JP2005501617A - 電気刺激により心臓のメカニカル機能不全を治療するシステム - Google Patents
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Abstract
【課題】広範な急性および慢性の心臓機能不全を監視および治療を可能にする、心臓の血行力学的機能不全を治療するシステムを提供する。
【解決手段】患者に対して電気刺激治療を供給して心臓のメカニカル機能不全に対処するシステムは、少なくとも1回の電気刺激治療を開始および終了させて患者の心機能を改善するルールベース手段と、患者の心周期の電気的、メカニカル、化学的または生理的側面を検知して該側面の出力信号を供給する手段と、前記出力信号に基づいて前記少なくとも1回の電気刺激治療のタイミングおよび振幅を調整する閉ループフィードバック制御手段と、前記患者の心周期の不応期および非不応期を検出する手段と、前記少なくとも1回の電気刺激治療の送出を続けるかどうかを判定する安全ロックアウト手段と、心房協調ペーシング刺激治療を供給する手段と、除細動刺激治療を供給する手段と、を備えている。
【選択図】図3A
【解決手段】患者に対して電気刺激治療を供給して心臓のメカニカル機能不全に対処するシステムは、少なくとも1回の電気刺激治療を開始および終了させて患者の心機能を改善するルールベース手段と、患者の心周期の電気的、メカニカル、化学的または生理的側面を検知して該側面の出力信号を供給する手段と、前記出力信号に基づいて前記少なくとも1回の電気刺激治療のタイミングおよび振幅を調整する閉ループフィードバック制御手段と、前記患者の心周期の不応期および非不応期を検出する手段と、前記少なくとも1回の電気刺激治療の送出を続けるかどうかを判定する安全ロックアウト手段と、心房協調ペーシング刺激治療を供給する手段と、除細動刺激治療を供給する手段と、を備えている。
【選択図】図3A
Description
【技術分野】
【0001】
本発明は包括的に、埋め込み可能医療デバイスに関し、より具体的には、急性または慢性の心臓の機械的機能不全(心不全(HF)、心臓性ショック、無脈性電気活動(PEA)、または電気機械解離(EMD)など)の徴候を監視して適切な治療を供給することに関する。
〔関連出願の参照〕
本開示は、2001年8月28日に出願された米国特許仮出願第60/315,316号(その内容全体が参照により本明細書に援用される)の利益を主張する。
【0002】
本特許の開示は、本発明の譲受人に譲渡された、2002年8月20日に発行されたLawence J. Mulligan他による米国特許第6,438,408号「IMPLANTABLE MEDICAL DEVICE FOR MONITORING CONGESTIVE HEART FAILURE」およびDeno他による国際特許出願第PCT/US01/50276号「IMPLANTABLE MEDICAL DEVICE FOR TREATING CARDIAC MECHANICAL DYSFUNCTION BY ELECTRICAL STIMULATION」を参照により本明細書に援用する。
【背景技術】
【0003】
慢性HFを患う患者は、既知のフランク−スターリング(Frank and Starling)の異尺性自己調節の法則により、左室拡張末期圧の上昇をきたす。これは、心室壁の硬さの増加に付随する左室コンプライアンス(compliance)により、左室拡張末期容積が正常である間にも生じる可能性がある。慢性高血圧、虚血、梗塞または特発性心筋症によるHFは、心房筋および心室筋のコンプライアンスの低下を含む収縮・拡張機能の低下(compromise)を伴う。これらは慢性疾患過程、または特定の疾患過程を伴うかあるいは伴わない心臓手術の合併症に伴う状態である可能性がある。ほとんどの心不全患者は、心室粗動をもたらす伝導系の欠陥を患うことはなく、むしろ心筋の収縮機能の全体的な衰え、それに伴う心筋の肥大、収縮後の拡張期における心筋弛緩特性の低下および心室充満特性の低下を含む場合がある症状を患う。肺水腫、息切れ、および全身血圧の崩壊(disruption)は、心不全の急性悪化に関連する。これらの疾患過程はすべて、軽度または中度の運動および他の身体器官の適切な機能を維持するには不十分な心拍出量をもたらし、悪化が進むとやがて、心臓性ショック、不整脈、電気メカニカル解離、および死という結果となる。
【0004】
このような患者は通常、薬剤治療(ジギタリスを含む)により処置されるが、薬剤治療は、毒性をもたらすか、あるいは時間が経つと効果をなくす可能性がある。最近では、心筋細胞の様々な受容体を標的とするとともに、収縮性を高めるために心臓組織を直接刺激する目的で設計された多くの強心薬が使用可能になってきた。しかしながら、これらの薬剤は必ずしも意図した目的に作用しないという事実に加えて、多くの望ましくない副作用の可能性が存在する。これは特に、末期の心不全を患う患者に特徴的である。
【0005】
初期の埋め込み可能心臓ペーシングでは、対ペーシング(補充間隔のタイムアウト時に2回以上の間隔の短いペーシングパルスを送出する)、およびパルス間間隔の比較的短い(イヌの場合150〜250ミリ秒、ヒト被験者の場合約300ミリ秒)トリガまたは結合ペーシング(補充間隔を終了させるP波またはR波を検出すると1回またはそれ以上のペーシングパルスを送出する)は、心拍を有利に遅くし拍出量を増やすことが認められた。1回目のペーシングによる脱分極または自発的脱分極の不応期の後すぐに印加される2回目のパルスの結果は、心室不応性をさらに延ばし、心拍をその自発的調律よりも遅くするものである。それ以来この遅らせる効果が多くの用途において使用されており、当該用途のうち、心房および心室性頻脈の処置では、米国特許第3,857,399号および第3,939,844号に教示されているように、1回のパルスまたはパルスバーストが、自発的頻脈間隔よりも短く頻脈間隔の何分の一かとして設定することができる結合間隔で自発的頻脈事象に結合される。結合ペーシングにより心拍が遅くなれば、その後の広範囲の結合ペーシングにより心拍数を上下させることができる。
【0006】
心腔の対刺激および結合刺激は、本発明の譲受人に譲渡される米国特許第5,213,098号に詳細に記載される期外収縮後増強(「PESP」)として知られる現象により収縮力の増強作用ももたらす。心臓の収縮力は、対刺激または結合刺激が印加される次の心周期に増加し、この増大は持続するが、続く何度かの心周期にかけて徐々に弱まる。同様に持続するが何度かの心周期にかけて徐々に弱まる他の測定可能な効果に、ピーク収縮期血圧、心室筋の収縮レートの変化があり、結果として心室内圧(dP/dt)の上昇レートを上げ、冠血流量を上昇させ、1回の拍動当たりの酸素摂取量を増加させる。調査者によって認められたことは、増強治療を行った場合、同じレートで1回のパルス刺激を行った場合と比べて、心筋酸素消費量が35%〜70%増加し、駆出分画が著しく向上したことである。3回目の刺激の印加では、心収縮力の増加が付随して認められることなく心筋酸素摂取量がさらに増加した。こうした研究で認められるように、冠血流量の変化は心臓の酸素消費量とほぼ平行する。
【0007】
対刺激により生じる顕著な増強効果から、一部の調査者は、ヒトの心不全の処置にPESP刺激が有益ではないかと考えるようになり、イヌ被験者で誘発させた急性心不全の処置における技法を用いて研究を行った。そのような対ペーシングによってイヌにもたらされる左心室の機能および心拍出量の向上が数人の調査者により認められた。比較的正常なイヌの心臓に対して行われた他の研究では、対ペーシングが、おそらくは反射補償(reflex compensation)のために心拍出量を増加させないことが確認された。初期の調査者は、心房腔および心室腔の対刺激および結合刺激を使用して動物およびヒトで多くの研究を行い、増強を利用しようとする試みにおいて、Medtronic, Inc.および他の会社により医療デバイスが入手できるようになった。しかしながら、時間的に接近した対または結合ペーシングパルス、特に当時埋め込み可能ペースメーカで使用されていた高エネルギーのペーシングパルスを印加すると、影響を受けやすい患者の心臓で頻脈を引き起こす可能性があることが分かった。PESP作用を活用しようという試みは大部分が断念された。行われてきた調査および研究の歴史は、上記で参照した米国特許第5,213,098号に記載されている。
【0008】
二腔ペーシングが開発されてからは、Medtronic, Inc.および他の会社が販売する従来の房室(AV)同期ペーシングシステム(DDDおよびDDDRペーシングシステムを含む)が、HFならびに様々な徐脈状態の処置に処方されている。徐脈を伴うかまたは伴わない心不全の症状を患う特定の患者群は、心室の充満とその後の収縮に心房収縮の寄与が加わることにより、AV同期ペーシングを用いた場合の血行力学が遥かによい。しかしながら、そのような患者における固定または生理的センサ駆動のレート応答ペーシングは、心拍出量の向上およびそのような疾患過程に伴う症状の緩和を常にもたらすわけではない。これは、HFにより心拍出量が損なわれる程度を評価し、心拍出量を最大にするのに最適なペーシングパラメータを求めるのが困難であるためである。本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,626,623号に記載されるように、最適なAV遅延の選択には、広範囲にわたる患者の精密検査を伴う圧力データを得ることが必要とされることが多い。
【0009】
上記で参照した米国特許第5,213,098号は、対および/またはトリガペーシング刺激パルスを右心房および/または右心室に印加するPESP心臓ペーシングエネルギー刺激器であって、1つまたは複数のセンサと、トリガまたは対ペーシングの定期的な送出間の心周期の周波数または回数を制御して、HFまたは他の心臓機能不全の処置のためのPESPの効果を最適化する信号処理回路とを組み込んだ刺激器を開示する。第1センサ(例えば、心室または心房血圧または血流量センサ)が、心機能を監視して心機能指数(CPI)を生じるために使用される。第2センサ(例えば、冠状静脈洞に配置される酸素飽和度センサ)が、心筋ストレスを監視して心臓ストレス指数(CSI)を生じて、機能とストレスのバランスを取るために使用される。開示されるPESP刺激器は、生理レート制御部を有するかまたは有さない、かつバックアップ・カーディオバージョン/ディフィブリレーション治療機能を有するかまたは有さない二腔(DDD)ペーシングシステム、あるいは別個の専用デバイスに組み込むことができる。PESP刺激器は、心房刺激において心室の充満を増強する特定の用途を有する。
【0010】
例えば、PCT WO 97/25098を含む一連のPCT公報が、1つまたは複数の「非興奮性」陽極または陰極刺激パルスの心臓への印加を記載し、心臓を捕捉することなくLV機能の向上を実現することができると主張している。さらに別の本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,800,464号では、しきい値未満の陽極刺激が心臓に与えられて、従来の陰極のしきい値を超えるペーシングパルスにより激しくメカニカルに応答するように心臓を調整する。
【0011】
したがって、HFを含む心臓機能不全の処置のための様々な刺激療法が提案されており、これには、しきい値を超えるおよび/またはしきい値未満の刺激の対または結合パルスまたはパルス列の印加が含まれる。さらに上記で参照した特許および公報では、刺激パルスを1つまたは複数の心腔へ一部位または複数部位送出のための様々な電極が提案されている。しかしながら、そのような刺激から利益を得る適切な候補を経済的に決定して所与の刺激療法および/または電極アレイの有効性を測定するのは依然として困難である。心不全患者がかかるシステムの埋め込みの候補者であるかを判断するには、当該患者の広範囲にわたるカテーテル手法を行わなければならない。その場合、任意所与の処置の有効性が、埋め込み時に、および定期的な埋め込み後の追跡臨床試験において、評価しなければならない。患者の一連の追跡試験は、日々のタイムスパンにわたる心不全状態を表すために、既知の患者の活動、患者の姿勢、および患者が起きているか寝ているかを考慮またはシミュレートしなければならない。さらにこれらの治療は、刺激タイミングまたは刺激に対する生理反応がずれることで有効性を失うか、あるいは不整脈を発生しやすい。
【0012】
最新の埋め込み可能医療ペースメーカおよび埋め込み可能カーディオバータ/ディフィブリレータ(ICD)には、生理データおよびデバイス動作データ収集機能が含まれており、ペースメーカまたはICDによって提供される、徐脈または頻脈エピソードおよび当該エピソードに対する反応の記録を提供している。記憶された生理デバイス動作データおよび患者データ、ならびにリアルタイムの電位図(EGM)データは、当該技術分野で既知であるように、外部プログラマへアップリンクテレメータ送信され、表示されて医療提供者によって分析されることができる。
【0013】
さらに、今のところ刺激機能(例えば、心臓ペーシングまたはカーディオバージョン/ディフィブリレーション)を含まない埋め込み可能心臓モニタが、患者の心臓の血行力学および電気信号を監視するために臨床的に使用されているか、あるいは使用を提案されている。こうした埋め込み可能モニタは、臨床設定よりも長期間にわたるデータを生成するために患者に埋め込まれ、当該データは、同様に取り出されて、散発的にまたは日常生活における一定の負荷およびストレス下で現れるHFを含む心臓機能不全の診断に用いることができる。
【0014】
本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,331,966号およびPCT WO 98/02209公報に開示されるような、心臓から遠隔にある電極からの心電位図を記録するこのような埋め込み可能EGMモニタの1つが、離間したハウジングEGM電極を有する、Medtronic(登録商標)REVEAL(登録商標)挿入可能ループ記録装置に具現される。心臓内またはその周囲に配置された電極からのEGMおよび他の生体センサ導出信号(例えば、血圧、血液ガス、温度、心臓および/または胸部の電気インピーダンス、ならびに患者活動のうちの1つまたは複数)を記録するより精巧な埋め込み可能血行力学モニタ(IHM)も提案されている。Medtronic(登録商標)CHRONICLE(登録商標)IHMは、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,564,434号に記載される、容量性血圧および温度センサならびにEGM検知電極を有するタイプのリード線を介して結合される、そのようなモニタの一例である。このような埋め込み可能モニタは、心臓不整脈または心不全を患う患者に埋め込むと、長期間にわたって患者が日々の活動に従事している間の心臓の状態を判断するのに役立つ日時スタンプ付きデータを蓄積する。
【0015】
経胸腔インピーダンスならびに患者の姿勢を検知し、HFの程度および進行を診断および評価するために、その記録を提供するHFモニタ/刺激器が、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第6,104,949号に開示されている。検知された経胸腔インピーダンスは、肺の血液または流体の容積に依存し、HFの徴候となる肺水腫の検出および定量化を助ける。経胸腔インピーダンスは、姿勢(すなわち、被験者が寝ているか立っているか)の影響を受け、検知された経胸腔インピーダンスは、患者の姿勢検出器の出力と関連付けられて、治療の送出および/または生理データの記憶の判断のために肺水腫の存在とその程度の判断を行う。
【0016】
心機能のレベルを監視および評価し、次に治療が指示された場合に医師が治療モードを調整することを可能にするモニタ/刺激器が米国特許第5,417,717号に開示される。このモニタ/刺激器は、インピーダンス、EGM、および/または圧力測定値を評価し、次に様々な心臓パラメータを計算する。これらの計算の結果により、選択する治療モードが決まる。治療は、デバイス自体によって行うことができるか、または制御信号が心機能を向上させることを目的として様々な周辺デバイスへテレメータ送信される。あるいは、デバイスは、治療を送出せずに情報を監視して記憶またはテレメータ送信するようにプログラムされてもよい。
【0017】
特に、埋め込み可能なモニタ/刺激器は、心周期の全段階を含む心機能および収縮状態の従来のパラメータを監視する。したがって、測定された収縮状態の評価値は、心臓の弛緩および収縮の両方の指数を含む。米国特許第4,674,518号に記載されるデュアルソース(dual source)インピーダンス脈波検査法を使用することにより、モニタ/刺激器は、心室の充満および駆出における血行力学の変化を評価することによって、あるいは既知のアルゴリズムにより等容性相指数(isovolumic phase indices)を計算することによって、心機能を監視する。主な計算には、(1)収縮性の等容性指数としての圧力または容積の時間変化率(dP/dtまたはdV/dt)、(2)一回拍出量を拡張末期容積で割った既知の商による心機能の駆出期指数としての駆出率、(3)最大エラスタンスEM、(4)佐川(Sagawa)の方法を用いたさらなる収縮性の駆出期指数としての、最大圧容積点を通る再帰の傾き、(5)既知の圧容積積分による一回仕事量、(6)拡張機能の尺度としての、Glantsの方法による最小拡張(末期)圧容積測定値の時間経過、および(7)全体機能レベルの指数としての、心拍数と一回拍出量の既知の積による心拍出量の計算が含まれる。
【0018】
この心機能および収縮状態のパラメータ群の測定および記憶は、心不全の状態に関する貴重な情報を提供することができるが、さらに価値の高いパラメータが他にある。患者の自律状態に対する一時的変化は、血圧(P)、心拍数、および圧力変化率(dP/dt)といった収縮尺度を変化させ、心臓の「真の」機能状態の変化を反映しない可能性がある。このような自律状態の一時的変化は、上記で参照した米国特許第6,104,949号に記されるような興奮および姿勢の変化、ならびに他の動き(物を拾うためにかがむ、座ったまたは寄り掛かった位置から急に立ち上がるなど)によって起こる。心臓の信号および状態を測定するための比較的単純で高度な信号処理により、上記のような患者の精神状態、動きおよび姿勢の変化に影響を受けない、(米国特許第6,104,949号のような肺水腫の尺度ではなく)心臓収縮機能不全の状態の高度な評価を行う心臓データを得ることが望ましい。
【0019】
本発明と所有者を同じくし、本開示と同じ表題を有する、Deno他により2000年12月28日付で出願された米国特許出願第09/750,631号として識別される関連特許の開示(‘631号特許の開示)(2002年7月11日付で公開されたPCT WO 02/053026A2)では、心不全治療を提供する様々な技法が記載されている。以下の主題は、‘631号特許の開示(参照により本開示に援用する)に記載されるPESP治療を提供するためのいくつかの装置(様々なセンサを含む)および技法を表す。‘631号特許の開示によれば、埋め込み可能な刺激器およびモニタが、EGM信号、血圧(絶対圧P、上昇(developed)圧DP(DP=収縮期P−拡張期P)および/またはdP/dtを含む)の測定値、ならびに1回または複数回の心周期にわたる心腔容積(V)の測定値を使用して心不全の状態を示すパラメータ群を測定する。これらのパラメータには、(1)弛緩または収縮時定数(τ:tau)、(2)メカニカル復旧(mechanical restitution、MR)、すなわち心腔に加えられた期外刺激に対する心腔のメカニカル反応、(3)再循環率(RF)、すなわち一連の心周期にわたるPESP効果の減衰率(rate of decay)、および(4)収縮末期エラスタンス(EES)、すなわち収縮末期血圧P対容積Vの比が含まれる。これらの心臓状態パラメータは、精神状態、患者の姿勢、および活動レベルに関係なく、定期的に求められる。しかしながら、ある種のパラメータの測定およびある種のデータの記憶は、患者の心拍数が一定で、かつプログラムされた上限および下限心拍数の間の正常洞の範囲内にあるときにのみ行う。
【0020】
埋め込み可能な刺激器およびモニタは、1つまたは複数の測定モードで動作され、この測定モードは場合によっては、期外収縮期(ESI)の後に期外収縮(ES)パルスを送出して、測定されるPESP効果を誘発することを必要とする。本発明では、心臓状態が回復して収縮性の増加、弛緩時間の減少、および心拍出量の増加の恩恵を受けることをMR、RF、tau、およびEESパラメータのうちの1つまたは複数が示す場合に心収縮を強化するため、PESP機能も使用される。この状況において、刺激治療は、PESP刺激またはPESPペーシングと呼ばれる。本発明によれば、PESP刺激治療を適用した効果は、心機能パラメータ測定モードに入ってパラメータを収集することにより、所定期間にわたって認めることができる。
【0021】
好ましくは、パラメータデータは日時スタンプおよび他の患者データ(例えば、患者の活動レベル)と関連付けられ、この関連付けられたデータは、後日従来のテレメトリシステムを用いて取り出すために、埋め込み可能医療デバイス(IMD)のメモリに記憶される。経時的なパラメータデータの漸次の変化(incremental change)は、関連付けられた日時および患者データを考慮すると、心臓状態の変化度の尺度を提供する。
【0022】
‘631号特許の開示は、上記手法を組み合わせて、心機能レベルを検出および監視するか、またはこの監視情報に基づいて治療を変更するデバイスとしている。主要な送出モードは直接的な電気刺激であり、結果として、収縮性、弛緩、圧力または心拍出量を向上させる。様々な機能を行うことができる埋め込み可能な刺激器およびモニタには、埋め込み可能パルス発生器(IPG)、ならびに収縮および弛緩中の電気検知および刺激、血圧測定および腔容積の測定のために少なくとも1つ、好ましくは複数の心腔に作用する関係になるように延びるリード線システムがある。IPGは、関心のある各心腔につき1つの検知増幅器を有し、当該検知増幅器は、リード線導体を介して、心腔内で発生するか、またはその心腔を横切る心臓の電気心臓信号を検知する電気刺激/検知電極と結合されており、心房腔におけるP波または心室腔におけるR波を検出できるようになっているIPGは、結合または対PESP刺激パルス(複数可)の心房および/または心室補充間隔ならびにESIをタイムアウトさせるタイミング回路部を有する。IPGは、ペーシングパルスおよびPESP刺激パルスを関心のある各心腔に送出する少なくとも1つの刺激器/検知電極と結合されたパルス発生器を有する。IPGは、リード線導体を介して血圧センサと結合された血圧信号処理回路部を有する。この血圧センサは、関心のある各心腔内のリード線の遠位端部分に配置されるか、関心のある各心腔と作用する関係にあって、血圧PおよびdP/dtサンプルを導出する。IPGはまた、各心腔内にまたは各心腔に関連して配置された容積センサと結合されており、心腔容積Vを表す信号を導出する容積算出回路部も有する。容積センサは、単一のインピーダンスリード線に沿って、または複数のインピーダンスリード線上に配置された一組のインピーダンス検知電極を含むことが好ましく、インピーダンスセンサ電極に結合された容積算出回路部は、選択された電極対の間のインピーダンスを検出する。インピーダンス検知電極は心腔の周囲に分散され、分離された電極間の距離および測定されるインピーダンスの変化が心腔壁の収縮および弛緩に伴って変化するようにする。
【0023】
埋め込み可能な刺激器およびモニタは、単腔、二腔、または多腔(両房および/または両室)レート応答ペースメーカ内に組み込まれ、内因性洞心拍数がプログラムされた下限HRを下回ると徐脈ペーシングを提供することができる。あるいは、埋め込み可能な刺激器およびモニタは、そのような単腔、二腔、または多腔レート応答ペーシング機能ならびに頻脈性不整脈検出およびカーディオバージョン/ディフィブリレーションショック送出機能を含むICD内に組み込むことができる。いずれの場合にも、頻脈の検出および抗頻脈ペーシングならびに心臓再同期ペーシング治療も組み込むことができる。
【0024】
この‘631号特許の開示の要約ならびにその目的、利点および特徴は、単に、従来技術にあった欠点を克服するために‘631号特許が提供する方法のいくつかを示すとともに、‘631号特許の引用文献に記載される発明を従来技術と区別するために、本明細書中に提示されており、当該特許明細書に最初に提示され、いずれ付与される特許請求の範囲の解釈の限定として作用するように意図するものではない。
[本発明の背景]
米国では何百万人もの患者が心不全と診断されている。心不全(HF)は特定の疾患ではなく、徴候および症状の合併症であり、その全てが、心臓が活動中に心拍出量を適切に上昇させることができないために生じる。HFは、慢性高血圧、虚血、閉塞または突発性心筋症により生じる可能性がある。うっ血不全の症状に伴う心臓疾患には、拡張型心筋症、拘束型/収縮性心筋症、および肥大型心筋症がある。この疾患の一般的な症状としては、息切れ、水腫、および激しい疲労感がある。疾患が進行するに従い、心拍出量の不足は他の身体臓器の不全をもたらし、心臓性ショック、不整脈、電気メカニカル乖離および死につながる可能性がある。
【0025】
不応期におけるペーシングの送出は、心臓組織内でのカテコールアミン(ノルエピネフリンなど)の放出を生じる非興奮性刺激(NES)の1タイプである。この化学物質の放出は、心臓組織の収縮性の増加をもたらし、その結果、心拍出量が増加し、心不全の症状が少なくなり、活動能力が向上する。
【0026】
重篤な心臓機能不全および非代償性心不全の処置は、カテコールアミン(ドーパミンおよびドブタミン)やホスホジエステラーゼ阻害剤(ミルリノンまたはアミリノン)などの強心薬による治療を含む可能性がある。これらの薬剤は、特定の状況では有利かもしれないが、静脈経路による薬剤の投与を要することが多く、全身性副作用および多大な時間を要する専門医の関与を伴う。電気刺激治療は、機能不全が発生または悪化した直後に埋め込み式または体外デバイスにより行うことができ、かつその作用を心臓に制限することができるため、魅力的な代案である。
【0027】
不応期における刺激の送出は、心臓組織内でのカテコールアミン(ノルエピネフリンなど)の放出を生じる非興奮性刺激(NES)の1タイプである。この化学物質の放出は、心臓組織の収縮性の増加をもたらし、その結果、圧力または流量が増加し、心不全の症状が少なくなり、活動能力が向上する。NES神経刺激は、脱分極を検知した直後、あるいは初回のペーシングパルスが送出された結果として心室収縮が起きた直後に、印加される1回または複数回のパルスを使用する。これらのNESパルスは、心臓組織の不応期に送出され、別のメカニカル収縮または電気的脱分極を結果的に生じないようにする。
【0028】
別のタイプの電気刺激は、心周期の不応期において与えることができる。このタイプの刺激は、さらなる電気的脱分極を生じ、適切にタイミング調整されれば、期外収縮後増強(PESP)を生じる。1回目の脱分極の直後に生じるさらなる脱分極は、大きな機械的収縮に関係がない可能性が高い。本発明の譲受人に譲渡される米国特許第5,213,098号に詳述されるように、以後の心周期の収縮性は増加する。この機構は、筋細胞内でのカルシウムの循環に依存することが理解される。早期期外収縮は、筋小胞体(SR)からのカルシウムの放出をあまりに早く開始しようとするため、結果としてカルシウムはあまり放出されない。しかしながらSRは、さらなるカルシウムを取り込み続け、その結果、次の心周期でカルシウムがSRから大量放出され、筋細胞はより激しく収縮する。興奮性PESP刺激は、さらなる電気的脱分極を要し、小さなメカニカル収縮が伴う。
【0029】
HF患者の別の既知の処置は、心不全の症状を患う特定の患者群を治療するための房室(AV)同期ペーシングシステム(DDDおよびDDDRペーシングデバイス、心臓再同期治療(CRT)デバイス、および除細動システムを含む)を伴う。これらのシステムは通常、右心房と右心室の両方でペーシングまたは検知を行って、収縮を同期させ、心室の充満に寄与する。心臓再同期デバイスは、二腔ペーシングを両室ペーシングに拡張して、より良好な充満およびより調整の取れた左心室と右心室の収縮を達成する。これらのペーシング治療により、脈圧が上昇し、dP/dtが増加し、心拍出量が向上する。しかしながら、適切なペーシングパラメータを求めることは困難である。例えば、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,626,623号に記載されるように、AV遅延の長さを最適化することは、広範囲にわたる患者の精密検査を伴う圧力データを得ることを要する。これらのペーシングシステムはまた、心房および心室除細動器または頻脈性不整脈の他の治療も含む可能性がある。頻脈の直接的な結果として、あるいは後遺症として、心拍出量が大きく低下し拡張期血圧が上昇するところまで心機能が低下する可能性がある。頻脈を早期に終了させることにより心不全の悪化を防ぐ。
【0030】
上述の治療(ペーシング、CRT、NES、PESP、および除細動機能を含む)は、HFを含む心臓機能不全を処置するために単独であるいは組み合わせて用いることができる。しかしながら、従来技術のシステムは、これらの機構を安全かつ効果的に調整する包括的な治療法を達成していない。1つの問題は、PESPを達成するために非不応期に刺激を送出することに伴う危険性を含む。心臓組織が非不応性になりつつあるときに電気刺激を送出すると、頻脈性不整脈を引き起こす可能性がある。これは特に、複数回の高振幅ペーシングパルスを用いる場合に当てはまる。第2の問題は、疾患過程または投薬により、結果として得られる増強期または不応期の大きさがシフトすることであろう。これにより、許容不可能なレベルの増強性能、または効果の完全な損失がもたらされる。したがって、このタイプの治療に関連する適切なタイミングパラメータを迅速に得ることは不可欠である。
【0031】
上記で参照した米国特許第5,213,098号は、1つまたは複数のセンサおよび信号処理回路部を使用してタイミングパラメータを制御するやり方でのPESPの使用を開示する。例えば、検知した生理的信号を用いて、1回または複数回のさらなる非不応期ペーシングパルスの送出の間の心周期の頻度および回数を制御する。より具体的には、第1のセンサ(例えば、心室または心房血圧または血流量センサ)が、心機能を監視して心機能指数(CPI)を生じるために使用される。第2のセンサ(例えば、冠状静脈洞に配置される酸素飽和度センサ)が、心筋ストレスを監視して心臓ストレス指数(CSI)を生じるために使用される。CPIおよびCSIは、PESP刺激の印加およびタイミングを管理して機能とストレスのバランスを取るために用いられる。開示されるPESP刺激器は、生理レート制御部を有するかまたは有さない二腔ペーシングシステム(例えば、DDD)に組み込むことができる。
【0032】
PESPに伴うもう1つの問題は、心室脱分極が多くなることにより、次の心周期のAV伝導が失われる可能性があることである。この結果、心室での次の内因性脱分極が失われる。通常これは、1心周期おきに起こるだろう。これは一般に、2:1AVブロックと呼ばれる。結果として得られるパターンは不安定である可能性があり、2:1および1:1伝導間の間欠的なシフトを特徴とし、充満が犠牲になるためにPESPがもたらす他の利点を相殺してしまう可能性がある。
【0033】
HFを含む心臓機能不全の処置に利用できる既知の治療を、メカニカル機能または心拍出量を最適化するやり方で組み合わせる一方で、同時に不整脈を誘発する可能性に伴うリスクを最小化するシステムおよび方法が必要とされている。
【0034】
上述のように、PESP治療は、心室の非不応期にパルスを供給することを伴う。パルスは、心室が内発性またはペーシングによる脱分極から約200〜300ミリ秒後に2回目の脱分極を起こすように送出される。この結果、余分な収縮期が得られ、以後の収縮において収縮機能および一回拍出量が増加する。向上した機能の大きさは刺激のタイミングに依存する。期外収縮期(ESI)が短いほど、以後の心周期の増強を、不応期となりそれ以上の増強が結果として得られないところまで大きくすることが知られている。
〔発明の概要〕
本発明は、心臓の血行力学的機能不全のための治療を送出するシステムおよび方法を提供し、本システムおよび方法は、以下の特徴のうち1つを含んでよいが、これらに限定されない。
・他の方法では強心薬(例えばボブタミン、カルシウム、またはミルリノン)を要するかもしれない心臓機能不全の治療、
・他の方法ではメカニカル補助(例えば、大動脈内バルーンポンプ、心臓マッサージ(cardiac compression)デバイス、またはLV補助デバイスポンプ)を要するかもしれない心臓機能不全の治療、
・患者を継続的に監視し、生理的センサがその必要性または患者に症状が出ていることを示すと治療を自動的に行う埋め込み可能または体外デバイス、
・薬剤の過量摂取または低体温の結果生じた心臓機能不全の処置、
・β遮断薬などの陰性変力薬(negative inotrope drug)処置と組み合わせてこれらの治療に対する患者の耐性を改善する、
・虚血後心臓機能不全または例えば冠血管閉塞、血栓溶解剤、血管形成術、または心臓バイパス手術後のスタンニングの治療、
・心臓バイパス術の成功に伴う機能不全のサポートおよび心停止法(cardioplegia)の使用、
・2:1AVブロックを規則化し、メカニカル心拍数を低下させ、かつメカニカル機能を向上させることによる高速かつ許容できない上室性頻脈症(SVT)の治療、また、不整脈の停止を促進してもよい、
・AT、AF、SVT、VT、またはVFを含む頻脈事象後の機能不全の管理(電気カーディオバージョン、緊急ディフィブリレーション、および蘇生を含む)、
・重篤な心不全発作、心臓性ショックの悪化、電気メカニカル乖離(EMD)または無脈性電気活動(PEA)、
・低酸素症または代謝異常に伴う心機能の急性低下、
・例えば、活動前または活動中のHFの、または悪化する症状の間欠治療、
・心拍数を変化させ、充満およびメカニカル効率を上げ、逆リモデリングおよび他の回復プロセスを促進するためのHFの継続治療、
・指定の時間間隔にわたり特定の時間帯での、あるいはN回の心周期毎の計画送出の使用を含むHFの計画治療、
・心房収縮性を高め、より良好な心室充満、およびAV同期を促進するための心房PESP治療、および/または
・治療中に心房負荷を減らし心室機能を良くした結果としてAF負荷を減らすこと。
【0035】
本発明に従って動作するシステムの概要
本発明に従って構成されおよび動作する、上述した治療を送出するために用いられることができるシステムは、当該技術分野で既知のペースメーカまたはICDシステムに内蔵されているタイプの信号発生器、タイミング回路、および/またはマイクロプロセッサ制御回路を含んでよい。例示的なシステムは、米国特許第5,158,078号、同第5,318,593号、同第5,226,513号、同第5,314,448号、同第5,366,485号、同第5,713,924号、同第5,224,475号、同第5,835,975号(それぞれ参照により本明細書中に援用される)に示されるが、任意の他のタイプのペーシングおよび/またはICDシステムもこの目的で用いることができる。このようなシステムにおいて、EGM検知は、心腔内に配置されたリード線上、またはデバイスのハウジング上に保持される電極によって行われる。あるいは、皮下および/または体外パッドまたはパッチ電極を用いて心臓信号を検知してもよい。生理的センサも同様に、当該技術分野で既知である任意の構成および/または検知システムによるリード線システム上に保持されてもよい。
【0036】
以下の導入部は、本発明の全体的な性質およびいくつかの特徴の理解を容易にするためのものである。
本発明に関して使用する電極およびリード線の簡単な説明
本発明の全ての実施形態は、必要な所に電気刺激エネルギーを送出し、このエネルギー送出のタイミングを取って、危険な送出を回避しながら、有益な効果を達成する電極構成を共通に必要としている(以下でさらに述べられる)。上述した各治療部品について、特定の電極の場所および幾何学的構造が好ましい場合がある。刺激用の、本発明の電極の場所および幾何学的構造は、心臓内かまたは心臓に隣接した表面積の大きな除細動コイル電極の使用;右室心尖部、流出管(outflow tract)、心房の各種場所、ヒス束部位、左側心外膜、心膜または心内膜を含む場所におけるペーシング電極;頚部または胸部の骨棘(spine)または神経に近いか、あるいは、心臓の上にあるかまたは心臓に近い交感神経領域;パドルおよびパッチ、円筒電極、一時的な電極(例えば、心外膜電極、経静脈電極、または術後電極)、皮下電極および複数部位の刺激を含む、経胸腔電極を含む。
【0037】
一般的な医用生体工学のやり方によれば、腐食を減らし、分極エネルギー損失に対抗するように、最小の正味電荷を送出しながら刺激治療が適用される。エネルギー効率のよい治療送出および電位図(EGM)検知は共に、分極性の低い誘導法(lead system)から利益を得る。最後に、電極は、治療送出後すぐにEGMの検知を可能にする高速回復増幅器に接続されるのが好ましい。
【0038】
本発明に関して使用するセンサの簡単な説明
最も基本的なセンサは、電位図(ECGまたはEGM)に基づくセンサであり、心臓電気活動を反映する。これらのセンサは、センサが脱分極および再分極信号を容易に検出することができる所に位置する電極ならびに心調律を監視し、不整脈を診断するための検知増幅器を必要とする。
【0039】
一実施形態によれば、血圧センサ、加速度計、流量プローブ、マイクロフォン、または聴力計結晶を用いて、流量、力、速度、心臓の壁の移動を測定し、および/または、心腔の容積を推定することができる。これらのセンサから誘導されるパラメータを用いて、心臓の血行力学的機能不全の発現および重篤度(severity)を検出することもできる。例えば、HF代謝不全を指示することができるのは、心臓拡張期圧の変化が増加し、一方、心室圧の上昇であるdP/dtから導出された心臓の収縮性が減少したときである。
【0040】
本発明の別の実施形態は、経胸腔または心臓内インピーダンス信号の変化を利用して、心臓の運動および呼吸による移動を検知することができる。肺浮腫の結果としての胸腔内インピーダンスの変化を用いて、PESPおよび/またはNES刺激治療をトリガすることもできる。
【0041】
埋め込み可能デバイスまたは外部デバイスにおいて、呼気CO2および血中酸素飽和度、pH、PO2、および/または乳酸塩用の代謝すなわち化学センサを使用して、心臓機能不全を反映することができる。
【0042】
本発明による心房協調 (coordinated) ペーシング(「ACP」)の簡単な説明
本発明の一形態によれば、心臓の上部腔および/または下部腔に対する電気刺激は、不応期および非不応期の両方の期間に送出されて、心房の収縮を協調させ、調律を安定化し、心拍出量を最適化することができる。この刺激は、引き起こされる不整脈に伴う危険を最小にするように本発明によって実施される。内因性の心房事象は、その後に心室事象が続き、心房および心室電位図(それぞれ「AEGM」および「VEGM」)の急峻な動揺部(deflection)として現れる。PESP治療の設定は、断続する2:1AVブロックをもたらす可能性がある。残念ながら、PESPによる1:1伝導が、非常に速い心室レートをもたらす可能性があるため、2:1伝導は、非常に遅い心室レートを生ずる可能性がある。こうした変更形態によって、興奮性PESP治療によって提供される利点のいくつかが相殺される。こうした状況を改善するために、心房ペーシングパルスが、内因性補充間隔より短い間隔で送出される。このACPの形態において、心房は、一定の2:1AVブロックを確立する内因性心房レートを越えるレートでAAIペーシングされ、その結果生ずる内因性心室拍動がより頻繁に起こる。これは、「高速な」AAI心房ペーシングによるACPと呼ばれる。
【0043】
ACPの代替の方法があり、その方法において、内因性のまたはペーシングされた心房事象の後に(洞調律または心房ペーシングされた調律と同様に)心室脱分極が続くが、追加の刺激パルスが、心房および心室にほぼ同時に供給される。このことは、PESP治療によって心房および心室機能の強化を達成するだけでなく、洞結節をリセットして、それによって、得られる全体の心拍数は、一定となり、内因性(または生理的)A−A間隔と関連し、患者の生理的要求によって決まる。この治療形態と関連するACPパルスは、「ACP」と標識付けをされて心房ペーシングの特別な形態として区別される。
【0044】
これらの概念は、タイミング図(例えば、図9)を参照すると最もよく理解される。例えば、第1の波形「A」を用いて、治療の介在のない洞調律を示すことができる。心房で検知された事象(AS事象)は、AV結節を通って心室に伝導して、内因性脱分極(VS事象)を引き起こす。PESP治療が開始されると、2:1AVブロックが通常起こる(第2の波形「B」で示すことができる)が、2:1AVブロックは不安定である場合が多い。こうした波形Bの場合、AVブロックによって、1つおきの内因性心房拍動が心室に伝導することができない。さらに別の波形「C」を用いて、ACPに対する独特のペーシングの実施形態(例えば、AAIペーシング)を示すことができる。
【0045】
本発明の一形態によれば、ペーシングは、内因性レートより高いレートで心房内で起こる。たとえ2:1伝導がまだ存在していても、心房レートが増すため、内因性心室脱分極がより頻繁に起こる。さらに別の波形「D」を用いて、本発明者等がACPの特別な場合であると考える、別の形態のACPを示すことができる。この場合、心房協調ペーシングは、心室(または心房)拍動に続いて比較的短い期間がたって開始される。AVブロックおよび心室の不応状態のために、このACPペーシングされた事象は心室には伝導しない。このACPペーシングされた拍動に続いて、内因性脱分極が心房内で起こることができる(AS)。この内因性拍動は心室に伝導し、心室脱分極が生ずる(VS)。
【0046】
本発明のこの態様によって、心周期の間に、患者の自然なAV伝導および内因性レートが現れることが可能になり、PESP治療中に、よりよいレート制御が可能になる。同時に、所定の期間に発生する内因性心室拍動の数は、心房ペーシングがないときに普通起こるよりも多い。これは、生理的心房協調ペーシング(「ACP」)と呼ばれる。心房ペーシングおよび/または心室ペーシングによってレートの下限を与えるという拡張は、ペーシングの技術分野ではよく知られている。ACPは、本明細書に示した埋め込み可能デバイスによって供給されるか、または、心房および心室の両方を捕捉するのに十分な振幅を有する刺激による表面ECGのR波からタイミングを取った経皮ペーシング(TCP)刺激によって供給されることができる。
【0047】
本発明によるNES/交感神経刺激の簡単な説明
本発明の別の態様によれば、非興奮性の電気神経刺激治療を、首、胸、縦隔、および心臓の交感神経に加えて、ノリエピネフリンなどのカテコラミンの局所放出によってメカニカル機能を強化する。これらの治療は、非興奮性電気刺激(NES)治療として知られており、その理由は、これらの治療が、心臓組織の脱分極を引き起こすことを意図せず、心臓組織を電気的に励起することを回避する電極の場所および刺激タイミングを用いて達成することができるからである。心臓に近い電極は、心筋の不応期の間に1つまたは複数のNESパルスを送出する。もちろん、心筋からそれた所に電流を加える電極は、心臓組織を直接励起せずに、心周期にわたって種々の時刻で電気刺激を送出することができる。
【0048】
本発明による安全ロックアウトルールの簡単な説明
本発明の別の態様は、付随するリスクを最小にしながら、圧力および流量を含む、結果として生じるメカニカル機能を最適化するように、心房および心室に電気刺激を送出することを伴う。本発明のいくつかの特徴がこの目的を達成するために提供され、その特徴は、所望のレベルの強化された機能を得るためのNESおよびPESP治療送出の調整、NESおよび/またはPESPのみに対して調律の規則正しさおよび血行力学上の利点を改善するための心房協調ペーシングすなわちACPの使用、および、催不整脈性である恐れがあるとき、拡張期および冠動脈の血流を減少させる恐れがあるとき、および/または、血行力学についての有益な効果を減らす恐れがあるときに、PESP治療を禁止すなわちロックアウトするための安全ルールを含む。心拍数が速いことは、PESP治療が利益を生じないときの主要な例であり、安全ロックアウトルールを使用するよう動機を与える。
【0049】
安全ロックアウトルールは、短期間または拍動ごとに働いて、前の周期からのV−V間隔が短かすぎる場合、PESP(およびACP(使用可能な場合))が使用不能にされる。このように、異所性は、洞頻脈、他のSVT、VT、およびVFと同様に、PESP治療を抑制するであろう。本発明者等は、さまざまな状況において、このルールが、安全で効率的なPESP刺激治療の重要な要素であることを発見した。
【0050】
本発明による治療開始および停止ルールの簡単な説明
本発明に従うPESPおよびNES治療の適用は、(i)医師によって(試験所の結果および患者の徴候および患者の症状に基づいて)、(ii)患者によって(活動に伴って、予想される症状かまたは現在の症状が改善するように)、または、(iii)これらの刺激治療に応答する状態を検出するデバイスセンサによって自動的に変更されることができる。これらの場合のそれぞれにおいて、別個の最大治療持続期間および終了基準が存在する場合がある(または、治療が医師または患者によって終了させられる場合がある)。
【0051】
刺激治療のセンサ決定式の(sensor-governed)自動開始が本明細書に記載される。その時不整脈が存在しない場合、生理的センサを使用して、心臓の血行力学的機能不全治療を開始すべきかが判断される。動脈圧、右心室圧、および/または左心室圧などの血圧信号センサ(他の離散的な心血管圧測定値を導出するのに利用することができる)を用いて、それぞれの圧力測定値を取得することができる。治療は、これらの測定値が、確立された期間にわたって、所定のしきい値以下に降下するか、またはそれを越える圧力変化を示す時に開始される。本明細書で詳細に示す一例において、機能不全の重篤なレベル(LV dP/dtmax<400mmHg/s)が、6秒を越える期間の正常洞調律の間に認められる。圧力測定値を重み付けし、および/または、組み合わせて、治療送出をトリガするのに用いる統計量を取得することができる。統計量を用いて、HFおよび血行力学的機能不全の発現および重篤度を示すのに用いる長期間傾向データを生成することができる。
【0052】
本発明の別の態様において、RV圧を用いて、RV拡張末期の生成圧、時間に応じた最大圧の変化(dP/dtmax)、肺動脈拡張期圧の推定値(ePAD)、RV弛緩または収縮時定数(τ:tau)、またはRV再循環分画(RF)が導出される。次に、導出されたこれらのパラメータを用いて、機能不全の程度が、治療送出が開始されるような許容可能レベルを越えたときが求められる。パラメータは、上述したように測定され、計算され、しきい値と比較されるか、または、センサ信号が処理され、心臓機能不全がテンプレートマッチングおよび分類によって特定される。しきい値および/または分類方式は、定期的に更新されて、治療の原因としての、患者の状態の任意の自然な変化を排除することができる。
【0053】
本発明はまた、心周期長の長期にわたる解析を通して、予想される血行力学上の折衷案を組み込むことができる。例えば、長い持続期間および速いSVT、VT、またはVFは、急性HF代謝不全を含む機能不全、心臓性ショック、あるいは、自発的終了またはカーディオバージョン後の電気メカニカル分離(EMD)または無脈性電気活動(PEA)を生ずる可能性が高い。こうした場合、刺激治療の試験(trial)が、メカニカルセンサ、代謝センサ、または化学センサの確認なしでプログラムされてもよい。
【0054】
患者の体内の電極からの表面心電図(ECG)または電位図(EGM)信号などの他の信号を用いて、機能不全および心不全(HF)を検出することができる。例えば、ECGによって検出される心周期(PQRST)のSTセグメントレベルを監視することができる。上昇したか、または低下したSTセグメントレベルは、虚血(機能不全およびHFと関連することが知られている状態)の信頼性の高いインジケータであることがわかった。別法として、Q−T間隔の持続期間を用いて、血行力学的機能不全を検出することもできる。例えば、短くなったQ−T間隔は心筋機能不全を示す場合がある。ウェーブレット分類アルゴリズムなどのテンプレートマッチングアルゴリズムを用いて、血行力学的機能不全に伴う電位図信号を特定することができる。
【0055】
血液を解析して、乳酸塩、O2飽和度、PO2、PCO2、およびpHの変化を検出するセンサを含む化学センサを用いて、治療を開始することができる。蘇生手技中に、心拍出量のインジケータとしてのPCO2について呼気ガスを解析することができる。脈波型酸素飽和度測定は、頻脈性不整脈のカーディオバージョンに続く外部自動ディフィブリレーション(AED)を本心臓治療に適用する状況において特別の有用性を有する酸素飽和度およびパルスプレチスモグラム信号についての無侵襲評価を提供することができる。次に、治療は、これらの変数によって反映される機能不全またはHFの程度が、十分な期間の間所定量を下回るまで続けられる。
【0056】
圧力センサは、上述の例において、(また、‘631号特許の開示において)非常に目立つが、いくつかの他のセンサはメカニカル機能を反映するであろう。心臓内の、または経胸腔のインピーダンス変化は、メカニカル機能、一回拍出量、および心拍出量を反映する。体内の、または外部に貼り付けられた加速度計またはマイクロフォンは、重篤な心臓機能不全を検知し、治療に対する応答を監視する。超音波を埋め込むか、または外部で印加することによって、心臓の容積、寸法の変化、および速度を測定することができる。
【0057】
治療終了条件が満たされたかどうかを判断して、治療を終了するように、生理的信号が検知され続けてもよい。例えば、AEDの状況で、これは、頻脈性不整脈が終了したこと、および、動脈脈圧が回復に適合するレベルに達したことを判断することを含むことができる。しかしながら、治療を適用すべきかどうかを判断するために、圧力センサまたは加速度計などのメカニカルセンサを用いることは、心臓胸部圧迫などのPEA/EMDの外部処置が、生理的信号に誤差を導入する可能性があり、その誤差は、治療が必要とされるときに治療を禁止するか、または遅延させるという欠点を有する。本発明のさらなる態様は、心機能を検出する心臓内または心臓の上のメカニカルセンサだけでなく、埋め込み可能デバイスハウジングまたは筐体(不関電極として働く)の内部などの、心臓から離れた所の第2のセンサまたは複数のセンサを含むことである。この第2のセンサから、(胸部圧迫などによる)CPRアーチファクトが特定され、引き算されて、より正確な真の心機能の評価が示されることができる。
【0058】
治療は普通、不整脈事象が検出されると自動的に中断される。不整脈事象が終了すると、再誘導のリスクを減らすために治療が自動的に再構成されることが可能である。治療はまた、期外心室収縮(PVC)などの十分な量の異常な脱分極が検出されると中断されるであろう。レート限度を用いることによって、ウェーブレット分類アルゴリズムに似た、テンプレートマッチングアルゴリズムなどのテンプレートマッチング型アルゴリズムによって、または、Medtronics, Inc.の独自の検出技法である、PR−logic(登録商標)型調律識別方式を用いて、1つまたは複数のPVCが検出されるであろう。
【0059】
本発明による不応間隔の特定についての簡単な説明
心機能にとっては有益であるが、PESP刺激パルスの送出は、不整脈を誘導するリスクを最小にするように制御されなければならない。初期時刻ゼロ(0)においてQRS群に一致する心室脱分極に続く期間の間に期外収縮を誘導するのに必要とされるパルスの強度を示す刺激−強度曲線と整列したECGまたはEGM信号のトレースを参照すると、これが最もうまく実現される。絶対不応期の間に、直接か、または心房腔に電気刺激を印加することによってのいずれかによって電気刺激を送出することで別の脱分極が誘導されないように、心室は不応性である。この期間後、心臓組織に電気刺激が送出されると、別の電気的脱分極が可能になるように組織が回復する。この期間の間に期外収縮を引き起こすのに必要とされる電流量は、刺激−強度曲線によって示される。
【0060】
最初は、組織を捕捉するのに必要とされる電流レベルは高いが、その後、埋め込み可能ペーシングリード線の場合、約0.5〜1mAの基線レベルまで急速に減少する。AEDまたは外部ディフィブリレータの電極パッドまたはパドルによるTCPの場合、基線レベルは、約50〜100mAである可能性がある。
【0061】
また、心室の「受攻期」は、PESP治療が行われるときに考慮されなければならない。受攻期は、VTまたはVFエピソードを引き起こす恐れのある所定の振幅か、またはそれを越えて電気パルスが送出される期間を示す。例えば、40mA以上の振幅を有し、約170ミリ秒で送出されたパルスは頻脈性不整脈を誘導する可能性がある。
【0062】
特定することの重要性および不応−非不応の境界を特定する技法が本明細書に記載される。非興奮性神経刺激の利点は、パルスが不応期のどこにあってもよいこと(pulses anywhere in the refractory period)から生ずる。不応期からはずれて送出されたNES神経刺激は、興奮性である場合が多い(また、本明細書で以下に続く興奮性PESP解析において対処されるであろう)。
【0063】
興奮性PESP刺激治療から生ずる強化または増強のレベルは、本明細書でさらに述べる増強応答曲線に従う。本発明者等は、不応期後すぐに送出される、こうした電気刺激パルスが、後で強い収縮を生ずることを見出した。刺激の遅延が大きいと増強の量が減る。早期すぎる(すなわち、期外の)刺激は、心筋が不応性であるため、増強が加えられない。受攻期について論じたように、不整脈を誘導するリスクは、不応期よりほんの少し長い、比較的狭い期間に限定される。しかしながら、本発明者等は、(簡単に上述した)安全ロックアウトルールおよび(同様に簡単に上述した)ACP協調に従って、単一のPESPパルスが送出される場合、こうしたリスクは全く小さいことを発見した。PESP刺激治療についての合成利益関数が本明細書において開示され示される。小振幅PESPパルスは、絶対不応期に制限されると実質的には「利益に中性(benefit neutral)」であり、不応期よりほんの少し長い短期間についてリスクが少しあり(not without risk)、この短期間後すぐに最大利益まで上昇し、最後に、固有の周期長の近くで送出されたパルスについて、再び「利益に中性」になる。
【0064】
結果として、不応−非不応期境界についての刺激タイミングが、所望の応答(NESまたはPESP)を取得すること、および、治療送出のリスクと利益を制御することの重要な側面であることが明らかである。本発明は、電気的センサおよび/またはメカニカルセンサ信号からこの時刻を求める手段を提供し、それによって、より安全でより効率的な刺激治療が可能になる。
【0065】
本発明者等は、不応期が、Q−T間隔と密接に関連しており、Q−T間隔は、当技術分野で既知の技法によって、電位図信号または他の生理的センサ信号から得ることができるという事実を利用する。Q−T間隔長を用いて、直接か、または、心拍数および検知遅延の関数を組み込むことによるかのいずれかで、不応期の持続期間が推定される。PESP治療の場合、Q−T間隔長は、期外収縮刺激パルスから誘発されたT波までの時間間隔によって推定することができ、PESPを伴わない心周期中よりも少し長いであろう。これは、PESPによって引き起こされた追加の脱分極がQT間隔を少し長くするためである。
【0066】
別法として、PESP刺激の誘発反応を監視して、PESP治療が、不応期に送出されたかどうかが示されるであろう。例えば、不応期中に始まる複数の電気パルスが心筋に印加される。各パルスの結果は、パルスが期外収縮を引き起こしたことを示す誘発反応が検知されるまで、刺激電極か、または補助電極のいずれかからEGM上で検知される。この時点では、不整脈を誘導するリスクを最小にするため、パルスはそれ以上印加されないであろう。
【0067】
別の例において、単一パルスの振幅およびタイミングは、誘発されたR波によって捕捉が検出されるまで操作されてもよい。捕捉が失われた場合、刺激パルスは、より大きく遅延させられるか、振幅を増加させられるか、PESPパルス列のパルス数が増加させられる。また、本発明を実施するときに、PESP刺激が心室を捕捉している/捕捉したかどうかを評価するのに用いられる圧力波形(または、任意の他のメカニカル応答変数)の特徴を利用することができる。期外収縮の存在は、先行の圧力パルスのサイズの5〜80%という狭い心室圧力パルスによってか、または、テンプレートマッチングアルゴリズムなどの適当なアルゴリズムによって特定されるであろう。期外収縮として役立つことが意図されるパルスについての捕捉と非捕捉の間の移行もまた、後続の増強された拍動の圧力波形の変化によって特定されてもよい。このことは、心房パルス圧について明確に示することができる。
【0068】
本システムはまた、不応期中に、1つまたは複数のパルスを含む波形を用いて任意選択の非興奮性神経刺激を送出することができる。NES刺激が確実に受攻期に入らないようにするために、不応期長が上述した機構を用いて推定される。NESが独占的に予定される場合、期外収縮の検出によって、刺激の遅延時間、振幅、またはパルス数が減らされなければならない。
【0069】
不応−非不応境界が、非常に重要であり、患者ごとに、さらに患者の時間経過により、疾患および薬剤により変わるため、これらの方法は、デバイスの刺激タイミングアルゴリズム部にとって、定期的に、または絶えず使用されるべきである。この境界情報がパルスタイミングを直接設定するのに用いられない場合、この情報を使用して、タイミングに対する限度が確立されることができ、その限度は、次に、臨床医かまたは次に述べるような、ある自動制御アルゴリズムによって設定される。
【0070】
PESP治療についてのSVT管理の簡単な説明
本発明によるPESP治療は、PESP治療を適用することによって、速いSVTを減速させるのに使用することができる。こうした速いSVTは、異所性または再入可能な調律が心房またはAV結節を包含し、心室に伝導するときに生じる。心室への伝導は、非常に速いため充満および駆出を損ない、結果として、圧力および流量が通常損なわれる。興奮性PESP刺激パルスの導入によって、心室において追加の不応期が生成され、2:1レート減少が起こる。さらに、増強作用、および強化されたメカニカル機能が生ずる。正味の結果は、血行力学性能の改善を伴う有効なレートの減少である。このPESP治療法は、生命を脅かす可能性のあるSVTを、十分に許容される調律に変えるだけでなく、自然な、デバイスまたは薬剤手段によって、不整脈を終了させるのにより多くの時間を与える。
【0071】
本発明による刺激治療のフィードバック制御の簡単な説明
本発明のさらに別の態様によれば、生理的センサからの閉ループフィードバックを用いて、電気刺激のタイミングが調整され、それによって、心機能をさらに最適化し、安全を維持し、心臓の応答性の変動に対処するように治療送出を合わせることができる。基本PESP増強応答曲線(しきい値上刺激時間の関数)は、基本非興奮性神経刺激(NES)応答曲線(不応期の刺激強度の関数)と共に本明細書に示される。患者ごとの、または、患者内の(時間経過による)変化は、一定のNES刺激について、異なるレベルの強化された機能をもたらす可能性がある。逆に、所望のレベルの強化を維持するには、種々の刺激期間または強度が必要とされる可能性がある。
【0072】
センサ信号フィードバックを用いて、閉ループ方式で刺激タイミングを決定して、応答性の変動に対処するようにすることができる。医師は、生理的情報に対応して、電気刺激の振幅およびタイミングを調整することができる。別法として、この応答は、コントローラと呼ばれるアルゴリズムに従ってデバイスによって得ることができる。初歩的だが役に立ち、広く用いられているコントローラの種類は、PID制御またはP+I+D制御と呼ばれる。PIDコントローラは、センサレベルが、目標レベルまたは設定点からどれほど離れているかを反映する誤差信号によって動作する。コントローラの出力は、誤差信号、誤差の積分値、およびそれぞれP、I、およびDを表す定数によってそれぞれスケーリングされた誤差の導関数の組み合わせである。実際のコントローラは、その出力および積分器に制限を組み込んで、コントローラが影響を与えるシステム(プラントと呼ばれる)への入力を適度な範囲内に保ち、応答性を維持する。
【0073】
RV dP/dtmaxに基づく機能しているP+Iコントローラの図が、本発明と共に用いられるために本明細書に開示される。例として、280mmHg/秒の基線からのPESP刺激について、700mmHg/秒の設定点が選択され、コントローラおよび刺激が始まった。PESP刺激パルスは、上限および下限内で、P+Iコントローラに基づいて各心周期を自動的に調整した。本発明者等は、調査の間に、コントローラの利得を増加させ、それによって、振動が起こった。小さい利得を用いると、フィードバック制御を利用することで、少し応答を遅らせて、プラントの応答の変動に対する大幅な頑強性を得ることが可能であった。
【0074】
刺激期間ならびに最大振幅、パルス間隔、1列(train)内のパルス数、パルス列の順次パルスの振幅の変化、および他のパラメータは、所与の患者について最適な心臓性能を達成するために調整されてよいことが留意され得る。これは、検知した生理的パラメータを閉ループ方式で監視することによって得ることができる。次に、パルス列はそれに応じて調整されて、心拍出量または生理的機能の他の指標を最大にすることができる。例えば、単一PESPパルスのタイミングを変えるのではなく、コントローラは、パルス列の数および持続期間を変えてもよい。
【0075】
PESP治療について先に論じたものと非常に似た閉ループ環境で監視することによって、生理的信号を用いて心機能をさらに改善するように、NES刺激が調整されてもよい。NESおよびPESP治療で使用するのに最も有効であることが見出された種々のパルス列が、‘631号特許の開示に詳細に述べられている。パルス数、パルス振幅、パルス形状、および任意の他の信号の態様は、心拍出量を最大にするように生理的測定値に基づいて変えてもよい。NESおよびPESPパルス列は共に、心拍出量を最大にするように最適化されることができる。NESおよびPESP治療は共に、心周期ごとに適用される必要はなく、アプリケーションによって、一定数の周期を飛ばすことができるであろう。飛ばされる周期の数もまた制御変数として役立つであろう。
【0076】
頻脈性不整脈管理デバイスへの拡張についての簡単な説明
心臓刺激治療が、これらの治療に従って行われる(activated)ならば、本発明のさらなる態様は、カーディオバージョンおよびディフィブリレーション用の抗頻脈ペーシング(ATP)およびショックを送出する現存の療法を変更することである。本発明のこの態様を示すフローチャートは、本明細書に示され、ICD(埋め込み可能カーディオバータ/ディフィブリレータ)およびAED(外部自動ディフィブリレータ)の両方に適用可能である。
【0077】
現存の従来技術の療法に対する第1の変更は、現在の上限を超えてショックの数を増やすことである。
第2の変更は、シーケンスにおいて、後になるほどショック間の期間を増やすことである。間隔が広くなると、より高い特異性の検出が可能になり、それによって、ショックが誘導する心筋損傷のリスクが起こる可能性が最小になるであろう。
【0078】
第3の変更は、追加のショックを送出するのが最も有効であるときに関するインジケータであってよい、規則正しさの増加および/または振幅の増加がないかEGMを監視することである。
【0079】
本発明のさらなる態様は、埋め込み式治療デバイスおよび外部治療デバイスの、現存の調律認識アルゴリズムを修正することであって、それによって、既存の外部デバイスまたは埋め込み式デバイスによって、それぞれ送出された治療パルスと同時に動作することに対処することである。刺激パルスに伴う電位図のスルーレートの急峻な変化は、自動調律認識のために、認識され、無視することができる。さらに、心臓機能不全の状況において、第2の脱分極の直前に検出された、刺激パルスによる密接した心室脱分極の対は、PESP期外収縮であり、内因性二重頻脈調律ではないと考えられる。デバイスは、それに従って有効な心拍数および調律を解析し、誤って頻脈性不整脈を検出または処置することはない。
【0080】
本発明を構成するシステムの簡単な説明
興奮性PESP刺激のための統合した重要な態様を示す、本発明の上位レベル図を示す包括的なフローチャートが、本明細書に含まれる。代表する心臓および心血管系は、ペーシング、除細動、CRT、PESPを含む電気的治療、または任意選択でNES刺激治療によって影響を受ける。心臓および心血管系は、電気的、メカニカル、および代謝/化学センサによって監視されることができる。これらのセンサからの信号は、治療の開始または停止に対する決定、閉ループ制御、不応期の検出、治療安全ロックアウトルール、および心房協調ペーシングに影響を与える。
【0081】
本発明のこれらおよび他の利点および特徴は、図面と共に検討すると、以下の本発明の好ましい実施形態の詳細な説明からより容易に理解されるであろう。いくつかの図を通して、同様の参照符号は同様の構造を示す。図面は一定縮尺どおりには描かれておらず、本発明のあらゆる実施形態の要素全てを必ずしも含むものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0082】
以下の詳細な説明において、本発明を実施する例示的な実施形態を参照する。本発明の範囲を逸脱することなく他の実施形態を利用してよいことは理解されよう。
好ましい実施形態を説明する前に図1を参照する。図1は、先に引用した米国特許第5,800,464号からの参照であり、絶対血圧、大動脈血流量、および左心室容積の変動に関連する、正常な洞調律心周期に伴う電気脱分極波を示す。右心房および右心室は、PQRST群に関連して、左心房および左心室と略類似の圧力、流量、および容積の変動を示す。本発明の監視および刺激治療の態様は、心臓の片側または両側に存在し、そこで作用することができることが理解されるであろう。心周期は、右心房に静脈血が再び充満し、左心房に酸素化された血液(oxygenated blood)が再び充満する際に、連続的なPQRST群と後続の心房および心室の弛緩との間隔内で終了する。洞調律では、脱分極の間隔は、それぞれ120bpm〜60bpmの対応する洞心拍数に対して約500.0ミリ秒〜1,000.0ミリ秒である可能性がある。この時間間隔において、心房および心室は弛緩し、全体的な心房サイズすなわち容積が胸腔内圧および呼吸に応じて変化することができる。図1の血圧図において、心房および心室血圧の変化が心周期のP波およびR波に追随し、P波およびQ波に遅れることを認めることができる。期間T0〜T1は、AV間隔を包含する。
【0083】
機能不全のSA結節またはAVブロックに起因する徐脈から生じる心臓の機能不全を患う患者において、従来の心房および/または心室ペーシングを処方して、十分な心拍数およびAV同期性を回復することができる。例えば、図1では、心房および/または心室ペーシングパルスは、P波、および一般にR波と呼ばれるQRS群の動揺部(deflection)より前に起こる。心房または心室の心筋細胞が、後続の心房収縮期間(T0〜T1)および心室収縮期間(T1〜T2)に続いて、弛緩することができないことによって心拍出量が低下する可能性がある。図1に示すように、心収縮期間が長くなると、受動的充満時間T4〜T7が減る。したがって、次の心周期において心房および/または心室から排出される血液量は、最適値未満である可能性がある。これは特に、HF患者または心臓の剛性が増した他の患者に見られる事例であり、受動的充満段階(T4〜T7)中および心房収縮期(T0〜T1)中の心臓の充満は大幅に制限される。
【0084】
本発明の監視/治療送出IMDを用いて、所定期間にわたって記憶用患者データとして上述のパラメータを取得し、心不全を処置する治療を送出することができる。医師は、患者データのアップリンクテレメトリ送信を開始し、患者データを再検討して、患者の心臓の心不全状態を評価することができる。次いで医師は、特定の治療が適切であるかを判断し、ある期間の治療を処方し、一方、後の再検討および評価のために記憶用患者データを再び蓄積して、行った治療が有益であるか否かを判断することができ、それにより、適切である場合には、治療を定期的に変更することが可能になる。このような治療には、薬剤治療、PESPおよび/またはNES刺激を含む電気刺激治療、ならびに単腔、二腔、および多腔(両心房および/または両心室)ペーシングを含むぺーシング治療が含まれる。さらに、悪性頻脈性不整脈の傾向がある患者において、頻脈性不整脈の検出または分類および送出される治療のパラメータを設定する際に、心不全状態の評価を考慮することができる。
【0085】
したがって、本発明の実施形態を多腔ペーシングシステムの状況において詳細に開示する。この多腔ペーシングシステムは、1つまたは複数の心腔に作用するように位置するセンサ、検知電極、および電気刺激電極から、心臓のメカニカル機能不全を示す上述のパラメータを導出するように変更されている。本発明の実施形態は、必要に応じて動作し、心房に追随し、トリガ式にペーシングする、両心房および両心室のAV順次ペーシングシステムとして動作して、検知されかつペーシングされた心房事象と同期した、左および右心房の脱分極ならびに収縮の同期性を回復するようにし、それによってHFおよび/または徐脈を処置するようにプログラムすることができる。したがって、本発明のこの実施形態は、上部および下部心腔の同期ならびに右および左の心房腔および/または心室腔脱分極の同期性を回復するために、AV同期動作モードを有する、2チャネル、3チャネル、または4チャネルのペーシングシステムとして動作するようにプログラム可能である。しかしながら、後述する複雑な多腔ペーシングシステムの部品のうちの特定のもののみが、機能するように選択的にプログラムされ、すなわち、より単純な単腔監視/刺激システムに単に物理的に組み込まれて、心不全状態を示すパラメータを導出することができることが理解されるであろう。
【0086】
図2において、心臓10は、上部心腔、すなわち右心房(RA)および左心房(LA)、下部心腔、すなわち右心室(RV)および左心室(LV)、ならびに冠状静脈洞(CS)を含む。冠状静脈洞は、右心房の開口から心房を横方向に延びて大静脈を形成し、さらに下位に延びて大静脈の分岐に入る。心周期は通常、右心房壁のSA結節における脱分極インパルスの発生により開始する。次いでインパルスは、結節間路を経て右心房を通り、バッハマン束を経て左心房中隔に伝導する。RA脱分極波は、房室(AV)結節および心房中隔に約40ミリ秒以内で達し、最も離れたRAおよびLA壁に約70ミリ秒以内で達する。電気的活性化後およそ50ミリ秒に心房が収縮する。RAおよびLA脱分極波の集合体は、外部ECG電極にわたって検知されて表示されると、PQRST群のP波として見える。RAまたはLA上にあるいはそれに隣接して位置する単極または双極ペーシング/検知電極対間それぞれを通る心房脱分極波の成分は、検知されたP波とも呼ばれる。外部ECG電極または埋め込み式単極心房ペーシング/検知電極の場所および間隔はいくらかの影響を及ぼすが、このような電極に結合した高インピーダンス検知増幅器によって測定する場合、正常なP波の幅はせいぜい80ミリ秒である。RAまたはLA上にあるいはそれに隣接して位置する密接した間隔の双極ペーシング/検知電極の間で検知された正常の近方場P波は、高インピーダンス検知増幅器によって測定する場合、P波の幅はせいぜい60ミリ秒である。
【0087】
AV結節に達した脱分極インパルスは、約120ミリ秒遅れて、ヒス束を下方へ心室内中隔(intraventricular septum)に伝導する。脱分極波は、心臓の心尖領域(apical region)に約20ミリ秒後に達し、その後残りの40ミリ秒にわたってプルキンエ線維網を通って上方に移動する。RAおよびLA脱分極波の集合体、および脱分極した心筋の再分極を伴う後続のT波は、外部ECG電極にわたって検知され表示されると、PQRST心周期群のQRST部と呼ばれる。RVまたはLV上にあるいはそれに隣接して位置する単極または双極ペーシング/検知電極対間を通るQRS心室脱分極波の振幅が振幅しきい値を超えると、この振幅は検知されたR波として検出される。外部ECG電極または埋め込み式単極心室ペーシング/検知電極の場所および間隔は、R波の検知にいくらかの影響を及ぼすが、高インピーダンス検知増幅器によって測定する場合、正常なR波の持続期間は80ミリ秒を超えない。RVまたはLV上にあるいはそれに隣接して位置する、密接した間隔の双極ペーシング/検知電極間で検知された正常な近方場R波は、高インピーダンス検知増幅器によって測定する場合、R波の幅はせいぜい60ミリ秒である。
【0088】
正常の電気的活性化シーケンスは、進行したHFを患い、かつ心房内伝導遅延(IACD)、左脚ブロック(LBBB)、右脚ブロック(RBBB)および/または心室内伝導遅延(IVCD)を示す患者において著しく分断される。これらの伝導欠陥により、RV活性化およびLV活性化の間に大きな非同期性が生じる。心室内非同期性は、80〜200ミリ秒以上の範囲である可能性がある。RBBBおよびLBBB患者において、QRS群は、表面ECGで測定する場合、正常範囲を大きく超えて120〜250ミリ秒に広がる可能性がある。幅の増加は、右および左心室脱分極および収縮の同期性が欠けていることを示す。
【0089】
図2はまた、埋め込み式の多チャネル心臓ペースメーカ、ICD、IPG、または心房および心室腔のAV同期収縮ならびに右および左心室の同時または順次ペーシングを回復する、上記のタイプの他のIMDを示す。ペースメーカIPG14は、皮膚と肋骨の間で患者の体内の皮下に埋め込まれる。3本の心内膜リード線16、32、52により、IPG14がRA、RVおよびLVにそれぞれ接続される。各リード線は、少なくとも1つの導電体およびペーシング/検知電極を有し、遠隔の筐体(can)不関電極20が、IPG14のハウジングの外面の一部として形成される。さらに後述するように、ペーシング/検知電極および遠隔の筐体不関電極20(IND_CAN電極)を選択的に用いて、ペーシングおよび検知機能のために単極および双極ペーシング/検知電極の複数の組み合せを実現することができる。右および左心腔内またはその周囲の図示した位置もまた、単なる例示である。さらに、RA、LA、RVおよびLV上、またはその内部、またはそれらに関連する電極部位に位置するようになっている図示のリード線およびペーシング/検知電極の代わりに、他のリード線およびペーシング/検知電極を使用することもできる。
【0090】
図示の双極心内膜RAリード線16は、静脈を介して心臓10のRA腔に通され、RAリード線16の遠位端は、取り付け機構17によってRA壁に取り付けることができる。双極心内膜RAリード線16は、IPGコネクタブロック12の双極の穴に嵌まるインラインコネクタ13とともに形成される。IPGコネクタブロック12はリード線本体15内の一対の電気的に絶縁された導体に結合され、遠位先端RAペーシング/検知電極19と、近位リングRAペーシング/検知電極21とに接続される。心房ペーシングパルスの送出および心房検知事象の検知は、先端RAペーシング/検知電極19と、近位リングRAペーシング/検知電極21との間で行われ、近位リングRAペーシング/検知電極21は、不関電極(IND_RA)として働く。別法として、単極心内膜RAリード線を、図示の双極心内膜RAリード線16の代わりに用いてもよく、IND_CAN電極20と共に用いてもよい。または、遠位先端RAペーシング/検知電極19および近位リングRAペーシング/検知電極21の一方を、単極ペーシングおよび/または検知のためにIND_CAN電極20と共に用いてよい。
【0091】
双極心内膜RVリード線32は、静脈および心臓10のRA腔を経てRVへと通され、RVにおいて、その遠位リングおよび先端RVペーシング/検知電極38および40が、従来の遠位取り付け機構41により心尖部の適所に固定される。RVリード線32はIPGコネクタブロック12の双極の穴に嵌まるインラインコネクタ34と共に形成される。IPGコネクタブロック12は、リード線本体36内の電気的に絶縁された導体の対に結合され、遠位先端RVペーシング/検知電極40および近位リングRVペーシング/検知電極38に接続され、近位リングRVペーシング/検知電極38は不関電極(IND_RV)として働く。別法として、単極心内膜RVリード線を、図示の双極心内膜RVリード線32の代わりに用いてもよく、IND_CAN電極20と共に用いてよい。または、遠位先端RVペーシング/検知電極40および近位リングRVペーシング/検知電極38を、双極ペーシングおよび/または検知のためにIND_CAN電極20と共に用いてよい。
【0092】
この図示した実施形態において、双極の心内膜LV CSリード線52は、静脈および心臓10のRA腔を通ってCSに入り、次いで下方に大静脈48の分岐血管に通されて、LV腔に沿って遠位LV CSペーシング/検知電極50を延ばす。このようなLV CSリード線は、上大静脈、右心房、冠状静脈洞口および冠状静脈洞を通って、大静脈などの、冠状静脈洞から下行する冠状静脈へと進む。通常、LV CSリード線およびLA CSリード線はいかなる固定機構も用いず、その代わり、ペーシング/検知電極(単数または複数)を所望の部位に保持するように、これらの血管内にしっかりと拘束することに頼る。LV CSリード線52は、直径が小さい単一の導体リード線本体56と共に形成され、このリード線本体56は、IPGコネクタブロック12の穴に嵌まる近位端コネクタ54において結合される。直径が小さい双極のリード線本体56を選択して、大静脈48から下方に分岐する静脈内の深部に遠位LV CSペーシング/検知電極50を収容するようにする。
【0093】
好ましくは、遠位LV CS活性ペーシング/検知電極50は、左心室および心室内中隔のバルクにわたってLVペーシングパルスを送出するために、LVペーシングパルス近位リングRV不関ペーシング/検知電極38と対にされる。遠位LV CS活性ペーシング/検知電極50はまた、さらに後述するように、RVおよびLVにわたって検知を行うために、遠位先端RV活性ペーシング/検知電極40と対にされることが好ましい。
【0094】
さらに、4腔実施形態では、LVCSリード線52は、LAに隣接するより大きい直径の冠静脈洞CS内にあるように、リード本体に沿って位置決めされた近位LA CSペーシング/検知電極を保持する。この場合、リード線本体56は、より近位のLA CSペーシング/検知電極から近位方向に延び、双極コネクタで終端する2つの電気的に絶縁されたリード線導体を収容するであろう。LV CSリード線本体は、近位LA CS電極および遠位LV CS活性ペーシング/検知電極50間でより短いであろう。この場合、RAのペーシングは、活性近位LA CS活性電極および近位リングRA不関ペーシング/検知電極21間のペーシングベクトルに沿って達成されるであろう。
【0095】
通常、図2に示すタイプのペーシング/除細動システムにおいて、「ペーシング/検知」電極として先に示した電極は、ペーシングおよび検知の両機能に使用される。本発明の一態様によると、これら「ペーシング/検知」電極は、ペーシングまたは検知電極として専用に使用されるようにか、または心臓信号を検知しかつペーシングおよび検知ベクトルに沿ってペーシングパルスを送出するために、プログラム式に組み合せてペーシング/検知電極として共通に使用するように選択することができる。個別または共有の不関ペーシングおよび検知電極もまた、ペーシングおよび検知機能において指定することができる。便宜上、以下の説明はペーシングおよび検知電極対を、区別が必要である場合に個別に指定する。本発明に関して、医療電気リード線43に結合された皮下電極45が、図2に示される1本または複数本のリード線または電極に追加されるか、またはその代わりに用いられてもよい。皮下電極45を利用する場合、適切な除細動(ディフィブリレーション)コイル47が適当な高電圧回路部に結合され、タイミングが取られた除細動パルスを送出することができる。コイル電極53がRVリード線32の一部に結合されて示されるが、このような電極は、図2に示す任意のリード線の他の部分、例えばLV電極57に結合されてよい。コイル電極53、皮下電極45、または他のタイプの適当な電極構成は、高電圧回路部のほかに低電圧ペーシング/検知回路部に電気的に結合できる。既知のように、このような電極は心臓内、心臓の周囲、および心臓上の様々な位置に設けることができる。
【0096】
図2にはまた、RVセンサ55およびLVセンサ59が示され、これらは、当該技術において既知の様々なセンサの1つまたは複数を含む。好ましくは、RVセンサ55は絶対圧センサを含むが、他の圧力センサを利用することもできる。さらに、RVセンサ55は、加速度計、インピーダンス電極、酸素飽和度センサ、pHセンサ等を含むことができる。さらに、リード線の各々は、心収縮期および拡張期圧力を生成するメカニカルセンサ、ならびにRA、LA、RVおよびLVの拡張および収縮の容積測定値を生成する離間した一連のインピーダンス検知リード線を備えることができる。
【0097】
当然ながら、このようなセンサは、生体適合性があり、長期使用のために信頼があるようにされなければならない。NES治療を送出する本発明の実施形態に関して、少なくとも1つの電極の好ましい位置は、隣接の交感神経に非常に近接した冠状静脈系内である。さらに、図2に示すセンサ11などの1つまたは複数のセンサは、IMD14のハウジング20内またはハウジング20上に位置してよい。
【0098】
図3Aは、治療の送出および/または生理的入力信号の処理を可能にする患者の体10に埋め込まれた、例示的な多腔モニタ/センサ(埋め込み可能医療デバイス:IMD)100のシステムアーキテクチャを示す。通常の多腔モニタ/センサ100は、タイプおよびそのタイプに内蔵される機能特徴に応じて精巧さおよび複雑さが変わる、マイクロコンピュータベースの制御およびタイミングシステム102を中心に構成される。マイクロコンピュータベースの多腔モニタ/センサの制御およびタイミングシステム102の機能は、ファームウェア、ならびにRAMおよびROM(PROMおよびEEPROMを含む)に記憶され、通常のマイクロプロセッサコアアーキテクチャのCPU、ALU等を使用して実行される、プログラムされたソフトウェアアルゴリズムによって制御される。当然ながら、このようなファームウェアおよびソフトウェアはin situ(例えばin vivo)で変更することができ、動作特性を特定の状況または患者に合わせることができる。医師または臨床医は、このようなアルゴリズムの検出または応答の変化を引き起こすであろう1つまたは複数のパラメータを変更することができる。多くの場合に、所望のソフトウェアルーチンが有利に変化するように離散的な値を変更することができるが、時には、当該技術において既知のように、動作ソフトウェアの全く新しいセットを、動作ソフトウェアの今あるセットの代わりに用いることもできる。マイクロコンピュータベースの多腔モニタ/センサ制御およびタイミングシステム102はまた、ウォッチドッグ回路、DMAコントローラ、ブロックムーバ/リーダ、CRC計算器、および当該技術において既知の方式の経路すなわちツリーにおけるオンチップデータバス、アドレスバス、電力線、クロック線および制御信号線により連結された、他の特定の論理回路部を含んでもよい。また、多腔モニタ/センサ100の制御およびタイミングは、プログラムされたマイクロコンピュータではなく専用の回路ハードウェアまたは状態マシンロジックにより達成し得ることが理解されるであろう。
【0099】
また、多腔モニタ/センサ100は通常、患者の心腔の特定部位に位置するセンサおよびペーシング/検知電極からの信号を受け取り、かつ/または心不全パラメータを導出するPESP刺激またはペーシング治療を心腔に送出する、患者インタフェース回路部104を含む。したがって、患者インタフェース回路部104は、ペーシングおよび他の刺激治療を任意選択で含むPESP刺激送出システム106と、センサによる血圧および容積信号出力を処理する生理的入力信号処理回路108とを備える。本発明の考えられる用途を説明するために、治療送出システム106および入力信号処理回路108と、RA、LA、RV、およびLVに作用するように位置するペーシング/検知電極のセットとの間の電気的接続を形成するリード線接続部のセットを示す。図3Aに示すように、化学/代謝センサ入力および/またはメカニカルセンサ入力が入力信号処理回路108に供給される。図2に関して述べたように、本発明を実施する際に、各種のこのようなセンサを用いることができる。
【0100】
バッテリは、多腔モニタ/センサ100の回路部を含む多腔モニタ/センサオペレーティングシステムを駆動し、かつ物質送出多腔モニタ/センサの任意の電気機械デバイス(例えばバルブ、ポンプ等)を駆動し、またはICDショック発生器、心臓ペーシングパルス発生器または他の電気刺激発生器の電気刺激エネルギーを供給する電気エネルギー源を提供する。通常のエネルギー源は、パワーオンリセット機能を有する電源/POR回路126に結合したエネルギー密度の高い低電圧バッテリ136である。電源/POR回路126は、1つまたは複数の低電圧電力Vlo、POR信号、1つまたは複数のVREF源、電流源、選択的交換指標(ERI)信号、および(ICDの場合)高電圧電力Vhiを、治療送出システム106に供給する。
【0101】
本発明によるNESまたは心臓除細動治療を図3Aの例示的な回路で実施するために、治療送出システム106は適切なNESおよび高電圧回路部をそれぞれ利用する必要がある。NES治療送出電極が心臓から遠く離れて位置する場合、NES治療の送出は、心周期とは独立して(例えば、おおよそ10ミリ秒〜約10秒間で周期的に)起こる可能性がある。数多くの異なるタイプのパルスをNES治療に用いることができるが、約0.1〜約10ミリ秒の持続期間である1つまたは複数のパルスが、所望の結果をもたらすことが示された。様々な電極構成(例えば、1個または数個のディスクリート電極の間)を使用して、効果的なNES治療を送出することができる。また、標準的な先端電極、リング電極、コイル電極、円筒電極、および皮下電極を利用して、NES治療を効果的に送出することができる。図面には具体的に示さないが、適当な外部回路部を、表面電極パッチ、パッドまたはパドル、ならびに心膜(pericardial)電極の使用を含むNES治療送出に適合することができる。特に、心嚢内に位置する1つまたは複数の電極が、交感神経を刺激するように適切に位置決めされる。
【0102】
ほぼ全ての現行の電子多腔モニタ/センサ回路部は、圧電結晶132およびシステムクロック122により供給されるクロック信号CLKを必要とするクロック駆動式CMOSデジタル論理IC、ならびにICと共に1つまたは複数のサブストレートすなわちプリント回路板に取り付けられるディスクリート部品(例えば、インダクタ、コンデンサ、変圧器、高電圧保護ダイオード等)を使用する。図3Aにおいて、システムクロック122により生成された各CLK信号は、クロックツリーを介して適用可能なクロック駆動式ロジックの全てにルーティングされる。システムクロック122は、1つまたは複数の固定周波数CLK信号を供給する。このCLK信号は、システムタイミングおよび制御機能のために、またテレメトリI/O回路124におけるアップリンクテレメトリ信号送信のフォーマット時に、システムのバッテリ動作電圧範囲にわたってバッテリ電圧とは独立している。
【0103】
RAMレジスタを使用して、検知された心臓活動から編集したデータ、および/または、ダウンリンクテレメトリ送信を介した検索または問合せ命令を受け取った際のアップリンクテレメトリ送信のための、デバイスの動作履歴または検知された生理的パラメータに関するデータを記憶することができる。データ記憶装置をトリガするための基準は、ダウンリンクテレメトリ送信された命令およびパラメータ値を介してプログラム入力されてもよい。データ記憶装置は、周期的にか、あるいは特定のプログラム入力された事象検出基準が満たされる際に、生理的入力信号処理回路108内の検出ロジックによりトリガされる。場合によっては、多腔モニタ/センサ100は磁界感知スイッチ130を含む。この磁界感知スイッチ130は、磁界に応答して閉じ、閉じることによって、磁界スイッチ回路が、制御およびタイミングシステム102に対してスイッチ閉(SC)信号を発し、制御およびタイミングシステム102は電磁モードで応答する。例えば、患者は磁石116を装備しており、磁石は、所定の症状を感じると、皮下に埋め込まれた多腔モニタ/センサ100の上にかざされて、スイッチ130が閉じ、制御およびタイミングシステムが治療を送出しかつ/または生理的エピソードデータを記憶するように促すことができる。いずれの場合も、事象関連データ(例えば、日付および時間)を、後の問合せセッションにおけるアップリンクテレメトリのために周期的に集められたかまたは患者により始動された、記憶された生理的データと共に記憶することができる。
【0104】
多腔モニタ/センサ100において、アップリンクおよびダウンリンクテレメトリ機能が設けられており、遠隔に位置する外部医療デバイス、または患者の体の上のより近位の医療デバイス、または図2および図3Aに関して上述した(また図3Bについて後述する)ように、患者の体内の他の多腔モニタ/センサとの通信が可能となる。上述したタイプの記憶された生理的データならびにリアルタイムで生成された生理的データおよび非生理的データが、ダウンリンクテレメトリ送信された問合せコマンドに応答して、アップリンクRFテレメトリにより、多腔モニタ/センサ100から外部プログラマまたは他の医療デバイス26に送信される。リアルタイムの生理的データは通常、リアルタイムでサンプリングされた信号レベル、例えば心臓内心電図の振幅値、およびセンサ出力信号を含む。非生理的患者データは通常、その時プログラムされたデバイス動作モードおよびパラメータ値、バッテリ状態、デバイスID、患者ID、埋め込んだ日付、デバイスのプログラム履歴、リアルタイム事象マーカ等を含む。埋め込み可能ペースメーカおよびIDの状況において、このような患者データは、プログラムされた検知増幅器の感度、ペーシングまたはカディオバージョンパルスの振幅、エネルギー、およびパルス幅、ペーシングまたはカディオバージョンリード線インピーダンス、およびデバイスの性能に関する蓄積された統計量、例えば不整脈エピソードおよび与えた治療に関するデータを含む。このように、多腔モニタ/センサは、このような様々なリアルタイムのまたは記憶された、生理的または非生理的データを発生し、このような発生されたデータは、本明細書では一括して「患者データ」と呼ばれる。
【0105】
したがって、生理的入力信号処理回路108は、検知事象を増幅し、処理し、また場合によっては電気検知信号またはセンサ出力信号の特徴から検知事象を検出する、少なくとも1つの電気信号増幅回路を含む。二腔または多部位または多腔監視および/またはペーシング機能を提供する多腔モニタ/センサにおける生理的入力信号処理回路108は、心腔に関して位置する検知電極からの心信号を検知および処理する、複数の心臓信号検知チャネルを含む。このようなチャネルのそれぞれは通常、特定の心臓事象を検出する検知増幅器回路と、EGM信号を制御およびタイミングシステム102に供給してサンプリングし、デジタル化し、記憶またはアップリンク送信する、EGM増幅器回路とを含む。心房および心室検知増幅器は、P波またはR波の発生をそれぞれ検出し、A SENSEまたはV SENSE事象信号を制御およびタイミングシステム102に供給する、信号処理ステージを含む。タイミングおよび制御システム102は、その特定のオペレーティングシステムに従って応答して、適切であれば、ペーシング治療を送出または変更し、あるいはアップリンクテレメトリ送信のためにデータを蓄積し、または当該技術において既知の様々な方法でMarker Channel(登録商標)信号を供給する。
【0106】
さらに、入力信号処理回路108は、少なくとも1つの生理的センサ信号処理チャネルを含む。この生理的センサ信号処理チャネルは、心腔または体内の他の場所に関して位置する生理的センサからの、センサ導出信号を検知および処理する。
【0107】
次に図3Bを参照すると、本発明と共に使用する別のシステムアーキテクチャが示される。図3Bは、上述のシステムおよび方法を組み込むことで治療を送出するのに利用することができる例示的なシステムである。特に、図示のシステムは、各心腔内に位置する1本または複数本のリード線を用いてEGM信号などの電気信号を検知する、検知増幅器534を含む。これらの信号を用いて、心房および心室脱分極およびQ−Tの長さを求めることができ、それによりNESおよびPESPの送出が安全な方法で行われる。1つまたは複数の生理的または血行力学的信号が、上述したようなセンサを用いて検出することができる。ライン505上に供給されるように一括して示されるこれらのさらなる信号を用いて心拍出量を求め、それにより治療が開始、終了、および/または最適化することができる。
【0108】
図3Bのシステムはさらに、出力ライン500および502上のペーシングパルス送出を制御するタイマ/コントローラを含む。この回路は、単独でまたはマイクロプロセッサ524と共に、間隔の長さ、パルス振幅、パルス長、およびNESおよびPESPパルスに関連する他の波形属性を制御する。出力回路548は、CARD(カーディオバージョン)/DEFIB(ディフィブリレーション)制御回路554の制御のもとで、除細動ショックなどの高電圧刺激を送出する。
【0109】
これらの電圧および信号の従来の相互接続の全てを図3Aまたは図3Bに示してはおらず、当業者には既知であるように、図示の電子回路部における多くの他の変形形態が可能である。
【0110】
図4は、1つの心腔に関連する1つのペーシング、検知、およびパラメータ測定チャネルを概略的に示す。一対のペーシング/検知電極140、142、センサ160(例えば、圧力、酸素飽和度、流量、pH等)、および複数(例えば、4つ)のインピーダンス測定電極170、172、174、176が、心腔に作用するように位置する。一対のペーシング/検知電極140、142は心腔に作用するように位置し、それぞれリード線導体144および146を経て、入力信号処理回路108内に位置する検知増幅器148の入力に結合される。検知増幅器148は、制御およびタイミングシステム102により供給される検知イネーブル信号の存在によって、選択的に使用可能にされる。検知増幅器148は、心不全パラメータの測定値を参照して後述するように、ペーシングが使用可能かまたは使用不能にされるときに、複数回の所定期間の間使用可能にされる。ペーシングまたはPESPパルス列が送出されると、制御およびタイミングシステム102によりブランキング信号が供給されて、当該技術において既知の方法で、短いブランキング期間の間、リード線導体144および146から検知増幅器入力を切り離す。検知増幅器148が使用可能であり、ブランキングされていない場合、検知増幅器は、心腔における心臓の電気信号(EGMと呼ばれる)を検知する。検知増幅器は、ペーシング技術において既知の方法で、EGM(通常、心腔がRAまたはLAである場合はP波、心腔がRVまたはLVである場合はR波)の特徴に基づいて、心周期を開始する心腔の収縮を示す検知事象信号を供給する。制御およびタイミングシステムは、ペーシング技術において既知の方法で、心腔のEIをタイムアウトする補充間隔(EI)タイマを再始動することにより、非不応性検知事象に応答する。
【0111】
一対のペーシング/検知電極140、142はまた、それぞれリード線導体144および146を経てパルス発生器150の出力に結合される。PESP/ペーシング送出システム106内のパルス発生器150は、ペーシング技術において既知の方法で、制御およびタイミングシステム102内のEIタイマのタイムアウト時に発生されるPESP/PACEトリガ信号に応答して、電極140、142にペーシングパルスを選択的に供給する。または、パルス発生器150は、先に参照した米国特許第5,213,098号に記載される方法で、制御およびタイミングシステム102内のESIタイマのタイムアウト時に発生されるPESP/PACEトリガ信号に応答して、PESPパルスまたはパルス列を電極140、142に選択的に供給し、より強い力により心腔が収縮する。この増大した力は、ESIの持続期間に依存する。
【0112】
センサ160および/または他の生理的センサが、リード線導体164のセットを介して入力信号処理回路108内のセンサ電源および信号プロセッサ162に結合される。リード線導体164は、センサ160に電力を供給し、サンプリングされた血圧Pをセンサ160からセンサ電源および信号プロセッサ162に供給する。センサ電源および信号プロセッサ162は、制御およびタイミングシステム102からの検知イネーブル信号によって使用可能にされると、心腔内に位置するセンサ160の変換器表面に衝突する血圧をサンプリングする。一例として、後述するように記憶および処理するために、絶対圧力P、生成圧力DP、および圧力変化率dP/dtサンプル値が、センサ電源および信号プロセッサ162により、または制御およびタイミングシステム102により生成されることができる。センサ160ならびにセンサ電源および信号プロセッサ162は、本譲受人に譲渡された米国特許第5,564,434号に開示される形態を取ることができる。
【0113】
インピーダンス電極170、172、174および176のセットは、導体178のセットにより結合され、先に参照した米国特許第5,417,717号に記載するタイプのリード線として形成され、このリード線は、インピーダンス電源および信号プロセッサ180に結合される。インピーダンスに基づく心臓パラメータの測定値(例えば、一回拍出量)が、上で参照した米国特許第5,417,717号に記載されるように当該技術において既知である。この米国特許第5,417,717号は、心腔内に位置する、離間した複数対の表面電極を有するインピーダンスリード線を開示する。離間した電極はまた、心臓血管(例えば冠状静脈洞および大静脈)内に収容されるインピーダンスリード線に沿って配設されるか、または心腔周囲の心外膜に取り付けられることができる。インピーダンスリード線は、ペーシング/検知および/またはリード線を保持する圧力センサと組み合わせてもよい。
【0114】
心腔容積Vの測度は、制御およびタイミングシステム102により供給されるインピーダンス測度イネーブル信号によってインピーダンス電源および信号プロセッサ180が使用可能にされると、インピーダンス電極170、172、174および176のセットによって供給される。定電流搬送信号が一対のインピーダンス電極の間に印加され、信号の電圧が、インピーダンス電極間の距離が変わるにつれ変化する、血液および心筋にわたるインピーダンスによって変調される。したがって、選択されたインピーダンス電極170、172、174および176の対の間のインピーダンス測定値からの心腔容積V信号の計算は、心壁の移動、または心腔から出て、その後心腔に入る血液の一回換気流に起因して、離間した電極の対をそれぞれ近づけかつ離す心腔の収縮および弛緩の際に行われる。生信号は復調され、デジタル化され、かつ処理されて、補外したインピーダンス値が取得される。この値を除算して、血液の比抵抗を離間した電極の対間の距離の二乗倍した積にすると、結果は心腔内の瞬時の心腔容積Vの測度となる。
【0115】
本発明によれば、IMDは、EGM信号を用いる心不全状態を示すパラメータ、絶対血圧Pおよび/またはdP/dt、酸素飽和度、流量、pH等の測度、および心腔容積Vの測度からなる群を、1つまたは複数の心周期にわたって求める。
【0116】
心不全状態を示すRF、MR、EES、およびτパラメータを導出するステップは、‘631号特許の開示においてより詳細に説明され、本明細書では繰り返さない。予備知識のない者のために以下の説明を提示するが、さらなる詳細が必要である場合、‘631号特許の開示を参照されたい。これらのパラメータは、患者の姿勢および活動に関係なく毎日周期的に求められる。しかしながら、患者は、特定の活動または動作を正確な時刻に行い、IMDが検出する磁石または遠隔システムプログラマユニット(図示せず)を用いることにより、パラメータの測定を同時に開始するように医師から助言を受けることができる。患者の心拍数が、プログラムされた下限心拍数および上限心拍数の間の正常洞範囲内であり、心調律が比較的安定である場合、特定のパラメータが単に測定され、特定のパラメータデータが単に記憶される。パラメータデータおよび関連データ(例えば、心拍数および患者の活動レベル)は、日時スタンプを押され、従来のテレメトリシステムを用いて検索するためにIMDメモリに記憶される。所定期間にわたる記憶されたデータの漸次の変化により、心臓の心不全状況における変化の程度の測度が提供される。このようなパラメータデータおよび関連データは、読み出され、再検討され、解析されること等ができ、パラメータデータは、その時の患者の状態、患者の病歴、患者または医師の選好等に基づいて変更可能である。
【0117】
図5を参照すると、このタイミング図は、検知またはペーシングされた事象からのタイミングが取られた間隔に関連する心腔への刺激ならびに代替的なパルス波形のPESP/NES刺激の送出のタイミングを示す。本発明の一態様によると、トレース(e)に示す治療刺激の遅延は、検知またはペーシングされた事象(例えば、図示のV事象)からタイムアウトされ、NESの場合、この遅延は検知またはペーシングされた事象から持続する心臓不応期よりも短い。遅延のタイムアウト後に開始する、図示の治療送出間隔トレース(f)において、刺激パルス列が心房および/または心室に送出され、そのため、NES治療を送出する場合、パルス列の少なくとも初期パルス(複数可)は、不応期が終了する部分内にある。PESP治療を送出するためのパルスは、心周期の非不応期に送出されると、実際にしきい値を超える(supra-threshold)、すなわち、心臓を脱分極するのに十分なエネルギーがあることが意図され、その結果、不応期外のPESPパルスの少なくとも1つによって心臓が捕捉される。不応期中に送出される初期パルスはまた、心臓に力を与えることができる。説明を簡単にするために、トレース(f)〜(j)は時間の長さが引き延ばされており、それらが引き起こす心臓の脱分極はトレース(a)には示されていない。各治療パルスにおける不応間隔パルスおよびPESPパルスの振幅および個数、ならびにパルス間の間隔もまた、図示のトレース(g)〜(j)とは異なり得る。
【0118】
トレース(b)において検出された心室検知またはペーシング事象もまた、トレース(c)の補充間隔のタイムアウトをトリガする。この補充間隔は、システムの動作モードに応じて、後続の心房または心室事象の検知によって終了することができる。図5の最初に示されるシーケンスは、トレース(c)の補充間隔、トレース(d)の不応期、およびトレース(e)および(f)の治療遅延および送出間隔の完全なタイムアウトを示す。治療遅延および治療送出間隔は、内因性の心室および/または心房の検知された事象またはペーシングされた事象間の間隔を測定し平均することにより導出される、内因性のV−VまたはV−A補充間隔に応じて導出されることができる。治療遅延はまた、Q−T間隔の測定値からも求めることができる。図示のように、トレース(e)の治療遅延は、QRS群が終了するまで、またはT波が終了する付近で生じる心臓受攻期の開始よりも十分に前のV事象の約40〜60ミリ秒後まで、治療パルス列の送出を遅延させる。治療送出間隔は、以前に導出されたV−VまたはV−A補充間隔の終了よりも十分に前にタイムアウトするようにタイミングが取られるが、トレース(f)〜(j)のパルス列の説明を簡単にするために時間が引き延ばされている。
【0119】
治療刺激エネルギーは、バーストの各パルス間のパルス分離間隔により分離されるX個の一定または可変エネルギー刺激パルスのバーストの形態で送出される。パルスの全ては、トレース(i)の波形#3に示すのと同じ振幅およびエネルギーを有してもよい。または、パルス列の立ち上がりおよび/または立ち下がりパルスは、トレース(g)および(h)に示す波形#1および#2と同様の傾斜した振幅を有することができる。トレース(g)および(h)において、バーストのパルスのサブセットの、前縁部上昇振幅が、初期振幅から最大振幅に増加するように示されている。トレース(g)において、バーストのパルスの別のサブセットの、後縁部下降振幅が、最大振幅から最終振幅まで減少するように示されている。
【0120】
別法として、不応期中のパルスの初期セットは、トレース(j)に図示する波形#4によって示されるように、より大きなパルス振幅または広いパルス幅を有することができる。不応期中に送出される高エネルギーパルスは、後続の心周期の増強作用を高めることができる。トレース(j)はまた、パルス列の代替的なパルス数およびパルス間隔を示し、この実施形態は波形#1〜3のパルス数およびパルス間隔を用いてもよいことが理解されるであろう。
【0121】
さらに、T波が終了する付近の心臓の受攻期において(特に、不応期中に高エネルギーパルスが送出される場合)、いかなる治療パルスの送出も回避することが望ましい場合がある。トレース(j)はまた、心臓の受攻期においていかなるパルスの送出も避けるための、不応期中に送出される高エネルギーパルスと、低エネルギーPESPパルスとの間の受攻期遅延を示す。不応期の後期に送出されるパルスのパルスエネルギーを小さくすることも可能である。
【0122】
治療送出機能は、好ましくは、従来のペーシング治療および動作モード、ならびにカーディオバージョン・ディフィブリレーション機能を含むことができるシステムに実装されるか、または、図5に示す検知されたPQRST群の間の心筋細胞の増強作用をもたらすパルス治療を単に供給する独立型システムとして実施される。
【0123】
本発明による心房協調ペーシングの詳細な説明
図6は、慢性HFの外来モデルでの、急速洞調律(rapid sinus rhythm)(100bpm)を示す未処置慢性HF機能不全を示す。図6では、通常の心房電位図および心室電位図(AEGMおよびVEGM)が示されており、LV圧(LVP)から得られる収縮機能の指数(LV dP/dtmax)の測定値が示される。図6では、LV dP/dtmaxの値は、約900mmHg/sと示される。
【0124】
図7は、本発明によるPESP治療および心房協調ペーシング(ACP)で処置されたHF機能不全を示す。図7では、慢性HFを有する被験者が、心室PESP治療(Vtherapyと記されたチャネル)および心房協調ペーシングACP(ACPと記されたチャネル)で連続的に処置される。結果として、持続的な収縮増強を伴う低いレート(約50bpm)の安定した調律が得られる(LV dP/dtmaxは、約1800mmHg/sに改善される)。内因性の心房レートが低下した場合、心周期を開始するために心房ペース事象が発生することがあることがわかる(「AAIレートサポート」(図7の右側)と記された垂直線と一致したApace事象を参照)。PESP治療およびACP治療の1つの結果は、心周期のうち内因性のAV(房室)伝導および自然な心室脱分極を呈する部分に生じる、メカニカル機能の向上を伴うより遅い調律である。この治療法は、心調律を強制的に減速させる。このタイプの刺激治療は、SVT(上室頻脈性不整脈)に罹患した正常なAV伝導を有するHF患者に適しているとも思われ、これに関しては図36(下記)に関してさらに記載および説明する。
【0125】
図8を参照すると、PESP治療(ACPなし)の間の調律の不規則性が示される。図8の左側部分では、HF機能不全が、PESP治療および2:1のAVブロックを伴う120bpmでのAAIペーシングからなるACPの形態で処置される。図8の右側部分では、HF機能不全は、AAIペーシングなしのPESP治療で処置される。収縮性は改善されたままである(約1900mmHg/s)が、不応性および内因性の間隔の変動により、通常は、間欠的な1:1および2:1のAV伝導がもたらされる(図8の右側を参照)。心臓組織には、良好な血液充満、冠動脈血流、およびイオン流束安定化に十分な時間が、心拡張期に確保されない。結果として、末梢脈拍数は可変であり、メカニカルな増強はあまり一貫しておらず、心臓が不整脈および代謝不耐性になる傾向が増す。
【0126】
図9A〜図9Dは、ICDまたはペースメーカーなどの埋め込み可能医療デバイスの観点から見た、心房協調ペーシング(ACP)の概略図である。図9Aでは、内因性の心房脱分極それぞれ(心房検知事象に関してAsで示す)が、心室に伝わり、内的に(intrinsicly)伝わった心室脱分極(心室検知事象に関してVsと記す)をもたらす正常洞調律が示される。内因性心房レートが遅すぎる場合、心房ペーシング(Apで示す)が、図示の心房検知事象の代わりとなる可能性がある。図9Bに関して、心室刺激治療パルス(Vthで示す、PESP単独またはPESPとNESとの組み合わせのいずれか)の導入が生じ、心室は2回目の不応状態になる。結果として、1つおきに心房検知事象がブロックされる2:1の伝導パターンが生ずる可能性がある。このパターンは、不安定であることが多く(上記の図8を参照)、遅すぎる(徐脈)かまたは速すぎる(頻脈)有効心室レートがもたらされる可能性がある。
【0127】
ACPの単純な形態を示す図9Cに関して、心房は、内因性レートよりも速いレートでペーシングされ、2:1のブロックが調整される。この手法は、図9Bに示す場合の結果が遅すぎるかまたは不規則すぎる有効心室レートであった場合には役立つが、患者の生理機能が心拍数を設定できるようにはせず、心房を激しくペーシングするため、過剰な心拍数がもたらされる。
【0128】
ACPの好ましい実施態様を示す図9Dに関して、心房検知事象後の、Vthパルス(複数可)と同じ頃に、協調のために心房がペーシングされる(「Acp」で示す)。ACPペース事象は、心室に伝わらないが、洞結節をリセットする。これにより、次の心房検知事象は、生理的な要求に支配された時点で生じる。したがって、結果として「増強された(potentiated)」拍動が、十分な充満時間、より良好な冠動脈血流、および筋細胞イオン流束が正常化するのにより長い時間によって、有利にもたらされる。
【0129】
当然ながら、当該技術分野において既知のように、心房ペーシングは、内因性心房レートが遅すぎるほど低下した場合に用いられて(上記の図7を参照)、上述の利点を維持することができる。さらに、AVまたは心室伝導が弱められた場合、適当なAV間隔での心室ペーシングも用いることができる。これは、一部位または複数部位(例えば、両室)ペーシングの形態を取ることができる。
【0130】
AEDとともに用いられるものなどのTCPまたは経胸腔ペーシングの場合、心房検知は容易に利用可能ではない(心房ペーシングも同様である)が、図9Dに示すACPは依然として実行することができる。このようなACPを行うために、検知されたR波(またはペーシングパルス)からトリガされたTCP治療パルスは、心房および心室の両方で同時に脱分極を誘導し、本発明によるPESPおよびACPを達成する。
【0131】
当該技術分野において既知のように、ACPパルスのタイミングおよび送出は、図3Aおよび図3Bのシステム図に示すようなマイクロプロセッサ制御の下で行われることが好ましい。また、このようなタイミングパラメータはプログラム可能であり、臨床医により調整または修正され得る。
【0132】
図6〜図9全体を参照すると、Vthで示す心室治療は、PESPおよび任意選択で非興奮性神経刺激(NES)を含むことを理解するべきである。Vthパルス(複数可)のタイミングおよび振幅の決定因子は、先に’631号特許の開示および本発明の開示の他の箇所に述べられている。前のVsまたはVp事象からの間隔は、所望の効果(興奮性または非興奮性)および増強(PESP)の振幅を得るために選択される。さらに、心機能の安全な生理的増強を実施するためのACPタイミングの選択も重要である。Vth治療パルスが安全ルールまたは他の理由により拒否されるか、または捕捉しない場合、ACPパルスは保留される。興奮性心室治療が中断された場合、ACPも中断される。これが行われなければ、ある形態のペースメーカー介在頻脈(Pacemaker Mediated Tachycardia)(PMT)が生じる。増強がACPパルスの脱分極の伝導に起因する傾向がない限り、ACPの目的は、心房脱分極およびAVブロックを確保することである。これらの考慮事項により、ACPタイミングの範囲が得られ、これについては心周期ごとに送出される治療の場合に関して説明する。
【0133】
例えば、Xが増強されたVs(またはVp)から予定されるACPの送出までの時間を表すものとする。同様に、Yが増強されたVs(またはVp)から予定されるVthの送出までの時間を表すものとする。Yの値の計算のこれらのルールは、’631号特許の開示と、フィードバック制御、安全ロックアウトルール、および不応間隔の指示および決定に関する論考および説明に関する本特許開示とにおいて、説明されている。Xの値は、A−A不応期(約200〜300ミリ秒である場合が多い)よりも大きい(すなわち長い)必要がある。Xの値は、生じる脱分極が不応状態の間にAV結節または心室を通過するように選択される必要もある。RVがV−V不応期を示し、RAがA−A不応期を示すものとする。さらに、AVがAV伝導遅延(ApaceからVsense事象までの時間から、検知事態に関連するいかなる遅延も除いたもの)を示すものとする。この場合、Xは以下の不等式対を満たさねばならない。
【0134】
X>RA および Y−AV<X<Y−AV+RV
経験により、両方の不等式を満たし、所望の効果を得るために、Xの値が150〜200ミリ秒の範囲であることがわかっている。これは一般に、興奮性Vthパルスの直前にACPを配置する。読者は、ACPはVthと同じ安全拒否ルールの下で行われる(本特許開示の安全ロックアウトルールの項に関して説明される)が、さらなる課題に直面することに留意するべきである。すなわち、Vthパルス振幅(複数可)がしきい値以下であるか、または完全に不応期内にある場合、増強は得られない。不整脈の危険性は本質的にないが、被験者は、PESP治療の恩恵を受けることができない。しかしながら、ACPがこの設定でしきい値を上回って送出された場合、これが心室に伝わることにより、心室レートが上昇する。その結果生じるVsenseは、別のACPを開始し、X+AVの周期長を有するPMTを確立する。したがって、本発明は、1回の拍動後にこのタイプのPMTを終了させるさらなるACPロックアウトルールを包含する。このロックアウトルールが要求することは、前の心周期(VsenseからVsenseまで)にわたって、または十分な間隔にわたって心房事象(検知またはペーシング)がない場合、ACPが次のN回の心周期の間、選択的に禁止され、期外収縮の捕捉の証拠が求められることである。
【0135】
非興奮性神経刺激の詳細な説明
次に、図10を参照すると、心臓の交感神経支配および非興奮性刺激(NES)に関する電極の位置が、見やすいようにいくつかの部分を取り出して、部分分解斜視図で示されている。図10の重要な要素は、以下のように特定される。すなわち、脊髄、頚節および胸節神経(cervical and thoracic segmental nerves)(文字「A」で集合的に示す)、頸部および胸部交感神経幹神経節(cervical and thoracic chain ganglia)(文字「B」で示される、胸部の後の椎体付近の上下)、胸部および縦隔を通って大血管および心臓10に向かって走り、鎖骨下わなを含む自律神経(文字「C」で示す)、冠血管付近を走っていることが多い種々の心臓神経(文字「D」で示す)、および心筋の心臓神経(文字「E」で示す)。電極(図2に示すようなもの)は、これらの交感神経に電気刺激電流を導き、他の神経または器官の痛みを伴う刺激を回避し、心臓10のペーシングを回避するように、これらの経路に沿ったいかなる場所にも位置決めすることができる。あるいは、筐体電極などの皮下電極または他の皮下パッチ電極を用いて領域A〜Eを広範囲に刺激してもよく、このような電極は、心臓性ショックおよび電気メカニカル解離(EMD)、または無脈性電気活動(PEA)を含む重篤な機能不全のために取っておくことができる。さらに、本発明のこの態様により、関連の交感神経組織に電流を導くために、皮下パッチ、パッド電極、またはパドル電極を同様に用いてもよい。
【0136】
次に、神経刺激および心臓不応期を示す図11を参照すると、心筋の刺激しきい値曲線および非興奮性神経刺激用の電極位置が、刺激パルスタイミングを決定することがわかる。刺激が捕捉を引き起こし得る心臓の付近では、NESパルスが不応期の間に送出され、および/またはしきい値以下に(すなわち、しきい値の大きさ未満に)留まる。心臓組織から離れた場所では、刺激パルスは異なる振幅を有してもよく、より広い間隔であってもよい。
【0137】
図12は、NES治療送出の一例を示す図である。この図は、電流量を増加させて(それぞれ1、2.5、および5mA)心臓付近の交感神経を刺激した効果を示す。不応期の間のこのようなNES刺激により、大動脈圧(AoP)、収縮性(LV dP/dt)、心拍数、および心拍出量の適用量による増加が生ずる。応答の大きさは、NESパルス列のパルスの持続時間および/または数を調整することにより、同様に制御することができる。NES治療のタイミングおよび刺激パラメータは、マイクロプロセッサまたはハードウェアにより制御され、図3Aおよび図3Bのシステム図に示すような、アルゴリズムまたは臨床医により決められる入力値でプログラム可能であることが好ましい。
【0138】
安全ロックアウトルールの詳細な説明
図13A〜図13Cは、頻脈事象の間のPESP刺激の結果を示す。絶対に必要なわけではないが、頻脈の間は興奮性PESP刺激治療の送出を中止することが好ましいことを、本発明者等は発見した。図13Aに示す状況では、メカニカルな心室レートは低く(60bpm)、増強の振幅は大きく、拡張期に心室充満に十分な時間がある。図13Bの状況では、心拍数は事実上2倍にされており(すなわち120bpmまで上昇されており)、増強の振幅は大きいままであるが、拡張期の時間は短くなっている。図13Cに示す状況では、心拍数はさらに上昇し(すなわち、約150bpm)、期外収縮が心周期の拡張期間に著しく侵入している。さらに、このような高い心拍数ではPESP増強が減少する。PESP刺激は、150bpmの頻脈を、メカニカルな交代拍動(mechanical alternans)および300bpmの有効レートを伴う心室性頻脈に変える。この高さの心拍数は、あまり大目には見られず、さらに心臓機能不全および心不全の代償不全の一因になるため、このような有効心拍数の状態にある人ではVTまたはVFが生じやすくなる。
【0139】
次に図14を参照すると、興奮性PESP刺激の適用のための安全ロックアウトルールのフローチャートが示されている。新たな心周期はそれぞれ、VpaceまたはVsenseである心室事象(Vevent)で開始することが理解できる。安全ロックアウトルールは、興奮性PESP刺激を心室に送出する決定に対して、またおそらくはこの周期の間の心房協調ペーシング(ACP)に対して、拒否する機能を有する。前のV−V間隔がしきい値よりも大きい場合、PESPおよび/またはACPパルスがこの周期で使用可能にされる。V−V間隔が短すぎる場合、刺激治療は打ち切られる(aborted)。これにより、刺激治療が内因性の心室性期外収縮(PVC)の不整脈の可能性をさらに高めることを防ぐ。短い連結期での刺激は、特に他の短い間隔のすぐ後に続く場合、極めて催不整脈性であり、当然避けるべきである。安全ロックアウトルールは、洞性頻脈、上室性頻脈(SVT)、心室性頻脈(VT)、または心室性細動(VF)を含む種々の頻脈の間の興奮性治療の適用も防止する。用いられるしきい値は、固定値であってもよく、または他の血行力学的なまたは電位図に基づいたパラメータから導出されてもよく、通常は400〜600ミリ秒である。安全ロックアウトルールは、様々なタイミング方式を用いて動作することができ、タイミング方式は、マイクロプロセッサまたはハードウェアにより制御され、図3Aおよび図3Bのシステム図に示すような、アルゴリズムまたは臨床医により決められる入力値でプログラム可能である。
【0140】
調歩式( start-stop )ルールの詳細な説明
次に図15を参照すると、これは、本発明による刺激治療の開始および終了を制御する上位レベルフローチャートである。治療が現在使用可能ではない場合、臨床医、患者、またはデバイスにより治療が開始され得る。臨床医は、デバイスまたは患者による評価に優先して、患者との相談、心臓機能不全の徴候または症状、あるいは検査結果に基づいて刺激治療を開始することができる。このような方法で開始される場合、治療は、患者またはデバイスにより開始された治療とは異なる持続時間および終了基準を有する可能性がある。同様に、患者は、症状または予想される活動の結果として、デバイスに優先して治療を開始することができる。最後に、デバイスは、事前にプログラムされた日時に基づいて、またはセンサ信号(電位図、血行力学等)、活動センサ信号、および他の生理的なセンサ信号により、治療を自動的に開始することができる。治療は、十分な治療持続時間および十分な利益またはリスクのセンサ評価を含む、臨床医のコマンド、患者の要求、またはデバイスベースの基準により、中断してもよい。
【0141】
図16は、センサ決定式の刺激治療の自動開始のより詳細なフローチャートである。患者から得られる電位図(EGM)センサ信号(現在および最近の両方)に基づいて、デバイスはまず、他の信号データの調査に移る前に、心調律問題を探してそれを治療する。心調律が順調であると思われる場合、圧力および血流等の血行力学センサが用いられる。十分な機能不全および持続時間がある場合、治療が開始される。代謝または他の生理的センサによる重篤度および持続時間の評価、ならびに事前に予定されている日時の基準によっても、本発明による刺激治療を開始することができる。
【0142】
図17は、本発明による刺激治療の停止または終了の拡大図である。頻脈性不整脈が十分なレートまたは持続時間(例えば、所定のレートまたは持続期間のしきい値を超える)で発生する場合、治療は一時中止または完全停止され、不整脈は、抗頻拍ペーシング(ATP)、カーディオバージョン等のような様々な既知の手段のいずれかにより治療される。より正常な調律が回復すると、デバイスは自動治療送出を再び使用可能にしてもしなくてもよい。デバイスは、タイミングおよび振幅等の刺激治療パラメータを再調整してより低い不整脈リスクプロファイルを得て、(刺激治療により被験者にこの不整脈が生じるか、または生じやすくなると仮定して)不整脈リスクの代わりに生理的利益をもたらすこともできる。調律が順調なままである場合、デバイスは、持続時間の基準または血行力学的な改善および持続時間を組み合わせた基準が満たされているか否かを調べる。満たされている場合、治療は再び一時中止されるか、完全停止される。自動治療は、一定期間の後に再び使用可能にされてもよく、使用不能のままであってもよい。短期間の治療を複数回適用することを防ぐために、改善基準は、ヒステリシス様の効果を実施するための開始基準とは異なるものであり得る。治療は、一定の治療適用回数に達すると使用不能にされて、外的オーバーライドの再開を必要としてもよい。
【0143】
次に、頻脈性不整脈の停止および心臓機能不全の治療の開始を示す図18を参照すると、図18は、上述の治療開始ルールのいくつかを示している。図18を参照してわかるように、頻脈性不整脈は、17:46:05頃に終わり、電位図センサ(ここでは表面心電図(ECG))が適正な調律およびレートの存在を確認する。しかしながら、動脈圧(ABP)および左心室圧(LVP)等の血行力学センサが、6秒および12心周期を超えて持続する重篤なレベルの機能不全(例えば、LV dP/dtmax<400mmHg/s)を確認する。結果として、刺激治療を開始する決定は17:46:15頃に起こる。動脈圧、LVP、冠動脈血流、大動脈血流、およびLV dP/dtmaxの即座の応答が、PESP治療パルス(Vtherapy)の適用と同時に見られる。
【0144】
図19には、PESP刺激治療の開始およびそれに対する応答が示されている。前または同時に発生した頻脈性不整脈に必ずしも関連しないHF等の他の状況では、デバイスにより開始される治療を必要とする程度まで心臓機能不全が悪化する場合がある。このような心臓機能不全の発現は、漸進的である場合も突発的である場合もあるが、十分な重篤度および持続時間が確立されると、PESP刺激治療が開始される。ここで示す興奮性PESP治療は、動脈圧(ABP)、冠動脈血流量(CorFlow)、および大動脈血流量(AorFlow)の大いに必要な増大をもたらし、LV dP/dtmaxの値は、約5秒の間にPESP前治療の2倍を超えるものとなる。
【0145】
図20は、持続時間および応答基準に基づいたPESP治療の終了を示す。図20では、終了基準が満たされ、PESP刺激治療が停止される。この場合、洞結節を捕捉およびリセットする心房のみのPESP刺激治療パルス(Ath)からなる刺激治療が、心室に伝わり、自然な伝導により心房および心室のPESPをもたらす。この順序で、患者は良好なRV圧(RVP)およびLV dP/dtmaxを30〜60秒間以上維持しているため、心房のみのPESP刺激治療が停止される。心拍数は上昇し、収縮性は減少するが、心機能は、図18および図19(上述)に示すレベルから極めて著しく回復している。
【0146】
次に、救命PESP刺激治療の劇的な例を示す図21を参照する。図21は、期外収縮後増強刺激治療が、麻酔をされたイヌ被験体において頻脈性不整脈を長時間ペーシングした後の心機能の急速な回復を促進し得ることを示している(また、明らかに実証している)。
【0147】
図21では、「ECG」で示すトレースは表面ECGの記録であり、「ABP」で示すトレースは被験体の大動脈においてカテーテルにより測定された大動脈圧の記録であり、「RVP」で示すトレースは、右心室内で測定された血圧の記録である。「CorFlow」で示すトレースは、冠動脈の血流量の記録であり、「LV dP/dtmax」で示すトレースは、各心周期あたりの左心室圧の第1次導関数の最大値の記録であり、「CO」で示すトレースは、平均大動脈血流量から得られる心拍出量の記録である。図21に示す記録は、6分間の長さのペーシングされた動脈性不整脈のうちの最後の数秒(「End VT」マーカーの前のトレース部分)から開始している。これに続いて、約10秒の正常な洞調律(NSR)があり、無脈性電気活動(PEA)または電気メカニカル解離(EMD)として分類され得る重篤な血行力学的機能不全を伴う。この時間の間、冠動脈血流量および心拍出量は、頻脈性不整脈の間に生じる血流量と比較して明確に増加していない。十分な血流量がないと、心臓は虚血性のままであり、被験体はPEAで死亡する可能性が高い。図21の「PESP治療」と記された水平矢印により示される部分は、PESPペーシング治療が被験体の心臓の右室心尖に送出された期間を示す。この期間の間、測定された全ての圧力および血流量が、最初のペーシング(PESP)刺激の送出に続く一番最初の心周期に関してかなり増大している。これらの値は増加し続け、約1分以内に正常な生理的レベルに回復し始める。PESP治療送出区間の終わりには、心臓を事前灌流するのに十分な冠動脈血流量があり、これにより、心臓はさらに治療をせずに機能を再開することができる。この被験体での自己心拍再開(return of spontaneous circulation)は、いかなる薬理学的またはメカニカルな補助治療または処置も行わずに生じたが、その代わりに、本発明により送出される電気刺激に専ら依存していたことは言うまでもない。
【0148】
このような治療の必要性の認識は、臨床医または自動デバイス(埋め込みまたは外部)、および経皮的に適用されるかまたは心臓上あるいは心臓付近にある電極から適用される刺激治療に依存する。図17の注釈付きバージョンである図22は、持続期間および改善基準、治療送出の停止、およびPESP治療の振幅およびタイミングのより低い不整脈リスクへの調整に関するいくつかの追加情報を含む。
【0149】
調歩式ルールは、図2に示すような様々な方式およびセンサ入力を用いて機能することができ、これら方式およびセンサ入力は、マイクロプロセッサまたはハードウェアにより制御され、図3Aおよび図3Bのシステム図に示すような、アルゴリズムまたは臨床医により決められる入力値でプログラム可能である。
【0150】
不応および非不応間隔の特定の詳細な説明
次に、図23A〜Dを参照すると、これは、データの4つのX−Yプロットからなる複合図であり、興奮性(PESP)および非興奮性刺激(NES)治療の送出に関するこれらデータのプロット間の重要なタイミングシーケンスを示す。相互参照を容易にするために、ラベル付けしていない時間整列された表面の代表的なECG電位図のトレースが、これらの図の一番上に現れている。
【0151】
図23Aでは、PESP興奮性刺激から得られる不整脈リスクおよび血行力学上の利点に関連するタイミングの主要決定因子が示される、刺激強度曲線が示されている。捕捉し、したがってPESP刺激治療からの利益をもたらすために、曲線よりも大きい振幅の刺激パルスが(所与の時点で)必要があることが理解されるであろう。絶対不応期を図23Aに示す。この期間の間、脱分極は生じず、これは心臓付近の電極による非興奮性神経刺激(NES)にとって理想的である。絶対不応期のすぐ外側に生じる「受攻期」と記される期間では、非常に大きい振幅パルスが、反復期外収縮、VT、またはVFを含む不整脈を引き起こし得る。実用的な目的のために、捕捉が2値現象となるように興奮性刺激パルスがしきい値をいくらか上回って送出される。しかしながら、刺激パルス振幅はまた、小さく維持され、その結果、受攻期と同時に起こるようにタイミングが取られる場合でさえも不整脈のリスクが非常に低くなる(比較のために、図23Cの「不整脈誘導リスク曲線」を参照)。文献において既知であるように、期外収縮に続く拍動(期外収縮後拍動)に関して見られる増強の大きさは、期外収縮のタイミングの関数であり、図23Bに示すように捕捉を失う直前に最大になる(「増強応答」と記される曲線)。図23Dに示す実線の曲線(「正味の利益」と記される曲線)は、興奮性PESP刺激からの生理的利益と不整脈リスクとを合わせたものである。不応/非不応の境界よりもわずかに長く(すなわち超えて)刺激することが最も望ましい。破線の正味利益曲線は、非興奮性神経刺激(NES)が不応/非不応の境界の「短い側(short side)」に送出されることが最善であることを示す。本発明は、臨床医または自動デバイスがこの不応/非不応の境界を見つけるのに役立つ方法を含むため、リスクを制御しながら意図する治療の利益を得ることができる。
【0152】
次に図24を参照すると、これは、心室捕捉の電気的および血行力学的検出のグラフである。「1」と記されたトレースは、刺激治療の適用部位から得られる心室電位図(VEGM)である。「2」と記されたトレースは、右心房および右心室の両方の付近にあり、ペーシング治療の適用部位から離れている第2の電位図である。「3」と記されたトレースは表面ECGであり、トレース「4」は動脈圧(ABP)の記録であり、トレース「5」は左心室圧(LVP)の記録であり、トレース「6」は右心室圧(RVP)の記録であり、トレース「7」は心室に適用される刺激治療(Vtherapy)のマーカーチャネル記録である。図24は、心臓増強治療が心臓不応期内にあるか心臓不応期外にあるかを特定する概念の実施形態を示す。
【0153】
トレース7に関して、矢印19は、不応期内にある心室に治療が送出されることを特定し、矢印20は、不応期外にある治療を特定する。トレース1に関して、矢印8は、結果として脱分極の証拠を示さない治療後の電位図のトレースを特定し、これはその治療が不応期にあることを確認し、矢印9は、治療後の心臓脱分極を示す電位図のトレースを特定し、これは捕捉された治療パルスが十分な振幅および持続期間を有し、不応期外にあったことを確認する。
【0154】
同様に、トレース2に関して、矢印10および11は、心室脱分極の存非により心臓不応期内および心臓不応期外のパルスを特定するのに適した、補助電極部位の電位図からの非捕捉および捕捉それぞれを特定する。トレース3に関して、矢印12および13は、表面ECGでの心室脱分極がないかあるかをそれぞれ特定する。
【0155】
本発明の一実施形態は、検出アルゴリズムを電位図信号(信号トレース1〜3を含むがこれらに限定されない)および誘発された脱分極がないかあるかの特定に適用することである。次いで、この情報を用いて、先行する治療が心臓不応期内であったか心臓不応期外であったかを特定する。
【0156】
トレース4に関して、矢印14は、不応期外にある治療に続く心周期の動脈脈圧が上昇した、著しく増大したABPを指す。同様に、LVP(トレース5)およびRVP(トレース6)も、捕捉に続く周期で増大する。このように、図24は、圧力、血流量、加速度、インピーダンスの変化、または治療送出に続くメカニカルな増大の他の好ましい証拠の存在を検出するために用いられる本発明の実施形態を示す。この証拠は、先行する治療が心臓不応期内であったか心臓不応期外であったかを特定するのにも役立つ。
【0157】
トレース5および6に関して、矢印15および17はそれぞれ、心臓不応期中に送出される刺激治療の結果生じる左および右心室圧波形の部分を示す。結果として、治療に続く期外収縮の証拠は見られない。
【0158】
再びトレース5および6に関して、矢印16および18は、心臓不応期外に送出される治療に続く圧力波形である。この治療に続いて期外収縮が見られ得る。本発明の別の実施形態は、限定はしないが右心室、左心室、または動脈の圧力、寸法、加速度を含む、心臓のメカニカルな活動の測定値を作成し、期外収縮の存否を特定する検出アルゴリズムをセンサに適用するようになっている。この情報を用いて、先行する治療が心臓不応期内であったか心臓不応期外であったかを特定する。次いで、誘発されたR波の検出情報を用いて、期外収縮後の増強作用を引き起こすかまたは神経刺激の場合に非興奮性である、あるいはその両方である、刺激治療の送出のタイミングを取るか、または送出をトリガすることができる。
【0159】
図25は、それぞれT波を解析することによって捕捉が行われたか否かを判断するのに用いることができる、3つのトレースVEGM、ECGおよびVtherapyを示す。トレース1は刺激治療の適用部位からの心室電位図(VEGM)であり、トレース2は表面ECGであり、トレース3は適用される刺激治療のマーカーチャネル記録である。トレース1および2に関して、矢印4および7は心室脱分極を示す電位図信号であり、矢印5および8は、得られる心室再分極またはT波を示す信号である。トレース3において、矢印10は、T波の直後に適用される、送出される治療のマーカーに対応する。トレース1および2において、矢印6および9は、適用された治療から生じた脱分極を示す。
【0160】
本発明の治療捕捉態様の別の実施形態は、治療パルスを印加した後に電位図信号から誘発されたT波を特定するのに用いられる。さらなる実施形態は、T波が発生する時間(電位図信号の脱分極および再分極の間)に直接頼り、不応間隔(T波の前)および非不応間隔(T波の後)の間の境界の指数を形成する。次いで、T波検知情報を用いて、期外収縮後の増強作用を引き起こすかまたは神経刺激の場合に非興奮性である、あるいはその両方である、刺激治療の送出のタイミングを取るか、または送出をトリガすることができる。
【0161】
図26は、非興奮性神経刺激(NES)治療を適用する情報を取り込むための応答を示すフローチャートである。心室ペーシングまたは検知事象に続いて、検知回路はアクティブのままであり、スケジューリングされたNES刺激パルス(複数可)が送出されるまで、タイマが遅延をカウントダウンする。この間隔内に内因性事象がない場合、NESパルス(複数可)が送出され、(本明細書で上記したような)電位図またはメカニカルセンサ信号を用いて、捕捉および期外収縮が発生したかを判断する。捕捉が発生した場合、送出時間、刺激振幅、またはパルス数が減少し、プロセスは繰り返される。T遅延の値は通常、10〜120ミリ秒である。上述の電気的およびメカニカルなパラメータのほかに、T遅延および他の刺激パラメータもまた、心拍数または他の生理的センサの観測によって影響を及ぼされる場合がある。
【0162】
図27は、興奮性PESP治療を適用する情報を取り込むための応答を示すフローチャートである。心室ペーシングまたは検知事象に続いて、図3Aおよび図3Bに示すような検知回路はアクティブのままであり、スケジューリングされたPESP刺激パルス(複数可)が送出されるまで、タイマが遅延をカウントダウンする。この間隔内に内因性事象がない場合、パルス(複数可)が送出され、(本明細書で上記したような)電位図またはメカニカルセンサ信号を用いて、捕捉および期外収縮が発生したかを判断する。捕捉が発生しなかった場合、送出時間、刺激振幅、またはパルス数が増大し、プロセスは繰り返される。T遅延の値は通常、200〜300ミリ秒である。上述の電気的およびメカニカルなパラメータのほかに、T遅延および他の刺激パラメータもまた、心拍数または他の生理的センサの観測によって影響を及ぼされる場合がある。このアルゴリズムはまた、NESパルス(複数可)を伴う場合にPESPを生成するように意図されるパルス(複数可)に使用することができる。
【0163】
不応間隔および非不応間隔の特定ならびにパルスの適切なタイミングは、種々のタイミング方式および検知回路を用いて操作することができる。これらはともに、図3Aおよび図3Bのシステム図に示すようなマイクロプロセッサまたはハードウェアによって制御され、アルゴリズムまたは臨床医が求めた入力値を用いてプログラムすることができることが好ましい。
【0164】
PESP治療によるSVT管理の詳細な説明
図28は、本発明の一実施形態によるPESP治療を適用することによる急速なSVTの減速を示す、一連の4つのX−Yプロット(A〜Dと表示する)である。このような急速なSVTは、異所性または再入可能な調律が心房またはAV結節を含み、心室に伝導する場合に生じる(トレースA)。心室への伝導は、充満および拍出を損なうほど急速であり、結果として、圧力および流量が通常損なわれる(トレースB)。興奮性PESP刺激パルス(トレースCに図示のVth)の導入により、心室においてさらなる不応時間が発生し、2:1のレートの減少が生じる。さらに、増強作用および高められたメカニカル機能が生じる(Dに見られるように)。正味の結果は、効果的なレート減少および血行力学的性能の向上である。このPESP治療療法は、生命を脅かす可能性のあるSVTを十分に許容される調律に変えるだけでなく、自然、デバイス、または薬剤手段によって不整脈を終わらせるためのより多くの時間を与える。
【0165】
PESP治療による急速なSVTの減速は、種々のタイミング方式および検知回路を用いて操作することができる。これらはともに、図3Aおよび図3Bのシステム図に示すようなマイクロプロセッサまたはハードウェアによって制御され、アルゴリズムまたは臨床医によって決定される入力値でプログラムすることができることが好ましい。
【0166】
フィードバック制御の詳細な説明
図29は、NESおよびPESP刺激の基本的な制御関係を示す、2つのX−Yプロットからなる。図29において、心臓のメカニカル機能の指数が、基線のパーセンテージとしてdP/dtmaxであるように考えるが、心房パルス圧力または心拍出量のような他の変数を用いてよい。図29の最上部付近にある最上部X−Yプロットにおいて、PESP増強作用応答は、期外収縮を誘発する刺激のタイミングに左右されるように見える。これは刺激強度には影響されず、不応期(ここでは、0〜200ミリ秒として示す)外である必要がある。しかしながら、非興奮性神経刺激は非興奮性である必要があり、心臓付近の電極にとっては、これは不応期内を意味する。NESはまた、(ここでは、mAの電流として示されるが、電圧、パルス持続期間、または複数パルスの個数を含んでもよい)刺激強度に大きく依存する。
【0167】
図30は、刺激パラメータを調整して、高められた機能の所望レベルを維持する必要性を示す2つのX−Yプロットからなる。刺激に対する応答の対象にわたるまたは対象内の変動が生じ、これは高められた機能の結果のレベルに影響を与える可能性がある。これは、PESP増強作用およびNES神経刺激の両方の場合に、応答の絶対レベルの変化(またはずれ)の形態を取ることができるが、便宜上、最新の100%における非刺激基線に正規化することによってこれを取り除いた。残りの変動は、勾配またはNES応答の変化の形態を取るが、PESPの場合、勾配の変化(単位時間当たりdP/dtmaxの変化)および増強作用が生じない不応期の変化の両方を示す。結果として、所望レベルの向上を一度提供した刺激時間が、ここで、向上を伴わず、多少の心臓のメカニカル機能の向上、および異なる勾配を伴う可能性がある。心機能に対する有益な効果のレベルを維持するために、ある種の刺激の閉ループ制御が必要である。
【0168】
図31は、高められた心機能のレベルを制御する手段を示すフローチャートである。刺激のタイミングおよび振幅の調整は、刺激および関連組織および臓器に作用を与え、電気的、メカニカル、代謝、または他の生理的センサによって観測される。最も初期の状況では、臨床医がこのセンサ情報を観測し、それに応じて刺激を調整する。これは、ループを閉じることと見なされるが、応答時間が遅れることにとなる。本発明の埋め込み可能または外部デバイスの実施態様はまた、コントローラと呼ばれる治療送出デバイスの一部の制御アルゴリズムに従って、ループをより高速に閉じることができる。実際の制御システムの全てがそうであるように、コントローラの手動オーバライドおよび調整のための手段が設けられている。治療制御のこの態様は、どこか他の所で記載される開始/終了および安全ロックアウトルールとは別に考えることができる。
【0169】
図32は、刺激治療の自動調整のための基本的なPIDコントローラを示すブロック図である。最も基本的な自動制御方式の1つが、図32に示すPIDコントローラである。目標レベル(設定点)がセンサから導出される実際レベルと比較され、その差が誤差と呼ばれる。PIDコントローラには、関連する乗算定数Pとの比例経路、誤差を定数Iで積分する経路、誤差の導関数を定数Dで処理する経路がある。実際的なPIDコントローラは一般に、命令された出力の絶対制限を実施し、誤差の積分を同様に制限する(反ワインドアップ限度と呼ばれるプロパティ)。さらに、これらのコントローラは一般に、手動または固定出力から自動制御出力への移行が円滑に行われるように実施される(バンプレスな移行と呼ばれるプロパティ)。本出願において、このコントローラは、比較的単純な計算によって心周期毎に刺激パラメータを更新するため、埋め込み式または外部医療機器の処理電力に対して大きな負担を与えることはない。
【0170】
図33は、PESPによる心強化(cardiac enhancement)を維持するP+Iコントローラの効果を図示する、一連の経験的測定値を示す。P+Iコントローラを、制御変数としてのRV dP/dtmaxを使用して用いた。その結果をここに示す。設定点700mmHg/sを入力した(これは、基線レベルの280mmHg/sよりも大幅に大きい)。PESP治療パルスのタイミングの限度が確立され(ここでは、250〜400ミリ秒を用いた)、治療を開始した。高められた機能の所望レベルが急速に得られ、フィードバックコントローラがタイミング(T遅延)を調整し続ける際に、平均レベルRV dP/dtmaxは設定点の付近に維持された。積分器をフィードバックループに組み込むことにより、平均誤差が確実に0となる。この特許開示において、本発明者等は、振動が発生する点までコントローラの利得を高めたこと、すなわちフィードバック制御の分野でよく知られた不安定性現象を報告した。PESP刺激は、心拍数を90bpmから50bpmに低下しただけでなく、LV dP/dtmaxを約1100mmHg/sから2600mmHg/sに増加し続けた。本発明の顕著な特徴は、PESP刺激のタイミングを調整するプロセスにおいて高められた機能の所望レベルを維持するために、コントローラが自動的に増強作用応答曲線の変化に適合することである。これにより、コントローラが不応期の外側に、かつ線形フィードバック制御が適用される動作領域に保たれる。同様の線形フィードバックコントローラは、NES神経刺激およびNESおよびPESPの複合刺激に適用することができる。このようなコントローラはまた、本発明の他の場所において記載したように、刺激治療を開始および終了するためのルールならびに安全ロックアウトルールと協働する。
【0171】
フィードバック制御は、多様なコントローラを用いて操作することができる。これらはともに、図3Aおよび図3Bのシステム図に示すようなマイクロプロセッサまたはハードウェアによって制御され、アルゴリズムまたは臨床医によって求められる入力値を用いてプログラムできることが好ましい。
【0172】
頻脈性不整脈管理デバイスへの拡張に関する詳細な説明
図34は、ICDおよびAEDの通常のショックアルゴリズムを拡張してNESおよび/またはPESP治療を促進する技法を示すフローチャートである。本発明の他の重要な態様は、EMDまたはPEAのような、以前は略一律に致命的と考えられていた特定の非常に危険な状態の認識が、実際に電気刺激治療に応答し得ることである。その際、現世代のICDおよびAEDデバイスはこの可能性を反映するように変更されてよい。このフローチャートは、いくつかの大きな変更を示す。まず、これは、頻脈性不整脈の終了後に重篤な血行力学的機能不全の存在をチェックし、治療を適用することにより、本発明の他の場所に記載されるPESPまたはNES刺激治療または複合刺激治療をデバイスのアルゴリズムに導入する。次に、1つのセットのショック数(n)以上が単一のエピソードまたはクラスタのエピソードで送出される場合、より多くの時間を消費する正確なVF検出ルールが設けられ、VFを認知し処置する機能を依然として保持しながら、ショックに応答しない調律に対して不注意にショックを与える危険性を減らす。より遅いVF検出の潜在的なマイナスの効果はここで、低減された不注意なショックと、より長い持続期間の頻脈性不整脈の回復を助ける刺激治療の実施とにより均衡が取られる。最後に、このフローチャートは、表面ECGまたは心臓内電位図信号、または頻脈を終わらせるための延長されたが成功しなかった努力に続く他のセンサのさらなる解析を提示する。デバイス、またはデバイスおよび臨床医は、良好なVFのような頻脈性不整脈の移行の成功率の向上に関連する特徴を探す。現在の考え方では、このように遅く頻脈エピソードへのショックまたはATP治療に応答する際の生存率は、治療を保証するにはあまりにも低いが、本明細書に記載する本刺激治療の発明は、さらなる救命および生命維持治療への扉を開いたと考えられる。
【0173】
本発明のさらなる態様は、埋め込み式および外部治療デバイスの今ある調律認識アルゴリズムを修正し、すでにある外部または埋め込み式デバイスのそれぞれによって送出される治療パルスと同時に動作することに対処することである。刺激パルスに伴う電位図スルーレートの急峻な変化は、自動調律認識のために認識および無視されることができる。さらに、心臓機能不全の状況において、第2の脱分極の直前に検出された、密接した心室脱分極の対は、PESP期外収縮であり内因性二重頻脈調律ではないと考えられる。デバイスは、それに従って有効な心拍数および心調律を解析し、誤って頻脈性不整脈を検出または処置しない。
【0174】
PESP、NES、除細動およびペーシングの構想を統合した図
図35は、本明細書に記載する本発明のいくつかの態様に従った刺激治療の重要な態様を示すフローチャートである。本発明の様々な構成要素を協働させて、特に不整脈およびHFを含む心臓機能不全のための安全で効果的な刺激治療を供給する。図35の左上部分から始まり、ブロック4は全体として治療を開始または終了するルールを組み込んでおり、したがってこの態様(ブロック4)は、他のものを点状の境界線で囲んでいる。この態様は、自動アルゴリズムであってもよく、あるいは臨床医または患者による入力を必要としてもよい。ブロック6は、メカニカルセンサからの心機能の測度を収集する閉ループフィードバックコントローラと、臨床医または患者からの所望の制御点とを示す。ブロック6として示されるコントローラは次に、この所望の制御点を達成するための治療のタイミングまたは振幅を調整する。ブロック5は心臓不応期を特定するのに用いられるアルゴリズムを含み、このアルゴリズムは心臓脱分極または再分極の電気的検知、あるいは期外収縮または増強作用のメカニカル検知の入力を使用する。非興奮性の神経刺激(NES)が望まれる場合、アルゴリズムは、治療タイミングを不応期内に保つ。PESP刺激の場合は不応期を避ける。ブロック5は、範囲制限システムとして考えることもでき、フィードバックコントローラから受け取る治療タイミングの範囲を制限する。ブロック3は、心室期外収縮や頻脈性不整脈などの異常な心臓事象が発生した場合に治療をロックアウトするアルゴリズムを含む。ブロック1は、完全な二腔検知/ペーシング能力を組み込み、PESP治療に心房協調ペーシング(ACP)機能を追加した、デバイスの二腔ペーシングエンジンである。最後に、ブロック7は、頻脈性不整脈事象の検出と、そのような事象を終了させるためのショックまたはペーシング治療(ATPなど)の適用とを含む除細動システムである。本システムはまた、通常であれば高い死亡率を伴う持続期間の長い頻脈または機能不全エピソードの生存性を高める新しいルールを含む。
【0175】
図35に示す様々な部品は単一の医療デバイスに内蔵されることが好ましいが、そのような部品が全て任意の特定の医療デバイスに含まれる必要はない。実際、部品は、リモードデバイス間に分散され、ワイヤレスまたは他の方法で結合されて、上記の説明に従って動作してもよい。そのような部品を使用する医療デバイスには、IMD、AEDまたは他の体外医療デバイス、デバイスプログラマ、一時的ペーシング/除細動デバイスなどが含まれる可能性がある。
【0176】
図36は、従来のAEDデバイスに組み込まれた本発明の一実施形態を示す図である。本実施形態の一形態において、このような従来のAEDは、TCPに適合した心臓ペーシングシステム(例えば、ペース/検知回路32)を有する。図示しないが、ユーザインタフェースは再構成されて、適切なペーシングおよび検知インジケータが表示され、TCPを処理するためのマイクロプロセッサ能力が向上する。
【0177】
本実施形態の別の形態において、従来のAEDは、本発明に従ってPESPおよび/またはNES治療を送出するように構成される。PESPおよび/またはNES治療を送出するための好適なAED回路部は、ペース/検知回路32内に位置してよい。図示しないが、ユーザインタフェースは再構成されて、適切なペーシングおよび検知インジケータが表示され、PESPおよびNES治療を処理するためのマイクロプロセッサ能力が向上する。本発明のこの形態はほぼ、表面電極から導出される電気信号のみに基づくことが好ましい。
【0178】
本実施形態のさらなる形態において、AEDは、心臓機能不全の程度および送出された治療(例えば、除細動、PESP、NES、TCPなど)に対する反応をより正確に評価するために、様々な生理的センサを含むことが有利である。図36に示すように、1つまたは複数のセンサ1、2、3をAEDに結合して、治療の必要性および有効性を評価することができる。このようなセンサの例として、脈波型酸素飽和度計1、無侵襲型血圧センサ2、カプノメータ(すなわち、呼気CO2センサ)3などがある。このようなセンサと組み合わせて、信号調整回路部4、5、8が結合されて、信号を増幅およびフィルタリングし、AEDのマイクロプロセッサおよび関連回路部が利用できるようにすることが好ましい。
【0179】
PESPを含む本実施形態の全形態の1つの顕著な利点は、従来のAED除細動の周波数が、致命的な調律を即座に終了させるものの、適切な心機能を回復できないという事実に起因している。その結果、突然の心停止の犠牲者は多くの場合、すぐにまたは最終的に心臓機能不全に陥る。頻脈性不整脈が終了した直後にPESP治療を送出するように構成されたAEDは、適切な心機能を回復しようとすることが有利である。心臓のメカニカル機能の迅速な回復は、そのような致命的となる可能性のある頻脈性不整脈の終了直後において非常に重要であり、本発明のこの態様により提供される。
【0180】
上記では、PESPを単独で使用するものとして(表面電極の位置と刺激の大きさのために付随的なNES治療とともに)記載してきたが、NESを意図的に単独で、あるいはPESP治療と組み合わせて呼び出すことが望ましい場合がある。これは、1つまたは複数の専用電極を用いることによって有利に使用することができる。
【0181】
上記の例は例示的なものであり、特許を請求する発明の範囲を限定するものではない。
例1 VFの現れるAEDの例
一般の人々が除細動(ディフィブリレーション)を即座に利用できるようになり、反応時間が早くなったにもかかわらず、突然の心停止の犠牲者が予後に退院できるまで生存することは低く、これらの犠牲者の多くが電気メカニカル乖離(EMD)または無脈性電気活動(PEA)で死亡する。現在のAED技術は、頻脈性不整脈を処置する手段を備えているが、EMD/PEAを処理する手段は備えていない。
【0182】
本発明において詳述する特徴を備えるAEDはこれらのシナリオに対処する。実施態様例において、AEDは第1の応答者と同じに見える。応答者は、2つの経胸腔自己接着性電極を患者に配置してデバイスのスタートボタンを押す。するとAEDは、経胸腔電極から表面ECGを取得し、その信号にVF検出アルゴリズムを適用する。VFが検出された場合、AEDは、除細動ショックを印加し、再検出アルゴリズムを適用する。VFが停止した、または存在しなかった場合、デバイスは、患者が徐脈性不整脈または心停止状態にあったかを確かめるチェックを行い、必要であれば経胸腔電極によりペーシング治療を適用する。さらに、洞調律の検知時またはペーシングによる調律中に、デバイスは応答者に、犠牲者からのパルスを取得するように要求する。パルスが検出されなかった場合、応答者はAEDのボタンを押し、それによりPESP/NES治療が開始され、経胸腔電極により送出される。デバイスは、さらなるパルスチェックを定期的に要求するとともに、明記された中止ボタンを有し、犠牲者が意識を取り戻した場合に応答者が治療を終了することを可能にする。
【0183】
別法としてAEDは、心機能の無侵襲性の測定を行うセンサ(脈波型酸素飽和度計など)または無侵襲型血圧デバイス(膨張式腕帯など)に接続される。このようなシステムは、犠牲者のパルスの評価を行う応答者を必要とせず、PESP/NES治療を必要に応じて自動的に開始および終了する。
【0184】
例2 VTの現れるICDの例
ICDシステムは、AEDで処置された患者と比較すると、突然の心臓停止エピソードからの大幅に改善された生存可能性を患者に提供する。これは主として、デバイスが埋め込まれており常に事象を検知する準備ができている場合に、不整脈の発現と治療送出との間で待機する最小限の時間があるためである。しかしながら、患者によっては、特により顕著なHFを有する患者は、最も短いVFエピソードにさえ耐えることができない可能性があり、不整脈の終了から長い時間が経ってから心機能が低下する可能性がある。さらに、デバイスが治療を送出する前の頻脈性不整脈の持続期間を長くする状況が生じる可能性がある。頻脈性不整脈によってはICDに検出の課題を課すものもあり、これは治療の送出を延期する可能性がある。不整脈はまた、いくつかのショックを終了することを必要とし、エピソードをさらに延期する可能性もある。
【0185】
不整脈の間、心臓を灌流する冠動脈血流量が重度に損なわれ、虚血、およびスタンニングと呼ばれる心収縮性の一時的損失につながる可能性がある。いったん不整脈が終了しての冠動脈流量の回復を防止するのに、収縮性の損失が十分に重度である場合、虚血がさらに生じ、収縮性を下向き螺旋に低下することになるであろう。収縮性を早期に回復するための治療により、この周期を壊し、維持されている心機能の回復をもたらすことが可能である。
【0186】
PESP/NES刺激治療の例には、頻脈性不整脈に続いて損なわれた心臓のメカニカル機能を処置することが含まれるであろう。1つのシナリオ例において、このような治療を装備するICDは、検出された任意の頻脈性不整脈の持続期間をログに記録するであろう。エピソードの持続期間が終了する前にプログラム可能なしきい値を超え、心臓のメカニカル機能が重度に損なわれている可能性が高いことを示す場合、デバイスは、血行力学の早期の増強を与えるために、エピソードに続いてある一定の持続期間の間NES/PESP治療を開始して、心臓の再灌流を早め、頻脈性不整脈からのより完全な回復を可能にする。別法として、エピソードに続いてRV圧力センサがRVパルス圧を検出し、このRVパルス圧と、エピソードが検出される前に測定および記憶された基線値とを比較する場合がある。頻脈性不整脈に続いてあまりにも長い時間、RVパルス圧が基線値に満たず、心臓のメカニカル機能の低下期間が延長していることを示す場合、ICDは、PESP/NES治療を開始し、基線測定値の数パーセントにRV圧力が達した後に治療を終了して、心機能が回復したことを示すであろう。
【0187】
例3 急性代償不全の現れるHFの例
ステージが進行したHF患者は、入院を必要とする心不全関連症状の急な悪化に遭遇する。慢性の代償性HFから急性の非代償性HFへの移行は、食事療法を怠ること、HF疾患の進行、および急性心筋梗塞を含む複数の要因により生じる可能性がある。症状は、重篤である場合、これらの患者をクリティカルケアの病床に収容して生理的センサで監視し、静脈内イノトロープ(inotropes)を含む様々な薬剤で処置する必要があるステージに数時間で進行する可能性がある。このような代償不全に遭遇する患者は一般に、低い安静時心拍出量、収縮機能不良、低いdP/dtmax、弛緩の遅れおよび高いτ、拡張期心室圧の上昇、ならびに心室生成圧力の低下を示す。
【0188】
埋め込み式デバイスによって送出される心臓再同期化治療は、良好な医学治療に対する重要な補助である。このような再同期化デバイスは、NESおよび/またはPESP刺激治療を送出するのに適切な電極および回路部を有する。RV圧力を用いて心機能を絶え間なく監視するための埋め込み可能な監視技術に関して、臨床試験が行われている。このシナリオにおいて、本発明において教示されるように、埋め込み可能デバイスは刺激治療を供給し、血行力学的機能を監視するようになっている。
【0189】
過去2〜4週間にわたって生じた平均値からのdP/dtによって評価される、RV拡張期圧の上昇および収縮性の低下が検知されると、RV心尖部双極リード線からのVsense事象の260ミリ秒後に送出される、2.0V、0.5ミリ秒の単一の心室パルスを用いて、PESP治療を開始することができる。この時点で患者は、HF症状の中程度の悪化にのみ遭遇する可能性がある。
【0190】
このシナリオにおいて、この治療に対する応答は、ほぼちょうど二倍のdP/dtmax、一回拍出量および駆出分画(ejection fraction)の増加、心拍出量の増加、および心拍数の低下である。数時間にわたり、血行力学の改善により肝臓の過剰な塩分および水分を取り除くことができ、RV拡張期圧は基線レベルに戻る。刺激治療は痛みを伴わず、患者によって通知されることなく自動的に開始および停止される。埋め込み式デバイスのメモリに問い合わせを行うことにより、上述のエピソードが明らかとなり、入院および救急部への来院が確実に不要となる。
【0191】
例4 高レートに対して低い耐性を有するSVTの例
高速な心室レートを生じる上室性頻脈は、特に心不全の病歴を有する患者において耐性が低い場合がある。このシナリオにおいて、患者は眩暈および動悸(胸部内が振動する感じ)の初期症状を感じる。救急医療職員が調べる際、心拍数は220bpmであることがわかる。次の数分間にわたって、患者の血圧は低下し、患者は血色が悪くなり、発汗し、精神状態が混乱する。本発明に記載されるようなNESおよびPESP治療が装備されるAEDデバイスが、一対の粘着性パッド電極によって患者に取り付けられている。
【0192】
高速であるが狭いECG群により、デバイスが重篤なSVTを診断することが可能となり、操作者には、PESP刺激またはカーディオバージョンの試験のオプションが提示される。鎮静剤/鎮痛剤を投与した後、表面ECG心室検知事象の250ミリ秒後にタイミングを取られた60mA、20msのパルスを送出することにより、5分間のPESP刺激試験が開始される。救急職員が調べたバイタルサインにより、心拍数が220bpmから110bpmに低下し、血圧が90/50から120/60に増加することが報告されている。患者は以前より正気となり、明らかに血色が良くなる。2分間の試験が完了する前に、調律が瞬時に120bpmの洞調律に変わる。AEDはこのことを認識し、その刺激治療を直ちに終了する。
【0193】
HFの病歴を有する患者は、たった数分の頻脈性不整脈でさえ耐えられない場合がある。レートが十分に高い場合、患者が意識を失い、患者の調律がVFへと悪化することがしばしばである。迅速かつ適切なケアにも関わらず、数分間の長引く心臓虚血の後のディフィブリレーションは、EMD/PEA、または不全収縮(asystole)および死をもたらす可能性がある。この患者は、緊急の薬理的または電気的なカーディオバージョンショック治療の必要を示し、心静止および死を回避した。
【0194】
上述の方法および装置は、心臓機能不全、慢性HFなどを含む心不全を患う患者、ならびに本明細書中に記載し、本発明が対象とする技術分野の技術者に既知のものを含む全ての変形形態に特に有益であると考えられる。本発明は、広範な急性および慢性の心臓機能不全を監視および治療する可能性を提供することが理解されるだろう。本発明は、心臓の血行力学的機能不全のための治療を送出するシステムおよび方法を提供し、本システムおよび方法は、以下の特徴のうち1つを含んでよいが、これらに限定されない。
・他の方法では強心薬(例えばボブタミン、カルシウム、またはミルリノン)を要するかもしれない心臓機能不全の治療、
・他の方法ではメカニカル補助(例えば、大動脈内バルーンポンプ、心臓マッサージデバイス、またはLV補助デバイスポンプ)を要するかもしれない心臓機能不全の治療、
・患者を継続的に監視し、生理的センサがその必要性または患者に症状が出ていることを示すと治療を自動的に行う埋め込み可能または体外デバイス、
・薬剤の過量摂取または低体温の結果生じた心臓機能不全の処置、
・β遮断薬などの陰性変力薬処置と組み合わせてこれらの治療に対する患者の耐性を改善する、
・虚血後心臓機能不全または例えば冠血管閉塞、血栓溶解剤、血管形成術、または心臓バイパス手術後のスタンニングの治療、
・心臓バイパス術の成功に伴う機能不全のサポートおよび心停止法の使用、
・2:1AVブロックを規則化し、メカニカル心拍数を低下させ、かつメカニカル機能を向上させることによる高速かつ許容できない上室性頻脈症(SVT)の治療、また、不整脈の停止を促進してもよい、
・AT、AF、SVT、VT、またはVFを含む頻脈事象後の機能不全の管理(カーディオバージョン、緊急ディフィブリレーションおよび蘇生を含む)、
・重篤な心不全発作、心臓性ショックの悪化、電気メカニカル乖離(EMD)または無脈性電気活動(PEA)、
・低酸素症または代謝異常に伴う心機能の急性低下、
・例えば、活動前または活動中のHFの、または悪化する症状の間欠治療、
・心拍数を変化させ、充満およびメカニカル効率を上げ、逆リモデリングおよび他の回復プロセスを促進するためのHFの継続治療、
・指定の時間間隔にわたり特定の時間帯での、あるいはN回の心周期毎の計画送出の使用を含むHFの計画治療、
・心房収縮性を高め、より良好な心室充満、およびAV同期を促進するための心房PESP治療、および/または
・治療中に心房負荷を減らし心室機能を良くした結果としてAF負荷を減らすこと。
【0195】
結果として、上記および添付の特許請求の範囲で使用されるような「心不全」という表現は、上記の各々とそれに関連する状態を包含するものと理解される。上に記した全ての特許および他の文献は本明細書中に参照により援用される。
【0196】
本発明を好ましい実施形態に関して詳細に例示および説明してきたが、それにより本発明の範囲が制限されるものではないことが理解されるべきである。本発明の範囲は、添付される特許請求の範囲によってのみ規定される。また当業者は、本明細書中に記載される特定の実施形態の、本発明の原理を組み込んだ変形形態を思い付くであろうが、そのような変形形態は依然として添付の特許請求の範囲内にあることも理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0197】
【図1】図1は、1心周期における心腔EGM、圧力、流量および容積の関係を示す。
【図2】図2は、本発明が好ましく実施される、多チャネルの心房および両心室監視/ペーシングIMDを示す概略図である。
【図3A】図3Aおよび図3Bは、1つまたは複数の心腔への選択的な治療の送出およびそこでの心不全状態の監視を可能にする、図1のシステムにおいて用いられるIPG回路部および関連するリード線の一実施形態の簡略ブロック図である。
【図3B】図3Aおよび図3Bは、1つまたは複数の心腔への選択的な治療の送出およびそこでの心不全状態の監視を可能にする、図1のシステムにおいて用いられるIPG回路部および関連するリード線の一実施形態の簡略ブロック図である。
【図4】図4は、本発明によりHFの監視、および任意選択で心臓のペーシング、PESP治療の送出に用いられる、圧力、インピーダンスおよび心臓EGM信号を導出する、信号監視およびペーシングチャネルの簡略ブロック図である。
【図5】図5は、心臓不応期中に開始されてPESP送出間隔の間継続される、治療PESP刺激、特にペーシングエネルギーパルス列の送出を示す。
【図6】図6は、本発明による生理的および治療活動を示すトレースのセットである。
【図7】図7は、 本発明による生理的および治療活動を示すトレースのセットである。
【図8】図8は、本発明による生理的および治療活動を示すトレースのセットである。
【図9A】図9Aないし図9Dは、本発明による治療送出の実施形態の簡単な例示的タイミング図である。
【図10】図10は、本発明の特定の実施形態による、有利には刺激されることができる心臓および関連する交感神経の、部分的に分解した斜視図である(いくつかの部分は図示せず)。
【図11】図11は、患者の心臓組織の近くに位置された電極、および患者の心臓組織から遠く離れて位置された電極の神経刺激タイミング図である。
【図12】図12は、本発明による生理的および治療活動を示すトレースのセットである。
【図13】図13Aないし図13Cは、本発明による生理的および治療活動を示す3つのX−Yプロットのセットである。
【図14】図14は、本発明の一態様を示すフローチャートである。
【図15】図15は、本発明の別の態様を示すフローチャートである。
【図16】図16は、本発明のさらに別の態様を示すフローチャートである。
【図17】図17は、本発明のさらなる態様を示すフローチャートである。
【図18】図18は、本発明による生理的および治療活動を示すトレースのセットである。
【図19】図19は、本発明による生理的および治療活動を示すトレースのセットである。
【図20】図20は、本発明による生理的および治療活動を示すトレースのセットである。
【図21】図21は、本発明による生理的および治療活動を示すトレースのセットである。
【図22】図22は、本発明のさらなる態様を示すフローチャートである。
【図23】図23Aないし図23Dは、本発明による治療刺激の刺激振幅、機械的機能、不整脈の危険性および「正味の利益」のタイミング関係を示す、4つのX−Yプロットのセットである。
【図24】図24は、本発明による生理的および治療活動を示すトレースのセットである。
【図25】図25は、本発明による生理的および治療活動を示すトレースのセットである。
【図26】図26は、本発明のさらなる態様を示すフローチャートである。
【図27】図27は、本発明のさらなる態様を示すフローチャートである。
【図28】図28は、本発明のさらなる態様を示すフローチャートである。
【図29】図29は、時間および刺激強度それぞれに応じたメカニカル機能(dP/dtmax)の関係を示す一対のX−Yプロットである。
【図30】図30は、時間および刺激強度それぞれに応じたメカニカル機能(dP/dtmax)の関係を示す一対のX−Yプロットである。
【図31】図31は、本発明のさらなる態様を示すフローチャートである。
【図32】図32は、本発明のさらなる態様を示すフローチャートである。
【図33】図33は、本発明による生理的および治療活動を示す実験的データのプロットのセットである。
【図34】図34は、本発明のさらなる態様を示すフローチャートである。
【図35】図35は、本発明のさらなる態様を示すフローチャートである。
【図36】図36は、本発明による生理的および治療活動を示すトレースのセットである。
【0001】
本発明は包括的に、埋め込み可能医療デバイスに関し、より具体的には、急性または慢性の心臓の機械的機能不全(心不全(HF)、心臓性ショック、無脈性電気活動(PEA)、または電気機械解離(EMD)など)の徴候を監視して適切な治療を供給することに関する。
〔関連出願の参照〕
本開示は、2001年8月28日に出願された米国特許仮出願第60/315,316号(その内容全体が参照により本明細書に援用される)の利益を主張する。
【0002】
本特許の開示は、本発明の譲受人に譲渡された、2002年8月20日に発行されたLawence J. Mulligan他による米国特許第6,438,408号「IMPLANTABLE MEDICAL DEVICE FOR MONITORING CONGESTIVE HEART FAILURE」およびDeno他による国際特許出願第PCT/US01/50276号「IMPLANTABLE MEDICAL DEVICE FOR TREATING CARDIAC MECHANICAL DYSFUNCTION BY ELECTRICAL STIMULATION」を参照により本明細書に援用する。
【背景技術】
【0003】
慢性HFを患う患者は、既知のフランク−スターリング(Frank and Starling)の異尺性自己調節の法則により、左室拡張末期圧の上昇をきたす。これは、心室壁の硬さの増加に付随する左室コンプライアンス(compliance)により、左室拡張末期容積が正常である間にも生じる可能性がある。慢性高血圧、虚血、梗塞または特発性心筋症によるHFは、心房筋および心室筋のコンプライアンスの低下を含む収縮・拡張機能の低下(compromise)を伴う。これらは慢性疾患過程、または特定の疾患過程を伴うかあるいは伴わない心臓手術の合併症に伴う状態である可能性がある。ほとんどの心不全患者は、心室粗動をもたらす伝導系の欠陥を患うことはなく、むしろ心筋の収縮機能の全体的な衰え、それに伴う心筋の肥大、収縮後の拡張期における心筋弛緩特性の低下および心室充満特性の低下を含む場合がある症状を患う。肺水腫、息切れ、および全身血圧の崩壊(disruption)は、心不全の急性悪化に関連する。これらの疾患過程はすべて、軽度または中度の運動および他の身体器官の適切な機能を維持するには不十分な心拍出量をもたらし、悪化が進むとやがて、心臓性ショック、不整脈、電気メカニカル解離、および死という結果となる。
【0004】
このような患者は通常、薬剤治療(ジギタリスを含む)により処置されるが、薬剤治療は、毒性をもたらすか、あるいは時間が経つと効果をなくす可能性がある。最近では、心筋細胞の様々な受容体を標的とするとともに、収縮性を高めるために心臓組織を直接刺激する目的で設計された多くの強心薬が使用可能になってきた。しかしながら、これらの薬剤は必ずしも意図した目的に作用しないという事実に加えて、多くの望ましくない副作用の可能性が存在する。これは特に、末期の心不全を患う患者に特徴的である。
【0005】
初期の埋め込み可能心臓ペーシングでは、対ペーシング(補充間隔のタイムアウト時に2回以上の間隔の短いペーシングパルスを送出する)、およびパルス間間隔の比較的短い(イヌの場合150〜250ミリ秒、ヒト被験者の場合約300ミリ秒)トリガまたは結合ペーシング(補充間隔を終了させるP波またはR波を検出すると1回またはそれ以上のペーシングパルスを送出する)は、心拍を有利に遅くし拍出量を増やすことが認められた。1回目のペーシングによる脱分極または自発的脱分極の不応期の後すぐに印加される2回目のパルスの結果は、心室不応性をさらに延ばし、心拍をその自発的調律よりも遅くするものである。それ以来この遅らせる効果が多くの用途において使用されており、当該用途のうち、心房および心室性頻脈の処置では、米国特許第3,857,399号および第3,939,844号に教示されているように、1回のパルスまたはパルスバーストが、自発的頻脈間隔よりも短く頻脈間隔の何分の一かとして設定することができる結合間隔で自発的頻脈事象に結合される。結合ペーシングにより心拍が遅くなれば、その後の広範囲の結合ペーシングにより心拍数を上下させることができる。
【0006】
心腔の対刺激および結合刺激は、本発明の譲受人に譲渡される米国特許第5,213,098号に詳細に記載される期外収縮後増強(「PESP」)として知られる現象により収縮力の増強作用ももたらす。心臓の収縮力は、対刺激または結合刺激が印加される次の心周期に増加し、この増大は持続するが、続く何度かの心周期にかけて徐々に弱まる。同様に持続するが何度かの心周期にかけて徐々に弱まる他の測定可能な効果に、ピーク収縮期血圧、心室筋の収縮レートの変化があり、結果として心室内圧(dP/dt)の上昇レートを上げ、冠血流量を上昇させ、1回の拍動当たりの酸素摂取量を増加させる。調査者によって認められたことは、増強治療を行った場合、同じレートで1回のパルス刺激を行った場合と比べて、心筋酸素消費量が35%〜70%増加し、駆出分画が著しく向上したことである。3回目の刺激の印加では、心収縮力の増加が付随して認められることなく心筋酸素摂取量がさらに増加した。こうした研究で認められるように、冠血流量の変化は心臓の酸素消費量とほぼ平行する。
【0007】
対刺激により生じる顕著な増強効果から、一部の調査者は、ヒトの心不全の処置にPESP刺激が有益ではないかと考えるようになり、イヌ被験者で誘発させた急性心不全の処置における技法を用いて研究を行った。そのような対ペーシングによってイヌにもたらされる左心室の機能および心拍出量の向上が数人の調査者により認められた。比較的正常なイヌの心臓に対して行われた他の研究では、対ペーシングが、おそらくは反射補償(reflex compensation)のために心拍出量を増加させないことが確認された。初期の調査者は、心房腔および心室腔の対刺激および結合刺激を使用して動物およびヒトで多くの研究を行い、増強を利用しようとする試みにおいて、Medtronic, Inc.および他の会社により医療デバイスが入手できるようになった。しかしながら、時間的に接近した対または結合ペーシングパルス、特に当時埋め込み可能ペースメーカで使用されていた高エネルギーのペーシングパルスを印加すると、影響を受けやすい患者の心臓で頻脈を引き起こす可能性があることが分かった。PESP作用を活用しようという試みは大部分が断念された。行われてきた調査および研究の歴史は、上記で参照した米国特許第5,213,098号に記載されている。
【0008】
二腔ペーシングが開発されてからは、Medtronic, Inc.および他の会社が販売する従来の房室(AV)同期ペーシングシステム(DDDおよびDDDRペーシングシステムを含む)が、HFならびに様々な徐脈状態の処置に処方されている。徐脈を伴うかまたは伴わない心不全の症状を患う特定の患者群は、心室の充満とその後の収縮に心房収縮の寄与が加わることにより、AV同期ペーシングを用いた場合の血行力学が遥かによい。しかしながら、そのような患者における固定または生理的センサ駆動のレート応答ペーシングは、心拍出量の向上およびそのような疾患過程に伴う症状の緩和を常にもたらすわけではない。これは、HFにより心拍出量が損なわれる程度を評価し、心拍出量を最大にするのに最適なペーシングパラメータを求めるのが困難であるためである。本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,626,623号に記載されるように、最適なAV遅延の選択には、広範囲にわたる患者の精密検査を伴う圧力データを得ることが必要とされることが多い。
【0009】
上記で参照した米国特許第5,213,098号は、対および/またはトリガペーシング刺激パルスを右心房および/または右心室に印加するPESP心臓ペーシングエネルギー刺激器であって、1つまたは複数のセンサと、トリガまたは対ペーシングの定期的な送出間の心周期の周波数または回数を制御して、HFまたは他の心臓機能不全の処置のためのPESPの効果を最適化する信号処理回路とを組み込んだ刺激器を開示する。第1センサ(例えば、心室または心房血圧または血流量センサ)が、心機能を監視して心機能指数(CPI)を生じるために使用される。第2センサ(例えば、冠状静脈洞に配置される酸素飽和度センサ)が、心筋ストレスを監視して心臓ストレス指数(CSI)を生じて、機能とストレスのバランスを取るために使用される。開示されるPESP刺激器は、生理レート制御部を有するかまたは有さない、かつバックアップ・カーディオバージョン/ディフィブリレーション治療機能を有するかまたは有さない二腔(DDD)ペーシングシステム、あるいは別個の専用デバイスに組み込むことができる。PESP刺激器は、心房刺激において心室の充満を増強する特定の用途を有する。
【0010】
例えば、PCT WO 97/25098を含む一連のPCT公報が、1つまたは複数の「非興奮性」陽極または陰極刺激パルスの心臓への印加を記載し、心臓を捕捉することなくLV機能の向上を実現することができると主張している。さらに別の本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,800,464号では、しきい値未満の陽極刺激が心臓に与えられて、従来の陰極のしきい値を超えるペーシングパルスにより激しくメカニカルに応答するように心臓を調整する。
【0011】
したがって、HFを含む心臓機能不全の処置のための様々な刺激療法が提案されており、これには、しきい値を超えるおよび/またはしきい値未満の刺激の対または結合パルスまたはパルス列の印加が含まれる。さらに上記で参照した特許および公報では、刺激パルスを1つまたは複数の心腔へ一部位または複数部位送出のための様々な電極が提案されている。しかしながら、そのような刺激から利益を得る適切な候補を経済的に決定して所与の刺激療法および/または電極アレイの有効性を測定するのは依然として困難である。心不全患者がかかるシステムの埋め込みの候補者であるかを判断するには、当該患者の広範囲にわたるカテーテル手法を行わなければならない。その場合、任意所与の処置の有効性が、埋め込み時に、および定期的な埋め込み後の追跡臨床試験において、評価しなければならない。患者の一連の追跡試験は、日々のタイムスパンにわたる心不全状態を表すために、既知の患者の活動、患者の姿勢、および患者が起きているか寝ているかを考慮またはシミュレートしなければならない。さらにこれらの治療は、刺激タイミングまたは刺激に対する生理反応がずれることで有効性を失うか、あるいは不整脈を発生しやすい。
【0012】
最新の埋め込み可能医療ペースメーカおよび埋め込み可能カーディオバータ/ディフィブリレータ(ICD)には、生理データおよびデバイス動作データ収集機能が含まれており、ペースメーカまたはICDによって提供される、徐脈または頻脈エピソードおよび当該エピソードに対する反応の記録を提供している。記憶された生理デバイス動作データおよび患者データ、ならびにリアルタイムの電位図(EGM)データは、当該技術分野で既知であるように、外部プログラマへアップリンクテレメータ送信され、表示されて医療提供者によって分析されることができる。
【0013】
さらに、今のところ刺激機能(例えば、心臓ペーシングまたはカーディオバージョン/ディフィブリレーション)を含まない埋め込み可能心臓モニタが、患者の心臓の血行力学および電気信号を監視するために臨床的に使用されているか、あるいは使用を提案されている。こうした埋め込み可能モニタは、臨床設定よりも長期間にわたるデータを生成するために患者に埋め込まれ、当該データは、同様に取り出されて、散発的にまたは日常生活における一定の負荷およびストレス下で現れるHFを含む心臓機能不全の診断に用いることができる。
【0014】
本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,331,966号およびPCT WO 98/02209公報に開示されるような、心臓から遠隔にある電極からの心電位図を記録するこのような埋め込み可能EGMモニタの1つが、離間したハウジングEGM電極を有する、Medtronic(登録商標)REVEAL(登録商標)挿入可能ループ記録装置に具現される。心臓内またはその周囲に配置された電極からのEGMおよび他の生体センサ導出信号(例えば、血圧、血液ガス、温度、心臓および/または胸部の電気インピーダンス、ならびに患者活動のうちの1つまたは複数)を記録するより精巧な埋め込み可能血行力学モニタ(IHM)も提案されている。Medtronic(登録商標)CHRONICLE(登録商標)IHMは、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,564,434号に記載される、容量性血圧および温度センサならびにEGM検知電極を有するタイプのリード線を介して結合される、そのようなモニタの一例である。このような埋め込み可能モニタは、心臓不整脈または心不全を患う患者に埋め込むと、長期間にわたって患者が日々の活動に従事している間の心臓の状態を判断するのに役立つ日時スタンプ付きデータを蓄積する。
【0015】
経胸腔インピーダンスならびに患者の姿勢を検知し、HFの程度および進行を診断および評価するために、その記録を提供するHFモニタ/刺激器が、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第6,104,949号に開示されている。検知された経胸腔インピーダンスは、肺の血液または流体の容積に依存し、HFの徴候となる肺水腫の検出および定量化を助ける。経胸腔インピーダンスは、姿勢(すなわち、被験者が寝ているか立っているか)の影響を受け、検知された経胸腔インピーダンスは、患者の姿勢検出器の出力と関連付けられて、治療の送出および/または生理データの記憶の判断のために肺水腫の存在とその程度の判断を行う。
【0016】
心機能のレベルを監視および評価し、次に治療が指示された場合に医師が治療モードを調整することを可能にするモニタ/刺激器が米国特許第5,417,717号に開示される。このモニタ/刺激器は、インピーダンス、EGM、および/または圧力測定値を評価し、次に様々な心臓パラメータを計算する。これらの計算の結果により、選択する治療モードが決まる。治療は、デバイス自体によって行うことができるか、または制御信号が心機能を向上させることを目的として様々な周辺デバイスへテレメータ送信される。あるいは、デバイスは、治療を送出せずに情報を監視して記憶またはテレメータ送信するようにプログラムされてもよい。
【0017】
特に、埋め込み可能なモニタ/刺激器は、心周期の全段階を含む心機能および収縮状態の従来のパラメータを監視する。したがって、測定された収縮状態の評価値は、心臓の弛緩および収縮の両方の指数を含む。米国特許第4,674,518号に記載されるデュアルソース(dual source)インピーダンス脈波検査法を使用することにより、モニタ/刺激器は、心室の充満および駆出における血行力学の変化を評価することによって、あるいは既知のアルゴリズムにより等容性相指数(isovolumic phase indices)を計算することによって、心機能を監視する。主な計算には、(1)収縮性の等容性指数としての圧力または容積の時間変化率(dP/dtまたはdV/dt)、(2)一回拍出量を拡張末期容積で割った既知の商による心機能の駆出期指数としての駆出率、(3)最大エラスタンスEM、(4)佐川(Sagawa)の方法を用いたさらなる収縮性の駆出期指数としての、最大圧容積点を通る再帰の傾き、(5)既知の圧容積積分による一回仕事量、(6)拡張機能の尺度としての、Glantsの方法による最小拡張(末期)圧容積測定値の時間経過、および(7)全体機能レベルの指数としての、心拍数と一回拍出量の既知の積による心拍出量の計算が含まれる。
【0018】
この心機能および収縮状態のパラメータ群の測定および記憶は、心不全の状態に関する貴重な情報を提供することができるが、さらに価値の高いパラメータが他にある。患者の自律状態に対する一時的変化は、血圧(P)、心拍数、および圧力変化率(dP/dt)といった収縮尺度を変化させ、心臓の「真の」機能状態の変化を反映しない可能性がある。このような自律状態の一時的変化は、上記で参照した米国特許第6,104,949号に記されるような興奮および姿勢の変化、ならびに他の動き(物を拾うためにかがむ、座ったまたは寄り掛かった位置から急に立ち上がるなど)によって起こる。心臓の信号および状態を測定するための比較的単純で高度な信号処理により、上記のような患者の精神状態、動きおよび姿勢の変化に影響を受けない、(米国特許第6,104,949号のような肺水腫の尺度ではなく)心臓収縮機能不全の状態の高度な評価を行う心臓データを得ることが望ましい。
【0019】
本発明と所有者を同じくし、本開示と同じ表題を有する、Deno他により2000年12月28日付で出願された米国特許出願第09/750,631号として識別される関連特許の開示(‘631号特許の開示)(2002年7月11日付で公開されたPCT WO 02/053026A2)では、心不全治療を提供する様々な技法が記載されている。以下の主題は、‘631号特許の開示(参照により本開示に援用する)に記載されるPESP治療を提供するためのいくつかの装置(様々なセンサを含む)および技法を表す。‘631号特許の開示によれば、埋め込み可能な刺激器およびモニタが、EGM信号、血圧(絶対圧P、上昇(developed)圧DP(DP=収縮期P−拡張期P)および/またはdP/dtを含む)の測定値、ならびに1回または複数回の心周期にわたる心腔容積(V)の測定値を使用して心不全の状態を示すパラメータ群を測定する。これらのパラメータには、(1)弛緩または収縮時定数(τ:tau)、(2)メカニカル復旧(mechanical restitution、MR)、すなわち心腔に加えられた期外刺激に対する心腔のメカニカル反応、(3)再循環率(RF)、すなわち一連の心周期にわたるPESP効果の減衰率(rate of decay)、および(4)収縮末期エラスタンス(EES)、すなわち収縮末期血圧P対容積Vの比が含まれる。これらの心臓状態パラメータは、精神状態、患者の姿勢、および活動レベルに関係なく、定期的に求められる。しかしながら、ある種のパラメータの測定およびある種のデータの記憶は、患者の心拍数が一定で、かつプログラムされた上限および下限心拍数の間の正常洞の範囲内にあるときにのみ行う。
【0020】
埋め込み可能な刺激器およびモニタは、1つまたは複数の測定モードで動作され、この測定モードは場合によっては、期外収縮期(ESI)の後に期外収縮(ES)パルスを送出して、測定されるPESP効果を誘発することを必要とする。本発明では、心臓状態が回復して収縮性の増加、弛緩時間の減少、および心拍出量の増加の恩恵を受けることをMR、RF、tau、およびEESパラメータのうちの1つまたは複数が示す場合に心収縮を強化するため、PESP機能も使用される。この状況において、刺激治療は、PESP刺激またはPESPペーシングと呼ばれる。本発明によれば、PESP刺激治療を適用した効果は、心機能パラメータ測定モードに入ってパラメータを収集することにより、所定期間にわたって認めることができる。
【0021】
好ましくは、パラメータデータは日時スタンプおよび他の患者データ(例えば、患者の活動レベル)と関連付けられ、この関連付けられたデータは、後日従来のテレメトリシステムを用いて取り出すために、埋め込み可能医療デバイス(IMD)のメモリに記憶される。経時的なパラメータデータの漸次の変化(incremental change)は、関連付けられた日時および患者データを考慮すると、心臓状態の変化度の尺度を提供する。
【0022】
‘631号特許の開示は、上記手法を組み合わせて、心機能レベルを検出および監視するか、またはこの監視情報に基づいて治療を変更するデバイスとしている。主要な送出モードは直接的な電気刺激であり、結果として、収縮性、弛緩、圧力または心拍出量を向上させる。様々な機能を行うことができる埋め込み可能な刺激器およびモニタには、埋め込み可能パルス発生器(IPG)、ならびに収縮および弛緩中の電気検知および刺激、血圧測定および腔容積の測定のために少なくとも1つ、好ましくは複数の心腔に作用する関係になるように延びるリード線システムがある。IPGは、関心のある各心腔につき1つの検知増幅器を有し、当該検知増幅器は、リード線導体を介して、心腔内で発生するか、またはその心腔を横切る心臓の電気心臓信号を検知する電気刺激/検知電極と結合されており、心房腔におけるP波または心室腔におけるR波を検出できるようになっているIPGは、結合または対PESP刺激パルス(複数可)の心房および/または心室補充間隔ならびにESIをタイムアウトさせるタイミング回路部を有する。IPGは、ペーシングパルスおよびPESP刺激パルスを関心のある各心腔に送出する少なくとも1つの刺激器/検知電極と結合されたパルス発生器を有する。IPGは、リード線導体を介して血圧センサと結合された血圧信号処理回路部を有する。この血圧センサは、関心のある各心腔内のリード線の遠位端部分に配置されるか、関心のある各心腔と作用する関係にあって、血圧PおよびdP/dtサンプルを導出する。IPGはまた、各心腔内にまたは各心腔に関連して配置された容積センサと結合されており、心腔容積Vを表す信号を導出する容積算出回路部も有する。容積センサは、単一のインピーダンスリード線に沿って、または複数のインピーダンスリード線上に配置された一組のインピーダンス検知電極を含むことが好ましく、インピーダンスセンサ電極に結合された容積算出回路部は、選択された電極対の間のインピーダンスを検出する。インピーダンス検知電極は心腔の周囲に分散され、分離された電極間の距離および測定されるインピーダンスの変化が心腔壁の収縮および弛緩に伴って変化するようにする。
【0023】
埋め込み可能な刺激器およびモニタは、単腔、二腔、または多腔(両房および/または両室)レート応答ペースメーカ内に組み込まれ、内因性洞心拍数がプログラムされた下限HRを下回ると徐脈ペーシングを提供することができる。あるいは、埋め込み可能な刺激器およびモニタは、そのような単腔、二腔、または多腔レート応答ペーシング機能ならびに頻脈性不整脈検出およびカーディオバージョン/ディフィブリレーションショック送出機能を含むICD内に組み込むことができる。いずれの場合にも、頻脈の検出および抗頻脈ペーシングならびに心臓再同期ペーシング治療も組み込むことができる。
【0024】
この‘631号特許の開示の要約ならびにその目的、利点および特徴は、単に、従来技術にあった欠点を克服するために‘631号特許が提供する方法のいくつかを示すとともに、‘631号特許の引用文献に記載される発明を従来技術と区別するために、本明細書中に提示されており、当該特許明細書に最初に提示され、いずれ付与される特許請求の範囲の解釈の限定として作用するように意図するものではない。
[本発明の背景]
米国では何百万人もの患者が心不全と診断されている。心不全(HF)は特定の疾患ではなく、徴候および症状の合併症であり、その全てが、心臓が活動中に心拍出量を適切に上昇させることができないために生じる。HFは、慢性高血圧、虚血、閉塞または突発性心筋症により生じる可能性がある。うっ血不全の症状に伴う心臓疾患には、拡張型心筋症、拘束型/収縮性心筋症、および肥大型心筋症がある。この疾患の一般的な症状としては、息切れ、水腫、および激しい疲労感がある。疾患が進行するに従い、心拍出量の不足は他の身体臓器の不全をもたらし、心臓性ショック、不整脈、電気メカニカル乖離および死につながる可能性がある。
【0025】
不応期におけるペーシングの送出は、心臓組織内でのカテコールアミン(ノルエピネフリンなど)の放出を生じる非興奮性刺激(NES)の1タイプである。この化学物質の放出は、心臓組織の収縮性の増加をもたらし、その結果、心拍出量が増加し、心不全の症状が少なくなり、活動能力が向上する。
【0026】
重篤な心臓機能不全および非代償性心不全の処置は、カテコールアミン(ドーパミンおよびドブタミン)やホスホジエステラーゼ阻害剤(ミルリノンまたはアミリノン)などの強心薬による治療を含む可能性がある。これらの薬剤は、特定の状況では有利かもしれないが、静脈経路による薬剤の投与を要することが多く、全身性副作用および多大な時間を要する専門医の関与を伴う。電気刺激治療は、機能不全が発生または悪化した直後に埋め込み式または体外デバイスにより行うことができ、かつその作用を心臓に制限することができるため、魅力的な代案である。
【0027】
不応期における刺激の送出は、心臓組織内でのカテコールアミン(ノルエピネフリンなど)の放出を生じる非興奮性刺激(NES)の1タイプである。この化学物質の放出は、心臓組織の収縮性の増加をもたらし、その結果、圧力または流量が増加し、心不全の症状が少なくなり、活動能力が向上する。NES神経刺激は、脱分極を検知した直後、あるいは初回のペーシングパルスが送出された結果として心室収縮が起きた直後に、印加される1回または複数回のパルスを使用する。これらのNESパルスは、心臓組織の不応期に送出され、別のメカニカル収縮または電気的脱分極を結果的に生じないようにする。
【0028】
別のタイプの電気刺激は、心周期の不応期において与えることができる。このタイプの刺激は、さらなる電気的脱分極を生じ、適切にタイミング調整されれば、期外収縮後増強(PESP)を生じる。1回目の脱分極の直後に生じるさらなる脱分極は、大きな機械的収縮に関係がない可能性が高い。本発明の譲受人に譲渡される米国特許第5,213,098号に詳述されるように、以後の心周期の収縮性は増加する。この機構は、筋細胞内でのカルシウムの循環に依存することが理解される。早期期外収縮は、筋小胞体(SR)からのカルシウムの放出をあまりに早く開始しようとするため、結果としてカルシウムはあまり放出されない。しかしながらSRは、さらなるカルシウムを取り込み続け、その結果、次の心周期でカルシウムがSRから大量放出され、筋細胞はより激しく収縮する。興奮性PESP刺激は、さらなる電気的脱分極を要し、小さなメカニカル収縮が伴う。
【0029】
HF患者の別の既知の処置は、心不全の症状を患う特定の患者群を治療するための房室(AV)同期ペーシングシステム(DDDおよびDDDRペーシングデバイス、心臓再同期治療(CRT)デバイス、および除細動システムを含む)を伴う。これらのシステムは通常、右心房と右心室の両方でペーシングまたは検知を行って、収縮を同期させ、心室の充満に寄与する。心臓再同期デバイスは、二腔ペーシングを両室ペーシングに拡張して、より良好な充満およびより調整の取れた左心室と右心室の収縮を達成する。これらのペーシング治療により、脈圧が上昇し、dP/dtが増加し、心拍出量が向上する。しかしながら、適切なペーシングパラメータを求めることは困難である。例えば、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,626,623号に記載されるように、AV遅延の長さを最適化することは、広範囲にわたる患者の精密検査を伴う圧力データを得ることを要する。これらのペーシングシステムはまた、心房および心室除細動器または頻脈性不整脈の他の治療も含む可能性がある。頻脈の直接的な結果として、あるいは後遺症として、心拍出量が大きく低下し拡張期血圧が上昇するところまで心機能が低下する可能性がある。頻脈を早期に終了させることにより心不全の悪化を防ぐ。
【0030】
上述の治療(ペーシング、CRT、NES、PESP、および除細動機能を含む)は、HFを含む心臓機能不全を処置するために単独であるいは組み合わせて用いることができる。しかしながら、従来技術のシステムは、これらの機構を安全かつ効果的に調整する包括的な治療法を達成していない。1つの問題は、PESPを達成するために非不応期に刺激を送出することに伴う危険性を含む。心臓組織が非不応性になりつつあるときに電気刺激を送出すると、頻脈性不整脈を引き起こす可能性がある。これは特に、複数回の高振幅ペーシングパルスを用いる場合に当てはまる。第2の問題は、疾患過程または投薬により、結果として得られる増強期または不応期の大きさがシフトすることであろう。これにより、許容不可能なレベルの増強性能、または効果の完全な損失がもたらされる。したがって、このタイプの治療に関連する適切なタイミングパラメータを迅速に得ることは不可欠である。
【0031】
上記で参照した米国特許第5,213,098号は、1つまたは複数のセンサおよび信号処理回路部を使用してタイミングパラメータを制御するやり方でのPESPの使用を開示する。例えば、検知した生理的信号を用いて、1回または複数回のさらなる非不応期ペーシングパルスの送出の間の心周期の頻度および回数を制御する。より具体的には、第1のセンサ(例えば、心室または心房血圧または血流量センサ)が、心機能を監視して心機能指数(CPI)を生じるために使用される。第2のセンサ(例えば、冠状静脈洞に配置される酸素飽和度センサ)が、心筋ストレスを監視して心臓ストレス指数(CSI)を生じるために使用される。CPIおよびCSIは、PESP刺激の印加およびタイミングを管理して機能とストレスのバランスを取るために用いられる。開示されるPESP刺激器は、生理レート制御部を有するかまたは有さない二腔ペーシングシステム(例えば、DDD)に組み込むことができる。
【0032】
PESPに伴うもう1つの問題は、心室脱分極が多くなることにより、次の心周期のAV伝導が失われる可能性があることである。この結果、心室での次の内因性脱分極が失われる。通常これは、1心周期おきに起こるだろう。これは一般に、2:1AVブロックと呼ばれる。結果として得られるパターンは不安定である可能性があり、2:1および1:1伝導間の間欠的なシフトを特徴とし、充満が犠牲になるためにPESPがもたらす他の利点を相殺してしまう可能性がある。
【0033】
HFを含む心臓機能不全の処置に利用できる既知の治療を、メカニカル機能または心拍出量を最適化するやり方で組み合わせる一方で、同時に不整脈を誘発する可能性に伴うリスクを最小化するシステムおよび方法が必要とされている。
【0034】
上述のように、PESP治療は、心室の非不応期にパルスを供給することを伴う。パルスは、心室が内発性またはペーシングによる脱分極から約200〜300ミリ秒後に2回目の脱分極を起こすように送出される。この結果、余分な収縮期が得られ、以後の収縮において収縮機能および一回拍出量が増加する。向上した機能の大きさは刺激のタイミングに依存する。期外収縮期(ESI)が短いほど、以後の心周期の増強を、不応期となりそれ以上の増強が結果として得られないところまで大きくすることが知られている。
〔発明の概要〕
本発明は、心臓の血行力学的機能不全のための治療を送出するシステムおよび方法を提供し、本システムおよび方法は、以下の特徴のうち1つを含んでよいが、これらに限定されない。
・他の方法では強心薬(例えばボブタミン、カルシウム、またはミルリノン)を要するかもしれない心臓機能不全の治療、
・他の方法ではメカニカル補助(例えば、大動脈内バルーンポンプ、心臓マッサージ(cardiac compression)デバイス、またはLV補助デバイスポンプ)を要するかもしれない心臓機能不全の治療、
・患者を継続的に監視し、生理的センサがその必要性または患者に症状が出ていることを示すと治療を自動的に行う埋め込み可能または体外デバイス、
・薬剤の過量摂取または低体温の結果生じた心臓機能不全の処置、
・β遮断薬などの陰性変力薬(negative inotrope drug)処置と組み合わせてこれらの治療に対する患者の耐性を改善する、
・虚血後心臓機能不全または例えば冠血管閉塞、血栓溶解剤、血管形成術、または心臓バイパス手術後のスタンニングの治療、
・心臓バイパス術の成功に伴う機能不全のサポートおよび心停止法(cardioplegia)の使用、
・2:1AVブロックを規則化し、メカニカル心拍数を低下させ、かつメカニカル機能を向上させることによる高速かつ許容できない上室性頻脈症(SVT)の治療、また、不整脈の停止を促進してもよい、
・AT、AF、SVT、VT、またはVFを含む頻脈事象後の機能不全の管理(電気カーディオバージョン、緊急ディフィブリレーション、および蘇生を含む)、
・重篤な心不全発作、心臓性ショックの悪化、電気メカニカル乖離(EMD)または無脈性電気活動(PEA)、
・低酸素症または代謝異常に伴う心機能の急性低下、
・例えば、活動前または活動中のHFの、または悪化する症状の間欠治療、
・心拍数を変化させ、充満およびメカニカル効率を上げ、逆リモデリングおよび他の回復プロセスを促進するためのHFの継続治療、
・指定の時間間隔にわたり特定の時間帯での、あるいはN回の心周期毎の計画送出の使用を含むHFの計画治療、
・心房収縮性を高め、より良好な心室充満、およびAV同期を促進するための心房PESP治療、および/または
・治療中に心房負荷を減らし心室機能を良くした結果としてAF負荷を減らすこと。
【0035】
本発明に従って動作するシステムの概要
本発明に従って構成されおよび動作する、上述した治療を送出するために用いられることができるシステムは、当該技術分野で既知のペースメーカまたはICDシステムに内蔵されているタイプの信号発生器、タイミング回路、および/またはマイクロプロセッサ制御回路を含んでよい。例示的なシステムは、米国特許第5,158,078号、同第5,318,593号、同第5,226,513号、同第5,314,448号、同第5,366,485号、同第5,713,924号、同第5,224,475号、同第5,835,975号(それぞれ参照により本明細書中に援用される)に示されるが、任意の他のタイプのペーシングおよび/またはICDシステムもこの目的で用いることができる。このようなシステムにおいて、EGM検知は、心腔内に配置されたリード線上、またはデバイスのハウジング上に保持される電極によって行われる。あるいは、皮下および/または体外パッドまたはパッチ電極を用いて心臓信号を検知してもよい。生理的センサも同様に、当該技術分野で既知である任意の構成および/または検知システムによるリード線システム上に保持されてもよい。
【0036】
以下の導入部は、本発明の全体的な性質およびいくつかの特徴の理解を容易にするためのものである。
本発明に関して使用する電極およびリード線の簡単な説明
本発明の全ての実施形態は、必要な所に電気刺激エネルギーを送出し、このエネルギー送出のタイミングを取って、危険な送出を回避しながら、有益な効果を達成する電極構成を共通に必要としている(以下でさらに述べられる)。上述した各治療部品について、特定の電極の場所および幾何学的構造が好ましい場合がある。刺激用の、本発明の電極の場所および幾何学的構造は、心臓内かまたは心臓に隣接した表面積の大きな除細動コイル電極の使用;右室心尖部、流出管(outflow tract)、心房の各種場所、ヒス束部位、左側心外膜、心膜または心内膜を含む場所におけるペーシング電極;頚部または胸部の骨棘(spine)または神経に近いか、あるいは、心臓の上にあるかまたは心臓に近い交感神経領域;パドルおよびパッチ、円筒電極、一時的な電極(例えば、心外膜電極、経静脈電極、または術後電極)、皮下電極および複数部位の刺激を含む、経胸腔電極を含む。
【0037】
一般的な医用生体工学のやり方によれば、腐食を減らし、分極エネルギー損失に対抗するように、最小の正味電荷を送出しながら刺激治療が適用される。エネルギー効率のよい治療送出および電位図(EGM)検知は共に、分極性の低い誘導法(lead system)から利益を得る。最後に、電極は、治療送出後すぐにEGMの検知を可能にする高速回復増幅器に接続されるのが好ましい。
【0038】
本発明に関して使用するセンサの簡単な説明
最も基本的なセンサは、電位図(ECGまたはEGM)に基づくセンサであり、心臓電気活動を反映する。これらのセンサは、センサが脱分極および再分極信号を容易に検出することができる所に位置する電極ならびに心調律を監視し、不整脈を診断するための検知増幅器を必要とする。
【0039】
一実施形態によれば、血圧センサ、加速度計、流量プローブ、マイクロフォン、または聴力計結晶を用いて、流量、力、速度、心臓の壁の移動を測定し、および/または、心腔の容積を推定することができる。これらのセンサから誘導されるパラメータを用いて、心臓の血行力学的機能不全の発現および重篤度(severity)を検出することもできる。例えば、HF代謝不全を指示することができるのは、心臓拡張期圧の変化が増加し、一方、心室圧の上昇であるdP/dtから導出された心臓の収縮性が減少したときである。
【0040】
本発明の別の実施形態は、経胸腔または心臓内インピーダンス信号の変化を利用して、心臓の運動および呼吸による移動を検知することができる。肺浮腫の結果としての胸腔内インピーダンスの変化を用いて、PESPおよび/またはNES刺激治療をトリガすることもできる。
【0041】
埋め込み可能デバイスまたは外部デバイスにおいて、呼気CO2および血中酸素飽和度、pH、PO2、および/または乳酸塩用の代謝すなわち化学センサを使用して、心臓機能不全を反映することができる。
【0042】
本発明による心房協調 (coordinated) ペーシング(「ACP」)の簡単な説明
本発明の一形態によれば、心臓の上部腔および/または下部腔に対する電気刺激は、不応期および非不応期の両方の期間に送出されて、心房の収縮を協調させ、調律を安定化し、心拍出量を最適化することができる。この刺激は、引き起こされる不整脈に伴う危険を最小にするように本発明によって実施される。内因性の心房事象は、その後に心室事象が続き、心房および心室電位図(それぞれ「AEGM」および「VEGM」)の急峻な動揺部(deflection)として現れる。PESP治療の設定は、断続する2:1AVブロックをもたらす可能性がある。残念ながら、PESPによる1:1伝導が、非常に速い心室レートをもたらす可能性があるため、2:1伝導は、非常に遅い心室レートを生ずる可能性がある。こうした変更形態によって、興奮性PESP治療によって提供される利点のいくつかが相殺される。こうした状況を改善するために、心房ペーシングパルスが、内因性補充間隔より短い間隔で送出される。このACPの形態において、心房は、一定の2:1AVブロックを確立する内因性心房レートを越えるレートでAAIペーシングされ、その結果生ずる内因性心室拍動がより頻繁に起こる。これは、「高速な」AAI心房ペーシングによるACPと呼ばれる。
【0043】
ACPの代替の方法があり、その方法において、内因性のまたはペーシングされた心房事象の後に(洞調律または心房ペーシングされた調律と同様に)心室脱分極が続くが、追加の刺激パルスが、心房および心室にほぼ同時に供給される。このことは、PESP治療によって心房および心室機能の強化を達成するだけでなく、洞結節をリセットして、それによって、得られる全体の心拍数は、一定となり、内因性(または生理的)A−A間隔と関連し、患者の生理的要求によって決まる。この治療形態と関連するACPパルスは、「ACP」と標識付けをされて心房ペーシングの特別な形態として区別される。
【0044】
これらの概念は、タイミング図(例えば、図9)を参照すると最もよく理解される。例えば、第1の波形「A」を用いて、治療の介在のない洞調律を示すことができる。心房で検知された事象(AS事象)は、AV結節を通って心室に伝導して、内因性脱分極(VS事象)を引き起こす。PESP治療が開始されると、2:1AVブロックが通常起こる(第2の波形「B」で示すことができる)が、2:1AVブロックは不安定である場合が多い。こうした波形Bの場合、AVブロックによって、1つおきの内因性心房拍動が心室に伝導することができない。さらに別の波形「C」を用いて、ACPに対する独特のペーシングの実施形態(例えば、AAIペーシング)を示すことができる。
【0045】
本発明の一形態によれば、ペーシングは、内因性レートより高いレートで心房内で起こる。たとえ2:1伝導がまだ存在していても、心房レートが増すため、内因性心室脱分極がより頻繁に起こる。さらに別の波形「D」を用いて、本発明者等がACPの特別な場合であると考える、別の形態のACPを示すことができる。この場合、心房協調ペーシングは、心室(または心房)拍動に続いて比較的短い期間がたって開始される。AVブロックおよび心室の不応状態のために、このACPペーシングされた事象は心室には伝導しない。このACPペーシングされた拍動に続いて、内因性脱分極が心房内で起こることができる(AS)。この内因性拍動は心室に伝導し、心室脱分極が生ずる(VS)。
【0046】
本発明のこの態様によって、心周期の間に、患者の自然なAV伝導および内因性レートが現れることが可能になり、PESP治療中に、よりよいレート制御が可能になる。同時に、所定の期間に発生する内因性心室拍動の数は、心房ペーシングがないときに普通起こるよりも多い。これは、生理的心房協調ペーシング(「ACP」)と呼ばれる。心房ペーシングおよび/または心室ペーシングによってレートの下限を与えるという拡張は、ペーシングの技術分野ではよく知られている。ACPは、本明細書に示した埋め込み可能デバイスによって供給されるか、または、心房および心室の両方を捕捉するのに十分な振幅を有する刺激による表面ECGのR波からタイミングを取った経皮ペーシング(TCP)刺激によって供給されることができる。
【0047】
本発明によるNES/交感神経刺激の簡単な説明
本発明の別の態様によれば、非興奮性の電気神経刺激治療を、首、胸、縦隔、および心臓の交感神経に加えて、ノリエピネフリンなどのカテコラミンの局所放出によってメカニカル機能を強化する。これらの治療は、非興奮性電気刺激(NES)治療として知られており、その理由は、これらの治療が、心臓組織の脱分極を引き起こすことを意図せず、心臓組織を電気的に励起することを回避する電極の場所および刺激タイミングを用いて達成することができるからである。心臓に近い電極は、心筋の不応期の間に1つまたは複数のNESパルスを送出する。もちろん、心筋からそれた所に電流を加える電極は、心臓組織を直接励起せずに、心周期にわたって種々の時刻で電気刺激を送出することができる。
【0048】
本発明による安全ロックアウトルールの簡単な説明
本発明の別の態様は、付随するリスクを最小にしながら、圧力および流量を含む、結果として生じるメカニカル機能を最適化するように、心房および心室に電気刺激を送出することを伴う。本発明のいくつかの特徴がこの目的を達成するために提供され、その特徴は、所望のレベルの強化された機能を得るためのNESおよびPESP治療送出の調整、NESおよび/またはPESPのみに対して調律の規則正しさおよび血行力学上の利点を改善するための心房協調ペーシングすなわちACPの使用、および、催不整脈性である恐れがあるとき、拡張期および冠動脈の血流を減少させる恐れがあるとき、および/または、血行力学についての有益な効果を減らす恐れがあるときに、PESP治療を禁止すなわちロックアウトするための安全ルールを含む。心拍数が速いことは、PESP治療が利益を生じないときの主要な例であり、安全ロックアウトルールを使用するよう動機を与える。
【0049】
安全ロックアウトルールは、短期間または拍動ごとに働いて、前の周期からのV−V間隔が短かすぎる場合、PESP(およびACP(使用可能な場合))が使用不能にされる。このように、異所性は、洞頻脈、他のSVT、VT、およびVFと同様に、PESP治療を抑制するであろう。本発明者等は、さまざまな状況において、このルールが、安全で効率的なPESP刺激治療の重要な要素であることを発見した。
【0050】
本発明による治療開始および停止ルールの簡単な説明
本発明に従うPESPおよびNES治療の適用は、(i)医師によって(試験所の結果および患者の徴候および患者の症状に基づいて)、(ii)患者によって(活動に伴って、予想される症状かまたは現在の症状が改善するように)、または、(iii)これらの刺激治療に応答する状態を検出するデバイスセンサによって自動的に変更されることができる。これらの場合のそれぞれにおいて、別個の最大治療持続期間および終了基準が存在する場合がある(または、治療が医師または患者によって終了させられる場合がある)。
【0051】
刺激治療のセンサ決定式の(sensor-governed)自動開始が本明細書に記載される。その時不整脈が存在しない場合、生理的センサを使用して、心臓の血行力学的機能不全治療を開始すべきかが判断される。動脈圧、右心室圧、および/または左心室圧などの血圧信号センサ(他の離散的な心血管圧測定値を導出するのに利用することができる)を用いて、それぞれの圧力測定値を取得することができる。治療は、これらの測定値が、確立された期間にわたって、所定のしきい値以下に降下するか、またはそれを越える圧力変化を示す時に開始される。本明細書で詳細に示す一例において、機能不全の重篤なレベル(LV dP/dtmax<400mmHg/s)が、6秒を越える期間の正常洞調律の間に認められる。圧力測定値を重み付けし、および/または、組み合わせて、治療送出をトリガするのに用いる統計量を取得することができる。統計量を用いて、HFおよび血行力学的機能不全の発現および重篤度を示すのに用いる長期間傾向データを生成することができる。
【0052】
本発明の別の態様において、RV圧を用いて、RV拡張末期の生成圧、時間に応じた最大圧の変化(dP/dtmax)、肺動脈拡張期圧の推定値(ePAD)、RV弛緩または収縮時定数(τ:tau)、またはRV再循環分画(RF)が導出される。次に、導出されたこれらのパラメータを用いて、機能不全の程度が、治療送出が開始されるような許容可能レベルを越えたときが求められる。パラメータは、上述したように測定され、計算され、しきい値と比較されるか、または、センサ信号が処理され、心臓機能不全がテンプレートマッチングおよび分類によって特定される。しきい値および/または分類方式は、定期的に更新されて、治療の原因としての、患者の状態の任意の自然な変化を排除することができる。
【0053】
本発明はまた、心周期長の長期にわたる解析を通して、予想される血行力学上の折衷案を組み込むことができる。例えば、長い持続期間および速いSVT、VT、またはVFは、急性HF代謝不全を含む機能不全、心臓性ショック、あるいは、自発的終了またはカーディオバージョン後の電気メカニカル分離(EMD)または無脈性電気活動(PEA)を生ずる可能性が高い。こうした場合、刺激治療の試験(trial)が、メカニカルセンサ、代謝センサ、または化学センサの確認なしでプログラムされてもよい。
【0054】
患者の体内の電極からの表面心電図(ECG)または電位図(EGM)信号などの他の信号を用いて、機能不全および心不全(HF)を検出することができる。例えば、ECGによって検出される心周期(PQRST)のSTセグメントレベルを監視することができる。上昇したか、または低下したSTセグメントレベルは、虚血(機能不全およびHFと関連することが知られている状態)の信頼性の高いインジケータであることがわかった。別法として、Q−T間隔の持続期間を用いて、血行力学的機能不全を検出することもできる。例えば、短くなったQ−T間隔は心筋機能不全を示す場合がある。ウェーブレット分類アルゴリズムなどのテンプレートマッチングアルゴリズムを用いて、血行力学的機能不全に伴う電位図信号を特定することができる。
【0055】
血液を解析して、乳酸塩、O2飽和度、PO2、PCO2、およびpHの変化を検出するセンサを含む化学センサを用いて、治療を開始することができる。蘇生手技中に、心拍出量のインジケータとしてのPCO2について呼気ガスを解析することができる。脈波型酸素飽和度測定は、頻脈性不整脈のカーディオバージョンに続く外部自動ディフィブリレーション(AED)を本心臓治療に適用する状況において特別の有用性を有する酸素飽和度およびパルスプレチスモグラム信号についての無侵襲評価を提供することができる。次に、治療は、これらの変数によって反映される機能不全またはHFの程度が、十分な期間の間所定量を下回るまで続けられる。
【0056】
圧力センサは、上述の例において、(また、‘631号特許の開示において)非常に目立つが、いくつかの他のセンサはメカニカル機能を反映するであろう。心臓内の、または経胸腔のインピーダンス変化は、メカニカル機能、一回拍出量、および心拍出量を反映する。体内の、または外部に貼り付けられた加速度計またはマイクロフォンは、重篤な心臓機能不全を検知し、治療に対する応答を監視する。超音波を埋め込むか、または外部で印加することによって、心臓の容積、寸法の変化、および速度を測定することができる。
【0057】
治療終了条件が満たされたかどうかを判断して、治療を終了するように、生理的信号が検知され続けてもよい。例えば、AEDの状況で、これは、頻脈性不整脈が終了したこと、および、動脈脈圧が回復に適合するレベルに達したことを判断することを含むことができる。しかしながら、治療を適用すべきかどうかを判断するために、圧力センサまたは加速度計などのメカニカルセンサを用いることは、心臓胸部圧迫などのPEA/EMDの外部処置が、生理的信号に誤差を導入する可能性があり、その誤差は、治療が必要とされるときに治療を禁止するか、または遅延させるという欠点を有する。本発明のさらなる態様は、心機能を検出する心臓内または心臓の上のメカニカルセンサだけでなく、埋め込み可能デバイスハウジングまたは筐体(不関電極として働く)の内部などの、心臓から離れた所の第2のセンサまたは複数のセンサを含むことである。この第2のセンサから、(胸部圧迫などによる)CPRアーチファクトが特定され、引き算されて、より正確な真の心機能の評価が示されることができる。
【0058】
治療は普通、不整脈事象が検出されると自動的に中断される。不整脈事象が終了すると、再誘導のリスクを減らすために治療が自動的に再構成されることが可能である。治療はまた、期外心室収縮(PVC)などの十分な量の異常な脱分極が検出されると中断されるであろう。レート限度を用いることによって、ウェーブレット分類アルゴリズムに似た、テンプレートマッチングアルゴリズムなどのテンプレートマッチング型アルゴリズムによって、または、Medtronics, Inc.の独自の検出技法である、PR−logic(登録商標)型調律識別方式を用いて、1つまたは複数のPVCが検出されるであろう。
【0059】
本発明による不応間隔の特定についての簡単な説明
心機能にとっては有益であるが、PESP刺激パルスの送出は、不整脈を誘導するリスクを最小にするように制御されなければならない。初期時刻ゼロ(0)においてQRS群に一致する心室脱分極に続く期間の間に期外収縮を誘導するのに必要とされるパルスの強度を示す刺激−強度曲線と整列したECGまたはEGM信号のトレースを参照すると、これが最もうまく実現される。絶対不応期の間に、直接か、または心房腔に電気刺激を印加することによってのいずれかによって電気刺激を送出することで別の脱分極が誘導されないように、心室は不応性である。この期間後、心臓組織に電気刺激が送出されると、別の電気的脱分極が可能になるように組織が回復する。この期間の間に期外収縮を引き起こすのに必要とされる電流量は、刺激−強度曲線によって示される。
【0060】
最初は、組織を捕捉するのに必要とされる電流レベルは高いが、その後、埋め込み可能ペーシングリード線の場合、約0.5〜1mAの基線レベルまで急速に減少する。AEDまたは外部ディフィブリレータの電極パッドまたはパドルによるTCPの場合、基線レベルは、約50〜100mAである可能性がある。
【0061】
また、心室の「受攻期」は、PESP治療が行われるときに考慮されなければならない。受攻期は、VTまたはVFエピソードを引き起こす恐れのある所定の振幅か、またはそれを越えて電気パルスが送出される期間を示す。例えば、40mA以上の振幅を有し、約170ミリ秒で送出されたパルスは頻脈性不整脈を誘導する可能性がある。
【0062】
特定することの重要性および不応−非不応の境界を特定する技法が本明細書に記載される。非興奮性神経刺激の利点は、パルスが不応期のどこにあってもよいこと(pulses anywhere in the refractory period)から生ずる。不応期からはずれて送出されたNES神経刺激は、興奮性である場合が多い(また、本明細書で以下に続く興奮性PESP解析において対処されるであろう)。
【0063】
興奮性PESP刺激治療から生ずる強化または増強のレベルは、本明細書でさらに述べる増強応答曲線に従う。本発明者等は、不応期後すぐに送出される、こうした電気刺激パルスが、後で強い収縮を生ずることを見出した。刺激の遅延が大きいと増強の量が減る。早期すぎる(すなわち、期外の)刺激は、心筋が不応性であるため、増強が加えられない。受攻期について論じたように、不整脈を誘導するリスクは、不応期よりほんの少し長い、比較的狭い期間に限定される。しかしながら、本発明者等は、(簡単に上述した)安全ロックアウトルールおよび(同様に簡単に上述した)ACP協調に従って、単一のPESPパルスが送出される場合、こうしたリスクは全く小さいことを発見した。PESP刺激治療についての合成利益関数が本明細書において開示され示される。小振幅PESPパルスは、絶対不応期に制限されると実質的には「利益に中性(benefit neutral)」であり、不応期よりほんの少し長い短期間についてリスクが少しあり(not without risk)、この短期間後すぐに最大利益まで上昇し、最後に、固有の周期長の近くで送出されたパルスについて、再び「利益に中性」になる。
【0064】
結果として、不応−非不応期境界についての刺激タイミングが、所望の応答(NESまたはPESP)を取得すること、および、治療送出のリスクと利益を制御することの重要な側面であることが明らかである。本発明は、電気的センサおよび/またはメカニカルセンサ信号からこの時刻を求める手段を提供し、それによって、より安全でより効率的な刺激治療が可能になる。
【0065】
本発明者等は、不応期が、Q−T間隔と密接に関連しており、Q−T間隔は、当技術分野で既知の技法によって、電位図信号または他の生理的センサ信号から得ることができるという事実を利用する。Q−T間隔長を用いて、直接か、または、心拍数および検知遅延の関数を組み込むことによるかのいずれかで、不応期の持続期間が推定される。PESP治療の場合、Q−T間隔長は、期外収縮刺激パルスから誘発されたT波までの時間間隔によって推定することができ、PESPを伴わない心周期中よりも少し長いであろう。これは、PESPによって引き起こされた追加の脱分極がQT間隔を少し長くするためである。
【0066】
別法として、PESP刺激の誘発反応を監視して、PESP治療が、不応期に送出されたかどうかが示されるであろう。例えば、不応期中に始まる複数の電気パルスが心筋に印加される。各パルスの結果は、パルスが期外収縮を引き起こしたことを示す誘発反応が検知されるまで、刺激電極か、または補助電極のいずれかからEGM上で検知される。この時点では、不整脈を誘導するリスクを最小にするため、パルスはそれ以上印加されないであろう。
【0067】
別の例において、単一パルスの振幅およびタイミングは、誘発されたR波によって捕捉が検出されるまで操作されてもよい。捕捉が失われた場合、刺激パルスは、より大きく遅延させられるか、振幅を増加させられるか、PESPパルス列のパルス数が増加させられる。また、本発明を実施するときに、PESP刺激が心室を捕捉している/捕捉したかどうかを評価するのに用いられる圧力波形(または、任意の他のメカニカル応答変数)の特徴を利用することができる。期外収縮の存在は、先行の圧力パルスのサイズの5〜80%という狭い心室圧力パルスによってか、または、テンプレートマッチングアルゴリズムなどの適当なアルゴリズムによって特定されるであろう。期外収縮として役立つことが意図されるパルスについての捕捉と非捕捉の間の移行もまた、後続の増強された拍動の圧力波形の変化によって特定されてもよい。このことは、心房パルス圧について明確に示することができる。
【0068】
本システムはまた、不応期中に、1つまたは複数のパルスを含む波形を用いて任意選択の非興奮性神経刺激を送出することができる。NES刺激が確実に受攻期に入らないようにするために、不応期長が上述した機構を用いて推定される。NESが独占的に予定される場合、期外収縮の検出によって、刺激の遅延時間、振幅、またはパルス数が減らされなければならない。
【0069】
不応−非不応境界が、非常に重要であり、患者ごとに、さらに患者の時間経過により、疾患および薬剤により変わるため、これらの方法は、デバイスの刺激タイミングアルゴリズム部にとって、定期的に、または絶えず使用されるべきである。この境界情報がパルスタイミングを直接設定するのに用いられない場合、この情報を使用して、タイミングに対する限度が確立されることができ、その限度は、次に、臨床医かまたは次に述べるような、ある自動制御アルゴリズムによって設定される。
【0070】
PESP治療についてのSVT管理の簡単な説明
本発明によるPESP治療は、PESP治療を適用することによって、速いSVTを減速させるのに使用することができる。こうした速いSVTは、異所性または再入可能な調律が心房またはAV結節を包含し、心室に伝導するときに生じる。心室への伝導は、非常に速いため充満および駆出を損ない、結果として、圧力および流量が通常損なわれる。興奮性PESP刺激パルスの導入によって、心室において追加の不応期が生成され、2:1レート減少が起こる。さらに、増強作用、および強化されたメカニカル機能が生ずる。正味の結果は、血行力学性能の改善を伴う有効なレートの減少である。このPESP治療法は、生命を脅かす可能性のあるSVTを、十分に許容される調律に変えるだけでなく、自然な、デバイスまたは薬剤手段によって、不整脈を終了させるのにより多くの時間を与える。
【0071】
本発明による刺激治療のフィードバック制御の簡単な説明
本発明のさらに別の態様によれば、生理的センサからの閉ループフィードバックを用いて、電気刺激のタイミングが調整され、それによって、心機能をさらに最適化し、安全を維持し、心臓の応答性の変動に対処するように治療送出を合わせることができる。基本PESP増強応答曲線(しきい値上刺激時間の関数)は、基本非興奮性神経刺激(NES)応答曲線(不応期の刺激強度の関数)と共に本明細書に示される。患者ごとの、または、患者内の(時間経過による)変化は、一定のNES刺激について、異なるレベルの強化された機能をもたらす可能性がある。逆に、所望のレベルの強化を維持するには、種々の刺激期間または強度が必要とされる可能性がある。
【0072】
センサ信号フィードバックを用いて、閉ループ方式で刺激タイミングを決定して、応答性の変動に対処するようにすることができる。医師は、生理的情報に対応して、電気刺激の振幅およびタイミングを調整することができる。別法として、この応答は、コントローラと呼ばれるアルゴリズムに従ってデバイスによって得ることができる。初歩的だが役に立ち、広く用いられているコントローラの種類は、PID制御またはP+I+D制御と呼ばれる。PIDコントローラは、センサレベルが、目標レベルまたは設定点からどれほど離れているかを反映する誤差信号によって動作する。コントローラの出力は、誤差信号、誤差の積分値、およびそれぞれP、I、およびDを表す定数によってそれぞれスケーリングされた誤差の導関数の組み合わせである。実際のコントローラは、その出力および積分器に制限を組み込んで、コントローラが影響を与えるシステム(プラントと呼ばれる)への入力を適度な範囲内に保ち、応答性を維持する。
【0073】
RV dP/dtmaxに基づく機能しているP+Iコントローラの図が、本発明と共に用いられるために本明細書に開示される。例として、280mmHg/秒の基線からのPESP刺激について、700mmHg/秒の設定点が選択され、コントローラおよび刺激が始まった。PESP刺激パルスは、上限および下限内で、P+Iコントローラに基づいて各心周期を自動的に調整した。本発明者等は、調査の間に、コントローラの利得を増加させ、それによって、振動が起こった。小さい利得を用いると、フィードバック制御を利用することで、少し応答を遅らせて、プラントの応答の変動に対する大幅な頑強性を得ることが可能であった。
【0074】
刺激期間ならびに最大振幅、パルス間隔、1列(train)内のパルス数、パルス列の順次パルスの振幅の変化、および他のパラメータは、所与の患者について最適な心臓性能を達成するために調整されてよいことが留意され得る。これは、検知した生理的パラメータを閉ループ方式で監視することによって得ることができる。次に、パルス列はそれに応じて調整されて、心拍出量または生理的機能の他の指標を最大にすることができる。例えば、単一PESPパルスのタイミングを変えるのではなく、コントローラは、パルス列の数および持続期間を変えてもよい。
【0075】
PESP治療について先に論じたものと非常に似た閉ループ環境で監視することによって、生理的信号を用いて心機能をさらに改善するように、NES刺激が調整されてもよい。NESおよびPESP治療で使用するのに最も有効であることが見出された種々のパルス列が、‘631号特許の開示に詳細に述べられている。パルス数、パルス振幅、パルス形状、および任意の他の信号の態様は、心拍出量を最大にするように生理的測定値に基づいて変えてもよい。NESおよびPESPパルス列は共に、心拍出量を最大にするように最適化されることができる。NESおよびPESP治療は共に、心周期ごとに適用される必要はなく、アプリケーションによって、一定数の周期を飛ばすことができるであろう。飛ばされる周期の数もまた制御変数として役立つであろう。
【0076】
頻脈性不整脈管理デバイスへの拡張についての簡単な説明
心臓刺激治療が、これらの治療に従って行われる(activated)ならば、本発明のさらなる態様は、カーディオバージョンおよびディフィブリレーション用の抗頻脈ペーシング(ATP)およびショックを送出する現存の療法を変更することである。本発明のこの態様を示すフローチャートは、本明細書に示され、ICD(埋め込み可能カーディオバータ/ディフィブリレータ)およびAED(外部自動ディフィブリレータ)の両方に適用可能である。
【0077】
現存の従来技術の療法に対する第1の変更は、現在の上限を超えてショックの数を増やすことである。
第2の変更は、シーケンスにおいて、後になるほどショック間の期間を増やすことである。間隔が広くなると、より高い特異性の検出が可能になり、それによって、ショックが誘導する心筋損傷のリスクが起こる可能性が最小になるであろう。
【0078】
第3の変更は、追加のショックを送出するのが最も有効であるときに関するインジケータであってよい、規則正しさの増加および/または振幅の増加がないかEGMを監視することである。
【0079】
本発明のさらなる態様は、埋め込み式治療デバイスおよび外部治療デバイスの、現存の調律認識アルゴリズムを修正することであって、それによって、既存の外部デバイスまたは埋め込み式デバイスによって、それぞれ送出された治療パルスと同時に動作することに対処することである。刺激パルスに伴う電位図のスルーレートの急峻な変化は、自動調律認識のために、認識され、無視することができる。さらに、心臓機能不全の状況において、第2の脱分極の直前に検出された、刺激パルスによる密接した心室脱分極の対は、PESP期外収縮であり、内因性二重頻脈調律ではないと考えられる。デバイスは、それに従って有効な心拍数および調律を解析し、誤って頻脈性不整脈を検出または処置することはない。
【0080】
本発明を構成するシステムの簡単な説明
興奮性PESP刺激のための統合した重要な態様を示す、本発明の上位レベル図を示す包括的なフローチャートが、本明細書に含まれる。代表する心臓および心血管系は、ペーシング、除細動、CRT、PESPを含む電気的治療、または任意選択でNES刺激治療によって影響を受ける。心臓および心血管系は、電気的、メカニカル、および代謝/化学センサによって監視されることができる。これらのセンサからの信号は、治療の開始または停止に対する決定、閉ループ制御、不応期の検出、治療安全ロックアウトルール、および心房協調ペーシングに影響を与える。
【0081】
本発明のこれらおよび他の利点および特徴は、図面と共に検討すると、以下の本発明の好ましい実施形態の詳細な説明からより容易に理解されるであろう。いくつかの図を通して、同様の参照符号は同様の構造を示す。図面は一定縮尺どおりには描かれておらず、本発明のあらゆる実施形態の要素全てを必ずしも含むものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0082】
以下の詳細な説明において、本発明を実施する例示的な実施形態を参照する。本発明の範囲を逸脱することなく他の実施形態を利用してよいことは理解されよう。
好ましい実施形態を説明する前に図1を参照する。図1は、先に引用した米国特許第5,800,464号からの参照であり、絶対血圧、大動脈血流量、および左心室容積の変動に関連する、正常な洞調律心周期に伴う電気脱分極波を示す。右心房および右心室は、PQRST群に関連して、左心房および左心室と略類似の圧力、流量、および容積の変動を示す。本発明の監視および刺激治療の態様は、心臓の片側または両側に存在し、そこで作用することができることが理解されるであろう。心周期は、右心房に静脈血が再び充満し、左心房に酸素化された血液(oxygenated blood)が再び充満する際に、連続的なPQRST群と後続の心房および心室の弛緩との間隔内で終了する。洞調律では、脱分極の間隔は、それぞれ120bpm〜60bpmの対応する洞心拍数に対して約500.0ミリ秒〜1,000.0ミリ秒である可能性がある。この時間間隔において、心房および心室は弛緩し、全体的な心房サイズすなわち容積が胸腔内圧および呼吸に応じて変化することができる。図1の血圧図において、心房および心室血圧の変化が心周期のP波およびR波に追随し、P波およびQ波に遅れることを認めることができる。期間T0〜T1は、AV間隔を包含する。
【0083】
機能不全のSA結節またはAVブロックに起因する徐脈から生じる心臓の機能不全を患う患者において、従来の心房および/または心室ペーシングを処方して、十分な心拍数およびAV同期性を回復することができる。例えば、図1では、心房および/または心室ペーシングパルスは、P波、および一般にR波と呼ばれるQRS群の動揺部(deflection)より前に起こる。心房または心室の心筋細胞が、後続の心房収縮期間(T0〜T1)および心室収縮期間(T1〜T2)に続いて、弛緩することができないことによって心拍出量が低下する可能性がある。図1に示すように、心収縮期間が長くなると、受動的充満時間T4〜T7が減る。したがって、次の心周期において心房および/または心室から排出される血液量は、最適値未満である可能性がある。これは特に、HF患者または心臓の剛性が増した他の患者に見られる事例であり、受動的充満段階(T4〜T7)中および心房収縮期(T0〜T1)中の心臓の充満は大幅に制限される。
【0084】
本発明の監視/治療送出IMDを用いて、所定期間にわたって記憶用患者データとして上述のパラメータを取得し、心不全を処置する治療を送出することができる。医師は、患者データのアップリンクテレメトリ送信を開始し、患者データを再検討して、患者の心臓の心不全状態を評価することができる。次いで医師は、特定の治療が適切であるかを判断し、ある期間の治療を処方し、一方、後の再検討および評価のために記憶用患者データを再び蓄積して、行った治療が有益であるか否かを判断することができ、それにより、適切である場合には、治療を定期的に変更することが可能になる。このような治療には、薬剤治療、PESPおよび/またはNES刺激を含む電気刺激治療、ならびに単腔、二腔、および多腔(両心房および/または両心室)ペーシングを含むぺーシング治療が含まれる。さらに、悪性頻脈性不整脈の傾向がある患者において、頻脈性不整脈の検出または分類および送出される治療のパラメータを設定する際に、心不全状態の評価を考慮することができる。
【0085】
したがって、本発明の実施形態を多腔ペーシングシステムの状況において詳細に開示する。この多腔ペーシングシステムは、1つまたは複数の心腔に作用するように位置するセンサ、検知電極、および電気刺激電極から、心臓のメカニカル機能不全を示す上述のパラメータを導出するように変更されている。本発明の実施形態は、必要に応じて動作し、心房に追随し、トリガ式にペーシングする、両心房および両心室のAV順次ペーシングシステムとして動作して、検知されかつペーシングされた心房事象と同期した、左および右心房の脱分極ならびに収縮の同期性を回復するようにし、それによってHFおよび/または徐脈を処置するようにプログラムすることができる。したがって、本発明のこの実施形態は、上部および下部心腔の同期ならびに右および左の心房腔および/または心室腔脱分極の同期性を回復するために、AV同期動作モードを有する、2チャネル、3チャネル、または4チャネルのペーシングシステムとして動作するようにプログラム可能である。しかしながら、後述する複雑な多腔ペーシングシステムの部品のうちの特定のもののみが、機能するように選択的にプログラムされ、すなわち、より単純な単腔監視/刺激システムに単に物理的に組み込まれて、心不全状態を示すパラメータを導出することができることが理解されるであろう。
【0086】
図2において、心臓10は、上部心腔、すなわち右心房(RA)および左心房(LA)、下部心腔、すなわち右心室(RV)および左心室(LV)、ならびに冠状静脈洞(CS)を含む。冠状静脈洞は、右心房の開口から心房を横方向に延びて大静脈を形成し、さらに下位に延びて大静脈の分岐に入る。心周期は通常、右心房壁のSA結節における脱分極インパルスの発生により開始する。次いでインパルスは、結節間路を経て右心房を通り、バッハマン束を経て左心房中隔に伝導する。RA脱分極波は、房室(AV)結節および心房中隔に約40ミリ秒以内で達し、最も離れたRAおよびLA壁に約70ミリ秒以内で達する。電気的活性化後およそ50ミリ秒に心房が収縮する。RAおよびLA脱分極波の集合体は、外部ECG電極にわたって検知されて表示されると、PQRST群のP波として見える。RAまたはLA上にあるいはそれに隣接して位置する単極または双極ペーシング/検知電極対間それぞれを通る心房脱分極波の成分は、検知されたP波とも呼ばれる。外部ECG電極または埋め込み式単極心房ペーシング/検知電極の場所および間隔はいくらかの影響を及ぼすが、このような電極に結合した高インピーダンス検知増幅器によって測定する場合、正常なP波の幅はせいぜい80ミリ秒である。RAまたはLA上にあるいはそれに隣接して位置する密接した間隔の双極ペーシング/検知電極の間で検知された正常の近方場P波は、高インピーダンス検知増幅器によって測定する場合、P波の幅はせいぜい60ミリ秒である。
【0087】
AV結節に達した脱分極インパルスは、約120ミリ秒遅れて、ヒス束を下方へ心室内中隔(intraventricular septum)に伝導する。脱分極波は、心臓の心尖領域(apical region)に約20ミリ秒後に達し、その後残りの40ミリ秒にわたってプルキンエ線維網を通って上方に移動する。RAおよびLA脱分極波の集合体、および脱分極した心筋の再分極を伴う後続のT波は、外部ECG電極にわたって検知され表示されると、PQRST心周期群のQRST部と呼ばれる。RVまたはLV上にあるいはそれに隣接して位置する単極または双極ペーシング/検知電極対間を通るQRS心室脱分極波の振幅が振幅しきい値を超えると、この振幅は検知されたR波として検出される。外部ECG電極または埋め込み式単極心室ペーシング/検知電極の場所および間隔は、R波の検知にいくらかの影響を及ぼすが、高インピーダンス検知増幅器によって測定する場合、正常なR波の持続期間は80ミリ秒を超えない。RVまたはLV上にあるいはそれに隣接して位置する、密接した間隔の双極ペーシング/検知電極間で検知された正常な近方場R波は、高インピーダンス検知増幅器によって測定する場合、R波の幅はせいぜい60ミリ秒である。
【0088】
正常の電気的活性化シーケンスは、進行したHFを患い、かつ心房内伝導遅延(IACD)、左脚ブロック(LBBB)、右脚ブロック(RBBB)および/または心室内伝導遅延(IVCD)を示す患者において著しく分断される。これらの伝導欠陥により、RV活性化およびLV活性化の間に大きな非同期性が生じる。心室内非同期性は、80〜200ミリ秒以上の範囲である可能性がある。RBBBおよびLBBB患者において、QRS群は、表面ECGで測定する場合、正常範囲を大きく超えて120〜250ミリ秒に広がる可能性がある。幅の増加は、右および左心室脱分極および収縮の同期性が欠けていることを示す。
【0089】
図2はまた、埋め込み式の多チャネル心臓ペースメーカ、ICD、IPG、または心房および心室腔のAV同期収縮ならびに右および左心室の同時または順次ペーシングを回復する、上記のタイプの他のIMDを示す。ペースメーカIPG14は、皮膚と肋骨の間で患者の体内の皮下に埋め込まれる。3本の心内膜リード線16、32、52により、IPG14がRA、RVおよびLVにそれぞれ接続される。各リード線は、少なくとも1つの導電体およびペーシング/検知電極を有し、遠隔の筐体(can)不関電極20が、IPG14のハウジングの外面の一部として形成される。さらに後述するように、ペーシング/検知電極および遠隔の筐体不関電極20(IND_CAN電極)を選択的に用いて、ペーシングおよび検知機能のために単極および双極ペーシング/検知電極の複数の組み合せを実現することができる。右および左心腔内またはその周囲の図示した位置もまた、単なる例示である。さらに、RA、LA、RVおよびLV上、またはその内部、またはそれらに関連する電極部位に位置するようになっている図示のリード線およびペーシング/検知電極の代わりに、他のリード線およびペーシング/検知電極を使用することもできる。
【0090】
図示の双極心内膜RAリード線16は、静脈を介して心臓10のRA腔に通され、RAリード線16の遠位端は、取り付け機構17によってRA壁に取り付けることができる。双極心内膜RAリード線16は、IPGコネクタブロック12の双極の穴に嵌まるインラインコネクタ13とともに形成される。IPGコネクタブロック12はリード線本体15内の一対の電気的に絶縁された導体に結合され、遠位先端RAペーシング/検知電極19と、近位リングRAペーシング/検知電極21とに接続される。心房ペーシングパルスの送出および心房検知事象の検知は、先端RAペーシング/検知電極19と、近位リングRAペーシング/検知電極21との間で行われ、近位リングRAペーシング/検知電極21は、不関電極(IND_RA)として働く。別法として、単極心内膜RAリード線を、図示の双極心内膜RAリード線16の代わりに用いてもよく、IND_CAN電極20と共に用いてもよい。または、遠位先端RAペーシング/検知電極19および近位リングRAペーシング/検知電極21の一方を、単極ペーシングおよび/または検知のためにIND_CAN電極20と共に用いてよい。
【0091】
双極心内膜RVリード線32は、静脈および心臓10のRA腔を経てRVへと通され、RVにおいて、その遠位リングおよび先端RVペーシング/検知電極38および40が、従来の遠位取り付け機構41により心尖部の適所に固定される。RVリード線32はIPGコネクタブロック12の双極の穴に嵌まるインラインコネクタ34と共に形成される。IPGコネクタブロック12は、リード線本体36内の電気的に絶縁された導体の対に結合され、遠位先端RVペーシング/検知電極40および近位リングRVペーシング/検知電極38に接続され、近位リングRVペーシング/検知電極38は不関電極(IND_RV)として働く。別法として、単極心内膜RVリード線を、図示の双極心内膜RVリード線32の代わりに用いてもよく、IND_CAN電極20と共に用いてよい。または、遠位先端RVペーシング/検知電極40および近位リングRVペーシング/検知電極38を、双極ペーシングおよび/または検知のためにIND_CAN電極20と共に用いてよい。
【0092】
この図示した実施形態において、双極の心内膜LV CSリード線52は、静脈および心臓10のRA腔を通ってCSに入り、次いで下方に大静脈48の分岐血管に通されて、LV腔に沿って遠位LV CSペーシング/検知電極50を延ばす。このようなLV CSリード線は、上大静脈、右心房、冠状静脈洞口および冠状静脈洞を通って、大静脈などの、冠状静脈洞から下行する冠状静脈へと進む。通常、LV CSリード線およびLA CSリード線はいかなる固定機構も用いず、その代わり、ペーシング/検知電極(単数または複数)を所望の部位に保持するように、これらの血管内にしっかりと拘束することに頼る。LV CSリード線52は、直径が小さい単一の導体リード線本体56と共に形成され、このリード線本体56は、IPGコネクタブロック12の穴に嵌まる近位端コネクタ54において結合される。直径が小さい双極のリード線本体56を選択して、大静脈48から下方に分岐する静脈内の深部に遠位LV CSペーシング/検知電極50を収容するようにする。
【0093】
好ましくは、遠位LV CS活性ペーシング/検知電極50は、左心室および心室内中隔のバルクにわたってLVペーシングパルスを送出するために、LVペーシングパルス近位リングRV不関ペーシング/検知電極38と対にされる。遠位LV CS活性ペーシング/検知電極50はまた、さらに後述するように、RVおよびLVにわたって検知を行うために、遠位先端RV活性ペーシング/検知電極40と対にされることが好ましい。
【0094】
さらに、4腔実施形態では、LVCSリード線52は、LAに隣接するより大きい直径の冠静脈洞CS内にあるように、リード本体に沿って位置決めされた近位LA CSペーシング/検知電極を保持する。この場合、リード線本体56は、より近位のLA CSペーシング/検知電極から近位方向に延び、双極コネクタで終端する2つの電気的に絶縁されたリード線導体を収容するであろう。LV CSリード線本体は、近位LA CS電極および遠位LV CS活性ペーシング/検知電極50間でより短いであろう。この場合、RAのペーシングは、活性近位LA CS活性電極および近位リングRA不関ペーシング/検知電極21間のペーシングベクトルに沿って達成されるであろう。
【0095】
通常、図2に示すタイプのペーシング/除細動システムにおいて、「ペーシング/検知」電極として先に示した電極は、ペーシングおよび検知の両機能に使用される。本発明の一態様によると、これら「ペーシング/検知」電極は、ペーシングまたは検知電極として専用に使用されるようにか、または心臓信号を検知しかつペーシングおよび検知ベクトルに沿ってペーシングパルスを送出するために、プログラム式に組み合せてペーシング/検知電極として共通に使用するように選択することができる。個別または共有の不関ペーシングおよび検知電極もまた、ペーシングおよび検知機能において指定することができる。便宜上、以下の説明はペーシングおよび検知電極対を、区別が必要である場合に個別に指定する。本発明に関して、医療電気リード線43に結合された皮下電極45が、図2に示される1本または複数本のリード線または電極に追加されるか、またはその代わりに用いられてもよい。皮下電極45を利用する場合、適切な除細動(ディフィブリレーション)コイル47が適当な高電圧回路部に結合され、タイミングが取られた除細動パルスを送出することができる。コイル電極53がRVリード線32の一部に結合されて示されるが、このような電極は、図2に示す任意のリード線の他の部分、例えばLV電極57に結合されてよい。コイル電極53、皮下電極45、または他のタイプの適当な電極構成は、高電圧回路部のほかに低電圧ペーシング/検知回路部に電気的に結合できる。既知のように、このような電極は心臓内、心臓の周囲、および心臓上の様々な位置に設けることができる。
【0096】
図2にはまた、RVセンサ55およびLVセンサ59が示され、これらは、当該技術において既知の様々なセンサの1つまたは複数を含む。好ましくは、RVセンサ55は絶対圧センサを含むが、他の圧力センサを利用することもできる。さらに、RVセンサ55は、加速度計、インピーダンス電極、酸素飽和度センサ、pHセンサ等を含むことができる。さらに、リード線の各々は、心収縮期および拡張期圧力を生成するメカニカルセンサ、ならびにRA、LA、RVおよびLVの拡張および収縮の容積測定値を生成する離間した一連のインピーダンス検知リード線を備えることができる。
【0097】
当然ながら、このようなセンサは、生体適合性があり、長期使用のために信頼があるようにされなければならない。NES治療を送出する本発明の実施形態に関して、少なくとも1つの電極の好ましい位置は、隣接の交感神経に非常に近接した冠状静脈系内である。さらに、図2に示すセンサ11などの1つまたは複数のセンサは、IMD14のハウジング20内またはハウジング20上に位置してよい。
【0098】
図3Aは、治療の送出および/または生理的入力信号の処理を可能にする患者の体10に埋め込まれた、例示的な多腔モニタ/センサ(埋め込み可能医療デバイス:IMD)100のシステムアーキテクチャを示す。通常の多腔モニタ/センサ100は、タイプおよびそのタイプに内蔵される機能特徴に応じて精巧さおよび複雑さが変わる、マイクロコンピュータベースの制御およびタイミングシステム102を中心に構成される。マイクロコンピュータベースの多腔モニタ/センサの制御およびタイミングシステム102の機能は、ファームウェア、ならびにRAMおよびROM(PROMおよびEEPROMを含む)に記憶され、通常のマイクロプロセッサコアアーキテクチャのCPU、ALU等を使用して実行される、プログラムされたソフトウェアアルゴリズムによって制御される。当然ながら、このようなファームウェアおよびソフトウェアはin situ(例えばin vivo)で変更することができ、動作特性を特定の状況または患者に合わせることができる。医師または臨床医は、このようなアルゴリズムの検出または応答の変化を引き起こすであろう1つまたは複数のパラメータを変更することができる。多くの場合に、所望のソフトウェアルーチンが有利に変化するように離散的な値を変更することができるが、時には、当該技術において既知のように、動作ソフトウェアの全く新しいセットを、動作ソフトウェアの今あるセットの代わりに用いることもできる。マイクロコンピュータベースの多腔モニタ/センサ制御およびタイミングシステム102はまた、ウォッチドッグ回路、DMAコントローラ、ブロックムーバ/リーダ、CRC計算器、および当該技術において既知の方式の経路すなわちツリーにおけるオンチップデータバス、アドレスバス、電力線、クロック線および制御信号線により連結された、他の特定の論理回路部を含んでもよい。また、多腔モニタ/センサ100の制御およびタイミングは、プログラムされたマイクロコンピュータではなく専用の回路ハードウェアまたは状態マシンロジックにより達成し得ることが理解されるであろう。
【0099】
また、多腔モニタ/センサ100は通常、患者の心腔の特定部位に位置するセンサおよびペーシング/検知電極からの信号を受け取り、かつ/または心不全パラメータを導出するPESP刺激またはペーシング治療を心腔に送出する、患者インタフェース回路部104を含む。したがって、患者インタフェース回路部104は、ペーシングおよび他の刺激治療を任意選択で含むPESP刺激送出システム106と、センサによる血圧および容積信号出力を処理する生理的入力信号処理回路108とを備える。本発明の考えられる用途を説明するために、治療送出システム106および入力信号処理回路108と、RA、LA、RV、およびLVに作用するように位置するペーシング/検知電極のセットとの間の電気的接続を形成するリード線接続部のセットを示す。図3Aに示すように、化学/代謝センサ入力および/またはメカニカルセンサ入力が入力信号処理回路108に供給される。図2に関して述べたように、本発明を実施する際に、各種のこのようなセンサを用いることができる。
【0100】
バッテリは、多腔モニタ/センサ100の回路部を含む多腔モニタ/センサオペレーティングシステムを駆動し、かつ物質送出多腔モニタ/センサの任意の電気機械デバイス(例えばバルブ、ポンプ等)を駆動し、またはICDショック発生器、心臓ペーシングパルス発生器または他の電気刺激発生器の電気刺激エネルギーを供給する電気エネルギー源を提供する。通常のエネルギー源は、パワーオンリセット機能を有する電源/POR回路126に結合したエネルギー密度の高い低電圧バッテリ136である。電源/POR回路126は、1つまたは複数の低電圧電力Vlo、POR信号、1つまたは複数のVREF源、電流源、選択的交換指標(ERI)信号、および(ICDの場合)高電圧電力Vhiを、治療送出システム106に供給する。
【0101】
本発明によるNESまたは心臓除細動治療を図3Aの例示的な回路で実施するために、治療送出システム106は適切なNESおよび高電圧回路部をそれぞれ利用する必要がある。NES治療送出電極が心臓から遠く離れて位置する場合、NES治療の送出は、心周期とは独立して(例えば、おおよそ10ミリ秒〜約10秒間で周期的に)起こる可能性がある。数多くの異なるタイプのパルスをNES治療に用いることができるが、約0.1〜約10ミリ秒の持続期間である1つまたは複数のパルスが、所望の結果をもたらすことが示された。様々な電極構成(例えば、1個または数個のディスクリート電極の間)を使用して、効果的なNES治療を送出することができる。また、標準的な先端電極、リング電極、コイル電極、円筒電極、および皮下電極を利用して、NES治療を効果的に送出することができる。図面には具体的に示さないが、適当な外部回路部を、表面電極パッチ、パッドまたはパドル、ならびに心膜(pericardial)電極の使用を含むNES治療送出に適合することができる。特に、心嚢内に位置する1つまたは複数の電極が、交感神経を刺激するように適切に位置決めされる。
【0102】
ほぼ全ての現行の電子多腔モニタ/センサ回路部は、圧電結晶132およびシステムクロック122により供給されるクロック信号CLKを必要とするクロック駆動式CMOSデジタル論理IC、ならびにICと共に1つまたは複数のサブストレートすなわちプリント回路板に取り付けられるディスクリート部品(例えば、インダクタ、コンデンサ、変圧器、高電圧保護ダイオード等)を使用する。図3Aにおいて、システムクロック122により生成された各CLK信号は、クロックツリーを介して適用可能なクロック駆動式ロジックの全てにルーティングされる。システムクロック122は、1つまたは複数の固定周波数CLK信号を供給する。このCLK信号は、システムタイミングおよび制御機能のために、またテレメトリI/O回路124におけるアップリンクテレメトリ信号送信のフォーマット時に、システムのバッテリ動作電圧範囲にわたってバッテリ電圧とは独立している。
【0103】
RAMレジスタを使用して、検知された心臓活動から編集したデータ、および/または、ダウンリンクテレメトリ送信を介した検索または問合せ命令を受け取った際のアップリンクテレメトリ送信のための、デバイスの動作履歴または検知された生理的パラメータに関するデータを記憶することができる。データ記憶装置をトリガするための基準は、ダウンリンクテレメトリ送信された命令およびパラメータ値を介してプログラム入力されてもよい。データ記憶装置は、周期的にか、あるいは特定のプログラム入力された事象検出基準が満たされる際に、生理的入力信号処理回路108内の検出ロジックによりトリガされる。場合によっては、多腔モニタ/センサ100は磁界感知スイッチ130を含む。この磁界感知スイッチ130は、磁界に応答して閉じ、閉じることによって、磁界スイッチ回路が、制御およびタイミングシステム102に対してスイッチ閉(SC)信号を発し、制御およびタイミングシステム102は電磁モードで応答する。例えば、患者は磁石116を装備しており、磁石は、所定の症状を感じると、皮下に埋め込まれた多腔モニタ/センサ100の上にかざされて、スイッチ130が閉じ、制御およびタイミングシステムが治療を送出しかつ/または生理的エピソードデータを記憶するように促すことができる。いずれの場合も、事象関連データ(例えば、日付および時間)を、後の問合せセッションにおけるアップリンクテレメトリのために周期的に集められたかまたは患者により始動された、記憶された生理的データと共に記憶することができる。
【0104】
多腔モニタ/センサ100において、アップリンクおよびダウンリンクテレメトリ機能が設けられており、遠隔に位置する外部医療デバイス、または患者の体の上のより近位の医療デバイス、または図2および図3Aに関して上述した(また図3Bについて後述する)ように、患者の体内の他の多腔モニタ/センサとの通信が可能となる。上述したタイプの記憶された生理的データならびにリアルタイムで生成された生理的データおよび非生理的データが、ダウンリンクテレメトリ送信された問合せコマンドに応答して、アップリンクRFテレメトリにより、多腔モニタ/センサ100から外部プログラマまたは他の医療デバイス26に送信される。リアルタイムの生理的データは通常、リアルタイムでサンプリングされた信号レベル、例えば心臓内心電図の振幅値、およびセンサ出力信号を含む。非生理的患者データは通常、その時プログラムされたデバイス動作モードおよびパラメータ値、バッテリ状態、デバイスID、患者ID、埋め込んだ日付、デバイスのプログラム履歴、リアルタイム事象マーカ等を含む。埋め込み可能ペースメーカおよびIDの状況において、このような患者データは、プログラムされた検知増幅器の感度、ペーシングまたはカディオバージョンパルスの振幅、エネルギー、およびパルス幅、ペーシングまたはカディオバージョンリード線インピーダンス、およびデバイスの性能に関する蓄積された統計量、例えば不整脈エピソードおよび与えた治療に関するデータを含む。このように、多腔モニタ/センサは、このような様々なリアルタイムのまたは記憶された、生理的または非生理的データを発生し、このような発生されたデータは、本明細書では一括して「患者データ」と呼ばれる。
【0105】
したがって、生理的入力信号処理回路108は、検知事象を増幅し、処理し、また場合によっては電気検知信号またはセンサ出力信号の特徴から検知事象を検出する、少なくとも1つの電気信号増幅回路を含む。二腔または多部位または多腔監視および/またはペーシング機能を提供する多腔モニタ/センサにおける生理的入力信号処理回路108は、心腔に関して位置する検知電極からの心信号を検知および処理する、複数の心臓信号検知チャネルを含む。このようなチャネルのそれぞれは通常、特定の心臓事象を検出する検知増幅器回路と、EGM信号を制御およびタイミングシステム102に供給してサンプリングし、デジタル化し、記憶またはアップリンク送信する、EGM増幅器回路とを含む。心房および心室検知増幅器は、P波またはR波の発生をそれぞれ検出し、A SENSEまたはV SENSE事象信号を制御およびタイミングシステム102に供給する、信号処理ステージを含む。タイミングおよび制御システム102は、その特定のオペレーティングシステムに従って応答して、適切であれば、ペーシング治療を送出または変更し、あるいはアップリンクテレメトリ送信のためにデータを蓄積し、または当該技術において既知の様々な方法でMarker Channel(登録商標)信号を供給する。
【0106】
さらに、入力信号処理回路108は、少なくとも1つの生理的センサ信号処理チャネルを含む。この生理的センサ信号処理チャネルは、心腔または体内の他の場所に関して位置する生理的センサからの、センサ導出信号を検知および処理する。
【0107】
次に図3Bを参照すると、本発明と共に使用する別のシステムアーキテクチャが示される。図3Bは、上述のシステムおよび方法を組み込むことで治療を送出するのに利用することができる例示的なシステムである。特に、図示のシステムは、各心腔内に位置する1本または複数本のリード線を用いてEGM信号などの電気信号を検知する、検知増幅器534を含む。これらの信号を用いて、心房および心室脱分極およびQ−Tの長さを求めることができ、それによりNESおよびPESPの送出が安全な方法で行われる。1つまたは複数の生理的または血行力学的信号が、上述したようなセンサを用いて検出することができる。ライン505上に供給されるように一括して示されるこれらのさらなる信号を用いて心拍出量を求め、それにより治療が開始、終了、および/または最適化することができる。
【0108】
図3Bのシステムはさらに、出力ライン500および502上のペーシングパルス送出を制御するタイマ/コントローラを含む。この回路は、単独でまたはマイクロプロセッサ524と共に、間隔の長さ、パルス振幅、パルス長、およびNESおよびPESPパルスに関連する他の波形属性を制御する。出力回路548は、CARD(カーディオバージョン)/DEFIB(ディフィブリレーション)制御回路554の制御のもとで、除細動ショックなどの高電圧刺激を送出する。
【0109】
これらの電圧および信号の従来の相互接続の全てを図3Aまたは図3Bに示してはおらず、当業者には既知であるように、図示の電子回路部における多くの他の変形形態が可能である。
【0110】
図4は、1つの心腔に関連する1つのペーシング、検知、およびパラメータ測定チャネルを概略的に示す。一対のペーシング/検知電極140、142、センサ160(例えば、圧力、酸素飽和度、流量、pH等)、および複数(例えば、4つ)のインピーダンス測定電極170、172、174、176が、心腔に作用するように位置する。一対のペーシング/検知電極140、142は心腔に作用するように位置し、それぞれリード線導体144および146を経て、入力信号処理回路108内に位置する検知増幅器148の入力に結合される。検知増幅器148は、制御およびタイミングシステム102により供給される検知イネーブル信号の存在によって、選択的に使用可能にされる。検知増幅器148は、心不全パラメータの測定値を参照して後述するように、ペーシングが使用可能かまたは使用不能にされるときに、複数回の所定期間の間使用可能にされる。ペーシングまたはPESPパルス列が送出されると、制御およびタイミングシステム102によりブランキング信号が供給されて、当該技術において既知の方法で、短いブランキング期間の間、リード線導体144および146から検知増幅器入力を切り離す。検知増幅器148が使用可能であり、ブランキングされていない場合、検知増幅器は、心腔における心臓の電気信号(EGMと呼ばれる)を検知する。検知増幅器は、ペーシング技術において既知の方法で、EGM(通常、心腔がRAまたはLAである場合はP波、心腔がRVまたはLVである場合はR波)の特徴に基づいて、心周期を開始する心腔の収縮を示す検知事象信号を供給する。制御およびタイミングシステムは、ペーシング技術において既知の方法で、心腔のEIをタイムアウトする補充間隔(EI)タイマを再始動することにより、非不応性検知事象に応答する。
【0111】
一対のペーシング/検知電極140、142はまた、それぞれリード線導体144および146を経てパルス発生器150の出力に結合される。PESP/ペーシング送出システム106内のパルス発生器150は、ペーシング技術において既知の方法で、制御およびタイミングシステム102内のEIタイマのタイムアウト時に発生されるPESP/PACEトリガ信号に応答して、電極140、142にペーシングパルスを選択的に供給する。または、パルス発生器150は、先に参照した米国特許第5,213,098号に記載される方法で、制御およびタイミングシステム102内のESIタイマのタイムアウト時に発生されるPESP/PACEトリガ信号に応答して、PESPパルスまたはパルス列を電極140、142に選択的に供給し、より強い力により心腔が収縮する。この増大した力は、ESIの持続期間に依存する。
【0112】
センサ160および/または他の生理的センサが、リード線導体164のセットを介して入力信号処理回路108内のセンサ電源および信号プロセッサ162に結合される。リード線導体164は、センサ160に電力を供給し、サンプリングされた血圧Pをセンサ160からセンサ電源および信号プロセッサ162に供給する。センサ電源および信号プロセッサ162は、制御およびタイミングシステム102からの検知イネーブル信号によって使用可能にされると、心腔内に位置するセンサ160の変換器表面に衝突する血圧をサンプリングする。一例として、後述するように記憶および処理するために、絶対圧力P、生成圧力DP、および圧力変化率dP/dtサンプル値が、センサ電源および信号プロセッサ162により、または制御およびタイミングシステム102により生成されることができる。センサ160ならびにセンサ電源および信号プロセッサ162は、本譲受人に譲渡された米国特許第5,564,434号に開示される形態を取ることができる。
【0113】
インピーダンス電極170、172、174および176のセットは、導体178のセットにより結合され、先に参照した米国特許第5,417,717号に記載するタイプのリード線として形成され、このリード線は、インピーダンス電源および信号プロセッサ180に結合される。インピーダンスに基づく心臓パラメータの測定値(例えば、一回拍出量)が、上で参照した米国特許第5,417,717号に記載されるように当該技術において既知である。この米国特許第5,417,717号は、心腔内に位置する、離間した複数対の表面電極を有するインピーダンスリード線を開示する。離間した電極はまた、心臓血管(例えば冠状静脈洞および大静脈)内に収容されるインピーダンスリード線に沿って配設されるか、または心腔周囲の心外膜に取り付けられることができる。インピーダンスリード線は、ペーシング/検知および/またはリード線を保持する圧力センサと組み合わせてもよい。
【0114】
心腔容積Vの測度は、制御およびタイミングシステム102により供給されるインピーダンス測度イネーブル信号によってインピーダンス電源および信号プロセッサ180が使用可能にされると、インピーダンス電極170、172、174および176のセットによって供給される。定電流搬送信号が一対のインピーダンス電極の間に印加され、信号の電圧が、インピーダンス電極間の距離が変わるにつれ変化する、血液および心筋にわたるインピーダンスによって変調される。したがって、選択されたインピーダンス電極170、172、174および176の対の間のインピーダンス測定値からの心腔容積V信号の計算は、心壁の移動、または心腔から出て、その後心腔に入る血液の一回換気流に起因して、離間した電極の対をそれぞれ近づけかつ離す心腔の収縮および弛緩の際に行われる。生信号は復調され、デジタル化され、かつ処理されて、補外したインピーダンス値が取得される。この値を除算して、血液の比抵抗を離間した電極の対間の距離の二乗倍した積にすると、結果は心腔内の瞬時の心腔容積Vの測度となる。
【0115】
本発明によれば、IMDは、EGM信号を用いる心不全状態を示すパラメータ、絶対血圧Pおよび/またはdP/dt、酸素飽和度、流量、pH等の測度、および心腔容積Vの測度からなる群を、1つまたは複数の心周期にわたって求める。
【0116】
心不全状態を示すRF、MR、EES、およびτパラメータを導出するステップは、‘631号特許の開示においてより詳細に説明され、本明細書では繰り返さない。予備知識のない者のために以下の説明を提示するが、さらなる詳細が必要である場合、‘631号特許の開示を参照されたい。これらのパラメータは、患者の姿勢および活動に関係なく毎日周期的に求められる。しかしながら、患者は、特定の活動または動作を正確な時刻に行い、IMDが検出する磁石または遠隔システムプログラマユニット(図示せず)を用いることにより、パラメータの測定を同時に開始するように医師から助言を受けることができる。患者の心拍数が、プログラムされた下限心拍数および上限心拍数の間の正常洞範囲内であり、心調律が比較的安定である場合、特定のパラメータが単に測定され、特定のパラメータデータが単に記憶される。パラメータデータおよび関連データ(例えば、心拍数および患者の活動レベル)は、日時スタンプを押され、従来のテレメトリシステムを用いて検索するためにIMDメモリに記憶される。所定期間にわたる記憶されたデータの漸次の変化により、心臓の心不全状況における変化の程度の測度が提供される。このようなパラメータデータおよび関連データは、読み出され、再検討され、解析されること等ができ、パラメータデータは、その時の患者の状態、患者の病歴、患者または医師の選好等に基づいて変更可能である。
【0117】
図5を参照すると、このタイミング図は、検知またはペーシングされた事象からのタイミングが取られた間隔に関連する心腔への刺激ならびに代替的なパルス波形のPESP/NES刺激の送出のタイミングを示す。本発明の一態様によると、トレース(e)に示す治療刺激の遅延は、検知またはペーシングされた事象(例えば、図示のV事象)からタイムアウトされ、NESの場合、この遅延は検知またはペーシングされた事象から持続する心臓不応期よりも短い。遅延のタイムアウト後に開始する、図示の治療送出間隔トレース(f)において、刺激パルス列が心房および/または心室に送出され、そのため、NES治療を送出する場合、パルス列の少なくとも初期パルス(複数可)は、不応期が終了する部分内にある。PESP治療を送出するためのパルスは、心周期の非不応期に送出されると、実際にしきい値を超える(supra-threshold)、すなわち、心臓を脱分極するのに十分なエネルギーがあることが意図され、その結果、不応期外のPESPパルスの少なくとも1つによって心臓が捕捉される。不応期中に送出される初期パルスはまた、心臓に力を与えることができる。説明を簡単にするために、トレース(f)〜(j)は時間の長さが引き延ばされており、それらが引き起こす心臓の脱分極はトレース(a)には示されていない。各治療パルスにおける不応間隔パルスおよびPESPパルスの振幅および個数、ならびにパルス間の間隔もまた、図示のトレース(g)〜(j)とは異なり得る。
【0118】
トレース(b)において検出された心室検知またはペーシング事象もまた、トレース(c)の補充間隔のタイムアウトをトリガする。この補充間隔は、システムの動作モードに応じて、後続の心房または心室事象の検知によって終了することができる。図5の最初に示されるシーケンスは、トレース(c)の補充間隔、トレース(d)の不応期、およびトレース(e)および(f)の治療遅延および送出間隔の完全なタイムアウトを示す。治療遅延および治療送出間隔は、内因性の心室および/または心房の検知された事象またはペーシングされた事象間の間隔を測定し平均することにより導出される、内因性のV−VまたはV−A補充間隔に応じて導出されることができる。治療遅延はまた、Q−T間隔の測定値からも求めることができる。図示のように、トレース(e)の治療遅延は、QRS群が終了するまで、またはT波が終了する付近で生じる心臓受攻期の開始よりも十分に前のV事象の約40〜60ミリ秒後まで、治療パルス列の送出を遅延させる。治療送出間隔は、以前に導出されたV−VまたはV−A補充間隔の終了よりも十分に前にタイムアウトするようにタイミングが取られるが、トレース(f)〜(j)のパルス列の説明を簡単にするために時間が引き延ばされている。
【0119】
治療刺激エネルギーは、バーストの各パルス間のパルス分離間隔により分離されるX個の一定または可変エネルギー刺激パルスのバーストの形態で送出される。パルスの全ては、トレース(i)の波形#3に示すのと同じ振幅およびエネルギーを有してもよい。または、パルス列の立ち上がりおよび/または立ち下がりパルスは、トレース(g)および(h)に示す波形#1および#2と同様の傾斜した振幅を有することができる。トレース(g)および(h)において、バーストのパルスのサブセットの、前縁部上昇振幅が、初期振幅から最大振幅に増加するように示されている。トレース(g)において、バーストのパルスの別のサブセットの、後縁部下降振幅が、最大振幅から最終振幅まで減少するように示されている。
【0120】
別法として、不応期中のパルスの初期セットは、トレース(j)に図示する波形#4によって示されるように、より大きなパルス振幅または広いパルス幅を有することができる。不応期中に送出される高エネルギーパルスは、後続の心周期の増強作用を高めることができる。トレース(j)はまた、パルス列の代替的なパルス数およびパルス間隔を示し、この実施形態は波形#1〜3のパルス数およびパルス間隔を用いてもよいことが理解されるであろう。
【0121】
さらに、T波が終了する付近の心臓の受攻期において(特に、不応期中に高エネルギーパルスが送出される場合)、いかなる治療パルスの送出も回避することが望ましい場合がある。トレース(j)はまた、心臓の受攻期においていかなるパルスの送出も避けるための、不応期中に送出される高エネルギーパルスと、低エネルギーPESPパルスとの間の受攻期遅延を示す。不応期の後期に送出されるパルスのパルスエネルギーを小さくすることも可能である。
【0122】
治療送出機能は、好ましくは、従来のペーシング治療および動作モード、ならびにカーディオバージョン・ディフィブリレーション機能を含むことができるシステムに実装されるか、または、図5に示す検知されたPQRST群の間の心筋細胞の増強作用をもたらすパルス治療を単に供給する独立型システムとして実施される。
【0123】
本発明による心房協調ペーシングの詳細な説明
図6は、慢性HFの外来モデルでの、急速洞調律(rapid sinus rhythm)(100bpm)を示す未処置慢性HF機能不全を示す。図6では、通常の心房電位図および心室電位図(AEGMおよびVEGM)が示されており、LV圧(LVP)から得られる収縮機能の指数(LV dP/dtmax)の測定値が示される。図6では、LV dP/dtmaxの値は、約900mmHg/sと示される。
【0124】
図7は、本発明によるPESP治療および心房協調ペーシング(ACP)で処置されたHF機能不全を示す。図7では、慢性HFを有する被験者が、心室PESP治療(Vtherapyと記されたチャネル)および心房協調ペーシングACP(ACPと記されたチャネル)で連続的に処置される。結果として、持続的な収縮増強を伴う低いレート(約50bpm)の安定した調律が得られる(LV dP/dtmaxは、約1800mmHg/sに改善される)。内因性の心房レートが低下した場合、心周期を開始するために心房ペース事象が発生することがあることがわかる(「AAIレートサポート」(図7の右側)と記された垂直線と一致したApace事象を参照)。PESP治療およびACP治療の1つの結果は、心周期のうち内因性のAV(房室)伝導および自然な心室脱分極を呈する部分に生じる、メカニカル機能の向上を伴うより遅い調律である。この治療法は、心調律を強制的に減速させる。このタイプの刺激治療は、SVT(上室頻脈性不整脈)に罹患した正常なAV伝導を有するHF患者に適しているとも思われ、これに関しては図36(下記)に関してさらに記載および説明する。
【0125】
図8を参照すると、PESP治療(ACPなし)の間の調律の不規則性が示される。図8の左側部分では、HF機能不全が、PESP治療および2:1のAVブロックを伴う120bpmでのAAIペーシングからなるACPの形態で処置される。図8の右側部分では、HF機能不全は、AAIペーシングなしのPESP治療で処置される。収縮性は改善されたままである(約1900mmHg/s)が、不応性および内因性の間隔の変動により、通常は、間欠的な1:1および2:1のAV伝導がもたらされる(図8の右側を参照)。心臓組織には、良好な血液充満、冠動脈血流、およびイオン流束安定化に十分な時間が、心拡張期に確保されない。結果として、末梢脈拍数は可変であり、メカニカルな増強はあまり一貫しておらず、心臓が不整脈および代謝不耐性になる傾向が増す。
【0126】
図9A〜図9Dは、ICDまたはペースメーカーなどの埋め込み可能医療デバイスの観点から見た、心房協調ペーシング(ACP)の概略図である。図9Aでは、内因性の心房脱分極それぞれ(心房検知事象に関してAsで示す)が、心室に伝わり、内的に(intrinsicly)伝わった心室脱分極(心室検知事象に関してVsと記す)をもたらす正常洞調律が示される。内因性心房レートが遅すぎる場合、心房ペーシング(Apで示す)が、図示の心房検知事象の代わりとなる可能性がある。図9Bに関して、心室刺激治療パルス(Vthで示す、PESP単独またはPESPとNESとの組み合わせのいずれか)の導入が生じ、心室は2回目の不応状態になる。結果として、1つおきに心房検知事象がブロックされる2:1の伝導パターンが生ずる可能性がある。このパターンは、不安定であることが多く(上記の図8を参照)、遅すぎる(徐脈)かまたは速すぎる(頻脈)有効心室レートがもたらされる可能性がある。
【0127】
ACPの単純な形態を示す図9Cに関して、心房は、内因性レートよりも速いレートでペーシングされ、2:1のブロックが調整される。この手法は、図9Bに示す場合の結果が遅すぎるかまたは不規則すぎる有効心室レートであった場合には役立つが、患者の生理機能が心拍数を設定できるようにはせず、心房を激しくペーシングするため、過剰な心拍数がもたらされる。
【0128】
ACPの好ましい実施態様を示す図9Dに関して、心房検知事象後の、Vthパルス(複数可)と同じ頃に、協調のために心房がペーシングされる(「Acp」で示す)。ACPペース事象は、心室に伝わらないが、洞結節をリセットする。これにより、次の心房検知事象は、生理的な要求に支配された時点で生じる。したがって、結果として「増強された(potentiated)」拍動が、十分な充満時間、より良好な冠動脈血流、および筋細胞イオン流束が正常化するのにより長い時間によって、有利にもたらされる。
【0129】
当然ながら、当該技術分野において既知のように、心房ペーシングは、内因性心房レートが遅すぎるほど低下した場合に用いられて(上記の図7を参照)、上述の利点を維持することができる。さらに、AVまたは心室伝導が弱められた場合、適当なAV間隔での心室ペーシングも用いることができる。これは、一部位または複数部位(例えば、両室)ペーシングの形態を取ることができる。
【0130】
AEDとともに用いられるものなどのTCPまたは経胸腔ペーシングの場合、心房検知は容易に利用可能ではない(心房ペーシングも同様である)が、図9Dに示すACPは依然として実行することができる。このようなACPを行うために、検知されたR波(またはペーシングパルス)からトリガされたTCP治療パルスは、心房および心室の両方で同時に脱分極を誘導し、本発明によるPESPおよびACPを達成する。
【0131】
当該技術分野において既知のように、ACPパルスのタイミングおよび送出は、図3Aおよび図3Bのシステム図に示すようなマイクロプロセッサ制御の下で行われることが好ましい。また、このようなタイミングパラメータはプログラム可能であり、臨床医により調整または修正され得る。
【0132】
図6〜図9全体を参照すると、Vthで示す心室治療は、PESPおよび任意選択で非興奮性神経刺激(NES)を含むことを理解するべきである。Vthパルス(複数可)のタイミングおよび振幅の決定因子は、先に’631号特許の開示および本発明の開示の他の箇所に述べられている。前のVsまたはVp事象からの間隔は、所望の効果(興奮性または非興奮性)および増強(PESP)の振幅を得るために選択される。さらに、心機能の安全な生理的増強を実施するためのACPタイミングの選択も重要である。Vth治療パルスが安全ルールまたは他の理由により拒否されるか、または捕捉しない場合、ACPパルスは保留される。興奮性心室治療が中断された場合、ACPも中断される。これが行われなければ、ある形態のペースメーカー介在頻脈(Pacemaker Mediated Tachycardia)(PMT)が生じる。増強がACPパルスの脱分極の伝導に起因する傾向がない限り、ACPの目的は、心房脱分極およびAVブロックを確保することである。これらの考慮事項により、ACPタイミングの範囲が得られ、これについては心周期ごとに送出される治療の場合に関して説明する。
【0133】
例えば、Xが増強されたVs(またはVp)から予定されるACPの送出までの時間を表すものとする。同様に、Yが増強されたVs(またはVp)から予定されるVthの送出までの時間を表すものとする。Yの値の計算のこれらのルールは、’631号特許の開示と、フィードバック制御、安全ロックアウトルール、および不応間隔の指示および決定に関する論考および説明に関する本特許開示とにおいて、説明されている。Xの値は、A−A不応期(約200〜300ミリ秒である場合が多い)よりも大きい(すなわち長い)必要がある。Xの値は、生じる脱分極が不応状態の間にAV結節または心室を通過するように選択される必要もある。RVがV−V不応期を示し、RAがA−A不応期を示すものとする。さらに、AVがAV伝導遅延(ApaceからVsense事象までの時間から、検知事態に関連するいかなる遅延も除いたもの)を示すものとする。この場合、Xは以下の不等式対を満たさねばならない。
【0134】
X>RA および Y−AV<X<Y−AV+RV
経験により、両方の不等式を満たし、所望の効果を得るために、Xの値が150〜200ミリ秒の範囲であることがわかっている。これは一般に、興奮性Vthパルスの直前にACPを配置する。読者は、ACPはVthと同じ安全拒否ルールの下で行われる(本特許開示の安全ロックアウトルールの項に関して説明される)が、さらなる課題に直面することに留意するべきである。すなわち、Vthパルス振幅(複数可)がしきい値以下であるか、または完全に不応期内にある場合、増強は得られない。不整脈の危険性は本質的にないが、被験者は、PESP治療の恩恵を受けることができない。しかしながら、ACPがこの設定でしきい値を上回って送出された場合、これが心室に伝わることにより、心室レートが上昇する。その結果生じるVsenseは、別のACPを開始し、X+AVの周期長を有するPMTを確立する。したがって、本発明は、1回の拍動後にこのタイプのPMTを終了させるさらなるACPロックアウトルールを包含する。このロックアウトルールが要求することは、前の心周期(VsenseからVsenseまで)にわたって、または十分な間隔にわたって心房事象(検知またはペーシング)がない場合、ACPが次のN回の心周期の間、選択的に禁止され、期外収縮の捕捉の証拠が求められることである。
【0135】
非興奮性神経刺激の詳細な説明
次に、図10を参照すると、心臓の交感神経支配および非興奮性刺激(NES)に関する電極の位置が、見やすいようにいくつかの部分を取り出して、部分分解斜視図で示されている。図10の重要な要素は、以下のように特定される。すなわち、脊髄、頚節および胸節神経(cervical and thoracic segmental nerves)(文字「A」で集合的に示す)、頸部および胸部交感神経幹神経節(cervical and thoracic chain ganglia)(文字「B」で示される、胸部の後の椎体付近の上下)、胸部および縦隔を通って大血管および心臓10に向かって走り、鎖骨下わなを含む自律神経(文字「C」で示す)、冠血管付近を走っていることが多い種々の心臓神経(文字「D」で示す)、および心筋の心臓神経(文字「E」で示す)。電極(図2に示すようなもの)は、これらの交感神経に電気刺激電流を導き、他の神経または器官の痛みを伴う刺激を回避し、心臓10のペーシングを回避するように、これらの経路に沿ったいかなる場所にも位置決めすることができる。あるいは、筐体電極などの皮下電極または他の皮下パッチ電極を用いて領域A〜Eを広範囲に刺激してもよく、このような電極は、心臓性ショックおよび電気メカニカル解離(EMD)、または無脈性電気活動(PEA)を含む重篤な機能不全のために取っておくことができる。さらに、本発明のこの態様により、関連の交感神経組織に電流を導くために、皮下パッチ、パッド電極、またはパドル電極を同様に用いてもよい。
【0136】
次に、神経刺激および心臓不応期を示す図11を参照すると、心筋の刺激しきい値曲線および非興奮性神経刺激用の電極位置が、刺激パルスタイミングを決定することがわかる。刺激が捕捉を引き起こし得る心臓の付近では、NESパルスが不応期の間に送出され、および/またはしきい値以下に(すなわち、しきい値の大きさ未満に)留まる。心臓組織から離れた場所では、刺激パルスは異なる振幅を有してもよく、より広い間隔であってもよい。
【0137】
図12は、NES治療送出の一例を示す図である。この図は、電流量を増加させて(それぞれ1、2.5、および5mA)心臓付近の交感神経を刺激した効果を示す。不応期の間のこのようなNES刺激により、大動脈圧(AoP)、収縮性(LV dP/dt)、心拍数、および心拍出量の適用量による増加が生ずる。応答の大きさは、NESパルス列のパルスの持続時間および/または数を調整することにより、同様に制御することができる。NES治療のタイミングおよび刺激パラメータは、マイクロプロセッサまたはハードウェアにより制御され、図3Aおよび図3Bのシステム図に示すような、アルゴリズムまたは臨床医により決められる入力値でプログラム可能であることが好ましい。
【0138】
安全ロックアウトルールの詳細な説明
図13A〜図13Cは、頻脈事象の間のPESP刺激の結果を示す。絶対に必要なわけではないが、頻脈の間は興奮性PESP刺激治療の送出を中止することが好ましいことを、本発明者等は発見した。図13Aに示す状況では、メカニカルな心室レートは低く(60bpm)、増強の振幅は大きく、拡張期に心室充満に十分な時間がある。図13Bの状況では、心拍数は事実上2倍にされており(すなわち120bpmまで上昇されており)、増強の振幅は大きいままであるが、拡張期の時間は短くなっている。図13Cに示す状況では、心拍数はさらに上昇し(すなわち、約150bpm)、期外収縮が心周期の拡張期間に著しく侵入している。さらに、このような高い心拍数ではPESP増強が減少する。PESP刺激は、150bpmの頻脈を、メカニカルな交代拍動(mechanical alternans)および300bpmの有効レートを伴う心室性頻脈に変える。この高さの心拍数は、あまり大目には見られず、さらに心臓機能不全および心不全の代償不全の一因になるため、このような有効心拍数の状態にある人ではVTまたはVFが生じやすくなる。
【0139】
次に図14を参照すると、興奮性PESP刺激の適用のための安全ロックアウトルールのフローチャートが示されている。新たな心周期はそれぞれ、VpaceまたはVsenseである心室事象(Vevent)で開始することが理解できる。安全ロックアウトルールは、興奮性PESP刺激を心室に送出する決定に対して、またおそらくはこの周期の間の心房協調ペーシング(ACP)に対して、拒否する機能を有する。前のV−V間隔がしきい値よりも大きい場合、PESPおよび/またはACPパルスがこの周期で使用可能にされる。V−V間隔が短すぎる場合、刺激治療は打ち切られる(aborted)。これにより、刺激治療が内因性の心室性期外収縮(PVC)の不整脈の可能性をさらに高めることを防ぐ。短い連結期での刺激は、特に他の短い間隔のすぐ後に続く場合、極めて催不整脈性であり、当然避けるべきである。安全ロックアウトルールは、洞性頻脈、上室性頻脈(SVT)、心室性頻脈(VT)、または心室性細動(VF)を含む種々の頻脈の間の興奮性治療の適用も防止する。用いられるしきい値は、固定値であってもよく、または他の血行力学的なまたは電位図に基づいたパラメータから導出されてもよく、通常は400〜600ミリ秒である。安全ロックアウトルールは、様々なタイミング方式を用いて動作することができ、タイミング方式は、マイクロプロセッサまたはハードウェアにより制御され、図3Aおよび図3Bのシステム図に示すような、アルゴリズムまたは臨床医により決められる入力値でプログラム可能である。
【0140】
調歩式( start-stop )ルールの詳細な説明
次に図15を参照すると、これは、本発明による刺激治療の開始および終了を制御する上位レベルフローチャートである。治療が現在使用可能ではない場合、臨床医、患者、またはデバイスにより治療が開始され得る。臨床医は、デバイスまたは患者による評価に優先して、患者との相談、心臓機能不全の徴候または症状、あるいは検査結果に基づいて刺激治療を開始することができる。このような方法で開始される場合、治療は、患者またはデバイスにより開始された治療とは異なる持続時間および終了基準を有する可能性がある。同様に、患者は、症状または予想される活動の結果として、デバイスに優先して治療を開始することができる。最後に、デバイスは、事前にプログラムされた日時に基づいて、またはセンサ信号(電位図、血行力学等)、活動センサ信号、および他の生理的なセンサ信号により、治療を自動的に開始することができる。治療は、十分な治療持続時間および十分な利益またはリスクのセンサ評価を含む、臨床医のコマンド、患者の要求、またはデバイスベースの基準により、中断してもよい。
【0141】
図16は、センサ決定式の刺激治療の自動開始のより詳細なフローチャートである。患者から得られる電位図(EGM)センサ信号(現在および最近の両方)に基づいて、デバイスはまず、他の信号データの調査に移る前に、心調律問題を探してそれを治療する。心調律が順調であると思われる場合、圧力および血流等の血行力学センサが用いられる。十分な機能不全および持続時間がある場合、治療が開始される。代謝または他の生理的センサによる重篤度および持続時間の評価、ならびに事前に予定されている日時の基準によっても、本発明による刺激治療を開始することができる。
【0142】
図17は、本発明による刺激治療の停止または終了の拡大図である。頻脈性不整脈が十分なレートまたは持続時間(例えば、所定のレートまたは持続期間のしきい値を超える)で発生する場合、治療は一時中止または完全停止され、不整脈は、抗頻拍ペーシング(ATP)、カーディオバージョン等のような様々な既知の手段のいずれかにより治療される。より正常な調律が回復すると、デバイスは自動治療送出を再び使用可能にしてもしなくてもよい。デバイスは、タイミングおよび振幅等の刺激治療パラメータを再調整してより低い不整脈リスクプロファイルを得て、(刺激治療により被験者にこの不整脈が生じるか、または生じやすくなると仮定して)不整脈リスクの代わりに生理的利益をもたらすこともできる。調律が順調なままである場合、デバイスは、持続時間の基準または血行力学的な改善および持続時間を組み合わせた基準が満たされているか否かを調べる。満たされている場合、治療は再び一時中止されるか、完全停止される。自動治療は、一定期間の後に再び使用可能にされてもよく、使用不能のままであってもよい。短期間の治療を複数回適用することを防ぐために、改善基準は、ヒステリシス様の効果を実施するための開始基準とは異なるものであり得る。治療は、一定の治療適用回数に達すると使用不能にされて、外的オーバーライドの再開を必要としてもよい。
【0143】
次に、頻脈性不整脈の停止および心臓機能不全の治療の開始を示す図18を参照すると、図18は、上述の治療開始ルールのいくつかを示している。図18を参照してわかるように、頻脈性不整脈は、17:46:05頃に終わり、電位図センサ(ここでは表面心電図(ECG))が適正な調律およびレートの存在を確認する。しかしながら、動脈圧(ABP)および左心室圧(LVP)等の血行力学センサが、6秒および12心周期を超えて持続する重篤なレベルの機能不全(例えば、LV dP/dtmax<400mmHg/s)を確認する。結果として、刺激治療を開始する決定は17:46:15頃に起こる。動脈圧、LVP、冠動脈血流、大動脈血流、およびLV dP/dtmaxの即座の応答が、PESP治療パルス(Vtherapy)の適用と同時に見られる。
【0144】
図19には、PESP刺激治療の開始およびそれに対する応答が示されている。前または同時に発生した頻脈性不整脈に必ずしも関連しないHF等の他の状況では、デバイスにより開始される治療を必要とする程度まで心臓機能不全が悪化する場合がある。このような心臓機能不全の発現は、漸進的である場合も突発的である場合もあるが、十分な重篤度および持続時間が確立されると、PESP刺激治療が開始される。ここで示す興奮性PESP治療は、動脈圧(ABP)、冠動脈血流量(CorFlow)、および大動脈血流量(AorFlow)の大いに必要な増大をもたらし、LV dP/dtmaxの値は、約5秒の間にPESP前治療の2倍を超えるものとなる。
【0145】
図20は、持続時間および応答基準に基づいたPESP治療の終了を示す。図20では、終了基準が満たされ、PESP刺激治療が停止される。この場合、洞結節を捕捉およびリセットする心房のみのPESP刺激治療パルス(Ath)からなる刺激治療が、心室に伝わり、自然な伝導により心房および心室のPESPをもたらす。この順序で、患者は良好なRV圧(RVP)およびLV dP/dtmaxを30〜60秒間以上維持しているため、心房のみのPESP刺激治療が停止される。心拍数は上昇し、収縮性は減少するが、心機能は、図18および図19(上述)に示すレベルから極めて著しく回復している。
【0146】
次に、救命PESP刺激治療の劇的な例を示す図21を参照する。図21は、期外収縮後増強刺激治療が、麻酔をされたイヌ被験体において頻脈性不整脈を長時間ペーシングした後の心機能の急速な回復を促進し得ることを示している(また、明らかに実証している)。
【0147】
図21では、「ECG」で示すトレースは表面ECGの記録であり、「ABP」で示すトレースは被験体の大動脈においてカテーテルにより測定された大動脈圧の記録であり、「RVP」で示すトレースは、右心室内で測定された血圧の記録である。「CorFlow」で示すトレースは、冠動脈の血流量の記録であり、「LV dP/dtmax」で示すトレースは、各心周期あたりの左心室圧の第1次導関数の最大値の記録であり、「CO」で示すトレースは、平均大動脈血流量から得られる心拍出量の記録である。図21に示す記録は、6分間の長さのペーシングされた動脈性不整脈のうちの最後の数秒(「End VT」マーカーの前のトレース部分)から開始している。これに続いて、約10秒の正常な洞調律(NSR)があり、無脈性電気活動(PEA)または電気メカニカル解離(EMD)として分類され得る重篤な血行力学的機能不全を伴う。この時間の間、冠動脈血流量および心拍出量は、頻脈性不整脈の間に生じる血流量と比較して明確に増加していない。十分な血流量がないと、心臓は虚血性のままであり、被験体はPEAで死亡する可能性が高い。図21の「PESP治療」と記された水平矢印により示される部分は、PESPペーシング治療が被験体の心臓の右室心尖に送出された期間を示す。この期間の間、測定された全ての圧力および血流量が、最初のペーシング(PESP)刺激の送出に続く一番最初の心周期に関してかなり増大している。これらの値は増加し続け、約1分以内に正常な生理的レベルに回復し始める。PESP治療送出区間の終わりには、心臓を事前灌流するのに十分な冠動脈血流量があり、これにより、心臓はさらに治療をせずに機能を再開することができる。この被験体での自己心拍再開(return of spontaneous circulation)は、いかなる薬理学的またはメカニカルな補助治療または処置も行わずに生じたが、その代わりに、本発明により送出される電気刺激に専ら依存していたことは言うまでもない。
【0148】
このような治療の必要性の認識は、臨床医または自動デバイス(埋め込みまたは外部)、および経皮的に適用されるかまたは心臓上あるいは心臓付近にある電極から適用される刺激治療に依存する。図17の注釈付きバージョンである図22は、持続期間および改善基準、治療送出の停止、およびPESP治療の振幅およびタイミングのより低い不整脈リスクへの調整に関するいくつかの追加情報を含む。
【0149】
調歩式ルールは、図2に示すような様々な方式およびセンサ入力を用いて機能することができ、これら方式およびセンサ入力は、マイクロプロセッサまたはハードウェアにより制御され、図3Aおよび図3Bのシステム図に示すような、アルゴリズムまたは臨床医により決められる入力値でプログラム可能である。
【0150】
不応および非不応間隔の特定の詳細な説明
次に、図23A〜Dを参照すると、これは、データの4つのX−Yプロットからなる複合図であり、興奮性(PESP)および非興奮性刺激(NES)治療の送出に関するこれらデータのプロット間の重要なタイミングシーケンスを示す。相互参照を容易にするために、ラベル付けしていない時間整列された表面の代表的なECG電位図のトレースが、これらの図の一番上に現れている。
【0151】
図23Aでは、PESP興奮性刺激から得られる不整脈リスクおよび血行力学上の利点に関連するタイミングの主要決定因子が示される、刺激強度曲線が示されている。捕捉し、したがってPESP刺激治療からの利益をもたらすために、曲線よりも大きい振幅の刺激パルスが(所与の時点で)必要があることが理解されるであろう。絶対不応期を図23Aに示す。この期間の間、脱分極は生じず、これは心臓付近の電極による非興奮性神経刺激(NES)にとって理想的である。絶対不応期のすぐ外側に生じる「受攻期」と記される期間では、非常に大きい振幅パルスが、反復期外収縮、VT、またはVFを含む不整脈を引き起こし得る。実用的な目的のために、捕捉が2値現象となるように興奮性刺激パルスがしきい値をいくらか上回って送出される。しかしながら、刺激パルス振幅はまた、小さく維持され、その結果、受攻期と同時に起こるようにタイミングが取られる場合でさえも不整脈のリスクが非常に低くなる(比較のために、図23Cの「不整脈誘導リスク曲線」を参照)。文献において既知であるように、期外収縮に続く拍動(期外収縮後拍動)に関して見られる増強の大きさは、期外収縮のタイミングの関数であり、図23Bに示すように捕捉を失う直前に最大になる(「増強応答」と記される曲線)。図23Dに示す実線の曲線(「正味の利益」と記される曲線)は、興奮性PESP刺激からの生理的利益と不整脈リスクとを合わせたものである。不応/非不応の境界よりもわずかに長く(すなわち超えて)刺激することが最も望ましい。破線の正味利益曲線は、非興奮性神経刺激(NES)が不応/非不応の境界の「短い側(short side)」に送出されることが最善であることを示す。本発明は、臨床医または自動デバイスがこの不応/非不応の境界を見つけるのに役立つ方法を含むため、リスクを制御しながら意図する治療の利益を得ることができる。
【0152】
次に図24を参照すると、これは、心室捕捉の電気的および血行力学的検出のグラフである。「1」と記されたトレースは、刺激治療の適用部位から得られる心室電位図(VEGM)である。「2」と記されたトレースは、右心房および右心室の両方の付近にあり、ペーシング治療の適用部位から離れている第2の電位図である。「3」と記されたトレースは表面ECGであり、トレース「4」は動脈圧(ABP)の記録であり、トレース「5」は左心室圧(LVP)の記録であり、トレース「6」は右心室圧(RVP)の記録であり、トレース「7」は心室に適用される刺激治療(Vtherapy)のマーカーチャネル記録である。図24は、心臓増強治療が心臓不応期内にあるか心臓不応期外にあるかを特定する概念の実施形態を示す。
【0153】
トレース7に関して、矢印19は、不応期内にある心室に治療が送出されることを特定し、矢印20は、不応期外にある治療を特定する。トレース1に関して、矢印8は、結果として脱分極の証拠を示さない治療後の電位図のトレースを特定し、これはその治療が不応期にあることを確認し、矢印9は、治療後の心臓脱分極を示す電位図のトレースを特定し、これは捕捉された治療パルスが十分な振幅および持続期間を有し、不応期外にあったことを確認する。
【0154】
同様に、トレース2に関して、矢印10および11は、心室脱分極の存非により心臓不応期内および心臓不応期外のパルスを特定するのに適した、補助電極部位の電位図からの非捕捉および捕捉それぞれを特定する。トレース3に関して、矢印12および13は、表面ECGでの心室脱分極がないかあるかをそれぞれ特定する。
【0155】
本発明の一実施形態は、検出アルゴリズムを電位図信号(信号トレース1〜3を含むがこれらに限定されない)および誘発された脱分極がないかあるかの特定に適用することである。次いで、この情報を用いて、先行する治療が心臓不応期内であったか心臓不応期外であったかを特定する。
【0156】
トレース4に関して、矢印14は、不応期外にある治療に続く心周期の動脈脈圧が上昇した、著しく増大したABPを指す。同様に、LVP(トレース5)およびRVP(トレース6)も、捕捉に続く周期で増大する。このように、図24は、圧力、血流量、加速度、インピーダンスの変化、または治療送出に続くメカニカルな増大の他の好ましい証拠の存在を検出するために用いられる本発明の実施形態を示す。この証拠は、先行する治療が心臓不応期内であったか心臓不応期外であったかを特定するのにも役立つ。
【0157】
トレース5および6に関して、矢印15および17はそれぞれ、心臓不応期中に送出される刺激治療の結果生じる左および右心室圧波形の部分を示す。結果として、治療に続く期外収縮の証拠は見られない。
【0158】
再びトレース5および6に関して、矢印16および18は、心臓不応期外に送出される治療に続く圧力波形である。この治療に続いて期外収縮が見られ得る。本発明の別の実施形態は、限定はしないが右心室、左心室、または動脈の圧力、寸法、加速度を含む、心臓のメカニカルな活動の測定値を作成し、期外収縮の存否を特定する検出アルゴリズムをセンサに適用するようになっている。この情報を用いて、先行する治療が心臓不応期内であったか心臓不応期外であったかを特定する。次いで、誘発されたR波の検出情報を用いて、期外収縮後の増強作用を引き起こすかまたは神経刺激の場合に非興奮性である、あるいはその両方である、刺激治療の送出のタイミングを取るか、または送出をトリガすることができる。
【0159】
図25は、それぞれT波を解析することによって捕捉が行われたか否かを判断するのに用いることができる、3つのトレースVEGM、ECGおよびVtherapyを示す。トレース1は刺激治療の適用部位からの心室電位図(VEGM)であり、トレース2は表面ECGであり、トレース3は適用される刺激治療のマーカーチャネル記録である。トレース1および2に関して、矢印4および7は心室脱分極を示す電位図信号であり、矢印5および8は、得られる心室再分極またはT波を示す信号である。トレース3において、矢印10は、T波の直後に適用される、送出される治療のマーカーに対応する。トレース1および2において、矢印6および9は、適用された治療から生じた脱分極を示す。
【0160】
本発明の治療捕捉態様の別の実施形態は、治療パルスを印加した後に電位図信号から誘発されたT波を特定するのに用いられる。さらなる実施形態は、T波が発生する時間(電位図信号の脱分極および再分極の間)に直接頼り、不応間隔(T波の前)および非不応間隔(T波の後)の間の境界の指数を形成する。次いで、T波検知情報を用いて、期外収縮後の増強作用を引き起こすかまたは神経刺激の場合に非興奮性である、あるいはその両方である、刺激治療の送出のタイミングを取るか、または送出をトリガすることができる。
【0161】
図26は、非興奮性神経刺激(NES)治療を適用する情報を取り込むための応答を示すフローチャートである。心室ペーシングまたは検知事象に続いて、検知回路はアクティブのままであり、スケジューリングされたNES刺激パルス(複数可)が送出されるまで、タイマが遅延をカウントダウンする。この間隔内に内因性事象がない場合、NESパルス(複数可)が送出され、(本明細書で上記したような)電位図またはメカニカルセンサ信号を用いて、捕捉および期外収縮が発生したかを判断する。捕捉が発生した場合、送出時間、刺激振幅、またはパルス数が減少し、プロセスは繰り返される。T遅延の値は通常、10〜120ミリ秒である。上述の電気的およびメカニカルなパラメータのほかに、T遅延および他の刺激パラメータもまた、心拍数または他の生理的センサの観測によって影響を及ぼされる場合がある。
【0162】
図27は、興奮性PESP治療を適用する情報を取り込むための応答を示すフローチャートである。心室ペーシングまたは検知事象に続いて、図3Aおよび図3Bに示すような検知回路はアクティブのままであり、スケジューリングされたPESP刺激パルス(複数可)が送出されるまで、タイマが遅延をカウントダウンする。この間隔内に内因性事象がない場合、パルス(複数可)が送出され、(本明細書で上記したような)電位図またはメカニカルセンサ信号を用いて、捕捉および期外収縮が発生したかを判断する。捕捉が発生しなかった場合、送出時間、刺激振幅、またはパルス数が増大し、プロセスは繰り返される。T遅延の値は通常、200〜300ミリ秒である。上述の電気的およびメカニカルなパラメータのほかに、T遅延および他の刺激パラメータもまた、心拍数または他の生理的センサの観測によって影響を及ぼされる場合がある。このアルゴリズムはまた、NESパルス(複数可)を伴う場合にPESPを生成するように意図されるパルス(複数可)に使用することができる。
【0163】
不応間隔および非不応間隔の特定ならびにパルスの適切なタイミングは、種々のタイミング方式および検知回路を用いて操作することができる。これらはともに、図3Aおよび図3Bのシステム図に示すようなマイクロプロセッサまたはハードウェアによって制御され、アルゴリズムまたは臨床医が求めた入力値を用いてプログラムすることができることが好ましい。
【0164】
PESP治療によるSVT管理の詳細な説明
図28は、本発明の一実施形態によるPESP治療を適用することによる急速なSVTの減速を示す、一連の4つのX−Yプロット(A〜Dと表示する)である。このような急速なSVTは、異所性または再入可能な調律が心房またはAV結節を含み、心室に伝導する場合に生じる(トレースA)。心室への伝導は、充満および拍出を損なうほど急速であり、結果として、圧力および流量が通常損なわれる(トレースB)。興奮性PESP刺激パルス(トレースCに図示のVth)の導入により、心室においてさらなる不応時間が発生し、2:1のレートの減少が生じる。さらに、増強作用および高められたメカニカル機能が生じる(Dに見られるように)。正味の結果は、効果的なレート減少および血行力学的性能の向上である。このPESP治療療法は、生命を脅かす可能性のあるSVTを十分に許容される調律に変えるだけでなく、自然、デバイス、または薬剤手段によって不整脈を終わらせるためのより多くの時間を与える。
【0165】
PESP治療による急速なSVTの減速は、種々のタイミング方式および検知回路を用いて操作することができる。これらはともに、図3Aおよび図3Bのシステム図に示すようなマイクロプロセッサまたはハードウェアによって制御され、アルゴリズムまたは臨床医によって決定される入力値でプログラムすることができることが好ましい。
【0166】
フィードバック制御の詳細な説明
図29は、NESおよびPESP刺激の基本的な制御関係を示す、2つのX−Yプロットからなる。図29において、心臓のメカニカル機能の指数が、基線のパーセンテージとしてdP/dtmaxであるように考えるが、心房パルス圧力または心拍出量のような他の変数を用いてよい。図29の最上部付近にある最上部X−Yプロットにおいて、PESP増強作用応答は、期外収縮を誘発する刺激のタイミングに左右されるように見える。これは刺激強度には影響されず、不応期(ここでは、0〜200ミリ秒として示す)外である必要がある。しかしながら、非興奮性神経刺激は非興奮性である必要があり、心臓付近の電極にとっては、これは不応期内を意味する。NESはまた、(ここでは、mAの電流として示されるが、電圧、パルス持続期間、または複数パルスの個数を含んでもよい)刺激強度に大きく依存する。
【0167】
図30は、刺激パラメータを調整して、高められた機能の所望レベルを維持する必要性を示す2つのX−Yプロットからなる。刺激に対する応答の対象にわたるまたは対象内の変動が生じ、これは高められた機能の結果のレベルに影響を与える可能性がある。これは、PESP増強作用およびNES神経刺激の両方の場合に、応答の絶対レベルの変化(またはずれ)の形態を取ることができるが、便宜上、最新の100%における非刺激基線に正規化することによってこれを取り除いた。残りの変動は、勾配またはNES応答の変化の形態を取るが、PESPの場合、勾配の変化(単位時間当たりdP/dtmaxの変化)および増強作用が生じない不応期の変化の両方を示す。結果として、所望レベルの向上を一度提供した刺激時間が、ここで、向上を伴わず、多少の心臓のメカニカル機能の向上、および異なる勾配を伴う可能性がある。心機能に対する有益な効果のレベルを維持するために、ある種の刺激の閉ループ制御が必要である。
【0168】
図31は、高められた心機能のレベルを制御する手段を示すフローチャートである。刺激のタイミングおよび振幅の調整は、刺激および関連組織および臓器に作用を与え、電気的、メカニカル、代謝、または他の生理的センサによって観測される。最も初期の状況では、臨床医がこのセンサ情報を観測し、それに応じて刺激を調整する。これは、ループを閉じることと見なされるが、応答時間が遅れることにとなる。本発明の埋め込み可能または外部デバイスの実施態様はまた、コントローラと呼ばれる治療送出デバイスの一部の制御アルゴリズムに従って、ループをより高速に閉じることができる。実際の制御システムの全てがそうであるように、コントローラの手動オーバライドおよび調整のための手段が設けられている。治療制御のこの態様は、どこか他の所で記載される開始/終了および安全ロックアウトルールとは別に考えることができる。
【0169】
図32は、刺激治療の自動調整のための基本的なPIDコントローラを示すブロック図である。最も基本的な自動制御方式の1つが、図32に示すPIDコントローラである。目標レベル(設定点)がセンサから導出される実際レベルと比較され、その差が誤差と呼ばれる。PIDコントローラには、関連する乗算定数Pとの比例経路、誤差を定数Iで積分する経路、誤差の導関数を定数Dで処理する経路がある。実際的なPIDコントローラは一般に、命令された出力の絶対制限を実施し、誤差の積分を同様に制限する(反ワインドアップ限度と呼ばれるプロパティ)。さらに、これらのコントローラは一般に、手動または固定出力から自動制御出力への移行が円滑に行われるように実施される(バンプレスな移行と呼ばれるプロパティ)。本出願において、このコントローラは、比較的単純な計算によって心周期毎に刺激パラメータを更新するため、埋め込み式または外部医療機器の処理電力に対して大きな負担を与えることはない。
【0170】
図33は、PESPによる心強化(cardiac enhancement)を維持するP+Iコントローラの効果を図示する、一連の経験的測定値を示す。P+Iコントローラを、制御変数としてのRV dP/dtmaxを使用して用いた。その結果をここに示す。設定点700mmHg/sを入力した(これは、基線レベルの280mmHg/sよりも大幅に大きい)。PESP治療パルスのタイミングの限度が確立され(ここでは、250〜400ミリ秒を用いた)、治療を開始した。高められた機能の所望レベルが急速に得られ、フィードバックコントローラがタイミング(T遅延)を調整し続ける際に、平均レベルRV dP/dtmaxは設定点の付近に維持された。積分器をフィードバックループに組み込むことにより、平均誤差が確実に0となる。この特許開示において、本発明者等は、振動が発生する点までコントローラの利得を高めたこと、すなわちフィードバック制御の分野でよく知られた不安定性現象を報告した。PESP刺激は、心拍数を90bpmから50bpmに低下しただけでなく、LV dP/dtmaxを約1100mmHg/sから2600mmHg/sに増加し続けた。本発明の顕著な特徴は、PESP刺激のタイミングを調整するプロセスにおいて高められた機能の所望レベルを維持するために、コントローラが自動的に増強作用応答曲線の変化に適合することである。これにより、コントローラが不応期の外側に、かつ線形フィードバック制御が適用される動作領域に保たれる。同様の線形フィードバックコントローラは、NES神経刺激およびNESおよびPESPの複合刺激に適用することができる。このようなコントローラはまた、本発明の他の場所において記載したように、刺激治療を開始および終了するためのルールならびに安全ロックアウトルールと協働する。
【0171】
フィードバック制御は、多様なコントローラを用いて操作することができる。これらはともに、図3Aおよび図3Bのシステム図に示すようなマイクロプロセッサまたはハードウェアによって制御され、アルゴリズムまたは臨床医によって求められる入力値を用いてプログラムできることが好ましい。
【0172】
頻脈性不整脈管理デバイスへの拡張に関する詳細な説明
図34は、ICDおよびAEDの通常のショックアルゴリズムを拡張してNESおよび/またはPESP治療を促進する技法を示すフローチャートである。本発明の他の重要な態様は、EMDまたはPEAのような、以前は略一律に致命的と考えられていた特定の非常に危険な状態の認識が、実際に電気刺激治療に応答し得ることである。その際、現世代のICDおよびAEDデバイスはこの可能性を反映するように変更されてよい。このフローチャートは、いくつかの大きな変更を示す。まず、これは、頻脈性不整脈の終了後に重篤な血行力学的機能不全の存在をチェックし、治療を適用することにより、本発明の他の場所に記載されるPESPまたはNES刺激治療または複合刺激治療をデバイスのアルゴリズムに導入する。次に、1つのセットのショック数(n)以上が単一のエピソードまたはクラスタのエピソードで送出される場合、より多くの時間を消費する正確なVF検出ルールが設けられ、VFを認知し処置する機能を依然として保持しながら、ショックに応答しない調律に対して不注意にショックを与える危険性を減らす。より遅いVF検出の潜在的なマイナスの効果はここで、低減された不注意なショックと、より長い持続期間の頻脈性不整脈の回復を助ける刺激治療の実施とにより均衡が取られる。最後に、このフローチャートは、表面ECGまたは心臓内電位図信号、または頻脈を終わらせるための延長されたが成功しなかった努力に続く他のセンサのさらなる解析を提示する。デバイス、またはデバイスおよび臨床医は、良好なVFのような頻脈性不整脈の移行の成功率の向上に関連する特徴を探す。現在の考え方では、このように遅く頻脈エピソードへのショックまたはATP治療に応答する際の生存率は、治療を保証するにはあまりにも低いが、本明細書に記載する本刺激治療の発明は、さらなる救命および生命維持治療への扉を開いたと考えられる。
【0173】
本発明のさらなる態様は、埋め込み式および外部治療デバイスの今ある調律認識アルゴリズムを修正し、すでにある外部または埋め込み式デバイスのそれぞれによって送出される治療パルスと同時に動作することに対処することである。刺激パルスに伴う電位図スルーレートの急峻な変化は、自動調律認識のために認識および無視されることができる。さらに、心臓機能不全の状況において、第2の脱分極の直前に検出された、密接した心室脱分極の対は、PESP期外収縮であり内因性二重頻脈調律ではないと考えられる。デバイスは、それに従って有効な心拍数および心調律を解析し、誤って頻脈性不整脈を検出または処置しない。
【0174】
PESP、NES、除細動およびペーシングの構想を統合した図
図35は、本明細書に記載する本発明のいくつかの態様に従った刺激治療の重要な態様を示すフローチャートである。本発明の様々な構成要素を協働させて、特に不整脈およびHFを含む心臓機能不全のための安全で効果的な刺激治療を供給する。図35の左上部分から始まり、ブロック4は全体として治療を開始または終了するルールを組み込んでおり、したがってこの態様(ブロック4)は、他のものを点状の境界線で囲んでいる。この態様は、自動アルゴリズムであってもよく、あるいは臨床医または患者による入力を必要としてもよい。ブロック6は、メカニカルセンサからの心機能の測度を収集する閉ループフィードバックコントローラと、臨床医または患者からの所望の制御点とを示す。ブロック6として示されるコントローラは次に、この所望の制御点を達成するための治療のタイミングまたは振幅を調整する。ブロック5は心臓不応期を特定するのに用いられるアルゴリズムを含み、このアルゴリズムは心臓脱分極または再分極の電気的検知、あるいは期外収縮または増強作用のメカニカル検知の入力を使用する。非興奮性の神経刺激(NES)が望まれる場合、アルゴリズムは、治療タイミングを不応期内に保つ。PESP刺激の場合は不応期を避ける。ブロック5は、範囲制限システムとして考えることもでき、フィードバックコントローラから受け取る治療タイミングの範囲を制限する。ブロック3は、心室期外収縮や頻脈性不整脈などの異常な心臓事象が発生した場合に治療をロックアウトするアルゴリズムを含む。ブロック1は、完全な二腔検知/ペーシング能力を組み込み、PESP治療に心房協調ペーシング(ACP)機能を追加した、デバイスの二腔ペーシングエンジンである。最後に、ブロック7は、頻脈性不整脈事象の検出と、そのような事象を終了させるためのショックまたはペーシング治療(ATPなど)の適用とを含む除細動システムである。本システムはまた、通常であれば高い死亡率を伴う持続期間の長い頻脈または機能不全エピソードの生存性を高める新しいルールを含む。
【0175】
図35に示す様々な部品は単一の医療デバイスに内蔵されることが好ましいが、そのような部品が全て任意の特定の医療デバイスに含まれる必要はない。実際、部品は、リモードデバイス間に分散され、ワイヤレスまたは他の方法で結合されて、上記の説明に従って動作してもよい。そのような部品を使用する医療デバイスには、IMD、AEDまたは他の体外医療デバイス、デバイスプログラマ、一時的ペーシング/除細動デバイスなどが含まれる可能性がある。
【0176】
図36は、従来のAEDデバイスに組み込まれた本発明の一実施形態を示す図である。本実施形態の一形態において、このような従来のAEDは、TCPに適合した心臓ペーシングシステム(例えば、ペース/検知回路32)を有する。図示しないが、ユーザインタフェースは再構成されて、適切なペーシングおよび検知インジケータが表示され、TCPを処理するためのマイクロプロセッサ能力が向上する。
【0177】
本実施形態の別の形態において、従来のAEDは、本発明に従ってPESPおよび/またはNES治療を送出するように構成される。PESPおよび/またはNES治療を送出するための好適なAED回路部は、ペース/検知回路32内に位置してよい。図示しないが、ユーザインタフェースは再構成されて、適切なペーシングおよび検知インジケータが表示され、PESPおよびNES治療を処理するためのマイクロプロセッサ能力が向上する。本発明のこの形態はほぼ、表面電極から導出される電気信号のみに基づくことが好ましい。
【0178】
本実施形態のさらなる形態において、AEDは、心臓機能不全の程度および送出された治療(例えば、除細動、PESP、NES、TCPなど)に対する反応をより正確に評価するために、様々な生理的センサを含むことが有利である。図36に示すように、1つまたは複数のセンサ1、2、3をAEDに結合して、治療の必要性および有効性を評価することができる。このようなセンサの例として、脈波型酸素飽和度計1、無侵襲型血圧センサ2、カプノメータ(すなわち、呼気CO2センサ)3などがある。このようなセンサと組み合わせて、信号調整回路部4、5、8が結合されて、信号を増幅およびフィルタリングし、AEDのマイクロプロセッサおよび関連回路部が利用できるようにすることが好ましい。
【0179】
PESPを含む本実施形態の全形態の1つの顕著な利点は、従来のAED除細動の周波数が、致命的な調律を即座に終了させるものの、適切な心機能を回復できないという事実に起因している。その結果、突然の心停止の犠牲者は多くの場合、すぐにまたは最終的に心臓機能不全に陥る。頻脈性不整脈が終了した直後にPESP治療を送出するように構成されたAEDは、適切な心機能を回復しようとすることが有利である。心臓のメカニカル機能の迅速な回復は、そのような致命的となる可能性のある頻脈性不整脈の終了直後において非常に重要であり、本発明のこの態様により提供される。
【0180】
上記では、PESPを単独で使用するものとして(表面電極の位置と刺激の大きさのために付随的なNES治療とともに)記載してきたが、NESを意図的に単独で、あるいはPESP治療と組み合わせて呼び出すことが望ましい場合がある。これは、1つまたは複数の専用電極を用いることによって有利に使用することができる。
【0181】
上記の例は例示的なものであり、特許を請求する発明の範囲を限定するものではない。
例1 VFの現れるAEDの例
一般の人々が除細動(ディフィブリレーション)を即座に利用できるようになり、反応時間が早くなったにもかかわらず、突然の心停止の犠牲者が予後に退院できるまで生存することは低く、これらの犠牲者の多くが電気メカニカル乖離(EMD)または無脈性電気活動(PEA)で死亡する。現在のAED技術は、頻脈性不整脈を処置する手段を備えているが、EMD/PEAを処理する手段は備えていない。
【0182】
本発明において詳述する特徴を備えるAEDはこれらのシナリオに対処する。実施態様例において、AEDは第1の応答者と同じに見える。応答者は、2つの経胸腔自己接着性電極を患者に配置してデバイスのスタートボタンを押す。するとAEDは、経胸腔電極から表面ECGを取得し、その信号にVF検出アルゴリズムを適用する。VFが検出された場合、AEDは、除細動ショックを印加し、再検出アルゴリズムを適用する。VFが停止した、または存在しなかった場合、デバイスは、患者が徐脈性不整脈または心停止状態にあったかを確かめるチェックを行い、必要であれば経胸腔電極によりペーシング治療を適用する。さらに、洞調律の検知時またはペーシングによる調律中に、デバイスは応答者に、犠牲者からのパルスを取得するように要求する。パルスが検出されなかった場合、応答者はAEDのボタンを押し、それによりPESP/NES治療が開始され、経胸腔電極により送出される。デバイスは、さらなるパルスチェックを定期的に要求するとともに、明記された中止ボタンを有し、犠牲者が意識を取り戻した場合に応答者が治療を終了することを可能にする。
【0183】
別法としてAEDは、心機能の無侵襲性の測定を行うセンサ(脈波型酸素飽和度計など)または無侵襲型血圧デバイス(膨張式腕帯など)に接続される。このようなシステムは、犠牲者のパルスの評価を行う応答者を必要とせず、PESP/NES治療を必要に応じて自動的に開始および終了する。
【0184】
例2 VTの現れるICDの例
ICDシステムは、AEDで処置された患者と比較すると、突然の心臓停止エピソードからの大幅に改善された生存可能性を患者に提供する。これは主として、デバイスが埋め込まれており常に事象を検知する準備ができている場合に、不整脈の発現と治療送出との間で待機する最小限の時間があるためである。しかしながら、患者によっては、特により顕著なHFを有する患者は、最も短いVFエピソードにさえ耐えることができない可能性があり、不整脈の終了から長い時間が経ってから心機能が低下する可能性がある。さらに、デバイスが治療を送出する前の頻脈性不整脈の持続期間を長くする状況が生じる可能性がある。頻脈性不整脈によってはICDに検出の課題を課すものもあり、これは治療の送出を延期する可能性がある。不整脈はまた、いくつかのショックを終了することを必要とし、エピソードをさらに延期する可能性もある。
【0185】
不整脈の間、心臓を灌流する冠動脈血流量が重度に損なわれ、虚血、およびスタンニングと呼ばれる心収縮性の一時的損失につながる可能性がある。いったん不整脈が終了しての冠動脈流量の回復を防止するのに、収縮性の損失が十分に重度である場合、虚血がさらに生じ、収縮性を下向き螺旋に低下することになるであろう。収縮性を早期に回復するための治療により、この周期を壊し、維持されている心機能の回復をもたらすことが可能である。
【0186】
PESP/NES刺激治療の例には、頻脈性不整脈に続いて損なわれた心臓のメカニカル機能を処置することが含まれるであろう。1つのシナリオ例において、このような治療を装備するICDは、検出された任意の頻脈性不整脈の持続期間をログに記録するであろう。エピソードの持続期間が終了する前にプログラム可能なしきい値を超え、心臓のメカニカル機能が重度に損なわれている可能性が高いことを示す場合、デバイスは、血行力学の早期の増強を与えるために、エピソードに続いてある一定の持続期間の間NES/PESP治療を開始して、心臓の再灌流を早め、頻脈性不整脈からのより完全な回復を可能にする。別法として、エピソードに続いてRV圧力センサがRVパルス圧を検出し、このRVパルス圧と、エピソードが検出される前に測定および記憶された基線値とを比較する場合がある。頻脈性不整脈に続いてあまりにも長い時間、RVパルス圧が基線値に満たず、心臓のメカニカル機能の低下期間が延長していることを示す場合、ICDは、PESP/NES治療を開始し、基線測定値の数パーセントにRV圧力が達した後に治療を終了して、心機能が回復したことを示すであろう。
【0187】
例3 急性代償不全の現れるHFの例
ステージが進行したHF患者は、入院を必要とする心不全関連症状の急な悪化に遭遇する。慢性の代償性HFから急性の非代償性HFへの移行は、食事療法を怠ること、HF疾患の進行、および急性心筋梗塞を含む複数の要因により生じる可能性がある。症状は、重篤である場合、これらの患者をクリティカルケアの病床に収容して生理的センサで監視し、静脈内イノトロープ(inotropes)を含む様々な薬剤で処置する必要があるステージに数時間で進行する可能性がある。このような代償不全に遭遇する患者は一般に、低い安静時心拍出量、収縮機能不良、低いdP/dtmax、弛緩の遅れおよび高いτ、拡張期心室圧の上昇、ならびに心室生成圧力の低下を示す。
【0188】
埋め込み式デバイスによって送出される心臓再同期化治療は、良好な医学治療に対する重要な補助である。このような再同期化デバイスは、NESおよび/またはPESP刺激治療を送出するのに適切な電極および回路部を有する。RV圧力を用いて心機能を絶え間なく監視するための埋め込み可能な監視技術に関して、臨床試験が行われている。このシナリオにおいて、本発明において教示されるように、埋め込み可能デバイスは刺激治療を供給し、血行力学的機能を監視するようになっている。
【0189】
過去2〜4週間にわたって生じた平均値からのdP/dtによって評価される、RV拡張期圧の上昇および収縮性の低下が検知されると、RV心尖部双極リード線からのVsense事象の260ミリ秒後に送出される、2.0V、0.5ミリ秒の単一の心室パルスを用いて、PESP治療を開始することができる。この時点で患者は、HF症状の中程度の悪化にのみ遭遇する可能性がある。
【0190】
このシナリオにおいて、この治療に対する応答は、ほぼちょうど二倍のdP/dtmax、一回拍出量および駆出分画(ejection fraction)の増加、心拍出量の増加、および心拍数の低下である。数時間にわたり、血行力学の改善により肝臓の過剰な塩分および水分を取り除くことができ、RV拡張期圧は基線レベルに戻る。刺激治療は痛みを伴わず、患者によって通知されることなく自動的に開始および停止される。埋め込み式デバイスのメモリに問い合わせを行うことにより、上述のエピソードが明らかとなり、入院および救急部への来院が確実に不要となる。
【0191】
例4 高レートに対して低い耐性を有するSVTの例
高速な心室レートを生じる上室性頻脈は、特に心不全の病歴を有する患者において耐性が低い場合がある。このシナリオにおいて、患者は眩暈および動悸(胸部内が振動する感じ)の初期症状を感じる。救急医療職員が調べる際、心拍数は220bpmであることがわかる。次の数分間にわたって、患者の血圧は低下し、患者は血色が悪くなり、発汗し、精神状態が混乱する。本発明に記載されるようなNESおよびPESP治療が装備されるAEDデバイスが、一対の粘着性パッド電極によって患者に取り付けられている。
【0192】
高速であるが狭いECG群により、デバイスが重篤なSVTを診断することが可能となり、操作者には、PESP刺激またはカーディオバージョンの試験のオプションが提示される。鎮静剤/鎮痛剤を投与した後、表面ECG心室検知事象の250ミリ秒後にタイミングを取られた60mA、20msのパルスを送出することにより、5分間のPESP刺激試験が開始される。救急職員が調べたバイタルサインにより、心拍数が220bpmから110bpmに低下し、血圧が90/50から120/60に増加することが報告されている。患者は以前より正気となり、明らかに血色が良くなる。2分間の試験が完了する前に、調律が瞬時に120bpmの洞調律に変わる。AEDはこのことを認識し、その刺激治療を直ちに終了する。
【0193】
HFの病歴を有する患者は、たった数分の頻脈性不整脈でさえ耐えられない場合がある。レートが十分に高い場合、患者が意識を失い、患者の調律がVFへと悪化することがしばしばである。迅速かつ適切なケアにも関わらず、数分間の長引く心臓虚血の後のディフィブリレーションは、EMD/PEA、または不全収縮(asystole)および死をもたらす可能性がある。この患者は、緊急の薬理的または電気的なカーディオバージョンショック治療の必要を示し、心静止および死を回避した。
【0194】
上述の方法および装置は、心臓機能不全、慢性HFなどを含む心不全を患う患者、ならびに本明細書中に記載し、本発明が対象とする技術分野の技術者に既知のものを含む全ての変形形態に特に有益であると考えられる。本発明は、広範な急性および慢性の心臓機能不全を監視および治療する可能性を提供することが理解されるだろう。本発明は、心臓の血行力学的機能不全のための治療を送出するシステムおよび方法を提供し、本システムおよび方法は、以下の特徴のうち1つを含んでよいが、これらに限定されない。
・他の方法では強心薬(例えばボブタミン、カルシウム、またはミルリノン)を要するかもしれない心臓機能不全の治療、
・他の方法ではメカニカル補助(例えば、大動脈内バルーンポンプ、心臓マッサージデバイス、またはLV補助デバイスポンプ)を要するかもしれない心臓機能不全の治療、
・患者を継続的に監視し、生理的センサがその必要性または患者に症状が出ていることを示すと治療を自動的に行う埋め込み可能または体外デバイス、
・薬剤の過量摂取または低体温の結果生じた心臓機能不全の処置、
・β遮断薬などの陰性変力薬処置と組み合わせてこれらの治療に対する患者の耐性を改善する、
・虚血後心臓機能不全または例えば冠血管閉塞、血栓溶解剤、血管形成術、または心臓バイパス手術後のスタンニングの治療、
・心臓バイパス術の成功に伴う機能不全のサポートおよび心停止法の使用、
・2:1AVブロックを規則化し、メカニカル心拍数を低下させ、かつメカニカル機能を向上させることによる高速かつ許容できない上室性頻脈症(SVT)の治療、また、不整脈の停止を促進してもよい、
・AT、AF、SVT、VT、またはVFを含む頻脈事象後の機能不全の管理(カーディオバージョン、緊急ディフィブリレーションおよび蘇生を含む)、
・重篤な心不全発作、心臓性ショックの悪化、電気メカニカル乖離(EMD)または無脈性電気活動(PEA)、
・低酸素症または代謝異常に伴う心機能の急性低下、
・例えば、活動前または活動中のHFの、または悪化する症状の間欠治療、
・心拍数を変化させ、充満およびメカニカル効率を上げ、逆リモデリングおよび他の回復プロセスを促進するためのHFの継続治療、
・指定の時間間隔にわたり特定の時間帯での、あるいはN回の心周期毎の計画送出の使用を含むHFの計画治療、
・心房収縮性を高め、より良好な心室充満、およびAV同期を促進するための心房PESP治療、および/または
・治療中に心房負荷を減らし心室機能を良くした結果としてAF負荷を減らすこと。
【0195】
結果として、上記および添付の特許請求の範囲で使用されるような「心不全」という表現は、上記の各々とそれに関連する状態を包含するものと理解される。上に記した全ての特許および他の文献は本明細書中に参照により援用される。
【0196】
本発明を好ましい実施形態に関して詳細に例示および説明してきたが、それにより本発明の範囲が制限されるものではないことが理解されるべきである。本発明の範囲は、添付される特許請求の範囲によってのみ規定される。また当業者は、本明細書中に記載される特定の実施形態の、本発明の原理を組み込んだ変形形態を思い付くであろうが、そのような変形形態は依然として添付の特許請求の範囲内にあることも理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0197】
【図1】図1は、1心周期における心腔EGM、圧力、流量および容積の関係を示す。
【図2】図2は、本発明が好ましく実施される、多チャネルの心房および両心室監視/ペーシングIMDを示す概略図である。
【図3A】図3Aおよび図3Bは、1つまたは複数の心腔への選択的な治療の送出およびそこでの心不全状態の監視を可能にする、図1のシステムにおいて用いられるIPG回路部および関連するリード線の一実施形態の簡略ブロック図である。
【図3B】図3Aおよび図3Bは、1つまたは複数の心腔への選択的な治療の送出およびそこでの心不全状態の監視を可能にする、図1のシステムにおいて用いられるIPG回路部および関連するリード線の一実施形態の簡略ブロック図である。
【図4】図4は、本発明によりHFの監視、および任意選択で心臓のペーシング、PESP治療の送出に用いられる、圧力、インピーダンスおよび心臓EGM信号を導出する、信号監視およびペーシングチャネルの簡略ブロック図である。
【図5】図5は、心臓不応期中に開始されてPESP送出間隔の間継続される、治療PESP刺激、特にペーシングエネルギーパルス列の送出を示す。
【図6】図6は、本発明による生理的および治療活動を示すトレースのセットである。
【図7】図7は、 本発明による生理的および治療活動を示すトレースのセットである。
【図8】図8は、本発明による生理的および治療活動を示すトレースのセットである。
【図9A】図9Aないし図9Dは、本発明による治療送出の実施形態の簡単な例示的タイミング図である。
【図10】図10は、本発明の特定の実施形態による、有利には刺激されることができる心臓および関連する交感神経の、部分的に分解した斜視図である(いくつかの部分は図示せず)。
【図11】図11は、患者の心臓組織の近くに位置された電極、および患者の心臓組織から遠く離れて位置された電極の神経刺激タイミング図である。
【図12】図12は、本発明による生理的および治療活動を示すトレースのセットである。
【図13】図13Aないし図13Cは、本発明による生理的および治療活動を示す3つのX−Yプロットのセットである。
【図14】図14は、本発明の一態様を示すフローチャートである。
【図15】図15は、本発明の別の態様を示すフローチャートである。
【図16】図16は、本発明のさらに別の態様を示すフローチャートである。
【図17】図17は、本発明のさらなる態様を示すフローチャートである。
【図18】図18は、本発明による生理的および治療活動を示すトレースのセットである。
【図19】図19は、本発明による生理的および治療活動を示すトレースのセットである。
【図20】図20は、本発明による生理的および治療活動を示すトレースのセットである。
【図21】図21は、本発明による生理的および治療活動を示すトレースのセットである。
【図22】図22は、本発明のさらなる態様を示すフローチャートである。
【図23】図23Aないし図23Dは、本発明による治療刺激の刺激振幅、機械的機能、不整脈の危険性および「正味の利益」のタイミング関係を示す、4つのX−Yプロットのセットである。
【図24】図24は、本発明による生理的および治療活動を示すトレースのセットである。
【図25】図25は、本発明による生理的および治療活動を示すトレースのセットである。
【図26】図26は、本発明のさらなる態様を示すフローチャートである。
【図27】図27は、本発明のさらなる態様を示すフローチャートである。
【図28】図28は、本発明のさらなる態様を示すフローチャートである。
【図29】図29は、時間および刺激強度それぞれに応じたメカニカル機能(dP/dtmax)の関係を示す一対のX−Yプロットである。
【図30】図30は、時間および刺激強度それぞれに応じたメカニカル機能(dP/dtmax)の関係を示す一対のX−Yプロットである。
【図31】図31は、本発明のさらなる態様を示すフローチャートである。
【図32】図32は、本発明のさらなる態様を示すフローチャートである。
【図33】図33は、本発明による生理的および治療活動を示す実験的データのプロットのセットである。
【図34】図34は、本発明のさらなる態様を示すフローチャートである。
【図35】図35は、本発明のさらなる態様を示すフローチャートである。
【図36】図36は、本発明による生理的および治療活動を示すトレースのセットである。
Claims (20)
- 患者に対して電気刺激治療を供給して心臓のメカニカル機能不全に対処するシステムであって、
少なくとも1回の電気刺激治療を開始および終了させて患者の心機能を改善するルールベース手段と、
患者の心周期の電気的、メカニカル、化学的または生理的側面を検知して該側面の出力信号を供給する手段と、
前記出力信号に基づいて前記少なくとも1回の電気刺激治療のタイミングおよび振幅を調整する閉ループフィードバック制御手段と、
前記患者の心周期の不応期および非不応期を検出する手段と、
前記少なくとも1回の電気刺激治療の送出を続けるかどうかを判定する安全ロックアウト手段と、
心房協調ペーシング刺激治療を供給する手段と、
除細動刺激治療を供給する手段と、
を備えることを特徴とする、患者に対して電気刺激治療を供給して心臓のメカニカル機能不全に対処するシステム。 - AV伝導が正常である患者に治療を供給する生理的心房協調ペーシング方法であって、
心臓の心房腔または心室腔の不応期とそれに続く非不応期の間に、該腔に、内因性A−V間隔が終わる前の前記心臓の推定または実際の内因性心房レートをわずかに上回るレートで電気刺激を送出するステップを含む生理的心房協調ペーシング方法。 - 前記電気刺激は、前記腔の内因性脱分極の後に前記レートで送出される請求項2に記載の生理的心房協調ペーシング方法。
- 前記内因性心房レートは、比較的安定した心調律に基づいて推定され、該安定した心調律は、最大値が最大しきい値よりも小さく最小値が最小しきい値よりも大きい心調律を含む請求項2に記載の生理的心房協調ペーシング方法。
- 前記実際の内因性心房レートまたは推定の内因性心房レートが下限しきい値を下回った場合に、心房ペース電気刺激を開始するステップをさらに含む請求項2に記載の生理的心房協調ペーシング方法。
- 前記実際の内因性心房レートまたは推定の内因性心房レートが、下限しきい値を下回る可能性が高いことを示すレートで低下した場合に、心房ペース電気刺激を開始するステップをさらに含む請求項2に記載の生理的心房協調ペーシング方法。
- 所定数の以前の心周期に基づいて、次に予測される心房検知事象の代わりに心房ペース電気刺激を送出する請求項2に記載の生理的心房協調ペーシング方法。
- 前記電気刺激治療を送出する手段は、自動体外ディフィブリレータ、埋め込み可能なカーディオバータ/ディフィブリレータ、ペースメーカ、体外ペースメーカ、または神経刺激器である請求項1に記載の患者に対して電気刺激治療を供給して心臓のメカニカル機能不全に対処するシステム。
- 前V(検知)−V(検知)期間として定義される期間中に心房検知事象が起こらない場合、少なくとも次の心周期の間、あるいは期外収縮の捕捉が明らかになるまで、治療の送出を保留すること請求項2に記載の生理的心房協調ペーシング方法。
- 前記患者の正常なA−V伝導に欠陥が生じた場合、前記心腔の少なくとも1つに非同期電気刺激を送出するステップをさらに含む請求項2に記載の生理的心房協調ペーシング方法。
- 前記心臓の心臓組織の一部に少なくとも1回の非興奮性刺激パルスを送出するステップをさらに含む請求項2に記載の生理的心房協調ペーシング方法。
- 前記心臓組織の一部は、前記心臓の冠状静脈洞の一部、前記心臓の自律神経系の一部、自律神経に近接しており、前記送出した少なくとも1回の非興奮性刺激パルスに応答して前記自律神経からノルエピネフリンが放出されるような場所、前記患者の皮下組織の一部、前記患者の表皮の一部、前記心臓の心膜の一部、前記腔の内部、前記心臓の外部、前記心臓の心膜の一部のうちの少なくとも1つを含む請求項10に記載の生理的心房協調ペーシング方法。
- 前記刺激パルスは、興奮性パルスまたは非興奮性パルスのどちらとして働くように意図されているかに応じた所定の振幅を有する請求項10に記載の生理的心房協調ペーシング方法。
- 安全性に基づくルールが前記心臓の心室腔への前記電気治療の送出を阻止する場合、前記心房協調ペーシング治療も保留される請求項2に記載の生理的協調ペーシング方法。
- 脱分極を誘発するほどに心臓組織を刺激することなく患者の交感神経系の一部を刺激して心機能を増強することを伴う治療送出方法であって、
患者の頸部、胸部、縦隔部、心臓部のうちの少なくとも1つの部位に配置された交感神経の少なくとも一部に非興奮性電気刺激を送出して、少なくとも部分的にカテコールアミン物質の放出により前記心臓の機械的機能を改善するようにするステップを含む治療送出方法。 - 前記交感神経の一部は、鎖骨下わな、胸部交感神経の一部、心臓神経叢、冠血管に並んで配置された名前のない1組の心臓神経のうちの1つの少なくとも一部、下頸心臓神経の一部のうちの少なくとも1つである請求項15に記載の治療送出方法。
- ほぼ上記で説明および例示した通りに患者に対して電気刺激治療を供給するシステム。
- 心腔にPESP刺激パルス治療を安全に適用する方法であって、
心臓の所定数の心周期の間に不整脈が発生していないことを確認するステップと、
前記心腔にPESP刺激治療を送出するステップと、
不整脈心周期が検出されると前記PESP治療の送出を中止するステップと、
を含む、心腔にPESP刺激パルス治療を安全に適用する方法。 - 前記PESP治療の送出を中止した後で、心腔に対して非PESP治療を実施するステップをさらに含む請求項18に記載の心腔にPESP刺激パルス治療を安全に適用する方法。
- 患者へのPESP刺激治療の開始および終了を指示する方法であって、
心臓の血行力学的機能不全の治療の可能性を示す患者から生理的測定値を取得するステップと、
前記生理的測定値を少なくとも1回の電気刺激治療の指示と比較するステップと、
前記少なくとも1回の電気刺激治療のうちの第1電気刺激治療を送出するステップと、
前記生理的測定値に改善が見られるかを再確認するステップと、
前記生理的測定値が所定の期間、所定のしきい値を超えた場合に前記治療を中断するステップと、
を含む、患者へのPESP刺激治療の開始および終了を指示する方法。
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