JP2005504281A - 診断用プローブ検出システム - Google Patents

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Abstract

本発明は、標的核酸鎖上のそれぞれ第一標的領域および第二標的領域に実質的に相補的な第一および第二のプローブ領域を含む診断用プローブであって、ここで第一のプローブ領域が第二のプローブ領域に対して(5’)に位置する診断用プローブを用いてこの標的核酸配列を検出するための方法を提供する。この第一のプローブ領域は、第二の標的領域をも含む標的核酸鎖上の第一の標的領域に実質的に相補的であり、ここでこの第一の標的領域が、標的核酸鎖上の第二の標的領域と連続しているならば、この診断用プローブ上の第一および第二のプローブ領域は、核酸のスペーサー領域によって分離される。

Description

【技術分野】
【0001】
本出願は、その全体が参考として本明細書に援用される、2001年9月24日出願の米国仮出願番号60/324,421号の優先権の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、病原などの特徴である核酸配列、ならびにヒトの移植の分野における目的である、ヒト白血球抗原(HLA)に関連するものを含む遺伝子のバリエーションおよび変異の有無の検出のための方法に関する。T細胞レセプター(TCR)遺伝子配列に関するバリエーションおよび変異もまた目的である。
【0003】
HLA遺伝子座は、事実上高度に多形性である。非特許文献1に開示されるように、124個のHLA−A対立遺伝子、258個のHLA−B対立遺伝子、74個のHLA−C対立遺伝子、221個のHLA−DRB1対立遺伝子、19個のDRB3対立遺伝子、89個のDRB4対立遺伝子、14個のDRB5対立遺伝子、19個のDQA1対立遺伝子、および39個のDQB1対立遺伝子が存在しており、新しい対立遺伝子が継続して発見されている。この急速な進歩の証拠として、非特許文献2は、250個のHLA−A対立遺伝子、488個のHLA−B対立遺伝子、118個のHLA−C対立遺伝子、312個のHLA−DRB1対立遺伝子、38個のHLA−DRB3対立遺伝子、12個のHLA−DRAB4対立遺伝子、25個のHLA−DRB5対立遺伝子、22個のDQA1対立遺伝子、53個のDQB1対立遺伝子、20個のDPA1対立遺伝子、および99個のDPB1対立遺伝子が存在することを示した。
【0004】
全てのHLA−A、HLA−BおよびHLA−C対立遺伝子は類似の配列を有する。同じことがDRB1、DRB3、DRB4およびDRB5配列についてもあてはまる。これらの類似性のせいで、プライマー対がポリメラーゼ連鎖反応配列特異的プライミング(PCR−SSP)の実施に用いられる場合、非常にしばしば、2つ以上の対立遺伝子が増幅されるか、または診断用の配列特異的オリゴヌクレオチド−プローブ検出(SSO)システムにおいて、2つ以上の対立遺伝子がハイブリダイズする。従って、固有のPCR−SSPまたは検出−SSOパターンを有する各々の対立遺伝子について、プライマーまたはプローブの多くの対を用いなければならない。さらに、HLAタイピングにおける診断用ハイブリダイゼーションSSOプローブの使用は、HLA対立遺伝子によって共有される高レベルのホモロジーによって混乱させられる。従って非特許文献3の方法のような多くの先行技術のタイピング方法は、HLAタイピングおよび他の適用について所望される正確度を欠く。
【0005】
PCRを用いて標的DNAテンプレート上の配列を特徴付けることができる。増幅が生じれば、テンプレートDNAは、用いられたプライマーと同じ配列を含む。増幅が生じなければ、このテンプレートDNA上の配列は、プライマー配列とは異なる。Newtonら、米国特許第5,595,890号は、PCR−SSPを用いるHLAの分子タイピングを含む、タイピングのためのPCR診断方法を開示している。この方法によれば、未知の対立遺伝子は、多数回のPCRからの陽性反応または陰性反応のパターンに基づいて割り当てられる。しかし、Newtonによって開示される方法は、上記のようなHLAにおける高い程度の多形性に起因して、HLAタイピングのためのそれらの有効性において限定される。各々が特定の配列を有する2つのプライマーの結果として、頻繁に多くのHLA対立遺伝子が増幅し、これによって未知の対立遺伝子を割り当てるために必要とされるPCR増幅の回数が増大する。同様の理由によって、非PCRの状況ではHLAの正しいタイピングのためには多数の診断用プローブが必要である。PCRには、DNAテンプレート上の領域に隣接するプライマーの対が、その領域を増幅させるために必要である。プライマーが所望の配列に対してアニーリングする能力は、プライマーの長さおよびPCRサーモサイクリングプログラムにおけるアニーリング温度設定に依存する。プライマーが長いほど、DNA配列の特定の増幅を達成するために必要であるアニーリング温度は高くなる。PCR−SSPは、プライマー長とアニーリング温度との間のバランスを用いて、プライマー指向性配列増幅の特異性を達成する。
【0006】
HLAタイピングのためのPCR−SSPシステムの臨床的使用において、限られた数のPCR反応を用いて、できるだけ多くの分解を達成し、これによって1対のプライマーによって増幅される対立遺伝子の数を減少する(すなわち、プライマーまたはプローブの特異性が増大される)必要性があった。本発明の目的は、共有に係る米国特許(特許文献1)の開示であり、その開示は参考として本明細書に援用され、これはHLAタイピングにおける関連の対立遺伝子の間で大きい差別を獲得するために連続しない(ギャップ)配列によって特徴付けられる診断用PCRプライマーの使用を教示する。別の実施形態において、米国特許第6,207,379号は、標的核酸において連続しない配列に対してハイブリダイズして、かつポリメラーゼ媒介プライマー伸長によってその標的を増幅する診断用プライマーの使用を教示する。標的HLA配列のさらに特異的な増幅を実行するのにおける特許文献1の方法の成功にもかかわらず、PCRおよび非PCRの両方の状況において、HLA配列の検出のための改良方法の要望が依然として残っている。
【0007】
特許文献1に記載のPCR発明は、PCR−SSPベースの分子タイピングの改良方法であって、これによってタイピングの特異性が増大されて、各々のタイピングのために必要なPCR反応の回数をへらすことができる方法のための当該分野における必要性に取り組んだ。しかし、非PCRの状況において特定の配列についてプローブする方法についての必要性は当技術分野に依然として存在する。基本的熱力学の理由によって、完全なマッチを有するものを含むプローブおよびテンプレートは、ハイブリダイズ状態と非ハイブリダイズ状態との間で平衡の状態である。その標的テンプレートに一瞬の間付着されるプローブは、さらに長くは付着されないかもしれない。ポリメラーゼはPCRにおいて、伸長によって所定の位置にプライマーを固定することによって重要な役割を果たす。非PCRの状況において、重要な因子であるポリメラーゼ(および引き続く伸長)は欠けており、標的に対してハイブリダイズされた短いプローブ二重鎖の長期安定性は必然的に予期されない。これらの理由によって一般に、安定な二重鎖を形成することを保証するために、対応する伸長プライマーよりもハイブリダイゼーションプローブが長くなる必要性が考慮される。
【0008】
また本発明の目的は、非特許文献4の開示であり、これは、オリゴヌクレオチドアレイ上の同じアドレスで2つ以上のオリゴヌクレオチドプローブを有する高密度オリゴヌクレオチドアレイの手段によってDNA鎖の上の2つの遺伝子座の間の物理的連鎖を決定するための方法を教示している。Gentalenによれば、協同的ハイブリダイゼーションは、物理的に連鎖した標的配列と連鎖していない標的配列との間を識別することができる。
【0009】
従って、HLAタイピングおよびT細胞レセプター(TCR)遺伝子配列の同定を含む、高度に多形性の状況において特定の標的を確実に検出し得る、改良されたハイブリダイゼーションに基づく検出システムの必要性が依然として存在する。
【特許文献1】
米国特許第6,207,379号
【非特許文献1】
Nomenclature for Factors of the HLA System 2000 (Hum.Immunol.2001 Apr;62(4):419〜68)
【非特許文献2】
WHO Nomenclature Committee for Factors of the HLA System(www.anthonynolan.com/HIG/)、2002年7月版
【非特許文献3】
Bugawanら、Tissue Antigens(1994)44:137〜147
【非特許文献4】
Gentalanら、Nucleic Acids Research 第27巻6号1485〜1491頁(1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、サンプル/標的核酸配列を検出するための改良方法として、ヒト白血球抗原(HLA)をコードする核酸の検出およびT細胞レセプター(TCR)遺伝子配列の検出のための改良方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、サンプル/標的核酸配列を検出するための改良方法に、そして詳細には、ヒト白血球抗原(HLA)をコードする核酸の検出およびT細胞レセプター(TCR)遺伝子配列の検出のための改良方法に関する。この改良方法によれば、診断用プローブの特異性は、少なくとも1つのプローブが、標的上の2つ以上の領域を認識し得、そして好ましくはサンプル/標的の核酸配列に対するプローブのアニーリング温度を増大させることなくそのように認識し得るように増大される。プローブセットの特異性の増大によって、検出された対立遺伝子の数が減少し、これによってこの方法の分解能が向上して、同じことがより低コストで行なわれる。
【0012】
詳細には、本発明は、サンプル核酸鎖上の標的核酸配列の存在を検出するための方法であって、以下の工程:この標的核酸配列を含むことが疑われるサンプルと診断用プローブとをハイブリダイズ条件下で接触させる工程、を包含する方法を提供する。この診断用プローブのヌクレオチド配列は、その5’末端における第一のプローブ領域であって、この標的核酸配列の特徴的な第一の標的領域に対して実質的に相補的である第一のプローブ領域、およびこの第一のプローブ領域に対して3’側に位置する第二のプローブ領域の両方を含む。この第二のプローブ領域はこの標的核酸鎖上のこの標的核酸配列の特徴的な第二の標的領域に対して実質的に相補的である。この第一の標的領域が、この標的核酸鎖上のこの第二の標的領域と連続する場合、この診断用プローブ上のこの第一および第二のプローブ領域は、核酸のスペーサー領域によって分離される。この診断用プローブ上の第一および第二のプローブ領域が連続する場合、この標的核酸鎖上のこの第一の標的領域と第二の標的領域との間には介在配列が存在する。この第一のプローブ領域がこの第一の標的領域に実質的に相補的であり、かつこの第二のプローブ領域がこの第二の標的領域に対して実質的に相補的である場合、この選択されたハイブリダイゼーション条件について、この第一および第二のプローブ領域の長さは、この診断用プローブがこの標的核酸鎖に対して安定にハイブリダイズされて検出可能なプローブ:標的ハイブリッドを形成するような長さである。しかし、この第一のプローブ領域またはこの第二のプローブ領域のいずれかがそれぞれ、この第一の標的領域および第二の標的領域に対して実質的に相補的でない場合、この選択されたハイブリダイゼーション条件下で、この診断用プローブは、この標的核酸鎖に対して安定にハイブリダイズされて、安定なハイブリダイゼーションを示す閾値を上回る検出可能なプローブ:標的ハイブリッドを形成することはない。次いでこのサンプル中の標的核酸配列の有無の指標として安定なプローブ:標的ハイブリッドの有無が検出される。
【0013】
本発明の実施に従えば、本発明の標的核酸および核酸プローブは、リン酸結合でなく硫酸またはペプチド結合のような修飾された骨格を有するDNA、RNA、または合成DNAの分子であってもよい。
【0014】
検出可能なシグナルが、安定なハイブリダイゼーションの非存在下で生成され得ることが認識されるが、当業者は、安定なハイブリダイゼーションの有無は、陰性コントロールおよび陽性コントロールの両方によって生成されるシグナルの比較によって決定され得るということ、ならびにシグナル閾値によって、サンプル中の標的核酸配列の有無の指標である安定なハイブリダイゼーションと不安定な(一過性を含む)ハイブリダイゼーションとの間の区別を行ない得るということが決定され得るということを認識する。1つの方法によれば、「陽性」反応を指定する閾値は、選択された設定条件下で、陽性コントロールサンプルについての最低値と陰性コントロールサンプルについての最高値との間の中間点として選択され得る。
【0015】
本発明の好ましい局面によれば、第一のプローブ領域と第二のプローブ領域はそれぞれ、第一および第二の標的領域に正確に相補的であるが、ただしそれらは必須ではない。本発明の好ましい局面によれば、サンプル/標的核酸鎖(単数または複数)は、ヒト被験体に由来するが、必ずしもそうでなくてもよい。
【0016】
第一のプローブ領域および第二のプローブ領域は、本発明の診断用プローブ上で連続してもよいが、それらは必須ではない。従って、本発明の好ましい実施形態によれば、第一のプローブ領域および第二のプローブ領域は、第一の標的領域と第二の標的領域の配列の間の標的核酸鎖の配列に相補的でない核酸配列のスペーサー領域、すなわち「介在配列」によって分離されてもよい。詳細には、このスペーサー領域は、診断用プローブの第一のプローブ領域のヌクレオチド配列および第二のプローブ領域のヌクレオチド配列の相補性を不連続にするように選択されて、その結果、この第一のプローブ領域および第二のプローブ領域がそれぞれ実質的に、第一および第二の標的領域に相補的でない限り、標的核酸配列の安定なハイブリダイゼーションは生じない。本発明の方法のさらなる実施形態によれば、第一のプローブ領域と第二のプローブ領域との間にスペーサー領域が存在し、またこの標的核酸上の第一の標的領域と第二の標的領域との間に介在配列が存在する場合にも、本発明は実施され得る。
【0017】
プローブ上のプローブ領域の間のスペーサー領域は一般には、1ヌクレオチドより長いが350ヌクレオチド長より短く、これは1〜30ヌクレオチドの長さが好ましく、そして3〜10ヌクレオチドが特に好ましい。ほとんどの状況では、このスペーサー領域は、せいぜい10または20ヌクレオチド塩基長しか必要としない。対照的に、標的核酸上の標的領域の間の介在配列は、1〜500以上の塩基長であって、これは350未満(1〜350塩基)のヌクレオチドが好ましい。にもかかわらず、スペーサー領域の長さ、および標的核酸鎖上の標的領域の間の介在配列の長さは、それぞれの標的領域に対するプローブ領域の協同的結合が妨げられるようなほど長くてはならない。さらに、プローブおよび標的領域の長さは、いずれかのプローブ領域が、その標的領域に対する他のプローブ領域の優先的な一過性のハイブリダイゼーションを要することなく、長さの増大(従って、アニーリング温度の増大)のせいで、その標的領域に対して独立してハイブリダイズし得るほど長くてはならない。両方のプローブ領域がそのそれぞれの標的領域に安定にハイブリダイズする場合のみ、標的核酸の存在の指標である閾値を上回るシグナルが生じる。
【0018】
別の局面において、本発明は、2つ以上のサンプル核酸鎖上の2つ以上の標的核酸配列の存在を検出するための方法を教示しており、これは以下の工程を包含する:この標的核酸配列を含むことが疑われるサンプルと診断用プローブとをハイブリダイズ条件下で接触させる工程。この第一の標的核酸配列は、第一の標的領域および第一の相補的標的ゾーンを有する。この第二の核酸配列は、第二の標的領域および第二の相補的標的ゾーンを有する。この診断用プローブのヌクレオチド配列は、以下(1)この標的核酸配列に特徴的な第一の標的領域に実質的に相補的である第一のプローブ領域、および(2)第二のプローブ領域であって、この第二の標的核酸配列に特徴的な第二の標的領域に対して実質的に相補的である第二のプローブ領域、を含む。この第一の相補的標的ゾーンがこの第二の相補的標的ゾーンに対して実質的に相補的であり、この第一のプローブ領域がこの第一の標的領域に対して実質的に相補的であり、そしてこの第二のプローブ領域がこの第二の標的領域に対して実質的に相補的である場合、この選択されたハイブリダイゼーション条件について、この第一および第二のプローブ領域は、この診断用プローブがこの標的核酸鎖に対して安定にハイブリダイズされて検出可能なプローブ:標的ハイブリッドを形成するようなものである。しかし、ここでこの第一の相補的標的ゾーンがこの第二の相補的標的ゾーンに対して実質的に相補的でないか、またはこの第一のプローブ領域がこの第一の標的領域に対して実質的に相補的でないか、またはこの第二のプローブ領域がこの第二の標的領域に対して実質的に相補的でないかのいずれかの場合、この選択されたハイブリダイゼーション条件について、この診断用プローブがこの標的核酸鎖に対して安定にハイブリダイズされて、安定なハイブリダイゼーションを示す閾値を上回る検出可能なプローブ:標的ハイブリッドを形成することはない。次いで、このサンプル中の標的核酸配列の有無の指標として安定なプローブ:標的ハイブリッドの有無が検出される。
【0019】
いくつかの実施形態では、この診断用プローブ上の上記第一および第二のプローブ領域は、核酸配列のスペーサー領域によって分離される。いくつかの実施形態では、この第一の標的領域および第一の相補的標的ゾーンが第一の非相補的なゾーンによって分離されるか、または第二の標的領域および第二の相補的標的ゾーンが第二の非相補的なゾーンによって分離されるかのいずれかである。
【0020】
相補的な標的ゾーンを含むいくつかの実施形態において、この第一の標的領域およびこの第一の相補的標的ゾーンは、第一の非相補的なゾーンによって分離され得るか、または第二の標的領域および第二の相補的な標的ゾーンは、第二の非相補的なゾーンによって分離され得る。いくつかの実施形態において、第一および第二の非相補的ゾーンは、お互いに対して実質的に相補的でなく、そしてこのスペーサー領域に対して実質的に相補的でない。
【0021】
これらの実施形態において、スペーサーが存在する場合、このスペーサーは一般に1ヌクレオチドより大きいが350ヌクレオチド長未満であり、1〜30ヌクレオチド(塩基)長が好ましく、そして3〜10ヌクレオチド(塩基)が特に好ましい。ほとんどの状況において、スペーサー領域は、10または20ヌクレオチド塩基長までである必要がある。対照的に、標的核酸上の標的領域と相補的標的ゾーン(CTZ)との間の非相補的ゾーン(NCZ)は、1〜500以上の塩基長であってもよく、350未満(0〜350塩基)のヌクレオチドが好ましい。にもかかわらず、スペーサー領域の長さ、および標的核酸鎖上の標的領域の間の非相補的ゾーンの長さは、それらのそれぞれの標的領域に対するプローブ領域の協同的結合が妨げられるほどの長さであってはならない。さらに、プローブおよび標的領域、ならびに相補的な標的ゾーンの長さは、いずれかのプローブ領域が、その標的領域に対する他のプローブ領域の優先的な一過性のハイブリダイゼーション、および相補的な標的ゾーンの間の安定なハイブリダイゼーションを要することなく、長さの増大のせいで(従ってアニーリング温度の上昇のせいで)、その標的領域に対して独立してハイブリダイズし得るほどの長さであってはならない。両方の相補的な標的ゾーンがお互いに対して安定にハイブリダイズし、かつ両方のプローブ領域がそれらのそれぞれの標的領域に安定にハイブリダイズする場合のみ、標的核酸の存在の指標である閾値を上回るシグナルが生じる。
【0022】
本発明の実施によれば、本発明の標的核酸および核酸プローブは、リン酸結合でなく硫酸またはペプチド結合のような修飾された骨格を有するDNA、RNA、または合成DNAの分子であってもよい。
【0023】
検出可能なシグナルが、安定なハイブリダイゼーションの非存在下で生成され得ることが認識されるが、当業者は、安定なハイブリダイゼーションの有無は、陰性コントロールおよび陽性コントロールの両方によって生成されるシグナルの比較によって決定され得るということ、ならびにシグナル閾値によって、サンプル中の標的核酸配列の有無の指標である安定なハイブリダイゼーションと不安定な(一過性を含む)ハイブリダイゼーションとの間の区別を行ない得るということが決定され得るということを認識する。1つの方法によれば、「陽性」反応を指定する閾値は、選択された設定条件下で、陽性コントロールサンプルについての最低値と陰性コントロールサンプルについての最高値との間の中間点として選択され得る。
【0024】
本発明の好ましい局面によれば、第一のプローブ領域および第二のプローブ領域はそれぞれ、第一および第二の標的領域に正確に相補的であるが、ただしそれらは必須ではない。本発明の好ましい局面によれば、第一のCTZおよびCTZは、それぞれ第一および第二の標的領域に正確に相補的であるが、ただしそれらは必須ではない。本発明の好ましい局面によれば、サンプル/標的核酸鎖(単数または複数)は、ヒト被験体に由来するが、必ずしもそうでなくてもよい。
【0025】
本発明は、同じプローブ上に2つ(またはそれ以上)の配列を有する。本発明におけるギャッププローブの2つの別の部分は、それら自体で十分に結合するには短すぎる。プローブ領域は最初、当業者が検出したい対立遺伝子上に存在する固有の配列に基づいて設計され得る。一旦最初の設計の考慮に取り組めば、プローブ領域の長さは一般に、次の重要な設計要因となる。プローブ領域長の考慮は、所望されない配列が所望の標的配列からわずか2〜3塩基対ずつ異なる状況(単一塩基対の相違しか存在しない場合も含む)では、特に重要である。両方のプローブ領域の結合(安定なハイブリダイゼーション)が、陽性のシグナルに必要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明は、種々の様式で用いられ得る核酸プローブであって、ただし特定の標的ヌクレオチド配列の存在を検出するために特に有用である核酸プローブに関する。従来のプローブを用いるのと異なり、本発明は、同じプローブ配列上に、好ましくは連続しない2つ(またはそれ以上)の核酸プローブ領域を含む診断用プローブを提供する。本発明によれば、このプローブ配列の2つの部分である第一および第二のプローブ領域は、それぞれ、第一および第二の標的領域に特異的に結合するように機能する。第二のプローブ領域は、第一のプローブ領域の3’末端に連結される。第二のプローブ領域は好ましくは、第一のプローブ領域から下流に分離されるが、このサンプル核酸鎖上の標的領域が連続していない場合は連続していてもよい。
【0027】
本発明の実践によれば、プローブ領域の1つは、サンプル核酸鎖上の目的の配列に対してこのプローブが最初は一過性に結合するように機能する。プローブ領域の両方ともこの役割を果たし得、このことは、いずれかのプローブ領域が最初は一過性に結合し得ることを意味する。一過性に結合したプローブ領域の1つを考慮すれば、他のプローブ領域は、それによって(局所的な濃度効果のおかげで)動態学的にさらに有利に配置され、その結果、その後に別の近傍(通常数百の塩基対以内)の配列をさらに容易に認識することができる。両方のプローブ領域とも、特定の対立遺伝子または他の標的配列のための診断用プローブの特異性を増大するように機能し得る。
【0028】
各々のプローブ領域の長さは、偽陽性のシグナルを防ぐために、ある長さを下回るように選択されるべきであるが、この長さとは、そうでなければ選択されたハイブリダイゼーション条件下で標的配列に対してそれ自体によって安定にハイブリダイズする長さである。標的領域に対するプローブ領域の1つの一過性のアニーリングによって、他のプローブ領域の局所濃度がその標的領域に対して増大され、これによってその標的領域に対する他の領域の首尾よいアニーリング、およびこのサンプルに対するプローブの安定なハイブリダイゼーションが達成される。
【0029】
本発明の1つの局面によれば、第一および第二のプローブ領域は、両方のプローブ領域がそれらの各々の標的領域に対して実質的に相補的である場合に、所定の選択されたハイブリダイゼーション条件下で検出可能な反応産物の形成が生じるように、そして、いずれかのプローブ領域がその各々の標的領域に対して実質的に相補的でない場合に、これらの同じハイブリダイゼーション条件下でこの標的配列の存在の指標の閾値を上回って検出可能である反応産物が生じないように、設計される。本発明の診断用プローブの選択性は、実践のために選択されたハイブリダイゼーション条件に依存するということが理解される。従って、当業者は、アニーリング温度が高いほど一般に、プローブ領域の配列は長くなる必要があるが、アニーリング温度が低いほど一般に、プローブ領域の配列は短くてもよいということを認識する。試薬の濃度ならびにプローブおよびサンプル核酸鎖のGC含量のような他の因子がまた、本発明の実践のための診断用プローブの設計およびハイブリダイゼーション条件の選択に影響する。
【0030】
図1は、本発明の実施形態を示す。ここでは、スペーサー領域によって分離されていない第一および第二のプローブ領域を含む診断用プローブが、サンプル核酸鎖上の標的核酸配列の存在を検出するように働く。詳細には、図1Aは、サンプル核酸上の第二の標的領域に対して3’側であって介在配列によって分離される第一の標的領域に対する、第一のプローブ領域の一過性のハイブリダイゼーションを示す。図1A’は、サンプル核酸上の第一の標的領域に対して5’側であって介在配列によって分離される第二の標的領域に対する、第二のプローブ領域の一過性のハイブリダイゼーションを示す。
【0031】
1つのプローブ領域のその対応する標的領域に対する一過性のハイブリダイゼーションによって、局所濃度効果が生じ、その結果選択されたハイブリダイゼーション条件下で、診断用プローブの他のプローブ領域が、サンプル核酸配列上のその標的領域に対して安定にハイブリダイズする。第一プローブ領域が第一の標的領域に実質的に相補的でないか、または第二のプローブ領域が第二の標的領域に対して実質的に相補的でないかのいずれかの場合、この診断用プローブが標的核酸鎖に安定にハイブリダイズして検出可能なプローブ:標的ハイブリッドを形成することがないように、標的および診断用プローブの同一性を考慮して、ハイブリダイゼーション条件をさらに選択する。図1Bは、診断用プローブの両方のプローブ領域の、それぞれサンプル核酸上のそれらのそれぞれの標的領域に対するハイブリダイゼーション、および診断用プローブの一部にハイブリダイズしたサンプル核酸鎖上の標的領域の間の介在配列によるループの形成を示す。図1Bにおいては、安定なプローブ:標的ハイブリッドが形成されている。
【0032】
図2は、本発明の第二の実施形態であって、ここではスペーサー領域によって分離された第一および第二のプローブ領域を含む診断用プローブを用いて、標的核酸鎖の存在を検出する。この場合、第一の標的領域は、標的核酸鎖上の第一の標的領域と連続する第二の標的領域と会合される。詳細には、図2Aは、標的核酸上の第二の標的領域に対して3’側である第一の標的領域に対する、第一のプローブ領域の一過性のハイブリダイゼーションを示す。図2A’は、標的核酸上の第一の標的領域に対して5’側である第二の標的領域に対する、第二のプローブ領域の一過性のハイブリダイゼーションを示す。
【0033】
図2Bは、診断用プローブの第一および第二のプローブ領域の、それぞれサンプル核酸鎖上の第一および第二の標的領域に対するハイブリダイゼーション、ならびにサンプル/標的核酸鎖の配列に対して相補的でないプローブ領域の間のスペーサー配列によるループの形成を示す。図2Bにおいては、安定なプローブ:標的ハイブリッドが形成されている。
【0034】
図3は、本発明の第三の実施形態を示す。ここでは、スペーサー領域によって分離される第一および第二のプローブ領域を含む診断用プローブを用いて、標的核酸鎖の存在を検出する。この実施形態では、第一の標的領域は、標的核酸鎖上の第一の標的領域から介在配列によって分離される第二の標的領域に会合される。従って、図3は、図1および図2に示される実施形態の特徴を組み合わせる実施形態を示す。詳細には、図3Aは、標的核酸上の第二の標的領域に対して3’側である第一の標的領域に対する、第一のプローブ領域の一過性のハイブリダイゼーションを示す。図3A’は、標的核酸上の第一の標的領域に対して5’側である第二の標的領域に対する、第二のプローブ領域の一過性のハイブリダイゼーションを示す。
【0035】
図3Bは、診断用プローブの第一および第二のプローブ領域の、それぞれサンプル核酸鎖上の第一および第二の標的領域に対するハイブリダイゼーション、ならびにプローブ領域の間のスペーサー領域によるループの形成、そして標的領域の間の介在配列によるループの形成であって、その結果この2つのループはお互いに実質的に相補的ではないループの形成を示す。図3Bにおいては、安定なプローブ:標的ハイブリッドが形成されている。
【0036】
第一の標的領域は、図1、2および3における標的ヌクレオチド鎖において第二の標的領域に対して3’側に示されているが、これは例示のために過ぎない。他の実施形態では、第一の標的領域は、第二の標的領域に対して5’側であってもよい。3つ以上の標的領域および3つ以上のプローブ領域を用いる実施形態も意図される。
【0037】
本発明のさらに他の実施形態において、プローブ領域は標的領域にハイブリダイズし得る。ここで標的領域は、異なる標的核酸鎖上に位置し、そしてさらに他の標的核酸鎖上のゾーンに対して実質的に相補的である、標的核酸鎖の1つの上の少なくとも1つのゾーンが存在する。
【0038】
次いで、目的の少なくとも2つの配列を含む第一の標的核酸鎖が存在する。この第一の標的核酸鎖の第一の配列は、第一のプローブ領域に対して実質的に相補的である第一の標的領域である。第一の標的核酸鎖の第二の配列は、第二の標的核酸鎖における第二の相補的な標的ゾーン(CTZ)に対して実質的に相補的である第一の相補的な標的ゾーン(CTZ)である。この第一のCTZは、第一の非相補的なゾーン(NCZ)によって第一の標的領域から分離され得る。この第一の非相補的なゾーン(NCZ)は好ましくは、350ヌクレオチド塩基長未満(0〜350塩基)であるが、500ヌクレオチド塩基長程度以上であってもよい。
【0039】
次いで、目的の少なくとも2つの配列を含む第二の標的核酸鎖が存在する。第二の標的核酸鎖の第一の配列は、第二のプローブ領域に実質的に相補的である第二の標的領域である。この第二の標的核酸鎖の第二の配列は、第二の相補的標的ゾーン(CTZ)であり、これは、第一の標的核酸鎖における第一の相補的標的ゾーン(CTZ)に対して実質的に相補的である。第二のCTZは、第二の非相補的なゾーン(NCZ)によって第二の標的領域から分離され得る。この第二の非相補的なゾーン(NCZ)は好ましくは、350ヌクレオチド塩基長未満(0〜350塩基)であるが、500ヌクレオチド塩基長程度以上であってもよい。
【0040】
本発明の初期の実施形態および局面において考察される同じ原理がまた、少なくともハイブリダイゼーション特性が考慮される限りは、これおよびCTZを含む他の実施形態にあてはまる。詳細には、第一のプローブ領域と第一の標的領域との間、および第二のプローブ領域と第二の標的領域との間の両方の実質的な相補性が、安定なハイブリダイゼーションのために必要である。さらに、CTZを含むこのような実施形態において、第一のプローブ領域と第一の標的領域との間、および第二のプローブと第二の標的領域との間に安定なハイブリダイゼーションが存在するためには、第一のCTZは、第二のCTZに対して実質的に相補的でなければならない。しかし、初期の実施形態とは異なり、CTZを含む実施形態は、第一のプローブ領域が第二のプローブ領域に対して5’であることを必要としない。
【0041】
図4-1および図4-2は、本発明の第4の実施形態を示す。ここでは、スペーサー領域によって分離される第一および第二のプローブ領域を含む診断用プローブ(ここで第二のプローブ領域に対して第一のプローブ領域が5’側である)を用いて、2つの標的核酸鎖の存在を検出する。この実施形態において、第一の標的領域および第一のCTZは、第一の標的核酸鎖上であり、そして第二の標的領域および第二のCTZは、第二の標的核酸鎖上である。詳細には、図4Aは、ハイブリダイゼーションが行なわれる前の第一および第二の標的ヌクレオチド鎖ならびに診断用プローブを示す。図4Bは、第一のCTZと第二のCTZとの間の安定なハイブリダイゼーションを示す。図4Cは、第一の標的領域に対する第一のプローブ領域の一過性のハイブリダイゼーションを示す。この後者は、第一の標的核酸上の第一のCTZに対して3’側である。図4Dにおいて、安定なプローブ:標的ハイブリッドが形成されている。
【0042】
図4-1および図4-2は、第一の標的領域に対して5’側である第一のCTZ、および第二の標的領域に対して3’側である第二のCTZを示すが、他の実施形態においては、CTZは、そのように配置される必要は無い。すなわち、CTZは、同じ核酸鎖上の標的領域に対して異なって配置されてもよい。例えば、第一のCTZは、5’側ではなく第一のプローブ領域に対して3’側に配置されてもよい。別の実施形態は、3’側でなく第二の標的領域に対して5’側に配置される第二のCTZを含んでもよい。なお別の実施形態において、第一のプローブ領域に対して3’側である第一のCTZ、および第二の標的領域に対して5’側に位置する第二のCTZの両方が含まれてもよい。さらに、図4-1および図4-2は、第二のプローブ領域に対して5’側に位置する第一のプローブ領域を示すが、この状況である必要はない。例えば、他の実施形態において、第一のプローブ領域は、第二のプローブ領域に対して3’側に位置してもよい。さらに、CTZを含む実施形態は、診断プローブの一部としてスペーサーを含んでも含まなくてもよいし、そして標的核酸鎖のいずれかまたは両方においてNCZを含んでもよいし含まなくてもよい。
【0043】
CTZを含む実施形態において、2つ以上の対のCTZが存在してもよいこと、すなわち2つ(またはそれ以上)の標的核酸鎖の間に相補性の複数のゾーンが存在してもよいことが理解される。所定の実施形態における1つ以上のCTZは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を介して標的核酸鎖に挿入されてもよい。詳細には、PCR反応を用いて標的核酸鎖を生成する場合、PCR反応において用いられる1つ以上のプライマーは、別の標的核酸鎖における核酸のあるゾーンに対して相補的である、核酸のあるゾーンを組み込んでもよい。複数のCTZ対を有するこれらの実施形態において、所定のヌクレオチド鎖において、NCZが2つのCTZを分離してもよい。
【0044】
図1〜4において、診断プローブは、このプローブの5’末端において固体支持体に結合されて示される。しかし、その描写は、例示の目的でしかない。本発明による診断用プローブはまた、このプローブの3’末端に結合されてもよいし、または同様に他の位置に結合されてもよい。
【0045】
本発明による標的核酸鎖は、ヒト被験体を含む任意の天然または人工の供給源に由来し得る。
【0046】
本発明の方法による診断プローブの使用は、ハイブリダイゼーションアッセイに対して選択性を付加する。なぜなら、3つ以上の固有の配列を検出のための選択基準として用いることができるからである。従って、未知の対立遺伝子を指定するために必要な別々の検出工程の数は減らされてもよく、これは対立遺伝子解析の全体的コストを低下させる。本発明による適切な診断用プローブの選択によって、いくつかのヘテロ接合の場合に生じる多義性の解決が可能になり、ここで2つの異なる対立遺伝子由来の検出パターンは、従来のデザインを有するプローブを用いる対立遺伝子の別の対に対して同一である。
【0047】
本発明の方法による診断用プローブを使用して、目的の核酸配列に対して相同な配列の2つ以上の領域を用いることによって、特定の対立遺伝子または対立遺伝子のセットの認識において、より大きい特異性が得られる。核酸配列ホモロジーの特定の認識を増大することによって、DNAに基づく種々の試験を実行する能力が洗練される。これらの試験の間に含まれるのは、HLA組織タイピング、遺伝性疾患の検出、組織における感染性生物体の検出、または核酸配列の存在に基づく種々の他のマーカーもしくは状態の検出(例えば、遺伝子治療技術の有効性を試験するため)である。
【0048】
本明細書において用いる場合、「ヌクレオチド」という用語は、DNAまたはRNAのいずれかに存在するヌクレオチドをいい、従って塩基としてアデニン、シトシン、グアニン、チミンおよびウラシルを組み込み、糖部分がデオキシリボースまたはリボースであるヌクレオチドを含む。しかし、従来の塩基であるアデニン、シトシン、グアニン、チミンおよびウラシルのうち1つと塩基対合し得る他の修飾塩基が本発明において使用される診断用プローブにおいて用いられ得ることが理解される。このような修飾された塩基としては、例えば、8−アザグアニンおよびヒポキサンチンが挙げられる。
【0049】
本明細書において「〜に相補的な」という用語は、ヌクレオチドに関して、別の特定のヌクレオチドと塩基対合するヌクレオチドを意味するものとして用いられる。従って、アデノシン三リン酸は、ウリジン三リン酸またはチミジン三リン酸に対して相補的であり、そしてグアノシン三リン酸は、シチジン三リン酸に対して相補的である。チミジン三リン酸およびグアノシン三リン酸は、特定の状況のもとで塩基対合し得るが、それらは本明細書の目的については相補的とみなされないことが理解される。シトシン三リン酸およびアデノシン三リン酸は、特定の状況のもとで塩基対合し得るが、それらは本明細書の目的については相補的とみなされないことがやはり理解される。同じことが、シトシン三リン酸およびウラシル三リン酸にあてはまる。
【0050】
「シス」という用語は、2つ(またはそれ以上)の標的領域が同じDNA鎖上に位置する状況(すなわち、それらが同じ対立遺伝子の一部である)をいうために用いられる。対照的に、「トランス」という用語は、2つ(またはそれ以上)の標的領域が2つの異なるDNA鎖上にある状況(すなわち、それらが異なる対立遺伝子の一部である)をいうために用いられる。
【0051】
「連続する」という用語は、核酸の2つの配列、領域、ゾーン、ストレッチなどがお互いに対してすぐ隣接しており、核酸の同じ鎖に位置している状況をいう。すなわち、2つの配列の間には、スペーサーも、介在配列も、非相補的なゾーンもない。
【0052】
本明細書の診断プローブ領域は、検出されるべき各々の特定の配列の異なる鎖に対して「実質的に」相補的であるように選択される。これは、診断用プローブが、それらの各々の鎖と実質的に相補的にハイブリダイズしなければならないということを意味する。従って、診断用プローブ配列は、サンプル/標的核酸配列の正確な配列を反映する必要はない。従って、プローブ配列(診断用プローブの第一および第二のプローブを含む)は、標的配列に対して正確に相補的でなければならないという必要はない。従って、全てのプローブが、陰性対立遺伝子についての陰性コントロールのシグナルと同様のきれいな陰性シグナルを生じるのではない。ミスマッチの数およびどんなタイプのミスマッチ(G−Tミスマッチは、時々、G−Cマッチとほぼ同じシグナルを生じる)かに依存して、1塩基対のミスマッチした対立遺伝子についての蛍光シグナルが、陰性コントロールよりも実質的に高いシグナルを生成するかもしれない。しかし、真の陽性対立遺伝子のシグナルが、潜在的に交差反応する対立遺伝子よりも実質的に高い限りは(通常>10〜20%)、閾値またはカットオフ値を確立して、陽性反応と陰性反応との間を識別することができる。
【0053】
一般に、少数のミスマッチがプローブ配列の中央で許容されて、ハイブリダイゼーションが可能になる。概して、許容されるミスマッチの程度は、プローブ領域の長さに依存し、これが次に選択される変性温度およびアニーリング温度に影響する。プローブの変性温度が、アニーリング温度に近いかまたはそれより高い(ストリンジェントが低い)ならば、プローブは、少数(一般に1もしくは2つまたはせいぜい3つ)のミスマッチがあろうとも、標的配列に対して依然として結合する。プローブ領域は、配列の中央においてより多くのミスマッチを許容し得るが、許容する能力は、選択されたハイブリダイゼーションおよび検出条件のプローブ領域の変性温度およびアニーリング温度に依存する。同様のパラメーターが、相補的な標的ゾーン配列にあてはまる。第一および第二のプローブ領域、ならびに第一および第二の相補的なゾーンが、それぞれの標的領域またはゾーンに対して正確に相補的であることが好ましい。しかし、これらの領域およびゾーンは、正確に相補的である必要はない。
【0054】
診断用の配列特異的なオリゴヌクレオチドプローブ検出(SSO)システムは、特定の標的核酸配列の存在についてアッセイする診断用プローブを用いるシステムまたはデバイスである。このようなシステムまたはデバイスにおいて、診断用プローブは、ポリカーボンリンカーおよびポリヌクレオチドリンカーの使用を含む、当該分野で周知であるようなリンカーを用いて支持体に結合されてもよい。あるいは、標的配列は、ニトロセルロース膜のような固体支持体に固定されてもよく、そして診断用プローブは溶液中である。SSO中の診断用プローブは、少なくとも1つのプローブ領域を含む。「プローブ領域」という用語は、標的ヌクレオチド配列の一部に対して実質的に相補的な診断用プローブ上のヌクレオチド配列をいう。この標的ヌクレオチド鎖の実質的に相補的な部分は、「標的領域」と呼ばれる。多様な標的ヌクレオチド鎖を含むこれらの実施形態は、各々の標的ヌクレオチド鎖において、特定のヌクレオチド配列である「相補的な標的ゾーン」(CTZ)を有してもよく、その結果、1つの標的鎖におけるCTZは、別の標的鎖におけるCTZに対して実質的に相補的である。特定の標的ヌクレオチド鎖におけるCTZから標的領域を分離する配列は、非相補的ゾーン(NCZ)と命名され、その結果、1つの標的鎖におけるNCZは、別の標的鎖におけるNCZに実質的に相補的ではない。しかしNCZが存在する必要はない。
【0055】
ギャッププローブとは、2つ以上のプローブ領域を含む特定の種類の診断用プローブをいう。ギャッププローブは、そのプローブ領域の間にスペーサーを有しても有さなくてもよい。「スペーサー」とは、2つのプローブ領域の間のヌクレオチド配列をいい、これは標的ヌクレオチド配列の対応する標的領域の間の介在配列(もし存在する場合)に対して実質的に相補的ではない。「スペーサー」はまた、標的ヌクレオチド配列の標的領域とCTZとの間の非相補的なゾーン(もし存在する場合)に対して実質的に相補的ではない。プローブ:標的ハイブリッドは、標的ヌクレオチド配列に対して安定にアニーリングされた診断用プローブを含む複合体である。
【0056】
標識は、プローブ上、または標的配列上のいずれかであり得る。直接の蛍光化合物であるビオチン、FITC、またはジゴキシゲニン(Dig)を、タグとして用いることができる。間接的な検出のために、アビジン/ストレプトアビジン(ビオチンについて)、抗FITC抗体(FITCについて)、抗Dig抗体(Digについて)に結合体化された蛍光物または酵素を、検出目的に用いる。1つの実施形態によれば、カルボキシル基で修飾されたラテックスビーズを用いてプローブを固定することができる。ビーズ上のカルボキシル基は最初に、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドハイドロクロライド(EDC)によって活性化され、次いでこのEDC活性化カルボキシル基が、このオリゴプローブの5’末端でアミン基と反応する。アミンとアミンの間、硫化物とアミンの間、および他の化合物の間を連結するための化合物を用いる別の実施形態がまた実施され得る。
【0057】
本発明の他の局面および実施形態は、以下の例示的な実施形態の考慮に基づいて理解される。
【実施例1】
【0058】
本実施例によれば、第一のプローブ領域および第二のプローブ領域を含む本発明による単一の診断用ギャッププローブを用いて、他のDRB1対立遺伝子由来のHLA DRB10308およびDRB11107の対立遺伝子を識別した。従って、従来のプローブであるOLR4040(5’−GCCTGATGAGGAGTACTG−3’)(配列番号5)を、DRB1のアミノ酸位置58でGAGを検出するように設計した。プローブOLR−4093−2(5’−AAGCGGGGCCGGGTG−3’)(配列番号6)は、DRB1のアミノ酸位置71〜72においてAAG CGG GGC(配列番号8)の相補体を認識する。しかし、DRB10308およびDRB11107は、両方の配列を含み、そして両方のプローブにハイブリダイズする。従って、これらの対立遺伝子は、DRB1ヘテロ接合性反応パターンを分析する場合、多くの多義性に寄与する。下の表1Aおよび表1Bは、DRB1対立遺伝子の配列とそれらを検出するために用いたギャップおよび従来のプローブとの間の関係を示す。
【0059】
表1は、対立遺伝子の領域の特徴的な配列およびプローブの配列を提示する。本実施形態における対立遺伝子は、それぞれ「領域1」および「領域2」と命名された2つの領域を含む。各々の領域についてのアミノ酸位置がまた提供される。表の配列は、左から右へ読み取り、そして配列の末端は、行の末端であるとき、または二重スラッシュ「//」に達するとき、常に最初である。この結果は連続的な配列である。例えば、参照(対立遺伝子)は、配列番号1および配列番号2の両方を含む。配列番号1は連続的な配列であり、領域1に相当し、そして「CGG」で始まり、「//」において「TGG」で終わる。配列番号2は、連続的な配列であり、領域2に相当し、そして「GAG」で始まり、「GTG」で終わる。
【0060】
「−」が出現する参照以外の配列タイプについて、特定の配列は、この参照(対立遺伝子)の対応する位置でヌクレオチド塩基を含む。ヌクレオチドの「文字」が「−」の代わりに出現する場合、特定の配列は、対応する位置で参照ヌクレオチドの代わりにそのヌクレオチドを含む。「−」もヌクレオチドの「文字」も存在しない場合、この特定の配列は、その位置に相当するヌクレオチド塩基を含まない。次いで、この表は、どちらに先に達するにしても、「//」に達するかまたは行の末端に達するまで横向きに読まれて、連続的な配列を形成する。(いくつかの表において、行は、引き続くページ上に、続けられてもよい)。プローブの場合は、リーダーは、「//」がないということを評価し、そのためこの配列は、対立遺伝子を用いる場合のように2つの別の連続する配列の代わりに、単一の連続する配列を形成するように横向きに読む。
【0061】
プローブOLR−4431は、中間領域(インター領域)を含む。中間領域は、対立遺伝子の配列に相当しないが、代わりに人工配列に相当する。人工的な配列の例としては、診断用プローブにおける「スペーサー」、例えば、プローブOLR−4431−3の「TTTT」が挙げられる。リーダーはまた、2つ以上の対立遺伝子が特定の配列識別(ID)番号を共有し得ることを評価する。なぜならこの対立遺伝子は、特定の領域について共通の配列を共有するからである。例えば、表1における参照対立遺伝子DRB10101およびDRB103011シリーズの対立遺伝子は両方とも、配列番号1に相当する、領域1について共通の配列を共有する。しかし、これらの2つの対立遺伝子シリーズは、領域2に関しては異なる。
【0062】
ちょうど表1に記載されるスキームに類似の組織的なスキームをまた、表3Aおよび3B、5、7、9、並びに11に使用する。
【0063】
【表1A】
Figure 2005504281
【0064】
【表1B】
Figure 2005504281
DRB10308およびDRB11107対立遺伝子によって生じる多義性を解決するための従来のアプローチは、DRB103xxまたはDRB111xxのいずれかのみを増幅する2回のPCRを実施し、次いでプローブハイブリダイゼーションを繰り返すことである。従って、DRB10308およびDRB11107の存在を検出して、それによって第1回のPCRおよびプローブハイブリダイゼーションの間に他の類似の対立遺伝子から対立遺伝子を識別し、さらなる回のPCRおよびハイブリダイゼーションを回避することは非常に有利である。
【0065】
詳細には、増幅されたHLA遺伝子とマイクロスフェアに固定されたプローブとの間のDNAハイブリダイゼーション反応を以下のとおり実行した。1μlのゲノムDNAあたり約1ngを含有する標準的な遺伝子増幅反応物および10マイクロモルの対応する配列特異的なビオチン化プライマーを、予め最適化したサーモサイクリングプログラムを用いて設定した。増幅したHLA−DRAB1エキソン2領域を含有する、得られた混合物の5μlを変性し、中和して、1M NaClおよび70mMのリン酸ナトリウム緩衝液に含有される所望のプローブ結合マイクロスフェア(1試験あたり1プローブあたり1000マイクロスフェア)と混合した。60℃で15分間、ハイブリダイゼーション反応をインキュベートした。次いで2容積の50nM NaCl溶液(60℃で予め加熱)をこの混合物に添加し、そしてこのチューブを5分間遠心分離した。ペレット化したマイクロスフェアを掻き乱すことなく、上清を除去した。この洗浄工程をさらに2回繰り返した。
【0066】
次いで、フィコエリトリン−ストレプトアビジン結合体の1μlあたり3容積の5μgの添加によって、ハイブリダイズしたDNAを標識した。標識混合物を60℃で5分間インキュベートして、上記のように洗浄した。洗浄したマイクロスフェアを、50nMのNaClを有する80μl容積に再懸濁した。装置に注入された個々のマイクロスフェアについて580nmでの蛍光シグナルを励起し、検出して記録する、Luminex 100 Flow Analyzerを用いて、ハイブリダイゼーションシグナルを検出した。1試験あたり約100〜200マイクロスフェアを解析して、各々のプローブについてメジアン蛍光強度(MFI)を算出した。次いで、試験において用いた各々のプローブについて得られたMFIを用いて、適切な陽性コントロールプローブ由来のMFIを用いて相対的ハイブリダイゼーションシグナルを算出する。
【0067】
陽性コントロールプローブとは、特定のプライマーセットによって増幅され得る全ての対立遺伝子上の非多形性領域を認識するプローブである。本発明についての標的核酸鎖としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて増幅された対立遺伝子の領域が挙げられる。陽性コントロールプローブを用いて、増幅されたDNA(アンプリコン)の量のバリエーションを評価することができるように、参照シグナルを提供する。陽性コントロールシグナルを用いて、全ての診断用プローブの相対的シグナルを算出する。なぜなら診断用プローブシグナルは、陽性コントロールシグナルのパーセントとして表されるからである。DRB1エキソン2についての陽性のコントロールプローブ配列は、5’−ggAACAgCCAgAAggAC−3’(配列番号9)である。
【0068】
本発明によれば、以下の配列:(5’−CTGATGAGGAGTACTTTTAGCAGAAGCGGGG−3’(配列番号7))を有するOLR4431−3と命名されたギャッププローブは、標的核酸配列(DRB10308およびDRB11107を含む)にハイブリダイズするように設計された2つのプローブ領域を有する。第一のプローブ領域CTGATGAGGAGTAC(配列番号10)は、第一の標的領域にハイブリダイズし得、そして第二のプローブ領域AGCAGAAGCGGGG(配列番号11)は、第二の標的領域にハイブリダイズし得る。2つのプローブ領域は、標的配列にハイブリダイズするように設計されていない、4つのTを含むスペーサーによって分離される。ギャッププローブは、位置71〜73でAAG CGG GGC(配列番号8)なしに位置58でGAGのみを含むDRB1対立遺伝子に対して<1%の蛍光シグナルを生じ、これによって、位置71〜73におけるAAG CGG GGC(配列番号8)なしに位置58でGAGのみを含むDRB1対立遺伝子による偽陽性のシグナルを効率的に排除する。このプローブはまた、位置58におけるGAGなしに位置71〜73におけるAAG CGG GGC(配列番号8)を含むDRB1対立遺伝子に対して<20%の蛍光シグナルを生じた。表2に示されるデータにおいて、DRB10308を含有するサンプルとともにギャッププローブの以下の使用によって、陽性コントロールプローブシグナルのほとんど90%のシグナルが生成された。従って、陽性反応を決定するためのカットオフ値(通常、最小の陽性値と最大の陰性値との間の中間点)は、容易に確立できる。骨髄ドナーバンクにおいて試験される必要があるサンプルの数を考慮すれば、上記のように提供されるDRB10308およびDRB11107の存在を検出する能力によって、時間および費用のかなりの節約が得られる。
【0069】
【表2】
Figure 2005504281
【実施例2】
【0070】
SSO方法論を用いてHLA−A遺伝子座で血清学的なレベルのDNAタイピングにおいて最も共通に存在する多義性のうちの2つは以下のとおりである。第一に、高頻度のA03011およびA2501のヘテロ接合体は、A3204およびA6601のヘテロ接合体と同じSSO反応パターンを有する。第二に、高頻度のA3201およびA6601のヘテロ接合体は、A2502およびA7401と同じSSO反応パターンを有する。A2501およびA2502においてのみ提示される2つの標的領域を認識する特有のプローブを生成する能力によって、上記のヘテロ接合体の2回の試験についての必要性が有意に低下する。
【0071】
本実施例では、シグナル診断ギャッププローブであり、2つの別々のプローブ領域から構成され、短いスペーサーによって分離されるA166−2は、多数の他のHLA−A遺伝子型から、A2501−2504群のいくつかの遺伝子型を識別することができる。下の表3は、これらのHLA−A対立遺伝子の配列とそれらを検出するために用いたギャップおよび従来のプローブとの間の関係を示す。2つの従来のプローブの使用によって、このゲノムにおける2つの標的領域の存在を決定することができるが、これらの標的領域が、対立遺伝子対が同じ、「シス」対立遺伝子であるか、または異なる「トランス」対立遺伝子であるかは決定できない。単一の認識配列を有するプローブA104−11によって、およそコドン62〜およそコドン68までの示された標的核酸配列の存在が決定される(表3A)。プローブA150〜19はまた、およそコドン77〜およそコドン85の示された標的核酸配列の存在を決定するための単一のプローブ領域を有する(表3B)。
【0072】
【表3A】
Figure 2005504281
【0073】
【表3B】
Figure 2005504281
【0074】
【表4】
Figure 2005504281
両方の標的領域に対するギャッププローブの結合は、両方の標的領域が存在しかつシス構成である対立遺伝子の1つの存在を示す。この結果は、両方の標的領域が存在するが、トランス構成であるものとは識別可能である。トランス構成において、従来のプローブは、それらの標的領域(もし存在すれば)に結合するが、ギャッププローブは結合しない。なぜなら、2つの標的領域のうちの1つだけについての親和性は、これらの条件下で安定な結合を促進するほど十分大きくないからである。従って、例えば、A2501/A03011の対立遺伝子対を含む遺伝子型は、A3204/A6601対立遺伝子対を含む遺伝子型から識別可能である。A166−2は、少なくとも1つのA25対立遺伝子を有するサンプルにのみ結合するが、A104−11およびA150−19の両方とも、いずれかの対立遺伝子対を有するDNAに結合する。
【0075】
プローブA104−11は、そのHLA−A標的配列(本実験では、対立遺伝子A2501、A68012、A6601、およびA6802)を含む任意のDNA(9008、Ter250、9057、およびTer259)に十分に結合する。A150−19は、その標的配列(本実験では、対立遺伝子A2501、およびA3201)を含む任意のDNA(9008、Ter250、9035、およびTer259)に十分に結合する。両方の標的配列をトランスで含むヘテロ接合性DNA、例えばTer259(A3201/A6802)は、2つの従来のプローブA104−11およびA150−19のみを用いては、両方の標的配列をシスで含むもの、例えば、9008(ホモ接合性A2501)またはTer250(ヘテロ接合性A2501)から識別不能である。しかし、A166−2は、シス構成9008(61.9%)およびTer250(46.8%)を有するA2501含有DNAにのみ十分に結合する。A遺伝子座エキソン2について陽性のコントロール配列は、5’−gCTACTACAACCAgAgCgAg−3’(配列番号20)である。
【実施例3】
【0076】
本実施例においては、ギャッププローブ、B204を用いて、2つの認識部位がシス構成であるか否かを決定する。下の表5は、この配列および他のHLA−B対立遺伝子の配列と、それらを検出するために用いられるギャップおよび従来のプローブとの間の関係を示す。DNA#1067は、対立遺伝子B1521を含み、これはプローブB106についての標的領域を有するが、B153についての標的流域は有さない。逆に、DNA#1064およびTer244は、プローブB153についての標的領域を含む対立遺伝子についてホモ接合性である。DNA#124は、B106およびB153の両方のプローブについてHLA−Bにおいて標的領域を含む。しかし、プローブB204についてのシグナルは、これらのDNAについて陰性である。なぜなら各々の標的領域は、別々の対立遺伝子にあり、すなわち「トランス」構成であるからである。プローブB204についてのシグナルは、DNA Ter250(対立遺伝子B1523)および9035(B3801)について陽性であり、これは同じ対立遺伝子において標的領域を含み、すなわち、「シス」構成である。
【0077】
プローブB106によって認識されるアミノ酸コドン64〜68における配列は、HLA−B遺伝子座の少なくとも73個の対立遺伝子を認識する。しかし、プローブB153のアミノ酸79〜83における配列がギャッププローブの一部として含まれるならば、HLA−Bのわずか約5個の対立遺伝子がB204ギャッププローブによって認識され、これによってギャッププローブを利用するSSOシステムの分解能が増大される。
【0078】
【表5】
Figure 2005504281
【0079】
【表6】
Figure 2005504281
表6において、プローブB153についての高いシグナルによって、これがそれぞれ、対立遺伝子B3801、B1523、B51011、およびB5301、およびB51011に対応するDNA9035、Ter250、#124、#1064およびTer244におけるHLA−B標的配列を認識することが示される。同様に、B106は、それぞれ、対立遺伝子B3801、B1523、B1401、およびB1521に対応するDNA9035、Ter250、#124、#1067における配列を認識する。これらの2つの従来のプローブを用いる結果では、標的配列がトランス構成(例えば、DNA#124(B1401/B51011)における)であるか、またはシス構成(例えば、DNA9035(B3801)またはTer250(B1523)における)であるかを区別しない。9035(B3801)およびTer250(B1523)のDNAのみを有するプローブB204についての高いシグナルによって、2つの別の標的配列についてのシス構成が存在することが実証される。B遺伝子座エキソン2について陽性のコントロール配列は、5’−gCTACTACAACCAgAgCgA−3’(配列番号32)である。
【実施例4】
【0080】
本実施例は、HLAクラスIIのDQB1遺伝子座に関する。プローブDQ25−8は、DQB105031およびDQB106011の特徴的な標的領域を認識するが、DQ33は、DQB105011およびDQB105031の特徴的な別々の標的領域を認識する。しかし、両方のプローブ領域を認識するが、シス構成でのみ存在するプローブDQ54G−3の使用によって、DQB105031が、2つの対立遺伝子の少なくとも1つであるか否かが決定される。下の表7は、これらのHLA−DQB1対立遺伝子の配列とそれらを検出するために用いたギャップおよび従来のプローブとの間の関係を示す。
【0081】
【表7】
Figure 2005504281
【0082】
【表8】
Figure 2005504281
表8は、クラスIIのHLA遺伝子のDQB1遺伝子座における実施例を支持するいくつかのデータを示す。ここでも、従来のプローブであるDQ25−8は、それぞれ対立遺伝子DQB105031(ホモ接合性)、DQB105031(ヘテロ接合性)、DQB0601、およびDQB10601における標的配列の存在に対応するいくつかのDNA−Ter145、Ter68、Ter74およびTer87に対して比較的高いシグナルで結合する。一方で、DQ33は、それぞれ対立遺伝子DQB105031(ホモ接合性)、DQB105031(ヘテロ接合性)、DQB10502、およびDQB10501における標的配列の存在に対応するDNA−Ter145、Ter68、Ter74およびTer123に対して比較的高いシグナルで結合する。以前の実施例においてと同様、2つの従来のプローブを用いても、どちらもDQB105031を含むTer145またはTer68においてのように、シス構成からのTer74(DQB10502/DQB10601)において同様に認識部位についてトランス構成を識別しない。両方の標的配列を認識するが、シス構成でのみあるギャッププローブDQ54G−3は、DQB105031対立遺伝子を含むDNAについてのみ比較的高いシグナルを与える。DQB1遺伝子座エキソン2についての陽性コントロール配列は、5’−gTCCCgTTggTgAAgTAgCAC−3’(配列番号40)および5’−gTCCCATTggTgAAgTAgCAC−3’(配列番号41)である。
【実施例5】
【0083】
DRB10308を含む実施例1に対して類似の実施例を、「ハーフプローブ」、すなわちギャッププローブOLR−4431−3についての2つのプローブ領域のうちの1つにのみ同一である比較的短い配列を有するプローブを用いて実施した。これらの「ハーフプローブ」(表9に示される)を、試験されたサンプルについて、DRB10308、他のDRB103対立遺伝子、またはDRB111対立遺伝子に対するそれらの結合についてOLR−4431−3に対して比較した。下の表9は、これらのDRB1対立遺伝子の配列と本実験で用いたギャップおよびハーフプローブとの間の関係を示す。このハーフプローブは、DRB10308、他のDRB103対立遺伝子、またはDRB111対立遺伝子について、バックグラウンドを超えるシグナルを与えないかまたは事実上与えなかった(常に<1%)。OLR−4431−3は、やはりDRB10308DNA(表10)についてのみ高いシグナル(64.0%)を与えた(表10)。本実施例によって、短い、単一の部位認識配列それ自体は、この実験におけるDRB1対立遺伝子のいずれにも安定に結合できなかったが、単一配列として一緒におかれた場合はDRB10308に結合し得ることが実証される。個々のハーフプローブは、試験された対立遺伝子において見出された認識配列について本実験のための閾値未満の結合能力を有する。「ハーフプローブ」配列を組み合わせることによって、本実験のデザインにおいて両方の「ハーフプローブ」またはプローブ領域についての標的領域を含む対立遺伝子についてのみ閾値を越える結合能力を有するプローブが、生成される。
【0084】
【表9】
Figure 2005504281
【0085】
【表10】
Figure 2005504281
表10によって、ギャッププローブOLR4431−3が、DRB10308を含有する細胞GN090由来のDNAに対してのみ比較的高いシグナルを生成することが示された。OLR4611、OLR4612、OLR4613およびOLR4616は、OLR4431−3において2つのギャップ領域のうち1つのみを有するプローブである。なんらかのDNAサンプルに対してなんらかの認識可能なシグナルを生成するプローブはない。本実施例は、2つのプローブ領域の協同的な結合が、所望の標的配列に対して正のシグナルを生成するのに必要であることを実証した。DRB1エキソン2についての陽性のコントロールプローブ配列は、5’−ggAACAgCCAgAAggAC−3’(配列番号46)である。
【実施例6】
【0086】
本実施例において、ギャッププローブOLR4029−6は、以下の2つの短い標的領域を認識する:対立遺伝子のDRB116群におけるエキソン2の5’末端付近の15塩基の領域(コドン12〜16)、およびエキソン2の3’末端にさらに近い12塩基の領域(コドン68〜71)(表11A)。この2つの認識された(標的)領域は、150塩基離れている。DRB116群は、エキソン2の5’末端でDRB115群に対して配列で同一である(表11B)。(2つの群は現実には、もともと命名された群であるDR2の「スプリット」またはサブグループである)。タイピング目的のために、単一のプローブを用いてDRB115群における対立遺伝子からDRB116群における対立遺伝子を識別することを可能にすることが有用である。下の表11Aおよび表11Bは、これらのDRB1対立遺伝子の配列とそれらを検出するために用いたギャッププローブとの間の関係を示す。
【0087】
【表11A】
Figure 2005504281
【0088】
【表11B】
Figure 2005504281
【0089】
【表12】
Figure 2005504281
プローブOLR4029−6は実際に、DRB115からDRB116対立遺伝子を識別する有意なシグナルを示す。DRB116対立遺伝子についてのシグナルは、2つの標的領域の間に150塩基のギャップがあってさえ本実験におけるDRB115対立遺伝子のシグナルの2.5倍である(表12)。5’末端におけるDR2特異的配列は、対立遺伝子をDRB115またはDRB116として同定するが、大きいシグナルを生成するには不十分である(表12)。DRB116特異的配列は、5’DR2特異的シグナルと呼応して働いて、DRB116対立遺伝子についてシグナルを有意に上昇させる(表12)。3’プローブ領域はそれ自体では、本実験に提示された対立遺伝子であるDRB10801、DRB10804、DRB11101、DRB10415、およびDRB11201においてコドン68〜11で短い標的配列を含むDNAについてバックグラウンドを上回るシグナルを与えるには不十分である。DRB1エキソン2についての陽性コントロールプローブ配列は、5’−ggAACAgCCAgAAggAC−3’(配列番号9)である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1A(および1A’)および1Bは、本発明の第一の実施形態を示しており、ここでは、第一の標的領域は第二の標的領域に対して3’側であって、サンプル標的上の介在配列によって分離されている。
【図2】図2A(および2A’)および2Bは、本発明の第二の実施形態を示しており、ここでは、第一の標的領域はサンプル標的上の第二の標的領域と連続しており、そして診断用プローブは、第一のプローブ領域と第二のプローブ領域との間に配置されたスペーサー配列を含む。
【図3】図3A(および3A’)および3Bは、本発明の第三の実施形態を示しており、ここでは、第一の標的領域は第二の標的領域に対して3’側であって、サンプル標的上の介在配列によって分離されており、そして診断用プローブは、第一のプローブ領域と第二のプローブ領域との間に配置されたスペーサー配列を含む。
【図4−1】図4A、4B、4Cおよび4Dは、本発明の第四の実施形態を示しており、ここでは、第一の標的領域は第一の標的核酸鎖上の第一の相補的な標的ゾーンに対して3’側であり、そして第二の標的領域は、第二の相補的な標的ゾーンに対して5’側である。
【図4−2】図4A、4B、4Cおよび4Dは、本発明の第四の実施形態を示しており、ここでは、第一の標的領域は第一の標的核酸鎖上の第一の相補的な標的ゾーンに対して3’側であり、そして第二の標的領域は、第二の相補的な標的ゾーンに対して5’側である。

Claims (20)

  1. サンプル核酸鎖上の標的核酸配列の存在を検出するための方法であって、以下の工程:
    該標的核酸配列を含むことが疑われるサンプルと診断用プローブとをハイブリダイズ条件下で接触させる工程であって;
    ここで該診断用プローブのヌクレオチド配列が、以下:(1)その5’末端における第一のプローブ領域であって、該標的核酸配列の特徴的な第一の標的領域に対して実質的に相補的である第一のプローブ領域、および(2)該第一のプローブ領域に対して3’側に位置する第二のプローブ領域、を含み、ここで該第二のプローブ領域が該標的核酸鎖上の該標的核酸配列の特徴的な第二の標的領域に対して実質的に相補的であり、ここで該第一の標的領域が、該標的核酸鎖上の該第二の標的領域と連続する場合、該診断用プローブ上の該第一および第二のプローブ領域は、核酸のスペーサー領域によって分離され、さらにここで該診断用プローブ上の第一および第二のプローブ領域が連続する場合、該標的核酸鎖上の該第一の標的領域と第二の標的領域との間には介在配列が存在する、工程;
    これによって、該第一のプローブ領域が該第一の標的領域に実質的に相補的であり、かつ該第二のプローブ領域が該第二の標的領域に対して実質的に相補的である場合、該選択されたハイブリダイゼーション条件について、該第一および第二のプローブ領域は、該診断用プローブが該標的核酸鎖に対して安定にハイブリダイズされて検出可能なプローブ:標的ハイブリッドを形成するものであるが、
    ここで該第一のプローブ領域が該第一の標的領域に実質的に相補的でないか、または該第二のプローブ領域が該第二の標的領域に対して実質的に相補的でないかのいずれかの場合、該選択されたハイブリダイゼーション条件について、該診断用プローブが該標的核酸鎖に対して安定にハイブリダイズされて、安定なハイブリダイゼーションを示す閾値を上回る検出可能なプローブ:標的ハイブリッドを形成することがない、工程;ならびに
    該サンプル中の該標的核酸配列の存在の指標として該安定なプローブ:標的ハイブリッドの有無を検出する工程、
    を包含する、方法。
  2. 請求項1に記載の方法であって、前記診断用プローブ上の前記第一および第二のプローブ領域が、前記標的核酸上の前記第一の標的領域と第二の標的領域との間の前記サンプル核酸鎖の前記配列に相補的ではない核酸配列のスペーサー領域によって分離される、方法。
  3. 前記スペーサーが1〜30塩基長である、請求項2に記載の方法。
  4. 前記スペーサーが3〜10塩基長である、請求項2に記載の方法。
  5. 請求項1に記載の方法であって、前記第一の標的領域が、前記標的核酸配列上の前記第二の標的領域から1〜350塩基である、方法。
  6. 請求項1に記載の方法であって、前記第一および第二のプローブ領域が、それぞれ前記第一および第二の標的領域に対して正確に相補的である、方法。
  7. 請求項2に記載の方法であって、前記標的核酸上の前記第一の標的領域と第二の標的領域との間に介在配列が存在する、方法。
  8. 請求項1に記載の方法であって、前記標的核酸配列が、1つ以上のヒトリンパ球抗原(HLA)またはT細胞レセプター(TCR)遺伝子配列の特徴である、方法。
  9. 2つ以上のサンプル核酸鎖上の2つ以上の標的核酸配列の存在を検出するための方法であって、以下の工程:
    該標的核酸配列を含むことが疑われるサンプルと診断用プローブとをハイブリダイズ条件下で接触させる工程であって;
    ここで該第一の標的核酸配列は、第一の標的領域および第一の相補的標的ゾーンを有し;
    ここで該第二の核酸配列は、第二の標的領域および第二の相補的標的ゾーンを有し;
    ここで該診断用プローブのヌクレオチド配列が、以下(1)該第一の標的核酸配列に特徴的な第一の標的領域に実質的に相補的である第一のプローブ領域、および(2)第二のプローブ領域であって、該第二の標的核酸配列に特徴的な第二の標的領域に対して実質的に相補的である第二のプローブ領域、を含み;
    これによって、該第一の相補的標的ゾーンが該第二の相補的標的ゾーンに対して実質的に相補的であり、該第一のプローブ領域が該第一の標的領域に対して実質的に相補的であり、そして該第二のプローブ領域が該第二の標的領域に対して実質的に相補的である場合、該選択されたハイブリダイゼーション条件について、該第一および第二のプローブ領域は、該診断用プローブが該標的核酸鎖に対して安定にハイブリダイズされて検出可能なプローブ:標的ハイブリッドを形成するものであり、
    ただし、ここで該第一の相補的標的ゾーンが該第二の相補的標的ゾーンに対して実質的に相補的でないか、または該第一のプローブ領域が該第一の標的領域に対して実質的に相補的でないか、または該第二のプローブ領域が該第二の標的領域に対して実質的に相補的でないかのいずれかの場合、該選択されたハイブリダイゼーション条件について、該診断用プローブが該標的核酸鎖に対して安定にハイブリダイズされて、安定なハイブリダイゼーションを示す閾値を上回る検出可能なプローブ:標的ハイブリッドを形成することがない、工程;ならびに
    該サンプル中の標的核酸配列の存在の指標として安定なプローブ:標的ハイブリッドの有無を検出する工程、
    を包含する、方法。
  10. 請求項9に記載の方法であって、前記診断用プローブ上の前記第一および第二のプローブ領域が、核酸配列のスペーサー領域によって分離される、方法。
  11. 請求項9に記載の方法であって、前記第一の標的領域および前記第一の相補的標的ゾーンが第一の非相補的なゾーンによって分離されるか、または第二の標的領域および第二の相補的標的ゾーンが第二の非相補的なゾーンによって分離されるかのいずれかである、方法。
  12. 請求項10に記載の方法であって、
    ここでさらに、前記第一の標的領域および前記第一の相補的標的ゾーンが第一の非相補的なゾーンによって分離されるか、または第二の標的領域および第二の相補的な標的ゾーンが第二の非相補的なゾーンによって分離されるかのいずれかであり;
    これによって該第一および第二の非相補的ゾーンが、お互いに対して実質的に相補的でなく、そして前記スペーサー領域に対して実質的に相補的でない、
    方法。
  13. 前記スペーサーが1〜30塩基長である、請求項10または12に記載の方法。
  14. 前記スペーサーが3〜10塩基長である、請求項10または12に記載の方法。
  15. 請求項9に記載の方法であって、前記第一の標的領域が、前記第一の標的核酸配列上の前記第一の相補的標的ゾーンから0〜350塩基である、方法。
  16. 請求項9に記載の方法であって、前記第二の標的領域が、前記第二の標的核酸配列上の前記第二の相補的標的ゾーンから0〜350塩基である、方法。
  17. 請求項9に記載の方法であって、前記第一および第二のプローブ領域が、それぞれ前記第一および第二の標的領域に対して正確に相補的である、方法。
  18. 請求項9に記載の方法であって、前記第一および第二相補的標的ゾーンが、お互いに対して正確に相補的である、方法。
  19. 請求項9に記載の方法であって、前記標的核酸配列が、1つ以上のヒトリンパ球抗原(HLA)またはT細胞レセプター(TCR)遺伝子配列に特徴的である、方法。
  20. 前記サンプル核酸鎖(単数または複数)がヒト由来である、請求項1または9に記載の方法。
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