製及びCADの分野での専門家による使用により、このアプローチはいくらかの成功を収めたが、観察者が一般にアイウェアの着用を好まないので、こうした方法は広く受け入れられてはいない。これが、自己立体表示装置(原語:autostereoscopic)の分野における開発の動機となってきた。
【0005】
自己立体表示装置は、画像の立体分離を内部的に行うので、観察者が付加的なアイウェアを使用する必要がない。観察者が空間上の固定位置にとどまる限りは、それぞれの目に異なる画像を提示する表示装置が多くの研究者により開発されている。殆どの装置はパラックスバリア法を変形したもので、細かな垂直格子又はレンチキュラーレンズアレーが、表示画面の前に配置されている。観察者の目が空間上の特定位置に固定されている場合は、それぞれの目は、上述の格子又はレンズアレーを介して一組の表示画素(偶数又は奇数)だけを見ることになる。各組の画素は画像の1つの図を表示し、これにより、人間の視覚系が3次元像として認知する。
【0006】
ホログラフィック及び擬似ホログラフィック表示装置は、部分的な光照射野を出力して、多くの異なる図を同時に表示する。又、この像は光学写実的で、視点の妨害及び他の観察位置に依存する効果(例えば、反射)を示す。このアプローチは、多くの観察者に同一画像を同時に見せる潜在力を有するが、一人の観察者用の2図立体表示装置に一般に必要となるより、遙かに大きな計算能力及び帯域幅を必要とする。多くの場合は、これら表示装置は、2次元光照射野を生成して、垂直でなく水平視差を提供する。
【0007】
米国特許第5,172,251号において、ベントン(原語:Benton)は、ホログラフィック光波干渉によって光照射野を生成する表示装置を開示している。より最近では、アイヒェンラウブ等(原語:Eichenlaub et al.)が、離散的光照射野表示装置を開示しており(Proc. SPIE, 3639, p. 110121,1999)、これは、それぞれが異なる或いは予め格納した画像を備えた24個までの離散的視野領域を生成する。観察者のそれぞれの目が、ある領域から別の領域へ移動する際に、画像がこの別の領域へ飛び移るように見える。観察者の2つの目が2つの異なる領域にある時は、観察者は、立体的不一致により奥行きを感じる。
【0008】
発明の概要
本発明は、3次元表示装置及び方法に関する。本発明の表示装置は、像空間(例えば、画像平面又は画像体積)における選択した点に、光を等方的に放射するか、或いは軌道に依存した振幅を備えた光を放射するように知覚させる能力を付与することで、3次元画像を生成する。
【0009】
一般的に、一態様においては、本発明は、画像の構成要素を像空間に一連のフレームで提供することにより、3次元画像を形成するための方法に関する。この方法は、(i)光成形素子の画像を像空間に走査する段階であって、光成形素子の複数領域のそれぞれが、像空間の複数領域のそれぞれに投射される、走査する段階と、(ii)走査時における複数フレームそれぞれの期間に、光成形素子領域の部分を選択的に照光する段階であって、光成形素子領域のそれぞれが、照光を散乱し、且つ散乱された照光の少なくとも一部が、像空間において3次元画像の構成要素となる、照光する段階とを含む。
【0010】
この3次元画像の形成方法の実施形態には、次のいずれかの特徴が含まれうる。走査時に、光成形素子の全領域を像空間の全領域に投射できる。光成形素子の画像を走査する上記段階は、散乱された照光を走査光学素子で像空間へ反射させる段階を更に含む。光成形素子画像の走査は、像空間に第1方向(例えば、垂直方向)へ行うことができる。光成形素子画像の像空間への走査は、第1方向に直交する第2方向(例えば、水平方向)へも行うことができる。
【0011】
光成形素子の各領域は、光を、水平面に水平な軌跡などの所定の軌跡に散乱可能である。光成形素子の各領域は、光を拡散的に散乱させることもできる。光成形素子は、複数のセクションに分割することもできる。走査時に、各セクションを像空間内の異なる深さ平面に投射できる。幾つかの実施形態では、各領域は、像空間内の異なる深さ平面に投射できる。
【0012】
この方法は、光成形素子から散乱された照光を、像空間において垂直方向に散乱させる段階も含み得る。これにより、視野領域の垂直寸法を拡大できる。
【0013】
一般的に、別の態様においては、本発明は、画像の構成要素を像空間に一連のフレームで提供することにより、3次元画像を形成する3次元表示システムを特徴とする。この3次元表示システムは、空間光変調器と、複数の領域を含んだ光成形素子と、光成形素子の画像を像空間に投射する走査光学素子とを含む。動作時には、走査光学素子が、光成形素子の画像を像空間に走査し、走査時の複数フレームそれぞれにおいて、空間光変調器が、光成形素子領域の複数部分を選択的に照光し、各領域がこの照光を散乱させる。光成形素子により散乱された照光の一部は、像空間において3次元画像の構成要素を提供する。
【0014】
この3次元表示システムは、次のいずれかの特徴を含むことができる。空間光変調器は、複数の横列及び縦列に並んだ要素を含むことができ、各要素列は、光成形素子の1つの領域に対応可能である。場合によっては、空間光変調器の各要素は、光成形素子の1つの領域に対応する。光成形素子の各領域は、空間光変調器からの照光を、水平及び/又は垂直軌跡などの所定の軌跡に散乱させることができる。光成形素子の全領域は、回折格子(例えば、透過型回折格子又は反射型回折格子)でよい。光成形素子は、幾つかの光成形素子セクションに分割可能である。光成形素子の各セクションは、複数の領域を含むことができ、更に、光成形素子の各セクションは、軸(例えば、光学軸)に沿った異なる平面内に配置できる。光成形素子は、拡散スクリーンでよく、空間光変調器からの照光を拡散的に散乱できる。こうした場合は、拡散スクリーンは、光学軸に対して直角以外の角度で配置できる。光成形素子の少なくとも2つの領域のそれぞれは、光成形素子画像内の異なる深さ平面に投射できる。
【0015】
3次元表示システムの走査光学素子は、多角柱スキャナであってもよく、これは光成形素子からの光を像空間に向けて反射する。集光レンズをこの表示システムの光路に含めてもよく、このレンズは、光成形素子からの照光を走査光学素子に集束させる。光成形素子の画像を像空間に中継するための、テレセントリックリレーもこの表示装置の光路に含めてもよい。又、この表示装置は、像空間に配置した垂直拡散スクリーンを含むこともできる。
【0016】
本発明の実施形態には多くの利点がある。例えば、3次元表示システムは、その内部にある1つの光学構成要素(例えば、光成形素子)を取り替えることで、立体表示装置から体積表示装置へ容易に改造できる。更に、この3次元表示システムは、単一の実施形態において体積表示装置及び立体表示装置の両方の特性を発揮できる。更に、光学構成要素の1つ又は2つを切り替えることで、水平視差のみの表示と完全視差表示との間を容易に切り替え可能である。
【0017】
他に特に定義していない限り、本明細書で用いる科学技術用語は、本発明が属する分野の通常の技能を備えた当業者が一般に理解する意味と同一である。本明細書に記載したものと類似又は同等の方法及び材料を、本発明の実施又は試験に用いることができるが、適切な方法及び材料は後述する。本明細書で言及するすべての刊行物、特許明細書、特許、及び他の引用文献は、その全体を引用して援用する。矛盾が生じた場合は、定義も含めて本明細書が優先する。更に、これら材料、方法、及び例は、例示的なものであって限定する意図はない。
【0018】
本発明のその他の特徴及び利点は、詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかとなるはずである。
【0019】
詳細な説明
図1を参照すると、水平視差のみ(HPO)の表示装置101は、画像データを空間光変調器(SLM)ドライバ120に与える電子構成要素130を含む。SLMドライバ120は、この画像データを、表示光学素子110に内蔵したSLMの駆動に適した電圧及びタイミングの電気パルスに変換する。表示光学素子110は、画像データを光学情報に変換することで、表示装置101の視野領域に位置した観察者140に立体画像を提示する。
【0020】
図2及び3を参照すると、表示光学素子110は、空間光変調器(SLM)210を含み、この変調器は、光源からの平行光205を光成形素子220に選択的に向ける。表示光学素子110は、光成形素子220からの光を、多角柱スキャナ240に集束させる集光レンズ230を更に含んでいる。動作時には、多角柱スキャナ240は、水平の回転軸250を中心に回転して、光成形素子220の画像270を、平面260内の像空間510に垂直方向下方に走査する。垂直拡散シート261が平面260上に配置され、この3次元像の視野領域を垂直方向に拡大する。更に、表示光学素子110は出力レンズ280も備え、このレンズは、平面260における光成形素子220の画像270を、出力レンズ280を挟んで画像270の反対側に位置する観察者に対して拡大する。
【0021】
この説明の補助として、3つの直交軸、すなわち垂直軸310と、水平軸(水平回転軸250と同一の軸)と、奥行き軸290とを定義するのが有用である。観察者は、典型的には自分の目を水平面に配置し、出力レンズ280の方を向いて奥行き軸290に沿って視線を向ける。観察者は、出力レンズ280と観察者の目との間に浮き上がって再生された3次元光景に焦点を合わせる。垂直軸310、奥行き軸290、及び水平回転軸250は、観察者が知覚する3次元画像の垂直、奥行き、及び水平寸法に対応する。
【0022】
奥行き軸290は、図3に展開した状態で示した光学軸と平行である。上記のように定義した軸は、本説明を通じてこの展開した光路を基準として用いる。こうする理由は、図2に示した折り曲げた光路における方向及び平面を説明する際の曖昧さを避けるためである。
【0023】
SLM210は、テキサスインスツルメンツ社のDMD(商標)などの、独立して切替え可能なミクロミラーのアレーからなる微小電気機械装置である。このアレーサイズは、どのSLMを選択するかにもよるが、典型的には、数百の横列及び縦列のミクロミラー(例えば、1024×786の解像度を備えたXGA装置)を含む。ミクロミラーには、「オン」状態と「オフ」状態がある。「オン」状態では、ミクロミラーは、光源からの平行光線を光成形素子220の一部に向けて反射する。「オフ」状態では、ミクロミラーは、光源からの光りが光成形素子を避けて反射させる。動作時には、SLMドライバ120(図1を参照)は、ミラーの状態を制御する電気信号を供給する。
【0024】
光成形素子220は、(光学)奥行き軸290に直交する平面内に位置している。図4A及び4Bを参照すると、光成形素子220は、それぞれが透過型回折格子である幾つかの領域410乃至414を含む。領域410乃至414は、垂直に積み重ねられており、それぞれが光成形素子220を水平に横断する方向に延伸している。それぞれの領域内の透過型回折格子は、SLMからの平行光線を、水平面内の所定の軌跡に向けるように設計された回折周期及び配向を備えている。各軌跡は、奥行き軸290に対する対応する角度で定義される。これらの角度は、水平面内の一定範囲にわたる(図4Bを参照)。例えば、光成形素子220の領域410を透過する光線(図4A)は、奥行き軸290に対して角度φ410の軌跡に散乱する。同様に、領域411乃至414を透過した光線も、それぞれ角度φ411−414で軌跡に散乱する。従って、各領域は、SLM210からの光に平面において固有の軌跡を与える。
【0025】
説明を簡単にするため、図4Aは、光成形素子220が5つの領域を備えているように示してある。光成形素子220は、実際には、SLMのミラーアレーにおけるミラーの各横列に対応した1つの領域を備えている。これは、数百或いは数千もの領域に上ることがある(例えば、XGAのSLMに関しては768個の領域)。各領域は、異なる水平軌跡を実現するので、SLM中の横列の数は、光成形素子が実現する軌跡の範囲の角解像度を規定する。これは、光成形素子内の各領域(SLM中の各横列のミラーに対応する)が、それぞれ異なる光線軌跡を3次元画像形成に寄与することを意味する。
【0026】
SLMの縦列の数は、画像の水平方向の空間解像度を決定する。同一横列の異なる縦列内のミラーは、光成形素子の同一領域の異なる部分を照光(原語:illuminate)する。従って、光成形素子の同一領域の異なる部分から発する異なる光線は、像空間に投射されると、観察者には同一の角軌跡を持つように見えるが、同一画像の異なる区域から発するものである。
【0027】
図2及び3を再び参照すると、集光レンズ230は、光成形素子220が透過させた光を角柱スキャナ240に集束させ、光成形素子220の倒立像を画像平面260に投射する。集光レンズ230は、奥行き軸290に平行に伝搬する光、及び水平面内を伝搬する光(例えば、光成形素子により方向づけられた光)を集束する。垂直軌跡成分などを備えた光線のような外部光線は、角柱スキャナ240には集束しないし、画像平面260には投射されない。
【0028】
多角柱スキャナ240は、回転しつつ、光成形素子の画像270を画像平面260内の像空間510に垂直方向下方に走査する。よって、観察者(画像平面260に集束している)が感じる光線の見かけの光源は、この走査における画像270の位置に依存する。走査時の正しい時間に適切なミクロミラーを「オン」に切り換えることで、表示装置は、ミクロミラーから発する光線を、像空間510の任意所望の垂直位置に投射できる。
【0029】
図5A乃至Kは、それぞれ、観察者の位置から知覚される、画像270の像空間510への一回の走査の時系列におけるフレームを示す。水平軸250及び垂直軸310の配向を参考のため含めた。像空間510は、画像270と同一サイズで、画像270の各領域531乃至535は、走査時に像空間の各領域(541乃至545)に連続的に結像される。光成形素子の各領域が、光線に特徴的な水平軌跡を与えることを想起されたい。画像の各領域531乃至535を各像空間領域541乃至545に走査することで、このシステムは、光成形素子から像空間510の任意部分に、任意の特徴的な軌跡を備えた光線を発生できる。画像270は、少なくとも約20Hzの振動数で像空間510に垂直方向で走査されるが、この振動数は、観察者の視覚残像性が、1回の走査時に画像平面に投射される光を、ちらつきのない単一の画像へと融合させるのに十分な速さである。
【0030】
図5Aは、時刻t=0における光成形素子画像270のフレーム及び像空間510を示す。光成形素子の画像270は、像空間510のちょうど上に、重なり合うことなく結像している。この時点では、SLMは、光成形素子には何の光も向けておらず、スキャナが画像平面に光線を向けることもない。このフレームは、画像形成には寄与しない。
【0031】
図5Bは、走査の時刻t=1における類似したフレームを示す。画像270は、その領域531が像空間の領域545に投射されるように、下に向かって走査されている。この時点では、SLMは、?必要に応じて?光を光成形素子の最も下の領域に向ける。この光は像空間の領域545に投射され、第1軌跡の光線を像空間の領域545の作成に寄与させる。画像270の領域532乃至535に向けられている光はない。
【0032】
図5Cは、走査の時刻t=2における類似したフレームを示す。多角柱スキャナは、図5Bの位置から更に下方に画像270を走査し、画像領域531及び532が、それぞれ像空間510の領域544及び545に投射される。この時点で、SLMは、?必要に応じて?光を光成形素子の最も下方の2つの領域に向け、第1軌跡を備えた光線を像空間の領域544に、第2軌跡を備えた光線を像空間の領域545に当てる。
【0033】
図5D乃至Kは、走査のそれぞれ時刻t=3乃至10におけるフレームを示す。画像270は、その各領域が像空間の各領域に投射されるまで、像空間510を前進し続ける。各フレームにおいて、これら図中の画像270のハッチングした領域は、像空間510の領域に投射されている。これら領域に投射された光は、いずれの場合も3次元画像作成に寄与しているので、これらはアクティブ領域と考えられる。
【0034】
簡潔に要約すると、1回の走査時に、HPO表示システムは、N個の異なる軌跡を備えた光線を像空間中のN×M個の離散点に与える。ここでは、NはSLMの横列の数で、Mは縦列の数である。
【0035】
図5A乃至Kに示した走査シーケンスは、新たな走査が開始される前に、画像270が、像空間510に完全に走査されるのを示していることに注目されたい。結果として、特にt=0及びt=10におけるフレームに、光成形素子の領域が像空間510に投射されない有意な「デッドスペース」が形成される。一般的には、デッドスペースがこれより少ない走査シーケンスを用いることができる。例えば、光成形素子画像の最上部の画像領域を像空間の最下部に結像させつつ、最下部領域を、像空間の最上部に「ラップ」させる走査光学部品を使うことも可能である。典型的には、走査と走査の間の投射画像がスムーズに繋がれば繋がるほど、表示された画像のちらつきが減少する。
【0036】
HPO表示装置が実際にどのように3次元画像を生成するかを説明する前に、画像の形成に関わる一般的な原理を概略すると有益である。立体映像的表示装置は、物体が発する(或いは反射する)光照射野(例えば、波面)を再形成することで、観察者に空間情報を提示する。図6A乃至Cを参照すると、これを説明するため、単一の発散点光源601から放射される600光照射野を通る2次元の水平スライスを考えてみる。このスライスは、観察者の目と同一平面上にとる。実際の点光源(図6A)からの光照射野は、一定の曲率半径を備えている。理想的な、仮定の立体表示装置610は、この光照射野を正確に再現して(図6B)、観察者にこの点光源の画像を表示する。この仮定の表示装置610は、点光源601の光照射野を正確に再現して、観察者に点光源601を完全に再現するが、こうした装置は、特に動画に関しては実現困難である。すなわち、連続的な複数の光照射野の時間的に変化するシーケンスを完全に再形成して、変化する3次元画像を正確に再形成するのは容易ではない。仮定の表示装置610が、新たな点の光照射野を生成するには、或いは元の点が移動すれば、この新たな画像の光照射野を生成するために、表示領域全体を修正しなければならなくなる。
【0037】
より実用的なアプローチは、点601の光照射野を区分的な方法で近似するものである(図6C)。ここでは、表示の各離散要素620、630、及び640が、それぞれ対応する平面波621、631、及び641を生成する。平面波620、630、及び640は、それぞれ軌跡622、632、及び642に沿って伝搬する。平面波621、631、及び641が合わさると、点601からの連続的な光照射野を観察者の位置で近似する。これは、画像からの連続的強度分布を近似する離散的画素アレー(例えば、平面パネル表示装置における)を用いた2次元画像の生成に例えることができる。
【0038】
表示装置の各離散要素からの平面波軌跡は、画像内の変化の表示に適用しやすいので、光照射野のこの区分的近似は、動画像の表示により適している。これを次の例を使って説明する。図7A乃至Cを参照して、3つの平面波により観察者に提示される3次元画像の水平面における点光源750を考慮してみる。各光線711、721、及び731は、3つの平面波の対応する軌跡を示す。表示装置701の要素710、720、及び730は、それぞれ光線711、721、及び731を生成する。点750から横方向に変位した新たな点760を表示するために、表示装置701は、表示要素710、720、及び730を調節して、それぞれ光線761、762、及び763を持つ新たな平面波を生成する(図7Aを参照)。これら新たな平面波は、新たな点70から放射される光照射野を近似する。
【0039】
点760は点750から横方向に変位しているように見えるが、この近似処理は、空間における深さが異なる点からの光照射野もシミュレートできる。例えば、観察者から点750より遠くに位置した点770を表示するには、表示装置701は、光線軌跡771、772、及び773を備えた平面波を、それぞれ要素710、720、及び730から生成する。光線771、772、及び773は、光線771、721、及び731より発散する度合いが低いので、点750よりも観察者から見て遠い点の光照射野を近似する(図7Bを参照)。或いは、表示装置701を、収束光線781、782、及び783として示した平面波を発するように調節する場合は、光照射野は、表示装置701と観察者との間の点780を近似するはずである(図7C参照)。
【0040】
3次元画像において深さ及び位置が異なる複数の点からなる画像を生成する場合は、表示装置701は、慎重に選択した軌跡を備えた、画像平面上の適切な位置から出る光線を放射することに注目されたい。
【0041】
図8Aを参照して、ここに記載した実施形態のHPO表示装置がどのように3次元画像を生成するかを説明するために、水平表示平面内に2つの点810及び820を含んだ例示的画像を考慮してみる。一方の点(点810)が、画像平面260を挟んで観察者140の反対側に位置している。他方の点(点820)が、画像平面260に対して観察者140と同じ側に位置している。点810及び820それぞれの光照射野は、光線841乃至846として示した軌跡を備えた3つの平面波で構成されている。点810及び820の平面波は、画像平面260の6つの異なる位置から放射される。光線841、842、及び843として伝搬する平面波は、画像平面260の点831、832、及び833から放射され、点810から発散していると観察者140に知覚される光照射野を提示する。光線844、845、及び846として伝搬する平面波は、それぞれ点834、835、及び836として放射され、点820に集束する。光線対841及び846、842及び845、並びに843及び844は、それぞれの平行軌跡沿いに伝搬する。
【0042】
図8Aでは、光線841乃至846は、観察者140の焦点面である画像平面260から同時に発しているように示されている。図8B乃至Dを参照すると、実際には、光線841乃至846は、SLM210及び光成形素子220により3つのフレームで生成されている。これらの光線は、多角柱スキャナが、光成形素子220の画像を画像平面260に走査する際に、そのスキャナにより画像平面260に投射される。
【0043】
走査のフレームt=1では(図8Bを参照)、SLM210の第1横列における位置861及び862にある「オン」状態のミラーが、光成形素子220の第1領域の部分851及び856に光を向ける。光成形素子の第1領域が、この光を光線841乃至846として示した軌跡に散乱させる。集光レンズ及び多角柱スキャナ(図8Bには示していない)は、光線841乃至846を画像平面260まで中継し、これら光線は、ここでそれぞれ点810及び820を表す光照射野の一部を形成する。
【0044】
走査のこれより後の時刻(t=2)フレームでは(図8Cを参照)、SLM210の第2横列における位置862及び865にあるミラーが、光成形素子220の第2領域の部分852及び855に光を向ける。光成形素子の第2領域が、この光を光線842乃至845として示した軌跡に散乱させ、上述のように画像の光照射野形成に寄与する。
【0045】
走査の更に後の時刻(t=3)フレームでは(図8Dを参照)、SLM210の第3横列における位置863及び864にあるミラーが、光成形素子220の第3領域の部分853及び854に光を向ける。第3領域が、この光を光線843乃至844として示した軌跡に散乱させる。多角柱スキャナは、光線843乃至844を、画像平面260における要素833乃至834(図8Aを参照)に投射する。この走査全体は1/20秒未満しか要しないので、残像性によって、光線841乃至846が単一の光照射野の一部として知覚され、観察者にとっては点810及び820が生成されたことになる。
【0046】
上述したHPO表示装置は、3次元像における視点の妨害を実現する。この特性は、この表示装置が、画像の離散的な光照射野部分(例えば、各平面波)の強度を変調する能力を備えていることに起因する。視点妨害が起こるのは、画像において、第1要素が別の要素の視界を遮る時である。これが真の3次元光景で自然に起こるのは、第1要素が、観察者の第2要素への視線上にちょうど位置している時である。観察者にとって、視点障害は、視界深度を知る重要な手がかりである。次の例は、HPO表示装置が、ある画像でどのように視点妨害を実現するかを示したものである。図9を参照すると、3次元画像の一部は、水平視野平面に2つの線910及び920を含んでいる。観察者から見て画像平面260の背後に位置した線920を作成するには、HPO表示装置は、位置930、932、934、及び936において画像平面260から光を放射することで、3つの共直線性を備えた点光源を位置921、922、及び923において近似する。位置930は、軌跡950を備えた平面波を放射し、位置932は、軌跡952及び956を備えた平面波を放射し、位置934は、軌跡954、958、及び962を備えた平面波を放射し、位置は、軌跡960を備えた平面波を放射する。線920は、観察者から見て画像平面260の前にある。線910は、観察者と線920のちょうど中間に位置していて線920の視点妨害となるので、観察者は、位置990では線910しか見えない。仮に線910がなければ、HPO表示装置は、軌跡946及び966を備えた平面波を位置936及び938から放射するはずであり、又、線920は位置990から観察できるはずである。図9を不要に複雑にしないため、線910からの平面波軌跡は図示していないことに注意されたい。
【0047】
図10を参照すると、画像平面260に配置した垂直拡散スクリーン261は、結像した光照射野を垂直方向に拡散的に散乱させ、垂直方向の視野領域を拡大する。拡散スクリーン261は光を垂直方向にしか拡散させないので、光照射野の水平方向の形状は拡散スクリーン261による影響を受けない。この作用を、例えば点1010を考察して示す。拡散スクリーン261は、結像点1010を構成する光照射野を、視野領域において一定範囲の垂直軌跡に散乱させる。結像点1010は、光線1030及び1031を含んだ光照射野により、位置1020で構成される。表示装置が、光線1030及び1031を、垂直拡散スクリーン261上の点1040及び1041に投射すると、ここで光線は垂直方向に拡散される。観察者が、第2位置1021に垂直に移動すると、点1010を垂直方向に変位した点1011として知覚する。この点の位置は、観察者の頭部の動きに追従し、従って3次元画像は大きく変化しない。
【0048】
本実施形態は、ホログラフィックステレオグラムに類似した多視野(原語:multi−view)HPO画像を提供する。幾つかの実施形態では、この表示装置は、体積画像を表示するように適合させることも可能である。図11を参照すると、光成形素子は、光を光学軸1109に沿った異なる位置で散乱させる。この光は画像体積に投射されると、観察者に対して体積充填画像を生成する。表示光学素子1101は、光成形素子を除いては表示光学素子110(図3を参照)と同一であることに注意されたい。表示光学素子1101の光成形素子は、(展開した)光学軸1109に対して角度θで傾斜した拡散スクリーン1110である。SLM210は、光源からの平行光1105を拡散スクリーン1110に選択的に向ける。拡散スクリーン1110は、SLM210からの平行光1105を拡散的に散乱させる。集光レンズ230は、平行光を垂直方向に集束させ、且つ一定範囲の発散軌跡に散乱した光を多角柱走査ミラー240に集束させる。多角柱走査ミラー240は、拡散スクリーン1110の画像を垂直方向に一定の体積に走査する。拡散スクリーン1110の画像全体が走査されるこの体積部分が、画像体積1130を画定する。
【0049】
拡散スクリーン1110の画像を画像体積1130に走査すると、この拡散器の各水平領域は、画像体積1130において異なる深さ平面(例えば、光学軸1109に垂直な平面)に走査される。多角柱スキャナ240は、例えば拡散スクリーン1110上で点1140により散乱された光を、画像体積1130において深さ平面1150に投射する。画像体積1130における投射点の垂直位置は、この光が発せされたときの、光成形素子画像の位置に依存する。表示光学素子1101は、画像体積1130における各深さ平面内でN×M個の点の位置を指定(原語:address)できる。又、N×MはSLM210の解像度である。
【0050】
表示光学素子1101が、どのように3次元画像を生成するかを示すため、画像体積1130の単一水平面に3点を含んだ画像の単純な例を考察する。図12Aを参照すると、表示光学素子は、点1210、1220、及び1230を水平面上において観察者1201まで投射する。各点1210、1220、及び1230は、それぞれ拡散的に散乱した光1240、1250、及び1260の集束点である。各点から発散する光の強度は、特定方向には変調できない。よって、この画像では、一点が、別の点を視点妨害することはできない。
【0051】
水平面1205内のこれら3点のそれぞれは、次のように、走査時に単一の異なる時間フレームで生成される。図12Bを参照すると、SLM210を通る水平スライス及び水平領域1270における拡散スクリーンが図示されている。拡散スクリーンの水平投射は、区域1265として示してある。この走査の時刻t=1において、多角柱スキャナは、拡散スクリーンの水平領域1270を、画像体積における水平面1205に投射する。SLM210の第1横列における点1282に位置したミラーは、光線1283を、拡散スクリーン上の領域1270の部分1280に向ける。拡散スクリーンは、光線1283を拡散的に散乱させる。集光レンズ及び多角柱スキャナ(図示しない)は、散乱光1281を、画像体積の水平面1205(図12Aを参照)内の点1210まで中継する。
【0052】
図12Cを参照すると、この走査における後の時刻t=2において、領域1270よりもSLM210から離れた位置にある第2水平領域1271が、画像体積の水平面1205内の第2深さ平面まで投射される。SLM210の位置1287にある第2横列に位置したミラーは、光線1288を、拡散スクリーン上の領域1271の点1285に向け、この光線は、ここで拡散的に散乱される。散乱光1286は、多角柱スキャナに集束し、画像体積内の水平面1205に点1220として投射される。
【0053】
図12Dを参照すると、この走査における更に後の時刻t=3において、第3水平領域1272が、画像体積の水平面1205まで投射される。上述のように、水平領域1272の点1290からの散乱光1291が、画像体積内の水平面1205の点1230まで投射される(図12Aを参照)。散乱光1291は、SLM210内の位置1292にあるミラーから発せられる。走査全体は、観察者の残像が、点1210、1220、及び1230を単一の3次元画像に融合するほど十分に短い時間(例えば、50ミリ秒未満)で完了する。
【0054】
立体HPO表示装置及び体積表示装置の実施形態をこれまで説明してきた。上述の光成形素子が、これら表示装置の表示光学素子を区別する唯一の光学要素である。幾つかの実施形態では、光成形素子は、構造化光照射野(例えば、上述のHPO表示装置が生成する光照射野に類似したもの)を、画像体積内の複数の深さ平面まで表示して、立体的及び3次元画像の要素を組み合わせる。図13A及びBを参照すると、ハイブリッド光成形素子1301が、表示光学素子1300に組み込まれている。光成形素子1301は、幾つかの類似のセクション1310、1311、1312、及び1313を含み、それぞれのセクションは、光学軸1390に沿って異なる深さ平面にオフセットされている。セクション1310、1311、1312、及び1313は、それぞれ深さ平面1319、1329、1339、及び1349に配置されている。
【0055】
光成形素子1301の各セクションは複数の領域を含んでいる。説明を簡単にするため、セクション1313は、5つの領域1360乃至1364を備えるように示してある。同様に、セクション1312、1311、及び1310は、それぞれ領域1369乃至1373、1379乃至1383、及び1389乃至1393を備えている。光成形素子1301は、合計20の領域を備えるように示してあるが、実際には、領域の総数はSLMのミクロミラーアレーにおける横列の数と同じである(例えば、XGAのSLMでは768)。それぞれの領域は透過型回折格子で、SLMからの光を、水平面における所定の水平軌跡に散乱するように設計された回折周期及び配向を備えている。光成形素子1301は、各セクションが、水平面において同一範囲にわたる光線軌跡を与えるように設計されている。
【0056】
集光レンズ230及び多角柱スキャナ230は、光成形素子1301の各セクションを、画像体積1360内で光学軸1390に沿った異なる深さ平面まで投射する。セクション1310、1311、1312、及び1313は、それぞれ深さ平面1320、1330及び1350まで投射される。動作時には、多角柱スキャナ240は、光成形素子の画像を画像体積1360に走査する。SLM210は、光源からの照射光205を光成形素子1301の複数部分に選択的に向け、この素子は、この照射を水平面における軌跡に散乱させる。光成形素子1301の各セクションにより散乱された照射光は、画像体積1360に投射される。投射された照射光は、適切な位置にいる観察者には、画像体積1360内の異なる深さ平面から発しているように見える。例えば、光成形素子のセクション1313が散乱する光は、深さ平面1350(この散乱光を見るときに、観察者の目はこの平面に集束している)まで投射される。
【0057】
表示光学素子1300は、HPO表示装置及び体積表示装置の性質を組み合わせてハイブリッド3次元画像を生成する。光成形素子の各領域は、離散的軌跡を備えた光線を発生して、表示装置に実体像を構築させる。更に、光成形素子の各領域は奥行き情報を散乱光線に与え、従って、実体像が体積を充満する。画像体積内の殆どいずれの深さにある点も、典型的には結像深さがその点に最も近い要素を用いて描画できる。図14を参照してこれを詳しく説明するために、点1410、1420、及び1430を水平面1405内に含んだ、観察者1401に向けられた例示的画像を考察する。各点1410、1420、及び1430は、3つの発散平面波により近似される。発散平面波の軌跡は、光線1411乃至1413、1421乃至1423、及び1431乃至1433として示した。光線1411、1412、及び1413は、深さ平面1414内の点1410から発散し、光線1421、1422、及び1423は、深さ平面1425内の点1420から発散し、光線1431、1432、及び1433は、深さ平面1435内の点1430から発散する。
【0058】
点が位置している深さ平面に走査される光成形素子セクションは、各点ごとに3つの光線を生成する。この対応した光成形素子セクション内の異なる領域が、各点の各光線を生成する。従って、この3点3次元画像は、一回の走査時に9個のフレームで生成される。
【0059】
ハイブリッド光成形素子1301は4つのセクションを備えているが、他の実施形態はこれに限定されない。光成形素子は、結像される物体の一般的特性に基づいて、必要に応じて任意の数に分割可能である。光成形素子のセクションの数が多くなれば、表示装置の「体積」は増加するが、光線軌跡の角分解能が犠牲となる。
【0060】
光成形素子は、必ずしも「階段状に段差を付けた」セクションの集合体に物理的に分割されている必要はない。光成形素子を形成するより高度な方法を用いれば(例えば、2段ホログラフィック露光(原語:holographic exposure)を用いれば)、光成形素子の画像だけを、画像体積内の異なる深さ平面に投影すればよい。光成形素子そのものは単一の平面要素でよく、様々な表示装置の実施形態の光学設計を更に簡素化できる。
【0061】
画像を生成する上述の原理を、完全視差3次元画像を表示するために適合できる。図15A及び15Bを参照すると、表示光学素子1500は、視野領域内に位置した観察者1501に対して完全視差3次元画像を表示する。完全視差表示装置を使えば、観察者1501は、3次元画像に対して水平及び垂直範囲内で移動できる(これは両方向への移動であり、観察者が同一光景を異なる様態で知覚できる)。これは、横方向の移動は同一光景を異なる様態で知覚可能とするが、垂直方向の移動は、画像の垂直位置が観察者に追従すると知覚される上述のHPO表示装置(図2及び3を参照)とは異なる。
【0062】
表示光学素子1501は、透過型SLM1510、光成形素子1520、及びx−y走査システム1540を含む。SLM1510は、平行照射光1505を、光成形素子1520の動的に選択した領域に中継する。表示光学素子1501には、光成形素子により散乱された光を、x−y走査システム1540(例えば、ガルバノメータに取り付けたミラー又は一対の角柱スキャナ)に集束する集光レンズ1530も含む。x−y走査システム1540は、散乱光を画像平面1551に位置したスクリーン1550に投射する。拡大光学素子1560は、画像平面1551における3次元画像を、画像平面に集束している観察者のために拡大する。
【0063】
SLM1510(例えば、強誘電性液晶表示装置)は、画素1601乃至1611を含み、これら画素が、レーザー光源(図示しない)からの平行照射光1505の透過を変調するための独立した動的光シャッタとして作用する。実際は、SLM1510は、説明を簡略化するために図15Bに示した16個の画素よりも遙かに多くの画素を備えている。駆動電子機器が、画素1601乃至1611を、透過的な「オン」状態と不透明な「オフ」状態との間で切り替える。代表的な例として、3つの「オン」画素1601、1608、及び1615が図15Bに示されており、これら画素が、それぞれ光線1660、1640、及び1650を光成形素子1520まで透過させる。
【0064】
光成形素子1520は、傾斜した回折領域1621乃至1636から構成されている。こうした装置は、引用して本明細書にその全体を援用する米国特許出願第09/648,313号により詳しく記載されている。光成形素子の各領域は、SLM1510の1つの画素に対応している。「オン」状態の画素を介して中継された光線は、対応する光成形素子領域に入射し、そこでこの回折領域の配向及び回折周期により決定される軌跡に散乱される。例えば、光成形素子1621、1628、及び1635は、光線1660、1640、及び1650を、それぞれ軌跡1665、1645、及び1655に散乱する。
【0065】
領域1621乃至1636は、垂直及び/又は水平成分を備えた軌跡を実現する。この点で、光成形素子1520は、HPO表示装置101の光成形素子220(図2及び3を参照)から区別される。光成形素子220は、水平成分のみを備えた軌跡を与えるので、水平視差のみを備えた実体像に限定される。水平及び垂直成分を備えた光線軌跡を与えることで、光成形素子1520は、表示光学素子1500に完全な3次元光照射野を形成させ、従って、完全な視差3次元画像も形成させる。光成形素子1520は受動素子であって、三次元画像の各フレーム内の光線軌跡は、どのSLM画素がそのフレームに関してオン状態にあるかによって最終的には決定される。
【0066】
x−y走査システム1540は、光成形素子1520の画像を、スクリーン1550にラスタ走査する。SLM1510が、光成形素子1520の適切な領域を位置指定するのは、x−y走査システム1540が、光成形素子1520を出る光線を適切な水平及び垂直座標に当てて、画像平面1551において所望の3次元画像を作成するタイムスロットにおいてのみである。
【0067】
3次元画像は、画像平面1551において次のように生成される。プロセッサが、3次元データセットを検査し、照光すべき光成形素子領域の、深さでソートしたリストを作成する。プロセッサは、このデータを時系列の2次元マトリックス(それぞれが1つの時間フレームに対応している)としてSLMに与える。このデータは、この3次元画像を生成するには、光成形素子の適切な領域がいつ照光されるべきかを決定する。
【0068】
他の完全視差表示装置の実施形態も考慮されている。例えば、HPO表示装置100(図2及び3を参照)の光成形素子を、それに替わる完全視差光成形素子で代替してもよい。この完全視差光成形素子は、HPO光成形素子220の領域と同一に位置決めされた領域を備え、又、この表示装置は、光成形素子の画像を像空間に垂直方向に走査することで動作する。しかし、この完全視差光成形素子内の幾つかの領域は、照射光を、水平でなく垂直軌跡に散乱させるよう構成されている。もちろん、垂直視差を実現するには、表示装置の水平方向における角解像度低下という犠牲を払う。
【0069】
一般的に、上述の実施形態では、任意の光源を用いて光を空間光変調器に与えることができる。この光源には、SLMが平行照射光を光成形素子に向けられるように、適切な角度で入射する平行照射光をSLMに与えるのに必要な任意の付加的構成要素(例えば、光学要素)が含まれる。
【0070】
実施形態によっては、この光源はレーザ光源である。例えば、回折光成形素子を用いて平面波軌跡を実現する表示装置においては、この光成形素子の発散作用を最小限にするには、コヒーレントな単色光源が望ましい。或いは、光源は、広帯域の非干渉性光でもよい。例えば、SLM及び光成形素子が、最小の波長依存性を有する場合は(例えば、SLMがミクロミラーアレーで、光成形素子が傾斜した拡散スクリーンである場合)、広帯域光源を用いて白色画像を表示できる。
【0071】
実施形態によっては、表示装置はフルカラー画像を表示する。例えば、広帯域光源を用いて、吸収性の色フィルタアレーを備えたSLMに白色光を供給してもよい。色フィルタアレーは、SLMにより光成形素子に向けられた各光線からスペクトル成分を吸収する。従って、画像を形成する各平面は、画像に付加的スペクトル情報を与える。フルカラーの3次元画像は、画像平面でスペクトル成分を加色混合して得られる。別の例としては、時系列的な加色を用いてフルカラーの3次元画像を生成するものがある。走査時に像空間に投射される各フレームを、3つのサブフレームから構成させ、その際に、SLMを連続的に赤、緑、及び青照射光で照射する。各サブフレームは、赤、緑、又は青成分をフレームに生成する。もちろん、こうした表示装置には、走査の各フレーム時に多数回リフレッシュできるように反応時間が高速なSLMが必要である。観察者の視覚系は、これら色成分を統合してフルカラー画像を生成する。サブフレームをリフレッシュする能力を備えたSLMには、1フレーム時にディザーを行って、画像を構築する各平面波に異なるレベルの照光を与えることもできる。これにより、表示装置は、グレースケールを備えた画像を生成できる。
【0072】
幾つかの実施形態では、光源アレーをSLM及び光源として機能させることもできる。例えば、画素化した有機発光ダイオード(OLED)装置を、光源及びSLMの代わりに使用できる。各OLED画素が発する光を平行にする必要があれば、小型レンズアレー又はマイクロプリズムアレーなどの付加的な受動光学素子を、OLED装置と光成形素子との間に配置してもよい。
【0073】
受動回折及び拡散光成形素子について説明してきた。一般に、光成形素子は、入射照射光を3次元画像生成に必要な軌跡に散乱するものならどんな光学素子であってもよく、或いは複数光学素子の組合せでもよい。これには、回折、反射、屈折、及び拡散素子、並びにそれらの組合せが含まれうる。
【0074】
上述の表示光学素子システムは、光成形素子の画像を像空間に投射するための付加的光学素子を含むことができる。例えば、上記集光レンズには任意数の付加的レンズ又は他の光学要素を組み込んで、光成形素子が透過した光をスキャナに集束させ、この光を像空間に投射してもよい。スキャナと像空間との間に付加的光学素子を含めることもできる。例えば、テレセントリックリレーは、光成形素子を像空間に結像できる。このリレーは、集光レンズに加え、スキャナと像空間との間に付加的なレンズを含めることができる。このシステムは、光学軸に対し傾斜させた光成形素子を用いる場合は、特に有用である。
【0075】
本発明の幾つかの実施形態を説明した。しかしながら、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく多くの修正が可能なことは理解されるであろう。例えば、システムは、冗長SLM画素又は光成形素子領域を含んでもよい。言い換えれば、多数の画素及び/又は多数の領域を用いて、入射照射光を複数軌跡に、或いは同一深さ平面で散乱させることができる。こうした場合は、表示装置は、部分走査によって3次元画像の全ての構成要素を像空間に提供できるので、全ての領域を像空間全体に走査する必要はない。従って、これ以外の実施形態も、次の特許請求の範囲に入る。
【図面の簡単な説明】
【図1】
水平視差のみの表示装置の一実施形態の概略図である。
【図2】
水平視差のみの表示装置の光学素子の一実施形態の斜視図である。
【図3】
水平視差のみの表示装置の光学素子の一実施形態を、光路を展開した状態で示した概略図である。
【図4】
(A)光成形素子の一実施形態の斜視図である。
(B)水平面における例示的な光線軌跡を示す図である。
【図5】
(A)乃至(K)水平視差のみの表示装置における画像平面の、走査時の異なる時間フレームにおける概略的速写図である。
【図6】
(A)点光源から発せられる光照射野の水平スライスの概略図である。
(B)仮定の水平視差のみの表示装置を通る水平スライスの概略図である。
(C)水平視差のみの表示装置の一実施形態を通る水平スライスの概略図である。
【図7】
(A)乃至(C)水平視差のみの表示装置の一実施形態を通る水平スライスの概略図である。
【図8】
(A)水平視差のみの表示装置の一実施形態の像空間を通る水平スライスの概略図である。
(B)乃至(D)水平視差のみの表示装置の一実施形態における、SLM及び光成形素子を通る水平スライスの概略図である。
【図9】
水平視差のみの表示装置の一実施形態の像空間を通る水平スライスの概略図である。
【図10】
水平視差のみの表示装置の一実施形態における垂直拡散スクリーンの斜視図である。
【図11】
光路を展開した状態で示した体積表示装置の一実施形態の概略図である。
【図12】
(A)体積表示装置の一実施形態の像空間を通る水平スライスの概略図である。
(B)乃至(D)体積表示装置の一実施形態におけるSLM及び光成形素子を通る水平スライスの概略図である。
【図13】
(A)水平視差のみの体積表示装置の一実施形態の概略図である。
(B)光成形素子の一実施形態の斜視図である。
【図14】
水平視差のみの体積表示装置の一実施形態の像空間を通る水平スライスの概略図である。
【図15】
(A)完全視差表示装置の一実施形態の概略図である。
(B)完全視差表示装置の一実施形態におけるSLMおよび光成形素子の斜視図である。
これら様々な図面中の類似記号は、類似の構成要素を示す。

Claims (26)

  1. 画像の構成要素を一連のフレームで像空間に提供することにより、3次元画像を形成するための方法であって、
    像空間に光成形素子の画像を走査する段階であって、前記光成形素子の複数領域のそれぞれが、前記像空間の複数領域のそれぞれに投射される、走査する段階と、
    前記走査時における複数フレームそれぞれの期間に、前記光成形素子領域の複数部分を選択的に照光する段階であって、前記光成形素子のそれぞれの領域が、前記照光を散乱し、且つ前記散乱された照光の少なくとも一部が、前記像空間において前記3次元画像の構成要素を提供する、照光する段階とを含む、3次元画像を形成するための方法。
  2. 前記走査時に、前記光成形素子の全領域が、前記像空間の全領域に投射される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記光成形素子の画像を走査する前記段階が、前記散乱された照光を走査光学素子で前記像空間へ反射させる段階を更に含む、請求項1に記載の方法。
  4. 前記光成形素子の前記画像を、前記像空間に第1方向で走査する段階を更に含む、請求項1に記載の方法。
  5. 前記第1方向が垂直方向である、請求項4に記載の方法。
  6. 前記光成形素子の前記画像を、前記像空間に第2方向で走査する段階を更に含む、請求項4に記載の方法。
  7. 前記第1方向が垂直方向であり、前記第2方向が水平方向である、請求項6に記載の方法。
  8. 前記光成形素子の各領域が、光を所定の軌跡に散乱させる、請求項1に記載の方法。
  9. 各所定の軌跡が、水平面に平行である、請求項8に記載の方法。
  10. 前記光成形素子が複数のセクションを含み、前記走査時に、各セクションが、前記像空間内の異なる深さ平面に投射される、請求項9に記載の方法。
  11. 前記光成形素子の各領域が、光を拡散的に散乱させる、請求項1に記載の方法。
  12. 前記走査時に、各領域が、前記像空間内の異なる深さに投射される、請求項11に記載の方法。
  13. 前記光成形素子からの前記散乱された照光を、像空間において垂直方向に散乱させて、垂直寸法を視野領域において拡大する段階を更に含む、請求項1に記載の方法。
  14. 画像の構成要素を一連のフレームで像空間に提供することにより、3次元画像を形成する3次元表示システムであって、
    空間光変調器と、
    複数の領域を含む光成形素子と、
    前記光成形素子の画像を像空間に投射する走査光学素子とを包含し、動作時には、前記走査光学素子が、前記光成形素子の前記画像を前記像空間に走査し、前記走査時の複数フレームそれぞれにおいて、前記空間光変調器が、前記光成形素子領域の複数部分を選択的に照光し、各領域がこの照光を散乱させ、更に、前記光成形素子により散乱された前記照光の少なくとも一部が、前記像空間において前記3次元画像の構成要素を提供する、3次元表示システム。
  15. 前記空間光変調器が、複数の横列及び縦列に並んだ要素を包含し、各要素列が、前記光成形素子の1つの領域に対応した、請求項14に記載の3次元表示システム。
  16. 前記空間光変調器の各要素が、前記光成形素子の1つの領域に対応した、請求項14に記載の3次元表示システム。
  17. 前記光成形素子の各領域が、前記空間光変調器からの照光を所定の軌跡に散乱させる、請求項14に記載の3次元表示システム。
  18. 前記光成形素子の各領域が、回折格子である、請求項14に記載の3次元表示システム。
  19. 前記光成形素子が、複数の光成形素子セクションを包含し、各光成形素子セクションが、複数の領域を包含し、更に、各光成形素子セクションが、軸に沿った異なる平面に位置した、請求項14に記載の3次元表示システム。
  20. 前記光成形素子が、前記空間光変調器からの照光を拡散的に散乱させる、請求項14に記載の3次元表示システム。
  21. 前記光成形素子が拡散スクリーンを包含し、この拡散スクリーンが、光学軸に対して直交以外の角度に配置されている、請求項20に記載の3次元表示システム。
  22. 前記光成形素子の少なくとも2つの領域のそれぞれが、前記光成形素子画像内の異なる深さ平面に投射される、請求項14に記載の3次元表示システム。
  23. 前記走査光学素子が、前記光成形素子からの光を像空間に反射する多角柱スキャナを含む、請求項19に記載の3次元表示システム。
  24. 前記光成形素子からの照光を、前記走査光学素子に集束する集光レンズを更に含む、請求項14に記載の3次元表示システム。
  25. 前記光成形素子の前記画像を、前記像空間に中継するテレセントリックリレーを更に含む、請求項14に記載の3次元表示システム。
  26. 前記像空間に配置した垂直拡散スクリーンを更に含む、請求項14に記載の3次元表示システム。
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