JP2005501859A - 白金錯体及びガンの処置におけるそれらの使用 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
本発明は新規な白金錯体及びそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
シスプラチン、シス−[PtCl2(NH3)2]は多様な充実性腫瘍の処置において最も広く用いられる3つの臨床的薬剤の1つである(非特許文献1)。それはDNAに、主に同じ鎖上の2つの隣接するグアニンに不可逆的に結合し、DNAにおける屈曲を誘導し、それがシスプラチン−改変DNAに結合する細胞タンパク質により認識されることにより腫瘍細胞を殺すと思われる(非特許文献2)。アポトーシス及び結果としての細胞死の誘導を担うのはPt−DNA付加物である(非特許文献3)。精巣及び卵巣腫瘍を含む種々の腫瘍性疾患の処置におけるその有効性にかかわらず、その臨床的有用性はその低い溶解度、毒性及び特に腫瘍の耐性により制限される(非特許文献4)。カルボプラチン(Pt(CBDCA)(NH3)2,CBDCA=1,1−シクロブタンジカルボキシレート)のような第二世代薬剤は腎毒性の低下を示すが、おそらくそれらがシスプラチンが生成すると同じ範囲のDNA付加物を生成するという事のために、腫瘍の耐性を克服できない(非特許文献5)。
【0003】
耐性の克服は新規な白金薬剤の開発における主な目標の1つであり、従って古典的な構造−活性関連性(SAR)から離れる新規な化合物が設計され、合成され、スクリーニングされてきた(非特許文献6)。Cleare及びHoescheleにより最初に公式化された(formulated)SARは医化学者に、シス立体配置における2個の不活性リガンド及び2個の半−不安定離脱基を有する中性白金(II)錯体の製造に彼らの努力を向けるように影響を与えた(非特許文献7)。
【0004】
2個の離脱基のシス立体配置がシス−ジアミンジクロロ白金(シス−DDP)の抗−腫瘍活性に必須であることは一般的に受け入れられた。これは、Am1、Am2=NH3又は平面状アミンリガンド、例えばキノリン、チアゾール、ピリジン又はベンゾチアゾールであるトランス−PtCl2(Am1)(Am2)、(例えばトランス−[PtCl2(NH3)(ピリジン)]、トランス−[PtCl2(NH3)(チアゾール)]、トランス−[PtCl2(NH3)(キノリン)]及びトランス−[PtCl2(NH3)(ベンゾチアゾール)])における1個もしくは両方のNH3リガンドの置き換えがトランス形の細胞毒性を実質的に強化することをfarrell等が報告するまで20年以上もの間の状況であった(非特許文献8)。
【0005】
さらにNavarro−Ranniger及び共同研究者等は、トランス−PtCl2[NH2CH(CH3)2][NH(CH3)2]が興味深い薬理学的性質を有することを示し(非特許文献9)、Natile等はトランス−PtCl2(イミノエーテル)2もいくつかのヒトガン系に対して活性であることを報告した(非特許文献10)。臨床試験の2期にある非−古典的錯体の他の例は、四重に帯電したカチオンである3核Pt錯体BBR3464である(非特許文献11)。
【0006】
非−古典的白金化合物の重要性は、シスプラチン及びカルボプラチンにより形成される付加物と別個の範囲のDNA付加物を形成するようにそれらが設計され、従ってそれらが後天的Pt耐性を妨げることができるという事実に由来する(非特許文献12)。
【0007】
一般にトランス−ジアミンジクロロ白金(II)類似体は、それらのシスの相手より低い水溶液中における溶解度を有し、限られたバイオアベイラビリティーを生ずる。水溶解度を向上させる1つの方法は錯体に電荷を加えることによる方法である。Farrell等は、トランス−[PtCl2(NH3)(Am1)](Am1=平面状リガンド)の型の化合物の劣った水溶解度の克服においていくらかの努力をしたが、NH3及び平面状リガンドのトランス配向及び四角形−平面状物(square−planar entity)の電気的中性性を保持した。トランス−白金錯体、トランス−[PtCl(PyAc−N,O)(NH3)](PyAc=ピリジン−2−イルアセテート、N−ドナーはトランス)及びそのシス異性体が合成され、トランス異性体は類似錯体、トランス−[PtCl2(NH3)(Am1)](Am1=平面状リガンド)と比較して水中における溶解度の向上を示した(約4〜5ミリモルL−1)(非特許文献13)。他方、Farrell等により、及びまたHollis等により製造される白金錯体のカチオン性電荷は金属中心上にあり、アニオン性クロリドリガンドの1つの中性リガンドによる置換から生ずる(非特許文献14)。
【非特許文献1】
Jamieson,E.R. & Lippard,S.J.著,Recognition,and Processing of Cisplatin−DNA Adducts.Chem.Rev.1999;99(9);2467−2498
【非特許文献2】
Kartalou,M.& Essigmann,J.M.著,Recognition of cisplatin adducts by cellular proteins,Mutat.Res.2001,478,1−2,1−21
【非特許文献3】
Gonzalez,V.M.;Fuertes,M.A.;Alonso C.;Perez J.M.著,Is cisplatin−induced cell death always produced by apoptosis? Mol.Pharmacol.2001,59,4,657−63
【非特許文献4】
Kartalou M,Essigmann JM.著,Mechanisms of resistance to cisplatin.Mutat.Res.2001,478,1−2,23−43
【非特許文献5】
Cornelison,T.L.& Reed,E.著,Nephrotoxicity and Hydration Management for Cisplatin,Carboplatin,and Ormaplatin,Gynecol.Onc.1993,50,2,147−158
【非特許文献6】
Wong,E.& Giandomenico,C.M.著,Current Status of Platinum−Based Antitumor Drugs Chem.Rev.1999;99(9);2451−2466
【非特許文献7】
Cleare,M.J.;Hoeschele,J.D.著,Studies on the antitumor activity of group VIII transition metal complexes.part I.Platinum(II) complexes.Bioniorg.Chem.1973,2,187−210
【非特許文献8】
Bierbach,U.;Qu,Y.;Hambley,T.W.;Peroutka,J.;Nguyen,H.L.;Doedee,M.;Farrell,N.;Synthesis,Structure,Biological Activity,and DNA Binding of Platinum(II) Complexes of the Type trans−[PtCl2(NH3)L](L=Planar Nitrogen Base).Effect of L and Cis/Trans Isomerism on Sequence Specificity and Unwinding Properties Observed in Globally Platinated DNA.Inorg.Chem.1999;38,15,3535−3542
【非特許文献9】
Montero,E.I.;Diaz,S.;Gonzalez−Vadillo,A.M.;Perez,J.M.;Alonso,C.& Navarro−Ranninger,C.著,Preparation and characterization of nevel trans−[PtCl(2)(amine)(isopropylamine)]compounds:cytotoxic activity and apoptosis induction in ras−transformed cells,J.Med.Chem.1999,42,20,4264−4268
【非特許文献10】
Coluccia,M.;Nassi,A.;Boccarelli,A.;Giordano,D.;Cardellicchio,N.;Locker,D.;Leng,M.;Sivo,M.;Intini,F.P.;& Natile,G.著,In vitro and in vivo antitumour activity and cellular pharmacological properties of new platinum−iminoether complexes with different configuration at the iminoether ligands,J.Inorg.Biochem.1999,77,1−2,31−35
【非特許文献11】
John D.Roberts,John Peroutka and Nicholas Farrell著,Cellular pharmacology of polynuclear platinum anti−cancer agents,J.Inorg.Biochem.1999,77,1−2,51−57
【非特許文献12】
Kelland,L.R;Sharp,S.Y.;O’Neill,C.F.;Raynaud,F.I.;Beale,P.J.& Judson,I.著,Mini−review:discovery and development of platinum complexes designed to circumvent cisplatin resistance,J.Inorg.Biochem.1999,77,I 1−2,111−115
【非特許文献13】
Biervach,U.;Sabat,M.;Farrell,N.著,Inversion of the Cis Geometry Requirement for Cytotoxicity in Structurally Nevel Platinum(II) Complexes Containing the Bidentate N,O−Donor Pyridin−2−yl−acetate,Inorg.Chem.2000;39(9);1882−1890
【非特許文献14】
Hollis,L S;Amundsen,A R;Stern,E W.著,Chemical and biological properties of a new series of cis−diammineplatinum(II)antitumor agents containing three nitrogen donors:cis−[Pt(NH3)2(N−donor)Cl]+,Journal of Medicinal Chemistry,January 1989,Volume 32,Issue 1,pages 128−136
【発明の開示】
【0008】
発明の概略
本発明は、その側面の第1に従い、一般式(I):
[Pt(X)(Y)(Am1)(Am2)] (I)
[式中:
−X及びYは、同一もしくは異なることができ、ハロゲン、カルボキシレート、ホスフェート又はサルェート基を示し;
−Am1はアンモニア、第一級アミン、第二級アミン、非−平面状複素環式脂肪族アミン又は複素環式芳香族アミンから選ばれるアミンを示し;
−Am2は非−平面状複素環式脂肪族アミンを示す]
を有する新規な白金錯体(Pt−錯体)であって、但し、該錯体がシス立体配置にある場合、Am1及びAm2は同時にピペリジンを示すことはできない白金錯体に関する。
【0009】
本発明のPt−錯体はダイマーの形態にあることができ、そこにおいて各モノマー単位は、独立してAm1リガンドを介して又はAm2リガンドを介して又は該Am1もしくはAm2に連結したリンカーを介して他のPt−錯体に結合した定義されている通りのPt−錯体である。
【0010】
他の側面に従い本発明は、製薬学的に許容され得る担体ならびに活性成分として一般式:
[Pt(X)(Y)(Am1)(Am2)]
[式中:
−X及びYは、同一もしくは異なることができ、ハロゲン、カルボキシレート、ホスフェート又はサルェート基を示し;
−Am1はアンモニア、第一級アミン、第二級アミン、非−平面状複素環式脂肪族アミン又は複素環式芳香族アミンから選ばれるアミンを示し;
−Am2は非−平面状複素環式脂肪族アミンを示す]
のPt錯体であって、但し、該錯体がシス立体配置にある場合、Am1及びAm2は同時にピペリジンを示すことはできないPt錯体の治療的に有効な量を含む製薬学的組成物に関する。
【0011】
製薬学的組成物はモノマーの形態における、又は上記で定義したダイマーの形態における本発明のPt−錯体を含むことができる。
本発明は、必要のある患者に治療的効果を達成するのに十分な量の白金錯体(モノマー又はダイマーの形態における)を投与することを含み、Pt錯体が一般式(I):
[Pt(X)(Y)(Am1)(Am2)] (I)
[式中:
−X及びYは、同一もしくは異なることができ、ハロゲン、カルボキシレート、ホスフェート又はサルェート基を示し;
−Am1はアンモニア、第一級アミン、第二級アミン、非−平面状複素環式脂肪族アミン又は複素環式芳香族アミンから選ばれるアミンを示し;
−Am2は非−平面状複素環式脂肪族アミンを示し、
但し、該錯体がシス立体配置にある場合、Am1及びAm2は同時にピペリジンを示すことはできない]
を含む治療的効果を達成するための方法にも関する。
【0012】
図の簡単な説明
図1A〜1Bは、C−26ガン細胞(図1A)又はOV−1063ガン細胞(図1B)によるシスプラチン(−?−);トランスプラチン(−:−);トランス−[(PtCl2)(4−ピコリン)(ピペリジン)](−^−);トランス−[PtCl2)(4−ピコリン)(ピペラジン)]・HCl(−:−)及びトランス−[PtCl2(NH3)(ピペリジノ−ピペリジン)]・HCl(−o−)の吸収を示す。Pt含有量は原子吸光分析法(AAS)により決定された。
【0013】
図2A〜2Bは、C−26ガン細胞(図2A)又はOV−1063ガン細胞(図2B)におけるシスプラチン(−?−);トランスプラチン(−:−);トランス−[PtCl2)(4−ピコリン)(ピペリジン)](−^−);トランス−[PtCl2)(4−ピコリン)(ピペラジン)]・HCl(−:−)及びトランス−[PtCl2(NH3)(ピペリジノ−ピペリジン)]・HCl(−o−)のDNA白金化レベルを示す。Pt含有量は原子吸光分析法(AAS)により決定された。
【0014】
図3は、シスプラチン(−:−);トランスプラチン(−^−);トランス−[PtCl2(NH3)(ピペラジン)]・HCl(−:−);トランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペラジン)]・HCl(−x−)及びトランス−[PtCl2(NH3)(ピペリジノ−ピペリジン)]・HCl(−?−)により改変された種々の濃度のDNAへのEtBr蛍光の依存性を示す。データ点は三重に測定され、それは平均で±3%変動した。
【0015】
図4は、IC50値のトランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペリジン)](6.5μM,trans−[PtCl2(4−pic)(pip)])、トランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペラジン)]・HCl(それぞれ7.5μM又は6.5μM,trans−[PtCl2(4−pic)(pz)]・HCl)、トランス−[PtCl2(NH3)(ピペリジノ−ピペリジン)]・HCl(それぞれ4μM又は6μM,trans−[PtCl2(NH3)(pipo−pip)]・HCl)又はシスプラチン(それぞれ2μM又は1μM)で処理されたOV−1063細胞における、未処理の(標準細胞)と比較されるキャスパーゼ−3−活性を示す。薬剤−処理された細胞及び標準の細胞の両方を次いで回収し、溶解し、キットの案に記載されている通り、指示される長さの時間の後に検定した。
【0016】
図5は、シスプラチン(−?−);トランスプラチン(−:−);トランス−[PtCl2)(NH3)(ピペリジン)](−^−);及びトランス−[PtCl2)(NH3)(ピペラジン)]・HCl(−:−)へのユビキチンの結合曲線を示す。
【0017】
図6は、C−26結腸ガンが接種され、本明細書下記に記載されるスケジュールに従って処置された雌のBALB/Cマウスにおける、シス−DDP(−:−)と比較されるトランス−[PtCl2(NH3)(ピペリジノ−ピペリジン)]・HCl(−:−)の抗腫瘍活性を示す。
発明の詳細な記述
本発明は、Pt−錯体中に非−平面状複素環式脂肪族アミンリガンドが含まれることが、例えばガン処置の分野において治療的利点を有するという驚くべき発見に基づく。本発明に従うPt−錯体は少なくとも1個の非−平面状複素環式アミンリガンドを含み、それは柔軟性であり且つ水素結合ドナーを有し、それは他の物質と、例えばDNAと相互作用して損傷を形成することができる。リガンドは、得られる錯体の速度論及び細胞毒性に影響するのに十分に嵩高いこともできる。
【0018】
かくして本発明はその側面の1つに従い、一般式(I):
[Pt(X)(Y)(Am1)(Am2)] (I)
[式中:
−X及びYは、同一もしくは異なることができ、ハロゲン、カルボキシレート、ホスフェート又はサルェート基を示し;
−Am1はアンモニア、第一級アミン、第二級アミン、非−平面状複素環式脂肪族アミン又は複素環式芳香族アミンから選ばれるアミンを示し;
−Am2は非−平面状複素環式脂肪族アミンを示す]
の白金錯体(Pt−錯体)であって、但し、該錯体がシス立体配置にある場合、Am1及びAm2は同時にピペリジンを示すことはできない白金錯体を提供する。
【0019】
本明細書で用いられる「Pt−錯体」という用語は、その最も広い意味において、2個のアミン−含有リガンドを含み、少なくとも1個のリガンドが非−平面状複素環式脂肪族アミンであるいずれのPt−錯体をも指す。これらの錯体はシス及びトランス位置異性体の両方を含む(但し、錯体がシス立体配置にある場合、2個のアミンリガンドは同時にはピペリジンを示さない)。Pt−錯体は、金属中心として配位されたPt(II)又は配位されたPt(IV)を含むことができる。さらにPt−錯体はダイマーの形態にあることができ、そこにおいて各モノマー単位は、独立してそのアミンリガンドの1つを介して直接、あるいは該Am1又はAm2に連結したリンカーを介して他のPt−錯体に結合している上記で定義されたPt−錯体であり、2個のアミンリガンドは一緒になって、窒素結合を介してそれぞれのPt金属と配位するピペリジン環のような環式環を形成することもできる。
【0020】
好ましい態様に従うと、X及びYは同一もしくは異なり、クロリド又はヨーダイドを示し、より好ましくはX及びYは両方ともクロリドを示す。
【0021】
本発明に従うと、Am1はアンモニア;これらに限られるわけではないがメチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン又はn−ノニルアミンのような第一級アミン;これらに限られるわけではないがジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミンのような第二級アミン;これらに限られるわけではないがピペラジン、2−メチルピペラジン、ピペリジン、2−、3−もしくは4−ヒドロキシピペリジン、4−ピペリジノ−ピペリジン、ピロリジン、4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン及び3−アミノピロリジンのような非−平面状複素環式脂肪族アミン;あるいはこれらに限られるわけではないがピリジン、2−、3−もしくは4−アミノピリジン、2−、3−もしくは4−ピコリン、キノリン、3−もしくは4−アミノキノリン、チアゾール、イミダゾール、3−ピロリン、ピラジン、2−メチルピラジン、4−アミノキナルジンのような複素環式芳香族アミンを示すことができる。
【0022】
本発明に従うAm2は非−平面状複素環式アミン、例えばこれらに限られるわけではないがピペラジン(本明細書で時々「pz}の略字により言及される)、2−メチルピペラジン、ピペリジン(本明細書で時々「pip」の略字で言及される)、2−、3−もしくは4−ヒドロキシピペリジン、4−ピペリジノ−ピペリジン(本明細書で時々「pip−pip」の略字により言及される)、ピロリジン、4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン及び3−アミノピロリジンである。
【0023】
上記で示した通り、本発明のPt−錯体は上記で定義した一般式(I)を有する錯体のすべての位置異性体を指す。1つの側面に従うと、Pt−錯体はトランス立体配置にある。特定の例には:
−トランス−[PtCl2(NH3)(ピペリジン)];
−トランス−[PtCl2(NH3)(4−ヒドロキシピペリジン)];
−トランス−[PtCl2(NH3)(4−ピペリジノ−ピペリジン)];
−トランス−[PtCl2(NH3)(4,4’−ビピペリジン)];
−トランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペリジン)];
−トランス−[PtCl2(ピペリジン)2];
−トランス−[PtCl2(NH3)(ピペラジン)]・HCl;
−トランス−[PtCl2(イソプロピルアミン)(ピペラジン)]・HCl;
−トランス−[PtCl2(n−ブチルアミン)(ピペラジン)]・HCl;
−トランス−[PtCl2(n−ノニルアミン)(ピペラジン)]・HCl;
−トランス−[PtCl2(ピペリジン)(ピペラジン)]・HCl;
−トランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペラジン)]・HCl;
−トランス−[PtCl2(ピペラジン)(ピペラジン)]・HCl;
−トランス−[PtCl2(NH3)[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン)]・HCl;
が含まれる。
【0024】
さらに別の側面に従うと、錯体はシス立体配置にある。特定のシス異性体にはシス−[PtCl2(NH3)(ピペリジン)]又はシス−[PtCl2(NH3)(ピペラジン)]・HClが含まれるがこれらに限られない。
【0025】
上記で示した通り、非−平面状複素環式アミンリガンドは柔軟性であり且つDNAと相互作用して損傷を形成することができる水素結合ドナーを有し、得られる錯体の速度論及び細胞毒性に影響するのに十分に嵩高い。さらに、ピペラジンのようなアミンリガンドのいくつかは錯体に正の電荷を与え、かくして十分な水溶解度及びDNAのようなポリアニオン性分子との錯体の迅速な相互作用を保証する。
【0026】
錯体はダイマーの形態にあることもできる。従って、2個のPt−錯体が原子価結合、各Pt−錯体のアミン置換基の間で形成される環式環(例えば一緒になってピペラジン環を形成する)を介して、あるいは各錯体のAm1又はAm2リガンドに連結するリンカーにより会合する。リンカーの制限ではない例には短いポリエチレングリコール鎖(PEG)、短いジアミノアルカン類(例えば1,6−ジアミノヘキサン、1,8−ジアミノオクタン)が含まれる。リンカーに関する特定の例は4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカン鎖であり、2個のPt−錯体がこのリンカーにより会合している1つの特定のダイマーはビス−[{トランス,トランス−(PtCl2ピペラジン)2}(4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンジアミン)]・2HClである。
【0027】
本発明は、製薬学的に許容され得る担体ならびに活性成分として上記で定義した本発明のPt−錯体の治療的に有効な量を含む製薬学的組成物にも関する。
【0028】
本発明のPt−錯体は優れた医学的慣習に従い、個々の患者の臨床的状態、投与の部位及び方法、投与のスケジュール、患者の年齢、性別、体重及び医療実施者に既知の他の因子を考慮して、投与され、投薬される(administered and dosed)。本明細書の目的のための治療的に「有効な量」は、かくして当該技術分野において既知の考察により決定される。その量は、本発明の活性成分を用いて処置される疾患状態からの生存率の向上又はより迅速な回復あるいは疾患状態と関連する症状の改善もしくは除去ならびに当該技術分野における熟練者により適した尺度として選ばれる他の指標を含むがこれらに限られない改善を達成するのに有効でなければならない。
【0029】
有効量は典型的には適切に設計される臨床試験(投薬量範囲研究)において決定され、当該技術分野における熟練者は有効量を決定するためにそのような試験をいかにして適切に行なうかを知っているであろう。一般的に既知の通り、有効量はPt−錯体の、例えばPt−DNA付加物を形成するためのDNAへの親和性、体内におけるPt−錯体の分布プロファイル、多様な薬理学的パラメーター、例えば体内における半減期を含む多様な因子、もしあるとしたら望ましくない副作用、年齢及び性別などのような因子に依存する。
【0030】
Pt−錯体の送達のために多くの投与様式を用いることができ、これらは当該技術分野において既知の通り、種々の担体、添加剤、エリキサーなどの使用を必要とするであろう。
【0031】
明らかに、本発明に従って用いられる製薬学的に許容され得る担体は一般に、それらがPt−錯体の所望の治療効果を邪魔しないかもしくは妨げず且つ本発明のPt−錯体と反応しない程度までの不活性無毒性固体もしくは液体充填剤、希釈剤又はカプセル封入材料を指す。
【0032】
Pt−錯体を経口的に、皮下的に又は静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内及び鼻内投与ならびに包膜内投与及び輸液法による投与を含む非経口的に投与することができる。さらに、肺への吸入器を介する送達のためにPt−錯体をクロロフルオロカーボンもしくはヒドロフルオロカーボンプロペラント中に懸濁させることができる。あるいはまた、Pt−錯体をマトリックス(ラクトースなど)又は担体(例えばリポソームなど)中で調製することができ、それは経口的、舌下的又は座薬による送達を可能にするであろう。
【0033】
投薬は1回の投薬又は数日間に及ぶ複数回の投薬であることができる。処置は一般に疾患経過の長さ及び活性成分の有効性及び処置されている患者の種に比例する長さを有する。さらに、本発明のPt−錯体の投与は断続的であるか、あるいは漸次的又は連続的、一定の又は制御された割合における患者への投与であることができる。本明細書に記載される白金化合物を用いる治療的処置のための宿主又は患者は一般に哺乳類、例えば人間、犬及びネズミ類などである。
【0034】
本発明のPt−錯体を非経口的に投与する場合、それは一般に注入可能な単位投薬量の形態で調製されるであろう(溶液、懸濁剤、乳剤)。注入に適した製薬学的調剤には無菌の水溶液もしくは分散液及び無菌の注入可能な溶液もしくは分散液への再構築のための無菌の粉剤が含まれる。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、脂質ポリエチレングリコールなど)、それらの適した混合物及び植物油を含有する溶媒又は分散媒であることができる。綿実油、ごま油、オリーブ油、大豆油、コーン油、ひまわり油又はピーナッツ油ならびにエステル、例えばミリスチン酸イソプロピルのような非水性ビヒクルを本発明のPt−錯体のための溶媒系として用いることもできる。
【0035】
さらに、抗微生物性防腐剤、酸化防止剤及び緩衝剤を含む本発明のPt−錯体含有組成物の安定性、無菌性及び等張性を増強する種々の添加剤を加えることができる。種々の抗バクテリア剤及び抗菌・カビ剤、例えばパラベン類、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などにより微生物の作用の防止を確実にすることができる。
【0036】
本発明の製薬学的組成物を必要のある患者に経口的に投与することもできる。錠剤、懸濁剤、溶液、乳剤、カプセル、粉剤、シロップなどにおいて活性化合物を投与するような通常の方法が有用である。それを経口的又は静脈内に送達し且つその生物学的活性を保持する既知の方法が好ましい。
【0037】
1つの好ましい態様に従うと、本発明のPt−錯体はリポソームにより閉じ込められるか又はその上に充填される。本明細書で用いられる「リポソーム」という用語は、自然に又は自然にではなく小胞を生ずることができるリポソーム−形成性脂質、例えば少なくとも1個のアシル基が複雑なリン酸エステルにより置き換えられているグリセリドであるリン脂質のすべての球又は小胞を含む。
【0038】
「充填される」又は「閉じ込められる」という用語は、リポソームの内部に閉じ込められるか、リポソームの表面に露出されるかもしくは存在するか、リポソームの膜内に埋め込まれることを意味する。
【0039】
本発明に従うリポソームはいずれの既知のリポソーム形成性脂質からも形成され得る。本明細書で用いられる場合、「リポソーム−形成性脂質」という用語は、特徴的に異なる性質、例えば親水性と疎水性の両方を有する基又はそのような分子の混合物を含有し、その水性媒体中の分散液においてリポソーム性小胞を形成する生理学的に許容され得る両親媒性物質を示す。リポソームは1種の両親媒性物質から、又はそのような物質の混合物から成ることができる。
【0040】
両親媒性物質には中でもリン脂質、スフィンゴ脂質、糖脂質、例えばセレブロシド及びガングリオシド、PEG化脂質(PEGylated lipids)及びステロール類、例えばコレステロール及び他が含まれる。本発明の方法による使用のために、通常既知のいずれのリポソーム−形成性脂質も適している。脂質の源又はその合成法は重要ではない:改変されたもしくは改変されない自然に存在するいずれかの脂質又は合成ホスファチドを用いることができる。
【0041】
好ましいリポソーム−形成性両親媒性物質は天然、半−合成又は完全に合成の分子;負に又は正に帯電した脂質、場合によりコレステロールのようなステロールと;及び/又はPEG化脂質のようなリポポリマーと組み合わされていることができるリン脂質又はスフィンゴ脂質である。
【0042】
本発明により用いられるリポソームを、種々の生物学的流体(biological fluids)を含むいずれかの特定の貯蔵体(reservoir)の必要条件に適合させて作ることができ、それは凝集又はクロマトグラフィー分離なくそれらの安定性を保持し、それにより注入される流体中に十分に分散され且つ懸濁されたままである。その場の流動性は組成、温度、塩分、二価カチオン及びタンパク質の存在の理由で変化する。他の溶媒又は界面活性剤と一緒に又はそれらなしでリポソームを用いることができる。
【0043】
本発明に従う好ましいリン脂質の組み合わせには(HSPC):コレステロール:PEG2000−DSPEの混合物(HSPCは水素化大豆ホスファチジルコリンを指し、PEG2000−DSPEはPEG2000が頭基(head group)に結合したジ−ステアロイル−ホスファチジル−エタノールアミンを指す)、あるいはまたジアシルグリコールPEG(2個のステアロイルアシル鎖を有する)又はコレステロール−PEGが含まれる。
【0044】
本発明の組成物は治療的効果を達成することを目的とし、治療的効果は本発明のPt錯体とDNAのような核酸分子の間の付加物の形成を含む。治療的効果は望ましくない細胞増殖の阻害又は望ましくない細胞のアポトーシスの誘導を含むことができる。
【0045】
かくして本発明の組成物を、望ましくない細胞増殖と関連する疾患状態の処置又は予防のために用いることができる。本明細書で用いられる「処置又は予防」という用語は、疾患状態と関連する望ましくない症状の改善に、そのような症状が起こる前にそれらの発現を妨げるのに、疾患の進行を遅らせるのに(病気の組織の増殖の速度から明らかになり得る)、症状の悪化を遅らせるのに、軽快期の開始を増進させるのに、疾患の進行性慢性期において引き起こされる不可逆的な損傷を遅らせるのに(例えば自己免疫疾患において)、該進行性期の開始を遅らせるのに、重度を低くするか又は疾患を治癒させるのに、生存率を向上させるか又はより急速な回復を達成するのに、あるいは疾患が起こるのを妨げるのに、あるいは上記の2つもしくはそれより多くの組み合わせのために有効である本発明の組成物の治療的量の投与を指す。
【0046】
かくして本発明は治療的効果を達成するための方法にも関し、その方法は必要のある患者に該治療的効果の達成に十分な量の本発明に従う白金錯体を投与することを含む。1つの態様に従うと、本発明のPt−錯体は抗−ガン剤として用いられる。
【0047】
ここで以下の制限ではない実施例により本発明をさらに説明する。前記の記述は本発明のいくつかの特定の態様のみを詳細に記載しているが、本発明はそれらに制限されないことならびに特許請求の範囲により定義される本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、形式及び詳細において他の変動が可能であり、それらは明細書の開示内に含まれるとして読まれるべきであることが当該技術分野における熟練者により理解されるであろう。
特定の態様の詳細な記述
【実施例1】
【0048】
−化学合成
(1)ピペリジン−含有Pt錯体の合成
トランス−[PtCl 2 (NH 3 )(R)]の製造のための一般的方法
以下の記述において、Rは下記のピペリジン誘導体のいずれか1つを指す:ピペリジン、4−ヒドロキシピペリジン、4−ピペリジノ−ピペリジン、1,4’−ビスピペリジン。さらなる参照のために、得られる誘導体を括弧内の参照番号により同定する。
【0049】
シス−ジアミンジクロロ白金(II)(300mg,1ミリモル)を30mLの二回蒸留水(double distilled water)、DDW中に懸濁させた。2当量(eq.)のピペリジン誘導体を加え、懸濁液を85℃に3時間加熱した。この時間の間に黄色の懸濁液は無色透明の溶液に変わった(いくつかの場合には黒色沈殿が生成した)。反応混合物を室温に冷却し、濾過し、1mLの濃HClを滴下した。温度を90℃に6時間上げ、その間に黄色の生成物、トランス−[PtCl2(NH3)(ピペリジン誘導体)]が沈殿した。反応混合物を室温で4時間放置し、その後黄色の生成物を濾過により集め、40mLのDDW、10mLのEtOH及び40mLのジエチルエーテルで洗浄した。
トランス−[PtCl 2 (NH 3 )(ピペリジン)](1):収率86.9%.分析(C5H14Cl2N2Pt)C,H,N.195Pt NMR(δ,DMF):−2167ppm.
トランス−[PtCl 2 (NH 3 )(4−ヒドロキシピペリジン)](2):収率80.0%.分析(C5H14Cl2N2OPt)C,H,N.195Pt NMR(δ,DMF):−2172ppm.
トランス−[PtCl 2 (NH 3 )(4−ピペリジノ−ピペリジン)](3):収率78.5%.分析(C10H24Cl3N3Pt)C,H,N.195Pt NMR(δ,H2O):−2170ppm.
トランス−[PtCl 2 (NH 3 )(4,4’−ビピペリジン)](4):収率85.9%.分析(C10H24Cl3N3Pt)C,H,N.195Pt NMR(δ,H2O):−2175ppm.
トランス−[PtCl 2 (4−ピコリン)(ピペリジン)]の製造のための方法(5)
K2PtCl4(200mg,0.482ミリモル)を30mLのDDW中に溶解した。4−ピコリン(2.5当量,117.3μL;1.2ミリモル)を加え、混合物を室温で終夜攪拌した。黄色の沈殿、シス−[PtCl2(4−ピコリン)2][195Pt NMR(DMF)=−1964ppm]を濾過により集め、50mLのDDW及び40mLのジエチルエーテルで洗浄した。シス−[PtCl2(4−ピコリン)2](226mg,0.5ミリモル)を40mLのDDW中に2当量のピペリジン(99μL,1ミリモル)と一緒に懸濁させ、懸濁液を80℃に3時間加熱した。溶液は透明且つ無色に変わり、黒色の沈殿がいくらか生成した。反応混合物を室温に冷まし、沈殿した材料を濾過した。無色の濾液に1mLの濃HClを加え、混合物を90℃に加熱した。加熱を6時間保持し、その間に黄色の沈殿が生成した。反応混合物を室温に冷まし、沈殿(180mg)を集め、50mLのDDW、10mLのEtOH及び30mLのジエチルエーテルで洗浄した。
【0050】
収率:81%.分析(C11H18C12N2Pt):C,H,N.195Pt NMR(δ,DMF):−2087ppm.
トランス−[PtCl 2 (ピペリジン) 2 ]の製造のための方法(6)
K2PtCl4(415mg,1ミリモル)を50mLのDDW中に溶解し、それに(1.330グラム,8ミリモル)のKIを加え、赤色の溶液を室温で20分間攪拌した。攪拌されている溶液に(202μl,2ミリモル)のピペリジンをゆっくり加えた。室温で1時間攪拌した後、黄色の沈殿を集め、50mLのDDW及び次いで50mLのエーテルで洗浄した。シス−[PtI2(Pip)2](300ミリグラム,0.484ミリモル)を20mLのDMF中に取り上げ、164.5ミリグラム(0.97ミリモル)のAgNO3及び(98μl,1.94ミリモル)を加え、混合物を室温で終夜攪拌した。沈殿を濾過した後、溶液を蒸発乾固した。ゴムに20mLのDDWを加え、30分間攪拌した。不溶性の材料を濾過し、2mLの濃HClを加えた。酸性化された溶液を90℃に5時間温めた。室温に冷却した後、黄色の沈殿を集め、50mLのDDW及び40mLのエーテルで洗浄した。
トランス−[PtCl 2 (ピペリジン) 2 ](6):収率:91%.分析(C10H22Cl2N2Pt):C,H,N.195Pt NMR(δ,DMF):−2080ppm.
シス−[PtCl 2 (NH 3 )(ピペリジン)]の製造のための方法(7)
K2PtCl4(415mg,1ミリモル)を50mLのDDW中に溶解し、8当量のKI(1.328g,8ミリモル)を加えた。混合物を室温で15分間攪拌し、次いで2当量のピペリジン(198μL,2ミリモル)をゆっくり加えた。混合物を室温で1時間攪拌し、その間に黄色の沈殿が生成した。沈殿を集め、50mLのDDW及び20mLの(1:1)アセトン:ジエチルエーテル混合物で十分に洗浄した。乾燥後、黄色の沈殿(500mg,0.8ミリモル)を20mLのDDW及び40mLのエタノールの混合物中に懸濁させ、それに1mLの過塩素酸(70%)を加えた。懸濁液を室温で8日間攪拌した。この期間の間に、黄色の沈殿は褐色に変わった。褐色の沈殿を濾過により集め、40mLのDDW及び20mLのアセトン:ジエチルエーテル(1:1)で洗浄した。乾燥後、沈殿を20mLのDDW中に再−懸濁させ、0.5mLの25%NH4OHを滴下し、混合物を24時間激しく攪拌し、その間に褐色の沈殿は黄色に変わった。黄色の沈殿を集め、50mLのDDW及び10mLのアセトン−ジエチルエーテルで十分に洗浄し、連続的吸引により乾燥した。生成物は混合シス−アミン−ピペリジン−ジヨード白金(II)として分析された[195Pt NMR(δ,DMF)=−3260ppm]。
【0051】
シス−アミン−ピペリジン−ジヨード白金(II)(300mg,0.54ミリモル)を20mLのDDW中に懸濁させ、2当量のAgNO3(184.9mg,1.08ミリモル)を加えた。懸濁液を暗所で24時間激しく攪拌した。AgI沈殿を濾過し、水性濾液を50−mLの容器に移し、それに0.5gのKClを加えた。無色の溶液は黄色がかり、ジクロロ−ジアミン白金(II)生成物が沈殿し始めた。室温で4時間の後、黄色がかった沈殿(260mg)を集め、50mLのDDWで十分に洗浄し、100mLのジエチルエーテルで洗浄することにより乾燥した。
シス−[PtCl 2 (NH 3 )(ピペリジン)](7)の全体的収率:69%.分析(C5H14Cl2N2Pt)C,H,N.195Pt NMR(δ,DMF):−2159ppm.
(2)ピペラジン錯体の合成
本明細書で示す研究の1つの目的は、水溶性であり、DNAと迅速に反応し且つシスプラチン及びトランスプラチンにより形成されるものと異なるDNAとの付加物を形成することができる白金錯体を設計し且つ製造することであった。これはリガンドとしてピペラジンを有するいくつかの追加のトランス−Pt誘導体の設計及び合成に導いた。このリガンドは、それが錯体に正の電荷を与え、かくして十分な水溶解度及び迅速なポリアニオン性DNAとの相互作用を保証するであろう故に選ばれた;それは、柔軟性であり且つDNAと相互作用して損傷を形成することができる水素結合ドナーを有する非−平面状複素環式アミンリガンドであり;且つそれは速度論及び細胞毒性に影響するのに十分に嵩高い。
トランス−[PtCl 2 (NH 3 )(ピペラジン)]・HCl(8)
シス−ジアミン−ジクロロ白金(II)、(300mg,1ミリモル)を30mLのDMF中に溶解し、2当量(372.52mg,2ミリモル)の1−ピペラジンカルボン酸tert−ブチル及び2当量(339.76mg,2ミリモル)のAgNO3を攪拌しながら同時に加えた。暗所で室温において24時間攪拌を続けた。セライト焼結ガラスを介して沈殿を濾過し、濾液を減圧下で蒸発乾固した。得られるゴムを30mLのDDW中に溶解し、2mLの濃HClを加え、反応混合物を室温で24時間攪拌した。着色沈殿を除去し、溶液を85〜90℃に60分間加熱した。室温に冷却した後、反応混合物を濾過し、濾液を0℃に72時間冷却した。黄色の沈殿を濾過し、10mLの氷−冷DDW及び30mLのジエチルエーテルで洗浄した。乾燥後、黄色の生成物(300mg)を所望のトランス−アミン−ピペラジン−ジクロロ白金(II)(8)の塩酸塩として分析した。
トランス−[PtCl 2 (NH 3 )(ピペラジン)]・HCl(8)収率:74%.分析 C4H14Cl3N3PtH2Oに関する計算値:C,11.34%;H,3.81%;N,9.92%.測定値:C,11.27%;H,3.56%;N,9.86%.195Pt−NMR(δ,H2O):−2177ppm.
トランス−[PtCl 2 (Am 1 )(ピペラジン)]・HClの製造のための一般的方法
以下の記述においてAm1は下記のアミンのいずれか1つを指す:n−ブチルアミン、イソプロピルアミン、4−ピコリン、ピペリジン、ピペラジン。
【0052】
中間体シス−[PtI2(1−ピペラジンカルボン酸tert−ブチル)2]の合成:テトラクロロ白金酸カリウム(1g,2.4ミリモル)を40mLのDDW中に溶解し、8当量(3.2g,19.27ミリモル)のKIを加えた。混合物を室温で15分間攪拌した。2当量(0.9g,4.8ミリモル)の1−ピペラジンカルボン酸tert−ブチルを加え、混合物を室温で1時間激しく攪拌した。この時間中ずっと、所望のジヨードジアミン白金(II)が沈殿していた。黄色の沈殿を濾過により集め、50mLのDDWで洗浄し、吸引により乾燥した。
シス−[PtI 2 (1−ピペラジンカルボン酸tert−ブチル) 2 :収率:89%,195Pt−NMR(δ,DMF):−3264ppm.
シス−[PtI2(1−ピペラジンカルボン酸tert−ブチル)2(411mg,0.5ミリモル)を暗所で15mLのDMF中に溶解し、2当量(169.88mg,1ミリモル)のAgNO3を2当量の対応するアミン(98.83μLのn−ブチルアミン、85.17μLのイソプロピルアミン、97.4μLの4−ピコリン、99μLのピペリジン又は186mgの1−ピペラジンカルボン酸tert−ブチル)と同時に加えた。暗所で室温において24時間攪拌を続けた。セライト焼結ガラスを介して沈殿を濾過した。濾液を減圧下で蒸発乾固した。得られるゴムを30mLのDDW中に溶解し、2mLの濃塩酸を加え、反応混合物を室温で24時間攪拌した。着色沈殿を除去し、溶液を85〜90℃に60分間加熱した。室温に冷却した後、反応混合物を濾過し、濾液を0℃に24時間冷却した。黄色の沈殿を濾過し、20mLの氷−冷DDW及び30mLのジエチルエーテルで洗浄した。乾燥後、黄色の生成物を所望のトランス−ジアミン−ジクロロ白金(II)錯体の塩酸塩として分析した。
トランス−[PtCl 2 (イソプロピルアミン)(ピペラジン)]・HCl(9):収率 71%,195Pt−NMR(δ,H2O):−2226ppm.
トランス−[PtCl 2 (n−ブチルアミン)(ピペラジン)]・HCl(10):収率 67%,195Pt−NMR(δ,H2O):−2221ppm.
トランス−[PtCl 2 (n−ノニルアミン)(ピペラジン)]・HCl(11):収率 77%,195Pt−NMR(δ,H2O):−2236ppm.
25.06%,H:3.82%,N:8.55%,195Pt−NMR(δ,H2O):−2086ppm.
トランス−[PtCl 2 (ピペリジン)(ピペラジン)]・HCl(12):収率 56%,195Pt−NMR(δ,H2O):−2230ppm.
トランス−[PtCl 2 (4−ピコリン)(ピペラジン)]・HCl(13):収率 61.2%,分析 C10H18Cl3N3Ptに関する計算値:C:24.99%,H:3.56%,N:8.74%,測定値:C:25.06%,H:3.82%,N:8.55%,
トランス−[PtCl 2 (ピペラジン)(ピペラジン)]・HCl(14):収率 83%,195Pt−NMR(δ,H2O):−2238ppm.
トランス−[PtCl 2 (NH 3 )[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン)]・HCl(15):収率 83%,195Pt−NMR(δ,H2O):−2238ppm.
シス−[PtCl 2 (NH 3 )(ピペラジン)]・HClの製造のための方法(16)
テトラフェニルホスホニウムトリクロロ−モノアミン−白金(II)(300mg,0.45ミリモル)を10mLの1:1アセトン/DDW混合物中に溶解した。オレンジ−色の溶液に1当量(77.53mg,0.45ミリモル)の1−ピペラジンカルボン酸tert−ブチルを加えた。密閉容器中で室温において7日間混合物を攪拌した。減圧下で溶液を蒸発乾固した後、黄色の固体を10mLの無水エタノール中に取り上げ、0.5mLの濃塩酸を加え、混合物を終夜放置した。黄色の沈殿を濾過により集め、10mLのエタノールで洗浄した。
シス−[PtCl 2 (NH 3 )(ピペラジン)]・HCl:収率58%,195Pt−NMR(δ,H2O):−2187ppm.
【実施例2】
【0053】
−生物学的アッセイ
細胞培養
Hadassah University病院で樹立されたヒト卵巣ガン細胞系(OV−1063)及びヒト結腸ガン細胞系(C−26)を、10%FCS、抗生物質及びグルタミンが補足されたRPMI−1640培地中に保持した。すべての培養培地成分はBiological Industries(Beit−HaEmek,Israel)から購入された。両細胞系は37℃において水−ジャケット付きCO2インキュベーター中で保持された。
【0054】
さらに3対のシスプラチン感受性及び耐性のガン細胞系(A2780/A2780cisR、41M,/41McisR及びCH1/CH1cisR)を用いた(15)。これらの細胞系の対はシスプラチンに対する耐性の既知の主要な機構のすべてを包含することに基づいて選ばれた:41McisRは主に薬剤輸送の低下を介して耐性であり(16)、CH1cisRは強化されたDNA修復/寛容性(tolerance)を介して耐性であり(17)、A27780cisRは吸収の減少、強化されたDNA修復/寛容性及びGSH量の増加の組み合わせを介して耐性である(18)。
薬剤
シスプラチン及びトランスプラチンは(Sigma,St Louis,MO,USA)により供給された。すべての薬剤は実験の直前に正常食塩水中に溶解された。
細胞生存のメチレンブルーアッセイ
合成された錯体の細胞毒性をメチレンブルー(MB)染色アッセイにより調べた(19)。200μlの培地中の指数関数的に成長する細胞の決められた(fixed)数を96穴平底プレート中にプレーティングした。調べられる錯体のそれぞれに関し、4個のウェルを用いた。培養中で24時間の後、未処理の細胞を含有する各ウェルに20μlの種々の濃度の錯体を加えた。標準に正常食塩水を加えた。細胞を錯体に4、24又は72時間暴露した。決められた時間の間の暴露の最後に、処理された細胞ならびに平行標準細胞を洗浄し、実験の終止まで新しい培地中でインキュベーションを続けた。72時間の成長の後、50μlの2.5%グルタルアルデヒドを各ウェルに15分間加えることにより細胞を固定した。固定された細胞を新しい脱イオン水で10回及びホウ酸塩緩衝液(0.1M,pH=8.5)で1回濯ぎ、乾燥し、MB(0.1Mホウ酸塩緩衝液中の1%溶液の100μl,pH=8.5)を用い、室温で1時間染色した。染色された細胞を脱イオン水を用いて十分に濯ぎ、非−細胞−結合色素を除去し、次いで乾燥した。固定された細胞に結合したMBを、37℃において200μlの0.1N HClと一緒に1時間インキュベーションすることにより抽出し、各ウェルにおける色素の正味の光学濃度(OD)を平板分光光度計(Labsystems Multyskan BICHROMATIC,Finland)により620nmにおいて決定した。
【0055】
96穴プレートを用いるMB法の利点は、細胞増殖の速度及び生存についての広範囲の実験を多数のデータ点を用いて行なう可能性であり、その方法では種々の実験的錯体に関して細胞が同じプレートにおいて生育され、正確に同じ条件で検定される。細胞生存の評価に関するMBアッセイの妥当性は、MB比色アッセイとコロニー−形成単位アッセイの結果の間の高い関連性により支持される(20)。
ミクロ培養テトラゾリウム(MTS)アッセイ及び細胞生存
合成された錯体の細胞毒性をMTS法(21)によっても調べた。従って化合物を対応する細胞系と一緒に24時間インキュベーションし、化合物処理した培養における細胞生存を評価した。
白金錯体細胞内蓄積測定
細胞を播種してから48時間後に錯体の1つを培養培地に加えた。24時間の暴露の後、錯体を除去し、細胞を氷−冷PBSで2回洗浄し、ペレット化した。細胞(1*106個)を乾燥し、65%HNO3(BDH,England)中で10分間加熱することにより鉱物化した(22)。試料を脱イオン水中に溶解し、各試料を2種の希釈において無炎Zeeman原子吸光分析計(FAAS)により測定した。キャリブレーションカーブは、ml当たりに50〜250ngの白金の範囲の濃度を有する5つの標準のK2PtCl4貯蔵溶液を含んだ。1*106個の細胞当たりのピコモルの白金として白金含有量を表した。
FAASによるPt−DNA付加物の決定
細胞を播種してから48時間後に薬剤の1つを培養培地に加えた。24時間の暴露の後、錯体を除去し、細胞を氷−冷PBSで2回洗浄し、ペレット化した。白金−含有材料(2*106個の細胞)からのDNAを、QIAamp DNA Blood Kit(QIAGEN,Germany)により、製造者の指示に従って細胞ペレットから抽出した。260nmにおける吸光度により溶離物中のDNAの濃度を測定することによって、DNA収量を決定した。各試料から単離されたDNAは平均で50±10μg/mlであった。純度は260nmにおける吸光度対280nmにおける吸光度の比を計算することにより決定される;DNAの精製の程度は平均して95%であった。
EtBr蛍光によるPt−DNA付加物の決定
ヒト成長ホルモンをコードする遺伝子を含有するプラスミド(4.8kbp)であるプラスミドpS16−hGHを以前に記載されている通りに調製した(23)。SYBR Green I蛍光色素(Molecular Probes,Eugene,OR)での後−染色(post−staining)を用いるアガロースゲル(1%)電気泳動により、新しく調製されたDNAを分析した。スーパーコイルプラスミドの定量的分析(24)を行い、プラスミドDNAが85〜90%スーパーコイル形態にあることを示した。UV−分光分析は、いずれのDNAバッチ中にもタンパク質又はRNA汚染が存在しないことを示した。260nmにおける吸光度対280nmにおける吸光度の比は常に1.8〜1.9であった。
【0056】
37℃において暗所で24時間、10mM NaClO4(pH 7.0)中でDNAを白金錯体により改変した。EtBr蛍光の測定をLS50Bルミネセンス分光分析器(Perkin Elmer,Norwalk,CT)上で行なった。EtBrの存在下において白金により改変されたDNAの蛍光測定を、546nm(スリット10nm)の励起波長及び590nm(スリット10nm)の発光波長を用い、25℃において行なった。濃度はDNAに関して0.01mg/ml及びEtBrに関して0.04mg/mlであり、それらはDNAにおけるEtBrのすべての挿入部位の飽和に相当する。
アポトーシスの評価
2つの方法によりアポトーシスを評価した:
(1)メロシアニン 540(MC 540)(Molecular probes,Oregon,USA)及び4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドンジヒドロクロリド(DAPI)(Molecular probes,Oregon,USA)を用いるC−26及びOV−1063細胞の染色により。このアッセイは、アポトーシスの開始からすぐ後にホスファチジルセリン(PS)が原形質膜の内面から細胞表面に転位するという観察に基づく。この時点に、PSに強い親和性を有するMC 540を用いて染色することにより、PSを容易に検出することができる(25)。二重鎖DNAを優先的に染色するDAPIを用いる染色により、クロマチン凝縮(chromatin condensation)を評価した。以下の実験において、5*105個の細胞を含有する試料を、ガラスのカバースリップで覆われた6穴プレート上で培養した。IC50の錯体で細胞を処理した後、細胞をPBSで洗浄し、2.5μlのMC 540(1mg/ml)を含有する500μlのPBS中で、暗所において2分間インキュベーションした。その後、細胞をPBSで洗浄し、4%ホルムアルデヒドで固定し、300μlのDAPI(3μM)で染色した。その後ガラスのカバースリップをガラススライド上に置き、蛍光共焦点顕微鏡(fluorescence confocal microscope)を用いて写真撮影した。
【0057】
(2)EnzChektm Caspase−3アッセイキット(Molecular probes,Eugene,OR)により。このキットは、キャスパーゼ−3及び他のDEVD−特異的プロテアーゼ活性(例えばキャスパーゼ−7)における向上に関して検定することにより、アポトーシスの検出を可能にする。アッセイのための基礎はローダミン 110 ビス−(N−CBZ−アスパルチル−L−グルタミル−L−バリル−アスパラギン酸アミド)(Z−DEVD−R110)である。この基質はR110のアミノ基のそれぞれに共有結合したDEVDペプチドを含有するローダミン 110(R110)のビスアミド誘導体である。酵素的に切断されると、非−蛍光性ビスアミド基質が蛍光性R110に転換され、それを485±10nmにおける励起及び535±10nmにおける発光検出を用いて蛍光マイクロプレートリーダーにより定量することができる。
【0058】
簡単に記載すると、C−26及びOV−1063細胞をIC50のトランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペリジン)](5)(それぞれ4.5μM及び6.5μM)及びトランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペラジン)・HCl](12)(それぞれ5μM及び7.5μM)を用いて5又は16時間処理した。次いで「誘導された」細胞及び「標準」細胞の両方を回収し、溶解した。96穴プレートにおいて50μgの細胞質ゾルタンパク質を用いて(55分間のインキュベーション)及び25μMの最終的濃度のZ−DEVD−R110基質を用いて、キットの案に記載されている通り、酵素反応を行なった。
生体内毒性及び抗−腫瘍効果
トランス−白金(II)誘導体、トランス−[PtCl2(NH3)(4−ピペリジノ−ピペリジン)](3)を、シス−DDPに比較されるその毒性及び抗腫瘍有効性に関して評価した。
毒性
トランス−[PtCl2(NH3)(4−ピペリジノ−ピペリジン)]の毒性を8週齢の雌のBALB/Cマウスについて評価し、シス−DDPと比較した。種々の濃度におけるこの新規な錯体及びシス−DDPを静脈内に、週間隔で3回注入し、動物の体重及び生存を評価した。
抗腫瘍有効性
雌のBALB/Cマウス(17〜20gの体重範囲内)に1*106個のC−26結腸ガンを腹腔内に注入した。トリパンブルー排除によると、これらの細胞の生存率は>90%であった。
【0059】
トランス−[PtCl2(NH3)(ピペリジノ−ピペリジン)]・HCl(3)の治療的有効性を研究し、シス−DDPと比較した。腫瘍の接種から後の3日に処置を開始し、週間隔で合計3回の注入のために2回繰り返した。
結果
Pt錯体の溶解度
劣ったバイオアベイラビリティーを生ずる中性のジアミンジクロロ白金(II)化合物の低い溶解度は、一般式[PtCl2(Am)(Pz)]・HClの正に帯電した錯体の設計及び合成に関する理由の1つであった。本明細書で示される化合物は、シスプラチンの場合の6.3mM及びトランスプラチンの場合の0.8mMと比較して20mMの範囲内の溶解度を有し、それらの中性の相手より可溶性であることが示された。例えばトランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペラジン)]・HCl(13)はDDW(37℃において)中で7.5mg/ml(18.0mM)の溶解度を示した。
生物学的活性
試験管内成長阻害
合成されたトランス及びシス錯体の抗−腫瘍活性を評価するために、C−26及びOV−1063細胞をこれらの錯体と一緒に4、24又は72時間インキュベーションした。MB細胞毒性アッセイは、トランスプラチンの1個の(NH3)又は両方の置き換えがC−26及びOV−1063ガン細胞系の両方において、新規なトランス−PtCl2化合物の細胞毒性を有意に(4倍より高く)増強することを明らかにした(表1)。
【0060】
【表1】
【0061】
1個のNH3基を芳香族−平面状アミン(4−ピコリン)で置き換えてトランス−[PtCl2(NH3)(4−ピコリン)]を得るか、又は脂肪族非−平面状アミン(ピペリジン)で置き換えてトランス−[PtCl2(NH3)(ピペリジン)](1)を得ることは、トランスプラチンと比較して細胞毒性活性を増強した(表1)。錯体(1)が[トランス−[PtCl2(NH3)(4−ピコリン)]誘導体より細胞毒性であることに注目するべきであり、それは立体的に妨げられたアミンリガンドによりトランス位の活性化が達成され得ることを示唆している。4−ピコリンの芳香環の平面状水素と対照的に、反対の方向に向いている水素原子のために、ピペリジンは4−ピコリンより立体的に妨げられており、それは細胞毒性活性と関連し得る。
【0062】
さらに、トランス−[PtCl2(NH3)(4−ピコリン)]中の第2のNH3をピペリジンで置き換えて混合トランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペリジン)](5)を得ることは、化合物の細胞毒性を2〜3倍(by a factor of 2−3)増強した(表1)。この観察は、錯体(5)のより高く立体的に妨げられた構造により説明され得る。トランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペリジン)]はシスプラチンより3倍活性が低く、トランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペリジン)]のより高いIC50値は、図1A及び1Bにおいて示されるより少量のPt−DNA付加物と一致している。
【0063】
トランス形の立体的に妨げられた化合物の細胞毒性をそれらのシスの相手、シス−[PtCl2(NH3)(4−ピコリン)]及びシス−[PtCl2(NH3)(ピペリジン)](7)の細胞毒性と比較した。新しいトランス−Pt錯体中の1個のNH3の置き換えの効果と対照的に、シスプラチンの1個のNH3の芳香族−平面状アミンリガンド(4−ピコリン)又は脂肪族非−平面状アミン(ピペリジン)による類似の置き換えは、シスプラチン自身に比較してより低い細胞毒性活性を生じた。錯体シス−[PtCl2(NH3)(ピペリジン)]は、白金薬剤耐性を妨げるために設計され、現在臨床試験下にある新規な立体的に妨げられた抗−腫瘍化合物である新しい活性なシス−[Pt(NH3)(2−ピコリン)](AMD473)への類似体である(26)。
【0064】
いくつかのピペラジン−含有Pt錯体の、シスプラチン感受性及び耐性ガン細胞系への細胞毒性も決定された。特定的には3対のシスプラチン感受性及び耐性ガン細胞系(A2780/A2780cisR、41M/41McisR及びCH1/CH1cisR)を用いた。
【0065】
錯体を上記の細胞系と一緒に24時間インキュベーションし、化合物処理した培養中の細胞生存を、前に報告した(ミクロ培養テトラゾリウム)MTS法により評価した。IC50研究の結果を表2A〜2Bに示す。
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
NBA=n−ブチルアミン、IPA=イソプロピルアミン、4−pic=4−メチルピリジン、pip=ピペリジン、pip−ピペラジン。括弧内の数字は耐性因子(IC50耐性/IC50感受性)である。
【0069】
SARに関して言うと、トランスプラチンの1個もしくは両方のアミンリガンドをピペラジンで置き換えることは、トランスプラチンに対して抗腫瘍活性を顕著に向上させ、正に帯電した非−平面状アミンリガンド(ピペラジン)がトランス形を活性化できることを示している。これらの細胞毒性研究の最も衝撃的な特徴は、強化されたDNA修復/寛容性及び増加したGSH量を介して耐性であるA2780cisR細胞系に対し、錯体が少なくともシスプラチンと同様に活性であることである。特に注目できることは、すべての3つの細胞系に対するトランス−[PtCl2(NBA)(pz)]・HCl(10)の非常に低い耐性因子(RF)であり(RF<2)、シスプラチン耐性の有効な妨害を示している。
【0070】
これらのトランスプラチン錯体の抗−腫瘍活性の向上に関する可能な説明は、立体的に妨げられたリガンドがチオールによる解毒を低下させ得ることである。生物学的(biological)なチオール及びチオエーテル(タンパク質及びペプチド)に対する反応性の低下は有益であると考えられ、それは生物学的硫黄含有リガンドとのシスプラチンの反応が後天的な耐性及び薬剤の毒性の副作用の源にあると思われるからである。
細胞の薬剤吸収及びDNA白金化
腫瘍細胞における薬剤蓄積を決定するために、C−26及びOV−1063細胞を細胞毒性化合物、トランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペリジン)](5)及びトランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペラジン)・HCl](13)に24時間暴露し、同じ条件下におけるシスプラチン及びトランスプラチンの薬剤吸収と比較した。原子吸光分析法(AAS)により、細胞と関連するPt含有量を測定した。図1Aにおいて示される通り、両細胞系においてトランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペリジン)](5)は非常に有効に細胞に浸透することが見出された(シスプラチンより6−倍高い)。
【0071】
また図1Bにおいて示される通り、トランスプラチンと比較して、トランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペリジン)](5)の浸透はOV−1063細胞において7−倍高く、C−26細胞において30−倍高い。トランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペリジン)](5)の蓄積の時間−依存性増加は、薬剤暴露の4(データは示されていない)〜24時間の間、観察された。細胞におけるPtの時間−依存性蓄積はIC50値における低下と一致する(表1)。トランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペラジン)]・HCl(13)は両細胞系において最も高い浸透値を示した(シスプラチンと比較して22−倍高い)(図1A及び1B)。
【0072】
細胞DNAの白金化を決定するために、C−26細胞及びOV−1063細胞をこれらのトランスプラチン錯体に4時間又は24時間暴露し、シスプラチンと比較し、AA分光計により白金DNA含有量を測定した。トランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペリジン)]のDNA白金化はC−26細胞及びOV−1063細胞においてCis−Ptのそれと同じであり、トランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペラジン)]・HCl錯体からDNAに挿入された(intercalated with DNA)Pt分子の値は両細胞系においてCis−Ptのそれより7−倍高かった(図2A及び2B)。
【0073】
コウシ胸腺DNAの白金化の形成も調べた。この目的のために、コウシ胸腺DNAを種々の化合物(表3)と一緒にインキュベーションし、そこにおいて以下のパラメーターを決定した:
t1/2−10mM NaClO4中で37℃、ri=0.08における、ディファレンシャルパルスポーラログラフィー(differential pulse polarography)により決定されるコウシ胸腺DNAへの化合物の結合の半時間(half time)(分における);
ΔΔεmax−約275nmにおける正のCDバンドの極大、標準及び白金化コウシ胸腺DNAの間の差; ΔTm−非白金化及び白金化コウシ胸腺DNAの融解温度における差; 巻き戻し−付加物当たりの巻き戻し角; %IEC/付加物−鎖間架橋の頻度。
【0074】
【表4】
【0075】
わかる通り、両ピペラジン−及びピペリジン含有錯体はシスプラチンより有意に高い速度でDNAに結合する。
EtBr蛍光によるDNA付加物の分析
蛍光性プローブとしてEtBrを用い、白金(II)化合物の付加物によりDNAにおいて誘導される撹乱を区別した(14)。挿入によるEtBrの結合は、Cis−Ptの結合と同様に二官能基性付加物の形成により化学量論的に遮断され、それは蛍光強度を失わせる。他方、一官能基性付加物の形成はEtBr蛍光をわずかに低下させるのみである。
【0076】
トランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペラジン)]・HClにより改変されたDNAのDNA白金化測定は、二官能基性付加物の形成と一致する蛍光における有意な低下を示した。他方、トランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペリジン)]の付加物による蛍光強度の低下はシスプラチンのそれより小さく、しかしながらトランスプラチンのそれより大きかった。最良の付加物はトランス−[PtCl2(NH3)(ピペリジノ−ピペリジン)]・HClを用いて形成された(表4及び又図3)。
【0077】
【表5】
【0078】
かくして引き出される結論は、トランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペリジン)が一官能基性付加物及び又、DNA中へのEtBrの挿入を阻害し、従ってEtBr蛍光強度を低下させることができる二官能基性付加物を形成するということであった。
【0079】
さらに、トランス−[PtCl2(NH3)(ピペリジノ−ピペリジン)]・HCl(3)と一緒に24時間インキュベーションされたDNAはEtBr蛍光における有意な低下を示した(シスプラチンのそれよりわずかに大きい)(図4)。錯体(3)とシス−DDPの間の差は低濃度においてより大きく、それは錯体(3)がDNAへのより高い親和性を有することを示唆している。シス−[PtCl2(NH3)(ピペラジン)]・HCl(8)の付加物による蛍光強度の低下はシスプラチンのそれに類似していた(図4)。
アポトーシスの評価
プログラミングされた細胞死としても知られるアポトーシスは、多細胞生物における細胞数の調節ならびに腫瘍進行、神経変性障害及びウィルス感染を含む種々の疾患の病因に含まれる。通常は正常な細胞の原形質膜の内側のリーフレットに閉じ込められている脂質であるホスファチジルセリン(PS)がほとんどの細胞型において示された。アポトーシスを経る細胞においては、PSがアポトーシスの初期の段階に外側の原形質膜リーフレットに輸送される(exported)。処理されたC−26及びOV−1063細胞におけるPS露出を、PSへの強い親和性を有するMC 540を用いる染色により検出し、二本鎖DNAを優先的に染色するDAPIを用いる染色によりクロマチン凝縮を評価した。
【0080】
赤く着色されない未処理細胞(結果は示されていない)と対照的な細胞膜における赤い蛍光の出現及び核の緑の蛍光の増加により証明される通り、トランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペリジン)]処理されたOV 1063細胞においてはアポトーシスの顕著な特徴が観察された。この染色の結果は、OV−1063細胞の大部分が6.5μMのトランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペリジン)]で処理されてから5時間後にアポトーシス的であるように見えることを示した。C−26細胞の細胞表面は、未処理細胞において赤い蛍光がないこと(結果は示されていない)と対照的に、4.5μMのトランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペリジン)]で処理されてから5時間後にわずかに赤く蛍光性となる(結果は示されていない)。
【0081】
近年、プロテアーゼのキャスパーゼ(CED−3/ICE)ファミリーのメンバーがアポトーシスと関連する複雑な生化学的現象の決定的な媒介物質であることが見出された(27)。特に、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)、タンパク質キナーゼCδ及びアクチンを含む複数の異なるタンパク質を切断するキャスパーゼ−3の活性化は、アポトーシスの開始に重要であることが示された(28)。かくしてトランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペリジン)]処理されたC−26及びOV−1063細胞においてキャスパーゼ−3の活性化を測定した。6.5μMのトランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペリジン)]又は7.5μMのトランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペラジン)]・HClで5時間処理されたOV−1063細胞がキャスパーゼ−3を活性化することが見出された(未処理の細胞と比較して処理された細胞における蛍光の約2倍の増加)。さらに、トランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペリジン)]又はトランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペラジン)]・HClを用いるOV−1063細胞の16時間の処理の後、未処理の細胞と比較して処理された細胞において蛍光が3倍増加した(示されていない)。
【0082】
観察された蛍光シグナルがキャスパーゼ−3の活性化の故であることを確かめるために、キャスパーゼ−3様プロテアーゼの可逆的Ac−DEVD−CHO阻害剤を標準及び処理試料に加えた。Ac−DEVD−CHO阻害剤で処理された試料において蛍光シグナルにおけるものすごい低下が見出され(示されていない)、それはキャスパーゼ−3の特異的活性化を証明している。4.5μMのトランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペリジン)]で処理されたC−26細胞において蛍光シグナルは見出されなかった。
【0083】
シスプラチンで処理されたOV−1063又はC−26細胞がアポトーシスを経るか否かを決定するために、これらの細胞系をそれぞれ2μM又は1.5μMで5又は16時間処理した。シスプラチン処理されたOV−1063細胞又はC−26細胞において蛍光シグナルは見出されなかった。これらの発見は、シスプラチンで処理されたL1210細胞においてアガロースゲル電気泳動により検出される分解DNAがないことを示したL.Szmigiero et al.のデータと一致している(29)。それは結腸ガン細胞が、アポトーシスを阻害する単数もしくは複数の可溶性因子を分泌することによって(30)及び結腸ガン細胞をアポトーシスから防御するc−キットの異常な活性化によって自己防衛することを示したいくつかの発見とも一致した。
タンパク質結合
静脈内に投与されるほとんどの白金(II)誘導体は24時間以内にタンパク質結合となるので、2種のモデルタンパク質、ユビキチン(MW 8565)及び心臓ミオグロビン(MW 16951)のPt錯体への結合速度を決定した。この目的のために、白金錯体とタンパク質の間の1:1反応を10mMリン酸塩緩衝液,pH6.4中で1〜2mM濃度において、37℃で行なった。タンパク質結合速度を反応混合物について直接、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)により測定した。図5は、中性のトランス−PtCl2(NH3)(ピペリジン)がタンパク質に迅速に結合し、結合速度に関してシスプラチン及びトランスプラチンが続くが、帯電したピペラジン錯体はタンパク質に有意に結合しないことを示している。DNAへの非常に迅速な結合とタンパク質への遅く且つ無効な結合の組み合わせは、白金に基づく抗−腫瘍薬剤の非常に望ましい性質である。
毒性
トランス−[PtCl2(NH3)(ピペリジノ−ピペリジン)]・HCl及びシス−DDPが5mg/kgの濃度において無毒性であり、トランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペラジン)]・HClが20mg/kgの濃度において無毒性であることが見出された。
生体内抗腫瘍効果
雌のBALB/Cマウス(17〜20グラムの体重範囲内)に1*106個のC−26結腸ガンを腹腔内注入した。トリパンブルー排除によると、これらの細胞の生存率は>90%であった。
【0084】
トランス−[PtCl2(NH3)(ピペリジノ−ピペリジン)]・HClの治療的有効性を研究し、シスプラチンと比較した。処置は上記のスケジュールに従って行なわれた。結果を表5及び図6に示す。
【0085】
【表6】
【実施例3】
【0086】
−リポソーム調剤
トランス−[PtCl2(NH3)(ピペリジノ−ピペリジン)]・HClを含有する立体的に安定化されたリポソーム(SSL)の調製及び分析
トランス−[PtCl2(NH3)(ピペリジノ−ピペリジン)]・HClを含有するSSLの調製
トランス−[PtCl2(NH3)(ピペリジノ−ピペリジン)]・HCl(10mg/ml)を0.9% NaCl中に65℃で溶解し、この温度で1時間放置した。脂質(HSPC:コレステロール:PEG2000−DSPE 51:44:5)をエタノール中に溶解した。このエタノール性溶液を薬剤混合物に加えることにより、脂質を水和させた。最終的な脂質濃度は、65℃において25%エタノール中で150mg/ml(15%)であった。混合物を65℃で1時間攪拌し続け、次いで200nmの孔径を有する25mmのポリカーボネートフィルターを介し、Lipex押出し機(Nothern Lipids Inc.Vancouver,Canada)を用いて65℃で5回押出し、続いて100nmの孔径のポリカーボネートフィルターを介して11回押出した。寸法をそろえられた(sized)リポソーム(〜100nm)を室温に冷ました。冷ます間、重質の沈殿が生成し、上澄み液を集めた。次いで上澄み液を4℃に終夜冷却し、再び上澄み液を集めた。上澄み液を集め、10%スクロース及び1mM NaClを含有する10mMヒスチジン緩衝液(pH=6.5)に対して、100体積の緩衝液に対して合計で5回及び200体積に対して1回、4℃で透析した。これらの条件下で、緩衝液との完全な平衡が起こるはずである。最終的なリポソーム分散液は半透明白色であった。
トランス−[PtCl2(NH3)(ピペリジノ−ピペリジン)]・HClを含有するSSLの分析
CoulterモデルN4 SD(Coulter Electronics,Hialeah,FL,USA)を用い、動的光−散乱(DLS)により、リポソームをそれらの寸法分布に関して25℃で分析した。
【0087】
リン脂質(PLs)の濃度を脂質リン含有量により調べた(修正Bartlett法)
(31)。
【0088】
無炎Zeeman原子吸光分析計(FAAS)により、リポソーム中の白金濃度を測定した。白金濃度は、mL当たりに50〜250ngの白金の範囲の濃度を有するK2PtCl4貯蔵溶液の5つの標準を含むキャリブレーションカーブに従って計算された。
【0089】
トランス−[PtCl2(NH3)(ピペリジノ−ピペリジン)]・HClを含有するSSLを以下のパラメーターにより分析した:寸法−102nm;調製物中のトランス−[PtCl2(NH3)(ピペリジノ−ピペリジン)]・HClの濃度:1mM;調製物中の脂質の濃度:94mM;及びカプセル封入のパーセンテージ(リポソーム中のPt/Pl比/初期Pt/Pl比x100)8%。
トランス−[PtCl2(NH3)(ピペリジノ−ピペリジン)]・HCl SSLからのPt放出の分析
硫黄含有グルタチオン(GSH)は白金との反応性が高いことが知られている。従ってリポソームからの白金の放出実験のためにそれを選択した。その白金との迅速な反応及び195Pt−NMR上で誘導されるその硫黄の結合による強い化学シフトは、問題の範囲において我々がジアミンジクロロ白金のみを検出することを可能にするであろう。正に帯電した活性誘導体はトランス−[PtCl2(NH3)(ピペリジノ−ピペリジン)]・HCl(3)であった。
【0090】
すべてのNMRスペクトルはVarian Inova 500 MHz分光計上で5mmのスィッチ可能なプローブを用いて記録された。195Pt NMRスペクトルは外部標準としてHCl中のK2PtCl4(−1624ppm)に関連付けられた。
195NMR実験
NMR管中の0.5mLのリポソーム懸濁液(0.5mg/mL)に2当量のグルタチオン(GSH)を加え、懸濁液を2分間激しく振盪させた。195Pt−NMR試験は、リポソーム内の錯体が無損傷であることを示した(δ=−2134.597ppm)。試料を37℃で放置した。続行195Pt NMRを1、2及び7日後に行なった。最初の2日間ずっと、白金部分は無損傷であった。第7日に行なわれた195Pt−NMRは、ジアミンジクロロ白金(II)部分に特徴的な化学シフトの全体的消失を明らかにした。
【0091】
白金薬剤の放出への(GSH)の効果を評価するために、GSHなしで上記の実験を繰り返した。195Pt−NMRは、37℃において10日後でさえ錯体が内部で無損傷であり(δ=−2132.585ppm)、δ=−2661.428ppmにおける少量の生成物があることを明らかにした。
【0092】
要するに結果は、帯電した錯体、トランス−[PtCl2(NH3)(ピペリジノ−ピペリジン)]・HClが、シスプラチンと対照的に放出されることを明白に示した。ジアミンジクロロ白金(II)の特徴的な化学シフトの全体的消失は、配位球中のリガンドが変化したことを意味する。それにもかかわらず、GSHを含まない実験において変化が現れないことは、放出がないことを示す糸口ではない(not a clue for)。そのためには、リポソームの外部における白金部分の存在を証明するために、外部の溶液を濾過し、原子吸光(AA)及び(可能なら)195Pt−NMRを行わなければならない。
【実施例4】
【0093】
−四官能基性の正に帯電したピペラジンに基づくビス−白金錯体
非−古典的な白金錯体の合成の努力を続け、四官能基性の正に帯電したビス−白金錯体を以下のスキームに従って合成した:
【0094】
【化1】
【0095】
シス−PtCl2(BOC−Pz)2(1g,2.41ミリモル)を20mLのDDW中に溶解した。攪拌されている混合物に2当量(0.9g,4.84ミリモル)の1−ピペラジンカルボン酸tert−ブチルを加え、混合物を70℃に加温した。攪拌及び加温を50分間続け、次いで黄色の沈殿を集め、40mLのDDWで2回洗浄した。乾燥後、195Pt−NMR(DMF)を用いて且つさらなる精製を用いずに黄色の生成物を分析した。
195Pt−NMR(DMF):δ=−2239.4ppm,−2267.8ppm
ビス−[{トランス,トランス−(PtCl2−Pz)2}(リンカー)]・2HClの合成
暗所でシス−PtCl2(Boc−Pz)2(538mg,1ミリモル)を50mLのDMF中に溶解した。攪拌されている黄色の溶液に1当量(169.88mg,1ミリモル)の硝酸銀を加え、混合物を室温で48時間攪拌した。195Pt−NMR(DMF)は、(δ=−2240.477ppm)における微量の出発材料とともにモノ−ニトラト/DMFモノ−クロロジアミノ白金(II)(δ=−2002.987ppm,−2123.995)の生成を示した。この段階にAgCl沈殿を濾過し、0.5当量(110mg,0.5ミリモル)の4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンジアミンを加えた。混合物を暗所で終夜攪拌した。195Pt−NMR(DMF)はモノ−クロロ−トリアミン白金の生成を示した(δ=−2542.974ppm,−2570.911ppm)。黄色がかった濾液を取り上げ、溶媒を減圧下で蒸発乾固した。ゴムを20mlのエタノール中に溶解し、1mLの濃塩酸を加えた。全体が可溶化するまで混合物を室温で攪拌し、次いで50分間温度を上げて還流させた。この時間中ずっと、黄色がかった沈殿が生成していた。反応混合物を室温に冷まし、沈殿を集め、20mlのエタノールで洗浄し、乾燥した。
195Pt−NMR(H2O):δ=−2224.396ppm,2238.142ppm,2248.194ppm。
【0096】
【表7】
【0097】
【表8】
【0098】
【表9】
【0099】
【表10】
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1A】C−26ガン細胞によるシスプラチン;トランスプラチン;トランス−[(PtCl2)(4−ピコリン)(ピペリジン)];トランス−[PtCl2)(4−ピコリン)(ピペラジン)]・HCl及びトランス−[PtCl2(NH3)(ピペリジノ−ピペリジン)]・HClの吸収を示す図。
【図1B】OV−1063ガン細胞によるシスプラチン;トランスプラチン;トランス−[(PtCl2)(4−ピコリン)(ピペリジン)];トランス−[PtCl2)(4−ピコリン)(ピペラジン)]・HCl及びトランス−[PtCl2(NH3)(ピペリジノ−ピペリジン)]・HClの吸収を示す図。
【図2A】C−26ガン細胞におけるシスプラチン;トランスプラチン;トランス−[PtCl2)(4−ピコリン)(ピペリジン)];トランス−[PtCl2)(4−ピコリン)(ピペラジン)]・HCl及びトランス−[PtCl2(NH3)(ピペリジノ−ピペリジン)]・HClのDNA白金化レベルを示す図。
【図2B】OV−1063ガン細胞におけるシスプラチン;トランスプラチン;トランス−[PtCl2)(4−ピコリン)(ピペリジン)];トランス−[PtCl2)(4−ピコリン)(ピペラジン)]・HCl及びトランス−[PtCl2(NH3)(ピペリジノ−ピペリジン)]・HClのDNA白金化レベルを示す図。
【図3】シスプラチン;トランスプラチン;トランス−[PtCl2(NH3)(ピペラジン)]・HCl;トランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペラジン)]・HCl及びトランス−[PtCl2(NH3)(ピペリジノ−ピペリジン)]・HClにより改変された種々の濃度のDNAへのEtBr蛍光の依存性を示す図。
【図4】IC50値のトランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペリジン)]、トランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペラジン)]・HCl、トランス−[PtCl2(NH3)(ピペリジノ−ピペリジン)]・HCl又はシスプラチンで処理されたOV−1063細胞における、未処理の(標準細胞)と比較されるキャスパーゼ−3−活性を示す図。
【図5】シスプラチン;トランスプラチン;トランス−[PtCl2)(NH3)(ピペリジン)];及びトランス−[PtCl2)(NH3)(ピペラジン)]・HClへのユビキチンの結合曲線を示す図。
【図6】C−26結腸ガンが接種され、本明細書上記に記載されるスケジュールに従って処置された雌のBALB/Cマウスにおける、シス−DDPと比較されるトランス−[PtCl2(NH3)(ピペリジノ−ピペリジン)]・HClの抗腫瘍活性を示す図。
2個の離脱基のシス立体配置がシス−ジアミンジクロロ白金(シス−DDP)の抗−腫瘍活性に必須であることは一般的に受け入れられた。これは、Am1、Am2=NH3又は平面状アミンリガンド、例えばキノリン、チアゾール、ピリジン又はベンゾチアゾールであるトランス−PtCl2(Am1)(Am2)、(例えばトランス−[PtCl2(NH3)(ピリジン)]、トランス−[PtCl2(NH3)(チアゾール)]、トランス−[PtCl2(NH3)(キノリン)]及びトランス−[PtCl2(NH3)(ベンゾチアゾール)])における1個もしくは両方のNH3リガンドの置き換えがトランス形の細胞毒性を実質的に強化することをfarrell等が報告するまで20年以上のものより長い間の状況であった(非特許文献8)。(非特許文献15)は、キノリンならびに第一級及び第二級アミンを含有するシス−PtCl 2 錯体の合成を記載しており、それらの 1 H−NMRスペクトルを議論している。(非特許文献16)は、2個のアミン−含有リガンドを含有し、1個は芳香族ピリジン又はベンジルアミンであり、他は脂肪族環状アミン(モルホリン又はピペリジン)であるシス−PtCl 2 錯体を記載しており、錯体のIR及びラマンスペクトルを議論している。(非特許文献17)は、ピペリジン及び芳香族アミン又は芳香族アミンで置換されたアミンを含有するシス−PtCl 2 錯体の合成、それらのIR、ラマン及びUVスペクトルを記載している。さらに、ヒト肝臓ガン細胞への細胞毒性に関して錯体を調べた。(非特許文献18)は、キノリンならびにモルホリン、シクロヘキシルアミン、ピペリジン又はベンジルアミンから選ばれるアミンを含有するシス−PtCl 2 錯体の合成、それらのUV及びIRスペクトルならびに仁の発芽の減少のためのそれらの生物学的活性を記載している。(特許文献1)は、式Pt(X)(Z)(A) 2 のシス−Pt錯体及びガン細胞へのそれらの活性を記載している。Aは離脱基(例えばハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシレート又は一緒になって二座配位カルボキシレート又はサルフェートを形成する)であり、XはNH 3 又はモノ−もしくはジアルキル置換NH 3 であり、Zは置換アミン、好ましくは5−もしくは6−員単環式又は8〜10員多環式アミン、特に置換ピリジン又は二環式アミンであり、ここでアミンは窒素原子を介して配位している。(非特許文献19)は、ピペラジンとのPtX 2 錯体の合成を記載しており、ここでXはCl又はBrであることができる。合成された錯体は、ピペラジンのコンフォーメーションを明らかにするために振動分光学を用いて分析された。(非特許文献20)は、ピリジン、置換ピリジン、モルホリン、ピペリジン及びジメチルアミンから選ばれる2個のアミンリガンドを含有するシス及びトランスPtCl 2 錯体を記載している。(特許文献2)は、シス−PtX 2 (NH 3 )(Am)錯体及びそれらの抗腫瘍活性を開示している。XはCl、I、ニトロ又は環状部分であることができ、Amは置換C 2−7 Nである。(非特許文献21)は、白金に基づく抗腫瘍薬剤を総説しており、シス−Pt錯体に言及している。
一般にトランス−ジアミンジクロロ白金(II)類似体は、それらのシスの相手より低い水溶液中における溶解度を有し、限られたバイオアベイラビリティーを生ずる。水溶解度を向上させる1つの方法は錯体に電荷を加えることによる方法である。Farrell等は、トランス−[PtCl2(NH3)(Am1)](Am1=平面状リガンド)の型の化合物の劣った水溶解度の克服においていくらかの努力をしたが、NH3及び平面状リガンドのトランス配向及び四角形−平面状物(square−planar entity)の電気的中性性を保持した。トランス−白金錯体、トランス−[PtCl(PyAc−N,O)(NH3)](PyAc=ピリジン−2−イルアセテート、N−ドナーはトランス)及びそのシス異性体が合成され、トランス異性体は類似錯体、トランス−[PtCl2(NH3)(Am1)](Am1=平面状リガンド)と比較して水中における溶解度の向上を示した(約4〜5ミリモルL−1)(非特許文献13)。他方、Farrell等により、及びまたHollis等により製造される白金錯体のカチオン性電荷は金属中心上にあり、アニオン性クロリドリガンドの1つの中性リガンドによる置換から生ずる(非特許文献14)。
【非特許文献1】
Jamieson,E.R. & Lippard,S.J.著,Recognition,and Processing of Cisplatin−DNA Adducts.Chem.Rev.1999;99(9);2467−2498
【非特許文献2】
Kartalou,M.& Essigmann,J.M.著,Recognition of cisplatin adducts by cellular proteins,Mutat.Res.2001,478,1−2,1−21
【非特許文献3】
Gonzalez,V.M.;Fuertes,M.A.;Alonso C.;Perez J.M.著,Is cisplatin−induced cell death always produced by apoptosis? Mol.Pharmacol.2001,59,4,657−63
【非特許文献4】
Kartalou M,Essigmann JM.著,Mechanisms of resistance to cisplatin.Mutat.Res.2001,478,1−2,23−43
【非特許文献5】
Cornelison,T.L.& Reed,E.著,Nephrotoxicity and Hydration Management for Cisplatin,Carboplatin,and Ormaplatin,Gynecol.Onc.1993,50,2,147−158
【非特許文献6】
Wong,E.& Giandomenico,C.M.著,Current Status of Platinum−Based Antitumor Drugs Chem.Rev.1999;99(9);2451−2466
【非特許文献7】
Cleare,M.J.;Hoeschele,J.D.著,Studies on the antitumor activity of group VIII transition metal complexes.part I.Platinum(II) complexes.Bioniorg.Chem.1973,2,187−210
【非特許文献8】
Bierbach,U.;Qu,Y.;Hambley,T.W.;Peroutka,J.;Nguyen,H.L.;Doedee,M.;Farrell,N.;Synthesis,Structure,Biological Activity,and DNA Binding of Platinum(II) Complexes of the Type trans−[PtCl2(NH3)L](L=Planar Nitrogen Base).Effect of L and Cis/Trans Isomerism on Sequence Specificity and Unwinding Properties Observed in Globally Platinated DNA.Inorg.Chem.1999;38,15,3535−3542
【非特許文献9】
Montero,E.I.;Diaz,S.;Gonzalez−Vadillo,A.M.;Perez,J.M.;Alonso,C.& Navarro−Ranninger,C.著,Preparation and characterization of nevel trans−[PtCl(2)(amine)(isopropylamine)]compounds:cytotoxic activity and apoptosis induction in ras−transformed cells,J.Med.Chem.1999,42,20,4264−4268
【非特許文献10】
Coluccia,M.;Nassi,A.;Boccarelli,A.;Giordano,D.;Cardellicchio,N.;Locker,D.;Leng,M.;Sivo,M.;Intini,F.P.;& Natile,G.著,In vitro and in vivo antitumour activity and cellular pharmacological properties of new platinum−iminoether complexes with different configuration at the iminoether ligands,J.Inorg.Biochem.1999,77,1−2,31−35
【非特許文献11】
John D.Roberts,John Peroutka and Nicholas Farrell著,Cellular pharmacology of polynuclear platinum anti−cancer agents,J.Inorg.Biochem.1999,77,1−2,51−57
【非特許文献12】
Kelland,L.R;Sharp,S.Y.;O’Neill,C.F.;Raynaud,F.I.;Beale,P.J.& Judson,I.著,Mini−review:discovery and development of platinum complexes designed to circumvent cisplatin resistance,J.Inorg.Biochem.1999,77,I 1−2,111−115
【非特許文献13】
Biervach,U.;Sabat,M.;Farrell,N.著,Inversion of the Cis Geometry Requirement for Cytotoxicity in Structurally Nevel Platinum(II) Complexes Containing the Bidentate N,O−Donor Pyridin−2−yl−acetate,Inorg.Chem.2000;39(9);1882−1890
【非特許文献14】
Hollis,L S;Amundsen,A R;Stern,E W.著,Chemical and biological properties of a new series of cis−diammineplatinum(II)antitumor agents containing three nitrogen donors:cis−[Pt(NH3)2(N−donor)Cl]+,Journal of Medicinal Chemistry,January 1989,Volume 32,Issue 1,pages 128−136
【非特許文献15】
Nguyen,H.D.et al.著,Vietnam J. of Chem.,2001年,39(4),111−114
【非特許文献16】
Tran,T.D.et al.著,Tap Chi Duoc Hoc,2001年,6,6−8
【非特許文献17】
Tran T.D.et al.著,Vietnam J.of Chem.,2001年,39(3),99−102
【非特許文献18】
Tran,T.D.et al.著,Tap Chi Duoc Hoc(Vietnam J.of Chem.),1997年,35(2),21−23
【特許文献1】
欧州特許出願公開第0727430号明細書,Jonson Matthey Pub.Ltd.Co.,1996年
【非特許文献19】
Ivanova,N.A.et al.著,Russian J.Coord.Chem.,1993年,19(12),856−863
【非特許文献20】
Cattalini.L.et al.著,J.Chem.Soc.Dalton Transactions,1993年,233−236
【特許文献2】
欧州特許出願公開第0273315号明細書,Shionogi & Co.,1988年
【非特許文献21】
Wong et a.著,Chem.Rev.,1999年,99(9),2451−2466
【発明の開示】
発明の概略
本発明は、その側面の第1に従い、一般式(I):
[Pt(X)(Y)(Am1)(Am2)] (I)
[式中:
−X及びYは、同一もしくは異なることができ、ハロゲン、カルボキシレート、ホスフェート又はサルェート基を示し;
−Am1はアンモニア、第一級アミン、第二級アミン、非−平面状複素環式脂肪族アミン又は複素環式芳香族アミンから選ばれるアミンを示し;
−Am2は非−平面状複素環式脂肪族アミンを示す]
を有するトランス配置にある新規な白金錯体(Pt−錯体)であって、以下の化合物:
トランス−[Pt(ピペリジン) 2 Cl 2 ]及びトランス−[Pt(モルホリン) 2 Cl 2 ]を除く白金錯体に関する。
本発明は、必要のある患者に治療的効果を達成するのに十分な量の白金錯体を投与することを含み、Pt錯体が一般式(I):
[Pt(X)(Y)(Am1)(Am2)] (I)
[式中:
−X及びYは、同一もしくは異なることができ、ハロゲン、カルボキシレート、ホスフェート又はサルェート基を示し;
−Am1はアンモニア、第一級アミン、第二級アミン、非−平面状複素環式脂肪族アミン又は複素環式芳香族アミンから選ばれるアミンを示し;
−Am2は非−平面状複素環式脂肪族アミンを示し、
但し、該錯体がシス立体配置にある場合、Am1及びAm2は同時にピペリジンを示すことはできない]
を含む治療的効果を達成するための方法にも関する。
さらに別の側面に従うと、本発明は一般式(I):
[Pt(X)(Y)(Am 1 )(Am 2 )] (I)
[式中:
−X及びYは、同一もしくは異なることができ、ハロゲン、カルボキシレート、ホスフェート又はサルェート基を示し;
−Am 1 はアンモニア、第一級アミン、第二級アミン、非−平面状複素環式脂肪族アミン又は複素環式芳香族アミンから選ばれるアミンを示し;
−Am 2 は非−平面状複素環式脂肪族アミンを示す]
の白金錯体であって、以下の化合物:
シス−[PtCl 2 (キノリン)(ピペリジン)];シス−[PtCl 2 (ピペリジン)(ピリジン)];シス−[PtCl 2 −(ピペリジン)(o−CH 3 −C 6 H 4 −NH 2 )];シス−[PtCl 2 (ピペリジン)(p−CH 3 −C 6 H 4 −NH 2 )];シス−[PtCl 2 (モルホリン)(ピリジン)];シス−[PtCl 2 (モルホリン)(o−CH 3 −C 6 H 4 −NH 2 )];シス−[PtCl 2 (モルホリン)(p−CH 3 −C 6 H 4 −NH 2 )];シス−[PtCl 2 (ピペリジン)(アニリン)];シス−[PtCl 2 (ピペリジン)(o−CH 3 O−C 6 H 4 −NH 2 )];シス−[PtCl 2 (ピペリジン)(p−C 2 H 5 OC 6 H 4 −NH 2 )];シス−[PtCl 2 (キノリン)(シクロヘキシルアミン)];シス−[PtCl 2 (キノリン)(モルホリン)];シス−[PtCl 2 (キノリン)(ピペリジン)];シス−[PtBr 2 (ピペラジン)(ピペラジン);シス−[PtCl 2 (ピペラジン)(ピペラジン)];シス−[PtCl 2 (ピペリジン)(ピペリジン)];シス−[PtCl 2 (モルホリン)(モルホリン)];シス−[PtCl 2 (ピロリジン)(NH 3 )],シス−[PtI 2 (ピロリジン)(NH 3 )],シス−[PtICl(ピロリジン)(NH 3 )],シス−[PtCl 2 (ピペリジン)(NH 3 )],シス−[PtI 2 (ピペリジン)(NH 3 )],シス−[PtCl 2 (ピペリドン)(NH 3 )],シス−[PtI 2 (ピペリドン)(NH 3 )],シス−[PtICl(ピペリドン)(NH 3 )],シス−[PtCl 2 (3−ヒドロキシピロリジン)(NH 3 )],シス−[PtI 2 (3−ヒドロキシピロリジン)(NH 3 )],シス−[PtClI(3−ヒドロキシピロリジン)(NH 3 ),トランス−[Pt(ピペリジン) 2 Cl 2 ]及びトランス−[Pt(モルホリン) 2 Cl 2 ]を除く白金錯体に関する。
Claims (58)
- 一般式(I):
[Pt(X)(Y)(Am1)(Am2)] (I)
[式中:
−X及びYは、同一もしくは異なることができ、ハロゲン、カルボキシレート、ホスフェート又はサルェート基を示し;
−Am1はアンモニア、第一級アミン、第二級アミン、非−平面状複素環式脂肪族アミン又は複素環式芳香族アミンから選ばれるアミンを示し;
−Am2は非−平面状複素環式脂肪族アミンを示す]
の白金錯体であって、但し、該錯体がシス立体配置にある場合、Am1及びAm2は同時にピペリジンを示すことはできない白金錯体。 - 各モノマー単位が、独立してAm1を介して、Am2を介して、該Am1又はAm2に連結したリンカーを介してあるいは該Am1とAm2から生成する環式環を介して他のPt−錯体に結合している請求項1で定義されているPt−錯体であるダイマー形態の請求項1の錯体。
- 該X及びYが同一もしくは異なり、クロリド又はヨーダイドを示す請求項1又は2の錯体。
- 該X及びYが両方ともクロリドを示す請求項3の錯体。
- 該Am1がアンモニアを示す請求項1〜4のいずれか1つの錯体。
- 該Am1がメチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン又はn−ノニルアミンから選ばれる第一級アミンを示す請求項1〜4のいずれか1つの錯体。
- 該Am1がジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミンから選ばれる第二級アミンを示す請求項1〜4のいずれか1つの錯体。
- 該Am1がピペラジン、2−メチルピペラジン、ピペリジン、2−、3−もしくは4−ヒドロキシピペリジン、4−ピペリジノ−ピペリジン、ピロリジン、4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン及び3−アミノピロリジンから選ばれる非−平面状複素環式脂肪族アミンを示す請求項1〜4のいずれか1つの錯体。
- 該Am1がピリジン、2−、3−もしくは4−アミノピリジン、2−、3−もしくは4−ピコリン、キノリン、3−もしくは4−アミノキノリン、チアゾール、イミダゾール、3−ピロリン、ピラジン、2−メチルピラジン、4−アミノキナルジンから選ばれる複素環式芳香族アミンを示す請求項1〜4のいずれか1つの錯体。
- 該Am2がピペラジン、2−メチルピペラジン、ピペリジン、2−、3−もしくは4−ヒドロキシピペリジン、4−ピペリジノ−ピペリジン、ピロリジン、4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン及び3−アミノピロリジンから選ばれる非−平面状複素環式アミンを示す請求項1〜9のいずれか1つの錯体。
- トランス立体配置にある請求項10の錯体。
- −トランス−[PtCl2(NH3)(ピペリジン)];
−トランス−[PtCl2(NH3)(4−ヒドロキシピペリジン)];
−トランス−[PtCl2(NH3)(4−ピペリジノ−ピペリジン)];
−トランス−[PtCl2(NH3)(4,4’−ビピペリジン)];
−トランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペリジン)];
−トランス−[PtCl2(ピペリジン)2];
−トランス−[PtCl2(NH3)(ピペラジン)]・HCl;
−トランス−[PtCl2(イソプロピルアミン)(ピペラジン)]・HCl;
−トランス−[PtCl2(n−ブチルアミン)(ピペラジン)]・HCl;
−トランス−[PtCl2(n−ノニルアミン)(ピペラジン)]・HCl;
−トランス−[PtCl2(ピペリジン)(ピペラジン)]・HCl;
−トランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペラジン)]・HCl;
−トランス−[PtCl2(ピペラジン)(ピペラジン)]・HCl;
−トランス−[PtCl2(NH3)[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン)]・HCl;
から選ばれる請求項11の錯体。 - シス立体配置にある請求項10の錯体。
- シス−[PtCl2(NH3)(ピペリジン)]又はシス−[PtCl2(NH3)(ピペラジン)]・HClから選ばれる請求項13の錯体。
- 正に帯電している請求項1〜10のいずれか1つの錯体。
- 該リンカーが4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカン鎖を含んでなる請求項2の錯体。
- ビス−[{トランス,トランス−(PtCl2ピペラジン)2}(4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンジアミン)]・2HClである請求項16の錯体。
- 製薬学的に許容され得る担体ならびに活性成分として一般式:
[Pt(X)(Y)(Am1)(Am2)] (I)
[式中、
−X及びYは、同一もしくは異なることができ、ハロゲン、カルボキシレート、ホスフェート又はサルェート基を示し;
−Am1はアンモニア、第一級アミン、第二級アミン、非−平面状複素環式脂肪族アミン又は複素環式芳香族アミンから選ばれるアミンを示し;
−Am2は非−平面状複素環式脂肪族アミンを示す]
の白金錯体であって、但し、該錯体がシス立体配置にある場合、Am1及びAm2は同時にピペリジンを示すことはできない白金(Pt)錯体の治療的に有効な量を含んでなる製薬学的組成物。 - 活性成分がダイマー形態の該Pt錯体であり、そこにおいて各モノマー単位は、独立してAm1を介して、Am2を介して、該Am1又はAm2に連結したリンカーを介してあるいは該Am1とAm2から生成する環式環を介して他のPt−錯体に結合している請求項18で定義されているPt−錯体である請求項18の組成物。
- 活性成分が、X及びYが同一もしくは異なり、クロリド又はヨーダイドを示す該Pt錯体である請求項18又は19の組成物。
- 活性成分が、X及びYが両方ともクロリドを示す該Pt錯体である請求項20の組成物。
- 活性成分が、該Am1がアンモニアを示す該Pt錯体を含んでなる請求項18〜21のいずれか1つの組成物。
- 活性成分が、Am1がメチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン又はn−ノニルアミンから選ばれる第一級アミンを示す該Pt錯体を含んでなる請求項18〜21のいずれか1つの組成物。
- 活性成分が、Am1がジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミンから選ばれる第二級アミンを示す該Pt錯体を含んでなる請求項18〜21のいずれか1つの組成物。
- 活性成分が、Am1がピリジン、2−、3−もしくは4−アミノピリジン、2−、3−もしくは4−ピコリン、キノリン、3−もしくは4−アミノキノリン、チアゾール、イミダゾール、3−ピロリン、ピラジン、2−メチルピラジン、4−アミノキナルジンから選ばれる複素環式芳香族アミンを示す該Pt錯体を含んでなる請求項18〜21のいずれか1つの組成物。
- 活性成分が、Am1がピペラジン、2−メチルピペラジン、2−ピラゾリン、ピペリジン、2−、3−もしくは4−ヒドロキシピペリジン、4−ピペリジノ−ピペリジン、ピロリジン、4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン又は3−アミノピロリジンから選ばれる非−平面状複素環式脂肪族アミンを示す該Pt錯体を含んでなる請求項18〜21のいずれか1つの組成物。
- 活性成分が、Am2がピペラジン、2−メチルピペラジン、2−ピラゾリン、ピペリジン、2−、3−もしくは4−ヒドロキシピペリジン、4−ピペリジノ−ピペリジン、ピロリジン、4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン又は3−アミノピロリジンから選ばれる非−平面状複素環式脂肪族アミンである該Pt錯体を含んでなる請求項18〜26のいずれか1つの組成物。
- 活性成分がトランス立体配置にある該Pt錯体を含んでなる請求項18〜26のいずれか1つの組成物。
- 該活性成分が、
−トランス−[PtCl2(NH3)(ピペリジン)];
−トランス−[PtCl2(NH3)(4−ヒドロキシピペリジン)];
−トランス−[PtCl2(NH3)(4−ピペリジノ−ピペリジン)];
−トランス−[PtCl2(NH3)(4,4’−ビピペリジン)];
−トランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペリジン)];
−トランス−[PtCl2(ピペリジン)2];
−トランス−[PtCl2(NH3)(ピペラジン)]・HCl;
−トランス−[PtCl2(イソプロピルアミン)(ピペラジン)]・HCl;
−トランス−[PtCl2(n−ブチルアミン)(ピペラジン)]・HCl;
−トランス−[PtCl2(n−ノニルアミン)(ピペラジン)]・HCl;
−トランス−[PtCl2(ピペリジン)(ピペラジン)]・HCl;
−トランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペラジン)]・HCl;
−トランス−[PtCl2(ピペラジン)(ピペラジン)]・HCl;
−トランス−[PtCl2(NH3)[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン)]・HCl;
から選ばれる請求項28の組成物。 - 該活性成分がシス立体配置にある請求項18〜26のいずれか1つの組成物。
- シス−[PtCl2(NH3)(ピペリジン)];シス−[PtCl2(NH3)(ピペラジン)]から選ばれる請求項30の組成物。
- 該リンカーが4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカン鎖を含んでなる請求項19の組成物。
- ビス−[{トランス,トランス−(PtCl2ピペラジン)2}(4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンジアミン)]・2HClである請求項32の組成物。
- 該Pt錯体とDNAの間の付加物の形成を含んでなる治療的効果を達成するための請求項18〜33のいずれか1つの組成物。
- 望ましくない細胞増殖の阻害を含んでなる治療的効果を達成するための請求項18〜33のいずれか1つの組成物。
- 望ましくない細胞のアポトーシスを誘導するための請求項35の組成物。
- リポソーム内に充填される請求項18〜36のいずれか1つの組成物。
- 必要のある患者に治療的効果を達成するのに十分な量のPt−錯体を投与することを含んでなり、Pt錯体が一般式(I):
[Pt(X)(Y)(Am1)(Am2)] (I)
[式中:
−X及びYは、同一もしくは異なることができ、ハロゲン、カルボキシレート、ホスフェート又はサルェート基を示し;
−Am1はアンモニア、第一級アミン、第二級アミン、非−平面状複素環式脂肪族アミン又は複素環式芳香族アミンから選ばれるアミンを示し;
−Am2は非−平面状複素環式脂肪族アミンを示し、
但し、該錯体がシス立体配置にある場合、Am1及びAm2は同時にピペリジンを示すことはできない]
から成る、治療的効果を達成するための方法。 - 該Pt−錯体がダイマーの形態にあり、そこにおいて各モノマー単位は、独立してAm1を介して、Am2を介して、該Am1又はAm2に連結したリンカーを介してあるいは該Am1とAm2から生成する環式環を介して他の錯体に結合しているPt−錯体である請求項38の方法。
- X及びYが同一もしくは異なり、クロリド又はヨーダイドを示すPt錯体を該患者に投与する請求項38又は39の方法。
- X及びYが両方ともクロリドを示す請求項40の方法。
- Am1がアンモニアを示すPt錯体を該患者に投与する請求項38〜41のいずれか1つの方法。
- Am1がメチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン又はn−ノニルアミンから選ばれる第一級アミンを示すPt錯体を該患者に投与する請求項38〜41のいずれか1つの方法。
- Am1がジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミンから選ばれる第二級アミンを示すPt錯体を該患者に投与する請求項38〜41のいずれか1つの方法。
- Am1がピリジン、2−、3−もしくは4−ピコリン、キノリン、3−もしくは4−アミノキノリン、チアゾール、2−、3−もしくは4−アミノピリジン、イミダゾール、3−ピロリン、ピラジン、2−メチルピラジン又は4−アミノキナルジンから選ばれる複素環式芳香族アミンを示すPt錯体を該患者に投与する請求項38〜41のいずれか1つの方法。
- Am1がピペラジン、2−メチルピペラジン、ピペリジン、2−、3−もしくは4−ヒドロキシピペリジン、4−ピペリジノ−ピペリジン、ピロリジン、4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン及び3−アミノピロリジンから選ばれる非−平面状複素環式アミンを示すPt錯体を該患者に投与する請求項38〜41のいずれか1つの方法。
- Am2がピペラジン、2−メチルピペラジン、ピペリジン、2−、3−もしくは4−ヒドロキシピペリジン、4−ピペリジノ−ピペリジン、ピロリジン、4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン又は3−アミノピロリジンから選ばれる非−平面状複素環式アミンを示す請求項46の方法。
- 該錯体がトランス立体配置にある請求項38〜47のいずれか1つの方法。
- −トランス−[PtCl2(NH3)(ピペリジン)];
−トランス−[PtCl2(NH3)(4−ヒドロキシピペリジン)];
−トランス−[PtCl2(NH3)(4−ピペリジノ−ピペリジン)];
−トランス−[PtCl2(NH3)(1,4’−ビピペリジン)];
−トランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペリジン)];
−トランス−[PtCl2(ピペリジン)2];
−トランス−[PtCl2(NH3)(ピペラジン)]・HCl;
−トランス−[PtCl2(イソプロピルアミン)(ピペラジン)]・HCl;
−トランス−[PtCl2(n−ブチルアミン)(ピペラジン)]・HCl;
−トランス−[PtCl2(n−ノニルアミン)(ピペラジン)]・HCl;
−トランス−[PtCl2(ピペリジン)(ピペラジン)]・HCl;
−トランス−[PtCl2(4−ピコリン)(ピペラジン)]・HCl;
−トランス−[PtCl2(ピペラジン)(ピペラジン)]・HCl;
−トランス−[PtCl2(NH3)[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン)]・HCl;
から選ばれる白金錯体を該患者に投与することを含んでなる請求項48の方法。 - 該錯体がシス立体配置にある請求項38〜47のいずれか1つの方法。
- 該錯体がシス−[PtCl2(NH3)(ピペリジン)];シス−[PtCl2(NH3)(ピペラジン)]から選ばれる請求項50の方法。
- 該リンカーが4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカン鎖を含んでなる請求項39の方法。
- 治療的に有効な量のビス−[{トランス,トランス−(PtCl2ピペラジン)2}(4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンジアミン)]・2HClを患者に投与する請求項52の方法。
- 該Pt錯体とDNAの間の付加物の形成を含んでなる治療的効果を達成するための請求項38〜53のいずれか1つの方法。
- 望ましくない細胞増殖の阻害を含んでなる治療的効果を達成するための請求項38〜53のいずれか1つの方法。
- 望ましくない細胞のアポトーシスを誘導するための請求項55の方法。
- 該Pt錯体をリポソーム内に充填する請求項38〜56のいずれか1つの方法。
- 抗ガン剤として用いるための請求項1〜17のいずれか1つで定義されている白金錯体。
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